詳細を見る

No.
May
106
2001
■
第24回卒業証書・学位記授与式
平成13年総合医学研究所春季セミナー
■学事
第30回入学宣誓式
平成13年度医学部第1学年オリエンテーション
新任教授紹介
退任教授のご挨拶
附属看護専門学校第13回卒業式・第14回入学式
■学生のページ
受賞の喜び/益谷秀次賞・学長賞・北辰同窓会会長賞
「医学を学ぶ学生メーリングリスト」に参加して
ITを利用した新しい医学教育へのトライアル
新入学生インタビュー
2001年度マーサ大学交換留学報告
■学術
中国・江蘇省友好交流訪問団が来学
第28回金沢医科大学神経科学セミナー〈予告〉
平成12年度学内研究費研究発表会
■トピックス
クリティカルパス─その可能性と限界─
第16回教育懇談会:医学生のための医療面接
■病院
第19回北陸腎移植連絡協議会
接遇に関する講演会
平成12年度臨床研修医研修修了証書授与式
療養型病棟勉強会
金沢医科大学肝移植友の会発会
第18回緩和ケア研究会
■管理・運営
平成13年度新入職員辞令交付式
学内駐車場のゲート管理化
学校法人金沢医科大学平成13年度予算
インターネットライブ中継本格化
教員評価制度の導入
■随想・報告
アメリカ整形外科学会交換フェロー印象記
■教室紹介
社会科学、化学、救急医学、呼吸器外科、総合診
療科、リハビリテーション科
教室記念行事:眼科学
■金沢医科大学学術振興基金募金のお願い
2
第24回
卒業証書・学位記授与式
第16回 博士学位記授与式
平成13 年3月 22日(木)午前10 時から、本学講堂
において第24回卒業証書・学位記授与式並びに第16
回博士学位記授与式が行われた。
はじめに、医学部卒業生81 名の氏名が読み上げら
れ、卒業生総代の西森左和さんに卒業証書・学位記
が授与された。引き続き、大学院医学研究科の博士
学位記授与式が行われ、修了生11 名の氏名が読み上
げられたあと、修了生総代の土原一真君に博士(医
学)学位記が授与された。
このあと、竹越襄学長の式辞、小田島粛夫理事長
の告辞があり、続いて、来賓の東田紀彦金沢医科大
学北辰同窓会会長から、卒業生並びに修了生に祝辞
と餞の言葉が送られた。
益谷秀次賞(副賞:懐中時計)は西森左和さんに
授与され、北辰同窓会会長賞(副賞:置き時計)は
斎藤雄之君、永友佐知代さん並びに山本佳乃子さん
に、学長賞(副賞:輪島塗文箱)は土原一真君にそ
れぞれ授与された。
最後に、在学生を代表して三浦由希子さんが送辞
を読み、これに対し卒業生を代表して齋藤雄之君が
答辞を述べた。そして卒業生、修了生らは列席者の
盛大な拍手に送られて退席した。
(上)医学部卒業生総代 西森佐和さん (下)大学院修了生総代 土原一真君
3
式 辞
学 長
竹 越 襄
本日、第24 回金沢医科大学卒業証書・学位記授与式並びに第 16回博士学位記
授与式を挙行するに当り、卒業された皆さんおよび本学大学院を修了されめでた
く医学博士の学位を取得された先生方に、心よりお喜びとお祝いを申し上げたい
と思います。
これまでの皆さんのご努力に敬意を表しますと共に、この日を待ち望んでおら
れたご両親はじめご家族の皆様に、心よりお祝い申し上げたく存じます。又、ご
多忙中の所、本卒業式にご臨席を賜りましたご来賓、関係者各位に厚くお礼申し
上げます。
さて、本学の医学部卒業生は本年度をもちまして2405 名に、また大学院医学
研究科博士課程を修了し学位を取得された方は249名に上り、医師として又医学
研究者として国内外で活躍しておられます。本学は平成14年(来年)で創立30周年を迎えます。皆さんは、この
30年を心に刻んで先輩諸氏に負けない様活躍してください。
最近、マスコミ上で多くの医療事故や医療不信が取り沙汰され、医療に対する国民の不安感が増しておりま
す。この事は、私共医学教育に携わる者にとって大きな責任を感じざるを得ません。医の倫理、医の心の教育
が充分でない事が反省されます。患者さんに暖かいやさしい気持ちで接する事や、共に苦しみを分かち合う気
持ちが大切であります。この心が欠けていると様々のトラブルが生じます。医療訴訟の大部分は患者さんと医
師の人間関係から生まれます。すなわち、患者さんとの深い信頼関係で結ばれている医師には医療過誤や医療
事故は生じません。この事は、最近話題のリベラルアーツ、いわゆる人間学(medical humanics)に通ずる根
幹をなすものです。
“人間は病む生きものである”という哲学者ニーチェの言葉にあるように「いかなる医学
の進歩をもってしても死をまぬがれることはできない。そのような人間の身体と心をケアする医師となるため
の学習の期間に、病む人間を理解し、同時にいのちの尊厳を理解する感性と知性を持つ訓練が必要である」こ
れは循環器学の先達であります聖路加看護大学の日野原先生の提言ですが、この様に医師にとってのリベラル
アーツ、人間学の必要性が叫ばれています。医師として必須の感性と知性を持つ心を、諸君がどの位身につけ
ているか、実の所、教育責任者として自信はありませんが、諸君は将来全国の医療現場に携わる事となるの
で、この心を忘れずに精進して欲しいと願うものです。
次に新卒業生の若き医師に一先輩として一言申し上げたいと思います。
その第一は謙虚な気持ちで人と接する事であります。この春より諸君はまさにペーパードライバーから試運
転の時期に入る訳ですが、先輩医師や看護婦さん始めパラメディカルの人々にひかえ目に後輩として接して欲
しいという事です。国試に合格したからと言って諸君は何も出来ない何も知らない状態です。現場で戸惑う事
が多い筈です。何事も先輩の言う事を良く聞いて自分の血と肉にしてください。
その二は勉強を忘れない事。医師は生涯学習が必要です。すなわち生涯教育です。私の恩師の故村上先生は
言われました。患者さんに本当に親切であるという事は、やさしい言葉も大切だがそれ以上に自分が勉強して
新しい診断法や治療法を身につけて患者さんに還元することであると。この為には日頃勉強を怠らず、新しい
医学の進歩に遅れてはいけません。医学は日進月歩というよりは秒進分歩の速さで進んでいます。臓器移植や
遺伝子の診断と治療が華やかな時代ですが、これらに目をとられる事なく、自分の足場をしっかり固めて一歩
一歩力をつけていってください。現場ではおぼえる事は山ほどあります。しかし、謙虚な気持ちで一つ一つ学
んで行けば必ず良医に到達します。
その三は感謝の気持ちを忘れずに、ということです。これは今迄お世話になったご両親、ご家族、教職員お
4
よび日本国家を含めた関係者に常に報恩の気持ちを忘れず日々を送るということです。諸君がここ迄来るには
多くの人々の精神的・経済的さらに身体的援助がありました。この恩に報いてください。すなわち立派な良医
になる事が報恩につながります。
以上が一臨床医として若い諸君に贈る言葉です。
さて、将来諸君は学会や研究会、または講演会等で本学の教員に会うことがあると思いますが、その際元気
な顔を見せてください。教育者として、各地で活躍している卒業生の元気な顔を拝見し、近況を聴くのが大変
楽しみです。皆さんも母校の教員が医師会等の講演に行った時には、必ず顔を出して元気な姿を見せてくださ
い。
最後に一言、この金沢医科大学は諸君の母校です。母校の隆盛を願うのは当然です。最近、母校に残って勉
強する卒業生が極端に少なくなりました。色々な事情が有るのでしょう。教職員も反省すべき点が多々あると
思います。しかし母校で研鑚するのが最も理想的です。日本的あるいは世界的に名の知られたすばらしい業績
を持つスタッフが沢山本学には居ます。是非母校に残って勉強してください。
最後に、何処で医学の勉強をしても楽な事はないでしょう。当分は苦労ばかりでしょう。しかし暗い長いト
ンネルを抜け出した者のみが知り得る明るい未来が待っています。是非、若い時には苦労を買ってでも積極的
に前進してください。諸君の健闘を祈ります。
5
告 辞
理事長
小田島 粛 夫
本日、晴れて医学部を卒業し、また、大学院を修了し、それぞれ学位を授与さ
れた皆さんに心からお祝いを申し上げます。そして同時に、今日まで皆さんをご
指導くださった先生方、また、長年に亘って何かと皆さんを支えてこられたご両
親、ご家族の皆さんに対して心からの敬意と、深甚なる謝意を表したいと思いま
す。
皆さんは、21世紀における最初の医学部卒業生、大学院修了生であり、社会か
らの皆さんに対する期待も大きいと思いますが、その期待に応えるように努力さ
れることを心から望んで止みません。
20世紀を「科学」の時代とすれば、21 世紀はまさに「生命科学」の時代であ
り、医学研究そして医療技術が、急速に進歩発展することは疑いもありません。
今から30年以上前に、Oxford大学のGurdon教授は、両生類の卵を使い、クローン生物の誕生の可能性を暗示
する研究を発表しておりますが、基礎医学研究者は、クローン人間の誕生や、多分化能を持つ幹細胞による臓
器再生は、理論的には可能でも、倫理的にも技術的にも実現されることのない、夢物語と考えておりました。
しかし、21 世紀の生命科学の進歩は、これらの夢を間もなく現実のものにするであろうし、さらに遺伝子解析
の成果と共に、難治性疾患の治療を可能にし、多くの生命を救うことになると思われます。確かに高度先進医
療によって、多くの生命を救うことは重要であり、医学の大きな使命であることは言うまでもありませんが、
しかし、一方では、これらの医学・医療の進歩発展とは無関係に、草深い田舎で静かに、ひっそりとその生涯
を終える人もあり、また、貧困と飢餓によって医療の恩恵を全く受けることなく、その短い生涯を終える幼い
命のあることも忘れてはなりません。
このように最先端医療による難治性疾患の治療から、貧困と飢餓から幼い生命を救うという医療まで、現実
的に医療は非常な広がりを見せ、その格差は益々広がることが予想されます。また、グローバル化やIT 革命が
進み、その結果、一層、経済中心の社会に変容し、生命そのものが経済力によって左右されることになり、や
がて人類の生存にも拘わる大きな問題に発展する可能性もあります。この社会の歪みは、人間の英知を持って
しても是正は困難であり、実際の医療に携わる私どもに課せられる責務は、益々大きくなると思います。
このような社会状況の下では、医療の本質が見失われることが懸念されますが、私ども医療に携わる者すべ
てが、医療の原点は、
「Ehrfurcht vor dem Leben、生命への畏敬」であることを改めて再確認することが必要で
あると思っております。この言葉は1915年、アフリカの黒人医療にその生涯を捧げた、Albert Schweitzerが、
アフリカのオゴウエ川を航行中の船の中で考えたと言われております。また、本学のエンブレムには、これと
同義語である「REVERENTIA VITAE, 生命の尊厳」の言葉が刻み込まれており、この言葉は、本学の良医を
育成するという教育方針の基本理念でもあります。
今後、皆さんが医療活動を続ける上で、また人間としても悩むことも多いと思いますが、
「生命への畏敬、生
命の尊厳」という言葉が、皆さんの心の支えの一つになれば、これに過ぎるものはありません。
今、将来の社会変容や生命科学の進歩・発展については、想像することすら出来ませんが、皆さんは最高学
府の卒業生、大学院修了生として、自信と希望を持って、混迷を続ける社会においても、指導的な役割を果た
されることを心から期待し、告辞と致します。
6
祝 辞
北辰同窓会会長
東 田 紀 彦
所定の学業を終え、最新医学知識を修得されてめでたく卒業されます学生のみ
なさん、博士課程(医学)を修了されてその称号を授与予定の皆さん、そしてそれぞ
れの長い学生生活に苦労を重ねてご支援されましたご父兄の皆様に心からお祝い
申しあげます。
このあいだ本学図書館の課長さんから面白いものを見せてもらいました。1901
年(明治 34 年)1月2、3日の報知新聞に掲載された 20 世紀の科学技術の予想です。
23項目の予想のうち21項目がほぼ実現していることに驚きました。例えば通信会
話の自在簡易化、航空機や自動車の普及と高速化による交通の至便性やエアーコ
ンデイションの普及などで良く当たっています。医療に関する予言は2つでした。
第1は「手術によって人の身長を伸ばせる時代になる」ということですが、いまや
脚延長術は10cm以上の延長を日常的に取り扱っており図星です。第2は内科医をして手術に踏み切らせるこ
とや、画像診断の進歩と顕微鏡や電気メスによる手術を予言して的中しています。実現していない2項目はサ
ハラ砂漠の沃野化、人獣間の自在な会話でした。
21世紀に実現可能な科学技術の予想はどうでしょうか。昨年 12 月の日本医事新報の中に科学技術庁による
8項目の予測があり、うち3項目が医学医療関係で、第1は化学合成素材から人工的に生命を合成する技術が実
現すること。第2は電磁気情報を使用して人の脳情報を読み取ること。第3は再生医療の普及、長寿化、ロボ
ットと義手、義足の精緻化でした。
20 世紀医療の予想の2つとも実現されたように、21 世紀の3つの予測が実現するとすれば、その間の知識技
術がいかにめまぐるしい速度で進歩せねばならないか、20 世紀を過ごしてきた私たちは既に体験済みです。そ
れらに追随できることは、本学で超一流の先生方に師事してきた皆さんですから何ら懸念ありません。しかし
知識と技術は世界の一流と言われるわが国で、最近東海村の臨界事故、ロケット打ち上げ失敗や点滴、薬の間
違い、などが続き医療を含め科学への信頼が失われつつあります。それはとりもなおさずこの知識と技術を従
属せしめる心の管理が等閑にされているからにほかなりません。まさに「徳なき名誉」
、「智慧なき理性」
、そ
して「幸福なき快楽」を求めてきた結果としか言いようがありません。
本学の建学の精神に良医の育成を目指すと謳ってあります。みなさんの先輩のある臨床医に良医像を聞いて
みますと、医師の仕事が好きな人、病人のいたみの判る医師等であり、看護婦さんの良医像はすぐに怒鳴った
りしないで患者さんや家族に納得してもらえる話のできる先生、いざというときに患者さんのそばにいてくれ
る先生、看護婦の仕事を理解してくれる先生、そして極め付きは、男の先生ならハンサムな先生でした。また、
検査技師さんの良医像は支障なく時間励行に検査の終わる医師でした。一方、薬剤師さんに良医像を尋ねる
と、処方箋を見ればその先生が大体どんなことを考えているか分かると述べました。本学のある部長さんは初
代学長の大谷佐重郎先生の解釈を引用して良医の中に名医が含まれるものであるということでした。どうも最
新の知識と技術を兼ね備えたのが名医ですが、良医はその上、患者さんに信頼される要素ももっている医師を
言うようです。みなさんは金沢医科大学で多くの友人、先輩、教職員と出会い、良医として身につけねばなら
ない学問、道徳を互いに補完しあいました。6年間で良医の端緒につかれましたが完成にはまだ時間が必要で
あり、卒業後も本学の大学院生や研修医になって建学の趣旨を全うしてください。
7
送 辞
在学生代表 三浦 由希子 金沢医科大学第24 回卒業証書・学位記授与式にあ
たり、在学生を代表して、お祝いと感謝の言葉を申し
上げます。
北陸の長い冬も終わりを迎え、春の息吹を感じさせ
るこの日に、医学部の全課程を修了され、栄えあるご
卒業を迎えられましたことを、心からお慶び申し上げ
ます。
答 辞
卒業生代表 齋
た け し
藤 雄 之
本日、金沢医科
大学第 24 回卒業証
書・学位記授与式
に諸先生方、ご来
賓各位、並びにご
父兄の皆様方のご
臨席を賜ったこと
は、私達卒業生に
とりまして、この
上ない喜びでござ
います。卒業生を
代表して厚く御礼
申し上げます。
また、只今、学長先生並びに理事長先生、ご来賓各
位からの祝辞、在校生代表からの送辞の言葉をいただ
き卒業生一同、心より感謝申し上げます。
かつてこの講堂で、入学宣誓式が行われました。こ
の北陸の地で、医学の道を歩もうと心に決め、不安と
期待を胸に大学生活をスタートさせたのを今でも鮮明
医学を志し、ここ金沢医科大学にご入学以来、幾多
の困難を前にし、悩み苦しまれたこともあったと思い
ます。しかし、困難に臆することなく、試練をも学ぶ
喜びとして、克服されてきたことと思います。勉学、
課外活動等、先輩方と共に過ごした学生生活の中で、
我々後輩は、何度となく励まされ、充実した日々を送
ることができました。今日、この日を迎えられました
先輩方の晴れ晴れとしたお顔を拝見し、改めて感謝の
気持ちと尊敬の念を抱いております。
諸先輩方にとって、日本海を臨むこの自然多き内灘
の地で過ごされた学生生活は、生涯忘れられない思い
出となることと思います。また、諸先生方の、厳しさ
の中にも優しさのあるご指導は、今後の医師としての
人生に、大いに役立つことと思います。
今日ここに、新たなる道への第一歩を踏み出される
諸先輩方が、金沢医科大学の卒業生であることを誇り
にして精進され、人間性豊かな信頼される医師となら
れ、後に続く我々後輩の道しるべとなってくださいま
すよう、お願いいたします。
お別れにあたり、卒業生の皆様のご活躍とご健勝を
お祈りして、送別の言葉とさせていただきます。
に覚えています。
大学生活と一言で言ってしまうと、とても短い時間
のように感じられますが、在学中に私達は貴重な多く
の出会いを経験しました。
まず医学という厳しく奥深い学問との出会い、そし
てそれらについて情熱を持ってご指導下さる先生方、
またそれらに立ち向かうべく強い志を持った友人達、
部活動や課外活動を通じて知り得た先輩、後輩や地域
住民の方々との出会いを経験しました。そして、その
素晴らしい出会いに加え、未熟な私達を心より支えて
くれた家族の愛情にも出会うことが出来ました。これ
らの出会いを通し私達が経験してきたことは、私達の
知識や人間性をより高め、これから社会へ羽ばたこう
としている私達の心の土台となり、自信となりました。
更に、医師としての基本を忘れることなく、諸先生
方、諸先輩方の助言に耳を傾け、同志の活躍を励みと
し、また新たな出会いから積極的に物事を吸収してい
きながら、前進し成長していくことを誓います。
最後に母校の繁栄と私達をここまで導いてくださっ
た諸先生方、ご父兄の皆様方のご健康、ご活躍、並び
に在校生皆様の一層のご健闘、これまで私達を支えて
下さった多くの方々の幸せをお祈り致しまして、答辞
の言葉とさせていただきます。
9
平成13年 総合医学研究所春季セミナー
テーマ
突然死から身をまもる
〈プログラム〉
〈講演〉
1. 突然死とは?
2. 突然死のもとをたとう
乳幼児の突然死
睡眠中の突然死
脳卒中による突然死
3. 倒れている人をみたら─救急蘇生法を学ぼう─
松井忍(総合医学研究所教授)
柿沼宏明(小児科学助教授)
栂博久(呼吸器内科学助教授)
廣瀬源二郎(神経内科学教授)
瀧野昌也(救急医学教授)
〈特別講演〉
心臓病とのつきあいかた:医者まかせではダメです
平盛勝彦(岩手医科大学第二内科学教授)
平盛勝彦岩手医科大学第二内科学教授
総合医学研究所恒例の春季セミナーが、平成13年3月 11
日(日)午後、金沢市文化ホールにて開催された。本セミ
ナーは従来から公開講座として一般市民を対象に病気に対
する正しい知識と医療に対する理解を深めてもらう目的で
行われているもので、一昨年からは県教育委員会が実施し
ている「県民大学校」へも開放されている。
「突然死」とは予期しない突然の死亡をいい、一般的に
は「瞬間死または症状発現後24時間以内の死亡で外因死を
含まないもの」と定義されている。正確な統計はないが、
我が国では年間15∼20万人が突然死していると推定されて
いる。その頻度もさることながら、乳幼児から青壮年とい
う社会の中心をなす一見健康な人達を襲うというところに
問題があり、その社会的・家庭的影響は極めて大きい。
予期しない突然の死亡であるので、症状・診断・治療とい
う通常の診療体系ではその根絶は難しい。突然死を来しや
すい病気を知り、その原因となる危険因子の除去につとめ
ることが肝要なわけである。
このような観点から、今回のセミナーでは『突然死から
身をまもる』をメインテーマとした。出来るだけ幅広い年
代の方々に参加していただきたいと考え、上記プログラム
でセミナーを企画した。
松井 忍教授
柿沼宏明助教授
栂博久助教授
松井教授は講演2、3および特別講演の理解を深めるため
に突然死を概説した。柿沼助教授は乳幼児突然死症候群を、
栂助教授は睡眠時無呼吸症候群を、廣瀬教授はくも膜下出
血・脳出血を中心にその予知・予防策について述べられた。
瀧野教授は自験例を中心に心肺蘇生法の有効性・重要性を
強調された。
平盛教授は講演の前半で心臓性突然死の予知・予防、す
なわち、もととなる心臓病の危険因子、すなわち肥満、高
血圧、高脂血症、糖尿病などの自己管理の重要性について
話され、後半では長年にわたる先生を中心とした岩手県に
おける心肺蘇生法の啓蒙運動とその効果について述べられ
た。先生の医師としての「哲学」の一端がうかがえて、大
変すばらしい内容の講演であった。
それぞれの講演に活発な質問があり、また、講演終了後
の心肺蘇生法の実習にも数多くの参加者があり、この問題
に対する関心の高さがうかがわれた。
今回は学内外合わせて120名余の参加をいただいたが、本
セミナーから「突然死の予防・心肺蘇生法の習得の重要性」
を身近なことと認識し身を守ることに関心を持っていただ
けたものと確信している。 (総合医学研究所松井忍記)
廣瀬源二郎教授
瀧野昌也教授
10
学 事
平成13年4月4日(水)午前10時から、本部棟4階講堂において第30回入学宣誓式が挙行された。
多数の父兄、教職員に迎えられた新入学生 95 名、編入学生5名、計 100 名に対して、竹越襄学長の式辞、
小田島粛夫理事長の告辞があり、来賓の久藤豊治金沢医大後援会橘会会長並びに東田紀彦金沢医科大学北
辰同窓会会長から新入生に祝辞が述べられた。これを受けて、新入生を代表して柳下幹男君が入学宣誓を
行った。
入学宣誓をする柳下幹男君
式辞を述べる竹越襄学長
11
式 辞
学 長
竹 越 襄
若き学徒に与える言葉
皆さんは大変な難関を突破されて、本学にめでたく入学されました。大学関係者一同こぞって入学を歓迎し
たいと思います。今日からは同じ医学の道を学ぶ者として、お互い切磋琢磨して勉学に励みましょう。
さて、皆さんが入学されたこの金沢医科大学は、やがて創立30周年を迎えようとしております。本学を巣立
った2400人以上の皆さんの先輩が、立派な医師として全国で活躍しております。今日からはこの多くの先輩に
負けずに、そして、彼らが築いた伝統を守って精進しなければなりません。大学という所は、本質的には明徳
を明らかにする、すなわち学問と徳を積む所です。医科大学としては、医学、医術、医道の3つからなる柱が
それに当たります。これを6年間で修得しなければなりません。
今医学は多方面にわたって驚くべき速さで進歩しております。バイオテクノロジー、遺伝子工学を駆使して
の医学・医療の研究が進んでおります。これらは全て病気の克服により、生命の健康維持を目的としたもので
あり、これらを学んで立派な医師に成長しなければなりません。
ここで、特に強調したい事は“医道”
、医の道です。これは医の心に通じます。最近世間の注目を浴びてい
るものの一つに医療問題があります。介護保険法等の老齢化社会に向けての対応もさる事ながら、医療事故の
多発が問題となっております。これは医療人の病める人への深い思いやりの心の欠如と思われます。病人に対
する細やかな気配り、すなわち病む人間を思いやり、いのちの尊厳を理解する事が医療人として必要欠くべか
らざる事です。皆さんは、常にこれらの事を考えながら学生生活を送ってください。我々教職員もこの点を常
に念頭におきながら、将来の良医を育てるべく努力をしたいと思っております。
これから皆さんは、今まで学んで来た知識を基に、大学の医学専門教育で多くの学問を修める事になるわけ
ですが、大学教育は今まで受けた高校までの教育より更に、自己研鑽いわゆる自学自習が重要となります。医
学教育に限らず、小学校からの教育そのものが変革を要求される時代になったわけで、その基本は個人の個性
を伸ばす教育、押しつけではなく、自発的な能動的、自己開発型の教育に移りつつあるという事です。
具体的には、小グループによる学生中心の討論が柱で、教員は手助け的役割で方向性を与えるのみという授
業形態です。個々の自発的発言は、それぞれ自分に責任がありますから予習が重要となり、グループの仲間の
発言も真面目に聴き、テーマの最終結果に導くという事になります。これを問題立脚型学習 Problem-Based
Learning(PBL)と呼んでいます。本学ではこの教育方法を導入するための準備期間も終わり、いよいよ本年
度より本格的に開始します。従って、皆さんはこのPBL 方式により、学習する事となります。従来までの大講
義室で多くの学生を集めて教員が講義をする授業形態は少なくなるでしょう。この様に医学教育も大きく変化
し、どうすれば学生にとって学問が最も身に付くかを考えています。その他色々の特色のあるカリキュラムを
考えています。又、米国のマーサ大学やハワイ大学とも提携し、交換留学制度もあり、さらに中国の大学や東
南アジアの医学生との交流も盛んです。この様に国際交流に関心のある学生に色々と便宜が計られています。
入学してからの教育に関する全体像は以上の様ですが、学生の本分は勉学にあるとは言え、若い皆さんは青春
を謳歌し、良い友達を作り、人生を語り、スポーツを楽しみ、文化活動にも大いに興味をもち“よく学び、よ
く遊び”の精神で楽しい学生生活を送って頂きたいと思います。
最後に時あたかも政局は激動しております。色々取り沙汰されている国民の健康を守る医療問題も重要な勉
強課題の一つです。これらも医学の道を志す者にとっては避けて通れない事項です。
将来立派な良医となる為には、これら社会問題を含め多くの事を学ばねばなりません。心身の健康に気を付
けて、悔いのない学生生活を送ってください。
12
告 辞
理事長
小田島 粛 夫
多数の志願者の中から選ばれて、皆さんは本日、栄えある入学式を迎えられました。お祝いを申し上げると
共に、大学としてはもちろん、同じ道を志す者として、皆さんの入学を心から歓迎いたします。今日からは最
高学府の学生としての誇りと、その若いエネルギーで、新しい金沢医科大学を創り出すという自負と気概を持
って、勉学に勤しまれることを心から期待致します。
動機はそれぞれ異なると思いますが、皆さんは医学・医療への道を選ばれました。科学としての医学は、生
命の神秘に迫る奥深い学問であり、人類の生存と繁栄にとって、極めて重要な研究領域の一つであると同時
に、医療は人の健康を守り、病苦を除き、そして人の命を守るという、社会的にも大きな責任と使命をもって
おります。皆さんが、生涯の仕事として医学・医療の道を選択された事に対して、心から敬意を表します。
現在、
「良医の育成」が世界の共通のテーマになっておりますが、やがて医療のグローバル化が進み、医師
の国際競争力が問われる時代になると思われます。この様な情勢の中で、文部科学省は、日本の医学部卒業生
の臨床能力を一定のレベルに保持するために、標準的な医学教育カリキュラムを公表し、各大学にこれを導入
することを求めております。この改革は単に医学教育カリキュラムに止まらず、教育、研究、診療システムな
ど、大学の基本構造の見直しを行わざるを得ないほどの、百年に一度の大改革であると言っても過言ではあり
ません。
本学は、建学の精神にも謳われているように、開学以来、
「人間性豊かな良医の育成」を教育の基本理念と
しており、医師としての心の教育や、その表現である態度教育を含めて、すでに医学教育カリキュラムや教育
システムの見直しが進められてきました。文部科学省の新しいカリキュラムでは、少人数グループを対象とし
た「問題解決能型」教育が大幅に導入され、自ら問題を考え、それを解決する能力を育み、医師としての判断
力を養うことに医学教育の主眼がおかれ、また、臨床教育においては、これまでの伝統的な見学型臨床実習か
ら、参加型臨床実習へと教育技法が大きく変わることになると思われます。何れにしてもこれからの医学教育
は、高等学校における「知識詰め込み型教育」とは異なり、自ら学ぶ、自学自習が基本で、皆さんは戸惑うこ
とも少なくないと思いますが、本学の医学教育システムを充分に理解し、将来の目標に向かって努力されるこ
とを、心から期待いたします。
平成10 年に本学は、アメリカのマーサ大学と姉妹提携を結んでおりますが、マーサ大学は、このような医学
教育システムを、いち早く体系化した大学であり、アメリカの中でも良医を育成する大学として高く評価され
ております。皆さんは希望すれば、在学中にマーサ大学で学ぶことも可能であり、医療のグローバル化が進む
中で、このマーサ大学での体験が、皆さんの将来にとって非常に大きな意味を持つことになると考えており、
今後もこのプロジェクトを支援してゆきたいと思っております。
金沢医科大学のあるこの内灘の地は、立山連峰や霊峰白山などの北アルプスの山々、そして眼下には日本海
を眺望するなど、自然環境に恵まれております。また、金沢は天下の書府として知られ、江戸時代から医学教
育の歴史と伝統を持つ地であり、皆さんが医学の勉強に打ち込むには、最高の地であると思います。本学はこ
の環境の中で開学以来、優れた教員の確保、最先端の教育、研究、診療設備の充実に努力して参りました。さ
らに21 世紀に向かって、医療体制の充実のために病院新棟の建設を進めてきましたが、大学としては今後と
も、教育・学術上の要望に対して充分に応えてゆきたいと考えております。
皆さんはこの充実した設備、恵まれた環境の中で、将来の目標に向かって互いに切磋琢磨し、実りある学生
生活を送っていただきたいと思います。
皆さんの新しい門出を心から祝福し、告辞と致します。
13
祝 辞
金沢医科大学後援会橘会会長
久 藤 豊 治
入学生のみなさん、そして今日の晴れの日を心待ちにして日夜応援されて来られましたご父兄の皆様、本当
にご入学おめでとうございます。金沢医科大学後援会橘会を代表して心よりお祝い申し上げます。
西暦2001 年、まさに21 世紀の幕開けというこの記念すべき年にご入学されました皆様は、新しい時代にお
ける医学界の担い手として学業に邁進され、一日も早く立派な医師になられるよう期待しております。
現在の医学は、従来からの診断治療学に加えて遺伝子解析による診断・治療、クローン研究、臓器移植など
めまぐるしいスピードで進展しています。他方では、医療現場における患者とり違えミスや投薬ミスなどの初
歩的な医療ミスが連日のように報道されており、医療機関でのさらなる危機管理が問われる時代になりました。
このような状況の中で、医師の道を目指され、高い倍率の入学試験を経てみごと合格されました皆様には、大
きな期待が寄せられており、その責任も計り知れないものがあります。
金沢医科大学の建学の精神の中に、
「人間性豊かな良医の育成」があります。今まさにこのことが必要にな
ってきたのです。名医という言葉はよく聞かれます。例えば知識と技術的に優れていることが名医だとすれば、
それに加えて、患者の痛みを理解し心で接することができ、患者から信頼される医師、これが良医でないかと
思います。皆さんがこれから歩まれる六年間は決して平坦な道ではありませんが、単に知識の詰めこみに追わ
れるのではなく、心豊かな学生生活を送られるよう期待します。
一方では、医師国家試験という問題があります。元来国家試験は資格試験であり、かつては一定の基準に達
していれば合格できました。しかし最近ではこれまでの資格試験から合格の人数を限定した選抜試験に変わっ
てきているようです。例えば、毎年九千人から一万人程の国家試験の受験生がおりますが、七千人程度を医者
にするという国の方針により合格者が決定されるシステムに変わってきております。そのため、数年前から私
立や国公立を問わず国家試験受験テクニックを身につけるためのいろいろな方策がとられているのが実情です。
金沢医科大学でも、昨年から大学と北辰同窓会、橘会が協力し、医師国家試験対策にも取り組まれています。
皆さんが一日も早く立派な医師になれるよう側面的に支援しております。難関をみごと突破して入学された皆
さんは、ぜひこのことを忘れないでいただきたいと思います。特に医学部だけは、国家試験に合格して医師に
なるか、ならないかが後の人生を決めてしまう、他の学部とは異なる特殊な学部、大学であります。そのこと
を常に心に留めながら、修養に励み、更に、建学の精神である良医への道をめざして、文学、音楽、芸術やス
ポーツなど心の教育と合わせて技術の他に人間の道をも広く学ばれますようお願いするとともに、皆様のこれ
からの21世紀を通してのご活躍を祈念申し上げ、私の挨拶に代えさせていただきます。
14
祝 辞
北辰同窓会会長
東 田 紀 彦
めでたく入学試験に合格され北辰同窓会会員になられた新入学生のみなさんとご父兄に心からお喜び申しあ
げます。
皆さんの昨日までの目的は金沢医科大学に入学する事でしたが今日それが達成されました。次の目的は充実
した学生生活をおくり良医になることです。世の中に三つの戦い、人の自然に対する戦い、人と人との戦い、
人の内心との戦いがあり、それぞれ「海上の苦闘者」
、
「1793 年」
、
「レ・ミゼラブル」の小説三部作になってい
ます(ヴィクトル・ユーゴー)
。良医になるためにこれから自分の内心と戦わねばなりません。
戦いに勝つには天の時、地の利、人の和(武田信玄)を要します。
21 世紀の生命科学時代を我が国は高齢化社会で幕開けを迎え、病気の無い健康な国を目指しています。み
なさんの入学は天の時に一致しました。医学を学ぶに天賦の才能は要りません。
「敵を知り己を知れば百戦危
うからず」で、
「事は四方にあり、要は中央にあり」と落ち着いて「唾面自乾(トウメン、モウガン)
、唾を吐
きかけられたら乾くまで待つ」くらいの忍耐を要するのみです。
教養課程で医学の学際領域の人文科学、社会科学、自然科学を学びます。以前、優秀な成績で入学された学
生さんが医学に直接関係なさそうと思いこまれて、
「上に教務政策あれば、下に試験対策あり」と、教養課程
を疎かにしたため、前半に受けたボデイブローのように修学の途中で効いてきて、不本意に大学を去っていか
れたのは忍びがたいものでした。
「一日再び晨なり難し、時に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず」(陶
淵明)です。
大蔵省印刷局発行の常用漢字表(1987年)を一冊常備して慣れない言葉はその都度確認してください。
広辞苑(岩波書店)、大漢和辞典(大修館書店)、英和辞典、Medical Dictionary(Saunders)を座右においてい
つでも引いてください。基礎医学へ進むと学術用語が洪水のようにあふれ出てきます。医学用語は略々1万語
で、その内8000語は解剖学用語だそうです。臨床医学ではそれぞれの学会が出版している用語集を常備して
繰り返し引いて意味を重複理解し、医学的Literacy 能力を養ってください。官庁用語、宗教用語はジャーゴン
(仲間だけに通ずることば)が多く理解しにくいと云われていますが、最も厄介なのは医学用語です(金田一春
彦)。30 年ほど昔、患者さんの母親に診断書を依頼されて「進行性骨化性線維異形成症」と書きましたら、じ
っと見つめ、
「あっちこっちの医者様が治らん病とだけ言わしゃったれど、ここで戒名まで付けてもろたがみ
たいやちゃ」と小声でつぶやいて帰られたほど世間離れしているのが医学用語です。
第二は地の利です。石川県は昔から学問に力をいれてきましたが、五代藩主前田綱紀公以降、四民教導とい
って共に学ぶ気風が飛躍しました。加賀藩の洋学振興の特徴は適塾塾頭の津田淳三、長崎で蘭学を学んだ黒川
良安、パーシバル・オスボーンなど一流の学者を国の内外から招聘し、次代の高峰譲吉、木村栄、関口開らで
開花(北国新聞3月朝刊)させたように、有為の人材確保とその継続性の重視でした。過去の医学を理解、消
化し、更に発展、創造する主体である良医養成を目的とする卓越した英知の持ち主である理事長と循環器内科
の泰斗の学長の基本方針で、学閥にとらわれず全国公募で選りすぐられた本学教授は、愛と関心をもって学生
を教導され、前者の使命を果たされています。その豊富な学識と崇高な人格の琴線に触れる機会を与えられた
後者に該当するみなさんは至福の極みであり欣喜雀躍として学問に専念し、6年後に比類なき良医になり、授
かった医学の真髄を後輩の北辰会員に継承される事でしょう。
第三は人の和です。同じ目的の集まりであるみなさんは人格性の主体である他人を尊重し、
「人間の口は一
つ耳が二つ」(ユダの格言)ですから、互いに自分の喋ることの2倍は人の云うことを聞く協調性をもってくだ
さい。完膚なきまでに相手を打ちのめすことなく、しかし卑屈な妥協苟合に陥らないよう原則は堅持し、
「5∼
6分の勝ちは勝ち、8分の勝ちは危険、10分の勝ちは負け」(武田信玄)を念頭において友情、師弟愛を暖め充実
した学生生活を謳歌され良医になられますよう期待します。
16
平成13年度
学年暦
教務日程
第1学期 【第1学年】
授 業
定期試験
【第2∼4学年】
授 業
定期試験
【第5学年】
【第6学年】
4月 16日(月)∼ 6月 30日(土)
7月 2日(月)∼ 7月 14日(土)
4月
6月
4月
4月
9日(月)∼
25日(月)∼
9日(月)∼
2日(月)∼
6月
7月
7月
7月
23日(土)
7日(土)
14日(土)
7日(土)
第2学期 【第1∼4学年】
授 業
定期試験
【第5学年】
【第6学年】
8月
11月
8月
8月
27日(月)∼
5日(月)∼
20日(月)∼
27日(月)∼
11月
11月
11月
11月
2 日(金)
17日(土)
24日(土)
17日(土)
第3学期 【第1∼4学年】
授 業
定期試験
【第5学年】
11月 19日(月)∼ 12月 22日(土)・ 1月 7日(月)∼ 2月 9日(土)
2月 12日(火)∼ 2月 23日(土)
11月 26日(月)∼ 12月 22日(土)・ 1月 7日(月)∼ 3月 30日(土)
【第6学年】
11月 19日(月)∼ 12月 22日(土)・ 1月 7日(月)∼ 1月 26日(土)
行 事
入学宣誓式
オリエンテーション 【第1学年】
【第2∼4学年】
【第5・6学年】
特別休業日
定期健康診断
開学記念日
夏季休暇
【第1学年】
【第2∼4学年】
【第5学年】
【第6学年】
学園祭
解剖体合同追悼法要
冬季休暇
【第1∼4学年】
