13号 - カンボジアの子ども達の教育を支援する会

№13
カンボジアの子ども達の
教育を支援する会
2014 年 8 月 1 日
The Society of Educational Support for Children in Cambodia
◆三現のチャンス◆
本会理事
広畑 伸暁
SESCCが発足して7年、チャリーティフォーラム、ラウンドテーブル、総会で、多くの実践や貴重な体験談を聞
くことができました。そしてカンボジアの子ども達が「3つの願い~感謝、親孝行、勉強~」を持っていることを聞く
たびにカンボジアへ行きたいという思いがつのるばかりでした。念願かなって2回ほど三現(現地に行き、現物に触れ、
現地の人と語る)のチャンスがやってきました。カンボジアといえば世界遺産アンコール・ワット、暗黒のポルポト時
代、メコン川、雨季と乾季の国であるということぐらいしか知らなかった私です。2007 年 11 月10日の朝6:00、
遥か水平線にカメラを向けながら首都プノンペンを流れるトンレサップ川のほとりを歩いています。太極拳を演じてい
る老若男女、早朝散歩、ランニングをしている外国人、手を組みながら歩いているカップル、ごみ拾いをしている子ど
も達、サッカーに興じている子ども達、川魚を売っている婦人・子ども、これがプノンペンの朝か、7泊8日どんな風
景に出会うことができるだろうかと思い巡らしながら、小中高等学校、施設、大学等を訪問しました。黒い瞳を輝かせ
話に身を乗りだしてくる子ども達、休み時間になると皆ワーッと外に走り出て夢中に遊ぶ子ども達、
「皆さんの旅が安全
で無事日本に帰られますようにお祈りしています」と手を合わせてくれた女子中学生、民間の学校を訪問したとき「お
帰りなさい」と飛び出してきた日本語が堪能で日本大好きな女性、車の往来の激しい道端で上半身裸で遊びに夢中にな
っている子どもたちを笑みを浮かべながら見守っている父親たちに出会いました。そして、会の活動の一つであるホー
ムステイを4年間経験する中で、彼らが日本に来たい理由として(多少お飾りの面も見られるが)
、日本の文化や歴史が
素晴らしい、日本人は優しい、日本には最先端ハイテク産業、大きな企業が多く将来日本で働きたいなどと話してくれ
ました。また彼らが母国カンボジアを誇りに思う礼儀正しい若者であると実感することができました。我が家にホーム
ステイした男子大学生が帰国の際に感謝の気持ちを残した手紙を発見し胸が熱くなり、今でも家族で「彼はどうしてい
るだろうか、30歳を過ぎ家族や会社を背負う青年になっていることだろう」と思いを巡らしています。
三現で学んだことは、カンボジアでは子どもを取り巻く教育環境や条件が決して恵まれていないことです。しかし、
子ども達は大声で笑い良く遊ぶ、勉強好きで、兄弟の仲が良く家のお手伝いをします。これからもSESCCの一員と
して、楽しんで勉強できる環境づくりに取り組み子ども達が「3つの願い」を実現していけるように、そして、カンボ
ジアと日本の架け橋となる若者が誕生するように支援できればと思います。
もう一つは、
「日本の子どもの現状」についてです。プノンペン訪問から5、6年経過し、カンボジア(プノンペン)
も経済発展がなされ若者の生き方も大きく変化してきていると聞いています。私はカンボジアの子どもの姿(かっての
日本の原風景)を見て、子どもは遊びの天才であり、知恵者であり、
そして遊びは子どもを無我夢中にさせ健やかな体をつくり生きてい
くためのルールや思いやりを培うものであると確信し、日本の子ど
もを捉える視点の一つにしてきました。現在小学校に勤務して、子
どもの様子を見ると、遊ばない、話さない、奇声を発する、言われ
たことが分からない子どもたち、その背景に何かが起こっているの
ではないかと思えてなりません。会員の皆様と語り合い、知恵を出
し合い、子どもにとって「行きがい」
「居がい」
「やりがい」のある
空間を創り出して行ければどんなに素晴らしいかと思っています。
「皆さんが無事日本に・・・」と言ってくれた女生徒
~第5 回チャリティフォーラムのご報告~
「カンボジアの今 -見て 聞いて ふれあって-」
◆質問、意見など
〇写真でカンボジアの変化について初めて知った、今後支援の在り方も考えたいと思う。このような活動を広げる方法は?
