流通ビジネスメッセージ標準(流通 BMS)導入の手引き

流通ネットワーキング 2008 年 7月号
流通ビジネスメッセージ標準(流通 BMS)導入の手引き
== 流通 BMS 導入までの手順とよくある疑問への回答 ==
株式会社データ・アプリケーション
ACMS 統括本部 ビジネス推進部
上級コンサルタント
藤野 裕司
はじめに
1.EDI モデルは S-S 型と C-S 型の2つ
2.導入するシステムはサーバタイプかクライアントタイプか
サーバタイプの特徴
クライアントタイプの特徴
3.自社導入か ASP 利用か
4.中小規模の企業にとっての導入
おわりに
はじめに
前章までの流れで、流通 BMS の現状を「制定の経緯」や「導入事例」を通してご理解いただけたと
思う。まだお読みでない方は、是非ご一読いただきたい。そうすると、本章もより理解を深めやすくな
るだろう。
本章では、流通業界の現状をふまえて、実際に導入する場合の具体的な検討の進め方を述べる。
ポイントは、まず流通 BMS の特徴を理解した上で、自社で行う場合にどのような形態でどの程度の規
模になるかを想定すること。そのシステムを自社で導入するか ASP(*1)を利用するかを選定することに
なる。
また、中小規模の企業が自社で導入するための費用の目安などにも触れておく。
1. EDI モデルは S-S 型と C-S 型の2つ
EDIを実施するにあたり、どのような形態で行われるかを考えていきたい。
EDI モデルとは EDI の実施形態
まず始めに、どのような形で EDI が行われるかを見ていきたい。その EDI の実施形態を EDI モデル
という。
1
EDI モデルには、自社と相手先とをサーバ同士で接続する S-S 型 EDI モデル(常時稼働)と、自社
クライアントから相手先のサーバに接続しに行く C-S 型 EDI モデル(随時稼働)の2種類がある。
S-S 型 EDI モデルの通信プロトコルは ebXML MS(*2)もしくは AS2(*3)。どちらのプロトコルも、デ
ータが発生したタイミングで相手先に送りつける Push 型通信。一方、C-S 型 EDI モデルの通信プロト
コルは JX 手順(*4)で、送受信の要求はクライアント側から発し、サーバ側はその要求に応じてデータ
の送信または受信を行う Pull 型通信。現行の EOS(*5)と同様のことを行うことができる。
★S - S 形EDI モデル
J X手順
X手順
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ファイア
ウォール
相当機能
イン
ンタ
ター
ーネ
ネッ
ット
ト
イ
社内
形式
ED
DI
I
E
クラ
ライ
イア
アン
ント
トシ
シス
ステ
テム
ム
ク
デー
ータ
タ変
変換
換
デ
アプ
プリ
リケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン
ア
社内
形式
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ファイア
ウォール
イン
ンタ
ター
ーネ
ネッ
ット
ト
イ
★C - S 形EDI モデル
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ED
DI
I
E
サー
ーバ
バシ
シス
ステ
テム
ム
サ
社内
形式
デー
ータ
タ変
変換
換
デ
アプ
プリ
リケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン
ア
社内
形式
ebXML MS、
MS、AS2
取引先X
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
取引先X
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
[図1:S-S 型 EDI モデルと C-S 型 EDI モデル]
2. 導入するシステムはサーバタイプかクライアントタイプか
導入するシステムには、運用の規模によりサーバタイプとクライアントタイプがある。
(1) サーバタイプとクライアントタイプ
大規模システムはサーバタイプ 小規模システムはクライアントタイプ
一般的に、小売および大手の卸・メーカの場合はサーバ型 EDI システムでの運用(サーバタイプ)
、
小規模の卸・メーカの場合はクライアント型 EDI システムでの運用(クライアントタイプ)と考える。
中間規模の企業は、データ量やプロトコルの特性に応じて判断されたい。クライアントタイプを選択す
