糖鎖の発現と制御 - 公益財団法人 内藤記念科学振興財団

第31回内藤コンファレンス 研究テーマ趣意書
糖鎖の発現と制御[Ⅱ]-代謝物、ストレス応答、マイクロドメインと展望Glycan Expression and Regulation[Ⅱ]: Metabolites, Stress Response, Microdomains, and Beyond
糖鎖は、細胞間コミュニケーションの場で重要な役割を果たしている。翻訳後修飾の一つとして
付加された糖鎖は、タンパク質に多様なしかも新たな機能を加える重要な役割を果たしている。一
方、脂質を修飾した糖鎖は細胞膜で微小環境マイクロドメインを形成し膜受容体を始め膜機能分子
の存在状態のコントロールや機能維持に重要な役割を果たすことが注目されてきている。糖鎖の特
徴は、受精、発生、分化、再生、免疫、細胞増殖などの多くの生物現象に関係することにある。同
時に、感染症、ガン化、脳筋肉疾患、生活習慣病など様々な疾患に深くかかわることも明らかになっ
てきている。
糖鎖の発現と制御[Ⅰ]では、我が国が中心的な役割を果した糖鎖遺伝子研究に基づいて行われ
てきた糖鎖の発現調節機構、遺伝子破壊マウスを使った機能研究などの基礎研究に加え、タンパク
質情報に糖鎖情報を加えたガンマーカーの探索、福山型筋ジストロフィーなどの先天性糖鎖不全症、
肺気腫、糖尿病などの疾患に焦点をあてた研究に関する発表、討論が活発に行われた。引き続いて
今回の糖鎖の発現と制御[Ⅱ]では、糖鎖合成に関わる代謝産物をシステムズ糖鎖生物学の視点か
ら見直すことによって全く新しい視点が開け始めていることの紹介と討論、タンパク質に糖鎖が付
加することにより行われる品質管理の最新の知見を共有すること、膜糖タンパク質、糖脂質、膜脂
質が作るマイクロドメインの果たす役割を全く新しい視点から見直すこと、糖鎖の立体構造に迫る
新たな方法論の展開と応用を展望すること、ケミカルバイオロジーを糖鎖生物学へ導入することに
より開かれる新たな展開を共有することを目的として、国内外の第一線の研究者と我が国の若手研
究者による活発な討論の場を提供することを達成目標としている。さらに、本会の最後のセッション
として、糖鎖科学の生命科学における「今後」の問題に、海外の研究者3名、糖鎖の発現と制御[Ⅰ]
と[Ⅱ]の組織委員長2名で、問題提起とパネル討論を通して、総括を行う野心的なプログラムを組
んでいる。
本会の最重要課題は若手研究者と国内外の著名な研究者との討論、個人的な接触を通じて、次世
代を担う研究者の育成と触発にある。参加者募集の段階では90名を超える応募者があり、利益相反
を十分考慮した厳正な選考を行ったが、参加できない評価を受けた応募者にとっては、ネガティブ
な評価でしかない。しかし、生きることと同じく、研究の本当の価値は後になってからでないと確定
されないのが現実であり、参加できなかった若手研究者はこのことをバネに、新たな意欲を掻き立
てて研究に向かって欲しい。同時に、参加者はこの機会を十分に活用することを期待する。
2011年7月
組織委員 鈴木 明身 東海大学 糖鎖科学研究所 所長
(組織委員長)
井ノ口仁一 東北薬科大学 分子生体膜研究所 教授
北島 健 名古屋大学 生物機能開発利用研究センター 教授
小堤 保則 京都大学大学院 生命科学研究科 教授
谷口 直之 理化学研究所 基幹研究所 グループディレクター
顧 問 永井 克孝 東京大学 名誉教授(財団評議員)
岩永 貞昭 九州大学 名誉教授(財団名誉理事)
─ 78 ─
第31回内藤コンファレンス プログラム
第1日 2011年9月13日(火)
開会挨拶
東海大学糖鎖科学研究所 鈴木 明身
基 調 講 演
1
膜タンパク質内の脂質の構造とその機能
月原 冨武
兵庫県立大学大学院生命理学研究科
2
Post-translational glycosylation: challenges and opportunities
Chi-HueyWONG
AcademiaSinica,Taiwan
第2日 2011年9月14日(水)
セッションA
糖代謝への回帰
座長:北島 健、
JinWonCHO
1 シアロメタボロームが語る健康と病気
名古屋大学生物機能開発利用研究センター 北島 健
2 ガングリオシドシアリダーゼ Neu3および Neu4 における機能的役割の相違について
東北薬科大学分子生体膜研究所 宮城 妙子
3 分子設計を利用した新規ファブリー病酵素補充療法の開発
4 FunctionalrolesofO -GlcNAcmodification
明治薬科大学薬学部 櫻庭 均
YonseiUniversity,Korea JinWonCHO
5 Usingautomatedoligosaccharidesynthesistoelucidatethebasisofinfectiousdiseasemechanisms
MaxPlanckInstituteofColloidsandInterfacesandFreeUniversity,USA PeterSEEBERGER
ショートトークセッション A
北島 健
宮城 妙子
櫻庭 均
─ 79 ─
JinWonCHO
PeterSEEBERGER
セッション B
ストレス応答と糖鎖
座長:小堤 保則、ReidGILMORE
1 Posttranslationalglycosylation:amechanismtoenhanceglycoproteinqualitycontrol
UniversityofMassachusettsMedicalSchool,USA ReidGILMORE
2 哺乳動物シアリル糖鎖の代謝におけるオートファジーの役割について
理化学研究所基幹研究所 鈴木 匡
3 哺乳類小胞体における糖タンパク質の品質管理を担うレクチンと酵素
京都大学再生医科学研究所 細川 暢子
4 ストレス応答に於ける酵母 Ypk1 のリン酸化と分解へのスフィンゴ脂質の関与
京都大学大学院生命科学研究科 小堤 保則
5 Siglec-dependentcross-talkbetweentheinnateandadaptiveimmunesystems
UniversityofDundee,UK PaulCROCKER
ショートトークセッション B
ポスターセッション[Ⅰ] ReidGILMORE
鈴木 匡
細川 暢子
小堤 保則
PaulCROCKER
第3日 2011年9月15日(木)
セッションC
膜マイクロドメインのダイナミクスと病態生理学
座長:井ノ口仁一、SandroSONNINO
1 膜マイクロドメイン矯正療法
東北薬科大学分子生体膜研究所 井ノ口仁一
2 Thelipidphaseproblemandtheinductionofalipidosisintheendolysosomalsystem
UniversityofBonn,Germany KonradSANDHOFF
3 Plasmamembraneglycohydrolasesandnewstrategiesformedicaldiagnosisand
therapeutictreatments
UniversityofMilan,Italy SandroSONNINO
4 貪食細胞の自然免疫応答における糖脂質の役割について
順天堂大学大学院医療看護学研究科 岩渕 和久
5 アルツハイマー病発症初期過程におけるガングリオシド誘導性のアミロイドβ蛋白の構造変化
国立長寿医療研究センター研究所 柳澤 勝彦
ショートトークセッション C
井ノ口仁一
KonradSANDHOFF
SandroSONNINO
─ 80 ─
岩渕 和久
柳澤 勝彦
セッションD
糖鎖生物学への新たなアプローチ
座長:谷口 直之、HakonLEFFLER
1 Galectin-bindingtospecificglycoformsofserumglycoproteins:mechanismsofselectivity,functional
consequences,andrelationshipstodisease
LundUniversity,Sweden HakonLEFFLER
2 糖鎖構造生物学によるアプローチ:タンパク質の糖鎖認識
理化学研究所基幹研究所 山口 芳樹
3 治療標的としての糖鎖−タンパク質相互作用系の分子構造基盤
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター 加藤 晃一
4 病気での糖鎖の働きを理解するためのシステム糖鎖生物学のアプローチ
理化学研究所基幹研究所 谷口 直之
ショートトークセッション D
ポスター・セッション[Ⅱ]
HakonLEFFLER
山口 芳樹
加藤 晃一
谷口 直之
第4日 2011年9月16日(金)
セッションE ドメインでの相互作用
座長:鈴木 明身、KelleyMOREMEN
1 糖鎖、糖脂質によって支持されている膜機能
東海大学糖鎖科学研究所 鈴木 明身
2 ミクロドメインにおける癌関連糖鎖によるヒト腫瘍の悪性形質の調節機構
名古屋大学大学院医学系研究科 古川 鋼一
3 Regulationofmammalianglycosylationenzymeexpressionduringhumanstemcell
differentiation
UniversityofGeorgia,USA KelleyMOREMEN
4 Human-specificevolutionofsiglecs
鈴木 明身
UniversityofCalifornia,SanDiego,USA AjitVARKI
古川 鋼一
KelleyMOREMEN
─ 81 ─
AjitVARKI
セッションF
糖鎖生物学展望
座長:鈴木 明身
