実効的なコンプライアンスとは - 米国医療機器・IVD工業会(AMDD)

米国海外腐敗行為防止法について
US Foreign Corrupt Practices Act (FCPA)
(実効的なコンプライアンスとは)
弁護士・ニューヨーク州弁護士
Baker & McKenzie パートナー
西 垣 建 剛
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)はスイス法上の組織体であるベーカー&マッケンジー インターナショナルのメンバーファームです。専門知識に基づくサービスを提
供する組織体に共通して使用される用語例に倣い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者又はこれと同等の者を指します。同じく「オフィス」とは、かかるいずれかの
法律事務所のオフィスを指します。
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本日の構成
はじめに
第一 米国FCPA及び日本の反贈賄関連法令
第二 実効的なコンプライアンス制度
第三 ケーススタディ
今回は、「Interactive 形式」でトレーニングを実施します。
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2
はじめに
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最近の事例①京大病院(2015年7月3日)
–
2015年6月14日に、収賄罪で同病院臨床研究総合センター元准教授
の医師及び医療機器代理店の社員を逮捕
–
血管再生医療プロジェクトで使用する医療機器を随意契約で発注し
た際、有利に取り計らった謝礼として、2010年12月~2013年9月、
海外製のキャリーバッグやスピーカーなど計17点(約95万円相当)
を渡す。TUMI、RIMOWAの色や型番などを細かく指定するメール
送付。「儲かっているんだから、頼む」
–
背景として、祇園などの寿司屋や高級クラブで飲食接待→「接待を
受けるうちに常識がまひ」と供述
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4
最近の事例②徳島大病院(2014年12月)
– 徳島大病院の医療情報システム関連の契約に関して便
宜を図る見返りにシステム開発会社から賄賂を受け取
ったとして、元徳島大病院情報センター部長で慶応大
環境情報学部准教授(当時)を逮捕、起訴。
– 贈賄容疑で兵庫県明石市のシステム開発会社元代表取
締役を再逮捕
– 現金約300万円を複数回に分けて授受
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過去の事例①
時期
事例
2014年7月
代理店による神戸市立医療センター中央市民病院の役職
員に対する贈賄行為で同社支店長と従業員の2名が逮捕。
病院元副部長に対してパソコン10台とプリンター1台(合
計242万円相当)を渡す他、飲食接待や、病院と自宅の送
迎を繰り返していた嫌疑
2014年7月
大阪市立総合医療センターの人工心肺装置の入札をめぐ
り、同センター主査及び贈賄容疑で代理店の社員逮捕。
「100万円くらいの枠内で好きなものを買ってください」
2013年7月
代理店の社長が臨床工学科長を務める看護師に対して、3
泊5日のハワイ旅行(10万円相当)の海外旅行の接待を
行ったとして逮捕
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過去の事例②
時期
事例
2013年7月
東京大などに架空の研究費を請求し2000万円余りをだま
し取ったとして、同大政策ビジョン研究センター教授を
詐欺容疑で逮捕。同教授自身が懇意にしていた会社と共
謀の上、研究費を不正取得した疑い。
2012年7月
京都大学大学院薬学研究科の元教授、代理店の社長が贈
収賄の容疑で東京地検特捜部に逮捕。物品納入の便宜の
見返りとして、代理店のクレジットカードを自由に使わ
せたり(476万円)、本人や家族の海外旅行費用約146万
円を負担。
2011年3月
徳島県立中央病院の臨床検査技師及び代理店の営業担当
係長を贈収賄容疑で、それぞれ逮捕。ノート型パソコン7
台(約80万円相当)を授受(病院の調査では合計25台)。
資金捻出のため病院システムから架空発注。
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ご質問:何が一番の原因であると思いますか?
A. 医療従事者の意識の低さ
B. 社内規程の不整備
C. トレーニングの欠如
D. トップ経営陣による率先垂範の欠如
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東芝「不適切会計事件」(2015年)
– 9月7日、不正会計による利益の水増しが、2009年3月
期から14年4~12月期に、税引前の損益ベースの累計
で2248億円あったと発表
– 原因

