3.道路維持に関する技術 - 北海道開発局

3.道路維持に関する技術
(1)日常管理
①除草
1)作業の目的と実施概要(頻度・時期・使用機械と作業範囲)
道路維持における除草(草刈り)は、法面や中央分離帯の
雑草繁茂による通行車両の視距阻害、および建築限界を侵す
恐れがある場合、交通安全の確保を目的として実施する。
作業の実施頻度については、、建築限界内の障害の発生防
止、通行車両からの視認性を確保するため、除草すべき箇所
を抽出した上で実施している。
写真1 法面における機械除草
今後も、さらなるコスト縮減が求められるが、作業間隔を
長くすると、雑草の幹が太く、硬くなりすぎて作業効率を低
下させる懸念もあり、地域・箇所毎の実状に応じた適切な対
応が必要である。
作業の実施時期については、春先からの繁茂がひと段落
し、まだ幹が硬くなりきらない6月下旬から8月上旬にかけ、
各道路維持工事の作業工区毎で実施される。
なお、このとき使用される専用機械は、通常、特定の工区
のみに官貸されず、複数の作業工区で兼用されるため、沿道
状況や交通需要を考慮した優先順位を設定する等、道路利用
写真2 人力除草(肩掛け式)
者へのサービス水準をより向上させる工夫が重要である。
作業工種としては、上記の専用機械を使用する「機械除草」(写真1)と「人力除草」(写真2)の2つ
に大別される。機械除草はさらに、作業範囲(例.路肩+法面1段刈り)に応じて工種が分類される。
人力除草はおもに肩掛け式がこれに該当するが、その他、集草積み込み運搬、雑工(草むしり、薬剤散
布、チップ敷設、等)も除草に含まれる。
作業の効率面からは、短時間でより広い対象の処理が可能な機械除草が望まれるが、機械のアームが
届かない法面、道路附帯施設や占用物によって連続的な作業が困難な箇所では人力除草を行うこととな
る。
2)沿道環境に配慮した除草の実施
道路整備を進める上で、土工造成を行う場合、切土・盛土法面の保護や道路景観の改善を目的とした
植生(吹付け・張芝)が行われる。植生の選定にあたっては、各地域の気象特性に応じた品種が検討さ
れるが、一定の丈夫さ(寒さや病気への耐久性)を確保するため、虫の発生が伴うこととなる。
平成10年7月に供用開始した深川留萌自動車道では、おもに田園地帯を盛土形状で通過しるため、盛
土法面の植生繁茂に誘発される害虫が、沿線農地に影響を及ぼす懸念があった。
そこで、当該路線を管理する札幌開発建設部 深川道路事務所では、沿線の関係者との協議・調整を
重ね、作付け時期を考慮した除草や薬剤散布の実施、また、
沿線農地に配慮した除草範囲の設定(例.道路路肩や法肩に
加えて、農地に近い立入防止柵付近も除草を行う)により、
地域産業との共存を図っている。(写真3)
3)さらなるコスト縮減に向けた取り組み
日常管理作業の1つとして実施される除草は、他の工種と
同様、安全性の確保・サービス水準の向上とコスト縮減がト
レードオフの関係にある。このため、利用者ニーズを踏まえ
写真3 立入防止柵付近での除草
た両者のバランスに配慮しつつも、昨今の情勢に応じたさら
(深川留萌自動車道)
なるコスト縮減(効率性の向上)や事業の透明性確保が求め
られている。
上述のとおり、作業効率を向上させる上では、機械除草の
可能範囲を広げ、また、作業速度を向上させるための機械開
発に加えて、作業対象側となる道路構造の改善方策として、
道路附帯施設や占用物の集約化、セットバック等も機械除草
の効率性向上に有効といえる。
また、網走開発建設部では、同じく夏期に実施される清掃
に使用される路面清掃車(スィーパー)の回転ブラシ部分を
写真4 人力除草(草むしり)
取り替えることで、路肩縁石部の雑草を処理する調査研究を
平成21年度より進めている。(写真4・5)
このように、比較的稼働率の低い日常管理作業用の機械を
兼用する方策についても、機械の老朽化・更新に伴って計画
的に進めてゆくことが重要である。
写真5 路面清掃車の回転部ブラシ部
分に取り付けられた除草専用のブラシ
②清掃
1)作業の目的と実施概要(頻度・時期・使用機械と作業工種)
道路維持における清掃は、通行の支障となる車道及び歩道上の堆積土や落ち葉、あるいは排水施設の
機能低下(詰まり)に対し、通行車両や歩行者等の安全な通行確保、さらに降雨等に伴う道路冠水の防
止を目的として実施される。
道路清掃の中でも、排水構造物の機能低下は、道路冠水を
要因とした通行規制による経済損失、さらには人的被害への
拡大も懸念されることから、特に留意が必要である。このた
め、地域・箇所毎の施設整備状況や点検結果を十分に把握し
た上で、適切に清掃を行う必要がある。(写真6・7)
作業の実施時期について、特に路面清掃や歩道清掃は春先
に実施する。これは、冬期間の路面管理として散布された滑
り止め材(焼砂など)や路上障害物(ゴミ)が露出するとと
もに、処理量(水分)を出来るだけ少なくすることを目的と
写真6 道路清掃(路面清掃)
してこの時期を選定している。
さらに、落葉樹等が植栽されている市街地部では、秋口に
落ち葉処理も行われる。
排水構造物については、上述のとおり、集中豪雨の襲来時
期を考慮した上で、計画的かつ効果的な作業時期を設定する
ことが求められる。
それぞれの道路清掃に使用される専用機械としては、ま
ず、路面清掃については、回転ブラシによる掻き出し、吸引
が可能な路面清掃車(スウィーパー)が挙げられる。また、
散水車も使用される。(写真8)
写真7 道路清掃(歩道清掃)
また、路肩の雨水桝や管渠部分については、側溝清掃車が
用いられ、側溝清掃車の吸引ホースや散水車の洗浄ノズルを
使用して、内部の堆積土砂を排出し、運搬処理する。
(写真9)
その他、トンネル壁面の汚れを取り除くことで明るさを向
上させるためのトンネル清掃車や、路側施設による視線誘導
効果を確保するためのガードレール清掃車といった専用機
械もある。
写真8 路面清掃車による清掃
これらの道路清掃に使用させる専用機械も、除草用の機械
と同様、特定の工区のみに官貸されず、複数の作業工区で兼
用されている。
作業工種としては、対象物に応じて、「路面」と「排水施
設」さらに「道路付属物」の3つに分類される。
路面清掃はさらに、上記の専用機械を使用する車道清掃、
人力も伴う路側清掃、加えて排出した土砂等を運搬処分する
作業、歩道・歩道橋等の人力清掃に分類される。
排水施設の清掃はさらに、専用機械と人力を用いて、局所
写真9
側溝清掃車による雨水桝清掃
的な通行規制を伴って実施される桝清掃、側溝清掃、管渠清
掃に分類される。
道路付属物の清掃はさらに、専用機械を用いるガードレール清掃、人力による標識清掃・デリニェー
