第5章 - 地域実践教育研究センター

神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究 都市イノベーション学府 佐土原・吉田研究室 M1
南燿太
東日本大震災を契機に日本全国で津波に関する危機感や関心が高まっている。今後の災害に対しては
想定外の被害といった事態にならないように東日本大震災の被害状況や経験から各地域にどのような
被害が起きるのかを把握し対策や事前に復興計画を立てる必要があると考えられる。そこで、本研究で
は今後神奈川県の津波対策を考えていくために慶長型地震による津波を想定として各地域の被害特性
を明らかにすることを目的とする。
1. 津波による浸水被害 1-1.浸水被害影響延べ床面積 国土交通省中部地方整備局地震・津波災害に強いまちづくりガイドライン中間とりまとめによれば浸
水深に相当する階の上階が被害を受けているものの 2 階上の階が被害を受けた例はなかった。このこと
から浸水深に相当する階の上階までは被害を受けると考える。これをもとに実際に被害を受けると考え
られる延べ床面積を求めた。その結果、浸水被害影響延べ床面積は横浜、川崎、横須賀で大きな数値を
示したが各市町の全建物延べ床面積に占める浸水被害影響延べ床面積の割合は逗子市が最も大きくな
ることがわかった。
図 1.浸 水被 害影 響延 べ 床面 積概 略図
表 1. 浸 水被 害影 響延 べ 床面 積
横浜市
川崎市
横須賀市
三浦市
葉山町
逗子市
鎌倉市
藤沢市
茅ヶ崎市
平塚市
大磯町
二宮町
小田原市
真鶴町
湯河原町
全建物
延べ床面積(ha)
19,253.83
7,364.47
2,612.70
315.62
237.18
336.35
1,106.71
2,126.87
1,113.53
1,154.93
184.87
140.24
1,426.77
59.36
191.71
浸水被害影響
延べ床面積(ha)
964.67
555.76
384.84
57.06
31.74
91.65
90.13
90.98
9.72
3.63
3.64
0.49
1.70
1.95
0.02
浸水被害影響
延べ床面積割合
5.01%
7.55%
14.73%
18.08%
13.38%
27.25%
8.14%
4.28%
0.87%
0.31%
1.97%
0.35%
0.12%
3.29%
0.01%
1-2.浸水予測建物の用途別延べ床面積 また浸水被害を受ける建物の用途によって起
こる被害や対策が異なる。そこで各市町で浸水
が予測される建物を表 2 に従って分類し、用途
別延べ床面積の割合を求めた。浸水被害が小さ
い地域は一つの建物の影響を強く受けてしまい
表 2. 建物 用途 の分 類
住宅宅系 (住宅・集合住宅・店舗併用住宅・店舗併用集合住宅・作業所併用住宅)
商業系 (業務施設・商業施設・宿泊施設・娯楽施設・遊技施設・商業系用途複合施設)
⼯工業系 (運輸倉庫施設・重化学工業施設・軽工業施設サービス工業施設・家内工業施設・処理施設)
官公庁・⽂文教厚⽣生施設
その他 (農業施設・防衛施設)
特徴的になってしまった。多くの地域で住居系
の被害が大きくなることが明らかになったが、
横浜や川崎では商業系や工業系の被害が大きく
なった。これは川崎市沿岸部には広大な工業用
埋立地があること、商業系用途の建物が多い横
浜市西区・中区の浸水地域が広がっていること
によるものと思われる。
図 2. 浸 水建 物用 途別 割 合
2. 全壊予測建物延べ床面積 国土交通省「東日本大震災による被災現況調査結
果(第 2 次報告)について」をもとに建物構造、階数
ごとに浸水深による建物全壊条件を表 3 のように
表 3.建 物全 壊条 件 階数
浸水深
が非常に少なく、逗子などでは全壊する建物が多
が予測される建物の木造割合が少ないのに対し逗
子などでは木造の割合が大きいことや、震源地が
東海道沖であるため、相模湾と隣接している逗子
市などでは浸水深が大きな地域が多いのに対し、
東京湾の横浜市などでは浸水深が小さいことによ
るものである。
3階建以上
10m 以上
表 4.全 壊予 測建 物延 べ 床面 積
設定した。その結果、横浜、川崎では全壊する建物
いという結果になった。これは横浜、川崎の浸水
木造
RC ・
S造
1・
2階建 3階建以上 1・
2階建
2.5m 以上 6m 以上
6m 以上
横浜市
川崎市
横須賀市
三浦市
葉葉⼭山町
逗⼦子市
鎌倉市
藤沢市
茅ヶ崎市
平塚市
⼤大磯町
⼆二宮町
⼩小⽥田原市
真鶴町
湯河原町
全建物
全壊予測
全壊予測建
延べ床⾯面積(ha) 建物延べ床⾯面積(ha) 物延べ床⾯面積割合
19253.83
0.53
0.003%
7364.47
0.00
0.000%
2612.70
33.61
1.286%
315.62
14.63
4.635%
237.18
8.43
3.554%
336.35
35.33
10.504%
1106.71
33.90
3.063%
2126.87
11.57
0.544%
1113.53
0.01
0.001%
1154.93
0.00
0.000%
184.87
0.01
0.007%
140.24
0.00
0.000%
1426.77
0.02
0.002%
59.36
0.04
0.061%
191.71
0.00
0.000%
3. 仮設住宅用地 図 3 のような手順で各市町の仮設住宅用地必要面積を求めた。さらに既往研究に基づき土地利用現況
などからオープンスペース、空地、小学校を
抽出しその面積に面積補正を行い、面積 504
㎡以上を利用可能用地として計算し比較した。
その結果多くの市町では必要面積を満たす結
果となったが、逗子市では用地不足となった。
これは逗子市の浸水地域範囲が広いことによ
るものと思われる。
図 3.仮設住宅用地必 要面積計算フロー図
また実際にはこの仮設住宅建設可能用地は仮設住
宅以外にも使用される可能性やライフライン設備
などによって建設可能面積はさらに小さくなるこ
とが見込まれる。
図 4. 仮設 住宅 用地 需 給量
4. まとめ 同じ沿岸部であっても津波による浸水被害に違いがみられた。特に横浜市、川崎市では商業系や工業
系の建物の被害が大きく全壊する建物の割合が少なるため他の地域と異なる対策が必要になると考え
られる。またこの研究を通して逗子市の被害が大きくなると予想され、特に仮設住宅用地不足は逗子市
のみで解決できる問題ではないため近隣の市と共同で対策や事前復興計画を立てる必要があると思わ
れる。今回の研究では主に建物被
害が中心であったが実際には人口
集中地区の横浜市や川崎市、観光
客が多い鎌倉など、人的被害に着
目した被害特性も考えていかなけ
ればならない。
図 5. 被害 特性 と 必 要対 策
参考文献
1. 神奈川県土整備部都市計画課 H17 年度都市計画基礎調査
2.神奈川県土整備局「新たな津波浸水予測図解説書」
(http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/life/484439_858154_misc.pdf)
3. 国土交通省「東日本大震災による被災現況調査結果(第 2 次報告)について」
(http://www.mlit.go.jp/common/000168249.pdf)
4. 国土交通省中部地方整備局 地震・津波災害に強いまちづくりガイドライン 中間とりまとめ
(http://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/machi_seibika/pdf/TunamiSaigai_guideline_3.pdf)
5. 小野田隆「横浜市における震災後の仮設住宅用地の選定に関する研究」2011 年度横浜国立大学環境情報学府修士論文
逗子における水辺の原風景 − 事前復興に活かす逗子らしさとは? − 横浜国立大学理工学部建築学科非常勤講師
平井政俊
大災害が発生すると被災した土地の長年に渡って積み重ねられてきたその場所の特徴が一気に喪失
されてしまう恐れがある。その土地らしい復興のあり方がなされるべきとする逗子市民の考えに触れ、
逗子の原風景について調査した。調査分析から、「水辺が近くにある暮らし」「披露山・桜山が望める街
並み」「黒松並木とコミュニティ」「水辺の交通・産業活用を通じた危険リスクの感知向上」など、逗子の
原風景から事前復興へと繋がる観点が導かれた。本研究は、原風景を保持・発展・伝承しながら、大災
害にも対応できる「逗子らしい」事前復興計画の具体的な提案を導くための基礎研究である。 事前復興計画と原風景 想定外の被害をもたらす大災害が発生すると、その土地における歴史的建造物や文化財あるいはそれ
に関する資料は失われ、さらに土地の形質も変わってしまう。またその後は迅速な復興が求められるた
め、時間や手間が掛かる検討、つまり土地の特徴としての原風景や流されてしまった歴史的記憶などに
配慮した復興計画はほとんど行うことができない。例えば、海が全く見えない程巨大な防潮堤が漁村に
築かれたり、山の頂部を切り払って集団移転用地とされたりするように、復興の名の下にさらなる風景
の大きな改変が延々と行われ、結果的にその場所の特徴が喪失されてしまう恐れがある。
これに対して「事前復興」とは災害に対して弱い部分を強くしておくことで被害を減らし、また予め復
興の考え方や対策を計画しておくことで災害が起こった後により早くより良い復興が出来るようにす
ることである。事前だからこそ、その土地の特性を捉え直し、それを活かす復興のあり方とはどういう
ものなのかを多角的に議論することが重要であると考えられる。
今回、逗子市の事前復興計画の提案にあたり、逗子市民へのヒアリングを通じて地域の方々が大切に
している逗子らしい原風景に繋げられる復興のあり方が望まれていることがわかった。
そこで本稿では、原風景とは「地域が根ざしている気候や風土、空間、文化、歴史に関わる人々の意
識無意識の個人的・集団的記憶の蓄積i」として定義し、視覚的風景だけではなくそこに生起する人々の
営みを含んだ総体と捉え、逗子の原風景の要素を掘り起こすために、資料やヒアリングを通して調査を
行った。
逗子の特徴である水辺と共生しながら、持続的に逗子に住み続けられる復興計画はどういうものなの
か探るために、ここでは逗子における水辺の原風景について、明治初期から戦後までおよそ 130 年〜50
年くらい前を記録した古い写真や地図などを通して考察する。
水辺の原風景の調査 (1)近世の逗子 図 1 は明治 14 年の逗子の地形図
である。まだ逗子が7つの村(桜
山、逗子、山野根、沼間、池子、
久木、小坪)だった頃で、この後
明治 17 年にそれらが連合し、逗子
村外六ヶ村が発足する。
各村を見ていくと、桜山村は田
越橋(後の富士見橋)周辺、逗子
村は現逗子駅から銀座商店街の一
帯、亀岡八幡宮周辺および新宿の
標高が少し高い北西地域に民家が
集中しているのが分かる。これは
図 1 帝国陸軍地形図 二万分の一 (日本地図センター発行) 近世江戸期の交通システムから形成された構成で、主には三浦半島〜東海道と結ぶ「浦賀道(現屋敷通
り)」と、逗子〜横須賀を結ぶ「現県道 24 号線」、またそれらと当時の主流物流線としての田越川の結節
点、石渡代官がいた川港あたりである。
現在の海側の市街地である新宿 1〜2 丁目、逗子 5〜6 丁目付近など水辺周辺に街の骨格が出来初めて
いるのが捉えられる。
当時の人口は少なく、低地のほとんどが田畑で沼地もある。中世においては延命寺の南側に田越川が
通っていたとか、逗子南西部は満潮時に浸水していたという文献も見られ、現市街地は地盤が低く水気
が多い地域だった。また新宿地域
の海沿いに黒松が多く自生してい
る様子が特徴的に記されており、
「海辺の黒松林を抜ける浦賀道」と
いう風光明媚な風景が長年に渡っ
て逗子の人々に集団的に記憶され
蓄積されてきたことが想像できる。
このような近世から引き継いだ
交通網の骨格を下敷きに、明治中
図 2 黒田清輝 「逗子五景」 田越川富士見橋付近 (神奈川県立美術館蔵) 期における鉄道開通をきっかけに逗子の近代化が加速していく。
(2)田越川のある風景 図 2 は明治 31 年 画家の黒田清輝が描いた「逗子五景」という風景画のうちの富士見橋付近のもので
ある。1893 年フランス留学から帰国した黒田は 1898 年1月から約半年ばかり逗子に滞在し、逗子の風
景を 5 点描く。いずれの絵も主題は田越川の風景で、川辺が当時の逗子の特徴であり魅力だったことが
捉えられる。当時と比べると現在は川の印象というのがずいぶん薄まってしまったことが分かる。また、
山際に建物がなく、建物同士の間隔も広いので、平地から桜山への地形が連続して認識できる。例えば
津波が来ても、桜山へ逃げるにはどう行けばよいか、容易に認識出来たと思われる。
(3)黒松並木と屋敷通り 写真 1 は明治 33 年田越川と新宿
付近の鳥瞰である。横須賀線が開
通した明治 22 年に創業した養神亭
をはじめ木造平屋の日本家屋が黒
松林のなかに建っている。写真上
方には明治維新後に流行した和洋
折衷様式の木造二階建ての大きい
別荘が多く写っている。富士見橋
は木造で、写真手前には茅葺きの
農民家も見られる。大きい敷地の
中でも、水際に寄せて建てていて、
川に船が係留されている長島鷲太
写真 1 田越川河口、新宿付近鳥瞰 (長島孝一氏蔵) 郎邸もある。田越川の水運を利用
し川から屋敷にアプローチでき、
川側も生活の表としている利用し
ている様子が分かる。
富士見橋までくると江の島とほ
ぼ同じ方角に富士山が見えるはず
で、低層低密の街であったが故に
いろんな所から遠くの景色が見え
ていたということが地名などを通
して後世に伝わってくる。
図 3 国土地理院 地形図 二万五千分の一 (逗子市役所蔵) (4)保養地としての逗子 図 3 は明治 36 年の地形図である。鎌倉から逗子を経由し三浦半島へ抜ける道(現県道 205 号線、24
号線)が整備され、現在の位置に田越橋が移った。駅前から続く銀座通りは少しずつ市街化し、新宿地
域の海岸沿いには外国人や政治家の別荘が並びだしている。それでも大部分の田畑や黒松林などは残っ
ていて、大きい沼も確認出来る。
当時の絵はがきには逗子海岸、田越川、沼地など水辺空間の写真が多く使われていて、保養地として
栄える逗子の名所の多くが水辺空間だったことが分かる。
(5)屋敷通りと桜山・披露山 写真 2 は明治 44 年の屋敷通りの
様子である。屋敷通り沿いの宅地
は面積が大きく、各庭に黒松が群
生しているので、大きい屋敷は直
接見えない。街道であったため道
幅は広く、そのために遠景に桜山
や披露山がよく見える。避難の際
は黒松並木沿いに逃げれば、桜山
や披露山にたどり着くことができ
ると考えられる。
また黒松の葉を掃除するために、
近所の人が同じ時間帯に集まって
写真 2 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 屋敷通り 掃除を行い、それが交流の場となっていた、という市民からの経験談もある。長年にわたって蓄積され
てきた逗子らしい風土や空間が残っていると、それを維持するために多くの人が関わり、自然とコミュ
ニティの形成につながっていくことが捉えられた。
(6)公共空間としての田越川
写真 3 は明治 30 年代の田越橋で
ある。川沿いの道は水面に近く、
護岸もまだない。浮かべている小
舟は本当に小さいが、住民の誰も
が、自由な思いで川を使うことが
許されている状態であろう。田越
写真 3 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 田越橋 川が公共空間として誰のものでもあり、物理的にも心理的にも今よりもずっと近い存在だ。しかし津波
の際には波が田越川を遡上する恐れがあるため、すみやかに避難する必要がある。写真のように普段か
ら川を直接利用したり、すぐそばまで降りたりできれば、潮の満ち引きだけではなく津波の遡上などの
危機もすぐに察知し避難行動をとることができたと推測される。このように日常的に水辺を活用してい
れば、災害時の危険性に対しても
自然と意識が高まり、さらに後世
へ伝承することにも繋がっていく。
写真 4 は明治末年の田越川の川
釣りの様子である。田越川は釣り
だけではなく、水運としても使わ
れており、伊豆の魚や木材が田越
川を経由して江戸に運ばれていた。
また川際にかなり近づけて配置
された建物が確認できるが、洗濯
物が干されていて、おそらく川で
洗濯もしていたのだろう。物流と
写真 4 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 田越橋の川釣り いう都市スケールから洗濯という
ヒューマンスケールまでダイナミックに水辺がいきいきと活用されていることが捉えられる。
(7)多元的システムの共存
写真 5 は大正初年の富士見橋付
近の様子である。田越川の水運を
はじめ、自動車、馬車、徒歩と複
数の交通手段が混在している様子
が分かる。
陸運だけでなく水運も利用する
ということは、例えば土砂災害で
道路が寸断されたときは水運を、
干ばつや干潮のときは陸運を利用
するというように、システムを一
元的に集約していくのではなく多
元的なシステムを持って被災時な
写真 5 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 富士見橋付近 どのリスクを分散させるということであり、今後の交通システムの再編時に考慮すべきことではないだ
ろうか。
さらに街の構造についても同じ事がいえるかもしれない。被災後生き残ったシステムを活用しながら
被害を受けたシステムを復旧していくことで、各所各所で同時多発的に復興が行えるのではないか。こ
ういう災害時のバックアップのために、多元的で横断的なシステムの構築という観点に立てば、戦後非
常時対応として作り上げられた集約的でいわゆる縦割りの現行の法制度や物流やエネルギーシステム
などの抜本的見直しを行うテコになり得るかも知れない。
(8)公園のような逗子海岸
写真 6 は大正 5 年の逗子海岸の
様子である。海水浴を楽しむ人も
いるが、近年と比べると人の数は
まだ随分少ない。着物姿で座って
いたり、子供を負ぶって歩いてい
たりと、海水浴以外の使い方も混
じっていて、公園のようにも見え
てくる。街と海岸が現在のように
国道で分断されていないので、自
由に海際まで近づき、思い思いに
海辺を楽しむことができている。
写真 6 木村彦三郎監修 「目で見る鎌倉・逗子の百年」 逗子海岸 (9)別荘地としての逗子海岸
写真 7 は大正中期の逗子海岸の
様子である。明治初期以降、海岸
沿いに折衷様式の大型の木造二階
建てが数多く建てられ、逗子海岸
は外国人や政治家、将校など富裕
層の別荘地として栄えた。建物自
体は大きいが、土地が広いので、
建物の間隔は 20〜30m くらいあり、
背景に黒松林や桜山が見える。
各々の住戸が防潮用に土地を嵩上
げ、擁壁を設けていて、水辺に建
写真 7 木村彦三郎監修 「目で見る鎌倉・逗子の百年」 逗子海岸別荘群 つ建築の考え方として、津波や高潮災害に対する自助意識が高いことが分かる。
(10)インターフェイスとして
の河岸
写真 8 は昭和元年の富士見橋の
様子である。関東大震災の津波に
よって富士見橋は流失するが、す
ぐに再建された。この船は富士見
橋の河口側に停泊している。干潮
時と思われるが、それでも富士見
橋の下はくぐれないので漁船と思
われる。漁師なのか河原に人が写
っていて船の整備か漁の準備を行
っている。現在ではほとんど見ら
れなくなってしまっているが、こ
写真 8 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 富士見橋 のような地上から河原へ自由に下りられたり、そこで活動できたりする河岸のインターフェイスとして
のデザインが川辺空間を身近に引き寄せる重要な要素である。
(11)広い砂浜による娯楽
写真 9 は昭和初年の逗子海岸の
海水浴の様子である。この頃すで
に多数の海水浴客で賑わっている。
更衣所や海の家が連なっているが、
湘南道路がまだないため、砂浜は
とても広い。この頃は貸しボート
が盛んだったようだが、現在では
危険が伴うためあまり見かけない。
ただ、海でボートを漕ぐというの
は、海側から海岸を見ることがで
きて魅力的であるため、波の低い
逗子ならではの遊びかもしれない。
写真 9 久保木実 「絵葉書が語る三浦半島の百年」 逗子海岸 海岸沿いにまだ高い建物が無いため、海岸から避難するには桜山か披露山しか考えられないが、これだ
け多い人数では逃げ切ることは不可能だと思われる。
(12)50 年前と 50 年後の逗子
写真 10 は昭和 21 年、終戦直後
の逗子海岸の様子で湘南道路が開
通する 18 年前である。明治期より
は小振りだが、それでも大きい木
造の別荘が海際に並び、その大き
い庭に黒松などが群生しているの
で、屋敷通りは依然黒松並木とし
て新宿地域の特徴的な風景をなし
ている。
今から 50 年前の昭和 30 年の人
口は約 38,000 人で、今から 50 年
後の平成 77 年は推定約 36,000 人
写真 10 逗子海岸 (長島孝一氏蔵) となり、この写真に近い頃とほぼ
同じか少なくなる。低層住宅と黒松が混在した風景が新宿から久木へと続いているが、高台住宅地が開
発された今、高台と低地の人口バランスからすると 50 年後の低地はこれよりもっと低密で緑地の多い
街になるのではと推測される。
また、この写真とは逆に市街地と海辺が国道や防潮堤などで分断されると海水浴で賑わう夏場の避難
