go・fun: インタラクティブな料理コンテンツ

WISS2004
go・fun: インタラクティブな料理コンテンツ
go・fun: An Interactive Content for Cooking
赤保谷
鮎美*
大和田 茂ξ
五十嵐 健夫Φ
楠 房子**
Summary. We propose an interactive cooking content through which the user gets interested in cooking.
Our goal is to trigger them to be able to eat well for a healty life. For this purpose, it is very important to educate
them in early childhood. We developed a content that mainly focuses on cooking, aiming at drawing interest of
young people in creating meals by themselves. A main characteristic of our system is its interactivity. Interactive
experience of various aspects of cooking such as change of shape or color of foods enables to draw attention to
wide range of users. As an user study, we let our content used by fifth grader of an elementary school, receiving
a positive feedback.
1
はじめに
人間の生活に必要な衣食住の中でも,食の重要性が
とりわけ最も高いことは言うまでもない.しかしな
がら,先進国の子供達は,豊かさの中にありながら,誤
った食生活により健康を害しているという調査があ
る[1].これを改善するには,幼少時の食に関する教育
の改善が不可欠である[1][2].我が国でも「食育」と
いう枠組みを用いて,この問題に取り組もうという
動きが盛んになってきている.食育とは,「望ましい
食生活を送ることのできる能力を幼児期に身につけ
させるための教育」である.それらは主に次の 3 つの
要素からなると我々は考えている.
この過程で食材の色や形状が様々に変化していき,
それまで料理をしたことのないユーザーにも楽しさ
が感じられるようになっている.
対象ユーザーとしては主に,コンピュータを扱った
経験のある小学校高学年程度を想定しており,パソ
コン学習の時間を借りて使用感の実験も行った.ア
ンケートの結果,本システムにより料理に対する興
味が高まったことが確認された.
2
コンテンツの構成と特色
このコンテンツの全体構成を図 1 に示す.
・望ましい食べ物を選択する能力
・料理をする能力
・食べ物の育ちを知り,感謝して食べる能力
我々はこの中でも,料理する能力に着目し,この能力
を育てることを目標に研究を進めている.これまで
にも料理に関する書物や番組等のコンテンツが数多
く製作されてきたが,それらは食育の観点からは不
十分である.なぜなら,料理は本質的にインタラクテ
ィブな活動であり,食に関する十分な説明を与える
には双方向のやりとりが不可欠だからである.
我々のコンテンツは「go・fun(ごはん)」と名付けら
れており,ユーザーに数種類の料理をインタラクテ
ィブに製作してもらうという内容になっている.
*
多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科
ξ
東京大学大学院 情報理工学系研究科/Sony CSLabs,Inc.
Φ
東京大学大学院 情報理工学系研究科,PRESTO/JST
** 多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科
図 1.コンテンツの全体構成
このコンテンツは進行役として二人のキャラクター
「トマとトミー」を用いている(図 2).これらは,料理
上のアドバイスや,料理の不思議さや面白さを伝え
WISS 2004
る役割がある.まず最初にこれらを登場させ自己紹
介をさせる.次に準備フェーズとなり,ユーザーはメ
ニューや人数を指定する.すると,材料,道具の説明画
面となり,必要な情報をインタラクティブに得るこ
とができる.次に洗う,切る,炒める,煮るなどの調理
を行う.
図 2.
登場するキャラクター
が特に人気が高かった.例えば,ナベのフタを開ける
と中から煮込むムービーがでてくるところや,3D
で切るところは,にんじんが切られる状況をみて喜
んでいた.コンテンツが簡単すぎるのではという懸
念があったが,実際には,ちょっとした動きや仕掛け
にとても素直に反応している様子が伺えた.このこ
とから,当初は家庭科を習う前の子供に使用しても
らうことで料理の興味を持ってもらうことを目的と
していたが,すでに家庭科で実際に料理を経験して
いる年齢に対しても有効であると考えられる.
アンケートの結果は,大半が面白かったという回
答であった.従ってコンテンツの目的である「料理経
験のない児童に興味を持ってもらう」に関しては,
ほぼ達成されたと考えている.中には「私はカレーを
作れるがこれをやってまた作ってみようと思った.」
というような意見もあり料理の面白さが料理経験の
ある子供にも伝わっていることがわかった.
本コンテンツの最も大きな特徴は,料理をインタラ
クティブに進めることができるという点である.例
えばタワシ,包丁,木べらなどをユーザーが自由に操
作できる.また,切る部分では三次元のユーザーイン
ターフェースを用いて食材を自由に切ることができ
る(図 3).
図 4.
4
実際に使用している様子
今後の課題
小学校での実験をふまえて,今後はインタラクティ
ブ性をもっと強調し,アニメーションの部分とのメ
リハリをつけた構成にしていく予定である.
操作面においても,単にボタン操作で動くようにす
るのではなく,実際に調理している状態に近い動作
ができるようにしたいと考えている.またシーンと
シーンが独立してしまっているのでアニメーション
などを工夫するなどして,シーン同士の繋がりを出
し,より楽しいコンテンツとなるようにしたい.
(a)
(b)
謝辞
実践に参加してくださった八王子市立鑓水小学校の
先生方,生徒の皆さんに感謝します.
(c)
(d)
図 3.
3
インタラクティブな操作の例
小学校での実験
本システムを小学校5年生2クラスの生徒に使って
もらう実験を行った(図 4).インタラクティブな部分
参考文献
[1]砂田登志子,今こそ食育を!元気をつくる選食・食
選,法研,2000
[2] く ら し の 情 報 コ コ ネ ッ ト ベ ビ ア ン キ ッ
ズ ,http://www.cocotto.net/online/babykiz_syokuik
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