通信・メディア・ハイテク業界 「Digital Consumer」調査レポート

通信・メディア・ハイテク業界
「Digital Consumer」
調査レポート
日本の消費者は、世界に比して高度にデジタル化してい
ます。複数のデジタルデバイスを所有することは珍しくあ
りませんし、またそれらを利用する機会や時間も増加し
ていく一方、さらには次々と新しいデバイスやサービス
が生まれて消費者に提供されています。こうした状況に
おいては、事業者は消費者の動向にあわせ、常に新しい
デバイスやサービスを市場に提供していく必要があり、
さもなくば自らの商品やサービスが新しいものにとって
変わられることは必然ともいえます。
アクセンチュアは、デジタルに関連したデバイスやサー
ビスおよびネットワークインフラに関する消費者の意識
の変化をとらえるため、2014 年に日本を含む世界 23
か国、23,000名超の消費者への意識調査を行いました。
本稿では、その調査結果の中から抽出した日本のサン
プル、約1000名の動向に基づいて考察しました。
2
日本の消費者は複数のデジタルデバイスを所有し
使い分けている
世界各国の消費者に対し、ラップトップや
ノートパソコン、携帯電話やタブレットから
テレビや電 子ブックリーダーなどを含む
各種デジタルデバイス所有の状況、および
今後の購入予定について尋ねました。
「複数持ち」が当たり前の日本
て尋ねた質問に対して、45%がさまざまな
種類のデジタルデバイスを異なる目的によ
多く、海外では大画面のスマートフォンの購
入意欲の方が高いのと対照的です。一方、
って使い分けるのがいいと回答しました。 タブレットについては、今後の購入意欲とし
一方、新興国のユーザーは、1つの機器でイ てフルサイズが63%と、若干ミニやマイク
ンターネットも電子メールもテレビも音楽
も通話もできる方がいいと考えているユー
ロのサイズへの興味が見られるものの、
依然としてフルサイズへのニーズが高いよ
ザーの割合が高まっています。
うです。日本の消費者は、スマートフォンに
レットについては、大画面で使いたいと思っ
パソコンは3人に2人が、ラップトップパソコ
用途に応じて、
デジタル機器を
使い分ける
ンも2人に1人が所有しています。そのうえ
こうした使い分けの様子は、以下の調査結
おける標準画面、
タブレットに関する大画面
でスマートフォンや一般の携帯電話も、
ほぼ
果からも分かります。製品種別毎の購入意
日本においては、多くの消費者は複数の
デジタルデバイスを所有しています。
ノート
はそれほど大画面を求めてはおらず、タブ
ているのです。ちなみに、スマートフォンに
2人に1人が持っていると答えています。タブ 欲について尋ねた質問では、日本の消費者
レットについては5人に1人が所有していま が今後 12か月の間に購入する予定のある
した。また、携帯ゲーム機の所有が3 人に1 アイテムのトップ3は、
スマートフォン
(36%)
、
ノートパソコン( 22% )
人というのは、他国にはない特徴です。経済 タブレット( 26% )、
的な豊かさも背景に、日本ではデジタル
でした。ただし詳しく見ると、
スマートフォン
への志向は、それぞれ調査対象国中 1位で
した。つまり、スマートフォンでは携帯メー
ルや通話に代表される通信機能およびゲー
ムを主に利用し、タブレットではウェブペー
ジの閲覧や動画視聴などを行っていると
いった使い分けが想像されます。
機器については「複数持ち」が当たり前とな については、大画面( 23% )より標準画面
を購入しようと考えている人の方が
っています。また、
デバイスの持ち方につい (77%)
質問:あなたが個人で所有しているデジタルデバイスはどれですか (複数回答可)
