参考書、参考サイト

14a 参考書、参考サイト
参考書
A. 日本語の参考書
この 10 年間に、細胞遺伝学全般を網羅した日本語の本は出ていません。細胞遺伝学の一部の領域を扱っ
た本は出ているので、列挙しておきます。
1.緒方勤:ターナー症候群の遺伝学.メジカルビュー社、東京、2003.
1.緒方勤:ターナー症候群の遺伝学.メジカルビュー社、東京、2003. 1–
1–205 p.
2.稲澤譲治、蒔田芳男、羽田明・編:アレイ CGH 診断活用ガイドブック–
診断活用ガイドブック–知っておきたい染色体構造異常.
医薬ジャーナル社.2008.
医薬ジャーナル社.2008.
B. 英文参考書
1.Gardner
1.Gardner RJ, Sutherland GR、
GR、Shaffer LG: Chromosome
Chromosome Abnormalities and Genetic Counseling. 4th
ed. Oxford : Oxford University Press, 2011. 1–
1–624 p.
染色体カウンセラー・染色体検査技師を対象にした最良の参考書ですが、臨床細胞遺伝学の専門家が読ん
でも参考になりましょう。細胞遺伝学を専門としない医師が読みこなすのは難しいと思われます。2004
でも参考になりましょう。細胞遺伝学を専門としない医師が読みこなすのは難しいと思われます。2004 年
の第3版(A4
の第3版(A4 版、577
版、577 ページ)から 7 年を経て、2011
年を経て、2011 年 11 月 11 日(11
日(11 並び)に第 4 版(A4
版(A4 版、624
版、624 ペ
ージ)が出ました。著者は従来の
ージ)が出ました。著者は従来の Gardner(ニュージーランド)と
Gardner(ニュージーランド)と Sutherland(オーストラリア)に、新
Sutherland(オーストラリア)に、新
たに Lisa Shaffer(アメリカ)が加わりました。新しい章としては、1)染色体分析、2)コピー数の変化
Shaffer(アメリカ)が加わりました。新しい章としては、1)染色体分析、2)コピー数の変化
(copy number changes)
changes)
、が加わり、どちらもマイクロアレイを扱っています。27,00
、が加わり、どちらもマイクロアレイを扱っています。27,00 の引用文献の 40%
は、2003
は、2003 年以前の文献をそれ以降の文献に置き換えたものです。
情報が増えているのにページ数の増加(47
情報が増えているのにページ数の増加(47 ページ)を押さえたので、引用文献の内容を圧縮し過ぎたのが
目につきます。例を挙げると、
目につきます。例を挙げると、Matsui et al. (2003) の千葉県における胞状奇胎の調査の引用で「日本では
1970 年代の全奇胎の頻度は 1/400 で、1990
で、1990 年代の末には 1/650 に減った。」と書いています。これは全奇
胎と部分奇胎を合計した表と読み間違えたものです。同じ論文の全奇胎の表に従って訂正すると、「日本で
は 1980 年代末の全奇胎の頻度は 1/600 で、2000
で、2000 年には 1/2,000 に減った。」になります。
2.Schinzel
2.Schinzel A: Catalogue of Unbalanced Chromosome Aberrations
Aberrations in Man, 2nd ed. Berlin: Walter de
Gruyter, 2001. 1–
1–966 p.
核型と表現型の相関を扱った本としては最良です。1984
核型と表現型の相関を扱った本としては最良です。1984 年に初版が出てから 17 年を経て、大幅に拡充し
た2版が出ました。染色体ごとに分類し、モノソミー、欠失、重複、トリソミーに分け、さらに領域ごとに
細分しているので、目的とする染色体異常をみつけるのに容易です。不均衡型転座の表現型は部分モノソミ
ー、部分トリソミー(重複)の和なので、両者を総合して推定することができます。患者の写真を多数添付
ー、部分トリソミー(重複)の和なので、両者を総合して推定することができます。患者の写真を多数添付
して、理解を助けています。文献は 1998 年までが主体ですが、項目によっては 1999 年、2000
年、2000 年も引用し
ています。片親性ダイソミーは詳しく、微細欠失症候群の一部も含みます。
3.Wyantdt
3.Wyantdt HE, Tonk VS: Atlas of Human Chromosome Heteromorphisms. Kluwer, Dordrecht, 2004.
