第9回論文全ページPDF版ダウンロード

目 次
1
公募型工事技術者としての現場体験 …………………………………………………………………………
1
2
地域とのコミュニケーションと設計変更 ……………………………………………………………………
4
3
小さな経験からの大きな効用−工程短縮による地域貢献−…………………………………………………
7
4
歩道工事における工法検討と工程管理 ……………………………………………………………………… 11
5
堤防除草工事における工事施工説明 ………………………………………………………………………… 14
6
国道16号埋設排水ヒューム管破壊による沈下防止対策工事 ……………………………………………… 17
7
環状第 8 号線整備工事に伴う水中躯体移動設置工法について …………………………………………… 20
8
場所打杭施工から発生する汚泥のリサイクル ……………………………………………………………… 23
9
地下鉄工事における既設地下鉄のアンダーピニングの設計と施工管理 ………………………………… 26
10 地盤改良工事における品質管理のための管理項目一覧表の作成 ………………………………………… 29
11
2 層同時舗設排水性舗装における施工管理についての取り組み ………………………………………… 33
12 長距離推進工事における掘進機損傷原因究明について …………………………………………………… 36
13 コンクリート打設計画策定について ………………………………………………………………………… 42
14 治山施設災害復旧工事に於ける施工管理について ………………………………………………………… 45
15 TTM床版工法による工期短縮について …………………………………………………………………… 48
16 夏季の路盤材出荷に伴う含水管理 …………………………………………………………………………… 51
17 ハイピアにおける施工上の問題点 …………………………………………………………………………… 54
18 仮設排水施設のコスト低減と騒音対策について …………………………………………………………… 57
19 仮締切工の遮水について ……………………………………………………………………………………… 60
20 地域に愛される工事をめざして ……………………………………………………………………………… 63
21 夏期コンクリート打設時の単位水量管理に伴うスランプロス対策について …………………………… 66
22 高橋脚施工における私の取組事項 …………………………………………………………………………… 69
23 ケーソン・セルラーブロック製作の施工管理 ……………………………………………………………… 72
24 最高の瞬間 ……………………………………………………………………………………………………… 75
25 工事現場におけるヒューマンエラーによる労働災害対策と、河川工事における環境対策について … 78
26 地域活動を通してのイメージアップ ………………………………………………………………………… 81
27 河川浚渫工事における工程管理∼レーザーレベル及びGPS無線の効果的応用について∼ …………… 84
28 薄土被りの軌道下ボックスカルバートの施工 ……………………………………………………………… 87
29 大型クレーンによる鋼製トラス橋の撤去 …………………………………………………………………… 90
30 旧橋撤去工事における乾式ワイヤーソーシング工法 ……………………………………………………… 93
31 国道の舗装修繕工事での技術的工夫 ………………………………………………………………………… 95
32 国道の舗装修繕工事での安全の確保と周辺対策 …………………………………………………………… 98
33 コンクリート構造物(A 1 橋台)におけるひび割れ抑制対策 …………………………………………… 101
34 鋼矢板引抜きに伴う埋設管沈下抑制対策 …………………………………………………………………… 104
35 河口付近における河川改修工事の仮締め切りと護岸ブロック積の裏込方法について ………………… 107
36 テールアルメ工法において盛土の締固めの管理方法について …………………………………………… 110
37 緩衝リンク型耐震連結装置(Kリンク)について ………………………………………………………… 113
38
海底トンネル補強工事における安全管理 …………………………………………………………………… 116
39
逆ローゼ式上路アーチ橋の施工と出来形管理 ……………………………………………………………… 119
40
支承取替工事における創意工夫∼九頭竜川橋補修工事∼ ………………………………………………… 122
1
公募型工事技術者としての現場体験
(社)北海道土木施工管理技士会
近 藤 始 ※
対応が余儀なくされます。
1 .公募型工事の受注までの経過
平成16年 6 月初旬、私の勤務している会社でも
6 月初旬の北海道は、梅雨もなく土木工事は最高
以下に記するようなことが有りました。会社の過去
に恵まれた条件で施工出来る季節です。しかし公共
10年間の施工実績は有りましたが、配置予定技術
工事が主体の北海道の建設業者は、自社の雇用して
者としての施工経験は私一人という中で公募型工事
いる技術者のほんの一部が現場に従事する程度で、
に応募し、指名を勝ち取りました。当然受注の際は、
ほとんどの業者は工事を受注していない閑散とした
私が現場の配置予定技術者となることを含め、この
季節でもあります。受注に備えて資材庫の整理、社
工事をどのように対応して施工するか等、社内の経
員の技術力向上を目指した教育訓練に明け暮れ、し
営会議の中で議論を重ねました。というのも私は、
かも今までは指名されることをひたすら待っている
会社の中では常務取締役の立場に有り、しかも
状態でした。指名されて初めて受注に向けての積算
ISO 9001の品質管理責任者でもあります。常務とし
がはじまり、入札に参加して、競争に勝って初めて
ての職務を休業することは当然のことですし、かと
技術者の人選を行う。これが私どものクラスの会社
いって会社の業務に支障をきたすようでは企業とし
の現状でした。しかし昨今は入札制度の改革で、公
て成り立ちません。
募型入札制度なら会社の施工実績と、雇用している
「会社の運命を背負う気持ちで」と社長に命じら
技術者個人の施工経験が条件に合致すれば、入札に
れ、自ら工事の積算業務に入り、その中で受注に備
参加出来るようになりました。公募型工事の入札に
えた工事に対する具体的検討、積算価格の検討を経
参加する事前段階で配置技術者を社内で検討決定
営会議に提案して、二度、三度と議論を重ねて頂き
し、受注に至らなくても、工事に対する技術者の配
ました。電子入札の開札は、平成16年 6 月 8 日午
置を含めた具体的対応が出来ることになりました。
後 4 時 5 分からでしたが、私には悲しい出来事の
しかし全ての会社がこの制度に参加出来るとは限り
最中でした。
ません。私どもの会社は、技術者 8 人程の小規模
6 月 7 日に父が長い闘病生活の後、94才で天寿を
な会社で、多くの技術者を雇用するほどの余力は有
全うし、丁度湯灌の時間と重複したのです。しかし
りません。しかも一人の技術者が沢山の経験を持っ
会社の「運命を背負って」との社長の言葉に応える
ていても受注に至った場合は配置を予定した一件の
ことが、私を今日まで育ててくれた、亡き父への供
工事に専属配置となり、経験豊富な技術者を雇用し
養と会社に出向きパソコンの前に座り電子入札に対
ているにもかかわらず、これまでとは、全く違った
応しました。27社の指名業者の頂点に立ったとき、
−1−
父が最後に残してくれた「勤労」という教えの神髄
て沿線住民の方と同じ立場で工事を見て、感じるこ
に感謝し、念仏を唱えたことを、今まざまざと思い
とが必要と直感しました。本社から通勤するには距
出します。
離も有り、通勤災害も懸念されること、又現場が車
両通行止めという交通規制を行う上で保安の問題も
父の葬儀を終えて、工事契約業務に自らが出向き、
着工関係の書類の作成、施工計画書の作成と業務を
有り、現場配置スタッフ全員が宿泊する選択をしま
こなし、私は、当工事の技術者として配属され、現
した。幸いにも工事区域の沿線にアパートが有りま
場代理人、監理技術者の職責を担うこととなりまし
したのでここで 5 ヶ月間を過ごし、沿線住民の立
た。経験の少ない私の子供と同年代の職員を担当技
場になって、工事が周辺に及ぼす影響度を体験する
術者として配置し、他に技術職員1名、技能職員1
ことが出来ました。近隣の方と日常の挨拶を交わす
名で現場組織体制を固め施工に臨みました。
ことは当然として、こちらから積極的に話しかけ、
工事の協力を依頼しました。通行止めの前後には、
公共工事予算が大幅に縮減されている中にあっ
て、これが北海道内の小規模建設業者の実情だと思
【ご近所の皆様へ】というボードを掲示してその週
います。そんな中にあっても対応できた当社は恵ま
の工程を公開しました。散歩ルートの迂回を余儀な
れていましたから、私の土木屋人生36年の多種多
くされた方からも、「毎日現場の状況が変わってい
用な経験を活用してくれた会社に恩返しすべく、私
くのを見させてもらうのも楽しいし、どんな仕事を
なりに現場の課題に取り組みました。
しているかもボードでわかる」そんな話を耳にした
とき安堵感を覚えたものです。近くには、温泉施設
2 .現場での課題
があり毎日通っているうちに、名前を知らなくても
本工事には、道路横断工が有り車両通行止めの
親しくお話の出来る方も増え、私がこの工事の関係
期間が約 3 ヶ月以上に及ぶこと、又既存のコンク
者であることを告げて、沿線住民の方がこの工事の
リート水路と橋の取り壊しが有り、振動、騒音の発
影響をどのように受け止めているのか、又工事に対
生が懸念されることから、施工内容についてどのよ
してどんな要望を持っているのか等の情報収集につ
うに理解、協力をしてもらったら良いのか、又その
とめ、職長との工程打ち合わせの議題として現場施
間工事の進捗状況を如何に周知して理解を求める
工の改善につとめ、実施事項を朝のミーティング時
か。
に作業班に周知することにつとめました。
安全管理として有資格者選任の作業を行う場
現場を含めた周辺には、不法投棄された一般廃棄
合、作業主任者に自覚を持たせ、作業班への周知徹
物、産業廃棄物が散乱していたことから、地域の清
底を如何にするか。現場来訪者にも誰が作業を指揮
掃作業に現場を挙げて積極的に取組み、地域の環境
しているかを、如何にして知ってもらえるか。
改善に協力するとともに、工事区域の町内会のイベ
ントにも現場スタッフが参加して交流につとめた結
又有ってはならない、起こしてはならないとい
えども、建設工事には事故の発生が懸念されます。
果、町内会からは、活動の広報や連絡文書が配布さ
とっさの時に連絡系統がわからず時間を費やし、処
れるまでになり、徐々に意志の疎通がはかられてき
置遅れという例があります。如何に連絡網を工事関
たことを実感しました。
次に取り組んだのが情報の公開です。工事区域の
係者に周知し迅速に連絡するか。以上の 3 点を重
住民だけでなく、広く当作業所が施工している工事
点課題として対応に取り組むこととしました。
について迅速に情報を公開する手段として、作業所
3 .私が取り組んだこと
のホームページを開設しました。作業所のホームペ
ージということで、写真を中心に心がけ、土木に縁
工事区域沿線の方とコミュニケーションをはか
遠い人や、子供達にもわかってもらえるようにと、
るために取り組んだことはまず、工事区域に居住し
−2−
わかりやすい言葉を使用して、工事の概要、現場ス
空知中央地区北海幹線用水路
岩見沢黄金橋工区工事
タッフの紹介、工事の状況、現場周辺地域の施設や
地域のイベント、交通規制の案内、そして当社の紹
介、メール投稿欄のページを設けて広く御意見、御
指導を受けることとしました。 7 月28日に開設し
てから12月20日に工事の検定引き渡しが実施され
るまでの間に、2 , 500件あまりのアクセスが有り、
貴重な御意見、御指導に併せて励ましのメールが、
遠くは長野県からも寄せられ、反響の大きさに驚か
工事完成
されました。請負金額八千五百万円の小さな工事で
底をはかりました。おかげさまでこのボードを利用
すし、ホームページを開設するほどの現場ではなか
するような事故はありませんでしたが、携帯電話を
ったかもしれません。しかしアクセス数が増えるに
現場の末端作業員までが所持する昨今ですので「い
つれて、情報公開に踏み切った決断は、正しかった
ざというとき、そばに連絡系統図があることは心強
と満足しました。工事完成後は、完成の御礼欄を設
い」と作業班からの感想でした。
けて、工事に協力してくれた下請け業者の職長さん
4 .工事を終えて修得したこと
も紹介し、苦労をねぎらいました。
労働安全衛生法等で規制されている有資格者に
事前に予定された技術者として、実際に現場に配
よる作業については、朝のミーティング時に作業内
属され、現場での問題点、その対策、成果について
容を説明して、当日の有資格作業にあたる作業主任
公共工事に関しては、高度技術・創意工夫・社会性の
者に直接作業班の前で記名入りのカードを手渡し、
実施状況として報告する手段がとれ、顧客である発
安全通路入り口の所定のボードに指名された作業主
注者にもその実績を理解してもらうことも出来ま
任者自らが差し込み、作業主任者としての意識高揚
す。当工事では前述の取組について、高度技術・創
につとめました。工事関係者以外の方からもわかり
意工夫・社会性の実施報告として最終的には、24
やすいと好評でした。
項目を実施して報告したのですが、小さな工事であ
もう一点は、安全管理にどんなに力をいれても、
っても、小規模な請負業者であっても、技術者とし
労災事故がおこらないとは限りません。朝のミーテ
ての取組みの手法によっては、工事によって不便を
ィング時に現場に持ち込む必携品として、緊急連絡
被る住民からも、十分な理解を得られるという実績
系統図(電話番号入り)をボードに貼り付け、作業
を、本工事を体験して習得することが出来ました。
班毎に作業範囲の良く見える所に掲示することの徹
四苦八苦しながらも私どもの会社は、今回の工事
を受注し完成にこぎつけることが出来ましたが、対
作業主任者記名入りカード
応の出来ない会社も沢山有ると思います。チャンス
を与えてくれた社長をはじめとする経営陣に感謝す
るとともに、これからの社員教育においては、工事
の受注前の段階から、受注に備えた事前検討の必要
性、工事沿線住民とのコミニュケーションの重要性
を教授しなければならないと、実感したことも付け
加え、文の末尾とします。
※ 若林建設株式会社
緊急連絡系統図
作業主任者の記名入りカードと緊急連絡系統ボード
−3−
2
地域とのコミュニケーションと設計変更
(社)北海道土木施工管理技士会
佐 藤 敏 文 ※
工事に先立って、現地調査をしたところ、いくつ
1 .は じ め に
かの問題点が出てきました。歩道拡幅にあたって、
発 注 者 帯広開発建設部
開発の用地はあるのですが、支障物件が多いこと。
工 事 名 一般国道273号上士幌町 糠平市街歩道
その中に、モミジの木が 2 本あって、その木は、
観光の名物となっていること。大きなカーブがあり、
拡幅工事
工事概要 施工延長L=894 . 23m、道路改良工一
その下が沢のようになっているところが盛土で歩道
式、舗装工一式、道路植栽工一式、情報
拡幅の設計となっているのですが、その通りに施工
ボックス工一式
すると、法面がずっと沢の下まで続いてしまい、そ
のために、多くの木を伐開しなければならないこと。
伐開してしまうと、露天風呂の一部が歩道から見え
落札が終わって、発注者である開発に挨拶にいっ
たところ、あそこの地域は、特殊であり、苦労する
てしまうこと。国立公園内で環境保護の観点からも、
ぞとのことで、これは大変な工事かも知れないと密
また、モミジの木は、この街の観光の振興策として、
かに覚悟しました。工事は歩道拡幅工事で、延長は
紅葉を売りにしている関係で、地元からは、残すこ
ありますが、さほど特殊なものもなく、変わったも
とに強い要望がありました。これらの問題点を抱え、
のといえば、縦型の勾配型の転落防止柵くらいでし
その解決を求めながらの工事となりました。
た。何が大変なのかを聞くと、温泉街であること、
3 .対応策・工夫改良点
過去の工事で、温泉の湯の出が悪くなり、損害賠償
問題が起きたりしたこと、もう何年も工事がなされ
まず、大きなカーブのところの対応策としては、
てなくて、地域住民の工事に対する期待が、過度に
補強土壁工の採用を提案し、設計変更の対象として
なっていることなどがありました。これはよほど地
もらいました。補強土壁によって法面勾配を立てる
域とのコミュニケーションに注意して施工していか
ことによって、大幅な伐開面積の短縮を計ることが
ねばならないと気をひきしめました。そこで、開発
できます(図− 1 )。しかし、それにはひとつ重大
主導で、現場説明会を開催し、地域住民に参加して
な問題がありました。過去の補強土壁工の経験から、
もらって、理解を求めました。国立公園内の観光地
補強土壁の端部は十分な転圧ができず、必ず翌年に
で、人口僅か100名足らずの温泉街で、注目の中、
は沈下して歩道舗装面などにクラックが起きてしま
こうして工事はスタートしました。
うのです。つきものの、転落防止柵も、歩道の外側
に傾きます。これを防ぐためには、土中建込み式の
2 .現場における課題・問題点
−4−
図−1
図−2
もうひとつの問題点である、モミジの木のほうは、
ように、支柱を深く差し込む方法がありますが、こ
れだと安定補助材を突き破らねばならないので、採
2 本あり、 1 本はこの街で最も古いといわれる巨木
用になりませんでした。そこで、補強土壁のパネル
であり、もう片方はこの街で最も美しい紅葉になる
の前面に路盤材を敷設することを提案し採用となり
といわれる木であり、両方とも歩道の中に残す方向
ました。これで沈下を防ぐことができることで、こ
で、工事は進められていました。問題は、残す方法
れも設計変更の対象としてもらいました(図− 2 )。
であり、歩道の中ということで、なるべく歩道幅を
−5−
写真− 1
写真− 2
とる形で舗装と平らにしなければなりません。そこ
で、舗装の高さにあわせて、木片を埋め込む方法を
提案し、創意工夫として出しました(写真− 1 、2 )。
巨木のモミジの方は、その後、根の下にやはり巨大
な岩石を抱いていることがわかり、倒木の危険があ
るということで、撤去することになりましたが、 1
本は、この方法で、残すことができました。地元か
らは、大変喜ばれました。
4 .お わ り に
地元の要望を設計変更に生かして、施工後に本当
に喜ばれる工事をすることができたとおもいます。
こうした背景には、開発の監督員の理解や判断の力
も大きく、その点では、恵まれたとおもいます。ま
た、地域の住民の方とは、とにかくコミュニケーシ
ョンを計り、施工業者としての姿勢をみせることに
より、理解を得ることができたとおもいます。この
ため、打合せや協議などに、かなりの時間をさかな
資料− 1
ければなりませんでしたが、結果としては、こうい
うことこそが、現場代理人としての重要な仕事だっ
要望書は、大変めずらしいということで、開発も喜
たとおもいます。最後になりますが、工事の終わり
んでおりました。また、私もこのような形になった
頃に、地元の有志から連署でもって要望書が開発の
ことで、現場代理人冥利につきるおもいで、それま
建設部長宛てと道路事務所所長宛てに提出されまし
での苦労も吹き飛んだような気がしました。この度
た(資料− 1 )。監督から連絡があり、要望書が出
の経験は、私のつたない現場経験の中でも、印象に
ているということで、何事かと思い駆けつけて中味
残るものになろうかとおもいます。この論文で、皆
を確認させてもらうと、この工事に対する感謝の意
様の施工に何か参考となるものがあれば幸いとおも
と、できれば来年度の反対側の歩道拡幅工事に、同
い応募いたしました。
※ 右谷建設工業株式会社
じ業者が来てほしいという内容でした。苦情でない
−6−
3
小さな経験からの大きな効用
− 工程短縮による地域貢献 −
青森県土木施工管理技士会
竹 内 貴 之 ※
のため、以前から周辺地域や利用者に強く要望され
1 .は じ め に
ていた。
工事概要は以下の通りである。
土木工事を施工するに当たり、工期短縮は避けて
通れない命題である。工期短縮は、第三者の利便性
・工 期:自平成15年11月13日
の阻害軽減、地域経済の阻害軽減、早期完成による
至平成16年 3 月29日
地域経済の活性化促進そして、コスト削減などその
・盛土工:4 , 500
効用は実に大きい。そのために我々土木技術者は、
・ボックス:16 . 8
いろいろな努力を行っている。
・構造物取壊し:400
・アスファルト舗装:6 , 400
新工法の採用、従来工法の検討と応用、経験施工
・排水構造物:520
の模索、徹底した施工管理の合理化など、種々の手
立てで工期短縮を実施し、地域への貢献を惜しまな
3 .工事の課題
いものである。
しかし第三者は、現状より快適な生活環境になる
工事の課題は、積雪寒冷地の厳冬期に施工するボ
と理解しているものの、生活リズムを一時的にも阻
ックスを早期完成する施工方法である。国道と立体
害されたことに不満を表し、工事現場が早く立ち去
交差する町道部分に延長16 . 8
ることを願っている。
内高6 . 8
内幅8 . 0
のボックス施工は、施工場所の地形から、全面通
当該工事は、地域の主要生活道路をコンクリート
行止めとしなければならなかった。
ボックスカルバート(以下ボックスと記す。)施工
地域住民、役場、関係各署からは、片側交互通行
のため全面通行止めとしなければならなかった。そ
に出来ないかと強い要望もあったが、止むを得ない
のため、発注者、役場、地域住民から、一日でも早
ことに理解を示し協力を得ていた。
い交通開放を求められた工事である。
しかし、全面通行止め期間を60日と依頼された。
この日数は、隣接での同施工の全面通行止め期間が
2 .工 事 概 要
90日であったのに対して、かなり厳しい数字であ
る。
青森県南津軽郡藤崎町地区内の、青森市と弘前市
を結ぶ一般国道 7 号線(以下国道と記す。)の道路
この町道は、国道を挟んで住宅地と小中学校への
改良工事である。交通量が 6 万台/日を超える慢性
通学路、商業施設への通勤路等として、地域の重要
的な渋滞の緩和を安全確保、環境対策、経済活性化
な生活道路になっている。
−7−
ト打設準備作業、養生を要すること足場鉄筋組立作
この全面通行止め期間を短縮し、一日でも早い生
業が発生し、工程短縮は望めない(図− 1 )。
活リズムの回復、さらに便利で快適な生活道路の提
供と、施工への理解と協力に答えるため、土木技術
更なる日程短縮をするため側壁頂版の他、底版及
者のプライドにかけて、施工方法の検討を行った。
び均しコンクリートを含むコンクリート打設部分
を、全てプレキャストに出来ないか検討した。
4 .施工方法の検討
私が土木工事に携わった、今からの20数年前の
ことである。小規模工事であったが、作業員から工
作業工程は大きく分けて、既設構造物取壊しを含
程短縮の施工提案があった。
む掘削工(28日)、埋戻し工(20日)の土工事(計
48日)と、ボックス施工(37日)、で在る。施工場
交通を阻害する日数を軽減する方法で、事前に均
所が狭小で作業機械の台数を増やせないため、土工
しコンクリート版を製作するものである。施工時、
事での大幅な工程短縮は望めない。故に、ボックス
掘削に続きそれを敷設、その上に組合せ暗渠ブロッ
の施工工程短縮に焦点を当てた。
クを設置する方法で、片側交互通行規制の施工形体
で、幅員約7 . 5
施工方法には、①現場打ち施工②プレキャスト製
を 1 日で規制解除した。
この方法を当該工事に応用出来ないかと製作業者
品の使用による施工がある。
現場打ち施工では、作業足場組立解体、鉄筋組立、
に依頼、また底版を含む全てをプレキャスト製品が
型枠組立解体、コンクリート打設養生の作業工程が
出来ないか併せて依頼した。本工事に協力してくれ
発生し、施工日数も 60 日以上を要する。よって
た制作業者も、初めての案に戸惑ったが製作の協力
早々にこの工法は除外し、プレキャスト製品を使用
を得、検討の結果構造的に問題ないこと、製作可能
する工法に決定した。
であることの確証を得た。
基礎地盤整地に続き均しコンクリート版を敷設、
この方法は、2 部材の側壁と 1 部材の頂版を組立
てる従来工法である。この工法の施工日数は37日
この上に床版、続いて左右の側壁、最後に頂版を設
である(表− 1 )。
置して組立てが完了する。
さらにこの 4 部材をPC鋼棒で緊張接続し一つの
しかしこの従来の施工手順では、依頼の60日を
ボックスを形成する。このボックスを隣同士のボッ
満たすことはできない。
クスとPC鋼棒で緊張接続し、目的の延長にする方
この工法は、底版と頂版の一部にコンクリート打
法である(図− 2 )。
設が在る。コンクリート量に関わらず、コンクリー
表− 1
これにより、施工日数が僅か 11 日で完了する、
日程比較表
コンクリート打設が全くない大型構造物の施工が可
能になった。これで、全面通行止め期間も59日と
なり、依頼の日数が現実になった(表− 1 )。
5 .施工の課題と対策
施工において次の課題があった。①製品重量に対
して基礎地盤の支持力が得られるか。②既設構造物
内部にある、供用中の上下水道管に支障なく施工す
るかである。
①の課題において基礎地盤の土質調査を行った。
シルト層と砂礫層が互層に形成され、加えて湧水層
が在った。結果から良質材料で50㎝の深さで置換
図− 1
−8−
図− 2
−9−
えた。置換え後平板載荷試験を行い、必要支持力
167KN/
に対し、長期支持力180KN/
限支持力540KN/
7 .今後の課題
以上、極
の結果を得た。
当該工事で使用したボックスの 1 部材の重量は
②の課題において各管径は、上水道管φ 150 ㎜
(以下、水道管と記す。)基礎地盤より2 . 2
上方、
最大で23t平均12t、使用したクレーンは200t級
である。各部材の軽量化により、施工場所に苦慮す
下水道管φ200㎜(以下、下水管と記す。)基礎地
ることなく汎用クレーンでの作業が可能となれば、
盤より1 . 3
さらなる日程短縮、コスト削減と施工地域への貢献
上方に位置する。土圧で安定していた
水道管は、常に満水状態で、その重量により簡易な
が出来ると考える。
防護では、僅かな接触、振動でもジョイント部分か
8 .お わ り に
ら漏水破裂する恐れがあった。下水管においても、
流量、流量物が一定しないので、急激な管内の荷重
変化に対し同様なことが起こる可能性があった。
土木技術は、日進月歩である。その技術は多種に
渡りそれを全て把握し採用することは、中小建設業
水道企業者、水道工事業者と対策を協議した結果
者には容易なことではない。
次の指導を受けた。水道管、下水管ジョイント部分
本工事は、技術と言うには恐縮するが、工程短縮
に離脱防止具を設置すること、さらにその部分に荷
のための工夫を以前の小さな経験を基に応用できた
重が集中しないように管に添え木を施すことであっ
ことは先人に感謝するものである。その小さな経験
た。加えて、水道管は凍結防止のための防護も行っ
から得たものは、実に大きかった。
た。掘削、床版敷設、側壁敷設の各作業時に発生す
工程短縮により、第三者のへの障害の軽減、地域
るもりかえ防護作業も、ジョイント部分に荷重が集
活性化促進、コスト削減そして、土木技術のイメー
中しないように施工した(図− 2 )。
ジアップ。
積雪寒冷地の厳冬期で、より高品質な製品を提供
6 .結 果
できること。
特殊作業がないので、省人化でき労働力不足、労
予定通りボックスの施工期間は、11日で完了し
た。これは、従来プレキャスト施工より70%の工
働力の高齢化に対応し、安全作業を確保できたこと。
程短縮となった。また、日々の作業の徹底した役割
小さな経験も積み重ねれば、土木技術の財産にな
分担で能率をアップできた結果、全面通行止め期間
り得ると考える。このことをこれからの技術者作業
は44日であった。これは、以前近接工区での同様
員に伝えていきたいと思う。
工事で全面通行止め期間が90日だったの対し、約
とかく工事の創意工夫は、実績不足や経験不足な
半分の日数で、さらに要望された60日より16日早
ど今まで経験のない事象は、否定敬遠されることが
く道路開放できた。
多分にある。
しかし、本工事では関係者がポジティブに課題に
施工課題であった地盤支持力は、道路開放後も、
耳を傾け、取り組み、一体となってやり遂げようと
変位は確認されない。
水道管、下水管も支障なくスムーズなもりかえ作
業ができ、無事復旧した。
努力した。この姿勢も目標達成の源となったことも
間違いない事実である。
※ 共栄建設株式会社
−10−
4
歩道工事における工法検討と工程管理
(社)岩手県土木施工管理技士会
上 野 裕 矢 ※
あった為、当初の設計としてプレキャストL型擁壁
私が現在の会社に入社して、現場の施工管理に携
の設置が計画されていました。
わるようになってから 7 年が経ちました。今まで
携わってきた工事は土木工事が主であり、ここ数年
起工測量と併せて現地踏査を行ったところ、プレ
は、主に国道における歩道工事を手掛けてまいりま
キャストL型擁壁が計画されている箇所の地盤が軟
した。その中で、特に印象に残っている工事につい
弱であることに気づきました。そこで、数箇所のポ
て、調査から竣工までの経過について述べたいと思
イントでスウェーデン式サウンディング試験を実施
います。
したところ、換算N値の平均値が10以下となりま
した。この値と現地の土質(粘性度と砂質土の混合)
その工事は片側 1 車線の国道の歩道未整備区間
に、土砂の切盛りを行いながら、新たに全長980
から判断した結果、許容支持力度は 5 tf/㎡程度と
の歩道を設ける工事でした。この施工区間の中で、
想定されました。
以前、沢地形だった場所に盛土を行って国道を通し
次に、スウェーデン式サウンディング試験時に値
ている箇所では、盛土施工に伴う用地買収が困難で
の最も低かったポイントにて、許容支持力を再確認
写真− 1
−11−
表− 1
する為に、平板載荷試験を実施しました(写真−1)。
交互通行規制が余儀なくされ、一般交通に多大な影
試験の結果、長期的な許容支持力が3 . 2tf/㎡しか
響を与えることが予測された為、一般交通に支障を
ないことが判明しました。計画されているプレキャ
きたさない工法の選択が必要となりました。そこで、
ストL型擁壁の設置には支持力度が 9 tf/㎡以上必
次に表− 1 に示す内容で、置換え工法に変わる地
要となる為、工法の検討が必要となりました。
盤改良工法と上載構造物の再検討を行いました。
再検討した結果、現道へ床堀時に影響を与えるこ
そこで、先に置換え工法について検討しましたが、
ともなく、かつ、他の比較検討案と比べて工事費が
置換え工法に伴う床掘線の影響で、国道の終日片側
図− 1
−12−
写真− 2
割安であることから、地盤改良を行わずに組立歩道
を割当てました。
にて施工を行うことになりました(図− 1 )。
作業班A・・・床堀∼基礎砕石∼埋戻し∼支柱・梁・
床版のセットまでの一連の作業
また、組立歩道の施工に必要な支持力が、現地盤
の支持力である3 . 2tf/㎡以下となるように基礎の底
作業班B・・・別の作業場にて基礎型枠の組立∼作業
版面積を逆算したところ、支柱基礎の底版形状を標
班Aの進捗に併せて現地に設置∼コンクリートの
準の1 . 1
打設∼脱型までの一連の作業
×1 . 1
から1 . 1
×1 . 6
と車道の縦断
これによって、現場作業のライン化が図られ、ス
方向へ延ばした形状に変更することよって、支持力
ムーズに施工を行うことができ、結果として、無事
の問題がクリアできることになりました。
発注者との協議の結果、組立歩道の施工箇所は 3
箇所となり、それぞれの箇所の施工延長の合計は
340
に工期内にて竣工することが出来ました(写真−
