呼吸機能検査から肺の病気を診る

呼吸機能検査から肺の病気を診る、慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?
埼玉医科大学病院
呼吸器内科
金澤 實
1.はじめに
呼吸機能検査は、楽な検査ではありません。息を吸ったりはいたり、また息
止めをしてこらえたりと、健康な私たちでも苦しいと思うくらいです。でも肺
の病気のいくつかはこの検査をしないと診断や治療の効果が分かりません。そ
の代表格が今日の話題となる慢性閉塞性肺疾患で、最近では英語の略語の COPD
(chronic obstructive pulmonary disease)もそのまま病名として使われます。
その他にも呼吸機能検査で診断する病気としては、喘息や間質性肺炎、じん肺
などが挙げられます。また全身麻酔をかける手術では呼吸機能がどれほどある
かは、安全に麻酔がかけられるかの大切な判断材料になります。とくに肺癌で
は肺そのものを切除するため、患者さんの呼吸機能だけでなく、切除後の呼吸
機能予測も大切な問題となります。
2. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)について
COPD はタバコを長年吸う高齢者にみられる生活習慣病ともいえる病気で、気
流閉塞を特徴とします。以前は肺気腫とか慢性気管支炎と呼ばれました。呼吸
機能検査で慢性的な気流閉塞の結果が得られたときに診断します。かつては成
人男性の 80%以上の人がタバコを吸っていたせいで、今日 COPD になる人は 40 歳
以上の成人では 10%以上もいるといわれています。2020 年には世界の死因順位
で 3 位になるだろうとも予測されています。ただ多くの患者さんは症状が軽い
ため、重症になってからでないと医療機関を受診しないため病院への受診が遅
れて、後から苦しい思いをする人が多いようです。まずはタバコを吸わないこ
とが大切ですが、早く診断がつけば、よい薬も増えているので、進行を遅らせ
ることもできます。
3.診断
診断は呼吸機能検査によります。高齢者で喫煙歴があり、坂や階段で息切れ
があれば診断の見当はつきます。また胸部レントゲンや CT スキャンは診断の参
考にはなりますが、決定打にはなりません。わが国では画像検査はよく普及し
ており、どんな開業の先生でもレントゲンがとれますし、多くの先生は CT もと
っています。ただ呼吸機能検査は大変普及が遅れています。今は簡単に呼吸機
能を測定できるスパイログラムも販売されているのですが、測定時に掛け声を
かけたり、また患者さんには最大努力をしてもらうので、開業の先生では普及
が遅れてしまいました。COPD の診断には努力呼出時の 1 秒率が 70%以下になっ
ていることがポイントです。また COPD の重症度はやはり 1 秒間にはいた空気の
量がどのくらい少なくなっているかということで判断します。 もちろん治療し
てよくなったとの判定もこの努力呼出で判定します。
4. 肺年齢
最近一般のひとたちにも呼吸機能検査に親しんでもらおうと、日本呼吸器学
会から「肺年齢」という指標が提唱されました。この値はタバコなどによる呼
吸機能の低下を検査値ではなく、機能の衰えを年齢で表わしたものです(図 1)。
呼吸機能検査をすることと肺年齢を測ることは同じですが、結果を「○○歳」
と言われるとインパクトがあります。ただ肺年齢は上限を 95 歳にしていますの
で、95 歳といわれたら COPD になったかなとご相談ください。肺年齢は敏感なた
め、あれずいぶん高齢者にされたと思うことがありますが、早期診断もしくは
COPD の警鐘と受け取っていただくとよいと思います。
図1
5. タバコの健康被害と禁煙
COPD の原因は何と言ってもタバコです。タバコに起因する疾患群としては、
癌と心血管疾患、呼吸器が3大疾患です。呼吸器疾患としては COPD, 感染症、
喘息への悪影響があげられます。COPD で重症になると急性増悪といって命にか
かわる病状の悪化が起きますが、これには感染症が係わっており、また肺炎も
多くみられます。そのためインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは欠か
せません。また COPD の患者さんは喫煙を背景として、おおくの生活習慣病や癌
を合併します(図 2)。とはいえ禁煙は容易でありません。というのは、喫煙習慣
は「タバコ依存」という病気だからです。最近では健康保険を使った禁煙治療
もおこなわれていますので、ご相談ください。
図2