1. AVMに対するエタノール塞栓療法

第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
:大須賀慶悟
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四肢軟部血管奇形
1 . AVM に対するエタノール塞栓療法
大阪大学大学院医学系研究科 放射線医学講座
大須賀慶悟
Ethanol Embolotherapy for Arteriovenous Malformations
Department of Diagnostic and Interventional Radiology, Osaka University Graduate School of Medicine
Keigo Osuga
Key words Arteriovenous malformation, Embolization, Ethanol
はじめに
四肢・軟部の動静脈奇形(AVM)は,年齢とともに進
行しやすく,シャント血流増加に伴い,疼痛・腫脹・
潰瘍・出血・高拍出性心不全などの症状に至る。深部
組織に浸潤して切除困難なことも多く,低侵襲的な塞
栓療法が第一選択になる機会が増えつつある。塞栓療
法では,血管構築と血行動態に応じた塞栓物質の選択
が重要である。特に作用の強い無水エタノール(以下,
エタノール)は,有効で再発率も低いとされる一方,重
篤な合併症の報告もあり,その使用には十分な知識と
1,2)
技術・経験が求められる 。本稿では,AVM のエタ
ノール塞栓療法の実際について述べる。
ノールは,中枢神経毒性,低血糖,横紋筋融解,溶血,
腎毒性,循環不全など全身副作用もあり,塞栓療法に
おいては全身管理を要する。
禁 忌
肝癌に対する経皮的エタノール注入療法用の市販薬
の無水エタノール注フソー(扶桑薬品工業)の添付文書
によると,絶対禁忌は,エタノール過敏症,原則禁忌
は,重篤な肝障害(総ビリルビン値 3 ㎎/㎗以上)
,重篤
な出血傾向とある。AVM に対する治療上は,重要な神
経が隣接する部位,流出静脈の拡張が著明でエタノー
ルや血栓の流出制御が困難な場合など,エタノールの
投与は慎重にすべきである。
塞栓療法の適応
エタノール塞栓療法
症状軽微で変化に乏しい間は保存的に観察し,疼痛・
機能障害や増大傾向を示す場合に治療を検討する。塞
栓療法はしばしば反復を要するため,表在性の限局性
病変では一期的な根治切除を勧める場合もある。切除
適否は,術創や術後の機能障害の兼ね合いも含めて形
成外科や整形外科と協議を行う。深在性の切除困難例
では塞栓術が優先される。また,止血困難な出血時は,
緊急塞栓術が必要になる。
エタノールは,血流の早い状態では直ちに流れ去り,
広い血管腔では希釈されるなど,その作用を十分発揮
できない。動静脈短絡部(nidus)の血管内皮に高濃度
のエタノールを十分接触させるよう,投与経路や血流
コントロールを最適化すべきである。注入時の疼痛は
非常に強く,全身麻酔が必要である。
血流コントロールの手段として,用手圧迫・ターニ
ケット駆血・バルーン閉塞などがある。但し,血流を
完全に遮断するとエタノールが近位側の正常動脈枝に
溢流する恐れがあるため,正常動脈枝までの十分な距
離が確保できない場合は,静脈側への順行性血流を少
し残すぐらいがよい。実際にエタノールを注入する前
に,試験造影を行い,造影剤の挙動をよく観察し,必
要注入量を推測する。圧迫や駆血の解除時に高濃度の
エタノールや大量の血栓が一気に体循環に流出する危
険もあるため,血流コントロールは定期的に解除する
必要がある。
また,エタノールは X 線透視下での視認性がないた
エタノールの特徴
タンパク変性や細胞固定作用を有するエタノールが
血管壁に接触すると,障害を受けた内皮細胞が脱落す
る。内皮の脱落した血管腔では血栓が形成され閉塞に
いたる。エタノールによる局所効果は注入速度によっ
て異なり,急速注入(1~5 ㏄/sec)では,局所組織毒性
が強く,血管周囲の壊死,血管攣縮,内膜障害などを
もたらす。一方,緩徐な注入(0.1 ㏄/sec)では,主に破
3)
壊赤血球による sludge 形成による塞栓となる 。エタ
(83)83
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め,エタノール注入前後に造影剤を注入するサンドイッ
チ法が基本になる。水溶性造影剤で 80%程度までは希
釈できるが,透視下での詳細な観察は難しい。リピオ
ドールを混合する方法もあるが,オイルが静脈に流出
するため好ましいとはいえない。
血管を即時的に閉塞させる NBCA とは異なり,エタ
ノールの作用には時間がかかる。5 ~ 10 分間隔でボー
ラス注入を反復し,次第に血栓化や血流が低下する様
子をその都度造影で確かめる。血流低下に伴い,追加
するボーラス注入量も減らす(図 1)。超音波では,血
栓化が進むにつれて,B モードで徐々に血管内に点状
高輝度が観察される。
エタノールは,血管腔の血液を押しやり血管内皮へ
の接触を高めるよう,ある程度の力で圧入する必要が
あるが,あくまで正常動脈枝への溢流は回避する。
エタノールの過量投与は,中毒症や心肺虚脱の危険
があり,使用量は制限される。肝癌用の無水エタノー
ル製剤(フソー)の添付文書は,1 日投与量が原則最
大 10 ㎖としている。AVM に対する治療では,文献上
0.5 ~ 1.0 ㎖/㎏が上限とされている。総量だけでなく,
1 回毎のボーラス注入量も重要で,Mitchell らはボー
ラス注入当たり最大 0.1 ㎖/㎏とし,5 分以上の注入間
2)
隔を推奨している 。Shin らは,Swan-Ganz・カテー
