乳腺 - がん情報サービス

乳房 Breast(C50)
乳腺に原発する悪性腫瘍
局在コード(ICD-O-3) 「C50._」
側性あり臓器
形態コード(ICD-O-3)
1)癌腫
《乳腺》
← 主要 5 部位に相当
2)悪性リンパ腫
《非ホジキンリンパ腫》
3)肉腫
《軟部組織》
上記1)~2)以外は UICC TNM分類第 7 版では病期分類の「適用外」
1. 概要
わが国における 2014 年の女性の乳がん粗死亡率(人口 10 万対)は 20.6 である。年齢調整死亡率(昭和 60 年モ
デル人口で調整、人口 10 万対)は、女で 11.8 となっている。悪性新生物死亡全体に占める割合は女 8.8%を占める
(第 5 位)。
十数府県の地域がんデータによる 2011 年の全国推計年齢調整罹患率(昭和 60 年モデル人口で調整、人口 10 万対)
は、女 82.2(上皮内癌を含まず)となっており、新たにがんと診断されたがんとして第 1 位となっている。年齢階級別罹
患率は、30 歳代から増加をはじめ、40 歳代後半から 50 歳代前半に最も多くなっている。
2. 解剖
原発部位
乳房(breast)は皮膚・皮下組織(脂肪)とその中に乳腺を含む部位である。乳腺(mammary gland)は前胸壁の外
部に位置し、厚い線維性の間質を伴った腺組織である(図1)。腺組織は多くの小葉(lobule)からなり、その小葉は集
まって 15~25 の葉を形成する。大小多くの乳管(mammary duct)が乳汁分泌腺と乳頭(nipple)へとつながってい
る。小乳管は乳房の中を通り、集合して大乳管となって、最終的には乳頭の基部にある乳管洞へと続く。大部分のが
んはまず初めに、管の末端にある小葉部分の乳管に発生する。腺組織は乳房の上外側部により多く存在するので、
乳癌の半数はこの部分に生じることになる。胸壁には肋骨、肋間筋、前鋸筋が含まれるが、胸筋は含まれない。
乳房
乳頭 nipple(C50.0)
乳輪 nipple areola(C50.0)
乳房体
乳腺 mammary gland
乳房脂肪組織
皮下組織 subcutaneous tissue
皮膚 skin
乳腺
乳管 … 乳頭に各腺葉から約 20 本の乳管が開口
腺葉 … 約 20 ヶ、1本の乳管を有する
小葉→腺房
腺房が集まって小葉を形成し、
小葉が集まって、腺葉を形成している。
図1 乳腺の解剖図
3.亜部位と局在コード 《乳房》
ICD-O-3 において、乳房は乳頭~乳輪の表面 C50.0(乳頭部)、乳輪皮下の乳腺を指す C50.1(乳輪部)の 2 部位を
除いて、上下・内側外側に 4 等分した C50.2(内側上部)、C50.3(内側下部)、C50.4(外側上部)、C50.5(外側下部)の 6
部位でコードされる。
乳房に原発する肉腫
表1 取扱い規約の表記と ICD-O-3 局在コード 《乳房》
ICD-O 局在
取扱い規約
(第 17 版)
側性あり臓器
診療情報所見
備 考
腫瘍占拠部位
C50.0
E' (乳頭部)
乳頭および乳輪
乳頭と乳輪の表面、乳頭部分を指す。
C50.1
E (乳輪部)
乳房中央部
乳輪部の皮下に原発する腫瘤を指す。
C50.2
A (乳房内上部)
乳房上内側4分の1
C50.3
B (乳房内下部)
乳房下内側4分の1
C50.4
C (乳房外上部)
乳房上外側4分の1
C50.5
D (乳房外下部)
乳房下外側4分の1
C50.6
C' (乳房の腋窩尾部)
乳房腋窩尾部
乳腺の尾部,NOS
AB, AC・・等
C50.8
C50.9
「2つ以上の領域にまたがり
主占拠部位が決定しにくい
もの」
乳房の境界部病巣
外側乳房
上部乳房
内側乳房
下部乳房
乳房正中線部
乳房,NOS
乳腺
図2 乳房の亜部位表記
※取扱い規約の表記では、
腫瘍が複数の亜部位に
またがって存在する場合は、
初めに書かれている亜部位が
その主部位となるので、
初めに書かれている亜部位を
原発の局在コードにする。
(例: CA → Cにあたる C50.4 )
4.形態コード(病理組織型) 《乳房》
乳房に原発する腫瘍のほとんどは乳管上皮から発生する腫瘍で、ほとんどが導管癌と呼ばれる腺癌である。
取扱い規約【第 17 版】では、全体を非浸潤癌、浸潤癌、Paget(パジェット)病に分類され、特に浸潤がんにつ
いてはわが国独自の分類で「乳頭腺管癌」「充実腺管癌」「硬癌」に分類されるため、がん登録ではこれらの組織
型について、8500/3 をコードして 6 桁目で上記 3 つに区別する。
表2 取扱い規約の表記他と ICD-O-3 形態コード 《乳房》
◆該当
TNM
病理組織名(日本語)
(取扱い規約第 17 版)
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
非浸潤癌
非浸潤性乳管癌
非浸潤性小葉癌
非浸潤性導管内乳頭状腺癌
導管内小乳頭状癌
導管上皮内癌、充実型
非浸潤性癌 NOS
乳房 Paget〔パジェット〕病、上皮内※1
上皮内アポクリン癌 ※2
浸潤癌
浸潤癌 NOS
浸潤性乳管癌
乳頭腺管癌 ※3
充実腺管癌 ※3
硬 癌 ※3
特殊型
粘液癌
髄様癌
浸潤性小葉癌
腺様嚢胞癌
扁平上皮癌
紡錘細胞癌
アポクリン癌
1
1
1
1
1
1
1
1
1
3
2
3
3
管状癌
分泌癌(若年性癌)
浸潤性小乳頭状癌
基質産生癌
他の型の癌を伴う浸潤性導管癌
他の型の癌を伴う浸潤性小葉癌
コメド癌 NOS
Paget 病
葉状腫瘍(葉状嚢胞肉腫)悪性
癌肉腫
間質肉腫
血管肉腫
リンパ管肉腫
骨・軟骨化生を伴う癌