2014 年 4 月 13 日(日)、福岡市中央区の福岡市立婦人会館(あい
◆前田志津子会員からの話題の要旨
→若者に関わって欲しいと思う/日本の大学生にもカンボジアの現状を見てほしいと思う/支援をしている側も忍耐強さを持つ必要
れふ)で、『カンボジアの今―見て聞いてふれあって―』というテーマで
カンボジアの生活と教育事情について:フルーツが豊富でよ
横山正幸代表と前田志津子会員からの話題提供のもと、チャリティ・フ
く食べられている。また、熱い鍋料理もよく食べられている。地
ォーラムを開催しました。皆さんからたくさんの質問やご意見をいただ
方によっては食用蜘蛛の佃煮が名物になっているところもあ
→カンボジアの小学校 5、6 年生に画用紙とクレパスを渡して、絵を描こうといってみると全く描けなかったのは、体験がなかった、
きとても充実した会となりました。またチャリティ・フォーラムと並行して
り、驚いた。近年、プノンペン市内には若者が好むような洋食
教育をしなければいけない/プノンペンに孤児院の子どもたちが壁に絵を描いたフランス系のレストランあるが、とても素晴らしか
バザーも開催し、たくさんの人にご協力いただきました。(田中孝知記)
の店が増えてきている。しかし、高額なため利用する階層はま
った、指導者がどうかかわるかがとても重要。
だ限られているようだ。バイキングのレストランも増えてきてお
がある。
〇カンボジアへ行き、自由な美術がポルポト政権でなくなったことに興味を持った。美術などもきちんと教えたいと思うがどう思うか?
〇幼児教育の環境は厳しいと聞いたが実際の教育はどうか?
◆横山正幸代表からの話題の要旨
り、食材も豊富になってきている。車事情も変わってきた。昔
→幼稚園は砂場なども何もなく、幼児教育もカリキュラムはない。しかし教員養
最近のカンボジアについて:カンボジア王国は、人口が 1462 万
はガソリンスタンドでドラム缶から直接車に給油したり、ペット
成学校付属の幼稚園では日本のような教育が行われている/私立の幼稚園
人で、半数が20歳以下。一人当たりのGDPは世界158位で1.016
ボトルに入れたガソリンを道端に並べて売っていたりしてい
もあり、年 1 万ドル近くかかるが、欧米のような教育が行われている。
ドル(日本は 38,491 ドル)。経済成長率は 7.2 パーセント。日本の
た。最近では立派なガソリンスタンドが増えてきた。信号もでき
1 年で 5 年分も発展しているような感じを受ける。今、プノンペンで
てきた。しかし、一台のバイクに 6 人、乗用車には 10 人乗って
生活するには月 300 ドルは必要。でも、教員の給料は 100 ドル以
いたりすることもまだ珍しくない。村の小学校には遊具などな
下。暮らしていけないほど厳しい。就学率は小学校では 98 パー
かったが、国立幼稚園教員養成学校の幼稚園の園庭には立
セントだが、卒業は 52 パーセントしかできない。近年、高層ビル
派な遊具があり恵まれていた。伝統舞踊アプサラダンスを子
がたくさん建ってきているが、その一方掘立小屋のような家も少な
ども達に教え、それを観光客に見せて収入源としている孤児
くない。日本円で 2000 万円クラスの一軒家に住む人も現れてい
院もある。カンボジアの子ども達の生活調査をした。その結
る。都市は目覚まし発展をしているが、メコン川は毎年氾濫し、地
果、家族思いで、先生や親を尊敬し、よく手伝いをしている子
方の人々は毎年被害を受けている。発展と同時に格差が広がり、
が多いことなどがわかった。帰国後、長崎市内の5つの小学
昨年から最低賃金の引き上げを求めるデモが続いている。このよ
校でも同様の調査をしてみた。結果としてお金や物に関する
→関わった子どもたちが育つこと、最初に関わった学生達は、第一線で活躍していたり、結婚の話を聞くと嬉しくなる/毎年1人ずつ
うな状況の中、教育現場ではまだまだ指導者の養成が遅れてい
希望が多く、家族や目上の人に対する思いは出てこなかっ
ホームステイを受け入れているが、最初の 2 人はポルポトの影響が残っていたが、年々日本のように裕福な子が出てきた、毎年
て、支援で贈られた紙芝居やハーモニカやピアニカなど使い方
た。大学生にも調査をしてみたが、小学生と同じ傾向だった。
毎年その子にあった支援をできたらいいなと思っている/このようにつながりができることもやりがい/興味がなかった学生が本会
がわからないために使われないまましまっていることもあり、今後
お金や物中心の、大人社会の価値観が、子ども達の心に反
の活動に興味を持ってくれることもやりがい。
の支援の在り方が問われる。
映しているのかもしれない。
児童図書を届ける
小学校の図書室で本を読む子ども達
〇女子の進学率はどうか?