ター清掃に分類され、それぞれの作業工区の実状に応じて実施されている。
2)さらなるコスト縮減に向けた取り組み
日常管理作業の1つとして実施される清掃は、他の工種と
同様、安全性の確保・サービス水準の向上とコスト縮減がト
レードオフの関係にあり、昨今の情勢に応じたさらなるコス
ト縮減や事業の透明性確保が求められている。
上述のとおり、作業効率の向上やコスト縮減を図るために
は、路上作業の改善のみならず、排出した土砂の最小化や滑
り止め材としての再利用等、今後も多岐に亘る技術開発が求
められている。
さらなるコスト縮減の方策の1つとして期待される手法の
写真10 VSP団体による清掃
最後に、ボランティア・サポート・プログラム(VSP)の拡充が挙げられる。これは、おもに市街地の
歩道等における日常的な清掃作業を沿道住民や企業に行っていただくもので平成22年度末現在、国道関
連として297の団体が活動を行っている。(写真10)
③剪定・植栽
1)作業の目的と実施概要(頻度・時期・作業工種)
道路維持における剪定は、植樹帯や中央分離帯等に植栽さ
れている樹木の繁茂による通行車両の視距阻害、および建築
限界を侵す恐れがある場合に、交通安全の確保を目的として
実施される。(写真11)
なお、暴風雨等の影響によって道路敷地に近接する原野等
の樹木が倒木、または倒木の恐れがある場合に行われる伐採
も含まれる。(写真12)
この場合、原野等を管理する地権者との協議調整が必要と
写真11 植樹帯における剪定
なる。
また、おもに沿道施設が集積する市街地においては、道路
景観の向上を目的とした植栽が行われる。
その他、必要に応じて冬囲い、施肥、間伐、下草刈り、除
草剤散布、病虫害駆除等も行われる。
剪定の実施時期については、常緑種の場合、新芽の生長が
一旦休止する5~6月頃と土用芽や徒長芽が再度伸び生長が
休止する9~10月頃が適している。落葉樹の場合、新芽が出
揃って葉が固まった7~8月頃、または落葉した10~11月頃が
適している。
北海道開発局の場合、剪定には、専用機械は用いられてい
写真12 自然公園内での倒木
(国道276号 支笏湖付近)
ないが、作業車や高所作業車を用いた人力によって行われている。
作業工種として、剪定、伐採、植栽等に分類されるが人力による箇所毎の作業であるため、雑工とし
て取り扱われる場合がほとんどで、別途、枝打ちで発生する枝梢の処分費を計上する場合もある。
2)さらなるコスト縮減に向けた取り組み
日常管理作業の1つとして実施される剪定・植栽は、他の
工種と同様、安全性の確保・サービス水準の向上とコスト縮
減がトレードオフの関係にあり、昨今の情勢に応じたさらな
るコスト縮減や事業の透明性確保が求められている。
その具体的な方策の1つとして期待される手法として、除
草や清掃と同様、ボランティア・サポート・プログラム(VS
P)の拡充が挙げられる。(写真13)
具体的な事例として、函館開発建設部 函館道路事務所が
所管する国道5号(函館新道)の石川町~桔梗町周辺では、
平成16年度より「函館花いっぱい道づくりの会」が主催して、
肥料づくりのための植樹帯の花の撤去などを継続的に行っ
ている。
写真13
VSP団体による植栽
④除排雪施設
1)冬期道路管理の体系と除排雪作業の概要
冬期間の道路交通を確保するための対策は、「除雪・凍結防止対策」と「防雪対策」の2つに大別され
る。除雪・凍結防止対策はさらに、下図のとおり、各種機械や人力を用いて実施される除排雪・凍結防
止作業(工事)と、これを支援するための除排雪施設が一体的に機能することで、効率的な冬期道路管
理が実現される。(表1)
表1 冬期道路管理の体系
除
機械除排雪、人力除排雪
雪
除排雪・融雪施設
凍結防止剤等の散布
凍結防止
消融雪施設、舗装対策
吹雪対策
防
雪
吹き溜まり対策
防雪柵・林、スノーシェルター
雪崩対策
雪崩防止施設、人工処理
着雪対策
消融雪施設、設置方法の改良
北海道開発局では、一般国道、高規格幹線道路とも、各地域の気象特性に応じた作業工区(道路維持
除雪工事の1単位)が設けられ、通年を通した日常管理作業(除草、清掃、剪定・植栽、道路巡回、
等)が請負業者へ発注される。
請負業者は、道路事務所の監督の下、作業工区に隣接して整備された除雪ステーションを基盤として
上図の日常管理作業に従事し、また、除排雪施設等の機能保持のための修繕工事を行う。
2)除排雪作業を支援する各施設の概要
(ア)除雪ステーション(除雪基地:写真14)
日常管理作業の基盤施設として、作業工区内の沿道やイ
ンターチェンジ部(高規格幹線道路の場合)に整備されて
いる。請負業者が事務処理や監督職員との情報連絡を行う
事務室、特に冬期の悪天候時に機械オペレーター等が待機
する仮眠室、その他の厚生施設がある。また、敷地内に
は、除雪機械や道路パトロール・作業車両を格納する車庫
棟、凍結防止剤等の保管と機械への積込みを行う薬剤庫、
資機材置き場、駐車場、等によって構成されている。
近年 整備された除雪ステーションには、一般の利用者が
写真14 一般国道の除雪ステーション
(国道230号 豊滝除雪ステーション)
24時間利用可能なトイレや休憩所、駐車場等を併設したものもある。
(イ)除雪車旋回場(写真15)
作業工区の境界部では、大型の除雪機械が安全・迅速に
旋回するため、また、複数の機械を組み合わせて除雪する
場合の待ち合いスペースとして除雪車旋回場が整備されて
いる。
旋回場の整備位置は、担当する各路線区間において作業
残しが無いように留意する必要がある。
写真15
高規格幹線道路の除雪車旋回場
(国道5号 黒松内IC付近)
(ウ)雪堆積場(雪捨場:写真16)
都市部の歩道区間や投雪が出来ない両側切土区間では、
運搬排雪が行われる。そのため、ダンプトラックで運ばれ
た雪を捨てるための雪堆積場を確保する必要がある。
確保する位置は、コスト・効率性から工事箇所の近傍が
望ましく、従前は河川敷地等を利用していたが、春先に残
るゴミの問題も発生している。
現在、北海道開発局と自治体で雪堆積場を共有するなど
コスト縮減や効率向上に向けた取り組みが行われている。
写真16 札幌市近郊の雪堆積場
(豊水大橋)
(エ)道路付属物(写真17・18・19)
昼夜を問わず、また、悪天候下で行われる除排雪作業の
効率性・安全性を確保することを目的として、道路の路側
には様々な付属物が設置されている。
固定式視線誘導柱(矢羽根)やスノーポールは、路肩の
位置を連続的に表示することで除雪作業のみならず、一般
利用者への視線誘導効果も高く、視程障害(吹雪・地吹
雪)の発生し易い郊外部を中心に設置されている。
また、立体交差箇所の多い高規格幹線道路では、除排雪