経営トップの姿勢

「チャレンジ」:上司の意向に逆らうことができないと
いう企業風土

西田社長(当時):「経理なんて言われたとおりに数字
をつけておけばいいんだ」「死に物狂いでやってくれ。
最低100億円やること。」
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違反から生じる深刻な影響
 逮捕・刑事罰
 指名停止
 新聞報道による信用失墜
 代理店契約の解約等による売上減
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10
本日のメッセージ
– コンプライアンスを達成するには、経営トップの姿勢
が極めて重要

「コンプライアンス違反をしなければ
達成できない売上は目指さない」
という明確な姿勢を貫く
– 具体的にコンプライアンス制度を構築し、「仏に魂を
入れる」
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第1 米国FCPA及び
日本の反贈賄関連法令
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域外適用法ーFCPAとは?
– FCPAとは、”Foreign Corrupt Practices Act”



外国公務員に賄賂を渡すことを禁止する米国の連邦法
規制官庁:米国司法省(DOJ)と証券取引委員会(SEC)
違反した場合は、利得・損失の2倍までの罰金・懲役刑
–
1977年制定。しかし、2004年頃から執行強化
–
2012年11月、DOJ及びSECが共同で、「A Resource Guide to the
U.S. Foreign Corrupt Practices Act」(FCPAガイドライン)を発表
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医療業界におけるFCPA執行の強化
–
2009年11月12日の司法省の副司法長官のスピーチ
 「今後、FCPAを医療業界に積極的に適用する」
–
近時の医療機器・製薬業界での米国FCPA違反