というものが大変大きな課題となる。
(13)漁師町と傾斜地形の風景
写真 11 は昭和 29 年の埋め立て
前の小坪湾の様子で、住宅各戸が
西面に太陽を受けているため、夕
刻の写真である。海岸に沿って密
集している各戸から海が見えるよ
うに傾斜地形をうまく利用しなが
ら建物を配置していることが分か
る。漁師町にとって海が見えると
いう重要性をその傾斜地形が担保
しており、その有機関係が特徴的
写真 11 逗子に市立博物館を作る会 「写真・資料で見る逗子の戦前・戦後」 小坪湾 な風景をなしている。
海際まで建て込んでいて、嵩上げもしてないため、浸水時には建物損壊の被害は大きいと思われるが、
そもそも海がよく見えるので、早い段階で津波の発生を認識できたはずである。ただし、後背地形が急
峻なため、避難路の整備が必要で、かつそれをしっかり認知していないと逃げ遅れてしまう。漁師は逆
にさっと舟に乗って沖へ避難したかもしれないと推測される。
(14)生物多様性のある水辺
写真 12 は昭和 30 年の田越川六
代御前前の様子。水位が高く、川
幅は狭い。水運としてまだ利用し
ていたようで、大八車が置かれて
いる。この辺りは戦後も依然とし
て護岸整備はされておらず、当時
はこの付近までスズキやクロダイ
などが遡上し、釣り人が河畔に腰
掛けて糸を垂れていたという。こ
のような環境によって維持される
生物多様性も水辺の重要な役割だ
と考えられる。
写真 12 逗子に市立博物館を作る会 「写真・資料で見る逗子の戦前・戦後」 田越川 (15)逗子海岸の多様な活用
写真 13 は昭和 32 年からは海辺
での大イベント「海上ページェン
ト」の様子である。海開きの期間、
海の上に舞台を作り、広い砂浜に
観客が集まって、グループサウン
ズのコンサートやミスコン、米軍
の演奏など大イベントを行ってい
た。湘南道路が開通し浜辺が狭く
なった後も昭和 45 年まで行われた。
逗子の街ではこの海上ページェ
ントや逗子海岸花火大会が同じ昭
写真 13 海上ページェント (逗子市立図書館蔵) 和 30 年代に始まり、最近では逗子海岸映画祭や逗子ロックなど海岸の独自の活用法が生み出されてい
て、逗子の人は水辺が好きで、それを大人数の人々と共有することも大切にしてきたといえる。
(16)人気海水浴場の逗子
写真 14 は昭和 34 年 8 月 2 日の
逗子駅前の様子である。昭和 30 年
代からは高度経済成長によって、
都市に人口が集中し、逗子の自然
や街並みが急激に変化していく。
駅前は海水浴客で埋まってしま
い、バスは立ち往生している。娯
楽が少なかった時代に海水浴は人
気が高かったため、行楽客が集中
してとても賑っているが、果たし
てこの姿は本来的に望まれる逗子
らしさと言えるだろうか。海水浴
写真 14 8 月 2 日逗子駅前の混雑 [逗子市立図書館蔵] は水辺の魅力的なアクティビティだが、一定期間のみの産業であり、それを仕事として逗子に定住する
人は少ないだろう。一年を通じて逗子に住みたい、逗子で働きたいと思える地域に根ざした魅力的な暮
らし方・産業を育てていくことが、逗子を活き活きとした街にし、被災しても拠り所となる地域コミュ
ニティを形成する方法なのではないだろうか。
(17)コミュニティと原風景
図 4 は昭和 35 年の逗子市全図で
ある。この地図は小字の単位が分
かるものになっており、低地部だ
とだいたい半径 100〜150m ぐら
いの大きさである。小字の名前が
その範囲の土地の特徴と結びつい
ており、例えば蟹がたくさん採れ
る地域は「蟹田」、久木川が真ん中
を抜ける地域は「川間」などと地名
がついている。この頃の地域コミ
図 4 逗子市全図 六千分の一 (逗子市役所蔵) ュニティが小字くらいの大きさと対応していたとすると、それは土地の特有性とも結び付く「その場所
らしさ」を持ったコミュニティだったと言える。「原風景」とはこのような土地の特性や風土と人々の活
動や経験の両方が合致したものだと言えるのではないか。
この後、昭和 39 年の亀岡団地完成を皮切りにアザリエ、興人、ハイランドなどと高台住宅地が次々
と誕生し、昭和 50 年までの 10 年で人口が約3割(1.3 万人)の急増となり、その後も人口は増え続け、
経済成長とともに都市のさらなる近代化がすすみ、現在の逗子の姿へと開発されてきた。
結 長い歴史の中で維持されてきた逗子の水辺の原風景を調査してきたが、50 年程前の戦中戦後から高
度成長期を経て、それらは時代の要請とともにほとんど漂白されてしまい、元の風景と現在の風景とい
うのはイコールでは無くなってしまった。しかし、50 年後、100 年後の未来に向け、たとえ大きな災害
があって全てが流されたとしても、逗子の「原風景」を人々の胸の中にだけではなく、事前復興計画と
して留めておくことが出来れば、新しくつくる街の風景すらも過去と地続きでありかつ発展させた風景
としていくことができると考える。
復興のあり方を考える上において、土地の「原風景」を掘り起こし、それを活かす計画を事前に議論す
ることが強く求められている。
i 長島孝一著、「風土と市民とまちづくり」、(鹿島出版、2015 年 出版予定)
「逗子の”まちづくり”に”原風景”を生かす」の章より
東日本大震災の復興制度から見る、津波事前復興における課題に関しての研究
- 水辺と共生するデザインを行う為に 都市イノベーション学府・博士課程後期 2 年
石塚直登
本稿では津波被害において浸水したエリアの活用に関して、東日本大震災以降変更されている現行
制度の整理を行う。その整理を基に提言書本体の内容との適合を検証する事により、事前復興におい
て問題となる制度との齟齬や検討点を明らかにすることを目的としている。
特に、被災自治体で設定されている L2 津波時に 2m 以上の浸水をする地域の非居住化と、L1 津波に対
する防潮堤・河川堤を基本的な防御手段とするという原則の妥当性を、神奈川県の地域特性を考慮し
て検討し、別の手段の提示を行っている。
1. 中央防災会議による津波レベルの設定
東日本大震災以降の制度について整理して行く。東日本大震災における復興事業では、震災以後に
制度変更が復旧・復興事業と並行して行われた。復興計画は基本的に新しい制度に従って運用されて
いる。これは、阪神大震災では耐震設計は見直されたものの、基本的には復旧工事などは発災以前の
制度によって計画・実施されたことと異なる。
津波に対する考え方の変更としては、内閣府の中央防災会議によって津波のリスクが 2 段階に分類
されたることとなった *1。レベル1津波とレベル2津波(以下 L 1津波、L 2津波とそれぞれ表記す
る)である。L1 津波は頻度が高く、三陸地域においては、チリ地震津波、昭和三陸地震津波、明治三
陸地震津波などが当り、数十年に一度起こり規模が比較的小さい。L 2津波は 2011 年の東日本大震災、
1611 年の慶長三陸津波、896 年貞観地震津波が当り、発生周期が長いが規模が大きいものである。な
お L1 は L2 に比較して小さいということであり、被害はこれまで繰り返し起きている点は注意が必要
である。
中央防災会議では L1 津波に対しては、人命保護・財産保護の他に地域経済の安定化、効率的な生産
拠点の確保の観点から、防潮堤などの海岸保全施設整備による防御を行うべきであるとしている。また、
L2 津波に対しては住民の生命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸にとりうる手段を尽くした総
合的な津波対策を実施すべきとしている。
(これらの方針を以下 L 1防御、L 2避難とそれぞれ表記する)
以前は津波に関しては、これまでに起きている中で最大(以下では既往最大と表記)の津波に対して
防御を行うこととされていた。しかし、その基準で復興事業を行うと東日本大震災と同規模の津波を
防がなければならないこととなり規模が過大になる。また、東日本大震災による津波(以下では今次
*1: 参照・内閣府中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会 報告」
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/28/index.html 2015 年 1 月 22 日アクセス
津波と表記)はシミュレーション上の L 2津波をわずかに下回るため、既往最大での計画でも完全な
L2 防御とならない。(干潮に近い時間であった等の要因による)それらを考えれば、襲来頻度を考慮し
た、L 1防御・L2 避難という整備の段階分けの原則自体は合理性を持っている。
2. 自治体独自の 「2 − 2 ルール」 とは
設計用
浸水深
堤防などによる軽減効果あり,
海岸等からの距離500m以遠
堤防などによる軽減効果あり,
海岸等からの距離500m以内
(水深係数:a=1.5)
(水深係数:a=2.0)
例)2階建て, 高さ6m
確保できれば、どのような復興事業を行っても良
2階,
6m
高さ6
1m
いこととなる。しかしながら、実際には「L2 津
奥行8m
波時における 2m 以上の浸水が想定されるライン
例)2階建て(耐震性1.5倍
例)2階建て(耐震性1
5倍※),高さ6m
) 高さ6
3階建て, 高さ9m
2階,
高さ6m
3階,高さ
さ9m
2m
より海側では、居住用途の建築を許可しない」と
奥行8m
いう復興計画を策定し、制度運用を行っている自
奥行8m
例)3階建て(1階鉄筋コンクリ ト造),
例)3階建て(1階鉄筋コンクリート造),
高さ9m
奥行8m
例)3階建て(1階鉄筋コンクリ ト造,
例)3階建て(1階鉄筋コンクリート造,
2~3階部分の耐震性1.5倍),高さ9m
(耐震性1.5倍)
治体が多くある。この運用ルールは通称「2 − 2
3階,高
高さ9m
3m
ルール」と呼ばれる。2 − 2 ルールの設定の理由
奥行8m
※
としては、「L2 津波がついこのあいだ起きたとい
例)3階建て(1階鉄筋コンクリート造),
例)3階建て(1階鉄筋コンクリ
ト造)
高さ9m
(耐震性1.5倍)
3階,高さ
さ9m
に照らせば、L 1防御ラインより内陸では避難を
想定される設計用浸水深に耐えうる建築物の規模(例)②
2.戸建住宅の場合(木造の場合)
3階,高
高さ9m
L 1防御、L 2避難という中央防災会議の原則
奥行8m
1.5倍に割り増した地震力に耐えられる耐力を有するもの.住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度における耐震等級3に相当.
図 1. 浸水に耐えうる建築物の指針
*2
うのに、その規模の津波に対して避難という手段
しか講じないのは無責任でないか」という、いわば心理的な不安感への対処が大きい。2m 未満の浸水
を許すということの根拠に関しては、東日本大震災における津波による建物の損壊のデータが関係し
ている。東日本大震災以後に国土交通省から、図1の様な津波の浸水深に対する建築の安全性(危険性)
に関する資料 *2 が出されている。この資料では、2m の浸水深においてある程度の条件を満たせば一般
的な木造戸建ての建築が倒壊しないことが示されている。また 2m を超えると、特別な手立てを行わな
ければ安全ではない(木造では 3m 以上の浸水に対する基準自体が示されていない)ため、一律に 2m
浸水ラインより海側では居住用途を制限するとするのが分かりやすいという想定である。さらに、2 −
2 ルールのラインより海側は平野部では広大なエリアとなり、そのエリア全体に確実な避難手段を提供
する(例えば避難タワーの設置を漏れなくする)ことが難しいという事情もある。また復興交付金の
申請をワンストップで受けている復興庁は復興事業においての安全性も査察する。その際に、「要件に
はなくともリスクを抱えている申請を復興庁は受けないということがあるかもしれない。」という様な、
申請する側の被災自治体側の心情から安全側にルールを自己設定するという側面も考えられる。この
点は、復興交付金の申請とそれに対する審査が妥当であったか、今後研究・検証が必要となる部分で
もある。2 − 2 ルールは国費による復興事業の適用要件ではない。しかし時間の限られた中で、迅速に
かつ安全側で復興計画を策定したい被災自治体の実情においては、それなりの合理性はあるルールと
言える。
以上述べてきたたように、2 − 2 ルールはの設定は L 1防御ラインより内陸側にも居住不可の地域を
作ることとなる。特にリアス式海岸の地形により L2 津波の浸水予測が高くなる地域においては、2-2
*2: 国土交通省「津波に対し構造耐力上安全な建築物の設計法等に係る追加的知見について」
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000274.html 2015 年 1 月 22 日アクセス
ルールのラインは非常に標高の高い位置となる。実質的に東日本大震災の浸水ライン(以下では今次
津波ラインと表記)より海側は再居住不可となるケースが多く *3、復興計画の中で浸水エリアの再活用
を考える際に大きな足かせとなっている。
3.L 1防御に対応する防潮堤 ・ 河川堤の計画基準
次に防潮堤など海岸・河川の保全施設の計画・建設について見て行く。中央防災会議の L 1防御と、
L 2避難という原則に基づいて、国土交通省がL1の防潮堤の算定方法の指針を出している。さらに L
1防潮堤と河口部で同じ高さとなるように河川堤の指針を出している。しかし、実際の計画高は周辺
環境やまちづくり上の状況を考慮して各自治体・基本的には都道府県が単独もしくは連携して海岸保
全計画を作成し決定することとなっており、国が一律に定めている訳ではない。被災自治体では被災
以前の多くの計画で、これまでに起きた津波のうち痕跡調査等から高さが分かっているもの(以下で
は既往最大と表記)を整備高の基準としていたが、L1 シミュレーションを基に L 1整備高を設定し直
している。この L 1整備高を基準として防潮堤の設置計画が進められている。
ただし、一部 L 1防潮堤による整備を行わない場合が存在する。防潮堤によって保護すべき施設が
内陸に存在しない場合である。例えば、被災により浸水したエリアに建築がなくなり、流失した建築
が L1 浸水エリアに再建されない場合などである。2 − 2 ルール採用の自治体では、その 2 − 2 ルールの
ラインの内側で再建されない場合となる。何も保護するべき物がないのに防潮堤を作る事は事業性か
ら考えて非合理だからである。L 1整備を行わない場合は、基本的には従前の高さまでの復旧となる。
守るべき施設の設定は自治体によって若干異なるが、県道・国道等は半島地域においてライフライン
になるため、それらの道路も保護対象となる事が多い。
以上、東日本大震災以降の制度の変更経緯や変更理由を見て来たが、基準は以下にまとめられる。
• L2 津波:避難を原則とする。避難時間を稼ぐ為に防潮堤を破堤しにくい物とする。2m 以上の浸水
が見込まれるエリアは、あらかじめ居住用途を制限する(2 − 2 ルールを採用する)自治体が多い。
• L1 津波:防潮堤・河川堤による L 1津波の防御を行う。防御すべき対象のない海岸は従前の復旧
に留める。
4. 神奈川県における現状の備え
次に神奈川県における制度の整理をして行く。神奈川県においては、新しい指針を受けて津波浸水
想定検討部会が平成 23 年 5 月以降新たな計画策定を行っている。現時点ではどのタイプの地震による
津波を L 1・L 2と設定するか検討が進んでおり、「地域海岸及び設計津波の対象津波群の設定」とい
う資料 *4 の公表が行われている。資料の中では図2の様に既往の津波を整理している。新たな基準では、
*3: 東日本大震災の津波が干潮に近い時間で発生した L2 津波であったため、「L2 津波に対する 2m 浸水ライン」≒「今次津波ライン」
となる場合が多い。従って、今次浸水ラインを計画上の目安として使用している場合もある。
*4: 出典・神奈川県津波浸水想定検討部会「地域海岸及び設計津波の対象津波群の設定」
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f300010/p590880.html 2015 年 1 月 22 日アクセス
28
計画対象の L 1津波は南関東地震(歴史的地震と
しては 1923 年(大正 2 年)の大正関東地震つま
⑦鎌倉・逗子・葉山地域
最大クラスの津波地震
設計津波の対象津波群
り関東大震災である)及び神奈川県西部地震によ
②東京湾
横浜地域
慶長型地震
大正関東地震、神奈川県西部
地震
⑩小田原
東部地域
⑧湘南海岸
地域
⑨二宮・大
磯西部地域
⑪真鶴東部・小田
原西部地域
⑫湯河原・真
鶴南部地域
7.鎌倉・
逗子・
葉山地域
る津波である。図 3、4 はシミュレーションによ
③東京湾
横須賀地域
⑦鎌倉・逗子・
葉山地域
④三浦半島
東部地域
⑥三浦半島
西部地域
東
京
湾
沿
岸
⑤三浦半島
南部地域
相模灘沿岸
切迫性の高い
地震
津波痕跡高(信頼度A・B)
津波痕跡高(信頼度その他:参考値)
慶長型
シミュレーション
津波来襲地震
る 2 つの L 1津波の浸水予測図 *5 である。この 2
対象津波群
津波高(T.P.m )
つの地震が L 1津波のうち浸水深が大きい。なお
①東京湾
川崎地域
最大クラス
神奈川県西部
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神奈川県西部地震はやや南関東地震より逗子市に
東海
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最大クラス地震
おける浸水深は小さい想定であるが、発生間隔か
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1946南海地震
想定地震津波
1960チリ地震
1853嘉永地震
1854安政東海地震
1782天明地震
1703元禄地震
1677延宝地震
1923大正関東地震
L 2津波は図 2 のように慶長型とされている *5。
1707宝永地震
ら見て切迫性が高いとされている。
1633寛永地震
1498明応地震
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1605慶長地震
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図 2. 鎌倉 ・ 逗子 ・ 葉山地域における L1、 L2 津波の想定
*4
逗子市において小坪地域は図 5 のように慶長型の
津波シミュレーションが被害甚大である。しかし
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ながら、小坪地域以外の被害は図 6 のように明応
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型の方の被害が大きくなり、現行のハザードマッ
プは明応型で作成されている *5。津波浸水想定検
討部会において L 2津波はいわば防御しなくても
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䎃䎃䎃ᶐ᳓ᷓ䫹䎋䏐䎌
10.00 9.00 - 10.00
良い津波であるので細かく触れられていないが、
8.00 - 9.00
7.00 - 8.00
⪲ጊ᷼
᷼⪲ጊ
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6.00 - 7.00
避難計画においては場所ごとに想定する L 2津波
5.00 - 6.00
ᗐቯ࿾㔡䋺␹ᄹᎹ⋵⷏ㇱ࿾㔡
4.00 - 5.00
Ü
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を細かく見る必要があることは、注意をしなけれ
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ᦨᄢᵤᵄ㜞ߐ㧦O
ᦨᄢᵤᵄ೔㆐ᤨ㑆㧦ಽ
3.00 - 4.00
2.00 - 3.00
1.20 - 2.00
0.80 - 1.20
䎔䎝䎕䎓䎏䎓䎓䎓
0 125 250
ばならない。
500
m
0.50 - 0.80
0.15 - 0.50
0 - 0.15
ᐔᚑ䯾䰀ᐕ䯿᦬␹ᄹᎹ⋵
図 3.L1 津波の浸水想定 (南関東地震)
先述の「地域海岸及び設計津波の対象津波群の
*5
設定」の資料において鎌倉・逗子・葉山地域の以
前の防潮堤の計画天端高としては +4.20 ~ 5.50m
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という値が示されている。新しい防潮堤の計画高
㎨ୖ
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ᦨᄢᵤᵄ㜞ߐ㧦O
ᦨᄢᵤᵄ೔㆐ᤨ㑆㧦ಽ
は地域の実情に即して決定することとなっている
ため、まだ高さの決定・公表は行われていない。
ዊဝṪ᷼ዊဝ
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しかし津波浸水シミュレーションを参考にすると
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䎃䎃䎃ᶐ᳓ᷓ䫹䎋䏐䎌
10.00 9.00 - 10.00
8.00 - 9.00
海沿い、川沿いともに現況に対して+ 1.0m 程度