【第5学年】
【第6学年】
卒業証書・学位記授与式
4月 4日(水)
4月 5日(木)∼ 4月 14日(土)
4月 6日(金)
4月 7日(土)
5月 1日(火)∼ 5月 2日(水)「特別休業日」
5月中旬
6月 1日(金)「特別休業日」
7月 16日(月)∼ 8月 25日(土)
7月 9日(月)∼ 8月 25日(土)
7月 16日(月)∼ 8月 18日(土)
7月 9日(月)∼ 8月 21日(火)
9月 29日(土)∼ 10月 1日(月)「特別休業日」
10月 20日(土)
12月 25日(火)∼ 1月 5日(土)
12月 25日(火)∼ 1月 5日(土)
12月 25日(火)∼ 1月 5日(土)
3月 20日(水)
標準試験
第1回 2月
第1回 7月
第2回 11月
第3回 2月
第1回 8月
第2回 12月
第3回 1月
【第3・4学年】
【第5学年】
【第6学年】
25日(月)
14日(土)
24日(土)
16日(土)
22日(水)∼ 24日(金)
5日(水)∼ 7日(金)
9日(水)∼ 11日(金)
第1学年「福祉体験実習」【前期:7月中旬、後期:8月下旬】
第2学年「面接技法」【6月上旬】
第3学年「看護体験実習」【8月20日(月)∼8月25日(土)のうち三日間】
第4学年「院内当直実習」【第1・2学期間中の土曜日または夏季休暇期間中の一日】
第6学年「強化試験」については別に示す。
※この学年暦は、必要に応じて一部変更することがある。
17
平成13年度 医学部第1学年オリエンテーション
第1学年オリエンテーションが、平成 13年4月4日(水)
∼13日(金)の10日間にわたって開催された。
前半は教育方針の説明、修学案内、諸手続等これから学
生生活を送る上での重要なポイントについて説明が行われ
た。
医師になることの動機付けとして、本学麻酔学の土田英
昭教授による不慮の事故や急病に対する応急手当について
救急法講習会が行われた。初めての医学に関する講義を、
学生達は熱心に傾聴し、なれない手つきで心肺蘇生法等の
実習を行っていた。
後半は宿泊研修で、第1学年担当教員およびテューターと
して参加した本学卒業生の若手医師らと共に11 日(水)∼13
日(金)の3日間の日程で「いこいの村能登半島」に会場を移
し行われた。
先ず特別講演として本学名誉教授の津川龍三先生の「臓
器移植について」と題する講演が行われた。臓器移植した
患者さんが無事退院し、困難と言われていた出産まででき
たという症例、命の尊さ、臓器移植が成功したときの感動
等、熱のこもった話に学生達は熱心に聴き入った。初めて
みる臓器移植のスライド、元気になった患者さんの表情、
熱心に新しい医療に取り組まれた津川先生の情熱に打たれ、
改めて医師になる自覚を確認したようだった。
次に、
「先輩医師と語る会」と題して、本学卒業生を迎え
ての懇談会が行われた。素朴な疑問から答えにくい難問ま
でが飛び出し、参加した先輩医師達は少々困惑する場面も
あったりして、笑いの中活発な懇談が行われた。会場を各
グループワークショップの部屋に移し、
「教員と語る会」と
して、小グループに別れての懇談会が行われた。先輩医師
達も各グループに別れて参加し、自分達の学生時代の話や
医師になってからの苦労話等、和気藹々と懇談が行われて
いた。
第2日目はワークショップと全体発表の準備が行われた。
また、レクリエーションとしてソフトバレーボール大会が
行われた。学生のチームの中に教員も参加し、日頃の運動
不足を解消するかのように熱戦が繰り広げられていた。そ
して夕食を兼ねたバーベキューガーデンでのフリートーキ
ングでは、教員と学生間の親睦が深められ、大いに盛り上
がった。
第3日目はワークショップの全体発表が各グループから
OHP を使って行われた。テーマは「21世紀にはばたく」と
題されており、未来の医療のあり方や、環境問題を考慮し
た未来都市について等、幅広く活発な意見交換がなされた。
オリエンテーションを通しての新入学生の感想として、
「津川先生の講演はとても興味深く感動した。先輩医師のお
話はこれから学生生活を送っていくのに、すごくためにな
ったと思う」という意見や、
「救急法の講義の中で、なかな
か蘇生できなくて困ってしまったが、心肺蘇生というもの
の意味がわかってとても自分のためになったし、興味深か
った」、
「宿泊研修でたくさん友達が出来てとても楽しかっ
た」という感想が述べられていた。
(教学課高直美記)
津川龍三名誉教授の特別講演
18
平成13年度
平成13年度
医学部入学試験(AO、推薦、編入、 大学院医学研究科選抜試験(第2次
一般)の結果
募集)の結果
平成13 年度の医学部入学試験は、次のとおり全て
終了した。
◇特別推薦入学試験(AO入試)
本学の特別推薦入学試験( AO 入試)は平成 13 年
度入試から初めて導入されたものである。医師とな
るべき者の倫理性、人間性が一層強く求められる時
代に、従来の学力を中心とした入学試験では評価で
きなかった学習意欲、使命感、人間性に評価の重点
を置いて、建学の精神に沿った人間性豊かな活力の
ある人材を求めるために行うことになったものであ
る。募集人員約5名に対して全国から132名の出願が
あった。書類選考の結果、10 月 31 日(火)に第1次
選考合格者18名が発表された。
第2次選考は、11 月 19日(日)に本学において18
名が「個人面接」・「小論文」・「集団面接」の各試
験に取り組み、12 月1日(金)に合格者 10 名が発表
された。
平成 13年度大学院医学研究科選抜試験(第2次募
集)が、平成 13 年3月 21日(水)に本部棟3階 A33
講義室で実施され8名が受験した。
試験は、午前10時から2時間の外国語の筆記試験、
午後から面接試験が行われ、4月 16 日(月)に合格
者8名が発表された。
(大学院課 林秀樹記)
◇推薦入学試験
平成12 年11月19 日(日)に本学で行われた。推薦
入学試験は、目的意識を持ち且つ個性豊かで優秀な
人材を確保する目的で昭和61年度入試から実施され
ている。募集人員約20 名に対して56名が出願し、平
成12年12月1日(金)に合格者18名が発表された。
◇編入学試験
平成12 年11月26 日(日)に本学で行われた。編入
→第1次試験は、平成 13 年1月 14 日(日)に本学
学試験は、医学以外の分野を修学した者に医学を学
試験場、東京試験場(青山学院大学)、大阪試験場
ぶ道を開き、すでに履修している教養科目の重複履 (大阪工業技術専門学校)、福岡試験場(公務員ビジ
修を省き、第2学年に編入して効率的に医学の専門教
ネス専門学校)
、仙台試験場(東北電子計算機専門学
育を実施し、医学の研究及び医療の実践に貢献する
校)の5会場で実施された。受験者は 1,354 名(19.3
有為な人材を育成する目的で平成3年度入試から実施
倍)で、午前中の「外国語」及び「小論文」
、午後の
されている。募集人員若干名に対して74名が出願し、 「選択科目(数学、物理、化学、生物の中から2科目
平成12 年12月1日(金)に合格者5名が発表された。 選択)
」の筆記試験に取り組んだ。
◇一般選抜入学試験
第2次試験は、平成13年1月 30日(火)
、31日(水)
平成2年度から2段階選抜を実施している本学の一
の両日(いずれか希望する1日)に第1次試験の合
般選抜入学試験は、学力は勿論のこと、人間性豊か
格者(298名)を対象として本学で実施され、281 名
な人材を確保する目的で、第1次試験に学力試験を行
が面接・口頭試問に取り組んだ。第2次試験の合格者
い、その合格者に対し第2次試験で面接・口頭試問を
は、平成13年2月3日(土)午後1時に70名が本部棟
行っている。
正面玄関に公示され、本人宛に文書通知された。
平成13年度入試では、1,397 名の出願があった。→
(入試センター森茂樹記)
19
平成12年度
遺骨返還式
平成13 年3月3日(土)午後2時から本部棟2階会
議室で平成12年度遺骨返還式が、ご遺族、解剖学教
職員ら35名が出席して行われた。
はじめに、第2学年学生を代表して山口昌大君が献
体されたご遺族に対し御礼を述べ、引き続き解剖学
教授、ご遺族、関係教職員が献花を行った後、解剖
学Ⅰ講座平井圭一教授から、ご遺族の代表者に丁重
にご遺骨が返還された。
最後に、解剖学Ⅱ講座篠原治道教授から「尊いご
遺体を捧げられたご本人、ご同意いただいたご遺族
のご協力により、解剖学実習を無事終えることがで
き、心から御礼を申し上げたい」との言葉が述べら
れ、式を終了した。
(教学課田川俊範記)
平成13年度
金沢医科大学臨床教授等懇談会
ならびに委嘱状交付
平成 13年3月 15 日(木)午後7時から、ホテル日
航金沢において、本学臨床教授等の医療機関で実施
された平成12 年度学外臨床実習に関する懇談会が行
われ、併せて、平成13 年度に臨床教授等に再任され
た先生方に委嘱状が交付された。
懇談会は、本学から竹越襄学長をはじめ9名の教職
員、並びに8名の臨床教授等が出席して行われ、平成
12 年度学外臨床実習の反省点や今後の問題点等につ
いて活発な意見が交わされた。
本学では、平成7年度から学生が医療チームの一員
となり、スチューデントドクターとして行動すること
を目的とした Clinical Clerkship (CCS) を導入し、平
成11 年度からは、大学病院では得られない体験実習
を経験させるため、学外の医療機関において臨床実
習を行っている。さらに、平成12年度からは、これ
ら受入施設の指導医師の方々に対し医学教育の位置
付けを明確にすべく、臨床教授、臨床助教授、臨床
講師として委嘱する制度を設けている。
今年度臨床教授等に委嘱された先生方は前年度と
同じ方々で、任期は平成13 年4月1日から平成 14年3
月31 日まで。
(庶務課笠間孝一記)
委嘱状を授与された方々は、次のとおり。
臨床教授
山口 成良(松原愛育会松原病院院長)
菊地 誠(金沢西病院院長)
松井 晃(国民健康保険志雄病院院長)
東福 要平(済生会金沢病院院長)
浜田 重雄(二ッ屋病院院長)
勝木 建一(リハビリテーション加賀八幡温泉病院院長)
北田 博久(らいふクリニック院長)
上野 敏男(浅ノ川総合病院院長)
横井 克己(公立穴水総合病院病院長)
臨床助教授
田 充彦(医療法人社団宇野気医院理事長)
的場 宗敏(的場病院病院長)
名村 正伸(金沢循環器病院病院長)
臨床講師
加藤 正彦(千木病院院長)
(職階順・卒業年度順、敬称略)
20
平成14年度 〈予告〉
平成13年度 〈予告〉
金沢医科大学入学試験説明会
オープンキャンパス/進学説明会
平成14年度金沢医科大学医学部入学試験の説明会
が例年のように全国8ヶ所(金沢、札幌、岡山、仙
台、福岡、東京、名古屋、大阪)において、平成13
年7月 30 日(月)から8月8日(水)にわたって、受
験生や父母、高校の進路指導教諭等を対象として開
催される。
説明会では入試実施委員から「本学の概要」
「教育
方針」
「学生生活」
「平成14 年度入試要項」等につい
て詳細な説明が行われる。(入試センター森茂樹記)
本学受験希望者や、父母、高校の進路指導教員等
を対象として、学内施設見学や模擬講義等を通して
本学を肌で理解し医学への志望意志をより確実なも
のにしてもらうことを目的として、平成13年度の金
沢医科大学オープンキャンパスを8月26日(日)と9
月24 日(月、振替休日)の2回実施することになっ
た。
昨年度は 163 名の参加があり、参加者からは模擬
講義や施設の見学、在学生との懇談などオープンキ
ャンパスならではの貴重な体験をしたとの評価を得
た。
今年度は昨年の参加者の意見をもとに模擬講義内
容や施設見学コースの見直しを行い、オープンキャ
ンパスを通して参加者に充実した一日を過ごしても
らうよう準備が進められている。
(入試センター森茂樹記)
入学試験説明会実施日程
金 沢 7月30日(月) 13:30∼
ホリディ・イン金沢
札 幌 8月 1日(水) 13:30∼
札幌ガーデンパレス
岡 山 8月 1日(水) 13:30∼
ホテルグランヴィア岡山
仙 台 8月 2日(木) 13:30∼
仙台ガーデンパレス
福 岡 8月 2日(木) 13:30∼
福岡ガーデンパレス
東 京 8月 3日(金) 13:30∼
東京ガーデンパレス
名古屋 8月 7日(火) 13:30∼
名古屋ガーデンパレス
大 阪 8月 8日(水) 13:30∼
大阪ガーデンパレス
参加希望者は、電話、ハガキ又は FAX で金
沢医科大学入試センターまで申し込んでくださ
い。予約なしでも当日現地で受付けます。
電話 076-286-2211(内線2532・2533)
FAX 076-286-6279
Eメールアド レス:[email protected]
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1
金沢医科大学入試センター
オープンキャンパス実施日程
第1回 平成13年8月26日(日)
10:00 ∼ 15:00
第2回 平成13年9月24日(月)
10:00 ∼ 15:00
場所は金沢医科大学キャンパス
参加希望者は、電話、ハガキ又は FAX で金
沢医科大学入試センターへ申し込んでくださ
い。
電話 076-286-2211(内線2532・2533)
FAX 076-286-6279
E メールアド レス:[email protected]
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1
金沢医科大学入試センター
21
臨床病理学講座主任に
医学教育学講座主任に
眼科学講座主任に
野島 孝之 教授
安田 幸雄 教授
高橋 信夫 教授
平成 12年 12月 14日に開催された第604 回医学部教授会において、臨床病理学講座主任に本学病院病理部の
野島孝之教授(特任)が選考され、平成13年1月1日付で就任した。
平成 13年3月8日に開催された第 611 回医学部教授会において、医学教育学講座主任に本学救急医学講座の
安田幸雄教授(特任)
、3月 22日に開催された第613 回医学部教授会において、眼科学講座主任に同総合医学
研究所難治疾患研究部門長の高橋信夫教授が選考され、平成13年4月1日付で就任した。
のじま
たかゆき
野島 孝之 教授
【略歴】
1977. 3 北海道大学医学部卒業
1981. 4 同大学医学部附属病院病院
病理部助手
1991. 4 同大学医学部病理学第二講
座講師
1994. 9 金沢医科大学病院病理部教
授(特任)
2001. 1 臨床病理学教授(講座主任)
やすだ
ゆきお
安田 幸雄 教授
【略歴】
1973. 3 金沢大学医学部卒業
1975. 4 金沢医科大学形成外科学助
手
1984. 4 同講師
1989. 6 同助教授
1994.11 同救命救急科助教授
1998. 4 同教授(特任)
2001. 4 医学教育学教授(講座主任)
たかはし
のぶお
高橋 信夫 教授
【略歴】
1965. 3
1970.10
1971.11
1972.11
1982. 4
1989. 4
東北大学医学部卒業
同大学医学部眼科学助手
秋田大学医学部眼科学助手
同講師
金沢医科大学眼科学助教授
同総合医学研究所難治疾患
研究部門教授
2001. 4 眼科学教授(講座主任)
22
新任教授紹介
きごし
木越
としかず
俊和 教授
(内分泌内科学・特任)
このたび、本年2月1日付けで、内分泌内科学講座
の教授(特任)を拝命致しました。
私は昭和52 年に金沢大学医学部を卒業し、同大学
医学部大学院に進学しますと同時に金沢大学医学部
第二内科学教室(竹田亮祐教授)に入局致しました。
学位を取得後、金沢医科大学内分泌内科学森本真平
教授のお誘いを受けて昭和 57 年4月から同内科助手
に就任し、平成1年4月に講師に昇任させていただき
ました。この間に、米国立衛生研究所(NIH, NICHD)
のDr. Kevin J. Catt およびDr. Greti Aguilera のもとに2
年間留学致しました。帰国後、金沢医科大学内分泌
内科学内田健三主任教授のご推薦をいただき平成8年
4月には助教授に昇任させていただきました。平成10
年4月からは金沢医科大学病院栄養部長も併任して
おります。これまでに、竹田亮祐教授、森本真平教
授、内田健三教授のご指導のもとで、一貫してレニ
ン・アンジオテンシン・アルドステロン系に関する
研究に携わってまいりました。この研究生活を通し
まして、臨床医としてのあるべき姿やものの考え方
を学んでまいりました。
これまでの経験を活かして今後は、内分泌内科学
内田健三主任教授のもとで教育面を中心として教室
活動のさらなる活性化と人材の育成に努力する所存
です。皆様方の更なるご指導、ご鞭撻のほど宜しく
お願い申し上げます。
おおたき
大瀧
さちこ
祥子 教授
(一般教育英語・特任)
このたび、本年4月1日付けで一般教育英語講座教
授(特任)を拝命致しました。
私は昭和39 年お茶の水女子大学文教育学部英文科
を卒業し、母校富山県立富山中部高校で3年間英語
教師として後輩を教えました。昭和57年金沢大学大
学院文学部英文科修了後、昭和59 年講師として本学
に赴任以来英語教育に努め、平成6年からは講座責任
者として、一般教育以外のスタッフへの協力要請を
含めて英語教育企画運営に心を砕いてまいりました。
平成10 年より毎夏、異文化体験、動機付けも意図し
たハワイ語学・医学研修を実施してきました。テュ
ートリアル、
「医学英語入門」、PBL 等SGL 教育への
協力を通して、よりよき医学教育実現のためにも貢
献したいと思っております。研究では、従来モダニ
ズム文体研究をしていましたが、本学着任以来医学
生のニーズに応えて医系英語と異文化間コミュニケ
ーションを研究することにいたしました。平成8年
AMWA(American Medical Writers Association)Core
Curriculum Programを修了し、現在主に日本医学英語
教育学会を拠点にESP(特定目的のための英語)の教育
研究に励んでいます。看護系学生のための英語テキ
ストを米国専門家と協力出版し、昨年はミシガン大
学医学部スタッフと共同研究「医師・患者間コミュニ
ケーション日米比較」を行ない、現在分析をまとめて
います。また、6年目を迎える2学年副主任あるいは
女子学生生活相談室長として、学生の抱える種々の
問題にも敏感な教師でありたいと願っています。
21 世紀を迎えて医学部における総合的人間教育が
ますます重要になる今、国際コミュニケーション教
育や学生との交流を通して、本学に学ぶ価値と喜び
を感じる学生が1人でもふえるように努力したいと
思います。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお
願い申し上げます。
23
新任教授紹介
うえだ
よしみち
上田 善道 教授
(病理学Ⅱ・特任)
このたび、平成13年4月1日付けで病理学Ⅱ講座教
授(特任)を拝命いたしました。
私は昭和56年に金沢大学医学部を卒業し、天理よ
ろづ相談所病院レジデントコースで臨床と外科病理
学を学びました。その後、金沢大学医学部第Ⅰ病理
学講座中西功夫教授の下で博士課程を履修、平成2
∼4年にはドイツのミュンスター大学病理学研究所で
A.Roessner 教授(現マグデブルグ大学病理学研究所
所長)の下で、研究を行う機会を得ました。平成6
年、病理学Ⅱ講座主任教授の勝田省吾先生のご推挙
により病理学Ⅱ助教授として本学に赴任し、以来、
勝田教授の下、教育、診療、研究に精進してまいり
ました。診療では、外科病理全般に関して研鑽を積
んでまいりましたが、特に、腫瘍性・非腫瘍性肺疾
患と骨・軟部腫瘍の病理診断を専門としています。
形態学を基本とし、最新の分子病理学的手法も導入
し、客観的かつ evidence-based な病理診断を行ない本
院の診療に貢献したいと考えています。基礎研究で
は、細胞外マトリックスの産生・分解に注目し、骨
軟部腫瘍や肺癌の浸潤・転移に関わる分子機構の解
析を行ってまいりました。MMPs のメッセージ、蛋
白、更に活性のin situレベルでの分析や最近では
DNAアレイを用いた多数遺伝子の発現解析による腫
瘍個々の悪性度の推定とその臨床応用を目指し研究
を進めています。教育において重要なことは良き先
生との出会いと考えます。天理時代には、山辺博彦
先生(現京都大学基礎病態学教授)、市島国雄先生
(現奈良医大病理学教授)、小橋陽一郎先生(同病院
病理部部長)など日本の外科病理学をリードする先
生方から病理診断学の手ほどきを受ける幸運に恵ま
れました。金沢大学大学院では、中西功夫教授はじ
め現在全国の医科大学病理学講座の教授・助教授と
して活躍されている先輩方から研究の醍醐味を教え
ていただきました。病理学実習やPBL をはじめとす
る少人数教育を通じて、一人でも多くの本学学生にこ
のような経験を還元できるよう務めたいと思います。
今後とも皆様方のご指導ご鞭撻のほど、何卒よろ
しくお願い申し上げます。
ひがし
こうたろう
東 光太郎 教授
(放射線医学・特任)
このたび、平成13 年4月1日付けで放射線医学講座
教授(特任)を拝命致しました。
私は昭和54 年に金沢医科大学を卒業し、同年金沢
医科大学放射線科に入局させていただきました。以
来、主に核医学の分野の研鑽を積ませていただきま
した。
教育について、これまでの教育経験を通じて感じ
ている点はまず第一にどの分野の講義においても学
生の向学心を刺激することが大変重要なことである
ということです。第二に、第5学年のbed side learning(BSL)が医学卒前教育の中で最も重要な期間で
あるということです。講義、BSLおよびclinical clerkship(CCS)のさらなる充実のために、またtutorialの
導入のために本学卒業生の一人として微力ではあり
ますが貢献させていただければと考えております。
診療は、核医学診療を専門領域としております。
平成8年より中央放射線部副部長を拝命し、一カ月
平均約 4 5 0 人の患者さんの核医学診療(心臓、脳、
腫瘍、骨、肺、甲状腺、泌尿器、消化器系核医学)
に携わってまいりました。今後も、核医学診療の分
野の診療技術のさらなる向上と充実をめざし、各診
療科からご要望にお応えできるように努力してまい
りたいと存じます。
研究面では、腫瘍核医学の研究に従事してまいり
ました。平成2年から約1年間米国ミシガン大学核医
学科にて糖代謝薬剤であるF-18 FDGを用いたポジト
ロン断層法(FDG PET)の基礎的研究を行ない、帰国
後 FDG PET の臨床応用について研究を続けさせてい
ただきました。これらの研究は、学内の複数の講座
との共同研究により初めて可能となった研究です。
また現在は、羽咋の先端医学薬学研究センターとの
間でも全身FDG PET の共同研究が進行中です。今後
も、学内の講座あるいは学外の施設との共同研究と
いう形で腫瘍核医学の研究に従事してまいりたいと
存じます。
今後とも皆様方のご指導ご鞭撻のほど、何卒よろ
しくお願い申し上げます。
24
新任教授紹介
まつだ
松田
よしろう
芳郎 教授
(健康管理センター・特任)
このたび、4月1日付けで健康管理センター教授
(特任)に任じられました。
私は昭和41 年に金沢大学医学部を卒業し、武内重
五郎教授に内科学を、梶川欣一郎教授に病理学を学
びました。その後、本学の開学とともに高田昭教授
に師事して消化器内科で消化器病学を専攻しました。
その間、New York市立大学でLieber教授のもとでア
ルコール性肝障害の研究に約4年間研究生活を送ら
せていただいています。
5年前から健康管理センターに移って、入院ドック
を中心に診療を行っています。
健康管理が今後の医療の根幹になろうとしている
現在、その責任の重さを感じています。健康を維持
することが、私たちの大きな願いであることは、いつ
の時代でも変わりありません。健康は、単に身体の
みならず、心(精神状態)もバランスのとれた状態
にあることです。さらに、健康を維持するというこ
とは、健康な状態のうちに病気を予防することでも
あり、このために、個人の生活習慣を変える必要も
出てきます。しかし、背景の異なった個人個人に同
じような生活はありえません。そのためには、一人一
人に適した生活指導が必要になってきます。このこ
とをわきまえないと、健康を守ることが逆にストレ
スになって、健康を損ねているという皮肉な調査結
果も出ているくらいです。そのためには医師だけで
はなく、看護婦、栄養士などの医療職がチームを組
んで専門的にアドバイスする体制を確立したいと考
えています。その目的のために、当院の電子カルテ
を利用したクリティカルパスの実施などを行う予定
を立てています。
この観点から、臨床研究や医学部の講義のお役に
立てられればと考えています。
ドック診療は各診療科をはじめとする皆様にお世
話になることが多く、日ごろ感謝いたしております
が、今後もこれまで以上のご鞭撻、ご指導いただき
ますよう心よりお願いいたします。
しばもと
芝本
とししげ
利重 教授
(生理学Ⅱ)
このたび、5月1日付けで生理学Ⅱ講座の主任教授
を拝命し、身に余る光栄に存じております。
私は昭和53 年信州大学医学部を卒業後、同大第一
内科に入局しました。呼吸器を中心とした臨床研修
とともに環境生理学教室の上田五雨教授のもとで高
地医学・肺水腫の共同研究を行い、生理学研究の手
ほどきを受けました。肺リンパ瘻を作成した緬羊を
用いた農薬のパラコートによる肺水腫に関する研究
で学位を取得後、昭和62 年から肺水腫の権威である
南アラバマ大学生理学の Taylor 教授のもとに留学す
る機会に恵まれ、摘出灌流肺を用いてパラコート肺
水腫の研究を発展させました。その過程で生理学研
究が面白くなり、1年半の留学後、小山省三教授の信
州大学第二生理講座に移りました。教室の研究主題
は循環ショックの病態生理解明であり、私はアナフ
ィラキシーショックに伴う肺水腫の発生機序を検討
しました。それと並行して小山教授より交感神経活
動の測定法を御指導いただき、種々の低血圧時の交
感神経応答解明の研究に参加いたしました。さらに、
自律神経学的研究として内肛門筋機能に及ぼす交感
神経活動の役割を明らかにする目的でトーマスジェ
ファーソン大学消化器内科のRattan 教授のところへ2
回目の留学をしました。その後、本邦でも肝移植な
どで肝臓研究への注目が高まり、肝循環生理に研究
領域を広げました。特に血管閉塞法による新たな肝
毛細管圧測定法を確立しました。本法により肝臓内
の血管抵抗分布を解析し、血管作動性物質の肝血管
収縮部位の同定、肝虚血再灌流傷害や肝硬変の肝内
血行動態についての研究をすすめています。今後も
引き続き以上の循環生理についての研究を進めてい
きたいと考えています。
学生教育については、私は今まで信州大学で平成2
年に講師、平成4年より助教授として生理学の講義・
実習を行ってきました。本学建学の精神である良医
の育成に向けて微力ではありますが全力を挙げて取
り組む所存でございます。今後、皆様方のご指導ご
鞭撻をお願い申し上げます。
25
長い間のご活躍有難うございました
退任教授のご挨拶(就任順)
さ
さ
き かずゆき
佐々木一之 教授
(眼科学)
本年3月末をもって眼科学
教授を退任いたしました。
本学に眼科教授として赴
任したのが昭和 5 3 年 2 月 で
した。 4 0 年に及ぶ大学生活
の3分の2を金沢医科大学で
お世話になったことになり
ます。
初代眼科教授、故倉知 与
志 先生の後を引き継いでの
第2代の教室主任でしたが、23年にわたり眼科教室の基
礎を築いてきたつもりです。幸いこの間多くの教室員
にめぐまれ何とか教室らしいものが出来上がり、次代
へバトンタッチができたかと思います。白内障は臨床、
研究を含め文字通り教室の中心テーマとなりましたが、
感染症、緑内障、斜視・弱視、ぶどう膜炎など広い領域
で多くの専門家が育ったことも誇りに思います。今日
まで10回の国際学会、7回の全国学会を開催させていた
だけたことも教室の発展につながったものと感謝して
おります。
大学の中でも多くのことをさせていただきました。
金沢医科大学雑誌編集責任者、現小田島理事長先生の
下での学位審査の基礎作り、故鈴木理事長時代の地下
動物施設作り、現山下副理事長先生の下での病院増改
築草案作り等々、何れも新たな発展へと進みつつある
ものですが、大学の発展と共に歩んできたことを改め
て実感しています。
大学のすべてのみなさん方と楽しい 23年を送らせて
いただけたことに感謝申し上げるとともに、更なる本
学の発展をお祈りいたします。
いまにし
すなお
今西 愿 教授
(生理学Ⅱ)
平成 1 3 年3月末日をもっ
て、本学第Ⅱ生理学教授(講
座主任)の職責を全うし退任
致すことになりました。
平成4年 10 月1日に発令い
ただいて以来、8年6ヶ月と短
期間ではありましたが、大過
なく任務をつとめることが出
来ました。これもひとえに、
大学関係者各位のご援助、ご
協力のたまものと深く感謝し、厚くお礼申し上げる次第で
す。
私は、初代斎藤幸一郎教授、2代今永一成教授、3代後
藤鹿島教授を継ぐ4代目として着任させて戴きました。大
学院生もいない少ないスタッフでしたが、各教室員の協
力を得ながら私なりに微力を尽くして参りました。大し
た業績を残すことも出来ませんでしたが、この数年間は
本教室の伝統である心筋の電気生理学を中心にした研究
が漸く軌道に乗って来たところでした。また私の着任当
初の教室員2人は栄転し、それぞれの分野で活躍してお
り、私としても悦ばしく思っております。
学生教育では、生理学・病態生理学が内科診断学に直
結する教科であることを念頭に置いた上で、人体の植物
性機能の講義と実習を実践して参りました。これらの指
導を通じて、学生が自ら考え問題提起をなし、それを自
ら勉学することにより問題を解決する姿勢と能力を養う
べく、教室員共々工夫と努力を重ねて来ました。
平成7年より4年間教務部副部長、1年間教育研究室長
を勤めました。この間3代の教務部長にお仕えし、一年生
の医学英語入門、情報処理入門等の導入をはじめ、教育
のワークショップ開催、5年間の学生アンケートの集計な
ど、何時も教職員の真摯なご協力を賜りながら私なりに
そのお手伝いをさせて戴き、役割を果たすことが出来ま
した。また平成 12 年より、木南義男教授の後任として、
総合医学研究所所長を拝命し現在に至っています。
今後とも当分の間は、医学・医療の教育・研究の充実
と発展に、影ながら何らかの型で拘っていきたいと念じ
て居り、皆様方のご指導ご厚情を賜りますようお願い申
し上げます。末筆ながら、本学諸先生、関係職員の皆様
方のこれまでのご支援・ご協力を心から感謝し、また金
沢医科大学の一層のご発展をお祈り申し上げ、私の挨拶
26
第13回附属看護専門学校
卒業式
附属看護専門学校の第 13 回卒業式が、平成 13 年
3月6日(火)午前 1 0 時から本部棟講堂で行われ、
52人が学舎を後にした。
松本正幸学校長から卒業生一人一人に卒業証書
が授与され、「実際の看護の解決に必要となるのは、
人に接する温かい心と、幅広い視野・見識と高い
倫理観、そして立派な看護のプロになるという信
念を持つことだと思います」と式辞が述べられた。
引き続いて、小田島粛夫理事長から「医療にお
いて最も重要なことは、医療に携わる者と、病め
る人の心の触れ合いによる信頼関係であることは、
今後も変わらないと思います」と告辞が述べられ、
竹越襄学長、内田健三病院長から祝辞が述べられ
た。
在校生を代表して山岸雅美さんが送辞を述べた
のに対して、答辞に立った小松原美緒さんは「人
とのきずなを大切にし、思いやりの心を忘れず、
頑張って下さい」と後輩へエールを送った。
(看護専門学校事務課 山田克己記)
平成13年度
附属看護専門学校入学試験結果
推薦入学試験は、平成 12 年 11 月 23 日(木)に本
校で行われ、受験者 70 名に対し 30 名が合格し、一
般入学試験は、平成 1 3 年1月 2 6 日(金)に本校で
卒業生氏名
河井 沙織 菅原 美紀 寺井加寿美
久田 文代
荒川 奈美
飯田 聡子
石田 千晶
一森友香里
稲田 浩子
大澤 陽子
太田 理絵
大道 由果
小原まゆみ
加藤 友美
加藤 真里
金嵜 春美
上山なぎさ
川崎 由紀
北川 美玲
國田真理子
小松原美緒
作元めぐみ
澤田 明子
沢田ひかり
新江 好枝
園田 奈央
竹中めぐみ
竹林 友紀
田辺かおる
田之下 愛
中 由紀子
中村 愛
南波 美織
西脇めぐみ
濱野 洋子
林 真弓
藤田 梨恵
古野 孝子
堀田 美樹
松浦久美子
松本 瑞恵
水上さゆり
宮崎真須美
森田 美樹
柳瀬真由美
藪下 美里
山岸 香代
山口 祐香
吉田 晃子
吉田 智絵
吉田 瑞恵
吉畠 歩
(以上52名)
行われ、受験者 2 6 2 名に対し 3 0 名が合格し、合計
60名の新入学者が決定した。
(看護専門学校事務課 山田克己記)
27
第14回附属看護専門学校
入学式
附属看護専門学校の第 14 回入学式が、平成 13 年
4月6日(金)午前 1 0 時から本部棟4階講堂で行わ
れ、新入生 60 名(男子2名を含む)が看護の道を目
指してスタートを切った。
始めに入学生の紹介があり、松原純一学校長か
ら「これからの3年間、苦しいことがあったり、落
ち込んだりした時は、いつも自分が選んだ看護専
門職の道なのだということを思い出し、青春の真
っ盛りを無駄にすることなく頑張ってほしいので
す」と式辞が述べられた。
引き続いて、小田島粛夫理事長から「看護の在
り方が如何に変わろうとも、病気で苦しむ人々に
とって、最も身近な存在である、看護婦さんに対
する信頼は変わることはありません。皆さんは看
護の対象となる人間に対して、単に医療施設で治
療を受ける患者としてではなく、社会生活を営む
一人の人間として接するように心掛けなければな
りません」と告辞が述べられた。
さらに、竹越襄学長、内田健三病院長から祝辞
が述べられた。続いて、在校生代表、春田恵美さ
んからの歓迎の言葉に対し、入学生を代表し松平
篤士君が「学生の本分を守り学校の使命に沿うよ
う努めます」と力強く宣誓した。
(看護専門学校事務課 山田克己記)
入学生氏名
第90回 看護婦国家試験結果
された試験に本校からは 5 2 名が受験し、4 9 名が合
格(合格率 94.2%)した。全国平均合格率は 84.1 %
であった。
(看護専門学校事務課 山田克己記)
去る平成 13 年3月 31 日(金)に第 90 回看護婦国
家試験合格者が発表された。2月25日(日)に実施
四十沢繭子 赤井 千紘 荒屋 陽子
石宮 頼子
上田 葵子
大森 静香
織田 麻以
亀田 裕子
河合美彩子
河瀬 麻希
川田 りえ
川村 紗知
神並 茜
北井麻美子
黒川 沙紀
後藤 由美
坂井沙耶香
酒井美千留
坂本 麻衣
沢井 美菜
清水 亜希
清水明日香
白江 広美
新谷 智枝
高井あきな
田島 朋江
田中 礼子
田渡 晴美
近安 紀子
辻裏 夏希
得永 香
戸田 秀之
中島 紀子
長田 香織
中道亜希菜
中道香緒里
長村 純子
羽野 莉映
崎 涼子
林 美由紀
東森佳世子
廣村 有紀
古田しのぶ
本多 愛子
孫八めぐみ
松平 篤士
丸山 香織
宮本裕里子
村田和香菜
矢 未来
矢鋪 恵理
矢留 瞳
山口 美紗
山下 祐子
大和 陽香
山本 明美
山本真里亜
山本裕香子
吉田 奈々
吉田 裕美
(以上60名)
28
留学生情報
1.留学生の往来
2001年1月27日
2月10日
2月25日
2月27日
3月10日
3月22日
中国・浙江省中医院副主任医師夏 氏が短期研究員として研究を開始した。呼吸器内科学で1年
間の研究予定。
中国・華中科技大学同済医学院附属協和病院消化器内科主治医師劉俊氏に研修証明書が、日中友
好病院神経内科主治医師李穎異氏に研究証明書が各々授与された。劉俊氏は姉妹校短期研修員と
して消化器内科学で11カ月間の研修を、李穎異氏は姉妹校プロジェクト研究員として神経内科学
で1年間の研究を終了した。
中国・中国医科大学第一臨床医院老年病講師 揚鴎氏が短期研究員として血清学で8ヶ月間の研
究を終了した。
中国・中日友好病院内科住院医師楊萌氏、中国医科大学附属第一臨床医院腫瘍科助手郭大川氏に
研修証明書が、中国医科大学附属第一臨床医院放射線学講師周錦山氏に研究証明書が、各々授与
された。楊萌氏と郭大川氏は姉妹校短期研修員として呼吸器内科学で11ヶ月間、病理学Ⅱで1年
間の研修を、周錦山氏は姉妹校プロジェクト研究員として放射線医学で1年間の研究を終了した。
中国・華中科技大学同済医学院生理学助手杜以梅氏に研究証明書が授与された。杜以梅氏は姉妹
校プロジェクト研究員として生理学Ⅱで1年間の研究を終了した。
中国からの留学生郭一琳氏に、博士(医学)の学位記が授与された。大学院医学研究科外科系産
科婦人科学において4年間の課程を修了した。
2.留学生の学外研修等
(氏名)
孔 孔 (所属)
眼科学
眼科学
(研修先)
鎌 倉
東 京
(研修期間)
1/12∼1/13
1/15∼1/23
(学会名等)
第27回水晶体研究会
総務省との共同研究のため
3.留学生の紹介
カ
夏
ヨウ
さん
1962年4月18日生、女性(中国)
中国・浙江省中医院副主任医師/所属は呼吸器内科学 研究テーマは「呼吸器疾患における肺気道特性の研究」
29
学生のページ
受賞の喜び
益谷秀次賞・学長賞
益谷秀次賞 西森左和さん
この度、卒業証書・学位記授与式において益谷秀次賞を
いただきました。益谷秀次賞は、金沢医科大学の初代理事
長であられた益谷秀次先生に由来した賞であると聞いてお
り、このような名誉ある賞に選ばれましたことを大変嬉し
く、また光栄に思っております。6年間の学生生活は思い起
こせばあっという間でした。実習に試験にと毎日が忙しく、
今となれば勉強に遊びに趣味に、もっと多くの事がやりた
かったと思うこともありますが、それは欲張りだと感じて
います。私の学生生活の中で最も思い出深いことは、4学年
の夏休みにハワイ大学での第1回金沢医科大学語学医学研
修に参加したことです。この時が私にとって初めての海外
旅行であり、英語の勉強、アメリカの医療制度の学習、
PBL体験、病院見学そしてレジャーも満喫して最高に楽し
い3週間でした。この研修は医学教育、医療制度などそれま
で全く知らなかった多くのことを学び、また考えさせられ、
私にとって貴重な体験でした。そしてこの時以来、英会話
を勉強しようという目標もできました。私の学生生活は、
