S 会 場 第 1 日 1S17-1S34

S 会 場
第 1 日
1S17-1S34
1S17
酸化あるいは還元作用を有する各種溶液の環境化学的応用
苅野
1
仁 ,本田
2
祐美 ,○田村
3
1
2
3
健治 ((有)イオン化学 ,環美健ライフ研 ,首都大産技高専品川 )
Environmental Chemistry Applications of Variously Solutions with Oxidation or Reduction Power
Hitoshi Karino,1 Yumi Honda,2 and Kenji Tamura3 (Ion-Kagaku, Lid.,1 Kanbiken Life Labo.,2 TMCIT3)
1.目的
環境負荷低減技術の開発に関する研究の一環として, 機能性を有する溶液等の研究を行ってきた. 特に,
活性種の存在寿命が長く, 酸化作用あるいは還元作用(すなわち抗酸化作用)を発現する溶液等についてそ
れぞれ開発し, 応用利用を検討した研究成果について報告する.
2.イオン半導体 1 による還元作用(抗酸化作用)の発現 2 と応用 3
イオン半導体 1 は, 人畜無害で消費電力をはじめとする環境負荷が著しく小さい環境適合型装置である.各
種溶媒あるいは雰囲気に対して本半導体を作用させることにより, 安全・簡便な方法で非常に強力な還元作
用すなわち抗酸化作用が発現されることを明らかとしてきた 2. 本半導体および関連技術由来の強力な抗酸
化作用は, ①各種二次電池用バッテリー活性強化剤, ②各種二次電池再生技術を基盤とするエネルギー貯蔵
システム, ③空調あるいは冷凍・冷蔵設備等熱交換機を指向した消費電力削減システム, ④食品揚げ加工工程
における食用油劣化防止システム, ⑤食品の鮮度保持・選択的熟成促進を実現する冷凍・解凍システム, ⑥自
動車の燃費向上と排気ガスの清澄効果をもたらす燃油あるいはエンジンオイル用添加剤等について開発し実
用化段階まで研究が推進されている 3. これらの効果は, 本半導体および関連技術により発現される存在寿命
が長い活性種に由来するものであり, その成果の概要と試験分析結果・フィールドデータについて報告する.
3.高精度流体制御法による製造装置 4 由来の安定化次亜塩素酸水 5 の調製と酸化作用の応用 6
電子機器制御技術と試行錯誤法により構築した独自の流体制御技術(高精度流体制御法:式 1)を駆使し
た製造装置 4 を開発し, 安定化次亜塩素酸水 5 の連続的な調製方法を確立した. 本法では, 塩素ガスの使用や
発生を伴わず, さらに塩酸を共存させることなく弱酸性領域において調製することが可能で, なおかつ有効
塩素濃度および水素イオン指数(pH)について, 可変設定値範囲内における任意の設定値に著しく高精度に
保持した状態で連続的に調製することを実現し, 従来法(式 2)による次亜塩素酸とその調製方法に伴う多く
の問題点を解消した。長期保存可能な本品の強力な酸化作用は, 人畜無害な低温殺菌, 消臭等の効果を発現し,
各種衛生管理や防疫対策等への応用利用を容易にしている 6. 成果の概要と試験分析結果について報告する.
H+ + Cl- + NaClO → HClO + Na+ + Cl(高精度流体制御法による調製)
1
安定化次亜塩素酸水の主成分:HClO + Na+ + Cl可変設定値:
①流量:450 L/hr < 流量 < 800 L/hr
②有効塩素濃度:10 ppm < 有効塩素濃度 < 200 ppm
③水素イオン指数:5.0 < pH < 6.8
Cl2 + H2O → H+ + Cl- + HClO
(従来法:塩素の水に対する溶解平衡)
2
参考文献等
(1) a) N. Yamanoi, H. Karino, Japan Kokai Tokkyo Koho, JP2002-069476, (2002). b) idem, Japan Tokkyo Koho,
JP3463660, (2003). (2) a) H. Karino, K. Tamura, 2nd Int. Symp. Org. Elec. Trans. Chem., PP-22, Yokohama, (2007).
b) idem, ISESS-SEST2007, P03, Shizuoka, (2007). (3) a) idem, 1st Asian Conf. Electrochem. Power Sour., 1P17,
Kyoto, (2006). b) K. Tamura, Research aid by “Kieikai Research Foundation 2012”. c) H. Karino, K. Tamura,
World Cong. Oleo Sci. 2012, P-123, Sasebo, (2012). d) K. Tamura, Research aid by “Nissui Research Fund 2006”.
e) idem, Int. Food Mach. Tech. Exh., 1, Ariake, (2011). f) idem, 7th Asian Conf. Electrochem. Power Sour., 2P-51,
Osaka, (2013). (4) a) H. Henmi, S. Henmi, Japan Kokai Tokkyo Koho, JP2002-273452, (2002). b) H. Henmi, S.
Henmi, A. Nagaoka, Japan Tokkyo Koho, JP3438880, (2003). (5) a) K. Tamura, 59th Ann. Meet. Jpn. Water Works
Ass., 4-53, Sendai, (2008). b) idem, Research aid by “Kieikai Research Foundation 2011”. (6) a) idem, SETAC Asia
Pacific 2012 Meet., 2P-11-3, Kumamoto, (2012). b) idem, Int. Food Mach. Tech. Exh., 44, Ariake, (2014).
1S18
電解沈降を用いた Mg-Al 系層状複水酸化物イオノマーの物性評価
○北口
雄也,山田
裕久,片倉
勝巳(奈良高専)
Study on Ion conductivity in Mg-Al Layered Double Hydroxides by electro-coprecipitation technique.
Yuya Kitaguchi, Hirohisa Yamada, and Katsumi Katakura (NIT, Nara College)
1.目的
層状複水酸化物(Layered double hydroxide , LDH)は触媒、イオン交換体、ドラッグデリバリー、吸着材、プ
ラスチック添加剤など多様な分野で研究されている陰イオン性粘土鉱物である。LDH は 2-3 価金属水酸化物
の正八面体基本層およびアニオンと層間水から構成される中間層が交互に積層した構造をもっており、その
層間にアニオン交換能を有するため、アルカリ型の燃料電池や空気電池用の電解質材料とイオノマーとして
期待されている 1)。
LDH の合成法として共沈法などがあげられるが 2)、本研究では電極に直接 LDH 薄膜を形成することができ
る電解沈降法に着目した。電解沈降法を用いた LDH の合成として現在までに、Mn-Al 系において LDH の合
成を確認している 3)。そこで本研究では、電解沈降法を用いて Mg-Al LDH を合成し、そのイオン伝導機構に
ついて検討を行った。
2.実験
Mg–Al LDH の合成には、共沈法と電解沈降法を用いた。共沈法では、0.075M Mg(NO3)2 + 0.025M Al(NO3)3
溶液を Ar 雰囲気下で撹拌しながら 2M NaOH 溶液を用いて pH = 10 に調整し、80oC で 18 時間水熱処理を行
った。電解沈降法では、作用極に 1.5×1.5 cm の白金板、対極として Pt 被覆チタン板を用いた。また、Ar 脱気
した 0.075M Mg(NO3)2 + 0.025M Al(NO3)3 + 2M NaNO3 水溶液を電解液として用いた。調整した電界液に浸漬
し、-16 mA cm-2 で定電流電解することで白金電極上に Mg-Al LDH を析出させた。作製した試料は XRD を用
いて同定し、その形態について SEM 観察した。また、LDH のイオン伝導度は、60oC、80%RH の条件下で電
気化学インピーダンス法を用いて測定した。
3.結果および考察
Fig. 1 に電解沈降法と共沈法で合成した試料の XRD パターンを示す。LDH 特有の倍角ピーク 11o (003)、22o
(006)がどちらの試料においてもみられており、それぞれの合成法において LDH が合成可能であることがわ
かった。一方、電解沈降法ではピークがブロードになっているため、アモルファスな LDH が形成している可
能性が示唆された。Fig. 2 に共沈法を用いて合成した試料と電解沈降法を用いて合成した試料の SEM 画像を
示す。ともにプレート状の粒子が確認できる。Fig. 3 に測定した伝導度を示す。両方の合成法において、同程
度の伝導性を示し、Al 比 x = 0.25 (Mg1-x - Alx LDH)の際に伝導度が高くなることがわかった。
coprecipitated LDH
electrochemical LDH
●
●
●
□
-2.5
(b)
(a)
-3.0
□
●
-1
log () / S cm
Intensity
●
electrochemically precipitation
□
□
□
□
□
□
□
coprecipitation
10
20
30
40
50
2 / deg (Cu k)
60
-4.0
-4.5
100nm
70
● Pt
□ LDH
Fig. 1 XRD patterns of
electro-coprecipited sample and
coprecipitated sample.
-3.5
1 m
-5.0
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
0.50
0.55
x : Al content
Fig. 2 SEM images on
(a) Coprecipitated sample.
(b) Electro-coprecipitated sample.
Fig. 3 Ion conductivity on
coprecipitated LDH and
electro-coprecipitated LDH at
60oC under 80%RH.
参考文献
1) Yoshihiro Furukawa, Kiyoharu Tadanaga, Akitoshi Hayashi, and Masahiro Tatsumisago, Solid State Ionics
192(2011) 185-187.
2) Federica Prinetto, Giovanna Ghiotti, Patrick Graffin, Didier Tichit, Microporous and Mesoporous Materials 39
(2000)229-247.
3) Chihiro OBAYASHI, Mituru ISHIZAKA, Takayoshi KONISHI, Hirohisa YAMADA, and Katsumi KATAKURA,
electrochemistry, 80(11), 1-4(2012).