テルを用いた検証から,ボーラス注入量が 0.14 ㎖/㎏
4)
を超えると有意に右心負荷が増して危険としている 。
小児における至適量は十分検討されておらず,重症低
5)
血糖を認めた報告もあり,注意を要する 。従って,
大きい病変では,一度に無理せず治療を分割・反復す
る方がよい。
以下,投与経路別に技術的な注意点について述べる。
1)経動脈的アプローチ(図 1)
可能な限り nidus 直前までカテーテルの超選択挿入
に努める。流入動脈の本数が多く,屈曲・蛇行が強い
場合は限界があり,手技・透視時間も長引きやすい。
妥協して正常動脈枝より手前からエタノールを注入す
ると周囲組織の虚血障害の恐れがある。カテーテル
操作によるウェッジやスパスム惹起は,血行動態を変
えるが,意図せず好都合な血流コントロールにもなり
得る。
2)経静脈的アプローチ
多数の流入動脈が 1 本の流出静脈(dominant outflow
vein)に抜ける場合に有用である。流出静脈までカテー
テルを逆行性に挿入し,バルーン閉塞やターニケット
駆血を併用する。バルーン閉塞下では,B-RTO の要領
になるが,動脈圧がかかり続けると潰瘍など脆弱な組
織では出血させる恐れがある。従って,ターニケット
を動脈圧以上に加圧したり,動脈側もバルーン閉塞し
て,動脈圧を下げておくことも考慮される。流出静脈
腔が広すぎる場合は,そのままエタノールを注入して
も十分な塞栓効果は望めないので,先にコイルを用い
て静脈側の cavity を極力減らすとよい。その際,コイ
ルの逸脱の回避が重要である。引き続き,エタノール
を注入する場合,正常動脈まで逆流させ過ぎないよう
に加減する。あるいは,エタノール注入を動脈側から
に切り替えてもよい。
図 1 10 代女性。左大腿 AVM に対する経動脈的塞栓術。
a : 左深大腿動脈造影。正常な筋肉枝を分岐後,末梢で動静脈短絡(nidus)を形成している。
b : Nidus 直前までマイクロカテーテルを選択挿入し,ターニケット駆血下に造影剤約 1 ㎖で造影。
屈曲蛇行する複数の流入動脈から拡張した流出静脈に移行する。近位側の正常筋肉枝に逆流し
ないことを確認し,エタノール 1 ㎖を注入。
c : 5 分後の造影。Nidus は減弱している。エタノール 0.5 ㎖を追加注入。
d : 15 分後の造影。Nidus はほぼ閉塞した。
84(84)
a b c d
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3)
直接穿刺アプローチ(図 2)
経動脈や経静脈アプローチが困難な場合に有用であ
る。超音波下あるいはロードマップ透視下に nidus を
穿刺し,ヒットした部位が,nidus の動脈成分側か静脈
成分側かを造影で見極める。バルーンやターニケット
で血流コントロールしながら,nidus にうまく停留し,
正常動脈まで溢れないようエタノールを注入する。穿
刺針は,浅い病変には,翼を鋏で切った 23~25 G 翼状
針
(約 1.5 ㎝長)
がちょうどよい。翼を切る理由は,せっ
かくヒットした針が翼の重さで傾いて抜けたり,穿刺
を追加する際に翼同士が干渉するからである。翼状針
で届かない深さでは,23 G 注射針(約 3 ㎝長)
,さらに
深い部位には 23 G カテラン針(約 6 ㎝長)
,22 G スパイ
ナル針(約 9 ㎝長)などを用意する。翼状針以外では,
デッドスペースの小さい(0.4 ㎖)延長チューブと接続す
る。逆血の確認は重要だが,針内に残った血液とエタ
ノールが接触すると sludge を作り針が詰まってしま
う。シリンジを交換する際に,血液が針内に逆流しや
すいため,シリンジの繋ぎ替えは,鉗子で延長チュー
ブを先にクランプしてから行うとよい。針が標的に
ヒットしなかったり,ヒットしてもエタノール注入に
不適切な場合は,抜針せずにそのまま置いておく。そ
の理由は,針を抜いてしまうと出血して圧迫止血に時
間を取られたり,次の穿刺部位を決めるのに残した針
の位置や角度が目安になるからである。従って,実際
にエタノールを注入した針よりもしばしば多い数の針
図 2 50 代女性。左足 AVM。主訴は難治性潰瘍と疼痛。
a : 踵部足底に微細な nidus を認める。
b : 経動脈的塞栓術を試みるも,nidus 直前への十分な選択挿入は困難で,足底動脈への溢流が危惧
された。
c : 直接穿刺造影。異常血管が描出される。ターニケット駆血下に無水エタノールを 0.5 ㎖注入。
d : 2 回目の治療終了時の DSA。Nidus はほぼ消失している。
e : 超音波下に 25 G 翼状針
(翼はカット)
で皮下の異常血管を穿刺する様子。
f : エタノール注入終了時に針先に血液が返らないようクランプする様子。
g : 治療終了時の穿刺針の様子。
a b e
f
c d g
(85)85
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が穿刺される。超音波で観察できる場合は,
カラーモー
ドでシャント波形を示す血流が残る部分に対して追加
の穿刺を行う。
術中管理
術前から十分な補液を行い,腎血流・尿量を確保す
る。水分バランスのモニターとヘモグロビン尿のチェッ
クを兼ねて尿道カテーテルを留置する。術中は,心電
図,血中酸素飽和度,終末呼気二酸化炭素濃度などの
モニタリングが必要である。エタノール投与量が 0.5
㎖/㎏以上に達すると肺高血圧や心肺虚脱のリスクも
高まるため,ニトログリセリン持続投与,Swan-Ganz
カテーテル・動脈ライン・経食道エコーや集中回復室
4)
などの準備が必要となる 。急激な肺血圧上昇の際は,
純酸素投与・血栓溶解・抗凝固療法なども開始する。
