プログラム・抄録集 - 株式会社プロコムインターナショナル

∼今こそラパヘル手術手技を極めよう∼
プログラム・抄録集
日 時
2012 年 9 月 15 日(土) 10: 00∼16 : 30
会 場
愛知県産業労働センター『ウィンクあいち』10階 会議室
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38 TEL:052-571-6131
当番世話人
早川 哲史(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院 副院長)
第1回
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会
∼今こそラパヘル手術手技を極めよう∼
プログラム・抄録集
会 期 2012年9月15日
(土)
会 場 愛知県産業労働センター『ウィンクあいち』10階
当番世話人 早川
会議室
哲史(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院 副院長)
第一回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会
の開催にあた っ て
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会 代表世話人
第一回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会 当番世話人
早川 哲史 医療法人豊田会
刈谷豊田総合病院 副院長
このたび、顧問の諸先生方のご指導、ご助言と幹事の先生方の多大なるご協力をいただきまして日本腹腔
鏡下ヘルニア手術手技研究会 ( ラパヘル研究会 ) を発足させていただくことになりました。本研究会は、腹
部ヘルニアに対する腹腔鏡下治療に関する知識と実際の経験を会員の先生方と共有することで、腹腔鏡下ヘ
ルニア治療のさらなる進歩、普及を図ることを目的とした研究会です。
昨今ではラパコレは当然ながら胃癌、大腸癌に対する内視鏡外科手術も普及し、認知されて参りました。
2012年4月の保険点数の改定により腹腔鏡下ヘルニア修復術の保険点数がアップされたこともあり、多くの
一般外科医が本手術に取り組む環境も整ったといえます。一方、腹腔鏡下ヘルニア修復術は内視鏡外科手術
の中でも、ある特殊な手術操作やテクニックが必要となります。欧米では鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下
手術の再発率が10%以上とする論文の報告もありますが、本邦では再発率10%のヘルニア治療法など許容さ
れません。そこでこの度、手術手技の映像を利用した勉強会として日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会を
発足させる運びとなりました。腹腔鏡下ヘルニア修復術 ( ラパヘル ) の症例数が激増している今こそ「真の
ラパヘル手術手技とは何か?」をしっかりと認識し、討議する時期が訪れたと思われます。
今回、第一回腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会の当番世話人も同時に務めさせていただきます。この研
究集会はすべてビデオ映像による研究集会であり、一会場のみのビデオ発表をすべての参加者が共有する形
式で行います。この研究会に参加された先生方が、研究会終了後も同じ映像を共有して議論を重ねていただ
きたいと願っています。各テーマで 2 名の先生方にノーカット 7 分間のビデオプレゼンテーションをお願い
致しました。学会では一般的にわかりやすい場面のみをカット編集するセッションが多く見られ、手術手順
は理解できても「実際にうまくいかない点は何か?」、
「自分がうまくできない部分を他のエキスパートの先
生方はどのようにしているのか?」、
「一般にどのようなスピードで手術が行われているのか?」などの小さ
な疑問点が沢山あると思われます。本研究会は決してチャンピオンビデオではなく、いつものあるがままの
手術手技の 7分間ノーカットビデオ発表に対して、座長と指定討論者の先生方との歯に絹を着せない総合討
論形式で進めて参りたいと考えています。
本研究集会は単なるビデオ発表のみの小さな研究集会ですが、現在そして未来の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修
復術を担う若い先生方の手術手技の定型化に貢献し、決して起こしてはいけない合併症を防止し、手術手技
上の未熟さから起こる再発を防止することに寄与できればと思っています。日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技
研究会を会員の先生方にさらに育てていただきたいと考えております。今後とも何卒ご支援、ご協力をどう
ぞよろしくお願い申し上げます。
1
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会 役
員
顧 問
冲永 功太 日本ヘルニア学会 名誉会長
北野 正剛 日本内視鏡外科学会 理事長
木村 泰三 富士宮市立病院 名誉院長
柵瀨信太郎 日本ヘルニア学会 理事長
徳村 弘実 東北労災病院 副院長
松本 純夫 東京医療センター 病院長
代表世話人
早川 哲史 豊田会刈谷豊田総合病院 副院長
世話人(幹事)
植野 望 高槻病院 外科・消化器外科部長
江口 徹 原三信病院 副院長
川原田 陽 斗南病院 外科・消化器外科科長
重光 祐司 膳所病院 副院長
中川 基人 平塚市民病院 外科部長
能城 浩和 佐賀大学医学部附属病院 一般・消化器外科教授
和田 則仁 慶応義塾大学病院 一般・消化器外科助教
和田 英俊 浜松医科大学医学部附属病院 一般外科講師
[ あいうえお順 ]
2
会場までのご案内
至大阪
ロータリー
桜通口
JRセントラル
タワーズ
太閤通口
JR名古屋駅
大名古屋ビルヂング
ジュンク堂
桜通
ユニモール地下街 5番出口
5
名古屋ビルディング
キャッスルプラザ
ホテル
ミッドランド
スクエア
ウインクあいち
近鉄
WINC AICHI
名鉄
名古屋三井ビルディング
錦通
モード学園
中村署
広小路通
至東京
名鉄
レジャック
愛知県産業労働センター
ウィンクあいち
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38
TEL:052-571-6131
❏ 電車をご利用の場合(JR・地下鉄 ・名鉄 ・近鉄)名古屋駅より
• JR 名古屋駅桜通口から ∼ ミッドランドスクエア方面 徒歩 5 分
• ユニモール地下街 5 番出口 ∼ 徒歩 2 分
❏ 東海道新幹線をご利用の場合
• 東 京 ∼ 約 97 分
• 新大阪 ∼ 約 51 分
❏ 飛行機をご利用の場合
中部国際空港 ( セントレア ) ∼ 約 28 分 ( 名鉄空港特急利用 )
※名古屋駅発各駅への所要時間は、乗り換え・待ち時間を含みません。
また、時間帯により多少異なります。
3
会場案内図
10F
小会議室 C
1009
小会議室 B
1008
クローク・本部
世話人会
小会議室 A
1007
総合受付
展示・ドリンク
小会議室 A
1006
口演
会場
大会議室
1001
小会議室 C
1005
小会議室
1004
中継
会場
中会議室
1003
大会議室
1002
4
第1回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会
発表形式のご案内
1. ご発表に当たりましては原則、ご自身のPCをご持参下さい。
事務局側でも Window7 の PC を用意しておりますが、編集方法、ビデオの形式等の関係で再生できない
場合がございます。
PCをご持参できない場合は、事務局側でデータのチェックをいたしますので平成24年9月10日(月) まで
に下記あて、DVDで事前に送付ください。
[送付先]
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 東京ファッションタウンビル東館9階
株式会社プロコムインターナショナル内
第1回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会運営担当
2. ビデオに関しましてはメディアプレーヤーで再生できるような形式で作成・事前確認をお願いいたし
ます。
3. メディアプレーヤーの操作方法 (スタート、ストップ、巻き戻し、先送り操作等) を事前にご確認くださ
い。念のため会場のPCセンター (ウインクあいち10階1006会議室) におきましてもオペレータからご説