●:乳癌取扱い規約【第 17 版】に収載の組織診断名
形態
コード
英語表記
Noninvasive carcinoma
Noninvasive ductal carcinoma
Lobular carcinoma in situ
Noninfiltrating intraductal papillary adenocarcinoma
Intraductal micropapillary carcinoma
Ductal carcinoma in situ, solid type
Noninvasive carcinoma, NOS
Paget's disease, mammary, in situ
Apocrine carcinoma, in situ
Invasive carcinoma
Invasive carcinoma, NOS
Invasive ductal carcinoma
Papillotubular carcinoma
Solid-tubular carcinoma
Scirrhous carcinoma
Special types
Mucinous carcinoma
Medullary carcinoma
Invasive lobular carcinoma
Adenoid cystic carcinoma
Squamous cell carcinoma
Spindle cell carcinoma
Apocrine carcinoma
Carcinoma with cartilaginous and/or osseous
metaplasia
Tubular carcinoma
Secretory carcinoma(Juvenile carcinoma)
Invasive micropapillary carcinoma
Matrix-producing carcinoma
Infiltrating duct mixed with other types of carcinoma
Infiltrating lobular mixed with other types of carcinoma
Comedocarcinoma, NOS
Paget's disease
Phyllodes tumor (Cystosarcoma phyllodes), malignant
Carcinosarcoma
Stromal sarcoma
Hemangiosarcoma
Lymphangiosarcoma
◆該当 TNM :該当する病期分類は以下の通り
1.乳腺
2.軟部組織
3.該当 TNM 分類なし
※1 ICD‐O‐3 には掲載されていない。がん登録で独自に採用されているコード。
※2 がん登録では、乳房の上皮内アポクリン癌は「8500/29」のコードを採用する。
※3 浸潤性乳管癌の日本独自の亜分類に対して、がん登録では 6 桁の決められたコードを採用する。
●
●
8500/2
8520/2
8503/2
8507/2
8230/2
8010/2
8540/2
8500/2
●
●
●
●
8010/3
8500/3
8500/31
8500/32
8500/33
●
●
●
●
●
●
●
8480/3
8510/3
8520/3
8200/3
8070/3
8572/3
8401/3
●
8571/3
●
●
●
●
8211/3
8502/3
8500/3
8575/3
8523/3
8524/3
8501/3
8540/3
9020/3
8980/3
8935/3
9120/3
9170/3
●
●
●
●
上皮内癌について
上皮内癌には、非浸潤性、non-invasive、Carcinoma in situ 等の用語が用いられる。
微小浸潤(microinvasion)という記載があれば、浸潤癌とする。
組織コード 6 桁目(分化度のコードについて)
組織学的異型度
組織学的異型度(組織学的悪性度)判断の要素は、組織の特徴、核異型、核分裂像(細胞の核が示す形態異常:異型性、
顔つきの悪さ)である。我が国では、最近 N-SAS-BC による核異型度を評価するシステムが広がりを見せている。病理
報告書に核異型度(nuclear grade)の記載がある場合は、どのような評価システムを用いているのかを病理医に問い合
わせ、分化度(ICD-O-3 形態コードの 6 桁目)に記載する。
表3 N・SAS‐BC における乳管癌の核異型度(nuclear grade)の評価
A.核異型(nuclear atypia)
Score 1
核の大きさ、形態が一様で、クロマチンは目立たない。
Score 2
1 と 3 の中間
核の大小不同、形態不整が目立つ。クロマチンの増量、不均等分布が目立ち、大型の核小
Score 3
体を有することがある。
B.核分裂像の数(number of mitotic figures)
低倍で最も分裂像の多そうな部分を選んだ後、
Score 1
高倍(400×) 10 視野で 5 個未満
Score 2
同 10 視野で 5-10 個
Score 3
同 10 視野で 11 個以上
A+B.核異型度(nuclear grade)
A の Score と B の Score の合計
「核異型」、「核分裂像の数」のスコアを合計
合計 Score 2~3
Nuclear grade 1 (NG1)
→ 高分化型 (ICD-O-3 形態コード 6 桁目が 1)に相当
※
合計 Score
Nuclear grade 2 (NG2)
→ 中分化型 (ICD-O-3 形態コード 6 桁目が 2)に相当
※
Nuclear grade 3 (NG3)