治療中は,皮膚障害や末梢循環不全が起こっていない
か,患部周囲の色調変化や過度の腫脹など視・触診を
行う。
術後管理
急性炎症による患部の疼痛・腫脹は,術直後から約
1 ~ 2 週間は持続する。当日から翌日は,鎮痛剤・ステ
ロイド・抗生物質などの投与を基本とし,必要に応じ
て皮膚保護,患肢挙上を行う。溶血,肝・腎機能障害,
横紋筋融解,炎症反応など,血液・生化学・凝固線溶・
検尿などのチェックを適宜行う。肉眼的にヘモグロビ
ン尿を認めた場合は重炭酸ナトリウム投与による尿の
アルカリ化(ヘモグロビン成分のヘマチン沈着による
尿細管閉塞を予防)やハプトグロビン点滴静注を行う。
ハプトグロビンは生物由来製剤であり,予防投与は控
えるべきである。
合併症
エタノールの血管外漏出や正常終末動脈枝への溢流
により,皮膚壊死,筋肉障害,神経障害などが起こり
得る。筋肉の術後腫脹が過度になるとコンパートメン
ト症候群を起こす危険もある。筋肉内病変では,瘢痕・
拘縮による機能障害を来す恐れもあり,急性期が過ぎ
たら,ストレッチングやリハビリに努める。神経障害
は,多くは一過性の知覚麻痺で,ある程度強い障害で
は,運動麻痺が長引く恐れがある。流出路の血栓化や
患部の腫脹圧迫に伴い深部静脈血栓症のリスクもある。
高濃度・大量のエタノール,または多量の血栓流出に
よる肺高血圧症や肺塞栓症は,致死的になり得る。
文献上の成績
四肢軟部の AVM に対するエタノール塞栓術の報告
は,多くが症例報告や総説で,まとまった成績は少な
い。Do らは,四肢・体幹 AVM 40 例に対して 1~ 24 回
(中央値 3 回)計 175 回のエタノール塞栓術を行い,平均
86(86)
14.6 ヵ月(2 ~ 48 ヵ月)の観察期間中,27 例(68%)で症
6)
状改善が得られ,16 例(40%)で治癒したとしている 。
しかし,皮膚壊死・神経麻痺・感染・急性腎不全を含
む合併症を 21 例(52%)に認めたとしている。Park ら
は手 AVM 31 例に対して,1~11 回(平均 2.8 回)のエタ
ノール塞栓術を行い,1 例(3%)で根治,22 例(78%)で
改善,7 例
(23%)
は不変としている。一方,19 例
(61%)
に合併症を認め,内訳は,皮膚壊死 14 例(45%),水
泡 7 例(23%)
,関節拘縮 6 例(19%)
,一過性麻痺 4 例
7)
(13%)で,2 例は切断を要したとしている 。いずれも
同じ施設からの報告だが有効性が高いと同時に合併症
率も高いことが共通している。
まとめ
AVM に対する血管内治療は,施行施設が一部の専
門施設に集中する傾向があり,その有効性について高
いエビデンスはないのが現状である。特に,エタノー
ル塞栓療法は,優れた効果を示す一方,全身麻酔を必
要とし,局所壊死・麻痺から致死的合併症までリスク
の高い治療である。従って,他の塞栓物質や治療法と
のリスク・ベネフィットを熟慮した上で,エタノール
塞栓療法の適応を慎重に判断し,合併症管理も含めて
集学的な専門チームにより行われるべきである。
【参考文献】
1)Yakes WF, Rossi P, Odink H: How I do it. Arteriovenous malformation management. Cardiovasc Intervent Radiol 19: 65 - 71, 1996.
2)Mitchell SE, Shah AM, Schwengel D: Pulmonar y
arter y pressure changesduring ethanol embolization procedures to treat vascular malformations: can
cardiovascular collapse be predicted? J Vasc Interv
Radiol 17: 253 - 262, 2006.
3)Ellman BA, Parkhill BJ, Curry TS 3rd, et al: Ablation
of renal tumors with absolute ethanol: a new technique. Radiology 198; 141: 619 - 626.
4)Shin BS, Do YS, Cho HS, et al: Effects of repeat bolus ethanol injections on cardiopulmonary hemodynamic changes during embolotherapy of arteriovenous malformations of the extremities. J Vasc Interv
Radiol 21: 81 - 89, 2010.
5)Joffe D, Bank WO: Morbidity in a pediatric patient
having alcohol ablation of an arteriovenous malformation. Can J Anaesth 53: 527 - 528, 2006.
6)Do YS, Yakes WF, Shin SW, et al: Ethanol embolization of arteriovenous malformations: interim results.
Radiology 235: 674 - 682, 2005.
7)Park HS, Do YS, Park KB, et al: Ethanol embolotherapy of hand arteriovenous malformations. J Vasc
Surg 53: 725 - 731, 2011.