1S19
濃厚炭酸系における亜鉛の電気化学的挙動
○石田 智也,中田 薫徳 ,辻本 祥子,片倉 勝己(奈良高専)
Electrochemical behavior of Zn in concentrated of carbonate solutions
Tomoya ISHIDA, Shigenori NAKATA, Shoko TSUJIMOTO, and Katsumi KATAKURA (Nara Inst.)
m / mg 100cm-3
1.目的
安価で高エネルギー密度を有する亜鉛-空気二次電池は、次世代を担う水溶液系二次電池として期待されて
いるが、空気極からの CO2 混入や亜鉛極からのデンドライト形成の問題のため実用化が困難とされてきた。
デンドライト抑制を目的として、低亜鉛溶解性電解質の利用 1) やイオン交換膜による表面修飾 2) などの研究
報告がなされているが、いずれも実用化には至っていないのが実情である。我々は、濃厚な K2CO3 水溶液系
電解質を用いることでデンドライト生成が抑制できることを見いだすことに成功した 3)。本研究では、炭酸
カリウムを主体とする濃厚な水溶液電解質中における亜鉛の電気化学的酸化還元挙動を調べ、本系の二次電
池負極としての可能性について検討した。
2.実験
低濃度から高濃度の K2CO3 水溶液、高濃度 K2CO3 と KOH の混
1000
合水溶液の pH、電導度、亜鉛溶解度をそれぞれ、ガラス電極法、
KOH
KOH in 5M K CO
電導度計、ICP 発光分光法を用いて評価した。亜鉛の電気化学的
100
K CO
酸化還元挙動は、作用極に 0.05m アルミナ粒子で鏡面研磨した
10
Zn 板(0.8×10×10 mm)、対極に Zn 板(0.8×20×20 mm)、参照極に 1M
Hg/HgO を用いた 3 電極からなる開放系の電気化学セルを構築し
1
て調べた。分極特性の評価とともに電気化学インピーダンス法、
及び QCM 法による膜物性の評価を行い、酸化後の亜鉛表面を
0.1
0
1
2
3
4
5
6
XRD, SEM 等を用いて分析した。
Solute Concentrations / mol dm
3.結果および考察
Fig. 1 Solubility of ZnO in alkaline solutions at 25℃.
種々の濃度の KOH, K2CO3, KOH+5M K2CO3 混合水溶液中にお
ける亜鉛イオン溶解度は、いずれの溶液でも溶質濃度が高くなる
10
0.5M K CO
につれて増加したが、K2CO3 系は 5M KOH 中に比べて著しく小さ
5M K CO
く、5M K2CO3 溶液中で比較すると 1/500 以下であった(Fig.1)
。
5M K CO + 0.5M KOH
一方、各電解液中での亜鉛の CV(Fig.2)では、4M 以上の K2CO3
0
で急激に酸化還元電気量が増大し 5M K2CO3 で最大値を示したが
80
3)
40
、KOH を添加すると著しく抑制され、0.15M KOH 添加時に最低
-10
0
値を示した後、さらに濃度を増やすと増大に転じることがわかっ
-40
た。なお、観察された電流は、0.5M KOH+5M K2CO3 の場合 0.5M
-1.8
-1.2
-0.6
0.0
Potential / V vs. Hg/HgO
K2CO3 中と同程度であった。K2CO3 水溶液中および KOH を添加し
-20
-1.6
-1.2
-0.8
-0.4
0.0
た K2CO3 水溶液中における電流抑制は、亜鉛酸化時に表面に形成
Potential / V vs. Hg/HgO
する皮膜が原因と考えられ、5M K2CO3 水溶液中での電流増加は生
Fig.2 Cyclic voltammograms of Zn electrode
in 0.5M, 5M K2CO3 and 0.5M KOH + 5 M K2CO3
成した皮膜の物理的な剥離によるものと推定された。
at the scan rate of 20 mV s-1.
また、CV の酸化波と還元波の電気量より充電効率を求めたとこ
ろ、0.5M KOH+5M K2CO3 水溶液で 93 %を示し、0.5M K2CO3 中の
92%や 5M K2CO3 中の 39%に比べて高くなることがわかった。KOH と 5M K2CO3 混合水溶液系おける亜鉛の
特徴的な酸化還元挙動は、亜鉛表面に生成する酸化皮膜の諸物性と関係しているものと推定された。
4.参考文献
1) T. C. Adler, F. R. McLarnon, and E. J. Cairns,J. Electrochem. Soc. 289, 140(1993)
2) K.Miyazaki, Y.S.Lee, T.Fukutsuka, and T.Abe, Electrochemistry,725,80(2012)
3) 片倉ら、電気化学会第 80 回大会要旨集,40(2013)
2
2
3
3
-3
謝辞
3
3
2
3
Current / mA cm-2
Current / mA cm-2
2
2
本研究は、JST ASTEP(探索タイプ)、長岡技術科学大学技学イノベーション推進センター、中西金属奨
学会の支援を受けて実施されたものである。
1S20
RRDE 法を用いた Pt/C 触媒上の酸素還元反応ならびに過酸化水素還元反応の解析
1
1
1
2
1
3
1
2
3
○川上望美 ,山田裕久, 小林貴宣, 城間純, 片倉勝己, 稲葉稔 (奈良高専 ,産総研 ,同志社大 )
Stuties on Oxygen and Hydrogen Peroxide Reduction Reaction on Pt/C catalysts by RRDE technique
Nozomi Kawakami,1 Hirohisa Yamada,1 Takanori Kobayashi 2 ,Zyun Siroma3,Katsumi Katakura1,and Minoru Inaba2
(NIT, Nara College1, AIST2, Doshisha Univ.3)
1.目的
固体高分子型燃料電池(PEFCs)では燃料を水素とした場合、水のみが生成することが一つの特徴である。し
かしながら、空気極で起こる酸素還元反応(ORR)では最終生成物としての水に加えて、中間体の過酸化水素
が生成することが報告されている1,2) 。また、PEFCの実用化に際してカソード触媒の更なる高活性化と高耐
久化が必要とされている。過酸化水素は強酸化性であるため、触媒の自蝕を加速させる可能性があることに
加え、過酸化水素は2電子反応であるため、ORRの活性低下の要因となりえる。そこで、本研究では回転リン
グディスク電極法(RRDE)を用い、Pt/C触媒の担持密度を変化させたときの酸素還元電流および過酸化水素の
還元電流を評価し、過酸化水素の生成機構について考察した。
2.実験
Pt/C を担持した GC 電極の酸素還元挙動は RRDE 法を用いて解析した 1)。直径 6mm の GC ディスク電極に、
キャスト法により超音波で分散させた Pt/C(TKK 社製, TEC10E-50E)触媒懸濁液を所定量塗布し、電極を作製
した。リング電極は白金であり、対極には Pt 線、参照極には可逆水素電極(RHE)を用いた。電解液には 0.1 M
HClO4 を用い、ORR 測定は酸素雰囲気、また過酸化水素還元反応は Ar 雰囲気下で各濃度の過酸化水素を添
加し、ディスク電極電位をそれぞれ 0.05~1.0 V、0.05~1.5 V の範囲で貴な電位方向に走査した。ORR 測定
では、同時にリング電極電位を過酸化水素の酸化が拡散限界に十分に達する 1.2V に保持し、ディスク電極上
で生成した過酸化水素をリング電極上で検出した。このとき、電極の回転数は 400-3000 rpm とした。
3.結果および考察
それぞれの Pt/C 担持密度でキャストした電極上での CV で得られた電流値を Pt 質量あたりに換算して Fig.
1 にまとめた。どの電極においても Pt に特徴的な CV が得られたことに加え、Pt 質量あたりの電流値は同程
度であり、ECSA もほぼ一定となったことから、各担持密度で正確に触媒が担持されていることがわかる。
Fig. 2 に RRDE 測定結果より得られた過酸化水素の生成率を示す。Pt/C の担持密度が低下するとともに過酸
化水素の生成率が増加することがわかる。Fig .3 に電解液に過酸化水素を加えた場合の LSV 測定結果を
示す。過酸化水素濃度の増大とともに還元電流も増していった。発表ではこれらの挙動が酸素還元
反応、ならびに過酸化水素の分解反応へ及ぼす影響について検討し、考察した結果を報告する。
80
0.00
60
-2
2.5
2
0.05
0.705 g cm
-2
0.94 g cm
-2
1.41 g cm
-2
2.82 g cm
-2
7.05 g cm
-2
14.1 g cm
ID/ mA
100
2
XH O
I / mA gPt
-1
0.10
-0.05
-2
14.1 g cm
-2
2.82 g cm
-2
1.41 g cm
-2
0.94 g cm
-2
0.705 g cm
-0.10
-0.15
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
E / V vs. RHE
Fig. 1 CVs on 46wt% Pt/C catalysts
dispersed at different catalyst loading on
GC in Ar saturated 0.1 M HClO4. Scan
rate : 50 mV s-1.
40
20
H2O2 1.09 mmol L
-1
H2O2 3.26 mmol L
-1
H2O2 5.44 mmol L
-1
ORR
0.0
-2.5
0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
E/V vs .RHE
Fig. 2 The ratio of H2O2 formation
upon ORR at 46wt% Pt/C loaded with
different amount on GC in O2 saterated
0.1 M HClO4. Rotating rate : 1600 rpm.
0.0
0.4
0.9
1.3
E / V vs. RHE
Fig.3 Hydrodynamic voltammograms
for ORR at 46wt% Pt/C 14.1μg cm-2
in Ar saturated 0.1 M HClO4 and H2O2.
Rotating rate : 1600rpm.
4.参考文献
1) M. Inaba, H. Yamada, J. Tokunaga and A. Tasaka, Electrochemical and Solid-State Letters, 7 (12),
A474-A476 (2004).
2) M. Inaba, H .Yamada, R. Umebayashi, M. Sugishita and A. Tasaka, Electrochemistry, 75
(2),207-212(2007).
