「沖縄本島北部地区における、ICカードを用いた健康増進管理

平成 15 年度「保健医療福祉分野における標準化事業」
:事業区分6
「沖縄本島北部地区における、ICカードを用いた健康増進管理
・コンシェルジュサービス事業」
カヌチャヒルトコミュニティ株式会社
1.背景
(2)コンシェルジュサービス
(1)IC カードを用いた健康増進管理
近年、人々の健康に関する興味が増す中で、「具体
2003 年『国民生活に関する世論調査』で明らかに
的にどのようにしたら『健康』が獲得できるのか?」
されたように、国民最大の関心事項は「健康」です。
「どのような方法で自己の『健康』の度合いをはあく
健康関連分野には大きな潜在需要が存在しています。
できるのか?」などの要求が高まっています。
健康寿命の延伸、そして生活の質の向上を図るうえで
このような状況下において、一方、医療分野におい
ては、検診データを利用者や別の医師などが容易に閲
覧・把握できるようにするためのICカードの利用が
の、健康づくりは、画一的な方法によるのではなく、
それぞれの地域特性に応じた方法で、かつ生活者個々
のニーズ・健康状態等に応える形で、楽しみながら進
めることが重要であり、そのような取組が期待されて
試験的に行われています。
います。
この二つの状況を合わせ、医療の分野だけでなく、
健康の分野にまでICカードの利用を広げ、より利用
者にとってわかりやすい健康増進管理が行えるよう
にすることは、非常に有効なことであり、そのために、
ICカードのより有効な利用方法を構築する必要性
一方、これらの健康づくりを、生活者のニーズに応
えるサービス産業として捉え、その創出を地域の雇用
創出と活性化に繋げる活動も展開されつつあります。
年間五百数十万人の観光客が訪れる沖縄では、基幹
産業である観光・リゾートに健康的要素を付加した長
が問われています。
期滞在型健康増進プログラムの検討が進められてお
り、その発展が期待されています。
2.目的
康増進の度合いを確認・管理ができる「ICカードの
(1)ICカードを用いた健康増進管理
ICカードを用いた利用者の健康増進管理の体系
有効利用モデル」を提案します。
(2)コンシェルジュサービス
を活性化させることを目的とします。
A.ICカードに格納する健康に関するデータ内容
本調査研究では、実証実験等を通じて、以下のよう
な事業を創出することを目的とします。
をモデル化する
従来、検診データのみを格納し、沖縄北部地区の住
A.民間ベースの事業として成立させる
民へ配布していた「やんばる健康カード」を基盤とし、
健康分野への拡大を行う際に、どのような健康に関す
るデータ内容を格納すればよいかを検討し、自分の健
公共財政・公的機関等に依存せず、民間ベースの
事業として採算性の見込めるモデルの創造を目指
します。民間ベースの健康産業を創出することに
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より、増嵩する老人医療費や介護費用等の社会的コ
沖縄と首都圏を結ぶウェルネス・コンシェルジュ事
ストの削減に繋ぐことができると同時に、民間事業
業を成功モデルとし、全国への展開を視野に入れます。
としての継続性を追及することが可能になります。
B.全国に普及する楽しい健康づくり事業モデル
(ウェルネス・コンシェルジュ)を創出する
以上の結果、沖縄県での雇用創出など地域活性化に
貢献します。
3.ウェルネス・コンシェルジュの概要と特徴
また、提供する地域サービスの質を確保・向上する
(1)ICカードを用いた健康増進管理
沖縄北部地区にて配布されているICカードであ
る「やんばる健康カード」を地域住民は用い、また、
首都圏等から訪れた顧客に対しては、独自に作成した
ICカードを用いて、利用者自身の健康増進管理が行
ため、提供された各種サービスを、顧客視点で評価し
ます。顧客層としては、首都圏等の富裕層・シニア層
を中心に、具体的には、高級クレジットカードホルダ
ー、大企業OB会、旅行業者会員、航空会社会員、な
どを想定しています。これらの顧客が、沖縄を訪れ、
える環境を検討・構築します。
沖縄の豊かな資源を活用した各種サービスを受けな
具体的には、利用者の検診データより、各自に適し
た運動・食事・文化交流などからなる健康メニューを
作成し、それぞれのメニューの実践に応じて、そのデ
ータをICカードに登録していくようにします。この
がら「楽しい健康づくり」を実践することで、沖縄訪
問のリピーターとなり、ショートステイからロングス
テイ、そして将来的には定住化に繋がっていくことを
展望しています。
ようにすることで、利用者が逐次、自分のメニューの
消化状況や、それによる健康増進の管理が行えるよう
