No.29 前編 - 分子予防医学

JSICR
Newsletter
Japanese society for
Interferon & Cytokine Research
No.29 2010年春号
第75回日本インターフェロン・サイ トカイン学会学術集会演題募 集案内
サイトカインハンティング: いよい よ最終章
日本インターフェロン・サイトカイン学会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1
東京大学大学院医学系研究科・分子予防医学 内
TEL:03-5841-3431 FAX:03-5684-2297 E-mail:[email protected]
HP http://www.prevent.m.u-tokyo.ac.jp/JSICR/index.htm
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン 学会学術集会開催のご案内
【 会期 】
2010 年 6 月 25 日(金)・26 日(土)
【 会場 】
北九州国 際会議場
〒802-0001 北九州市小倉北区浅野 3-9-30
【 会長 】
田中 良哉 (産業医科大学第 1 内科学 教授)
【 学会事務局 】
産業医科 大学第 1 内科学
〒807-8555 北九州市八幡西区医生ケ丘 1-1
TEL :093-691-7397
FAX:093-691-9334
http://www.congre.co.jp/jsicr2010/
会場のご案内
■ JR
JR 小倉駅より徒歩 5 分
■ バス
西鉄浅野(西日本総合展示場) バス停前下車、徒歩 5 分
■ 車
北九州都市高速道路 (小倉駅北ランプより 1 分) (足立ランプより 8 分)
■ フェリー
日明港より車 10 分 新門司港より車 30 分 砂津港より徒歩 2 分
■ 飛行機
北九州空港より 路線バス約 40 分 (小倉駅バスセンター下車) 車 約 30 分
福岡空港より 新幹線で最速 15 分(小倉駅下車) (福岡空港から博多駅までは地下鉄で 5 分)
2
ご挨拶
この度、第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会を担当することになりました。
大変光栄に存じますとともに、
先生方のご支援に重ねて感謝申し上げます。平成 22 年 6 月 25 日(金)、
26 日(土)に、北九州国際会議場(小倉駅北口)で開催すべく鋭意準備を進めています。
インターフェロンやサイトカインを用いた、或は、標的とした治療の進歩は目覚しく、ウイルス肝
炎や関節リウマチなどの免疫難病の治療にパラダイムシフトを齎してきました。斯様な展開は多く
の基礎研究者に大きな希望を与えるものであり、また、実地臨床でもベンチからベッドサイドへの
リサーチトランスレーションが開花しつつあることを実感できます。しかし、ベッドサイドでは基
礎研究に差し戻して再考を要する問題点も浮上してきました。斯様な現状に基づき、本学術集会の
メインテーマは「基礎と臨床の架け橋 ∼ベンチからベッドサイドへ、ベッドサイドからベンチへ
∼」としました。
本学術集会では、ポスター、4 つのシンポジウム、教育講演と特別講演を計画しています。以下に
ご案内致します企画に関して、ご理解、ご協力を賜ります様、お願い申し上げます。第 1 に、ポス
ターは一般公募としますが、第 74 回と同様に、全員に 1 分間講演をお願いします。また、優秀な
ポスターには、優秀ポスター賞、または、young investigator award を授与し、シンポジウム講演
にも採択する予定です。
第 2 に、4 つのシンポジウムは藤田尚志先生と宇野賀津子先生に「インターフェロン」、中西憲司先
生と岩倉洋一郎先生に「サイトカイン」、義江修先生と松島綱治先生に「ケモカイン」、吉村昭彦先
生と吉田裕樹先生には「シグナル伝達分子」をテーマに企画をお願いしました。いずれもメインテ
ーマ「基礎と臨床の架け橋」を意識した企画をして戴いています。
第 3 に、教育講演と特別講演はスポンサード形式で行います。特別講演(ランチタイム)は、審良静
男先生(第 1 日)、岸本忠三先生(第 2 日)にご依頼申し上げました。また、初日の教育講演は、竹内
勤先生、渡辺守先生にお願いし、引き続き会員懇親のためのディナーをご用意します。さらに、イ
ンターフェロンに関する教育講演を坂本直哉先生にお願いし、第 2 日モーニングタイムに軽食と共
に予定しています。
ベンチワークや動物モデルの研究が臨床にトランスレーションされる時代に突入しました。今こそ、
玄界灘の荒波のように、小倉祇園の太鼓のように、インターフェロンとサイトカインを熱く論じ合
う時です。幅広い分野から多数の方々が興味を持って参加し、梅雨空を吹き飛ばすように討論して
戴けるよう期待申し上げます。皆様には、どうぞご協力のほど宜しくお願い致します。
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会 会長
田中 良 哉
(産業医科大学医学部第 1 内科学講座 教授)
3
プログラムのご案内
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会を下記のとおり開催いたします。
ご多忙の時期とは存じますが、多数の皆様のご参加および演題のご提出をお待ちしております。
【 プログラム 】
メインテーマ
:
基礎と臨床の架け橋
∼ベンチからベッドサイドへ、ベッドサイドからベンチへ∼
■
特別講演 (ラン チ)
共催/武田薬品工業株式会社
2010 年 6 月 25 日(金)
オーガナイザー・座長:山本 一彦 (東京大学医学系研究科 アレルギー・リウマチ内科 教授)
演者:審良 静男 (大阪大学免疫学フロンティア研究センター 教授)
■
特別講 演(ラ ンチ)
共催/中外製薬株式会社
2010 年 6 月 26 日(土)
オーガナイザー・座長:松島 綱治 (東京大学医学部大学院医学系研究科 分子予防医学 教授)
演者:岸本 忠三 (大阪大学大学院生命機能研究科 免疫機能統御学講座 教授)
■
教育講演 (イブ ニング )
共催/田辺三菱製薬株式会社
2010 年 6 月 25 日(金)
オーガナイザー・座長:宮坂 信之 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学 教授)
演者:竹内 勤
(慶應義塾大学医学部内科学教室 リウマチ内科 教授)
演者:渡辺 守
(東京医科歯科大学 消化器内科 教授)
■
教育講演 (モー ニング )
オーガナイザー・座長:西口
演者:坂本
■
共催/中外製薬株式会社 2010 年 6 月 26 日(土)
修平
直哉
(兵庫医科大学病院 肝疾患センター長)
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科・分子肝炎制御学講座 准教授)
シンポジ ウム
1)私たちの身体を守るインターフェロンシステム
オーガナイザー・座長:
藤田 尚志 (京都大学ウイルス研究所 分子遺伝学研究分野)
宇野 賀津子(ルイ・パストゥール医学研究センター IFN・生態防御研究室)
2)ケモカイン
∼ベンチからベッドサイドへ、ベッドサイドからベンチへ∼
オーガナイザー・座長:
義江 修
(近畿大学医学部 細菌学)
松島 綱治 (東京大学大学院医学系研究科 分子予防医学)
3)サイトカイン
∼ベンチからベッドサイドへ、ベッドサイドからベンチへ∼
オーガナイザー・座長:
中西 憲司 (兵庫医科大学 免疫学・医動物学)
岩倉 洋一郎(東京大学医科学研究所システム疾患モデル研究センター 分子病態研究分野)
4)シグナル伝達分子 ∼ベンチからベッドサイドへ、ベッドサイドからベンチへ∼
オーガナイザー・座長:
吉村 昭彦 (慶應義塾大学 医学部微生物学教室)
吉田 裕樹 (佐賀大学医学部 分子生命科学講座)
■
一般演題 (ポス ター)
※演題募集については、次頁の募集要項をご参照ください。
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【 演題募集 】
下記のとおり演題を募集いたします。多数のご出題をお待ちしております。
なお、演題の採否および発表形式につきましては、会長にご一任ください。
■
発表形式 : 一般演題
一般演題は全て、ポスター発表と1min
・ 1min
presentation をお願いいたします。
presentation は、1 枚のスライドに演題名と発表のポイントをまとめ、1 分以内で発表
いただきます。
・
応募された一般演題がシンポジウムに採択される場合もあります。
シンポジウムで発表される場合は、1min presentation はありません。
■
応募期間
■
応募資格
:
2 01 0 年 1 月 26 日 (火) ∼ 3 月 31 日(水 )
筆頭演者は、日本インターフェロン・サイトカイン学会の会員であることが発表に際し必要
です。未入会の方は、下記URLより用紙をダウンロードの上、入会手続きをお願いします。
◆日本インターフェロン・サイトカイン学会ホームページ:入会案内
http://www.prevent.m.u-tokyo.ac.jp/JSICR/Pages/JSICR-regist.html
■ 応募方法
1) ホームページの「演題募集」よりフォーム(エクセル)をダウンロードの上記入し、
Eメールに添付して、運営事務局宛にご送付下さい。なお、ワード等、規定フォーム
