2016 秋田県母性衛生学会

ソフロロジー法を用いた当院の取り組み
医師 1名
助産師 13名
受付 3名
事務 1名
スタジオスタッフ 3名
看護師 9名
厨房スタッフ3名
補助スタッフ 2名
清掃スタッフ 3名
ソフロロジー法を用いた当院の取り組み
Ⅰ.はじめに
当院は、前院長が「常に患者さんの身になって心のこもった医療。 幸福になって
いただくための医療を奉仕の心で努める」という理念のもと、昭和53年に開業し
地域医療に携わっています。 スタッフ全員が、来院していただいた方々に
「心地よい」と感じていただけるよう心がけて接しています。
平成7年より現院長が赴任し、平成9年度よりソフロロジー法を導入しました。
今回は看護研究ではありませんが、当院の取り組みを紹介したく発表させていただきます。
当院が目指すソフロロジー法
お産をすることのみがゴールではなく・・・
1.
2.
3.
妊娠中から子を思い、母性を育む
家族みんなで、新しい家族を迎えるための気持ち
を育んでいく。
その人らしく楽しく子育てをし、幸福な家庭を
創造することができるよう支えていく
当院が目指すソフロロジー法は・・・
お産をすることのみがゴールではなく、妊娠中から子を思い、母性を育み、
家族みんなで新しい家族を迎えるための気持ちを育んでいく。 そして、
その人らしく楽しく子育てをし、幸福な家庭を創造できるよう支えていく
ことを目的としています。
そのためには、妊婦自身が自分の身体の変化を感じ取り、受け入れ、正しく
妊娠、出産、子育てを理解するということが大切です。
その大切さを伝えるために、母乳・骨盤ケア・ソフロロジーの各チームを
主体としたクラス運営をしています。
それでは、活動内容についてお話いたします。
Ⅰ
出産前の活動内容
1、個別での保健指導
1)外来での妊婦健康診査時、
妊娠週数に応じた保健指導
Ⅰ.出産前の活動内容
妊娠10週の健診時に、パンフレットを購入していただき、それに沿って
各週数に応じた指導を個別で行っています。
パンフレットは、データを書き込んだり、胎児の写真を張ったり、
胎児へのメッセージを書き込めるようになっており、出産後は、
その子の生い立ち本となるように作ってあります。
妊婦一人当たりの指導時間は、10~20分程度ですが、妊婦の体調や
心理的状況によってはそれ以上の時間を要することもあります。
支援が必要と思われる時には同意を頂き、市へ訪問依頼をお願いし、
保健師と連絡を取り合いながらサポートしています。
2、集団での保健指導
1)初期クラス( 対象:妊娠12週~20週
、
6名
)講義・体験型
目的:妊娠中の身体の変化について知り、楽しい妊娠生活を送ることがで
きる。
また、赤ちゃんの心を育てる授乳の大切さを知る。
クラスの内容
:
1、ソフロロジー式分娩法について
2、妊娠中の過ごし方
3、妊娠期からの体調の変化
4、妊娠中の食事
5、妊娠中の体作り
6、妊娠初期~安定期までに注意する症状
7、妊娠中のお口のケア
8、母乳の大切さについて
集団での保健指導
初期クラスは・・・ 妊娠20週までに受けていただいています。
内容としては・・・
妊娠中の身体やこれから大きく変わる生活スタイルの変化を前向きに捉え、
「こころ」と「身体」の健康を保ちながら自己管理できるよう指導しています。
並木クリニックのソフロロジー法として大事にしていることをお話し、
3か月、6か月、9か月の胎児モデルや子宮、胎盤等の模型を実際に触っていただき、
自分の体の変化や赤ちゃんをイメージしやすくしています。
筋肉の緊張を緩和し血流を良くして、冷えを予防するための体操も取り入れています。
参加後全員に、イメージトレーニングCDを配布し、自宅でも取り入れてもらう
ようにしています。
2)骨盤ケアクラス
(対象:妊娠26週ころまで
、
4名)
講義・実践型
目的:妊娠に伴うマイナートラブルをセルフケアで解消できる。
内容 : 1、骨盤の仕組みと役割
2、骨盤ケアってどんなこと?