→ 低分化型 (ICD-O-3 形態コード 6 桁目が 3)に相当
※
4
合計 Score 5~6
※ 院内がん登録では浸潤性導管癌について、独自の 6 桁コードを設けているため、
登録時の組織診断名コード入力時には、「組織学的異型度」を 6 桁目のコードに反映させない。
【用語の整理】 Class Grade Level
Class: 細胞診の結果報告に用いられる。
Class I
: 良性あるいは正常
Class II : 良性あるいは正常
Class III : 良悪判定困難(3a:少し怪しい 3b:だいぶ怪しい)
Class IV : 悪性の疑い
Class V : 悪性
Grade: 腫瘍の悪性度を示す。上記 N-SAS や Nottingham grade がよく使われている。
Grade 1 : 顔つきのおとなしいがん細胞
Grade 2 : 中間のがん細胞
Grade 3 : 顔つきの悪いがん細胞
注:上皮内癌にも Grading system が存在するが、院内がん登録では上皮内癌の 6 桁目は 9 とするので、
上皮内癌の Grade は ICD-O-3 の形態コードには用いない。
レベル(level)→
レベル 1 :
レベル 2 :
レベル 3 :
所属リンパ節郭清の範囲を示す。
小胸筋より外側のリンパ節まで
小胸筋の上(皮膚側)リンパ節と、大・小胸筋の間のリンパ節まで
小胸筋より内側のリンパ節まで
5. 病期分類
1) UICC TNM 分類(第 7 版)
【標準項目】
T-原発腫瘍 【510】【610】
原発腫瘍の皮膚浸潤/胸壁浸潤の状況および最大径を評価する。
※ より進展している状況(乳癌では T4)に合致しているかを評価した上で、評価を行う。
①皮膚浸潤を理学的検査(視診/触診/聴診など)で評価する。
視診:皮膚潰瘍形成、浮腫(peu d’orange:橙皮状皮膚を含む)、触診:皮膚衛星結節
②胸壁浸潤を理学的検査(視診/触診/聴診など)で評価する。
触診:胸壁(小胸筋、大胸筋は含まない)に固定して可動性がなくなる
③最大径をMMG(マンモグラフィー)、超音波検査、MRI等の画像診断で評価する。
※ pT:病理学的所見では手術標本の浸潤部分の最大径で測定する。
なお、生検などによる組織診で、非浸潤癌の診断があるときは、Tis とする。
Tis
非浸潤癌 (DCIS(非浸潤性導管癌)、LCIS(非浸潤性小葉癌)、 非浸潤性 Paget 病など)
T1
最大径が 2cm 以下の腫瘍
T1mi
最大径が 0.1cm 以下の微小浸潤注 1
T1a
0.1cm < 最大径 ≦ 0.5cm
T1b
0.5cm < 最大径 ≦ 1.0cm
T1c
1.0cm < 最大径 ≦ 2.0cm
T2
2.0cm < 最大径 ≦ 5.0cm
T3
5.0cm < 最大径で、理学的に T4 の所見が認められないもの
T4 腫瘍の大きさに関係なく、胸壁および/または皮膚注 2 への直接的な広がりを示す腫瘍
T4a
触診で胸壁固定を認めるもの
T4b
触診または視診で、潰瘍形成/皮膚の浮腫/衛星結節など、皮膚への直接浸潤を認めるもの
T4c
T4a(胸壁固定)の所見と T4b(皮膚所見)の所見の両方を認めるもの
T4d
炎症性乳癌注 3 と記載されているもの
注1
注2
注3
基底膜をこえた周囲組織への癌細胞の広がりで、最大径が 0.1cm
病理学的な真皮への浸潤所見だけで皮膚所見ありとはしない(理学的検査所見が必須)
炎症性乳癌は、癌細胞が皮膚のリンパ管を閉塞することによって起こる病態で、
皮膚の乳房全体が固い硬結を示す状況で通常、腫瘤を伴わない。
表4 T 因子 《乳房》
最大径
Tis
T1mi
確認していく
T4
皮膚所見
なし
なし
なし
なし
T1a
0.1cm < 最大径 ≦ 0.5cm
なし
なし
T1b
0.5cm < 最大径 ≦ 1.0cm
なし
なし
T1c
1.0cm < 最大径 ≦ 2.0cm
なし
なし
T2
2.0cm < 最大径 ≦ 5.0cm
なし
なし
T3
5.0cm < 最大径
なし
なし
T4a
腫瘍最大径と無関係
あり
なし
T4b
腫瘍最大径と無関係
なし
あり
T4c
腫瘍最大径と無関係
あり
あり
T4d
腫瘍最大径と無関係
T1
進行している
組合せから
合致するかを
下から上に
最大径 ≦ 0.1cm
胸壁固定
炎症性乳癌の記載
N-所属リンパ節転移 【520】【620】
触診、超音波検査所見やCT所見などの画像診断所見をもとに、所属リンパ節転移を評価する。
臨床分類(cN)と病理学的分類(pN)は基準が違うので、注意する。
腋窩リンパ節の「可動」「固定」について特に記述ない場合は、「可動」と考えて cN を決定する。
所属リンパ節は、
① 同側 腋窩リンパ節(レベルⅠ、レベルⅡ)
② 同側 胸骨傍リンパ節
③ 同側 鎖骨下リンパ節(腋窩リンパ節レベルⅢ※)
④ 同側 鎖骨上リンパ節
※ 鎖骨下 LN(リンパ節)=腋窩 LN レベルⅢと考えてよい
表5 cN 因子(臨床分類) 《乳房》
腋窩リンパ節
UICC TNM 分類
【第 7 版】
cN2
進行している
組合せから
合致するかを
下から上に
確認していく
cN3
(レベルⅠ、レベルⅡ)
胸骨傍
リンパ節
鎖骨下
リンパ節
鎖骨上
リンパ節
可動
固定
cN0
なし
なし
なし
なし
なし
cN1
あり
なし
なし
なし
なし
cN2a
?
あり
なし
なし
なし
cN2b
なし
なし
あり
なし
なし
cN3a
?
?
?
あり
なし
あり
なし
なし
?
?
あり
cN3b
cN3c
可動/固定いずれか
?
あり
?
