中1 方程式・不等式の計算

中1 方程式・不等式の計算
1.1次方程式の計算
正負の数、文字式と中学校に入って新しいことばかりで、少々数学が嫌いになりかけている人がいるかもしれ
ませんね。しかし、少し待って下さい。これから出てくる方程式さえクリアーできれば、中1の数学はほぼマスター
したといってもよいのです。ここでは、1次方程式の計算方法について、できるだけ簡単にマスターできる方法を
解説します。
その前に、文字式の計算について少し復習しておきましょう。文字式の計算には、いくつかのルールがありま
す。
ルール・その1 「×」や「÷」の記号は使わない。
ルール・その2 「×」を省略するときは、文字がさき、数字があと。ただし、文字どうしの場合は、原則として
アルファベット順。(そうでないこともある)
ルール・その3 「1x」や「-1x」の1は書かない。
ルール・その4 割り算のときは分数にする。(マイナスは分母や分子にはつけず、真ん中に書く)
ところで、文字式の足し算や引き算をするとき、例えばこんな人はいませんか? 「3x+2y=5xy」と
してしまうような人。また、「3x2+2x=5x3」としてしまう人。こういう間違いをしてしまう人は、これらのx
やyは単位と同じと考えて下さい。3m(メートル)+2m=5m、ですが、3m+2g(グラム)の計算
はできませんよね。単位が異なるものどうしの足し算や引き算はできないのです。ですから、3x+2x=5x
になりますが、3x+2yの計算はできません。また、3m2(平方メートル)と2m(メートル)の足し算
や引き算もできません。なお、単位が違っていても、かけ算や割り算は可能です。
さて、方程式の計算ですが、これは単純な作業なので、手順さえしっかりとマスターすれば、誰でも簡単に解
けます。手順の説明の前に1つだけ方程式とは何かを確認しておきましょう。例えば「たかし君は、1個150
円のエクレアをx個買いました。その代金を、xを使った式で表しなさい。」という問題の答えは150x円に
なりますね。この答には「=」(等号)はありません。ところが、「たかし君は1個150円のエクレアをx個買
って、1800円の代金を払いました。これを、xを使った式で表しなさい。」となると、150x=1800
というように、等号の入った式になります。このように、等号を使った式の中に、xやyなど(変数といいます)を
含む項がある式を方程式といいます。「方程式を解きなさい。」と言われたら、このxやyの値を求めることにな
ります。
では、その手順を解説していきましょう。教科書や学校の授業での説明とは順序が異なりますが、最もわか
りやすい手順です。
まず第1段階。3x=12という問題。これは、3とxをかけて12になるよ、xはいくつ?ということで
すね。九九ができれば誰でも答えられるでしょう。x=4ですね。では、-3x=12ならどうですか? -3
とxをかけて12になる数、そう、x=-4が答えです。3x=-12の答えもx=-4。そして、-3x
=-12なら、x=4になります。ここでのポイントは、等号の左側(左辺といいます)または右側(右辺)
のどちらかにマイナスがついていたら、答はマイナスになり、等号の両側(両辺)が共にプラスだったりマイナスだっ
たりしたときの答はプラスになるということを覚えておきましょう。
次に、第2段階。今度は3x=5という問題。3と何をかけると5になるか、という問題ですが、九九の
3の段を探しても答が5になるようなものはありません。小学生のときに、3×□=12、□に入る数は何でしょ
う? という問題をやったことがあると思います。この□を求めるとき、12÷3=4というように、割り算で□を求め
ましたね。同じように、3×□=5の場合も、5÷3で□を求めることができます。ただし、実際に割り算をやるので
5
5
3
3
はなく、分数で答を求めます。ですから、5÷3= ということになります。つまり、3x=5の答はx= です。
ただし、いちいち頭の中で割り算を考えるのではなく、xの前についている数(係数)を分母、右辺にある数を
分子にもってくる、というように覚えておいて下さい。このときも、第1段階と同じで、等号のどちらか一方にマイナ
スがあるときの答はマイナスです。答のマイナスは、分母や分子につけるのではなく、真ん中に書いて下さい。それ
9
から、6x=9のような場合、x= で終わりにしないで下さい。必ず約分をしないと、バツになります。
6
第3段階。教科書や問題集を見ればわかりますが、方程式の計算問題では3x=5などという問題は
ほとんどありません。実際に出てくるのは、3x+4=x-8とか、2(x-5)=5x+9というような問
題です。さらに先に進むと、分数や小数もでてきます。では、これらの問題をどうやって解いていくか、その手順を
説明しましょう。例えば、3x+4=x-8という方程式では、xのついているものを=の左側(左辺)、数
字だけのものを=の右側(右辺)に集めます。1つずつみていきましょう。最初の3x。これはxがついている
ので、そのままです。2番目の+4。これは数字だけなので、右辺に移動させます。(移項といいます)ただ
し、このときにルールがあって、=を飛び越えるときは+とーの符号を逆にしなければいけません。ですから、3x
=x-8-4となります。次に、右辺のx。これは左辺に移項するので、符号が変わって-xとします。さらに
最後の-8。これはもともと右辺にあるので、そのまま。ですから、移項を終えた段階で、元の式は、
3x-x=-8-4
となります。ここで、左辺の3x-xを計算して2xに、右辺の-8-4を計算して-12にします。つまり、
2x=-12
という形になります。ここまでくれば、x=-6であることはわかりますね。このときに注意したいのは、移項したと
きの符号の間違いです。移項したのに符号を変えるのを忘れないようにして下さい。
