第 2 回 新潟県言語聴覚士会 学術大会

第 2 回
新潟県言語聴覚士会
学術大会
プログラム・抄録集
新 潟 県 言 語 聴 覚 士 会 会 長
大会長: 井口光開( ゆきぐに大和病院リハビリテーション科科長
)
会 期 : 平成26年6月1日(日)
会 場 : 燕三条地場産業振興センター メッセピア
大会長挨拶
第 2 回新潟県言語聴覚士会学術大会開催にあたり
新潟県言語聴覚士会
会 長 井 口 光 開
日頃より、県士会活動にご支援、ご協力を賜り誠にありがとうございます。第 2 回となりました本
大会ですが、今年は会場を三条市の「メッセピア」とし、前回とはまた違った雰囲気の中での大
会をお楽しみ下さい。
今回のプログラム構成は、基礎講座 2 講座、専門講座、一般演題、企業展示となっておりま
す。昨年は、専門講座として志學館大学人間関係学部心理臨床学科 飯干紀代子先生より、
「認知症へのコミュニケーション支援 -評価・介入の基本と実践-」についてご講演いただきま
した。今年は、埼玉県総合リハビリテーションセンター清水充子先生より「嚥下リハビテーションと
呼吸」をテーマにご講演いただきます。折しも、平成 26 年度診療報酬改定において「認知症患
者のリハビリテーション料」や「経口摂取回復促進加算」が新設されたことを鑑みると正に時節に
あった講座が開講できているものと思います。是非、今年も多くの会員より奮ってご参加いただき、
ご自身のキャリアアップや日頃の臨床に役立てて戴ければ幸いです。今年の診療報酬改定は、
国が推進している地域包括ケアシステムを大きく反映した改定となりました。今後、制度上医療
と介護における機能や役割がさらに厳しく区分されていくことが予想されます。2000 年に介護保
険制度が施行され、今年で 14 年目になります。当県士会の会員数も 300 名を超え、徐々に介
護保険領域に勤務する ST が増えてきているとは言え、配置状況からみると未だ ST の中心は医
療であり、十分な人数が確保されているとは言えません。この領域全体の質の向上と ST 充足に
むけ、自己研鑽とエビデンスの蓄積がさらに必要となります。そのような意味でも本学術大会が、
一助になればと考えています。さらに、今年は「がんのリハビリテーション研修会」が、新潟県で開
催できる運びとなりました。今後は、がんや認知症リハビリテーションなど多岐にわたったテーマで
の発表を期待しております。
本学術大会は、他の研修会とは異なり小児、成人、医療、福祉、教育など様々な領域で活
躍されている諸先生方が一同に会する絶好の機会です。発表を聴講するだけでなく多くの先生
方と交流を持ち、日頃の悩みや疑問を解決する場としても活用して頂きたいと思います。
最後に、学術大会成功を祈りつつ、本大会開催、運営にあたりご尽力くださいました役員なら
びにご協力頂いた諸先生方に感謝申し上げます。
1
目
次
大会長挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
会場案内図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
大会スケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
参加者の皆様へ(諸注意/参加費など)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
専門講座 司会:西尾正輝先生(新潟医療福祉大学)
14:45~16:45
「嚥下リハビリテーションと呼吸」
講師:清水充子先生 埼玉県総合リハビリテーションセンター・・・・・・7
一般演題 会場 1
摂食・嚥下障害
座長:片桐啓之先生(長岡中央綜合病院)
10:00~10:30
① 脳出血後,重度嚥下障害を呈した一例
田中宏美 立川メディカルセンター 悠遊健康村病院・・・・・・8
② 気管カニューレ抜管から経口に向け ST が早期に介入した症例
松田夏美 南魚沼市立ゆきぐに大和病院・・・・・・9
③ 姿勢の安定とともに経口摂取が可能となった一例
佐藤愛理 悠遊健康村病院 リハビリテーション部・・・・・10
失語症
座長:永井直子先生(三之町病院)
10:40~11:10
④ 音の鳴る缶を使用し,連絡手段が確立した重度 Broca 失語の 2 例 ―人を呼ぶ行為の獲
得を目指して―
松田貴幸 総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科・・・・・11
⑤ Anarthria および語義理解障害を伴う超皮質性運動失語の一例
橋本一穂 新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション部・・・・・12
⑥ 脳出血により失語症を呈し一般就労に至った事例
北上守俊 新潟県障害者リハビリテーションセンター・・・・・13
高次脳機能障害
座長:木村隼也先生(新潟市民病院)
11:20~11:50
⑦ 頭部外傷後,病識理解が社会的行動障害の改善に繋がった一例
矢内康洋 新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科・・・・・14
⑧ 注意障害を主体とする高次脳機能障害を呈するも異なる結果となった自動車運転再開支
援の 3 例
佐藤卓也 新潟リハビリテーション病院言語聴覚科・・・・・15
⑨ 右被殼出血にて軽度左半側空間無視(USN)が残存し自動車運転評価時に著明な影響が
みられた症例
渡邊隆幸 総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科・・・・・16
2
目
次
一般演題 会場 2
摂食・嚥下、dysarthria
座長:目黒文先生(長岡中央綜合病院)
10:00~10:30
⑩ 摂食・嚥下障害 検査入院の取り組み
塚田紗知 新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科・・・・・17
⑪ 摂食嚥下障害者の「外食ツアー」参加への試み~QOL向上に向けた実践報告~
中嶋優子 介護老人保健施設レインボーヴィラ清津・・・・・18
⑫ パーキンソン病関連疾患に対する集団発声訓練 :6 症例の MPT に関する経過
田村俊暁 小千谷さくら病院 リハビリテーション室・・・・・19
リスク管理・難病・訪問リハ
座長:池浦一樹先生(ゆきよしクリニック)
10:40~11:20
⑬ 当院リハビリテーション科でのリスクマネジメントの取り組み 第 1 報 -リスクマネジメントチー
ムの活動紹介渡邊隆幸 総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科・・・・・20
⑭ 当院リハビリテーション科でのリスクマネジメントの取り組み 第 2 報 ‐インシデントレポートの
分析と ST 部門の関わりについて‐
井上真衣 総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科・・・・・21
⑮ 難病医療協力病院における言語聴覚士の役割について
井口正明 小千谷さくら病院・・・・・22
⑯ 訪問リハビリテーションにおける ST 部門開設にむけた取り組み
平野祥子 総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科・・・・・23
県士会活動
座長:森田浩先生(新潟労災病院)
11:30~11:50
⑰ 災害リハビリテーションを考える ―その時,私たち ST にできること―
堂井真理 新潟県言語聴覚士会 公益事業部・・・・・24
⑱ 学校教育連携が始まります!(活動報告)
鍛治山洋 新潟県言語聴覚士会 学校教育連携ワーキンググループ(WG)・・・・・25
3
メッセピア会場案内図
―アクセス―
燕三条地場産業振興センター
JR 上越新幹線燕三条駅(燕側出口)から
徒歩 5 分
北陸自動車道三条燕 IC から車で 5 分
〒955-0092 新潟県三条市須頃 1-17
TEL:0256-32-2311(代)
3階
5階
エレベーター
会場 1: 3階 中会議室
会場 2
ホール
会場 3
会場 4
会 場 2・3: 5階 総 合 研 修 室
会場 4: 5階 ミーティングルーム
4
第2回 新潟県言語聴覚士会学術大会スケジュール
会場1
会場2
会場3
会場4
(3階 中会議室)
(5階 総合研修室(1))
(5階 総合研修室(2))
(5階 ミーティングルーム)
9:30
9:30
9:55
10:00
10:30
10:40
11:10
11:20
11:30
11:50
摂食・嚥下障害
①~③
開会式
摂食・嚥下 ⑩⑪
dysarthria ⑫
座長:片桐啓之先生
座長:目黒文先生
失語症
④~⑥
座長:永井直子先生
11時以降の参加受付は
基礎講座1
5階ロビーにて行います。
『臨床のマネージメント
受付は15時で終了します
と職業倫理』
小林 優紀江先生
リスク管理 ⑬⑭
難病 ⑮
訪問リハ ⑯
座長:池浦一樹先生
高次脳機能障害
⑦~⑨
県士会活動 ⑰⑱
座長:木村隼也先生
座長:森田浩先生
10:00
参加受付
企
業
展
示
11:00
11:15
基礎講座2
『臨床業務の
あり方、進め方』
井口 光開先生
12:15
13:15
13:30
平成26年度
新潟県言語聴覚士会
総会
14:30
14:45
専門講座
『嚥下リハビリテーション
と呼吸』
清水 充子先生
司会:西尾正輝先生
16:45
16:55
閉会式
5
参加者の皆様へ
≪参加者の皆様へ≫
※学術大会(専門講座、基礎講座含む)の事前申し込みは必要ありません。
※JAS(日本言語聴覚士協会)の会員で、専門講座または基礎講座を受講される方は、当日
『生涯学習受講記録票』を必ず持参してください。
※専門講座および基礎講座については JAS 生涯学習のポイント取得対象の研修会ですが、両
方を受講されても参加証明書の発行は 1 枚のみとなります。
※一般演題については JAS 生涯学習のポイント取得対象ではないため、参加証明書の発行は