「?」は、転移陽性/陰性いずれでもかまわない
(レベルⅢ)
表6 pN 因子(病理学的分類) 《乳房》
UICC TNM 分類
【第 7 版】
pN0
pN1mi
pN1a
pN1
pN1b
pN1c
pN2a
pN2
pN2b
進行している
組合せから
合致するかを
下から上に
(レベルⅠ、レベルⅡ)
胸骨傍
リンパ節
なし
なし
腋窩リンパ節
pN3
鎖骨上
リンパ節
(レベルⅢ)
なし
なし
0.2mm < 微小転移の大きさ ≦ 2.0mm または 2.0mm 以下の転移で細胞数 200 以上
1~3 個
なし
なし
なし
なし
微小転移
微小転移
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
あり
なし
なし
10 個以上
なし
なし
なし
?
?
1 個以上
なし
pN3b
1 個以上
4 個以上
1 個以上
微小転移
なし
なし
なし
なし
pN3c
?
?
?
1 個以上
1~3 個
4~9 個
pN3a
確認していく
鎖骨下
リンパ節
「?」は、転移陽性/陰性いずれでもかまわない
M-遠隔転移 【530】【630】
画像所見(CT/MRI、超音波検査)等から遠隔転移を評価する。
M0
M1
遠隔転移なし
遠隔転移あり
Stage-病期 【500】【600】
表7 UICC TNM 分類 病期(Stage)のマトリクス (Matrix) 《乳房》
UICC TNM
分類
【第 7 版】
N0
Tis
0
N1
N1mi
N1a
N2
N1b
N1c
N2a
N2b
N3
N3a
N3b
T1mi
T1
T1a
T1b
IA
IB
ⅡA
ⅢA
ⅢC
ⅡA
ⅡB
ⅡB
ⅢA
ⅡB
ⅢA
ⅢA
ⅢA
ⅢC
ⅢC
ⅢB
ⅢB
ⅢB
ⅢB
ⅢC
Ⅳ
Ⅳ
Ⅳ
Ⅳ
Ⅳ
T1c
T2
T3
T4a
T4
T4b
T4c
T4d
M1
N3c
2) 進展度(臨床進行度)
【標準項目】
進展度 【580】【680】
表8 進展度 UICC TNM 分類からの変換マトリクス (Matrix) 《乳房》
UICC TNM
分類
【第 7 版】
N0
Tis
400:
上皮内
T1
T1mi
T1a
T1b
T1c
N1
N1mi
N1a
N2
N1b
N1c
N2a
N2b
N3
N3a
N3b
N3c
420:
所属
リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
440:
遠隔転移
420:
所属
リンパ節
転移
420:
所属
リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
440:
遠隔転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
420:
所属リンパ節
転移
440:
遠隔転移
3:隣接
臓器浸潤
3:隣接
臓器浸潤
3:隣接
臓器浸潤
3:隣接
臓器浸潤
3:隣接
臓器浸潤
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
440:
遠隔転移
410:
限局
T2
410:
限局
T3
410:
限局
T4a
T4
T4b
T4c
T4d
M1
6. 診断・検査
1) マンモグラフィー (乳腺 X 線検査、mammography : MMG)
乳腺を圧迫板ではさみ X 線撮影する検査。乳癌のスクリーニングとして最も有用とされている。微細な石灰化、腫瘤陰
影、構築の異常などを検出している。所見の評価としてカテゴリー分類(1:正常~5:癌)がなされる。
2) 超音波検査
乳癌のスクリーニングや良悪性の鑑別に有効な検査である。超音波ガイド下の針穿刺細胞診や針生検に応用され
る。
3) X 線 CT 検査、MRI 検査
いずれも、乳房温存療法における腫瘍の拡がり診断に有用と考えられている。
4) 骨シンチグラフィー
乳癌患者で骨転移の頻度が高いため、骨転移検出目的で、骨シンチが行われることがある。
5) 穿刺吸引細胞診 (Fine needle aspiration cytology : FNB)
腫瘍を穿刺して細胞を採取し、細胞診検査を行う方法。超音波ガイド下で行われることもある。確定診断として即、治
療に移行する場合もある。
6) 経皮的針生検法
細胞診よりも太い穿刺針で組織を採取する方法。core needle biopsy:CNB (細胞診よりやや太い針)やマンモトーム
生検(core needle biopsy よりもさらに太い針で吸引をかけて採取)がある。確定診断に有用である。
7) 腫瘍マーカー
CEA, CA15-3 などが高値となる。
7. 治療
【標準項目】
乳がんの初期治療として手術、術後の放射線照射および薬物療法(化学療法、内分泌療法)が用いられる。
表9 乳がんの病期ごとにおける標準治療
病期
標準的治療
乳房温存手術(扇状、円状切除術)+腋窩リンパ節郭清+放射線治療
Ⅰ、Ⅱ
非定型乳房切除術(胸筋温存乳房切除術)
ⅢA
非定型乳房切除術
ⅢB
根治的手術の適応とならない。生検後、全身薬物療法+放射線療法
Ⅳ
転移を伴う乳がん
再発した乳がん
化学療法、または内分泌療法
出血、感染、疼痛など
局所コントロールを目的とした放射線療法、手術療法
骨転移
症状緩和を目的とした放射線療法
術前薬物療法
Ⅰ~ⅢA の一部
手術可能な乳癌に対して、標準的治療として施行することがある
術後放射線療法
①乳房部分切除術を行った場合:残存乳房に対して施行
