MLG CARGO WEEKLY DIGEST

☆
新泉地紀行
その一
熊本県人吉温泉(2)
湯老人・佐藤哲治
“人吉旅館”は駅から徒歩 5 分、球磨川に面した木造 2 階建ての人吉では歴史の古い宿である。最後の 5
分でとどめの汗をかかされたが、丁寧に掃き清められた宿の玄関前に来ると漸くほっとした気分になる。通
されたのは 2 階の客室 1 番、間取りは前室 3 畳、本間 10 畳(だったか)に床の間・ベランダ・トイレ・洗面付き
のゆったりした和室で天井高が 3.6M.もあるので開放感は抜群である。窓を開ければ球磨川の涼風が頬をな
でるはずであったが、案に相違してむっとする熱気が入ってくるので早々に窓を閉め冷房を入れて一息つい
た。1 泊 2-3 万の高級旅館であればともかく、リーズナブルな料金にもかかわらず隅々まで掃除が行き届いた清
潔でゆったりした部屋に泊まることができて感激。贅沢にも天然木をふんだんに使用した館内では木造純和
風の旅館のよさを十分味わうことができ、今時のコンクリート造りの旅館にはない風情がある。
この宿には今はやりの露天風呂がない、露天を作ると湯量や湯温の関係からどうしても無理が生ずるので
作らないのだそうだ。立派な見識である。内風呂は 1 階の中庭に面した廊下を歩いた先にある。浴室の片隅
に 3M.x8M.程度の長方形の浴槽が一つ、地下 1,500 尺(=454.5M.)より湧出した微弱アルカリ炭酸泉が掛け流
しされている。浴槽の反対側にシャワー付きのカランが並び、もう一方の窓際に上がり湯(=温泉)が流れる半割り
した木の筒がある、何の装飾もないシンプルな浴室である。湧出口で泉温 47 度の無色透明・無味無臭の温泉は
浴槽で適温、誠に入り心地のよい湯となる。何故そうしたのか分からぬが、浴槽の深さは 80CM.もある。し
かし、浴槽の片側に木のベンチが設けられており、ベンチに座って浴槽のふちにある丸木に頭をのせると寝湯の
ような形で長時間入浴が可能となり至極具合がよい。効能は飲用で胃炎・腸炎・気管支炎、浴用で神経痛・リ
ュウマチ・腰痛・肩こり・婦人病・全身機能回復・若返り等。近所の方々が入浴していたので話を聞いてみると、
「ここに近い共同湯は入浴料金 300 円(「新温泉」と同じでこれが人吉の相場らしい)でこの内湯は 500 円」
とのこと、
「しかしのんびり入浴できるので 200 円高くてもこちらに入る」のだそうである。
話は変わるが今回の旅のテーマの一つが‘鮎’、筆者は鮎料理を食べたいがために球磨川沿いの温泉、人吉温
泉と明日泊まる吉尾温泉を旅程に組み込んだのである。しかし、残念ながら筆者の期待が十分かなえられた
とは言い難い。2 軒の宿を通して塩焼き・あめだき・うるか(鮎の卵巣のしおから)
・味噌汁までは味わえた
が、背ごしや田楽は出されず、最も期待していた刺身も駄目であった。昔、奥只見・西山温泉の“滝の湯”
で初体験し、紀伊半島・十津川温泉の“田花館”で再び感動した鮎の刺身には今後いつ会えるのであろうか。
やはり事前に宿と十分打ち合わせすべきであったと反省したが後の祭り、今後はかかる失敗を繰り返さない
ようにしなければと肝に銘ずる。とは言うものの“人吉旅館”の食事は水準を超えており、熱々の牛テールなど
絶品である。確かに、癖のある川魚料理よりこちらを好む人が多いことは筆者にも容易に想像できる。
1.人吉旅館、玄関には七夕飾り
2.窓の外は球磨川
* 続く *
3.木造りの館内
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MLG CARGO WEEKLY DIGEST vol.175
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