明申し上げます。
4. 演者の方は全員ご発表前に必ずPCセンターで発表データのご登録および出力の確認をお願いします。
5
参加者へのご案内
参加受付
日 時:9月15日(土) 9:00∼
場 所:『愛知県産業労働センター ウインクあいち』10階 (1006)
参加費:5,000円 (当時受付)
受付にて参加費を現金でお支払いください。ネームカードに所属・氏名をご記入の上、会期中は必ず胸に明
示してください。
尚、ネームカードをお持ちでない方、参加登録をお済みでない方の会場への立ち入りは固くお断り致します。
【研究会入会のお手続き法】
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会のホームページ
(http://www.procomu.jp/lapaher/) からご入会頂けます。
※学会当日の入会も受け付け致します。
※会費は不要です。
6
プログラム
10 : 00∼10 : 05
開会の辞
当番世話人・代表世話人:早川 哲史 刈谷豊田総合病院 外科
セッション1[ TAPP ]
座長: 能城 浩和
中川 基人
10 : 05∼10 : 55
佐賀大学医学部 消化器外科
平塚市民病院 外科
1. TAPPにおける左鼠径ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
演者1 : 和田 治(北里研究所メディカルセンター 外科)
演者2 : 野澤 雅之(刈谷豊田総合病院 外科)
2. TAPPにおける右鼠径ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
演者1 : 山下 公裕(富士宮市立病院 外科)
演者2 : 植野 望(高槻病院 外科)
セッション2[ TEP ]
座長: 江口 徹
植野 望
10 : 55∼11 : 45
原三信病院 外科
高槻病院 外科
1. TEPにおける腹膜剥離の問題点と注意点(PTBバルーン不使用)
演者1 : 池田 義博(倉敷成人病センター)
演者2 : 朝蔭 直樹(柏厚生総合病院 外科)
2. TEPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
演者1 : 山口 拓也(耳原総合病院 外科)
演者2 : 川原田 陽(KKR札幌医療センター斗南病院)
ランチョン教育セミナー (株式会社メディコン)
12 : 00∼12 : 45
『鼠径部ヘルニア手術における重要な解剖と神経走行 −TAPP手術のピットホールとは?−』
座長 : 冲永 功太(帝京大学医学部 外科)
演者 : 早川 哲史(刈谷豊田総合病院 外科)
世話人会
12 : 50∼13 : 20
ミニセミナー (株式会社メディカルリーダース)
13 : 00∼13 : 15
『私のTAPP手術』
演者 : 齊藤 健太(名古屋東部医療センター 外科)
7
セッション3[ 腹膜剥離 ]
座長: 徳村 弘実
和田 英俊
13 : 30∼14 : 20
東北労災病院 外科
浜松医科大学 一般外科
1. TAPPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
演者1 : 小野田貴信(KKR札幌医療センター斗南病院)
演者2 : 中川 基人(平塚市民病院)
2. TEPにおける腹膜剥離の問題点と注意点(PTBバルーン使用)
演者1 : 川中 博文(福岡市民病院 外科)
演者2 : 和田 寛也(済生会八幡総合病院 外科)
セッション4[ TAPP ]
座長: 木村 泰三
柵瀨信太郎
14 : 20∼15 : 35
富士宮市立病院 外科
聖路加国際病院 外科
1. TAPPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
演者1 : 小森 徹也(JA知多厚生病院 外科)
演者2 : 和田 英俊(浜松医科大学 一般外科)
2. TAPPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
演者1 : 川上 義行(福井赤十字病院 外科)
演者2 : 早川 哲史(刈谷豊田総合病院 外科)
3. TAPPにおける腹膜閉鎖の注意点と閉鎖法
演者1 : 亀井 文(メディカルトピア草加病院)
演者2 : 佐藤 怜央(刈谷豊田総合病院 外科)
セッション5[ TEP ]
座長: 松本 純夫
重光 祐司
15 : 35∼16 : 50
国立医療センター 外科
膳所病院 外科
1. TEPにおける内鼠径輪処理時の注意点と処理法
演者1 : 若杉 正樹(大阪警察病院 外科)
演者2 : 和田 則仁(慶応大学 一般 ・ 消化器外科)
2. TEPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
演者1 : 小根山正貴(川崎幸病院 外科)
演者2 : 江口 徹(原三信病院 外科)
3. TEPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
演者1 : 武内 裕(健康保険南海病院 外科)
演者2 : 重光 祐司(膳所病院 外科)
閉会の辞
当番世話人・代表世話人:早川 哲史 刈谷豊田総合病院 外科
8
指定討論者 [ あいうえお順 ]
植野 望(高槻病院 外科)
江口 徹(原三信病院 外科)
川原田 陽(KKR札幌医療センター斗南病院)
重光 祐司(膳所病院 外科)
中川 基人(平塚市民病院 外科)
能城 浩和(佐賀大学医学部 消化器外科)
和田 則仁(慶応大学 一般 ・ 消化器外科)
和田 英俊(浜松医科大学 一般外科)
9
日程表
大会議室
10:00
1001
大会議室
1002
小会議室A
1006
小会議室A
1007
10:00∼10:05
開会の辞
10:05
セッション 1
[ TAPP ]
中継
座長:能城 浩和・中川 基人
11:00
10:55
10:55
セッション 2
[ TEP ]
中継
クローク
本部
座長:江口 徹・植野 望
11:45
12:00
12:00
ランチョン教育セミナー
『鼠径部ヘルニア手術における重要な解剖と
神経走行−TAPP手術のピットホールとは?−』
中継
座長:冲永 功太 演者:早川 哲史
12:45 共催:株式会社メディコン
13:00
12:50
13:00
ミニセミナー『私のTAPP手術』
13:15
演者:齊藤 健太 共催:株式会社メディカルリーダース
世話人会
総合受付
展示
13:30
ドリンク
セッション 3
[ 腹膜剥離 ]
14:00
13:20
中継
座長:徳村 弘実・和田 英俊
14:20
14:20
セッション 4
[ TAPP ]
15:00
中継
クローク
座長:木村 泰三・柵瀨 信太郎
本部
15:35
15:35
セッション 5
[ TEP ]
16:00
中継
座長:松本 純夫・重光 祐司
16:50
16:50
閉会の辞
10
セッション1[ TAPP ]
座長:能城 浩和・中川 基人
1. TAPPにおける左鼠径ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
TAPPにおける左鼠系ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
北里大学北里研究所メデイカルセンター病院 外科
和田 治、高橋 禎仁
当院における成人鼠系ヘルニアの手術法としては,これまでに前方アプローチによる Lichtenstein 法,
メッシュプラグ法や腹膜前腔アプローチによる Kugel 法等を標準術式として行ってきたが,2010 年から
TAPP法も導入し始めた.TAPP法では気腹圧を利用して,腹腔内からヘルニア病変を観察できる為に,ヘ
ルニアの診断を確実に行う事ができ,また創も小さく術後疼痛が少ないことや整容性の高さ,感染が少ない
など様々な利点がある.しかし手術手技が難しく,当院でも 2010 年の導入当初は TAPP 法の症例数はごく
限られていたものであった.最近になってから,従来法に比べてこれらTAPP法の利点に再度注目し,徐々
に症例数も増加してきている.
左鼠系ヘルニアの腹膜切開の開始位置としては,内側臍ヒダの中央側では膀胱損傷を起す可能性があるた
めに,これより外側で腹膜切開を開始するように心がけている.またヘルニア門の内側上方では操作ポート
が右側であり,創の剥離が難しい為にヘルニア門の下方から剥離を開始することが多い.TAPP法では腹腔
鏡により,鼠蹊部の膜構造を正確に確認できるという利点があり,正しい剥離層でメッシュを展開する事で
術後疼痛や合併症の減少になると考えられる.
今後も,症例を重ねていき,TAPP法の手術手技の向上を目指していきたい.
