2 平成26年度 全国高等学校水産教育研究会 関東・東海地区

平成26年度
全国高等学校水産教育研究会
関東・東海地区研究協議会報告
海洋科学科
海洋科学科
栽培漁業科
栗山
千葉
金子
朝充
涼子
誠
1
期
日
平成 26 年6月 19 日(木)∼20 日(金)
2
会
場
公立学校共済組合ホテルポートプラザちば
〒260-0026 千葉県千葉市中央区千葉港8-5
TEL 043-247-2877
FAX 043-247-2811
3
主
催
全国水産高等学校長協会関東・東海地区
4
後
援
千葉県教育委員会
千葉県産業教育振興会
夷隅・長生地区水産教育振興連絡協議会
5
来
賓
国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官
兼文部科学省初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室
教科調査官 瀧田 雅樹
千葉県教育庁教育振興部指導課教育課程室
指導主事 山本 昭博
6 内 容
(1) 開会式
ア 主催者挨拶
全国水産高等学校長協会関東・東海地区長
神奈川県立海洋科学高等学校 校長 水木 久雄
現在の水産業は厳しい状況におかれている。このような状況をふまえ、
「6次産業化」や
「HACCP」などの推進政策が地域水産業に貢献できると考える。水産・海洋系高等学
校においてはこれら取組を行うことが進んでおり、今後に期待できる。
また、平成 25 年4月 26 日に閣議決定された新たな「海洋基本計画」において、重点的
に推進すべき取組として「海洋産業の振興と創出」や「人材の育成と技術力の強化」など
が盛り込まれている。このことは海洋教育について小学校や中学校との連携を取りながら
啓発して行く必要があると考える。しかし、小学校や中学校には海に関する教材が少ない。
そのため水産高校から地域へ発信し、少しでも水産高校を目指す中学生を増やしたいと思
っている。
イ 主管校校長挨拶 千葉県立勝浦若潮高等学校 校長 石塚 和美
勝浦若潮高等学校は、約 10 年前に近隣の高等学校と合併し、以後総合学科として過ごし
ていた。海洋系、食品系が主であったが来年度からさらに3校が統合して食品科学系しか
残らないこととなってしまった。大変残念である。食品科学系は近年「かつラー油」を商
品開発し、地域活性に一役買っている。地域に即したさまざまな状況があるが、有意義な
研究会となるよう祈念する。
ウ 来賓挨拶
2
(ア)国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官
兼 文部科学省初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室
教科調査官 瀧田 雅樹
学力とは、生きる力の学力である。知識だけでなく社会で生きて行く力も必要である。
この研究会ではそのことを踏まえ、日頃考えていることや忘れていることの振り返りをし、
それぞれの学校にどう生かすかということを考える場として欲しい。
また、発表を聞くことで、自分の学校の強さや弱みを再発見する機会として学校へ戻っ
てからも振り返りをして欲しい。
(イ)千葉県教育庁教育振興部指導課教育課程室 指導主事 山本 昭博
千葉県教育委員会では、
「千葉県教育振興計画」を策定し、学校・家庭・地域・行政が一
体となって責任と信頼を持って心身ともに健康で、責任ある行動と自己表現ができる子供
を育てることを目標としている。それに伴い、将来の専門的な職業人を育てるために、魅
力ある高等学校づくりを目指している。今回の研究協議会では、そのための提案やヒント
が多く出されると期待する。実りある研究協議会になるよう祈念する。
エ 助言者・司会者紹介
オ 所管事項説明(瀧田調査官) 翌日に変更
カ 日程説明
(2)分科会研究協議
第1分科会 会場 すずらん
6月 19 日(木) 14:00∼16:40
副題1「水産・海洋教育の特性を生かした、地域産業の担う人材育成の在り方はどのよ
うにあればよいか」(新規)