以外での受付はいたしかねますので予めご了承ください。
※ ファイル名は、「筆頭演者名」で作成してください。
※ 詳細は、HP「演題募集」http://www.congre.co.jp/jsicr2010/よりご確認ください。
2) 応募方法はEメールのみとさせていただきます。
・メールの件名を「演題登録
筆頭演者名」としてください。
・応募演題を受領後、確認メールを返送いたします。演題申込後、1 週間以内に確認メール
が届かない場合は、事務局までお問い合せください。
送付先:
E-mail:[email protected]
■ 入力項目
・ 筆頭演者名(フリガナ)
・ 日本インターフェロン・サイトカイン学会 会員
・ 筆頭演者所属名
・ 所属先住所・TEL・FAX・E-mail
・ 演題名
・ 筆頭演者と共同演者の氏名
・ 所属機関
・ 抄録本文(全角換算 1,000 文字以内) ※図表・写真は不可
※英文可
【お問合せ先】
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会 運営事務局
株式会社コングレ 九州支社 内野、光武、長野
〒810-0001 福岡市中央区天神 1-9-17-5F
TEL:092-716-7116 FAX:092-716-7143
E-mail:[email protected]
http://www.congre.co.jp/ jsicr2010/
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【 参加登録
1.事前参加登録
】
できる限り事前参加登録をお願いいたします。
■ 事前参加登録締切
:
2010 年 1 月 26 日(火)∼5 月 14 日(金)
■ 申込方法:同封の郵便払込用紙、および郵便局備え付けの用紙に下記項目をご記入の上、
郵便局よりご入金ください。
郵便払込用紙 1 枚で 1 名のお申込を受付けます。
【通信欄記入項目】参加区分/勤務先・部署名/ネームカード送付先(自宅 or
勤務先、郵便番号、住所)/氏名(フリガナ)/TEL
払込口座
01700‐9‐121558
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会
※記入に不足がある場合、ネームカードがお手元に届かないことがあります。
■ 事前登録された方には、ネームカードを送付いたします。
■ 学生の方は、学生証と払込受領書のコピーを FAX で運営事務局(FAX:092‐716-7143)まで
お送りください。
※送付の際には、学会名を必ず明記してください。
2.参加登録費(抄録集代・懇親会費を含む)
事
一
般
前
4,000円
当
日
5,000円
学 生
1,000円
1,000円
3.抄録集
1)抄 録 集 販 売:1部 2,000円
2)会 員の場合:日本インターフェロン・サイトカイン学会全会員へ事前に送付いたします。
非会員の場合:事前参加登録者には、ネームカードと共に送付いたします。
4.懇親会
懇親会を下記の日程で開催いたします。ぜひ、ご参加ください。
日時:6 月 25 日(金) 17:40∼20:30
場所:イベントホール(北九州国際会議場 1F)
※特別講演、教育講演につきましてはお食事をご用意いたしております。
5.宿泊について
詳細が決まり次第、第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会
ホームページ http://www.congre.co.jp/jsicr2010/ にてご案内いたします。
【お問合せ先】
第 75 回日本インターフェロン・サイトカイン学会学術集会 運営事務局
〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神 1-9-17 5F
株式会社コングレ 九州支社 内野、光武、長野
TEL:092-716-7116 FAX:092-716-7143
E-mail: [email protected]
http://www.congre.co.jp/ jsicr2010/
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学会奨励賞にふるってご応募ください
日本インターフェロン・サイトカイン学会奨励賞にふるってご応募ください。
日本インターフェロン・サイトカイン学会では学会奨励賞をもうけております。応募規定、応募要領
は下記の通りです。なお、不明な点などあればお尋ねください。多数の優秀な若手(平成 20 年 5 月 31
日で 45 歳以下)研究者の応募をお待ちしていいます。平成 19∼20 年度の選考委員は以下の 5 名です。
藤田尚志(委員長)、岩倉洋一郎、米原伸、中西憲司、松島綱治
応募の締め切り:
宛て先:
2010年5月31日(月)必着
日本インターフェロン・サイトカイン学会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1
東京大学大学院医学系研究科・分子予防医学 内
応募者は以下の事項につき記載して、封書にてお送り下さい。(封書の表に奨励賞応募書類在中と
朱記して下さい。)
i) 氏名、年令、生年月日
ii) 所属
iii) 過去 3 回の学術集会(2007∼2009 年)で発表済み、あるいは本年(2010 年)発表予定の
研究内容(抄録集あるいは発表応募抄録のコピー)。1 ないし数編。
iv) 上記研究に関連して発表した学術論文の別冊、あるいは受理論文、1 ないし数編。
v) 学術論文に掲載されている共同研究者全員の署名による応募承諾書(形式自由)
。
vi) 応募理由(800 字程度で研究のどの点がインターフェロン・サイトカインの進歩に寄与し
ているかを明確に記載すること。)
なお、奨励賞応募規定は以下のとおりです。
日本インターフェロン・サイトカイン学会奨励賞応募規定
1. 奨励賞は、本会会員にうち学術集会においてインターフェロン・サイトカインの進歩に寄
与するすぐれた研究を発表した若手研究者に授与する。
2. 奨励賞は、毎年 2 件以内とし、各々賞状および副賞(1 件当たり 10 万円)を贈呈する。
3. 応募資格は以下の通りとする。
① 応募の暦年度を含め過去 3 年間に本会学術集会において 1 回以上発表したもの。
② 応募の締めきり時において 45 才以下のもの。
応募者は以下の事項につき記載して、封書にて本会宛に送付すること。
i) 氏名、年令、生年月日
ii) 所属
iii) 本会学術集会において発表済みないし予定の研究内容。1 ないし数編。
iv) 上記研究に関連して発表した学術論文の別冊、あるいは受理論文。1 ないし数編。
v) 学術論文に掲載されている共同研究者全員の署名による応募承諾書
vi) 応募理由
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DNAX におけるサイトカインハンティング
新井賢一
1. 遺伝子工学の成立とバイオベン
チャー
まず、DNAX のサイトカインハンティングの背
の独立した創造的なボトムアップの研究を支える
ことの意義を訴えた。このような状況のなかで、
アメリカ西海岸の Genentech、Amgen、Cetus、
景にあるStanford大学と遺伝子工学について述べ
Chiron 等のバイオテクベンチャーが 70 年代末か
る。1959 年に、Arthur Kornberg が St. Louis から
ら 80 年代初頭に出発し、挑戦心の旺盛な若者を
Paul Berg、Dale Kaiser、David Hogness、Robert
引きつけた。私は、80 年 3 月から 1 ヶ月余り米大
Lehman、Robert Baldwin らとともに Stanford 大
陸の生命科学の拠点研究所を訪問した。New
学に移り、生化学教室を設立した。これが、エレ
Jersey 州 Nutley の Roche Institute of Molecular
クトロニクスに続く、シリコンバレーのバイオテ
Biology にmRNA のCapping を発見した古市泰宏
クノロジー産業の幕開けとなった。それに呼応し
博士を訪問した際に、Hoffmann La Roche 社の支
て、Charles Yanofsky は Stanford 大学の生物学教
援により、
λファージの研究で著名であったAnne
室に参加し、Joshua Lederberg が、遺伝学教室を
Skalka らがレトロウイルスの研究で新たな課題
設立し、Lee & Len Herzenberg、Stanley Cohen
に挑戦している姿に感銘し、NIH のグラントに頼
らが参加した。Kornberg の盟友である Alejandro
らずに、民間の企業の支援で、新たな領域に挑戦
Zaffaroni は、ステロイド医薬の先駆的な企業であ
することが可能であることを実感した。しかし当
るSyntex 社を50 年代末にメキシコからPalo Alto
時、設立された多くのバイオベンチャーは、短期
に移転し発展させた後、60 年代に ALZA 社を設立
的な製品開発を掲げて、ベンチャーキャピタルや
し、薬剤の controlled delivery をめざす Drug
製薬企業から資金を集めていた。Kornberg は、誕
Delivery System(DDS)を開拓した。Stanford 大
生しつつあるバイオテク企業が、狭い視野から、
