介護有料老人ホームベルパージュ大阪上本町に おける全電化設備事例

―― 実 施 例 ――
介護有料老人ホームベルパージュ大阪上本町に
おける全電化設備事例
㈱大林組 本店 小 松 宏 之
■キーワード/
■キーワード/介護・福祉施設・全電化・蓄熱
建物用途 主:老人ホーム,副:診療所
1.はじめに
敷地面積 03,800fl
大阪赤十字病院跡地に建設中の「桃坂コンフォガーデ
ン」は,高層分譲マンション1棟,中層賃貸マンション
延床面積 11,445fl
施設内容 介護付有料老人ホーム
2棟,および今回ご紹介させていただく「介護有料老人
一般居室 80戸・介護居室 41室
ホームベルパージュ大阪上本町」からなる医療連携・生
診療所モール
活サービスのネットワークを有する住宅群である。
内科・整形外科・眼科・歯科など8診
ここでは「介護有料老人ホームベルパージュ大阪上本
保育所・介護支援センター
町」で採用された,夜間蓄熱を利用した業務用ヒートポ
訪問介護ステーション・調剤薬局
ンプ給湯システムを含む全電化設備事例を紹介する。
コンタクト販売・コンビニ・喫茶
構造規模 RC造 地下1階,地上8階
2.建物概要
最高高さ 27.87m
建 築 主 関電不動産ñ
工 期 平成17年7月∼平成18年12月
建 築 地 大阪市天王寺区筆ヶ崎町
設計施工 ñ大林組 本店
写真−1 外観
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ヒートポンプとその応用 2007.
11.
No.74
―― 実 施 例 ――
3.建築計画
「桃坂コンフォガーデン」は,大阪赤十字病院
の建て替えにともなう余剰地をUR都市機構が収
得し,開発コンセプト策定後に約1.7haの敷地を
4つの街区に分け,民間開発事業者をコンペ方式
で募集し,総戸数701戸の住宅,高齢者施設,診
療所モールなどからなる,総合的で一体的なまち
づくりをめざした。
医療連携・生活サービスのネットワークで都心
生活を支えるまちづくり,周辺に配慮した快適で
一体的な屋外空間の創出,病院と直結した屋外整
備という3つの開発コンセプトのもと,病院の隣
接地という立地を生かした高齢者支援施設・診療
写真−4 食堂
所として計画され,大阪赤十字病院と連携した医
療サービスを実現している。
キーワードのもと開発された街にふさわしい,人と環境
にやさしい設備計画とするために,空気熱源ヒートポン
4.設備計画
プ給湯機を用いた夜間蓄熱給湯システム,床暖房設備,
医療連携・生活サービスのネットワークの構築という
貯湯式電気温水機,および氷蓄熱を含めた空気熱源ヒー
トポンプエアコンを採用した全電化システムを構
築している。
4−1 設備概要
4−1−1 電気設備
受 変 電 6.6kV 1回線受電
キュービクル変電設備 合計 1,450kVA
発 電 機 キュービクル型発電機(防災・保安)
115kVA
防災設備 非常用照明・誘導灯・自火報・非常放送
特殊設備 ナースコール・LAN・電気錠
4−1−2 衛生設備
給 水 加圧給水ポンプシステム
受 水 槽 FRP製単版パネル水槽(2槽式) 39„
給 湯 空気熱源ヒートポンプ給湯機
写真−2 エントランスホール・受付
55.8kW×3台
排 水 自然流下式
(汚水・雑排水合流式,雨水分流式)
防災設備 スプリンクラー設備,補助散水栓
連結送水管設備
4−1−3 空調設備
空気熱源ヒートポンプエアコンを採用すること
で,個別運転を可能とし,管理の簡略化をはかっ
ている。夜間停止が可能な共用諸室については,
ランニングコストの低減を目的として氷蓄熱ヒー
トポンプエアコンを採用した。また,施設用厨房
の作業環境向上のため,厨房外気系統に外気処理
パッケージエアコンを設置した。
3階男女共同浴室,同左脱衣室,介護フロアの
写真−3 一般居室
ヘルパーステーションに面した食堂兼機能訓練
ヒートポンプとその応用 2007.11.No.74
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―― 実 施 例 ――
室,および機械浴脱衣室に床暖房設備を設置し,
利用者に対する温熱環境の向上をはかっている。
_
空気熱源ヒートポンプエアコン
(ビルマルチ)
冷房能力 014.0kW・暖房能力 016.0kW×1台
冷房能力 016.0kW・暖房能力 018.0kW×5台
冷房能力 028.0kW・暖房能力 031.5kW×2台
冷房能力 033.5kW・暖房能力 037.5kW×3台
冷房能力 040.0kW・暖房能力 045.0kW×4台
冷房能力 068.0kW・暖房能力 076.5kW×1台
