色の見え方は難しい

特集 光
20064332
TOPICS
色の見え方,光の見え方
*
Appearance of Color and Light
中村 芳樹1)
Yoshiki Nakamura
Several color order systems are presented and the relations between them are also discussed in this paper.
20
Key Words : Vision, Interior, Exterior, Psychology / Color, Light, Appearance □
1. は じ め に
違いや,日向と日陰の違い,あるいは蛍光灯,白熱灯,
水銀灯といった人工光源の違いを想定して,上着の色を
色は光と切っても切れない関係にある.話をそんなフ
決めただろうか.おそらくそんな人はいまい.なぜなら,
レーズで始めると,光と色の関係について少し知識をも
高速道路の低圧ナトリウムランプで照らされたような場
っておられる読者なら,
「あー,演色性のことね」とお考
合は別にして,通常はどのような場合でも,同じ色の上
えになることだろう.演色性とは,物体の色をどの程度
着は同じ色に見えるからである.ここで「同じ色の上
正確に見せることができるかという,光がもつ性質をい
着」という表現を使ったが,この語法が意味するように,
うが,ここではこの演色性を念頭においているわけでは
色というものは物体に付属する属性,もう少し詳しくい
ない.演色性はもちろん重要だが,実は,色と光の間に
うならば,物体表面の反射率によって決まる属性である
は,もっと本質的で入り組んだ関係があるのである.本
といえる.
稿では,インターネットで検索をかければ出てくるよう
ところが光にも色はある.たとえば蛍光灯は白い光,
な色の知識の羅列ではなく,このまだ解かれていない問
白熱電球は黄色い光である.また自動車のインパネには,
題を中心に話を展開してみよう.
赤い光や黄色い光を発する LED が設置されている.そう
2. 色 と は 何 か ?
すると,色は光の属性であるともいえる.事実,後述す
るように,光の分光分布がわかれば光の色は正確に定義
読者の今日の上着は何色だろうか.紺やベージュとい
できる.
うオーソドックスな色だろうか.あるいは春らしく,山
したがって色は,物体表面の属性であり,かつ光の属
吹や浅黄といった色なのだろうか.どのような色であれ,
性である.この事実を踏まえると次のような推論が可能
それを購入する際にはかなり吟味をして色を決められた
となろう.上着の色のような物体表面の色は,照明光が
ことだろう.ではそのとき,晴れや曇りといった天候の
物体表面に当たり,そこで反射した光がわれわれの目に
入射して感じられるのだから,その反射光の光の色を測
定すれば,物体表面の色も定義できるだろう.そんな推
* 2
0
0
6年3月1
3日受付
50
2 横浜市緑区長津田町4259
1)東京工業大学総合理工学研究科(226―8
G3―1)
E-mail: [email protected]
Vol. 60, No. 5, 2006.
論である.
ところが,実際にその光を測定してみると,この推論
がまったく成り立たないことがわかる.同じ色の物体表
23
色の見え方,光の見え方
0.9
2.5
520
540
550
0.7
zλ
1.5
Yellowish
Green
0.6
1.0
yλ
Green
xλ
0.5
y
0.5
400
450
Bluis
h Gre
0.4
500
550
600
波 長(nm)
650
700
0.3
図1 XYZ の等色関数
490
h
enis
Gre
e
u
l
B
Blue
480
0.2
面で反射した光は,その分光分布が光源によってまちま
ちで,その結果,光の色はまったく異なったものとなる.
0.1
0
en
Blue Green
(3)
0.1
Greenish Yellow
Yellow
580
Orannge
Yellowish Orange
590
Orannge
Reddish Orange
Orannge
Orange
Orannge
Orange
600
Pink
610
Illuminant
620
“C”
630
Pink
Red
675
Purplish
Purplish
700―780
Pink
Red
Red Purple
Purplish
Blue 470
460
450
0
570
Purple
xλ
0
560
Ye
Gr llow
een
刺激値
530
0.8
2.0
Reddish Purple
Bluish Purple
0.2
ところがわれわれは,その物体を何度見てもやはり同じ
色に見える.このような,物体表面の色が光源の種類に
0.3
0.4
x
0.5
0.6
0.7
0.8
図2 xy 色度図(4)
かかわらず同じ色に見えるという現象を物体色の恒常性
といい,現在でもその発生機構が完全にわかっているわ
けではない.
