ポスター - 日本コンベンションサービス

一般セッション
抄 録
ポスター討議
ポスター討議
DP-1-01-01
DP-1-01-02
有限会社ラジオロネット東海
公益財団法人 天理よろづ相談所病院
宮川 英男、鈴木 智博
桑垣 陽子、稲本 俊、松谷 泰男、西村 理、山城 大奏、小川 真理、
平野 加奈子
複数施設との遠隔検診デジタルマンモグラフィ読影の運用経験
乳腺外科外来におけるタッチパネル端末による問診の導入と効果
一般セッション(ポスター討議)
当読影センタは CT,MRI を中心とした遠隔画像診断を行っている。常勤放射線
科医師のみによる集合読影方式を採用しており、5名すべて検診マンモグラ
フィ読影有資格者である。過去12年間、フィルム宅配による検診マンモグ
ラフィの読影業務も行ってきた。デジタルマンモグラフィの普及に伴いフィ
ルム読影からデジタル読影への移行機運が高まり、平成23年4月より順次
モニタ読影運用への移行が始まった。現状マンモグラフィ読影を契約してい
る6施設中4施設との間で遠隔通信利用のデジタルマンモグラフィ読影を
行っている。運用開始当初から、施設が増えるごとに様々な問題が発生した。
ざっとあげてみると以下のとおりである。1.CT や MR に比べ1画像あたり
のデータ量が大きいデジタルマンモグラフィのデータ取得方法、取得後セン
ター内の画像配信、保管をどうするか。インフラ速度とデータ保存の問題に
ついて。2.画像データは電子転送によるモニタ読影、所見用紙のみ郵送に
よる紙記入で対応する場合、送られてくる所見用紙と読影画像の並び順を一
致させるにはどうしたらよいか。3.読影センタ内で CT や MR と同様にすべ
てリスト表示をさせてそこから開くのか、あるいは直接マンモグラフィ読影
ワークステーションへ送り、独自のリストのみで運用するのか。運用の円滑性、
展開速度等含めたそれぞれのメリットデメリット。4.送られてくる様々な
画像に対し適切なウィンドウ条件に変更できるよう、各々複数のボタンが必
要となる。さらに施設数分必要なのでかなり多数のボタンが必要となってく
るが、これらをどのようにキーボードに設定、運用するのか。5.取り込ま
れた患者情報を電子的に見る場合、画像表示の前にストレスなくかつ確実に
描出できる工夫。6.電子的なレポート作成の場合、レポート添付画像の基
本をシェーマ表示にするのか、実画像表示にするのか。7.シングルチェック、
ダブルチェックそれぞれ運用可能かどうか。読影者名をどのように反映させ
るのか。今回はこのようなデジタル運用における実際を紹介し、発生した諸
問題と我々なりの解決方法を紹介する。
【はじめに】外来での患者情報の収集は、問診用紙を使って患者が記入し、診
察時に医師が不足を補うのが一般的である。今回、タッチパネル端末の外来
問診導入による患者・看護師の視点からの効果を明らかにする研究に取り組
んだ。【対象】乳腺外来初診患者 167 名と看護師 4 名【方法】タッチパネル端末
(Apple 社 iPad)を用いた問診(タッチパネル群)と問診用紙による問診を行っ
た群(問診用紙群)のカルテ記載項目の回答割合を比較検討した。問診用紙群
は、患者が記入した内容と医師が聞き取った内容をデータとした。タッチパ
ネル群に対し、タッチパネル操作についてのアンケートを行った。さらに、
担当した看護師 4 名に対して導入効果のアンケート調査を行った。研究の趣
旨、参加への自由意思、個人情報の保護について口頭と書面で説明し、同意
を得た。【結果・考察】タッチパネル群 137 名、問診用紙群 30 名であった。タッ
チパネル群と問診用紙群の平均年齢、性別、疾患の分布に有意な差はなかった。
タッチパネル群の回答率は全ての項目において 90%以上あった。問診用紙群
では、患者の負担を考え医師が診察で聞き取るとしていた内容の項目はカル
テにも記載がなく回答率が低かった(図1)。患者アンケートでは、問診用紙
に比べ問診内容は増えたが、量、内容共に 90%以上に抵抗がなかったと回答
した。タッチパネルを用いた問診は患者の負担を最小にし、適切に情報を得
ることができると考える。また、看護師のアンケートでは、「患者の不安を事
前に知ることができる」、「診察時の患者への声掛けが変わった」など初診時に
看護師が関わることで、診察や検査時に相談しやすい関係を作ることができ
ると考える。
DP-1-01-03
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がん研究会有明病院 乳腺センター
函館五稜郭病院 パソロジーセンター
飯島 耕太郎、宮城 由美、照屋 なつき、北川 大、中島 絵里、荻谷 朗子、
坂井 威彦、森園 秀智、蒔田 益次郎、岩瀬 拓士
池田 健
スキルアップのためのウェアラブルカメラによる検査治療手技
の記録について
乳癌では診療報酬の最大 60%が病理標本作製に喰われる
-診断群分類包括評価におけるコスト率をもとに-
診療において、薬物治療等は各種ガイドライン等による治療水準の均てん化
や向上が進められている。しかし、現在も乳癌診療の根幹をなす針生検等の
検査手技や手術については手術書などの書籍はあってもなかなか具体的なも
のではなく、技術の継承という面から考えると問題があると思われる。近年、
ビデオカメラの小型化や高画質化が進み、かつ低価格となり、いわゆるウェ
アラブルカメラとして各種記録に多く用いられるようになっている。今回こ
れらの器機を用いて有益性について検討した。使用機材はヘッドマウントが
できかつ4K 記録ができるものとし、針生検ならびに乳癌手術の際に装着した。
針生検については、施行者の目線としてみることができかつ超音波のモニター
画面も十分認識できるもので、実地の臨場感がわかりやすいものであった。
手術については、無影灯の当たる場所の関係に大きく左右することなく術者
のほぼみたままの画像が得られた。また、動画からのスナップショットも十
分実用に耐えるものであった。問題点としては記録時間が連続30分程度で
あることや、頭の動きが意外と画像に反映するため見やすい画像にするには
やや意識しないとならないことなどがあった。今後、これら画像からマニュ
アルを作成することや手技の評価が可能になると考えられる。またリアルタ
イムに映像を遠隔地に送信できる機能を利用し、検査施行者への実地指導な
らびに監視も可能であり、検査の際の安全性向上にも役立つことも期待でき
る。
【目的】病理標本作製原価が診断群分類包括評価(以下 DPC)に占める割合をコ
スト率と定義し,他臓器癌と比較することで,乳癌症例における病理検査の
コスト構造を解析する.【方法】平成 25 年 1 月 1 日から 12 月 31 日まで,当院
で DPC 適用となった乳癌手術症例 108 例,他臓器癌 310 例(胃癌,結腸・直
腸癌,肺癌および前立腺癌)を対象とした. DPC 分類コードおよび DPC 診療
報酬の算定には平成 24 年度改定時の点数表を用い,医療機関別係数は 1 とし
た.コスト率算出のための病理標本作製原価は,ヘマトキシリン・エオジン
染色標本作製原価は日本病理学会の試案に基づき 1 枚あたり 1114 円とし,免
疫組織化学標本作製原価には当該の出来高診療報酬点数を用いた.【結果】乳
癌 108 例のコスト率は平均 24.8%(最小 5.8%,最大 61.3%)であった.他臓
器癌のコスト率は平均 4.1%であった.【考察】日常の病理診断業務を通じ,乳
癌の病理診断コストが他臓器癌よりもかなり高いことは自明であった.それ
でもなお,症例によっては病理標本作製原価のみで DPC 診療報酬全体の 60%
以上が消えるという事実には驚く.現在,病理標本作製のための診療報酬は
ホスピタルフィーとして包括評価されているが,ドクターフィーとして出来
高払いとするべき性質のものと考える.
318
ポスター討議
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DP-1-02-01
石巻赤十字病院 乳腺外科
1
古田 昭彦、佐藤 馨、玉置 一栄、安田 有理
宮原 か奈 1、海瀬 博史 1、寺岡 冴子 1、上田 亜衣 1、河合 佑子 1、
細永 真理 1、木村 芙英 1、山田 公人 1、佐藤 永一 2、石川 孝 1
臨床指標からみた乳癌診療の質的評価~当地域の場合~
Luminal 乳癌における術前化学療法の効果と予後の検討
【背景】Luminal 乳癌は、他のサブタイプと比較して化学療法の治療効果が乏
しいとされ、その位置付けは日常の臨床上、一つの大きな問題である。【目的】
当院で行った術前化学療法の症例をもとに Luminal 乳癌における治療効果及
び予後を観察し、予後因子について検討した。【対象及び方法】対象は、当院
で 2004 年 11 月から 2011 年 9 月までに術前化学療法後に手術を施行したホル
モン陽性 HER2 陰性乳癌 115 例である。これらの症例において、1)術前化学
療法の原発巣における病理学的治療効果(pCR)、2)再発率と死亡率、3)予
後因子(pCR、治療前の Ki67、治療前後の腋窩リンパ節転移状況)について検
討した。【結果】使用したレジメンは、EC → T が 110 例、タキサン単剤が 2 例、
TC が 2 例、EC のみが 1 例であった。観察期間の中央値は 72.6 ヶ月であり、
全 例 術 後 に は ホ ル モ ン 治 療 が 行 わ れ て い た。 1)組 織 学 的 治 療 効 果 は、
Grede0 ~ 1 が 67.8% (78 人 )、Grade2 が 25.2% (29 人 )、Grade3 が 8.7%
(10 人 ) であり、pCR 率は 8.7%であった。2)再発率は 13.0% (15 人 )、死
亡率は 4.3% (5 人 ) であった。3)pCR の有無により再発率、死亡率ともに有
意 差 を 認 め な か っ た。Ki67 は 14 % を カ ッ ト オ フ 値 と す る と、 再 発 率 は
Luminal A:10.2%、Luminal B:14.9%であり、死亡率は Luminal A:0%、
Luminal B:7.5%であったが、有意差はなかった。リンパ節に関しては、治
療前の臨床的転移の有無は、再発率、死亡率ともに有意差を認め (p = 0.0027、
p < 0.0001)、また治療後の病理学的リンパ節転移の有無は、再発率において
有意差を認めた (p = 0.001)。【結語】従来報告されているように Luminal タ
イプ乳癌でも約 10%弱の症例に pCR は見られるが、原発巣の pCR は予後予測
因子にはならなかった。一方、腋窩リンパ節転移に関しては、リンパ節の
pCR が予後因子になりうるかについての検討は必要であるが、このタイプの
乳癌症例の予後を予測するためには、腋窩リンパ節転移状況は、化学療法前
後を問わず重要であることわかった。
DP-1-02-02
DP-1-02-03
1
1
Luminal B(HER2 陰性 ) 乳癌の術前化学内分泌療同時併用療法
の有効性、安全性の検討
リンパ節転移高度 luminal 乳癌における化学療法のベネフィッ
トについて
浜松医科大学 第一外科、2 聖隷浜松病院 乳腺科、
浜松医療センター 乳腺科、4 自治医科大学附属病院 乳腺科、
5
浜松医療センター 病理診断科、6 浜松オンコロジーセンター
3
松沼 亮一 1、小倉 廣之 1、井手 佳美 1、杤久保 順平 1、細川 優子 1、
吉田 雅行 2、徳永 祐二 3、小泉 圭 3、穂積 康夫 4、森 弘樹 5、宮本 康敬 6、
渡辺 亨 6
背景:現在、ER 陽性乳癌に対する術後薬物療法は化学療法と内分泌療法の順
次投与が推奨されている。ER 陽性乳癌は Luminal A/Luminal B と区別される
ようになり、Luminal B 乳癌は化学療法、内分泌療法の効果が共に期待でき
るサブタイプと認識されている。1980 年代に ER 陽性転移乳癌では化学療法
と内分泌療法同時併用の奏効率が高いという報告が散見され、術前療法で同
時併用した場合に高い pCR 率が期待できると考えられる。Luminal B(HER2
陰性 ) 乳癌での pCR は予後のサロゲートマーカーになるという報告もあり、
術前療法で同時併用の効果と安全性を検討する試験を計画した。試験デザイ
ン:Luminal B(HER2 陰性 ) 乳癌の術前薬物療法として対照群は PTX → AC →
手術。試験群は PTX+ANA → AC+ANA →手術。閉経前はリュープリン 3 か月
製剤を追加。割付け因子は施設と閉経状態で 94 例を 1:1 に割付け。主要評価
項目は pCR。副次評価項目は奏効率、有害事象の発現頻度と程度、組織学的
治療効果、乳房温存率、HRQOL。選択基準:Luminal B(HER2 陰性 ) の手術
可能乳癌。Luminal B の定義は ER(+) かつ / または PgR(+) のうち、Ki67-LI
≧ 14% か つ NG ≧ 2、 ま た は NG=3。 統 計 学 的 方 法:Simon two-stage
design を用いて、対照群の閾値 pCR 率を 10%、試験群の期待 pCR 率を 25%
と設定。αエラーを 5%、検出力を 80% と設定。各群の pCR 率を比較し、χ 2
乗検定で有意差検定を行う。症例集積:94 例登録予定で 2014 年 12 月現在、
53 例登録。結果:2014 年 12 月時点での pCR 率は両群に差は認められていな
いが、Ki67 の治療前後の変化は同時併用群で顕著であった。最新に更新され
たデータを発表する予定である。
都立駒込病院 乳腺外科、2 都立駒込病院 病理科
宮本 博美 1、山下 年成 1、有賀 智之 1、堀口 和美 1、本田 弥生 1、
井寺 奈美 1、後藤 理紗 1、黒井 克昌 1、堀口 慎一郎 2
【目的】luminal A-like 乳癌において化学療法のベネフィットは少ないとされ
るが、リンパ節転移高度例では相対的適応として考慮されることも多い。リ
ンパ節転移高度 luminal 乳癌の補助療法と予後について検討した。【対象と方
法】1998-2013 年に当院で手術を施行し、病理組織学的にリンパ節転移が 4
個以上認められた ER 陽性の浸潤癌 220 例について後方視的に検討を行った。
ER は 1% 以上を陽性とし、レセプターの発現量が不明な症例は除外した。こ
れらを luminal A-like(lumi-A)
:ER 陽性で PgR > 20% かつ核異型度 1 また
は 2、luminal B-like(lumi-B):ER 陽性で PgR ≦ 20% または NG3 に分類し、
化学療法はアンスラサイクリン系とタキサン系の逐次レジメンを完遂した症
例を AT 完遂群、完遂できなかったがアンスラサイクリン系またはタキサン系
が 4 コース以上施行された症例を B 群、いずれの抗癌剤も 4 コース以下または
投 与 な し の 症 例 を C 群 と し て 予 後 を 検 討 し た。【 結 果 】lumi-A は 84 例、
lumi-B は 136 例で、患者背景に有意な違いは認めなかった。観察期間中央値
4.9 年(範囲:0.4-17 年)で、遠隔再発は lumi-A:16 例、lumi-B:59 例、乳
癌特異的死亡は lumi-A:9 例、lumi-B:38 例で認められ、lumi-B は lumi-A
と比較して有意に予後不良であった(5 年無遠隔再発率 DFS 82% vs 56%、5
年乳癌特異的死亡 CSS 94% vs 75% ともに log-rank p= < .001)。また、化
学療法の患者背景は、C 群、B 群、AT 完遂群の順で有意に高齢であった。化
学療法ごとの DFS は、lumi-A では 3 群間に有意差は認めなかった(log-rank
p=0.67)が、lumi-B では AT 完遂群、B 群、C 群の順で有意に高かった(10 年
DFS 54% vs 22% vs 27%、log-rank p=0.05)。CSS は lumi-A、lumi-B と
もに 3 群間で有意差は認めなかった。lumi-A では Cox 比例ハザードモデルに
おいても化学療法完遂の有無は予後因子とはならず、術後胸壁照射なしが予
後不良因子であった。【考察】リンパ節転移高度であっても luminal A-like の
症例では、化学療法追加によるベネフィットは少なく、省略できる可能性が
あると考えられた。しかし、luminal A-like の再発イベント数が少ないため、
症例の蓄積による慎重な検討が必要である。
319
一般セッション(ポスター討議)
【背景】昨今、医療機関や医療圏の「医療の質」を評価する、あるいは改善する
目的に医療施設・地域間の種々の臨床指標を比較検討する手法が一般化しつ
つある。しかしながら施設それぞれに様々な制約事情があり、単に病院間の
成績表を横並びに比較することは短絡に過ぎると思われる。一方、自施設内
においては、煩雑な日常診療に忙殺される中、がん診療拠点病院の要件厳格
化やあらたな役割への対応に追われ、体感でしか判断できない自施設の医療
の質の改善度を客観視するにはこういった臨床指標の活用が有用と考えた。
【目的】乳癌診療の質の指標となり得るいくつかの臨床指標統計を過去のある
時点と現在とで比較することで当院の乳癌診療の質の変遷を検討する。【対象
と方法】2014 年における以下の臨床指標を過去、すなわち 2010 年(東日本大
震災の被災前年でもある)と比較検討した1.乳癌手術件数2.外来患者数(の
べ)3.
一次乳房再建件数4.HBOC遺伝カウンセリング件数 5.化学療法前
の口腔ケア・歯科依頼件数 6.化学療法前のB型肝炎対策件数 7.肥満者への
管理栄養士による栄養指導件数について比較した。【結果】1.乳癌手術件数
144 件(1%減)2.外来のべ患者数。概数 8000 名(12%減)3.一次乳房再建
件数 13 件(2.6 倍増)4.HBOC遺伝カウンセリング件数 47 件(2010 年実績
なし)5.化学療法前の口腔ケア・歯科依頼件数 148 件(2010 年実績なし)6.
化学療法前のB型肝炎対策件数 48 件(2010 年実績なし)7.肥満者への管理
栄養士による栄養指導件数 20 件(2010 年実績なし)
【考察】乳癌診療の量的問
題(1、2)は国家レベル、地域レベルでの人口伸び悩みから減少へとの流れか
らもはや拡大局面は終わったと思われ、止むを得ないものと考える。一方、
恣意的な選択ではあるが 3 ~ 7 のごとき指標は目覚ましい改善がみられ、こ
のこと自体は当地域における乳癌診療の質的改善につながる動きと素直に評
価してよいかと考えられる。今後さらに乳癌診療における種々の臨床指標を
用いた質的評価が重要視されると考える。
東京医科大学 乳腺科学分野、2 東京医科大学病院 病理診断部
ポスター討議
DP-1-02-04
DP-1-02-05
術後補助ホルモン療法によるタモキシフェンにて高エストラジ
オール血症を呈した閉経前乳癌の検討
レトロゾールによる関節症状の実態調査
ブレストクリニック築地
1
IMS グループ 横浜旭中央総合病院 乳腺外科、
2
聖路加国際病院 病理診断科、3IMS グループ 横浜旭中央総合病院 外科
猿丸 修平
小野田 敏尚 1、本田 朱麗 1、大山 真有美 1、阿部 江利子 1,2、白畑 敦 3、
櫻井 修 1
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】日本人の平均閉経年齢は日本産婦人科学会から 50 歳と報告されて
いる。閉経の有無はホルモン療法の選択に重要であるが、その定義として
NCCN のガイドラインでは血中エストラジオール値 (E2)、卵胞刺激ホルモン
値 (FSH) の測定が推奨されている。また大規模な臨床試験の結果から、術後
補助ホルモン療法としてタモキシフェン (TAM)1 0 年の投与が考慮されるよう
になった。このような背景から、TAM 投与による月経状況やホルモンバラン
スの変化、有害事象などを E2、FSH でモニタリングすることは有益と推測さ
れる。【対象と方法】術後補助療法に TAM ± LH-RH アゴニスト (LH-RHa) を投
与中の閉経前ホルモン受容体陽性乳癌症例に対して、3-6 か月おきに血中 E2
と FSH の測定を行った。【結果】血中 E2 濃度> 1,000pg/ml の症例は 3 例確認
された。症例 1 は 52 歳、両側乳癌術後に TAM 内服後 1 年 3 か月で E2 1,400pg/
ml に増加、フェアストンに変更するも改善なく、LH-RHa 単独療法に変更し
たところ E2 は 15pg/ml に減少した。症例 2 は 47 歳、子宮全摘術の既往があっ
た。左乳癌術後に TAM 内服開始、4 か月で E2 1,197pg/ml に増加したため、
LH-RHa 単独療法に変更し、E2 < 15pg/ml に減少した。症例 3 は 46 歳、左
乳癌術後に TAM+ LH-RHa を開始した。LH-RHa は 2 年で終了したが、TAM
内服 3 年で E2 が 1,110pg/ml となり、現在フォロー中である。
【まとめ】過去
の文献では TAM による高エストラジオール血症の報告が若干みられるが、い
ずれも化学療法後の症例であった。今回の経験から化学療法を受けていない
ホルモン療法単独症例が、TAM により高 E2 血症を呈しているケースは実際に
多いことが予想された。今後 TAM の長期投与が行われる傾向にあることから、
血中 E2、FSH 値により女性ホルモンを定期的にモニタリングすることが重要
と考えられた。
【目的】アロマターゼ阻害薬の有害事象として、関節の痛み、こわばりなどの
関節症状 (Joint symptom:JS) がある。その頻度は、医薬品添付文書では約
1 ~ 5% 未満と記載されているが、実際の臨床現場においてはより頻度が高
いと感じられる。さらに、その発生時期についても不明なところがある。そ
こで今回、更なるエビデンス構築を目的として、レトロゾール (LET、商品名:
フェマーラ R 錠 2.5mg) による JS の実態調査を行った。【方法】2008 年 5 月 1
日から 2014 年 7 月 31 日までに、ブレストクリニック築地において、LET を
処方した全乳がん患者 208 例を対象に診療録による後ろ向き調査を実施した。
調査項目は 1)JS 発生割合 2)JS 発生時期 3)JS に対する対症療法とその内容及
び改善状況 4)JS 発生と患者背景との関連要因である。【結果・考察】1)JS 発生
割合は、49.0%(102 例 )。症状別では関節痛が 40.0%(83 例 )、こわばりが
22.1%(46 例 ) と高い頻度で観察された。2)JS 初回発生時期は投薬開始1年
以内が半数以上を占めたが、2年以上経過してからの症例も認められた。ま
た JS は、投薬開始1年半を超えると、減少していく傾向が認められた。3)JS
に対する対症薬物療法 ( 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)、漢方薬 ) が行わ
れたのは、関節痛で 147 回の訴えのうち 80 例 (54.4%) で、そのうち改善例
は 46 例、こわばりで 53 回の訴えのうち 12 例 (22.7%) で、そのうち改善例は
4 例であった。4)JS 発生と患者背景との関連要因について検討したところ、
顕著な関連要因を見つけることはできなかった。今回の調査により、レトロ
ゾール投薬開始1年半を超えると、JS が減少していく傾向が認められた。患
者に内服の継続を薦める際の、心強い具体的なデータであると感じられた。
DP-1-03-01
DP-1-03-02
術前内分泌療法を施行したホルモン感受性乳癌における予後予
測因子としての PEPI score の有用性
内分泌療法施行した乳癌患者における Ki67 の臨床的有用性
1
慶應義塾大学 医学部 外科学教室 一般・消化器外科
橋本 直樹 1、久留島 徹大 1、木村 昭利 1、阿部 皓太郎 1、赤石 隆信 1、
鈴木 大和 1、谷地 孝文 1、米内山 真之介 1、岩間 正浩 1、十倉 知久 1、
梅原 実 1、梅原 豊 1、西川 晋右 1、高橋 賢一 1、岡林 孝弘 1、森田 隆幸 1、
成田 富美子 2
横江 隆道、神野 浩光、原田 華子、竹前 大、栗原 俊明、永山 愛子、
高橋 麻衣子、林田 哲、北川 雄光
背景:術前内分泌療法により、乳房温存率が上昇することが明らかとなって
いるが、無病生存期間や全生存期間の延長については未だ明らかではない。
術前化学療法における pCR に相当する有効な予後因子を見つけることが現在
の術前内分泌療法の課題である。本研究では術前内分泌療法を施行したホル
モン感受性乳癌を対象として、PEPI score を含めた臨床病理学的因子と予後
との相関を検討した。対象と方法:2005 年 10 月から 2010 年 6 月までの期間
で、術前内分泌療法を行った、StageI-III のホルモン感受性乳癌 49 例を対象
とした。anastrozole または exemestane を術前の 4-6 ヶ月間内服した。また、
術前内分泌療法の予後因子として、PEPI score を用いた(BJC (2010) 103,
759-764)。PEPI score は、pT stage、pN stage、手術検体の Ki67 値およ
び ER status からそれぞれに対応したハザード比を点数化し、その合計を予後
の予測因子としたものである。結果:年齢の中央値は 71 歳(53-84)、ER 陽
性は 98%(48/49 例)で、PgR 陽性は 94%(46/49 例)
、術前内分泌療法の投
与期間の中央値は 16 週間(16-24)、観察期間の中央値 1680 日の時点で、再
発 4 例、死亡 2 例を認めた。全症例のうち、9 例(18%)で術後補助化学療法
が施行された。治療前腫瘍径は 2.5cm(1.5-5.3)であったが、手術直前の腫
瘍径は 1.5cm(0-4.0)と有意に縮小していた(p < 0.001)。また、Ki67 値は、
治療前の針生検時で 10%(1-32)、手術検体では 5%(1-30)と有意に低下を
認めた(p < 0.003)。CR/PR(25 例)と NC/PD(17 例)の再発率は、それぞれ
12%、6% であった(p=0.861)。また、PgR の変化については、PgR 陰転化(12
例)と PgR 維持(32 例)の再発率はそれぞれ 8%、9% であった(p=0.138)。
術前内分泌療法の予後因子である PEPI score を用い、PEPI score 0 点の群と
1 点以上の群で再発率を比較したところ、それぞれ 11%、21% と 0 点群にて
低い傾向がみられた(p=0.749)。結論:PEPI score を用いることで予後を予
測できる可能性が示唆された。
青森県立中央病院 がん診療センター 外科、2 青森県立中央病院 看護部
【目的】術前化学療法では患者の予後を示す代替マーカーとして pCR 率を用い
ることが可能であり広く使用されているが、ホルモン受容体陽性患者では
pCR を示した患者と全生存率および無病生存率との間に有意な相関がみられ
なかったと報告されている。このためホルモン受容体陽性乳癌患者では、
pCR は有効性、予後を評価するマーカーとして有用でないと思われる。術前
内分泌療法の代替マーカーとして期待できるのは腫瘍細胞における Ki67 であ
るが、その有用性は未だ十分に検討されていない。今回、術前内分泌療法施
行した乳癌患者における Ki67 の変化、病理学的奏効および臨床的有用性など
につき検討した。【方法】2010 年 4 月より 2013 年 4 月までに当科で術前内分
泌療法に対し同意が得られた 67 例を対象とした。ホルモン感受性の十分ある
症例に対して、閉経前症例 23 例は tamoxifen + LH-RH agonist、その他、閉
経後症例 44 例は letrozole による内分泌療法を行い、6 ヵ月後に手術を行った。
Ki67 は、治療前は針生検標本で、治療後は手術標本にて測定した。効果判定は、
臨床的には CT、US を用い、組織学的評価は手術標本にて行った。【結果】治
療前の Ki67 は 18.8 ± 15.7%、治療後の Ki67 は 11.4 ± 12%と有意に低下が
みられた (p = 0.01)。臨床学的効果判定で CR 及び PR が得られた症例 38 例
( 奏効率 : 56.7% ) で検討したところ、有意な低下がみられた (19.7 ± 17.3
vs. 8.2 ± 7.6% , p = 0.002)。一方、SD 症例 27 例 (40.3% ) で検討したとこ
ろ、低下傾向にあったが有意差はなかった (17.2 ± 12.7 vs. 14.5 ± 15.3% ,
p = 0.28)。組織学的効果判定では pCR が得られた症例は 2 例 (3.0% ) のみで
あったが、43 例 (64.2% ) で grade1b 以上の効果を認め、Ki67 の有意な低下
がみられた (18.9 ± 18.6 vs. 11.0 ± 12.9% , p = 0.03)。一方、grade1a 症
例 25 例 (37.3% ) で検討したところ、低下傾向にあったが有意差はなかった
(19.5 ± 8.0 vs. 14.0 ± 14.2 % , p = 0.06)。 ま た grade2 以 上 の 症 例 12 例
(17.9% ) で検討したところ、低下傾向にあったが有意差はなかった (23.5 ±
26.6 vs. 10.6 ± 9.2% , p = 0.1)。【結論】術前内分泌療法における Ki67 の低
下率と臨床的奏効率が関係していることが示唆された。組織学的効果判定で
は、必ずしも Ki67 の低下率と相関しないところもあり、今後も症例を重ねて
検討していきたい。
320
ポスター討議
DP-1-03-03
DP-1-03-04
四谷メディカルキューブ 乳腺外科
1
ER 陽性乳癌に対しての術前化学療法治療(特に PgR 発現に関し
ての検討)
乳癌術後ホルモン療法における服薬アドヒアランスと副作用発
現の関連について
3
長内 孝之、岡本 直子
東京西徳洲会病院 薬剤部、2 東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター、
井上レディースクリニック、4 瀬戸病院
DP-1-03-05
DP-1-04-01
三河乳がんクリニック
1
ゴセレリン酢酸塩デポの投与時の処置と同 3.6mg と 10.8mg
の注射部位反応の比較の検討
初発乳癌患者術後補助療法における TC 療法の忍容性,安全性と
予後についての後方視的検討 (SBCCSG-34 study)
埼玉メディカルセンター 外科、2 埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、
赤心堂病院 外科、4 三井病院 外科、5 二宮病院 外科、
6
春日部市立病院 外科、7 越谷市立病院 外科・がん治療センター、
8
埼玉乳がん臨床研究グループ (SBCCSG)
3
高坂 歌純、日置 あずみ、大久保 紀江、小暮 俊明、佐々木 俊則、
水谷 玲子、水谷 三浩
【 目 的 】ゴ セ レ リ ン 酢 酸 塩 デ ポ 10.8mg( ゾ ラ デ ッ ク ス RLA10.8mg: 以 下
ZOL10.8)の閉経前乳癌への適応承認に伴い、投与間隔が延長し(12 週毎)、
同治療患者のアドヒアランス向上が期待されている。しかし使用する注射針
の変更(16 → 14G)などによる同剤の注射部位反応の増強も懸念される。当院
で は 従 来 の ゴ セ レ リ ン 酢 酸 塩 デ ポ 3.6mg( ゾ ラ デ ッ ク ス R3.6mg: 以 下
ZOL3.6)の投与においても、局所冷却による鎮痛や止血の徹底などに留意し、
注射部位反応の軽減に努めてきた。そこで今回 ZOL10.8 への変更がもたらし
た必要な局所処置や注射部位反応の増強の実際について、当院の症例を検討
し報告する。【対象と方法】2014 年 4 月 3 日~ 11 月 15 日の期間の当院の内分
泌療法中の閉経前乳癌例で、ZOL3.6 から ZOL10.8 に変更した 87 例(平均年
齢 44.8 ± 6.3 歳)を対象とした。1:両デポ剤の投与方法は、注射予定部位(臍
を中心に手掌をあてた範囲)を保冷剤で 3 分間冷却。2:投与毎に穿刺は左右
交互とし、冷却済みの穿刺部位をつまみ上げ、尾側から頭側に向かって刺入
し皮下注。3:デポ剤到達先端部から針穿刺部までを患者本人の 3 横指で 5 分
間圧迫止血。4:止血を確認し、不十分な場合は圧迫時間を延長。さらに穿刺
部皮膚上に大綿球を枕子にしてテープで圧迫固定したうえで帰宅許可。以上
の 4 点の手技について全投与者に徹底し施行した。治療当日の注射前に前回の
注射部位反応を確認し、穿刺時の疼痛は注射直後に評価 (NRS 使用 ) を行った。
【結果】全 87 例のうち、注射部位反応を比較すると ZOL3.6 は 25 例 28.7%、
ZOL10.8 は 17 例 19.5% に出現していた。それぞれの内訳は、内出血 18 例
20.7%vs10例11.5%、掻痒感6例6.9%vs違和感2例2.3%、疼痛4例4.6%vs6
例6.9%だった。疼痛のNRS評価はZOL3.6で1.65±1.17、ZOL10.8で2.26±
2.03であった。
【考察】ZOL3.6からZOL10.8に変更することで最も心配された
のは疼痛と出血の増強である。疼痛は頻度、程度ともにわずかな差であり、疼
痛のためにZOL3.6への差し戻しを希望した例はなかった。当院の冷却法による
疼痛の制御は有効と思われた。その他の注射部位反応にも差異はなかった。以
上よりZOL10.8への変更は、患者の来院頻度と経済的負担を軽減するのみでな
く、苦痛を悪化させずに安全に実施できることが判明した。今後も、苦痛を抑
えかつ安全な医療技術を提供できるよう慎重な観察と技量向上に努力したい。
櫻井 孝志 1,8、井上 賢一 2,8、永井 茂勲 2,8、山田 博文 3,8、秦 怜志 4,8、
二宮 淳 5,8、君塚 圭 6,8、三浦 弘善 7,8
【背景】乳癌治療後長期生存者の増加に伴い Anthracycline 系薬剤による心毒
性が懸念されるようになり,non-anthoracycline レジメンの開発がなされて
いる .US oncology 9735 試験では,1・2 期および手術可能な 3 期の原発性乳
癌を対象として,AC の 4 コース投与と Docetaxel + Cyclophosphamide( 以
下 TC 療法 ) の 4 コース投与を比較した結果,TC 群の無病生存期間は AC 群よ
りも有意に長いことが確認された . しかし,この試験は海外の患者を対象とし
たもので,国内の患者集団での TC 療法の忍容性および安全性は十分に評価さ
れていない . 埼玉乳がん臨床研究グループとして,使用実態下における TC 療
法の忍容性および安全性・予後について評価した 【
. 対象と方法】2006 年 1 月
より 2012 年 6 月までに TC 療法 (Docetaxel 75mg/m2 + CPA 600mg/m2
4kur 予定 ) を開始した 148 例について検討した .DFS, OS, 有害事象等につい
て後方視的に検討した 【
. 結果】患者背景は,Stage 0:2 例,1:60 例 , 2A:71 例 ,
2B:13 例 , 3A:3 例 . サブタイプは,ER+/HER2- :104 例 , ER-/HER2- :32 例 ,
ER+/HER2+ :11 例 , ER-/HER2+ :2 例 . 組織型は,2a1 :24 例,2a2 : 42 例,
2a3 :64 例,特殊型 19 例 . 腋窩リンパ節転移は , 陰性 91 例 (65%),1-3 個
39 例 (27.9%),4 個以上 10 例 (7.1%) であった . 完遂率は 94.6%(140/148)
であり,非完遂例は毒性によるものが多かった . また減量例に関しては,2kur
目の早期から減量が行われていた症例が多かった . 現時点までに 9 例に再発を
認め ( 無病生存率 93.9%),うち 4 例が死亡した 【
. 結語】TC 療法は認容性が有
り,効果的な治療と考えられた . 有害事象およびそれらへの対応についてさら
に報告する .
321
一般セッション(ポスター討議)
岩井 大 1、渕上 ひろみ 2、水野 嘉朗 2、竹田 奈保子 2,3、井上 裕子 3、
(背景)術前化学療法 ( 以下 NAC) により病理学的 CR 症例の予後が良いこと
瀬戸 裕 4、佐藤 一彦 2
が示されており、本邦においても対象症例が増えている。HER 2 type ある
い は Triple negative 症 例 に 関 し て は そ の 有 効 性 は 多 く の 報 告 が あ る。 【目的】乳癌術後補助療法においてタモキシフェン (TAM) やアロマターゼ阻害
Luminal type 乳癌に関しては、適応に関して controversial である。一方で
薬 (AI) の服用は再発抑制や対側乳癌予防に重要であるが , その期間は 5 ~ 10
2013 年 St.Gallen recommendation において PgR 発現 cut off 値を 20%とす
年と非常に長い . 近年 , 服薬アドヒアランスの低下が再発及び死亡率の上昇に
ることが提案されているが その臨床的応用に関しても controversial であ
関連があると報告され , 高い服薬アドヒアランスの維持が課題とされる . 服薬
る。 ( 目的 )ER 陽性乳癌に対する NAC に関して検討した。特に PgR 発現(cut
アドヒアランス低下の要因として副作用の発現が指摘されているが ,ATAC 試
off 値 20%)に関してその治療成績について検討した。(NAC の適応)cStageII
験ではほてりや関節症状発現例における高い服薬アドヒアランスが報告され
以上(T2 or 3 N10,1 M0)
(対象)2007 年 から 2011 年まで術前化学療法後
ており , その関連は未だ明らかでない . 本邦ではこれらに比して高い服薬アド
手術を実施した 60 例 (61 病変:1 例は両側同時乳癌 ) の内 , Luminal type(ER
ヒアランスが報告されている . そこで本邦の乳癌患者における副作用発現と服
陽性 ) 乳癌 50 例、50 病変。( レジメ )weekly Paclitaxel( B法 :pacl100mg/m2
薬アドヒアランスの関連を検討した 【
. 方法】2008 ~ 14 年に当院で術後補助
2
2
q1w)x12 followed by FEC(5-FU500 mg /m Epirubicin 100mg/m
療法として TAM または AI を投与された患者を対象に , 後方視的カルテ調査を
2
Cyclophosphamide 500 mg/m q3w)x4(免疫染色評価方法)HER2 発現に関
実施した . 服薬アドヒアランスの評価には , ホルモン薬の服用を要した日数の
しては ASCO/CAP ガイドライン、PgR は St.Gallen 2013 に準拠し cut off 値
うち薬剤を処方された日数の割合 (MPR:medication possession ratio) を用
PgR:20% とした。切除標本の病理学的判定基準は日本乳癌取り扱い規約(第
いた . 副作用評価はホルモン薬に特異的な副作用 (HSAEs:hormonal therapy
17 版)に従った。 ( 治療成績 ) 平均観察期間 51.9 ヶ月。平均年齢 47.9 歳。閉
specific adverse events)として,血管運動症状(VMSs:vasomotor symptoms),
経前:30 例 閉経後:20 例。PgR 陽性 34 例
(HER2 陽性 1 例、
HER2 陰性 33 例)
:
関節症状 (MSAEs:musculoskeletal adverse events),婦人科症状 (VVSs:
閉経前 21 例、閉経後 13 例 PgR 陰性 16 例(HER2 陽性 7 例、HER2 陰性 9 例)
:
vulvovaginal symptoms) を選択し , その発現頻度と薬剤変更 / 中止の有無を
閉 経 前 11 例、 閉 経 後 5 例 病 理 学 的 効 果 判 定:Grade( 以 下 G)1a:14 例、
調査し , 更にそれらの MPR を比較した 【
. 結果】対象は 441 例 , 平均年齢 56(28
G1b:16 例、G2a:11 例、G2b:4 例、G3:5 例.PgR 発現では PgR 陽性: G1 24
~ 92) 歳 ,TAM は 218 例 (49%),AI は 223 例 (51%) に投与され , 平均服薬期間
例 (70.6%) G2 以上:10 例 (29.4%)、PgR 陰性:G1 6 例 (37.5%) G2 以上 は 1020 日 , 平均 MPR は 97% であった .HSAEs は 259 例 (59%) に発現してお
10 例 (62.5%) であり有意に PgR 陰性に関して組織学的効果が高かった。PgR
り , 内訳は ,VMSs 123 例 (28%),MSAEs 151 例 (34%),VVSs 53 例 (12%) で
陰性 HER2 陽性では 5 例 (71.4%) で G2 以上であった。PgR 陰性 HER2 陰性では
あった .HSAEs 発現症例の平均 MPR は 97% で , 非発現 182 例 (41%) の 98%
G2 以上 3 例 (33.3%) であった。局所再発 2 例 (4.0% 温存症例 )、遠隔転移 4
と比較し有意差を認めなかった (p=n.s.). 更に , 個々の症例における HSAEs 発
例 (8.0% )(骨単独転移 1 例、肺・骨転移 1 例、胸膜播種。骨転移 2 例)~ 4 群
現件数による比較では ,1 件発現 194 例 ,2 件発現 62 例 ,3 件発現 3 例の平均
での有意差なし。乳癌死1例 (PgR:pos, HER2 pos 脳転移 )(結語)2013 年
MPR は , それぞれ 97%,97%,100% で非発現症例と比較し有意差を認めな
St,Gallen recommendation でのホルモン感受性乳がんに関して PgR 発現 cut
かった (p=n.s.).HSAEs 発現症例のうち , 薬剤変更を要した 34 例の変更前後
off 値は術前化学療法病理学的効果判定予測には妥当である可能性が示唆され
における平均 MPR は 96% と 94% であり , 有意な低下は認めなかった (p=n.
た。
s.).HSAEs に よ る 治 療 中 止 は 4 例 の み で あ っ た 【
. 考 察 】今 回 の 検 討 で
は ,HSAEs の発現状況に関わらず高い服薬アドヒアランスが維持されてい
た . しかしながら , 単一施設での後方視的解析であり , 症例数や観察期間も限ら
れている . 今後 , 多施設間で症例を蓄積し , 高い服薬アドヒアランスの維持に関
連する因子を検討する必要があると考えられた .
ポスター討議
DP-1-04-02
DP-1-04-03
リンパ節転移個数および治療法別にみた Luminal A 乳癌の予後
エストロゲンレセプター陽性早期乳癌患者の術後補助内分泌療
法の完遂率の検討
国立がん研究センター東病院 乳腺外科
北海道大学病院 乳腺外科
米山 公康、和田 徳昭、山内 稚佐子、康 裕紀子、岡田 淑、渡邊 真
一般セッション(ポスター討議)
【背景・目的】ホルモン受容体陽性乳癌、特に Luminal A(LA)乳癌に対する薬
物療法の第一選択はホルモン療法であり、化療は推奨されない。しかしリン
パ節転移が高度な局所進行乳癌では化療が併用されることも少なくない。LA
乳癌の予後をリンパ節転移個数および治療法により後ろ向きに解析した。【対
象と方法】2002 年 1 月から 2012 年 12 月までに当院で根治術を施行した原発
浸潤性乳癌 L A タイプ 892 例を対象とし、リンパ節転移個数、治療法により
群別し臨床病理学的因子、予後を比較解析した。LA は ER もしくは PgR 陽性、
HER2 陰性、Ki-67 10% 以下と定義。2 群の比較はχ 2 検定、生存期間の解析
は Kaplan-Meier 法を用い、検定は Log-rank test で行った。p < 0.05 で有意
とした。
【結果】全症例の平均年齢 56.8 歳(26 ~ 87 歳)、平均腫瘍径 2.5cm(0.5
~ 15cm)。 臨 床 病 期 は I/II/III が 404/390/98 例。 リ ン パ 節 転 移 陽 性 は
311/892 例(34.9%)。転移個数は n0/n1-3/n4-9/n10 ≦が 581/225/65/21
例。観察期間中央値 67 ヶ月(4 ~ 144 ヶ月)で再発 72 例(遠隔 47 例、局所
17 例、温存乳房 11 例)
、死亡 43 例(現病死 35 例、他病死 8 例)。6 年無再発
生存率(RFS)90.7%、全生存率(OS)96.2%。リンパ節転移陰性 / 陽性の 6 年
RFS は 96.2%/80.5%、OS は 97.5%/93.7% で陽性例が不 良(p < 0.0001)
であった。リンパ節転移個数別では n0/n1-3/n4 ≦で 6 年 RFS、OS はそれぞ
れ 96.2%/87.4%/63.6%、97.5%/97.1%/85.9% で n4 ≦が不良(p < 0.0001)
であった。ホルモン単独(569 例)でのリンパ節転移個数別 6 年 RFS、OS はそ
れ ぞ れ 97.6%/90.1%/63.2%、98.6%/97.9%/88.2% で n4 ≦ が 不 良(p <
0.0001)であった。リンパ節転移個数と治療法では、転移陰性ではホルモン単
独(400 例)と化療併用(181 例)では 6 年 RFS、OS がそれぞれ 97.6%/93.2%、
98.6%/95.3% で化療併用が不良(p < 0.01)であった。n1-3 ではホルモン単
独(132 例 )
、 化 療 併 用(71 例 )で 6 年 RFS、OS は そ れ ぞ れ 90.9%/81.5%、
97.9%/95.6% であり OS は化療併用が不良(p < 0.05)であったが、RFS では
差を認めなかった。n4 ≦ではホルモン単独(27 例)
、化療併用(59 例)で 6 年
RFS、OS はそれぞれ 63.2%/62.8%、88.2%/84.6% でありいずれも有意な差
は認めなかった。
【結語】LA 乳癌ではリンパ節転移陰性例ではホルモン治療単独
でも予後は良好で、化療は効果がなく施行すべきではない。リンパ節転移陽性、
特に 4 個以上でも化療の効果は極めて限定的であり大きな予後改善は期待でき
ない。
市之川 一臣、石田 直子、郭 家志、山本 貢、細田 充主、山下 啓子
【はじめに】乳癌は女性の発生する癌の中で最も頻度が高く,今後もさらに発
生率の増加が予測されている.近年,ATRAS 試験,aTTom 試験などタモキシ
フェン(以下 TAM)を 5 年以上内服する症例の検討が行われ,死亡率の減少が
明らかになっている.より長期の術後内分泌療法が推奨されるようになって
いるが,5 年間の術後内分泌療法が完遂できない症例が存在する.今回われわ
れは , エストロゲンレセプター(以下 ER)陽性早期乳癌患者を閉経前後に分け ,
術後内分泌療法剤の投薬期間,副作用との関連を検討し,完遂状況を調査した.
【症例と治療背景】2001 年 1 月―2011 年 6 月まで 10 年 6 ヶ月間に手術を施行
した閉経後 ER 陽性早期乳癌 287 例と 2004 年 1 月―2010 年 12 月まで 7 年間
に手術を施行した閉経前 ER 陽性早期乳癌 89 例.2014 年 12 月時点で予後調
査を行った 【
. A. 閉経後】年齢中央値 62 歳(47 - 89 歳).観察期間中央値 86 か
月(1 - 162 か月).アロマターゼ阻害剤(以下 AI 剤)を第 1 選択とし , 関節痛
等で AI 剤内服困難例は抗エストロゲン剤に変更.TAM1 年間程度内服後に ,AI
剤に変更している 14 例(4.9%)を含んでいる 【
. B. 閉経前】年齢中央値 44 歳
(27 - 56 歳).観察期間中央値 87 か月(37 - 120 か月).術後内分泌療法は,
TAM + LH-RH アゴニスト 38 例,TAM 単剤 28 例,AI 剤 6 例,LH-RH アゴニ
スト単剤 5 例,TAM → AI 剤 3 例,TAM + LH-RH アゴニスト→ AI 剤 1 例 【
. 結
果 A 閉経後】全 287 例中 36 症例(12.5%)に術後再発を認めており,AI 剤内
服中の再発は 30 例(10.5%).190 例 (66.2%) は 5 年間以上の内分泌療法が完
遂され ,AI 剤の完遂症例は , 162 症例(56.4%).28 例 (9.8%) は現在内分泌療
法継続中である . 他院へ転院し追跡困難 , 原因不明中止の症例が 25 例(8.7%),
自己治療中断が 6 例(2.1%),関節痛,手のこわばり,骨粗鬆症増悪など内分
泌療法による副作用による中が 5 例(1.7%),他癌悪化が 3 例(1.0%)あっ
た【
. 結果 B 閉経前】TAM 内服 70 症例の内服期間,副作用,中止理由,完遂
率を検討した.36 症例(51.4%)は 5 年間内服を完遂し,20 例(28.6%)は現
在内服継続中である . 更年期症状,手足の痺れ,皮疹 ,TAM 網膜症 , 肝機能障
害の副作用で 5 症例(7.1%), 骨転移などの再発で 4 症例(5.7%)が内服中止
となった . また ,TAM 内服後 1-3 年後に閉経を確認した 4 症例(5.7%)は ,AI 剤
に変更となった.【結語】閉経後乳癌 , 閉経前ともに , 約 8 割の症例で術後補助
内分泌療法が予定通り行われていた .
DP-1-04-04
DP-1-04-05
多重治療歴のある閉経後進行乳癌におけるフルベストラントの
治療奏効期間
当科における進行再発乳癌に対する Fulvestrant の使用成績
別府医療センター 乳腺外科
1
公益財団法人がん研究会 有明病院 乳腺センター 乳腺内科、
2
北海道大学病院 乳腺外科、3 がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科、
4
がん研有明病院 総合腫瘍科、5 がん研究所 病理部 臨床病理
武内 秀也
荒木 和浩 1、石田 直子 2、深田 一平 1、小林 心 1、堀井 理恵 5、秋山 太 5、
蒔田 益次郎 3、高橋 俊二 4、岩瀬 拓士 3、伊藤 良則 1
【背景】フルベストラントは従来の内分泌療法と異なり、エストロゲン受容体
をダウンレギュレーションする。ホルモン陽性閉経後進行乳癌において内分
泌療法の主軸となりつつあり、近年の報告ではより早期の投与により2年超
の無増悪生存期間が示されている。実臨床ではアロマターゼ阻害剤やタモキ
シフェン、さらには化学療法後に頻用されており、その状況下での有用性は
不明である。そのため当院でのフルベストラントの現況ついて後方視的に検
討した.
【対象・方法】2012 年 1 月から 2014 年 12 月までに当院でフルベストラントを
投与した 197 例を対象に、フルベストラントの効果として治療奏功期間を用
い、その要因を検討した.
【結果】フルベストラント開始時の年齢中央値は 65(42 ‐ 90)歳で、前治療歴
の中央値は 5(1-15)レジメンであった。前治療として選択的エストロゲン受
容体モジュレーターが 130 例、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤が 186 例、
エキセメスタンが 131 例、エベロリムスが 4 例、ベバシズマブが 10 例、トラ
スツズマブが 15 例であり、化学療法歴のない症例が 59 症例であった。転移
部位としては軟部組織が 56.3%、骨 71.0%、内蔵 75.6%、脳 6.6%であった。
ER 陽性は 88.8%、PgR 陽性は 67.5%であり、両方いずれも陽性は 61.9%で、
HER2 の過剰発現は 6.6%であった。全症例の治療奏効期間中央値は 5.4 ヶ月
で、ホルモン受容体別には ER 陽性が 5.6 ヶ月、陰性が 3.7 ヶ月(p=0.8676)、
PgR 陽性が 5.4 ヶ月、陰性が 5.5 ヶ月(p=0.8787)であった。転移部位別に
検討すると軟部組織転移あり 6.1 ヶ月、なし 4.7 ヶ月(p=0.7771)、骨転移
あり 4.5 ヶ月、なし 7.0 ヶ月(p=0.4645)、内蔵転移あり 5.4 ヶ月、なし 5.4 ヶ
月(p=0.3727)脳転移あり 6.6 ヶ月、なし 5.0 ヶ月(p=0.3809)であった。
化学療法治療歴のない 55 症例でも転移部位別で同様の検討を行い、軟部組織
転移あり 6.8 ヶ月、なし 4.7 ヶ月(p=0.9984)、骨転移あり 6.4 ヶ月、なし 6.5 ヶ
月(p=0.6599)、内蔵転移あり 5.8 ヶ月、なしが 7.7 ヶ月(p=0.5114)脳転
移なし 5.8 ヶ月(p=0.9611)であった。
【考察】タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤などのホルモン療法、さら
には化学療法に対して治療歴のある閉経後進行乳癌におけるフルベストラン
トの治療奏効期間は、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の発現の
有無、転移部位の有無に関わらず、ほぼ 5.0 ヶ月である。
【目的】Fulvestrant(以下 FLV)は selective estrogen receptor down regulator
に分類され、ER 分解を促進し ER 機能を可逆的に失活させる新しい内分泌療法
剤である。閉経後ホルモン受容体陽性進行再発乳癌に対する治療薬として認可
され、主に内分泌療法の 2 次治療以降で使用されていることが多い。今回、当
科での FLV の使用成績を解析し、FLV の有効性および安全性を明らかにするこ
とを目的として検討を行った。
【方法】2011 年 11 月から 2014 年 12 月までに当
科にて FLV(500mg/body)を投与した進行再発乳癌 12 例(再発 10 例、stage
IV2 例)の臨床病理学的特徴、治療効果および安全性を後方視的に解析した。な
お、Luminal-Her2 type は除外した。また、投与は RECIST に準拠し PD と判断
されるまで継続し、有害事象は CTCAE v4.0 で評価した。
【成績】1. 年齢中央値
は 61(53-77)歳で、LuminalA が 8 例(67%)
、Luminal B が 4 例(33%) であっ
た。2. 前治療レジメン数の中央値は 4(0-10)で、内分泌療法レジメン数の中央
値 2(1-6) で、化学療法レジメン数の中央値 2(0-4)であった。転移・再発部位
は肺 2 例、肝臓 4 例、リンパ節 4 例、骨 5 例、皮膚・軟部 3 例(重複あり)で、内
蔵転移を有する症例は 8 例(66%)であった。3.FLV 開始時からの観察期間中央
値は 8 か月で、
治療効果は PR が 3 例(25%)
、
SD が 5 例(42%)
、
PD が 3 例(23%)
で、TTP の中央値は 5 か月、CBR は 42%であった。4. 内分泌療法前治療歴が 2
レジメン以下の 6 例では、5 例が PR もしくは SD を得られていた。また、PD3
例はすべて PgR 陰性であった。5. 有害事象は Grade 1 の注射部位反応 2 例
(17%)
、関節痛 1 例(8%)を認めたが自然に軽快した。ただし、この注射部位
反応 2 例は FLV 採用開始時の初期 2 例であり 3 例目以降は認めなかった。
【結論】
今後、症例を重ねての検討が必要であるが、FLV は有害事象は少なく高齢者に
対しても高い忍容性が期待でき、特に 3 次治療以前で用いられた症例で高い治
療効果が認められたことより、FLV をより早い段階で使用することでより高い
治療効果が期待できる。また、PgR の発現量で治療効果予測ができる可能性が
示唆された。
322
ポスター討議
DP-1-05-01
DP-1-05-02
FES-PET 検査を用いた転移再発乳癌に対する 2 次内分泌治療効
果予測の検討
当科における進行再発乳癌に対するフルベストラントの使用成績
信州大学 医学部附属病院 乳腺内分泌外科
1
福井大学 第 1 外科、2 福井大学附属病院 病理部、3 福井大学 放射線科、
4
福井大学 高エネルギー研究センター、5 福井大学 がん診療推進センター
前田 浩幸 1、東 瑞穂 1、中澤 雅子 1、今村 好章 2、土田 龍郎 3、森 哲也 4、
辻川 哲也 4、岡沢 秀彦 4、片山 寛次 5、山口 明夫 1
【はじめに】閉経後進行再発乳癌に対する治療薬として,フルベストラントの
本邦での使用が始まって約 3 年が経過した.現在は進行再発症例での内分泌療
法の 2 次治療以降で用いられているが,これまでの当科での使用成績を解析
し,今後の位置づけについて考察する.また,有害事象についても検討し,
その忍容性についても考察する.【対象と方法】2011 年 12 月 -2014 年 10 月
に当科でフルベストラントを使用した進行再発乳癌 23 例の臨床病理学的特
徴,治療効果,有害事象を後方視的に解析した.【結果【平均年齢は 63.8 ± 8.8
歳,subtype は ER + /PgR+/HER2- が 20 例 (86.9%),ER + /PgR-/HER2が 2 例 (8.7%),ER+/PgR+/HER2 +が 1 例 (4.4%) であり,前化学療法レジ
メン数の中央値は 3(0-4),前内分泌療法レジメン数の中央値は 2(1-5) であっ
た. フ ル ベ ス ト ラ ン ト の 治 療 効 果 は PR が 5 例 (21.7%),long SD が 6 例
(26.1%),SD が 3 例 (13.1%),PD が 9 例 (39.1%) で あ り, 奏 効 率 21.7%,
臨床的有用率は 47.8% であった.フルベストラントを 3rd line 以前で使用し
た症例での奏効率は 55.6%,4th line 以降で使用した症例での奏効率は 60%
であり,フルベストラントの治療効果と前内分泌療法レジメン数に相関は認
められなかった.フルベストラントに対して PD となった後に内分泌療法を施
行した症例は 8 例であったが,フルベストラントの後の内分泌療法の奏効率は
0%であった.Grade 3 以上の有害事象の発症はなく,有害事象により投与を
中止した症例は認めなかった.【考察】フルベストラントは late phase の導入
でも効果が期待できる.一方,早期導入症例においてもフルベストラントに
対して PD となった後の内分泌療法では奏効例を認めなかったことより,フル
ベストラントは内分泌療法としては late phase で使用する選択肢が有用であ
る可能性が示唆された.また,フルベストラントは他の内分泌療法と同様,
忍容性の高い薬剤であると考えられた.
DP-1-05-03
DP-1-05-04
閉経後 ER 陽性進行再発乳癌に対するフルベストラントの有効
性、安全性に関する多施設共同観察研究
Fulvestrant 療法後の治療経過についての検討
小牧市民病院 外科
1
春日部市立病院 乳腺外科、2 埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、
3
日本赤十字社さいたま赤十字病院 乳腺外科、
4
川口市立医療センター 外科、
5
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般消化器外科、
6
赤心堂病院 外科、7 埼玉協同病院 乳腺外科、
8
埼玉メディカルセンター 外科、9 三井病院 乳腺外科、
10
埼玉県立がんセンター 病理診断科
井戸田 愛、間下 優子、田中 恵理
君塚 圭 1、井上 賢一 2、永井 成勲 2、齊藤 毅 3、中野 聡子 4、蓬原 一茂 5、
山田 博文 6、金子 しおり 7、櫻井 孝志 8、秦 怜志 9、三宅 洋 1、
黒住 昌史 10
【背景】フルベストラント 500mg は CONFIRM 試験において閉経後ホルモン受
容体陽性進行再発乳癌の 2 次治療としてフルベストラント 250mg に対し優位
性が証明されているが、日本における効果、安全性に対するデータは単施設
による報告に留まっている。また、フルベストラントの最適な治療ラインは
確立されていない。【目的】フルベストラントの投与の実際とその効果および
安全性を明らかにする。【方法】埼玉乳がん臨床研究グループによる観察研究。
(SBCCSG29:UMIN000009110)【対象】フルベストラント投与予定、投与中、
投与終了のいずれかの状態にある閉経後、ホルモン受容体陽性、進行・再発
乳癌の患者。
【評価項目】主要評価項目 : 治療成功期間 (TTF)。副次評価項目 :
全生存期間 (OS)、奏効率 (RR)、臨床的有用率 (CBR:CR+PR+LSD(24 週 )/
全症例)、有害事象 (AE)。フルベストラント耐性後の治療。治療ライン別の効
果については、再発 1 次 +2 次治療と 3 次以降の 2 群に分けて検討した。【結果】
対象症例 135 例 ,( 解析終了 :94 例 )。年齢 ( 中央値)66.0 (47-96)。生物学
的特徴 ( 原発巣 ):ER 陽性 :87, 陰性 :2, 不明 :4、PR 陽性 :66, 陰性 :21, 不明 :6、
HER2 陽性 :19,HER2 陰性 : 55, 不明 :19。治療ライン:再発 1 次 :3, 2 次 :16,
3 次以降 :58、進行 2 次 :1, 進行 3 次以降 :15。進行再発 1 次+ 2 次治療 :20, 3
次治療以降 :73。前治療数(中央値):4.38(1-20)。TTF(中央値)5.6 ヶ月
(13-873)
。OS(中央値)18.3 ヶ月 (97-921 日)
。RR:14.9%,
CBR:33.0%。
治 療 ラ イ ン 別 TTF で は 再 発 1 次 +2 次 治 療 :3.7 ヶ 月、3 次 以 降 :5.5 ヶ 月、
HR1.22 P=0.4468,95%CI(0.71-2.01)。RR:1 次 + 2 次 治 療:23.8%、3 次
治療以降 12.3%、CBR:1 次+ 2 次治療 :38.1%、3 次治療以降 :31.5%。フルベ
ス ト ラ ン ト 後 治 療 (60 例 ): 化 学 療 法 :31 例、51.7%、 内 分 泌 療 法 :29 例、
48.3%。有害事象は、
ほてりと注射部位反応が 10% を超える患者に見られたが、
グレード 3 以上は 2 例に認めるのみであった。
【考察】保険収載が始まった初期
からのデータであり、進行再発 3 次治療以降のフルベストラントの使用が多く
見られた。TTF は中央値が 5.6 ヶ月、OS は 18.3 ヶ月であった。1 次 +2 次治療
と 3 次以降の治療では TTF に差を認めなかったが、RR、CBR とも早期の治療ラ
インのほうが高い傾向が見られた。有害事象は、極めて少なく安全性の高い薬
剤といえる。フルベストラントは早期の治療ラインと同様の効果が、3 次以降
の治療にも期待できる可能性が示唆された。
【背景・目的】進行再発乳癌の治療は QOL の維持・改善を目標として治療選択
を行う。Fulvestrant(FUL)は Tamoxifen 療法後の閉経後進行・再発乳癌患者
において治療効果・忍容性が示されているだけでなく、4 週毎の投与で患者の
コンプライアンスも高く有用である。しかし ER のダウンレギュレーション作
用を有するという作用機序から FUL 療法後は内分泌療法への反応性低下の可
能 性 も 考 え ら れ る。 今 回、FUL 療 法 進 行 後 の 内 分 泌 療 法 の 治 療 経 過 を
retrospective に検討した。【対象・方法】2011 年 11 月~ 2014 年 12 月まで
に FUL の投与が終了しているホルモン陽性進行・再発乳癌 29 例のうち、他疾
患で FUL 投与中断となった 3 例、副作用のため患者希望で投与中断となった 2
例、FUL 投与終了後に BSC となった 3 例を除いた 21 例を検討対象とした。【結
果】21 例のうち 8 例が FUL 療法後に内分泌療法を選択し、13 例が化学療法を
選択していた。内分泌療法を行った 8 例の年齢中央値は 78 (44-89) 歳。全例
ER 陽性で PR 陽性が 7 例、HER2 陽性は 1 例であった。4 例に内臓転移を認め、
2 例は骨転移のみで 2 例は局所進行例であった。前内分泌療法レジメン数の中
央値は 4 (1-5)、化学療法を含めた前治療レジメン数の中央値は 5 (2-8) で
あ っ た。FUL 治 療 期 間 中 央 値 は 8.9 (0.9-13.2) か 月。6 例 で 臨 床 的 有 用
(Clinical Benefit:CB)を得ていた。この 8 例の FUL 療法後の内分泌療法の治
療効果は奏功率 25%、CB 率 37.5% であった。PR となった 2 症例は酢酸メド
ロキシプロゲステロンと高容量トレミフェンで、2 症例の無増悪期間は 18 か
月以上であった。これに対して 13 例の化学療法の奏功率は 33.3%、CB 率
66.6% と高かったが、無増悪期間中央値は 4.0 (2.0-10.0) か月であった。
【ま
とめ】本検討は症例数が少なかったが、FUL 療法後でも内分泌療法反応性があ
る症例があることがわかった。FUL 療法後に差し迫った生命の危機がない場
合には忍容性の高い内分泌療法も選択肢とすることも可能で、今後、症例の
蓄積をして更に検討をしていきたい。
323
一般セッション(ポスター討議)
【目的】ホルモン受容体陽性の転移再発乳癌の治療では、内分泌治療をできる
だけ長期に継続することが大切である。我々は、エストロゲンの誘導体 16 α
[18F]fluoro-17 β -estradiol (FES と略す ) を用いた PET 検査により、転移腫
瘍のエストロゲン受容体の存在をイメージングすることが、1次内分泌治療
効果を予測するのに有用であることを報告してきた。今回は 2 次以降の内分泌
治療効果予測に有用であるかを検討した。【方法】原発腫瘍のホルモン受容体
が陽性であった転移再発乳癌 8 例、21 病変を対象とした。平均年齢は 61.4 歳
(42 - 75)で、骨転移 13 病変、リンパ節転移 6 病変、肺転移 1 病変、皮下転
移 1 病変であった。2 次以降の内分泌治療開始前に FES-SUV 検査を施行し、
FES 集積(FES-SUV 値、cut-off 値 2.0)とその後の内分泌治療効果を比較検討
した。平均 2.9 レジメ(2 - 4)の内分泌治療で、AI 剤を 5 例に、Fulvestrant3
例に投与した。【結果】21 病変の内分泌治療効果は、PR2 病変、LongSD12 病
変、PD7 病変であった。FES - SUV 値は、2.0 以上は 16 病変、2.0 未満は 5
病変であった。陽性反応適中率は 81.3%(13/16 病変)、陰性反応適中率は
80% (4/5 病変 ) となった。FES-SUV 値が 2.0 未満で内分泌治療効果を認めた
転移腫瘍は 1 病変で、大きさ 1cm 弱の縦隔リンパ節転移であった。FES-SUV
値が 2.0 以上で、2 次内分泌治療効果を認めなかった 3 病変の原発腫瘍は、
invasive micropapillary carcinoma, ER+、PgR+、Her2score1 で、術後 5
年間、LH-RH アゴニスト +TAM を継続中に、肺転移をきたした症例であった。
LH-RH アゴニスト + AI 剤を投与したが、FES 集積を認めた肺転移腫瘍は増大
し PD となった。【結語】FES-PET 検査により、1 次内分泌治療効果だけではな
く、2 次以降の内分泌治療効果を予測できる可能性が示唆された。しかし、転
移 腫 瘍 径 が 1cm 弱 の 病 変 や、 原 発 腫 瘍 が invasive micropapillary carcinoma の場合には、正確に内分泌治療効果を予測できない問題点を認め
た。
大場 崇旦、小野 真由、家里 明日美、花村 徹、伊藤 勅子、金井 敏晴、
前野 一真、伊藤 研一
ポスター討議
DP-1-05-05
DP-1-06-01
ホルモン治療歴からみた fulvestrant の臨床効果
乳癌術後、髄膜播種を伴う CNS(Central Nervous System)
転移症例の検討
国立病院機構 大阪医療センター 乳腺外科
がん・感染症センター 都立駒込病院 乳腺外科
水谷 麻紀子、田中 希世、田口 裕紀子、苅田 真子、増田 紘子、
八十島 宏行、増田 慎三
一般セッション(ポスター討議)
[ 背景 ]FIRST、CONFIRM 試験では fulvestrant(FAS)500mg 療法は他の内分
泌療法より進行再発乳癌 (MBC) への有効性が高かった。またホルモン陽性
MBC では生命を脅かす転移がない限りはなるべくホルモン療法の継続が望ま
しいという。FAS が日本で使用可能になり 3 年が経過し早い line での使用が有
効という報告が多いがいかに長期かつ効果的に MBC の治療歴で使用するかは
未確立である。当院での FAS 使用例をコホート研究により FAS の有効な使用
方法を検討した。[ 対象と方法 ]2011 年 11 月から 2014 年 11 月の間に FAS を
使用した MBC56 例を対象に有効性を検討。[ 結果 ] 全例女性、年齢中央値
67(41-87)歳、再発/stageIV=49/7例、ER(+)/HER2(-)46例、ER(+)/HER2(+)
10例。術後再発日(stageIVは当院初診日)からの観察期間中央値は4.6(0.312.0)年、FAS使用開始からの観察期間中央値は17.1(1.4-38.9) ヶ月。内臓転移
あり/なし35/21例。adjvant中再発は11例(1)2年以内3例、2)2年以降8例)。
残り45例をFAS直前のホルモン治療のTTF別にA)3カ月未満B)3カ月以上9カ
月未満C)9カ月以上2年未満D)2年以上とした。A/B/C/D=7/11/15/12例。FAS
の 効 果 はA)PR/longSD/SD/PD/NE=0/0/1/5/1、B)0/3/3/4/1、C)1/6/0/7/1、
D)1/8/0/3/0で、CBRはA/B/C/D=0/27/46/75%。FASのTTF中 央 値 は
A)2.8(2.8-5.8) ヶ月、B)4.7(1.9-19.1) ヶ月、C)4.0(1.9-21.0) ヶ月、D)15.4(2.824.7) ヶ月、p=0.0057。45例のFAS直前のホルモン治療はNSAI/SAI/SERM=
29/8/8例、FASのCBRはNSAI/SAI/SERM=41/50/38%。adjvant中11例 の 効 果
は1)PR/PD=1/2、2)PR/longSD/SD/PD/NE=1/3/2/1/1でTTF中 央 値 は1)3.7(2.