→家族に男の子と女の子がいれば、女の子は我慢して男の子一人を進学させ
る傾向がある/最近は中間層以降の女性は先を見て進学を始めている。
活発な意見交換で盛り上がりました
〇図書教育の状況はどうか?
→図書室・図書館がある学校が少ない状況の中、日本の NGO が作ることの支援をしているが、まだまだ進んでいない。
図書館は日本のように開架していないで、しめきり、倉庫のようになっていることが大半である。
〇支援をしていることは素晴らしいしそれを継続していることがとても素晴らしい。カンボジアの状況を知ることができ一歩踏み出した
いと思う。
〇この会のやりがいは?
私達の会の主な活動内容の一つに読書教育の支援があります。子ども達が本を読む
コッ・プラック小学校では、図書室の利用を活性化するために一昨
ことは、知的な発達、情操の発達を促し、心豊かな子を育むことにつながると考えた
からです。これまで、会ではカンダル州キエンスヴァイのコッ・プラック小学校(本
う年から会としてパートのスタッフを雇用しています。スタッフの名前
は、ソクラーさん(19 才の女子大学生)です。今回、彼女の仕事の様
校)と、首都プノンペン郊外の貧困地区にある子どもの居場所「プティア・クニョム
子も見てきました。ソクラーさんは、よくやってくれています。図書
(私の家の意味)」の2ケ所に図書室をつくり、毎年、児童図書を寄贈してきました。
室に若いお姉さんがいるせいでしょう。利用する子ども達が最近では
2013 年度も 12 月にプノンペンを訪問しましたが、
この時はコッ・プラック小学校
(本
かなり増えてきているようです。また、本を借りて帰る子も多いよう
校)に紙芝居2セットを含む児童図書 184 冊を、川下のコッ・プラック小学校(分校)
です。貸出ノートには、書名と子ども達の名前がたくさん記録されて
には 177 冊を、また「プテイア・クニョム」には 200 冊の本を贈りました。もちろ
いました。ソクラーさんによると、図書室の利用者が多いのは嬉しい
んすべてクメール語で書かれた本です。プノンペンには大きな書店が2軒あります。
けれど、破れたり、紛失する本も多いので、もっともっと本が欲しい
今回寄贈した本は、その一つ PBC と、カンボジア各地で学校建設などを展開してい
とのことでした。因みにコッ・プラック小学校の児童数は、400 名を
るシャンティ国際ボランティア会(SVA)の現地事務所で調達しました。私たちはクメ
ール語が読めません。それで、本の選択にあたっては、通訳のリホーさん、かつて私
超えています。
プティア・クニョムの図書室も子ども達によく利用されています。
の家にホームステイしたレッケナーさん、ダニーさんに手伝ってもらいました。まだ、
座って一人黙々と本を読む子、寝そべって本を読む子、頭を寄せ合って1冊の絵本を見ている仲良
売られている本は、児童図書とはいっても薄い冊子のような絵本が主流です。200 冊
しの子ども達。本に向かう姿勢は色々ですが、ここは間違いなく子ども達にとって居心地の良い「私
でもスーパーの籠に2つ分程度にしかなりません。しかし、それでも以前に比べると
の家」になっています。寄贈にあたっては、持参した本の表紙を1冊1冊示しながら、子ども達に
本の種類は確実に増えてきております。クメール語に翻訳された「クレヨンしんちゃ
書名を読んで、紹介してやりました。どの子も食い入るような表情で私の説明を聞いていました。
ん」も出版されています。高学年向けの偉人伝や物語も僅かですが、棚に並ぶように
子ども達は、本が大好きです。彼らが健やかに育つためにこれからも良い本をたくさん届けてあげ
なってきました。数年前に比べると飛躍的な変化です。
たいものだと思います。(横山正幸記)
-2-
-3-
ソクラーさんと子ども達
コッ・プラック小学校で「きらきら星」を教える!