3、なぜ骨盤ケアが必要なのか?
4、骨盤を歪ませないために
5、骨盤の歪みを整えましょう
(操体法・骨盤高位・骨盤輪支持)
アフタークラス:個別的にもう一度聞きたい方
1人/1時間
次に骨盤ケアクラスです。
妊娠に伴うマイナートラブルをセルフケアで解消できることを目的とし、26週まで
に受けていただいています。
指導内容は・・・
産婦自身が自分の身体をよく知り、腰痛や恥骨痛を緩和して、楽しく妊娠生活が
送れるよう、また骨盤を整え、赤ちゃんも心地よい子宮環境で育っていけるように
とお話ししています。
操体法では、どれも産婦自身が心地よいと思える指導を心がけています。
Ⅱ
出産後、入院中の活動内容
1、個別での保健指導
1)母乳・育児指導
2)産褥指導
3)バースレビュー
出産後、入院中の活動内容についてお話します。
1、個別での保健指導
1)母乳・育児指導
全室個室のため夫の付き添いも多く、オムツ交換や抱き方などは一緒に説明し、
夫や家族の積極的育児参加を促しています。
授乳は母が自信をもって一人でできるようになるまで毎回指導に入って
見守ります。
退院時には、褥婦さんと退院後健診の必要性や今後の栄養方針、授乳方針
などを相談します。
2)バースレビューは、妊娠期、分娩期、入院生活についてお話を聞き、褥婦の
思いを受け止め、褥婦が自分の分娩を肯定的に受容できるよう促しています。
また、産後の指導もしながら、退院後の環境も聞き、育児に協力してくれる
存在も再度確認しています。
2、出産後、集団での保健指導
1)母児同室指導(30分)
対象:産後1日目の褥婦
目的:赤ちゃんを思い母乳育児ができる
内容:①退院までのスケジュール
②赤ちゃんを知ろう
③母乳の大切さ
④抱き方、寝かせ方、おむつ交換の実際
2)沐浴指導: 3回
/
週
2、集団での保健指導
母児同室指導では、赤ちゃんが泣くことは言葉であることを理解してもらい、
その言葉に答えていくことで、母児相互作用が高められていくことを伝えています。
沐浴指導に関しては週3回実施し、入院中何度でも受けられるようにしています。
また、沐浴のDVDを各部屋に置き、いつでも見れるようにしています。
Ⅲ 退院後の活動内容
1)退院後健診
対象: 健診希望者
授乳に自信がない方
育児不安の強い方
児の体重増加が緩やかな方
内容: 児の体重測定
母の乳房、乳汁分泌状況
時間と料金: 1組/1時間
1回無料/1か月健診まで
2)アフタービクス・ベビービクス
退院後の活動内容です。
当院の退院後健診は、1か月健診まで1回、無料で行っています。
児の体重や乳房状態だけではなく、母親の育児に対しての気持ちや家族の
支援状況などの把握にも努めています。
1回の受診に終わらず、1か月健診まで数回受診する方もいらっしゃいます。
母親が自信をもって「一人で出来る」と思うまで支援していますが、
必要時には母親からの同意を得て、市の訪問へとつないでいます。
退院後希望者は、産後のアフターケアとしてベビービクスやアフタービクス
にも参加し、コミュニティの場の一つとなっています。
Ⅳ
今後の課題
里帰り分娩の方への出産前教育をどのように対応していくか
今度の課題として・・・
院長の方針で、5月より里帰り出産を取り扱うことになりました。
妊娠後期に当院を受診される方へ、ソフロロジー法で大切にしている出産前教育を
短期間で、どのように対応していくのかが課題です。
おわりに
退院時のアンケートやバースレビューでは、「お産は怖いものではなく、
楽しみなものと気持ちを切り替えてくれた」とか、「産ませてもらうのではなく、
自分で産むという気持ちにさせてもらった」などの嬉しい言葉も聞かれます。
しかし、当院での取り組みは産後すぐに結果が出るものではありません。
それでも母と子が、家庭・地域で幸せに暮らしていけることを願って、
今後も妊産褥婦に寄り添い、周産期医療に携わっていきたいと思います。