②乳房切除術(T3 : 5cm 以上)、腋窩リンパ節転移 4 個以上の場合:胸壁・領域リンパ節に対して施行
1)観血的治療 【700】 【710】 【720】
(1) 外科的治療 【700】
a.乳房切除術
拡大乳房切除術: Extended radical mastectomy Bt+Ax+Mj+Mn+Ps+(Sc)。
現在、ほとんど行われない。
胸筋合併乳房切除術: Radical mastectomy (Halsted) Bt+Ax+Mj+Mn。
現在、ほとんど行われない。
胸筋温存乳房切除術: Modified (muscle-preserving) radical mastectomy Bt+Ax (Auchincloss), Bt+Ax+Mn (Patey)。
乳房切除として最も標準的な術式である。
全乳房切除術: Total resection Bt
腋窩リンパ節郭清を行わない乳房切除術。
b.乳房温存手術
乳房扇状部分切除術: Quadrantectomy Bq+Ax
乳頭を中心とする乳腺の扇状切除で、英語では Quadrantectomy (1/4 切除)だが必ずしも 90 度切除とは限らない。
乳房円状部分切除術: Lumpectomy (Partial resection) Bp+Ax
腫瘤縁より一定の距離をおいて肉眼上正常と思われる乳腺組織に切除線をおく乳腺部分切除。
腫瘤摘出術: Tumorectomy (Local excision) Tm+Ax
術中の視触診上、腫瘤縁に沿って腫瘤を全切除する術式。
(2)鏡視下治療 【710】
鏡視下手術: Video-assisted surgery
上記手術療法の種々の手術が鏡視下で応用されているが、院内がん登録では 2016 年症例から、
鏡視下治療として登録する。
手術範囲に関する略語(取扱い規約での解剖用語)
Bt:全乳房、 Bq:乳房の一部(扇状)、 Bp:乳房の一部(部分)、 Tm:腫瘤、
Ax:腋窩 LN、 Ps:胸骨傍 LN、 Ic:鎖骨下 LN、 Sc:鎖骨上 LN、
Mj:大胸筋、 Mn:小胸筋
(3)外科的 ・ 鏡視下 ・ 内視鏡的治療の範囲 【730】
【治療結果の評価】
表10 外科的・鏡視下・内視鏡的治療の範囲 【730】 《乳房》
選択肢コード
外科的治療
1:原発巣切除
切除断端陰性
4:姑息的な観血的治療
切除断端陽性
9:不明
原発巣切除が行われたが、
その結果が不明・記載がない場合
2) 放射線療法 【740】
0,Ⅰ,Ⅱ期の乳房温存手術後、Ⅲ期の乳房切除後、骨転移、脳転移などに放射線療法が行われる。
3) 薬物治療 【750】 【760】
(1) 化学療法 【750】
乳癌に対するレジメン例
単剤
・コスメゲン(ACD)
・ジェムザール(GEM)
・ゼローダ
・フトラフール (FT,TGF)
・タキソテール(DTX)
・マイトマイシン(MMC)
・ハーセプチン
・トポテシン(CPT-11)
・アドリアシン(DXR(ADR))
・エンドキサン(CPA)
・ユーエフティ(UFT)
・タキソール(PTX)
・メソトレキセート(MTX)
・ファルモルビシン(EPI)
・ノバントロン(MIT)
・ナベルビン(VNL)
・フルツロン(5’DFUR)
・5-FU
・アルケラン(L-PAM)
※ Trastuzumab (ハーセプチン)は、2008 年 1 月 1 日登録症例から化学療法に含む。
併用療法
・エンドキサン + メトトレキサート + 5-FU (CMF 療法)
・エンドキサン + アドリアシン (AC 療法)
・ファルモルビシン + エンドキサン (EC 療法)
・エンドキサン + アドリアシン + 5-FU (CAF 療法)
・エンドキサン + ファルモルビシン + 5-FU (CEF 療法)
・アドリアシン + エンドキサン + タキソール (AC followed by PTX 療法)
(2)免疫療法 【750】
単剤
・スミフェロン(IFNα)
(3)内分泌療法 【760】
術後補助治療
抗エストロゲン薬:
アロマターゼ阻害薬:
LH-RH アゴニスト:
合成黄体ホルモン薬:
・タスオミン(TAM)
・アリミデックス(ANZ)
・ゾラデックス・デポ(ZOL)
・ヒスロン H(MPA)
・フェアストン(TOR)
・アロマシン(EXE)
・リュープリン
表11 乳癌に用いられる薬剤一覧
略名
英語表記(一般名)
日本語名
日本語名(一般名)
(商品名)
化学療法
CPA
cyclophosphamide
シクロフォスファミド
エンドキサン
化学療法
MTX
Methotrexate
メトトレキサート
メトトレキサート
化学療法
5-FU
fluorouracil
フルオロウラシル
5-FU
化学療法
DXR(ADR)
doxorubicin
ドキソルビシン
アドリアシン
化学療法
EPI
epirubicin
塩酸エピルビシン
ファルモルビシン
化学療法
CPA
cyclophosphamide
シクロフォスファミド
エンドキサン
化学療法
PTX
paclitaxel
パクリタキセル
タキソール
化学療法
ACD
Actinomycin D
アクチノマイシン D
コスメゲン
化学療法
CPT-11
Irinotecan
塩酸イリノテカン
トポテシン
化学療法
GEM
Gemcitabine
塩酸ゲムシタビン
ジェムザール
化学療法
ADM
doxorubicin
塩酸ドキソルビシン
アドリアシン
化学療法
MIT
Mitoxantrone
塩酸ミトキサントロン
ノバントロン
