中間報告書の内容 - JBOG BWR事業者協議会

平成 21 年 6 月 23 日
気体廃棄物処理系の水素濃度対策SubWG 中間報告書
JBOG(Japan BWR Owners’ Group)
1. 検討の経緯
2007年以降、下記に示す通り、プラント起動時の部分出力状態において、気体廃棄物処理系(以下、OG 系)の
水素濃度が4%以上に上昇、プラント停止に至る事象が散見されている。
(3)復水器構造調査
復水器の細管管配列はプラント建設時期により若干の相違(FW型・BDF型・SBDF型)は認められるものの、
これまで同事象の原因と対策結果については、各社に情報共有され適宜水平展開が図られてきているが、本
事象の再発防止は BWR 事業者共通の重要な課題であると捉え、BWR 事業者協議会(以下、JBOG)トラブル情
非凝縮性ガスが空気集合管に集められ空気冷却器を通り復水器から排出される構造は全て同じであり、復水器
構造の相違と水素濃度上昇有無との関連はないものと考える。
報・信頼性向上 WG の作業部会として「気体廃棄物処理系の水素濃度対策 SubWG」を設置し、各社のOG系に
関する情報共有を行うとともに、OG系の適切な運用面・設備面等の対策案について検討することとした。
(4)触媒製造プロセス調査
触媒製造時期に着目して調査した結果、1996年を境に製造過程で生じる温水洗浄時間に差異がある(長くな
OG 系水素濃度上昇事象によりプラント停止に至った事象
った)ことが確認された。(図-2参照)この温水洗浄時間の延長により触媒内の担体内にベーマイトがより多く含
発生年月
プラント名
発生時出力状況
推定原因
2007 年 11 月
東北電力 女川 3 号機
約50%
低酸素/水素比における運転の
影響
2008 年 4 月
北陸電力 志賀 2 号機
約25%
長期保管により生成された硫酸
塩水和物による影響
2008 年 11 月
中部電力 浜岡 5 号機
約80%
低酸素/水素比における運転の
影響
2008 年 12 月
中部電力 浜岡 5 号機
約60%
2009 年 5 月
中部電力 浜岡 4 号機
約50%
まれることとなる。
実際に1996年以降製造された触媒に水素濃度上昇が多く発生していることから考えて、温水洗浄時間の延
長が触媒性能劣化に寄与した可能性は考えられる。
(5)触媒毒調査
想定される触媒毒について調査した結果、有機ケイ素化合物(シロキサン)が触媒性能に悪影響を与えることを
確認した。
このことを踏まえ、シロキサンを含有する使用材料を調査した結果、一部の液状パッキンに含有されていること
触媒製造プロセスの変更と液状
パッキンから発生したシロキサン
の影響
が判明したため、流入経路におけるシロキサンを含有する液状パッキンの使用状況を追跡調査した。(図-3参
照)
その結果、水素濃度上昇が発生したプラントでは、未発生のプラントと比較して、タービンパッキンケース・復水
器ラバーエキスパンション等に対し比較的多くの液状パッキン(シロキサン含有のもの)を使用していたことが確認
2. 金属触媒プラントの調査
水素濃度上昇事象は金属触媒プラントで発生しているが、金属触媒プラントにおいても発生プラントと未発生プ
されたことから考えて、シロキサンが触媒性能低下に寄与した可能性は考えられる。(但し、一部のプラントでは
比較的多く使用しているにも係わらず水素濃度上昇事象が確認されないプラントもあり。)
ラントがある。浜岡4号機・5号機の推定原因(図-1参照)も含め、各プラントの設備面・運用面等の観点から比
較調査した。結果を以下に記す。
(6)触媒性能試験
水素濃度上昇が発生したプラント(水素濃度上昇当時の触媒が現存、定期検査中等調査可能なプラント)と未
(1)OG系統相違調査
OG系統について、復水器~活性炭ホールドアップ塔までの各プラントの系統比較を行い、水素濃度上昇事象
発生との関連について調査・検討を行った。
調査の結果、浜岡 4 号機で水素濃度上昇事象が発生する以前は再結合器が1系列のプラントでのみ発生して