る目安は「1通信のデータサイズが10MB 未満」と考えるとよい。ただし、データは XML なので、
もとのサイズの12倍くらいに増大する。
データ量が大きい場合は圧縮する
また、データが大きすぎる時は圧縮する。圧縮方法は、ebXML MS および JX 手順の場合は zip、AS2
の場合はプロトコルが持つ圧縮機能で行う。
サーバタイプの場合は、当然サーバシステムを導入することになるのだが、相手先がクライアントタ
2
イプの場合、自社には JX 手順対応のサーバシステムを導入する必要がある。
(2) サーバタイプの特徴
サーバタイプは24時間常時稼働
このタイプは、インターネット上で、サーバを常時稼働し運用する。
通信プロトコルが ebXML MS、AS2 の場合、Push 型通信を行う。つまり、アプリケーション側で送
信データが生成されたら、その場で相手先に送る。受信は常に相手からのデータを待ち、先方から送り
つけられたら、その場で受ける。
Push 型とはいえ従来の運用スケジュールを継承することもできる。つまり、締め時刻まで送信側で
データを蓄積し、時間が来たら相手先に向けて送信する。これだと、業務の流れは変わらない。
JX 手順の場合、常に相手からの要求を待ち、相手からの送りつけならそのまま受信に、相手への送
信要求なら用意してあったデータを送る。
いずれにしても、サーバタイプは 24 時間運用となり、EDI システムを停止させることができない。
クラスター構成(*6)もしくはフォルトトレラント(*7)の構成で備えることをお勧めする。
DMZ
I nternet
EDI システム
通信機能
証明書
通信サーバ通信サーバ1
EDI システム
通信機能
通信サーバ通信サーバ証明書
2
負荷分散装置
ファイア
ウォール
クラスタ
構成
EDI システム
管理機能
送受信
データ
社内
ネットワーク
管理サーバ
[図2:高セキュリティ負荷分散型]
3
管理DB
AP
データ
共有ディスク
DMZ
I nternet
証明書
証明書
フォワードプロキシ
リバースプロキシ
クラスタ
構成
ファイア
ウォール
送受信
データ
EDI システム
社内
ネットワーク
管理DB
通信/
通信/ 管理
サーバ
[図3:ミドルサーバシステム]
DMZ 上に EDI サーバ設置は危険
従来型 EDI と違いインターネット経由となるので、セキュリティについて慎重に準備を進めなくて
はならない。特に、外部のアタックから社内ネットワークや EDI サーバを守る必要がある。そのため
には、外部ネットワークと社内ネットワークの間に DMZ(非武装地帯)(*8)という緩衝域を設けて、そ
こを通過する方法をとるのが一般的である。
その場合でも、DMZ 上に EDI サーバを置くのは、外部からのアタックにより、EDI サーバ上のデー
タを破壊される危険性がある。DMZ 上には通信サーバだけを置き、管理サーバを社内に置く分散構成
を取ったり、DMZ 上にリバースプロキシ(*9)を置いて直接社内にアクセスできないようにしたりするな
どの工夫が必要。詳細については、セキュリティのご担当者に相談していただきたい。
証明書は流通 BMS 専用を取得
セキュリティで、もう一点気をつけなくてはならないのが証明書である。これは、Web サーバの SSL
サーバ証明として利用されているパブリック証明書とは異なり、流通 BMS 専用の業界標準証明書であ
る。これはパブリック証明書が有効期限1年の SSL サーバ証明だけであるのに対し、有効期限3年で、
サーバ証明書、クライアント証明書、署名の 3 機能が含まれている。
従来型 EDI も併存し統合管理が望ましい
通信プロトコルは、ebXML MS、AS2、JX 手順の3種類あると説明したが、いきなり従来型通信プ
ロトコルから入れ替えることはできない。接続先にも事情があるからである。よって、新旧両プロトコ
ルが並行に運用されることとなる。この場合、これらのプロトコルはすべて統合運用できる方がリスク
管理面でも運用コスト面でも望ましい。
4
DMZ
I nternet
EDI システム
通信機能
通信サーバ
証明書
次世代手順
全銀TCP/IP
手順
全銀TCP/IP手順
EDI システム
管理機能
ファイア
ウォール
送受信
データ
通信/
通信/ 管理/
管理/
AP サーバ
ダイアルアップルータ
UST
通信回線網
( 専用線/I
専用線/I SDN
SDN))
全銀手順
JCA手順
JCA手順
社内ネットワーク
[図4:従来型 EDI と併存]
(3) クライアントタイプの特徴
クライアントタイプは必要なときのみ随時稼働
このタイプは、EDI 関連業務を行うときのみシステムを立ち上げ、随時稼動で運用する。