8-17.5) ヶ月、2)7.4(1.9-21.5) ヶ月。56 例を内臓転移の有無別でみたCBRはあ
り/なし=40/81%。2014年11月時点でFAS無効症例は46例でうち9例はbest
support careでFAS後は無治療、9例がホルモン治療、27例が化学療法を次治療と
した。ホルモン群のFASのCBRは78% 、TTF中央値は14.8(2.8-22.6) ヶ月。内
訳はNSAI/SAI/SAI+mTOR阻害剤/SERM=4/1/3/1例。化学療法群のFASのCBR
は33%、TTF中央値は3.7(1.8-19.1) ヶ月。[考察]FASは内分泌療法既治療のホル
モン受容体MBCに有効だが、前治療歴でホルモン治療への反応が不良である場合
はFASの効果も得られにくい可能性がある。一方でFAS後は治院では化学療法を
選択する傾向にあるが、FASであった症例は再度内分泌療法を選択することも可能
と考えるがどの内分泌療法が効果的かはさらなる検討が必要である。
本田 弥生、後藤 理紗、井寺 奈美、堀口 和美、宮本 博美、有賀 智之、
山下 年成、黒井 克昌
(背景)髄膜播種は固形癌の 1 ~ 5% 程度に認められ、乳癌においても髄膜播
種を伴う症例は予後不良である。また髄膜播種に対するエビデンスレベルの
高い標準治療は確率されておらず治療に難渋することが多い。(対象、方法)
当院で乳癌術後に CNS 転移と診断された症例 79 例を対象とした。髄膜播種の
有無は MRI 検査で確定診断をおこなった(髄液細胞診で陰性の症例も含む)。
当院での抗がん剤髄腔内投与は Methotrexate (MTX), Cytarabine (Ara-C)
の髄腔内投与の他、HER2 陽性乳癌髄膜播種症例に対しては駒込病院倫理委員
会の承認を得て Trastuzumab の髄腔内投与を行っている。(結果)乳癌術後
CNS 転移 79 例中髄膜播種を認める症例が 29 例(36.7%)、脳実質と髄膜播種
19例、髄膜播種のみ10例であった。CNS転移79例のsubtypeはHR+HER2-24
例、HR+HER 2+30例、HR-HER 2-25例で髄膜播種を伴う症例はHR+HER2-10
例(41.7%)、HR+HER 2+8例(26.7%)、HR-HER 2-11(44%)とHER2陽 性 乳
癌の髄膜播種の頻度は低い傾向にあった。脳実質転移のみの症例と髄膜播種を伴
う症例では転移後の生存期間に有意差はなかった(髄膜播種後生存期間中央値9カ
月P=0.150)が、頭蓋内にとどまらず広範囲に播種を伴う症例はKPSが低く生存
期間は短いと思われた。髄膜播種診断時の髄液細胞診では17例が陽性8例が陰性
(不明4例)であった。29例中髄注化学療法を施行した症例は20例であり播種診
断時にKPSが低く全身状態の悪い症例には適応とならなかった。播種診断時より
髄液細胞診が陽性で髄注化学療法施行後も細胞診が陰性化しない症例は陰性化す
る症例より予後が悪い結果であった(P=0.006)髄注化学療法により細胞診が陰性
化すると当初より髄液細胞診が陰性の症例と予後に差はない結果となった。
(P=0.801)
(考察)髄注化学療法、全身化学療法、放射線治療等、髄膜播種の治療
は確率されておらず積極的治療を行っても生存期間は4-6カ月といわれている。
今回は症例数の少ない検討ではあるが当院の乳癌術後髄膜播種症例の生存期間は
9ケ月と比較的長く、また髄液細胞診の経過は予後予測に反映される可能性があ
ると思われた。
DP-1-06-02
DP-1-06-03
当院における乳癌脳転移症例の臨床病理学的特徴と治療方針に
ついて
転移再発を伴い 10 年以上生存した症例の検討
自治医科大学附属病院 乳腺科
三井記念病院 乳腺内分泌外科
上徳 ひろみ、相良 由佳、芝 聡美、宮崎 千絵子、櫻木 雅子、
竹原 めぐみ、大澤 英之、藤田 崇史、水沼 洋文、穂積 康夫
辻 宗史、稲垣 麻美、太田 大介、加藤 孝男、小原 孝男、竹内 昌、
西 常博、福内 敦
【はじめに】転移性乳癌に対する薬物療法の進歩により脳以外の転移巣の治療
成績は向上している。しかし脳転移に対しては著効する薬物療法がなく、手術・
放射線療法を組みあわせた脳転移のコントロールが課題となっている。
【方法】
2003 年 1 月~ 2014 年 11 月までに当院で経験した乳癌脳転移症例49例につ
いて、臨床病理学的特徴、治療法、予後について検討した。【結果】乳癌初回
治 療 時 の 年 齢 中 央 値 は 50 歳(34 ~ 71)。 原 発 乳 癌 の 病 期 は I 6%、IIA
20%、IIB 29%、IIIA 12%、IIIB 10%、IIIC 8%、IV 14%( 全例初診時脳
転 移 あ り ) で あ っ た。 原 発 巣 の subtype は Luminal 37%、Luminal-HER2
24%、HER2 20%、TN 18%。初発転移が脳転移のものは 20%で、発見時
無症状が 12%であった。全症例の 94% が死亡し、OS 中央値は 52 ヶ月であっ
た。脳転移までの期間の中央値は 40.3 ヶ月、脳転移後の OS 中央値は 5.5 ヶ
月 で あ っ た。 脳 転 移 後 OS を サ ブ タ イ プ 別 に み る と Luminal 2 ヶ 月、
Luminal-HER2 8.4 ヶ月、HER2 17.6 ヶ月、TN 5.2 ヶ月で、HER2 別で見
る と、HER2(+)12.8 ヶ 月、HER2(-)4.1 ヶ 月 (p=0.001) と 有 意 に HER2 陽
性症例の予後が良かった。脳転移時の症状の有無や転移個数(単発 vs 多発)別
では脳転移後の予後に差はなかったが、髄膜播種を伴っている症例は有意に
予後不良であった(p=0.015)。脳転移に対しは、手術 6%、定位手術的照射
(SRS)45%、全脳照射 (20%、手術+ SRS or 全脳照射 (RT)4%、化学療法
6%、緩和医療 18% が施行されており、手術(手術 +RT 含む)、全身治療(緩
和医療+薬物治療)、RT の3群で検討すると脳転移後 OS は 25.2 ヶ月、1.7 ヶ
月、10.9 ヶ月(p < 0.001)と手術、放射線治療を施行できた群は予後良好で
あった。【まとめ】HER2 陽性乳癌は、脳転移後の予後が良好であった。乳癌
脳転移症例は手術や放射線治療で脳転移をコントロールすることにより、脳
転移後の生存期間を延長できる可能性が示唆された。
【はじめに】転移再発乳癌の 10 年生存率は局所再発を除いて 5 % 程度であり、
20 年を超えて完全奏効を継続する症例は 2 ~ 3%とされている。また、局所
再発もその後の遠隔転移のリスクファクターとされており、生存率に影響す
る可能性がある。【目的】当院で、転移再発後 10 年以上生存している症例につ
いてその経過、特徴について検討を行う。尚、局所再発については胸壁、領
域リンパ節を含み、温存乳房内再発を除外した。【方法】対象は 1980 年 4 月か
ら 2003 年 7 月に初診時 Stage4、または初期治療後再発と診断され、治療開
始から 10 年以上生存した乳癌症例とした。これらの症例についてカルテの
データをもとに後ろ向きに解析を行った。【結果】対象症例は 30 例で、全例女
性 だ っ た。Stage4 4 例、 再 発 26 例 で あ り、 そ の 内 訳 は Stage1 7 例、
Stage2A 8 例、Stage2B 7 例、Stage3A 2 例、Stage3B 1 例、Stage3c 1 例
だった。初再発部位は骨 12 例、局所皮膚 6 例、局所リンパ節 5 例、遠隔リン
パ節 4 例、肺 2 例、骨および肺 1 例だった。局所再発した 11 例中 6 例は遠隔
転移再発をきたした。再発症例の初期治療後無病再発期間の中央値は全症例
で 51.3 ヶ月(1.4 ~ 193.3)だった。治療開始からの生存期間の中央値は全症
例 192.7 ヶ月(120.9 ~ 352.9)、局所再発を除いた症例で 176.7 ヶ月(132.6
~ 274.8)、局所再発症例が 227.2 ヶ月(120.8 ~ 352.9)だった。全症例の
ER、HER2 の発現状況は、ER 陽性 19 例、陰性 7 例、不明 4 例であり、HER2
発現状況が判明している 9 例中陽性は 2 例だった。転移再発後の薬物療法の投
与レジメン数の平均は 4 レジメン、最少 1 レジメン、最多 11 レジメンだった。
【まとめ】転移再発後 10 年以上生存した症例の初再発部位は骨転移が最も多
かった。局所再発例の半数が遠隔転移再発をきたした。ER 陽性症例が全体の
63%だったが、1990 年代以前の症例については確認が困難な症例が多く評価
困難だった。新薬の登場もあり、骨転移再発は転移再発後も長期生存が期待
できる症例が存在すると考えられた。
324
ポスター討議
DP-1-06-04
DP-1-06-05
乳癌術後皮膚再発病変に対する治療法および予後の検討
乳癌術後治療の適応:原発巣と所属転移リンパ節の免疫学的特
性の検討
1
日本大学 医学部 外科学系 乳腺内分泌外科分野、
2
医療法人社団 藤崎病院 外科、
3
埼玉医科大学 国際医療センター 消化器腫瘍科、
4
公立阿伎留医療センター 乳腺外科
1
国立病院機構 名古屋医療センター 乳腺外科、
国立病院機構 名古屋医療センター 病理診断科、
3
国立病院機構 名古屋医療センター 放射線科
2
櫻井 健一 1,2、藤崎 滋 2、安達 慶太 1、鈴木 周平 1,2、藤原 麻子 1、
増尾 有紀 1、鈴木 由佳里 1、長島 沙樹 1,2、原 由起子 1、富田 凉一 2、
権田 憲士 3、松尾 定憲 4、平野 智寛 1、榎本 克久 1、前田 哲代 1,2、
天野 定雄 1、谷 眞弓 1
佐藤 康幸 1、林 孝子 1、加藤 彩 1、森田 孝子 1、須田 波子 1、森谷 鈴子 2、
市原 周 2、長谷川 正規 2、大岩 幹直 3
【背景】本邦における乳癌術後皮膚再発病変の治療成績に関する報告は少ない。
【目的】乳癌術後の皮膚再発において、治療法および予後の面から検討を行う。
【対象】2004 年から 2013 年に経験し、手術を行った原発性乳癌 2077 例のう
ち、初再発部位が局所の皮膚であり、予後が明らかな 38 例を対象とした.【方
法】皮膚再発診断は臨床所見、画像診断、病理組織検査より行った.患者背景、
治療内容、再発部位、予後について検討した.統計学的解析には分散分析法
を用い、p < 0.05 を有意差ありと判定した。【結果】経過観察中に再発・転移
を認めた症例は 314 例。このうち皮膚に初再発部位が局所皮膚であったもの
は 38 例であり、全症例のうち 1.8% を占め、再発症例のうち 12.1% を占めて
いた。初回手術より皮膚再発を認めるまでの期間の中央値は 3.2 ± 1.9 年で
あった.初回手術の術式は全例に胸筋温存乳房切除術が 23 例、乳房温存術が
15 例。初回手術時の臨床病期は StageI:7 例、StageIIA:15 例、StageIIB:7 例、
StageIIIA:9 例であり、全例が初回手術時の病理組織学検査で切除断端は陰性
であった.温存症例には全例に術後放射線治療が施行されていた。26 例が術
前・術後に補助化学療法を受けていた。ホルモン受容体陽性であった 33 例に
は内分泌治療が施行されていた.皮膚再発後の治療は手術療法、化学療法、
放射線療法、内分泌療法による集学的治療が施行されていた.治療効果の判
定と病巣の除去に生検を含む手術療法は有用であった.観察期間の中央値は
4.9 ± 2.8 年.その後に他臓器転移を認めたものは 11 例であった.【結語】乳
癌術後の局所皮膚再発において、外科的切除を含む積極的な局所治療は、薬
物治療や放射線治療の効果判定と病変の除去などの観点から、治療法の選択
肢として重要であると考えられた。
DP-1-07-01
DP-1-07-02
1
1
HER2 陽性乳癌に対する Pertuzumab + Trastuzumab +
Docetaxel 併用療法における Docetaxel 中止・再開時期の検討
HER2 陽性進行・再発乳癌、2 次治療以降例に対する
Pertuzumab 療法の治療成績
名古屋第二赤十字病院 一般外科、2 名古屋第二赤十字病院 薬剤部
秋田 由美子 1、赤羽 和久 1、坂本 英至 1、法水 信治 1、新宮 優二 1、
田口 泰郎 1、渡邉 博行 1、伊佐治 孝洋 1、牧野 安良能 1、三浦 泰智 1、
山東 雅紀 1、大原 規彰 1、木全 司 2、高原 悠子 2
富山市民病院 外科、2 富山市民病院 病理診断科
福島 亘 1、武居 亮平 1、八木 康道 1、佐々木 省三 1、吉川 朱実 1、
月岡 雄治 1、藤村 隆 1、廣澤 久史 1、泉 良平 1、斎藤 勝彦 2
【はじめに】2013 年より HER2 要請乳癌に対し Pertuzumab の投与が可能とな
り、Pertuzumab + Trastuzumab + Docetaxel 併用療法(以下 P+T+D 療法)
は進行再発 HER2 陽性乳癌に対する第一選択薬として認識されている。本治
療を長期間継続するうえでは Docetaxel の副作用対策が重要である。すなわ
ち、Docetaxel の ON/OFF は腫瘍感受性と並んで治療期間へ影響を及ぼす要
因の一つと考える。当院では CLEOPATRA 試験に準じて Docetaxel を8回投
与してから OFF としている。ただし、高齢者や抗がん剤の副作用が顕著な例
で は 6 回 ま で Docetacel を 併 用 す る よ う に 努 め て い る。 し か し な が ら、
Docetaxel を中断し再投与までの期間や再投与後の治療効果に関しては明確
な報告はない。【目的】当院における P+T+D 療法の治療経過、主に Docetaxel
を OFF した時の病勢増悪までの期間と、Docetaxel を再度 ON した時の治療効
果を検討する。【方法】2013 年 9 月~ 2014 年 12 月までに当院で P+T+D 療法
を施行した HER2 陽性進行・再発乳癌 10 症例を対象とし、治療ライン、治療
効果、有害事象、Docetaxel 中断までの期間と中断後病勢増悪までの期間、並
びに再投与後の治療効果について検討した。【結果】10 症例の年齢は範囲 43
から 74 歳で中央値は 58 歳であった。Luminal HER2 が 5 例、HER2 enriched
が 5 例であった。P+T+D 療法の実施回数は 2 から 9 回までで中央値は 6 回で
あ っ た。10 例 中 7 例 に Docetaxel を 除 い た Pertuzumab + Trastuzumab 療
法 ( 以下 P + T 療法 ) を行った。治療効果判定は CT 画像による RECIST 評価を
行った。Docetaxel を除外した時点で 3 例が PR、3 例が SD であった。P + T
療法の継続期間は 1 から 12 回までで、中央値は 2 回であった。2 例が P + T 療
法継続中であり、2 例が Docetaxel 再開、3 例が抗癌剤の変更を行った。【考察】
P+T+D 療法において、Docetaxel の副作用により治療継続困難となる症例は
少なくない。当院では P+T+D 療法において SD 以上の効果が得られている場
合、Docetaxel の副作用を考慮して Docetaxel を除外した P + T 治療を選択し
ている。P + T 療法に切り替えることにより、継続的な治療が可能となると考
える。また、副作用の経験から Docetaxel を再投与することを拒む例も少な
くないことから、再投与時から Pac l itaxel へ変更することも検討している。
【 は じ め に 】2013 年 6 月 よ り HER2 陽 性 手 術 不 能・ 再 発 乳 癌 に 対 す る
Pertuzumab の使用が承認され、転移・再発乳癌に対する 1 次治療の位置づけ
となっている。ただし現時点では治療継続中の 2 次治療以降の症例も多く、こ
れらの症例に対する Pertuzumab の治療効果に関しては不明な点も多い。【目
的 】HER2 陽 性 進 行・ 再 発 乳 癌 の 中 で、2 次 治 療 以 降 例 に 対 し て 行 わ れ た
Pertuzumab 療法の治療成績について検討を行う。【対象および方法】対象は
平成 25 年 11 月以降に Pertuzumab 療法を施行した 9 例。平均年齢は 61.4 歳
(48 ~ 77 歳 ) で、進行が 4 例、再発が 5 例であった。HER2 陽性は全例 IHC
3+ で診断され、ER and/or PgR 陽性 7 例、ER and PgR 陰性 2 例であった。
治療開始時の転移臓器では、肺 5 例、骨 5 例、リンパ節 3 例、肝 2 例、局所 1
例 ( 重複を含む ) で、6 例 (66.7%) に内臓転移を認めた。併用抗がん剤では
Docetaxel (DTX) が 7 例、Paclitaxel (PTX) が 2 例で、治療ライン別では 2 次
が 3 例 (33.3%)、3 次が 4 例 (44.5%)、5 次以降が 2 例 (22.2%) であった。
また、治療歴としてアンスラサイクリン、タキサン系抗癌剤既治療例は、そ
れぞれ 6 例 (66.7%)、7 例 (77.8%) で、Trastuzumab は全例で投与されて
いた。【結果】抗癌剤併用での Pertuzumab 療法の投与クールは、DTX 投与例
4 ~ 6 クール ( 平均 5.6)、PTX 投与例 3 ~ 15 クール ( 平均 9) で、測定可能
病 変 を 有 す る 8 例 の 治 療 効 果 で は、PR 3 例 (33.3%)、SD 4 例 (44.4%)、
PD 1 例 (11.1%) であった。Grade 3 以上の有害事象は 8 例 (88.9%) に認め
られ、白血球減少 7 例 (77.8%)、好中球減少 8 例 (88.9%)、発熱性好中球
減少症 2 例 (22.2%) であった。このため予定の 6 クールを減量なく完遂でき
た症例は 1 例 (11.1%) のみで、他の 8 例 (88.9%) は発熱性好中球減少症など
の有害事象のため抗がん剤の減量・中止が必要であった。また、治療経過中
に LVEF が 50% 未満となった症例は認めなかった【結語】HER2 陽性進行・再
発乳癌に対する Pertuzumab 療法は、2 次治療以降例に対しても有効な治療法
であると考えられるが、好中球減少症などの血液毒性の頻度が高く、有害事
象に十分留意して治療を行う必要があると思われる。
325
一般セッション(ポスター討議)
乳癌初回手術後の補助治療の薬剤は、原発巣の病理学的、免疫学的特性のみ
から決定されている。再発症例では再発転移巣からの Re-biopsy が推奨され、
原発巣以外の免疫学的特性が治療法の選択に重要視されつつある。「目的」遠
隔転移を認めない所属転移リンパ節を有する初回手術症例の原発巣とリンパ
節の免疫学的特性を比較し、術後薬物療法の適応を検討する。「対象症例」初
回手術時にn(+)と診断された女性乳癌136例。「方法」原発巣と転移リン
パ節の免疫学的に ER、PgR、HER2(2+のときは FISH 追加)を判定。「結果」
原発巣と転移リンパ節に免疫学的乖離が見られたのは、136例中8例、5.9%
であった。内訳は原発巣が HER 2陽性、リンパ節 HER2 陰性が 5 例(A 群)、
原発巣が triple negative でリンパ節が ER 陽性3例:このうち HER 2陰性2
例(B 群)、HER2 陽性1例(C 群)であった。「考察」転移リンパ節の免疫学的
特性が術後治療の薬剤を決定できるかどうかは分かっていない。一般に転移
リンパ節を有する HER2 陽性乳癌症例にはトラスズマブ併用による化学療法
が選択されることが原則であるが、A 群での適応はあるのか。原発巣が triple
negative 症例の B 群では内分泌療法が、C 群ではさらにトラスズマブも適応
としていいのか。当然術後補助療法は病理学的な適応があればすべて行えば
いいというわけではなく、年齢、合併症の有無、進行度、悪性度、患者の希
望などから十分な IC によって決定されるべきものである。実際 C 群の 1 例は
高齢であったことから、内分泌療法のみを選択し、A 群の 1 例は ER 陽性で転
移巣が HER2 陰性であったことからトラスズマブ併用の化学療法を行わず内
分泌療法のみとなっている。なお残りの 6 例は適応と考えられるすべての治療
を行った。「結語」今後もこの研究を継続し、原発巣と転移リンパ節の免疫学
的特性を判定するとともに、よりよい術後薬物療法の適応を検討していく予
定である。
ポスター討議
DP-1-07-03
DP-1-07-04
1
大阪府済生会野江病院 乳腺外科
閉経後ホルモン陽性進行乳癌に対するエベロリムスとホルモン
併用療法に関する有用性の検討
若年で化学療法により cCR となった Stage4HER2 陽性乳癌の
症例検討
がん研有明病院 乳腺センター、2 がん研有明病院 総合腫瘍科
柳 裕代 1、荒木 和浩 1、柴山 朋子 1、深田 一平 1、小林 心 1、小林 隆之 2、
高橋 俊二 2、伊藤 良則 1
一般セッション(ポスター討議)
背景;ホルモン受容体陽性かつ HER2 陰性で NSAI に抵抗性の局所進行性また
は転移性の閉経後乳癌患者を対象とした BOLERO-2 試験においてエベロリム
スの有用性が示された。しかし本薬剤は肺炎、口内炎などの様々な有害事象
を伴うので実施臨床における最適な投与時期は明らかではない。対象と方法;
2014 年 5 月から同年 12 月までにエベロリムスにエキセメスタンまたはタモ
キシフェンの併用した転移乳癌 9 例を対象とし、安全性と有効性について後方
視的検討を行った。結果;年齢中央値 58 歳 (38 ~ 78)、投与期間中央値 3 ヶ
月 (1 ~ 7)、ホルモン受容体の発現は ER +、PgR +は 5 例、ER +、PgR -は
3 例、ER-、PgR +は 1 例であった。転移部位は骨、表在リンパ節等のみの症
例が 4 例、肺、肝臓など内臓転移症例は 5 例であった。術前後補助療法を除い
た前治療の化学療法レジメン数の中央値は 4(0 ~ 6)、内分泌療法レジメン数
の中央値は 2(1 ~ 5) であった。部分奏効(PR)例は 1 例、SD が 7 例、PD は 2
例であった。PD となった 2 例は共に前治療レジメン数が他の症例に比べて多
かった (7 ~ 11 レジメン ) が、一方 SD や PR の症例の前治療レジメン数は 2
~ 7 レジメンと少なかった。有害事象については薬剤性肺障害 3 例 (Gr2 が 2
例、Gr3 が 1 例 )、口内炎は Gr2 が 5 例、Gr3 が 1 例、高血糖 Gr2 が 1 例であっ
た。肺障害症例は 3 例とも入院が必要となり、口内炎の Gr3 でも入院となった。
結論;少数例ではあるものの前治療歴が多い症例ではエベロリムスの効果は
得られにくい傾向であった。また有害事象については十分な観察と支持療法
をしっかり行ったうえで慎重な投与が必要である。
原田 敦、吉田 朱里、藤澤 憲良
近年抗 HER2 療法の進歩と共に HER2 陽性乳癌の治療成績は著しく向上してお
り、HER2 陽性乳癌の術前化学療法による pCR 症例は 60%以上に及ぶといわ
れている。根治手術適応とならない Stage4HER2 陽性乳癌で化学療法後 cCR
と な っ た 症 例 の 報 告 も 散 見 さ れ る よ う に な っ て き た が、cCR と な っ た
Stage4HER2 陽性乳癌に対して治療を中止していいというエビデンスは無い。
今回我々は若年で化学療法により cCR となった Stage4HER2 陽性乳癌の症例
を 2 例経験したのでその治療経過と今後の治療戦略について文献的考察を含
めて報告する。症例 1 は 47 歳女性で約 5 年前より自覚していた右乳房腫瘤が
増大し、痛みを伴うようになってきたため当院受診。全身精査で右乳房全体
の皮膚浸潤を伴う乳癌で胸壁浸潤、胸膜播種結節、癌性胸水を伴う Stage4、
ホルモン陰性 HER2 陽性乳癌であった。化学療法を FEC 8 クール、3w トラス
ツズマブ+ドセタキセル 18 クール、トラスツズマブ+ペルツズマブ 17 クー
ル施行し FDG-PET で cCR を確認した。症例 2 は 44 歳女性で胸部痛を主訴に
当院受診。全身精査にて右乳房全体の自壊した乳癌で胸骨転移により病的骨
折を伴った Stage4、ホルモン陽性 HER2 陽性乳癌であり、その他多数の骨転
移と肝転移も認めた。タモキシフェン+ゴセレリンによる閉経前ホルモン療
法に加え、化学療法を FEC 4 クール、3w トラスツズマブ+ドセタキセル 4 クー
ル、3w トラスツズマブ+カペシタビン 46 クール、トラスツズマブ+ペルツ
ズマブ 19 クール施行し FDG-PET で cCR を確認した。
DP-1-07-05
DP-1-08-01
1
福島労災病院外科
術前化学療法を受ける乳癌患者における心毒性の検討
―ハーセプチンの影響―
3
HER2 陽性の進行再発乳癌に対するペルツズマブを用いた治療
経験
八尾市立病院 中央検査部 超音波検査室、2 八尾市立病院 乳腺外科、
八尾市立病院 循環器内科
又吉 一仁、武藤 亮、渡邉 譲、石井 恒、押部 郁朗、塩 豊、宮澤 正紹、
武藤 淳
寺西 ふみ子 1、森本 卓 2、細井 亮二 1、駒 美佳子 1、浅岡 伸光 1、
野村 孝 2、星田 四朗 3
【背景】 乳癌術前化学療法で使用されるハーセプチンの副作用としては心毒
性があげられ、特にアンスラサイクリン系抗癌剤の治療歴や順次併用によっ
て心機能障害発現率が高くなると報告されている。心機能のモニターは心エ
コー図法による左室駆出率が用いられている。【目的・方法】 対象は術前化
学療法を受けた乳癌患者で、心機能が正常かつ心血管イベントのない 35 例。
全例ともアンスラサイクリン系の化学療法を 3 ヶ月施行し、順次療法として
ハーセプチン投与群 15 例、非投与群 20 例でそれぞれ 3 ヶ月化学療法をおこ
ない、これらの化学療法前と投与後 6 ヶ月で心エコー図法により得られた心
機能諸指標を対比・検討するとともにハーセプチンの影響について検証した。
【結果】 化学療法後には左室拡張末期容積 ( 化学療法前 57.5 ± 9.2ml/m2 vs
化学療法後 60.1 ± 8.9 ml/m2、p=0.024) や左室収縮末期容積(化学療法前
18.8 ± 4.2 ml/m2 vs 化学療法後 20.6 ± 4.4 ml/m2、p=0.007)は有意に拡
大 し、 左 室 駆 出 率 ( 化 学 療法前 67.3 ± 4.5% vs 化学療法後 65.5 ± 4.6 %、
p=0.065) は低下傾向を示したが、他のエコー指標との有意な関連はなかった。
左室駆出率の変化量は、化学療法前の左室収縮末期容積と有意な相関を示し
(r=0.350, p=0.039)、左室収縮末期容積の小さい例ほど左室駆出率はより低
下したが、他のエコー指標との有意な関連はなかった。ハーセプチン投与群、
非投与群における化学療法前後の検討では、ハーセプチン投与群では左室拡
張末期容積 ( 化学療法前 56.5 ± 10.5ml/m 2vs 化学療法後 61.9 ± 9.0ml/m2、
p < 0.001), 左室収縮末期容積 ( 化学療法前 18.3 ± 4.5ml/m2vs 化学療法後
21.7 ± 5.0ml/m2、p=0.004) の有意な拡大とともに左室駆出率 ( 化学療法前
67.8 ± 4.1% vs 化学療法後 65.0 ± 5.4%、p=0.048) は有意に低下したが、
ハーセプチン非投与群では有意な変化は見られなかった。【考察】 半年間の
化学療法により左室容積は拡大し左室収縮力の低下が生じるが、左室収縮力
の変化はハーセプチン投与群でのみ有意であり、同剤の有する心毒性が影響
を及ぼしていると考えられる。臨床的に心機能正常と診断される範囲内であっ
ても左室容量拡大を示す場合があることから、左室収縮能の評価には駆出率
に加えて、左室容量、特に収縮末期容積を計測することが有用であると考え
られる。
326
HER2 陽性乳癌に対する治療薬は次々に新しい薬剤が承認され、HER2 陽性の
進行再発乳癌患者の延命に寄与していると思われます。HER2 陽性再発症例に
対しトラスツズマブ、ラパチニブを使用した化学療法を行ってきたが、耐性
をきたした症例にパージェタを使用した経験および高額な薬剤費用も考慮し
ながら報告します。今まで HER2 陽性再発患者に一般的に行われてきたトラ
スツズマブ + パクリタキセルを月 3 回投与すると約 6 万 8 千円(3 割負担)、ペ
ルツズマブを使用したトラスツズマブ + ペルツズマブ + ドセタキセルを月 1
回投与すると約 12 万 8 千円、月 2 回投与すると約 25 万 7 千円(3 割負担)とか
なりの高額負担となります。ここで高額療養を適応すると約 4 万 4 千円以下に
経済的負担を抑えることができます(高額所得者を除いて)。ペルツズマブ使
用により医療費の上昇がみられるが、高額医療費などを使うことにより患者
の経済的負担を減らすことができます。ペルツズマブをトラスツズマブに上
乗せすることにより治療効果が上がるのであればペルツズマブをより早い段
階で使用することが望ましいと考えます。当院において 3 例の HER2 陽性再発
乳癌に対してトラスツズマブ + ペルツズマブ + ドセタキセル治療を行いまし
た。3 例とも 5 次以降での使用でした。治療による副作用はドセタキセルによ
る好中球減少や手足のしびれのみで、ペルツズマブによる目立った副作用は
認めていません。治療により転移巣の縮小、腫瘍マーカーの低下などの効果
が認められ 8 ~ 17 サイクル継続できています。今後 HER2 陽性乳癌の再発進
行症例にもより早期に投与していきたいと考えます。
ポスター討議
DP-1-08-02
DP-1-08-03
1
JA 長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 乳腺外科
当院における HER2 陽性進行再発乳癌に対する抗がん剤併用、
Trastuzumab + Pertuzumab 療法の経験について
HER2 陽性転移・再発乳癌に対する Trasutuzumab、
Pertuzumab 投与症例の検討
春日部市立病院 外科、2 春日部市立病院 看護部
小倉 道一 1、君塚 圭 1、小野 賀功 1、神定 のぞみ 1、菊池 剛史 1、
康 祐大 1、大原 守貴 1、三宅 洋 1、小島 寛子 2
半田 喜美也、石毛 広雪
【 は じ め に 】Pertuzumab、T-DM1 の 承 認 以 降、HER2 陽 性 転 移・ 再 発 乳 癌
(HER2+MBC)に対する治療選択肢が広がる一方、化学療法(CTx.)、内分泌
療法(ET)との組み合わせ方、薬剤耐性時の対応など実臨床では悩むことも多
い。HER2+MBC に対して 1st line 治療となる Trastuzumab(T)+Pertuzumab
(P)投与症例につき検討し文献的に考察した。
【対象】2013 年 9 月~ 2014 年
12 月までに行った抗 HER2 療法導入 MBC 症例 14 例。年齢 35 ~ 82 歳 ( 中央値
56 歳 )、転移臓器別に肝 7 例(20%)
、肺 5 例(15%)
、骨転移 9 例(26%)
、胸
膜 2 例(6%)
、腹膜 2 例(6%)
、脳 1 例(3%)
、リンパ節 8 例(24%)
、原発巣組
織型はa3:10例(67%)、a2:2例(13%)、a1:1例(7%)、b3:2例(13%)、subtype
別ではLuminalB-like(HER2+):9例(64%)、HER2 enriched:5例(36%)であった。
うちP使用症例は10例、PよりT-DM1へ変更したのは1例、今後P投与を考慮し
ている症例は3例であった。T+Pに併用する化療薬剤は3wDTX:7例(64%)、
wPTX:1例(9%)、Eriburin1例(9%)
、Gemcitabine1例(9%)、併用無し1例(9% )
であった。
【結果】reponse rate:45%、clinical benefit rate:72%、TTP:約8 ヶ
月と評価された。HER2 enriched typeでは転移巣病変消失に近い症例が経験され、
6か月以上のT+P維持投与が可能であった。黄疸を伴う多発肝転移、びまん浸潤
型肝転移症例ではTまたはT+P単独導入により化療併用が可能となる症例が経験
された。
【考察及び結論】黄疸を伴う肝転移症例にて抗HER2薬単独導入は化療併
用に向けて考慮し得る治療法と考えられた。LuminalB-like(HER2+)typeにて
visceral crisisを伴わないケースでT+ET
(推奨グレードC1)
は選択肢の一つとなる。
T+P+ETはその作用機序やT+ETのデータから奏効すると予想されるがデータは
無く、PERTAIN試験などの結果が待たれる。従来より施行してきたT+CTx.ある
いはT単剤治療にてPRまたはSDが維持されている症例では必ずしもP併用を行
う必要は無いと考えられた。
DP-1-08-04
DP-1-08-05
Pertuzumab 使用経験からの現状と課題
当院における HER2 陽性進行・再発乳癌に対するペルツズマブ
の使用経験
日本大学 医学部 板橋病院 乳腺内分泌外科
関西労災病院
前田 哲代、榎本 克久、櫻井 健一、平野 智寛、原 由起子、和賀 瑛子、
鈴木 周平、長島 沙樹、小野 容子、天野 定雄
[ は じ め に ]2013 年 8 月 に、HER2 陽 性 手 術 不 能 又 は 再 発 乳 癌 に 対 し、
Pertuzumab が 薬 価 収 載 さ れ、 当 院 で も 同 年 10 月 よ り 使 用 開 始 し た。
Pertuzumab は HER2 二量体化阻害モノクローナル抗体で、Tratuzumab の併
用により単剤で投与するよりも HER シグナル伝達系をより広範囲に遮断する
と考えられている。CLEOPATRA 試験では、無増悪生存期間 (PFS) と全生存期
間 (OS) の 延 長 が 認 め ら れ、 有 益 な 治 療 薬 と し て 期 待 さ れ て い る。 今 回、
Pertuzumab の治療成績をまとめ、みえてきた現状と課題について文献的考
察 を 加 え て 報 告 す る。[ 対 象 お よ び 方 法 ]2013 年 10 月 か ら 12 月 ま で に
Pertuzumab+Tratuzumab (HP)+ ドセタキセル (DTX) 又はパクリタキセル
(PTX) のレジメンで投与された 11 症例を対象とし、有害事象、PFS および OS
などを臨床検討した。[ 結果 ]HP+DTX 投与症例は 6 例、HP+PTX 投与症例は
5 例であった。平均年齢は 55 歳。PFS の平均値は 6.5 ヶ月、中央値は 7 ヶ月
であった。サブタイプは HER2 type が 7 例、Luminal B (HER2 + ) type が 4
例であった。HP レジメンが Third line 以降に投与された症例は 5 例、アンス
ラサイクリン投与歴のあった症例は 2 例、タキサン系投与歴のあった症例は 7
例であった。有害事象は、Grade3 の好中球減少症が 3 例、Grade3 の中毒疹
が 1 例に認められたが、大部分は Grade1,2 で、著名な心機能低下症例も認め
なかった。病勢コントロール率(CR+PR+SD)は 36.4% であった。病状がか
なり進行してからの投与症例と有害事象による中止症例 4 例を除外した PD 症
例は、3 例で、その内 2 例は脳転移の出現によるものであった。[ 考察 ] third
line 以降で投与された症例が多く、PFS が Cleopatra 試験と比較し短期間と
なったが、有害事象は、大部分が Grade1,2 で著名な心機能低下症例もなく、
安全性はハーセプチン単独投与とほぼ変わりないと考えられたことから、
third line 前に投与することが有意義であると考えられた。また、脳転移に抑
制効果をもつ薬剤と併用できることがさらなる治療法の拡大ができると示唆
された。
日馬 弘貴、沖代 格次、新田 佳苗、柄川 千代美、武田 裕、高塚 雄一
【はじめに】HER2 陽性進行・再発乳癌患者に対しての一次治療として行われ
た CLEOPATRA 試 験 に お い て、Docetaxel(DTX)+ Trastuzumab(HER)+
Pertuzumab(PER) 併用療法は DTX+ HER+ pracebo と比較し有意に無増悪
生存期間、全生存期間を延長させた。PER は HER2 陽性進行・再発乳癌にお
い て 本 邦 で 2013 年 6 月 に 承 認 さ れ た。 当 科 で は 2013 年 10 月 よ り DTX+
HER+ PER 併用療法が導入となった。【対象と方法】2013 年 10 月~ 2014 年
12 月の間に HER2 陽性進行・再発乳癌と診断し、DTX+ HER+ PER を投与し
た 10 例。また臨床試験として nab-Paclitaxel(nab-PTX)+ HER+ PER を投与
した 2 例を加えた合計 12 例を対象とした。DTX, nab-PTX の用量はそれぞれ
DTX: 60 ~ 75mg/m2, nab-PTX: 220 ~ 260mg/m2 とし、患者の全身状
態を考慮し初回より減量を行った症例もあった。有効性、安全性についてレ
トロスペクティブに検討した。【結果】年齢の中央値は 64.5 歳 (42 ~ 75 歳 )。
再発乳癌が 7 例、進行乳癌が 5 例。Subtype は ER 陽性が 4 例、ER 陰性が 8 例。
臓器転移ありが 10 例、なしが 2 例。転移臓器部位数は中央値 2 臓器(0-3)で
あった。前化学療法レジメン数(術前・術後は除く)中央値は 4 レジメン(0-7
レジメン)であった。DTX, nab-PTX 投与サイクル中央値は 4 サイクルで、抗
腫瘍効果は PR: 3 例 , Long-SD: 2 例 , SD: 2 例 , PD: 3 例 , NE:2 例で、奏功
率 25%、臨床的有用率 41.7%、PFS は中央値で 126 日であった。PR が得ら
れた 3 例については 1st line での投与であり、奏効率において 1st line とそれ
以降のラインを比較すると、1st line のほうが有意に高かった。有害事象につ
いては Grade 3/4 の血液毒性は好中球減少 Grade 3: 1 例、Grade 4: 3 例、
発熱性好中球減少症 (FN) は 3 例であった。Grade 3/4 の非血液毒性は、心不
全 Grade3: 1 例、 疲 労 Grade3: 1 例、 悪 心 Grade3: 1 例、 末 梢 神 経 障 害
Grade3: 1 例を認めた。HER, PER を含めた治療中止例は心不全が 1 例、疲労
が 1 例であった。また Grade2 の Infusion related reaction を 3 例 (25% ) に
認めたが、投与速度の調節により中止例はなかった。【まとめ】当院で経験し
た 12 例では前治療の多い症例が含まれていたため、CLEOPATRA 試験と比較
し奏効率 25%、臨床的有用率 41.7% と低く、PFS 中央値は 126 日と短かった。
1st line で投与した 3 例は PR を得られており、早い段階での使用が有効であ
ると考えられた。
327
一般セッション(ポスター討議)
乳癌の抗 HER2 療法として Trastuzumab(Tmab), Lapatinib(Lapa) に続いて
2013 年 9 月から Pertuzumab(Pmab)、2014 年 4 月からは TDM-1 が加わり、
HER2 陽性転移再発乳癌に対する治療の選択肢は広がった。Pmab はヒト化モ
ノクローナル抗体で HER2 の細胞外領域ドメイン II に結合し HER2/HER3 を
中心とする二量体化を阻害し HER2 シグナルを遮断して抗腫瘍活性を発揮す
る。2014 年の NCCN のガイドラインでは ER および PR 陰性、もしくは ER お
よび/または PR 陽性かつ内分泌療法不応性 HER2 陽性再発/病期 IV 乳癌に対
してタキサン併用 Tmab + Pmab 療法は第一選択となっている。【目的】当院
における HER2 陽性進行再発乳癌に対する抗がん剤併用 Tmab + Pmab 療法
症例の臨床的特徴について検討する。【方法】当院にて 2013 年 9 月~ 2015 年
1 月の間に抗がん剤併用 Tmab + Pmab 療法を受けた HER2 陽性進行再発乳癌
に対する観察研究。【結果】対象は 12 症例で、全て女性であった。平均年齢は
61.7 歳(38 ~ 73 歳)で、Luminal-HER2 type は 9 症例、HER2 enrich type
は 3 症例であった。切除不能局所進行例は 8 症例、転移再発例は 4 症例であっ
た。前治療歴は中央値 2.5(0 ~ 7) レジメンであった。Tmab または Lapa の前
治 療 歴 が あ る 症 例 は 7 症 例 で あ っ た。 組 み 合 わ せ の 抗 が ん 剤 は
Docetaxel(DTX) が 8 症例、Paclitaxel(PTX) が 1 症例、Capecitabine(Cape)
が 3 症例であった。Pmab の平均投与 cycle 数は 10.2(2 ~ 19) cycle であり、
このうち抗がん剤を用いずに Tmab + Pmab 療法を行った平均 cycle 数は
4.1(0 ~ 12)cycle で あ っ た。 経 過 中 に PD と な っ た 3 症 例 の う ち 2 症 例 が
TDM-1 に、1 症例が Lapa + Cape 療法に移行した。Tmab + Pmab を再導入
した症例はなかった。臨床的な治療効果判定で PR が得られたのは標的病変が
ある 10 症例中 8 症例で、奏効率は 80%であった。有害事象としては下痢
(Grade 2:2 例 , Grade 3:1 例 )、口内炎 (Grade 1:1 例 ) があった。左心機能
不全、アナフィラキシー、infusion reaction など重篤な有害事象はみられな
かった。
【考察】HER2 陽性進行再発乳癌に対する抗がん剤併用 Tmab + Pmab
療法は重篤な有害事象はなく、治療初期から高い治療効果が認められた。また、
抗がん剤を中止し Tmab + Pmab 投与を行った際にも治療効果の継続が得ら
れた。至適な抗がん剤の種類や容量について、症例の蓄積が待たれる。
ポスター討議
DP-1-09-01
DP-1-09-02
1
1
トラスツズマブ治療後に再発が認められた HER2 陽性乳癌の予
後と再発後の予後因子
2
HER2 陽性進行乳癌に対するドセタキセル・トラスツズマブ・
ペルツズマブ療法の効果と有害事象管理
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、
愛知県がんセンター中央病院 薬物療法科
3
服部 正也 1、澤木 正孝 1、近藤 直人 1、吉村 章代 1、石黒 淳子 1、
小谷 はるる 1、安立 弥生 1、久田 知可 1、瀧 由美子 1、安藤 正志 2、
岩田 広治 1
稲垣 里奈 1、荒木 和浩 2、鈴木 えりか 3、照屋 なつき 3、小林 心 2、
深田 一平 1,2、柴山 朋子 2、柳 裕代 3、小林 隆之 1、高橋 俊二 1、
伊藤 良則 2、岩瀬 拓士 3
一般セッション(ポスター討議)
【背景】1 年間のトラスツズマブ治療により HER2 陽性乳癌の予後は改善した
が,トラスツズマブ治療を行っても再発が認められる症例も存在する.今回,
術後トラスツズマブ治療後に再発が認められた HER2 陽性乳癌の予後と再発
後の予後因子につき検討した.【対象と方法】当院で 2003 ~ 2012 年に術後ト
ラスツズマブ治療を行った HER2 陽性乳癌 321 例中,再発が認められた 29 例
を対象とした.同時両側,乳房内再発,オカルト乳癌,トラスツズマブが 6 か
月未満で終了した症例は対象外とした.再発後の全生存期間(OS)は KaplanMeier 法で算出し,再発後の予後因子は log-rank 検定と Cox 比例ハザードモ
デルを用いて検討した.統計学的に p < 0.05 を有意差ありと判定した.
【結果】
追跡期間中央値は 45.5 ヵ月で,トラスツズマブ治療後再発例の年齢中央値は
54 才.トラスツズマブ治療終了から再発までの期間中央値は 10.3 ヶ月で,
再発後の初回抗 HER2 療法への奏効率は 53.8%であった.術後トラスツズマ
ブ治療後に再発した HER2 陽性乳癌の再発後の OS 中央値は 25.4 ヶ月で,単
変量解析で初回抗 HER2 療法への奏効と初再発時の脳転移が再発後の予後へ
の有意な因子であった.一方,トラスツズマブ終了から 6 か月未満での再発,
ホルモン受容体,初診時の臨床病期,初再発時の内臓転移は有意な因子では
なかった.多変量解析では初回抗 HER2 療法への奏効(HR=2.8,p=0.059)
と初再発時の脳転移(HR=4.3,p=0.086)はいずれも再発後の OS に関与す
ることが示唆されるも統計学的には有意でなかった.【結語】今回の検討では,
術後トラスツズマブ治療を受け再発した HER2 陽性乳癌の再発後の生存期間
中央値は 25.4 か月で,再発後の初回抗 HER2 療法への反応と初再発時の脳転
移の有無が再発後の予後因子である可能性が示唆された.一方,トラスツズ
マブ治療終了から再発までの期間は予後因子ではなかった.
【背景】ペルツズマブ (PER) はトラスツズマブ (TRA) と併用することで HER2
陽性の進行乳癌の予後を改善することが示された。本薬剤の薬価収載に合わ
せ、当院ではチームパージェタ (teamP) を立ち上げ、院内での PER 導入とそ
の安全管理を行ってきた。当院での PER 使用経験を奏効期間と有害事象管理
に集約して検討した。【対象と方法】2013 年 9 月から翌年 12 月までに、当院
にてドセタキセル (DTX)・TRA・PER(DHP) 療法を 3 サイクル以上施行した
例について、後方視的解析を行い、無増悪生存期間 (PFS) を算出した。DTX
の投与状況と CLEOPATRA 試験で指摘された好中球減少・下痢・皮疹と想定
外の有害事象 (AE) を記述的に検討した。【結果】DHP 療法がなされた全 23 症
例の平均年齢は 55.7(33-75) 歳だった。ホルモン受容体陽性が 12 例、前化学
療法歴は平均 1.4(0-7) レジメン、DTX と TRA 併用療法を施行中に PER を追
加した例が 8 例だった。追跡期間中央値は 7.2 ヶ月、PFS 中央値は 7.8 ヶ月で
あり、増悪による治療終了は 12 例、AE による中止はなかった。最良総合効
果は完全奏効 1 例、部分奏効 7 例、安定 11 例、増悪 2 例、評価不能 2 例だった。
DHP 療法は平均 10.4(3-22) サイクル施行中、DTX は平均 5.8(1-11) サイク
ル投与され、18 例で減量を要した。DTX 投与中止の理由の内訳は浮腫 8 例、
倦怠感 6 例、患者希望 3 例 ( 重複あり ) だった。DHP 療法の AE 関して、グレー
ド 3 以上のものは、好中球減少が 10 例、発熱性好中球減少症は 0 例、下痢は
1 例、皮疹または手足症候群は 3 例だった。この他重篤な AE として、治療当
日よりインフュージョン・リアクションに加え腫瘍崩壊症候群を考える腎機
能障害、LDH 高値、胸水貯留、局所出血を来した 1 例を経験した。【結論】
DHP 療法では、DTX による好中球減少、浮腫、倦怠感によって治療スケジュー
ルや投与量調整を要したが、想定された FN や下痢、皮疹による重篤な症例は
少数であり、teamP による院内の管理体制で十分に対応可能であった。一方
で全身状態悪化例も経験したため、今後も更なる症例の集積とリスク解析、
その対策を要する。
DP-1-09-03
DP-1-09-04
当院における TDM-1 使用状況に関して
1
がん研有明病院 総合腫瘍科、2 がん研有明病院 乳腺センター乳腺内科、
がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科
当院における Her2 陽性進行・再発乳癌に対するトラスツズマブ
エムタンシンの有効性と安全性の検討
近畿大学 医学部 腫瘍内科、2 近畿大学 医学部 外科
大分県立病院 外科
岩朝 勤 1、西田 諭美 1、鶴谷 純司 1、中川 和彦 1、新崎 亘 2、安積 達也 2、
橋本 幸彦 2、菰池 佳史 2
背景:転移再発乳癌治療の新しい分子標的薬として認可された TDM-1 は、先
に行われた EMILIA 試験においてはラパチニブ + カペシタビン群に比較して
PFS・OS で有意差を持って有効性が示され 2 次治療の標準治療として認識さ
れ て い る。 ま た、 現 在 1 次 治 療 に お け る TDM-1 の 有 効 性 を 検 討 し た
MARIANNE 試験の結果が期待されており、今後の HER2 陽性乳癌治療戦略の
重要な位置を占める薬剤となっている。わが国では 2014 年 4 月より認可され、
以後幅広く使用されている同薬剤に関して、当施設での使用経験を基に安全
性および有用性に関する検討を行った。方法:2014 年 5 月 1 日から 2014 年
12 月 26 日 ま で の 間 で、 転 移 再 発 HER2 陽 性 乳 癌 患 者 9 名 を 対 象 と し て、
TDM-1 使用での奏効および副作用に関する検討を行った。結果:患者背景と
しては、免疫染色にて HER2 陽性症例 9 例を対象として、年齢中央値 60 歳、
PS は 6 例で 0、3 例で 1、前治療レジメン平均数は 3.4 レジメンであり、前治
療レジメンで最も多かったものは、トラツズマブ + ペルツズマブ + ドセタキ
セルの 6 例であった。奏効に関しては、CR0 例、PR2 例、SD5 例であり、病
勢コントロール率は 78%であった。また、副作用に関しては、血液毒性とし
ては血小板減少が最も多く 8 例で認められた。非血液毒性としては疲労が 4 例
で認められ、次いで肝機能障害が 3 例で認められた。結論:有効性に関しては、
PR が 4 例 44%で認められており、DCR も 78%と平均 3 次治療以降の化学療
法としても有効であることが示された。また副作用に関しても、最も重篤な
毒性には血小板減少 G3 が認められたものの、1 週間程度で輸血は必要とせず、
その他非血液毒性に関しては特に治療を要さない G2 以下の副作用であること
から、血小板減少に対する採血頻度が多くなるものの、同薬剤は外来でも使
用しやすい薬剤であることが示された。
野田 美和、増野 浩二郎、高井 真紀、田代 英哉
【背景】トラスツズマブ エムタンシン(以下 T-DM1)は、抗 Her2 ヒト化モノク
ローナル抗体であるトラスツズマブと細胞傷害性を有するチューブリン重合
阻害剤 DM1 を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。タキサ
ン系薬剤及びトラスツズマブ既治療の Her2 陽性進行・再発乳癌を対象に、カ
ペシタビン+ラパチニブ併用療法を対照群として行われた国外第 III 相臨床試
験では、T-DM1 は無増悪生存期間、全生存期間について有意な延長が認めら
れた。【目的】当院における Her 陽性進行・再発乳癌に対する T-DM1 の有効性
と安全性を検討した。【対象・方法】2014 年 3 月から 2014 年 10 月まで当院で
T-DM1 を 投 与 し た Her2 陽 性 進 行・ 再 発 乳 癌 12 例。 投 与 ス ケ ジ ュ ー ル は
T-DM1 3.6mg/kg を原則 3 週間間隔で点滴静注した。【結果】全例女性、平均
年齢 66.7 歳(41-84)、Performance Status(以下 PS)の中央値 0(0-2)、エ
ストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性である Luminal type
は 5 例であった。進行・再発乳癌に対して過去に受けた化学療法レジメン数の
中央値は 2(0-9)、転移部位の延べ数はリンパ節 11 例、肺 6 例、骨 5 例、脳 3 例、
皮膚 3 例、局所 2 例、肝 1 例であった。治療効果は CR 1 例、PR 3 例、SD 6
例(long SD 2 例)、PD 2 例、奏効率 33%、臨床的有用率は 50%であった。
12 例中 2 例は自己都合により治療中断していた。臨床的に効果が確認できた
6 例中 3 例が Luminal type であり、開始ラインは 2 次 /3 次 /4 次以上;1 例 /4
例 /1 例であった。Grade3 以上の有害事象は見られなかった。Grade1-2 の有
害事象として AST または ALT 上昇 8 例、悪心 5 例、末梢神経障害 5 例、便秘 5
例、血小板減少症 3 例、倦怠感 2 例が見られた。T-DM1 投与 3 コース後に間
質性肺炎をきたした症例を 1 例認めた。【考察】国外第 III 相臨床試験と比較す
ると当院における T-DM1 の奏効率、臨床的有用率はやや低い結果であった。
しかし、3 次治療以降の既治療レジメンが多い症例、Luminal type にも効果
を示した。また、高齢者や PS が悪い症例でも安全に投与できた。
328
ポスター討議
DP-1-09-05
DP-1-10-01
1
1
T-DM1 耐性となった際に、再生検により HER2 の発現を再評価
した症例の検討
2
HER2 陽性乳癌におけるトラスツズマブ併用術前化学療法の治
療効果、IHC 2+ と IHC 3+ の比較
大阪府立成人病センター 臨床腫瘍科、
大阪府立成人病センター 乳腺・内分泌外科
大阪ブレストクリニック、2 関西電力病院病理部
山本 仁 1、秋丸 憲子 1、廣瀬 富紀子 1、井口 千景 1、小池 健太 1、
松之木 愛香 1、藤田 倫子 1、芝 英一 1、河合 潤 2
吉波 哲大 1、屋木 敏也 1、芝 瑞穂 2、石飛 真人 2、中山 貴寛 2、
元村 和由 2、玉木 康博 2
DP-1-10-02
DP-1-10-03
熊本大学 医学部付属病院 乳腺・内分泌外科
慶應義塾大学 医学部 一般・消化器外科
末田 愛子、山本 豊、林 光博、竹下 卓志、山本 聡子、稲尾 瞳子、
指宿 睦子、岩瀬 弘敬
林田 哲、永山 愛子、高橋 麻衣子、神野 浩光、北川 雄光
PI3K 経路活性化を有する HER2 陽性原発乳癌は術前トラスツ
ズマブ療法に抵抗性である
ネットワークメタ解析による HER2 陽性乳癌に対する新たな治
療エビデンスの構築
【目的】HER2 陽性乳癌におけるトラスツズマブ治療抵抗性の一因として、
PI3K/AKT 経路の活性化が挙げられる。その代表的な機序として PIK3CA 遺伝
子変異や、PTEN 喪失などが考えられている。PI3K 経路活性化に関連する因
子が、術前トラスツズマブの治療効果に及ぼす影響を検討した。
【対象と方法】
対象は、当院にて術前トラスツズマブ治療を施行した、HER2 陽性乳癌 43 例。
化学療法はアンスラサイクリン系、タキサン系をベースとした。治療前組織
を用いて、PI3K 経路関連因子と病理学的完全寛解 (pCR) との関連を検討した。
PIK3CA 遺伝子変異(E545K, E542K, H1047R)の検索は、direct sequence
法に加えて、次世代 PCR 法である digital PCR を用いて行った。PIK3CA コピー
数は digital PCR 法にて、pAkt, PTEN, INPP4B の蛋白発現は、免疫組織化学
法にて検討した。
【結果】平均年齢 53 歳。全体の pCR 率は 60% (26/43) であっ
た。PIK3CA 遺伝子変異頻度は、direct sequence 法では 21% であったのに
対し、digital PCR 法では 49% であった。Digital PCR 法にて、変異含有率が
10% 以上のものを変異ありと定義すると、PIK3CA 遺伝子変異がある症例で
の pCR 率 は 29% で あ る の に 対 し、 変 異 が な い 症 例 で は 67% で あ っ た
(P=0.093)。PIK3CA コピー数と治療効果との関連は認めなかった。蛋白発
現では、PTEN 発現低下のみ、低い pCR 率と関連を認めた(P=0.034)。更に、
PI3K 経路活性化を PIK3CA 遺伝子変異、PTEN または INPP4B 発現低下の組
み合わせにより定義したところ、PI3K 経路活性化のあるものでは pCR 率が有
意に低かった。この結果は、pCR 予測における多変量解析でも有意であった
(オッズ比 0.11, 95%CI; 0.03 - 0.48)。【結論】HER2 陽性乳癌は、pCR 率が
高いサブタイプであるが、その中でも PI3K 経路の活性化のあるものでは、ト
ラスツズマブの治療効果が低い可能性が示唆された。PI3K 経路活性化に関連
するバイオマーカーを組み合わせることで、より正確な pCR 予測が可能であ
る。
329
我々はネットワークメタ解析の手法を用いて、HER2 陽性乳癌術前治療の前向
きランダム化比較試験を対象とし、各治療アームの有用性・安全性の比較検
討を行い報告した。(J Natl Cancer Inst., 2014) この結果を踏まえ、本手
法の乳癌治療エビデンス構築に関する有用性と、さらなる応用について報告
を行う。乳癌治療薬に関して、大規模な前向きランダム化比較試験を行うた
めには、一般的に経費・労力・患者負担などの多大なリソースを必要とする。
また長い期間を経て終了しても、予想したポジティブな結果が得られるとは
限らず、新規薬剤の登場により、その臨床試験の医学的意義が消失すること
も 考 え ら れ る。 そ の た め、 既 に 存 在 す る 臨 床 試 験 の 結 果 か ら、 新 た な
” clinical question” に対する答えを導き出すことができれば、本当に実施が
必要な臨床試験を判別することが容易となり、限られたリソースをこれに注
力する事ができる。ベイジアンネットワーク解析は、異なる複数の臨床試験
における治療アームの比較 A vs B および B vs C の結果から、間接比較である
A vs C の優劣を統計学的に解析する手法である。これに、システマティック
レ ビ ュ ー の 国 際 的 ガ イ ド ラ イ ン で あ る Preferred Reporting Items for
Systematic Reviews and Meta-Analyses (PRISMA) を厳格に適用し、信頼
性を飛躍的に高めることで、十分な医学的根拠として臨床へ適用可能となる。
具体例として前述の報告においては、HER2 陽性乳癌に対する術前化学療法に
おける現在の標準治療である、抗癌剤 (CT) +トラスツズマブ (tzmb) と比較
し て、CT + tzmb + ラ パ チ ニ ブ (lpnb) (OR 2.08 [1.18-3.56], p=0.01)、
CT + tzmb +ペルツズマブ (pzmb) (OR 2.29 [1.02-5.02], p=0.03) は pCR
率 に お い て 有 意 に 良 好 な 結 果 で あ っ た。 さ ら に、CT+tzmb+lpnb と
CT+tzmb+pzmb の間では統計学的有意差は認めなかったが、安全性の解析
を含めて検討することで、CT+tzmb+pzmb が総合的に最も優れた治療アー
ムであることが結論として導き出された。このように、現時点では直接比較
された臨床試験が存在しない治療法の優劣が判別することで、多種多様な
clinical question に対する解答を得ることが可能となり、今後このネットワー
クメタ解析を通じて、臨床試験の効率化・集約化が進むと考えられる。
一般セッション(ポスター討議)
(目的)IHC 法 2+ で FISH 法にて HER2 陽性と判定された乳癌症例は IHC 法 3+
症例に比べ HER2 タンパクの発現量が少なくトラスツズマブ (HER) の治療効
果に差がある可能性がある。今回 HER 併用術前化学療法を施行した HER2 陽
性乳癌で IHC 2+ 症例と IHC 3+ 症例との治療効果について比較検討をおこ
なった。(対象、方法)2006 年 5 月から 2014 年 11 月の期間に当院で術前化学
療法(HER+weekly PTX 、FEC)を施行した HER2 陽性乳癌 74 例 (IHC 2+
18 例、IHC 3+ 56 例 ) を対象とした。治療効果は手術標本の組織学的治療効
果判定基準によった。また治療効果とホルモンレセプター (HR) との関係、
HER/CEP17 比との関係についても検討した。(結果)<治療効果> IHC 2+:
G1 6 例 33%、G2 8 例 44%、G3 4 例 22% 、IHC 3+:G1 6 例 10.7%、
G2 24 例 42.9%、G3 26 例 46.4% で IHC 2+ では IHC 3+ に比べ G3 の比率
が約 1/2、G1 の比率が約 3 倍で低い治療効果であった。< HR との関係> IHC
2+:HR 陽性 G1 4 例 44.4%、G2 4 例 44.4%、G3 1 例 11.1%、HR 陰性 G1 2 例 11.1%、G2 4 例 44.4%、G3 3 例 33.3%、IHC 3+:ER 陽性 G1
2 例 8%、G2 12 例 48%、G3 11 例 44%、ER 陰 性 GI 4 例 12.9%、
G2 12 例 37.8%、G3 15 例 48.4% で IHC 3+ では治療効果において HR の
関係は認めなかった。IHC 2+ においては HR 陽性では陰性に比べで GI の比
率が 3 倍、G3 の比率が 1/3 と治療効果が低かった。< IHC 2+ における治療
効果と HER/CEP17 比との関係> G3 を得られた症例は HER/CEP17 比 3 未満
で 0/4、3 以上で 4/14 であった。(まとめ)IHC 2+ 症例は IHC 3+ 症例に比べ
術前化学療法にて治療効果が低くかった。また IHC 2+ 症例においては HR 陽
性症例は陰性症例に比べ治療効果が低くかった。今回の症例では HER/CEP17
比 3 未満では G3 を得られた症例はなかった。Lipton らは転移性乳癌において
FISH 陽性で HER2 タンパクの発現量が少ない症例は HER の治療効果が低いと
報告しているが(Cancer2010;116:5168-78)、今回術前化学療法での組
織学的判定でも同様の結果であった。
【はじめに】T-DM1 は trastuzumab に DM1 を結合させることで、非常に高い
特異性を持って HER2 強発現細胞へ効果を発揮する。T-DM1 は、有効性の点
から HER2 陽性転移性乳癌において、2 次治療以降で最も優先されるべき治療
として確立されているだけでなく、その高い特異性のため有害事象が従来の
殺細胞薬に比較し非常に少ない。一方、HER2 陽性乳癌においては、原発巣と
転移巣での HER2 発現状況に不一致があることや、転移性乳癌への治療経過
のなかで HER2 発現状況が変化することが指摘されている。T-DM1 は HER2
強陽性細胞への特異性が高い反面、その薬剤特性を考慮すると、HER2 強陽性
でない細胞への効果は極めて低いと予測される。そこで、T-DM1 が耐性となっ
た際に再生検が可能であった症例を検討し、T-DM1 の耐性化に HER2 発現低
下が影響するかどうかを検証した。【症例と方法】2014 年 12 月までに当科で
T-DM1 を投与された転移性乳癌症例 16 例を、診療録をもとに後方視的に検討
した。【結果】16 例はいずれも診断時もしくは手術標本にて HER2 強発現が確
認されていた。T-DM1 投与中に病状が進行した症例が 10 例あり、そのうち 9
例で進行した病変からの再生検が施行されていた。再生検部位は肝が 3 例、胸
壁が 3 例、乳房、腋窩、食道が各 1 例ずつであった。9 例中 5 例で HER2 が陰
転化していた (56%)。陰転化症例 5 例の特徴は、無病生存期間中央値で 64 日
と短く、SD が 1 例、PD が 4 例であった。【まとめ】本研究にて、T-DM1 がほ
とんど奏効しなかった症例では HER2 陰転化が起こっている可能性が高いこ
とが示唆された。T-DM1 が奏功しなかった症例を中心に、T-DM1 耐性となっ
た際には積極的に再生検を施行し biology を再評価したうえで、その後の治療
方針を決定することが望ましいと考える。
ポスター討議
DP-1-10-04
DP-1-10-05
1
1
当科における HER2 陽性乳癌に対する Anthracycline,
Taxane+Trastuzumab 併用術前化学療法の治療成績
2
手術可能 HER2 陽性乳癌に対する術前化学療法
- Nab- パクリタキセルを用いた多施設共同第 II 相試験-
大阪医科大学 一般・乳腺・内分泌外科、2 大阪労災病院 乳腺外科、
大阪警察病院 乳腺外科、4 八尾市立病院 乳腺外科、
5
関西医科大学滝井病院 乳腺外科、6 高槻赤十字病院 乳腺外科
東京女子医科大学東医療センター 乳腺科、
東京女子医科大学東医療センター 病理診断科
3
大久保 文恵 1、平野 明 1、上村 万里 1、小倉 薫 1、服部 晃典 1、
井上 寛章 1、阪口 志帆 1、松岡 綾 1、藤林 真理子 2、清水 忠夫 1
一般セッション(ポスター討議)
【 は じ め に 】一 般 的 に 術 前 化 学 療 法 (NAC) に よ り 組 織 学 的 完 全 奏 効
(pathological complete response;pCR) を得られた症例は、pCR が得られな
かった症例に比べて予後良好である。しかし subtype 別にみると HER2 type
と triple negative では pCR と予後が強く相関するが、その他の subtype では
相関しないことが示され (CTNeoBC)、全生存率 (OS) の surrogate marker と
しての pCR の意義は controversial である。今回、HER2 陽性乳癌に対する術
前化学療法後の予後について検討した。【対象】2006 ~ 2013 年に当科で
Anthracycline, Taxane, Trastuzumab(T) 併用の NAC を開始後、手術を施行
した HER2 陽性乳癌 48 例。【方法】EC(Epirubicin+cyclophosphamide) 療法
後に Taxane (Docetaxel; D, Paclitaxel; P または nab-Paclitaxel; nab-P) +
T を逐次投与した。 投与レジメンは EC(100/600) 4 コース後 , P80mg/m2
( 計 12 コース ) と T(2mg/kg) を毎週投与したのが 20 例。EC(90/600)4 コー
ス 後 , P 80mg/m2( 計 12 コ ー ス ) と T(2mg/kg) を 毎 週 投 与 し た の が 8 例。
EC(90/600)4 コース後 , nab-P 125mg/m2( 計 12 コース ) を 3 投1休投与し
T(2mg/kg) を各週投与したのが 13 例。EC(90/600)4 コース後 , D 75mg/m2
と T(6mg/kg) を 3 週ごとに 4 コース投与したのが 7 例。 HER2 陽性かつ ER・
PgR 陰性を HER2 enrich type (HER2 type)、HER2 陽性かつ ER and/or PgR
陽性を Luminal-HER2 type (LH) と定義した。評価項目は組織学的治療効果と
subtype 別の評価 , および pCR 症例と non-pCR 症例の 5 年 DFS, 5 年 OS。pCR
の定義は乳房および腋窩リンパ節における浸潤癌の消失とした。【結果】年齢
中央値は 59 歳 (23-76 歳 )。Subtype は HER2 type 29 例、LH 19 例。組織学
的効果は pCR が 26 例 (54.2% )。pCR を subtype 別にみると , HER2 type は
17/29 例 (58.6% ), LH は 9/19 例 (47.4% )。5 年 DFS は pCR 群 95.0%、nonpCR 群 71.8% と pCR 群で良好な傾向が見られた (log-rank p=0.0955)。また、
5 年 OS は pCR 群 100%、non-pCR 群 95.2% と有意に pCR 群で予後良好であっ
た (p=0.0137)。 さ ら に、subtype 別 に 予 後 を 見 る と、5 年 DFS は HER2
type77.2 %、LH91.7 % (p=0.2757)、5 年 OS は HER2 type 96.6%、LH
100%(p=0.2164) と LH で予後良好な傾向が見られた。【考察】HER2 陽性例
では NAC により高い pCR 率が得られ、pCR 群は non-pCR 群より予後良好で
あった。また、LH は HER2 type より pCR は得られにくいが、予後は良好な傾
向が見られた。今後は HER2 type の non-pCR 例に対する有効な追加治療が求
められる。
田中 覚 1、岩本 充彦 1、木村 光誠 1、松並 展輝 2、森島 宏隆 2、
吉留 克英 3、野村 孝 4、森本 卓 4、山本 大悟 5、坪田 優 5、小林 稔弘 6、
内山 和久 1
【背景】HER2 陽性乳癌に対するアンスラサイクリン、タキサン、トラスツズ
マブを用いた術前薬物治療により、30 ~ 50%の症例に病理学的完全奏功率
(pCR 率)が得られ、さらに pCR と予後との関連が示唆されている。従って、
HER2 陽性乳癌に対する新規薬剤の治療効果をみるためには、pCR 率が有用
とされている。Nab- パクリタキセルは、転移性乳癌において、従来のパクリ
タキセルよりも有用であることが報告されている。今回われわれは、手術可
能な HER2 陽性乳癌に対する術前アンスラサイクリンと Nab- パクリタキセル
+トラスツズマブ逐次療法の有効性および安全性を検討した。【方法】StageI
~ IIIA の症例に対して FEC100/EC90 を 3 週間毎に 4 サイクル投与し、次い
で、Nab- パクリタキセル(260mg/m2)+トラスツズマブを 3 週間毎に 4 サ
イクル投与した後に、手術を施行した。主要評価項目は pCR 率、副次評価項
目は臨床的奏効率、無病生存期間、組織学的治療効果、乳房温存率、安全性
とした。尚、pCR とは残存する浸潤癌が乳房とリンパ節に存在しない(ypT0/
is and ypN0)こと、組織学的治療効果ありとは pCR もしくは乳房内のみにわ
ずかに浸潤部が存在する(乳癌取扱い規約での Grade2b 以上)こと、と各々定
義した。【結果】2011 年 9 月から 2013 年 11 月までに 46 例が登録されたが、
うち 1 例が他の悪性疾患の併存あり除外された。従って、全ての治療に対して
の評価は計 45 例での検討となった。さらに、45 例中 1 例が EC 治療中に急速
な病状進行を認め試験治療を中止した。従って、計 44 例で Nab- パクリタキ
セルの安全性を評価した。pCR 率は 49%(22/45)であった。pCR 率を ER 発
現別に見ると、ER 陽性が 36%(10/28)、ER 陰性が 71%(12/17)であった。
45 例中 2 例で Nab- パクリタキセルを完遂できなかった(1 例は前述の病状進
行のため、もう 1 例は好中球減少遷延のため 3 クール目以降の Nab- パクリタ
キセル投与のみを中止)。全治療のうち、治療延期や減量が行われた原因は、
血液毒性によるものが最多であった。44 例中 1 例のみにおいて、Nab- パクリ
タキセルの末梢神経障害によって第 1 段階の減量を必要とした。発熱性好中球
減少症は FEC/EC で 40%、Nab- パクリタキセルで 11%に見られた。また、
Nab- パクリタキセルにおいて 9%に Grade3 の末梢神経障害を認めた。1 例の
み、ベースラインから 10%以上の左室駆出率低下を認めた。【結論】HER2 陽
性乳癌に対する本治療は、有用かつ安全であることが示された。
DP-1-11-01
DP-1-11-02
FEC100 療法における、ペグフィルグラスチムの適応の検討
持続型 G-CSF 製剤ペグフィルグラスチムの使用経験
KKR 札幌医療センター 外科
医療法人丸茂病院 乳腺外科
田村 元、大槻 雄士、谷 道夫、小柳 要、桑原 博昭、今 裕史、武田 圭佐、
小池 雅彦、赤坂 嘉宣
【背景】ペグフィルグラスチムが使用可能となった。FEC100 では 20%程度の
FN が起こるとされているが、実際の臨床では臨床試験とは異なる患者に使用
されることもあり、実臨床での FN 発症率を調べる必要がある。またペグフィ
ルグラスチムは相対用量強度(RDI)の増強につながる可能性があり、実臨床
での FEC100 の RDI を検討することは意味がある。【目的】実臨床での FN 発症
率、RDI を 調 べ、 ペ グ フ ィ ル グ ラ ス チ ム の 適 応 を 考 え る。【 方 法 】 対 象:
2008/12 から 2013 末まで FEC 療法を術前術後に使用した 86 例。4 サイクル
施行した 5 例以外は 3 サイクルを目標とした。終了後はタキサン系薬剤を投与
予定とした。ほとんどの治療は初回より外来で行われた。FN 発症時はシプロ
フロキサシンが投与され、3 日間で解熱しない場合、入院加療とした。原則的
に投与予定日の白血球数が 3000/ μ l 未満では投与を延期した。【結果】年齢等
を考慮し、8 例では初回より 80 から 90mg/m2 投与されていた。この8例を
除く 78 例で検討すると、FN は 22 例、28%で認められた。結果8例が入院と
なった。65 才で分けると、未満(64 例)では FN は 16 例(25%)、うち入院は
5 例(8%)、FN または FN からの感染症が投与延期、または減量の理由であっ
たのは 3 例、抗菌薬予防投与は 12 例であった。65 才以上(14 例)では 6 例
(43%)、うち入院は 3 例(21%)、FN または FN からの感染症が投与延期、ま
たは減量の理由となったのは 2 例、予防投与は 4 例であった。有意差は認めら
れなかったが、65 才以上で FN、FN による入院の率、FN が投与延期や減量に
つながった率が高くなる印象であった。また初回より減量した8名は、1例
をのぞいて 65 才以上であった。RDI が 0.9 より小さい症例は 26 例(34%)あっ
た。うち FN は8例経験されたが、RDI 低下の原因となったのは 5 例であった
のに比較し、開始時の白血球低下が原因であった症例は 13 例で、全症例の
17%であり主要な原因となっていた。【考察】日常臨床では FEC100 の FN 発
症率は、ペグフィルグラスチム 1 次予防投与が推奨される 20%より高い可能
性がある。65 才以上では FN の率や重症度が高く、1 次予防投与が適当である
可能性がある。 投与予定日の白血球数が 3000/ μ l 未満での投与延期、減量が
多かったが、ペグフィルグラスチムの使用により、このような症例で FEC100
が安全に施行できれば、RDI が高くなる可能性がある。
竹内 透、大久保 雄一郎、竹内 新治
【はじめに】乳がん化学療法の支持療法としての新規薬剤である持続型 G-CSF
製剤のペグフィルグラスチムの使用経験および副作用につき報告すると共に
至適投与法についても検討した。ペグフィルグラスチムは G-CSF のフィルグ
ラスチムをペグ化した持続型の G-CSF 製剤で、がん化学療法時の発熱性好中
球減少症の発症抑制が期待されている。従来の G-CSF 製剤とは異なり化学療
法 1 サイクルに 1 回のみの予防的投与で、フィルグラスチム連日投与と同様の
効果が得られるとされている。外来化学療法時の通院負担や感染症発症リス
クを低減と言った患者さんの負担軽減やがん化学療法の投与量やスケジュー
ル遵守が可能となるといった、治療効果上のメリットが期待されている。【対
象 】当 院 で 化 学 療 法 を 行 っ た 乳 癌 症 例 17 例 で 術 後 化 学 療 法 症 例 11 例 (
FEC100 9 例 TC 1 例 PTX 1 例 ) と 進 行 再 発 乳 が ん 6 例 (FEC100 4 例 PTX 2 例 ) である。乳癌術後化学療法においては 60 歳以上では全例投与、そ
れ以下の年齢では前治療で高度好中球減少ないしは回復の遅れにより治療ス
ケジュールに支障を来たした症例とした。ペグフィルグラスチムは化学療法
後 Day3-5 日に1回皮下投与を行ない Day8-10 に末梢血検査を行なった。複
数の症例では 3 クール以上治療を既に行なっている。【結果】前治療後の同時
期と比べ好中球の減少が抑制され、かつ単球の増加を認め骨髄機能の回復傾
向が早い事が示唆された。60 代女性ではペグフィルグラスチムを投与したに
もかかわらず好中球減少を来した症例を認めた。タキサン系投与はいずれも
40 代女性であるが白血球はいずれも減少せず増多傾向を来していた。観察期
間がまだ短いが間質性肺炎や重篤な血液検査値異常などの副作用の発現は認
めなかった。【結語】本薬剤を併用する事により骨髄機能の低い前治療歴のあ
る再発症例でも抗がん剤の減量に頼らず治療を完遂する事が可能となる。ま
た、G-CSF 使用を前提とした薬剤や治療法の実施、開発も現実的になったと
言える。高齢者においては好中球減少抑制効果について慎重に検討する必要
性があると考えられた。
330
ポスター討議
DP-1-11-03
DP-1-11-04
乳癌周術期補助 EC 療法における RDI の検討。
- 特に FN との関連について 1
FEC100 療法における発熱性好中球減少症のリスク因子の検討
岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科
兵庫県立がんセンター 腫瘍内科、2 兵庫県立がんセンター 乳腺外科
梅邑 明子、宇佐美 伸、佐藤 未来、渡辺 道雄、大貫 幸二
柴田 祥宏 1、朴 将源 1、三木 万由子 2、尾上 琢磨 1、広利 浩一 2、
松本 光史 1、高尾 信太郎 2、根来 俊一 1
DP-1-11-05
DP-1-12-01
1
1
持続型 G-CSF 製剤を使用すべき乳癌化学療法施行症例の探索
~乳癌患者 200 例の検討~
FEC100 療法における発熱性好中球減少症発症リスクと G-CSF
一次予防的投与の妥当性についての検討
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科、2 金沢大学附属病院 乳腺科
3
石川 聡子 1、井口 雅史 1,2、北野 悠斗 1、川島 博子 2、高村 博之 1、
二宮 致 1、北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、太田 哲生 1
勤医協中央病院 乳腺センター、2 勤医協中央病院 呼吸器センター、
勤医協札幌病院 外科
鎌田 英紀 1、後藤 剛 1、中村 祥子 1、川原 洋一郎 2、細川 誉至雄 3
【背景】持続型 G-CSF 製剤の使用が可能となり、発熱性好中球減少症(FN)発
症率が 20% 以上および 10 ~ 20% のレジメンに対する予防投与が推奨されて
いる。FN を予防しかつ治療強度 (Dose intensity、DI) を保つことが期待でき
る一方、高額な製剤であり副作用も伴うことから、適切なタイミングで適切
な対象に使用すべきと考える。乳癌術前、術後化学療法において、持続型
G-CSF を使用すべきターゲットを明らかにするため、当院の術前、術後化学
療法症例を後ろ向きに探索した。【方法】2009 年 1 月から 2014 年 10 月までに
当院で術前、術後化学療法を行った Stage1 ~ 3 の原発性乳癌患者 200 例を
対 象 と し、 レ ジ メ ン 別( 術 前 FEC100、 術 前 DOC75、 術 後 FEC100、 術 後
DOC75、術後 TC)に発熱性好中球減少、減量投与や治療延期を要した割合、
治療強度を評価した。年齢中央値は 53 歳(33 ~ 74 歳、65 歳以上を 12% 含む)、
治療中断者は除外した。【結果】FN 発症率は術後化学療法で 20% 以上(TC 34%、FEC100 28%、DOC75 22%)、 術 前 化 学 療 法 で 10-20%(FEC100
15%、DOC75 12%) であった。術後 FEC では 8%(FN 症例の 29%) が入院加
療を要し、12%で治療延期、6%で減量投与が必要であり FN 症例の約 47%
で DI が低下していた。術前 FEC100 では 16%が治療延期、6%で減量投与が
必要であった。術後 TC では 3%(FN 症例の 10%) が FN による入院加療を要し
いずれも 65 歳以上であった。また術後 TC の 5% で減量投与が必要であり、
FN 症例による DI の低下は約 20% に認めた。術前、術後 DOC75 では減量投
与 や 治 療 延 期 は 不 要 で あ っ た。 治 療 強 度 (DI) は 術 後 化 学 療 法(TC 97%、
FEC100 94%、DOC75 98%)、 術 前 化 学 療 法 (FEC100 93%、DOC75
98%) であった。【結語】加療を要する FN、治療延期や減量投与は術前、術後
FEC100、術後 TC で問題となり、FN 発症リスクに応じて本製剤を積極的に考
慮すべきと考える。特に FEC100 では FN による入院率を低下させ、DI を保つ
ことが期待される。一方術前、術後 DOC75 では外来通院で対処し得る FN が
多く、結果として延期や減量にまで至らないことから高リスク症例や二次予
防投与が考慮される。
331
[ はじめに ] 発熱性好中球減少症(FN)の併発は、抗がん剤の減量や治療スケ
ジュールの遅延につながり、結果的に予後にも影響を与えると報告されてい
る。欧米では、以前から FN 発症リスクが高いレジメンに対して G-CSF の予
防的投与が行なわれていたが、本邦でもようやく昨年末にペグフィルグラス
チムが一次予防目的で保険適用となった。ただ本邦におけるレジメン別の FN
発症リスクのデータは十分ではない。そこで今回我々は標準的な乳癌化学療
法の1つである FEC100 療法における FN 発症リスクに関して検討を行ったの
で報告する。[ 対象・方法 ]2014.7 までに FEC100 療法を終了した乳癌患者
57 例中、予防的抗菌剤投与未施行、かつ 1 コース目の Nadir の血液検査およ
び FN を発症した場合は発熱時の血液検査を施行していた 48 例を対象とした。
対象者を FN 群、非 FN 群に分け、その発症リスク(年齢、進行度、治療歴、併
存症、嗜好、BMI)について retrospective に検討した。[ 結果 ]FN 群は 18 例、
非 FN 群は 30 例で FEC100 の FN 発症率は 37.5% であった。FN 群、非 FN 群
における平均年齢は、55.1 才、50.6 才と FN 群で年齢が高い傾向を認め、T4
症例の割合は、38.9%、10.0% と FN 群で有意に多かった(p < 0.05)。治療
歴は、化学療法、放射線療法ともに両群で既往者は認めなかった。併存症は、
DM、COPD、耳鼻咽喉領域炎症性疾患、ステロイド内服の有無を調査したが、
両群で有意な傾向は認めなかった。嗜好に関しては、飲酒習慣は両群で差は
なく、喫煙歴は非 FN 群で多い傾向を認めた。BMI は FN 群で 24.4、非 FN 群
で 24.6 と差がなかった。[ 考察 ]“G-CSF 適正使用診療ガイドライン”によると、
FN 発症率が 20% 以上のレジメンを使用する場合には、G-CSF の一次予防的
投与が推奨されている(推奨グレード A)。当院における FEC100 療法施行患
者の FN 発症率はこの数値を超えており、予防的抗菌剤を投与していない諸家
の報告でも 20% 以上の発症率が報告されていることから、FEC100 療法にお
ける G-CSF の一次予防的投与は妥当であると考える。一方 FN の発症リスク
に関しては種々のガイドラインに記載がある。今回、発熱に関連しそうな上
記項目について検討した結果、高年齢、進行癌(T4)では特に FN 発症率が高
い傾向を認めた。[ 結語 ]FEC100 療法における FN 発症率は高く、G-CSF の一
次予防的投与は妥当と考えられた。また高年齢、進行癌では特に発症リスク
が高い可能性があり、注意を要する。
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌周術期補助療法において、抗癌剤の投与量 (RDI:Relative Dose
intensity) と生命予後との関連が報告されている。また、RDI 低下をもたらす
原因の一つとして、FN(febrile neutropenia) が考えられる。今回、当院で乳
癌周術期の補助療法としておこなった EC 療法における、RDI を特に FN との
関連を中心に検討をおこなった。【対象】2013 年 1 月から 2014 年 9 月までに
当 院 で 乳 癌 周 術 期 補 助 化 学 療 法 と し て EC 療 法 (epirubicin は 90mg/m2、
cyclophosphamide は 600mg/m2 を 3 週毎に 4 コース ) を施行した 56 例を
後方視的に検討した。【結果】年齢分布:~ 39 歳:7 例 /40 ~ 49 歳 :12 例 /50
~ 59 歳 :16 例 /60 ~ 69 歳 :15 例 /70 歳~ :6 例。Stage 分布 : 1期 :24 例 /
2期 :26 例 / 3期 :5 例 / 不明 :1 例。ホルモン status / Her2 status: ホルモン
陽性 /Her2 陰性 :31 例、ホルモン陽性 /Her2 陽性 :6 例、ホルモン陰性 /Her2
陽 性 :9 例、 ホ ル モ ン 陰 性 /Her2 陰 性 :10 例。4 コ ー ス 完 遂 症 例 数 :54 例
(96.4%)。RDI 平均値 ( 完遂症例のみ ):93.0%。 RDI : ~ 84% :10 例 / 85
~ 99%:15 例 / 100 % :31 例。RDI 低 下 の 理 由 : 好 中 球 回 復 遷 延 :7 例 /
FN:4 例 / 悪心・食欲不振 :4 例 / 倦怠感持続 :3 例 / その他 :7 例。FN 発生症
例数 : 20 例 (35.7%)。FN の有無での RDI 平均値 ( 完遂症例のみ ):FN あり
88.9%(20 例 )/FN なし 95.3%(34 例 ) p =0.034(t 検定 ) 有害事象 (FN に限ら
ず ) による入院症例数 : 5 例。【まとめと考察】当院における EC 療法の RDI 平
均値は 93%であり、全症例の 82%が RDI を 85%以上保つことができていた。
RDI 低下の理由の第一が好中球回復遷延であり、順に、FN、嘔気などの消化
器症状、倦怠感の持続であった。今回の検討で RDI を低下させる最大要因は、
FN ではなく好中球回復遷延であった。また FN 有無での RDI に関しては、FN
発症症例が非発症症例に比べ有意な低下を認めた。以上より RDI を保つため
には、好中球回復遅延がおこらないようにペグフィルグラスチムを含む
G-CSF 製剤の投与や FN 予防のための予防的抗生剤投与の対応が有用と考えら
れる。
【背景】発熱性好中球減少症(FN)発症リスクはレジメン,患者側のリスク因子
により異なるが,FN 発症リスクと Body mass index(BMI) についての詳細
な検討は少ない.【目的】今回当院外来で術前または術後に FEC100 療法を施
行した症例について,FN発症率と,FN発症リスク因子について検討する.
【対象・方法】2011 年 1 月から 2014 年 12 月に当院外来で施行した術前 / 術後
の FEC100 療法施行例のうち,Dose intensity(DI) が 95% 以上で,G-CSF の
一次予防または二次予防投与を施行しなかった 91 例.FN発症率と年齢,
BMI,合併症の有無,化学療法施行前の好中球数について後方視的に検討した.
BMI はアジア人向けの分類を用いて 4 群にわけ,A 群 (BMI < 18.5),B 群 (18.5
≦ BMI < 23),C 群 (23 ≦ BMI < 27.5), D 群 (27.5 ≦ BMI) とした.【結果】術
前化学療法は 57 例,術後化学療法は 34 例であった.年齢の中央値は 49 歳
(30-67 歳 )、FN発症は 50 例 (55%) にみられ , Grade3 以上は 3 例 (3%) で
あった.40 例は初回施行時の発症であった. BMI 分類別では,A 群 : 9 例中
8 例 (89%),B 群 :41 例中 26 例 (63%), C 群 : 29 例中 11 例 (38%), D 群 :12
例中 5 例 (42%) とA群で最も高頻度にFNを発症し,症例数は少ないながら,
最も低頻度の C 群と比較して有意差を認めた (p < 0.05).また,A 群では 2 回
以上の FN 発症は 8 例中 4 例であった.FNのなかった 1 例は Grade4 の好中
球減少症を認め,薬剤投与の延期・減量を要した.また,G-CSF 投与を要し
たのは全体で 8 例と少ないが,A 群 2 例 (2/9, 22%), B 群 6 例 (6/41, 15%)
で,C, D 群はいずれも投与した症例はなかった.なお,年齢,合併症の有無,
化学療法施行前の好中球数ではFN発症率に差はなかった.【結語】今回の検
討 で 有 意 差 は な か っ た が, 乳 癌 術 前 / 術 後 化 学 療 法 に お い て
underweight(BMI < 18.5) はFN発症率が高い傾向にあり,今後症例数を重
ねてさらに検討する必要があると考えられる.
ポスター討議
DP-1-12-02
DP-1-12-03
1
1
FEC 療法におけるペグフィルグラスチム予防的投与による発熱
性好中球減少症に対する予防効果の検討
3
乳癌術前化学療法及び術後補助化学療法における発熱性好中球
減少症についての検討
福山市民病院 乳腺甲状腺外科、2 うだ胃腸科内科外科クリニック、
いしいクリニック、4 かわの医院
3
久保 慎一郎 1、池田 雅彦 1、山本 真理 1、突沖 貴宏 1、中本 翔伍 1、
宇田 憲司 2、石井 辰明 3、川野 亮 4
吉野 裕司 1、佐藤 礼子 1、金子 真美 1、北原 智美 1、片桐 亜矢子 2、
車谷 宏 3、清水 由賀 4、多賀 玲奈 4
一般セッション(ポスター討議)
【 背 景 】2014 年 12 月 よ り 長 期 作 用 型 granu l ocyte colony- stimulating
factor 以下 G-CSF 製剤であるペグフィルグラスチムが本邦でも使用可能と
なった。本製剤による発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:以下 FN)
ハイリスク化学療法における FN の発症予防効果が国内相臨床試験により示さ
れている。FEC 療法は、FN の発症率が 20%、Grade3/4 の好中球減少発現率
が 44%、Graade4 の白血球減少の発現率が 51%であり、予防的な G-CSF 製
剤の投与が推奨されている。しかし、国内第 III 相臨床試験は TC 療法(ドセタ
キセル+シクロフォスファミド併用療法)については実施されたが、FEC 療法
(F-FU +エピルビシン+シクロフォスファミド併用療法)についてはペグフィ
ルグラスチムの有用性が予測されるものの日本人についてはのデータはない
のが現状である。今回、日本人コホートでのペグフィルグラスチム予防的投
与併用 FEC 療法における FN の発症予防効果についての有効性を検討する前向
き観察研究を立案した。【対象と方法】2015 年 1 月から 2015 年 6 月までに、
FEC 療法施行予定の乳癌患者に対して、ペグフィルグラスチム併用下での化
学療法を行う。予定登録症例数は 2014 年の実績、国内臨床試験の成績を参考
にし 25 例とした。 主要評価項目を FN の発症率、
副次的評価項目を好中球数、
白血球数、有害事象(関節痛、腰痛、筋肉痛、倦怠感、皮膚炎症状、その他)
とした。投与は、FEC 療法 Day2 以降 day4 以内にペグフィルグラスチム 3.6mg
を皮下注射することとした。予備試験により 3 例に同様のプロトコールで投与
し、FN の発症は認められていない。【まとめ】本前向き観察研究は、FEC にお
ける日本人コホートでのペグフィルグラスチムによる FN の予防効果を示す重
要なデータと位置付けられることが予想される。本会では、本前向き観察研
究の結果 ( 中間解析)を示すと同時に、海外での報告、国内第 III 相臨床試験の
データを考え併せたうえでの当院での今後の予防的な G-CSF 製剤の投与の方
針を提示する。
2014 年より本邦でも G-CSF の予防的投与が認可されたが、化学療法を施行
する全例に対して予防的投与を行うのは医療経済上の観点からも妥当ではな
いと考えられる。今回乳癌術前術後化学療法における発熱性好中球減少症 ( 以
下 FN) 発症の危険因子を探る目的で、当院における化学療法施行例について
retrospective に検討し、どのような症例に対して予防的投与を行うのが妥当
かについて考察した。【対象】2012 年 -2014 年に術前もしくは術後補助化学
療 法 が 施 行 さ れ た 原 発 性 乳 癌 86 例。【 結 果 】regimen の 内 訳 は、FEC100
followed by DTX:46 例、FEC100 のみ:13 例、DTX のみ:11 例、TC:16
例であった。FEC100 における FN 発症率は 59.3%、65 歳以上では 71.4%、
FN 発 症 例 で 2 回 以 上 発 症 し た 割 合 は 31.4%、DTX 例 で の FN 発 症 率 は
24.6%、65 歳以上では 33.3%、2 回以上 FN 発生例は 28.6% であった。TC
では FN 発症率は 50%、65 歳以上では 100%、2 回以上 FN 発生率は 62.5%
であった。FEC followed by DTX 施行例おいて FEC で FN 発症し DTX でも FN
を発症した割合は 19.0% であり、FEC での FN 発症と DTX での FAN 発症につ
いて高い関連性は認められなかった。入院を必要とした症例は FEC100:2 例
(3.4)%、DTX:2 例 (3.5% )、TC:1 例 (6.3%) であった。治療関連死はなかっ
た。【考察】欧米のガイドラインでは、FN 発症率が 20% 以上の regimen につ
いて GCSF 予防的投与を推奨している。今回の検討では、FEC100・DTX・
TC のいずれも FN 発症率は 20% を大きく上回っていた。ただし入院が必要に
なるまで重症化した症例は少なく、盲目的に全例に対して G-CSF 予防的投与
を行う必要はないと思われた。65 歳以上の症例や、一度 FN が発症した症例
では、FN の発症割合が上昇しており、このような症例に対しては G-CSF 予防
的投与を考慮してもよいと考えられた。
DP-1-12-04
DP-1-12-05
乳癌術前、術後化学療法中に発症した薬剤性間質性肺炎の検討
1
Everolimus による間質性肺炎死亡例の検討
淀川キリスト教病院 外科、2 茶屋町ブレストクリニック
1
國久 智成 、脇田 和幸
石川県立中央病院 乳腺内分泌外科、2 石川県立中央病院 放射線科、
石川県立中央病院 病理科、4 石川県立中央病院 看護部
1
1,2
兵庫県立がんセンター乳腺外科、2 兵庫県立がんセンター 放射腺診断科
松尾 容子 1、三木 万由子 1、広利 浩一 1、橋本 知久 2、高尾 信太郎 1
「目的」抗癌剤治療中に発症する合併症の中で、薬剤性間質性肺炎は比較的稀
である。しかし重症例では間質性肺炎による呼吸不全から死に至ることもあ
り、慎重かつ迅速な対応を要する合併症である。当院で乳癌の術前、術後の
化学療法中に薬剤性間質性肺炎を発症した症例について報告する。「症例」
2013 年 7 月から 2014 年 8 月までに当院で乳癌の術前、術後の化学療法中に
薬剤性間質性肺炎と診断された 8 例。年齢は 48 歳から 82 歳まで(平均 64 歳)。
「結果」術前化学療法中は 3 例、術後化学療法中は 5 例。化学療法の内容は
FEC100 が 3 例、FEC100 f/b weekly Paclitaxel が 2 例、FEC100 f/b
Docetaxel+Herceptin が 1 例、TC が 1 例、weekly Paclitaxel+Herceptin が
1 例であった。喫煙者は 1 例のみであった。治療開始前の CT にて肺の間質性
変化を認めた症例は 3 例あったが、いずれも軽度のものであった。いずれの症
例も間質性肺炎の発症前に放射線治療は受けていない。全例とも呼吸器内科
医の診察を受け、肺感染症は除外され、薬剤性間質性肺炎と診断された。気
管支鏡検査は 4 例で行われ、TBLB あるいは BAL での診断は非特異的な炎症像
で感染や悪性所見は認めなかった。2 例でステロイド投与を行ったが、他の症
例は被疑薬の中止のみで症状と画像所見の改善が見られた。追加治療を行っ
た症例はホルモン療法のみが 3 例、ハーセプチン+ホルモン療法が 2 例、異な
る種類の抗癌剤+ホルモン療法+放射線照射が 1 例であった。術前化学療法中
の 3 例の内、1例のみ手術を行い、残りの 2 例は手術待機中である。乳癌の抗
癌剤治療に伴う薬剤性間質性肺炎の経験を文献的考察を踏まえ、報告する。
【はじめに】Evelorimus(EVE) による間質性肺疾患 (ILD) は、発現は高頻度で
も軽症で、投与中止のみで回復することも多く、ステロイドに対する反応性
が良好とされる。しかし、薬剤性 ILD は本来、致死的リスクを伴う合併症で
あり、EVE のみが例外とは考えにくい。今回、EVE のよる ILD を発症し、ス
テロイドパルス療法にも全く反応せず死亡した症例を経験したので、文献的
検証をくわえ報告する。
【症例】患者は 68 歳女性。1996 年に左乳癌手術を受け、
2003 年7月肺転移発症。UFT + Anastrozole(ANA) にて CR。2006 年5月肺
転移再燃と骨、右鎖骨上リンパ節再発を来たし当科紹介受診。2006 年7月~
2011 年 8 月 ま で Letrozole,Exemestane(EXE),Toremifene,MPA 使 用 し、
各々 cPR~SD であった。2011 年8月 Capecitabine + Cyclophosphamide 使
用 し longSD で あ っ た が 手 足 症 候 群 G 3 と な り 中 止。2012 年 7 月
Fluvestrant、2013 年7月 Tamoxifen、各々 longSD 、2014 年6月 ANA を三ヵ
月間使用後 2014 年9月8日肺、肝、縦隔リンパ節転移増悪にて、EXE+EVE
開始。内服三日目より口内炎出現、二週後軽い咳、痰あり。4週後階段昇降
にて息切れ自覚。7週後歩行にて息切れ、嗄声、むせあり。縦隔リンパ節転
移による反回神経麻痺疑われた。胸部 X - P、CT にて両側肺すりガラス様陰
影 認 め 間 質 性 肺 炎 G 2 と 診 断 し EVE 中 止。 4 日 後 呼 吸 苦 に て 緊 急 入 院。
CRP:9.0,KL-6:1855. β -D- グルカン陰性、X - P にて誤嚥性肺炎、間質性肺
炎疑い。酸素吸入、抗生剤投与したが呼吸苦改善せず、CRP 上昇した。ステ
ロイドパルス療法施行したが CT 上間質性肺炎像増悪。エラスポール投与、エ
ンドキサンパルス療法施行も反応せず、入院後1ヵ月で死亡した。
【考察】
EVE による ILD は、腎細胞癌、膵神経内分泌腫瘍に対する製造販売後調査結
果では、22.9%、12.1%に発症し、そのうち 32%、28.9%が Grade3 以上の
重篤例であった。死亡例も ILD 発症例の 2.9%、2.6%に見られている。また、
ステロイドが投与された症例の 20%は不応性で、G 3以上でも 23.5%は反応
していない。これに対して AI 耐性進行再発乳癌での使用例(Bolero2 試験)で
は、ILD は全体で 18.0%、国内症例で 40.8%に発症したが Grade4 は認めら
れなかったことから、画像所見で ILD が認められても無症状例では投与継続、
中止例でも投与再開が可能な場合があるとされ、軽視されがちである。今回、
死亡例を経験し、EVE による ILD を詳細に検討し報告する。
332
ポスター討議
DP-1-13-01
DP-1-13-02
1
杏林大学 医学部附属病院 乳腺外科学教室
術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は高精度で長期成績
良好である
術前センチネルリンパ節生検は治療に影響を与えるか
~当院での治療症例の検討~
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科、2 東京慈恵会医科大学 病理学講座
野木 裕子 1、内田 賢 1、神尾 麻紀子 1、加藤 久美子 1、塩谷 尚志 1、
鳥海 弥寿雄 1、鈴木 正章 2、武山 浩 1
伊坂 泰嗣
【目的】センチネルリンパ節生検(以後 SNB) は術前画像検査で腋窩リンパ節転
移陰性症例に標準術式である。しかし、多くは術中迅速診断であるため、偽
陰性等の問題があり、必要な補助療法を術前に施行する機会を逸脱し、得ら
れるはずであったメリットを損なう可能性がある。そこで、当院では SNB 対
象症例に対し、術前 SNB を施行、永久標本で評価を行い、治療方針に影響を
あたえるか検討した。【対象と方法】当院で 2013 年 6 月から 2014 年 10 月ま
でに施行した術前 SNB 症例 34 例を対象とし、検討を行った。手術は静脈麻酔
と局所麻酔を併用し、インジゴカルミンと ICG の 2 種類の色素を併用した色
素法を施行した。10 倍希釈した ICG1ml、インジゴカルミン 2.5ml + 1% キ
シロカイン 2.5ml、生理食塩水 10ml の順で腫瘍存在エリアの乳輪部に皮内・
皮下注射し 1 分程マッサージを行い、赤外線カメラで皮下リンパ管の発光部先
端を同定し SNB を施行した。【結果】SNB 施行症例は 34 例で、平均年齢は
56.6 歳、腫瘍径の平均は 16.3mm で、組織型は乳頭腺管癌 4 例(11.8%)、
充 実 腺 管 癌 2 例 (5.9%)、 硬 癌 21 例 (68.8%)、 微 小 乳 頭 癌 3 例 (8.8%)、
DCIS2 例(5.9%)、浸潤性小葉癌 1 例(2.9%)、不明 1 例 (2.9%) であった。
34 例中、33 例で同定可能で同定率は 97.1%、1症例あたり平均 2.9 個リンパ
節を摘出した。同定可能であった 33 例中 12 例 (36.4%)に腋窩リンパ節転移
を認めた(摘出リンパ節 92 個中 15 個 (16.3%)。転移状況は macrometa3 個
(20%:転移巣サイズは 5mm、2.5mm、2.2mm)、micrometa8 個(53.3%)、
ITC4 個 (26.7%)であった。この結果より、治療方針変更(術前治療なし→あり、
もしくはレジメン変更)が行われた症例は 8 例(24.2%)であり、その後術式
変更(Bt → Bp) となった症例は 2 例(6.1%)であった。なお、この 2 例は転移
リンパ節が 2 個以下だったため、術後放射線照射の範囲を腋窩にも広げること
で腋窩リンパ節郭清を省略可能であった。【考察】術前画像による腋窩リンパ
節転移陰性例の中で 36.4% の症例に転移を認めた。その結果、必要な補助療
法が術前に施行でき、6.1% の症例で術式を縮小、また腋窩リンパ節郭清を省
略可能となり、郭清に伴う合併症の多くを回避できる可能性が示唆された。2
回入院・手術というデメリットはあるものの、術前 SNB を施行し、その結果
より治療方針を決定することは、患者にとって十分なメリットを持つものと
思われた。
DP-1-13-03
DP-1-13-04
腋窩リンパ節転移陽性乳癌に対する術前化学療法後センチネル
リンパ節生検適応の検討
1
3
術前化学療法後のセンチネルリンパ節転移診断における OSNA
法の有用性について
帝京大学 医学部 外科学講座、2 帝京大学 医学部 病理学講座、
慶應義塾大学 医学部 一般・消化器外科
1
大阪大学 医学部 乳腺内分泌外科、2 大阪成人病センター 乳腺内分泌外科
高本 香 1、島津 研三 1、直居 靖人 1、下村 淳 1、下田 雅史 1、
加々良 尚文 1、丸山 尚美 1、金 昇晋 1、玉木 康博 2、野口 眞三郎 1
高橋 洋子 1、柳澤 貴子 1、吉川 三緒 1、関 朋子 3、池田 正 1、
笹島 ゆう子 2、神野 浩光 1
術前化学療法 (NAC) 後のセンチネルリンパ節生検 (SLNB) には多くの議論が
ある。NAC により約40%の症例で腋窩リンパ節転移が陰性化するという報
告があり、NAC 後は症例に応じて腋窩郭清 (ALND) を省略できる可能性があ
る。当院における NAC 後乳癌の SLNB について検討をした。対象は当院で
2012 年 1 月から 2014 年 12 月までに原発性乳癌に対して NAC 後手術を施行
した 65 例。そのうち 48 例 (72.7% ) で治療前に腋窩リンパ節転移陽性と診断
されていた。平均年齢は 54.5 歳。治療前臨床病期は病期 I 0 人 (0%)、病期
IIA 15 人 (23.1%)、病期 IIB 18 人 (27.7%)、病期 IIIA 12 人 (18.4.%)、病
期 IIIB 10 人 (15.4%)、病期 IIIC 5 人 (7.7%)、病期 IV 5 人 (7.7%)。サブタ
イ プ 別 の 内 訳 は、Luminal 29 例 (43.9%)、Luminal-HER 10 例 (15.4%)、
HER-enriched 11 例 (16.9%)、Triple negative 15 例 (23.8%) で あ っ た。
pCR は 16 例 (24.6%) で得られた。当院では SLNB をアイソトープ法、色素
法を用いた併用法で施行しているが、今回の検討では同定率 100%であった。
SLNB 施行例は 23 例あり、2 例で転移が陽性となり ALND を施行しているが、
郭清したリンパ節には転移は見られず、病理組織学的奏効度はそれぞれ
Grade0、Grade1a と診断され、原発巣への効果も乏しい Luminal 症例であっ
た。反対に、NAC 後画像評価にて cCR とした 7 例すべては SLN 陰性であった。
治療前 N1 と診断され ALND を施行した 42 例のうち 4 例は NAC 後も N1 と診
断されていたが、それを含む 15 例に転移は見られなかった。ALND 施行し転
移の見られなかった 15 例のサブタイプは Luminal 6 例、Luminal-HER 3 例、
HER-enriched 2 例、Triple negative 4 例であり、治療前評価 N1 が陰性化し
た割合は、Luminal 20.0%、Luminal-HER 30.0%、HER-enriched 27.3%
例、Triple negative 26.7% であった。また、2013 年から当院では、治療前
N1-2 症例の中で NAC 後 N0 と評価したものに関しては原発巣に対する治療効
果も検討し症例に応じて SLNB を施行している。これまで施行した 3 例とも
SLNB 転移を認めず ALND を省略可能であった。今回の検討では、Luminal タ
イプ乳癌では NAC 施行後も郭清省略が難しい傾向が示され、HER タイプで腋
窩リンパ節転移陰性化率が高い傾向を得た。NAC 前腋窩リンパ節転移陽性症
例であっても、NAC 後に症例毎に十分な検討をすることで郭清を省略できる
可能性が示唆された。
【目的】OSNA 法は乳癌患者のセンチネルリンパ節(SLN)転移の術中迅速検査
法として広く普及している。本研究の目的は、術前化学療法後(NAC)のセン
チネルリンパ節転移診断における OSNA 法の有用性を検討することである。
【方法】NAC 後に手術を施行した乳癌患者 88 症例(CK19 低発現症例を除く)
より摘出された腋窩リンパ節 300 個(SLN115 個、non-SLN185 個 ) を対象と
した。個々のリンパ節を 4 分割し互い違いに OSNA 法と病理組織診断 (HE 染
色と pancytokeratin 免疫染色 ) に提出し結果を比較した。また、リンパ節転
移巣の CK19mRNA 発現を In situ hybridization (ISH) にて評価した。
【成績】
全リンパ節(300 個)での OSNA 法の正診率は 92.3% と高率であった。一方、
SLN と non-SLN に分けて検討したところ、SLN での正診率 87.8% は、nonSLN での正診率 95.1% よりも有意に(P < 0.05)低率であり、その原因は低感
度(特に、微小転移(micrometastasis)の検出率低下)によるものであった
(75.0% vs. 97.3%)。そこで、微小転移における CK19mRNA の発現を ISH
で検討したところ、SLN 微小転移における CK19mRNA の発現は、non-SLN
微小転移における CK19mRNA 発現よりも低下傾向(P = 0.061)を示した。
【結
論】NAC 後の全リンパ節での OSNA 法の正診率は NAC 非施行例と同様に高率
であった。しかし、NAC 後の SLN での OSNA 法の正診率は non-SLN に比し
て有意に低率であった。NAC 施行症例では、化学療法の効果によって SLN 転
移における CK19mRNA の発現が non-SLN 転移に比してより低下し、その結
果、OSNA 法による SLN 転移の検出感度が低下する可能性が示唆された。
333
一般セッション(ポスター討議)
【背景】cN0 に対するセンチネルリンパ節生検 (SN) は,腋窩の評価における標
準的手法となった.しかし,術前化学療法症例に対する SN のタイミング,適
応についてはいまだ議論の余地が残る.【目的】我々は cN0 症例における SN に
よる評価の同定率と長期成績を手術先行例と化学療法先行例において比較検
討した 【
. 対象】2007 年から 2013 年に SN を施行した患者 : 1180 名.【方法】
触診,画像所見,穿刺細胞診によって腋窩を評価した.センチネルリンパ節
同定には色素法と RI 法を用いた.摘出リンパ節は 2mm 間隔の切片を HE 染色
にて術中迅速診断を行い,術後,ホルマリン包埋後ケラチンによる免疫染色
にて再評価した.センチネルリンパ節転移陽性症例は腋窩郭清を施行した.