いたが、2 系列のプラント(100%*2 系列)の浜岡 4 号機においても発生したことから考えて、系統数の違いと水素
濃度上昇有無との関連はないものと考える。(その他は特に有意な差異は認められなかった。)
(2)OG系再結合器機器仕様調査
発生のプラント(一部)を対象として、現品触媒より試験片を製作、実機再結合器環境を模擬して、触媒性能試験
を実施した。
試験の結果、水素濃度上昇が発生したプラントの触媒については、触媒性能試験においても水素濃度が安定
しない挙動を示す一方、未発生のプラントの触媒ではその性能が安定していることを確認した。
以上のことから、本試験は、実機再結合器の触媒の再結合反応挙動を把握・差別化する上で有用であるとの
見通しを得ることが出来た。
(7)水素濃度上昇時の対応手順
OG系再結合器の機器仕様の相違による触媒性能への影響を調査した。
水素濃度上昇時の対応手順について、各社の状況を調査した。
調査の結果、上蓋構造、入口配管への電気ヒータの有無、ブリードエア(IA・SA)等の相違点は認められたもの
調査の結果、水素濃度が4%※を超えた場合にはOG系隔離を行い、原子炉停止操作に移行する手順となっ
の、水素濃度上昇の原因につながると思われる相違は認められておらず、機器仕様の違いと水素濃度上昇有無
ていること、また各プラントにおける水素濃度計のサンプリング時間遅れを把握した上で4%以前の段階で警報を
との関連はないものと考える。
発し、各種パラメータを総合的に監視する手順となっていることを確認した。このことから、万一水素濃度上昇した
※水素濃度4%とは
水素などの可燃性気体が燃焼するためには、気体の濃度が、火炎が持続的に伝播できる濃度範囲にあり、かつ着
火源が存在することが必要である。水素の場合、可燃濃度の下限は4%である。
際も安全にプラントを停止できると考える。
3. 過去の水素濃度上昇事象に対する考察
上記調査結果及び浜岡 4 号機、5 号機の事象を勘案し、過去に発生した水素濃度上昇事象(プラント停止以外
の2事例も含む)についての考察を「表―1過去の水素濃度上昇についての考察」に示す。
4. 浜岡 4 号機、5 号機の事象に対する評価
過去に水素濃度上昇が発生したプラントについては、触媒製造プロセスにおける温水洗浄時間を延長した触媒
にシロキサンを含む液状パッキンの影響が重畳している場合と、温水洗浄時間は延長前であっても過去から複数
回の定期検査後の起動を経験してシロキサンが触媒に蓄積されたと推測された場合であることから、これまで得
られた知見を踏まえると、浜岡 4 号機、5 号機の事象の原因も、これに準じると判断することが妥当と思われる。
5. まとめ
(1)一連の水素濃度上昇原因
浜岡 4 号機、5 号機の水素濃度上昇事象の推定原因も踏まえ、各プラントの設備面、運用面等の観点で水素濃
度上昇事象の発生プラントと未発生のプラントを比較検討した結果、製造プロセスの変更及びシロキサンの影響
比較により、水素濃度上昇事象発生プラントと未発生プラントの差別化はほぼ可能であることから、この2つはO
G系水素濃度上昇に影響を与える因子として妥当であると考える。(表-2 水素濃度上昇に対する各金属触媒
プラントの影響評価)
また、この条件に必ずしも合致しない水素濃度上昇事象については、上述の通り推定原因の特定がなされてお
り、これら全体を俯瞰すると、OG系水素濃度上昇事象に対する原因については、概ね把握できたものと考える。
今後も引続きBWR事業者間で情報共有を行い、OG系再結合器に関する更なる知見拡充に努めていくことが
肝要と考える。
(2)当面の対策
製造プロセス及びシロキサンの影響による水素濃度上昇に関する当面の対策として、以下を実施していく。
① 金属触媒の性能把握のため、プラントパラメータの採取、触媒性能試験及び分析を適宜実施し、データの
蓄積による更なる知見拡充を図っていくこと。
② タービンパッキンケース及び復水器廻りに液状パッキンを使用する際は、OG系再結合器へシロキサン流