いたしません。
※参加受付は 9 時 30 分より開始します。11 時 00 分までは会場 3 にて、それ以降は 5 階ロビ
ーにて行います。なお、受付は 15 時 00 分で終了します。
※事前に「第 2 回学術大会 参加票」に必要事項を記入のうえ当日会場に持参し、受付に
お渡しください。
※参加費については、下記の表をご覧ください。
≪発表者の皆様へ≫
※発表時間 7 分、質疑応答 3 分です。時間厳守にご協力ください。
※一般演題で発表される先生方は事前に複数の PC で動作確認を行ってください。
※一般演題で発表される先生方は、当日、発表用スライド(パワーポイント)のデータのみが入っ
た USB フラッシュメモリをお持ちください。
※PC 受付は 5 階ロビーにて行います。発表演題群の開始 30 分前までには PC 受付を行って
ください。
※必ず事前にウイルスチェックを行ってください。
※データのファイル名は、『演題番号・氏名』としてください。
※音声ファイルは wav、mp3、wma のいずれか、動画ファイルは mp4、wmv、mts のいずれかで
保存してください。それ以外の保存形式では、再生されない可能性があります。
※動画を使用される先生におかれましては、事前に下記問い合わせ先へご連絡ください。
問い合わせ先 : [email protected],jp (担当:新潟リハビリテーション病院 佐藤卓也)
※Mac をご使用の先生は、各自で PC、ケーブルアダプタをご用意ください。
※一般演題の発表につきましては、JAS 生涯学習の症例検討・発表の対象とはなりません。
※発表後はセッション終了後に座長より発表証明書をお受け取りください。
第 2 回新潟県言語聴覚士会 学術大会
生涯学習 参加費
新潟県士会員・準会員・賛助会員
他県 ST、他職種、学生
参加費
2,000 円
参加費
新潟県在住・在勤で非県士会員の ST
4,000 円
※新潟県在住・在勤の ST で新潟県士会員でない方のみ 4,000 円となります。
※学術大会では、生涯学習講座(基礎講座・専門講座)および一般演題を開催します。
参加される内容にかかわらず(一部でも全てでも)、上記のいずれかの金額となります。
6
生涯学習 専門講座
「嚥下リハビリテーションと呼吸」
埼玉県総合リハビリテーションセンター
言語聴覚科 清水充子
言語聴覚士が訓練の対象とする嚥下と構音、発声の機構は呼吸のそれ
と多くの共通する器官を使い、関連しあって機能している。
発声の原動力である呼気の支えの大切さ、発声持続時間の延長とスラ
ードスピーチの改善、咳嗽力の向上と湿性嗄声の改善など、呼吸と発声、
嚥下の関連性を臨床上実感する。
呼吸理学療法の領域は理学療法士が専門としているが、言語聴覚士の
立場で嚥下に関連する呼吸の機能を理解し、必要な働きかけに習熟する
ことは、訓練の精度を上げるために有用である。
今回は、言語聴覚士が呼吸リハを行う意義を確認し、呼吸のしくみや機
能、評価について概説する。その上で、誤嚥性肺炎の特徴に触れ、呼吸リ
ハの大きな目的となる誤嚥性肺炎の予防リハについて、その実際を解説す
る。
脳卒中系では、急性期から回復期、維持期にわたるそれぞれの時期の
対象者の特徴を踏まえながら、実践可能なプログラムの進め方をお示しし
たい。
また、神経筋疾患系では、進行してゆく症状に対して呼吸リハの貢献でき
る内容に触れたい。
新潟県言語聴覚士会の皆様の、明日からの臨床にお役立て頂ければ幸
いである。
7
一般演題①
脳出血後,重度嚥下障害を呈した一例
田中宏美
立川メディカルセンター 悠遊健康村病院
Ⅰ.はじめに
顕性誤嚥あり.自力で喀出できず,複数回嚥下でもクリ
脳出血後,重度嚥下障害を呈した一例について入
アできなかった.症例の食べたいという希望もあり,ミキ
院中に行ったアプローチについて報告する.
サー粥,ミキサー食に変更となる.間接嚥下訓練を追
加した.
Ⅱ.症例
②再評価 (第 119 病日)
【症例】男性 43 歳 矯正右利き【診断名】脳幹出血
痰の量に変化はみられなかったが,症例は食べられ
(橋)【現病歴】平成 25 年 7 月下旬朝,頭痛が出現,
るという気持ちが強く,現在の食形態に納得できず再
構音障害と右片麻痺が加わり,救急要請した.CT によ
評価の訴えが頻回にみられたため,再度 VF を行うこと
り上記診断を受け,保存的に加療する.さらなるリハビ
となる.結果,前回と著変なし.
リ目的にて第 49 病日当院へ転院となる.転院時の食
第 146 病日 PEG 造設,経口摂取中止となる.
形態は全粥,刻み食,トロミ水.【既往歴】脳挫傷,器
③退院前評価 (第 196 病日)
質性うつ病,器質性統合失調性障害,高血圧症.
PEG 造設後,痰の量が減少した.しかし,それに伴
い症例の経口摂取への強い希望がきかれ始めた.退
Ⅲ.当院転院時所見
院後の ST 外来フォロー先がないことに加え,病識の低
<身体機能>中等度~軽度右片麻痺.失調あり.
下があり,妻の病状への理解も不十分であったため,
<言語機能>
退院後に経口摂取してしまう危険性が考えられた.現
弛緩性ディサースリア.発話明瞭度 2 / 5.左顔面
状における摂取可能な形態を検討するために VF を施
神経麻痺,左舌下神経麻痺あり.
行した.喉頭蓋谷,梨状窩に貯留あるものの咳によっ
摂食・嚥下面については,取り込みや咀嚼は十分で
て喀出でき,誤嚥を防止できていた.そのため,お楽し
あり,口腔内残留なし.時折,ムセや湿性嗄声あり.喉
みとして 1 日 1 回,ティースプーン 3 杯程度のゼリー又
頭の動きが若干遅い印象を受けた.RSST
0~1 回.
はヨーグルトを体幹角度 30 度で摂取することとなった.
嚥下に関しては経過観察し,ディサースリアに対して
症例はこの結果に納得され,入院中は安全に摂取す
訓練を行う方針とした.
ることができた.第 214 病日,自宅退院となった.
Ⅳ.経過
Ⅴ.考察
第 56 病日頃より,痰の量が増加し吸引頻回となる.
今回の症例を経験し,経口摂取を開始する際の VF
現状評価のため,VF を施行する.
等による評価の重要性を再確認した.また,症例は若
①嚥下造影検査 (第 77 病日)
年であり,長期間経過を追うことが望ましい.摂食・嚥
全粥にて施行するも咽頭への送り込みや嚥下反射
下障害の方の在宅支援体制を整えていくことが今後必
の遅延,減弱がみられ,喉頭蓋谷,梨状窩に貯留,不
要なのではないかと思われる.
8
一般演題②
気管カニューレ抜管から経口に向け ST が早期に介入した症例
松田夏美1, 加藤千恵子1,井口光開1
南魚沼市立ゆきぐに大和病院1
70 歳代男性
【診断名】急性喉頭蓋炎,低酸素脳症,肺炎
【現病歴】喉の痛みが徐々に増強,約 12 時間後に
呼吸苦,嗄声が出現,当院に救急搬
送された.CT 施行中,呼吸苦増強,窒
息状態に至り,緊急的に経鼻挿管を施
行し,ICU 入院となる.
【既往歴】糖尿病,高血圧
【入院前 ADL】FIM126/126
病日 21 日目,抗生剤治療により喉頭蓋炎はほぼ
治癒したが,肺炎は残存.抗生剤治療を中止し,離
床 ex で排痰を促す治療方針となった.
病日 33 日目,呼吸状態は改善傾向.
呼吸:O21ℓ,SpO290%代後半,吸引 0.5 回/h
嚥下:吸引時に嚥下反射が活発にみられる
病日 34 日目,カニューレ閉塞.
唾液嚥下が良好であり,かつ十分な自己排痰能
力を有していることと,気管カニューレ留置による閉
塞等のリスクを伴うという観点から,気管カニューレ
の抜管を ST が提案.
病日 36 日目,気管カニューレ抜管.唾液嚥下
良好,自己排痰良好であった.
呼吸:O2 1ℓ,SpO290%代後半,吸引(-)
嚥下:RSST1 回/30 秒,安静時唾液嚥下良好
発声:G1R0B1A0S0,MPT6 秒,咳嗽音減弱
方針:機能訓練を実施し,嚥下随意性・声帯運
動改善後,経口摂取へ移行する.
病日 45 日目,間接評価や VE での経口評価に
おいて,嚥下随意性や声帯運動の改善,喉頭流入
所見がないことを確認し,経口摂取へ移行.
呼吸:Room air,SpO290%代後半,吸引(-)
嚥下:RSST3 回/30 秒
発声:G0R0B0A0S0,MPT8 秒,咳嗽音良好
病日 52 日目,食事条件ゴール.FIM118/126
病日 61 日目,自宅退院.
3.経過
4.まとめ
1.はじめに
急性喉頭蓋炎は細菌感染によって生じる喉頭の
炎症疾患であり,症状の進行によっては呼吸困難
や窒息に至る事例がある.急性喉頭蓋炎の発症率
は人口 10 万人当たり 11 人,気道確保を要する事
例が 4%である.今回,急性喉頭蓋炎の発症により
窒息に至り,気管カニューレ挿入,呼吸管理となっ
た症例に対し,経口摂取移行の指示のもと,急性
期から ST が介入した.
予後予測が困難であった本症例に対し,医師との
連携の中で,嚥下と呼吸の観点より ST が早期に介
入することの必要性や効果について知見が得られ
たので報告する.
2.症例
病日 4 日目,気管切開,気管カニューレ挿入.
病日 5 日目,人工呼吸器離脱.
病日 6 日目,経口摂取目的に ST 指示あり.
呼吸:O25ℓ,SpO2 90%代後半,吸引 1.5 回/h
咳嗽反射が活発にみられる
認知:JCSⅠ桁,言語理解良好
口腔:全般的な運動は良好
嚥下:唾液嚥下困難,口腔吸引対応
身体機能:麻痺など明らかな障害は認めない
方針:経口摂取を目標に,呼吸状態改善・気管
カニューレの抜管を目指す.
今回,急性喉頭蓋炎により気管カニューレ対応と
なった症例に対し,急性期から ST が呼吸管理と並
列して評価介入ができた.
気管カニューレの抜管には,肺炎の再発等リスク
が伴うが,逆に留置期間延長による廃用性の機能
低下やカニューレ管理上のリスクを伴う.気管カニ
ューレの抜管には,リスク管理の他,嚥下機能と咳
嗽能力の評価が必須であり,ST と医師(主治医,耳
鼻科医,リハ医)が連携し,情報共有を図りながら,
治療を進めていくことが重要であった.