化 学 療 法 レ ジ メ ン は FEC (5FU500mg/m2, Epirubicin100mg/m2,CPA
500mg/m2) / DOC100mg/m2 を各 4 サイクル逐次に施行した.手術先行
群と化学療法先行群における,臨床病理学的特徴,センチネルリンパ節同定率,
局所再発率を比較検討した.【結果】化学療法先行群(183 例)は手術先行群
(997 例)に比較し,有意に若年齢 (P=0.0004),病期進行 (P < 0.0001),
ER 陰性 (P < 0.0001),
PgR 陰性 (P < 0.0001),
HER2 陽性 (P=0.017) であっ
た.同定率は化学療法先行群 99.5%,手術先行群 99.7% と,有意差を認めな
かった.センチネルリンパ節転移陰性率は化学療法先行群 80.8%,手術先行
群 95.7%であった.経過観察期間中央値 55.1 か月おいて,腋窩における局所
再発率は化学療法先行群 1 例(0.5%),手術先行群 6 例 (0.6%) であり,有意
差を認めなかった.【結語】術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は高精
度で長期成績良好であった.これにより,不要な腋窩郭清を省略し得たと考
える.
ポスター討議
DP-1-13-05
DP-1-14-01
術前化学療法施行例におけるセンチネルリンパ節生検の成績
―CT-lymphography を併用してー
1
術前薬物療法前のセンチネルリンパ節生検の検討
1
2
弘前市立病院 乳腺外科、2 弘前市立病院 外科
田口 裕紀子 1、八十島 宏行 1、田中 希世 1、増田 紘子 1、水谷 麻紀子 1、
森 清 2、児玉 良典 2、眞能 正幸 2、増田 慎三 1
長谷川 善枝 1、三浦 元美 1、成田 淳一 2
一般セッション(ポスター討議)
術前化学療法 (NAC) 施行例でのセンチネルリンパ節生検 (SLNB) の妥当性に
ついては、日本乳癌学会乳癌診療ガイドラインでは治療前 N0 症例においては
推奨グレード C1、治療前リンパ節転移陽性例では C2 とされ、郭清省略につ
いては現在でも cotrovasial とされている。当科では Multi-ditectorCT を用い
た lymphography(CTLG 法 ) をナビゲーションとした SLNB 法をを導入してお
り、NAC 施行前後に CTLG を施行し根治手術時に SLNB を施行しその成績を
検討した。【対象と方法】2007 年から 2013 年までに、NAC を施行した原発性
乳癌 142 例に対し、NAC 前後に CTLG を施行した。NAC はサブタイプに基づ
き Anthracyclie(FEC),Taxane の逐次投与± Trastuzumab を施行した。CTLG
法は 16 列の Multi-ditectorCT を用いて水溶性造影剤を患側乳輪下及び腫瘍直
上に皮内注下の地に 90 秒後より撮影を行い、同じ条件で NAC 前後に撮像を
行った。根治手術時には色素法を用いて行い、摘出リンパ節は 2mm 全割で評
価した。全例 back up 郭清を施行し腋窩リンパ節は長軸 1 方向の切片で転移
の有無を検索した。【結果】治療開始前に画像診断あるいは穿刺吸引細胞診で
N0 と診断されたのは 20 例、N1以上と診断された例は 122 例であった。N1
以上と診断された例においては CTLG の所見ではリンパ管の途絶や狭小化の
所見がみられ、31 例 (25.4%) にリンパ節の造影不良を認めたが、これらはリ
ンパ節へ連続するリンパ管の造影によりセンチネルリンパ節の同定が可能で
あった。また NAC 前後の画像所見の比較では、リンパ管やセンチネルリンパ
節に対して造影の経路や部位が変化した例は認められなかった。治療前 N0 症
例 20 例のうち、センチネルリンパ節転移陽性は 4 例(20%)センチネルリンパ
節転移陰性は 16 例(80%)、うち偽陰性は 2 例にみられ偽陰性率は 12.5%で
あった。また、治療前 N1 以上症例 142 例のうち NAC 後 N0 と評価した 49 例
のうち、センチネルリンパ節転移陽性は 6 例(12.2%)、転移陰性は 43 例
(87.8%)、うち偽陰性(センチネル陰性 / ノンセンチネル陽性)は 1 例のみで
偽陰性率は 2.3%であった。【まとめ】NAC 施行症例においても SLNB は概ね
安全に施行することができ、診断的価値は高いものと考えられた。また、
CTLG は NAC 施行症例に対しても SLNB のナビゲーションとして有用である
と思われた。
国立病院機構 大阪医療センター 外科・乳腺外科、
国立病院機構 大阪医療センター 臨床検査科
【背景と目的】乳癌治療において術前薬物療法 (PST) が主流となってきたなか、
その際のセンチネルリンパ節生検 (SLNB) の安全性に関するエビデンスは十分
ではない。当院では腋窩の正確な staging を目的に、PST 開始前の SLNB に取
り組んでいる。単一施設での連続症例の前向き観察研究から、PST 前 SLNB の
安全性や腋窩温存率、腋窩再発を検討したい。【対象と方法】cT1-3cN0 の浸
潤癌で、2011.6-2014.2 に PST 前 SLNB を実施した症例 ( 以下 PST 施行群 )
を対象とした。SLN(+) の場合は PST 後の乳腺切除時に原則腋窩郭清を勧めつ
つも、SLN 転移個数が 2 個以下で PST が PR 以上の効果であった症例の多くは
非 郭 清 で 経 過 観 察 し た。 こ れ ら の 症 例 を 2003.5-2014.2 の PST 非 施 行 の
SLNB 実施症例 ( 以下 PST 非施行群 ) と比較した。平均観察期間は PST 施行群
27.0 ヶ月、非施行群 75.5 ヶ月。【結果】PST 施行群は全 121 例 (T1:28.1%,
T2:66.1%,T3:5.8%)、手術時間は平均 53.1 分 (19-131 分 ; 中央値 43 分 ) で
大きな合併症は認めなかった。pN0 は 81 例、pN1 は 40 例。pN1 の 40 例中、
22 例 (cCR:3 例 ,cPR:14 例 ,cSD:4 例 ,cPD:1 例 ) は PST 後 に 腋 窩 郭 清 ま た は
サンプリングを追加実施したが、18 例 (cCR:6 例 ,cPR:11 例 ,cSD:1 例 ,cPD:0
例 ) は 追 加 郭 清 な し で 経 過 観 察 し た。PST 非 施 行 群 は 全 931 例
(T1:57.4%,T2:40.2%,T3:2.5%)。pN1 は 232 例 で、 う ち 173 例 は 術 中
SLN(+) で追加郭清を行い、59 例は術中 SLN(-) かつ永久 SLN(+) であり非郭
清で経過観察した。PST 施行群のうち郭清例の SLNB 時 LN 検索個数、転移陽
性個数の平均値はそれぞれ 3.9 個、2.9 個で、追加郭清分も含めた LN 総摘出
個数の平均値は 16.8 個であった。非郭清例の LN 検索個数、転移陽性個数の
平均値はそれぞれ 3.9 個、1.2 個であった。郭清した LN に転移を認めたのは
PST 施行群の 18.2%、PST 非施行群の 51.4% であった。SLN(+) 症例の腋窩
温 存 率 は PST 施 行 群 で 45.0 %、PST 非 施 行 群 で 25.4 % と 有 意 差 を 認 め た
(p=0.014)。同側腋窩再発率は PST 施行群で 5.6%、PST 非施行群で 5.1%で
あった。【考察】PST 前 SLNB で手術、入院回数は増えるが、安全性に問題は
なかった。更に PST 施行群では、より進行度が低いと推測される PST 非施行
群に比し LN 郭清個数減少、腋窩温存率増加を認めた。症例数や平均観察期間
が異なるため腋窩再発率の評価には更なる症例と長期観察が必要だが、現時
点では同等である。PST 前に SLNB で腋窩転移状況を把握し PST 効果と併せ
て評価することで、郭清の必要性を判別できる可能性が示唆された。
DP-1-14-02
DP-1-14-03
広島市立広島市民病院 乳腺外科
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
梶原 友紀子、金 敬徳、藤原 みわ、吉村 友里、河内 麻里子、伊藤 充矢、
大谷 彰一郎、檜垣 健二
吉村 章代、澤木 正孝、近藤 直人、服部 正也、石黒 淳子、安立 弥生、
小谷 はるる、久田 知可、瀧 由美子、岩田 広治
【背景】術前化学療法 (NAC) 後に、センチネルリンパ節生検 (SNB) による腋窩
リンパ節郭清 (Ax) の省略について、乳癌診療ガイドライン 2013 では、NAC
前 N0 症例では推奨グレード C1、N1 以上の症例では C2 とされている。最近
の検討では NAC 前 N0 症例について、良好な同定率と偽陰性率の報告がある。
当院における 2000 ~ 2009 年までの NAC 後 SNB および back-up 郭清を行っ
た 275 例の検討においても、N0 症例では SN 同定率 92.7%, 偽陰性率 0%、
N(+) においても NAC 著効症例 (clinical Complete Response) では SN 同定率
83.9%, 偽陰性率 0% であり、標準治療群 (2000 ~ 2009 年に標準治療として
SNB を施行した 2340 例 , 同定率 94.9%, 偽陰性率 11.6%) と比較して差はな
く、NAC 後 SNB の適応となる可能性が示唆された。【方法】2011 年 1 月~
2012 年 12 月に手術を施行した NAC 症例 117 例 ( 観察期間 35 ヶ月 ) に対し
て、NAC 前 N0 症例では SNB による Ax 省略を施行し、cCR 症例については、
SNB 陰性であれば Ax 省略または sampling 郭清とし、それぞれの局所再発お
よび予後について統計学的検討を行った。SNB は併用法 (99mTc phytate +
indigocarmine) にて同定した。【結果】117 例は N0:44 例 (37.6%),N(+):73
例 (63.4%) であった。NAC 前 N0 症例において、SN 同定率 100%、SN 陰性
で Ax 省略が 30 例、SN 陽性で Ax 施行が 5 例、SN 陰性だが術中判断で Ax 施行
9 例 ( いずれも pN0) であった。Ax 省略症例では、乳房内再発 1 例、脳転移再
発 1 例認めたが、腋窩再発は認めなかった。Ax 施行例においては、乳房内再
発 1 例、 病 側 鎖 骨 下 リ ン パ 節 再 発 1 例 認 め た が、 い ず れ も pN0 で あ っ た。
NAC 前 N(+) か つ cCR 症 例 35 例 で は、SN 同 定 率 94.3%(33/35 例 )、SN 陰
性で Ax 省略 20 例、SN 陽性で Ax 施行 7 例、SN 同定困難または SN 陰性だが
術中判断にて Ax 施行 6 例であった。SN 同定困難の 2 症例は pN0、術中判断で
Ax 施行した 6 例中 2 例でリンパ節転移を認めた。Ax 省略症例では、乳房内再
発 1 例、病側腋窩リンパ節再発 1 例、Ax 症例においても、乳房内再発 1 例、
病側腋窩リンパ節再発 1 例を認めた。SNB による Ax 省略の可能性が考えられ
た 79 例は、いずれも生存しており、現時点で予後に差は認めない。【結論】
NAC 前 N0 症例において,SN による Ax 省略例では、腋窩再発は無く,NAC
後 SN 陰性の郭清症例と比較して遜色ない予後であった。NAC 前 N(+) かつ
cCR 症例においては、腋窩リンパ節再発を認め、適応について更なる検討が
必要である。
【 背 景 】2011 年 Z0011 試 験(Bp+SLN 転 移 1-2 個 に お い て SLND 単 独 群 と
ALND 群 で OS, 領 域 再 発 に 差 が な い ),2014 年 AMAROS 試 験 (cT1-T2,SLNB
術中転移陽性において SLND+ 腋窩照射群と ALND 群で領域再発 ,OS に差がな
い ),2 つの欧米における非劣性試験の結果が論文発表された . しかし当院では
macro 転移時に郭清の省略は行っておらず , 日本のガイドラインでも推奨グ
レード C2 という現状がある 【
. 目的】上記試験 ALND 群と当院の対象となる
ALND 群 (2002-2010 年 ) の背景と予後を比較検討した 【
. 対象】Z0011-ALND
群 420 例 VS 当 院 Bp+SLN 転 移 1-2 個 に て ALND 群 85 例 【
. 結 果 】観 察 期 間
(6.3Y VS 6.1Y) cT1(67.9%VS68.2%) nonSLN 転 移 (27.3%VS32.9%)
SLNmacro 転移(62.5%VS87.1%) 乳房照射(88.9% VS 78.8%) 薬物療法
(96.7% VS 97.6%) であった . 残存乳房再発(3.6% VS 3.5%)領域リンパ節
再 発(0.5 % VS 1.1 %)5y-DFS(82.2 % VS 91.7 %)5y-OS(91.8 % VS
97.6%)であった 【
. 対象】AMAROS-ALND 群 744 例 VS 当院 cT1-2+SLN 転移
陽 性 に て ALND 群 261 例 【
. 結 果 】観 察 期 間(6.1Y VS 6.0Y)cT1(82 % VS 58 %)Bp 例(82 % VS 42%)nonSLN 転 移(33% VS 41%)SLNmacro 転 移
(59%VS84%)乳 房 ま た は 胸 壁 照 射(85% VS 45%)薬 物 療 法(90% VS
98%)であった . 領域リンパ節再発(0.43% VS 0.38%)5y-DFS(86.9% VS
87.7%)5y-OS(93.3% VS 93.8%)であった . 各試験とも SLN 摘出数 2 個 ,
郭清リンパ節数 17-18 個であり当院と差は認めなかった 【
. 結語】当院の ALND
群は Z0011-ALND 群と比べ DFS,OS 共に良好の結果であり , AMAROS-ALND
群と比べ腫瘍が大きく Bt+ 非照射が多いにも関わらす予後は同等であった . 本
邦での適切な術式と全身治療により良好な予後が期待できるため , 試験結果を
慎重に解釈し個々に ALND 省略の可能性を検討すべきである .
術前化学療法後センチネルリンパ節生検の予後および腋窩再発
の検討
欧米の臨床試験の結果からセンチネルリンパ節 macro 転移陽性
時に腋窩リンパ節郭清を省略すべきか
334
ポスター討議
DP-1-14-04
DP-1-14-05
三重大学医学部附属病院 乳腺外科
1
センチネルリンパ節転移陽性症例における腋窩郭清術省略の適
応拡大に向けて
乳癌センチネルリンパ節転移陽性症例に対する腋窩リンパ節郭
清省略の実際
2
今井 奈央、木村 弘子、木本 真緒、澁澤 麻衣、野呂 綾、由井 朋、
柏倉 由実、伊藤 みのり、中村 卓、山下 雅子、岡南 裕子、花村 典子、
三井 貴子、稲上 馨子、小川 朋子
聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学 放射線医学、3 聖マリアンナ医科大学 病理学
津川 浩一郎 1、小島 康幸 1、西川 徹 1、志茂 彩華 1、上島 知子 1、
土屋 恭子 1、志茂 新 1、川本 久紀 1、印牧 義英 2、五味 弘道 2、
前田 一郎 3
[ 背景と目的 ] ACOSOG Z0011 試験および AMAROS 試験の結果を受け、当施
設ではセンチネルリンパ節(SLN)転移陽性症例に対する腋窩リンパ節郭清省
略を実施している。治療プロトコールの遵守率を調査し、現時点での問題点
を確認する。[ 対象と方法 ] 術前化学療法を受けておらず、cT1-2N0 で乳房温
存術(Bp)が適応とされる症例を適格としている。cN0 は術前超音波、CT、細
胞診で評価。SLN の術中迅速病理診断は省略。術後温存乳房照射は全例に施行、
SLN 転移を認めた場合は腋窩照射を併施している。また、転移リンパ節転移
を 3 個以上認めた場合は腋窩リンパ節郭清を追加で施行する。2014 年 1 月か
ら 6 月までに上記方針で Bp+SLN 生検を施行した 129 症例を対象とし調査し
た。[ 結果 ] SLN 生検は全例で成功。平均リンパ節提出個数は 1.6 個であった。
術後永久切片(2mm 切片、cytokeratin 併用)によるリンパ節転移状況は、
pN0(i-): 114 例、pN0(i+): 3 例、pN1mi: 3 例、pN1 1 個 : 7 例、pN1 2 個 :
2 例で、SLN 転移陽性率は 9.3%であった。全例に術後温存乳房照射が行われ
ていた。また、SLN 転移陽性症例では全例に腋窩照射が併施され、全身薬物
療法も施行されていた。治療に伴う重篤な有害事象はなく、現在までに再発
した症例も認めなかった。[ 結語 ] 我々の施設における、「乳癌センチネルリ
ンパ節転移陽性症
例に対する腋窩リ
ンパ節郭清省略」
は特に問題点なく
実 施 さ れ て お り、
スムーズに導入さ
れたと言えた。
DP-1-15-01
DP-1-15-02
1
昭和伊南総合病院
センチネルリンパ節生検 PDE 法 ( 蛍光法 ) の応用と 2016 年問題
CTによる症例選択した乳癌胸骨傍リンパ節生検の有用性について
日野市立病院 乳腺外科、2 慶應義塾大学病院病理診断部
森 克昭 1、川口 正春 1、三上 修治 2、辻川 華子 2
【背景 / 目的】当科の SN 生検は全例蛍光法色素法併用 (2006 ~ ) で同定率は
PDE97% (239/247) 色素 81%(199/247) 色素のみの同定例はない . 同定個数
は PDE1-7(Av.2.73) 個であり全例で色素法 (0-5) の方が少ないか同数であっ
た . 現在も約 1/3 とされる色素法のみの施設の正当性も考慮し PDE 色素両方で
同定なら 1stSN,PDE のみで同定なら 2ndSN と識別するのは妥当と判断しそ
の現状や腋窩非郭清への応用を検討すると共に来年に迫る 2016 年問題につい
ても一考した【方法】PDE 色素両方で同定なら 1stSN,PDE のみで同定なら
2ndSN として識別解析 (2012/11 ~ 74 例【
) 結果】
同定率は PDE100%(74/74)/
色 素 82%(61/74)61 例 中 PDE 色 素 同 定 個 数 が 等 し い 8 例 を 除 く 53 例 で
1stSN/2ndSN で 識 別 可 能 で あ っ た (72% 53/74). 平 均 個 数 1st1.9/2nd2.5
個 . 転移は 41 例 (77%) が 1st/2nd 両方陰性 (Ax 省略 )10 例 (19%) が 1st のみ陽
性 (ITC/Bp 例は Ax 省略 /Bt 例は Ax 施行 )2nd のみ陽性 1st/2nd 両方陽性が 1 例
ずつで NAC 症例であった (Ax 施行 )【考察】予後を論ずるのは時期尚早だが Ax 省
略例で転移再発なく paraSN(nonSN) や Bt 附随 N にも転移を認めなかった . 色
素単独では 1stSN しか検出できないことになり PDE 色素併用の重要性が明らか
となった .ICG 取込強度がカラーで視認可能な pde-neo では識別は更に容易で
識 別 率 も 上 が る 可 能 性 が 高 い が 今 回 の 解 析 で は 全 症 例 の 72% が 確 実 に
1nd/2nd 識別可能であった . しかし 1st 陽性 2nd 陰性の Ax 省略例がまだまだ少
なく観察期間も短いため症例集積・経過観察を要する . 一方 , 放射性医薬品原料
を製造する海外原子炉が 2016 年以降相次いで製造停止となるため世界的な放
射性医薬品不足が予想され 2016 年問題とされている .RI 法 SN に用いる Tc の原
材料 Mo は現在 6 か国の原子炉で製造されており日本では 100% 輸入 ( 日本は米
国に次ぐ世界第 2 位の Mo 使用国 ). 過去の事例では 2009/5 カナダの生産用原子
炉停止時は欧州・南アフリカからの空輸で急場を凌ぎ 2010 アイスランドの火
山爆発による欧州の空港封鎖時は通常の需要をまかなう輸入が不可能となり一
部施設における PDE 臨時レンタルが増加 .2014/7 の製造元トラブルによる供給
制限時は数日で何とか克服したものの 2016 年はより大きなトラブルが予想さ
れ国内生産も視野に官民連携して対策を検討中である . しかし 3・11 以後の原
子炉の安全性の問題やその他の製造方法では膨大な初期投資が必要なことなど
により厳しい状況であるため被曝無 ICG 安定供給の PDE 法のさらなる有用性が
期待されている .
森川 明男、阿藤 一志
(はじめに)乳癌診療ガイドラインでは胸骨傍領域のセンチネルリンパ節生検
は推奨グレード C2 で、勧める根拠に乏しいとされている。一方で胸骨傍リン
パ節の転移の有無は Staging、治療方針に影響することも記載されている。当
院の胸骨傍リンパ節生検症例を検討した。(方法)当院では通常通りセンチネ
ルリンパ節生検は腋窩のみ行っている。CT で胸骨傍リンパ節の腫大を認め、
転移の有無やバイオマーカー診断など治療方針に影響する場合に、胸骨傍リ
ンパ節生検を施行してきた。2005 年~ 2014 年に当院で手術した乳癌症例は
213 例である。(多くの症例で術前及び術後 1 年毎に体幹 CT 検査を行ってい
る。)そのうち 6 例に胸骨傍リンパ節生検を施行した。いずれも他には転移を
疑う所見がなく、第 1 または第 2 肋間に 5 ~ 10mm 程度の胸骨傍リンパ節腫
脹を認めた症例であった。(結果)生検により転移は 6 例中 2 例に認めた。6 例
とも組織診で腋窩リンパ節転移を認めなかった症例であった。原発巣手術と
同時生検した症例 3 例、異時生検 3 例であった。同時生検 3 例中、1 例に胸骨
傍リンパ節転移を認めた。その症例は 35 歳、内側乳癌の症例であり、レベル
2 郭清施行し腋窩転移なし。胸骨傍は節外浸潤なし。Stage3 と診断し放射線
治療を追加した。術後 9 年経過で再発を認めていない。異時生検の 3 例はいず
れも乳房切除、インプラント再建症例であった。術後に胸骨傍リンパ節の腫
大を確認。経過観察も転移否定できないため、生検を行った症例である。1 例
で胸骨傍リンパ節転移を認めた。症例は 56 歳、AI 剤による術後薬物治療 2 年
経過中であった。穿刺細胞診で陽性も、バイオマーカー再確認する目的で生
検を行った。転移は節外浸潤なし。生検後は放射線治療を追加した。バイオマー
カーは原発巣と変化なし。SERM へ変更し 2 年経過。再燃を認めていない。異
時陰性 2 例のうち、1 例で異物反応を病理で確認した。観察期間でインプラン
ト再建は 18 例である。インプラントを使用してない乳房切除 113 例では術後
の胸骨傍リンパ節生検を行った症例はなかった。(考察)乳癌手術例のうち腋
窩陰性胸骨傍陽性乳癌は 2 例 /213 例、0.9%と少ないが、リンパ節腫大症例
では 2 例 /6 例、33% となる。CT による症例選択は有用と考えられる。異時
生検での転移陰性 2 例はインプラント再建症例であるが、発生頻度と組織検査
からインプラントが胸骨傍リンパ節腫大に関与した可能性がある。
335
一般セッション(ポスター討議)
【背景】ACOSOG Z0011 の発表により、センチネルリンパ節 (SLN) 転移陽性
であっても、症例によっては腋窩郭清術 (Ax) 省略を検討できるとされてきて
いる。現在当院では、SLN1 個にのみ ITC もしくは微小転移がみられる場合に
Ax 省略を行っており、マクロ転移の場合には Ax を施行している。今回、SLN
転移陽性症例での Ax 省略の適応拡大を考慮するにあたり、当院で施行した
SLN 生検症例での術後腋窩再発症例について検討した。【対象】2005 年から
2013 年までに当院で施行した、原発性乳癌症例 1676 例中、SLN 転移陰性 ( 微
小転移例を含む ) であり、Ax を省略した 1250 例。【結果】Ax を省略した 1250
例のうち、Bp 症例が 571 例 (45.6% )、Bt 症例は 679 例 (54.3% ) であった。
Bp 症例のうち、502 例 (87.9% ) に術後放射線照射を施行していた。Bt 症例
では、T3 症例 3 例、胸壁側断端陽性症例 1 例、SLN が術中迅速で転移陰性も
永久標本で転移陽性かつ傍胸骨リンパ節転移陽性症例2例の合計6例
(0.88% ) に放射線照射が施行されていた。Ax を省略した 1250 例のうち、腋
窩再発を起こした症例は 4 例 (0.32% ) で、そのうち Bt 症例が 3 例 (75% ) を
占めていた。この 3 例は全例で術後薬物療法が施行されていたが、放射線照射
は施行されていなかった。1 例 (33.3% ) が Triple Negative で腋窩再発後、肺
転移・脳転移をきたしており、2 例 (66.7% ) が Luminal B-like で、うち 1 例
は腋窩再発後、骨転移をきたした。また Bp 症例は、Triple Negative で、術
後化学療法中の腋窩再発であり、放射線照射は未施行であった。【考察】
ACOSOG Z0011 で示されている Ax 省略の基準は Bp 症例、つまり術後放射線
照射を施行する症例に限定されており、かつ推奨される術後薬物療法の施行
が前提となっている。この基準を満たした症例では、転移陽性 SLN が 2 個ま
での場合は Ax 省略可能とされているが、ACOSOGZ0011 で示される腋窩再
発率は 0.9%である。一方、当科における SNB 後の腋窩再発率は 0.32%で、
放射線照射を施行している症例での腋窩再発は 0%であった。前述の条件にな
らって適応を拡大した場合、術後に適切な薬物療法と放射線治療を行っても
Ax を省略すると腋窩再発率が上昇する可能性も否定できない。そのため、適
応拡大に関しては、施設ごとにデータを検討しながら慎重に行うべきである
と考える。当院ではまず、マクロ転移陽性 SLN が 1 個の場合から Ax の省略を
開始し、慎重に経過を追う方針である。
ポスター討議
DP-1-15-03
DP-1-15-04
CT ガイド下センチネルリンパ節穿刺吸引細胞診の有用性
色素法によるセンチネルリンパ節生検における
3D CT-lymphography の有用性
1
小山記念病院 乳腺外科、2 小山記念病院 薬剤科、
3
東京医科大学茨城医療センター 乳腺科、4 千葉細胞病理診断センター
大原綜合病院 外科
近藤 亮一 1,3、花香 淳一 2、越川 佳代子 3、西村 基 3、藤田 知之 3、
亀田 典章 4、藤森 実 3
菅野 浩樹、渡辺 洋平、門馬 智之、阿部 貞彦、阿美 弘文、小山 善久
一般セッション(ポスター討議)
われわれは術前あるいは術前化学療法 ( 化療 ) 前に CT ガイド下センチネルリ
ンパ節 (SN) 穿刺吸引細胞診 (FNAC) を施行し SN への転移の有無を診断、治
療法を検討している。今回、加療前 CT ガイド下 SN・FNAC が術前 SN 転移診
断の補助になり得るか検討した。【対象】2008 年 2 月~ 2014 年 12 月までに、
3D-CT リンパ管造影 (LG) 時 CT ガイド下 SN・FNAC を施行した 90 例とした。
【結果】FNAC にて良悪性の診断を得たのは、90 例中 33 例、37%であった。
手術施行例は 23 例であり、FNAC にて ClassI・II と診断した 21 例のうち 18
例はセンチネルリンパ節生検 (SNB) を 3 例は SN を含めた部分郭清を施行し
た。LN の切除個数は 1 ~ 7 個 ( 平均 2.4 個 ) で、病理学的に 20 例は転移陰性
と診断されたが、1 例は SN3 個中 2 個の転移を認め、腋窩郭清を施行した。転
移は SN のみの 8 個中 2 個であった。FNAC を併用した転移診断の正診率は
95%であった。ClassIII と診断した 2 例は、病理学的に 1 例は転移陰性と診断
され、1 例は SN2 個中 2 個の転移を認め、腋窩郭清施行も転移は SN のみの 10
個中 2 個であった。術前化療後の手術症例は 10 例で、術前化療前 FNAC にて
ClassI・II と診断した 9 例は SNB にて病理学的に転移陰性と診断され、正診
率は 100%であった。1 例は ClassIII と診断され、SN 1個中1個の転移を認
めたが腋窩郭清施行により転移は SN のみの 8 個中 1 個であった。【考察】CT
ガイド下 SN・FNAC にて ClassI・II と診断された症例では SNB でもほぼ転移
を認めないことが考えられるが、3 個以上 SN を描出した場合には全てを
FNAC する事は困難であり、その場合は参考にしかならないことがわかった。
1・2 個の SN に対しては CT ガイド下 SN・FNAC は術前 SN 転移診断の補助に
なり得ることが
考えられた。
( 目的 ) 当科では RI を使用できない施設上の制約からセンチネルリンパ節
(SN) 生検を色素法単独で施行している。SN を同定するには色素の流入した
リンパ管を追求し、それが最初に到達するリンパ節を見つけ出す必要がある。
しかし、色素法単独では SN が複数存在する場合など、複数のリンパ管の追及
が必要とされ、全てのSNを摘出できているかは疑問がある。このような色
素法の欠点を考慮して、術前に 3D CT-lymphography(CTLG) を施行した上
で SN 生検を施行している。当科における色素法単独による SN 生検の信頼性
を検証する目的で、CTLG の有用性を検討した。(対象と方法)対象はH 18 年
1 月からH 26 年 12 月までに当科で SN 生検を施行した 194 例である。CTLG
は手術前日に乳輪皮内にイオパミロン 2cc を注入し1分間のマッサージを施
行。1 分後、3 分後、5 分後に CT 撮影し造影されたリンパ節の直上の皮膚にマー
キングした。さらに、検査終了後に画像処理ソフトを用いて造影されたリン
パ管とリンパ節との関係を詳細に画像構築し、造影剤が最初に到達するリン
パ節を SN と同定した。SN の部位と数およびリンパルートを術前に把握した
上で、手術を施行した。手術時の SN の同定は色素法単独にて行った。病理診
断は術中迅速は 2mm 全割、永久標本では 200 μm全割での HE 染色にて行っ
た。( 結果 )1)CTLG での SN 同定は 190 例 /193 例(同定率 98.4%)。2) 手術時
の SN 同定は 192 例 /193 例(同定率 99.5%)。SN 転移陽性例は 42 例 /192 例
(21.9%)で、陽性例すべてに腋窩廓清が施行された。SN 転移陰性と診断され
た 150 例の内、偽陰性は 5 例(micrometastasis:3 例、macrometastasis:2 例)
に認めた。3)CTLG で同定できた症例は、全例が手術時にも同定可能であった。
CTLG で同定できなかった 3 例中 2 例は色素注入後のマッサージ時間を長くす
ることで手術時に同定可能となった。CTLG および手術時ともに SN が同定で
きなかった 1 例は、術前化学療法後の症例であった。4)CTLG で同定可能であっ
た 190 例中の内、術前の画像診断にて複数の SN が存在すると判断されたのは
74 例(38.9%)であった。手術時に 74 例 /74 例 (100%) でマーキングした複
数の SN が同定できた。5)3D 画像でリンパルートの本数と走行部位および SN
の個数と存在部位を術前に詳細に把握しておくことにより、染色されたリン
パ管を損傷することなく系統的に追求すること。リンパ管の切断および SN の
摘出は、全ての SN を同定できた後に行うことが重要な手順であった。
DP-1-15-05
DP-1-16-01
Bp 施行乳癌で SN 陽性であり Ax を追加した症例における SN の
み陽性症例と non-SN 陽性症例の検討
ACOSOG Z0011 適応症例に対する腋窩郭清省略の取り組み
広島市立安佐市民病院
自治医科大学附属病院 乳腺科
船越 真人、向田 秀則、小橋 俊彦、大森 一郎、吉満 政義、恵美 学、
加納 幹浩、池田 拓広、中島 亨、伊冨貴 雄太、太田 浩志、瀬尾 信吾、
甲斐 佑一郎、山本 将輝、北川 浩樹、半田 良憲、平林 直樹、多幾山 渉、
金子 真弓
田中 裕美子、藤田 崇史、相良 由佳、芝 聡美、宮崎 千絵子、
上徳 ひろみ、大澤 英之、櫻木 雅子、竹原 めぐみ、穂積 康夫
【背景】SN 転移陽性患者における ALND の有用性を検討したランダム化比較試
験 ACOSOG Z0011 で は 観 察 期 間 中 央 値 6.3 年 の 時 点 に お い て ALND 群 と
ALND 省略群の間に全生存率および無病生存率ともに有意差を認めなかった。
この結果から,T2N0 以下,HE 染色による病理検索にて SLN 転移個数 2 個以下,
照射を伴う温存手術を受けており,術後薬物療法を受けていれば SLN 転移陽
性であっても ALND を省略できる可能性が示唆された。
【目的】乳房温存術 (Bp)
施行乳癌でセンチネルリンパ節生検 (SN) が陽性であり腋窩リンパ節郭清術を
追加した症例において、SN のみ陽性であった症例と non-SN にも陽性を認め
た症例について検討した。【対象と方法】2004 年 3 月から 2013 年 5 月までに、
当科で PST を施行せず Bp を施行した症例で SN 陽性症例は 154 症例であっ
た。154 症 例 の う ち、macrometastasis と micrometastasis に 分 類 し て、
SN のみ陽性症例と non-SN 陽性症例の腫瘍径、バイオマーカー、NG につい
て 比 較 検 討 を し た。【 結 果 】154 例 中 macrometastasis 症 例 は 132 症 例、
micrometastasis は 22 症例であった。Micrometastasis の 22 例中、全症例
が SN のみ陽性であった。Macrometastasis の 132 例中、SN のみ転移を認め
た症例(SN のみ陽性群)は 78 例、non-SN に転移を認めた症例(non-SN 陽性
群)は 44 例、不明症例が 10 症例であった。腫瘍径については、SN のみ陽性
群 で は T1:50 例 /T2:27 例 / 不 明 :1 例 で、non-SN 陽 性 群 で は T1:30 例 /
T2:14 例であった。バイオマーカーについては、SN のみ陽性群では ER+:64
例 /HER2+:2 例 /TN:11 例 / 不 明 :1 例 で、non-SN 陽 性 群 で は ER+:36 例 /
HER2+:5 例 /TN:4 例 / 不明 :2 例であった。NG については、SN のみ陽性群で
は 1:23 例 /2:55 例 /3:2 例 / 不 明 :2 例 で、non-SN 陽 性 群 で は 1:19 例 /2:11
例 /3:12 例 / 不明 :2 例であった。【結語】Micrometastasis では、全症例にお
いてが SN のみに転移を認めており、Micrometastasis では Ax 省略する可能
性が示唆される。Macrometastasis では、SN のみ陽性群と non-SN 陽性群を
比較して腫瘍径には関係がない傾向があり、バイオマーカーではと non-SN
陽性群に HER2+ が多い傾向があり、NG では SN のみ陽性群において grade1
より grade2/3 症例が多い傾向があった。
【目的】センチネルリンパ節(SLN)転移陽性の場合,改定ガイドラインでは,
「Z0011 の条件を参考に,個々に ALND の省略の可能性を慎重に検討してもよ
い」との見解である。自験例で SNB 施行例中 SLN 転移陽性例を後方視的に検
討し、Z0011 適応例での腋窩郭清省略の妥当性を検索した。【対象と方法】対
象は 2009 年から 2012 年に手術を施行した乳癌症例 360 例のうち,SNB を施
行した 302 例。(T1-2,N0 例。Bp 例、PST 例は適応外。平均観察期間 3.8 年)
SNB は色素 +RI 法。迅速病理にて SLN 転移陽性例は全例腋窩廓清を施行した。
SLN 転移は永久病理で判断し、術中迅速陰性永久病理陽性例は原則腋窩非郭
清とした。SNB 施行全例を SLN 転移陽性例、陰性例と分類し臨床病理学的因
子との相関を検討した。次に SLN 転移陽性例を,SLN のみへの転移群,nonSLN への転移群に分類し,臨床病理学的因子との相関を検討した。次に SLN
転移陽性例中 Z0011 適応例にしぼり同様の解析を行った。加えて再発症例、
SLN 転移陽性腋窩非郭清例の検討を行った。【結果】SLN 転移症例は 38 例
(12.5%)。SLN 転移陰性、陽性群の比較では腫瘍径、リンパ管侵襲において
有意差を認めた。SLN 陽性例中 SLN のみへの転移例は 25 例(65%)、nonSLN への転移例は 13 例(35%)であった.SLN 転移個数別 non-SLN 転移率は,
1 個(micrometa)0%,1 個(macrometa)18%,2 個 32%,3 個以上 100%。nonSLN 転移陽性 / 陰性例は,原発巣の病理組織学的比較ではリンパ管侵襲におい
て有意差を認めた。38 例中 Z0011 適応例は 31 例(81.5%)で 6 例(19.8%)に
non-SLN 転移を認めた。さらにリンパ節転移 4 個以上で治療方針変更の可能性
が あ る 症 例 は 2 例(6 %)で あ っ た。SLN 転 移 陽 性 腋 窩 非 郭 清 は 6 例 で
micrometa5 例、macrometa 1例で全例再発は認めていない。SLN 転移陰性
術後再発は 3 例(1.1%)で 3 症例とも SNB は 0/2、luminal B 例で化学療法は未
施行例。1 例は再手術で resucue 出来たが 2 例は遠隔再発を来した。
【考察】1)
Z0011 適応症例となる SLN 転移 2 個以下では 19.8%に non-SLN 転移を認めた。
SLN の転移状況,腫瘍の性質から non-SLN 転移予測が可能か検討したが,転移
1 個微小転移以外は non-SLN 転移陰性が予測できなかった。2)Z0011 適応例
のうちリンパ節転移 4 個以上で治療方針変更の可能性がある症例は 2 例(6%)
であった。3)当院では SLN micrometa 例は 2013 年より腋窩非郭清としてい
る。macrometa 1個例にはサンプリング廓清を併用し適応開始している
336
ポスター討議
DP-1-16-02
DP-1-16-03
1
1
センチネルリンパ節 OSNA 法判定における TTL(Total tumor
load) の non-SLN 転移予測の検討
3
センチネルリンパ節転移陽性症例をどうする? 郭清をより安全に省略するための検討
純幸会 東豊中渡辺病院、2 純幸会 渡辺病院、
大阪大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
日本海総合病院 乳腺外科、2 日本海総合病院 病理科
天野 吾郎 1、濱中 洋平 1、矢島 美穂子 2、西田 晶子 2
井上 共生 1、松本 真由美 1、杉本 卓司 1、渡邉 太郎 2、金 昇晋 3
センチネルリンパ節生検 (SLNB) において micrometa があった場合の腋窩郭
清省略についてはコンセンサスが得られているが、macrometa の場合は
controversial な部分も多い。【目的】自験例をレトロスペクティブに検討し、
腋窩郭清をより安全に省略できる因子について探る。【対象】2008 年 5 月から
2014 年 11 月に当院で SLNB を施行した 508 例のうち、SLN に転移陽性で腋
窩郭清を行った 60 例。
【患者背景】全例女性、年齢 28-82 歳(中央値 56 歳)、
cStage は I/II 以上 が 36/24 例、術式は温存 / 全摘が 44/16 例、病理診断は
IDC/ILC/Mucinous が 57/2/1 例。
【結果】転移陽性 SLN 個数は 1-3 個(平均 1.4
個)、転移陰性 SLN 個数は 0-6 個(平均 1.6 個)。腋窩郭清により摘出された
non-SLN の個数は 2-30 個(中央値 14 個)であり、non-SLN に転移を認めた
のは 60 例中 9 例 (15%) であった(その転移個数は 1 個が 6 例、9-11 個と多数
認められたのが 3 例)。Non-SLN に転移陽性であった 9 例の臨床病理学的関連
因 子 を 多 変 量 解 析 に て 検 討 し た と こ ろ、 組 織 学 的 浸 潤 径 ≧ 27mm(p <
0.005)、extranodal invasion(+)(p < 0.05)、 転 移 陰 性 SLN 個 数 0 個 (p <
0.05) が統計学的に有意な因子であり、年齢、多発の有無、転移陽性 SLN 個数、
ER、PgR、HER2、Grade、Ki-67 LI、ly(CNB 標本 ) との関連性は認められな
かった。また non-SLN に多数の転移があった 3 例について同様の検討を行っ
たところ、単変量解析で転移陽性 SLN 個数≧ 2 が有意な因子であった (p <
0.05)。【考察】Z0011 および AMAROS trial の結果を受け、2014 年 4 月に乳
癌診療ガイドラインにおいて、
『SLN に macrometa を認めた場合であっても、
症例毎に慎重に検討し、腋窩リンパ節郭清省略を考慮しても良い(推奨グレー
ド C1)』と の 改 定 が な さ れ た。 自 験 例 で の 検 討 で は、『 組 織 学 的 浸 潤 径 ≧
27mm・節外浸潤 (+)・転移陰性 SLN0 個・転移陽性 SLN 個数≧ 2』の場合は
要注意であることが示唆されたが、症例数が少ない中での検討であり、さら
なるデータの蓄積が必要である。
DP-1-16-04
DP-1-16-05
1
(公財)
結核予防会 複十字病院 乳腺センター、
2
(公財)
結核予防会 複十字病院 放射線診療部
1
武田 泰隆 1、生魚 史子 1、小柳 尚子 2
鈴木 やすよ 1、大月 寛郎 3、新井 義郎 3、國友 愛奈 2、諏訪 香 2、
本間 千帆 2、金 容壱 2、吉田 雅行 2
センチネルリンパ節転移陽性症例の腋窩操作省略可能群の検討
センチネルリンパ節生検にて転移陽性であった症例の検討
3
【背景】腋窩リンパ節転移陽性症例に対する腋窩操作(腋窩リンパ節郭清(Ax)
および腋窩照射)は、術後のリンパ浮腫(LE)の発生リスクを上げ、QOL を低
下させる一因となっている。センチネルリンパ節生検(SNB)でセンチネルリ
ンパ節(SLN)陽性であっても、非センチネルリンパ節(NSLN)の陰性症例を
選択できれば、より多くの症例が Ax を省略して高い QOL を維持できると思わ
れる。【対象】2012 年 4 月から 2014 年 12 月まで OSNA 法で評価した SNB 症
例 181 例のうち、SLN 陽性 45 例(24.9%)について、NSLN 転移状況とバイ
オ マ ー カ ー お よ び v・ly・NG・ki-67・ T の 各 因 子 と 組 織 型・ 年 齢 お よ び
OSNA 法の Total Tumor Load(TTL)について検討した。【結果1】SLN 陽性
45 例 の う ち、NSLN 陰 性 は 34 例(75.6%)で あ っ た。SLN 陽 性 症 例 の 実 に
3/4 が腋窩操作省略可能群ということになる。NSLN 転移状況と上記の各因子
および SLN 転移個数との相関を Mann-Whitney’s U test で検討した。NSLN
陽性群 11 症例で NG が高く、また NSLN 陽性群の SLN の微小転移率が 27.3%
(NSLN 陰性群:52.9%)と低かったものの有意差は認めなかった。そこで、
SLN 陽性 45 例のうちの微小転移 21 症例について検討を行った。【結果2】
SLN 微小転移 21 例のうち、NSLN 陰性は 18 例(85.7%)と高かったものの、
NSLN 陽性例の中に NSLN11 個もの転移陽性の症例もあり、SLN 微小転移症
例すべてを腋窩操作省略可能群とすることはリスクが高いと考えられた。そ
こで、この 21 例の NSLN 転移状況と上記の各因子および SLN 転移個数との相
関を Mann-Whitney’s U test で検討したところ、T因子でのみ有意の相関が
みられた。SLN 微小転移例の T1 症例においては、腋窩操作が省略可能で、か
つ negative predictive value は 100%と NSLN 転移陽性例の腋窩操作省略を
除外できることが示された。【結論】SLN 転移陽性であっても微小転移であっ
た場合、腫瘍径が 2 センチ以下であれば、腋窩照射を含めた腋窩操作の省略は
可能と考えられた。【考察】Z0011 試験では cN0 において SLN が陽性であって
も、乳房温存術後の残存乳房照射という腋窩操作を条件に Ax は省略可能と結
論している。一方、MA.20 試験では、腋窩照射は有意に LE を増加すると報告
している。SLN のみの転移陽性であっても n(+) であることから術後療法を考
慮する必要はあるが、QOL 低下を招く腋窩操作を省略できる症例の選択は可
能であることが示された。
すずかけセントラル病院 乳腺甲状腺科、2 聖隷浜松病院 乳腺科、
聖隷浜松病院 病理診断科
【目的】現在、センチネルリンパ節生検(SNB)は標準術式として広く行なわれ、
近年は生検省略、あるいは転移陽性の場合の腋窩郭清省略などについても多
数検討されつつある。今回、術前に N(-)と診断し術後に n(+)であった症例
を調べ、SNB の省略が難しいと考えられる症例について検討した。【対象と方
法】2008 年 1 月~ 2012 年 12 月に当科で初回治療を行なった乳癌例を対象と
し、A: 術前診断 N 0→術後診断 n(+)
(137 例)、
B: 術前後ともに N 0(499 例)
の2群に分け、臨床病理学的因子を比較検討した。【結果】各群の年齢中央値
は A:53 歳 B:58 歳と A は若い傾向にあり、腫瘍径別では増大するにつれて、
また組織型では浸潤性小葉癌、浸潤性微小乳頭癌における転移例の割合が高
かった(いずれも n.s)。また、乳房内の腫瘍占拠部位別では E 領域を主座とす
る場合に転移率は高い傾向だが、有意差を認めなかった。リンパ節転移例に
おいては、Nuclear Grade(NG)2以上(p < 0.01)、PgR、HER-2 の有無で
差を認めないが、ER 陽性、Ki-67 高値(カットオフ 20%)
(p < 0.01)であった。
ま た、ER、PgR、HER2、Ki-67 の 免 疫 染 色 結 果 に よ る subtype 分 類 で は、
Luminal B(HER2 陰性)type におけるリンパ節転移例が多かった(P < 0.05)。
さらに、リンパ節転移 4 個以上であった 15 例について術前 CT 画像所見とと
もに再検討したところ、対側腋窩に比して大きく丸いリンパ節、周囲の脂肪
組織濃度の上昇例は転移個数が多かった。また浸潤性小葉癌(1 例)は、画像
的に所見を認めないにもかかわらず 48 / 57 個もの高度転移であった。
【結語】
今回の検討では、NG2 以上、ER 陽性、Ki-67 高値、Luminal B(HER2 陰性)
type で、術前予想に反しリンパ節転移例が多かった。また 4 個以上の転移を
認めた症例は、CT で対側と比べて大きく丸いリンパ節所見が多かったが、一
部は指摘困難であった。現在、当院では明らかな非浸潤癌以外は N 0全例に
SNB を行っているが,今後、SNB 省略を検討していくためには、画像所見も
含めたさらなるデータの蓄積が必要と考えられた。
337
一般セッション(ポスター討議)
早期乳癌におけるセンチネルリンパ節 (SLN) 生検は標準手技となってきたが、
その判定法については一定していない。病理医が常在する施設であれば術中
迅速病理組織検査が可能であるが、そのような施設は少数である。当院では
SLN の術中判定に OSNA 法 (One-step nucleic acid amplification) を用いて
きたが、ACOSOG Z0011 試験では SLN 転移陽性であっても腋窩郭清省略の
可能性さえ示唆され、過剰な腋窩郭清は疑問視されるようになってきた。ま
た 最 近、 転 移 陽 性 SLN に お け る CK19 mRNA copies の 総 量 で あ る
TTL(Total tumor load) が non-SLN の転移を予測すると報告された。そこで
我々は当院で摘出した SLN の TTL と non-SLN 転移を後ろ向きに検討した。当
院では cT0-3N0M0 の原発性乳癌患者に色素法 (patent blue) で SLN 生検を施
行し、SLN を 2-3mm に薄切して、その半数を術中 OSNA 法で判定した。対
象は 2012 年 5 月から 2014 年 12 月までに、SLN 生検を施行し OSNA 法で判
定した 103 例。SLN の同定率は 99.0% (102/103) であった。OSNA 法で転
移陽性と判定され腋窩郭清へ移行した 24 例中、non-SLN に転移を認めた症例
は 5 例 で あ っ た。TTL の cut off 値 を 5.4 × 104 copies/ μ L と し て 2 群 間 の
non-SLN 転 移 を Fisher’s exact test で 解 析 し た と こ ろ TTL > 5.4 × 104
copies/ μ L 群において有意に non-SLN 転移発生率が高かった(P=0.0065)。
T 因 子、ER、PgR、HER2、Ki-67 に つ い て も 解 析 し た と こ ろ ER(-) 群、
PgR(-) 群において non-SLN 転移発生率が有意に高かった(ER; P=0.0362,
PgR; P=0.0145)。文献的には TTL > 1.2 × 105 copies/ μ L が有意とされて
いるが、当院では SLN の半分を OSNA 法で検査しているため、これとほぼ同
等と推定された。術中に SLN が OSNA 法で転移陽性と判定されても、術前に
ER(+)、PgR(+) と判定され TTL ≦ 5.4 × 104 copies/ μ L の場合、腋窩郭清を
省略できる可能性が示唆された。
ポスター討議
DP-1-17-01
DP-1-17-02
演題取り下げ
乳癌センチネルリンパ節陽性症例における腋窩郭清省略の妥当
性と問題点
1
トヨタ記念病院 乳腺内分泌外科、2 トヨタ記念病院 放射線科
伊藤 和子 1、川瀬 麻衣 1、上本 康明 1、渡辺 絵美 2
一般セッション(ポスター討議)
【背景】2014 年改訂の乳癌診療ガイドラインによりセンチネルリンパ節(以下
SN)転移陽性症例に対しても腋窩郭清省略の適応が拡大されている。ガイド
ラインの妥当性と実地臨床での問題点について過去の当院自験例を集計し検
討した。【対象と方法】2006 年から 2014 年までに当院で手術にて治療開始し
た cT1-2cN0 乳癌症例で、SN 転移陽性にて腋窩郭清術を施行した 61 例を対
象として SN 転移と非 SN 転移状況について検討した。【結果】61 例中 cT1 は
36 例(59.0%)、 乳 房 部 分 切 除 が 34 例(55.7%)で あ っ た。 ホ ル モ ン 陽 性
HER2 陰性は 51 例、ホルモン HER2 共陽性は 7 例、ホルモン陰性 HER2 陽性
は 2 例、ホルモン HER2 共陰性は 1 例。転移 LN 個数が 4 個以上は 12 例。鎖上
を含む放射線治療は 12 例に施行された。再発は 5 例に認め、うち領域 LN 再
発 は 1 例 で 手 術 単 独 症 例 で あ っ た。 転 移 SN 個 数 は 1 ~ 5 個 で、1 個 45 例
(73.8 %)、2 個 12 例(19.7 %)、3 個 以 上 は 4 例(6.6%)で、SN 単 独 転 移 は
36 例(59%)であった。61 例中 SN 微小転移は 17 例(27.9%)認め全例 2 個以
下、12 例(70.6%)が SN 単独転移であった。非 SN に 6 個の転移症例が 1 例
(5.9%)あったがこれは術前画像の見直しから SNB 適応外とすべき症例で
あった。ACOSOG Z0011 試験のように SN 転移個数が 2 個以下で乳房部分切
除 を 施 行 し た 症 例 は 33 例 で あ っ た。 う ち 非 SN 転 移 個 数 は 0 個 は 23 例
(69.7%)で、1 個 6 例(18.2%)、2 個 2 例(6.1%)、5 個が 1 例(3.0%)、6 個
が 1 例(3.0%)で、最終的にリンパ節転移個数が合計 4 個以上であったのは 4
例(12.1%)であった。【考察】ガイドラインに沿った腋窩郭清省略は概ね可能
と思われるが、転移個数が不明となり追加されるべき局所放射線治療が省略
されてしまう可能性がある。慎重なフォローアップが必要である。
DP-1-17-03
DP-1-17-04
SLN 転移陽性症例における腋窩郭清縮小の可能性についての検討
1
腋窩郭清省略に向けたセンチネルリンパ節陽性症例の検討
東京都済生会中央病院 乳腺外科、2 東京医科歯科大学 乳腺外科
1
1
1
佐藤 隆宣 、及川 明奈 、福富 隆志 、中川 剛士
1
山梨大学 医学部 消化器、乳腺内分泌外科、
山梨大学医学部付属病院 病理部、3 山梨大学医学部付属病院 検査部、
4
市立甲府病院 外科、5 市川三郷町立病院 外科
2
2
(背景)腋窩リンパ節郭清の際に乳房からのリンパ流と上肢からのリンパ流を
区別し、上肢からのリンパ管とリンパ節を温存することにより,上肢浮腫の
発生を予防しようという試みが報告されている。我々も以前より検討を重ね、
上肢からのリンパ流は腋窩静脈と第二肋間上腕神経の間に存在することを示
してきた。cN0 症例の場合、SLN に転移を認めた場合でも SLN 以外への転移
個数は比較的少なく、標準とされている腋窩郭清(Level1+2)では、over
treatment の印象も受ける。(目的)SLN 転移陽性症例において、上肢リンパ
流の温存を目的とした腋窩郭清の縮小が可能であるか検討すること。(対象)
2007 年 7 月から 2014 年 6 月までの間に、SLN 生検を施行した原発性乳癌
cN0(例)で、SLN 転移陽性にて腋窩リンパ節郭清を施行した 66 例中、腋窩の
領域別に転移状況を検討できた 17 症例。(方法)Level1+2 の標準腋窩郭清に
おいて、Level1 を SLN basin dissection 領域とそれ以外の領域とに分けて、
それぞれの転移状況について検討した。(結果)1)SLN 転移陽性例の検討で
は、ITC/micrometastasis においては SLN 以外への転移が 21% に認めている
が、その転移個数の多くは 1 個のみであった。また、macrometastasis にお
いては SLN 以外への転移が 38% と高く、その転移個数が 4 個以上となるケー
スが 33% と比較的多かった。2)SLN basin dissection における郭清個数の
中央値は 11 個(5 ~ 16 個)であった。3)SLN 以外に 3 個以上の転移を認めた
3 症例は、すべて macrometastasis であり 5mm 以上 の転移巣であった。さ
らに 3 症例とも luminal B type であった。 4)SLN basin dissection による
転移 LN の遺残は 2 例に認め、SLN 以外への転移個数 がそれぞれ 13 個、9 個
の症例であった。(考察)リンパ節転移は、まず SLN に転移し順次遠位に広がっ
ていくという仮説から考えると、その主なリンパ流の方向は、外側胸静脈に
沿って上行し腋窩静脈に沿って鎖骨下リンパ節へ至る経路がメインルートと
考えられる。このルートに沿った SLN basin dissection は、SLN 以外への転
移が 3 個程度までなら網羅できる可能性があると考えられた。
井上 亜矢子 1、井上 慎吾 1、大森 征人 1、井上 正行 1、丸山 孝教 1、
中澤 匡夫 2、福嶋 貴美代 3、長田 美智子 3、奥山 純子 3、五味 律子 3、
國友 和善 4、松田 啓 5、藤井 秀樹 1
【背景】近年乳癌治療における有効な全身療法の確立に伴い、局所療法におけ
る腋窩マネジメントは治療的な位置づけよりもステージングとその後の補助
治療の方針決定の上で重要となってきている。cN0 の場合、センチネルリン
パ節生検(SNB)で陽性であっても陽性センチネルリンパ節(SN)の数が 2 個ま
でであれば、乳房照射と適切な全身療法を行う条件で、腋窩廓清 (ALND) を省
略しても生存期間に影響を与えないという試験結果から、実地臨床でも症例
によって ALND の省略が行われつつある。当院における SNB 症例を後ろ向き
に検討し、この結果をどのように取り入れたらよいかを検討した。
【対象・方法】
2006 年 1 月から 2014 年 11 月末までに当院で原発性乳癌に対し cTis/T1/T2
かつ cN0 で SNB を行い転移陽性で ALND を施行した 69 症例につき、臨床病
理学的因子を検討した。【結果】当該期間の SNB 施行例は 662 例、そのうち
DCIS:157 例、T1mic 27,NAC 施行例を除くと 469 例であった。転移陽性
で ALND 施行は 69 例(14.7%)、年齢中央値は 54 歳、術式は Bt:49 例(71%)
Bp:20 例(29%)と全摘が多かった。摘出 SN 個数は平均 1.68 個、非 SN 摘出
個数平均 0.68 個であり、総摘出個数平均 2.3 個、ALND での郭清リンパ節個
数平均 13.4 個であった。SN 転移個数の平均 1.1 個、郭清したレベル 1 の転移
個数は平均 1.7 個であり 65% は転移なしであった。SN 転移個数別に、レベル
1 転移保有率をみると SN 転移 1 個ではレベル 1 転移 0 か 1 個が 71% で、これ
らの症例は ALND の省略が可能と考えられる。SN 転移 2 個では 3/11 例(27%)
に 2 個以上のレベル 1 転移を認めた。SNB 時の摘出個数 3 個以上で転移が 2 個
までにとどまっているのに、その先のレベル 1 に転移を認めたのは 5 例(7%)
で あ っ た。 サ ブ タ イ プ は LuminalA:2 例、LuminalB:1 例、LuminalHER2:1 例、TN:1 例であり、何らかの薬物療法の恩恵は受ける症例であっ
たが、このうち 3 例はレベル 1 に 4 個以上の転移があり、Bt 症例であった場合
に胸壁照射をうけるかどうかの治療方針が変わってくる症例と思われた。【結
語】転移陽性の SN があっても、多くの場合は 2 個までであり ALND 省略が可
能になるものと思われたが、SN 転移が 2 個の場合 3 割近くはそれ以上の転移
を有するため、ALND が重要となる症例は存在すると考えられる。
338
ポスター討議
DP-1-17-05
DP-1-18-01
原発性乳癌に対する腋窩手術によるリンパ浮腫の検討
OSNA 法と細胞診を併用したセンチネルリンパ節生検転移陽性
症例の検討
1
香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科、2 香川県立中央病院 乳腺センター、
3
香川県立中央病院 外科
1,2
1,2
2
小笠原 豊 、鳩野 みなみ 、白岩 美咲 、川崎 賢祐
田中 則光 3、吉川 武志 3、大橋 龍一郎 3、青江 基 3
1,2
1
3
、久保 孝文 、
安藤 二郎 1、北村 東介 1、原尾 美智子 1、矢野 健太郎 1、中野 公子 2、
上田 香織 2、星 暢夫 3、五十嵐 誠治 3
(目的)OSNA 法と細胞診を併用したセンチネルリンパ節(SLN)生検転移陽性
症 例 に お け る non SLN 転 移 率 に つ い て 検 討 し た。( 対 象 と 方 法 )対 象 は
2011/9 月 -2014/5 月に色素 +RI 併用法(3D-CT ガイドあり)SLN 生検を行
い、リンパ節転移検索を 2mm 分割の細胞診施行後に全 SLN を OSNA 法で検
討した cN0 乳癌手術症例 328 例である ( 両側 SLN 生検例、術前化学療法例、
SLN 生検不成功例、CK19 陰性例を除外 )。全例に術前の針生検で CK19 の発
現を確認し、CK19 陰性例は OSNA 法の適応外とした(CK19 陰性率:4.7%、
16/344 例)。OSNA 法は 1+、2+、I+ を転移陽性、細胞診は 1+、2+ と転移
陽性と術中診断した。術中細胞診診断が±であった症例は永久標本で異型細胞
が CK19 陽性であった場合に転移陽性と最終診断した。術中診断で SLN 転移
陽性例(62 例)には腋窩 LN 郭清を施行した。
(結果)平均 SLN 個数は 2.4 個で
あった。OSNA 法または細胞診で SLN 転移陽性が確認された症例は 64 例、
20%であった(OSNA 法陽性例 62 例:1+ 21 例、2+ 31 例、I+ 10 例、細胞
診陽性例 35 例:± 7 例、1+ 12 例、2+ 16 例)。non SLN 転移率は OSNA 法
1+ 例で 5%(1/21)、2+ 例で 32%(10/31)、I+ 例では 0%(0/10) であった。
細 胞 診 の 術 中 診 断 で の non SLN 転 移 率 は ± 例 で 20%(1/5)、1+ 例 で
25%(3/12)、2+ 例で 44%(7/16) であった。OSNA 法陽性 / 細胞診陰性症例
29 例の non SLN 転移率は 0%(0/29)であった。(まとめ)OSNA 法 1+ 症例、
I+ 症例、細胞診陰性症例に関しては non SLN 転移率は低く、非郭清での対応
も考慮されうると考えられた。
DP-1-18-02
DP-1-18-03
島根大学 医学部 消化器・総合外科
国立病院機構 千葉医療センター 乳腺外科
百留 美樹、板倉 正幸、田島 義証
中野 茂治、鈴木 正人
SPECT 合成 3D-CT リンフォグラフィを用いたセンチネルリン
パ節転移の評価
インドシアニングリーンはセンチネルリンパ節生検の色素とし
て本当に有用か?
【目的】3D-CT リンフォグラフィ(3D-CTLG)によりリンパ流を描出し、セン
チネルリンパ節(SLN)を同定することができる。これに SPECT を重ねること
で、さらに詳細な SLN の評価が可能となる。今回、SPECT 合成 3D-CTLG を
用いることで、SLN 転移の評価が可能かを検討した。【方法】対象は 2013 年
12 月 か ら 2014 年 12 月 に SLN 生 検(SNB)を 行 っ た 乳 癌 39 例。 手 術 前 日、
99mTc フチン酸 74MBq を腫瘍の両サイドに半量ずつ注入。2 時間後に乳輪皮
内にイオパミロン 4cc を注入後、CT を撮影し 3D 画像を作成。同時に SPECT
を撮影し、3D-CTLG と合成した。RI 集積 SLN と 3D-CTLG 検出 SLN が完全一
致した群とその他の群に分け、SLN 転移の有無について検討した(χ二乗検定)。
【結果】組織学的 SLN 転移陰性は 29 例、SLN 転移陽性は 10 例であり、うち 3
例は微小転移であった。RI 集積 SLN の平均は 1.07 個、3D-CTLG 検出 SLN の
平均は 1.33 個。RI 集積 SLN と 3D-CTLG 検出 SLN が完全一致する場合、SLN
転移陰性が有意に多い結果となった(p=0.01)。SLN 転移陽性の場合、RI 集
積 SLN と 3D-CTLG 検出 SLN とに乖離があり、転移陽性 SLN への RI 集積の欠
損、転移陽性 SLN の造影不良(リンパ流の途絶・迂回)が認められた。【結論】
SLN 転移陽性症例で、RI 集積 SLN と 3D-CTLG 検出 SLN とに乖離が生じる原
因として、正常リンパ経路が破綻していることが考えられる。SPECT 合成
3D-CTLG は、SLN の転移診断に有用であることが示唆された。更に症例を重
ね、SNB 省略の可能性を示していきたい。
339
乳癌に対するセンチネルリンパ節生検 (SNB) は既に標準手術として広く行わ
れており、同定方法は施設により色素法、RI 法、併用法と様々である。色素
法の薬剤として世界的に頻用されているイソスルファンブルーやパテントブ
ルーは国内では保険認可がされておらず、インドシアニングリーン (ICG) や
インジゴカルミンの使用のみが推奨されており、また ICG に関しては昨今、
蛍光法として施行している施設も増えてきている。SNB を色素法単独で行う
場合、センチネルリンパ節 (SLN) の同定の可否は視認性にかかっており、使
用が推奨されている ICG やインジゴカルミンでも同定率に差はないという報
告がある一方、ICG 蛍光法を行っている多くの施設では ICG と別の色素を併
用使用している報告が多く、ICG の色素としての有用性が疑問視されている
傾向も認める。当院では併用法で SNB を施行しているが、今回、ICG が色素
単独法の薬剤として実地臨床において有用であるのか否かの検討を行った。
2014 年 5 月以降に当院で SNB を施行した原発性乳癌 50 例を対象とし、SNB
に対し十分な経験を有した乳腺外科医による ICG とテクネシウム・フチン酸
コロイドによる併用法を施行したが、ICG の有用性を検討するため、先に色
素によるリンパ管の同定及び追走を行い、SLN の同定をした後か色素法にて
同定出来ない時にのみガンマプローベを用いる形とした。ICG は乳輪下に 3
~ 5ml を注入し、摘出個数は 0 ~ 4 個(平均 1.6 個)、手術開始から摘出まで
の時間は 6 ~ 37 分(平均 20.9 分)であった。SLN が ICG で染色されていなかっ
たのは 4 例のみで同定率としては 92%と諸家の報告と変わらず良好であった
が、リンパ管が同定されずに、RI 法で同定した際に染色が認められたのが 18
例、リンパ管は同定されたが追走しても SLN の同定に至らなかったのはさら
に 9 例あり、ICG による色素単独で SNB を施行したと仮定するとリンパ管を
追走し SLN に到達出来た症例は 23 例 (46% ) しかなく、非常に厳しい結果で
あった。ただし、投与量で評価をすると 5ml では 75%と高くなり、パテント
ブルーとは異なり比較的多い量の投与が前提となる可能性は示唆された。平
均摘出時間も 20 分前後と長く、ICG は RI と併用する形であれば色素としての
有用性は高いと考えられるが、色素法単独で使用する際は 70%程度の同定率
と 20 分近い摘出時間を考えると実地臨床においてはやはり推奨し難いとの結
論に達した。
一般セッション(ポスター討議)
【目的】センチネルリンパ節生検 (SNB) の普及により乳癌術後のリンパ浮腫の
頻度は減少したものの、依然リンパ浮腫を経験することがある。最近の腋窩
手術後のリンパ浮腫の現状について検討した。【対象】2008 年 5 月から 2013
年 10 月までに SNB あるいは腋窩郭清 (Ax) が連続して施行された原発性乳癌
203 例。両側乳癌は除外した。【方法】SNB は CT リンパ管造影を併用し RI 法
でおこなった。Ax はレベル 2 までおこなった。腋窩手術後 1 年毎に健側と患
側の上腕周囲径を肘上 10cm、肘上 5cm、肘下 5cm、肘下 10cm、手関節の 5
か所で測定し、1 か所でも患側の周囲径が 2cm より大きい場合をリンパ浮腫
とした。【結果】全 203 例のうち Ax が施行された症例 (Ax 群 ) は 55 例 (27%)、
SNB が施行された症例 (SNB 群 ) は 148 例 (73%) であった。術後観察期間は
Ax 群で 12 ~ 72 か月 ( 中央値 36 か月 )、SNB 群で 12 ~ 83 か月 ( 中央値 36.5
か 月 ) で 有 意 差 は な か っ た。Ax 群 で リ ン パ 浮 腫 を 発 症 し た 症 例 は 19 例
(34.5%) で SNB 群 の 15 例 (10.1%) よ り 多 か っ た (p < 0.0001)。Ax 群 に お
いてリンパ浮腫発症例 (19 例 ) と非発症例 (36 例 ) で、年齢、術式、郭清個数
(12.7 個 vs 13.9 個 )、術後ホルモン療法の有無、術後化学療法の有無 ( 有 / 無 ,
10/9 vs 23/13)、術後照射の有無 ( 有 / 無 , 7/12 vs 15/21) では有意差はな
かったが、BMI では有意差を認めた (25.7 vs 22.2, p=0.0288)。SNB 群に
おいてもリンパ浮腫発症例 (15 例 ) と非発症例 (133 例 ) で、年齢、腫瘍径、術
式、生検個数 (1.5 個 vs 1.6 個 )、術後ホルモン療法の有無、術後化学療法の
有無 ( 有 / 無 , 1/14 vs 26/107)、術後照射の有無 ( 有 / 無 , 9/6 vs 78/55) で
は 有 意 差 は な か っ た が、BMI で は 有 意 差 を 認 め た (27.3 vs 23.2,
p=0.0002)。Ax 群のリンパ浮腫発症例と SNB 群のリンパ浮腫発症例で、発
症時の最大周径差 (3.3cm vs 2.2cm, p=0.030)、2cm 以上の左右差を認め
た箇所 (1.8 か所 vs 1.3 か所 , p=0.0492)、発症時の自覚症状の有無 ( 有 / 無 ,
8/10 vs 0/15, p=0.0036) では有意差を認めたが、発症時期 (29 か月 vs 28
か月 ) では差を認めなかった。【結語】Ax は SNB と比べて、より重症のリンパ
浮腫を高頻度に、ほぼ同時期に発症する。いずれの腋窩手術においても肥満
がリンパ浮腫の危険因子であった。SNB においても軽症ではあるがリンパ浮
腫を発症するため、とくに肥満例では剥離範囲の少ない手術をおこなったう
え慎重な経過観察が必要である。
栃木県立がんセンター 外科、2 臨床検査部、3 病理
ポスター討議
DP-1-18-04
DP-1-18-05
1
京都ブレストセンター 沢井記念乳腺クリニック
術前非浸潤性乳管癌と診断した症例に対するセンチネルリンパ
節生検省略の検討
術前 DCIS 診断症例におけるセンチネルリンパ節生検省略可能
例の検討
昭和大学 医学部 乳腺外科、2 昭和大学 病理診断科
橋本 梨佳子 1、広田 由子 2、佐藤 大樹 1、小杉 奈津子 1、池田 紫 1、
渡辺 知映 1、吉田 玲子 1、桑山 隆 1、沢田 晃暢 1、明石 定子 1、
中村 清吾 1
今井 文、新蔵 信彦、田中 彰恵
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】ACOSOG Z0011 trial 以降、早期乳癌に対する腋窩郭清省略は本
邦でも広く検討され始めた。これを踏まえ非浸潤性乳管癌 ( 以下 DCIS) に対す
るセンチネルリンパ節生検 ( 以下 SLB) の必要性そのものが問われ始めている。
ASCO guideline は、乳房温存手術予定の DCIS 症例に対し SLB は勧められな
いと up date された。しかし High grade DCIS や広範な広がりを認める DCIS
にはしばしば小さな浸潤巣が混在しており、この有無を術前に診断する事は
困難である。今回当院で術前に DCIS と診断した症例を後ろ向きに検討し、
Z0011 trial の適応を踏まえ SLB 省略について検討を行う。【対象と方法】対象
は 2010 年 9 月から 2014 年 9 月に当院で針生検とエコー、マンモグラフィー
の所見から術前に DCIS と診断した 283 例。乳管内癌の壊死を認めたものを
high grade DCIS 相当とし Comedo type と分類、それ以外の乳管内癌所見を
non-Comedo type とした。【結果】対象 283 例の年齢中央値は 50 歳、乳房温
存術施行例が 131 例 (46% )、乳房切除施行例が 152 例 (54%)。乳管内癌が
Comedo type は 59 例 (21%)、non-Comedo type は 224 例 (79%) であった。
また、対象症例 283 例中、手術標本で浸潤巣を認めたのは 61 例 (22%) であっ
た。浸潤巣を認めた 61 例は、20 例 (33%) が乳房温存術を施行されており、
41 例 (67%) が乳房切除術であった。Comedo type は 25 例 (41%) であり浸
潤径中央値は 0.3cm、non-Comedo type の浸潤径中央値は 0.5cm であった。
対象症例中 SLB 転移陽性は 4 例 ( 腋窩リンパ節転移個数は 1 個 :3 例、11 個 :1
例 )、全例が Comedo type であり、乳房切除術を施行されていた。
【考察】今
回 ASCO guideline の up date を踏まえ当院の術前 DCIS 診断症例について検
討を行った。乳房温存症例は、SLB 転移が認められなかった事から十分 SLB
省略は可能であった。また、乳房全摘症例でも SLB 転移は 4 例 (3%) であった
事から適確な画像診断、広範な High grade DCIS の除外等の基準を設ける事
により SLB 省略の適応拡大が可能と考えられた。
【はじめに】術前に CNB または VAB(以下生検)で DCIS の診断を得た症例の多
くはセンチネルリンパ節生検(以下 SLNB)陰性であり,安全に SLNB を省略し
得る症例選択について検討を行った.【方法】術前に乳房病変の生検で DCIS の
診断を得て 2006 年 12 月から 2014 年 12 月に手術を施行した 268 症例及び,
そのうち SLNB を施行した 213 症例について,切除標本での浸潤癌の有無及
び SLNB での転移の有無に関連する因子について検討を行った.
【結果】切除
標本での浸潤癌出現率は,生検法別では CNB 群 42.4%,VAB 群 16.0% で
VAB 群で低かった(p < 0.001).生検組織の核グレード別では,グレード 1 群
18.2%,2 群 29.1%,3 群 36.0% で,有意差はないが、高グレードほど浸潤
癌 出 現 率 が 高 く な る 傾 向 を 認 め た.MRI で mass lesion を 認 め る 群( 以 下
mass 群)34.1%,non mass lesion のみの群(以下 non mass 群)25.8%,造
影病変のない群 5.0% と,造影病変のない群で低かった(p < 0.001).SLNB
転移陽性率は,CNB 群 4.3%,VAB 群 3.3%.グレード 1 群 10.5%,2 群 2.1%,
3 群 6.8%.年齢< 40 歳で 10.0%,≧ 40 歳で 2.8% と,有意差はないが若年
で高い傾向を認めた.mass 群 7.7%,non mass 群 2.4%,造影病変のない
群 0% と,mass 群でやや高い傾向を認めた.また,SLNB 陽性群では乳頭を
中心とした non mass 病変の広がり角度が大きく,ROC 曲線の AUC:0.73.
最適な cut off 値は 60 度,陽性率は 60 度未満で 1.2%,60 度以上で 7.7% で
あった(p=0.048).【考察】切除標本での浸潤癌出現率は,VAB で術前 DCIS
と診断された症例が CNB で診断された症例よりも低く,生検組織が高グレー
ドほど高い傾向を認めたが,SLNB 陽性率は全症例で 3.8% と低く生検方法や
生検組織のグレード間で差を認めなかった.SLNB 転移陽性率については MRI
で 60 度以上の non mass 病変の広がりを認める症例で高く,< 40 歳,MRI
で mass を含む症例で高い傾向を認めた. MRI で造影病変を認めない,また
は 60 度未満の non mass 病変の広がりに限局した非若年症例,特に乳房温存
術予定の患者で SLN 省略を考慮し得ると考える.
DP-1-19-01
DP-1-19-02
当院における乳癌全摘術後局所再発手術例の検討
1
当院における腋窩郭清後の腋窩リンパ節再発の検討 -第 2 報-
公益財団法人 星総合病院、2 いがらし内科外科クリニック
1
松嵜 正實 1、長塚 美樹 1、片方 直人 1、佐久間 威之 1、菅家 康之 1、
左雨 元樹 1、渡辺 文明 1、野水 整 1、二瓶 光博 2
3
乳癌全摘術後局所再発例に対し我々は、時として治療選択に悩むことがある。
そこで乳癌全摘手術後局所再発に対し当科で手術療法を選択した症例を検討
した。 【対象】2005 年から 2014 年までの間に乳癌局所再発例に対し手術療法を選択
施行した 25 例である。全摘術後局所再発を「胸壁・創皮下再発群(W 群)」「腋
窩リンパ節再発群(Ax 群)」「鎖骨上窩・頸部リンパ節再発群(Sc 群)」の 3 群に
分け病理学的に検討した。 【結果】W 群;14 例、Ax 群;7 例、Sc 群;4例であった。これら症例の年齢、
組織型、織学的悪性度、リンパ節転移の有無に差はなかった。再発までの平
均期間 W 群;57 ヶ月、Ax 群;40 ヶ月、Sc 群;30. 5ヶ月(有意差あり)。こ
れ ら 原 発 乳 癌 の サ ブ タ イ プ は、W 群(ER 陽 性 86 %、TNBC 14 %、HER
type 0% )、Ax 群(43%、43%、16%)、Sc 群(50%、25%、25%)であっ
た。再発癌の組織サブタイプでは、1 例が原発 TNBC で、再発で HER type へ
形質転換していた。それ以外は、原発と再発で一致していた。再発後死亡例
W 群;6 例、Ax 群;3 例、Sc 群;2 例(各群に有意差なし)。5 年生存率では、
Ax 群> W 群> Sc 群の順で良かった。
【結論と考察】Sc 群の予後は悪かったが、形質転換によって薬剤の反応性が得
られ長期生存例が見られることから生検的な手術療法の選択も考慮すべきと
考える。一方、W 群と Ax 群は、術後の予後改善がある程度に期待できるので
今後も積極的に手術療法を選択しても良いと思われる。
静岡県立静岡がんセンター 乳腺外科、2 同 女性内科、
同 乳腺画像診断科、4 同 乳がん集学治療科
林 友美 1、西村 誠一郎 1、佐藤 睦 1、菊谷 真理子 1、渡邉 純一郎 2、
植松 孝悦 3、山崎 誠二 4、高橋 かおる 1
【 背 景・ 目 的 】腋 窩 リ ン パ 節 郭 清 (ALND) が 生 命 予 後 に 寄 与 す る 明 ら か な
evidence はないが , 不十分な局所制御が予後に影響する可能性はある . 既報に
続き , 当院での ALND 後の局所制御率およびリスク因子を検討した 【
. 対象・方
法】2003 年 1 月から 2008 年 12 月までに手術が施行された原発性乳癌 1605
例 の う ち ,NAC 施 行・ 他 院 切 除 後・ n 0 等 を 除 く 236 例 を 対 象 と し 20032005 年を前期群 (132 例 ),2006-2008 年を後期群 (105 例 ) に分け腋窩リン
パ節再発 (AxF) について検討した . 観察期間は 2003 年 1 月 -2014 年 12 月(観
察 期 間 中 央 値 は 前 期 113 ヶ 月 / 後 期 84 ヶ 月 ,5 年 f/u 率 80.3%/91.3%).
Kaplan-Meier 法を用いて腋窩無再発生存率と遠隔無再発生存率を算出 . また
リスク因子としてサブタイプ (Lum/Lum-H/H/TN), 術式 (BCS/Bt),BMI( <
22/22-28/ > 28), リンパ節転移度 (pN1/pN2 以上 ), 化学療法 (CT) 有無と種
類 ( アンスラサイクリン (A)/ タキサン併用 (A+T)/ その他 ), 放射線療法 (RT)
有無につきχ 2 検定による単変量解析を行った 【
. 結果】術式は BCT: 前期 65 例 /
後期 56 例 ,Bt:67 例 /48 例 (p=0.48).236 例全例で Level 2 以上の郭清を施行
した.転移度はpN1:88例(66.7%)/86例(82.7%),pN2以上:44例(33.3%)/18
例(17.3%)(p=0.005)と前期群でpN2以上が有意に多かった.CTは前期116例
(87.9%(A43.1%/A+T31.9%)),後 期86例(80.8%(A20.9%/A+T75.6%))で
施行された(p=0.25).BCS後のRT施行率は前期53.8%,後期80.4%(p=0.002).
pN2以 上 のBtに 対 す るPMRT施 行 率 は 前 期15.2%,後 期81.8%(p<0.001).
AxFは7例(3.6%)で,前 期6例(4.5%、 年 率0.48%),後 期1例(1.0%、 年 率
0.14%)に認めた(p=0.54).前期AxF6例はpN1:88例中3例(3.4%),pN2:44例
中3例(6.8%),pN1:1例 を 除 く5例 でCT施 行.BCT3例(RT施 行1例),Bt3例
(pN2:2例、PMRT施行1例).後期AxF1例 はpN1:86例 中1例(1.2%,CT施 行),
BCT(RT施行)例,pN2:18例中0例.5年腋窩無再発生存率は前期97.5%/後期
99 % (p=0.28),5年 遠 隔 無 再 発 生 存 率 は 前 期84.3%/後 期94.9%で あ っ た
(p=0.19).サブタイプ(p=0.59),BMI(p=0.2)には有意差を認めなかった.【 結
語】過去の報告ではpN+郭清後のAxF率は3.6%(0-6.2%)で有意なリスク因子
は認めないとされており,自験例も同様の結果だった.今回pN因子に偏りがある
(NAC例除外)がAxF率は後期で少ない傾向がみられた.体型・術式など手技的な
因子で有意差がないこと,後期でRT施行率・タキサン併用率が有意に高いこと
から遠隔再発・局所とも集学的治療によりcontrolされている可能性が考えられ
た.