学における遺伝子工学技術は生化学教室と遺伝学
研究成果を公開せず秘密主義に陥る場合には、研
教室が中核となり70年代半ばに形を整えた。
究者の企業への囲い込みにつながり、大学からの
Herzenberg は、70年代に Becton Dickinson 社
頭脳枯渇(brain draining)が起こることを懸念し
と共に FACS の開発を行っていたが、これは単ク
ていた。
ローン抗体の開発とともに、単一の哺乳動物細胞
を解析する基盤技術となった。遺伝子工学のガイ
ドラインを作成した California 州 Asilomar 会議に
象徴されるように、Stanford 大学とシリコンバレ
ーは、バイオテクノロジーの発祥の地となった。
遺伝子工学技術とバイオテクノロジーが開拓した
医学、生命科学、産業への輝かしい展望により生
命科学研究者は飛躍的に増加した。しかし当時の
アメリカでは、ベトナム戦争の後遺症もあり、NIH
の研究費が削減されつつあった。Kornberg は全米
の科学者を代表して、当時のカーター大統領に、
基礎的な研究を支えることの重要性、若手研究者
2.遺伝子工学と免疫学の融合による
DNAX の創立
1980 年、Zaffaroni にバイオベンチャーを設立
のような国際研究所が必要であり、そのためには
欧州の EMBO/EMBL のアジア版が必要であると
感じていた。80 年には、James Watson、Kornberg、
する話が持ちかけられ、Kornberg に相談した結果、
Sydney Brenner 等の協力を得て、渡辺格、赤堀四
Paul Berg、Charles Yanofsky と共に自分たちが理
郎らの先駆者達が AMBO と AMBO Laboratory を
想とするオープン型のバイオベンチャーを創立す
設立する努力を開始したが時期尚早で、国や産業
ることになった。それは有機化学の得意な ALZA
界からの十分な支援は得られなかった。こうした
とは異なり DNA をベースとする、若手研究者を
閉塞状況の中で、これから姿を現す未来のバイオ
主体に創造性の高い研究開発を行う、バイオテク
ベンチャーに関わることは魅力的であり、DNAX
ノロジーを用いて有用な医薬品を開発する、など
に Molecular & Cellular Biology の呼称を付けるよ
の特徴を持っていた。DNAX の名前はそれに由来
う要望し、81 年の設立とともに参加した。折しも
する。当時の日本は、経済こそ Japan as Number
70 年代は monoclonal antibody (mAb)の開発と抗
One を謳歌しており、生化学や分子生物学でも優
体遺伝子構造の解明に象徴されるB 細胞の時代で
れた研究を行っていたが、生まれたばかりの遺伝
あり、Stanford でも、mAb の技術が導入され、
子工学のガイドラインの整備やバイオベンチャー
Ronald Levy が mAb の白血病治療への応用、
は未成熟であった。私と妻の直子は 1980 年、
Henry Kaplan がヒト型抗体を産生するヒトハイ
Stanford の生化学教室での 3 年間の研究を終えて
ブリドーマの開発を試みていた。Zaffaroni は、
日本に戻るにあたり、自分達が研究生活を送って
DDS の概念を蛋白質に拡張し、Irving Weissman、
きた医科学研究所や東京大学が、Stanford やアメ
Leroy Hood と 相 談 し 、 免 疫 − 遺 伝 子
リカの私立大学とは異なるシステムで運営されて
(Immuno-genetic)エンジニアリングにより抗原
いる事を痛感した。アメリカの大学や研究所と交
を認識する最小結合部位(MBS)を、ALZA の
流する中で、日本とアジアに Cold Spring Harbor
DDS 技術と結びつけて抗体医薬として開発する
Laboratory や、企業がサポートする Roche 研究所
ことをめざした(図1)。創立時の DNAX の
9
3.Schering-Plough の DNAX 支援と
UNICET の統合
Scientific Advisory Board は次の通りである。Paul
Berg (Stanford)、William Dreyer (Caltech)、Judah
Folkman (Harvard)、Avram Goldstein (Stanford)、
Edgar Haber (Harvard) 、 Kurt Isselbacher
(Harvard), Leroy Hood (Caltech) 、 Michael
Hunkapiller (Caltech)、Arthur Kornberg (Stanford)、
Roger Kornberg (Stanford)、Thomas Kornberg
(UCSF) 、 Ronald Levy (Sanford) 、 Harden
McConnell (Stanford)、George Palade (Yale)、
Samuel Strober (Stanford) 、 Irving Weissman
(Stanford)、Charles Yanofsky (Sanford)(図2)
。
DNAX は二つの部門からなり、
分子生物部門には、
新井賢一、新井直子、Frank Lee、Gerard Zurawski、
Kevin Moore(図3)、免疫部門には Robert
Coffman、
Tim Mosmann が研究主任スタッフとし
て参加した(図4)
。イディオタイプ抗体を開発し
ていたパリの Arthur Dony Strossberg の招聘は実
現しなかった。免疫部門には、さらに Maureen
Howard, Albert Zlotnik, Chris Martens, Marilyn
Kehry, Anne O’Garra, Lewis Lanierらが参加した。
遺伝子工学を動物細胞に適用して、免疫分野の課
題に 挑戦 する 試み は、Genetics Institute や
Immunex でも開始された。
Zaffaroni の理念により、DNAX は、個人の自由
な発想に基づく Discretionary Research と、会社
と し て 取 り 組 む プ ロ ジ ェ ク ト研 究 で あ る
Communal Researchから成り立っていた。
DNAX
が設立された 80 年には、
製品開発をめざす約 160
のバイオベンチャーが全米で設立され、ベンチャ
ーファンドの獲得をめざして競争を繰り広げた。
遺伝子工学により抗体を大腸菌、酵母で発現し、
MBS を操作する DNAX のアイディア自体は良か
ったが、技術的に時期尚早であり、現在みるよう
な抗体医薬は、90 年代以降に実現した。DNAX の
長期的な運営資金を獲得するために Zaffaroni は
製薬企業との提携を模索するなかで、
Schering-Plough 社 President の Robert Luciano
(弁護士出身) に出会った。
Biogen 社のスポンサー
である Schering-Plough は、長田重一、Charles
Weissmann によりクローニングされた IFNαを
医薬品として開発する権利を保持していた。
Luciano は、IFNαに続く重要な医薬品は、免疫分
野からでること、そして、次のターゲットは、B
細胞ではなく T 細胞になり、80 年代は T 細胞の
時代であることを予見していた。しかし、伝統的
10
免疫学研究所 UNICET を、DNAX に統合すること
になり、DNAX は、マウスモデル、UNICET はヒ
トの免疫系の研究を進める体制が整った。
UNICET にはB 細胞のJacques Banchereau のチ
ームと並んで、T 細胞の Jan de Vries のグループ
(Hergen Spitz, Hans Yssel)を、オランダ癌研究
所から迎えた(図4)
。
4.DNAX における T 細胞リンホカイ
ンのハンティング
DNAX のCommunal Research としてのT 細胞
プロジェクトは、
Sydney (Dana) Farber の Harvey
Cantor と共同ですすめることになった。Cantor
は、
70年代にhelperとsuppressorの性質を持つ、
種々のマウス T 細胞クローンを樹立していたが、
これらに、分子・細胞生物学の解析の光をあて、
産生される蛋白質(リンホカインと総称)をクロ
ーニングすることをめざした。Cantor ラボの
+
+
suppressor T 細胞株 Ly2 ,3 4 は分子量 70K の
suppressor 因子を産生する。 helper T 細胞 D9.1
な製薬企業である Schering-Plough には、そのス
Hi は MCGF と TCGF を産生することが Gary
ペシャリストが欠けており、DNAX の擁する遺伝
Nabel、Gordon Freeman らにより示されていた
子工学(Kornberg、Berg、Yanofsky)と免疫学
が、その分子の実体は不明であった。Cantor の
(Weissman、Hood、Strober、Levy)の advisor
hapten specfic T 細胞 E1、C5 は、その後、Mark
達をグループに迎えたかった。こうして両社の利
Davis との連携により、T 細胞受容体の構造解析
害が合致し、
DNAX は運営の独立性を保持しつつ、