3x+4=x-8
3x-x=-8-4
2x=-12
x-6
となります。方程式を解く場合はこのように、1段目、2段目…という書き方の方をします。各段の間や最後に
=をつけてはいけません。
さてここで、移項をしたときに符号が変わる訳を少し説明しておきます。実は、方程式を解くのは、「等式の性
質」というものを利用して解いているのです。等式の性質とは、
1.両辺に同じ数を足しても、同じ数を引いても成り立つ。
2.両辺に0以外の同じ数をかけても、同じ数で割っても成り立つ。
の2つです。上の式の1段目から2段目にいくときに、実は両辺からxを引き、さらに4を引いているのです。
細かくみていくと、まずxを引きます。
3x+4-x=x-8-x
3x-x+4=-8
次に4を引きます。
3x-x+4-4=-8-4
3x-x=-8-4
これで2段目の式になりました。さらに、3段目から4段目にいくときには、両辺を2で割っています。
2x÷2=-12÷2
x=-6
教科書では、この等式の性質を
A=BならばA+C=B+C,A-C=B-C、
A
B
C
C
A=BならばAC=BC, = (ただしC≠0)
というような書き方をしています。学校の試験では方程式の問題と解くまでの式が載っていて、「1段目から2
段目にいくときに、どの性質を使いましたか。」という問題がよく出題されるので、チェックしておいた方がよいでしょ
う。
さて次は最終段階。あとは、()のある方程式や、分数、小数の混ざった方程式です。()のある方程式
では、まず()をはずします。例えば3(2x+4)=2x-8のような場合、
6x+12=2x-8
あとは先ほどと同様に移項して解いていきます。
6x-2x=-8-12
4x=-20
x=-5
次に小数の混じった問題。これは最初に等式の性質を利用し、両辺を10倍したり100倍してから始め
ます。例えば、0.3x-1=1.2x+0.8という問題では、両辺、つまり全ての項に10をかけま
す。
3x-10=12x+8
このとき、整数の-1にも10をかけることを忘れないで下さい。続きはもうわかりますね。また、小数第2位
まで出てくる場合は、両辺を100倍してから移項します。そうすればすべて整数にしてから計算することができ
ます。もちろん、小数のままでも計算は可能ですが、整数にしてから計算した方が間違いの可能性が低くなりま
す。数学では、普通、答えは1つですが、そこにたどり着くまでの道(解き方)が何本もある場合があります。も
っともよい解き方というのは、答えまでの道のりができるだけ近いこと、つまり、できるだけ簡単な方法です。曲がり
くねったでこぼこ道を選ぶより、一直線の近道を選ぶことです。なぜなら、曲がりくねったでこぼこ道では、間違え
る可能性のある箇所がいくつも出てくるからです。それに時間もかかります。できるだけ速く、正確に答えを出すに
は、最も簡単な近道を選ぶのがベストなのです。ここでは、最初に小数をなくした方が、遠回りのように見えます
が、実は近道なのです。
さて、話を戻して、分数の混じった問題にいきましょう。分数が混じっている場合も、最初に整数にしてから始
めます。そのためには、問題にある分数の分母と同じ数を両辺にかけます。また、分数が2つ以上でてくる場合
2
1
3
2
は、それらの分母の最小公倍数を両辺にかけます。例えば、 x+ =x-1のような場合、分母の3と2
の最小公倍数は6なので、全ての項を6倍します。
4x+3=6x-6
このときも右辺のxや-1を6倍することを忘れないで下さい。続きはこれまでと同じです。
以上で方程式の解き方の手順は終わりです。最初にも書きましたが、方程式の計算については、以上の手
順をしっかりと踏まえてさえいれば、数学が苦手な人でも解くことはできます。しかし、移項したときの符号や小数
や分数を整数にするときなど、間違いやすいポイントもいくつかあります。それらの点に注意をしながら練習を繰り
返して下さい。
2.1次不等式の計算
不等式の計算方法は、方程式とほとんど同じです。方程式と同じように、xのついているものは左辺、数字
だけのものは右辺に移項していくのですが、1つだけ方程式と違うところがあるので、そこだけ覚えて下さい。その
前に、等式と同じように不等式の性質を覚えましょう。
1.不等式の両辺に同じ数を足しても、両辺から同じ数を引いても成り立つ。
2.不等式の両辺に正の数をかけても、両辺を正の数で割っても成り立つ。
3.不等式の両辺に負の数をかけたり、両辺を負の数で割ると、不等号の向きが逆になる。
等式との違いがわかりましたか。3番目が等式の性質との違いです。例えば、3<5の両辺に正の数、例えば
2をかけても不等号の向きは変わりません。しかし、-2をかけると、左辺は-6,右辺は-10となり、不
等号の向きが-6>-10となるのです。同様に、-1で割っても不等号の向きは逆になります。そこで、不
等式を解く場合、
3x-5>5x+3
3x-5x>3+5
-2x>8
とここまでは方程式の等号が不等号に変わっているだけです。が、次の段階では、両辺を-2で割ることに
なるので、不等号の向きが変わります。
x<-4
つまり、不等号を解いていて、最後の段階でxの前にマイナスがついているときは、不等号の向きを変える、
ということになります。ここで注意したいのは、不等号の向きを変えることを忘れないのはもちろんですが、意外と
不等号の向きを変える事に気をとられて、右辺の4にマイナスを付け忘れがちになります。気をつけて下さい。
不等式に小数や分数が混じっている場合も、方程式と同じように、最初に何倍かして小数や分数をなくして
から始めて下さい。不等式も方程式と同じで、この手順さえしっかり覚えておけば、それほど難しいところではあり
ません。とにかく問題をたくさん解いて、方程式や不等式に慣れることが重要です。