340
ポスター討議
DP-1-19-03
DP-1-19-04
術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は妥当か?(当院で
の後方的検討)
1
当院における乳癌 Lung oligometastasis に対する肺切除症例
の検討
東大阪市立総合病院 乳腺外科、2 東大阪市立総合病院 病理診断科
1
1
1
2
富永 修盛 、松本 謙一 、古妻 康之 、千原 剛 、山内 周
1
2
2
金 敬徳 1、河内 麻里子 1、藤原 みわ 1、吉村 友里 1、梶原 友紀子 1、
伊藤 充矢 1、大谷 彰一郎 1、藤原 俊哉 2、松浦 求樹 2、檜垣 健二 1
【背景・目的】乳癌の肺への遠隔転移や遠隔再発があっても 1 か所もしくは数
か所のみの場合 (Lung oligometastasis),同部位に局所治療をすることで長
期生存の可能性が示唆されている。【対象・方法】1995 年から 2013 年までに,
当院にて Lung oligometastasis に対し胸腔鏡補助下に肺病変の完全切除が可
能であった 32 例を対象とした。【結果】初診時年齢中央値は 51.5 (28-73) 歳,
経 過 観 察 期 間 中 央 値 は 158 (38-319) か 月 で,Luminal A 9 例 (28%),
Luminal B 9 例 (28%),Luminal Her 2 2 例 (6%),Triple negative 8 例
(25%),評価不能 4 例 (13%) であった。初診時に孤立性肺転移を認めた
stage4 症 例 2 例 を 除 く, 術 後 再 発 症 例 の Disease free interval 中 央 値 は
61(11-200) か月であった。肺切除後治療は化学療法 13 例 (40%),内分泌療
法 14 例 (43%),併用療法 4 例 (12%),無治療 1 例 (3%) であった。肺切除後,
13 例 (40%) で再発を認め,再発部位は骨 8 例 (61%),肺 6 例 (46%),肝 4
例 (30%),縦隔・腋窩・鼠径・外腸骨・リンパ節 4 例 (30%),脳 2 例 (15%),
対側乳房 1 例 (7%),皮膚 1 例 (7%) であった。再発例のうち 4 例 (30%) は乳
癌による全身転移で死亡した。肺切除後の 5-year-recurrent free survival
54.6%,5-year-overall survival(OS) 88% であった。化学療法例 2 例,化
学療法 + ホルモン療法例 1 例が,現在無治療で無再発生存中である (RFS;
76mo., 89mo., 140mo.)。【考察】乳癌肺転移巣切除例に関する報告のうち,
最も症例数の多い International registry of lung metastases では,467 例
中 84% で完全切除が得られ,5-year-OS 38%,median survival 37 か月で
あり,肺切除と全身療法とを比較検討した非ランダム化試験の報告で,肺切
除例の予後がよいとの報告もある。これらの報告では切除・非切除群間の選
択バイアスが大きく,外科的切除による予後改善の evidence は乏しいが,
Lung oligometasis に対する切除は長期生存をもたらす可能性がある。
【結論】
乳癌 Lung oligometastasis に対する肺切除により、予後が改善する可能性が
示唆された。【今後の予定】肺転移巣でのサブタイプを組織学的に調べ、原発
巣との一致性を評価し、発表予定である。
DP-1-19-05
DP-1-20-01
当院における乳癌脳転移症例の検討
広範囲の皮膚浸潤を伴うT4乳癌に対する皮膚移植併施切除の4例
~遠隔成績とQOLからみた臨床的意義~
1
独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院 乳腺内分泌外科、
2
独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院 病理科
1
樋口 奈苗 1、塚本 文音 1、岩崎 香 1、久保 杏奈 1、大井 香 1、笠島 綾子 1、
木村 綾 1、春日井 務 2
【目的】近年の化学療法の進歩や抗 HER2 治療の進歩により再発乳癌患者の生
存期間が延長した結果、脳転移症例が顕在化しており、脳転移による症状コ
ントロールも重要な課題となっている。当院において経験した再発乳癌症例
につき検討を行った。【対象と方法】2008 年 1 月から 2014 年 11 月までに当院
で乳癌脳転移の治療を行った 26 症例を対象にし、以下の各項目を検討した。
【結果】手術時の Stage は、I期 3 例(11%)、II 期 12 例(46%)、III 期 9 例(35%)、
IV 期 2 例(8%)であった。サブタイプは、ホルモン感受性 (+)・HER2(-) が
12 例(46%)、ホルモン感受性 (+)・HER2(+) が 5 例(19%)、ホルモン感受
性 (-)・HER2(+) が 6 例(23%)、トリプルネガティブが 3 例(12%)であった。
手術日から脳転移発覚までの期間は、0 ヶ月~ 19 年 3 ヶ月で中央値は 4 年 8 ヶ
月であった。0 か月の 1 症例は手術までに脳転移が発覚した症例であった。脳
転移発覚時の年齢は、35 歳~ 82 歳で中央値は 59 歳であった。脳転移発覚時
に症状があった症例は 19 例(73%)、症状がなかった(腫瘍マーカー上昇など
で検査した)症例が 7 例(27%)であった。脳転移発覚時にすでに発覚してい
た他臓器転移の臓器数は 0 個~ 4 個で、脳転移単独の症例は 6 例であった。治
療内容は、全脳照射が 11 例、定位放射線治療が 5 例、全脳照射+定位放射線
治療が 6 例、手術のみが 2 例、手術+全脳照射+定位放射線治療が 1 例、全身
状態が悪く治療しなかった症例が 1 例であった。脳転移発覚から死亡までの生
存期間は 0 ヶ月~ 11 年 5 ヶ月で、中央値は 1 年 1 ヶ月、5 年以上生存した症
例は 2 例であった。11 例が現在も生存し、15 例が死亡した。死亡した症例の
死因が脳転移であった症例は 7 例、脳転移以外の再発乳癌による死亡は 7 例、
他疾患で死亡した症例が 1 例であった。【結語】化学療法の進歩により再発乳
癌患者の頭蓋外病変の制御は改善している。乳癌の脳転移症例は一般に予後
不良とされることが多いが、適切な治療を行える症例では長期生存が得られ
ると考えられる。また乳癌脳転移患者は脳への局所治療だけではなく全身治
療も重要であり、特に HER2 陽性乳癌の場合はトラスツズマブ、ペルツズマブ、
トラスツズマブ エムタンシンなど分子標的治療も進歩しており、今後脳転移
の治療方針についてさらなる検討が必要と考えられた。
341
うえお乳腺外科、2 白山クリニック
上尾 裕昭 1、甲斐 裕一郎 1、久保田 陽子 1、福永 真理 1、早川 宏司 2
広範囲の皮膚浸潤を伴う進行乳癌は患者の QOL を著しく低下させるため、薬
物療法後に遠隔転移のない場合には局所コントロールを図る目的で積極的に
切除する方針として来た。切除後の皮膚欠損範囲が広くて皮膚移植を併施し
た 4 例の長期予後と subtype を解析し、本法の臨床的意義を検討した。【対象
と方法】開院後 12 年間の乳癌手術 2,645 例のうち皮膚移植併施切除の対象と
なったのは僅か 4 例(0.15%)で、いずれも乳房全体を占める皮膚浸潤巣が術
前治療により縮小し、遠隔転移を認めなかったため手術に踏み切った。乳癌
切除直後の皮膚欠損部のサイズに応じて、皮膚移植は大腿部皮膚の分層遊離
移植、腹部または鼠径部皮膚の全層移植を採用した。【症例】
(1)51 才。乳房
全体の皮膚自潰を伴う乳癌に対して化学療法と照射療法を併用し、腫瘍縮小
後に広範囲切除と鼠径部皮膚全層移植を行った。subtype は luminal A type
で術後はタキサンの後にホルモン療法を 10 年間行い、初診後 11 年目の現在、
再発も無く健在である。(2)46 才。両側乳房全体の炎症性乳癌。初診時には
乳房痛に対してモルヒネが必要であった。化学療法後に両側の広範囲切除と
大腿部皮膚の分層遊離移植を行い、鎮痛薬から解放されて家庭復帰。subtype
は HER2 type。初診後 6 年 2 ヶ月目に肺転移で死亡するまで外来治療を続け、
大部分の期間を未成年女子の居る家庭で過ごすことができた。(3)46 才。化
学療法後に広範囲切除と皮膚全層移植。subtype は HER2 type。術後 1 年目
に肺転移が出現して初診後 5 年 7 ヶ月で死亡したが、大部分の期間を小学生男
子の居る家庭で過ごせた。(4)46 才。化学療法後に広範囲切除と皮膚全層移
植し家庭復帰と入浴が可能となった。subtype は triple negative。術後に出
現した肺転移に対して各種化学療法剤を使用したが初診後 2 年 1 ヶ月目に死
亡。【まとめ】広範囲の皮膚浸潤を伴う高度進行乳癌であっても、薬物療法が
奏功して遠隔転移が無ければ広範囲切除+皮膚移植を行うことにより、QOL
の改善(家庭復帰、浸出液・悪臭・疼痛からの解放、入浴)とともに、4 例中 3
例(75%)で 5 年以上の生存が得られた。長期予後にはサブタイプ
(薬剤感受性)
が影響を与えると考えられた。
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】3cm 以上の乳癌を術前化学療法(以下 NAC)で downsizing し、乳
房温存手術を行う事は広く行われている。しかし、NAC 後のセンチネルリン
パ節生検(以下 SN)による腋窩郭清(以下 Ax)の省略については controversial
である。当院における NAC 後手術症例に後ろ向き検討を加え、上記の是非に
ついて考察した。【対象と方法】2013 年 1 月から 2014 年 12 月まで当科で行わ
れた乳癌手術症例 198 例中、NAC 後に乳癌手術を行った 26 例が対象。全例を
永久標本で、組織学的治療効果およびリンパ節転移状況等について検討した。
NAC 後も N1 症例、炎症性乳癌など 8 例には Ax(以下 Ax 群)を、NAC 後 N0 だっ
た残り 18 例症例には SN を追加した(以下 SN 群)
。【結果】全例における組織
学的治療効果は、Grade 1 が 8 例、Grade 2 が 11 例、Grade 3 が 7 例だった。
Grade 3 は 全 例 の 26.9 % で、7 例 中 HER2 陽 性 高 発 現 型 が 4 例、luminal B
(HER2 陽性)が 3 例と、全例 HER2 陽性だった。Ax 群ではリンパ節獲得個数
が 0 から 11 個(中央値 4.4 個)で、リンパ節転移 0 個の症例は 1 例のみ(0/9)
で Grade 3 であった。一方 SN 群 18 例中 9 例は初診時から N0 であり、残り 9
例は NAC 後 N0 と評価されていた。SN 群のリンパ節獲得個数は 0 から 2 個(中
央値 0.2 個)で、永久標本でリンパ節転移が 3 例(16.7%)に判明した。3 例と
もに局所治療は Bp+RT で、2 例が micrometastasis、1 例が 3mm の
macrometastasis であった。3 例中 2 例は luminal type で、ET 投与下に経過
観察中である。【結論】NAC 後 N0、HER2 陽性症例、RTなど選択条件を考慮
すれば、NAC 後 SN を安全に行える可能性が示唆された。
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 乳腺外科、
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 呼吸器外科
ポスター討議
DP-1-20-02
DP-1-20-03
千葉西総合病院
東京女子医科大学 内分泌外科
長谷川 圭、岡元 るみ子
永井 絵林、羽二生 賢人、徳光 宏紀、吉田 有策、尾身 葉子、坂本 明子、
堀内 喜代美、岡本 高宏
抗血栓薬服用下での乳癌手術に関する検討
乳癌全身麻酔症例における術後悪心嘔吐の予防対策:前向き研究
一般セッション(ポスター討議)
【背景】抗血栓薬服用中の乳癌手術の周術期管理は施設によりさまざまであり、
明確な指針は存在しない。日本循環器病学会・日本脳卒中学会などにより
2009 年に刊行された『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガ
イドライン改訂版』では「術後出血への対応が容易な場合のワルファリンや抗
血小板薬内服継続下での体表の小手術」はレベル IIA(有益/有効であるという
意見が多い)とされている。当院は高齢患者が多く、その多くが基礎疾患を有
しており、心血管系・脳血管系の基礎疾患のために抗血栓薬を服用中の患者
も多く存在する。これらの患者に対し当院では原則として抗血栓薬服用下で
乳癌手術を行う方針としている。【対象と方法】2010-2014 年に当院で抗血栓
薬服用下で乳癌手術を受けた 22 症例(26 乳房)について基礎疾患・手術時間・
ドレーン留置期間・術後合併症などについて後方視的に検討した。
【結果】年
齢は 59-95 歳 ( 中央値 72 歳 )。男性を 1 例含み、他 21 例は全て女性。基礎疾
患は慢性心不全 4 例、慢性心房細動 8 例、心臓弁膜症 1 例、虚血性心疾患 9 例、
深部静脈血栓症 1 例、脳梗塞 3 例、慢性腎不全 1 例であった ( 重複あり )。内服
薬はアスピリン 10 例、クロピドグレル 3 例、シロスタゾール 2 例、チクロピ
ジン 2 例、ワーファリン 6 例、ダビガトラン 3 例、リバーロキサバン 1 例、ア
ピキサバン 1 例であった ( 重複あり )。単剤内服が 17 例で 2 剤併用が 5 例、3
剤以上併用例はなかった。乳癌のステージは Stage0:2 例、StageI:12 例、
StageII:7 例、StageIII:5 例であった。手術は乳房切除術 :15 例、乳房部分切
除術 :11 例、腋窩手術は腋窩郭清 :9 例、センチネルのみ :16 例、腋窩手術なし :1
例であった。手術時間は 65-217 分 (4 例の同時両側手術を含む (
) 平均 105 分)、
出血量は 5-128ml( 平均 23.5ml) であった。術後入院期間は 2-64 日(中央値
7.5 日)。ドレーンは 13 例に留置し、留置期間は 3-12 日(中央値 7 日)であった。
術後合併症は、液貯留 2 例、血腫 3 例、膿瘍 1 例、創縁壊死 1 例であった(19%)。
穿刺ドレナージや抗生剤投与を要したが、再手術を受けた例はいなかった。
周術期に血栓性の合併症を生じた例もなかった。同時期の乳癌手術例と比較
して、ドレーン留置期間が長い傾向にあったが、手術時間・出血量・入院期間・
術後合併症率に差はなかった。【考察】抗血栓薬服用下での乳癌手術は安全に
行えるため、今後も十分に選択肢の 1 つとなりうると考えられた。
【はじめに】術後悪心嘔吐(Postoperative nausea and vomiting; PONV)は
全身麻酔手術の 30 - 50% の頻度で発症し、患者にとって不快であるだけで
なく離床・治癒の遅延等との関連から改善が望まれる合併症である。当科で
は 2012 年 1 月より全身麻酔下に手術を行う全症例を対象に、Apfel’s score
を用いた術前評価を行い、高リスク群に対しては薬物の予防的投与を行う対
策を講じている。
【目的】本研究の目的は現対策下での PONV 発症頻度を推定し、そのリスク因
子を明らかにするとともに今後の改善点について検討することである。
【方法と対象】2010 年 1 月から 2013 年 12 月までに全身麻酔下に乳癌に対する
手術を受けた 175 人を対象とした。対策導入前の 77 人をコホート A、対策導
入後の 98 人をコホート B とした。Apfel’s score では、女性である、非喫煙者
である、PONV もしくは動揺病の既往がある、術後オピオイドの使用予定が
あるの 4 項目それぞれについて該当する場合に各 1 点を付与する。2 点以上を
高リスク症例として麻酔導入後にデキサメタゾンかつ / またはドロペリドール
の予防的投与を行った。PONV の有無は主治医が担当看護師および患者への
聞き取りによって判定し、術翌朝 8 時までに悪心・嗚咽・嘔吐のいずれかを認
めたものを “PONV あり”、無症状であったものを “PONV なし” とした。
【結果】PONV 発症率はコホート A で 29.9%、コホート B で 13.3%と対策導入
後に減少を認めた (p= 0.008)。コホート A は高リスク群 (n= 62)33.9%、低
リスク群 (n= 15)13.3% (p = 0.10)、コホート B の予防投与群 (n= 73) では
11.0%であった。高リスク症例では予防投与の導入に伴い、33.9% から
11.0%(p=0.0015 ) に改善した。 2014 年に新たに示されたガイドラインを
基に、コホート B の予防投与群を対象に年齢 50 歳以下、T2 以上、閉経前、麻
酔 3 時間以上、術後オピオイド使用の 5 項目において多重ロジスティック回帰
分析を行った。結果は 50 歳以下(OR 1.43, p= 0.77)、T2 以上 (OR 2.01,
p= 0.39)、 閉 経 前 (OR 0.79, p= 0.85)、 麻 酔 3 時 間 以 上 (OR 0.95, p=
0.96)、術後オピオイド使用 (OR 0.32, p= 0.23) のいずれにおいても統計学
的有意差は認められなかった。
【結論】Apfel’s score を用いてリスク評価を行い高リスク例に予防的投与を行
う対策で PONV 発症率は以前に比べ有意に改善を認めた。高リスクにも関わ
らず予防投与がされずに PONV を発症した症例が含まれており、システムの
改善が必要と考えらえた。
DP-1-20-04
DP-1-20-05
南東北グループ 医療法人社団 三成会 新百合ヶ丘総合病院
札幌乳腺外科クリニック
田中 規幹
岡崎 亮、岡崎 稔、渡部 芳樹、佐藤 文彦、渡辺 千里、玉田 香織、
米地 貴美子、千葉 沙織、山岸 妃早代、大杉 美幸
当院での乳がん術前患者の全胸壁ブロックの導入
乳頭異常分泌を主徴とする乳癌に対する手術術式とその課題
当院では、乳がん症例の高齢化と乳房温存術でも再建のために広範囲に剥離
を行うため、術後疼痛に伴う血圧コントロール不良例とそれに伴う後出血例
が散見されるようになった。当院麻酔科医の勧めもあり、すでに日本臨床麻
酔科学会で報告されている前胸壁ブロックの導入を試みた。対象は、2014 年
10 月から 12 月までの乳がん手術患者、1 4例。平均年齢 64.7 歳。術式の内訳:
乳房全摘術 4 例、温存術 3 例、全摘または温存術の腋窩リンパ節郭清症例:7 例。
方法:エコーガイド下に行う胸筋神経ブロックである PECS II block(modified
pectoral nerves block) と SIPB(serratus- interocostal plane block) を 行 っ
た。 導入時、
局所麻酔の広がりを麻酔液の水泡化形成で広がりを判断していた。
それ以外の部分では、広がりの評価がはっきりしないため、インジゴカルミン
液を麻酔薬に混ぜ、広がりの検討を行った。この試みでは、広背筋全面、胸筋
間など腋窩領域が広範囲に染まっていた。このことにより、郭清症例を含めた
乳がん手術患者全例に導入することになった。結果は、ほぼ全例に鎮痛剤を使
用する頻度、血圧コントロールに難渋する頻度がほぼなくなった。また、合併
症として、軽度の血腫のみであった。 今回のわれわれの小研究から術後疼痛
コントロールに対して、この神経ブロックは、有効ではないかと考えられた。
今後、さらに対象症例を広げ、さらなる検討を行う予定である。
乳頭異常分泌を主徴とする乳癌に対する手術術式の課題について局所再発の
観点から検討した。【対象・方法】1998 年 4 月から 2014 年 12 月までに当院で
組織診断が確定した、乳頭異常分泌を主徴とする乳癌 74 例を対象とした。そ
の内訳は Tis:50 例、T1mic:11 例、T1a:8 例、T1b:5 例である。根治手
術に際して、主に術前の仰臥位 Gd 造影 MR 画像から乳腺の切除範囲を想定し
て手術術式を選択した。癌の乳管内進展範囲が限局し、乳腺部分切除術によっ
て整容性が保たれると判断されるときは Bp あるいは Bq を選択し、乳管内進
展範囲が広範であるときには Bt あるいは乳頭温存皮下乳腺全切除術 nipple
sparing mastectomy:NSM)を 選 択 し た。【 結 果 】手 術 術 式 は Bp あ る い は
Bq:34 例 (45.9% )、Bt:25 例 (33.8% )、NSM:15 例(20.3%)であった。
断端陽性は 8 例(8 / 34:23.5%)にみられた。患側乳房内(胸壁)再発は 4 例
(術後 13 カ月、56 カ月、95 カ月、105 カ月後)にみられた。それらの初回手
術術式は Bp:3 例(すべて断端陰性)、NSM:1 例であった。再発病変に対し
て局所切除を 3 例に、Bt を 1 例に施行した。4 例の再発様式からみて 3 例は断
端近傍に遺残した癌に由来し、1 例は多発癌によるものと推定された。
【まとめ】
乳頭異常分泌を主徴とする乳癌では乳房温存手術の適応がある例も多く含ま
れている。また、近年乳房再建の希望例が増加しつつあり、乳腺全切除を行
う場合であっても局所再発を生じないように癌の完全切除を心がけることが
重要である。
342
ポスター討議
DP-1-21-01
DP-1-21-02
バイクリルメッシュを用いたティッシュエキスパンダーによる
乳房再建
1
生体吸収性メッシュを併用した人工物乳房再建
1
3
昭和大学 医学部 形成外科、2 昭和大学 乳腺外科
森之宮病院 形成外科、2 大阪大学 医学部 形成外科、
森之宮病院 乳腺内分泌外科
藤原 貴史 1、矢野 健二 2、丹治 芳郎 3
草野 太郎 1、佐藤 信弘 1、中村 清吾 2、明石 定子 2、澤田 晃暢 2、
桑山 隆志 2、吉田 玲子 2、橋本 梨佳子 2
DP-1-21-03
DP-1-21-04
Brava を併用した脂肪移植による乳房再建~術前計画と術中組
織内圧モニタリングの重要性~
Upper Pole Expansion 法による乳房一次二期再建
1
ナグモクリニック名古屋、2 ナグモクリニック東京、
名古屋市立大学乳腺外科
1
3
2
山口 悟 1、南雲 吉則 2、遠山 竜也 3、吉本 信保 3、遠藤 由美 3
藤沢湘南台病院 形成外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
KO CLINIC 形成外科・美容外科、
4
横浜市立大学 大学院医学研究科 形成外科学、
5
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
6
東京医科大学 乳腺科
3
武藤 真由 1、佐武 利彦 2、黄 聖琥 3、長谷川 佳子 4、成井 一隆 5、
石川 孝 6、前川 二郎 4
【目的】遊離脂肪移植による乳房再建術の前後に Brava を連続装着することで、
組織内圧を下げて血流を増強し、さらに移植床スペースを拡張することで、
注入できる脂肪容量の増加や移植脂肪の生着率向上が期待できる。しかし乳
癌患者により健側乳房の形態と大きさ、体型、切除術式、乳房皮膚や大胸筋
の欠損や瘢痕の状況、照射有無が異なるため、1 回の脂肪移植量や治療回数が
大きく異なる。全体を見通した治療計画を立て、安全かつ良好な結果を得る
ためには、術前のプランニング、術中評価が重要である。当科での取り組み
について報告する。
【方法】遊離脂肪移植による乳房再建の前後(Brava 装着前、
術後 1 日目、術後 4 ヶ月目の計 3 回)で、3D 画像診断装置 VECTRA にて撮影
を行う。まず術前写真より再建側と健側乳房との容積の差異(欠損量)を算出
し、初回手術時と 2 回目以降の移植量のプランニングを行う。必要により 3D
プリンターによる鋳型モデルで移植前のシミュレーションを行う。手術時に
は移植床の大胸筋下(内)、皮下、瘢痕部にて、注入前後で圧モニターにて組
織 内 圧 を 測 定 し て 過 圧 を 避 け る。 こ の 数 値 を 指 標 に 経 皮 的 な needle
aponeurotomy を追加する。術後は 3 枚の経時的写真から移植脂肪の生着率
を評価して、2 回目以降の手術の参考とする。【結果および考察】2014 年 4 月
より現在までに、35 例で 3D 画像による術前プランニングと術中組織圧のモ
ニタリング、また一連で撮影した写真による生着率の評価を行った。脂肪生
着率の概算は 45 ~ 75%であった。VECTRA で撮影された写真にて、欠損量
の計算や手術のプランニングが容易となり、患者への説明に有用であった。
また組織圧は注入可能な脂肪量の術中の唯一の客観的な指標となった。問題
点として VECTRA は、撮影状況により乳房体積に若干の差異が生じることが
あげられる。
【はじめに】乳房の一次再建では、通常、大胸筋下を剥離してエキスパンダー
を挿入するが、直上の大胸筋が断裂したり、皮膚壊死をおこしたりすると、
エキスパンダーが露出して抜去しなければいけなくなる。われわれは乳房再
建を安全に行えるエキスパンダー挿入法を考案したので報告する。【方法】一
次再建は乳腺外科医と形成外科医の共同作業である。乳腺外科医は癌の完全
切除のために、乳癌直上の皮膚、乳頭乳輪、皮下脂肪、大胸筋の筋膜を切除
することもある。一方で形成外科医はエキスパンダーやインプラントの露出
を避けるために、それらの組織の温存を要望することがある。われわれの方
法は、再建のために乳腺外科医に制約を加えることは一切なく、乳腺外科医
は通常の胸筋温存乳房全摘術を行う。乳癌直上の皮膚と乳輪は切除され、皮
弁は薄層皮弁で、大胸筋の筋膜に関しては温存可能であれば温存とした。そ
の後、形成外科医が創部より大胸筋下を剥離してエキスパンダーを挿入する。
このとき尾側の大胸筋起始部を切離すると大胸筋が断裂してエキスパンダー
が露出しやすくなるため、第3肋間より頭側の剥離にとどめる。これを
Upeer Pole Expansion 法と命名した。術後半年以上経過した時点で、乳房下
溝切開から外腹斜筋上を剥離、被膜切開してエキスパンダーを抜去しインプ
ラントに置換する。【結果】2013 年 11 月より 2014 年 9 月までに名古屋市大病
院で胸筋温存乳房全摘術を行った 6 症例に対して、本法による一次二期再建を
施行した。4 例にインプラントの入れ替えを施行し、整容的結果は良好である。
2 例は現在エキスパンダーの拡張中である。【考察】一次再建ではエキスパン
ダーの露出を防ぐために被覆組織の温存が望まれる。しかし皮膚や大胸筋膜
に癌の浸潤が疑われる場合や乳頭への進展がある場合は温存が困難である。
われわれはエキスパンダーの大胸筋下挿入を頭側にとどめる、安全な挿入法
を考察し、良好な結果を得た。
343
一般セッション(ポスター討議)
【目的】海外において Acellular Dermal Matrix(以下 ADM)を併用した人工物
による乳房再建は標準的な術式として定着しているが、近年その代替物を利
用した方法も報告されている。我々も、ADM の代用としてバイクリルメッシュ
を併用した人工物乳房再建を行っており、その利点や注意点を含め経過につ
き報告する。
【方法】1. 一次一期再建として乳癌手術と同時にインプラントを挿入する場合
は、大胸筋外下方の sling としてバイクリルメッシュを使用する。Nipplesparing mastectomy(以下 NSM)後で mastectomy flap の血流が良好である
症例を適応としている。NSM 終了後、インプラントを挿入する部位の大胸筋
下を剥離し、大胸筋起始部を切離する。インプラントを挿入し、大胸筋で被
覆できない部分に対してバイクリルメッシュを縫着する。2. 一次二期再建と
して乳癌手術と同時にエキスパンダーを挿入する場合は、sling あるいは
patch としてバイクリルメッシュを使用する。大胸筋外下方の軟組織弁が不十
分な症例や大胸筋に部分欠損を生じている症例を適応としている。エキスパ
ンダーを挿入し、大胸筋および外下方の軟組織弁で被覆できない部分や大胸
筋の欠損部位に対してバイクリルメッシュを縫着する。
【結果】一次一期再建としてインプラント挿入に併用した症例は 5 例、一次二
期再建としてエキスパンダー挿入に併用した症例は 4 例である。放射線治療後
再発例で一次二期再建としてのエキスパンダー挿入に併用した 1 例で術後感
染を生じた。漿液腫やインプラントおよびエキスパンダーの露出を生じた症
例は無かった。エキスパンダー挿入例では expansion 中の皮膚軟組織の拡張
にも問題は無かった。
【考察】本法は、特に合併症を惹起することもなく簡便かつ安全に行え、ADM
の代用としてその役割を十分に果たしていると思われた。
はじめに ここ数年アメリカではティッシュエキスパンダーやインプラントに
よる乳房再建に Acellular dermal matrix( 以下商品名 AlloDerm) を用いた再
建の適応症例が増えてきており、その有用性が謳われている。しかしながら
同材料は日本では入手が難しい上に厚生省の認可もおりていないのが現状で
ある。今回われわれは、AlloDerm に替わる材料として吸収性組織補強材であ
るバイクリルメッシュを用いた再建を行ったので報告する。対象と方法 当院
にてエキスパンダーによる乳房再建手術を施行した 12 例 12 乳房においてバ
イクリルメッシュを使用した。一般的な AlloDerm の使用方法と同じく、大胸
筋にて覆いきれない外側下方部分をバイクリルメッシュにて被覆した。結果
全例において初回の注水量を増やしてもティッシュエキスパンダーを覆うこ
とが可能であった。また術後疼痛においても、いわゆる muscle pocket 法と
比較し少ない傾向にあった。手術時間においては大きな差はなかった。現時
点において感染を起こした症例はない。考察 バイクリルメッシュは臓器欠
損補強用材料として復壁瘢痕ヘルニアなど他の臓器に用いられることも多い
材料である。バイクリルメッシュを用いた乳房再建は muscle pocket 法と比
して、侵襲が少ない、つまり疼痛も少なく術後の浸出液も軽減でき、ひいて
は入院期間の短縮にもつながる可能性があると考えられた。短所としては人
工物である以上感染症のリスクが高いであろうということ、また保険適応と
はいえ医療費がかかるということなどがあげられる。 まだ症例が少なく検討
課題は多いが、おそらく浸出液、手術時間には影響を及ぼすであろうし、適
応 症 例 と し て は AlloDerm 使 用 例 の 報 告 に も 散 見 さ れ る よ う に、nipple
sparing mastectomy におけるダイレクトインプラント症例や乳房の大きい
症例に限られるであろうと考えられる。また術前に放射線療法を施行した症
例においては、血流の良い muscle pocket 法の方が良いであろうことも予想
できる。 また、根本的に日本人のような小さいサイズの胸において外側下
方を覆う必要性については、今後も検証が必要であると考えている。今後症
例を重ねて報告する。
ポスター討議
DP-1-21-05
DP-1-22-01
新しい、インプラントの決定法~相対評価とエキスパンダーの
拡張分析により、健側乳房の計測は不要とできる
当院における同時乳房再建術の現状と傾向
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 形成外科
1
2
原岡 剛一 1、藤井 奈穂 1、丸山 陽子 2、鄭 聖華 3、青松 直撥 3
越智 友洋 1、神保 健二郎 1、岡崎 憲二 1、神谷 有希子 1、小倉 拓也 1、
麻賀 創太 1、北條 隆 1、藤木 政英 2、宮本 慎平 2、木下 貴之 1
社会医療法人生長会 府中病院 形成外科、2 大阪市立大学 形成外科、
3
社会医療法人生長会 府中病院 乳腺外科
一般セッション(ポスター討議)
【目的】シリコン乳房インプラント(SBI)のサイズは、健側乳房の幅、高さ、
そして厚みを計測し、選択するのが一般的であるが、それは経験を必要とし、
簡単なものではない。我々は健側との相対評価と、ティシューエキスパンダー
(TE)の拡張を分析したデータを用い、健側乳房の計測を不要としているので
報告する。
【方法】本法を用いて SBI を選択し、3 ヶ月以上経過観察し得た 35 例を対象と
した。予め体外で TE を拡張させ、注入量による厚みの変化を計測し、データ
を作成しておく。SBI の選択は、初めに TE により拡張された乳房を健側乳房
と相対的に比較して “幅” と “高さ” を決めることから開始する。客観的な外見
に加えて、患者の意見も参考にする。例えば “幅” は、外見上綺麗でも、上腕
と干渉するなどで不快感が強い場合には小さめに変更する。“高さ” は、裸体
だけでなく下着や衣服を着用した状態での検討を追加し、希望があれば大き
めを選択する。最後に “厚み” を決めるが、上述のデータを用いると健側乳房
と厚みが等しくなった TE の注入量における、ポケット内の TE の厚みを求め
ることができる。その TE の厚みが、必要な SBI の厚みである。将来的な被膜
拘縮を考慮する際には大きめを選択することもある。この“幅”“高さ”と“厚み”
の値から SBI のサイズは自動的に決定される。
【成績】SBI のサイズに起因する問題は認めず、選択が容易かつ確実となった。
【考察】健側乳房の計測の難しさに加えて、ポケット天蓋の組織は TE により薄
く伸展されており、腹部の組織は厚いままであり、その計測結果をどのよう
に SBI のサイズに反映させればよいのか?と考えると SBI の選択はさらに難
しいものとなる。我々はこれまでに種々の方法による評価し、SBI の選択を試
みてきた。が、CT や MRI は撮影体位に、超音波は再現性に問題がある。そし
て 3D スキャンはあくまで体表からの形態評価であり、SBI の形態とは異なる
など問題があり実用化には至らなかった。一方本法は特別な装置を必要とせ
ず簡便で、術者の経験を要さない。加えて周辺の軟部組織の厚みも、自動的
に考慮されたことになる。また患者も人工物による乳房の膨らみを叩き台に
することができるので、SBI に入替後の再建像をイメージしやすいのも利点で
ある。ただし、体外での TE の拡張データを基にしているため、ポケットの内
腔圧によって TE の拡張具合が変化している可能性があることには留意が必要
である。
【背景】2013 年 7 月よりティッシュエキスパンダーの保険診療が認められ、早
期乳癌における乳房切除後一次再建は標準治療として広く普及してきた。
2013 年版乳癌診療ガイドラインではその適応は早期乳癌に対して推奨グレー
ド B と表記されている。しかしながら、その再建方法には施設間差があり、個々
の施設の判断に委ねられている現状である。そこで当院での一次再建におけ
る現状と傾向につき提示し、若干の考察を加え報告する。【対象・方法】2006
年 9 月~ 2014 年 7 月において当院で乳房切除後一次再建を行った原発性乳癌
245 例を対象とした。年代別に再建症例数の数と全症例に占める割合、進行度、
再建法を求めた。次に再建方法別に臨床背景を比較検討し、周術期合併症の
傾向について評価した。また、それぞれの無病生存率(DFS)を求め一次再建
の短期成績を比較した。【結果】当院での全乳房再建の割合は 2012 年以前で
9.2%、2013 年が 11.1%、2014 年で 13.0%と増加傾向にあった。対象病期
は stage0-1 が 2012 年以前で 65.5%、2013 年が 71.7%、2014 年で 87.5%
と増加傾向にあった。再建方法は 2013 年 -2014 年で人工物による再建が増
加傾向にあった。再建法別では、45 歳以下、BMI25 未満の症例では人工乳房
による再建例が有意に多かった(p < 0.001)。周術期合併症は、36 例 (14.7%)
に認め ( 出血 8 例、創感染 8 例、血流障害 20 例など )、再建方法による影響は
認めなかった。平均フォローアップ期間 25.2 ヵ月での短期成績では再発が 4
例 ( 腋窩リンパ節 2 例、胸壁、肺 ) 認められ、全て自家再建症例であった。対
側乳癌は 1 例に認めた。【結論】乳房全切除症例の一次再建は増加傾向にあり、
stage0-1 の早期癌に多く施行されている事が確認された。一次再建の短期成
績は良好であり、初期治療の選択肢の 1 つとして妥当であると考えられた。
DP-1-22-02
DP-1-22-03
乳房再建を踏まえた乳房切除の提案:皮膚切開線と TE 挿入時の
留意点
1
乳房一期再建術症例の検討
東京女子医科大学 内分泌外科
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター外科
坂本 明子、岡本 高宏、羽二生 賢人、永井 絵林、徳光 宏紀、吉田 有策、
尾身 葉子、堀内 喜代美
前田 拓摩 1、澤泉 雅之 1、棚倉 健太 1、宮下 宏紀 1、山下 昌宏 1、
松本 綾希子 1、今井 智浩 1、岩瀬 拓士 2
乳がん手術における皮膚切開線の設定は病変の浸潤度や腫瘍の位置・大きさ
により乳腺外科による決定が一般的であるが、再建症例を多数経験すると皮
膚切開線の設定や乳房切除の方法によって再建結果が大きく変わることを痛
感する。例えば胸部の高い位置に水平に切開された症例はインプラント挿入
時の工夫が困難になる上、自然な丸みが出せない。皮膚切除量が多い症例で
は乳房の表情がタイトになりどうしても下極の自然な膨らみは再建できない。
そこで当科では、皮膚切開線は内側下方から外側に抜ける S-shape line で、
乳房の下垂方向に垂直に切開線を設定することを推奨している。それは乳房
の皮膚余裕は下垂方向に最大限取ることができるため、余裕のある方向への
切除を行うことでかかる緊張を最小限にすることができるからである。さら
に腫瘍の大きさや位置、浸潤の程度に問題がなければ皮膚切除は行わない、
または最小限に留めるのが良い。皮膚の切除を行わない場合、温存される
mastectomy flap が大きくなるため皮弁壊死などの問題が生じる可能性が高
まるが、これは内胸動脈の温存や flap の厚みの確保により合併症の低減が可
能となる。 当科では TE 挿入時に muscular pocket 法を用いており、大胸筋
から腹直筋前鞘の連続性を重要視しているが、これらの 2 者が接合する第 7 肋
軟骨近傍の脂肪組織が温存されていないと剥離操作時に容易に離開してしま
う。また、外側の被覆には前鋸筋を用いるが、前鋸筋筋膜とその直上の脂肪
組織が温存されていれば、adipofascial flap として前鋸筋を挙上する必要が
なく、出血の可能性も低減できる。上胸部の組織温存が可能であれば鎖骨下
の陥凹を免れることができ、広背筋の前方の脂肪組織が温存できれば側胸部
の陥凹やこの周囲のリンパ浮腫、疼痛、違和感などの術後合併症も回避でき
る可能性がある。しかし、これらは乳腺外科医により切除が不必要だと判断
された部位の組織についてのみ再建を考慮した温存をすべきであり、温存あ
りきの切除ではないことを強調したい。乳腺外科医、形成外科医の連携をよ
り深め、再建に適した乳房切除が行われるためのポイントを考察を含めて報
告する。
【背景】乳癌治療において、再建術は患者の意思に委ねられるオプションの1
つであるが、早期乳癌において推奨されるものの、進行症例に対しては慎重
な検討が必要とされている。2007 年から 2014 年に当院で乳房切除と一期的
再建術を行った 52 例の乳癌症例について、その臨床病理学的な背景、行われ
た治療、および予後について後ろ向き解析を行った。【結果】観察期間の中央
値は 44 か月(8- 84か月)である。年齢は 27-71 歳(中央値 48.5 歳)。組織
学 的 腫 瘍 径 は 0-24 c m( 中 央 値 2.5 c m )。 乳 房 全 摘 術 の 際 の surgical
margin は全症例腫瘍細胞フリーであった。病期はステージ 0:1:2:3:4=4 例
(7.7 %):9 例 (17.3%):23 例 (44.2%):11 例 (21.2%): 5 例 (9.6%) で あ り、
ステージ 3 以上が 30.8%と、進行症例の占める割合が比較的多かった。再建
術式の内訳はインプラント 10 例、広背筋皮弁 15 例、腹直筋皮弁 27 例。全体
の予後をみると、局所再発は5例(9.6%)、遠隔転移は 13 例 (25%) に認めら
れ、4例が再建後に乳癌死していた。( 疾患特異的死亡率 7.6% )。ステージ
別での経過をみると、ステージ3以上では全例が術前化学療法後の症例であ
る。ステージ3の局所再発は2例(18.2%)に認められた。遠隔転移は7例
(63.6%)に認められ、DFI の中央値は 27 か月(4- 72か月)であった。2 例
が癌死している。( 再建後 19 か月、23 か月 ) ステージ 4 は 5 例に行われ、術
前化学療法後に局所および転移巣の制御が画像診断で得られた背景が主であ
る。局所再発は1例に認められ、遠隔転移(制御されていた転移巣の再燃、も
しくは新規転移病変の出現)が 3 例(60%)に認められた。(DFI 中央値 14
か月)2 例が癌死した。(再建後 33 か月、77 か月)全ステージにおいて、臨
床病理学的因子と再発転移を検討すると、Ki-67 高値(20%以上)、トリプル
ネガティブの因子が、再発転移と有意に相関している。一方、年齢、腫瘍サ
イズ、再建術式に関しては、再発転移との有意な相関性は認めなかった。一
期的乳房再建術の選択の際は、進行度 ( ステージ )、Ki-67, subtype の各因子
が関わる再建後の予後について留意し、希望患者への情報提供と共に慎重な
検討が重要と考えられた。
344
ポスター討議
DP-1-22-04
DP-1-22-05
一次二期再建におけるエキスパンダー / インプラント喪失に術
後化学療法が与える影響の検討
1
乳房同時再建後の化学療法施行症例の検討
福岡大学 医学部 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科
相原病院 乳腺科、2 ブレストサージャリークリニック
榎本 康子、吉永 康照、中村 茉美花、山下 眞一、岩崎 昭憲
相原 智彦 1、清水 宏 1、早川 昌子 1、岩平 佳子 2
【はじめに】近年、乳癌治療は生存率だけでなく QOL の向上も重視している。
整容性に関しては乳房温存術には限界があり、早期乳癌に対する同時乳房再
建術は標準的な治療となり、乳癌診療ガイドラインでも推奨グレード B に位
置づけされている。当院では形成外科と連携をし、同時乳房再建術を積極的
に行っている。2012 年 9 月に組織拡張器が保険適応となったのを皮切りに
2014 年 1 月からは人工乳房が保険適応となり、同時再建症例は増加している。
同時再建は術後化学療法の開始時期、局所再発、再発診断には影響しないと
いう結果は出ているが、同時再建後の術後化学療法の安全性については報告
が少ない。【対象・方法】2006 年 1 月から 2014 年 8 月までに施行した同時乳
房再建術 106 症例の中で、術後化学療法を施行した 20 症例について、レトロ
スペクティブに検討した。【結果】同時乳房再建 106 症例中、術後化学療法を
施行したのは 20 例 (18.9%) であった。平均年齢 44.8 歳 (28-66 歳 )、術式は
NSM:8 例、SSM:4 例、Bt:8 例。再建方法では、TE 挿入:15 例、広背筋
皮弁:4 例、下腹壁動脈穿通枝皮弁:1 例であった。リンパ節転移陽性 10 例 ( 平
均リンパ節転移 2.7 個 ) に対しては腋窩リンパ節廓清を施行し、リンパ節転移
陰性 10 例についてはセンチネルリンパ節生検のみ施行し、腋窩リンパ節廓清
は省略した。病理:全例が浸潤性乳管癌、平均腫瘍浸潤径 23.9mm、サブタ
イプでは、ルミナール A:4 例、ルミナール B HER2 陰性:8 例、ルミナール
B HER2 陽性:6 例、HER2 タイプ:1 例、トリプルネガティブ:1 例であった。
術後化学療法は A( アンスラサイクリン系 ) → T( タキサン系 ):10 例、A のみ:
3 例、T のみ:7 例であり、HER2 陽性には全例に対し抗 HER2 薬を施行した。
有 害 事 象 と し て、 発 熱 性 好 中 球 減 少 症 4 例 (20%)、 好 中 球 減 少 グ レ ー ド
1/2/3:4/6/10 例 (20/30/50%)、末梢神経障害 17 例 (85%)、消化器症状グ
レード 3 以上 4 例などを認めた。TE 挿入を行った 1 例が化学療法施行中に TE
感染を生じ、TE を抜去した。【考察・結語】同時乳房再建術後の化学療法施行
に関しては安全に行えるものと考えるが、今回、TE を抜去せざるを得なかっ
た 1 症例を経験したため、細心の注意が必要だと思われる。化学療法施行中は
視触診をはじめ身体所見、血液検査所見が重要であり、再建乳房への注意が
必要である。また、化学療法施行中、再建乳房の状態把握、異常時はすぐに
病院を受診するなど徹底した患者教育も必要だと考える。
DP-1-23-01
DP-1-23-02
1
1
乳房再建が乳がん治療に与えるインパクト
エキスパンダーを用いた人工乳房再建時の感染リスク因子の検討
横浜市立みなと赤十字病院 乳腺外科、
2
横浜市立みなと赤十字病院 形成外科、
3
横浜市立みなと赤十字病院 病理診断部
1
2
1
3
1
2
吉田 敦 1、猪股 直美 1,2、尹 玲花 1,2、竹井 淳子 1,2、岩平 佳子 1,2、
磯村 智子 1、林 直輝 1、矢形 寛 1、中村 清吾 3、山内 英子 1
2
清水 大輔 、矢野 智之 、河手 敬彦 、島 秀栄 、石井 義剛 、伊藤 理 、
熊谷 二朗 3
【背景】乳房専用エキスパンダー・インプラントの保険適応により乳房再建手
術が、乳がん治療においてより身近なものとなってきた。当院では、同時再
建としてコーケンティシューエキスパンダー挿入を行ってきたが、2013 年 9
月より乳房専用エキスパンダー・インプラント (Ex) 導入とともに、広背筋皮
膚弁 (LD) と深下腹壁動脈穿通枝皮弁(DIEP)による同時再建手術の提供を始
めた。再建と乳がん治療の関係を知ることは、医療の質向上にとって有用な
情報となる。【目的】新たな再建方法の導入の、乳がんの治療に対する影響を
検討する。【対象と方法】2011 年 4 月から 2014 年 12 月まで当院で手術を施行
した、原発性乳癌 421 例を対象とした。2013 年 9 月以前の 181 例(前期)と
以後の 240 例 ( 後期 ) について、乳房術式、再建率、再建方法、年齢、術後断
端陽性率、過大切除率について検討した。過大切除の定義は、術前診断から
乳房切除を行った症例で、術後病理で 2.0cm 以下の広がりで、温存が可能で
あったと考える症例とした。また、後期については、乳房再建方法と患者背
景(年齢、BMI、ステージ、サブタイプ、乳房の大きさ、挙児希望、家族構成)
について検討を行った。【結果】年齢は前期で平均 58.7 歳(中央値 58 歳)、後
期で平均 55.7 歳 ( 中央値 52 歳 ) と年齢が低下する傾向があった (p=0.089)。
前期、後期における乳房温存率は、47.5%、50.8%と差を認めず、乳房再建
率は前期 31%、後期 56.7%と上昇していた。断端陽性率は、前期で 6.62%、
後期で 4.58%、過大切除率は、前期で 10%、後期で 12%といずれも有意差
を認めなかった。後期における乳房再建方法は、Ex22 例 40.7%、LD 25 例
46.3%、DIEP 7 例 13.0%であった。平均年齢は Ex LD DIEP で 45, 46, 52
歳と DIEP で年齢が高い傾向がみられた。乳房のサイズが D Cup 以上の症例は
Ex LD DIEP で 17, 8, 57%と DIEP で多く、下垂についても同様の傾向が認
め ら れ た。Ex,LD,DIEP で、 結 婚 は、82, 92, 100%、 出 産 歴 は、36, 68,
100%、挙児希望は 13, 24, 0% と DIEP において特徴が認められた。【結語】
再建の導入は、乳房の過大な切除を助長することはなく、また、断端陽性率
には大きな影響を与えなかった。新たな乳房再建の導入により、乳房再建の
比率は著明に上昇し、患者年齢は低下した。再建のニーズは高く、かつ、多
様であることが示され、各種再建方法を提供できる環境の整備が必要である
と考えた。
聖路加国際病院 乳腺外科、2 ブレストサージェリークリニック、
昭和大学 医学部 乳腺外科
【背景】2013 年にティッシュエキスパンダー(以下、エキスパンダー)を用い
た人工乳房再建が保険適応となり、エキスパンダーを用いた人工乳房再建を
選択する患者は増加傾向にある。人工乳房再建の合併症の中でエキスパンダー
感染は術後早期から晩期にかけてもなお認められる合併症であり、人工物を
用いた乳房再建の 2 ~ 10%に生じると報告されている。エキスパンダー感染
のリスク因子としてリンパ節廓清、放射線療法、一期的再建、術前化学療法、
Nipple sparing mastectomy、肥満、年齢、喫煙、高血圧などが報告されて
いるが、国内からの報告は少ない。そこで、当院でエキスパンダー感染のリ
スク因子について検討を行った。【方法】2012 年 1 月 1 日~ 2014 年 7 月 31
日の期間に乳房全摘術と同時にエキスパンダー挿入による人工乳房再建を
行った全患者を対象に、感染リスクと考えられる各項目(年齢、Body Mass
Index (BMI)、手術時間、ドレーン留置期間、喫煙、エキスパンダーの容量、
組織型(浸潤癌、非浸潤癌)、手術前後の化学療法の有無、放射線療法の有無)
について感染の有無との関連をカイ二乗検定を用い検討し、関連が考えられ
る項目に関し多変量ロジスティック回帰分析で検討した。また感染は穿刺液
の培養で細菌を検出したものを陽性とし、発熱や発赤のみは除いた。【結果】
対象女性 566 名中、感染は 38 名で認められた(6.7%)。対象集団の年齢は 45
歳(24-73 歳 )( 中 央 値 ( 範 囲 ): 以 下 同 様 )、 手 術 時 間 は 126 分(59-424)、
BMI は 20.7(15.4-33.4)、ドレーン留置期間は 5 日(2-18 日)であった。カ
イ二乗検定では、BMI(25 以上:p=0.001)、ドレーン留置期間(6 日以上:
p=0.038)、エキスパンダー容量(450ml 以上:p < 0.001)、組織型 ( 浸潤癌:
p=0.022) が感染と有意な相関を認めた。多変量解析では BMI(25 以上:オッ
ズ比 2.881 95% 信頼区間:1.113-7.454 p < 0.001)のみが有意な因子と
なった。【結論】BMI が 25 以上であることが、エキスパンダー容量の大きさや、
ドレーン留置期間と関連し、人工乳房再建後感染リスクとなることが考えら
れた。BMI 高値の患者での人工物再建ではこのことを念頭に置いた治療計画
が必要と考えられる。
345
一般セッション(ポスター討議)
【背景および目的】人工物による乳房再建術において、エキスパンダー / イン
プラント喪失に術後化学療法が悪影響を与えるか否かは明らかでない。その
ため、自験例でエキスパンダー / インプラント喪失に至る合併症と術後化学療
法との関係を後方視的に検討した。【対象および方法】対象は、当院で平成 19
年 4 月から平成 26 年 6 月までに乳房切除後に人工物による乳房再建を行った
全 73 例のうち、一次二期再建を完了もしくは合併症のためにエキスパンダー
/ インプラントを喪失した 46 例(乳房温存術後の局所再発症例を除く)。カル
テレビューによる検討を後方視的に行った。【結果】観察期間中央値 33 か月。
化学療法のレジメンは AC が 3 例、AC+DTX が 7 例、AC+PTX が 7 例、PTX が
1 例、UFT が 1 例であった。全例でテクスチャードタイプのエキスパンダーと
コヒーシブシリコンインプラントを使用した。化学療法を行わなかった 27 例
で感染を疑い抗生剤を投与したのは 1 例で、エクスパンダ―/ インプラント喪
失例はなかった。化学療法を行った 19 例で化学療法中に感染を疑い抗生剤を
投与したのは 6 例、エクスパンダ―喪失は 2 例、インプラント喪失は 2 例であっ
た。これら 4 例のエクスパンダ―/ インプラント喪失例には放射線療法を行っ
ておらず、化学療法を完了してインプラント挿入後に放射線療法を行った 9 例
では喪失に至る合併症を認めていない。【結論】人工物による一次二期再建例
に術後化学療法を行うことで、エクスパンダ―/ インプラント喪失の危険性が
高くなることが示唆された。
ポスター討議
DP-1-23-03
DP-1-23-04
1
1
切除生検、温存手術後の全摘手術に対する乳房再建術の問題点
一次乳房再建における組織拡張器挿入術後の感染率の検討
がん・感染症センター 都立駒込病院 形成再建外科、2 同・乳腺外科
多摩総合医療センター 形成外科、2 埼玉県立がんセンター 形成外科、
埼玉県立がんセンター 乳腺外科、4 多摩総合医療センター 外科、
5
東京女子医科大学 形成外科
3
谷口 浩一郎 1、寺尾 保信 1、森山 壮 1、黒井 克昌 2、山下 年成 2、
有賀 智之 2、宮本 博美 2、堀口 和美 2、井寺 奈美 2、本田 弥生 2
一般セッション(ポスター討議)
目的・方法:切除生検や温存手術は皮膚に瘢痕を生じ、その後の全摘手術時
に瘢痕を含めた切除を必要とする為、皮膚欠損量が通常より多くなる。乳房
再建では残存皮膚量が整容性に反映されることも多く、皮膚欠損範囲によっ
ては人工物による再建が困難な場合もある。当院で最近 10 年間に施行した乳
房再建患者を後ろ向きに調査し、何らかの外科的手術施行後に乳房再建を施
行した患者を調査し、手術に対する注意点やその対策の検討を行った。結果:
2005 年 1 月から 2014 年 12 月の 10 年間に都立駒込病院で行った乳房再建
769 例のうち、外科的手術後に全摘手術を施行した再建患者は 75 例(9.8%)
(一次 64 例 二次 11 例)であった。切除生検もしくは温存手術後の断端陽性
に対する放射線照射のない全摘は 58 例(一次 51 例、二次 7 例)、温存手術後
に放射線照射を行った後の再発に対する全摘は 17 例(一次 13 例、二次 4 例)
であった。再建法の内訳は組織拡張器が 53 例(一次 45 例、二次 8 例)、広背
筋皮弁が 5 例(一次 4 例、二次 1 例)、腹直筋皮弁が 17 例(一次 15 例、二次 2 例)
であった。非照射例で皮膚伸展不良による広背筋皮弁付加が 2 例、術後放射線
照射による乳房インプラントの感染抜去が 2 例であった。また、放射線照射後
の患者に対する再建での人工物の感染抜去例は見られなかった。自家組織再
建では皮弁壊死は認めなかった。考察:皮膚欠損が大きい場合は、組織拡張
器による同時再建が困難な場合もあり、閉創不可能な場合は自家組織による
再建が必要となる。また、温存手術により大胸筋筋膜が切除されている場合は、
全摘時に大胸筋表面の部分的な切除を伴うことが多く、組織拡張器の被覆に
は弱点である。しかし創部直下や乳頭位置を大胸筋で覆えれば、TEを完全
に被覆せずとも再建に問題は生じない。皮膚の放射線障害が落ち着いていれ
ば再建に影響はない結果であった。また、組織拡張器のみによる再建が困難
な場合は広背筋弁を付加する等の工夫を行うことで満足いく結果を得ること
が出来る。一方、自家組織による再建では皮島の露出範囲が大きくなり、二
次再建においても皮膚切除量が多い場合は瘢痕が頭側よりに位置する可能性
があるため、整容性に問題を残す。切除生検、温存手術などの外科処置後の
患者に対する乳房再建術を計画する際には、瘢痕の状態、および皮膚切除範
囲の確認が重要でありこれを踏まえた患者への説明も必要である。
久保 和之 1、濱畑 淳盛 2、齋藤 喬 2、松本 広志 3、高見 実 4、樋口 良平 1、
櫻井 裕之 5
【諸言】人工物を使用する手術において、感染の発生は患者に入院期間の延長
や、洗浄・抗生物質投与等の治療による身体的・経済的負担を強いることに
なる。さらに感染が一旦生じると、その後の治療にもかかわらず埋入した人
工 物 の 抜 去 を 余 儀 な く さ れ る 場 合 が 少 な く な い。 組 織 拡 張 器(tissue
expander: TE)による乳房再建においても感染は最も避けなければならない
合併症の一つであると言える。今回、当科における一次乳房再建での組織拡
張器挿入術後の感染について検討したため報告する。【対象・方法】2006 年 7
月~ 2014 年 12 月の期間に、乳癌に対して乳房切除術後に TE による一次乳房
再建を施行した 140 例(131 症例・両側乳癌症例が 9 例)を対象とした。TE 挿
入後の感染率・感染時期・使用した TE の種類等について検討した。感染に関
しては、乳房インプラントまたは自家組織による二期再建が施行されるまで
に発生したものを対象とした。【結果】140 例中、5 例(3.5%)で術後感染によ
り TE の抜去を施行した。感染以外の創部合併症(胸部皮弁の壊死や創離開な
ど)により TE を抜去した症例はなかった。感染を発生した時期は全例術後 1
か月以内であり、予定注入量まで注入した後の感染発生は認めなかった。感
染により TE を抜去した症例では、全例放射線照射は施行していなかった。TE
の種類別の感染率は、スムースタイプの TE では 99 例中 3 例(3.0%)、テクス
チャードタイプでは 41 例中 2 例(4.9%)であり、両者に有意差は認めなかっ
た。
【考察】今回の検討では、感染を発生した時期は全例術後 1 か月以内であり、
注入が終了したあとの二期再建までの待機期間には発生はなかった。このこ
とから、当然ではあるが手術操作および術後早期の創部管理が感染率の低下
に関して重要であることが示唆された。術後抗生物質投与期間の延長や、ド
レーンの本数や位置の変更が創部感染率に影響したという報告があり、この
ような創部管理の改良を継続し、症例を重ねて検討することが必要と考えら
れた。TE を使用した乳房再建術は、保険収載も後押しとなり、今後ますます
施行数が増加することが予想される。今後さらなる検討を重ね、合併症発生
率の低下につなげていきたいと考えている。
DP-1-23-05
DP-1-24-01
1
1
ティッシュ・エクスパンダーやインプラントの合併症
一次乳房再建 乳頭乳輪温存症例の治療成績に関する検討
国際医療福祉大学 三田病院 形成外科・美容外科、
2
慶応義塾大学 形成外科
名古屋大学大学院 腫瘍外科学、
名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科、
3
名古屋大学医学部附属病院 形成外科
2
酒井 成身 1、種子田 紘子 1、渡海 由貴子 1、酒井 成貴 2、中村 友季恵 2
【目的】ティッシュ・エクスパンダーやインプラント(以下人工乳房)が乳房再
建において保険適応になったが、合併症に悩んでいる患者が多くみうけられ
る。経験した人工乳房の合併症は 138 例になるが、ほとんどが他院から来院
したものである。これらを分類しその症状や状態とその対処法を検討する。
【分
類】1)人工乳房の破損・パンク・劣化 32 例。2)人工乳房の露出とそれに伴
う感染、23 例。3)人工乳房周囲のカプセル形成とその拘縮、それに伴う疼痛、
形態異常、22 例。4)左右の形態異常と左右差(これには術直後からの左右差
も含め)、15 例。5)人工乳房不適応による左右差、周囲の陥凹変形、15 例。6)
術後の位置移動、13 例。7)皮膚表面の rippling( 波打ち )、7 例。8)長期経
過による健側との左右差、6例。9)挿入口(特に腋窩部)の瘢痕拘縮と疼痛、
5 例。であった。【対策と修正手術】原因や何らかの修正では、1)人工乳房は
いつかは劣化・破損する。長期間の挿入では劣化し内容物が漏れて肉芽腫を
つくる。2)露出は合併症の中で一番修復が困難であり、人工乳房の適応が間
違っていて表面組織が薄いところに挿入している例が多く、手術中に何らか
の厚い組織(筋膜や筋で覆うなど)が必要である。いったん露出してしまうと
は膚縫合で修復することは基本的に無理で、何等かの皮弁や筋皮弁でカバー
しないと修復できないことが多い。露出は感染を起こすことが多く、治療を
更に困難にする。3)カプセル形成は拘縮を起こすと球状に変形し、硬く疼痛
を伴ってきて、石灰が沈着し卵の殻のようになると人工乳房を破損する。4)
最初から左右差のあるのは挿入時の問題である。5)人工乳房周囲の組織不足
陥凹は人工乳房が不適応であり、自家組織組織の適応である。6)当初左右対
称で非常によい位置にあったものが何年かの経過とともに位置がずれてくる
場合がある。7)波打ちは表面の皮膚が薄く柔らかい場合に起こりやすい。波
打ち部に脂肪注入などを試みるが、治療は困難である。8)長期挿入では健側
が下垂してくることがほとんどで、それには健側の乳房縮小固定を行う。9)
腋窩からの挿入は瘢痕や疼痛の原因になることがある。【考察】これら合併症
を防ぐには適応をしっかりと見極め、手術中も表面組織を薄くしないなど合
併症をおこさないための工夫を常に考える必要がある、これらを症例ととも
に提示する。
角田 伸行 1,2、村田 嘉彦 1、武内 大 2、中西 賢一 2、都島 由希子 2、
林 裕倫 2、菊森 豊根 2、亀井 譲 3、梛野 正人 1
【背景と目的】シリコン・インプラントを用いた乳房再建が保険収載されたこ
とにより、一次乳房再建を行う機会が急増している。これに伴い、乳頭温存
乳房切除と一次再建を併施する症例も増えつつあるが、その適応は未だ確立
されていない。本調査では当院で実施した一次乳房再建のうち、乳頭温存乳
房切除を行った症例を中心に検討を行った。【対象】1997 年 1 月より 2014 年
12 月の期間に一次乳房再建を行った症例を対象とした。【結果】115 乳房 110
症例(異時両側 3 例、同時両側 2 例)に対して一次乳房再建が行われていた。
年齢の中央値は 44 歳(23 ~ 72 歳)、術後観察期間の中央値は 52 ヶ月(0 ~
210 ヶ月)であった。このうち乳頭温存乳房切除は 31 例で、年齢の中央値は
45 歳(23 ~ 72 歳)、術後観察期間の中央値は 44 ヶ月(0 ~ 183 ヶ月)であっ
た。自家組織による一次一期再建が 29 例(遊離腹直筋皮弁 20 例、広背筋皮弁
9 例)、組織拡張器 Tissue Expander(以下 TE)を挿入した一次二期再建は 2 例。
組 織 型 は 浸 潤 性 乳 癌 が 17 例(pN0 15 例、pN1a 1 例、pN3a 1 例 )で、
Luminal type 15 例・Luminal HER2 type 1 例・HER2 type 1 例であった。
非浸潤性乳癌は 14 例(全例 pN0)で、Luminal type 12 例・Luminal HER2
type 1 例・不明 1 例であった。非浸潤癌のうち 4 例で HER2 score 2+ であっ
たが、FISH 検査は未実施であったので Luminal type として扱った。全症例
で乳頭直下の切除断端を術中迅速診断へ提出し、癌陰性を確認されていた。
Luminal type の浸潤癌 1 例が術後 2 年 9 ヶ月で再発しており、同側腋窩およ
び頚部リンパ節と同側大胸筋内に再発巣を認めたが、温存乳頭下に病変はな
かった。一方、一次乳房再建を行った 110 例全体では 6 例(乳頭温存の 1 例を
含む)が再発を来しており、全例で遠隔再発を伴っていた。【まとめ】乳頭温存
乳房切除および一次乳房再建を併施した 31 例中 1 例で再発を認めたが、温存
乳頭下の再発は0例であった。少数例かつ短い観察期間での検討である為、
解釈に注意は要するが、適切に症例選別は行われていると考えられた。
346
ポスター討議
DP-1-24-02
DP-1-24-03
札幌ことに乳腺クリニック
1
Nipple sparing mastectomy 症例の検討
乳頭温存乳房切除術(NSM)の安全性に関する検討
3
三神 俊彦、増岡 秀次、白井 秀明、下川原 出、浅石 和昭
土井 卓子 1、井上 謙一 1、荒井 学 1、堤 千寿子 1、合田 杏子 1、
井上 としお 1、川崎 あいか 1、田中 佳和子 2、須田 嵩 2、佐々木 毅 3
目的:インプラントを用いた乳房再建術が保険適応になり、NSMが多く行
われるようにった。評価がまだ十分ではないこの術式の安全性について検討
した。対象:2011 年 4 月から 2014 年 12 月までに当院、他院でNSMを施行
し、経過観察中の 81 人 87 乳房を対象にした。腋窩はセンチネール生検(SN)
68 例(78.2%)、SN→Ax 8 例(9.2%)、廓清 6 例(6.9%)、施行せず 5 例
(5.7%)であった。組織拡張期(TE)留置は 51 例(59.8%)、インプラント(I
MP)留置は 2 例(2.3%)であった。乳頭の癌進展を術中迅速病理で確認して
いる。方法:皮弁状態(壊死、菲薄化、乳頭壊死など)、感染、TEやIMP
トラブル、病理結果、再発の有無を検討した。結果:皮弁の合併症は 10 例
(11.5%)に発生し、広範壊死 1 例(1.1%)、小範囲 6 例(6.9%)、菲薄化 2 例
(2.3%)、乳頭びらん 5 例(5.7%)、壊死0であった。2011 年から 12 年前半
に発生し、術者の手技向上とともに減少、2013 年から術前画像評価から癌進
展を評価、部位別に皮弁の厚さを決定するように変更し合併症はなかった。
感染は 13 例(14.9%)に発生、皮弁壊死に伴うもの 3 例(壊死症例の 43%)、
壊死と無関係 10 例(正常皮弁の 12.5%)で、TE、IMP留置例が 9 例(留置
の 17%)で、抜去は 3 例(5.7%)であった。病理結果で、術中迅速で乳頭裏面
追加切除が 2 例(2.3%)、乳頭切除へ変更 1 例(1.2%)であった。永久標本で
リンパ管侵襲や剥離面から照射必要が 2 例(2.3%)あり、再建後に照射した。
乳房内がん再発は 4 例(4.6%)みられ、2 例はいずれも一時一期IMP症例で、
皮下多発再発であり、脂肪層の癌遺残によると思われた。2 例は一時二期TE
症例で、腋窩方向の 1 か所再発で、病理結果から多発癌の取り残しと遺残乳腺
での発生と思われた。結語:皮弁壊死は術者の手技と関連し、感染は皮弁壊
死とTE留置と関連した。迅速病理は乳頭再発予防に有用と思われた。再発
は 5%だが、腋窩方向に取り残しやすく、一時一期IMP再建は癌の取り残し
が非常に多く、再発リスクが高かった。手技に習熟し癌の広がりを検討して
慎重に行うことが必要と考えられた。
DP-1-24-04
DP-1-24-05
1
1
皮下乳腺全摘後の再建乳房局所再発に関する検討
当教室における Nipple (Skin) sparing mastectomy の検討
横浜市立大学付属市民総合医療センター 乳腺・甲状腺外科、
2
横浜市立大学付属市民総合医療センター 病理部、
3
横浜市立大学大学院医学研究科 消化器・腫瘍外科、4 東京医科大学 乳腺科、
5
横浜市立大学大学院医学研究科 がん総合医科学
足立 祥子 1、成井 一隆 1、山田 顕光 1、田辺 美樹子 2、島 秀栄 3、
喜多 久美子 3、菅江 貞亨 3、市川 靖史 5、石川 孝 4、遠藤 格 3
【背景】広範な乳管内進展を伴う乳癌や多発乳癌では,乳房温存術によって整
容性を保つことは困難である.当科ではそのような症例に対して,形成外科
と連携し,皮下乳腺全摘、自家組織による一次一期乳房再建を積極的に行っ
ている.今回,皮下乳腺全摘後の局所再発について検討した.【対象】2004 年
10 月から 2013 年 12 月に,当院で原発性乳癌に対して皮下乳腺全摘と自家組
織による一次一期再建を施行した 224 例を対象とした.【結果】平均年齢は 43
歳(23~65 歳 )で, 治 療 前 Stage は 0:100 例,I:48 例,II:67 例,III:9 例,
術後観察期間の中央値は 4.3 年であった.断端陽性は 24 例にみとめたが,断
端陽性例には局所再発はなかった.再発例は 10 例(4.4%)で,局所再発が 5
例(2.2%),遠隔転移が 5 例(リンパ節転移:2 例,骨転移:2 例,肺転移:1 例)
であった.局所再発 5 例の,手術から局所再発までの平均期間は 28.5 か月
(17.5-52.2 か月)で,発見の契機はいずれも腫瘤自覚であった.原発巣は 4
例 が ductal carcinoma in situ(DCIS)
,1 例 は mucinous carcinoma
で,全例で断端は陰性であった.また、初回手術時に DCIS であった 4 例の再
発巣はいずれも invasive ductal carcinoma(IDC)であった.再発部位は,
原発巣の直上皮膚が 2 例,原発巣とは離れた部位が 2 例で,残りの 1 例は原発
巣直上皮膚と離れた部位のいずれにも認める多発病変であった.いずれの症
例も再発巣を切除し,術後適切な補助療法を行うことで現在まで再々発を認
めていない.【考察】断端陽性例で局所再発を認めなかった一方で,永久標本
で断端陰性であっても術後経過中に局所再発を認めた.いずれの症例も再発
巣は浸潤癌であったが,適切に治療することで制御可能と考えられた.
群馬大学 医学部 乳腺内分泌外科、2 群馬大学 医学部 病理診断学
長岡 りん 1、堀口 淳 1、高他 大輔 1、佐藤 亜矢子 1、時庭 英彰 1、
樋口 徹 1、内田 紗弥香 1、坪井 美樹 1、菊地 麻美 1、小山 徹也 2、
竹吉 泉 1
【目的】近年、乳癌術後の乳房再建が保険適応になり、乳房再建を行う症例が
増加する中で、Nipple (Skin) sparing mastectomy の適応も拡大しつつある。
従来の乳房切除術と比較して局所制御や予後には差がないという報告も多い
が、
その安全性はまだ確立されたものではない。
今回、
当教室での Nipple (Skin)
sparing mastectomy の治療成績を報告する。【対象と方法】1996 ~ 2014
年までに Nipple (Skin) sparing mastectomy を施行した原発性乳癌 163 例
に対し、切除断端状況と局所再発率、および予後について検討した。乳頭直
下断端が術中迅速診断または永久標本で陽性となった場合、乳頭切除を追加
し、Skin sparing mastectomy を施行した。【結果】平均年齢は 47.1 歳。観
察期間中央値は 39.8 ヶ月。Stage0:37 例、Stage1:54 例、Stage2:57
例、Stage3:15 例で、術前化学療法施行例は 26 例(20%)だった。断端陽性
例は 14 例 (8.6%) で、そのうち 7 例に乳頭切除を追加した。断端状況は局所
再発の危険因子であった。局所再発率は 4.3%(7 例)であり、乳頭乳輪下再
発に限ると、3.1%(5 例)であった。同時期に施行した乳房切除術の局所再
発率と比較すると、Nipple (Skin) sparing mastectomy 後の局所再発率は高
かったが、局所再発後の予後は乳房切除術を施行した群より有意に良好であっ
た。また、乳頭乳輪下再発例に限ると、局所再発をしていない群と比較し予
後に差はなかった。【まとめ】Nipple (Skin) sparing mastectomy 後の乳頭乳
輪下再発は予後に影響を与えず、断端に留意すれば、整容性と根治性をかね
た有用な術式であると思われる。
347
一般セッション(ポスター討議)
Nipple sparing mastectomy(NSM) は乳頭を温存し整容性をいくらか保つ方
法として主に乳房のサイズの小さい症例に施行してきた。現在インプラント
による乳房再建が保険適応となりその適応等につき慎重な配慮が必要である。
今回、当院の症例の評価を行った。【対象】平成 6 年 1 月から平成 26 年 12 月ま
でにNSM施行例 130 例である。【結果】対象例の平均年齢は 48 才 (21 才~
75才)、病期はStage0 19例(14.6%)、I 63例(48.5%)、IIA 37例(28.5%)、
IIB 11例(8.5%)であった。乳頭部の部分壊死9例、乳頭乳輪部の脱色17例に
認められた。乳頭部再発は8例(8/145・5.5%)、皮弁再発は7例(7/130・5.4%)
であった。病理学的に乳頭断端陽性と判定されたのは全体のうち9例、皮膚断端
が近接されていると判定されたのは7例であった。乳頭断端陽性例中の乳頭断端
再発は2例(28.6%)、皮膚近接例のうち胸壁再発も2例(22.2%)であった。乳
頭部再発例のうち7例は腫瘤形成で再発し、1例はPaget様の再発を示した。同
時にSCリンパ節と肺転移を1例ずつ認めた。再発までの平均期間は63.4 ヶ月(9
~ 208 ヶ月)であった。Stage別ではStage0 1例、I 4例、II 3例であった。
全例乳頭乳輪切除+放射線治療を受け局所再発に限局している症例はその後の
再発を認めていない。他方、胸壁再発例は同時に2例にPS/SCリンパ節再発を
認め、1例で肝転移を認めた。乳頭再発例では死亡例は無かった。
【考察・結語】
正確な乳頭断端および皮弁断端の診断は永久標本でも困難であると考えられる
が、たとえ断端陽性でも実際の再発率は20%程度であった。また、乳頭再発・
皮弁再発を来たしても生命予後への影響は軽微と考えられた。しかし、乳房再
建後の再発は極力軽減する必要性があり画像診断の正確な読影を含め検討して
いきたい。
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター、2 さつき台診療所、
東京大学病理学研究室
ポスター討議
DP-1-25-01
DP-1-25-02
Vertical 型切開を用いた Skin-sparing mastectomy の乳房
皮弁血流
1
人工物を用いた skin-sparing mastectomy 時おける拡大傍乳
輪切開の有用性
東京医科歯科大学 形成・再建外科学、2 東京医科歯科大学 乳腺外科
1
1
2
森 弘樹 、岡崎 睦 、中川 剛士 、永原 誠
1
2
神鋼病院 乳腺科、2 神鋼病院 形成外科
山神 和彦 1、結縁 幸子 1、松本 元 1、出合 輝行 1、橋本 隆 1、奥村 興 2
一般セッション(ポスター討議)
《目的》Skin-sparing mastectomy(SSM) における乳房皮弁壊死の合併につい
ては多く報告されているが、切開法別における報告は少ない。今回我々は
Vertical 型切開を用いた SSM の乳房皮弁血流と対処法について検討したので
報告する。《対象・方法》2008 年から 2014 年に Vertical 型切開の SSM を用い
て深下腹壁動脈穿通枝皮弁 (DIEP) による乳房再建を行った 32 例 33 側を対象
にした。切開線は乳頭乳輪をくり抜く切開の 6 時方向から尾側に乳房下溝線に
向かう切開を加える。この切開から乳房切除、および内胸動静脈へ血管吻合、
DIEP 挿入を行った。腋窩にはリンパ節生検・郭清のための補助切開(3-5cm)
を置いたが、1 例のみ、それを延長した外側縦切開が併用された。2010 年以
降の 22 例 23 側ではインドシアニングリーン (ICG) 蛍光撮影法を用いて血流
評価を行った。DIEP 挙上時に ICG 造影(0.1mg/kg)を行い、2-3 分後の不染
領域を印した。乳房皮弁壊死の部位は下方切開辺縁、下方内側、外頭側の 3 つ
に大別した。《結果》乳房皮弁壊死は 7 例 7 側 (21%) に認めた。部位は vertical
切開辺縁 3 側、下方内側 3 側、外頭側 1 側であり外頭側の壊死例は外側縦切開
の併用例であった。手術室でのデブリードマン、再縫合が必要となった例は
なく、いずれも軟膏治療で保存的に治癒した。ICG 所見では乳房皮弁壊死部
は必ず不染領域であったが、ICG 不染領域全てが壊死に陥ることはなかった。
《考察》SSM において乳房皮弁壊死は約 10-30% に合併すると報告されてお
り、今回の結果も同等であった。外側縦切開併用例を除き、下方の少範囲の
壊死で収まることが多いのが本切開法での特徴と考えられた。また vertical 切
開辺縁辺縁の壊死がしばしば起こることから、乳輪径が大きい、もしくは皮
膚の余裕がある場合は vertical 切開を最小限にすることで壊死を減らせる可能
性も示唆された。
【背景】無理した乳房温存術は局所再発率を高くし、整容性が不良。整容性と
根治性を追求する方策として、形成外科と連携した乳房同時再建術が増加し
て い る。 乳 輪 乳 頭 を 合 併 切 除、 乳 房 皮 膚 を 温 存 し た skin-sparing
mastectomy(SSM)は乳癌診療ガイドライン(2013 年板)の推奨グレードは
B であり、乳頭近傍の腫瘍に対しては乳頭・乳輪を温存する nipple-sparing
mastectomy(NSM)よ り も 安 全 性 が 高 い。 日 本 人 乳 房 の 形 状 に 有 利 な
Anatomical Implant が 2014 年 1 月に保険収載になり、人工物による再建の
割合が増加すると考えられる。NSM、SSM の場合、切開創を考慮して、側胸
部縦切開(envelope 切開)を採用し、Tissue Expander(TE)を留置する場合
が多いが、側胸部縦切開近傍の血流が不安定で、皮膚壊死を生じることをし
ばしば経験する。SSM 時、乳輪乳頭切除部は縫合閉鎖し、TE により皮膚の拡
張後 Implant と交換する。Implant は頭側に挙上する場合が多く、乳輪乳頭
縫合閉鎖創も頭側に移動する。健側の乳輪乳頭の位置を考慮し、患側乳頭形
成には新たな位置を決める必要があり、縫合閉鎖創は利用できない。以上の
背景より、側胸部縦切開を伴わない拡大傍乳輪切開の有用性を検討した。【目
的】本院で施行された同時再建(TE 留置)を伴う SSM における拡大傍乳輪切開
術後の整容性、合併症、手術手技の簡便さを検討した。【対象】2010 年 1 月よ
り 2014 年 7 月まで本科で施行した乳癌手術 1148 例、同時再建術を 149 例に
行った。そのうち SSM を施行した 39 例。【方法】腫瘍直上皮膚近接病変に対
して、直上皮膚の合併切除が可能となる拡大傍乳輪切開による SSM を施行し、
TE を 留 置 し た(A 群:n=8)。 そ の 他 は 側 胸 部 縦 切 開 を 施 行 し た(B 群:
n=31)。【結果】整容性:A 群は B 群に比して乳輪乳頭縫合閉鎖創が 2-3cm 長
くなるが、側胸部縦切開線は無く、センチネルリンパ節生検に必要な腋窩小
切開(1-2cm)が加わることとなる。合併症:A 群は切開創近傍の皮膚血流不
良によると考えられる皮膚壊死はなかった。手術手技:乳腺外科担当の乳腺
全摘術、ならびに形成外科担当の TE 留置における手術手技の簡便さは同等と
考えられた。【結語】腫瘍直上皮膚近接病変に対する拡大傍乳輪切開による
SSM を施行した。皮島を伴わない人工物による同時再建では、拡大傍乳輪切
開は側胸部縦切開に比して、整容性は同等と考えられ腫瘍残存に対する安全
性、術後の切開創近傍の皮膚障害に関しては有利と考える。
DP-1-25-03
DP-1-25-04
信州大学 乳腺内分泌外科
1
金井 敏晴、小野 真由、大場 崇旦、家里 明日美、福島 優子、花村 徹、
伊藤 勅子、前野 一真、伊藤 研一
宮下 宏紀 1、澤泉 雅之 1、前田 拓磨 1、棚倉 健太 1、山下 昌宏 1、
松本 綾希子 1、川上 順子 1、今井 智浩 1、岩瀬 拓士 2
当科における皮膚温存乳房切除の成績
当院における両側乳癌切除症例・両側乳房再建症例の検討
【はじめに】早期乳癌の標準術式として乳房部分切除(Bp)が広く行われている
が、広い乳管内病変を伴っていたり、病変が複数の領域に存在しているよう
な症例では Bp が困難な症例が経験される。当科では、主に広範な乳管内病変
を 伴 う 症 例 に 対 し て 2000 年 よ り 皮 膚 温 存 乳 房 切 除(nipple/skin sparing
mastectomy:NSM/SSM)を行っている。手技および成績について後方視的に
検討した。【対象・結果】2000 年 4 月~ 2014 年 12 月までに当科で皮膚温存
乳房切除を施行した初発乳癌症例 64 例。全例女性で手術時年齢 45.9 歳(29
~ 67 歳)。乳頭も温存した NSM が 27 例、乳頭を切除した SSM が 37 例で、
センチネルリンパ節生検は 47 例に施行されていた。59 例は一次再建が行われ
おり、再建方法は人工物 45 例(生食バッグ 26 例、tissue expander19 例)、
自家組織 14 例(LD 3 例、TRAM 8 例、DIEP 3 例)であった。病理診断は
38 例が非浸潤癌(平均 46mm)であり 26 例は浸潤癌(浸潤部平均 7mm 非浸
潤部含め平均 43mm)であった。浸潤癌のうち 11 例は広範な乳管内進展を伴っ
ていた。ER/PgR 陰性は 9 例に認め、うち 1 例は triple negative であった。ま
た初期の症例では術前化学療法が行われた症例も 2 例認められた。NSM 例で
は乳頭側断端陽性にて後日乳頭切除を行った症例が 4 例認められた。また乳腺
辺縁断端陽性 1 例には再手術を施行し、皮膚側断端陽性疑い 1 例には局所皮膚
への外照射を行った。平均観察期間 80 カ月(4 ~ 165 ヶ月)では追跡し得た
範囲で局所再発・遠隔再発ともに認められず、良好な成績であった。対側乳
房に new primary を発症した症例を 1 例認めた。【考察】浸潤癌では皮下脂肪
織や皮膚近傍まで病巣が及ぶ症例もあり、NSM/SSM の適応は慎重に決定する
必要がある。当科では主に広範な DCIS を対象としており、Bp では良好な整
容性が得られないと考えられる症例に対して本術式を提示している。乳頭近
傍まで病変が及んでいる場合は乳頭乳輪は無理に温存せず二期的な乳頭形成
術に委ねた方が、根治性だけでなく整容性もむしろ優れる可能性がある。広
い乳管内進展を伴った病変で Bp が困難な症例に対しては、整容性に優れまた
予後的にも劣らない術式であるため、本術式は大変有用であると考える。
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター外科
【目的】当院での両側性乳癌切除症例・両側乳房再建症例の臨床像を検討する。
【方法】2006 年 1 月~ 2013 年 12 月で、当院乳腺外科で両側性乳癌症例に対
し乳房切除術を行った症例の同時性異時性、切除術式を検討した。その中で
当科にて一次乳房再建を行った症例に関して、年齢、同時性異時性、再建時期、
再建方法を検討した。
【結果】上記期間で乳腺外科での両側性乳癌症例に対する切除術件数は 811 件
で、そのうち同時性両側性切除は 300 件(37.0%)、異時性両側性切除が 511
件(63. 0%)であった。2006 年の同時性両側性切除は 86 件中 18 件 (20.9%)、
2013 年の同時性両側性切除は 113 件中 54 件 (47.8%) であった。上記期間に
当 科 で 一 次 乳 房 再 建 を 行 っ た 全 982 例 の 内、 両 側 乳 房 再 建 症 例 は 75 例
(7.64% ) で、年齢は 25 歳~ 74 歳 ( 平均 46.4 歳 ) であった。同時性異時性の
内訳は同時性両側性乳癌 35 例、異時性両側性乳癌 40 例であった。再建時期
については、同時性両側性乳癌では全例一次再建で 35 例、異時性両側性乳癌
では両側一次再建 14 例、一次+二次再建 26 例であった。再建方法は全例一
次エキスパンダー挿入後に、インプラント(以下 IMP)ないし自家組織への入
れ替えを行った。最終的な再建方法の内訳としては、IMP が 72 例、自家組織
が 1 例(他院片側腹部皮弁再建後に当院で片側広背筋皮弁施行)、自家組織と
IMP による再建が 2 例(当院片側腹部皮弁再建後に対側 IMP 施行)であった。
【考察】本邦での両側性乳癌発症の割合は 3 ~ 5% とされてきたが、2007-8 年
の坂井らの報告によればその割合は 8.9%と増加傾向にあり、その中で同時性
乳癌として両側同時に手術される症例が増えている。各種画像機器の進歩と
その診断能力の向上がその一因となっていると考えられた。両側一次再建の
際は、侵襲が少なく対称性を得やすいことからインプラントによる再建が第
一選択と考えられる。第一癌側再建時に腹部皮弁再建を選択した場合は、第
二癌側の再建の際に腹部皮弁を用いることができず、形態や質感に差を生じ
る可能性がある。40 歳以下の片側性乳癌症例では、異時性対側乳癌発症のリ
スクが 5 ~ 6 倍に増加することがよく知られており、若年症例では将来的な
対側再建の選択肢も加味した上で慎重に再建術式を検討する必要があると考
える。
348
ポスター討議
DP-1-25-05
DP-1-26-01
1
千葉大学大学院 臓器制御外科
両側乳房再建の検討 特に異時乳癌の再建について
MRI navigation 下乳房温存手術後 6 年の治療成績
がん・感染症センター都立駒込病院 形成再建外科、
2
がん・感染症センター都立駒込病院 乳腺外科
三階 貴史、長嶋 健、榊原 雅裕、藤本 浩司、椎名 伸充、藤咲 薫、
榊原 淳太、岩瀬 俊明、羽山 晶子、石神 恵美、宮崎 勝
寺尾 保信 1、谷口 浩一郎 1、森山 壮 1、黒井 克昌 2、山下 年成 2、
有賀 智之 2、宮本 博美 2、堀口 和美 2、井寺 奈美 2、本田 弥生 2
【目的】 当科では 2005 年にサージカルポジション MRI 撮像法を新規に開発
し、この画像情報を乳房皮膚上へ投影する事により正確な切除範囲を決定す
る MRI navigation 下の乳房温存手術をこれまで 94 例行い、MRI 画像と切除
標本の病理組織検査結果との対比、切除量、切除断端の検討からその有用性
を報告してきた。今回、術後観察期間が平均 6 年以上経過したのでその治療成
績を報告する。
【方法】 対象は 2005 年 4 月から 2010 年 3 月までに当科で乳房温存手術を
行った 476 例のうち MRI navigation 下の乳房温存手術を施行し、術後 1 年以
上経過観察可能であった 92 例。そのうち非腫瘤性病変に対する手術 67 例と
術前化学療法施行後の手術 25 例、それぞれの同側乳房再発率、遠隔臓器再発
率、生存率について検討した。
【結果】 非腫瘤性病変症例の平均観察期間は 80.2 ヶ月。同側乳房再発は 3 例
4.5%。再発までの期間は平均 67.2 ヶ月。いずれも再手術で乳房全摘術を施行。
遠隔臓器再発は 1 例もなく 0%、5 年生存率は 100% であった。
術前化学療法施行例の平均観察期間は 79.2 ヶ月。同側乳房再発は 3 例
12.0%。再発までの期間は平均 37.8 ヶ月。そのうち 1 例は同時に所属リンパ
節と遠隔臓器の再発を認めた。同時に遠隔臓器再発を認めず、再手術で乳房
全摘術を施行した 2 例も再手術後短期間で所属リンパ節と遠隔臓器への再発
を来した。これら 3 例を含む遠隔臓器再発は計 5 例 (20.0%)、5 年生存率は
84.0% であった。
同時期に超音波検査又はフックワイヤーを用いて乳房温存手術を行った
287 例中、化学療法後の 36 例を除いた 251 例における同側乳房再発は 9 例
3.6% であり、MRI navigation 下の乳房温存手術の再発率と同等であった
(P=0.721 Fisher's exact test)。
術前化学療法を施行し、超音波検査等をガイドに乳房温存手術を施行した
36 例における同側乳房再発は無かったが、統計学的に有意差を認めなかった
(P=0.0786 Fisher's exact test)。
【考察】 MRI navigation 下の乳房温存手術は従来の方法と比較して同側乳房
再発率において同等であり、安全に施行できる。化学療法後の症例に対して
は適応の慎重な検討と、一層の技術的工夫が必要である。
DP-1-26-02
DP-1-26-03
1
千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学
VR-CT(Volume Rendering-CT) 所見に基づく Navigation
surgery の有用性と問題点
3
非腫瘤性乳癌病変に対する MDCT の描出能と乳房温存手術にお
ける断端陽性の相関
北斗病院 乳腺・乳がんセンター、2 北斗病院 外科、
北斗病院 腫瘍医学研究所、4 北海道大学探索病理学講座
石神 恵美、榊原 雅裕、長嶋 健、三階 貴史、藤本 浩司、椎名 伸充、
藤咲 薫、榊原 淳太、羽山 晶子、宮崎 勝
川見 弘之 1,2、中島 恵 1,2、山口 智仁 2、赤羽 俊章 3、難波 清 1、
西原 広史 3,4
【はじめに】Oncoplastic surgery の観点から、乳房切除+乳房再建術を選択す
る患者も増加している。しかし乳房温存術か全摘術かの術式選択において、
安易に乳房全摘を選択するのでは無く、正確な癌の広がり診断が必須である
ことに変わりは無い。MMG,US,MRI の各 imaging modality は、感度、特異度、
再現性、手術時イメージングの点から、それぞれ長所と短所がある。MRI は
乳管内病巣描出において最も感度が高いとされる。しかし MRI 施行が、必ず
しも乳房温存術後の断端陰性率の改善に寄与しないとの臨床試験の報告も見
られる。これは撮像時と手術時体位の違いが原因の1つともされる。当科では、
非浸潤癌で US にて病巣範囲の把握が困難なケースや、乳管内進展が疑われる
浸潤癌の場合、これらの imaging modalityに加え、積極的に MDCT
(multidetector-row CT) を術前に撮像し、VR-CT 画像を構成した上で、患者
への術式説明と手術時のイメージングに応用している。【方法と結果】2012/9
月~ 2014/4 月の乳癌手術例 101 例の内、45 例に対し術前 VR-CT(使用装
置 :Light Speed VCT Vision、ワークステーション:AW Volume Share 4、
GE 社製)を施行した。45 例中 12 例は、乳管内進展が広範で、整容性の点か
らも乳房温存術不可と判断し乳房全摘術に変更した。一方乳房温存術を施行
した 33 例の内訳は、非浸潤癌 18 例、乳管内進展を伴う浸潤癌 15 例であった。
これらの内、術後病理検査にて断端陽性と判断されたのは、33 例中 1 例(3%)
であった。この 1 例は下垂乳房の C 領域外側深部にある非浸潤癌で、手術時の
計測方法に問題があった可能性が考えられた。患者希望でその後乳房全摘が
施行されたが、病理学的に残存病変は指摘されていない。【結語】VR-CT は
navigation surgery に十分臨床応用可能であると考える。しかしながら、低
悪性度の微小病変が描出されないこともあること、また良性病変でも描出さ
れ る こ と が あ る た め、VR-CT 所 見 の み に 拘 泥 す る 事 無 く、 他 の imaging
modality 所見と併せ、総合的に判断して応用することが肝要である。
349
照射を併用した乳房温存手術は腫瘤性の早期乳癌患者に対する最も標準的な
術式となった。一方で、非腫瘤性の早期乳癌病変(DCIS や乳管内成分を主と
する浸潤癌)に対する乳房温存手術では、腫瘤性病変に比して高い断端陽性が
問題となる。これらの病変へのアプローチでは MRI と MDCT による広がり診
断が不可欠であり、特に MRI や MDCT による病変範囲の描出能(病理学的病
変の広がりを画像がどの程度描出するか)が治療成績に強く関与すると推測さ
れ、その予測が切望される。しかし通常の乳癌手術では画像撮像時と手術時
の体位が一致しないために描出範囲と実測範囲の直接比較は困難であった。
当科ではこれらの非腫瘤性乳癌の乳房温存手術に、MRI および MDCT の描出
範囲を直接乳房皮膚上に投影するアプローチ法(画像ガイド手術)を用いてい
る。我々の画像ガイド手術では撮像時と手術時の体位が完全に一致し、さら
に画像上の病変範囲が正確に投影切除されるため、画像描出範囲と病理標本
上の実測病変範囲が完全に一致する。そこで今回我々は、MDCT 病出範囲(予
測病変範囲)と病理標本上での実測病変範囲を直接比較し、MDCT の描出能と
治療成績の関係を解析した。(患者方法)2011 年から 2014 年までに MDCT ガ
イド手術を施行した 115 例を対象とした(浸潤癌;35 例、非浸潤癌;80 例)。
MDCT 上での予測病変範囲、病理標本上での実測病変範囲、さらに MDCT 描
出能(実測病変範囲 / 予測病変範囲)を算出し、手術による断端陽性(近接およ
び露出)との関係を検討した。(結果)MDCT による予測病変範囲は 2.278
(0.085-14.617) cm2、 実 測 病 変 範 囲 は 1.958 (0.039-11.005) cm2 で、
MDCT による描出能は 121 (9.488-403.1) % であった。115 例は病出率によ
り描出率 100% 未満の過小評価群(35.3%)と 100% 以上の評価群(64.7%)
に分類された。過小評価群の断端陽性率(37.5%)は評価群(9.1%)に比して
有意に高かった(p=0.025)。(結論)MDCT による病変の評価群の成績は良好
であったが(断端陽性 9.1%)、過小評価群では高い断端陽性(37.5%)に直結
する結果となった。さらに本会では、断端陽性に直結する MDCT による過小
評価を予測する因子を検討し報告する。
一般セッション(ポスター討議)
【目的・方法】2005 年 1 月から 2014 年 12 月の 10 年間にがん・感染症センター
都立駒込病院で行った乳房再建 769 例のうち、74 例(9.6%)が両側再建であっ
た。両側同時期の乳房切除を同時乳癌、時期を異にしたものを異時乳癌、両
側同時期の再建を同時再建、時期を異にしたものを異時再建として、両側乳
房再建の問題点と対策の検討を行った。
【結果】同時乳癌は 44 例、異時乳癌は
30 例。同時乳癌は全例同時再建(両側一次 41 例、両側二次 3 例)で、再建方
法は腹直筋皮弁(TRAM)13 例、乳房インプラント(BI)31 例。異時乳癌・同
時再建のうち後発側切除時の両側再建は 14 例(TRAM 8 例、BI 6 例)、両側二
次再建は 3 例(TRAM 1 例、BI 2 例)。異時乳癌・異時再建は 13 例(両側一次
11 例、初発側二次+後発側一次 2 例)で、再建方法は TRAM+ 広背筋皮弁(LD)
1 例、TRAM+BI 1 例、両側 BI 10 例、初発側 BI を後発側再建時に両側 TRAM
に変更 1 例。同時一次 BI の 3 例に片側エキスパンダー(TE)の感染(1 例抜去、
1 例再挿入、1 例両側 TRAM に変更)、1 例に両側 TE の感染(両側 TRAM に変
更)、2 例に片側 BI の感染(1 例再挿入、1 例広背筋皮弁+ BI)。自家組織移植
は全例生着した。【考察】異時乳癌の再建は考慮すべき点が多い。乳癌ハイリ
スク症例(若年者、家族歴、既往歴)では片側乳癌の再建に BI を用いているが、
異時乳癌・異時再建では後発側再建時に初発側の BI を入れ替える症例や BI を
抜去し両側とも TRAM で再建する症例が見られた。TRAM で片側を再建した 2
例にも反対側乳癌が発生し、後発側再建(BI、LD)に合わせて初発側の修正を
行っていた。異時乳癌・同時再建で一次+二次再建の場合、BI 症例では皮膚
拡張性の違いに留意する必要があり、TRAM 症例では残存組織量の評価と皮
島のデザインに工夫を要した。両側同時再建では本来の乳房形態を再建する
必要がなく、患者の希望に加え皮膚の拡張性や移植組織量で形態が決まる傾
向があった。両側 TRAM の場合は組織量が限られるため全ての欠損を再建す
ることが困難で、再現性よりも対称性が重要となった。同時一次 BI 再建では
BI,TE の感染率が高く、手術時間が影響を及ぼしていると考えられた。
ポスター討議
DP-1-26-04
DP-1-26-05
石灰化により検出される早期乳癌患者に対して適応診断と手術
法を兼備する MRI ガイド乳房温存手術
当科における腫瘤非形成性石灰化病変の切除方法についての検討
山口県立総合医療センター 外科
千葉大学 医学部 臓器制御外科
深光 岳、野島 真治、須藤 隆一郎、金田 好和、杉山 望
榊原 雅裕、長嶋 健、三階 貴史、藤本 浩司、椎名 伸充、藤咲 薫、
榊原 淳太、岩瀬 俊明、羽山 晶子、石神 恵美、宮崎 勝
腫瘤非形成性石灰化病変に対しては主にマンモトーム生検により診断を確定、
治療方針を決定するが、集簇性石灰化病変の切除範囲を決定するためには術
中に何らかの指標を必要とする。当科では 2011 年 8 月まで、手術当日にマン
モトーム生検時に留置した金属マーカーを指標にフックワイヤーを挿入、こ
れを手術時の切除部位の目安として乳房部分切除を行っていた。フックワイ
ヤーの挿入は手術当日にマンモグラフィー下の挿入を必要とするため患者の
身体的負担は当然ながら,医療従事者 ( 医師,放射線技師 ) の時間的負担も大
きかった。特に,患者によっては乳房の固定が難しく,フックワイヤーの挿
入にかなりの時間を要することが度々あった.また、マンモトーム生検時に
形成した生検部の血腫を手術時に超音波で同定し,同部位にインジゴカルミ
ンなどの色素を注入して手術時の指標とする方法も試みたが,超音波で確認
される血腫は患者により個人差が大きく、同定が困難なことがあった.2012
年 5 月からは手術前日に留置されている金属マーカーを指標に CT を用いて体
表にマーキングを行いこの体表マーキングを目安に乳房部分切除を行ってい
る。CT 撮影時に可能な限り術中体位に近い状態で撮影をすることでフックワ
イヤー挿入と比較し遜色のない乳房部分切除が可能となった。2014 年 8 月ま
でに 8 例 (A 領域 ;1 例、B 領域 ;2 例、C 領域 ;4 例、D 領域 ;1 例 ) に対して同方
法で手術を行い良好な成績を得られているため CT 撮影時の工夫などを含めて
症例を提示し報告する.