にも用いられた。Cantor と協力して、活性の解析
Schering-Plough 傘下の研究所として進むことに
とクローニングをすすめるためにDNAXはT細胞
なった。Schering-Plough で、抗生物質、遺伝子
導入動物細胞の選択に用いられている G418 や
IFNαの開発のリーダーであった Allan Waitz が
DNAXのPresidentに就任した。
新たなCommunal
プロジェクトチーム(リーダー 新井賢一、サブ
リーダー Frank Lee)を組織し、解析にあたって
はチームワークと data sharing を重視し、毎週、
T cell group meeting を開催し、全員参加で発表し
Research として T 細胞と IgE プロジェクトを立
た。T 細胞クローンの培養上の制約から、大量の
ち上げるために、Dana Farber の Harvey Cantor
mRNA を必要とする hybrid selection は困難であ
と Johns Hopkins の石坂公成、照子夫妻を、さら
にヒト免疫学のリーダーである Hugh McDevitt を
advisor として迎えた。Schering-Plough が、フラ
ンスのリヨン郊外の Dardilly に持っていた自社の
11
るため、Paul Berg の研究室で、動物細胞発現ベ
クター pcD を開発していた岡山博人博士の協力
を求め、宮島篤はさらに酵母の発現ベクター
pcD-Y を開発した。
DNAX T 細胞サイトカインクローニングチーム
クローニング
pcD cDNA library の作製
横田崇
COS-7 細胞での発現スクリーニング
横田崇、畠清彦
T 細胞クローンの培養
Donna Rennick, Frank Lee
Xenopus oocyte による mRNA 評価
Tim Mossman
増殖と survival の MTT アッセイ
Tim Mossman
3
H-thymidine の取り込みとの比較
血球系の増殖・分化活性測定
Donna Rennick, Frank Lee
マウス mast cell clone MC9
コロニー形成 マウス、ヒト multi-CSF、Eo-CSF
クローニング産物の生産
動物細胞培養と発現
新井直子
酵母とカイコでの発現
宮島篤
細菌での発現
Gerard Zurawski, Michael Benedik
Robert Kastelein
単クローン抗体の作製
John Abrams
遺伝子構造と発現解析
宮武昌一郎、大塚毅、新井直子、
萩原一(故人)
、Rene deWaal Malefijt
Schering-Plough は、自己免疫疾患の治療薬の候
リーだったが、Genetic Institute が、マウス IL-3
補として、suppressor factor に関心を持っていた
遺伝子と類似の構造をもつサルのIL-3 分子を同定
が、Fresno が樹立した suppressor T 細胞株が産
し、さらに5番染色体のヒトの IL-3 を同定した。
生する物質は、分子の実体が不明確で、活性測定
も定量性に乏しいため、helper T 細胞が産生する
GM-CSF
因子である MCGF と TCGF に集中することにし
続いて、WEHI のグループがマウス GM-CSF
た。抗原刺激で活性化された D9.1 Hi 上清は、
をクローニングし、DNAX チームは、ヒトとマウ
Multi-CSF、Ia 誘導活性、igE 増強活性、IgA 増強
ス GM−CSF をクローニングした。コロニー形成
活性、Eo-CSF 活性を持っていた。
能を指標とする生物活性で、
GM-CSF は IL-3 と区
別された。マウスとヒト GM-CSF 遺伝子は、そ
IL-3
れぞれ、マウス 11 番染色体、ヒト 5 番染色体に
D9.1 Hi 細胞の pcD 発現ベクターライブラリー
存在した。さらに、D9.1 Hi の MCGF 活性は、IL-3
から、MCGF 活性を指標に、まずマウス IL-3 をク
の活性だけでは説明できないことから、第2の
ローニングした。その結果、MCGF は WEHI の
MCGF があることを予測し、MCGFII と呼んだ。
Donald Metcalf のグループが探していた multi
また Eo CSF は、IL-3 や GM-CSF とは区別され
CSF 活性を持っており、James Ihle が IL-3 と呼
ることを確認した。
んでいた分子に該当する事が判明した(MCGF =
multi CSF = IL-3)(図5)。マウス IL-3 遺伝子は1
IL-2 と IFNγ
1番染色体に存在した。ヒト IL-3 の存在はミステ
Tim Mosmann の樹立したヘルパーT 細胞 LB
12
2-1 が産生する強い TCGF 活性指標に、TCGF を
に由来する事が、
精製の過程で示唆されていたが、
クローニングした。これは、谷口維紹のクローニ
さらに、monoclonal 抗体を用いて、このものが
ングしたヒト IL-2 のマウスホモログであった
William Paul の BSF1 とも同一であることが示唆
(TCGF = IL-2)
。LB 2-1 は、Mosmann らの Th1
された。これらの関係は、マウス分子のクローニ
細胞に相当するが、D9.1 Hi は IL-2 を発現しない
ングによって確認できた。この分子は、本庶佑ら
ことから、D9.1 Hi の TCGF は、IL-2 とは異なる
の分子とも一致し、IL-4 と呼ぶことになった
ことが判明し、TCGFII と呼ぶことになった。ま
(MCGFII = TCGFII = IgE inducing Factor = Ia
た、helper T 細胞 E1 は Th1 であり大量の IFNγ
Inducing Factor = BSF1 = IL-4)
(図5)
。さらにマ
を 産 生 す る が 、 Coffman は 、 IFN γ は IgE
ウスIL-4 との相同性にもとづいてヒトIL-4 をクロ
suppressing activity を持つ事を確認し、さらに
ーニングし、IL-4 遺伝子の構造を決定し、それぞ
Mosmann とCoffman は多くのマウスT 細胞株を
れマウスの染色体 11 番、ヒト染色体 5 番に、
検討した結果、IL-2 と IFNγを発現する T 細胞を
IL-3,GM-CSF 遺伝子と隣接して存在している事
Th1 と呼ぶことを提唱した。DNAX チームは、ヒ
がわかった。
ト T 細胞クローンから、IL-2 と IFNγを同定し、
IL-5
サイトカイン発現のパターンを検討した。
IL-3、GM-CSF、IL-4 のクローニングにより、
IL-4
D9.1 Hi は、それらとは区別される IgA Inducing
Coffman、Mossman、Albert Zlotnik、Rennick、
Factor と Eo CSF を産生する事がわかった。クロ
Craig Smith らによって、D9.1 Hi は、MCGFII、
ーニングの結果、それらの活性は同一分子に由来
TCGFII の他に、IgE 誘導,Ia 誘導、IgA 誘導、
する(IgA Inducing Factor = Eo CSF)ことを確認
BCGF1、BCGFII、Eo-CSF などの活性を産生す
したが、これは本庶、高津聖志グループの IL-5 と
るが、 IL-2 と IFNγを産生しないことを確認した。
一致した。IL-5 は、LB2-1 や E1 からは産生され
MCGFII、TCGFII、IgE 誘導活性は同一の蛋白質
なかった。
13
Th1/Th2 のパラダイム
シンを経て医科研から武部豊、丸山和夫、自治医
IL-2 と IFNγを産生する Th1 に対して、IL-4 と
大から畠清彦、東大から北村俊雄、原孝彦、鴨川
IL-5 を発現する T 細胞を Th2 と呼ぶことを
由美子、倉田寛一、Liu Jie、Hyun Jun Lee、熊本
Mosmann と Coffman が提唱したが、これは Th1
大から原田信之、今村龍、京大から平家俊男、堀
と Th2 のパラダイムとしてポピュラーになった。
俊行、石田博史、内藤嘉之、山口—岩井裕子(故
当初、ヒト T 細胞では、Th1/Th2 の関係は、あま
人)
、阪大から須田貴司、名大から坪井昭夫、医科
り明瞭ではなかったが、helper T 細胞が、周囲の
歯科大からは東みゆき、筑波大から渋谷彰らが参
環境によりサイトカイン産生のパターンを変える
加した。北村が開発した TF1 は、ヒトのサイトカ
柔軟性、可塑性を持つことは広く認識された。
イン活性を測定する際に威力を発揮した。酵母の
Mosmann は、Th1 サイトカインである FNγに拮
細胞周期と増殖制御の研究では、鳥取大学の松本
抗する Th2 サイトカインの存在を予見したが、こ
邦弘がスタッフとなり、神戸大より貝淵弘三、広
れは IL-10 として結実した。EBV が IL-10 様の物
島大から辻潤が参加した。大学院生として、正井
質を産生することから、がんウイルスが宿主の増
久雄、中山直樹、宮武昌一郎、萩原一(故人)
、村
殖に関係する遺伝子をウイルスゲノムに保持する
松正明、渡辺すみ子、佐藤憲子らが参加し、免疫
ことにより、細胞のがん化を引き起こすように、
研究者の集団に混じって、Stanford 大学の研究者
ある種のウイルスは、サイトカインを産生するこ