作業時に高架下への投雪を防止する飛雪防止網や投雪禁止
写真17
固定式視線誘導柱(自発光タイプ)
表示が設置されている。
写真18 飛雪防止網(深川留萌道路)
写真19 投雪禁止表示(深川留萌道路)
⑤巡回
1)作業の目的と実施概要(頻度・人員体制と実施時期)
道路巡回(道路パトロール)は、路上障害物(落下物等)、路面や路肩・路側・法面の変状、交通安
全施設等の道路付属物の機能劣化、トンネル等の道路構造物の損傷といった異常を目視確認(発見)す
るとともに、道路工事・占用工事の実施状況や交通状況の把握、さらに、歩道等における不法占用・不
法使用の発見および必要な措置を講ずることによって道路を常時良好な状態に保ち、安全かつ円滑な道
路交通を確保することを目的に実施している。
すなわち、道路法 第42条第1項に規定されている「道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つよう
に維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。」に従って道路
を維持・管理する際に、その前提となる各種の情報を収集することを目的としている。
巡回のうち、通常巡回と異常時巡回(緊急出動)については、維持担当職員が実施するほか、他の日
常管理作業と同様、各々の作業工区を単位とした道路維持除雪工事を請け負っている維持除雪業者が実
施している。
定期巡回については、上記の維持除雪業者・維持担当職員に加えて、それぞれの道路施設に応じた専
門技術者(コンサルタント等)が実施する場合がある。
通常巡回は、市街地における交通への影響(朝夕のピーク
時間を避ける)、目視による異常や不法工事の発見等を総合
的に考慮して、日中の9~15時頃の時間帯内で実施してい
る。また、道路照明施設等の機能損傷を確認するために、通
常巡回の実施時間帯を日没後とした夜間巡回を、1月に1回程
度実施している。(写真20)
定期巡回については、各道路施設の特性に応じた適切かつ
効果的となる時期に行われ、施設の更新や修繕等の計画的な
実施へ向けた基礎資料となる。
写真20 道路パトロールカーの
車載機材
2)準拠する要領の策定経緯、マニュアル等の作成
北海道開発局における道路巡回は、昭和38年に制定された「道路工手巡回要領」によって基準化され、
その後 昭和48年には「北海道開発局道路パトロール暫定要領」が施行され、道路パトロール員制度が
導入された。
平成4年度からは「北海道開発局 道路巡回実施要領」
、「同運用」及び「実施要領及び同運用の取扱い
について」が施行され、道路管理権の行使と道路巡回員の業務の範囲が明確になった。
さらに、組織の統廃合、道路巡回業務の委託の拡大への対応や一層の業務内容の明確化のため、平成
4年度以降の通達を整理し、平成19年3月に「北海道開発局 道路巡回実施要領」が施行された。
この間には、道路巡回業務に従事する委託員が常時携行し、内容の一層の理解に供するため、同要領
に基づく「道路巡回ハンドブック」(監修:北海道開発局)等の各種マニュアルも作成された。
3)巡回業務のさらなる効率化・高度化に向けた取り組み
コスト縮減に応じた巡回頻度の低減に伴い、毎回の巡回を
迅速かつ確実に実施することが求められている。
通常巡回においては、作業工区毎の既往実績より季節毎や
曜日別の重点的観察項目を設定する等、計画的かつ効率的な
体制を構築することが必要である。
定期巡回についても同様に、年間の実施計画を設定の上で
多様かつ対象量が極めて多い各種道路施設の変状・機能劣化
を発見、評価することで、事後対処から計画的な維持修繕へ
の移行を図ることが必要である。
写真21 災害フォトシステムの
表示画面例
また、悪天候時や道路利用者からの連絡・通報に基づいて
行われる異常時巡回については、現地到着後の判断が重要と
なりますが、近年のカメラ付き携帯電話の普及によって迅速
性・確実性は格段に向上したと言える。北海道開発局では道
路災害時に、これら情報通信技術を活用した「災害フォトシ
ステム」等を運用してる。(写真21)
今後とも、技術革新に伴うさらなる効率化・高度化を進め
るとともに環境配慮型のパトロールカーの導入を促進する
等、様々な取り組みが求められている。(写真22)
写真22 圧縮天然ガス(CNG)を用いた
環境配慮型の道路パトロールカー
(2)道路付属施設
①道路標識
1)案内表示の体系整備
(ア)道路案内標識表示地名選定要領(案)」の発行
ある。さらに道路に対するニーズが多様化し、案
表-1 「道路案内標識表示地名選定要領(案)」の内容
項目
内容
1道路案内標識表示
北海道地域における道路案内標
基準(案)
識の表示内容の整合を図る目的
で、その表示地名(目標地)を選
定する基準を示した。
北海道ブロック内の地域名につ
いて、4種類(「基準地」・「重
要地」・「主要地」・「一般
地」)に分類整理した。
2道路の機能分類
北海道の路線(国道、道道等)
の果たすべき機能に着目し、主要
幹線道路、幹線道路、補助幹線道
路に分類・整理した。
内標識の整備についてきめ細かい対応が望まれ
3 路線別目標地
道路案内標識は、道路利用者に位置や方向など
の情報を提供するものであり、これを適切に設置
し、また管理することで道路利用者が迷わずに目
的地に着くことができるようになる。このため、
各々の道路管理者が密接に連絡を取りながら、統
一した目標地を一貫して表示することが必要で
ている。
この「道路案内標識表示地名選定要領(案)」
は、統一した案内を行うために「道路案内標識表
北海道の路線(国道、道道等)
の目標地を整理した。
4 案内標識の表示地名
北海道の各路線の表示内容レイ
アウトを整理した。
5目標地一覧
示基準(案)昭和61年北海道ブロック道路標識適
正化委員会」を十分に踏まえ、「標識BOX」等に寄
北海道の各建設部管内 の重要
地、主要地、一般地となる地名と
住所を整理した。
平成4年12月
監修 北海道開発局建設部道路維持課
せられた道路利用者の声を反映して作成されたものであり、主な内容は表1のとおりである。
2)標識板の材質
(ア)反射シートの構造
反射シートの構造は、主に封入レンズ・カプセルレンズ・広角プリズムレンズの3種類が採用されて
いる。反射シートの耐久性・反射性能につ
いては、広角プリズムレンズが他のシート 封入
レンズ
より優位となっている。(表2)
表-2 反射シートの構造
反射シートの構造
ガラスビーズをプラ
スチックに封入する
タイプ。
(イ)最近の傾向
平成21年度までは、一般国道・高規格幹 カプセル
レンズ
線道路ともにカプセルレンズの使用が基本
であった。平成22年度以降は、一般国道の