TAPPにおける左鼠径ヘルニア腹膜切開開始位置と注意点
刈谷豊田総合病院 外科
野澤 雅之、早川 哲史、北上 英彦、田中 守嗣、清水 保延、山本 稔、小出 亨、
森本 守、中村 謙一、牛込 創、佐藤 怜央、青山 佳永、加藤 知克、早川 俊輔
左鼠径ヘルニアの腹膜開始位置は I 型、II 型ともに内側臍襞と輸精管の間としている。腹膜切開はすべて
超音波凝固切開装置で行なっている。左手の鉗子で内側臍ヒダを牽引し輸精管の内側で腹膜および腹膜前筋
膜深葉 (以下、深葉) を同時に切開すると容易に腹膜前腔 (Bogros腔) に入ることができる。また、腹膜の切
開に際して腹膜鞘状突起の確実な切離を心掛ける。輸精管および精巣動静脈前面の深葉を温存しつつ外側に
向けて腹膜を切開し内鼠径輪の下半分の切開が終了する。内鼠径輪の背側から外側にかけてラパロ用ガーゼ
で腹膜と深葉を剥離しておくとメッシュを展開するスペースを確保できるだけでなく、腹膜の可動性が良く
なり後の内側へのアプローチが容易になる。最初に確認した腹膜前腔から内鼠径輪上縁に沿って上半分の腹
膜を切開すると内鼠径輪を全周性にくり抜くことができる。このとき下腹壁動静脈の前を横切ることになる
が深葉を意識して切開していけば、絶対に下腹壁動静脈を損傷することはない。
左鼠径ヘルニアの腹膜切開のポイントは、①最初に腹膜前腔をしっかり確認する、②内鼠径輪下半分の腹
膜切開時は深葉の温存を意識する、③内鼠径上半分の腹膜切開時には深葉の切開を意識する、ことである。
層を意識することで不必要な腹壁の破壊を避けるだけでなく出血のない手術操作が可能となる。
11
セッション1[ TAPP ] 座長:能城 浩和・中川 基人
2. TAPPにおける右鼠径ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
TAPPにおける右鼠径ヘルニア腹膜切開の開始位置と注意点
富士宮市立病院 外科
山下 公裕、川辺 昭浩、高梨 裕典、甲賀 淳史、水野 智哉、矢島 澄鎮、奥村 拓也、
礒垣 淳、鈴木 憲次、木村 泰三
当院では1997年9月より腹腔鏡手術下鼠径ヘルニア手術 (TAPP) を導入し、2012年4月までに333症例に
同手術を施行している。TAPPにおける腹膜切開はまず内鼠径輪外側より開始している。そこから内側は内
側臍ひだ直上付近まで切開する。切開線は短ければ後の腹膜閉鎖の時間が短縮できるが、腹膜前腔の剥離の
際などの視野展開が難しくなるため適宜切開する長さを調節していく。外鼠径ヘルニアでヘルニア sac が翻
転可能な場合にはsacを切除するかたちで腹膜を切開するが、ヘルニアsacが大きく翻転不能な場合にはsac
を残し、上下縁に沿うように切開していく。その際ヘルニア sac を少し引きずりだした位置で切開していく
と、腹膜の閉鎖の際に縫合しやすくなる。内鼠径ヘルニアの場合には外側からの切開線を直線的につなげて
いく。腹膜切開に用いるdeviceは基本的には鋏鉗子を用いて切開する。超音波凝固切開装置やバイポーラな
どは熱損傷により腹膜の収縮してしまうことより炎症性に肥厚している腹膜を切開する以外にはほとんど
用いていない。実際に鋏鉗子で剥離しながら腹膜1枚にして切開していくことで手術操作の妨げとなるよう
な出血はほとんど認めることはない。
当科におけるTAPP法の腹膜切開 ・ 腹膜前腔到達時の工夫 :
膀胱前腔到達先行アプローチ
社会医療法人愛仁会 高槻病院消化器一般外科
植野 望
当科ではTAPP法を鼠径ヘルニアに対する治療の第一選択術式としており、2009年4月から2012年8月末
までに286症例に施行した。
TAPP法手術手技の骨子は、ヘルニア門を中心とした腹膜前腔を充分に展開し、ヘルニア門ならびに脆弱
化した横筋筋膜を確実にシート状メッシュで補強することであるが、加えて、腹膜前筋膜深葉を腹壁側へ温
存し深葉と腹膜との間隙にあえてメッシュを留置することにより、脈管や神経に直接メッシュが接触するこ
とを回避できる。
我々は、この部位への到達の際に、内側臍靭帯を充分に背側へ牽引し、必ずその外側で腹膜ならびに深葉
をほぼ一括で切開し、膀胱前腔を展開することから始める。この時点で、膀胱は腹膜ならびに深葉とともに
背側へ落とした状態となり、確実に術野から排除できる。膀胱前腔を充分に開放し、腹膜前筋膜浅葉に覆わ
れたCooper靭帯ならびに恥骨結節を確認した後に、外側へ向けて腹膜のみを深葉から剥離し、メッシュ装
着のスペースを確保する。
腹膜前腔へのアプローチの際のピットホールに膀胱損傷が挙げられるが、上記の操作を最初に行うことに
より回避できる。
膀胱前腔到達を先行させるアプローチのコツは、内側臍靭帯を充分に牽引することにより膀胱を腹腔側へ引
き寄せ、さらに腹壁側下の腹壁動静脈などの脈管から解離させることにより、安全に切開できることである
と考えている。
12
セッション2[ TEP ] 座長:江口 徹・植野 望
1. TEPにおける腹膜剥離の問題点と注意点(PTBバルーン不使用)
TEPにおける腹膜剥離の問題点と注意点(PTBバルーン不使用)
倉敷成人病センター
池田 義博
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、脆弱部を後方から補強する術式であり、術中に確実に診断ができ、鼠径
部ヘルニアの発生部位である myopectineal orifice (MPO) を後方から被覆し補強できるため、解剖学的見
地からも合理的手術であると考える。
当院では2010年5月、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を導入した。また2011年8月から単孔式腹腔鏡下鼠径
ヘルニア根治術 (SILS-TEP法) を導入し、現在まで55例に施行してきた。
当院の SILS-TEP 法はプラットホームにラッププロテクターと手術用グローブを用いる簡便な方法であ
る。臍を2cm縦切開し、白線に至る。白線を臍輪から0.5cm尾側に離し真正中で切開する。横筋筋膜・腹膜
前筋膜浅葉間を直視下で剥離し、Retzius腔に至る。下腹壁動静脈を同定した後、浅葉を開放しメッシュを
展開できる十分な範囲を確保する。ヘルニア嚢を慎重に剥離し途中で切離せず脱転する。メッシュはBard®
3D Mesh (L) を用い固定にはBard® Permafixを用いている。
本術式は膜構造を意識しながら施行することが肝要であり、MPO を適切に補強する基本に則ることによ
り整容性にも優れ、術後再発も限りなくゼロに出来ると考える。
Retzius腔とはどこか? −正中アプローチTEPにおける進入経路の解剖−
柏厚生総合病院総合病院
朝蔭 直樹
我々はTANKO-TEPを白線切開による正中アプローチで行っています。経腹直筋前鞘アプローチでは下腹
壁動静脈を損傷する危険性があり、横筋筋膜を突破してRetzius腔に進入することになってレイヤーの認識
が難しくなります。正中アプローチなら一気にRetzius腔に通じるスペースに進入可能で出血もありません。
では、我々が正中アプローチで到達するRetzius腔とはどこでしょうか?腹膜前筋膜浅葉と深葉は膀胱の
腹側にあり、Retzius腔とは浅葉と深葉に挟まれた間隙すなわち腹膜前腔?と表現されていることがしばし
ば見受けられますが、はたして本当にそうなのでしょうか?