1 トランスからシスの認識へ
東海大学糖鎖科学研究所 鈴木 明身
2 スナップ写真から動画へ
理化学研究所基幹研究所 谷口 直之
3 Carbohydrate-baseddrugdiscoveryandvaccinedevelopment
AcademiaSinica,Taiwan Chi-HueyWONG
4 Glycosylationoflysosomallipidbindingproteinsisessentialfortheirfunction
5 Thoughtsonthefutureofglycosciences
UniversityofBonn,Germany KonradSANDHOFF
UniversityofCalifornia,SanDiego,USA AjitVARKI
閉会挨拶
理化学研究所基幹研究所 谷口 直之
─ 82 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
内藤コンファレンス 報告
糖鎖の発現と制御[Ⅱ]
−代謝物、ストレス応答、マイクロドメインと展望
東海大学糖鎖科学研究所
所長
組織委員長 鈴木 明身
第31回内藤コンファレンス、
「糖鎖の発現と
ションでは以下に要約するように、活発な討論
制御[Ⅱ]代謝物、ストレス応答、マイクロ
が行われ、レベルの高い会議となった。幸い、
ドメインと展望」は平成23年9月13日から16日
大きな問題も発生しなかったことを合わせ、極
まで、札幌のシャトレーゼ・ガトーキングダ
めて有意義な会となった。
ムサ ッ ポ ロ で 開 催 された。本会は昨年8月11
本会は、上述のように第28回で糖鎖の機能と
日〜14日湘南国際村で行われた谷口直之教授
病態を中心として論議されたことを受けて、代
を組織委員長とする第28回内藤コンファレン
謝物、ストレス応答、マイクロドメインと展望
ス「糖鎖の発現と制御[Ⅰ]−機能から病態ま
に焦点を絞る会議として計画された。展望は、
で−」に引続く会議として計画されたもので、
第28回、第31回の2回の会議を踏まえて、糖鎖
両会議ともに永井克孝財団評議員、岩永貞昭財
科学の将来について、論議することが不可欠で
団名誉理事の先生方の提案による企画である。
あるとの永井克孝先生の提案に基づいて計画さ
第31回内藤コンファレンスは組織委員として
れたもので、内外5人の研究者が各自の問題意
鈴木明身
(東海大学)
、
谷口直之
(理化学研究所)
、
識と今後の展開をサマリーし、その後に5人で
小堤保則(京都大学)
、井ノ口仁一(東北薬科
会場からの質問に対して、ラウンドテーブル討
大学)、北島健(名古屋大学)が参加し、準備
論を行うという挑戦的な企画となった。以下、
が行われた。本会議の準備中、2011年3月11日
講演の要約を記載するが、文中で敬称を省略さ
に千年に一度の頻度で発生すると考えられた巨
せていただく。
大地震(マグニチュード9.0)
、引続く津波によ
る東日本大震災が発生し、さらに、福島第一原
子力発電所の冷却装置破壊に続く、水素爆発、
放射能物質の飛散、放出の事故による汚染とい
う、未曾有の災害が発生した。海外からの招聘
コンファレンス内容の要約
Opening Lecture
座長:鈴木 明身
研究者の来日取り止め並びに災害後の自粛を懸
念し、開催中止の可能性を論議する事態が生じ
月原冨武(兵庫県立大学)はウシ心筋から精
た。組織委員会は、成り行きを注視するが、開
製されたcytochrome c oxidaseの結晶構造につ
催する決定を下し、予定通りの準備を進めるこ
いて紹介した。既に6万種を超えるタンパク質
とにした。5月末時点での汚染現状の報告、開
の立体構造が報告されているが膜タンパク質
催予定の連絡に対して、来日の取り止めを表明
については500以下の報告しかなく、今後の発
する海外招待者は皆無で、汚染の危惧は限定的
展が期待される挑戦的な研究分野であるとし
で、開催に大きな支障とならないことが時間の
た。膜タンパク質が膜中に存在し、機能するた
経過とともに、確認された。実際に当初の予定
めには膜成分のリン脂質、コレステロール、糖
どおり開催された。
日本人の参加者を含め、
セッ
脂質といった膜成分と相互作用することが不可
─ 83 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
欠であり、本会議のセッションでも論議される
マイクロドメイン(ラフト)との関係は極めて
Session A
重要な研究課題である。膜タンパク質と相互
糖代謝への回帰
座長:北島 健、Jin Wong Cho
作用する脂質にはannular lipidsとnon-annular
近年、ポストゲノム時代の到来とともに、糖
lipidsが存在し、cytochrome c oxidaseにはnon-
鎖科学においても遺伝情報に依拠する方法論が
annular lipidsとして13分子の脂質分子が存在
展開されている。また、グライコミクスなどの
することが示された。これらの脂質分子は極性
オミックス解析の技術革新もなされ、生化学・
基、疎水基とも、酵素の特定の構造と特異的に
分子生物学を基本としつつも統合的な糖鎖生物
相互作用し、酵素のdimer形成、活性に必須の
学・医学研究が可能になっている。こうした
構造を確保するために重要であることが示され
背景から、1960年頃までにほぼ確立された糖鎖
た。13分子中にはtriglycerideが含まれ、これ
の代謝研究にも新しい動きが生まれている。本
までtriglycerideは膜脂質としては存在しない
セッションは、この新しい動向を総括する目的
とする一般的概念を覆すものある。この点は質
で、Revisit として企画された。
疑で取り上げられた。マイクロドメインの構造
北島 健(名古屋大学)は細胞内遊離シア
と機能を考える上にも、重要な構造基盤を提示
ル 酸 の 種 類 と 量 の 調 節 が、 そ のde novo合 成
した。
酵素群の発現と基質特異性の違いによって制
Chi-Huey Wong(Academia Sinica)は翻訳
御されることを発表した。低酸素状態でKDN
後修飾としての糖鎖修飾に関して、化学合成
やNeuAcが 増 加 す る こ と が 示 さ れ た。CMP-
を基礎とする広範な研究を紹介し、今後の医
KDN、CMP-NeuAcの生合成に関与する酵素は
学への応用の可能性を論議した。糖鎖修飾の
核に存在し、その意味は未だ解明されておらず、
機能を明らかにし、機能への応用を目指すに
シアロメタボロームはがん化や再生過程でもそ
は、構造が確定できる糖鎖化合物の合成、分
の重要性が再認識される必要がある。宮城妙子
離、metabolic engineeringが必要で、化合物合
(東北薬科大学)はシアリダーゼの研究を長年
成のために400の素材ブロックを準備している
にわたって継続してきており、この研究分野の
とした。精力的に行われている合成、応用へ例
先駆者の一人として、新たな知見を紹介した。
が紹介された。乳がん、幹細胞に発現が知られ
四種類あるシアリダーゼの一つNeu3は細胞膜
るグロボ系列の糖脂質Glob-H、SSEA-4を合成
に局在し、シアル酸を持つ糖脂質を基質とする。
し、乳がん治療を目指すワクチンの開発、ポリ
Neu4はミトコンドリアに局在し、糖脂質、ム
シアル酸誘導体を合成し、髄膜炎菌に対するワ
チン型糖タンパク質糖鎖を基質とする。神経突
クチンとする可能性が紹介された。インフルエ
起形成と癌の進行において、Neu3とNeu4が互
ンザウイルスに対する糖鎖科学の応用は重要性
いに逆の効果を示す興味深い知見を発表した。
を増しており、ウイルス検出のための糖鎖アレ
櫻庭 均(明治薬科大学)はリソゾーム病の
イ、糖鎖ワクチン、新たな阻害剤、ウイルスに
Fabry病で欠損するα-ガラクトシダーゼAの遺
対する抗体の開発が課題であるとした。また、
伝子変異を詳細に検討してきている。また治療
ヘムアグルチニン(HA)の糖鎖付加部位は保
法として、酵素補充療法に注目して、問題点の
存されていることが多く、糖鎖付加HAをワク
解決に取り組んでいる。課題は、酵素が不安定
チンとするための免疫実験結果がしめされた。
で失活しやすい、細胞への取り込み効率が低い、
Wongのアプローチは合成を基礎に糖鎖科学の
頻回の投与で抗体が産生されるなどである。こ
医学への応用にあり、その広範で精力的な研究
れらの問題に対して、α-ガラクトシダーゼA
は参加者に大きな感銘を与えた。
の代わりに類似の酵素α-N-アセチルガラクト
サミニダーゼ(NAGA)を用いる新しい酵素補
充療法の成果を報告した。NAGAは患者も発現
していることから、抗体の産生は抑えることが
─ 84 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
でき、酵素の安定性もα-ガラクトシダーゼAよ
先ずERストレスに関しては、Reid Gilmore
りも高く、治療への応用が期待できることを紹
(University of Massachusetts)がER内で起こ
介した。Jin Wong Cho(Yonsei University)は、
るN型糖鎖の転移に関わる2種類のオリゴ糖転
細胞質で起こる唯一でユニークな糖付加である
移 酵 素(OST)、STT3A、STT3Bの 機 能 の 違
O-GlcNAc修飾について紹介した。この研究分
い に つ い て、siRNAを 用 い たknockdown実 験
野はHartによって創出されたが、博士は独自
によって明らかになった結果を報告した。この
に研究を展開している。O-GlcNAc修飾に使わ