ハーモニカについて説明を聞く、興味津々の子ども達
1日目:ホテルを8時 40 分に出発し、9時半頃学校に着く。職員室で少
し先生方と懇談した後、5年生のクラスに行く。子ども達は、両手を会
わせ、笑顔で私達を迎えてくれる。みんな外国からの「お客さん」に興
味津々である。児童数は 43 名。ハーモニカの数は 30 本。全員に行き渡
らないのが残念だが、予定通り「授業」を始める。最初に「今日は、日
本からハーモニカという楽器を持ってきたこと、これを使って皆で合奏
できるようにしたい。」と子ども達に伝える。通訳は、会のプログラム
でかつて日本に来たことのあるリホーさん(女性)。祝田さんが、まず
「ドレミファソラシド」と「ちょうちょ」「きらきら星」の2曲を吹く。
次いでハーモニカの 15 穴を黒板に描き、リホーさんが、それぞれの穴の
下にクメール語でドレミファソラシドと書く。その後、吹く、吸うとド
レミ・・・・の関係を祝田さんが黒板の図を示しながら説明し、その内
容をリホーさんが通訳する。そのうえで子ども達に練習させるが、なか
なかできない。それでも「前に出て吹いてみたい人?」と問いかけると
何人もの子ども達が手を挙げる。頑張って吹くのだが、ほとんどドレミ
ファ・・・にはなっていない。どうも音階がわからないために穴との対
応づけができないようなのだ。そこで、また黒板に五線譜を書き、○で
音階を示すようにした。そして、それを指さしながら子ども達に繰り返
し、ドレミファソラシドドシラソファミレドを「合唱」させる。皆、大
きな声で楽しそうに「歌う」。最後に祝田さんと私がハーモニカでドレ
ミファソラシドを吹いた後、「きらきら星」を吹き、あと3日でこの曲
を吹けるようにしよう!」と言ってこの日の指導を終える。
昨年の6月、私たちの会は、宗像市にある赤間保育園・第ニ赤間保育園の職員の皆さんから「カンボジアの子ども達
のために」と 30 本のハーモニカ(単音 15 穴)をいただいた。そこで、2013 年 12 月のカンボジア訪問では、会が支
援している、コッ・プラック小学校にそのハーモニカを持参し、使い方を子ども達に教えることが大きな課題となった。
カンボジアの小学校では、音楽の授業がない。音楽室はもちろん、簡単な楽器さえなく、音楽を指導できる先生もい
ない。そのため高学年でも五線譜を見たことがない。せっかく支援団体からピアニカなどの寄贈を受けても、使い方が
わからず、職員室の戸棚の中に大事に保管されているというのが実情である。使い方を教えなければ、せっかくの善意
も意味のないものになってしまう。
コッ・プラック小学校では、5年生に吹き方を教えることにした。とは言っても、当初、カンボジア訪問の予定者は
私と妻・あづまの二人だけ。しかも、私自身ハーモニカを習った体験はなく、子どもの頃我流で吹いていたに過ぎない。
どうしたものか困っていたところ、大学で教鞭をとっていた時の教え子で、現在千葉県の障害者施設に勤務している祝
田千慧さんが手伝ってくれることになった。プノンペンに着いたのは、私と妻が 12 月 21 日、祝田さんが 22 日。コッ・
プラック小学校には、22 日(月曜日)、23 日(火曜日)、24 日(水曜日)、26 日(金曜日)の4日間通った。この
間、子ども達にハーモニカの吹き方をどのように指導したのか、その様子を述べてみたい。
2日目:学校に着くと、すぐに5年生のクラスに入る。子ども達は瞳を輝かせ
て待っている。この日は、私、祝田さん、リホーさんの他にスキラさんも加わ
って4人で指導する。スキラさんは、私たちが 2006 年にホームステイに招待
した最初のカンボジア人である。日本語が堪能で、元気いっぱいの女性である。
初めにドレミファを全体で何回も繰り返し「合唱」し、練習する。そのあと「や