9
一般演題③
姿勢の安定とともに経口摂取が可能となった一例
佐藤愛理
悠遊健康村病院 リハビリテーション部
1.はじめに
座位保持が安定し,普通車椅子乗車が 1 時間程
左小脳橋角部腫瘍術後,重度嚥下障害・構音障害
度可能になる.顔面の非対称性は軽減され左口唇お
を呈した症例を経験した.
よび左眼瞼の閉鎖が可能となる.
2.症例
湿声はあるものの流涎が目立たなくなったため現状
A 様 50 歳・男性・高校卒 独身.
評価として VF 施行.食塊の形成・口腔内保持困難,
現病歴:H25 年 6 月ふらつきあり A 病院受診.頭部 CT
嚥下反射遅延,食物の咽頭残留が認められた.咽頭
で左小脳橋角部腫瘍を認め同日入院.腫瘍摘出術
残留は複数回嚥下やトロミ付き水分との交互嚥下で対
施行.状態落ち着き,第 65 病日更なるリハビリ目的に
応すれば残留しながらも経口摂取は可能と考えられた
て当院転院となる.転院時の栄養補給は経鼻経管栄
ため,間接嚥下訓練に加え直接嚥下訓練としてベッド
養であった.
アップ 30°にて昼のみミキサー食 1/2 量が開始となる.
神経学的所見:右麻痺(Br,stageⅢ~Ⅳ)頭頸部・体
易疲労性あり食事開始から 15 分程度経過するとむせ
幹・四肢に失調症状.左顔面神経麻痺(+),左三叉
ることが増える.
神経麻痺(+)
③12 月~1 月
3.初回評価
立位バランスが改善し,移乗動作や下衣操作が見
発声発語器官:口唇の運動制限あり.舌は粗大運
守りで行えることが増える.ベッドアップ 60°でむせなく
動は可能も微細な協調運動の障害あり.鼻漏出は左
摂取できるようになる.食事量を全量,食形態は主食
右とも 3 度.発話明瞭度は 4/5.発話速度は遅く爆発
を全粥とした.普通車椅子に乗車し摂食を試みるもむ
性の発話.湿性嗄声,開鼻声,構音の歪みがみられる.
せが多く中止.当面はベッドアップでの食事とした.三
前病院ではコミュニケーションボードの指導を受けてい
食経口摂取が確立しチューブ抜去.発話面では湿性
た.嚥下機能:RSST5 回/30 秒.
嗄声が消失し,発話明瞭度が 2/5 に向上した.その後
4.経過
B 病院転院となった.
①8 月~9 月前半
5.考察
失調による頭部の揺れが著明で頭頸部の支持がな
顔面・頸部への関わりにより筋緊張が緩み,舌・口
いと座位が不安定.リクライニング車椅子に乗車するも
唇・頬の協調運動がスムーズとなった.しかし嚥下機
耐久性が低く乗車時間は 15 分程度.顔面神経麻痺
能自体は 9 月以降大きな変化は認められなかった.
があり,左眼瞼閉鎖不全・口唇は健側に引かれ左右
本症例においては失調軽減とともに三食経口摂取が
非対称であり,流涎がみられた.唾液嚥下困難で頻回
可能となったことから,失調に対する代償行動としての
に吸引を行っていた.ST では唾液嚥下が可能になるこ
体幹の固定が嚥下機能に影響を及ぼしていたのでは
と,発話明瞭度向上を目的に頭頸部リラクゼーション,
ないかと考えられる.
顔面のアイシング,口の体操,間接嚥下訓練を実施し
本症例を通して食事における体幹の重要性を再認
た.
識することができた.体幹機能を絡めたアプローチの重
②9 月後半~11 月
要性を改めて考えさせられた.
10
一般演題④
音の鳴る缶を使用し,連絡手段が確立した重度 Broca 失語の 2 例
―人を呼ぶ行為の獲得を目指して―
松田貴幸1, 中山正1,堂井真理1,川村邦雄2,工藤由理2
総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科言語聴覚療法部門1
総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科2
今回,意図的な発声から困難であった重度 Broca
失語 2 症例を経験した.この症例に対し,音のなる
缶(以下,「音缶」)による連絡手段を導入し,課題
と生活場面で効果が認められたので報告する.
話す 意図的な表出では/i/による語頭音の引き伸
ばしや断綴性構音に限定.音読は若干可能で歪み
が生じる.
読む SLTA「単語の理解」では漢字と仮名とも 10
割可能で、短文は 7 割可能.
書く 写字は可能だが,名前の自発書字から困難.
【症例 1】
【結果】
症例:63 歳、男性、右利き.
医学的診断名:左被殼出血.
現病歴:呂律不良,意識障害にて A 病院に救急搬
送し緊急開頭血腫除去術を施行.発症 2 ヵ月後当
院転入院.
神経学的所見:重度右片麻痺、右顔面・舌下神経
麻痺.
言語機能所見:
聴く SLTA「単語の理解」は 8 割可能.
話す 意図的な発声及び系列語の表出や歌唱も困
難.
読む SLTA「単語の理解」は漢字は 10 割、仮名は
9 割可能.短文は 5 割可能.
書く 写字は可能だが,名前の自発書字から困難.
症例1では,課題場面とおやつ場面で連絡手段
が確立した.
症例 2 では,課題場面のみならず退院後の生活
場面においても連絡手段が確立した.
【はじめに】
【考察】
本症例2例に対し,連絡手段を確立することは主
体的な生活の獲得,QOL の向上に繋がると考える.
しかし,安易にプッシュコールやボタンコールを導入
すれば確立するものではなく,随伴する認知機能障
害を含めて実用的な連絡手段を検討していく必要
があると考える.
【おわりに】
【症例 2】
「Communication とは,社会生活を営む人間の間
で行なわれる知覚・感情・思考の伝達」(広辞苑よ
り)と記載されている.意図的な発声から困難となっ
たケースに対しては,まずは人を呼べることが能動
的なコミュニケーションの出発点になるのではない
かと感じた.
症例:87 歳、女性、右利き.
医学的診断名:脳塞栓症.
現病歴:寝室で倒れているのを発見.A 病院に搬
入され,保存的療法を施行.発症1ヵ月後当院転
入院.
神経学的所見:重度右片麻痺、右顔面・舌下神経
麻痺.
言語機能所見:
聴く SLTA 「単語の理解」は 10 割で「短文の理解」
は 8 割可能.
文献
1)保坂俊男・深沢美奈,重度失語症を伴う高次脳
機能障害のためのアプローチ,自立支援とリハビリテ
ーション,Vol.3 No1,76-83,2005 年 4 月 30 日
11
一般演題⑤
Anarthria および語義理解障害を伴う超皮質性運動失語の一例
橋本一穂1, 村田翔太郎1,佐藤卓也1,﨑村陽子 2
新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語聴覚科1
新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション科2
【はじめに】
今回,我々は anarthria および語義理解障害を伴
う超皮質性運動失語と考えられる症例を経験した
ので若干の考察を加えて報告する.
【症例】
72 歳,男性.右利き.教育歴 9 年.
主訴:これ(言葉)がね.
既往歴:胃癌開腹術(数十年前),左肺腫瘍手術,
高血圧症(5 年前)
現病歴:言葉がおかしくなり A 病院に救急搬送され
左内頚動脈閉塞の診断.発症時間が確定できない
ため t-PA は行わず血管内治療が施行された.19
病日にリハビリ目的に当院転入院.
頭部 MRI 所見(19 病日):左中心前回から左中前
頭回に及ぶ高信号域を認めた.
神経学的所見:極軽度右片麻痺を認めたが独歩
可能.軽度の右顔面神経麻痺,右舌下神経麻痺
を認めた.感覚は上下肢ともに保たれていた.
神経心理学的所見(19 病日~)
意識覚醒.視覚,聴覚に問題なし.発話は非流
暢で,不規則な構音の歪みと dysprosody を特徴と
する anarthria を認めた.Dysarthria は認めなかった.
音韻性錯語は認めなかったが,語レベルでは喚語
困難と語性錯語を認めた.理解は単語レベルで低
下を認めたが,状況判断は保たれていた.WAB 失
語症検査(20 病日~26 病日)では,聴理解は語義
理解障害を認めた.読解は音読が可能であったが
語義理解障害を認めた.発話は視覚性呼称に比し
語想起課題の成績低下が顕著であった.自発話お
よび復唱課題において anarthria を認めたが,復唱
課題時は自発話に比し症状は目立たず,24 音節
の復唱も可能であった.書字は右手で氏名書字お
よび短文の写字が可能であったが,漢字想起低下,
音韻性錯書により書字での意思表出は困難であっ
た.
【考察】
本症例の発話は非流暢で anarthria,喚語困難,
語性錯語を認めた.また,自発話に比し復唱が良
好であり,視覚性呼称も保たれているという特徴を
12
有していた.これらの症状のうち anarthria,喚語困
難,語性錯語に関しては Broca 失語の臨床症状と
一致している.しかし,本症例の発話症状の最大の
特徴は自発話に比し復唱が良好な点である.この
視点から失語型診断を試みた場合に,超皮質性運
動失語(transcortical motor aphasia: 以下 TCMA)
である可能性が考えられた.TCMA に関し山鳥
(1985)は復唱と自発話の乖離のみに焦点を絞り,
それ以外の諸特徴は一応無視したうえで,そこには
めこまれる失語症候群をすべて TCMA と呼ぶ立場
をとっており,亜型が多く存在する可能性を指摘し
ている.本症例は,自発話と復唱との乖離を認めた
ことから,山鳥のいう TCMA に該当すると考えられた.