中でSTT3AとSTT3Bは部分的に異なる機能を
れるUDP-GlcNAcはウリジン、ATP、グルコー
有しており、STT3BはER内で合成される糖タ
ス、グルタミン、アセチル-CoAから合成され、
ンパク質の品質管理に関与していることを明
これらの物質代謝の影響下にある。このことは
らかにした。討論では、2種のOSTをそれぞれ
UDP-GlcNAcを使って、GlcNAcを転移する酵
knockdownした場合のBiPの誘導の違いとOST
素OGTがある種のマスター酵素・遺伝子であ
の機能の違いとの関連等について議論された。
る可能性を考えさせる。このような考察のも
一方、ER内で合成された糖タンパク質の品質
とに、ガン細胞でp53のO-GlcNAc化によりグ
管理については、細川暢子(京都大学)が、
リコーゲン分解とヘキソサミン経路が活性化
ER内のレクチンであるXTP3-Bについて、糖鎖
すること、SnailのO-GlcNAc化がEM transition
結合特異性やその機能について報告した。類似
と、ショウジョウバエのO-GlcNAc化と細胞の
のレクチンであるOS-9との比較や、タンパク
大きさとが対応関係にあることを見いだした。
質の変性状態に関して議論があった。
Peter Seeberger(Max Plank Institute)は、全
飢餓ストレスでは、鈴木 匡(理研)が、マ
自動オリゴ糖合成に成功し、マラリア原虫の
クロオートファジー機能が欠損した細胞では、
GPI糖鎖ライブラリーを構築・利用して、マラ
サイトゾルにシアリルオリゴ糖が蓄積すること
リア感染の診断と治療に役立つ抗体の選別に成
を報告した。さらに飢餓条件下でない場合でも、
功した結果を発表した。また、ポスター発表か
オートファジーによってサイトゾルのシアリル
ら口頭発表に選ばれた中嶋和紀(理研)は全糖
オリゴ糖の分解が起こることを提案した。この
ヌクレオチドの新しい同時定量法の開発につい
シアリルオリゴ糖の由来などについて議論が深
て、宮田真路(神戸薬科大学)は神経可塑性に
められた。オートファジーの経路について、小
おけるコンドロイチン硫酸の6-硫酸化の重要性
堤保則(京都大学)は、スフィンゴ脂質によっ
について発表した。
てリン酸化が制御されている酵母のキナーゼ
糖代謝は新しい観点から、もう一度見直す必
Ypk1が、ESCRTが関与する新しいオートファ
要があること、単にエネルギー産生に関与する
ジー経路によって分解されることを報告した。
のみならず、糖複合体は勿論のこと、他の物質
この経路について、ESCRTの全てのサブユニッ
の代謝、転写の制御にもかかわる新たな側面が
トが必要かどうかについて議論があった。また、
あること、
が再確認されたセッションとなった。
芦田 久(京都大学)は、グルコサミンを培地
に添加すると種々の培養細胞でmTOR非依存
Session B
的なオートファジーが誘導されることを報告し
ストレス応答と糖鎖
座長:小堤 保則、Reid Gilmore
た。そのオートファジーの機構に関して議論さ
れた。
本セッションでは、種々のストレス条件下で
炎 症 ス ト レ ス に 関 し て は、Paul Crocker
の糖鎖関連の話題について7題の講演があった。
(University of Dundee) が マ ウ スT細 胞 を 活
これらの講演は、ERストレス(Gilmore、細川)
、
性化させた場合に、シアル酸分子種がNeuGc
飢餓ストレス(鈴木匡、小堤)
、炎症ストレス
からNeuAcへ変化し、シアル酸結合タンパク
(Crocker)
、低酸素ストレス(大坪)に分けら
質であるSiglec-Eの結合が増加することを報告
れる。
した。さらに、Siglec-Eのリガンドについて一
─ 85 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
部解析した結果を示した。NeuGcからNeuAc
酵素KOマウスを用いて、ヘルパーT(CD4T)
の 変 化 が 起 こ れ ば、NeuAcに 親 和 性 が 高 い
細胞の機能発現には、GM3やGM1aなどのa系
Siglec-1の結合が増加するはずだが、結合が見
列に分類されるガングリオシドを必要とし、一
られなかった。この点に関して議論があった。
方、 キ ラ ーT(CD8T) 細 胞 の 機 能 に は、a系
低酸素ストレスに関しては、大坪和明(理
列ガングリオシドではなく、GM1bや GD1α
研)が、
がんマーカーであるシアリルTn抗原が、
などのo系列を選択的に必要とすることを発表
低酸素条件下で誘導されるが、その原因はシア
した。さらに、a系列ガングリオシドを欠損し
ル酸転移酵素ST6GalNAc-1 のHIF-1依存的な発
ているGM3合成酵素KOマウスでは、ヘルパー
現誘導によること、さらには異種移植実験によ
T細胞の活性化が特異的抑制により、オボアル
りシアリルTn抗原の発現が腫瘍の転移に関与
ブミンで誘発した喘息モデルでの炎症性アレ
していることを報告した。この転移におけるイ
ルギー反応が著しく低下していることを報告
ンテグリンの関与について議論が深められた。
した。このことは、T細胞サブセット間では異
なるガングリオシド分子種により、機能発現が
Session C
制御されていることを明確に示しており、今
膜マイクロドメインのダイナミクスと病態生理学
座長:井ノ口仁一、Sandro Sonnino
後、それぞれのラフト構造の違いが明らかに
されれば、“Functional repertoire selection of
本セッションは細胞膜マイクロドメイン即ち
individual T cell subset is glycolipid selection”
細胞膜ラフトの形成機構、そして生理的および
という概念の確立が可能になる。上記“複数の
病態における機能についての最新の知見につい
ラフトの存在の意味”への一つの回答が目前に
て議論することを目的とした。
「ラフトは細胞
あ る。Konrad Sandhoff(University of Bonn)
のどこで最初に形成され、どのようにして細胞
は、ラフトの脂質分子であるコレステロール、
膜に運ばれるのか?そして、複数のラフトが存
スフィンゴミエリン、スフィンゴ糖脂質はエン
在するその必然性は何なのか?」という問題を
ドサイトーシスによって常に分解されている
提起した。この提起は、藤本が開発した凍結割
が、これらのラフト脂質分子の効率的代謝と分
段レプリカ標識法で観察された細胞膜外層のガ
解には、エンドソームとライソソーム膜の脂質
ングリオシド GM1とGM3は別々のラフトを形
組 成 がlipid-binding proteins(NPC-1、NPC-2、
成しているという報告に基づいている。
しかし、
saposins)やエンドソーム脂質であるBMP(bis
ガングリオシドの分子種に特異的なラフトは、
(monoacylglycero)phosphate)によりダイナミッ
細胞内(例えばTGN:トランスゴルジネット
クかつ選択的に変化することが必要であること
ワーク)で別々の輸送小胞として形成されるの
を述べた。SandhoffはSandhoff病の発見者であ
か、またはガングリオシドが細胞膜に輸送され
りlysosomal storage disease研究の大家である
てから形成されるのかは明らかではない。さら
が、ラフト脂質分子のダイナミックな動きを理
には、個々の細胞膜ラフトの存在意義と機能に
解する上で、上記の脂質の分解と膜輸送にかか
関しては、想像の域を脱していないという認識
わる分子の関与を総合的に理解することが必須
を共有して、発表される最新の知見についての
討議を行った。
であることを再認識させた。Sandro Sonnino
(University of Milan)は脂質ラフトの細胞膜
井ノ口仁一(東北薬大学)は「インスリン
上でのリアルタイムな再編成が細胞膜外層に存
抵抗性とガングリオシドGM3」について過去
在するスフィンゴ糖脂質(GSLs)の代謝酵素
10年の研究を総括し、メタボリックシンドロー
群によって起こっているという興味ある作業仮
ムの脂肪組織で上昇したGM3レベルを正常化
説を提唱している。様々なストレス刺激によっ
することが新たな治療法“マイクロドメイン矯
て、ライソソームの糖鎖水解酵素群が細胞膜
正療法”に繋がる可能性について述べた。さら
外層に移動すると同時に、ラフトに存在する
に、GM3合 成 酵 素KOマ ウ ス とGM2/GD2合 成
細胞膜プロトンポンプが活性化され、ラフト
─ 86 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
局所のpHを酸性に傾け、水解酵素を活性化す
との共同研究により明らかにするとともに、家
ることで、GSLsの再編が起こる可能性が示さ
族性アルツハイマー病原因遺伝子を導入した病
れた。岩渕和久(順天堂大学)は、糖脂質マイ
態モデルマウスに抗GAβ抗体を投与し、脳内
クロドメインがその糖鎖構造によって異なる機
におけるAβ蓄積が有意に抑制されることを確
能ドメインとなること、さらに脂質構造の違い
認した。今後、アルツハイマー病に有効な新た
によって細胞内への情報伝達機構が異なること
な治療法に発展することを期待したい。
を示した。ヒト好中球は細胞膜上にスフィン
ポスター発表から選択された2名の若手研究者
ゴ糖脂質のラクトシルセラミド(LacCer)と
の発表が行われた。近藤裕史(名古屋大学)は
グリセロ糖脂質のホスファチジルグルコシド
LPS刺激によるTLR4/MD2複合体の活性化を
(PtdGlc) を 発 現 し て い る。Candida albicans