美しい内灘の地で数多くの素晴らしい友人達や熱心な先生
方に恵まれ、本当に充実していました。今は今後の医師と
しての人生に期待を膨らませているところですが、人の役
に立ちたいという初心を忘れず、常に前向きに目標を持ち
続け、一歩でも良医に近づけるよう努力していきたいと思
います。
学長賞 土原一真君
今回、大学院医学研究科を修了し、無事に博士(医学)
の学位を取得することができました。さらに名誉ある学長
賞をいただき、大変嬉しく思っております。
私は本学を卒業後、大学院へ進学しました。内科学Ⅰ
(呼吸器)に籍を置き、臨床研修を行いました。当初は臨床
研修に多くの時間をとられ、実験研究に時間を費やすこと
はなかなか困難でしたが、後半は大谷教授を始めとし諸先
生方の協力もあり、十分な時間を実験研究に費やすことが
できました。
今回、私の行った研究は、人工呼吸器による肺傷害と炎
症性サイトカインとの関連についての研究です。近年、
様々な領域の疾患において、人工呼吸器の使用により多く
の患者を救命できるようになりましたが、一方で人工呼吸
器自体による肺傷害が大きな問題となっております。この
肺傷害に特定の炎症性サイトカインが関与しており、この
炎症性サイトカインを抑制することにより肺傷害を防ぐこ
とができる可能性が示唆されました。
今回の研究で得られた内容を学会や研究会で発表する機
会がありました。そこでは基礎医学や他学部での実験内容
のレベルの高さに驚かされました。しかし、臨床を基礎と
する視点は、様々な疾患の病態解明や治療に重要な役割を
果たせるものと考えております。
臨床の場から離れたこともあり、現在はまだ戸惑うこと
も多々ありますが、この4年間で学んだことは今後の臨床・
研究の場において必ず役に立つと思っております。
今後は臨床においてさらに研鑚を重ねるとともに、現在
の研究をさらに継続し、母校の発展に寄与することができ
れば幸いと考えております。
30
学生のページ
受賞の喜び
北辰同窓会会長賞
齋藤雄之君
今回北辰同窓会会長賞をいただきあ
りがとうございました。大変うれしく
思っています。僕自身やりたいことを
やってきただけでこのような賞をいた
だき驚いています。
僕は4年生までクラブ活動に没頭し、
あまり勉強に力を入れることがなかっ
たのですが、5年生のBSL をきっかけ
に勉強の方にも力を入れ始めました。
というのも実際に患者さんと接してい
くのに知識がないのも失礼にあたると
思いましたし、なにより実践に基づい
た医学の勉強に興味がもてたので自然
に勉強を進めることができました。ま
た、毎日新しいことが学べるというこ
とを楽しく思いました。
クラブ活動との両立に悩んだことも
ありましたが、実習の息抜きになり、
続けてよかったと思います。僕はクラ
ブ活動で得るものが多かったので後輩
のみなさんもぜひ参加して続けていた
だきたいと思います。
今後、この賞をいただいたことを励
みとし、その名に恥じぬようがんばっ
ていきたいと思います。
永友佐知子さん
今回、卒業証書・学位記授与式にお
いて、金沢医科大学北辰会同窓会会長
賞をいただき、大変嬉しくまた光栄に
思っています。この賞を受賞すること
ができたのは、金沢医科大学の諸先生
方、友人たち、そして両親の理解と励
ましがあったからこそだと思います。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
私は鹿児島の出身で、はるばる北陸
の地へやってきました。低学年のうち
は冬になじめず、空がどんより曇って
いるのを見ては、故郷の青空が恋しく
帰りたいなあと思ったことが何度もあ
りました。しかし学年が上がるにつれ、
実習、レポート、試験に追われ、あっと
いう間に6年間が過ぎた気がします。な
により大学生活を楽しくさせてくれたの
は、かけがえの無い友人達です。一緒に
夜遅くまで勉強したり、試験前に覚え
られない所を言い合ったり、たまには将
来のことを語り飲み明かしたり、常に私
の心の支えとなってくれました。この仲
間たちとはきっと一生の付き合いになる
と確信しています。また、たくさんの先
生方にも恵まれました。ご自分の診療、
研究等で忙しい合間をぬって学生たち
に根気よく指導し、様々な貴重な経験
をさせてくださいました。私もいつかは
指導する立場になるのでしょうが、その
時に先生方の苦労がわかるのではないか
と思います。課外活動では北アルプスに
魅了され、山好きな友人たちとワンダー
フォーゲルサークルを作り、年に数回近
郊の山々を楽しみました。こうした6年
間のたくさんの想い出を心の宝石箱にし
まい、つらくなった時には箱を開くとま
た元気が湧いてくる気がします。
これから臨床医へと進路をとるわけ
ですが、医師にとって必要な正確な知
識、技術、そしてどんな状況にも耐え
られる体力、精神力を身につけていか
ねばなりません。そのためにも勉強を
怠らず、良医を目標にがんばっていき
たいと思います。
山本佳乃子さん
月日の経つのは早いもので浪人時代
が終わって本学で学生生活を送り6年
が過ぎた。地味ながら自分にもいろい
ろな事があったと思う。予備校の寮で
の浪人生活は思った以上に辛く、肝心
の受験期にはお疲れモードで受かれば
どこでもいい、兎に角浪人から開放さ
れて家に帰りたい一心だった。そんな
状態で金沢医大も数打ちゃ当たる方式
で受けた一校だった。
ところが、面接試験で実際に行って
みると、先生が優しく、土地柄も好ま
しく一番印象が良かった。先に面接を
受けたA医大は志望順位は高かったは
ずが、思ったより都会だったことにが
っかりして「もしA医大と金沢医大に
受かったらどちらに行く?」と面接官
に聞かれて「金沢医大」と答えてしま
った。当然、A医大の合格通知は来な
かった。金沢医大の合格報告はD医科
大の受験前夜受験地のホテルで聞いた。
うれしかった。浪人からの開放感に酔
いしれて翌日は受験せずに帰ってしま
った。志望校には全てフラれ、受かっ
たのは本学のみで迷うことなく内灘で
学生生活を送ることになった。
しかし、期待以上に楽しく6年間過
ごさせていただき、結果的には本学で
過ごせて本当に良かったと思っている。
人づき合い悪く不活発な性格の割りに
は友人にも恵まれ、我ながらよく動い
たと思う。
長年お世話になった医科大の皆様、
患者さん、内灘住民の方々、両親、内
灘に導いて下さった神様、本当に有難
うございました。
31
学生のページ
〔学生みんなへの呼びかけ〕
「ともに医学を学ぶ医学生のメーリング
リスト」に参加して
永井恒志
(M97-0581 第4学年)
「ともに医学を学ぶ医学生
のメーリングリスト」は東海
大学医学部6学年の市村公一
さんによって立ち上げられた
MLです。ケーススタディーや
実際の症例についての検討、
医療問題や医学教育について
の論議、勉強法や国試につい
ての情報などをメールでやり
取りしています。会員数は医
学生を中心に実に 5 7 0 人を数
えます。また医学生以外では
東海大学医学部長黒川清先生をはじめ本学でも上田善道先
生(病理学Ⅱ)
、相野田紀子先生(医学教育学)
、堀有行先
生(神経内科学)など全体の約1/4∼ 1/3が医師や大学教員、
救急救命士などです。
僕自身は去年の暮れから参加していますが、僕がこのML
に入って一番最初に驚いたことは「すさまじく優秀な医学
生がいる!」ということでした。ML にはまさに日本を代表
すると言っても過言ではない優秀な人達が沢山いて、彼ら
の医学知識の豊富さ、医学に対する熱意などに圧倒されま
した。Harrison、Cecilなど日常の如く読み、国試問題集は
もちろんのこと内科認定医問題集までこなし、そうかと思
えば医学教育や医療問題などに対してもきちんと個人とし
ての意見を持っています。中には実際社会的な活動をして
いる人達もいて、週刊医学界新聞などに出る医学生達はこ
のMLの会員が多いのです。しかしこれら高度なレベルでの
成果もひとえに医学に対する熱意の高さ、医師として生き
ていく自分に対する要求の大きさの結果だろうと思います。
彼らの多くは医師として社会に出て行く自分を真正面から
見つめ、そして自分には何が出来るのか真剣に問いただし
ています。また、それだけに先輩としてアドバイスをする
先生方も真剣です。彼らの学年を超えた医学生同士の真剣
な対話、世代を超えた今日の医師と未来の医師の真剣な対
話は常に互いを刺激し合い、より良い医学医療界の構築を
目指しています。
僕自身も彼らとの交流の中で非常に強く影響を受け、自
分の医学に対する取り組み方や将来どのようなスタンスで
医師として活動を行っていくかなどについても考え方が大
きく変わりました。また会員である他大学の医学生とも直
接友人になれ、合同で勉強会をしたり、社会的な活動を行
ったりすることで視野が広くなりました。そして彼らと共
にこれからの医学・医療の世界を創っているという実感が
得られたときには最高の喜びを感じました。間違いなくこ
の友人達が医学の世界の中心となって活躍していくと僕は
信じていますし、そうなる事を楽しみにしています。
今後も益々の MLの発展を期待し、僕自身も努力を続け
ていこうと思っています。そしてこれからも新たに多くの
医学生がこのMLに参加し、大いに刺激を受けて与えて充実
した学生生活を送っていただければと思います。興味のあ
る方は[email protected]までお尋ねください。
お待ちしております。
最後に創始者である市村さんの言葉を紹介します。
「もちろんいくら勉強しても『国試』に通らなければ免許
をもらえないわけですから『国試』も大切ですが、でも『国
試』が学生としての最終目標じゃ淋しい。このMLに参加す
るまでは周囲の影響もあって何となく「目標は『国試』
」だ
ったのが、このMLに入ったことでそもそも自分が何のため
に医学部に入ったのか、医師を目指したのかを再認識した
というメールを時々戴きます。私には一番嬉しいメールで
す。市村公一」
〔解説:ぜひ読んでください〕
た、メーリングリストを利用したサイバーホスピタル空間
での症例立脚型グループ学習のトライアルを紹介したいと
思います。
ITを利用した
新しい医学教育へのトライアル
病理学Ⅱ教授 上
田善道
インターネットを介したコンピューターネットワークの
発達により、現代社会は激変しています。従来の仕組みの
再構築や新たな機構・方法の開発が、さまざまな分野にお
いて求められています。医学教育も例外ではありません。
Information technology (IT)を用いた学習者のニーズに応じた
新たな学習スタイルの開発が今望まれています。本稿では、
診療参加型臨床実習導入を見据えて我々が本学で行ってき
1. インターネット時代におけるコンピューターの役割:
情報収集・発信とグループのオーガナイズ
現代はコンピューター社会と言われます。コンピュータ
ーのルーツは加減乗除のための計算機に遡ります。その後、
コンピューターは多量なデジタルデータの解析やファイリ
ングを主な機能としてきました。しかし、1990 年代のイン
ターネットの爆発的普及により、コンピューターの役割は
情報収集と発信へ大きく変容しました。さらに最近では、
インターネット時代のもう一つのコンピューターの機能と
して、グループ・組織をオーガナイズする能力が注目され
32
学生のページ
ています。
皆さんは電子メールを日常頻繁に使用されていると思い
ます。電子メールがこれまでのコミュニケーション・メデ
ィアと最も異なる点は、一対一の個人メディアから、使い
方次第で一対多数の情報メディアにもなるという点です。
我々が今回利用したメーリングリストとは、決められたア
ドレスにメールを送るとインターネット上でリストに登録
されているメンバー全員に同時に電子メールを配送するシ
ステムです。メーリングリストをグループで共有すれば(メ
ーリングメンバー)
、グループ内でメールを使ってあらゆる
連絡、情報伝達、そして会議までもが可能となります。イ
ンターネットの情報収集・発信という双方向性を生かし、
グループ内のどの個人からもグループ全員に情報を伝える
ことができる、すなわち密度の濃い情報交換によって結合
度が強いグループ・組織をオーガナイズすることが可能に
なります。
これまでグループ活動を行う場合、メンバー全員が出席
できる日時の設定、場所の確保、資料の事前配付、議事録
作成などに大きなエネルギーを必要としました。メーリン
グリストを利用すればこのような煩雑さから解放され、各
人のスケジュールに合わせて、効率的な、密度の高い活動
が可能になります。グループメンバー各自のメール受信の
確認や返信の時間帯によって自分の意見に対する返答に多
少の時間差が生じる可能性があります。しかし、文章化す
るためにじっくり練られた、参考資料や他のグループメン
バーの意見も十分踏まえた密度の高い応答であることを考
慮すれば、この時間差など大きな欠点にはならないと思わ
れます。また、メールは総てarchives として保存され、グル
ープメンバーはいつでも自由に検索し、見直すことが可能
です。
2. 本学における PBLトライアル、そしてメーリング
リストの立ち上げ
生命科学情報の指数関数的増加と社会が求める医師像の
変化のため、医学教育改革は避けて通れない情勢です。従
来の知識伝授型教育から、問題発見・解決型、自学自習主
体の能動学習型教育法への変革が切望されています。医学
部6年間で最も重要な臨床実習も診療参加型実習が望まれ、
そのための準備教育の一貫として小グループ形態の problem-based leaning (PBL)/tutorial形式のカリキュラムが必要と
なりました。本学ではPBL の導入を目指して、約2年前から
4年生を対象に PBL トライアルを行ってきました。しかし、
正規カリキュラム外に行うPBLであり、時間的制約のため
学べる症例数は限られ、PBLの効果という点では量的にと
ても満足できるものではありませんでした。テューターや
学生の時間的制限をクリアーできる解決策を模索していた
時、週刊医学会新聞第 2409号(医学書院平成 12 年10 月 23
日発行)で、メーリングリストを利用したケーススタディ
ーをしている全国的医学生のグループがあることを知りま
した(この詳しい活動内容は5学年生の永井くんの項を参照
して下さい)
。幸いにもコンピューターリテラシーに長けた
学生が PBL のメンバーにおり、彼の大いなる助けのもと、
同年11 月後半にメーリングリスト PBL-MLを立ち上げトラ
イアルを開始しました。
3. メーリングリスト PBL-MLの活動内容
メーリングリストメンバーは4学年生のPBL メンバー8人
と、2学期から開始した3学年生の PBL メンバーの中からの
有志数名、それに教員として私が参加しています。活動の
中心は、PBLを補うためのケーススタディーです。私が症
例を発信し、それに対してメーリングリストをフル活用し
て意見交換をします。メールは主に深夜あるいは早朝にイ
ンターネットを飛び交っています。スタイルはPBLテュー
トリアルと同様です。患者の言葉で述べられた症状からス
タートし、推測される病態生理に基づいた仮説の設定、そ
の立証に必要な問診、身体所見、検査に関する情報を列挙
します。十分意見が出尽くしたところで、次の情報(詳し
い病歴や身体所見など)が与えられます。新たに得られた
情報をもとに、仮説を検証し診断と治療法の選択に至る過
程をバーチャル体験します。この他、私を含めメンバーの
何人かは全国版の「ともに医学を学ぶ医学生のメーリング
リスト」にも参加しており、最新の医学学習に有用なテキ
ストや文献に関する情報交換、全国の医科大学における医
学教育体制や学生の活動、各学年での学習法や学習すべき
内容、更に本学の医学教育の問題点や望ましい方向などに
関しても議論しています。現在まで3、4学年生併せて約25
症例を学び、メール総数は約500に上ります。期末試験前や
休暇中は休止しますので、日により多寡がありますが一日
平均6∼8メールの意見交換になります。
実際のケーススタディーを紹介します。紙面の都合上、
やりとりが理解できる最低限のメールに抜粋しました。
*先ず簡単な患者の言葉で綴られた病歴が提示されます。
これから問題を抽出し、どういう病態生理を考え、それら
を明らかにするために必要な情報を議論します。
*********************************************
症例は、50才女性です。頭の中が真っ白になったり、朦
朧となったり、完全に意識がなくなって、
「ちょっとあなた
どうしたの?」と揺り起こされることが最近時々あるとい
います。
*********************************************
*これは、学生のN君からの返答メールです。
*********************************************
キーワードは「一過性意識障害(失神)
」と考えます。
意識障害が起こる機序は大きく分けて3つに分けられると思
います。
1. 脳の一次性障害
2. 全身性障害に伴うもの
3. 心因性の意識障害
今回の患者さんの話だと一過性意識障害のみで他の訴え
は無いですが、この時点で「他に特に症状なし」と判断す
るわけにはいきません。以下のような情報が知りたいです。
a. いつ、どんな時、どんな状況で発症したか(労働した後
33
学生のページ
とか、立ち上がったときとか、ある特定の場所でとか)
。
b. 意識障害の起こり方は突発性だったか、或いは急性だっ
たか。つまり「これは倒れるな」とわかるようだったか、そ
れとも全く分からないうちに倒れていたとか。
c. 随伴症状はあったか。発熱、痙攣、頭痛、嘔吐、胸痛な
ど。
d. 既往歴について。高血圧、糖尿病、てんかん、あるいは
心臓、肺、腎臓、肝臓などの疾患を持っていないか。
e. 現在何か薬を服用しているか。飲酒歴は?
*********************************************
*出題者から新たな情報が流されます。
*********************************************
このような発作は特定の姿勢や行為とは関係ない。自分
では気付かず、家族から「お母さんボーッとしてどうした
の」と注意され、始めてハッとする。頭痛や痙攣はない。
胸痛や動悸もない。病歴を詳しく聴くと、ここ2、3ヶ月間、
微熱があり、とても疲れやすく、寝汗がかなりひどいとい
います。体重減少も気になっているそうです。膝や肩関節
などの関節痛と、突然の息切れも認めています。この息切
れは、安静時に生じ、体を起こすと余計にひどくなり、臥
位で楽になるといいます。
身体所見:
体温 37.8 ℃、それ以外のバイタルサインは正常範囲内、皮
膚は蒼白、心臓の聴診では、I音が減弱かつ遅延していま
す。拡張早期に低張音とそれに続く拡張期ランブルが聴取
されます。
検査所見:血液・一般 小球性・低球性貧血、赤沈の亢進
以外、異常なし。
心電図:洞性調律
*********************************************
*新たな情報を踏まえ別の学生から詳細な分析が寄せられ
ました。
*********************************************
Problem list
患者は50歳の女性
#1 一過性意識消失(失神)発作
#2 微熱(ここ2∼3ヶ月)
#3 易疲労感
#4 ひどい寝汗
#5 体重減少
#6 関節痛
#7 呼吸困難(息切れ):安静時に生じ、体を起こすとひ
どくなるが臥位では楽
#8 体温37.8℃
#9心雑音:I音の減弱、遅延、拡張早期の低張音と拡張期
ランブル
#10 小球性低色素性貧血
#11 赤沈の亢進
特に注目したい所見は#9. 心臓の聴診所見です。病態生
理学的に考えるとある程度どういった聴診所見が得られる
かは見当がつく。僧帽弁狭窄症MSとすると
・I音の増強、僧帽弁開放音opening snap、拡張期ランブル
が特徴的
・胸部 X - p で左房拡大と代償性の右室肥大、肺うっ血
(Kerley-B lines)を認める
僧帽弁閉鎖不全症MRとすると
・I音は減少、Ⅲ音を聴取、収縮期雑音を認める
・胸部X-pでは左室・左房の拡大を認める
しかし!失神ということを考えると、大循環の血流障害が
もっとも起こり易いのは大動脈弁狭窄症 ASである。教科書
によれば「胸痛」・「失神」・「心不全」がASの特徴的な所
見である(文光堂内科学)
・収縮期雑音を聴取する。
・胸部X-pでは左室肥大
いまいち全体としてしっくりしないです。だからこそ心エ
コーで心臓がどのような状態になっているのかハッキリさ
せておいた方がいいと思います。また、胸部X線写真も必
要です。
#10. 小球性低色素性貧血
多くは鉄欠乏性貧血であるので血清鉄、血清フェリチン
値、総鉄結合能(TIBC)を調べて確認をとるといいと思う。
減少しているはずだ。もしそうでなければサラセミアや鉄
芽球性貧血、遺伝性球状赤血球症を考えなければならない。
鉄欠乏の原因としてもっとも多いのは慢性出血であり、消
化管出血の頻度が高い。
その際最も気を付けなければならないのは消化管悪性腫
瘍である。大腸癌などもなぞの貧血の検査で発見されるこ
とがまれならず。貧血にたいして代償性に心拍出量が増加
し、その結果心に負担がかかって心疾患になるとすれば、
左室の拡張により拡張期血圧の低下と収縮期血圧の増加、
すなわち脈圧の増大がありそう。しかし発熱以外のvital は
正常であった・・・。むむむー!
#6. 関節痛
炎症を伴った関節痛は全身疾患に付随して起こるものが
多いので全身性疾患として検索が必要。単関節痛であるの
か多関節痛であるのか、および急性発症か慢性発症かであ
るていど原因疾患を分類できる。
全身状態では発熱と言い、易疲労感と言い、体重減少と
言い、これは悪性腫瘍の存在を感じさせます。また女性で
あることより膠原病も考えられます。リウマチ熱によるMS
も考えられます。
今後のアプローチとして
1. 病歴
・A溶連菌感染症にかかったことはないか。
・関節痛について急性発症か、慢性発症か。
・食欲はあるか、最近どのくらい食事をしているのか。
・便通について、或いは血便の有無について(→消化管出
血をR/O)
2. physical examination
・輪状紅斑の有無
・皮下小結節の有無
3. laboratory data
・胸部X-p(→肺、心の状態を確認&肺結核の有無をみる)
34
学生のページ
・心エコー
・ECG(→2つとも心の状態を正確に見るために行う)
・ ASO、ASK、抗 DNAseB を測定(→リウマチ熱の疑い、
リウマチ熱ならば95%の確率で陽性)
・便潜血反応(→消化管出血を否定)
という感じになりました。かなり難しく感じました。この
後が楽しみです。
*********************************************
*出題者からのこの症例の最後の情報(診断・経過)です。
*********************************************
心臓エコーが行われました。左心房内に、心房内に腫瘤
状所見を認めた。左心房に発生した粘液腫の術前診断のも
と、外科的切除が行われた。左心房内に心房中隔卵円窩縁
に短茎を有するゼラチン様腫瘤がみられ摘出された。病理
組織学的に粘液状の器質中に星ぼう状細胞が疎らに増殖す
る粘液腫 myxomaと診断された。外科的切除により、症状
や炎症所見は消失し、術後1年後の現在健康な生活を送っ
ている。
*********************************************
*学生からのこのケースを学んでのまとめが来ました。
*********************************************
うーん、左心房にできた腫瘍による僧帽弁機能異常とは
頭が回りませんでした。心臓の聴診所見の重要さを改めて
考えさせられました。I音はこのケースでは減弱していまし
たが、左房粘液腫では亢進する症例もあり得るそうです。
大切なことは、臥位では呼吸困難が軽減し、臥位・立位で
増悪することですね。これは重力による腫瘍の僧帽弁口へ
の嵌入による閉塞を考えれば理解できると思います。拡張
早期に低張音、いわゆるtumor propとそれに続く拡張期ラ
ンブルが聴取されることが重要な徴候ということです。
「一過性意識障害(失神)
」の病態の理解に役立つ情報です。
SYNCOPE(失神という意味の英語)と憶えましょう。
S: situation:状況性 排便、排尿、咳、嚥下、鎖骨下動脈ス
チール、頚動脈洞過敏症
V: VはYに似ている。vasovagal:血管迷走神経性(感情刺激
や激しい痛み時)
N: neurogenic:神経原性、一過性脳虚血発作 (TIA)、自律神
経機能不全
C: cardiogenic :心原性、閉塞性障害 AS, MS, IHSS, 心房粘
液腫、肺塞栓症, 不整脈(徐脈性および頻脈性)
O: orthostatic:起立性低血圧
P: psychiatry 心因性
E: その他(薬物)
(
「セイントとフランシスの内科診療ガイド」より)
*********************************************
4. サイバーホスピタル構想
文部科学省の諮問委員会から平成13年3月に発表された
医学教育改革に対する提言から解るように、米国のCCS的
な診療参加型臨床実習の必要性が各医科大学の卒前教育で
求められています。このためには大学側の受け入れ体制の
改善は勿論ですが、学生にチーム診療に参加して積極的に
学習していけるだけの知識・能力・技法を習得させる臨床
実習前教育の改革が必須です。米国医科大学のように大学
病院で低学年から患者さんと接して、臨床実習を始めるた
めに必要な知識や技法を学んでいくのが理想ですが、本学
では教員の量的問題があり現実には容易ではありません。
これを解決するための手段としてメーリングリストを利
用したサイバー(バーチャル)ホスピタルが、診療参加型
臨床実習に必要な医学知識、問題発見・解決能力の養成と
自学自習習慣の獲得に役立つものと考えられます。綿密に
用意された症例(シナリオ)のもとに、仮想の診察室、病
室をつくり、問題発見・解決型の自己学習を、メーリング
リストでオーガナイズされたグループで行います。バーチ
ャル空間なので、各学習者が納得するまでどんなに時間を
かけてテキストや文献を調べ考えようが、患者さん、教員、
コメディカルの人たちから苦情を言われる心配はありませ
ん。間違い犯すことを心配することは全くありません。間
違いが起きた原因をグループで考えることで、メンバー全
員が再び同じような間違いをしなくなります。メーリング
リストを利用したサイバーホスピタルでは、こんな作業を
コーヒーカップ片手に、自分にとって最も快適な空間で、
集中できる時間に行うことが可能になります。診療、研究、
教育で多忙な教員も、自分のスケジュールに合わせて、人
によっては自宅の書斎からでも、学生とバーチャル空間を
共有できるのです。サイバーホスピタルにおいて教員サイ
ドに求められるのは、学生が臨床医学を興味を持って学ぶ
ためのオーガナイズされた、ぐんぐん引き込まれていくよ
うなシナリオ(症例)と学生のグループ学習を支援・刺激
する暖かいまなざしです。
コンピューターネットワークを利用するもう一つの利点
は、バーチャル空間では学生と教員が水平の関係を作りや
すいことです。教員の強面の顔や雰囲気はそこにはなく、
存在するのは情報のみです。従来型医学では経験が重んじ
られ、専門化と非専門化の壁は非常に高かったと思います。
現在も経験の重要さは変わりませんが、インターネットの
発達による自由な情報へのアクセスやevidence-based medicine (EBM)の発達で、素人と玄人の壁は消失しています。
バーチャル空間で問われるのは発信内容です。情報発信能
力があれば地位など関係なくどんどん仲間に加わり、対等
な討論ができる状況になりつつあります。バカなメールを
送って笑われるんじゃないかと心配する必要はありません。
バカなメールは受信側で無視してくれます。本当にいいグ
ループを責任持ってオーガナイズできるよう各人が発信能
力を身につけていくことが重要です。
5. 終わりに
情報媒体がどんなに進んだ現代でも、やはり生身の人間
同士が集合して行う活動に勝るものは無いと思います。し
かし、インターネットのグループのオーガナイズ機能を利
用したサイバーホスピタルでのケーススタディーは、学生・
教員がそれぞれ有する物理的問題を克服し、医学教育の効
率をあげるための一つの有効な手段と考えられます。イン
35
学生のページ
フラストラクチャーの整備やハードのめざましい進歩によ
り、テキスト情報だけでなく静止画像や動画も使用可能と
なり、よりエキサイティングなシナリオ作成も可能になっ
てきました。本学学生は一般教育の情報処理入門でコンピ
ューターリテラシーは習得済みです。大学病院ではカルテ
も完全電子化されており、コンピューターネットワークを
用いたサイバーホスピタルを用いた学習の環境は十分整っ
ています。今後、多くの学生・教員がこのメーリングリス
トに参加し、学生たちが社会に出ていった時にどういう状
況にぶつかるのか見通しながら、予想される大きな状況変
化に対応できる能力の育成を目指し、バーチャル空間で共
に活動することを望みます。
新入学生インタビュー
Q1
Q2
Q3
Q4
こう
高
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
A8
Q5
Q6
Q7
Q8
どこのクラブに入部したか
内灘の印象
6年間のキャンパスライフ
将来像
ぎよう
儀容(A1-034)
千葉県
乙女座
AB型
自分ではよくわからな
いです。明るくもあり
暗くもあり・・・。
ヨット部
道が広い。海がキレイ。
山もキレイ。
人格を磨く。
小さな町で、町人全員と知り合いになって、皆の
相談役みたいな医師になりたいです。
ささはら
笹原
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
出身
星座
血液型
性格
あきひろ
聡豊(A1-038)
神奈川県
おうし座
B型
おっとりしている。
アメフト部
自然がとても多い。
勉強と遊びを両立させ
てがんばりたい。
A8 他人のことを思いやれ
る人になりたい。
こばやし
小林
としえ
俊恵(A1-036)
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
新潟県
乙女座
O型
負けず嫌い
バドミントン部
海がめっちゃ近い。
たくさん友達をつくり
たい。
A8 患者さんが信頼して何
でも話してもらえるよ
うな医者になること。
なかむら
中村
A1
A2
A3
A4
A5
A6
たくじ
拓路(A1-061)
岐阜県
てんびん座
O型
温厚だと思う。
水泳部、写真部
町の規模とかが地元の
町に似ていて暮らしや
すい。
A7 とにかく留年しないよ
うがんばって勉強す
る。
A8 技術的にも精神的にも患者から頼られる医者にな
る。
36
学生のページ
2001年度
マーサ大学交換留学報告
期間:2001年3月12日∼3月24日
今年度のMercer 大学への留学生派遣には6人の学生が応募してくれたが、最終的に4人が選ばれることになった。選考基
準には学業成績、英語力も含まれるが、何よりもはっきりとした目的意識と向上心が重要なポイントと考える。つまり成績
優秀な学生でなければ行けないのではなく、誰にでもチャンスがあるという事である。今回の4人の留学生も、それぞれに
個性があり、しかし未熟な面もあり、決して完璧な学生であったとは思っていない。したがって派遣前に不安もあったよう
だが、お互いの弱点を助け合い、協力し合って事を成し遂げること、また自分の能力を超えることに挑戦することなど、い
くつかの課題を各自に与えた。帰国後の報告を見るとそれぞれの課題を達成してくれたように思っている。国家試験を1年
後に控えたこの時期に海外に留学するなんてと考える学生も多いかもしれないが、未知の世界との遭遇、体験を通じて、自
分を向上させ、自信をつけることは国家試験だけではなく、自分の未来への挑戦につながるものと考える。次の第3期生に
多くの学生が挑戦してくれることを期待している。
報告者
糸 井 あ や (M96-008
第6学年)
Dean Skeleton、Dr Lin、菅井教授とともに
2001年 3月 11 日より2週間、ジョージア州にある Mercer
大学に留学できるチャンスをいただきました。留学して世
界を広げてみたらという話を友田先生から伺ったときは、
私は全く英語ができず、どうやって過ごすのだろうかと不
安に思っておりました。しかし、実際は英語が通じないと
きは、ジェスチャー、please more slowly、please write here
などを使って楽しく会話を進めることができました。たっ
た2週間でしたが聞きとることと表現することができること
を知ったのは大きな進歩でした。
私が留学したいなと考えたきっかけは、もちろんアメリ
カの医療を実際見学したかったことと、色々なところに友
達が欲しかったからです。
アメリカの医療に関しては、family medicine(地域医療で
す)が発達していました。初診患者さんにかける時間は、1
時間です。この1時間の中でインフオームド コンセント、
evidence-based medicine が患者さんの納得のいくまでじっく
(国際教育交流小委員会委員長友田幸一記)
り組み込まれていました。また検査が少ないことが印象的
でした。例えば、血液検査にしても様々なデータと、X-P、
CT、内視鏡など一連の検査を進めながら病態と治療を考察
していくのが当たり前と考えておりましたが、2週間のうち
で CT のオーダ一を見たのは2回でした。これは背景にある
保険システムの違いが大きいように思えました。私もphysical examinationを重要視してゆきたいと考えています。他
に、ほとんどの患者さんは、高血圧と糖尿病と高脂血症を
持っていました。確かに、食事の面では、お肉を初めとし
て全てのものが新鮮でおいしく、私も朝からスカートがき
つくなるほど大量に食べ、患者さんの気持ちを、身を持っ
て体験してきました。
わずか 2週間でしたが、自分の目で見て来れたことは大
変貴重な経験でした。友達もできて、これからどんどん視
野を広げて行けれ
ばと考えていま
す。もし、Mercer
大学に行ってみた
いけど英語ができ
ないし、不安と思
っている人がいれ
ば思い切って行っ
てみて下さい。行
けば自分の中に新
風を取り込めま
す。留学先で大変
お世話になりまし
た Lin 先生には感
謝の気持ちでいっ
ぱいです。また私
がここまで成長で
rural preceptorと
きたのも多くの先
37
学生のページ
お世話になったサンチェス先生
生方と友達と家族のおかげと思っております。本当にあり
がとうございます。
報告者
長田 ひろみ(M96-021
第6学年)
○旅のはじまり
ピーピーと警報音がこだまして、私は警備員に呼び止め
られた。手荷物の筆箱からカッターが取り上げられ押収さ
れ・・・と、これは小松空港の出発ゲートでの出来事。見送り
に来て下さった友田先生、友人の中野さんが向こう側で頭
をかかえている。
「大丈夫、大丈夫」と菅井先生夫妻に励ま
され苦笑されながらの出発となった。
○応募の理由
そもそものきっかけは実習斑の長村さんに「行ってみれ
ば?」と言われた事からはじまった。英語を勉強するのが
好きなので海外に行ってみたいけれどもなかなか機会は無
いしと思っていたところに舞い込んだチャンスだった。こ
の旅で自分を変える事が出来るかもしれないとひそかに期
待をしていた。というのも日々の勉強に追いつかず試験も
良い結果を残せない状態で、自信の無い毎日を送っていた
からだ。友田先生には「この旅に参加して何か目標をもて
rural preceptorと
たらいい。日本で駄目でもアメリカでは上手くいく事もあ
るかもしれない。
」と前向きとも楽天的ともとれるアドバイ
スをいただいた。
○ジョージア州メーコン市にて
マーサ大学のあるメーコン市はのどかな田舎町で、アト
ランタから車で約2時間の距離に位置している。
大学の構内は赤レンガの建物が並び、緑の芝生にリスが
駆け回る美しいキャンパスだった。その一角にある同窓会
館に間借りして生活した。
マーサ大学医学部は地域医療に基づく General Practitioner
を育成する事を目的としている。地域での疫学動向や疾病
の統計学などの公衆衛生学を軸に、学生は臨床実習を行っ
ている。臨床実習は大学の関連病院だけでなく、地域の開
業医のもとでも行われている。本学でのBSLと違う点は学
生が患者さんに対して問診・診断・治療・薬の処方などの
医療行為を指導医のもとに実際に行っている事である。
大学構内の診療所や地域の開業医のどこを見ても、診察
には個室が使われ患者さんの待つ部屋に医師が訪れるとい
う形式だった。医師は診察台に座った患者さんに向かって
親しく話し掛け、間診をとり身体所見をとって診断をつけ
ている。細かい検査よりもまず話しをする姿が印象的であ
る。患者さんが少しでも心配な事があればそれに対して詳
細な説明をする。よくこんなにしゃべれるなあと感心した。
付き添いの家族に対しても、納得がいくまで充分なケアを
していたと思う。
また、訴訟の多いお国柄という事もあり医師は診察記録
にかなり注意を払っていた。
〇ファンキーな患者さん
いろいろな患者さんの中で見た目が印象に残っているの
は前歯二本が白抜きの星型金歯をした方だ。先生は淡々と
診察をしていてそれもまたおかしかった。
短期間ではあるけれど、アメリカの医療現場をこの目で
見るという貴重な体験が出来て幸運だったと思う。文化や
環境が異なれば、疾患や社会問題も当然異なり必要とされ
る医療も変わってくるという事を実感した。
旅先では様々な人に出会った。休日を楽しむ事に命をか
けるドクターもいれば、気難しい先生もいた。実習に疲れ
Macon市内のホテルにて
38
学生のページ
た学生もいれば、ものすごく張り切っている生徒もいた。メ
ーコンは田舎だから早く都会に帰りたいと切実に訴える学
生のセリフは内灘から脱出したがる友達を思い出させた。
向こうの人達がどれだけ違う事をしているのか見てこよう
と考えて出発したが、西洋医学を学ぶ私達にとって共通す
る点も多かったと思う。
○結局、自分のテーマはどうなったのか?