一般セッション(ポスター討議)
我々は手術適応判断と外科的アプローチの難しい区域性の石灰化を有する早
期乳癌患者に対して、仰臥位 MRI の再構築画像を用いて、その画像上で予め
仮想乳房部分切除による適応診断が可能でかつ、適応時には診断に用いた画
像をそのまま乳房皮膚上に投影切除する診断兼手術法(MRI ガイド乳房温存手
術)をデザインした。本研究では、マンモグラフィによって長径 2cm 以上の
石灰化で検出された早期乳癌患者において、従来法(フックワイヤー法)に対
する我々の MRI ガイド乳房温存手術の優位性を検討した。(患者方法)長径
2cm 以上の石灰化を有し、術前組織診にて非浸潤性乳管癌と診断された 86 人
の乳癌患者を対象とした。32 人は通常 MRI(伏臥位)で適応診断しフックワイ
ヤー法で乳房温存手術を受け(従来群)、54 人は仰臥位 MRI で診断と投影法に
よる乳房温存手術を受けた(MRI 群)。
MRI 群では固定具と斜台を用いて、
MRI の撮像時、投影時および手術時
の体位を完全に一致させた(図)。こ
の 2 群間における治療成績をヒスト
ロジカルに比較した。(結果)MRI 群
は術中の追加切除率(9.3%)を従来
群(53.1%)に比して有意に減少させ
(p=0.00001)、 同 様 に 断 端 陽 性 率
(3.7%)も従来群(18.8%)に比して
有意に減少させた(p=0.02)。さら
に MRI 群 の 手 技 時 間(12.5 分 )は 従
来群(33.6 分)に比して有意に短かっ
た(p=0.00001)。( 結 論 )我 々 の 考
案した適応診断と手術法を兼備する
MRI ガイド乳房温存手術は、従来法
に比して手術成績と手技時間を有意
に改善し、石灰化により検出された
早期乳癌患者におけるフックワイ
ヤー法に取って変わるアプローチ法
である。
DP-1-27-01
DP-1-27-02
乳癌における SEPT9_v2 遺伝子の新規メチル化マーカーとして
の意義
乳癌におけるコピー数変化とゲノム不安定性
1
2
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科
順天堂大学附属順天堂医院 乳腺・内分泌外科、
東京大学医科学研究所 人癌病因遺伝子分野
平 郁 1,2、高橋 由佳 1、齊藤 光江 1、村上 善則 2
松井 早紀、加々良 尚文、三嶋 千恵子、直居 靖人、下田 雅史、
丸山 尚美、下村 淳、島津 研三、金 昇晋、野口 眞三郎
【目的】癌抑制遺伝子のプロモーター領域のメチル化は、乳癌を含む様々な癌
腫 に み ら れ る エ ピ ゲ ノ ム 変 化 で あ る。 癌 患 者 の 血 中 の 腫 瘍 由 来 DNA
(circulating tumor DNA ; ctDNA) にもこれらの変化が継承されており、診
断や予後予測マーカーとしての意義が検討されている。大腸癌においては、
血中診断マーカーとして、血中メチル化 SEPT9 遺伝子がすでに海外で臨床実
用化されている。そこで本研究では、乳癌組織における SEPT9 のメチル化状
態を調べ、診断マーカーとしての意義や可能性につき検討した。【方法】1. 乳
癌細胞株 12 例、正常乳腺細胞株 1 例、乳癌・正常乳腺組織 19 例のペアサンプ
ルを対象とし、
次世代シークエンサー
(NGS)
を用いて methylation index (MI)
を測定した。細胞株の発現量測定には qRT-PCR 法を用いた。3. 術前化学療法
(NAC)を施行した乳癌患者 107 例を対象とし、NAC 前に採取した凍結検体に
ついて NGS で MI を測定した。この中の 20 例については FISH 法で mRNA 発
現を評価した。3. 転移性乳癌患者 50 人、健常人 51 人を対象とし、血漿中(2
ml)のメチル化 SEPT9 遺伝子を MSP(methylation specific PCR) 法で検出し
た。【結果】1.SEPT9 のメチル化(MI ≧ 10 %)は、67 % (8 / 12 例 ) の乳癌
細胞株、53 % (10 / 19 例 ) の乳癌組織でみられたが、正常乳癌細胞株、正
常乳腺組織ではみられなかった。乳癌細胞株では MI と SEPT9 mRNA 発現量
の間に強い逆相関がみられ、脱メチル化剤により発現が誘導された。2.NAC
前乳癌症例の平均 MI は 11 % で、subtype 別では basal type (3.0 %) で有意
に低かった (p < 0.01)。また、これらの症例群においても MI 値は SEPT9
mRNA 発現 (FISH 法 ) と逆相関の傾向を示した。3. 血漿中メチル化 SEPT9 は
転移性乳癌患者において 52 % (26 / 50 例 ) で検出されたが、健常人では全
く検出されなかった。【結論】乳癌において、SEPT9 のメチル化は癌組織特異
的にみられ mRNA 発現を制御していた。転移性乳癌症例の血漿中にメチル化
SEPT9 が検出され、乳癌においても血中診断マーカーとしての可能性が示唆
された。
【背景】コピー数多型とは,ゲノムの中でのある特定の DNA 配列の出現数の多
型であり、「1Kb 以上の DNA 配列で,参照されるゲノムと比べてコピー数の
多様性が存在するもの」と定義される。CNV は個人の多様性に寄与する一方、
疾患に関与するものも多く報告されている。その中でも癌細胞と正常細胞と
の 比 較 に よ っ て 認 め ら れ る コ ピ ー 数 の 体 細 胞 変 化 は CNA(copy number
alteration) と呼ばれており、癌と関連する領域を含む CNA がこれまでにも報
告されている。今回我々は乳癌細胞 DNA と、同一患者の非癌部 DNA を比較す
ることによって得られるコピー数の体細胞変化に着目し、乳癌における CNA
の臨床的意義を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は 2006 から
2010 年に浸潤性乳管癌の診断にて当院で手術を施行した 20 例。癌部の DNA
は手術検体から採取した凍結標本から抽出し、対照とする非癌部 DNA はそれ
ぞれ対応する患者の末梢血から抽出した。【結果】39.9%以上のプローブでコ
ピー数変化が検出された CNA の頻度と核異型度は有意に相関していた。染色
体不安定性を示唆する 10Mb 以上の長い領域の CNA は、核異型度・Ki-67 陽
性率と有意に相関していた。臨床病理学的因子と有意に相関する CNA 領域が
多く見つかり、その領域には癌関連の機能を有する遺伝子の多くが含まれて
いることが明らかとなった。【考察】検出された CNA をサイズ別に検討した場
合、20kb 未満の短い領域の変化が最も高頻度に検出され、これは他の癌種(頭
頸部癌・膀胱癌・胆道癌)と比較しても乳癌で顕著であった。これは乳癌の特
徴である多様性に寄与している可能性がある。コピー数変化の頻度による検
討では、コピー数変化の割合が高いサンプルほど高い核異型度を示し、より
長い領域の変化はより多くの臨床病理学的因子と相関していた。これらの
CNA は染色体不安定性を反映していると考えられる。染色体不安定性は異数
性腫瘍細胞の増殖を促進するとされており、乳癌を含む固形腫瘍においてそ
の関連が報告されている。本研究において、CNA の頻度と領域長に染色体不
安定性が寄与し、乳癌患者における臨床病理学的因子と有意に相関すること
が示唆された。
350
ポスター討議
DP-1-27-03
DP-1-27-04
東京医科大学茨城医療センター 乳腺科
1
トリプルネガティブ乳癌における次世代シーケンスデータと予
後情報を用いた遺伝子解析
ゲノム薬理学検査を応用した乳癌個別化医療テガフール・ウラ
シルによる肝機能障害の発症予測に関する研究
3
藤森 実、越川 佳代子、西村 基、近藤 亮一、藤田 知之
神尾 英則 1、神尾 孝子 1、内山 智貴 2、塚田 弘子 1、野口 英一郎 1、
大地 哲也 1、斎藤 加代子 3、菅野 仁 3、亀岡 信悟 1
【目的】テガフール・ウラシル (UFT) は、Luminal Type でリスク因子を有する
症例や、高齢者や心機能低下などの合併症を有し静注化学療法の導入が不適
切な症例において、術後補助療法の選択肢の1つとなる抗癌剤である。UFT
はテガフールとウラシルの合剤であり、テガフールは肝臓で CYP2A6 などに
より代謝され 5-FU に変換されるプロドラッグである。UFT の副作用には肝機
能障害が知られており、劇症肝炎等の重篤な肝障害が起こることも報告され
ている。今回、我々は UFT による肝機能障害に関連するゲノム薬理学 (PGx)
バイオマーカーの同定を試み、候補遺伝子多型を同定したので報告する。【方
法】当科において術後補助療法に UFT を用いた乳癌患者 36 症例を対象とした。
患者平均年齢は 64.3 歳で、21 症例は UFT 単剤、15 症例は内分泌療法との併
用であった。遺伝子多型解析マイクロアレイ (DMET plusTM) を用いて、225
遺伝子・1936SNPs の薬物代謝酵素およびトランスポーター遺伝子を網羅的
に解析し、UFT による肝機能障害と遺伝子多型との関連性を検討した。1936
SNPs のうち、検討した症例で多様性の無い多型と連鎖多型を除いた 423
SNPs を解析対象とした。UFT による肝障害を解析するにあたり AST および
ALT の 変 化 量 に 注 目 し、jonckheere-terpstra 検 定 を 用 い た。【 結 果 】AST、
ALT の変化量に関連する、8 個の候補遺伝子多型を同定した。先行研究におい
て 5-FU の代謝に関連が示唆されている DPYD の遺伝子多型が、ALT との関連
においてのみ有意であった。【考察】乳癌治療において、UFT は術後補助療法
の重要な治療選択肢のひとつである。したがって、投与前に肝機能障害発症
リスクが予測出来れば、極めて有用な情報と成り得る。現在更に多くの症例
を対象にして、今回同定した 8SNPs について前向き研究を進めている。
DP-1-27-05
DP-1-28-01
1
1
次世代シークエンサーによる Trastuzumab 耐性 Her2 陽性乳
癌症例の癌部および血中 Circulating Tumor DNA 解析
乳癌術前化学療法症例における Tumor-infiltrating
lymphocytes と PD-1/PD-L1 発現の関連性に関する検討
山梨県立中央病院 外科、2 山梨県立中央病院 ゲノム解析センター
2
高橋 和徳 1、中込 博 1、弘津 陽介 2、井上 正行 1、坂本 育子 2、
雨宮 健司 2、小俣 政男 2
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
国立がん研究センター中央病院 病理診断科、
防衛医科大学校 病態病理学、4 国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
北野 敦子 1、小野 麻紀子 1、津田 均 3、吉田 正行 2、橋本 淳 1、
【 は じ め に 】 2008 年 1 月 ~ 2013 年 12 月 に 23 例 の Her2 陽 性 乳 癌 に 対 し 山本 春風 1、温泉川 真由 1、公平 誠 1、米盛 勧 1、清水 千佳子 1、
Trastuzumab を含む化学療法を術前に施行した。CR52%、PR39%と極めて
木下 貴之 1,4、田村 研治 1,4
良好な腫瘍縮小効果を認めている。しかし、SD 症例も散見され、ことに今回、
腫瘍縮小効果がまったく認められない(de novo Resistance)1 例を経験した。 【背景】腫瘍周囲リンパ球浸潤(Tumor-infiltrating lymphocytes:TIL)はト
【方法】 患者は 45 歳の女性で、術前 Trastuzumab 投与するも、反応なく
リプルネガティブ乳癌(TNBC)や HER2 陽性乳癌など高悪性度乳癌において、
2013 年 5 月 29 日、10cm 腫瘍手術摘除、CEA は術前 37ng/ml から 3.2ng/ml
治療効果予測因子や予後因子であるとの報告がある。我々も TNBC において
ま で、 下 降 す る も、 術 後 1 年、CEA 再 上 昇 し、 肺 転 移 出 現、 そ こ で、
TIL と術前化学療法の病理学的完全奏効 (pCR) が有意に関連することを報告し
Bevacizumab + Paclitaxel 開始し、良好な結果を現在まで得ている症例であ
た(Ono M, Breast Cancer Res Treat. 2012)。一方、免疫チェックポイント
る。まず、手術標本を用い、次世代シークエンサー(NGS)により癌組織にお
阻 害 剤 の 開 発 が 進 め ら れ て お り、 そ の 治 療 標 的 で あ る programmed cell
ける癌関連 50 遺伝子のホットスポット領域 (7300 アミノ酸 ) の変異探索を
death-1 (PD-1)、programmed cell death-1 ligand (PD-L1) が注目されて
行った。その結果 TP53 の 7 塩基欠失による Frameshift 変異 (p.Arg158fs) を、
いるが、同一腫瘍内で両者の発現や予後との関連を検討した報告は乏しい。
【目
アレル頻度 59% (Coverage Depth=5016) で同定した。この同定された TP53
的】TIL 中の PD-1 および腫瘍細胞上の PD-L1 の発現と、サブタイプや予後な
変異をバイオマーカーとして、Bevacizumab + Paclitaxel 治療開始後の病態変
ど臨床病理学的因子との関連を検討した。【方法】1999 年 -2007 年に術前化
化と Circulating Tumor DNA (ctDNA) との関連性を検討した。
【結果】
術後
学療法を施行し、術前の針生検検体が利用可能であった 180 例が対象。針生
肺 転 移 発 見 時 の 血 漿 中 に TP53 変 異 DNA を、 ア レ ル 頻 度 2% (Coverage
検検体内における TIL は HE 標本にてスコアリング (0-5 点 ) を行った。PD-1,
Depth=10806) で 同 定 し 得 た。Trastuzumab 不 応 性 で あ っ た た め、
PD-L1 は免疫組織染色にて測定し、陽性細胞1%以上を「発現あり」と定義し、
Bevacizumab + Paclitaxel を開始したところ、治療開始後1および2か月の血
臨床病理学的因子との関連を解析した。また、PD-1、PD-L1 の発現別に無病
漿には変異は消失した。Coverage Depth を 9989 から 10256 と深くしても、
生存期間(DFS)、全生存期間(OS)を検討した。【結果】TIL 中の PD-1 発現を
1 クローンも検出できなった。 これは腫瘍マーカー(CEA)の減衰に先行し、
認めたのは 24.4%、腫瘍細胞上の PD-L1 発現を認めたのは 37.6%。PD-L1
その後良好な経過を予知したと考えられる。
【結論】
血漿中 ctDNA、所謂
は TNBC の 49%(40 人 /81 人)、HER2 過剰発現乳癌の 33%(13 人 /40 人)、
Liquid Biopy による遺伝子解析は治療効果の先行指標となることが示唆され
ホルモン陽性乳癌の 21%(9 人 /46 人)に発現しており、3 群間に有意差を認
た。トラスズマブ耐性機序の解明を含め、In house でカスタム合成した乳癌
め た(p = 0.005)。TIL 中 の PD1 の 発 現 も 同 様 の 傾 向 を 認 め た。TIL 中 の
特異的 53 遺伝子(Nature 2012;490;61-70)の全エクソン領域(6 万 8526
PD-1 発現は TIL スコアと正の相関があり(p = 0.006)、また TIL 中の PD-1 発
アミノ酸)を現在解析中である。
現 と 腫 瘍 細 胞 上 の PD-L1 発 現 は 有 意 に 関 連 し て い た(p=0.03)。PD-1、
PD-L1 発現と DFS、OS との関連は認めなかった。【結語】PD-1 と PD-L1 の発
現はサブタイプおよび TIL スコアと関連することが示唆された。また TIL 中の
PD-1 発現と腫瘍細胞上の PD-L1 発現の相関を認めた。PD-1, PD-L1 の予後
因子、効果予測因子としての意義については更なる検討を要する。
351
一般セッション(ポスター討議)
【背景】近年 The Cancer Genome Atlas(TCGA)など大規模なゲノムプロジェ
クトの結果により、乳癌においても体細胞変異頻度、コピー数変化、同時共
起性と相互排他性解析、ネットワーク解析などが網羅的に解析され、各サブ
タイプの遺伝子変化の特徴が明らかになってきた。basal-like タイプではゲノ
ム不安定性と p53、PIK3CA 遺伝子の変異頻度が高いことが最大の特徴である
ことがわかってきた。しかし、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)において次
世代シーケンス (NGS) の結果と予後の関連を解析した結果は報告されていな
い。【方法】われわれは TCGA より TNBC68 例を抽出し、全生存期間情報をも
とに 2 群に分類し、TNBC で変異頻度が高い p53 を含む 10 遺伝子と、ヒトタ
ンパク質をコードする 20630 遺伝子を対象として、それぞれの群で同時共起
性と相互排他性解析を行い、その結果の一部を昨年の乳癌学会で報告した。
今回 p53 を query とした際の解析結果を用い、Ingenuity Pathways Analysis
(IPA) 解析による遺伝子の機能
分類、パスウェイ解析およびネッ
トワーク解析を行い、TNBC の
予後の違いによる差異を抽出し
た。【結果】機能解析の結果、予
後不良群と予後良好群では有意
性が高い遺伝子機能群が両群で
まったく異なった。また予後良
好群のネットワーク解析で解析
対象の 13 遺伝子がユビキチン C
を中心に一つのネットワーク内
で 繋 が っ た( 図 )。【 結 語 】今 後
NGS を利用し、予後情報に基づ
いた解析を行うことで、乳癌の
診断と治療を向上させる可能性
があり、最終的には、NGS 解析
が癌治療法選択における標準手
段の一つの柱となっていくと考
えられる。
東京女子医科大学 第二外科、2 メディカル統計(株)、
東京女子医科大学大学院 先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野
ポスター討議
DP-1-28-02
DP-1-28-03
1
1
新規バイオマーカーとしての hERO1-L αの臨床病理学的意義の
検討
2
Neuropollin-1 陽性免疫細胞はトラスツズマブによる免疫応答
を惹起し抗腫瘍活性を誘導する
札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座、
札幌医科大学 医学部 第一病理
京都大学 大学院 医学研究科 外科学講座 乳腺外科学、
京都大学 大学院 医学研究科 生体構造医学講座 形態形成機構学、
3
京都大学 医学部附属病院 病理診断科
2
九冨 五郎 1、田村 保明 2、田中 努 2、島 宏彰 1、前田 豪樹 1、里見 蕗乃 1、
鳥越 俊彦 2、佐藤 昇志 2、平田 公一 1
一般セッション(ポスター討議)
【背景】我々は以前 human endoplasmic reticulum oxidoreductin 1 like α
(hERO1-L α ) が乳癌において発現の亢進を認め予後予測因子になりうる可能
性を報告してきたが、今回その中でもトリプルネガティブ乳癌に関して新規
バイオマーカーとしての hERO1-L αの発現の意義に関して特に、最近抗腫瘍
免 疫 を 抑 制 す る 予 後 不 良 因 子 と し て 注 目 を 集 め て い る PD-L1 の 発 現 と
hERO1-L αの相関性について、臨床病理学的因子と基礎研究のデータを交え
て検討した。【対象】当科にて手術を行ったトリプルネガティブ乳癌症例を検
討した。【方法】全症例に関して、PD-L1 を含めた臨床病理学的因子を検討、
またトリプルネガティブ乳がん細胞株の MDA MB 231 を用い、hERO1-L αを
過剰発現させた細胞株やノックダウンさせた細胞を作製し基礎実験を行った。
【結果】今回検討したトリプルネガティブ乳癌症例は 56 症例であり、以下の 2
つのサブタイプに分けた。basal type (EGFR もしくは CK5/6 のいずれかの染
色を認める ) は 40 例 (71%)、non basal type(EGFR, CK5/6 のいずれも染色
を認めない ) は 16 例 (29%) であった。Basal type と no basal type で臨床学
的な有意差は認めなかったが、多変量解析において hERO1-L αの発現の有無
はステージと並び独立した予後規定因子であった (p=0.041)。また MDA MB
231 で hERO1-L αをノックダウンすると腫瘍増殖能の低下および PD-L1 の発
現低下を認め、過剰発現させると VEGFA の分泌の増加および PD-L1 の発現増
加を認めた。さらに免疫組織染色を用いて hERO1-L αと PD-L1 の発現の相関
を検討している。【結語】以上の結果より hERO1-L αは、トリプルネガティブ
乳癌における新たなバイオマーカーとして有用であり、さらに hERO1-L αを
発現制御することにより抗腫瘍免疫応答を活性化できる可能性が示された。
河口 浩介 1、鈴木 栄治 1、喜井 勲 2、片岡 竜貴 3、平田 勝啓 3、
羽賀 博典 3、萩原 正敏 2、戸井 雅和 1
【目的】腫瘍微小環境における宿主免疫細胞は癌の進行制御というポジティブ
な役割を持つ一方で、癌の進行を助長するというネガティブな役割も担って
おりその役割は複雑である。Neuropillin-1(NRP-1) 発現免疫細胞は免疫制御
性機能を有するとの報告があるが、抗腫瘍免疫における役割は明らかでない。
今回我々は NRP-1 陽性免疫細胞の HER2 陽性乳癌における抗腫瘍性の役割に
ついて実験的、臨床的に検討した。【方法】健常人末梢血単核球細胞 (PBMCs)
をエフェクター細胞、HER2 陽性乳癌細胞株である SK-BR-3 をターゲット細
胞としてトラスツズマブによる抗体依存性細胞障害(ADCC)活性、細胞遊走
能並びにサイトカイン産生能を in vitro にて確認した。動物モデルとして
NOD/Shi-scid, IL-2R null マウスを用いてヒト化 HER2 陽性乳癌マウスモデ
ルを樹立し、PBMCs の NRP-1 をノックダウン行い、ADCC 活性及びサイトカ
イン産生、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)について評価を行った。また、トラスツ
ズマブによる術前化学療法 (NAC) 施行した HER2 陽性乳癌 28 症例における
TILs 中の NRP-1 発現の評価を行った。【結果】PBMCs 中の NRP-1 は主に単球
中に発現することを確認し、in vitro において NRP-1 の発現は ADCC 活性並
びにリンパ球遊走・浸潤に関与するサイトカイン (IP-10, MIP-1, RANTES)
産生に寄与する事を確認した。ヒト化マウスにおいても、PBMCs 中の NRP-1
をノックダウンすることにより、抗腫瘍活性、リンパ球の腫瘍浸潤能並びに
サイトカイン産生が低下することを確認した。更に NAC 患者における TILs の
評価において、NRP-1 陽性 TILs は病理学的完全奏功 (pCR) と相関した (pCR
及 び non-pCR 症 例 に お け る NRP-1 陽 性 TILs: median 45% vs. 8%, p <
0.001)。【考察】HER2 陽性乳癌において NRP-1 陽性免疫細胞はトラスツズマ
ブによる免疫応答を惹起し抗腫瘍活性を誘導する事を確認した。今後 NRP-1
の個体差並びに発現調整のメカニズムについて検証することにより、抗体療
法の個別化治療に寄与できるものと考える。
DP-1-28-04
DP-1-28-05
乳癌組織における免疫関連因子の組織学的検討
1
乳癌環境下における脂肪細胞の質的変化と腫瘍細胞の増殖性及
び走化性に与える影響
久留米大学 外科学講座、2 久留米大学 病院病理部
千葉大学 臓器制御外科
岡部 ( 古川 ) 実奈 1、唐 宇飛 1、岩熊 伸高 1、三島 麻衣 1、河原 明彦 2、
赤木 由人 1
【背景】癌局所免疫細胞の浸潤と予後については様々な見解が報告されてきた
が、癌局所に見られる炎症性マクロファージや多種サイトカイン・ケモカイン、
増殖因子類は免疫抑制に働くのみならず、腫瘍細胞増殖にも作用することが
近年注目されてきた。T 細胞上にある PD-1(programmed death 1) 受容体は
腫瘍細胞に発現する PD-L1(programmed cell death 1 ligand-1) と結合し T
細胞の活性化を抑制し、免疫寛容を担うことが明らかになった。今回、乳癌
組織における PD-L1,PD-1 発現と腫瘍内浸潤 T 細胞 (TIL) 発現を中心とした癌
免疫環境の詳細な解析を行い、サブタイプ別の発現状況を検討した。【対象・
方法】1995 ~ 2005 年までの病理組織学的検討可能であった浸潤性乳癌 100
手術例を対象とした。T リンパ球に関与している PD-1、PD-L1、FOXP3 を免
疫染色し、抗腫瘍免疫応答としてリンパ球表面分子である CD3,CD8,CD163
の発現や Ki-67、癌抑制遺伝子である PTEN の発現も検討行った。【結果】腫瘍
部位と非腫瘍部位 ( 間質 ) に分けて染色評価を行った。この 100 症例は 27-84
歳で平均 57.8 歳。バイオマーカー別では ER+/Her2+:1 例、ER + /Her2-:
55例、Her2+:22例、Triple negative:22例であった。PD-1はTriple negative
において、腫瘍部位に有意に高発現認め、CD3,CD163はtriple negativeにおい
て腫瘍部位・間質共に有意に高発現認めた。CD8,PD-L1はサブタイプ別に発現
の有意差は認めなかった。PTENはLuminalAにおいて有意に高発現であった。
Ki-67はtriple negative、HER2 typeにおいて高発現を認めた。
【結語】乳癌組織
におけるPD-1,CD3,CD163はtriple negativeにおいて有意に高発現を認め、癌
局所の免疫学的関与が示唆された。今後、高発現における予後との相関につい
て更に検討が必要である。
藤本 浩司、藤咲 薫、長嶋 健、榊原 雅裕、三階 貴史、椎名 伸充、
榊原 淳太、岩瀬 俊明、石神 恵美、羽山 晶子、宮崎 勝
【目的】癌間質相互作用については様々な報告がある。乳腺は周囲を脂肪組織
に囲まれ、脂肪細胞はその重要な構成要素である。また、近年、肥満は乳癌
に関して発生だけでなく予後に関してもリスクファクターであると報告され
ている。以上から乳癌と脂肪細胞の相互作用は非常に重要と考えられるが、
まだ十分に理解されているとは言い難い。これらの相互作用に対する理解が
遅れている要因の一つに脂肪細胞の浮遊性による培養実験の困難さがあると
思われる。そこで今回、我々は 3 次元コラーゲンゲル培養系を用いて、ヒト脂
肪細胞の初代培養を試みた。さらに、乳癌環境下における脂肪細胞の変化と
脂肪細胞が腫瘍細胞の増殖性及び走化性に与える影響について調べた。
【方法】
乳房全摘術症例より癌周囲および非癌部から脂肪組織を採取、コラゲナーゼ
処理後、脂肪細胞を単離した。得られた脂肪細胞をそれぞれ癌関連脂肪細胞
(CAA)及び正常乳腺脂肪細胞(NBA)として培養、その形態変化、増殖性につ
いて比較検討を行った。さらに、得られた脂肪培養上清を乳癌細胞株に添加し、
乳癌細胞の増殖性、走化性に関する効果についても比較検討を行った。【結果】
CAA, NBA ともに 3 次元コラーゲンゲル培養下では脂肪滴が減少し、紡錘形細
胞となって増殖したが、CAA ではその数が有意に増加した。また、単離直後
の脂肪細胞の PCR では成熟脂肪細胞への分化マーカーである C/EBP αの発現
が CAA に比べ有意に低下していた。NBA に MCF-7 及び MDA-MB-231 乳癌細
胞株を導入した場合にも、紡錘形細胞の数は CAA において有意に増加した。
以上より、癌存在下において脂肪細胞はより未分化な状態にあることが示唆
された。これらの培養上清を乳癌細胞株に添加し、変化を比較検討した結果、
NBA と比較して CAA では増殖性には有意な変化を与えなかったが、ER 発現
の有無にかかわらず乳癌細胞株の走化性を有意に増加させた。さらに、培養
上清に対してサイトカインアレイを用いて因子の同定を試みると、CAA 培養
上清中では IL-6 及び MCP-1 濃度の上昇が認められた。この乳癌細胞株の走化
性の上昇は中和抗体を用いると有意に抑制された。【結論】脂肪細胞は乳癌存
在下で、より未分化なプロファイルを示し、IL-6 や MCP-1 を含むサイトカイ
ンを分泌することで乳癌細胞の走化性増加に寄与することが分かった。
352
ポスター討議
DP-1-29-01
DP-1-29-02
1
東北大学大学院 医学系研究科 分子機能解析分野、
横浜市立大学大学院 医学研究科 消化器・腫瘍外科学、
3
信州大学医学部 外科学講座 ( 外科学第二 )、
4
埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所
1
2
2
木村 万里子 1、藤木 夏 1、花村 徹 1,3、丹羽 俊文 1、山口 ゆり 1,4、
遠藤 格 2、林 慎一 1
樋口 徹 1、遠藤 恵 2、花村 徹 3、郷野 辰幸 2、丹羽 俊文 2、山口 ゆり 4、
堀口 淳 1、竹吉 泉 1、林 慎一 2
AI 耐性かつ mTOR 阻害剤エベロリムス耐性を示す乳癌細胞株
に対する次治療としての薬物療法の検討
ER 陽性原発性乳癌の解析によるアロマターゼ阻害薬耐性機構と
しての硫酸エストロン依存性増殖の妥当性の検討
群馬大学大学院 臓器病態外科学分野、
東北大学大学院 分子機能解析学分野、
3
信州大学医学部外科学講座 乳腺内分泌外科、
4
埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所
[ 目的 ] 我々が樹立した AI 耐性を模した ER 陽性乳癌細胞株の検討から,複数
の AI 耐性機序が見出されたことはすでに報告されている.そのうちの 1 つに,
血中に豊富に存在する硫酸エストロン(E1S)からエストロゲンを産生するこ
とにより AI 耐性を獲得している乳癌細胞株が存在する(LR 細胞株).LR 細胞
株においては E1S の代謝酵素である steroid sulfatase(STS)と複数の E1S 細
胞膜上輸送体である organic anion transporter peptides(OATPs)の遺伝子
発現が亢進していた.また,LR 細胞の増殖は STS 特異的阻害薬を AI と併用す
ることによって有意に抑制された.今回の検討では,ER 陽性原発性乳癌組織
における OATP,STS,さらに E1S から産生されたエストロン(E1)をエスト
ラジオール(E2)に変換する 17beta-hydroxy steroid dehydrogenase type1
(HSD17B1)の発現を比較検討することによって,AI 耐性機序としての E1S
依存性細胞増殖機構の妥当性を考察した.[ 方法 ]2011 年 5 月から 2012 年 5
月の期間で当施設において手術を施行された ER 陽性乳癌患者 43 例を対象と
した.同意を得られた患者の凍結検体より mRNA を抽出し,Real-time PCR
法によって発現量を定量化し統計学的に検討した.[ 結果 ]STS mRNA と LR
細胞株において発現が上昇していた OATP1A2, 1B1, 4A1, 5A1 のうち 3 つの
mRNA の発現が有意に相関していた.1A2 との検討においても有意ではない
ものの正の相関傾向を認めた.一方,HSD17B1 との検討においては全く相関
関係が認められなかった.さらにエストロゲン枯渇が AI 耐性を模倣しうると
仮定し,エストロゲン枯渇が STS,HSD17B1 の発現にどのような影響を与え
るかを検討するために閉経前後の 2 群に分け,発現の差を比較検討した.STS
の mRNA 発現は閉経後乳癌患者群において有意に高かったが,HSD17B1 で
は差が認められなかった.[ 考察 ]LR 細胞における検討においては,E1S の代
謝産物である E1,E2 投与では細胞増殖に差が認められなかったが,この結果
は LR 細胞における AI 耐性機序は E1S 代謝活性が亢進することで獲得されて
いることを支持すると考えられた.本検討において,HSD17B1 の mRNA 発
現が OATP と相関せず,血中エストロゲン濃度が大きく異なる閉経前後でその
発現に差が認められなかった結果は,HSD17B1 と E1S 代謝との関連性が低い
ことを示唆すると思われた.本検討から,複数の AI 耐性機序の中に E1S 依存
のメカニズムが見出され、STS を標的とした治療が有効であると考えられた.
DP-1-29-03
DP-1-29-04
大阪医科大学 乳腺・内分泌外科
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科
藤岡 大也、碇 絢菜、冨永 智、前沢 早紀、佐藤 七夕子、寺沢 理沙、
木村 光誠、高橋 優子、田中 覚、岩本 充彦、内山 和久
三本 麗、井廻 良美、神尾 麻紀子、加藤 久美子、野木 裕子、
鳥海 弥寿雄、内田 賢、武山 浩
乳癌細胞株における Cyclophilin A の抗癌剤耐性獲得関連蛋白
質としての検討
化学療法耐性 DYRK2 低発現乳癌に対するエベロリムスの有効
性の検討
【背景と目的】 タキサン系抗癌剤は、アンスラサイクリン系抗癌剤と並んで
【 背 景 】DYRK2(dual-specificity tyrosine-(Y)- phosphorylation regulated
再発乳癌患者に用いられる代表的な抗癌剤である。しかしその奏効率は 30 ~
kinase 2) は c-Myc, c-Jun, Snail の発現制御を介して癌に抑制的に働くこと
60%であり現在のところ治療における効果予測や耐性獲得に関するエビデン
が報告されており、DYRK2 低発現の乳癌は化学療法耐性を獲得し予後不良で
スは不十分である。 耐性獲得の機序として P 糖蛋白、MAP2、MAP4、tau
ある。それ故 DYRK2 低発現乳癌に対して効果的な治療法の確立が重要と考え
の過剰発現やβ -tublin の変異といったものが報告されているが、主に in vitro
られる。我々は DYRK2 低発現細胞株において mTOR (a mammalian target
でのものでありエストロゲン受容体、HER2 蛋白といった治療効果の予測因子
in the rapamycin) pathway が活性化していることから、mTOR 阻害薬であ
や治療の適応決定に活用されているものはない。 これまで我々は、添加で
るエベロリムスが有効である仮説をたてた。【方法】ホルモン受容体陽性乳癌
きる蛋白量を増やし再現性を高め CBB 染色を用いた定量性も高い IPG 法(改良
細胞株 MCF-7 細胞において DYRK2 の発現を恒常的に抑制した細胞株を作製
型 IPG 法)を用い paclitaxel 耐性に関連する蛋白質を同定してきた。これら関
し、エベロリムスに対する有効性を検討する。ドセタキセル・ドキソルビシン・
連蛋白質が臨床応用に使用できる可能性があるかを検討する。【材料と方法】 エリブリン単独細胞群とエベロリムス上乗せした細胞群で MTS assy を行っ
乳癌細胞株(MCF -7、以下親株)とパクリタキセル耐性株(MCF -7/tax、
た。更に xenograft model において無治療群、エリブリン群、エベロリムス
以下耐性株)を用いる。個々の細胞株から可溶性蛋白を抽出し、改良型 IPG 法
群を比較し、腫瘍抑制効果を検討した。【結果】MCF-7 細胞に比較し (IC50
を用い2次元電気泳動にて蛋白質を分離する。両者間での発現する蛋白スポッ
17.8nM)、MCF-7 DYRK2 抑制細胞株ではエベロリムスが低濃度で効果的で
トを定量し、質量分析器(MALDI-TOF MS/MS)を用いて同定する。同定され
あった (IC50 1.5nM)。DYRK 2抑制細胞株では、細胞障害性薬剤にエベロリ
た蛋白質を認めた場合、その機能を論文検索し関連性の高いと思われる蛋白
ムスを上乗せした効果が顕著に認められた。Xenograft model において、エ
質においてノックダウンを行い、その発現を抑制させることで耐性の消失が
ベロリムス群はエリブリン群に比較し、重大な副作用なく高い治療効果を認
あるかを MTT assay にて確認する。【結果】 電気泳動で分離された蛋白のう
めた。【結論】DYRK2 低発現乳癌において mTOR pathway が活性化しており、
ち、親株と比較して有意に蛋白発現の増強や抑制した蛋白を耐性株に認め質
エベロリムスが特異的に有効である事が示された。今後は臨床においてアフィ
量分析器にてその蛋白質を同定した。有意差のあった発現増強蛋白は 11 種、
ニトールの治療効果との相関性の検討が望まれる。
抑制蛋白は 12 種であった。その中で Cyclophilin A はノックダウンさせるこ
と で 獲 得 し た paclitaxel 耐 性 が 消 失 傾 向 に あ る こ と を 確 認 し た。【 考 察 】 Cyclophilin A は乳癌における抗癌剤耐性の関連蛋白質であり、
耐性獲得のマー
カーや新たな治療の標的蛋白としての可能性が示唆される。
353
一般セッション(ポスター討議)
エストロゲンレセプター (ER) 陽性乳癌の内分泌療法耐性獲得機序として、ER
と PI3K/Akt/mTOR 経 路 と の crosstalk の 重 要 性 は 広 く 認 識 さ れ て い る。
mTOR 阻害剤エベロリムスは BOLERO-2 試験において、エキセメスタンとの
併用で非ステロイド系アロマターゼ阻害剤 (AI) 耐性乳癌に対して有用性を示
したことを受け、本邦でも実臨床での使用が可能となった。当研究室では ER
陽性乳癌細胞株 MCF-7-E10 を親株として AI 剤への耐性を mimic するエスト
ロゲン長期枯渇耐性乳癌細胞 (EDR 細胞株 ) を複数種樹立し報告しているが、
そのうち ER 陽性を保持しているのは EDR-Type1 ( エストロゲン非依存的
PI3K/Akt 経路依存性 )、EDR-Type4( アンドロゲン代謝産物依存性 ) であり、
EDR-Type2 は ER 低下と IGF-1R/JNK 経路への依存を特徴としている。今回、
EDR-Type1, 2, 4 の細胞株に対し長期エベロリムスを曝露することで AI 耐性
かつエベロリムス耐性を示す細胞 (evR 細胞株 ) を得たことから、エベロリム
ス 治 療 耐 性 獲 得 後 の 薬 物 療 法 に つ い て 検 討 し た。evR 細 胞 株 は 親 EDRType1,4 と同じく ER 陽性を保っていたにも関わらず、抗エストロゲン剤への
感受性は著しく低下していた。evR 細胞株では MAPK 経路の亢進がみられた
が、MEK 阻害剤単剤では細胞増殖は抑制されず、抗エストロゲン剤と併用す
ることで親 EDR 株よりも高い増殖抑制効果がみられた。また、その他の増殖
因子シグナル経路を標的とする薬剤 ( 抗 EGFR 剤、PI3K 阻害剤、Akt 阻害剤 )
でも同様の結果がみられた。ER 低下を特徴とする EDR-Type2 の evR 株では
ER 再発現はなく、ER を標的とする薬剤は無効であった。また、EDR-Type2
は JNK 阻害剤によって増殖が抑制されたが、evR-Type2 では JNK 阻害剤にも
同時に耐性が示された。evR-Type2 では Src 経路の亢進がみられ、Src 阻害剤
が有効であったが、EDR-Type1,2,4 や evR-Type1, 4 に対して Src 阻害剤単剤
の効果は低かった。また、細胞周期キナーゼ阻害剤、化学療法剤は親 EDR 株、
evR 株ともに有効であった。このように AI 耐性株のエベロリムス耐性獲得後
は、ER 陽性を保持している細胞に関しては ER と細胞内リン酸化シグナル経
路を同時に標的とする治療が必要であり、ER 陰転化に対してはもはや ER を
標的とした治療は無効で、依存シグナル経路を標的とした治療が必要とされ
ること、また細胞周期を標的とした薬剤は ER の発現に関係なく有効であるこ
とが示唆された。
ポスター討議
DP-1-29-05
DP-1-30-01
ER 陽性乳がん細胞のエストロゲン枯渇耐性獲得に関連する
non-coding RNA の解析
1
ドキシサイクリン誘導性 BRCA1 欠損 ER α陽性細胞の樹立
1
2
熊本大学 乳腺・内分泌外科、2 熊本大学発生医学研究所 細胞医学分野
黒田 貴子 1,2、岡田 麻衣子 1、呉 文文 1、敦賀 智子 1、福田 貴代 1、
太田 智彦 1、津川 浩一郎 2
藤原 沙織 1,2、斉藤 典子 2、冨田 さおり 1,2、モハメドオサマ アブダラ 2、
岩瀬 弘敬 1、中尾 光善 2
一般セッション(ポスター討議)
内分泌療法は閉経後 ER 乳癌患者に対する有効な治療薬である。しかし、内分
泌療法の使用を継続し、長期間エストロゲン枯渇状態にすると、腫瘍細胞が
環境変化に適応し再増殖することがある。我々はこの ER 陽性乳癌細胞におけ
るエストロゲン枯渇耐性獲得の分子メカニズムの解明を目指している。
エストロゲン受容体 (ER) 陽性乳癌細胞 MCF7 をエストロゲン枯渇下で長期培
養すると、細胞はエストロゲン非依存性に増殖可能となり、これは内分泌療
法耐性獲得のモデル細胞である(LTED;long term estrogen deprivation)。
我々は、RNA-Seq 解析などにより、LTED ではエスロトゲン受容体遺伝子
(ESR1) と、その隣接した複数の遺伝子のコード領域と非コード領域の転写が
上昇していることを見いだした。特に ESR1 の上流の非コード領域で、極めて
活発な転写を認めた。過去に報告されたゲノムワイドな ChIP 解析結果をもと
に調べたところ、ER 陽性乳癌細胞でこの領域には、転写活性なクロマチン修
飾が豊富に蓄積していることが分かった。我々は、この領域由来の noncoding RNA が ESR1 の制御因子である可能性を考えた。そこで MCF7 におい
て新規ゲノム編集技術である CRISPR/Cas system を用い、この非コード領
域を欠損したところ、ESR1 と近傍遺伝子の発現が変化することが分かった。
これらのことより、エストロゲン枯渇に応じて non-coding RNA が産生され、
この RNA が ESR1 を含む複数の遺伝子を制御し、エストロゲン枯渇耐性獲得
と関連している可能性が示唆された。
聖マリアンナ医科大学大学院 応用分子腫瘍学、
聖マリアンナ医科大学病院 乳腺・内分泌外科
【背景】BRCA1 変異による臓器特異的な癌発症の機序は未だに解明されていな
い。BRCA1 機能不全は主にトリプルネガティブ乳癌を発症するが、癌発生母
地は ER α陽性で、エストロゲンシグナルと BRCA1 機能不全が癌発症に何らか
の役割を果たすと考えられている。したがって、diploid 細胞を用いて BRCA1
欠損と ER αシグナルのゲノム不安定性に与える影響を解析することが重要で
あるが、ER α陽性のヒト diploid 細胞は存在しない。これまでに、ROCK 阻害
剤による正常乳腺細胞からの ER α陽性細胞の樹立を試みたが、株化の過程で
ER αが陰転化してしまうことが判明した。そこで、本研究では ER α陰性の正
常 乳 腺 細 胞 株 で あ る MCF10A を 用 い て、 ド キ シ サ イ ク リ ン (Dox) 誘 導 性
BRCA1 欠損 ER α陽性細胞を樹立した。
【方法】最初に Dox 誘導性 BRCA1 欠損
細胞を作成した。BRCA1 遺伝子に対する shRNA のオリゴ DNA をエントリー
ベクター pENTR4-H1tetOx1 にクローニングし、Gateway 相同組換えにより
レンチウィルスベクターに組換え、blasitidin で選択可能な CS-RfA-ETBsdshBRCA1 を作成した。293T 細胞よりレンチウィルスを作成、MCF10A 細胞
に感染させた後、blasitidin で選択して細胞株 (MCF10A-Dox-shBRCA1) を樹
立した。次にドキシサイクリン誘導性 ER α発現細胞を作成した。エントリー
ベクター pENTR1A1 に ER αをクローニングしたのち、上記同様に puromycin
で選択可能な CSIV-TRE-Rfa-Ubc-puro-ER αを内包するレンチウィルスを作
成 し た。 上 記 MCF10A-Dox-shBRCA1 細 胞 に 感 染 さ せ た の ち blasitidin と
puromycin で選択し MCF10A-Dox-shBRCA1-ER α細胞を樹立した。樹立し
た細胞株を用いて種々の機能解析を行った。【結果】Dox 添加 48 時間後のウェ
スタンブロットにて、BRCA1 の発現が消失し、ER αが出現することを確認し
た。プレリミナリーな結果ではあるが MCF10A-shBRCA1-ER α細胞および
MCF10A-ER α細胞において、Dox 誘導にて DNA 損傷の指標となるγ H2AX 核
内 foci の増加を認めた。【結語】今後、樹立した細胞を用いてエストロゲン刺
激が BRCA1 欠損 ER α存在下でゲノムの安定性に与える影響を解析する予定で
ある。
DP-1-30-02
DP-1-30-03
乳腺葉状腫瘍における MED12 反復突然変異の同定
乳癌におけるアンドロゲン代謝酵素、3 β -HSD Type1 発現の
臨床病理学的意義及び予後因子としての意義
1
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科、
2
聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科 応用分子腫瘍学、
3
聖マリアンナ医科大学 診断病理学
1
3
永澤 慧 1,2、前田 一郎 3、太田 智彦 2、津川 浩一郎 1
【背景】乳腺葉状腫瘍発症の遺伝子学的な背景はわかっておらず、これまでに
特異的な反復突然変異も同定されていない。一方、線維腺腫の Exome 解析か
ら、71% という驚くべき高率で MED12 エクソン 2 の反復突然変異が報告され
た (Nature Genetics 46:877-80, 2014)。他の反復変異が同定されなかった
ことから、MED12 エクソン 2 の変異が線維腺腫の病因として注目されている。
本研究では線維腺腫と同様に乳腺の混合腫瘍である葉状腫瘍における MED12
エクソン 2 の変異を解析した。【方法】2003 年 5 月から 2012 年 12 月の間に聖
マリアンナ医科大学付属病院で手術が施行された線維腺腫 9 例と葉状腫瘍(境
界悪性)11 例について、ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)検体からゲ
ノム DNA を抽出し、Sanger シーケンス法で MED12 エクソン 2 および周囲の
イントロンの変異を検索した。他の遺伝子変異については AmpliSeq 癌関連パ
ネ ル を 用 い た 次 世 代 シ ー ケ ン サ ー(Ion Torrent Personal Genome
Machine)にて解析した。【結果】線維腺腫では 9 例中 6 例 (67%)、葉状腫瘍で
は 11 例中 5 例(45%) に MED12 エクソン 2 変異を同定した。葉状腫瘍の変異
のうち 3 例は線維腺腫で頻発するコドン Gly44 のミスセンス変異、1 例は inframe deletion (c.133_144del12)、1 例はこれまでに報告されたことのな
い frameshift deletion (c.100-68_137del106) であった。これらの変異は全
て、MED12 の転写における mediator complex としての機能に必須な塩基を
欠失していた。次世代シーケンスでは他の遺伝子に反復突然変異を認めなかっ
た。【考察】線維腺腫と同様に葉状腫瘍においても高頻度に MED12 エクソン 2
変異を認めることから、MED12 エクソン 2 変異は両疾患に共通したドライ
バー変異である可能性が考えられる。境界悪性型葉状腫瘍の少なくとも一部
は線維腺腫と同じ遺伝学的エチオロジーを有することが裏付けられた。
信州大学医学部 外科学講座第二、2 信州大学医学部 病態解析診断学講座、
東北大学大学院医学系研究科 分子機能解析学分野
花村 徹 1、小野 真由 1、大場 崇旦 1、家里 明日美 1、福島 優子 1、
伊藤 勅子 1、金井 敏晴 1、前野 一真 1、上原 剛 2、林 慎一 3、
伊藤 研一 1
【背景と目的】エストロゲンは卵巣で産生される他 , 副腎由来のアンドロゲンか
ら末梢組織においてアロマターゼ依存的に産生され , エストロゲンレセプター
(ER) 活 性 化 を 介 し ホ ル モ ン 感 受 性 乳 癌 の 増 殖 を 促 進 す る .3 β HSD
Type1(HSD3B1) の関与でアンドロゲンからアロマターゼ非依存的に産生さ
れる 3 β -diol はエストロゲニックアンドロゲンと呼ばれ , エストロゲン存在下
ではアンドロゲンレセプター (AR) アゴニストとして腫瘍抑制的に働く一方
で , エストロゲン非存在下では ER アゴニストとして働き腫瘍促進的に働くこ
とが In-vitro の解析で報告されている . 我々はこれまでにアロマターゼ阻害剤
(AI) 耐性モデル細胞株において HSD3B1 発現が亢進することや , 臨床検体を
用いた小規模な解析で ,HSD3B1 によるステロイド代謝が ER 活性化に寄与す
る可能性を報告し ,HSD3B1 によるステロイド代謝経路を AI 耐性メカニズム
の候補の一つとして着目した . しかしながら乳癌における HSD3B1 発現の臨
床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず , 今回の解析を行った 【
. 方
法】未治療の乳癌 161 検体を用い HSD3B1 発現を免疫染色法にて評価 , 各種臨
床病理学的因子 ( 年齢 , 閉経状況 , 組織型 , 腫瘍浸潤径 , リンパ管侵襲 , リンパ節
転 移 , 組 織 学 的 悪 性 度 ,ER,PgR,HER2 過 剰 発 現 ) お よ び 予 後( 無 再 発 生 存
率 :DSF, 疾患特異的生存率 :DSS)との関連につき解析した 【
. 結果】HSD3B1
は ER 陽性例において有意に高発現である一方 HER2 過剰発現の有無では差を
認めなかった . 以降 ER 陽性乳癌 130 例に限った解析結果を示す.HSD3B1 高
発現群は低発現群と比較し , 有意に若年傾向 , 腫瘍浸潤径が小さい , 非浸潤癌が
多い , リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた (p < 0.05). 予後の解析
では HSD3B1 高発現群は低発現群と比較して DFS,DSS いずれも有意に良好
(DFS:p < 0.01,DSS:p < 0.01:Log rank 検 定 ) で , 多 変 量 解 析 に お い て も
HSD3B1 発現は DFS,DSS 両者において独立した予後因子であった(DFS:p <
0.05,RR=0.34,DSS:p < 0.05, RR=0.09:Cox 比例ハザード回帰 ).AI 単独に
よる術後補助療法がおこなわれた症例(n=44)に限った解析でも HSD3B1 高
発現群は有意に DFS が良好であった 【
. 考察】AI 耐性メカニズムに関与する分
子の候補として注目した HSD3B1 は少なくとも未治療の乳癌においては腫瘍
抑制的に働いていることが示唆され , とりわけ HSD3B1 が乳癌における予後
因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い . 今後更なる考察およ
び解析を加え報告する .
354
ポスター討議
DP-1-30-04
DP-1-30-05
1
熊本大学 乳腺・内分泌外科
ホルモン療法耐性乳癌細胞における ER 遺伝子のエピゲノム解析
と新規分子標的薬適応の可能性
ER 陽性転移再発乳癌における ESR1 遺伝子変異の同定と臨床病
理学的検討
東北大学大学院 医学系研究科 分子機能解析学分野、
東北大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科学分野、
3
信州大学大学院 医学系研究科 外科学分野
2
1
1
1
1
岩瀬 弘敬、竹下 卓志、指宿 睦子、村上 敬一、稲尾 瞳子、末田 愛子、
林 光博、山本 聡子、藤原 沙織、富口 麻衣、山本 豊
1
坪井 洸樹 、長友 隆将 、金子 陽介 、木村 万里子 、藤木 夏 、
郷野 辰幸 1、藤井 里圭 1,2、花村 徹 1,3、丹羽 俊文 1、林 慎一 1
DP-1-31-01
DP-1-31-02
1
1
ZEB-1 および E-cadherin 発現による浸潤性乳管癌の再発予測
因子の検討
TNRC9 rs3803662 がマンモグラフィ濃度とエストロゲンレ
セプター陽性乳癌罹患リスクに与える影響
山形大学 医学部 消化器・乳腺甲状腺・一般外科学、2 天童市民病院 外科
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科、2 北海道大学病院 乳腺内分泌外科、
名古屋市立西部医療センター 放射線診断科、
4
名古屋市立西部医療センター 乳腺内分泌外科
3
柴田 健一 1、鈴木 明彦 1、木村 青史 2、小野寺 雄二 1、木村 理 1
【背景】上皮間葉移行 (Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT) は上皮細胞
が間質細胞に変化する現象であり、腫瘍の進行、転移に重要な役割を果たす
とされている。E-cadherin はヒトの上皮細胞に存在する膜貫通型糖タンパク
であり、それを通じて細胞間接着を保持し、上皮細胞の特徴を維持している
ことから、上皮細胞の代表的な接着分子のひとつとされている。ZEB-1 は
E-cadherin のプロモーターに結合し、その発現を抑制することから、EMT の
代表的な分子の 1 つとされている。今回、われわれは、EMT に関与する分子
である ZEB-1 と E-cadherin を浸潤性乳管癌の切除標本で免疫組織学的に評価
し、術後無再発生存率との相関を検討した。【方法】2007 年より 2010 年まで
に、当院で根治切除が施行された Stage I、II、III の浸潤性乳管癌 116 例を
対象とした。標本は、乳癌取り扱い規約第 17 版 ( 日本乳癌学会 2012 年 ) に
則り、病理組織学的に浸潤性乳管癌と診断された。Staging は UICC の TNM
分類 ( 第 7 版 2009 年 ) に準じて行った。腫瘍の浸潤部を含む代表的な切片を
免疫組織染色で評価した。ZEB-1 は腫瘍の周囲の間質の紡錘型細胞が5%以
上染色されているものを陽性とした。E-cadherin は、腫瘍全体の染色が 25%
以下もの、全体的に弱いもの、および、腫瘍の中心部位と比較し、末梢で染
色が弱いものを減弱とした。各種パラメータはカイ二乗検定で検討し、無再
発生存率は Kaplan-Meyer 法を用いて評価し、群間の差はログランク検定で
検討した。【結果】ZEB-1 陽性は 66 例(57%)であった。Stage、リンパ節転
移の有無、バイオマーカーなどを含め有意差は見られなかった。E-cadherin
減弱は 38 例 (29%) であった。E-cadherin 減弱例では、ER 陰性例とトリプル
ネ ガ テ ィ ブ 例 が 多 く 見 ら れ た。 無 再 発 生 存 率 で 予 後 を 比 較 し た と こ ろ、
ZEB-1 陽性例で予後不良であった (p= 0.036)。同様に、E-cadherin 減弱例
で予後不良であった (p=0.002)。また、ZEB-1 陽性および E-cadherin 減弱
例は、それ以外のものに比較し予後不良であった (p=0.0003)。【結論】浸潤
性乳管癌症例における、間質の ZEB-1 発現および腫瘍細胞の E-cadherin 減弱
は、再発予測因子として有用であると考えられた。
吉本 信保 1、山下 啓子 2、白木 法雄 3、杉浦 博士 4、遠藤 友美 1、
浅野 倫子 1、波戸 ゆかり 1、遠山 竜也 1
【背景・目的】日本人女性における乳癌の罹患者数は、ここ 20 年の間にすべて
の年代で約 2 倍に増加している。私たちは、これらの増加の大部分がエストロ
ゲンレセプター (ER) 陽性乳癌によるものであることを報告し、また閉経前・
閉経後それぞれにおいて遺伝因子 ( 一塩基多型 (SNP))、環境因子、血清ホル
モン・成長因子からなる ER 陽性乳癌罹患リスク予測モデルをロジスティック
回帰モデルを用いて構築し報告した。
このモデルによると、SNP が他の因子と同様に重要な危険因子であること
が示された。しかしながら、これら SNP が乳癌罹患リスクとなるメカニズム
は明らかになっていないものが多い。一方、マンモグラフィ濃度が高いほど
乳癌罹患リスクが高いことも報告されている。そこで今回私たちは、SNP と
マンモグラフィ濃度の相関を解析することにより、そのメカニズムの解明を
試みた。
【方法・対象】対象は乳癌患者 913 名と健常者 278 名の合計 1191 名。14 の
SNP と ER 陽性乳癌罹患リスクについて閉経前と閉経後でそれぞれ検討した。
また、各症例のデジタルマンモグラフィ CC 上でマンモグラフィ濃度を計算し
た。各 SNP の遺伝子型ごとにマンモグラフィ濃度に差があるか、統計学的に
解析した。
【結果】CYP19A1 rs10046 TT genotype と TNRC9 rs3803662 AA genotype
は閉経前女性において ER 陽性乳癌罹患リスクと相関を認め (OR 0.55: p =
0.019, OR 1.59: p = 0.027)、また ESR1 rs6905370 GG genotype と TP53
rs1042522 CC genotype は閉経後女性において ER 陽性乳癌罹患リスクと相
関を認めた (OR 1.83: p = 0.033, OR 0.54: p = 0.045)。マンモグラフィ濃
度 は、TNRC9 rs3803662 の genotype 間 で 有 意 差 を 認 め (AA 49.35 +/18.43%, AG 48.43 +/- 20.45%, GG 44.12 +/- 18.41%, p = 0.042)、
COMT rs4680 の genotype 間 (AA 43.02 +/- 21.01%, AG 48.74 +/19.29%, GG 47.79 +/- 19.13%, p = 0.084)、CYP2C19 rs4917623 の
genotype 間 (CC 50.23 +/- 18.82%, CT 46.69 +/- 20.03%, TT 49.04
+/- 19.22%, p = 0.084)、CYP17A1 rs743572 の genotype 間 (AA 47.48
+/- 19.26%, AG 46.34 +/- 19.32%, GG 51.12 +/- 19.95%, p = 0.056)
で差がある傾向を認めた。
【結語】TNRC9 rs38803662 AA genotype は、マンモグラフィ濃度を増加さ
せることによって ER 陽性乳癌の罹患リスクを増加させると考えられた。さら
なる検討にて、より正確に ER 陽性乳癌罹患高リスク群を同定できる可能性が
ある。
355
一般セッション(ポスター討議)
エストロゲン受容体 (ER) 陽性乳癌において、ホルモン療法に対する耐性獲得
が問題となっており、耐性機序の解明や効果的な次治療の探索は急務である。
当研究室では以前より、アロマターゼ阻害剤 (AI) や抗エストロゲン剤に対す
るホルモン療法耐性乳癌モデル細胞株を複数樹立してきた。これらモデル細
胞株の耐性機序の解明を進めるにあたり、ER 遺伝子発現の変動が耐性獲得の
一因と考えられる株が複数確認された。
本研究では、これらの耐性モデル細胞株における ER 発現制御機序の変化を明
らかにするため、樹立時に ER 発現に大きな変動が確認された ER 陽性乳癌細
胞株をエストロゲン枯渇条件下で長期培養して樹立した AI 耐性モデル細胞株
(Type1, Type2 細胞 [MCF-7 由来 ]) と、同じくフルベストラント添加長期培
養して樹立した耐性細胞株 (MFR, TFR 細胞 [ それぞれ MCF-7, T-47D 由来 ])
を用いて、代表的なエピゲノム制御機構である遺伝子プロモーター領域の
DNA メチル化頻度の解析を行なった。各モデル細胞株の ER 遺伝子プロモー
ター領域の DNA メチル化頻度を確認したところ、Type1 細胞において特定領
域の低メチル化、MFR 細胞において広範囲にわたるメチル化亢進が確認され、
この変化が ER 遺伝子の発現と相関した。一方、TFR 細胞では ER の発現が低
下しているものの、DNA メチル化頻度に大きな変化は確認されず、ヒストン
修飾等他の制御機構の存在が示唆された。
これらの結果より、同じ ER 陽性乳癌であっても、原発時の癌細胞の性質や、
AI や抗エストロゲン剤といった治療の違いによって、異なる ER 発現制御機構
の変化が生じ、その結果さまざまな耐性機序が生じることが確認された。さ
らに逐次治療の探索として、これらのホルモン療法耐性乳癌モデル細胞を用
いて、近年注目されている HDAC 阻害剤 (entinostat) や DNA メチル化阻害剤
(5-Azacytidine) といったエピゲノム治療薬や、Src 阻害剤 (dasatinib) といっ
た分子標的薬の効果を検討したので報告する。
【背景】ER α遺伝子である ESR1 の mutation は、原発巣では極めて稀であり、
化学療法、内分泌療法がおこなわれた後での転移・再発巣においては、20 ~
50% の頻度で認められるとされている。特に、リガンド結合ドメインにある
コドン 537 および 538 の変異はホルモン療法耐性に関連している可能性があ
る。
【対象と方法】2005 年以降、当施設で治療を行った ER 陽性再発乳癌 51 例、
55 病巣のホルマリン固定パラフィン包埋切片 (FFPE) から LCM にて癌病巣の
み を 切 り 出 し、DNA を 抽 出 し た。digital PCR 法 に て Y537N、Y537C、
D538G の変異検索と ESR1 の copy number を検索し、臨床病理学的因子や
内分泌療法の効果との関連について検索した。さらに一部の症例では、循環
血漿由来の DNA(circular tumor DNA; ctDNA) での ESR1 mutation の同定
についても検討した。
【結果】対象例の観察期間中央値は 37.2 か月であった。ESR1 mutation は
Direct sequence 法では検出できなかったが、digital PCR 法では、25 検体 ( 全
体の 45%) で認められた。変異部位は Y537N 12 (48%)、D538G 9 (36%)、
Y537C 1 (4%)、
Y537N+Y537C 2 (8%)、
Y537N+D538G 1 (4%) であった。
転移臓器別では、肝転移例では変異を認めなかったが、脳転移例は検索した 3
例で変異が認められた。ESR1 mutation は、生検前の治療回数(P = 0.85)
や治療内容 (P = 0.96) には関連が認められなかったが、生検時の若年齢 (P
=0.048)、生検後内分泌療法に効果が認められない症例 (P = 0.042) と関連
があった。また、複数の内分泌療法に抵抗性となりエストロゲン付加療法に
効果が見られた 3 症例の再発巣では、2 例に ESR1 mutation と copy number
の増加が確認された。また、変異が認められた症例の一部には、ctDNA での
ESR1 mutation が確認できた。
【結語】ER 陽性再発乳癌症例で digital PCR を用いて ESR1 mutation を全体の
45% の症例で検出した。その発現は内分泌療法抵抗性と弱い関連があり、
ctDNA での発現は Liquid Biopsy としての重要な可能性を秘めていると考え
られた。
ポスター討議
DP-1-31-03
DP-1-31-04
ER 陽性 HER2 陰性乳癌における FGFR1 の臨床的意義
molecular apocrine 乳癌培養細胞は、p62 ノックダウンによ
り細胞増殖が抑制される
熊本大学 医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
1
冨口 麻衣、指宿 睦子、山本 豊、山本 聡子、藤原 沙織、末田 愛子、
竹下 卓志、林 光博、稲尾 瞳子、村上 敬一、岩瀬 弘敬
一般セッション(ポスター討議)
【目的・背景】Fibroblast growth factor receptor 1(FGFR1) は乳癌の約 10%
に遺伝子増幅を認め、近年新たな治療標的として注目されているが、FGFR1
蛋白発現に関しては、臨床病理学的因子や予後との関連について不明な点が
多い。【対象・方法】今回、当院で手術を行った ER 陽性 HER2 陰性原発乳癌患
者 268 症例 ( 観察期間中央値 61 ヶ月 ) を対象とし、免疫組織化学染色法で
FGFR1 蛋白発現を検討した。評価法には Histo score を用い、score が 180 以
上を高発現、180 未満を低発現とした。【結果】FGFR1 高発現群は 72 症例
(26.9% )、低発現群は 196 症例 (73.1% ) であった。臨床病理学的因子との
関連においては、浸潤腫瘍径が大きいと FGFR1 蛋白発現が有意に高かった ( 浸
潤 腫 瘍 径 > 2cm;FGFR1 高 発 現 n = 39 vs 低 発 現 n = 77、 浸 潤 腫 瘍 径 ≦
2cm;高発現 n = 33 vs 低発現 n = 119、p = 0.030)。また、Ki67 高値では
FGFR1 発 現 が 有 意 に 高 い (Ki67 > 15%; 高 発 現 n = 39 vs 低 発 現 n = 56、
Ki67 ≦ 15%;高発現 n = 16 vs 低発現 n = 50、p = 0.025) という結果であっ
た。予後については FGFR1 蛋白高発現群と低発現群を比較し Recurrence
free survival(RFS;p = 0.21)、Distant recurrence free survival(DRFS;p
= 0.94)、Overall survival(OS;p = 0.60) のいずれも両群間に有意差を認め
なかったが、RFS では 5 年目以降で 2 群間の生存曲線が分離し、高発現群で
RFS が不良である傾向を認めた。【考察】ER 陽性乳癌の晩期再発の予測因子に
は、 腫 瘍 径 や リ ン パ 節 転 移、High-Proliferation score/High-Estrogenrelated signal(ERS) などが報告されている。本研究の結果と一致する部分も
あり、FGFR1 蛋白発現は ER 陽性 HER2 陰性乳癌において腫瘍増殖に関連し、
晩期再発の予測因子の一つとなる可能性が示唆された。
2
日本大学 医学部 病態病理学系 病理学分野、
日本大学 医学部 病態病理学系 腫瘍病理学分野
渕之上 史 1、野田 博子 1、唐 小燕 1、増田 しのぶ 2
【目的】我々はこれまでに乳腺アポクリン癌組織において、オートファジー・
細胞増殖関連因子である、p62 蛋白が貯留していることを報告した。今回、
molecular apocrine(MA) 乳癌培養細胞を用いて、p62 の遺伝子発現抑制によ
る細胞増殖抑制効果の有無について検討した。
【方法】MA 乳癌培養細胞である、
MDA-MB-453、MFM223 を対象とした。MDA-MB-453 は L-15 培地、MFM223
は MEM 培地に FBS、penicillin、streptomycin を添加して培養した。セルブロッ
クを作成し、免疫組織染色により estrogen receptor(ER)、human epidermal
growth factor receptor (HER2)、androgen recepotr(AR) 発 現 を 検 索 し た。
また全細胞溶解液を使用し、RT-PCR 法とウエスタンブロット法により p62
mRNA、タンパク質を検索したのち、p62 siRNA (siGENOME SMART pool,
M-010230-00-0005, Life Technologies) を用いた p62 遺伝子のノックダウン
実験を行い、BrdU 法による細胞増殖能の評価を行った。
【結果】MDA-MB-453
は ER-、HER2+、AR+、MFM223 は ER-、HER2-、AR+ を 示 し た。p62
siRNA 導入により、MDA-MB-453、MFM223 における p62 の mRNA、蛋白発
現 は 抑 制 さ れ、 細 胞 増 殖 が 有 意 に 抑 制 さ れ た (MDA-MB-453:p < 0.01,
MFM223:p=0.018)。
【考察】p62 は多機能なシグナル分子であり、癌細胞増殖
への関与が報告されている。MA 乳癌培養細胞において、p62 のノックダウン
により細胞増殖が抑制されたことより、p62 はアポクリン癌細胞の治療標的と
なる可能性がある。
DP-1-31-05
DP-1-32-01
1
1
乳癌における APOBEC3B 遺伝子発現と病理学的 aggressive
phenotype の検討
3
トリプルネガティブ乳癌における腫瘍浸潤リンパ球測定の意義
と問題点
群馬大学 臓器病態外科学、2 群馬大学 病態腫瘍薬理学、
群馬大学 病理診断学、4 東邦病院 外科
3
坪井 美樹 1,2、山根 有人 2、六代 範 1,2、吉山 伸司 2、中村 彰男 2、
半田 正 3、内田 紗弥香 1、樋口 徹 1、時庭 英彰 1、佐藤 亜矢子 1、
長岡 りん 1、高他 大輔 1、小田原 宏樹 4、西山 正彦 2、小山 徹也 3、
堀口 淳 1、竹吉 泉 1
浜松医療センター 乳腺外科、2 浜松医療センター 病理診断科、
浜松オンコロジーセンター、4 神田クリニック
小泉 圭 1、徳永 祐二 1、鈴木 英絵 1、森 弘樹 2、渡辺 亨 3、神田 和弘 4
【はじめに】近年、cytidine deaminase 活性を持つ AID/APOBEC family のメ
ンバーである APOBEC3B がゲノム DNA に対する mutator として働きうるこ
とが示された。特に乳癌、卵巣癌の一部において APOBEC3B の高発現が認め
られること、および APOBEC3B の変異 signature である TCA → TTA パターン
の点突然変異が多いことから、これらの癌における遺伝子変異の原因の一つ
となっている可能性が示唆されている。しかし、その詳細な臨床的意義、特
に APOBEC3B 遺伝子の欠失型多型が多いとされているアジア人の乳癌におけ
る意義は明らかではない。そこで我々は APOBEC3B 高発現乳癌の特徴を明ら
かにするため原発性乳癌の手術検体における APOBEC3B の mRNA 発現と臨
床病理学的因子との関連、および driver gene mutation status との関連を検
討した。【対象と方法】2007 年 1 月~ 2012 年 12 月に当科にて手術を施行さ
れた原発性乳癌のうち、研究への同意を得られ、凍結標本が確保できた症例で、
術 前 化 学 療 法 例 を 除 外 し た 93 症 例 (luminal 74 例、luminal-HER2 3 例、
HER2 6 例、Triple negative 10 例 ) を 対 象 と し APOBEC3B mRNA の 発 現
を検討した。【結果および考察】APOBEC3B mRNA はこれまでの報告と同様
に、正常乳腺組織と比較し腫瘍組織で有意な高発現がみとめられたが、サブ
タイプ、病期、再発の有無などの臨床的因子と APOBEC3B の発現の間には関
連 性 を 認 め な か っ た。 ま た 欧 米 で 報 告 さ れ た APOBEC3B 発 現 と TP53
mutation status、また ER 陽性例における予後との相関は明らかではなく、
人種間の差異の存在が示唆された。本研究の症例においては、APOBEC3B 発
現と病理学的核異型度との間に相関関係をみとめ、APOBEC3B により引き起
こ さ れ る 主 要 driver mutation 以 外 の 遺 伝 子 変 異 や、 ゲ ノ ム 不 安 定 性 の
aggressive phenotype への寄与を示唆するものと考えられた。また Ki67 と
の関係の検討結果についても報告する。今後、多数例での発現解析、および
ゲノム全体での遺伝子変異解析による検討が待たれる。
【緒言】近年トリプルネガティブ乳癌 ( 以下 TNBC) における腫瘍浸潤リンパ球
(Tumor-Infiltrating Lymphocytes:TILs) が、術前化学療法での病理学的完
全奏効(以下 pCR)や良好な予後と関連していると報告され、新たな効果・予
後予測因子として注目されている。しかし TILs の評価方法に関して統一され
た定義や評価法はまだない。【目的】TNBC における TILs と術前化学療法を施
行した場合の pCR、再発との関連を既存の予後予測・効果予測因子と比較検
討すること、測定における問題点を明らかにすることを目的とした。【対象と
方法】2010 年 1 月から 2014 年 12 月に当院にて手術を施行した原発性乳癌の
うち TNBC と診断された 75 例(術前化学療法は 47 例に施行)を対象とした。
TILs は治療前の HE 染色標本にて International TILs Working Group 2014
の報告に則り腫瘍間質部分を評価した。病理医にて、TILs 陰性群 (10% 未満 )、
L 群 (10-60%)、H 群 (61%以上 ) の 3 群に分け、L 群と H 群を合わせ TILs 陽
性群とした。他の因子として Ki67 labeling index、治療前の原発巣(T)
、所
属リンパ節転移(N)を検討した。pCR の定義は ypT0/isN0 とした。【結果】平
均観察期間は 22 か月(1-59 か月)、TILs は 72 症例で測定された。TILs 陰性
群 35 例 (49%)、L 群 27 例 (37%)、H 群 10 例 (14%)、TILs 陽性群 37 例 (51%)
と既報より TILs 陽性群は少なかった。術前化学療法での pCR は TILs 陰性群
4/21(19%)、L 群 12/17(71%)、H 群 4/6(67%) で TILs 陽性群 16/23(70%)
と pCR に至る症例が有意に多かった (P < 0.01)。Ki67 labeling index(51 未
満と以上)、T 因子(T1/2 と T3/4)、N 因子(0 と 1/2/3)の間には pCR 率に有
意な差は認めなかった。17 症例に再発を認めたが、有用な予後予測因子とな
るものはなかった。【考察】TILs は既報の通り TNBC において pCR の有用な予
測因子と考えられたが、予後予測因子としては治療背景の違いや観察期間が
影響を与えていると考えられ本検討での評価は困難と考えられた。TILs 測定
の問題点としては、腫瘍間質範囲の特定が困難で、特に硬癌や硝子化を伴っ
ている標本では正確な評価が困難であった。また、Ki67 labeling index の
ように TILs も不均一性があり、評価を困難にした。【結語】TILs は術前化学療
法に対する効果予測因子として有用であるが、測定には問題点も多くあり評
価方法の標準化が必要であると考えられた。
356
ポスター討議
DP-1-32-02
DP-1-32-03
トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) における腫瘍リンパ球浸潤
(TILs) と術前化学療法の治療効果および予後との関係
1
トリプルネガティブ乳癌の術前化学療法における好中球・リン
パ球比による治療効果予測
北海道がんセンター 乳腺外科、2 北海道がんセンター 病理部
1
1
1
1
1
1
浅野 有香 1、柏木 伸一郎 1、石原 沙江 1、倉田 研人 1、田内 幸枝 1、
徳本 真央 1、森崎 珠実 1、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、
小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
富岡 伸元 、馬場 基 、萩尾 加奈子 、佐藤 雅子 、五十嵐 麻由子 、
渡邊 健一 1、山城 勝重 2、高橋 将人 1
〈目的〉担癌患者では好中球増加やリンパ球減少など白血球分画の異常や好中
球・リンパ球比 (NLR) が根治的外科手術後の患者の予後と相関することが複
数の癌種において報告されている.好中球は腫瘍細胞の増殖や血管新生を促
す作用,またリンパ球は腫瘍に対する免疫反応を担っていることが知られて
いる.そのため,NLR は予後や化学療法感受性に関連する可能性があると考
えられている.一方で,乳癌の術前化学療法 (NAC) は術後化学療法と同等の
効果でかつ乳房温存率を向上させるため広く使用されている.NAC の主目的
は,腫瘍の縮小や温存率の向上,治療効果の確認とその結果に基づく治療戦
略の構築である.今回われわれは,NLR は NAC の治療効果予測マーカーとな
り得るかについての検討を行った.〈対象と方法〉2007 年から 2013 年に FEC
(5-fluorouracil, epirubicin, cyclophosphamide) followed by weekly
paclitaxel の レ ジ メ で NAC を 行 っ た 177 例 を 対 象 と し た.ER, PR, HER2,
Ki67 の発現から免疫組織化学的に intrinsic subtype の同定を行った.NLR の
カットオフ値を 3.0 と設定し,intrinsic subtype との相関や予後および化学
療法感受性についての検討を行った.〈結果〉NAC 施行症例 177 例のうち 58
例 (32.8%) が低 NLR 群であり,有意にトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) が
多く (p < 0.001),病理学的完全奏効 (pCR) 率が高かった (p < 0.001).さ
らに TNBC61 例のなかでは,36 例 (59.0%) が低 NLR 群であり,有意に Ki67
が高く (p = 0.002),pCR 率が高かった (p < 0.001).また pCR を獲得した
TNBC 症例において,低 NLR 群は有意に無病生存期間 (DFS) および全生存期
間 (OS) の延長が認められ (p = 0.006, log-rank),単変量解析においては無
病生存の予測因子であった (p = 0.044, HR = 0.06).
〈結語〉TNBC において,
NLR は NAC の治療効果予測マーカーとなりうる可能性が示唆された.
DP-1-32-04
DP-1-32-05
1
愛知県がんセンター 中央病院
Tumor Infiltrating Lymphocytes は HER2 陽性乳癌の治療
効果予測因子となるか
3
ER 陽性乳癌における腫瘍内リンパ球浸潤と術前ホルモン療法の
治療効果との関連
がん研究会 がん研究所 病理部、2 がん研究会 有明病院 病理部、
がん研究会 有明病院 乳腺センター
久田 知可、近藤 直人、澤木 正孝、服部 正也、吉村 章代、石黒 淳子、
権藤 なおみ、安立 弥生、小谷 はるる、岩田 広治
井上 寛章 1,3、堀井 理絵 1,2、伊藤 良則 3、岩瀬 拓士 3、秋山 太 1,2
【 背 景 】乳 癌、 特 に triple negative や HER2 陽 性 乳 癌 に お い て Tumor
Infiltrating Lymphocytes(TILs) は予後予測因子や化学療法効果予測因子と
して注目されている。【目的】HER2 陽性乳癌において TILs が薬物療法の効果
予測因子となり得るか否かを明らかにする。【対象】当院で 2008 年から 2013
年までに術前薬物療法が施行された StageI ~ III の HER2 陽性乳癌のなかで、
薬物療法前に当院で針生検を施行した症例のみとし、前医で生検されている
症例は除外した。また術前薬物療法はアンスラサイクリン系、タキサン系、
トラスツズマブが投与された 97 症例を対象とした。pCR の定義は浸潤癌の消
失とし、乳管内病変の有無は問わないこととした。年齢中央値は 52(30 ~
75) 歳、 腫 瘍 径 は T1:14 例 (14%)、T2:59 例 (61%)、T3:14 例 (14%)、
T4:10 例 (11%)、リンパ節転移陽性は 90 例 (93%)、ER 陽性は 45 例 (46%)
であった。全体における pCR は 50 例 (52%) に認められた。【方法】TILs の測
定には、治療開始前に当院で行われた針生検標本を用いた。International
TILs Working Group による測定法に準じて行った。すなわち、浸潤癌周囲の
間質面積に対するリンパ球の占める割合を評価した。TILs(1+):0 ~ 29%、
(2+):30 ~ 49%、(3+):50% ~とし、TILs と pCR の関係について検討した。
また subgroup 解析として ER 陽陰性別にも TILs と pCR の関係について検討
した。有意差検定はカイ 2 乗検定を用い P < 0.05 を有意差ありとした。
【結果】
対 象 症 例 97 例 の TILs 別 症 例 分 布 は、(1+):78 例 (80.4%)、(2+):15 例
(15.5%)、(3+):4 例 (4.1%) で あ っ た。 そ れ ぞ れ の pCR 率 は、(1+):
44.9%(35/78 例 )、(2+):80.0%(12/15 例 )、(3+):75.0%(3/4 例 ) であっ
た (p=0.0228)。(2+) と (3+) で 高 い pCR 率 を 認 め た た め、(1+) と (2-3+)
の 2 群に分け評価したところ (1+) では pCR 率が 44.9%(35/78 例 )、(2-3+)
では 79.0%(15/19 例 ) で、(2-3+) 群において有意に pCR 率が高く認められ
た (p=0.0061)。ER 状 況 別 の pCR 率 は、ER(+) で (1+):22.0%(9/41 例 )、
(2-3+):50.0%(2/4 例 )(p=0.2448)、ER(-) で (1+):70.3%(26/37 例 )、
(2-3+):86.7%(13/15 例 )(p=0.1963) となり有意差は認められなかった。
【結語】HER2 陽性乳癌において TILs は薬物療法の効果予測因子となり得るこ
とが明らかになった。
【背景】近年乳癌領域においても、免疫組織系の関与が治療に影響し、予後に
重要な役割を担うと考えられている。中でも、腫瘍内リンパ球浸潤(Tumorinfiltrating lymphocytes :TILs)が注目され TILs と triple negative-type や
Her2 positive-type などの、増殖能力の高い乳癌や、化学療法やハーセプチ
ンとの関係が多く報告されている。しかし、ER 陽性乳癌には TILs が少ないこ
との報告はあるが、ホルモン療法との関連性はあまり知られていない。【目的・
方法】当院において 2008 年 12 月から 2013 年 10 月までにレトロゾールによ
る 6 カ月の術前ホルモン療法を施行した ER 陽性原発性乳癌患者 45 名を対象
とした。治療前の組織生検標本の TILs とホルモン療法の効果について後方視
的に検討した。TILs は腫瘍周囲高度リンパ球浸潤 (inTu-Ly):腫瘍細胞巣のう
ちリンパ球の占める割合と、間質内リンパ球浸潤 (str-Ly):間質のうちリンパ
球 の 占 め る 割 合 に 分 類 し、 い ず れ か に 50% 以 上 浸 潤 が あ る も の を
Lymphocyte-predominant breast cancer(LPBC) と定義して検討した。【結
果】対象患者の患者背景は年齢:中央値 61.8 歳 (51-73)、腫瘍径:中央値
19.mm(12-35)、組織型は浸潤性乳管癌 40 例、粘液癌 1 例、小葉癌 4 例であっ
た。inTu-Ly が 50%を超える症例が 4 例 (8.9%) であり、str-Ly が 50% 以上
であった症例は 6 例 (13.3%)、LPBC は 8 例 (17.8%) であった。LPBC の術前
ホルモン療法に対する臨床的治療効果は全例 PR で、腫瘍縮小率(US 最大径)
は中央値 56% であったのに対し、non-LPBC では中央値 37.5% であり、有
意差を持って LPBC で高かった(P=0.0081)。実際の病理学的治療効果におい
ては、Grade2 を 7 例認めておりそのうち 3 例が LPBC であった。
【結論】高度
な TILs は ER 陽性乳癌における術前ホルモン療法の効果予測因子となる可能
性があり、今後症例数を追加した検討が必要と考える。
357
一般セッション(ポスター討議)
【緒言】現在トリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対しては、アンスラサイクリ
ン系、タキサン系の化学療法を施行するのが通常である。しかし、再発後の
治療効果は十分ではなく、プラチナ製剤や、BRCA 変異陽性乳癌に対しては、
PARP 阻 害 剤 の 投 与 が 検 討されている。一方、腫瘍内浸潤 T 細胞(Tumorinfiltrating lymphocytes: TILs)が認められる症例では、その予後は良好で
あるとの報告がなされ、術前後もしくは再発後の治療として、免疫学的アプ
ローチが検討されている。【目的】TNBC 症例における術前化学療法施行前の
CNB 検体の TILs の程度と、腫瘍の臨床病理学的因子や術前化学療法の治療効
果および予後との関連について検討する。【方法】2002 年から 2011 年までの
当院の乳癌手術症例のうち、術前後の治療歴や予後の明らかな TNBC 症例は
277 例であり、その内、検体の再評価が可能な術前化学療法施行例 32 例を対
象とした。TILs は 10% 刻みで評価した。【成績】下記因子につき、TILs30%
未満(L 群:19 例)と 30% 以上(H 群:13 例)で比較検討(L 群:H 群)した。T
因 子 1/2/3/4(1/6/4/8:2/6/4/1)、 リ ン パ 節 転 移 -/+(11/8:10/3
p=0.03)、 治 療 効 果 grade 1/2or3(12/7:3/10 p=0.04)、non-pCR/pCR
(15/4:9/4)、再発 / 無再発(8/11:1/12 p=0.04)、初再発の再発形式は、
局所再発 / 遠隔再発(2/6:1/0)であった。DFS および OS は Kaplan Meier 法
にて比較検討し、DFS において有意差を認めた(p=0.038;Logrank test)。
再発症例は L 群の 1 例を除き、いずれも切除検体で腫瘍浸潤径 5cm 以上、あ
るいはリンパ節転移を 5 個以上認めた。【結論】TILs 高発現症例で術前化学療
法 の 治 療 効 果 が 高 く、DFS も 良 好 な 結 果 で あ っ た。 し た が っ て、 免 疫
checkpoint へのアプローチにより、さらなる TNBC の予後の改善が期待され
ると考えられる。
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、2 大阪市立大学大学院 診断病理学
ポスター討議
DP-1-33-01
DP-1-33-02
1
鳥取赤十字病院 外科
術前における骨代謝マーカーの予後因子としての意義の検討
乳癌骨転移症例における骨関連事象と予後
兵庫医科大学、2 さきたクリニック、3 海の里クリニック
今村 美智子 1、西向 有沙 1、柳井 亜矢子 1、宮川 義仁 1、八木 智子 1、
榎本 敬恵 1、村瀬 慶子 1、先田 功 2、畑田 卓也 3、高塚 雄一 1、
三好 康雄 1
山口 由美、岩本 明美、尾崎 佳三、山代 豊、柴田 俊輔、石黒 稔、
西土井 英昭
一般セッション(ポスター討議)
【背景】閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌に対して、ビスフォスフォ
ネート製剤を術後療法として投与すると、予後を改善する可能性が示唆され
ている。この結果から、ビスフォスフォネート製剤による骨吸収の抑制が、
予後の改善につながった機序が推測される。そこで、術前の骨吸収マーカー
である 1CTP(I 型コラーゲン C 末端テロペプチド)と NTx(I 型コラーゲン架橋
N- テロペプチド)が、予後因子として有用かどうかを検討した。また、CRP(C
反応性蛋白)と腫瘍マーカーの CEA (carcinoembryonic antigen), CA15-3
(carbohydrate antigen) に 関 し て も 検 討 を 行 っ た。【 対 象 と 方 法 】当 院 で
2005 年 2 月から 2013 年 12 月までの間に手術切除された浸潤癌性乳癌 481 例
を 対 象 と し、 術 前 の 1CTP, NTx, CRP, CEA, CA15-3 値 と 無 再 発 生 存 期 間
(RFS)を検討した。観察期間の中央値は 23.8 か月で、44 例に再発を認めた。
そ れ ぞ れ の 中 央 値 を カ ッ ト オ フ と し(1CTP:3.1ng/ml, NTX:12.4nmol/l,
CRP:0mg/dl, CEA:1.9ng/ml, CA15-3:11.3U/ml)、 高 値 群、 低 値 群 で の
RFS を log-rank テストで検討した。有意差の認められた因子に関しては、
Cox 比例ハザードモデルで多変量解析を行った。【結果】1CTP、NTx ともに閉
経後で有意に高値群の頻度が高かった
(1CTP: 40.4% vs 57.2%, P=0.0004,
NTx: 31.6% vs 60.5%, P < 0.0001)。臨床病理学的因子との相関では、腫
瘍径と 1CTP に正の相関が認められた(P=0.011)。NTx と CRP に関しては、
予後との相関はみられなかったが、1CTP 高値群では有意に予後不良であった
(P=0.0023)。1CTP と予後の有意な相関は、閉経後ならびに ER 陽性群で認
められた。予後との有意な相関が認められた 1CTP、腫瘍径、リンパ節転移、
核異型度、CEA、CA15-3 で多変量解析を行った結果、閉経後の ER 陽性群で
は 1CTP のみが有意な独立した予後因子であった(P=0.047)
。
【考察】1CTP は、
閉経後の ER 陽性乳癌の予後因子として有用である可能性が示唆された。閉経
後の ER 陽性乳癌では、骨吸収の亢進が予後不良につながるのかもしれない。
【はじめに】乳癌骨転移は単独では生命を脅かす原因となることは少ないが、
病的骨折や疼痛、脊髄圧迫等によって QOL を低下させ、予後に影響を与える
可能性もある.また、内分泌療法、化学療法に加え骨修飾薬(BMA)を併用す
る場合が多く、BMA の副作用に関しても注意が必要である.今回、骨転移症
例の予後因子と BMA の副作用の発現状況に関して検討を行った.【対象と方
法】2000 年から 2014 年までに乳癌骨転移で治療を行い、予後の明らかな症
例 50 例を対象とした.これらの症例を対象に予後に影響を与える臨床病理学
的因子、骨関連事象(SRE)の発現状況、BMA の副作用に関しても検討を加えた.