2 )。
工事を振返って見ると、工法検討の際に発注者へ
(支柱基礎全111基)となりました。
次に施工段階に入りましたが、検討の為に長期間
対して、スピーディーに適切な提案を行うことが出
を費やしていた為、工期的にかなり厳しい状態とな
来ずに、いたずらに時間を浪費したことが反省材料
っておりました。また、施工時の重機やクレーンの
となりました。これは、私自身の発案力不足とそれ
作業スペースが確保出来ない為、片側交互通行規制
ぞれの工法に関する知識不足に起因しました。
を行わなければなりませんでしたが、規制時間帯の
これからの施工業者には、単に工事の施工能力だ
制約があり、1 日の作業時間が実質 6 時間程度しか
けではなく、臨機の検討力と提案力が求められてく
確保できないことが厳しい工期にさらに追い討ちを
ると思われます。
今後は、構造物の施工時の検討の基本となる事項
かけました。
工期の延長に際しては、様々な事由から難しい状
と様々な工法についての知識習得を心掛けるととも
況でしたので、工程管理に万全を期す必要がありま
に、多くの現場体験を通して技術力の向上に努めた
した。
いと思います。
そこで、効率よく作業を進める為に、各施工箇所
に作業班を 2 班体制で配置し、下記の要領で作業
−13−
※ 刈屋建設株式会社
5
堤防除草工事における工事施工説明
千葉県土木施工管理技士会
城之内 健 一 ※
来る人も多い。地域の子供達と一緒にカラシナの状
1 .は じ め に
況を調査し現地の様子他の生物状況を調べました。
近年は利根川の堤防をオープンスペースとして河
カラシナの繁茂している場所には、ミミズの糞が見
川と親しむ人も多くなってきており、その人々との
つかり、またその付近には、モグラの穴も見つかり
コミュニケーションをとりながら施工をすることは
ました。写真のような、栄養満点のカラシナの根が
施工業者としての責務でもある。当社では昨年度か
腐り、その腐った根を餌にするミミズが住み着き、
らカラシナの調査をしており今年度はそれを元に、
そのミミズを食べにモグラがやってくる事が確認で
パネル制作展示をすることとなった。
きました。堤防は重要な河川構造物であり、その堤
3 月の中旬に「カラシナ対策」と称してカラシナ
防がモグラによって穴をあけられ漏水の原因になる
の花が咲く直前に繁茂している場所を刈り取る作業
と判明し、現場でカラシナの芽を採取していた住民
があり、その時期にはカラシナの新芽を摘み取りに
にも説明をしました。またカラシナの花がキレイな
写真
カラシナ群生地
−14−
のにどうして最近は少なくなってきたかの質問も多
工 事 名 佐原堤防除草(その 1 )工事
くあり、その啓発のために、佐原市主催「環境フォ
工 期 H16年 4 月17日よりH16年11月30日
ーラム」幕張メッセの「エコメッセ」においてポス
発 注 者 関東地方整備局利根川下流河川事務所
ターを製作展示して環境に興味のある方に見て頂き
工事数量 機械除草240万平米 80万平米 3 回 一般市民への浸透を図った。
機械草集運搬40万平米(川裏 1 回)
2 .工 事 概 要
写真
写真
カラシナ
写真
カラシナ根
写真
カラシナ
写真
カラシナ根
カラシナ(野生化)
写真
ミミズの巣
−15−
り現場で作業している人の説明が良とのことで、
人員を配置した結果参加者より好評であった。
昨年度は「カラシナ」対策と称して、3月に「カ
ラシナ」が繁茂している作業(本堤)のみ刈り取
りその繁茂を防ぐ事ができた。
しかし別添の写真のように、黄色と緑にはっきり
分かれ、一回目除草時には「何故咲かないのか」
「咲いているのに何故刈るのか」の意見が寄せら
れ、前年度施工時の調査「カラシナ」「ミミズ」
写真
「モグラ」「軟らかい堤防」の写真をもとに説明を
モグラの巣
した。
3 .カラシナの状況調査・説明の手順
4 .お わ り に
現地踏査
根の状況を把握して食物連鎖があるという事実か
黄色と緑のコントラストはっきりしている場所の
ら、堤防除草工事の重要性を、どのようなストーリ
撮影
ーで説明するかに苦労した。現地においてカラシナ
カラシナの群生地から根を採取測定
を採取していると、ミミズ・モグラの巣がみつかり、
根の大きそうなカラシナを採取測定
真実は現場にありを実感した。また展示会場におい
ミミズの巣を探す
ては、参加者より「カラシナでは無い」の質問に対
展示物作成(パネル) モグラの巣も探す
して、発注者の仕様に「カラシナ」とあり掲示した
が、「アブラナ科の植物が野生化している」との指
一般市民向けに製作(中学生の意見を聞く)
摘により掲示中に補足説明文を追加した。今回のよ
地域の行事で掲示 (佐原市環境フォーラム・幕
うな、自然科学的要素の多い展示を大勢の人に見て
調査報告 張エコメッセ)
もらう事の難しさも実感ができた。また写真の撮影
方法は土木屋的にスケール・デジタル測定器なの
昨年度の調査をもとに、パネル制作時に中学生の
で、数値がはっきり撮影をしたので、参加者からは
意見を聞きながら、適切な文字数と写真を選び制
好評だった。
今回の調査は昨年度施工時から中学生と一緒に調
作し、説明をだれがするかの問題に対して、やは
査を行っており、今年度には中学生の意見を聞き、
パネル製作展示となった。今回のような自然科学的
な要素が深い調査には、年月をかけて発表すること
が大切で、中学生でも理解できる展示をすることが
良い結果が出ることに気づいた。河川法の改正によ
り「治水」「利水」「環境」とはっきり「環境」が明
記されており、我々、土木技術者はもっと自然科学
の勉強をすることが、これからの技術者の責務だと
実感をした。
※ 日之出建設株式会社
写真 現場作業員による説明
−16−
6
国道16号埋設排水ヒューム管破壊による
沈下防止対策工事
千葉県土木施工管理技士会
芳 賀 芳 治 ※
しかしこのような中、現状の工期・作業効率の窮
1 .は じ め に
状、加えて新たな問題点の発生という状況を説明し、
発注者を始めとする関係者の積極的な協力を得るこ
1 .工事名、場所、時期
とができ、課題を克服することができた。
工事名:国道16号下排水管破壊沈下対策工事
場 所:千葉県千葉市
2 .現場における課題・問題点
時 期:平成15年 1 月∼平成15年 3 月
2 .工事の概要
ヒューム管はⅠ種(外圧)管であることが判り、
本来、この工事は高速道路と並行する国道16号
耐久強度検討の結果ヒューム管上部を車道として使
の立体交差・交差点部の右折レーン増設を行うもの
用するためには何らかの補強・保護措置が必要であ
であった。
るとの結論を得た。
車道拡幅のため路床地盤確認中に設計図面には存
また、千葉市、千葉県、国土交通省、日本道路公
在しない埋設管が発見された。
団などとの管を特定するための協議、調査の結果日
調査の結果
本道路公団に属し過去の暫定的な雨水排水管であり
①内径φ1350㎜のヒューム管である
現在は別ルートに切り替えられ利用されていないこ
②排水管と推定される
とも判った。
③所有企業者が不明である
以上より 「国道車道下のヒューム管をどのよう
④高速道路や国道の整備経緯などから設置後20
に補強または保護するか」ということが課題である。
年程度が経過すると思われる
⑤土被りは1 . 2
から0 . 6
ヒューム管の管理者である日本道路公団の了解の
と浅く車道が上載す
下、詳細調査を進めた。
ることは難しい
①全長は250
以上のことが判った。
分は80
当初工事を厳しい工期で完了することや、ほとん
どの施工が夜間作業を余儀なくされる中、そこへ新
たな問題を抱えることになった。
であり今回補強等を必要とする部
である
②ヒューム管勾配は概ね 2 %である
③流水はヒューム管継ぎ手や破損部からの漏水で
ある
所有企業者の特定と上載荷重に対するヒューム管
の耐久強度検討を急務として予想外の課題に対応す
る必要が生じた。
④好天時の流水は 5
は500
/毎分程度、降雨30㎜/時
/毎分程度である
⑤補強等を必要とする部分には 2 個所の落差工
−17−
より詳細な検討を行った。
(人孔)がある
これらの状況からも対処の必要性が認められた。
3 .対応策・工夫改良点
しかし、一つの工事に於ける変更工事コストに限度
があり、工期、補強・保護強度、ヒューム管内の充
工法としては、最も想定強度に近い、流体(フロ
填性・充填率、施工性、適合性など短時間に多くの
ー値180㎜∼300㎜)で充填度が高い、バキューム
要素を探求し、工法選定へと結びつけることが求め
車運搬により特に設備の必要もなくヒューム管内に
られた。
投入可能である、施工性がよい、経済性に優れてい
工法選定の条件としては、
るなどの理由にから流動化処理土充填を採用した。
A.短期間( 7 日∼10日程度)の施工が必要で
ある
B.一定( 5 N/
つぎに実施工段階での手順と効率作業の進め方で
ある。
以上)の強度がある(特に重
①ヒューム管内の止め型枠をどうするか
点指向)
②ヒューム管内の流水処理をどのようにするか
C.充填性、充填率が高い
③流動化処理土の投入をどこから行うか
D.施工性がよい
④流動化処理土の配合設計について
E.より経済性が高い
⑤充填度合いをどのように評価するか
F.現地への適合性に優れている
などの問題点・疑問点の克服が必要であった。
G.将来的、環境的に優位である
発注者、現場職長、流動化処理土納入会社に集ま
などを工法採択の条件として挙げ、早速選定に入
った。
ってもらい情報・意見・ノウハウの集約を図った。
多くの貴重な教えやヒントを戴き、これを基に施工
考えられる工法としては
標準を定めた。
Ⅰ.ヒューム管上部に車道からの上載加重を受け止
①ヒューム管内の止め型枠(隔壁)施工方法
めるRCコンクリート床版を設置する
隔壁に作用する荷重はmax=4 . 0 t/㎡として、合
Ⅱ.発泡ウレタン充填(内部充填方式)
板パネル 2 枚合せ加工とし裏側は土のうを積み、
Ⅲ.エアモルタル充填(内部充填方式)
充填側はヒューム管本体にインサートアンカーを打
Ⅳ.土砂充填(内部充填方式)
ち込み、セパレーターによる支保工とする。
Ⅴ.流動化処理土充填(再利用土を使用した内部充
填方式)
材料搬入は人孔を利用する。
②ヒューム管内の流水対策
以上を候補として、表− 1 に示すマトリックス図
による絞込みを行った。
想定最大流量を1 , 500
/毎分としφ300㎜塩化ビ
ニール管を設備し、施工時の浮き上がり、蛇行を防
候補として、特に再生資源利用とコストパフォー
止するため 2
ピッチにインサートアンカー止め
マンスの観点から流動化処理土(関東ローム土と水
とする。
を混合した泥土にセメント系固化材を添加)を加え
③流動化処理土の投入場所、充填確認
表− 1
工法選定
−18−
隔壁・型枠
投入口φ500
ヒューム管φ1350
型枠支保アンカー
土のう
排水用塩ビ管φ300
80 . 0
表− 1
流動化処理土の投入口としてヒューム管にφ500
㎜の開口を10
ピッチに新設し、充填状況を把握
する点検孔を兼用する。
2.5
工法選定
処理土の運搬時間30分に対するフロー値の変化や
分離、沈降などについて調査したが異常は認められ
なかった。
④流動化処理土の配合設計について
隔壁に対する荷重は予想内で型枠の変化もなく、
流動化処理土の配合、設計基準強度、品質管理基
充填率も打込み速度を調整・確認しながら空気を排
準等の施工標準は、現在国内で最も流動化処理土の
除し空隙を埋めることができた。施工期間は 6 日
生産量の多い東京都の基準を採用し、以下の様に決
間であった。
定した。
28日一軸圧縮強度は6 . 2N/
a.品質管理基準
これは流動化や型枠への荷重負担軽減を考慮し泥水
・設計基準強度 28日 5 . 0N/
5 . 5N/
と少し高めに出た。
(東京都基準
比重を高めに設定したためと思われる。
以下)
現在、地下構造物の多くがセメント系を主とした
・フロー値 200 ㎜(東京都基準 180 ㎜∼
300㎜)
コンクリート製品であり、当工事もセメント固化材
を使用した。今回排水管内充填であることを考慮す
・ブリージング率 1 %未満(東京都基準 同
じ)
ると、出来ることなら環境対応型とすべきであった。
固化材の六価クロム溶出試験値は基準内であった
b.配合設計(aを踏まえ製造プラントに於ける
実績データーより)
・泥水比重 1 . 25
が、今後はセメント系材料に頼らない安価で安全な
材料の開発が必要である。
固化材添加量 65 ㎏/
(東京都基準 1 . 20
70㎏/
今回の工事に際し、多くの方々のお力をお借りす
)
ることとなった。不明管の特定に当っての発注者、
⑤充填度合いの施工管理
県、市、企業者の皆さんを始め、計画段階での納入
下流側投入口から1
/10分程度で打込み隔壁の
会社、施工会社、施工段階では運搬、交通誘導各社
変化や効果促進度を見ながら随時上流へ打ち上が
など直接会えないプラントマンなど心からの感謝で
る。配合設計の中で(泥水比重・フロー値の検討、
ある。技術力低下が問われている昨今これらの力、
調整)ヒューム管内での流動性を考慮したため、勾
技術のコラボレーションが一層の施工能力、品質向
配と相まってほぼ100%充填できる。
上と安全確保、原価低減に寄与したことが実績と自
施工法を図− 1 に示す。
信を生んだ。更に、結集する成果の認識を新たにで
きたことは、現場一同最大の成果である。
4 .お わ り に
※ 株式会社伊藤土建
実施工に当たっては、バキューム車による流動化
−19−
7
環状第 8 号線整備工事に伴う
水中躯体移動設置工法について
東京土木施工管理技士会
中 村 一 郎 ※
の遮断が発生した。その結果、土留め壁を挟んで地
1 .は じ め に
下水位が西側で上昇し東側で下降した結果、3
環 8 の整備状況は、練馬区及び板橋区の 2 地区、
度の水位差が生じ、近隣家屋で不同沈下の現象など
の居住環境の悪化が問題となった。
4 . 2㎞であり、現在工事中である。
そこで、トンネル躯体底版直下の地盤に手を加え
当現場は、笹目通りとの分岐部の練馬区南田中地
区の約500
ず、できるだけ自然な状態のままにして、良好な通
を施工している。
平成 9 年に供用開始した、井荻トンネルの築造
に伴う土留め壁(L=30
程
)に起因する地下水流
水層を確保できる水中移動設置工法が一部区間に採
用された。
この水中躯体移動設置工法は、図− 2 に示すよう
に沈埋工法の原理を応用した新しい工法で、一部分
を構築したトンネル躯体を水に浮かべて所定の位置
まで移動し、その後その躯体を計画通りの位置に着
底・固定して、残りの躯体を引続き構築していくも
のである
2 .現場における課題・問題点と対応策
水中躯体移動設置工法は、日本初の工法であるた
め、作業における課題・問題点を施工計画段階より
検討して実際の作業に望んだ。
①移動する躯体は、気中の構築立坑にて製作するが、
均しコンクリート上で構築するため、制作中に躯
体と均しコンクリートが躯体重量によって密着
し、浮上時に浮力が働かない可能性がある。
この対応策として、均しコンクリートに溝を 2
×2
メッシュ状に設け、躯体底面に浮力が
均等に作用するようにした。
図− 1
現場位置図
その結果、躯体は浮上水位で安定して浮上さす
−20−
図− 2
水中躯体移動設置工法 手順概念図
時には構内に水道水を注水して浮上さすため構外
ことができた。
②設置立坑部の地盤は、止水のための地盤改良を行
に溢水すると安定した移動が出来なくなる。
っていないため、構内水位と構外水位がつながっ
そこで、掘削終了時に床付全面に水中不分離均
ており、躯体浮上・移動時の水位上昇時構内水が
しコンクリートを打設して逸水防止を図った。鋼
構外に溢水する可能性がある。
矢板が施工後撤去できるように潜水士で鋼矢板と
掘削時は、構内と構外がつながっている方が土
留めの安定のためには必要であるが、浮上・移動
図− 3
水中不分離均しコンクリートの間に縁切りシート
を施工した。
18・19BL施工断面図
−21−
表− 1
移動躯体諸元
表− 2
施工実績
写真−18・19BL移動前状況(躯体沈設位置より撮影)
にて躯体を安定して移動することが出来た。
また、移動の時期の地下水位を通年観測してい
るデータより予測して移動時の水位を決定した。
④躯体沈設時、水中作業のため精度良く設計位置に
躯体を設置することが問題となった。
水中不分離均しコンクリートを床付全面に施工
そこで、位置決め用治具としてセンターキー、
することによって、注水時・移動時の逸水を防止
サイドキーのガイド材を使用して精度良く設置で
でき、安全に浮上・移動・沈設の施工ができた。
きた。
③躯体を移動するとき、移動する躯体重量が約
1800tとなるので躯体移動コントロールに細心
3 .お わ り に
の注意が必要となる。
そこで、躯体を牽引するワイヤーを前面 2 箇
日本初の水中移動設置工法を施工したが、施工前
所、後方の 2 箇所からバックテンション用ワイ
に社内外の知識を集約して発注者、コンサルタント
ヤーにてコントロールを行った。
との協議を重ね、精度良く安全に施工出来た。
また、横ぶれ対策として、土留め壁にガイドロ
本工法は、地下ダムかを軽減するために有効な工
ーラーを取付け、ある程度横ぶれが発生した場合
法であるので今後本工法が採用される事を期待す
のガイド材とした。
る。
ワイヤーによるコントロールとガイドローラー
−22−
※ 大成建設株式会社
8
場所打杭施工から発生する汚泥のリサイクル
東京土木施工管理技士会
高 木 栄 ※
となる礫層(N値50以上)が存在する。そのため杭
1. は じ め に
長も21 . 5
∼26
となっている。
本報告は、環境負荷の低減への取り組みとして、
日暮里・舎人線は、荒川区の日暮里駅と足立区の
舎人地区を結ぶ延長約10㎞の新交通システムであ
建設施工における資源の有効利用と建設副産物対策
る。
の推進に向け、場所打ち杭施工から発生する汚泥の
本工事は、尾久橋通りの熊野前陸橋付近、上り線
側道の延長約139 . 9
リサイクルを計画し、実施したものである。
区間において、その日暮里・
2 .汚泥のリサイクルにむけて
舎人線の下部工事(橋脚 5 基)を昼間にて施工す
るものである。基礎部は杭基礎となっており、杭径
2−1
φ1200の場所打ち杭をリバースサーキュレーショ
ン工法にて75本施工する。
土質は、GL-28
現場における課題
従来、場所打ち杭(リバースサーキュレーション
工法)で発生する汚泥はタンク車またはバキューム
程度まで砂質シルト及び粘土混
車で産業廃棄物として搬出・処理を行っている。そ
じりシルト(N値 2 程度)であり、その下に支持層
のため、処理費にコストがかかるうえに、運搬にタ
断 面 図
平 面 図
図− 1
施工概要図
−23−
泥はポンプにて送水・投入する事とした。
スラリー槽内で汚泥と泥水を混合撹拌し、比重
1.5前後の高濃度の流動状態とした。処理された泥
水の搬出車輌は、汎用性のあるアジテーター車を採
用した。そして、泥水を積込むためにスラリー槽上
に自動投入配管を施し、排泥・積込みの操作は、ア
ジテーター車の運転手が手元スイッチのみで作業を
行えるようにした。
これらを実施する事で、汚泥の約 5 割について、
図−2 土 質 条 件
比重1 . 5前後の流動状態で搬出し流動化処理土の原
ンク車、バキューム車等の特殊車輌を使用するため
料としてリサイクルできた。また、流動化処理土の
運搬コストもかかることが予想されていた。さらに、
原料とする事で処理費を削減し、搬出車輌をアジテ
タンク車には直接油圧クラムで汚泥を積込むため、
ーター車とする事で運搬費も削減することに成功し
積込みに時間がかかる事からも省力化が望まれてい
た。さらに、泥水の積込みを自動化することで、積
た。
込み時間を大幅に短縮することが出来た。
2−2
場所打ち杭の高濃度泥水を流動化処理土としてリ
対 応 策
対応策として、発生する汚泥を流動化させ流動化
サイクルした第 1 号の工事である。
処理土の原料としてリサイクルすることを考案し
3 .システムの改良
た。
まず、従来の設備にスラリー槽(撹拌機付き)を
追加し、スラッシュタンクで沈殿させた汚泥をスラ
計画通り始めたものの、実施段階において新たな
問題点が発生した。
リー槽内に油圧クラムで投入する。比重調整用の汚
図− 3
写真− 1
場所打ち杭の削孔地盤は大部分がシルト・粘土分
汚泥処理設備 システム概要図
場所打ち杭 泥水処理プラント全景
写真− 2
−24−
スラリー槽汚泥投入状況
積込み用ポンプ
手元スイッチ
泥水積込み用配管
写真− 3
泥水積込み状況
写真− 4
第 1 スラッシュタンク分岐沈殿処理計画
で構成されているものの、支持層は砂礫となってい
たものである。
る。そのため、掘削泥水中に礫が混じり、スラリー
3−2
スラリー槽(撹拌機)の改良
(1) 騒音の発生
槽での騒音発生および積込みポンプの閉塞につなが
った。また、汚泥の中に礫が大量に混じると圧送性
スラリー槽は、泥土の沈殿を防ぐため昼夜連続し
の点で流動化処理土として不適合となる欠点も発生
て撹拌機を稼動させる必要があった。しかし、礫が
した。
混入すると夜間に騒音が発生する原因となる。そこ
3−1
で撹拌電動機にインバータを設置し回転数を1/10
スラッシュタンクの改良
そこで流動化処理土用材料として撹拌混合するス
程度として稼動させる事により、万一礫が混入して
ラリー槽内へ汚泥を投入するときに、あらかじめ礫
も夜間における騒音発生を抑制する処置を取った。
(2) 積込みポンプの閉塞
質土とシルト粘土を分別して、礫分の混入を防ぐ工
夫を施した。汚泥を沈降させるスラッシュタンク①
礫の混入により、積込みポンプが閉塞することが
(図− 3 参照)への排泥管にバルブを設置して放出
たびたび生じていた。これは、積込みポンプのサク
口を分岐させ、粘性土と礫質土に分けて排泥する方
ション位置を高くしてスラリー槽下部を礫溜めとす
法を採用した。
ることで、礫の吸い込みを防止した。
・
この改良で、スラッシュタンク内にて礫質土とシ
の設備改良は比較的安価なものであり、コ
ルト粘土を分別沈殿させ、スラリー槽への投入は、
ストの上昇や設置面積の増加を抑えることができ
そのうちのシルト粘土のみとする事が出来た。これ
た。
で、スラリー槽への礫質土の混入を防ぐ事が出来る
4 .お わ り に
ようになった。比較的簡易な設備の改良で対応でき
今回、技術的、経済的に可能な範囲で建設副産物
の有効利用を図ることができた。具体的には、都市
部の狭い施工場所で従来の汚泥処理設備(沈殿・分
離)を工夫、改良して設備仕様の大幅な変更もせず、
汚泥を流動化処理土としてリサイクルしたものであ
る。このリサイクルによりコスト削減も確保できた。
今後は、対象土質の性状に対して設備費、リサイ
吸込位置改良
0 . 5m嵩上げ
クル率の変動データを蓄積し、さらに他の工事への
水平展開を図りたい。
写真− 5
積込みポンプ改良
※ 戸田建設株式会社
−25−
9
地下鉄工事における既設地下鉄の
アンダーピニングの設計と施工管理
東京土木施工管理技士会
西 谷 和 宏 ※
ニングを行なう必要があった。
1 .は じ め に
2 .工 事 概 要
本工事は春日通り地下に新設する地下鉄工事で、
駅構築延長が 390
と長い為、昭和通り・ JR 山手
工事数量
線・ JR 新幹線・中央通りを横断することになる。
H形鋼矢板圧入 7 , 064
また、この地域はアメ横・湯島があり都心でも超繁
路面覆工 5 , 167
華街で、昼は買い物客が多く、夜は泥酔人が多いの
掘 削 92 , 731
で、第三者災害に十分配慮した施工が要求された。
山留支保工 2 , 923 t
その中で中央通り地下にある、銀座線上野広小路駅
鉄筋コンクリート 22 , 851
(既設)の直下を交差する為(丸円部)、アンダーピ
図− 1
上野広小路駅部 平面図・断面図
−26−
図− 2
断 面 図
慮しなければいけないことは、営業線であるため走
行に支障になる変位(±5 ㎜/10
、営団軌道設備
基準)は与えられないことである。
しかし、銀座線は70年以上も前の構造物であり、
かなり老朽化している。さらに框構造という特殊構
造(図− 3 )のため、配筋が極めて少なく縦断方向
図− 3
框 構 造
地下鉄12号線上野広小路駅は、延長460
、地下3 層深さ18 . 5
19
の連結性が非常に弱い。
さらに、アンダーピニングの構築幅が26
幅12∼
の駅である。銀座線の下、
東北新幹線の上を通過する構造である為、開削工法
く、しかも線路部とコンコース部には1 . 5
の段差
がある。
になった。
4 .解 決 策
さらに、銀座線と地下鉄12号線は図− 2 のよう
に交差するためアンダーピニングをする必要が生じ
た。
と広
当現場は現設計が無いため、現地を照査し設計施
工で行なった。
アンダーピニングの工法としては、杭直受工法、
3 .技術的な問題点
下受桁工法、パイプルーフ工法等があるが、ここで
銀座線をアンダーピニングするにあたって一番考
図− 4
は、銀座線が老朽化していることから、構造物に影
平 面 図
−27−
表− 1
図− 5
断 面 図
響の少ないこと、受替完了後も調整可能なこと及び
工期の短縮が可能なことにより下受桁工法を採用し
た。
全性から構築には極力変位を与えないように、プ
支持杭については、銀座線の両側に受杭を打設し
た。また、銀座線下床と12号線上床の離隔が2.1
レロード荷重はプレロード対象荷重の100%を採
と狭いため、受桁の桁高を抑えるため、また、コン
用した。
コース部と線路部の段差1 . 5
しかし、下受桁 5 本目のプレロード時、銀座
を解消するため貫通
杭を採用した(図− 5 )。
線が隆起方向(0 . 02㎜)を示した。
以前の施工過程において、掘削によるリバウン
各杭とも、銀座線構造物の荷重で沈下しないよう、
杭底のスライム処理が確実であること、また支持層
ド及び導坑掘削のための薬液注入を行なった際、
が東京礫層であり、地下水位の高い砂礫でも削孔が
4 ㎜/10
可能であることにより、リバース杭(TBH 工法)
方向に推移したものと判断し、その隆起を抑える
を採用した。
目的とし、各載荷段階での構造物の変位の計測結
の隆起があった。その影響により隆起
果を詳細に検討し、帝都高速度交通営団とも協議
さらに、銀座線構造物が弱いことから、以下の対
策を講じた。
をし、プレロード目標荷重をプレロード荷重の
①銀座線本体を鋼材で補強した。
80%に変更した。
②受桁のピッチを 1
その結果、アンダーピニングの施工前後で± 2
と密なものにした。
㎜の沈下が認められたが、全施工期間中、管理範
③覆工荷重が直接構造物に作用しないよう、受桁に
囲以内で完了することが出来た。
受け渡すようにした。
④特殊ジャッキを採用した。
5 .お わ り に
特殊ジャッキとは、仮受桁の撓みにより変化する
ジャッキ設置部の平行度を考慮し、頭部に自在球座
営業している地下鉄構造物をアンダーピーニング
を内蔵し、構造物受替え完了後も調整可能な油圧機
することは、細心の注意が必要であります。各載荷
能とナット構造を持ち合わせたものである。
段階での変位を計測し、プレロード荷重を検討する
⑤プレロード荷重は銀座線構造物の死荷重と交通荷
ことで、老朽化した銀座線を安定した状態でアンダ
重の合計とした。
ーピニングすることが出来た。また、下受桁工法、
⑥プレロード方法は、プレロード荷重を20%毎に
特殊ジャッキの採用で、受替え完了後も調整可能で
別けて載荷し、各載荷段階で、下受桁の相対変位
あったことにより、安定性が高く確実な施工をする
の進行が15分間で0 . 03㎜(0 . 03㎜は地盤工学会
ことが出来た。
「杭の鉛直載荷試験基準・同解説」 の杭の沈下安
今後、各載荷段階での変位データを整理分析する
定基準による)であり、銀座線に異常がないか確
ことで、アンダーピニングの標準化をさせていきたい。
認後、次の載荷を開始する。 設計段階では、駅
部が非常に老朽化していると考えられ、構築の安
−28−
※ 戸田建設株式会社
10
地盤改良工事における
品質管理のための管理項目一覧表の作成
東京土木施工管理技士会
北 原 淳 史 ※
交通網の整備と、震災時の水上交通網の基点となる
1 .は じ め に
ことが期待されている。
地盤改良施工予定地は、新設水路構造物(閘室)
本報告は、東京都江戸川区小松川地区において展
開されている小松川閘門新設工事のうち、軟弱地盤
との離隔が少ないこと(離隔幅: 1 . 75
の側方流動対策として実施した深層混合処理の品質
工法選定において地盤改良施工中の周辺への影響低
向上に関するものである(図− 1 参照)。
減を検討した。その結果CDMを改良した変位低減
小松川閘門は、荒川と旧中川を結ぶ閘門であり、
江東区・江戸川区・墨田区の江東デルタ地帯の水上
図− 1
)から、
型の深層混合処理工法である「CDM−LODIC」を
採用した。
小松川閘門地盤改良工事概略図
−29−
図− 2
CDM工法 図− 3
このCDM−LODIC工法は、施工管理の大部分が
自動化されコンピューター制御によって不具合を未
CDM−LODIC
工 期:平成16年 2 月24日∼平成16年 8 月31日
施工数量:深層混合処理(排土式)L=27 . 9
然に防止する措置が講じられているが、機械にすべ
組
て頼るのは土木技術者として適切でないと考えた。
補強土壁工 1式
特に施工管理上人的監視が必要となるポイントに対
142
3 .CDMとCDM−LODICの相違点
し不具合の発生防止を目的として改善を図った。以
下にその内容を述べる。
CDM−LODICは周辺構造物への影響を低減する
ため、従来のCDMとは以下の項目で施工方法の相
2 .工 事 概 要
表− 1
工 事 名:小松川閘門地盤改良工事
工事場所:東京都江戸川区小松川一丁目
発 注 者:国土交通省関東地方整備局 荒川下流河
川事務所
図− 4
CDM−LODIC施工管理システム
−30−
CDM−LODIC管理項目
5.4
違がある。
∼−10 . 2
∼−12 . 1
CDMの先端ビットは吐出口が 1 箇所で、ロッド
付近、細砂(YLS層):GL−10 . 2
付近、及びシルト(YLC1層):GL−
貫入時にセメントミルクを吐出しながら杭体を造成
12 . 1
する貫入吐出攪拌方法である。
り、またその地層勾配が変化に富んでおり、配合試
これに対し、CDM−LODICの先端ビットには上
∼−28 . 4
付近、の 4 層から構成されてお
験の結果各層毎のセメントミルク添加量も異なり、
段・下段の 2 箇所に吐出口を設置し吐出時期を変
打設本数142組の中で打設パターンが11種類となっ
えた。ロッド貫入時にはセメントミルクを吐出せず、
た。
先端処理段階で下部吐出口からセメントミルクを注
この打設パターンを入力するのは作業員の手作業
入し、先端処理完了段階で吐出口を切替え、上部吐
であり、入力ミスを起こす恐れがあった(図− 5 、
出口からセメントミルクを注入しロッドを引抜きな
6 参照)。
がら杭体を造成する引抜き吐出攪拌方法である。ま
② 吐出口切り替え
セメントミルクに関しては、注入量は流量計で管
たロッドには、排土用にスクリューを設置し排土効
率を高める措置を講じている。
(図− 2 、3 参照)
理されているだけであり、吐出口の上部、下部いず
れのノズルから吐出されているかは、手動による切
4 .品質確保上の問題点
り替えに頼っている。
吐出口切り替えミスが発生した場合、計器上は所
CDM − LODIC の自動運転における品質管理項
目、規格値、確認方法及び頻度を表− 1 に示す。
定計画注入量を満足した結果となっているが、実施
表− 1 の管理項目データは、各検出器から施工管
工では所定の注入量を確保できず強度不足となる。
理装置に随時送信され、不具合が生じた場合は警告
よって今回の施工に関しては①打設パターン入力
音を発するシステムとなっている(図− 4 参照)。
時、②セメントミルク吐出口切替え時の 2 工程段
この警告を受けて誰がいつ、どのように修正作業
を実施するか、その手順を明確にすることが課題で
階における人為的ミスの発生防止も品質確保のため
の重要課題である。
あった。
5 .品質確保の対策
また以下に示す 2 工程に関しては、施工管理装
杭体の品質を保持するため、表− 2 に示す品質管
置による制御が困難なため人為的ミスが発生する恐
れがあった。
