アメリカに於ける日本の法令・判決のアクセス - University of Washington

アメリカに於ける日本の法令・判決のアクセス*
アメリカに於ける日本の法令・判決のアクセス
「日本研究学術資料情報の利用整備に関する国際会議」の発表
東京;2001年12月17日
ロブ・ブリット著
日本資料係
東アジア法学部門
マリアン・グルド・ギャレガー法律図書館
Robert R. Britt
Library Associate
University of Washington
East Asian Law Department
Marian Gould Gallagher Law Library
1100 NE Campus Parkway
Seattle, Washington 98105-6617
電話: 206-543-7447
FAX: 206-685-2165
電子メール: [email protected]
ホームページ: http://lib.law.washington.edu/eald/eald.html
*添付のマイクロソフトパワーポイントプレゼンテーションはここにあります:
http://staff.washington.edu/rrbritt/general/Tokyo2001/SlideShow/Tok2001_files/frame.htm
[Slide 1]
法律の一次資料とは一体何のことでしょうか。この発表では最初に,海外と日本
の「法律学資料の意識」の違いについて説明したいと思います。それから,法律
資料はどんなものですかという質問を答えて見ます。そして,特に海外の立場か
ら見て必要な日本の法律の一次資料の例をあげます。日本語と英訳物の法令,判
例を含めます。そして戦前の一次資料も大切ですからその例もあげる積もりです。
たくさんの資料のスライドをお見せて、それから私の図書館関係の話もしたいと
思います。最後に,私の意見をのべたいと思います。というのは日本の法律の司
書には二つの基本的な義務があるからです。:一つ目は日本の法律の一次資料の
アクセスを容易にすること,そして二つ目は日本の法律の資料を保存する事です。
法律学の一次資料は他の分野に比べるとユニークです。本当に法律の場合には一
次資料は特別の意味があります。というのは,法律学の主としての対象が国会に
よる法令と裁判所による判例だからです。
法令の方はアクセスはかなりしやすいので海外で日本の法令を探すことにはほと
んど問題がありません。刊行物でも,インターネットでもあります。英語に翻訳
された法令もかなり多いです。(しかし,勿論法令全書の小部分だけです。)そ
して,重要な法令には大体英語の翻訳があります。規則には英語の翻訳はあまり
ないですけれども,大体規則を使いたいという要望は多くないです。
判例の場合には,英語に翻訳された判決はかなり入手が難しいです。難しいとい
うより不可能だという状態です。憲法の関係英訳判例以外,英語の日本の判例は
あまりないです。そのうえに日本語の判例も検索をしにくいです。いろいろな問
題があります。これについては後でもうちょっと詳しく説明します。
アメリカ人の法学校(ロー・スクール)の人たちは全く違う人種です。アメリカ
の法学校の法律図書館を使う学生や教授達の頭のなかには次のような期待が深く
あります。彼らは日本の法律を勉強しようとする時,アメリカと同じ事を「当た
り前」の事として考えています:この当たり前の考え方の一つは:「何でも英語
である」ということです。当たり前の考え方の二つ目は:「アメリカでは判例は
大切。だから日本でもそうだろう」と考えることです。当たり前の三つ目は:「レ
ックセスとウエストロー」のオンライン法律の一次資料のデータベースはどこで
も法律研究に対して欠くことのできないものだから日本にもそのようなデータベ
ースがきっとある」という考え方です。
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実は,日本の法律資料が日本語であるということは私が図書館で受ける一番多い
苦情です。私は利用者に「英語ではありません」といつも繰り返していいます。
ロブ・ブリット
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アメリカ人は信じられないという顔をします!そうして,アメリカのレックセス
の法律データベースは日本の法令と判例があまり込めないということも初学者は
よく吃驚します。だから,日本法の一次資料のアクセスの問題を考えれば最初に
アメリカの日本法関係情報の使用者の意識を十分考察しなければなりません。
[SLIDE 3]
すでに言ったように日本の現行法律資料について,一般的には法令のアクセス
は問題ではありません。法令は刊行物と電子刊行物がよくありますから,簡単に
検索できます。
[SLIDE 4]
それぞれの資料は私の法律の図書館では刊行物,CD-ROM,インターネットのア
クセスはあります。東アジア法学部門ではそのアクセスの改善は一番大切な仕事
です。
[SLIDE 5]
部門のそばのウインドズ NT ターミナルでは日本法のアクセス方法の情報がありま
す。このターミナルのそばに参照棚では日本法研究のためのいつも使う本は並べ
ています。
[SLIDE 6]
このような様々な資料は専門的な日本の法学研究のホームページでは便利に組織
しました。
現行法律は次のような法令と法令索引の資料があります:
英語での法令
[SLIDE 7]
• 日本法令英訳書誌 / 編集国立国会図書館。FD 版
1999年10月発行 = Bibliography on English-translated texts of Japanese laws
and regulations [computer file]
(この非常に便利な道具は国会図書館の山田俊之さんが作れたものです。いつ
でもどこでも英語に翻訳された日本の法令を使いやすくするものです。)
ロブ・ブリット
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[SLIDE 8]
• 英文法令社のロー・ブレティン・シリーズ=EHS
law bulletin series, Japan.
