特集4 進化するベルギー(2)

進化するベルギー
物流業者の動き
ICO
完成車ターミナル用地拡大
08 年は取扱量 160 万台見込む
ICO の完成車ターミナル(ゼーブルージュ)
扱台数の増加は著しく、さらなる拡張が急
した理由について、ベ
務になっている」と語る。今後は、ゼーブ
ルギー支店の浜島徹
ルージュ港湾局により、後期計画完了後の
支店長は「ハンブルク
駐車スペースと対岸の自社ターミナルとの
やロッテルダムなどと比
間に、長さ400m ほどの橋を建設するプラ
較して、もっとも伸びる
アントワープ港は、北海からオランダ内陸部
ンもある。これにより、トランシップ車両の
余 地 が あると判 断し
までのびるスケルト川沿いに位置。欧州屈指
横持ち時の利便性や安全性が向上する。
た」と語る。特に、倉
港湾局への要望は提出済みで、早ければ
庫運営では、他港より
08 年末にも供用が開始される予定。
も広いスペースを確保しやすく、倉庫賃料
Focus
4
アントワープ港
港湾機能拡張、新ドック開発も
の貿易港として知られ、07 年の貨物取扱量は
浜島支店長
ロッテルダムに次いで欧州第 2 位となる 1 億
8300 万㌧(06 年比 15 %増)
を取り扱った。こ
日本郵船の欧州自動車ターミナル子会
量を伸ばしている。ICO は同港でバステ
社 International Car Operations( ICO)
ナーケン・ターミナル(54ha)
、ノーザン・イ
や人件費も割安だという。
「現地代理店に
は 800 万 TEU(16 %増)
で、ロッテルダム、ハ
は、06 年 10 月に日本郵船がシンガポール
ンレット・ターミナル(44ha)、ヴァークスホ
よるオペレーションの品質も高い。現在
ンブルクに次ぐ欧州第 3 位。近年、コンテナ貨
は、もともとドイツの倉庫で請け負っていた
物取扱量は年率 10 %以上の成長率を記録し
の PSA コーポレーションからアントワープ
ール・ターミナル(15ha)の 3 ターミナルを
港、ゼーブルージュ港の完成車ターミナル
運営し、合計面積は 113ha を超える。この
を取得したことで、同社 100 %出資の運営
うち最大のバステナーケン・ターミナルは、
会社として設立。07 年 4 月から、両港の運
日系はじめ各国メーカーの完成車を幅広
営を正式に開始した。07 年の両港の合計
く取り扱い、収容台数は 2 万 5000 台。今
取扱台数(完成車、建設機械)
は、06 年比
後の取り扱い増加を見込み、09 年末まで
伊勢湾海運
08 年 4 月からベルギー支店開業
アントワープで特殊貨物など増加
特集 4
貨物を取り扱っているが、今後、新規案件
を手掛ける上でも条件が良いと感じる」
のうち約半分を占めるコンテナ貨物の取扱量
ドイルガンクドック
ており、08 年の取扱量は 900 万 TEU 以上を見
トワープ港には多大な優位性がある」と語る。
込んでいる。
港湾地区周辺には欧州最大のキャパシティー
アントワープ港は化学品の取り扱い港として
を誇る 530ha の倉庫用地があり、ロッテルダ
(浜島支店長)
。将来的には、通関やトラッ
発展してきた経緯から、港湾地区一体は化学工
ムやハンブルクの倍以上の面積を持つ。港湾
伊勢湾海運の欧州法人、伊勢湾ヨーロ
ク輸送などで協力関係を持つ現地代理店
業地帯になっており、日系企業ではクラレや日
の混雑も少なく、バージなどの内陸輸送網も発
ッパは、ドイツ・デュッセルドルフに本社を
と共同出資し、自社倉庫を取得するプラ
本触媒などが工場を構える。07 年の液状ケミ
達しているため、欧州全域への輸送で効率的
ンもある。
カル貨物の取扱量は約 40 万㌧で、取扱貨物全