理項目一覧表を作成し、施工管理に使用した。今回
① 打設パターン
設定した品質管理項目一覧表は、CDM−LODIC施
深層混合処理工施工箇所の土質性状は、埋土:
GL0 . 0
∼−5 . 4
付近、シルト(YLC1層):GL-
工の各工程における管理項目、管理値、確認者、管
理方法及び対応策を明確にした。
特に、施工管理装置の計器による制御不可能な、
図− 5
地層ごとの注入量
図− 6
−31−
打設平面図
表− 2
品質管理項目一覧表
「①打設パターンの設定」、「②吐出口の切り替え」
7 .今後の取り組み
の 2 工程においては、2 者以上の相互確認(クロス
チェック)による作業手順及び施工体制を確立した。
今回の地盤改良工事で当作業所に即した管理項目
一覧表を作成し、人為的ミスの防止と品質確保を達
6 .品質管理項目一覧表作成による効果
成することができた。
今回の施工に関しては、品質管理項目一覧表を作
施工管理装置に関しては、吐出口の切替えが確認
成し各作業員の役割分担を明確にしたこと並びにそ
できるような流量計の設置や、GPSを利用した打設
れらを徹底したことにより、無事施工を完了するこ
位置の確認等について管理できるよう改良していき
とが出来た。これには品質管理項目を遵守した他、
たい。
コンピューターにより制御されている計器類の正常
今回はCDM−LODIC工事品質管理のために管理
性の確認(施工管理装置と施工機械のクロスチェッ
項目一覧表を作成したが、今後は噴射撹拌等他の工
ク)を随時実施したことも役立っている。
事で現場に即した管理項目一覧表を作成するほか、
また、品質管理項目一覧表、注入量一覧表など現
シールド工事、杭打ち工事等の反復工事への水平展
場内に掲示し、作業員が頭の中で理解している事に
開を図り、各工種における品質確保の向上、安全管
加えてビジュアルに確認出来ることで、より一層品
理の充実を達成したいと考える。
※ 戸田建設株式会社
質向上への取り組みが達成できた。
−32−
11
2 層同時舗設排水性舗装における
施工管理についての取り組み
東京土木施工管理技士会
松 田 真 司 ※
水量、平坦性、騒音値の 4 項目である。
1 .は じ め に
2 )提案工法
提案舗装構成を図− 1 に示す。
近年、社会・経済情勢の変化と国民生活の高度化
舗装構成における最大の特徴は、主に性能指標の
にともない、道路をとりまく環境も大きく変化し、
騒音低減に着眼し、表層の上層に位置するアスファ
舗装へ要求される性能も多様化してきている。
これらの性能の一つにタイヤ路面騒音(以下、騒
ルト混合物(以下、混合物と記す)について、高空隙
音と記す)の低減が挙げられ、騒音低減を主目的と
率化や粗骨材の小粒径化等の改善を行っていること
する性能規定工事が全国的に施工されており、今後
である。これらの混合物の改善は混合物の耐久性低
はこれまで以上に施工者の技術を活かした低騒音技
下やコスト面に影響することから、薄層化している。
従来のアスファルトフィニッシャ(以下、AFと
術の高度化が期待される。
本文は、国土交通省から騒音の低減を基本性能と
記す)のように各層毎に施工した場合には、表層に
する技術提案総合評価方式として発注された「末木
おける上下層の一体化や均一な舗装体の形成が困難
舗装修繕工事」において取り組んだ 2 層同時舗設
であり、この施工性を改善することを目的に 2 層
排水性舗装における施工管理の取り組みについて報
同時舗設型AFおよびAFへの材料供給機械である
告するものである。
アスファルトローダを適用したものである。
2 .工事概要および提案工法
1 )工事概要
工事概要は表− 1 に示す。
なお、規定される性能指標は塑性変形輪数、浸透
表− 1
工事概要
−33−
図− 1
提案舗装構成
表− 2
使用施工機械
上記技術の活用や各工程における作業人数と作業
時間の関係を詳細に把握することにより、施工タイ
ムテーブルの短縮を図った。
4 )表層混合物の供給体制 現場へ 2 種類の混合物を連続的に安定供給する
ために、現場に近い 2 箇所のアスファルトプラン
図− 2
2 層同時舗設の施工模式図
トよりの出荷体制をとった。また、2 種類の混合物
使用した施工機械を表− 2 に、2 層同時舗設の施
工模式図を図− 2 に示す。
を同時に舗設することから、ダンプトラックの識別
は混合物名を記載した色旗を車両に装着した。
なお、混合物の運搬は、運搬時の温度低下を防ぐ
3 .現場における施工管理
ために 2 重シートにより覆い、現場での待ち時間を
前項に示す使用材料や機械能力を最大限に活か
少なくすることで、混合物の温度の変動を抑制した。
し、所定の性能指標を満たすことが到達目標であり、
5 )表層の敷きならし
そのためには現場として表層における平坦性の向上
① 敷きならしの速度は、混合物の供給能力(プラ
や均一な舗装体を形成が特に重要となる。そこで性
ント能力)と転圧機械の転圧速度にあわせて、一定
能指標を満たすため以下に示す内容について特に留
速度での連続施工となるように設定した。また事前
意した。
に協議した出荷予定時間割を活用し、施工時にプラ
1 )基層の平坦性
ントとの連携を密にとることで、AFを止めない施
基層の施工では日々平坦性を測定し、この結果と
工とした。
施工機械の速度や混合物の温度管理等の施工内容と
② 敷きならしはAFのスクリードに抱える混合物
照らし合わせ、翌日の施工に活用するとともに、作
の量によってスクリードの前進に抵抗する反力が変
業前のミーティング時に平坦性の結果を伝えること
化し、微妙に敷きならし時の密度やレベリングアー
により、施工従事者の品質管理に対する意識高揚を
ムの動きに影響し、仕上がり面の小波につながるた
図った。
め、スクリードに抱える混合物の量を一定に保った。
2 )表層の施工区割
③ 均一で平坦な仕上がり面とするため、極力AF
表層については、施工機械の能力を加味した上で
で行うこととし、人力による敷きならしは極力避け、
日当たりの施工面積を大きくし、施工継目をできる
また供用車線側端部のレーキング作業を行う場合に
限り設けない施工区割とした。
は、敷きならし面上での作業をともなうことから、
施工区間の沿道には店舗が多く、利用者の通行が
仕上がり後の足跡等の凹凸が残らないように「舗装
あることから、発注者および地元協議の上、夜間施
用草履」を履いて作業を行った。
工に変更した。また、第 2 走行車線を先行して施
6 )表層の転圧
工し、店舗の営業終了後に第1走行車線を施工する
① 転圧作業は一定速度で連続的に行い、転圧作業
ことで店舗の営業を阻害せず、利用者の出入りに左
範囲では停止させず、給水等で一時的に停止する場
右されることのない連続的な施工を行った。
合は、仕上げ転圧の終了した温度の下がった位置で
3 )表層の施工タイムテーブル
行った。
夏季の施工であり、交通開放後の初期わだちの防
② ローラによる転圧の順序は、混合物の側方移動
止と施工性の向上を図るため、速乾性の高いタック
を少なくするため、横断勾配の低い側から高い側に
コート材の使用や転圧機械へ路面冷却用散水装置を
行い、特に線圧の大きいマカダムローラを使用した
設置した。
初期転圧では混合物の温度が高い状態でのローラの
−34−
表層の得られた性能の均一性を標準偏差(σn-1)
切り換え、幅寄せ等の操作を行わないように指示し
た。なお、オペレータは熟練した技能を有するもの
で評価した場合には、以下のとおりとなる。
を専任した。
・平坦性 各車線における平坦性の標準偏差は0 . 03
③ 長い転圧距離(ストローク)は、平坦性を向上
㎜であり、各車線の測定値は、概ね標準偏差の範囲
させるために有効であることから、所定の転圧温度
内にある。
を満たす範囲で極力長い転圧距離を確保した。
・締固め度
7 )温度管理
101 . 9%の範囲であり、標準偏差1 . 5%である。測
従来の熱電対式接触型温度計では、排水性混合物
切取りコアの締固め度は、98 . 5%∼
定値は、全て標準偏差の範囲内の結果である。
の舗設時に迅速な温度測定が困難であることから、
・きめ深さ
事前に検定を行った赤外線放射温度計(非接触型温
路面のマクロ評価と仮定すると路面のきめ深さはミ
度計)を用いて迅速な温度測定を行うことで、適性
クロ評価の一指標に位置づけられる。英国製きめ深
かつ安定した温度条件での敷きならしおよび転圧を
さ測定機(TM- 2 )により測定した結果、標準偏差
行った。
は概ね 2 倍の標準偏差(2σn-1)の範囲内であり、
8 )施工継目部の施工
過去の測定実績と比較した場合には、ばらつきが少
日々の施工起点となる継目部の施工では、3
定
平坦性を乗り心地の一つの指標として
ない傾向が得られている。
規を用いて平坦性を確認し、不陸や段差が生じない
以上の得られた標準偏差( 3 項目)は、過去の
ように行うとともに、前日に施工した表層面を汚さ
施工における測定値の標準偏差と比較し、ばらつき
ないようにシート等による養生を行った。
が少ない傾向にあり、また施工後約 2 年半経過し
なお、人力による敷きならしを避けるため、原則
として日の施工終点側が施工後の路面とならないよ
た現在も良好な供用性を維持していることから、均
一な舗装体が確保されたと推定される。
表− 3 に示す性能および供用状況を勘案すると、
うに配慮した。
現場における重点方針であった平坦性の向上と均一
4 .施工管理の成果
な舗装体の形成に対して本工事で行った施工管理の
完成時の性能指標の値は表− 3 に示すとおり、全
取り組みが大きく寄与し、成果に至ったと考えられ
て満足する結果であり、特に平坦性については性能
る。これらの性能の向上には様々な因子が複合的に
指標を大きく上回る良好な結果が得られた。
影響することから、施工計画から本施工に至る全て
基層における平坦性は各車線でσ1 . 05∼1 . 26㎜
の段階における品質への配慮は不可欠と考える。
であり、基層の平坦性に対し、表層の平坦性は
5 .お わ り に
50%∼58%低減しており、基層の平坦性の大小に
より表層の平坦性も変動する傾向が得られた。この
本工事で得られた低騒音を基本とする各性能と施
関係より表層の性能には、基層の平坦性が影響して
工管理の取り組みは、これからの施工に多いに活用
いると考えられる。
できるものである。今後の施工についても、本文に
示す継続した検証を行うことで技術の向上を図って
表− 3
完成時の表層における性能指標
いく必要があり、また、舗装に要求される性能は高
度化し、これらにともない様々な新技術が導入され
ていくと想定されるが、従来の技術と新技術を融合
した施工管理を行うことで、様々な課題に対応した
いと考える。
※ 株式会社 NIPPOコーポレーション
−35−
12
長距離推進工事における
掘進機損傷原因究明について
山梨県土木施工管理技士会
宮 川 弘 ※
透水係数:1 . 0∼2 . 0×10-3㎝/sec
1 .は じ め に
地下水位:GL-2 . 1∼3 . 4
土被り:7 . 97
山梨県発注の『釜無川11号幹線推進 1 工区建設
∼10 . 22
工事』を施工中に突然起った、転石による掘進機の
破損という前例のないトラブルへの対応と、発注者
3 .工法検討・発進
及び工事関係者と共に行った。原因検証究明につい
ての膨大な資料の中より、掻い摘み紹介します。
設計条件を検討し推進工法は、玉石混じり砂礫層
で長距離推進(L=542 . 13
2 .工 事 概 要
)の実績のある、緩
み土圧抑制方式泥土圧推進工法(CMT:複合掘進
の横
機)を採用。推進管は、含有水及び礫が多い長距離
断を含む極めて交通量の多い県道 6 号線の一部を
カーブ推進ではまれに礫がくさび状になり管を破損
当工事は,甲府盆地北西に位置し、川幅20
施工するものです。設計図書での本工事概要は、下
(陥没)することがあるため、設計50N/
(標準
記のとおりです。
管)を70N・90N/
(ガラス繊維入管)に変更、
管 渠
又、伝達計算結果を基に中押管についても、設計 2
内 径:1000㎜
本に対し 1 本増やし 3 本使用し、万全の策で無事
中押し管: 2 本
故・無災害での到達に願いを込め、4 月10日,10時
推進延長:L=471 . 08
R=110
(R=1000
1 箇所,
10分発進しました。
1 箇所)
施工方法
4 .トラブル発生・掘進機破損
推進工法:土圧式推進工法
土質条件
発進し 3 ヶ月、現場にもゆとりがあり『到達日
土 質:玉石混じり砂礫層
がいつになるか当てよう』という企画まで飛び出し、
最大礫径:1 , 200㎜(長辺長)
順調に進んでいた 7 月12日(土)突然関係者の誰
玉石の混入率: 74 ㎜以上で(300 ㎜以上含む)
一人として、経験したことのないトラブルが起きま
60%,300㎜以上で23%
した。それは、推進管№132を掘進中推進抵抗が急
一軸圧縮強度:220∼330N/
に大きくなり、掘進機へグリスの給油に入った所、
N値:50以上
モーター部から異音がしたので推進を中断し、点検
−36−
破損箇所、破損状態図
中に掘進機内部(右推力点ジャッキ部)の破損を発
見したのです。
2 )要因の考察
5 .推進再開の方法討論
・礫地盤におけるヒューム管の破損の原因として
は、(図− 1 )転石と管との隙間に石がくさび状
破損の状態を精査し、破損原因及び推進再開方法
の検討内容を以下に記します。
に挟まり、管の推進力がくさび状に挟まった石に
1 )掘進機破損状況
作用し、地盤強度が大きい時に管にくい込み破損
・図− 2 で示した様に、推力点ジャッキ右上部のス
する事がある。
キンプレートが周方向に30㎝、推進方向に50㎝
・(図− 2 )また、楕円状の転石が推進方向の力に
より回る時、回転半径の違いから、地山の反力が
程度陥没している。
・(図− 1 )推力点ジャッキを支えているボックス
大きい時に管にくい込み破損することがある。
しかし、掘進機表面は鋼板で製作しており摩擦係
を、掘進機中心部下方へ70㎜程度押し下げてい
数が小さく、転石がくさび状にはさまる事や回転す
る。
・推力点ボックス上部溶接部分を破断(写真②)し
ることは無く、転石による掘進機の破損は前例が無
い。しかしながら、今回の破損状態を見ると、石が
ている。
・掘進機最後尾補強フランジ(写真①)を破断して
掘進機本体にくい込んでいる事から上記のいずれか
の状況が発生したと考えられる。
いる。
3 )推進再開の方法
・前方方向は、推力伝達フラットバーが推力点ボッ
まず現状のままでは、推進することは不可能です。
クスに追随して変形している。
現在掘進機にくい込んでいる転石を取り除き掘進機
を修復します。その方法を以下に示します。
a案 掘進機内部より取り除き修復する方法
推進機内部より50㎝角で掘進機を切断し、そこ
より転石を取り除き修復するのですが、切り取った
跡の修復が問題で、内側しか溶接出来ないので強度
的に問題が残ります。特にこの部分は推力点ジャッ
キ(40 t /台 最大推力100 t )が有り掘進機を推進
する上で重要な部分で有ります。掘進が140m残っ
ており、その内、カーブ推進が70m程度有るので
この方法では今後の推進に不安が付きまといます。
問題点
・内外の温度差によって溶接強度が低下する。
・水及び土砂の流入による溶接の信頼性が低下す
−37−
d案 掘進機全体を交換する。
る。
立坑を掘り掘進機全体を交換することは現在の掘
・上向き溶接の強度への信頼性が低下する。
・片面溶接(内側のみ)による強度不足。
進機には特殊な切削部、及び機器が取り付いていま
・内側からだけでは影響範囲の転石の確認及び取
すので、引上げ後それらを取り外し取り付け直しの
為25日程度の日数が必要と成ります。
り除きが充分に出来ない。
問題点
・薬液注入及び圧気施工が必要になり、火気の使
・工期的に25日掛かる。
用による安全性が低い。
【b案】
・立坑寸法が2500×5500㎜程度の大きさが必要
掘進機破損変形部分に立坑を掘り転石を
になる。
取り除き修復する方法
・上記の立坑掘削では交通規制上、施工不可能で
掘進機に転石が食い込んでいる部分に立坑を掘
ある。
り、転石を取り除きこの立坑を利用して破損変形部
分を切り取り、新たに製作した推力点ボックスを取
【対象表】
り付ける。この方法では、内外より溶接が出来るの
で修復部分に自信が持てます。修復期間は、15日
程度で元の形に復旧出来ます。心配なのは推力点部
分を加工するので、その後ろに有るシール部分への
影響ですが、加工時に注意深く冷却すれば解決でき
6 .立抗掘削と掘進機修復そして再発進
ます。
利 点
数日間の協議の結果、推進再開方法は【b案】で
・内外からの溶接が可能なので強度的に信頼がで
きる。
決定、直ちに立抗掘削に必要な薬液注入を開始この
時使用した削孔に欠かせないロッドが主因の玉石
・強度的にはほぼ100%の修復が可能である。
(⑤の石)に、後の原因究明に欠かすことのできな
・転石の確認及び除去ができる。
い傷を付けていてくれました。
c案 掘進機破損変形部分に立坑を掘り転石を取り
薬液注入終了後推進管頂1 . 5mからは、発注者立
除き、後胴部分を入れ替える方法。
会いの基、玉石一個一個の並びを記録に残すために、
b案と同じ様に転石がくい込んでいる部分に立坑
遺跡調査をも思わせる慎重な掘削を行いました。
を掘り、転石を取り除きこの立坑を利用して破損し
掘削終了後、掘進機破損変形部分を切り取り修復
た胴を交換する方法です。問題は後胴部を交換する
するという前例のない作業のため、当然現場関係者
為に後続胴をひきもどさなければ成りません、この
誰一人として経験がなく、事前に計画した作業手順
時薬液部分が破れて掘進機全体が水没する可能性が
書に基づき慎重且つ冷静に修復作業を行い、掘進機
大きい。又、各掘進機によって微妙に細部が違うの
破損から88日目の10月 7 日ついに、再発進するこ
で持ち込んだ後胴が現在の掘進機と一致しない可能
とができました。
性が有るので不確定要素があります。
7 .掘進機後部外板損傷の原因検証究明
問題点
・後胴部取外し作業時における水没の危険性があ
る。
証結果より、破損の機構が明らかになりました。
・前胴部との接続インロー部が合わない場合があ
る。
掘進機後部損傷箇所の調査、立坑を掘削しての検
[1]掘進機破損のメカニズム
第1図 主因の玉石(⑤の石)の下面が削られてい
・立坑寸法がφ3500㎜の大きさが必要になる。
る状況
−38−
回転して立ち上がることにより、高さが約650㎜に
なりました。
この増加した分の150㎜のうち、70㎜は上載土の
「焼け砂」を圧密しましたが、その圧密反力が主因
の玉石(⑤の石)の後ろ下の突起に加わり掘進機を
掘進機破損周り玉石状況
主因の玉石形状(L=750
㎜、W=300㎜、
H=600㎜)
80㎜陥没させました。
[2]
破損メカニズムを生じさせた現場特有の条件
1 )主因の玉石(⑤の石)の特徴的な形状
根本的な原因は、焼け砂層の存在と主因の玉石
(⑤の石)の形状と掘進機との相対的な位置が、最
悪の形状になったことです。
主因の玉石
主因の玉石切削状況
第 3 図を見ていただくと、まず、主因の玉石
(⑤の石)の下端が突出して、曲率の小さな球面に
なっているため、掘進機を 1 点で集中的に加圧し
ています。玉石の下端の曲率が大きければ掘進機を
抑える力が分散して、このような破損をしなかった
はずです。
外部破損
状況確認外部修復完了
又一方、主因の玉石(⑤の石)の上端は曲率が大
主因の玉石(⑤の石)の下の面に明らかに掘進機
で削られた面があります。このことから主因の玉石
きいため、焼け砂にめり込むためには大きな圧密反
力を受けます。
(⑤の石)は、元は第 1 図や第 2 図のように約500
もし、上端面が下端面のように突出していれば貫
㎜の高さをもって横長になっていたことが分かりま
入抵抗が小さくなり、すなわち圧密反力が小さくな
す。
り、掘進機を破壊するほどの押し付け力が生じなか
第 2 図 主因の玉石(⑤の石)の回転前の状況
ったはずです。
主因の玉石(⑤の石)が回転して立ち上がるため
掘進機の後胴部はリブやフランジで殻構造になっ
には、起こし役の石(①の石)が主因の玉石(⑤の
ていて、その設計強度は 50 t ですが、少なくとも
石)の前(切羽側)にあって主因の玉石(⑤の石)
50 t 以上の力が加わったと考えられます。
この様な状態で、この様な形状の玉石が存在する
の先端が起こし役の石(①の石)に当たっています。
一方、主因の玉石(⑤の石)の後では、何らかの
確率は、極めて小さいはずですがこの立坑を見る限
原因により、滑り止めの石(④の石)が主因の玉石
り、「玉石混じり砂礫地盤」ではなく「玉石層」と
(⑤の石)の下部を押し、掘進機と共に主因の玉石
言うほうが適切なほどの玉石の量です。そのため、
(⑤の石)を前進させます。切羽側にある起こし役
確率は小さくとも、たまたま 1 個当たったといえ
の石(①の石)は地盤に対して、前進しないので、
ます。
主因の玉石(⑤の石)を前進させることによって、
砂礫の中の玉石は通常、楕円回転体のような形を
主因の玉石(⑤の石)は起こし役の石(①の石)に、
しているものですが、何故か当現場の玉石は、不規
当たり回転していきます。
則な形状で突起を持っていたり、板状の形状をした
第 3 図 主因の玉石(⑤の石)が回転し掘進機を
ものが多数含まれています。
又、従来は中間径が、φ300㎜を越えるような大
陥没させた状況
高さ約 500㎜の主因の玉石(⑤の石)が約30°
きな玉石は、まわりの土砂に保持されてカム作用
−39−
(回転)を起こさないと言うのが常識でしたが、当
その焼け砂層が、たまたま掘進機の上載地盤に分布
現場では玉石のまわりも玉石ばかりであるという状
していて、主因の玉石(⑤の石)が起こし役の石
(①の石)によって回転し、カム作用を起こしたと
況が見うけられました。
きに玉石が頭を持上げるのを、大きな力で押さえつ
2 )主因玉石(⑤の石)の岩質及び強度
山梨県に分布する砂礫地盤の玉石の多くは安山岩
です。この現場の主因の玉石も安山岩です。安山岩
けました。そのため主因の玉石(⑤の石)の下端の
突起が掘進機に食い込みました。
は、花崗岩より強度がありますが、流紋岩より割れ
又、「焼け砂」とは火山放出物の 1 つで、粒子の
やすい岩です。主因の玉石の一軸圧縮強度と引張り
大きなものから、火山礫、火山砂、火山灰に分類さ
強度の測定結果によれば凡そ *一軸圧縮強度200
れ「スコリア」とも言います。「焼け砂」は富士山
N/
を中心とする関東地方の火山砂の地方名です。鹿児
引張強度(割裂強度)10N/
の強度を持っ
島や北海道では火山砂を「しらす」と呼んでいます。
ています。安山岩の通常の強度です。
岩石の引張強度は通常、一軸圧縮強度の 1/6 ∼
火山砂はその火山のマグマの成分によって色も性質
1/20の範囲にあります。従って主因の玉石(⑤の
も全く異なります。「焼け砂」は暗褐色をして、多
石)の下端が掘進機の外板(鋼板)、上端が別の玉
くの場合、砂岩のような固結状態ですが、「しらす」
石に各々点接触していれば、小さな引張強度で破壊
は白色で乾燥すると固結していますが、水分を含む
するので、主因の玉石はB図のように、容易に割裂
と流砂状になります。
土質資料では分布が限定的なので、明記してない
破壊をおこします。
一方、A図のように玉石が上下の面で加圧された
場合は、大きな一軸圧縮強度で抵抗するので容易に
ことが多く、例え記述があってもボーリングでは
「N値の大きい砂」としか出ていません。
この近くの火山が噴火したとき、風向きによって
割れません。
しかし、C図のように、主因の玉石の上端が焼け
砂に面で接触すると、玉石の上部は一軸圧縮強度を
持つので割れません。引張応力が主因の玉石の下端
大量の火山砂がこの地区に帯状の範囲に降ったのだ
と思います。
[3]検証・究明結果
外板損傷の機構はこの地方特有の焼け砂地盤の中
だけしか働かないので、下端が少し欠ける程度で、
主因の玉石は割れません。
に、逆おむすび形状の硬く大きな玉石が有り、その
3 )焼け砂の存在
玉石の前後に、この玉石を挟み、立ち上がらせる
「焼け砂」は火山の噴火砂で火山帯のまわりに局
所的に体積している地層です。砂の粒子が相互に接
(回転させる=カム作用させる)に都合の良い形状
の別の玉石が配置されていました。
これらの諸条件が偶然重なり合った為に、起こし
着しているので、砂岩のような硬さやもろさはあり
ませんが、粘り強さが大きいので地耐力の地層です。
役の石(①の石)が、主因の玉石(⑤の石)を、後
下端を回転中心として約30°回転させました。この
回転により大きな支持力を持つ焼け砂地盤を反力
に、突出した主因の玉石(⑤の石)の後部下端の先
で掘進機後部に集中荷重として作用したことによ
り、陥没させたことが明らかになりました。
今回主因の玉石(⑤の石)が破壊しなかった理由
は、主因の玉石の形状と、上部に【焼け砂層】が存
在した事に起因されます。
また、数々の玉石混じり砂礫層現場を掘進して、
−40−
掘進機破損状況
主因の玉石撤去前
主因の玉石撤去後
掘進機破損状況再現
破損前の状態
破損時の状態
その間、ヒューム管が破損した事例は有りましたが、
い返事が返ってきてこれでまた、一致団結して仕事
ガラス繊維入り90N/
ができると胸が熱くなりました。
管の 2 倍以上の強度を持つ
掘進機の胴体が凹むようなことは 1 度もありませ
発進してから276日目の 1 月10日、ついに待ちに
んでした。掘進機の胴体が陥没したのは今回が始め
待ったカッターヘッドが【歓声】の中顔を出し、無
てです。
事到達しました。
工事竣工検査時にも、今回のトラブルに対する対
8 .お わ り に
応が話題にあがり、工事評定点も高得点を頂くこと
今回、88日間と長い日にちを掛けての検証結果
ができました。
に対し、発注者と関係請負者が長年蓄積された経験
今思い起こせば、現場関係者一人一人が自分の役
と技術力全てを出し合い・膨大な資料の提出・協
割を十分果たすことにより、成し遂げた結果だった
議・検討・論議を重ねた結果、監督員から念願であ
と思っています。
った。【工事請負契約書 第29条(不可抗力による
最後に、現場の訴えに真剣に対応して頂いた発注
損害)を適用する】。との通達に、おもわず【やっ
者関係各位に、心より御礼を申し上げこの報告を終
た】と大声を上げてしまいました。
わります。
作業員に朗報を伝えると『皆で努力した結果だ、
残るは無事到達するだけだ、まかしてくれ』と心強
−41−
※ 株式会社 早野組
13
コンクリート打設計画策定について
山梨県土木施工管理技士会
白 倉 久 士 ※
連続RC中空床版橋、L=136 . 0
1 .は じ め に
、W=19 . 45
と、ON、OFFランプ橋、3 径間連続RC中空床版
今回、山梨県発注の多径間連続RC中空床版橋工
橋、L=51 . 0
事を施工しました。一度に大量のコンクリートを連
、W=5 . 95
です。
3 .コンクリート打設計画策定について
続打設する為に、施工前に、綿密な検討をして、実
施を行ないました。その結果、計画通りに施工を終
了することが出来、的確な施工計画であったと思っ
コンクリート打設計画策定にあたり、下記の要素
について検討を行ないました。
ています。そこで、当現場で策定しましたコンクリ
① コンクリート打設時期について
ート打設計画の検討要素及び計画を、簡単ではあり
② コンクリート供給について
ますが紹介したいと思います。
③ コンクリート配合計画について
④ 周辺環境について
2 .工 事 概 要
⑤ 人員配置について
⑥ 床版上げ越し量設定について
甲府市を取り囲む全長約 39 ㎞の新環状道路は、
⑦ 養生について
甲府市内から放射状に延びる県道、一般国道、高規
格幹線道路を相互に連結する地域高規格道路です。
4 .コンクリート打設時期について
東西南北部の 4 つの区間に分け整備が進められ
ており、当工事は南部区間に属した本線橋、8径間
配合、及び、一度の打設量を考慮すると、硬化の
際の発熱量が非常に大きくなることが予想できま
す。また、外気温の影響によって、打ち込み時のコ
ンクリート温度が高くなると、打設後のコンクリー
ト温度の上昇量も大きくなり、部材断面に大きな温
度差を生じてヘアークラックの発生を誘発するな
ど、品質に悪影響を及ぼす可能性が考えられました。
本工事における床版コンクリート打設時期は、全
体工程から、 5 月下旬∼ 6 月中旬になる予定でし
たので、過去の気象データーを調査し、暑中での施
工を回避できる時期を選定しました。
−42−
5 .コンクリート供給について
8 .人員配置について
レディーミクストコンクリートの連続供給をする
コンクリート打設は施工及び、品質管理において
為には、品質に関連する時間的制限を満足し、なお
も人海戦術であり、スムーズに打設を終了する為に
かつ、打設完了まで安定供給が継続できる単位時間
は役割分担を決め、適切な配置を行なうことが重要
当たりの納入量を決定することが重要です。そのた
です。
め、施工箇所周辺の生コンプラントの供給能力、コ
ンクリートポンプ車の圧送性能を事前に調査するこ
また、各担当者全員が計画通りに機能するよう周
知させる事が何より重要です。
とが重要でした。
本線橋では床版コンクリート打設量が1 , 841
9 .床版の上げ越し量設定について
あ
りましたので、打設完了まで連続供給できる単位時
床版の出来形を満足させる為には、施工中や支保
間供給量を決定するのに、コンクリートの供給を 2
工解体後の沈下をみこして、あらかじめ、上げ越し
社以上から行なうことで可能となりました。
を設定して、コンクリートを打設することが重要です。
本工事においても、支保工解体までの床版の沈下
6 .コンクリート配合計画について
量を想定し、あらかじめ上げ越しを行ないました。
コンクリートの供給を 2 社( J I S工場)以上から
10.養生について
行なうことは、品質は同じであっても、使用してい
るセメント、骨材の違いから、硬化後のコンクリー
養生はコンクリートを打ち終わってからセメント
トの外見に違いが見られてしまうなどの注意が必要
と水との水和反応を促進させ、所要の強度・耐久性
です。
を得られるようにし、温度応力・乾燥収縮によるひ
当現場では、同一のセメントメーカーを使用して
び割れを防ぐ為に重要な作業です。このため、急激
いる生コンプラントを決定し、更に、使用している
な乾燥、温度変化がコンクリートの強度・耐久性に
骨材の産地統一を図り、外見上の違いに対応する配
どのような影響を与えるか理解することが重要でし
合を計画しました。もちろん、発注者との綿密な協
た。
議、試験結果を経てからの計画です。
11.コンクリート打設計画概要
7 .周辺環境について
今回策定しましたコンクリート打設計画の概要に
安定したコンクリート供給を行なう為には、現場
ついて紹介します。
内でのアジテータトラックの安定走行を常に保ち、
コンクリートポンプ車に連続供給できるように現場
内の環境を整えるだけではなく、コンクリートを供
給するプラント施設から施工箇所までの道路状況、
交通状況を把握し、アジテータトラックがスムーズ
に運行できるルートを選定ことが重要です。また、
一般車の通行妨害、現場周辺の騒音、振動、粉塵の
発生抑制に対応することで、施工中のトラブル発生
を抑制し、連続供給をさらに安全にします。
打設計画打合せ風景
−43−
打設管理責任者 6名
(24-8-25N)
支保工観察者 2名
2 . コンクリート供給プラント
生コン車誘導責任者 3名
1 .コンクリート打設数量 1 , 836
A社 プラント能力180
/h
コンクリート品質管理 12名
B社 プラント能力100
/h
写真管理 2名
3 .コンクリート供給
施工 96名
アジテータトラック 1 台当りの打設サイクルタイム(分)
交通誘導員 20名
12.お わ り に
今回、多径間連続RC中空床版橋工事のコンクリ
使用台数
ート打設計画策定について述べました。様々な制約、
アジテータトラック 52台 条件について、多くの時間を費やし検討を行なった
コンクリートポンプ車
結果、綿密な計画策定が出来、長時間の施工をトラ
6台
4 .打設スケジュール
ブル無く終了することが出来ました。
打設開始 AM 5 時00分
すべての工事においても同じ事が言えますが、や
打設終了 PM 4 時40分
はり綿密な施工計画が成功の鍵であるということを
5 .人員配置