趣旨 産業界、高校・大学及び自治体との連携を通して、地域の水産業・海洋関連産業
に従事する人材や新たに水産業に携わる人材をどのように育成していくか、地域
の特性と産業界、高校・大学及び自治体との連携を通した教育活動、人材育成の
在り方について調査・研究する。
助言者 愛知県立三谷水産高等学校
校長 丸崎 敏夫
三重県立水産高等学校
校長 徳田 嘉美
司会者 千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 薮崎 秀人
記録者 千葉県立勝浦若潮高等学校
講師 齋藤健太郎
発表者 栃木県立馬頭高等学校
教諭 田中 邦幸
茨城県立海洋高等学校
教諭 宮木 則之
千葉県立銚子商業高等学校
教諭 猪野 尚文
千葉県立館山総合高等学校
教諭 守安 五郎
東京都立大島海洋国際高等学校 教諭 伊藤 陽介
静岡県立焼津水産高等学校
教諭 栗山 朝充
愛知県立三谷水産高等学校
教諭 藤井 徳久
三重県立水産高等学校
教諭 井上 謙盛
資料提供 神奈川県立海洋科学高等学校 教諭 小野 昭久
ア 各校発表内容
(ア)栃木県立馬頭高等学校 教諭 田中 邦幸
馬頭高等学校は「地域とともにある馬頭高校水産科」をスローガンに、今まで多くの教
育活動を実践してきた。水産科として限られた人数で最大限の力を発揮するため様々な場
面で共通認識を確認する工夫をしてきた。「水産科、生徒の強み、弱み」「水産科イノベー
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ションの覚書」
「活動の単年度、3ヶ年計画」など様々な活動の基軸や指針を明確にするこ
とで、教員や生徒が同じ方向を向き教育活動に取組むことができる環境となっている。
(イ)茨城県立海洋高等学校 教諭 宮木 則之
平成 27 年度末をもって専攻科が廃科となることが決定しており、人材育成と同時に生徒
数の確保が課題となっている。地域のイベントへ積極的に参加し実習製品の販売やロープ
ワークのコースター作り、マグロの解体ショーなどを行うだけでなく、小中学校を訪問し
た出前講演にも力を入れて取組み、水産業への興味関心の向上に努めている。このような
活動の成果もあり、近年では定員の充足率が増加している。
(ウ)千葉県立銚子商業高等学校 教諭 猪野 尚文
銚子漁港は全国でも有数の水揚量を誇る港である。しかし、海のレジャーは、釣り以外
はあまり楽しめないという意見が多い。そのような中、海洋環境コースが新たに設立され
た。身近にある利根川や太平洋を、水上スポーツにより親しみ、活動を通じ自ら考え行動
できる社会人の育成を目標としている。今後、好適環境水を用いた陸上養殖の実用化やヒ
ラメの中間育成と放流事業など予定している。
(エ)千葉県立館山総合高等学校 教諭 守安 五郎
木更津周辺の漁業協同組合、千葉県の水産関連団体で構成される安房・君津地区水産教
育振興連絡協議会と連携し、地域の水産関連活動に参加している。アワビの種苗放流やア
ジすくい大会補助、ヒジキ狩りなどに参加した。また、小学生へのスキンダイビング、体
験クルーズ、調理実習も行っている。この協議会は、地域活動だけでなく、インターンシ
ップの受け入れ調整も行っている。
(オ)東京都立大島海洋国際高等学校 教諭 伊藤 陽介
高校卒業後の進路選択において、東京都は全国で最も進学率が高い地域である。このよ
うな中、上級学校に進学した後に海洋関連の進路を選択するような取組が、本校では求め
られている。主な取組として、高大連携事業により東京海洋大や東海大による講義を実施
している。また、夏季研修や乗船実習では海洋に関する興味・関心が湧くように、幅広い
分野で活動する工夫をしている。
(カ)静岡県立焼津水産高等学校 教諭 栗山 朝充
本校提出資料を参照
(キ)愛知県立三谷水産高等学校 教諭 藤井 徳久
自動車産業を中心とした製造業が盛んな土地柄であり、入学生も卒業後の進路に製造業
を希望する生徒が多い。佃煮製造の食品会社と連携し「愛知丸ごはん」を開発したり、名