アメリカに行ったからと言って、金髪と青い目になるわ
けでもなく姿・形は何ら変化なし。発言も行動も積極的に
していかなければ、損をする環境だったのでますます神経
が太くなったかもしれない。言葉に関しては、表現する力
をもっと付けたいと思ったけれど技よりもきっとハートの
方が大事ではないかと感じている。実習中にはそういうわ
けにはいかず、やはり医学の勉強の足りない事を悔やんだ
が。
また一緒に旅をしたメンバーと沢山話せた事も大きな財
産となった。7人の侍(?)ではないが、全員のキャラクタ
ーが絶妙に生かされグループとしてもまとまっていたと思
う。
最後にマーサ大学のリン先生には大変にお世話になった
事を感謝します。それから竹越学長はじめ、友田先生、鈴
木先生、川上先生、相野田先生、交流センターの皆様、本
当にありがとうございました。
報告者
木口 由利絵(M96-027
第6学年)
お世話になった Rural Precepterの Dr. Shoup、スタッフとともに
私が今回マーサ大学の交換留学生に応募した動機は、新
しい体験をすることで将来の大きな目標をみつけたいとい
う為でした。
ちょうど応募時期に私はBSL で耳鼻咽喉科をまわってお
り、バリから留学にこられた一人の先生がいらっしゃいま
した。その方の歓迎会ということで、友田教授をはじめ先
生方と夕食会にいったのでした。このとき友田教授に、マ
ーサ大学にいってみてはどうか、という素敵なお話をいた
だきました。偶然といってよい程のこの留学生の方との出
会いは、外国の方ともっとコミュニケーションをはかるこ
とができたなら、という切実な思いをかきたてられたので
す。しかし、この頃の私は、英語に全くといって良い程自
信がなく、応募締め切り日までずっとためらっておりまし
た。毎日一緒に病院を回っていたBSL の仲間に相談したと
ころ、温かく応援し後押ししてくれたので、思い切って応
募したところ、選抜試験に見事合格することができました。
これは、私に英語を教えてくださったテニス部の元顧問
の伊藤教授のお陰でもありました。というのは去年の秋、
私は音楽に夢中になっており、伊藤先生の奏でるフルート
とともに小さい頃から好きであったピアノでバッハの曲を
一緒に練習したり、幾度かコンサートに誘っていただいた
りしておりました。その時、先生が若い頃に船で世界一周
旅行をした話を聞かせてくださり、外国への憧れがとても
強くなったのを今でも鮮明に覚えています。英語がうまく
話すことができない私に、
「とにかく分かることを一生懸命
相手に伝えることで、コミュニケーションの道は開かれる
よ」とアドバイスしてくださったのです。
この日から、約2ヶ月問、マーサ大学留学に向けての準備
が始まりました。具体的な準備としましては、医学教育を
なさっている相野田先生から欧米人のコミュニケーション
とその問題解決についてオリエンテーションを行っていた
だきました。欧米人のマナーをはじめ、
「アメリカ医療の光
と影」という本や先生の愛読書を紹介してくださったり、
インターネットでの耳よりな情報を教えていただいたこと
で、出発前の私達の視野をぐんぐんと広げてくださいまし
た。
その他、私は個人的に英語力を強化したいと思っていた
ので、日常英会話や医学英単語 3000を毎日CD で聴く努力
を重ねてゆきました。
標準試験もあり、あっという間にこの2ヶ月の準備期間は
過ぎていきました。いよいよ、出発当日、私は緊張感のた
めか食事も喉に通らない状態でした。不安な私達の為に、
血液免疫内科の菅井教授がしばらくの間、引率してくださ
ることになりました。アトランタに到着すると、満開に咲
いた桜の花に心打たれ不安は吹き飛びました。現在メーコ
ンには、1万5千本もの吉野桜があるとお聞きしました。庭
にも桜の木がある家が多く、そのような桜は家族のように
大切にされているそうです。欧米人が家族との時間をとて
も大事にするという温かさを感じました。その日、すぐに
Lin先生夫妻が迎えてくださり、中華料理で歓迎してくださ
いました。
マーサ大学はGP(General Practitioner)といって地域住民
に信頼される医師の養成を医学部の使命としている大学で
す。実際、この2週間の実習の中で、産婦人科、小児科、救
命救急科などあらゆるアメリカの医療現場を見学させてい
ただきました。
中でも、Rural Precepterといって地域で医学教育の指導的
立場にある先生につき、アメリカの家庭医療について学び
ました。これは、私が最も印象に強く残った実習でした。
私達4人の学生は、それぞれ別の家庭医を訪問することにな
39
学生のページ
Dr. Shoupと筆者
満開の桜の下にて、Lin夫妻とともに
り、私はDr. Shoup というそれは人柄が大変すばらしく、地
域住民から信頼を寄せられている先生にお世話になりまし
た。
Dr. Shoup は一人一人の患者さんに私を紹介してくれまし
た。そして、私に病歴聴取や聴診をさせてくださいました。
患者さんの様子をその都度説明してくださいましたが、私
が英語で理解できないことについては、ゆっくり話しても
らったり、別の表現をお願いしたり、ノートに医学英語を
かいてもらうという工夫や、医学書をみせていただくこと
などして把握することができました。マーサ大学の医学生
も一人きており、一緒に勉強しました。
この日は、糖尿病、高血圧の患者さんが最も多く、その
他骨粗鬆症による腰痛の患者さん、神経性食欲不振症、う
つ病、腎結石、慢性閉塞性肺疾患、マラリア、扁平苔癬、
Spider Biteの患者さんなど幅広い疾患をみました。
診察室はすべて個室に分かれていて、いくつもある診察
室をDr.が行き来するシステムになっており、患者さんのプ
ライバシーがしっかりと守られていました。患者さんは完
全予約制であり、診察には十分時間をかけておりました。
眼底鏡、耳鏡はすべての診察室に設置されていて、どんな
患者さんに対しても毎回使用していました。まさに、患者
さんの全身を診察しているように思いました。驚いたこと
は、InterviewやPhysicalでかなりの診断がつき、日本でされ
ているような膨大な検査は必要とされていなかったことで
す。さらに、患者さんに対しての生活指導や食事指導、喫
煙、睡眠、ストレスのマネージメントまで非常にきめ細か
く指導なさっていました。
2週間、欧米の食生活にもふれ、この豊かな食生活が生活
習慣病といわれる高血圧、糖尿病、高脂血症、特にアメリ
カに多いといわれる虚血性心疾患につながるという、公衆
衛生の予防医学という面も学ぶことができました。
そして、何よりも私が感銘を受けたのは、アメリカでの
コミュニケーション技法です。最近、私はターミナルケア
の患者さんとどうコミュニケーションをとったらよいかと
いうことで悩んでいました。まずは、しゃがんで患者さん
と同じ目線に立つことは勿論のことですが、さらにアメリ
カの医療現場から学んだ点は、体の一部に直接触れながら
対話するということです。
アメリカでは、医師が患者さんと対面する場合、挨拶か
ら握手したり抱擁したり、とにかくスキンシップで気持ち
を伝えあいます。これは、まさに医師と患者の関係や人種
を乗り越え、真の人間同士のつきあいの奥深さを感じまし
た。日本からの留学生である私が一緒に診察させてもらえ
るか、と患者さんに同意を求めると、決まって「勿論よ。
今日は、あなたに逢うことができてうれしいわ。
」と笑顔で
手を差し出してくれました。こんな医師と患者の関係には、
たいへん見習うべきことがありました。アメリカは様々な
人種や異なる生活レベルが混在する分、医師はそれぞれの
患者さんの人生観、哲学、趣味などをよく理解していて、
よく話をきいているように映りました。診察後は、さらに
必要とされる検査内容、医療費、治療方針、起こりうる合
併症、予後などを患者の納得のいくまで説明し、最後に必
ず質問はないかと尋ねておりました。これは、リスクマネ
ージメント、つまり、訴訟を防ぐための1つの対処法である
ともいわれているそうです。アメリカにおいては、患者さ
んがそれぞれ異なる保険に入っているため、医療費が支払
うことが出来ない場合は、それ以上の検査や治療を受ける
ことができないのです。その為、より詳しい I n t e r v i e w や
Physicalが重要視されてくるのです。
2週間、日本では体験できないような日々を過ごしまし
た。すべてが新しい体験であり、自分なりの形で吸収して
いくことができ、見聞を広めることができました。そこに
は、人生観までを変えて下さったLin先生をはじめ、お世話
になった先生方、患者さん、学生たちとのたくさんの出逢
いがありました。生涯、連絡をとりあってゆきたいと思う
人々に出逢うことができました。人との偶然な出逢いの素
晴らしさを実感しました。
コミュニケーションとしては、英会話だけでなく、ジェ
スチャー、笑顔、視線の重要さがよく分かり、これらに強
く助けられました。医学の面のみではなく、日本の文化、
日常生活・食生活・学生生活などの話題により、心をかよ
わすことができました。また、日本人でありながらまだ知
らないことがあることにも気付かされました。これからは、
常に好奇心をもって過ごし、外国人から最高の日本人と呼
40
学生のページ
ばれる人を目指したいと思いました。
これは、私が医師となってから必ず役立つときがくると
信じています。趣味、哲学、文化、歴史、宗教など見聞を
広めることは、いろいろなタイプの患者さんの興味を理解
し共感しあうための手助けになると思います。また、ター
ミナルケアにある病に苦しむ患者さんの気持ちを考えるう
えで、大きな手がかりとなることでしょう。個性をもつ一
人一人の患者さんを人間として好きになることができる、
そんな医師になりたいです。
こんな体験ができるとは、夢にも思っていませんでした。
自分の価値観を大きく成長させてくれました。
私は他の3人の仲間にも本当に恵まれており、出発前から
不安を打ち明け合い、支え合ってきました。この2週間の旅
でさらに4人の結束は固くなり、毎晩のように自然にみんな
集まってはお互いの体験を語り合い、その体験をより大き
なものへ変えました。不思議なことに体験した幸せは4倍以
上に膨らみ、悩みはいつのまにか4分の1以下に消えてしま
いました。今では、一生の財産であるといえる程の親友に
なりました。
「人生楽しみをもって毎日暮らすこと」と教えてくださ
ったのは、大好きなLin先生でした。
現在の私を例えるならば、週末にフロリダでみた大きな
木、それは1本の太い幹からたくさんの枝が成長したところ
であり、これから、教え切れぬ程の葉を茂らせ、実をつけ
るための段階にあるといえます。今後の自分自身の努力次
第で立派な木に育っていくことと思います。
YOUR FUTURE DEPENDS ON MANY THINGS. BUT
MOSTLY ON YOU.
これは、私がマーサ大学で見た心に残ったメッセージです。
私の将来の大きな目標は、世界で活曜の場をもつ医師に
なることです。
何とお礼を申し上げたらよいのかという気持ちでいっぱ
いですが、今の私に出来ることは、マーサ大学との交流、
親睦をこれからも続けていき、多くの友人、後輩にこの体
験を伝えていくことがみなさんへの大きな恩返しになると
思っています。
後輩達にも、チャンスに飛び込む勇気をもって新しいこ
Disney Worldにて
とに挑戦して欲しいと思います。学生生活は、毎日が社会
勉強であり何にも代えがたい貴重な時間です。
最後に、こんなに素晴らしいチャンスを与えてくださっ
た先生方、Lin先生、お世話してくださった多くの方々に厚
く感謝の気持ちを申し上げます。Thanks a million!!
報告者
齋藤
裕(M97-502
第6学年)
Mercer Nniv. キャンパス内
今回私は、第6学年生選択必修科目の一環である学外臨
床実習のひとつとして、米国ジョージア州にある M e r c e r
University School of Medicineにおいての2週間の実習の機会
を得ました。
我々で第2回目の交換学生受け入れとなる Mercer 大学医
学部は、そのユニークな特徴として、地域に貢献する GP
(general practitioner)を育成する使命を負うという点にあり
ます。大学はその目的のもとに公的な補助をも受けており、
よって学生は卒業後はジョージア州内でGP として州民に貢
献することが前提となっております。
またMercer大学医学部の学生は、GPを目指すという意味
でfamily medicine(家庭医療学)の分野を中心に学んでお
ります。 日本では家庭医というと、
「広く浅く診る医師」、
「かかりつけのお医者さん」といったイメージがありますが、
実際の現場で体験した診療内容は、内科、小児科にとどま
らず、産婦人科や整形外科、あるいは眼科、耳鼻科といっ
た領域にまで及んでおり、家庭医療学はそれ自体で一つの
専門領域であると実感しました。現在の日本の医学部では、
ややもすると臓器別の診療科による教育に偏重し、学生が
患者さんを生活者としてトータルに診る視点を培う機会に
乏しいとの指摘が聞かれます。 そのような現状の中、家庭
医療学という専門領域が確立している米国で、家庭医によ
る診療の実際に触れる機会を得たことは、今後、医療のあ
り方や目指すべき医師像を考えていくうえで、非常に貴重
な経験ができたと思っております。
具体的な実習内容ですが、Mercer大学医学部の Lin先生
のお計らいにより、2週間という短期間の中、様々な種類の
41
学生のページ
医療施設で見学実習を行なうことが出来ました。 family
medicineでは、地域のプライベート診療所や、Family Health
Center(小規模病院)での外来実習、大学併設の診療所で
ある Mercer Health Systems では小児科の外来実習、Medical
Center of Central Georgia(総合病院)では産婦人科や救命
救急科での実習、また地方の中規模病院である P e r r y
Hospitalの見学など、盛り沢山の内容でした。
今回の実習で米国のドクター達に接して強く感じた事の
ひとつに、患者さんへのインフォームドコンセントが徹底
しているという事実が挙げられます。ドクター達はとにか
く思っている事を口に出して患者さんに伝えます。また患
者さん側も質問をするなどしてドクターの説明を理解しよ
うと努めています。ドクター側にとっては、そのような態
度の中にはもち
ろん、意思伝達
の不調和による
訴訟を回避した
い、という米国
ならではの社会
問題に端を発し
ている部分も
多々あるとは思
います。私がお
世話になったド
クター達も医療
訴訟の問題を何
度か話して下さ
いました。です
が、それでもや
はり、インフォ
ームドコンセン
Dr. Linとともに
トの徹底は、患
Perry Hospitalを見学
者さんにとっては多くの情報が得られるという点で患者さ
んの利益につながっており、私も今後、患者さんとのコミ
ュニケーションの中で是非見習っていきたい点であると感
じました。
また、米国は医療先進国であるだけに、ハード面での充
実ぶりにも目をみはるものがありました。一つの例として、
Perry Hospitalの産科病棟では、病室はすべて個室であり、
しかもベッドがそのまま分娩台となるために、妊婦さんは
病室を出ずに出産が行なえます。また付き添いの家族のた
めにもソファベッドが置かれているといった配慮もなされ
ておりました。
今回の実習は2週間という短期間の中、米国の医療の現場
を垣間見たに過ぎませんでしたが、かの地での経験は、実
際に自分の目や耳で経験したという点において、新たな発
見の連続であり、非常に有意義でした。また日本の医療を
違う視点から捉え直す機会を与えられたということでもあ
り、実り多き2週間であったと思います。
42
学 術
中国・江蘇省友好交流訪問団が来学
2月 21 日、中国江蘇省友好交流訪問団が本学を訪
問した。これは、昨年2月に中国南京市で締結された
石川県・江蘇省複数大学間交流協定に基づくもので
あり、丁暁昌江蘇省教育庁副庁長を団長とする江蘇
省の8大学の一行が来県し、県内の8大学と交流を行
った。うち、丁暁昌団長他、医学部を有する南京大
学陳駿副校長、東南大学林萍華副校長、鎮江医学院
曹友清院長が来学した。
小田島粛夫理事長の歓迎の挨拶に対して、丁団長か
ら訪問の挨拶と最近の中国の医学部の改革について説
明が行われ、竹越襄学長から大学概要説明、山下公一
副理事長から本学の国際交流状況に関する説明が行わ
れたあと、江蘇省の3大学の概要説明が行われた。
引き続き、午前は病院において、電子カルテ、MRI、
中央放射線部の情報処理システムの見学が行われ、
しゅうぎょく えん
昼食会のあと大学に隣接の内灘町中国庭園秀
苑
でくつろぎの一時を過ごし、午後は図書館、ハイテ
クリサーチセンター、生化学Ⅰ研究室等を見学した。
左から 林萍華副校長、黄さん(通訳)、丁暁昌江蘇省教育庁副
庁長、呉さん(通訳)、陳駿副校長、曹友清院長
特にハイテクリサーチセンターではセンター長の西川
克三副学長にセンターの運営について活発な質問が
行われた。また3名の中国からの留学生と研究員が在
籍する生化学Ⅰ教室では、和やかな懇談が行われた。
(教育学術交流センター古本郁美記)
43
<予 告>
第28回金沢医科大学神経科学セミナー
テーマ
脳幹・脊髄の神経学
―多発性硬化症を中心に―
〈予定講師陣〉
Raymond P.Roos(University of Chicago神経内科学教授)
田代 邦雄(北海道大学神経内科学教授)
吉良 潤一(九州大学脳研神経内科学教授)
小松崎 篤(東京医科歯科大学名誉教授)
花北 順哉(静岡県立総合病院脳神経外科部長)
馬場 久敏(福井医科大学整形外科学教授)
朝倉 邦彦(金沢医科大学微生物学講師)
毎年8月下旬に行われる金沢医科大学神経科学セミナーが、今年は平成13 年8月 24日(金) と8月 25日(土)の両日
に行われる。今年は「脳幹・脊髄の神経学─多発性硬化症を中心に─」と題して、脳幹および脊髄の神経学に関す
る話題について、上記の講師陣に、基礎知識とともに最近の新しい知見も加えたレクチャーをお願いすることに決
まった。毎年学外からの熱心な参加者でにぎわうが、学内の神経科学の領域に携わる医師や研究者をはじめ、大学
院生、研修医など多数の若い医師の参加を期待している。
なお受講受付は平成13年7月2日(月)から研究助成課で行う。
藤田拓也 講師
(金沢医科大学神経科学セミナー運営委員会)
えて各施設を訪問する
機会が与えられた。ど
平成11年度 アメリカ整形外科学会
ちらの講演も大変好評
交換フェロー日本代表に選出される で、特に頚椎椎弓形成
術はアメリカ人医師に
このプログラム(AAOSInternational Educational
とって苦手意識がある
Exchange Fellowship)は、アメリカ整形外科学会
らしく、講演後、
「手術
と日本整形外科学会との間の人的交流、およびグロ
の適応は?」さらには
ーバルな視野とバランス感覚を兼ね備えた整形外科 「そのコツは?」など白
医育成を目的として、アメリカ整形外科学会の発案
熱した質疑応答があっ
で平成8年から発足したものである。毎年日本から4
た。詳細は本号の同講
名の若手整形外科医が日本整形外科学会よりフェロ
師執筆の随想の欄 ( 7 2
ーとして選抜され、まずアメリカ整形外科学会に参
頁)を参照されたい。
加し、その後、各々が希望の施設数ヶ所を回り、そ
当科は北陸の地、金沢にありながら、常に視点を
れぞれで講演および手術見学を行うことができる。
世界に向け、国際的に通用する医療を、と日々心が
平成 11年度は当科の藤田拓也講師が今までの脊椎
けている。そのスピリットが今回の藤田講師のフェ
外科分野での業績が認められ、見事このフェローに
ロー選出につながったとものと考えている。今後、こ
選出された。そして昨年の3月中旬から4月にかけて
の貴重な経験を生かして藤田講師の益々の活躍を祈
約3週間にわたり、全米各地の病院や施設を訪問し、 ると同時に、脊椎班チーフとして、当教室のさらな
手術や外来見学を行うと同時に、
「頚椎椎弓形成術」 る発展に寄与してくれることを期待してやまない。
「転移性脊椎腫瘍の手術療法」と2題の講演をたずさ
(整形外科学 松本忠美記)
整形外科学
44
平成13年度 ハイテクリサーチセンタープロジェクト研究
平成13 年度ハイテクリサーチセンタープロジェクト研究が次のとおり採択された。本研究は、文部科学省か
らハイテクリサーチセンター整備事業の拠点の一つとして平成9年度に選定された3件(ハイテク1∼3)と平
成11 年度に選定された2件(ハイテク4,5)のプロジェクト研究で構成されている。本年度は、平成9年度に選
定されたプロジェクト研究の5年計画の最終年度であり研究成果報告書の提出が必要であり、また、平成11 年
度に選定されたプロジェクト研究の3年目であり進捗状況の中間報告が必要となっている。
(研究助成課)
ハイテク1
多倍体化細胞形質変換の制がん剤医療への応用(H2001-1)
(班長;HRC運営委員会)
藤川孝三郎教授(基礎医科学研究部門)
倍数性変化に伴う形質変化
宗志平助手(基礎医科学研究部門)
終末分化細胞における細胞周期の制御機構に関する研究
太田隆英講師(病理学Ⅰ)
がん転移におけるRho ファミリーGDI の機能解析
岩淵邦芳助教授(生化学Ⅰ)
酵母チェックポイント蛋白Rad9 とヒトBRCT ドメイン蛋白53BP1 の相同性
池田照明助教授(医動物学)
Meth-Aがん細胞の2倍体細胞と4倍体細胞株の細胞生物学的、生化学的比較検討
(ポスドク1名;王士勇)
ハイテク2
遺伝子導入法による細胞癌化の分子機構の解明および癌の遺伝子治療への応用(H2001-2)
(班長;HRC運営委員会)
竹上勉教授(熱帯医学研究部門)
フラビウイルス病原性およびウイルス発癌の分子機構
野島孝之教授(臨床病理学)
癌関連遺伝子の病理組織内発現に関する研究
友杉直久助教授(腎臓内科学)
Fas リガンド及びCTLA4 遺伝子導入による腎の免疫特権化及び免疫寛容の誘導
東光太郎教授(放射線医学)
多剤耐性遺伝子のmRNAおよび抗癌剤耐性関連タンパク発現の画像化の確立
酒井宏一郎助教授(神経内科学)
腫瘍性小脳変性症の研究
(ポスドク1名;岩井淳)
ハイテク3
先天性代謝異常症の診断支援を目的とした全自動GC/MS装置の開発(H2001-3)
(班長;HRC運営委員会)
久原とみ子教授(人類遺伝学研究部門生化)
先天代謝異常症の診断支援を目的とした全自動GC/MS 装置の開発
新家敏弘助教授(人類遺伝学研究部門生化)
脂肪酸β-酸化障害の鑑別化学診断法の確立
福田雅隆助手(内分泌内科学)
糖尿病患者におけるACE 遺伝子多型と長期予後に関する研究
梶波康二助教授(循環器内科学)
冠危険因子としての女性ホルモン−ホルモン受容体系の意義
岡本晋弥助手(小児外科学)
正常下部腸管発生におけるSHHとHox遺伝子発現調節と直腸肛門奇形に関する研究
(ポスドク1名;大瀬守眞)
ハイテク4
女性生殖機能に及ぼすダイオキシン等の外因性内分泌撹乱因子の影響(H2001-4)
(班長;中川秀昭)
田中卓二教授(病理学Ⅰ)
内分泌かく乱物質の卵巣発がん修飾効果
甲野裕之講師(血清学)
内分泌かく乱物質の発がん修飾効果
大久保信司助教授(循環器内科学)
心筋虚血耐性によるアポトーシス形成抑制効果に対するgenisteinの影響
(技能員1名;山本外枝)
ハイテク5
男性生殖機能に及ぼすダイオキシン等の外因性内分泌撹乱因子の影響(H2001-5)
(班長;中川秀昭)
中川秀昭教授(公衆衛生学)
ダイオキシン暴露の母乳成分および免疫能に及ぼす影響
池田龍介助教授(泌尿器科学)
内分泌攪乱物質による性器催奇性と膀胱発癌における作用機序の検討
木越俊和教授(内分泌内科学)
アルドステロン合成および分泌に及ぼすダイオキシン類汚染の影響に関する研究
長尾嘉信助教授(難治疾患研究部門)
培養精子形成細胞に及ぼす環境ホルモンの影響
井上雅雄講師(共同利用部門)
ダイオキシンのマウス生殖細胞への影響
(技術員1名;俵 健二)
45
平成13年度 金沢医科大学奨励研究
平成13 年度金沢医科大学奨励研究が次のとおり採択された。本研究は、本学における研究の活性化と若手
研究者の育成を図るとともに、平成7∼11年度に実施されたプロジェクト研究(共同研究、高度先進医療に関
する研究を含む)の総括と発展的展開および新しい研究を育成することを目的として平成12年度に創設され、
今年度は次のいずれかの要件を満たした研究の中から、特に優れた16件の研究課題が採択された。
(研究助成課)
①平成7∼ 11年度プロジェクト研究(共同研究、高度先進医療に関する研究を含む)において顕著な成果
を挙げ、現在も研究が継続中で、さらに大きな発展が期待できるもの
② 上記①の研究と無関係であっても、最近優秀な論文を発表し、今後の発展が期待できるもの
③若手研究者(平成 13年4月1日現在で 40 歳未満)の萌芽的研究で、今後の顕著な発展が期待できるもの
〈40歳未満〉
三浦克之講師(公衆衛生学)
血清過酸化脂質と血圧との関連に関する大規模疫学研究(S2001-1)
吉谷新一郎助手(一般外科消化器外科学)
フェルラ酸及びその新規合成性誘導体による食道発がん制御(S2001-2)
日下一也助手(消化器内科学) 飲酒家における食道癌発生機序の検討:テロメラーゼ活性に及ぼす飲酒の影響(S2001-3)
山谷秀喜助手(腎臓内科学)
腎疾患の進展過程におけるFasおよびFasリガンドの発現(S2001-4)
島田ひろき講師(解剖学Ⅰ)
農薬パラコートの生体内解毒機構の研究(S2001-5)
塚正彦講師(病理学Ⅱ)
ゼラチナーゼ解析と循環器疾患再発および悪性腫瘍進展の予測・予防に関する研究(S2001-6)
北川泉助手(循環器内科学)
動脈圧波形による非侵襲的連続的末梢血管抵抗測定法の開発(S2001-7)
白塚秀之助手(麻酔学)
脳損傷に対する脳低温療法導入のための基礎的研究(S2001-8)
〈40歳以上〉
朝倉邦彦講師(微生物学)
吉岡 亮助教授(神経内科学)
佐久間勉助教授(呼吸器外科)
動物モデルを用いたヒトモノクローナル抗体による多発性硬化症治療法の開発(S2001-9)
cyclic AMP系のオリゴデンドログリアの細胞死に対する抑制作用の研究(S2001-10)
低酸素暴露が肺胞上皮細胞の水分再吸収機序とα-rENaCmRNA発現に及ぼす影響
(S2001-11)
松井忍教授(難治疾患研究部門) 心筋膜受容体に対する自己免疫機序による心筋症の発症・進展:自己抗体吸着療法の試み
(S2001-12)
石橋隆治助教授(薬理学)
血液中(全血)のN0x分布とその調節因子(S2001-13)
倉田康孝講師(生理学Ⅱ) アドレノメデュリンの心筋L型Ca チャネル電流並びに収縮張力修飾作用とその分子機構(S2001-14)
須貝外喜夫助教授(生理学Ⅰ)
副嗅球におけるオシレーション神経活動と細胞内Ca2+ 濃度変化の解析(S2001-15)
中野茂助教授(内分泌内科学)
糖尿病患者における早期動脈硬化病変と血圧日内変動異常との関連について(S2001-16)
46
平成12年度金沢医科大学
奨励研究・ハイテクリサーチセンタープロジェクト研究 発表会
平成 12 年度金沢医科大学奨励研究及びハイテクリサーチセンタープロジェクト研究発表集会が、平成 13
年2月9日(金)、10日(土)の2日間にわたって、基礎研究棟3階セミナー室において開催された。平成 12
年度から新設された奨励研究の 23 名の研究者から 21演題並びにハイテクリサーチセンタープロジェクト研
究(1)∼(5)の 25 名の研究分担者から 23 演題の計 44 題の発表があった。参加者は延べ 106 名で,昨年(3日
間)の 132 名より減少し、少し寂しく感じられたが質疑応答では活発な意見交換等がなされていた。研究助
成課の皆さんの協力および発表集会の座長を快諾された諸先生方のご協力を得て、発表集会は盛会裡に終
了した。
(平成12年度研究発表集会小委員会委員長 地引逸亀記)
◇奨励研究
座長:高瀬修二郎教授
動物モデルを用いたウイルス性脱髄発症の解析
トランスフェリン・レセプター2の発現とその病態との関連
ミトコンドリアの活性酸素障害を引き起こす新規酵素に関する研究
熱性けいれんの大家系における全ゲノム連鎖解析(ハイテク3)
Zymographyを用いた各種循環器疾患の至適薬剤選択のための萌芽的システム
腎間質虚血で惹起された酸化ストレスに対するMIF発現の意義
小渕正次助手(微生物学)
川端浩講師(血液免疫内科学)
島田ひろき講師(解剖学Ⅰ)
柿沼宏明助教授(小児科学)
塚正彦講師(病理学Ⅱ)
山谷秀喜助手(腎臓内科学)
座長:川上重彦教授
心筋におけるブラジキニン受容体の役割
術前前眼部構造からの白内障術後前房深度の予測と新しい眼内レンズ計算式の作成
急性肝障害患者における肝再生と末梢血幹細胞との関連についての研究
一般集団における高血圧発症予測因子としてのミクロアルブミン尿の検討
顎関節症の病態解明−患者検体における生化学的・組織学的研究−
性器催奇形性および膀胱発癌に関する検討(ハイテク5)
木村康宏講師(老年病学)
佐々木洋講師(眼科学)
福羅匡普助手(消化器内科学)
西条旨子講師(公衆衛生学)
金山景錫助手(口腔科学)
池田龍介助教授(泌尿器科学)
座長:友田幸一教授
肺全摘術後の肺胞水分再吸収機序に関する研究:肺胞Ⅱ型上皮細胞のリモデリングとα-rENaCmRNA発現に関して
佐久間勉助教授(呼吸器外科)
副嗅球オシレーション神経活動と僧帽細胞−顆粒細胞間相反性シナプス
須貝外喜夫助教授(生理学Ⅰ)
生体内での一酸化窒素(NO)関連物質の動態:赤血球内NO関連物質を中心として
石橋隆治助教授(薬理学)
冠危険因子としての女性ホルモン−ホルモン受容体系異常に関する研究
梶波康二助教授(循環器内科学)
小脳変性関連蛋白の機能の解析
酒井宏一郎助教授(神経内科学)
オリゴデンドログリアのapoptosisとその治療法に関する研究
吉岡亮助教授(神経内科学)
座長:地引逸亀教授
糖尿病患者における血圧日内変動異常の発現機序:インスリン抵抗性との関連について
中野茂助教授(内分泌内科学)
血小板活性化因子の心筋Kチャネル修飾作用:虚血・再灌流不整脈誘発との関連
倉田康孝講師(生理学Ⅱ)
Furanonaphthoquinone誘導体による肺癌細胞に対するFas受容体とアポトーシス感受性亢進
南部静洋講師(呼吸器内科学)
大腸癌進展過程における血管新生とその臨床的意義に関する研究
原田英也助手(一般外科消化器外科学)
食道の化学発癌に対する慢性アルコール投与の影響
島中公志助手(消化器内科学)
47
◇ハイテクリサーチセンタープロジェクト研究
座長:藤川孝三郎教授
多倍体化細胞形質変換の制がん医療への応用(ハイテク1)
多倍体化細胞形質変換の制がん医療への応用
藤川孝三郎教授(基礎医科学研究部門)
Meth-Aがん細胞の2倍体細胞と4倍体細胞株の細胞生物学的、生化学的比較検討
終末分化細胞における細胞周期の制御機構に関する研究
池田照明助教授(医動物学)
宗 志平助手(基礎医科学研究部門)
ヒト大腸癌細胞株から分離した転移誘導遺伝子の機能解析
太田隆英講師(病理学Ⅰ)
X線照射によるATM、p53の活性化におけるp53結合蛋白質、53BP1の役割
岩淵邦芳助教授(生化学Ⅰ)
座長:竹上 勉教授
遺伝子導入による細胞癌化の分子機構の解明および癌の遺伝子治療への応用(ハイテク2)
肝発癌に関わるC型肝炎ウイルスの蛋白NS3と結合する宿主蛋白
竹上 勉教授(熱帯医学研究部門)
消化管間質腫瘍と関連腫瘍におけるc-kit遺伝子変異の解析
野島孝之教授(臨床病理学)
アデノウイルスを用いたMIF遺伝子導入による糸球体腎炎の制御に関する研究
友杉直久助教授(腎臓内科学)
C型肝炎ウイルスコアタンパク質による二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼPKRの阻害 松井 理助手(生化学Ⅰ)
多剤耐性遺伝子のmRNAおよび抗癌剤耐性関連タンパク発現の画像化に関する研究東光太郎助教授(放射線医学)
座長:小野田法彦教授
先天性代謝異常の診断を目的とした全自動GC/MS装置の開発(ハイテク3)
ミトコンドリア遺伝子点変異を伴う糖尿病患者の予後:3年間の経過観察による検討福田雅隆助手(内分泌内科学)
G-CSFが果たすヒト卵巣機能における局所調節機構の解明についての研究
金子利朗講師(産科婦人科学)
座長:田中卓二教授
女性生殖機能に及ぼすダイオキシン等の外因性内分泌撹乱因子の影響(ハイテク4)
子宮内膜症の誘発及び発癌の修飾に関する研究
田中卓二教授(病理学Ⅰ)
内分泌攪乱物質による前立腺がんに対する影響
化学物質の作用機序の解明
化学物質による活性酸素生成を介する細胞毒性とその防御
甲野裕之講師(血清学)
村上 学助手(基礎医科学研究部門)
平井圭一教授(解剖学Ⅰ)
Ischemic preconditioning による心筋保護効果に対するtyrosine kinase inhibitor genisteinの影響
大久保信司助教授(循環器内科学)
座長:中川秀昭教授
男性生殖機能に及ぼすダイオキシン等の外因性内分泌撹乱因子の影響(ハイテク5)
母子の健康影響に関する疫学的研究
アルドステロン分泌に及ぼすダイオキシンの急性暴露の影響
培養哺乳類精子形成細胞への影響
マウス生殖細胞への影響
西条旨子講師(公衆衛生学)
木越俊和教授(内分泌内科学)
長尾嘉信助教授(難治疾患研究部門)
井上雅雄講師(共同利用部門)
48
トピックス ①
金沢医科大学病院公開パネルディスカッション
クリティカルパス ─その可能性と限界─
平成13 年2月 10日(土)の13:30から16:30、表記のテーマによる公開パネルディスカッションが金沢医科大学病院
主催のもと、C41講義室において開催され、招待講師、パネリストおよび出席者の間で熱心な意見交換が行われた。パ
ネルの内容はビデオ・オン・デマンドの形で3月16日まで本学のホームページからインターネット上に配信された。
(管理課小平俊行記)
基調講演
パス法の可能性と限界
聖学院大学教授 郡 司 篤 晃
私たちは十数年間、医療の質に関する研究会を組織し
て、そこから病院の第三者評価機構を産み出しました。
その後は、医療の質を管理する「パス法」の研究を続け
てきて、先般「郡司篤晃編:パス法−その原理と導入・
評価の実際−(へるす出版, 2000)
」としてまとめました。
きょうは、その総論部分を紹介します。
まず名称について、一般には「クリティカルパス」と
いう名前で知られています。旧い工程管理技法( C P M :
Critical Path Method)が医療に導入さたものですが、アメ
リカの医療関係者はCPMという名称に抵抗を感じていま
す。なぜならば、医療でcriticalとは「重症」
、pathは「小
道」でどちらの意味も印象が悪く、わざわざclinical pathway と言い換えているほどです。それを最初に作った看
護婦のカレンザンダーさんは“CareMap”と呼び商標登
録して、コンサルティング活動をしています。私たちは、
英語の言い方に関わらず、
「パス法」と統一して呼ぶこと
にします。
パス法の目的には「医療の効率の向上」と「医療の質
の向上」の2つがあります。工程管理におけるCPM には
「質の向上」の意味が含まれてなく、医療にはいってき
てから「質の向上」の意味が加わります。
ここで「効率の向上」とは医療費または病院経費の節
減を意味しますので、その背景に触れておきます。アメ
リカ政府は老人医療費の高騰に長年悩んできました。そ
して1983 年、Medicare(老人医療)
、Medicaid(生活保護
医療)にDRG (Diagnosis Related Group)を導入し、アメ
リカは医療費抑制に成功したのです。
DRGは診断名が決まれば病院収入が決まってしまうの
で、病院が利潤を求めようとすれば、経費削減のインセ
ンティブが働きます。実際には早く退院してもらった方
がよいことになり、アメリカの病院は40%が空床、60%
の利用率になってしまいました。そこで、工程管理の
CPM を医療に導入したらどうかということになり、カレ
ンザンダーさんたちの活動が始まります。
パス法の基本構造は、ある疾患について横軸に時間経
過をとり、縦軸にケア項目を展開して目標設定するもの
です。そしてパス法の問題はバリアンスの分析にありま
す。バリアンスの記録をとらないと改善もできません。
バリアンスとはパスに合わなくなることで、ザンダーは
「パスに概略示されている『患者と家族に期待される中
間目標・成果及びスタッフの介入』からの逸脱」と定義
しています。その原因は、患者側の要因、医療提供者側
の要因(休暇等)
、システムの要因(優先順位を決めな
い予約制等)の3つに大別されると言われています。ザ
ンダーは最近、最終目標から遡って日々の目標を決める
のがよい、その目標に向かって医療チームが協同して自
律的に介入して行くのがパスの本質だと言っています。
この部分は後で議論したら面白いと思います。また、も
うひとつの重要な点は、パス法に患者用のパスを作ろう
という考え方があることです。
私は、患者用の(イラスト入りのわかりやすい)パス
こそがパス法の核心のひとつであると思っています。と
いうのは、それが全面的なInformed Consentであるから
です。大きな侵襲がある検査や処置についてだけinform
するのではなく、退院までのプロセスを全て患者に説明
してしまう。それにより患者は退院後の予定を立てるこ
49
とができるし、自分が何を我慢しなければならないかを
知ることも教えてもらうことができます。患者用パスで
説明してしまうことにより、患者との間には透明性が生
まれ緊張感のある協働関係が樹立できるのです。それで
バリアンスが起こったら、それをちゃんと説明すべきで
しょう。その意味で、パス法は医療のパラダイムチェン
ジだと思います。いままでの医療は、医師の指示に全員
が従うというパラダイムでしたが、これからは、患者と
ケアチームが疾病の経過の理解を共有した協働の体制に
よる医療を行うのが新しいパラダイムであると思いま
す。
パス法はいろいろな形で展開可能です。たとえば、金
沢医科大学病院のように、電子化された最新マニュアル
は端末画面に表示されるでしょう。それから、どのパス
パネルディスカッション
クリティカルパスの可能性と限界
司会 松 田 芳 郎 (金沢医科大学病院クリティカ
ルパス実施検討委員会委員長)
最近の医療界では、クリティカルパスがブームで、当
病院でも内田健三病院長の指示によりクリティカルパス
実施を検討する委員会が平成12年4月に発足した。
この委員会でまずクリティカルパスの意義について討
論したが、なかなか委員の中でまとまりがつかなかった。
討議の中で問題になったのは、
1.クリティカルパスとは本来ネットワークプランニ
ング技法のPERT/CPM(Program Evaluation and Review
Technique / Critical Path Method)を用いて複雑工程を要素
作業の前後関係で整理し、標準作業時間と標準作業コス
トを勘案して求めた最適経路のことである。しかし、患
者の年齢、性別、既往歴、合併症、病態が多種多様で、
かつ常に臨機応変な対応が必要な病院の労働集約的診療
工程で、要素作業の標準データーとバリアンスは設定で
きるのか?さらに、臨床応用に耐えうるのか。
2.現在提唱されているクリティカルパスは標準診療
計画(標準治療計画、標準看護計画)を意味するだけ
で、PERT/CPMとは本来無関係ではないのか?