Capecitabine
カペシタビン
ゼローダ
化学療法
化学療法
VNL
Vinorelbine
酒石酸ビノレルビン
ナベルビン
化学療法
FT,TGF
Tegafur
テガフール
フトラフール
化学療法
UFT
Uracil/Tegafur
テガフール・ウラシル配合
ユーエフティ
化学療法
5'DFUR
Doxifluridine
ドキシフルリジン
フルツロン
化学療法
MMC
Mitomycin C
マイトマイシン C
マイトマイシン
化学療法
MTX
Methotrexate
メトトレキサート
メソトレキセート
化学療法
L-PAM
Melphalan
メルファラン
アルケラン
Trastuzumab
トラスツズマブ
ハーセプチン
化学療法
免疫療法
IFNα
Interferon α
インターフェロンアルファ
スミフェロン
内分泌療法
TAM
tamoxifen citrate
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス
内分泌療法
TOR
Toremifen
クエン酸トレミフェン
フェアストン
内分泌療法
ANZ
Anastrozole
アナストロゾール
アリミデックス
内分泌療法
EXE
Exemestane
エキセメスタン
アロマシン
内分泌療法
ZOL
Goserelin
酢酸ゴセレリン
ゾラデックス
Leuprorelin
酢酸リュープロレリン
リュープリン
Medroxyprogesteron
酢酸メドロキシプロゲステロン
プロベラ
内分泌療法
内分泌療法
MPA
8. 略語一覧
HER-2
ER
PgR
SLN
ABC
Human Epidermal Growth Factor Receptor 2
estrogen receptor
progesterone receptor
sentinel lymph node
aspiration breast cytology
ヒト上皮成長因子受容体 2
エストロゲン・レセプター
プロゲステロン・レセプター
センチネルリンパ節
乳腺穿刺吸引細胞診
9. 参考文献
1)
2)
3)
4)
5)
6)
公益財団法人がん研究振興財団 がんの統計‘15
UICCTNM 悪性腫瘍の分類 第 7 版 日本語版(金原出版)
日本乳癌学会編 臨床・病理乳癌取扱い規約 2012 年 6 月 第 17 版 (金原出版)
日本乳癌学会編 科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン 1 治療編 2011 年版 (金原出版)
日本乳癌学会編 科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン 2 疫学・診断編 2011 年版 (金原出版)
国立がんセンター中央病院内科レジデント編 がん診療レジデントマニュアル第 5 版 2004 年 (医学書院)
≪参考資料≫
1) TNM 分類 (UICC【第7版】、2009 年) 《乳房》
T-原発腫瘍
TX
T0
Tis
T1
T2
T3
T4
原発腫瘍の評価が不可能
原発腫瘍を認めない
非浸潤癌
Tis(DCIS) 非浸潤性乳管癌
Tis(LCIS) 非浸潤性小葉癌
Tis(Paget) 乳頭のパジェット病は、乳腺実質中に発生した浸潤癌および/または非浸潤癌(DCIS および/または LCIS)
とは直接関連はない。パジェット病と同時に診断された乳腺実質中の癌は、乳腺実質の病変の大きさ
と性状で分類するが、(併存状況として)パジェット病の記載もしておく方が良い。
最大径が 2cm 以下の腫瘍
T1mi 最大径が 0.1cm 以下の微小浸潤注1
T1a 最大径が 0.1cm をこえるが 0.5cm 以下
T1b 最大径が 0.5cm をこえるが 1.0cm 以下
T1c 最大径が 1.0cm をこえるが 2.0cm 以下
最大径が 2.0cm をこえるが 5.0cm 以下の腫瘍
最大径が 5.0cm をこえる腫瘍
腫瘍の大きさに関係なく、胸壁および/または皮膚注2への直接的な広がりを示す腫瘍
(潰瘍形成または皮膚結節)
T4a 胸壁への広がり(胸筋浸潤のみは含まない)
T4b 潰瘍形成、同側乳房の衛生皮膚結節、または皮膚の浮腫〔橙皮状皮膚(peau d’orange)を含む〕、
T4c 上記の T4a、T4b の両方
T4d 炎症性乳癌注3
注: pT 分類では、浸潤性要素を腫瘍の大きさとする。
非浸潤性要素が大きく、浸潤性要素が小さな場合(たとえば前者:4cm、後者:0.5cm)は pT1a に分類する。
注1: 微小浸潤とは基底膜をこえた周囲組織への癌細胞の広がりで、最大径が 0.1cm をこえない病巣をいう。
微小浸潤病巣が複数個存在する場合は最大のもの 1 個の大きさで微小浸潤に分類する(個々の病巣の大きさの合
計を用いてならない)。より大きな浸潤癌が多発している場合と同様、微小浸潤病巣が多発していることを記録す
る。
注 2: 真皮への浸潤だけでは T4 としない。
胸壁は肋骨、肋間筋、および前鋸筋を含めるが、胸筋は含めない
注 3: 炎症性乳癌は類丹毒の辺縁にみられるような皮膚のびまん性の固い硬結を特徴とし、通常、腫瘤を伴わない。
皮膚生検が陰性で計測可能な限局した原発腫瘍がない場合に、臨床的な炎症性乳癌(T4d)の病理学的 T 因子は
pTX※となる。えくぼ症状、乳頭陥凹 あるいは T4bやT4d の所見を除く他の皮膚変化は、T1、T2、T3の状態にお
いても生じるかもしれず、病期分類には影響を及ぼさない。