入がないよう配慮すること。
(3)今後の取組み・課題
① データの蓄積により、現品金属触媒の特性に関する知見の充実を図ること。
② 金属触媒の点検方法、交換時期等のOG系再結合器の保守管理方法に関する検討を行うこと。
③ OG系再結合器金属触媒に影響を及ぼす可能性のある使用溶剤に対する検討を行うこと。
以 上
触媒性能低下 推定メカニズム
触媒基材の製造
②触媒性能阻害物質流入に起因する
性能低下
温水洗浄により,アルミナの結晶形態がγアルミ
ナからベーマイトに変化する。
温水洗浄時間が長いとベーマイトへ変化する量が
多い。
触媒製造工程において,温水洗浄時間が1995年以
前は27時間程度であったものが,1996年以降32時
間以上に変更されていた。
2006年以前には低圧タービンパッキン水平・垂直
面のシール材として亜麻仁油を使用していたが,
浜岡5号機では,2007年以降は液状パッキンに見
直した。
液状パッキンの一部(シロキサン)が揮発してOG
液状パッキンの一部(シロキサン)が揮発して排
ガス再結合器へ流入した。
系再結合器へ流入した。
温水洗浄
成形加工
触媒(写真)
触媒の製造工程(概要)
使用
アルミナ
試料A
試料B
試料C
製造段階での性能低下
アルミナ
:白金
:埋没した白金
アルミナ基材毎のベーマイト量の比較
アルミナの細孔が閉塞し、
表面に添着した白金が埋没
ベーマイトが多い触媒の使用による
白金の活性表面積の減少(イメージ図)
試料A:触媒の製造工程変更前(浜岡4号機相当品)
試料B:触媒の製造工程変更後(浜岡5号機相当品)
試料C:再加熱処理温度の改善品
焼成温度,還元温度が低いとベーマイトからγア
ルミナへの変化量が少ない触媒となる。
再加熱処理
白金添着
アルミナ基材(以下同じ)
アルミナ(酸化アルミニウム)基材
流入したシロキサンが重合し白金表面を覆うこと
により触媒性能が低下した。またシロキサンの影
響は温水洗浄時間が長い触媒(べーマイトが多い
触媒)ほど大きい。
被毒による性能低下
加熱処理
ベーマイト量
①触媒の特性に起因する性能低下
白金の添着
白金化合物溶液
図-2:触媒製造工程と温水洗浄時間の触媒への影響
ベーマイトが多い触媒は使用履歴により比表面積
が減少し易い。
液状パッキン
(実物は白色)
外気側
低圧タービン
車室側
比表面積の減少により白金の活性表面積が減少。
空気抽出器
揮発
車室側への
はみ出し
使用による性能低下
塗布状態
締結後
一部液化
気体廃棄物処理系へ
再揮発・ミスト
(排ガス再結合器へ流入する)
触媒性能低下
タービンパッキン部パッキンケース
復水器
垂直面
液状パッキン
(6箇所)
高出力では,白金を覆っていたシロキサンが酸化分解し,膜が切れることで性能が回復し
(シロキサンによる影響分),出口水素濃度が低下する。
白金の活性面積減少による性能低下
シロキサン(触媒毒)による性能低下
水平面
(低圧タービンから排ガス再結合器への有機ケイ素化合物が流入する経路)
出口水素濃度上昇
性能回復
触媒40層での再結合能力
触媒40層での再結合能力
シロキサン
重合
触媒40層での再結合能力
触媒40層での再結
合能力
性能低下が40層での再結合能力を越えず,
出口水素濃度が上昇しない。
温水洗浄時間の短い触媒
触媒性能低下イメージ図
注)還元とは2次還元を示す。
図-1:触媒性能低下の推定メカニズム
H2
H2
O2
酸化
OH
OH
Pt
アルミナ
Pt:白金、OH:水酸基
ベーマイトの水酸基(OH)とシロキ
サンが強固に結合する。
Pt
Pt
OH
H2
H2
O2
H2
性能回復
OH
温水洗浄時間の長い触媒
O2
H2
シロキサン重合物
Pt
Pt
Pt
アルミナ
O2:酸素、H2:水素
シロキサン同士が重合し、アルミ
ナ表面にシロキサン重合物の膜
が形成し、白金表面が覆われる。
Pt
Pt
Pt
アルミナ
シロキサン重合物の酸化によりベ
ーマイトと結合していない部分の
膜が 切 れ 、 白金 が露 出 する こと