改めて実感しました。
全体総指揮者 1名
※株式会社 早野組
現場内運搬経路及び人員配置計画
コンクリート打設計画サイクルタイム(打設開始から4 . 4h∼6 . 5h)
−44−
14
治山施設災害復旧工事に
於ける施工管理について 新潟県土木施工管理技士会
長谷川 竜 太 ※
防潮工 L=140 . 0m
1 .は じ め に
端部処理工 L=20m
法面保護工 A=416㎡
本工事は新潟県北蒲原郡中条町荒井浜地内の海岸
3 .現場における課題・問題点
線において、厳しい冬期間の強風や波浪等により砂
浜が侵食され続けていることから、その復旧を目的
基礎部分は海水面下の施工であるため、鋼矢板 3
とした災害復旧工事で度重なる台風、豪雨、猛暑と
型 L=11 . 0
厳しい自然環境の中での工事施工管理について報告
り排水を行い作業するのですが、締切り矢板天端高
で仮締切りを施工し水中ポンプによ
いたします。
2 .工 事 概 要
工 事 名 施第15-2号 治山施設災害復旧・15年災
工事
工 期 平成15年11月13日∼平成16年10月29日
工事内容
根固ブロック製作工 サンビーチブロック(無筋 4 t )787個
完成全景
サンビーチブロック(無筋 2 t )16個
標準断面図
−45−
掘削完了水替え状況
台風による波浪被災状況
程度しか上がっておらず、悪天
度重なる台風の上陸 7 月の大雨と真夏日の連続
候になると矢板を越えて波が押し寄せ又矢板セクシ
など、施工期間中は異常気象に悩まされ、工事の安
ョンからの漏水もあり、掘削面が流されることもし
全、工程、品質管理と全てにおいて的確な判断が要
ばしばでした。(ちなみに地元の方から聞いた話で
求されました。
さが海面より2 . 5
は荒井浜という地名の由来は波が荒いところからつ
4 .発注者への顧客満足度の向上
いたそうです。)
発注者がお客様であるということを常に意識し、
ただ設計通りに作るだけでなく、どうしたら満足し
て頂けるか顧客満足度を向上させるため、何か工
夫・提案できないかと常に検討しながら工事を進め
ました。
今回の工事は 3 年前に施工した既設の階段ブロ
ックを更に延長する工事でありましたが、着手時に
はすでに既設護岸と端部処理の間が洗掘され、一部
が崩落しており危険な状態でありました。原因は既
設護岸と端部処理工の間にわずかな隙間ができてし
既設護岸洗掘状況
まい、波で洗掘されたことが原因と思われました。
洗掘防止対策(捨石設置状況)
−46−
今回の災害復旧工事でも端部処理の構造は基本的に
あったと思います。
変わりがなく、また同じようなことを引起す可能性
6 .地域への貢献について
がありました。そこで端部処理と階段護岸の境に捨
石を詰め洗掘防止処置を行いました。
最近の報道等では、何かと公共事業に対しての誤
捨石を詰めるだけの簡単な工夫ですが、企業努力
解と偏見のようなものが見受けられます。おおげさ
として提案し実行したところ発注者から好評でし
にいうと公共事業というものは全て無駄なもので、
た。
事業をする地域にとって必要でないものばかり作っ
ているかのような、印象を受けることがあります。
5 .安全管理について
そういった逆風の中平成16年は異常気象の中で
当然のことですが、安全は何よりも最優先される
自然災害の発生が多い年でありましたが、先行して
べきものであります。日々現場管理に携わっていて
行われていた公共投資により被害が少なかったとこ
思うことですが、どんなにすばらしい作業手順書・
ろもあったと思いますし、また被災地の災害復旧作
作業計画があり、それを作業員に周知徹底させ、
業での報道等により、建設業界の重要性、必要性と
日々安全教育を行ったからといって事故がなくなる
いうものが再認識されたのではないかと思います。
わけではないと思います(もちろん事故発生の確率
工事期間中は、毎月 1 回現場周辺のゴミ拾いを
は下がると思いますが)。あのプロ野球の巨人軍の
実施しました。また地元自治会の所有地の草刈清掃
エース上原でもピッチャーにホームランを打たれる
なども積極的に行いました。
今後もいろいろな形での地域貢献、地域との関わ
こともあります。人は機械ではありません。どんな
に注意していても、つい油断していたり、思わぬア
りを積極的に考えていきたいと思います。
クシデントやその時の体調の変化などにより人間は
7 .お わ り に
ミスをすることのある生き物だと思います。そのこ
とを認めたうえでヒューマンエラーをおこさせない
今後も公共事業費は削減していくことが予想され
ような対策をとり、少しでも事故を防ぐような環境
る中で、施工管理については環境面に対する配慮、
整備を行うことが事故防止の対策につながるのでな
建設CALSへの対応、地域住民との協調等々、多様
いかと考えました。
化するニーズに応えていくことが要求されます。そ
施工時期が真夏にあたるため熱中症事故防止対策
のことに対応し生き残るために、私個人が建設技術
及び作業効率アップのために、作業環境の整備が第
者として更なる成長をするために目指すものは、技
一と考え、海岸での作業のため仮設電気が用意でき
術力を向上させより専門的な知識・技術を得ること
なかったので発電機を用い作業員休憩所にエアコ
だと判断し、今現在様々な資格の取得に励んでおり
ン・自動販売機・電動肩たたき・血圧計・テレビ
ます。
等々を設置しました。また屋外には日陰テントを設
昨年はコンクリート技士を取得し、今年はコンク
置したことにより、疲労からくるヒューマンエラー
リート診断士・舗装施工管理技士の取得を目指して
の防止に効果があったと思います。
おります。
また安全管理活動への意識の高揚を図るため、全
これらの努力が現場での施工管理に反映され、よ
員の参加を義務付け安全標語を募集し、それぞれの
り安全に、より早く、より良い品質のものをお客様
作品を現場に掲示しましました。渋々参加していた
へ提供できることにつながると信じ、日々精進して
人もいる中、何点も応募する人もおり、暑い日が続
いきたいと考えております。
き疲れはありましたが、現場の士気も高まり効果が
−47−
※ 株式会社 新潟藤田組
15
TTM床版工法による工期短縮について
新潟県土木施工管理技士会
坂 井 剛 ※
当初は現場打RC床版の設計でしたが、施行時期
1 .は じ め に
が冬季にかかることから工期短縮と新技術採用をふ
本工事は新潟市と白根市を隔てる中ノ口川に架か
る国道 8 号線の橋梁工事で、数年前より迂回仮橋
まえ社内で検討を重ね施工致しました、TTM床版
工法について紹介いたします。
の設置から始まり平成16年度工事で当社が床版工
2 .工 事 概 要
事を受注し施工しているものです。
橋長L=143
上下線各2車線歩道付
型枠A=3220㎡
鉄筋232t 地覆工L=573
橋梁用高欄工L=286
橋梁用防護柵L=143
床版工事1, 000㎡当たりの工程比較表
下り車線コンクリート打設完了時全景
TTM床版施工図
−48−
鉄筋部組立
パネル部組立
工場製作状況
工場製作したものをトラック輸送により現場へ搬入
TTM床版架設作業状況
3 .現場における課題・問題点
の面から、冬季に入る前の短期間での施工が要求さ
本工事は 3 月に発注されましたが、継続工事で
れました。
あり前期工事の完了引渡しの都合から施工に着手で
対応策として、型枠・鉄筋工の施工時間短縮や新
きるのが 9 月以降10月にずれ込むことが、受注時
工法の検討など行った結果、NETISに登録されて
の打合せで予想されました。
いるTTM床版工法の採用を決定し、施工時間の短
打合せにもとづき計画工程を検討した結果、床版
コンクリートの打設が冬季期間になり寒中コンクリ
縮を図り冬季に入る前に床版コンクリートの打設を
行うことに致しました。
ート仕様となるため、コンクリート養生や品質管理
床版鉄筋組立状況
TTM床版とは、プレハブ床版で鋼製型枠と主鉄
鉄筋組立完了
−49−
コンクリート打設状況
コンクリート打設完了全景
筋を工場で一体化し、現場へトラック輸送にて搬入
たことにより 3 ヶ月で施工完了し、2 ヶ 月工期を
し、所定の箇所に設置を行い、設置後は配力筋を所
短縮することが出来ました。又、鋼製型枠と主鉄筋
定の位置に取付けてコンクリート打設を行う工法で
が工場で正確に製作されるため、主鉄筋の間隔・被
あり、在来工法に比べ、型枠主鉄筋組立は工場で行
り厚等については、正確で満足のいくものが得られ
うため、現場での型枠支保工組立解体が不要で、現
たと思っています。
今後の課題としては、地覆部の一部(街灯箇所)
場での作業が大幅に削減される工法であり、工期短
に生コンクリート打設時コンクリート重量により沈
縮において約46%の短縮が期待出来るものです。
下変形が僅かに見られたことから、パネルの支持強
4 .お わ り に
度(沈下・変形に対する)の再検討と施工コスト見
TTM 床版工法を施工することで、現場での型
直しが必要と考えておりますが、このTTM床版工
枠・支保工組立解体作業がなくなり安全性の向上や
法の採用により工期短縮が図られ、初期の目的を達
型枠合板等木材の使用を減らし、地球環境の保護の
成することができ喜んでおります。
面でも貢献する事が出来、当初在来工法で考えてい
た工程は 5 ヶ月でしたが、TTM床版工法を採用し
−50−
※ 株式会社 新潟藤田組
16
夏季の路盤材出荷に伴う含水管理
岐阜県土木施工管理技士会
山 口 豪 ※
荷時期が例年まれに見る猛暑であったため、含水管
1 .は じ め に
理に苦慮した経験について述べるものであります。
近年、日本道路公団発注工事の路盤材としてセメ
2 .現場における課題・問題点
ント安定処理路盤材が使用されております。セメン
ト安定処理路盤材とは砕石(C−40・砂)とセメ
現場着工と同時に仮設ソイルプラントの計画に入
ントを適切な含水比で混合した路盤材料のことで
りました。その結果、刈谷パーキング工事現場内に
す。
設置する事となり、工事が進む中で、他工事(パー
今回私の担当した第 2 東名高速道路刈谷パーキ
キング工事なので他業者も場内にて同時作業)、他
ングエリア舗装工事でもセメント安定処理路盤材を
工種の極力邪魔にならず、また、材料の搬入・搬出
使用し、工事エリア内に仮設プラントを設置し、現
に支障のない場所としてプラント敷地を選定し、敷
場内と近郊工事に出荷する事となりました。
地面積を約2 , 000㎡確保しました。
本稿では、セメント安定処理路盤材に関して、出
プラント混合機は仮設である事と安定したセメン
プラント全景
−51−
ト量・水分量が計測で出来るという点と、日本道路
脱した状態では限界があります。そこで、日々のス
公団発注工事の過去の実績より、日立の自走式土質
トックヤード管理として、調整可能な混合材料含水
改良機を選定しました。
比を管理していく事が必要になりました。
路盤材料のストックヤードは出荷時に常に混合機
3 .対応策・工夫改良点
に原材料を投入しなければならない事もあり、隣接
して設置しました。これはプラント運行と並行して
混合材料のストックヤードが工事現場内に設置さ
管理しやすいという利点はありましたが、限られた
れた事もあり、通常のプラントの様に敷きコンクリ
エリアの中で、ストックできるのは、砕石が360㎡、
ートを打設する事は、使用後の撤去工程・予算の関
砂が120㎡でした。このストック量は、当初の一日
係上困難でありました。また、設置箇所が将来、造
予定使用量から換算すると 2 日分に当たり、通常
園されるところでもある為、水捌けもよくありませ
のプラント施設として考えると決して広いとは言え
んでした。そこで、現地盤より25㎝山土を盛り土
る面積ではありませんでした。
し、勾配をとる事にしました。さらに、ストックヤ
出荷に当たり、出荷時期が梅雨から夏季迄という
ードを横断する様に暗渠排水を設け、降雨を少しで
事で、混合材量の自然含水比のコントロールを中心
も排水しやすくなる様に計画しました。また、屋外
に日々の品質管理を行う必要性が予想されました。
でのストックですから、降雨に左右される事は十分
もちろん、水分量は混合時に添加水を加える事で最
予想出来ますので、ブルーシートで降雨を路盤材料
適含水比になり混合され出荷されます。目標とする
から遮断する用意もしておきました。以上の対策に
最適含水比は下層路盤材が 6.1 %、上層路盤材が
より場内における含水量管理は、万全であると思い
6 . 8%であります。混合材料の自然含水比は4 . 5%
運行を開始しました。
程度であると想定し、土質改良機の混合能力120 t /
しかし、場内のストックヤードは狭い為、路盤材
hを考慮すると、添加水量は4 . 0∼5 . 0 t /h程度で
料は 2 日分しか堆積出来ません。実際に運行しだ
ある事が想定されました。しかし、場内のストック
すと、一日稼働中の午後からは前日に搬入した材料
ヤードにて雨などの過剰な給水、また、炎天下の水
を使用する事も頻繁にありました。搬入元である採
分蒸発等により、加水出来る範囲(本工事に使用し
石場から場内に運搬する際の降雨による給水、また、
た添加水装置は0 . 6∼6 . 0 t /hの加水能力)から逸
採石場での降雨による給水は避けられませんでし
ブルーシートによる養生
−52−
た。昨年は雨が少なかったものの、例年通り台風が
比に関して非常に気にかけるようになっていきまし
通過し、その翌日に搬入する砕石は私たちの求める
た。ストックヤードから混合機投入まで、タイヤシ
自然含水比より過剰に含水した路盤材が搬入されま
ョベルで運搬しますが、砕石の自然含水量が変わっ
した。
たと目視で確認出来ると、すぐに私たちに報告し、
工事を進めていく上で、他工事に供給するのが延
べ20日ありましたが 2 日だけ前日の降雨により供
含水量の計測後、添加含水量を調整し変更出来るよ
うになりました。
給水設備に関しても思わぬトラブルが発生しまし
給出来ませんでした。
当社の工事への供給は梅雨期が終わってからでし
た。それは、混合機の添加水装置(ポンプ)でした。
たので、降雨による混合材の未供給は起きませんで
添加水の水量計は0 . 6∼6 . 0 t /hの間で加水出来る
した。
ようになっており、添加水は20
の水槽より、サ
今回の路盤材出荷において、最も苦労した点は夏
クションホースによって供給されます。試験施工時
季の自然含水比低下によって、多量の添加水が必要
や他工事供給時は何も問題は発生しませんでした
になったことです。
が、1 ヶ月半がすぎ、気温の上昇に伴い、時間当た
昨年は全国的にまれに見る猛暑であり、当現場の
り供給量が増加すると、ホース自体が変形し、最大
4 . 5 t /h程度しか供給能力が無くなりました。全く
刈谷市も連日の真夏日となりました。
計画時にはある程度、暑さにより路盤材料の自然
予想していない事で、自然含水比が減少した猛暑の
含水比が低下する事は予想していましたが、降雨に
中、この能力低下は大きな打撃でした。ホースのた
よる過剰含水量管理に主観をおいていました。乾燥
るみを無くす等対策を講じましたが、最後までホー
した状態に対しては楽観視をしていたわけではあり
スによる予期せぬ給水量の変化に悩まされました。
ませんが、混合機に加水機能があった為、「加水す
今回の路盤材の混合作業では、このような軽微な
ればよい」といった程度の認識でした。しかし、連
トラブルが数多くありましたが、梅雨期から夏季に
日の30℃後半の猛暑により、私たちの想像以上に
かけて、路盤材の品質安定を目標に出荷を継続しま
含水比の低下が見られました。採石場より搬入され
した。
た砕石は、梅雨時期と比べ 2 ∼ 3 %程度減少して
4 .お わ り に
いました。最も少なかった時期では2 . 0%を下回る
事もありました。また、砕石はストックヤードへ搬
試行錯誤の繰り返しで、6 月中旬より始まり 8 月
入後、タイヤショベルにて掻き上げられます。この
末までの 2 ヶ月半ではありましたが、大きな問題
とき、砕石の表面だけでなく、内部の水分も蒸発し
もなく無事に出荷し終える事ができました。
てしまう為、さらに自然含水比が低下することが判
明しました。
通常、私は現場の施工管理をしていますが、今回
のプラント施設運行管理は新鮮な業務であり、いつ
そこで混合材料に散水を行い自然含水比の低下を
もの供給される側から供給する側へと変わる事によ
防ごうと試みましたが、出荷中の含水比のムラは安
り、違った角度で現場管理を見直す事ができました。
定した最適含水比の混合材の供給にマイナス要因と
今後、この経験をフィードバックさせて、現場管
なります。そのため、散水は搬出終了後の夕方のみ
理に活かしていきたいと思います。
に限って行なうこととしました。また、散水後の水
最後に、今回日立の自走式土質改良機を導入する
分蒸発が考えられたので、当初は梅雨時期に降雨に
に当たり、運行上のトラブル解決のアドバイスをし
よる給水を防ぐ為に用意したブルーシートでした
て頂きました大有建設㈱様に深く感謝申し上げま
が、蒸発を防ぐという用途で使用しました。
す。
作業を進めていく中で、重機オペレーターも含水
−53−
※ 株式会社 市川工務店
17
ハイピアにおける施工上の問題点
岐阜県土木施工管理技士会
小 川 正 司 ※
橋脚工: 2 基
1 .は じ め に
P1橋脚 H=69
コンクリート 2 , 232
私が携わったのは、岐阜県藤橋村(旧徳山村)で
(30-8-25BB)
鉄筋 1 , 035t
現在急ピッチで施工が行なわれている徳山ダム建設
P2橋脚工 H=65
に伴う県道付替事業の内、山間部でのハイピア工事
コンクリート 2 , 108
である。
鉄筋 今回のハイピア工事では、安全面において、転
976t
落・墜落災害やクレーン災害、通勤や資材搬入時の
3.工事における課題
交通災害が考えられ、また施工管理面では、工期が
この工事における課題は主に以下の 3 つが挙げ
厳しいため施工日数の削減や、構造物の品質確保に
られた。
①ハイピアであるがゆえにまず第一に、墜落落下
関する検討が必要であった。
2 .工 事 概 要
災害を防止する事。
②当現場の橋脚構造は、中空式で壁厚さ1 . 2
、
当工事の主な概要は以下の通り。
鉄筋は主筋D51、帯鉄筋D32が緻密に配置されて
工期:平成16年 3 月18日
おり、工期短縮の為には、鉄筋組立に要する日数を
∼平成16年12月12日
極力減らす事。
③品質の良いコンクリートを打設する為に、構造
全 景
施工状況
−54−
図−2 材例とひび割れ指数
や形状、気象条件に合った養生方法で施工する事。
度に吊上げ、落とし込む方法を採用した。
しかし、この方法で施工しただけで、鉄筋組立が
これらに対して行なった対策を以下に述べる。
早くなるわけではなく、施工しながらもその方法に
3 .対 策
合う地組架台、吊り具の形状を検討し改良する必要
①の対策として、墜落落下災害防止の為に、毎朝
があった。また、鉄筋組立においても、どの位置の
の朝礼での連絡事項の伝達、作業場、使用機材、保
主筋をどれだけ建込んでから帯鉄筋を落とし込むの
護具等の始業前点検を確実に行う様心掛けた。
か、鉄筋作業時の人員配置、落とし込みに合った鉄
また、ハイピア工事は、一見同じ作業の繰り返し
のように思われがちだが、細部を見ればそれぞれ違
筋の形状変更の承諾、これら一つ一つの積み重ねが
鉄筋組立に要する時間の短縮につながった。
③の対策として行なったのは、まず事前にコンク
った作業であり、危険予知訓練は、マンネリ化しな
リートの温度ひび割れに対する 3 次元フレーム解
い様に現地で具体的に行うようにした。
設備においても、落下防止ネットを必要箇所に使
析による検討である。
当社では 2 年程前から自社受注のマスコンクリ
用したり、足場に巾木を設置し、小資機材の落下防
ート工事において事前の温度解析を実施し、施工管
止に努めた。
②の対策として、鉄筋組立を効率良く施工するた
めに、帯鉄筋鉄筋組立は、4 ∼ 5 段分の帯鉄筋を一
理に反映させており、今回も実績を踏まえて打設割、
養生対策を検討の上解析を実施した。
図−1 解析モデル図
コンクリート温度測定状況
−55−
図−3 解析結果と実測温度との比較
解析結果では、橋脚全13ロッド全てにおいてひ
が20㎏/
が増加することとなり、ひび割れ指数が
び割れ指数1 . 0を上回り、有害なひび割れは発生し
どう変化するかが新たな問題となり、断熱温度上昇
ないと推測され、ひび割れ指数の最も低い 2 ロッ
量とひび割れ指数の関係を、更に計算した。
結果、温度上昇は +2 ℃、ひび割れ指数 1 . 08 と、
ド目では、コンクリートの最高温度は壁の中心部に
おいて材令 2 日で発生(56℃)することとなった
当初配合時の1 . 13より若干低下したものの、目標
が、ひび割れ指数が最も低くなる時期は、次ロッド
指数1 . 0を上回ることとなった。これらにより、コ
のコンクリート打設直後の時期(1.04)となった
ンクリートが閉塞することなく、無事にクラックの
(図− 2 参照)。これは、打設された新しいコンクリ
ない良好なコンクリート打設を終えることができ
ートが膨張し、前ロッドに引張り応力を加えている
た。
からと考えられた。
4 .お わ り に
このため、コンクリート温度の上昇抑制は勿論、
打設後の温度低下にも気を使い、解析に合ったコン
本年は、台風の襲来が多く、それによる工程調整
クリートの養生方法で養生し、実際のコンクリート
にも苦労したが、工期厳守で工事期間内はほとんど
温度測定を行ったところ、ほぼ解析通りの温度上昇
休工することなく急ピッチで施工を行なった。この
を得た。(図− 3 参照)
ような状況の中、鉄筋組立の施工方法の工夫により
また、本工事は 5 月から11カ月間の施工で、途
工程短縮を図り、無事工期内に無災害で工事を完了
中夏期にもかかるため、コンクリートの散水養生、
することができ、また充実した施工管理で品質の良
ポリフィルム養生を初め、コンクリート打設時の型
い構造物ができたのは、現場に携わる一人一人が忙
枠への散水を実施し、コンクリートの温度上昇の抑
しさに感けることなく安全や品質確保に対する意識
制を図った。
を持ち続けた結果であると思う。
また、打設箇所が高所になっていくほど、特に夏
季にはコンクリートのスランプロスが予想され、コ
今後も、今回得た技術的なノウハウを活かし、さ
らに高く高度なハイピアに挑戦していきたい。
ンクリート配合を30-12-25BBに変更承諾を取った。
最後に本寄稿にあたって、施工中常に的確な指導
配合決定時には、早期施工の為、普通ポルトランド
をしていただいた独立行政法人水資源機構の担当者
セメントとも考えたが、温度ひび割れ防止に有効な
の皆さまに心よりお礼申し上げます。
高炉セメントのままとした。これによりセメント量
−56−
※ 株式会社 市川工務店
18
仮設排水施設のコスト低減と
騒音対策について
岐阜県土木施工管理技士会
大 野 元 照 ※
埋め戻しD 100
1 .は じ め に
小規模土工 25
盛土(山土)
本工事は、旧プレハブ水路を取り壊し、L 型擁
壁・底版コンクリートを用いた水路に改良する工事
盛土(掘削土)
である。
盛土(耕土)
4
旧水路(幅=3 . 0
、高さ=0 . 6
24
3
盛土法面整形 46
)の老朽化し
た事、又、度重なる増水により水路法面が侵食され
運搬 260
た為、L型擁壁とブロック張により水路を改良する
プレハブ撤去 60
工事である。
構造物取壊し 17 . 9
水路工
−工事概要−
L型水路工 60
工 事 名 平成16年度 契約第319号 水路改良
ブロック張工 168㎡
工事
ブロック張基礎工 120
工事場所 岐阜県 大垣市 本今地内
発 注 者 大垣市役所 建設部 治水課
附帯工
足掛け金具設置 1 箇所
−工事内容−
土 工
宅地排水管取合工 2 箇所
盛土 23
法止め工 2 箇所
バックホウ床掘り 230
舗装工
標準断面図
−57−
路盤工 126㎡
仮設工
土留矢板工 1 式
仮設道路工 1 式
仮締切工 2 箇所
仮設排水管設置撤去 1 式
ポンプ据付撤去 1 式
図− 1
仮設電力設備工 1 式
表− 1
本工事における設置詳細図
バーチカルポンプと水中ポンプ比較表
2 .現場における課題・問題点
工事現場の条件としては、構造物は幅=3 . 0
高さ=0 . 6
、
のプレハブ水路が主となっており、施
工箇所上流からは一定量の流量が流れているのに加
え、工場からの排水が多く流入している。また施工
箇所下流では、流量の多い別の水路とサイフォン形
式で合流していた。また施工箇所より10
も離れ
またポンプ稼動時における振動音も発生する。
ていない所に民家が点在していた。
3 .改 善 策
上記のように、一定水量がある為に上・下流で仮
締切りを行い、昼夜通してポンプによる切り回し排
問題点 1 ・2
両面を踏まえると、サイフォン効
水を計画したが、以下の問題点が課題となった。
果と水位差を利用したエコポンプも近年紹介され話
問題点 1
題となりましたが、本工事における条件では使用で
∼コストについて∼
常時水量が水中ポンプ 8 インチ相当の240
/h
はある為、水中ポンプを使用すると消費電力コスト
きないため、今回は過去に多く利用されていたバー
チカルポンプを使用し改善に取組みました。
が多く掛かる。
問題点 2
バーチカルポンプと水中ポンプの違いを比較して
∼騒音について∼
みると、バーチカルポンプは、排出口より上には排
水深は30㎝しか無いために一般的な水中ポンプ
出できません。また水中ポンプの様に圧送すること
( 8 インチ)を使用した場合、吸入口と水面の高さ
は効果的ではありません。バーチカルポンプにて揚
不足により、エアーを吸い込む音が発生してしまう。
写真− 1
水された水は自然流下で排出させます。
写真− 2
バーチカルポンプ13 . 5インチ
−58−
L=1800バーチカルポンプ設置状況
送音源 2
今回の試験対象に使用した形式。
表− 1 から電力コストを比較すると、現場の排水
条件(雨水等)にもよるがバーチカルポンプを使用
送水管から既設仮排水路へ流入する際、排水量が
多く柵板に当たる為、渦巻音が発生した。
した場合、使用電力が水中ポンプでは11kW必要な
のに対し、バーチカルポンプは2 . 7kW。つまり約4
分 の 1 の電力で 8 インチ相当の水中ポンプ以上の
揚水量を確保することができ、問題点1の改善が出
来た。
騒音については、バーチカルポンプは吸水ではな
く、自然流入方式により排水を行うので稼動時は本
体のモーター音のみとなり、4 ∼ 5
ポンプから離
れるとほとんど聞こえないくらいにまで抑える事が
改善策
出来た。またエアーを吸込む音についても一般の水
中ポンプに比べ大幅に軽減することが出来た。
ブルーシートを 2 枚重ねにし、水面に密着させ
設置することにより、渦巻を起こりにくくし、騒音
の軽減を行った。
4 .バーチカルポンプ設置後に発生し
た騒音源と改善策
騒音源 1
排水口から送水管内に流入する箇所で音が発生
し、送水管内を伝わり、音が民家側へ漏れた。
5 .お わ り に
本工事では以上の改善を行い、結果的に仮設排水
における消費電力コストの削減と騒音防止に努める
ことが出来た。
私達、工事施工管理者としては、発注者に高品質
改善策
送水管末端に下げ蓋を設置し、管内に音を反射さ
な構造物を提供することは無論大切であるが施工を
せ、水路側へ逃がすことにより民家騒音を防いだ。
速く・低コストで・安全に行うことも重要だと思わ
れます。
今回の目標は、コストの削減と地域住民への環境
の配慮を課題としたが近年、自然環境に配慮するこ
とも重視されてきている為、岐阜県自然工法管理士
の資格を活用し工事現場周辺の生態系保全にも役立
つような、創意工夫に今後共取組んでいきたい。
※ 三建産業株式会社
−59−
19
仮締切工の遮水について
三重県土木施工管理技士会
勝 矢 理 ※
ョンからの漏水を軽減するために、打設時に鉄粉を
1 .は じ め に
セクションに挿入したり、パイルロックを塗布した
本工事は、県発注の橋梁下部工工事である。前年
りしたが、いずれもあまり効果がなかったようだ。
度までに、2 基の橋台及び 4 基の橋脚を完了。今回
今回は、水替えのホース延長が300
の工事では、2 基の橋脚工施工で河川内の工事とな
なるので、水中ポンプを設置し維持管理することが
るため、河川内に仮桟橋・作業構台を設置しての作
大がかりとなり、また、電気代を節約するために、
業となった。仮締切は、11
8 吋高揚程水中ポンプを常時 1 台(掘削完了時は、
のⅣ型鋼矢板をウォ
ータージェット併用打設し、岩盤に 4
打ち込む
ため約 1 枚当たりの打設時間は30分程度かかった。
くらいと長く
2 台稼働)で施工できるよう、矢板セクションから
の漏水を軽減することを課題点とした。
土留め支保工は 2 段設置。
3 .対応策・工夫改良点
2 .現場における課題・問題点
11
この橋の工事に携わるのは今回が初めてであった
のⅣ型鋼矢板をウォータージェット併用打
設し、岩盤に 4
打ち込むため約 1 枚当たりの打
が、県民局建設部担当者及び前年度までの施工スタ
設時間は30分程度かかるために、パイルロック等
ッフの苦労話、助言等により、今回の問題点の整理
の現代的な方法では、矢板のセクションからの漏水
ができた。問題にしたのは、前年度シートパイルで
を軽減することは不可能に思われたので、昔ながら
の仮締切工内の水替え工は、1 箇所当たり 8 吋高揚
の矢板のセクション遮水方法がないかをいろいろな
程水中ポンプを常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台
人に聞きまわったが、鉄粉をセクションに入れて錆
稼働)しており、その電気代は 1 ヶ月当たり50万
を促進させるなど、前年度にやってみた方法しかな
円程度かかったこと。それに対しての水替え工の設
かった。が、ある作業員から、以前に矢板を打設し
計は、矢板のセクションからの漏水はほとんどない
て仕事をしていた時に、矢板のセクションに槙肌
ものとしており、4 吋水中ポンプ 1 台分しか計上さ
(まきはだ)を詰めて遮水をしたということを聞き、
槙肌(まきはだ)について調べてみた。
れていなかった。
前年度においても、矢板のセクションからの漏水
槙肌(まきはだ)は、“まいはだ”とも言う。木
は新品を打設してもあることを説明したが、聞いて
造船に水が入るのを防ぐ『あか止め』に、板の間に
もらえなかったようで、今回も同じように説明した
詰める造船材である。水を含むと膨張し、隙間を埋
が、結果は同じであった。前年度は、矢板のセクシ
める。杉に比べ粘りがあるヒノキの皮を蒸し、たた
−60−
いて軟らかくしてから縄のようになったもので、矢
水も多い。しかしながら、この状態を有効に利用し
板のセクション遮水方法としては有効のように思え
た遮水方法はないものかと考えていたところ、オガ
たので、槙肌(まきはだ)を段取りするようにした。
クズによる遮水を、ある方から教えていただいた。
水替えの計画としては、前年度と同じように 1
その方法とは、オガクズを水の流れを利用してゴ
箇所当たり常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台稼働)
ミのように隙間に流し込む、ということです。また、
できる容量の電力を準備したが、その時は槙肌(ま
オガクズも槙肌(まきはだ)同様水分を吸収すると
きはだ)で遮水できるのではないかと安易に考えて
膨張するので有効であるように思われた。そのこと
いた。河川内の仮締切工が完了し、8 吋高揚程水中
をもとに早速オガクズによる遮水方法について検討
ポンプ 2 台を設置して水替えを行ったところ、水
を開始した。
深約 2
まず、材料のオガクズですが、近くの材木団地に
から30㎝程度しか水替えができなかった。
これではとても次の工程に移ることはできないの
て入手することができた。その際に、粒の大きさの
で、用意してあった槙肌(まきはだ)をセクション
違う、のこぎりクズのオガクズ 2 種類とパウダー
に詰め込むことにした。その結果、かなりの効果が
状のオガクズの計 3 種類で、どれが一番有効であ
あり、当初は 2 台で30㎝程度しか水替えができな
るか試してみたかったので、いろいろな種類のオガ
かったのが、槙肌(まきはだ)をセクションに詰め
クズを頂いてきた。
次に、オガクズを入れるカゴは、河川の水流を考