7.00 - 8.00
⪲ጊ᷼
᷼⪲ጊ
ᦨᄢᵤᵄ㜞ߐ㧦O
ᦨᄢᵤᵄ೔㆐ᤨ㑆㧦ಽ
6.00 - 7.00
5.00 - 6.00
4.00 - 5.00
Ü
すれば L 1津波に対する防御が行える。
⪲ጊ
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ᦨᄢᵤᵄ㜞ߐ㧦O
ᦨᄢᵤᵄ೔㆐ᤨ㑆㧦ಽ
3.00 - 4.00
2.00 - 3.00
1.20 - 2.00
0.80 - 1.20
䎔䎝䎕䎓䎏䎓䎓䎓
0 125 250
500
m
0.50 - 0.80
0.15 - 0.50
0 - 0.15
5. L 2津波に対して可能な施策
L2 津波に対しては、現在でも各自治体がハザー
ドマップを作成している。行政がとりうる施策と
しては、以下に具体的に示す避難先の確保・避難
*5: 出典・神奈川県「津波浸水予測図」
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f360944/ 2015 年 1 月 22 日アクセス
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図 4.L1 津波の浸水想定 (神奈川県西部地震)
*5
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時間の確保・減災としての住宅等の強化である。
なお図 7 はそれぞれの施策と、エリアの対応を整
理した図である。
1. 現状の高台や津波避難ビルへの避難計画の検
䎫䎕䎖䎑䎓䎖䎑䎕䎚ᤨὐ
証が必要である。
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2. 検証で問題がある高台への避難道の整備およ
䎃䎃䎃ᶐ᳓ᷓ䎋䏐䎌
10.00 9.00 - 10.00
8.00 - 9.00
7.00 - 8.00
び、避難道にかかる斜面などの土砂災害への
6.00 - 7.00
5.00 - 6.00
4.00 - 5.00
Ü
対策が必要である。
0
1
䎔䎝䎛䎖䎏䎓䎓䎓
2
3.00 - 4.00
2.00 - 3.00
1.20 - 2.00
0.80 - 1.20
0.50 - 0.80
0.15 - 0.50
4
km
3. 高台への到達に時間がかかり、事実上避難が
0 - 0.15
図 5. 慶長型地震の津波浸水想定 *5
困難な地域で、特に L2 時に 2m 以上の浸水が
見込まれる地域において、津波避難ビルの設
定が急務である。どの様に津波避難ビルを確
保するかは、提言書本体を参照されたい。
L2 津波を受けた際の 2 − 2 ルールに関しては、
神奈川県は導入を避けるべきである。図 5、6 は
慶長・明応各地震による津波浸水予測図であるが、
䎃䎃䎃ᶐ᳓ᷓ䎋䏐䎌
10.00 9.00 - 10.00
8.00 - 9.00
7.00 - 8.00
藤沢、鎌倉、逗子、三浦においては 2 つのいずれ
6.00 - 7.00
5.00 - 6.00
4.00 - 5.00
Ü
かの津波において、2m 以上の浸水予測域が大き
0
1
䎔䎝䎛䎖䎏䎓䎓䎓
2
3.00 - 4.00
2.00 - 3.00
1.20 - 2.00
0.80 - 1.20
0.50 - 0.80
0.15 - 0.50
4
km
い。したがって 2-2 ルールの対象となるエリアが
図 6. 明応型地震の津波浸水想定 *5
図 7.L2 津波に対して可能な施策とエリアの対応
0 - 0.15
広く発生してしまう。特に逗子市は住宅の浸水割合が大きい事から、広大な非可住エリアを生み出し
てしまう。従って 2-2 エリアを設定することは現実的ではない。
しかし前述したように、2-2 ルールは避難に対する責任という観点からは一定の合理性がある以上、
何らかの方策をした上で適用しないことを選択する必要性がある。そこで、L2 津波によって壊れると
分かっている部分であるとの周知を事前から進めることが望まれる。提言書本体でも提案するように、
災害危険区域指定や特進地区として設定する事で、危険の周知と津波避難ビルの設置の加速等を行う
施策を行うべきである。
なお、2-2 ルールを設定しても、盛り土による嵩上げを行い、想定浸水深を 2m 未満とすることで住
宅用途とすることも可能である *6。しかし、嵩上げは復興スピードが非常に遅くなる。盛り土だけでな
く、インフラの引き直し等工事工程が増えるためである。この遅れは、通常年単位となる。復興のスピー
ドの遅れは、一次産業を持たない地域にとっては、人口流出の強力な要因となる。また提言書本体で
も示しているが逗子市の様に景観意識が高く、
「緑の伐採や、山の切り開き」を避ける場合、高台移転(防
災集団移転促進事業 *7)を行わないため切り土が発生せず、嵩上げの土量が確保できないという問題も
発生する。従って、嵩上げによって 2 − 2 ルールのエリアを活用することは実現が難しい。
6. L1 津波に対して可能な施策
L1 津波に対しては、原則としては防御が必要である。従って、とりうる施策の選択肢としてはまず
は防潮堤・河川堤の建設である。図 8 は逗子市において防潮堤・河川堤を建設する場合の施策の選択
肢と、その施策の課題点である。建設する場合においてはどの選択肢をとっても、最終的に課題点が
残るというフローになってしまう。単純に防潮堤・河川堤を建設することは不可能で、水辺との移動性・
視線の連続・砂浜の確保等に関して優先順位の設定が必要となる。これらの優先順位の設定に際しては、
市民や水辺を観光資源とする主体との間での合意形成が必要となる。
次に L1 防潮堤・河川堤を建設しないという施策を考えてみる。防潮堤の計画高は地域の実情に即し
て決定するという点から、選択肢として検討する意味がある。図 9 は逗子市において防潮堤・河川堤
を建設しない場合の施策の選択肢である。既に L1 浸水エリアに建築が立地している場合は、建築が破
壊されないかの検証と避難の確保が必要である。なお建築の破壊されない構造は前述の資料 *2 では L1
防御がされて津波の流速が落ちていることが前提となっているため、検証方法を新たに設定する必要
がある。まだ建築の立地していない L1 浸水エリアにおいては、居住用途の建築を制限することも考え
られる。都市計画法の用途地域による制限や、海岸法の海岸保全区域への指定が方法として考えられる。
幸い逗子市を初めとして神奈川県においては L1 浸水深が比較的低いため、建築の構造の検証と避難
確保を行えれば安全の確保が可能である。防潮堤・河川堤の増強を全てに対して行うより、費用対効
果は大きいと考える。
*6: 復興交付金事業としては、国土交通省所管の「被災市街地復興土地区画整理事業」などは土地の嵩上げを行うことが可能である。
*7:「防災集団移転促進事業」は国土交通省所管の復興交付金事業である。
図 8. 逗子市において L1 防御を行う場合の施策フロー
7. 浸水エリアに再居住をすべきか
以上見てきたように国・県いずれの基準におい
ても、浸水エリアであっても L1 浸水エリアでな
ければ原則的に再居住は可能である。L1 浸水エ
リアの再居住に関しては前項の様に施策の選択が
分かれるが、2 − 2 ルールによる居住可能なエリ
アの大幅な制限は、特に藤沢、鎌倉、逗子、三浦
地域においては、街の構造の破壊となる。従って
2-2 ルールのもつ合理性に対しての回答を示しつ
図 9. 逗子市において L1 防御を行わない場合の施策フロー
つ、浸水エリアにおいての再居住は許可すること
が最も妥当である。
「2 − 2 ルールを設定しない」、「浸水エリアにおいて再居住を許可する」といった事項は、特に被災後
の事後復興計画であると安全側に計画したいという思いや、市民の合意形成の面から決定しづらいこ
とである。従って事前に復興計画を策定する意義の最もある部分である。
東日本大震災の復興事業においては、事業性として検証したとき過大と思われる計画も、安全側に
振れた政治判断から実施されている。また復興事業という期間の限られた事業であるため、十分に地
域性にあった計画となっていないことも少なくない。東日本大震災に対する復興事業の詳細な検証・
評価は筆者の今後の研究課題であるが、過大でなく地域の実情にあった復興が神奈川県において行わ
れるために、本稿がわずかでも貢献できれば幸いである。
逗子市における津波に対する事前復興計画案
- 水辺と共生しつづけるために -
水辺と共生するまちづくりデザインプロジェクト
志村真紀 *1, 平井政俊 *2, 石塚直登 *3, 児玉千絵 *4, 南 燿太 *5,
岡田大貴 *6, 神谷圭祐 *6, 小竹杏奈 *7, 宮城仁美 *8
本提案は、神奈川県の湘南地域および三浦半島の地域性および地形的特徴を併せもつ逗子市を対象
にした事前復興計画の素案である。この素案は災害が起こる事前に取組むことによって、減災させ復
興を早く行うための、幾つかの項目の提案が含まれている。具体的には、逗子らしさを尊重した復興
ができるように原風景の特徴の把握、津波避難ビルの必要性、都市基盤・インフラに関する検討点、
仮設商店街、仮設住宅用地、逗子らしい仮設住宅、防災協力緑地、ふれあい活動圏によるコミュニティ
育成、産業・活力の促進のための各策と、以上の事前復興計画を進めるための推進策を含めている。
0. はじめに
2011 年におこった東日本大震災を踏まえ、神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究の
結果、神奈川県内において逗子市における被害の割合が大きく積算の結果が出た。そこで市内の状況
や歴史を調べながら、平成 26 年度に計 6 回ほど市内の有識者の方と意見を交換する検討会を行い、ま
た、12 月に市民の方を対象にしてシンポジウムおよびワークショップを行うことを通じて民意を集め
て事前復興の素案を作成した。本提案の骨子は、海岸や川沿いに防潮堤はつくらずに、たとえ津波災
害がおこったとしても、水辺周辺の復興を行い、逗子市内の水辺と共生した暮らしを続けていきたい、
という市民の意向を尊重した方向性で事前復興計画を組立てている。
0.1 神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究
*9
まずは、各提案の前に「神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究」 を要約して下記に
示す。東日本大震災以降日本全国津波に対する関
心・危機感は高まっている。また東日本大震災で
は様々な想定外の被害ということが起こった、こ
の経験から津波を想定として地域ごとにどんな被
害の特性が出るか把握しておく必要があると考え
る。そこで、今後の神奈川県の津波対策を考えて
いくために津波を想定として地域ごとの被害の特
性について分析することを目的として研究を行っ
た。
研究方法としては GIS というツールを用いて津
図 0-1. 神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究の対象地域
*1: 横浜国立大学 地域実践教育研究センター 准教授 , *2: 横浜国立大学理工学部建築学科 非常勤講師 ,*3 : 横浜国立大学大学院 都市
イノベーション学府 Y-GSA, *4 : 東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 都市デザイン研究室 ,*5 : 横浜国立大学大学院 都市イノ
ベーション学府 佐土原・吉田研究室 , *6: 横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科 都市基盤 EP,*7: 横浜国立大学 理工学部 建築
都市・環境系学科 海洋空間のシステムデザイン EP, *8: 横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科 建築 EP
*9: 南 燿太 , 稲垣景子 , 吉田聡 , 佐土原聡:「神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究」, 日本建築学会大会(近畿)学術講
演梗概集 2014( 都市計画 ), p.765-766, 2014
波浸水予測図と建物現況データなどとの重ね合
わせを行った。対象地域は神奈川県沿岸の 15 市
町、対象地震は神奈川県に対し最大クラスの津波
を生じるとされる慶長型地震を用いた(図 0.1)。
まずは、浸水被害影響延べ床面積というものに
ついて説明する。これは実際に浸水被害の影響を
受ける延べ床面積を求めたもので、東日本大震災
の被害調査によると浸水深に相当する階の上階
までが浸水被害を受ける可能性があることがわ
かっている。これを踏まえて、例えば図 0-2 の1
階の半分以上が浸水したとしたとき1階と2階
図 0-2 津波被害の影響を受ける延べ床面積
表 0-1. 各市における津波被害の影響を受ける延べ床面積の積算
が被害を受ける可能性があるので、この場合だと
1階と2階の床面積の合計が被害を受ける床面
積と仮定した。
表 0-1 が計算結果である。被害を受ける床面積
の合計では横浜・川崎などの大都市で大きな値を
示しているが、市の全建物の床面積のうち被害を
受ける床面積の割合を見ると、逗子市が大きな値
を示した。特記すべき点は数字ではなく、神奈川
県全体を同じ条件で計算すると逗子市で比較的
大きな値を示したというところである。これは今
回用いた地震で逗子市の広い範囲が浸水するこ
となどが影響していると思われる。
0.3 事前復興の必要性
以上の結果を踏まえると、現状のままでは逗子
市は津波による建物被害だけでなく人的被害も
大きいことが想定される。ただし、事前に津波
に対して脆弱な部分を解消させ強化することに
よっては被害を減らすことも期待できる。また、
予め復興の考え方についてを行政と市民の間で
共有し計画を作成することによっては、復旧復興
をスムーズに進め時間を短縮できる。そこで、以
降の各章では、津波に対する事前復興計画として
必要と考えられる項目を挙げ、調査や分析の結果
と、検討会やワークショップによって市民からの
意見や希望を踏まえて調整した案を提案する。
図 0-3. 事前復興計画の必要性
1.原風景から事前復興計画へとつなげる観点 東日本大震災により被災した地域では、歴史的建造物や文化財やその資料が失われ、かつ迅速な復興
が求められているために、その土地の特徴としての原風景に配慮した復興計画はほとんど見受けられな
い。逗子市の事前復興計画には、地域の方々が大切にしている逗子らしい原風景から繋げられた復興の
あり方を反映することが望まれている。またそれを議論する時間と機会を生み出す点に、事前復興計画
の大切な意義を見いだすことができる。そこで本稿では、原風景を「地域が根ざしている気候や風土、
空間、文化、歴史に関わる人々の意識無意識の個人的・集団的記憶の蓄積」*1と定義し、視覚的風景だ
けではなくそこに生起する人々の営みを含んだ総体と捉え、逗子市の原風景の要素を掘り起こすために、
資料やヒアリングを通して調査を行った。
(1)水辺が近くにある暮らし 逗子らしさと聞いて多くの人が真っ先に浮かぶのは
逗子海岸であろう。写真 1-1 は 1946 年の逗子海岸の
様子である。国道 134 号線は未開通で砂浜は広く市街
地からどこからでも直接行き来することができ、現在
よりも日常的に海辺を楽しんでいたことが推測できる。
また、写真からは海辺近くに住宅があることや、新宿
地区に黒松の群生が優越していたことがうかがえる。
調査やワークショップなどの市民の声からも、逗子市
に住む人の多くが海辺・水辺があることに魅力を感じ
ていることが明らかになった。暮らしのなかで水辺が
近くにあり、そこで思い思いの時間を楽しむこと自体
が逗子らしい原風景の重要な要素の一つと言える。
(2)披露山・桜山が望める街並み 写真 1-2 は 1911 年の屋敷通りの様子である。近世
写真 1-1.1946 年 逗子海岸 においては三浦半島へ延びる浦賀道として利用され往
来が多かった。現在では中層の集合住宅が立ち並んで
いるが、戦後までは低層低密の街並みだったため、披
露山や桜山の遠景を見ることができる見通しの良い通
りであったことが捉えられる。このような風景は多く
の人に共有されている原風景であると言える。
(3)黒松並木とコミュニティ 写真 1-2 における、もうひとつの特徴的な原風景とし
*1)参考文献:長島孝一著、「風土と市民とまちづくり」、(鹿島出版、2015年 出版予定)
「逗子の”まちづくり”に”原風景”を生かす」の章より
写真 1-2.1911 年 屋敷通り て黒松の群生(並木)が挙げられる。この黒松の葉を掃除するために、近所の人が同じ時間帯に集まっ
て掃除を行い、それが交流の場となっていた、という市民からの経験談もある。黒松並木のように長年
にわたって蓄積されてきた逗子らしい風土や空間が残っていると、それを維持するために多くの人が関
わり、自然とコミュニティの形成につながっていくことが捉えられた。
(4)水辺の交通・産業活用を通じた危険リスクの感知向上 写真 1-3 は明治末年田越川の川釣りの様子である。
当時、田越川は釣りだけでなく主要な水運としても使
用されており、現在よりも生活や産業との結びつきが
強い存在であった。しかし津波の際には波が田越川を
遡上する恐れがあるため、すみやかに避難する必要が
ある。写真のように普段から川を直接利用したり、す
ぐそばまで降りることができていれば、潮の満ち引き
だけではなく津波の遡上など危機をすぐに察知し避難
写真 1-3.明治末年 田越川 行動をとることができたと推測される。このように日
常的に水辺を活用していれば、災害時の危険性に対しても自然と意識が高まり、さらに後世へ伝承する
ことにも繋がっていく。現在でも逗子の特徴の一つである川や海などの水辺を、ただ近くにあるだけで
なく身近な交通・産業に活用していくことで地域全体の活力と危険感知度の向上に繋がると考える。
(5)原風景から事前復興へとつなげる観点 以上の逗子市における原風景の要素と特徴を踏まえながら、逗子市の事前復興の計画にあたっては、
市民が古くから山・川・海といった日常に親しみのある自然風土を大事にし、蓄積してきた点を念頭に
おくことが望まれる。そこで下記には、各章における事前復興計画の各項目の提言につなげるべき原風
景の特徴を整理する。
2 章では津波による浸水が想定される海や川の付近には防潮堤をつくることを推進せずに、避難ビル
を増やすことによって市民や海水浴客の命を守り水辺と市街地をつなげた街を維持することを提案す
る。3 章では津波によって浸水したエリアであっても現地再建を行うことができ、水辺に逗子らしさを
もった暮らしを復興できるようにするための都市基盤に関する提案を行う。4 章では逗子市を囲む緑豊
かな山を切り開かずに、緑地保全を考慮した仮設住宅の提案と、逗子らしい街並みを残すために防災協
力緑地や防火帯に関する提案を行う。5章では、人々の経験やつながりのなかで共有している原風景を
核としたコミュニティとして、‘ふれあい活動圏’による防災的な可能性について提案する。 6 章では
水辺における産業や営みを通じて、災害後も生産人口が市外へと流出してしまわないような方法の提言
を行う。
以上を踏まえながら、原風景を保持・発展・伝承しながら、大災害にも対応できる「逗子らしい」事
前復興計画の具体的な案を次章以降に提案する。
2 章 津波浸水被害の予測を踏まえた津波避難ビルの必要性 2 章では、神奈川県沿岸各地域の予測される建物被害の想定を踏まえ、逗子市における津波避難ビル
の必要性について分析を通して提案する。 2-1.津波避難ビル追加の必要性 -1.避難可能距離から見る津波避難ビル追加の必要性 今年度の研究では主に避難時に重要
な要素と考えられる津波避難ビルに関
して研究を行った。今回は逗子市のハザ
ードマップにも使われている明応型地
震で分析を行っている。この地震の津波
によって、逗子市の市街地の広範囲の浸
水が予測され、また第一波到達予測時間
が地震発生後約 8 分であり、東日本大震
災の事例等で地震発生後約 3 分後に津波
警報が出されたということも踏まえる
と、5 分以内で安全な場所への避難が必
要と考えられる。これらを考慮すると逗
図 2-1-1.安全な場所への 5 分間での避難可能距離(逗子市) 子市においては短時間での避難が必要であるため津波避難ビルの数や配置が重要と考えられる。そこで
現在の津波避難ビル等の津波一時避難所について GIS のネットワーク解析の中の到達圏解析を行った。
その結果、浸水予測区域内でも 5 分間で津波一時避難所に到達できない地域の抽出することができた。
この浸水予測図は第一波のものではないため正確な浸水する範囲はわからないが海岸付近や田越川沿
いは第一波でも浸水すると考えられる。そこでこの結果を元に事前復興計画 PJ では、新しく津波避難
ビルが必要とされる場所に、津波避難ビルとして使えると考えられる既存の建物を新しく指定する形、
広い敷地を確保できる場所では新設のビル型、狭い敷地しか確保できない場所では新設のタワー型とい
う 3 つのタイプの提案を行った。その新しく津波避難ビルを増やしたときに 5 分間で安全な場所へ避難
できる範囲が変わったかを図で示した。これにより津波避難ビルを増やすことの必要性等を可視化する
ことができた。
-2.津波避難ビルの収容最大人数に関して
逗子市には指定された津波避難ビルがあり、ハザードマップなどで公表されている。しかし、それぞ
