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クライアント・アラート
国際仲裁
2014年2月
JCAA規則の改正
2012年7月以降の見直し及び改正を経て、JCAA商事仲裁
規則の新規則が近頃発表された。JCAA規則は、2008年
以来の改正となり、2014年2月1日付けで有効となった。新
規則には、近年の国際的な進展と一致した複数の変更点
が含まれる。
効率性の改善
JCAA規則の様々な改正箇所は、仲裁をより迅速かつ効率的に行うことを目的としている。従
来存在した「基準日」(JCAAが仲裁申立ての通知を発信した日から3週間を経過する日として
定義されていた)は、被申立人による答弁書及び反対請求の期限を4週間と定める起点として
使用されていたが、当該条項は削除された。新規則において、被申立人は、仲裁申立ての通
知を受領した日から4週間を経過する日までに、答弁書及び反対請求を提出しなければなら
ない(18条1項及び19条1項)。また、相殺の抗弁についても、同様に4週間以内に提出しなけ
ればならない(20条)。
その他の改正点は、仲裁人及び当事者によるより迅速かつ費用効率の高い手続の実施を目
的としており、相手方の仲裁人又はすべての当事者が合意する場合、仲裁廷の長である仲裁
人は手続上の事項を決定することができる(7条3項)。また、仲裁廷は、可能な限り速やかに
当事者と協議の上、審理手続の予定表を書面により作成し、争点の整理に努めなければなら
ない(40条1項)。さらに、仲裁廷は、当事者の意見を聴いた後、主たる争点を記載した付託事
項書を作成することができると定められている(40条2項)。ホワイト&ケースとロンドン大学クイ
ーン・メアリー ・カレッジは共同して国際仲裁に関する調査を行っているが、今回新設された
条項は、仲裁手続を迅速化させるためには仲裁廷による争点の早期特定が最も有効と考えら
れているとの上記調査結果に合致する。1
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仲裁人の選任
新規則においては、JCAAが仲裁人の選任を確認する(25条3項)。また、当事者と異なる国籍
を有する単独仲裁人又は第三仲裁人を当事者が求めた場合、JCAAはかかる要求に応じな
ければならない(27条4項)。この点に関して改正前規則ではJCAAに一任されていたが、
JCAAは第三国籍を有する者を選任することでかかる要求を尊重しており、規則上の改正条
項は、これまでの慣行と一致している。
1 2012年国際仲裁調査:仲裁手続の実情と望ましい実務。実証的な調査結果は、世界各地の700名以上(法律事
務所で活動する弁護士、仲裁人、社内弁護士その他)の回答に基づく。
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クライアント・アラート
国際仲裁
複数当事者への請求、手続参加及び請求の併合
新規則において、当事者が3名以上及び仲裁人の数が3名の場合、
申立人(又は申立人側)及び被申立人(又は被申立人側)は、それ
ぞれ仲裁人1名を選任することとし、2名の当事者選任仲裁人は、3
人目の仲裁人を選任することと定めている(29条)。また、(1)当事者
全員及び第三者の書面による同意がある場合、又は(2)各申立てが
同一の仲裁合意に基づくものである場合、第三者は申立人として仲
裁に参加し又は当事者は第三者を被申立人として仲裁に参加させ
ることができる。但し、仲裁廷の成立後に被申立人として参加させら
れる場合、当該第三者の書面による合意が必要となる(52条)。仲裁
廷の成立前に第三者が参加する場合、仲裁廷は29条を含む規則に
基づき指定される。
また、(1)当事者全員の書面による合意がある場合、(2)すべての仲
裁申立てに係る請求が同一の仲裁合意に基づくものである場合(但
し、他の仲裁申立てに係る請求の当事者が係属中の申立てに係る
請求の当事者と異なる場合、当該他の仲裁申立てに係る請求の当
事者の書面による合意が必要となる)、又は(3)係属中の仲裁申立て
に係る請求と当該他の仲裁申立てに係る請求が同一の当事者間に
おけるものであり、同一もしくは同種の法律問題もしくは事実問題を
含み、かつ、仲裁合意の互換性が認められる場合(例えば、すべて
が仲裁機関としてJCAAを指定する)、仲裁廷は、係属中の仲裁申立
てに係る請求と仲裁廷の成立前の他の仲裁申立てとを併合すること
ができる(53条)。
調停
改正前規則においては、すべての当事者が合意した場合に仲裁人
が仲裁を和解により解決させることが可能であり、その際には事実上
仲裁人が調停人の役割を担っていた。英米法においては、仲裁人
が仲裁判断を決定する際に影響を受けないよう「偏見なく」調停手続
きを行うために意識的な努力をすることになっており、かかる状況に
なることは稀であった。新規則においては、原則として仲裁人は同一
の紛争において調停人としての役割を担ってはならないと定められ
ている(54条1項)。それにもかかわらず、改正前規則と同様に新規
則においても、当事者が合意した場合には、仲裁人が同一の紛争
において調停人を務めることが認められている(55条1項)。しかし、
仲裁人兼調停人は、当事者の書面による合意なしに当事者と個別
に相談してはならないと規定されている(55条2項)。この点について
は、さらに明確化されるべきであり、当事者による事前の同意がある
場合に限り「仲裁兼調停」の選択肢が与えられるべきである。
暫定的措置及び緊急仲裁人
新規則に基づき、仲裁廷は、仲裁判断の対象となる資産の保全、関
連証拠の保存及び適切な担保の提供等、特定の種類の保全措置を
命ずることができる(66条及び67条)。仲裁廷は、当該措置を求める
当事者が、仲裁判断では適切に回復できない損害を被る可能性が
あり、かつ、本案請求が認められる合理的な可能性が存在する場合
等の基準を用いて当該措置の判断を下さなければならない。
また、仲裁廷が設定されていない場合(又はその任務を中断した場
合)及び当事者が求める場合、JCAAは、緊急の保全措置を講じる
ため、単独の緊急仲裁人を選任することができる(70条、71条及び
72条)。JCAAは、要請から2営業日以内に緊急仲裁人を選任する
ために努力するものとし、緊急仲裁人はその選任から2週間以内に
要請された措置の判断を下さなければならない(71条4項及び72条
4項) 。これらの条項は、他の代表的な仲裁機関が定めるものと類似
している。
費用の配分
改正前規則においては、仲裁廷が別途定めない限り、仲裁費用(例
えば、手続費用、仲裁人費用及び弁護士費用)は当事者が平等に
負担するものと定められていた。新規則に基づき、仲裁廷は、手続の
経過、仲裁判断の内容その他の一切の事情を特に考慮して、当該
費用の負担割合を定めることができる(83条2項)。上記改正点も、前
述の弊所とクイーン・メアリー・カレッジとの国際仲裁調査における、
当事者の不正行為及び仲裁の結果を考慮した仲裁廷による費用配
分が好まれるとの結果に合致する。
結論
新規則は、JCAA仲裁の効率性と有効性の改善を重視しており、実
証研究及び他の代表的な機関に基づく仲裁手続の実情と望ましい
実務を反映した改正も含まれている。新規則によって、JCAAは国際
仲裁の主流と同水準となるとともに、日本独自の仲裁の特性も維持
されている。
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AP0214002_JPN_05