込むことで、1 台の 8 吋高揚程水中ポンプで水替え
慮すると軽いものでは流されるので、鉄筋を溶接し
ができた。
思っていた以上の効果が得られたので、ますます
安易に水替えができるように思えた。水替えができ
てうなぎ採り用カゴのような形にして、その中にオ
ガクズを入れる網状の土のう袋をはめ込んだ。
たことにより、土留め支保工施工に進むことができ
オガクズは、そのままの状態ではカゴに入れて沈
た。その中で、切梁のキリンジャッキを張った時に、
めてみても、浮いてしまうのは明らかであるので、
槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクションに力がか
オガクズの比重を 1 以上にする必要がある。その
かり、新たな隙間ができ再び水が漏れだした。しか
方法として、紀州釣りのだんごの要領で、砂を混ぜ
しながら、漏れ出した箇所をこまめに補修すること
ることによって重みを持たせることにした。頂いて
で対応できた。
きた2種類ののこぎりクズオガクズを主に、パウダ
1 段目土留め支保工施工完了後、本格的な掘削作
ー状のオガクズを繋ぎとして配合し、その中に砂を
業となった。ここで問題となったことは、掘削機械
混ぜた。砂とオガクズがくっつくようにシャワーで
が矢板にあたると、切梁のキリンジャッキを張った
散水しながら混ぜた。その材料を矢板の外側に落と
時同様に、槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクショ
しこみ効果をみたところ、想像以上にオガクズがセ
ンに力がかかり、新たな隙間ができ再び水が漏れだ
クションの隙間に目詰まりし、遮水できた。オガク
した。これも前と同じように、漏れ出した箇所をこ
ズによる方法では、河床付近までしか効果がないよ
まめに補修することで対応できたが、掘削が進むに
うに思われたが、実際にやってみると、セクション
つれて河川との水頭差が大きくなり、水圧が大きく
の隙間を通って河床より1 . 5
なってきたので、最初に槙肌(まきはだ)をセクシ
あった。結果として 3 種類の大きさの違うオガク
ョンに詰め込むだけでは、遮水できないのではない
ズを混ぜたことで、細部までオガクズを目詰まりさ
かと思えてきた。これ以外に他に有効な方法を考え
せることができたように思う。オガクズと平行して
なければならなくなった。
槙肌(まきはだ)をセクションに詰め込んだことに
くらい下まで効果が
ここで、今回の施工場所は、河川の中であるので
より、水替え工は、8 吋高揚程水中ポンプを常時1
仮締切工の外側は、直接、水と接しているので浸入
台稼働(掘削完了時は、2 台稼働)で施工できた。
−61−
仮締切工の土留め支保工の状態は日々変化する。
また、雨天により河川の水位が上昇したりするので、
う。電気代は予定の半額を目指したが、30%程度
の削減は達成できた。
また、熟練者の経験を聞き参考にするとか、欠点
槙肌(まきはだ)の状態は日々管理し、最良の状態
であると思われたこと(今回は、河川内の工事であ
を保った。
もう 1 箇所は、河川敷内であるので、仮締切工
るので仮締切工の外側が、直接水と接しているので
の外側は、直接、水と接していないためにオガクズ
浸入水も多い)が最大の利点であることに気づいた
での遮水はできなかったので、槙肌(まきはだ)を
ことは、大きな収穫であった。
セクションに詰め込むのみの遮水となったが、河川
また、シートパイルによる仮締切工においての水
内仮締切工箇所と同様、水替え工は 8 吋高揚程水
替え工の積算は実勢に合ったものにしてもらえるよ
中ポンプを常時1台稼働(掘削完了時は、2 台稼働)
う、このような実績、データ等の蓄積が非常に大切
で施工できた。
だと実感した。
※ 丸亀産業株式会社
4 .お わ り に
今回の遮水方法は、かなり有効な手段であると思
−62−
20
地域に愛される工事をめざして
三重県土木施工管理技士会
荒 山 富 明 ※
(φ150∼200)を地下に布設します。
1 .は じ め に
架空線および埋設管の移設工事も終わりに近づ
自治会への回覧文書にて工事内容の紹介をさせて
き、3月初旬より下水道工事に着手させていただき
ます。
いただきます。
下水道工事のお知らせ(お願い)
まず1工程目は、交差点を含めアパート前を、3
月初旬∼ 5 月中旬にかけて施工します。施工時間
関係各位
( 8 時30分∼17時00分)に、交差点部分が通り抜け
丸亀産業株式会社
大黒田(下水)作業所
この度、市発注の下水道工事(雨水管渠・汚水管
できない場合がありますので、迂回路のご利用をお
願い致します。
つきましては、工事期間中は関係者の皆様に、大
渠)の布設工事を、受注させていただきました。
)の土留めを
変ご不便をおかけすると思いますが、安全第一で工
まで掘削し、ボックスカ
事を行いますので、工事に対する御理解と御協力の
この工事は、鋼矢板(長さ:6 . 0
行い、道路面より約3 . 5
ルバート(幅 2 . 0
・高さ 1 . 3
)と塩ビパイプ
ほど、よろしくお願い致します。
下水道工事 断面図
−63−
2 .現場における課題・問題点
/工程)に
施工箇所近隣にはアパート・商店・事務所・民家
分けて、雨水管渠・汚水管渠の布設を行います。施
が建ちならんでいます。近隣の方には、同じ場所を
工に伴い、別件工事による架空線の移設・地下埋設
何回も掘ったり・埋めたりという工事が繰り返し行
管の切換え工事もあり、工事期間は約12ヶ月間か
われ、長期にわたり、振動・騒音・駐車場および商
かります。
売などに、大変ご不便をお掛けすると思います。
この工事は施工区間を 3 工程(約60
3 .対応策・工夫改良点
を撤去し本舗装を行うのが標準ですが、この工事は
対応策
ボックスから舗装面までの埋戻しが砕石であったの
1 .振動・騒音
低騒音型の重機械の使用
で、不等沈下もそれほどないのではと思い、発注者
重機械はアクセル80%
と協議しました。
施工は、5 ㎝下がりで仮舗装を行うだけのもので
重機械走行時は低速走行
す。利点は、本舗装を仮舗装の上に舗設するので、
2 .駐車場及び商売
近場に必要台数の駐車場の確保
仮舗装の撤去費用・産廃処理費、本舗装時の不陸整
ガードマンによる誘導
正費が節約になり、工期の短縮にもなります。
結果として一番よかったのは、同じ場所を何回も
工夫改良点
下水道工事(雨水管渠・汚水管渠)は管布設完了
後に仮舗装を行い、ある程度の路線完了後に仮舗装
掘ったり埋めたり、たとえ何日かでも工事の振動・
騒音が減ったことです。
−64−
顧客に満足を与えることは、どうしたら喜んで頂
4 .お わ り に
けるのかという観点で想い、ちょっとした想いを実
行することでないでしょうか。
私にとって初めて経験する内容
1 .サイレントパイラーによる鋼矢板圧入
これからも、地域に愛されるよう頑張ります。
2 .鋼矢板の中で据付作業を行うリフトローラ工法
工事期間中は地域の方々に大変お世話になり有難
3 .横方向の簡易推進とんとん君
4 .縦方向の簡易推進ぶるぶる君
うございました。
〈添付写真は、地域の回覧・発注者および社内の報
告などに使用したものです。〉
5 .近隣の家屋調査
※ 丸亀産業株式会社
いろいろと勉強になりました。
−65−
21
夏期コンクリート打設時の単位水量
管理に伴うスランプロス対策について
広島県土木施工管理技士会
大 林 成 徳 ※
工程的にも厳しいのでありました。
1 .は じ め に
2 .工 事 概 要
当工事は、加古川市区画整理地業に伴い、東西交
通の円滑化を図るためJR加古川線を高架化すると
工事名:加古川BL加古川線工区新設他工事
いう連続立体交差化工事です。
工事場所:兵庫県加古川市加古川町溝之口地内
工事は営業線である加古川線に近接し、作業ヤー
ドも狭い上に施工区間延長は約950
工事内容:鉄道単線 高架区間延長L=553 . 9
と長く、平成
擁壁区間延長L=101 . 7
15年 2 月上旬より仮設備を着手し、本体工事を平
土工区間延長L=296 . 5
成17年 2 月末までの約13ヶ月で完了させるという
総コンクリート数量V=4 , 810
高架区間全景
−66−
コンクリート単位水量の測定は、最初の 1 台目
及びそれ以降50
㎏/
毎に 1 回の頻度で、配合設計+ 5
あるいは示方書上の上限値のいずれか小さい
値が目標値という管理基準(図− 1 、2)にて実施
し、測定値が目標値を超え警戒範囲内であれば測定
頻度及び管理を厳しくし(図− 3 )、限界範囲にな
ればコンクリートを返納する事との顧客要求でし
た。
図− 1
単位水量の管理基準
躯体工事は、平成16年 3 月下旬より土工事を開
始し、コンクリート数量約4 , 800
約3 , 000
の内 7 割程度の
をCT温度が25℃以上になると予想され
る 5 月から 9 月にかけて打設する工程となりまし
た。
CT温度が25℃となる夏期でのコンクリート納入
時に、工場からの運搬時のスランプロスを 3 ㎝程
度考慮した場合、コンクリート標準示方書により
図− 2
配合設計173㎏+
( 3 ㎝×1 . 2%×173)
=179㎏
コンクリートの管理方法
となり管理基準値となる示方上の上限値175㎏を
満足することが困難となる。あるいは、単位水量の
基準値を満足させ、スランプロスが−2 . 5㎝以内に
収まっても下限値に近くなりワーカビリティーが低
下することが予想され課題となりました。
本工事は、前掲の写真からも分かるようにラーメ
ン構造の高架橋にRC桁あるいはPC桁という構造
で、鉄筋が蜜に配筋されてあるラーメン構造におい
て緊密な構造物を築造する為に、ワーカビリティー
図− 3
の低下は当然避けなければなりませんでした。
警戒範囲における取扱い
4 .対 応 策
3.夏期コンクリート打設にあたる
課題及び問題点
単位水量管理基準の目標値を満足し、かつワーカ
ビリティーも損なわない為に、使用する減水剤を通
まず、鉄道高架橋という特性もあり構造物は設計
耐用年数100年である為、施工もそれに応じた厳し
常のAE減水剤からスランプロス低減型AE減水剤
へ変更することとしました。
いフレッシュコンクリート単位水量の管理も発注者
このスランプ低減型AE減水剤は、カタログ説明
のマニュアルにて明確に求められました。単位水量
になりますが大きな特徴として従来のAE減水剤よ
の現場測定については、国土交通省により現場にお
りもセメントに対する分散性能が高く単位水量を低
ける品質管理において標準となりつつあると思いま
減することができるという製品で、減水率を 3 %
すが、私自身の現場管理において本工事が初めてで
改善できるということでした。
配合設計 173㎏/
あり勉強しながらの着工となりました。
−67−
−(173× 3 %)
=167㎏
と単位水量を低減でき、夏期でのスランプロス 3
の承諾を得て採用することとしました。
㎝を考慮すると、
167㎏/
5 .結 果
+( 3 ㎝×1 . 2%×167)=173㎏
となり管理基準値となる示方上の上限値175㎏を
満足することができます。
本工事の夏期コンクリート打設において、搬入時
の現場単位水量試験で管理基準の目標値を超えるこ
そして、スランプロスが実際に改善されるか確認
となく、又、脱枠後の外観検査においてもジャンカ
する為に、発注者立会によりスランプ値の比較試験
及びコールドジョント等のない、推定圧縮強度測定
を実施しました。
試験においても設計基準強度を十分に満足したこと
試験は、夏期前の比較的外気温の高い日を選び、
同一の標準配合(27 . 12 . 20N)で混和剤のみ通常の
から、緊密で発注者の求める100年の耐用年数に耐
えうる構造物が築造できたと思われます。
標準型AE減水剤とスランプロス低減型AE減水剤
又、なにより、今年度は各地記録的な猛暑となり、
使用の 2 種類を並行して試験練をし、0 分、30分、
実施工における作業性については一番の判断材料と
60分、90分及び120分の間隔でスランプ試験を実施
なる作業員からの「打ちにくい、硬い、均しにくい」
し、スランプロス経時変化を観察しました。測定間
等の声を聞くことなく、酷暑時のスランプロスによ
の材料は、通常のアジテータートラックによる運搬
るワーカビリティー低下を防止することが出来たと
条件よりも悪くし、トロ箱に入れコンパネにて蓋を
思っています。
して屋外にて養生しました。
6 .お わ り に
スランプ試験の結果は表− 1 のように、練り直の
0 分で 3 ㎝、120分で4 . 5㎝のスランプ値の差があり
昨今、土木工事においてテレビや新聞で、内部リ
顕著な結果となり、又、圧縮強度試験(σ3 , 7 , 28)
ーク等によると思われますが、不適切な位置での鉄
及び空気量についても比較試験を併せて実施したと
筋やアンカーの切断、支持杭の杭芯変位、ジャンカ
ころ測定値において大差はありませんでした。
等の無断補修など現場管理における施工不良の問題
試験結果から、スランプロス低減型AE減水剤を
がよく見受けられます。今後、品質や出来形の管理
使用することにより、夏期におけるコンクリート打
基準をやむなく満足できなかった場合には、当たり
設において単位水量管理基準の目標範囲内でスラン
前ですが発注者への報告及び適切な対処がより重要
プロス 3 ㎝程度の対応が出来ると判断し、発注者
となっていると思います。「打ち難いので生コンに
表− 1
スランプ値比較試験結果
水を入れる」もその内のひとつで、土木施工管理者
の参考になり、この混和材を知っている管理者の方
も多いとは思いますが、高品質の構造物を作る為に
夏期コンクリート打設時の対応方法の選択肢のひと
つとして報告致します。
※ 広成建設株式会社
−68−
22
高橋脚施工における私の取組事項
広島県土木施工管理技士会
今 井 俊 晴 ※
① 当現場でのマスコンクリートの打設時期は、フ
1 .は じ め に
ーチング施工時より 7 月及び 8 月にかけての非
常に暑い時期において施工することがあった。
本工事は、自分にとって経験のないものばかりで
その対策として、長距離及び高所への圧送にて
あり、色々と不備な点はあったと思うが、共同企業
低発熱コンクリートを使用した。
体の所長をはじめ協力会社の職員、職長に至るまで
又、現場の設備においてはコンクリートを定置
のたくさんの人の指導等により施工できたものであ
式ポンプ 2 台にて配管を介して圧送したため、
ります。
又、安全も作業員とのコミュニケーションを取り
配管には養生マットを巻き又、安価な園芸用ホー
ながらの指導・管理も非常に勉強になり今後の糧と
スを固定用ビニール線にて固定し、常時、流水し
して頑張っていきたいと思います。
ながら施工したため十分なコンクリートの品質も
良好であった(写真 2 − 1 − 1 ・2 − 1 − 2 参
一部ではありますが、当現場にて行った取組事項
照)。
をあげようと思います。
2 .取 組 事 項
② ポンプ車及びディストリビューターによるコン
クリートの打設時は、直射日光を遮るために各層
2−1
毎(高さ約70㎝/層程度)に遮光率99%の黒色遮
暑中コンクリートの対策
光シートを盛換えながら施工した(写 真 2 −
写真 2 − 1 − 1
写真2−1−2
−69−
写真 2 − 1 − 3
写真 2 − 1 − 4
1 − 3・2 − 1 − 4 参照)。
距離 5
打設足場も安全上の不具合がないように、かつ
程度の流動距離と中間帯鉄筋、又 5 / 8 セ
パレーター及び帯鉄筋の曲げ加工部等も考慮して打
最小限の設備としており棒状の振動バイブレータ
設落下口を決定し、施工した。又、毎回高さ 5
ーの配線等もあり、作業中には人員が打設用人員
の打設高さであったため、密に組み上がった鉄筋と
以外に専属に 4 名程度必要であったが、コンク
外型枠・内型枠に緩衝しないよう慎重に10㎝程度
リートの品質も良好であった。
の隙間に棒状振動バイブレーターを十分コンクリー
又、熱中症にも気を使う時期であったが、遮光
シートの下では直射日光が遮られて非常に涼しい
トが行き渡るようかつ、空気アバタが出来ないよう
に施工した。
その他にも現地でのコンクリートのフロー状態を
環境下での作業となり、熱中症対策にも役立った。
2−2
目視にて確認し、毎回のように打設の前後に、職
高流動コンクリートの対策
高橋脚において、鉄筋も密に配置されており十分
員・職長・作業員にて改良点及び打設方法を打合せ
なコンクリートの充填が必要であるため、高流動コ
して十分良好なコンクリートの仕上りとなった(写
ンクリートを使用し打設した。
真 2 − 2 − 1 ・2 − 2 − 2 参照)。
品質管理も十分に有識者が行っており良好であっ
たが、コンクリート表面の出来栄えに非常に苦慮し
2−3
その他
① FCB工法(気泡混合軽量盛土工法)の埋殺化
粧型枠においては、基礎コンクリートからの上面
た。
簡易ディストリビューター及び配管打設にて水平
写真 2 − 2 − 1
高さ4 . 5
であり、型枠の変位を微少に押さえる
写真 2 − 2 − 2
−70−
写真 2 − 3 − 2
写真 2 − 3 − 1
② 落石防護柵は、当初GLから5 . 0
にて落石防
ため内側に先行設置したライナープレートの上面
護する予定で施工したが、土砂搬出用に堆積する
に取付けた単管パイプと型枠上面に取付けた単管
ため、親杭H−400に簡易な継足杭H−250をボ
パイプにて補強しエアミルクを約70㎝/リフトに
ルト緊結にて施工し、部材も少なくすみ早期に施
て打設注入した。
工できた。
当初のワイヤー等にて下側から固定するという一
又、落石防護柵撤去も考慮し、丸鋼にてタラップ
般の方法よりも、簡易な材料及び簡易な方法にて施
を先行設置し安全上にも問題なく施工できた(写真
工でき型枠の精度も良好であった(写真 2 − 3 −
2 − 3 − 2 )。
1 )。
※ 広成建設株式会社
−71−
23
ケーソン・セルラーブロック製作の施工管理
広島県土木施工管理技士会
脊 戸 郁 男 ※
月に供用開始され県民の憩いの場になっている。2
1 .は じ め に
期工事(全長=740
)は、平成10年度より 7 ヵ年
計画で完成を目標に継続中である。本工事は、平成
本事業計画は、広島県が広島市内から南に位置す
る潮かおる緑ゆたかな町、安芸郡坂町の国道31号
15年度工事として工事延長433 . 3
線の海岸沿いに、人口海浜を築造する事業である。
礎及びケーソン・セルラーブロック製作の工事であ
工事は 1 期工事と 2 期工事に分かれて施工されて、
った。製作品の製作場所は、当社が所有する海上兵
1 期工事(全長=466
学校があることで、全国的に有名な江田島の東側に
)は既に完成し平成11年 7
図− 1
−72−
の階段式護岸基
図− 2
ケーソン製作完成写真
488 t )
位置する切串地区のヤードで製作を行った。
セルラーブロック製作 15基(4 . 5×5 . 0×6 . 0
工事内容
量=90 t )
工事延長=433 . 3
浚渫 3 , 420
基礎捨石 97 , 028
裏込め石
2 .現場における課題・問題点
16 , 275
ケーソン製作 5 基(7 . 4×12 . 45×10 . 5
重量=
−73−
製作品ケーソン・セルラーブロックについての
重
セルラーブロック完成写真
・上部コンクリート打設による下部コンクリートの
・脱型後のコンクリート養生
汚れ
(脱型中 3 日強度確認による)(養生 7 日以上
ロット毎に施工を行なうために、上部コンクリー
広島県共通仕様書による)
・上部コンクリート打設による下部コンクリート
ト打設時に下部コンクリート面に、のろが垂れて汚
れを生じるが、すき間テープを取り付ける事により
の汚れ
防止した。
3 .対応策・工夫
4 .お わ り に
・脱型後のコンクリート養生(施工時期 4 月∼ 6
月)
今回の工事は、クラックの発生も無く指定強度も
大型型枠によるジャンピング工法で施工するため
確保でき、コンクリート面も美しく出来た。今後も
に、打設後中 3 日で脱枠及び組立作業を行なう事
品質の向上に創意工夫を凝らし顧客により、信頼を
から、脱型後のコンクリート面の養生方法に問題が
得る仕事を求めていきたい。
あったが、型枠下部へ遮光ネットを取り付け(図−
1 )直射日光及び風を防ぎ品質を確保した。
−74−
※ 株式会社 鴻治組
24
最 高 の 瞬 間
(社)鳥取県土木施工管理技士会
勝 部 道 徳 ※
るのだろうか?」という不安だらけのまま着任しま
1 .は じ め に
した。
工業高等専門学校を卒業し、入社して 3 年目の
県外での仕事のため、当然家を離れて暮らすこと
春でした。年度末工事も完了し、新年度を向かえ新
となり、現場近くに宿舎を建て、そこに引越しして
しい現場に配属される日が来ました。私は部長に呼
仕事をすることになりました。今まで住み慣れてい
ばれて、「次はどこの現場になるのかな?」と、期
た環境とはまったく違い、しかも 2 年間その環境
待と不安を胸にドキドキしながら待っていると、部
で生活しないといけないという思いから、仕事に取
長の口から「勝部君!次は湯原に行ってくれない
り掛かる前から気持ちが不安になってしまい「誰か
か!」と言われました。当時、我社では地元(鳥取
他の人に変わってもらえないかな?」とか「家に帰
県)を中心に工事をしていたため、十数年ぶりに県
りたい!」というマイナス思考の気持ちでいっぱい
外に進出して工事を行うとの事。まさか県外に進出
のスタートでした。
して工事をするとは、思っても見なかったため、目
3 .悪戦・苦闘の日々
の前が真っ白になりました。
仕事に取り掛かって最初の仕事は施工計画書の作
2 .現場における苦労と苦悩
成でした。この現場に着任するまでは、主に現場に
私の配属となった工事は、日本道路公団発注の工
出て測量業務と写真管理、出来形調書の作成をして
事で、工期は 2 年 2 ヶ月。主な工種としては橋梁
いたため、初めての経験である計画書作成業務は何
の下部工と土工の工事であり、詳細として橋梁下部
を書いていいのか分からず、仕様書を単に複写して
工は橋台 2 基と20∼30
作成するだけでした。発注者の方の反応は・・・
の橋脚 7 基に深礎杭 8 本、
の切土の他、盛土
「たったこれだけしか書いてないの?駄目!書き直
・ブロック積工等、多種にわたる工種があ
して。」と厳しいものでした。やはり厳しい技術集
り、久々の大工事でした。当時、入社 3 年目で部
団と聞いていただけあって、評価は厳しいものでし
の中で一番下っ端であった私にとって、工事の規模、
た。と、同時に「使用機械や施工方法は実際にやる
金額共に想像も出来ないくらい大きなものでした。
ことを具体的に書けばいいんだよ!」というアドバ
しかも、日本道路公団は発注者の中でも最も厳しい
イスを頂きました。「ん?どういうことだろう?」
技術集団と聞いていたので、「なぜ下っ端の俺がこ
初めて計画書を作った私には最初はピンときません
の工事に選ばれたのだろうか?」「本当に俺に出来
でしたが、よく考えてみると、「実際に施工を行う
土工は延長約 2 ㎞で約 12 万
3 , 000
−75−
のは協力会社、使用機械を使うのも協力会社」⇒
測量をしたのが失敗につながってしまいました。パ
「そうか!協力会社の方に実際の施工はどのような
ソコンで計算するから間違いないという発想が失敗
機械を使用して施工を行うのか聞けばいいんだ!」
の原因でした。パソコンに数値入力や現場で座標を
単純なことかもしれませんが、自分一人で何とかし
出すのは私自身なので、間違いが起こるという発想
て作らないといけないという思いから、施工方法に
がありませんでした。このような失敗が無いよう、
ついても一般的な流れしか計画書に書かず、現場に
この後は、パソコン上で座標を出してみて、本当に
適したものを書いていなかったのです。
あっているか絵を描いてみる事により確認とチェッ
こうして、協力会社の方に具体的な施工のアドバ
クを行うようになりました。その結果それ以後の間
イスを受け計画書を作成した結果、承認を得ること
違いはなくなりました。一つのミスが大きな手戻り
が出来ました。
を起こし工期遅れの原因になったり、協力会社の方
計画書作成も終り現場も着工して、少し自信のつ
いた私は初めての発注者の立会に、上司の指示や確
に迷惑をかけてしまうことになると身をもって体験
しました。
もう一つの失敗は発注者の対応による失敗です。
認を受ける事なく、立会準備はしてありますと上司
に報告してしまいました。当日は「現場の状態も良
鉄筋組立作業の時、配筋図の見方が詳しく分からず
し!寸法もバッチリ!今日の立会は大丈夫だ!」と
協力会社の方に任せていました。そして初めて圧接
思い、張り切った思いで発注者の方の到着を待って
作業を見て、ただ私は感心していました。やがて鉄
いました。いざ立会となり発注者の方から「立会願
筋組立が完了し配筋立会を受ける時がきました。
いは?」の質問で立会願いが無いことを指摘され、
「これはどの鉄筋で径の大きさはどのくらいなんだ
そのとき初めて立会には立会願いが必要であること
い?」発注者の方に聞かれても図面の見方が分から
を知りました。そのときは大目に見てもらいました
ず考え込んでしまい、協力会社の方に「これは図面
が、危うく立会を受けることが出来なくなる所でし
ではどれですか?」と聞いてしまいました。すると、
た。今回の失敗は上司の確認を受けることなく、安
発注者の方が「何を協力会社に聞いてるんだよ!元
易に立会を受けたことが原因です。この失敗から自
請がこんなことを知らなくてどうするんだよ!」ま
分で調べその後で上司の確認を受ける必要性を学
た怒られた。発注者の方はあくまで元請に対して立
び、反省と共に教訓として以後事前に何事も調べて
会を行っているのに協力会社の方に目の前で聞いて
行い、それが習慣として身に付くようになりました。
しまったのがいけなかったことでした。
事務所では、出来形立会のための立会願いや資料
ようやく、橋脚・橋台の施工に向かうこととなり、
初めて行う仕事で分からないながらも日々勉強だと
の作成・翌日の測量箇所の計算・報告書の作成・時
思い、一連の流れを把握しながら、測量を行ってい
には遅い時間にもかかわらず、発注者の方からの電
ました。そのような中、測量による大きなミスを犯
話の対応で毎日日付を超える位の残業の日々でし
してしまいました。フーチングの位置出し測量の際、
た。「何のためにこの仕事をやっているのだろう
計算を間違えてしまい、違うところにポイントを出
か?」「誰のために仕事をやっているのだろうか?」
してしまいました。幸い型枠を組む前であったので、
家族を離れて仕事をしていて、毎日の残業で寝る暇
大事にはなりませんでしたが、協力会社に手戻りを
もなかなかなく、心のよりどころもなくなったこの
発生させ職長から怒られ、上司からも怒られ落ち込
精神的状況に耐えられなくなり「辞めたい」と何度
みました。間違いの原因は計算時に方向の点を間違
か考えました。そんな時、上司が「誰だって辛い事
えてしまい、そのまま計算してしまった事によりま
はあるんだよ。今は忙しくて苦しいかもしれないけ
す。座標計算であったため、「パソコン上で計算し
ど、工事は必ず完成して終わるんだ。ここには遊び
ていたから間違いないだろう」という安易な思いで
に来ているわけではない。前向きに頑張ろうじゃな
−76−
いか!」と声をかけてくれました。その時初めて
た。そして、2 年が経過し完成検査の日を迎えるこ
「今までの自分の考え方は常にマイナスだった。プ
とが出来ました。検査当日は部長も立会いに来られ
ラスに考えればきっとうまくいくんじゃないか!」
ました。立会の途中、部長が私の横に来て耳元で
と気が付きました。そしてまた配筋の立会があった
「 2 年間辛かっただろうけどご苦労さん!」その一
とき、事前に予習を行い発注者の方の対応にもきち
言でこの 2 年間が報われたような気がしました。
んと答えると、「やればできるじゃないか。次もこ
完成した品物もなかなかの出来映えで、この世界に
の調子で頼むよ!」と初めて褒められました。
入りたいと思ったきっかけの「地図に残る仕事」が
でき、喜びを分かち合える瞬間でした。
4 .お わ り に
振り返ってみると、この現場に着任してから毎日
我社の経営理念の中に「お客様第一主義、地域貢
書類の日々で現場よりも書類が多かったような気が
献の経営に徹する」「技術の向上を優先に考える経
するのですが、この現場に着任するまでの「地図に
営に徹する」とあります。お客様=発注者の方、技
残る仕事」の考え方は、現場での測量・コンクリー
術の向上=最高の品物を提供する事、徹する=その
トの打設管理・型枠の寸法のチェック・高さのチェ
ことのために頑張る。このようなことを忘れかけて
ックなど、ただ現場でがむしゃらにやる事であると
いたのではないかと自分自身に問いかけると、お客
思っていました。しかし、この現場が完成してから
様→一番に考えていなかった。技術の向上→協力会
の「地図に残る仕事」の考え方は、現場の測量や施
社に聞いているようではダメ!、徹する→自分の時
工管理は当たり前、それ以上に協力会社とのコミュ
間が欲しく甘えていた。
ニケーションの徹底やお客様とのコミュニケーショ
マイナス的な考えからまったく守れていないよう
ン・高品質の施工物を提供することでお客様の信頼
な気がして恥ずかしくなりました。このことを考え
を得て、スムーズに仕事を行える環境づくりが非常
てからはプラスに物事を考えようと改心し、お客様
に大事だと気づきました。
→何よりも1番に!、技術の向上→協力会社から聞
これからこの仕事をやっていて辛いことは何度も
いたこと、施工方法は自分のものにして発注者の対
あると思いますが、私はこの経験を生かし今後もこ
応を頑張ろう!、徹する→とにかく仕事を1番に考
の仕事を続けていきたいと思っています。喜びを分
えよう!と思うようになりました。その結果、時に
かち合える最高の瞬間を味わうために・・・。
は自分ひとりでは負担が大きく挫折したこともあり
ましたが、発注者の方ともスムーズに話が出来まし
−77−
※ 美保テクノス株式会社
25
工事現場におけるヒューマンエラーによる労働災
害対策と、河川工事における環境対策について
(社)高知県土木施工管理技士会
細 木 仁 ※
が直接河川に流出するようなことはない。しかし、
1 .は じ め に
台風等で河川が増水した場合、確実に現場内は水没
当工事は高知県西南部を流れる清流四万十川河口
し、資材や油類等の河川への流出による環境への影
部に既存する河川堤防の河川側部分を一部掘削し、
響と、施工中の堤防の法面の水没、降雨等による法
張コンクリート、法面ブロックを打設設置し終了後、
面土砂の流出等によって生じる堤防の破損が問題だ
掘削土で再度覆いを行う工事(全長600
)を主体
った。又、ここ四万十川では、冬季期間中(12月
とし、その他河川敷への搬入路の移設、階段工、混
∼ 3 月)青海苔漁の時期を迎える。青海苔漁自体
合土舗装等がある。
は川の中で行う漁であるので問題はないが、収穫後、
河川敷内に場所を設け天日干しを行う。この天日干
2 .現場における課題・問題点
しを行っている間に青海苔にゴミや埃が付着してし
この工事について、簡単に言えば堤防の表土を剥
まうと商品価値がなくなってしまうが、この天日干
がし、コンクリートとブロックを打設し、表土を戻
しを行う場所が現場と隣接する。川漁師の方々の貴
すという技術的には単純に見える工事であるが、そ
重な収入源である青海苔漁で工事による損害を与え
の数量が法面コンクリートが8000
、ブロック据
た場合、工事に与える影響は、計り知れない。従っ
付個数が6000個と施工量が多く、しかも同じ工程
てこの時期の作業方法、防塵対策は十分検討協議し
の巡廻であり作業内容も移動式クレーンを使用した
絶対に損害を与えてはならなかった。
法面上での吊荷作業という危険作業で、日々の作業
3 .対応策・工夫改良点
のマンネリ化によるヒューマンエラーでの重大災害
を極めて起こしやすい状況が予想され、個々の作業
その1、ヒューマンエラー防止対策。
員の安全意識の向上と持続が不可欠であった。それ
が一つ目の課題・問題点である。
この工事で作業を行う業者は、自社も含めて、全
て高知県西南地区の業者で、県外の業者や大手ゼネ
2 つ目は、当工事は河川敷内での工事であり、河
コン関連の工事経験者は少なく地元近辺で工事を行
川への環境対策を留意しなければならなかった。具