通信プロトコルは JX 手順。データの送受信が必要なときのみ起動し、送信もしくは受信を行う。業
務アプリケーションとセットになったパッケージもある。
運用形態は、JCA 手順と同じであるため、通信システムを入れ替え、流通 BMS 関連の設定を行うだ
けで、既存の業務につなぐことができる場合もある。
I nternet
社内ネットワーク
クライアントP
クライアントP C
P C用
EDI システム
ファイアウォール
相当機能
送受信
データ
[図5:PC システム]
5
証明書
3. 自社構築か ASP 利用か
実際の導入タイプが決まれば、自社で導入するか ASP を利用するかの選択になる。
以下に各々の特徴と選択の判断基準を説明する。
(1) 自社構築の特徴
自社構築は規模の想定から設計・運用まですべて自社の責任で
自社構築の場合には、まずシステムの構成を決めなくてはならない。
はじめは、当然まだ対象となる相手先が少ないため、いきなり大規模システムを導入する必要はない。
しかし、流通 BMS が普及すると、接続先やデータ量が増加するため、初期より拡張性の高い構成を考
えておかなくてはならない。
その後、流通 BMS 導入手順に従い、業務の設計・開発からセキュリティ対策、運用設計、移行計画
へと準備を進めていくが、基本的には自社の責任で遂行する。
自社センター内ですべてクローズするのでシステム連携が容易
EDI システムは自社センター内に設置し、既存の情報システムと直接接続する。
既存システムとのデータ連携は、XML 変換を含めてすべて自社で行う。自社と相手先を直接接続す
るため、相互に時間的な遅延は発生しない。
自社の情報システム
自社導入のEDI
自社導入のEDI システム
ビジネス
ビジネス
文書
文書
イン
ンタ
ター
ーネ
ネッ
ット
ト
イ
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ED
DI
Iシ
シス
ステ
テム
ム
E
流通
通 BMS
流
BMS
社内
形式
デー
ータ
タ変
変換
換
デ
アプ
プリ
リケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン
ア
社内
形式
ファイア
ウォール
取引先X
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
[図6:自社構築の EDI システム]
最終的には運用コストが下がる
普段から要員確保と継続的教育負担が発生するが、それを乗り越えると EDI に関わる最新技術と情
報コントロールノウハウの蓄積ができ、最終的には運用コストを抑えることができる。
(2) ASP 利用の特徴
ASP は自社専用タイプか汎用タイプかを選択
6
ASP事業者センター
ASP事業者センター
A社用流通BMS
システム
A社用流通BMSシステム
データ変換
データ変換
B社用流通BMS
社用流通BMS
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
データ変換
データ変換
ASPサービス
ASPサービス
流通BMS
流通BMS
データ変換
データ変換
ASPサービス
ASPサービス
流通BMS
流通BMS
社内
形式
社内
形式
C 社用流通BMS
社用流通BMS
ASPサービス
ASPサービス
個別企業接続用
個別企業接続用
ASPサービス
ASPサービス
個別企業接続用
個別企業接続用
ASPサービス
ASPサービス
流通BMS
流通BMS
ASPサービス
ASPサービス
個別企業接続用
個別企業接続用
A社の情報システム
インターネット
インターネット
ED
DI
Iシ
シス
ステ
テム
ム
E
接続
続用
用
接
ASP
ASP
アプ
プリ
リケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン
ア
社内
形式
社内
形式
Z社
X社
Y社
★S - S 型EDI モデル
[図7:ASP 利用 自社専用 ASP サービス]
ASP事業者センター
ASP事業者センター
ビジネス
ビジネス
文書
文書
データ変換
データ変換
ビジネス
ビジネス
文書
文書
社内
形式
社内
形式
A社用データ
社内
形式
社内
形式
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
文書
文書
ビジネス
ビジネス
ビジネス
ビジネス
文書
文書
文書
文書
ASPサービス
ASPサービス
個別企業接続用
個別企業接続用
ASPサービス
ASPサービス
流通BMS
流通BMS
B社用データ
A社の情報システム
