カナダケベック出張報告

日本工業大学 第 45巻 第 4号 (平成28年2月)
Report of Researches, Nippon Institute of Technology, Vol.45, №4(February, 2016)
教育・研究活動報告
カナダケベック出張報告
WCTE 2014†木材技術国際学会での論文発表
那須 秀行*
(2014 年 08 月 17 日作成)
Travel Report Bound for Quebec, Canada
Four Presentatons at World Conference on Timber Engineering 2014
Hideyuki Nasu
(Written August 17, 2014)
World Conference concerning timber engineering WCTE started in 1984 and is held in turn every 2 years. WCTE 2014
was hosted by Canadian Timber Design and Engineering Society colleagues on 9th – 15th August 2014. There were wide
ranges of over 800 participants. Four presentations were made by our laboratory. Two of them were personated
by master course students. We have gotten a lot of profitable intelligence, good connections among the participants
and high level of motivations for next research collaborations with international colleagues.
1
2
国際学会の概要
参加の準備と主目的
WCTE, World Conference on Timber Engineering 2014
参加の準備として、当研究室からは修士コース M1 の院生
がカナダ東部フランス語圏の都市ケベックで開催された。
4 名全員が投稿し、
4 編が査読を通り今回の発表機会を得た。
WCTE は世界各国が幹事を持ち回り 2 年に一度開催される木
昨年 2013 年 8 月がアブストラクトの締切であったが、卒業
質構造に関する世界最大の国際学会であり、前回のニュー
論文をベースにそれを発展させ修士論文の途中までを英文
ジーランドから引き継いで開催された。
で投稿した。その後、フルペーパー投稿の締切である 2014
2014 年 8 月 9 日(土)から 15 日(土)までの 7 日間、
年の 4 月末までに国際学会で発表できるレベルまで研究を
世界遺産である市の中心からほど近い国際会議場 Centre
深め、英文で完成させることは容易ではなかったが、皆が
des Congres du Quebec を会場として開催された。毎回、
諦めずにチャレンジを続けた。
各国から国を代表する研究者の他、スポンサーとして実業
参加の主目的としては次の通りである。
界からも多くの参加があり、情報交換の他、国を超えた研
1) 論文 4 編の発表。発表題目は参考文献に示す通り。
究開発のコラボレーションへの発展機会ともなっているが、
2) 世界的な研究テーマの動向把握。
特に今回は 68
th
3) 各国を代表する研究者や実業界とのコネクション構築。
FOREST PRODUCTS SOCIETY INTERNATIONAL
4) 研究活動に対する動機づけ(特に院生に対して)
CONVENTION と合同開催ということもあり、世界 40 か国か
ら 800 名を超える参加者(前回大会は約 500 名)を迎え、
3
盛大に開催された。
発表内容
3.1
開会式では、
カナダの自然資源大臣による挨拶がなされ、
発表 1 編目
Satoshi Oonishi(Nippon Institute of Technology,
森林資源を多く有する同国が目指している国際社会での貢
Japan): Study on Compressive Strain of CLT Wall Bottom
献の他、本会への期待等について基調講演があった
(Fig.1)。
Under the Extreme Vertical Load
期間中は毎朝 8:45 から各専門分野の代表による基調講演
欧州の中層木造で活用され始めた CLT(Cross Laminated
が開催され、小休憩を挟んで各セッションに分かれ並行し
Timber)の壁脚部にかかる極大鉛直力による局部座屈に対
て発表された(Fig.2)
。小休憩や昼食は決まった一ヵ所で
し、
扁平頭の長ビス埋込による補強を開発し検証したもの。
行われるため、貴重な意見交換の場として活用できた。
本研究は JSPS 科研費(課題番号 24560696)の一部であり、
今回の渡航費も当該科研費から一部捻出している。
___________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
†
*
WCTE 2014:World Conference on Timber Engineering 2014
建築学科
96
日本工業大学 第 45巻 第 4号 (平成28年2月)
Report of Researches, Nippon Institute of Technology, Vol.45, №4(February, 2016)
3.2
発表 2 編目
先述の科研費テーマについて FEM 解析を中心に実験にも参
加した。本学で共に過ごしカナダで再会できたのは研究が
Rika Arai(Nippon Institute of Technology, Japan):