で、触媒性能が回復する。
排ガス再結合器触媒表面の挙動(イメージ)
図-3:液状パッキン使用箇所と被毒物質の触媒表面における挙動(イメージ)
表-1
過去の水素濃度上昇事象についての考察
プラント
浜岡5号機
発生時期
2007年7月
発生時の状況
当時の対応
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 原子炉出力上昇操作を継続。
起 動 時 の 約 2 9 0 0 定格出力付近にて水素濃度が低下。
MWtでホールド中
●
●
女川3号機
2007年11月
定期検査中,原子炉
起動時の出力上昇時
(熱出力約1360
MWt)
金属触媒でしきい値の存在を確認。 ●
触媒を取り替えた再起動後のプラン
ト運転において,酸素/水素濃度比
のしきい値を踏まえた運転を実施。
●
●
●
●
●
浜岡4,5号機の水素濃度上昇メカニズムを踏まえた考察
当時使用した触媒(運転開始後約1.5年使用)は1996年以降に製造した温水洗浄時
間が延長された触媒(ベーマイトを多く含む触媒)であり,また,2004年以降の定期
検査において,シロキサンを発生させる液状パッキンをシール材としてタービンパッキン
ケース等に使用していた。
従って,「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存在」の影響により触媒性
能が低下したと推定される。
当時使用した触媒(運転開始後約3.8年使用)は1996年以降に製造した温水洗浄時
間が延長された触媒(ベーマイトを多く含む触媒)であり,また,2004年以降の定期
検査において,シロキサンを発生させる液状パッキンをシール材としてタービンパッキン
ケース等に使用していた。
従って,「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存在」の影響があった可能
性は否定できない。
一方,当時の原因分析において,使用した触媒は「低酸素/水素濃度比」で触媒性能が低
下する特徴があるという知見を得たが,これは劣化した触媒を使用した場合,性能が低下
する傾向をとらえていたものと考えられる。
以上を踏まえると,当時の事象は「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存
在」の影響が重畳した可能性は否定できない。
触媒を新品に取替え再起動した際,使用した触媒は「ベーマイトを多く含む触媒」であっ
たものの酸素/水素濃度比を改善して運転したこと,および,触媒の取替えにより触媒に
対するシロキサンの影響が軽減されたことで触媒性能が維持できたものと推定される。
以上より,浜岡4,5号機の水素濃度上昇事象の推定原因は,当時の事象を否定するもの
ではない。
志賀2号機
2008年4月
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 長期停止時に金属触媒に空気中の硫 ● 当時使用した触媒(運転開始後約0.3年使用)は1996年以降に製造した温水洗浄時
起 動 時 の 約 9 7 5 黄酸化物と結露水により生成した硫
間が延長された触媒(ベーマイトを多く含む触媒)であり,2007年以降に実施した定
MWtでホールド中
酸塩が付着したため触媒性能が低
期検査において,シロキサンを発生させる液状パッキンをシール材としてタービンパッキ
下。
ンケース等に使用していた。
触媒の取替えを実施。
● 従って,「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存在」の影響があった可能
性は否定できない。
● また,当時の原因調査において,使用していた触媒は「硫酸塩水和物」により触媒性能が
低下していたことが確認されている。
● このため,
「硫酸塩水和物」の影響に加え,
「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキ
