第56回宣言決議 H22決議と提案理由

各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及び
パリ原則に準拠した政府から独立した国内人権
機関の設置を求める決議
当弁護士会連合会は,わが国における国際人権基準の実施を確保するため,20
08年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関から
の相次ぐ勧告をふまえ,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定め
る 個 人 通 報 制 度 の 導 入 及 び 国 連 の 「 国 内 人 権 機 関 の 地 位 に 関 す る 原 則 ( パ リ 原 則 )」
に合致した,真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強
く求める。
以上のとおり決議する。
2010年(平成22年)11月12日
四国弁護士会連合会
提
1
案
理
由
個人通報制度について
個人通報制度とは,人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されてい
る に も 拘 わ ら ず ,国 内 で の 法 的 手 続 を 尽 く し て も な お 人 権 救 済 が 実 現 し な い 場 合 ,
被 害 者 個 人 等 が 各 人 権 条 約 の 定 め る 国 際 機 関 に 通 報 し ,救 済 を 求 め る 制 度 で あ る 。
こ の 個 人 通 報 制 度 を 実 現 す る た め に は ,各 条 約 の 人 権 保 障 条 項 に つ い て 個 人 通 報
制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
残 念 な が ら ,日 本 の 裁 判 所 は ,人 権 保 障 条 項 の 適 用 に つ い て 積 極 的 と は い え ず ,
上 告 理 由 に は 国 際 条 約 違 反 が 含 ま れ ず 、国 際 人 権 基 準 の 国 内 実 施 が 極 め て 不 十 分
と な っ て い る 。そ の た め ,各 人 権 条 約 に お け る 個 人 通 報 制 度 が 日 本 で 実 現 す れ ば ,
被 害 者 個 人 が 各 条 約 上 の 委 員 会 の 見 解・勧 告 等 に よ る 救 済 を 求 め る こ と が 可 能 と
な り ,日 本 の 裁 判 所 も 国 際 的 な 条 約 解 釈 に 目 を 向 け ざ る を 得 ず ,そ の 結 果 と し て ,
日本における人権保障水準が国際基準にまで前進するなどの著しい向上が期待
される。
2
国内人権機関の設置について
国連決議及び人権諸条約機関は,国際人権条約及び憲法などで保障される人権
が 侵 害 さ れ ,そ の 回 復 が 求 め ら れ る 場 合 に は ,司 法 手 続 よ り も 簡 便 で 迅 速 な 救 済
を 図 る こ と が で き る 国 内 人 権 機 関 を 設 置 す る よ う 求 め て お り ,多 数 の 国 が 既 に こ
れを設けている。
国内人権機関を設置する場合,1993年12月の国連総会決議「国内人権機
関の地位に関する原則」
( い わ ゆ る「 パ リ 原 則 」)に 沿 っ た も の で あ る 必 要 が あ る 。
具 体 的 に は ,法 律 に 基 づ い て 設 置 さ れ る こ と ,権 限 行 使 の 独 立 性 が 保 障 さ れ て い
る こ と ,委 員 及 び 職 員 の 人 事 並 び に 財 政 等 に お い て も 独 立 性 を 保 障 さ れ て る こ と ,
調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
日本に対しては,人権諸条約機関から,早期にパリ原則に合致した国内人権機
関 を 設 置 す べ き と の 勧 告 が な さ れ て お り ,ま た ,国 内 の 人 権 N G O か ら も 国 内 人
権機関設置の要望が高まっている。
現在,わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが,独立性等の
点からも極めて不十分な制度である。
このような状況の中で,日本弁護士連合会は,2008年11月18日,パリ
原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。
さらに,2010年6月22日には,法務省政務三役が「新たな人権救済機関
の 設 置 に 関 す る 中 間 報 告 」に お い て ,パ リ 原 則 に 則 っ た 国 内 人 権 機 関 の 設 置 に 向
けた検討を発表するなど,国内人権機関設置に向けた機運は高まってきている。
3
当弁護士会連合会は,国際人権基準を日本において完全実施するための人権保
障 シ ス テ ム を 確 立 す る た め ,国 際 人 権( 自 由 権 )規 約 を は じ め と し た 各 人 権 条 約
に 定 め る 個 人 通 報 制 度 を 一 日 も 早 く 採 用 し ,パ リ 原 則 に 合 致 し た 真 に 政 府 か ら 独
立した国内人権機関をすみやかに設置することを政府及び国会に対して強く求
めるものである。