古屋港水族館と実習船愛知丸を活用したウミガメ放流と生態研究を行うなどマスコミに取
り上げられる機会を増やし認知度の向上につなげている。
(ク)三重県立水産高等学校 教諭 井上 謙盛
地元小学生との関わりを深めるため、隔週土曜日に体験学習を実施している。キーホル
ダーや文鎮作成だけでなく、ガス溶接実習の体験も行っており、大きな印象を与えたと思
われる。また、相可高校の「まごの店」とも連携を行っている。漁獲物の提供に合わせ、
相互に訪問し漁獲から流通、加工、販売と幅広く水産業を捉える機会としている。
(ケ)神奈川県立海洋科学高等学校 教諭 小野 昭久
就業体験、課題研究などを通じ、水産関連の体験・学習を行い、自らの生産物を自らで
考え、開発し、販売していく「地域の1次産業の活性化(6次産業化)」のできる人材育成
を目指している。
イ 講評 三重県立水産高等学校 校長 徳田 嘉美
地域と密接に関わることは、どの水産高校でも求められることである。それぞれの地域
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産業の特性に合わせた工夫が必要であると感じた。各学校の特色に合わせた目標設定も必
要なことであり、取組の目標をしっかりと認識して活動することが重要である。生徒募集
において PR を進める中で、小中学生に地域の担い手として興味・関心を持たせることが必
要なことだが、さらに水産高校生に対しても地域に感謝される存在であることを意識させ
ることも重要である。
第2分科会 会場 りんどう
6月 19 日(木) 14:00∼16:40
副題2「新学習指導要領を踏まえ、地域の発展に寄与する人材をいかに育てるべきか」
(修正継続)
趣旨 水産業の6次産業化が重要視されている中で水産・海洋系高等学校が果たすべき
役割は何かを踏まえ、効果的な人材育成はいかにあるべきかを研究する。
助言者 千葉県立館山総合高等学校
校長 安田 健治
静岡県立焼津水産高等学校
校長 飯田 秀人
司会者 千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 福永 勝秀
記録者 千葉県立勝浦若潮高等学校
実習助手 杉田 勇樹
発表者 茨城県立海洋高等学校
教諭 金子 遊
千葉県立館山総合高等学校
教諭 川嶋 光
神奈川県立海洋科学高等学校 教諭 牧園 尚朗
静岡県立焼津水産高等学校
教諭 千葉 涼子
愛知県立三谷水産高等学校
教諭 長谷川 貢
千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 川名 祐二
ア 各校発表内容
(ア)茨城県立海洋高等学校 教諭 金子 遊
主な取組としては、他の水産高校と同じように2年生で宿泊を含めた一週間の企業実習
を行っているほか、講師招請も行っている。課題研究では、アカエイを利用したレトルト
カレーの研究に取り組んでおり、インド料理店や商工会議所、水産試験場などと連携して
昨年度から本格的な開発に着手している。特徴的な取組は、
「みんなの海洋高校プロジェク
ト」がある。これは小学生・中学生に海洋高校の学習内容を体験してもらうというもので、
講師は高校生である。これによって、海洋高校への理解を深めたり、高校生自身に自覚と
誇りを持たせる効果が見られる。案内は地域の小・中学校全てに配布しており、特別時間
割を利用して出前授業を行ったり体験に来てもらったりしている。
(イ)千葉県立館山総合高等学校 教諭 川嶋 光
館山総合高校では栽培コースと食品コースの2コースが現在の海洋科の編成である。以
前の合併統合などの影響で、教員数が激減したことなどもあり、2つのコースで総合実習
や課題研究を相互乗り入れとしている。このことは、初めは教員不足に対する対策であっ
たが、現在では他コースの理解や協力的な6次産業化の研究につながっている。
(ウ)神奈川県立海洋科学高等学校 教諭 牧園 尚朗
現在、地域貢献として栽培した生物の放流や海岸清掃、潜水海中清掃やアマモの植栽を
行っている。また、
「三浦こどもの船」や県下の小学生に実習船「湘南丸」の見学や体験乗