サンの存在」の影響が重畳した可能性は否定できない。
● 以上より,浜岡4,5号機の水素濃度上昇事象の推定原因は,当時の事象を否定するもの
ではない。
志賀2号機
2008年5月
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 一時的に水素濃度が上昇したが,そ ● 触媒を新品に取替えて起動した際に使用した触媒は2006年製でありベーマイトを多
起 動 時 の 約 2 2 0 0 の後の運転の調整により低濃度で推
く含んだ触媒であった。また、タービンパッキンケース等には液状パッキンを使用した状
MWtでホールド中
移。
態であった。
原子炉出力上昇操作を継続。
● 従って,「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存在」の影響があった可能
性は否定できない。
プラント
発生時期
発生時の状況
当時の対応
浜岡4,5号機の水素濃度上昇メカニズムを踏まえた考察
● 以上より,浜岡4,5号機の水素濃度上昇事象の推定原因は,当時の事象を否定するもの
ではない。
浜岡5号機
2008年11月
浜岡5号機
2008年12月
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 しきい値を考慮しなかった運転によ ● 新品に取替えた触媒は温水洗浄時間が延長された触媒(ベーマイトを多く含む触媒)であ
起 動 時 の 約 2 9 0 0 り水素濃度が上昇。
り,また,触媒取替え時の定期検査において,シロキサンを発生させる液状パッキンをシ
MWtでホールド中
また水素燃焼によりホールドアップ
ール材としてタービンパッキンケース等に使用していた。
塔の温度が上昇。
● 従って,「触媒内のベーマイトの存在」および「シロキサンの存在」の影響により触媒性
能が低下したと推定される。
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 酸素/水素濃度比を改善し再起動。
起 動 時 の 約 2 6 0 0 水素濃度上昇が発生
MWtでホールド
浜岡4号機
2009年5月
定 期 検 査 中 , 原 子 炉 排ガス再結合器2系列運転
● 当時使用した触媒(運転開始後約7.9年使用)は1995年以前に製造した温水洗浄時
起 動 時 の 約 5 5 0 タービンパッキンケースのシール材
間が延長される前の触媒(ベーマイトが比較的少ない触媒)である。また,2005年以
MWeでホールド中
除去実施
降の定期検査において,シロキサンを発生させる液状パッキンをシール材としてタービン
パッキンケース等に使用していた。
● 過去の定期検査において使用したタービンパッキンケースの液状パッキンから流出した
シロキサンが,その後の2サイクルの運転により触媒に蓄積した。今サイクルの起動時に,
主復水器ラバーエキスパンション等から微量のシロキサンが流れ込み,触媒がさらに被毒
した。
● 従って,浜岡5号機に比べて浜岡4号機の方が「触媒内のベーマイトの存在」が少なかっ
たものの,
「シロキサンの影響(過去からの蓄積および今サイクルの被毒)」により触媒性
能が低下したと推定される。
表-2 水素濃度上昇に対する各金属触媒プラントの影響評価
液状パッキンシール材使用
触媒
起動前点検停止時
プラント
水素濃度上昇事象
製造年
2007.7
浜岡5
水
素
濃
度
上
昇 志賀2
発
生
プ
ラ
ン
ト 女川3
水
素
濃
度
上
昇
未
発
生
プ
ラ
ン
ト
上昇⇒回復
2004年
2008.11 上昇⇒停止
再起動
2008.12
上昇⇒停止
使用期間
約1.5年
温水洗浄時間
※1
32h程度
ベーマイト量
※2
◎
過去の点検停止時
影響 大
影響 小
影響 大
影響 小
◎
×
◎
×
32h程度
◎
◎
×
◎
×
「触媒内のベーマイト量が比較的多いこと」および「シロキサンの影
響」の重畳によると推定される。
0年
約0.3年