な配送体制の構築が可能だ。
15 %増の 163 万 9500 台で、08 年は前年比
に 30ha、計 1 万 3000 台分の駐車スペース
置いて欧州事業を展開。日系メーカーの
22%増となる200万台を見込んでいる。両
を増設する計画もある。09 年の拡張工事
自動車・工作機械関連の輸送業務を中心
ベルギー支店の現在の取扱量は、月間
港は、他船社の自動車専用船も多く利用
完了時には、約 4 万台が駐車可能な巨大
に取り扱う。08 年 4 月から、アントワープ
約 3000 ㌧。輸入後の配送先はフランスや
07 年はトヨタやマツダ
ケルト川沿いに建設中の「ドイルガンクドック」
するコモンターミナルとして運営。PDI サー
ターミナルとなる予定だ。
にベルギー支店を開業し、欧州では 2 拠
イタリアを中心に、一部ドイツ向けもある。
など日系メーカーを含
は 05 年に一部稼動を開始し、08 年末には全
点体制を敷く。アントワープでは、ドイツ本
ドイツ国内向けの大半はドイツ本社が取り
め 94 万台を取り扱って
面稼働する予定。同ドックのフル稼働で取り
扱い、ハンブルクでも倉庫運営を行ってい
いる。
扱いが可能になるコンテナ貨物量は約 700 万
ビスも提供し、07 年はゼーブルージュ港だ
けで 9 万 9700 台を取り扱った。完成車の
開発計画では、バステナーケン・ターミ
ナルを 2 期に分けて 15ha ずつ拡張し、08
社が 07 年春から 5000 ㎡の倉庫を賃借し
体の 2 割強を占めている。また、自動車の完成
車港としても欧州で第 3 位の取り扱いがあり、 とから、新ターミナルの開発も進めている。ス
アントワープ港湾局
TEU。アントワープ港全体の取扱量は 1500 万
のサビエ・ヴァンロール
TEU となり、欧州の貿易港では最大のキャパ
ゲン営業部長は「今後
シティとなる。今後は、同ドックを上回る規模
洗浄やクリーニング、オプション取り付けな
年夏までに前期、09 年末までに後期の計
て機械設備関連など特殊貨物を取り扱っ
る。アントワープでは、今後も重量物や展
ども手掛け、約 700 人のスタッフを抱える。
画を完了させる。すでに、前期計画は一
ていたが、同倉庫の事業が順調に推移し
示会、プラント輸送などの特殊貨物を中心
ゼーブルージュ港では、完成車や建設
部スペースの整備が完了し、6 月中旬から
ていることから、支店設立に至った。同支
に手掛けていく考え。
「アントワープでは後
のさらなる貨物量の増
機械の取扱台数を拡大している。07 年の
稼働を開始。ICO のユルゲン・ヴァンホー
店では、主に名古屋港発貨物の輸入取扱
発のため、厳しい面もあるが、特殊貨物
加にも豊富な倉庫用地
取扱台数は 06 年比 21 %増の 130 万台強
ヴ・ジェネラルマネージャーは「既存スペー
業務を中心に、日本向け貨物の輸出業務
の輸送では独自のノウハウや実績がある。
で対応できる点で、アン
で、08 年も前年比 22 %増となる 160 万台
スは 100 %使用しており、開設したばかり
も一部、取り扱っている。
今後は、オペレーションの質をさらに高め
を見込む。ロシア向けなどを中心に取扱
のスペースも翌日からフル稼働の状態。取
欧州での新拠点にアントワープを選定
画も控えており、港湾機能のさらなる拡張を図
る方針だ。
い」
(浜島支店長)
。7 月からは事務所の人
面積は国内 5 施設、延べ床面積は計 8 万
する高付加価値サービスの事例には、各
員体制も3 人に拡充しており、サービスレ
3000 ㎡に上る。主要拠点となるアントワー
種製品の流通加工や出荷前検査業務に加
ベルの向上を図っていくという。
プ港湾地区のメルセルでは 3 棟を運営し、