1S21
亜鉛含有ハイドロキシアパタイトプラズマ溶射被覆材の機能性評価
1
1
1
1
○菅野陽平 ,武成祥 ,糸井康彦 (小山高専 )
Evaluation of the functionality for Zn doped HAp Plasma Spray Biocompatible Coatings
Yohei Sugano1, Seisho Take1, Yasuhiko Itoi1 (NIT, Oyama College1)
1.目的 ハイドロキシアパタイ[HAp:Ca10(PO4)6(OH)2]は人の骨や歯を構成する無機質の主成分であり、骨組織と直
接結合し生体軟組織と優れた親和性を示す。近年、骨形成を促進させる亜鉛を含有させた HAp 被覆材の作製
を行ってきた。本実験ではステンレス基亜鉛含有 HAp 被覆材を作製し、その耐久性(耐食性)、Hanks 生理食
塩水における亜鉛イオンの溶出状況(機能性)および下地金属との密着性を評価した。
2.実験 HAp 粉末に 5wt%ZnO を混合し、高温焼結(10h, 1150℃)を行った後、焼結体を粉砕し粒径が 75 ㎛以下にな
るように調整した。金属下地として浸漬実験にステンレス丸棒(SUS316L,Φ3×50 ㎜)、密着性の評価用のチタ
ン板(99.9%, 1.5×5×50 ㎜)を用いた。各試料をサンドブラストにより表面を粗化させ、プラズマ溶射で Ti の中
間層を施した後に上記の Zn-HAp 混合粉体を用いプラズマ溶射によりコーティングを作製した。グルコース
を加えない Hanks 生理食塩水に丸棒試料を浸漬させ一週間ごとに交流インピーダンス測定と浸漬液の採取を
行った。交流インピーダンス測定の条件として、対極は Pt 板、参照電極は飽和 Ag/AgCl 電極(SSE)、周波数
範囲は 10-2Hz~105Hz、電圧の振幅は 10mV であった。採取した浸漬液は ICP 発光分析法により測定し各種
イオンの濃度を調べた。Ti 基亜鉛含有プラズマ溶射 HAp 被覆材の密着性を PosiTest AT-A(密着性評価試験器)
により測定した 3.結果および考察 Fig.1 に示すように約 3 ヶ月浸漬している間インピーダンスに大きな変化はみられず高い値を示しているこ
とから、SUS316L 基亜鉛含有 HAp 被覆材の耐食性が良く長期的に安定していることが分かる。また、ICP
発光分析の結果(Fig.2)から、生理食塩水中の Zn2+イオン濃度は浸漬初期から一定となり、浸漬時間の経過に
伴う溶出の増加が見られなかった。これはコーティングの表層に含まれていた Zn が溶出し、その後の溶出
は殆どなかったことを意味する。浸漬後の EDS による元素分析の結果、Zn がコーティング層に均一に分布
していることが分かった。
今まで 3 点曲げ試験により亜鉛含有 HAp プラズマ溶射被覆材の密着性を評価したが、今回国際標準規格に
適している密着性評価試験器により密着性を評価した。Ti 基亜鉛含有プラズマ溶射被覆材に対して測定した
結果、平均 30MPa 以上の剥離強度も持っており非常に優れた密着性を有することが分かった。
0.15
sample1
2
Corrosion Resistance [Ωcm ]
106
105
sample2
Zn [ppm]
sample3
104
Sample2
Sample3
2
10
sample4
2+
Sample1
103
0.10
0.05
Sample4
101
0
5
10
15
Time [week]
Fig.1. Changes in corrosion resistance for
Zn doped HAp plasma spray coatings on
SUS316L in Hanks’ solution at 37℃.
0.00
0
5
10
15
Time [week]
Fig.2. Changes in Zn2+ ion concentration in
Hanks solution by ICP analysis for Zn doped
HAp plasma spray coatings on SUS316L.
1S22
Fe3O4 担持マクロポーラス TiO2 を用いた水環境中の鉛イオン光電析除去とその回収
○野崎拓弥 1,金崎稜 1,小林靖和 1,佐藤一則 2(東 京 工 業 高 等 専 門 学 校 1 , 長 岡 技 術 科 学 大 学 2)
The removal of lead ions from water by Fe3O4-added macroporous TiO2 photocatalyst
Takuya Nozaki1, Ryo kanasaki1, Yasukazu Kobayashi1 and Kazunori Sato2 (Tokyo National College of Technology1,
Nagaoka University of Technology2)
1.緒言
工場排水や埋立地からの浸出水に含まれる鉛は水環境を汚染するため、水中から鉛イオンを高濃度で除去
する必要がある。加えて、除去された鉛の再利用を考えた場合、効率的かつ選択的に鉛を回収することが望
ましい。本研究では、磁性を有する TiO2 光触媒を用いた光電析法により水中の鉛イオンを高効率で除去・回
収することを試みた。
触媒活性の向上を目的として、
高表面積を有するマクロポーラス TiO2 の調製を行った。
触媒の磁性化には、調製したメソポーラス TiO2 にマグネタイトである Fe3O4 を逐次含浸することで実現した。
2.実験
マクロポーラス TiO2 は PMMA を鋳型に用いるテンプレート法により合
成した[1]。粒径の異なる PMMA (0.15 - 1.5 μm)を用いて、細孔径と比表面
積が異なる四種類のマクロポーラス TiO2 を合成した。焼成は 500℃で 5
時間行った。磁性を有する Fe3O4/TiO2 触媒は Fe 前駆体を逐次含浸により
TiO2 表面に担持した後、アンモニア水と熱処理により調製した。
活性試験はバッチ式反応器で行った。500 ppm の鉛イオン溶存水溶液 2
mL に調製した触媒 0.01 g を加え、攪拌しながら6時間紫外線光照射(6
W×2)した。紫外線光照射後、遠心分離によりろ液を回収し、ICP 測定に
より残存する鉛イオン濃度を測定した。活性試験後の TiO2 は酢酸・水処
理を施され、TiO2 表面に析出した PbO2 の除去を行った。
Fig.1 0.8 μm PMMA を用いて合成し
たマクロポーラス TiO2 の SEM 像
鉛イオン除去量[g-Pb/g-cat]
BET比表面積[m2/g]
3.結果および考察
Fig.1 に示す SEM 観察と XRD 測定の結果より、比較的均一な細孔を有するアナターゼ型 TiO2 多孔体が合
成された。粒径の異なる PMMA を用いて調製したマクロポーラス TiO2 の BET 比表面積および活性試験の結
果を Fig.2 に示す。粒径が小さい PMMA を用いて合成した触媒ほど大きな BET 比表面積と多い鉛イオン除去
量を与えた。最も高い活性を示した粒径 0.15 μm の PMMA を用いて調製したマクロポーラス TiO2 は P25
(JRC-TIO-4 (2), 触媒学会参照触媒部会提供)の約2倍の鉛イオン除去量を示した。
0.03
70
XRD と XPS 測定の結果より、本研究で合成した Fe3O4/TiO2
触媒表面にはマグネタイトである Fe3O4 が存在していること
鉛イオン除去量
60
0.025
が示唆された。水中に同試料を分散させた懸濁液を含むビー
BET比表面積
50
カーに磁石を近づけると、20分ほどで磁石周辺に粉体試料
0.02
が集まり、液は透明になった。このことから本研究で調製し
40
0.015
た触媒を用いることで、活性試験後 PbO2 が析出した触媒を迅
30
速に回収できると考えられる。
0.01
20
触媒表面に析出した PbO2 の回収を目的に、活性試験後の
Fe3O4/TiO2 触媒の酢酸・水処理を行った。処理前後の触媒の
0.005
10
P25 鉛イオン除去量
XPS 測定から、PbO2 に帰属されるピークの大幅な減少が見ら
0
0
れた。また、Fe3O4 に帰属されるピークに変化は見られなかっ
0
0.5
1
1.5
2
た。このことから、酢酸・水処理によって触媒表面に析出し
調製に用いたPMMA粒径[μm]
た PbO2 のみを選択的に再イオン化することが可能であるこ
Fig.2 マクロポーラス TiO2 の比表面積と鉛イオ
とが示唆された。
ン除去量の関係
4.参考文献
[1] 岩本正和 他、触媒調製ハンドブック、株式会社 NTS (2011) P310-311.
謝辞
本研究は「高専-長岡技科大共同研究助成」の支援を受けて実施した。関係者各位に感謝申し上げます。
1S23
フミン酸の銅イオン結合に対する温度依存性の検討
◯岩瀬 鉄也,倉澤 裕己,庄司 良(東京高専)
Analysis of the temperature dependence of copper ion adsorption onto humic acid
Tetsuya Iwase, hiroki Kurasawa, and Ryo Syoji (TNCT)
lnK [-]
1.目的
生物の死骸などが分解され生成するフミン酸は土壌や河川に含まれ、溶存有機物の 7~9 割を占める 1。フ
ミン酸は重金属と錯形成するため、土壌や河川における生物に対する重金属の毒性を変化させる 2、3。フミン
酸の重金属結合性は pH、イオン強度など生成後の環境によっても大きく変化することが知られている。また、
土壌への重金属吸着量は、吸着温度によって変化することが知られていることから、土壌中における主な重
金属吸着物質であるフミン酸への重金属の結合性も温度によって変化すると考えられる。日本においては季
節や地域によって約 30℃程度の水温差があり、このような温度変化によってフミン酸の重金属結合性が変化
する場合、生物に対する毒性を過小または過大に評価してしまう可能性がある。
よって本研究では河川・土壌由来の 2 種類のフミン酸を用いて温度を変化させた銅イオン滴定を行い、フ
ミン酸に対する銅イオン結合の温度依存性を明らかにすることを目的とした.
