ファイル(PDF形式) - 医療安全全国共同行動 いのちをまもるパートナーズ

目標5b_栗原市立栗原中央病院
行動目標5 取り組み
医療安全全国共同行動
行動目標5 医療機器の安全な操作
栗原中央病院
メンバー杉山公利先生 斉藤夕布子先生
◎千葉香代子臨床工学技士 ○高橋燈子
大場祐子 佐藤ゆかり 佐藤幹子
1.人工呼吸器の保守点検(日常・定期点検)の確実な実施
点検チェックリストを用いて点検継続する。
2.人工呼吸器動作確認チェック表の作成と運用
チェックリストを用いて、看護師2人で9時・17時・0時の点検
を継続する。
3.人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防:チャレンジ項目
①人工呼吸器関連肺炎に関して勉強会の実施
②人工呼吸器関連肺炎防止策の遵守
・標準予防策の徹底
・閉鎖式吸引チューブ使用方法の理解と実施
・人工呼吸器回路の取り扱いの理解と実施
・可能な限り上体挙上(30~45°)とする
・口腔ケアを3回/日の実施
1.人工呼吸器の保守点検(日常・定期点検)
の確実な実施
点検チェックリストを用いて点検継続する。
人工呼吸器始業点検記録
機種; エビタ4
エビタ2デュラ
SN、
点検日
点検項目
点検者
供給ガス接続(O₂・Ai r)
駆
動
源
電源コンセント接続(非常電源)
呼吸回路接続
呼気弁
フローセンサ
デ
バ
イ
ス
チ
ェ
ッ
ク
・臨床工学技士による、定期点検の実施
・年間病棟勉強会による「人工呼吸器につ
いて」の計画的な実施
回路接続
Ai rーO₂切替弁
安全弁
ガス供給圧
バックアップアラーム
ランプ表示
この点検記録を使っ
てMEが点検をします。
フローセンサ
O₂センサ
回
路
リ
ー
ク
回路内リーク
コンプライアンス
吸気・呼気気道抵抗
O₂濃度
2.人工呼吸器動作確認チェック表の作成と運用
[±6%]
換
気
動
作
VT→VTE
ア
ラ
ー
ム
機
能
高気道内圧
[±12%]
VT×f → MV
[±12%]
PEEP
[±3%]
Pi ns p → Ppea k [±4%]
高低分時換気量
回路外れ・回路リーク
内部バッテリー動作
供給ガス圧力不良
人工呼吸器チェックリスト
使用機種 : エビタ4
人工呼吸器チェックリスト表の解説
エビタ2デュラ
使用開始日 :
患者名 :
チェックリストを用いて、看護師2人で
9時・17時・0時の点検を継続する。
点検者
電源コンセント
パイプライン
酸素は緑色、圧縮空気は黄色に接続。呼吸器 とホースの接続 部からエ ア漏 れが ないか。
固定位置 (cm)
挿管後X線写真で確認し、その位置を 保つ。体 動のある 患者 では 注意!
固定状態
固定用絆創膏が緩んでいないか。可能 であれ ば1回⁄日 固定位 置を 変える (左右を 記入)。
カフ圧(15~25cmH₂O)
カ フ圧計で測定する 。値を 記入。
固定位置
回路の水滴が気管内チューブ に落ち 込まない位置か。ウォ ータートラ ップ の角度など 。
パイプライン
Yピ ース、ネブ ラ イ ザー、加湿器周辺、ウォ ータートラ ップ 、カ テーテルマウン トと挿管チューブ の接続部等
固定位置 (cm)
のリークがないか。蛇管内に水がないか(特に、呼気 弁~ウォ ータトラ ップ まで)。
Dr.の指示がないかぎり、人工鼻 のみ でOK。
人工鼻
固定状態
1回⁄日交換。水滴のつき具合、吸気圧やPpeak が上昇 していない か
目詰まり
分泌物の付着
カフ圧(15~25cmH₂O)
ウォータートラップ内
水を 廃棄した後は確実に接続する 。呼気弁からの水も蛇管を 叩い て落 とす。
チューブ内壁の曇り
細かい水滴(曇り)がうっすらと付いていれば適正な加湿。
モード
SIMV:同期式間欠的強制換気
FiO₂
加湿器
設定温度(39℃)⁄表示温
度
水位
ウォータートラップ内
チューブ内壁の曇り
モード
FiO₂
(酸素濃度)
(1回換気量)
VT
f
(呼吸回数)
PEEP (呼気終末陽圧)
(プレッシャーサポート圧)
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
⁄
通常は、38~39℃ に設定。肺胞へは、設定温度-2℃ のガスが届けられる 。
釜に引いてある ラ イ ン まで満たす。滅菌製精水を 使用し、注入前に必ず製剤名を 確認。
水位
人工鼻
目詰まり
分泌物の付着
P ASB
Dr.の指示のとき。
設定温度(39℃ )⁄表示温度
回路リーク(接続部)
等
スプ ータ、血液汚染時は交換。
加湿器
固定位置
・人工呼吸器装着患者のベッドサイドで看護師
2人でチェック項目を指さし、声だし確認の実施
9時(夜勤看護師・日勤看護師)
ダブルチェック!!
