使用上の注意等改訂のお知らせ

医薬品の適正使用に欠かせない情報です。必ずお読み下さい。
使用上の注意等改訂のお知らせ
抗ウイルス化学療法剤
劇薬、指定医薬品、処方せん医薬品注)
(エムトリシタビン・フマル酸テノホビル
ジソプロキシル配合剤)
注)注意−医師等の処方せんにより使用すること
2006年7月
謹啓
時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は弊社製品につきまして格別のご高配を賜り、厚
くお礼申し上げます。
さて、この度、抗ウイルス化学療法剤「ツルバダ®錠」の使用上の注意等の改訂を行いましたので、ご案内申
し上げます。
今後、当該製品のご使用に際しましては、下記の改訂内容をご参照下さいますようお願い申し上げます。
謹白
■ 主な改訂内容(詳細につきましては、2〜13ページをご参照下さい。)
1.「2.重要な基本的注意」の(5)の項に、フマル酸テノホビル ジソプロキシル(以下テノホビル)
製剤の長期投与における骨密度の変化に関する情報を更新しました。
2.「4.副作用」の項を、エムトリシタビン製剤とテノホビル製剤の併用による比較試験の成績に基づい
て全面的に変更しました(以下の3及び5も同様の理由により変更しました)。
3.「4.副作用」の「(1)重大な副作用」の項の発現頻度を変更しました。
4.「4.副作用」の「(1)重大な副作用」の「1)腎不全又は重度の腎機能障害」の項に以下の副作用
を追記しました。
腎性尿崩症、腎炎
5.「4.副作用」の「(2)その他の副作用」の項の頻度を、上記比較試験の成績に基づいて再算出しまし
た。また、以下の副作用を追記しました。
上腹部痛、疲労、ほてり、末梢性浮腫、皮膚色素過剰、皮膚良性新生物、食欲亢進、食欲減退、骨軟化症、
ミオパシー、咽頭炎、肝機能異常
15〜20ページに改訂後の添付文書全文を掲載しましたので、併せてご参照下さい。また、今回の改訂内容につ
きましては、Drug Safety Update(DSU:医薬品安全対策情報)No.151(2006年7月下旬)に掲載される予定です。
1
■ 改訂内容(下線部追加改訂箇所)
改訂後
改訂前
2.重要な基本的注意
2.重要な基本的注意
(5)テノホビル製剤の試験において,144週間
の投与により腰椎と大腿骨頚部の骨密度の減少
が見られている。骨密度の減少した患者の大部
分は,投与開始後24〜48週目にかけて発現し,
以降は144週目まで安定していた。臨床的意義
は不明であるが,病的骨折の既往のある患者又
はその他の慢性骨疾患を有する患者では,観察
(5)テノホビル製剤の試験において,48週間の
投与により対照群と比較して平均の骨密度の減
少が報告されている。臨床的意義は不明である
が,病的骨折の既往のある患者又はその他の慢
性骨疾患を有する患者では,観察を十分に行い,
異常が認められた場合には,投与を中止するな
ど適切な処置を行うこと。
を十分に行い,異常が認められた場合には,投
与を中止するなど適切な処置を行うこと。
3. 相互作用
3. 相互作用
薬剤名等 臨床症状・措置方法
機序・危険因子
薬剤名等 臨床症状・措置方法
ロピナビル/ 本剤による有害 テノホビル製剤
リトナビル 事象を増強する とロピナビル/リ
おそれがある。
トナビル製剤の
併用により,テ
ノホビルのAUC
が32%,Cminが
51%上昇する。
機序・危険因子
ロピナビル/ 本剤による有害 テノホビルのAUC
リトナビル 事象を増強する が32%,Cminが
おそれがある。
51%上昇する。
4. 副作用
4. 副作用
外国における抗レトロウイルス薬による治療経
験患者及び未治療患者を対象としたエムトリシ
タビン製剤による2つの比較試験において,エ
ムトリシタビン製剤投与群の580例中303例
(52.2%)に副作用が認められた。主な副作用は
下痢,浮動性めまい,悪心,腹痛,頭痛,不眠
症,無力症等であった。