とも協力して、シグナル伝達と増殖制御の分子生
とにより宿主の免疫応答に働きかけ、持続的感染
物学的研究をすすめた(図6)
。
を維持すことが示唆された。
DNAX の分子生物部門と免疫部門には、
80 年代
5. サイトカインネットワークの提
唱と細胞内シグナル伝達ネットワー
ク
から、多くの日本人研究者がポストドクあるいは
1981 年から 85 年までの 4 年余りの DNAX チ
スタッフとして参加し、免疫と分子生物学の研究
ームの研究により、自然免疫の応答に続く T 細胞
者が、国際色豊かに一体となって研究した。九大
と B 細胞の連携による獲得免疫の応答の姿が、次
から大塚毅、林田一洋、出原賢治等、ウィスコン
第に明らかになってきた。これまで免疫学者と血
DNAX の日本人研究者
14
液学者は、互いに独立の世界観をもち、別々に研
多くのサイトカインの機能は重複することから、
究を展開してきたが、IL-3、GM-CSF などの造血
細胞外の受容体と細胞内のチロシンキナーゼドメ
因子や、IL-4、IL-5 等の多機能因子の産生と通し
インが連結した増殖因子受容体とは異なるサイト
て、両者にはサイトカインで結ばれる細胞間のネ
カイン受容体の構造が示唆された。
一つの細胞は、
ットワークが存在する(図7)
。また、血液系と免
異なるサイトカインに応答して、類似の反応を示
疫系の連携において、二つのタイプの造血反応、
すことから、
そのレセプターは、
成分を共有する、
構成的造血と誘導的造血を区別することが必要で
複数のサブユニットから構成される事が予測され
ある。内在的な発生プログラムにより構成的に制
る(図9)
。これは、宮島らにより、IL-3、GM-CSF、
御される増殖・分化システムと、ウイルス、細菌、
IL-5 レセプターの共通するβ鎖とサイトカイン特
寄生虫等の感染に対する免疫応答に伴う、誘導的
異的なα鎖のクローニングにより実証された。当
な増殖・分化システムである。IL-3 の multi CSF
初、リンパ球系の特殊な性質であると考えられた
活性は、骨髄の多能性幹細胞の動態に新たな視点
細胞間ネットワークと細胞内シグナル伝達ネット
を提起した。多能性血液幹細胞に由来する血球系
ワークは、多細胞からなる動物に共通する性質で
細胞とリンパ球系細胞はネットワークで結ばれて
ある事が明らかになってきた。
おり、両者は、共通の幹細胞に由来するが、IL-3
は、
構成的造血を維持する多能性 CSF ではなく、
6. DNAX のレッスン
IL-3 以外の幹細胞因子の探索が必要である。サイ
DNAX の特徴
トカインは、当初、細胞系列特異的であり、T、B、
製薬企業がサポートする研究所としては、遺伝
血液細胞の活性化、増殖、分化に特異的なサイト
子工学以前の 60 年代にスタートした Roche
カインが存在すると考えられた(系列特異的リニ
Institute of Molecular Biology や Basel Institute of
アモデル)
。
実際にはサイトインは多機能性であり、
Immunology があるが、遺伝子工学とバイオベン
一つのサイトカインが、多くの細胞に作用して、
チャーの時代である 80 年代にスタートした
種々の機能を果たす
(ネットワークモデル)
(図8)
。
DNAX には、幾つかの特徴がある。1)免疫・血
15
液学、分子生物学など専門の異なる研究者からな
カインの発見を、製品開発に有効に結びつける上
る小規模のチームであること、2)アメリカ人は
では種々の歴史的制約と改善すべき課題を背負っ
少数で、日本、オーストラリア、インド、中国、
ていた。その背景には、1)大企業と研究開発ベ
イギリス、オランダ、フランス等からなる多国籍
ンチャーのカルチャーの相違、2)化学系と生命
のチームであること、3)スタンフォード、UCSF
系の協力のあり方への理解の相違、3)サイトカ
はじめ、大学との交流、連携を進めたこと、4)
インの実用化への評価システムの欠如、など
製薬企業のサポートにより、NIH の Funding とは
DNAX を傘下においた Schering-Plough など大手
異なる、柔軟で自由度の高いチーム編成が可能で
の製薬企業のもつ縦割りと官僚主義など組織の制
あったこと、5)ポストドクトラルフェローシス
約に由来するものがある。Genentech や Amgen
テムが有効に機能したこと、6)研究者のキャリ
などバイオテクから新たな製薬企業へと成長した
アパスとして、アカデミックでの NIH シャントか
バイオベンチャーは、自社内に生産設備と製品評
ら、アカデミックと企業研究開発のリーダーへの
価システムを持っており、大企業に依存せずに事
パスであるバイオテック(DNAX、Genentech)
業を進めることが可能であった。
これらの教訓は、
シャントを開拓することに貢献したこと、などが
発見から、前臨床、臨床治験、製品開発など、バ
あげられる。この背景には、多様性を許容するカ
イオベンチャーと製薬企業の連携におけるトラン
リフォルニアの環境と、世界から人が集まる大学
スレーショナル・リサーチの重要性を示唆するも
とベンチャー企業の生態系がある。
のである。
改善すべき点
免疫治療のバイオベンチャーとアジア連携
DNAX の特徴は、西海岸の Stanford 大学とシリ
80 年代、
DNAX は、
カリフォルニアをベースに、
コンバレーの環境によって発揮されたが、それを
サイトカインハンティングとサイトカインネット
可能にしたのは、東海岸の Schering-Plough から
ワークの解明をすすめてきた。この経験をアジア
の長期のファンディングと支援、製品開発での連
に広げることが重要である。
1997 年の科学技術基
携である。しかし DNAX でなされた多くのサイト
本法の制定を契機に、21 世紀に入り、大学・製薬
16
企業の連携とバイオベンチャーの振興が日本でも
され、免疫制御ネットワークを操作することによ
活発にすすめられてきた。また、1987 年のシンガ
り、ウイルスワクチンやがんワクチンを開発する
ポールの IMCB の設立を皮切りとして、韓国、台
展望が開けてきた。21 世紀の日本は、これまでの
湾、香港、中国、タイ、マレーシア等、アジアに
欧米との連携とともに,アジアの研究開発のハブ
おける生命科学の研究拠点の整備がすすめられて
の役割を果たすことが必要である。DNAX のよう
いる。この間、免疫学も、T 細胞、B 細胞の獲得
なバイオベンチャーが日本でも発展し、アジアや
免疫に続いて、樹状細胞、形質細胞様樹状細胞
欧米との連携に貢献することが期待される。
(pDC)
、NK 細胞等による自然免疫の分野が開拓
17
IL-4, IL-5 のクローニング
木梨
達雄
関西医科大学附属生命医学研究所分子遺伝学部門
本庶研究室で IL-4, IL-5 の遺伝子クローニングが行わ 立した 2.19T 細胞クローンの培養上清は強力な BCGF と
れたのは 1985-1986 年である。この当時、私(木梨)は IgG1 誘導因子を含んでいる。それでも蛋白量としては
遺伝子の実験が好きな(?)大学院 2 年から 3 年生の 微量であり、タンパク質精製から部分的アミノ酸配列
駆け出しであったが、幸運にも IL-4, IL-5 遺伝子クロ を決定し、それをもとに cDNA クローニングすることは
ーニングに携わることができた。本来なら私が書くべ 困難である。野間先生と本庶先生は、液性因子の機能
きことではないと思うが、多忙を極める本庶先生にか 的同定に適した cDNA ライブラリー作成法とスクリーニ
わり、その当時の状況や雰囲気を書き留めたいと思う。 ングを考案し、確立した。基本的には in vitro で cDNA
1984 年には二階堂敏夫先生が IL-2 レセプター ライブラリから mRNA を合成し、それをアフリカツメガ
(IL2Rα)をクローニングしており、本庶研の研究が世界 エルの卵に injection し、その培養上清を細胞アッセイ
の先端を走っているという実感は、論文はもちろんの 系によって測定するという戦略である。まず、mRNA の
こと、研究室の雰囲気から肌身に感じていた。本庶先 ソースとして 2.19T 細胞を用い、それをさらにショ糖密
生は抗体のクラススイッチ機構が、介在する定常領域 度勾配遠心でサイズ分画したものをアフリカツメガエ
遺伝子の欠失によって起こることを Cot 解析によって ルに翻訳させ、Severinson 研で測定すると、特定の画分
示し、それが正しいことを抗体定常領域遺伝子のクロ から求める活性が検出できた。機能的スクリーニング
ーニングによって証明してきた。Cot 解析というのはハ に求められる全長 cDNA 発現ライブラリには、
イブリダイゼーションのキネティックスを測定する方 Okayama-Berg 法を用い、ベクターには in vitro RNA 転写
法であるが、その技術や解釈の難しさをよく聞かされ、 に当時使われ始めたばかりであった SP6 プロモーター
混沌とした状況から決定的な発見に至るには、優れた 系を使用した。個々の技術はすでに報告されたもので
先見性、多くの忍耐、絶え間ない努力が必要であると あったが、それを目的に応じて組み合わせる発想力と
教えられた。しかし、駆け出しの大学院生に求められ 技術力は、本庶研の強いところであり、本庶先生の新
ているのは、すばらしい着想ではなく、机に座って論 しい技術を開発して困難な局面を突破する姿勢が反映