れのビルが避難してくる人に対してどれほどの収容力があるのかは公表されていない。そこで逗子市役
所から各避難ビルの避難想定面積と避難最大収容人数に関する資料・データをいただいた。このデータ
は国の津波避難ビルのガイドラインに従って 1 人当たり 1 ㎡で収容最大人数を算出している。それを元
に、各避難ビル収容最大人数と、平成 22 年度の町丁目ごとの人口を GIS 上で表示させたのが図 2 であ
る。図 2 を見ると避難ビルの収容最
大人数の視点から、避難ビルの数が
足りない地域というものが明らかに
なった。特に海岸付近の新宿 1,2,3
丁目はその地域の住民だけでなく、
夏には海水浴客も避難してくること
が想定される。その海水浴客数を概
算すると一日あたり平均 3,050 人ほ
どが海水浴に訪れている。それを考
慮すると海岸から最寄りの津波避難
ビルの逗子開成学園で(収容最大人
数:1155 人)は対応しきれないことは
図 2-1-2.町丁目ごとの人口と避難ビルの収容最大人数 明らかである。
-3.海岸付近の津波避難ビルに関して 先に述べたように逗子市では 5 分以内の避難というのが重要となってくる。また海岸付近には津波避
難ビルというものが少ない。そこで海岸から 5 分間での避難可能距離というものを図示すると図 3 の赤
く塗られた部分になる。これを見ると海岸から 5 分間でたどり着ける現在指定されている津波避難ビル
は逗子開成学園のみであり、明らかに津波避難ビルが海岸付近に不足している。そこでこの 5 分圏内に
ある建物のうち津波避難ビルに指定できる可能性のある、非木造で 3 階建て以上の建物を図 3 に示した。
これを見ると海岸付近にも津波避難ビルとして指定できる可能性のある建物があることがわかる。仮に
これらの建物が避難ビルに指定され屋上が全て使えると仮定して概算すると、約 18300 ㎡の避難想定面
積、つまり約 18300 人分の避難スペー
スの確保が可能になる。実際には屋上
が使えない建物や、屋上が使えたとし
てもその一部しか利用できないとい
うことがあると思うので、これほどの
避難想定面積の確保は難しいといえ
る。しかしながら、この結果から海岸
付近にある既存の建物の津波避難ビ
ルとしての新規指定の受け入れを促
すことが必要であるといえるだろう。
図 2-1-3.海岸から徒歩 5 分圏と津波避難ビル候補建物 2-2.津波に負けない建物の構造・構成 次に、津波に対してどのような建物が被害を免れることができるのかについて、東日本大震災にて津
波に負けなかった建物の参照を下記に挙げ、その特徴を構造面と構成面から簡単に紹介する。 東日本大震災の津波による建物被害の特徴としては、木造の基礎だけが敷地に残り、基礎から上部の
木造の部分が流された*2-2-1。 津波に強かった建物の特徴としては鉄筋コンクリート造る(以下、RC 造)の建物が挙げられる。写真
2-2-1 のような建物は、窓に嵌められたガラスは壊れたが駆体はいずれも残存した。また写真 2-2-2 の
RC 造住宅は大量のがれきを受け止め、背後にあった木造住宅や住人も前の建物の RC 造住宅によって助
かった好事例である。しかし、特殊例として女川町における比較的窓が小さめの 5 階建ての RC 造は、
非常に高い津波が到来し建物の中に残った空気の浮力で建物が転がるような流れで倒れた事例もある。 建物の構成面で津波に強かった建築としては、写真 2-2-3 のような 1 階部分が柱で構成されているピ
ロティ形式である。また、写真 2-2-4 は鉄骨造による建物で、鉄骨造の建物は鉄骨部分は残ったが、鉄
骨以外の材料でできた壁パネルや床材等は流失した状況が多かった。 (左上)写真 2-2-1.南三陸町における RC 造の集合住宅, (右上)写真 2-2-2.RC 造による住宅, (左下)写真 2-2-3.宮城県気仙沼市大谷海岸近くのピロティ式住宅, (右下)写真 2-2-4. 鉄骨造による 2 階建ての建物 *2-2-1:(参考図書)田中礼治 「津波に負けない建物づくり・まちづくり」,相模書房,2012.2 *写真 2-2-2 :佐々木賢一氏 撮影/ 大成ハウジング(パルコン) による資料提供 *写真 2-2-3,2-2-4:東北工業大学 名誉教授 田中礼治 氏 2-3.津波避難ビルの提案 ここでは、2-1 において分析された逗子市の沿岸部において 5 分以内に津波から避難場所に辿り着け
ないエリアを対象に、津波避難ビルを設置することを提案する。提案にあたっては各エリアの既存の敷
地や建物の状況や、周囲に対する経済性・不動産的特徴を踏まえながら、前項の東日本大震災において
津波による建物被害の影響が少なかった「鉄筋コンクリート造とピロティ形式の建物」を参考に、3 タ
イプの津波避難ビルを提案する。 (A) 民間ビル転用型 ここでは、既存の建物を対象に、鉄筋コンクリート造3階建ての建物の屋上を避難場所として災害時
は開放する津波避難ビルのことを「民間ビル転用型」と名付けて提案を行う。 津波避難ビルの最終的な目標としては、住民や海水浴客をはじめとする観光客の全員の命が助かるよ
うに、浸水エリアにおける条件をみたすビルの全てが津波避難ビルに指定されることが望まれる。
-1.海岸沿いにおける目指すべき避難の方法 津波ハザードマップによると、5 分以内で一時避
難所に避難できないエリアにおける予想浸水高は3
∼5mであるが、現在の逗子市ではその短時間では
一時避難所に避難できない地域が存在する。特に、
海岸沿いにおける津波避難ビルは圧倒的に少なく、
海辺から山に逃げるための時間も足りなく、夏場に
多くの観光客が訪れることを考えると、現在の津波
避難ビルや一次避難所の数では足りない。
そこで、ここでは浸水する危険性のあるエリアにお
いては、3階建て以上の RC 造の既存の民間の建物
図 2-3-A-1.逗子海岸から見た既存の民間ビル を津波避難ビルとして指定し、災害時には屋上を一
般開放することが望まれる(図.2-3-A-1)。
-2.津波避難ビルに求められること、必要な設備・備蓄 津波避難ビルに求められる点としては、①近隣住民にとって避難の対象地となれること、②初めて逗
子に来た人や、逗子海岸に訪れる観光客でも、津波避難ビルがどれか判り、行き方が分かりやすいこと、
③ビル住民や近隣住民だけでなく観光客も避難することを考えた十分なスペースがエリア内で確保で
きていること。④津波避難ビルの屋上には安全のための手すりが設置されていること、⑤津波が引くま
での時間に寒さや暑さに耐えれるよう、観光客分を含めた毛布・水などの備蓄を多めに用意されていれ
ていること、⑥津波避難ビルをハザードマップに載せるなどして認知を広めること、そして⑦一目で津
波避難ビルと分かる工夫が必要とされる。
-3.津波避難ビル指定の現状と課題 東日本大震災を踏まえて、逗子市の防災課では津波避難ビルとしての対象となりうるビルや集合住宅
のオーナーに何度か避難ビル指定に向けた交渉はされてはいるものの、逗子市では指定を受け入れるビ
ルが増えていない。その理由としては、ビルに不特定多数(観光客など)の人々が入ってくることに対
する防犯面の不安や、津波避難ビル指定を受け入れてもビルの居住者やオーナーにとってのメリットが
感じられないことが課題として挙げられる。
-4.津波避難ビルを増やすための行政から民間ビルへのインセンティブ案 そこで現在の課題をふまえて避難ビル指定受け入れ数を増やすために、行政からビルのオーナーや居
住者に対して、下記のような選択肢を案とした保証やインセンティブを選択して与えることを提案する。
①日常的な防犯システムの導入補助
②避難に関わる床面積(屋上面積など)に係る固定資産税
や都市計画税の減免
③災害時に玄関扉等が破損した場合の補修
④住民と避難者想定数分の備蓄や非常用電源
⑤避難時に利用する外部非常階段の整備・設置
上記のような、行政からビルのオーナーや住民へのイン
センティブが与えられる代わりに、指定を受託したビルは
図 2-3-A-2.津波避難ビルを増やすためのインセンティブ案
災害時に避難ビルとして屋上および屋上へ辿り着くまでの空間を開放することと、日常時(平常時)に
おける避難スペースとなる屋上の管理を委託することを契約条件として交わせると良いのではないだ
ろうか。状況によっては津波避難ビルの指定を促進させる条例を定めることも検討課題として挙げられ
る。なお、津波避難ビルをめぐるコミュニティの課題については 5 章に記す。
-5.現在の避難収容施設と備蓄の状況 なお、これまでに逗子市において災害想定の基準としていた三浦半島断層群による地震の場合は、想定避
難者数は 41640 人としているが、既存の防災施設に収容可能な人数は 19485 人に留まっており、必要数の半
分を満たしていない状況にある。また、備蓄に関しては、水(18.87 万ℓ)・食料(7.51 万食)・毛布(2.03 万
枚)が用意されているが、必要数(41640 人)に対して 3 日分の充足率は、水が 50%、食料が 60%、毛布が 48%
の状況である。このように避難収容施設と備蓄の状況は不足している状況にあり、これらの課題に関して 2014
年 10 月∼11 月に募集された逗子市総合計画パブリックコメントでは 132 人からの要望があった。 このことから、①観光客や夏期における海水浴客の人数を含めた十分な備蓄の必要性、②現在の備蓄
3 点以外にも仮設トイレ、非常用電源、仮設住宅機材等の備蓄の充実化、③現在指定されている逗子小、
沼間小、小坪小は全て JR 線路の南側にあるため、防災拠点に準ずる備蓄防災施設が JR 線路の北側に必
要とされる。その一つの案として、標高 10mを超える市内唯一の広大な平場を有する池子接収地 40h
a共同使用地に備蓄防災施設を設置する必要性、が考えられる。
(B)新設津波避難ビル型 -1. 新設津波避難ビルに求められるプログラム 次に、新逗子駅前にある京急バスの駐
機場を敷地とした、新設ビル型の避難ビ
ルを提案する。この避難ビルでは、民間
事業者が建てることを想定した空間の
プログラムとし、近隣住民や通勤ラッシ
ュ時の駅滞留者数を考慮した約 1000 人
が避難可能なビルを想定している。
駅前の津波避難ビルとして求められ
るプログラムや特徴として、1 階部分は
図 2-3-B-1 新逗子駅前避難ビル断面 既存のバス駐機場としての機能を保つためにピロテ
ィ形式とし、新たに避難可能になる地域住民に向けて
避難階に直接昇ることができる階段が必要とされる。
2 階部分は、この地域の浸水深が 4∼5m のため、そ
れより一層分たかい高さ 8m の避難テラスを設ける
ことで避難階としての基準を満たす。避難テラスは、
ニューヨークの High Line*2-3-B-1 をイメージしてい
る。High Line とは、かつて利用されていた鉄道の高
架を庭園化したもので、現在ではベンチなどが設置さ
れ、市民の憩いの場となっている。日常的に利用され
図 2-3-B-2 High Line る避難テラスが避難場所になっていることで、避難や
防災のことを普段から認識す
ることができるだろう。3 階
から 6 階は住戸とすることで、
民間事業者にとって収益性の
高いビルになると考えられる。
さらに、屋上には住民や地域
住民が利用できる市民農園を
設けた案としている。例えば、
貸菜園ソラドファーム恵比寿
は恵比寿駅の上にあり、気楽
*2-3-B-1 出典:http://www.thehighline.org/
*2-3-B-2 出典:http://www.machinaka-saien.jp/
図 2-3-B-3 新逗子駅前避難ビル外観 に立ち寄ることができる*2-3-B-2。この避難ビルの使い方としては、新逗子駅と直結していることや、前
述のとおり保育園やデイケア施設が 2 階にあることで、例えば、若夫婦が通勤の際に子供や高齢な親を
預け、そのまま仕事へ行くことができる。なお、バス停・駐輪場・コンビニは既存の施設を利用および
拡張させ、避難テラスの中央付近にはカフェや水上交通やレンタサイクルの窓口を設けている。これら
を設けることで、この避難ビルと海辺をつなぐ田越川の水辺の観光拠点として活用できると良い。
-2. 新設津波避難ビルの課題 新設津波避難ビルにはいくつかの課題がある。 1 つ目に「ビルの高さ」である。ビルの高さ
を高くすることで、事業性を高めることができ
るが、この避難ビル建設予定地の後方には桜山
があるため、高いビルを建てることで桜山が見
えなくなり、景観を損ねる可能性がある。2 つ
目に、逗子らしさを有したプロポーションやデ
ザインへの課題、3 つ目にビルの高層化による
図 2-3-B-4.避難ビルの問題点 日照問題がある(図 2-3-B-4)。
最後に、土地所有権と開発事業者の課題があ
る。図 2-3-B-5 にあるように、建設開発の方法
は 2 つあると考えられる。Case 1 は、土地所有
者と開発事業者が同じ場合であり、素早い建設
が望める。一方で、Case 2 は、土地所有者と開
発事業者が別の場合である。例えば、開発事業
者が逗子市内の丘の上の住宅地と同一の業者で
あれば、住宅地に住む高齢者の住み替えが可能
になる。丘の上の住宅地は、急な坂が多く、買
物や病院へ行くのが不便で、高齢者には住みに
図 2-3-B-5.避難ビルの建設の方法 くい状況や課題があるだろう。そこで、駅に近
く、またデイケア施設をも備えた新設ビルに高齢者の住み替えを促進させることで、高齢者の生活が快
適になると考えられる。また、それによって空いた住宅に、安い価格で若者に貸したり売却するで、住
宅地内に世代の新陳代謝を起こすことができる。このような住み替えを伴う建設方法は、逗子市内の他
の場所も候補地となれるであろう。例えば、新逗子駅前と同じく交通の便が良い JR 逗子駅前や東逗子
駅前も候補として挙げられる。避難ビルは、民間事業者による建設や活用を積極的にすべきであり、住
み替えを伴う手法も建設促進の一つとなると考えられる。
(C)新設タワー型 -1.タワー型が必要とされる敷地状況 津波避難場所が必要とされるこの敷地は、田
越川に面した閑静かつ建物の密度が高い低層
住宅地にある。想定できる建設面積は比較的小
さい面積であろため、高層のタワー型の津波避
難施設として、最低限の機能は「10m 以上の
避難階 50 ㎡を確保し、近隣の避難困難住民 50
人を収容する」ことを提案する。
また、住環境や景観への配慮および川との良
図 2-3-C-1.(C)新設タワー型・断面 好な関係を検討することが求められる。田越川
では、長年続く洪水被害への対策として、護岸
整備と管理用通路の整備が進められており、管
理用通路を遊歩道等に活用されることが親水
を高めるためには望まれる。河口に近いため、
逗子では海を中心に行われているSUP(スタ
ンドアップパドルボーディング)を楽しんでい
る人が、ときおり田越川を上ってくる光景も見
られる。
-2.新設タワー型の機能や構造について このような敷地や周辺環境を条件に提案す
図 2-3-C-2.(C)新設タワー型・多目的活用案 るタワー型の津波避難施設には、下記のような
機能や設備が求められる。
まず、タワーの中心は非常時の給水タンクを構造コアとしてその周囲に階段を設ける。地下には新宿
中継ポンプ場のバックアップとなる予備下水ポンプ、上部にはソーラーパネルと災害時の発電室を設け、
災害後の上下水道インフラを起動させる。なお、1 階には完全防水の備蓄ストックを備えさせる。
このような防災拠点としての役割だけでなく、日常的にも使える施設としての運用案としては、市内
が一望できる展望台や、田越川に下りることができるテラス、維持管理費の歳入源ともなるオープンカ
図 2.(C)新設タワー型・多目的活用案 フェ設備を設けることで、防犯上の安全性を高めるとともに、市民がいざというときにどう使ったらい
いかわからないとか鍵がかかっていて開かない、といったことを防ぐことにも繋がる。
検討事項としては、①川辺に観光客を集めることによって高まるリスクへの対処、②「逗子らしい」
デザインとすること、③建設費の確保方法(3-1章、7章に記載) 、④用地の確保、⑤高さの制限の緩和
(3-1章に記載)といった点が挙げられる。
3章 都市基盤面で事前に検討すべきこと 本章では、都市基盤面で事前に検討すべき点として、市街地等における津波避難ビル設置のための方策
や、浸水想定域における復興計画や仮設市街地の想定の必要性や、緊急輸送路等の整備について挙げる。 -1.防災機能特進特区・災害危険区域の提案 (1) 防災機能特進特区 相模湾沿岸地域においては、開放的な海浜と、その近くに形成されたゆとりある低層市街地がこの地
域独自の魅力を生み出してきた。逗子市も例に漏れず、駅前から海浜までのエリアは海・駅へのアクセ
スもよく人気のエリアとなっている。 しかし、これらの海浜に近い低層市街地では、津波浸水時の一時避難所が十分に整備できていないと
いう課題がある。特に低層住居専用地域のように、10m あるいは12m の高さ制限が設けられている場合
は、制度上津波避難タワーなどを建設することが困難である。 そこで、防災機能特進地区(仮称)といった特区を設け、例外的に津波避難施設の高さ制限緩和を行
うことを提案する。神奈川県は「建築基準法55 条第2 項に基づく建築物の高さに関する認定方針」に
おいて、寺院や小学校といった低層住居専用地域での高さ制限を除外する建築物を定めている。当該特
区内の津波避難施設は海辺の低層住居専用地域での暮らしを支えるために必要な施設であるため、小学
校等の基本的な公共施設同様、同認定方針第2 項第3 号「学校その他の建築物で知事が用途上やむを得
ないと認めたもの」として取り扱うよう、同認定方針を改訂することが有効である。また、沿岸基礎自
治体で建築主事を設置している特定行政庁も同様の改訂を行うよう促し、沿岸域一帯が足並みを揃える
必要がある。 また、実際の避難施設設置の際には、基本的には民間建物の建設と活用を前提とし、固定資産税の減
免等のインセンティブを行政が整備することが必要である。また、低層住居専用地域において高さ制限
を越える建物を建設する際には、周辺住民の理解を得るための周辺住民説明会開催や、避難施設が常に
利用可能な状態であることをチェックする住民の目が必要不可欠となる。そこで、行政は説明会開催や
専門家派遣の支援を行うとともに、避難施設の運営監督業務等の委託を行う等の対応が必要である。ほ
かにも、日影の不利を受ける敷地の固定資産税減免や、避難施設周辺の上下水道等ライフラインの優先
的な強化など、多様なインセンティブを検討することが好ましい。 このような総合的な防災財源確保のためには、当該特区を対象としたカタストロフィ・ボンド(キャ
ットボンド cat bond, catastrophe bond)の発行といった柔軟な資金調達手段を検討すべきである。
例えば東京ディズニーリゾートを運営している株式会社オリエンタルランドは、地震の発生を想定した
キャットボンドを発行することで、地震発生時の被害復旧や運営中断による損失をカバーしている*。
また、相模湾沿岸地域の当該特区において防災インフラ強化にむけた計画水準を定め、水準を満たさな
い不利地域に優先的に予算を配分する等、市町村を超えた沿岸地域全体の防災性向上を目指すことも考
えられる。 (2) 災害危険区域 最後に、広域的な防災対策を効率的に進めるためには、災害リスクの周知や啓発が重要である。そこ
で、神奈川県が建築基準法の災害危険区域条例にもとづき、当該特区を「最寄りの津波避難施設までの
所要時間」に応じた段階的な災害危険区域に指定することを提案する。 災害危険区域というと建築行為の規制手段と捉えられがちであるが、実際には非常に自由度が高く、
自治体が独自の内容を定めることが可能である。神奈川県が津波避難施設までの所要時間に応じた災害
危険区域を広範にわたって設定することのメリットは大きく3点あげられる。 1つは、災害危険区域は不動産取引の重要事項説明の対象であるため、住民への周知に高い効果が期
待されることである。特に地域の災害史等に詳しくない新規住民が転入してくる際、不動産取引で必ず
説明されるという点で効果が高い。 2つめに、県が広域的に災害危険区域を指定することで、災害リスクの明示による地価低下が防げる
ことである。市町村ごとに災害危険区域を指定する場合、災害危険区域を指定していない隣接市町村と
の比較で不動産価値が低下することが懸念されがちである。逆に、災害危険区域を指定しない、つまり、
災害リスクを明示しないことで不動産価値を保つというモチベーションが働いてしまうと、広域的な防
災対策は進めづらくなるおそれがあるため、県による広域的な指定が有効と言える。 3つめに、災害危険区域の指定が、災害の想定に依存するのではなく津波避難施設までの所要時間を
基準とするため、津波避難施設が増加するメリットを住民が自覚しやすくなる点があげられる。住民の
理解や民間建物の活用によって津波避難施設が身近に増加した場合、段階指定された災害危険区域評価
が向上していくため、津波避難施設の整備が進むにつれて不動産評価も多少向上することが考えられる。
このように住民自身が津波避難施設整備を進めるインセンティブをもつことにより、民間活力の活用が
より円滑に進むと考えられる。 図2-4-1. 災害危険区域の指定イメージ例 * 参考 石川裕(2004 年 9 月)震動予測地図の工学的ニーズと利用例 - リスクファイナンスへの適用、防災科学技術研究所研究資料
第 258 号 4.7.2 節 http://www.j-shis.bosai.go.jp/j-map/result/tn_258/html/html/4_7_2.html(2015 年 1 月 29 日アクセス)
3-2. 事前に復興計画は考えられるか?