※ このルールは院内がん登録では用いず、cT4d をそのまま pT4d として登録する。
N-所属リンパ節
cN 分類と pN 分類が異なる点に注意する。
1.腋窩(同側):胸筋間リンパ節(ロッターリンパ節)および腋窩静脈とその支流に沿うリンパ節で、以下の Level に分類。
(ⅰ) LevelⅠ(下部腋窩):小胸筋の外縁より外側に存在するリンパ節。
(ⅱ) LevelⅡ(中部腋窩):小胸筋の内縁と外縁の間に存在するリンパ節および胸筋間リンパ節(ロッターリンパ節)
(ⅲ) LevelⅢ(最上部腋窩):最上部腋窩および小胸筋の内縁より内側に存在するリンパ節。鎖骨直下または鎖骨下リ
ンパ節は除く注1。
注: 乳房内リンパ節は腋窩リンパ節の Level I として分類する。
2.鎖骨下(鎖骨直下)(同側)
3.胸骨傍(同側):胸骨縁に沿う肋間腔内のリンパ節で、内胸筋膜に存在する。
4.鎖骨上(同側)
頸部または対側胸骨傍のリンパ節を含め、上記以外へのリンパ節転移は遠隔転移(M1)として分類される。
cN 分類
NX
N0
N1
N2
N2a
N2b
N3
N3a
N3b
N3c
所属リンパ節転移の評価が不可能(例えば、すでに摘出されている場合)
所属リンパ節転移なし
可動性の同側腋窩 Level I/II リンパ節転移
臨床的に固定または癒着した同側腋窩 Level I/II リンパ節転移、または腋窩リンパ節転移を認めない場合で
臨床的に検出された注2 同側胸骨傍リンパ節転移。
相互に、あるいは周囲組織と固定している腋窩リンパ節転移
臨床的に検出された注2 胸骨傍リンパ節転移のみで、臨床的に腋窩リンパ節転移を認めないもの
腋窩 Level I/II リンパ節転移の有無を問わない同側鎖骨下(腋窩 Level III)リンパ節転移、
臨床的に腋窩 Level I/II リンパ節転移を認める場合の臨床的に検出された注2 同側胸骨傍リンパ節転移、
または腋窩または胸骨傍リンパ節転移の有無を問わない同側鎖骨上リンパ節転移
鎖骨下リンパ節転移
胸骨傍および腋窩リンパ節転移
鎖骨上リンパ節転移
注1 : 腋窩リンパ節 LevelⅢは「鎖骨直下または鎖骨下リンパ節は除く」と記述されているが、院内がん登録では「腋窩
リンパ節 LevelⅢ」は「鎖骨下リンパ節」として N 分類を行う。
注2 : 「臨床的に検出された」とは、視触診、または画像診断(リンパ節シンチグラフィを除く)により検出されたものと
いう定義であり、悪性を強く疑う特徴をもつか、あるいは穿刺吸引細胞診で病理学的転移が推定される場合をいう。
検査の確実性を評価するため、切除生検を行わず穿刺吸引(FNB)によって転移と考えられた場合は(f)を付けて
cN3a(f)のように表記する。
pT の評価と同時に行われていないリンパ節生検やセンチネルリンパ節生検は、臨床分類として例えば cN1 の
ように分類する。病理学的分類(pN)は、病理学的な pT の評価とともにリンパ節の切除またはセンチネルリンパ
節生検が行われた場合に限って、分類される。
pN 分類
病理学的分類では少なくとも、下部腋窩リンパ節(Level I)(UICC TNM 分類第 7 版日本語版 172 ページ参照)の
切除と検索が必要である。このような切除では通常、6 個以上のリンパ節が含まれる。通常の検索個数をみたしてい
なくても、すべてが転移陰性の場合は pN0 に分類する。
pNX
pN0
pN1
所属リンパ節転移の評価不可能(すでに摘出済みまたは病理学検索用の摘出なし)
所属リンパ節転移なし注1
微小転移、あるいは 1~3 個の同側腋窩リンパ節転移、および/または臨床的に検出されない注2 が、
センチネルリンパ節生検により検出された同側胸骨傍リンパ節転移
pN1mi 微小転移(最大径が 0.2 ㎜をこえる、および/または細胞数 200 個をこえるが 2 ㎜以下のもの)
pN1a
1~3 個の腋窩リンパ節転移で最大径が 2 ㎜をこえるものを少なくとも 1 個含む
pN1b
臨床的に検出されないが注2、センチネルリンパ節生検により検出された顕微鏡的または
肉眼的転移のある胸骨傍リンパ節
pN1c
1~3 個の腋窩リンパ節転移および、臨床的に検出されないが注2、センチネルリンパ節生検により
検出された顕微鏡的転移または肉眼的転移のある胸骨傍リンパ節
pN2
4~9 個の同側腋窩リンパ節転移、または腋窩リンパ節転移を伴わない臨床的に検出された注2
同側胸骨傍リンパ節
pN2a
2 ㎜をこえるものを少なくとも 1 個含む 4~9 個の腋窩リンパ節転移
pN2b
腋窩リンパ節転移を伴わない臨床的に検出された注2 胸骨傍リンパ節転移
pN3
以下に示す転移
pN3a
10 個以上の同側腋窩リンパ節転移(少なくとも1個は 2 ㎜をこえる)、または鎖骨下リンパ節転移
pN3b
転移陽性の腋窩リンパ節転移が存在し臨床的に検出された注2 同側胸骨傍リンパ節転移、
または臨床的に検出されない注2 が、センチネルリンパ節生検により顕微鏡的または肉眼的に
検出された転移がみられる胸骨傍リンパ節転移を伴う 4 個以上の腋窩リンパ節転移
pN3c
同側鎖骨上リンパ節転移
注 1: 遊離腫瘍細胞(ITC)とは通常の HE 染色または免疫組織化学で検出できる単一の腫瘍細胞群、または小さな細
胞集塊群で、最大径 0.2 ㎜以下である。1つの組織学的最大割面に 200 個未満の細胞群を含むとする新たな基準も提
案されている。ITC のみを含むリンパ節は、N 分類の陽性リンパ節個数に含めず、評価リンパ節全個数には含めるべ
