フルカラーディジタル複合機 AR-C150

フルカラーディジタル複合機 AR-C150
フルカラーディジタル複合機 AR-C150
Full-Color Digital Copier / Printer
高 京 介 *
Kyosuke Taka
平 井 政 志 *
Masashi Hirai
山 田 義 門 *
Yoshikado Yamada
まえがき
近年のパソコンの急激な増加および,
インターネッ
ト,Web情報のカラー化に伴い,一般オフィスでのカ
ラー出力化が,急速に普及しつつある。このオフィス
のカラー化により,
カラー出力機器市場は急成長が予
測されており,カラーコピー機能とネットワークカ
ラープリンタ機能もあわせもった,
フルカラー複合機
のニーズが急速に高まってきた。これに対応して,今
回,普及機クラスの価格帯で,高速,高生産性,高画
質,ネットワーク対応機能を備えた高コストパー
フォーマンスのフルカラー複合機 AR-C150 を商品化
したので紹介する。
写真1 AR-C150
1 . 製品概要
表1 AR-C150 コピー機能仕様
製品仕様を表1,2に,製品概観を写真1に示す。
当商品の特徴仕様を下記する。
(1)フルカラー速度毎分 15 枚(A4 横)とファー
ストコピータイム 10.5 秒
カラーコピーは遅いという常識を覆し,標準価格
200 万円以下のフルカラー複写機クラスで初めて,Y
(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラッ
ク)の4色現像ユニット(感光ドラムを含む)を直列
配置した,タンデムエンジンを搭載して,クラストッ
プの高速性を実現するとともに,モノクロ複合機に迫
るコンパクトサイズと軽量化を達成した。
(2)解像度 600dpi,256 階調の高画質
読み取り,書き込みともに 600dpi の高解像度,256
階調の色再現力とともに,{文字/写真領域分離技
術}
,
{空間フィルタ技術},
{インテリジェントニュー
ロ技術を用いた3次元色補正技術}
から構成される当
社独自の画像処理技術VIPシステムの搭載により原稿
に忠実な色再現と高画質を実現。また,長時間使用で
生じるエンジンの特性変化,使用環境変化(温度,湿
度)を自動的に補正する当社独自の画質制御システム
* ドキュメントシステム事業本部 ドキュメント第1事業部 第1技術部
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複写方式
解像度
複写サイズ
複写速度
複写倍率
ウォームアップ
ファーストコピー
給紙方式
電源
消費電力
エネルギー消費効率
外形寸法
質量
レーザ静電複写方式
読み取り,
書き込みとも600dpi
A3ワイド
(305×457mm)
∼A6,
官製はがき
フルカラー:15枚/分(A4横)
モノクロ:25枚/分(A4横)
1:0.25∼1:4.00
約200秒
フルカラー:10.5秒,
モノクロ:19.5秒
3トレイ方式(500枚×3)
マルチ手差しトレイ
(50枚)
AC100V,
15A
最大1500W
175Wh/h
750×695×1060mm(幅×奥行き×高さ)
約152kg
表2 AR-C150 プリンタ機能仕様(オプション)
対応OS
対応ネットワーク
対応プロトコル
ページ記述言語
内蔵フォント
最大プリントサイズ
プリント解像度
プリント速度
スキャン機能
スキャン解像度
メモリ
インタフェース
Windows 95/98,
Windows NT 4.0
Mac OS 7.6/8.0/8.1以降
Netware,
Windows NT,
Macintosh
TCP/IP,
IPX/SPX,
Ethertalk
Adobe PostScript 3
和文:2書体,
欧文:136書体
A3
600dpi
カラー:最高15枚/分(A4横)
モノクロ:最高25枚/分(A4横)
Twain Scan Plug-in (Photoshop)
シングルページスキャン
600dpi
192MB
100Base-TX/10Base-T
シャープ技報
第76号・2000年4月
を搭載して,初期と同等の高画質を維持している。
(3)高速,高画質ネットワークカラープリンタ/
スキャナ機能
EFI 社製 Fiery プリントコントローラ接続により,
PS3を搭載した高速(カラー15枚/分),高画質なネッ
トワークカラープリンタ,スキャナへ機能拡張でき
る。提供される統合カラーマネジメントシステム
ColorWise や Web によるジョブ管理ツール WebTool,
プリント済ジョブの再構成出力できる DocBuilder 等
多彩なツールで高品位なネットワークカラープリント
機能を実現。
(4)大型液晶タッチパネルによる簡単操作 操作パネルにワイド液晶タッチパネルを採用して,
トナー補給や,紙詰まり除去手順等を,メッセージと
動画アニメーションでわかりやすく表示して,
簡単操
作を実現。
(5)省エネモードを搭載,環境にも配慮
クラストップのウォームアップタイム約200秒とエ
ネルギー消費効率175Wh/hを実現するとともに,国際
エネルギースタープログラムの新基準 Tier2に適合し
て省エネモードを搭載して,
エネルギー節約に配慮し
ている。
2 . 技術概要
AR-C150 で搭載した,タンデムエンジンは高速化,
用紙の厚紙対応等,
可能なすぐれた方式であるが一方
で,カラー出力時の Y,M,C,K 各色のカラーレジ
ストレーション制御と用紙への転写制御が難しい。
ここでは,
この重要なカラーレジストレーション制
御技術,転写制御技術について説明する。
2・1 タンデムカラーレジストレーション制御技術