2.実験
多 摩 川 底 質 ( 緯 度 :35.639497, 経 度 :139.296856) 及 び 八 王 子 市 の 畑 土 壌 ( 緯 度 : 35.67303, 経 度 :
139.29806) から採取した土壌から、国際腐植学会の IHSS (International Humic Substances Society) 法 4
に準拠してフミン酸を抽出した。得られたフミン酸を供試試料 (PTHA, PFAHA) とした。
フミン酸濃度が 1000 mg/L かつ 1.0 mol/LNaCl 水溶液を用いてイオン強度が 0.005 mol/L になるように調
製したものを試験液とした。作製した試験液を 0.1 mol/L HCl を用いて pH3.5 にし、30 分間窒素バブリング
した後、pH5, 7, 9 になるように 0.1 mol/L NaOH 水溶液を用いて調整した。ここに 0.01 mol/L 硝酸銅水溶
液を滴下し、低下した pH を元の pH に戻すために 0.1 mol/L NaOH 水溶液を少量滴下した。この操作を銅イオ
ン活量が十分上昇するまで繰り返した、各滴下量における温度、pH および銅イオン活量を記録した。上記の
方法でそれぞれ水溶液温度を 20、25、30℃にウォーターバスで変化させて銅イオン滴定を行った。
3.結果および考察
銅イオン滴定結果に対して NICA-Donnan Model を適用し、
Cu2+-carboxyl group
14
特に温度による変化が大きく吸着量の算出に大きく影響を与
Cu2+-phenolic group
えると考えられる安定度定数の温度依存性を検討した。本研
CuOH+-carboxyl group
12
究においては、銅イオンの結合種として 2 価の銅フリーイオ
CuOH+-phenolic group
2+
+
ン(Cu )と 1 価の水酸化銅イオン(CuOH )の 2 種類を考慮して
10
それぞれのカルボキシル基、フェノール基に対する安定度定
8
数を算出した。
Fig.1 より土壌由来フミン酸である PFAHA の安定度定数と
6
温度の逆数の間には van’t Hoff 式に従うような直線的な関
係が見られた。特にフェノール基に関する安定度定数で温度
4
による変化が大きく、温度依存性が高いことが確認された。
+
2+
これは、結合種である CuOH と競合する Cu の濃度が温度の上
2
昇にともなって減少したことにより、CuOH+がフミン酸に対し
てより結合しやすくなったため、温度の上昇にともなってフ
0
3.28 3.30 3.32 3.34 3.36 3.38 3.40 3.42
ェノール基に対する CuOH+の安定度定数が増加したためと考
1000/T [1/K]
えられる。
(1) 石渡ら,日本腐食物質学会 巻 2-7, (2007)
(2) R.Shoji, Aquatic Toxicol, 87, 210-214,(2008).
(3) 庄司ら, J, Japan Soc, Wat, Environ , 36, 1-9 (2013).
(4) R.S.Swift, Soil Sci, Soc, America: Madison, WI, 1018-1020,(1996).
Fig.1 Van’t Hoff plot of the stability
constants of humic acid(PFAHA) for Cu2+
and CuOH+
1S24
酸化マンガンナノシート/ナノカーボン複合体の合成と空気極触媒としての性能評価
1
1
1
1
2
3
○髙坂晋平 ,塚田千晶 ,鈴木啓志 ,齋藤守弘 ,城石英伸 ,田中優実 ,関 志朗
1
2
3
4
(東京農工大工 ,東京高専 ,東京理科大 ,電中研 )
4
Synthesis and Electrochemical Evaluation of MnO2 Nanosheet/Nano-Carbon Composites as Air-Electrode Catalyst
Shinpei Kosaka1, Chiaki Tsukada1, Hiroshi Suzuki1, Morihiro Saito1, Hidenobu Shiroishi2, Yumi Tanaka3, Shiro Seki4
(Tokyo Univ. of Agri. and Tech.1, Tokyo National College of Tech.2, Tokyo Univ. of Sci.3, CRIEPI4)
1.緒言
近年、ポストリチウムイオン電池として更なる高エネルギー密度化が可能とされる Li 空気二次電池(LAB)
への関心が高まっている。しかしながら、現状の LAB では空気極の充放電反応における過電圧が大きくエネ
ルギー効率が低いため、酸素還元反応(ORR)と酸素発生反応(OER)の双方に対し高活性を示す空気極触媒が切
望されている。また、LAB では充電時に 4 V vs. Li/Li+を超える貴な電位に晒されるため、同時に高い酸化腐
食耐性を持つことも求められる。一方、種々のマンガン酸化物は、資源量が豊富である上にアルカリ水溶液
中で高い ORR 活性を示すことが知られている[1]。また、電極触媒としては比表面積が大きく電子伝導性が
高いことが重要である。本研究では、これらの条件を満たすべく、マンガン酸化物として高比表面積を有す
る酸化マンガンナノシート(MnNS)を採用し、これと種々のナノカーボン材料を複合化した新規空気極触媒の
作製と、その電気化学特性について検討した。
2.実験
MnNS は室温一段階溶液法[2]により合成し、このコロイド溶液にカーボンナノチューブ(CNT, 20-30 nm)ま
たはケッチェンブラック(KB, EC600JD)を混合した後、LiCl 添加することで MnNS を再積層させ、MnNS/ナノ
カーボン複合体を得た。また、MnNS の結晶化度やナノカーボン材料との接合性の向上のため、空気中で 400oC
熱処理した試料の合成も行った。得られた試料のキャラクタリゼーションは、X 線回折(XRD)分析により結
晶構造の同定を、透過電子顕微鏡(TEM)にて表面形状の観察を行った。また、回転リングディスク電極装置
を用いたサイクリックボルタンメトリー(CV)および対流ボルタンメトリー(HV)測定により、0.1 M KOH 水溶
液中における ORR および OER 活性を評価した。
3.結果および考察
Fig. 1 に、400oC にて熱処理した各複合体試料の TEM 像を
示す。図より、いずれの複合体においても MnNS と CNT ある
いは KB が均一に分散し複合化されていることが確認される。
これらの触媒試料に対して 0.1 M KOH 水溶液中における ORR
活性を評価したところ(Fig. 2(a))、特に MnNS/KB 複合体にお
いて MnNS 単体や MnNS/CNT よりも高活性を示すことがわか
った。これは CNT および KB の各ナノカーボン単体の触媒活
性と比較して KB の方が高活性であることにも由来するが、 Fig. 1. TEM images of the MnNS/nano-carbon
composites heat-treated at 400oC in Air.
ORR 電流の大幅な増加から、MnNS と KB を複
合化するとより微細な KB 粒子が MnNS のシー
ト間により均一に分散し、MnNS の触媒活性を向
上するものと推測される。しかしながら、OER
活性の評価(Fig. 2(b))では、同様により高活性で
あるものの MnNS/KB 複合体や KB では 1 V vs.
RHE 付近より大きな KB の酸化電流が確認され、
酸化腐食耐性としては MnNS/CNT の方が有利で
あることが示唆された。すなわち、比表面積の大
きな KB では触媒活性に対し、黒鉛化度の高い
CNT では酸化腐食耐性に対し、より優れている Fig. 2. HV curves of (a) ORR and (b) OER for the MnNS/nano-carbon
ことが明らかになった。当日は、熱処理が触媒活 composites heat-treated at 400oC in Air, MnNS, KB and CNT in O2
saturated 0.1 KOH at 50oC.
性に及ぼす影響の詳細についても報告する。
謝辞:本研究は、JST テニュアトラック事業および科研費若手研究(B)(25870899)の助成を受けて行われた。また、アニオ
ン樹脂バインダーをご提供いただきました(株)トクヤマに感謝の意を表します。
[1] N. Ohno et.al. , J. Springer, 52, 903 (2009). [2] K. Kai et.al. , J. AM. CHEM. SOC., 130, 15938 (2008).
1S25
大気圧パルス放電プラズマを用いた単層カーボンナノチューブの表面修飾
○田中 泰彦,川口 佑磨,猪原 武士,大島 多美子(佐世保高専)
Surface Modification of Single Walled Carbon Nanotube by Atmospheric Pulsed Discharge Plasma
Yasuhiko Tanaka, Yuma. Kawaguchi, Takeshi. Ihara, Tamiko Ohshima (Natl. Inst. of Technol., Sasebo Col.)
1.目的
単層カーボンナノチューブ(CNT)は,炭素原子の六角網面で構成される平面を円筒状に丸めた構造体で
ある。無極性の炭素原子のみから構成されているため,CNT 表面は疎水的でかつ化学的に不活性である。CNT
壁面同士のファンデルワールス力による結合で束状構造(バンドル)を形成している。CNT のバンドルは物
性評価する上でのボトルネックとなる。一般に,CNT 同士のバンドルをほどき分散状態にするは,溶媒中で
の超音波照射によりバンドルを解くと同時に,界面活性剤ミセルで埋包する,高分子鎖で包み込む,芳香族
系化合物を表面へ吸着させるなどの手法により CNT を溶媒中に分散させる。しかし超音波照射により,CNT
の表面破壊により CNT そのものの性能を損ねてしまう。
本研究では,ナノ秒パルス電圧による大気圧プラズマを照射することによって CNT の低欠損型の表面修飾
を目指す。本発表ではナノ秒パルス電圧による大気圧プラズマの CNT への照射実験を行い,官能基およびプ
ラズマ中のラジカル種の評価を行った結果を報告する。
2.実験
反応容器に,粉末状の CNT を置き,その上部 3 mm
の位置に針電極を,容器の外に接地電極をそれぞれ設
置した。プラズマを生成する電源には,自作した全固
体素子で構成されたパルス電源を用いた。最高出力電
圧 8.8 kV,パルス幅(FWHM)100 ns,最高繰り返し
数 100 pps である。
CNT の評価には,X 線光電子分光器(XPS)
,発光
分光器をそれぞれ用いて CNT 試料表面の電子状態や
プラズマ中のラジカル種の同定を行った。
3.結果および考察
XPS による CNT に生成された官能基の評価を行っ
た。CNT へのプラズマ照射時間を変化させた場合の
XPS による測定した。1 分と 15 分の典型的な結果を図
1に示す。図中の 284.5,286,および 290 eV のピーク
はそれぞれグラフェンに観測される C-C 結合,C-O 結
合,C=O 結合である[1]。照射なしの状態と比べ,照射
後には各ピークが検出され,CNT に官能基が生成され
たことが確認された。
発光分光法によるプラズマ中のラジカル観測を行っ
た。CNT へのプラズマ照射の有無による発光分光の結
果を図 2 に示す。図よりプラズマ中に He,C2,O ラジ
カルが生成されていることが確認された。C2 スペクト
ルは CNT から C 原子が離脱することが示唆された。
本実験によって CNT に大気圧パルス放電プラズマを照
射することで,CNT への官能基の生成が確認された。
図 1. プラズマ照射前後の CNT の XPS ス
ペクトル
図 2. CNT の発光分光スペクトル
参考文献
[1] V. Datsyuk, M. Kalyva, K. Papagelis, J. Parthenios, D. Tasis, A. Siokou, I. Kallitsis, C. Galiotis Carbon 2008, 46,
833-840.