J&J (2011年4月):罰金等の合計額-70百万ドル

Smith & Nephew(2012年2月):罰金等の合計額-22百万ドル

バイオメット(2012年3月):罰金等の合計額-22.8百万ドル

ファイザー(2012年8月):罰金等の合計額-60百万ドル

イーライリリー(2012年12月):罰金等の合計額-29百万ドル
→代理店を通じて賄賂を支払うケースが多い。
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14
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(2015年10月)
–
SECと和解し、不法利益の追徴11,442,000米ドル、裁判前の利息
500,000米ドル、及び民事制裁金2,750,000米ドル(合計約
14,692,000米ドル)を支払う(会計内部統制条項違反)。
–
中国子会社において、営業社員が偽の費用償還を受けて医療従事
者に対して現金等の利益を与える状況を放置した。その他にも、
講演者の選定・報酬の決め方、寄付及びコンサル契約に関して正
式な手続がなく、トレーニングを十分に行っていなかった。
–
旅費等の名目で営業社員が償還を受けた金銭を医療従事者に支払
う営業手法につき、「アクション・プラン」を作っていた。
–
メールには、「私が配属されたとき、感染症部の部長の態度は、
極めて明確だった。『金がなければ処方なし』」というものがあ
った。
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FCPA-世界中のあらゆる企業が摘発されている
罰金Top 10
企業名 (国)
1
Siemens (独)
2
Alstom (仏)
3
KBR ・ Halliburton (米)
4
BAE (英)
5
和解額
和解年
8億米ドル
2008年
7.72億米ドル
2014年
5.79億米ドル
2009年
4億米ドル
2010年
Total S.A. (仏)
3.98億米ドル
2013年
6
Alcoa Inc.(米)
3.84億米ドル
2014年
7
Snamprogetti (蘭)・Eni (伊)
3.65億米ドル
2010年
8
Technip (仏)
3.38億米ドル
2010年
9
日揮 (日)
2.188億米ドル
2011年
10
Daimler (独)
1.85億米ドル
2010年
その他:丸紅①8,800万米ドル(2014年)、丸紅②5,460万米ドル(2012年)、
ブリヂストン2,800万米ドル(2011年)
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* 上表は、「FCPA Blog」を参考に作成。
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FCPAの2つの柱
– 賄賂禁止条項
– (米国から見た)外
国の公務員に賄賂
を申し込み、供与、
支払を約束すること
を禁止
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– 会計・内部統制条項
–
賄賂の支払いを防止するた
め、適正な会計記録を保持
し内部統制を確立する義務
–
主に、米国上場企業にのみ
適用される厳格な義務
–
(但し、米国企業一般につき
FCPAガイドラインに基づき
賄賂禁止条項遵守のため体
制構築が推奨されている)
17
ご質問:米国FCPAについてどう思いますか?
A. 米国の法律であるのに、なぜ、日本企業が守らないと
いけないか理解できない。
B. 具体的にどのような行為が処罰されるかわからない。
C. その重要性をしっかりと認識しているので、積極的に
遵守したい。
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なぜ、米国の法律が日本国内の活動に適用されるのか?
適用範囲は4種類
適用パターン
①Issuer (米国の上場企業)
AMDDの会員企業の親会社の大多数は米
国上場企業
②Domestic Concern(米国法人、米国
市民、住民等)
AMDDの会員企業の親会社は米国企業。日
本法人のトップが米国人であることも。
③Foreign Person Acting within US(米 不正資金を医療従事者の第三国の口座に米
国で行為の一部をした者)
ドル送金する。米国旅行に招待する。
④上記の①から③の者と共謀し、又は
幇助若しくは代理した場合
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AMDDの会員企業の担当者と代理店が共謀
して裏金を捻出し、医療従事者に対して賄賂
を渡す場合
(代理店単独犯は、FCPAで処罰されないの
が原則だが、AMDD会員企業は会計・内部
統制条項で処罰される可能性あり)
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代理店が日本で賄賂を支払ったら?
米国メーカー
賄賂禁止規定違反
会計・内部統制義務違反
日本子会社
代理店
共謀・幇
助・代理
米国親会社、日本子会社、代理店、その各担当者
がFCPAで処罰される可能性
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賄賂(接待等も含む)
国公立病院の医師
等
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日立製作所の件(2015年9月)
日立
フロント企業
成功報酬
南アフリカ
与党ANC
25%出資
•
子会社
•
•
•
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フロント企業に対して、合計1050万ドル
(12億円)の利益供与
「コンサル報酬」「配当」として計上し、政
治団体への支払であることを帳簿上明確
にせず。
発電所建設を受注
SECと和解し、1900万ドルを支払う(会計
内部統制条項違反)。
21
参考 FIFAの件
– 米国司法省:47名を起訴、4名が有罪答弁
– 容疑:150百万ドルの賄賂とキックバックの受領等
– 違反法令:資金洗浄(Racketeer Influenced and
Corrupt Organizations Act)
– スイス検察当局は2015年9月25日、横領などの疑いで
ブラッター元会長を事情聴取し、資料を押収。
– ミシェル・プラティニ氏(60)が容疑加担の疑い
特色
– ①スイス当局と米国司法省との協力、②域外適用、③国外
追放
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22
日本の反贈賄関連法令とFCPA
–
日本の法令上、適法な行為は
FCPA違反を構成しない(明
文上適法である場合の例外)
–
したがって、代理店において
日本の法令を完全に遵守すれ
ば米国FCPAに反しない。
–
もっとも、FCPAは、米国上
場企業であるメーカーに対し
、代理店との関係を含めた、
賄賂を支払わない体制の構築
までを求めている(また、米
国企業一般についてもFCPA
ガイドラインに従い体制構築
が推奨されている。)
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– では、問題となる日本の
反贈賄関連法令とは?
①刑法
②国家公務員倫理法・倫理
規程、職務倫理条例、
各医療機関の倫理規程
③景表法に基づく公正競争
規約
23
刑法
– 単純収賄罪

第197条第1項 公務員が、その職務に関し、賄賂を収
受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以
下の懲役に処する。(その他、請託収賄、事前収賄、第
三者教賄、加重収賄、事後収賄、斡旋収賄が存在する)
– 贈賄罪

第198条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規
定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をし
た者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に
処する。
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国家公務員倫理法
– 国家公務員倫理法第5条
– 内閣は、(中略)職員の職務に係る倫理の保持を図る
ために必要な事項に関する政令(以下「国家公務員倫
理規程 」という。)を定めるものとする。
– 国家公務員倫理法は、地方公務員、みなし公務員には
適用されない(但し、同法第42条及び43条に施策義務)