また,外国における抗レトロウイルス薬による
治療経験患者及び未治療患者を対象としたテノ
ホビル製剤による3つの二重盲検比較試験の48
週までの評価において,テノホビル製剤投与群
の912例中379例(41.6%)に副作用が認められ
た。主な副作用は悪心,下痢,無力症,頭痛,
腹痛,嘔吐及び浮動性めまい等であり,胃腸障
害が多かった。臨床検査値異常では,CK
(CPK)増加,血中トリグリセリド増加,血中
アミラーゼ増加等が多かった。
外国における抗レトロウイルス薬による未治療
患者を対象としたエムトリシタビン製剤とテノ
ホビル製剤の併用による比較試験において,
257例中84例(32.7%)に副作用が認められた。
主な副作用は,悪心,下痢,疲労等であった。
臨床検査値異常では,血中アミラーゼ増加,
CK(CPK)増加,血中トリグリセリド増加等
が多かった。
2
改訂後
(1)重大な副作用
1)腎不全又は重度の腎機能障害(<1%)
改訂前
(1)重大な副作用
注)
1)腎不全又は重度の腎機能障害
(0%/頻度不明)
腎機能不全,腎不全,急性腎不全,近位腎尿細
管機能障害,ファンコニー症候群,急性腎尿細
管壊死,腎性尿崩症又は腎炎等の重度の腎機能
本剤の有効成分であるフマル酸テノホビル ジ
ソプロキシルにより,腎機能不全,腎不全,急
性腎不全,近位腎尿細管機能障害,ファンコニ
ー症候群又は急性腎尿細管壊死等の重度の腎機
障害があらわれることがあるので,定期的に検
能障害があらわれることがあるので,定期的に
査を行うなど観察を十分に行い,臨床検査値に
異常が認められた場合には,投与を中止するな
検査を行うなど観察を十分に行い,臨床検査値
に異常が認められた場合には,投与を中止する
ど適切な処置を行うこと。特に腎機能障害の既
など適切な処置を行うこと。特に腎機能障害の
往がある患者や腎毒性のある薬剤が投与されて
いる患者では注意すること。
既往がある患者や腎毒性のある薬剤が投与され
ている患者では注意すること。
2)膵炎(頻度不明)注)
2)膵炎(0%/<1%)注)
膵炎があらわれることがあるので,血中アミラ
ーゼ,リパーゼ,血中トリグリセリド等の検査
値の上昇がみられた場合には,投与を中止する
本剤の有効成分であるフマル酸テノホビル ジ
ソプロキシルにより膵炎があらわれることがあ
るので,血中アミラーゼ,リパーゼ,血中トリ
グリセリド等の検査値の上昇がみられた場合に
は,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
など適切な処置を行うこと。
3)乳酸アシドーシス(頻度不明/<1%)注)
3)乳酸アシドーシス(頻度不明)注)
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるの
で,このような場合には,投与を中止するなど
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるの
で,このような場合には,投与を中止するなど
適切な処置を行うこと。
適切な処置を行うこと。
注)エムトリシタビン製剤又はテノホビル製剤の臨床試験,市販後
の調査及び自発報告等で報告された副作用を示した。
注)本剤による臨床試験は実施中であり,副作用発現率に関するデ
ータは得られていないため,エムトリシタビン製剤の発現率/テノ
ホビル製剤の発現率(外国における集計対象となる臨床試験で報告
された副作用)を示した。
市販後調査,自発報告又は外国における集計対象外の臨床試験等で
報告された副作用で頻度の算出できないものは頻度不明とした。
3
改訂後
改訂前
(2)その他の副作用
(2)その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので,観察を
十分に行い,異常が認められた場合は適切な処置を
行うこと。
頻度
2%以上
2%未満
頻度不明
下記の副作用があらわれることがあるので,観察を
