相当地代の授受された貸宅地の価額は自用地の

相続KOBAKANレター
2015 年 11 月 26 日 VOL.54
http://www.広大地判定.jp/
http://www.koudaichi.net/
※配信停止は右記Eメールへお願い致します。
〒530-0047
大阪市北区西天満1-10-16
株式会社アプレイザル総研
TEL : 06-6315-5111/FAX : 06-6315-5125
e-mail : [email protected]
文責:小林穂積
相当地代の授受された貸宅地の価額は自用地の価額の 100
ておおむね年 6 パーセント程度の地代をいう。相当
分の 80 が相当であるとした事例
地代通達 3 及び 6 において同じ。)を支払っている場
(平成 22 年 2 月 15 日裁決)
1.本件土地の概要
合は、借地権を有する者については当該借地権の設
本件土地の面積:2985 ㎡、国道に面する近隣商業地
定による利益はないものとして取り扱う旨定め、
域(容積率 200%)に存する土地、三方道路、ショ
(注)の1において、相当の地代の額を計算する場
ッピングセンター及びその駐車場を目的とする土
合に限り、自用地としての価額は、評価基本通達 25
地賃貸借契約あり(権利金等一時金なし)
の(1)に定める自用地としての価額の過去 3 年間
地代 1,255,170 円(月額、H1 年 12 月~)
(借地権を設定し、又は借地権若しくは貸宅地につ
1,529,682 円(月額、H12 年 10 月~)
本件土地上の建物:鉄筋コンクリート造陸屋根
いて相続があった年以前 3 年間をいう。)における平
均額によるものとする旨定めている。
地下 1 階付 4 階建、店舗、延 40225.99 ㎡
(2)3《相当の地代を支払っている場合の借地権の
昭和 52 年 6 月新築 平成 4 年増築等
評価》は、借地権が設定されている土地について、
2.原処分庁の主張
相当の地代を支払っている場合において、権利金そ
本件土地は、その賃貸借に係る権利金の収受はなく、
の他の一時金を支払っていない場合の当該土地に係
本件相続開始日において相当の地代を収受してい
る借地権の価額は、零として評価する旨定めている。
ることから、本件土地の自用地としての価額からそ
(3)6 は、借地権が設定されている土地について、
の借地権の価額を控除する評価基本通達 25 の(1)
相当の地代を収受している場合に、権利金その他の
の定めによることはできず、相当地代通達 6 の定め
一時金を収受していない場合の当該土地に係る貸宅
により、本件土地の自用地としての価額の 100 分の
地の価額は、当該土地の自用地としての価額の 100
80 に相当する金額により評価すべきである。
分の 80 に相当する金額により評価する旨定めている。
3.請求人の主張
(ロ)法令解釈等
本件土地は、評価基本通達 25 の(1)の定めにより、
相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価
本件土地の自用地としての価額からその借地権の価
借地人が個人の場合には、相当地代通達 1 の定めに
額を控除した後の金額により評価すべきである。
より、借地権を有する者には借地権の設定による利
(1)本件被相続人は、本件契約及び本件変更契約
益はないものとして取り扱われているところ、相当
の際、本件土地を相当の地代で賃貸した認識はない。
地代通達 3 は、借地権が設定されている土地につい
(2)
「土地の無償返還に関する届出書」及び「相当
て、権利金を支払うことなく相当の地代を支払って
の地代の改定方法に関する届出書」のいずれも原処
いる場合の当該土地に係る借地権の価額は、零とし
分庁に提出していないので、相当地代通達を適用す
て評価する旨定めている。
べきではない。
そうすると、借地権が設定されている土地について、
(3)路線価が下がるが、地代は変わらない状況に
権利金を収受することなく相当の地代を収受してい
おいて、路線価が下がり地代の路線価に対する割合
る場合の貸宅地の評価は、その土地の自用地として
が上がることによって、相当地代通達が適用される
の価額となるから、控除すべき借地権の価額はない
のは不合理である。
こととなる。
4.関係法令等
しかしながら、このような場合においても、相当地
(イ)相当地代通達
代通達 6 は、その土地の自用地としての価額の 100
(1)1《相当の地代を支払って土地の借受けがあ
分の 80 に相当する金額により評価する旨定めている。
った場合》は、借地権の設定に際しその設定の対価
これは、控除すべき借地権の価額がない土地といえ
として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の
ども、借地借家法による制約を受けること、また、
慣行のある地域において、当該権利金の支払に代え、
現在借地権の設定に伴う権利金の授受の取引慣行の