17時(日勤看護師・夜勤看護師) よし!OK!
0時(夜勤看護師・夜勤看護師)
非常用電源(赤)にきち んと差し込まれている か。コードにつまずいて抜けない か。
電源コンセント
実施日時
点検項目
(酸素濃度)
VT
(1回換気量)
f
(呼吸回数)
IPPV:間欠的陽圧換気
PASB
患者の吸気に同期して空気を 押し込む 圧。
(プレッシャーサポート圧)
CPAP:持続気道陽圧
SIMVやIPPVでの器械によ る 換気量。
器械の換気回数。
気道内圧に常時加える 陽圧。肺胞の虚脱を 防ぐ 。
FiO₂ (酸素濃度)
BIPAP:圧制御換気
開始直後は基本的に100%。その後徐々に下げていき、60%以下を 目 指す。
PEEP (呼気終末陽圧)
酸素濃度異常アラ ームが鳴ったときは何度か校正 してみる 。設定値 と表示 値の誤 差は±6% 以下 である こと。
VT
(1回換気量)
誤差の原因がわからないときは、フロ ーセン サ異常の場合もある の で、何度 か校正 してみる 。
f
(呼吸回数)
器械の換気回数と自発呼吸の回数を 確認する こと。
PEEP (呼気終末陽圧)
PASB
(プレッシャーサポート圧)
無呼吸時で設定値と表示値の誤 差は±3mbarの範囲 内 である こと。自発がある と上 昇する ことがある 。
自発呼吸が停止する と0になる 。
PPeak (最高気道内圧)
高すぎる と肺損傷の原因。設定値を 変えてい ないのに 値が大き く変動する とき は注意 が必要。
(1回換気量)
VTe
f
(呼吸回数)
PEEP (呼気終末陽圧)
MV
強制換気+自発呼吸。MV [ml⁄min]= f [回⁄min]×V T [ml⁄回]
P ASB
胸郭の動き
FiO₂ (酸素濃度)
(プレッシャーサポート圧)
P Peak (最高気道内圧)
MV
(分時換気量)
両肺聴診
胸郭の動き
(分時換気量)
肺雑音、スプ ータ音がある ときはスプ ータ吸引、ネブ ラ イ ザー吸入、体位変換など 処置を する 。
それでも音が消失しないときは主 治医に上 申する 。
呼吸パターン
規則正しく上下している か。
表情
チアノーゼなど全身状態
苦しそうではないか、奇異呼吸 では ないか、適 正 な鎮静 である か。
ベッドサイ ドモニタだけに頼らず、患者を よ く観察する 。
設定値変更指示確認
設定値変更指示があったとき、指示通りに なっ ている か。
SpO₂値
プ ロ ーブ 装着指に異常がないか観察する 。爪に異常がある 指では測定しない。
アンビューバック
患者のベッドサイ ドにリザーバー・人工鼻を つけて必ず準備しておく。
呼吸パターン
サクショ ン チューブ (月・木交換)・カテーテル各サイ ズ、 滅菌水(気管用・口腔用ー1回⁄日交換)、
ディスポグロ ーブ 、 滅菌グロ ーブ 、 吸引びん(汚物廃棄後、確実にセットし作動テストする )
チアノーゼ
設定値変更指示確認
SpO₂値
・処置や体交を 行った後は、患者状態、呼吸器本体、回 路を 見直す。
アンビューバック
・アラ ーム発生時は必ず患者のもとへ行き、アラ ーム発生原因に適切 な処置を してから アラ ームを 解除する 。
吸引用具
・器械に異常がある ときはME千葉(PH
305)まで。
1
目標5b_栗原市立栗原中央病院
人工呼吸器動作
チェックリストを使用し
ベッドサイドでダブル
チェック!!