3.クリティカルパスは診療工程のツールという位置
を越えて病院管理経営のコンセプトを形成するところま
で拡大解釈されていないか?このようなことを第一線の
医師やコメディカルの医療スタッフに理解されるのか?
このような問題点について、郡司篤晃教授の基調講演
をお願いし、菅野由貴子さん、北陸地方でクリティカル
パスを最初に実施している黒部市民病院の今田医師を交
えてわれわれの考え方をまとめるためにパネルディスカ
ッションを企画した次第である。
が良いか客観的に判断するためには、証拠(Evidence)
が必要になります。だから証拠に基づいてパスを作るよ
うになって行くと思います。パスから外れた患者を集計
して行けばClinical Indicatorにもなります。
パス法の批判のひとつはCook Book Medicine であると
いうことで、医療は調理とは違うという批判です。不測
の事態に対し臨機応変に対応するのが医療であるという
言い方もできますが、決められたことをきちんとやるこ
とも重要ではないでしょうか。医療の標準化は不可能で
すが、ある程度はできると思います。問題は、全ての症
例が対象になるわけではないということでありますが、
これもいろいろな工夫があるようです。そうなるとパス
の概念とは何だろうということにもなりますが、いろい
ろな可能性があるということでもあります。
2月 10日には連休前にもかかわらず北陸3県から150名
の出席者があり盛会だった。各演者の要旨は別に出され
ているが、討論についてまとめると、まず郡司教授の基
調講演は、これまでの先生のお仕事のまとめを格調高く
講演され、前もってテキストが配布されていたこともあ
り、理解しやすく聴衆に大きな感銘をあたえた。
討論のなかで、クリティカルパスは、目標管理による
評価をどう臨床にいかしていけるかを考慮できることが
単なる標準治療計画とは異なることであるとの意見が大
半を占めたようである。クリティカルパスを応用できる
疾患はかなり限られているが、その評価を適切な時期に
適切な方法で行うことによってバリアンス発生を確実に
認識することができれば、多くの疾患に応用できるであ
ろうとの意見も多く出された。
また、このような認識をもつことによって、医療の質
の向上に役立つことが示され、医師やコメディカル教育
にも応用できる可能性も討論された。
クリティカルパス成功のコツは全職種の全員がクリテ
ィカルパスに理解を持ち、作成に参加することであるこ
とが、すでに実施中の施設の意見として強調された。こ
のことはこれからクリティカルパスを導入しようとする
当院への最大のメッセージであったと思われる。今回、
健康管理センターでの人間ドックに電子カルテを利用し
たクリティカルパスの試みが示されたが、郡司教授も当
院の電子カルテを利用すればクリティカルパスが容易に
実現できるはずとコメントされていたのが印象的だった。
討論はフロアをまじえ白熱しましたが、時間切れで終
わらざるを得なかったことを残念に思っている。このパ
ネルを通して、当院職員のクリティカルパスに対する考
え方は、郡司教授をして絶賛させるほどのレベルの高さ
であることが明らかとなったが、これからの導入には全
職員の協力が不可欠である。今後も委員会として皆さん
に働きかけ続ける努力を傾けるのでよろしくお願い申し
上げたい。
50
医療経済におけるCP
東京大学大学院医学系研究科 菅野
CP実践病院の立場から
由貴子
パス法の経済的効果には、①医療資源の有効利用─無
駄な検査が省かれる、薬剤及び材料使用量を節減できる、
器材の使用効率が向上する等、②在院日数の短縮─医療
費が節減される、病床回転率が向上する等、がある。
手術を要する患者の入院期間中には、手術後のケアが
進んで様態も落ち着いて、特に診療行為をせずに観察す
るだけの期間がある。
「在院日数の短縮」を考えるとき、
この医療費収入も多くを望めない観察期間を短くする、
或いは省くといった考え方もあるが、三つの視点①臨床
のスタッフの視点─医学的な治療が必要な期間と患者が
退院していくためのステップが正常に進行しているかを
専門性と責任をもって観察できる期間、②患者の視点─
医学的見地とは別に、患者自身が退院後の生活に自信と
安心を得られる期間、③病院経営の視点─病床回転率を
向上し、かつ、稼働率を下げずに収入増につながる期間、
これらを勘案して患者個々に「適正な入院日数」を考え
ることが必要である。
そうした中で「クリティカル・パス」は、自分たちの
病院のミッション・使命は何なのか、何をどこまで責任
を持って提供するのか、或いは自分たちが提供したい医
療は何なのか、を明確にするフレームワークとして用い
られる可能性がある。
医療の経済的評価のもう一つの側面に、医療の質は患
者が得た結果・病態を評価することで保証されるとした
Outcome思考がある。その示唆的な一つの方法がRadical
Outcome Method─ある期間と目標を定めてその間の目標
達成度を患者の状態・Outcomeから評価し、結果に基づ
いて、このまま継続するのか、或いは別の治療計画に移
るのかをフェーズ毎に分けてパスを乗り継いでいく方法
である。
「クリティカル・パスの可能性と限界」としては、①
ケア・ガイドラインの呈示─パス自体がケアの指標にな
り、スタンダードになる可能性もある、②スタッフ教育
─現任教育、新任教育に利用は可能だが、アセスメント
能力の向上に単独で役立てることは難しい、③継続性─
診療及び治療の継続性が重視され地域、外来、病棟の連
携が求められる中でパスをツールとして利用することが
できる、④評価及び評価に必要なデータの集積・・・フレ
ームを与えて同じ条件のデータを集めるとそれがエビデ
ンスとなるという意味でデータ集めのツールとして導入
するのも一つの方法である、⑤適正なケアの提供に適正
なコスト・・・必要とするケア及びコストを事前に明示する
フレームとして利用できる、が考えられる。その他、パ
スをよりよく活用する上で⑥コンピュータの活用、⑦職
種間での各職種の専門性の理解、⑧共通言語(患者⇔医
療スタッフ、医事⇔臨床)の共有、などが必要になって
くる。
黒部市民病院CP委員会(整形外科)今 田
光一
我々の病院では、1998年より導入計画を立案し、試行
を含めて約1年の過程を経て全科全部門同時導入を行っ
た。
立案に際しては、それまで導入を試みた多くの病院例
を綿密に調査し、できるだけ合理的、全院的取り組みと
して行うことを心がけた。
導入の目的に、
「CP 作成計画・組織編成・ CPの形式
をきちんと一致させること」が鉄則である。CPには、そ
の形式、その目的、その作成方法が多種報告されてお
り、新規に導入を図ろうとする時、その不一致によっ
て、これまで多くの病院で混乱が生じている。
最も多いケースが「チーム医療」という目的のパスな
のに、原案作成組織は看護部のみで、いざ話し合いに持
っていこうとすると「医師や他部門が協力してくれな
い」というものである。チーム医療を目的とするパスは、
その原案作り、CP に関する組織編成から、チーム体制
で行わなければならない。
当院では、これらを厳格に遵守する計画をたて、原案
から全体会議に至る1つのパスの製作過程では、全部門
で討論を行った。また、全てのパス製作で他科の意見、
新たな医療サービスを参画させた。
一方CPの形式は、
「情報の共有化」
「転記作業の廃止」
「日程の柔軟な変更」を目指した結果、多くのCP での一
覧表式ではなく、医師記録・看護記録・指示箋・検温グ
ラフ・部門間連絡表を包括する、独自の「オールインワ
ンパス」を開発した。
導入をより合理的、理論的に進めるためにはどのよう
なパターンであっても前記した鉄則が重要であると考え
る。そのためにも、職員サイドでの導入目的が何なの
か。すなわちチーム医療、入院日数短縮、コスト削減、
リスク回避のどれなのかを充分検討するべきである。1
つの目標で導入がなされると自然に他の効果も追随す
る。
参考)医療マネジメント学会雑誌 1(2)134-139,2000、
SEIKEIGEKA-KANGO 6(1)17-22,2001
臨床医から見たクリティカルパス
よりよい医療のためのIntegrated pathの提唱
金沢医科大学神経内科学 堀 有
行
勤務医から見て、臨床現場で直面する問題点としてあ
げられるもののなかで、パスに関連するものには次のよ
うなものがあろう。
1)在院日数短縮による医療不信。急性期の治療が終了
し、リハビリが主体になる時期の転院。あるいは看護度
が高いにもかかわらず、在院日数を理由に、その看護度
を維持できない病院への転院の勧め。
51
2)医療情報の分散化。紹介状のみの病診連携による同
一検査の繰り返し、 同一医療機関内の情報の分散化
(非効率)
。
3) 計画的診療に適さない疾患群の存在。特に高齢者
の場合、合併する疾患が多く、単一の疾患の診療行為の
みで一連の入院を終了できない。
4) 専門分化の弊害として、診療科ごとの独立した医
療プランによる病院全体としての計画性の不成立。
パスにおいてキーワードのような“入院期間(在院日
数)
”は、日本の患者さんにとって、保険がカバーする
限り、期間は問わないことが多い。特に高齢者では、介
護保険の活用を説明しても、病状の不安定性あるいは家
族への遠慮などから、早期退院は望んでいない。むし
ろ、家族に気兼ねすることなく食事を含めた身の周りの
世話が受けられる病院は快適にみえる。
厚生省は、
「医療技術評価」について検討した。これ
は、当該医療技術を適用した場合の効果・影響につい
て、特に健康結果を中心とした医学的な側面、経済的な
側面及び社会的な側面から、総合的かつ包括的に評価す
る活動である。国により、医療技術の評価の目的は、医
療費削減であったり、安全で有効な医療技術の普及であ
ったりする。日本の臨床医として「医療技術評価」に望
むことは、医療費の問題も理解できるが、それ以上に、
満足のゆく、計画性のある、質の高い医療をめざすこと
である。医療の質向上のためには、EBMに基づいた最良
の医療が必要で、さらに各施設でのEBMも重要となる。
標準診療ガイドラインは、最小限の資源で、EBMに基
づいた、最大限の医療を、全ての人が得られるようにす
るためのものであり、正しい「医療技術評価」が不可欠
である。
満足のゆく、計画性のある、質の高い医療を達成する
ためには、卒前卒後の教育、標準化ガイドライン作成、
および医療情報の共有化とチーム医療が重要な要素とな
る。この際、卒前卒後医学教育は、医師のみではなく、
全ての医療従事者に対して行なわなくてはならない。
忘れてはならないのは、「標準」とは「手本となるもの、
理想的なもの」であり、「普通の程度(妥協)」とならな
いようにすべきである。日本は、従来の様な画一的なパ
スではなく、問題点に応じて軌道修正できる、より充実
した医療を目標としたパス(integrated path)を目指すゆ
とりがまだあると思われる。
上、②スタッフ教育、③インフォームドコンセントを含
めたサービスの向上を掲げ、活動を展開してきている。
当院は大学病院・特定機能病院として、また地域の基
幹病院として存在しており、より高度な医療技術の展開
を望まれる傍ら、教育機関として、毎年多くの新人スタ
ッフを迎えながら看護活動を行ってきている。新人とし
て現場に配属されたその日から、今まで経験したことの
ないような現実に直面し、複雑なニーズを持つ患者に対
する判断や技術が要求され、様々なプレッシャーの中で
働かざるを得ない状況が必然となる。
そのような中では、標準化された基準・手順を活用す
ることで、経験の少ない新人看護婦であっても、安全性
を配慮した看護ケアを提供することができる。又、アセ
スメントツールを利用することで、同じ視点で観察を行
い、判断・評価につなげることができる。すなわち、新
人看護婦であっても科学的な根拠に基づいて、看護活動
を展開することができることを期待している。
一方、経験を積んだ看護婦はクリニカルパスを活用し
看護を提供する中で、EBN の立場からバリアンスの分析
を行い、ひいてはさらに掘り下げた研究活動につなげる
ことで、質の向上をもたらす結果が得られる。
患者さんへは、対応する看護婦の経験や知識レベルに
関係なく、均一化した看護の提供ができ、又、看護婦自
身には、EBNに基づき看護を展開する能力が身に付く場
となり、スタッフ教育の場となって、専門性の維持と向
上をもたらす結果になる。
さらに、クリニカルパスを、患者さんに十分な説明を
行い、同意を得るための情報提供の道具として使用する
ことで、診療過程が明確になり、患者さんと目標を共有
し取り組め、顧客としての患者さんの満足度を高めるこ
とにもつながります。そして、そのことが、働くスタッ
フの職務満足にもつながり、達成感となり、働く意欲や
職場の業務改善などの前向きな行動につながっていくと
考えている。
クリニカルパスを導入していく際には、他職種の方と
の連携が非常に重要になってくると感じている。より専
門的立場からの見解をあわせて、パスの作成を行ってい
くことで、役割分担が明確化し、無駄が省かれ、チーム
医療が確立し、効率的な医療の展開につながるに違いな
い。
クリニカルパスを作成していく際には、多大なエネル
ギーと多くの連携が必要とされるが、患者さんに一番近
いところで、共に感じあったり、考えあったりできるこ
とに喜びを感じたいと思っている。
看護婦の立場から
金沢医科大学病院12FB看護婦 瀬戸
奈穂美
看護部では、平成 11 年度より、婦長会・主任会を中
心に、クリニカルパス導入に向けての準備、検討をかさ
ね、各フロアで看護基準・手順を作成し、患者指導要綱
を整え、婦長会・主任会で作成されたパスや、アセスメ
ントツールの紹介や研修報告を行っている。そしてクリ
ニカルパス導入の目的として、①専門性の維持と質の向
医療経済の角度から見たCP
金沢医科大学病院健康管理センター看護婦
山田千恵
わたしはクリティカルパス(CP)について、医療経済の
角度から多面的にとらえ整理してみた。マクロ経済すな
52
わち国の GDP に占める国民総医療費の割合は、年々増
加の一途を辿っている。そして、医療費の抑制・削減が
急務であることから、医療制度上で DRG/PPSの導入が
検討されはじめている。それを受けて、地域医療機関に
おいても医療の標準化が求められてきた。すなわちミク
ロ経済の面でも、病院機能整備が必須であり、それぞれ
の病院でも収益確保の手段としてCP の導入が望まれて
いる。CP は本来、診療業務の計画、記録等の標準化に
より、医療のサービス向上とコスト(在院日数)の低減
をはかる技法である。よってCPは、病院経営改革(リ
エンジニアリング)の考え方を実践するのに適している
と考えられるが、その意味を理解してCPを作成・実践
することは難しく、単なる標準治療計画あるいは医療ス
タッフの教育の目標に留まっているように思われる。
つぎに、わたしの職場である健康管理センターの視点
でCP をとらえてみる。主業務である人間ドックは保険
外の診療であることから、医療経済の中では自由経済市
場にあると考えられる。当センターのスタッフは、
「人・
物・金」を適切に配分して診療時間の節約をと診療業務
の効率化をはかりながら、質の高いサービスを提供して
いる。入院健診のコースは医療費の定額前払いDRG/PPS
に相当する。また、クライエントの健診スケジュールは、
電子カルテシステムで諸検査の予約と実施、記録の標準
化をはかりながら、医療サービスを提供するもので、本
来のCPにとても近いと思われる。
その意味で、CP はチーム医療を具体的に実践する方
法のひとつだが、それを一般患者の入院診療(特に看護
ケア)に応用するためには、診療業務全体をマネジメン
トできるコーディネータを中心に展開されるべきだと考
えられる。
コメディカルからみたクリニカルパス
金沢医科大学病院中央臨床検査部技師長
百 成富 男
医療経済の国家的課題として「医療費の抑制」
、一方
国民は「より良質な医療」を望んでいる。この低コスト
で良質な医療を確保するために、医療を提供する病院や
研究機関を中心に、クリニカルパスの導入事例を見聞き
する機会がここ数年多くなった。事例の多くは、入院し
た患者が最短のコースで退院できるように、医療スタッ
フが作成した「プロトコール」から実践したものである。
その成果と今後の課題として使われるキーワードは「診
療の標準化」
、
「チーム医療」
、
「DRG/PPS」
、
「インフォ
ームドコンセントの発展型としのカルテ開示」
、
「医療資
源の共有化」
、
「EBM」
、あるいは「病院経営」等がある。
コメディカルといっても、医師・歯科医師を除く医療
従事者および福祉従事者の資格制度は、増加の一途をた
どっており現在 20を超えます。当院でも 10 を超える専
門職の方々が業務を行っており、専門職であるがゆえに
クリニカルパスへの関わり方に特性があると思う。
私の専門の臨床検査では、検査の標準化による検査デ
ータの施設間相互の共有やEBM(根拠に基づく医療)の
前段階としてEBD(根拠に基づく診断)ということが提
唱されている。また、DRG/PPSに関しては、平成12年
4月の保険改正で特定機能病院の入院検査料は限りなく
PPS方式に近いものになっている。
当院でも、特徴を生かして出来るものからクリニカル
パスを導入していくことで、コメディカルの医療への参
加が加速され、より効果的な「チーム医療」が可能にな
ると思う。そして、
「低コストで良質な医療の提供」に挑
戦すべきと考えている。
経営工学から見たCP
金沢医科大学病院情報システム調査室
大石勝昭
クリティカルパス法(CPM)とは、経営工学における工
程管理の一技法で、診療過程に転用された。生産工程と
診療過程には相違点と共通点がある。相違点は、工業製
品には競争原理が働いているのに対し医療サービスの競
争は地域に限定されていること、製品価格が自由経済で
決まるのに対し医療価格は保険診療という統制経済で決
められていることなどである。共通点は、生産工期短縮
と在院日数短縮により費用を削減しようとするところで
あろう。 生産工場の総合品質管理技法(TQM)の考え方
は、病院のCPM の考え方に似ている。TQM、CPMのい
ずれも高品質、高能率、低原価という概念が含まれてい
るところから、組織の経営改革(リエンジニアリング)
の方法になると拡大解釈されている。生産工程のCPM で
は、標準の作業工程、作業人員、作業時間、規格品質等
が必要不可欠の条件だが、その方法原理は当然、病院の
CPMにも適用される。ところが、工場は全体の生産計画
をスケジュールしているのに、病院では一部の診療計画
しかスケジュールできない。ということは、病院では部
分的なクリティカルパス(CP)を優先順に積み重ねても全
体の診療計画にはなり得ないし、全体の診療活動から影
響を受けるバリアンスから特定部分のCP標準を補正して
行くことが難しいことを意味する。
病院の CPMが、経営管理技法から組織活性化の精神
論へ逸脱して行く過程には、原理的な問題が内在してい
るが、そこを通過しなければ「クリティカルパスの可能
性と限界」は明確にならない。一般に原理的に無理なこ
とは、コンピュータシステムで情報処理の仕組みを作っ
ても運用できない。病院が電子カルテシステムにCPを組
み込む「可能性と限界」を検討するときは、システム工
学の原理的な考え方を加える必要があると思う。
53
トピックス②
第16回教育懇談会・セミナー
テーマ
医学生のための医療面接
講 師 藤崎和彦先生(奈良県立医科大学衛生学)※
日 時 平成13年2月20日(火)13:00∼17:00
医学部教育6年間で“良き臨床医”の基礎を築
くには、どのような教育プログラムがよいのか。
今、世界中の医学教育担当者たちはこの基本的な
問に対して、各医科大学・医学部の命運をかけた
様々なカリキュラムを工夫し実行している。その
教育の手段や方法の中には、少数人数教育(Small
group teaching)、問題立脚型学習(PBL:Problembased learning)、 臨 床 実 技 試 験 ( OSCE:
Objectively structured clinical examination)、模擬患
者 (SP:Simulated patients)などのように、すでに
本学で導入あるいは導入が計画されているものが
ある。今回の教育懇談会では、この中から、OSCE
がテーマとしてとりあげられた。本学で初めての
実施となるこのOSCEは、3月3日に実施が予定さ
れていたので、今回の講演は4年生と教員に対す
るオリエンテーションの意味をもっていた。
講師の藤崎和彦先生は、医療面接の分野で今や
超売れっ子の先生で、講演の予約を取るのが非常
に難しく、今日に至った次第である。北海道大学
医学部をご卒業後、大阪大学医学部衛生学教室を
経て現職にお就きになり、10年前に日本で初めて、
患者の側から医療を考える団体「ささえあい医療人
権センター・コムル (COML:Consumer Organization
for Medicine and Law)」を設立され、日本医学教育
学会でのワーキンググループの一つである「SP養
成者教育」の主任としても活躍なさっている。
当日の聴衆は、本学第1回の OSCE を受けよう
とする4学年全員および教員56 名で、本部棟4階
の講堂は、藤崎先生の講演とそれに続いて行われ
た医療面接の実技で熱気に溢れた。
※現在、岐阜大学助教授、岐阜大学医学部医学教育開
発研究センター所属
藤崎和彦先生(奈良県立医科大学衛生学)
<タイム・スケジュール>
藤崎先生から学生に配布されたタイム・スケジ
ュールは、以下のような内容であった。
13:00 オリエンテーション
13:20 実習1:ロールプレイ
シナリオ配布・患者イメージ作り(14分)
セッション(12分)
フィードバック(16分)
気づいたこと・感じたことをメモ(1分)
医師役フィードバック(2分)
作戦は?うまく行った点・駄目だった点
シナリオ交換(2分)
患者役フィードバック(2分)
気持ちは?嬉しかった点・悲しかった点
14:20 講義: コミュニケーション・スキルのチェック・
ポイント
14:45 グループ分け、グループ代表選び
14:50 休憩
15:00 実習2:トレーニング・セッション
グループ別作戦会議(10分)
何に気をつけてコミュニケートするか
セッション
症例1(8分)
、 症例2(8分)
グループ別ふりかえり(10分)
注意点をうまくコミュニケートできたか
全体フィードバック(25分)
16:30 全体ふりかえり
17:00 終了
54
SPと学生代表による医療面接の実際
このスケジュールを見てまず気づくことは、①
時間表が詳細に設定されているので、各学生がこ
れから何をすればよいのか理解できること、②担
当者がその時間に学生に何を求めているのか推測
できること、③個々の行動についてフィードバッ
クの時間が確保されていることなど、まさに講義
をする時のお手本というべきスケジュールである。
キッチンタイマーを首からぶら下げた藤崎先生
は、
「はい、始めてください」
、
「はい、終わりです」
など学生の行動の区切りを明確につけ、学生は合
図に従ってスムーズに行動していた。
以下、藤崎先生のセミナーの模様を報告する。
<オリエンテーション>
まず、
「問診」と「医療面接(medical interview )」
との違いについて説明があった。従来使われてい
た「問診」という用語は、
“医師が診断する”ため
の情報の収集であって医師に必要な情報を医師の
側のテンポで、患者に訊くことが中心であった。
これに対し、1 9 7 0 年代から欧米で使われ始めた
「医療面接」という概念では、その主役はあくまで
も患者であり、患者の問題を解決するための情報
を収集することを目的とする。さらに情報収集と
いう過程を利用して、患者と医師の信頼関係を築
くためのコミュニケーションを確立し、患者自身
が自分の治療に参加するための情報を提供するこ
とをも目的とするようになっている。
医療面接は、医師からの挨拶・自己紹介・患者
の確認から始まり、今後の医師側の予定および医
師との接触方法の明示(open-the-door technique)
に終わる。その過程における医師側のチェック・
ポイントは、共感的なコミュケーション技法、適
切な傾聴態度と十分な情報収集、患者への説明と
患者教育、患者が示した心理的・社会的問題に対
学生たちの作戦会議
する適切なマネジメントおよび問題解決などであ
る。ここで明らかなように、医療面接の訓練にお
ける最も重要な要素はまずコミュニケーション・
スキルの修得である。
<実習1:ロールプレイ>
学生は2人1組となり、2例の想定患者につい
て、それぞれ患者役と医師役になり医療面接をそ
の場で体験した。患者1は 38 歳の男性で会社員。
胃癌と診断されたが、患者には胃潰瘍と説明され
ている。2週間前に手術を受け、術後経過は良好。
最近食欲がなく退院予定も決まっていないので、
患者は胃癌を疑っている。今日の昼食もほとんど
食べていないという看護婦の説明を聞いてから、
医師が患者に会うという設定。一方、患者2は75
歳の女性。元助産婦で一人暮らし。末期の膵臓癌
で痛みのコントロールは不十分。黄疸が強く腹水
も見られる。この患者にこれから会いに行くとい
う設定。
医師役と患者役のロールプレイを終了した段階
で、患者役および医師役の学生の感想をお互いに
述べ合う時間がとられた。
<講義:コミュニケーション・スキルのチェ ッ
ク・ポイント>
ロールプレイで体験した胃潰瘍と説明されてい
る胃癌の患者および末期膵臓癌の患者を例に挙げ、
患者とのコミュニケーションのとり方についての
要点がまとめられた。「傾聴」ということの重要
性、患者の言うことを黙って“聞く”ことは、す
なわち“ケア”の重要な部分であることが強調さ
れた。次いで、患者とのコミュニケーションを成
立させるためのスキルがまとめられ、相づち・オ
ウム返しなどの言語に関する技法、視線・姿勢・
身ぶりなどの非言語に関する各種の技法が具体的
55
に述べられた。これらは患者対医師のみならず、
人間のコミュニケーションそのものの基本であり、
これまでの医学教育の中で軽視されてきた部分で
ある。先日、正式に公表された医学教育モデル・
コア・カリキュラムの中にも、カリキュラムの基
本的事項として明示されている。
<実習2:トレーニング・セッション>
実習を行う前に、藤崎先生から簡単なオリエン
テーションがあり、その中では模擬場面であるこ
とにこだわらず自由に自分を表現することの重要
性が強調された。このオリエンテーションで、学
生たちは、人前で実習することが決して恥ずかし
いことではないと保証されたわけである。また、
聴衆である学生たちにも“観る”際のマナーが明
確に説明された。
その後、大阪SP 研究会から来ていただいた模擬
患者お二人と選ばれた2名の医師役学生が、壇上
で実際の医療面接実習を披露した。患者に関する
情報は聴衆にのみ知らされ、医師役の学生にはま
ったく提供されていない。患者1は、一過性脳虚
血発作あるいはてんかんが疑われる 57 歳の女性。
意識消失発作を訴えて、総合病院内科外来を初診
した。必要な検査は脳MRI ・CT、脳波、心エコー
などで、診察所見は異常なし。また患者2は、す
でに他院で過換気症候群と診断されている58 歳の
女性。同じく総合病院内科外来を初診。身体所見
藤崎和彦講師によるオリエンテーションの風景
異常なし。このお二人の模擬患者を相手に、出席
者全員の見守る中で学生代表はよく健闘した。
模擬医療面接の終了後、学生同士が感想を述べ
合うフィードバックの時間がとられた。次いで各
模擬患者の方からのフィードバックがあり、
「話し
を聞いてもらえた」
、
「話しやすい先生だった」な
ど学生を鼓舞する言葉を聞くことができた。学生
を決して傷つけず、代表となったことの勇気を認
めるこのような言葉は、出席した教員にも大いに
参考になったと考えられる。
以上、セミナー形式で行われた第15回教育懇談
会の内容を簡単に紹介した。学生の注意を引きつ
ける藤崎先生の話術もさることながら、予定の明
示、要点を強調したオリエンテーション、学生の
準備時間の確保、フィードバック時間の確保、ま
とめとしての学習内容の確認など、詳細なプログ
ラムを事前に提示することは、講義計画を立案す
る上で、出席した教員にとっても大いにプラスに
なったと思われる。何よりも学生たちからの「講
義がみなこんなに面白かったらよいのに」
、
「ぜん
ぜん眠くなかった」
、「もっと聞きたい」という声
はこの講演の魅力を端的に語っていた。
(医学教育学 相野田紀子記)
56
病 院
第19回 北陸腎移植連絡協議会
第6回東海北陸ブロックセンター北陸連絡会
平成13年3月 31日(土)
、ホリデイ・イン金沢にお
いて第19回北陸腎移植連絡協議会(委員長:石川勲
北陸腎移植HLA 検査センター所長)が、60 名の出席
のもとに開催された。
この協議会は、北陸三県の厚生行政機関、医師会、
医療機関及び腎臓バンクが十分な連携と調整を行い、
慢性腎不全患者に対する腎移植医療の確保と円滑な
推進を図ることを目的として、昭和59年度に北陸腎
移植センター(現北陸腎移植HLA 検査センター)設
置と同時に発足したもので、毎年定期的に北陸腎移
植HLA 検査センターが主催者となって開催されてい
る。
平成 10 年からは従来の協議会のメンバーに加え、
石川県臓器移植情報担当者連絡会議(石川県の27 医
療機関に設置された医師及び看護婦等の臓器移植情
報担当者、行政機関の担当者等で構成)のメンバー
が参加し、医師、看護婦、コーディネーター、検査
技師、腎臓バンク等それぞれの立場から献腎移植の
現状報告や問題点などについて討議がなされた。
本学病院は、石川、富山、福井の北陸三県と愛知、
岐阜、静岡、三重県で構成する「社団法人日本臓器
移植ネットワーク・東海北陸ブロックセンター」の
一員として北陸三県の組織適合性検査を行う指定
HLA 検査センターを設置するとともに、一方では、
北陸の中心的役割を果たす移植実施施設として位置
付けられており、現在までに生体腎移植203 例、死体
腎移植42 例、合計245例の腎移植が実施されている。
協議会の後、浜松医科大学泌尿器科学鈴木和雄助
教授による「静岡県におけるドナーアクションプロ
グラムについて」と題した移植教育講演会が60 名の
出席のもとに開催された。講演では、静岡県におけ
るドナーアクションプログラム(死亡例がなぜ臓器
移植に結びつかなかったか、あるいは結びついたか
を検証する研究調査)について、同プログラムの導
入から現在に至る経緯等をスライドを用い興味深く
話され、出席者は熱心に聞き入っていた。
(管理課 南英樹記)
57
接遇に関する講演会
講師:高橋啓子氏(日本総合研究所主任研究員)
病院職員を対象とした接遇に関する講演会が平成
13年2月9日(金)午後5時 30分から、昨年と同様に
日本総合研究所主任研究員の高橋啓子氏を講師にお
招きして病院4階C41講義室において開催された。
開催に先立ち、高島茂樹副院長から「近年全国的に
医療事故・医療トラブルが多発しており、本院にお
いてもいくつかのトラブルが発生しているが、そのト
ラブルの原因の多くは、患者さんやご家族とのコミ
ュニケーションの不足にあったもので、接遇の欠如
によるものである。本講演会を通じて、職員一人一
人が患者接遇の重要さを、改めて考えていただきた
い」との挨拶がなされ、接遇教育委員会の鮴谷佳和委
員長から講師が紹介され、講演がはじまった。
講演は「医療CS の実践:選ばれる病院サービスと
は」と題して病院全職員を対象として行われ、243名
が参加した。
その中で、①病院を取り巻く状況、②医療サービ
スの特徴、③患者の期待は、④サービス提供者に求
平成12年度
臨床研修医研修修了証書授与式
高橋啓子主任研究員
められるもの、⑤出会いの決定的瞬間をよくする接
遇応対など、医療機関での接遇の重要さを、データ
および事例をふんだんに盛りこんだ講演となり、約1
時間半の講演は瞬く間に過ぎていた。
病院管理運営にとって接遇ということが如何に重
要であるかを再認識できたよい機会であり、顧客満
足(Customer Satisfaction:CS)の考え方が患者さん
中心の医療を支えることなどが印象に残った。
今後の本院のさらなる発展のためにも患者さんに
対する心の通った接遇応対のあり方、重要性があら
ためて認識させられた有意義な講演内容であった。
(管理課 中新茂記)
今年度の臨床研修修了者は13名で、内田健三病院
長から修了証書が授与されたあと「この2年間の臨床
研修を行なった貴重な経験を生かしてさらに自分の
目的に向かって研鑽して下さい」との言葉があった。
なお、研修修了者の進路は本学病院8名、他の医療
機関3名、大学院2名となった。(管理課中谷一也記)
臨床研修修了者氏名
秋谷 進
緒方 肇
小林 晋
斉木 臣二
南野 壽利
西川 雄希
田 和也
丸山 秀道
盛田 英樹 平成 12年度臨床研修医の研修修了証書授与式が、
平成13 年3月 14 日(水)14 時 30分から病院本館4階
会議室において行われた。
後藤 哲郎
辻 智成
西夛 直規
宮崎さつき
以上13名
58
療養型病棟勉強会
─起居移動動作の自立を目指して─
講師:茅野慎一 (リハビリテーション部理学療法士)
リハビリテーションというと訓練やマッサージを思
い浮かべる人も少なくないようであるが、実際は患
者の「全人間的復権」を目的とし、理学療法士や作
業療法士だけでなく、医師をはじめ看護婦、および
看護助手、言語療法士、ソーシャルワーカー等多職種
によりチーム医療として行っていくものである。