1S26
MnO2 担時メソポーラス TiO2 による水中に存在する微量鉛イオンの選択的光電析除去
○金崎稜 1,野崎拓弥 1,小林靖和 1,佐藤一則 2 (東 京 工 業 高 等 専 門 学 校 1 , 長 岡 技 術 科 学 大 学 2)
Selective removal of lead ions from water by MnO2-added mesoporous TiO2 photocatalyst
Ryo Kanasaki1, Takuya Nozaki1, Yasukazu Kobayashi1 and Kazunori Sato2 (Tokyo National College of Technology 1,
Nagaoka University of Technology2)
1.緒言
工場廃水には多種の重金属が含まれている。廃水処理段階から各重金属を選択的に除去・回収することで
水環境汚染を防止すると共に、回収した重金属の再利用がしやすくなる。本研究では光触媒作用により水中
の鉛イオンを触媒表面上に酸化物として析出させる光電析による鉛イオンの効率かつ選択的除去を試みた。
光触媒には紫外線光照射により高い触媒活性を示すと報告されている酸化チタンを用いる。一般的な光触媒
では、表面積が大きいほど触媒活性が良いとされるため、表面積を高める目的でメソポーラス構造を持つ酸
化チタンを合成した。また、鉛イオンに対する吸着能が高いと報告されている MnO2 に注目し[1]、TiO2 表面へ
の添加を検討することで、鉛イオン吸着能向上を図った。
2.実験
メソポーラス TiO2 (m-TiO2)は界面活性剤 P123 を鋳型に用いるテンプレート法により合成した[2]。MnO2 を
添加した触媒(MnO2/m-TiO2)は 400℃焼成した m-TiO2 に Mn 前駆体を逐次含浸することで調製した。
活性試験は回分式反応器で行った。合成した MnO2/m-TiO2 0.01 g と 500 ppm 鉛イオン溶存水溶液 2 mL の懸
濁液を攪拌しながら、UV 照射(6 W×2)を 6 時間行った。5 成分共存系(Pb2+, Cu2+, Zn2+, Co2+, Ni2+)の実験で
は、各イオンを 100 ppm ずつ含む水溶液を用いた。UV 照射後の懸濁液は遠心分離(15000 rpm, 10 時間)により
触媒とろ液に分離され、ろ液中の残存鉛イオン濃度を
ICP 発光分光分析法によって測定した。
3.結果および考察
MnO2 添加量を変えて合成した MnO2/m-TiO2 を用い
て行った活性試験の結果を Fig. 1 に示す。MnO2 添加
量が増加するにしたがって鉛イオン除去量は増加し、
20 wt%で最大となった。20 wt%以上の MnO2 を添加し
た触媒は、光照射なしでは鉛除去量は変化せずほぼ一
定値を示したが、光照射ありでは MnO2 添加量の増加
に従って鉛除去量は減少する傾向がみられた。これら
のことから、20 wt%以上の MnO2 を添加した触媒では
過剰の MnO2 が光触媒活性点を被覆してしまい、光照
射時の活性が減少したと考えられる。
20wt%MnO2/m-TiO2 と MnO2 無添加の m-TiO2 を用い
て行った5成分共存系実験の結果を Fig. 2 に示す。
m-TiO2 を用いることで、水溶液中に存在する Pb2+は高
選択的に除去された。
20 wt% MnO2 / TiO2 を用いると、
溶液中に存在する鉛イオンの 97 %が除去されたが、同
時に Cu2+も除去される結果が得られた。後者について
は、MnO2 に対する吸着能が鉛に次いで銅も大きいこ
とが原因であると考えられる[1]。
4.参考文献
[1] RM McKenzie, The Adsorption of Lead and Other Heavy Metals on Oxides of Manganese and Iron, Aust. J. Soil
Res., 18(1) (1980) 61-73.
[2] 岩本正和 他, 触媒調製ハンドブック, 株式会社 NTS (2011) p.298-299.
謝辞 本研究は「高専-長岡技科大共同研究助成」の支援を受けて実施した。関係者各位に感謝申し上げます。
1S27
和歌山県の特産品を活用した創造化学教育
○綱島克彦,奥野祥治
(和歌山工業高等専門学校物質工学科)
Creative Chemical Education Using Special Products in Wakayama
Katsuhiko Tsunashima, Yoshiharu Okuno
(Department of Materials Science, National Institute of Technology Wakayama College)
1.目的
創造教育とは,人間の自発性や創造性を教育の原動力とする教育思想および教育システムである.化学分
野においても創造教育は重要な要素となっており,特に化学実験科目において学生の自由な発想に基づく自
由実験研究の実施は,創造力を涵養する教育的観点から極めて効果的である.
一方,和歌山工業高等専門学校では,和歌山県の地域環境および地域社会との共生に関する理解および倫
理観を身につけ,公共の安全や利益に配慮したものづくりの考え方を理解できることを主眼として,エンジ
ニア育成のための工学教育プログラムを実施している.また,当校物質工学科では,エンジニア育成のため
の基礎教育と実践教育を主眼として,和歌山県の特産品を活用した創造化学実験プログラムを推進してきた.
本講演では,その一環として実施されている学生実験の自由研究活動として実績のある最近のいくつかの教
育事例を報告する.
2.方法
和歌山工業高等専門学校物質工学科で実施している学生実験科目の中から,第3学年・物質基礎実験にお
けるグループワークを検討対象とした.和歌山県の特産品を用いた独創的な研究展開を考案させ,夏季自由
研究課題として推進した.教育的効果を検証するために,第3学年の学生を対象に適宜アンケートを実施し
た.
3.結果および考察
まず,色素増感型太陽電池を研究課題とする学生グループは,和歌
山県産の備長炭が高い電気伝導性を有することに注目し,これを色素
増感型太陽電池の電極に用いることを考案した.当初は,酸化チタン
光アノードの作製過程において,酸化チタンペーストに粉砕した備長
炭を混合して用いたところ,電流電圧特性を向上させることはできな
かった.そこで,ITO 電極上に導電性高分子であるポリアニリンを電
解重合させる過程において,電解液に備長炭粉末を懸濁させることに
より,ポリアニリン/備長炭複合電極材を得ることに成功した.これ
を色素増感太陽電池の対極に用いたところ,電流電圧特性の向上が観
測された.
Fig. 1 色素増感型太陽電池の電流電圧
さらに,別の学生グループは,和歌山県産の南高梅を原料とする梅
特性を解析中の学生グループ.
干しの製造工程で大量に排出される梅調味廃液(梅酢)の有効利用を
構想した.梅調味廃液中の主要成分として,クエン酸やリンゴ酸等の
多価カルボン酸が挙げられる.そこで,梅調味廃液に金属イオンを含有させて多価カルボン酸アニオンと錯
形成させ,これを利用して金属回収に用いることを考案した.特に,希土類金属であるネオジムやサマリウ
ムイオンを梅調味廃液に加えたところ,当該金属のクエン酸錯体が沈降し,分離回収できることを見出した.
さらに,希土類金属イオンと鉄族金属イオンとの混合系から選択的に希土類金属を分離回収できる可能性も
示唆された.1
以上の学生自由研究課題はいずれも高校化学グランドコンテストにて表彰され,当該学生グループの独創
性が評価された.
(1) 綱島,宮崎,前川,J. Technology and Education, 20, 1 (2013).
1S28
非水溶媒中の Pt 電極に対する希薄塩素の影響
○中川省吾,西村基,小寺史浩(旭川工業高等専門学校)
Effect of diluted chlorine for platinum electrode in non-aqueous solvent
Shogo Nakagawa, Hajime Nishimura, and Fumihiro Kodera (National Institute of Technology, Asahikawa College)
1.目的
近年,H2-Cl2 PEFC に関する報告が度々なされている 1,2).この理由のひとつとして,H2-O2 PEFC の O2
還元の高い過電圧,すなわち O2 還元の反応速度が遅いことが挙げられる.確かに Cl2 はその問題を解決する
が,一方で Cl2 の毒性や副成する HCl といった重い課題が残されたままである.そこで,我々は,Cl2 の代
替として固形化塩素に着目した.固形化塩素は Cl2 の固定材として開発された経緯があり,安全性が高く,
持ち運びや,長期保管も可能である.これまでの研究から,実際に固形化塩素の分解ガスを PEFC に用いる
と開回路電圧が向上することがわかっている.本研究では,固形化塩素から発生する希薄塩素の電極反応と
電極への影響について検討したので報告する.
2.実験
非水溶媒に固形化塩素を溶解,または固形化塩素の分解ガスを任意の時間通気し測定・解析した.H2O の
影響を考慮し,溶媒には Acetonitrile (AN),支持電解質には Tetrabutylammonium Tetrafluoroborate
(TBABF4) を選択した.電気化学計測には,HZ-5000 (HAG-1512m,北斗電工製) を用い,Pt micro-disk (φ
= 20μm) を作用極とする 3 電極式により実施した.電解における電極の影響を調べるため,作用極に Pt bar,
参照極に Ag/Ag+,対極に Pt-flag で構成した電解セルにて任意の電位で定電位電解を行った.電解液は,前
処理後,原子吸光光度計(偏光ゼーマン ZA-3000 日立ハイテク製)によるファーネス分析をおこない,溶解量
など電極の影響を解析した.
3.結果および考察
固形化塩素を AN 中に添加・溶解させ,Pt micro-disk を用いて測定した電流-電位曲線を Fig.1 に示す.