- 浸水域の復興 津波による広範な浸水や地盤沈下、地震動・水
流による多数の建物被害が面的に発生した場合、
復興にむけて堤防建設事業や盛土による市街地嵩
上げ事業、それらに伴う道路拡幅や土地区画整理
のように、計画立案から土地権利調整、工事の完
了に至るまで非常に長い時間を要する復興事業が
計画される可能性がある。
そのような復興事業は単なる復旧ではなく、町
がこれからどのようにあるべきかという長期的な
ヴィジョンに基づくべきである。しかし前述した
ように計画から実現まで長時間を要する事業は、
避難所や仮設住宅での生活を長引かせ、むしろ被
災地での住居や雇用の確保を困難なものにしてし
まう。結果的に、時間をかけた復興計画の検討が
図 3-2-1. 大船渡市における盛土事業予定市街地の様子 *3-2-1
被災者の生活再建の見通しを悪くしてしまうのである。実際 2011 年東日本大震災の被災自治体では、
生活再建の見通しが立たずに被災自治体から他自治体へ転出する住民も多い。この人口流出によって
被災自治体の将来像はますます描きづらいものとなってしまうのである。
そこで、時間をかけた復興計画の実現と迅速な生活再建の両者を同時に叶えるため、①計画時間の
短縮と②計画時間の有効活用を提案する。
1点目の計画時間の短縮とは、「被災後の計画時間を短縮する」ということである。つまり、発災前
に具体的な被害を想定した上で、盛土する地区・盛土しない地区の検討や、国道・県道・市道・私道
の拡幅および位置変更の検討を行う。想定する被害は仮定的なものであるため、実際に同じ被害が発
生するとは限らない。しかし行政と住民で、被害発生から市街地復興・生活再建までを一度具体的に
イメージしてみるという経験そのものが、実際に被害が発生した際の円滑な復興計画立案にも寄与す
るのである。また、この発災前に想定した被害が、実際に発生した被害と似ている場合には、事前に
検討した計画内容の大部分を実際の復興計画に反映することができ、大幅な時間短縮が期待される。
また、復興計画立案上の技術的な検討を発災前に行うことで、実際に被害が発生した際には、行政の
リソースを被災者のケアに集中させることが可能となる。
2点目の計画時間の有効活用は、即ち、「仮設市街地の建設を認める」ことにより復興事業着工まで
の時限的な市街地再建を行うということである。従来、都市計画の観点から、復興事業による恒久的
な市街地の再建に着手するまで、民間による個別の建築行為は制限されてきた。しかし、広範な市街
地で長期に渡って建築制限を行うと、大部分の敷地をいかなる用途にも利用することができず、市街
地から活気が失われてしまう。特に逗子市の場合は、予想される浸水域が中心市街地の大部分にあたり、
駅前の商業地域での商業再開の遅れが多くの市民の生活再建に大きな影響を及ぼすと考えられる。そ
*3-2-1: 出典 大船渡市土地区画整理事業区域内における盛土高の表示板設置のお知らせ http://www.city.ofunato.iwate.jp/www/
contents/1379585016990/index.html(2015 年 1 月 29 日)より筆者加工
こで、例えば、仮設商店街のような形態で早急に
市民の生活圏を取り戻すことが有効である。その
ためには、発災前から半壊建物の修繕や仮設建物
の設置・解体のルールをガイドラインで定め、発
災後には重点的なインフラ復旧を行うことで、発
災から復興事業着工までの空白期間に民間活力を
活用し市街地の活気を取り戻すことができる。
また、仮設市街地というと、多くの市民が災害
救助法で設置される応急仮設住宅団地を指すと考
えがちである。しかし応急仮設住宅はあくまでも
図 3-2-2. 石巻まちなか復興マルシェの様子
住宅の提供が主眼となっている。商業店舗や医療
施設、文化施設などの多様な用途の仮設的な再建
はどのような法律にも明確には位置付けられてい
ない。そのため、東日本大震災の被災自治体では、
長引く仮設暮らしを支えるための各種生活サービ
ス施設の提供が課題となり、実験的に設置された
仮設的な商業エリアが復興の重要な拠点となった
例も多い。この教訓をふまえ、復興事業着工まで
にかかる計画時間の長さにかかわらず、各種生活
サービスの迅速な再開を仮設市街地ガイドライン
図 3-2-3. 大船渡屋台村の様子
で明確に位置付け、人口流出防止を目指す。
200m
仮設再建エリア
図 3-2-4. 仮設市街地再建ガイドライン策定が期待されるエリア例
*3-2-2: 出典 石巻まちなか復興マルシェ http://www.fukkoumarche.com/(2015 年 1 月 29 日)
*3-2-3: 出典 東北観光推進機構 復興商店街をめぐる旅 http://www.tohokukanko.jp/feature/shun-fukkou2/(2015 年 1 月 29 日)
3-3. 緊急輸送路の整備等 災害時における緊急輸送対
象は避難・救護・物資搬入など
が挙げられる。
図 3-3-1 は、現状の逗子市の
幹線道路網体系であり、市内主
要幹線は県道が占めている。ま
た、地域防災計画において葉山
港は物資受入港に指定されて
いるが、葉山港と市内をつなぐ
アプローチとなる県道 207 号
線(3.5.4 森戸海岸線)は緊急
輸送路・避難道路に指定されて
図 3-3-1.道路:緊急輸送路の整備等 いながらも、土砂災害警戒区域
に指定されている。また、片側 1 車線の 2 車線道路であり心もとない道幅となっている。横須賀港と市
内をつなげる県道 24 号線や 3.6.4 松本沼間線についても市境のトンネル付近で同様のことが指摘できる。
その他に、未整備の都市計画道路のうち、市内を循環し葉山や横須賀に通じる 3.4.2 新宿久木桜山線
と、3.6.5 桜山長柄線は、避難・救護・物資搬入の観点から必要と考えられる。
さらに、小坪地区に繋がる道路は少なく、土砂災害によ
る孤立の恐れもあるため、海からの緊急アクセスを検討す
る必要がある。そこで、
「緊急災害用浮桟橋」の設置を提案
する。
「緊急災害用浮桟橋」は「防災桟橋」とも呼ばれるも
のであり、図 3-3-2 のように、静岡県、千葉県などで実際
に導入されている。
図 3-3-2.「緊急災害用浮桟橋(防災桟橋 以上の他にも、緊急輸送路として活用できる可能性をもっ
たインフラを追求する必要があるだろう。たとえば、湘南
地域や三浦半島には民間事業者によるマリーナが沿岸部にあることから、災害時にマリーナ間で連携し
て緊急輸送手段として活用することも考えられる。ちなみに、逗子マリーナと葉山マリーナは運営主体
が同じ会社である。
このほかにも、空輸についてもさらに検討すべきである。逗子市では、小学校校庭が既にヘリコプタ
ーが止められる場所として指定されているが、自衛隊や米軍が所有する空輸拠点の活用も視野に入れ、
緊急時に大容量かつ高度な輸送ができるような体制や協定を形成すべきである。特に逗子市では、横須
賀海軍基地との連携が望まれ、そのためには横須賀港と逗子市をつなげる県道の強化を検討されたい。
4 章 逗子らしい仮設住宅と街並みであるために
4-1. 逗子における 2 パターンの仮設住宅
-1. 仮設住宅の用地想定
津波等の大規模な災害においては、避難所での数週間〜数ヶ月の避難を経て、災害救助法に基づい
て設置される「応急仮設住宅」(以下、仮設住宅と表記)に入居する被災者が多く発生する。逗子市に
おける津波の被害予測 *4-1-1 においては、約 3,000 世帯分 *4-1-2 の住宅の全壊が想定されており、相当数
の仮設住宅の需要が発生すると予測される。そこで本節では全壊戸数を目安に仮設住宅の必要戸数(世
帯数)を想定し、市の使用可能な用地面積との比較を行う。*4-1-3、4 比較においては、一定規模以上の空
地を建設可能用地と想定し GIS による抽出を行う。その後、平坦さや緑地の状況が疑わしい箇所に関
しては、現況確認などにより状況の確認を行う。
表 4-1-1 は抽出した用地の面積と、必要用地面積に対する割合である。用地の使用を考えるうえで、
「①:浸水せず造成や緑地の伐採を伴わない用地」、「②:浸水しないが造成や緑地の伐採が伴う用地」、
「③:浸水が予測されるが造成や緑地の伐採を伴わない用地」の 3 種に分類を行った。なお、この抽出
においては規模を条件としているため、所有主体に関しては考慮していない。
「浸水しなかった①・②の用地に建設する」建設パターンは、大規模な津波被害において災害救助法
状の仮設住宅制度が初めて適応された東日本大震災において、用地選定の基本となったパターンであ
る。しかし、仮設住宅という期間限定的な用途のために、日常からその維持を考えている景観を壊し
かねない「緑地の伐採」や「造成による山の切り開き」は避けたいとの意見が市民の有識者から出さ
れたた。そのため伐採、造成は建設までに期間も
かかることから原則として②の用地は使用しない
ことが仮設用地選定の際には望まれる。
「①と③の用地に建設する」建設パターンで考
えても、必要戸数の 74%に用地量がとどまる。
仮設住宅
必要量
①
候補地
②
面積
335,060 ㎡
150,054 ㎡
196,157 ㎡
98,651 ㎡
戸数
3046 戸
1364 戸
1783 戸
897 戸
45 %
59 %
29 %
割合 -
③
表 4-1-1. 逗子市における仮設住宅用地の想定面積
①
②
③
図 4-1-1. 逗子市における仮設住宅用地の想定場所
*4-1-1: 参照・南燿太、稲垣景子、吉田聡、佐土原聡 (2014)「神奈川県沿岸地域における津波浸水被害に関する研究」,『2014 年度大会(近
畿)学術講演梗概集』,日本建築学会
*4-1-2: 全壊する住宅の戸数は世帯数と一致しないため、
「全壊する住宅の延べ床面積÷逗子市の 1 世帯当たりの平均延べ床面積」によ
り全壊により住宅を失う世帯数を概算している。
*4-1-3: 全壊しても仮設住宅に入居しない場合や、半壊やそれ以下でも入居する場合、世帯人数が多く入居の際に世帯分けが起きる場
合もある。したがって、必要な戸数は増減する可能性のある目安である。
*4-1-4: 仮設住宅 1 戸当たりに必要な用地面積は、いくつかの既往研究を参考に 110 ㎡ / 戸として算出した。
-2. 従来の仮設住宅
従来の仮設住宅は、前述した通り災害救助法の定めによって設置される。災害救助法においては、
平均面積は 1 戸当り平均 29.7 ㎡、限度額 1 戸当り平均 2,401,000 円以内(いずれも平成 25 年の仕様)
といった規模・費用の規定がある。着工は災害発生から 20 日以内に着工、供与期間は工事完了から 2
年と定められている。
ほとんどの自治体では仮設住宅を「プレハブ建築協会」(以下プレ協と表記する)というプレハブ建
築の業界団体と協定を結ぶことで確保している。プレ協は常に一定数の仮設住宅の供給準備を行って
おり、発災時に迅速に供給・着工を行う体制が築かれている。プレ協の供給するプレハブ仮設住宅は
図 4-1-2 の様な物である。基本的に平屋であり、木杭を基礎とした上に長屋形式で建設される。
しかしながら、東日本大震災においては迅速な 20 日以内の供給や限度額以内での着工は多くの場合
で行われなかった。被災規模が甚大で救助・救難活動が長引いたこと、交通網が遮断されたこと、候
補用地が浸水したことなどにより 20 日以内は難しかった。また建築資材の高騰、仮設住宅の用地候補
が浸水し、確保の為に造成や伐採を伴ったこと、インフラが寸断し、浄化槽の設置等インフラ設置に
コストがかかったこと、寒冷地のため断熱仕様となったこと等さまざまな要因で 1 戸当りの金額も 240
万円を大きく超えている。特に用地の不足は、迅速な建設と費用双方にとって大きな問題となった。
前項でも見たように、逗子市の津波被害においても用地の不足が想定できるため、この点は事前に検
討が必要である。
したがって、我々は従来型のプレハブ仮設住宅とは別に、「3 層積層型の仮設住宅」と「空き家活用
によるみなし仮設住宅」の利用を検討することとした。
-3. 3層積層型の仮設住宅
「3層積層型の仮設住宅」は、東日本大震災において導入事例が見られる。図 4-1-3 は宮城県女川町
のコンテナ積層型仮設住宅である。従来のプレハブ平屋型の仮設住宅に対するメリットとしては、「用
地面積当りの入居戸数が多い」ということが第1に挙げられる。この特徴から、避難者の集約的入居
図 4-1-2. プレハブ仮設住宅
図 4-1-3. 女川町の3層積層型仮設住宅
*4-1-5: 出典・http://www.shigerubanarchitects.com 2015 年 1 月 22 日アクセス
*4-1-5
が可能となり、ソフト的な支援も行いやすくなる 2 次的なメリットもある。デメリットとしては「建
設において大型の重機が必要である」ため、アクセスする道路が狭い用地、重機での施工が困難な用
地には不向きである。また、一般に自治体が協定を結んでいるプレ協供給の標準ユニットでないため、
事前の供給準備がないと迅速かつ大量の建設が困難である。
まず「3層積層型の仮設住宅」を「①と③の用地に建設する」パターンから重機使用の難しい敷地
をのぞき、2 年以上の占有が予想されるため、学校の校庭等の使用は避けた。建設の迅速性や被災者へ
の支援サービスの集約、③の分類の用地における避難や再度の浸水リスクの問題を検討した。それら
の条件を踏まえたのが、①と③のうち「第1運動公園及び池子米軍共同利用地」(図 4-1-4)へ「3層
積層型の仮設住宅」の建設を集約して行う提案である。表 4-1-2 の様に「第1運動公園及び池子米軍
共同利用地」の面積は約 81,700 ㎡であり、3 層で建設を行う場合 2,227 戸分の用地にあたる。これは
必要量の 73%である。逗子市におけるエリア的にもまとまった敷地としての「第1運動公園及び池子
米軍共同利用地」に対する仮設住宅建設は、その計画の実現に対する期待の声が市民からは上がって
いる。
この提案において事前復興の観点から県レベルで必要と考えられる事柄は以下のような点である。
1. 浸水した敷地に対する仮設住宅の建設を可とするか否かの事前判断、もしくは発災時における判断
基準の策定が必要である。浸水エリアにおいて仮設住宅の建設を行うことは、技術面(浸水エリア
における基礎の問題)や安全上の判断(仮に再度災害がすぐに起きた際に被災するリスクがある)
など事前に検討・整理すべき項目が多くある。
2.「3層積層型の仮設住宅」は県がプレ協との連携で想定しているタイプとは別の仮設住宅であるた
め、供給元の確保について県レベルで検討が必要とされる。プレ協では工事現場事務所などの用途
で積層型のプレハブ仮設建築は使用しているため、これらの仮設住宅への使用は考え得る。
3. 物資拠点・救援活動拠点など応急期の連携はもちろん、がれき置き場・仮設住宅用地などの復旧・
復興期における利用に関して、逗子市だけでなく県内各所に米軍敷地を含めて計画の策定が必要で
ある。また、米軍家族等に対する支援の必要性の把握なども県として必要だと考える。
池子米軍恊働利用地
第1運動公園
仮設住宅
必要量
第1運動公園
候補地
池子米軍恊働利用地
合計
面積
335,060 ㎡
15,130 ㎡
66,539 ㎡
81,669 ㎡
戸数
3046 戸
138 戸
605 戸
742 戸
45,390 ㎡
199,617 ㎡
245,007 ㎡
413 戸
1815 戸
2227 戸
13.5 %
59.6 %
73.1 %
3層積層換算
割合
図 4-1-4. 第1運動公園及び池子米軍共同利用地の位置
100 %
表 4-1-2. 3層積層型の仮設住宅用地の想定面積
-4. 空き家活用による 「みなし仮設住宅」 と 「空き家バンク」
次に「空き家活用によるみなし仮設住宅」についての提案である。「みなし仮設住宅」は既存の住宅
を借り上げることで仮設住宅として利用する制度である。東日本大震災では、6 万戸以上がみなし仮設
住宅で賄われている *4-1-6。みなし仮設住宅は、財政負担が新規の仮設住宅の建設より少なくなる傾向
にある *4-1-7。また新規の仮設住宅は、応急期における建設のため被災エリア外からの資材供給となる
ことが多く、建設費が地域に還元されない傾向にあるが、みなし仮設住宅は貸し主・不動産業にお金
が支払われる。したがって復旧・復興期に地域経済にお金が還元されることが地域に対してのメリッ
トとなる。また、即入居が可能で避難所生活も短期間にできるなどメリットが多い。仮に先述の提案
のように「3 層積層型の仮設住宅」を建設したとしても約 800 戸分は用地が不足する。従って、みなし
仮設住宅の利用を積極的に考えることが望まれる。
総務省の統計 *4-1-8 によれば、逗子市には 22.9% の空き家がある。逗子市のある住宅地の協力で頂い
た自治会の把握しているデータでは、約 1 割の家が空き家であるという結果が出ている。総務省統計
を基に概算をすると、市全域で約 5,500 戸の空き家があると想定される。逗子全域の住宅のうち約 4
割が浸水する想定であるので、約 5,500 戸の内浸水しない空き家は約 3,300 戸と概算している。*4-1-9
これらの空き家をみなし仮設住宅として利用できれば、仮設住宅の建設戸数を大幅に減らすことが可
能である。そこで下記には、現時点では空き家を緊急時にみなし仮設住宅として利用するための課題
を挙げる。
• 普段からの空き家情報の把握が必要である。市や県の公共住宅、UR などの住宅、不動産のネットワー
クで把握されている物に関しては比較的迅速に活用が可能であるが、それ以外の別荘、放置空き家
などに関して、統合された情報がない。
• 逗子市においては空き家とはいえ、実態は別荘であり低頻度とはいえ使用者がいるという物が多く
存在している。管理・活用のためには放置されている空き家、不動産取引中の空き家(借主・買主
募集中の空き家)、別荘などの低利用空き家を分けた把握が必要である。
• 空き家情報を把握したうえで、普段の管理・活用の仕組みが必要である。これがなされていないと、
緊急時にみなし住宅としての活用も迅速に行えない。
これらの課題を解決する方法として、「空き家バンク」と呼ばれる空き家の情報蓄積、管理、活用を
行う仕組みを提案する。「空き家バンク」と呼ばれるような空き家情報の把握の仕組みは全国で様々に
*4-1-6: 参照・復興庁「復興の現状」[ 平成 26 年 11 月 13 日版 ]
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20141209102639.html 2015 年 1 月 22 日アクセス
*4-1-7: 参照・仙台市「東日本大震災 仙台市 震災記録誌-発災から 1 年間の活動記録-」
http://www.city.sendai.jp/fukko/1207640_2757.html 2015 年 1 月 22 日アクセス
*4-1-8: 参照・総務省「平成 20 年住宅・土地統計調査」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001025144&cycode=0 2015 年 1 月 22 日アクセス
*4-1-9: 空き家戸数は「逗子市の全世帯数×空き家率」として概算した。また、空き家の分布に関しては調査がなされていないため、
一様に分布しているものとして浸水しない戸数の概算を行った。
あるが、それらの多くは新規居住者を獲得するこ
とを主な目的としている。逗子市においては別荘
も多いことから新規居住者を得る目的よりは、ゲ
非常時には中期的にみなし仮設住宅として使用で
としての日常時の活用を行うことで管理も行い、
地域活動拠点 ・情報の集約 ・活用マッチング ・管理 市
民
ストハウスのような短期滞在や、地域活動の拠点
空き家バンク
情報と空き家使用
空
�
家
�
所
有
者
管理へ協力
管理
空き家活用の 事業 集約した情報 きることが望まれる。また、図 4-1-6 のようにソー
逗子市
ラパネルによる非常電源、雨水タンクによる非常
用水の備蓄、プロパンガスによる煮炊きなどハー
図 4-1-5. 逗子市における空きやバンクの概念図
ド的な整備も出来れば、非常時の一時避難所の機
能を担うことや、災害備蓄倉庫としての活用も考
〈電気〉太陽光発電
〈水道〉雨水タンク
えられる。この「空き家バンク」の提案は市民の
関心は高く、設立を望む意見が多く寄せられてい
非常時に使える燃料
る。
ただし、この提案については、「空き家バンク」
の主体を、行政とするか民間とするかで情報蓄積、
管理、活用の度合いが異なる。一般に行政が主体
となる場合は、情報の蓄積までは問題ないが、日
常時の管理、活用は行いにくい。老朽化した危険
