30P-am017

30P-am017
ヒトおよびラット血清中に観察される糖タンパク質由来遊離型糖鎖の解析
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◯渡部 沙木絵 1 ,
能登 啓介 1 ,
木下 充弘 1 ,
掛樋 一晃(
近畿大薬)
【緒言】我々は血清中の糖タンパク質糖鎖の疾患あるいはエイジングマーカーと
しての可能性について検討してきた。その過程で、血清中には糖タンパク質由来
の遊離糖鎖が微量に存在することを発見した。本研究では、ヒト及びラット血清
中の遊離糖鎖を順相 HPLC および質量分析を組み合わせて解析するとともに、健
常者及び癌患者血清の比較、ラット血清中遊離糖鎖のエイジングによる質的・量
的変化を追跡した結果について報告する。
【方法】血清試料:インフォームドコンセントを得て採取された健常者及び癌患
者血清、3∼15 週齢の Wistar 系ラット血清を用いた。糖鎖分析:血清を限外ろ過に
より脱塩後、逆相カートリッジを用いる固相抽出法によって脂質除去し得られた
遊離型糖鎖を 2-アミノ安息香酸(2-AA)により蛍光標識し、順相 HPLC と質量分
析を組み合わせて解析した。
【結果・考察】ヒト及びラット血清中の遊離糖鎖を解析した結果、N 型糖鎖由来
の還元末端にキトビオース構造を持つジシアロ複合型 2 本鎖糖鎖が全遊離糖鎖の
約 45∼60%を占め、アシアロ、ジシアロ、トリシアロ糖鎖も観察された。また、
ヒト健常者及び癌患者血清を比較すると、ジシアロ 2 本鎖糖鎖を主とする点では
共通であったが、肝癌患者では総遊離糖鎖量は健常者よりも低く、約 30%であっ
た。一方、ラット血清中の遊離糖鎖は加齢に伴い、ジシアロ 2 本鎖糖鎖量が増加
する傾向が観察され、またシアル酸の O アセチル体を持つ糖鎖の存在比が増加し
ていることがわかった。今後、エイジングマーカーとしての観点からもラット血
清中遊離糖鎖の加齢に伴う変化について解析していきたい。