Fig.1 より,固形化塩素添加量に伴い還元電流が増大していることから,固形化塩素の溶解物質は電極活性を
有することが示された.Fig.2 に固形化塩素の分解ガスを AN 中に通気・溶解させた際の電流-電位曲線を示
す.Fig.2 より,通気時間による大きな差は確認されなかった.このことは,本実験条件において AN 中の固
形化塩素分解ガス溶存量が上限に達していることを示唆している.Fig.3 に固形化塩素を添加・溶解させた
AN に不活性ガスを通気させた際の電流-電位曲線を示す.Fig.3 より,不活性ガスを通気させると固形化塩
素由来の還元電流が容易に減少したことから,固形化塩素を溶解させた際の溶存物質は,分子状の形態を有
していると推測された.さらに,固形化塩素の分解ガスが電極材にどのような影響を及ぼしているのかを調
査するために,電解法および原子吸光分析による検討を進めた.
Fig.1 i - E curves of AN samples
containing solid chlorine at Pt
micro-disk.
Fig.2 i - E cutves of AN samples
containing cracked gas from
solid chlorine at Pt micro-disk.
Fig.3 Effect of Ar aeration to
dissolved chlorine species in
AN. (a) 0.4 g solid chlorine +
Ar gas, (b) 0.4 g solid chlorine.
1) M. Thomassen, B. Børresen, G. Hagen, R. Tunold, J. Appl. Electrochem., 33, 9 (2003).
2) J. Rugolo, B. Huskinson, M. J. Aziz, J. Electrochem. Soc., 159, B133 (2012).
1S29
鉄コバルト錯体担持多層カーボンナノチューブ触媒の酸素還元触媒活性に
与える分散法の影響
青柳 朔海 1,◯高橋 勝國 1,城石 英伸 1,齋藤守弘 2,田中 優実 3
(東京高専 1,東京農工大 2,東京理科大 3)
Effect of dispersion methods on the oxygen reduction reaction activity of multi-wall carbon nanotube supported iron
cobalt complex catalysts
Sakumi Aoyagi1, Masakuni Takahashi1, Hidenobu Shiroishi1, Morihiro Saito2, Yumi Tanaka3
(Tokyo National College of Technology1, Tokyo University of Agriculture and Technology 2,
Tokyo University of Science2)
1.目的
回転リングディスク電極(RRDE)法は,触媒の酸素還元能を定量的に評価できるため,よく用いられる測定
法である.この方法を用いてナノ微粒子触媒の活性を正確に評価するためには,触媒層をディスク電極上に
均一に塗布しなければならない.従来,超音波を用いて調製したナノ微粒子触媒懸濁液を,ディスク上にキ
ャストし,乾燥する方法が一般的であったが 1,2),使用する触媒によっては必ずしも均一とはいえない状況が
あった.本研究では,触媒として非白金系カーボン触媒を用い,超音波の代わりに振盪機により分散させる
振盪法を採用して,触媒修飾 Pt リング-グラッシーカーボン(GC)電極を作製し,作製した触媒修飾電極の酸
素還元触媒活性を比較するとともに,分散法が触媒表面に与える影響を XPS 測定により検討した.
2.実験
2.2 mL スクリュー管に,酸素還元触媒(6 wt% FeCo(phen)/MWCNT 触媒)2.00 mg に対し 0.1 wt% Nafion-メタ
ノール溶液 1 mL を加えた.振盪法では,ジルコニアボール 3 個(φ3 mm)をスクリュー管に加え,1000 rpm で,
振盪機(MS3 D S1,IKA)を用いて振盪時間,速度を変化させて分散液を調製した(以後試料名を SK-振盪速度振盪時間と称す).超音波法では,超音波 (AS482,AS ONE)を 30 分照射することによって分散液を調製した
(以後試料名を US-振盪時間と称す).得られた触媒分散液を Pt リング- GC ディスク電極の GC ディスク(φ5
mm)上に合計 10 µL(5 μL×2)キャストし,触媒修飾電極を作製した.電極表面はデジタル顕微鏡(MSP-3080,
PANRICO)により観察を行った.作製した触媒修飾電極を作用電極,参照電極を RHE,対極を Au 線として使
用し,電解液に 0.1 M HClO4 を用いて三電極系で RRDE 法を用いて窒素および空気下で酸素還元能を測定し
た.XPS は Phi-Tools(ULVAC-PHI)を用いて,触媒分散液を銅テープ上にキャスト後風乾したサンプルについ
て測定を行った.
3.結果および考察
SK-1000 rpm-0.75 h
Fig. 1 に振盪法と超音波法で作製した修飾電極の 0.7 V におけ
SK-1000 rpm-1 h
る酸素還元電流密度を示す.振盪速度が 1000 rpm の場合,酸素
SK-1000 rpm-1.25 h
還元電流は振盪時間が 1 時間で頭打ちとなった.酸素還元電流は
SK-500 rpm-24 h
分散法によらずほぼ一定であったが,超音波法より振盪法のほう
US-0.5 h
が,再現性が高いことが明らかとなった.また,振盪速度を速く
0
0.2 0.4 0.6 0.8
したほうが,標準偏差が小さく,精度がよいことが示された.
i / mA mg-1
Fig. 1. Relationship between current density at
XPS 測定により得られた,触媒の分散前後の炭素,窒素,酸素
0.7 V and dispersing conditions for 6 wt %
の表面濃度を Table 1 に示す.振盪法を用いた場合では表面化学
FeCo/MWCNT catalyst in 0.1 M HClO4 at 25C
種濃度に変化が見られなかったが,超音波法を用いた場合では窒
under air atmosphere. Rotating speed: 600 rpm.
素の減少,酸素の増加が確認された.超音波を照射すると部分的
Scan rate: 5 mVs-1. Error bar shows ±σ.
・
に数千C になるとともに,キャビテーションによって OH ラジ
Table 1. Surface concentrations of chemical
カルが生じることが知られている 3).これらの現象によって,触
species for 6 wt% FeCo(phen)/MWCNT catalyst
媒表面の酸化および構造が変化し,窒素の脱離が生じたと考えら
at various dispersing conditions by XPS
れる.窒素や酸素原子の一部は,本研究で触媒として用いた
analysis.
FeCo(phen)/MWCNT 触媒の触媒活性点を構成しており,超音波
Sample name
C/%
N /%
O/%
91.7
4.5
3.8
照射によって,これらの活性中心の構造がダメージを受けたこと
FeCo(phen)/MWCNT
±1.1
±0.6
±0.5
が,超音波法でのばらつきの要因の一つであると考えられる.
91.3
4.7
3.8
SK-1000 rpm-1 h
(1) T. Okajima, Electrochemistry, 81, 717 (2013).
±1.1
±0.6
±0.5
92.1
4.1
3.8
(2) 衣本 太郎,山田 裕久,Electrochemistry, 79, 116 (2011).
SK-500 rpm-24 h
±0.4
±0.3
±0.2
(3) 副島 潤一郎,Electrochemistry, 76, 306 (2006).
91.2
3.6
5.2
US-30 min
±0.4
±0.2
±0.3
1S30
水熱合成法による非導電性ナノ炭素質微粒子型新規プロトン導電体の合成(2)
○小林 昌広 1,城石 英伸 1,木島 匡彦 2,田中 優実 2,桑野 潤 2
(東京高専 1,東京理科大学 2)
Synthesis of nanoparticle-type new proton conductor by the water heat composition method (2)
Masahiro Kobayashi1, Hidenobu Shiroishi1, Masahiko Kijima2, Yumi Tanaka2, Jun Kuwano2
(Tokyo National College of Technology1, Tokyo University of Science2)
103 nSO3H / mol g-1
1.目的
固体高分子形燃料電池(PEFC)に使用されている Nafion®は,プロトン導電率が極めて高いだけでなく,化学
的安定性に優れ,寿命も長いという特徴がある.しかし,コストが高いことから,Nafion®を代替する低価格
固体電解質の開発が期待されている.我々は,D-グルコースを原料とし,水熱合成法と硫酸によるスルホ化
処理を組み合わせることにより,非導電性ナノ炭素質微粒子型新規プロトン導電体(Nanoparticle-type proton
conductor, NPPC)を合成し,燃料電池の固体電解質として機能することを報告してきた 1).本研究では,プロ
トン導電率の向上を目指し,スルホ化処理の時間依存性を検討した.また,水熱合成時に硫酸を共存させる
ことにより炭素質微粒子サイズの制御も試みた.
2.実験
0.5 M D-グルコース-硫酸(0 M~0.1 M)水溶液 50 mL を調製し,オートクレーブを用いて 193C で 6 時間水
熱合成を行った.生成物をデカンテーションによりアセトンと Milli-Q 水で洗浄後,真空乾燥を行い,球状の
ナノカーボン微粒子を調製した.それを 9 M の硫酸で,一定時間(7.5 h,16 h,24 h)還流し,スルホ基を導入
した.これらの生成物は Milli-Q 水で洗浄後,真空乾燥して非導電性ナノ炭素質微粒子型プロトン導電体試料
とした(以後,NPPC-水熱合成時硫酸濃度-水熱処理温度-スルホ化時間-スルホ化時硫酸濃度と称す).NPPC の
スルホ基の導入量は NaOH による酸塩基滴定により求め,TG/DTA-GC/MS(TG/DTA 部: TG-DTA2500,
NETZSCH,GC/MS 部: GCMS-QP2010 Ultra,(株)島津製作所)により熱分析ならびに FE-SEM(FEI,Quanta 250
FEG)による観察を行った.また,25 wt%の PTFE(TFW-3000,セイシン企業)と NPPC を混合し,ペレット化
した後,プロトン導電率を交流二端子法(80C~200C,10 mol%水蒸気-窒素下)により測定した.
3.結果および考察
Fig. 1 に NPPC へのスルホ基の導入量に対する硫酸中での還流時間依存性を示す。9 M 硫酸を用いたとき
には,16 時間程度の誘導期がみられ,その後,スルホ基の導入量が増加した.誘導期には,1)NPPC 表面のス
ルホ化,2)炭素-炭素結合の酸化(カルボニル基やカルボキシル基の導入)が進行していると考えられる.NPPC0 M-193C-24 h-9 M は,NPPC-0 M-193C-7.5 h-18 M よりもスルホ基の導入量が 1.1 倍増加した.また,イン
ピーダンス測定の結果,80C における NPPC-0 M-193C-24
12
h-9 M のプロトン導電率は,8.6×10-4 S / cm となり,18 M で
10
7.5 h スルホ化処理したときに比べて 1.9 倍程度プロトン導
電率が向上した.スルホ基の導入量に対してプロトン導電
8
率が大幅に向上しているのは,スルホ基の局所的な導入が
6
起こったためであると考えられる.