シート内部に空気層
を設け、空気層の中
にガラスビーズを露
出させてプラスチッ
クで覆ったタイプ。
案内標識はカプセルレンズを使用し、高規
広角プリズム
格幹線道路の案内標識は広角プリズムレン レンズ
ズを使用することを原則としている。
(
「平成22年度
北海道開発局
要領 第2集」参照)
道路設計
ガラスビーズ素子よ
り反射性能が優れて
いる三面体キューブ
コーナー素子にて構
成された広角プリズ
ム型反射シートタイ
プ。
「道路標識ハンドブック(2004年版)」,社団法人全国道路標識・
協会,P.252参照
3)支柱の形式
(ア)路側式の設置(コスト縮減、景観)
道路案内標識は、方面・方向・距離を標示する案内標識105
系、106系、108系は、F型(片持式)で設置されている。
それらF型標識の課題は表3のとおりである。このため、景観に
配慮した道路案内標識の設置方法と機能について、アイマークレ
コーダを用いた被験者走行実験を行い比較検証し、以下の結果を
得た。
①
表-3 F型標識(片持)の課題
課題
比較的に面積が大きく、景観阻害
要因になりやすい。
②
着雪・落雪の対策を要する
③
路側式より設置費用を要する。
④
車両単独の衝突志望事故の要因と
なることがある。
A) 片持式は路側式と比較して、遠くからの標識の存在を視
認しやすい(片持式は路側式より道路景観に与える影響
が大きい:図1)。
B) 路側式は片持式に比べて、案内標識の内容の判読性はほ
ぼ同等、もしくは同等以上の可能性がある。(図2)
以上より、郊外部における路側式案内標識の採用は、景観
性・交通安全性・維持管理の容易性から片持式より有利と考
えられ、平成22年度以降に高規格幹線道路のIC出口案内標識
の支柱形式を路側式タイプを採用する計画の事例があげられる。
独立行政法人土木研究所
寒地土木研究所
地域景観ユニット
図-1
片持式
パンフレット
図-2
路側式
http://scenic.cer
i.go.jp/pdf_pamphlet/panf-200812-hyoshiki.pdf (2008年12月作成)参照
4)照明方式
道路標識の標示板は、夜間における視
分岐点
照明式
認性を確保するための方策として、標示
板に反射材料を用いる方式(反射式)と
標示板に照明を施す方式(照明式)を採
用することとされている。それら照明方
式の特徴については表4のとおりである。
平成23年度から高規格線道路では、単
路部に反射式(広角プリズムレンズ)を
設置し、ICのノーズ部に照明式を設置
図-3 高規格幹線道路出口案内標識の照明方式
することとなっている。(図3)
遠方照明式(路肩に光源を設置)については、反射シートの生産中止により新規の設置は無いものと
考え、平成22年設計要領改訂時に設置基準から削除されている。
表-4 反射式標識板と照明式標識板の概要
概要
反射シートを標示板に貼付した標識板。
反射シートの使用材料より反射性能に差が生じる。
最近は、反射性能が高いシートとして広角プリズムレンズが使用され
ている。
種類
反射式
照明式
外部照明方式
反射式標示板と併用し、標示板の夜間の視認性、判読性を高める目的で補助的に外部光
源を近接して設置し板面を照射する。
投光形式により、上方照明式と遠方照明式(紫外線照査システムを含む)がある。
車両前前消灯のロービームが届きにくい片持
・上方照明式
(標識板の上方に光 式や門型等の標示板設置位置の高いものに使用
されている。
源を併設)
反射シートの再帰反射特性を十分に発揮でき
ない。
・遠方照明式
(路肩に光源を設
置)
反射シートの屈折率の改良(拡散成分の利
用)により広観測角反射特性を有し、これに照
射範囲を限定できる投光器を使用して、標示板
を照明する方式である。
ハイビーム走行と同一の視認性が得られる
事、かつ投光の照射範囲を限定できるので対向
車線への光漏れがない。
投光器は路肩に設置できるので維持管理作業
に車線規制が不要であるため経済的である。
標識板に紫外線を照射し、標識板自体が発光
・遠方照明式
(紫外線照射システ する方式である。
可視光線ではないため、対向車線のドライバー
ム)
が光源を直視しても眩しさが少ない。
標識板の近くに投光機器を設置するため、植
樹等で光が遮られない。
中央自動車道(NEXCO中日本管理)の駒ヶ根
ICと駒ヶ岳サービスエリアでの実施例がある。
(P.5~P.7資料を参照)
内部照明方式
例
標識の筐体内部に光源を有し、自発光することで夜間の視認性に優
れている。
設置場所の背景に外乱光となるネオンサインや建物照明が多い市街
地や、道路の分岐部、出口等の行動点を表す重要度の大きい標示板に
使用され、視認性、判読性を確保している。
②路面標示
1)北海道における道路標示の歴史
北海道の道路標示は、昭和17年6月に開かれた第2回北海道庁技術競技会の「小樽旭川間国道改良計画
に於いて」の中に道路中央線について、つぎのように述べられている。「中央1.0m未満の部分には着色
コンクリートが施工されこの異色分離帯によって高速車道に方向別的の観念を与えて交通の混乱を防
ぐとともに相交換する高速車相互の安全間を高めようとするもので、之が国道の基調として小樽旭川間
を一貫するものである」とある。その後、昭和28年に完成した札幌・千歳間道路において道路中心鋲が
設けられ、全線に渡って白色の実線が道路中心に施工されている。
昭和32年北海道開発局は、手押しのロードラインマ
ーカー(高千穂製)を一台購入し、翌33年になると3
台、34年には7台、35~41年にかけて45台を購入、
直営で、中心線などを施工した。(写真1)
昭和36年ころから舗装道路延長に伴い、部分的な請
負施工となっていた。
写真 1 ロードラインマーカー車
出典)http://www.h-d-h-k.or.jp/index4.htm
北海道道路標示業協会より引用
2)路面標示・区画線の種類
路面標示は、道路標識や交通信号等とともに有機的あるいは補完的に設けられている交通安全施設で
あって、道路交通に対し、必要な案内、誘導、警戒、規制、指示等についてペイント類又は道路鋲又はこれ
に類するもの等を用い、一定の様式化された線及び文字、記号を路面に設置することにより交通の流れ
を整え、誘導して交通の安全と円滑を確保するとともに、併せて道路構造物等の保全を図るために設け
られている。路面標示のうち、道路標示は道路交通法に基づき都道府県公安委員会が、区画線は道路法
に基づき道路管理者が設置するものであり、その種類、様式、設置場所等の細目的事項は標識令に規定
されている。路面標示は、下図のとおり分類され、その設置管理者はカッコ内のとおりである。(図4)