になります。また、メニュー終了後の検診にて、最終
的に健康への変化がどのように現れたかをビジュア
また、やんばる健康カードの地元での利用定着後、
首都圏等の富裕層・シニア層への健康増進策として、
やんばる健康カードとの連携を検討します。
ルに見られるようになります。
B.ウェルネス・コンシェルジュの全体概念図
(2)コンシェルジュサービス
生活産業創出コンソーシアムでのコンシェルジュ、
ヘルスケアの実証実験結果などを生かし、本格的な事
A.ウェルネス・コンシェルジュの概要
業展開を目指します。あくまでも生活者と会員組織の
ウェルネス・コンシェルジュは、顧客の健康データ
等に基づいて、生活習慣病の改善や健康増進策などを
求めるものを、リクエストベースを基本に提供します
(従来の供給者論理の手法ではありません)。
提案する健康アドバイスを中心に、それ以外の各種リ
クエスト(問合せ)にも回答し、要望があれば手配ま
で行います。リクエストの内容は、旅行・ホテル・リ
システム構築案としては、以下の図に基づくシステ
ム構築を想定しています。
ゾートやスポーツ、美容、生涯学習、医療機関、人間
ドック、生きがいづくりなど、健康へつながる幅広い
分野を想定します。
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エージェント(One Gateway)
主なサービス利用者
サービス提供業者(SP)
ゴルフ場
総合データベース(独自開発)
①リクエスト
富裕層顧客を対象
・高級クレジット
カードホルダー
・旅行業者会員
・航空会社会員
・企業OB会
中間組織︵
NPO法人など︶
首都圏の潜在顧客
スポーツ
施設
SP DB
顧客DB
履歴DB
美容・エステ
タラソテラビー
データベース化
森林浴
エコツーリズム
トレッキング
エージェント(ホスピタリティ・
専門知識を持つ者)
事前に業者を評価・選別
サービスの開発
提携病院
クリニックなど
②選別・手配
リゾートホテル
レストラン
生き甲斐
づくり支援
③サービスの提供
利 用 デ ー タ の 管 理 ・ 課
金
の シ
ス
テ
ム
4.今年度調査研究の概要
「旅と健康に関する調査研究プロジェクト」「P
(1)IC カードを用いた健康増進管理
ET検診ツアー」「北海道観光保養型ロングステイ
A.ICカードの利用状況の調査
実証実験」などの先行事例を研究し、サービス開発
現在、「やんばる健康カード」として地元住民に配
について考察し、課題・問題点を抽出しました。
布されているICカードの利用に関する状況や、利用
B.沖縄のサービス資源調査
する医師の要望などの調査を実施しました。
観光施設、食材などの資源調査を実施しました。
B.ICカードの有効利用の検討
ICカードを検診データの格納のみに利用するの
C.ニーズ調査
健康づくりおよび沖縄に関する首都圏会員組織
ではなく、広く健康分野への利用を検討し、より多く
の利用者がより多くの場面でICカードを利用する
企業へのヒアリング、生活者へのヒアリング等によ
方策を検討し、そのために構築するためのシステム・
りニーズを把握しました。
利用方法等について検討しました。
D.コンシェルジュサービスのあり方
(2)コンシェルジュサービス
コンシェルジュサービスの具体的な提供方法、事
業スキーム等について検討しました。
A.他地域での先行事例研究
5.今年度調査研究の結果
(1)IC カードを用いた健康増進管理
・利用者も健康への意識が高く、運動・栄養・文化
面での活動でのデータ共有を行い、ICカードを
A.ICカードの利用状況の調査
健康増進管理面で利用することが必要
・検診データのみのカード利用では、利用活性化は
難しい
B.ICカードの有効利用の検討
・運動・栄養・文化面での具体的にICカードにデ
ータとして登録する内容を検討
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・工夫が必要(日焼けする、料理の味付け)
・利用者の健康への活動により、上記のデータを格
納するための端末の設置・情報処理システムの構
・長期滞在のニーズ(社会保険が適用されるため
築・利用者にわかりやすい情報提示の方法などの
海外と比べて安心、地域社会への参加が重要)
内容を検討
C.サービス資源調査
(2)コンシェルジュサービス
・調査実施済み。今後評価する予定。
A.他地域での先行事例から
D.コンシェルジュサービスのあり方
・有償で行なわないと実態がつかめない
・首都圏を対象にしないと事業化は難しい。健康だ
・沖縄県でのアトピーなどの治療に関するエビデン
けでは事業になりにくい。
スが有効
・ 事業スキームの組立て方
・顧客獲得手段、販売ルートが重要 等々
D.会員組織との事業企画の打合せ