一方で,一般的に TCMA は失構音の要素は少なく,
言語理解は比較的保たれているとされている(山鳥,
1985).本症例の失語症状は一般的な TCMA 像と
比較し,anarthria および語義理解障害を認めてい
る点が特徴的であると考えられた.TCMA の亜型に
ついて榎戸ら(1984)は 3 型に分類し,軽度の失構
音が残存する Broca 失語の回復期を F3 型と称して
いる.この亜型分類に従えば,本症例は anarthria を
認める F3 型の TCMA であると考えられた.一方,
TCMA の語義理解障害に関し大槻ら2)は,病巣が
中前頭回に至ると語義理解障害も認められることを
指摘しており,本症例の病巣が左中前頭回に及ん
でいたことから,本症例は語義理解障害も呈してい
たと考えられた.以上より,本症例の失語障害像は
F3 型の TCMA に語義理解障害を合併した状態と
考えられた.
文献
1) 山 鳥 重 , 神 経 心 理 学 入 門 , 医 学 書
院,190-191,1985,
2) 榎戸秀昭,鳥居方策,相野田紀子,ほか:いわ
ゆる超皮質性運動失語の自発話障害について―
病巣部位の異なる 3 例での比較―.脳神経,9:
895-902,1984.
3)大槻美佳,相馬芳明,小野寺理,ほか:左前頭葉
内側面損傷による超皮質性運動失語における聴理
解.脳神経,11:1081-1085,1995.
一般演題⑥
脳出血により失語症を呈し一般就労に至った事例
北上守俊1,2
新潟県障害者リハビリテーションセンター1,新潟大学大学院医歯学総合研究科 2
【社会生活技能】
・コミュニケーションスキルで一部やや不十分
【職業評価】
・GATB:全下位項目平均値以下
・MWS:OA・事務作業共に作業時間は標準値以下
1.はじめに
今回、一般就労に向けて身体・言語機能に対す
る訓練と並行し、職業評価や就労支援機関と協働
したことで、比較的スムーズに一般就労に至った事
例を報告する。スムーズに目標到達した要因等を
中心に考察する。
3.支援目標
①身体・言語機能の向上
②パソコンスキルの向上
③自動車運転再開 ④一般就労
2.事例
【年齢・性別】50 歳代・男性
【診断名】脳出血(左被殻)、高血圧
【障害名】右片麻痺、失語症
【発症日】平成 21 年 6 月
【現病歴】急性期、回復期、リハビリ施設を経て、平
成 24 年 7 月当センター入所。
【社会的背景】
・3 人暮らし(両親・本人)
・職業:管理栄養士
・住居:一戸建て(住宅改修済)
・身体障害者手帳 1 種 1 級
・障害基礎年金:1 級受給
【ニーズ】
身体・言語機能の向上、パソコンスキルの向上、
自動車運転再開、一般就労
【身体機能】
・Br-stage:上肢・手指・下肢Ⅲ
・Sensory:表在・深部重度鈍麻
・FIM:120 点(運動面全て自立)
【知的機能】
・WAIS-R:VIQ101、PIQ109、FIQ105
【言語機能】
・失語症:伝導失語
・主な失語症状:接近行為、聴覚言語性短期記憶
低下、復唱障害、音韻性錯語、音韻性錯書
・SLTA(標準偏差以下項目のみ記載):「単語の復
唱」、「文の復唱」、「短文の書取」
【自己認識】
・PCRS:問題所見なし
4.経過
①身体・言語機能の向上
前述した SLTA の標準偏差以下の項目は、最終
評価時、全て平均値内まで改善。
②パソコンスキルの向上
資格検定試験ビジネス能力認定 サーティファイ
(ワード・エクセル)1 級取得。
③自動車運転再開
自動車学校にて自動車運転の適性検査受講。
④一般就労
地域障害者職業センター、障害者就業・生活支
援センターと協働した結果、管理栄養士として医療
機関へ就職。
5.考察
事例は脳出血発症後、約 4 年が経過したが身体
機能、失語症共に機能障害を残存していた。職業
評価上でも、全ての課題で標準値以下であった。し
かし、パソコンの資格を取得したり、就労支援機関と
協働して支援を行ったことも影響し一般就労に至っ
た。
事例がスムーズに一般就労に至った要因としては、
①時間を要してでも自身の考えを相手へ伝達したり、
相手が話す内容がある程度理解出来る言語機能
を有していたこと、②病気に対する自己認識が明瞭
であったこと、③社会生活技能がほぼ獲得されてい
たこと等が考えられた。
13
一般演題⑦
頭部外傷後,病識理解が社会的行動障害の改善に繋がった一例
矢内康洋1,村田翔太郎1,佐藤卓也1
新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科1
はじめに
頭部外傷後,注意障害,軽度近時記憶障害,病
識低下,脱抑制を呈し,その後病識理解から社会的
行動障害の改善を示した症例を経験したので報告す
る.
症例
19 歳男性,矯正右利き,大学在学中(1 年生).
【主訴】勉強に集中できない
【現病歴】2013 年 X 月自転車走行中に車と衝突.A
病院搬送され同日に減圧開頭術,血腫除去術施行.
受傷 26 日目に B 病院に転院.35 日目頭蓋形成術
施行したが,術後創部感染,硬膜外膿瘍により 48 日
目人工骨除去.神経心理学的検査施行,WAIS-Ⅲ:
言語性 IQ103,動作性 IQ99,全検査 IQ102,言語理
解 102,知覚統合 95,作動記憶 102,処理速度 94.
BADS:総プロフィール得点 13 点(全般的区分:境界
域).リハビリ継続目的で 90 日目に当院に転院した.
【頭部 MRI 所見】受傷 47 日目 FLAIR 画像にて,右側
頭葉底面~中側頭回,左中脳に高信号領域を認め
た.
【神経学的所見】軽度左片麻痺.
【転院時神経心理学的所見】意識覚醒.注意障害あ
り.入院当初,「(神経心理検査について)こんなこと
より試験の勉強がしたい」,「なぜ入院しているのかわ
からない」といった発言あり,病識は低下.礼節に欠け,
取 り 組 み 態 度 は 不 良 で あ っ た . MMS:27/30 .
TMTA:30 秒(エラーなし),B:63 秒(エラーなし).CAT:
注意障害(選択性・持続性低下),ワーキングメモリー低
下による情報処理速度の低下認めた.FAB:18/18.
RBMT:標準プロフィール得点 21/24.WMS-R:言語
性記憶 105,視覚性記憶 80, 一般性記憶 98,注意/
集中 102,遅延再生 84.Rey 図形:模写 32/36.即時
再生 16.5/36.
注意障害を中核とし,情報処理速度の低下,軽度
近時記憶障害を認めた.
両親は受傷後の変化について,「イライラしやすくな
った」,「感情の浮き沈みが激しくなった」と話す.病棟
14
生活では,「同室者がうるさくて勉強の邪魔だ」等の言
動を認め,病識低下,脱抑制による社会的行動障害
を認めた.
【経過】言語聴覚療法では復学することを目標とし,
注意障害の改善と病識の獲得,脱抑制を中核とした
社会的行動障害の改善を目的に介入を行った.入院
当初から,病棟生活では,目標とする試験の勉強に
は固執ともいえるほどのこだわりをみせ,「1日に 100
単語を覚える」等非現実的な目標を掲げては朝から
晩まで勉強はするものの,達成できずに不満を漏らす
ことが多くあった.また,自身の希望に沿わない治療
方針にあからさまに悪態を示す様子がみられていた.
訓練場面では,女性スタッフに親しすぎる態度をとっ
たり,取組みが不十分である等,脱抑制行動が目立
っていた.しかし,検査結果に基づいた病状説明を行
った日を境に,自身の問題点を言語化することが出
来るようになり,勉強方法を見直す等の行動変容が
みられた.同時期に,以前文句を言っていた他患に
対して自ら謝罪する等,礼節ある態度がみられるよう
になった.それらの行動には,スタッフ・家族間で情報
を共有し,多方面から正のフィードバックを行った.ま
た,退院時にはお世話になったスタッフにプレゼントを
作成したいと自ら希望し,ペーパークラフトを作成する
ために時間を割く等,試験勉強に対する固執傾向は
軽減した.さらに,これまで悪口や文句を言っていた
人に対しても感謝の気持ちを伝える等,社会的行動
障害は明らかに改善がみられた.
【考察】本症例は頭部外傷後に脱抑制による社会的
行動障害を認め,今後目標とする復学にはその点が
問題となることが予想された.受傷前との相違(イライ
ラしやすい,勉強に集中できない等)を感じてはいるも
のの,それが自己の症状とは結びついておらず,病識
は不十分であった.また,そのことからフラストレーショ
ンを感じ,周囲との軋轢が生じていた.しかし,本人に
対する検査結果説明により,現状認識,病識理解が
得られ,他者との関わりに明らかな行動変容がみられ
るようになった.本人に対する症状説明が病状,病識
理解に重要なものの一つと考えられた.
一般演題⑧
注意障害を主体とする高次脳機能障害を呈するも異なる結果となった
自動車運転再開支援の 3 例
佐藤卓也 1 市野千恵 1 坂井威文 2 村山拓也 2 佐藤厚 1 﨑村陽子 3
新潟リハビリテーション病院言語聴覚科 1 新潟リハビリテーション病院作業療法科
新潟リハビリテーション病院リハビリテーション科 3
2
秒 . CPT284.0 秒 ± 32.2,X462.2 秒 ±
64.2,AX461.5 秒±81.1.実車評価(発症 10 カ
月):「右麻痺のため左ハンドル,左ペダル改造車」
運転適性診断:良好,運転技能:やや不安,運転
行動:やや注意不足.総合評価:左での操作に不
慣れ.運転操作の遅れ,走行の位置取り不安定,
安全確認場面での注意不足となる.教習所で改造
車の乗車練習後,運転再開となる.