区画線(道路管理者)
路面標示
指示標示
道路標示(都道府県公安委員会)
規制表示
図4 路面標示の分類
3)路面標示材の開発
路面標示(区画線や道路標示)は、高速道路や一般道路の路面に、塗料で描かれた白線や黄色等のこ
とを言い、車両の通行区分を明確にしたり、交通法規を遵守させて車や人の流れを円滑にし、交通事故
を防止・減少させる役割を担っている。同時に都市道路景観の向上にも貢献してきた。
塗料の色は白と黄色が圧倒的に多いが、近年ではスクールゾーンや自転車道などに、緑色やレンガ色
の塗料も採用され始めた。路面表示用塗料は、液体塗料(JIS
K
K
5665
1種、2種)と粉体塗料(JIS
56653種)に大きく2種類に大別され、特殊な塗料として、夜間雨天時の視認性を高めた高視認性
標示用塗料がある。液体塗料は、主として高速道路や一般道路の区画線に使用されており、水系型と溶
剤型があり、それぞれ常温用(コールドペイント)と加熱用(ホットペイント)に分けられる。水系
(水性)路面標示用塗料は、平成6年に北海道開発局で試験施工されて以降、高速道路や一般道路に使
用されてきた。粉体塗料(溶融型)は、主として一般道路の道路標示や区画線に使用され、一般的に18
0°C前後の温度で加熱融解させて使用する。高視認性標示用塗料は、溶融型と2液反応型があり、建設
省(現:国土交通省)が公募し、平成3年から導入が始まった。
4)カラー舗装の導入
カラー舗装は、主としてアスファルト混合物系の舗装
に各種の色彩を付加したもので、加熱アスファルト混合
物に顔料を添加する工法や混合物の骨材にカラー骨材を
使用するなど用途に応じて使い分けられている。カラー
舗装は、景観舗装として歩道、街路、遊歩道、広場など
に、安全で円滑な交通に寄与する舗装として通学路、交
差点付近、バスレーンなどに使用されている。北海道開
発局では、平成6年11月に一般国道5号札幌市中央区北12
条~北1条間に試験施工を実施されて以降、一般道路に使
用されてきた。(写真2)
写真2 一般国道5号札幌市中央区
北12条~北1条バスレーンのカラー舗装
5)ランブルストリップス
ランブルストリップスは、主に自動車の路外逸脱や正
面衝突を防止するための運転者への注意喚起、あるいは
走行速度の抑制を目的として、道路の中央や路肩の路面
上に意図的に波上面をつくり、この部分を通過する際に
音と振動を与えるようにした交通安全施設である。北海
道開発局と独立行政法人北海道開発土木研究所は、平成1
4年7月に八雲町の一般国道5号の直線区間約700mのセン
ターライン上に正面衝突防止対策としてランブルストリ
ップスを試験的に施工し、実道への導入の結果、設置区
間における正面衝突事故が事故件数で約50%、死者数で
約70%減少するなど大きな効果を確認した。北海道では
平成17年に13年連続した交通事故死者数都道府県別ワ
写真 3 一般国道5号八雲町設置状況
出典)ランブルストリップス整備ガイドライン
(案)p6より引用
ースト1を14年ぶりに返上するなど、このランブルストリップスも大きく貢献したものと評価されてい
る。北海道内国道におけるランブルストリップスの施工延長は、平成22年3月末で、46路線の総延長872
kmに達した。また、道道や高速道路を合わせた設置延長は約1,338kmに達した。(写真3)
③視線誘導標
1)視線誘導施設の種類
北海道は積雪寒冷地であり、冬期の視程障害は切り離せない課題である。吹雪による視程障害時に
は、ドライバーは前方の視線誘導施設等を頼りに走行を続けている状況にある。そのため、視程障害
対策は路面凍結対策や吹雪による吹きだまり対策と並び人命に係る重要な雪害対策の一つである。
(ア)視線誘導標
視線誘導標(デリニエータ)は除雪による雪堤や吹だまり時等において、道路線形を示すために設
置される視線誘導施設である。(写真4・5)
支柱の先の反射体には使用する場所によっ
て使い分けられることが多い。一般的に円形又
は正方形の反射体が取り付けられており、反射
体が縦に2個付いているものや支柱自体が夜
に光るものもある。粉塵の多い場所では、防塵
用のファンが取り付けられているものもある。
写真4
標準式
写真5
伸縮式
また設置環境によっては自発光式のものもあ
る。
積雪地域ではスノーポール兼用デリネーターが取り付けられることが多い。近年では夜間の吹雪時
に大きな視線誘導効果がある自発光式(LEDライト)も整備され、時代とともに機能・安全性共に向
上している。
(イ)自発光視線誘導標
視線誘導標は、夜間においても視認性が必要であり、そのため、一般的にはポールの上部にヘッド
ライトの光を反射する反射テープが巻回されている。しかし、反射テープは幅が狭いために夜間の視
認性が十分ではない。また、幅の広い反射テープが巻回されている場合であっても、無灯火の自転車
が走行する場合や人が歩行する場合、反射テープに光が反射することがないため、誘導標に衝突する
危険性がある。そこで、太陽電池等により生起された電力を用いて、夜間において発光体を発光させ
て道路利用者の視線を誘導する自発光式視線誘導標が近年使用されている。自発光視線誘導標は、主
に夜間の吹雪時の視線誘導に特に効果が期待できるが、
整備にあたってはイニシャルコストが高く、維持管理コ
ストなどのランニングコストが非発光施設に比べ高くな
るため、夜間の晴天時にはドライバーへのまぶしさや不
快感を与える事などにも留意し、その導入にあたって
は慎重に検討した上で設置を実施している。(写真6)
写真 6 自発光式
(ウ)スノーポール
スノーポールとは、積雪量の多い地域で除雪作業
の除雪範囲やドライバーへの視線誘導を行うため、
車線の側方に沿って設置される施設である。固定式
視線誘導柱の出現以前は反射器に対しての支柱を
「視線誘導標の支柱」と呼び、添加するスノーポー
ルの条件は「表面が白色のペイント地に赤色の反射
シートまたは赤色塗料を使用したゼブラ模様」とな
っていたが(写真7)、近年では赤色の代わりに緑、
写真7
青、黄色、オレンジ等の色や自発光式、伸縮式等の
スノーポール
スノーポールがある。
(エ)固定式視線誘導柱(矢羽根)
固定式視線誘導柱(写真-8)とは、吹雪や
降雪時の道路視認性を高めるとともに、除雪
管理時に除雪幅を示すために、路側に連続し
て設置される施設である。
北海道では、除雪の目印として赤白のスノ
ーポールが用いられてきたが、除雪車両が高
写真8
固定式視線誘導柱
写真9
LED自発光式
速化したためスノーポールの損傷が多く見
られるようになった。このために昭和50年代以降これを解消し除雪作業の効率化を図るため、固定式
視線誘導柱(矢羽根)が常設の道路付属施設として広く導入されてきている。近年、矢羽根は一般ド