単色光を三原色として使った等色実験の結果をもとに,
このようなことから,色の表現方法には二つの方法が
扱う量がすべて正となり,かつ原色の一つ
()
の等色関数
ある.一つは物体の色を表現する顕色系(けんしょくけ
が標準比視感度曲線と一致するように座標変換して求め
い)と呼ばれる方法で,もう一つは光の色を表現する混色
られたもので,光の色を刺激値 ,,で表す.図1に
系と呼ばれる方法である.次に両者の概要を紹介しよう.
示すのが三刺激値を求める際の等色関数で,光の分光ス
ペクトルが得られれば,各波長のエネルギー量をこの等
3. 光 の 色
色関数で重み付けして足し合わせることにより,刺激値 ,
光が眼を通して知覚されることはご存知だろう.眼の
,が算出される.刺激値の等色関数は,すでに述べ
大まかな原理はカメラと類似していて,カメラのフィル
たように標準比視感度曲線と一致するから,は光束と一
ムにあたる眼の結像面
(網膜)
には,1億個以上の視細胞が
致する.一方,光の量は で表現されてしまうわけであ
配列されている.視細胞には錐状体と杆状体という2種
るから,,は光としての量はもたない仮想的な刺激値
類があり,錐状体にはさらに,赤,青,緑の光に選択的
ということになる.そんなこともあって,通常はその色
に反応する3種類がある.われわれの色覚は,この3種
味を色度と呼ばれる と という数値に変換して表現す
類の錐状体が存在することによって生ずるが,色覚には
る(図2).
,は から次の式を用いて算出される.
よくわからない部分も多く,3種類の視細胞が受け取る
/ + + ),= (
/ + + )
=
(
情報は,視神経レベルでさまざまな変換が施されている
光の色は,このように,,
,という三つの数量で
といわれている.
示されるが,環境の色を考える際,光の色であっても大
しかし,3種類の錐状体からの情報が色覚を発生させ
きさをもつ発光面を考えることが普通であるから,通常
ることは間違いないから,3種類の光をうまく選択すれ
の場合 は輝度に対応し,光の色は輝度と色度 ,で表
ば
(光の三原色),すべての色はその三原色の混合比で表
されることが多い.
現できる.これを利用して体系づけられた表色系が混色
一方,光源の色を考えるとき,色をそれほど厳密に表
系である.
現する必要がないため,通常
(相関)
色温度を用いて表さ
代表的な混色系は 表色系で,CIE
(国際照明委員
れる.色温度とは標準黒体の絶対温度のことで,ケルビ
会)
が定めた表色系である.表色系は,波長が 700.0
ン
[K]
で表され,色温度の低い光は赤っぽく,色温度の
−9
nm,546.1 nm,435.8 nm
(nm:ナノメータ,10 m)
の
24
高い光は青っぽい.
自動車技術
色の見え方,光の見え方
他の表色系,たとえば NCS 表色系
(Natural Color System)
白
White
や,PCCS 表色系などが用いられることが多い.
5. 均 等 知 覚 空 間
このように,表色系には混色系と顕色系の二つが別々
10YR
7/10
5R7/8
5YR
6/12
に存在する.しかしもちろん,多くの研究者によって,
混色系から顕色系へのアプローチが試みられてきた.
5R6/10
10R
5/12
まず,表色系の 色度図が色感覚と合っていない
5R5/12
5PR
4/12
5R4/14
5R2/10
という問題意識から,最初の検討が展開された.具体的
にいえば,
色度図が均等でないこと,すなわち色度図
上の2点の距離と色の違いの感覚が異なることが問題と
10RP4/10
Black
黒
され,さまざまな試行錯誤の結果,CIE1960 UCS 色度図
が提案された.UCS とは Uniform chromacity scale の略
(4)
図3 マンセル色立体
で,下記の変換式を用いて求められる ,をプロット
すると,その色度図上の2点間の距離は感覚的な色の違
4. 物 体 の 色
いとかなり一致する.