66%
(658)
ラップトップ・コンピュータ
50%
(501)
47%
(467)
スマートフォン
デスクトップ・コンピュータ
37%
(368)
HD/3D/4K テレビ
53%
(531)
基本的な機能のみ/特定機能を有する携帯電話
47%
(468)
標準的なテレビ
19%
(187)
タブレット
29%
(288)
インターネット接続が可能な家庭用ゲーム機
GPS ナビゲーション
ケーブルテレビ視聴機 (ブロードバンド・TVサービス業者)
4%
(44)
33%
(331)
ポータブルゲーム機
E-ブックリーダー
車載用エンターテイメントシステム
ケーブルテレビ視聴機 (第三者サービス企業)
16%
(160)
4%
(44)
4%
(37)
2%
(20)
3
デジタルデバイスの購入ということに関し
ことで、新たな需要を生むでしょう。さらに
回答の結果を見ると、例えば車両ナビで
ていえば、日本では既にデバイスの所有率
あっても(渋滞などの)
リアルタイム情報と
ウェアラブルも含めた携帯できるデバイス
も高いこともあって買換え需要が中心と
の連携機能であったり、
住宅や個人のセキュ
と連動して活用するような付属品(たとえば
ブレスレット型の小さなヘルスモニターで
なり、新規購入の意欲の高い新興国に比べ
リティやヘルス関連についてのモニタリング
て活気ある市場とはいえません。では、
日本
をバンドル
機能などといった常にモニター
(監視・管理) デバイスに情報を取り込むなど)
の消費者は、もはやデジタル機器への興味
しておきたい機能への興味が目立ちます。 して販売することで既存携帯デバイスの機
を失ってしまったのでしょうか。ここで、興味
また、ウェアラブル・グラスといった新しい
深い質問への回答結果を見てみましょう。
デバイスへの興味も現れ始めています。
ウェアラブル端末、付加機能との
バンドリング、高機能デジタル家電
に可能性あり
こうした結果から導き出される、デジタル
らは外れますが、日本の高機能デジタル家
デバイスメーカーにとっての新しい需要創
電は、
日本人の高機能専用デジタル機器志
これは、消費者に対してアプリケーション
デバイス、デジタル機器とのバンドリング、 ているといえます。
単体であるか、もしくはその機能を搭載し
たデバイスであるかを問わず、購入を考え
ているアプリケーション機能について尋ね
た質問です。
能を強化していくことなども考えられます。
さらに、今回の調査でのデジタルの定義か
出の機会は大きく次の 3 点、ウェアラブル・ 向ともあわせ、今後も発展の可能性を持っ
高機能デジタル家電に集約されるでしょう。
ウェアラブル・デバイスについては、
いうまで
次にアプリケーションについての回答結果
を見ていきます。
もなく、携帯できるデバイスがさらにコン
パクトかつ身に着けられる形になるという
質問:これらのデジタルコンテンツがアプリとしてモバイル、PC、専用機器に提供された場合、購入に興味がありますか。
リアルタイムアラート付き車載ナビ
37%
(321)
家庭用防犯モニター
34%
(300)
25%
(216)
快適さを管理するツール
7%
(57)
8%
(70)
4%
(38)
33%
(291)
ヘルスモニター
6%
(51)
29%
(238)
個人用防犯モニター
7%
(55)
フィットネスモニターや進捗管理ソフト
33%
(301)
6%
(57)
スマート・ウォッチ
32%
(287)
8%
(71)
25%
(221)
ウェアラブル・グラス (メガネ)
車載用エンターテイメントシステム
とても興味がある
4
すこし興味がある
26%
(219)
8%
(51)
5%
(43)
日本の消費者は、
ゲーム以外のアプリケーションに
興味がない?