「触媒内のベーマイト量が比較的多いこと」および「シロキサンの影
響」の重畳によると推定される。
「触媒内のベーマイト量が比較的多いこと」および「シロキサンの影
響」の重畳によると推定される。
0年
新品取替
2008年
考 察(推定)
タービンパッキン
タービンパッキン
ラバーエキスパ
ラバーエキスパ
ケース/外部車
ケース/外部車
ンション※4
ンション※4
室※3
室※3
32h程度
◎
「硫酸塩水和物の影響」に加え,「触媒内のベーマイト量が比較的多
いこと」および「シロキサンの影響」が重畳した可能性は否定できな
い。
2008.4
上昇⇒停止
2003年
2008.5
再起動
上昇⇒回復
新品取替
2006年
0年
32h程度
◎
触媒を新品に取替えており,一時的に水素濃度が上昇したが,その
後の運転調整により,問題なく起動したと推定される。
2007.11 上昇⇒停止
2000年
約3.8年
32h程度
◎
「低酸素/水素濃度比」に加え,「触媒内のベーマイト量が比較的多
いこと」および「シロキサンの影響」が重畳した可能性は否定できな
い。
2007.12 再起動問題なし
新品取替
2006年
0年
32h程度
◎
浜岡4
2009.5
1992年
約7.9年
24~27h程度
○
×
○
◎
○
福一1
なし
1996年
約6.6年
32h程度
◎
×
×
×
○
福一4
なし
2002年
約3.7年
32h程度
◎
×
×
×
○
柏崎4
なし
1992年
約9.7年
24~27h程度
○
△
1車室のみ使
用
×
×
○
「シロキサンの影響」の影響は否定できないが1車室のみと少ないこと
から影響は相対的に小さいと想定され,問題なく起動できていると推
定される。
柏崎5
なし
1988年
約13.5年
24~27h程度
○
×
○
×
○
「シロキサンの影響」がほとんどないと想定されるため,問題なく起動
できていると推定される。
柏崎6
なし
1995年
約8.9年
27h程度
○
×
○
×
○
「シロキサンの影響」がほとんどないと想定されるため,問題なく起動
できていると推定される。
志賀1
なし
1991年
約5.5年
24~27h程度
○
○
○
×
×
「シロキサンの影響」は否定できないものの,その影響は比較的小さ
かったと想定され,問題なく起動できていると推定される。
島根1
なし
1984年
約18.4年
24h程度
△
×
×
○
○
「シロキサンの影響」は否定できないものの,その影響は比較的小さ
かったと想定され,問題なく起動できていると推定される。
島根2
なし
1987年
約16.6年
24~27h程度
○
○
×
○
○
「シロキサンの影響」は否定できないものの,その影響は比較的小さ
かったと想定され,問題なく起動できていると推定される。
◎
○
上昇⇒停止
×
×
×
○
×
×
低酸素/水素濃度比を改善および触媒を新品に取り替えており,問
題なく起動したと推定される。
浜岡5号と比較して触媒内のベーマイトの量は少ないが,「過去のシ
ロキサンの蓄積による影響」と「ラバーエキスパンションのシロキサン
の影響」の重畳によると推定される。
触媒内のベーマイト量は比較的多いものの,「シロキサンの影響」が
ほとんどないと想定されるため,問題なく起動できていると推定され
る。
触媒内のベーマイト量は比較的多いものの,「シロキサンの影響」が
ほとんどないと想定されるため,問題なく起動できていると推定され
る。
※1 6hの温水洗浄後の浸漬時間を除く。
※2 温水洗浄時間が長いほどベーマイトが多いという実験結果からの評価に基づき,ベーマイト量に関し温水洗浄時間に応じて「◎32h程度○24~27h程度△24h程度」に設定した。
※3 タービンパッキンケース等シール材調査結果に基づき,使用量に応じて「◎600g以下○400g以下△200g以下×なし」に設定した。
※4 ラバーエキスパンションシールは,シロキサンによる影響が小さいとの評価から,シール材の使用実績に応じて「○使用×未使用」に設定した。