佐藤の示した骨盤内解剖図から、浅葉は横筋筋膜・膀胱下腹筋膜間に存在し、深葉は膀胱下腹筋膜・腹膜
間を尿膜管を包んでさらに膀胱周囲を包み込むような結合組織層であることがわかります。つまりRetzius
腔とは横筋筋膜と浅葉との間に広がる疎なcavityであり、浅葉・深葉間のいわゆる腹膜前腔ではないという
ことが理解できます。
我々の行っているTANKO-TEP進入経路の解剖をまとめると、
① 臍直下白線・横筋筋膜を切開進入すると、横筋筋膜・腹膜間に臍膀胱前筋膜(膀胱下腹筋膜)と尿膜管
が存在しています。
② 横筋筋膜背側を恥骨に向かって進むと、膀胱腹側の横筋筋膜・浅葉間のRetzius腔に到達します。
③ この時外側縁は下腹壁動静脈に沿った横筋筋膜・浅葉の癒合線にあたります。
④ ランドマークである下腹壁動静脈根部から精索方向へ浅葉を突破し腹膜前腔に進入することになります。
13
セッション2[ TEP ]
座長:江口 徹・植野 望
2. TEPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
TEPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
耳原総合病院 外科
山口 拓也
症例 57歳 男性 両側鼠径ヘルニア (右I-2, 左II-1)
体位は仰臥位で両上肢は体幹につける。術者はヘルニア病変の対側にたち、カメラ助手は術者の反対側に
たつ。臍部に縦に2cm程度の切開をおき、腹直筋前鞘を1cmほど縦に切開。腹直筋を正中から1枚の薄膜を
つけて、外側に金鉤で牽引。腹直筋背面と腹直筋後鞘との間を剥離。長めの金鉤で下方にむかって腹直筋を
垂直方向につり上げる。この状態で、内視鏡カメラを金鉤の下を沿わして 腹直筋後鞘の前面また正中線に
平行にカメラポートの入る空間を作る。( このとき実は腹膜を破っています ) 10mm カメラポートを挿入し
10cmH2Oで気腹を行い、恥骨結合のやや外側に向かう。この際、腹直筋後鞘に薄い膜を残し、腹直筋後面
にもひと膜かぶったような層を狙いながら恥骨後面へと向かう。剥離が少しすんだ段階で恥骨上 3 横指に
5mmポートを挿入。さらに臍部との中点あたりに、もう1本5mmポートを挿入する。このあとは、操作ポー
トよりツッペル鉗子や短腸鉗子を用いて先ほどの気腹で生じたアワアワの層を上下左右にひろげながら膀
胱前腔に到達。クーパー靭帯を見いだし、外側に外腸骨動静脈の拍動やIEVが膜越しにみえる。内鼠径輪の
上方から腹膜縁をもとめるようにする。( 外鼠径ヘルニアではこここで SAC をみることになる。) 腹膜前筋
膜深葉に包まれた精管、精巣動静脈の parietarization を少し行い、外側の腹膜剥離を続ける。これを繰り
返しながら、メッシュの入る空間を作る。実際のビデオを供覧しながら剥離層や、手技の問題点について、
討論したい。
TEPにおける腹膜の剥離 ∼当科の手順∼
KKR斗南病院 外科
川原田 陽、小野田 貴信、岩城 久留美、山本 和幸、鈴木 善法、北城 秀司、
奥芝 俊一、加藤 紘之
当科でのTEPにおける腹膜剥離の要領は以下の通りである。
臍を縦切開して腹直筋前鞘を横切開する。腹直筋を筋鈎で挙上し,腹直筋と後鞘の間の層を剥離していく
が,この時盲目的な剥離は行わず,正しい層を 5mm scope で観察,確認しながら,恥骨方向に可能な限り
剥離を行い,腹膜前腔のスペースを作成する。この時,後鞘表面の血管を含む層はすべて腹直筋側になるよ
う剥離する。Scopeを見ながら可能な限り剥離した後,バルーンを挿入してさらにスペースを広げる (バルー
ンを使用しない場合もある)。この時点での剥離は,下腹壁動脈より正中側のスペースののみとし,外側は,
後で鋭的に一層超えてから剥離するつもりで行う。トロッカーを挿入し,さらに下腹壁動静脈より正中側の
剥離を広げるが,恥骨から Cooper 靭帯,腹直筋にいたる腹壁側に脂肪を含む一層が残る層を正しい層とし
て剥離を広げる。この状態で,下腹壁動静脈は外側の腹壁側に一層被った状態で透見できる。正中側の剥離
が終了したら,下腹壁動静脈を覆っている (癒合している) 膜を切離し,同脈管の外側にある疎な空間 (腹膜
前腔) に入る。同空間を脂肪組織を腹壁側につけるように尾側に向かって剥離していくと,腹膜縁が確認で
きる。あとは腹膜縁に沿って,内鼠径輪方向に剥離を進め,精巣動静脈,精管を parietalization して,ヘ
ルニア嚢をテーピングする。ヘルニア嚢は基本的に切離している。
14
セッション3[ 腹膜剥離 ] 座長:徳村 弘実・和田 英俊
1. TAPPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
当科で施行している腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TAPP)の腹膜前腔剥離
KKR斗南病院 外科
小野田 貴信、川原田 陽、岩城 久留美、山本 和幸、鈴木 善法、北城 秀司、
奥芝 俊一、加藤 紘之
当科で行っている腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術 (TAPP) での腹膜前腔剥離時の動画を供覧する。内外鼠径
ヘルニアに関わらず、まず内鼠径輪 ( 外側鼠径窩 ) 尾側縁で腹膜を切離し、腹膜と腹膜前筋膜深葉の間で剥
離を行う。外鼠径ヘルニアであれば長軸方向にヘルニア嚢に割を入れ、漿液腫の予防とする。次に層を維持
したまま内側に剥離を進めるが、輸精管近傍は腹膜と深葉の生理的癒着が強いため、そこで剥離を一時中断
する。下腹壁動静脈の内側で腹膜を鋭的に切離し、(狭義の) 腹膜前腔に達する。綿の様な層の境を鈍的に剥
離すると Cooper 靭帯が確認され、先の剥離層との間にスクリーン状に深葉が残るのが確認される。これを
鋭的に切離し、内側と外側の層を交通させる。内側頭側に剥離を延長させて膜一枚被った腹直筋背面を確認
し、続いて外側尾側、外側頭側と剥離していく。腹膜・深葉間の剥離は、ガーゼによる愛護的剥離を基本と
している。剥離時に腹膜背面を覆う微小な血管が損傷された際も、出血による剥離層の不明瞭化や、それに
よる層の誤認を防ぐのに有用と考えている。外側頭側では腹膜と深葉、及び浅葉が順次癒合しているので、
必要性に応じて鋭的に切離し、メッシュ留置のスペースを確保する。最後に内側と外側の剥離層を交通さ
せ、剥離を完了する。外鼠径ヘルニアであれば、ヘルニア門上縁に残った腹膜の切離が層の交通に必要と
なる。
TAPPにおける腹膜剥離についての注意点と剥離法
平塚市民病院 外科
中川 基人
TAPP施行時の腹膜剥離はメッシュを最も適した場所に留置するための剥離である。適した場所を考える
際には “範囲” と “層” を意識する必要がある。“範囲” に関しては既に広く知られている通り、内側は腹直筋
の外側縁、背側はクーパー靭帯、腹側は腹横筋の腱膜弓、そして外側はGilbertの呼ぶlateral triangleを十分
に覆う範囲を剥離する。一方でメッシュを留置すべき “ 層 ” は、腹膜前腔という名で呼ばれる層であると一
般的には認識されている。佐藤によれば横筋筋膜と壁側腹膜の間に疎な結合組織層が介在し ( 手術 第 62 巻
2008年 1625ページ)、この層を間隙と見立てると腹膜前腔の概念が理解しやすくなる。しかし拡大視効果
に優れたTAPPにでは更に詳細な構造である腹膜前筋膜までをも意識すべきである。同じく佐藤によれば腹
膜前腔に存在する疎性結合組織はある程度発達して膜層とみなすことができる場合があり、これを腹膜前筋
膜と呼ぶ。前述の TAPP で剥離すべき “ 範囲 ” にはこの腹膜前筋膜を認識できる部位が多いが、これを意識
せずズタズタにしてやたらに大きな空間を作ることは患者にとって過剰で不要な手術操作と考えるべきで
あろう。詳細な手術解剖によればこの腹膜前筋膜には体表に近い浅葉と壁側腹膜に近い深葉とが区別される
という。本演題においては I 型ヘルニアに対する TAPP において、鼠径管後壁を構成する横筋筋膜の腹腔面
に存在する腹膜前筋膜 (浅葉と考えている) を意識し、これを温存する腹膜剥離に焦点をあてる。
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セッション3[ 腹膜剥離 ]
座長:徳村 弘実・和田 英俊
2. TEPにおける腹膜剥離の問題点と注意点(PTBバルーン使用)
当院における鼠径ヘルニアに対するTEPPの工夫