ライバーへの視線誘導施設としての役割も担うようになり、安全性を高めるため板の反射材や色を改
良させたもの、LED自発光式(写真9)などの景観に配慮したタイプ等がある。
(オ)視線誘導樹
視線誘導樹は、吹雪時の視線誘導を目的に道路の路側、
または中央分離帯等に設置される樹木である。(写真10)
北海道内では平成5年に国道12号江別市において間伐材
を利用した視線誘導樹が施工されたのが初めてであり、そ
の後、国道40号豊富町、334号東藻琴村、337号石狩市等で
施工された。
視線誘導樹には主にトドマツ等の枝葉が黒っぽい針葉
樹を用いられ、吹雪による視程障害時においても周囲との
コントラストが大きく、視認性の確保が期待できることが
写真10
視線誘導樹
特徴であり、夜間時の視認性確保・維持管理の面では課題はあるが、今後適用が期待される施設であ
る。
2)景観への配慮
平成15年に国土交通省が発表した「美しい国づくり政策大
綱」をはじめ、平成17年に施行された景観法、平成19年に施
行された観光立国推進法などの制定により、良好な景観形成
に対する国の責務が明確になり、また北海道ではシーニック
バイウエイ北海道が本格的に展開するなど、道路景観の保
全・向上に対する取り組みが盛んになってきた。
このような背景の中、スノーポールや固定式視線誘導柱
(矢羽根)といった視線誘導施設は冬期には安全上無くては
写真11
矢羽根による景観阻害の例
ならない道路の付属物であるが、夏期間にはその必要性が低く、逆に地域の景観を阻害するものとして
の認識が強まってきた。(写真11)。
景観への配慮の試みは国立公園内で実
施した収納式視線誘導柱の事例(写真12)
をはじめ、周囲の景観に馴染むような色彩
で視線誘導柱を塗装する例や植樹による
柱の遮蔽、矢羽根そのものの色彩配慮など
が上げられる。
また、平成15年度には一度整備した視線
誘導柱について、周辺環境の変化に対応し
写真12 固定式視線誘導柱の設置例(左)と収納例(右)
撤去の試行(写真13)も行われた。
このような取組みを経て、視線誘導施設
の設置必要箇所を厳選し、過度な整備が行
われないことを基本として、平成19年に吹
雪時を考慮した視線誘導施設マニュアル
(案)が作成されるに至っている。
写真13 矢羽根の撤去の試行 撤去前(左)
、撤去後(右)
④道路照明
1)道路照明施設
道路照明施設は、道路法第30条に基づく道路構造令第31条において、「交通事故の防止を図るため必
要がある場合においては、横断歩道橋等、さく、照明施設、視線誘導標、緊急連絡施設その他これらに
類する施設で国土交通省令で定めるものを設けるものとする。」と規定され,交通安全施設として位置
づけられている。
北海道開発局では、道路利用者が夜間おいて、道路状況、交通状況を的確に把握するための良好な視
環境を確保し、道路交通の安全、円滑を図ることを目的とし、道路照明施設を整備している。
(ア)道路照明施設の変遷
道路照明施設は、従来からポール照明施設方式により、8~12mの鋼製テーパーポールに、その頂部
に設置された器具にランプ(蛍光水銀ラン
プまたは高圧ナトリウムランプ)を取り付
け、道路全面を照射している。
近年では、器具の効率化、ランプ効率の
向上、光害抑制(上方向への光の漏れ)等
から直線テーパーポールに、新型器具(側
面からは光源が見えない)にランプ(高圧
ナトリウムランプまたはセラミックメタ
ルハライドランプ)を使用した照明施設が
適用されている。(写真14)
(イ)道路照明施設設置規準の改訂
道路照明施設の設置基準は平成19年、
写真 14 道路照明施設の型式
(左:従来型
右:直線ポール型)
「道路照明施設設置基準・同解説」(平成1
9年10月
日本道路協会)が改訂された。従来の仕様規定から性能指標へ転換され、新技術等が導入し
やすい内容となっている。さらに、「高齢者・障害者の移動等の円滑化に関する法律」の施行などユニ
バーサルデザインに関する社会ニーズの高まりを踏まえ歩道等の照明施設も規定されている。
また、平成10年には環境庁(現環境省)から光害対策ガイドラインが制定され、屋外照明施設に対す
る良好な照明施設環境の実現や地球温暖化対策を推進している。
北海道開発局ではこれら基準等に基づき道路照明施設の整備を行っている。
(ウ)新光源の種類と特徴
道路照明施設に使用されている光源は、蛍光水銀ランプが主流であったが、北海道では視程障害時に
おける視認性、ランプ効率等を考慮し、高圧ナトリウムランプが多く採用されてきた。近年では、技術
革新が進み、高圧ナトリウムランプの長寿命化や、さらに長寿命で効率の良いセラミックメタルハライ
ドランプが採用されつつある。さらに、光源にLED(発光ダイオード)を使用した照明施設器具も多
く開発されてきており、北海道開発局では平成21年度よりLED道路照明施設の実証実験を行い、積雪
寒冷地における評価を行っている。
(エ)道路照明施設の今後の展望
道路照明施設は、道路利用者が夜間において、道路状況、交通状況を的確に把握するため重要な施設
であるが、視環境を良くすると消費電力がより大きくなる。道路照明施設では、地球温暖化抑制のため
のCO2削減、東日本大震災を契機とした電力不足に対応した、より効率の良い道路照明施設が求められ
ている。このため、今後はLED道路照明施設の改善が進み、低消費電力、高効率化、低価格のLED
道路照明施設が開発されることが予想される。
⑤路側駐車帯
1)チェーン着脱場
北海道開発局は、「防雪事業」の一環として、峠、山岳部で気象条件の急変する箇所などに、タイヤ
チェーンの装着、離脱を安全に行うためのチェーン着脱場を整備している。(表5)
チェーンの着脱場の整備は、確実なチェーンの着脱を可能とし、道路交通の円滑化を確保、また交
通安全の推進へと結実している。また、このスペースは、安全な走行が続けられるように、長距離運
転中の休憩や荷直しをするためにも利用されている。
表5 国道の主な峠におけるチェーン着脱場の整備状況
峠
名
稲穂峠(いなほとうげ)
静狩峠(しずかりとうげ)
※静狩峠含む
路線名
一般国道5号
一般国道 37 号
チェーン着脱場
共和町側(有) ~ 仁木町側(有)
長万部町側
~
豊浦町側(有)
(静狩峠と礼文華峠の間に有)
狩勝峠(かりかちとうげ)
一般国道 38 号
南富良野町側(有) ~ 新得町側(有)
石北峠(せきほくとうげ)
一般国道 39 号
上川町側(有) ~ 留辺蘂町側(有)
塩狩峠(しおかりとうげ)
一般国道 40 号
比布町側(有) ~ 和寒町側(有)
渡島中山峠
(おしまなかやまとうげ)
一般国道 227 号
大野町側(有) ~ 厚沢部町側(有)