冷房能力 078.5kW・暖房能力 087.5kW×1台
冷房能力 085.0kW・暖房能力 095.0kW×1台
冷房能力 101.0kW・暖房能力 113.0kW×2台
冷房能力 124.0kW・暖房能力 138.0kW×1台
`
氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ)
写真−6 食堂兼機能訓練室
冷房能力 028.0kW・暖房能力 025.0kW×1台
一般的に,循環系の給湯配管は溶存酸素による潰食の
冷房能力 035.5kW・暖房能力 031.5kW×1台
a
厨房外気処理系統空気熱源ヒートポンプエアコン
危険性があるため気水分離器を設置する必要があるが,
冷房能力 067.0kW・暖房能力 056.0kW×1台
当計画では屋上に空気熱源ヒートポンプ給湯機,および
b
床暖房設備
貯湯槽を設置し,循環系配管に適切な勾配を考慮するこ
布設面積合計 96.36fl・定格電力合計 13,641W
とで,配管系最上部に設置された開放型貯湯槽より効率
4−2 空冷ヒートポンプ給湯機
的に溶存酸素の排出が可能となり,気水分離器の設置を
全電化建物であることから,当初より空気熱源ヒート
ポンプ給湯機の採用を前提として計画を行った。
省略することが可能となっている。この方式を採用する
ことで屋上荷重は増加するが,機械室も不要となりスペ
ース効率の向上に寄与することができた。
採用した空気熱源ヒートポンプ給湯機の仕様を
表−1に,系統図を図−1に示す。
本計画では,メインテナントとして入居された
ñかんでんジョイライフ様と綿密な打ち合わせを
行い,他のベルパージュシリーズでの給湯使用量
実積より,本計画での給湯使用量をシミュレーシ
ョンし,夜間蓄熱を最大限に利用可能とするため
に55.8kWの給湯機を3台,24.0„(12.0„+12.0
„)の貯湯槽を1基,給湯系統と浴槽昇温系統の
2次側循環ポンプを2系統設置し,1日の給湯使
用量をすべて夜間蓄熱でまかなう計画としてい
る。
写真−5 ビルマルチ室外機
表−1 給湯設備機器仕様
名 称
仕 様
形 式:空気熱源ヒートポンプ給湯機
加熱能力:55.8kW
給 湯 機
(外気温度7.0℃,
温水出口温度65.0℃)
HP−1∼3
温水流量:12.4m3/h(61.1℃−65.0℃)
冷 媒:R407C
貯 湯 槽
形 式:開放型耐熱断熱SUSパネル水槽
3
3+12.0m3)
有効容量:24.0m(12.0m
THW−1
給湯循環系(PHW−1)
形 式:SUS製ラインポンプ
能 力:50r/min×10mH
循環ポンプ
浴槽昇温系(PHW−2)
形 式:SUS製ラインポンプ
能 力:100r/min×10mH
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動 力
台数
3φ200V19.8kW
3
−
1
3φ200V0.25kW
2
3φ200V0.75kW
2
ヒートポンプとその応用 2007.
11.
No.74
―― 実 施 例 ――
給水
BV1
PHW
1
HP
1
HP
2
HP
3
PHW
2
THW
1
図−1 給湯設備熱源周り系統図
表−2 電化厨房主要機器
名 称
電 気 フ ラ イ ヤ ー
I H ロ ー レ ン ジ
I
H
テ
ー
ブ
ル
IH ジ ャ ー 炊 飯 器
小 型 ベ ーカリーシステム
コ ン ビ オ ー ブ ン
ディッシュウォーマーテーブル
ド ア タ イ プ 洗 浄 機
電 気 消 毒 保 管 庫
冷 温 蔵 配 膳 車
仕様
6.0kW
5.0kW
台数
1
1
3.0kW×3
3.0kW×2
1
1
4.57kW
3.637kW×2
10.1kW×2
2.0kW×2
16.0kW
9.4kW×2
1.41kW×2
1
2
2
1
1
2
2
写真−7 給湯設備外観
4−3 電化厨房
表−2に厨房機器のリストを,写真−8に3階
厨房の内観を示す。電化厨房による快適な空間に
加えて,前述の厨房外気処理系統空気熱源ヒート
ポンプエアコンによる処理外気を供給することに
より,年間を通して快適な作業環境を確保するこ
とをめざした計画としている。
5.おわりに
本建物の計画にあたり,事業主である関電不動
産ñ関係者各位,メインテナントであるñかんで
んジョイライフ関係者各位より多大なるご協力,
およびアドバイスをいただきましたことに深くお
礼を申しあげます。
写真−8 厨房内観
ヒートポンプとその応用 2007.11.No.74
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