ア メリカ Cleveland Clinic(`11)

アメリカ Cleveland Clinic(田中研 ) 留学
レポー ト
4 回生
後藤健太郎
私は、8/17∼10/21 の間、マイコースプログラムを利用してアメリカのクリーヴランドにあるクリーヴランドク
リニックへ留学に行きました。
時系列順にレポートを書いていきたいと思います。
◎日本出国前
2月頃に武田先生の元を訪れ、留学先としてクリーヴランドクリニックの田中先生の研究室を紹介していただ
き、2か月のインターシップをすることとなりました。
準備としては以下のようなことをしました。
①研究室配属
実験の研鑽を積むために3月から直前まで放射線生物センター内の高田研にて研鑽を積みました。高田研は、
教授の高田先生だけではなく研究室全体が和やかな雰囲気で、楽しく実験に通うことが出来ました。また、放射
線生物センターには、English Speaking Club のような物があり、3回ほど参加させていただきましたが、英語
に多少なりとも慣れることが出来ました。
②病院へ出す書類類の作成
CV と Essey を書く必要があります。CV とは、履歴書みたいな物です。が、日本の物とは違い、デザインも
自分で考え(といっても google で「CV design」など検索をかければ参考になる物が出てきます)、かなりの自己
アピールが必要となります。これらは、田中先生にかなりの添削をしていただきました。
また Reference といって自分を推薦してくれる人を3人選んで、その人の住所、メールアドレスなどを提出し
なくてはなりません。私は武田先生、高田先生、高校の時の担任の先生の3人を選んで書きました。
それから、インターネットで病院への Online Application をしなくてはなりません。1時間ほどで終わります。
最後に受け入れ証明書のような物が出てきますが、印刷しておきましょう。私の場合は、これで命拾いをするこ
とになるのですが、また後ほど。
あと、HealthCheck の予約をとらなければいけません。日本から電話をかけて予約するのですが、当時英語に
全く慣れていなかった私は、全く相手の言っていることが聞き取れず、大変でした。
③下宿の手配
田中先生にしていただきました。大きさ、家賃などの詳細は後ほど。
④飛行機の手配
生協で手配しました。出国時は羽田早朝発の便で、帰国時は成田着の便でした。6月中旬には安めの便がそれ
しかなかったからです。出国時は東京まで新幹線で行き、羽田空港内で1泊してから飛行機に乗りました。また、
帰国時には飛行機が遅延したせいで、デトロイトでの乗り継ぎに失敗し、帰国が1日遅れました。乗り継ぎには
3時間ほどの余裕を持ちましょう。
⑤国際学生証
日本出国前に気休めぐらいのつもりで発行してもらったのですが、絶対に必要です。日本のパスポートではお
酒を売ってもらえないことが多いです。
⑥入国審査書類など
Cleveland Clinic で Research Student として働くには、パスポートはもちろん、「J-1 ビザ」というものが必
要となります。
ここで書くのも正直恥ずかしいのですが、私はビザを忘れて不法入国しました(笑)。笑い事ではなかったので
すが。ビザを申請する際には、まず DS-2019 というものを受け入れ先の機関から発行してもらいます。この後、
本当は領事館にいって、面接を受け、それからパスポートにビザ印を押してもらうことが必要となります。(しか
も発行までに最大1ヶ月ほど必要だそうです)が、私はビザという物がいかなる物か分からず、DS-2019 をビザ
本体と思い込み、入国しました。もちろん、税関で引っかかりました。病院側から発行してもらった、受け入れ
証明書(前述)をもっていたので、日本にとんぼ返りすることなく違反金$600 をとられただけですみましたが・・・
ビザがないと、アメリカ入国時に面倒なだけでなく、旅行で Niagara などにいってもカナダに入国することも
できず、楽しみが半減してしまうので、絶対にビザをパスポートに押してもらってから入国しましょう。
⑦お金などの準備
トラベラーズチェック、現金を持って行きました。クレジットカードは、出発までに作成が間に合わず、到着
後国際郵便で実家から郵送してもらいました。
実際に暮らしてみると、トラベラーズチェックは下宿ですら受け取ってもらえず、$50,$100 紙幣はスーパー
で使うと異様なほどの確認をされるなど、アメリカは本当にカード社会なのだと言うことを実感しました。トラ
ベラーズチェックは本当に「もしものため」ぐらいの気持ちで持って行くと良いと思います。
また、クレジットカードの発行には1ヶ月ほどかかるので、前もって準備しておきましょう。クレジットカー
ドさえあれば旅行の際にバス、野球のチケットなどの予約も簡単です。絶対必要です。
後述しますが、銀行口座を開いたら Debit Card も有効です。ただ、銀行口座を閉める直前には使わないよう