安全な機器の取り扱いの
ために、ICU棚も整理しま
した!
3.人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防:チャレンジ項目
①人工呼吸器関連肺炎に関して勉強会の実施
誰が見ても、すぐ分かる
VAP発生のメカニズムを理解しよう
勉強会の内容
「人工呼吸器関連肺炎とは」
・「人工呼吸器関連肺炎(VAP)」とは人工呼吸器装着から48時間以降に、新たに起
こる肺炎のこと。
・発症原因は主に次の①②が考えられる。
①口腔、咽頭、胃に定着した細菌の誤嚥
②汚染された人工呼吸器やそのほかの器具や器材からの汚染、エアロゾルの吸入
患者の
要因
入院時や気管挿管時に肺炎がなく、
気管挿管による人工呼吸管理開始
後48~72時間以降に発症する肺炎
抗菌剤その他の
薬物投与
口腔・咽頭へ
の菌の定着
外科
手術
侵襲的
器具
胃への菌の
定着
汚染エアロゾ
ルの発生
流入
菌血症
汚染された人工
呼吸器呼吸機
能モニタ器具麻
酔器材
汚染された
手・手袋
機器の不適
切な消毒滅菌
汚染さ
れた水
吸入
肺防護
の破綻
バクテリアルトランスロケーション
肺炎
VAP防止のために出来ること
患者さんは半座位
の姿勢を保持する
呼吸器回路を取扱
う場合は必ず手袋
を装着し処置の前
後で手指衛生を実
施する
呼吸器回路内
の汚染状況を
確認する
口腔ケアを
行う
吸
入
汚染エアロゾ
ルの発生
流
入
結露は定期的
に廃棄する
口腔・咽
頭への
定着
カフ圧を定期的
チェックする
肺防護
の破綻
気道分泌物吸引の際は標
準予防策に準じて適切に
防護用具をつける
胃への
定着
肺炎
人工呼吸器関連肺炎(VAP)防止対策
・標準予防策を徹底する
人工呼吸器回路の取り扱い、吸引、口腔ケアなどの際には、
処置前後の手指衛生防護用具の適切な着脱、適切な廃棄
を行う。
・吸引の手順をマスターする
閉鎖式の吸引チューブの使用方法を理解し、実施する。カフ
圧調整を適切に実施し、カフ上部に貯留した気道内分泌物
の気道への流入を防ぐ。
・人工呼吸器回路の取り扱いをマスターする
回路の定期的な交換は必要ないが、日常的に回路の汚染や
機能上問題ないかを観察する。また、結露は患者側に流入
しないように注意し、処理は防護具を使用し、前後の手指衛
生を実施して細菌の伝播を防止する。
2
目標5b_栗原市立栗原中央病院
当院ICUにおける管理法
人工呼吸器関連肺炎(VAP)防止対策
・VAP予防につながる体位(半座位)
VAP予防につながる体位(半座位)を可能な範囲で調整する。
褥創予防をしながら、可能な範囲で上体を30~45°挙上し
た体位の調整が出来る。
・口腔ケア
患者にあった口腔ケアを実施する。定期的に口腔内の状態を
評価し、分泌物の流入がないよう注意しながら物理的に歯垢
を除去する。
VAPケアバンドル
ケアバンドルとは・・・
科学的に有効性が認められたいくつかの介入
を、単独ではなく束ねて(束:bundle)実施するこ
とで、より大きな効果を得ようとするアプローチ
方法である。
重要なことは、VAP予防ケアを可能な限り実施
することと、どれくらいケアバンドル(ケアの束)
として実施できたかというところを重視する。
1)すべての操作に先立ち、十分な手指衛生を施行する。
2)人工呼吸器回路は患者ごとに滅菌済の回路を使用し、そ
の組立て時にはディスポの手袋を用いる。人工鼻使用症例
では人工呼吸器回路及びアンビューバッグの交換は基本的
に行わない。(人工鼻は1日1回交換)
3)挿管が必要な場合、気管内チューブは側孔付きのものを