【症例 3】43 歳 男性 教育歴 16 年 コンビニアルバ
イト.現病歴:脳出血発症.左片麻痺.開頭血腫除
去術施行.発症 1 カ月当院転院.CT 所見:右被殻
に病巣認める.神経学的所見:左不全麻痺.左半
身感覚軽度鈍麻.ADL:歩行自立.セルフケア自
立.神経心理学的所見(発症 3 カ月):注意障害,
処理速度低下,交叉性失語(失名辞失語). TMT:
A28 秒,B61 秒.CPT:SRT320.9 秒±51.2,X493.4
秒±67.7,AX495.7 秒±102.8.WAB 失語症検
査:AQ97.8.実車評価(発症 3 カ月):運転適性診
断:やや注意不足,運転技能:やや不安,運転行
動:やや注意不足.総合評価:注意分配低下が顕
著でハンドル操作に気を取られるとギア操作やクラ
ッチ操作忘れる.中央線寄りの走行となる.注意喚
起,指摘にも修正できない.それらの失敗に自覚あ
るものの今後運転しても大丈夫と考えているなど見
通しの甘さがうかがえる.よって,今回は再開困難と
判断し,経過観察後再評価となる.
はじめに
脳血管障害発症後,注意障害を主体とする高次
脳機能障害を呈し,自動車運転再開支援を行った
3 例について報告する.
症例紹介
【症例 1】50 歳 男性 教育歴 12 年 タクシー運転
手.現病歴:脳梗塞発症.右軽度不全麻痺,右半
身感覚障害,右上四分の一盲認める.発症 27 病
日当院転院.CT 所見:左視床,左後頭葉内側部
に病巣認める.神経学的所見:右軽度不全麻痺,
右半身感覚障害.ADL:歩行自立,セルフケア自
立.神経心理学的評価(発症 2 カ月):近時記憶障
害,処理速度低下.TMT:A55 秒,B103 秒.CPT:
SRT399.3 秒±124.9,X454.9 秒±71.7,AX405.8
秒±62.7.実車評価(発症 3 カ月):運転適性診断:
普通,運転技能:おおむね良好,運転行動:問題
なし.総合評価:注意,遂行機能,視空間認知に
問題ない.四分の一盲あるが代償可能.ブレーキ
反応の若干の遅延,カーブでの減速不足があるも
修正可.見通しの悪い所での確認行動など可.運
転再開となる.
【症例 2】64 歳 男性 教育歴 12 年 年金生活.現
病歴:脳梗塞発症.右片麻痺,右顔面の痺れ,失
語認める.発症 45 病日当院転院.MRI 所見:左放
線冠に病巣を認める.神経学的所見:右片麻痺,
右顔面痺れ.ADL:歩行は装具とT字杖使用で自
立.第 1 回目神経心理学的評価(発症 4 カ月):注
意障害,処理速度低下,失名辞失語. TMT:A48
秒 ,B254 秒 中 止 . CPT : SRT292.1 秒 ±
35.2,X480.4 秒±77.8,AX489.2 秒±93.9.WAB
失語症検査:AQ91.注意障害強く再評価とする.
第 2 回目神経心理学的評価(発症 8 カ月):注意障
害軽減,処理速度低下軽減.TMT:A54 秒, B119
考察
高次脳機能障害の主体は注意障害であるが,そ
の経過は症例によって異なる.実車評価後の最終
評価は「再開可能」,「条件付き再開可能」,「再開
困難」と三者三様である.症例ごとに経過をみて実
車評価を行うが,神経心理学的評価結果からの想
定とは異なる最終評価となる例もある.双方を総合
して判断することが重要と考えられる.
15
一般演題⑨
右被殼出血にて軽度左半側空間無視(USN)が残存し
自動車運転評価時に著明な影響がみられた症例
渡邊隆幸¹,堂井真理¹,川村邦雄²,工藤由理²,青柳文昭³,池田治人³
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 言語聴覚療法部門¹
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科² 東新潟自動車学校³
はじめに
今回,右被殼出血にて左半側空間無視(以下
USN)等の右半球症状や脱抑制等の前頭葉症状を
呈した症例を経験した.日常生活では左 USN が改
善したが自動車学校での運転評価にて左側の注意
障害を認め,危険性が明らかとなった.自動車運
転評価を行った結果について若干の考察を加えて
報告する.
症例
51 歳,男性,右利き.【職業歴】セールスドライバー.
【既往歴】12 歳時頭蓋骨陥没骨折,高血圧症,ア
ルコール多飲歴あり.【経過】仕事中に右共同偏視,
左上下肢麻痺で発症.右被殼出血の診断で保存
的加療をされた.発症 1 ヵ月で当院回復期入院し
た.
所見(発症 6 ヵ月時)
【画像所見(頭部 MRI)】右被殼出血巣,左被殼低吸
収域,両側脳室拡大,両側前頭葉萎縮.【神経学
的所見】左不全麻痺(Brs:左上肢 V,左手指 VI,左
下肢 V).【神経心理学的所見(一部)】意識覚醒.
MMSE:30/30.WAIS-Ⅲ:VIQ106 PIQ110 FIQ109
VC107 PO125 WM107 PS92.CAT:PASAT1 秒条
件,Memory Updating4 スパンにて成績低下.BIT:
通常検査:145/146,行動検査 79/81(左右差な
し). FAB:15/18(類似性 4,語流暢性 1,運動系
列 3,葛藤指示 3,GO/NO/GO2,把握行動 3).
BADS:年齢補正した標準化得点 108(平均).自動
車運転 6 項目評価(加藤ら 2008)にて TMT-A,
TMT-B,仮名拾いテスト,RCFT 模写,RCFT 再生,
Kohs を実施し TMT-A が境界域,他可レベルであ
った.検査から注意障害,遂行機能障害,思考の
柔軟性低下,反応抑制障害がみられた.【生活場
面】ADL 自立.脱抑制,表情・発話の平板化がみら
れた.病棟生活では規則や食事の制限を守れない,
外出時に無断で自動車に乗る等がみられ,屋外で
は目についた物に触れる・近づく,障害物や車への
気づきが遅い等を認めた.検査や病棟生活におい
て左 USN の症状が改善し,自動車学校での実車と
運転シミュレーションを行ったところ,著明な左側の
注意障害と右側注意の亢進が認められた.
考察
USN 例では,右側の対象または対象の右側部分
の感覚が優先される.それに伴い,右側の感覚情
報処理が亢進する(石合ら 2003).本症例は右被
殼以外にも病変があり全般的な注意障害も認めら
れる.さらに前頭葉症状による脱抑制も加わり,左
USN は軽度であっても運転等の高度な作業の際は
右側へ注意が過剰に偏り易くなっていたと考えられ
る.
おわりに
日常生活や検査場面と運転場面とは乖離がある
症例は多く,実車の運転評価は必要と考える.当院
では運転評価を系統的に進めるため,自動車学校
との連携に取り組んでいる.
16
一般演題⑩
摂食・嚥下障害 検査入院の取り組み
塚田 紗知 1 矢内 康洋 1 村田 翔太郎 1 宮澤 さやか 1
渡辺 聖子 1 橋本 一穂 1 佐々木 大輔 1 佐藤 卓也 1 小股 整 2
新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科 1,新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション科 2
はじめに
実施報告
摂食・嚥下障害を呈した方の中には,常食摂取で
は誤嚥の可能性があるため食事条件の工夫が必
要な状況で自宅へ退院する方や,誤嚥の可能性が
高いために,胃瘻で自宅へ退院する方がいる.そう
した方々の中には自宅退院後に摂食・嚥下機能の
改善を示す方もおり,ご本人・ご家族として経口摂
取に対し,強い思いを持つ方も多い.
一方,肺炎のリスクが高く,十分なリスク管理を行
える方が少ない在宅生活では経口摂取への移行
や食事形態の向上は現状としては難しく,ご本人の
嚥下機能以上の経口摂取を望まれた場合,誤嚥
や窒息のリスクが懸念される.
当院では平成 24 年から摂食・嚥下障害の検査
入院を行っており,検査入院を導入したことで摂食
状況の改善や家族指導など摂食・嚥下障害者及び
ご家族への在宅支援を図ることが出来ていると思わ
れる.今回,検査入院の概要及び現状について報
告する.
平成 24 年 8 月から検査入院を開始し,現在に
至るまで 7 名(男 6:女性 1)の検査入院を行っており,
全員当院に入院歴がある方である.検査入院に至
った経緯として「入院及び退院時の担当医の判断」
4名,「訪問STからの相談」2名,「老人保健施設か
らの相談」1 名となっている.在院日数は対象 7 名
のうち 5 日間の在院が 5 名,5 日間以上の在院が 2
名であった.
検査入院前後の変化として,経口摂取継続には
リスクが高く,現状では継続困難と判断した例があ
る一方,食形態の変更はなかったが経口摂取の頻
度が増加した例や,環境調整・介助方法変更の指
導により,嚥下がムセなく行われるようになった例も
挙げられる.
今後の展望
重度摂食・嚥下障害の胃瘻の方やそのご家族は,
経口摂取へのあきらめや在宅生活について漠然と
した不安を抱いている方も多い.その中には,在宅
生活が中心で摂食・嚥下障害のケアを受けたことが
ない方も少なくない.そのため必要に応じて検査入
院を行い,その都度ご本人の嚥下機能に合わせた
情報提供・指導を行うことはご本人・ご家族への心
理面へのフォローにも繋がっていると思われ,更に
在宅生活に沿った有意義な情報提供・環境調整を
行うことが出来ていると考えられる.
これらの経験から,在宅生活でのご本人の嚥下
機能を最大限に引き出す環境作りの必要性,地域
との連携の重要性を感じた.今後も積極的に検査
入院を行うと同時に,取り組みを紹介し,地域に密
着した支援を行っていくことが重要と考えられる.
摂食・嚥下障害 検査入院の概要
①目的:
摂食・嚥下機能の状態を検査・評価し食事形態,介
助・支援方法,食材・調理に関する情報などを提供
し在宅生活への支援,QOL の向上を図る.
②対象:
経口摂取しているが,嚥下機能低下が疑われる方.
もしくは嚥下機能低下により経口摂取していない
方.
③期間:
月曜入院から金曜退院までの 4 泊 5 日を標準とし,
対象患者によっては入院期間の短縮・延長など随
時対応する.