船を提供している。他には学校近隣、実習場周辺の清掃、漁協朝市の手伝いや講師招請を
行っている。6次産業化の取組は今後の課題である。
(エ)静岡県立焼津水産高等学校 教諭 千葉 涼子
本校提出資料を参照
(オ)愛知県立三谷水産高等学校 教諭 長谷川 貢
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地域連携の取組では、ロープ製造・加工工程の工場見学を実施。海洋漁業コースの生
徒は、普段利用するロープの製造工程を知ること以外にも破断試験を見学することによ
って安全対策の必要性なども学ぶことができる。
他に「アマモ場再生プロジェクト」や「クロアワビの陸上養殖プロジェクト」などが
あり、どのプロジェクトも地域との連携が大切である。さらに「愛知丸ごはんの商品開
発」は、愛知丸で釣ったカツオを食品科の生徒が商品開発を行ったもので、佃煮が完成
している。この商品は地元でも人気があり、6次産業化を考える上で貴重な経験となっ
た。
(カ)千葉県立勝浦若潮高等学校 教諭 川名 祐二
総合学科の中で、水産に関する系列は海洋科学系列と食品科学系列である。生徒数の大
幅な減少の中で、水産系列は縮小傾向にあり予算や職員が少ないのが現状である。
そこで、食品系の部活動を中心に、地元で水揚げされるカツオを使った商品を開発した。
地元名物の「勝浦タンタンメン」からヒントを得て「かつラー油」を開発、製造、販売し、
地元の朝市などで人気を得た。
「かつラー油」は地元企業に製法を伝えることとなり、地域
に貢献することができた。今後は「第3回ご当地!うまいもん甲子園」への出場や、
「かつ
ラー油」を具にした中華まんの開発を予定している。
イ 講評
(ア)千葉県立館山総合高等学校 校長 安田 健治
今回の発表から、各校で6次産業へ取り組んでいることがわかった。しかし、商品開発
については、法的な手続きや衛生面をしっかりとクリアしなければならないと感じる。商
品開発以外にも、6次産業化として「観光」について学び、地域発展に生かすこともこれ
から大切なのではないか。
(イ)静岡県立焼津水産高等学校 校長 飯田 秀人
今回の発表から見えたことはやはり「6次産業化」である。この言葉は非常に重要なキ
ーワードである。しかし、
「6次産業化」は複合的産業であることからも、難しく、また危
ないところも含んでいると感じた。館山総合高校の海の駅や遊漁船の取り組みは6次産業
を超えている。
「食PRO」の申請なども6次産業を学ぶきっかけとなり得るので、水産基
礎の授業にあてはめて申請してみるとよいかと考える。
(3)学科別協議会
海洋漁業系 会場 すずらん 6月 20 日(金) 09:00∼10:45
主題「地域を理解し、地域に貢献するための海洋漁業教育はどのようにあればよいか」
趣旨 各校が海洋漁業教育の教育を通じて、どのような方法で地域の水産業を理解する
か、また、どのような貢献を通じて地域から必要とされる学校づくりを目指すの
か、原点から見直す必要がある。地域に根差した海洋漁業系教育の在り方につい
て、各校の取組み事例、実践例を踏まえて研究する。
助言者 千葉県立銚子商業高等学校
校長 三浦 弘行
司会者 千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 荘司 明
記録者 千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 宮内 陽子
発表者 茨城県立海洋高等学校
教諭 菊本 欣三郎
千葉県立館山総合高等学校
教諭 守安 五郎
東京都立大島海洋国際高等学校 教諭 伊藤 陽介
静岡県立焼津水産高等学校
教諭 栗山 朝充
愛知県立三谷水産高等学校
教諭 長谷川 貢
6
三重県立水産高等学校
教諭 佐々木 智史
千葉県立勝浦若潮高等学校
教諭 藪崎 秀人
ア 各校発表内容
(ア)茨城県立海洋高等学校 教諭 菊本 欣三郎
平成 20 年から3年間の「地域産業の担い手プロジェクト」事業の指定を受けた。この取