【結果】骨転移診断時の平均年齢は 57.0 歳、再発乳癌は 38 例、進行乳癌が 12
例であった.50 例中 ER/PgR/HER2 陽性例はそれぞれ 38/26/11 例であった.
BMA は 47 例に使用しておりパミドロネート / ゾレドロン酸 / デノスマブが
8/30/9 例であった.SRE は 24 例に認めた.対象症例中、初転移部位に骨転
移を認める症例が 35 例で、骨単独転移は 24 例(A群)、他臓器転移を合併(B 群)
は 11 例であった.また、他臓器転移が先行し、後に骨転移を発生した症例は
15 例であった(C群)
.ABC 3 群において転移・再発後生存期間はそれぞれ
1712 日、2036 日、1422 日で各群に有意差を認めなかった.初転移部位が骨
転移である 35 例(A+B群)で、ER、HER2、発見契機(症状 / 検査)、SRE 発生、
手術時の病期と予後との関連を検討したところ、SRE の発生のない症例で予
後良好の傾向を認めた(p=0.07). また、骨転移症例全体の予後因子として ER
陽性例で予後良好(p < 0.05)であり、SRE 発生のない症例で予後良好の傾向
をみとめた(p= 0.10).BMA の副作用は 9 例にみとめ、顎骨壊死が 7 例、低
カルシウム血症が 1 例、非定型骨折が 1 例であった.顎骨壊死は BMA 使用後
最短 411 日で発生しており、BMA を 3 年使用すると約 13%の患者に発生する
ものと予想された.顎骨壊死の発生は年長者に多い傾向があったが有意差は
認めず、治療前の歯科受診の有無とも関連を認めなかった.【結語】骨転移症
例における骨関連事象の発生は予後に影響を与える可能性が示唆された.
BMA は SRE 発生を防ぐことに有効であるが、長期使用とともに副作用の発現
率も上昇しており、患者の QOL を保つためにも歯科との綿密な連携が必要で
あると考えられた.
DP-1-33-03
DP-1-33-04
兵庫医科大学 乳腺内分泌外科
1
乳癌骨転移に対する骨修飾薬の効果判定における TRACP-5b の
意義の検討
乳癌骨転移患者におけるゾレドロン酸治療に関する後ろ向き
コホート研究
兵庫県立がんセンター 乳腺外科、2 兵庫県立がんセンター 腫瘍内科、
近畿大学 医学部附属病院 薬剤部、4 近畿大学 医学部 腫瘍内科、
5
近畿大学 医学部 臨床研究管理センター、6 近畿大学 医学部 外科
3
西向 有沙、柳井 亜矢子、宮川 義仁、八木 智子、榎本 敬恵、
今村 美智子、村瀬 慶子、高塚 雄一、三好 康雄
【背景】乳癌の骨転移に対して用いられる骨修飾薬は、破骨細胞の活性を抑制
することで効果を発揮する薬剤である。骨修飾薬の効果は、骨代謝マーカー(骨
吸収マーカー 1CTP: I 型コラーゲン C 末端テロペプチドや NTx: I 型コラーゲ
ン架橋 N- テロペプチド、骨形成マーカー BAP: 骨型アルカリフォスファター
ゼ)によって判断されるものの、これらのマーカーは骨代謝を間接的に反映し
ていることから、骨修飾薬の効果判定としての有用性は明らかでない。一方、
TRACP-5b(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ 5b)は破骨細胞にのみ存在し、
骨吸収の亢進に伴って血中に出現することから、破骨細胞の活性を直接評価
していると考えられる。今回、乳癌の骨転移で骨修飾薬を用いた症例を対象に、
TRACP-5b の変化を他の骨代謝マーカー(1CTP, NTx, BAP)の変化と比較検
討した。【対象と方法】乳癌で骨転移に対し、骨修飾薬(ゾレドロン酸 20 例、
デノスマブ 20 例)を使用した 35 症例を対象とした(5 例はゾレドロン酸使用
後にデノスマブを使用)。21 例は血中の TRACP-5b を、19 例は血中の 1CTP,
NTx, BAP を投与前、1 か月、3 か月、6 か月後に測定し、Friedman 検定を行っ
た。【結果】TRACP-5b は有意に低下しており(P < 0.0001)、1 か月後に顕著
に 低 下 し た も の の( 前: 中 央 値 467mU/dl; 範 囲 173-1630mU/dl、 後:
126mU/dl;91-795mU/dl)、 そ の 後 低 下 は み ら れ な か っ た。 投 与 前 に
TRACP-5b が異常値を示した 13 例のうち、11 例は 1 か月後に正常化した。
NTx も有意に低下したが(P=0.0023)、1 か月後より 3 か月後にはさらに低下
していた。一方、1CTP は 1 か月後には低下はみられず、3 か月後、6 か月後
に徐々に低下した(P=0.067)。BAP は有意に低下したが(P=0.0022)、1 か
月後では低下は認められず、3 か月後に低下した。
【考察】
骨代謝マーカーによっ
て、骨修飾薬の効果が反映される時期が異なっていた。TRACP-5b は 1CTP、
NTx、BAP に比べ最も P 値が小さく、より早期に低下していた。以上の結果か
ら、TRACP-5b は鋭敏に骨修飾薬の効果を反映していると考えられ、臨床的
有用性が示唆された。
田根 香織 1、柳江 正嗣 3、鶴谷 純司 4、谷岡 真樹 2、藤本 伸一郎 3、
藤原 季美子 3、山添 譲 3、千葉 康敬 5、中川 和彦 4、菰池 佳史 6、
高尾 信太郎 1
【背景】乳癌薬物療法においては、ER,PgR,HER2 発現等の臨床病理学的特徴と
治療効果や予後との関連が報告されており、これらの因子に基づき治療選択
がなされている。一方で、ゾレドロン酸 (ZA) 治療患者における骨関連事象
(skeletal related event : SRE) の発現、すなわち ZA 治療効果と乳癌の臨床
病理学的特徴の関連を検討した報告は少ない。
【目的】2 施設における ZA 治療患者の SRE 発現と臨床病理学的特徴の関連性を
調査する。SRE 発現は骨折,脊髄圧迫、骨に対する放射線療法や手術の施行
と定義した。
【方法】後ろ向きコホート研究を行った。SRE 発現と臨床病理学的特徴の関連
性は、ロジスティック回帰分析を用いて探索的に検討した。
【結果】2007 ~ 2011 年における対象症例は 176 例 ( ホルモン受容体陽性 (HR
+ )HER2 - :125 人 (71.0% )、triple negative(TN):20 人 (11.4% )、HER2
陽性 (HR + HER2 +もしくは HR - HER2 + ):31 人 (17.6% ))。年齢中央値
は 59 才 (30-87)。うち SRE 発現症例は 42 例 (23.9% )(HR + HER2 - :30 人
(71.4% )、TN:4 人 (9.5% )、HER2 + :8 人 (19.1% ))。全症例で骨転移を有
し、骨単独転移群は 53 例、他臓器転移合併群は 123 例。ZA 投与期間中央値
は 465 日 (11-1683)、骨転移診断日から ZA 開始迄の期間中央値は 4 年 (029)。内分泌療法は ZA 投与前 27 人・ZA 投与中 127 人に、化学療法は ZA 投
与前 27 人・ZA 投与中 137 人に施行。
ZA 治療患者の SRE 発現において、年齢、単発・多発骨転移、ZA 投与期間、
骨転移診断日から ZA 開始までの期間、ZA 投与前および投与中の内分泌療法
や化学療法の有無に関して有意な関連性を認めず。サブタイプ (HR + HER2
-、TN、HER2 + ) と SRE 発現割合に有意差を認めず (TN/HR + HER2 - : p
= 0.831, OR = 0.84, 95% CI = 0.15-4.18、TN/HER2 + : p = 0.970, OR
= 0.97, 95% CI = 0.19-4.20、HR + HER2 - /HER2 + : p = 0.775, OR =
1.16, 95% CI = 0.41-3.10)。一方、骨単独転移群と他臓器転移合併群にお
いて比較検討した結果、骨単独転移群で SRE 発現割合が有意に高かった (p
< .01, OR = 4.07, 95% CI = 1.74-9.88)。
【結論】乳癌骨転移患者の中でもより骨指向性の高い乳癌患者においては、ZA
治療中であっても SRE を発現する可能性が高いことが示唆された。サブタイ
プや年齢、内分泌療法・化学療法の有無等については SRE 発現割合に差は見
られなかった。今後、乳癌骨転移患者における骨指向性を示すファクターを
探索し、ZA の有用性との関連を検討する必要がある。
358
ポスター討議
DP-1-33-05
DP-1-34-01
乳癌術前化学療法の効果判定における乳管内癌消失の意義
好中球 / リンパ球比 (NLR) は転移再発乳癌 (MBC) における
1 次ホルモン治療 (HT) の効果予測因子として有用である
1
東京女子医科大学 東医療センター 乳腺科、
2
東京女子医科大学 東医療センター 病理診断科
1
1
1
1
1
2
1
平野 明 、服部 晃典 、小倉 薫 、大久保 文恵 、井上 寛章 、
田川 寛子 1、阪口 志帆 1、松岡 綾 1、上村 万里 1、宮本 礼子 1、木下 淳 1、
藤林 真理子 2、清水 忠夫 1
宮本 健志 1、藤澤 知巳 1、森下 亜希子 1、柳田 康弘 1、桑野 博行 2
【はじめに】好中球 / リンパ球比 (neutrophil/lymphocyte ratio; NLR) は全身
炎症の簡便な指標で、種々の癌腫で予後予測因子となると報告されている。
腫瘍細胞による炎症の惹起が一因と考えられ、治療により腫瘍細胞が減少す
れば、環境の改善により NLR が変化する可能性がある。しかし化学療法を実
施した場合、NLR は薬剤により影響され、治療効果予測への応用は不可能で
ある。その点、ホルモン陽性 MBC では HT が第一選択となることが多く、こ
の場合は薬剤が NLR に影響を与えない。こうした症例の HT 効果予測に NLR
の活用を試みた。【目的】ホルモン陽性 MBC 患者の治療開始後 2-3 か月と治療
前 の NLR の 差 (dNLR) が overall survival(OS) や progression-free
survival(PFS) に影響しているかを検討する。【対象】2003-2013 年の当院
MBC 患者 299 例から、1 次治療として HT を受けた 134 例。初診時 Stage4 は
18 例。Disease free survival(DFS) 中央値は 1497 日、OS 中央値は 1472 日。
PFS 中央値は 278 日。治療前 NLR の平均値は 2.62。【結果】単変量解析にて
OS 不良因子は DFS < 1000 日 (p < 0.01) と肝転移あり (p < 0.01) であった。
PFS 不良因子は、dNLR ≧ 0.5(p < 0.05)、肝転移あり (p < 0.05)、2 臓器以
上の転移あり (p < 0.05) であった。多変量解析にて DFS < 1000 日は独立し
た OS 不良因子であった。PFS に関しては dNLR ≧ 0.5 のみが独立した不良因
子であった。肝転移ありは OS と PFS ともに多変量解析では影響因子ではな
かった。OS 不良因子が PFS に反映されない一方で、PFS 不良因子も OS に反
映されなかった。【考察】dNLR は採血を行うだけで解る非常に簡便な HT 効果
予測因子の一つであった。今回の解析では OS への影響はみられなかったが、
dNLR に応じて早めに 1 次 HT をあきらめ、2 次治療に移行することは、画像
や腫瘍マーカー等で明らかな PD を待つよりも早い段階での方針決定に有用で
ある可能性が示唆された。dNLR に則した治療戦略を整えることで OS への寄
与度の上昇も期待される。ただし、あくまでも症例の後ろ向き検討であり、
患者背景、治療背景のばらつきがある。まずは背景のそろったコホートでの
再解析が必要である。【結語】dNLR ≧ 0.5 は MBC への 1 次 HT の独立した治療
効果予測因子である。
DP-1-34-02
DP-1-34-03
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科
1
日本人のホルモン受容体陽性乳癌におけるエストロゲン受容体α
遺伝子変異の検出
Luminal type HER2 陰性乳癌の化学療法効果予測における
FDG-PET 検査の有用性
3
波戸 ゆかり、遠藤 友美、吉本 信保、浅野 倫子、遠山 竜也
【背景】エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌の発生・進展において、ER は重要
なドライバー遺伝子であるとともに乳癌における内分泌療法の標的である。
しかしながら、ER 陽性であっても内分泌療法に抵抗性(de novo, acquired)
を示す乳癌が存在し、大きな臨床的課題となっている。最近、原発巣にはなかっ
た ER αの変異が再発転移巣で同定され、この変異が、ホルモン療法抵抗性に
関連することが示唆された。
【目的】ホルモン受容体(HR)陽性乳癌のうち、当
院で手術を施行した術前ホルモン治療症例、進行再発乳癌でホルモン療法抵
抗性になった症例について、ER αの遺伝子変異について検討した。
【結果】術
前ホルモン治療を施行した原発性乳癌 23 例を対象に、乳癌組織より DNA を
抽出して、サンガーシークエンス法にて変異検索を施行した。23 例中、HR
陽性 /HER2 陰性症例が 22 例、HR 陽性 /HER2 陽性症例が 1 例、全症例でアロ
マターゼ阻害剤(AI)治療を 5 か月~ 5 年(中央値 6 か月)行った。治療効果は
CR:0 例、PR:9 例、SD:12 例、PD:2 例であった。しかしながら、全症
例において ER αの変異は認められなかった。一方、進行再発乳癌でホルモン
療法抵抗性になった9症例を対象に同様の手法により ER α変異検索を行った。
全症例が HR 陽性 /HER2 陰性、ホルモン療法は様々で治療期間は 22 ~ 109
か月(中央値 3 年 8 か月)、ホルモン療法レジメン数は 1 ~ 6(中央値 3)であっ
た。結果、9 例中 2 例(22%)に ER αの変異(Y537S,Y537C)を認めた。その
うち 1 例のホルモン療法前乳癌組織からは ER αの変異は認められなかった。
【まとめ】術前内分泌療法施行症例では ER α遺伝子変異は検出されなかったが、
HR 陽性進行再発乳癌の 9 例中 2 例に ER αの遺伝子変異を認めた。諸家の報告
通り日本人乳癌においても ER α遺伝子変異はホルモン療法抵抗性に関連する
ことが示された。若干の文献的考察を加え報告する。
市立岸和田市民病院 乳腺外科、2 和歌山県立医科大学 紀北分院 外科、
紀和病院 ブレストセンター、4 串本有田病院
吉村 吾郎 1、畑 和仁 1、櫻井 照久 2、佐々木 恵里 2、梅村 定司 3、
鈴間 孝臣 4
【背景】乳癌術前化学療法の適応は針生検標本の ER、PgR、HER2 発現状況と
Ki67 labeling index に基づく代替サブタイプに従って決定される。Luminal
A と Luminal B/HER2 陰性の識別は主に Ki67 によるが、Ki67 評価では針生検
標本と手術標本の不一致や標準的カットオフ値が定まっていないことが問題
である。【目的】FDG-PET 検査では腫瘍細胞の糖代謝能から生物学的活性を評
価できるため、治療効果予測における有用性が期待されている。今回、FDGPET の定量的指標である SUVmax を用いて、
Luminal type HER2 陰性乳癌 (L/
HER2-) における化学療法感受性例選別の有用性を検討した。【対象と方法】治
療前に FDG-PET 検査を行った臨床病期 I-III 期浸潤性乳癌 79 例を対象とし
た。(1) 2013 年 St. Gallen 代替サブタイプ別に術前化学療法組織学的効果と
SUVmax を比較した。(2) L/HER2- において術前化学療法組織学的効果別に
SUVmax を 比 較 し、SUVmax カ ッ ト オ フ 値 を 設 定 し た。(3) L/HER2- を
SUVmax で分類し、術前化学療法の効果予測能を検討した。化学療法組織学
的効果は乳癌取扱い規約に従い grade 1-2a を non-responder、grade 2b-3
を responder とした。Ki67 は hot spot で判定した。【結果】(1) 代替サブタイ
プ別 response rate は Luminal A が 36.3%、Luminal B/HER2 陰性が 18.1%、
Luminal B/HER2 陽 性 が 62.5 %、HER2 が 75.0%、Basal-like が 50.0%。 平
均 SUVmax は Luminal A が 9.7、Luminal B/HER2 陰 性 が 8.0、Luminal B/
HER2 陽性が 11.7、HER2 が 8.3、Basal-like が 10.8。(2) L/HER2- において
responder の 平 均 SUVmax は 6.7、non-responder は 10.0 (p=0.04)。(3)
SUVmax カ ッ ト オ フ 値 を 8.0 と し た 場 合 の response rate は L/HER2-/ 高
SUVmax で 9.5%、L/HER2-/ 低 SUVmax で 50.0% (p=0.009)。
【 結 語 】
SUVmax は L/HER2- における化学療法の効果予測因子として有用である。
359
一般セッション(ポスター討議)
はじめに 術前化学療法 (PST) における病理学的 CR(pCR) の定義に関しては
様々な意見があるが、FDA の guidance に基づき「乳房、腋窩における浸潤巣
の完全消失 (ypTis/0, ypN0) で DCIS の遺残を問わない」とするのが主流とな
りつつある。しかし、実地臨床では pDCIS の再発例をしばしば経験する。今回、
Anthracycline(A), taxane(T) を併用した PST における乳管内癌消失の意義に
ついて検討した。対象 2004 年 1 月から 2014 年 1 月に AT 逐次投与による PST
を開始し、手術まで施行した乳癌 227 例。方法 組織学的効果を乳房、腋
窩における浸潤巣・DCIS ともに完全消失したものを狭義の pCR(ypT0 かつ
ypN0)、DCIS の み 遺 残 し た も の を pDCIS(ypTis か つ ypN0)、 そ れ 以 外 を
non-pCR と し て 5 年 全 生 存 率 (5yOS)、5 年 無 病 生 存 率 (5yDFS) に つ い て
retrospective に検討した。結果 平均観察期間は 59.7 カ月で再発 50 例、死
亡 28 例。 狭 義 の pCR28 例 (12.3%)、pDCIS 16 例 (7.0%)、non-pCR 183
例 (80.6%)。5yOS は pCR 100%、pDCIS 91.7%、non-pCR 88.5% (logrank p=0.1494)、5yDFS は pCR 95.7%、pDCIS 86.7%、non-pCR
74.1% (log-rank p=0.0725) であった。OS のハザード比 (HR) でみると、狭
義 の pCR と non-pCR の 間 に 有 意 差 を 認 め た (HR 0.001 未 満 , 95%CI:00.525; p=0.0078)。 一 方、pDCIS と non-pCR の 間 は HR が 1.00 (95%CI:
0.161-3.36; p=0.9988) で有意差を認めなかった。また、DFS の HR でみる
と、 狭 義 の pCR と non-pCR の 間 に 有 意 差 を 認 め た (HR 0.14, 95%CI:
0.0078-0.638; p=0.0058)。一方、
pDCISとnon-pCRの間はHRが0.789 (95%CI:
0.191-2.16; p=0.6807)で有意差を認めなかった。さらに、OSの多変量解析では
狭義のpCR (pCR/non-pCR; HR 0.0000000002, 95%CI:0-0.31, p=0.0011)、核
グレード(NG1,2/NG3; HR 0.327, 95%CI:0.143-0.752, p=0.0091)、ER (陰性/
陽性; HR0.332, 95%CI: 0.139-0.782; p=0.0119)が独立した予後因子となった。
ま た、DFSの 多 変 量 解 析 で は 狭 義 のpCR (pCR/non-pCR; HR 0.0994,
95%CI:0.005-0.494, p=0.0019)、核グレード(NG1,2/NG3; HR 0.435, 95%CI:
0.238-0.814, p=0.0100)、T (T0-3/T4; HR0.457, 95%CI: 0.250-0.865;
p=0.0173)が独立した予後因子となった。考察 OS, DFSとも狭義のpCRとnonpCR間でHRに有意差を認めた。臨床試験におけるendpointとしてのpDCISを含
む広義のpCRは妥当であるが、術前化学療法後の個々の症例における再発リスク
を予測する上で乳管内癌も消失した狭義のpCRは有用である。
群馬県立がんセンター 乳腺科、
群馬大学大学院 医学系研究科 病態総合外科学
ポスター討議
DP-1-34-04
DP-1-34-05
日本大学 医学部 乳腺内分泌外科
1
術前化学療法の施行前後における乳癌サブタイプの変化につい
ての検討
術前化学療法前後におけるバイオマーカーの変化と臨床効果の
検討
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科、2 兵庫医科大学 放射線科、
兵庫医科大学 病院病理部、4 八尾市立病院 乳腺外科、
5
八尾市立病院 病理診断科
3
原 由起子、櫻井 健一、水沢 容子、鈴木 周平、長島 沙樹、和賀 瑛子、
前田 哲代、平野 智寛、榎本 克久、天野 定雄
一般セッション(ポスター討議)
(目的)術前化学療法前後のホルモンレセプターの変化、HER-2 レセプターの
変化、Ki-67 陽性率の変化と化学療法の効果の関係を検討することを目的とし
た。(対象)当科で過去 3 年間に術前化学療法を施行し、術前術後に免疫染色
が可能であった 55 例を対象とした。(結果)平均年齢 54.7 歳。すべて女性。
すべてアンソラサイクイン系とタキサン系の遂次投与行っており、HER-2 陽
性症例に対してはタキサン系にハーセプチンを併用していた。術前化学療法
施 行 前 で は ER 陽 性 率 は 76.3 %、PgR 陽 性 率 は 61.8 %、HER-2 陽 性 率 は
21.8%であり、ki-67 の陽性率の平均値は 41.3%± 22.0%であった。術後の
病理組織学的検査では ER 陽性率は 74.5%、PgR 陽性率は 67.2%、HER-2 陽
性率は 18.1%であり、ki-67 の陽性率の平均値は 19.2%± 20.4%であった。
ER、PgR に変化を認めた症例は認めた症例はそれぞれ 4 例、10 例であり、全
体の 9、18%であった。HER-2 に変化を認めた症例は認めた症例は 4 例であり、
全体の 9%であった。
術前化学療法の効果判定は grade0:4 例、
Grade1a:19 例、
Grade1b:11 例、Grade2a:10 例、Grade2b:5 例、Grade3:6 例であった。ま
た Grade0-1 を化学療法効果なし、Grade2-3 を効果ありとして 2 郡に分けて
検討した。術前化学療法の効果があったものとなかったものではホルモンレ
セプター、HER-2 レセプターが変化する割合に統計学的に差は認めなかった。
(P=0.84、0.98)また、術前化学療法前後での Ki-67 の陽性率は、化学療法で
効果を認めた群で統計学的に有意差をもって減少していた。
(P < 0.01)(ま
とめ)術前化学療法前後のホルモンレセプターの変化、HER-2 レセプターの変
化、Ki-67 陽性率の変化について、化学療法の有効であったものとなかったも
のの 2 郡に分けて検討した。症例数が少なく、観察期間が短いため今後症例を
蓄積し、無再発生存率等も加えて検討を続ける必要がある。
八木 智子 1、榎本 敬恵 1、柳井 亜矢子 1、宮川 義仁 1、西向 有紗 1、
今村 美智子 1、村瀬 慶子 1、高塚 雄一 1、山野 理子 2、渡邊 隆弘 3、
森本 卓 4、野村 孝 4、竹田 雅司 5、三好 康雄 1
【背景】術前化学療法(NAC)において病理学的完全奏効(pCR)は、予後のサロ
ゲートとなることが明らかにされている。一方、pCR が得られなくても臨床
的奏効が得られた症例や、NAC 後に増殖マーカーである Ki67 が低値の症例は
予後良好であることが報告されている。しかし、Ki67 の発現低下は化学療法
の効果の指標となる可能性があるものの、Ki67 の低下と臨床効果の関連に関
しては明らかにされていない。今回、術前化学療法前後の Ki67 の低下と、臨
床効果の相関を検討した。さらに治療前、後におけるバイオマーカーの変化
も評価し、臨床効果に与える影響を検討した。【対象と方法】NAC 後に手術切
除した原発性乳癌 193 例を対象に、エストロゲン受容体 (ER), プロゲステロ
ン受容体 (PgR), Ki67 の発現割合を、治療前後で免疫組織染色にて検討した。
臨床的効果は主に MRI で腫瘍径を測定し、RECIST 判定で CR+PR を奏郊群
(cResp)、NC+PD を非奏郊群 (cNon-Resp) とした。病理学的効果は乳癌取
扱い規約によって、グレード 2b+3 を奏効群(pResp)、グレード 0, 1a, 1b,
2a を非奏効群(pNon-Resp)に分類した。治療後のバイオマーカーの検討は、
病理学的非奏効群の 132 例を対象に行った。【結果】治療後の Ki67 は治療前に
比べ有意に低下しており、Ki67 の低下は cResp 群で有意差が認められた(平
均 ; 範 囲 , 前:33.4%; 3-90%, 後:20.0%; 0-80%, P < 0.0001, n =
101)。ER 陽 性 群 で は cResp 群 で Ki67 は 有 意 に 低 下 し て い た も の の( 前:
25.5%; 1-90%, 後:11.3%; 0-60%, P < 0.0001, n = 65)、ER 陰性群で
は相関は認められなかった。ER の発現割合は、閉経前、閉経後いずれにおい
ても治療前、後で変化は認められなかった。一方、ER 陽性乳癌において PgR
の発現割合は、閉経前では cResp 群で有意に低下していたが(前:45.0%;
0-100%, 後:5.5%; 0-20%, P = 0.0003, n = 25)、cNon-Resp 群 で は
PgR の低下はみられなかった。【考察】ER 陽性乳癌では病理学的非奏郊群でも
臨床的奏郊群において Ki67 が有意に低下しており、Ki67 の低下が臨床効果に
つながった可能性が示唆された。閉経前では奏効群において PgR は有意に低
下していたことから、化学療法による卵巣機能の抑制が、エストロゲンシグ
ナルの阻害を介して臨床効果につながった機序が推測された。
DP-1-35-01
DP-1-35-02
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
2
国立がん研究センター中央病院 先端医療科 早期・探索臨床研究センター
1
下井 辰徳 1、田辺 裕子 1,2、清水 千佳子 1、前嶋 愛子 1、笹田 伸介 1、
佐々木 小百合 1、橋本 淳 1、公平 誠 1、温泉川 真由 1、山本 春風 1、
米盛 勧 1、藤原 康弘 1、山本 昇 2、田村 研治 1,2
宇野 智子 1,3、九冨 五郎 1、島 宏彰 1、前田 豪樹 1、里見 蕗乃 1、
豊田 宣彦 1、澁谷 均 3、廣橋 良彦 2、鳥越 俊彦 2、佐藤 昇志 2、
平田 公一 1
乳癌臨床検体における遺伝子プロファイルの検討
乳癌予後因子としての HLA class I 発現についての検討
2
【目的】乳癌患者の腫瘍組織および非腫瘍組織の遺伝子プロファイリングを行
うことにより、臨床意義のある体細胞遺伝子変異、遺伝子発現の同定を行う
ことを目的とした。【方法】20 歳以上、当科で継続フォローされている転移・
再発乳癌患者で、手術または生検検体が入手可能な 34 症例を対象とした。病
理科保存検体のフォルマリン包埋パラフィン (FFPE) 切片 10 μ m の厚さスライ
ド 5 枚から DNA を抽出し、Mutiplex 遺伝子検査法を用いた次世代シークエン
ス解析により、90 の遺伝子変異または遺伝子増幅と、10 の融合遺伝子の有無
を解析した。34 例の乳癌患者の年齢中央値は 56 歳 ( 範囲 ;33-73) であった。
乳癌のバイオロジーはホルモン受容体陽性症例が 24 例、HER2 受容体陽性症
例は 6 例、トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) は 7 例であった。術前化学療法後
の 手 術 検 体 9 例 を 含 む が、 い ず れ も 治 療 効 果 は 乳 癌 取 り 扱 い 規 約 に 従 い
Grade0 から 1b であった。DNA 抽出に用いた FFPE 検体は、原発巣からの生
検検体が 29 例、転移巣からの検体は 5 例であった。最も小さな検体は生検検
体からのものであり、8mm × 1mm の切片であった。収穫 DNA 量中央値は 4.9
μ g( 範囲 ;0.73-14.04)、DNA の品質を反映する Q-value(qPCR/Qubit) の中
央値は 0.51( 範囲 ;0.1-1.84) であった。【結果】1 検体中に認められた遺伝子
変異・増幅の数は中央値 2 個 ( 範囲 ;0-4) であった。本解析の結果、1 つ以上
の何らかの変異・増幅を有する症例は 28 例 (82% ) であり、変異検出がなかっ
たのは 6 例 (18%、ホルモン受容体陽性 HER2 陰性 21 例中 4 例と TNBC7 例中
2 例 ) であった。融合遺伝子は全症例で認められなかった。認められた体細胞
遺 伝 子 変 異 は TP53 が 11 例 (32 % ) と 最 も 多 く、 次 い で PIK3CA が 8 例
(24 % )、BRCA1、BRCA2、ERBB2 と AKT1 が そ れ ぞ れ 2 例 (5.9%) ず つ、
MAP3K1、FGFR1、KRAS、ARID2、DDR2 と MAP3K4 がそれぞれ1例 (2.9%)
ずつであった。BRCA1/2 の遺伝子変異を有する 3 例中 2 例は、TNBC 症例で
あった。認められた遺伝子増幅は ERBB2 が 6 例であり、これは病理組織学的
検査で HER2 陽性とされている症例と一致していた。他の遺伝子増幅は、
MYC と CCND1 が 3 例 (8.8%)、IGFR1、EGFR 、MDM2 と FGFR1 が そ れ ぞ
れ 1 例 (2.9%) ずつであった。【結論】乳癌検体の 34 例全例で次世代シークエ
ンス解析を用いて遺伝子解析を行うことができた。そのうち 82%は何らかの
遺伝子変異・増幅を有し、特に TP53、PIK3CA 変異の頻度が高かった。18%
の腫瘍には遺伝子変異・増幅を同定できなかった。
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座、
札幌医科大学 病理学第一講座、3 市立室蘭総合病院 外科
【目的】HLA class I(以下、class I)は腫瘍免疫に深く関与しており、様々な癌
種において class I 発現低下が予後と相関する可能性が示唆されている。乳癌
組織における class I 発現低下が予後に与える影響を明らかにするため、乳癌
症例を対象に免疫組織化学的に class I の発現を調べ、
臨床病理学的検討を行っ
た。
【対象と方法】当院で手術を施行された乳癌 210 例を対象に、原発巣より 2 ブ
ロック、リンパ節転移のある症例はリンパ節も class I 染色を施行した。80%
以上の細胞において細胞膜が染色される場合を positive 群、80% 以上の細胞
で 細 胞 質 お よ び 細 胞 膜 が 染 色 さ れ な い 場 合 を negative 群、positive と
negative が混在、もしくは、細胞質は positive だが細胞膜は negative である
場合を hetero 群とし、3 群に分類した。そして、その 3 群における組織型、
ホルモンレセプター(以下、HR)
、HER2、予後について分析を行った。
【結果】原発巣における positive、hetero、negative の比率はそれぞれ 18%、
45%、37% であり、hetero と negative を合わせた class I 発現低下症例は
82 % に ま で 及 ん だ。 組 織 型 で は、 浸 潤 癌 と 比 較 し、 非 浸 潤 癌 に お い て
positive 群が占める割合が 30% 弱と大きい傾向にあった。統計学的有意差は
認めないものの、HR では陽性群の方が class I 発現低下の割合が大きく(陽性
群 87%、陰性群 76%)、HER2 では陽性群の方が class I 発現低下の割合が大
きく(陽性群 71%、陰性群 59%)、病期分類では stage が進行するにつれて
class I 発現低下の割合は大きくなる傾向にあった。原発巣と比較して転移巣
では class I 発現低下を認める傾向にあるため、原発巣に限った分析も行った。
stage III 症例において DFS で有意差を認めた。一方で、転移巣 に お け る
class I 発現低下を反映させるため原発巣で positive だが転移巣で hetero もし
くは negative と class I 発現低下を示した場合も class I 低下症例として扱い、
それぞれ hetero 群、negative 群に割り付けなおして再分析した。その結果、
全症例、stage II、stage III において、positive 群に対して hetero、negative
群は再発率が有意に高い結果であった。
【考察】class I 発現の低下している腫瘍は免疫監視機構を回避することにより
転移を促進し、予後に影響すると推察された。乳癌において class I 発現低下
症例は予後不良であり、class I は予後予測因子としての可能性が示唆された。
360
ポスター討議
DP-1-35-03
DP-1-35-04
原発性乳癌における APOBEC3B mRNA 発現の生物学的意義
日本人乳癌とイギリス人乳癌の比較(第一報 ) -conventional factors を中心として -
1
九州大学 大学院 九州連携臨床腫瘍学、2 九州がんセンター 乳腺科、
3
九州大学 大学院 消化器・総合外科
小沼医院 乳腺外科
徳永 えり子 1,2、山下 奈真 3、田中 仁寛 3、井上 有香 3、前原 喜彦 3
加藤 孝男
【目的】日本人乳癌は欧米人乳癌に比べほんとうに予後が良いのだろうか?違
いの原因となる biological factors は存在するのだろうか?日本人乳癌 (J) と
イギリス人乳癌 (B) を対象に臨床病理学的観点より比較検討した。【対象】
1991年から1993年までに東京女子医科大学とオックスフォード大学
で手術された浸潤性乳癌のうち病理学的検索が可能であった各々173例、
184例。非浸潤癌、Stage IV 乳癌、両側乳癌、男子乳癌および炎症性乳癌
は除いた。
【方法】pT、n、HG (Elston&Ellis)、ER (DCC)、histological type、
vascular invasion(H & E 染色のみ)を J、B それぞれについて調べ、健存率
(RFS) および生存率 (OS) を Kaplan-Meier survival curves で示した。さらに
各々の因子について多変量解析も試みた。
【結果】tumour size (J:2.7 ± 1.8
cm;B:2.2 ± 1.3 cm, p < 0.01), pT1 (J:45.1%; B:63.0%, p < 0.01), n(+)
(J:37.5%; B:39.1%, p=0.75), HGIII (J:21.4%;B:29.9%,p=0.04), ER(+)
(J:57.2%;B:78.8%,p < 0.01), infiltrating lobular carcinoma (J:4.0%;
B:13.6%, p= 0.01), positive vascular invasion (J:34.1%;B:32.1%,
p=0.16), conservative surgery (J:13.9%; B:82.1%, p < 0.01),
chemotherapy alone (J:31.8%; B:8.2%, p < 0.01), endocrine therapy
alone (J:12.1%; B:62.0%, p < 0.01)。J は B に比べ予後良好であった (RFS:
p= 0.01; OS: p= 0.02)。subgroup 解析を行うと、pT2 群 (RFS: p < 0.01;
OS: p < 0.01)、50歳以上群(RFS: p=0.03; OS: p=0.02)とりわけ50歳
以上の ER (-) 群 (RFS: p=0.04; OS: p=0.01) で有意差を認めた。OS につい
て多変量解析を行うと、population (B vs J: p < 0.03), pT (pT2 vs pT1: p
< 0.01; pT3 vs pT1: p < 0.01), n (positive vs negative: p < 0.01) および
HG (II vs I: p=0.02; III vs I: p=0.01) が独立した予後因子であった。
【結語】
B は J に比べ、同等のリンパ節転移、小腫瘍径、多くの ER 陽性例にもかかわら
ず予後不良であった。予後の差は HG の違いによることが示唆された。
DP-1-35-05
DP-1-36-01
1
1
2
2
乳がん幹細胞マーカー SOX2・ALDH1 と DFS/OS の関与につ
いての検討
乳癌患者血清における癌幹細胞マーカー SOX2 の自己抗体価の
検討
札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科、
東札幌病院 ブレストケアセンター、
3
北海道立子ども総合医療・療育センター 病理診断科、
4
札幌医科大学 医学部 第一病理学講座、
5
札幌医科大学 医学部 病理診断科・病理部、6JR 札幌病院
札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座、
札幌医科大学 第一病理
里見 蕗乃 1、九冨 五郎 1、島 宏彰 1、前田 豪樹 1、廣橋 良彦 2、
佐藤 昇志 2、平田 公一 1
島 宏彰 1、九冨 五郎 1、里見 蕗乃 1、前田 豪樹 1、亀嶋 秀和 2、
大村 東生 2、木村 幸子 3、高橋 秀史 3、廣橋 良彦 4、鳥越 俊彦 4、
木村 康利 1、水口 徹 1、長谷川 匡 5、佐藤 昇志 4、平田 公一 6
【背景】臨床において乳癌幹細胞は、化学療法や放射線療法などに治療抵抗性
を示し再発や転移の起源となるとされる。癌幹細胞マーカー発現程度による
再発期間への影響については現在も結論がでていない。われわれは過去の研
究で乳癌幹細胞マーカーとして知られる ALDH1 と SOX2 について少数例では
あるが原発巣と転移巣の関係について解析した結果、DFS との関連性が示唆
された。【症例・方法】2011 年 1 月から 2012 年 12 月まで当科で手術を施行し
た原発性乳癌 cStage I ~ IIIC106 例において SOX2、ALDH1 の免疫染色を行
い、レトロスペクティブに臨床病理学的因子、DFS/OS への関与について検
討した。観察期間中央値は 46.2 ヶ月である。症例の内訳はホルモン感受性(あ
り / なし)81/25 例、HER 陽性 / 陰性 13/93 例で、腫瘤径平均 2.3cm、腋窩リ
ン パ 節 転 移 陽 性 / 陰 性 は 26/80 例、 組 織 型 DCIS/IDC/special type は、
6/81/19 例、pStage は 0/I/II/III それぞれ 6/52/35/13 例であった。統計は
JMP11 にて、χ二乗検定、および、wilcoxon 検定を用いた。【結果】ALDH1 陽
性例は、リンパ節転移個数が有意に多かった (p=0.0272)。ALDH1 陽性例で
は DFS、OS と も に 有 意 に 不 良 で あ っ た (p=0.0018, p=0.0031)。 一 方、
SOX2 陽性例では、リンパ節転移個数が有意に多く (p=0.011)、HER2 陽性が
有 意 に 多 く (p=0.0261)、NG や Ki67 も 有 意 に 高 値 で あ っ た (p=0.0176,
p=0.0166)。 ま た、SOX2 陽 性 例 に お い て 有 意 に DFS は 不 良 で あ っ た
(p=0.0487) が、OS についても同様の傾向を示した (p=0.084)。【考察】症例
数に課題を残すもののこれらの乳癌幹細胞マーカーは、いずれも原発巣の免
疫染色で得られる予後予測マーカーとして期待されるものである。乳がん幹
細胞の最近の知見を加えて報告する。
【背景】癌組織には癌幹細胞が存在し、これらの細胞は自己増殖能と多分化能
を有するため高い造腫瘍能を持つ。乳癌組織においても乳癌幹細胞が化学療
法等に対する治療抵抗性と密接に関係し、再発や転移に深く関与していると
言われている。SOX2 は胚幹細胞の転写因子の一つであり、ES 細胞や TS 細胞、
さらには神経幹細胞などで幹細胞性の維持に機能していることが知られてい
る。今回、われわれは乳癌患者の血清における SOX2 の自己抗体価について
検討した。【対象・方法】健常者 31 例と原発性乳癌患者 38 例の血清を用い、
SOX2 の full-length recombinant 蛋白を抗原として、乳癌患者血清中の自己
抗体価を ELISA 法を用いて検出した。また、各々の吸光度と臨床病理学的因
子との関連に関して検討した。【結果】健常者の吸光度の平均値は 0.100、乳
癌患者の平均値は 0.272 であり、有意差が認められた(P < 0.01 )。【考察】健
常者と比較し、乳癌患者の血清では SOX2 の自己抗体価は有意な上昇を認め、
SOX2 は乳癌において新たな癌幹細胞マーカーとして有用であることが示唆さ
れた。
361
一般セッション(ポスター討議)
【背景】ヒトの癌には多数の遺伝子変異が含まれる。APOBEC (apolipoprotein
B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like) シチジンデアミナー
ゼファミリーはウイルス感染に対する細胞内防御においてきわめて重要な役
割を果たす。一方、これらの酵素は、シチジンの脱アミノ化を触媒すること
により、宿主側のゲノムにも C-to-T 変異を惹起する。近年、APOBEC3B が
いくつかのタイプのヒト癌に過剰発現しており、乳癌を含む様々な癌の変異
源の一つであり、癌化や予後に関与している可能性が報告された。【目的】原
発性乳癌における APOBEC3B mRNA の発現、及び臨床病理学的因子との関
連を解析し、その生物学的意義を検証する。【方法】: 当科にて手術を施行し
た術前無治療の原発性乳癌 305 例を対象とした。採取した乳癌組織より、
total RNA を抽出し、APOBEC3B mRNA の発現を定量的 RT-PCR(qRT-PCR)
で解析した。内因性コントロールとして TATA binding protein (TBP) を用い、
APOBEC3B mRNA 発現量と臨床病理学的因子および予後との関連を解析し
た。【結果】APOBEC3B mRNA 発現は 277 症例で検出できたが、28 症例では
発現を認めなかった。 APOBEC3B 発現は ER 陰性 , PR 陰性 , 高グレード症例
で有意に高値であった。APOBEC3B 発現は Ki67 index と正の相関を示し、
triple negative 群で最も高く、HR+/HER2- 群で最も低値だった。年齢、腫
瘍径、リンパ節転移、臨床病期、組織学的浸潤の有無と APOBEC3B 発現に有
意な相関は認められなかった。APOBEC3B mRNA 高値群では全症例および
ER 陽性症例で有意に recurrence free survival(RFS) が短かったが、ER 陰性
症 例 で は APOBEC3B mRNA 発 現 と RFS に 相 関 は 認 め ら れ な か っ た。
APOBEC3B が全く検出できなかった症例は APOBEC3B 低発現症例に比べて、
予後不良であった。【結語】APOBEC3B 高発現は乳癌の高悪性度と関連し、予
後不良因子であることが示された。現在 APOBEC3B 発現と遺伝子変異やゲノ
ム不安定性との関連について解析中である。
ポスター討議
DP-1-36-02
DP-1-36-03
富山大学 第二外科
1
新規解析装置を用いた血液中浮遊乳癌細胞(CTC)の同定
乳癌早期発見を目的とした血清バイオマーカー TFF の検討
東京大学 大学院 医学系研究科 代謝栄養内分泌外科、
東京大学 大学院 医学系研究科 消化管外科、
3
東京大学 医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
4
東京大学 医学部附属病院 病理部、5 大塚製薬研究所、
6
東京大学 大学院 医学系研究科 臨床試験データ管理学、
7
国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター、
8
獨協医科大学越谷病院 乳腺センター、
9
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座
2
長田 拓哉、松井 恒志、塚田 一博
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】上皮間充織転換(EMT)は、上皮が細胞間接着を離脱し、間葉系細
胞の性質を獲得することにより、癌の浸潤・転移に関与していることが報告
されている。EMT を起こして血液中を浮遊する癌細胞(CTC)の捕捉は、治療
効果予測や生命予後予測、癌転移メカニズムの解明など、広い分野での応用
が期待されている技術である。これまでの CTC 解析は Cell Search System を
中心として行われてきたが、装置が高価であるとともに、癌細胞を捕捉する
ための抗体があらかじめ決められており、多様な癌細胞の捕捉が困難であっ
た。今回我々は、安価で効率的な新規 CTC 捕捉チップを開発し、乳癌患者に
おける CTC 同定を行った結果につき報告する。【方法】1、72 例の乳癌患者よ
り 3ml の血液を採取し、リンフォプレップを用いて有核細胞を濃縮する。抗
EpiCAM 抗体をコーティングした CTC チップを用いて CTC を捕捉する。捕捉
した細胞を抗 EpiCAM 抗体、ならびに抗 CK18 抗体を用いて免疫染色し、蛍光
顕微鏡にて陽性細胞を確認する。得られた CTC の結果を臨床病理学的に解析
する。また同じサンプルについてフローサイトメーターを用いて CTC 解析を
行い、得られた結果について比較検討する。2、進行乳癌患者に対して術前
化学療法を行う際に定期的に採血し、血液中の CTC を解析する。得られた結
果を画像診断結果と比較する。【結果】1、72 例中 13 例(18.1%)において、
解析開始より1時間で 1 個以上の CTC が捕捉された(病期 0:3 例、I:4 例、
II:6 例)。フローサイトメーターで 10 個以上の陽性細胞が確認された症例(16
例、21.9%)と有意な相関を認めた(p=0.0053)。以前に化学療法が施行され
ている再発乳癌症例では CTC を捕捉しなかった。2、術前化学療法(FEC100)
の施行により、主腫瘍の縮小に先んじて CTC の減少、消失を認めた。途中、
副作用による化学療法の中断により CTC は増加したが、化学療法(ドセタキセ
ル)の開始により、再び CTC は減少した。【結語】新規に開発した CTC チップ
は安価で効率的に CTC を捕捉する事が可能であった。また抗癌剤に対する感
受性を早期に評価する事が可能であった。現在、CTC 陽性症例の再発につい
て評価中である。
石橋 祐子 1,3、野村 幸世 2、原田 真悠水 3、山村 純子 3、倉林 理恵 3、
分田 貴子 3、菊池 弥寿子 3、丹羽 隆善 3、西岡 琴江 3、内田 惠博 3,7、
愛甲 丞 2、大本 安一 5、大津 洋 6、池村 雅子 4、対馬 ルリ子 9、
佐々木 毅 4、深山 正久 4、小川 利久 8、多田 敬一郎 3、瀬戸 泰之 2
【背景・目的】Trefoil Factor Family(TFF)1, 2, 3 は消化管粘膜などで部位特
異的に分泌されているタンパク質である。中でも TFF3 は、胃癌患者血清で上
昇していることが見いだされ、胃癌のバイオマーカーとなる可能性が示唆さ
れた。膵癌患者の血清中でも TFF3 値が非担癌者に比し上昇していることが確
認され、汎癌バイオマーカーとなり得るといえる。これらのことより、血清
TFF1, 2, 3 が乳癌患者の拾い上げにも有用であるかどうかを検討することと
した。【方法】検診受診の 20 ~ 80 歳代の非担癌女性 351 名の血清 TFF1, 2, 3
値と未治療の乳癌患者 44 名の血清 TFF1, 2, 3 値を ELISA(サンドイッチ法)
により比較した。さらに、乳癌患者数に対して± 5 歳として年齢でマッチング
し、対象集団を 1:3 の割合で抽出した擬似的な集団にて検討することを 100
回繰り返した。胃癌では胃切除後も血清 TFF 3 が低下しなかったことを踏ま
え、乳癌患者の術前術後の血清 TFF1, 2, 3 も測定し、切除による TFF 値の変
化を比較した。手術検体の免疫染色も施行した。【結果・考察】乳癌患者の
TFF1, 2, 3 は、TFF1: P = .843, TFF2: P = .254, TFF3: P = .068, TFF3(80
歳未満 ): P = .004 で TFF3 のみ有意に高値であった。症例数が少ないため、
100 回試行を繰り返した結果、TFF1: 2 群の差に有意差を示す回数 alpha =
5% : 0 回 , TFF2: 2 群の差に有意差を示す回数 alpha = 5% : 0 回 , TFF3: 2
群の差に有意差を示す回数 alpha = 5% : 99 回 , alpha = 1% : 81 回であっ
た。TFF1, 2 については統計的な有意差を示す結果は得られなかったが、
TFF3 において有意差を示す結果となり、TFF3 は乳癌バイオマーカーとなり
え、すなわち汎癌バイオマーカーとなる可能性が示唆された。術後血清 TFF3
は術前より有意に減少しており、血清高 TFF3 は乳癌自体に因ると考えられ、
乳癌再発のバイオマーカーとなる可能性も示された。術前血清 TFF3 の実測値
は 4.402 から 17.164 までの幅があるため、症例数を増やして、腫瘤の大きさ、
組織型等で分類し比較する必要があろう。実際に手術検体の免疫染色では
TFF3 は 96%の症例で陽性であった。血清 TFF3 は乳がんの早期発見バイオ
マーカーとなりうる。
DP-1-36-04
DP-1-36-05
血清コレステロール値と乳癌の予後との関連
術前末梢血中の EMT 誘導因子:Plasmin-3(PLS3)発現の臨床
的意義
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科
1
製鉄記念八幡病院 外科、2 九州大学別府病院 外科、
群馬大学大学院病態総合 外科、
4
九州がんセンター 臨床研究センター 乳腺部
近藤 直人、澤木 正孝、服部 正也、吉村 章代、石黒 淳子、小谷 はるる、
安立 弥生、瀧 由美子、岩田 広治
【背景】最近の大規模な観察研究において、コレステロール(Chol)低下薬であ
るスタチンの内服は、全癌死を抑制する効果があると報告されており、Chol
が癌の増殖に関与している可能性が示唆されている。また、基礎研究におい
ては 27-hydroxycholesterol(27-OHC)など Chol の代謝産物がエストロゲン
レセプター(ER)の agonist 作用を持つことが示されており、Chol 値が乳癌
の予後と関係する可能性がある。【目的】乳癌患者において血清 Chol 値と予後
との関係を明らかにする。
【対象・方法】2000 ~ 2013 年の期間に当院で手術
が施行された原発性乳癌のうち、非浸潤癌、stage4 症例を除いた 3439 例を
対象とした。術前に測定された総コレステロール (T-Chol) 値をもとに、施設
基準値である 220 をカットオフ値とした。データベース、カルテをもとにし
た後方視的検討。【結果】3439 症例の内訳は T-chol 正常群:2139 例、T-chol
高値群:1300 例、観察期間中央値は 65 ヶ月(8 - 141 ヶ月)。患者背景は年
齢(T-chol 正 常 群: 中 央 値 52.6(22-90)、T-chol 高 値 群:57.2(25-88))、
閉経状況(T-chol 正常群:閉経後 974 例(46%)、T-chol 高値群:閉経後 883
例(68%))のみ有意な差を認めたが、腫瘍径、リンパ節転移の有無、BMI、
ER、HER2、薬物療法の有無、治療内容(ホルモン療法、抗癌剤、分子標的薬)、
放射線治療の有無に関しては両群に差を認めなかった。5 年生存率(OS)は
T-chol 正常群:94.8%、T-chol 高値群:95.0%(HR:1.02、95%CI:0.86-1.15;
p=0.95)、5 年無再発生存率(DFS)は T-chol 正常群:92.4%、T-chol 高値群:
90.6%(HR:0.85、95%CI:0.78-1.18;p=0.21)であり両群に差を認めなっ
た。ER 陽 性 群 に お い て も OS は、T-chol 正 常 群:97.4%、T-chol 高 値 群:
96.8%(HR:1.08、95%CI:0.79-1.24;p=0.93)、5 年無再発生存率(DFS)
は T-chol 正 常 群:94.6%、T-chol 高 値 群:95.0%(HR:0.92、95%CI:
0.72-1.19;p=0.30)と差を認めず、ER 陰性群でも同様の結果であった。こ
の傾向はリンパ節転移陽性症例に限った場合でも、ER の発現に関わらず、
OS、DFS とも差を認めなかった。【結語】血清 T-chol 値は乳癌の予後とは関係
しないことが示された。今後、27-OHC 値、さらに Chol に関係する代謝酵素
活性との関連に関して検討の余地がある。
3
上尾 裕紀 1、新田 吉陽 2、横堀 武彦 3、大野 真司 4、三森 功士 2
【背景・目的】乳癌術後補助療法の選択は国際的ガイドラインに沿って行われ
ているが、より良好な治療成績を得るためには個々の症例での再発リスクを
評価できるプラスαの予後予測因子が望まれる。転移のプロセスとして原発巣
における癌細胞が上皮間葉転換(Epitherial-Mesenchymal,EMT)により血流
へと流入し Circulating tumor cell(CTC) となることが知られているが、我々
は EMT 誘導因子である Plasmin-3(PLS3)に着目し大腸癌の予後予測因子と
なることを報告した。そこで今回、乳癌患者における術前末梢血中 PLS3 発現
の予後予測マーカーとしての臨床的意義について検討を加えた。
【対象と方法】
次のサンプルを対象として PLS3 発現を定量的 RT-PCR を用いて評価した。
(1)
乳癌細胞株(MCF-7,SKBR3,MDA-MB-468,MDA-MB-231)と骨髄転移巣
から樹立された乳癌細胞株(BC-M1)、および健常者末梢血、(2)乳癌の癌部
107 例と非癌部 39 例より抽出した RNA、(3)乳癌患者 595 例の術前の末梢血
サンプルを評価し、PLS3 の発現の程度と臨床病理学的因子・予後との関連を
検討した。【結果】(1)すべての乳癌細胞株に PLS3 発現を認め、健常者末梢
血中には認めなかった。(2)PLS3 mRNA は非癌部と比較して癌部で有意に高
発現していた (p < 0.01).(3)PLS3 高発現群(n=389 例)、低発現群 (n=206
例 ) に分けて臨床病理学的因子の差異を検討したところ、腫瘍径と Luminal
type において有意差を認めた (p < 0.05)。多変量解析では PLS3 高発現群は
有意に予後不良で,独立予後因子であることが示された (p < 0.05)。リンパ
節転移陰性例では、361 例中 PLS3 高発現例(n=228)の予後は低発現(n=133)
に 比 べ て 不 良 で あ っ た(p=0.0312)。triple negative 症 例 で は、 高 発 現 例
(n=51) で は DFS、OS と も に 低 発 現 例(n=18)よ り も 予 後 不 良 だ っ た
(p=0.021 、p=0.043)。【結語】乳癌患者の術前末梢血中 PLS3 発現は予後予
測マーカーとして有用であることが示され、術後補助療法の選択やホルモン
療法の延長を決定する上での biomarker として期待される。
362
ポスター討議
DP-1-37-01
DP-1-37-02
当院における検診発見乳癌症例の検討~検診における視触診省
略の可能性の検討~
福島県におけるマンモグラフィ併用乳癌検診 8 年間の成績
1
2
南大阪病院 乳腺外科
福島県立医科大学 医学部 器官制御外科学講座、
公益財団法人福島県保健衛生協会乳がん集団検診精度管理委員会
村上 祐子 1、阿部 宣子 1,2、青砥 慶太 1、渡邉 久美子 1,2、君島 伊造 2、
里見 孝弘 2、阿部 力哉 2、大竹 徹 1,2、竹之下 誠一 1
原田 知明、中谷 守一
【背景】当院における乳癌検診は大阪市乳癌検診の方針に従い、40 歳以上は視
触診と MMG にて判断されている。近年、乳癌検診において視触診の限界が指
摘されており、その省略の可否が検討されている。【目的】当院での検診発見
乳癌症例について臨床病理学的に検討し、さらに視触診省略の可能性を検討
する。【結果】当院乳腺外科外来において、2011 年 12 月より 2014 年 12 月ま
でに、乳癌検診にて要精査と診断され、針生検にて組織学的に証明された症
例は、同時期の外来針生検症例 329 例のうち 20 例であった。このうち、乳癌
と診断された症例は 12 例であり、これを検討したところ、年齢は 40 歳から
75 歳(平均 60.7 歳)であり、術前の MMG にてカテゴリーは 3 が 4 例、4 が 6 例、
5 が 2 例と 4 が最も多かった。T 因子は触診にて非触知症例が 7 例、T1 症例が
3 例、T2、3 症例が各 1 例と、非触知乳癌症例が最も多かった。N 因子は 0 症
例が 11 例、N2 が 1 例と N0 症例が多く、M 因子は全例 0 であった。非触知乳
癌症例は全例 MMG にて異常を指摘されており、さらに視診にて乳頭陥凹を指
摘された症例が 2 例存在したが、いずれも MMG にて異常を指摘されていた。
組織型については、コア・ニードル生検にて浸潤性乳管癌と診断されたもの
が 10 例、非浸潤性乳管癌が 2 例であった。また、Subtype 分類については、
非浸潤性乳管癌症例を除く全例が luminal Atype であった。さらに、当院に
て手術となった 5 症例について検討したところ、組織型は乳頭腺管癌が 2 例、
硬癌が 1 例、非浸潤性乳管癌が 1 例、その他(術前化学療法症例)が 1 例であっ
た。【結論】検診発見乳癌症例は早期にて発見される傾向が強く、特に非触知
乳癌症例の発見に有用である可能性が示された。また、非触知乳癌症例、及
び視診にて乳頭陥凹を指摘された乳癌症例はいずれも MMG にて異常を指摘さ
れており、乳癌検診(40 歳以上)にては視触診が省略可能である可能性が示唆
された。
福島県では、独自に乳癌検診を実施できない自治体を対象にして、視触診外
科医と MMG 搭載バスを派遣し同時併用方式の住民検診を行っている。今回福
島県における MMG 併用乳癌検診の現況と課題について検討したので報告す
る。2005 年以降 8 年間の MMG 併用検診受診者を対象に受診者数、要精検率、
発見癌の特徴などを検討した。総受診者数は 91,065 人、要精検率は 4.7%、
精 検 受 診 率 は 88.4%、 発 見 癌 数 ( 率 ) は 221 人 (0.24%) で あ っ た。 発 見 癌
221 例 の 病 期 分 類 は、0 期 32 例 (14.5%)、1 期 120 例 (54.3%)、2 期 59 例
(26.7%)、3 期 10 例 (4.5%) で あ っ た。221 例 中 16 例 (7.2%) は MMG で 異
常なく視触診で要精査 ( 硬結 6、腫瘤 9、乳頭分泌 1) となった症例であり、う
ち 2 例は非浸潤癌であった。繰り返し受診歴のある 84 例から 18 例 (21.4%)
の非浸潤癌が発見されたが、繰り返し受診歴のない 137 例から発見された非
浸潤癌は 14 例 (10.2%) であった。以上より要精検率を適切に維持した MMG
併用検診が早期癌の発見に寄与したと考えられる。視触診所見のみで発見さ
れる早期病変に対する対応方法が今後の課題である。繰り返し受診をさらに
推奨することで、より早期の乳癌を発見できると考えられた。
DP-1-37-04
ベルーガクリニック 乳腺外科
帯広厚生病院
富永 祐司
吉岡 達也、大野 耕一、村川 力彦、武藤 潤
任意型乳癌検診の必要性
検診発見乳癌症例の検討
【目的】MMG とエコーを併用した任意型乳癌検診に置いて診断された乳癌を検
討した。【対象】2006 年 6 月~ 2014 年 11 月までに当院で施行した MMG とエ
コーを併用した任意型乳癌検受診者 17502 人、延べ検診回数 33022 回を調べ
た。【結果】精密検査数 2471 人 (7.5%) で、その内乳癌診断数 441 人 (17.8%)
であった。年齢は、40 歳未満 106 人 (24.0%)、40 歳~ 55 歳 243 人 (55.1%)、
56 歳以上 92 人 (20.9%) であった。無症状が 167 人 (37.9%)、有症状 273 人
(62.1%) であった。腫瘍径別では、Tis:90 人 (20.4%)、T1:208 人 (47.2%)、
T2:127 人 (28.8%)、T3 以上 :16 人 (3.6%) であった。バイオマーカーから
分類したサブタイプ別では、Luminal A:338 人 (76.6%)、Luminal B:29 人
(6.6%)、HER2 type:28 人 (6.3%)、Triple Negative:46 人 (10.4%) であっ
た。
【考察】乳癌発見率は 2.5%であった。74.9 回の検査で乳癌が 1 人の発見
につながった。年齢は、対策型検診を受診可能な 40 歳以上が 76%を占めるの
が意外な結果であった。任意型検診は、自覚症状を認めるが診療まで至らな
い人が多く、その中でも腫瘤のようなものと言うような曖昧な不安を抱え、
検診を受ける方が多く ( 乳癌診断者の 228 人 )、陽性的中率が 17.8%と高かっ
た。非浸潤癌が 20.4%で、腫瘍径では T2 以下が殆どで、比較的進行した症例
は少ない事が解った。サブタイプ別では Luminal A type が 76.6% と多くを
占め、他はほぼ同等の割合であった。【結語】MMG とエコーを併用した対策型
検診は、陽性率 7.5%、陽性的中率 17.8% と効率的な精度の高い結果を得ら
れる検診だった。40 歳未満の受診者が少ない事から、年齢とは無関係に、不
安を抱える人に需要がある検診として、診療と対策型検診の中間の立ち位置
となる検診としての需要がある。MMG、エコーを併用しても、Luminal A が
多いことから、家族性乳癌の発見と言う意味では効果が低かった。
【緒言】早期発見により乳癌死亡を減少させることを目的に、われわれは乳癌
検診に取り組んでいる。早期発見乳癌症例は増加しており、乳癌検診がその
一助になっていると考えられている。しかし現在まで早期発見乳癌症例の増
加ほどは乳癌死亡の減少が顕著ではない。【目的】検診発見乳癌とその他乳癌
の臨床病理学的因子に関して比較検討することで検診発見乳癌の特徴を明ら
かにする。【対象】2012 年 10 月~ 2014 年 9 月までに当院で手術施行した乳
癌症例のうち、再発症例、両側乳癌症例を除いた 168 例。【結果】検診発見乳
癌は 34 例 (20.2%)、その他乳癌は 134 例 (79.8%) であった。閉経状況は検
診発見乳癌で閉経前 15 例、閉経後 19 例、その他乳癌では閉経前 33 例、閉経
後 99 例、男性 2 例であった。手術術式は検診発見乳癌で乳房切除 9 例、乳房
部分切除 25 例、その他乳癌で乳房切除 76 例、乳房部分切除 58 例であった。
腫瘍径は検診発見乳癌で Tis 7 例、T1 22 例、T2 4 例、T3 1 例、T4 0 例、そ
の他乳癌では Tis 9 例、T1 71 例、T2 40 例、T3 3 例、T4 11 例であった。リ
ンパ節転移は検診発見乳癌で転移あり 3 例、転移なし 31 例、その他乳癌で転
移あり 33 例、転移なし 95 例、不明 6 例であった。検診発見乳癌のサブタイプ
は Luminal A:19 例、Luminal B:3 例、Luminal B(HER2 陽性 ):2 例、Triple
negative:2 例、HER2:1 例、その他乳癌のサブタイプは Luminal A:75 例、
Luminal B:19 例、Luminal B(HER2 陽 性 ):5 例、Triple negative:19 例、
HER2:7 例であった。
【まとめ】検診発見乳癌はその他乳癌と比較して早期癌の
割合、乳房部分切除の割合が多かった。
363
一般セッション(ポスター討議)
DP-1-37-03
ポスター討議
DP-1-37-05
DP-1-38-01
26 年間の福井県癌登録の推移からみた乳癌検診の効果 -検診の過剰診断の可能性について-
1
マンモグラフィでカテゴリー3の腫瘤の意義を考える
1
2
福井県済生会病院 乳腺外科、2 福井県癌検診精度管理委員会乳癌部門
鈴木 昭彦 1,2、石田 孝宣 1、多田 寛 1、渡部 剛 1、宮下 穣 1、成川 洋子 2、
鄭 迎芳 2、佐藤 章子 1、吉田 紀子 1、藤井 里佳 1、大内 憲明 1
笠原 善郎 1,2、大田 浩司 2、田中 文恵 2、前田 浩幸 2
一般セッション(ポスター討議)
【背景】Bleyer らは米国の 30 年間の乳癌罹患の推移から検診導入による過剰診
断が 30%に上ることを報告した。今回われわれは福井県癌登録の 26 年間の
データを用い、乳癌罹患数を発見契機別進行度別に検討し、検診の過剰診断
の可能性について考察したので報告する。
【対象と方法】 福井県癌登録の
1985~2010 年までの乳癌症例を抽出した。1985-87 年の導入前期、19882003 年の触診期、2004-2010 年のマンモグラフィ(以下 MMG)期に分け、
発見契機別(検診及びドック、臨床発見)進行度別(非浸潤:DCIS 群、限局:
IDC n- 群、リンパ節転移以上:n+ 群)にその増加割合、増加数を検討した。【結
果 】 登 録 乳 癌 患 者 総 数 6382 人、DCO(Death Certificated Only)1.2% で
あった。各時期の増加率を一定と仮定すると、発見乳癌の傾き(例 / 年)は導
入前期 4.0、触診期 8.2、MMG 期 14.3 と MMG 期の乳がん増加率が高かった。
触診期の傾きのままの増加で推移したと仮定した場合の MMG 期の乳癌数と登
録された乳癌数の差(Excess Cancer:EC)は、2010 年度で 65 例(324 例 vs
389 例)であり MMG 期の 7 年間では 324 例と算出された。臨床発見例と検診
及びドック発見例別に検討すると、臨床発見例では MMG 期の EC はほとんど
なかったのに対し、その増加分のほとんどを検診及びドック発見群が占めて
いた。 検診及びドック発見群のみでみると、発見乳癌の傾きは触診期 1.3、
MMG 期 16.8 と MMG 期 で の 増 加 が 著 し か っ た。 進 行 度 別 に 検 討 す る と、
MMG 期の傾きは DCIS 群 3.7、IDC n- 群 8.3、n+ 群 4.2 で IDC n- 群で最も高
かった。Excess Cancer (EC) は MMG 期の 7 年間で DCIS 群 108 例、IDC n群 161 例、n+ 群 96 例と算定され、IDC n- 群で最も高かった。DCIS のうち
EC 算定数を過剰診断と仮定すれば、検診発見乳癌 593 例中 108 例、18.2%が
過剰診断と考えられた。
【考案】MMG 期の乳癌数の増加は、1)MMG 導入の効
果に加え 2) 検診受診率上昇、3) 乳癌発生そのものの増加、などの要因が関与
し今回の算定には不確定要素が多いが、過剰診断は一定の割合で存在すると
考えられる。しかし MMG 導入により最も増加しているのは IDC n- 群、(おそ
らく放置すれば致死的となり、治療により治癒しうる一群)であって、決して
過剰診断となりやすい DCIS のみの増加ではないことが明らかとなった。【結
語】MMG 検診により発見乳癌数は増加するが、DCIS の増加分よりも、リンパ
節転移のない浸潤癌の増加が最多で、利益が不利益を上回る可能性が示唆さ
れた。
【背景】我が国のマンモグラフィガイドラインでは境界明瞭平滑な腫瘤はカテ
ゴリー3に分類され要精査の対象とされる。明らかに良性と診断の付いてい
る腫瘤を比較読影でカテゴリー2に落とすことは日常よく行われているが、
初回受診では精査せざるを得ず要精検率が上昇する要因となっている。一方
超音波検査は腫瘤の検出感度に優れ一部の腫瘤に関しては検診の段階で良性
の腫瘤を選別することが可能であり、検診の不利益となる特異度の低下を抑
制することが期待される。【対象】2007、2008 年度に仙台市の乳がん検診を
受診し、超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)に登録し
た 40 歳代女性 6731 名を対象とした。対象者のうちマンモグラフィで腫瘤カ
テゴリー3以上の症例を抽出し、同時に施行された超音波検査結果、精密検
査機関からの検査結果を基にマンモグラフィ所見の信頼度に関して考察を
行った。【結果及び考察】マンモグラフィの所見でカテゴリー5は2例(2例と
も乳癌)、カテゴリー4は 13 例(乳癌 3 例)、カテゴリー3は 128 例(乳癌 1 例:
但し構築の乱れでカテゴリー4の診断、検診超音波未施行)であった。カテゴ
リー3の 128 例のうち、随伴所見として石灰化カテゴリー3が1例、石灰化
カテゴリー4が1例あったがいずれもがんは認めなかった。検診時に超音波
検査を併用していた症例が 68 例あり、超音波でカテゴリー 2 の所見があるも
のが 23 例、超音波カテゴリー3の症例が 9 例であった。この 9 例中 6 例は線
維腺腫、1 例が嚢胞、2 例は異常なしの精査結果であった。36 例は検診超音波
での異常所見がなく、精密検査の結果でも 26 例は正常または乳腺症、2 例が
線維腺腫、2 例が嚢胞、6 例は不明またはその他の所見と報告されている。超
音波検査は十分な精度管理下では診断精度が高く、精密検査結果との整合性
が高いことが示唆される。高い要精検率が不利益として問題視される 40 歳代
女性において、マンモグラフィ検診に超音波を併用し総合判定することは腫
瘤を所見とする要精査を 70%程度減少させることが期待できる。一方で超音
波単独で要精査となる症例が 217 例(受診者の 6.4%)あり、検診でのバラン
スを検討することが必要である。今後より不利益の少ない検診システムにで
きるよう、マンモグラフィと超音波の総合判定基準をブラッシュアップする
ことが重要と考える。
DP-1-38-02
DP-1-38-03
妊婦乳房スクリーニングの実際
1
東北大学 大学院 医学系研究科 腫瘍外科学、
東北大学 大学院 医学系研究科 乳癌画像診断学寄附講座
当院の乳がん検診ドックにおける HRT 施行中の乳房構成と乳癌
検出率について
医療法人社団赤恵会 赤川クリニック、2 千川産婦人科医院
湘南記念病院乳腺センター
赤川 元 1、土橋 慶一 2
妊娠関連乳癌 (PABC) の多くは妊娠・授乳による乳房変化によって視触診のみ
で早期に発見されることは少なく、多くは進行癌の状態で発見される。母親、
妻として、家庭の中心的存在である女性に降り掛かる不幸を1例でも少なく
するため、妊娠初期に視触診・超音波検査 (US) 併用の妊婦乳房スクリーニン
グ (S) が有用であることを明らかにし発表してきた。同時に、適切な妊婦乳房
スクリーニング確立には、妊娠という特殊な生理現象を理解した産婦人科医
が参加することの重要性を指摘してきた。【方法】妊婦 5,142 名を対象に、妊
娠初期に US 併用 S を行った。視触診で乳頭分泌、硬結、腫瘤、US で腫瘤性、
非腫瘤性病変を認めたものを要精検とした。【成績と考察】視触診で異常が
8.6%、US のみで異常が 12.0%。触診で腫瘤を触れたものの 87.5% に US で
異常を認めた。US の異常所見は嚢胞 77.9%、充実性腫瘤 15.7%、非腫瘤性
低エコー域 6.4%。要精検 320 例の結果は乳癌1例、妊娠性変化 43.3%、線
維腺腫 31.0%、嚢胞 11.3% であった。S 成績報告に加え、産褥期に経験した
乳癌症例も紹介し、日々乳癌検診・治療に全力を注いでいる皆様に、一般的
な乳癌検診とは異なる、女性の乳癌検診への第一歩となることを願う妊婦乳
房 S への理解を深めて頂きたいと考えている。
364
長島 美貴、合田 杏子、荒井 学、堤 千寿子、井上 謙一、佐々木 毅、
川崎 あいか、田中 佳和子、土井 卓子
[ はじめに ] 閉経後ホルモン補充療法(HRT)は施行中に乳腺組織濃度が高くな
ることがあり、また乳癌発症リスクが増加するとされている。当院の乳がん
検診ドックでは HRT 施行中の他院からの紹介状も多い。当院の乳がん検診ドッ
ク に お け る HRT 施 行 中 の 乳 房 構 成 と 乳 癌 検 出 率 に つ い て 報 告 す る。[ 方
法 ]2013 年 7 月から 2014 年 8 月までの当院の乳がん検診ドック(任意型検診)
を行った計 602 名について検討した。マンモグラフィの読影判定はマンモグ
ラフィ検診制度管理中央委員会における A 判定2名、B 判定 2 名で行った。[ 結
果 ] マンモグラフィを行った HRT 施行中の検者は 168 名で、その乳房構成は
脂肪性 3 名、乳腺散在 60 名、不均一高濃度 91 名、高濃度 14 名であった。マ
ンモグラフィを行った HRT 未施行の検者は 401 名で、その乳房構成は脂肪性
20 名、乳腺散在 123 名、不均一高濃度 234 名、高濃度 24 名であった。40 ~
50 歳代での年齢調整を行い Mann-Whitney 検定にて HRT 施行中と HRT 未施
行の両群で比較検討したところ、乳房構成に有意差はなかった(p=0.829)。
両群の検者で乳癌と診断されたのが各 3 名でそれぞれの検出率は 1.7%と
0.7% で HRT 施行中は乳癌の検出率が高かった。[ 考察 ] 今回当院のドックに
おいては HRT 施行と HRT 未施行では乳房構成に有意差はなかったが、HRT 施
行期間や投薬内容等のさらなる検討が必要であると思われた。HRT 施行中は
乳癌検出率も高く、年に1回の乳癌検診は施行するべきである。また HRT 導
入または施行中の患者は特に乳癌発症のリスクに対し不安を感じているため
安心して治療を施行していくために他院と連携していくことが大切である。
ポスター討議
DP-1-38-04
DP-1-39-01
ホルモン補充療法と乳房スクリーニングの検討
当院における発見癌で精密検査時超音波診断カテゴリー3で
あった症例の検討
恵仁会 今村病院
1
渡海 由貴子
阿部 桐子 1、原田 雄功 1、渋谷 里絵 2、長沼 廣 2
【目的】当院は乳腺専門クリニックであり、精密検査として良性を疑う病変に
は細胞診を、悪性を疑う病変には針生検を施行している。精密検査時の超音
波検査においてカテゴリー 3 と診断したが、最終病理診断が悪性であった症
例も存在する。その超音波画像所見を明らかにするため、当院での発見乳癌
症例で超音波画像の検討を行った。
【対象・方法】2010 年 11 月~ 2014 年 10
月の当院での発見乳癌において、超音波で所見を認めた 229 症例 (231 病変 )
をカテゴリー分類し、カテゴリー 3 とした症例の超音波所見と最終病理診断
について検討した。【結果】超音波診断カテゴリーの内訳は、カテゴリー 1,2
は 0 例、カテゴリー 3 は 25 例 (10.8%)、カテゴリー 4 は 70 例 (30.3%)、カ
テゴリー 5 は 136 例 (58.9%) であった。カテゴリー 3 とした中にカテゴリー
4 以上とすべきであった症例はなく、25 例の超音波所見の内訳は、充実性腫
瘤 14 例、乳管拡張 10 例、混合性腫瘤 1 例であった。充実性腫瘤の特徴として、
10mm 未満の扁平腫瘤での形状不整、5mm 大の小腫瘤での縦横比の高さ、
乳管拡張では、内部の充実性エコーや乳管の不規則な走行が認められた。最
終病理診断は非浸潤性乳管癌 11 例、浸潤性乳管癌 12 例、浸潤性小葉癌 1 例、
粘液癌1例であった。【考察】今回検討した症例の多くは、しこりは非触知で
MMG でも所見は認められず、超音波のみで所見が認められた。非浸潤性乳管
癌や乳管内に進展する乳癌では超音波でのみ病変を指摘できる症例も多く、
早期に癌を発見するために、乳癌術後や他病変の経過観察中での新たな病変
の出現、腫瘤径や縦横比の変化、拡張乳管内部の観察が重要と再確認できた。
また、今回の症例では全例で細胞診を施行しており、この様な症例では精密
検査として超音波ガイド下での細胞診の意義は大きいと考えられた。
DP-1-39-02
DP-1-39-03
1
1
TNBC において TILs が US 画像に及ぼす影響についての検討
乳房同時再建後の局所再発に対しての超音波検査の有用性
博愛会 相良病院 乳腺科、2 松山赤十字病院 病理診断科、
3
博愛会 さがらパース通りクリニック 放射線診断センター、
4
博愛会 相良病院 病理診断科
神鋼記念病院 乳腺センター エコー室、
神鋼記念病院 乳腺センター 乳腺科、
3
神鋼記念病院 乳腺センター 形成外科、
4
神鋼記念病院 乳腺センター 放射線科、
5
神鋼記念病院 乳腺センター 病理部、6 橋本クリニック
2
金光 秀一 1、飛田 陽 2,4、佐々木 道郎 3、大井 恭代 1,4、松方 絢美 1、
川野 純子 1、寺岡 恵 1、四元 大輔 1、馬場 信一 1、松山 義人 1、
安藤 充嶽 1、相良 安昭 1、相良 吉昭 1、相良 吉厚 1
【背景】TNBC において tumor-infiltrating lymphocytes (TILs) が予後良好因
子かつ化学療法の効果予測因子となる biomarker と報告されている。TILs は
形態学的評価によるため、TILs により病変の細胞密度が高くなると、水成分
が豊富になるため US 画像では内部のエコーレベルは低く後方エコーは増強さ
れる可能性がある。【目的】TILs が US 画像所見とどのように関連するかとい
うことを検討する。【対象】2007 年 1 月から 2014 年 6 月の間に根治切除術を
受けた TNBC202 例より、評価しうる US 画像データがあった 149 例を対象と
し、それより US 所見で孤在性かつ充実性腫瘤を成し、術前化学療法未施行の
126 例を抽出して解析した。【方法】TILs について手術標本の代表切片を HE
染色下で評価し、リンパ球の浸潤する面積によって 10% 未満 (Grade 1(G1);
n=22)・10 ~ 50%(Grade 2 (G2); n=88)・50% 以 上 (Grade 3 (G3);
n=16) の 3 段階で分けた。US 所見は乳房超音波診断ガイドライン改定第 3 版
に則り評価した。TILs の各々の評価項目と US 所見についてχ 2 検定で比較検
討した。【結果】TILs の G3 で病変の「形状」が円形 (n=45) である頻度が高い
(G1, G2, G3= 13.3%, 33.0%, 62.5%; p=0.019)。また、G1 で「乳腺境界
の 断 裂 」あ り (n=14) の 頻 度 が 高 い (G1, G2, G3= 31.8%, 8.0%, 0.0%;
p=0.002)。内部の「エコーレベル」や「後方エコー」を含め、その他の項目に
ついては関連性を見出せなかった。【結論】TILs の程度が US 画像所見での「形
状」および「乳腺境界の断裂」と関連あることが示唆された。
山神 真佐子 1、曽山 ゆかり 1、松本 元 2、結縁 幸子 2、出合 輝行 2、
奥村 興 3、門澤 秀一 4、伊藤 利江子 5、西川 ユウコ 5、大矢 ミカ 5、
橋本 隆 2,6、山神 和彦 2
(はじめに)無理した温存術は、整容性を悪くするばかりか、局所再発を増加
させるため、乳腺全摘術に同時再建を選択する機会が増加している。さらに
アナトミカル型インプラントの保険適用が認可され、インプラントを用いた
再建が増加すると想定される。同時再建を施行した場合、局所再発を検出す
るにあたり、再建物の影響にて乳房超音波検査(US)の検出力が懸念される。
本院での乳房同時再建後の局所再発例を検討し、再発検出に対する乳房 US の
有用性、さらに再発例の術前乳房 US の特徴を検討した。
(対象)2010 年 1 月
~ 2013 年 12 月の期間に、乳癌手術 994 例中、乳房同時再建を 128 例施行し
た。局所再発 4 症例(年齢 35 歳~ 51 歳)を対象とした。(方法)(1) 局所再発
病変は、再建物の影響で乳房 US において指摘することが困難であったかを見
直した。局所再発例を乳房造影 MRI での検出と比較した。(2) 術前乳房 US 画
像を検討し、局所再発病変との関係を調べた。尚、本科での乳頭温存乳房切
除術(nipple-sparing mastectomy: NSM)の適応は、術前 MRI 検査にて腫瘍
乳頭間が 1cm 以上、乳頭直下の術中迅速病理が陰性としている。(結果)各症
例 の 初 回 病 理 組 織、 切 除 術 式、 再 建 物 は;( 症 例 1)浸 潤 性 乳 管 癌(IDC)、
NSM、自家組織。(症例 2)非浸潤性乳管癌(DCIS)
、NSM、自家組織。(症例 3)
IDC、NSM、インプラント。(症例 4)DCIS、乳房切除術、インプラント。(1)
再発病変は 4 症例とも、皮下腫瘍の形態であった。さらに再建物周囲は淡い高
エコー(結合組織と脂肪組織、又は大胸筋)で覆われていた。即ち局所再発腫
瘍は再建物による影響を受けず、乳房 US にて容易に検出可能であった。乳房
造影 MRI 検査では症例 1 と 2 は再発疑いであったが、症例 3 と 4 は術後の変化
と読影された。(2)初回手術病理永久標本の診断は断端陰性であったが、乳
房 US では腫瘍は皮膚側に近接していた。NSM の場合、乳頭部への癌の進展
が懸念されるが、本科でのこの部位での再発は無かった。(考察)乳房再建後
の局所再発は皮下腫瘍の形態で認めた事、さらに再建物と皮膚との境界が判
別可能であった事は、局所再発の検出に乳房 US は有効である。これは、高周
波の探触子を用いており特に浅層部分の分解能は良好のためと考えられた。
さらに、術前乳房 US にて、皮膚近接病変は直上皮膚の合併切除を注意深く検
討するべきと考えられた。
365
一般セッション(ポスター討議)
はじめに)ホルモン補充療法(以下、HRT)の長期継続は、乳癌の危険因子で
あるが、HRT における乳癌スクリーニング方法は確立されていない。そこで
HRT 中に推奨すべきスクリーニング方法を見つけるために乳腺の変化を観察
した。対象と方法)当院で 1 年以上の HRT かつ乳がん検診を開始前から1年ご
とに受けた患者の 50 例(HRT 群:年齢 51.1 ± 2.47 歳)を調査した。以下の非
HRT の対照群として閉経後の患者の 70 例を選んだ。(非 HRT グループ:コン
トロール群年齢 53.9 ± 5.92 歳であった)。 HRT は、以下の方法に分類した。
エストリオール単独 2 例(E3 群)エストラジオール単独7例(E2 群)、エスト
ラジオールおよびプロゲスチンの組み合わせが 41 例(EP 群)を投与した。す
べての症例でマンモグラフィー(MMG)と超音波検査(US)を施行した。 結果)
HRT グループ内では非 HRT グループに比してと比較し MMG 上高濃度乳房ま
たは不均一高濃度乳房の頻度が有意に高かった。(85%、68%)(p=0. 04)
また、US での嚢胞性腫瘤の発生頻度は、HRT グループでは非 HRT グループ
より有意に高かった(26%、13%)
(p=0.03)。 E3 群は2例のみであったが、
投与前後での変化はなかった。MMG での乳腺濃度が開始前より密になったと
思われる頻度は、E2 群は 47%であったが EP 群は 83%と EP グループ群が
(P=0.05)有意に高かった。乳腺嚢胞の出現頻度は有意差がなかったが、E2
単独より EP 群でより顕著になるようであった。まとめ)早い段階で乳腺の変
化を知るためには、特に EP 群においては US の組合せが望ましいだけでなく、
短い間隔での MMG スクリーニングを推奨したほうがよい可能性がある。
原田乳腺クリニック、2 仙台市立病院 病理診断科
ポスター討議
DP-1-39-04
DP-1-39-05
演題取り下げ
乳癌患者の骨転移経過観察における VSBONE(viewer for
stangardized bone scintigraphies)の有用性
1
名古屋市立大学病院 放射線科、
名古屋市立西部医療センター 放射線診断科、
3
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科
2
浦野 みすぎ 1、白木 法雄 2、後藤 多恵子 1、遠山 竜也 3、吉本 信保 3、
遠藤 友美 3
一般セッション(ポスター討議)
【目的】骨シンチグラフィが経時的に施行された乳癌患者で、骨転移の有無や
変化を既存の骨シンチグラフィ画像と骨シンチグラフィ用診断支援ソフト
VSBONE(骨シンチ画像経過観察 viewer)による正規化画像と比較し、経過観
察おける VSBONE の有用性を検討する。【方法】対象は 2004 年 1 月から 2014
年 8 月までに 740 MBq technetium-99m hydroxymethylene diphosphonate
を投与 3 時間後に骨シンチグラフィを複数回施行した 43 人の乳癌患者 (37-79
歳、中央値 57 歳 ) の 604 領域の骨 ( 椎骨あるいは骨盤骨:578, 胸骨あるいは肋
骨:3, 上肢骨:19, 下肢骨:4)。臨床情報を伏せて 2 人の放射線科医が既存の
骨シンチグラフィ画像と VSBONE の画像を独立して読影し、それぞれの骨に対
し骨転移の有無を判定した。ゴールデンスタンダードを非造影 MRI として、
McNemar test を用いて両者の感度、特異度を分析し、読影者間の一致率を
kappa score で評価した。
【結果】骨シンチグラフィでの骨転移検出の感度は既
存の骨シンチグラフィ画像で reader 1:35%、reader 2:40%、VS BONE で
reader 1:44%、reader 2:48%、特異度は既存の骨シンチグラフィ画像で
reader 1,2 とも 98%、VS BONE で reader 1:96%、reader 2: 97% であった。
読影者間の kappa score は既存の骨シンチグラフィ画像で 0.58 と moderate、
VSBONE で 0.66 と good であった。
【結論】骨転移検出に関し、VSBONE では
感度が上昇し、読影者間の一致率も上昇した。しかし、VS BONE をさらに有用
にするためには偽陰性を減らすことが必要と考えられた。
DP-1-40-01
DP-1-40-02
1
浦添総合病院 乳腺センター
センチネルリンパ節生検を行った症例における造影超音波所見
によるリンパ節転移診断の検討
造影乳腺超音波検査で良性と診断された場合、針生検を回避す
ることは可能か
りんくう総合医療センター 外科、2 りんくう総合医療センター 病理診断科
宇治 公美子 1、位藤 俊一 1、飯干 泰彦 1、山村 憲幸 1、西谷 暁子 1、
藤井 仁 1、今里 光伸 1、金 浩敏 1、藤井 亮知 1、今北 正美 2、
伊豆蔵 正明 1
宮里 恵子、蔵下 要、新里 藍
【はじめに】術前にリンパ節転移陰性と診断された症例に対し、センチネルリ
ンパ節生検を行い、センチネルリンパ節転移陰性の場合は腋窩リンパ節郭清
を省略することができる。さらに、Z0011 trial の結果などを踏まえ、センチ
ネルリンパ節転移陽性でも一定の条件を満たせば腋窩リンパ節郭清省略の方
向へとシフトしつつある。腋窩リンパ節の評価法としては、もっとも簡便で
あり、穿刺吸引細胞診(FNAC)も行うことが可能である超音波検査による術
前診断が重要である。腫瘍の良悪診断には通常の超音波検査や MRI 検査より
造影超音波検査がより診断精度が高いことが示されており、リンパ節転移診
断に対してもより有用な可能性が考えられる。【目的】造影超音波検査により
リンパ節転移の有無を評価することを目的とした。【対象】2012 年から 2013
年の間に当院でセンチネルリンパ節生検を行い術前に造影超音波検査による
評価を行った 37 例を検討の対象とした。【方法】センチネルリンパ節生検はジ
アグノグリーンを用いた色素法単独で行った。造影超音波検査は手術直前に
行い、リンパ節全体またはリンパ節皮質全体が均一に染まる場合を転移陰性
と判定し、リンパ節が不均一に染影される and/or リンパ節周囲から多数の
微細血流シグナル流入を認める場合を転移陽性と判定し、後方視的に検討し
た。【結果】センチネルリンパ節生検陽性症例は 10 例であった。リンパ節転移
個数は平均 4.4 個(1-17 個)で、3 例がセンチネルリンパ節転移のみであった。
造影超音波検査にて転移陰性と評価した症例は 26 例で、実際にセンチネルリ
ンパ節転移陰性であった症例は 25 例であった(陰性的中率 96.2%)。造影超
音波検査にて転移陽性と評価した症例は 11 症例で、実際にセンチネルリンパ
節転移陽性であった症例は 9 例であった(陽性的中率:81.8%)。検査の感度
は 90% で、特異度は 92.6% であった。【考察・まとめ】造影超音波検査によ
るリンパ節転移の有無を評価することの有効性が示唆された。今後、前向き
な検討が必要であると考える。
【はじめに】乳腺診療において、所見に対する良悪性の最終判断は針生検によ
るところが多い。しかし、針生検は精神的・身体的・経済的に患者に負担の
かかる検査であり、明らかに良性と思える疾患に対しては回避されることが
望ましい。今回針生検を予定している患者に対して、針生検前に造影超音波
検査 ( 以下 CEUS) を行い、CEUS で良性と判断された患者が病理診断でどの程
度良性だったかを検討し、そのような患者で針生検の回避が可能かどうか検
討した。【対象と方法】本研究は院内 IRB を通過した臨床試験として 2013 年 9
月から 2014 年 12 月までの間に実施し、針生検を予定された患者を対象とし
た。針生検前に、検査担当技師が CEUS を実施し結果の評価を行った。CEUS
の良悪性判断は造影乳房超音波検査の良悪性鑑別基準に基づいて担当技師の
主観に基づいてなされ、その確信度合も 3 段階に分け記録した。病理学的確定
診断には針生検検体あるいは切除標本を用いた。【結果】対象患者は 68 例で
あったが、CEUS 後に病理診断が確定した患者は 42 例であった。CEUS で良
性と判断された患者は 16 例、悪性は 26 例で、病理診断の結果は良性 14 人、
悪性 28 人であった ( 良性に対する CEUS の感度 71%、特異度 79%、陽性的
中率 63%)。CEUS で良性と診断した確信度を「間違いなく良性(良性確信度
90%)」、「おそらく良性(同 70%)」、「良悪性半々(同 50%)」と三段階に分け
た場合、CEUS で良性と診断された 16 例において、良性確信度 90%であった
2 例中 1 例、良性確信度 70%の 6 例中 5 例、良性確信度 50%の 8 例中 4 例が良
性であった。細胞診で鑑別困難であった患者は 19 例で、これらに対する
CEUS の判定は良性 11 例、悪性 8 例、病理診断は良性 12 例、悪性 7 例であっ
た ( 良性に対する CEUS の感度 75%、特異度 71%、陽性的中率 82%)。【ま
とめ】CEUS 後の病理診断の感度・特異度は高いとは言えない結果であった。
これは過去に報告されている数値より低い結果であった。特に良悪性の判断
を迷うような症例では、CEUS でも同様に判断が難しく、判断の確信度が低い
ことが分かった。他の画像診断で鑑別が難しい症例は CEUS でも鑑別が難し
いことを示している。CEUS の良悪性判断が他の画像診断の所見に影響された
可能性や、検査担当技師の所見についての目あわせが十分でなかった可能性
も考えられる。CEUS を導入することによって、良性疾患に対して針生検を回
避することは現時点では早急であると考えられた。
366
ポスター討議
DP-1-40-03
DP-1-40-04
1
一般財団法人 住友病院 乳腺外科、
2
一般財団法人 住友病院 超音波検査部
1
山片 重人 1,2、西村 重彦 1、尾羽根 範員 2、田中 涼太 1、河本 真大 1、
中澤 一憲 1、妙中 直之 1
久保畠 香織 1、関 大仁 2、山田 好則 2、浅沼 史樹 2、中嶋 純子 1、
林 規隆 1、森永 正二郎 3
乳癌拡がり診断における乳腺造影超音波検査の有用性
乳癌術前化学療法におけるエラストグラフィの有用性
2
【背景】エラストグラフィの乳癌術前化学療法におけるエビデンスは確立して
いない。今回我々は術前化学療法の効果判定におけるエラストグラフィの有
用性を検討したので報告する。【対象・方法】2013 年 4 月から 2014 年 12 月ま
でに当院で術前化学療法 ( アブラキサン+ FEC) を行った 40 名を対象に化学療
法 前 と ア ブ ラ キ サ ン 終 了 時、FEC 終 了 時 に お け る 縮 小 率 と Strain
Elastography を用いたエラストスコアおよび FLR の相関性について検討し
た。nab-PTX は 80mg/m2 を 3 週 投 与 1 週 休 薬(HER2 陽 性 の 場 合 に は
Trastuzumab を毎週投与)を 4 クール施行後、FEC は 3 週毎投与を 4 クール施
行した。【結果】化学療法前の腫瘤径の平均値は 22mm、エラストスコアの平
均値は 3.03、FLR の平均値は 5.70 だった。アブラキサン終了時臨床的奏効判
定で PR を得られた対象群 (PR 群 ) のエラストスコアの平均値は 1.90、FLR の
平均値は 3.83、平均縮小率は 43.4%、明らかな腫瘤を認めず瘢痕化した対象
群 ( 瘢痕化群 ) のエラストスコアの平均値は 1.00、FLR の平均値は 1.58、平
均縮小率は 18.9%、腫瘤の増大傾向を認めた対象群 ( 増大傾向群 ) のエラスト
スコアの平均値は 3.63、FLR の平均値は 7.32、平均腫瘤径は 54.3%の増大
だった。また増大傾向群の 63%で FLR の上昇を認めた。FEC 終了時の PR 群
の エ ラ ス ト ス コ ア の 平 均 値 は 1.87、FLR の 平 均 値 は 4.22、 平 均 縮 小 率 は
47.1%、瘢痕化群のエラストスコアの平均値は 1.00、FLR の平均値は 1.50、
平均縮小率は 33.3%、増大傾向群のエラストスコアの平均値は 2.33、FLR の
平均値は 5.87、平均腫瘤径は 25.1%の増大だった。また増大傾向群の 25%
で FLR の上昇を認めた。【考察】PR 群ではアブラキサン終了時と FEC 終了時共
に明らかなエラストスコアと FLR の低下がみられた。エラストスコアは 2 以
下、FLR は PR 群の 90%が 4.5 以下であった。瘢痕化群では明らかな腫瘤を認
めない為エラストスコアおよび FLR がごく低値になったと考えられる。最終
病理診断結果では癌細胞は認めず繊維化した組織のみを認めた。以上より
FLR が 2 以下であれば腫瘤影が残存していたとしても pCR が期待できると考
えられる。また、増大傾向群の 75%ではエラストスコアが不変か上昇を認め
50%で FLR の明らかな上昇を認めたことよりエラストスコアと FLR の上昇を
認めた場合 PD の可能性が示唆される。【結語】エラストグラフィは乳癌術前化
学療法の臨床的効果判定をより正確に行うための新たな手法と考えられる。
DP-1-40-05
DP-1-41-01
乳癌術前化学療法後の病理学的効果判定予測における造影超音
波検査の有用性
1
超音波画像を用いた目視による乳房の構成の評価の検討
1
2
広島大学病院乳腺外科、 広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科
愛媛大学 乳腺センター、2 肝胆膵・乳腺外科学、3 地域救急医療学
山下 美智子 1,2、亀井 義明 1,2、松満 紗代子 1,2、小松 紗綾 1,2、小林 加奈 1,2、
村上 朱里 1,2、杉森 和加奈 1,2、本田 和男 1,3
網岡 愛 1、舛本 法生 1、郷田 紀子 1、梶谷 桂子 1、恵美 純子 1、
重松 英朗 1、角舎 学行 1、春田 るみ 1、片岡 健 1、岡田 守人 2
【 背 景 】Perflubutane を 用 い た 造 影 超 音 波 検 査(Contrast-enhanced
ultrasonography : CEUS)は、リアルタイムかつ詳細な腫瘍内血流の描出が
可能である。今回我々は、乳癌の術前化学療法(Neoadjuvant chemotherapy
: NAC)終了後に行う術前の治療効果判定において、CEUS が pathological
complete response (pCR) を予測するのに有用であるかについて検討した。
【対象・方法】2012 年 10 月~ 2014 年 10 月までに NAC を完了し手術を行った、
浸潤性乳管癌 40 症例(48.5 ± 10.3 歳)を対象とした。NAC 終了後、手術前日
までに MRI、PET、CEUS を施行し、臨床的効果判定を行った。CEUS の客観
的評価方法として輝度の強さと時間変化を表す Time Intensity Curve(TIC)
を作成し、(1) 最高輝度(Peak intensity:PI)、(2) 最高輝度到達時間(Time
to peak:TTP)
、(3) 流入速度(Wash-in slope:WIS)の 3 種類のパラメータ
を、それぞれ、(1)PI:(ピーク時の輝度値)-(造影剤が腫瘍に流入する直前
の輝度値)、(2)TTP:造影剤が腫瘍内に流入開始してからピークに到達する
までの時間、(3)WIS:PI / TTP、と定義し、各パラメータの pCR 予測に対
する感度、特異度、正診率を算出した。【結果】40 症例中 14 例が NAC により
pCR となった。Receiver operating characteristics curve analysis を行い、
PI、TTP お よ び WIS の pCR を 予 測 す る cut off 値 を そ れ ぞ れ、25.65(area
under the curve:0.860)、9.85 (0.876)、2.09 (0.887) に設定した。各パ
ラメータの診断精度は PI ( 感度 92.9% /特異度 76.9% /正診率 82.5%)、
TTP (100% / 76.9% / 85.0%)、WIS (92.9% / 80.8% / 85.0%) であっ
た。 一 方、 造 影 MRI で は(71.4 % / 84.6% / 80.0 %)、PET-CT(100%
/ 57.7 % / 72.5%)であった。CEUS は、病理学的効果判定予測において、
MRI、PET-CT と同等以上の感度、特異度、正診率を示した。【考察】CEUS に
おける 3 つのパラメータは、MRI や PET と同様に、NAC 後の pCR を正確に予
測することが可能であった。今後、薬物療法の新たなモダリティとして応用
可能と思われる。
【はじめに】近年、高分解能超音波機器の普及より乳房内の構造を細かに描出
することが可能となっている。JABTS の乳房超音波診断ガイドライン改定第
3 版 に お い て も 2 種 類 の 間 質 に よ る 超 音 波 像 の 記 述 が な さ れ、 ま た BIRADS2013 においても乳房の構成の記載が推奨された。【目的】超音波検査画
像の乳腺厚/全体厚を目視で判定することで、乳房の構成の評価が可能かど
うかを検討する。【対象と方法】2013 年4月から 2014 年 12 月に当院で施行
した超音波検査のうち正常乳腺を各乳房で 4 部位以上撮影している 194 例を
対象とした。検査は 7 年目以上の乳腺科医師 3 名で行った。乳房の構成につい
ては、BI-RADS2013 での3分類に加えて、不均一をさらに乳腺優位な症例と
脂肪優位な症例に分け、脂肪性、不均一脂肪優位(乳腺厚/全体厚 50%未満)、
不均一乳腺優位 ( 乳腺厚/全体厚 50%以上 )、乳腺主体の4群に分け、乳腺科
医師1名にて目視でカテゴリーを判定した。その後、乳腺厚、全体厚、豹紋
縦径、豹紋面積について画像解析ソフトである ImageJ を用いて計測し、年齢、
閉経、出産回数、現在の妊娠・授乳についても検討した。4 群間でノンパラメ
トリック検定を行い、目視での乳房厚/全体厚を用いた乳房の構成の評価に
ついて検討した。【結果】乳房の構成の内訳は、脂肪性 4 例、不均一 166 例 ( 脂
肪優位 86 例、乳腺優位 80 例 )、乳腺主体 24 例であった。今回の検討では多
くの症例が不均一であった。乳腺厚/全体厚の増加に伴い優位に豹紋も大き
くなっており、乳腺厚/全体厚は小葉と周囲間質の量を反映している有効な
指標であると考えられた。多産、閉経後、高年齢群では優位に乳腺厚/全体
厚が低かった。また、妊娠後期・授乳期には乳房の構成は乳腺主体で豹紋の
消失している症例が5例中3例に見られ、特徴的な所見であった。【考察】超
音波画像を用いた乳房の構成の評価に、目視での乳腺厚/全体厚の判定は簡
便に施行でき、有効な指標であると考えられる。BI-RADS の分類では多くの
症例が不均一に該当するため、不均一を乳腺優位と脂肪優位の2つに分類す
ることによって詳細な評価が可能であった。評価者によるばらつきや測定部
位の標準化などの課題はあるものの、超音波を用いた詳細な乳腺構造の評価
を標準化することにより、MMG 高濃度症例や乳癌高リスク患者の同定などへ
の応用が可能となる可能性がある。
367
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌の拡がり診断(乳房温存手術時の乳腺切除範囲の決定)における、
ソナゾイドを用いた乳腺造影超音波検査 (CEUS) の有用性を検討した。
【対象】2013 年 7 月から 2014 年 9 月の間に、乳癌にて乳房温存手術を施行し
た症例のうち、術前に造影超音波検査と造影 MRI 検査を施行した 35 例。
【方法】CEUS はソナゾイド 0.015mg/kg を投与後、腫瘍とその乳頭方向を含
めた断面で経時変化を観察し、その後腫瘍周囲を走査して、拡がり診断(乳管
内進展および娘結節の有無)を行った。造影 MRI でも同様の拡がり診断を行い、
これら結果を手術標本の全割病理診断と比較した。画像検査で乳管内進展ま
たは娘結節ありと診断したが病理診断では認められなかった場合を偽陽性、
その逆を偽陰性とした。
【結果】24 例 (68.6%) において、CEUS・造影 MRI ともに病理診断と一致した。
CEUS と病理が一致したが、造影 MRI が異なった症例が 3 例あり、いずれも偽
陽性であった。造影 MRI と病理が一致したが、CEUS が異なった症例が 3 例あ
り、偽陰性 2 例と偽陽性 1 例であった。CEUS・造影 MRI ともに病理診断と異
なった症例が 5 例あり、偽陰性 2 例、偽陽性 3 例であった。
【考察】乳癌術前の拡がり診断において、CEUS の正診率は 77.1% (27/35) で
あり、これは造影 MRI の正診率 77.1% と等しかった。CEUS 偽陰性例は組織
型が DCIS または硬癌で、腫瘍本体も弱くしか造影されず、その拡がりも不明
瞭であった。これらの腫瘍は造影 MRI では濃染しており、US と MRI では造影
剤の分布が異なると考えられた。造影 MRI 偽陽性例では腫瘍近傍の乳頭腫や
乳腺症が早期濃染し悪性と診断されたが、CEUS ではこれらは良性の造影パ
ターンで描出された。術前検査においては、これら両検査の特徴を踏まえて
診断することが重要と考えられた。両者とも偽陽性となった症例はいずれも
閉経前で、2 例は検査日が月経に近かった。CEUS も造影 MRI と同様に月経と
検査タイミングを考慮する必要がある。
【まとめ】CEUS は従来から行われている造影 MRI に遜色ない乳癌の拡がり診
断を行える。
北里大学 北里研究所病院ブレストセンター 臨床検査科、
同 ブレストセンター 外科、3 同 病理診断科
ポスター討議
DP-1-41-02
DP-1-41-03
昭和大学 乳腺外科
1
乳房超音波診断における Computer Aided Detection(CAD)
の初期使用経験
乳腺腫瘤に対する comprehensive ultrasound diagnosis の
検討
3
桑山 隆志、池田 紫、沢田 晃暢、明石 定子、小杉 奈津子、吉田 玲子、
橋本 梨佳子、佐藤 大樹、中村 清吾
一般セッション(ポスター討議)
はじめに乳房超音波検査はマンモグラフィと並び、乳腺の日常診療における
重要な検査である。乳腺超音波検査は簡便な検査であり高濃度乳腺ではマン
モグラフィより病変検出に優れている一方、検者個人の能力による差が大き
く、他の検査モダリティと比較して再現性も低い。また偽陽性となる可能性
が高く、不要な生検が増えてしまう恐れもある。したがって病変の客観的評
価や画像診断の標準化が必要と考えられる。CAD はマンモグラフィなど他の
モダリティでは使用されており、感度が上昇することが報告されている。今回、
当科では新しく開発された乳腺超音波検査での CAD システムによる病変の画
像診断を行ったのでこれを報告する。対象当院にて手術を行った 24 例(悪性
22 例、良性 2 例)。乳房超音波機器は Samsung 社製の RS80A を使用した。
まず通常の B モードによる診断を行い、引き続き CAD による判定を行った。
CAD は同超音波装置のアプリケーションである S-Detect を用いて判定した。
超音波判定は JABTS の乳腺超音波カテゴリー分類を用いて判定した。結果
S-Detect を用いた悪性病変の感度は 59.1%(13/22)、特異度は 100%(2/2)、
陽性的中率は 100%(13/13) であったが、陰性的中率は 18.2%(2/11)と低
かった。病変の良悪性に関する正診率は 62.5%(15/24)であった。一方、
カテゴリー分類で 4 以上と診断した症例のうち悪性病変は 68.2%(15/22) で
あった。病変の形態別では腫瘤性病変の正診率は 65% (13/20) であり、非腫
瘤形成性病変では 50%(2/4) と非腫瘤形成性病変の正診率は低い傾向にあっ
た。カテゴリー分類にて 4 以上と判定した症例は全て悪性病変であったが、そ
のうち S-Detect でも悪性と診断したものは 73.3%(11/15) であった。カテゴ
リー分類にて 2 と診断した 2 例は S-Detect でも良性と判定されたが、そのう
ち 1 例は悪性病変であった。考察今回の検討では、悪性病変のうち比較的腫瘤
の形状が oval に近いものでは S-Detect での判定が良性と判定される傾向に
あった。また腫瘤非形成性病変では病変全体を認識することが困難であった
ため、感度が低くなったと考えられる。一方 S-Detect で悪性と判断されたも
のは全例悪性の診断を得ており、悪性の診断としての一助にはなりうる可能
性が示唆された。しかしながら現状では S-Detect にて良性と判断されても偽
陰性率が高く、生検を行わない症例を鑑別できないと考えられた。今後症例
を蓄積し、検討を重ねる予定である。
西神戸医療センター 乳腺外科、2 西神戸医療センター 外科・消化器外科、
西神戸医療センター 放射線科
奥野 敏隆 1、京極 高久 2、今中 一文 3
【はじめに】乳房超音波検査は乳腺疾患の診断にひろく用いられている.なか
でも検診とその精密検査におけるニーズが高まりつつある.従来は B モード
超音波検査を行い,カテゴリー 3 以上の病変に対して細胞診や針生検を行う
のが一般的であった.いっぽう,Nakashima らは診断能の向上,精密検査の
効率化を目的として B モードにカラードプラ法(以下 CD)とエラストグラフィ
(以下 EG)を追加する comprehensive ultrasound diagnosis を提唱してい
る.