グロボ系GSLsがMD2に結合して抑制している
のβグルカンや好酸菌のリポアラビノマンナン
という興味ある知見を発表した。山口亜利沙(高
とLacCerとの結合を例に、LacCerが病原微生
知大学)は所属研究室で開発された EMARS
物 のpathogen-associated molecular patternと
(Enzyme-Mediated Activation of Radical
特異的な糖鎖-糖鎖相互作用を介して結合する
Source) の 改 良 法 を 発 表 し た。EMARS法 と
ことを示した。また、LacCerが様々な長さの
は、ペルオキダーゼ(HRP)で標的タンパク
脂肪酸鎖を持っており、中でも炭素数24の脂肪
を標識し、ビオチン化アリールアジド基を活性
酸鎖を持つことで、細胞内情報伝達分子であ
化してナイトレンラジカルを生じさせることに
るLynと会合した脂質マイクロドメインを形成
より、標的分子の近傍に存在する分子を同定す
し、情報伝達ユニットとして好中球の遊走・貪
る新奇のラフト分子の解析方法であるが、新
食・活性酸素産生を引き起こすことを示した。
EMARS法は、HRP遺伝子を付けた標的遺伝子
一方、PtdGlcはC24脂肪酸鎖を持たないために
を発現させてEMARS法を行うものである。新
Lynなどの細胞内情報伝達分子と会合した情報
EMARS法 をGPI-ア ン カ ー タ ン パ ク(Thy-1)
伝達ユニットは形成できないが、膜貫通Fas分
で行い、標識タンパクを解析した。その結果、
子と会合することで、Fasの情報伝達機構を利
130個のタンパク質が同定されたが、その中に
用したアポトーシス誘導を引き起こすことを示
その他のGPI-アンカータンパクは一個も検出さ
した。今後、糖脂質構造の差違による糖脂質マ
れなかった。この結果は、即ち、個々のGPI-ア
イクロドメインのオーガニゼーションと情報伝
ンカータンパク依存したラフトの存在を示唆す
達・機能発現の制御機構が明らかとなることが
るものであり、150種におよぶ独立したGPI-ア
大いに期待される講演であった。柳澤勝彦(長
ンカータンパク依存ラフトの存在の可能性が示
寿研)は、オリジナリティーに富むガングリオ
唆されたことになる。
シドとアルツハイマー病に関する研究を行って
本セッションでラフトのダイナミックスを解
いる。「AβはGM1ガングリオシドに結合する
明する手がかりとなる知見とその解析手法につ
ことで構造変化を獲得し、その結果、seedと
いて理解を深められたことは、今後のラフト研
なって可溶性Aβの重合を促進する」という画
究の道標となることが期待される。
期的な発見をして以来、この作業仮説の検証を
進めている。GM1-ganglioside-bound Aβ(GA
β)の特異構造を認識する抗体が得られ、脳内
Session D
におけるGAβの形成をアルツハイマー病脳で
糖鎖生物学への新たなアプローチ
座長:谷口 直之、Hakon Leffler
確認した。また、これらの脳領域特異的なAβ
GalectinはN-acetyllactosamine(LacNAc)
蓄積には、局所に発現するガングリオシドの分
を含有するようなβ-galactosideを含む糖鎖と
子種とその分布様式が重要な役割を果たしてい
結合する動物蛋白質のファミリーである。
ることを見いだしている。さらに、これらの
Hakon Leffler(Lund University)は多くの血
Aβ重合機構をNMRの専門家である加藤晃一
清蛋白質はN-結合型糖鎖を有しており、LacNAc
─ 87 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
の変化を利用して炎症やがんの診断に役立てる
究を報告した。抗体のFc領域に普遍的に存在
可能性があることから、正常血清や転移性の乳
するN結合型糖鎖がコアフコース存在下でFc受
がん患者血清をgalectin 1結合カラムにかけ、
容体との親和性が大きく低下する理由として、
特異的に結合した血清蛋白質をlactoseで溶出
立体障害が生じるためである事がX線結晶構造
させたのち、SDS電気泳動で血清蛋白質を同
解析の結果より示された。またコアフコース非
定した。また、質量分析により、糖鎖構造も
存在下では糖鎖間の相互作用が抗体−Fc相互
決定した。まず、galectin 1と血清蛋白質であ
作用の親和性を高めていることが明らかとなっ
るhaptoglobinやtransferrinを 使 い N 型 糖 鎖 の
た。本発見は抗体医薬品の開発に不可欠の情報
構造との相関性を明らかにした。ついで、転
と言える。アルツハイマー病に関係するAβと
移性乳がん患者血清ではgalectin 1と結合する
糖脂質GM1が複合体化して凝集能が高まる現
glycoformが著しく増え、galectin 8と結合する
象に関して、AβとGM1ミセルとのNMRを用
glycofomが減少する。一方それに反して、IgA
いた相互作用解析の結果、GM1脂質の膜表面
糖鎖にはgalectin 8が唯一結合しうるが、IgA
側とAβのC末端の相互作用を始点として特異
腎臓症ではgalectin 8に非結合性のIgAが病気
なGM1 /Aβ複合体が形成されることが示され
と相関する。galectin 1に結合するhaptoglobin
た。本発表で加藤氏は不明な点も多かった糖鎖
と非結合性のhaptoglobinの機能を見たところ、
が関わる生命現象を構造生物学的手法により明
hemoglobinとの結合やCD163受容体を介した
快に説明した。谷口直之(理研)はこれまでN
マクロファージの活性化の作用はかわらない
結合型、なかでも分岐糖鎖を合成する糖転移酵
が、細胞内のtargetingでは、非結合性のもの
素や糖鎖遺伝子の研究をつづけ、それらの標的
はLAMP-2陽性であるリソゾームに、また結
蛋白質の同定や機能変化をあきらかにしてき
合性のものはgalectin 1陽性の小胞に取り込ま
た。特に、癌、肺気腫などとこれらの糖鎖との
れた。
かかわりを報告してきたが、統合的に糖鎖の構
自然免疫の第一段階は病原体関連分子
造と機能を把握するためのシステム糖鎖生物学
(PAMP)をパターン認識受容体が認識するこ
の重要性からGlycan cycleという機能的な糖鎖
とからはじまる。山口芳樹(理研)はPAMPの
のサイクルを提唱した。これまでの研究がいわ
一種で真菌類などに見出されるβグルカンを認
ばsnapshotsをとったものであり、今後統合的
識するパターン認識レセプターβGRP/GNBP3
なmoviesによる解析が必要であることを強調
についてX線結晶構造解析の結果を報告した。
した。すなわち単糖(細胞外)−糖ヌクレオチ
βGRP/GNBP3がその広いリガンド結合面を用
ド(細胞内)−ヌクレオチド輸送体−糖転移酵
いて3重らせん型βグルカンを特異的に認識す
素(ゴルジ)−糖タンパク質前駆体−糖タンパ
る様子が明らかとされた。3重らせん型βグル
ク質−受容体蛋白質(細胞膜)−endocytosis
カンを認識するタンパク質の構造解析例はこれ
と糖タンパク質の分解(endosome/lysosome)
が初めてであり、これまで長く不明だった3重
というような糖鎖の機能的なサイクルである。
らせん構造の認識様式が原子レベルで明らかと
その手始めとしてHPLCを用いた糖ヌクレオチ
されたことは意義深い。今回明らかとなった
ドの一斉定量法の開発や安定同位体を使った質
3重らせん構造認識の仕組みは、βグルカンの
量分析によるmetabolic flowの解析の試み、ま
免疫調整剤としての機能を高める合理的薬剤設
た、click chemistryを利用したフコース誘導体
計などに貢献するだけでなく、血中や体液中の
による糖鎖のイメージング等についても紹介
βグルカンを検出するためのツールの開発に役
した。佐々木洋子(帝京大)は、C. elegans ガ
立ち、真菌感染症の診断やモニタリングへの応
レクチンの糖鎖結合特性をフロンタルアフィニ
用など医療分野への貢献も期待される。加藤晃
ティー・クロマトグラフィーにより解析し、そ
一(基礎生物研)は、糖鎖が関連する3種の相
れらの共通点および各ガレクチンごとの特徴を
互作用に関して構造生物学的手法を駆使した研
明らかにした。また、lec-1 、lec-8 、lec-9 、lec-
─ 88 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
10 の欠失変異株の表現型を解析したが、通常の
飼育条件では顕著な異常は見られなかった。一
方、lec-8 欠失変異株では高温ストレス感受性が
増大し、lec-10 欠失変異株では酸化ストレス感
受性が増大していることを見いだした。これら
の結果から、LEC-8およびLEC-10はストレス条
件下での生存に重要な役割を果たしており、そ
れぞれが異なるストレスに対して機能している
ことを示した。ナマズ卵由来レクチン(SAL)
はラムノース結合レクチンであるが、ガラク
トースにも結合する。特にグロボトリアオシ
ルセラミド(Gb3Cer)のような糖脂質の持つ
αGalも認識する。SALはしたがってGb3Cerを
発現しているバーキットリンパ腫細胞(Raji細
胞)に結合して細胞縮小を引き起こすことか
ら、菅原栄紀(東北薬科大学)はこの分子機
構の解明を行った。SALはGb3Cerを発現して
いるRaji細胞に結合し、ホスファチジルセリン
のトランスポーターであるMRD1 Pgpによる
細胞膜外層側への移行や、同様に、G-protein