きである。序論(12 ページ)を参照。
注 2: 「臨床的に検出された」とは画像診断(リンパ節シンチグラフィを除く)または視触診により検出されたものという
定義であり、悪性を強く疑く特徴をもつもの、あるいは穿刺吸引細胞診で病理学的マクロ転移が推定されるものであ
る。
「臨床的に検出されない」とは画像診断(リンパ節シンチグラフィを除く)または視触診では検出できないものという定
義である。
M-遠隔転移
M0
M1
遠隔転移なし
遠隔転移あり
M1 および pM1 を以下の記号を用いて特定してもよい:
肺 PUL 骨髄 MAR
骨 OSS
胸膜 PLE
肝
脳 BRA
副腎 ADR
リンパ節 LYM
皮膚 SKI
HEP
腹膜 PER
その他 OTH
2)乳癌取扱い規約【第 17 版】 2012 年 6 月
【病期分類】
取扱い規約には、pTNM 分類は存在せず、病理学的腫瘍径やセンチネルリンパ節の微小転移などの表記に
わずかに用いられるのみである。また、N1mi も分類として存在しない。
T-原発巣注 1
大きさ
(cm)
TX
評価不可能
Tis
非浸潤癌あるいは Paget 病
T0
原発巣を認めず注3、4)
T1
注5)
皮膚の浮腫、潰瘍
胸壁固定
衛星皮膚結節
≦2.0
-
-
T2
2.0<, ≦5.0
-
-
T3
5.0<
-
-
+
-
大きさを問わず
-
+
+
+
a
b
T4
c
注6)
d
炎症性乳癌
注 1 : T の大きさは原発巣の最大浸潤径を想定しており、視触診、画像診断を用いて総合的に判定する。
乳管内成分のを多く含む癌で、触診径と画像による浸潤径の間に乖離が場合は、画像による浸潤径を優先する。
乳腺内に多発する腫瘍の場合はもっとも大きい T を用いて評価する。
注 2 : 胸壁とは、肋骨、肋間筋および前鋸筋を指し、胸筋は含まない。
注 3 : 視触診、画像診断にて原発巣を確認できない。
注 4 : 異常乳頭分泌例、マンモグラフィの石灰化例などは T0 とはせず判定を保留し、最終病理診断によって Tis、T1mi などに
確定分類する。
注 5 : a (≦0.5)、 b (0.5< ≦1.0)、 c (1.0< ≦2.0)に亜分類する。
ただし、組織学的浸潤径が 0.1cm 以下のものは T1mi として付記する。
注 6 : 炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず、皮膚のびまん性発赤、浮腫、硬結を示すものを指す。
腫瘤の増大・進展に伴う局所的な皮膚の発赤や浮腫を示す場合はこれに含めない。
N-所属リンパ節
注1
a. 腋窩リンパ節
レベル I、II、III に分ける。
レベル I : 小胸筋外縁より外側のリンパ節
レベル II : 小胸筋より背側および胸筋間(Rotter)のリンパ節
レベル III : 小胸筋内縁より内側のリンパ節
b. 胸骨傍リンパ節
c. 鎖骨上リンパ節
同側腋窩リンパ節
レベル I 、II
周囲組織への固定
あるいは
可動
リンパ節癒合
NX
注: 乳房内リンパ節は腋窩リンパ節に分類する。
同側
胸骨傍
リンパ節
同側腋窩
リンパ節
レベル III 注2
同側
鎖骨上
リンパ節
所属リンパ節転移の評価が不可能
N0
-
-
-
-
-
N1
+
-
-
-
-
+/-
+
-
-
-
N2
N3
a
b
-
-
+
-
-
a
+/-
+/-
+/-
+
-
+
-
-
+/-
+/-
+
b
c
+
+/-
+/-
注 1:リンパ節転移の診断は触診と画像診断などによる。
注 2:UICC TNM 分類【第 7 版】でいう鎖骨下リンパ節に相当する。
M-遠隔転移
MX 評価不可能
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
注: 転移を認めた臓器は UICC 分類に準じて 3 文字コードで別個きに記載する。
肺 (PUL)、 骨 (OSS)、 肝 (HEP)、 脳 (BRA)、 遠隔リンパ節 (LYM)、 骨髄 (MAR)、
胸膜 (PLE)、 腹膜 (PER)、 副腎 (ADR)、 皮膚 (SKI)、 その他 (OTH)
TNM 分類(病期)
腫瘤
T0
転移
N0
M0
T1
T2
T3
T4
I*
IIA
IIB
IIIB
N1
IIA
IIA
IIB
IIIA
IIIB
N2
IIIA
IIIA
IIIA
IIIA
IIIB
N3
IIIC
IIIC
IIIC
IIIC
IIIC
IV
IV
IV
IV
IV
M1
※病期0*
Tis 非浸潤癌
Ⅰ*:わが国では
早期乳癌と定義される
※取扱い規約において、P は筋肉への浸潤、S は皮膚への浸潤、W は胸郭への浸潤を示す(大文字の場合は、術後摘出標本の肉眼
的所見であり、小文字の場合は、病理組織学的浸潤を示す)。大文字の P, W, S は、術後の所見であるため、治療前の所見を用い
る臨床的 TNM 分類(cTNM)を行う際は、これらの情報は用いない。病理組織学的分類を行う際に用いる。
【診療記録で用いられる略語】
術式関連用語
略語
腫瘍摘出術
乳房部分切除術
乳房切除術
皮膚温存乳房切除術
乳頭温存乳房切除術
Tm
Bp
Bp
Tm
Ax
腋窩郭清
Ax
センチネルリンパ節(腋窩)
センチネルリンパ節(胸骨傍)
SN
SN(Ps)
センチネルリンパ節
術中転移陽性で腋窩郭清追加
SN→Ax
備考
Ax(Ⅰ)、Ax(Ⅱ)、Ax(Ⅲ)という表
記で、郭清レベルを表現
図3 乳腺のリンパ節