文を読む暇があったら実験せよということであること されている。活性のあった mRNA 画分から cDNA ライブラ
は教室の雰囲気からにすぐに分かった。これを素直に リをつくり、それを in vitro で転写してアフリカツメ
受け入れることができる大学院生はいまでは絶滅危惧 ガエルに翻訳させ、Severinson 博士の研究室でアッセイ
種になりつつある。当時の私は遺伝子操作技術を習得 する、という国際的な連携が確立された。活性のあっ
するのが最大の目標であり楽しみであり、免疫学の知 たcDNAグループを絞り込んでcDNAクローンが速やかに
識は医学部でならった教科書レベルの乏しいものであ 同定された。塩基配列からシグナルペプチドをもつ分
った。T. Maniatis の Molecular Cloning は座右の書であ 泌タンパク質がコードされていた。この cDNA から BCGF
ったが、W. Paul の Fundamental Immunology は机の枕にな 活性と IgG1 誘導活性が確認された。この研究成果は
っていたと言えば、わかっていただけるであろうか。 1986 年 2 月の Nature 紙 article に掲載され、IL-4 と呼ぶ
そんな私でも、免疫学が分子生物学の力によって大き ことを提唱したのである。
く変貌をとげつつあることは分かった。IL-4 の cDNA ク このIL-4のcDNAクローニングから間を置くことなく、
ローニングは、大学院の先輩であった野間喜彦先生が 新たなサイトカインのクローニングプロジェクトが立
研究を推進しており、私はその末端でお手伝いしただ ち上がった。IL-5 の cDNA クローニングである。当時、
けである。
IL-4が当時B細胞増殖因子(BCGF)であったり、 熊本大学におられた高津聖志先生らが注目していた B
IgG1 誘導因子とも呼ばれていたことからわかるように、 細胞の増殖と分化の両方を誘導する液性因子の cDNA ク
状況は、アッセイの数だけ液性因子があるかの如く混 ロ ー ニ ン グ で あ る 。 こ の サ イ ト カ イ ン は T
沌としており、遺伝子を同定するより他に道はない程 cell-replacing factor (TRF)と呼ばれており、IgM と IgG
に煮詰まっていた。クラススイッチの全容解明を目指 抗体産生誘導活性と BCGF(BCGFII と呼ばれていた)の
す本庶先生は、IgG1 誘導因子同定から遺伝子組み換え 2つの作用を持っていた。もちろん、高津先生は、こ
機構に踏み込む構想を持っておられた。ストックホル れは IL-4 と異なる新規のサイトカインであると考えて
ム大学との共同研究が始まった。Severinson 博士らが樹 共同研究を提案されたのである。IL-4 と同様、タンパ
18
ク質の精製が難しく、分子としての同定がまだであっ
た。問題は、それが IL-4 と異なるものであるかという
こと、そして、TRF と BCGFII が一つの分子による作用
であるのか、という点である。まず、こちらで作成し
た IL-4 を送り、
高津研が独自のアッセイ系で測定した。
その結果、IL-4 は BCGFII アッセイ系で活性があったが、
TRF の活性はなかった。したがって、TRF と BCGFII が同
一分子であれば、それは IL-4 と異なる分子であるとい
うことになる。そこで 2.19T 細胞からショ糖密度勾配遠
心で分画した mRNA をアフリカツメガエルに injection
した上清をおくり、再び測定していただくことになっ
た。すでに IL-4 がどの画分にあるかわかっており、も
し新規の分子であれば、それと異なる画分に BCGFII と
TRF の活性が同時に検出されると期待される。結果が届
いたのは 1986 年年明け早々であった。仕事始めは皆が
集まって新年のあいさつをして始まったが、そのあと
数人で初詣に繰り出した。正月気分ですこし羽目を外
し愉快な気分で午後遅く戻ってきたところ、本庶先生
から呼び出しのメモが机にあった。悪いパターンであ
る。覚悟して教授室にいってみると、意外に機嫌が悪
くなさそうであった。本庶先生は赤ら顔の私を横目に、
高津研がだしたクリアなデータを示し、説明された。
それは IL-4 と異なる画分に TRF と BCGFII の活性が同時
に検出されたことを示していた。IL-4 の画分に BCGFII
としての活性があったが、TRF の活性はなかった。これ
は、IL-4 とは異なる新規のサイトカインが存在するこ
と、また、IL-4 を産生する 2.19T 細胞が、高津研が追及
しているサイトカインも産生していることを強く示唆
していた。本庶先生は、新年早々にこの結果が来たと
いうことは高津研は年末から年始にかけてデータを出
したのであろうと述べられ、私は身の引き締まる思い
であった。サイトカイン cDNA クローニングをめぐる国
内外の競争は激しくなっていたのである。
早速、cDNA クローニングが始まった。こちらで cDNA
をもとに培養上清を作り、高津研がアッセイを担当す
る分担である。2.19T 細胞から作ったトータル cDNA ライ
ブラリがある。これに BCGFII/TRF が含まれていれば、
cDNA 単離まで一直線である。早速、cDNA ライブラリを
転写してアフリカツメガエル卵に翻訳させ、その活性
を測定することになった。懸念すべき点は、IL-4 の時
のように分画した mRNA を用いていないので、トータル
ライブラリに含まれる目的の cDNA 量は少なく検出限界
を下回る恐れがある点である。cDNA ライブラリを転写
する際に制限酵素でリニアにするが、このとき、比較
的頻度の高い制限酵素でライブラリを切断し、翻訳す
ることにした。目的の cDNA に制限酵素部位があれば、
切断され、活性ある産物はできない。これらを比較す
ることによって background に隠れた微妙な差を見つけ
ることができると期待した。結果は懸念した通り、微
妙であった。高津研は陽性であると明言していた。こ
れは BCGFII/TRF のアッセイ細胞を知り尽くした練達の
観察眼にしか判断できない世界である。SacI で切断し
た場合と Acc1 で切断した場合で比較すると、DNA 合成
や IgM 産生がわずかに異なっていた。これが数字上、
有意かどうかはわからないが、本庶先生はこれはいけ
ると判断した。私は不安であったが、ライブラリサイ
ズから4‐5回スクリーニングを繰り返せば目的の
cDNA クローンにたどりつく計算になり、その過程で活
性が上昇するはずであると考え、スクリーニング計画
を立てた。国内ということもあり、このときの連携は
素晴らしかった。活性はスクリーニングとともに上が
っていき、最後に数十個程度の cDNA プールにたどりつ
くまで、2カ月程度であった。最終的なクローンは TRF
活性と BCGFII 活性を両方もっていた。cDNA は 1.6kb の
長さで適当なサブクローニングの制限酵素がなかった
が、日頃検討していた unidirectional deletion mutant
の作成法がこのとき役に立ち、一気に塩基配列を決定
することができた。また、これを利用して open reading
frame が同定でき、アミノ酸配列から新規の分泌タンパ
ク質であることが明らかになった。IL-4 に続く、IL-5
の名称が提唱されることになった。気になっていた一
番最初に検討した制限酵素については、SacI、Acc1 が
cDNA に存在したが、SacI はコーディング領域に、Acc1
は 3’UT に存在していた。実は SacI 以外に活性を失わせ
た制限酵素があったが、その部位は存在しなかった。
もし、このとき最初からやり直していれば、競争に負
けていたことも充分考えられる(後に DNAX の新井賢一
先生のグループもクローニングしていたことを聞い
た)
。この研究成果は 1986 年 11 月 Nature 誌に掲載され
た。
IL-4, IL-5 のクローニングに参加させていただいた当
時の状況を思いつくままに書かせていただいた。IL-4,
IL-5 クローニングは、これらのサイトカインにかける
Severinson 博士、高津先生とクラススイッチの全容解明
にかける本庶先生の熱い思いとそれを支える技術力が
結実した成果である。私は分子生物学的な研究の切れ
味を実感するとともに、それぞれを担当した研究者の
職人気質ともいうべきものに触れ感動した。IL-4 のア
ッセイをした Pascalis Sideras や、IL-5 の原田先生や高
津先生に言わせると、アッセイの次の日に細胞をみる
と、どんな結果がでるか予想できたという。私はこれ
らのアッセイ系を樹立した免疫学者に憧れを感じ、自
分の研究スタイルはどうあるべきかを考えるよいきっ
かけとなった。
19
シグナルシークエンストラップ法の樹立と SDF-1 クローニング
京都府立医科大学医学研究科 ゲノム医科学
田代 啓
1. シグナルシ ークエ ンスト ラップ (SST) 法 の
たのだが、それに怯まず、「成功体験無き集団に
樹立
次の大成功が望める筈が無い。成功体験と高い技
シグナルシークエンストラップ(SST)法は、分
術と見識を持つ師匠と元気な先輩がいっぱいい
泌シグナルシークエンスをもつタンパク質をコ
る研究室で修行をさせてもらうべきだ」と自分な
ードする cDNA を捕らえる独特のアッセイ系であ
りに考えて本庶研に入門した。希望通り IL-5 ク
り 、 そ れ を 使 う 発 現 cDNA ク ロ ー ン ニ ン グ