それにより、①各地方公共団体において、同様の職務倫理条
例を定めていることもあり(例:北海道職員の公務員倫理に
関する条例)、②医療機関においても倫理規程を定めている
(例:独立行政法人国立病院機構職員の倫理に関する規程)
。
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ご質問:次のうち国家公務員倫理規程に抵触する行為は
どれですか?
A. 国家公務員の医師が、代理店担当者と割り勘でゴルフ
に行く行為
B. 国家公務員の医師が、代理店担当者と割り勘で一人あ
たり1万円で食事をする行為
C. 医療機器の説明会のあとで開催される多数の医師が参
加する立食パーティに、国家公務員の医師が参加して
飲食を行う行為
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国家公務員倫理規程
– 国家公務員倫理規程第3条(禁止行為)
– 1項:職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。





1号:利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せ
ん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものと
してされるものを含む。)を受けること
4号:利害関係者から又は利害関係者の負担により、無
償で役務の提供を受けること。
6号:利害関係者から供応接待を受けること。
7号:利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。
8号:利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く
。)をすること。
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国家公務員倫理規程(許される行為)
– 第3条2項 前項の規定にかかわらず、職員は、次に掲
げる行為を行うことができる。





1号:利害関係者から宣伝用物品又は記念品であって広く一般に配布するた
めのものの贈与を受けること。
2号:多数の者が出席する立食パーティー(飲食物が提供される会合であっ
て立食形式で行われるものをいう。以下同じ。)において、利害関係者から
記念品の贈与を受けること。
5号:職務として出席した会議その他の会合において、利害関係者から茶菓
の提供を受けること。
6号:多数の者が出席する立食パーティーにおいて、利害関係者から飲食物
の提供を受けること。
7号:職務として出席した会議において、利害関係者から簡素な飲食物の提
供を受けること。
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刑法と国家公務員倫理法との関係
– 刑法上、社会的儀礼の範囲内の贈答・接待については
贈収賄罪は成立しない(判例)。
– 国家公務員倫理法、都道府県の職務倫理条例、医療機
関の倫理規程に反する贈答・接待は、社会的儀礼の範
囲を超えるか否かの解釈基準となる。
(注)国家公務員倫理法等は、公務員、みなし公務員に
対して適用されるもので、贈賄側には適用されない。
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国家公務員、地方公務員(例)
種類
例
国家・地方公務員
厚生労働省直轄の病院
国立ハンセン病療養所
国家公務員
都道府県・市町村直轄
の病院(*)
公立病院(都道府県立
病院や市町村立病院)
地方公務員
特定地方独立行政法人
山梨県立病院機構
三重県立総合医療セン
ター
地方公務員(地方独立
行政法人法第47条)
*都道府県は指定管理者に運営を委託することもある。
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みなし公務員(例)
種類
例
法律
国立研究開発法人
国立がん研究センター
高度専門医療に関する
研究等を行う国立研究
開発法人に関する法律
第12条
独立行政法人国立病院
機構
東京医療センター
独立行政法人国立病院
機構法第14条
国立大学法人
東京大学医学部付属病院
国立大学法人法第19条
一般地方独立行政法人
大阪市立大学医学部付属
病院、宮城県立こども病
院
独立地方行政法人法第
58条
みなし公務員は、公務員ではないが刑法の適用上、公務員と見なされる。
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医療機器業公正競争規約
–
景品表示法第3条に基づき、「医療用医薬品業、医療機器業及び
衛生検査所業における景品類の提供に関する事項の制限」(平成
9年公正取引委員会告示第54)が設けられている(医療機器を取
り扱っているすべての事業者に適用)。
–
→公正競争規約は、①景品表示法に基づき、②内閣総理大臣から
権限の委任を受けた消費者庁長官と公正取引委員会から認定を受
けて設定されている。