/ −2+12+3)
/ −2+1
=
4
(
,
=
6
(
2+3)
物体の色の表色系すなわち顕色系の代表例はマンセル
UCS 色度図は 色度図を変換したものだが,物体色
表色系である.すでに述べたように,顕色系は色の現象
には色味だけではなく明度がある.そこで明度を入れた
的な見え方,言い換えればいつも体験する見え方に基づ
均等知覚空間が提案された.二次元で表現される色度図
いてつくられた体系で,色の恒常性を仮定した表色系と
に明度を加えて三次元ということから,均等知覚「空
考えることができる.繰り返しになるが,色の恒常性と
間」という.均等知覚空間にはいくつかあるが,その代
は,照射されている光が変化しても,物体の反射特性が
表的なものは CIE1976L* a* b*で,次の式で表される.
同じであれば同じ色に見える傾向のことをいう.
1/3
16
(/)
−16
*=1
マンセル表色系では,色相(Hue)
,明度
(Value),彩度
1/3
1/3
*=5
00
[(/)
−
(/)
]
(Chroma)という三つの属性を用いて色を表示する.この
1/3
1/3
*=2
00
[(/)
−
(/)
]
表色系でさまざまな色を位置づけると,図3に示すよう
ここで,,,は標準光の下の資料の三刺激値で,
な立体(マンセル色立体)
となる.色相は円周方向で,明
,,は同じ標準光の下の完全拡散反射面(反射率が
度は中心軸上下方向で,また彩度は中心軸からの放射方
1
0
0% でどちらから見ても同じ輝度となる反射面)
の三刺
向で示される.色相は赤
(R)
,黄赤
(YR)
,黄
(Y),黄緑
激値である.
(GY),緑(G),青緑
(BG)
,青
(B)
,青紫
(PB)
,紫
(P)
,
こ の ほ か に,色 の 見 え の モ デ ル(color appearance
赤紫(RP)の10色相を基本とし,さらにそれぞれを10分
model)という成果もあり,これは CIECAM02 と呼ばれ
割した1
00色相で全色相を表すが,一般には40色相がよ
ているが,ここではその詳細は紹介しない.ご興味がお
く用いられる.
ありの読者は JCIE
(日本照明委員会)
に連絡すると出版物
明度は理想的な白を10,理想的な黒を0とし,その間
が手に入るのでそちらを参照願いたい.
を等間隔に分割した数値で表す.彩度は中心軸から遠ざ
CIE1976L* a* b*はマンセル表色系での色表示とよく対
かるほど鮮やかになるように位置づけられ,あくまでも
応している.実はそれを目標に変換方法を検討したので,
心理的に等間隔になるように尺度が構成されている.ま
これはある意味では当然のことではあるのだが,式から
た中心軸は彩度0であり,しかも色相の区分もなく,い
わかるように,,,三刺激値から,マンセル表色系
わゆる無彩色と呼ばれる白,灰,黒の系列が位置づけら
と対応関係にある数値 * * *を計算できる.そうす
れている.
ると,この表色系によって二つの表色系,すなわち混色
マンセル表色系は JIS でも採用されている表色系だが,
系と顕色系が統合されたのではないかという印象も受け
色彩デザインでは,色の等間隔性よりも,軽さや重さ,
る.ところが実はそうではない.なぜなら,変換式に ,
強さといった色の感覚的な側面が重要であることから,
,が含まれていることからわかるように,*
* *
Vol. 60, No. 5, 2006.
25
色の見え方,光の見え方
の値は ,,の反射率から求められているからである.