福岡市民病院 外科
川中 博文、橋本 健吉、枝川 愛、東 貴寛、石井 寛邦、永田 茂行、内山 秀昭、
江口 大彦、奥山 稔朗、立石 雅宏、是永 大輔、竹中 賢治
【はじめに】当科では、正確な術中診断と確実な修復が可能な腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘル
ニア修復術 (TEPP) を鼠径部周辺ヘルニアに対する標準術式と考えている。しかし、広く普及していない
のが現実である。麻酔やコスト面以外にも技術的な問題が存在すると思われる。腹膜外腔剥離直後の腹腔鏡
画像は症例によって異なり、最初から教科書と同じ鼠径床解剖が得られるわけではないことや、外鼠径ヘル
ニア嚢処理が比較的困難なことが考えられる。当科におけるTEPP手技、特にバルーンによる腹膜外腔拡張
の手技について報告する。
【手技】(1) バルーンによる腹膜外腔拡張は、ポート挿入が安全にできる程度にとどめ、意識的に下腹壁動静
脈を腹壁側に残すように剥離することで、初対面の腹腔鏡画像はいつも同じになる。(2) 再生可能な腹膜外
腔拡張バルーンは安価であるが、air が漏れやすく、バルーンとシャフトが一か所しか固定されていないた
め、シャフトの方向を変えてもバルーンの位置は変えることができない。しかし、オリジナルのPDBバルー
ンは高価だが、クオリティが高く、ストレスも少ない。(3) ポートは固定力が高く、腹腔内への露出部分が
短いポートを使用している。
【まとめ】以上により、いつも同じ視野で手術を開始することができ、ストレスなく TEPP 手術を開始する
ことができる。
TEP法における腹膜剥離の問題点と注意点(PDBバルーン使用)
済生会八幡総合病院 外科 (済生会くれたけ荘)
和田 寛也
TEP 法は開始時点の手術操作空間が狭く剥離されるまでは主要な指標が観察できないことや前方からの
手術法とは異なる見慣れない術野であるため難解な手術として一般に敬遠されている。しかしながら PDB
バルーンを用いれば短時間に腹膜前腔内の指標となる構造を広範囲に露出でき、むしろ他の術式以上にわか
りやすい解剖が展開され教育的にも意義がある。バルーンの価格が高いのが欠点だが、使用すれば腹膜前腔
をすっきりきれいに剥離でき手術時間の短縮ができる。但しメッシュをそのまま展開固定したくなるほど広
い空間が出来ても腹膜縁の確認を怠り腹膜をメッシュの下敷にして固定すると再発の原因となるので注意
を要する。バルーンが下腹壁動静脈を腹膜側に薙ぎ倒せば出血のため視認性が低下し手術操作が困難になる
ので、一気に拡張するのではなく下腹壁血管が見える位置で剥離の様子を窺いながら徐々に行うのが安全で
ある。またごくまれに腹膜を損傷する場合もあり、特に再発例の場合には注意を要する。バルーンを使わな
ければコスト削減にはなるが腹膜前腔剥離に要する時間が長くなるだけでなく、十分な剥離が完成する前に
腹膜を損傷すれば気腹のために空間が狭くなり手術時間がさらに延長することもある。私は TEP 法におけ
るPDBバルーンの使用を推奨する。
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セッション4[ TAPP ]
座長:木村 泰三・柵瀨 信太郎
1. TAPPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
TAPPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
JA知多厚生病院 外科
小森 徹也
当院では、2011 年の 11 月に TAPP 法による腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を導入した。Kuegl 法や Mesh
plug 法、PHS 法など前方アプローチのヘルニア根治術も標準術式として実施しており、前方アプローチの
手術経験をもとに、導入に際し TAPP 法でも Kugel patch を使用している。これまでに当院では、16 症例、
18病変に対してTAPP法を実施している。Kugel patchを使用するにあたり、本来が腹腔鏡用ではないmesh
を使用する点や、術後疼痛や違和感の軽減の観点から、症例集積が進んでいる現在は light mesh の導入を
検討している。
mesh 挿入に先立ち、十分な腹膜剥離が行われていることを確認している。内側では恥骨・腹直筋外縁・
Cooper 靭帯・iliopubic tract などが確認できる程度まで、腹側や外側では十分にヘルニア門を覆うことの
できる程度まで剥離されていることを確認している。Kugel patch は、長軸方向に四つ折りし、10mm
trocarより挿入している。腹腔内では、二つ折りの状態で鉗子で把持し、挿入部位の左右方向の奥行を意識
しながら挿入している。挿入後は mesh を腹側にて固定し、折りたたまれた mesh を腹側から背側へと開く
ように展開している。展開後は、ヘルニア門の上方に主眼を置き、次いで、Hesselbach 三角に対して腹直
筋外縁や恥骨に、大腿輪に対してCooper靭帯に注意して、myopectineal orifice (以下、MPO) 全体を覆う
ことのできるように調整している。この際にも、腹側より背側へ、内側より外側へとmeshを調整するよう
に心がけている。
Meshの固定はAbsorba Tackを用い、腹膜閉鎖は3-0 PDSを用いて連続閉鎖している。
TAPPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
浜松医科大学 第一外科
和田 英俊
当科ではTAPPによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を5mm trocar2本 (臍、右) と3mm trocar1本 (左) で行
なっている。そのため 5mm trocar から挿入可能な柔らかい flat mesh を挿入し腹膜前腔に展開している。
今回、当科で行なっているmeshの挿入と展開の方法を報告する。
Mesh は 3mm 鉗子との相性や handling がよいことから、TiLENE mesh (light) もしくは Parietex 3D
(standard) を使用している。
Meshの挿入と展開のポイントは、
1) meshの展開部位を想定した十分な剥離 (特に内側頭側と外側頭尾側)
2) 5mm trocarからのmeshの挿入 (3mm鉗子の使用)
3) 腹膜前腔へのmeshの留置 (腹膜ポケットの十分な展開、頭側への展開、meshの位置ずれの予防、
Cooper靭帯方向への展開)
4) tacker固定直前のmeshの留置位置の確認 (四隅のmeshの折れ曲がり、頭側のmeshのずれ落ち)
である。
柔らかいflat meshは形状記憶のある3D meshより展開は困難であるが、meshのhandlingと展開方法に
慣れれば腹膜前腔に適正な留置が可能である。
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セッション4[ TAPP ] 座長:木村 泰三・柵瀨 信太郎
2. TAPPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
TAPPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
福井赤十字病院 外科
川上 義行、藤井 秀則、我如古 理規、広瀬 慧、吉田 誠、土居 幸司、青竹 利治、
田中 文恵、廣瀬 由紀
これまで当科では諸般の事情より両側鼠径ヘルニア症例,再発症例において腹腔鏡下ヘルニア修復術
(TAPP) を施行していたが,平成24年7月より初発,片側症例においても本術式を導入した.症例は65歳男
性,165.0cm, 63.5Kg, BMI23.3. 既 往 歴 : 上 行 結 腸 癌 で 腹 腔 鏡 下 結 腸 切 除 術 . 方 法:臍 部 よ り Open
laparotomy法で10mm径金属ポートを挿入,8.0mmHg, 頭低位,左下側臥位.10mm 30º 硬性斜視鏡で腹
腔内観察.右側II-2,約1.5cm,内鼠径ヘルニアの診断.右側腹部,鎖骨中線上で6mmSTORZ ENDOTIP,
65mm挿入,左下腹部で3mm細径ポート,ENDOTIP, 105mm挿入.左手は3mm有窓把持鉗子を用いた.