相当の地代(その土地の自用地としての価額に対し
ない地域についても、その土地の自用地としての価
相続 kobakan レター vol.54
額からその価額の 100 分の 20 の借地権相当額を控除
ったと推認され、さらに、本件契約及び本件変更契
して評価が行われていることとの権衡上、当該貸宅
約の締結に際し、権利金相当額の認定課税は行われ
地の評価についても 100 分の 20 を控除することが適
ていなかった。
当であるとの考えによるものと認められ、この考え
(ヘ)
に基づく評価方法は、当審判所においても相当と認
続人から E 社への移転の有無
められる。
5.法令等の適用
借地権部分に相当する経済的価値の本件被相
上記によれば、本件契約は、借地権の設定に際し、
通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域におい
(イ)本件契約時における地代の状況
て、権利金の授受に代えて相当の地代を授受する内
A 本件契約の当事者間における通常より高額な地
容であったと認められ、本件土地の借地権部分に相
代とする取決めの有無
当する経済的価値の本件被相続人から E 社への移転
F 社から、権利金として一時金を支払うのではなく、
があったとは認められない。
通常より高額な地代を毎月支払ったらどうかとの提
このことは、本件契約が終了した場合には、賃借
案があり、E 社はその提案を受け入れたことから、本
人は、賃貸人に本件土地を明け渡すとともに、一切
件契約の当事者間において、権利金の授受を伴う場
の金員を請求しないと約定されていることからも肯
合の地代よりも高額な地代とする取決めが行われた
定することができる。
と認められる。
ロ
B
方法
本件契約時における地代が相当の地代に当たる
かどうかの検証
(A) 本件土地の地代の割合
本件相続開始日における本件土地の価額の評価
(イ) 地代の割合
相当地代通達 1 の(注)の 1 の定めに従い、本件
本件一団の土地を 1 画地の宅地として評価し、本
相続があった年以前 3 年間における本件土地の自用
件契約があった年以前 3 年間における本件土地の 1
地としての価額の平均額を算定すると、別表 4 の 1
平方メートル当たりの自用地としての価額の平均額
のとおり 112,572,558 円となる。また、本件土地の
を算定すると、本件契約があった年の 1 平方メート
地代は、前記のとおり、月額 1,529,682 円(年額に
ル当たり 73,954 円を上回ることはなく、また、月額
して 18,356,184 円)であった。
1,255,170 円、年額にして 15,062,040 円の地代の本
したがって、地代の割合は、16.3 パーセントとなる。
件契約があった年以前 3 年間における本件土地の自
(ロ) 相当の地代の該当性
用地としての価額の平均額に対する割合を算定する
本件土地の地代の割合は、上記のとおり、相当地
と、本件契約があった年の 6.8 パーセントを下回る
代通達 1 に定めるおおむね年 6 パーセント程度を超
ことはない。
えるから、本件相続開始日における本件土地の地代
C 相当の地代の該当性
は、同通達 1 に定める相当の地代に該当する。
権利金の授受を伴う場合の地代よりも高額な地代
(ハ) まとめ
とする取決めが行われたこと、上記のとおり、地代
借地権が設定されている本件土地は、上記のとお
の割合が、法人税法施行令第 137 条に規定する相当
り、本件土地の借地権部分に相当する経済的価値が
の地代の具体的な判定基準である法人税基本通達 13
本件被相続人から E 社への移転があったとは認めら
-1-2 及び「法人税の借地権課税における相当の地
れず、また、上記のとおり、本件相続開始日におい
代の取扱いについて」に定めるおおむね年 6 パーセ
て相当地代通達 1 に定める相当の地代を収受してい
ント程度を超えることを併せ判断すると、本件契約
たことから、本件土地の評価に当たっては、評価基
時における地代は、同条に規定する相当の地代に該
本通達 25 の(1)の評価方法によることはできない。
当する。
(ホ) 権利金相当額の認定課税の有無
したがって、本件相続開始日における本件土地の
価額は、本件土地の自用地としての価額からその価
権利金の授受なしに、地代の額を権利金の授受を
額の借地権割合である 100 分の 50 に相当する金額を
伴う場合の地代相当額と取り決め、借地権を設定し
控除して評価すべきであるとする請求人の主張は採
た場合には、借地権を取得したのが法人であるなら、
用することができず、相当地代通達 6 の定めにより
法人税法第 22 条第 2 項の規定に基づき権利金相当額
本件土地の自用地としての価額の 100 分の 80 に相当
の認定課税が行われるところ、上記の事実からすれ
する金額により評価することとなる。
ば、権利金相当額の認定課税が行われる適状になか
以上
相続 kobakan レター vol.54