え、返品物流、最終加工製造などがある。
各種付加価値サービスを展開中の 3 万
メルセル倉庫で取り扱う日系家電大手の
5000 ㎡の複数顧客用倉庫に加え、1 万
案件では、商品のリパックや特別包装、コ
8000 ㎡、6000 ㎡の 2 棟を日系家電メーカ
ンセント類の詰め替え、品質管理などを受
流通加工など付加価値サービス
医薬品取り扱いスペースは拡張
ー専用倉庫として運営している。また、メ
注。作業現場にはトヨタ生産方式の“カイ
ッヘレン近郊のセントカトレーンウァーバー
ゼン”を導入しており、業務の可視化や効
に 4000 ㎡のクロスドックセンター、東部ゲ
率化を徹底している。また、携帯電話大手
NYK ロジスティクス
(ベルギー)は 89 年
ンクに 2 万㎡の複数顧客用倉庫を設置。
の返品物流では、壊れた携帯電話を販売
の設立以来、フォワーディングや国内の保
ゲンク倉庫では、自社トラック5 台を所有
店から集約するワークショップを設置。破
管・配送業務を展開して事業を拡大。従
して、コピー機の配送業務も行う。
損度に応じて仕分け後、軽度の破損はワ
業員は 500 人以上を擁し、運営中の倉庫
CARGO AUGUST 2008
での建設が予定される「サーフティンドック」計
ヴァンロールゲン
営業部長
るなど、より一層の信頼を獲得していきた
NYK ロジスティクス
50
今後も大幅な取扱量の拡大が見込まれるこ
NYK ロジスティクス
(ベルギー)が注力
ークショップで修理して販売店へ返送し、
CARGO AUGUST 2008
51
進化するベルギー
取扱貨物は、薬事卸業者に配送するジェ
時に倉庫面積 4000 ㎡でスタートし、02 年
ネリック医薬品や、薬局などに配送する化
には 1 万 620 ㎡に拡大。周辺地域に 1 万
粧品、サプリメントなど。欧州で医薬品を
㎡ほどの倉庫スペースも賃借しており、現
取り扱う際、物流業者は施設ごとにそれ
在展開する倉庫スペースは 2 万㎡を超え
ぞれの国で許認可を得る必要があり、
る。月間の貨物の出入庫量は約 2 万㌧で、
ンスポート(WCT)は、アントワープから約
NYK ロジスティクスは事業の開始にあた
平均在庫も約 2 万㌧。取扱貨物の内訳は、
70km 離れたメーハウト市で内陸コンテナター
り、ベルギーの GDP ライセンス(Good
Focus
5
WCT
バージ輸送、前年比 44 %増
内陸水運大手のウォーター・コンテナ・トラ
ミナルを運営している。同ターミナルはアント
化学品が 7 割、一般貨物が 3 割。近年は
左から合田社長、松田氏
Distribution Practice =医療製品流通の
ワープとワロン地方のリエージュを結ぶアルバ
特集 4
一般貨物の取り扱いを増加させており、
三井倉庫のアントワープ倉庫
安全性を高めるための規約)
を取得してい
進出企業の化学品を中心に取扱量を伸ば
スポーツ用品大手の保管業務では製品を
する。倉庫運営を 24 時間体制に移行する
路の利用が可能なマルチ・モーダル対応型タ
る。NYK ロジスティク
してきた。現在は、機械製品や日本のス
段積みラックでサイズや種類ごとに分けて
ため、設備や人員体制の強化も検討中だ。
ーミナルとして展開している。同地域には、
ス(ベルギー)のカトリ
ポーツ用品大手の製品保管、流通加工も
保管している。取扱貨物全体の仕向地は
欧州の主要配送拠点としてアントワープ
ーン・ポッペ販売・マー
手掛けるなど一般貨物の取り扱いも増加
欧州全域に広がり、ドイツ向け 35 %、フラ
を利用するメリットについて、三井倉庫欧
ケティング担当は「同ラ
傾向にある。
ンス向け 25 %ほか、オランダやイタリアな
州法人の池田明郎社長は「倉庫の月間賃