簡易バイオトイレ
〈ガス〉プロパンガス
図 4-1-6. 一時避難所になるような空き家の整備例
な空き家の管理や取り壊しの指導と、緊急時のみなし仮設住宅としての提供の呼びかけなどにとどま
るだろう。したがって、普段からの管理、活用も視野に入れる場合、行政が支援しつつも、民間団体
や NPO を主体とした「空き家バンク」とする方が適すると考えられる。
みなし仮設住宅への提供を見据えると、以下のような施策を行政が行うことが求められる。
1. 常時の管理コストや情報蓄積・更新のコストを「空き家バンク」が負担することをかんがみて、行
政から財政面などの支援を行う。
2. 非常電源の設置等で災害時の一時拠点となる様な場合は、さらに支援を行う。
-5. 「現地再建」 の希望と課題整理
最後に、仮設住宅とは別の考え方として、避難所から直接再建した自宅に戻ることをここでは「現
地再建」と定義し、考え方を提案する。津波被害においては、建物が全壊被害や流失被害を受けても、
基礎部分やがれきが大量に残り全くの更地になることはまれである。しかし、逗子市には比較的庭の
広い住宅も多いため、基礎が残るなどした場合にも、庭であった部分のみがれきを撤去し住宅を早期
に再建できる状況が考えられる。東日本大震災の仮設住宅の供給時期と量を考えれば、場合によって
*4-1-10: 参照・江口亨 (2014)「建築生産から考える応急仮設住宅」 は新築の木造住宅の建設期間とさほど差がない *4-1-10。したがって、避難所から仮設住宅に入居せずに
直接「現地再建」の住宅に移ることも不可能ではない。「現地再建」は、結果的に仮設住宅の必要戸数
を減らすことで、自治体の財政負担を減らすことにつながる。仮設住宅に入居した後に最終的に住宅
を再建する場合にかかる 2 重の住宅再建費用を考えれば、費用の差もそれほど非現実的ではなく、む
しろ復興全体の経済負担は圧縮されるといえる。
なお、海外では仮設住宅の供給を行うのではなく、現地において増築可能なコアハウスと呼ばれる最
低限度の住宅を早期に再建し、その後段階的に増築することで住宅を復興するような事例がある。東
日本大震災においても、漁師など生業の復興にお金が必要であり、住宅への初期投資の額を抑えたい
ような場合の住宅のモデルも作られている。図 4-1-4 は実際に建設されたモデルである *4-1-11。被災者
の経済事情に合わせた住宅の供給の選択肢が事前に用意されていない場合、被災者が災害復興公営住
宅への入居を選択する割合が増加する。災害復興公営住宅は、建設のコストはもちろんのこと、その
後の管理コストが自治体の大きな負担となる。し
たがって「現地再建」のような選択肢を用意する
ことは重要である。また、仮設住宅での生活の長
期化、また被災前の土地での再建の見通しが長く
たたないことは、地域からの人口の急激な流出に
つながる。したがって「現地再建」のような早期
図 4-1-7. 増築可能な事例
再建の方法は、人口減に対する抑止にもなるといえる。
「現地再建」の技術的、計画的な課題としては、以下のような点があげられる。
• 敷地のインフラの復旧や、場合によっては地盤沈下などへの対応が必要である。インフラに関して
は 4-2 で扱う防災協力緑地などに仮設的に地域一帯の物を設置するなどの可能性が考えられる。
• 増築型のコアハウスのような住宅は、既存の住宅市場では十分なモデル開発がなされていない。ま
た、増築に関わる建築確認等の手続きが必要である。
• 早期の再建において地元施工者は被災しているため、供給・施工者などについて遠隔地との連携が
必要である。この点は、仮設住宅の供給・施工とも共通する。
この提案に関しては、 県レベルでの大きな検討事項が存在する。それは、「浸水エリアに再居住を許
すのか」という事項である。東日本大震災においては浸水エリアにおける再居住は、国の防災会議の
決定を受けたうえで、県ごとで指針が異なっている。被災後の検討では大きく安全側に指針が振れる
可能性が高く、
「浸水エリアに再居住は許可しない」側になる恐れがある。しかしながら、この指針は
津波被害における復興計画の大きな前提となる。事前復興においてこそ十分に検討の意味をもつ部分
である。したがって、この事項に関しては本提言書の中で別途論文で報告することとする *4-1-12。
*4-1-11: 出典・「福島県南相馬市塚原公会堂」、http://archiaid.org 2015 年 1 月 22 日アクセス
*4-1-12: 都市イノベーション学府博士課程後期・石塚直登による「東日本大震災の復興制度から見る、津波事前復興における課題に関
しての研究」において詳しく検証する。
4-2. 逗子らしい街並みを生かすためには
- 「防災協力緑地」 と 「防火林と緑のネットワーク」 の提案 -
沿岸部においては津波による浸水被害のリスクが高いため、被害を軽減するために事前にできる計
画を検討することや、二次災害を減らすための制度を検討すること、あるいは復興の際にどのような
街の特徴を残したいか検討しておくことが課題とされる。本項では逗子市の沿岸部をケース対象とし
た課題について分析をもとに整理をし提案を行う。
-1. 現状分析
①沿岸部・田越川下流周辺の街並みの特徴
逗子市において浸水する可能性があるエリアの
うち、逗子湾に近い田越川下流の周辺地区は第一
種低層住居専用地域が多くを占め、10m の高さ制
限や容積率 100% の規制があるため、津波によっ
て浸水する床面積が多くなることが課題である。
歴史を遡れば、100 年以上前の田越川下流の地
区は田畑や沼が多くを占めていた *4-2-1。その後、
1966 年の住宅地図(図 4-2-1) によると、新宿 1
丁目などの沿岸部には 2000 ㎡以上の事業者が所持
図 4-2-1.1966 年における敷地面積の大きさ (田越川下流周辺)
する別荘や寮が多く、逗子 6 丁目あたりには 500
㎡以上の大規模な個人住宅や沿岸部の多くを占め
ていたことが捉えられる。桜山 8 丁目においては、
比較的小規模な住宅も多く密集し、新宿 1 丁目、
逗子 6 丁目、桜山 8 丁目は近隣でありながらも各
地区の敷地や住宅の特徴が異なる点が捉えられる。
その約 50 年後にあたる 2014 年(図 4-2-1) にお
いて特記すべき点としては、逗子 6 丁目をはじめ
とした各地区で、500 ㎡以上や 2000 ㎡以上の個人
住宅地や別荘地が細分化され、60 坪以下さらに
は 30 坪以下のミニ開発による戸建住宅が増えて
図 4-2-2. 2014 年における敷地面積の大きさ (田越川下流周辺)
いることが挙げられる。各規模の住宅が不均質に混在している状況から、かつてあった各地区の特徴が
失われつつあることが指摘できる。このような現状のなかで、現存する街路沿いの大規模な個人住宅
地には植栽が豊かに植えられており、この地区の街並みや景観を残し、特徴づける要素となりつつある。
道路に関しては、国道と県道以外の道路幅が全般的に狭く 6m を満たさない道路や路地が多いことが
防災面の課題として挙げられる。ただし、この地区に住む居住者は、道が狭い路地空間を逗子らしい
特徴と捉えている人も多く、駅から近く平坦な土地であるため自動車よりも自転車を活用し、自転車
や歩行者を優先した街路空間となっている。
*4-2-1:本報告書 5 章「逗子市における水辺の原風景」の 1881 年の地図「図 1 帝国陸軍地形図 二万分の一」を参照。
②建物の構造や密度からみる延焼の危険性
(1) 建物の構造
沿岸部における建物の構造を捉えると、第1種住居地域においては木造以外の鉄筋コンクリート造
や鉄骨造の建物が分散して存在している。一方で、第一種低層住居専用地域には木造住宅が多い状況
となっている。
(2) 延焼クラスター
次に、各建物の構造を木造と非木造に分けて延焼する限界の距離を算出 *4-2-2 し、その延焼限界距離
を橙色で表した図 4-2-2 を示す。この図において、各住戸の延焼限界距離が重なり繋がっているエリ
アは延焼するエリア(延焼クラスター)であり、空隙の部分は延焼する危険性が低い空間である。こ
の図からは、市街地を流れる田越川は大きな防火帯になっているが、逗子市の市街地は道路が狭く、
路地も多く、近隣公園が非常に少ない都市計画であるため、都市インフラによる防火帯が非常に少な
いことが捉えられる。
(3) 延焼しにくい「空隙と建物のタイプ」
延焼しない隙間つまり空隙は市街地の中に分散して存在している状況があり、それらは 3 つのタイ
プに分けて構成的特徴が挙げられる。A タイプは、500 ㎡以上の大規模な敷地に鉄筋コンクリート構造
による集合住宅、事業所、学校に併設して駐車場や校庭が設けられているか、マリーナや駐車場、空
地によって大きな空隙が確保されている空間である。B タイプは、500 ㎡以上の個人住宅の敷地に、木
造住宅と比較的広い庭と植栽によって延焼しない空隙を有している空間である。C タイプは、道路に面
した個人住宅の敷地の庭が、数件連なることによってできる細長い空隙が、防火帯としての機能を有
して市街地に存在する空間である。
図 4-2-3. 延焼クラスターにおける空隙のタイプ
図 4-2-4 . 空隙と建物の各タイプ
*4-2-2: 延焼クラスターは建物の構造ごとに延焼限界距離を設定、延焼限界距離と隣棟間隔を比較し、延焼限界距離内(延焼限界距離>
隣棟間隔)で連続して存在する建物群は一体となって延焼が及ぶという考え方に基づいている。
・延焼限界距離 木造 :12 ×(a / 10)0.422 m , 防火造:6×(a / 10)0.322 m, 準耐火造:3×(a / 10)0.181 m, 耐 火 造:0m
(a =建物の一辺長さ)
・延焼拡大係数 =1.5(集団火災による火災拡大の効果を考慮し、延焼限界距離にかける一律の倍数)
-2. 逗子市沿岸部における防災面の課題整理と、市民からの意見を踏まえた解決策案
以上の分析から逗子市沿岸部における防災面で脆弱な特徴として、第1種低層住居専用地域の区域
では低層な木造住宅が多く、そのエリアは津波による浸水のリスクが高い区域であるため、浸水する
床面積や被害が大きくなる恐れや避難階が設けにくい点が挙げられる。しかしながら、市民の意見と
しては低層の街並みを大事にしたいという声が強いため、用途地域は変更せずに、近隣に津波にまけ
ない津波避難ビルやタワーを設けることによって、近隣住民を津波から救い、日常における安全性、
安心性を確保することが必要とされる。
道路の道幅が狭いことや、土地の細分化により木造住宅により過密したエリアが増えつつあること
によって、火災によって延焼しやすい状況になっている。ただし、既に建物が過密に立ち並ぶ当エリ
アにおいて、道路幅を広げることは全体的に難しいため、延焼しにくくするための工夫として、防火
林の植樹や、庭面積を確保することや配置に工夫することで、防火帯や緑のネットワークを創出する
ことが解決方法の1つとして挙げられる。
また、相続税対策の一貫として土地の細分化は、津波によって流失しやすい木造住宅を増やすことや、
延焼しやすい特徴だけでなく、土地の利権が分配されることで、復興時に再計画する場合に所有者と
の調整が大変になる点もある。そのような過密な木造住宅によるミニ開発を抑えるためにも、津波に
よる被害が想定される区域では、大規模な個人所有の敷地を保全することや最低敷地面積制度の検討
を行うことが望ましい。 市民の立場からしてみると、大規模敷地の個人所有者は相続税対策として敷地を分配して売却せざ
るを得ない状況や、一般市民が個人住宅を新築する際には、津波によって建造物が流出しないように
するための杭基礎や RC 構造のコストが高い状況がある。そのため、そのような点をフォローアップす
ることが各自治体からの財政で補助することができれば、津波に強い建物や街並みを積極的につくる
ことが実現化できる。下記には上記の課題を整理して図 4-2-5 として示す。
図 4-2-5. 課題の整理
-3. 提案
上記の課題点と解決策が挙げられる中で、逗子市における財政的状況と現状の用途地域の設定のま
まで事前復興として取組めるであろう案として、「防災林と緑のネットワーク」と「防災協力緑地(登
録制)」を提案する。これらは、地震による二次災害として火災による延焼をふせぐことや、大きな津
波により多くの建物が流失した際の復興時に、近隣の復興を促進させる共助の拠点として公園の代わ
りに大規模な個人所有の敷地を活用できるようにすることなどが挙げられる。
なお、火災による延焼防止に関連した計画として「逗子市地域防災計画」において、「緑地等は輻射
熱の遮断や火災の燃焼防止に有効であり、又、街路樹や植栽帯が震災発生時の被害の軽減に役立つ」
ため、「減災の観点から、市街地を分節して火災の延焼を防止する緑地の保全・創造を図る。」*4-2-3 と
明記されている。
(1) 防災協力緑地(登録制)
逗子市をはじめ神奈川県の湘南地域は、昔は個人や事業者による別荘地として栄えたが、現在では
以前よりは別荘が少なくなり、個人によって所有している大規模な敷地が相続税対策により細分化さ
れ木造住宅によるミニ開発している状況が加速している。このような状況を行政がコントロールせず
ままに市場経済の原理で進むと、海が近いために津波による木造住宅の流失の被害リスクは高まり、
庭が広く植栽も豊かな宅地が過密化することで防災に対する脆弱性が高まってくる。
そこで、沿岸部における庭や植栽を有した個人所有の大規模敷地を保全することを通じて、津波に
よる被害量を減らし、延焼を抑え、災害後には共助の拠点となりうる協力地として活用することを目
的として、(仮称)「防災協力緑地」を提案する。
防災協力緑地の対象としては、個人所有の大規模な敷地で庭や緑地の面積が一定以上の割合の敷地
(図 4-3-2 における B タイプ)を対象候補とする。所有者が敷地の細分化を行わないように、例えば「10
年間は細分化をしないこと」を条件に、行政から固定資産税や都市計画税の減免措置を与える。その
代わりに、平常時は植栽によって延焼を防ぐこと、火災時には一時避難場所として活用すること、そ
して近隣の人も時々活用できるような共助のための協力地として活用できることが望ましい。また、
津波などの災害後における現地復興の際には、敷地の一部に近隣における共助の拠点として、「みんな
の家」を建てたり、浄化槽の一次設置を優先するなど、近隣の復旧、復興に貢献できる拠点として、
公園が少ないエリアでは特にパグリック的に防災協力緑地が機能することが望まれる。
図 4-2-6. 防災協力緑地の活用案
*4-2-3: 出典「逗子市地域防災計画」地震津波対策計画編
第 2 部第 2 章 1 節
本提案の参照になる政策としては、災害時に住民の一時避難所や復旧用の資材置き場として使える
農地を自治体が登録したり、地元農協と協定を結んだりする制度「防災(協力)農地」や、市域の緑
の減少に歯止めをかけ、緑豊かなまちを次世代に継承することを目的とした「横浜みどりアップ計画」
と、この事業計画を推進し実行するための財源として個人市民税の均等割の超過課税である「横浜み
どり税」が挙げられる。
(2) 延焼を防ぐ、逗子らしい「防災林と緑のネットワーク」への補助
次に、延焼を防ぐ防災林による緑のネットワークについて提案する。 図 4-2-3 で示した延焼しにくい空隙と建物のタイプ A・B・C は、市街地に点在して存在しており、
延焼しない空間として一時的な逃げ場所になる。さらに、これらの空隙がネットワーク化し帯状となっ
て防火帯になることが望ましい。既に建物が建ち並ぶ市街地では、道路の拡幅により新たな防火帯を
つくるのは難しいが、新築や増築をする際には各敷地の庭の配置が隣接するように計画したり、葉に
水分を多く含む植栽(防災林)*4-2-4 を選定することによって植栽に防火機能をもたせることによっては、
防火帯をつくりだすことができる。また、日常的に緑豊かな街並みをつくることにも貢献してくれる
ことに期待ができる。
植栽および防火林を選定する上で、逗子市の各エリアに潜在する植生を選定することによっては、
地質や風土に合った、逗子らしい街並みを創出することができる。図 4-2-7 には「逗子市潜在自然植
生図」を元に植生の群集 *4-2-5 を示し、潜在自然植生のうち防火機能をもつ植栽を図 4-2-8 に表す。
逗子市では既に「緑の助成制度」として、「生垣助成制度」、「シンボルツリー助成制度」、「壁面緑化
助成制度」が設置されているため、これに加えて「防火林助成制度」と「潜在自然植生助成制度」*4-2-6
を設け費用を助成することによって、防火性と逗子らしさをもった街並みを創出できるであろう。
図 4-2- 7. 逗子市における潜在自然植生図と各エリアにおける防火林
(宮脇昭らによる「逗子市の植生」を元にトレース)
図 4-2- 8. 各群集における防火林
*4-2-4: 藤原 一繪 , 楠本 良延 :「横浜国立大学キャンパスの植生機能 : 防災機能についての植生学的研究」, 横浜国立大学 , 横浜国
立大学環境科学研究センター紀要 27(1), 49-55, 2001
*4-2-5: ①マサキ - トベラ群集:クロマツ , オニヤブソテツ , ジャノヒゲ , マルバシャリンバイ , ススキ , イタビカズラ , マルハグミ , マサキ , トベラ , オオバイボダ ②ヤブコウジ - スダジイ群集:ヤブコウジ , ヤマイタチシダ , ベニシダ , キヅタ , テイカカズラ , トベラ , ヤブツバキ , シロダモ , ヒサカキ , カクレミノ , イヌビワ , モチノキ , ヤブニッケイ , イヌマキ , タブ , スダジイ
③イノデ - タブ群集:オニヤブソテツ , ヤブコウジ , ツワブキ , ヤブラン , マサキ , アオキ , ヤブツバキ , トベラ , シロダモ , モチノキ , ミズキ , タブ , スダジイ
*4-2-6: 宮脇昭ら:「逗子市の植生」, 逗子市教育委員会 , 1971.3
5. ふれあい活動圏
-1. 背景
防災計画においては小学区や町内会毎による避難や防災に関わることが計画されている。これに加え
て災害時は特にコミュニティによる助け合いが必要であり、平常時からの知り合い、ふれあいによる
コミュニティの形成促進は、高齢化や子育てがしやすい環境が求められるなかで重要度が増してくる
であろう。
以前から逗子市においては、日常生活の中で「互いに顔の見える」「すぐに扶け合える」「歩いてい
ける距離」というコンセプトで、自治会館等の施設を「ふれあい活動センター」として、半径 300m の
エリアをふれあい活動圏として、コミュティの単位が考えられている。
そのふれあい活動圏の中に、事前復興の一貫として必要とされる津波避難ビル、防災協力緑地、空
家活用を含めたコミュニティによる活用や、高齢者や、新規住民、若い世代にとっても興味がもてる
運用の仕方について検討する必要がある。
-2. 課題
(1) ふれあい活動センターの確保
高齢者、主婦、子育て中の若い世代、学生、子供などが日常的に気軽に使用できる空間。活動センター
としては自治会館などの活用が考えられているが、その他にも防災面を考慮して下記のような空間も
活動センターとして検討できるのではないか。
①福祉施設、保育園、学校の一部:上記のような公共(的)施設空間の一部が、ふれあい活動センター
として活用できるように調整されることが望ましい。特に、学校には空き教室が今後増えることが予
測されるため、近隣住民によるコミュニティによる活用がされると良い。
②空家:所有が不在で使われていないが売りたくない住居を、コミュニティで活用することで空き家
を管理し、災害時には見なし仮設として共助の拠点となるとなお良い。
図 5-1. 事前復興の観点からみたふれあい活動圏の可能性
③サード・プレイス(第三の空間):これは「コミュニティにおいて自宅や職場とは隔離された心地の
よい第 3 の居場所」のことを指す。近年で需要が高まっているこの空間は、カフェや図書館等が対象
となっている場合が多いが、営利的な空間であっても気楽に空間と時間を確保できる場合は、その空
間や建物がふれあい活動センターとして併用できると、事業者側としても定常的に利益が確保できる
メリットにつながる。他には例えば、食事処、居酒屋、床屋、美容院、工房などもサードプレイスの
候補として考えられる。これらの店舗は事業ビルに店舗を構えている場合も多くあるため、津波対し
て強い建物の場合は避難上のメリットが非常に高くなる。
(2) 要援護者や子供の津波避難ビルまでの避難の方法
事前に身体が不自由な要援護者(支えが必要な人)や、災害時に親が帰宅困難になりそうな子供が
住む場所を把握し、特に隣人や町内会内でどのように避難などの手助けが必要か検討することが望ま