activated K+channel(GIRK-1)によるカリウ
ムイオンの放出に伴う水の流失による細胞縮
小をひきおこすこと、これらの現象はGb3Cer
が、Glycosphingolipid-enriched microdomain
(GEM) にMDR1 Pgな ど と 共 局 在 し て お り、
その結果SALが選択的にMDR1P-gpを活性化す
ることを明らかにした。
じた。古川鋼一(名古屋大学)はガン細胞とガ
ングリオシドGD3の関係について解析し、GD3
とインテグリンがマイクロドメインで相互作用
し、FAKであるYesを介するシグナル伝達を亢
進させることを報告した。特にGD3を含むプロ
テオリポオームにYesを再構成し、そこにGM1
を加えることでGD3のYes亢進作用が阻害され
ることを見出している。GM1合成酵素遺伝子
を破壊した細胞や高転移性のガン細胞でO結合
型糖鎖合成を行うGalNAc-T13活性が上昇する
ことを報告した。GD3とインテグリン複合体形
成に関与する分子、GM1の欠損がGalNAc-T13
を亢進させるメカニズムに関して、討論がなさ
れた。Kelly Moremen(University of Georgia)
はマウス胚性幹細胞の分化過程における糖鎖遺
伝子発現変化の網羅的解析を既に完成させて
いる。本講演ではヒト胚性幹細胞の分化過程時
における糖鎖関連遺伝子発現の網羅的解析につ
いて報告した。分化に伴って、高マンノース型
糖鎖発現に関わる遺伝子の発現低下、複合型糖
鎖遺伝子、グロボ系列糖脂質遺伝子、コアフコー
ス転移酵素遺伝子の発現増加が検出された。変
化する糖鎖構造の解析、糖鎖修飾を受けるタン
パク質の同定が今後の重要な課題となる。また
iPS細胞との比較から、変化は必ずしも一致し
ないことを示した。Ajit Varki(University of
California)はシアル酸認識タンパク質(Siglec)
のヒトにおける分子進化を論じた。これまでに
Session E
14種分子が知られており、感染による進化圧力、
ドメインでの相互作用
座長:鈴木 明身、Kelley Moremen
マラリア感染圧力などにより、Siglec遺伝子の
変異、固定、偽遺伝子化が進行してきており、
本セッションは糖鎖の機能発現に至る糖鎖の
かなり近い過去においても変異が起こっている
発現制御の問題、糖鎖が機能する場で行われる
ことが見出されている。他の遺伝子よりも変異
transの及びcisの認識が取り上げられた。
の速度は速く、何らかの原因でSiglec遺伝子の
鈴木明身(東海大学)は、腎臓の近位尿細管
周辺に変異のhot spotが存在している。ヒトで
上皮細胞の存在し、低分子量タンパク質をリガ
はNeuGc発現の律速遺伝子が欠損しており、こ
ンドとして結合し、再吸収するメガリンと呼ば
の欠損後に、シアル酸認識の特異性はマウスの
れる糖タンパク質のN結合型糖鎖がリガンド結
対応する分子と比較して、変化していることが
合力に影響を与えることを報告した。また、消
確認できる。糖鎖の種差、それに対応して認識
化管上皮細胞に脂質部分を水酸化された糖脂
分子の進化が起こっていることを示す興味ある
質が種を超えて存在すること、この分子の機
報告であった。
能を膜結合性の糖タンパク質とのcis相互作用
本セッションでは分化と糖鎖遺伝子の発現制
を見出す指標として利用する可能性について論
御、それによって形成される組織あるいは細胞
─ 89 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
特異的糖鎖および糖鎖複合体、これら分子のシ
成であり、解析は今後ますます重要性をもつ
スあるいはトランスの認識を介した細胞機能の
と、発言した。鈴木は本コンファレンスのポス
制御に関する報告と討論が行われた。
ター発表で、マイクロドメイン可視化の新たし
いプローブが化学合成され、発表されているこ
とを指摘した。SonninoはGM1糖脂質の新しい
Session F
糖鎖生物学展望
座長:鈴木 明身
光架橋プローブを開発していること、糖鎖部分
と脂質部分とに官能基をもつプローブを準備す
本セッションは、28回と31回の二つのコン
ることで、糖鎖の認識が重要である場合、シス
ファレンス「糖鎖の発現と機能」を総括する
の相互作用が重要である場合とに対応できるこ
目的で行われた。5人の演者による10分間の、
とを指摘した。同時に、高額の分析機器を使用
糖鎖生物学の今後に関するサマリー講演の後、
する光度の分析技術を提供できる機関の整備、
5人の演者と聴衆でラウンドテーブル討論を行
共同利用が不可欠であることを指摘した。これ
う形で行われた。鈴木明身はトランスの認識か
に対して、Varkiは他の領域を専門とする研究
らシスの認識が糖鎖生物学の新たな局面を開
者のためにも、ルーチンの糖鎖分析を提供する
くものとする見解を示した。谷口直之はシス
ことは糖鎖生物学の将来に極めて重要で、サン
テム糖鎖生物学の重要性をスナップショット
ジエゴ校ではこれを実践して、利用者からの評
からムービーへの展開として、強調した。Chi-
価も得られ、注目されていることを紹介した。
Huey Wongは化学の手法を使った機能、応用
(2)糖鎖の発現制御に関して、糖鎖の生合成は
研究がまだまだ多くの課題で可能であることを
各種の糖転移酵素がある種の秩序に基づいて、
強調した。Konrad Sandhoffはリソゾームに存
お互いの局在が規定され、行われていると想像
在する脂質結合タンパク質が膜輸送、膜機能分
するが、どんな原則に基づいているか、どうやっ
子の輸送・機能発現に未解明の役割を果たす可
てそれにアプローチするか、フロアから質問が
能性のあることを力説した。Ajit Varkiは糖鎖
なされた。これに対し、井ノ口はシアル酸転移
生物学が持つ特殊性をどのように乗り越えてゆ
酵素の細胞質側ドメインの異なるものがあり、
くことができるか、研究者社会における糖鎖生
ゴルジ体内の局在がそれにより規定されている
物学の問題点をユニークな視点から指摘した。
可能性のあること、Moremenは彼らが行って
続くラウンドテーブル討論では、上記の発言
いるトランスクリプトームの解析は、今後糖転
を基に、ドメイン形成、メタボローム解析を含
移酵素の活性解析、糖鎖の解析を通じて、結果
む糖鎖の発現制御、合成化学の役割、の3点に
を統合して行くことで、全体像が描けると考え
ついて、糖鎖生物学の今後に果たす役割を討論
ていることを発言した。谷口は糖転移酵素のキ
した。
(1)ドメイン形成に関して、フロアか
ネテイクス解析はいまだに不十分で、今後も全
ら、マイクロドメインを可視化する良い方法が
体像を得るために、新たなアプローチで、ムー
見当たらない状況で、今後どのように、マイ
ビーを完成して行くことが必要であることを指
クロドメインの形成、膜輸送の過程、細胞膜で
摘した。(3)化学合成に関して、Wongは新た
の機能解析が可能になると考えられるか、と
な段階に入ってきていること、合成した化合物
いう質問がなされた。これに対して、Wongは
の応用は、ウイスル感染、細菌感染、免疫、再
Ramanスペクトルを用いた新しい方法の開発
生医療に大きく貢献することが期待できること
が報告され始めており、何ら標識することな
を発言した。
く、膜分子の動きを解析できる可能性があるこ
討論時間が30分しか確保できなかったこと、
とを発言した。Snadhoffは、マイクロドメイン
同時に、ラウンドテーブル討論は日本人参加者
の形成は場となる脂質分子の生合成、機能分子
にとって難しいことから、当初このセッション
となる膜タンパク質・膜糖タンパク質、それの
の成否は大いに危ぶまれた。しかし、糖鎖生物
裏打ちタンパク質などが関係する一大複合体形
学研究者の間で問題は共有されており、それに
─ 90 ─
第31回内藤コンファレンス 組織委員長報告
どう対処しうるかの模索も国内外を問わず進行
中であることから、活発な討論が行われた。時
おわりに
間が足りなかったことは否めないが、糖鎖生物
行われた講演、討論の要約を記載した。要約
学の今後に向けて、有意義な討論が行われた。
した講演、討論はそれのみで可能になるわけで
はなく、講演会場内外での研究者間の意見交
ポスター発表
換、個人的交流があって初めて、レベルの高い
本会への参加希望者登録は90名を超え、アブ
として、改めて痛感した。はじめに記載したと
ストラクトによる60名の参加者選択は、組織委
おり、東日本災害で開催が危ぶまれたことを含
員にとって、極めて難しく、心の痛む作業で
めて、いつくかの問題をクリアーして、何とか
あった。選択されたポスターは多くが講演、討
開催することができ、十分満足のゆくコンファ
論でも共有された糖鎖生物学の難問に果敢に挑
レンスとなった。また将来へ向けての総括が可
戦している若い研究者の苦心の跡が感じられる
能になったことも喜びたい。問題を共有して、
もので、活発な討論が行われた。ポスターの
克服に努力していただいた組織委員の方々に感
中から10題が特定研究助成金受領者に推薦さ
謝申し上げる。最後に、このコンファレンスの
れた。選にもれた若手研究者も、落胆せず、こ
実施を可能にしていただいた内藤記念科学振興
れをてこに新たな意欲をもって、難問に挑んで
財団の方々に、心から厚くお礼申しあげる。
講演や討論が可能になることを組織委員の一人
くれることを切望する。毎晩、夜遅くまで、活
発な意見交換が行われ、これからを担う若い研
究者と海外からの著名な研究者、国内の研究者
間の新たな絆が確実に培われた。
─ 91 ─
第31回内藤コンファレンス
基調講演:Dr.Chi-HueyWong
基調講演:月原 冨武 先生
