びわ湖源流の郷たかしま戦略 概要版(PDF文書)

さと
=高島から全国に発信する生物多様性の魅力=
~水を養い
水と暮らし 水でつながる高島~
【概要版】
イワナ
ブナの原生林
ザゼンソウ
モリアオガエル
畑の棚田
カワセミ
戦略の目的
滋賀県北西部に位置し、県内最大の面積を有する高島市は、琵琶湖へ注ぐ水のほ
ぼ 3 分の 1 を生み出す地域といわれています。
森林と平野、琵琶湖が川によって結ばれている自然豊かな本市では、これまでそ
の恵みを活かした魅力あふれる文化を形成しつつ、自然と共に暮らしてきました。
本戦略は、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略を「びわ湖源流の郷た
かしま戦略」として、本市の財産である多彩な自然を守り、市内の生物多様性の保
全と持続可能な利用を図ることによって、産業振興と地域の活性化を推進し、高島
ならではの生物多様性を次世代に継承していくことを目的として策定するもので
す。
また、本戦略には、生物多様性の保全にとどまらす、市民が地域に誇りを感じ、
高島市が元気になるための方策も含みます。
※生物多様性基本法第 13 条
都道府県及び市町村は、生物多様性国家戦略を基本として、単独で又は共同して、当
該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関
する基本的な計画(生物多様性地域戦略)を定めるよう努めなければならない。
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1. 生物多様性とは ~暮らしを支え、豊かにするもの~
生物多様性とは、いろいろな環境の中で生き物が生きている豊かさの状態を表す言葉です。生物多様
性は私たちの生活の様々なところで密接に関わっており、また多くの恵みをもたらしています。
≪生物多様性による恵み(生態系サービス)の種類≫
①供給サービス
(Provisioning Services)
②調整サービス
(Regulating Services)
森林があることによって気候が緩和
されたり、水が浄化されたり、洪水が
起こりにくくなるといった、環境を制
御するサービスのことを言います。
食料、燃料、木材、繊維、薬品、水
など、人間の生活に重要な資源を供給
するサービスを指します。
私たちの生活に恵みを
もたらす生物多様性
④基盤サービス
(Supporting Services)
③文化的サービス
(Cultural Services)
①から③までのサービスの供給を支
えるサービスのことを言います。例え
ば、光合成による酸素の生成、土壌形
成、栄養循環、水循環などがこれに当
たります。
人間の生活の中で精神的な充実、美
的な楽しみ、宗教・社会制度のしくみ、
レクリエーションの機会などを不える
サービスのことを言います。
2. 「びわ湖源流の郷」としての高島市の役割
高島市に降り注いだ多くの雨や雪解け水は森林からゆっくりと流れ出し、安曇川や石田川をはじめ
とする数々の河川を経て、
やがて琵琶湖へと流れつきます。
そして、琵琶湖を満たす水は京阪神 1,400
万人の生活用水として供給されています。
高島市に広がる豊かな自然環境を今後も残していくことは、生物多様性を保全するとともに、「び
わ湖源流の郷」としての役割を担う本市にとって重要です。
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3. 高島市の3つのエリア
本戦略では、面積 693 ㎢
(陸地:511.36 ㎢
、、琵琶湖:181.64 ㎢、)に及ぶ広大な圏域と奥山から湖
まで様々な環境が広がる高島市の特徴を3つのエリアに分け、それぞれを「里山(さとやま)・里住
(さとすみ)・里湖(さとうみ)」と名付けることにします。
≪3つのエリアのイメージ図≫
「里山(さとやま)」
一般的に言われている「里山」の意味にとどまらず、林業やレクリエーションなどで
人々が利用する奥山までを含む上流部全体を指し、源流の郷の源となるエリア
●生きもの
高島市の奥山にはブナの原生林や大規模なハンノキ林など、豊かな自然が
広がっています。また、日本海側の多雪地に適応したアシウスギというスギが育ち、
古くから良質な木材の産地として知られています。
里山の木々
●生態系サービス 高島市では立派なトチノキが多く存在しており、その実を利用した
栃餅などが日常的に食されていました。現在では地域の特産品としても販売されて
います。また、谷の傾斜地形には美しい景観を持つ畑の棚田があります。