1–279 p.
染色体異形性の専門書で、多数の染色体分析をする検査会社・検査室などで有用だと思われます。第一部
1
14a 参考書、参考サイト
はバンド法の歴史、異形の検出法、歴史、核型と表現型の相関、親起源、真性染色質(
はバンド法の歴史、異形の検出法、歴史、核型と表現型の相関、親起源、真性染色質(euchromatin
出法、歴史、核型と表現型の相関、親起源、真性染色質(euchromatin)の異
euchromatin)の異
形、FISH
形、FISH による異形の分析、サテライト DNA・セントロメアの機能・ネオセントロメア、セントロメアの
DNA・セントロメアの機能・ネオセントロメア、セントロメアの
alphoid repeats について述べ、第二部は異形ごとの染色体写真・文献・簡単な解説がついています。異形
と表現型の相関の可能性については中立の立場をとり過去の文献を引用するだけなので、この点を認識して
いないと誤解する恐れがあります。ヘテロクロマチンの異形と自然流産の関係の可能性(筆者は信じません)
について言及した文献も無批判で載せています。
について言及した文献も無批判で載せています。
4.Gersen
4.Gersen SL, Keagle MB, Ed.: The Principles of Clinical Cytogenetics, 2nd ed. Humana Press, 2005.
1−580 p.
初版(1999
(1999)
FISH、
1999)から 6 年を経て、二版が出ました。染色体不安定性、不妊、をそれぞれ新しい章とし、FISH、
固形腫瘍の解説を増やしました。
参考サイト
A.先天性染色体異常の文献検索・解説
1.PubMed
1.PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi
医学文献検索では定番。入力するキーワードによって検索結果が違うので、実例を使って解説します。ヒ
ットした文献の中から選んで抄録に目を通し、文献を取りよせます。
1)Wolf
1)WolfWolf-Hirschhorn 症候群
キーワード
ヒット数
WolfWolf-Hirschhorn syndrome
329
PittPitt-RogersRogers-Danks syndrome
syndrome
4p−
4p−
a
29
1737
deletion 4p
t(11;22)(q23;q11)
1
+der(22)t(11;22)(q23;q11)
1
translocation 11q and 22q
30
t(11;22)
83
translocation chromosomes 11 and 22
864
8
del 4p
54
t(11;22)(q23;q11)、
t(11;22)(q23;q11)、+der(22)t(11;22)(q23;q11)
+der(22)t(11;22)(q23;q11) はど
del4p
–
ちらも国際規約による記載ですが、殆どヒットしま
del(4)(p16.1)
3
del(4)(p16→
del(4)(p16→pter)
7
a
せん。t(11;22)
せん。t(11;22) が適当だと思われます。
3)片親性ダイソミー(UPD
3)片親性ダイソミー(UPD)
UPD)
2011 年 11 月現在
キーワードとしては「Wolf
キーワードとしては「WolfWolf-Hirschhorn syndrome」
syndrome」
キーワード
が最適。Pitt
が最適。PittRogers-Danks 症候群は
Pitt-Rogers-
uniparental disomy
609
WolfWolf-Hirschhorn 症候群の成人型です。
uniparental disomy 14
140
4del(4)(p16.1)、
4del(4)(p16.1)、del(4)(p16→
del(4)(p16→pter) は国際規約
paternal uniparental disomy 14
(ISCN
ISCN 1995)による正式の核型記載法ですが、ヒ
1995)による正式の核型記載法ですが、ヒ
UPD
ットしません。
UPD14
9
upd(14)
68
2)t(11;22)(q23;q11)
2)t(11;22)(q23;q11)
キーワード
ヒット数
2
ヒット数 a
51
321
upd(14)pat
3
upd(14)mat
6
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a
2004 年 6 月現在
多い傾向があります。片親性ダイソミーの文献が
uniparental disomy の方が UPD よりもヒット数が
2004 年6月現在で 609 あることが分かります。
多く、uniparental disomy 14 の方が upd(14)よりも
upd(14)よりも
2.Chromosomal
2.Chromosomal Variation in Man Online Database
http://www.wiley.com/legacy/products/subject/life/borgaonkar/access.html
編者(Digamber
編者(Digamber S. Borgaonkar)が重要と認めた
Borgaonkar)が重要と認めた 1974 年以降の染色体異常の文献 >23,000 を収録し、
定期的に更新しています。文献、核型、表現型異常、細胞株の有無 を記載。使いこなすためには核型を読
みこなせるだけの知識が必要なので、細胞遺伝学の専門家・染色体検査技師・遺伝カウンセラー向けだと思
みこなせるだけの知識が必要なので、細胞遺伝学の専門家・染色体検査技師・遺伝カウンセラー向けだと思
われます。
染色体切断点と染色体異常の種類をキーワードにして検索すると、両者を含む文献を表示します。1p36.3
