可視化技術が切り開く 未来のネットワークセキュリティ

可視化技術が切り開く
未来のネットワークセキュリティ
“つながる”新産業創出セミナー
〜加速するネットワーク社会の「攻め」と「守り」〜
(2014/09/12)
独⽴⾏政法⼈ 情報通信研究機構(NICT)
ネットワークセキュリティ研究所
サイバーセキュリティ研究室
笠間 貴弘
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NICTERとそのスピンオフ技術たち
インシデント分析センタ
NICTER
2.
対サイバー攻撃アラートシステム
DAEDALUS
ネットワークリアルタイム可視化システム
NIRVANA
4.
サイバー攻撃統合分析プラットフォーム
ライブネット観測
3.
ダークネット観測
1.
NIRVANA改
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
近年の主なセキュリティ事案
2008
Downadup (Conficker)
大規模感染ワーム
2009
Gumblar
Web媒介型攻撃
2010
Stuxnet
制御システム向けマルウェア
SONYへのDDoS攻撃
ハクティビズム
標的型攻撃
サイバーエスピオナージ
バンキングマルウェア
オンライン銀行詐欺
遠隔操作ウイルス
愉快犯、フォレンジック
リフレクター攻撃
DNSオープンリゾルバ問題
アカウントリスト攻撃
同一ID/パスワード問題
2011
2012
2013
3
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
サイバー攻撃の変遷
 20世紀:愉快犯/自己顕示
Richard Skrenta
世界初のウイルスElk Cloner
の作者(当時高校生)
 21世紀:経済犯
+
Anonymous
 2010年代: 示威活動(Hacktivism)
諜報活動(Cyber Espionage)
4
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
サイバー攻撃のツール:マルウェア
• Malware = Malicious(悪意のある)+ Software
- 情報漏えいやデータの破壊・改竄、他のコンピュータへの攻撃
など、ユーザの望まない不正な活動を行うソフトウェアの総称
コンピュータウイルス
ボット
ワーム
5
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
インシデント分析センタ NICTER 概要
NICTER
= Network Incident analysis Center
for Tactical Emergency Response
⽬的:
広域ネットワークにおけるセキュリティインシデント
(セキュリティ事故) の迅速な状況把握・原因究明・対策導出
主要コンポーネント:
• マクロ解析システム
• ミクロ解析システム
• マクローミクロ相関分析システム
(ネットワークモニタリング)
(マルウェア解析)
(マクロとミクロの融合)
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NICTERの全体像
マクロ解析システム
可視化エンジン
ウイルス
ネットワーク
モニタリング
ボット
!
分析エンジン
Tiles
Cube
Atlas
ワーム
24万アドレスからなる
ダークネット観測網
現
象
相関分析
システム
インシデント
ハンドリングシステム
1日7000検体の
マルウェア解析能力
30秒〜1 分で
マルウェアを推定
政府・官公庁
!
インシデント
アラート発行
相関分析
エンジン
原
因
Alert
----------------------------------
分析者ワークベンチ
インターネット
サービスプロバイダ
ミクロ解析システム
マルウェア
検体収集
ハニーポット
マルウェア 静的解析
!
マルウェア 動的解析
一般ユーザ
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
IPアドレス と ポート番号
• IPアドレス: インターネット上の⼀意の識別⼦(住所)
• ポート番号: サービスを特定するための番号(窓)
20番ポート
(ファイル転送 データ)
21番ポート
(ファイル転送 制御)
53番ポート
(DNS)
IP アドレス
192.168.1.100
25番ポート
(メール)
80番ポート
(WWW)
119番ポート
(ネットニュース)
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ネットワークスキャン と ポートスキャン
• ポートスキャン
• ネットワークスキャン
1ホストに対して複数のポートをスキャン
80番ポート
Open
25番ポート
Closed
複数のホストの特定のポートをスキャン
100
101
102
103
100
192.168.1.100:80 Open
192.168.1.101:80 Closed
192.168.1.102:80 Closed
192.168.1.103:80 Open …
9
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ダークネットとは?
• ユーザマシンやサーバが接続されていない
未使用アドレスブロック
• ダークネットトラフィックはなぜ発生?



マルウェアによるスキャンや攻撃
DDoS攻撃の跳ね返り(Backscatter)
設定ミス
• ダークネット観測のメリット
1.