患者の「できるADL」と「しているADL」の格差
が、患者の自立を目指した治療を行っていく上で大
変大きな問題となっている。それを解決するために
は各専門職が十分専門性を発揮し、またそれぞれの
職種について理解を深めていくことが重要だと思わ
れる。
今回、起居移動動作という、人が生活する上で必
要な基本的動作について取り上げたが、訓練室と病
棟での起居移動動作の格差を埋め、患者の自立に向
けてチームアプローチを行っていく上で大変有意義
な勉強会であったと思われる。
(リハビリテーション部茅野慎一記)
平成 13 年2月 19 日(月)、3月5日(月)および
26 日(月)の3回にわたって、起居移動動作勉強会
を開催した。
リハビリテーション医学では、患者のADL(activity of daily living)及びQOL の改善を第一の目標とし
ている。その中でも寝返り、起き上がり、立ち上が
り等の起居移動動作の改善は、自立した生活を達成
する上で不可欠なものである。患者のリハビリテー
ションには訓練室での訓練はもちろん、それを病棟
で生かし、さらにその後の生活に生かしていくこと
が重要である。
本勉強会は、6階療養型病棟看護婦およ
び看護助手を対象とし、患者の自立に向けて
の起居移動動作について理解し、実践するこ
とを目的として行った。
第1回は移動動作について力学的側面・
神経生理学的側面・運動学的側面・介護学
的側面・心理学的側面から講義を中心に行
い、第2回・3回では実技を中心に、寝返
り・起き上がり・立ち上がり・移乗動作・環
境整備までを取り上げた。
17 時 30 分からの開催にもかかわらず、3
回にわたり延べ 70 名の参加があった。参加
者は実に熱心で、介助方法や実際に困ってい
ることなどについての質問も多く、逆に教え
られることも少なくなかった。
リハビリテーション第一訓練室での講義風景
59
金沢医科大学
肝移植友の会発会
金沢医科大学で治療を受けていた胆道閉鎖症の一
人の女の子が肝不全に陥り、肝移植が必要となって
小児外科教室の北谷秀樹助教授らのご尽力で移植を
受けるためにオーストラリアへ渡ったのが13 年前で
した。その後、生体肝移植が始まり日本でも肝移植
が受けられるようになり、北陸の子供達も外国へ行
かなくても移植医療が国内で受けることができるよ
うになりました。金沢医科大学からも肝不全状態の
ため何人かが京都大学や信州大学で移植を受け、そ
の子供達も今では元気に成長し小学校、中学校、高
校に通っています。その間、移植医療も急速に進歩
し保険診療で受けられるようになって全国各地で行
われるようになりました。移植施設も40施設を超え、
北陸では1997 年に小児外科学教室の伊川廣道教授が
就任され、本学を北陸における肝移植医療の拠点と
するべく準備を始められて、1999 年4月北陸初の生
体肝移植を4歳の胆道閉鎖症女児に行いました。そし
て2001年3月までの2年間に 12 例(成人5例、小児7
例)の方々が金沢医科大学で肝移植手術を受けられ
ています。
北陸において肝移植医療が受けられるというのは
経済的な面のみならず精神的、肉体的なメリット、
さらには家族のサポートという面からも計り知れな
い利点があります。移植医療というものは単に周術
期をみるのみならず術後における免疫抑制療法、感
染予防など多岐にわたることに細心の注意を必要と
します。成長期、思春期を迎える子供達は本人はも
とより家族にとっても不安の多い時期です。また最
近では成人に対する生体肝移植も積極的に行われる
ようになり、その適応、周術期、術後フォローは小
児とはまた違ったニーズがみられます。以上のよう
な背景から1998 年8月に“肝移植外来”が小児外科
外来の特殊外来の一つとしてスタートしました。
この外来には移植を受けた患者さんはもちろん、
肝臓に疾患を持っている患者さんを広く迎えて、一
人ひとりの患者さんの要望に応えることを目的とし
ています。現在他施設で移植を受けた方を含め22名
(成人7名)の肝移植を受けた患者さんが通院してお
り、本人及び家族に対してできる限りのバックアッ
伊川廣道教授の開会の挨拶
プを行うようにしています。さらに移植が必要では
ないかと心配されている方々、またその家族も多数
来院されています。最近では他の病院で治療は受け
ているのだが移植が必要かもしれない、ないしは必
要であると言われたが実際に肝移植医療とはどのよ
うなものなのであろうかという質問が相次いでみら
れるようになってきました。実際には、はじめての方
が外来に訪れることも少なくありません。また外来
で日々接している患者さんからも学校の問題、家族
での旅行やその他様々な日常生活の中での疑問点や、
実際に他の人々がどうされているのか意見の交換の
場、交流の機会があればとの要望が聞かれるように
なり単に、治療のみならず日常の様々なことに対す
る要望が急増してきました。
こうした背景から次なるステップとして生まれた
のが「肝移植友の会」です。この会は小児外科学教
室を中心として病院の各部門、すなわち薬剤部、検
査部、輸血部、看護部、口腔外科、麻酔科、耳鼻科
をはじめ肝移植に関連する各部門から構成されてお
り、実際第1回の会では各部署から様々なアドバイス
を頂くことができ非常に有意義なものとなりました。
会の発足にあたっては子供達の学校のことも考慮し
春休み時期、すなわち新学期前が会を行うのに適当
であろうとの結論から、企画から第1回開催まであわ
ただしいスケジュールとなりましたが、学長、病院長
をはじめ病院幹部、大学からも応援、エールをいた
だき経済的にも助けていただいたことに非常に感謝
しています。
第1回肝移植友の会は平成 13 年3月 18日に全日空
ホテルで開催されました。移植を受けた患者さんお
よびその家族約40 名と病院の各関連部署から約50名
の総勢90 名もの多くの人が集まりました。まずアン
60
アンサンブル金沢による演奏
サンブル金沢のハープとフルート演奏のあと、伊川
教授から開会の挨拶をいただきました。そして本学
の移植医療のスタートに多大な援助をしていただい
た京都大学移植外科の上本助教授にも特別講演をし
ていただきました。先生からはお祝いの言葉ととも
に成人症例に対する生体肝移植の現状、特に肝炎と
肝癌に対する移植についてと小児に対する肝移植に
おける免疫抑制剤完全離脱の可能性と実際について
約1時間にわたり最新のデータを中心にお話を伺いま
した。その内容は非常に興味深いもので成人肝疾患
に対する集学的治療という観点から近未来の治療方
針の一端をみせていただいた感がありました。
患者さんの家族や子供達の反響は想像以上のもの
がありました。それぞれの地域では移植を受けた方
はもちろん周りにたくさんおられるわけでもなく、日
常のことを相談する機会がほとんどないのが現状で
したので、会に参加して同年代の子供を持つ家族も
少なくなく様々な意見交換を行うことができたと多
数の家族から喜びの声を聞くことができました。子
供達は同年代が多いこともあって会場の一角にもう
けられたプレイコーナーではしゃいで楽しい時間を過
ごすことができたようです。子供達の遊び相手をし
てくださった多数の看護部スタッフにはこの場を借
りてお礼申し上げます。
最後に、胆道閉鎖症を守る会の北陸支部会長斉藤
厚一さんから患者さん同士の交流を深めると同時に
患者さん一人一人が会の充実に手助けしていきまし
ょうとエールをいただきました。更なる充実に向け
てインターネット・ホームページの作成などこれから
が本当の意味での会のスタートであり、今後とも多
数の方々の援助のもと努力していきたいと思ってお
ります。
(小児外科学岡島英明記)
平成13年度
病院新入職員オリエンテーション
平成 13 年度第1回病院新入職員オリエンテーショ
ンが4月2日(月)∼4日(水)の3日間にわたって、
病院4階C41講義室において次のとおり実施された。
今年度の病院新入職員は、看護婦69名、技術職員
10 名の79 名である。
(管理課 中谷一也記)
<プログラム>
4月2日(月)
会場 本部棟4階講堂及び本部棟講義室
8:45 ∼ 9:45 各種説明(人事厚生課)
10:00∼10:30 辞令交付式
10:45∼11:30 福利厚生制度の説明(人事厚生課)
11:30∼12:15 提出書類の説明(管理課)
会場 病院4階C41講義室
13:00∼13:30 内田健三病院長挨拶
大学の概要と組織について(荒田満法人
事務部長)
13:30∼14:00 病院の概況及び病院勤務について(中農
理博病院事務部長)
14:00∼14:45 講演「一人暮らしの食生活について」
(河
原美智代栄養課長代理)
15:00∼15:45 安全運転交通事故の常識
15:45∼16:30 銀行振込等の説明
16:30∼17:00 各種事務手続き説明(管理課)
4月3日(火)
会場 病院4階C41講義室
8:45∼ 9:30 診療業務の留意事項と安全管理体制指針
について(高島茂樹診療部長)
9:30 ∼10:15 就業規則の説明(人事厚生課)
61
10:30∼11:30
11:30∼12:15
13:00∼13:45
13:45∼14:45
15:00∼16:15
16:15∼17:00
第18回
病院の諸規程・防災・院内感染・医療ト
ラブルの届出・職員駐車場使用について
(管理課)
ネームプレート用写真撮影
火災等の災害予防について(内灘消防署)
患者さんの受診システムについて(医事課)
オーダリングシステム等診療システムにつ
いて(医療情報部)
接遇の基本について(管理課)
緩和ケア研究会
テーマ:産みのコントロールにおける看護婦の役割
講 師:北野真実氏(金沢済生会病院看護婦)
平成 1 3 年 3 月 2 1 日
(水)午後5時 3 0 分か
ら、本学病院4階 C 4 1
講義室において、第18
回緩和ケア研究会が行
われた。今回は今年度
企画の最終回で、がん
認定看護士を招いての
講演会であった。講師
北野真実看護婦
は金沢済生会病院看護
婦の北野真実姉で「痛みのコントロールにおける看
護婦の役割」についてお話いただいた。北野姉は、
以前に当病院に勤務されていたが、神奈川県の看護
大学において緩和ケアについて勉強され、卒業後同
県下のホスピスに勤務されたが、今年から石川県で
勤務されることになった。講義内容は実践を踏まえ
た迫力があるもので看護の立場からとても分かりや
すいものだった。
ペインコントロールについて、全人的な痛みの捉
え方、看護婦としての知識と対応技術、人間性につ
いてお話いただいたので簡略に記載する。
「痛みはその人だけが分かる主観的なものであり、
身体的、精神的、社会的、霊的痛みがある。それら
は単独でなく、相互に関連し合い、絡み合って痛み
として表現される。がんの場合は、慢性的でいつ終
えるとも知れない持続的な痛みであるがゆえに痛み
がコントロールされないと、睡眠不足、食欲不振を
繰りかえし、精神的にも不安定となってついには人
格さえも変えてしまうことになる。
4月4日(水)
会 場 病院4階C41講義室
8:45 ∼ 9:10 院内防災設備について(設備課)
9:10 ∼ 9:45 院内防災設備の現場確認(設備課)
10:00∼11:15 消火器取扱訓練(大学裏グラウンド)
(管
理課)
11:15∼11:45 ツベリクリン反応検査(接種)
(健康管理
センター)
11:45∼12:15 まとめ
看護婦は痛みのメカニズムと対処方法、薬剤の作
用機序、痛みのコントロール目標等についての知識
をもって痛みのアセスメントをすることが大切であ
る。とくにモルヒネの薬理動態をよく知ったうえで
使用量と効果が安定するまでベットサイドでアセス
メントを行っていく。その際全身的観察と心理的側
面の観察を同時に行いアセスメントに生かしていく
ことが大切になる。
「痛い」という言葉の裏に隠れて
いる感情に焦点を当てていると何かサインがあるは
ずであり、その思いに気づいていけるようアセスメン
トしなければならない。それには日ごろから看護婦や
医療者としての知識・技術のみでなく人間として、
対等な立場で患者の話に耳を傾け、共感できるよう
感性を磨くことである」と強調された。
「特に傾聴す
ることは言葉でいうより難しく、何人の人の話を共
感をもって受け入れてきたかとふりかえってみると数
少ない」と自身への厳しい評価をされていることは、
講師の「人にやさしく自分に厳しい人柄」がうかが
われ仕事への情熱を感じた。今回は県外の施設から
の2名を含めて 81 名の参加者があり、ホスピスの実
践者から話が聞けてよかったとの感動の声が多かっ
た。今回の講義で得た知識を基に本学での緩和ケア
を考え、実践していくために、緩和ケア研究会は今
後も年3回の定例会を続けていく予定である。
(緩和ケア研究会 高山静子記)
62
管理・運営
平成13年度
新入職員辞令交付式
平成 13 年4月2日(月)午前 10時から、新入職員
辞令交付式が本部棟4階講堂において行われ、新入職
員81 名(事務職2名、技術職 10名、看護職69名)に
対し、小田島粛夫理事長から代表の松木瑠里子さん
に採用辞令が手渡された。
つづいて小田島理事長から「礼儀と謙虚さを忘れ
ることなく、金沢医科大学の職員としての自覚と帰
属意識をもって職務に取り組んで欲しい」との訓辞
があり、最後に新入職員を代表して中木哲也さんが
「一致協力して大学の発展に尽くします」と力強く宣
学内駐車場のゲート管理化
近年、病院増改築工事の影響もあって、学内の駐
車スペースに対して車両の量が過大となり、場所に
よっては身動きのできない状況が生じ、交通安全、
患者さんの駐車スペースの確保、災害時の安全確保、
環境保全などの上で問題が起こっている。そのため
緊急対策として学内の駐車場をゲート管理し、必要
な車のための駐車場と通行路を確保することになり、
5月14日から実施された。
〔ゲート管理要領〕
○ 職員及び学生については、通勤・通学距離が
2km 以内の人は原則として学内駐車場の使用はでき
ない。2km 以上の人は申請により挿入式パスカード
(年間4800円)の交付を受け、それを使用して所定の
ゲートを通過して駐車することになる。
○ 特例として、通学距離が2km以内でも臨床実習
で深夜に帰宅することがある第5、6学年の女子学生、
幼児を保育所に送迎する必要がある教職員、歩行障
害のある人などには挿入式パスカード(年間4800 円)
が交付される。
○ 緊急に入構する必要が生じた医師、及び深夜勤
務の看護婦の場合は、ゲートの発券機で駐車券をと
って入構し、出構する時は防災センター(臨床研究
棟、病院)で認証処理を行なった駐車券を出構ゲー
新入職員代表の松木瑠里子さん
誓を行った。
(人事厚生課 杉森哲也記)
トに挿入して出構する。職員及び学生駐車場の場合、
出構ゲートには精算機能はなく、認証された駐車券
以外では開かないので注意が必要である。
○ 患者さんは患者用駐車場で上記の医師の場合と
同じ手続きで入構・出構するが、駐車券の認証場所
は、外来患者の場合は1階外来受付カウンター(時
間外は救急外来受付)
、見舞客の場合は病院1階の病
室案内(時間外は病院防災センター)となっており、
それぞれ認証を受けた上で出構ゲートの精算機に挿
入して出構する。
○ 30 分以内に出構すれば上記の認証がなくても無
料でゲートは開くが、30 分以上経過すると1時間ごと
に1000円の駐車料金が必要となっているのでご注意
ねがいたい。
(総務課坂井輝夫記)
65
病院増改築/新棟の特徴紹介シリーズ
〈その5〉
免震構造
建設中の新棟の概要は、下記のとおり。
・構 造:鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
、
鉄骨造(S造)
・階 数:地下1階、地上12階、塔屋2階
・軒の高さ:53.906m
・最高高さ:68.756m
・基準階階高:4.00m
・基準階天井高:2.65m
・杭の長さ:37.00m
・延床面積:52,077.032㎡(約15,780坪)
建物を建てる場合は、
「建築基準法」により種々の
建築制限があり、また関係法令によって種々規制さ
れる。用途地域により規定される「建ぺい率」や
「容積率」によって、建てられる建築物が規制され、
また条例によっても規制がある。本学の場合、敷地
は「第2種中高層住居専用地域」であり、建ぺい率は
60%、容積率は 200 %に定められており、道路斜線
制限、日影による制限、採光面積、内装制限等、ま
た防火・耐火構造、避難・防災設備、電気設備、換
気設備等についても制限があり、
「内灘町中高層建築
物指導要綱」による規制、さらに消防用設備等の設
置についても消防法を遵守する必要がある。これら
をクリアした上で「建築確認申請」を行い「確認済
証」を受領して着工に至ることになる。
今回は、新棟に採用している「免震構造」につい
て紹介する。
阪神淡路大震災(1995.1.17 M7.2)から6年が経過
したが、当時世間では建物の耐震性が注目され、震
災の年には耐震改修促進法が制定された。本学にお
いても、病院という性格上安全で地震に強い建物を
構築することが検討され、新棟は「免震構造」を採
用することになった。地下1階の真下に免震装置を設
置する免震層を造り、地震が発生した場合、建物自
体が強い動きや揺れから免れるようにするもの。地
盤と建物の間に間隔を取ってあり、建物の出入口は
電車の連結部のようにデッキプレートを介して連接
されている。外部から建物に入る設備配線・配管等
も、断線・破損などを解消するために、地震の動き
に追従するようなフレキシブルジョイントで繋ぐ方法
を採用している。
地震に対する「免震」
「制震」
「耐震」の3つの工法の理
G.L.
←免震層
新棟断面図
念と特徴は次のとおりである。
1. 免震工法:「揺れから免れる」
地盤と建物の間に免震層を造って免震装置を設置
し、地震が起きてもその揺れを建物に伝わりにくく
する方法。
揺れの加速度は「小」
、揺れの変位は「大」
、建 物 変
形は「小」
安全性、居住性、機能性は「優」
経済性(イニシャルコスト)は、免震部材の
種類、使用数・配置により異なる(可∼優)
損傷を考慮したLCO(ライフサイクルコスト)は「優」
2. 制振工法:「揺れを制する」
建物に設置された制振装置が、地震や強風による建
物の揺れをコントロールする。
揺れの加速度は「中」
、揺れの変位は「小」
、建物変
形は「中」
安全性、居住性、機能性は「良」
経済性(イニシャルコスト)は「良∼優」
損傷を考慮したLCC(ライフサイクルコスト)は「良」
3. 耐震工法:「揺れに耐える」
適切な部材とその配置により強度とねばりで地震に
耐える。
揺れの加速度は「大」
、揺れの変位は「中」
、建物変
形は「大」
安全性は「可∼良」
、居住性、機能性は「可」
経済性(イニシャルコスト)は「優」
損傷を考慮したLCC(ライフサイクルコスト)は「可」
○工法の種類と大震災時の影響
大震災が発生した場合の影響はほぼ次のとおりとされて
いる。
免震工法:ほとんど被害なし(機能が保全される)
制振工法:軽微な被害の発生(補修不要)
耐震工法:補修が必要な被害の発生
(施設整備推進室)
〔病院新棟の特徴紹介シリーズ・バックナンバー〕
①学報№102(2000-May,51頁)
「臓器別診療態勢」
②学報№103(2000-August,44頁)
「臨床教育スペース」
③学報№104(2000-November,44・45頁
「バリアフリー、アメニティ、プライバシー」
④学報№105(2001-January,47頁)
「腎臓病センター」
66
病院増改築工事の進捗状況
今回の病院増改築は「病院新棟並びにエネルギーセンタ
ー移設・新営その他建設工事」の正式名称のもと、平成12
年12月14日に起工式を施行、着工された。現在までの進捗
状況と主な工事内容は次のとおり。
(施設整備推進室)
(第1回報告 平成13年4月10日現在)
○病院新棟(工期:2000年12月14日∼2003年8月31日)
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造(S R C 造)、鉄骨造(S
造)、地下1階、地上12階、塔屋2階
外部仕上
屋根:アスファルト防水押えコンクリート金ゴテ仕上げ
軒裏:コンクリート打放し仕上げ 高耐候性フッ素樹脂
クリア仕上げ
外壁:磁器質タイル貼り プレキャストコンクリート版
素地仕上げ 高耐候性フッ素樹脂クリア仕上げ
最高の高さ:68.756m
最高の軒の高さ:53.906m
基準階階高:4.0m
基準階天井高:2.65m
主たるスパン:6.0m×6.0m、8.48528m×8.48528m
杭の長さ:37m
延床面積:52,077.032㎡
○エネルギーセンター(工期:2000 年12月1日∼ 2002年2
月27日)
構造:鉄筋コンクリート造(RC造) 地上3階
外部仕上
屋根:アスファルト防水(BI-O)コンクリート押え
外壁:合板型枠コンクリート打放し複層仕上げ塗材 合
板型枠コンクリート打放し高耐候性フッ素樹脂ク
リア仕上げ
最高の高さ:23.324m
最高の軒の高さ:16.824m
基準階天井高:2.7m
主たるスパン:5.5m×7.7m
杭の長さ:26m
コジェネレーション設備:ガスタービン 1,200KW×3台
廃熱ボイラ 4ton ×3台
ボイラー設備等:炉筒煙管ボイラー 9.6ton×4台
貫流ボイラー 2ton×5台
延床面積:1,866.23㎡
〈内訳〉1,830.23㎡(本体)36.00㎡(オイルポンプ室)
〈病院新棟・エネルギーセンター共通事項〉
平成 12 年12 月 14日 起工式 その後、現地実地測量 工
事範囲の仮囲い等の準備工事開始
平成 12年12 月25日∼13年 1月 12日 セミナー棟内部解体
(病院新棟建設のため「セミナー棟」を解体)
平成 13年 1月 16 日∼13 年 1月 27 日 セミナー棟天井裏そ
の他アスベスト処理 2月末完了
平成13年2月2日∼13年3月31日 杭試験掘
平成13 年 3月 12日∼ 山留め(SMW :ソイルセメント柱
列壁)工事開始、継続中
山留めとは、掘削地盤の土圧による崩壊を防ぐことをい
うが、新棟工事の場合H鋼を柱状の壁に敷設し、砂と固化
材としてのセメント類及び粘性の高いベントナイトを混ぜ
た泥水を打ち込み、掘削した地盤の崩壊を防ぐ工法を採用
している。
(参考)
基礎工事において、アースドリル工法を採用している。
ドリリングバケットによって円筒形の穴を掘り、鉄筋カゴ
を入れ、そこにコンクリートを流し込んで(いわゆる現場
打ち)
、地中でコンクリート基礎杭を作ってしまおうという
工法である。しかし、この工法でいちばん問題となるのが、
穴を掘り進めていくうちに起こる側壁の崩壊で、ベントナ
イトと水を混ぜ合わせてベントナイト泥水を作りその強い
粘性を利用して、側壁を安定化させる方法が開発され、今
日では多くの現場で採用され工期短縮につながっている。
杭の試験掘りは、基礎杭と同等径のドリリングバケットで
円筒形の穴を掘りながら、側壁の崩壊防止のためベントナ
イト泥水を注入しながら掘り進むもので、地耐圧を確認し
基礎杭を現場打ちで作成可能かどうかを見極めるもの。
〈エネルギーセンター〉
平成 13年 4月 4日 旧ゴミ焼却場建屋解体、
基礎部解体終了、現在既設配管盛替継続中
〈廃棄物集積場〉
平成13年1月24日 着工
平成13年 3 月 28日 施主竣工検査済(3月26
日消防・建築官庁検査済)
(全景写真)
(工事の流れ)
集積場地盤鋤取土工事 地盤改良 墨出し
基礎配筋コンクリート打設 建込配管電気幹
線駐車場埋設配管 幹線露出配管 鉄骨建方
型枠鉄筋 壁コンクリート打設 外壁成形板
取付 外構配管 照明器具取付 衛生設備取
付
〈参考:現在工事中の施設概要 〉
○共通事項
第二種中高層住居専用地域(建ぺい率:
工事現場全景(矢印は竣工した廃棄物集積場)
60%、容積率:200%)防火地域は無指定
67
廃棄物集積場 竣工
4月から使用開始
廃棄物集積場
このたびエネルギーセンター建設のため既設ゴミ
焼却場を解体するのに伴い、廃棄物集積スペースを
内灘町の特別養護老人ホーム夕陽ヶ丘苑の向かい本
学敷地北側の駐車場内に「廃棄物集積場」として新
設することになり、本年1月下旬に着工して3月下旬
に竣工した。竣工に伴い3月 26日に、内灘町消防署
の消防用設備の検査および石川県津幡土木事務所の
竣工検査が行われ、指摘事項もなく無事検査は終了
して4月2日から使用を開始した。
新築された廃棄物集積場は、法改正により資源ゴ
ミ回収・リサイクルが徹底される今日の状況を考慮
して、廃棄物や資源ゴミの分別スペースを充実させ
たものとなっており、学外に搬出するまでの一時保
管庫として使用される。
分別スペースの奥には、LPGタンク置場があり、タ
ンク設置後はここから供給されることとなり、また
分別スペースの向側には酸素・窒素ボンベ置場が併
設される予定になっている。
(施設整備推進室)
〈廃棄物集積場概要〉
構造:鉄骨造(S造)平屋建
外部仕上
屋根:耐酸被覆鋼板丸馳折版葺き
軒裏:耐酸被覆鋼板丸馳折版さらし
外壁:合板型枠コンクリート打放し高耐候性フ
ッ素樹脂クリア仕上げ
押出し成形セメント板(60㎜厚)高耐候性
フッ素樹脂クリア仕上げ
最高の高さ:6.2m
最高の軒の高さ:5.8m
主たるスパン:7.0m×6.0m、5.0m×4.0m
延床面積:437.44㎡
〈内訳〉414.09㎡(集積場、LPG タンク置場を含む)
、
23.35㎡(酸素・窒素ボンベ置場)
人物往来(1)
□豊岡照彦 教授/東京大学医学部第二内科講座教授、同大学保健管理センター所長/昭和47年東京大学医
学部医学科卒業/昭和49 年東京大学医学部第二内科医員/昭和53年東京大学大学院医学研究科終了/昭和53
年カリフォルニア大学サンジエゴ校医学部循環器病学教室Research Associate /昭和61年東京大学医学部第二
内科講師/平成2年同大学保健センター助教授/平成3年より現職/平成12 年10月20 日大学院セミナーにお
いて「心不全の重症化と遺伝子治療の可能性」と題して講演を行った。/薬理学教室
□開祐司教授/京都大学再生医科学研究所生体分子設計学分野/昭和50年大阪大学理学部化学科卒業/昭和
52年京都大学大学院理学研究科修士課程修了/昭和 55 年大阪大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博
士/昭和56年大阪大学歯学部生化学講座助手/平成6年同助教授/昭和 61年∼平成元年ハーバードメディカ
ルスクール研究員/平成10年より現職/平成13年2月6日に2学年の特別講義「骨形成の生化学」を担当され
た。/生化学Ⅱ教室
□鈴木盛一先生/国立小児病院小児医療研究センター実験外科生体工学部部長/1970年千葉大医学部卒業/
日本移植学会幹事、日本臓器保存生物医学会幹事、復旦大学崋山臨床医学院(上海市)客員教授/平成13年
2月9日大学院セミナーにて「免疫抑制剤の作用機序と遺伝子療法よる免疫制御」と題して講演。/泌尿器科
学教室
68
セクシュアル・ハラスメント防止に関する規程
規程の制定及び委員会の発足
1. 関係諸規程の制定
セクシュアル・ハラスメントの防止に関する諸
規程については、次のとおり施行された。
(1)学校法人金沢医科大学セクシュアルハラスメ
ントの防止等に関する規程
平成13年1月1日 施行
平成13年3月1日 改正
(2)学校法人金沢医科大学セクシュアルハラスメ
ント防止委員会規程平成13年1月1日 施行
平成13年3月1日 改正
(3)学校法人金沢医科大学セクシュアルハラスメ
ントの防止等に関する規程の運用に関する申し合
わせ
平成13年1月1日 施行
2. 委員会の発足
セクシュアル・ハラスメントの防止に関する諸
規程の施行を受けて、平成 13 年1月1日付で委員が
委嘱され、第1回委員会が2月 2 8 日に第2回委員会
が3月 29日に開催され、セクシュアル・ハラスメン
ト防止に係る施策等が審議された。
(主な審議事項)
委員及び相談員の委嘱
防止パンフレットの作成
講演会等の啓蒙活動の実施
イントラネット上の委員会HP作成検討
大学公式HPへの掲載の検討
学報への関係記事掲載
規程の改正
3. セクシュアルハラスメント防止委員会委員
(平成13年4月1日現在)
委員長 西川 克三(副学長・生化学Ⅱ教授)
委 員 高橋 弘昭(副院長・小児科学教授)
〃 川上 重彦(学生部長・形成外科学教授)
〃 地引 逸亀(神経精神科学教授)
〃 西尾 眞友(薬理学教授)
〃 廣瀬 優子(血液免疫内科学教授)
〃 大瀧 祥子(英語教授)
〃 柳原 誠(看護専門学校副校長・皮膚科学教授)
〃 荒田
満(法人事務部長)
〃 浅野進一郎(大学事務部長)
〃 中農 理博(病院事務部長)
〃 松任 弘子(看護部長)
4. 相談員
(平成13年4月1日現在)
高橋 弘昭(副院長・小児科学教授)
上田 善道(学生部副部長・病理学Ⅱ教授)
酒井 桂子(看護専門学校教務主任)
登坂 由香(女子学生相談室カウンセラー・衛生学講師)
中島 素子(学生保健室・保健婦)
柳原 誠(看護専門学校副校長・皮膚科学教授)
当波 和美(看護部副部長)
宮本 文夫(人事厚生課長)
古居 滋(教学課長)
本田 俊幸(大学院課長)
小平 俊行(病院事務部副部長・管理課長)
榎戸芙佐子(神経精神医学助教授)
古府美知子(医事課課長代理)
田畑 紀子(薬剤部主任)
宮鍋真由美(中央臨床検査部副技師長)
木下 恵子(人事厚生課事務員)
高 直美(教学課事務員)
(人事厚生課 坂尾光一記)
69
インターネットライブ中継、本格化
卒業式などを全国配信
3月 22 日(木)に行われた医学部卒業式・学位記
授与式の様子は、インターネット上にライブ中継さ
れ全国の父母や関係者に供覧された。翌23 日には同
じくインターネット上にビデオ・オン・デマンド
(VOD /個々のユーザが選択した映像をユーザごとに
配信するサービス)されたが、最初の1週間で学外か
ら167件のアクセスがあった。
本学のインターネットライブ中継システムは昨年
末に導入され、21 世紀幕開けの理事長・学長年頭挨
拶の中継に初めて使用された。年頭挨拶は非公開な
のでイントラネット(学内通信網)限りとされ学外
からの視聴はできなかったが、2月10日の本学病院の
公開パネルディスカッション「クリティカル・パスの
可能性と限界」を皮切りに、続々とインターネット
上に教育行事や学術集会の様子が中継・録画配信さ
れている。3月6日の附属看護専門学校卒業式、3月
11 日の総合医学研究所春季セミナー「突然死から身
をまもる」、前記医学部卒業式、4月4日の医学部入
学宣誓式、4月6日の附属看護専門学校入学式等であ
る。因みに医学部入学宣誓式のVODには最初の1週
間で学外から386件のアクセスが数えられた。
これらを視聴するには、まず本学のホームページ
にアクセスし、メニューの「ライブ中継、ビデオ・オ
ン・デマンド」をクリックする(図参照)
。以後は見
たいものを選択していけばよいのだが、「RealPlayer
8」というソフトが必要である。無料でダウンロード
できるサイトがリンク貼りされているので、それを利
用してインストールすればよい。
広報委員会およびWeb 管理委員会(山下公一委員
長)では、今後ともこのシステムが本学の教育行事
や学術活動などに、大いに活用されていくことを期
待している。
(メディア情報部 國府克己記)
70
る。そこで、大学設置基準の大綱化にともない自
己点検・評価の制度化、医師養成のあり方や教育
課程の見直しなど、2 1 世紀に向けた医学教育改革
─教員の自己点検・自己評価のために─
への取組が大きな課題として取り上げられてきた。
この様な状況を背景に平成 12 年4月、教員評価委
員会(委員長:山本副学長)が学長の諮問委員会
大学の自立化と同時に責任が課せられるように
として設置された。本委員会では、教員評価の必
なり、本学においても教育・研究・診療の向上を
要性と目的、教員評価の内容、評価の公正性・客
めざす中、「自己点検・自己評価」の一環として教
観性を確保する方法などについて様々な観点から
員評価制度が導入されることになった。
幅広く議論を行い、平成 12 年8月には「中間のまと
当評価制度は、各教員の自己規律に基づき、教
め(教育評価活動)」を学長に報告した。
員の「教育、研究、診療、管理・運営活動」の活
その後、平成 12年9月に「第 596 回医学部教授会
性化を図る目的でつくられたものである。
(定例・拡大)」、「第 2 0 回国内医科大学視察と討論
導入にあたっては、平成 1 2 年度は教授職を対象
の会」で、その概要を説明し、関係者から意見聴
13年度から全教員を対象に実施する予定である。
取を行うなどして、引き続き、“教育活動”、“研究
活動”、“診療活動”、“管理・運営活動”の各領域
1. 背景と経緯
について検討を重ね、教員評価制度の概要がまと
現在、医学教育をめぐって、急速な科学の進歩、 められ、平成 12 年 12 月に「教員評価に関する答申
世界的なグローバリゼーションにより、大学自身
書」を学長に提出、さらに、平成 1 3 年2月 2 2 日開
が変わらざるをえない情勢になってきている。従
催の第 610 回医学部教授会(定例・拡大)で承認さ
来医学教育の世界は、一般社会とは隔絶した社会
れ、平成 1 3 年度から全教員を対象に教員評価を全
と思われその閉鎖性とともに「ぬるま湯」「甘えの
項目に亘って、実施していくことになった。
構造」「情報非公開」などの問題点が指摘されてい
教員評価制度の導入
〈評価シート抜粋〉
教育活動評価シート
教育評価
◆職員番号 所属 (役職 )
◆氏 名 印
◎調査期間:H.