【目的】B モードに CD および EG を追加した総合的カテゴリー判定を策定し,
その有用性を検証した.
【対象】本院において B モード法に CD と EG を追加して超音波検査を行った乳
腺腫瘤性病変 66 例を対象とした.内訳は良性 31 例(切除 5 例,針生検 6 例,
細胞診 +2 年以上経過観察 20 例),乳癌(すべて手術施行)35 例.
【方法】使用機種は日立アロカ社製 Preirus.B モードと EG は静止画像を,CD
は動画像を評価し,乳房超音波診断ガイドライン第3版に準じて B モードカ
テゴリー判定と血流評価を行い,EG はつくば弾性スコアに準じて判定を行っ
た. CD で貫入・貫通する血流,周辺の血流増加を認めた場合は +1,血流を
認めない,あるいは境界部に沿う血流を認めた場合は -1 を B モードカテゴリー
判定に追加し,EG でエラストスコア 1, 2 では -1,スコア 3 では 0,スコア 4,
5 では +1 を B モードカテゴリー判定に追加して総合判定とした.カテゴリー
2,3a,3b を良性,カテゴリー 4, 5 を悪性として B モード単独,B モード+
CD,B モード+ EG,B モード+ CD + EG の診断能を比較検討した.
【結果】(感度,特異度,正診率)は B モード単独:
(83%,94%,88%),B モー
ド+ CD:
(94%,84%,89%),B モード+ EG:
(89%,97%,92%),B モー
ド+ CD + EG:
(94%,97%,95%)であった.良性腫瘤のカテゴリー 2 と
カテゴリー 3 はそれぞれ B モードでは 3 例,26 例,B モード+ CD + EG では
24 例,5 例であった.
【考察】B モード法に CD を追加すると感度,EG を追加すると特異度の向上が
得られ,両方追加すると感度,特異度,正診率いずれも向上した.CD だけ追
加すると特異度の低下を伴った.CD と EG の追加によりカテゴリー 3 の良性
腫瘤の大半をカテゴリー 2 にすることができ,無用の細胞診や針生検を回避
できる可能性が示唆された.
DP-1-41-04
DP-1-41-05
演題取り下げ
乳腺微細石灰化病変における超音波検査の検出率とその対応に
ついて
1
2
医療法人財団博愛会 ウェルネス天神クリニック 乳がん診断センター、
博愛会病院 乳腺外科、3 糸島医師会病院 乳腺外科
高木 理恵 1、森 寿治 1、深水 康吉 2、稲田 一雄 2、渡邉 良二 3
【はじめに】近年マンモグラフィ ( 以下 MMG) 検診により , 多くの微細石灰化病
変が精査機関に訪れるようになり , 超音波診断装置の精度向上に伴い , 以前は
見つけることが困難だった微細石灰化病変が , 超音波検査 ( 以下 US ) でも検出
が可能になってきた . 今回我々の施設における石灰化病変の検出率等について
検討したので報告する 【
. 対象と方法】2012 年 12 月から 2014 年 3 月までの 1
年 4 か月間で , 当院 MMG にて石灰化でカテゴリー 3( 以下 C3) 以上となった
154 例 158 病変の内 , 乳癌術後と過去に同部位をステレオガイド下マンモトー
ム ( 以下 ST-MMT) にて診断した例を除いた 122 例 125 病変について ,US での
検出率と所見等について検討した 【
. 結果】125 病変の内 ,US にて石灰化を示唆
する点状高エコーが検出できた病変は 72 例 (58%) あり , カテゴリー毎の検出
率 は ,C-3 が 114 例 中 61 例 (54%),C-4 が 6 例 中 6 例 (100%),C-5 は 5 例 中 5
例 (100%) だった . 生検を施行した病変が 125 病変中 29 例で , 悪性は 125 病
変中 17 例 (14%) あり , 浸潤癌 11 例 , 非浸潤性乳管癌 ( 以下 DCIS)6 例 , 鑑別困
難が 125 病変中 2 例 (2%), 良性が 10 例 (8%) だった . 悪性と鑑別困難症例の
19 例はすべて US で検出され ,17 例は US ガイド下の針生検で診断された ( こ
れらはすべて標本撮影により石灰化の確認をした ). 悪性 17 例の点状高エコー
周囲の US 所見は , 浸潤癌 11 例はすべて低エコー域又は腫瘤内に ,DCIS6 例中
4 例は低エコー域又は腫瘤内にあり ,2 例は点状高エコーのみの描出であり , 鑑
別困難の 2 例では ,1 例は腫瘤内に ,1 例は点状高エコーのみの描出だった . 鑑
別困難例の 2 例は , 本人希望もあり現在経過観察中で , 特に変化なく 1 年以上
経過している 【
. 考察】今回の結果では , 悪性病変の石灰化は US ですべて検出
可能だった . これは ,US 前に MMG の確認を行う事で可能となっており ,MMG
の情報なしに検出する事は困難である . また ,US で指摘の部位が MMG で指摘
の石灰化と同一だと確信を持てない場合や ,US ガイド下で採取できない可能
性がある際には , 無理せず ST-MMT を選択した方が , 無駄な侵襲を加える事な
く診断ができるのではないかと思われ , 生検方法の選択には慎重になった方が
良いと考える . また US 下にて石灰化病変を生検する際に , 標本撮影にて石灰化
採取の確認をする事で , 正確な病変採取の確認が可能となり ,ST-MMT より低
侵襲での生検が可能になると考える 【
. 結語】悪性の微細石灰化病変は US にて
ほとんど検出は可能と思われるが , その対応は施設の状況に応じて慎重になっ
た方が良いと思われる .
368
ポスター討議
DP-1-42-01
DP-1-42-02
1
1
小倉 信子 1、本間 周作 1、小河 靖昌 1、和田 康雄 1、丸田 力 2
吉田 恵 1、伊藤 靖 2、後藤 圭吾 2、安澤 千奈 1、佐藤 紀子 1、
小板橋 実夏 1
乳癌診断におけるマンモグラフィー 3D トモシンセシスの有用性
乳房トモシンセシスを用いた MMG 画像評価法に関する検討
独立行政法人 国立病院機構 姫路医療センター 外科、
2
独立行政法人 国立病院機構 姫路医療センター 放射線科
【背景】乳房トモシンセシスによる多層の断層再構成を加えた MMG 画像の評価
法は確立されていない。【目的】トモシンセシスを加えた MMG 画像の評価法に
ついて検討し診断能向上を図る。【対象と方法】2014 年 1 ~ 12 月に当院で乳
房病変の精査に AMULET Innovality を用いてトモシンセシス撮影を行った
510 例を対象とした。読影資格を有する医師 2 名と、放射線技師・臨床検査技
師による画像評価検討会で、トモシンセシス追加でカテゴリーが変化した症
例を拾い上げ、腫瘤・FAD・構築の乱れ・石灰化についてトモシンセシスを
加えて評価が変わった理由を検討し、画像評価法に関して考察した。【結果】
トモシンセシスで腫瘤が指摘された 180 例中、22 例が通常画像の評価よりカ
テゴリーが上昇していた。C-1 → C-3:7 例 (US や病理学的診断を加えた最終
診断は良性か正常 )、C3 → C-4:11 例 (2 例は良性 )、C3 → C5:1 例 ( 悪性 )、
C4 → C-5:3 例 ( 悪性 ) で、最終診断が悪性の 13 例は通常画像評価でも C-3 以
上であったが、トモシンセシスで辺縁の評価が変わりカテゴリーが上昇した。
ト モ シ ン セ シ ス で FAD(C-3) が 指 摘 さ れ た 51 例 は 通 常 画 像 評 価 で も
FAD(C-3) が指摘されており、評価不変であった。トモシンセシスで構築の乱
れが指摘された 30 例中、線状陰影の走行や線状陰影付近の随伴影の評価が変
わり C-3( 構築の乱れ疑い ) → C-4( 構築の乱れ ) に変化した症例が 4 例 ( 最終診
断は悪性 ) 認められた。通常画像で腫瘤・FAD・構築の乱れのいずれかが疑わ
れ、トモシンセシスでカテゴリーが低下したのは 4 例で、C3( 腫瘤 ) → C-1:
2 例、C3(FAD) → C-1:1 例、C-3( 構築の乱れ疑い ) → C-1:1 例で最終診断
は良性か正常であった。トモシンセシスで石灰化が指摘された 169 例中分布
や 存 在 部 位 ( 乳 腺 内 か 乳 腺 外 か ) の 評 価 に よ り C2 → C3:2 例 ( 悪 性 )、
C3 → C2:4 例 ( 良性 )、C3 → C-1:1 例 ( 皮下乳腺外の石灰化 ) とカテゴリー
が変化していた。【考察】乳房トモシンセシスは、重なりを除いた標的陰影の
描出により腫瘤の辺縁所見・構築の乱れが明瞭になり、感度を上昇させる可
能性がある。内部構造の評価にすぐれ、内部に脂肪を含む腫瘤もしくは FAD、
乳腺外に存在する石灰化を良性と判断できるため、特異度も低下させる可能
性がある。しかしトモシンセシス画像でのみ境界明瞭な腫瘤を認めた場合は、
cyst や FA など硬度の低い良性病変の場合が多く、硬さが濃度として反映され
る通常画像の評価も参考に総合的に判断する必要がある。
DP-1-42-03
DP-1-42-04
市立秋田総合病院 乳腺・内分泌外科
1
片寄 喜久、高橋 絵梨子、伊藤 誠司、安藤 雅子
鯉淵 幸生 1、荻野 美里 1、常田 祐子 1、小田原 宏樹 1,2
乳癌検診におけるトモグラフィ併用対策型検診における精度管
理についてー 5mm 未満の腫瘤は要精査対象かー
乳房トモシンセシス再合成画像 C-View 導入の有用性と問題点
の検討
【緒言】乳房トモグラフィは、腫瘍の辺縁診断がより明瞭になることで画像診
断能の向上が得られ、検診における感度並びに特異度上昇が期待できる事が
報告されている。しかし現行の診断カテゴリではトモグラフィのみで検出さ
れる小さな良性腫瘤も要精査となってしまい精度管理上問題である。対策型
検診にトモグラフィを併用する問題点につき検討した。【対象・方法】平成 24
年 4 月 1 日から平成 25 年 11 月 30 日の期間、秋田市乳癌検診受診者中、通常
撮影にトモグラフィを追加することに了承が得られた検診受診者 1781 例
(3562 乳房)を対象とした。撮影は通常の 40 歳代2方向、50 歳以上1方向に
両側 MLO 方向のトモグラフィを追加した。要精査者の二次精査結果を解析し、
5mm 未満の腫瘤の乳癌発見率などにつき検討した。【結果】要精査乳房数は
288 例、要精査率は 8.09(288/3562)%、乳癌発見数は 11 例、乳癌発見率
0.31%、陽性反応的中率は 3.82% であった。乳癌の中で 5mm 未満の症例は
1 例、DCIS のみで FAD カテゴリ 3 であった。5mm 未満の境界明瞭な腫瘤は
すべて嚢胞などの良性の腫瘤あるいは乳腺症と診断されていた。【考察】トモ
グラフィを追加撮影することで、通常撮影では発見されない小さな腫瘤が多
数発見されたが、この内 5mm 未満の境界明瞭な腫瘤中乳癌は発見されず、
FAD と診断された症例 1 例のみが乳癌であり非常に少ないことが判明した。
現行のカテゴリ分類では腫瘤と診断できる場合はカテゴリ 3 となるが、現実的
にはそのままカテゴリ 1 あるいは 2 として要精査対象としない場合が多いので
はないか。BI-RADS では 5mm 未満の腫瘤は要精査対象としていない事、境
界明瞭な 5mm 未満の腫瘤は要精査対象から除外しても問題ないと思われる。
ただし、トリプルネガティブ乳癌など増殖速度が速く悪性度の高い乳癌も可
能性は少ないが含まれることも十分に考慮する必要はある。以上を踏まえて
文献的考察も含めて報告する。
国立病院機構 高崎総合医療センター 乳腺内分泌外科、2 東邦病院 外科
【背景と目的】乳房トモシンセシス(BT)は,複数回撮影をもとに合成される断
層画像であるが,コンベンショナルマンモグラフィ(C-MG)と共に撮影した
場合,総被ばく量が C-MG 単独に比較して約2倍になる.その問題点を解決
するためには,C-MG 撮影を省略し,BT 画像から C-MG 様の画像を再合成す
る画像(C-View)と BT の読影で C-MG + BT と同様の結果を得られれば良いこ
とになる.そこで,従来の C-MG + BT から C-View + BT への移行が可能か
どうか,有用性や問題点について検討した.【対象と方法】平成 26 年 10 月か
ら C-View 画像が加わった.現在までの,22 例 24 病変の乳癌の画像を対象に
C-MG + BT と C-View + BT の被ばく量や画像の差異について検討した.【結
果】C-View は BT から再合成される画像であり,C-MG + C-View + BT の撮
影時間と被ばく量はこれまでの C-MG + BT と同じである.C-View + BT は
C-MG + BT に比べ撮影時間が 1 方向につき 1 秒短縮され 6 秒に,被ばく量は
約半分になる.C-View を加えた場合,画像完成から診察室まで送られる時間
は数秒増えるだけで,診療に支障はない.診断面では,24 病変において 2D
では指摘しえなかった乳癌が 2 病変あった.それらの病変は C-View,BT では
検出可能で,構築の乱れ,spicula を主な所見とし,C-View で疑いを持ち,
BT で確認ができた.2D で検出可能であった病変はすべて C-View でも検出可
能であった.ただし,断層画像の再合成画像である C-View では,特に不均一
高濃度乳房において C-MG の持つ濃度という情報は減少する.すなわち,
C-View では高濃度病変として pick up することは困難になり内部構造の差で
の pick up が必要になる.石灰化については C-MG でも C-View でも指摘可能
であったが,C-View では強調処理がなされ,より鮮明に見えるようになった.
【まとめ】C-View は BT 画像から作成され,BT 読影する際に注目すべき部分を
強調するような画像構成になっており,それ単独での読影および診断を行う
事を目的にするのではなく,あくまでも BT とともに読影し,BT での読影の
補 助 を 行 う こ と を 前 提 と す る.C-MG で 指 摘 可 能 で あ っ た 病 変 は す べ て
C-View でも指摘可能で BT で確認できたが,濃度情報は失われるので注意が
必要である.C-MG + BT という従来の方法から C-View + BT への移行は可
能と思われるが,腫瘤の濃度は薄くなり,石灰化は強調されることを念頭に
おいての読影が要求される.
369
一般セッション(ポスター討議)
【背景】乳房マンモグラフィー・トモシンセシス撮影(3D)は通常のマンモグラ
フィー(2D)と同様に乳房を圧迫し、短時間でスキャンし、複数の角度で画
像収集する3次元デジタル撮影技術である。収集した個々の画像は一連の薄
い高解像度断層像に再構成され、1画像ずつまたは連続的にシネモードで表
示できる。組織の重なり・構造ノイズを減少できるため、病変を明瞭に描出し、
腫瘤や周囲組織の所見がより認識しやすくなる。【目的】通常の 2D マンモグラ
フィーに 3D トモシンセシスを追加することにより、乳癌診断能が上がるか否
か を 検 証 す る【 方 法 】当 院 で は、SIEMENS 社 MAMMOMAT Inspiration
Tomosynthesis を平成 24 年 10 月より導入した。検診要精検症例、有症状例
の初診時に 2D 撮影に加えて 3D トモシンセシスを追加撮影した。平成 26 年 5
月末までに撮影した 541 人に関して検討した。【結果】541 人中 80 人を乳癌と
診断した。カテゴリー 3 以上と診断された症例のうち乳癌症例の検出感度は
2D 単独で 92.5% (224 人のうち 74 人 )、2D+3D で 97.5%(221 人のうち 78
人 ) で 5%の感度上昇を認めた。2D 単独でカテゴリー 1・2 と判定した症例の
中で、2D+3D でカテゴリー 3 以上にアップしたのは 9 症例(総数 541 人中
1.66%)で、そのうち乳癌は 4 症例で、乳癌 80 症例のうち 5% を占めた。2D
単独でカテゴリー 3 以上と判定したが、2D+3D でカテゴリー 1・2 とダウン
したのは 13 症例(総数 541 人中 2.40%)で、全て非癌で、非癌 461 症例のう
ち 2.8% を占めた。2D 単独でカテゴリー 3・4 と判定し、2D+3D でカテゴリー
5 にアップしたのは 16 症例(総数 541 人中 2.95%)で、全て乳癌で、乳癌 80
症例内では 20% を占めた。2D で FAD の判定であったが、3D でスピキュラを
認めたものが最も多かった。また 2D 単独と比べて 2D+3D で検出した乳癌の
個数が増加したのは 12 症例で、乳癌 80 症例のうち 15% であった。【考察】
3D トモシンセシスは初診時に予約なしで検査できる簡便な検査法であり、被
ばく線量も 2D の 1.5 倍ではあるが平均乳腺線量の範囲内で撮影できる。病変
の正確かつ精密な描出能力は優れており、乳癌検出感度の上昇を認めた。【結
語】乳癌診断における乳房 3D トモシンセシスの有用性は高いと考える。
磐田市立総合病院 放射線診断技術科、2 磐田市立総合病院 乳腺外科
ポスター討議
DP-1-42-05
DP-1-43-01
自動乳腺濃度測定装置(VolparaTM)併用による乳腺濃度と造影
マンモグラフィの乳癌診断能
CT で偶然発見された乳癌 13 例の検討
1
2
1
昭和大学病院 乳腺外科、2 昭和大学病院 放射線科、
3
昭和大学病院 放射線部
鳥取県立中央病院 呼吸器・乳腺・内分泌外科、
鳥取大学医学部附属病院 胸部外科、3 鳥取県立中央病院 腫瘍内科
万木 洋平 1,2、門永 太一 1、窪内 康晃 1、松村 安曇 1、前田 啓之 1、
陶山 久司 3
池田 紫 1、澤田 晃暢 1、明石 定子 1、桑山 隆志 1、大澤 三和 3、
奥山 裕美 1、佐藤 大樹 1、小杉 奈津子 1、橋本 梨佳子 1、高丸 智子 1、
吉田 玲子 1、大山 宗士 1、森 美樹 1、吉田 美和 1、榎戸 克年 1、
廣瀬 正典 2、中村 清吾 1
一般セッション(ポスター討議)
CT で偶然発見された乳癌 13 例の検討【緒言】Computed Tomography(CT)
は多くの診療科領域で頻用されており,時に CT が契機となって乳癌が発見さ
れることがある.今回我々は CT で偶然発見された乳癌 13 例の検討を行った
ので報告する.【対象】2009 年 11 月から 2014 年 10 月までの 5 年間に,当院
で原発性乳癌として手術を施行した 153 例のうち,自覚症状や検診での異常
指摘がなく,CT で偶然乳房の異常を認め乳癌と診断された 13 例 (8.5%).乳
癌術後経過観察中,および乳癌の既往を有する患者の異時性乳癌や乳房内再
発は除外した.【結果】年齢は平均 67.8 歳,CT での腫瘍径は平均 17.7mm(1
例は腫瘤非形成のため計測できず ),発見契機となった CT の適応は,胸部異
常陰影 4 例,他の悪性疾患の術前・術後 3 例,胸部大動脈疾患 3 例,胸痛 2 例,
食思不振 1 例であった.マンモグラフィの背景乳腺は約 8 割が脂肪性または乳
腺散在,全例がカテゴリー 3 以上であった (1 例は全身状態不良のため施行せ
ず ).4 例はマンモグラフィ検診を 2 年以内に受診していた.温存術が施行さ
れたのは 4 例,浸潤径は平均 16.3mm,病理病期は 0 期が 2 例,I 期が 7 例,
IIB 期が 2 例,IIIC 期が 1 例で,早期癌が約 7 割を占めた (1 例は姑息的切除の
ため病理病期は不明 ).サブタイプは Luminal A が 4 例,Luminal B が 8 例,
HER2 enriched が 1 例で,Luminal type が 9 割以上を占めた.【考察】CT で
偶然に乳癌が発見される頻度は 0.3 ~ 0.58% と稀ではなく,特に造影 CT で
は早期癌も十分に描出可能であると報告されている.また CT 発見乳癌は 60
~ 70 歳代で頻度が高いとされ,背景乳腺の濃度が低く発見されやすいためと
考えられている.本検討では早期癌が多いことが特徴的で,進行が緩徐な
Luminal type が大半を占めていることが関連していると推測された.また平
均年齢が高く,乳腺散在~脂肪性乳房が大部分を占めており,早期癌でも比
較的発見が容易であったと考えられた.【結語】CT で偶然発見される乳癌では
早期癌が多く,乳癌の存在の可能性を念頭に置いた慎重な読影が必要と思わ
れた.
【背景】マンモグラフィ (MMG) はその簡便さと再現性より乳癌診断で最も使用
されるが、高濃度乳腺での検出率低下が問題とされ、BIRADS(MMG 編 ) 第 5
版では乳腺組織により病変がマスクされる危険性が明示されている。造影マ
ンモグラフィ (CESM) は造影効果による病変検出が可能となり、乳房 3 次元
自動解析ソフトである Volpara と CESM を組み合わせることで高濃度乳腺で
の診断精度の向上が期待される。今回、Volpara と CESM の併用が乳癌診断に
寄与するかを検討した。
【対象・方法】2013 年に乳癌と診断され、Volpara 測定および CESM を施行し
た症例を対象とした。乳腺密度 4.5% 以下を VolparaDensityGrade(VDG) 1、
4.5-7.5% を VDG2 、7.5-15.5% を 3、15.5% 以 上 を 4 と 分 類 し、VDG3,4
を 高 濃 度 乳 腺 と し た。CESM の 撮 影 法 は、 経 静 脈 的 に 1.5ml/kg の
Iopamiron300 を注入、2-4 分後に患側 MLO、CC を高低2つのエネルギーを
用いて撮影し、その後同様に健側を撮影した。乳房辺縁より強い造影効果を
陽性としている。
【結果】Volpara で測定した乳癌症例は 221 例、高濃度は 192 例であり、その
う ち 42 例 (22%) が MMG で C-1,2 と 判 定 さ れ、 か つ C-1,2 の 46 例 中 42 例
(91%) が高濃度であった。CESM は 19 例で実施され、乳腺密度は VDG2 が 1
例、3 が 6 例、4 が 12 例であった。高濃度 18 例中、MMG で C-3 以上は 10 例
(55.6%) で、CESM で は 15 例 (83.3%) で 造 影 効 果 が あ っ た。 ま た MMG で
C-1 の 8 例全例が高濃度であり、その内 6 例で CESM にて病変が検出可能で
あった。
【考察】Volpara で高濃度であった症例において、MMG に CESM を加えること
で乳癌検出能の向上が期待できると考えられる。 当院の研究では高濃度乳腺
において MMG 単独では検出能は低下しており、補助診断の必要性が示唆され
ている。CESM は病変への新生血管を特異的に造影することで MMG の補完効
果が期待でき、感度は MRI に匹敵することが報告されている。被爆量は MMG
の 1.2 倍と安全であり、比較的廉価で客観性、簡便性にも優れる。US や MRI
に加え CESM の診療現場での使用により経済効果や診断時間短縮が期待でき
る。今後も症例を蓄積し、さらなる検討を行っていく予定である。
DP-1-43-02
DP-1-43-03
1
1
胸部単純 CT における乳癌描出能の検討:早期の乳癌は描出可能
か?
SPECT-CT における乳癌センチネルリンパ節の局在と個数につ
いての検討
日本医科大学 放射線医学、2 日本医科大学付属病院 乳腺科
3
村上 隆介 1、谷 瞳 1、桑子 智之 1、吉田 民子 1、山根 彩 1、汲田 伸一郎 1、
岩崎 美樹 2、淺川 英輝 2、二宮 淳 2、柳原 恵子 2、飯田 信也 2、
山下 浩二 2、武井 寛幸 2
一般に乳癌は造影 CT にて比較的明瞭に造影され、描出が容易とされている。
近年のスクリーニングや他臓器癌の転移検索目的など胸部 CT の撮像機会は増
加し、それに伴って偶発乳癌の報告も多く見られているものの単純 CT におけ
る描出および所見についての報告は少ない。
【方法】2012 年 1 月から 2013 年 12 月に当院で手術が施行された乳癌患者のう
ち、術前にセンチネルリンパ節生検のための SPECT-CT を施行された 193 例
(浸潤性乳管癌 131 例、特殊型 29 例、非浸潤癌 33 例:うち両側 3 例)を対象
とし、SPECT-CT での CT component(単純 CT)での病変描出の有無・所見を
MMG 所見および病理学的所見と比較検討した。
【結果】133/193 例(69%)中が単純 CT にて病変指摘が可能であった。病変の
形 状 は mass 111 例 , scattered spotted lesions 9 例 , gland thickening/
laterality 13 例であった。浸潤癌の描出は 160 例中 126 例(79%)、非浸潤癌
は 33 例中 7 例(21%)であった。浸潤癌における腫瘍径と CT 描出能の比較で
は 5-10mm で 55%(11/20 例)、10-20mm で 81%(50/62 例)、20mm <で
83%(65/78 例)であった。MMG 所見との比較において、腫瘤で描出された
乳癌の CT 描出率は 93%(103/111 例)、石灰化 26%(9/35 例)、FAD/ 構築の
乱れ 38%(12/32 例)Category 1 25%(2/8 例)であり、腫瘤以外の描出は不
良であった。
【考察・まとめ】胸部単純 CT における乳癌の所見はそのほとんどが軽度濃度上
昇を呈する mass として描出され、その割合は比較的早期の浸潤癌においても
高率であった。スクリーニングの胸部単純 CT においても乳腺内の mass、濃
度上昇 , gland thickening や laterality の所見に注意することが肝要と思われ
た。
日本医科大学付属病院 放射線医学、2 亀田京橋クリニック 放射線科、
日本医科大学付属病院 乳腺科、4 二宮病院、5 新東京病院 外科
桑子 智之 1、村上 隆介 1、谷 瞳 1、吉田 民子 2、山根 彩 1、福嶋 善光 1、
汲田 伸一郎 1、柳原 恵子 3、岩本 美樹 3、山下 浩二 3、二宮 淳 4、
淺川 英輝 5、武井 寛幸 3
【背景】乳癌に対するセンチネルリンパ節生検(SNB)では,SPECT-CT を用い
ることにより術前にセンチネルリンパ節(SN)の解剖学的な局在や個数を把握
することが可能である。SPECT-CT において非典型的な集積部位を示す SN が
存在することが知られている。また,SN は 1 個であることが多いが,SN が
複数個存在する,あるいは SN の描出がみられない症例も存在する。今回,
SPECT-CT における集積部位や個数が SN 転移の有無と関連するか検討した。
【対象】2010 年 12 月から 2013 年 12 月に SNB に伴い SPECT-CT を施行した
cN0 乳癌 220 例を対象とした。【方法】SPECT-CT における集積部位を Level I
の み に 集 積,Level II-III に 集 積,SN 集 積 な し の 3 つ に 分 類 し た。 次 に,
SPECT-CT における SN の描出個数を 4 群
(a 群 : 1 個,b 群 : 2 個,c: 3 個以上,
d: 0 個)に分類した。SN の集積部位および個数と SN 転移の有無を比較検討
した。【結果】平均年齢は 58.6 歳。SN 転移陽性は 36 例(16.4%)
,転移陰性
は 184 例(83.6%)であった。SN の局在は Level I のみに存在するものが 201
例(91.4%),Level II あるいは III に存在するものが 16 例(7.3%),SN の描
出がみられないものが 3 例(1.4%)であった。SN の描出がみられなった 3 例
は全例で SN 転移陽性であった。Level II あるいは III に SN が存在する 16 例
のうち SN 転移陽性は 6 例(37.5%),Level I のみに SN が存在する 201 例の
うち SN 転移陽性は 27 例(13.4%)であった。SN の描出個数は a 群が 168 例,
b 群が 40 例,c 群が 9 例,d 群が 3 例であった。各々の SN 転移陽性率は a 群が
22/168(13.1%),b 群が 8/40(20%),c 群が 3/9(33.3%),d 群が 3/3(100%)
であった。【結論】SPECT-CT における SN の集積部位については SN の描出が
みられない,あるいは SN が Level II あるいは III に存在する際には 47.4% に
転移がみられ,SN 転移陽性の可能性が高い。また,SPECT-CT における SN
の描出個数については SN が 3 個以上あるいは 0 個の場合に SN 転移陽性の可
能性が高いと考えられる。
370
ポスター討議
DP-1-43-04
DP-1-43-05
乳癌の術前薬物療法施行例における FDG PET/CT の SUVmax、
MRI の ADC および Ki-67 値の相関と治療効果予測の検討
乳癌術前 CT は多発病変にも有用である
岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科
1
兵庫医科大学 放射線科、
2
兵庫医科大学 放射線医療センター 核医学・PET 診療部、
3
兵庫医科大学 乳腺外科、4 兵庫医科大学 病院病理部
佐藤 未来、大貫 幸二、梅邑 明子、宇佐美 伸、渡辺 道雄
山野 理子 1、北島 一宏 2、廣田 省三 1、今村 美智子 3、村瀬 慶子 3、
西向 有紗 3、榎本 敬恵 3、柳井 亜矢子 3、三好 康雄 3、渡邉 隆弘 4、
廣田 誠一 4
DP-1-44-01
DP-1-44-02
当院における両側同時性乳癌の放射線学的検討
乳癌の線維化の評価:MRIT2 強調画像における信号強度と、
BMI(体格指数)を含む臨床的特徴との相関
1
聖フランシスコ病院 放射線科、2 糸柳ブレストクリニック、
3
聖フランシスコ病院 外科、4 長崎大学病院 放射線科、
5
長崎大学 腫瘍外科、6 長崎大学 原研病理、7 長崎大学病院 病理診断科
1
磯本 一郎 1、糸柳 則昭 2、白藤 智之 3、瀬川 恵子 4、森 美央 4、矢野 洋 5、
大坪 竜太 5、三浦 史郎 6、中島 正洋 6、安倍 邦子 7
【目的】同時性両側乳癌の頻度は、以前は 1-2%と言われていたが、近年では
約 5%と増加している。これは画像診断の発達、特に MRI による対側乳癌の
スクリーニングが大きく寄与していると考えられる。本研究の目的は、同時
性両側乳癌の同定に MRI を含めた各画像診断法がどの程度寄与しているか検
討することである。【対象と方法】対象は 2012 年 5 月から 2014 年 11 月に、
病理診断にて同時性両側乳癌と診断された症例のマンモグラフィ、初回 US、
MRI、targeted US の病変同定率について検討した。【結果】期間中の乳癌患
者は 158 例で、そのうち同時性両側乳癌は 14 例(8.8%)で平均年齢は 62.1
歳(41 - 88 歳)、全例女性であった。最終病理診断は DCIS 9 病変、乳頭腺管
癌 11 病変(T1mi 4 病変を含む)、充実腺管癌 2 病変、硬癌 6 病変であった。
マンモグラフィでは両側とも病変を指摘できたのは 2 例、片側のみは 9 例、所
見なし 2 例であった(1 例は巨大腫瘤のため、未施行)。初回 US では両側とも
病変を同定できたのは4例で、片側のみは 10 例、所見なしはなかった。MRI
では 14 例全例両側の病変が同定された。両側乳癌の同定率はマンモグラフィ
15.4 %(2/13)、 初 回 US 28.6 %(4/14)、MRI100 %(14/14)で あ っ た。
マンモグラフィと初回 US で同定できたのは 35.7%(5/14)であり、残り 9 例
は MRI のみで指摘された MRI-detected lesion(MRDL)であった。MRI を加
えることで対側乳癌が 5.7%(9/158)増加した。初回 US で同定できなかっ
た 10 病変(MRDL 9 病変および石灰化病変1病変)に対する targeted US での
同定率は 8/10(80.0%)であったが、virtual sonography を併用することで
残り2例が同定された。これら 10 病変の最終病理診断は DCIS 5 病変、T1mi
3 病変、浸潤性乳癌 2 病変であった。
【結語】乳房 MRI は対側乳癌のスクリー
ニングツールとして有用である。また、virtual sonography は MRDL の同定
率を上昇させるのに有用である。
371
国立病院機構九州医療センター 乳腺センター 放射線科 臨床研究セン
ター、2 国立病院機構九州医療センター 乳腺センター 乳腺外科 臨床研究
センター
名本 路花 1、筒井 佳奈 1、高橋 龍司 2、赤司 桃子 2、中川 志乃 2
[Objective] Fibrosis of the stroma of breast cancers may reflect their
biological characteristics, and it is extremely important to evaluate the
biological features for an effective therapeutic strategy. We investigated
the correlation between signal intensity (SI) of breast cancers on T2weighted MR images, enhancement patterns, apparent diffusion
coefficient (ADC) values, and clinical features including body mass
index, age, and hormone receptors and HER2 protein. [Methods and
Materials] MR images of invasive breast cancers were reviewed in 75
females (77 lesions). We calculated the ratio of SI of the lesion to that
of muscle (L/M ratio) on T2WI and ADCs. The correlations of the L/M
ratio and ADCs with the BMI, age, hormone receptors, HER2 protein,
and the imaging findings based on BI-RADS-MRI were examined.
[Results] The mean L/M ratio was 8.169 ± 5.766 (range 2.18-33.8).
The mean ADC was 1.057 ± 0.270 × 10-3mm2/sec. The L/M ratio was
significantly correlated with the delayed-phase enhancement (plateau/
washout) (P=0.0233) on kinetic curve assessment. Additionally, the L/
M ratio was significantly correlated with age (P=0.0137) and BMI
(P=0.0129). There was no correlation between the L/M ratio and
hormone receptors and the ADC values; however, there was a trend of
weak correlations of the L/M with shape and HER2 expression
(P=0.0754 and 0.0834). [Conclusion] Recently, the interaction of
stroma and cancer has attracted attention. Rather than merely
hardness, stromal fibrosis should be regarded as a biological indicator
of cancer. MRI should contribute greatly to the development of a more
appropriate strategy of treatment for breast carcinomas.
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌の画像診断では画像的バイオマーカーともいえる 18F-FDG PET/
CT で の SUV max、MRI 拡 散 強 調 画 像 で の apparent diffusion coefficient
(ADC) の有用性が知られている。また Ki-67 値は細胞増殖能を反映するとさ
れている。術前薬物療法施行例においてこれらの3者の相関と治療効果に関
してそれぞれの因子との関連性を検討する。
【対象・方法】2012年1月~ 2014年6月に、術前に 18 F-FDG PET/CT, MRI(3T)
を施行後、術前薬物療法を行ない、手術により病理学的に治療効果判定をされ
た浸潤性乳癌 69例(平均57歳:31 ‐ 79歳)を対象とした。術前の 18F-FDG
PET/CTでのSUV max, MRIでの ADC (mean, min), Ki-67値の相関を検討し
た。ADCはMRI拡散強調画像のADC mapで造影dynamic studyでenhanceを
受けた腫瘍部にROIを複数個所設定し、meanおよびminを求めその平均を算
出した。摘出標本での組織学的効果判定により奏功群(grade3+2b)と非奏功群
(grade 1a, 1b, 2a)の2群に分け, 上記因子との関連性の有無を検討した。
【結果】腫瘍部の SUVmax と Ki-67 値の間に正の相関(rs 0.48, p=0.00007)、
SUVmax と ADC(mean, min)間に負の相関(rs -0.27, p < 0.03)を認めた。
Ki-67 値と ADC 間には軽度の負の相関がみられたが、有意差はなかった。治
療効果による(奏功群 16 症例、非奏功群 53 症例)2 群間の比較では奏功群で
有意に Ki-67 値が高値であった(p < 0.0002)が、SUVmax や ADC には有意
差は認められなかった。ROC 解析では Ki-67 値の cut off 値を 27.5%とすると、
感度、特異度はそれぞれ 0.875 0.321 で、AUC は 0.855 となった。SUVmax
では cut off 値を 3.68 とすると、それぞれ 0.938, 0.66 で AUC は 0.666 であっ
た。
【結論】乳癌の術前薬物療法施行例では SUV max と Ki-67 値、SUV max と
ADC 間に有意な相関があり、特に Ki-67 値高値例で、良好な治療効果を期待
できる。
【背景】当院では初診時、マンモグラフィ(MMG)読影後、視触診、超音波検
査(US)を医師が施行し、必要があれば細胞診、組織診を即時施行している。
乳癌と診断された場合、病変の広がり診断、多発病変の有無、リンパ節転移
の評価のため CT を施行している。【目的】初診時には指摘されず、術前CTに
よって指摘された多発病変を検討し、その有用性について考察する。【対象】
2014 年 1 月から 12 月までの女性初発乳癌手術 172 症例中、当院で CT 施行後、
初回治療として手術を行った 112 症例。【方法】CT(東芝 Aquilion64 )は造影
早期相のみを撮影し、1mm slice の軸位断、VR 画像、MIP 画像を複数の医師
で読影し、既知の病変と異なった領域もしくは対側にある造影される結節を
多発病変疑いとした。Second look US(日立 Avius または EUB-7500)も複数
の医師で検討した。【結果】初発乳癌 112 症例中、CT で多発病変が疑われたの
は 13 症例(11.6%)15 病変で、Second look US で全例部位を同定できた。
病変の大きさは 3 ~ 15mm( 平均 6.5mm)、局在は同側 8 病変、対側7病変。
US上、背景乳腺は斑紋が強く、病変は乳頭近傍や乳腺の深層に多く認めら
れた。15 病変中、USで悪性が否定出来なかった 9 症例に対し細胞診を施行
した。細胞診が悪性の 2 症例は US 上 4mm、6mm の病変を認め、いずれも
Bp を施行し、comedo DCIS と乳頭腺管癌であった。細胞診が悪性の疑いで
あった 1 病変と検体不適正であった1病変は同一症例であり、B tを施行、
5mm の粘液癌と 5mm の乳管内乳頭腫であった。細胞診が鑑別困難であった
1 症例は、Tm を施行し 9mm の硬癌であった。細胞診が正常あるいは良性の
4 病変、細胞診を行わなかった病変 6 は基本的に経過観察となった。初発乳癌
112 症例で、同時両側乳癌 3 症例中 CT で発見されたのは 2 症例、また、同側
多発乳癌 4 症例中 CT で発見されたのは 2 症例であった。【考察】初診時の MMG
と US では検査精度には限界がある。特に超音波検査は検者依存性もあること
が知られている。CT は、客観性、再現性があり造影情報も得られる。また、
手術や US と同じ体位で撮影できるため、乳腺の形状、クーパー靱帯、血管の
走行から Second look US で病変の位置が同定しやすい。9 病変に細胞診を行
い悪性は 4 病変であり、偽陽性の不利益も許容範囲であると考えられた。【結
語】初診時の MMG、US では検出が困難な多発病変に対して CT は有用であっ
た。今後、さらなる症例の蓄積と長期の経過観察が必要である。
ポスター討議
DP-1-44-03
DP-1-44-04
乳房 MRI を用いた腹臥位から仰臥位への体位変換に伴う乳癌位
置変化の検討
乳房インプラント破損の MRI による評価
1
3
1
滋賀医科大学 外科学講座 乳腺・一般外科、
2
滋賀医科大学 バイオメディカル・イノベーションセンター、
3
滋賀医科大学 外科学講座 消化器外科、
4
滋賀医科大学付属病院 放射線科、5 沢井記念乳腺クリニック
がん研究会有明病院 画像診断部、2 がん研究会有明病院 形成外科、
がん研究会有明病院 乳腺科、4 聖路加国際病院 形成外科
五味 直哉 1、松本 綾希子 2、澤泉 雅之 2、今井 智浩 2、前田 拓摩 2、
棚倉 健太 2、宮下 宏紀 2、山下 昌宏 2、川上 順子 2、平山 泰樹 2、
梁 太一 4、國分 優美 1、蒔田 益次郎 3、岩瀬 拓士 3
田中 彰恵 1,5、山田 篤史 2、梅田 朋子 1、冨田 香 1、北村 美奈 1、
河合 由紀 1、金子 智亜紀 4、森 毅 1、久保田 良浩 1、谷 眞至 3
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】術前に撮影した腹臥位 MRI で確認した乳房内病変の位置と、乳房
超音波検査(US)や手術体位である仰臥位での同病変の位置は異なるため、病
変を再検出(Second-Look US)する際の指標として、解剖学的指標や乳頭腫
瘍間距離(NTD)が用いられている。しかし、乳房の大きさや柔らかさによっ
ては、体位により病変位置が大きく異なるため、その検出が困難である。そ
こで我々は、US における病変の再検出率向上を目的とした新たな指標につい
て検討した。【対象】2013 年 10 月 -2014 年 11 月に当院で術前検査を行った
乳癌症例のうち、20 症例、23 病変(浸潤性乳管癌 19 病変、非浸潤性乳管癌 4
病変)に対して、腹臥位 MRI、仰臥位 MRI および座位 MRI を撮影した。この
うち乳頭に及んだ 3 病変、術前化学療法で完全奏効の 2 病変、仰臥位 MRI で
指摘困難な 3 病変を除いた 15 病変を対象とした。【方法】(1)腹臥位 MRI、仰
臥位 MRI を用いて 3 次元的に NTD をそれぞれ測定し、その差 dNTD を求めた。
(2) 腹臥位 MRI と座位 MRI における頭尾方向の乳頭位置の差を「乳頭の下垂」
dnip と定義し、dNTD との関連を調べた。(3) 胸骨剣結合部を基準にして、各
体 位 の 病 変 位 置 を 測 定 し た。【 結 果 】(1) dNTD は 0.3-24mm、 平 均 値 は
9.7mm。10mm 以上の dNTD を 15 病変中 5 病変(33.3%)で認めた。その 5
病変全てにおいて仰臥位 NTD は腹臥位 NTD より短かった。(2)15 病変中 14
病 変 で dnip が 測 定 可 能 で あ り、 測 定 値 は 15.7-116.1mm、 平 均 値 は
59.8mm。dnip と dNTD の相関係数は 0.39。 (3) 右 12 時末梢に病変が存在
した 1 例を除く 14 例で、腹臥位から仰臥位への体位変換に伴い病変は外側に
変位した。【考察】dnip が大きい乳房では dNTD が大きく、仰臥位 NTD は腹臥
位 NTD より短くなるため、腹臥位 MRI の検出病変部を US で再検出する際に
は注意が必要である。腹臥位で認められた病変部は、仰臥位では概ね外側に
変位することを念頭に検査を行えば、Second-Look US での病変検出率向上
につながると考えられた。座位 MRI を用いて求めた dnip を腹臥位 MRI および
仰臥位 CT のみを用いて再定義し、その指標を元に Second-Look US における
プローブの走査範囲を示すことが今後の課題である。
【目的】豊胸術もしくは乳癌術後の乳房再建のために挿入された乳房のシリコ
ンインプラントの評価は MRI を用いて行うことができる。その目的はインプ
ラ ン ト の 破 損 の 有 無 お よ び 破 損 部 位 が intra-capsular rupture か extracapsular rupture かの診断にあると考えられる。インプラントの破損は乳房
撮影、超音波、CT を用いても検出可能であるが、MRI は最も正確なモダリティ
と言われている。MRI による破損診断の有用性に関して初期的検討を行った。
【方法】2014 年1月~9月に当院形成外科を受診した患者の中でインプラント
挿入後2年以上が経過し、インプラント破損のスクリーニングのために超音
波検査を施行した無症状の 165 例中、超音波でインプラントに関する異常所
見(インプラントの外殻(shell)の連続性の途絶、被膜(fibrous capsule)と外
殻の分離、シリコンゲルの内部エコーの異常)を認め MRI を施行した 28 例で
ある。MRI 所見の評価は脂肪抑制 T2 強調画像とシリコンを選択的に強調した
撮像方法により行った。インプラントの破損を疑う所見の判定は ACR BIRADS ATLAS 2013 の IMPLANT ASSESEMENT の記載に沿って行った。【結
果】28 例中 5 例で被膜の内側に dark line が描出される subcapsular line を
認め、その内 3 例(2例は経過観察中)でインプラントの抜去が行われ、いず
れ も 破 損(intracapsular rupture)が 確 認 さ れ た。 ま た 1 例 で( 調 理 し た )
linguine(細麺パスタ)様の dark line が描出される Linguine sign が認められ、
インプラントの抜去を行い破損(intracapsular rupture)が確認された。【ま
とめ】MRI はシリコンインプラントの破損を無症状の段階で正確に診断できる
可能性がある。
DP-1-44-05
DP-1-45-01
1
1
乳腺超音波と乳腺 MRI を用いた原発性純型粘液癌における術前
広がり診断の検討
3
ダイナミック造影 MRI による乳癌結節内部の造影形態や辺縁性
状の評価:異なる時間分解能での比較検討
亀田総合病院 乳腺科、2 亀田京橋クリニック 放射線科、
亀田総合病院 臨床病理科
2
中川 梨恵 1、坂本 尚美 1、寺岡 晃 1、佐川 倫子 1、山城 典恵 1、
角田 ゆう子 1、坂本 正明 1、越田 佳朋 1、淺野 裕子 1、戸崎 光宏 1,2、
星 和栄 3、福間 英祐 1
山口大学大学院 医学系研究科 放射線医学分野、
山口大学大学院 医学系研究科 消化器・腫瘍外科
松隈 美和 1、古川 又一 1、松永 尚文 1、前田 和成 2、前田 訓子 2、
山本 滋 2
【目的】乳腺粘液癌は全乳癌の 2 ~ 4% を占め、特殊型の中では比較的発生頻
度が高く、一般的に予後良好といわれている。比較的境界明瞭な腫瘤を形成
することが多いが、一部の症例では乳管内進展を伴い広範囲に病変が及ぶこ
ともある。今回純型粘液癌症例において、乳腺超音波及び乳腺 MRI を用いた
術前広がり診断について病理所見と一致するか比較検討した。
【方法】2012 年 4 月から 2014 年 9 月までの期間、当院で手術を施行した原発
性純型粘液癌 21 例を検討した。術前の乳腺超音波及び MRI 所見を限局性、区
域性、多発性に分類し、病理標本で乳癌病変部の広がりを比較した。純型粘
液癌のうち細胞外粘液量が多く管状・索状など胞巣形態を主体とするものを
TypeA(hypocellular variant)、充実性で集塊形成するものをTypeB(hypercellular
variant)とし、癌の広がりとの関係を検討した。
【結果】原発性純型粘液癌 21 例のうち超音波所見では限局性が 14 例、区域性
が 6 例、多発性が 1 例であった。MRI 所見では限局性が 17 例、区域性が 4 例、
多発性が 0 例であった。病理標本の癌の広がりは限局性が 13 例 (62%)、区域
性が 6 例 (28%)、多発性が 2 例 (10% ) であり、区域性及び多発性の症例では
粘 液 癌 と DCIS の 併 存 を 認 め た。 超 音 波 所 見 と 病 理 所 見 と の 一 致 は 14 例
(67%) であり、不一致の理由は 7 例中 3 例 (43%) の症例で病変部が検出され
ないこと、7 例中 3 例 43%) の症例で限局性病変周囲の低エコー病変を粘液癌
の広がりとして診断したことが原因であった。MRI 所見と病理所見との一致
率は 15 例 (71%) であり、不一致の理由は 6 例中 3 例 (50%) の症例で病変部
が造影されず、かつ T2 強調画像でも高信号の異常を指摘できないことであっ
た。 病 理 学 的 に は 21 例 の う ち TypeA が 15 例、TypeB が 6 例 で あ っ た。
TypeA で病変の広がりが限局性であったものが 9 例 (60%)、区域性・多発性
であったものが 6 例 (40%)、TypeB で限局性であったものが 4 例 (67% )、区
域性・多発性であったものが 2 例 (33%) であった。
【結論】純型粘液癌の 38% が病理所見で区域・多発性の広がりを示した。乳腺
超音波、MRI と病理所見との一致率は高いとはいえず、不一致の主な理由は
画像で病変が検出されないことであった。今回の検討は比較的少人数の検討
ではあるが、純型粘液癌では乳腺超音波、MRI による広がり診断が困難な症
例があることが示唆された。
372
<目的>ダイナミック造影 MRI(DCE-MRI) で乳癌結節の血行動態解析を行う
ためには、高時間分解能での撮像が望ましいが、結節内部の造影形態や辺縁
性状を正確に評価するためには、至適造影タイミングと空間分解能の高い画
像が必要である。今回、異なる時間分解能の DCE-MRI で、乳癌結節内部の造
影形態や辺縁性状の評価を行った。<方法>手術で組織診断の得られた、長
径 30mm 以下の乳癌結節を有す 57 症例を対象に後方的画像評価を行った。
DCE MRI はシーメンス社性 3T-MR 装置を用い、両側冠状断で撮像が行われた。
31 例は時間分解能 10 秒 (Tem10) で、残る 26 例は時間分解能 30 秒 (Tem30)
で DCE-MRI を施行し、それぞれ造影後患側高分解能 3D-T1 強調像 (HR-T1)
をコントロール画像とし、直近撮像タイミングの DCE-MRI と腫瘍内部の造影
形態や辺縁性状を比較検討した。<結果> Tem10、Tem30 の両群間で、患者
年齢や腫瘍径に有意差は認められなかった (p=0.27,p=0.52)。Tem30 群で
は、HR-T1 では 26 例中 13 例で spicula もしくは irregular margin を、19 例
で 内 部 不 均 一 な 造 影 効 果 を 呈 し、DCE-MRI で は 11 例 で spicula も し く は
irregular margin を ( 感度 85%, 特異度 100%, 正診率 92%)、19 例で内部
不均一な造影効果が認められた ( 感度 95%, 特異度 100%, 正診率 96%)。一
方、Tem10 群 で は HR-T1 で は 31 例 中 22 例 に spicula も し く は irregular
margin が認められたが、DCE-MRI では同様の所見を呈したのは 8 例のみで
あった ( 感度 36%, 特異度 89%, 正診率 52%)。また HR-T1 では内部不均一
な造影効果が 28 例で認められたが、DCE-MRI では 13 例で認めたのみであっ
た ( 感度 46%, 特異度 100%, 正診率 52%)。<結論>乳癌結節内部の造影形
態や辺縁性状を評価する上で、時間分解能 30 秒の DCE-MRI は高い感度・特
異度を有し、至適造影タイミングで形態診断を行うためや Time intensity
curve 解析・動態解析で関心領域を設定する上で有用と思われる。
ポスター討議
DP-1-45-02
DP-1-45-03
1
1
3
3
3T MRI における PMView を用いた乳腺腫瘍の血流解析と病理
学的因子に関する検討 MRI における Linear distributed non-mass lesion の 2 亜
分類:その陽性的中率の違いについて
北海道大学病院 放射線診断科、2 北海道大学病院 診療支援部、
ジェイマックシステム、4 北海道大学病院 乳腺外科、
5
北海道大学大学院医学研究科 放射線医学分野、
6
北海道大学病院 病理診断科
亀田京橋クリニック 放射線科、2 亀田メディカルセンター 乳腺科、
東北大学病院 放射線診断科
町田 洋一 1、戸崎 光宏 1,2、嶋内 亜希子 1,3、吉田 民子 1
加藤 扶美 1、工藤 與亮 1、水戸 寿々子 2、森 祐生 3、海谷 佳孝 3、
山下 啓子 4、Jeff Wang5、細田 充主 4、菅野 宏美 6、山本 貢 4、三村 理恵 1、
薮崎 哲史 1、坂本 圭太 1、真鍋 徳子 1、白土 博樹 5
DP-1-45-04
DP-1-45-05
新 WHO 分類による carcinoma with medullary features;
画像 - 病理所見の検討
浸潤性微小乳頭癌症例における画像所見の特徴の検討
1
1
名古屋大学医学系研究科 臓器病態診断学講座、
名古屋医療センター 病理診断科、3 名古屋医療センター 外科、
4
名古屋医療センター 放射線科、5 東名古屋病院 乳腺外科
聖隷浜松病院 乳腺科、2 聖隷浜松病院 病理診断科
諏訪 香 1、吉田 雅行 1、大月 寛郎 2、新井 義文 2、小林 寛 2
2
村木 愛 1、市原 周 2、森谷 鈴子 2、長谷川 正規 2、岩越 朱里 2、
森田 孝子 3、佐藤 康幸 3、林 孝子 3、加藤 彩 3、須田 波子 3、大岩 幹直 4、
宇佐見 寿志 4、太田 康宣 4、遠藤 登喜子 5、中村 栄男 1
【目的】
2012年のWHO分類でtypical medullary carcinoma, atypical medullary
carcinoma, invasive carcinoma of no special typeの3つ を 含 むcarcinoma
with medullary featuresの新概念が提唱された.しかし,これまでの論文報告
は髄様癌の頻度が稀なために,症例数が少なく,髄様癌の定義として2003年の
WHO分類や他の定義が採用されており,また昨今の撮影装置の進歩もあり,
carcinoma with medullary featuresの画像的特徴を明らかにするためには今後
も更なる症例の蓄積検討が必要と考えられる.本研究では2012年のWHO分類
で定義されたcarcinoma with medullary featuresという新しい括りで,マンモ
グラフィー,超音波,MRIの3つの画像的特徴を,病理所見と照らし合わせて比
較検討し明らかにしたいと考えた.
【方法】2007年から2014年までに当施設で
経験したcarcinoma with medullary features8例を対象とした.8例のうち病
理所見と比較検討可能なマンモグラフィー,超音波,MRIがある症例はそれぞ
れ6例,4例,4例で,これらの画像的特徴と病理を比較し検討を行った.
【結果】
8例全てtriple negative.MRIで形状は分葉形,楕円形,不整形などを呈し,壊
死やのう胞変性がnon-enhanced spotとして描出された.TICパターンは
様々で,rim enhancementが見られた.超音波では後方エコーが増強し,
haloは見られず,前方境界線は保たれたものと断裂したものの両者があり,血
流も豊富な傾向があった.マンモグラフィーで石灰化が乏しい傾向があった.
【結
語】carcinoma with medullary featuresの画像的特徴をマンモグラフィー,超
音波,MRIについて病理と比較して検討した.今後更なる症例の蓄積検討が望
まれる.