4
水熱処理時に硫酸を共存させた場合についても,球形炭
素質粒子が生成することが確認された.また,それらの粒
2
子径は硫酸の濃度が高くなるほど肥大化することがわかっ
0
た.0.1 M 硫酸で熱処理を行った試料の平均粒径は,5.8 ± 2.0
0 5 10 15 20 25 30
μm であり,硫酸を共存させないときと比べておよそ 16 倍
Reflux time / h
となった.これより,水熱合成時の硫酸濃度を調製するこ
Fig.
1
Dependence
of the amount of sulfonic acid
とで粒子径を制御できることが示された.
in
NPPCs
on
reflux
time. NPPC-0 M-193C-9 M
参考文献
(●),NPPC-0
M-193C-7.5
h-12 M (△) and
[1] 小林昌広,城石英伸,福島奈津子,松島賢太郎,桑野潤,
NPPC-0 M-193C-7.5 h-18 M (■).
2014 年電気化学会秋季大会講演要旨集(1A20).
1S31
チタン錯体を前駆体とした非白金系酸素還元触媒の開発
○松下悠貴 1,青柳朔水 1,髙橋勝國 1,城石英伸 1,齋藤守弘 2,田中優実 3
(東京高専 1,東京農工大 2,東京理科大 3)
Development of non-platinum oxygen reduction catalyst using a titanium complex as a precursor
Yuki Matsushita1, Sakumi Aoyagi1, Masakuni Takahashi1, Hidenobu Shiroishi1, Morihiro Saito2, and Yumi Tanaka3
(Tokyo National of College Technology1, Tokyo University of Agriculture and Technology 2,
Tokyo University of Science3)
(a)
%H2O
log(i / A mg-1)
1.目的
固体高分子形燃料電池の触媒として用いられている白金は高コストであり,資源量も少ないため,白金代
替触媒の開発が盛んに行われている.本研究では,吉澤らが報告した新規水溶性チタン錯体 1)を出発物質と
して 2,2-ビピリジン(bpy)を配位子とするチタン錯体を合成し,これを多層カーボンナノチューブ(MWCNT)
に担持した後,アンモニア気流下および水素/窒素混合ガス気流下で焼成することで,チタン系酸素還元触媒
を調製した.これらの触媒の酸素還元能を RRDE 法を用いて評価するとともに,X 線光電子分光法や X 線回
折測定を通して酸素還元メカニズムについて検討した.
2.実験
30% H2O2 と 23% NH3aq をモル比で約 5 : 2 で混合させた溶液に,Ti 粉末を加え溶解させた後,Ti に対して
モル比が 1:2 の 2,2’-ビピリジン(bpy)を混合し,40C および 70C で 1 時間加熱した.この溶液に,金属担持
量が 10 wt%となるように MWCNT を加え,40C および 70C で 24 時間撹拌した後,蒸発乾固した.得られ
た前駆体は,アンモニア気流下で 600C,1 時間熱処理した後,10% H2-N2 雰囲気下で種々の温度(600C~
1000C)で 1 時間焼成することにより,酸素還元触媒と
0.0
10wt%Ti(bpy)/MWCNT-None after 4 h of ADT
した(以後 10 wt%Ti(bpy)/MWCNT-[熱処理温度または
10wt%Ti(bpy)/MWCNT-600℃ after 4 h of ADT
-0.5
None(10% H2-N2 焼成なし)]と称す).XRD(D8 Advance,
10wt%Ti(bpy)/MWCNT-None before ADT
-1.0
Bruker)および XPS(Phi-Tools, ULVAC-PHI)を使用して触
10wt%Ti(bpy)/MWCNT-600℃ before ADT
MWCNT
-1.5
媒のキャラクタリゼーションを行った.
-2.0
修飾電極は,振盪法(1000 rpm,1 h)を用いて調製した
2.0 mg mL-1-0.1 wt% Nafion-メタノール触媒懸濁液を Pt
-2.5
リング-グラッシーカーボン(GC)ディスク電極の GC 電
-3.0
極上に 10 L キャストし,1 時間室温で乾燥させること
-3.5
により得た.電解液に 0.1 M HClO4,対極と参照極にそ
-4.0
100
れぞれ Au 線及び RHE 電極を用いて回転リングディス
ク電極法にて酸素還元活性を評価した.触媒の加速劣
80
化試験は窒素雰囲気下にて,矩形波(1.2 V(1 s) → 0. 1
60
V(1 s))を印加することによって行った.
3.結果および考察
40
調製した触媒の 4 h の加速劣化試験前後での分極曲
20
線と 4 電子還元率(%H2O)を Fig. 1(a)および(b)にそれぞ
0
れ示す.加速劣化試験前後とも,酸素還元電流の立ち
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
上がり電位は MWCNT < アンモニアおよび H2-N2 雰囲
E
/
V
vs.
RHE
気下で熱処理した触媒 < アンモニア雰囲気下で熱処
理した触媒の順で高かった.また,加速劣化試験によ
Fig. 1 (a)Polarization curves and (b) efficiency of
って,酸素還元電流の立ち上がり電位並びに,酸素還
4-electron reduction of oxygen (%H2O) using 10 wt%
Ti(bpy)/MWCNT catalysts before and after
元電流密度とも改善することが明らかになった.H2-N2
accelerated durability test (ADT) in 0.1 M HClO4 at
雰囲気下で焼成した触媒の 4 電子還元率は,80%以上に
298 K.
改善した.これらの原因を XPS 測定結果を基に考察し
(b)
た結果ならびに 10% H2-N2 雰囲気下,700C 以上で熱処
理した触媒の酸素還元能については当日報告する.
(1) M. Yoshizawa, M. Kobayashi, V. Petrykin, H. Kato, and M. Kakihana, J. Mater. Res., 29, 90 (2014).
1S32
B サイト置換 Pb2Ru2O7-δ触媒による光化学的水の酸化・プロトン還元能の研究
○高橋
優 1,羽生 真也 1,城石 英伸 1,齋藤 守弘 2,田中
(東京高専 1,東京農工大学 2,東京理科大学 3)
優実 3
Study of photochemical water oxidation and proton reduction using B site-substituted Pb2Ru2O7-δ catalysts
1
Yu Takahashi1, Shinya Hanyu1, Hidenobu Shiroishi1, Morihiro Saito2, and Yumi Tanaka3
(Tokyo National of College Technology1, Tokyo University of Agriculture and Technology,2
Tokyo University of Science.3)
1.目的
堂免らによって 2006 年に報告された可視光半導体を用いた水の光分解では,Pt や Rh 等の貴金属に Cr2O3
シェルを被覆したコアシェル助触媒が用いられている 1).水の光分解の実用化のためには,より安価で高活
性な貴金属代替助触媒の開発が求められている.我々は, パイロクロア型の Pb2Ru2O7-δがより安価でかつ水
の可視光分解を達成する助触媒として有望であることを報告してきたが 2-3),貴金属触媒に比較して活性が低
く,更なる改善が必要であった.そこで本研究では,B サイトを Fe3+に置換した Pb2Ru2-xFexO7-δ を合成し,
XPS,XRD,BET 等を用いて触媒のキャラクタリゼーションを行うとともに,犠牲的電子供与体または電子
授与体存在下における増感剤を用いた水の光分解系において,本触媒のプロトン還元および水の酸化触媒能
の評価を行った.
(GC-8A,島津製作所)を用いて発
生した水素の定量を行った.
Pb2Ru2O7-δ
Intensity
(a.u.)
Intensity(a.u.)
2.実験
RuCl3・3H2O,Pb(NO3)2,Fe(NO3)・9H2O を所望のモル
比で,25 mL のイオン交換水に溶解させた後,1 M KOH
を加えて pH 13 に調整した.その後,酸素下で 24 時間
還流した.Milli-Q 水による洗浄後,24 時間,60C で真
空乾燥し,Pb2Ru2-xFexO7-δ を得た.合成後,空気下,500C
で 1 時間焼成を行ったものは,サンプル名の後に-500dry
と表記する.触媒のプロトン還元能は以下のように測定
した.ガスクロバイアル中に合成した触媒と Na2EDTA
を加え,増感剤として 2.5 mM トリス(2,2’-ビピリジン)
ルテニウム(III) 溶液を,電子伝達体として 2.5 mM メチ
ルビオロゲン溶液を加え,リン酸緩衝溶液(pH 7)を加え
て全体を 5 mL とした.ガスクロバイアルを 30 分間 Ar
ガスで置換した後,光量を 0.714 kW m-2 に固定した LED
ライトで光を照射し,30 分ごとにガスクロマトグラフ
Pb2Fe0.1Ru1.9O7-δ
| RuO2
| Pb2Ru2O7-δ
30
40
50
2 Theta
/
degree
2 Theta/degree
60
Fig. 1. XRD patterns of Pb2Ru2O7-δ and Pb2Fe0.1Ru1.9O7-δ.
Table 1. Summary of XPS analysis.
atom
O
average[%]
51.9
standard deviation[%] 2.0
Fe
1.78
0.21
Ru
24.9
2.7
Pb
21.4
1.1
3.結果および考察
合成した触媒の XRD 測定結果を Fig. 1 に示す.合成した触媒がパイロクロア型構造を有していることが確
認された.B サイトに Fe3+が置換されていた場合,ピークが高角度側にシフトすることが考えられるが,明
確なシフトは見られなかった.そこで,XPS 測定をしたところ,Fe は 1.78±0.21%しか含まれていなかったた
め,XRD のシフトが明確に起こらなかったと考えられる.
合成した触媒のプロトン還元および水の酸化触媒能の測定結果については当日報告する.
(1) K. Maeda, K. Teramura, D. Lu, N. Saito, Y. Inoue, K. Domen, Angew. Chem. Int. Ed., 45, 7806 (2006).