英文法令社のロー・ブレティン・シリーズ=
東京:英文法令社,195?-
Tokyo : Eibun-Horei-Sha, 195? (一番包括的,一番最新式の英訳法令の源泉です。いつも使います。)
[SLIDE 9]
• 英語での日本の法令:英文法令社シリーズの索引/
英語での日本の法令:英文法令社シリーズの索引 ロバートブリ
ット編集。第2版。2000年
Japanese laws in English : an index to the EHS law bulletin series /
compiled by Robert R. Britt. 2nd Edition. Seattle, Wash. : Marian
Gould Gallagher Law Library, University of Washington School of
Law, 2000.
http://lib.law.washington.edu/pubs/jlaw.html
(ワシントン大学の図書館で作った EHS の索引です。
日本語での法令
[SLIDE 10]
•
法令データ提供システム,
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
(2001年四月に日本の政府が発表するデータベースです。法令の全
体フル・テキストを提供します。非常に便利です。無料ですから,誰で
もどこでも使えます。
[SLIDE 11]
•
現行日本法規
東京:ぎょうせい,昭和24ー
これは加除整理(英語で「looseleaf」)の法令集です。包括的で日本の
」)の法令集です。包括的で日本の
これは加除整理(英語で「
法令を提供するものです。「いつも新しい」ので,法律学に対して大切
です。図書館員にとって,加除整理の手続は大変時間掛かるのです。
(日本では発行者がこの仕事をするのですが,海外では自分でやらなく
てはいけません。)五十音はさくいんあります。
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•
法令全書
東京:印刷局,
(月刊です。日本の政府が発行しているもので,全部新しい法律,条約,
政令,などを発表をするものです。
[SLIDE 13]
•
「マリアン」・オンライン・カタログ
http://140.142.12.195/search/)
(マリアンはワシントン大学法学校図書館の「オンライン・カタログ」
の検索システム;日本の法令が検索出来ます(英語,日本語どちでも)。
各個の法令のレコードは探すことは出来ます。(勿論,日本の法令の大
部分は各個にこのデータベースにありませんので。)
[SLIDE 14]
判例
すでに述べたように,判例は法令に比べてもっと難しいです。法令のように,判
例の場合も最近(戦後)のものは比較的にアクセスは簡単です。しかし,判例の
検索方法は複雑です。判例を検索するために特別の知識が要ります。勿論,キー
ワード検索が出来る判例データベース・システムは現代の法律資料の分野での
「情報革命」の一つの大切な機能です。この機能は残念ながら日本の外からは使
えませんでした。
しかし,最近の一年間で状況はかなり良くなりました。特に次のような事例があ
ります:一つは日本の外から法律判例資料データーベースアクセスが少し出来る
ようになりました;二つ目は契約のこと。日本のデータベース会社は外国で「サ
イト・ライセンス」(というのは大学のどこでもデータベースのアクセスの協定許
可書です)。使用の請求システムをはじめました。例えばワシントン大学は日外
アソシエツと「サイト・ライセンス」”の契約をしているので、ワシントン大学の
教授や,学生は雑誌記事索引(マガジンプラス「MagazinePlus」)を大学のどこで
でも使えるようになりました。雑誌記事索引は国立国会図書館が作って日外アソ
シエツがマガジンプラスで提供しています。それで,法律関係雑誌も検索する事
が出来るようになりました。
英語での判例
•
最高裁判所の大切の判例=Prominent judgements of the Supreme Court
最高裁判所の大切の判例=
Constitutional law
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(この資料は憲法関係判例を英語に翻訳しています。 50年代から刊行し
ていますけれども,30件の判例だけが在ります。