ってきた者が多かった。差別する訳ではないが経験
体的な問題として、工事期間が初夏から早春までに
上、都市部で大勢の競争相手に揉まれている下請け
なっており、工事の初期の段階で台風シーズンに突
業者などと比較すると、こと安全管理に関してはか
入することであった。実際工事場所は河川敷内に存
なり考え方の差がある。今工事の業者でも、例えば
在するが、河川からは多少離れており、工事排水等
朝礼後の危険予知活動は、「そういうものがある。」
−78−
ということは理解しているがこちらが指導しない限
として、3 つ以上は危険ポイントを出す。前日とは
りは何も行わない業者が多かった。他にも作業を統
違った意見を出す。この 2 つを基本として繰り返
括する職長が存在しない作業班もあり、先ずはそこ
しの作業の中で、知恵を出し合ってマンネリ化を防
から改善していくことにした。先ず、各作業班の職
ぐよう努めた。また週 1 回、職員又は会社役員で
長を集め写真撮影し、その写真を朝礼場の掲示板に
抜き打ちの安全パトロールを行い、不備があれば直
貼付け、各職長が担当する作業内容と職長の役割を
ちに是正指示を出し、それでも改善されない場合は、
説明した文面も同時に掲示した。又、名札を作成し、
その会社の安全責任者を呼び、職長を含めて協議、
各職長に見易い所に付けさせ、誰が現場にきても解
指導を行った。この抜き打ち安全パトロールは作業
るように工夫し、職長に使命感を持たせるようにし
員、下請会社から反感を買ったが、作業員に緊張感
た。最初はどの職長も嫌がり名札を付けるのを拒否
を持たせるには、事前に知らせては意味がないと考
する者もいたが、根気よく説得していけばこちらの
え、工事終了まで行った。
趣旨を理解してもらうことができた。前述した職長
これにより現場内のマンネリ化した雰囲気がだい
が存在しない作業班については、現場職員が候補者
ぶ改善された。しかし、それでも作業中‘ヒヤリ’
を選びこの工事の暫定的職長ということで説得し、
とさせられることが何度かあった。その際は、その
作業を遂行していった。又、毎日昼休みか作業後に
日の昼休みや休憩時、翌日の朝礼時などでヒヤリ、
必ず各職長が集合し、安全に関する反省会を作業打
ハットの協議会を開き再発防止に努めた。以上の活
合せの後に行った。これと平行して行ったのが、毎
動を行い、無事、無事故で竣工できた。工事の最後
朝行う危険予知活動をマンネリ化させず充実した活
の方では作業員個人個人が安全に留意して作業がで
動を行わせることであった。前述したようにこの工
きるようになった。
事の作業員の多くが危険予知活動の意味、方法、そ
その2・河川工事における環境対策
の効果を理解していなかったので先ずはそこから始
河川の環境対策で事前協議を行った。実際に工事
めることにした。まず月4時間の安全教育訓練の時
を行いだすのが 8 月下旬からだったが台風等での
間を利用し、どれだけ作業員が危険予知活動や安全
大雨やその大雨で河川が増水した場合、どの時点で
についての知識があるか、簡単な10∼20問程度の
機材の引き上げや、掘削部の埋戻し、表土を削った
ペーパーテストを作成しテストを行った。30分程
法面の保護を行うかタイミングが分からなかった。
度時間を割いた後、その問題 1 つ 1 つ説明しなが
そんな折、現場へ入る 2 週間程前に実際に台風が
ら回答していった。これで約 1 時間使い次はグル
接近してきた。この時、上流部の数箇所と現場付近
ープに分けて予め作成していた解説付きの作業の簡
の水位と降雨量を 1 時間毎にデータを取りそのデ
単な絵を使って「この絵を見てどんな危険が潜んで
ータを比較して検討した結果、上流部のある地点で
いるか。対処は。」等の問いに対し各グループで協
水位が 2
議し、その後グループ毎に発表した。このような教
河川敷が水没し始めることが判明した。又、その台
育を 1 時間、計 2 時間行い半月後にまた前回行っ
風の最高時間降雨量が30㎜であった。このデータ
たテストをお浚いに行い、成績が良ければ次のステ
を基に検討した結果、時間30㎜以上の降雨量を記
ップの問題に挑戦した。このような教育訓練を約 4
録した場合は堤防法面の保護(シートで覆う)を行
ヶ月程徹底して行った。最初は手探り状態で、真剣
い、上流地点が 1
に取り組んでくれるか心配したが、全員真剣に取り
掘削部の埋戻しを行うこととした。実際現場に入っ
組み日々の危険予知活動にも効果が現れた。一方、
て半月後に時間 30 ㎜を超す大雨が降ったのだが
現場の方では日々の危険予知活動の際職員も必ず参
1000
加し、活動終了後指導を行った。活動時の決まり事
で、設置に時間が掛かり、設置終了時には雨は上が
−79−
上昇すると約 3 時間後には現場付近の
水位が上昇すれば機材を撤去、
程の法面を保護しなければならなかったの
っている始末だった。この結果を踏まえて法面の保
季節が冬季だけに凍結を心配したが問題なかった。
護に関しては、早急な対応は無理と判断し、表土の
この結果を踏まえて午前中の 8 時、10 時、12 時。
除去時に順次シートを設置することとした。これに
午後は18時∼19時程度に 1 回、雨天以外は毎日散
より法面の侵食及び乾燥時の粉塵防止にもつながり
水する計画とした。実際に漁期に入ってからは漁師
十分な成果を得ることができた。資機材の移動に関
の方と日々連絡を取り合い少しでも粉塵が発生すれ
しては、事前の計画どおりの行動で問題なく処理出
ば早急に散水を行った。結果として粉塵による被害
来たが、夜間に増水が予想される際は事前に移動、
は避けられ、休日や正月期間中も休まず管理を続け
撤去、埋戻しを行った。
たことで、漁協や漁師の方々とも良好な関係で竣工
工事が冬季に入り、青海苔干し場の粉塵対策につ
いて詳細な協議に入った。青海苔漁は実際、12月
できた。ただ散水車の賃貸料が 高額になったのが
反省点で、もっと経済的な工夫が必要だった。
中旬から 3 月下旬まで漁期で、雨天以外は毎日行
4 .お わ り に
う。又、この工事で河川敷への搬入路の移設工事が
あり、工事中は一般者は迂回路を利用してもらうこ
現在の安全管理の傾向に対して一言。近年、労働
とになるが、この迂回路が干し場と隣接されており
災害に対する社会的処罰は非常に厳しいものがあり
且つ観光バスが 1 日10便程迂回路を往来する。従
ます。発注者によっては、2 週間以上の通院の労働
って我々が防止しなければならない事項は、第1に
災害は指名停止の対象となったり、鋼芯入りの長靴
工事で発生する粉塵防止。第 2 に工事の休日中、
や地下足袋が義務付けられたりと受注業者に対する
乾燥、強風等により生ずる現場からの自然粉塵の防
の罰則や規正は益々厳しくなってきているように思
止。第 3 に迂回路走行中の観光バス等の一般車か
います。連帯責任により元請業者にリスクを与える
らの粉塵の防止であった。防止策案として、干し場
管理方法は確かに有効だとは思います。しかし前述
側に防塵用の高さ 2 M程度の防護柵を検討したが、
したような最近の状況を見ると、「何故其処まで?」
季節風に対し強度的に無理があり断念した。続いて
という疑問にどうしても捕われます。例えばある国
塩化カリウムの散布を考えたが、一般車に錆び等の
では、完全に自己責任「自分の体は自分で守れ」で
障害がある理由で観光協会の方から反対があり却下
死亡事故などの重大災害以外は会社側が責任を負う
した。他にも様々な方法を検討した結果、賃貸料は
ことはあまりありません。だから現場に服装がラン
高価であるが、定期的に散水車による水の散布が有
ニングに短パン姿の作業員が大勢作業しています。
効という結論に至り実行することとした。まず漁が
勿論それが理想と言っている訳ではありません。双
始まる前に漁協副組合長や漁師の方に漁の方法、海
方を比較してみると、それは我が国のとっている管
苔の干し方、干し時間、漁の人数等を詳しく情報入
理システムの方が優れているのは確かです。しかし
手した。その結果、青海苔は早朝に採取し、採り次
このままでは規則や処罰で現場が雁字搦めになり作
第洗いにかけ干し場で乾燥さし午後 1 番には収穫
業に支障をきたしたり、逆に悪質な労災隠しが蔓延
を行う。即ち早朝から午前中まで埃らさなければ、
するのではないか危惧します。勿論、作業員に対し
青海苔漁に影響がないことが判明した。次に風の強
指導、教育等は徹底して行う責任はありますが、そ
い日を選び、日中に数回と作業終了時に散水を行っ
れ以外の責任はもっと個人に取らさせても良いので
て経過を調べてみた。その結果日中で約 2 時間は
はないでしょうか、そうすることで作業員も自覚を
粉塵を防ぐことが判明し又、作業終了後日没に散水
持って作業に当れるのではないかと考えます。
すれば、翌日の始業時まで粉塵が立たたなかった。
−80−
※ 刈谷建設株式会社
26
地域活動を通してのイメージアップ
(社)高知県土木施工管理技士会
西 内 俊 二 ※
②中学生の進路学習の一環として、社会人一日講師
1 .は じ め に
から職業観や労働観を学ぶ取り組み「ジョイン
ト・コミュニティ」に2000年から参加。
私が今まで大切にしてきたことは、『土木建設業
のイメージアップ』をしたいと考えるよりは、まず
③将来、土木・建設業に従事するであろう高等学校
地元地域に根付いた企業として、また地域の青年と
土木科生徒の現場実習の受け入れ。
して、自分が生まれ育ったふるさとにどのようなこ
高等学校の現場実習は、県建設業協会が主体とな
とができるのか、また地域の子ども達にふるさとに
っての取り組みとして行っているが、小・中学校の
誇りを持ってもらいたいという想いからの「地域活
取り組みは地域の特性を大切にした学校の教育目標
動」であった。
のもと、学習のねらいに沿って、進めることとなる。
地域行事である盆踊り・夏祭り・秋祭りに社用車
また、全く土木・建設業を知らない子ども達に土
である軽四トラックやダンプカーで荷物や器具の搬
木・建設業がどんな内容の仕事で、またどのように
送を行い、またヤグラやテントを組み立てる作業を
自分たちの生活や社会に関わっているのかというこ
行った。祭りの時には、地域の保護者や保育所・小
とを中心に発信している。
学校・中学校の先生方と一緒に綿菓子や焼きそば・
2 .小学校の取り組みについて
福引きなどの出店を行ってきた。祭りに参加してい
くことで、地域に住んでいる子どもや高齢者の方と
小学校では、毎年二学期に『わくわくタウン・ス
も関わりが持て、世代を超えての交流になっている。
タディ』という人権総合学習を行っている。『自分
私は、地域行事に参加していくなかで子ども達に
たちの地域を見つめ、みんなの生活をより高めよう
少しでも土木・建設業について知ってもらいたい、
と努力している人々の姿から、その力強さやたくま
また土木の素晴らしさや凄さをもっと分かって欲し
しさ、あたたかさ等を感じ取る。そして、みんなが
いという思いを持っていた。その中で地域の小・
生活しやすい町を作るために人権問題に気付き、ど
中・高等学校からの依頼があり、近年様々な取り組
んな活動や協力ができるか考え合う』という学習の
みに参加している。以下、簡単に紹介を行う。
ねらいを持っている。
①自分たちの地域をフィールド・ワーク(校外調査
今回の学習を取り組んでいく中で一番大切に考え
活動)をすることで、地域にある産業やそこで従
たことは、人権学習という視点で土木・建設業を捉
事している人から小学生が労働観を学ぶ機会があ
え、伝えていくことである。私は、家業である土
る。2001年から講師の一人として参加。
木・建設業を子どものときから手伝いをしてきた。
−81−
その中で、様々な大人の発言から他業種の仕事と比
壊等に対して緊急に対応していることも知ってもら
較しての土木・建設業に対しての偏見やマイナスイ
った。
メージを多々感じることがあった。そこには、きち
その後、視聴覚教材として、現在自社で施工して
んとした本当の情報が伝えられず、無知や「ステレ
いる工事現場の作業状況をビデオ撮影したものを見
オタイプ」から発生したマイナスの面だけがクロー
せた。自分達が生活している近隣の現場の着工前・
ズアップされていた。やはり、情報が偏らず、真っ
施工中・完成の流れを映像で見せることで、土木・
白なままの子ども達に土木・建設業の素晴らしい面
建設業とはどのように仕事をしているか知ってもら
も苦労する面も両方伝えることが重要であると考え
えたと思う。また、自社の倉庫内に並ぶ工事で使用
る。
する道具や材料を見て、触り、独特の土や木、油の
また、学校の先生方から土木の仕事に使う重機
におい等を肌で感じてもらった。
(バックホウ)や機械に子ども達を乗せて体験させ
続けて、私が仕事を選んだ理由や仕事をしていく
たいという要望があった。私も土木施工がどのよう
中での喜びや苦労したことを話した上で、周りの人
なものであるか、実際に見て、体験をさせてあげた
の無知から発生している土木・建設業に対する偏見
いという気持ちがあると同時に、実施においての安
やマイナスイメージに対して実際はどうなのかとい
全面・学校の授業後の安全面が気になった。まず、
うことを話した。しかしながら、子ども達にどこま
子ども達全員が試乗できる時間的なこと、子ども達
で私の想いが伝わるのか心配であったが、授業終了
に対応する職員と様々な問題が出てきた。何よりも
後の子ども達の感想文から想いが伝わっていること
今後の安全面を一番に考慮してバックホウの試乗を
が分かり、改めてきちんとした情報や知識を伝え、
行うことを止めた。なぜなら、要望を頂いた時点で
教えていくことの重要性を感じた。
の実施する場合は地域内にある自社の土置き場での
子ども達から「土木が私達の生活のいろいろな所
試乗しかなかった。それ故に興味を持ってくれた子
で役立っていることが分かった。」「土木業をしてい
ども達が今後、作業員がいない間や作業時間外に土
る人や土木技術のおかげで毎日安心して生活できて
置き場に入ってくる可能性を想定したのである。今
るんだなと思いました。」「仕事に上下はない。それ
後の体験活動で、試乗については全員が試乗できる
ぞれの人がそれぞれの役割をするものという言葉が
時間の確保、対応する職員数、危険についての情報
とても心に残りました。」という感想をもらった。
最後に、生徒の一人がこの学習で学んだことを作
提供、学校近隣での作業場の確保等、条件を満たし
たなかで試みたいと考える。
文に書いたところ、県内の『人権の主張』で入選し、
授業では、子ども達に土木・建設業の話をする時に
新聞やテレビで放送された。これらのことは、私自
身とても嬉しく、今後の活動だけでなく、仕事の面
まずいくつかの質問を行った。
①毎日の登校・下校にはどこを通って学校へ来てい
についても大きな励みになった。
るか
3 .中学校での取り組みについて
②テーブルの上に並ぶ朝ご飯や晩ご飯の食材はどこ
を通って運ばれているか
中学校では様々な進路学習(夏休み職場体験・ボ
③自分たちが生活に使った水はどこを通って処理場
ランティア活動)や人権学習を通じて、仲間と共に
に行くのか
自分たちのこれからの生き方や将来の進路について
などの質問を投げかけて、子ども達の意見を導き
考えることを目的に、
出し、その答え(道路や下水道・河川)から土木の
①社会の様々な分野で働く人たちから生の声を聴く
仕事が自分たちの実際の生活に関係していることを
ことで、働くことの意義や心構えを学び取り、自
認識させた。また台風災害時の地域の山や河川の崩
己の進路を真剣に考え、切り開いていく力を育成
−82−
する。
える・育てることの難しさや大切さが分かった。ま
②「開かれた学校づくり」の一環として、企業人・
た、ビデオを見る真剣な眼差しや予想もしない質問
地域の人々・保護者の「生きざま」や「仕事に対
を笑顔で投げかけてくることや子ども達の飾らない
する姿勢」に直接触れ、地域社会の教育力を学校
言葉、率直な感想から現場では味わえない喜びを頂
現場に導入するとともに、地域教育の掘り起こし
いた。
に努める。
分かりやすく伝えることの難しさや重要性と伝わ
③異業種に働く人たちの声から学び、教員の社会性
ることの嬉しさを踏まえて、業界の技術的なことと
の伸長を目指す現職教育とする。
共に人間性も磨いていく『教育』を今後の自社に活
という重点目標に掲げて学習している。
かしていきたい。
この授業では、将来どのような仕事をしたいかと
いう夢を持った子ども達に土木・建設業の内容を重
点的に自分自身の経験や今まで歩んできた生きざま
と重ねながら話をさせて頂いた。
これから土木・建設業に興味を持ち、携わってい
く子ども達にさらに『ものをつくることの喜び』
『できたことの楽しみや感激』また受け継がれてい
る伝統的な職人の技術力の凄さを伝えていくことが
まず、仕事の内容については先の小学校で使った
重要だと考える。
ビデオを使いながら、土木・建設業がどのように自
ふるさとへの想いや願いから地域活動をスタート
分の生活に関わっているのか、仕事上の喜びややり
し、『地域の教育力』として学校と交わっていくこ
がい、悩みや工夫したこと、また具体的に土木・建
とが、結果的には土木・建設業の『イメージアップ』
設業に必要な資格や免許、どのような学習や能力、
を行えたと考える。
適性が必要とされているか、更にどんな人材を会社
子ども達が、実際に感じ、学んだことを子ども達
が求めているか。また、私自身の中学校時代を振り
の親や土木・建設業を知らない人達に発信すること
返って、中学生にこれからの進路をどのように考え、
ができるのではないかと考える。
学校生活をどのように送るか等をアドバイスした。
生徒たちは真剣に聴いていた(写真)。
このような活動を継続していくことによって、子
ども達が自分のふるさとを大切に想い、また土木・
建設業界で活躍したいと思うことを願い、これから
4 .お わ り に
も地域と共に歩んでいきたいと考える。
地域の学校の取り組みに参加して、改めて人に教
−83−
※ 有限会社 西内土建
27
河川浚渫工事における工程管理
∼レーザーレベル及び GPS 無線の効果的応用について∼
(社)高知県土木施工管理技士会
弘 田 隆 啓 ※
工事の概要
1 .は じ め に
工事名国分川河川激甚災害対策特別緊急工事
発注者 高知県監理課
私が担当した工事は、98高知豪雨(1998年 9 月
24日未明から25日朝にかけ、高知市に総雨量858㎜、
工事場所 高知県高知市高須他地区 時間最大雨量は106㎜を観測する降雨があり、増水
工 期 自平成14年12月26日∼至平成16年 3
した河川の水が堤防を越流し、大津、布師田、高須
月31日
地区を泥の海に化した記録的な集中豪雨)規模に対
工事内容:河川浚渫工・土捨工・瀬取り工・沖捨
応できる流下能力を確保するための高知市東部を流
工
れる国分川河川浚渫工事である。
L=3 , 050
V=328 , 200
、礫混り土V=51 , 100
(砂質土V=277 , 100
)
施工方法
浚渫土の沖捨て場所は、高知灯台沖約 5 ㎞に指
定されており、浚渫から沖捨て作業はすべて船舶を
使用した。
①浚渫工:バックホウ浚渫船(1 . 0∼2 . 0
より浚渫した土砂を小型土運船(300
積)に
積)に積
込む(写真− 1 )。
②土捨工:小型土運船 9 隻を小型曳船(300ps)2
隻にて瀬取り場所まで運搬する。
③瀬取り工:浚渫土砂を瀬取船にて大型土運船に積
図− 1
写真− 1
−84−
浚渫状況
で3 . 5㎞を、1 日 2 往復することにより、
浚渫・運搬サイクルの効率化を図るこ
ととした。
この結果、浚渫区域から瀬取り場所
までの間を 9 隻の小型土運船が 1 日当
り延べ18往復( 1 往復 2 時間・運搬土
量300
/1 回・隻)することとなる。小
型土運船が 1 往復する際 2 ∼ 3 回の小
写真− 2
型土運船同士のすれ違いを生じるが、
土捨状況
替える(写真− 2 )。
橋梁の径間が狭いため橋梁付近でのすれ違いが出来
④沖捨工:大型土運船(1 , 000
積)を大型曳船
ず、どちらかの土運船が待機をすることになる。
加えて大潮時は潮位の変動が大きいために、浚渫
(2 , 000ps )にて高知沖に運搬し沖捨を行う(運
区域から瀬取り場所へ運航途中に航行不能になる可
搬距離約13㎞)。
能性がある。このため小型土運船の運航管理は、工
2 .現場における課題・問題点
程上の最重要課題となる。
以上、土運船運航時間に影響を与える潮位管理の
工事施工上、特に浚渫工・土捨工に下記の課題が
あった。
精度の向上、更には運航時間中の運航状況を如何に
①浚渫区域が感潮区域に位置しており、干潮時には
的確に管理するかが当現場の運営上の鍵となる。
水深不足により曳船の航行が困難になる。一方、
3 .対応策・工夫改良点
満潮時に土運船と橋梁(浚渫区域∼瀬取り場所は
8 基の橋梁がある)とのクリアランスが不足し、
土運船は航行不能となる。
対応策の基本方針は従来の方法を検討し、不十分
であるならば他の分野で使用している機械・方法の
このため、浚渫作業時間は土運船航行可能時間
に拘束されることとなり、1 日平均作業時間は日
応用を検討することにした。
潮位管理
中作業時間12時間( 7 時∼19時)中 9 時間と大
きな制約を受けることとなる。
②浚渫区域施工延長約 3 ㎞、幅約30∼100
従来の方法:潮位板を設置して潮位を管理する。
・目視によるので、遠方になるほど誤差が生じやす
と細長
い。
く、施工面積は約25万㎡と広大である。仮に10
・測定単位が10㎝単位である。
㎝の深掘りとなると2 . 5万
の余掘りとなり、経
・浚渫区域は図− 1 のように屈曲していて、また橋
費的には勿論、工程上も約18日の工程の遅延と
脚があり視界の妨げになるので、当現場において
なる。更に大潮時には1時間当たり30㎝程の潮位
は潮位板を15箇所設置する必要がある。その設
の変動があるため、潮位管理の精度の向上が施工
置及び維持管理の手間も必要となる。
管理上の重要な課題となる。
・他工事もあり、また河川護岸は被覆石で覆われて
③工程が厳しく、8 ヶ月間で土量約40万
(328 , 200
×1 . 2≒393 , 840
葦も群生しており設置場所が限られている。一般
、1 . 2は土量変化率)
船舶の航行があるため河川内に直接設置が困難で
の浚渫を行う必要がある。
ある。
この為、浚渫には 3 隻のバックホウ浚渫船(1 . 0
∼2 . 0
対応策:レーザーレベルによる潮位管理
積)を使用し、各浚渫船にはそれぞれ 3 隻
レーザーレベルを堤防上に設置し、その器械より
の小型土運船を配備して、浚渫区域より瀬取場所ま
レーザーを発信させ、浚渫船においてはスタッフに
−85−
写真− 3
取付けた受光器によりレーザーを受信し、
その時のスタッフ値を目視し潮位を計測
する。これにより以下のことが可能とな
った(写真− 3 )。
・現場の地形に左右されず800mの広範囲
で観測可能である。
・潮位を手元で確認できるため、5 ㎝単位
写真− 4
モニター画面
で読むことができる。
運航状況の管理
ることにより、より精度の高い出来形管理ができた。
従来の方法:警戒船を配備して管理する。
運航状況を管理するためにGPS無線を使用すること
橋梁の上下流に配備すれば16隻の警戒船が必要
により、現場事務所での一括管理、また浚渫工、瀬
となり連絡方法が煩雑になり情報が局所的になる。
取り工との円滑な調整が可能となった。この 2 つ
運航している土運船全船のリアルタイムな把握は困
の管理方法の採用により、土運船航行可能時間を出
難である。よって、一般航行船舶への警戒にのみ河
来る限り長く、かつ効率よく利用できたと確信して
川合流点 4 点に配備した。
いる。このことにより工期を余して工事を完成する
対応策:GPS 無線の使用
ことができた。
タクシー等に使用しているGPS 無線を使用する
4 .お わ り に
ことが出来ないかと考えた。小型無線機と発信機を
小型土運船を曳航する小型曳船に設置し、無線機と
現場を効率よく運営する上で、使用機械の選択は
受信装置を現場事務所に設置して小型土運船の動向
重要なことである。今回、この現場を担当して、使
をモニターにて管理することを考えた。これにより
用機械の選択もさることながらその使用する機械の
以下のことが可能となった。
能力を十分に発揮するために、現場の特性に応じた
・船舶の選別が出来、リアルタイムに動向確認が可
管理方法を如何に選択するかが重要であることを改
能である。
めて痛感した。
・モニターにて動向管理が出来る為、現場全域の運
また、従来と違った管理方法を選択する過程の中
航状況の把握が可能である(写真− 4 )。
で、他分野では当たり前に使用されて機械・方法に
・受信範囲が広い(基地局から約半径10㎞)。
目を向け、その応用を考えることは解決への糸口に
・無線機による搭載複船に一斉通話、個々判別通話
つながることを確信した。
が可能である。
※ 大旺建設株式会社
以上、潮位管理においてレーザーレベルを使用す
−86−
28
薄土被りの軌道下ボックスカルバートの施工
(社)高知県土木施工管理技士会
百 代 淳 一 ※
mでは水管橋とも交差する。同時に他工事と隣接し、
1 .は じ め に
輻輳する作業も多く施工には多くの制約がある。
図− 1 にボックスカルバート推進区間平面図、
近年の災害は、一点集中のゲリラ的様相を呈し、
図− 2 にボックスカルバート推進区間縦断図を示
短時間で、甚大な被害を発生させている。
平成16年を振り返って見ても、静岡県静岡市地
す。
方、新潟県南部・福島県西部地方、愛媛県東部・香
3 .技術的問題点と解決策
川県西部地方等において豪雨災害が発生し、莫大な
資産が流出した。
今回の工事では、農業用水路を施工するに当り、
私の住んでいる高知県においても、1970年以降、
供用中の国道及び路面電車軌道下を横断せねばなら
大きな豪雨災害が 4 度発生し、103名の死者・不明
ず、工事の中で、これを問題点とした。
者を出している。平成10年 9 月24日未明より降り
3−1
技術的問題点
だした雨は、最大時間雨量 129 . 5 ㎜、最大日雨量
ボックスカルバートの施工は、刃口推進工法によ
628 . 5㎜の高知地方気象台の極値を記録し、高知豪
るものであったが、土被りが路面電車軌道下98㎝
雨災害を発生させた。
と非常に浅く、土質も盛土地盤であり、N値10程度
と比較的軟弱である。
2 .工事の概要
そのため、施工に伴う地盤変位に対し、一般車輌
本工事は、平成10年 9 月に発生した高知豪雨災
や路面電車の安全通行が最重要課題であり、下記事
害の復旧工事の一部であり、河川改修に伴う護岸復
項について検討を行った。
旧および農業用水路の改修工事である。
①路面電車軌道の不等沈下量は、7 ㎜/
工事の規模は、護岸復旧工L=15
る。(路面電車会社の内規による。)
、農業用水路
、
②パイプルーフの空気削孔は、漏気による軌道路盤
、逆サイフォン立坑 2 基、
の掘り緩めや、騒音・振動が大きいため、これの
ボックスカルバート 1600 × 1000 ㎜、L =86 . 6
1000×1000㎜、L=31 . 6
以下とす
大型水路W=1600㎜、L=12 . 0
代替案の検討。
である。
現場は、農業用水路が国道及び路面電車軌道下を
③交通規制時間等、施工時間短縮方法の検討。
パイプルーフの施工
ボックスカルバートで横断し、既存水路へ大型水路
を介して接続する。なお、前述交差箇所は、路面電
①パイプルーフの土圧分担幅の再検討及びルーフ材
車軌道のポイント及び停留所がある。また、上空 7
の継ぎ手部分の強度確認を行い、鋼管の肉厚を
−87−
図− 1
図− 2
ボックスカルバート推進区間平面詳細図
ボックスカルバート推進区間縦断面図
図− 3 に薬液注入工注入計画図を示す。
4 . 5㎜から8 . 6㎜へと変更した。
施工は、発進立坑から水平注入することにより、
②パーカションドリル工法より、騒音・振動が少な
交通への影響を最小限に抑える計画とした。
いボーリング方式での削孔に変更した。
地盤改良
動態観測
刃口推進掘削時の切羽自立とボックスカルバート
施工中は国道及び路面電車軌道の高さを常時観測
の自重による沈下の低減、不測の湧水防止を目的と
し、計画値と実測値を対比しながら、施工する計画
して、溶液型薬液注入による地盤改良を計画した。
とした。
工期短縮
地盤改良範囲は、ボックスカルバートの周囲(幅
の
当初設計では、夜間施工の計画であったが、前述
区間は地山部分が大半と想定されたため、それより
の方策を組み合わせ、昼夜 2 交代作業へと変更し
河川側の範囲))とし、5 本× 2 段の注入計画とし
た。
3.6
、高さ2 . 5
、延長10
(発進立抗より 4
た。
4 .対策に対する効果と考察
また、薬液注入による地盤の隆起を防止するため、
上段では 25 %、下段では 30 %の注入率とした。
−88−
前述の方策を実施し、地盤の不等沈下量は、3 ㎜/
図− 3
薬液注入工 注入計画図
以内に収めることができ、一般
車輌や路面電車の安全通行を確
保した。また工期面では刃口推
進工事に関る部分で約2週間の短
縮を達成した。
刃口推進工法によるボックス
カルバートの出来形を、表ー 1
に示す。薬液注入による地盤改
良を実施したが、掘削の進捗に
伴い、河川に接近するほど盛土
地盤の含水量が増加し、一部湧
水箇所が確認された。その影響
で、掘削左側へ14㎜、計画高さ
で15㎜の誤差を生じた。いずれ
表− 1
推進成果図
も許容範囲内の誤差ではあるが、
薬液注入方法を、夜間国道及び路面電車軌道上から
ント能力が必要となってきた。
の垂直注入とすれば、もう少し精度良く施工できた
と思われる。
本工事においても、前述の様な施工条件の中で、
これまでの経験を最大限活用し工事を無事完成させ
また、補助工法についてはパイプルーフの鋼管強
度の増加及び、薬液注入による地盤改良を実施した
た事は、土木施工管理技士としての責務を果たした
と考える。
が、補強効果の相互関係を明確にできなかったこと
が、反省点である。
これまでにも、社会資本整備を中心的に担ってき
た我々土木施工管理技士は、高度化する住民のニー
ズに応えると共に、民衆の安全と福祉の向上を図り、
5 .お わ り に
更なる経済の発展に寄与するため、継続研鑚の努力
都市部での土木工事は、近年特に施工環境の悪化
をしていかなければならない。
が著しく、施工に当っての高度な技術力とマネジメ
−89−
※ 大旺建設株式会社
29
大型クレーンによる鋼製トラス橋の撤去
福岡県土木施工管理技士会
大 石 秀 幸 ※
水質汚濁防止に配慮した工法が求められた工事の報
1 .は じ め に
告です。
当工事は、一般国道209号の福岡県山門郡瀬高町
2 .現場における課題
と筑後市を結ぶ矢部川に架かる船小屋温泉大橋の開
通に伴い、昭和 4 年(1929年)に供用開始された
当初設計では、図− 1 に示すように河川内にベン
中ノ島橋(RCコンクリート橋、7 径間、橋長L=
ト基礎を設置し旧橋上よりトラッククレーン(25 t )
80 . 0
で鋼材を吊った状態でガス切断による解体計画であ
、幅員W=6 . 6
)と船小屋橋(鋼製トラス
橋、2 径間、橋長L=82 . 1
、幅員W=7 . 5
)の
った。
旧橋撤去工事です。工事場所の清流矢部川は、一級
しかし、この工法での解体作業には、次のような
河川でアユ等の淡水魚が多く生息し、中洲の中ノ島
問題が発生しました。
公園には国の天然記念物に指定された緑あふれる大
①旧橋上にクレーンを設置しての解体作業は幅員が
楠林があり、河畔には船小屋温泉郷がある旅情豊か
な場所での施工です。河川管理者及び内水面漁協と
狭く旋回できない。
②河川内のベント基礎設置は河川汚濁が予想され
の協議により、短期間で安全に振動・騒音が少なく
図− 1
る。
当初設計
−90−
図− 2
650tクレーン設置図
③トラス橋の強度検討の結果、鋼材の腐食と老朽化
記念物の大楠、右岸側にはホテル群があるため、自
により部材を切断・撤去すると橋全体がバランス
然保護・振動騒音問題が懸念され、又、構台工事費
を失い崩壊する恐れがある。
が割高になることが分かりました。
④河川管理者及び内水面漁協との協議により施工時
3 .新技術の内容
期を12月より翌年2月までとする。
上記の問題を解決するため、下記の 2 つの工法
こうした課題を解決するため、大型クレーンによ
を検討しました。
る撤去工法を採用することにしました。大型クレー
①河川内に作業構台を設置しクローラークレーンに