組を継続することで地域理解につながっている。他には講師招請による実践的指導、
「みん
なの海洋高校プロジェクト」推進事業での小・中学生に対する高校生の講義、自然教室開
催などで漁業や海について幅広く広める活動を行っている。
(イ)千葉県立館山総合高等学校 教諭 守安 五郎
地域貢献には地域理解が必要不可欠。その手段として学年ごとに地元産業の見学や体験
を実施している。また、大きな地域貢献としての水産高校の役割はやはり後継者育成であ
ると考える。以前から力を入れていることではあるが、くくり募集の強みを生かし、卒業
の際には少ない年で4割、多い年で7割の生徒が関連産業に就いている。
(ウ)東京都立大島海洋国際高等学校 教諭 平塚 正彦
平成 20 年度から沖ノ鳥島付近での観測を継続している。その結果はさまざまな分野で生
かしており、沖ノ鳥島フォーラムでの発表や沖ノ鳥島塩の販売なども継続している事業で
ある。
(エ)静岡県立焼津水産高等学校 教諭 栗山 朝充
本校提出資料を参照
(オ)愛知県立三谷水産高等学校 教諭 長谷川 貢
地域連携の取組では、ロープ製造・加工工程の工場見学を実施。海洋漁業コースの生徒
は、普段利用するロープの製造工程を知ること以外にも破断試験を見学することによって
安全対策の必要性なども学ぶことができる。
他にカッターの船底整備やマリーナ業務体験や三河海上保安署による海上交通安全講話
を受講している。水産高校があるからこの地域は安泰だと言われるような学校を目指した
い。
(カ)三重県立水産高等学校 教諭 佐々木 智史
学科の特性から、スクーバダイビング技術を生かした地域貢献が中心である。海水浴場
の海開き前のガンガゼ駆除を行っているほか、アワビ・クルマエビの放流の手伝いも行っ
ている。特に放流については、海女の素もぐりが不可能な水深で、丁寧に放流を行うこと
で放流後の稚エビを鳥から守るということにつながり、地域水産業に貢献している。6年
続いていることではあるが、海女の方々やその他漁業者からの理解を得るには苦労があっ
た。現在は漁協とも協力し、生徒も実践的な指導を受けながら技術を向上させることがで
きている。
(キ)千葉県立勝浦若潮高等学校 教諭 藪崎 秀人
勝浦若潮高等学校は、来年度から大きな変化を迎える。現在地域に貢献していることは
講義や実習を丁寧に行い、その後漁協などと実践的な放流などを行っている。地道な交流
を通じ、地域に入り込んで地域産業を理解していると考えている。
イ 講評 千葉県立銚子商業高等学校 校長 三浦 弘行
広報の面ではどの学校も苦労していることが伝わってきた。地域からの理解と、本当の
学校内容を浸透させるには時間がかかる。そのためにも広報は必要であろう。補足的な話
をすると、銚子ではインドネシアからの漁業体験を受け入れている。体験生は2年間銚子
に滞在することになっており、定着した事業である。これも後継者育成につながるものか
と感じている。地域に貢献できる生徒を育てることは、今後も大切なことである。
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今回の研究協議で出された取組事例を参考に情報交換をし、各校でも利用するとよいか
と思う。
資源増殖系 会場 ききょう 6月 20 日(金)9:00∼10:45
主題「資源増殖系学科における地域マネジメント能力を育成するための地域との連携の
在り方は、いかにあるべきか」
趣旨 水産系の6次産業化が重要視されている中で「産業界、高校、大学、および自治
体」が連携し、地域マネジメント能力を育成することは必須である。そこで、地
域の現状と新学習指導要領を踏まえた効果的な地域マネジメント能力の育成法を
検討し、連携の在り方、教育課程上の位置づけ、その評価法について研究する。」
助言者
栃木県立馬頭高校
校長 田代 和義
茨城県立海洋高校
校長 村田 一弘
司会者
千葉県立勝浦若潮高校 教諭 荘司 明
記録者
千葉県立勝浦若潮高校 実習助手 代市 礼子
発表者
千葉県立銚子商業高校 教諭 猪野 尚文
千葉県立館山総合高校 教諭 川島 光