にしましょう。
◎向こうに到着してから
①職場の様子
研究室は、Clinic 内の Lerner Research Institute という研究施設内の2F にあります。
ボスの田中先生を含め3人(田中先生と Michael と Anya)と、小さなラボです。
田中先生は京大医学部出身の元外科医の先生で、とても気さくな先生です。
非常に過ごしやすいラボだったように思います。
↑ラボ内の様子。私たちの研究室に与えられたスペースは左の写真3つ分である。
非常に開放的なラボだったので、隣の Eain さんの研究室の人たちにもお世話になりました。特に日本人スタ
ッフのまささん、そして大学を出たばかりのクレッグ君にはご飯に連れていただいたりとてもお世話になりまし
た。クレッグはあと1,2年ほど研究室に居てから大学院に進むそうですが、ワンピース、鋼の錬金術師、デス
ノートなどが大好きなアニメファンなので、なにかお土産を持って行くと喜ぶでしょう。
研究の内容としては、癌遺伝子に関する研究ですが、2ヶ月では研究のコアに関わる部分には携われないので、
私に与えられた2ヶ月間の課題は、「研究のための実験材料の構築」でした。具体的には、GFP 発現ベクターの
制作、ShRNA 発現ベクターの作成、染色体転座部位のシーケンスです。
基本的には制限酵素を扱えたり、PCR、DNA 抽出・精製、細胞培養、細胞への Plasmid 導入など一通りの実験
手技に慣れていれば何の問題もないと思います。
研究室での1日ですが、朝9時出勤で基本的には夕方5時で人はほとんどはけてしまいます。夜7時までやっ
ていることもありましたが、そういうときはだいたい実験が失敗することが多く、遅くまでやるのが能じゃない
と思いましたし、田中先生もそうおっしゃっていました。
昼飯は、各自が実験の合間に個人個人でとる感じでした。病院内の食堂、マクドや Subway などで食べていま
した。ここの研究室はみんなでたべるという風習はあまりないようです。ずっと本を読んでました(笑
←Lerner Research Institute にある食堂の様子
また、実験の空き時間には英語力向上のために田中先生に勧められて病院内でのセミナーを聞きに行ってまし
た。英語力不足のため本当にに分からないものもありましたが、今となってみれば良い経験になったのではない
かと思います。
それから、病院内には W.O.Walker Center という建物の中にプールを備えたスポーツジムがあるので、利用
すると良いでしょう。無料です。Clinic 関係者にのみ与えられた特権です。
②下宿の様子
The Alcazar 外観。1920 年代の建物。
下宿は田中先生が手配して下さいました。The Alcazar という所です。ホテルから自転車で 10 分ぐらいだっ
たと思います。Cleveland に配属される人は、来年以降も同じ所になる可能性が高いと思います。Case University
に行っている2人は2人部屋でしたが、僕は1人部屋でした。
最初入ったとき、宿舎と言うよりはホテルだな、と思ったのを記憶しています。残念ながら写真は取り損ねて
しまったのですが、「ヨーロッパのアンティークなホテル」をイメージしてもらえればいいと思います。
1,2週間に1回は掃除が入りますし、きれいな部屋であまり不自由することはなかったです。ただ、1人部
屋は2人部屋に比べて料理器具の数が少なく、包丁はパンきり包丁しかないなど料理器具に関しては多少衝撃で
した(笑。
食材は、ホテルの目の前に Dave’s Market というそれはそれはとてもアメリカンなスーパーで買ってました。
スーパーのそばには、Subway があって(夜 10 時頃までやってました)、自炊する気がないときはそちらに行って
しまうことが多かったです。
通学に使う自転車はどうしたかというと、なんとロードバイクを先生が貸して下さいました(ちなみに Case
University に行っていた森田君は中古の自転車を自分で買っていました)。鍵は日本から持って行きました。
Cleveland は結構朝晩雨がよく降るイメージがありました。向こうの人は傘差し運転とかしないのでレインコ
ートとか持って行ったらいいんじゃないでしょうか。向こうでも買えると思いますが。ちなみに僕は結局傘差し
運転で乗り切りました。が、周りのアメリカ人はそんな事をしないので非常に恥ずかしかったです。
向こうに行ったら予想以上に暇です。日本からこちらに来た3人は、非常に個人主義な奴らばっかりだったの
で、おのおのがおのおのの行動をとっていましたが、僕はバイオリンを弾いたり(日本から持って行きました)、
日本や海外にいる友達とスカイプ(ホテルには無線 LAN がついています)したり、2人部屋にいる同級生とだべ
りに行ったりしていました。
ホテルにはラウンドリーがあります。(乾燥機付きです)3人で洗剤を買って使っていました。ただ旅行に行く