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四肢軟部血管奇形
2 . 静脈奇形のポリドカノールを用いた硬化療法
川崎医科大学附属川崎病院 放射線科,岡山大学病院 放射線科
1)
三村秀文,松井裕輔,宗田由子,道下宣成
1)
1)
1)
1)
藤原寛康 ,平木隆夫 ,郷原英夫 ,金澤 右
Polidocanol Sclerotherapy for Venous Malformations
Department of Diagnostic Radiology, Kawasaki Hospital, Kawasaki Medical School
Hidefumi Mimura, Yusuke Matsui, Yuko Soda, Norishige Michishita
Department of Radiology, Okayama University Medical School
Hiroyasu Fujiwara, Takao Hiraki, Hideo Gobara, Susumu Kanazawa
Key words Venous malformation, Sclerotherapy, Polidocanol
施設では小学生低学年以下では全身麻酔下にポリドカ
ノールフォームあるいはエタノール硬化療法を施行す
る。中学年以上では局所麻酔下のフォーム硬化療法あ
るいは全身麻酔下のエタノール硬化療法を選択する。
はじめに
静脈奇形に対する積極的な治療方法としては硬化療
法,手術があるが,治療方針について明確なコンセン
サスはない。硬化療法は低侵襲で術後の機能・形態の
障害が少ないために,第一選択の治療になりつつある
が,本邦では保険診療未承認である。我々は硬化療法
の中でも局所麻酔下に簡便に施行可能なポリドカノー
ル硬化療法,特にポリドカノールフォーム硬化療法に
ついて述べる。
硬化剤の選択
静脈奇形治療法の選択
硬化療法の適応は疼痛,腫脹,機能障害などの症状
を有する病変,経過観察で急速に増大する病変など,
積極的治療を要する病変である。非常に細かい血管腔
から成る病変に対しては硬化療法の効果が得られにく
く,手術が適している。頭頸部病変に対しては硬化療
法後に整容目的のため手術が行われることが多い。当
硬化剤の種類,硬化作用の程度,注入時の疼痛,特
徴的な合併症,推奨最大容量は表 1 のとおりである。
硬化剤の選択方法として,大きい深部病変に対しては
無水エタノール,小さく皮膚あるいは神経に近い場合
はポリドカノール,エタノラミンオレイト,sodium
tetradecyl sulfate(STS:日本国内で入手不可)
,希釈
したエタノールが適切であるかもしれない。ポリドカ
ノールフォームは両者に使用可能で,多くのタイプの
静脈奇形が対象となる。
ポリドカノールは下肢静脈瘤,食道静脈瘤に有効で
保険認可されている。下肢静脈瘤に対しては液体のま
まで使用可能だが,最近ではフォームにして使用され
表 1 硬化剤の比較
Sclerosing
power
Pain on
injection
Absolute Ethanol
strong
severe
5% EO
(Ethanolamine Oleate)
moderate
mild
3% STS
(Sodium Tetradecyl Sulfate)
moderate
nearly painless
anaphylactic shock
3% POL
(Polidocanol)
week
nearly painless
anesthetic effect
- hypotension, bradycardia reversible cardiac arrest
Characteristic complications
extravasation through venous walls
- skin necrosis, nerve injury cardiovascular collapse
hemolysis
- hematuria, renal failure pulmonary toxicity
Maximum dosage
(adult)
0.5〜1 ㎖/㎏
20 ㎖
4〜10 ㎖
0.07 ㎖/㎏
(2 ㎎/㎏)
(87)87
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表 2 製造メーカーによる静脈瘤径別の推奨ポリドカ
ノール濃度
(液体で使用した場合)
ポリドカノール濃度
静脈瘤径
0.5%
1 ㎜未満
1%
1 ㎜以上 3 ㎜未満
3%
3 ㎜以上 8 ㎜以下
ることが多い。静脈瘤の径別のポリドカノール(液
体)の推奨濃度は表 2 の通りである。フォーム作成に
使用するポリドカノールの適切な濃度についてのコン
センサスはない。
フォームとは硬化剤とガスを混和したものである。
硬化剤としてはポリドカノール,STS,エタノラミン
オレイトが使用され,ガスとしては炭酸ガス(CO2)あ
るいは空気(フィルターを通した室内空気)が使用され
る。フォームの利点としては硬化剤の表面積,硬化剤
と血管内皮との接着性を増加させる。またフォームは
血管攣縮をきたし,硬化剤の効果を高める。これらの
利点により液体硬化剤の量を減らし,より太い血管に
対して有効であると考えられる。
術前評価
疼痛があればその頻度を問診し,疼痛スコア
(VAS:
visual analog scale あるいは NRS:numerical rating
scale)を計測する。整容目的であれば写真により評価
する。画像診断として超音波,MRI を行い,診断を確
定し,病変の大きさ・深さや近接する重要臓器との関
係を把握する。その他,血液検査(腎機能,凝固能を
含む)
,検尿を行う。
術前処置
当施設では術前処置として 6 時間絶食,2 時間絶飲
としている。成人に対しては手技の 30 分前に塩酸ヒ
ドロキシジン(アタラックス P)25 ㎎筋注を行い,手技
直前にフェンタニル 50 ㎍静注を行う。前腕病変など
コンパートメント症候群を来す危険性がある場合は
ステロイド投与を行う。術前より翌日までデキサメサ
ゾン 0.1 ㎎/㎏/8 hr 静注を行い,以後プレドニンを経
口投与し一週間でテーパリングする。
疼痛のある患者に対しては,術前に疼痛・圧痛があ
る部位を囲むようにマーキングする。全体を一度に治
療することが困難な大きい病変に対しては,疼痛があ
る部位を集中的に治療する必要があり,マーキングは
特に重要である。
ポリドカノールフォーム硬化療法の手技
準備する器具としては 23 G 翼状針,22 G 注射針に延
長チューブ接続したもの,CO2 ガスター,10 ㎖シリン
ジ 2 個と三方活栓,超音波装置(7.5 MHz プローブ)な
どである
(図 1)
。
ポリドカノールフォームの作成方法は以下のとおり
である。3%ポリドカノールと CO2 を 1:4 の比率で混
和する。10 ㎖シリンジ 2 個と三方活栓を用い,20 往復
パンピングしてフォームを作成する(図 2)
。これは下
1)
肢静脈瘤フォーム硬化療法の Tessari 法 の変法である。
超音波ガイド下に病変を穿刺し,逆血を確認後,造
影剤を注入する。造影により血管腔内に針先があるこ
と,病変の形態,病変内血流停滞の程度,造影剤の必
要量,病変内から流出静脈・深部静脈への造影剤の拡
がりを観察する。必要があれば血流をコントロールし,
DSA 下に硬化剤を注入する(図 3)
。一般にフォームは
図 1 準備する器具
a, b : 23G 翼状針
(b では翼をカットしている),22 G 注射針と延長チューブ
