測量士補 重要事項「撮影基線長の計算」

測量士補試験 重要事項 写真測量 「撮影基線長の計算」(Ver1.5)
撮影基線長の計算
<試験合格へのポイント>
撮影基線長の計算に関する問題を解くためには、
「撮影基線長」とは何か?と言う基本的な事柄を
理解しておく事はもちろんのこと、オーバーラップの算出式を覚えておく必要がある。
また出題年度によっては、海抜撮影高度≠撮影高度や問題に描かれている「図」も省略されてい
る事があるため、注意が必要である。
写真測量の計算問題全般に言えることであるが、
問題に沿って図を描けるようにしておくことが、
問題解答への近道となる。
(★★★:最重要事項
★★:重要事項
★:知っておくと良い)
● オーバーラップとサイドラップ ★★★
空中写真では、図化機により立体モデル(ステレオモデル)を作成するために、重複部を設ける
必要がある。この重複部のコース方向の重複を「オーバーラップ(以下 OL)
」
、コース間隔の重複を
「サイドラップ(以下 SL)
」と呼び、作業規程の準則では、OL を 60%、SL を 30%とすることを標
準としている。
サイドラップ
オーバーラップ
● オーバーラップ(OL) ★★★
f
O2
O1
s(1- p)
s
b
s/2
H
O2
O1
OL(p)
p
空中写真面
B
S
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~1~
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測量士補試験 重要事項 写真測量 「撮影基線長の計算」(Ver1.5)
O:写真主点(レンズ中心) b:主点基線長(主点距離) f:画面距離 H:撮影高度
B:撮影基線長 S:写真に写る地上距離 s:写真画面の大きさ OL:オーバーラップ (重複度(%)
)
※ 主点基線長:2枚の連続した空中写真の主点間の長さ
※ 撮影基線長:地上の(実際の)写真主点間の距離 ◆(主点基線長×写真縮尺の分母)で表される
まず、主点基線長(b)を求める式を考えると次のようになる。
b = s+s(1-p)-(s/2)-(s/2) = s(1-p)
また、撮影基線長と主点基線長には、次のような関係がある。
1
f
s b
= = = より B =bm  ① (m:写真縮尺の分母)
m
H
S
B
これより、OL を求める式を考えると次のようになる。
OL (p) =
s-B   100(%)
s
これを展開すると次のようになる。
S-B = S  OL B =S-S  OL  B =S 1- OL  ②
100 
 100 

※ 試験対策としては、上記の①と②式を覚えておけばよい。
● オーバーラップ(OL)に関する詳細 ★
公共測量作業規程によれば、空中写真の OL は、パスポイントが容易に選定できるようにするため
に、最低でも 55%を確保する必要がある。しかし、必要以上の OL の確保は、高さの測定精度を低
下させるため好ましくない。このため、主点基線長において、OL が 66~77%となるモデルは、コー
ス全体の写真枚数の 1/4 以下となるように制限している。
また、山地部等の高低差の多い地域においては、撮影基準面に対して、対象物の標高が上がると
その重複度が小さくなり、連続した空中写真に写らなくなる恐れがある。そこで、下図のように撮
影基準面に対する OL を十分考慮する必要がある。
1
2
F
O2
O1
B
山頂部が1の写真
に写らなくなる
S′
H
⊿H
撮影基準面
S
ここで、 写真に写る地上範囲(距離)を S、基準面より⊿H だけ標高の高い場所が写る地上範囲
を S′とすると、その関係は次のように表される。
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S
H-⊿H
=
S
H
…③
また、OL と撮影基線長の関係式より、基準面より標高の高い場所の重複度( OL′)と撮影基準
面の OL はそれぞれ次のように表される。
OL  

B =S   1-

100 

よって、
OL  

S   1-

100 

OL 

B =S  1-

100 

OL 

=S  1-

100 

…④
ここで、③式と④式をまとめると、次のようになる。
H-⊿H
H
=
100-OL
・・・⑤
100-OL 
⑤式により、撮影基準面に対して、山間部など高低差が激しい地域では、これ以上下回ってはな
らない最小のオーバーラップ
(OL′)
を与えてやれば、
撮影基準面に対する OL を求めることができ、
撮影計画を立てることができる。
● サイドラップ(SL)★
SL については、OL と同様の考えにより、以下の式によって表される。
SL =
S-C 100%
ここで、C は:コース間隔
S
コース間隔:C
また、コース間隔を決定するには、前式を次のように変換すればよい。
S-C   100% S-C  = S  SL
SL =
S
SL 