ってみたい人?」と問いかける。たくさん手が挙がる。指名し、前に出てきて
もらい、5人で、3人で、あるいは1人で、ドレミファを歌ってもらう。終わ
ると、皆いっぱい拍手する。ドレミファが歌えるようになったところで、ハー
モニカでドレミファの音を出す練習に移る。最初は、全体で何回かやり、ある
程度それらしい音になってきたところで、また「前に出てやってみたい人?」
と問いかける。いっぱい手が挙がる。指名し、これも 5 人で、3人で、あるい
は1人で吹いてもらう。ドレミファを綺麗に出せる子もいるが、全く調子はず
れの音を出す子もいる。しかし、聞いている子ども達は、終わると大きな拍手。
聞いている子も、吹いている子も皆嬉しそう。最後に、また私と祝田さんで「き
らきら星」を合奏。明日はいよいよこの曲の練習をすることを子ども達に伝え
てこの日の指導を終える。
ハーモニカの寄贈
~ありがとうございました~
赤間保育園・第二赤間保育園の職員互助会「たのもし会」
の皆さんから、カンボジアの子ども達に音楽の楽しさを知
ってもらいたいと、今年もハーモニカ 30 本の寄贈があり
ました。ほんとうにありがとうございます。昨年いただい
たものと合せると 60 本になります。クラス全員で練習す
ることができます。12 月に現地を訪問しますので、その折
り子ども達に新しい曲を教えてきたいと思います。
横山 正幸
前に出ドレミファを吹く3人の子ども達と祝田さん
皆の前で、一生懸命ハーモニカを吹く女の子
3日目:8時、祝田さんは、スキラさんのバイクの後ろに乗り、コッ・プラック小学校に向かう。
私たちは車で出発し、9時 50 分にコッ・プラック小学校到着。スキラさん達はまだ着いていない。
時間がないので、先に教室に入り、リホーさんがまず五線譜を黒板に書き、ドレミファソラシドの
位置を○で示し、下にドレミ・・・をクメール語で書く。それを見ながら、またクラス全員で数回
発声練習をし、その後、前に出てきてやってもらう。子ども達はかなり上手にドレミファを歌うこ
とができるようになってきた。そこで、いよいよ「きらきら星」の練習にはいるために、リホーさ
んに五線譜上にドドソソララソ・・・を書いてもらう。それを見ながら皆で、繰り返し、繰り返し
練習する。そのうち、祝田さん、スキラさんも到着。ハーモニカの指導に移る。これも最初は黒板
を見ながら全体で練習。次いで数人ずつ前に出て、皆の方を向いって吹いてもらう。「やってみた
い人?」と言うと、よく手が挙がる。吹き終わると皆から拍手。前に出た子ども達はとても嬉しそ
うだ。しかし、旋律は、残念ながら「きらきら星」にはなっていない。そこで、数組目から黒板に
書いたのを見ながら吹いてもらうようにする。結果としてかなり「きらきら星」らしいものに近づ
いてきた。この調子なら最終日には、うまくできるかもしれない。最後にドドソソララソ・・・の
「キラキラ星」を「エー」「ビー」「シー」「ディー」・・・に変えて皆で元気に歌い、この日の
授業は終わった。祝田さんは、この日の夜の便で帰国の途についた。
4日目:前夜、前田志津子さんがプノンペンに到着した。前田さんは、会の
事務局メンバーの一人であるが、元は福岡教育大学付属幼稚園の先生(現在
は長崎の活水女子大学子ども学科の准教授)で、音楽・リズムの指導経験が
豊かである。力強い味方だ。学校に着くと、クラスに直行。前田さんは何度
もコッ・プラック小学校を訪れているので、子ども達とは顔なじみだ。早速
練習に入る。この日、指導するメンバーは、私、前田さん、リホーさんの3
人。初めに「きらきら星」を「エー」「ビー」「シー」「ディー」・・・で
皆で合唱する。その後、ハーモニカで全体練習。それを何回かした後、出来
る子、したい子、数人ずつ前に出てきてもらい、吹いてもらう。皆、元気に
