エンジニアはどんなリーダーになるか? Engineering Leadership

エンジニアはどんなリーダーになるか?
Engineering Leadership
10月12日 九大生よ、リーダーになろう
特講 Let’s be a leader
横浜市立大学 ヨコハマ起業戦略コース
特別契約教授 トニー・チン
E-mail: [email protected]
Twitter: @TonyChin
1
Tony Chin略歴





1963年生まれ 台湾系アメリカ人 トライリンガル
1985: UC Berkeley 電子情報工学部卒業
20代~30代初期: IC設計エンジニア、アプリケー
ションエンジニア、チームリーダー等を経験
その後: 経営、起業、ベンチャーキャピタル、ベン
チャー企業の役員等
技術コンサルティング会社(半導体設計、組み込み
プログラミング等)
2
素朴な疑問

iPhoneやGoogleを生み出すシリコンバレーの秘密
はあるのか?

日本の技術は優れていると言われているが・・・

本田宗一郎、松下幸之助、盛田昭夫のようなすぐれ
た技術者系リーダーはもういないのか?
3
技術者系リーダーが多いシリコンバレー






Cisco - John Chambers (現CEO)
HP - Bill Hewlett/Dave Packard (創立者)
Intel – Andrew Grove (CEO/創立者)
Google - Eric Schmidt (現Chairman)
Twitter – Jack Dorsey (CEO/創立者)
Apple – Steve Jobs (現CEO/創立者)
※ 全てベンチャー企業としてスタートした会社
4
エンジニアのリーダーシップ教育

今まで

試行錯誤・経験から





例: Hewlett PackardのHP Way、Intelの社風
個人の努力、メンターリング、局所的なトレーニング等
MBAや経営学から
多くの失敗例、失敗した企業、製品から学ぶ
現在

工学部でリーダーシップを学べる大学が増えている。




例: MIT、Stanford、UC Berkeley、Duke等
例: UC Berkeleyは5年制の工学+経営学の学位を用意
イノベーションで国力を付け様としている表れ
1月18日 Cynthia Daiさんの講義について
5
エンジニアリングに必要なリーダーシップ
MITのBernie Gordon教授から:
1)リスクの評価とリスクを冒しても実行する・・・
不確実性の中で判断を下す能力
2)色々な障害の中、危機感を持ち(a sense of
urgency)目標通り仕事を仕上げる能力
3)柔軟な考えと工夫を創りだす能力
4)チーム・部下への信頼&忠誠心を勝ち取る能力
5)周りを巻き込む能力
6)将来を見通せる能力
6
The HP Way

従業員・現場の人間の知性・独立性を重視、それまでのアメ
リカ経営スタイル(階層的)から大きく変革・・・リーダーをそれ
ぞれの現場で育てる・・・中央政権的なリーダーシップの反対
We have trust and respect for individuals.
我々は個人を信用し、尊重する
We focus on a high level of achievement and contribution.
我々は高いレベルの達成と貢献に集中する
We conduct our business with uncompromising integrity.
我々は仕事を妥協無しの高いレベルでの誠実性で遂行する
We achieve our common objectives through teamwork.
我々は共通した目的にチームワークにて達成する
We encourage flexibility and innovation.
我々は柔軟性とイノベーションを推奨する
7
The HP Wayの多大な影響力

実施した当時では画期的だった制度










上層部の特別駐車場、食堂等廃止(平等精度)
フレックス勤務(タイムカード等の廃止)
プロフィットシェア
ストックオプション
自社株購入プラン
ジョブシェアリング
会社による奨学金・学費ローン
CSR
カジュアルフライデー
産休・サバティカル等
8
Intelのリーダーシップと社風

結果主義


“Only the paranoid survives” Andrew Grove
極端な心配性しか生き残れない



危機感
いつでも呼び出し、ポケベルカルチャー
“Constructive Confrontation”
上下に関係なく、強烈に議論・討論する事


Management by Objective (MBO)
数値化した目標設定
One on One 個別面談
リーダーは社内から叩き上げ
9
Appleの略歴









1976 Steve Jobs+Steve Wozniakが会社設立
1983~1993 ペプシ社からJohn Scullyを社長として
迎える
1985~1998 JobsはAppleを去りNeXTを設立
1987 Apple Newton開始
1998 暫定CEOとして戻る、建て直しを行う
2001 初代iPodをリリース
2005 MotorolaとROKR E1をリリース
2005 初代iPhoneの開発スタート
2007 初代iPhoneをリリース
10
25年前頃にAppleで見た大きな落書き
“Innovate or Die!”
変革するか、死ぬか!
“True artists ships”
真のアーチスト(エンジニアの事)は出荷をする
11
そもそもエンジニアの仕事とは?

