カメラ開発者が教える デジタル一眼レフ選び

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カメラ開発者
カメラ開発者が
開発者が教える
デジタル一眼
デジタル一眼レフ
一眼レフ選
レフ選び
量販店のカメラ売り場を覗くと、圧倒されるほどとデジタル一眼レフが陳列されています。
「どれを買えばいいんだろう?」
「この機種とあの機種は何が違うの?」
多くの初心者の方がデジタル一眼レフ選びで迷われていると思います。
ここではカメラ開発者の視点から、後悔しないコストパフォーマンス満点のデジタル一眼レフを
選ぶ方法をお教えします。
デジタル一眼レフを選ぶ際に、ぜひ覚えていただきたいことは、
「カメラ選びはメーカー選び」
ということです。そして、メーカーを選ぶときはカメラの性能比較ばかりに注目するのではなく、カ
メラを取り囲む環境(ユーザー数、交換レンズの種類)で選ぶことです。
なぜなら、デジタル一眼レフの性能向上は目覚しいものがあります。つい 3 年前に購入した何
十万円もするプロ用機種と最新の入門機を比較してみましょう。さすがにメカボディの部分はプロ
用が遥かに勝っています。しかし、画素数やオプション機能の有り無しなど、写真の美しさや操作
性に関係する性能はむしろ入門機のほうが優れています。
つまり、現段階で一生懸命“性能”を比較しても、2~3 年後には比較した意味が全く無くなるか
もしれないということです。
一方で、カメラを取り囲む”環境”はあまり変化しません。例えば、ユーザー数で言えばキヤノン
とニコンが突出しています。旅行先で一眼レフを持っている人を観察すると、この 2 メーカーを見な
いことはありません。また、カメラボディの開発スピードに比べて、交換レンズの開発スピードは遅
いので、2~3 年程度で交換レンズのラインナップが大幅に変わることはあまり考えられません。
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それでは、実際に想像してみてください・・・
念願の一眼レフをレンズセットで購入しました。
今まで撮りたいとイメージしていた、素敵な風景や花の写真を撮り始めました。
「写真って楽しいなあ、買ってよかった」と嬉しさがこみ上げてきました。
そうするうちに、カメラ仲間が増えて、
同じメーカーのカメラを持つ者同士のサークルに入りました。
レンズセットの標準ズームレンズに満足できなくなって、
マクロレンズ、広角レンズ、望遠レンズとレンズを増やしていきました。
そして 3 年後
デジタルの世界は進歩がとても早く、最初に購入したカメラボディは
とっくに時代遅れの感じが否めなくなりました。
「そろそろカメラボディを買い換えるか」
そう思って、周りの仲間と購入したレンズを見渡すと・・
・毎週末、撮影会で集まる気の置けないサークル仲間
・○十万円も投資した交換レンズ
そう、実質的に最初に購入したメーカーのカメラしか選択肢がないのです。
特に、交換レンズはカメラ本体よりも高価なことが多いので、そうそう他のメーカーに乗り換える
ことができません。
車や携帯電話であれば、気軽に他メーカーや他キャリアに乗り換えることができます。
しかし、デジタル一眼レフは簡単ではありません。スイッチングコストが相当かかるのです。
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では、どうすればよいのでしょうか?
一番簡単なのは、売れているメーカーを選ぶことです。
売れているメーカーを選ぶメリットは、同じメーカーのカメラを持っている仲間を簡単に見つけるこ
とができるので、お互いに情報やレンズを交換したりしやすくなります。初めて一眼レフを購入され
るのであれば、周りに同じ機種や同じメーカーのカメラを持っている仲間がいることはとても助け
になります。
市場シェアで見ると、先述したキヤノンかニコンになります。
次の視点は、交換レンズのラインナップから選ぶ視点です。DVD でもお話していますが、「写真
はレンズが命」です。どんな高級カメラを使っても、レンズがヘッポコだと良い写真を撮ることはで
きません。一方で、よいレンズを使えば、たとえ入門機でもプロ並みの写真を撮ることができます。
各メーカーから豊富な種類の交換レンズが販売されています。しかし、同じメーカーだからとい
って全ての交換レンズが装着できるとは限りません。例えば、レンズとボディの組み合わせによっ
てはオートフォーカスが使えなかったり、自動露出制御ができなかったりと相性の悪い組み合わ
せが存在します。
各メーカーの比較は「おすすめシンデレラレンズ特集」をご覧になっていただきたいと思います。
失敗しないレンズ選びという視点で見ると、キヤノンが有利ではと思います。比較的早くカメラの
電子化に取り組んだ結果、EF レンズと呼ばれるシリーズであれば、どのカメラボディでもオートフ
ォーカスや自動露出制御を使うことができます。また、「EF 50mm F1.8」の存在が際立っています。
このレンズは¥8000 前後という破格の値段で購入できるにも関わらず、とてもシャープで豊かな
描写力を持つ最強のハイコストパフォーマンスレンズです。他のメーカーで、一万円以下のシンデ
レラレンズは存在しません。このレンズの存在だけでキヤノンを選ぶユーザーもいるくらいです。
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ここまで、既存のカメラ技術の延長で考えてきました。
ここから、将来のデジタル一眼レフカメラ選びについて考えてみたいと思います。
これからのデジタル一眼レフを占う機種がミラーレスだと思います。一眼レフの常識と思われて
いたメインミラーと光学ファインダーをバッサリと削除して、かってないコンパクトなボディに仕上げ
ました。ファインダーの見やすさやオートフォーカスの速度など色々な意見がありますが、私はこ
の機種の売れ行き次第で将来の勢力図が一変するのではと感じています。
ここで一眼レフとミラーレスの違いを説明しておきます。
一眼レフの「レフ」とは、レンズと撮像素子の間にあるメインミラーと呼ばれる部品のことです。ミ
ラーレスはこのメインミラーが無いので、正しくは「一眼レフ」ではありません。メインミラーを無くす
最大のメリットは、ボディの小型化です。特に軽量コンパクトな機種を求める女性に根強い人気が
あります。
逆に、メインミラーを無くすことで失ったものがあります。
光学ファインダーと高速なオートフォーカスです。
コンパクトデジカメではすでに液晶モニタを見ながら撮影することが常識になっています。ミラー
レスでも背面の液晶モニタを使った撮影は手軽でとても便利です。しかし、カメラを構えてからファ
インダーに大きく写る被写体を捕らえてシャッターを押す感触は光学ファインダーならではだと思
います。
オートフォーカスには、これまでの一眼レフで採用されてきたオートフォーカス専用センサを使う
方法(位相差方式)と、コンパクトデジカメと同じ撮像素子で行う方法(コントラスト方式)があります。
一般的に専用センサを使う位相差方式の方が高速なのですが、最近は技術の進化でコントラスト
方式も十分実用可能になっています。しかし、スポーツや動き回るお子さんを撮影する場合には、
コントラスト方式は力不足です。位相差方式を採用する一眼レフの中でも、特にスポーツに強いニ
コンかキャノンをお勧めします。
量販店で販売員に「どの機種がおすすめですか?」と聞くと、そのときにお店で売りたい機種を
薦められることがほとんどです。その言い分を聞くと、ほんの僅かなカメラ性能の差を取り上げて、
あたかも販売員が薦める機種が No.1 であるかのように説明します。
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デジタルカメラは最初の一台を買って終わりではありません。カメラ仲間とのコミュニティー形成
や、レンズを交換する楽しみがこれからたくさん待っています。そうした先々のことを考えて最高の
カメラを選ばれることを切に願っています。
フォトアドバイス
佐藤孝太郎
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