社内
形式
ED
DI
Iシ
シス
ステ
テム
ム
E
接続
続用
用
接
ASP
ASP
アプ
プリ
リケ
ケー
ーシ
ショ
ョン
ン
ア
社内
形式
インターネット
インターネット
X社
Y社
Z社
★S - S 型EDI モデル
[図8:ASP 利用 汎用 ASP サービス]
ASP には2つの形態がある。1つは、業務をアウトソーシングし、自社専用のシステムで完全に独立
した運用を委託するパターン(ハウジング)
、もうひとつは汎用の流通 BMS サービスへの参加企業とし
て利用するパターン(ホスティング)
。
流通 BMS に関わる部分は基本的に ASP でまかなうため、自社システムに大きく手を入れることはな
7
いと思われる。ただ、ASP に設置された EDI システムを利用するため、別途自社の情報システムとの
連携を考える必要がある。また相手先と自社システムとの間に ASP での蓄積が発生するため、そこに
時間的遅延が生じる。
(3) 選択の判断基準
自社ノウハウ育成か ASP ノウハウ活用か
では自社構築か ASP 利用かをどうして決めればよいだろう。一応、以下の要件が目安になると思わ
れる。
【自社構築】
・ 自社にシステム管理、ネットワーク管理、従来型 EDI 管理ノウハウがあり、新しい流通 BMS の管
理も可能と判断できるとき。
・ 情報管理ノウハウを自社の強みとしたいとき。
・ 社内でのコストコントロールが可能で、トータルコストを安価に上げたいとき。
・ 自社と相手先を直接接続し、ASP を経由する時間的ロスを排除したいとき。
【自社専用 ASP】
・ 自社にシステム要員が少なく、管理を十分できないとき。
・ 取引先が極端に多く、とてもじゃないが自社で管理できないと判断したとき。
・ 24時間運用が困難なとき。
・ 自社に高度なセキュリティや障害管理機能がないとき。
・ 本業以外はアウトソースしたいとき。
・ 管理を専門家に任せたいとき。
・ 月額料金で運用したいとき。
・ システムコストの変動要素をできるだけ小さくして、予算計画を立てやすくしたいとき。
・ 最初から固定資産を持たず、利用分のみのコストを積み上げていきたいとき。
・ ASP 利用といえども、あくまで自社専用にしたいとき。
【汎用 ASP】
・ 企業グループで汎用 ASP を運営しているとき。
・ 上記 ASP 利用ニーズはあるが、自社専用は利用料が高いので、より安価に押さえたいとき。
・ とりたてて自社専用の ASP にこだわらないとき。
4. 中小規模の企業にとっての導入
最後に、中小規模の企業が導入する場合の簡単なシステム構成と費用の概略を説明する。
EDI システムの構成については、本誌6月号に「高セキュリティ負荷分散型構成」
、
「ミドルサー
バシステム」
、
「PC システム」の3パターンで各特徴を紹介した。詳細については、そちらをご参照
いただきたい[実際には2009年1月号の掲載となった]。そのなかから、中小規模の企業向けとして
最小構成のサーバシステムと PC システムについての導入形態と概算費用を述べる。
8
また、ASP の利用については、サービス内容によりすべてが異なるため、ここでは自社構築のパ
ターンで説明する。各費用についても、これが絶対額ではなく、製品や作業の内容により大きな違
いが発生する。これはあくまで目安としての判断材料にしていただきたい。
(1) 導入に必要な費用
EDI システムを導入するには、以下のような費用が必要となる。事業者やサービス名を記載した
ものもあるが、あくまでも参考で、他にもあることを念頭においていただきたい。
・ 回線費用:回線事業者より提供を受ける。NTT、TEPCO、eo、USEN、など。
・ インターネットプロバイダー費用:インターネット接続事業者と契約。インターネットを利用
するために必要。NTTcom、KDDI、IIJ、Sonet、Biglobe、Nifty、GYAO、など。
・ 通信関連機器:ルータ、LAN 関連機器。一部回線事業者よりレンタルできるものもある。
・ 宅内工事費用:ネットワークとの接続のための配線工事。電気工事事業者に依頼。
・ ハードウェア:サーバや PC などのコンピュータ。
・ インターネットセキュリティ関連:ファイアウォール、セキュリティソフトなど。
これには「ハード」で実施するタイプと「Linux+ソフト」で実施するタイプとがある。
・ EDI 関連ソフトウェア:通信、データ管理、スケジューラ、業務連携、XML 変換、運用管理、
などを行う EDI システム用ソフトウェア
・ アプリケーションシステム:受発注、入出荷、支払・請求に関わる業務関連システム。