ローニングの成功体験があってスマートな木梨
(expression cDNA cloning)方法である。以下に、
達雄先生に直接のご指導をいただいて造血幹細
候補 cDNA 産物が分泌経路タンパク質として生合
胞、造血系前駆細胞の生存と分化について細胞間
成されて細胞膜表面まで輸送される機能自体を
信号伝達研究の手ほどきを受けた。クローン化さ
アッセイすることにより cDNA 選択する SST 法を
れた血球系前駆細胞株 LyD9 を、クローン化され
樹立するに至った研究の道のりを述べる。
たストロマ細胞株(支持細胞株)ST2 や PA6 上で共
免疫学分野を含む細胞間信号伝達研究におい
培養し、成熟型血球細胞に分化誘導する分化誘導
て、信号伝達を担う分子の同定はブレイクスルー
因子のアッセイ系樹立に向けた努力へのお手伝
であり、分子が同定されると研究は一気に加速す
いをさせていただいた。しかしそれを用いて細胞
る。多くの研究者がその分子をマテリアルとして
間信号伝達タンパク質の遺伝子をクローニング
利用出来るようになり、定量的な添加実験・投与
するまでには至らなかった。 従来、分子単離は
実験が可能になることで、生理作用や薬理作用を
まずアッセイ系を確立した上で 2 つの道筋で行
検討出来るようになる。私はそのような分子単離
なわれてきた。個々の信号伝達分子の生物活性を
での医学に対する貢献を夢見て、1987 年に京大
体液や細胞培養上清の粗精製画分でアッセイ出
医学部卒業後すぐに本庶佑先生が着任されて間
来る実験系を樹立して生化学的に精製して同定
もない医化学第 1 講座の大学院に入学した。本庶
する道筋、または生物活性アッセイ系を指標とす
研はインターロイキン 2(IL-2)受容体(当時の本
る発現 cDNA クローニングの道筋である。アッセ
庶研はアフィニティーコンバージョンモデル証
イ系の確立には、数年に亘る地道で精緻な細胞生
明を目指して格闘中であり、Tac 分子をアルファ
物学的・生化学的条件検討が必要である。タンパ
鎖と呼ぶことを蛇蝎の如く嫌っていた)、IL-4、
ク質精製や発現クローニングのアッセイ系とし
IL-5 のクローニングに成功して華々しい成果を
て使用出来るような安定性、鋭敏性、特異性のあ
挙げた賢そうで(実際に賢い!)優しい先輩方が
る実験系の樹立そのものが一大研究目標となる
大勢おられてサイトカインハンティングトップ
難度であることがしみじみと実感された。大学院
レベルのラボとして元気いっぱいであった。ちょ
卒業時にそれでもなおサイトカインクローニン
うどそこまでは既存のアッセイ系を使ってクロ
グを目指したいとの希望を本庶先生に申し上げ
ーニングする時代だったので立て続けにクロー
たところ、
「細胞が分泌するタンパク質の cDNA を
ニングが成功したが、私が入学して以降は自力で
片端から網羅的にクローニングしたら、その中に
アッセイ系を作るところから始める必要がある
細胞間信号伝達候補タンパク質の cDNA も含まれ
ことも入門前に本庶先生はちゃんと説明して下
るはずだ」とのご着想に基づく決定的に大切な課
さった。外から見えているほどには甘い世界では
題をいただいた。もし細胞間信号伝達候補タンパ
無いと言わばリスク説明義務を果たしておられ
ク質をリコンビナントタンパク質の高純度品と
20
して 1 個でも得ることが出来れば、アッセイ系を
ノ末端が細胞外、カルボキシ末端(C 末端)が細胞
用いて機能を調べることが出来る。リコンビナン
内に位置する一回膜貫通型タンパク質(1 型膜タ
トタンパク質を用いれば、体液や細胞培養上清か
ンパク質)もしくはその前駆タンパク質の多くも
らの粗精製標品に比べ、鋭敏なアッセイとなる。
同様にアミノ末端に分泌シグナル配列を持つ。分
それを網羅的にやれば信号伝達に重要なサイト
泌タンパク質、細胞膜上 1 型膜タンパク質、小胞
カインやペプチドホルモン分子が多数獲れるに
体の膜タンパク質とその内腔タンパク質、ゴルジ
違いないと感じた。仲野徹先生(現阪大医学部病
装置の膜タンパク質とその内腔タンパク質、分泌
理学;この頃平行して仲野先生は、今では世の中
顆粒膜タンパク質とその内腔タンパク質、ライソ
の人々が当たり前のように iPS 細胞や ES 細胞か
ゾームの膜タンパク質とその内腔タンパク質は
ら分化誘導している実験の原型となる、in vitro
「分泌経路タンパク質」と総称される。全て粗面
培養系での ES 細胞株の成熟血球細胞への分化誘
小胞体で生合成され、いわゆる管腔オルガネラ輸
導に世界に先駆けて成功された)の直接のご指導
送系に入る。シグナルシークエンストラップ法は
のもとで多田秀明博士(現小野薬品工業筑波研究
この現象自体を捕えたアッセイで、それらをコー
所)とご一緒に、ストロマ細胞から mRNA を抽出
ドする cDNA を網羅的に単離する実用的な方法で
して cDNA ライブラリーを作製した。細胞膜タン
ある。これらは分泌シグナルシークエンスを持つ
パク質である IL-2 受容体 a 鎖の cDNA の分泌シグ
ものが大半であるが、インターロイキン 1(IL-1)
ナルシークエンス部分を除去した cDNA をレポー
のように、分泌タンパク質であっても N 末端分泌
タージーンとし、その直上流にライブラリーcDNA
シグナルシークエンスを持たない例もある。また、
を挿入して、IL-2 受容体α鎖と候補配列の融合
典型的にはアミノ末端に分泌シグナルシークエ
タンパク質が細胞膜上に輸送されて発現するの
ンスを持たない 2 型膜タンパク質や7回膜貫通
を、内山卓先生(当時京大第 1 内科学・現北野病
型膜タンパク質も、広義には分泌経路タンパク質
院長)から分与いただいた抗 Tac 抗体を用いて細
と分類され、数多くトラップされ単離された。つ
胞表面免疫染色で cDNA を選択することによって、 まり、分泌シグナルシークエンスを持たなくても、
新規細胞間信号伝達タンパク質を含む分泌経路
何らかのメカニズムで分泌経路に入るタンパク
タンパク質 cDNA を網羅的に単離することに成功
質も多数トラップされたため、「分泌経路タンパ
した(文献 1,2,3,4)
(図 1)
。
ク質トラップ」の呼称が最適であると考えられる。
シグナルシークエンストラップ法によって単
ペプチドホルモンやサイトカイン、ペプチド性
離・命名・解析された新規分泌タンパク質を表 1
神経伝達物質、またはその前駆タンパク質の多く
に示し、以下に SDF-1 など代表的分子について解
はアミノ末端(N 末端)に分泌シグナル配列(N
説する。
terminal-secratory signal sequence)を持つ。
サイトカインやホルモン等の受容体のうち、アミ
21
2. SDF -1 クローニングとその後の展開
一つは、SDF-1 が体内物質で最強の抗エイズ活性
SDF-1(ストロマ細胞由来因子 1)は、西川伸
を持つことによると考えられる。 SDF-1 の機能
一先生(現理化学研究所神戸)が樹立されたマウ
で重要なのは、未熟なリンパ球に対する遊走活性、
ス骨髄由来ストロマ細胞 ST2 を出発材料として
造血幹細胞と造血系の前駆細胞に対する遊走活
シグナルシークエンストラップ法にて cDNA 単離
性、血管形成を促進する活性、HIV-1 ウイルス感
された CXC ケモカインファミリーの一員である
染阻止活性である。近年、再生医学における幹細
(文献 1)。1992 年当時はまだ松島綱治先生がプ
胞の重要性が強く意識されるようになり、血球系
ロトタイプを提唱されたばかりで、モチーフを持
と血管系以外の幹細胞に対する遊走活性も注目
つサイトカインの一群をケモカインと総称する
を浴びている。幹細胞に対する遊走活性は、体内
ことが定着しておらず、インタークラインファミ
の幹細胞の位置を指令していることに他ならず、
リー、IL8 ファミリーなどとも呼ばれていたもの
特に注目されている。SDF-1 の HIV-1 ウイルス感
であった。ヒトやマウスの SDF1 遺伝子は 4 個の
染阻止活性は、1996 年に欧米日加の研究グルー
エキソンから成る(文献 5)。エキソン 1、2、3
プによって見出された(文献 7,8)。HIV-1 ウイル
を使うα型と、エキソン 1、2、4 を使うβ型の、
スは、感染標的細胞(ヒトヘルパーT リンパ球と
2つのオルタナティブスプライス型(アイソフォ
ヒトマクロファージ)に吸着する際、HIV-1 ウイ
ーム)が転写される。α型タンパク質はアミノ酸
ルス表面の gp120 が標的細胞表面の CD4 と SDF-1
18 残基の分泌シグナル配列を持ち、アミノ酸 89
受容体(CXCR4)の両分子を同時に認識する。in
残基から成る前駆タンパクとシグナル配列を切
vivo 感染実験で SDF-1 タンパク質を添加すると、
断されたアミノ酸 71 残基の成熟型に翻訳される。 SDF-1 受容体での競争 阻害と 、細胞 表面か ら
β型タンパク質はアミノ酸 93 残基の前駆タンパ
SDF-1 受容体がエンドサイトーシスされるインタ
クからアミノ酸 18 残基の分泌シグナル配列が切
ーナイゼーション機構によって感染が阻害され
断され、アミノ酸 75 残基の成熟型となる。SDF-1
る(文献 9)。SDF-1 が HIV-1 ウイルス感染阻止
には、別名がある。プレ B 細胞増殖活性をアッセ
能を持つと判明したことにより、実際の AIDS 病
イ指標にして独立に cDNA 単離に成功された阪大
態への関与から、AIDS の進行指標として診断に