十分に行い,異常が認められた場合は適切な処置を
行うこと。
頻度
注1)
2%以上
種類
注1)
胃腸障害
悪心(10.9%),
下痢(7.0%)
嘔吐,鼓腸,
腹部膨満,
口内乾燥,
腹痛,上腹部痛
消化不良,
便秘,胃炎,
胃腸障害,口臭,
アフタ性口内炎,
おくび
胃腸障害
下痢
(10.7%/9.2%),
悪心
(8.1%/10.4%),
腹痛
(6.0%/4.9%),
嘔吐
(2.2%/4.2%),
消化不良
(2.9%/2.1%),
鼓腸
(1.7%/2.9%)
全身障害
及び
投与局所
様態
疲労(3.1%)
発熱,ほてり
無力症,疼痛,
倦怠感,悪寒,
胸痛,
末梢性浮腫
全身障害
及び
投与局所
様態
無力症
(4.8%/5.8%),
疼痛
(2.1%/2.2%)
神経系障害
頭痛(2.7%)
浮動性めまい,
不眠症,傾眠
錯感覚,異常な夢,
ニューロパシー,
末梢性ニューロパ
シー,前庭障害,
思考異常,
味覚異常,振戦
神経系障害
浮動性めまい
(9.3%/3.4%),
頭痛
(5.3%/5.2%),
不眠症
(5.0%/1.6%),
錯感覚
(2.2%/3.2%),
異常な夢
(3.1%/0.8%)
うつ病,神経過敏,
不安,
リビドー減退,
睡眠障害,
感情不安定
精神障害
発疹
そう痒症,
皮膚変色,
多汗症,
皮膚乾燥,
脱毛症,湿疹,
ざ瘡,脂漏,
帯状疱疹,
単純ヘルペス,
皮膚良性新生物
皮膚及び
皮下組織
障害
食欲不振,
食欲亢進,
食欲減退
高脂血症,
後天性リポジスト
ロフィー,
体重減少,
高コレステロー
ル血症,高血糖,
低リン酸血症
代謝及び
栄養障害
筋痛,関節痛,
骨障害,背部痛,
側腹部痛,
筋痙攣,骨軟化症,
ミオパシー
筋骨格系
及び結合
組織障害
精神障害
皮膚及び
皮下組織
障害
代謝及び
栄養障害
筋骨格系
及び結合
組織障害
2%未満
注2)
頻度不明
注2)注3)
種類
皮膚色素過剰
(2.3%)
4
便秘,口内乾燥,
胃炎,胃腸障害,
a
腹部膨満,口臭 ,
アフタ性口内炎b,
おくびb
倦怠感b,発熱b,
悪寒b,胸痛b
ニューロパシー,
末梢性ニューロ
パシー,傾眠,
a
前庭障害 ,
思考異常,
味覚異常b,
振戦b
うつ病,神経過敏,
不安,リビドー
減退,睡眠障害b,
a
感情不安定
発疹
(3.8%/3.0%)
食欲不振
(1.4%/3.0%),
高脂血症
(2.8%/0.1%)
そう痒症,
a
皮膚変色 ,
多汗症,皮膚乾燥,
脱毛症b,湿疹b,
a
ざ瘡b,脂漏 ,
a
帯状疱疹 ,
単純ヘルペスb
後天性リポジスト
ロフィー,
体重減少b,
高コレステロール
a
a
血症 ,高血糖
筋痛,関節痛,
骨障害b,背部痛,
側腹部痛b,
筋痙攣b
低リン酸血症b
改訂後
改訂前
頻度
2%以上
2%未満
頻度不明
頻度
注1)
2%以上
注1)
2%未満
注2)
頻度不明
注2)注3)
種類
種類
呼吸器,
胸郭及び
縦隔障害
臨床検査
注2)
血中アミラーゼ
増加(7.5%)
,
CK(CPK)
増加
(7.1%)
,
血中トリグリセリ
ド増加(4.3%)
,
AST(GOT)
増加
(2.8%)
,
好中球数減少
(2.8%)
,
ALT(GPT)
増加
(2.0%)
,
血尿(2.0%)
Al-P増加,
血中ブドウ
糖増加, 尿糖
その他
気管支炎,
鼻炎,
呼吸困難,
咽頭炎
呼吸器,
胸郭及び
縦隔障害
リパーゼ増加,
血中ビリルビン増
加,血中リン減少,
血小板数減少,
蛋白尿,血中
クレアチニン増加,
γ-GTP増加
臨床検査
白血球減少症,
血管拡張,感染,
頻尿,インフル
エンザ症候群,
視覚異常,多尿,
肝炎,アレルギー
反応,肝機能異常
その他
注4)
気管支炎b,
鼻炎b
呼吸困難b
CK(CPK)増加
血中ブドウ糖
リパーゼ増加b,
(2.2%/11.2%),
増加b,Al-P増加, 血尿b,蛋白尿b,
血中アミラーゼ
血中ビリルビン
