平成18年度(2006)夏季研修会 - 香川県小学校教育研究会 国語部会

第6学年
1
単元名
国語科学習指導案
読み取ろう 筆者の人間への警告
ー「イースター島にはなぜ森林がないのか」ー
2 単元が目指す「語る子供」
○ 文章の構成や話題に注意しながら文章を適切に要約し,筆者の主張を的確に読み取
っている。
○ 環境問題について書かれた文章に興味をもち,進んで内容を読もうとすると同時に,
筆者の主張に対する自分の考えを座談会で述べている。
3 単元について
(1) 6年生のこの時期の児童は,時間的,地理的な広がりの中で,論理的,客観的に物事
を捉える力がついてきている。本教材はイースター島にかつてあった豊かな森林がどの
ようにして失われてしまったのかを解き明かした文章である。筆者は森林が失われた原
因と結果との因果関係を説明し,さらにその過去の教訓から人類の未来に警鐘を鳴らし
ている。話題の提示から理由の説明,そして筆者の主張で結ぶという文章構成が分かり
やすい上に,結論部分では文末表現に着目させることで,筆者の主張を捉えやすくなっ
ており,このことは学習指導要領Cのイ「目的や意図に応じて文章の内容を的確に押さ
えながら要旨を捉えること」及びエ「書かれている内容について事象や感想,意見の関
係を押さえ,自分の考えを明確にしながら読むこと」の指導に適した教材であると考え
る。
(2) 子供たちは,5年時に国語科で「森林のおくりもの」を学習し,森林がいかにわたし
たち人間にとって大切な物かを読み取っている。さらには,社会科の学習で地球上に起
こっている森林伐採の問題,理科では地球が抱える様々な環境問題も学習してきた。イ
ースター島は地理的になじみのない遠い外国ではあるが,香川県の企業が世界遺産であ
るモアイ像の再建のためにクレーン車を提供したという史実はほとんどの子供が知って
おり,その点でも本教材は,子供たちの興味関心にふれる教材だと考えられる。
ツリー図作成に関しては,5年時の「動物の体」から始めて今回で4作品目となる。
自分で作成する自信があると答えた児童はまだ50%ほどであるが,学習活動に対して
は前向きであり,アイテムを利用しながら説明文を読み進めていこうとする姿が育ちつ
つある。
(3)① 2色の付箋紙を利用したツリー図の工夫
ー研究仮説2よりー
本教材は,イースター島に森林がなくなっていた歴史と森林破壊の原因を説明するこ
とで筆者の人間に対する警告を述べる形となっている。その書きぶりとしては本論の前
半と後半でイースター島の歴史を順を追って記述し,中盤で原因を大きく2つの視点か
ら説明している。本校のツリー図の形で言えば,並列型(Aタイプ)と順序型(Bタイ
プ)の混じった構成と考えられ,5年時に学習してきた並列型のみの3つの説明文とは
違った形である。そのためツリー図を一色で作成していくことには子供たちの混乱が予
想されるため色分けして作成することで,本論の文章構成を確実に理解させていきたい
と考える。
② 補助教材「マンモス絶滅のなぞ」との比べ読み
ー研究仮説2よりー
並列型と(Aタイプ)と順序型(Bタイプ)の文章構成は本教材が初めてであり,子
供に定着を図る上での補助教材が必要と考えた。「マンモス絶滅のなぞ」は序論・本論
結論がはっきりと分かれ,しかも接続詞が巧みに使われているため,本論の構成もつか
みやすい。マンモス絶滅の原因が地球環境の急激な変化と人間の乱獲であることを並列
型で説明すると同時に,前半部分は環境の変化を順を追って分かりやすく順序型で説明
している。そこで同時期に2教材の説明文でツリー図を作成させ,混合型の文章構成を
つかむ習熟を図っていきたい。
③ 目的意識をもたせるための座談会の設定
ー研究仮説1よりー
ただ教材文を読み進めるだけでは,本校が目指す意欲的に文章と語る子供を育てるの
は難しい。そこで,単元の終末に有効な表現活動を組むことで子供たちに目的意識をも
たせ意欲的に学習を進めたいと考えた。環境問題について書かれた本を読み,そこから
読み取った筆者の考えと,そのことについての自分の考えをグループごとに座談会とい