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最近には,刊行物の発行を停止しました,最高裁判所のホームページだ
けがこの最高裁判所の判決を英語で発行します。)
日本語での判例
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o 判例タイムズ
(一般日本の判例に対して次の雑誌は一番大切です。この雑誌はよ
く索引・コンメンタールに参照します。判例タイムズは会社出版物で
す。いろいろな裁判所の判例を発行します。
[SLIDE 17]
o 最高裁判所のホームページ
(1997年ごろ最高裁判所が発表されましたの無料インターネッ
トアクセスのフル・テキストデータベースです。よく使います。)
•
判例の索引
[SLIDE 18; SLIDE 19]
o リーガルベース(CD-ROM)
)
リーガルベース(
(一年に二回更新します。非常に便利な判例索引です。インターネ
ットで最近の判決が調べる機能もあります。判例検索でキーワード
使えます。)
[SLIDE 20]
o LEX/DB(インターネットの日本法データベース)
(インターネットの日本法データベース)
(判例と法令両方フルテキストであるそうです。まだ私は購入して
いません。最近まで海外からの購入が禁止されていました。高そう
です。会社は「サイト・ライセンス」を提供すれば多分購入します。
アメリカのオンライン法律サービス(レックセス,ウエストロー)
に似ています。)
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o 値段は高いです!
無料と有料のサービスが両方あります。大体無料のサービスは政府
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が提供します。それは有難いですけれども,先に言ったように刊行
物が停止することは危険です。それに有料のサービスの値段は高す
ぎれば,問題になります。もっとも便利な機能があるのに,値段が
高すぎれば図書館は買えなくてその情報を提供できません。このよ
うな問題の背景には図書館の毎年縮小する予算の問題があります。
•
戦前の法律資料
法律学者の歴史的な研究をする時,勿論古い法令,判例を調べなくてはい
けません。この資料は,特に判例の場合はまだ電子アクセスはありません。
だから刊行物が大切です。次のようなものが大切です。
o 古い法令
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!
大正時代の法令全書
(これは法律に対して政府の大切な記録です。こんな「公文
書類」ということは図書館が保存義務があるだと思いま
す。)
o 古い判例
[SLIDE 23]
!
大審院民事判例集. 東京:法曹會, 昭和 2- [1927(大審院という裁判所は無くなりました。しかしその時代の
資料を勉強したいなら保存は必要です
[SLIDE 24]
結論
法律,判例のアクセスの問題は三つの範囲に分かれています:1)電子,刊行
物の発行は高価なので,アクセスは限られます(得に海外のアクセス);2)海
外からインターネットでの法律関係データベースに接続するのに最近まで様々な
障害がありました。だから良く CD-ROM データベースを使っていました。最近
状態は改善されまして,多分将来には海外での日本の法律研究分野で改革がある
でしょう。3)今も戦前の資料は電子アクセスはありませんから法政史研究をす
るためにまだ刊行物だけは要ります。
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日本とアメリカには同じように民主的な国家では法律,判例にだれでもいつでも
アクセス出来るということは「基本的な権利」だと思います。この情報革命時代
の若い人はやはり使いやすい情報アクセスの道具はただ「当たり前だ」と思って
いるでしょう。ということは,最近の「情報公開」という運動にも一致します。
勿論,この思想は日本だけの現象ではなくて国際的な現象だと確信しています。
法律図書館の司書は政府や会社とともにこのアクセスへの要求を実現していくの
が一番大事な仕事だと確信します。
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