時には洗濯が出来ないので、日本から洗剤の小分けになった粉パックを持って行くといいかもです。
ラウンドリーで思い出しましたが、向こうは案外寒いです。日本より1ヶ月早く冬が来る、と例えたらわかり
やすいでしょうか。厚めのものを持ってゆくとよいでしょう。
気になる家賃ですが、月 1200$、オプションとして朝食が月$50 です。朝食はパンとコーヒーみたいな簡単な
物なので、自分で作った方がいいかもですね。
③事務手続き
基本的にラボの秘書 Rosemary さんから言われたとおりにやっておけば問題ないですが、事前に知っておいた
方がよい物をあげておきます。
我々Cleveland Clinic で働く Research Student はサラリーとして時給8ドルをもらうことになっています。
(だからビザが必要なんです!!)そこで、銀行口座を開かなければなりません。銀行は、病院内にも支店のある
「Key Bank」を選びました。
また、Health Check を受けた後、病院の人事部(Human Resource)、そして Lerner Research Institute の事
務部にて簡単な面接があり、いくつかの書類に記入する必要があります。
これらの手続きはそんなに面倒ではないのですが、どちらも Social Security Number と言う物が必要になり
ます。(注:入国して1,2週間してからでないと発行されません)そのために Social Security Office に数回行く必
要がありました。病院から一番近い Social Security Office は、黒人の多い治安の悪い所にあるので、一人で行
くのであれば気をつけていった方がいいと思います。私は1回だけ一人で行きましたが、迷子になったあげく黒
人におそわれました。また、Office 内でも、柄の悪そうな黒人があふれているにも関わらず爆睡したりなど嘗め
た行動をとっていましたが、良くないと思います。
帰国前には銀行の口座を閉じなければいけません。が、口座を閉める直前まで Debit Card を使って買い物を
たくさんしていた私は、Debit Card で最後に支払いをしてから数日たたないと口座が閉められないことを知ら
ず、危うく口座を放置したまま帰国する所でした。
④余暇の使い方
土日は基本的には暇ので、観光などをしました。見所を紹介しておきます。
取りあえず Cleveland 市内について。
まず、特に音楽をやっていたことのある人にとっては、ロックンロールの殿堂(Beatles 前後 10 年のバンドが
主役ですが)、世界有数の名オーケストラであるクリーヴランド管弦楽団がおすすめです。特に後者は(申し込み
をすれば)学生料金 1 回$10 で聞けるので、クラシックファンでなくても聞いておくといいと思います。
あとクラシックファンの人に言っておくと、エマーソン弦楽四重奏団も Cleveland が地元なのでよくコンサート
をやっています。ホテルから自転車で 30 分以上かかる教会(Fairmount Temple)でコンサートをやっていたので、
行ってきました。遠かったですが、30 分かけて行くだけの価値のある凄まじい演奏でした。
また同じ芸術系で言うと、クリーヴランド美術館も無料で見学出来てクオリティ結構高いのでおすすめです。
それから、美術館近くの植物園も、なかなか凝っていて良かったです。
そして、アメリカといえばスポーツでしょう。アメフト(Cleveland Browns)と野球(Indians)の試合を見に行き
ました。どちらもファンでなくても一見の価値はあります。
また、Cleveland では素敵な出会いがありました。Case University の松山先生を通じて、井下先生という、
湊先生と同期の京大医学部卒の先生にもお会いすることが出来たのです。
井下先生は Ohio 州の南端 Portsmouth
にお住まいで、Clinical hematologist をしていらっしゃいます。井下先生には、ご自宅に招待して頂いただけで
なく、サウスポーツマスの病院にて勤務中の姿を見せていただき、学生時代のお話、アメリカに渡られてからの
体験談など貴重なお話を伺うことが出来ました。
それでは、Cleveland 以外の街について。
この機会を逃してはもったいないと言うことでアメリカ国内を飛び回りました。特に実習期間の最後の1週間弱
は先生からお休みを頂き、東海岸を巡らせて頂きました。本当にありがたいお話です。
廻った街について寸評をつけておきます(順不同)。詳しい解説は「地球の歩き方」に譲ります(笑
Detroit:荒廃していました。特に私が行ったのが日曜だったので、
唯一の観光の目玉 GM 本社も休業しており、何もすることがなかったです。
Las Vegas:まるで遊園地のようでした。複数人でわいわいした方が楽しい街です。
見る所が多すぎます。