染色体切断点と染色体異常の種類をキーワードにして検索すると、両者を含む文献を表示します。1p36.3
を 01p363 と現し、相互転座の記号(RT
と現し、相互転座の記号(RT)を入力して検索すると、
RT)を入力して検索すると、1p36.3
)を入力して検索すると、1p36.3 を切断点とする相互転座の文献
を分類・表示します。
特定の著者(Borgaonkar
特定の著者(Borgaonkar D S)を記入して検索すると、その著者が書いた文献を染色体異常ごとに分類し
S)を記入して検索すると、その著者が書いた文献を染色体異常ごとに分類し
て表示します。特定の年度(2000
て表示します。特定の年度(2000)について検索することもできます。
2000)について検索することもできます。PubMed
)について検索することもできます。PubMed では特定の著者の論文をす
べて表示しますが、染色体関連の論文に限って表示する機能はありません。
べて表示しますが、染色体関連の論文に限って表示する機能はありません。
3.Online
3.Online Mendelian Inheritance in Man
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=OMIM
ご存じの遺伝病・遺伝子多型・遺伝子変異検索の定番ですが、症候群(syndrome
ご存じの遺伝病・遺伝子多型・遺伝子変異検索の定番ですが、症候群(syndrome)と名が付くと収録さ
syndrome)と名が付くと収録さ
れています。
症候群
OMIM No.
Angelman syndrome
105830
Cat eye syndrome
123450
Chromosome 18q deletion syndrome
601808
DiGeorge syndrome
188400
LangerLanger-Giedion syndrome
150230
MillerMiller-Dieker lissencephaly syndrome
247200
PraderPrader-Willi syndrome
176270
SmithSmith-Magenis syndrome
syndrome
182290
Trisomy 21
190685
微細欠失(重複)症候群も多数収録されています。[14c
微細欠失(重複)症候群も多数収録されています。[14c 微細欠失(重複)症候群]
微細欠失(重複)症候群] をご参照ください。
4.Chromosomal
4.Chromosomal Mosaicism
http://www.medgen.ubc.ca/wrobinson/mosaic/
カナダ University of British Columbia の J. Furnival と W. Robinson が作った染色体数異常モザイクの
サイト。出生前診断、片親性ダイソミー、
サイト。出生前診断、片親性ダイソミー、confined
出生前診断、片親性ダイソミー、confined placental mosaicism の解説が優れていますが、末梢血
リンパ球、繊維芽細胞のモザイクには力を注いでいない傾向があります。1
リンパ球、繊維芽細胞のモザイクには力を注いでいない傾向があります。1–22、
22、X、Y のトリソミー・モザ
イク、21
イク、21、
21、X のモノソミー・モザイク、三倍体モザイク、四倍体モザイク のそれぞれについて解説し、文
献をつけてあります。
専門家でなくても理解できるように専門用語をできるだけ避け、解説を読まなくても使いこなせるように
3
14a 参考書と参考サイト
作ってあるなど、サイトの作り方が優れているとともに、モザイクの解説の質も高く、他の追随を許しませ
作ってあるなど、サイトの作り方が優れているとともに、モザイクの解説の質も高く、他の追随を許しませ
ん。モザイク・トリソミー19
ん。モザイク・トリソミー19 の報告例、文献を知りたければ、このサイトを使えば簡単です(羊水分析で1
例、Hsu
例、Hsu et al., 1997)
1997)。ヨーロッパの研究室の協力による絨毛のモザイクトリソミー192
。ヨーロッパの研究室の協力による絨毛のモザイクトリソミー192 例中には1例もあ
りません(Hahnemann
りません(Hahnemann and Vejerslev, 1997)
1997)。1981
。1981 年に小児の報告が2例ありますが、どちらも iso19p、
iso19p、
iso19q、その他
iso19q、その他 である可能性を否定できません(Borgaonkar
である可能性を否定できません(Borgaonkar のサイトで得た情報)。
5.The
5.The Chromosome Anomaly Collection
http://www.ngrl.org.uk/Wessex/collection
イギリス Wessex の JCK Barber が作った、表現型に影響しない真性染色質(euchromatin
が作った、表現型に影響しない真性染色質(euchromatin)多型のサイ
euchromatin)多型のサイ
ト。次の3群に分けます。
① 親の片方と子が同じ多型を持ち、両親と子が表現型正常。
② 親の片方と子が同じ多型を持ち、両親は表現型正常で、子が表現型異常。
③ 親の片方と子が同じ多型を持ち、どちらも表現型異常があるけれど軽い。
親の片方と子が同じ多型を持ち、どちらも表現型異常があるけれど軽い。
8p21、
8p21、9p12、
9p12、9q12、
9q12、15q11.2、
15q11.2、16p11.2 の多型が代表で、その他多数が収録されています。
文献
Barber JC: Directly transmitted unbalanced chromosome abnormalities and euchromatin variants. J
Med Genet 42:609−
42:609−629, 2005.