─ 92 ─
組織委員長:鈴木 明身 先生
第31回内藤コンファレンス印象記
北海道への感激の旅
名古屋大学生物機能開発利用研究センター
博士研究員
エステル・ガレノ
今年の 9月、私は第31回内藤コンファレンスに
またポスターセッションに長い時間を取っていただ
参加するために、初めて飛行機で北海道に行き
いたりしたことです。私は素晴らしいディスカッショ
ました。名古屋特有のとても暑く、湿気の多い夏
ンをエンジョイすることができ、大学の研究室でこ
を堪え忍んでいましたので、札幌の土地はまさしく
れから何ヶ月も仕事をするのに役立つ、多くの提
気候的に私を開放してくれました。空気は明らか
案を収集したり、十分なアイデアやモチベーション
に違い、新鮮そのもので、幾分フランスの事を思
を蓄積したりすることができました。
い出してしまいました。コンファレンスに参加する前
もう一つのオリジナリティがあったものとしては、
に、私は北海道大学を訪問いたしました。大学の
最後のセッションで、若い糖鎖の研究者向けの「糖
キャンパスをさまよい歩きながら、大学の景色、特
鎖科学の将来への考察」というものがありました。
に壮大な樹木を眺めていると、とてもリラックス及
私自身が若い研究者ですし、勿論、私がここに
び感激することが出来、これから始まるコンファレ
来た一番の動機は生物学に関する質問に対して
ンスでの素晴らしい機会を100%堪能することがで
の明快な解答を得ることでした。しかしながら私は
きる気持ちになりました。
良い論文の発表、助成金やポジションを得るため
このコンファレンスでは多くの事を期待して参加
に時間との戦いをしていたために、時々自分が一
した、と私は言わざるを得ません。それは非常に
歩退いてみて、より広い立場で考えることを難しい
素晴らしい科学プログラム、スピーカーの優れた選
と感じておりました。それは個人としてだけでなく、
択などによるものですが、決して言い忘れてはなら
我々研究者が築き上げているものが何なのか、そ
ないこととして、講演が英語で行われたことでした。
して我々が部分的ながら責任を持って糖鎖科学を
講演の内容を聞くと、糖鎖科学の分野では実際に
発展させ、推し進めているという事実をややもする
どのような事が起こっているのか、という素晴らし
と見失いがちでした。このコンファレンスに参加し
い全体像が分かりました。そしてこれが当たり前
て、私自身、楽観的になっても良いかも知れない
の様に私の頭に入って行きました。私は化学から
と思うようになり、糖鎖の世界が何と素晴らしいも
糖抱合体の代謝経路、膜マイクロドメインや分子
のであるかを再確認し、他の分野に携わっている
間相互作用における糖脂質の機能に至るまでの
人にも、その世界を見てもらう事に全力を尽くした
すべてのセッションを確実に堪能いたしました。
いと思うようになりました。
しかしながら、私の嬉しい驚きであったのは、
最後になりますが、北海道の新鮮な空気なの
参加者のコミュニケーションに関して非常に配慮さ
か、素晴らしい組織なのか、参加者の優れた選
れたプログラムであったからです。コンファレンス
抜なのか、恐らくその全てが合わさったものだと思
最中は、交流やディスカッションを促進するために、
いますが、私は本当に今回コンファレンスを堪能さ
すべてが完璧に組織されており、時間的にも他の
せていただき、第31回内藤コンファレンスの素晴ら
参加者とお会いする多くのチャンスが配慮されてい
しい思い出を持ち続けて行くと思います。
ました。即ち、コーヒーブレークの時間、その重
要性は全く無視すべきものではありませんでしたし、
─ 93 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
貴重な体験
名古屋大学大学院医学系研究科
博士研究員
近藤 裕史
左端が著者
私は修士から現在に至るまで一貫して糖脂質
て初めての英語での口頭発表でしたが、これま
糖鎖を研究対象にしてきました。膜ミクロドメ
でにないくらいの練習量が自信につながり、緊
インをテーマにした第31回内藤コンファレンス
張することもなくむしろ楽しく前を向いて発表
への募集案内のポスターを見て、これだ、と思
できたのは驚きでもあり、私の大切な思い出の
い参加を希望しました。この印象記を書いてい
1つです。古川教授からは発表は良かったが、
る今頃はとても半袖ではいられないくらい厳し
質問への答え方は良くなかったと、古川先生な
い寒さを体験するのでしょうが、私が初めて訪
りのお褒めの言葉もいただきとても嬉しく思い
れた 9月中旬の北海道はとても過ごしやすく、
ました。ポスター発表では、口頭発表直後とい
わくわくした気持ちで会場へと向かうバスに乗
う事もあり大変多くの方々から厳しいご指摘を
車したことを記憶しています。
いただくことができましたので、これから更に
今回の内藤コンファレンスでの 4日間の印象
データを重ねつつ、内容の練り直しをしていか
は、
良い意味での期待通りの英語漬けな日々と、
なくてはと痛感しました。
糖鎖機能の重要性を示す魅力的な講義でした。
今回の内藤コンファレンスで特に心に残っ
豪華な講師の先生方の講義はどれも分かりやす
たのは、色々な講師の先生方からのメッセー
く、おぼろげにしか理解していなかった膜ミク
ジ で す。 谷 口 先 生 か ら の「From snapshots
ロドメインを取り巻く複雑で多様な研究の実状
to movies」という言葉、これまでの一場面を
が整理され、これからの私の研究に道筋を示し
捉えるsnapshot的な研究ではなく、連続的な
てくださいました。
moviesで細胞内の糖鎖の機能的な振る舞いを
今回の内藤コンファレンスでは口頭発表とポ
見ていく必要があるということ。Ajit Varki先
スター発表の機会もいただきました。私にとっ
生からは糖鎖生物学の理解をより深めるために
は、糖鎖生物学に苦手意識を持つ(Glycophobia
と命名されていた)他分野の研究者にもっと参
入してもらう必要がある。という言葉が印象的
でした。私自身も痛感する糖鎖生物学の限界
は協力次第でいかようにもなるのだと感じま
した。
最後になりましたが、今回の内藤コンファレ
ンスに参加する機会をいただき、さらに内藤記
念特定研究助成金によるご支援を頂けることに
なりました。オーガナイザーの先生方、講師の
先生方、スタッフの皆様、参加者の皆様、とて
も楽しい 3 泊 4日をどうもありがとうございま
した。
─ 94 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
内藤コンファレンスに
参加して
帝京大学薬学部
助教
佐々木洋子
右が筆者
2011年9月に開催された、第31回内藤コンファ
うに」というプレッシャーをかけられ、発表原
レンスに参加させていただきました。事前に目
稿を準備する際は全く筆が進みませんでした。
を通した要旨集には、同年代の知り合いの発表
結局、自分にできる発表をするしかない、とい
者がほとんどいなかったため、4日間缶詰め状
うことに落ち着いたのですが、準備不足もあっ
態かと思うとやや不安でした。また、同室にな
て本番は非常に緊張してしまいました。
る人がどんな方か、期待と不安が入り混じって
大震災のわずか半年後であり、北海道を含め
いました。
て日本の各地で地震活動が活発な時期であっ
当日ホテルに到着すると、想像していた以上
たにもかかわらず、海外からも著名な研究者
に立派な所で圧倒されてしまいました。同室に
が多く参加し、大変内容の濃いコンファレン
なったのは留学生のChangさんという方で、日
スでした。初日の最初の演題(月原冨武博士の
本語がほとんど話せない方でした。私のつたな
膜タンパク質とリン脂質の構造解析に関する研
い英会話にいつも笑顔で応じて下さいました。
究)から最終日のAjit Varki博士のGlycophobic
英語が苦手な私にとっては、強制的に英語を話
diseaseのお話に至るまで、どれも興味深く、勉
さざるを得ない状況になって良かったと思い
強になる演題ばかりでした。ポスター発表の内
ます。初日のWelcome receptionでは、2004年
容も充実しており、自分の専門外の発表にも遠
に湘南国際村で開催された国際レクチン会議の
慮なく質問させていただき、丁寧に説明をして
Excursionで同室だったLeffler博士婦人に再会
いただくことができました。
し、お話することができました。
今回のコンファレンスでは、初対面の方と同
2日目はOral sessionで 若 手 研 究 者 の 方 々 が
室になった他、Welcome reception、夕食、ホ
堂々とした発表をされていて、非常に感心し
スピタリティールームでの歓談など、同世代の
ました。私も 3日目の口頭発表に採択していた
女性研究者を含め、多くの方々と知り合う機会
だいていたのですが、正直、気楽に原稿を読
がありました。これからも今回の出会いを大切
めば良いと考えて準備が不十分だった私はあ
にして、交流を続けていきたいと思います。
せって部屋で発表練習をする羽目になりまし
最後になりましたが、このような貴重な機会
た。この日は夕食後にポスター発表があり、私
を与えてくださった内藤記念科学振興財団の皆
はC. elegansのガレクチンに関する研究を発表
様、組織委員会の皆様、そして参加者の皆様に
しました。Paul Crocker博士や北島健博士、こ
深く感謝いたします。また、今回内藤記念特定
の会で新たに知り合いになった研究者の方々が
研究助成金に採択していただくことができたの
熱心に質問をしてくださったのが印象に残って
は、共同研究者をはじめ、助言をいただいた多
います。
