パネル発表要旨 1「継続飼育・教師と子どもと保護者とともに」 京都教育

パネル発表要旨
1「継続飼育・教師と子どもと保護者とともに」
京都教育大学附属幼稚園 光村智香子
鍋島恵美
当園では、ウサギとの出会い、自分たちの仲間となるウサギ、大きくなったウサギの出産、新た
な命の誕生、親ウサギの死といった、命の生成・つながりをめぐるストーリーのなかで、こどもは、
期待に弾む心、親しみ、愛着、驚き、慈しみ、喜び、心配、不安、悲しみといった様々な感情のう
ねりや情緒的な体験を豊かにしている。今回、こども、保育者、保護者がともに生活を営んできた
なかでの体験を、エピソードを通して「ウサギ物語」として語り、『1.ハイとの出会い
かわりはじめる 3.こどもと同じように
2.か
4.一緒にいる・仲間のハイ』の視点から、それぞれ
のこどもにとって「ウサギ物語」から見えてきたものをいくつかの観点から示したい。
2「飼育活動から広がる世界」総合的な学習の実践を通して
愛知県田原市立泉小学校
小笠原扶久美
本校では、4 年生がウサギの飼育当番を担っている。そこで、この活動を総合的な学習の年間計
画に位置づけ、どっぷりとゆったりと飼育活動に浸らせる中で、子供たちの探究心を引き出したい
と考えた。子供たちは、ウサギの飼育を通して、えさ・飼育環境・成長の様子・病気など様々な問
題や興味を抱き始める。そして、そこから、
「えさ対策」
「快適な環境作り」
「お知らせ」
「健康観察」
「成長記録」などの課題別に分かれ、探究活動を展開していった。ウサギへの愛着心が軸になって
いるため、子供たちは飽きることなく、今もなお、この活動にのめり込んでいる。また、追究した
ことを他学年や他校の友達にも情報提供し、ふれあいの輪も広がってきている。
3「生活科『いきもの だいすき』
」
京都市立元町小学校 1年
担任 藤原真由
4月に学校探検に出かけてからは,運動場や校舎内でいろいろな発見をする中で,何人かの子ど
もたちが,学校の生き物に興味をもつようになってきた。ただ,遠巻きに見るだけで,ウサギやニ
ワトリに実際に触れたことはなく,関わりたいけれどどうしようという様子であった。そこで,子
どもたちの興味・関心を引き出しながら,生き物とじっくり触れ合う機会を何度も継続して設ける
ようにした。繰り返し生き物と触れ合ったり,世話したりすることで,命の温かさを感じたり,生
き物に親しみをもち,生き物を大切にする気持ちをもつことができた。さらに,生き物博士として
獣医師の先生に来ていただき,動物のことや抱き方などを教えていただいたり,心音を聞かせてい
ただいたりすることで,生き物に対する適切な関わり方を自分なりに考えたり,生きているという
こと,生き物に対する愛情や命のすばらしさというものを実感した。
4「動物飼育で、子どもや教師が感動するとき
~4059名の子どもと161名の教師のアンケートを通して~」
岐阜県岐阜教育事務所教育支援課 課長補佐 堀部昇
豊かな人間性を育む、生命尊重の教育が重要視されています。
「学校飼育動物」の飼育を通した心の教育は大切だという認識がありつつも、様々な制約から、
縮小傾向にあります。そこで、学校飼育を継続している学校の子どもや先生の生の声を集約し、分
析することを通して、今一度「学校飼育」の重要性を再認識するきっかけとしたいと考えました。
調査は、アンケート方式ですが、
「生の声」を大切にするため、記述を基本とし、文章から読み
取れる様々な思いを分析することを中心に行いました。岐阜県中の飼育を担当する子ども4059
名と指導される教師161名という膨大な数の結果から、「感動」というキーワードを導き出すこ
とができました。生きている動物の学校飼育という「豊かな体験」は、その感動の記録のアンケー
トも「豊かな表現」を生み出すことが分かりました。
5「学生と学校飼育動物」-かかわり方-
岐阜大学・学校飼育動物サークル学校いきものがかり
私たちは、学校飼育動物について『学び・考え・生かす』ことを目的に活動している。
