中国水環境管理強化に関する 日中共同研究

中国水環境管理強化に関する
日中共同研究
-日本側から見た課題分析
及び日中環境協力の課題-
財団法人地球環境戦略研究機関
北京事務所長
小柳秀明
1.経緯
• 2006年12月 日中両国の環境大臣会談で
「中国の水環境管理を強化するための日中共
同研究」の実施について合意
• 日本側実施機関 地球環境戦略研究機関
• 中国側実施機関 日中友好環境保全セン
ター(SEPA環境と経済政策研究センター)
1.経緯
• 日中双方の実施機関は双方の専門家に加え
て、外部の日中専門家を招聘し、研究を実施
日本側専門家チーム
• 小柳秀明(IGES北京事務所長)(代表)
• 平山義康(大東文化大学教授)(環境法)
• 皆川新一(新潟県環境部)(地方環境行政)
• 久山哲雄(IGES淡水資源管理チーム)
1.経緯
中国側専門家チーム
• 夏光(SEPA環境と経済政策研究センター主任)(代表)
• 周国梅(SEPA環境と経済政策研究センター国際環境政
策研究所副所長)
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李華友(SEPA環境と経済政策研究センター研究員)
于敏(中国社会科学院法学研究所教授)
常杪(清華大学環境管理・政策研究所所長)
江東坡(中国人民大学博士)
1.経緯
• 2007年2月から両国の専門家チームが合同
で、重要水域の水環境管理の現状と課題に
ついて現地調査・ヒアリングを開始
• 2007年2月 河北省保定市 白洋淀流域
• 2007年3月 遼寧省沈陽市、撫順市
遼河流域
• 2007年3月 天津市 海河流域
遼河流域
白洋淀流域
海河流域
Web出典:在中国日本大使館
1.経緯
• 2007年4月 温家宝総理の訪日時に
• 「日本国政府及び中華人民共和国政府によ
る環境保護協力の一層の強化に関する共同
声明」署名
• その第1項において次の協力を強化すること
で一致
• 「飲用水源地保護を強化し、河川・湖沼・海
洋・地下水の汚染を防止し、特に渤海・黄海
区域及び長江流域などの重要水域における
水質汚濁防止について協力を実施する。」
1.経緯
• この共同声明を受けて、日中共同研究では
主要な調査対象地域を渤海・黄海区域及び
長江流域として現地調査・ヒアリングを継続
• 2007年7月 山東省済南市、東営市、威海市
渤海・黄海区域
• 2007年8月 四川省成都市、楽山市、宜濱市
長江上流域
• 2007年10月 湖北省武漢市、荊州市、宜昌市
長江中流域
渤海・黄海区域
長江中流域
長江上流域
Web出典:在中国日本大使館
(参考)調査・ヒアリング内容
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(調査内容の例:白洋淀流域 他の流域もほぼ同内容)
一 白洋淀流域の経済社会発展と環境状況
1 流域の自然地理と行政管轄の状況
2 流域の社会経済の発展状況
3 流域の水環境の状況
二 実施中の白洋淀流域の水質汚染防止対策
1 地域の水質汚染防止関連法令の制定と執行状況
2 流域水質汚染防止の行政管理体制及び部門の運営管理と機能に関する状況
3 水質汚染の改善に係る行政目標や任務の設定と役割分担体制
4 水質汚染改善任務完成の監督、奨励と懲罰措置
5 水質汚染整備の関係情報の社会に対する公布とそのルート
6 水質汚染事故の応急メカニズム
(1)事故発生の経過と影響
(2)事故発生の原因
(3)実施した主な応急措置とその効果
7 水質汚染改善面の財政収支
8 水質汚染改善の市政(公共)施設の整備と運営状況
9 主な汚染排出業種の発展状況と汚染の影響を受けた主な業種の発展状況。
三 主要政策の需要と「十一五」活動計画
1 水質汚染防止の法令に整備が必要とする部分
2 政府の行政機能、措置に改善が必要とする部分
3 行政機能を果たすため改善が必要とする部分
4 主な環境政策に対するニーズ
5 企業、住民と社会団体の役割
6 「十一五」白洋淀水質汚染防止計画(または構想)
白洋淀流域図
2.課題(白洋淀流域)
(1)水資源の欠乏が環境質の改善を制約
(2)下水処理施設の建設の遅れ
(3)白洋淀内での生活と観光による汚染物質排出が
未解決
(4)白洋淀の環境機能が不明確、無秩序な養殖の存
在
(5)一部企業の低い環境意識、汚染物質不法投棄の
存在
→魚大量死事件発生 など水汚染事故につながる
2.課題(白洋淀流域)
(国等が重点的に考慮すべき問題)
(1)資金不足の問題
(2)水補給問題
(3)白洋淀内住民の移住問題
遼河流域図
2.課題(遼河流域)
(1)水資源の不足が環境質の改善を制約
(2)汚水処理施設の建設に長期的な安定運営の保障
がない
(3)顕著な構造的汚染、汚染物質排出総量が環境容
量を超過
(4)日増しに顕著になっている農業面源汚染
(5)小流域の総合整備対策の停滞
(6)一部の大型ダムの水質汚染が深刻
(7)下流の水環境対策に影響を与え、飲用水源の安
全を脅かしている越境汚染
(8)瀋陽撫順灌漑用水路の水環境汚染の後始末(過
去の政策失敗の後始末)