ン(トラッククレーン650 t 吊)の作業半径・吊能
力等を検討した結果、図− 2 に示すように 1 ブロ
よる撤去。
②大型クレーンによる撤去。
ック(荷重75 . 3 t )、2 ブロック(荷重49 . 7 t )、3 ブ
しかし、①の工法については支持杭の打設により
ロック(荷重25 . 6 t )に分割することにしました。
河川の水質汚濁が予想されると共に、左岸側に天然
写真− 1
まず、河川内にアスファルト殻・コンクリート殻
コンクリート床版撤去完了
−91−
写真− 2
写真− 3
トラス橋吊上げ状況
トラス橋 2 次解体状況
等が落下しないように吊り足場を設置しコンクリー
2 次解体を行い処理業者へ搬出しました(写真−
ト床版をカッターで切断、バックホウ・人力にて取
3 )。
壊しトラス橋の鋼材のみとしました(写真− 1 )。
4 .お わ り に
次に、河川内に中ノ島公園土砂掘削の発生土で進
入路を造成、図− 2 の位置に重装備の大型クレーン
鋼製トラス橋の撤去に大型クレーン(650t吊)
を設置し、トラス橋上部に吊ピースを溶接、クレー
を使用し、鉄骨カッターを装着したバックホウにて
ンにて仮吊り上げ地切りをおこない、鋼材が崩壊し
2次解体することで、大幅な工期の短縮と高所での
ない事を確認の上、トラス橋を河川敷の仮置場へ吊
ガス切断作業が無くなり安全な作業が確保でき、工
り下ろしました(写真− 2 )。
期内に無事故・無災害で工事を完成することができ
次に、吊り下ろしたトラス橋は解体用鉄骨カッタ
ました。
ーを装着したバックホウにて積込み可能な大きさに
−92−
※ 株式会社 廣瀬組
30
旧橋撤去工事における
乾式ワイヤーソーシング工法
福岡県土木施工管理技士会
後 藤 知 治 ※
当初設計では、橋台・橋脚をワイヤーソーイング
1 .基 本 事 項
工法にて各ブロックに切断しクレーンで吊上げてト
当工事は、一般国道209号の福岡県山門郡瀬高町
レーラーに積込み、産業廃棄物処分場に運搬し処分
と筑後市を結ぶ矢部川に架かる船小屋温泉大橋の開
する計画だったが、通常のワイヤーソーイング工法
通に伴い、昭和4年(1929年)に供用開始された中
では切断時にワイヤーの冷却に大量の冷却水が必要
ノ島橋(RCコンクリート橋、7 径間、橋長L=80 . 0
となり、濁水の河川への流出が予想されました。
、幅員W=6 . 6
)と船小屋橋(鋼製トラス橋、2
径間、橋長L=82 . 1
、幅員W=7 . 5
3 .新技術の内容
)の旧橋撤去
工事です。工事場所の清流矢部川は、一級河川でア
こうした課題を解決するため、静的破砕等の検討
ユ等の淡水魚が多く生息し、中洲の中ノ島公園には
も行った結果、通常のワイヤーソーイング工法では
国の天然記念物に指定された緑あふれる大楠林があ
ワイヤーの冷却に時間当り1 , 200リットルの水を使
り、河畔には船小屋温泉郷がある旅情豊かな場所で
用するため、ワイヤーに霧状の水を噴き掛け冷却水
の施工です。河川管理者及び内水面漁協との協議に
が 1/100の12リットルで済む乾式ワイヤーソーイン
より、短期間で安全に振動・騒音が少なく水質汚濁
グ工法を採用することにしました。
防止に配慮した工法が求められた工事の報告です。
2 .現場における課題
作業に先立ち、作業足場にブルーシートを張りシ
ートの継目は布テープで目張りを行い、躯体とシー
トは板を釘止めしてコーキング材で隙間の充填を行
写真− 1
−93−
シート養生
い水が漏れないように厳重に養生を行いました(写
写真− 2
バキューマー状況
写真− 3
乾式ワイヤーソーイング
写真− 4
集 塵 機
4 .お わ り に
真− 1 )。
まず、ワイヤーソーイングのワイヤーを通すコア
乾式ワイヤーソーイング工法では切断水による水
ボーリング作業中は、バキューマーで切断水を吸い
質汚濁は全く無いものの、新たに集塵機等が必要と
取りながら作業を行いました(写真− 2 )。
なり、切断時間も約 3 倍と、通常のワイヤーソー
次に、乾式ワイヤーソーイング工法では殆ど水を
使用しないため、粉塵飛散防止にワイヤーの外側を
イング工法より割高となり、あまり経済的ではあり
ませんでした。
スポンジで覆い、集塵機で粉塵を集めながら作業を
行いました(写真− 3 、写真− 4 )。
しかし、内水面漁協からのクレームも無く、無事
に工事を完成することができました。
※ 株式会社 廣瀬組
−94−
31
国道の舗装修繕工事での技術的工夫
福岡県土木施工管理技士会
藤 山 浩 志 ※
出 口 淳 平 ※
す。その際、国土交通省は修復の舗装方式選択で、
1 .は じ め に
環境面を考慮した車両による騒音を抑えることがで
私は、国土交通省が発注する道路の舗装修繕工事
において、受注者側の現場の技術的責任者(監理技
術者)として工事を管理運営し、無事完了すること
きる排水性舗装を選定され、順次施工してこられま
した。
(工事内容)路面切削工(平均t=10㎝)
A=17 , 400
ができました。その過程で、現場技術に関連して
基層工(20㎜密粒度改質Ⅰ型t= 5 ㎝)
種々工夫、提案し、発注者側の同意の下、採用され
A=17 , 400
た主な内容をここに発表します。
表層工(高粘度改質 Ast= 5 ㎝)A=16 , 170
決して特別な技術的提案や工夫ではありません
が、それだけに同種工事に携わる方々は、きっと頻
橋面補修工 1 式 橋面防水工 1 式
繁に出くわす状況であろうと思いますので、そのよ
排水性舗装とは、空隙率20%以上のアスファル
ト舗装です。この空隙から雨水を速やかに吸収・排
うな方々に少しでも参考になれば幸いです。
施工場所は政令指定都市福岡市の南側隣の筑紫野
水します。また、この空隙は車両走行中に発生する、
市内を走る国道 3 号で、周辺は住宅街が広がり、
タイヤと路面間の騒音を吸収する特性があります。
現場の国道の沿線直接には民家は少ないのですが、
工事区間の起点側・終点側共に修繕工事が完了し
工事区間内には洋品店・飲食店等が多く立ち並ぶ、
非常に交通量の多い所です。ご承知の通り、国道 3
号は北九州市を基点に県庁所在地の福岡市、熊本市
を通り、鹿児島市に至る九州では最も重要な一般国
平 面 図
道です。
2 .工 事 内 容
工事内容は以下に詳細を示しますが、概要は、車
道の片側幅員10 . 75
車線の上下線合計 6 車線の傷
んだ従来の舗装面を、延長760
に亘り、路面切削
を平均深さ10㎝行い、修復の舗装として厚さ 5 ㎝
ずつ基層と表層を、合計厚さ10㎝を被せる工事で
−95−
標準断面図
前述したとおり、当現場には、県道との大きな交
ていて現道は排水性舗装です。
また、起点側に県道との大きな交差点があります
差点があり、交差点を曲がって通行する大型車両が
が、県道が大型車両の抜け道となっているため、交
多く、車両が曲がることによって、タイヤが路面を
差点の捌く通行量がかなり多い状況です。
ねじり、排水性舗装表面を剥離させる恐れがありま
す。排水性舗装は、通常舗装に比べると、空隙が多
3 .現場における課題・問題点
く脆性が高いため、通行車両のタイヤによるねじれ
当現場の課題・問題点を列挙してみると以下の通
に弱く、特にこのようにハンドルを切る状況が多く、
りです。
しかも大型車が多いこの交差点の場合、舗装表面の
① 道路線形による路面平坦性保持の困難性
骨材が剥離する恐れがあります。
排水性舗装の吸音効果を上げるには平坦性を確保
4 .対応策・工夫改良点
する必要がありますが、現場の長い区間で縦断勾配
やカーブ区間があり、平坦性が出にくい条件となっ
ています。
上記に対して次のように対処いたしました。
① 道路線形による路面平坦性保持の困難性
②構造物による路面平坦性保持の困難性
平坦性向上の為、路面切削は 2 回に分け、1 次切
また工事区間の中間に橋梁部がありジョイントが
削後再度測量を行い、所定の計画高になるように修
一部破損しているので、平坦性が出にくい条件とな
正し、2 次切削を行いました。このように、2 回に
っています。橋梁部ジョイントでは、工事着工前か
分けて切削をすることにより、途中修正ができるこ
ら破損していたようで、地元への工事説明時に住民
とや、2 次切削時は、切削機が平坦性の良い条件で
から最近橋梁部からの騒音が大きくなっていること
施工できる等で切削品質が向上します。また舗装時
への苦情がありました。
の敷き均しには、6
③ 施工車両による既設路面汚損の防止
トフィニィシャー(自社所有のフェーゲルS−
級の重量の大きいアスファル
工事現場には舗装材料を頻繁に運び込むため、運
1502)を使用し、敷き均し時の締め固めを高めて平
搬用のダンプカーが出入りしますが、段取りの都合
坦性の向上を図りました。合材の敷き均し時の締め
上、ダンプカーはやむを得ず舗設直前の路面にも入
固めが強いことは、その後のローラによる転圧時の
り込みます。ところが、この路面には舗装の層間相
転圧減が少なくなる為、転圧減による舗装の波がで
互の密着を図るための液状の乳剤が撒かれていま
きにくくなり、平坦に仕上がります。フェーゲル
す。これがダンプのタイヤにくっついて、工事現場
S−1502は、合材敷き均し時の振動による締め固
以外の完成した舗装路面を汚すことになります。こ
めが特に強い為、今回選択しました。また、表層の
れを避けるため、通常は石粉を完成した路面上に散
完了後だけでなく、基層の完了後においても平坦性
布し、タイヤに付着した乳剤を吸い取るのですが、
試験を実施し、表層の施工時に修正の必要があるか
前後の完成している路面は全て排水性舗装となって
の検討資料としました。
いて、舗装の目が大変荒く、石粉が排水性舗装の目
② 構造物による路面平坦性保持の困難性
詰まりを起こすので問題です。また、舗設時、横断
橋梁部のジョイントは、破損していたので補修の
歩道で歩行者が、乳剤散布した箇所を通行して、転
必要性があったため、平坦性の向上と維持修繕コス
倒したり、靴に付着したり、またその靴で歩道を汚
ト費の低減及び地元騒音対策の為、従来の露出型か
したりする恐れがあります。乾燥分解して靴等に付
ら完全埋設型の伸縮装置を提案し採用されました。
着しにくくなるまでに、冬期では数時間かかる場合
完全埋設型は、ジョイントが埋設されるので、通行
があります。
車両により直接衝撃を受けず、露出型より長期間維
④ 交差点路面の剥離防止
持できます。
−96−
対抗できる、強い超高粘度アスファルトを
使用しました。
その他の方法として、排水性舗装完成後、
舗装表面に樹脂・骨材を散布して、舗装表
面の骨材の飛散や空隙つぶれを改善する工
法もありましたが、コスト面も考慮して超
高粘度アスファルトを使用し、かつ使用箇
所を交差点部に限り使用することを提案し、
国土交通省に採用されました。
工事完成後、超高粘度アスファルトを使
高雄地区平面図
用した交差点部は、表面の剥離も見られず、
これら①、②の対策により、平坦性は0 . 7㎜と良
計画通りの成果が得られました。
い数値が得られました。
5 .お わ り に
③ 施工車両による既設路面汚損の防止
工事起終点は、排水性舗装となっていて直接舗装
はじめて性能規定発注の工事を担当しましたが、
面への石粉等散布での養生が出来ないので、ブルー
工事完成後の騒音測定と 1 年後の騒音測定ともに
シートを排水性舗装面に車両延長分敷いて、その上
クリヤしましたので安心致しました。完成検査時に
に石粉を散布する事にしました。
騒音値をクリヤしても、1 年後でクリヤできない場
また、乳剤も通常のゴム入り乳剤であると分解時
合があるので、1 年後の騒音測定は大変気になって
間が遅く合材運搬車両のタイヤへの付着が多くなる
いたところでした。これも平坦性向上の措置を取っ
ので、タイヤへの付着の少ない環境に配慮した自社
たために、クリヤできたものと考えられます。
製品のファインタックを使用しました。
また排水性舗装の乳剤による起終点側への汚れ・
横断歩道部では、乳剤を散布すると歩行者や自転
目詰まりは防ぐことができましたが、今回の特殊材
車の転倒事故や構造物の汚れ等の問題が生じる為、
料を使用しての保護だけでなく、創意工夫によりコ
これを解消すべく粉末乳剤を使用しました。
ストを押さえた養生方法を検討することが、今後の
歩行者の通る通路部だけ、乳剤を散布せずに歩行
課題となりました。
者を通します。その後舗設間近に粉乳剤を散布しま
交差点部の排水性舗装は、骨材の剥離がいつも問
すので、歩行者の靴を汚すことも、転倒することも
題となっていますが、今回は超高粘度を使用しまし
ありません。
たが、トップコートによる施工方法もあり、どちら
この粉末乳剤といわれる乳剤は、砂のようにさら
さらしていて靴やタイヤに付着せず、舗装時は合材
の施工方法を選択するかは、今後コスト面も含めた
総合的な検討が必要だと思います。
の温度により溶けて接着力をもち、アスファルト乳
剤と同等以上の性質を発揮します。
このように現場における問題点は多種多様であり
ますが、それらを創意工夫する事によってコストを
これらの対策により、起終点側舗装面の汚れや目
詰まり、構造物の汚れ、歩行者の転倒事故等を予防
安くし、品質の良いものを創ることができると思い
ます。
することが出来ました。
これからの現場の施工管理全般において、積極的
④ 交差点舗装の剥離防止
に創意工夫を取り入れて、発生する様々な問題に対
タイヤで路面をねじる事により、排水性舗装の表
処していきたいと思います。
面の骨材が剥離する恐れがあるので、骨材の剥離に
−97−
※ 福田道路株式会社
32
国道の舗装修繕工事での安全の確保と周辺対策
福岡県土木施工管理技士会
出 口 淳 平 ※
藤 山 浩 志 ※
は、他の例に漏れません。
1 .は じ め に
また、工事期間中の沿道の食堂や商店などへのお
国土交通省が発注する道路の舗装修繕工事におい
客の動向も大変心配な点です。
て、受注者側の現場の技術的責任者の一人として工
2 .工 事 内 容
事を管理しましたが、発注者、警察のご指導と、周
辺住民や商店街のご協力の下、上司の経験豊かで懇
工事の概要は、車道の片側幅員10 . 75
車線の上
切丁寧なご指導により無事完了することができまし
り下り合計 6 車線の傷んだ舗装全面を、延長760
た。
に亘り、路面切削を平均深さ10㎝で行い、修復と
現場で遭遇した様々な課題や問題点を試行錯誤を
重ねながら解決してまいりましたので、この中の主
して排水性の高い舗装で平均厚さ10㎝を被せる舗
装修繕工事です。
な物についてご報告いたします。
3 .現場における課題・問題点
工事対象の国道 3 号は北九州市を基点に県庁所
在地の福岡市、熊本市を通り、鹿児島市に至る九州
① 通行する一般車両に対する安全について
では最も重要な一般国道です。
現場は、九州の中心都市である福岡市に隣接した
施工場所は政令指定都市福岡市の南側隣の筑紫野
位置の国道 3 号であるため、交通量が多く、夜間
市内を走る国道 3 号で、周辺は住宅地として広が
になると重車両の割合も高くなります。また、3 車
る地域ですが、現場の国道沿いには民家は少なく、
線で幅員も広いためか、夜間交通量が減って昼間よ
むしろ洋品店・飲食店等が多く立ち並ぶ、非常に交
り走り易いため高速で走行する車両が多いのが現状
通量の多い所です。
です。
今回の工事でも、現道交通を遮断することなく車
管轄の警察署と道路使用許可の協議をした際、現
線を絞っての作業となるため、少しでも交通の障害
場付近では交通事故が多発していて、警察が警戒路
になることを避けるため、車道の工事は夜間のみの
線に指定していることがわかりました。大きな事故
作業が条件でした。
が、現場内の大きな交差点付近で最も多発しており、
それでも夜間交通量が多い上、色々な機器・設備
により規制表示の視認性を高くしてはいましたが、
路線内でワースト 1 となっていることがわかりま
した。
走行する車のスピードはほとんど落ちず、居眠り運
また、以前の道路工事においては、一般車両が居
転者の存在を考えるとかなり危険な状況であること
眠り運転や飲酒運転で、規制車や中央分離帯に追突
−98−
する事故が、工事中に数件あったという事も聞きま
ので、若干規制が長くなっても安全の為、規制車が
した。当然今回の現場においても、道路を規制して
一般車両からはっきり見える直線区間に規制車を設
の工事となるので、同様の一般車両の追突事故が、
置することにしました。
しかし、通行車両の居眠り・飲酒・不注意による
多く発生する恐れがあり、これについて何らかの対
処しなければなりません。
事故では、標識などの視認性が良くても規制車へブ
② 施工機械による事故の防止
レーキも掛けず突っ込むケースさえ発生していま
本工事では、路面切削工事があり、現在切削工事
す。自業自得と言ってしまえばお終いですが、それ
において作業員が、切削機やスィーパ(路面清掃車)
で片付けるわけには参りません。従来の例からも工
に轢かれる事故が多発しており、問題となっていま
事施工会社にもそれなりのペナルティーが掛かって
す。
きます。その対応策として国土交通省も推奨してい
③ 地元対応について
るデルタクッションとクッションドラムを組み合わ
現場国道沿いには、民家は少ないが、工事区間内
には洋品店・飲食店等が多くあり、工事の影響で店
せて、部分交通規制方式では最も安全性の高いと考
えられる施工方法を採ることにしました。
舗が見えにくかったり、車両の出入りが難しくなっ
突っ込んでくる居眠り運転の車両を食い止める規
たりして、利用客離れになり、店舗から苦情が出る
制車と、その直前にクッションドラムを配置し、ク
ことになります。
ッションドラムの位置から15
工事着手前に現場の説明をおこなった際、利用客
が減った場合は、補償はしてくれるのかという質問
程度前方にデルタ
クッションを配置して、3 重の安全性を確保しまし
た。
を受けました。各店舗にしてみれば、売り上げが下
この方法による効果は、一般通行車両が追突して
がるのは死活問題であり、店長として補償を訴える
きたら、まずデルタクッションに乗り上げてスピー
ことは、当然の事だと思います。
ドを下げ、なおかつクッションドラムとの衝突で更
工事による悪影響を最小限にとどめ、各店舗とコ
に車両を止めることが出来ます。
この規制のさらに良いところは、追突してきた車
ミュニケーションをとりながら、工事を進める方策
両をダブルクッション方式により優しく止めるの
が必要だと思いました。
で、追突してきた車両のドライバーへの衝撃を少な
4 .対応策・工夫改良点
くでき、負傷する確率を大幅に小さくできます。
これにより、工事の作業員に対する安全性はもと
① 通行する一般車両に対する安全について
工事の施工方法は車線規制方式が入札時の条件と
より、例え居眠りなどの理不尽なドライバーにさえ
なっているので、現場の車の通行状況を考慮に入れ
安全性を非常に高めることができます。
ると、通常の安全対策では作業員が大変な危険に曝
② 施工機械による事故の防止
されます。重車両の混じる割合が高く、夜間の高速
切削機との接触事故防止についてですが、安全訓
で走る交通状況を頭に入れた、もっと安全な方法を
練等の教育や、安全朝礼、その他打ち合わせ等によ
考える必要があります。
る、作業員レベルの安全意識向上教育など、先ず足
工事区間は警察が警戒路線に指定するほどの事故
多発路線内であり、通過する車両のスピードの出し
元を固めることが一番大事だと考え、野外実習等も
教育に含め実践しました。
さらに安全施設等の設備により、作業員を守るこ
すぎによる接触・追突事故等が多いので、工事中は
トラックなど重車両による追突事故等のもらい事故
とも併せて必要な事項です。
今回切削事故防止のため、他社でもよく使用して
が予想され、強力な安全対策を検討しました。
先ず、工事区間にはカーブが多く、視認性が悪い
効果が上がっている喚起バーを改良して使用するこ
−99−
その理解を得るために、当工事
では、工事内容を分かりやすくし
た図入りパンフレットを作成し、
地元住民の方に、そのパンフレッ
トを配布して説明しました。そう
することによって工事に対しての
パンフレットの一部
理解を得やすくなります。
営業店舗等については、店舗前で工事する際は、
利用客に店舗出入口が分かりやすく、出入りしやす
いようにする工夫が必要です。
そこで工事中には、工事車両等で店舗入口がわか
りにくくなるため、その店舗の看板を作成して、設
置する事にしました。その看板はその店舗のデザイ
ンをイメージして作成し、店長に要望を聞き修正し
とにしました。
(換気バーとは、断面は角型で、長さは切削幅員
て決定します。
このようにすると、各店舗の店長とコミュニケー
程度の棒状で、切削機とスィーパー(路面清掃車)
の間で作業する作業員を守る為に考案されたもので
ションがとれて、今後の工事の出入口規制の工程打
す。設置方法は、切削機側とスィーパー側に一本ず
合わせ等がスムーズに出来るようになります。
予想以上にイメージアップ看板は好評で、工事終
つ計 2 本設置するものです。その使用方法として、
作業員はバーとバーの間にて作業をおこない、作業
了後にその看板を欲しがる店舗もありました。
機械はバーを超えて施工しないルールを定めていま
5 .お わ り に
す。仮に作業機械が誤って換気バーに乗り越えた場
合は、乗り越える振動によって気づく仕組みです。
この現場の夜間に通行する一般車両は、高速道路
換気バーは施工の進行に合わせて移動していきま
並のスピードで走行する車両が多いのに驚かされ、
す。)
またそれと同時に一般車両の工事箇所への追突事故
その改良点は、持ち運びを考えての軽量化と、夜
を心配しました。幸いにして追突事故等のもらい事
間工事で使用しますので、視認性の向上を検討しま
故は、工事完成まで一度もありませんでした。規制
した。
の始まりを視認性の良い箇所を選択したことも、無
換気バー本体は、軽量化のためアルミ仕様で、角
事故で完成できたと思われます。
形空洞棒状の素材を使用し、表面に高輝度の反射テ
また、地元住民や各店舗からは、工事完成まで 1
ープを巻きます。さらに視認性アップのため、面積
度も苦情がでることなかったことは、地元住民の皆
の広い四面に等間隔に円状の穴をあけて、換気バー
様と良いコミュニケーションがとれた結果だと思い
の内部に点滅誘導棒を挿入すると、高輝度反射テー
ます。
プ付き自発光式換気バーが出来ます。
このように現場における問題点は多種多様であり
③ 地元対策について
ますが、それらを創意工夫する事によって問題を解
一番大事なことは、地元の方の立場になって、工
消していくことができるので、今後も現場の施工管
事をどのように進めていくか検討し、その誠意が伝
理全般において、常に創意工夫を取り入れて、発生
わるようにコミュニケーションをとり、工事に対す
する様々な問題に対処していきたいと思います。
る住民の理解を獲得する事が必要です。
※ 福田道路株式会社
−100−
33
コンクリート構造物(A 1 橋台)における
ひび割れ抑制対策
佐賀県土木施工管理技士会
森 建 樹 ※
昭和55年には浸水家屋270戸、昭和57年には浸水
1 .は じ め に
家屋258戸の被害を受け、この改修工事によって集
町田川は上場大地に水源をもち、唐津市街地中心
中豪雨に対しての被害は軽減が図られております。
を流れる 1 級河川で延長は約10㎞・流域面積は約
町田川広域基幹河川改修事業において、対象構造
10 . 3
物(下写真)は河川改修に伴い橋梁の架け替えとな
です。
河川下流域は市街地で家屋が密集し、中流域は近
年宅地化が進んでおり、昭和 55 年・ 57 年・ 60 年、
り、橋梁下部工における品質向上を目指しひび割れ
対策を行いましたので、その概要を報告します。
平成 2 年・ 10 年に浸水被害を発生させています。
2 .工事の概要
このため、洪水被害の軽減を図り安全な地域づくり
を進めるため昭和 58 年に河川改修工事が着工し、
発注者 佐賀県 土木部(唐津土木事務所監理)
平成29年完成を目指し行われています。
河川名 一級河川 町田川
−101−
→
新興橋 着工前(左岸側A1橋台)
新興橋 完成(左岸側A1橋台)
写真− 1
工事名 広域基幹第 1 − 6 号 町田川広域基幹河
案2
誘発目地材の設置(品名:スパンシール)
を行い、目地部にクラックを発生させる方法。
川改修工事
工 期 平成15年11月18日∼平成16年12月31日
2 )施工性の検討
概 要 護岸工 コンクリートブロック積
案1
が一部必要である。
A= 47 . 0
雑割石積
・塩ビ管を竪壁部中心部に固定が必要であ
A=155 . 0
A 1 橋台工 場所打杭工
n=28本
逆T型橋台
n= 1 基
(L=34 . 040
H=3 . 88
・塩ビ管設置のため、躯体鉄筋の組み直し
る。
・設置後、塩ビ管内に躯体と同等の無収縮モ
ルタルの充填が必要である。
)
案2
3 .課題とした点
・鉄筋に固定が必要である。
2 )経済性の検討
橋梁下部工の設計図を検討したときに、横断延長
約34
案1
断面阻害だけを考えた場合は安価であるが、
目地部にクラックを発生させた場合その後処理費
と長いにもかかわらずVカット目地が構造
用が割高である(クラック部の補修費+目地処理
物中心に 1 箇所設けてあるだけであった。
費)。
そのため、今までの経験から竪壁にひび割れ発生
が予測されたので、ひび割れ抑制対策が必要となっ
案2
材料費は高価ではあるが、設置費用・クラ
ック発生後の目地処理費用のみである。
た。
以上の検討内容から 2 つの案を比較検討した結
4 .対 応 策
果、施工性・経済性・クラック発生後の水密性から
担当監督員にひび割れ抑制対策の必要性を説明
考え案2を採用することにしました。
し、ひび割れ抑制対策を行うことの承諾を得、社内
3 )設置箇所の検討
にてひび割れ抑制対策方法について下記のとおり検
・沓座部及びアンカーホール位置を外す。
討を実施した。
・クラック発生ピッチを考慮して設置ピッチを 5
以内とする。
1 )クラック抑制の対策方法の検討
過去の実績を基にクラック抑制対策案を検討。
案1
5 .お わ り に
躯体中心部に塩ビ管を設置して断面阻害を
行い、設置した目地部にクラックを発生させる方
法。
ひび割れ抑制対策は、コンクリート構造物では重
要な課題で構築するうえで構造物の耐久性・美観性
−102−
誘発目地設置
躯体完了(上流より望む)
躯体完了(下流より望む)
次回、コンクリート構造物の構築にあたっては、
が求められいます。
今回実施したひび割れ抑制対策の結果は、設置し
その課題に取り組み耐久性に優れ、また美観性のあ
た誘発目地部内にひび割れを誘発させることが出来
るコンクリート構造物を作りあげたいと思っていま
ましたが、設置した誘発目地部以外にも0 . 1㎜程度
す。
この問題には、技術者である限り取り組み続け、
のひび割れが発生しました。
これは多分、誘発目地の設置が躯体の両側面と天
端にしか設置しておらず、フーチング部との接続面
より良い製品を提供できるように自らの技術も磨い
ていこうと思います。
でのコンクリート収縮における何らかの影響がある
と私は考えております。
−103−
※ 唐津土建工業株式会社
34
鋼矢板引抜きに伴う埋設管沈下抑制対策
佐賀県土木施工管理技士会
堤 茂 徳 ※
伏せ越し部の埋設管は、鋼管及びプラスチック管を
1 .は じ め に
用いるが、それが沈下すれば隣接するプラスチック
工事名:筑後川下流用水事業 幹線水路千代田線工
管のソケット継手で抜け出す恐れがある。矢板引抜
きに伴う埋設管の沈下を抑制するためには、引き抜
事
き時に砂を詰める方法が一般的に用いられる。しか
工事場所:佐賀県神埼郡千代田町
し、施工時期が苺の収穫期と重なり、水路の水質
2 .地位と担当内容
(濁度)を低下する手法は、生産者の反対もあり採
管理技術者として本工事の施工計画、管理計画を
用できなかった。そこで、矢板引抜きに伴う埋設管
立案した。特に矢板引抜きに伴う埋設管の沈下を抑
の沈下を抑制するための新たな手法を考案し、以下
制するための新たな手法を考案し、実際工事におい
に述べる施工法、管理法を導入した。
吊り金具による埋設管の支持
てその指導を行った。
図− 3 に示すように、矢板引抜きにともなって外
3 .現場における課題
側の地盤はすべり面に沿って沈下する。一方、掘削
本工事は、神埼町に管水路(径1200㎜)を鋼矢
底面に接する原地盤は、空洞を埋めるように移動し
築造する工事
ていきその結果埋設管は沈下する。そこで、図− 4
であった。途中には、図− 1 に示すように横断方向
に示すように吊り金具で埋設管を支持し、以下に述
に既設水路(幅約25
べる矢板引抜き、埋め戻しを行って埋設管の沈下を
板土留め形式の開削工法にて約330
)があり、伏せ越し方式に
て施工した。矢板引き抜きに伴う埋設管の沈下、埋
抑制した。
観測施工に基づく沈下管理
め戻し土の沈下は、伏せ越し部に重大な障害を起こ
図− 5 に示すように、地中の空洞体積と表面の沈
すことが懸念されその対策を講じることが最大の技
下体積はほぼ等しいと仮定し、地表面の沈下を観測
術的課題であった。
することで空洞の閉塞状態を推測できると考えた。
4 .技術的課題に対する対応策
空洞は、吊り金具で埋設管が支持された状態で埋め
伏せ越し部の土質は、N値 2 ∼ 3 の軟弱地盤で
戻し土による埋め戻しが進行するのを期した。実際
ある。粘土地盤に打ち込まれた矢板は、図−2に示
の施工では、矢板を1枚おきに引抜く工程を第1段
すように矢板に粘土が付着したまま抜け上がるので
階、残りの矢板を引抜く工程を第 2 段階、吊り金
地中に空洞が発生し、その結果埋設管は沈下する。
具を撤去する工程を第 3 段階として施工した。
−104−
図− 1
図− 2
断 面 図
地中空洞の発生
図− 3
地中変位
−105−
図− 4
図− 5
吊り金具
空洞と地表面沈下
上述のように施工した結果、埋設管の沈下は最大
れている。しかし、矢板引抜きに伴う周辺地盤、近
4 ㎜であり、継手の水圧テストにおいても異常は認
隣家屋の沈下が問題となっている。今回の工事では、
められず所要の品質を確保することができた。
矢板引抜きに伴う埋設管の沈下を極力抑制すること
が求められた。そこで、現場で試行錯誤を重ねた結
5 .現時点から見た批判と将来に対す
る見通し
果、吊り金具による埋設管の支持、矢板引き抜き方
法の変更、観測施工に基づく地表面管理により問題
今回の工事では、吊り金具の強度、予測される沈
下量より矢板を 1 枚おきに引抜いた。しかし、矢
を解決できるとの見通しを得、実際工事においても
良好な結果を得ることができた。
板の根入れが長い場合、矢板を 2 ∼ 3 枚おきに引
本工法は、他工事においても有益であり、当該地
抜いたり、埋設管の変更、底面改良等を検討する必
域における悩みの 1 つを解決できる工法の提案が
要がある。
できたと考える。
※ 株式会社 中野建設
6 .お わ り に
鋼矢板は、橋梁、河川、上下水道工事等に多用さ
−106−
35
河口付近における河川改修工事の仮締め切りと
護岸ブロック積の裏込方法について
長崎県土木施工管理技工会
藤 本 千佐美 ※
1 .は じ め に
今回長崎県大瀬戸土木事
務所発注の『大明寺川河川
改修工事』の施工にあたり、
仮設鋼矢板による仮締切及
び練積ブロック護岸の裏込
方法について、その問題点
と解決策を紹介します。
2 .工 事 概 要
図− 1
断 面 図
当工事は、長崎県西彼杵
郡西彼町に位置する二級河
川大明寺川の河口付近の自
然護岸に鋼矢板基礎の練積
ブロック護岸を鋼矢板締切
を行い、築造するものであ
りました。
3 .工事事前検討
№1
当現場は雲母変岩の
風化土層による軟弱地盤
の為、施工中仮締切矢板
が河川側へ大きく変位
し、施工途中に構造物が
締切矢板内に治まりきら
図− 2
ないケースが過去に発生
−107−
している。
№2
練積ブロック護
岸の裏埋戻し土の水
中部分が、完成後仮
設矢板の引き抜きに
伴う空隙や干満によ
る水位の変化の為沈
下し、ブロック積が
背面方向に倒れ込む
問題が発生してい
図− 3
る。
完成は不可能であり、効率が悪く、工事原価の大幅
4 .発注者との協議(図−2参照)
な増大につながる。
上記№ 1 について、発注者、及び設計業者との
6 .原 因 調 査
三社協議において、当社として河川側の矢板の外側
に仮設の押え盛土の施工を提案したが、使用土砂の