ート運河沿いに位置し、運河とレール、高速道
WCT の主要顧客であるナイキやイケア、トヨ
タが物流拠点を構えるほか、BP、エクソン、ダ
は毎日ある。ターミナルは常時、フル稼働の状
ウケミカルなどの化学産業が生産拠点を構え
態」とし、今後はターミナルを 8 万㎡ほど拡張
ている。
する予定。拡張計画のうち2 万㎡分はすでに着
07 年のコンテナ貨物取扱量は 26 万 TEU で、 工しており、08 年夏から秋にかけての稼働を
06 年の 18 万 TEU から44 %増と大きく物量を
目指している。
伸ばした。08 年も10 %増を予想しており、今
ターミナルは土曜の午後と日曜を除き、24
後も長期的な増加を見込んでいる。貨物はイ
時間稼働中。コンテナの荷役は 2 基のガントリ
ンバウンド(輸入、国内貨物)
が 6 割を占め、仕
ークレーンと7 台のリーチスタッカーで行って
出港はアントワープが 50 %、ゼーブルージュ、 いる。WCT から各地への配送にはトラックや
イセンスを取得したこ
欧州住友倉庫では、欧州地域に現地法
ど各国へ現地陸送業者を起用して配送し
借料やコンテナターミナルのハンドリング料
とで、メーカーを問わ
人や倉庫などの自社拠点を持たない日系
ている。東欧地域への輸送はまだ少ない
金が安く、物流費の削減が可能」と語る。
ず医薬品案件を受注
メーカーを対象に、アントワープ支店の倉
が、ポーランドやチェコなどへは、すでに
さらに、ロッテルダム港では、混雑やストラ
できるようになった。現
庫を欧州市場向け貨物の配送拠点として
10 年以上前から定期便を運行するなど配
イキの影響が年々深刻化していることもあ
在も複数社の医薬品を取り扱っているが、
利用する「コンサインメント在庫」を推奨し
送体制を整えている。欧州住友倉庫では、
り、アントワープ倉庫の活用でより定時性
今後も多くの企業の案件を獲得していき
ている。欧州住友倉庫の松田亮ジェネラ
アントワープから東欧地域へ輸送するとい
の高いサービスの提供を目指す。また、ア
ポッペ氏
ロッテルダムが 20 %ずつ、アムステルダムが
鉄道が多く利用されており、トラックは 80 台を
たい」と語る。現在、医薬品はメルセル倉
ルマネージャーは「欧州市場での日本製品
う選択肢が顧客に浸透していないと見て
ントワープ倉庫は自社運営となるため、現
10 %の割合。メーカーによっては仕出港を戦
チャーター。車両の出入りは、チャーター車以
庫の 1 階部分に摂氏 4 ∼ 8 度、同 8 ∼ 15 度
の評価は極めて高いが、欧州に在庫がな
おり、今後も営業活動を強化する構えだ。
地代理店を通じて運営するロッテルダム倉
略的に分散している企業もあるという。主な貨
外も含めると1 日に 600 台ほどあるという。タ
と2 つの温度帯の専用スペースを設置し
い場合は輸送に約 1カ月もかかってしまう
欧州住友倉庫の合田裕章社長は「今後
庫より、さらにきめの細かい倉庫運営が可
物は、化学品やプラスチックに加え、ナイキ製
ーミナル内には鉄道の線路が走っており、ドイ
て保管しており、ベルギー、インド、オラン
など、供給体制の不備が販売を難しくして
は、中東欧・ロシアに加え、トルコなどの新
能となる。このため、今後は自動車部品や
品も多く取り扱う。
ツ・ケルンから週 4 本のスケジュールで貨物列
ダなどの製薬会社製品を取り扱う。08 年
いるケースが多い」と語る。一方で、欧州
興市場への進出が課題になるが、引き続
電子機器関連の部品物流など、より付加価
10 月には、新たに常温スペースを追加し
に拠点を構えれば、人件費などの諸コス
きアントワープ支店の欧州配送拠点として
値の高いサービスの受託で倉庫事業の拡
トに加え、法人税の支払いも課されるな