手を挙げ、頑張って吹くのだが、なぜか「ソ」(吹く)、「ソ」(吹く)、「ラ」
(吸う)、「ラ」(吸う)、「ソ」(吹く)のところがうまくできない。中には
ハーモニカの左右を逆にして吹いている子もいる。そんな子ども達を前田さ
んが一生懸命個別指導するが、全部正しく吹けるというところまではなかな
かいかない。しかし、与えられた時間も残り少なくなっていたので最後に皆
で「きらきら星」を合奏する。結果として、不協和音も少しあったが、それ
なりに「きらきら星」らしい合奏になった。子ども達は、どの子も達成感の
喜び、嬉しさで表情が輝いていた。
前田会員のリードできらきら星を吹く子ども達
第3回日本語弁論大会の最優秀学生に SESCC 賞を贈る
コッ・プラック小学校の子ども達の生活意識調査より
「神様(仏様)への 3 つのお願い」
皆さん、覚えていますか。昨年、ニュース・レターNo.11 号で紹介した王立プノンペン大学の第二回日本語弁論
前田 志津子
大会で、3年生のソン・ソピアラー君が話した「世界をくれた妹」という記事を。それは「自分の家は、母子家
庭で経済的にとても厳しく、およそ大学への進学など考えられなかった。しかし、妹はそんな自分を励まし、早
私はこれまで「カンボジアの子ども達の教育を支援
ここでは「神様への三つのお願い」についての調
する会」の一員として、度々カンボジアを訪れています。
朝から夜遅くまで働き、支えてくれた。おかげで、大学に入り、世界について知識を得ることができた。いつか
世界をくれたこの妹に恩返しをしたい。妹を桜の咲く日本に連れて行きたい。」という感動的なものでした。本
査結果を報告します。
会は、昨年3月、西日本国際財団から「アジア貢献賞」をいただきました。その後、事務局会議ではこの受賞を
それは会の代表とともに、首都プノンペンから南東へ約
カンボジアは仏教国です。そこで、質問紙では「神
20 キロ、カンダル州キエンスヴァイ、トンボン区のコッ・
様」を「仏様」に変えて尋ねることとしました。結
記念し、ソピアラー君のような日本との絆になる優秀な学生に賞を出してはという意見が出ました。検討の結果、
プラック村にあるコッ・プラック小学校への読書教育等
果は、下図のとおりです。コッ・プラック小学校の
日本語弁論大会の最優秀者2名に SESCC 賞(本会の英語名の略称)を贈ることとしました。第三回大会は 12 月
の支援や、同校の先生・子ども達と交流するためです。
子ども達の場合、「賢くなること」「自分の健康と
28 日に行なわれました。登壇者は、予選を通過した2年生6名、3年生6名の計 12 名です。この中には、私達
横山正幸代表は、2011 年にカンボジアの中学生を対象
長生き」など自分についての願いも挙がっています
の会の奨学生である3年生のチャンダラーさんとセレイサンポーさんもいました。審査は本会の前田志津子会員
に生活意識について調査を行なっています。その結果と
が、最も目立つのは「家族の幸せ」「家族の健康」
を含む日本大使館の職員など6人で行なわれました。結果として、SESCC 賞を受賞したのは、「田舎」という題
して、①カンボジアの中学生は日本の中学生より早寝早
など家族についての願いです。「物」についての願
で話した2年生のオン・チャンポンさんと、「『お前をぶっとばすぜ』は私の心の歌」という、厳しくも優しい
起きで、睡眠時間を十分とっていること、②家庭で様々
いは出てきません。
お母さんの話をした3年生のソック・チョムラン君の2人でした。チャンポンさんの話は「カンボジアの田舎で
な手伝いをしていること、③日本の中学生に比べて、な
は女の子に教育は必要ないと考える人が多い。高校では田舎者とバカにされて泣いたこともある。
(%)
30
りたい職業選択の範囲が狭いこと、④全ての子どもが「学