何らかの自然科学がベース




例: 電子工学 ⇒ 物理と化学等
例: ソフトウエア工学 ⇒ 応用数学
解決する課題、目指すべきゴールを設定
ゴールに向かって相反する条件、設定などの中から
最適な答えを出す(製品を創り出す)
※ 情報や電子工学は技術革新のペースが速いので使える技術・手法も
日々変革している
12
科学(Science) vs. 工学(Engineering)
参考: Tony Hoare 、Man of Science
科学
工学
長期的
短期的
理想(真理)
妥協
確かさ
リスク
完璧
適切
一般性(普遍)
特殊性
分離・識別
融合
統一性
多様性
独自性
成功事例
形式的
直感的
正しいか?
使えるか?
13
相反する条件、複雑な状況から最適化
限られた開発日数(納期)
処理スピードは速く
部品・組み立てコストは安く
Appleらしさ、デザイン哲学
筐体(薄く軽く強く)
電池は長持ちが良い
iPhoneに求め
られる要素
アプリ開発環境
不具合・バグの
回避
画面の特性
世界中で繋がる
電波仕様、しかも
アンテナは内部に
タイムリーに決断、情報が揃わない場合が多い
14
実例:iPhon4 アンテナ問題 (2010年6月)
筐体がアンテナの斬新な
デザインがあだに・・・
Appleの取った対応策:
① 初期の顧客への
対応:バンパー配布
② 中期的対応:
フレームに特殊
コーティング
15
初代iPhoneの取った莫大なリスク (2005)





巨額が資本が動き、規制も多い、既得権者の多い通信業界
に乗り込む
技術経験が無いに等しい無線通信、クライアント・サーバー
プログラミング、精密化等に挑む
全く異なる世界の通信事情・業界で一気に流通させる
Google Mapなど他社のサービスも取り込むチャレンジ
失敗すればブランド力、成功しているiPodの売り上げに多大
なダメージ
更に・・・Steve Jobsはすい臓癌の摘出手術から復帰したばかり
16
リスクを回避する為に検討した事 (2005)


パソコンの次に大切になる分野はPDAではなく、
スマートフォンだという確信
過去の失敗例を研究






Newton (1987)
Motorola ROKR E1 (2005)
Palm等、その他多数
ユーザーの求めている事を追及
各国で携帯キャリヤ一社に絞った
チーム編成
17
Apple Storeのエンジニアリング





2001年から開始した直営店、それまでは量販店以外に直
販は電話・インターネットのみだった
Cupertino本社近くに巨大倉庫を借り、約20種類の店舗の
プロトタイプを作り検討した
経営陣自らストアスタッフや顧客を演じ「ショップ体験」の最適
化を行った
高級ホテルのコンシェルジェが大きなヒントとなった
全ては9ヶ月費やした
製品は単なるハードウエアとソフトウエアの固まりでなく、顧客の感じる体験
18
最新のiPhone4
エンジニアリングチャレンジ

ハードウエア







設計は全てApple
心臓部のプロセッサのベースは英国製のARM社のARM Cortex
Apple独自の回路を加えた、A4プロセッサ
A4プロセッサは韓国のサムスンが製造
メモリー等はサムスンから調達
最終組み立ては台湾Foxconn社の中国工場
ソフトウエア





設計は全てApple
オペレーティングシステム、iOS
ウェブブラウザー、Safari
システムソフト、iTune
アプリの開発環境
Appleの行ったすり合わせ:
プロセッサ周りのカスタマイズ
OSとブラウザーのチューニング
システム関連のグランドデザイン
各国携帯サービス会社との連携
19
シリコンバレーエンジニアのリーダーシップ
まとめてみると・・・







危機感を持ち、常にタイムリーに遂行する
不確実性の中で決断(ミクロとマクロの視点)
失敗、経験、他社、異業種から学ぶ
クリエーティブな問題解決
他社をまとめる力、影響する力
市場の要望を読む力、先を読めるリーダーシップ
全体を見渡せる能力
20
シリコンバレーのエンジニア達

仕事を通して評価されたい









エンジニアリングは創造的な仕事、我々はアーチスト!
いずれは社長、起業家、リーダーになりたい
お金持ちになりたい
歴史に残るヒット商品・ビックプロジェクトに参加したい
技術力を極めると同時にビジネスセンスも磨いている
時代や技術の変革に敏感
HP, Apple, Intelなどのbest practiceから学んでいる
リスク(責任)を取る人(リーダー)は報酬が高い
リーダーシップは学べる
21
日本はどうなのか?

個人の技術者・科学者のレベルは高い

目先の仕事に集中しがち、全体・他人の仕事を見ていない
(職人気質? 良い仕事をすれば評価されると思いがち)

グループになった場合の結果が出せていない(会議ばかり)


Engineering by committee
足算的考え方

マネージメントとリーダーシップの問題

特徴を生かし、世界に挑むネタは多数ある
22
現代の技術系リーダー達







浮川和宣 ジャストシステム
伊藤穰一 クリエィテイブコモンズ、デジタルガレージ
井口尊仁 トンチドットコム
高島秀行 クリック証券
田中良和 GREE
坂口亮 Digital Domain, 2008 アカデミー賞受賞
伊藤正裕 ヤッパ(17歳で起業、現在27歳)
23
皆さんにチャレンジして欲しい事

危機感を持って行動

タイムリーに決断する習慣

問題の本質を見極めて決断する

自分から変革を選ぶ
24
Change Leadership – John Kotter教授
8つのステップで変革








緊急テーマの周知・認識 Urgency
最適なチームの編成 Coalition
ビジョンの策定 Vision
組織の隅々までビジョンの伝達 Communication
社員へのビジョン達成へのサポート Empowerment
短期的成果をあげる(小さな成功) Momentum
成果の共有と更なる変革 Integration
新しいアプローチの定着 Anchoring
※ それぞれのステップをお料理本のように辿れば良いだけではない。
各ステップはそれぞれ細かく、状況に応じた対応・考え方が必須
25