血中クレアチニン
増加(2.4%/6.8%), 増加b,
増加b,
b
AST(GOT)増加
血中リン減少 , γ-GT増加b
(3.1%/4.8%),
血小板数減少b
血中トリグリセリ
ド増加(0%/7.7%),
ALT(GPT)
増加(2.9%/4.1%),
好中球数減少
(0%/2.3%),
尿糖
(0%/2.1%)
注1)エムトリシタビン製剤又はテノホビル製剤の臨床試験,市販後
白血球減少症
(3.6%/0%)
a
血管拡張 ,
アレルギー反応b
a
b
感染 ,頻尿 ,
インフルエンザ症
a
候群 ,
視覚異常b,
多尿b,肝炎b
注1)エムトリシタビン製剤,テノホビル製剤のいずれかに2%以上
の調査及び自発報告等で報告された副作用を示した。
発現した副作用(エムトリシタビン製剤の発現率/テノホビル
注2)エムトリシタビン製剤とテノホビル製剤の併用による比較試験
製剤の発現率)
で発現した臨床検査は因果関係によらずグレード3及び4
注2)aはエムトリシタビン製剤,bはテノホビル製剤の添付文書の
(NIAID分類)の臨床検査値異常を示した。
みに記載された副作用
注3)市販後調査,自発報告等にて報告された副作用
注4)テノホビル製剤の臨床検査については因果関係によらずグレー
ドⅢ及びⅣ(NIAID分類)の臨床検査値異常
5
■ 改訂理由
1.「2.重要な基本的注意」
(5)テノホビル製剤の試験において,144週間の投与により腰椎と大腿骨頚部の骨密度の減少が見られて
いる。骨密度の減少した患者の大部分は,投与開始後24〜48週目にかけて発現し,以降は144週目まで安
定していた。臨床的意義は不明であるが,病的骨折の既往のある患者又はその他の慢性骨疾患を有する患
者では,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
改訂理由:
これまでは外国におけるテノホビル製剤の臨床試験(903試験)の試験開始から48週までの骨への影響
について記載していましたが,144週までの成績が得られたことから記載を更新しました。
903試験において腰椎及び大腿骨頚部の骨密度を測定したところ,試験開始前と比べて試験開始後144週
において,両部位の骨密度の減少が見られました。腰椎の平均骨密度は,対照群であるサニルブジン投与
群に比べ,テノホビル製剤投与群で有意に減少していました。大腿骨頚部の平均骨密度は,両群の間に差
は認められませんでした(下表参照)。両群において骨密度が減少した患者の多くは,投与開始後24週か
ら48週にかけて骨密度が減少し,48週以降は144週目まで安定していました。
また,骨折(指骨折は除く)は,テノホビル製剤投与群で4例,サニルブジン投与群で6例報告されました。
テノホビル製剤投与群で認められた骨密度の減少の臨床的意義及び長期投与による骨への影響は現時点
で不明ですので,引き続き注意喚起を行っていくこととしました。
表 903試験:試験開始後144週における平均骨密度の変化(%)
部 位
テノホビル製剤投与群
(N=299)
サニルブジン投与群
(N=301)
P値
腰椎
−2.2±3.9
−1.0±4.6
<0.001
大腿骨頚部
−2.8±3.5
−2.4±4.5
0.064
2.「3.相互作用」の「ロピナビル/リトナビル」
薬剤名等
ロピナビル/
リトナビル
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
本剤による有害事象を増強するおそれ テノホビル製剤とロピナビル/リトナビ
ル製剤の併用により,テノホビルの
がある。
AUCが32%, Cminが51%上昇する。
改訂理由:
テノホビル製剤による試験成績であることを明記するために追記しました。
6
3.「4.副作用」
外国における抗レトロウイルス薬による未治療患者を対象としたエムトリシタビン製剤とテノホビル製
剤の併用による比較試験において,257例中84例(32.