の重要性は変わらない」という。
大を図る。現在、同倉庫の貨物は顧客企
車が運行されている。
WCT が運行するコ
テッセンス氏は「近年、アントワープ周辺で
ンテナ バージは 7 隻
で、積載能力 200TEU
も渋滞が目立つようになってきた。トラックの
て取り扱いスペースの拡張を予定。温度
ほどの小型のものが中
輸送時間を計算することが困難になっているこ
調節が可能な医薬品専用スペースを、現
ど、デメリットも多い。
「ベルギーでは、コン
業による引き取りが多いが、部品物流業
心。取扱量の拡大か
とも、バージ利用の増加を後押ししている」と
在の 4000 ㎡から 7000 ㎡に拡大する。
サインメント在庫の利用には法人税がかか
務の受託時にはトラック配送機能を強化す
ら、バージの運行はこ
みる。ターミナルと各主要港湾の間の輸送時間
の 2 年間で 3 隻も増え
は、自航式バージでアントワープが 8 時間、ゼ
た。WCT のミシャ・テ
テッセンス営業部長
ッセンス営業部長は
「環境規制や燃料費高騰の影響で、問い合わせ
ーブルージュが 15 時間、ロッテルダムが 17 時
間、アムステルダムが 22 時間が目安になると
いう。
らない。加えて、当社では同制度の利用
に必要となる VAT(EU 域内の付加価値
住友倉庫
アントワープに大型自社倉庫
日系荷主の「欧州配送拠点」
税)
に関する知識も、93 年の EU 統合時か
ら蓄積しており、複雑な手続きが必要とな
三井倉庫
アントワープ倉庫が本格稼動
今後は部品物流など受託目指す
る記帳などの業務もすべて請け負うことが
三井倉庫は、07 年 10 月にベルギー法人
できる」
(松田ジェネラルマネージャー)
。ア
を設立。アントワープで、現地陸送業者が
ることも視野に入れる。
名港海運
ロシア向け貨物が増加
08 年は、前年比倍増見込む
重度のダメージを負った製品はメーカーの
や動作確認などの検査業務を実施。日系
ポーランド工場へ配送している。ポーラン
事務機メーカーのコピー機を取り扱うゲン
住友倉庫の欧州法人、欧州住友倉庫は
ントワープ倉庫にコンサインメント在庫を持
展開する倉庫群のうち約 6000 ㎡の倉庫棟
ド工場で修理後の製品を、ワークショップ
ク倉庫でも、顧客の要望に応じてスキャナ
ドイツ・デュッセルドルフに本社を設置して
つことで、顧客は自社拠点を構えるリスク
1 棟を賃借して、倉庫運営を行っている。
から販売店へ返送する業務も請け負って
ーやソーターなどの組み立て作業を行う
欧州事業を展開。ベルギーでは、84 年に
を負わずに、欧州市場へのオンデマンド・
主に日系メーカーの事務機器や工具、建設
拠点にフォワーディングや倉庫事業などを
いる。同案件は現在、月間 1000 台ほどを
ほか、製品の据え付けや初期設定、機能
アントワープ支店を開業しており、大規模
デリバリーが可能になるという。住友倉庫
用機械に加え、化学品などの原材料を取
展開しており、今年で設立 30 周年を迎え
取り扱っているが、すでに一部、追加受注
説明などの業務を請け負っている。
な自社倉庫も所有するなど、欧州事業の
欧州では、すでに多くの日系企業のコンサ
り扱っている。08 年 9 月から、これまでロ
る。倉庫事業では、アントワープ近郊スケ
メイコー・ヨーロッパは、アントワープを
が決定しており、将来的には月間 1 万台の
07 年 6 月から開始した医薬品の取り扱
主要拠点に位置付けて、広く物流サービ
インメント在庫を取り扱うが、今後もこのシ
ッテルダム倉庫で取り扱ってきた日系電子
ラに延べ床面積6800 ㎡の自社運営倉庫を
取扱量を見込む。さらに、日系メーカーの
い業務では、製品の保管・配送業務に加