c : CO2 ガスター
88(88)
a b c
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図 2 ポリドカノールフォームの作成方法
a : 3%ポリドカノールと CO2 を 1:4 の比率で混和する。10 ㎖シリンジ 2 個と三方活栓で 20 往復パ
ンピングして作成する。
b : 作成されたフォーム。
エタノールよりも硬化作用が弱く,効果の発現に時間
を要し,血流コントロールが必要である。その方法と
しては駆血帯,ガーゼを巻いた鉗子,エアーターニケッ
トなどを用いた流出静脈圧迫を行う。
ポリドカノールフォームの注入方法としては,成人
では 1 回の注入量 5 ㎖以下で,DSA で流出静脈に流入
しない程度の量を注入する。フォームは DSA で陰性
造影剤として描出され,テスト注入した造影剤や延長
チューブ内の造影剤が先行することにより,流出静脈
を認識できる。必要があれば 5 分間隔を開け,2 回目
の注入を行う。複数個所穿刺し,フォームを注入する。
総注入量は CO2 フォームの場合,成人で 20 ㎖程度(ポ
リドカノールにして 2 ㎎/㎏)としている。空気を使用
したフォームを使用する場合,1 回注入量,総注入量
共に減らす必要があり,下肢静脈瘤硬化療法のヨー
ロッパコンセンサスミーティング(第 2 回)では空気を
用いたフォーム使用量は 1 セッション当たり最大 10 ㎖
2)
にするように勧告している 。
術後管理
前腕病変以外の四肢病変では術後 3 日間弾性包帯で
圧迫する。術翌日皮膚,神経障害などの観察,血液検
査,検尿
(溶血の有無,腎障害のチェックなど)
を行う。
術後評価
術後 1 ヵ月で合併症の有無,術後 3 ヵ月で症状・外観・
画像を評価する。疼痛がある場合は VAS,NRS で評価
する。表在病変や顔貌については写真による外観の評
価を行う。病変の大きさの変化については MRI ある
いは超音波検査による評価を行う。
成 績
静脈奇形のポリドカノール(液体)硬化療法の報告と
a b
して,我々は 32 人の患者に対し同治療を行い,46ヵ月
の平均観察期間で疼痛の改善を評価したところ,評価
可能であった 29 人中 26 人
(90%)
で疼痛の改善がみられ
た。また静脈奇形のうち,10 ㎝以下,境界明瞭,硬化
剤の停滞が良好な病変で治療効果が高かったと報告し
3)
た 。重篤な合併症は見られず,皮膚壊死もなかった。
しかしながらポリドカノールを過量に投与した患者で
術中の四肢・口唇のしびれ,徐脈・血圧低下がみられ,
ポリドカノールの使用可能な容量が少ないことが問題
であった。
4)
Cabrera ら によると,静脈奇形に対してポリドカ
ノールフォーム硬化療法を 50 人の患者に施行し,病
変の縮小は 50 人中 46 人(92%)で得られ,疼痛の改善
は 39 人全員で得られた,と報告している。合併症と
しては重篤なものはなく,皮膚壊死・軟部壊死は 4 人
(8%)でみられた。
合併症とその対策
硬化療法の一般的な合併症として皮膚壊死,神経障
害,深部静脈血栓症が挙げられる。硬化剤の血管外漏
出による皮膚壊死を防ぐため,逆血の速度とテスト注
入した造影剤をよく観察する。逆血がスムーズではな
く,造影剤が病変内外の両方に分布する場合は硬化剤
を注入しない。深部静脈血栓症の予防のために,血流
コントロールにより深部静脈への硬化剤の流入を少な
くする。逆に過度の駆血により硬化剤を深部静脈に暴
露させないことも重要である。長時間の駆血は望まし
くない。なお駆血を解除する際には硬化剤が大循環に
流入するので,硬化剤による全身性の合併症にも注意
が必要である。術後の皮膚壊死に対してはワセリンな
どによる保湿を行う。神経障害の多くは一時的である。
コンパートメント症候群を来す危険性がある場合は,
前述の通りステロイド投与を行う。その他,小児に対
(89)89
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
:三村秀文,他
技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
a b c
d e f
g
図 3 フォーム硬化療法の手技
a : 膝窩部静脈奇形は MRI T2 強調像で高信号を呈している。
b : 超音波ガイド下に病変を穿刺する。
c : 逆血を確認する。
d : 造影剤を注入する。
e : DSA 下にフォームを注入する。フォームは陰性造影剤として観
察される。
f : 複数か所穿刺し,硬化剤を注入する。
g : 硬化療法後,病変は縮小している。
しては被曝軽減に努める。
ポリドカノールによる合併症として術中の血圧低
下,徐脈が挙げられる。これはポリドカノールの麻酔
作用によると考えられる。さらに可逆性であるが心停
5)
この症例では2㎎/㎏のポリドカノー
止の報告があり ,
ル(液体)をワンショットで注入されている。硬化剤の
90(90)
注入量・注入速度に注意が必要である。ポリドカノー
ルにより溶血を生じることはほとんどないが,血尿が
みられれば補液を十分行う。
下肢静脈瘤に対するフォーム硬化療法の合併症とし
て脳梗塞による不全片麻痺が報告されており,この
患者では径 18 ㎜の卵円孔開存がみられ,左心系への
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
:三村秀文,他
技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
フォームの流入が原因と考えられた 。この報告では
空気を使用したフォーム 20 ㎖が使用されている。卵円
孔開存は一般人の約 20%に存在すると言われている。
前述のコンセンサスミーティングでは既知の卵円孔開
存はフォーム硬化療法の相対的禁忌であり,体位や
フォーム使用量について特別な注意が必要であると勧
告している。CO2 を使用したフォームは空気を使用し
7)
たフォームより安全と考えられる 。CO2 は毒性がな
く,右心系に多量に注入することが可能であるが,空
8)
気と比較してフォームの消失が速い 。
6)
おわりに
静脈奇形の硬化療法は日本では保険診療未承認であ
る。本治療の普及のためにはその必要性が広く認知さ
れることが第一歩である。硬化療法を施行する際には
患者ケアが必須であり,外来診療を含めて関わること
が求められ,さらに形成外科をはじめとする関連各科
との密接な関係の構築が必要である。
【参考文献】
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(91)91
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
:兵頭秀樹
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
四肢軟部血管奇形
3 . EO 硬化療法
札幌医科大学 放射線診断科
兵頭秀樹
Ethanolamine Oleate Sclerotherapy
Department of Diagnostic Radiology, Sapporo Medical University
Hideki Hyodo
Key words Sclerotherapy, EO, Vascular malformation
血管奇形は診断に難渋したり誤った治療が選択され
ることが多く,その難治性も相まって積極的な治療が
避けられてきた。1997 年に ISSVA(The International