神奈川立海洋科学高校 教諭 藤岡 高昌
静岡県立焼津水産高校 実習助手 金子 誠
愛知県立三谷水産高校 教諭 大島 寛俊
資料提供 栃木県立馬頭高校
教諭 田中 邦幸
茨城県立海洋高校
教諭 菊本 欣三郎
ア 各校発表内容
(ア)千葉県立銚子商業高校 教諭 猪野 尚文
銚子商業高校では海洋環境コースを設置し、資源増殖系のみならず、あらゆる状況下に
おいても柔軟な発想力と解決能力を備えた人員の育成に努力している。具体的には水産業
人としてのインターンシップ、工場の施設見学、地域の祭り(銚子産業祭り)、郷土料理の
保存・体験実習である。今後、当該校と地域・市、漁協、企業が一体となり、ヒラメの育
成や放流を行い、水産高校海洋コースのブランド化を推し進めていく。
(イ)千葉県立館山総合高校 教諭 川島 光
地域マネジメント能力を育成するために館山総合高校では沖縄まで遠征し、潜水実習を
行っている。近年の水産と環境を取り巻く環境は年々変化していることから、実際の海を
見せることで問題意識を明確にさせている。さらに自分たちが生産したアワビをダイビン
グ実習を通じて放流することで海洋環境や海洋生物への興味関心を湧き立たせ、自然界で
大きく育ててから商品にまでする取組を行っている。このような取組は栽培コースのブロ
グとして発信することで、生徒たちの自信と責任感の向上に役立てている。
(ウ)神奈川立海洋科学高校 教諭 藤岡 高昌
当該校では 20 年以上にわたり、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、マダイ、ク
ロダイ、アユ、トラフグ、カサゴ、ヒラメ、ナマコなど多種多様な魚種の種苗生産を行っ
ている。特にアワビの放流には力を入れている模様であった。6次産業化を見据え、さら
なる新規魚種の開拓に乗り出しており、アコヤガイやナマコの種苗生産も始めているよう
である。さらに仔稚魚のゆりかごとして知られるアマモを移植するプロジェクトも開始し、
「海の森作り」に取り組んでいる。
(エ)静岡県立焼津水産高校 実習助手 金子 誠
本校提出資料を参照
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(オ)愛知県立三谷水産高校 教諭 大島 寛俊
三谷水産高校でも、神奈川県立海洋科学高校と同様にアマモ場の再生プロジェクトに取
り組んでいる。これに加え、がまごおり産学官ネットワークを中心として旧市民プールを
活用し、クロアワビの養殖に乗り出した。課題研究を通じて、県の特産品であるみかんを
アワビの餌として使用する試験を行っている。生徒たちが毎日の飼育管理を行い、飼育環
境を知ることで、興味関心を高めるとともに、産学の連携による外部からの交流によりコ
ミュニケーション能力を向上させるといった狙いもあるようだ。
(4) 講評と所管事項
国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官
兼 文部科学省初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室教科調査官 瀧田 雅樹
ア 講評
第1分科会について、それぞれの学校が抱えている状況や連携について触れていない学
校があった。残念である。生徒への研究発表を指導している手前、きちんと発表すること
は大切である。そのためにもプレゼンなどはしっかりと行ってもらいたい。
第2分科会については、なぜ今6次産業化なのかをしっかり汲み取ってもらいたい。産
業界は水産業も含め、現在大変苦しい状態にある。かつて言われた3K、4Kでは済まず、
「借金」まであるような状況の中へ生徒を送り出せるのか。生徒を安心して水産界へ送り
出すことができるように新しい目線を持って産業界をアピールする必要がある。これこそ
が6次産業化である。これからも社会的ニーズに合ったことを実行し、続けることや産業
界を変えることは大切なことである。
学科別協議会の漁業系分科会については、漁業とは、農業と同時に大切な1次産業を担