Study on Damping Effect of Wooden Bearing Shear Wall
世界に広がっていく実感を持てるものでとても嬉しい。
木造の耐力壁において交通振動や大地震によって生じる
国際学会は日本の研究者との繋がりが深まる機会でもあ
耐力劣化を抑制すべく制振素材を活用し、その効果を部分
る。通常、日本の学会や各種委員会等で顔を合わせてもこ
せん断実験および実大面内せん断実験により比較検証した
れ程長い間共に過ごすことはないが、異国の地で他国の研
もの。本研究は平成 26 年度 京都大学防災研究所 一般共同
究者達とのディスカッションとなると仲間意識が大いに刺
研究課題 26G-10(制振素材による木造住宅の劣化抑制に関
激され、帰国後も距離感がぐんと縮まる。
する研究 研究代表者 那須秀行)の一部であり、今回の渡
5
航費も京都大学防災研究所から一部捻出している。
3.3
発表 3 編目
進めており国内外の学会で発表しているが、これらの研
Hideyuki Nasu(Nippon Institute of Technology,
究成果をフィードバックし日本での実用化に貢献したい。
Japan): Study on the Influence of Bearing Shear Wall
・欧州の高いレベルの研究者達と意見交換できた。来日の
with Opening
スウェーデン式木造住宅の耐力壁に設けられた窓開口に
際には本学に招聘し記念講演等に繋げたいと考えている。
6
ついて、その有無や配置が水平耐力に及ぼす影響について
実大の面内せん断実験により定量的に比較検証したもの。
3.4
今後
・世界的に CLT に関心が高い。当研究室も関連のテーマを
総論
より高いレベルの研究や海外とコラボレーションを進め、
発表 4 編目
今後も成果を上げ続けたいと思っている。査読付きの国際
論文を作成し発表に漕ぎつけるのは大変であるが、それを
Hideyuki Nasu(Nippon Institute of Technology,
Japan): Study on Prevention for Buckling of Combined
乗り越えれば更に世界が広がる。今回発表した大学院生に
Pillar with Fiber Materials or Screws
とっても実り多い海外研修であった。
やや小径の製材を活用しそれを機械的に束ねることで大
謝辞
断面の柱として座屈防止に機能できるか、その補強効果と
本報告に記載した一部の研究は、平成 24 年度 科学研究費助
成事業学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)JSPS 科研費「課
題番号 24560696 研究代表者 那須秀行」
の助成を受けています。
また、平成 26 年度 京都大学防災研究所 一般共同研究課題
26G-10「制振素材による木造住宅の劣化抑制に関する研究 研
究代表者 那須秀行」の助成を受けています。
一体性について実験により検証し評価したもの。
4
他者の発表やコンタクト
世界的な流れとして、CLT 構造に関連する発表が多かっ
た。環境問題を背景とし再生可能な建材である木材利用の
拡大に期待が高まる中、CLT 構造に対する関心は高い。
参考文献
他にも興味深い内容は多く、例えばミュンヘン工科大学
1)Satoshi Oonishi, Hideyuki Nasu, Yasuteru Karube,
Masahiro Inayama: Study on Compressive Strain of CLT
Wall bottom under the Extreme Vertical Load, World
Conference on Timber Engineering 2014, ABS140, 2014.8
2)Rika Arai, Yuichiro Matsutani, Hideyuki Nasu, Hiroshi
Kawase: Study on Dumping Effect of Wooden Bearing Shear
Wall, World Conference on Timber Engineering 2014,
ABS142, 2014.8
3)Ryutaro Watanabe, Tatsuya Degura, Hideyuki Nasu: Study
on the Influence of Bearing Shear Wall with Opening,
World Conference on Timber Engineering 2014, ABS144,
2014.8
4)Hirokazu Namiki, Hideyuki Nasu: Study on Prevention for
Buckling of Combined Pillar with Fiber Materials or
Screws, World Conference on Timber Engineering 2014,
ABS168, 2014.8
のグループによる発表では、最近の欧州の中層木造で湿気
によって構造にダメージを受けた複数の事例が発表された。
一方、休憩時間等には個人的に情報交換でき、例えば、
以前から面識のあるウィーン工科大の Prof. Wolfgang
Winter(次回 2016 の議長)
(Fig.3)や、スウェーデン王立
SP 技術研究所に赴任していた時(2007 年~2009 年)の同僚
達とも再会し直に意見交換ができた。これらは一例だが、
本会を通じて今後の研究の足掛かりにもなった。
また今回、Mr. Florian Rebstock(スウェーデンのルレオ工科大)
も日本の接合部技術を応用した研究の発表をしていた。彼
は 2014 年 5 月から 6 月にかけて約 1 ヶ月当研究室に滞在し、
Fig.1 カナダ自然資源大臣の挨拶
Fig.2 各セッション発表の様子
97
Fig.3 Prof Winter(ウィーン工科大)と