メッシュはBARD, 3DMax, Light weight, M size, tacking deviceはPERMAFIX.右側腹部トロッカーを
5mm XCELに入れ替えてメッシュ挿入,左下腹部3mm 細径鉗子で腹腔内へ引き込み,内側ではCooper靭
帯-恥骨結節,Ileopubic tractを確実に覆うように展開,固定位置は背側のCooper靭帯①④⑦,腹壁側の腹
直筋鞘②③,腹横筋腱膜弓⑤,下腹壁動脈外側⑥とした.腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 (TAPP) でのメッ
シュ固定手技の注意点についてビデオ供覧した.
TAPP法におけるメッシュ固定時の展開法と注意点
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 外科
早川 哲史、野澤 雅之、中村 謙一、牛込 創、佐藤 怜央、青山 佳永、加藤 知克、
小田 理沙、早川 俊輔、小出 亨、森本 守、山本 稔、北上 英彦、清水 保延、田中 守嗣
腹腔鏡下手術ではメッシュ展開後のタッキングの基本的な注意点は TEP 法も TAPP 法も同様と思われる。
メッシュ展開はmyopectineal orificeの完全閉鎖が目的である。鼠径部は複雑な腹壁層構造が存在すること
からメッシュ展開部位にも凹凸があり、上方に凸となっている空間に2次元平面画像を見ながらメッシュを
確実に展開することはそれほど容易ではない。予想外にメッシュが背側に展開されてしまう場合や、正中側
に十分に届いていない場合も時に起こってしまう。当院ではメッシュのタッキングの一発目はヘルニア門の
上縁に打ち、まず確実にヘルニア門を修復することを第一目的としている。最初にタッキングをしてしまう
とその後のメッシュは回転できても移動はできないことより、最初のタッキングの位置に最も注意を払って
いる。形状記憶メッシュはタッキングにて形状記憶リングが捻じれたり歪んだりする場合があり、形状記憶
部位が腱膜弓を覆うようにしっかり展開してタッキングを行う必要があると思われる。クーパー靭帯の固定
にてメッシュが歪む場合にはクーパー靭帯へのタッキングを行っていない。Light weightのsoft meshの場
合はできる限り伸ばして展開した後に腱膜弓を十分に覆うようにタッキングしている。タッキング手技の注
意点としてはカウンタートラクションが重要であるが、決してタッカーを腹壁に押し付けるのではなく、腹
壁側を移動させないように一度押してから少し引き戻し、その後凸方向の上方にコンパスで円を描くように
移動させてからタッキングを行うことで腹壁に垂直に確実なタッキングが可能となり、メッシュの移動が少
なくなると考えている。当院でのタッキングの手技を供覧する。
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セッション4[ TAPP ]
座長:木村 泰三・柵瀨 信太郎
3. TAPPにおける腹膜閉鎖の注意点と閉鎖法
BJニードルを用いたReduced port TAPPにおける腹膜縫合閉鎖
メディカルトピア草加病院 外科
亀井 文、金平 永二、谷田 孝、塩澤 邦久
当院の標準TAPPは12mm, 5mm, 5mmの3ポート法で行っており、症例によって2mm鉗子 (以下BJニー
ドル) を用い、単孔式+BJニードルで行うなどのReduced port TAPPを行っている。今回はReduced port
TAPPにおける腹膜の縫合閉鎖方法を供覧する。
縫合糸は 3-0 モノフィラメント吸収糸を使用し、持針器は主に Karl-Storz 社製パパガイ型 (5mm) を、補
助として BJ ニードルを使用する。方法は連続縫合とし、方向は腹膜切開部の内側から外側とする。内側か
ら縫合する理由は、内側臍襞近傍の腹膜部分が最も緊張がかからないからである。この部の脂肪組織を含め
最初に閉鎖し、外側に縫合を進めることにより、徐々に外側の腹膜の緊張を軽減できる。また腹膜縁からの
距離を一定に運針することにより、針穴の開大から誘引される裂けを防止している。縫合時間の短縮には、
BJニードルでの針の受け渡し方が肝要である。演者らは運針時の針の向きが変わらないようにBJニードル
で受け、そのままの方向で持針器に持たせることにより、タイムロス軽減に努めている。
腹膜の閉鎖においてわれわれが重要視している点は、腹膜が確実に閉鎖されメッシュが露出しないこと、
腹壁に沿った自然な形状の腹膜となること、迅速に行うこと、の3点である。さらに腹膜の柔軟性、伸展性、
菲薄度には個人差があるため、演者らはこれらに応じてコントロールされた縫合閉鎖が行えるよう、手技の
向上に取り組んでいる。
TAPPにおける腹膜縫合閉鎖の注意点と閉鎖法
刈谷豊田総合病院 外科
佐藤 怜央、早川 哲史、小田 梨紗、早川 俊輔、青山 佳永、加藤 知克、牛込 創、
中村 謙一、野澤 雅之、森本 守、山本 稔、北上 英彦、清水 保延、田中 守嗣
TAPPにおける3段階の手術手技 (剥離、メッシュ展開、腹膜閉鎖) のうち当院で行っている縫合閉鎖手技
につきビデオを供覧する。当院では腹膜縫合閉鎖には 4-0PDSII VISI BLACK を用いている。腹膜切開の
大きさにもよるが 22cm ∼ 26cm ほどに短く切り、12mm トラカールもしくは針を少し伸展させた状態で
5mmトラカールより挿入する。縫合予定ラインをデザインし、その中央部に1針結節縫合を置くことで腹膜
にかかる張力を軽減して裂けにくくし、また上下の腹膜の縫合ラインのずれと段違いを防ぐことができる。
糸の長さは最初の結節縫合で2cm使用、連続縫合する腹膜切開部が10cmとすると、最後の結紮に10cm使用
することで基本的には 24cm としているが、腹膜切開の長さにより調整している。長すぎる糸は腹腔内での
取り回しが難しくなる。左右とも内側から外側へ向かって連続縫合を行う。内側は腹腔内でも深い位置であ
り、2 次元平面の腹腔鏡視野では深い位置は予想外に荒く縫合してしまう場合があり、小腸の落ち込みイレ
ウスを予防するために意識的に密に縫合している。腹膜閉鎖のピッチは 10mm 以下でバイトは 5mmを基準
にしている。sacを成していた部分の腹膜はやや “余剰” があるため腹壁側へ折れ返すように、腹膜切離端が
腹腔側へ向かないようにできれば外反させて縫合している。糸を牽引する際には腹膜が巾着のように集簇し
ないよう注意し、縫合部に緊張がかからないように一直線に縫合している。
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セッション5[ TEP ]
座長:松本 純夫・重光 祐司
1. TEPにおける内鼠径輪処理時の注意点と処理法
当院でのTEPにおける内鼠径輪処理時の注意点と処理法
大阪警察病院 外科
若杉 正樹、赤松 大樹、鳥 正幸、上島 成幸、大森 健、鄭 充善、益澤 徹、西田 俊朗
当院でいつも行っているTEPにおける内鼠径輪処理時の注意点と処理法をビデオで供覧する。
当院では腹膜前腔拡張バルーンを使用しない。用手的もしくはスコープを用いて剥離した腹直筋後鞘と腹
直筋との間のスペースより鏡視下に腹膜前腔の剥離を行う。下腹壁動静脈に腹膜前筋膜浅葉を付けるように