校は好きだ」と答えていること、⑤先生と父親に対する
25
尊敬意識が非常に高いこと、⑥ほとんどの子どもが今の
24.6
親は1台しかないバイクを売って大学進学の学費を都合してくれた。今、
大学に入って思うことは頑張れば『田舎の子』でも未来は拓けるというこ
24.2
と。将来は、もっと世界を知り、そして田舎の子ども達に日本語を教える
20
生活は「幸せだ」と答え、その理由として⑦家族との団
らんが最も高い割合で挙げられていること、などを明ら
15
先生になりたい。」というものでした。なお、奨学生のセレイサンポーさ
10.9
かにしています。
10
そこで、今回は小学生の実態についての調査を実施し
ました。2012 年 12 月から 2013 年 3 月にかけてカンボジ
とても嬉しいことです。
(前田志津子・横山正幸記)
7.7
5
ア人材開発センター(CJCC)ボイ・ソムニアンさんの協
んは「あなたのひと言のおかげで」という話で特別賞を受賞しています。
13.7
12.9
2
3.6
SESCC 賞を手にする
0.4
チャンポンさんと前田会員
0
力を得て、生活リズム、手伝い、学校や先生に対する思
いなどに加え、「神様が三つだけ願いをかなえてくださ
る」と言われたら何をお願いするだろうか、について質
問を行いました。小学校でも中学生の調査とほぼ同様の
ソパリカさんのこと
結果が得られました。
神様(仏様)への3つの願い
横山 正幸
2010 年度~2012 年度の3年間、私たちの会が支援している王立プノンペン大学日本語学科の奨学生だったソー・ソ
パリカさんが SLE という難病で苦しんでいます。彼女は昨年7月に卒業し、CYK(幼い難民を考える会)に就職しました。
CYK は教育省と連携し、カンボジア各地で幼児教育の指導を行なっている日本の NGO です。就職して1ケ月後、突然発
カンボジア人材開発センター(CJCC)の
長崎市の小学校でも昨年、同様の調査をしました。そ
熱、全身倦怠感、脱毛、口内炎、そして両手、両足首が激痛に襲われ、歩くことはもちろん、スプーンをもって自分で食事
の結果目立つ事柄は、お金がほしい、しかも宝くじで 6
をすることもできなくなりました。昨年 12 月のプノンペン訪問の折、お見舞いに行きましたが、その時の様子はもう長く
億円当たりたい、あるいは一生困らないだけのお金がほ
はないのではないかというような状態でした。しかし、幸いその後副腎皮質ステロイド剤等の投与により持ち直し、現在
しい、というように必要なのはお金であるという思いで
は小康状態を保っています。ソパリカさんは、大学に入ったものの、家が経済的にとても貧しく、学業を諦めようとして
す。またドラエモンのポケットがほしい、なぜならば欲
いた時に奨学生に選ばれ、日本語学科を卒業することができたと一番喜び、感謝してくれていた学生です。しかもプノ
しいものが何でも出てくるから、そしてドラエモンのど
ンペン郊外の村から中古のバイクで毎日 1 時間半をかけて大学に通っていました。発症から 1 年が過ぎました。両親は、
こでもドアがほしい、どこでもドアは行きたいところに
この間、「この子を何とか救いたい」と売れるものは全て売り、医療費にあててきました。しかし、カンボジアでは、まだ
行けるから、またあるいは瞬間移動できる力が欲しい、
近代的な医療体制が整備されていません。人口 150 万人の首都プノンペンでも信頼できる病院は数ヶ所しかありませ
アニメの世界へ入りたい等、現実の社会にかかわる子ど
ん。しかも、保健制度はなく、そうした病院では簡単な検査でも 80 ドル(8200 円)、100 ドル(11000 円)とかかります。薬
も達の姿は見えてきません。
代も外国製で大変高いです。会としての活動ではありませんが、見るにみかね私自身個人的に幾分かの医療費を援助