れる。また避難経路についても年に 1 度は防災訓練時に避難のシュミレーションを実際に行い確認す
る必要があることは言うまでもない。
(3) 津波避難ビルと近隣住民とのふれあい
津波避難ビルの指定を増やす必要があるなかで、ビルのオーナーや住民の不安点としては知らない
人や不審者が災害時以外の時も出入りするのではないか、という点が「指定」への承諾をしにくい一
因であると考えられる。
(4)消防署・分署に代わるふれあい活動圏等をベースとした自主防災との恊働の強化
現在、逗子市内において沼間地区は既存の消防署・
分署の防御基準範囲 1.5 ㎞圏内から外れており、消
防施設が足りていない状況にある。広域災害に際し、
沼間地区は他の地区と比較し不利である一方、津波
に関しては海から遠い同地区は有利でもあり、特別
な防災機能や組織の確立の必要とされている。(これ
に関して、2014 年 10 月~ 11 月に募集された逗子市
総合計画パブリックコメントでは、153 人からの要望
があった。)
このような状況に対して、消防署・分署の新設が
理想であるが、逗子市では消防を市自ら管轄するこ
とから、他都市に比べ人件費等の負担が多大となる。
そのため、ふれあい活動圏など、自主防災との協働
の強化が急がれる。
図 5-2. 逗子市における救護体制の空白について
-3. 災害時における市内における広域連携の展開策
このふれあい活動圏の災害時における応用や発展方法としては、災害の種類によって各エリアで被
害の受け方が違うため、災害時に市内での広域連携ができると、避難所の運営や、空家による見なし
仮設の利用者のマッチングも、コミュニティ単位で誘導できると考えられる。
6. 産業
現在、逗子市では高齢化率が高まり人口が減少する傾向があるが、そのような傾向のなかで災害後
にも逗子市に住み続けたい人を確保するためには、どのような手立てが考えられるだろうか。東日本
大震災を踏まえると、災害によって産業や仕事場がなくなった地域では、生産人口が市外へ流出する
特徴がある。また、逗子市の地域防災計画の中にも、「地域経済を復興するには、元いた地域に人々が
とどまり、人々が戻ってくる中で、経済活動が行われることが重要」と記されている。
津波想定では逗子市の海辺や川辺において浸水するリスクが高いエリアがあるが、昔は川を利用し
た水運業や川辺で遊べる浸水空間があり、いつでも川面の様子が捉えられることで危険をすぐに察知
し避難行動をとることができていたと推測される。そのような昔の営みを踏まえると、津波に対する
避難場所を確保した上で、水辺の近くで産業を行うことや住まいを設けることは、この地域の特徴を
踏まえた方法とも言える。そこで下記には一案として、近年における河川空間の規制緩和を元に考え
られる産業や暮らしの可能性について記す。
6.1 川辺周辺の活用
現在、田越川の特に下流側では、神奈川県による河川管理道路の整備が進められている。現在にお
いては、井までに整備がされていない部分があるため人々の流動性を促す歩行空間として活用するこ
とはできないが、既に完成している部分では、
部分的に滞留空間として活用できる可能性も
有している。
活用にあたっては、平成 23 年から「河川
敷占用許可準則の緩和」により、河川敷の公
共的活用がしやすくなり、河川管理道路にお
いてイベントやオープンカフェ等によって使
用することが公的主体や民間事業者に対して
可能になった。具体的には、水上において観
光船や船上における食事施設、そして船着き
場による活用、水辺の遊歩道の場所ではオー
図 6-1. 田越川における整備された河川管理道路の部分 (H26.12 現在 )
プンカフェや屋台などによる販売場所として
図 6-2. 河川敷占用許可準則の緩和により活用の検討ができるようになった点
図 6-3. 事業スキーム例
の活用、そしてイベントとしてマルシェなどを開
催することの検討が可能である。このような河川
管理道路をつかった活動を行う場合は、田越川を
管理している行政として下流と上流域は神奈川県
に、中流域は逗子市に占用許可をとる必要があり、
それを申請するためには、河川界隈に住む地域の
人や、そこで活動を行う事業者や、学識有識者な
どをメンバーとする推進協議会を立ち上げる必要
性がでてくる。また、水辺空間の使い方に併せて、
隣接する土地や住宅において、小さな店舗や事務
所を開くことも、敷地の所有者次第で検討できる
であろう。川沿いには比較的大きな庭をもった住
宅も多いため、その広い庭や建物を活用した法人
化事業を企てることによっては、相続税に対して
も長期的な対策が組めると考えられる。
図 6-4. 水辺周辺における回遊性の創出
なお復興時には、市内の商業施設が被災した場合は河川空間を活用して市を開くことなどが検討で
きるであろう。このような可能性を捉えると、平常時においても店をもってないクリエイターや趣味
でモノづくりをされている方が、定期的に市を開くことができれば、女性や高齢者による創造産業や
趣味産業が触発され、経済的効果を上げることにも期待ができる。
6.2 海辺における災害後の復興ビジョン
現在の逗子海岸は国道によって海と市街地とが分断されている。そこで、逗子海岸の未来像として、
国道を半地下化し地上にプロムナードを設けることを提案する(図 6-6)。このような海辺沿いの構成
によって、水辺と日々の暮らしがつながったり、津波の際には海岸から避難しやすくなる。
以上を踏まえながら、既存における商業的に賑わいのある駅前と海岸沿いと、水辺沿いのアクティ
ビテイを活性化させることによっては、日常的なアクティビティや、観光としてのルートをつくりだし、
市街地のなかに回遊性を生み出すことによっては、市街地の経済効果を挙げることにも期待ができる。
図 6-5. 川辺周辺の活用ビジョン
図 6-6. 海辺沿いのビジョン
7.推進方法 これまでの 2 章から 6 章までの提案を踏まえて、本章ではその推進方法として各提案の担い手、そし
て財政面からみた推進方法について整理する。 7-1.各事業の担い手 1 章から 6 章において挙げた各提案の担い手の可能性を整理して表 7 として示す。各項目の担い手は
複数の立場の方が関われる場合や、選択制をもつもの、あるいは曖昧なものもあるため、確定的なもの
でなく目安として捉えて頂きたい。下記には各章にて県行政や市行政が担い手となる提案を抽出する。 1 章の原風景については、昔の写真・資料・地図や市民による経験をもとに、行政、事業者、市民の
いずれもが市町村毎の特徴を把握し、今後のあらゆる計画や開発において考慮することが望まれる。特
に神奈川県の各地域には自然・歴史・文化に恵まれた素晴らしい特徴があるため、災害後の復興計画を
策定する際は、県行政が各市町村の特徴を尊重することが望まれる。 2 章における避難経路については、まず各個人が避難経路を把握することが重要である。また、津波
避難ビルの設置については、市行政が事業者やオーナーに掛け合い、必要に応じたインセンティブを与
えることによって津波避難ビル指定の誘導を行う計画が望まれる。津波避難ビルやタワーの建設にあた
っては、低層住宅専用地域での高さ制限を除外する建築物の改訂や、(仮称)防災機能特進特区の設置
に向けた検討を県行政がする必要があり、県知事の許可が必要な内容が出てくる。 3 章の緊急輸送路については、地域防災計画にて指定されている港や道路が脆弱ではないか確認する
必要がある。逗子市内の緊急輸送路は幾つかの県道が対象となるため、市と県との調整が必要となる。
また、逗子市内をはじめ県内には自衛隊や米軍の基地が多くありヘリポートや港を有しているため、緊
急時に活用できる協定を結ぶことによって、緊急輸送路整備にかかる多額の整備予算を軽減することが
期待される。 4 章における仮設住宅用地の選定(想定)に関しては、市が具体的な用地を想定し、市民や県民に情
報公開をすることが望まれる。特に災害時は迅速な復興計画が必要とされるが、仮設用地の場合は市民
が望まない建設用地もある(逗子市民の場合は、緑豊かな山を削って仮設用地を造成されることは望ん
でいない)。仮設住宅の建設については、民間や個人の空家や別荘の情報バンクを整備することで見な
し仮設としての利用が検討できるため、仮設住宅による建設量を少なくする工夫を県から市、市から民
間へと策を投じることが期待される。また、各市町村においてその街らしい復興の姿や、減災となれる
策を考えさせることは事前復興として望まれることである。各市町村毎に市民団体や各地区、あるいは
近隣の大学が協力することによって、そのビジョンを住民と共に素案を作成することが望まれ、それを
踏まえて、行政は素案を地域防災計画に盛り込み、固定資産税の減免などによって市民にインセンティ
ブをとれる計画があれば、積極的に災害に強い街並みに向けて事前復興を投じることができる。 5 章の産業については、ここでは河川管理空間の活用案を挙げた。市民や活用者による推進協議会の
設立の上で河川空間を管理する行政が占用許可を出す仕組みのなかで、平常時における活用協議に対す
る柔軟な対応と、災害後の復興時に臨時的に市場を設けることができる場所であるため、そのような展
開方法を行政内でも周知しておく必要がある。 6 章のコミュニティの促進に関しては、住民間によってコミュニティを育むことによって非常時の際
のコミュニティ力を高めることが望まれるが、コミュニティの拠点となる施設の建設協力や、地域内で
の津波避難ビルの確保については、行政が多分に協力を行う必要がある。また、平成 26 年度からは、
市民が素案をつくり行政に認定する「地区防災計画」の制度が新たに生まれた。このような制度を活用
して、市内の各地区で住民が主体となって事前復興として取組める内容や避難方法、高齢者・要援護者、
子供などの避難や仮設生活における想定などを地区内で検討することが望まれ、行政は住民が計画して
いる内容や求められている内容に対して、よく耳を傾ける必要が出てくるであろう。 図 7-1. 各事業の担い手の可能性 7-2.財政面からみた推進方法と効果 最後に、各章で提案した内容を対象とした「財政面からみた推進策と効果」の観点から、全体のまと
めを行う。下記には各章で挙げられた事業費がかかる提案を 3 つの枠組みに分けて分類する。 (1)短期的に多額な費用かかる、緊急輸送路やインフラ整備。 (2)初期コストが必要とされる避難ビルの追加指定に関わるハード整備、新たに避難ビルタワーを新設
するための建設費、空家バンクの運営組織の立ち上げ。防災協力緑地や津波避難ビル指定のためのイン
センティブ経費として固定資産税等の減免策。 (3)万が一災害が起きた際に復興経費として緊急となる多額な事業費。 そこで、これまでに挙げた(1)〜(3)の事業経費の特徴と、下記の①〜③の 3 つの財源策を照らし
合わせて示す。 ①大型の予算枠と事前復興に関する持続的な予算枠に関しては、小さな市町村で賄うことが難しいた
め、県行政によって予算を確保することが望まれる。 ②超過課税は県あるいは市毎に実施することが想定できる。例えば逗子市の場合は、逗子市の納税者
が 4 年間だけ超過課税制度を実施し、納税者が 1 年につき 1000 円ほど払うことができれば、(2)に
挙げた内容は大方まかなえるであろうと試算する。また、超過課税制度は明らかにそのメリットを
受ける住民にとっては、受益者負担の原則に基づいた合理的な予算措置であると言える。超過課税
制度は毎年度安定した税収が得られるため、一定の目標に向けて防災対策等を積み重ねていく施策
の財源として期待できる。 ③この相模湾沿岸地域のように海の魅力によって多くの交流人口を生み出している場合、被災後は一
刻も早い復旧と観光の再開が求められるが、そのような緊急財源を一自治体が独自に確保すること
は困難である。そういった被災後の急を要する復旧予算については、カタストロフィ・ボンドのよ
うなファイナンス手法の活躍が期待できる。カタストロフィ・ボンドの場合、自治体の人口・事業
者数・平年の予算規模といった一般的な歳入歳出の制約を受けることなく、広く協力者を募り、緊
急財源を確保することが可能である。 図 7-2. 財政面からみた推進策と効果 このように事前復興計画には事業費が必要になるが、自衛隊や米軍が所有する敷地、港、空輸拠点な
どを災害時に柔軟に活用できることが事前に確約できれば、多額なハード整備は抑えることができる。
また、事業者に対しても積極的な津波に強い建物やまちづくりの推進を誘発することによって、沿岸部
における産業用地、商業地、市街地は被害量を抑えることができるであろう。
以上のような推進策によって、事前復興によって沿岸部と市街地を災害に強くすることで、沿岸部や
市街地の安全・安心を確保することで、住む人や働く人を増やし、観光の促進によって交流人口を増や
すことによって、水辺や街並みの魅力を活用した経済の活性化を促すことができれば、おのずと財政の
方も税収が増し、災害に強い街であり続けながら、人口も確保し、逗子に住む人に対して福祉や教育な
どの公共的サービスも充実させる循環ができると考えられる。
終わりに
本提案では、逗子市における有識者と月に 1 回の検討会を開催しながら、逗子市市役所の各部局の方
からも現状や取組み状況をヒアリングし、シンポジウムにより市民の方から各提案に対する意見を挙げ
て頂いた上で当提案をまとめた。さらに市民に対する津波への啓発をする必要があるなかで、行政側で
は本提案でも挙げた事項について検討し、津波に強いまちづくりに向けた施策を検討し実現化頂きたい。
最後に、津波被害を想定した本提言において盛り込めなかった内容として、大規模盛土に関する課題
がある。特に逗子市の場合は、市域の三方が山で囲まれているため、地震による土砂災害や大規模盛土
の崩壊の危険性が挙げられる。この課題 *7-1 に関する検討の要点を簡略的に記すと、まずは地盤調査や
地盤補強を行う必要性が挙げられる。対象地が複数戸の住宅に関与する場合には、不安定な地盤全体に
対して対策をとる必要があり、関係する住民が費用負担について住民の合意形成をはかる必要がある。
高齢者の多くには宅地の地盤安定化に投資を躊躇する傾向があり、住民合意が取りにくい状況がある。
しかし、耐災害性能を獲得した宅地の価値は半永久的であるため、安心・安全な土地づくりと長期的な
社会資産の形成に向けて、住民、自治体(行政)がどのように投資をできるか、議論することが必要と
なってくるであろう。その他の諸課題点としては、崖崩れによる被害想定や、斜面地における避難経路
についても事前に確認しておく必要が挙げられる。
謝辞
本提案の作成にあたっては、逗子市における都市計画、建築、デザイン分野の有識者である長島孝一
氏、永橋爲成氏、松本寛氏、紫牟田伸子氏、日高仁氏、田中美乃里氏をはじめとする皆様に、逗子市に
関する情報、知見、意見を頂きながらまとめました。この場をお借りして御礼を申し上げます。
*7-1:参照文献 志村真紀「災害を乗り越える地域づくり:4 章 丘陵地の住宅地における防災視点と地域の持続化」、横浜国立大学 地
域実践教育研究センター、平成 24 年 3 月 p.94-99
シンポジウム・ワークショップを踏まえた逗子市における市民の声 1.「市民からの声の特徴」と「コメンテーターからの意見」 1章 原風景から事前復興計画へとつなげる観点 逗子らしさとは。原風景といった時に、屋敷通りの黒松の自生林や、山川海によって街の三方が囲ま
れているといった状況が挙げられる。 原風景というのがいつまでの時代なのか、という疑問も挙げられた。いつの時代というよりも、各個
人の思い出や経験も原風景と言ってもいいのでは。例えば、黒松がある通りにおける近所の方と同じ時
間に松葉の清掃や、今は下水処理場となってしまったが、その場所はとても綺麗な岩場であり、人間関
係でつながっている経験も挙げられる。一方で、全体においては、逗子の四季として、夏には海水浴場
で遊んだり、冬には凧をあげたり、寒中水泳を行っていたりと、逗子独自の文化であり原風景となって
いる。 ・コメンテータ−:平井氏から 逗子らしさを考える機会が事前復興の中で出てきたことが興味深い。逗子に住んでいる人が「逗子が
好きだから住んでる」という意識が高いから、事前復興を考える過程で原風景の話になったのだろう。
(防災計画は、防災能力/迅速性/経済性という数字でクリアする問題にひっぱられがちであるが。) 2章 津 波 浸 水 被 害 の 予 測 を 踏 ま え た 津 波 避 難 ビ ル の 必 要 性 大きな軸としては避難ビルや避難経路が取り上げられ、避難ビルについては既存ビルや既存の駐車場
を使えるのでは。避難経路については、どの道を使って行くかや、その道について熟知していないと避
難できないという意見も挙がった。それに対して、高齢者がいた場合どうするのか、といった人の属性
に関わってくる。一方で、避難ビルの外観については、景観を考慮した逗子らしさを尊重したデザイン
がいいという意見があった。避難ビルに逃げた後に、もっと安心して避難生活がおくれるようなデザイ
ンに対する必要も挙げられた。 ・コメンテーター:紫牟田 氏から 避難ビル・避難経路については、市民の日常経験の中で自覚的になれるか、非日常を日常にどう組み
込むかがポイントになるだろう。 市の方で熱心に取組んでいる状況や情報が市民に伝わっていない、市民の方で求めていることが、声
が市には汲み取れていないのではないか? 経験として避難ルートを知っているか、避難場所を意識できるか。これを今後市民と行政と共同でで
きるようになるのが「事前復興」。 防波堤をつくるという話に偏らないのが逗子のいいところ。その分、逃げることを意識できていない
といけない。 避難場所として利用可能な駐車場とか、日常で意識できる逃げる場所を増やしていく必要がある。 3章 都市基盤面で事前に検討すべきこと 「復興計画は事前に考えられるか」については、まずどういう市街地を復興するということよりも、
72時間以内で復興する、という救援や復旧が市街地の生活の復興につながり、大事だという意見が挙が
った。具体的には、港や本当に使えるのかということや、桟橋を使って救援物資を荷下ろしすることが
できるか、ということ。実際には横横経由の道路をつかった救援物資の輸送になるのではないか、とい
う意見や、それらをいかに市内の隅々にまで輸送させるのか、といった具体策が必要だという指摘があ
った。そういった市内の道路整備については殆ど進んでいない都市計画道路の計画があるため、そうい
うのも対象に事前復興計画として取組まなければならないのではないか、という意見が挙がった。がれ
きが出た時に、どこに処理置き場を設けて処理するか、というのも課題。そういった津波被害が起こっ
た時に安全だと考えられている斜面地や山の上の住宅地等では、大規模盛土による山津波の危険性があ
るのでは、という側面もある。個人のお宅だけでなく、道路も寸断する危険性もあり、公共施設(病院
や消防署)などの復旧の拠点になる施設を含めて、安全なところに配置されているのか事前に確認して
いくことも重要である。市街地の浸水する部分は、浸水想定の有無にかぎらず建物の密集化が進んでい
るので、その対策が必要である点と、液状化対策も同時に考えなければならない。避難ビル・行動につ
いては、高齢者への対応や、海側への避難は心理的に危険を感じられるため、細やかな観点も計画に反
映できると良いだろう。 ・コメンテーター:松本 氏から このテーブルでは、総じてインフラやハード面に関するご意見を頂戴した。 避難ビル、避難タワーについては本当にありがたい。これまでの考え方では津波がきたら山へ逃げる
という考え方であったが、そこまで逃げるには時間的に間に合わないことがわかった。それ以上に、津
波避難ビルを隣や近くに確保することは非常に重要だと改めて感じさせられた。ただし、避難タワーに
ついては、県の都市計画課にも問合せながら色々調べた結果、海や川に近くの浸水想定が高いエリアは、
逗子市の都市計画用途では低層住宅のエリアであるため、3F以上のタワーが建てらでない。「防災機能
特進地区」というような地区を指定して、そのようななかで市民参加によって地区計画を行い、避難タ
ワーのような高い建物ものが建設できるような緩和処置を設けることが非常に必要。 都市計画道路は6m以上の道路を設けることは皆不可能だと思っているが、もし津波で一掃されたら、
都市計画道路実現もできるし、救援復旧も楽となる。葉山とつながる経路確保が、3方山に囲まれた逗
子市では必須とされるであろう。 盛土については、参加者の方が個人で研究調査をし、どこが大規模盛土なのかを示した地図をつくっ
ていらっしゃった。横浜市や横須賀市ではそのようにチェックした地図を行政の方から公開しているが、
逗子市の場合は、それを公開すると個人の権利を阻害するのではないか、地価が下がるのではないかと