 SL 
C =S-S 

 C=S  1-
100 

 100 
なお、高低差のある地域における、SL についても次式のように、OL の場合同様に考えればよい。
H-⊿H
H
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=
100-SL
100-SL 
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◆ 過去問題にチャレンジ!( H17-5-A )
画面距離 15cm、画面の大きさ 23cm×23cm の航空カメラを用いて、海面からの高度 3,500m、
オーバーラップ 60%で標高 200mの平たんな土地の鉛直空中写真を撮影した。
このときの撮影基線長はいくらか。最も近いものを次の中から選べ。
1.
0.9km
2.
1.0km
3.
2.0km
4.
2.3km
5.
3.0km
<解 答>
この問題を解くためには、まず、撮影高度と画面距離の関係から写真縮尺を求め、これより写真
に写る地上の範囲(距離)を求める必要がある。これより計算された値を用いて、撮影基線長を求
めればよい。
① 撮影高度の計算
撮影高度(H)= 3,500m - 200m = 3,300m
② 写真縮尺の計算
F
1
0.15m
1
=
より、 =
M
m
3,300m
22,000
よって、この空中写真の撮影縮尺は、1/22,000 であることがわかる。
③ 写真に写る、地上の範囲の計算
写真画面の大きさが、23cm×23cm であり、その縮尺が 1/22,000 であることから、写真に写し
こまれる地上の範囲は、0.23m × 22,000 = 5,060m (一辺) となる。
④ 撮影基線長の計算
OL 
60 


B  S  1-
 より、 5,060 m   1-
=2,024m
100 
100 


よって、撮影基線長 B は、2.0 km となる。
解答:3
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◆ 過去問題にチャレンジ!( H18-5-A )
両面距離 15cm、画面の大きさ 23cm×23cm の航空カメラを用いて、オーバーラップ 60%で平たん
な土地の鉛直空中写真の撮影を行いたい。安全かつ安定して飛行できる最遅の対地速度が時速
207km の飛行機で撮影することとし、シャッター間隔が最小で4秒とすると、撮影可能な最大の縮
尺に最も近いものはどれか。次の中から選べ。
1.
1/2,500
2.
1/3,000
3.
1/3,500
4.
1/4,000
5.
1/4,500
<解 答>
この問題を解くためには、まず、飛行機の速度とシャッター間隔から撮影基線長を求め、ここか
ら問題文にある、OL と撮影基線長の関係を用いて写真縮尺を求めればよい。
① 飛行速度とシャッター間隔から、撮影基線長を求める。
飛行機
B
問題文より、飛行機の速度が 207 km/h、シャッター間隔が 4 秒とすると、その間に飛行機が進
む距離(撮影基線長:B)は、次のように求められる。
207 km/h = 207000m ÷ 3600s = 57.5 m/s より、
57.5 m/s × 4s = 230m
② 撮影基線長から写真縮尺を求める。
前出の式より、b = B/m
B = (1-p)
・d・m
ここで、B:撮影基線長 p:重複度(OL)、d:写真画面の大きさ、m:写真縮尺分母。
230m = (1-0.6)× 23cm × m
m = 230m / 0.092 = 2,500
よって、撮影可能な最大の縮尺は、1/2,500 となる。
解答 1
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◆ 過去問題にチャレンジ!( H20-5-D )
図5-2は、平たんな土地を撮影した一対の等高度鉛直空中写真を、縦視差のない状態で同一平
面上に並べて置いたものである。双方の写真には共通の地物Aが写っており、主点p及び地物Aの
間隔を計測したところ、図5-2のとおりであった。この写真のオーバーラップはいくらか。最も
近いものを次の中から選べ。
ただし、撮影に使用した航空カメラの画面の大きさは 23cm×23cm とする。
右写真
左写真
30cm
p
p
A
25cm
A
図5-2
1. 73%
2. 75%
3. 78%
4. 80%
5. 83%
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<解 答>
主点基線長から空中写真の重複(オーバーラップ:以下OL)を求める問題である。
まず、主点基線長の式 b = s(1-p) を変換して、
OL (p) =