熱電球をつけたとき,最初は黄色っぽい光だなと感じて
すなわち,光の色ではなく光の反射率を使って表現して
いても,その部屋でずっと過ごしているうちに光の色を
おり,物体色の表色系を超えるものではない.具体的に
まったく感じなくなる.われわれの感覚器官には,外か
いえば,この式からでは,例として挙げたインパネの LED
らの刺激に応じて感受性を変化させ,変化だけを検出で
の赤い色の見え方を表現することはできない.なぜなら,
きるようにするという特性があって,この感受性が変化
LED からの光は発光している光であって,反射率を求め
する過程,あるいは変化した状態を順応と呼ぶ.この例
ることは原理的に不可能であるからである.もちろん,
のように,白熱電球で照らされた環境に順応した状態で
後述の順応という概念を使って,無理やり ,,を
は,電球と同じ程度に黄色い光を発する LED は,色味
決めれば表現できないことはないが,現実の見え方と対
を感じず白く明るく光って見えることになる.
応するという保証はない.
一方,このような状況を別の言葉を使って表現するこ
6. 光の色の配列と物体色
ともできる.まず,部屋が白い蛍光灯で照らされている
ときに,前出の黄色い光を発する LED を点灯した場合
このように考えていくと,光の色と物体の色がどうに
を考えてみると,このとき LED は黄色く見える.ここ
も統合できないようにも思える.しかしご自分の生活を
で,LED の光って見える面を対象領域,視野内のその他
よく振り返ってほしい.実は,われわれは毎日,光の色
の領域を背景領域と考えれば,LED が黄色く光って見え
が物体の色に変換されたモノを見て生活しているのだ.
るのは,背景領域の光と対象領域の光の間に対比がある
そのモノとはテレビ画面である.
からであると表現できる.このとき,明るさの対比があ
テレビやコンピュータの画面には,さまざまな物が映
るために明るく光って見え,色味の対比があるために黄
っている.たとえば露天商がリンゴや野菜を売っている
色く見える.次に,部屋が白熱電球で照らされ,その光
映像などを見た覚えがあるだろう.このとき,画面に映
に眼が順応したときに LED を点灯したと考えると,対
ったそのリンゴははっきりと物体に見え,その鮮やかな
象領域である LED の発光面と背景領域の間に明るさの対
赤い色がはっきり知覚できる.この感覚はどう考えても物
比はあるが,色味については対比がないため,ただ白く
体色の感覚である.これに対して異を唱える人はいまい.
光って見える.
ところが,ご存知のように,テレビ画面の表面には R,
このように考えると,時間的な変化を考えない場合,
G,B の発光体が目に見えないほど細かく整然と配列さ
すなわちその環境に順応してしまっているという条件の
れていて,一つ一つの発光体が画像情報に合わせて光を
下では,順応しているから色味を感じないという表現と,
発しているだけである.この原理から考えると,テレビ
対比がないから色味を感じないという表現は同じ状況を
画面では光の色しか知覚できないはずだが,われわれは,
表現しており,対比はその状況を数量的に表現できるこ
画面に映ったリンゴに物体を感じ,自分の机の上にある
とから,表現方法として適切であるといえそうだ.
リンゴと本質的に同じ物体であると感じる.もし画面上
に,机の上にあるリンゴとその周辺の輝度・色度分布を
正確に再現できれば,見え方のまったく違わない画像が
8. 分布の特性を表現するコントラスト・
プロファイル できるはずである.
これまで述べたように,ある小領域と周辺との対比
(コ
すなわち,小さい領域から発する光が二次元的に配列
ントラスト)の状況を表現することが,光の色が二次元的
された場合,光の色が物体の色に変換されるということ
に配置された状況を記述する,最もシンプルな方法であ
である.しかしもちろん,物体を感じない画像をつくり
る.このような考え方で展開した方法が,手前味噌で恐
出すことも可能だから,物体の色が生ずる条件を整理し,
縮だが,筆者の研究テーマの一つであるコントラスト・
その際の光の色が配列されている状態を何らかの形で定
プロファイル法である.この方法は,コントラストのプ
量化できれば,光の色と物体色を統合できるという可能
ロファイル,すなわちコントラストのありようを定量的
性がある.
に記述する方法で,その大まかな概念は次のようなもの
7. 順 応 と 対 比
である.