公正競争規約は、公正取引協議会の会員企業に適用され、違反につ
いては罰則の適用を受ける(100万円以下の罰金等)
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公正競争規約と刑法、国家公務員倫理法等の関係
– 公正競争規約は、公務員、みなし公務員以外の民間病
院の医療従事者との関係においても適用される。
– 公正競争規約と刑法、国家公務員倫理法等とが重畳的
に適用される場合(公務員、みなし公務員との関係)
より厳格なルールが適用される(例:公正競争規約上
認められる1万円以内の飲食、3000円以内の中元・歳
暮、上司等が訪問する際の手土産等の提供は、対公務
員、みなし公務員との関係では認められない)。
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公正競争規約上、特に留意すべき点
メーカーにとって重要な最近のトピック
– 「医療担当者のトレーニングの提供に関する基準」
– 「医療担当者の海外派遣についてのQ&A」
→代理店に海外出張・学会登録の費用の肩代わりを要求して
くる可能性がある。
– 特に、公務員・みなし公務員に関しては、公正競争規約
違反だけでなく、刑法上の贈収賄になる可能性もある。

公正競争規約の遵守、所属機関の手続に従ってその承認を
書面で取得することを確実にする必要がある。
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その他の域外適用法
– 英国Bribery Act(2010年制定。2011年7月より施行)


英国国内外の贈収賄を禁止する英国法
 特徴①外国公務員だけでなく、民間人の贈収賄も処罰対象
 民間の医師への贈賄も処罰対象
 特徴②Facilitation Payment(機械的な業務のための少額の
支払い)も処罰対象(FCPAは処罰の対象の例外としている)
法人の贈収賄懈怠罪
 法人が従業員等の賄賂支払の防止を怠ったことを処罰
– 日本の不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪
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第2 実効的な
コンプライアンス制度
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FCPAガイドラインが推奨するコンプライアンス体制
第一段階
第二段階
第三段階
①リスク調査
①組織体制の整備
①懲戒
②トップ
経営陣の
誓約
②明確な規則・手続
②継続的改善
③トレーニング
③買収時の注意
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メーカーに求められる代理店への対応
①規則・契約
 コンプライアンスのための明確な基準・規則を制定し、代理店もそれを遵守する
 3つの要素を明記-(1)反汚職の表明保証、(2)反汚職確保のための監査権、
(3)違反の場合の解除権
 代理店契約上のFCPA条項は厳格化の傾向
②協力体制
 代理店向け定期的トレーニング
 代理店からも通報できる内部通報制度
③代理店の適切な選定
 デューデリジェンスの実施:代理店の能力・資格、業界内の評判、当該代理店を
用いる理由、FCPAリスクを発生させる諸事情(Red Flag等)
 違反の場合の対応-調査し、解除又は再発防止策の確約
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38
ご質問①:反汚職規程を導入していますか?
A. 導入している。
B. 検討中である。
C. 導入する予定はない。
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ご質問②:トップ経営者の誓約は十分ですか?
A. 十分である。
B. 不十分である。
C. 全く存在しない。
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40
トップ経営者の誓約(率先垂範)を達成する
方法
– 一切の不正な利益提供を認めないポリシーを導入し、
明確な規程を導入し、違反が発覚すれば地位にかかわ
らず懲戒する。
– 日頃から頻繁にコンプライアンスの重要性を強調し、
コンプライアンスを軽んじる発言をしない。
–
–
–
–
経営者自らも例外なく、規程を実行する。
コンプライアンスに必要十分な資金・人材を使う。
法令をねじ曲げて解釈しない。
中間管理職を指導し会社全体の意識を高める。
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41
ご質問③:トレーニングを実施していますか?
A. 毎年、一回は実施しています。
B. 実施したことがあります。
C. 実施したことはありません。
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42
現実的なトレーニング
– ①定期的に実施して必ず参加者にサインしてもらう。
– ②内容



トップ経営陣の誓約
コンプライアンス規程・手続の内容-懲戒することを通知
現実的な内容

(1)依存体質の高い医療従事者の性質を見極める目を持つ。

(2)要求を受けた場合に相手を傷つけずに断る方法を身につける。

法規制、執行、社内コンプライアンス制度が厳しい

(3)医療従事者の要求は不合理なものでも聞き入れるという態度を変える。
– ③グループ・ディスカッションを取り入れる

断り方、要求されない方法等の現実的なノーハウを共有
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43
賄賂の「断り方」
–
–
–
断り方のテクニック