7%)に副作用が認められた。主な副作用は,悪心,
下痢,疲労等であった。
臨床検査値異常では,血中アミラーゼ増加,CK(CPK)増加,血中トリグリセリド増加等が多かった。
改訂理由:
本剤の有効成分を含有するエムトリシタビン製剤とテノホビル製剤の併用による外国での比較試験
(934試験)の試験開始後48週までの副作用情報が得られたことから,エムトリシタビン製剤とテノホビ
ル製剤のそれぞれの臨床試験成績に基づいた副作用情報に替えて,934試験に基づいた副作用情報へ変更
しました。
934試験:エファビレンツにエムトリシタビン製剤+テノホビル製剤又はジドブジン/ラミブジン配合
剤を併用した多施設非盲検比較試験
■対象患者:抗レトロウイルス薬による治療を未経験の患者511例
■群構成:エファビレンツにエムトリシタビン製剤とテノホビル製剤を併用した群257例及び
エファビレンツにジドブジン/ラミブジン配合剤を併用した群254例
■副作用集計時の試験期間:48週間
4.「4.副作用」の「(1)重大な副作用」
1)腎不全又は重度の腎機能障害(<1%)
腎機能不全,腎不全,急性腎不全,近位腎尿細管機能障害,ファンコニー症候群,急性腎尿細管壊死,
腎性尿崩症又は腎炎等の重度の腎機能障害があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観
察を十分に行い,臨床検査値に異常が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこ
と。特に腎機能障害の既往がある患者や腎毒性のある薬剤が投与されている患者では注意すること。
改訂理由:
934試験で1例の腎不全が発現し,発現頻度が0.4%(1/257例)であるため,<1%に変更しました。
また,テノホビル製剤の外国における承認後の使用経験で腎性尿崩症及び腎炎が報告されていること
から追記し,注意を喚起することとしました。
以下に代表的な症例の概要を示します。
7
腎性尿崩症
性・
年齢
投与対象疾患
(合併症)
経過及び処置
薬剤
テノホビル製剤
ジダノシン
ロピナビル/リトナ
ビル
アンプレナビル
ヒドロキシウレア
テノホビル製剤投与約9ヶ月後:多飲,多尿及び呼
吸困難のため入院。入院時の所見は舌乾燥,高乳
酸血症(乳酸5.2mmol/L),代謝性アシドーシス(pH
7.27,重炭酸11.7mmol/L),アニオンギャップ正常,
蛋 白 尿 ( 2 . 3 g / 2 4 h r ),血清クレアチニン高値(177
μmol/L)。ファンコニー症候群(糖尿,アミノ酸尿,
低リン血症)が疑われた。
水制限試験で血漿浸透圧の上昇が認められたこと,
またバソプレシン投与によって尿浸透圧の上昇が
認められなかったことから,腎性尿崩症と考えら
れた。同時に細胞内ミトコンドリア量の減少が認
められた。
全ての抗HIV薬は中止され,重炭酸,カリウム,
ビタミンCの投与により,症状の改善が認められた。
テノホビル製剤投与中止約2ヶ月後:血液検査及び
尿検査値は正常,細胞内ミトコンドリア量は著明
に増加。
テノホビルとジダノシンの薬物相互作用により,
ジダノシンの血中濃度が上昇し,またヒドロキシ
ウレアも併用していたことから,ミトコンドリア
障害,さらには尿細管障害が引き起こされたと推
測された。本有害事象は,テノホビル製剤,ジダ
ノシン,ヒドロキシウレアと因果関係があると判
断された。
HIV感染症
テノホビル製剤
男・
30歳代(キャッスルマン病)ラミブジン
ジダノシン
ロピナビル/リトナ
ビル
リトナビル
エファビレンツ(そ
の後ネビラピンに変
更)
テノホビル製剤投与約2ヶ月後:CD4リンパ球数
117cells/mm3,HIV-RNA量 114,000copies/mL。
テノホビル製剤投与約4ヶ月後:ブドウ球菌感染に
よる敗血症のため入院。入院の約2週間前より多飲,
多尿あり。入院時の所見は高ナトリウム血症
(148mmol/L),血糖値正常(4.6mmol/L),血漿浸透
圧軽度上昇(293mOsm),尿浸透圧(123mOsm),蛋
白尿(0.16g/L,0.82g/24hr)。入院後にテノホビル