17
一般演題⑪
摂食嚥下障害者の「外食ツアー」参加への試み
~QOL向上に向けた実践報告~
中嶋優子1, 井口光開2
介護老人保健施設レインボーヴィラ清津1, 南魚沼市立ゆきぐに大和病院2
はじめに
当施設では年 4 回、入所者が近隣の飲食店に赴
き、外食を楽しむという「外食ツアー」を行っている。
参加者は摂食嚥下障害を有しない方に限られてい
た。今回 2013 年 4 月より当施設に常勤言語聴覚
士(以下 ST)が勤務したことにより施設職員の摂食
嚥下障害への理解や関わりに変化が生じた。結果、
摂食嚥下障害を有する入所者が「外食ツアー」に
参加するという試みを行うことができたので報告す
る。
症例
90 歳代女性、パーキンソン症候群、アルツハイ
マー型認知症、摂食嚥下障害、運動低下性構音
障害。Yahr の重症度分類ⅴ度。ADL 全介助。コミ
ュニケーション能力は著しい自発話の減少あり、働
きかけにより単語や挨拶語の表出があるが浮動的。
理解は生理的状態など親近性の高い話題に対して
は頷きにて反応可能。家族ニード「現状維持でお願
いします」。介護度:要介護度 4 障害老人の日常
生活自立度:C2 認知症老人の日常生活自立度:
Ⅲb。「安全に食事の経口摂取を継続できる」を目
標に 2013 年 5 月より ST 介入開始。
施。合わせて看護師、介護員に対してポジショニン
グと交互嚥下法の指導を行った。7 月頃より介護員
から「ムセることが多く食事介助が怖い」との意見が
あった。また嚥下状態の浮動性や、看護師、介護
員の介助方法が統一されていないなど問題点が明
確となった。そこで、食事形態をミキサー食に変更。
看護師、介護員には食事前の嚥下体操のみを確
実に行ってもらうよう指導。8 月より嚥下体操が実施
できていることが確認できた。また認知機能の改善
により「食べることを楽しみにしている」との本人意向
が明確となった。そこで、当施設で実践している「外
食ツアー」への参加を目標にできないか ST、看護
師、介護員、介護支援専門員と協議した。当施設
近隣の飲食店と交渉したところ、ミキサー食の提供
は困難だが刻み食であれば可能との回答を得た。
目標を「刻み食を安全に摂取でき、春の外食ツアー
に参加する」と再設定し、対応の統一を図った。11
月よりミキサー食の嚥下状態が安定したため、食事
形態を刻み食に変更。看護師、介護員には実施で
きている嚥下体操に加え、交互嚥下法を指導。そ
の後、嚥下状態安定し、ST 指導も実施できている。
まとめと考察
当施設は、これまで ST 不在により摂食嚥下障害
の理解や職員間の協力体制が不十分であった。し
かし、ST による介入が始まり、状況に応じた柔軟な
対応を図りつつ指導を行えたこと、また外食ツアー
参加という QOL 向上に向けた具体的な目標を多職
種と協議し決定したことが、職員の入所者への関わ
りの変化に繋がったと考えられる。今後も摂食嚥下
障害を呈している入所者への QOL 向上の手段とし
て、外食ツアー参加を促していきたい。さらに、介助
法、誤嚥予防、機能改善に向けたケアなど基礎技
術の学習会を開催し、施設職員全体の摂食嚥下
障害についての理解を高め、協力体制をより強化し
ていく必要性を感じた。
経過
介入時、摂食嚥下機能 RSST 1 回/30 秒。
MWST 3b。食事は普通型車椅子乗車し、全介助
にて主食全粥、副食刻み、トロミ付き水分(はちみつ
状)を 3 回/日摂取。食物認知良好。咀嚼時、下
顎運動、口唇閉鎖不十分なため流涎やこぼしあり。
嚥下後、軽度~中等度の口腔内残渣あり。嚥下反
射惹起遅延しており、嚥下前中の咳嗽や咽頭残留
あり。ST は直接的嚥下訓練と、間接的嚥下訓練と
して口腔運動練習、発声練習、顔面、頸部、肩甲
帯周囲のマッサージ等を 5 回/週、一日一単位実
18
一般演題⑫
パーキンソン病関連疾患に対する集団発声訓練
:6 症例の MPT に関する経過
田村俊暁1, 若林允甫2, 井口正明1, 西尾正輝3
小千谷さくら病院 リハビリテーション室1, 小千谷さくら病院 神経内科2, 新潟医療福祉大学3
PSPRS では低下傾向を認めた。
はじめに
表 1.各症例プロフィール及び MPT と介入期間との相関
パーキンソン病(以下、PD)関連疾患の集団言語
聴覚療法、特に長期的に発話・嚥下などに関わる
機能面に改善が得られたとする報告は極めて乏し
い。今回、運動低下性ディサースリア例に集団発声
訓練(以下、集団発声)を実施し、最長発声持続時
間(以下、MPT)が長期的に向上した症例を経験し
たため経過を報告する。
症例 診断名 年齢 罹病年数 H&Y
A
B
C
D
E
F
PD
PD
PD
CBD
PSP
PD
56
78
75
80
76
84
20
17
15
5
23
4
5
4
4
4
5
5
相関
全期間(18 ヵ月):−0.521*
全期間(21 ヵ月):ns
11 ヵ月まで:0.636*
15 ヵ月まで:0.727**
全期間(25 ヵ月):0.436*
14 ヵ月まで:0.720*
**
*
*
**
:p<0.01,
:p<0.05,
ns:not
ns
: not significant,
: p<0.05,
: significant
p<0.01
対象(表 1)
PD 関連疾患患者 6 例(PD4 例・CBD1 例・PSP1
例)。修正 H&Y は 4 度 3 例、5 度 3 例。平均年齢
は 74.8±9.8 歳。性別は女性 4 例、男性 2 例。罹
病期間は 4~23 年(平均 14.0±7.8 年)。
( )
M
P
T
秒
方法
調査期間は 2012 年 1 月~2014 年 1 月。頻度
は 40~50 分/週 1 回。MPT の集計:症例毎に 1
ヵ月間の平均値を算出した。全身機能評価は PD
統一スケール(以下、UPDRS)と進行性核上性麻痺
機能尺度(以下、PSPRS)を使用。統計学的解析に
はスピアマンの順位相関係数を用いた。
年月
図 1.各症例の MPT の継時的変化
考察
結果(表 1、図 1)
介入月数と MPT との間に 4例で正の相関を認め,
1 例で相関を認めず,1 例で負の相関を認めた。以
下、修正 H&Y が 4 度の症例 B、C、D の 3 例(以下、
4 度群)と 5 度の症例 A、E、F の 3 例(以下、5 度
群)の 2 群に分け MPT の経過を報告すると、4 度群
中 2 例(症例 C、D)で向上を認めたが 11~15 ヶ月
目以降は維持に留まり、1 例(症例 B)は向上を認め
ず 21 ヶ月目で死亡した。5 度群中 2 例(症例 E、F)
は 25 ヶ月間を通して維持から緩やかな向上を認め、
1 例(症例 A)は低下し 18 ヶ月で体調不良で参加困
難となった。
全身機能の経過は、ほぼ全例で UPDRS に著変
を認めなかったが、5 度群中 1 例(症例 E)は全期間
で MPT が緩やかな向上を認めたにも関わらず
19
体調不良を除き全例で長期的な向上を認め、
1)特に H&Y 分類や UPDRS といった全身機能の
低下がより軽度であれば、週 1 回の集団発声でも
効果があることが示唆された。
2)ただし、11~15 ヶ月以降は維持に留まり、そ
の時点が集団発声の限界と捉えることが妥当と思
われた。
3)MPT の低下は PD 症状の進行以外に内科的
要因なども影響していると思われた。
今後の課題として、症例を蓄積し MPT の延長が
及ぼす発話や嚥下への影響について検討を深めた
い。
まとめ
PD 関連疾患の集団発声の MPT の長期経過から、
維持や向上を示す症例の存在が明らかとなった。
一般演題⑬
当院リハビリテーション科でのリスクマネジメントの取り組み 第 1 報
-リスクマネジメントチームの活動紹介渡邊隆幸¹,井上真衣¹,堂井真理¹,宮島いずみ²
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 言語聴覚療法部門¹
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 理学療法部門²
行い,情報共有・転倒防止等の啓発ポスターの作
成・各病棟の事故防止ラウンド等を行う.
(3)リハ科内での事故防止啓発活動として,危険予
知トレーニング(以下 KYT)を月1回実施.KYT は訓
練場面やリハビリフロアでよく見られるシーンの写真
を提示し,どんな危険が推測できるかを列挙し重要
な項目について対応策を話し合う.
(3)リハビリフロア内の環境チェックラウンドを定期的
に行い,危険因子を発見し環境改善を図る.
(5)急変時対応のシミュレーション研修を年 1 回実
施.リハビリフロアで急変が起きた事を想定し,それ
ぞれの役を決めた上でシミュレーションを行い,適
切な対応ができたか指摘し急変に迅速に対応でき
るよう取り組んでいる.
はじめに
当院リハビリテーション科(以下リハ科)ではリスクマ
ネジメントチームを発足した.今回チームの取り組み
について紹介する.
病院紹介
当院は回復期病棟 120 床,一般病棟 31 床,医
療療養病棟 120 床,総数 271 床.リハ科のスタッ
フ数は言語聴覚士(以下 ST)20 名,作業療法士(以
下 OT)29 名,理学療法士(以下 PT)35 名が所属し
ている.
発足の目的
インシデントレポートについて
院内の転倒,転落の事故防止や意識の向上に取
り組む事と同時に,リハ科内での事故防止や事故に
対する意識の啓発活動を行う.
リハ科で使用しているインシデントレポートは日時
などの基本的情報,内容(場所,何をしている時か,
具体的な内容等),要因(分析として SHELL モデル
を使用),対策からなっている.インシデントが発生し
た際は速やかにレポートをチームの担当者に提出し,
要因,対策を検討してリハ科責任者に報告する流
れである.