通信の秘密に抵触しない
→
2.
ネットワークの端点で自分宛の通信のみ観測。
観測データに正・不正の区別がいらない
→
3.
Darknet
飛んで来たものは全て不正な通信。
パッシブモニタリング
→
待っているだけで定常的に通信が到来。
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
Atlas: 世界地図上での可視化エンジン
 ダークネットに飛来する
パケットの送信元アドレス
から緯度・経度を推定し
世界地図上で可視化
 色:パケットごとに
プロトコルやTCPのフラグ
を表現
 高度:ポート番号に比例
(対数軸)
■ TCP SYN
■ TCP SYN/ACK
■ TCP ACK
■ TCP FIN
■ TCP RESET
■ TCP PUSH
■ TCP Other
■ UDP
■ ICMP
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NICTERダークネット観測統計
年
年間
総観測パケット数
観測IPアドレス数
1 IPアドレス当たりの
年間総観測パケット数
2005
約 3.1億
約1.6万
約1.9万
2006
約 8.1億
約10万
約1.7万
2007
約19.9億
約10万
約2.0万
2008
約22.9億
約12万
約2.5万
2009
約35.7億
約12万
約6.4万
2010
約56.5億
約12万
約7.5万
2011
約45.4億
約12万
約6.0万
2012
約77.9億
約19万
約6.6万
2013
約128.8億
約21万
約9.3万
100000
90000
80000
70000
60000
50000
40000
30000
20000
10000
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
1 IPアドレスあたりの年間総観測パケット数
2012
2013
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
Cube: 3次元空間上での可視化エンジン
 縦軸:IPアドレス
横軸:ポート番号
■ TCP SYN
■ TCP SYN/ACK
■ TCP ACK
■ TCP FIN
■ TCP RESET
■ TCP PUSH
■ TCP Other
■ UDP
■ ICMP
Destination IP Address
 左平面:送信元
右平面:宛先
Source IP Address
 ダークネットに飛来する
パケットを3次元の
立方体中に可視化
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
Tiles: 振舞分析エンジン
 1ホストごとの30秒間の挙動を1つのタイルで表現
 ホストの挙動は自動分類されデータベースに蓄積される
 蓄積された情報を基に新規の攻撃パターンを検出可能
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
狙われる組込みシステム
• 制御システム向けマルウェア
– イランの核施設を狙った攻撃(Stuxnet)
• デフォルトID・パスワードを悪⽤するマルウェア
– Chuck Norrisボットネット
– Carnaボットネット(世界中で42万台以上もの機器が感染)
• 脆弱性を狙った攻撃事例
–
–
–
–
Synology社製のNASの脆弱性
ルータ管理画⾯のCGI脆弱性
ビル管理システムの脆弱性
Cisco、Linksysなどのルータのテストインタフェースの脆弱性
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
Telnet(23/TCP)に対するスキャン
ユニークホスト数/⽇
パケット数/⽇
パケット数(左軸)
ユニークホスト数(右軸)
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
検索エンジンSHODAN
• SHODAN:
– インターネット上でアクセス可能な機器とそのバナー情報を
蓄積しており、Webサイトから検索可能なサービス
17
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ダークネットの攻撃元とSHODANリストとの突合
インターネットに繋がった組込みシステムが
スキャン活動に悪用されている可能性が高い
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
対サイバー攻撃アラートシステム
DAEDALUS
(Direct Alert Environment for
Darknet And Livenet Unified Security)
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
マルウェア感染対策の現状 – 境界防御の限界 • 突破される従来の防御手法
– 回避される侵入検知システム
• USBメモリによるネットワーク内部からの感染
• 標的型メールによる「人」への攻撃
– 完璧ではないアンチウイルスソフト
• 膨大な亜種ウイルスの出現により100%の検知は困難
• マルウェア感染リスクのゼロ化は困難
• 事故前提のマルウェア対策が必要
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
境界防御技術とDAEDALUS
境界防御技術
組織外からの攻撃をネットワーク境界で検出
DAEDALUS
組織内からの攻撃をネットワーク広域で検出
NICTER
相補的
組織内ネットワーク
組織内ネットワーク
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
基本アイデア
登録されたIPアドレスから
ダークネットに⾶んできたら
アラート。
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
想定環境
NICTER