製剤,ジダノシン,リトナビルを中止し,症状は
改善した。
退院時の抗HIV薬はラミブジン,ネルフィナビル,
ロピナビル/リトナビル,ネビラピン,アバカビ
ルであった。
HIV感染症
男・
30歳代
8
腎炎
性・
年齢
投与対象疾患
(合併症)
経過及び処置
薬剤
HIV感染症/エイズ テノホビル製剤
男・
ラミブジン
40歳代 (うつ病)
アバカビル
(タバコ乱用)
ロピナビル/リトナ
ビル
テノホビル製剤投与開始の約6年前:インジナビル,
バラシクロビル,ガンシクロビル投与期間中にク
レアチニン 120μmol/Lを呈した。
テノホビル製剤投与約7ヶ月後:投与前から腎機能
が低下していたが,さらに悪化した(クレアチニン
144μmol/L)。
テノホビル製剤投与約11ヶ月後:クレアチニン
180μmol/L,蛋白尿(1.4g/24hr)。
テノホビル製剤投与約15ヶ月後:低リン血症
(0.58mmol/L)を呈した。その後入院し,腎生検を
実施。IgA沈着を伴う糸球体腎炎,尿細管病変及
び腎血管硬化を認め,間質性腎炎と診断された。
テノホビル製剤投与開始約25ヶ月後:テノホビル
製剤の投与を中止。中止までの半年間のリンは
0.97〜0.50mmol/Lの範囲であった。
その後,クレアチニンは200μmol/L程度が持続し
たが,尿細管障害は改善した。間質性腎炎及び低
リン血症は治癒した。
HIV感染症
男・
50歳代
テノホビル製剤投与開始前:クレアチニン
0.06mmol/L(基準値0.060-0.13),体重60kg
テノホビル製剤投与約16週後:急激な体重減少
(48kg),便秘,低重炭酸(14mmol/L)のため入院。
入院中に腎機能の異常を呈し,急性腎不全と診断
された。以前より胃腸炎の症状があったが,その
消失後も腎機能異常は持続した。腎生検を実施し
たところ,検体に糸球体が含まれていなかったが,
間質の炎症,線維化,尿細管変性を認めた。テノ
ホビル製剤の投与は中止し,ラミブジンとエファ
ビレンツは継続した。
テノホビル製剤投与中止3日後:クレアチニン
0.504mmol/L,クレアチニンクリアランス
7mL/min,尿素13.8mmol/L,カリウム
3.9mmol/L,リン 1.19mmol/L。
その後,腎機能は約7週間をかけて徐々に回復し,
最終的にはクレアチニン 0.084mmol/Lとなった。
本有害事象はテノホビル製剤と因果関係があると
判断された。
テノホビル製剤
ラミブジン
エファビレンツ
9
5.「4.副作用」の「(1)重大な副作用」
2)膵炎(頻度不明)注)
膵炎があらわれることがあるので,血中アミラーゼ,リパーゼ,血中トリグリセリド等の検査値の
上昇がみられた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
改訂理由:
934試験で試験開始後48週までに膵炎は報告されていませんが,テノホビル製剤の臨床試験及びエム
トリシタビン製剤の市販後の調査で報告されていることから,文頭に記載されていました「本剤の有効
成分であるフマル酸テノホビル ジソプロキシルにより」を削除し,発現頻度を「頻度不明」に変更し
ました。
6.「4.副作用」の「(1)重大な副作用」
3)乳酸アシドーシス(頻度不明)注)
乳酸アシドーシスがあらわれることがあるので,このような場合には,投与を中止するなど適切な
処置を行うこと。
改訂理由:
934試験で試験開始後48週までに乳酸アシドーシスは報告されていませんが,エムトリシタビン製剤
及びテノホビル製剤の臨床試験で報告されていますので,発現頻度を「頻度不明」に変更しました。
10
7.「4.副作用」の「(2)その他の副作用」
頻度
種類
胃腸障害
悪心(10.9%),
下痢(7.0%)
全身障害及び 疲労(3.1%)
投与局所様態
神経系障害
2%未満
2%以上
頭痛(2.7%)
頻度不明注1)
嘔吐,鼓腸,腹部膨満,消化不良,便秘,胃炎,胃腸障害,口臭,
口内乾燥,腹痛,
アフタ性口内炎,おくび
上腹部痛
無力症,疼痛,倦怠感,悪寒,胸痛,
発熱, ほてり
末梢性浮腫
浮動性めまい,
不眠症,傾眠
精神障害