・ 導入支援費用:ハードウェア・ソフトウェアの設置、導入、設定、XML 変換の定義体作成、業
務連携テスト、コンサルティング、など。
・ その他:固定 IP アドレス、証明書、GLN、など。
9
インターネット関連
ミドルウェア
DMZ
Internet
リバースプロキシ
クラスタ
構成
ファイア
ウォール
インターネット
プロバイダー
証明書
証明書
フォワードプロキシ
送受信
データ
EDI システム
社内
ネットワーク
管理DB
アプリケーション
システム
導入支援費用
その他
通信/
通信/ 管理
サーバ
回線費用
インターネット
プロバイダー費用
通信機器
ハードウェア
宅内工事費用
EDI関連
ソフトウェア
[図9:導入に必要な費用]
(2) タイプ別発生費用の概算
以下に各タイプ別の構成と費用を示すが、金額はあくまでも参考であることをご理解いただきたい。
①ミドルサーバ[リバースプロキシを使った構成]
•
インターネットを利用するため、ファイアウォールの設置は必須。その機能により、外部と社
内ネットワークの間に DMZ を作る。
•
外部からの攻撃を受けないための対策として、DMZ 上にリバースプロキシを設置する。
•
セキュリティに関するハード・ソフトは数多く販売されている。詳しくは、各社のセキュリテ
ィご担当者もしくはシステムベンダーにご相談いただきたい。
10
DMZ
I nternet
証明書
フォワードプロキシ
リバースプロキシ
クラスタ
構成
ファイア
ウォール
送受信
データ
EDI システム
社内
ネットワーク
管理DB
通信/
通信/ 管理
サーバ
[図10:ミドルサーバシステム]
【構築費用概算】
EDI サーバタイプ
・ サーバ(WinServerOS+DB)
・ EDI システム
・ 導入作業費(EDI システムのインストール&設定、XML 変換の定義体作成、業務連携テスト実施)
:
作業内容により変動範囲大
[概算]
a.クラスター構成(2システム) ¥12,000,000-
∼ (バックアップ装置、ラック含む)
b.シングル最小構成
∼
¥5,000,000-
その他
・ インターネット環境構築費(ファイアウォール、リバースプロキシ、フォワードプロキシ、他)
、
・ 従来型 EDI 環境、証明書、GLN
・ 業務システム開発費
②クライアントタイプ
•
インターネットに接続可能な Windows クライアント PC を使用する。
•
インターネット環境は、一般の家庭用環境と同等の法人タイプでよいが、ウィルス対策ソフト
やファイアウォールは必要。
•
業務用のパッケージにバンドルされた EDI システムなども販売されているが、ここでは単独の
EDI 機能を持ったソフトを前提としている。
11
社内ネットワーク
I nternet
クライアントP
クライアントP C
P C用
EDI システム
送受信
データ
ファイアウォール
相当機能
証明書
[図11:PC システム]
【構築費用概算】
EDI クライアントタイプ
・ PC(WindowsXP)
・ EDI システム
・ 導入作業費(EDI システムのインストール&設定、XML 変換の定義体作成、業務連携テスト実施)
:
作業内容により変動範囲大
[概算]
PC タイプ最小構成
¥800,000-
∼
その他
・ インターネット環境構築費(プロバイダ、他)
・ 証明書、GLN
・ 業務システム開発もしくは業務パッケージ導入費用
おわりに
流通業界では、すでに流通 BMS が普及段階に入ったと言って間違いないだろう。今後ますます小売
の流通 BMS 対応に関わる説明会が増えることになると思う。それを弾みに一気に導入が進む気配がす
るのだが、それより前に、少しでもみなさんがこの新しい標準 EDI に興味を持っていただき、いつ導
入が始まってもあわてることのないよう準備を進めていただけることを願ってやまない。
【用語解説】
(*1) ASP:Application Service Provider
ビジネス用アプリケーションソフトや業務システムをインターネットを通じてユーザにレンタルする
事業者のこと。
12
ユーザはネットワーク経由で ASP 事業者に接続し、システムを利用する。これにより、ユーザ側でア
プリケーションソフトや業務システムをインストールする必要がないので、インストールや管理アップ
グレードにかかる費用・手間を節減し、企業の情報システム部門の負荷を軽減できる。
(*2) ebXML MS
ebXML Message Services。ebXML における通信仕様。サーバ用プロトコルで、送信データができる都
度相手側に送りつけるプッシュ型。受信は、相手起動によるデータを待ち受け状態で常駐待機する。