中山峠(なかやまとうげ)
一般国道 230 号
札幌市側(有) ~ 喜茂別町側(有)
野塚峠(のつかとうげ)
一般国道 236 号
広尾町側(有) ~ 浦河町側(有)
金山峠(かなやまとうげ)
一般国道 237 号
南富良野町側(有) ~ 占冠村側(有)
日高峠(ひだかとうげ)
一般国道 237 号
占冠村側(有) ~ 日高町側(有)
士別峠(しべつとうげ)
一般国道 239 号
士別市側(有) ~ 幌加内町側(有)
霧立峠(きりたちとうげ)
一般国道 239 号
幌加内町側(有) ~ 苫前町側(有)
釧北峠(せんぽくとうげ)
一般国道 240 号
阿寒町側(有) ~ 津別町側(有)
美幌峠(びほろとうげ)
一般国道 243 号
美幌町側(有) ~ 弟子屈町側(有)
根北峠(こんぽくとうげ)
一般国道 244 号
斜里町側(有) ~ 標津町側(有)
浮島峠(うきしまとうげ)
一般国道 273 号
上川町側(有) ~ 滝上町側(有)
三国峠(みくにとうげ)
一般国道 274 号
上川町側(有) ~ 上士幌町側(有)
日照峠(にっしょうとうげ)
一般国道 274 号
日高町側(有) ~ 清水町側(有)
美深峠(びふかとうげ)
一般国道 275 号
幌加内町側(有) ~ 美深町側(有)
美笛峠(びふえとうげ)
一般国道 276 号
大滝村側(有) ~ 千歳市側(有)
雲石峠(うんせきとうげ)
一般国道 277 号
八雲町側(有) ~ 熊石町側(有)
北見峠(きたみとうげ)
一般国道 333 号
上川町側(有) ~ 白滝村側(有)
知床峠(しれとことうげ)
一般国道 334 号
羅臼町側(無) ~ 斜里町側(無)
野上峠(のがみとうげ)
一般国道 391 号
弟子屈側(有) ~ 小清水町側(有)
毛無峠(けなしとうげ)
一般国道 393 号
小樽市奥沢側(有) ~ 小樽市常盤側(無)
※北海道開発局では、各峠の道路画像情報を以下の HP で提供しています。
【http://northern-road.jp/navi/touge/map2.htm】
2)ビューポイント駐車場等の取り組み
ビューポイント駐車場は、景色の良い場所
H9
824
46
入り込み
駅数
H10
1,058
56
H11
1,597
64
H12
1,797
70
H13
1,890
70
H14
1,871
76
H15
2,038
83
H16
2,258
86
H17
2,205
92
H18
2,393
95
H19
2,590
101
H20
2,603
104
112
入込客数
110
登録件数
平成5年の道の駅登録制度のスタートを契
機に、北海道においても優れた自然景観を活
2,500
80
70
2,000
60
1,500
50
40
1,000
30
20
500
かしたドライブ観光(ツアーバスによらず、
10
0
レンタカーや自家用車などによる周遊旅行)
の需要が増加してきた。(図5)また、道内で
道の駅登録駅数
限られていた。
90
道の駅入り込み客数(
万人)
主要な峠部に整備されてきたが、その総数は
2,907万人 100
3,000
笏湖畔駐車場(昭和59年:写真15)をはじめ
H22
2,907
112
120
3,500
に路側駐車場等を整備するもので、古くは支
H21
2,800
109
0
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
図5 道の駅 登録数及び入込客数の推移
は全国に先駆けてシーニックバイウェイ(日
本風景街道)の取組みにより、道路景観に対
する地域活動も活発化してきた。このような
ことも背景として、平成17年には、小樽開発
建設部管内京極町及び網走開発建設部管内女
満別で、路側駐車場の設置に当たり、地域の
意見も参考にしながらビューポイントに駐車
場を整備した。(写真16)
現在、北海道内において「とるぱ(写真を
...
撮るパーキングの意)※」に登録されている
ビューポイントパーキングは86箇所あり、う
ち国道に付属しているものは46箇所存在して
いる。(平成23年5月現在:表6)
写真15 支笏湖畔の駐車場
(国道276号苫小牧市・支笏トンネル入口駐車場)
出典:「調和の道」一般国道 276 号支笏国道工事誌
※北海道とるぱHP:http://www.hkd.mlit.g
o.jp/zigyoka/z_doro/torupa/index.html
写真16 オホーツク圏特有の丘陵景観を楽しめる駐車場
(国道39号大空町・ビューポイントパーキング)
女満別メルヘンの丘)
表6 北海道の「とるぱ」
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
名称
清浜駐車場
宗谷岬駐車場
夕日が丘パーキング
小平町鰊番屋
東大演習林駐車帯
上富良野町トリックアート美術館駐車場
北臨港北駐車場
オタドマリ沼駐車場
銀泉台駐車場
銀河・流星の滝駐車場
神居古潭の駐車場
浜勇知展望休憩施設(こうほねの家)
稚内市恵山泊漁港公園
サロベツ原野パーキング
遠別町金浦
野塚駐輪駐車公園
大磯駐車公園
種富駐輪駐車公園
島津駐車場・見晴台公園
北西の丘展望公園
合力駐車場
ふらのワインハウス駐車場
宗谷丘陵駐車帯
京極町ビューポイント駐車場
有島記念館駐車場
石狩市望来
積丹町沼前駐車場
無意根駐車場
幌美内(ポロピナイ)駐車場
支笏湖駐車場
サイロ展望台駐車場
白鳥湾展望台駐車場
ひらふ第1駐車場
道道2号洞爺湖登別線 黄渓駐車場
新城峠駐車公園
戸外炉峠駐車公園
地球岬駐車場
秩父別パーキングエリア
喜茂別町相川駐車場
白銀の滝駐車場
神恵内村祈石駐車場
セタナカムイ道路防災祈念広場
毛無山展望台駐車場
道央自動車道有珠山SA
襟裳岬駐車場
中里駐車場(牧場タカラ)
弁慶岬駐車場
丸加高原展望台駐車場
道の駅「望羊中山」駐車場
きじひき高原パノラマ眺望台駐車場
道の駅「YOU・遊・もり」
松前町唐津駐車場
函館市石崎駐車場
ルート229元和台
館浜チェーン着脱場
せたな町長磯
城岱牧場駐車場
レストハウスきよさと駐車場
宇宙展望台駐車場
パパスランド駐車場
さくらの滝駐車場
裏摩周展望台駐車場
女満別「メルヘンの丘」
オホーツクはまなす街道駐車場
道の駅「ぐるっとパノラマ美幌峠」
知床オシンコシンの滝駐車場
知床峠駐車場
湧別芭露駐車場
原生花園駐車場
道道摩周湖斜里線清里町上斜里駐車場
津別峠展望台駐車場
流氷街道・鱒浦
美岬トンネル西側駐車帯
峯浜パーキング
塘路駐車場
滝見橋駐車場
トドワラ駐車公園
開陽台駐車場
藻琴山展望駐車公園
清水ドライブイン駐車場
美蔓パノラマパーク
日勝峠第1展望台
狩勝峠新得チェーン着脱場