っている。1次産業はなくてはならないものであると考えるので、海洋漁業の裾野を広げ
ることが今後の課題であろう。水産教育が日本の蛋白源を供給するという意気込みを持ち、
地元に求人が増えるよう、特産品やアンテナショップなどを作る努力も欠かせない。
情報通信系分科会についてだが、情報系学科は縮小傾向にあるが、無線通信の重要性は
忘れてはならない。地味な分野と思われがちではあるが、減らしたくない分野である。水
産高校から「情報」を無くしてはならないと思っている。
資源増殖系分科会についてだが、日本にとって養殖業はますます大きな役割を担うもの
である。このような研究だけを行うのではなく、養殖業を産業分野のひとつと捉えて考え
て行く必要がある。地元のニーズを把握し、協力することから生徒を将来的に地域へ戻す
努力をして欲しい。宇和島水産高校の専攻科の役割と存在も大きいものである。
イ 所管事項
新学習指導要領は昨年度から実施しており、現2年生までにあてはまる。スペシャリス
ト、地域産業、職業人をそれぞれ育成したい。情報は過多になりがちであるため、最小
限に選択することである。教科書については、来年度は航海・計器、機械設計工作、海
洋生物、水産流通が変更される。評価基準の作成は、実験・実習は特に難しく今後の課
題となりうるものである。
文部科学省関連としては中教審についてはHPをよく見てもらいたい。研究指定事業の
SPHやSSH、国研の教育課程や実践協力校にも水産高校の名前が挙がっている。関係
法規の改正や、水産を取り巻く社会情勢にはアンテナを高くしておくこと。
全国の高校生のうち、0.3%が水産系の生徒の割合である。これをもっと増やすようにP
Rを進めて欲しい。周囲の理解を得るために水高の記事や成果は大切である。これらを受
けて文科省が宣伝をしたいと考えている。
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まとめ
どの学校も本校と同じようにインターンシップや講師招請を取り入れ、生徒のキャリア
教育や6次産業化の模索をしていることがよくわかった。その取り入れ方についても丸1
日実習を行える日を設けるなど、各校のカリキュラムの特性や地域性を活かしていること
が伺えた。特に印象深かったのは2日目の漁業系分科会において発表のあった、三重県立
水産高等学校の取組である。地域の漁協や、三重県独特の海女組合などと協力体制を取る
までの苦労やその後のダイビングを活かした地域貢献の様子は、今後の本校の取組にも参
考になることが多かったと感じる。今回得た情報を今後の本校の活動に活かし、生徒へ還
元できるようにしたい。(千葉)
全国の水産高校において、どの高校においても6次産業化に向けた取組を行っている。
資源増殖系学科においては、生産物を生み出す基幹産業の一端を担っていることから、6
次産業化に向けたアイデアを出しやすく、多角的視点から問題に向き合っていることが伺
えた。水産業において栽培漁業なくして、6次産業化を目指すことはできない。今回の各
校の取組を参考に本校でも6次産業化に向けた取組を実施していきたい。(金子)
各校、それぞれが地域の実情を分析し、求められているニーズの把握に努めている。立
地や産業構造により特徴はあるが、地域の担い手を産・学・官で育成していく姿勢は共通
している。小・中学生に対する体験学習や講義で子どもたちに興味・関心を持たせること
は、水産高校のためだけでなく、地域社会に子どもが目を向けるきっかけとなる。その活
動を通じ、地域の担い手が育成されることになれば、そこに関わる水産高校生も地域に感
謝される存在になる。そのことを水産高校生が認識できるように仕向けていくことが、教
員に課せられた大きな責務であると感じることとなった。各校がそれぞれ「地域の水産高
校」である。このような研究協議を基に、それぞれの学校が切磋琢磨することが、地域の
水産業を支え、日本の水産業を支えることになることを認識し、日々の活動に取組んでい
きたい。(栗山)
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