Society for the Study of Vascular Anomalies)から提唱
1,2)
された分類 (表 1)により,血管奇形は hemangioma
of infancy を代表とする vascular tumor と毛細血管や動
静脈・リンパ管からなる脈管の形成異常により生じる
vascular malformation に大きく分けられ,これに基づ
いて治療法の標準化が進んだ。わが国においては形成
外科学会・日本 IVR 学会が中心となり,
「血管腫・血管
奇形ガイドライン」が発表され(執筆段階ではパブリッ
クコメント募集が終わっている)
,適正な診断・治療
への取り組みが急速に進んでいる。
四肢軟部血管奇形に対する治療のポイントは“いつ
治療を開始するか”という点である(図 1)
。仮に病変が
存在していたとしても臨床症状を発せずあるいは自覚
したとしても痛みなどの有害症状なく経過できるもの
であれば(Schöbinger’
s stageⅠ/Ⅱ)積極的に治療しない
ことが重要である。不用意に治療することで,かえっ
て病勢を進行させる懸念があるためである。一方,痛
みや潰瘍 / 出血等有害症状を発している(stageⅢ)にも
かかわらず適切な治療が行われないと多くの症例で増
悪化し心不全を招き(stage Ⅳ)死亡に至る場合がある。
すなわち,臨床症状が認められた時が治療開始時期と
考えればよく,その他の所見としてはしびれ・潰瘍・
3)
心不全徴候・心因性変化等が判断基準と考えられる 。
一方,治療の終了時期も判断に苦慮することがしばし
ばあり,病変が残存している場合の追加治療を如何に
するかは判断に迷う。その際,治療の目標が“臨床症
状の軽減”であり,病変を完全に消失することを目標
とした治療は積極的に行わない点を心掛け,症例毎に
検討される必要がある。
When should we treat vascular malformation ?
⇒ increase the symptom
(at the yellow zone = stage III)
表 1 ISSVA* classification(1997)
ISSVA Classification of Vascular Anomalies*
Vascular
Tumor
Vascular Malformation
Simple
Combined
Hemangioma
Capillary
malformation
Arteriovenous fistula,
arteriovenous malformation,
capillary-venous malformation,
capillary-lymphatic-venous
malformation
Other
Lymphatic
malformation
Lymphatic-venous malformation,
capillary-lymphatic-arteriovenous
malformation
Venous
malformation
Hyodoh H, et al: RadioGraphics 2005; 25: S159-171
ISSVA International Society for the Study of Vascular Anomalies.
*
92(92)
pregnant
injury
adolescence
図 1 血管奇形治療開始時期
血管奇形は自然退縮することはなく,外傷や妊
娠等を契機として増悪する。治療開始時期の決
定は患者毎で異なるが,臨床症状(痛み等)の出現
(Schöbinger stage Ⅲ)が判断基準となる。
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
:兵頭秀樹
技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
治療前画像診断に求められることは,病変のサイズ・
関与血管・血流速度と方向・周囲組織との関連性・内
部性状の評価であり,盲目的な治療アプローチは慎ま
3~6)
なければならない 。現在までに様々な画像診断手
法が検討されその有用性が報告されており,自験例で
は MRI 脂肪抑制 T2 強調像・脂肪抑制造影 T1 強調像が
2)
病変サイズや周囲との境界評価に有用と考えられる
(図 2)
。四肢血管奇形の治療に際しては駆血帯を併用
した治療が行われることが多く,治療前 MRI 画像所見
と病変内潅流の状態が異なるため治療前に完全に病変
の血流動態を把握することが難しい場合がある。より
安全な手技を行うためには,様々な診断法を組み合わ
せて病変の把握を行うことが必要であり,術者は各画
像診断法の利点 / 欠点を熟知して治療を計画・実施す
る必要がある(表 2)
。
治療法の選択は病変毎に異なるが,病変が小さく切
除後の機能障害を生じない場合には外科手術による完
全切除がよい適応と考えられる。広汎病変の場合に不
完全切除となることが多く術後更に複雑な血管再増生
を招くため実施は避けなければならない。同様の理由
で近位動脈塞栓術も実施してはならない。躯幹部病
変と異なり四肢領域では amputation・義肢装具による
QOL 向上を積極的に考慮することも可能であり,患
者 / 家族の希望にも配慮しながら治療計画することが
必要となる。
硬化療法は血管奇形に対する独立した治療法として
有用と考えられており,手術療法との組み合わせによ
7)
る有用性が報告されている 。一般的には臨床症状が
軽微だが出現している場合が硬化療法のよい治療適応
と考えられる。硬化剤は表 3 に示すものが現在わが国
で使用されているものである。オルダミン(EO)の効
果はエタノールより弱くポリドカノールより強いと考
*
表 2 Selection of imaging modalities
advantage
disadvantage
US
surface lesion, flow
direction, direct
observation
operator dependent,
subjectivity, small FOV
CT
objectivity, large FOV,
reproducibility
radiation exposure,
contrast enhancement,
static image
MRI
objectivity, high signal
resolve, flow direction,
time consuming,
expense, NSF (when
contrast using)
Angio(DSA)
time resolve, spatial
resolve, flow direction
invasive, small FOV,
radiation exposure
Cavography*
just before the session,
flow direction
invasive, small FOV,
radiation exposure
direct nidus opacify
*
**
1.6
8)
*
• 画像評価 (Fisher’s PLSD P<0.005*, <0.001**)
1.8
えられており ,B-RTO(バルーン閉塞下血栓塞栓療
法)で EO に習熟している日本の IVR 医師は多く,我々
の施設でも硬化療法の中心的薬剤として使用してい
5)
る 。過去の報告からは病変サイズが長径 5 ㎝以下・
境界が明瞭・ナイダスと呼ばれる病巣中心の血流うっ
滞が得られる場合には高い治療効果が認められてい
3,
5,
9)
る(図 3) 。そのため,体表面からの駆血・用手圧