4/1 ∼H.
3/31
講座主任: 印
●授業評価-1
教
員
に
よ
る
講
義
・
実
習
自 の
己
評
価
評価基準: 3. 非常に思う 2. そう思う
1. どちらでもない 0. 思わない
01. 授業内容はシラバスに沿っていましたか
3.
2.
1.
0.
02. 授業内容の量、難易度は適当でしたか
3.
2.
1.
0.
03. 学生の知識、理解度を把握していましたか
3.
2.
1.
0.
04. 説明を理論的に理解しやすいように務めましたか
3.
2.
1.
0.
05. 学生の反応に留意しながら授業しましたか
3.
2.
1.
0.
06. 授業内容を学生に理解させることができたと思いますか
3.
2.
1.
0.
07. 授業内容について興味を刺激するよう努力しましたか
3.
2.
1.
0.
08. 黒板の字、話し方、マイクの使い方は適当でしたか
3.
2.
1.
0.
09. 復習しやすいように教科書の該当部分を指摘しましたか
3.
2.
1.
0.
10. 熱意を持って授業をしましたか
3.
2.
1.
0.
計 /30点
71
2. 教員評価の理念について
1)教員評価は、
“教育活動”、
“研究活動”、“診療
活動”、“管理運営”の4つの領域において、教
員の諸活動の全般に亘って総合的に評価する。
2)教育研究活動はこれに直接携わる教員の自己
規律の側面を持つものであることから、その
評価は基本的に教員の「自己評価」を主体と
するが、より客観性を高めるため「学生評価」
や「第3者評価」など多面的な評価をも導入
する。
3)透明性、客観性に配慮し教員が理解し、納得
しうる評価を行うものとする。
4)本評価制度の導入にあたっては最初から完全
なものを目指すのではなく、可能な項目から
順次これを実施し、段階的に総合的な制度の
確立を目指すものである。
3. 教員評価制度の評価領域について
1)教育活動項目
(1) 授業評価−Ⅰ 「講義・実習」
(2) 授業評価−Ⅱ 「BSL・CCS」
(3) 「指導教員関係」
(4) 「授業改善の努力、教育研究、教育研究カリキ
ュラム改善」
学内基幹コンピュータシステム
新財務システム稼動
平成 13 年4月1日より新財務システム(会計、購
買、予算)が稼動した。5年前より運用されていた旧
システムは、月次バッチ処理に70 時間以上もの時間
が必要だった上にハードウェア(サーバー、クライア
ント、プリンタ等)が老朽化し、いつダウンするかも
しれないという不安があった。そのため、昨年10 月、
本学トップの許可を得て新システムの開発に着手し
た。
新システムの開発に際しては、データベースに
Oracle for Windows、 開 発 言 語 に Visual Basicと
Microsoft Access 2000、請求部署用インターフェース
にInternet Explorer、サーバーOSにWindows NT、ク
ライアントOS にWindows98 を採用した。Oracleの採
用でバッチ処理の高速化が計れ、Microsoft Access
(5) 「課外活動関係」
(6) 「学務活動関係」
(7) 「各種委員会関係(教学関連に限る)」
(8) 授業時間数について
2)研究活動項目
(1) 研究論文、(2) 学会報告、(3) 研究助成、(4)
指導研究者数、(5) 管理運営、(6) 主催学会、(7)
学術賞受賞、(8) 学会活動、(9) 社会活動
3)診療活動項目
(1) 診療活動
(2) 診療支援活動(委員会活動における評価)
(3) 指導医、専門医、認定医の取得の有無
(4) 患者による評価
(5) コ・メディカルによる評価
(6) 研修医及び大学院生による評価
4)管理運営項目
(1) 情意(規律性、協調性、積極性、責任性)
領域を考課要素とした評価
(2) 講座運営、管理者意識
(3) 入学試験に関する活動
(4) 管理・運営活動における評価
(教員評価委員会委員長 山本達記)
2000 の採用で旧システムの帳票出力プログラムなど
を簡単に移植することができた。
新システムの特徴は、各請求部署で入力したデー
タをできるだけ発注データとして利用し、調達主管
部署のデータ入力負荷を軽減する工夫がなされてい
ることである。旧システムと同様にイントラネットを
利用して物品請求(単価契約物品、随時契約物品、
図書、印刷物)や工事依頼を行うが、入力画面の性
能は予算コード検索や品名コード検索などが可能で
非常に使いやすい画面となっている。また、新たに
予算残高の照会、請求物品や経理伝票の照会が各請
求部署で簡単に行えるようにした。これにより、各
請求部署では経理課や調達主管課に電話での問い合
わせをすることなく、いつでも必要な情報が入手で
きるようになった。照会画面は右クリック操作で簡
単にプリントアウトできるが、その必要もないようで
ある。勿論、セキュリティ対策も万全で経理課の職
員以外は自部署のデータしか照会できないようにな
っている。 (ネットワークサポート課徳田治樹記)
72
随想・報告
AAOS International Educational Exchange Fellowship 印象記
平成11年度アメリカ整形外科学会交換フェローに選ばれて
整形外科学講師
藤 田 拓 也
昨年の3月中旬から約3週間、表記のプログ
ラムに日本整形外科学会より選出され、アメリ
カ 整 形 外 科 学 会 (American Academy of
Orthopaedic Surgeon, AAOS)に参加した後、全
米数ヶ所の施設を見学する機会に恵まれまし
たので報告いたします。公式には既に日本整
形外科学会雑誌(J. Jpn. Orthop. Assoc. 75
2001)にて報告済みであったため、当初、この
誌面への出版課からの執筆依頼を固辞してい
ましたが、オフィシャルには書けない、本音を
交えた印象記なら、ということで気恥ずかし
さもありますが書かせて頂きます。
このプログラムには日本から毎年約4名が日
本整形外科学会より選抜され、アメリカ整形
アメリカ整形外科学会(オーランド)にてDr. Kostuikと一緒に
外科学会に参加した後に、全米各地の施設で
研修および講演を行うことができるというものです。 ル調整するように、との連絡が入ってからは、訪問
先のドクターとの日程調整、ホテルの手配、フライ
当時、いや現在もですが、手術や外来などの臨床業
トの手配と、出発ぎりぎりまで大慌ての毎日でした。
務に朝から晩まで息つく暇なく追われる毎日で、最
このときばかりは海を越えてリアルタイムで連絡が
新の知識を仕入れたり、またそれらを整理する時間
取れるe-mailの有り難さを痛感いたしました。結局、
が全くなかったという現実と、また、毎日が猛烈な
最後までフロリダのオーランドでの数泊分のホテル
スピードで過ぎ去っていくことに対して、少しでも
は決定しませんでしたが、行けば何とかなるさ、と
時間の流れに抵抗したい、という一種の焦燥感、こ
いう軽い気持ちで3月 14 日、私一人、関西空港より
の二つがプログラム応募のきっかけでした。早速、所
定の書類を揃えて日整会事務局に提出したところ、 約3週間のアメリカ研修旅行に出発しました。
まずフロリダのオーランドで開催された AAOS 参
幸運にもその半年後にフェローに選出された旨の連
加です。この学会の参加者は数万人規模であり、全
絡がありました。
米各地はもとより全世界から整形外科医が集結する、
しかしそれからが大変でした。私の訪問希望病院
整形外科分野では世界最大の学会です。私自身この
の3ヶ所を書いてアメリカ整形外科学会に提出したの
ですが、その後数ヶ月間、何の音沙汰もありません。 学会への参加は3回目で、ニューオリンズ、サンフラ
ンシスコと参加しましたが、今回のオーランドの学
その年のアメリカ整形外科学会開催は 2000 年3月で
会場は特に巨大で、会場内を移動するには、ゴルフ
したが、その1ヶ月前の2月上旬になっても、私の予
場のカートはないの?と思うぐらい、果てしなくロ
定は全く立っていないという状況でした。突如、2月
ビーが続いています。またホテルから学会場までの
の中旬になってアメリカ側から、君の希望施設に連
移動も一苦労です。というのもオーランドはディズ
絡してあるので、あとは自分で交渉してスケジュー
73
メンフィス テネシー大学Dr. Smithの自宅でのホームパーティーで
ニーワールドで有名な一大リゾートエリアで、広大
な土地に、ぽつぽつとホテルが点在しています。そ
れらと学会場とは学会専用無料シャトルバスで連絡
されているものの、私が宿泊したホテルは学会場か
ら離れていたこともあり、一日数往復だけで、午後4
時が最終シャトルバスという状況でした。最終シャ
トルが終了してしまった日に、
「どうやってホテルに
帰ろうか、タクシーはお金がかかるし、
」と思案して
いる時、思いついたのが、一旦近くの有名ホテル
(マリオット、シェラトンなど)へ学会シャトルバス
で移動し、そこからホテルのバスでディズニーワール
ドへ、そしてそこから観光客用のシャトルバスで自
分のホテルに帰るという、すべて無料バスを乗り継
ぐ方法です。確かに無料で帰れましたが、時間はた
っぷりかかる上に、ホテルに着いた時には心身とも
にヘトヘトになっていました。
学会場のロビーでは私の留学時代の恩師ジョンズ
ホプキンス大学教授のDr. Kostuikやアメリカの友人
たちと久々に再会し近況を報告しあったり、他の日
本人フェローと情報交換などをして一息入れながら、
真面目に演題に聞き入っていました。その中で痛感
させられた事は、整形外科の分野にも遺伝子治療の
可能性が模索され始めているということでした。 遺
伝子治療の臨床応用には、遺伝子導入の方法や、そ
の効率、合併症など、越えなければいけないハード
ルが数多くありますが、今後、整形外科の分野でも
遺伝子治療がますます盛んになると予想されます。
私自身も遺伝子工学の知識がなくては世界について
いけないと痛感させられた学会でした。
次にテネシー州メンフィスに移動しました。ここ
では屍体を用い胸腔鏡視下脊椎手術の講習をテネシ
ー大学Dr. Smithらから受けることができました。実
習室に入ると、既にそこには、手術時に実際に貼る
シカゴ ラッシュ大学の手術室でDr. Anと一緒に
ディスポの布に覆われ、側胸部のみ透明のドレープ
が貼られた屍体が安置されていました。特別な空調
なのか臭いは全くなく、特殊固定剤により、実際に
生体で手術を行っているかの錯覚に陥るほど、生体
に近い状態の感触でした。この施設の屍体はすべて
医学研究のために生前の意志に基づいて提供された
もので、近隣の病院から希望があれば、パーツ別に
決まった金額で売却されています。例えば、頭部だ
けならいくら、上半身だけならいくら、というわけで
す。講習の帰り際に、事務所の机の上に、整形外科
医からの1枚のファックスが目に留まりました。そ
こにはこう書かれていました。
「至急、ソケイ部から
切断した新鮮な足を5本買いたい」と. . . . . 。
旅は続きます。今度はシカゴに飛び、ラッシュ大
学 Dr. Anを訪問しました。彼は韓国系アメリカ人で、
今回の訪問時に聞いたことですが、以前いたウィス
コンシン大学でかなりの業績を挙げていたにも拘ら
ず、マイノリティということで、ポジションを追われ
たそうです。まさか彼までもが、と思いましたが、ア
メリカ社会の人種問題の一端を垣間見た気がしまし
た。彼の案内で手術や外来見学を行うと同時に、彼
が行っている椎間板の遺伝子治療の研究について充
分討議することができました。彼は、どこの馬の骨
とも分からないこの私に、様々なことを包み隠さず
話してくれ、その内容がまさに私が今から立ち上げ
ようとしていた研究と類似し、かつ非常にエキサイ
ティングであったため、思わず「是非、私と共同研
究してくれないか? いや、私がここに来て研究し
てもいいか?」と聞いてしまいました。すると彼の答
えは「もちろん!!」
。ということで、松本教授、私
をシカゴに行かせて下さい!!。
一方、シカゴの夜は連日、私の歓迎パーティーが
あり、その一つが脊椎外科医と手術場看護婦さん達
74
とのパーティーでした。これがまさに修業の時間と
なりました。最初は私に気を遣ってくれて、いろい
ろ喋りかけてくれましたが、皆アルコールが廻ってく
ると、私の存在など空気の様なものになり、私以外
の全員が早口の英語できゃーきゃーと大盛り上がり。
おいおい今日の主役は私じゃなかったの?と一人い
じけているところへ、さらに追い打ちをかけるかよう
に、へんてこなゲームが始まり、英語が聞き取れず、
ルールがよく分からない私は完全に一人置き去り状
態となりました。私は皆が笑うポイントでひきつっ
た作り笑いをしながら、
「どうか私に順番が回ってき
ませんように、なむみょうほうれん. . . . .」と今 NHK
で日蓮が説く念仏を唱え続けていました。
最後にアトランタに移動しました。エモリー大学
脊椎外科グループはDr. Heller、Dr. Bodenを中心に精
力的に臨床、基礎研究を行っている全米有数の施設
です。ここで様々な脊椎手術を見学させて頂いたの
と同時に、約30分間の講演を2題させて頂きました。
タイトルは「頚椎椎弓形成手術」と「転移性脊椎腫
瘍に対する手術療法」です。頚椎椎弓形成術という
のは、頚椎後方部分の骨を、まるで本を開くかのご
とく切り開くことにより、脊髄の除圧を図るのと同
時に、後方の骨を切除しないことにより、頚椎の安
定性をも確保する、という素晴らしい術式です。こ
の術式は日本で開発され、現在日本ではその手技も
確立されたものになりつつありますが、欧米人医師
には、高度なテクニックが必要と思われているのか、
ほとんど行われていません。そこで、我々は金沢の
地で特別に開発された手術器械を用いることにより、
極めて安全に椎弓形成手術を行うことができ、しか
もその成績は安定している、という内容の講演をし
ました。もう1題は、転移性脊椎腫瘍といえども、
ある程度の予後が見込まれる癌種で、麻痺や疼痛に
苦しんでいる場合は手術治療によりQOL が著しく改
善する、という主旨の講演を行いました。どちらも
反響は大きく、ホットなディスカッションをすること
ができました。特に頚椎椎弓形成術に関しては、そ
の適応やコツなどをスタッフ医師らから矢継ぎ早に
質問され、うれしい悲鳴となりました。その夜のパ
ーティー会場でも、シニアレジデントから、
「日本に
行って頚椎椎弓形成術の手術見学をしたいと思って
いる」などと言われ、
「来たいならいつでも来ていい
よ」なんて受け答えしながら最高の気分に浸ってい
ました。
アトランタでもほぼ連日連夜、何らかの歓迎パー
アトランタ エモリー大学手術室でDr. Hellerと。朝7時から連続
5件の手術が終了し、後ろの時計が夜10 時15 分を指している。私
は疲れ果ててグロッキー状態。何とこの後もう一件手術があった。
ティーがあり、ある夜は大リーグ、アトランタブレー
ブスの試合観戦と、至れり尽くせりの毎日でした。
最終日のお別れパーティーでDr. Heller から「日本整
形外科学会からのフェローがエモリーを訪問してく
れたことは、我々にとって大変名誉なことである」
とのお言葉と記念品を頂き、忘れ難い一夜となりま
した。
3週間にわたってアメリカを一人旅し、朝から晩ま
で、しかも食事の時まで英語で拘束される日々は、
体力的にも精神的にもかなり過酷なものです。メン
フィスでは体調を崩し「もう日本に帰りたい」とも
思いました。しかし旅を終えて関西空港で飛行機を
降り入国審査カウンターへと続くロビーを歩きなが
ら、ふと視線を窓の外にやると、今乗ってきたノー
スウエスト航空の機体が春の日差しを反射し銀色に
輝いていました。
「またアメリカに行きたい」そう呟
きながら、足早にカウンターの列につく私がそこに
いました。
今回の旅は松本教授や留守中に何かと御迷惑をお
かけした整形外科医局員の諸先生方のお力添えなく
しては成しえないものでした。この誌面を借りて深
く御礼申し上げます。
75
資 料
看護専門学校長に 松原純一教授 新任
副校長に 柳原 誠教授 新任
平成13年3月 22日に開催された第613回医学部教授会において、竹越襄学長から次期看護専門学校長に松原
純一教授(胸部心臓血管外科学)を選任したいとの発議があり、全会一致のもとに承認され、4月1日付で第6
代看護専門学校長に就任した。任期は平成13年4月1日から平成16年3月31日までである。
また、副校長には、柳原誠教授(皮膚科学)が選任され、同日付けで就任した。
まつばら じゅんいち
松原 純一
看護専門学校長
【略歴】
1966. 3
1967. 3
1971. 3
1971. 4
1972.12
1976. 9
1978. 9
名古屋大学医学部卒業
名古屋第一赤十字病院にて研修修了
名古屋大学大学院医学研究科修了
名古屋大学医学部分院外科助手
医学博士(名古屋大学)
ドイツHeidelberg 大学病理学教室助手(S52.8まで)
ドイツEngelskirchenのAggertal Klinik 助手(S55.8
まで)
1980.12 名古屋大学医学部分院外科講師
1983. 1 名古屋大学助教授(医学部分院外科)
1985. 4 金沢医科大学第一外科(胸部心臓血管外科学)助
教授
1995. 8 金沢医科大学胸部心臓血管外科学教授(特任)
1998. 5 金沢医科大学胸部心臓血管外科学教授(講座主
任)
【おもな学会活動】
日本外科学会評議員、日本外科学会指導医、日本脈管学会
評議員、日本血管外科学会理事、日本心臓血管外科学会評
議員、日本静脈学会理事、日本臨床外科医学会評議員、日
本人工臓器学会会員、日本循環器学会会員、日本胸部外科
学会会員、日本肺癌学会会員、日本呼吸器外科学会会員、
社会保険診療報酬請求書審査委員会審査委員、Member of
International Society for Cardiovalcular Surgery , International
College of Angiology , International Union of Angiology ,
European Society for Vascular Surgery , American Venous
Forum , Asian Vascular Society , Deutsche Gesellschaft fur Gefa
βchirurgie.
やなぎはら
柳原
まこと
誠
看護専門学校副校長
【略歴】
1968. 3 岐阜大学医学部卒業
1968. 5 岐阜大学医学部内科学第1講座研究生
1969. 5 岐阜大学医学部附属病院皮膚科助手
1975. 3 医学博士(岐阜大学)
1976. 7 大垣市民病院技術吏員(医師)
1978. 4 大垣市民病院皮膚科医長
1978.10 岐阜大学医学部附属病院皮膚科講師
1983. 6 岐阜大学医学部皮膚科学講座助教授
1993. 4 岐阜市民病院皮膚科部長
1993.11 福井医科大学皮膚科学講座助教授
1997. 1 金沢医科大学皮膚科学講座教授(特任)
【おもな学会活動】
日本皮膚科学会会員、日本研究皮膚科学会評議員、日本臨
床電子顕微鏡学会会員、日本結合組織学会評議員、日本電
顕皮膚生物学会評議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員
76
〈松原純一校長就任の挨拶〉
このたび、平成13 年4月1日付けで松本正幸前校長の
後任として、看護専門学校校長を拝命いたしました。
本看護専門学校の目的は、看護の専門的な知識や技術
のみならず豊かな人間性を備え全人的な看護の出来る卒
業生を、本学付属病院を中心に送り出すことにあります。
現在、看護婦の数は全国的にみてみますと35,000人程
不足しており、充足を続けて5年後の平成17年には5,000
人にまで減らす予定になっております。さらに、看護婦
の数だけではなく質も大きな問題であり、当石川県にも
設立されて2年を迎えた看護大学をはじめ、医学部保健
学科や多くの看護専門学校があります。また看護の領域
も従来の対象に加えて高度先進医療や介護保険問題など
新しいニーズも増え、看護婦国家試験もこれらを対象に
次第に難しくなる傾向であります。本看護専門学校でも
この変遷に対応して教育の充実を一層計らねばならない
と思っております。
ここで最近の本校の国試合格率を振り返ってみますと、
既卒者も含めた統計で、平成 1 0 年 7 9 . 2 %(全国平均
83.6%)
、平成11年98.6%(同97.1 %)
、平成12年100%
(同96.4%)
、そして平成13年94.2%(同84.1 %)といっ
た経過でありますが、油断はできず、引き続き柳原誠副
校長(本年度から新任)、酒井桂子教務主任、各専任教
員、山田事務課長等のスタッフと力を合わせ100 %合格
を目指して努力する所存であります。
まず教育スタッフの充実に関しては、平成13年4月か
ら専任教員が1名補充され計8名となりましたが、まだ欠
員が1名あり、課題のひとつとしております。平成14年
4月からは本校の定員は本学病院の最近の需要に合わせ
て60人(現在は80人)となりますが、それでも専任教員
は1名欠員です。また、今までは実務教育の責任は教務
主任が背負っておりましたが、平成13年度からは、実習
のより一層の充実を目指して実習調整者を新たにおき、
教務主任と対等の立場で実習の統括にあたることになっ
ております。
本校への入学試験は、平成12年から本学医学部の入試
センターの管轄下に入り、より優秀な学生を広く募るよ
う、新潟県や富山県でも学生募集活動が行われるように
なっております。ところで本校の入学試験を突破して入
学した学生のうち例年10名近くが種々の理由で退学とな
っていくことは誠に残念なことであり、最初に述べたよ
うに全員が見事国試に合格するようにしたいと考えてお
ります。松本前校長も考えておられたように、姉妹校、
海外研修制度などについても少しでもレールを敷きたい
とも考えております。
以上、教職員全員が力を合わせて看護専門学校を充実
させるべく努力する覚悟でおりますので、理事長、学長
先生を始め関係各位の方々の一層のご指導、ご鞭撻をお
願い申し上げます。
84
《本学スタッフ新刊著書》
野村恭也、小松崎篤、本庄厳 総編集:
CLIENT 21〔21世紀耳鼻咽喉科領域の臨床〕
第13巻 口腔・咽頭
友田幸一、堀口章子、小田真琴分担執筆
(唾液腺疾患:炎症性疾患、p177-186)
348頁、32,550円、2000年11月発行
唾液腺の炎症性疾患を担当したが、特に小児などの
流行性耳下腺炎(ムンプス)と反復性耳下腺炎の鑑別
など、耳鼻咽喉科医のみならず、内科医、小児科医、
外科医などにも実際の臨床の場に役立つことを念頭に
図を多用して解説した。また、近年ほとんどみられな
くなったが、耳下腺結核の臨床像など臨床では考慮し
ておく必要がある貴重な症例についても病理組織や所
見を提示して、実際面で役立つ解説を行なってある。
(耳鼻咽喉科学堀口章子記)
中山書店、全21巻、A4変形版
本書は 21世紀の臨床耳鼻咽喉科学を網羅する 21 巻
からなるレベルの高い全書である。全国の第一線の専
門家が執筆にあたっており、本学からも多くの執筆者
があり、このコラムにも紹介されている。
第11巻 言語聴覚リハビリテーション
相野田紀子分担執筆
(構音検査、p31-38)
348頁、32,550円、2000年11月発行
本学病院でも言語聴覚リハビリテーションは、耳鼻
咽喉科所属からリハビリテーション科所属となり、将
来の発展が望まれている。この巻は「言語聴覚リハビ
リテーションの最新」を集大成しており、言語聴覚を
介したコミュニケーション障害を扱う各方面の担当者
によい指導書となると思われる。相野田助教授は多く
の臨床経験から構音障害の検査の基本を北里大の小林
氏と共同でまとめている。
第14巻 喉頭
山下公一分担執筆
(視診、p116-142)
429頁、33,600円、2001年1月発行
喉頭の「視診」の章は、
「原理と歴史」
、
「視診法の
実際」に分けられ、山下公一名誉教授の執筆である。
19世紀の間接喉頭鏡から始まり現在使用されているフ
ァイバースコープ、ハイテクの電子内視鏡までの原理
と歴史を説明し、それぞれを比較して理解をうながし
ている。ヒトの場合わずか15センチで到達する喉頭で
あるが、反射があり舌があり、観察するのに種々の工
夫が必要である。
「視診法の実際」では多くの症例を
紹介するばかりではなく、喉頭鏡操作前に必要な体
位、喉頭展開の手技も提示し、目で診て診断する耳鼻
咽喉科学の基本を説いている。
(耳鼻咽喉科学鈴鹿有子記)
85
平成12年度
学位取得者及び学位論文(資料:大学院課)
橋 由夏
内科学Ⅲ(腎)/甲第240号/平成13年3月22日
腎移植患者と血液透析患者における腹部大動脈石灰化
指数(aortic calcification index : ACI)の比較・検討(金
沢医科大学雑誌 第25巻第3号, 2000)
山本 治郎
脳神経外科学/甲第241号/平成13年3月22日
持続感染および脱髄におけるタイラーウイルスL* 蛋白の
役割(金沢医科大学雑誌 第25巻第3号, 2000)
西村 正彰
口腔科学/甲第242号 /平成13年3月22日
顎関節内障の病態形成に関わる滑液中白血球の研究
(金沢医科大学雑誌 第25巻第3号, 2000)
郭 一琳
産科婦人科学/甲第243号/平成13年3月22日
卵胞壁組織におけるgranulocyte colony-stimulating factor (G-CSF) mRNA 発現の性周期における変動−排卵
現象におけるG-CSFの働きについての検討−(金沢医
科大学雑誌 第25巻第3号, 2000)
土原 一真
内科学Ⅰ(呼)/甲第244号 /平成13年3月22日
Ventilator-induced lung injuryにおけるCXCケモカインの
役割
(金沢医科大学雑誌 第25巻第4号2000)
渡邊 之夫
産科婦人科学/甲第245号/平成13年3月22日
卵 巣 動 脈 血 行 動 態 解 析 に よ る human chorionic
g o n a d o t r o p i n 投与後の排卵予知(金沢医科大学雑誌
第25巻第4号, 2000)
小川原雅隆
整形外科学/甲第246号/平成13年3月22日
日本人変形性股関節症における大腿骨髄腔形態の特
徴−コンピューター支援設計法による大腿骨頚部及び
遠位髄腔の形態解析−(金沢医科大学雑誌 第25巻第
3号, 2000)
升谷 宏
内科学Ⅰ(循)/甲第247号/平成13年3月22日
高血圧症,虚血性心疾患および高血圧性心肥大・拡大
とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系遺伝子
の関係について(金沢医科大学雑誌 第 25 巻第4号,
2000)
山下 昌信
形成外科学/甲第248号/平成13年3月22日
人工真皮貼付創における新生血管構築−光顕的・鋳型
走査電顕的研究−(金沢医科大学雑誌 第25巻第3号,
2000)
河上 裕
眼科学/甲第249号/平成13年3月22日
NC/Num マウスにみられる水晶体所見の長期観察(金
沢医科大学雑誌 第25巻第4号, 2000)
永井 康太
眼科学/甲第250号/平成13年3月22日
コハク酸プレドニゾロン長期単独投与により誘発され
るラット水晶体の変化(金沢医科大学雑誌 第25 巻第
4号, 2000)
官 陽
病理学Ⅱ/乙第217号/平成12年4月27日
Active gelatinase A(MMP-2) expressed in the invasive
non-small cell lung carcinomas (非小細胞性肺癌組織に
おける活性型ゼラチナーゼの局在とその活性化機構の
解析)(金沢医科大学雑誌 第25巻第2号, 2000)
榎戸芙佐子
神経精神医学/乙第220号 /平成12年6月8日
注意欠陥多動障害(ADHD)の臨床的研究(金沢医科
大学雑誌 第25巻第2号, 2000)
竹田 公英
皮膚科学/乙第221号/平成12年7月27日
日光角化症および同症由来有棘細胞癌の生物学的特性
(金沢医科大学雑誌 第25巻第2号, 2000)
小渕 正次
微生物学/乙第222号/平成12年11月24日
Theiler ウイルスL*蛋白の性状と機能(金沢医科大学雑
誌 第25巻第2号, 2000)
93
教室紹介
18
社会科学教室
金川 雄教授
社会科学教室で、現在開講している授業科目は、1年生
を対象に、法学、社会福祉学、心理学、6年生を対象に、医
事法学の計4科目である。社会科学教室としては、他に政治
学や経済学などの科目を開講することも有用なことと思わ
れるが、現在の諸々の状況を考えると、上記4科目の開講が
適当なところと思われる。
法学は、若干の変遷があるが、一般的な法学概論を講義
することは、医学部の学生にとっては必ずしも興味を引く
ものでもなく、また十分な理解を全うすることも困難であ
るように思われる(このことは、他の医科大学、医学部の
法学担当者も同じ意見である)
。そこで、医療に直接関係す
る法的な問題を講義内容に組み入れる医事法学の分野を講
義した方が良いのではないか、と考え、カリキュラムでも、
医事法学という名称とし、医事法学を講義してきた。その
ための適当な教材が我が国で出版されていないので、平成
5年に、
「現代医事法学」(金川 雄著、B5版、357 頁、金
原出版)を出版し、教材とした。できる限り一般理論との
関連を説明し、医療に必要とされる法的知識及び法的なも
のの考え方を講ずるよう努めた。上記著書は、予想以上の
評価を得て、平成7年に改定版を出した。ところが、法学の
講義は一般的な法学理論を教えるべきで、医事法学を1学年
で教えるのは時期尚早だ。医事法学は、6学年の集中講義で
実施してもらいたいとの教務部からの指示があり、平成7年
度から、1学年ではカリキュラム上からも医事法学の名称を
廃し、法学として、いわゆる法学概論を中心として医事に
関する部分を若干とり入れた形で、講義を行ってきた。
社会福祉学は、狭い意味での社会福祉ばかりでなく、医
療保険制度や労災保険などの社会保障制度としてとり入れ
て講義内容とする必要がある。ところが、医学部学生を対
象とした社会福祉、社会保障を含む適当な教科書がわが国
では出版されていない。これが永年の悩みであったが、昨
年、学界の指導的立場にある佐藤進先生と共編著「あたら
しい社会保障・社会福祉法概論説」(B5 版、338 頁、信山
社)を出版し、教材として使用している。これによって、
学生諸君の理解度も満足すべきものに達してきていると自
負している。
心理学は、神経精神医学講座の平口真理講師に基礎心理
学を含む応用・臨床心理学を担当してもらっており、この
科目についても特に問題なく良好な状況と考えている。
最後に6学年対象の医事法学であるが、この講義の教材・
教科書も適当なものが見当たらないので、自ら執筆するこ
ととし「保健医療論」
(A4版、155頁、金沢医大出版局、平
成9年4月。同改訂版、平成11 年4月)という名称の教科書
も出版した。昨年まで、これにより講義を行ってきたが、
平成 12年度からは、何故か講義時間がわずか3時間に短縮
された。この教材は、法律等の改正により更に改訂しなけ
ればならないのであるが、現在、そのままとなっている。
以上の如く、社会科学教室では、医学部学生を対象とす
る標準的な教科書が発行されていなかったという事情から、
教材作成に相当な努力をしてきたといえよう。
一方、研究面では、インフォームド・コンセントの問題
を中心に、医療関係法律及びこれに関連する医療保険、社
会福祉に至るまで幅広い分野で活躍しているところでる。
(社会科学金川 雄記)
94
化学教室
三由文久助教授
20 世紀後半の豊かな物質文明の隆盛に対して、化
学は大きな貢献を成したはずですが、人々の求める
ままに大量生産を続けたために、環境汚染の主役に
なり、すっかり嫌われものになってしまいました。し
かしヒトゲノムの解析が終了した今、その情報が示
すタンパク質とそのタンパク質が作り出す諸産物の
解明に、もう一度活躍する場が与えられようとして
います。
化学の講義は開学初期の頃から、いち早く約25 名
の少人数クラス編成を取入れ、各グループの進度に
見合った講義を行い、学力の増進に努めて来ました。
これは本学の1学年の講義全体にわたる少人数クラ
ス編成へと発展する源となりました。医学には、分
子の立体的な形をしっかり認識しておくことが極め
て重要になるとの考えから、学生一人ひとりが分子
模型を組み立て、よく観察し、分子の形と化合物の
性質の関係を理解することを目標に講義を展開して
います。
教室の研究テーマは、有機硫黄化合物の合成と物
性および有機化合物の固相反応です。有機硫黄化合
物では、炭素と硫黄の結合がわずかに弱くなってお
り、このために炭素・窒素・酸素を骨格とする化合
物には認められない物性が期待できます。新奇な性
質を持つ化合物が幾つも見つかり、期待通りの成果
を得ています。この研究の途中、化学の常識に反し、
溶媒のない固体状態で反応が進行する現象を見つけ
ました。ここから固相反応の研究を始め、置換反応
と付加反応の二大分野において、簡単な操作(乳鉢
で試剤を混合磨砕し加温)により高収率で反応させ
ることに成功しました。溶媒なしで反応が進むよう
になると、現在、化学が目指しているグリーンケミ
ストリー(製品以外のものを環境へ極力排出しない)
の考えに合致し、工業的に有望な手法になり得ると
期待しています。
'94 年度より、学生の主体的学習態度の育成を目標
に、1学年でテュートリアルという形態のグループ学
習(学生6∼7名と教員1名)を始めています。これ
に供する課題の作成は、テュートリアルの成否に係
わる重要な仕事で、周到な準備が必要です。そこで
この課題作成を研究の一環に加え、化学や現代の科
学技術と社会が関連する問題を題材とする課題の開
拓にも、力を注いでいます。
さて写真を見て不審に思われて来た方もあるでし
ょうが、7年前より化学教室は私一人になってしまい