「もや~」とした雰囲気に気をつける

「ガラッ」と雰囲気を変えて、強い意志で毅然として断る

上司がきっちりと断る
法令、執行リスクを理由に断る

「最近、京都大学で大変なことになりましたね。同じような
ことにならないようにしましょう。」

「何から発覚するかわかりません。お互い、大変なことにな
ります。」
社内規程を理由に断る。

「弊社では規程が厳しくてそんなことはできません。」
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44
賄賂を要求されにくい方法
– 普段からの営業態度が重要

代理店側が接待などを見返りにして売上を伸ばそうとい
うスタンスであると、毅然とした態度をとれない。

「高いレベル」で医師との関係を構築する。「言うこと
は何でも従う」というイメージを作らない。
– 普段から医療従事者とコンプライアンスの話題をする
– 接待開始前に、医療従事者に対して一次会のみである
ことをはっきりと伝える。接待場所には事前に1万円
以上は決して支払わないように伝える。
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45
第3 ケーススタディ
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ご質問:どの分野が一番気になりますか?
A. 接待(料亭、高級クラブ等)
B. 贈答(ブランド物バッグ等)
C. 寄付(備品の寄付も含む)
D. 送り迎え
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ケーススタディ①飲食接待
–
営業社員のAさんは、某国立大学病院の医師X先生の手術に立ち会
った。X先生は、最近私立病院から転勤してきた若いが大変優秀
な医師である。ただ、今回使う医療機器は新機種であり立ち会う
側のきめ細やかなサポートが必要であった。その協力関係の結実
により、大変な難手術を成功させることができた。その手術の後
、額に汗一杯のX先生から「ようやく終わった。立ち会い、あり
がとう。おかげで助かったよ。今度、一度、食事でも行きましょ
う。」と言われた。Aさんは感動のあまり、X先生がみなし公務員
であることを忘れ、「もちろんです!」と回答し、数日後、大学
病院近くの居酒屋で飲食をし、結局、その代金一人あたり1万
5000円を支払った。ただ、会社には、別の私立病院の先生を接待
した旨の申請書を提出した。
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分析と対応
①法令違反
–
刑法の贈賄罪
–
刑法の詐欺罪
–
FCPA違反(メーカーの関与が
ある場合)
–
公正競争規約違反(①金額の
超過、②目的外の飲食)
–
医師法違反(医行為を行ってし
まった場合)
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②再発防止策(予防策)
– トップ経営者の誓約
– トレーニング
– 接待規程の整備

事前申請を必須にする

明細が付いた領収書を
要求
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ご質問:どの程度の処分が妥当ですか?
A. 懲戒解雇
B. 諭旨退職
C. 減給
D. 厳重注意・戒告
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ケーススタディ②送り迎え
– 営業社員のBさんは、某県立病院のY先生の担当です。
Y先生はその病院の医局長であり、Bさんの代理店の先
輩社員も含めて伝統的に15年間以上も自宅と病院との
間の送り迎えをしてきました。その病院は代理店の売
上の30%を占める大得意先です。
– 最近、コンプライアンスが厳しくなってきたものの、
同業他社もこの病院の医師の送り迎えをしており、当
社だけがやめるわけにはいきません。他社の事例です
が、医師に送り迎えをやめることを切り出したら、
「それならお宅にはもう頼まない」と言われたとのこ
とです。
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分析と対応
①法令違反
–
刑法の贈賄罪
–
FCPA違反(メーカー関与の場
合)
–
公正競争規約違反
②断り方
–
「資金難で社用車の台数を減ら
さざるをえません。」
–
「コンプライアンスが厳しくなっ
た。」
他社と共同で一斉廃止
–
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③再発防止策(予防策)
– まさにトップ経営者の誓約
– トレーニングにおいて送
迎も賄賂にあたるものとし
て禁止
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ご質問:御社なら断りますか?
A. 断らない。
B. 断る。
C. 時間をかけてこのような慣行をなくしていく。
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本日のメッセージ
– コンプライアンスを達成するには、経営トップの姿勢
が極めて重要
– 具体的にコンプライアンス制度を構築し、「仏に魂を
入れる」
– 現実的なステップを実施することで、会社全体のリス
クを軽減
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