迫及びバルーンカテーテルを用いた一時的血流閉鎖術
等,様々な手技を駆使してナイダスの血流うっ滞を得
ることが成功の key point となる(図 4)。我々の施設で
は治療フローチャートをもとに治療計画を行っている
が,各施設の状況に応じた修正を加えて実施されるこ
とが望ましい(図 5)
。ナイダス内の血液還流が速い場
合,ナイダス血流うっ滞を得る方策を駆使し硬化療法
を実施することになるが,ナイダス血流うっ滞が得ら
れない場合には残念ながら硬化療法の有用性は限定的
となるため塞栓療法や amputation 法等他の治療法を
中心とした治療計画に変更が必要となる。
EO 硬化療法の薬液は EO1 バイアル(10 ㏄)に非イオ
表 3 Sclerosant, liquid embolization
1.4
absolute
ethanol
1.2
1.0
0.8
Ethanolamine
Oleate
0.6
0.4
0.2
0.0
fsGd-T1
fsT2
T1
T2
polidocanol
2007年JSIR金沢
図 2 病変評価に適する MR シーケンス
脂肪抑制 T2 強調像が病変と周囲組織との境界判
定に最適と考えられる。症例によっては皮下脂
肪内病変の評価に T1 強調像が有用な場合もあり,
症例毎に評価検討することが望ましい。
n-butyl 2 cyanoacrylate
advantage
disadvantage
strong endothelial
damage,
high response rate,
less expensive
painful, higher
complication
rate, penetrative
effect
excellent thrombosis
may induce
effect, chemical
acute renal
damage to vessel
failure,
wall
hemolytic effect
over-hydration of
endothelial cells,
nearly painless
may induce
reversible
cardiac arrest
liquid material,
flow dependent,
rapid embolization,
less effect in
radiolucent, feeding
large cavity,
arteries, feeding
radiolucent
arteries embolization
(93)93
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:兵頭秀樹
技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
Indication to treat VM using sclerotherapy
Favorable result predictive factors;
Small lesion
Well defined margin
Nidus flow stasis during session
Flow control sclerotherapy
図 3 硬化療法の適応
過去の報告からは,病変サイズが 5 ~
10 ㎝以下・境界が明瞭・ナイダス血流
のうっ滞が得られるものの治療効果が
よいことが明らかとなっている。
: occlusion balloon
①
: direct injection
: nidus cavity
: sclerotic / thrombotic area
prepare the nidus flow stasis
②
④
sclerosant contact the inner surface
thrombotic area is absorbed
⑤
③
coagulation increased the ablated area
vascular malformation is diminished
vascular malformation sclerotherapy flow chart
Vascular Malformation
asymptomatic
symptomatic
contrast stasis
within nidus
Hyodoh H. et al. Jpn J Intervent Radiol 2006 (modified)
venous malformation
Absolute ethanol
lymphatic malformation
Ethanolamine Oleate
arteriovenous malformation
Polydocanol
NBCA
NO
balloon / flow control
coil / embolic material
YES
flow control
NO
YES
+
Imaging
follow-up
94(94)
direct nidus puncture
sclerotherapy
図 4 硬化療法の作用機序図
病変の血流うっ滞を得るため,治療域
の血流を一時的に遮断し EO を注入す
る。薬液と壁の作用時間が確保される
ため硬化療法の効果が高まり,治療域
には血栓形成が促される。経過観察期
間に血栓は器質化され,血管奇形は減
少 / 消失する。
direct nidus puncture
sclerotherapy
with flow control
+
palliative
embolo/sclerotherapy
and/or surgery
図 5 硬化療法フローチャート
血管奇形病変で臨床症状(痛み)がある
ものが治療対象であり,ナイダス内に
血流うっ滞が得られる場合が硬化療法
の治療適応となる。血流うっ滞が得ら
れない場合には EO 硬化療法では治療
困難であり,塞栓術や他の硬化剤を用
いた治療法・外科的切除術等が治療の
中心となる。
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
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技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
ン性造影剤(10 ㏄)を緩徐に混和させることで 5% EOI
に調合する。病変によって EOI 濃度を高め少量高濃
度のものを使用する場合がある。EO foam を作成し治
療に使用することもあるが,ポリドカノールと異なり
foam 化することで容量を稼ぐことは薬剤の性質上難
しい。我々の施設では二酸化炭素との混和を 1:1 の割
合で実施することで,非常に高濃度な EO foam を作成
し局所治療に使用している
(図 6)
。
すべての IVR 手技に共通するが,もっとも重要な点
は合併症を生じさせないことである。特に神経障害は,
重篤な後遺症を永続的に生じさせ,患者の満足度の著
しい低下を招くため避けたい。また,十分な医師-患
foam sclerosant
•mixture with CO2 /sterile air
– Polidocanol : CO2 = 1 : 2-4
– EO : CO2 = 1 : 0.5-1
•small amount of foam sclerosant
per injection (1 –5 ml)
CO 2 bomb cylinder
Using foam sclerosant, the contacted surface and
adhesiveness is increased in vascular malformation.