して,浅葉と深葉の間を剥離する。下腹壁動静脈の起始部付近の内鼠径輪外側より開始して,外側,頭側へ
向かってヘルニア嚢の剥離をすすめる。必要以上に側腹部を剥離すると腹膜損傷をきたしやすい。外鼠径ヘ
ルニアの場合,精管・精巣動静脈とヘルニア嚢の剥離を外側から行う。下腹壁動静脈に留意しつつ出来るだ
け末梢側で剥離を行う。ヘルニア嚢が小さい場合は完全に末梢まで剥離して鼠径管より還納するが,通常は
12cm長の2-0 Vicrylを用いて ヘルニア嚢を結紮・切離する。メッシュの下 (裏) に腹膜縁が潜り込まないよ
うに,ヘルニア嚢断端を把持し,腹膜縁と精管,精巣動静脈とを十分に剥離する。
TEPにおける内鼠径輪処理時の注意点とコツ
慶應義塾大学 医学部一般・消化器外科
和田 則仁、古川 俊治、北川 雄光
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、ヨーロッパヘルニア学会ガイドラインでは多くの臨床的セッティングに
おいて推奨される術式である。特にTEPはTAPPに比しport-siteヘルニアや内臓損傷のリスクが低いことか
ら、グレードBで推奨されている。一方、TEPは術野が狭く解剖学的ランドマークが認識しにくいため習熟
が困難とされる。特に内鼠径輪周囲の処理は膜構造を理解した丁寧な操作が求めらる。不適切な操作は再発
や出血、慢性疼痛などの合併症の原因ともなりえるため、本発表では手技のポイントを示す。症例は 66 代
男性、両側鼠径ヘルニアに対して、TEP (totally extraperitoneal) 法による局所麻酔下に単孔式腹腔鏡下
鼠径ヘルニア修復術を施行した。下腹部正中を 3 センチ切開し、EZ アクセスと 3 本の 5 ミリトロッカーをア
クセスポートとした。内鼠径輪は側面よりみる形となる。まず浅葉の腹側でRetzius腔を剥離する。下腹壁
動静脈を壁側につけるところで浅葉の背側に入る。外側に剥離を進め深葉を破ると、深葉と腹膜の間の疎な
結合を鈍的に容易に剥離できる。内側では深葉と腹膜が癒合しているため鈍的剥離は不能で鋭的剥離を要す
る。ヘルニア嚢を確保した後、本症例では内鼠径輪からヘルニア嚢を剥離したが、大きな嚢では切離するこ
ともある。腸腰筋・外腸骨血管部で腹膜の剥離を確実に行うことが背側からの再発防止に重要と考えられ
る。腹膜前腔の膜の解剖を理解し膜の剥離と切開を適切に行うことが極めて重要である。
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セッション5[ TEP ] 座長:松本 純夫・重光 祐司
2. TEPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
TEPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
社会医療財団法人 石心会 川崎幸病院 消化器病センター 外科
小根山 正貴、佐藤 俊、下田 陽太、中山 幹太、平田 雄大、池田 博斉、高橋 保正、
河原 祐一、太田 竜、成田 和広、後藤 学、関川 浩司
【はじめに】当科では腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術としてTEP法を第一選択としている。また研修医教育の
一環としても本手術手技を当科における腹腔鏡手術に関する段階的教育の一環としても積極的に施行してい
る。今回、当科で行っているTEP法におけるメッシュ挿入の注意点と展開法における工夫について報告する。
【方法】メッシュ挿入法は腹膜前腔での出血を予防するため、胆嚢摘出時に用いる memo bag の外筒を用い
たいわゆる KS デリバリーシステムを用い、鏡視下に挿入している。使用するメッシュは狭い視野での展開
が比較的容易なことからUHS oval size under lay patchまたは3D Max light weight type M or L sizeを
使用している。メッシュ展開の留意点としてはまずメッシュ下縁を腹膜翻転部と腹壁の間に腹膜翻転部と平
行となるように留置することを先行させている。その後、メッシュ位置の微調整を行い恥骨から外側三角ま
でが十分にメッシュで覆えていることを確認し、まずは恥骨から吸収性 tacker を用い固定していく。この
際、第一打の位置を十分に注意しながら固定することが大事である。最終的に腹直筋外縁、腹横筋腱膜弓、
腸恥靭帯に固定し、症例に応じcooper靭帯にも追加としている。なお神経損傷を危惧し腸恥靭帯より下方に
は固定しないことを心がけている。
【結語】当科でのTEPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法について供覧した。メッシュ展開はヘルニア
根治術の根幹をなすものであり、TEP 法という狭い領域でのメッシュ挿入、展開法などにより慎重な手術
操作が求められる。
TEPにおけるメッシュ挿入の注意点と展開法
原三信病院 外科
江口 徹
メッシュを正しく展開するためには十分な腹膜前腔の剥離が必要である。TEP の場合は、背側での
parietalization と、外側での上前腸骨棘までの剥離が大切である。内側、頭側は自然と十分な剥離範囲が
得られる。
メッシュは径10mm以上のトロッカーから挿入する。挿入前に鼠径床の大きさを測り、large pore, light
weight のメッシュをトリミングして適切な大きさのもの、一般的に TAPP より大きいメッシュを使用して
いる。
メッシュは繊細なタッチで扱い、二本の鉗子を協調して操作する。鼠径床の3D構造を、頭のなかで2D映
像より再構築してメッシュを展開する。myopectineal orificeがすべて覆われており、大きなヘルニア門の
場合はメッシュ縁が十分オーバーラップしていることを確認する。
21
セッション5[ TEP ]
座長:松本 純夫・重光 祐司
3. TEPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
TEPPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
健康保険南海病院 外科
武内 裕、藤島 紀、佐々木 淳、森本 章生
【はじめに】当院では、1999年に鼠径部ヘルニアに対して鏡視下鼠径部ヘルニア修復術 (以下TEPP) を開始
し、以降第一選択としている。今回、メッシュの挿入、展開、固定までの手技を供覧する。
【使用メッシュ】マイクロバルメッシュ JG形成型 10×14cm
【挿入】メッシュをロール状に巻き、10mm カメラ用ポートよりブラインドで挿入する。挿入時に抵抗があ
る場合は、無理に挿入しない。
【展開】ロール状に巻かれたメッシュを展開後、メッシュの形状を利用し、下腹壁動静脈の根部を起点とし
て内側及び外側にメッシュをきれいに広げ、鼠径床を覆う。この際の注意点としては、メッシュの辺縁が内
側は Cooper 靭帯と腹直筋を、上方は腹横筋腱膜弓及び内鼠径輪上方の腹横筋を十分にカバーしていること
である。さらに外側は腹膜が入り込まないよう十分に剥離を行っておく必要がある。
【固定】メッシュの鼠径床の固定にはCOVIDIEN社のProTack (5mm) を使用し、固定部位は原則、Cooper