リハ科リスクマネジメントチームの紹介
1.チーム構成
回復期病棟担当 ST,OT,PT2 名ずつ,一般・療
養病棟担当 PT1 名,併設の老健担当 PT1 名,訪
問担当 OT1 名.
2.活動内容
(1)インシデントレポートの原因と対応策を報告者と
検討し,さらにその内容をリハ科内で検討・共有す
る.レポート全体の集計・分析を行う.
(2)他部署リスクマネジメントチームとの連携として,
看護部で編成するチームと月 1 回のミーティングを
終わりに
チームの役割は今後もリハ科・病院全体の事故
予防という点で非常に重要である.今後は事故の
発生率を減少できるよう発展させていきたい.イン
シデントの詳細な集計,分析は 2 報で報告する.
20
一般演題⑭
当院リハビリテーション科でのリスクマネジメントの取り組み 第 2 報
‐インシデントレポートの分析と ST 部門の関わりについて‐
井上真衣 1,渡邊隆幸 1,堂井真理 1,宮島いずみ 2
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 言語聴覚療法部門 1,
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 理学療法部門 2
年のスタッフにインシデントの発生率が高かった.
(6)療法別インシデント発生割合:ST22%,OT33%,
PT38%でリハ科の療法別人数構成の比率とほぼ
同率であった.(7)具体的な事例:訓練メニューの
合間にスタッフが患者から離れたときに生じる転倒,
訓練中の誤食・異食食,高次脳機能障害患者の予
想外の行動によるインシデント等があった.
はじめに
当院のリハビリテーション科(以下,リハ科)では,リ
スクマネジメントチームを設置し,事故防止の取り組
みを行っている.その活動の一つにインシデントレポ
ート(以下,レポート)の検討や分析があげられる.
今回,これらの分析結果と ST(以下,言語聴覚療
法)部門における傾向や ST がリスクマネジメントに関
わることの意義について若干の考察を加えたので報
告する.
考察
ST 部門における移乗や車椅子移動・介助方法の
インシデントの発生割合は,経験年数 0~2 年の者
が多かった.これは,移乗動作に関連した ST の教
育体制の問題や車椅子移動の介助方法の未熟さ
が関係していると考えられた.
また,対象者に多い認知機能低下・高次脳機能
障害は,指示が入りにくく,行動制御が困難なこと
が,転倒等のリスクに繋がりやすい要因と考えられ
た.
インシデントをアクシデントへ発展させないために
も,また,適切にリスクを予測するためにも,評価・
介入方法の提示などに ST が貢献する役割は大き
いと考えられる.
方法
リハ科で,平成 24 年 4 月から平成 25 年 12 月ま
でに提出されたレポートについて対象者の症状,発
生内容・要因・経験年数・療法別件数を分析した.
さらに,ST 部門から報告されたレポート内容の詳細
について検討した.
結果
(1)発生件数:報告総数は 116 件(2)対象者の症状
(重複回答含む):認知機能低下・高次脳機能障害
69 件,片麻痺 51 件,感覚障害 25 件,筋力低下
25 件(3)発生内容:転倒 44%,皮膚外傷 24%,
転落 6%,尿管カテーテルトラブル 5%(4)要因:油
断 34%,評価予測不足 23%,確認ミス 18%,情
報収集不足 3%,訓練プログラム選択ミス 3%,誤
った手順 3%,申し送り伝達ミス 3%(5)経験年数と
の関連:リハ科全体ではスタッフの経験年数別人数
構成と経験年数別インシデント発生割合の比率が
ほぼ同率であったのに対し,ST では経験年数 0~2
おわりに
対象者に多い認知機能低下・高次脳機能障害は,
ST の対象疾患であり,評価や適切な対応について
助言を示すことができる ST の存在意義は大きい.
今後も,リハ科内のみならず,病院全体にも発信し
続けていきたい.
21
一般演題⑮
難病医療協力病院における言語聴覚士の役割について
井口正明1, 田村俊暁1,井口光開2
小千谷さくら病院1, 南魚沼市立ゆきぐに大和病院2
よりも,発話速度の調節法やコミュニケーションボードの使
用など AAC の習得・活用を目的とした活動レベルの介入
割合が高かった.認知機能訓練では総合認知訓練や刺激
入れも取り入れているが,認知機能維持を目的とした現実
見当識訓練,回想法,バリデーションの割合が高く,楽しみ
の提供も兼ねていた.
②集団訓練
集団訓練の内容は,リラクゼーションプログラム,歌唱,
会話練習,発声練習である.
対象者は少数だが,家族も加わり将棋など対戦形式で
の介入が可能な患者もいる.当院の集団訓練の工夫として,
廃用性の機能低下による唾液誤嚥などのリスク軽減目的
で,重度の障害を呈している患者に対しても集団訓練への
参加を促している.また,発声訓練には,音楽療法士も加
わり PD 患者中心に発声,呼吸体操,MPT の測定,普段よ
く使用する機能的なフレーズ(例:ありがとう等)を参加患者
から聞き取りながら,訓練に組み入れていることも特徴であ
る.
はじめに
当院は難病医療協力病院で特定疾患病棟入院料Ⅰを
算定している.パーキンソン病(以下 PD),多系統萎縮症等,
重度の神経難病の入院患者が多く,「終の棲家」となる事
例もある.今回,そうした特徴を持つ当院の言語聴覚療法
業務の整理,まとめを行い,難病医療協力病院における
ST の役割について報告する.
対象および方法
対象:平成 25 年 4 月 1 日~平成 26 年 3 月 31 日の 1
年間に ST リハビリを実施した患者
方法:1)一般情報 2)医師からの指示内容 3)ST が行った
介入内容(個別・集団)について,調査を行った.
結果
1)一般情報
転帰理由は,死亡の割合が最も高かった.疾患は,PD
の割合が最も高かった.ADL において,移動手段は車椅子
で介助レベルは,全介助が大多数を占めた.経口摂取者
と非経口摂取者の割合に,顕著な差を認めなかった.発
話状態は,発話不能に比べ発話可の割合が高かったが,
中等度~重度の障害(発話明瞭度 3/5 以上)の割合が高
かった.
2)指示内容
嚥下障害評価・訓練の割合が最も高く,次いでディサー
スリア評価・訓練の割合が高かった.失語症評価・訓練と
認知機能評価・訓練はほぼ同じ割合であった.その他(楽し
みの提供,呼吸訓練等)の処方も一定の割合を占めた.
3)介入内容
①個別訓練
個別訓練の割合は,摂食嚥下訓練が最も高く,次いで
ディサースリアに対する訓練,認知機能に対する訓練であ
った.また,失語症に対する言語訓練も少数だが実施して
いた.嚥下訓練では,安全な経口摂取継続を目的とした,
環境調整や発声発語器官の機能維持訓練の割合が高か
った.ディサースリアに対しては,呼吸・発声訓練,楽しみの
提供や日常生活への般化を目的とした会話訓練の割合が
高かった.また,発声発語器官の機能レベルの介入割合
まとめと考察
今回,ST が介入した患者特徴を調査した結果,摂食嚥
下に関する評価・訓練の割合が最も高く,次いでコミュニケ
ーション障害や認知機能の評価に対する指示の割合が高
いことがわかった.また,対象患者は重症度が高い傾向に
あり,楽しみの提供の他,呼吸機能へのアプローチも求めら
れる.個別訓練として,環境調整,残存機能の活用,廃用
症候群の予防が主であり,急性期から回復期のような機能
訓練を主体としたリハビリテーションと一線を画していた.当
院入院患者の転帰状況は死亡の割合が最も高く,入院直
後より終末期までを考慮した対応が ST へは求められる.当
院では、音楽療法士や家族も加わった中での集団訓練を
重視しており,他者との交流機会を増やすことで,楽しみの
向上や意欲低下の防止に努めている.QOL への取り組み
を実践していくことも ST に求められる重要な役割と考えて
いる.
QOL を客観的に評価し,それを介入内容の質の向上につ
なげていく,この繰り返しに取り組んでおり,同時に終わりの
無い課題だと考えている.
22
一般演題⑯
訪問リハビリテーションにおける ST 部門開設にむけた取り組み
平野祥子 1,堂井真理 1,惣万一美 2
総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科 言語聴覚療法部門 1,
総合リハビリテーションセンターみどり病院リハビリテーション科 理学療法部門 2
【はじめに】
当院は回復期リハビリテーション病棟 120 床を有
する 218 床の一般病院で,介護老人保健施設,通
所介護施設を併設している.リハビリテーション科職
員 83 名のうち理学療法士(以下 PT)3 名・作業療
法士(以下 OT)1 名が訪問リハビリテーション(以下
訪問リハ)に従事しており,平成 25 年度より言語聴
覚士(以下 ST)1 名体制での本格始動を開始.開
設までの取り組みと課題を報告する.また,地域包
括ケアの根本である“可能な限り住み慣れた地域で,
自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることがで
きる”という目標に向けての地域での ST の役割を考
察する.
【取り組み】
介護保険制度の導入により高齢者の在宅支援に
ついては多くのサービスが提供されている.当院で
は平成 17 年度より訪問リハ部門を開設.平成 19
年度に嚥下障害への依頼をきっかけに訪問 ST を
開始.開始当初は①地域での訪問 ST へのニーズ
の発掘・人員配置に見合ったニーズの確保②移動
手段としての自動車をはじめ必要物品の予算確保
などの問題があがり,すぐには介入できなかった.そ
のため PT へ同行する形で介入を開始し,少しずつ
取り組みを積み重ねてきた.平成 24 年度より訪問
ST の問い合わせが増え,病院内リハビリ業務から
訪問業務へと比率を少しずつシフトしながら,訪問
業務を増やしてきた.平成 25 年度からいよいよ本
格始動することとなり,積極的な広報活動のための
チラシの作成・退院患者への訪問 ST 利用の PR・
既に訪リハの PT や OT を利用されているケースの
ST 介入への促進など啓発活動に取り組んだ.