C.白血病・がんの染色体異常
1.Atlas
1.Atlas of Genetics and Cytogenetics
Cytogenetics in Oncology and Haematology
http://www.infobiogen.fr/services/chromcancer/
フランスの JeanJean-Loup Huret が運営しているサイトです。1)遺伝子、白血病、固形腫瘍、高発癌性疾
患、2)染色体別、の分類で検索でき、説明を読まなくても検索できるように作ってあります。白血病・固
形腫瘍は病型ごとに好発する染色体異常を表示し、高発癌性疾患は
形腫瘍は病型ごとに好発する染色体異常を表示し、高発癌性疾患は 56 疾患についてそれぞれの著者が分担
して解説しています。フランスらしくサイトの作り方もエレガントであると共にシンプルで、使い易くでき
ています。
2.Mitelman
2.Mitelman Database of Chromosome Aberrations in Cancer
http://cgap.nci.nih.gov/Chromosomes/Mitelman
http://cgap.nci.nih.gov/Chromosomes/Mitelman
National Cancer Institute (NCI) が運営する The Cancer Genome Anatomy Project (CGAP) の一部で
す。2004 年現在で 46,493 例から成り、年に 4 回改訂します。Recurrent Chromosome Aberrations in Cancer
と呼ぶセクションを含み、上記のフランスのサイトに相当します。
D.FISH
1.DNA
1.DNA FISH Probes Reagents & Materials
http://www.vysis.com/Products_12.asp?bhcp=1
FISH プローブ販売大手の Vysis 社のサイト。製品の紹介が FISH 分析の解説を兼ねています。
4
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2.Molecular
2.Molecular Cytogenetics
http://www.sanger.ac.uk/HGP/Cytogenetics/
http://www.sanger.ac.uk/HGP/Cytogenetics/
Sanger Institute のサイト。FISH から初めて flow cytometry、
cytometry、chromosome sorting、
sorting、breakpoint analysis、
analysis、
array CGH などについて解説。専門家向けです。
E.サポートグループ
1.Support
1.Support Groups for Chromosomal Conditions
http://www.kumc.edu/gec/support/chromoso.html
http://www.kumc.edu/gec/support/chromoso.html
University of Kansas Medical Center の遺伝カウンセラーDebra
の遺伝カウンセラーDebra Collins が運営する患者サポートグルー
プのリンク集。アメリカが主体ですが、Down
プのリンク集。アメリカが主体ですが、Down 症候群は世界各国のサポートグループを含みます。
2.染色体起因しょうがいじの親の会
FOURFOUR-LEAF CLOVER
http://www.eve.ne.jp/FLC/
http://www.eve.ne.jp/FLC/
日本のサポートグループも多数ありますが、代表として挙げておきます。他のサポートグループとのリン
ク集を含みます。
3.全国のダウン症児親の会・支援組織のリスト
http://www.jah.ne.jp/~jds97/
日本ダウン症ネットワークの中にあるページです。
インターネット・サイトは突然閉鎖することがあるので、ご承知置きください。
梶井 [2011
[2011 年 12 月 17 日:改訂
日:改訂]
5