靭帯に2カ所、腹直筋に1カ所、下腹壁動静脈の内側に1カ所、メッシュの右上端に1カ所の計5カ所としてい
る。目視できる脈管を避けるのはもちろんのこと、神経損傷を避けるため、外側ではiliopubic tractより下
方には打たない。
【おわりに】当院での現在施行している手技に対して、忌憚のない意見を頂きたい。
TEPPにおけるメッシュ固定の注意点と固定法
慈善会膳所病院 外科
重光 祐司、膳所 憲二
腹膜外腔アプローチ (TEPP) による腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 (LH) の利点は、Fruchaudの提唱した
Myopectineal orifice (MPO) 全てを観察し正確なヘルニアの局在診断と、必要十分な大きさ・形状のMesh
を用いて MPO を補強できることであり、生涯に亘り再発や新しいヘルニアの発生を限りなくゼロにできる
ことである。
演者らは、Inlay Mesh Repair (IMR) で用いられるべきMeshは、14x9cm以上であることを報告してき
た。またIMRで剥離されるべき範囲は、横方向で恥骨結節から上前腸骨棘まで (約13.5cm) 以上を、腹側方
向で5cm以上、背側方向で内鼠径輪から精索の壁在化を5cm以上、である。これらが実現されて始めてMesh
を挿入・展開・固定することになる。
固定の注意点:① Cooper 靱帯・腹直筋への Tackingは可。② Iliopubic tract 以下は不可。③内鼠径輪の外
上方は極力Tackingしない。④Deviceは現在上梓されているもので可。
固定法:① Fibrin glue は本邦では適応外。②縫合は時間がかかる。③ Tacking は上記で可。④固定しない
ことは固定に伴う合併症を回避できる。
以上、これらの原則に従い Mesh を安全・確実に固定できる。また理論的に正しい大きさ・形状の Mesh
を用いれば固定を必要としない。
22
ランチ ョ ン教育セミナー
ミニセミナー
ランチョン教育セミナー 鼠径部ヘルニア手術における重要な解剖と神経走行
−TAPP手術のピットホールとは?−
座長: 冲永 功太 帝京大学医学部 外科
演者: 早川 哲史 刈谷豊田総合病院 外科
ミニセミナー 私のTAPP手術
演者: 齊藤 健太 名古屋東部医療センター 外科
25
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会 会
則
研究会名称
日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会 (英語表記:Japan Laparoscopic Hernia Surgical meeting, JLHS meeting) と称する。
目 的
本会は腹部ヘルニア治療に関して知識と経験を共有して腹腔鏡下ヘルニア手術手技の研究を行い、治療
の進歩、研究、教育及び普及を図ることを目的とする。
事 業
本会は前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
1. 年2回 (春・秋) の研究集会の開催。
2. 研究集会名は日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会とする。
3. 腹部ヘルニア治療における腹腔鏡下手術手技の充実を図る。
4. 腹部ヘルニア治療での腹腔鏡下手術に関する統計、資料の収集および提供。
5. その他本会の目的を達成するために必要な各種委員会、プロジェクト研究および講習会などの事業。
正会員および賛助会員
1. 会員は本会の目的に賛同し、所定の会費を納入した医師または医療関係者とする。
2. 本会は会員及び賛助会員により構成される。
3. 賛助会員は会員以外で本会の目的に賛同する法人、団体あるいは個人とする。
役 員
1. 本研究会には以下の役員をおく。
顧 問 若干名
代表世話人 1名
当番世話人 1名
世 話 人 若干名
幹 事 若干名 (世話人および事務局運営業務を兼ねる)
監 事 1名あるいは2名 (会計監査業務を兼ねる)
2. 代表世話人は世話人会の推挙によって定められ、本会を代表するとともに会務を統括する。
65歳以下、任期は3年とし再任を妨げない。
3. 世話人は会員の中から世話人会の議を経て、代表世話人が委嘱する。
4. 幹事は代表世話人が推薦し、世話人会で承認される。幹事は幹事会を構成し、会の運営に関して代表
世話人を補佐する。幹事会は代表世話人が招集し、代表世話人が議長となる。幹事会の招集は顧問に
も連絡する。
5. 監事は世話人会の議を経て世話人から選出し、代表世話人が委嘱する。
監事は会の財務ならびに会の運営を監査し、代表世話人に報告する。
6. 世話人・監事・幹事は65歳以下とし、任期は3年として再任を妨げない。
7. 当番世話人は世話人会で世話人から選出され、担当学術研究集会の業務を行う。
当番世話人は当番幹事を置くことができる。
8. 本会には名誉会長、名誉会員および特別会員を置くことができる。
名誉会長、名誉会員、特別会員は会費を免除する。
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世話人会
1. 世話人会は顧問、代表世話人、世話人、幹事および監事をもって構成し、会務に関する事項を議決する。
2. 世話人会は代表世話人が召集し、当番世話人および代表世話人が議長を務める。
3. 世話人会は年2回研究集会時に開催することを原則とする。
4. 世話人会を理由なく4回連続で欠席した場合は、世話人辞退と判断する。
研究集会
1. 研究会開催のために、当番世話人を置く。
2. 当番世話人は世話人会の審議によって決定する。
3. 研究会は学会形式をとらず、代表世話人、当番世話人、幹事の責任において主題を決定し、一会場で
の討議を行うこととする。
4. 研究会における発表は、会員に限る。
5. 学術研究集会会期は、原則として3月、9月とする。
6. 各研究集会会計については、原則として代表世話人が研究集会監事を兼務する。
7. 研究集会記録は日本ヘルニア学会の機関紙に掲載を依頼する。
会 費
1. 会員の会費は各研究集会毎の参加費5,000円をもってこれに当て、1年間有効とする。
2. 賛助会員の年会費は50,000円とする。
会 計
1. 本会の事業遂行に要する費用は、会費、補助金、寄付金その他をもってこれに当てる。
2. 本会の会計年度は同年1月1日より12月31日までとする。
研究会事務局
本研究会事務局は医療法人豊田会刈谷豊田総合病院外科に置く。
会計監査は世話人会で選出された少なくとも一名の監事が行う。
事務局
〒476-0002 愛知県刈谷市住吉町5-15
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院
代表世話人 早川 哲史
TEL:0566-21-2450 FAX:0566-22-2493
E-mail:[email protected]
会則変更
本会則の変更は委任状を含む過半数の世話人が出席した会議にて討議され、出席者の過半数の承認を得
なければいけない。
附 則
本会則は2012年4月28日の世話人会で承認され発効とする。
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