用いる。
4)バクテリアフィルター付きの人工鼻と閉鎖式吸引セットを
組み合わせて用い、気管内と外気との接触を防ぐ。
5)人工呼吸器の吸気側回路に人工鼻を用い、人工呼吸器
の汚染を防ぐ。吸引に先立ち十分な手指衛生を施行し、短時
間で終了するよう心がける。
6)気管支拡張薬の投与時以外、ネブライザーは用いない。
7)1日3回以上の定期的な口腔ケアを行う。
VAPケアバンドルチェックリスト
1
2
3
4
5
6
7
1)手袋の着用
□
□
□
□
□
□
□
2)手指衛生
□
□
□
□
□
□
□
3)人工呼吸器回路の
□
□
□
□
□
□
□
4)ヘッドアップ
□
□
□
□
□
□
□
5)口腔ケア
□
□
□
□
□
□
□
ICUに入室した日数
管理(回路内の水滴除去)
VAPケアバンドル実施前後の看護師
アンケートの結果
3.人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防:チャレンジ項目
②人工呼吸器関連肺炎防止策の遵守
96.00%
・人工呼吸器関連肺炎防止策を明文化し、
ICUに掲示して、スタッフの意識向上に努めた。
・人工呼吸器動作チェック表に、VAPケアバンド
ルチェックリストを追加・改訂し人工呼吸器関
連肺炎予防ケアの実施。
94.00%
ケア実施率の向上!!
92.00%
90.00%
88.00%
86.00%
84.00%
82.00%
80.00%
78.00%
ケアバンドル実施前
ケアバンドル実施後
76.00%
74.00%
・挿管患者の統一した効果的な口腔ケア実施
のために口腔ケアの勉強会の実施。NSTとの
協働。
他にも「意識してヘッドアップをするようになった。」「挿管チューブの固定方
法の統一してほしい。」などの意見が聞かれた。
3
目標5b_栗原市立栗原中央病院
体温
人工呼吸器装着患者の挿管から48~72時間
平均体温
40
39.5
39
38.5
内科男性
38
内科男性2
37.5
内科女性
37
外科女性
外科男性
36.5
外科女性2
36
35.5
35
1日目(24H) 2日目(48H) 3日目(72H)
まとめ
 人工呼吸器の保守点検の確実な実施に関しては点検
チェックリストを用いて100%の実施出来た。
外科病棟では「人工呼吸器について」勉強会の開催
しているが、病棟内に留まらず他病棟への広報をし
て、看護部全体で呼吸ケアのレベルアップを目指して
行く。
 人工呼吸器動作確認チェック表の作成と運用に関して
はケアバンドルチェック表を動作確認チェック表に加
え、看護師2人での点検が継続実施出来た。
今後も、継続していく。
人工呼吸器装着患者の概要
挿管患者
性別・年齢
内科男性
60歳
内科男性2
61歳
内科女性
81歳
外科女性
78歳
外科男性
66歳
外科女性2
87歳
挿管患者の疾患名
挿管期間
アルコール性肝障害
意識障害
肝性昏睡
8日
高度慢性呼吸不全
4日
出血性ショック
1日
中部胆のう癌
2日
胃穿孔、腹膜炎
1日
4日
まとめ
 人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防に関して
当ユニットにおける人工呼吸器関連肺炎防止
策を明文化しICU掲示、そしてケアバンドルを
チェック表に載せることで意識的に防止策の実
施がなされた。アンケートの結果からも看護ケア
実施率が向上し、統一したケアの提供につな
がったと言える。
人工呼吸器装着患者の熱型からも48時間以降
に発症したVAPによる発熱とは言えない。
ご清聴ありがとうございました
4