う自由な形で発表させ,意欲化を図る。それと同時に,子供たちの読書の幅を少しでも
広げていきたいと考える。図書館司書の協力を得て,市の図書館からも本を取り寄せ,
環境問題について書かれた本を用意した。なお選択にあたっては子供たちの発達段階を
考慮し,また事後の指導を考えて,6年生の本だな(一部5年生の本だな)に紹介され
ている本の中から,10冊を選択することにした。
4
単元の評価規準
話す・聞く
書
く
環境問題につい 理由や根拠を明ら 自 分 の 考 え を 述
て書かれた文章 かにして説得力の べ る た め に , 書
を進んで読み, ある話し方をした く 必 要 の あ る 事
そこから読み取 り,相手の話の意 柄 を 整 理 し , 効
ったことと考え 図を考えながら聞 果 的 に 座 談 会 の
を進んで座談会 いたりする。
台本を書くこと
で語っている。
ができる。
5 学習指導計画(総時数 12時間)
文章に
他者に
学習活動
向かって 向かって
関心・意欲・態度
読
む
文章の構成や話
題に注意しなが
ら文章を的確に
要約し,筆者の
主張を読み取っ
ている。
言語事項
事実と意見との
書き分け方,順
序に沿った述べ
方などの構成の
工夫が分かる。
時
読み取 組 み 立 読み取
る力
一
次
二
次
三
次
環境問題に関する様
1 々な新聞記事や本の紹
介を聞く。
「読み取ろう!地球へ
の警告」というテーマ
で座談会を開くという
めあてをもつ。
教材文を何度も音読
2 し序論・本論・結論の
大きな3つのまとまり
を見つける。
〈香川型教材活用〉
序 論 (1 ∼ 2 段 落 )と
3 本 論 (3 ∼ 7 段 落 )に お
ける文章構成の工夫を
調べツリー図に表す。
本 論 ( 8 ∼ 21 段 落 )
4 における文章展開の工
夫を調べツリー図に表
す。
〈香川型教材活用〉
本 論 (22 ∼ 24 段 落 )
5 における文章展開の工
夫を調べツリー図に表
し,2タイプの混合型
であることを捉える。
結 論( 25 ∼ 27 段 落 )
6 を読んで筆者の考えを
読み取り,文章全体の
組み立てを考え,要旨
を書く。
「マンモス絶滅のなぞ」
7 (読書の部屋)を通読
し,自力でツリー図を
作成する。
8
文章構成を,教材文
と比べるとともに筆者
本 の考えが表れた書きぶ
時 りの工夫を見つける。
9 10 種 類 の 環 境 問 題 に
関する本の中から最も
10 興 味 あ る 1 冊 を 選 び ,
筆者の主張を読み取っ
11 て , 座 談 会 の た め の 台
本を書く。
「読み取ろう!地球
12 へ の 警 告 」 と い う テ ー
マで座談会を開く。
てる力
る力
○
てる力
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
本時が目指す「語る子供」
組み立
○
様々な環境問題について知って
いることを発表したり,関心をも
って聞いたりしている。
テーマに沿って座談会をすると
いう見通しをもち,自分なりに読
む本を考えている。
(関)
文章のまとまりを意識しながら
教材文を読んでいる。
(読)
これまで培ってきた読みの力を
活用し文章の3つのまとまりを捉
えている。
(読)
文章に書かれている内容を正し
く理解し,大事な文や言葉を使い
ながら,内容を要約している。
(読)
言葉や内容のレベルの違いを認
識し,3つの階層に分けてツリー
図を作成できる。
(読)
本論の文章構成を正しくつかみ,
書きぶりの工夫をアイテムに付け
足している。説明文の2つのタイ
プ(並列型と順序型)を理解する
ことができる。
(読)
結論を読んで筆者の考えをつか
み,要旨を自分の言葉でまとめて
ノートに書いている。
(読)
事実と意見の書き分け方を文末
表 現 に 注 目 し て 気 付 い て い る 。(言 )
これまで培ってきた読みの力を
生かして,文章全体の構成をツリ
ー図を通してつかんでいる。
(読)
筆者が自分の考えを述べるため