通常の標準メッセージ(文字情報)のほか、様々なコンテンツ(Word/Excel/PowerPoint、PDF、CAD、
画像、音声、動画など)を送ることができる。データは、本文の文書以外に添付ファイルを付けて送る
こともできるが、流通 BMS では、本文のみに制限している。トランザクション単位の処理による EDI
メッセージングも可能。
(*3) AS2:Electronic Data Interchange-Internet Integration Applicability Standard 2
サーバ用プロトコルで、送信データができる都度相手側に送りつけるプッシュ型。受信は、相手起動に
よるデータを待ち受け状態で常駐待機する。
米国を中心に世界的に利用が拡大しつつあるインターネット EDI の通信プロトコル。
通常の標準メッセージ(文字情報)のほか、様々なコンテンツ(Word/Excel/PowerPoint、PDF、CAD、
画像、音声、動画など)を送ることができる。
(*4) JX 手順
EDI サーバの運用が困難な中小規模の企業向け EDI 通信プロトコル。データ発生時にプッシュ型で送
信するサーバ方式に対して、必要な時に任意のタイミングで起動しセンターサーバとデータをやり取り
することができるプル型クライアント方式。ebXML MS や AS2 など国際標準のサーバ方式では、EOS
などで行っているプル型処理を実現できないため、日本独自に開発した SOAP-RPC ベースの比較的シ
ンプルな通信手順。
(*5) EOS:Electronic Ordering System:電子受発注
スーバーなどの小売店の端末から、チェーンストア本部や卸売店などへ EDI で発注を行なうことによ
り、発注側・受注側双方にとって効率的で確実、スピーディな受発注業務を行うことができる。EOS
の導入により、受発注のペーパレス化やリードタイムの短縮、多品種少量発注への対応などを低コスト
で実現することができる。
(*6) クラスター構成
コンピュータが、ダウンして処理がストップしてしまうと、業務に甚大な被害を及ぼす場合がある。
そのようなときに、システム稼働停止時間(ダウンタイム)を最小限に食い止めたり、負荷を分散させ
ることでシステムダウンを回避できるよう、システムを構成する部品を冗長化した構成。クラスターと
は、「群れ」とか「房」という意味で、クラスター構成とは、複数のコンピュータを一群(または複数
群)にまとめて、信頼性や処理性能の向上を狙うシステムをいう。
(*7) フォルトトレラント
13
フォルト トレラント とは、ハードウェア コンポーネントを二重化 (または多重化) した、障害発生時
にもシステムを停止することの無い、極めて信頼性の高いシステム。代表的な構成では、CPU とメモ
リ、I/O をそれぞれ二重化 (または多重化)し、各ハードウェアコンポーネントは同期しながら、同じ処
理を並行して行う。万一、障害が発生すると、一方のコンポーネントを切り離して、もう一方のコンポ
ーネントで処理を継続する。
(*8) DMZ:DeMilitarized Zone 非武装地帯
インターネットなどの信頼できないネットワークと、社内ネットワークなどの信頼できるネットワーク
との中間に置かれる、ファイアウォールに囲まれたセグメントのこと。外部に公開するサーバをここに
置けば、ファイアウォールによって外部からの不正なアクセスを排除できる。また、万が一公開サーバ
が乗っ取られた場合でも、内部ネットワークまで被害が及ぶことはない。
(*9) リバースプロキシ
特定サーバの代理として、そのサーバへの要求を中継するプロキシサーバ。この特定サーバにアクセス
しようとしたユーザは、全てこのリバースプロキシを経由するので、特定サーバが直接アクセスを受け
ることはない。
「リバースプロキシ」という名前の由来は、通常のプロキシ(フォワードプロキシ)が、
「内部から外部へのアクセスを中継する」のに対し、動作がその反対であるためだと言われている。
【著者紹介】
藤野 裕司(ふじのひろし)
株式会社データ・アプリケーション
ACMS 統括本部 上級コンサルタント
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1−3−8
TEL 03-5640-8540 FAX 03-5640-8541
E-mail: [email protected]
URL: http://www.dal.co.jp/
藤野ブログ「EDI 情報館」
:
URL: http://www.ediblog.jp/
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