ました。しかし、私が現在身につけている多くのも
のは、かつて共に仕事をした教室の先生方(最盛期
には6名)と共に学び得たものです。講義と実習は総
合医学研究所および基礎医学系教室の先生方に助け
てもらっておりますが、授業時間割に現われない仕
事も多く、いつの日にか化学を研究分野とする新し
い力の加わることを願って、孤軍奮闘努力していま
す。
(化学 三由文久記)
95
救急医学教室
前列左から盛田英樹医員、真柴智助手、瀧野昌也教授、 田和也医員
後列左から安田幸雄教授(医学教育学)、吉田美雪事務員、林信行助手、
南野壽利医員、大山育子助手
救急医学教室は、平成12 年にスタートしたばかり
です。平成 13 年4月1日現在のスタッフは、教授1、
助教授1、助手4、医員4です。医局は病院別館1階の
救急医療センターの隣にあります。
学生教育では、高学年の講義と臨床実習を担当し
ています。個々の救急疾患の大半については臨床各
科で学ぶので、救急では症候に基づいた横の知識体
系と、救急ならではの考え方についての教育を行っ
ています。複数の科で学んだ救急疾患や救急病態は、
相互にどのような関係にあるのか? これは学生にと
っても大切な事項であるのみならず、私たち救急医
にとっても別の意味で興味尽きぬ課題です。十分な
教育には大量のエネルギーが必要であり、医局員が
そのようなエネルギーを持ちやすいような環境づくり
も考えていかなければなりません。
学生教育は大切ですが、医師としての資質を決め
るうえで、卒後臨床研修の重要性は論を待ちません。
臨床各科にわたる、さまざまな重症度、緊急度の患
者さんを、評価・振り分け以前に診ることのできる
救急外来は、卒後臨床研修に最適の環境を提供して
くれます。近年中に実施される卒後臨床研修の必修
化に対応すべく、現在マニュアルを作成中であり、
カリキュラムの見直しも予定しています。なお、当院
は平成 13 年1月より日本救急医学会認定医施設に認
定され、救急認定医資格の取得も可能となりました。
診療面では、以前からの救命救急科を引き継ぐ形
となり、救急医療センターにおける外来診療を主に
行っています。救急医療といえば、重症のみを扱う
救命救急だけが強調されたり、逆に時間外診療と同
一視されたりすることもあります。しかし、私たち
は、よい救急医療体制とは、いつでも、どんな急病
や怪我にも対応できる体制であると考えています。
そのためには病院全体の力が必要であり、各診療科、
各部署の参加は不可欠です。救急医療のうち、既存
の組織でカバーできない部分を担うのが救命救急科
の役目であるとの理念のもとに、各診療科、各部署
のご協力を得て日夜診療を行っています。昨年度の
救急医療センター受診患者数は、約23,000人でした。
研究は、これからという段階です。中毒、溺水、
環境異常による疾患などの急性外因性疾患や、プレ
ホスピタルケアに関する研究を端緒にして、ひとり
でも多くの人に、論文を書く快感を覚えてほしいと
願います。
医局の週間行事は、毎朝のカンファレンスで、前
日の症例の報告と必要に応じた症例検討を行うほか、
月曜日と金曜日の朝には、研修医による勉強会に続
いて、医局会と回診があります。
現在、医療を取り巻く環境は大きく変化しつつあ
り、救急医学もまたその波に揉まれながら、大きく
羽ばたこうとしています。救急医療に一生涯従事す
るつもりかどうかにはこだわりませんので、熱意のあ
る方の参加を歓迎します。 (救急医学瀧野昌也記)
96
呼吸器外科
前列左から伊藤和子事務員、土島秀次講師、佐久間勉助教授、四方裕夫助教授、佐川元保助教授
後列左から学生4名、田中潤一研修医、学生2名
昨年4月に呼吸器専門の外科が新設された。初代科
長には渡邉洋宇客員教授が就任されて、診療活動の
立ち上げと整備を行われたあと、この4月からは内田
健三病院長が呼吸器外科長事務取扱となられている。
スタッフは助教授3名(2名は併任)と講師1名
(併任)の少数精鋭(?)である。手術日は月、水、
金曜日の週3日で、気管支鏡検査及び治療を火、金
曜日に実施している。外来は月から土曜日の毎日で、
患者さんは北陸3県の全域から来院している。対象
疾患は肺腫瘍(肺癌)、気管・気管支腫瘍、縦隔腫
瘍、胸壁腫瘍、気胸、胸部外傷、膿胸等である。肺
悪性腫瘍の治療では、定型的な手術以外に胸腔鏡下
肺悪性腫瘍手術、気管・気管支形成術、大血管合併
切除術等を積極的に施行する。胸腔鏡下肺悪性腫瘍
手術は保険適応となってまもないが、当科は北陸地
方では最先端に位置していると自負している。肺癌
に対する戦略としては肺癌早期発見システムの確立、
胸腔鏡下手術等による早期手術、化学療法と放射線
療法を併用した集学的治療、遺伝子治療など先端医
療の導入をめざす。気管支鏡検査及びレーザー治療、
CT ガイド下肺生検、気管支動脈注入療法、気管支腔
内放射腺照射なども駆使し、正確な診断のもと積極
的治療を展開している。また、インフォームドコン
セントを基本とした患者中心の医療を大切にしてい
る。研究では肺癌及び縦隔腫瘍の発生、診断、治療
に関する研究、遺伝子治療に関する研究、胸腔鏡関
連機器の開発、気道上皮細胞の研究、虚血再潅流の
研究など幅広い研究を展開する。研修では胸腔鏡下
肺悪性腫瘍手術マニュアル、周術期管理マニュアル
などを作成し、呼吸器外科研修システムの確立をめ
ざしている。
当院は複数の専門医が常勤する日本呼吸器外科学
会認定施設となっており、広く呼吸器外科研修医を
募集している。医局は現在病院別館7階にある。
最後に学生教育は最も重要である。生命に直結す
る呼吸器の外科領域を担当しており、近年の著しい
進歩を次世代に継承していく必要がある。その準備
は万端整っているが、現在のところ残念ながら当科
は診療科であり講座ではないため学生教育の機会を
与えられない悩みを抱えている。
(呼吸器外科佐久間勉記)
97
総合診療科
前列左から松井恒二郎医師鮴谷佳和助教授、滝澤哲講師
総合診療科は平成9年4月発足し、現在、科長鮴谷
佳和助教授、滝澤 哲講師、松井恒二郎医師の3名
で構成しています。医療の原点とも言うべき「全人
的医療」を遂行し得る医療の供給と医師の養成が当
診療科の最も中心となる目標です。
「全人的医療」は当診療科だけの専売特許ではあり
ませんが、現実には医療の高度専門化と細分化のた
め、最も大切にすべき人間全体を省みることがなく
なり、その結果、患者と医師との間に心の隙間がで
き、それが徐々に拡大しつつあることが、我が国を
覆いつつある医療全体に対する不信感の大きな要因
と考えられます。このような人間不在のまま突き進
む現代医療への憂いが、欧米、特に米国を中心にプ
ライマリ・ケアを発展させ、日本はその後塵を拝し
て総合診療を誕生させたものと考えられます。
当総合診療科の診療内容は、現時点では内科診療
が中心ですが、従来の内科とは異なり患者の心理的、
精神的、あるいは経済的背景をも含めた患者の全て
に対して積極的に注意を払うこと、具体的には心身
の区別を問わず、特定臓器に偏向することなく、あ
らゆる悩みの総合窓口として、患者との接触は直接
的な対話・診察を中心とし、それを間接的な検査に
よって支援し、逆転させることなく対応することを
心がけています。現在までの構成メンバーの出身は、
内科、循環器科、老年科、脳神経外科等を経験し文
字通りの総合診療科です。当大学病院の中にあって
は、現時点では最も小さな診療科でありますが、他
の診療科の受け付け終了後も初診患者については午
後5時までは診療を続け、また、当病院の診療目標で
ある1日 24 時間1年 365 日受診可能な病院として、救
命救急科との協力関係を保ちつつ、夜間、日曜祝日
の診療業務の一翼も担っています。
学生教育においては、第4学年の内科診断学実習
では「病歴聴取」「医療面接のロールプレイ」
、第5
学年ではBSL、第6学年の集中講義においては身
体診察法の一部を担当し、医師として、最も重要か
つ基本的分野を担当しています。
研究に関しては、総合診療として臨床疫学、臨床
決断分析学、医療経済学、臨床倫理学、行動科学な
ど従来の臨床各科が取り組まなかった新しい分野の
研究に挑戦して行かなければならないと考えます。
しかし、現時点での常勤2名のスタッフでは日々の
診療業務に忙殺され如何ともし難く、今後の重要課
題と考えております。科長鮴谷助教授は一貫して糖
尿病学の研究に携わり、糖尿病性昏睡におけるイン
スリン少量持続療法の有用性を本邦で最初に報告す
るのみならず、closed-loop control による血糖制御シ
ステムである人工膵島の開発研究により本邦第一号
の人工膵島を完成させ、その有用性を証明しました。
総合診療科移籍後は高齢者糖尿病の病態の特殊性お
よび望ましい血糖コントロールと管理についての研
究を行っており、特に高齢者糖尿病の薬物治療にお
ける厳格すぎる血糖コントロールが低血糖性痴呆を
招来するという危険性を本邦でいち早く提起し、そ
の発症予防について学会、シンポジウム等で啓蒙に
努めています。
我が国における総合診療の歴史は浅く未だ、全国
的にも標準化はされてはいません。しかし、世界の
趨勢では総合診療=家庭医療と考えられ、将来、地
域医療の担い手となるべく目標を立てられている方
は是非、我々の仲間となってください。
(総合診療科 滝澤 哲記)
98
リハビリテーション科
前列左から山田俊昭技師長、中村恵子作業療法士、濱田美希理学療法士、河崎寛孝助手、山口昌夫教授、
大酢和喜夫登録医、萩原憲子言語療法士、松本美樹事務員
後列左から神戸晃男副技師長、茅野慎一理学療法士、岡田小弓技能員、畑有紀作業療法士、早川忍言語
療法士、亀田明男理学療法士、三井徳明主任、中木哲也理学療法士、薮越公司理学療法士、
斎藤紀子理学療法士、野間咲代子作業療法士、池田法子理学療法士、堂前隆志副技師長
介護保険がスタートして1年、いま、医療が大きく変わり
つつあります。少子高齢化社会の進行とともに、慢性疾
患・高齢障害者が急増しており、従来の医療体制では、十
分に対応できなくなってきているのです。すなわち高齢者
など筋力の弱い人が、治療時の安静臥床等によって発生す
る二次的障害によって、ますます筋力が低下し歩けなくな
る。医療技術の進歩によって、重度の障害を残しながらも
生存する人が増えている等。病気は治ってもすぐには生活
に復帰できない人が増加しており、そしてこのような方の
為にも、障害を克服するためのリハビリテーションの過程
が必要となってきているのです。
リハビリテーション科は、平成9年に、山口昌夫教授が就
任して産声を上げました。平成12 年には河崎寛孝助手が着
任し、理学療法、作業療法、言語療法の各部門も合わせる
と現在総勢19名となりました。徐々に拡大しつつある当院
のリハビリテーション部門ですが、業務はまだまだ多忙で
す。現在の当院の患者数から考えると、リハビリテーショ
ン医5名、理学療法士 15 名、作業療法士10名、言語聴覚士
5名が必要と考えられますが、我々の科自体がまだまだ発展
途上です。
当院でのリハビリテーション医の業務は、1)診療:整形
外科以外の各科から依頼される患者のリハビリテーション
処方、障害の診断上必要な各検査、リハビリテーションカ
ンファレンス開催、障害への特殊治療、住居改善指導など。
2)研究:リハビリテーション医療における基礎・臨床研
究。また、介護・福祉機器業者との共同研究も増えてきて
います。具体的には、筋電図を利用した歩行分析、大腿骨
骨折のクリニカルパス、急性期の嚥下障害の治療の研究な
ど進行中です。3)教育:医学生への教育はもちろん、理学
療法士、作業療法士、介護福祉士、ヘルパーなどの養成機
関での教育も行っています。また、最近、リハビリテーシ
ョン医の必要性の認識が高くなり、他の医療機関から研修
に来られる医師も増加しています。4)地域との連携:山口
教授は石川県介護保険審査会委員、石川地域リハビリテー
ション・ケア研究会の代表であり、また、いしかわ摂食・
嚥下研究会の事務局も置かれています。
このような多彩な業務があり2名の医師がフル回転して
いる毎日です。
リハビリテーション医になると得られる能力として、以
下のものがあります。1)地域医療から医療経済まで、この
激動の医療変革を見通せる広い視野。2)介護保険では、ケ
アプラン作成のための評価、医療/保健/福祉の調整能力、
生活を見る視点などが要求されますが、これらのことは、
リハビリテーション医の得意とするところです。3)リハビ
リテーション診療を行うには当然、医学全体にわたる広い
知識と技術が必要ですので、プライマリーケア能力は高く
なります。4)障害を持ちながらもQOL の向上をめざして
いく為の、リハビリテーション科独自の治療技術がありま
す。5)障害の受容から生活、生き甲斐まで、患者さんと
ともに考えて行く過程を通じて、深い人間洞察力が磨かれ
ていきます。
時代はリハビリテーション医を求めており、我々もリハ
ビリテーション医療に興味を持った若い医師が増えていく
ことを期待しております。
(リハビリテーション科河崎寛孝記)
99
教室記念行事
眼科学教室
2001年国際眼科フォーラム
佐々木一之教授退任記念会
平成13 年3月 25 日、佐々木一之教授の退任記念会
ならびに「2001 年国際眼科フォーラム」と銘打った
講演会がホテル日航金沢で開催され、およそ100名の
方々が聴講されました。
本フォーラムではOtto Hockwin名誉教授(ボン大
学)による 20世紀の水晶体研究、Paulus T.V.M. de
Jong教授(オランダ、エラスムス大学)による加齢
黄斑変成、Frederick T. Fraunfelder教授(アメリカ、
ケーシー眼研究所)によるバイアグラの眼副作用、
David H. Sliney博士(アメリカ、陸軍医学研究所)に
よる太陽光線と眼、および佐々木教授による白内障
疫学に関する研究がそれぞれ発表され、好評を博し
ました。午前10 時15分から始まったフォーラムは12
時30 分頃に閉会となり、続いて佐々木教授退任の記
念パーティーが開催されました。23 年間という長期
間の在籍ということもあり、御臨席いただいた方は
190名の多きにわたりました。
記念パーティーでは乾杯と会食から始まりました。
この間、佐々木教授の金沢医科大学赴任以来の写真
がコンパクトにまとめられて放映され、人々の共感
や笑いを誘った後、本学理
事長小田島粛夫先生の御
祝詞を筆頭に計 1 0 名の方
からスピーチを頂載いたし
ました。中国ハルピン大学
からの感謝状、記念品や花
束の贈呈があり、大変に和
気藹々とした雰囲気のすば
らしい会となりました。
先生は昭和 5 2 年本学の
眼科学教室の講座主任と
して着任され、2 3 年間教
室の運営に多大の労をとっ
てこられました。この間、
副院長、図書館長も歴任
されました。眼科では初代
倉知与志教授の後を継いで、教育、研究、診療に心
血を注いでこられました。学術活動は多岐にわたり
ますが、特に水晶体と白内障に関する研究は国際的
なもので、近年は紫外線と白内障の疫学に力を発揮
されてこられました。そのほかにも眼薬理、画像解
析、眼光学、ぶどう膜炎、感染症などの領域でも多
くの成果を挙げてこられました。学会の代表、理事、
評議員に名を連ねることも多く、一方で、中国医科
大学、ハルピン医科大学、同済医科大学等の客員教
授を兼ねておられ、多くの留学生を招いて立派な研
究者に育て上げてこられました。中国以外にもイン
ドネシア、ブルガリアやドイツなどからも留学生が来
ていて、大変国際色豊かな教室に発展させてこられ
ました。
先生のお人柄の突出したところは進取の気性に富
んでいるところだと思います。心不全を手術で克服
されてからも、若い者も及ばない活躍をされてきま
した。非常に活動的であること、自ら進んで行うこ
となど私共にはなかなか真似のできない資質を存分
に発揮されて、立派な教室づくりをしていただきま
した。
佐々木一之教授には今後もお体には充分留意され
て私共後輩の御指導をお願い致したいと思っていま
す。
(眼科学 高橋信夫記)
103
金沢医科大学学術振興基金募金のお願い
金沢医科大学学術振興基金募集趣意書
本学は、日本海側では初めての私立医科大学として、昭和 47年に設立され、倫理に徹した人間性豊かな良医を育成すること、医
学の深奥をきわめ優れた医療技術を開拓すること、人類社会の医療と福祉に貢献することを建学の精神として掲げて着実に歩み続
けてまいりました。
大学、特に医科大学は国の内外を問わず日進月歩の医学・医療をリードする大切な役割を担っていることは皆様充分にご承知の
ことであります。本学でも最高の教育・研究設備に加えて、先進医療機器の充実に意を尽くすとともに、基礎・臨床医学講座並び
に総合医学研究所の各部門において、医学の進歩に貢献できる人材の育成と研究の推進に日夜努力いたしております。
教育面では、教育スタッフとしてすぐれた人材を配し、学生の教育に専念しており、昭和 53 年に第1回の卒業生が誕生して以来、
数多くの医師を世に送り出し、それぞれ国内国外の医学・医療の最先端で活躍しております。
研究面では、平成元年には従来の人類遺伝学研究所、熱帯医学研究所及び共同研究室を母体とし、難病治療など医療の先端的な
分野の開拓を目的とした総合医学研究所を設置し、臓器置換・難治疾患・癌・人類遺伝学・熱帯医学・基礎医学・共同研究の各部
門を中心にプロジェクト研究の推進を図っております。また、国際舞台においても躍進を続けており、欧米の一流大学や研究所と
の研究員の交流、海外からの研究員・留学生の受け入れなどを通じて国際レベルの学術環境の整備にも意を尽くしております。
診療面では、金沢医科大学病院は日本海側随一の規模を誇るまでに成長し、最新の医療機器を整備し、医学教育のみならず、文
字どおり地域医療の基幹病院として順調に発展し、地域社会の要請に応えるべく最新レベルの医療サービスを提供することにも十
分な配慮をしてまいりました。
また、国際医療協力隊の派遣、世界各地域の種々の難病に対する国際医療協力に早くから取り組み、わが国の医科大学の中ではトッ
プクラスの実績を持っております。
しかしながら、この様な積極的な教育、学術及び医療活動を維持継続してゆくためには巨額の資金が必要で、学納金、国庫補助
金、附属病院の医療収入などの収入のみでは健全な経営は不可能であり、教育、研究、診療活動を萎縮させる恐れがあります。
このために、本学では文部省の許可を得て学術振興基金の募集を行っており、広く本学教職員、卒業生、学生の父兄をはじめ、
民間企業、篤志家の多くの皆様のご支援をお願い申し上げる次第であります。
日進月歩の医学の進歩に即応した最新の教育、研究及び診療環境を維持するにとどまらず、未来に向けてさらなる貢献と飛躍を
目指して、全学を挙げて努力いたし、社会的使命を果たし得たいと念願しております。
本趣旨にご理解、ご賛同を頂き、ご協力を賜りますれば誠に幸甚に存じます。
金沢医科大学理事長 小田島 粛 夫
募集要項
1.目 標 額 10億円
2.寄付方法 寄付申込書等を本学教育研究事業推進室に
ご請求ください。
TEL 0 7 6(2 8 6)2 2 1 1 内線2 7 2 0 ∼ 2 7 2 4
FAX 0 7 6(2 8 6)8 2 1 4
折返し、寄付方法、税務に関することな
どをご連絡致します。
3.そ の 他 本学は、平成10年9月1日付で文部大臣よ
り特定公益増進法人であることの証明を
受けております。
過去1年間の寄付者ご芳名(敬称略)
池田 憲彰(北海道)
松井寿美子(富山県)
横井 茂樹(愛知県)
大成建設㈱北信越支店(新潟県)
中井 澄子(奈良県)
下山 啓子(群馬県)
東山産婦人科医院(大阪府)
㈲アカシア商会(石川県)
㈱アクト(石川県)
小金井利信(東京都)
医療法人社団健松会(宮崎県)
永友 知澄(鹿児島県)
鈴木登喜子(宮城県)
森下 昭三(高知県)
唐沢 善徳(長野県)
田辺 正紀 (千葉県)
鴨下 泉(東京都)
野中 好雄 (山梨県)
黒澤 正憲(長野県)
津川 信 (福岡県)
有住 基彦(徳島県)
佐藤 正之(新潟県)
田中 雅祐(兵庫県)
小林 慶子(兵庫県)
福本 仁(広島県)
医療法人岑産婦人科医院(青森県) 古屋 聖兒(北海道)
有森 稔(岡山県)
荒木 威(鳥取県)
野崎 肇(岡山県)
升谷 一宏(石川県)
医療法人社団新井病院(北海道) 高野 雅巳(北海道)
松田 芳郎(石川県)
中川 克宣(長野県)
医療法人こまくさ会(長野県) 花田 紘一(福岡県)
㈱アドマック(石川県)
石澤 清(山形県)
中川 平義(滋賀県)
中根 英晴(三重県)
山中 啓明(北海道)
高田 弘(石川県)
佐藤 一巳(福島県)
久村 正也(北海道)
丸文通商(株)(石川県)
小松 史俊(山梨県)
篠田 廣(愛知県)
笹川 武(富山県)
中西 弘行(石川県)
増田 正俊(広島県)
杉浦 寿康(愛知県)
㈲八田物産(石川県)
米地 稔(宮城県)
島田 杉作(秋田県)
医療法人玉水会(鹿児島県)
岩 修三(大阪府)
成瀬 孟(千葉県)
大橋 冱子(富山県)
100
学内で行われた各種講演会
大学院セミナー
心不全の重症化と遺伝子治療の可能性
免疫抑制剤の作用機序と遺伝子療法に
よる免疫制御
講 師 豊岡照彦教授(東京大学医学部)
講 師
日 時 平成12年10月20日(金)18:30∼19:45
場 所 セミナー室D2, 3 (基礎研究棟3階)
担 当 薬理学 西尾眞友教授
心不全は生命を脅かす病
的状態にもかかわらず、そ
の原因の詳細についてはい
まだに明らかになっておら
ず、治療法も古典的なもの
を踏襲しているに過ぎな
い。
豊岡先生は、長年、心不
全の成因とその治療法に深い関心を持たれており、
特に最近、心不全の進展に伴って減少する蛋白(細
胞骨格の一部)を発見され、これを遺伝子導入によ
って発現させる事により、心不全状態が改善される
事を示された。さまざまな学会の講演やマスコミ取
材を受ける御多忙の中、今回は、大学院セミナーの
ためにお越しいただき、この蛋白(Sarcoglycan)に
ついてのこれまでの研究の成果をお話し頂いた。
まず、初学の大学院生にも理解できる程度の言葉
で、心不全の成因とそれに伴う細胞骨格の変化につ
いての概説が終わると、会場からのさまざまな質疑に
答えられた。大学院生のみならず、日頃当大学の研
究者が抱いている単純な疑問などにも丁寧に回答さ
れ、詳細に解説された。その博学ぶりは驚嘆に値する
ものであった。また、後半には、心不全の進展によっ
て複数の蛋白が減少するにもかかわらず、一つの蛋白
の遺伝子を導入しただけで、他の蛋白の発現も回復
して、心機能も回復するなどの現象を紹介され、今後
の遺伝子治療の発展の可能性を明快に示された。
講演後も予定時間を大幅に超過する活発な質疑応
答が交わされ、有意義なセミナーとなった。
(薬理学 石橋隆治記)
鈴木盛一先生(国立小児病院小児医療
研究センター実験外科生体工学部部長)
日 時 平成13年2月9日(金)17:00∼18:00
場 所 病院4階C42講義室
担 当 泌尿器科学 鈴木孝治教授
腎移植をはじめとする移植医療で最も重要な問題
は、有効な免疫抑制を行い移植片をできるだけ長く
生着させることである。免疫抑制法としてサイクロ
スポリンの開発は移植成績を上昇させたが、拒絶反
応の問題を解決できていない。さらに副作用の問題
も残っている。
本セミナーでは、移植免疫の日本における第一人
者である鈴木盛一先生に、まず移植免疫についての
解説をしていただいた。免疫を専門としない参加者
にも解りやすい内容であった。次に、鈴木盛一先生
が中心に開発された免疫抑制剤 FTY720 についての
お話があった。リンパ球のアポトーシスを介して免疫
を抑制する新しい薬剤である。すでにヨーロッパで
は治験が始まり問題となる合併症もなく、治療効果
も良好であるとのことであった。本邦でも臨床に使
用できるよう望むところである。後半は、遺伝子療
法による免疫抑制のお話であった。アデノウイルス、
HVJ-リポゾームなどをベクターとして in vivo への免
疫抑制遺伝子導入を行い拒絶反応を抑えるという究
極の治療法である。現在は実験段階ではあるが、鈴
木先生の熱のこもった説得力のあるお話に、移植医
療の問題点がすぐにでも解決してしまうような気さ
えおこさせた。最後に参加者からの質問に気軽に応
じていただき、和やかなうちにセミナーが終了した。
(泌尿器科学田中達朗記)
101
日本脳炎ウイルスが示す神経病原性の分
子的基盤の解析
講 師 保井 孝太郎先生
(東京都神経科学研究所副所長・微生
物部門参事研究員)
日 時 平成13年2月16日(金)17:00∼18:30
場 所 基礎研究棟3階セミナー室
担 当 解剖学Ⅰ平井圭一教授、総医研竹上勉教授
日 本脳 炎 ウ イ ル ス
( J E V )はフラビウイルス
科に属し、C型肝炎ウイ
ルスと近縁なウイルスで
ある。感染例は近年では
減少し、問題の無い感染
症に思われているが、ウ
イルスが消失したわけで
はなく、石川県でもウイルス分離の報告があり、ま
た最近ではオ−ストラリアにおいて感染例が報告さ
れるなど再興感染症として注意が喚起されている。
一旦感染し、脳炎を起こすと死亡率は 30 %にもなり
恐るべき感染症である。JEV 感染に伴い生じる神経
系障害の機序は解明されているかに見えるが、実体
は依然として不明な部分が多い。
保井先生は東京都神経科学研究所微生物部門に所
属し、長年にわたって JEV による神経病原性を明ら
かにしようと解析を続けてきた。本セミナーではこ
うした研究の成果を簡明に紹介していただいた。JEV
はニューロンに特異的に感染すること、それがおそ
らくウイルスレセプターの存在によるであろうこと、
さらには神経組織でのウイルス感受性は発生過程の
分化度に依存して低下すること、他方ウイルス側で
はエンベロープ蛋白に神経病原性に関わる部位があ
ることを変異ウイルスの遺伝子解析結果等から明確
に示された。病原性の解析はこれからのウイルス感
染対策にも活用されるであろうと締めくくられた。
講演後、活発な討論があり、セミナー出席者はウイ
ルスと神経組織障害の関わりについてさらに理解を
深めた次第である。
(総医研竹上勉記)
Hu-SCID マウスを用いたヒト病態動物
モデルの開発─新しいヒト型モノクローナル
抗体の開発─
講 師 穂積信道先生
(東京理科大学生命科学研究所教授)
日 時 平成13年2月20日(火)17:00∼18:00
場 所 血清学医局
担 当 血清学 山口宣夫教授
受動的免疫の典型として古くから、血清療法が知
られている。これはウマ等の他種動物血清を毒素性
疾患に用いてきたことによる。現在では、他動物の
血清抗体を利用して毒素性疾患の治療を行う頻度は
極度に低くなっている。その理由は他種動物血清に
対して生ずるアナフィラキシーショックの危険が潜
んでいるためである。しかし、抗体を受身移入して
治療する努力は現在も続けられている。この様な古
典的血清療法が考案されたのは以下の理由による。
毒素産生菌が侵入すると、宿主はただちに免疫反
応を開始するが、毒素を中和する抗体が末梢血中に
充分量達するまでに少なくとも2週間が必要である。
しかし毒素産生菌による外毒素の産生は生体内侵入
後2∼3日後から開始され、蛇毒咬症に至っては短
時間内に危篤状態となることがある。生体の対抗処
置に比べて素早く局所に感染病巣を形成する訳で能
動的免疫反応は時間的に遅れてしまう訳である。こ
の様に血清療法は副作用の危険をはらみながらも緊
急の対応に不可欠の治療とされて来た。これまで副
作用軽減のために抗毒素活性を備えたモノクローナ
ル抗体の作製に主力がそそがれることになった。し
かし、単クローン抗体は従来まではマウスで作製さ
れたマウス型免疫グロブリンであり、大腸菌に遺伝
子導入して生産されたレコンビナント型抗体の場合
も大腸菌タンパクの持ち込みを除外することができ
なかった。そこでヒト型アミノ酸配列を持つヒト型
抗体で且つモノクローナルな抗体の調製が考えられ
た訳である。
今回の講師、穂積先生はこの様な歴史的流れの中
で最もヒト型抗体に近いアミノ酸配列を持つ抗体の
作製に取り組まれ成功された訳である。セミナーで
はヒト型モノクローナル抗体作製のコンセプト及び
実際を紹介されました。当日は学内行事と重なり、
参加者は多くはなかったものの、講師の先生を中心
に熱心な討議が交わされた。 (血清学山口宣夫記)
102
核ー細胞質間分子輸送メカニズム
よしひろ
Autoimmune Ear Diseases Update 2001
and Gene Therapy for Allergic Diseases
講 師 米田悦啓(Yoshihiro Yoneda)教授
(大阪大学大学院医学系研究科情報伝達
医学専攻機能形態学講座)
日 時 平成13年3月9日(金)16:30∼18:00
場 所 基礎研究棟3階D1セミナ−室
担 当 生化学Ⅱ 西川克三教授
米田悦啓教授は大阪大学医学部を卒業後、大学院
生として、同大学微生物病研究所で、細胞融合法の
開発で著名な岡田善夫教授の元で研究を始められた。
その後、岡田先生と共に新設された同大学細胞工学
センターに移り、現在まで細胞生物学の基礎研究一
筋に携わられている。特に、細胞核での蛋白質の出
入り機構の研究で著名である。現在、さまざまな生
命科学の分野で注目されている、細胞機能の根幹と
なる癌抑制遺伝子産物の機能、転写、DNA の複製、
アポトーシス等は細胞核内の問題が中心で、核内外
でのそれらに関連する蛋白質、核酸の輸送が制御要
因になっている。
講演では、まず細胞核と細胞質を隔てる核膜の性
質、特にそれらの間で行われる物質輸送の通路とな
る核膜孔複合体の構造と機能に始まり、この輸送の
基本的な機構と意義について解説された。さらに、
最近の自身の研究成果を中心に、細胞質から核への
輸送に関わる担体である Importin 類、また核外への
輸送に関わる Exportin の機能、さらに輸送の方向性
を決め制御する低分子量G蛋白質 Ran について詳細
に紹介された。中でも自作の優れた性質をもつ特異
的単クローン抗体が有効に用いられている点が印象
的であった。金沢大学からの参加者も含めて約 30 名
の聴衆に感銘を与えると共に多くの議論を呼び、意
義深い講演会であった。
(生化学Ⅱ西川克三記)
講 師 Tai J. Yoo教授(Allergy and Immunology,
The University of Tennessee, Memphis, USA)
日 時 平成13年3月26日(月)18:00∼19:00
場 所 病院4階C41講義室
担 当 耳鼻咽喉科学 友田幸一教授
原因不明の難聴、
めまいの中に自己免
疫異常が存在するこ
とが 1970 年代後半に
提唱されるようにな
り、1982 年に Yoo 教
授らはメニエール病
の中にType Ⅱ collag e n を自己抗原とす
る免疫異常症例のあることを初めて Science 誌に報告
された。また 1983 年には動物実験モデルについて同
誌に発表された。
当時私は Memphis Eye and Ear Hospital (Shea clinic)
に留学中で、1人の自己免疫性難聴患者を通じて Yoo
教授と知りあうことになった。これをきっかけにお互
い分野の異なる立場から共同で内耳免疫の研究が始
まることになった。本セミナーの冒頭で Yoo 教授か
ら、いっしょに研究を始めた 20 年前当時の様子が紹
介され大変懐かしく思い出された。今日までに CB11
peptide, Type Ⅸ collagen, β-tubuline、myeloprotein,
RAF1 などが内耳特異抗原になることや、collagen の
経口免疫に関する最新の成果についても講演された。
またアレルギー性鼻炎や喘息に対する遺伝子治療の
現状についても語られた。時代とともに蛋白レベル
から分子レベルへと解析が進み、将来は内耳疾患の
いくつかは遺伝子治療にて解決できる可能性が出て
きたように感じられた。
先生は現在 64 歳で、まだまだお元気で現役で活躍
されておられ、昨年も教室の松野栄雄講師がアレル
ギーの遺伝子治療の基礎と臨床研究で1年間お世話
になった。今後もこの分野の共同研究をつづけてい
くつもりである。
(耳鼻咽喉科学 友田幸一記)
104
http://www.kanazawa-med.ac.jp/
金沢医科大学のホームページです
本学では、多くの分野でインターネットが利用されています。Web や Mail はもとより、文献
検索、地域の医療機関や全国の同窓生との連携、各種事業の公示に利用されているほか、学内
イントラネットも拡充されています。教育・研究・医療の分野で大いに活用されることを期
待します。
(広報委員会)
金沢医科大学専用個別郵便番号は
〒 920-0293
本学へ差し出される郵便物にこの番号が記載してあれば、住所記載がなくても配達されます。
☆ 職員宿舎の郵便番号 は「石川県河北郡内灘町字大学」地区の番号〒 9 2 0 - 0 2 6 5 です。
表紙写真
金沢医科大学報 第106号
内灘砂丘のハマナスの花 中谷 渉
内灘海岸の砂丘に群生するハマナスが、初夏の
空の青が濃くなるにつれて、赤い花と葉の緑の輝
きを増す。
ハマナスはばら科に属し、花は派手ではないが
かすかな芳香を放つ。
背景に見えているのは完成間近の内灘大橋。
はまなすのかをりは遠き薔薇のかをり
中村草田男
(中村草田男氏/ 1901∼ 1983、「萬緑」創刊主宰、芸術
院恩賜賞)
平成13年5月1日発行
発行者 金沢医科大学理事長 小田島 粛夫
編 集 金沢医科大学概要・学報編集委員会
山下公一 西川克三 山田裕一
廣瀬源二郎 平井圭一 伊川廣道
木越俊和 朝井悦夫 谷口 豊 相野田紀子 太田隆英 國府克己
坂井輝夫 木村晴夫 小平俊行
森 茂樹 佐野泰彦 北野 勝
中谷 渉 林 新弥 加富喜芳
中嶋秀夫 中川美枝子 服部一希
白川有紀
発行所 金沢医科大学出版局
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1ー1
TEL 0 7 6 ( 2 8 6 ) 2 2 1 1
印刷 能登印刷株式会社