Ground Caynon :ベガスからバスで行ったのですが、バスの中でおなかを壊し悲惨でした。
しかし絶景でした。
Niagara:ビザに不備がある私はカナダ側に渡れませんでした。感動的です。比較的近いです。
Chicago:芸術的な街でした。夜景がきれいすぎます。毎正時の夜の Buckingham Fountain は見るべきです。
New York:東京みたいにごみごみした街でした。見る所が多すぎます。
ミュージカルと MoMA は是非行きましょう。
Boston:古い町並みがきれいです。Harvard
University が威厳があって良かったです。
Washington:日帰りでせわしなかったですが、ここも見る物が多いので1泊をおすすめします。
Philadelphia:大阪みたいな賑やかな街でした。建国記念のモニュメント群が印象的でした。
1泊しかしませんでしたが、もう少し居たかった街の一つです。
Pittsburg:マットレス美術館とゴンドラは一見の価値ありですが、日帰りでオッケーだとおもいます。
Portsmouth:観光で行く所ではないですが、井下先生のお宅は超豪邸でした。
Chicago へは Amtrak、Las Vegas へは飛行機、あとはほぼ長距離バス(Greyhound,Megabus)を使いました。
Cleveland 近辺や東海岸の街巡りには Mega Bus をおすすめします。
また、Las Vegas に行ったときに思ったのですが、もし、飛行機を使って旅行に行くなら、とにかく予約を早
くするべきだと思います。直前に飛行機をとったため莫大なお金がかかりました。
遊びに行くために留学に行くわけではないですが、自分だけで計画を立てて自分だけの楽しみ方ができる1人
旅は経験として貴重なものだと思います。
左:Grand Canyon 右:Chicago ,Buckingham Fountain
◎日本に帰国してから思ったこと
①日本出国前にはちゃんと英語の勉強をしてから行きましょう
是非しましょう。4年間英語に触れるのは大学の授業のみ、そして直前には何も勉強せずに行ったので、悲惨
でした。よく2ヶ月間生きて帰ってこられたと今でも本当に思っています。
しゃべる方はごり押しでまだ何とかなるのですが、最後まで聞き取りが本当に出来ませんでした。日本を出る
前に多少の勉強が必要かと思われます。
私は日本出国前、洋楽の聞き流しをよくやっていましたが、あまり良くないと思います。歌詞が結局分からな
いまま終わるからです。洋画を英語字幕で見るのが一番勉強になるんじゃないかと思います。ちなみにアメリカ
では聴覚障害者のために、テレビはすべて字幕がつけれるようになっているので、向こうに行ってからも勉強は
出来ます。しかし向こうの人の英語を話すスピードは異常に早いので、一時停止、巻き戻し出来る洋画の DVD
にかなう物はないと思います。
英語を勉強しすぎて損になることはないです。頑張って下さい。
②ビザをとりましょう
前述しましたが、絶対に J-1 ビザをとってから行きましょう。迷惑がかかります。
③向こうでは洋書を1冊ぐらいは読み切りましょう
有り余る時間を使って洋書を1冊丸々読めたのは大きな収穫だったと思います。特に僕が読んだサリンジャー
の「ライ麦畑で捕まえて」は、ホテルの近くの本屋で購入しましたが、安い価格で入手できますし、英語自体も
(スラングばかりですが)かなり平易で、内容も若いうちにしか読めないような内容なので、是非おすすめします。
◎ 感想
普段全く授業に出ない僕にとって、2 ヶ月間朝から晩まで研究室に通うというのは非常に大変なことででした
が、研究室に通うことももちろん、人生初めての留学というのも貴重な経験になりました。
留学することに抵抗を感じている人もいるかと思いますが、正直この4年間、勉強もせずだらだらしてきた僕
にとって、この4年間で最も知的に充実した2ヶ月間であったことは主張したいです。絶対に行く価値がありま
す。特に、田中先生は京大出身の先生と言うこともあって、京大生の気質を分かって下さる非常に寛容な先生な
ので、自信を持っておすすめします。
最後になりましたが、多大なご迷惑をおかけしたにも関わらず、指導して下さるばかりか、お家に呼んで下さ
ったり、帰国前ホテルがなくて困っていたところをお家に泊めて頂いたりと、こんな劣等生を暖かく迎えて下さ
った田中先生、ろくろく英語の話せない私に親身になって教えて下さった同じラボの technician であった
Michael、Anna、そして Eain の研究室の方々、日本で直前に実験を教えて下さった高田先生・高田研のみなさ
ま、そして海外留学の斡旋をして下さった武田先生に厚く御礼申し上げます。
なにか質問などあれば、後藤([email protected])まで。
一緒に Cleveland に行った伊藤君、森田君の感想文も是非参考にして下さい。
それでは。Enjoy your trip.