に文章構成を工夫したり話題の提
示の仕方を工夫したりしているこ
とを見つけられる。
(読)
環境問題に関する本に興味をも
ち,進んで本を選び読みふけって
いる。
(関)
読み取った内容と自分の考えを
聞き手に分かりやすく伝えるため
に台本を書いている。
(書)
読み取った内容と自分の考えを
理由や根拠を明確にして相手に話
すととともに,相手の考えを自分
の考えと比べながら聞いている。
(話聞)
6 本時の学習指導
(1)目標
「イースター島にはなぜ森林がないのか」と「マンモス絶滅のなぞ」の2つの説明文を比べることで,筆者が自分の訴えを伝えるために,
文章の仕組みや話題の提示の仕方を工夫して書いていることが分かる。
(2)学習指導過程
○語る子供を育成するために
学 習 活 動
児
童
の
意
識
の
流
れ
支
援
活
動
・前時までに作成した、2つの説明文の
1 学習課題をつかむ。 イースター島にはなぜ森林がないのか
マンモス絶滅のなぞ
ツリー図を並べて掲示し、共通点や相
違点が視覚的に見つけやすいようにし
筆者が自分の主張を伝えるためにどう述べているか,2つの説明文からその工
ておく。
夫を見つけよう。
2
結論を読んで筆者
の主張を確認する。
筆者の主張は結論部分を読むといいんだったな。
自然の利用方法を誤ると悲さんで厳
しい運命をたどることになり、 今
後の人類の存続は子孫のことをいか
に考えられるかにかかっている。
3
今地球は生き物が絶滅,あるいは
危機に直面しており、人間と他の
生き物や地球との関わり合いを考
えることが大切である。
自分の課題に沿っ
て書きぶりを検証す どちらも地球環境を破壊しているのはわたしたち人間だと訴えているのは明白
る。
だ。もう一度,書きぶりを見直し,それがはっきりと分かる文章表現を探そう。
(1)一人で
(2)ペアで
(3)全体で
文章の仕組み (ツリー図から)
イースター島
マンモス
2つのまとまり 2つのまとまりか
から構成
ら構成
人間とラット 人間と地球環境の
変化
⑧段落に大きな ⑱段落の「さて」
原因は人間とあ という接続詞で話
る。
題転換している。
先に人間の直接
破壊をあげてい 後半であげている
る。
人間の乱かくの方
3つの事例で詳 が具体例が多い。
しく述べている。
話題の提示の仕方(本文から)
イースター島
マンモス
ラットは長い船 ⑰段落「いくつ
旅の間の食料, か の 疑 問 が 残
これは結局は人 る」とあるが 23
間の仕業。
段落には「この
人間に関する言 説だと説明でき
葉は何度も出て る」とある。
くるよ。
⑰段落以降は人
ラットに関して 間という2文字
の記述は∼らし が繰り返し出て
い,∼ようなの くる。強調して
である,という いることが分か
文末表現だ。
る。
4
分かったことをノ 筆者の主張に関する具体例は先に書くことも後から書くこともあるが,どちら
ートにまとめる。
にしてもそちらの方が詳しく情報量が多い。
問題を投げかける言葉や推測,断定を表す文末表現に注意すると, 筆者の主張
がつかみやすい。 何度も出てくる言葉はキーワードになっている。
5
次時の課題を確認
する。
自分が選んだ本も,今日の学びを生かして,筆者の主張を読み取ってみよう。
・2つの説明文の結論を音読し、筆者の
主張を、全員で確認する場を設ける。
・共通項として環境破壊の原因が人間で
あることを押さえた上で3の活動に入
る。
・ツリー図を中心に比べるか本文を中心
に比べるかを選択させる。
・違う課題で調べた者をペアとし、お互
いに見つけた文章表現の工夫を語らせ
る。
○相手が言う内容について分からないこ
とはきちんと質問し、また内容を自分
の言葉でもう一度言わせるようなやり
とりをさせ、学び合いの時間の充実を
図る。
・全体の場で共通に押さえたい書きぶり
の工夫がでた場合には、その場で説明
文アイテムに書き加えるようにする。
(評)
文章の仕組みや話題提示の仕方に注意
して読むと、筆者の主張が読み取りや
すいという内容が自分の言葉でノート
に書けている。