しんせい訪問看護ステーションからの訪問リハという
二つの母体が存在する.対象地域は新潟市中央
区を主としており,一回 40~60 分の提供である.
対象者は失語症・高次脳機能障害・Dysarthria・摂
食嚥下障害を中心としている.単に機能障害をみる
のではなくその方の疾患・生活背景全般から生活
動作に密着した観点で評価や訓練を提供すること
にも重点を置いている.
【今後の課題】
訪問 ST 開始していくなかでの課題として,①言語
聴覚療法の認知度の低さ,②生活支援という観点
に着目する必要性,③在宅医療や介護保険制度
についての知識・理解,④生活の場へ入るという心
構えと利用者との人間関係の構築,⑤急変やアク
シデントといったあらゆる状況への判断力の養成な
どがあげられた.
【地域の中でのSTの役割】
地域では,機能面のみならず生活場面との関係
性にも着目した評価が求められている.そしてこれ
らの内容を誰にでも分かりやすい言葉で説明・報告
することが多職種連携・家族への理解につながると
考えている.在宅では,食べられなくなり寝たきりに
なってしまう人,話せない事で会話に入れてもらえ
ず孤立した生活を送っている人など想像以上に多く
のケースが存在するのではと推測される.訪問 ST
を様々な方に知ってもらい一人でも多くの方へ支援
できるよう今後も宣伝活動を継続していきたい.
【おわりに】
まだ始めたばかりで ST としての戸惑いはあるが,連
携を図るなかでやりがいも見出せている.障害に目
を向けるだけではなく,生きがいや社会とのつながり
を共にみつけていくなかで楽しさを感じている.地域
との触れあいが生活に不自由を感じている方の発
見につながり,手を差し伸べることができるのではな
いだろうか.こうした地域の中で支援する ST が今後
増えていくことを望んでいる.
【当院での訪問 ST リハビリ実施内容】
当院の特徴として回復期病棟からのシームレス
な連携,安心した在宅生活への支援があげられる.
当院の訪問リハは,みどり病院からの訪問リハという
形で提供する場合と,かかりつけ医による指示の下
23
一般演題⑰
災害リハビリテーションを考える
―その時,私たち ST にできること―
堂井真理
新潟県言語聴覚士会 公益事業部
新潟県災害リハビリテーション連絡協議会
会の設置について会員に呼びかけ,協力要請を行
う.
2014 年 1 月に第1回災害対策支援委員会が開
催され,今後の活動内容・取り組み・課題について
県士会の中で検討していくこととなる.
【はじめに】
我が国は,1995 年の阪神淡路大震災より新潟
県中越大震災,新潟県中越沖地震,東日本大震
災と大きい震災を経験し,医療支援活動として協力
する必要性を認識しているつもりである.しかしなが
ら実際に災害が起きた時,私たちはどのようにその
役割を果たすべきなのだろうか?私自身新潟県言
語聴覚士会(以下県士会)の公益事業部として災
害対策に関与することになり,多くのことを考えさせ
られるようになった.今回県士会としての取り組みを
報告するとともに,言語聴覚士(以下 ST)として,一
人の人間として災害リハビリテーションを考えたいと
思う.
【県災害リハ連絡協議会について】
新潟リハビリ研究会・新潟県理学療法士会・新潟
県作業療法士会・新潟県言語聴覚士会・新潟県看
護協会・新潟県介護支援専門員協会・新潟県社会
福祉士会の 7 団体が協力し,災害発生後の各フェ
ーズにおける活動内容について協議を重ねている.
【災害支援対策委員会の役割】
県士会では,医療専門職の一つである言語聴覚
士の職能団体として,支援できる内容の検討・人材
育成・人員の確保・災害に関する情報の発信を行
っていきたいと考えている.そこで設置された災害
支援対策委員会を中心に①会員の安否確認②連
絡系統の整備③支援内容④災害ボランティァ登録
の活用⑤会員への災害に関する意識の啓発・知識
や情報の提供を行うことを掲げている.
【経緯】
2011 年 3 月に起きた東日本大震災は広大な範
囲で壊滅的被害をもたらしたことは記憶に新しい.
DMAT・JMAT をはじめ各医療職種や団体より,多く
の救助チームや支援チームが派遣されたが,被災
地での各職種による支援提供・医療職種の同士の
連携という面から反省点が残った.この反省を踏ま
え今後の災害発生時には各都道府県単位で円滑
かつ効果的に救助・支援活動が可能となるようリハ
ビリテーションチームを作り,円滑かつ効果的に救
助・支援活動に取り組むよう「東日本大震災リハビリ
テーション支援関連 10 団体」より新潟県も要請を
受ける.
2013 年 4 月に「新潟県災害リハビリテーション連
絡協議会(以下県災害リハ協議会)」が発足し,新
潟県言語聴覚士会(以下県士会)での災害対応に
関わる組織運営やシステムの見直し・支援体制の
構築・連絡系統の整備を行うこととなる.
2013 年 7 月ニュースレターにて災害対策委員
【災害時に必要なこと】
被災地で聞かれる言葉に「介入してもらったけれ
ど本当は迷惑だった」という現場側の声があるという.
これは相手を知り,相手を思いやった介入時期・介
入方法・情報共有・連携が取れていなかったからと
振り返られている.私たちが専門職として接する部
分は大切ではあるが,専門性だけに特化しそれを
振りかざすことは現場では望まれない.臨機応変な
対応を取り,専門職の立場で考えられること・地域
性を配慮し一人の人間として向き合うことが実は一
番大切なことであると考える.
24
一般演題⑱
学校教育連携が始まります!(活動報告)
鍛治山洋1, 古野芳毅2,青木さつき 3,入山満恵子 4
新潟県言語聴覚士会 学校教育連携ワーキンググループ(WG)1
県立柏崎特別支援学校2,白根大通病院 3,新潟大学教育学部 4
【学校教育現場は?】
平成 19 年に学校教育法が改正され「特別な場
で行う『特殊教育』」から「ニーズに応じた『特別支援
教育』」への転換がはかられ、特別支援教育は、特
別支援学校、特別支援学級のみならず、通常級に
おいても行われることになった。
障害種の多様化も進み、聴覚障害、言語障害、摂
食・嚥下障害はもとより、近年は発達障害への対応
も急増しているなど、教育現場では、幅広い領域を
カバーすることが必須となっている。そのため、福祉、
医療など教育以外の専門家と連携して児童生徒の
支援にあたることが求められており、特に言語聴覚
士との連携において、質の高い教育活動の展開に
つながるケースが多く報告されている。
今後、校種にかかわらず言語聴覚士等との連携
が教育現場から望まれている。
【どうして?いま学校教育連携なのか】
文部科学省による「PT、OT、ST等の外部専門
家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究
事業」等により、多くの都道府県で言語聴覚士が活
用されるようになった。また、文部科学省委託事業
として、「特別支援学校機能強化モデル事業(特別
支援学校センター的機能充実事業)」が実施される
ことにより、学校教育での言語聴覚士の活用と配置
が一層推進される見通しである。
以前より、日本言語聴覚士協会(以下JAS)にて
学校教育連携についての活動が行われていたが、
平成 25 年6月札幌にて、学校教育連携担当者連
絡協議会の第 1 回責任者全国会議が開催された。
この会議に新潟県からは演者が出席した。
から、県士会を窓口にした活動を早期に開始する
必要あるため、作業部会を構成し活動準備を進め
ている。
【活動の経過は?】
JASの第1回目の学校教育連携担当者連絡協
議会責任者会議を受けて、新潟県では、平成 25
年 9 月から県士会にて、会員 4 名で、『学校教育連
携ワーキンググループ』を設置し、平成 26 年3月ま
でに計5回会議を開き検討してきた。
【学校教育との連携が始まります!】
平成 26 年度からは、県内3校に対して直接学校
訪問して活動を開始する。派遣される県士会員に
は、県士会予算による有償によるものとして派遣活
動を行う。活動・指導内容は、学校へ直接訪問して
摂食・嚥下指導、コミュニケーション指導、言語発
達指導、構音指導、教職員に対しての指導など多
岐にわたる内容を想定している。
また、現在までに個々の会員が行っている学校教
育に関連してきた取組みを県士会で把握させて戴
き、各方面に提示しPRしていきたいと考えている。
今後は、派遣の依頼に応えられ、協力が得られるよ
うに県士会員の組織化も検討している。
また、教員職員免許の『特別支援学校教員資格
認定試験自立活動言語障害教育』の取得も含めフ
ィールドの違う学校教育現場の理解を深める研修
会も必要と考えている。
【そして、伝えたいことです】
新潟県においても「学校教育連携」が本格始動
する。全国的には言語聴覚士が学校教育現場で
「活用・配置」されるようになってきたが、新潟県の
教育行政・現場は全国に比べて動きが遅い。県士
会員の皆から協力をいただき、『新潟モデル』を構
築したいと考えている。活動への参加を宜しくお願
いします。
【新潟県内の現状は?】
新潟県内では学校教育と充分な連携が出来て
いるとは言えない。個々の会員レベルでの活動であ
り、把握できていない点も多くある。このような背景
25
賛 助 会 員
福祉・労災指定:各種車椅子・座位保持装置・ベッド
コミュニケーションエイド・福祉機器一般
介護保険レンタル・介護住宅リフォーム相談
㈱ G・T・B
(オーエックス新越)
〒 956-0017
新潟県新潟市秋葉区あおば通
2 丁 目 28-27
TEL 0250 -2 5- 2626
FAX 0250-25 -7710
http://www.gtb -niigata.jp/
主催 新潟県言語聴覚士会
大 会 運 営 :第2回学術大会実行委員会
大平芳則、高橋圭三、蓮子浩行、
本間桜、佐藤卓也、五十嵐武士、
本田俊一、竹内やよい、阿志賀大和
新潟県言語聴覚士会ホームページ
http://www.niigata-st.org/
22