スを提供している。アントワープの自社倉
ステムのメリットを前面に出して顧客獲得
メーカーの事務機器をすべてアントワープ
構えて欧州の主要配送拠点とするほか、
ボイラーセンサーを取り扱うワークショップ
え、ラベリングや出荷地域に応じた言語パ
庫は92 年に開業。同港が石油化学産業の
を目指す考えだ。
倉庫に移管することを決めており、物量の
現地倉庫業者 2 社を起用している。国内
では、出荷前製品の最終加工(圧力調整)
ンフレットの挿入業務を請け負っている。
集積港として発達してきた背景から、日系
大幅な増加に伴って本格的に稼動を開始
配送では、現地配送業者を起用するとと
52
CARGO AUGUST 2008
アントワープ支店の自社倉庫は、開業
CARGO AUGUST 2008
53
進化するベルギー
メイコーヨーロッパ本社
全性なども含めてベストな輸送方法を選
を多く請け負っている。今後、欧州事業を
択している」
と語る。工作機械など大型貨
拡大していく上での営業拠点としても、極
物は、アントワープ港から欧州域内のフィ
めて重要な拠点」
と、同支店の位置付けを
ーダー・サービスとトラック輸送を組み合わ
説明する。貨物の取扱量も年々増加して
せて、エストニアのタリン/パルディスキ港
おり、将来的には倉庫面積の拡張も検討
経由でロシア内陸部まで輸送している。ロ
する。
Focus
6
特集 4
ブリュッセル国際空港
貨物地区の整理・拡張計画進む
ブリュッセル国際空港は、首都ブリュッセル
今後も、積極的に外国キャリアの誘致を図るこ
近郊のザーベンタムに位置。07 年の航空貨物
とで、取扱量は早期に 07 年の水準に戻したい」
取扱量は、欧州の空港では第 5 位となる78 万
と語る。現在は年間 1800 便に定められている
5000 ㌧(06 年比 8.9 %増)
だった。このうち、約
深夜便の発着回数についても、拡大を検討する
9 割をフレーターによる輸送が占めており、シン
という。また、01 年に国営キャリアのサベナ航
シア向け輸送に強いエストニアの陸送会
ブリュッセル支店の倉庫は、ブリュッセ
社を代理店に起用し、高価な大型貨物の
ル国際空港発着の貨物に加え、アムステル
輸送では必須となる充実した輸送機材が
ダムから保税転送される輸入貨物も取り
ガポール航空、大韓航空、アシアナ航空、キャ
空が破綻してから途絶えている日本との直行便
扱っており、ベルギー国内向け貨物の集約
セイ・パシフィック航空などが定期便を運航す
については、日系航空会社との交渉を通じて再
るほか、DHL や TNT などのインテグレーターも
開を目指しているという。
ベネルックス郵船航空ブリュッセル支店
活用できるほか、ロシア国内の輸送で貨物
は たん
もに、子会社のメイコー・ユーロ・エクスプ
追跡が可能な体制を構築している。アン
ベルギー、ルクセンブルクを統括する、ベ
拠点としての機能も持つ。アムステルダム/
レスを通じて欧州全域へのトラック輸送を
トワープ/タリン間のフィーダー船のスケ
ネルックス郵船航空を設立。アムステルダ
ブリュッセル間はトラックで約3 時間での転
提供。自社車両 14 台を中心に庸車も利用
ジュールが週 2 便と充実していることも、
ムの本社を中心に5カ国に5 支店9 店舗を
送が可能なため、週 5 便と豊富なスケジュ
し、日系メーカーの事務機器など一般貨
同ルートを起用する大きな要因となってい
設置し、スタッフは 120 人あまりを擁する。
ールを運行している。通関から配送まで、
に2 年連続(06、07 年)
で選ばれるなど、効率の
目指し、航空会社の就航を誘致する戦略を強
物を輸送している。特にドイツ、フランス向
る。仕向地はモスクワのほかに、重化学