締切矢板が河川側に変位した最大の原因として、
運搬・盛土,撤去,運搬・捨土によるコストアップの
当現場の土質が雲母変岩の風化土層であり、軟弱か
為変更できない。又、設計業者によると、ヒービン
つすべりやすい土質である。河川側に押え盛土を施
グについても河川側への変位についても、計算上問
工していない為、管理道路上で作業を行うダンプト
題ないとのことで当初設計のとおり施工するよう指
ラック・建設機械等の輸荷重で集中的な土圧がくさ
示を受けた。
び形に作用する事により変位したものと判断され
上記№ 2 について、同じく三社で協議したが丁
る。
寧な埋戻し転圧を行ってくださいと言うことで、変
7 .対策(工法の決定)
更の意志はないとのことでした。しかしながら、当
社としては過去の他工区の状況を見る限り、このま
部分的な集中荷重が原因であるので、その荷重を
までは沈下は防げないと判断し、当社独自で工法を
分散させる方法として、次の二種類の方法を検討し
検討する事にした。11)参照
てみた。
鉄板を管理道路全面に設置する。
5 .問題発生(工事事前検討№1)
地盤改良により路床を固化し、一体化する。
については 1 枚当たり4 . 5平方メートル程度で
当初設計どおり、仮設締切矢板施工後、締切内の
床堀を行った。仮設矢板の変位が予想されたので、
あるので、不等沈下の可能性があり、傾きによって
仮設矢板の天端に 5
はダンプトラック、建設機械が滑動し、転倒、落下
ピッチで測点を設定し、変
位の観測を行いながら、床堀していたところ、約
のおそれがあるので安全面、施工性を考慮して
10
地盤改良による方法を採用した。
程度進んだころから動きだし、15
進んだ時
点で最大18㎝の変位が確認された。
の
8 .対 策(計画)
これ以上の変位は構造物の施工と安全に支障をき
たすので、発注者と協議した結果、10
ずつ完成
しながら施工するよう指示があった。
しかしながら、10
地盤改良の資材として、セメント系固化材を使用
することとし、土砂のサンプリングを行い、撹拌試
ずつの施工では、工期内の
験の結果、撹拌深さ0 . 5
−108−
巾6 . 0
とした場合、固
化材の含有量を50㎏/
と決定し
た。その結果単位面積当たりの土
圧は約 1/10∼ 1/20となる。
又、セメント固化材を使用した
場合含有量によっては六価クロム
発生等の環境に対する弊害も考慮
しなければならないので、有害物
質の抽出試験を行い、結果がOK
であったので、通常の材料を使用
した(NGの場合、六価クロム対
図− 4
応品を使用する)。
ることが出来、厳しい工期ではあったが工期内に無
9 .対策(施工)
事故無災害で竣工する事ができた。
図− 3 の断面で床堀施工前に全延長L=120
管理道路をW=6 . 0
、H=0 . 5
の
12.効果の確認(№2)
で撹拌・転圧施工
した、又。施工時の注意点として、河川側へのダン
プトラック、建設機械の滑動及び偏荷重を防止する
現在施行後、三年経過しているが、護岸ブロック
の変位も管理道路の沈下も発生していない。
為水田側へ 2 %の片勾配とし、滑り止めとして路
13.お わ り に
面に 5 ㎝程度の砕石を散布した。
当現場における問題点に対する対策は、設計変更
10.効果の確認(№1)
の対照にはしてもらえなかったが、工事の安全性・
地盤改良施工後、本工事の床堀を仮設矢板の変位
観測を行いながら施工した。床堀直後に多少の変位
効率面・施工性・構造物の品質等において、効果が
確認できました。
(1 . 5㎝∼2 . 0㎝)があったが収束が早く、全延長連
又、この方法は近年意識が高まっている環境面に
続施工後も最大で3 . 0㎝程度だった。又、護岸工事
おいても、下記のようなメリットがあると考えられ
完了後も、管理道路の堅固な路床として使用できる
ます。
メリットもある。
1 .盛土・埋戻し等には土質が多少悪くても、添加
剤を使用することにより、現場内の発生土を流用
11.工事事前検討№ 2 に対する対策
する事が出来る(資源の無駄使いの防止)。
裏埋戻し部分の当現場の工夫として、埋戻し流用
2 .現場内の土砂を流用することで、置換え等で発
土が施工後、水中になるとしても圧蜜を促進しなけ
生する資源の無駄、積込・運搬による油脂類の無
ればよいと考え、№ 1 と同様セメント系固化材を
駄、騒音・振動公害、残土処理場の確保等、すそ
流用土と撹拌し、改良土として使用する方法をとっ
野の広い環境に関するデメリットを回避する効果
た。
がある。
又、仮設鋼矢板の引抜時において、摩擦と振動が
以上、土木工事においても、安全で経済的でかつ
構造物に与える影響を軽減する為に、鋼矢板と埋戻
効率的な環境に優しい工事の企画・施工を行うこと
し土との境目にそって、パラフォーム(ダンボール
が本当の意味で建設業のイメージアップにつながる
製捨型枠)を挟み込み、埋戻し転圧を行った。結果、
のではではないでしょうか。
構造物に影響を与える事なく鋼矢板の引抜きを終え
−109−
※ 株式会社 西海興業
36
テールアルメ工法において
盛土の締固めの管理方法について
長崎県土木施工管理技工会
福 井 英 海 ※
方向へ膨張し、スキンを破壊するという事故が発生
1 .は じ め に
した。これは、水平目地材の荷重に対する耐用力の
長崎県の公共事業では、コスト縮減とトレードオ
不足と目地材が膨張することが第一の原因と考えら
フの関係にある品質の確保を出来る限り両立させる
れた。しかし、目地材を圧縮し、スキンの破壊を誘
方向へ転換しつつ、限りある資源を有効に活用する
発する作用の要因は不明であり、これらを発見する
地球規模の環境への配慮が求められている。このた
という課題があった。
め、各作業所に於いてもこれらの方針を基本に作業
4−2
課題に対する方策
目地材圧縮の要因には、スキンを重ねた場合の垂
を進めていく必要がある。ここでは、これらの方針
直荷重、盛土の締め固め不足が原因で起こる沈下や
を踏まえ工事を進めた事例について述べる。
時間的圧蜜沈下が考えられることから、工事着工に
2 .工事名、場所
あたり、次の 4 項目に着目し、施工中に観測と調
工 事 名:一般県道長崎式見港線道路改良工事
査を行うこととし、事故の防止に努めた。
工事場所:長崎市柿泊町
A)水平目地の変更
これは、過去の施工に於いて使用した目地材は再
工 期:平成14年 3 月14∼平成15年 3 月13日
生ゴムチップを接着材によって固め、型取った物で
3 .工 事 概 要
あり試験結果によると、熱に弱く膨張率が高い材料
道路路床と舗装を支持する道路路体を盛土量
9 , 800
のテールアルメにより構築すると共に、切
であることが判ったため、再生ゴムチップに熱処理
を加え、攪拌して固めた材料とコルク目地材への変
土補強土壁工(ルートパイル工)252本を施工する
更を行った。又、壁高が10
以上の構造について
工事であった。特に、テールアルメに於いては流用
は、30㎜の目地材を使用することとなった。これ
土の使用や供用開始の期限限定から工期等の制約条
により、目地には余裕が出来、スキンどうしが直接
件があった。
接触することなく設置できた。しかし、基礎面が段
差の多いこの現場に於いては、目地の沈下が少なけ
4 .技術的課題とその方策
れば次段基礎計画高を上げる必要があり、多ければ
4−1
次段基礎を下げなければならないという不具合がで
技術的課題
過去に施工したテールアルメに於いて、スキンと
スキンの水平目地が何らかの作用により圧縮され表
てくると共に、設置時に段差部の水平を保つことが
困難であった。
−110−
このため、標準目地厚(20㎜)を使用出来る目
することができ、現場密度は95%前後で推移する
地材の改良を今後も考える必要があると思う。
ことができた。
B)締固め施工不良個所減少を目的とした密度管理
C)作業時の圧密沈下の時間的作用の調査
テールアルメの施工では盛土量が500
この調査は、横断図、展開図に示すようにスキン
に 1 回以
上の頻度で現場密度(90%)が求められ、測定手
壁面沿いと、壁面より7 . 0
段は砂置換法が一般的である。砂置換法では、含水
異なる沈下盤、計 6 本を設置し、沈下盤にはそれ
比を求めるために 1 昼夜の乾燥が不可欠であり、
ぞれ丸鋼を施工の都度溶接し、表尺を取り付けてレ
測定結果は翌日にしか得られず、所用管理方法で進
ベリングを行った。その結果、表− 2 に示す結果
めると次層の施工を待機せざるを得ないことから工
が得られた。沈下盤 1 と 2 はフィルター層(再生
程に遅れを生ずることとなると共に、1 層の捲きだ
砕石)上に設置し、基礎部に近い事から、沈下が少
し数量が100∼150
なく穏やかに沈下していくと考えられる。
であり、各層の密度の管理が
背面に高さが 3 種類の
沈下盤 3 と 4 は流用土上に設置したもので、2 ヶ
不十分となり施工不良個所の発見が困難となる。
そこで、写真− 1 に示すような器具を製作し、密
月余りで80㎜の沈下があった。また沈下晩 5 と 6
度と土の固まり具合を数値化することで定量的に管
は上載盛土が少ない事から沈下量がやや少なくなっ
理を行った。
ているが、時間的には急速な沈下があり、3 , 4 が沈
表− 1 に示すように密度が高い盛土は沈下深さが
下すれば自然沈下することから長期的に沈下する事
少なく、逆に密度の少ない盛土は沈下深さが大きい
を予測し、笠石コンクリート等は上げ越しを施す必
事から、極力沈下深さを少なくするよう締め固めを
要がある。(既現場では30㎜)又、工期に余裕があ
行った。その結果、各層の沈下深さは 5 ㎜程度に
れば工事を中断し、自然圧密沈下を促進させること
展 開 図
写真− 1
表− 1
密度と沈下の関係グラフ
横 断 図
−111−
表− 2
沈下盤測定表(部分)
目地材はスキンの設置に於いて重要な役割を果た
は重要であると考える。
D)スキンの水平目地と盛土の圧蜜沈下の相互関係
していることから、コストが上がっても上質の物を
下段部の目地については、急速な沈下が見られる
使用する必要があると考える。又、盛土の沈下に伴
が、盛土の沈下と時間的に比例しており、各目地に
いストリップの沈下も強制され、スキンの沈下を促
於いても同じである。しかし、盛土の沈下量は中間
進すると考えられることから、スキンとストリップ
層が大きいが、スキン目地の沈下量は下層部ほど大
の接合部分の改良によりスキンへの応力が少なくな
きい。このことから、目地の沈下は盛土部の沈下の
るのではないかと思う。
影響だけを受けるのではなく、スキンの自過重の影
5 .お わ り に
響も大きいと考える。
又、基礎の計画高が異なるスキン同士は不等な沈
下をおこし、展開図− 2 壁高の高い方(沈下量が
補強土壁工に於いては、流用土の使用が多くなる
ことから、今後も調査が必要であると考える。
大きい)に過重がかかり、危険な状態で保つ事とな
る。
又、社会資本整備事業に携わる我々は、自己の研
鑚に努め社会に貢献していくことが大切であると思
これらのことより、段差の多い部分は一定の延長
う。
で縦目地を計画し、隣接するスキンと縁を切ること
も重要ではないかと思う。
−112−
※ 株式会社 西海興業
37
緩衝リンク型耐震連結装置(Kリンク)について
橋建土木施工管理技士会
松 浦 俊 二 ※
西 本 政 人 ※
1 .ま え が き
ナンスが非常に容易である。
本文では、Kリンクの構成と機構、橋梁等の鉄構
緩衝リンク型耐震連結装置(以後、K
リンクと記す)は、従来の一体リンク型
落橋防止装置にまったく発想の異なる機
構を用いることによって、地震時衝撃力
を緩和するとともに減衰も期待できるこ
とを実現した耐震連結装置である。(特
許第2930575号)。本装置を落橋防止装
置に適用する場合、桁と下部工を連結す
るタイプと桁と桁を連結するタイプがあ
る(写真− 1 、写真− 2 )。
Kリンクの特徴は、1)道路橋示方書
Ⅴ耐震設計編(平成 14 年 3 月)の落橋
写真− 1
施工例(桁−下部工連結タイプ)
防止システム規定に適合したうえで、地
震波双方向の衝撃力緩和・減衰に有効な
落橋防止構造である。2 )鋼板と市販の
ゴム・ロッド・ピンで構成した簡単な装
置である。ケーブルやチェーン型耐震連
結装置のように特別な材料や加工を必要
とせず、製造費は非常に安価である。3 )
取付け桁出来形誤差や取付け誤差等はあ
らかじめ設計段階で反映することとし、
現場施工(取付け)時の調整は不要であ
る。4 )地震被災や定期点検の結果で必
要となった部品は、大掛かりな設備を必
要とせず、簡単に取り替えができメンテ
写真− 2
−113−
施工例(桁−桁連結タイプ)
合わせて 1 ユニットとする。
リンクプレートA、Bにはリンクフランジおよび
フランジリブを溶接で取り付ける。リンクプレート
とリンクフランジの溶接は機能および品質上最も重
要な部分であり、完全溶込溶接とし、超音波探傷検
査を行う。
緩衝ゴムは、ネオプレンゴム(硬度55度)、円形、
厚さ50㎜以上を標準としている。
振動特性の異なる構造物Ⅰ、Ⅱがあり、これらを
Kリンクで連結し、構造物Ⅰの地震時慣性力が構造
物Ⅱに伝達される場合を考える(図− 3 )。
1 )慣性力がKリンクにとって引張方向の場合は、
構造物Ⅰ→リンクプレートA→引張緩衝ゴム→連
図− 1
Kリンクの機構
結ロッド→引張緩衝ゴム→リンクプレートB→構
造物Ⅱと伝達される。
製品の適用について述べる。
2 )慣性力がKリンクにとって圧縮方向の場合は、
2 .Kリンクの構成と機構
構造物Ⅰ→リンクプレートA→圧縮緩衝ゴム→リ
Kリンクは、一体のリンクプレートを分断しその
ンクプレートB→構造物Ⅱと伝達される。
分断部に緩衝ゴムを配置して連結ロッドで結合する
ことにより、引張力,圧縮力のいずれをも、緩衝ゴ
ムに対する圧縮力に変換する機構(図− 1 )であり、
緩衝・減衰に対するゴムの圧縮変形特性を有効に活
用できる。地震波としての圧縮・引張の双方向力に
ゴムの緩衝効果が有効となるため、一方向性の装置
に比べ構造物の耐震性は有利となる。
Kリンクの構成は、リンクプレートA、リンクプ
レートB、引張力緩衝ゴム、圧縮力緩衝ゴム、連結
ロッドであり(図− 2 )、これらの単体部品を組み
図− 3
図− 2
図− 4
Kリンクの構成
−114−
衝撃緩和・減衰機構
Kリンクの橋梁への適用
図− 5
Kリンクの貯槽機器への適用
構造物が振動状態にあるときは、双方向力 1 )、
2 )の繰り返しとなる。構造物Ⅰ、Ⅱの振動特性は
異なるとすると、連結されている二つの構造物の振
図− 6
動はやがて収束する。収束に至る過程でKリンクに
Kリンクの鉄骨建築構造への適用
Kリンクは構造的にメンテナンスが非常に容易で
より衝撃力は緩和減衰される。
ある。全ての構成部品の外部からの点検が容易で、
3 .鉄構製品へのKリンクの適用
地震被災や定期点検の結果で必要となった部品取替
Kリンクを橋梁に適用できると考えられる例を
図− 4 に示す。このうち橋桁と下部工(橋台)の連
には、大掛かりな設備を必要とせず、簡単に行うこ
とができる。
結については現在(平成16年12月末)140基の施工
4 .あ と が き
実績がある。橋桁と橋桁の連結については、桁端張
出長によってはスペース的に取付け困難な場合もあ
Kリンクは、「阪神電鉄㈱淀川橋梁沓取替・落橋
るが、長手方向長を短縮することにより適用可能と
防止工設置工事」において設計提案を行い、採用が
なり現在459基の実績がある。
決定された後、設計作業と併行して実機適用のため
貯槽容器にKリンクを適用できると考えられる
の性能確認試験を実施した。その結果を確認したう
例、建築鉄骨構造に適用可能と考えられる例を図−
えで特許申請し、平成 11 年 5 月特許認定された。
5 、6 に示す。
また、平成14年12月には、国土交通省新技術情報
適用にあたって、連結ロッド、緩衝ゴムについて
は、恒久的・無制限に使用すると考えるのではなく、
提供システム NETIS の新技術適合性評価を終え、
現在同システムにより情報提供されている。
設計上想定している地震を被災した場合、部品取替
えを前提としておくのが望ましい。
−115−
※ 川重工事株式会社
38
海底トンネル補強工事における安全管理
日本橋梁建設土木施工管理技士会
浦 川 智 志 ※
難しいが、非常用通路が接続部から235
1 .は じ め に
で地上ま
で出られる構造となっていたため、この通路を工事
橋梁架設や橋脚耐震補強などの経験を活かして、
用人道として使用し、徒歩で入退出することにした。
炭素繊維貼付による海底トンネル耐震補強工事に従
トンネルの断面は、図− 1 に示すように、上下線
事し、現場代理人を務めた。工事内容はエポキシ樹
の自動車通行部とその上に設けられた換気ダクト部
脂により炭素繊維をコンクリート壁へ接着すること
及びそれらの横に設けられた非常用通路部からな
が主な作業であるため、どのような点に注意すべき
り、補強は換気ダクト部の天井面及び非常用通路部
かを勉強せねばならなかったが、特に安全管理につ
の壁面を対象に施工するもので、換気ダクト①、②、
いては鋼構造工事と異質な点も多く、印象も深かっ
③へのアクセスは通路④の約500㎜□の扉から順次
たので、ここでは安全管理の内容について以下に紹
入る構造となっている。
ダクト内は真っ暗闇で、下の自動車通行部を換気
介する。
するため落下防止用グレーチング敷きの大きな孔が
2 .現地アクセス上の問題点と特徴
空けてあり、衝突事故や火災が発生すると、大型換
海底トンネルは、沈埋トンネル部744
の取付道路部1 , 038
、合計1 , 782
、地上へ
のトンネルで、
気ファンにより最大風速30
/sec程度までの速さ
で煙を強制排出するが、ダクトはその煙の通り道と
沈埋トンネル部と取付道路部の接続部近辺約82
なっている。このダクト内に人が入って有機溶剤を
を対象に補強する工事であり、人のアクセス方法が
扱う作業をするため、安全対策が必要となる。
3 .安全管理上のポイント
有機溶剤作業に対する安全管理
炭素繊維補強で使用するエポキシ樹脂やシンナー
類にはキシレンやエチレングリコールモノエチルア
セテートなどの第二種有機溶剤が含まれており、保
管に関しては消防法の規制を受け、有機溶剤の区分
や注意事項の掲示については労働安全衛生法の有機
溶剤中毒予防規則(有機則)の規制を受ける。
図− 1
作業者全員の中毒防止のための措置として以下の
トンネル断面図
−116−
写真− 1
作業手順会議
諸対策を行い、中毒予防に努めた。
図− 2
強制換気用吊天井開口部位置図
1 )第二種有機溶剤としての区分を、作業者が見や
に示すようにトンネル長手方向の各ダクト前後そ
すい朝礼場所の表示板に表示した。
2 )有機溶剤使用上の注意事項として、人体に及ぼ
れぞれに 6 箇所ずつ合計12箇所の換気孔を新た
す作用、取扱い上の注意事項、中毒が発生したと
に設けて、作業中は換気ファンにより送気と排気
きの応急処置の三点について記載した大きな掲示
を連動させた強制換気を常に行い、環境条件を整
板を作製し、作業者が見やすい朝礼場所に掲示し
えた。
8 )新規入構者には、その都度、有機溶剤教育及び
た。
3 )有機溶剤作業主任者 3 名を配置した。
作業上の注意事項教育を行い、不慣れによる中毒
4 )作業従事者全員に作業前に有機溶剤教育を半日
防止対策を行った。
9 )現場代理人及び安全管理者による安全パトロー
コースで実施した。
5 )作業手順を取り決め、作業手順会議で注意事項
ルを毎日行い、安全意識の高揚に務めるとともに
を徹底した。作業手順会議の様子を写真− 1 に示
不安全な行為をしないよう作業者へ注意喚起を行
す。注意事項としては次の 4 項目を主体とした。
った。ダクト内安全パトロールの様子を写真− 2
①現場に必要数量以上持ち込まない。②溶剤入り
に示す。
の缶の栓を解放したまま放置しない。③防毒マス
トンネルダクト内アクセスに対する安全管理
ク等の保護具を必ず使用する。吸収缶の破過時間
現地アクセスの特徴の項で述べた通り、図−1の
を過ぎる前に必ず交換する。④皮膚障害防止のた
めの保護手袋、保護眼鏡、長袖上着を着用する。
6 )作業中 1 日 2 回、10時と15時に、真空法ガス
採取器および検知管にてガス濃度をチェックし、
管理濃度以内で管理する。管理濃度はキシレンで
100ppm、エチレングリコールで 5 ppmで、混合
有機溶剤の評価には相加平均値が 1 以下となる
ように管理した。
7 )作業場の換気対策として、図− 1 に示したダク
ト内部を上下に仕切り、作業場となる上部空間を
密閉状態にしているALC板製吊天井に、図− 2
−117−
写真− 2
ダクト内安全パトロール
業者全員に退避命令を出す。
4)通路④まで退避した作業者の人数と名前を入構
者札で確認し、入構確認所の記録と合致するかを
確認担当警備員に有線電話で確認する。
6 )合致して全員退避を確認した後、確認担当警備
員から現場事務所及び監視所に退避完了の連絡を
する。
6 )全員退避完了の連絡の後、トンネル内監視所の
コントロールで大型ファンによる強制排気を行う
かどうかを決め、必要な場合、排気する。
図− 3
7 )以上の手順で予行演習を何度か行ったところ、
緊急時連絡体制図
トンネル断面図に示すダクト①∼③部は、トンネル
監視所よりの退避指令の連絡時点から全員退避完
内で事故や火災が発生した場合、大型ファンによる
了の連絡時点までの所要時間は、4 ∼ 7 分であり、
強制排気風の通り道であり、風速が速く、危険を伴
予想以上早く退避できることを確認した。
うので、通常時は人の立入禁止区域となっているた
8 )約 7 ヶ月の工事期間中、実際の事故や火災は
め、工事作業者は強制排気を行う前に退避しなけれ
発生しなかったが、トンネル内監視所の判断で退
ばならない。大型ファンは通常時にはセンサー信号
避行動を 2 回行っており、その結果は、予行演
等で自動的に作動するが、工事中はトンネル内監視
習通りスムーズに退避完了でき、満足できるもの
所にてコントロールして頂くようにし、図− 3 に示
であった。
すような緊急時連絡体制を構築して安全確保に努め
4 .お わ り に
た。以下にその内容を述べる。
1 )トンネル内監視テレビモニターや各種危機感知
有機則では特に自然通気の悪い場所として「タン
センサー等により緊急事態の発生が予測された場
ク等の内部」と表現されているダクト内で、かつ、
合、監視所より退避指令の連絡を現場事務所及び
緊急時にはすみやかに退避しなければならない条件
起点側・終点側の各作業者入構確認所(確認担当
のあるトンネル内作業で、不慣れなCFRPによるコ
警備員常駐)に入れて貰う。
ンクリート補強工事を行い、延べ28 , 044時間完全
2 )通路④のダクト入口に非常ベルと有線電話を設
無災害で竣功できたのは、安全対策の先手実施によ
置し、また、ダクト①、②、③内には非常用パト
る安全意識の高揚と、作業者一人一人の安全活動へ
ライトを設置して、退避指令の連絡があり次第、
の積極的な参画によりもたらされた賜物である。
常駐の確認担当警備員が非常ベルと非常用パトラ
イトを作動させる。
安全管理は、作業者個人の安全意識を如何に引き
出し、工事期間を通じて如何に保持できるかに尽き
3 )非常の合図に気付いた者は誰でも、通路④の有
ると思われる。
線電話で情報の内容を確認し、ダクト内に居る作
−118−
※ 三菱重工工事株式会社
39
逆ローゼ式上路アーチ橋の施工と出来形管理
日本橋梁建設土木施工管理技士会
井 上 睦 ※
①架設時安全性の確保
1 .は じ め に
斜吊り式架設工法は架設難易度が極めて高く、過
平成12年に熊本県農政部より受注した「矢形川
去に落橋等の重大事故も多い。架設時の安全性の確
橋」
(受注工事名称:広域営農団地第23号工事)は、
保は、架設計画を立案する上での最重要課題である。
阿蘇カルデラ台地の急峻な谷合に架かる逆ローゼ式
②架設精度の確保
バスケットハンドル型の長大アーチ橋であり、ア
バスケットハンドル型上路アーチ橋であり、アーチ
クラウン部の桁下高さは約90
ーチリブのスムースな閉合を可能とするため、架設
、アーチ支間202
精度確保に対する具体的対策を検討しておく必要が
に及ぶ。
本橋の架設工法は、橋梁形式・架設場所の条件か
ら、「斜吊り式架設工法」を採用したが、実施施工
ある。
③架設精度の確保
計画立案に当たり、以下の課題に対する対策を模索
バスケットハンドル型の長大アーチ橋であり、ア
することが「斜吊り工法張力管理システム」を開
ーチリブのスムースな閉合を可能とするため、架設
発・適用する動機となった。
精度確保に対する具体的対策を検討しておく必要が
ある。
2 .形状管理システム
④作業者の技量低下に対する対策
2−1
鋼橋架設に従事する熟練鳶工の不足等、現場作業
形状管理システム開発の目的
図− 1
架設一般図
−119−
者の技量低下対策として、極力作業者の経験・技量
に依存しない施工法とする必要がある。
⑤架設費のコストダウン
斜吊り工法では、架設コストに占める仮設機材費
の比率が高い。本橋のような大型橋梁では、新規製
作設備の増加により、架設コストアップを招くおそ
れがある。
極力所有機材を利用できるような合理的な仮設備
計画を行い、架設費のコストダウンをはかる必要が
ある。
2−2
形状管理システム運用の目的
1 )斜吊り架設時の安全性の確保
架設途上での斜吊り索張力、橋体形状を随時監
視・管理し、事故の原因となりうる要因を未然に排
除する。
また、管理値に基づいた張力・形状管理を架設途
上で行なうことにより、閉合に至るまでの斜吊り索
の調整箇所数、調整回数、及び大荷重下での張力調
図− 3
整作業量の低減を図り、作業者の熟練度への依存度
・斜吊り索張力の計測が随時行えること。
を軽減する。
・架設途中のアーチリブの変位(橋体形状)を随
時計測出来ること。
2 )架設精度の確保
・計測した張力・変位を温度補正し、誤差量の評
架設各段階で橋体形状の計測・確認を行いながら
価(設計管理値との対比)が行えること。
架設を進めることで、アーチリブ架設精度の向上と、
・斜吊り索の張力調整シミュレーションが可能な
閉合作業の円滑化を図る。
こと。
3 )斜吊り設備の合理化
・管理システムを管理室にて集中運用できるこ
斜吊り索の張力管理により安全性を確保した上
で、多段有効として算出した斜吊り索安全率を斜張
と。
橋と同様にS.F.=2 . 5とし、斜吊り設備の経済的合
2 )計測要領
理化を図る。
①斜吊り索張力
2−3
斜吊り索に設けた調整装置部に、センターホール
形状管理システムの概要
1 )張力及びキャンバー計測
型ロードセルを設置して計測する。
②橋体形状
図− 2
計測項目と計測位置図
図− 4
−120−
使用機器構成図
表− 1
管理目標値
アーチリブ主要格点にターゲットを設置し、格点
上の座標値(X,Y,X)を 3 次元光波計測器により
計測する。
③温度
アーチリブ主要点と斜吊り索主要点に熱伝対を取
り付けて温度を計測する。
3 )管理フローチャート
図− 3 に管理フローチャートを示す。
4 )使用機器概要
計測作業の効率化を図るため、使用機器の構成は
図− 4 に示すとおりとし、無線通信を利用して計測
室にて一括してデータ収集が可能なものとした。
5 )管理基準
本システムにおける管理目標値は、表− 1 に示す
とおりとした。
3 .結 果
各STEPにおける張力及びキャンバー計測結果を
図− 5 に示す。
また、本橋での課題等を下記に示す。
1 )出来形計測を改良し安全対策としても使用でき
るシステムとする。
・張力異常時の警報システム
図− 5
・クリップ滑り計測システム
2 )3 次元光波計測器を使用しているため計測の可
否が気象条件により左右される。
矢作川橋張力・形状管理記録
ステム適用の効果を総括すれば、安全性の確保と架
設精度確保における確実性の向上と言うことが出来
3 )シミュレーションを精度よく行うには予めワイヤー
るであろう。
の弾性係数を試験等により把握する必要がある。
なお、本システムの本橋での適用を通して、改善
すべき課題も多く認められる。
4 .お わ り に
本橋で得られたデータをもとに国土交通省発注の
本システムの適用により、架設中における安全・
逆ローゼ式アーチ橋:東海環状土岐川橋では、更な
品質管理に関する情報を、計測による具体的数値で、
る改善を行い、安全性の確保・架設精度の向上を計
しかも容易に得られるようになったことは、施工管
った。
理レベルの向上につながるものと評価できる。本シ
−121−
※ 日立造船株式会社
40
支承取替工事における創意工夫
∼ 九頭竜川橋補修工事 ∼
日本橋梁建設土木施工管理技士会
渡 辺 潔 ※
ため、支承取替工事が各所で行われています。
1 .は じ め に
今回、北陸自動車道九頭竜川橋で施工しました支
近年、支承の機能回復と交通荷重増加への対応の
承取替工事について紹介します。
施工フロ−チャ−ト
鉄筋探査測定結果
−122−
せ、アンカーボルト施工を確実に行うことが出来ま
した。
4 .現場状況や施工状況に対応させた桁
受設備
支承取替作業は主桁をジャッキで扛上し仮受けし
て行うものとしました。本工事は、支承反力が最大
3974KNと大きく供用中の作業でもあり、安全確保
のために、サンドル等で桁を仮受けする必要があり
ましたが、支承から橋座端までの作業スペ−スが狭
桁仮受設備
く桁受けサンドルとジャッキ設備の設置はできませ
んでした。狭いスペ−スにサンドル設備を設けるた
2 .工 事 概 要
めに、桁受けジャッキを囲むような桁仮受設備(組
合せジャッキ)で対応しました。
工 事 名:北陸自動車道九頭竜川支承改良工事
路 線 名:高速自動車国道北陸自動車道
5 .主桁付きブラケット工法
発 注 者:日本道路公団北陸支社
工事場所:福井県福井市北野上町
支承取替に伴い主桁を仮支持する必要がありまし
(kp105 . 0∼kp105 . 2)
構造概要: 3 径間連続非合成鈑桁橋(L=174
た。本工事は、当初、端支点部の桁受けは、主桁
)
施工内容:支承取替32基
上り線 A1 橋台∼P3 橋脚16基
下り線 A1 橋台∼P3 橋脚16基
施工概要:使用中の高速道路の支承取替工事となっ
た。施工場所は河川内のため非出水期作
業であった。また、同区間で橋脚耐震補
強工事があり、輻輳工事でした。
3 .補修工事における事前調査の重要性
主桁付きブラケット工法(桁間)
補修工事においては、既設構造物に対して削孔や
補強が生じます。設計図の照査だけでなく、既設構
造物の事前調査が確実な施工を行うために最も必要
な事項の一つです。
この工事では、新設沓のアンカ−ボルト孔削孔位
置を決定するのに超音波探査で行わず、下部工配筋
図をもとにアンカ−ボルト周辺をカッタ及び手動ブ
レーカーで試削し、既設鉄筋の位置を把握しました。
この方法で行った結果、ロス無く確実にアンカ−
ボルト孔の削孔位置が決定できました。
この位置を支承ベースプレートの製作に反映さ
−123−
主桁付きブラケット工法(端部)
桁仮受設備図(組合せジャッキ図)
主桁付きブラケット工法全体図
取替完了後も存置した。
WEB直下にジャッキを据えて仮受けする工法でし
②ブラケットの取付作業時、既設構造物(検査路、
たが、下記の問題がありました。
添架物等)の撤去・復旧が生じた。
①主桁と沓座の間に、組合せジャッキが設置できな
い。
6 .お わ り に
②支承から橋座端までの作業スペ−スが確保できな
い。
現場状況、工程ともに厳しいものであったが、事
以上の結果、当初の主桁WEB直下工法での施工
前調査、現場状況や施工条件に対応した支承取替工
は不可能となりました。新たに支承取替工法を比較
法及び桁仮受設備の採用などの創意工夫を凝らした
検討した結果、主桁付きブラケット工法を採用しま
結果、計画工程通り竣工することができました。
した。採用理由として、
補修工事の場合、適切な施工方法を選定すること
①組合せジャッキの設置スペ−スが確保できる。
が重要であり、綿密な計画が必要となります。
②支承周辺に作業スペ−スがとれる。
最後に、本工事の施工にあたり、多大なるご協力
③施工性が良い。
とご指導を賜った日本道路公団北陸支社の関係者各
が挙げられます。また、この工法を施工するために、
位に深く感謝し、厚くお礼申し上げます。
以下の作業が生じました。
※ 川田工業株式会社
①ブラケット取り合い部の主桁側ブラケットを支承
−124−