世界各国の消費者に対して、現在および近
画面のみならずバードビューに変えたり、北
い将来のデジタルアプリケーションの利用
を上にもしくは行先を上に表示する変更も
状況および意向を尋ねると、
グローバルに
比較して日本のユーザーはアプリケーショ
ンそのものには、あまり興味を持っていな
いように見えます。その背景の一つには、
日
本においては既にすぐれたデジタルアプリ
一方、従来の専用機器に搭載されている
簡単にできます。2 画面で地図画面と高速 (アプリケーション)機能は、日本人の求め
道路のインターチェンジやサービスエリア るサービスレベルに対応したきめ細やかで
情報とを同時に表示することも可能です。 クォリティの高いものです。そのような「お
ここまで充 実した機 能 、かつ使 いやすい もてなしアプリ」を海外市場において展開
インターフェースを持ったカーナビが既に
ケーションの搭載された機器が存在してい
存在している日本においては、ナビゲーショ
ることが挙げられます。
ンをスマートフォンのアプリとして搭載する
高機能の専用デジタル機器の存在
がアプリケーションのニーズを
生みにくい
分かりやすい 事 例でいうと、車 両 の ナビ
ゲーションシステムです。日本のカーナビ
のシステムは、
非常に高機能です。何も指示
しなくても、案内した道と異なる道を選ん
だことを認識するや、自動的にまた経路を
「おもてなしアプリ」の可能性
ということは他国の消費者に比べて魅力的
ではないということは想 像に難くありま
せん。
するというのも、コンテンツプロバイダに
とっての可能性の一つです。
最後に、
こうしたデジタル機器およびアプリ
ケーションを支えるインフラの状況につい
ての質問を眺めてみます。
こうした日本市場を攻略するにあたっては、
既に日本においては車両ナビやホームセ
キュリティの優れたシステムが存在してい
ることから考えても、既存の専用機器では
対応できない機能が不可欠となるでしょう。
再検索して表示してくれます。通常の地図
質問:専用機器で提供されてきた様々な「アプリ」が現在ではモバイル機器で提供されています。現在使用している、もしくは使用予定
のあるアプリはどれですか。
24%
(243)
カメラ (写真またはビデオ)
14%
(141)
ゲーム
17%
(171)
GPSナビ
9%
(88)
TVアプリ
11%
(106)
音声・音楽録音アプリ
E-ブック
7%
(72)
10%
(96)
ラジオ
徒歩・ジョギング用GPSナビ
8%
(84)
頻繁に使用している (一週間に1回以上)
5
総合的にはデジタルインフラは充実
自宅のブロードバンド、
3割が夕方の
使用ピーク時のスピードに不満
モバイル接続、遠隔地(8割)
や使用
ピーク時(7割)のスピードに不満
日本の調査対象者の自宅でのインターネッ
モバイル接続については、50% が標準的
インターネットサービスのスピードを知りた
いと答えており、通信事業者/プロバイダー
変更の可能性を示唆します。
トの接続方法について尋ねたところ、45%
なモバイルブロードバンドサービス( 3Gな
の消費者が固定ブロードバンドを利用して
ど)
を利用していますが、
すでに44%が高速
おり、ファイバー接続のブロードバンドが
モバイルブロードバンドサービス
(4Gなど)
41% 、モバイルブロードバンドが17%と続
を利用しており、
これはグローバル平均(4G
いています。そして、
夕方以降の使用ピーク
は18%)
と比べて著しく高くなっています。
時には、
インターネットが我慢できないほど
しかしながら、使い勝手でいうと、82% の
遅くなると回 答した人が 3 割 程 度もいま
消費者が遠隔地で、71% が使用ピーク時
した。また、過半数の回答者が、プロバイ
モバイルイン
に、60%が混雑した場所では、
ダーが提供する自宅のインターネットサー
ターネットのスピードが大幅に遅くなると
また、日本の消費者にとっては、テレビ番
組、映画、
ビデオクリップなど、動画コンテン
ツを見るには、
ダウンロードするのではなく
ストリーミングするのが主 流となってい
ます。
こうしたこととあわせて、
プロバイダー
のサービスについて、
使用ピーク時等を含め
て、サービスの質(スピード)をあげるため
なら、少々お金を払っても構わないと答え
た人が、約半数いたことも注目に値します。
ビスのスピードを知りたいと答えており、 感じており、サービス改善の余地があると
サービス改善・通信事業者/プロバイダーの
もいえます。また、55%の回答者が、契約プ
変更への興味が伺えます。
ロバイダーがモバイルデバイスに提供する
質問:以下の自宅でのインターネットサービスのスピードに対する
文章について、
どのくらいそう感じますか。
質問:以下のモバイルでのブロードバンド・インターネットの
スピードに対する文章についてどのくらいそう感じますか。
自宅でインターネットサービスを利用するに十分な回線容量が
提供されている。
遠隔地において、
モバイルでのインターネット速度が著しく低下する。
54%
(530)
16%
(160)
プロバイダーから提供されるインターネットサービスの速度に
ついて知っている。