数の研究者の皆様のお蔭であり、この場を借り
3日目の夕方には、口頭発表をさせていただ
て御礼申し上げます。
きました。恩師である笠井献一先生には、
「聴
衆を引きずり込むような、面白い講演をするよ
─ 95 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
内藤コンファレンスに
参加して
理化学研究所基幹研究所
研究員
中嶋 和紀
9月13〜16日の 4日間、札幌郊外で行われた
metabolism」のセッションで口頭発表の機会
第31回内藤コンファレンス「糖鎖の発現と制
も頂きました。
御「Ⅱ」代謝物、ストレス応答、マイクロドメ
本セッションでは北島先生がCMP-NeuAc合
インとその展望」に参加いたしました。今回は
成系について、宮城先生や桜庭先生が糖鎖分
著名な先生方によるクオリティが高い招待講演
解酵素と病態について最新の知見を話されま
に加えて、若手の口頭発表、各分野の展望を討
した。糖代謝とO-GlcNAc修飾の重要性は提案
論する場が設けられていたのが特徴で、若手の
されていますが、糖タンパク質や糖脂質の合成
私達にとって収穫が多い会でした。展望を討論
における重要性の実体はほとんど明らかにされ
するセッションでは今後の研究課題が浮き彫り
ていないように感じました。私の研究は質量分
にされて糖鎖生物学の現状を学ぶことができま
析により細胞内GlcNAcの動態と病態的意義を
した。
明らかにすることを目的としています。本会で
私は谷口先生の研究室に所属して以来、糖鎖
は単糖代謝からUDP-GlcNAcへの流れ、UDP-
発現における糖ヌクレオチドの生理的意義解明
GlcNAcからN型糖鎖への流れを、質量同位体
というテーマで研究を分析化学の立場から進め
測定に基づいて追跡する2つの実験技術を報告
ています。本会のポスターを拝見したとき、自
いたしました。病態における重要性を見いだす
分のテーマが一致していて是非参加したいと思
ことは今後の課題ですが、本会で知り合うこと
い、
「UDP-GlcNAc代謝物の新規解析戦略:糖
ができた新しい仲間と共同研究等を進めること
代謝異常における関与」という演題を登録させ
によって糖代謝の重要性を今後明らかにしてい
て頂きました。幸いにして「Revist to glucose
きたいと思います。
本コンファレンスで特に良かったことは、普
段論文でしかお目にかかることのできない著名
な先生方と、食事やお酒を囲んでお話しできた
ことです。特別講演をされたWong先生とは日
本の大型研究プロジェクトについて、Varki先
生とは論文のインパクトファクターについてご
意見を聞けたことが印象的でした。英語が不得
意なために積極的に自分の意見を述べることが
できなかったことが残念でしたが、本会に参加
して、研究面だけでなく、多くの観点から課題
を設けることができました。
末筆になりましたが組織委員の先生方ならび
に内藤記念科学振興財団の皆様に深く感謝いた
します。
─ 96 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
第31回内藤コンファレンスに
参加して
東北薬科大学分子生体膜研究所
助教
永福 正和
この度、念願の内藤コンファレンスに参加さ
る細胞生物学な知識やトピックに深い理解が
せていただきました。実は、昨年の第28回の参
なかっただけに、研究の方向性や技術面の可能
加を予定していましたが学内行事と重なったた
性などを知る格好の機会となりました。とりわ
めに断念したため、参加した方々の土産話を聞
け、Paul Crocker博士とAjit Varki博士に関し
きながら羨ましがっていたしだいです。今回は
ては、両先生が書かれたNature Rev. Immonol.
札幌での開催ということで、6 年前には住んで
のレビューで病原体認識におけるSiglecの重要
いた私としては帰郷したような気持ちでした。
性を読んでいたこともありそのご講演は印象
このように私はいろいろな感情が重なって非常
的でした。また、Crocker博士はポスター会場
にワクワクしながら会場に入りました。すぐに
に入ってくるやいなや直線的に私のポスターの
初日のLectureが開始されるので、
まずはチェッ
方へ来ていただきました。それだけでも嬉しい
クインして部屋に行きました。内藤コンファレ
限りでしたが、始めに内容を説明した直後の
ンスは相部屋でしかもその相手は当日までわか
“excellent”と一言いただけたのは感動的でし
らないというのが魅力の一つですが、私の場合
たし、その後いろいろな質問やアドバイスを丁
は以前に同じ大学で働いていた先生と同室とい
寧にしていただけたことは本当に感激でした。
うことになり、思い出話や今の研究の話などで
そして、Varki博士は非常に糖鎖生物学を愛し
夜を過ごしていました。また、ホスピタリティ
ているという印象を感じました。特に、糖鎖生
ルームでの夜の宴では、日本を代表する糖鎖生
物学が神経、内分泌、免疫、代謝など医学生理
物学の先生方と忌憚なく学問の話から世間話ま
学のすべての分野に関わる学問でありながら、
でできたことは通常の学会ではなかなか無い機
個々の分野でのプレゼンスが高くないという指
会で非常に楽しい夜でした。
摘は考えさせられるものでした。我々若い世代
さて、本会のレベルの高さは要旨集で演者を
もこれまで以上に外界と接点をもって仕事をや
見ただけでわかりますが、実際に海外10人国内
る重要性を再認識しました。
15人の著名な先生方のご講演を目の当たりにす
最後になりましたが、このような貴重な体験
ると、誰もがプロフェッショナルであり自分の
をさせていただいたオーガナイザーの先生方な
長年の仕事に生きがいと誇りを持っておられる
らびに内藤記念科学振興財団の皆さまに厚く御
ことがひしひしと伝わってきます。私はスフィ
礼申し上げます。コンファレンスで湧いた熱い
ンゴ糖脂質が担っている病態生理学的な役割
気持ちを忘れることなく今後とも精進してまい
を研究しており、ようやく細胞性免疫、脂質代
ります。
謝、糖尿病におけるスフィンゴ糖脂質の役割を
つかんできました。そして次に、どういうメ
カニズムでそれら現象が起こっているかを探
究する段階にいます。もともと私のバックグラ
ウンドは糖鎖研究ではないので、糖鎖に関す
─ 97 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
秋の実りと収穫
順天堂大学医療看護学部
助教
中山 仁志
全国各地で厳しい残暑の続くなか、今回私が
の学会へ参加するということもありました。し
参加させて頂いた第31回内藤コンファレンス
かしながら、参加後には、同室の先生とお酒を
「糖鎖の発現と制御[Ⅱ]代謝物、ストレス応
酌み交わしながら、研究の他多くの話をするこ
答、マイクロドメインと展望」
(9月13〜16日)
とができましたし、ポスターセッション後にも、
の開催地・札幌には、既に乾いた爽やかな風が
研究者同士が親交を深める場が提供されてお
吹きそそぎ、一足早く秋めいた空気を感じるこ
り、深夜に至るまで研究の話題に浸ることがで
とができました。同時に、初めて参加する内藤
きました。自分の発表の場では、多くの研究者
コンファレンスへの期待と緊張で、胸が高まる
の方々から研究内容に対するコメントをいただ
思いでした。しかしながら、実際に会場へ到着
き、大変良い勉強になりました。また、英語で
してからは、緊張感は払拭され(良い意味で)
、
の発表に若干不安もありましたが、いざ話して
むしろ、最先端の研究内容を勉強させて貰える
みると、案外すんなりと話すことができ、英語
という期待が増していったのを今でも思い出し
は度胸と胸を撫で下ろしました。しかしながら、
ます。言うに及ばずですが、招聘されていた国
後で振り返ると、あれはこんな感じで説明する
内外の先生方は、糖鎖科学をリードする論文や
べきだったとか、いろいろなことが頭をよぎり、
総説を数多く書かれている著名な方々で、ご講
やはり反省も多い発表でした。英語できっちり
演の内容は大変高度であり、非常に大きなイン
と言いたいことをアピールして、より分かりや
パクトを受けました。また、
このような経験は、
すいプレゼンテーション能力を磨いていこうと
自分自身を奮起させる糧となり、今後さらに研
決心した次第です。日常では、100%の時間を
究内容を進展させ研磨していこうという意欲を
研究やその議論に費やすことはなかなかできま
掻き立ててくれるものでした。上述した緊張感
せんが、内藤コンファレンスに参加させて頂い
の理由の一つに、初めて合宿形式かつ英語限定
た 4日間は、100%研究に集中し、頭をリフレッ
シュすることができました。こうして、緊張感
が大きな期待に変わり、短期間ですが、実りと
ともに多くの収穫を得ることができました。今
後は、これらの貴重な知識と経験を生かしなが
ら、研究力を磨き、今後の糖鎖科学の発展に少
しでも貢献できればと思います。末筆になりま
したが、今回の内藤コンファレンスにおいて発
表の場を与えて頂き、さらには、内藤記念特定
研究助成金によるご支援を頂くこと、厚く感謝
申し上げます。また、組織委員の先生方、なら
びに内藤記念科学振興財団の皆様に深く感謝申
し上げます。
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第31回内藤コンファレンス印象記
「責任と義務」
〜VARKI博士の講演を聴いて〜
先端医療振興財団先端医療センター
研究員
前田 良太
第31回内藤コンファレンスの初日、平成23年
わたくしのポスター発表の際には、岩渕和久
9月13日。その日は大安でもあり、朝から京都