コントラストを考えるとき,最も大きな問題が,対象
この可能性を検討する際まず考えなければならないの
領域と背景領域をどのように定めるかという問題である.
は,順応という視覚系の反応特性である.夕刻自宅で白
この問題に対してコントラスト・プロファイル法では一
26
自動車技術
色の見え方,光の見え方
白:重み付けが正,黒:重み付けが負,灰:計算対象外
狭い(小)
広い(大)
図4 コントラスト・プロファイルの概念
つに定めないとする.ある点とその周辺とのコントラス
周囲の対比の状況は,トータルとしてみると場所によら
トには,その点を中心とした針の先端ほどの小さな領域
ずとても似ている.
とその周辺領域とのコントラストもあるし,親指くらい
そしてこの論理を展開すると,LED の発光面の光の色
の領域とその周辺領域とのコントラスト,あるいは大き
と周辺との対比の状況をコントラスト・プロファイルを
な風船くらいの領域とその周辺とのコントラストもあると
用いて表現すれば,その色の見えは表現できることにな
考える.要するに,コントラストは大きさの関数として
るのである.まだまだ先は長いが,論理の破綻はないと
表現されるもので,一つに決まらないとする(図4)
.
思う.皆さんはいかがお考えになるだろうか.
では,このような方法で分布の状況を説明するとして,
9. お わ り に
それが光の色と物体の色をどのようにつなぐのか.ここ
までしたり顔で話を展開してきて恐縮だが,それについ
色はわれわれの身近に存在し,通常の視機能をもった
てはまだ明確に答えることはできない.ただ筆者なりの
方なら,色を感じるのに努力はいらない.そのため,ほ
考えはあるのでそれを説明してみよう.
とんどの読者にとっては,色知覚によくわからない不思
まず,物体の色はいつも同じ色に見えるのではなく,
議な性質があるという事実は思いもよらないことだった
同じような色,近い色に見えると考える.これまでの視
ろう.しかし,色をデザインしたり検討したりしようと
覚研究者は,物体色を色票に置き換えて研究していたが,
すると,この問題にすぐぶつかるから,何となくしっく
もっと広く環境の色を考えてみれば,同じ反射率のもの
りしないという経験をもっている方は,案外多いのかも
がいつも同じ色に見えるわけではないからである.たと
しれない.本稿をきっかけに,色の見え方の問題に興味
えば,本稿の初めの部分で取り上げた上着を考えてみよ
をもっていただければ幸いである.
う.上着は端から端まで一様な色に見えるだろうか.光
参 考 文 献
がよく当たった部分と陰になった部分を,感覚だけに意
識を集中して眺めてみると,少なくとも明るさが変わっ
て見えるはずである.あるいは,屋外の太陽光の下にあ
る上着を,屋内の暗い部屋から見ると,上着は明るく鮮
やかな色に見えるはずである.反射率が同じなら同じ色
に見えるのではない.同じような色に見えるのである.
(1) 日本色彩学会編:新編色彩科学ハンドブック
(第 2 版),東京大学
出版会(1998)
(2) 中村芳樹:光環境における輝度の対比の定量的検討法,照明学会誌,
Vol. 844,No. 8A,p. 522―528
(2000)
(3) 乾正雄:建築の色彩設計
(4) 藤井修二編,中村芳樹著:建築環境のデザインと設備,市ヶ谷出版
□フェース
次に,同じ反射率の物体が同じような色に見えるのは,
1956年生まれ.1986年東京工業大学大学院修
コントラスト・プロファイルで表現される,周辺との対
士課程社会開発工学専攻修了.東京工業大学
大学院助教授.博士(工学).専門は視環境評
比状況がとても似ているからであると考える.たとえば,
価,環境心理学.
よく行われる心理実験では,色票をグレーの紙の上に乗
せて眺めるから,色票とグレーの紙との間のコントラス
トはまったく同じであるし,上着の周囲には必ず白い壁
や机,さまざまな家具が存在しているから,上着とその
Vol. 60, No. 5, 2006.
中村芳樹
27