オランダの雇用 女性の就業率が90年代に急上昇し、日本を

80
日本
正社員の
労働時間短縮に
合意
70∼80年代にかけ
経済状況が悪化し、失業率急上昇
40
オランダ
20
80 年 85 90 95 00 05 09
(注)
15∼64歳女性人口に占める就業者の割合
(出所)
OECD Statを基に筆者作成
1982年 ワッセナー合意
政府・労働者・使用者の 3 者が、ワークシェ
アリング
(=雇用の分かち合い)
に合意
パートタイム労働が増加
均等待遇が実現しているオランダ
─男性常用労働者の年齢階層別時間当たり賃金─
パートタイム労働者の比率は、
オラ
ンダ 36.7 %に対し、日本 20.3 %、
米国14.1%(2009年時点)
フルタイム
250
フルタイム
200
パートタイム労働者とフルタイム労働者
の均等待遇( 96 年)と労働時間の短縮・
を法制化
延長の権利(00年)
150
パートタイム
100
50
90
労働時間選択の自由度が高まる
パートタイム
0
∼19 20
25 30 35 40 45 50 55 60
歳 ∼24 ∼29 ∼34 ∼39 ∼44 ∼49 ∼54 ∼59 ∼64
(注)各国の20∼24 歳のフルタイム労働者の賃金を100としたも
の。
日本はボーナスを含めた年収を総労働時間で除して算出
(出所)
オランダ統計局2004年データ、厚生労働省「賃金構造基
本統計調査」2006年より筆者作成
男性の労働
時間が減
り、仕事以外の活
動が充実
易依存度が高い。このため、
ーロッパの小国オランダは貿
を改善し働き方の柔軟性を高めると
や派遣労働などの非典型雇用の待遇
ともに、一人当たり労働時間を短縮
2010.9.25 週刊東洋経済
ヨ
日本よりもそうとう早く国際競争の
従来オランダは、日本以上に既婚
した。
柔軟性︵フレキシビリティ︶と生活
女性の就労に保守的で、男性稼ぎ主
波にのまれ、その中で、労働市場の
保障︵セキュリティ︶の両立︵フレ
モデルが支配的であった。しかしな
がら、働き方の柔軟性が高まること
キシキュリティ︶を模索してきた。
合計特殊出生率も2000年以降、
により、仕事と育児の両立も可能に
1970年代半ば以降、オランダ
1・7まで回復している。
一方、
家計
11
なり、女性の就業率は急上昇した。
は、深刻な不況に悩まされた。経済
を担う責任を一手に負っていた男性
82
労働時間の自由度高め
生活とのバランス実現
立て直しの大きな転換点となったの
なった。労働時間選択の自由度が高
も仕事以外の時間を多く持つように
る。政府・労働者・使用者の3者
く、労働市場に多くの人が長期にわ
は、 年 月のワッセナー合意であ
は、雇用の維持・創出のために、ワ
たって参加している
̶
̶
オランダ
は、男女共にワーク・ライフ・バラン
スが取りやすい社会となっている。
オランダ
オランダでは、9割前後の人が自分の労働時間に満
足している。
「減らしたい」と思っている人が6割前
後に上る日本とは雲泥の差だ。自由度の高い働き方
は、生活満足度の高さにもつながっている。
︵亜細亜大学准教授・権丈英子︶
日本
自分の仕事の時間は 減らし 増やし
現状のままでよい
たい
たい
35.0%
60.3% 4.7%
男性 フルタイム
39.3%
56.4% 4.2%
フルタイム
女性
パートタイム
63.3%
18.6% 18.1%
90.6%
6.2% 3.2%
フルタイム
男性
パートタイム
78.7%
5.8% 15.5%
フルタイム
83.6%
14.2% 2.2%
女性
パートタイム
81.0%
6.9% 12.1%
(出所)
連合総研「勤労者短観」2006∼08年調査の個票デー
タより筆者推計、オランダ統計局2008年データ
労働時間への満足度比較
ークシェアリングの実施に合意し、
VS. 日本
労働市場の構造改革に取り組んだ。
失業率は08年2.8%、
09 年 3.5%とユーロ
面積
4.1万㎢
GDP
7921億ドル(09年) 圏 16 カ国の中で最
GDP成長率 1.3%(10年見通し) も 低 い 水 準。10 年
に入り、やや上昇し
1人当たり
4万8223ドル
GDP
たものの、すでにピ
インフレ率
1.2%
ークを打ち下降して
通貨
1ユーロ=107.92円
いると見られる。
1653万人
人口
具体的には、正社員の雇用を基本的
ユーロ圏で最も低い失業率
に保障しながら、パートタイム労働
基本データ
仕事と育児
の両立が可
能になり、女性の
就業率が上昇
オランダ の雇用
(%)
先進
国編
オランダも30年前は専業主婦が
多かった ─女性就業率の推移 ─
60
1960年代、好況時に社会保障を充実
(ポイント)
女性の就業率が 年代に
急上昇し、日本を上回る
ワークライフバランスを
実現するまでの道のり
64