錯感覚,異常な夢,ニューロパシー,
末梢性ニューロパシー,前庭障害,
思考異常,味覚異常,振戦
うつ病,神経過敏,不安,リビドー減退,
睡眠障害,感情不安定
皮膚及び
皮膚色素過剰
皮下組織障害 (2.3%)
発疹
代謝及び
栄養障害
食欲不振,食欲亢進, 高脂血症,後天性リポジストロフィー,
体重減少,高コレステロール血症,
食欲減退
高血糖,低リン酸血症
そう痒症,皮膚変色,多汗症,皮膚乾燥,
脱毛症,湿疹,ざ瘡,脂漏,帯状疱疹,
単純ヘルペス,皮膚良性新生物
筋骨格系及び
結合組織障害
筋痛,関節痛,骨障害,背部痛,
側腹部痛,筋痙攣,骨軟化症,ミオパシー
呼吸器,胸郭
及び縦隔障害
気管支炎,鼻炎,呼吸困難,咽頭炎
臨床検査注2) 血中アミラーゼ増加 Al-P増加,
血中ブドウ糖増加,
(7.5%),
尿糖
CK(CPK)増加
(7.1%)
,
血中トリグリセリド
増加(4.3%),
AST(GOT)増加
(2.8%),
好中球数減少
(2.8%),
ALT(GPT)増加
(2.0%)
,
血尿(2.0%)
リパーゼ増加,血中ビリルビン増加,
血中リン減少,血小板数減少,蛋白尿,
血中クレアチニン増加,γ-GTP増加
その他
白血球減少症,血管拡張,感染,頻尿,
インフルエンザ症候群,視覚異常,多尿,
肝炎,アレルギー反応,肝機能異常
注1)エムトリシタビン製剤又はテノホビル製剤の臨床試験,市販後の調査及び自発報告等で報告された副作用を示した。
注2)エムトリシタビン製剤とテノホビル製剤の併用による比較試験で発現した臨床検査は因果関係によらずグレード3
及び4(NIAID分類)の臨床検査値異常を示した。
11
改訂理由:
934試験の試験開始後48週までの成績に基づいて頻度を再算出するとともに,2例以上報告された副作用
を頻度別に記載しました。
なお,頻度不明欄には,エムトリシタビン製剤又はテノホビル製剤のいずれかの臨床試験,市販後の調
査及び自発報告で発現した副作用のうち,934試験で報告されなかった副作用を記載しました。また,リ
パーゼ増加は,934試験で認められましたが,アミラーゼの異常値を示した患者26名のみを対象として測
定されているため,頻度不明欄へ記載しました。
表 934試験で報告された副作用
頻度
種類
胃腸障害
2%未満
2%以上
悪心,下痢
嘔吐,鼓腸,腹部膨満,口内乾燥,
腹痛,上腹部痛
全身障害及び
投与局所様態
疲労
発熱, ほてり
神経系障害
頭痛
浮動性めまい,不眠症,傾眠
皮膚及び
皮下組織障害
皮膚色素過剰
発疹
食欲不振,食欲亢進,食欲減退
代謝及び
栄養障害
臨床検査
頻度不明
Al-P増加,血中ブドウ糖増加,尿糖 リパーゼ増加
血中アミラーゼ増加,
CK(CPK)増加,
血中トリグリセリド増加,
AST(GOT)増加,好中球数減少,
ALT(GPT)増加,血尿
_下線部は,934試験により新たに追記された副作用
なお,テノホビル製剤の臨床試験,市販後の調査及び市販後の使用経験により新たに追記された副作用は
以下の通りです。
末梢性浮腫,皮膚良性新生物,骨軟化症,ミオパシー,咽頭炎,肝機能異常
12
■その他の改訂
「使用上の注意」以外にも改訂を行いましたので,主な内容を以下に記載します。
1.【薬物動態】<日本人における成績>1.吸収及び消失
日本人における薬物動態試験の成績が得られましたので,その概要を記載しました。
2.【薬物動態】<外国人における成績>4.薬物相互作用(2)テノホビル製剤の薬物相互作用
表6にネルフィナビル,サキナビル/リトナビルに関する情報を追記しました。また,表7にネルフィナ
ビル,M8代謝体,サキナビル,リトナビルに関する情報を追記しました。
3.【臨床成績】<外国人における成績>
エムトリシタビン製剤の試験成績(303試験,301A試験)及びテノホビル製剤の試験成績(907試験,
903試験)を削除し,934試験の成績を記載しました。
なお,エムトリシタビン製剤の試験成績及びテノホビル製剤の試験成績については,各製剤の添付文書
の【臨床成績】をご参照ください。
4.【薬効薬理】3.薬剤耐性
934試験の成績から得られた薬剤耐性に関する概要を記載しました。
13