一般に貧しさは、マイナス面が強調されますが、必ず
ボイ・ソムニアンさんと打ち合わせ中の筆者
しもそうではなく、むしろ家族の絆を強めたり、心を豊
かにする面があるのかもしれません。
-6-
してきました。ソパリカさんは、日本が大好きです。元気なら日本とカンボジアの絆になる若者です。会員の皆樣、ある
いはお知り合いでお心ある方、薬代の一部でも助けていただければ大変有難いです。
― お 知 ら せ ー
第8回総会のご案内
☆☆あなたに出来る こんなこと☆☆
◎会員になる
日時:2014 年 9 月 20 日(土)
年会費 3,000 円を下記の郵便振替口座に払い込むと会
員になることができます。
午後 2 時~
場所:エフコープ自由が丘店
2F 会議室 (宗像市田久4-16-6)
総会終了後、交流会を予定しています。
会員には「会報」
「ラウンド・テーブルのお知らせ」など
各種のご案内をさせていただきます。
◎寄付をする
1)一般寄付
ぜひご参加ください。
※詳細は別紙をご覧ください。
日本では僅かなお金でもカンボジアでは、次のような
色々な支援ができます。可能な方はいくらでも結構ですの
会費納入のお願い
2014 年度の会費納入を郵便振替口座にて
で、ぜひ応援してください。
例えば、100 円で鉛筆を10本、500 円でノートを1
お願いします。
0冊、
5,000 円で小学校低学年用の薄い絵本を 13 冊くら
納入方法:郵便振替口座
い買うことができます。
年会費:3,000 円
2)使用目的指定の寄付~奨学金のための費用として
口座番号:01730-9-47392
・貧困地区の子どもを小学校に通わせる
一人8,000 円(1年間分)
口座名称:カンボジアの子ども達の教育を支援する会
※本会の会計年度は 8 月から翌年の 7 月までとな
・貧困地区の子どもを中学校に通わせる
一人10,000 円(1年間分)
っています。
・女子大学生に授業料として奨学金を贈る
一人 50,000 円(1年間分)
♥ご寄付ありがとうございました♥
【2013 年度分】
(順不同・敬称略)
小方圭子 岡野知子 加知ひろ子 加知輝彦
25,000 円(半期分)
◇奨学金は本会とその方のお名前で贈らせていただきま
す。
坂元恵子 大久保淳子 窪田秀子 林田スマ
3)未使用の切手やハガキ書き(損じのハガキ)等の寄付。
廣畑香代子 栗崎一代 久保悦子 田崎徳友
◎資金確保のためのチャリテイ事業などを行う際、ボラン
下川トモ子 小野淑子 平地康登 小方信二
テイアをする。
廣田省治 福田ふみこ 桑原宏治 西藤佳史
◎ラウンド・テーブルや写真展に参加する。
益田信也 正平辰男 田中一郎 福田輝美
◎友達や家族に本会のことを伝える。
田中佐和子 桑野静子 林田宣子 宮原俊彦
※下記事務局までご連絡ください。
神野正子 森由美 多田有輝子 大島まな
牛島昌哉 赤木千賀子 八尋美恵子 方如偉
大久保美加 小島素子 佐藤和夫 松村ツヤ
田中景子 永瀬千草 林正子 山本万司子
横山順一 宮里智恵 松本寿道 福永善秀
カンボジアの子ども達の教育を支援する会
-事務局-
住所:〒811-4174 宗像市自由ヶ丘西町 9-4
川口和子 伊藤則子 中島寿子 本村主生
代表 横山正幸 方
高崎妙子 奥裕子 平井幹子 八頭司正典
℡/Fax:0940-33-1457
樋田京子 十時智子 岸庸夫 井上有比古
E-mail:[email protected]
古賀昭光 石田祐子 工藤優子 井上光枝
URL: http://sescc-fukuoka.pepper.jp/
横山正幸 池田龍男
-郵便振替口座-
読み聞かせの会「ととけっこう」
口座番号:01730-9-47392
その他、匿名希望の方々
口座名称:カンボジアの子ども達の教育を支援する会