So, even using small amount of sclerosant, we can
achieve the greater efficacy and lower complication.
pumping syringe
図 6 薬液 foam 作成
EO foam はポリドカノールより少量しか作成がで
きないため病変サイズが小さい場合に用いられ
る。EO と同程度の CO2 と混和を行うことで細か
な EO foam が作成可能である。病変への注入には
1 ㏄シリンジを用いて注入を行い,病変外漏出の
ないよう注意する。
者関係が築かれていない段階では治療によって生じる
一過性の副作用(発赤・潰瘍・機能低下等)により治療
法に対する不信感を生じさせ,その後の治療を困難に
させてしまう場合もある。十分なインフォームドコン
セントに加え医師-患者関係の構築が得られている必
要がある
(図 7,8,9)
。
血管奇形は良性疾患だが治療抵抗性であり,容易に
再燃する。また,全身のあらゆる部位に生じうるため
単独の治療法で治療完遂できることは少ない。十分な
医師-患者関係が構築されたうえで形成外科・放射線
科が協力し,経過観察-硬化療法-外科的切除までの
広い治療選択枝の中から最適な治療法を行える体制で
臨むことが必要であり,診療間で協力して診療に臨む
必要がある。また,患者に過剰な期待を持たせないと
ともに過剰治療に注意を払い,症状の軽快を目的とし
た治療を行うことが必要である。
【参考文献】
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various superficial vascular anomalies: hemangiomas and vascular malformations. J Dermatol 24:
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Case 1. 33 y.o. male, venous malformation (Schöbinge stage III)
nerve block
Because EO sclerotherapy is
painful, pre-procedural
anesthesia is necessary.
direct phlebography
fs-T2wi
pre
EO sclerotherapy
To measure the nidus volume (until the vein appearance), pre session direct
phlebography is recommended (the drainage veins appeared in this case).
The measured nidus volume is injected at EO sclerotherapy session (7ml).
fs-T2wi
Gd-T1wi
43 months
Gd-T1wi
Within 3 days, early reaction is settled and without no skin / nerve damage reported during whole follow up
period. On 43 months follow up MR images demonstrate the decreased VM volume, but not diminish.
He complains no symptom, additional sclerotherapy is postponed.
図 7 症例 1 30 代男性 手掌静脈奇形
左手母指球の静脈奇形。直接穿刺で造影
剤の貯留が認められたため EOI 硬化療法
を実施(7 ㏄)
。経過の MRI で病変の縮小
が観察された。
(95)95
第 40 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」
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技術教育セミナー / 四肢軟部血管奇形
Case 2. 9 y.o. girl, venous malformation (Schöbinge stage III)
fsGd-T1wi
fsT2wi
Tourniquet is used at proximal and
distal (not presented) side;
“Sandwich” method.
She complained left wrist swelling / pain.
Phlebolith is detected on fs-T2wi.
The lesion is lobulated and the nidus is
enhanced on Gd-T1wi.
Flow void is not detected.
EO sclerotherapy is planned with
tourniquet flow control.
Direct EO injection.
After pre-control phlebography (measuring the nidus volume), EO is
injected through intermittent fluoroscope guide.
Small part of drainage vein is demonstrated (arrow), but the tourniquets
give us good effect to keep the sclerosant within the nidus.
post 2 days
post 10 months
MR fsT2wi
Skin flare / blister is presented, but the fingers color
is preserved. She discharged without any event.
at 10 months; pain (-), nerve damage (-), motion (good)
No interval change until 30 months.
After 7 years (16 y.o.), she complained wrist pain;
regrowth after 7 years since initial sclerotherapy. pain (+), nerve damage (-), motion (fair)
Additional sclerotherapy was planned.
Using flow control
technique (sandwich
method), nidus flow
stasis is prepared for
sclerotherapy.
Using EO foam, we
achieve lower quantity
sclerotherapy than initial
session (to decrease the
skin reaction).
EO mixed with CO 2
1st session
2nd session
図 8 症例 2 9 歳女児 手首静脈奇形
手首皮膚面の膨隆を伴う静脈奇形であ
り,
MRIで静脈石が観察される。血流うっ
滞のためマンシェット圧迫を使用して直
接穿刺し薬液停滞が確認された。この部
位から EO 硬化療法を実施(3 ㏄)
。実施
より皮膚面の発赤が著明であったが手指
の血流た持たれていたため経過観察,術
後 7 日目には退縮し,皮膚潰瘍なく退院。
7 年後痛みが出現したため EO foam にて
追加治療を行い,皮膚潰瘍/ 神経障害な
く退院。
Case 3. 46 F wrist venous malformation (Schöbinge stage III)
pre
Pre treatment
contact pain (+)
MR imaging (not show) presented
venous malformation without
dilated vessel.
EO foam sclerotherapy is planned
with local anesthesia.
96(96)
post 6 days
Post 6 days
nerve damage (-)
Because VM lesion remain, additional
EO foam sclerotherapy is planned.
(EO 1.0 ml + CO2 0.5 ml, tourniquet)
post 7 days
Post 7 days after add. session
VM lesion diminished.
nerve damage (-)
skin ulcer (-)
図 9 症例 3 40 代女性 手首静脈瘤
病変は小さいが有痛性でありEO foam硬
化療法を実施(1 ㏄)。術後 7 日目には病
変脱落し皮膚面の平坦化が確認された。
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:兵頭秀樹
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5)Hyodoh H, Akiba H, Hyodoh K, et al: Ef fects of
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6)Mimura H, Fujiwara H, Hiraki T, et al: Polidocanol
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