これまで、小学校での動物ふれあい教室への協力や、全国学校飼育動物研究大会に参加などを通
じて『学び』、これらをもとに、小学校に飼育動物に関するアンケート調査を行い、動物飼育に関
する悩みや問題点を『考え』てきた。また、この『考え』を『生かす』ために、モルモットの交配・
出産・育児・譲渡の教室内飼育の様子を記録したモルモットストーリーの作成と、動物飼育活動の
サポートのための動物プリントの作成といった活動を行っている。
調査からは、学校動物飼育には、休暇中の世話・費用・飼育方法など、様々な問題があるとが判
明し、課題を解決し、より良い動物飼育の実現には、先生や児童だけ、保護者(PTA)・地域・
獣医師などが協力し合い、方策を考え、実行していくことが必要だと考え、そこに私たちも関わっ
ていきたいと考えている。
6岐阜県での『いのちの授業』実践」
岐阜県獣医師会 副会長 村田憲彦
獣医師は、自然・社会環境の人と動物の接点として、食肉生産や感染症予防、そして動物の診療
と、広い分野で常に「命」を見つめている職種である。一方、教育現場では「命の大切さを伝える」
ために、いろいろな試みがなされてきていた。このため当獣医師会は、以前より学校飼育動物サポ
ート事業とシンポジウムなどを展開し、学校での動物飼育体験で、情操教育(心の健康教育)を推
める必要性と重要性を訴え、かつ動物の健康、児童生徒の安全と健康、動物愛護の三者による専門
チームを組んで学校を支援してきた。現在17年を経て、25市町村と業務委託契約を締結し学校
飼育動物サポート事業を行っている。今回さらなる発展として、県内羽島市教育委員会と連携し、
正木小学校 6 年生及び羽島中学校 3 年生に、獣医師の職域の紹介を通して、命と向き合う様子、社
会生活が様々な命の支え合いの上に成り立っていることを伝え、命の大切さ、命への畏敬の念を感
じてもらうために、分野別の7シリーズの構成で出前授業を行った。
7「石川県における学校動物飼育支援の状況と展望」
石川県獣医師会学校飼育動物対策委員会
石川県では、平成 22 年 11 月現在、金沢市、内灘町、かほく市の3市町で獣医師会との連携のも
と、飼育動物支援体制が整っている。主な活動としては、年 1 回から 2 回の定期学校訪問による飼
育指導、治療、ふれあい授業の実施、教師への講習会などとなっている。
学校獣医師制度を取り入れることによって、子供たちの飼育動物への関心度の向上、それにかか
わる子供たちの精神面の成長、病気の減尐などが認められるようになった。一方で、獣医師側には
、いまだ当事業に対する温度差が存在することも事実である。
平成 23 年 4 月より新学習指導要領が全面施行される。これにあたり、平成 13 年に本県獣医師会
にて当事業がスタートして以来、今日まで、極めてゆっくりと教育行政に浸透してきた学校獣医師
制度も、需要速度の増加が期待される。同時に、獣医師会内部での意思・知識の統一が極めて重要
な事項として再考すべきところである。
8「全国の動物飼育支援体制―市町村の獣医師たちー」
日本獣医師会学校動物飼育支援対策検討委員会
副委員長中川美穂子
昭和50年代、飼育委員会の子ども達が近くの動物病院に持ち込む学校動物の悲惨さと、子ども
達の悲哀と教師の苦労をみて、各地で開業の獣医師達が無料等で診療し、情報交換を始めた。生活
科が始まった平成3年に、獣医師会と連携して動物飼育支援をしていた市区町村は3行政であった
が、獣医師会が文部省教科調査官や視学官方の協力を得て全国に講演を始めた10年以降増加して
きた。日本獣医師会の21年度の状況調査では、行政との何らかの契約や協定などがある地域は、
14%に過ぎなかったが、全国自治体の72%の地域の獣医師会が、何らかの動物飼育支援を行う
と回答している。また、契約が無い地域でも、熱心な獣医師たちが、学校や行政に呼びかけ、近く
の子ども達を支えているが、早期に行政は獣医師の支援を学校につけて、先生方が安心して子ども
達に飼育活動の良い影響を与えられるように願っている。今回、日本獣医師会の調査結果を提示し、
各地の様子をお伝えしたい。