●課題 里山では、野生動物、特にニホンジカによる剥皮害(樹皮を剥いで樹を枯らし
てしまう被害)が生じています。森林内の下草がほぼ消失している場所もあり、森
ニホンジカによる剥皮害
林生態系に深刻な影響を不えています。
●市民活動の紹介 トチノキやブナなどの樹の分布調査や保全活動(巨木と水源の
郷をまもる会)に取り組んでいます。また、子ども達を対象とした間伐体験等の
活動(麻生里山センター)なども行われています。
ホオノキ
ホオノキ
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「里住(さとすみ)」
水田を中心とする農地、河川、水路、市街地などが一体となって多様な環境を形成す
る空間であり、
人々の生活の中心となるエリア。
湖西線や国道 161 号が通っており、
高島市の玄関口としての役割も果たす。
●生きもの 里住エリアの雑木林には、春にはカタクリ、キクザキイチゲ、シュンラ
ン、キンランといった植物が林床を埋めます。湿地には、カキツバタやタヌキモ、
ヨシなどの貴重な植物が生育しています。
カタクリ
●生態系サービス 高島市では古くから綿織物や扇骨業などの地場産業が発展して
きました。また、川と人間生活が共存した「かばた」があります。
扇骨業
●課題 高齢化による耕作放棄地の増加の問題が生じており、地域の担い手づくりや農業の再生が求められて
います。
●市民活動の紹介 古いため池を利用したビオトープづくり(環境を守るいま
づの会)や、ザゼンソウ群生地の保全活動(いまづ自然観察クラブ)等が行
われています。また、豊かな自然環境との共生と安心・安全を目指した農業
の取り組み(たかしま有機農法研究会)もあります。
カバタ
「里湖(さとうみ)」
琵琶湖や湖岸を中心とした水辺空間を指すエリア。ヨシ原、内湖など高島市ならではの
豊かな自然環境が広がり、多様な生物相がひろがっている。
●生きもの 湖岸沿いには、海浜植物といわれるハマヒルガオやタチスズシロソウが、ま
た内湖には、コイ、フナ等の魚やカルガモ、バン、カイツブリなどの水鳥をたくさん見
ることができます。
●生態系サービス 近年では珍しくなってきた伝統的な漁法であ
るやな漁やえり漁が、今もなお行われています。
やな漁
●課題 貴重な存在であるヨシ群落の減少や農業用水路の整備による河川環境の悪化
が心配されています。内湖や自然湖岸の植生など、高島市らしい生き物の保全に
ヨシ群落
努める必要があります。
●市民活動の紹介 冬のヨシ刈りを中心としたヨシ群落の保全活動など、身近な
生物多様性を大切にする取り組みが進められています。
ハマヒルガオ
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4. 3つのエリアにおける問題点と課題解決をめざしたモデルプラン
≪問題点≫
≪課題≫
里山
源流の郷の自然の危機
森林内の生態系バランスが崩れ、森林本来がも
つべき多面的機能が十分に発揮されていない
森林の管理者不足
野生動物による農林業被害の増加
高島市の森林保全と持続可能な利用が必要
源流の郷のくらしの危機
外来種の増加
河川環境の悪化
里山の放置
耕作放棄地の増加
絶滅危惧種の増加
琵琶湖の水環境の変化
内湖、自然湖岸、
ヨシ群落の減少
里住
高齢化の進行等により、高島市の活力を支え
る人材等が丌足
高島市民自らが市域の豊かな資源価値を十分
に活用できていない
競争力のある地場産業の育成など、高島市の
更なる活性化が必要
生物多様性を身近に感じられるような教育の
普及が必要
源流の郷の役割の危機
里湖
琵琶湖の水環境の変化や外来種の侵入等によ
り、水辺の生きものの生息・生育環境が悪化
している
≪課題解決のためのモデルプラン≫
生きものの住みやすい環境の創出が必要
なりわい
問題点や課題を解決し、高島市が元気になるための方策として「暮らし」「生業」「連携・交流」
をもとに、次の3つのモデルプランに取り組みます。
【暮らし】
いきいきたかしまプラン
~将来も、豊かな自然環境と共生した暮らしが実現している高島~
今後も豊かな自然環境と共生した暮らしを実現するために、人と自然とのつながりを大切にしながら、
都市圏からの長期滞在や定住促進を促し、地域の活力創出へとつなげていきます。
なりわい
【生業】
循環型たかしま産業プラン
~高島の味覚を味わい 木のぬくもりが感じられる 資源の好循環による高島市らしい地域産業~
高島市の生物多様性保全に取り組むうえで、これからも農林水産業を守り伝えていくことは極めて重要
です。農林水産物等の付加価値を高められるような “高島市ならでは” に徹底的にこだわった商品を開