本機は,
感光ドラムを4個タンデムにレイアウトす
ることによって高速印字を実現している。この為,
Black ,Cyan,Magenta,Yellowの各カラー印字ステー
ジにおけるドットを出力用紙上において重ね合わせる
レジストレーション技術が重要となる。
人間の視覚が
色ズレを認識しない範囲はおよそ140μm以下とされ
ていることから,その目標を 100 μ m 以下とし,下記
内容に記した新開発のレジストレーション機構,制
御,調整技術により実力 80 μ m 以下を達成した。
(1)表3に示すようなミスレジストレーションと
なる主要因を,項目ごとに目標値として設定した。
(2)感光体ドラム周辺や読取り系の構造を簡素化
し部品点数を削減することで部品公差からくるバラツ
キを最小化した。
(3) 用紙搬送速度差に起因する印字位置ズレと,
感光ドラム1回転の速度差に起因する印字位置ズレ
は,各カラー部と搬送部の駆動系とを個別モータにて
駆動することで,ローラ間の速度差を 0.1% ステップ
で調整し,又,感光ドラム間の回転位相差を任意に調
整し,印字位置ズレを最小化した。
(4)シャーシの歪からくる印字位置の変化に対し
ては有限要素法による3次元 CAE シミュレーション
を実施し最適な構造を実現した。
(5)温度変化による書込み系部の膨張による印字
位置変化を最小化する為,各書込み系間の温度差を
10deg以下になるようレイアウトを配慮することで実
現した。
(6)部品公差に起因する書込み系の印字位置,用
紙搬送方向の傾きを調整する為に,
新規に調整機構を
導入した。
表3 ミスレジストレーション主要因に対する目標値と印字補正手法
書込み系
感光体ドラム
読取り系
搬送
印字位置補正
(テストパターン調整)
fθ特性のバラツキ
各像高において50μm以下
印字傾き
50μm以下
像面湾曲
同一方向に50μm以下
スラスト振れ
10μm以下
ラジアル振れ
50μm以下
駆動ギヤ精度
JIS2級
ミラー系駆動精度
読取り位置ズレ平均25μm以下
レンズ色収差
CCD位置にて1.2μm以下
転写ベルト走行精度
ベルト位置変化50μm以下
PSローラ振れ
30μm以下
用紙搬送傾き
85μm以下
主走査方向印字位置調整
レーザ印字方向の全体倍率及び書出し位置調整
副走査方向印字位置調整
用紙搬送方向の印字開始位置調整
ドラム位相調整
ドラム間の位相を最適化調整
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フルカラーディジタル複合機 AR-C150
図1 タンデム転写部
(7)最終的な印字用紙上での微妙なズレを容易に
補正する為,特殊な工具などを使用せず,視覚的な変
化から目視で作業者が調整できるよう表3に示す項目
に対し,Black ラインの印字位置を基準にして所定
ドットずらした他の色を専用パターンとして印字さ
せ,その各色間の重なり状態から判断することで,1
ドット(42.3 μ m)単位での調整を可能とするテスト
パターン調整方法を考案し確立した。
2・2 タンデム転写制御技術
タンデム転写方式では,
複写用紙を転写ベルトによ
り吸着搬送し,各色の感光ドラム上に形成されたト
ナー像を用紙上に静電転写する。
このため,
感光ドラム上の各色トナー像が理想的に
形成されたとしても転写が適正に行われないと,
色ズ
レが発生し高品位なカラー画像は得られない。
本製品のタンデム転写部を図1に示す。本製品で
は,転写ベルトとして,耐久性,寸法安定性に優れ,
環境による抵抗変動が少ないポリイミドシームレスベ
ルトを新規に開発した。
又転写ベルト帯電手段として,接触帯電方式(転写
ローラ)を採用し,これらの組合せによって高速転写
とオゾンレスを実現した。
尚且つ,各種用紙,各環境下にて転写を適正に行う
ため以下の技術を確立した。
転写ローラに印加する電圧を本体内蔵の湿度セン
サー出力に応じて最適転写電圧補正を行い,雰囲気の
湿度及び複写用紙の吸湿による転写の劣化を防止し
た。
又,普通紙より抵抗の高い OHP フィルム及び厚紙
への転写ではそれぞれのモードに応じて各色転写電圧
を制御する事で転写不良を防止した。
転写ベルトによる接触転写方式では,
トナー像の内
部と外部での部分的なトナーの欠落(中抜け)が発生
し易いが,これを感光ドラムと転写ベルトに約1%の
速度差を設ける事により防止した。
転写ローラの直後に接地除電板を設ける事により低
湿時に転写後の局部放電にて発生する画像乱れを防止
した。
これら技術により,ライフ,環境を通じて常に安定
した転写を行い高品位なカラー画像を得ることができ
た。
むすび
新開発タンデムエンジンの搭載により高速,高効率
フルカラー複合機 AR-C150 を商品化できたが,今後
の展開としては,このプラットフォームエンジンを
ベースに更なる高速,高画質商品を計画中である。
謝辞
フルカラー複合機 AR-C150 の開発にあたり,ご協
力頂いたドキュメントシステム事業本部の関係各位に
深く感謝致します。
(2
00
0年1月14日受理)
○ Windows は米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の
国における登録商標です。
○その他,製品名等の固有名詞は各社の商標または登録商標で
す。
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〈お問い合わせ先〉
ドキュメントシステム事業本部
ドキュメント第1事業部 第1技術部
〒63
9-1
18
6 奈良県大和郡山市美濃庄町492番地
電話 (0
74
3)53−5
52
1(大代表)