2.課題(遼河流域)
(国等が重点的に考慮すべき問題)
(1)資金不足の問題
(2)流域の越境汚染の問題
(3)飲用水源地の面源汚染防止対策手段と措
置
(4)水資源使用効率と汚水回収利用率の向上
海河流域図
(天津区間)
2.課題(海河流域天津区間)
(1)水質汚染防止法令の速やかな改善が必要
(2)地方行政体制と職責分担の調整が必要
(3)越境流域汚染の政府間調整メカニズム
2.課題(海河流域天津区間)
(緊急に解決すべき課題)
(1)水資源の不足がもたらす環境容量の激減
(2)都市配管網建設が立ち遅れ、下水の収集
と中水利用が影響を受けている
(3)飲用水源地の貯水池周辺の移民問題
(4)都市面源汚染問題が深刻である
(5)洪水期の農業排水の海河水質への影響は
無視できない
(6)灤河導水路水質保全を強化しなければなら
ない
渤海湾
黄 海
2.課題(環渤海・黄海)
(1)陸源汚染が環渤海地域環境汚染の主たる
原因
(2)自浄能力の弱さが渤海環境汚染を悪化さ
せる要因のひとつ
(3)汚染対策の資金不足が環境質の改善を制
約
(4)下水配管網建設の遅れで下水処理施設は
低負荷稼動をせざるを得ない
(5)海源汚染も環渤海・黄海地域の環境自浄
力を弱める要因
(参考)日中協力のニーズ
(1)都市環境インフラ建設資金
(2)下水処理施設の汚泥処理技術
(3)一部の特定業種(製紙業、重化学工業な
ど)の汚染整備技術の導入
2.課題(長江上流域)
(1)西部地区の経済発展レベルは、末端政府の水質
汚染改善のインフラと監督管理機構のキャパシ
ティ・ビルディングの持続投入能力を制約
(2)下水処理施設は長期的安定運営の保障に欠ける
(下水配管網建設の遅れなど)
(3)構造的汚染(重厚長大産業、多くのダムの存在に
よる水量減少)が際立ち、一部の地域は環境許容
量の限界の問題に直面する
(4)農業による面源汚染の問題が日増しに目立つ
(5)小流域総合改善のテンポが遅れている
(6)現行の水質汚染防止法体系を完備する必要があ
る
2.課題(長江中流域)
(1)小さな支流域の汚染対策が不十分
(2)支流域の汚染防止に対する中央からの支
持が不十分
(3)「南水北調」、「三峡ダム」など国家級プロ
ジェクトの影響
3.課題整理
COD排出量の推移(万t)
面
源
汚
染
2,500
2,000
1,500
生活系
工業系
1,000
500
06
20
05
20
04
20
03
20
02
20
01
20
00
20
99
19
98
19
19
95
0
3.課題整理
工業系汚染への課題
・企業の低い環境意識
・構造的汚染(重化学工業、古い遅れた工業基
地など)
・水質汚染防止法体系が不十分(執行体制、法
の整備不足)
・一部の業種について汚染防止技術がない
3.課題整理
生活系汚染への課題
・下水処理施設(下水処理場、配管)建設の遅れ
と安定的な運営の保障がない(含資金不足)
・増加する下水汚泥の適正な処理技術がない
3.課題整理
面源汚染対策の必要性
・湖沼、飲用水源地周辺での生活排水・観光関連
施設排水・畜産関連排水等処理の必要性
・農業面源対策の必要性
3.課題整理
その他の課題
・北方地域における慢性的な水資源不足
・中水利用の促進
・環境対策資金の不足(東北、中西部地域)
・小流域の総合的な汚染対策の欠如
・越境汚染問題(生態補償メカニズムの必要性)
・水源地周辺等での住民移転問題など
4.日中協力の可能性
中国が自らの力で解決することを原則
・工業系汚染分野
・特定の業種に対する汚染防止技術移転
・企業の環境意識改善、自主的環境管理体制
の構築(企業環境保護監督員制度等の推進)
・小流域の総合的な汚染対策
4.日中協力の可能性
中国が自らの力で解決することを原則
・生活系汚染分野
・下水処理の高度化(N、P対策)技術
・増大する下水汚泥の適正処理技術等
4.日中協力の可能性
中国が自らの力で解決することを原則
・面源汚染分野
・面源汚染対策は「十一五計画」以降ますます
重要になってくる。
・農村地域等、特に飲用水源地周辺における
生活排水等の処理技術(下水道普及が適切で
ない地域等における分散型排水処理技術)
4.日中協力の可能性
中国が自らの力で解決することを原則
・その他
・環境と健康の問題(日本には水俣病等の経
験あり)
・環境対策資金面での支援の可能性?
→円借款は終了する。
→新しい枠組がなければ困難
(参考)新たな協力の方向性
・公害問題をほぼ克服した日本では地球温暖化
防止対策が最重要課題の一つ
・一方、中国等の発展途上国では水汚染防止対
策等の公害対策が最重要課題
• ・2007年6月に閣議決定した「21世紀環境立
国戦略」では、「途上国の公害対策等と温暖化
対策との相乗的・一体的な対策(コ・ベネフィッ
ト対策)の推進」を提案
→このような支援のための新しい「資金メカニ
ズム」も検討中
最後に
・以上の内容は、本フォーラムにおける議論の
素材として提供するものであり、発表者の個
人的見解が多く含まれていることを付言して
おきます。
・参加の皆様から多くの意見が寄せられること
を期待しています。
謝謝!!
不客气!!