: ライブネット
: ダークネット
23
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ケース1
組織内感染(内部アラート)
NICTER
: ライブネット
: ダークネット
: 感染ホスト
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ケース2
組織外への攻撃(外部アラート)
観測データ
NICTER
: ライブネット
: ダークネット
: 感染ホスト
25
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ケース3
DDoS攻撃の跳ね返り(バックスキャッタ)
観測データ
NICTER
: ライブネット
: ダークネット
: DDoS 被害ホスト
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
膨大なアラートが。。。
ほとんど未読 orz …
DAEDALUS-VIZ
27
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
DAEDALUSの成果展開:国内展開
地方自治体へのアラート提供
• 2013年11月1日より、地方自治体に向けてアラート送信開始
– 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)を窓口として自治体より申込受付
– アラート発生時の対応マニュアルをNICTとJ-LISで整備
地方自治体
自治体
自治体
47自治体
(2013年11月時点)
203自治体
J-LIS
NICT
情報セキュリティ対策支援
申込申請
サイバー攻撃検知通報
(フィールド実証実験)
観測対象
登録申請
DAEDALUS
システム
対応
マニュアル
(2014年8月時点)
アラート送信
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
DAEDALUSの成果展開:商用展開
一般企業へのアラート提供
•
SiteVisor:
DAEDALUSに基づく商用アラートサービス
•
SiteVisor Professional:
インシデント発生時のレスポンスサービス
『SiteVisor』
『SiteVisor Professional』
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
ネットワークリアルタイム可視化システム
NIRVANA
(nicter real-network visual analyzer)
サイバー攻撃統合分析プラットフォーム
NIRVANA改
NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NIRVANA
ライブ
ネットを
⾒える化
ネットワーク管理者
の負荷を軽減
(輻輳・切断等の障害、
設定ミス等を瞬時に発⾒可能)
パケットモード
管理コスト
の軽減
(管理の迅速化
・効率化)
フローモード
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
標的型攻撃
•
•
•
特定組織を標的にした長期に渡る執拗なサイバー攻撃
周到な内容のメールに添付されたマルウェアで組織に侵攻
組織内ネットワークに潜伏・浸透し重要情報を収奪
標的型攻撃のKill Chain
諜報
侵攻
潜伏
橋頭堡
確保
索敵
浸透
TECH.ASCII.jp「9.5社に1社が対象に!シマンテックが明かす日本の標的型攻撃」
http://ascii.jp/elem/000/000/652/652712/ (2011-11-30)
占領
収奪
撤収
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
入口対策/出口対策
諜報
入口
出口
(境界防御)
(境界防御)
侵攻
潜伏
橋頭堡
確保
索敵
浸透
占領
収奪
撤収
ネットワークの内側でも対策を!
(組織内ネットワークのリアルタイム観測・分析)
NIRVANA
改
= NIRVANA + セキュリティ分析機能
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NIRVANA改
•
•
•
•
•
NIRVANAによるライブネット観測
各種のリアルタイム分析エンジン(新規開発中)
既存セキュリティアプライアンスのアラート集約
各種アラートを基にしたメタ分析
ドリルダウン機能付き可視化エンジン
組織内ネットワークを守る
統合分析プラットフォーム
の確立に向けて研究開発中
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
NIRVANA改
NIRVANA改
•
•
•
•
•
NIRVANAによるライブネット観測
各種のリアルタイム分析エンジン(新規開発中)
既存セキュリティアプライアンスのアラート集約
各種アラートを基にしたメタ分析
ドリルダウン機能付き可視化エンジン
組織内ネットワークを守る
統合分析プラットフォーム
の確立に向けて研究開発中
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NICTER
Network Incident analysis Center for Tactical Emergency Response
まとめ
• NICTER
– ⽇本最⼤のダークネット観測網+マルウェアの⾃動収集・解析
– 相関分析によるインシデント原因の推定
– 多くの外部連携とスピンアウト技術たち
• サイバー攻撃の可視化のメリット:
– 訴求⼒(攻撃の実態・対策の重要性に対する認識を促す)
– 理解⼒(迅速な状況把握、⼈間の「気づき」の能⼒を最⼤化する)
– 求⼼⼒(次世代の研究者を惹き付ける)
Made in Japanのサイバーセキュリティ技術を
日本に、そして世界に!
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