B.ニーズ調査
・中小企業主のニーズに応える PET 検診ツアーなど
・沖縄について知って驚くこと(花粉症がない、ア
について実施済み。
トピーが治る、琉球王国の伝統・歴史など)
6.今後の展望
(1)IC カードを用いた健康増進管理
・各健康増進内容が統合的に見れるためのシステム
の開発
A.今後の課題
B.システム構築案
・利用者により使ってもらうための魅力ある健康増
以下の図に基づくシステム構築を想定していま
進内容(運動・栄養・文化など)のラインアップ
す。
連携・指導
北部地区医師会病院
他医療施設
連携
統計
データ
健康福祉総合センター
健康福祉情報センター
大学
看護学校
人材育成
健康アドバイザ
健康管理・相談の継続
セルフ・ウェルネス・カルテ
名護市役所
他自治体
検診データ
投薬データ
医師・
保健士
文化活動
データ
施設利用
データ
保健士
薬剤師
食事データ
運動指導士・
ヘルスケアトレーナー
栄養士
1次産業者・
輸入業者
注文
配送
公共
施設
地域保健所
・地域病院
地域薬局
指導
文化活動
投薬
指導
相談
レジャー施設
・エコスポット
配食サービス
施設
案内
指導・
配食
案内
参加
利用
注文
検診
検索
バリアフリー
公衆端末
地域在住者
注文
帰宅後
ICカード
の利用
県外来沖者など
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滞在型
観光施設
宅配
来沖者自宅
(2)コンシェルジュサービス
・ウェルネス・コンシェルジュのデータベース開発
A.今後の課題
・ホスピタリティを持った専門家の育成
・生活者および会員組織のニーズに沿い、金銭を払っ
てもらえる健康ツアーをはじめとした各種商品化
B.事業展開案
以下のフローに沿った事業展開を想定しています。
ウェルネス・コンシェルジュ
顧客候補
顧客候補
沖縄誘導
沖縄誘導
クラブ組織化
クラブ組織化
アフタフォロー
アフタフォロー
主に首都圏富裕層を
ターゲット
新たなツアーで
宿泊先として組み込み
ウェルネス・クラブへ入会
(予約受付時に)
離沖後もコンシェルジュ
サービス提供
会員組織
高級クレジットカード会社
『旅行クラブ』
ウェルネスクラブ
カード保有者の会員組織
『ヘルスケアクラブ』
ウェルネス・コンシェルジュサービス
航空会社
(大手航空会社上級会員)
某鉄道会社
シニア向け 旅行クラブ
某旅行代理店 会員組織
コンソーシアム参加企業
顧客/従業員
(インフラ企業中心)
その他各種会員組織
各会員組織に合わせて展開
„ ヘルスケアサービス
„ エンタメサービス (レストラン、ホテルの紹介)
„ ファイナンスサービス (生保見直しなど)
誘導
„ パンフレット郵送
„ メールマガジン配信など
C.サービス候補
明示し、行動へと移すようにリードしていきます。
本事業において候補としているサービス内容は以
下のとおりです。リゾート地における各種サービスが
また、健康増進のインセンティブとなるダイエット
健康に与えるエビデンスを医療的検査・アンケートで
共済(体重が標準値に近づいたらご褒美がでる)など
収集し、それが何を意味するか生活者が分かるように
の新たな手法を開発します。
1.沖縄独自のサービス
他地域に真似のできない、環境・文化等の資産をいかしたもの
A.花粉症から開放
B.アレルギーの緩和・治療
※ 地元施設・食材の分類
医療保険福祉施設
宿泊施設
スポーツ施設
観光資源
文化・研修施設
公園・キャンプ場
観光イベント
その他の特産物
C.ゆったりキレイに
・地元施設、食材などを利用。(※)
D.個人事業主・オーナー向け人間ドック(PET検診)とツアー
・地元施設、食材などを利用。(※)
・体重が標準値に近づいたら、ご褒美が出る共済
2.お金を出してもらう仕掛 ヘルスケアクラブ入会費を捻出する。ポジティブな支出構造へ。
家計
生保・
住宅ローン
捻出した支出で
住宅ローン返済
ヘルスケアクラブ入会
見直し診断(※)
※信託銀行、損保、海外展開メーカー
OBを教育・選抜して起用。歩合制。
中小企業
生保
借り入れ
見直し診断(※)
捻出した支出で
借入返済
ヘルスケアクラブ入会
※中国での標準品製造
ビジネスコンシェルジュ(※)
欧米のノウハウ・デザイン導入
当事業に関するコンソーシアムの連絡窓口
カヌチャヒルトコミュニティ(仮称) コンソーシアム 事務局
Tel:03-3264-7455
http://www.kanucha-hilt.co.jp
FAX:03-3264-7466
E-mail: [email protected] (担当 原田)
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