扇ヶ原展望台駐車場
十勝が丘展望台駐車場
士幌高原ヌプカの里
所在地
路線名
稚内市清浜
一般国道238号
稚内市宗谷岬
一般国道238号
稚内市坂の下
主要道道稚内天塩線
北海道留萌郡小平町字鬼鹿広富
一般国道232号
富良野市山部
一般国道38号
空知郡上富良野町深川峠(国有無番地)一般国道237号
稚内市稚内市開運1丁目
市道築港通線
利尻富士町鬼脇字沼浦
道道沓形仙法志鴛泊線
上川郡上川町層雲峡銀泉台
一般道道銀泉台線
上川郡上川町層雲峡
一般国道39号
旭川市神居町神居古潭
一般国道12号(市道神居古潭3号線)
稚内市大字抜海村字下勇知
道道稚内天塩線
稚内市ノシャップ2丁目
市道
天塩郡幌延町サロベツ
主要道道稚内天塩線
天塩郡遠別町字金浦
一般国道232号
利尻町野塚
道道沓形仙法志鴛泊線
利尻富士町大磯
道道利尻富士利尻線
利尻町種富
道道利尻富士利尻線
空知郡上富良野町光町3丁目
一般国道237号
上川郡美瑛町字大村
町道村山大久保線
空知郡中富良野町合力
一般国道237号
富良野市清水山
市道ワイン通り
北海道稚内市大字宗谷村
道道上猿払清浜線
北海道虻田郡京極町更進
一般国道276号
北海道虻田郡ニセコ町有島
ニセコ町道
北海道石狩市厚田区望来
一般国道231号
北海道積丹郡積丹町大字神岬町
一般国道229号
札幌市南区定山渓
一般国道230号
千歳市幌美内
一般国道453号
千歳市幌美内
一般国道453号
虻田郡洞爺湖町成香3-5
一般国道230号
室蘭市崎守町18-2
一般国道37号
倶知安町虻田郡倶知安町字山田
道道ニセコ高原比羅夫線
有珠郡壮瞥町字黄渓
道道2号
芦別市新城町
道道旭川芦別線
深川市音江町国見
道道深川豊里線
室蘭市母恋南町4丁目
地球岬通り
秩父別町4-東1
深川留萌自動車道
虻田郡喜茂別町字相川49-2地先
一般国道276号
石狩市浜益区雄冬
一般国道231号
古宇郡神恵内村大字神恵内村字魚谷570 一般国道229号
古平郡古平町大字沖町11番地
一般国道229号
小樽市朝里川温泉1丁
一般国道393号
道央自動車道有珠山SA(伊達市)
道央自動車道
幌泉郡えりも町字東洋
主要道道襟裳公園線(34)
虻田郡喜茂別町字中里2番地9
一般国道276号
寿都郡寿都町字政泊町弁慶9-1
一般国道229号
滝川市江部乙
広域基幹林道エルム線
虻田郡喜茂別町字川上345番地
一般国道230号
北海道北斗市村山地内
市道村山第1号線
芽部郡森町字上台町326-18
一般国道5号
松前郡松前町字唐津
一般国道228号
函館市石崎町地内
一般国道278号
爾志郡乙部町字元和169
一般国道229号
松前郡松前町字館浜
一般国道228号
せたな町大成区長磯
一般国道229号
亀田郡七飯町字城岱
城岱スカイライン
北海道斜里郡清里町羽衣町62
道道摩周湖斜里線
北海道斜里郡清里町字江南807
町道南23号線
北海道斜里郡清里町字神威1071
道道摩周湖斜里線
北海道斜里郡清里町字清泉
清里町道
北海道斜里郡清里町(国有林)
道道摩周湖中標津線
北海道網走群大空町女満別昭和
一般国道39号
紋別郡興部町富丘
一般国道238号
網走郡美幌町字古梅
一般国道243号
斜里郡斜里町字真鯉
一般国道334号
斜里郡斜里町大字遠音別村字岩尾別
一般国道334号
紋別郡湧別町字芭露
一般国道238号
斜里郡小清水町浜小清水
一般国道244号
斜里郡清里町字上斜里
道道摩周湖斜里線
津別町字上里
道道屈斜路津別線
北海道網走市鱒浦
一般国道244号
北海道網走市字美岬
主要道道網走公園
目梨郡羅臼町峰浜町
一般国道334号
川上郡標茶町シラルトロ
一般国道391号
釧路市阿寒町オクルシュベ
一般国道240号
別海町野付63
道道野付風連公園線
中標津町字俣落2256-46
町道北19号
弟子屈町字川湯 国有林20林班は小班 道道網走川湯線
北海道上川郡清水町日勝峠石山
一般国道274号
上川郡清水町字美蔓
一般国道274号
上川郡清水町字清水
一般国道274号
上川郡新得町字新内西1線
一般国道38号
河東郡鹿追町瓜幕
道道鹿追糠平線
河東郡音更町十勝川温泉
町道東15号
河東郡士幌町字上音更21番地173
道道士幌然別湖線
⑥立体横断施設
1)設置の背景・目的
立体横断施設は、車道を横断する歩行者・自転
車利用者を、車道から立体的に分離し、横断者の
安全を確保するために設置されるものである。
昭和41年に、急増する交通事故を防止するため
「交通安全事業法」が制定され、同年閣議決定さ
れた「交通安全事業3カ年計画」では、特に歩行者
事故の防止に重点をおいて、歩道整備や立体横断
施設等を整備していくこととされた。この計画以
降、主に通学路の安全対策として、通学区を分断
する幹線道路等において立体横断施設の整備が進
められた。
資料:道路統計年報
図6 立体横断施設箇所数の推移
北海道内の一般国道における設置箇所数は、昭
和42年4箇所であったが、平成5年までに179箇所に
設置された。(図6)
2)立体横断施設の種類
立体横断施設は、車道の上空を横断する「横断
歩道橋」と、車道の地下を横断する「地下横断歩
道」に区分される。「横断歩道橋」は、事業費や維
持管理費が比較的安価であるといった長所がある
ものの、景観を阻害する、上下移動量が大きいとい
った短所がある。一方、「地下横断歩道」は、上下
移動量が小さく、景観の阻害が小さいといった長所
出典:北海道土木技術会 鋼道路橋研究委員会ホームページ
写真17 道内国道で最初に設置された横断歩道橋
(一般国道36号 豊平駅前横断歩道橋)
があるが、事業費、維持管理費がかさむ、防犯上の
問題がある、といった短所がある。(写真17・18)
一般国道12号幌向横断歩道橋
一般国道274号西の里地下横断歩道
写真18 立体横断施設の例
北海道開発局が管理する立体横断施設のうち、7割
が横断歩道橋、3割が地下横断歩道となっている。
3)社会変化への対応
積雪寒冷地である道内では、階段部における転倒を
防止するため、立体横断施設のほとんどにおいて、
ロードヒーティングが設置されている。(写真19)
また、自転車利用者の利便性を確保するため、ス
ロープを併設したものや、スロープのみで車道を横
断する立体横断施設も整備されている。(写真20)
近年では、高齢社会への対応、ノーマライゼーシ
ョン社会の実現に向けた道路のバリアフリー化が求
められている。立体横断施設は、自動車と歩行者等
写真19 ロードヒーティングが設置された
横断歩道橋の例
を分離することにより安全性の向上が図られるもの
の、歩行者等の上下移動が伴うことから、高齢者や
障がい者の移動の円滑性が確保できないという課題
が指摘されている。
写真20 スロープ式の横断歩道橋