の岸本忠三先生や長澤丘司先生らのグループは
活用できる可能性の追求という重要な研究課題
PBSF と命名され(文献 6)
、また一方、ケモカイ
が出現した。米国国立がんセンター(NCI)の
ンとケモカイン受容体の名称を整理しようとす
O
る試みにより CXCL12 と呼ばれることもある。
の大規模 HIV 感染症例追跡の共同研究にお招き
SDF-1 受容体の方は CXCR4 という名称が定着した
いただいて参画して、SDF1 遺伝子の開始コドン
が、SDF-1 自体は、SDF-1 または SDF-1/ CXCL12
から 801 番目の「SDF13
と表記されることが多く、最近は SDF-1 の表記が
スリープライムエー」と命名された SNP が AIDS
増加傾向にある。発見者の命名権を侵害する整理
進行遅延のマーカーとなる知見を得た(文献 10)。
屋さんが提唱した無味乾燥な名前を徐々に圧倒
これによって国内外のエイズ研究者の方々と情
して駆逐しつつあることは個人的にはたいへん
報交換するようになった。Winkler 先生は、責任
うれしいことである。2010 年 3 月現在、PubMed
をもって HIV 感染症制御遺伝子同定のゲノム解
検索では SDF-1 で 3277 論文、CXCL12 で 2897 論
析をやり遂げるために 25 年間に 3000 例以上もの
文がヒットし、Google サーチでは SDF-1 で約 30
HIV 感染症例の細胞株樹立を一人でやり抜くこと
万件、CXCL12 で約 15 万 3 千件がヒットする一大
によって研究材料の genomic DNA 枯渇の可能性を
研究分野となった。Google サーチで全サイトカ
断った上で HIV 感染症進行制御遺伝子を全部同
イン中トップクラスの数のヒットがある理由の
定した偉人であり、本庶先生の次にノーベル賞を
22
Brien 先生、Winkler 先生らを中心とする米国
A;エスディーエフワン
受賞して欲しいと願わずにはいられない。現在の
の海馬由来 FGF−2 依存性細胞株から cDNA ライブ
私は Winkler 先生の責任感ある研究態度をお手
ラリーを作製して単離されたのが SDNSF である
本にして、症例 3500 例の細胞株樹立を実行した
(文献 16)。SDNSF は、ラット頸動脈結紮による脳
上で多因子疾患感受性遺伝子同定研究に取り組
梗塞モデルで発現上昇が観察され、脳神経系の防
んでいる。
御メカニズムである可能性が指摘されている。
SDNSF が他の増殖因子より際立っている特徴は、
3. SST 法で 単離さ れた 分泌 タン パク質 ・ 膜
BrdU 取り込みを指標にした細胞増殖や DNA 複製/
タンパク質・オルガネラタンパク質
合成を引き起こさず、細胞のミトコンドリア酵素
マウス骨髄ストロマ細胞からは、SDF-1 以外に
活性を指標とする cell viability を高める点で
表 1 に示す分泌タンパク質をコードする新規遺
ある。幹細胞は少数が一生、生存し続ける必要が
伝子を単離した(文献 11)。SDF-5 は Wnt シグナル
あり、不必要な増殖を抑えるため何らかのメカニ
の内因性制御分子であると予測されたので、遺伝
ズムを要するが、SDNSF は 1 分子でそのメカニズ
子欠損マウスを作製して解析して手と足の指の
ムを担うことが出来る点が興味深い。
数の決定因子であることをつきとめた(文献 12)。
内耳神経細胞と、その他内耳を形成する前駆細
シグナルシークエンストラップ法によるスク
胞の分化と再生を解明する目的で、内耳幹細胞か
リーニングは、心臓や血管形成を制御する細胞間
ら cDNA ライブラリーを作製して単離されたのが
信号伝達タンパク質を得る目的でも行なわれた。
OC29 である(文献 17)。OC29 は、胎児期の内耳前
マウス胎令 day8.5 の拍動が始まったばかりの心
庭器官の原器とされる領域に発現することが in
臓から cDNA ライブラリーを作製して単離された
situ ハイブリダイゼーションにより確認された。
のが DANCE である。DANCE はその後中邨智之博士
(現関西医科大学薬理学)らによって、遺伝子欠
損マウスを作製、解析することで、皮膚の張力以
上と血管形成異常が認められ、弾性繊維の機能制
御をする分子であることがつきとめられた(文献
13,14)
。
ES 細胞をストロマ細胞との in vitro 共培養で
血球系未分化細胞に誘導し、その系から cDNA ラ
イブラリーを作製して単離された分泌経路タン
パク質が ESOP-1 である(文献 15)。ESOP-1 は、in
シグナルシークエンストラップ法では、膜タン
situ ハイブリダイゼーション法によって、発生
パク質をコードする cDNA も多数単離された(表
上最初期の造血の場、血島に発現が検出された。
2)
。SDR-1 のアイソフォームのうち、β型は脳に
単離当時は独立したサイトカインである可能性
特異的に発現していたの(文献 18)で、機能解析
に言及したが、後にその考察が誤りであり、TLR4
を目的に遺伝子欠損マウスを作製したが、胎生 8
受容体複合体の細胞外コンポーネントであると
日より早期の胚性致死が起こり、マウス死亡原因
判明した。
のさらなる解析は未了である。
1996 年から神経幹細胞が FGF-2 存在下で長期
免疫提示細胞である樹状細胞は、免疫制御の軸
に培養可能であることが示された。そこで神経幹
になる細胞である。免疫機能を司令する細胞間信
細胞の生存、増殖、分化を制御する細胞間信号伝
号伝達を担う分子を同定することを目的に、樹状
達タンパク質を同定することを目的として、高橋
細胞から cDNA ライブラリーを作製し、免疫細胞
淳先生(現京大再生研)が樹立された成体ラット
機能を負に制御する ITIM モチーフを持つ受容体
23
と考えられる DCIR を単離し、カルシウム依存性
ータージーンとして、ヒトインターロイキン 2
の制御を含む機能解析を行なった(文献 19,20)。
(IL-2)受容体α鎖(CD25)の、本来の分泌シグ
ナルシークエンスをコードする部分を遺伝子工
学 的 に 除 去 し た cDNA を 用 い て い る ( 文 献
1,2,3,4)(図1)。
選択の場を酵母に変えた改造型や、発現ベクタ
ーを複製能欠損組み替えレトロウイルスに変え
た改変型によって、選択を大規模に行なう試みが
諸家により報告された。米国 Genentech 社のグル
さらに、シグナルシークエンストラップ法では、 ープと Genetics Institute 社のグループは独立
小胞体内腔、ゴルジ装置内腔、ライソゾーム内腔
に、細胞外で 2 糖類を単糖に分解する分泌タンパ
で、シャペロンその他の機能を担うと推測出来る
ク質 invertase をリポータージーンとし、さらに
モチーフ配列を持つタンパク質、(総称してオル
invertase 欠損酵母を選択の場を提供する宿主と
ガネラタンパク質)の cDNA が単離された(文献
して用い、酵母の増殖能を用いて選択する系を作
21,22,23,24)(表 3)
。
った(文献 26,27)。我々本庶研 SST グループも酵
シグナルシークエンストラップ法は、細胞内局
母の系を導入し、DANCE、SDNSF、ESDN-1 等の単
在を指標するアッセイであるため、細胞生物学的
離に成功した(文献 13,16,25)。
なタンパク質局在シグナルの知見が得られる。最
以上に述べたように、シグナルシークエンスト
も特徴的な 2 例が ESDN1 と Calmenin に関する研
ラップ法は、発現するタンパク質の N 末端部分を
究成果である。ESDN1 は真核細胞の中でこれまで
単離する方法であり、他の方法ではこの単離が容
知られる限り最長の分泌シグナル配列を持つ(文
易に行なえないため、世界中で広く用いられるよ
献 25)。Calmenin は、典型的な小胞体留置シグナ
うになった。ヒトゲノム全塩基配列決定後も、ゲ
ルである KDEL 配列の方言と考察出来る HDEF 配列
ノム上のどこがタンパク質の N 末端であるか(コ
をカルボキシ末端に持つ(文献 21)。この様に、
ーディング領域開始の ATG)を塩基配列だけから
シグナルシークエンス法で単離したタンパク質
正確に予言することは不可能であるので、今後も
のアミノ酸配列を多数解析することは、新たなタ
実験的にそれを決定するシグナルシークエンス
ンパク質局在メカニズムの解明に繋がる可能性
トラップ法の重要性が減少することは無いと考
がある。
えられる。
これら SST 分子の基礎的知見と医薬品への開
発可能性について、小野薬品工業の研究者及び米
謝辞
国 Genetics Institute 社の創業者を含む研究者
御指導を頂きました本庶佑先生、仲野徹先生、
の方々と定期的に熱く情報交換する会合をほぼ
木梨達雄先生と、染色体マッピングを決定して頂
10 年間に亘ってもったことは、その準備は倒れ
いた稲澤譲治先生、谷脇雅史先生、及び多田秀明
そうになるほど大変であったが、自分の研究人生
博士、白水倫生博士、中邨智之博士、池川雅哉博
にとって得難い貴重な経験であった。
士、高橋淳先生を始めとする共同研究者の先生方
に感謝致します。
4.SST 法の改良版
シグナルシークエンストラップの原法は、分泌
文献
経路に入る/入らないの選択の場を提供する宿
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