  100( % )
s-b
s
ここで、b:主点基線長(主点距離)s:写真画面の大きさ OL:オーバーラップ (重複度(%)
)
上式に問題文の数値を代入すると、次のようになる。
( 30 cm -25cm )
b
OL (p) = 1-  100( % ) =1-
 100 % ≒ 78%
s
23cm
主点基線長とは、隣接する一組の空中写真を図のように、互いに移写した場合の主点間(p1p2)
の平均値を言う。
右写真
左写真
p1p2
p1p2
p1
p2
p2
p1
A
A
問題文より、縦視差の無い状態であるため、主点基線長は主点間の距離(30cm)から、目標物A
の間隔(25cm)を引いた値(5cm)である。
よって、写真のOLは、78%となる。
解答 3
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◆ 過去問題にチャレンジ!( H20-5-D )
<No16:写真測量>
次の文は、デジタル航空カメラで鉛直方向に撮影された空中写真の撮影基線長を求める過程につ
いて述べたものである。 ア
~
エ
に入る数値の組合せとして最も適当なものはどれか。
次の中から選べ。
画面距離 12 ㎝、撮像面での素子寸法 12μm、画面の大きさ 12,500 画素 × 7,500 画素のデジタ
ル航空カメラを用いて撮影する。このとき、画面の大きさを ㎝ 単位で表すと
イ
ア
㎝×
㎝である。
デジタル航空カメラは、撮影コース数を少なくするため、画面短辺が航空機の進行方向に平行と
なるように設置されているので、撮影基線長方向の画面サイズは
イ
㎝である。
撮影高度 2,050m、隣接空中写真間の重複度 60%で標高 50mの平たんな土地の空中写真を撮影
した場合、対地高度は
ウ
mであるから、撮影基線長は
ア
イ
ウ
エ
1.
9
15
2,000
1,000
2.
9
15
2,050
1,025
3.
15
9
2,000
600
4.
15
9
2,000
615
5.
15
9
2,050
615
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エ
mと求められる。
~8~
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<解 答>
デジタルカメラの画素寸法と基線長の計算に関する問題である。以前は、別々に出題されていた
が、まとめた問題となった。画素に関しては、単位に惑わされず順番に解答すればよい。また、撮
影基線長については、オーバーラップの算出式を覚えておく必要がある。
ア~エについて考えると、以下のようになる。
<画素寸法に関する問題>
ア:1 画素のサイズが、12μmであるため、12,500 画素 × 7,500 画素の写真サイズは、
12×10-6 × 12,500 = 0.15m = 15 ㎝
12×10-6 × 7,500 = 0.09m = 9 ㎝
よって、15 ㎝ × 9 ㎝ となる。
※ 1μmは、0.000001m(1×10-6)である。
イ:アの解説による。
<撮影基線長に関する問題>
ウ:撮影高度 2,050m、標高 50mであるから、対地高度は 2,050- 50 = 2,000mである。
エ:撮影基線長の計算は、以下による。
⑤ 写真縮尺の計算
1
0.12m
1
F
≒
より、 =
16,666
2,000m
m
M
よって、この空中写真の撮影縮尺は、約 1/16,666 である事が解る。
⑥ 写真に写る、地上の範囲の計算
写真画面の大きさが、15cm× 9cm であり、その縮尺が 1/16,666 であることから、写真に写し
こまれる地上の範囲は、0.15m × 16,666 ≒ 2,500 m と、0.09m × 16,666 ≒ 1,500 m、
つまり、2,500m×1,500m となる。
⑦ 撮影基線長の計算
撮影基線長方向は、1,500mであるため、
OL 
60 


B  S  1-
600m
=  より、 1,500 m   1-
100 
100 


撮影基線長は、600m となる。
よって、正しい語句の組合せは、3となる。
解答: 3
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