懸念しているため、そのようなチェックした地図を公共的に作成したり、チェックする体制が出来てい
ない。山の上の住宅団地への避難を充てにしていると、高台での地盤災害(谷戸の埋立て造成地)にお
ける山津波で思惑が外れる危険もある。 また、防災協力緑地(不燃化領域率=東京では40%が目標)の考え方に則って、空地の確保を進めてい
きたい。東京では不燃化に対する防災計画を進めている。 逗子らしさをもっている景観の地域が、最も脆弱でもある。逗子らしさを残すためには防災の取り組
みが必須。 総合計画のなかで、桜山のエリアで逃げる所は沼間になる、ただし消防署の分署もなにもない。その
ような地域格差が生まれている。 池子の防災備蓄施設(40haの共同使用の土地)は、逗子にある唯一の広域高地(海抜10m)なので、
どのような防災計画をつくるのか総合計画でもっと踏み込んで計画し活用すべきだ。ぜひ市民の声で行
政の背中を押してほしい。 4章 逗子らしい仮設住宅と街並みであるために 逗子らしい仮設住宅、逗子らしさを生かした街並みとは、意見の内容は仮設住宅そのものよりも、空
家活用による見なし仮設や防災協力緑地について、話が集中した。まず、空家については情報を集約す
ることや、現状を把握することがまず重要であることで意見が一致した。ただ、逗子の特徴としては空
家の中に別荘が含まれているという特徴があるため、それは空家とは分けて把握することが重要という
意見があった。その先としては、別荘を災害時に使えることはいいだろう、ということ。ただ、お金を
あまりかけずに情報を集約するようなアイデアが必要ということがあがった。 防災協力緑地について、小坪では植栽が土砂災害対策としても使えるだろう。植栽については土木工
事の際に植栽の価値付け(位置付け)がないために切られてしまう状況があるが、植栽の価値づけをし
ていくことで、今ある植栽を保全することが可能になるのではないだろうか。防災協力緑地でかかる財
源として、初期コストとして超過課税で4年間ということついては、それぐらいであれば、という意見
が挙がった。 ・コメンテーター:長島 氏 から 今日のプレゼンはなかなか奥行きのあるバラエティがある提案だった。実際に2011年に被災した人た
ちに意見を聞くと、現実味が帯びた事前復興計画を練り深めることができるのでは。(こうしておけば
よかった、等リアルな意見がきけるかも) 5章 ふれあい活動圏 新規住民も入ってこれるようなコミュニティになるには、ふれあい活動圏の拠点に日常的に行きつけ
の機能として保育園やコンビニなどの機能を持たせる等という案が挙がった。また、ふれあい活動圏そ
のものが成り立つのか、という疑問が大きく、善意でふれあい活動圏というのは成り立たないだろうと
いう意見があった。商売性を伴わないとこのような活動は成り立たないのではないか、という意見もあ
った。 ・コメンテーター:永橋 氏から 「ふれあい活動圏」というのは、まちづくり計画の中に位置づけられているものであるが、300mを半
径とした中心にはセンターを設けるというのは、特に福祉の面を考慮してのこと。逗子市が超高齢者に
なった時に、そのような方々が集まれる場所というのを近くにあればコミュニティも形成されるのでは
ないか。 津波の問題について事前復興をやろうとしても、一体誰が自分の土地や建物を提供して避難ビルを確
保できるかについては、逗子市は土地が高いので、採算性がとれるように(固定資産税の減免などの手
当によって)そのメリットを理解ができないと、よしやっていこう、ということにはならないのではな
いか。 具体的な事例をつくっていかないと、絵に描いた餅になってしまう。ふれあいセンターとして空家を
活用してお茶を飲むことはできるが、建物を3F建て以上にして、私有地や建物を提供頂けるようにする
には、やはり採算性が必要だ。 6章 産業 逗子の活力をあげていくには、という点で、主に5つのキーワードによる「管理」、「海」、「地下化」、
「川辺」、「若い人が逗子にくる産業」に関する意見が挙がった。 「管理」の問題では、今回のワークショップでは川辺の活用が理想という観点があるが、県とか行政
による制度的な管理のハードルがあるが、理想的なつなぐような計画をつくり現実につなげられるとい
いのでは。 「海」というキーワードでは、元々、逗子の海には若い人がくる特徴があるが、それにつなげて「国
道の(半)地下化」への興味深いという意見や賛成の意見もあったが、ファミレス等との商業面との連
携や財政面を見据えた案があるべきでは、という意見があった。 「川辺」に関する疑問としては、今の田越川は親水できるほど川が浅くないため、一方で観光船が入
れるような深さも確保しにくいことや、管理の面でも川辺に人が集まると津波の際のリスクが挙がるの
では、という意見もあった。 「若い人が逗子にくる産業」については、今の市長がマニフェスト掲げている、クリエイターやアー
ティストなどを対象としたレジデンスづくりというビジョンもあるなかで、若い人が逗子でなければい
けないという理由や協調性が必要と考えられる。 ・コメンテーター:田中 氏から 若者が逗子に暮らしながら産業の構成員になれる=災害に強いまちになれる。 災害がおこっても、逗子に帰って来る理由を考えると、コミュニティの強さが逗子の強みになるのでは。 子供の頃から海沿いに住んでいれば、海の恐ろしさも知っているはず。 満潮・干潮の差を身を以て経験していないとリスクが高い。(海水浴をしていて荷物流されてしまう観
光客もいる。) 水辺に人を集めるべきかどうか?という大きな葛藤はあるが、水辺を知らない人のほうが危ないので
はないか。「親水」を通して水辺のリスクについて正しく認知する必要性がある。 逗子らしさを好きで住んでいる人もいるが、今の一般に言われる「逗子らしさ」というのが好きなの
かもしれないが、ピロティ形式の建物が海沿いに並んだら逗子の景観としてよくなるのか? 新逗子駅付近に避難テラスをつくると、その地面に面した焦点が暗くなのでは? 逗子の駅に降り立って、桜山や披露山がみえるかという観点も含めて、逗子らしさに対する葛藤がある
のかなぁと思う。逗子らしいコミュニティなどを含めて、こういうところで検討することが必要なので
は。 2.議論 松本 氏 「実現性はあるのか?」という意見について、事前復興計画は、実現性も重要だが、実現性が低いか
らといって足踏みしてはいけない。現状では避難者数の半分しか備えられていない。(4万1千人の半
分が救えないという前提になってしまう) 仮に夢のように響いても、全員救えるアイデアを出していこうという取り組みが事前復興なのではない
か。それを実現するのは政治家や技術者であると思う。とにかくアイデアを出すことが重要。 長島 氏 夏の海岸における観光客の安全確保はどうなのか?普段、我々の市は観光客からの経済効果も得てい
るわけだから、定住者だけでなく外来者に対する考慮も必須。 逗子だけでなく湘南海岸全体の問題として、県レベルでも考えて頂かないといけない。 まちづくり基本計画で市民が考えていたのは、国道134号線の半地下化である。地上はプロムナード
として、避難経路にすれば、海岸観光客の避難路となれるのではないか。 神奈川県災害対策課 春山氏 防災という切り口で、地域についてみなさんが考え、意見を出し合う良い機会となった。神奈川県は
関東大震災以来大規模災害を受けていない。行政としても大災害に慣れていない。当県は移住者も多く、
「よそ者」がつくった文化?都市?に皆住んでいるということを自覚しなければならない。 防災だけでなく様々な角度から意見を出し合う機会となれた。 逗子市防災課 島貫 氏 普段の職務では自主防災組織との対話しかなく、いろいろな市民の意見を聞く機会として貴重だった。
お金のこと、個人の権利のことは、行政として非常に敏感にならざるをえない。津波避難ビルについて
も、3.11以降足りないという指摘が増えて、対象建物に全て声をかけているが、指定に対して了解を得
られた件数が今の現状の数となっている。津波避難ビルは、「いざという時はいいけれども、日常の安
全管理などの面が課題なので、指定というかたちはとりたくない」という方も多く、困難となっている。 市では自助共助公助というカタチで進めているが、地域のみなさんで共助を進めて頂くなかで、共同
住宅の管理組合の方や事業者の方もコミュニティの中に入ってくれば、考え方かわってきて、避難ビル
の指定も受けてくれるのではないかと考える。市の方でもそうなれるように動いていきたい。 また、市の方だけでやっていると頭が固まってくるので、こういう機会がもてると良い、と思ってい
る。 3.市民からの声 <詳細版> ・ 原風景は目に見えるものだけでない。当時の人間関係なども
原風景の一つ
1章 原風景から事前復興計画へとつなげる観点 ・ なぎさホテルは逗子の人にとっての逗子らしい場所、特別な
○黒松 ・ 黒松がどんどん切られていった→車が通り始めた頃、3〜4
0年前
時にいく所
・ 災害対策に関して、逗子らしい葛藤がある
・ 現在の下水処理場→昔はきれいな岩場。みんなでお弁当を食
・ 建物の洋風化に伴う変化
べたりしていた
・ 逗子マリーナ・葉山マリーナの計画するハワイアンなイメー
ジのヤシの木より黒松を増やしたい
2 章 津波浸水被害の予測を踏まえた津波避難ビル ・ 黒松の道の懐かしさ
の必要性 ・ 松の葉を近所の方と一緒に掃除していた。黒松は井戸端のよ
○避難経路 ・ 海側へ向かう避難所へは行きたくない
・ 原生である黒松は忘れられそうな原風景の要素
・ 人が密集すると逃げにくいのでは?
○山 ・ 避難には道を熟知していないと
・ 逗子の特徴は三方を山に囲まれ西に海を臨む風光明媚な地
・ ビルを建てるのにお金はかかるが意識を変えるのにはお金
うな存在。現在はバラバラの時間で掃除してしまっている
はかからない
形からなっています。この自然景観には災害に対応する多く
のヒントがあります。
・ てみることが大事
・ 披露山に残る東海道の道→自分にとっての逗子らしさ
○川 ・ 夏の海水浴客をどう避難させるか?⇒134 号線をプロムナ
ード化し、桜山・披露山への避難ルート
・ 川辺の近く、松の木といった長島さん宅をモデルに、これ以
上細分化しない
自分で歩いて避難経路の引き出しを多くする、自分で歩い
・ 5 分でいける避難所をどう確保するか
・ 源平ガニが川から庭にいっぱいあがっていた
・ 避難路の整備
・ 夏の海水浴のイメージ(原風景)
○災害について考える・知る ・ 最近は魅力的だが、昔は排水・下水を全て流してしまってい
・ ことを市民に求めるのはなぜか?(自助・共助・公助)
た。
・ 形を変えている(震災前後)
災害時、自分が避難するだけでも大変なのに他人を助ける
・ 市民が災害時どうするかの選択肢を事前に多くしていかな
いと
○逗子の地形 ・ コンパクトながらもすべてある(山、田越川、海)
・ 津波のときはできること・できないことの選択が必要
・ 山—川—海 と繋がる町
・ 市民が求めていることと、行政が行うことのギャップ
・ 災害時には、山に囲まれた逗子、小坪は独立する可能性が高
・ 行政の一番の役目は現状をきちんと伝えること
い。仮にそうなってもサバイブできるまちづくりが必要
・ 小坪は逗子の一種のもととなっている(鎌倉時代あたりから
ある)
○それぞれの原風景 ○日常・非日常 ・ 避難ビルより今できること
・ 避難ビルは日常的に何に使われる?
・ いつも使っているものが役立つと意識させる仕組み・伝え
方
・ 原風景=元の風景というイメージがあるが、いつまでの時代
の物を原風景というのか
・ 日常的に楽しく使え、いざというときは目印になる
・ 夏の海水浴客はどう考えるか?
・ 日常と非日常のギャップをどうするか⇒日常のものが非日
常に役立つ
・ ・ 海からの救援に関して、防災桟橋は本当に利用可能なのか?
その容量は? ・ 川に面したオープンカフェが増えるといい
空からの救援に関して、ヘリポートの確保と、そこから各避
難所へのルートは? ○誰が使う・人口属性 ・ 池子の米軍の敷地を有効活用すべきでは ・ 避難ビルは場所によって誰が避難してくるのか違うのではな
・ 道路閉塞状況にあわせた海 or 陸からの救援物資の量、また
いか?⇒観光客、住民 etc
・ タワーに老人は登れるのか?避難者のために何が用意される
のか
その配分計画 ・ がれきの集積場所の確保。池子に集積できないか? ○避難について
・ 備蓄は誰の費用で誰が管理するのか
・ 高齢者は避難できない ○避難ビル-構造- ・ 心理的に海側の避難所へ避難するのは難しい ・ ピロティ構造は地震に弱いのではないか?
・ 夏の海辺の観光客の避難は難しい ・ 目印になるための細長いものは津波に押されるようなイメー
・ 避難ビル・避難タワーのアイデアは良い。防災機能特進地区
ジがある
・ 自走式駐車場が使えるのでは?(キャパシティの面で)
をすすめてほしい ・ ⇒オーケー逗子の駐車場のような
避難想定に使っているモデル地震をもう少し現実的なもの
にしてほしい ・ 避難ビルの安定性(構造・地盤、液状化・がけ崩れの考慮)
○低地・市街地について
・ 既存の建物(構造的に条件を満たす)の有効活用すべき
・ 密集を防ぎ、不燃化も進めるべき ・ 避難ビルの収容力は?
・ 液状化対策を事前に行うべき ・ 避難してから安心できる建物、デザイン
○高台造成地の安全確保について
○景観・逗子らしさ ・ 盛土した造成地は山津波の危険がある ・ タワー型避難ビルの問題点:EV が止まるのでは?逗子の景
・ 造成地の地盤評価は個人資産への調査となるため難しい ・ 造成地の地盤リスクの公開は地価評価に直結するため行政
観にふさわしくない
・ 逗子内には高層建築はふさわしくない、4 層、5 層程度が周
辺の自然景観には合っている
では行えない ・ 高齢者は避難できない ・ 高さのある避難ビルは景観を害さないか
○安全が確保できる土地の使い方について
・ 日頃から水辺と親しむ
・ ・ 避難ビルとわかるデザインや色の工夫⇔景観保護、テナン
トの企業イメージとのギャップをどう埋める
消防署や公的施設、病院などが本当に安全が確保できている
土地に分布しているか ・ けが人などの収容ができる安全な場所が適切に分布してい
るか 3章 都市基盤面で事前に検討すべきこと ○その他
○発災後 72 時間の救援について
・ 広域の話が多かった ・ 道路啓開に関する地元建設業との連携が必要 ・ 公園は一時的な避難場所にしかならない ・ 横横道路が一番の生命線になる ・ 水上に仮設住宅を建設することはできるか? ・ 海からの救援に関して、葉山港は 200t までしか接岸できな
・ 事前復興計画の策定を講(?判読困難)ずるべき い 4 章 逗子らしい仮設住宅と街並みであるために ○仮設住宅について ○空き家バンク全般について ・ 仮設の効率的な計画は、今日のものを受けて行政もやってく
・ 空き家を使い切るという考え重要
れるだろう
・ 空き家をみなし仮設として使うのは良い考えと思う
○仮設住宅の用地について ・ みなし仮設の発想は良い。事前登録制なのか
・ 駐車場も使えるのでは
・ まずはお金をかけないで仕組みを作れると良い
・ 駐車場の利用可能性
・ 貸した時に出てくれないという不安がある
・ 亀ケ岡台に県有の広い敷地がある
・ 空き家は全壊しそうな気がするがどうか
○防災協力地全般について ○空き家バンクの位置づけ、運用について ・ 防災協力緑地の制度良い方法だと思う。まちなかに緑地のネ
・ 行政での位置づけ必要
ットワークが出来ると住みやすいまちなかになると思う。防
・ 登録の仕組みは必要
災にも効果あると思う。
・ 逗子市との共同できるのか?
・ 防災協力緑地は関心ある。景観保全にも有効だと思う。
・ 活用・管理運営は文化の会で出来ないか
・ 防災協力緑地はまちなみ・景観の観点でも良いのでは。
○空き家のバンク化もだがまずは実体把握が重要 ・ 防災緑地よい。
・ まずは空き家の現状確認必要
・ 土木工事で緑がどんどん切られているが、防災のためといっ
・ 空き家の実態調査必要
た位置づけかできればそれも保全しやすくなる
・ 空き家の実態把握が困難
○防災協力地の延焼防止帯について ・ 災害後どう使うか、どういう状況かを整理がまず必要
・ 延焼防止の距離はどのように出しているのか。建築基準法の
・ コンディションがまちまちである
延焼の恐れのある距離が元か?
・ 住めないイメージがあるがどうか
・ 本当に延焼防止などに役立つのか
・ 連絡がとれず利用してよいかどうか判断できない現状
・ シュロなどはいつ頃植えられたのか。役に立ったことがある
○空き家バンクにおける別荘の扱いについて のか知りたい。
・ 別荘が空き家扱いで良いのか
・ 防火帯として囲い、塀なども緑とすべき
・ 別荘をメインにバンクにすればどうか
○街中だけでなく小坪等での防災協力地の可能性について ・ 別荘の緊急利用を条例かしてはどうか
・ 小坪などでは小さい緑も重要
・ 空き家の中で別荘の割合はどのくらいか
・ 延焼のスタディ興味深い。防災協力緑地は良い。小坪のよう
・ 貸別荘ということとは違うのか
な密集地でも考えたい。
・ 別荘バンクなら空き家より貸しやすいのでは
・ 土砂対策にもなるのでは
・ 被災地から避難してきた人に別荘は貸しやすい
○その他 ・ 披露山の神谷邸などの位置づけが出来ると良い。地域の理解
・ 新築の家は強固にして行くべき
を得られる仕組みを作れないか。みなし仮設登録・ふれあい
活動センター
5 章 ふれあい活動圏 ・ 相続問題がない別荘の方が活用しやすいのでは
○ふれあい活動圏に必要なこと ○空き家のみなし仮設以外での利用について ・ 保育園、幼稚園、コンビニなど日常的に行きつけの機能がそ
・ 倉庫としての利用・備蓄拠点にできないか
のまま一時避難場所になっていれば、緊急のときに逃げ場と
・ 空き家情報ネットは、防災・防犯にも有効
して分かりやすくなる
・ 町内会を密にする
・ コミュニティパークみたいなイベントを川沿いに
・ インターネットの活用
・ 逗子の人は水辺をどうしたい? あまり手を加えたくない?
・ 住んでいる家のまわりとの関係を築いていく
○海 ・ 近所の人と会話
・ 海を憎むことはない
・ 特に、子供がいる家のほうが、親同士のつながりが生まれや
・ 海の歴史を踏まえて川沿いの利用もしたい。
すい
・ 防災活動以外の活動で、防災についての意識を高めることを
行う(日常的に使われる空間にする)
・ 新宿育ちの人間は子供の頃海や川でよく遊んでいる。
・ 潮の満ち引きや悪天候時の対応、付き合い方も知っている。
観光客や新住民の無知が心配。
・ 地域で空いている土地を借りる
・ 海があるから逗子を選んでいる人が多い。
・ まずひとつモデルをつくる
・ 小坪ではどうか
○ふれあい活動圏への疑問 ○地下化 ・ コミュニティのつながりは距離では測れないもの
・ ビジネス、採算面を強めよう
・ 誰が運営するのか
・ ファミレスと国道を一体化
・ 収益性がない → 減免措置をとる
・ 興味深い
・ 商売がないと成り立たない
・ 良い
・ 実現方法は活動するのみ
6 章 産業 ○若い人が来る逗子の産業 ○管理の問題 ・ 新逗子∼海に連続性のあるカフェ、マルシェ、古本屋、リサ
・ 早い復興が正義なのか?
イクルショップをつくる(cf.パリ)
・ 内陸で産業を起したほうが避難ビルも少なくて済む。
・ クリエーター向け、アーティストレジデンス
・ 「人が増える→歳出増」「にぎわう→歳入増?」どこにバラ
・ ただし、
「逗子ならでは」
「逗子でなければいけない」要素を
ンスを求めるのか。
・ 済むことすらリスクでもある。
・ しかし、住んでみてから学んでいくことも多い
発掘/強調していかねばならない。
・ 地元で生産と消費のサイクルが出来て、お金と生活が地元で
回る仕組み
・ 水辺に産業を作ると同時に避難所も増やさねばならなくなる。
・ 小さい個人商店を盛んにする。
・ 夢(理想像)は遠いが、第一歩として組織づくりが必要。
・ 大敷地のまま若い人が住むシェアハウス
○川辺活用の疑問 ・ 若い人が必要な理由
・ 水辺に人を集めるべきかどうか→知らないことは怖い→親水
・ 避難所開設、運営
という考えかたは大事。正しく怖がる。
・ ニューライフ横の池から川に降りていけるモデルケースを
・ 河川行政思想は、治水第一。
・ コミュニティの強さは子供が馴染んでいるから。知っている
人がいるから。
・ 「逗子都民」が多い→親不在時も子供がしっかり逃げられる
・ 100-200 年の継続性が担保できないと許認可出来ない
と安心。いつも家族で行っている披露山、桜山の登りルート
・ 田越川の水深で観光船の進入は可能か?
など
・ 田越川の護岸は「水路」。管理用道路も高低差が大きい。水
害を考えてなのか深い。せめて見て楽しめるしつらえができ
たら良い。
・ 避難を想定した学校お泊りも市民活動でやっている
・ 逗子で遊ぶ時間を増やしていくこと