ベルギーでは、ブリュッセル国際空港の貨
すべて自社ハンドリングすることで、盗難
高いオペレーションが強みだ。
化している。この誘致戦略の一環として、貨物地
けの貨物が多く、日系企業の販社などが
工業の発展が著しいウラル地方のペルミ、
物地区に航空貨物支店、アントワープに海
の防止やリードタイムの短縮を実現するな
集中するデュッセルドルフにも事務所を構
エカテリンブルクなど。浅井社長は「日系
上貨物支店を置いて、輸出入業務を中心
えて、営業活動を強化している。
メーカーの多くは、ロシア展開を欧州拠点
に事業を展開している。
ど、高い輸送品質が強みだ。
ブリュッセル支店の航空貨物取扱量の
貨物施設を構える。欧州各地へのアクセスが容
ブリュッセル国際空港会社は、05 年にオース
易な高密度の鉄道網、道路網に加え、欧州航
トラリアのマッコーリー・グループが全株式の
空連盟が選ぶ「欧州で最も定時性の高い空港」 75 %を取得して民営化。欧州のゲートウェーを
08 年 3 月、DHL が深夜便の発着規制を理由
区「ブリュカーゴ」の大規模な整理・拡張計画を
に、自社貨物の大半を他空港に移転。ブリュッ
推進中。より効率の高いオペレーションを目指
セル国際空港の全貨物取扱量の半分はDHLが
し、2025 年の完成を目指している。フェーズ1
占めていたため、今後、
では、ブリュカーゴの隣接地に確保した用地を
うち約 3 割は、アムステルダムからの転送
短期的には貨物量の減
「ブリュカーゴ・ウェスト」として新規開発し、倉
近年は、ロシア向け貨物の取り扱いが
の監督下で進めているため、アントワープ
ブリュッセル支店は、延べ床面積 550 ㎡
増加している。ロシア向けでは、アントワ
に欧州拠点を構えるメーカーから依頼が
の倉庫を運営。輸入航空貨物の仕出地は
分が占める。アムステルダム倉庫からは、
少を見込む。ブリュッセ
庫面積 7 万 5000 ㎡、貨物取扱能力 70 万㌧の
ープ港揚げで輸送している日系メーカー
増加している」と語る。ロシア案件は今後
約 40%が日本発。ほか中国やフィリピン、
ベルギーのほかにスウェーデン・イエーテ
ル国際空港会社のディ
拡張を予定。用地内では、すでに第1貨物施設
ボリへ週 2 便、スペイン・バルセロナへ週
ディエ・デュポンセル開
の建設が進んでおり、08 年末にも完成する見通
発部長は「シンガポール
しだ。また、フェーズ 2、3 では、既存のブリュカ
航空など、08 年に入って
ーゴの再開発を計画しており、施設配置の見直
の工作機械などの輸送量が増加。今年度
も増加傾向にあり、メイコー・ヨーロッパで
は同市場での展開をさらに拡大する方針。
インドネシアなどアジ
ア諸国発が 50%を占
3 便など、各国へトラック便を運行中。ス
度比倍増を見込むな
める。ベネルックス郵
ペイン向けでは現在、マドリードへの定期
ど、好調に推移してい
船航空のローランド・
便開始に向けてトライアル輸送を実施する
ゼゲルス・ブリュッセル
など、サービスの強化を推進している。
の取扱量は、対前年
郵船航空サービス
る。ロシア向け貨物
の輸送方法について、
メイコー・ヨーロッパの
浅井啓二社長は「貨
54
CARGO AUGUST 2008
る既存キャリアもある。
デュポンセル
開発部長
しや新規開発を進めることで、現在 100 万㌧の
貨物取扱能力をさらに増強したい考え。
支店長は「フランダー
ブリュッセルに国内配送拠点
アムステルダムから保税転送も
ス州には日系企業の
郵船航空サービスは、86 年にオランダ、
あり、当支店ではこれらの企業への配送
浅井社長
物の種類に応じ、安
乗り入れを増加させてい
ゼゲルス支店長
欧州統括拠点が多数
CARGO AUGUST 2008
55