発し、市内外の人たちがこれらの商品を活用・消費していくことにより、農林水産業の活性化へと導くシ
ステムを構築していきます。
【連携・交流】
私の好きなたかしまプラン
~好きな高島を楽しんでもらう 好みでリフレッシュする 多様な高島の魅力~
大阪や京都など、高島市に近接する都市圏の人たちが、趣味志向に応じて選択できる、魅力ある新たな
楽しみ方を提案し、都市圏からの交流人口の拡大に努めます。
同時に、高島市民が地域の魅力を再認識し、訪れた人たちがその魅力を理解し、より楽しんでもらえるよ
うなおもてなしの取り組みを進めます。
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5. モデルプランの整理と里山・里住・里湖における施策の方向性
モデルプランをもとに「里山」「里住」「里湖」と「共通する取り組み」に整理し、施
策の推進を図ります。
【暮らし】
【生業】
【連携・交流】
いきいきたかしま
プラン
循環型たかしま産業
プラン
私の好きなたかしま
プラン
林産業の振興
里山
過疎集落の再生
での取り組み
山の魅力の発信
地域農業の活性化
里住
地場産業の振興
での取り組み
商業・観光の振興
水と共生するまちづくり
里湖
水郷文化の創造
での取り組み
水辺空間の保全
新しい絆づくり
里山・里住・里湖
雇用の創出
に共通する取り組み
地域の賑わい
【将来目標】
「びわ湖源流の郷たかしま」を全国へ
=高島から全国に発信する生物多様性の魅力=
~水を養い
水と暮らし
※上記のイメージは次のページに示しています
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水でつながる高島~
≪施策の推進イメージ≫
高島市の豊かな自然環境を守り続けることは、市の活性化と発展に強く結びつきます。
「里山」
「里住」
「里湖」の全エリアで施策を推進していくことにより、
「水を養い
水でつながる高島」の実現を目指します。
水と暮らし
=共通する取り組み=
将来像
「水を養い
水と暮らし
水でつながる高島」の実現
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6.
「びわ湖源流の郷たかしま戦略」による高島市の将来の姿
これらの取り組みを実施することによって、生物多様性の恵みを受け、市民一人ひとりが地域
に誇りを感じ、地域が元気になっている高島市の将来の姿を想像してみましょう。
「里山(さとやま)」
○ブナ原生林やトチノキの巨木など、高島市が誇る貴重な自然が市民の手によって大切に守られ、積極
的な獣害対策により農林業被害が減少し、生態系が回復しています。
○里山の美しい風景に育まれた豊かな森林環境が市民の誇りとなっています。
○市内外の人が、健康づくりと風景の鑑賞に訪れ、豊かな森林環境を満喫します。高島の森林環境を愛
する人が、古くから残る空き家などに移り住み、新たな杣文化を創出しています。
○高島産の木材でできた家が各地に建てられ、木の温もり、香りが高島市の魅力となっています。
「里住(さとすみ)」
○生物多様性に配慮した農業用水路づくり、有機農法が多くの農家で取り組まれ、田畑はたくさんの生
き物であふれています。新たに農業を始める人が市内外から現れ、耕作放棄地が減少します。
○市内で生産された四季折々の農作物を用いた健康メニューが、家庭や学校などで提供され、市民の健
康を支えています。
○高島産の農作物や伝統工芸が、他の地域に無い質の高い「たかしまブランド」商品となり、全国の人
に親しまれています。
○生物多様性の大切さを知り、美しい自然を守り育てる、市民コミュニティや団体による地域主体の活
動が活発に展開されています。
「里湖(さとうみ)」
○ヨシ群落や内湖など、湖岸の美しい景観が市民によって守り続けられ、そこにある生態系が保全・保
護されています。
○琵琶湖に生息する動物が容易に田んぼと湖を往来でき、市民にとっても生き物にとってもすみやすい
水辺環境が構築されています。
○琵琶湖から水揚げされる魚など、高島市の自然に育まれた安全な食材は、伝統的な郷土料理や新たな
独自のメニューとして加工され、市内外の人にふるまわれています。
○琵琶湖岸の景色など、高島市の自然に育まれた美しい景勝地を鑑賞するため、市外からも多くの人々
が訪れています。
「里山」「里住」
「里湖」の恵まれた自然環境を保全・活用しながら、誰もがいきいきと暮らす
高島市を目指していきましょう。
発行
高 島 市
市民環境部 環境政策課
〒520-1592 滋賀県高島市新旭町北畑565番地
0740-25-8123
FAX 0740-25-8145
8 TEL