(2) N. Mori et al., Key Eng. Mat., 388, 297 (2009)
(3) 羽生真也,城石英伸,齋藤守弘,田中優実,太陽/風力エネルギー講演論文集, 183 (2014).
1S33
低温焼結型(ZrO2-1.6P2O5)-(ZnO-2P2O5)ハイブリッド電解質のプロトン導電率
○大屋彼野人 1,城石英伸 1,齋藤守弘 2(東京工業高等専門学校 1,東京農工大学 2)
Proton conductivity for low-temperature sintering-type (ZrO2-1.6P2O5)-(ZnO-2P2O5) hybrid electrolytes
Kayato Ooya1, Hidenobu Shiroishi1, and Morihiro Saito2
(Tokyo National College of Technology1, Tokyo University of Agriculture and Technology 2)
1.目的
我々は,75~250C の温度域において ZrO2-1.6P2O5 電解質を用いた中温作動燃料電池(ITFC)が良好な発電特
性を有することを報告してきた 1.しかしながら,その実用化のためには電解質の耐水性や機械的性質の改善
が必要である.そこで本研究では ZrO2-1.6P2O5 電解質を,粉末状にした ZnO-2P2O5 ガラスに混合して
300~900C で熱処理を施すことによりハイブリッド型ガラス電解質を作製し,プロトン導電率の温度依存性,
耐水性及びこれを用いた ITFC の発電特性について評価を行った.
2.実験
ZrO2-1.6P2O5 電解質は,(NH4)2HPO4 と ZrCl2O・8H2O を化学量論比にて混合し,これを 10 mol%水蒸気-空気
下 500C で熱処理することにより合成した.また,ZnO-2P2O5 ガラスは,Zn 粉末と 86 wt% H3PO4 と CaO を
化学量論比にて溶解し,900C で均一に溶融したことを確認した後,金属板上で延伸・急冷することで作製し
た.得られた ZnO-2P2O5 ガラスを粉末化し,所望量の ZrO2-1.6P2O5 電解質と均一になるまで混合した後,3 MPa
で加圧成形を行った.この混合物を 300~900C で熱処理し,金属板上で延伸・急冷することで無機-無機ハイ
ブリッド型ガラス電解質(試料名を(ZnO-2P2O5)-x wt%(ZrO2-1.6 P2O5) (熱処理温度)と称す)を作製した.キャラ
ク タ リ ゼ ー シ ョ ン は XRD 分 析 を 用 い て 行 っ た 。 プ ロ ト ン 導 電 率 は イ ン ピ ー ダ ン ス ア ナ ラ イ ザ (HP
4192A,Yokogawa)を用いて 125~300C の温度範囲にて乾燥窒素下で交流 2 端子法を用いて測定した。また,
耐水性試験は板状の試料の側面をニトフロンテープでマスキングした後,25C の 200 mL 水中に試料を含浸
させ,プロトン溶出量を pH メータ(三商,IWC-5)により評価した.ITFC 発電試験は,本電解質を 2 枚の 46 wt%
Pt/C(TEC10E50E,田中貴金属)を担持したカーボンペーパーにて挟み込み測定用セルに設置した後,アノード
に水素,カソードに酸素を各々50 mL min-1 供給し,測定を行った.
3.結果および考察
(ZnO-2P2O5)-10 wt%(ZrO2-1.6P2O5) (xC)(x= 300, 400, 500, 600, 900)は,熱処理温度が高いほど耐水性は向上し
たが,400C 以上でプロトン伝導率は低下し,トレードオ
フの関係であった.そこで以後は熱処理温度を 500C で
固定して実験を行った.また ZnO-2P2O5 ガラスに 0.3 M
CaO を 添 加 し た (ZnO-2P2O5-0.3 M CaO)-10 wt%(ZrO2
-1.6P2O5) (500C)は無添加のものと比較して約 4 倍耐水性
が向上し,ZrO2-1.6P2O5 電解質の配合比を 30 wt%まで増
加させることができた.作製した(ZnO-2P2O5-0.3 M CaO)
-30 wt%(ZrO2-1.6P2O5) (500C)の発電試験の結果を Fig. 1
に示す.OCV は 150C のとき 0.53 V 程度であったが,稼
動温度が 200C を越えると 275C のときを除き約 0.60 V
で安定した.これは,温度の上昇に伴ってハイブリッド
型ガラス電解質が膨張し,電解質の細孔やガスケットと
電解質の間からのガスクロスオーバーが抑制されたため
であると考えられる.また稼動温度の上昇に伴って電力
は増加し,275C のとき最大 1.8 mW に達した.
参考文献
(1) M. Yonekawa et al., Key Eng. Mater., 485, 145 (2011).
謝辞
本研究は科研費若手 B(23760704)の援助を受けて実施いたし
ました。関係各位に感謝申し上げます。
Fig. 1. Single cell performances for H2/O2 fuel cells
with the (ZnO-2P2O5-0.3 M CaO)-30 wt%(ZrO21.6P2O5) (area : 0.196 cm2, thickness : 0.89 mm) using
a spray method (0.73 mg cm-2 Pt / C) under dry N2. (a) j
- V curve and (b) power density.
1S34
マイクロバブル-ソリューションプラズマ法によって調製した白金ナノ粒子の酸素
還元能
1
1
1
2
2
1
2
○近岡 優 , 堀口元規 , 城石英伸 , 中島達朗 , 松田直樹 (東京高専 , 産総研九州センター )
Oxygen reduction characteristics of platinum nanoparticles synthesized by micro bubble-solution plasma processing
Y. Chikaoka1, G. Horiguchi1, H. Shiroishi1, T. Nakashima2, and N. Matsuda2 (Tokyo National College of Technology1,
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology Kyushu2)
1 . 目的 ソリューションプラズマ法とは液相中でプラズマを発生させ,金属ナノ粒子を合成する方法である.従来
の方法では,1 kV,15 kHz という高電圧・高周波数を印加するため,消費電力が大きく,電源装置も高価な
ものが必要であった.我々は,低電圧・低周波数を印加することによって低消費電力かつ低コストで約 7 nm
の白金ナノ粒子を合成できることを報告した1)。
本研究では,マイクロバブルを使用したマイクロバブル-ソリューションプラズマ法(MBSP)によって,数
nm 程度の白金ナノ粒子を調製し,その酸素還元能を,回転リングディスク電極法を用いて評価した.
2 . 実験 フローセル中に電極として 1 本または 2 本の Pt 線(ニラコ, φ0.5 mm)及び W 線(ニラコ, φ1 mm)を電極間距
離 0.2 mm で対向させた.45°C に加熱した様々な濃度の KNO3 水溶液中で,マイクロバブル発生装置(OK エ
ンジニアリング2), OKE-MATRIX-MB01)を用いてマイクロバブル懸濁液を調製し,フローセルへ 24 mL/min
の流速で供給した.電源トランス(豊澄電源機器, SD41-02KB)を用いて電極間に半波整流した 220 V の電圧を
任意の時間印加し, 液中プラズマを発生させることで白金ナノ粒子の合成を行った. 100 nm メンブランフィ
ルターで濾過した白金ナノ粒子を含む溶液中に,Vulcan XC-72R を加え,一晩撹拌させ,濃縮,遠心分離,
真空乾燥を行うことで白金混合カーボン触媒を得た(以後 Pt/XC-72R(MBSP)-粒子径と称す).
白金ナノ粒子の酸素還元能は以下のように評
Table 1. Result of lifetime analysis of catalysts.
価を行った.0.1 wt% Nafion-MeOH 溶液 1 mL に
i / mA cm
i / mA cm
τ/ h
R
Sample Name
2 mg の白金触媒を振盪法(1000 rpm,1 h)で懸濁
1.41±0.26
0.984
20% Pt/XC72 (E-TEK) 0.0189±0.0012 0.0424±0.0011
し,Pt リンググラッシーカーボン(GC)ディスク
0
35.9±5.4
0.957
5.46% Pt/XC72R(MBSP) 0.112±0.0011
電極の電極部へキャストし, 1 h 風乾することに
0.181±0.014
0.0637±0.016
2.77±0.57
0.993
11.5% Pt/XC72(MBSP)
より,触媒修飾電極とした.0.1 mol/L HClO4 溶
液中で参照電極を RHE 電極, 対極を Au 線として, 回転リング
ディスク電極法を用いて電気化学測定を行った.劣化加速試験
は FCCJ 電位サイクル試験法 1/2(1.5 V – 1.0 V 三角波)に基づい
て実施し,以下の式により見かけの寿命 τ[h]を算出した.
(1)
i = i0exp( -t / τ) + ic
ここで i[A]は 0.95 V での酸素還元電流,i0[A]は劣化部位の酸素
還元電流値の最大値,ic[A]は非劣化部位の酸素還元電流である.
3. 結果および考察 MBSP を用いて種々の条件下で調製した白金ナノ粒子と市販
触媒の酸素還元電流の劣化加速試験依存性を Fig. 1 に示す.酸
素還元電流は,初期の ECSA で規格化してある.MBSP で調製
された白金ナノ粒子は市販白金触媒と比べて初期実表面積あ
たりの酸素還元能が高かった.また,見かけの寿命の解析結果
(Table 1)より,見かけの寿命は市販触媒(20% Pt/XC72(E-TEK))
Fig. 1. Dependence of ORR current density
よりも長いことが明らかになった.
normalized by initial ECSA at 0.95 V on
謝 辞 (有)OK エンジニアリング 松永様, (独)産業技術総合研
ADT time in 0.1 mol/L HClO4 under N2 at
究所 亀田直弘博士にはマイクロバブルに関するアドバイスや
298K. ◯: 20% Pt/XC72(E-TEK), △: 5.46%
粒子径の測定をして頂きました. 心より感謝申し上げます.
Pt/XC72R(MBSP)- 3.25±0.12 nm, ◇:
11.5% Pt/XC72(MBSP)- 3.93±0.09 nm.
-2
0
1
2
-2
c
堀口元規,城石英伸,中島達朗,松田直樹,2014 年電気化学会秋季大会要旨集(1A17).
OK エンジニアリング, HP: http://www. k3.dion.ne.jp/~matrix/
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