42%
(423)
15%
(148)
45%
(221)
使用ピーク時にモバイルでのインターネットスピードが著しく
低下する。
47%
(229)
46%
(228)
14%
(71)
プロバイダーから提供されている、
モバイルでのインターネット速度
を知っている。
11%
(107)
使用ピーク時のスピードが我慢できないくらい遅くなるときがある。
22%
(213)
15%
(73)
繁華街など混雑した場所でモバイルでのインターネットスピードが
著しく低下する。
使用する部屋によって、
ブロードバンドのインターネットサービスの
回線容量が違うと感じることがある。
36%
(352)
14%
(67)
8%
(74)
40%
(197)
10%
(51)
モバイルでのブロードバンドのスピードは十分速いと感じている。
41%
(202)
6%
(29)
常にプロバイダーが保障しているスピードを提供されていると感じる。 モバイルでブロードバンドを使用したインターネット接続は、
常にプロバイダーが保証しているスピードが提供されている。
46%
(453)
強くそう思う
6
9%
(92)
ややそう思う
37%
(181)
強くそう思う
6%
(28)
ややそう思う
業界を超えた競争環境へ
最後に、少し視点を変えた設問の答えにつ
個人データの預け先として最も信頼する
ついても、デジタル化によって業界の境界
いて考察してみたいと思います。アクセン
企業について尋ねた質問において、最も信
線が曖昧になる中、個人情報の活用やデジ
チュアは、
「テクノロジービジョン」などに
頼度が高かったのは、取引銀行(3割)、続い
タルサービスへの進出可能性など、規制緩
よって、
インターネットやデジタル化の潮流
という結果
てモバイルプロバイダー( 2 割)
和を条件としながらも、デジタル関連企業
の中で、業界の垣根が取り払われ競争や
Google(10%)、 への新たな脅威となる可能性があるのでは
でした。そんな中、
たとえば、
競合相手の定義が変化していることを述べ
Microsoft(11%)、Apple(10%)、Amazon
ています。今回の調査範囲でいえば、従来
(8%)といったアプリケーションプロバイダー
の機器メーカー、
コンテンツ・アプリケーショ
への信頼度は、ある意味既にインフラ的な
ンメーカー、
デジタルインフラといったカテ
認知がされているともいえ、既存のインフ
ゴリーを超えて既に競争が始まっていると
ラ企業にとっては無視できない存在になり
もいえます。
つつあります。また、銀行への高い信頼度に
ないでしょうか。
質問:以下の企業のうち、あなたがその企業のデータポリシーを知っているという前提で、
メールアドレスや電話番号、購入履歴などの
個人情報の取り扱いについて信頼できる企業はどれですか。(複数回答可)
30%
(295)
銀行
20%
(200)
携帯電話のネットワークプロバイダー
10%
(99)
Google
12%
(124)
ブロードバンド・インターネットのプロバイダー
Facebook
3%
(25)
11%
(111)
マイクロソフト
10%
(97)
アップル
サムスン
0%
(2)
8%
(82)
アマゾン
Twitter
1%
(7)
7%
(66)
ソニー
ウィキペディア
上記のどれでもない
わからない
1%
(10)
18%
(180)
24%
(238)
7
本レポートの筆者ならびに協力者 アクセンチュアリサーチに
ついて
アクセンチュアリサーチ 日本統括
アクセンチュアについて
馬越 美香
アクセンチュアリサーチは、アクセンチュア
テクノロジー・サービス、アウトソーシング・
のグローバル組織として、経済や戦略調査を
サービスを提供するグローバル企業です。
通信・メディア・ハイテク本部
マネジング・ディレクター
古嶋 雅史
中藪 竜也
本間 泰志
アクセンチュアは、経営コンサルティング、
専門に行う目的で設立されました。現在、
約29万3千人の社員を擁し、世界120カ国以上
200名のスタッフ が、北 米 、欧 州 、アジ ア
のお客様にサービスを提供しています。豊富
太平洋地 域の主要オフィスで、経 済や社会
な経験、あらゆる業界や業務に対応できる
学、調査研究を専門に行っています。本レポート
能力、世界で最も成功を収めている企業に
は、アクセンチュアリサーチによるグローバル
関する広範囲に及ぶリサーチなどの強みを
調査の結果より、日本市場について取りまと
活かし、民間企業や官公庁のお客様がより
めたものです。
高いビジネス・パフォーマンスを達 成でき
www.accenture.com/jpをご覧ください。
るよう、その実現に向けてお客 様とともに
取り組んでいます。2013年 8月31日を期末と
する2013年会計年度の売上高は、286 億US
ドルでした(2001年7月19日NYSE上場、略号:
ACN)。
アクセンチュアの詳細は
www.accenture.comを、
アクセンチュア株式会社の詳細は
www.accenture.com/jpをご覧ください。
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