先生、古川鋼一先生、井ノ口仁一先生、北島健
の区役所に並んでいました。9月15日に誕生日
先生、Kelly MOREMEN先生にはとくに大き
を迎える彼女から、齢が増してしまうまでに必
な興味を持って議論をいただきました。また、
ず婚姻届を出すように、との厳命を受けていま
宮城妙子先生とAjit VARKI先生とは、シアル
した。待つこと1時間、婚姻の受理証明を無事
酸分解酵素とクロトーの関係について、屈託の
にもらい、神戸ポートアイランドのラボで印刷
ない意見の交換ができました。
に出しておいたポスターを受け取り、そのまま
講演を通じては、京大の大学院生のころから
神戸空港から札幌・千歳へと向かいました。
興味を持っていた小堤保則先生の冬虫夏草の最
会場の「シャトレーゼ ガトーキングダム 新のご研究に、懐かしみながら聞き入ることが
サッポロ」はひとりで過ごすにはもったいない
できました。また加藤晃一先生のデータと内容
ほどの一大保養施設です。毎回の食事もこの上
の豊富さに吃驚し、鈴木匡先生の英語での表現
なく充実し、
フロアーにはたくさんのお菓子
(ガ
力にはため息が出るほどの感銘を受けました。
トー)が飲み物とともに無料で置かれていま
もっとも印象に残ったのは鈴木明身先生、谷
した。いつかは妻も連れて来なければ罰
(ばち)
口直之先生そしてVARKI先生らの発揮された
が当たろうかと思いながら、秋をむかえた湖の
強いリーダーシップです。この糖鎖の分野を何
散歩や温泉(スパ)を何度も楽しみました。参
とか自分たちで盛り上げて、世界中の研究者へ
加者として選んでいただいた組織委員の諸先生
のつながりを広めたいという、大きな責任と義
方と、機会を与えていただいた内藤記念科学振
務のともなった強い意志を感じました。本会の
興財団の方々に深く感謝いたします。
締めくくりとしてのVARKI先生の講演とそれ
細川暢子先生には論文投稿上の相談にのって
に続くパネルディスカッションの中に、その具
いただき、とくに糖鎖研究の論文査読者にかか
体的な方策と意図が提案されてあり、科学研究
わる苦労話を成功談とともに、そのたいへん貴
の推進がどのようになされるのかを目の当たり
重な体験をうかがいました。かねてよりお世話
にすることができました。
になっていた山口芳樹先生や山田修平先生とも
このほかにも、印象に残ったことが数多くあ
お会いでき、近況をご報告できたうえで多くの
りましたが、字数の都合上、割愛せざるを得な
ご意見や研究上の提案をいただきました。今会
いのが残念です。最後に私ごとではありますが、
がきっかけとなり北川裕之先生や岡昌吾先生と
今年(平成23年)の12月に第一子が誕生する予
のご縁もでき、未発表の生データに対してもた
定です。生まれてくるこの子と、これからの糖
いへん有意義なご批評をいただけるようになり
鎖研究のために、いま自分ができる範囲での責
ました。さらに、西原祥子先生と岡先生とは現
任と義務を果たすべく、日々の研究生活に精進
在、糖鎖合成やその構造決定についての共同研
していきたいと思います。
究をはじめられるまでに至りました。
─ 99 ─
第31回内藤コンファレンス印象記
糖鎖恐怖症から糖鎖愛好症へ
神戸薬科大学薬学部
特別契約研究員
宮田 真路
内藤コンファレンスは、ゴードンカンファレ
が必要か話し合われた。そこで印象的だった
ンスの日本版を目指しており、各分野(今回で
の は、Ajit Varki教 授 の「Glycophobiaの 人 た
あれば糖鎖科学)で最先端の研究を行なって
ちに糖鎖科学の重要性を分ってもらうことが
いる比較的少人数の研究者を国内外から集め、
大事だ」という発言であった。Glycophobiaと
4日間にわたり朝から晩までみっちり討論する
は、glycan(糖鎖)と、嫌悪症、恐怖症を示す
という、比較的珍しいタイプの会議である。実
phobiaを組み合わせた、Varki教授の造語だと
際参加してみて、まさにその通りだと感じた。
思われる。糖鎖は、核酸、タンパク質に次ぐ
会場は札幌駅からバスで30分ほどの大きなリ
第三の生命鎖として注目を集めている。しか
ゾートホテルだが、近くに観光スポット、歓楽
し、糖鎖の構造多様性ゆえに、異分野の研究者
街など、会議への集中を妨げるおそれのあるも
にとってはとっつきにくく、なかには毛嫌い
のは何も無く、まさにホテルに缶詰め状態で
する人もいる。そのような人達に糖鎖研究の必
ある。大規模な学会でたまに見られる、参加登
要性を理解してもらうためには、糖鎖研究者
録者は多いが会場には人がいない(どこか観光
が、糖鎖研究の内側に閉じこもっていてはだめ
にいっている)というような状況は起こりえ
である。糖鎖研究では、はじめに分子つまり
ない。実際私も、「北海道に行った」という実
「モノ」としての糖鎖が存在しており、その糖
感があまりない(唯一、空港で「白い恋人」を
鎖がどのような働きがあるか解明することを目
買っただけ)
。この会議での一番の収穫と言え
指す。一方、免疫学、神経科学などでは、まず
ば、
「飲み会」である。夕食後に部屋が開放され、
免疫反応、記憶などの「現象」があり、その基
そこで好きなだけワインやビールが飲める。こ
盤にはどのような分子が働いているか追求する
の飲み会は自由参加で、
出入りも自由であるが、
という意味で、学問の方向性が逆であるが、究
私は連日最後まで皆勤を貫いた。もちろんお酒
極的にはどちらも生命の理解を目指している。
が収穫なのではなく(それもあるが)
、多くの
そこで、糖鎖科学の発展には、糖鎖研究者が異
研究者と親睦を深めることができた。特に普段
分野の人達と積極的に共同研究を行い、糖鎖の
あまり接点のない異分野の方と話し合うこと
面白さを伝えることで、糖鎖恐怖症を克服させ
で、研究者としての視野が広がった。また、私
ることが重要である。ちなみに、phobiaの反対
と同世代の多くの若手研究者と知り合い、刺激
に愛好症を意味するのはphiliaであり、糖鎖研
を受けたことは、これからの研究者人生にとっ
究者は皆、glycophilia(糖鎖愛好症)であるが、
ての大きな財産となった。通常の学会ではこの
glycophiliaは医学用語で高血糖傾向を意味する
ような機会を得ることはあまりなく、内藤コン
ので、使用には注意が必要である。
ファレンスの素晴らしい特徴だと感じた。
最後に、発表の機会と内藤記念特定研究助成
この会議のもう一つ特徴は、最終日に行われ
金によるご支援を頂き、組織委員の先生方、な
る討論である。自分の研究成果を発表するだけ
らびに内藤記念科学振興財団に深く感謝いたし
でなく、これからの糖鎖科学の発展のために何
ます。
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第31回内藤コンファレンス印象記
第31回内藤コンファレンスに
参加して
東海大学糖鎖科学研究所
特定研究員
米重あづさ
前列左から2人目が筆者
東日本大震災から半年、日本全国で復興への
話まで飛び出し、交流を持てたことも思い出の
機運が高まるなか、第31回内藤コンファレンス
一つです。同室だった高知大学の山口亜利沙博
「糖鎖の発現と制御[Ⅱ]代謝物、
ストレス応答、
士とは、博士の温和な人柄と年齢が近いことも
マイクロドメインと展望」が開催されました。
あり、終始楽しくご一緒させていただきました。
開催場所のシャトレーゼガトーキングダムサッ
一方で、東北地方の先生方から震災後の状況を
ポロは、早朝には朝靄がかかり夜は札幌市街地
聞くにつれ、研究の中断を余儀なくされた無念
の夜景を臨む美しいロケーションで、4日間に
さが感じられ、学問の徒として何かお役に立て
わたり同じ志を持つ研究者と寝食を共にし、通
なかったのかと自省の念に駆られることもあり
常の学会には無い貴重な体験をすることができ
ました。今後もコンファレンスでできた繋がり
ました。特に、駆け出しの研究者から当分野の
を持続していけたらと思います。
重鎮である高名な先生方まで、全ての研究者が
最後になりましたが、組織委員の先生方およ
時空間を共有する点が刺激的でありました。
び内藤記念科学振興財団の皆様におきまして
個人的な感想になりますが、スフィンゴ糖脂
は、コンファレンス開催にあたって例年以上の
質研究の第一人者であるKonrad Sandhoff先生
御苦労があったのではと察せられます。このよ
の講演を直に聴講でき、基礎研究から臨床応用
うな素晴らしい会議に参加させていただけたこ
までSandro Sonnino先生の多岐に渡る講演に
とに深く感謝し皆様の益々のご活躍を祈念する
感銘を受けました。ポスター発表においては、
と共に、私自身も微力ながら科学の発展に寄与
私の拙い英語の説明にも関わらずReid Gilmore
できるよう邁進していきたいと存じます。
先生よりアドバイスをいただけたことが強く印
象に残っています。また、最終日のAjit Varki
先生の「糖鎖科学という一分野に留まること
無く、現在主流である科学の分野において糖鎖
を広めよう」という示唆に富んだ提言は、ま
さ に セ ッ シ ョ ン の テ ー マ「Glycobiology and
beyond」に込められた組織委員の先生方の熱
い想いを感じました。このコンファレンスを通
して、私たち若手研究者は今後いかにして糖鎖
科学研究を発展させていくべきなのか、目指す
べき道を見出せたのではと思います。
私は内藤コンファレンスへの参加は 2 回目
だったのですが、今回はホスピタリティールー
ムで同年代の方々と研究や将来について、夜も
更けてくると学生時代の武勇伝や趣味や特技の
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