【目的】浸潤性微小乳頭癌(以下 IMPC)はリンパ管侵襲が高度で腋窩リンパ節
転移を高率に伴う組織型とされている。当科の IMPC 症例でも 6 割以上が組織
学的リンパ節転移陽性であった。そこでこの癌の存在を画像所見から推察す
ることを目的に、IMPC の画像所見の特徴を当科の経験症例から検討した。【方
法】2001 年 1 月~ 2013 年 12 月の当科の乳癌手術症例 2176 例のうち IMPC
症例は 67 例(3.1%)あり、このうち画像所見の再評価が可能であった 61 症例
でその特徴を検討した。IMPC は浸潤性乳管癌や粘液癌に混在することも多い
ため、組織学的にこの癌が 70% 以上を占める症例(以下純型)22 例を中心に、
それ未満の症例(以下混合型)39 例とも比較検討した。【結果】超音波検査所見
では IMPC 61 症例のうち 47 例(77.0%)が腫瘤性病変であり、非腫瘤性病変
も 14 例(23.0%)あった。まず腫瘤性病変においては、最も多い形状は境界
明瞭かつ粗造な低エコー腫瘤であり、全体では 39 例(83.0%)にみられ、純
型では腫瘤性病変 17 例のうち 16 例(94.1%)がこの形状であった。この中に
充実腺管癌類似の楕円形腫瘤を呈するものが全体で 12 例(30.8%)あり、特
に純型では 7 例(41.4%)と多くみられたことに加え、腫瘤のエコー輝度がや
や高いものがあり組織学的には腺腔形成型の IMPC であった。境界部高エコー
像を伴うものは 4 例(8.5%)のみで、すべて混合型であった。また壁外浸潤を
伴う嚢胞内腫瘍の形状のものが 2 例(4.3%)みられていた。非腫瘤性病変にお
いては、乳管内成分主体で組織学的浸潤径が 1cm 未満のものが 5 例(35.7%)
あったが、他の浸潤径 1cm 以上の 9 症例では組織学的に全例が ly3 でありリ
ンパ節転移も陽性であった。マンモグラフィ所見では微小石灰化巣を伴う症
例が 26 例(42.6%)とやや多いことが特徴で、形状は多形性不均一が 17 例
(57.7%)と最も多く、微細線状分枝状は 4 例のみですべて混合型であった。
MRI 所見では施行されていた 50 症例全例で濃染病変として描出されており、
このうち早期濃染像がみられていたのは 46 例(92.0%)であった。【結語】
IMPC に特異的な画像所見は少なかったが、超音波検査で境界が比較的明瞭で
楕円形の低(または等)エコー腫瘤を呈することがあること、また非腫瘤性病
変のこともありそのうち浸潤径 1cm 以上のものはリンパ節転移が高率である
ことなどが特記すべき点であった。
373
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳腺ダイナミック MRI では、病変部に関心領域(ROI)を設定し、time
intensity curve(TIC)を用いた血流評価を行う。新たに開発されたアプリケー
ション PMView は、病変内の血流変化をカラーマップ化したもので、マップ
上でポイントした各ピクセルの TIC が瞬時に表示され、そのピクセルを中心
とする周囲 5 ピクセル分の ROI の TIC が得られる。PMView を用いた乳腺腫瘍
の血流解析結果を病理学的因子と比較し、その有用性を検討する。【方法】平
成 25 年 4 月から平成 26 年 3 月に 3T 装置にて乳腺ダイナミック MRI を撮像
し、その後手術にて病理診断の得られた 40 症例 40 病変(浸潤性乳管癌(IDC)
:
28、非浸潤性乳管癌(DCIS):9、良性:3)を対象とした。ダイナミック MRI
の画像データを PMView で表示し、病変内に ROI を設定した。尚、ROI は、
BI-RADS-MRI に準じ、より疑わしい部位(早期濃染の程度が強い / 洗い出し)
を探して設定した。TIC から各病変の initial phase(IP)と delayed phase(DP)
の信号変化率(%)とその BI-RADS-MRI に準じた分類(IP:slow / medium /
fast, DP:washout / plateau / persistent)を決定し、病理所見と比較した。
【結果】IP は全 40 病変中 39 病変(97.5%)で fast であり、信号変化率は IDC:
209.3 ± 43.2、DCIS:152.0 ± 46.7、 良 性:248.4 ± 46.8 で、DCIS と IDC
および DCIS と良性の間に有意差を認めた(いずれも p < 0.05)。DP は、IDC
や良性では washout が多く、plateau や persistent は DCIS で多くみられた
(washout / plateau / persistent:IDC = 26 / 2 / 0, DCIS = 4 / 3 / 2, 良
性= 3 / 0 / 0, p = 0.0109)が、信号変化率には有意差はなかった。IDC にお
いては、Ki-67 高値群(≧ 14% , n = 18)で DP の負の信号変化率が有意に大
きく(高値群:低値群= -24.1 ± 6.1:-15.7 ± 11.1, p = 0.0416)、IP の信号
変化率も大きい傾向であった(高値群:低値群= 218.6 ± 34.6:192.68 ±
53.5, p = 0.0615)。【結論】PMView を用いた血流解析は DCIS と IDC の鑑別
や、IDC における細胞増殖能の評価に有用な可能性がある。
【目的】Breast Imaging Reporting and Data System (BI-RADS) MRI にお
いて、linear distribution と分類される non-mass enhancement(NME) につ
いて 2 つの亜分類を提唱し、その陽性的中率 (PPV) の差について検討、報告
する。あわせて BI-RADS カテゴリー 3( 良性疑い、経過観察が推奨される ) と
判定されうる所見を明らかにする。
【方法】当施設において 2008 年 1 月から 2011 年 12 月の間において撮像され
た乳房 MRI9453 例の読影レポートについて review を行った。読影法は基本
的に BI-RADS MRI 第 1 版に従って行われ、linear distribution と分類された
NME のみ、枝分かれ構造を伴わないもの (linear subtype) と枝分かれ構造を
伴うもの (branching subtype) に分類するという変更を加えた。単変量の検
定についてはカイ二乗検定、Fischer 正確検定、t 検定を行い、単変量解析に
て有意差を認めたものについて、ロジスティック回帰分析により多変量解析
を 行 っ た。 ま た、 別 の 2 名 の 放 射 線 科 医 が、 解 析 に 該 当 す る 症 例 画 像 の
review を行い、最初の臨床読影と追加読影者の計 3 名の間での検者間変動を、
kappa 解析を用いて行った。
【成績】解析対象となった 156 例のうち、branching subtype の PPV(71/95;
74.7%, 95% confidence interval [CI]: 66.0-83.5%) は、linear
subtype(5/61; 8.2%, 95% CI:1.3-15.1%) と比較し優位に高かった。 (p
< 0.0001)。また、1cm 未満の linear subtype に分類された NME の PPV は
0.0%(0/30、95% CI: 0.0-0.0%) であった。多変量解析では、branching
subtype であることと 1cm 以上であることがそれぞれ悪性であることの独立
因子であった。( それぞれ p < 0.0001; odds radio [OR]: 21.6; 95% CI:
7.5-62.2、p = 0.015; OR: 5.8; CI: 1.4-24.0)。検者間変動については 3
名 中 い ず れ の 2 名 の 組 み 合 わ せ に お い て も substantial interobserver
agreement が得られた (kappa 値 :0.64 (95% CI、0.51-0.76)、0.70 (95%
CI、0.59-0.82)、0.64 (95% CI、0.51-0.76)。
【結論】Linear distribution を呈する NME のうち、枝分かれを伴うものは伴わ
ないものと比較して悪性の可能性が高い。また、特に、枝分かれを伴わない、
1cm 未満の NME は低い悪性的中率であり、BI-RADS カテゴリー 3 と判定で
き、経過観察が許容され、生検が省略できる。
ポスター討議
DP-1-46-01
DP-1-46-02
1
千葉大学大学院 医学研究院 臓器制御外科
Non-mass enhancement を示す乳房 MRI-detected lesion
検出における real-time virtual sonography の有用性
バーチャルソノグラフィを用いた乳癌術前化学療法後患者の病
変範囲の同定
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科、2 愛知医科大学 放射線科
中野 正吾 1、藤井 公人 1、高阪 絢子 1、塩見 有佳子 1、安藤 孝人 1、
手塚 理恵 1、後藤 真奈美 1、今井 常夫 1、石口 恒男 2
榊原 淳太、榊原 雅裕、長嶋 健、三階 貴史、藤本 浩司、藤咲 薫、
椎名 伸充、岩瀬 俊明、羽山 晶子、石神 恵美、宮崎 勝
一般セッション(ポスター討議)
背景:乳房 MRI は高い感度を示す一方、特異度は相対的に低い。このため初
回 MMG や US では同定できず MRI ではじめて検出される病変(MRI-detected
lesion)を認めた場合、second-look US を施行し、US ガイド下生検による組
織学的評価が必要となる。一般に MRI は腹臥位、US は仰臥位で施行されるた
め、乳房下垂の強い症例においては病変の変位も大きく、正確な対比が困難
なことも少なくない。特に造影病変が non-mass enhancement を示す場合、
周囲との境界が不明瞭な場合も多く、second-look US での病変の検出におい
て術者の技量や装置の性能に左右される。近年、磁気ナビゲーションを用い
て US と MRI の 画 像 情 報 を 同 期 す る こ と が で き る Real-time virtual
sonography (RVS) が開発された。今回、non-mass enhancement を示す
MRI-detected lesion の検出における RVS の有用性について検討した。対象
と方法:2010 年~ 2013 年において当科で施行した乳房 prone MRI (1.5T)
のうち、non-mass enhancement を示す MRI-detected lesion 5 例(平均年
齢 56.6 歳)
を対象とした。
通常の US にての second-look US で検出困難であっ
た MRI-detected lesion に 対 し、 体 表 コ イ ル を 使 用 し た 乳 房 supine
MRI(1.5T) を新たに追加し、RVS を併用した second-look US を施行した。
結果:5 例中、2 例(40%)は通常の US にての second-look US にて病変の検
出を行うことが可能であった。通常の US にて検出困難であった 3 例 (60%)
に対し RVS を併用した second-look US を行ったところ、3 例とも US 下に病
変を検出でき、組織生検を行うことが可能であった。2 例は DCIS, 1 例は乳腺
症 の 診 断 で あ っ た。 結 語:non-mass enhancement を 示 す MRI-detected
lesion の 多 く は 通 常 の US に よ る second-look US で 検 出 可 能 で あ る が、
second-look US で検出できない病変においても悪性病変は存在し、これらの
病変の検出において RVS が有用であった。
進行性乳癌に対する術前化学療法は標準治療となり、腫瘍の縮小効果を用い
た乳房温存手術が行われてきた。他方で、腫瘍の縮小に伴い病変の不顕化に
よる断端陽性も報告されており、化学療法前の腫瘍占拠範囲を切除範囲とし
て考慮することが多い。しかし、その化学療法前の病変占拠範囲を記憶再現
する方法は容易ではない。現在、組織生検時の腫瘍内への metalic clip の留置
法が推薦されており、また従来からの腫瘍存在部位の皮膚内へのマーキング
が併用されることが多い。当科では仰臥位 MRI による病変範囲の同定記憶お
よび術前の投影による再現法を考案し、実践してきた。今回、新しいアプロー
チ法として、術前マーキングへの汎用性の高い超音波への応用を目的として、
Real-time Virtual Sonography を用いた病変範囲の再現法 ( 以下 RVS 法 ) を
新規に考案し、現在パイロットスタディとして術前化学療法後の患者の乳房
温存手術に応用している。今回は RVS 法を用いた化学療法前の腫瘍占拠範囲
の再現能とそれを応用した乳房温存手術の成績を報告する。【患者方法】2014
年 2 月~ 7 月に当科にて術前化学療法を施行した進行性乳癌 6 例を対象とし
た。すべての症例で化学療法前に超音波にて病変範囲の volume data を取得
記憶した。そして術前に、記憶した病変範囲をバーチャルソノグラフィを用
いて同一モニター上に並列表示して化学療法後の病変に同期させ、化学療法
前の病変範囲を化学療法後の乳房内に再現した。6 例中 2 例は RVS 法により乳
房温存手術を施行した。病変部位同定の際の補正には乳腺、脂肪、靭帯、血管、
肋骨などの解剖学的成分を使用した。
【結果】6 例中、Complete response2 例、
Partial response3 例、Stable disease1 例であり、RVS 法によりすべての症
例で病変部位を同定し得た。乳房温存手術施行の 2 例では断端陰性であった。
【結論】乳癌術前化学療法患者における化学療法前の病変範囲の化学療法後の
乳房内への再現法として、RVS 法は操作性と汎用性に優れ、クリップ留置に
比して侵襲が少なく、これらの患者に対する乳房温存手術への臨床応用が期
待された。
DP-1-46-03
DP-1-46-04
1
1
乳癌の光学的特徴の臨床病理学因子検討
-”光”でも小病変や非浸潤癌はわかるのか?-
近赤外光と超音波の同時測定による乳がん病変の化学療法にお
ける変化の検討
浜松医科大学 乳腺外科、2 浜松医科大学 放射線科
2
小倉 廣之 1、芳澤 暢子 2、細川 優子 1、松沼 亮一 1、杤久保 順平 1、
井手 佳美 1、椎谷 紀彦 1、那須 初子 2、阪原 晴海 2
3
浜松医科大学 医学部附属病院 放射線科、
浜松ホトニクス(株)中央研究所 第七研究室、
浜松医科大学 附属病院 乳腺外科
芳澤 暢子 1、上田 之雄 2、大前 悦子 2、佳元 健治 2、三村 徹也 2、
【 目 的 】我 々 は、 乳 癌 組 織 の 光 学 的 特 徴 に つ い て 検 討 し、 波 長
那須 初子 1、松沼 亮一 3、井手 佳美 3、細川 優子 3、栃久保 順平 3、
758nm,795nm,833nm のいずれにおいても腫瘍直上部の吸収係数(1/cm)
小倉 廣之 3、阪原 晴海 1
は、対側健常領域と比較して有意に高く、一方散乱係数は、両者の間に統計
学的に有意な差は認められないことを報告した。また、腫瘍直上部の総ヘモ
【 目 的 】近 赤 外 光 を 用 い た 組 織 代 謝 の 評 価 可 能 な 時 間 分 解 分 光 法(timeグロビン濃度(tHb、μ M)は、対側健常部と比較して有意に高く、組織酸素飽
resolved spectroscopy, TRS)のプローブと、超音波(US)プローブを組み合
和度 SO2 は、両群で有意な差は認められなかった。今回、年齢、腫瘍径、組
わせた機能情報と組織構造を同時に計測評価可能なプローブを用い、化学療
織型別に光学的特徴について検討したので報告する。【対象、方法】2007 年1
法による正常乳腺および乳がん病変の光学特性の変化を比較検討する。
【対象】
月から 2013 年 11 月までに当院で加療された原発性乳癌症例のうち、波長
2014 年 5 月から当院乳腺外科を受診し、
化学療法を行われた患者 6 人。
【方法】
758nm,795nm,833nm のパルス光を生体内に照射し、伝播した時の時間応
TRS-20SH(浜松ホトニクス、光源―検出器間距離 =3cm)と US プローブ(日
答特性を測定し、光拡散方程式で解析することにより組織の吸収係数(μ a、
立 EUB-7500、EUP-L65)を直交するよう配置したプローブを用いて、乳癌
1/cm)、換算散乱係数(μ s’ 、1/cm)、組織酸素飽和度(SO2、%)
、及び総ヘ
の病変部および対側乳房の同一部位を、光学係数と US 画像を同時に測定、記
モグロビン濃度(tHb、μ M)を計測できた 152 例。年齢(40 歳以下、41-50 歳、
録した。光学係数から計算される総ヘモグロビン濃度(tHb)等と、US 画像か
51-60 歳、61 歳 以 上、 に 分 類 )、 腫 瘍 径(10mm 以 下、11-20mm、21ら得られるプローブ胸壁間距離、病変の場合深さ、腫瘍径等について、化学
50mm、51mm 以上、に分類)、組織型(非浸潤癌、浸潤性乳管癌、特殊型、
療法前、化学療法 1 クール後、2クール後の3回測定を行った。プローブ胸壁
に分類)との関連について検討した。【結果】40 歳以下の若年者(n=15)では、
間距離を横軸、t Hb を縦軸として作成したこれまでの研究で得られている正
腫瘍直上部と対側健常領域との比較ではいずれの光学係数も統計学的に有意
常乳腺の標準曲線と、今回の症例における各測定値の差をδt Hb として検討
な 差 は 認 め ら れ な か っ た。( 吸 収 係 数 795nm;p=0.11、 散 乱 係 数 した。【結果】治療前の健側乳房ではt Hb は標準曲線に近接した部位にプロッ
795nm:0.47、tHb:0.11、SO2:p=0.54)。41 歳以上では、腫瘍直上の
トされた。正常乳腺のδt Hb は、治療前後で有意差はなかった。腫瘍は、治
吸収係数と tHb は有意に高く、散乱係数と SO 2は差は認められなかった。腫
療前では全例が標準曲線より上位にプロットされた。腫瘍径は治療により低
瘍径での検討では、10mm 以下の病変(n=17)であっても、吸収係数は有意
下傾向であるが有意差はなく、腫瘍のδt Hb は治療により有意に低下した。
【結
に高く(p=0.04)、また tHb も高い傾向が認められた(p=0.06)。組織型別では、
語】TRS と US での同時測定により、化学療法による乳がん病変の血液量低下
非浸潤癌(n=16)において、吸収係数、tHb 共に統計学的に有意に高かった(吸
を捉えることが可能と考えられ、化学療法の効果判定に有効な手段となる可
収係数:p < 0.01、tHb:p=0.013)。浸潤性乳管癌(n=117)では、腫瘍直
能性がある。
上の吸収係数と tHb は有意に高く、散乱係数と SO 2は差は認められなかった。
【まとめ】10mm 以下の小病変や非浸潤癌であっても、対側健常部との比較検
討では、腫瘍の光学的特徴を確認することができた。
374
ポスター討議
DP-1-46-05
DP-1-47-01
1
1
3
3
リアルタイムマイクロ波マンモグラフィの開発と乳癌組織 3 次
元映像化の研究
乳房 MRI 偶発造影病変に対する Real-time virtual
sonography(RVS) ガイド下マンモトーム生検の成績
兵庫県立がんセンター乳腺外科、2 神戸大学大学院理学研究科、
兵庫県立がんセンター 放射線診断科、
4
兵庫県立がんセンター 病理診断科、
5
インテグラルジェオメトリインスツルメンツ
1
2
1
1
静岡がんセンター生理検査科・乳腺画像診断科、2 静岡がんセンター乳腺外科、
静岡がんセンター女性内科、4 静岡がんセンター乳がん集学治療科、
5
静岡がんセンター病理診断科
3
高尾 信太郎 、木村 建次郎 、三木 万由子 、広利 浩一 、橋本 知久 、
佐久間 淑子 4、木村 憲明 5
背景目的:乳房 MRI の乳腺病変に対する感度は非常に高いが、その特異度が
中等度であるために術式および治療方針決定のために乳房 MRI 偶発造影病変
に対する組織採取は必須であり、乳房 MRI ガイド下生検が有用と言われてい
る。近年、Real-time virtual sonography (RVS) 技術を使用することにより、
乳房 MRI 偶発造影病変を描出することが可能であることが証明されている。
今回、われわれは乳房 MRI 偶発造影病変に対する RVS ガイド下マンモトーム
生検の成績について報告する。方法:非触知でマンモグラフィ、セカンドルッ
クエコーで描出不可能かつ乳房 MRI のみで検出された病変に対して、仰臥位
体位で再撮像した乳房 MRI 画像データと同期させて RVS ガイド下マンモトー
ム生検を施行した。病理診断結果をもとに悪性病変は手術を施行し、良性病
変と病理診断された症例は画像病理の不一致および生検手技後乳房 MRI 画像
で生検部位の適切性を判定して経過観察か再度生検かを判断した。結果:乳
房 MRI 偶発造影 78 病変 70 症例に対してセカンドルックエコーを施行して、
50 病変 (64%: 22 悪性病変、28 良性病変 ) がセカンドルックエコーで描出可
能であり、通常の US ガイド下針生検を施行できた。残りの 28 病変 (36%) は
RVS ガイド下マンモトーム生検を計画したが、4 病変は再撮像仰臥位乳房 MRI
にてターゲット病変が消退していたので乳房 MRI 診断の偽陽性と判定した。
残りの 24 病変に対して RVS ガイド下マンモトーム生検を施行して、全て病理
組織診断を得た (7 悪性病変、17 良性病変 )。乳房 MRI 偶発造影病変の真陽性
74 病変は乳房 MRI ガイド下生検を使用することなく、RVS を施行することで
全例エコーにて描出され、US ガイド下生検が可能であった。RVS ガイド下マ
ンモトーム生検の乳癌陽性率は 29% であった。良性病変に対しては生検手技
後乳房 MRI 画像で全例生検部位が的確であることを確認して経過観察とした。
手技に伴う有害事象は認めなかった。結論:乳房 MRI 偶発造影病変に対する
RVS ガイド下マンモトーム生検は安全で正確であり、乳房 MRI ガイド下生検
の適応症例に有効と考えられる。
DP-1-47-02
DP-1-47-03
1
1
2
2
Extensive intraductal component の術前評価:MRI と
CNB の併用
ステレオガイド下吸引式針生検 ( 以下 S-VAB) で石灰化を確実
に採取するための手技の工夫
順天堂大学 医学部附属 練馬病院 放射線科、
順天堂大学 医学部附属 練馬病院 病理診断科、
3
順天堂大学 医学部附属 練馬病院 乳腺外科、
4
順天堂大学 医学部附属 順天堂医院 放射線科
医療法人財団 博愛会 博愛会病院 放射線科、
医療法人財団 博愛会 博愛会病院 乳腺外科、
医療法人財団 博愛会 ウェルネス天神クリニック、
4
医療法人財団 博愛会 人間ドックセンターウェルネス 、
5
福岡大学病院 放射線科、6 糸島医師会病院 乳腺外科
3
天野 真紀 1、小倉 加奈子 2、尾埼 裕 1、渡邊 美玲 1、稲葉 玲子 1、
北畠 俊顕 3、小坂 泰二郎 3、児島 邦明 3、桑鶴 良平 4
【 背 景 】浸 潤 性 乳 癌 の 乳 房 温 存 療 法 に お い て 広 範 な DCIS 成 分、 す な わ ち
extensive intraductal component(EIC)は局所再発のリスク因子であり、そ
の存在診断は重要である。
【目的】改訂された BI-RADS(Breast Imaging Reporting and Data System)
MRI 第2版および core needle biopsy(CNB)の浸潤性乳癌に伴う EIC の検
出能を評価する。
【対象】MRI で MASS を呈し、CNB および手術が施行された浸潤性乳癌女性
50例(平均59.5歳)。
【方法】1. BI-RADS MRI に基づき、MASS を呈する浸潤癌に随伴する NONMASS ENHANCEMENT の分布と内部造影パターンを表記した。EIC を疑う程
度を、カテゴリー0(評価不能)、1(陰性)、4(a : 低い疑い、b;中間、c :
やや高い疑い)、5(高い疑い)の6段階に、分布と内部造影パターンの組み合
わせから判定した。2.CNB 標本内の DCIS 成分の有無および摘出標本の EIC
の有無を病理学的に判定した。3.MRI 単独、CNB 単独、MRI と CNB の併用
における EIC の有無を、摘出標本の EIC の有無と対比し関連性を検討し(χ二
乗、Fisher)、感度や特異度を算出した。
【結果】1.MRI における EIC の評価は、カテゴリー0-0例、1-28例、
4a-2例、4b-7例、4c-3例、5-10例であった。2. CNB での
DCIS 成分は陽性16例、陰性34例、摘出標本での EIC は陽性24例、陰性
26例であった。3.MRI 所見を陰性(カテゴリー1および4a)と陽性(4
b~5)の2群に分けた。摘出標本の EIC を基準とすると、MRI の EIC 検出は
p<0.01、感度70.8%、特異度88.5%、CNB の DCIS 成分はp=0.
27、感度41.7%、特異度76.9%であった。MRI または CNB の陽性所
見で検討するとp<0.01、感度75.0%、特異度65.4%であった。
【結論】1.BI-RADS MRI 第 2 版を用いた EIC の評価は摘出標本の EIC を良好
に反映していた。2.CNB での DCIS 成分の有無は、摘出標本の EIC の有無と
関連しなかった。3. MRI 診断に CNB での DCIS 成分の評価を加味しても、
EIC の検出能は向上しなかった。
375
沓形 裕美 1、深水 康吉 2、森 寿治 3、稲田 一雄 2、渡邉 良二 6、
藤光 律子 5、槇 彰子 2、島倉 樹子 5、松永 紗代子 1、菅原 さくら 1、
松本 みなみ 4
( 背景 )S-VAB におけるポジショニングは病変の確実な採取において重要であ
る。S-VAB の適応となる病変には、カテゴリー 3( 以下 C-3) の石灰化が全体
の 87.5%を占め、形状は淡く不明瞭や微小円形、またそれらが混ざったもの、
分布は集簇性や区域性、またそれらが混ざったものとさまざまで、石灰化の
採取に難渋することも多い。これまで、石灰化を確実に採取するために、ポ
ジショニングの工夫、テスト撮影の有用性の報告をおこなってきた ( 第 19 回、
第 21 回、乳癌学会総会 )。今回、新たに経験した S-VAB の成績と当院で行っ
ている手技の工夫について報告する。( 対象 )、2005 年 3 月から 2014 年 2 月
までに S-VAB を施行した 800 例 (802 病変 ) を対象とした。当院では腹臥位式
ステレオ生検装置 (LORAD Multi Carte Platinum prone type) を使用してい
る。( 結果 ) ポジショニングと手技の工夫、またテスト撮影をおこなった石灰
化は 122 例 (15.3%) で、1) 非常に淡い石灰化は 46 例 2) ポジショニング困難
が予想される石灰化は 32 例 3) 薄い乳房の石灰化は 29 例4) 乳房が厚く、非常
に淡い石灰化は 15 例であった。石灰化の採取率は 100%であった。( まとめ )1)
非常に淡い石灰化の場合は、MMG で見えやすい方向からポジショニンをおこ
なう。2) ポジショニング困難が予想される石灰化の場合は、適切な体位の確
認 (through arm が必要か否か等 ) を行い、乳腺と乳腺以外 ( 血管等 ) の石灰
化の位置関係を確認する。3) 薄い乳房の場合は、Air gap 法を有用に使って対
応 ( 乳房に膨らみを持たせ乳房厚を確保する )。4) 乳房が厚く、石灰化が非常
に淡い場合は、Air gap 用のアクリル板を取り外す等の工夫で対応した。( 結語 )
S-VAB ではポジショニングが成否を左右するといっても過言ではない。どの
ような症例であっても安全で確実な生検が実施できるよう、技術の向上に努
めることが大切である。
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】近年、無痛、無被爆で高い癌識別能を有する次世代の乳癌スクリー
ニング技術として、マイクロ波マンモグラフィの研究開発が活発に行われて
いる。我々は、独自の画像構築理論によって、乳房内部の構造を、従来の数
千倍の速度で高速に映像化することができることを、ファントム実験、動物
実験で証明してきた。【目的】試作装置を用いて、ヒト乳房内部のマイクロ波
の伝搬特性を調査し、ヒト乳癌組織を映像化する。【対象】本試験に同意を得
た術前無治療で原発性乳癌手術予定患者【方法】乳房表面から内部に微弱なマ
イクロ波を照射し、反射波の特性を小型 UWB アンテナとネットワークアナラ
イザを用いて調べる。使用するマイクロ波の周波数は 50MHz ~ 12GHz、出
力は 0.05 μW以下で環境電磁波に比べ極めて微弱で人体に有害な影響が無い
電力とする。小型 UWB アンテナを乳房表面にて走査、データを取得する。測
定時間は1人当たり15分程度。受信
信号を用いて、乳房内部の構造を 3 次
元再構成する。【結果】図にリアルタ
イム - マイクロ波マンモグラフィによ
る癌組織の映像化結果を示す。本患者
は、年齢47才、X線マンモグラフィ
およびMRIでは画像診断が困難であ
り、超音波エコーのみで異常部が撮影
されている。図では、皮膚から10
mm程度の深さに15 mm強の癌組
織が映像化されている。また、数mm
の粒状のコントラストも確認される。
画像構築に要する計算時間は1秒で
あった。【考察】乳癌ファントムを用
いた基礎実験では1mm以下の構造の
映像化にも成功している。講演では、
十数例の患者の超音波エコーや X 線マ
ンモグラフィの結果と比較検討した結
果を紹介する。
植松 孝悦 1、高橋 かおる 2、西村 誠一郎 1、渡邉 純一郎 3、山崎 誠二 4、
杉野 隆 5、佐藤 睦 2、林 友美 2、菊谷 真理子 2
ポスター討議
DP-1-47-04
DP-1-47-05
大阪市大学大学院 腫瘍外科
札幌医科大学付属病院 放射線部
徳本 真央、野田 諭、石原 沙江、浅野 有香、田内 幸枝、森崎 崎実、
柏木 伸一郎、川尻 成美、高島 勉、小野田 尚佳、平川 弘聖
杉本 晴美
針生検による DCIS の診断と手術検体での組織診断の不一致
マンモグラフィにおける石灰化病変位置の検討
一般セッション(ポスター討議)
【序言】針生検による病理診断は乳癌の治療方針決定に必須である。しかし、
針生検は病変の一部による診断であるため、手術標本の組織型と一致しない
ことがしばしば経験される。針生検で非浸潤性乳管癌 (DCIS) と診断されてい
ても約 25% で手術検体にて浸潤性乳管癌 (IDC) と診断されることが報告され
ている。そこで、針生検で DCIS と診断された症例において手術検体との不一
致の可能性がある症例を推定することを目的とした。【対象と方法】2006 年か
ら 2013 年の乳癌症例のうち針生検で DCIS と診断された 86 例を対象とし、
手術検体で IDC と診断された群(不一致群)
、手術検体でも DCIS と診断され
た群(一致群)に分け臨床病理学的因子を後方視的に比較検討した。
【結果】不
一致群は 37 例 (43%)、一致群は 49 例 (57%) で、年齢・閉経状況・腫瘍径・
ER/HER2 発 現 に 差 は 認 め な か っ た。 発 見 契 機 は 不 一 致 群 で 有 症 状 23 例
(62%)、無症状 14 例 (38%)、一致群でそれぞれ 25 例 (51%)、23 例 (47%)
で症状発見の割合は不一致群の方が多かったが有意差は認めなかった。MMG
所見は不一致群で石灰化 15 例 (52%)、腫瘤 /FAD 7 例 (24%)、構築の乱れ 1
例 (3%)、 所 見 な し 6 例 (21%) で、 一 致 群 は そ れ ぞ れ 12 例 (32%)、21 例
(57%)、1 例 (3%)、3 例 (8%) であった。一致群で腫瘤 /FAD を、不一致群で
石灰化を認めることが多い傾向にあった。石灰化の形態では不一致群で不明
瞭な石灰化が多く、一致群で多形石灰化が多かったが、石灰化の分布には差
を認めなかった。造影 MRI 所見は不一致群で non-mass enhancement(NME)
11 例 (44%)、mass enhancement(ME) 9 例 (36%)、腫瘤に線状影を伴うも
の 5 例 (20%)、一致群で NME15 例 (44%)、ME16 例 (47%)、造影域なし 3
例 (9%) であり、不一致群で腫瘤に線状影を伴うものが有意に多かった。
【考察】
針生検の診断が DCIS の症例のうち MRI で線状影を伴う腫瘤や MMG で不明瞭
な石灰化を認めるものでは手術検体との不一致を示す可能性がある。このよ
うな症例では生検時に浸潤部が採取されていない可能性を考慮したイン
フォームドコンセントや治療方針の決定をする必要がある。
【背景・目的】第 21 回乳癌学会総会においてステレオガイド下マンモトーム生
検のポジショニングを,MLO および CC 画像から作図するプランニング方法
(作図法)の有用性について報告した.今回われわれは,本法をアプリケーショ
ン化するにあたり石灰化病変の位置について検討した.【方法】マンモグラ
フィ・ポジショニングトレーニング用ファントムであるトーラスト・ファン
トムに模擬試料を複数個埋め込み 0°~ 90°まで 10 度ずつ角度を変えマンモグ
ラフィ撮影を行い,ファントム内の模擬試料の位置を計測した.また CT を用
いトーラスト・ファントムを撮影した.トーラスト・ファントム内の模擬試
料の位置について,マンモグラフィと CT 画像の比較検討を行った.さらにア
プリケーションを用いて石灰化病変の位置を同定した患者 20 例(平均年齢
51.0 歳)について検討を行った.【結果】CT 画像と比較すると、乳頭からの垂
線に近い模擬試料ほどマンモグラフィ撮影の角度変化による変動が少なかっ
た.臨床画像においては石灰化病変が乳頭からの垂線より 3cm を越えて離れ
ると MLO,CC 画像の乳頭からの垂線方向の距離がばらつき始めた 【
. 結論】作図
法を用いて乳房内の石灰化病変の位置を求めるときは,皮膚に近く乳頭から
の垂線より離れるほど奥行きは過小評価される.しかしそのばらつきは 1.5cm
以内に収まっており,マンモトームの生検可能範囲に十分収まる値であると
思われる.
DP-1-48-01
DP-1-48-02
ステレオガイド下吸引式乳房組織生検が施行された非触知石灰
化病変の長期経過
当科における MRI ガイド下 VAB の臨床経験
大阪大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科
1
がん研究会 がん研究所 病理部、2 がん研有明病院 病理部、
3
がん研有明病院 乳腺センター 外科、4 がん研有明病院 画像診断部
米倉 利香 1,3、堀井 理絵 1,2、山崎 希恵子 1、井上 寛章 1,3、神尾 英則 1、
國分 優美 4、五味 直哉 4、岩瀬 拓士 3、秋山 太 1,2
(背景)非触知石灰化病変にステレオガイド下吸引式乳房組織生検(sVAB)を
行う機会が増えた。これらの病変には良悪の鑑別が難しい例が少なからず存
在し、その取り扱いに悩むことも多い。
(目的)sVAB で乳癌と判定されなかった非触知石灰化病変の経過観察方法を構
築することを目的に検討を行った。
(対象と方法)2006-2007 年に当院で sVAB が施行された非触知石灰化 615 病
変を電子カルテ情報をもとに後方視的に検討した。患者の平均年齢は 49.3 才、
観察期間の中央値は 6.3 年。sVAB の針生検判定区分の内訳は、正常あるいは
良性:372 病変(60.5%)、鑑別困難:40 病変(6.5%)、悪性の疑い:1 病変
(0.2%)、悪性:202 病変(32.8%)。
(結果)
(1) 正常あるいは良性 372 病変のうち、12 病変(3.2%)で生検部位の再組織
診が行われ、4 病変(1.1%)が乳癌と診断された(乳癌診断までの期間中央値:
4.4 年、807-2973 日)。再組織診の契機は、石灰化増加が 3 病変、超音波検
査(US)異常が 8 病変、乳頭部びらんの出現が 1 病変であった。最終的に乳癌
と診断された 4 病変は、全て腫瘤や低エコー域などの新たな US 異常が出現し
ていた。MMG は、カテゴリー(C)3 の 3 病変は所見に変化なく、C4 の 1 病変
は腫瘤が出現し C5 となった。MRI 検査(MRI)では全て病変部に造影効果が認
められた。
(2) 鑑別困難 40 病変のうち、17 病変(42.5%)で再組織診が行われ、10 病変
(25%)が乳癌と診断された(乳癌診断までの期間中央値:120 日、40-1651
日)。再組織診の契機は、病理診断で構成細胞の異型がやや強い場合、画像診
断でより強く乳癌が疑われた場合(MMG で C5、US で病変部に低エコー域あ
り、MRI で造影効果あり)、石灰化増加が疑われた場合など多様であった。最
終的に乳癌と診断された 10 病変の MMG は C3:8 病変、C4:1 病変、C5:1
病変で、US は病変部に異常所見あり:5 病変、なし:5 病変であった。MRI
では 7 病変で造影効果が認められた。
(3) 悪性が疑われた 1 病変は、引き続き外科的生検が施行され、乳癌と診断さ
れた。この病変は MMG で C5 と判定されたが、US と MRI では病変を指摘でき
なかった。
(4) 悪性 202 病変のうち当院で手術が施行された 168 病変の最終診断は全て
乳癌であった。
(結語)sVAB で悪性と判定されなかった病変のうち、正常あるいは良性病変の
US や MMG で乳癌を疑う所見が新たに出現した場合、鑑別困難病変の MRI で
病変部に一致した造影効果が見られた場合は、再度のアプローチを検討すべ
きである。
376
道下 新太郎、金 昇晋、加々良 尚文、下田 雅史、直居 靖人、下村 淳、
島津 研三、野口 眞三郎
乳房造影 MRI 検査は、乳癌の描出に高い感度を有しているが特異度は低い。
それゆえ鑑別が必要な副病変が高率に見つかる。欧米では、そのような病変
に対しては MRI ガイド下 VAB が標準検査法になっているが、本邦では保険適
応はなく、現在 second look US で対応している。しかし、MRI 検査でしか同
定できない病変も多く、MRI 検査をする限り MRI ガイド下 VAB は必須の検査
である。当院では 2013 年 10 月から MRI ガイド下 VAB を導入したので、その
臨床経験を報告する。【方法】対象は 2013 年 10 月から 2014 年 12 月までに乳
房 MRI ガイド下 VAB を施行した 12 例(延べ 14 件:両側例が 1 例、フォロー
1年後に再施行例が 1 例)
。年齢:34 ~ 68 歳、平均 50.9 歳。 乳房造影 MRI
検 査 の 施 行 理 由 は、 乳 癌 術 前 評 価 8 件 (57.1%)、 血 性 乳 頭 分 泌 症 例 4 件
(28.6%)、MMG で FAD 例 1 件 (7.1%)、PET-CT で異常集積例 1 件 (7.1%) で
あった。VAB の方法は、当初は標的病変をマニュアルで 3 次元的に位置計測
を行い穿刺していたが、2014 年 8 月からは computer-aided diagnosis(CAD)
システム(DynaCAD)を用いている。【結果】全例で MRI ガイド下 VAB を施行
することができた。病理結果は、良性 11 件 (78.6%)、ADH 2 件(14.3%)、
乳癌 1 件 (7.1%) であった。この内、4 件(良性 1 件、ADH 2 件、乳癌 1 件)に
対して摘出生検 1 件、乳腺部分切除 2 件、皮下乳腺全摘出術 1 件を施行した。
3 件では生検診断と最終病理診断が一致したが、1例(生検診断:ADH)は、
最終診断が DCIS であった。検査時間は、マニュアル法(6 件)の平均 83.3 分
に対して、CAD システム(8 件)は 55.6 分であった。いずれの方法でも、治療
が必要な合併症は認めなかった。【結語】MRI ガイド下 VAB を 14 件施行し乳
癌を1件(7.8%)診断できた。また、DCIS 病変の1件は生検では ADH と過
小評価されていた。合併症は認めなかったが、検査時間が長くかかり高齢者
には負担であった。乳房 MRI ガイド下 VAB 用のプランニングツールと乳房専
用の 3D 解析ソフトで構成される CAD システムを利用することにより、簡便
に MRI ガイド下 VAB を施行することが可能で、検査時間も短く患者の負担を
軽減することができると考える。
ポスター討議
DP-1-48-03
DP-1-48-04
ステレオガイド下マンモトーム生検施行例からみた MMG 画像
の特徴-過剰な生検を回避するための指標の検討-
超音波所見別の細胞診及び針生検診断の有用性の検証
1
千葉労災病院 外科、2 千葉労災病院 病理科
笠川 隆玄 1、藤森 俊彦 1、石井 奈津美 1、尾崎 大介 2
川崎 あいか 1、田中 佳和子 1、土井 卓子 1、井上 謙一 1、荒井 学 1、
合田 杏子 1、長島 美貴 1、佐々木 毅 2、井上 俊夫 1
乳腺疾患の的確な診断には細胞診・針生検の特性の理解が必要と思われる。
当 院 で は 従 来 か ら の 穿 刺 吸 引 細 胞 診 (fine needle aspiration cytology ;
FNA)・コア針生検 (core needle biopsy ; CNB) に加え 2009 年より吸引式針
生検 (vacuum-assisted biopsy ; VAB) を導入し症例ごとに診断法を選択し
ている。今回当院での経験に基づき病変の超音波所見別に診断法の有用性を
検証した。対象は 2005 年 11 月から 2014 年 10 月に超音波ガイド下に検体採
取が行われ、最終的に針生検あるいは切除標本で組織診断が確認されている
1036 例とした。超音波所見は日本乳腺甲状腺超音波医学会編「乳房超音波診
断ガイドライン」に基づいて分類し、細胞診・針生検診断とも最終診断に一致
した「正常あるいは良性」または「悪性」と診断し得たものを「正診確定」と評価
した。超音波所見ごとに各診断法の正診確定率を FNA・CNB・VAB の順に示
すと、腫瘤性病変では、充実性腫瘤:60.9% (337 例 /553 例 )・98.1% (575
例 /586 例 )・100% (95 例 /95 例 )、混合性パターン:51.0% (25 例 /49 例 )・
87.2% (34 例 /39 例 )・91.7% (22 例 /24 例 )、嚢胞性パターン:0.0% (0 例
/7 例 )・66.7% (2 例 /3 例 )・100% (5 例 /5 例 )。非腫瘤性病変では乳管の異常:
44.7% (17 例 /38 例 )・90.0% (9 例 /10 例 )・93.3% (28 例 /30 例 )、乳腺内
の低エコー域:45.1% (78 例 /173 例 )・89.2% (116 例 /130 例 )・94.6% (70
例 /74 例 )、多発小嚢胞:44.4% (8 例 /18 例 )・77.8% (7 例 /9 例 )・83.3% (10
例 /12 例 )、構築の乱れ:60% (6 例 /10 例 )・100% (5 例 /5 例 )・100% (6
例 /6 例 ) の結果であり、全てのタイプで FNA < CNB < VAB と正診確定率が高
くなることが確認できた。以上より CNB 及び VAB の有用性が周知の通りであ
り、特に乳管内病変の存在を疑う非腫瘤性病変において VAB の優位性が確認
された。一方全 VAB 施行症例 246 例中 10 例 (4.1%) は VAB での正診確定に至
らなかった。その最終診断はいずれも乳管内中心の癌(非浸潤性乳管癌 :8 例・
乳管内成分優位の浸潤性乳管癌 :2 例)であり、このうち 5 例 (50%) は FNA で
悪性の診断を得ていた。このように VAB 及び CNB は非常に有用な診断法であ
るものの少数ながら限界となる症例も存在することが明らかとなった。乳腺
疾患の診断においては各診断法の特性を理解し画像診断及び細胞診を含めた
総合的判断を行うことが肝要であると思われた。
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター、
2
東京大学 医学部 大学院 医学系研究科 人体病理学・病理診断学分野
【目的】当院ではカテゴリー 3 以上の非触知石灰化病変のうち組織診断の適応
となる症例に対し、平成 21 年から 6 年間ステレオガイド下マンモトーム生検
(以下 STMMT 生検)を施行してきた。今回 STMMT 生検施行例から良悪性の石
灰化の特徴をマンモグラフィ(以下 MMG)におけるカテゴリー分類に加えて
新たな視点で見直し、過剰な生検を回避する指標を検討した。
【対象】H21 年 2 月から H26 年 8 月までに STMMT 生検を施行したカテゴリー
3 以上の非触知石灰化病変 579 例中石灰化と周囲乳腺組織を十分に採取でき
た症例で、良性例は 6 ヶ月以上経過観察し MMG 所見に変化を認めていない
224 例、悪性例は手術を施行し最終診断を得た 103 例(DCIS:70 例,浸潤癌:
33 例)を対象とした。【方法】石灰化所見を (1) カテゴリー(以下 C),(2) 輝度
差,(3) 大小のバラツキ(以下バラツキ),(4) 密度,(5) 背景乳腺の 5 項目に細
分類し、(1) は C3 を 1 点,C4 を 2 点,C5 を 3 点と、(2)(3) は輝度差やバラツ
キを認める場合を 1 点,(4) は密度が高い場合を 1 点,(5) は背景乳腺に濃度
上昇や構築の乱れを認める場合を 1 点とスコア化し、合計した点数から検討し
た。
【結果】良性例は、スコアが1点であった症例が 8%(17 例),2 点が 27%(60
例),3 点が 32%(72 例),4 点が 20%(44 例),5 点が 13%(30 例)であった。
スコアが 6 点であったのは 1 例、7 点であった症例は無かった。DCIS 例は、
スコア 2 点が 9%(6 例),3 点が 33%(23 例),4 点が 33%(23 例),5 点が
20%(14 例),6 点が 6%(4 例)で、スコアが 1 点又は 7 点であった症例は無
かった。浸潤癌例は、スコア 3 点が 21%(7 例),4 点が 24%(8 例),5 点が
27%(9 例),6 点が 21%(7 例),7 点が 6%(2 例)で、スコアが 1 点又は 2
点であった症例は無かった。2 点以下の症例は良性の可能性が極めて高く、悪
性であったとしても DCIS 例であった。3 点以上では浸潤癌の可能性が否定で
きない結果となった。【考察】石灰化所見をカテゴリーだけでなく輝度差やバ
ラツキなどを加えて細分類した結果、良悪性を鑑別する指標となり得た。簡
易的なスコア化は病変が悪性であるか否か、悪性であれば浸潤癌か否かの推
定に有用であり、外来医師の診療方針の選択に貢献できると思われた。
DP-1-48-05
DP-1-49-01
国立病院機構 長崎医療センター
生長会 府中病院
前田 茂人、崎村 千香、久芳 さやか、中島 一彰、伊東 正博
鄭 聖華、青松 直撥、平松 宗一郎、岩内 武彦、森本 純也、西居 孝文、
小坂 錦司
針生検と手術摘出組織における ER, PR, HER2 は一致するか?
再発乳癌における re-biopsy の有用性の検討
背景:乳癌針生検時の ER, PR, HER2 診断は、術前治療を決定する上で、また
手術後摘出組織での ER, PR, HER2 診断は、術後治療を決定する上で重要であ
る。針生検後は直ちにホルマリン固定可能であるが、手術摘出組織はホルマ
リン固定までに 1 ~ 2 時間を要する場合が多い。今回 ER, PR, HER2 の針生検
時診断と切除後診断での一致率を、非術前治療群:cont 群、術前化学療法群:
NAC 群、術前ホルモン療法群 :NAE 群に分け検討を行った。対象:2007 年 4
月より 2014 年 12 月までに切除を行った原発性乳癌 779 例中、針生検組織で
ER, PR, HER2 全てが判定可能であった 477 例(男女比= 3:474、平均年齢
57 歳)を対象とした。検討項目は、1) cont 群 (n=324) の針生検および手術
摘出組織での ER, PR, HER2 一致率。2) NAC 群 (n=121) の ER, PR, HER2 一
致率および変化率。3) NAE 群 (n=32) の ER, PR, HER2 の一致率および変化
率。結果:針生検時の ER 陽性率 80 %(381/477)(内訳 cont 群 87%(282/324),
NAC 群 55%(67/121), NAE 群 100%(32/32))、PR 陽性率 74% (351/477)(内
訳 cont 群 79%(258/324), NAC 群 52%(63/121), NAE 群 94%(30/32))、
HER3 陽 性 (3+ 以 上 )19.7% (94/477)( 内 訳 cont 群 14%(46/324), NAC 群
37%(45/121), NAE 群 9%(3/32)) で あ っ た。1) cont 群 で ER 陽 性 一 致 率 は
93%, ER 陰性一致率は 86%。PR 陽性一致率は 94%、PR 陰性一致率は 77%。
HER2 陽性 (3+ 以上 ) 一致率は 47%、HER2 陰性 (0,1,2) 一致率は 93%。HER2
陰性 (0,1,2) より HER2 陽性変更(以下 HER2 陽転)が 7% に認められた。Cont
群 ER 平均値は 72% であった。2) NAC 群の ER 陽性一致率は 81%。PR 陽性一
致率は 71%。NAC 群は cont 群と比較して ER 陽性率の低下が認められた。ER
平均値は 38% から 41% と同等であったが、PR 平均値は、30% から 21% へ低
下していた。HER2 陽性 (3+ 以上 ) 一致率は 56%、HER2 陽転が 8% に認めら
れた。3) NAE 群 32 例の ER 陽性一致率は 91%。PR 陽性一致率は 90%。NAE
群は cont 群と同等の陽性一致率であり、ホルモン治療後に ER, PR の変化は認
められなかった。まとめ:cont 群の結果より、針生検時 ER 陽性判定は 93%の
確からしさで切除標本 ER 陽性であり、術後ホルモン療法の説明資料となった。
NAC による ER および PR 発現率低下を考慮する必要がある。
【背景】近年、乳癌原発巣と転移巣間でのホルモンレセプターや Her2 といった
バイオマーカーの発現が変化することが報告されている。しかしながら再発
巣に関する re-biopsy の必要性や臨床的有用性に関しては一定の見解を得てい
ない。今回当院における再発乳癌において re-biopsy の現状を検討した。【対
象と方法】2004 年から 2014 年に当院で治療した再発乳癌患者のうち、rebiopsy を行い原発巣と再発巣の免疫組織染色の判定が可能であった 22 例を対
象とした。原発巣と再発巣における ER、PgR、Her2 の一致率を転移・再発部
位、再発時期にわけて比較検討した。また、変化があった群となかった群で
の OS についても検討した。【結果】初発時年齢中央値は 51.5 歳、再発までの
DFI 中央値は 50.5 か月、再発後の観察期間中央値は 47 か月であった。Rebiosy 部位は局所が 14 例、遠隔転移が 8 例であった。原発巣における ER 陽性
率は 72.7%、Her2 陽性率は 13.6%であった。全体での ER/PgR/Her2 一致率
は 72.7 % /77.3 % /81.3 % で あ っ た。 局 所 再 発 病 変 で は 85.7 % /78.6 %
/70.0%であったのに対し、遠隔再発病変では 62.5% /57.1% /100%であり、
遠隔再発病変にてホルモンレセプターの一致率が低い傾向にあった。また、
術後 5 年以上の再発での PgR 一致率が 92%であるのに対し、5 年未満の再発
では 40%と低かった。バイオマーカーに変化があった群となかった群で OS
に有意な差は認めなかったもの PgR 不一致症例で予後が悪い傾向にあった。
【考察】再発病変ではバイオマーカーが変化する可能性が少なからずあるため、
治療方針を再構築するために re-biopsy によるバイオマーカーの再検索が有用
であると考えられた。
377
一般セッション(ポスター討議)
1
ポスター討議
DP-1-49-02
DP-1-49-03
杏林大学 医学部 乳腺外科
1
上野 貴之、伊東 大樹、伊美 建太郎、宮本 快介、北村 真奈美、
井本 滋
石原 沙江 1、柏木 伸一郎 1、浅野 有香 1、倉田 研人 1、田内 幸枝 1、
徳本 真央 1、森崎 珠実 1、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、
小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
ER 陽性乳癌組織における ER 発現と Ki67 発現の腫瘍内
heterogeneity の解析
乳癌針生検検体と手術標本における生物学的バイオマーカーの
相違による治療効果予測の検討
一般セッション(ポスター討議)
ER 陽性原発性乳癌において Ki67 は予後や治療反応性と関連し、治療法選択に
おいてその重要性が増している。しかし、腫瘍内において Ki67 陽性細胞は数
パーセントから数十パーセントであり、必ずしも全ての細胞で発現している
わけではない。つまり、腫瘍内において Ki67 発現の不均一性が存在する。そ
こで ER 陽性乳癌組織を用い、個々の細胞レベルにおける ER 発現と Ki67 発現
を蛍光二重染色法により検出し、同一腫瘍内における Ki67 陽性細胞と陰性細
胞の違いを検討した。さらに、イメージアナライザーを用いて染色強度を半
定量化することにより、Ki67 発現と ER 発現や臨床病理学的因子との関連につ
き検討した。症例は Stage II ― III の ER 陽性乳癌 20 例で、1 つの腫瘍につき
500 個以上の癌細胞において、同一細胞内の ER 発現強度 ( 抗体:SP-1) と
Ki67 発 現 強 度 (MIB-1) を MetaMorph イ メ ー ジ ア ナ ラ イ ザ ー (Molecular
Devices Japan) を用いて解析した。まず、本解析における症例ごとの Ki67 陽
性率を通常の DAB 法と比較したところ、良好な相関を認めた(相関係数 0.93,
p < 0.0001、級内相関係数 [ICC]0.76)。次に、腫瘍内における Ki67 陽性細
胞と陰性細胞における ER 発現を調べたところ、Ki67 陽性細胞では有意に ER
発現が低くなっていた(14/20 例で p < 0.001)。さらに、Ki67 陰性細胞にお
いて、Ki67 発現強度と ER 発現強度の関連を調べると、二つの異なるパターン
をとることがわかった。つまり、Ki67 陰性細胞は目視では発現陰性であるが、
イメージアナライザーによる半定量を行うと、細胞の ER 強度の上昇に伴い
Ki67 強度も弱いながら増加し、両者が強い相関 (p < 0.0001) を示す症例が
80%(16/20) あった。一方、20%(4/20) の症例では ER 発現強度が上昇して
も Ki67 は一定で増加を示さなかった。これら 2 つのパターンを比較すると、
後者は全て Ki67 陽性率が低い腫瘍 (13.25% 未満 ) であり (p=0.043、カイ二
乗検定 )、グレードも低かった (75% がグレード 1) (p=0.005、カイ二乗検定 )。
以上より、ER 陽性乳癌組織において、Ki67 陽性細胞は ER 発現が低く、また
Ki67 陰性細胞でみると、ER 強度と Ki67 強度の関連により 2 つの症例群に分
かれることが分かった。特に Ki67 強度が ER 発現強度にかかわらず一定の群
は、分化度等の特性と関連していることが示唆された。今後症例数を増やし、
予後や治療効果、他の生物学的特性との関連を検討する予定である。
大阪市立大学大学院 腫瘍外科学、2 大阪市立大学大学院 診断病理学
【背景】乳癌の針生検検体と手術標本における生物学的バイオマーカーの相違
については,これまで多くの報告があり,固定状態の影響が考えられている.
一方で化学療法に伴うバイオマーカーの変化は,抗腫瘍効果を反映するとの
報告もある.今回われわれは,術前化学療法効果と生物学的バイオマーカー
変化との関係について検討した.【対象と方法】当施設にて 2013 年 1 月から
12 月 ま で に 手 術 施 行 し た 初 発 原 発 性 乳 癌 152 例 の う ち 術 前 化 学 療 法
(FEC100 followed by weekly paclitaxel) を行った症例は 24 例であった.
免疫組織化学的に ER, PR, HER2, Ki67 を確認した.それぞれのバイオマー
カー変化を定量的に評価し,奏効率との相関を解析した.また Ki67 index に
よる抗腫瘍効果の検討では,ROC 曲線にて AUC を算出し cut-off 値を設定し
た.【結果】全 152 例の手術前後の検体での一致率は,ER 86.5%, PR 71.1%,
HER2 88.0%, Ki67 69.6% であった.術前化学療法施行 24 例の抗腫瘍効果
は,pCR 4 例,PR 16 例,SD 4 例,PD 0 例であった.pCR 症例を除外した
化学療法前後の検体での一致率は,ER 85.0%,PR 60.0%,HER2 70.0%,
Ki67 60.0% と,化学療法非施行例に比して低かった.術前針生検標本で
Ki67 index 28.5% 以上のものは高い奏効率を示し (p=0.014),また手術後
の標本で Ki67 19.5% 以上の低下を認めた症例においても高い奏効率を示し
た (p=0.043).このいずれの条件も満たさない症例であっても部分奏効が得
られた症例のなかには,Luminal A から HER2 enriched に変化した症例も存
在した.【結語】化学療法前後では生物学的バイオマーカーの不一致が多かっ
た.さらに針生検標本で Ki67 index 28.5% 以上あるいは手術後の標本で
Ki67 19.5% 以上の低下を認めることで,治療効果が予測できる可能性が示唆
された.
DP-1-49-04
DP-1-50-01
1
1
乳癌原発巣とリンパ節転移巣の間での biomarker(molecular
subtype)の discordance がもたらす臨床的意義
捺印細胞診によるセンチネルリンパ節転移診断精度の検討,
AE1/AE3 抗体による免疫染色の併用効果と問題点
横浜南共済病院 乳腺外科、2 横浜南共済病院 病理診断科
3
加藤 直人 1、河野 尚美 2、吉岡 恵美 2、松村 真由美 1、高橋 咲 1、
松川 博史 1
【背景】乳癌は多様性に富む腫瘍細胞集団であり、その転移部位においては異
なる clones が発現していることも珍しくなく、molecular profile は腫瘍の進
行を通じて必ずしも安定していない。現在の治療戦略の立案はあくまでも原
発巣の biomarker profile に基づいて行っているが、metastatic cancer cell
の potential を持ち合わせている身近な lymph node に着目して、その臨床的
意義を考察する。【対象、方法】リンパ節転移を有し、原発巣と両方から組織
採取が可能であった 183 症例(術前化学療法例は除く)。それぞれ ER、PR、
HER2、Ki67 の発現につき IHC にて評価を行い、予後との関連性も調査した
(distant disease-free survival: DDFS)
。
【結果】ER 4.4%、PR 15%、HER2
1.6%、Ki67 20% に discordance を認めた。Subtype の変化は 183 症例中 47
例 (26%) に生じており、luminal A : 66 例から B へ 15 例(23%)
、luminal B:
69 例から A へ 25 例(36%)shift していた。他に luminal A から triple negative
へ、luminal B か ら luminal-HER2、HER2、triple negative へ、luminalHER2 から luminal B へそれぞれ 1 例ずつ shift がみられた。予後(DDFS)との
関連では、luminal type(A/B)において原発巣よりもリンパ節転移巣の profile
の方がより luminal A、B の差を明確に表現していた。また、luminal B では
lymph node における PR 発現低下、Ki67 上昇が予後不良の marker となって
いた。
【結語】原発巣とリンパ節転移巣の間においても profile の変化は生じ得
る。リンパ節転移巣との間で shift が起こった場合は、予後はリンパ節の
profile がより正確に表現している可能性がある。今後全身補助療法選択の際に
は一考に値する情報となり得るかもしれない。
東北公済病院 乳腺外科、2 東北公済病院 検査科病理、
川崎医科大学 病理学2、4 泉中央乳腺クリニック、5 東北大学病院 病理部
平川 久 1、長嶋 真紀 2、秋保 信彦 2、森谷 卓也 3、渡辺 みか 5、
笠島 敦子 5、甘利 正和 1、伊藤 正裕 1、深町 佳世子 1、佐伯 澄人 1、
木村 道夫 4、武田 元博 4
【目的】当院では病理医が非常勤であるなどの事情で,術中のセンチネルリン
パ節生検(SNB)時の迅速診断は捺印細胞診により行っているが、診断精度は
十分とは言えない。2013 年途中から上皮マーカー抗体による免疫染色を併用、
精度向上に努めているが、2010 年から 2014 年までの症例について当院にお
ける捺印細胞診診断の成績と問題点を検討した。【方法】SNB はインジゴカル
ミンによる色素法単独で行った。摘出後直ちに 2mm 全割,全切片を捺印して
パパニコロー染色を行った。捺印検体に対し 2013 年途中から AE1/AE3 によ
る IHC を他施設での方法に準拠し併用した。組織診断による転移判定は同一
切片の HE 染色標本により行い、AE1/AE3 による IHC により確認を行った。
一部 OSNA 法による判定を行ったが,今回の検討から除外した。【成績】2010
年 1 月から 2014 年 11 月までの対象 SNB 症例は 1641 例。組織診での転移症
例は 319 例であった。うち ITC のみの症例は 42 例であった。組織診転移陽性
例中の細胞診陽性(鑑別困難を含む)は 200/319 例 62.7% であったが,ITC
例を除くと,細胞診の感度は 69.3% であった。AE1/AE3 による IHC を併用
し手技が安定した 2014 年のみでみると、組織診で ITC を除く転移陽性 58 例
中,細胞診陽性は 46 例 79.3% で感度は 10% 程度上昇した。一方で,細胞診
陽性であるが組織診で転移を確認できない例は 15% で、IHC 非併用時よりも
増加傾向であった。IHC 追加による診断所要時間の増加は 5 分程度で許容範囲
であった。【結論】AE1/AE3 抗体による IHC 併用により捺印細胞診の感度は改
善され得る。しかし,組織で転移陰性、細胞診で陽性の症例が増加傾向にある。
これらが真に偽陽性例なのかについても今後の検討を要すると思われた。
378
ポスター討議
DP-1-50-02
DP-1-50-03
センチネルリンパ節検査における川本法の有用性
1
乳腺穿刺吸引細胞診の液状化検体における CK5/6 免疫染色の有
用性
新潟市民病院 病理診断科、2 新潟市民病院 乳腺外科
1
橋立 英樹 1、渋谷 宏行 1、三間 紘子 1、牧野 春彦 2、坂田 英子 2、
上原 拓明 2
坂本 真吾 1、本吉 知里 1、飛田 陽 1、川口 英俊 2、高石 治彦 1、
大城 由美 1
【背景】乳腺の穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology: FNAC)は低
侵襲で簡便ながら、良性・悪性の鑑別が困難な症例に遭遇することも多い。
一方、新しく広まりつつある液状化細胞診(liquid based cytology: LBC)で
は検体の保存が容易であり、免疫染色など詳細な追加検索を可能にするとい
う大きな利点がある。そこで乳腺 FNAC に LBC の手法を適用し、その実用性
を評価した。
【方法】まず、期間 A(従来の吹き付け法のみ:2012 年 4 ~ 11 月の 29 例)、期
間 B(従来法・LBC 併用:2012 年 11 月~ 2014 年 9 月の 57 例)、期間 C(LBC
のみ:2014 年 9 月以降の 11 例)において、検体不適(採取細胞量が過少)の割
合を比較した。次に、期間 B および C の LBC で、パパニコロウ染色標本に十
分細胞を認めた症例は CK5/6 免疫染色を追加し、良悪の鑑別における有用性
を検証した。
【結果】検体不適は期間 A:45%(13/29)、期間 B:32%(18/57)、期間 C:
18%(2/11)と、徐々に低下した。期間 B の 57 例中 LBC で免疫染色を施行し
えたのは 24 例で、従来法・LBC とも「良性」とした 14 例中 12 例が CK5/6 陽性、
2 例がアポクリン化生細胞のみで CK5/6 陰性となった。従来法で「不適」「鑑
別 困 難 」の 各 1 例 は、CK5/6 陽 性 を も っ て LBC で「 良 性 」と し た。 従 来 法・
LBC とも「鑑別困難」とした 2 例の LBC では、CK5/6 陽性~陰性の集塊が混在
していた。LBC で「悪性」とした 6 例は全て CK5/6 陰性であり、後の組織検体
でも全て悪性と診断された。期間 C の 11 例中免疫染色を実施できたのは 7 例
で、「良性」3 例(全て CK5/6 陽性)
・
「鑑別困難」1 例・
「悪性疑い」1 例・
「悪性」
2 例(共に CK5/6 陰性)であった。「鑑別困難」と「悪性疑い」の各 1 例は多くの
細胞集塊が CK5/6 陰性であったが、後の組織検体でそれぞれ線維腺腫・葉状
腫瘍と診断された。「悪性」のうち 1 例は組織診断も悪性で、もう 1 例は部分切
除予定である。
【まとめ】LBC 法は従来法より細胞の回収数が多く、集細胞性に優れていた。
CK5/6 免疫染色はアポクリン化生や線維腺腫・葉状腫瘍の一部で陰性となる
点に注意を要するが、基本的には悪性腫瘍で陰性(感度:8/8=100%)、良性
病変で陽性(特異度:17/21=81%)となった。特に、異型が弱いため「悪性」
と断定できない症例での有用性が高い。FNAC における LBC は、採取細胞量・
CK5/6 免疫染色の両面で診断精度向上に寄与できると考える。
DP-1-50-04
DP-1-50-05
1
大阪ブレストクリニック 医療技術部、
2
大阪ブレストクリニック 乳腺外科、3 関西電力病院 病理部
1
米川 みな子 1、藤田 倫子 2、松ノ木 愛香 2、小池 健太 2、井口 千景 2、
山本 仁 2、芝 英一 2、河合 潤 3
西前 綾香 1、中野 芳明 1、西 敏夫 1、矢竹 秀稔 2、沢井 ユカ 2、山崎 大 3、
梅本 郁奈子 4、稲治 英生 1
【はじめに】針生検やマンモトームによる検査が普及し、画像上、悪性と判定
された病変に対しては、サブタイプ検索もあり、FNA(穿刺吸引細胞診)が省
略されることも多くなってきている。一方、悪性の除外診断や、娘結節の確認、
術前のリンパ節への転移の有無などは、FNA が欠かせない検査法になってい
る。そこで当院におけるそれらの現状についての検討を行った。【対象】2014
年 1 月~ 11 月までに乳癌で手術した 330 例【結果】330 例の内訳は DCIS が
65 例、浸潤癌が 265 例で、DCIS 病変に対しては超音波で病変が指摘できな
かった石灰化病変をステレオガイド下マンモトーム生検したものと、他院で
の生検で診断がついたものを除く 45 例すべて FNA が行われた。浸潤癌に対し
ては 168 例(63%)のみ FNA が先行した。娘結節の確認は、41 例について行
われ、悪性が 19 例、鑑別困難が 1 例、正常あるいは良性が 13 例、判定不可が
8 例で、19 例の内訳は乳管内病変が 5 例で浸潤癌が 14 例であった。大きさは
5 mm以下が 9 例、6 ~ 10 mmが 20 例で、超音波判定はカテゴリー 3b 以下
が 33 例で 80%を占めた。対側セカンドルックで指摘された病変 15 例に対し
ての FNA の判定は悪性が 4 例、悪性疑いが 1 例、正常あるいは良性が 10 例で、
推定組織型は DCIS が 3 例、浸潤癌が 2 例であった。リンパ節への転移の有無
については、超音波所見で否定できない、あるいは疑いの 58 例に施行された。
結 果 は positive が 27 例、negative が 24 例、 検 体 不 適 正 が 11 例 で あ っ た。
Negative24 例のうち、センチネルリンパ節が positive であったのが 6 例あっ
た。【まとめ】主腫瘤については、DCIS 病変は超音波で病変が指摘されれば、
すべて FNA が先行した。浸潤癌では小さな病変や超音波所見がカテゴリー 3b
以下に対しては FNA が先行し、その他では主治医の考え方等に依存している
と思われた。娘結節の確認、およびセカンドルック病変については、悪性 23
例のうち超音波所見が、カテゴリー 3b 以下が 13 例(57%)あった。リンパ節
の転移検索については、false negative が 6 例あったが、転移巣の大きさが、
1 mm以下が 3 例、3 mmが 1 例、6 mmが 1 例で、穿刺時、針が当たらなかっ
たと思われる。以上 FNA は簡便で重要な役割を担っているが、生検より異型
の弱い病変を対象とすることが多く判定に苦慮することも多い。超音波像、
細胞像、組織像合わせ報告する。
Encapsulated papillary carcinoma( 以下,EPC) は 2012 年の WHO 分類改訂
により新たに独立した組織型として認識された papillary lesions の一亜型で
ある.肉眼的に嚢胞状の線維性被膜に囲まれた管腔内に,低~中等度異型度
の腫瘍性上皮細胞が乳頭状に増殖する乳頭癌の一種であり,大部分の症例に
おいて腫瘍辺縁や細血管性の間質と接する部分で筋上皮細胞は見られないと
記載されている.しかし,本邦の乳癌取扱い規約の組織学的分類にはそれに
相当する名称が記載されていない.当院で EPC と診断された 6 例について検
討する.平均年齢は 66 歳 (49 ~ 81 歳 ) と高年齢層に好発し,視触診にて 6 例
中 4 例で 2cm を超える腫瘤として触知した.1 例のみ血性乳頭分泌を伴って
いた.マンモグラフィでは全例で腫瘤もしくは局所的非対称性陰影でカテゴ
リー 3 以上の所見を認めた.乳腺エコー検査でも、腫瘤もしくは低エコー域
で全例でカテゴリー 4 以上の所見を認めた.5 例で術前に組織診断が施行され
ており,そのうち 4 例で,intraductal papillary carcinoma もしくは EPC と
診断されていた.手術は 3 例で乳房温存術,3 例で乳房切除術が施行されてい
た.全例でリンパ節転移を認めなかった.免疫組織学的には,全例で ER 陽性,
PgR 陽性であった.HER2,Ki-67 が測定されている 3 例では全例で HER2 陰性
であり,Ki-67 も低値であり,サブタイプは Luminal A であった.術後治療
として,温存症例では放射線治療,浸潤癌部分を認めた症例ではホルモン治
療が施行されている.本邦の乳癌取扱い規約では,浸潤癌がわずかでも見ら
れた場合は浸潤性乳管癌 ( 乳頭腺管癌 ) の診断となるため,新 WHO 分類で
EPC と診断された 6 例中 3 例は乳頭腺管癌と診断されていた.しかし,EPC は
極めて予後良好であり,治療は非浸潤性乳管癌に準じた治療で十分であると
考える.
当院の乳腺診断における穿刺吸引細胞診の役割について
Encapsulated papillary carcinoma の臨床病理学的検討
4
379
市立貝塚病院乳腺外科、2 市立貝塚病院放射線科、3 市立貝塚病院臨床検査科、
市立貝塚病院看護局
一般セッション(ポスター討議)
【背景】術中センチネルリンパ節生検 (SNB) の偽陰性は、主として迅速凍結標
本のクオリティの低さに起因する。川本法は薄切面に薄い粘着性プラスティッ
クフィルムを装着することで、迅速標本のリンパ節組織欠損やしわ・折れ曲
がりを回避しその質を向上させる。SNB と永久標本でみたリンパ節診断結果
を比較検討し、川本法導入後の SNB 偽陰性率の改善を試みた。【材料・方法】
2008 年 1 月~ 2014 年 12 月、新潟市民病院乳腺外科において、術中迅速診断
が行われた乳癌 754 病例(748 症例)を対象とした。SN は 2mm 間隔で全割し
迅速診断を行い、翌日以降永久標本(H & E のみ、免疫染色は未施行)にて、
転移の有無につき再評価した。2010 年 8 月に川本法を導入し、その前後で
SNB の診断精度を比較検討した。【成績】検索された全リンパ節は 1696 個(1
病例当たり平均 2.2 個)であった。迅速診断で転移陽性は 147 例(19.5%)、
永久標本で転移陽性は 151 例(20.0%)であり、偽陰性は 7 例(0.9%)であっ
た。川本法導入前後の比較では、導入前 208 例中 SNB 偽陰性は 4 例であった
のに対し、導入後 446 例中 SNB 偽陰性は 3 例であり、導入前後で SNB 検査の
sensitivity 91.7 → 97.3 %、false negative rate 8.2 → 2.7% であり、診断
精度の向上がみられた。【結語】川本法は SNB 偽陰性の減少に有効であると考
えられた。【考察】乳癌の微小転移・初期転移病巣はリンパ節被膜直下の周辺
洞付近に多い。従来法では全周性にリンパ節被膜直下組織を標本化すること
は困難であり、同部に小さな転移巣がある場合は術中迅速診断で偽陰性とな
る。川本法はリンパ節と周囲の脂肪組織も標本化することが可能であるため、
リンパ節被膜および被膜直下周辺洞の観察により優れる。川本法は薄切面に
粘着性プラスティックフィルムを装着して薄切し、UV 照射を必要とするが、
1症例あたり平均プラス 5 分程度の所要時間で済み、特別な技術や大規模な装
置導入は必要ない。またカバーグラスをかけることで、半永久的な標本保存
も可能である。川本法導入によりリンパ節辺縁部まで隈なく標本化できる川
本法は SNB 診断において従来法よりも優れており、簡便で1枚当たりプラス
100 円程度のランニングコストで済む比較的低コストな対策法である。
松山赤十字病院 病理診断科、2 松山赤十字病院 乳腺外科
ポスター討議
DP-1-51-01
DP-1-51-02
1
独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院 乳腺内分泌外科、
2
独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院 病理科
1
木村 綾 1、笠島 綾子 1、樋口 奈苗 1、大井 香 1、久保 杏奈 1、岩崎 香 1、
塚本 文音 1、春日井 務 2
山崎 希恵子 1、堀井 理絵 1、神尾 英則 1、井上 寛章 1、米倉 利香 1、
岩瀬 拓士 2、秋山 太 1
HER2 陽性 DCIS の臨床病理学的検討
経過観察可能な非浸潤性乳管癌の探索
2
一般セッション(ポスター討議)
【背景】非浸潤性乳管癌 (DCIS) の中には、経過観察可能な低悪性度 DCIS から、
浸潤性乳管癌 (IDC) への移行が早く局所再発率の高い DCIS まで存在し、個々
の生物学的特徴に基づいて術式や術後補助療法の選択が必要となる。そこで、
HER2 陽性 DCIS の悪性度について臨床病理学的に検討した。【対象と方法】
2004 年 4 月から 2013 年 12 月までに当院で手術を施行し、最終病理診断で
DCIS だった 261 例中 HER2 陽性 (IHC 法 3+ のみ )DCIS 症例 31 例につき検討
した。
【結果】年齢は 35-81 歳 ( 中央値 :57 歳 )。非触知例は 14 例 (45%) であっ
た。マンモグラフィでは 27 例 (87%) に石灰化主体の所見を認め、多形・区
域性石灰化を 13 例、多形・集族性石灰化を 6 例に認めた。エコーでは、点状
高 エ コ ー を 伴 う 低 エ コ ー 域 を 16 例 (52%)、 腫 瘤 性 病 変 を 5 例 に 認 め た。
DCIS の病理学的拡がりが 5cm 以上は 11 例 (35%) を占め、2cm 以下は 3 例
のみであった。エストロゲン受容体陽性 (ER ≧ 1%) は 3 例のみ、うち ER ≧
10% は 1 例のみ、28 例 (90%) は陰性であった。形態学的には comedo type
が 28 例 (90%) を占め、solid type が 2 例、cribriform type が 1 例であった。
核 異 型 度 3 は 29 例 (94%) で、 核 異 型 度 1 は 認 め な か っ た。Ki-67 高 値 ( ≧
20%) は 19 例 (61%) であり、p53 ≧ 10% の過剰発現は 20 例 (65%) であっ
た。術式は、乳房温存術が 17 例 (54%)、胸筋温存乳房切除術が 9 例 (29%)、
皮下乳腺全摘術 (Gt) が 5 例 (16%) と、乳房温存率が低かった。Gt 施行 5 例中
3 例に乳頭乳輪再発を認めた。【結論】HER2 陽性 DCIS は進展が広く乳房温存
率は低い傾向にあり、また Gt 後の乳頭乳輪再発率が高かった。病理学的には
comedo type DCIS が 90% を占め、HER2 陽性 DCIS は組織学的悪性度の高
いことが示唆された。
がん研究会 がん研究所 病理部、
がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科
【背景】乳癌は乳管内成分と間質浸潤成分により構成され、間質浸潤成分がな
い乳癌は非浸潤性乳管癌(DCIS)と称され、その予後は極めて良好であること
は知られている。マンモグラフィ検診発見石灰化病変の針生検を行うことで
多くの DCIS が発見されているが、最近 DCIS の過剰検出の問題について議論
されはじめた。
【目的】長期経過観察が可能と考えられる DCIS の臨床病理学的特徴を明らかに
することを目的とした。
【対象】2012 年の手術治療先行の浸潤性乳管癌 (IDC) および DCIS の 862 病変
のうち、他院生検後等の理由で評価対象病変が手術標本に含まれない 28 病変
と他癌に対し術前薬物療法が施行された 1 病変を除く 833 病変、IDC:613 病
変、DCIS:220 病変を対象とした。
【方法】手術標本のマッピング図を用いて病変全体に占める in situ の割合によ
り IDC を A 群 : ≦ 25%、B 群 :25 < ≦ 50%、C 群 :50 < ≦ 75%、D 群 :75 <
≦ 100% の 4 群に分類した。各群間で病理組織学的項目を比較し有意差検定
を行った ( χ 2 検定 )。検討項目は免疫組織化学的サブタイプ分類、核グレード
(NG)、comedo 壊死の有無とした。有意差を認めた項目について DCIS 群で
も検討した。
【結果】IDC の群別症例分布は、A 群 :275 病変 (45%)、B 群 :113 病変 (18%)、
C 群 :74 病変 (12%)、D 群 :151 病変 (25%) であった。A 群 :B 群 :C 群 :D 群で
各 因 子 を み る と、ER 陰 性・HER2(3+)=4%:5%:4%:14%、NG1=35%:
43%:39%:50%、comedo 壊死 (+)=22%:27%:32%:34% であり、いずれ
も D 群以外と比して D 群で有意に多かった (p < 0.01, p < 0.01, p < 0.05)。
これらの条件をすべて満たす病変は D 群および DCIS 群で各 1 病変のみであっ
た。
【考察】乳癌発生から発見までの時間、癌細胞の乳管内進展さらには間質浸潤
の速度や加速度などの時間的要素が不確実であり、経過観察可能な非浸潤性
乳管癌の探索には多くの問題点がある。今回は、浸潤性乳管癌の乳管内成分
の多寡を時間軸の指標、すなわち A 群から D 群になるにしたがい間質に浸潤
するまでに長時間を要していると仮定して検討を行った。HER2(3+)、NG1、
comedo 壊死 (+) の 3 項目が経過観察可能な DCIS の条件として抽出された
が、これらすべてを満たす病変は D 群および DCIS 群において極僅かであった。
これらの因子のスコア化や増殖能を反映するバイオマーカーなどを加味して
の研究が必要であると思われる。
DP-1-51-03
DP-1-51-04
非浸潤癌の核グレード分類と臨床所見との関連
浸潤径 5mm 以下の乳癌の検討ー非浸潤性乳管癌(DCIS)と比
較してー
1
山梨大学 医学部 第 1 外科、2 山梨県立中央病院 外科、
3
地域医療機能推進機構山梨病院 乳腺外科、4 山梨大学付属病院 検査部、
5
山梨大学 医学部 人体病理学、6 峡南医療センター 市川三郷病院 外科
1
2
3
井上 慎吾 1、井上 亜矢子 1、大森 征人 1、井上 正行 2、丸山 孝教 3、
福島 貴代美 4、長田 美智子 4、五味 律子 4、中澤 匡男 5、藤井 秀樹 1、
松田 啓 6、奥山 純子 4
静岡県立静岡がんセンター 乳腺外科、
静岡県立静岡がんセンター 生理検査科、
静岡県立静岡がんセンター 病理診断科
高橋 かおる 1、林 友美 1、佐藤 睦 1、菊谷 真理子 1、西村 誠一郎 1、
植松 孝悦 2、杉野 隆 3
目的:マンモグラフィ(MG)、超音波(US)の精度向上と乳癌検診の普及によ
り、非浸潤癌(DCIS)の発見数が多くなっている。しかし DCIS による再発・
死亡例は非常に少ないため、浸潤癌と同様の早期診断・治療がすべての DCIS
に必要か疑問に感じる。そこで DCIS を亜分類して発見時の臨床所見と対比
することを目的とした。対象と方法:2010 から 2014 年までに手術を行った
DCIS は 104 例(乳癌全体の 21%)であり、パジェット病 3 例を除いた 101 例
を 対 象 症 例 と し た。 増 殖 能 の 指 標 と し て 核 グ レ ー ド を 用 い、low、
intermediate、high grade の 3 群に分類した。核グレードと発見契機となっ
た検査方法、MG 所見、US 所見と比較検討した。結果:DCIS 101 例の発見
契機となった検査方法を同時期の浸潤癌 384 例と比較すると、MG が 48%(48
例)vs 20%(77 例)、US が 26%(26 例)vs 22%(84 例)、乳頭分泌が 8%(8
例)vs 1%(4 例)、腫瘤自覚が 8%(8 例)vs 41%(156 例)、検診腫瘤が 1%(1
例)vs 1%(5 例)、その他が 10%(10 例)vs 15%(58 例)であった。DCIS
は MG や乳頭分泌での発見が高く、腫瘤自覚の頻度が少なかった。発見方法別
で の low grade の 割 合 は、MG が 48 %(13/48 例 )、US が 69 %(18/26)、
乳頭分泌が 100%(8/8)、腫瘤自覚が 25%(2/8)、その他が 70%(7/10)
であり、US と乳頭分泌が高かった。MG で low grade の占める割合の高い所
見は、FAD が 63%(5/8 例)、不明瞭石灰化が 50%(3/6)であり、点状石灰
化は 26%(5/19)、多形・線状石灰化は 0%(0/10)であった。カテゴリー判
定ではカテゴリー2から5まで格差がなかった。US で low grade の占める割
合の高い所見は、乳管内病変が 80%(4/5)、斑状低エコーが 77%(10/13)
であった。考察・結語:今後 DCIS の病態の解明がさらに進めば、診断や治療
方針が変化する可能性がある。その一助として増殖能に関与する核グレード
分類と臨床検査所見との関連を検討した。いくつかの検査所見から low grade
DCIS を高率に選別できる可能性があったが、さらに症例を増やして検討する
必要があった。
【目的】非浸潤性乳管癌(DCIS)に対する適切な対応を考えるには、乳管内癌か
ら浸潤に至る過程を知ることが重要である。そこで乳管内主体の小浸潤癌に
つき、DCIS と比較しながら検討する。【方法】2008 ~ 2012 年に当院で手術
した最大浸潤径 5mm 以下の乳癌の、浸潤径、浸潤個数、ER、HER2、Ki67、
進展範囲、グレード等を、同時期の pure DCIS と比較検討した。【結果】pure
DCIS(DCIS 群)173 例に対し、浸潤径 5mm 以下の浸潤癌(浸潤群)は 80 例で、
浸潤径 2mm 以下 49 例、2.1 ~ 5mm 31 例、浸潤巣単発 39 例、浸潤巣多発
41 例であった。ER 陽性症例の割合は DCIS 群 75%、浸潤群 76%、HER2 陽
性症例の割合は DCIS 群 23%、浸潤群 19% で今回の検討では両群のサブタイ
プに明らかな差はなく、浸潤径 2mm 以下と 2.1 ~ 5mm の両群の比較でも差
はなかったが、浸潤巣単発で ER 陽性 92%HER2 陽性 13% に対し多発では ER
陽性 59%HER2 陽性 24% と、多発例は ER 陽性率が低く HER2 陽性率が高い
傾向であった。進展範囲の平均は DCIS 群 37mm より浸潤群 48mm が広かっ
たが、HRR2 陽性例では両群とも 50mm で差がなく、HER2 陰性例のみ浸潤
群 48mm が DCIS 群 33mm よ り 広 か っ た。Ki67 ≧ 20% の 症 例 の 割 合 は、
DCIS 群 28% 浸潤群 37% と全体では浸潤群がやや高かったものの、HER2 陽
性例では DCIS 群 82% 浸潤群 77% とどちらも同様に高く、HER2 陰性例での
み浸潤群 28% が DCIS 群 13% より高いという結果であった。浸潤巣がグレー
ド 3 の症例では乳管内成分も高グレード DCIS、浸潤巣がグレード 2 では乳管
内が中~高グレード DCIS、グレード 1 では低~中グレード DCIS と、浸潤巣
と乳管内のグレードは相関していた。進展範囲 5mm 以下(乳管内を進展しな
いうちに浸潤したと思われる)が 5 例あったが、すべて ER 陽性 HER2 陰性
Ki67 < 20% で 5 例中 4 例が low grade であった。
【考察】HER2 陽性 DCIS は
早期から広範囲に進展し短期間に複数個所で浸潤しやすいため DCIS と小浸潤
症例との間にあまり差がないのに対し、HER2 陰性 DCIS は乳管内進展が徐々
に広がる間に増殖能や悪性度の高いものから浸潤していくと推測された。乳
管内進展をほとんどしないうちに浸潤する乳癌は、ごく一部の低悪性度で発
育の遅いものだけが今回のような小浸潤の段階で発見されると考えられた。
【結語】HER2 陽性 DCIS の早期発見・治療とともに、HER2 陰性例の浸潤や治
療のタイミングについてのさらなる研究が今後の課題である。
380
ポスター討議
DP-1-51-05
DP-1-52-01
異常乳頭分泌で経過観察中に診断される乳癌について
同一病変中の浸潤巣と非浸潤巣における HER2 発現状況の相違
とその臨床病理学的特徴についての検討
1
がん研有明病院 乳腺センター 外科、2 がん研有明病院 病理部、
3
がん研究会がん研究所 病理部
1
1
1
1
1
2
1
貴志 美紀 、蒔田 益次郎 、照屋 なつき 、北川 大 、荻谷 朗子 、
坂井 威彦 1、宮城 由美 1、森園 英智 1、飯島 耕太郎 1、堀井 理絵 2、
秋山 太 3、岩瀬 拓士 1
京都府立医科大学大学院 内分泌・乳腺外科学、
京都府立医科大学大学院 人体病理学
大内 佳美 1、杉本 里保 1、富田 仁美 1、岡本 明子 1、中務 克彦 1、
藤田 佳史 1、阪口 晃一 1、加奥 節子 2、山崎 早苗 2、小西 英一 2、
田口 哲也 1
乳癌は診断後治療により治癒可能であることから早期発見が重要とされる。
しかし検診における中間期癌のように初診時に診断ができずにその後に診断
のつく場合がある。そして中間期癌は通常の検診発見乳癌とは生物学的に傾
向が異なることが示唆されている。異常乳頭分泌でも経過中に発見される乳
癌があるが、乳管内進展を主体とする癌であることから生物学的には緩徐に
発育するものが多いと考えられる。そこで異常乳頭分泌を伴う乳癌について
経過中に発見される乳癌について検討した。[対象および方法]1994 年 4 月か
ら 2008 年 3 月までに異常乳頭分泌のために乳管内視鏡を施行した 1139 例の
なかで、検査時を含めてその後に乳癌の診断された症例を対象とし、他院で
治療を行った症例や免疫染色を行っていない症例を除外した 358 例とした。
診断までの期間を初診時(グループ A、
177 例)、経過観察半年以内(グループ B、
111 例)、経過観察半年以上(グループ C、70 例)として、3 つのグループとサ
ブタイプに関して検討を行った。なお、サブタイプについては免疫組織学的
にホルモンレセプター、HER2 の判定により分類した。[結果]平均年齢は
50.0 歳であった。Stage 分類については Stage0 および I がグループ A/B/C で
それぞれ、109 例(61.6%)/92 例(82.9%)/59 例(84.3%)であった。サブ
タイプについては、luminal type が、グループ A/B/C でそれぞれ、132 例
(74.6%)/99 例 (89.2%)/69 例 (98.6%) で、診断がつく時期が遅くなるほど
多かった。非浸潤癌の割合はグループ A/B/C でそれぞれ、33.9%/48.6%/
44.3% で、診断時期により大きな変化はなかった。また、グレードについて
はグレード 3 がグループ A/B/C でそれぞれ、11 例(6.2%)/3 例(2.7%)/1 例
(1.4%)であった。[まとめ]異常乳頭分泌を主訴に初診時に診断がつかず、時
間が経ってから診断がついた乳癌の方が、luminal type が多い傾向がみられ
た。しかし、約半数が浸潤癌で見つかっており、慎重な経過観察や複数のモ
ダリティを使用し、変化があった場合には更なる追加精査を行う必要がある
と考える。
乳癌において HER2 蛋白過剰発現の評価は浸潤巣を対象として免疫組織化学
法を用いて行われ、浸潤巣で陽性と判定された場合のみ抗 HER2 療法の適応
となる。この HER2 蛋白過剰発現の評価を行う際に、浸潤巣と非浸潤巣で染
色態度が異なる症例をしばしば経験する。特に非浸潤巣で HER2 陽性だが浸
潤巣で陰性となる症例について、実際の症例数と、その臨床病理学的な特徴
に興味を持ち、検討した結果を報告する。
対象は 2010 年~ 2014 年の 5 年間に当院で手術を施行した原発性乳癌 729 症
例から、非浸潤巣のみで浸潤巣を含まない症例や、非浸潤巣を含まず浸潤巣
のみの症例、また浸潤巣がごく微小のため免疫組織化学法による HER2 の評
価が困難な症例を除いた、同一病変に浸潤巣と非浸潤巣の両方を含む 507 症
例・511 病変。免疫組織化学法では、非浸潤巣で HER2 陽性だが浸潤巣で陰
性となった症例が2例見られた。同検査で equivocal となった症例について
ISH 法でさらに検討を加え報告する。
DP-1-52-03
1
1
当院での原発性乳癌における HER2 発現判定についての IHC 法
と FISH 法の比較検討
4
免疫組織化学法で HER2 陰性と判定された ER 陽性乳癌の早期
再発症例における HER2 遺伝子増幅の検討
長野赤十字病院、2 同 腫瘍内科、3 同 病理、
中澤ウィメンズライフクリニック
3
大野 晃一 1、浜 善久 1、岡田 敏宏 1、渡辺 正秀 3、上野 真由美 2、
横山 史郎 4
北海道大学病院 乳腺外科、2 北海道大学病院 病理診断科、
北海道大学病院 コンパニオン診断研究部門
石田 直子 1、畑中 豊 2,3、菅野 宏美 2、細田 充主 1、山本 貢 1、
市之川 一臣 1、郭 家志 1、山下 啓子 1
【目的】乳癌診療において、トラスツズマブ(ハーセプチン)の治療対象を選択
するため immuno-histochemistry(IHC 法 ) による HER2 過剰発現の判定が行
われている。しかし、施設間格差があり完全に一致しないという問題点もある。
我々は同一の乳癌組織に対して全例 IHC 法及び FISH 法を施行し、HER2 過剰
発現 / 増幅の判定一致率について検討した。【対象・方法】対象は 2014 年 7 月
から 12 月まで当科で CNB もしくは手術にて摘出した乳癌組織 99 例であり、
切除標本のホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製、全例 IHC 法及び FISH
法を施行した。IHC 法はヒストファイン HER2 キット (MONO) を用い、スコ
ア 0 ~ 3 +のカテゴリーに分類し判定した。FISH 法は Path Vysion HER2
DNA プローブキットを用いて判定し、HER2/CEP17 比 2.0 以上を増幅ありと
し た。【 結 果 】HER2 IHC 法 の 結 果 は ス コ ア 0:82 例 (82.8%)、1 +:3 例
(3.0%)、2 +:7 例 (7.1%)、3 +:7 例 (7.1%)であった。FISH 法では増幅
あり 16 例 (16.2%)、増幅なし 83 例 (83.8%)であった。FISH 法で増幅を認
め た 症 例 で は IHC 法 ス コ ア 0:5 例 (5.1%)、1 +:2 例 (2.0%)、2 +:3 例
((3.0%)、3 +:6 例 (6.1%)であり FISH 陽性率はスコア 0 及び 1 +:7/85
例 (8.26%)、2 +:3/7 例 (42.9%)、3 +:6/7 例 (85.7%) であった。【考察】
乳癌での IHC 法び FISH 法による HER2 過剰発現 / 増幅の判定一致率は IHC 法
スコア 0、1 +、2 +、3 +の症例で FISH 増幅陽性率はそれぞれ 0 ~ 4%、0
~ 7%、20 ~ 30%、90 ~ 100% と報告されている。当院での結果ではスコ
ア 0 及び 1 +で陽性率が 8.26%、スコア 2 で 42.9% とであり概ね一致してい
た。スコア 0 及び 1 +で FISH が陽性となる要因として IHC 法の染色強度が低
いなど組織の固定から染色までに至る過程に問題がある、HER2 発現の不均一
性がある、癌の浸潤径が少なく判定が難しいなどが考えられる。HER2 検査法、
特に IHC 法は施設間格差があることを考慮し、FISH 法を追加で行うか決定し、
トラスツズマブ治療対象の選択を慎重に行っていく必要がある。
【背景】HER2 陰性の原発性乳癌が後に再発し、再発巣生検で HER2 陽性と診断
されることがある。原発巣と遠隔再発巣の HER2 陽陰性の不一致率は 5%程度
と報告されており、要因として検査精度の問題、腫瘍の不均一性等が考えら
れている。HER2 の評価については免疫組織化学(IHC)法でスコア 0、1+ の
症例が ISH(In situ hybridization)法で遺伝子増幅を認める頻度は 4%程度
とされている。我々は IHC 法でスコア 0、1+ と評価された ER 陽性 HER2 陰性
乳癌の早期再発症例の中には、原発巣の乳癌組織において HER2 遺伝子増幅
を有する症例があると仮説を立て、探索的検討を行った。【対象・方法】2000
年 1 月から 2004 年 12 月に当院で治療を開始し、ER 陽性かつ HER2 が IHC 法
でスコア 0、1+ であった原発性乳癌のうち、術後 5 年以内に再発した 15 例を
対象とした。これらの乳癌組織における HER2 遺伝子増幅について DISH
(Dual
color in situ hybridization)法で検討した。【結果】HER2 遺伝子増幅陽性(シ
グ ナ ル 比 2.0 以 上 も し く は HER2 遺 伝 子 コ ピ ー 数 平 均 値 6.0 以 上 )は 4 例
(26.7%)であり、シグナル比平均値は、陽性例が 2.6、陰性例は 1.3 であった。
HER2 DISH 陽性 4 例と陰性 11 例の初回治療時における臨床病理学的特徴を
比較すると、cT3-4 症例は DISH 陽性例では 3 例(75%)、陰性例で 1 例(9%)、
cN1-3 症例は陽性例では 3 例(75%)、陰性例で 3 例(27%)であり DISH 陽性
例で進行度が高い傾向を認めた。転移乳癌に対する初回内分泌療法奏効期間
平均値(月)は陽性例が 10.0、陰性例が 30.5、全内分泌療法奏効期間平均値(月)
は陽性例が 12.6、陰性例が 47.1 であり、DISH 陽性例は再発後の内分泌療法
の奏効期間が短い傾向にあった。再発から死亡までの期間平均値(月)は陽性
例が 26.6、陰性例が 44.0 であり、DISH 陽性例は陰性例と比較し再発後生存
期間が短かった。【結語】IHC 法による評価での ER 陽性 HER2 陰性乳癌で術後
早期再発症例の中には HER2 遺伝子増幅を有する症例が存在する。これらの
症例は再発巣では HER2 蛋白が過剰発現している可能性があり、この場合抗
HER2 療法の適応となる。IHC 法で HER2 陰性と判定された ER 陽性乳癌の早
期再発例においては、再発巣生検や原発巣乳癌組織の HER2 遺伝子増幅につ
いて検討することが望ましいと考えられた。
381
一般セッション(ポスター討議)
DP-1-52-02
ポスター討議
DP-1-52-04
DP-1-52-05
HER2 陽性乳癌の原発巣と trastuzumab 投与後の脳転移巣の
HER2 および EGFR の発現状況に関する免疫組織学的検討
ISH 法による HER2 診断基準の変更が臨床経過に及ぼす影響
1
2
1
埼玉県立がんセンター 乳腺外科、2 埼玉県立がんセンタ- 病理診断科、
3
埼玉県立がんセンター 脳神経外科、
4
埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、5 群馬大学 臓器病態外科
黒住 献 1,5、松本 広志 1、黒住 昌史 2、楮本 清史 3、井上 賢一 4、林 祐二 1、
戸塚 勝理 1、小松 恵 1、大庭 華子 2、早瀬 宣昭 3、永井 成勲 4、堀口 淳 5、
竹吉 泉 5
一般セッション(ポスター討議)
Background:HER2 陽性乳癌に対する trastuzumab 投与後の脳転移巣の抗
HER2 療法に対する感受性や耐性の機序に関しては未だ不明な点が多い.しか
し,最近の基礎研究によって trastuzumab 投与後に EGFR mRNA が上昇する
ことが明らかになり,EGFR が新たな標的分子になる可能性が示唆されている。
今回,我々は trastuzumab 投与後に脳転移をきたした HER2 陽性乳癌の原発
巣と脳転移巣における HER2 および EGFR の発現状況の変化について免疫組織
学的検討を行った. Patients and Methods: 対象は 2006 年から 2014 年ま
で に 当 院 で trastuzumab 投 与 後 の 脳 転 移 に 対 し て 腫 瘤 摘 出 術 を 施 行 し た
HER2 陽性乳癌の 18 例である(観察期間中央値:63 か月).原発巣と脳転移巣
の組織について ER,PgR,HER2,EGFR の免疫染色を行い,発現状況の比較
検討を行った.ER,PgR 発現は 1%以上を陽性とし,HER2 発現は ASCO の
ガイドラインに準じて評価した.また,EGFR は細胞膜の染色強度に応じて
HER2 と 同 様 に 0-3+ の 4 段 階 評 価 を 行 い,2+ と 3+ を 高 発 現 と し た.
Results:治療開始から脳転移までの期間は,9-87 か月(中央値:36 か月)で
あった.また,脳転移発症からの生存期間は,2-85 か月(中央値:17.5 か月)
であった.脳転移巣における HER2 発現は全例で陽性であり,陰転化した症
例はなかった. EGFR の発現状況は原発巣では,0:10 例,1+:2 例,2+:
2 例,3+:4 例であり,脳転移巣では,0:8 例,1+:0 例,2+:3 例,3+:
7 例であった.原発巣に比べて脳転移巣での EGFR 発現は 5 例(27.8%)で上
昇し,1 例(5.6%)で低下した.EGFR 高発現(2+,3+)は原発巣 6 例に対し
て脳転移巣 10 例に認められ,1.7 倍増加していた.ホルモンレセプターにつ
いては,原発巣の ER 陽性例は 5 例,ER 陰性例は 11 例であり,脳転移巣にお
いて ER が陰転化した症例は,3 例(16.7%)であった.原発巣の PgR 陽性例
は 3 例,PgR 陰性例は 15 例であり,脳転移巣においては PgR の陽転化を 1 例
(5.6 %)に 認 め, 陰 転 化 を 2 例(11.1 %)に 認 め た.Conclusions:
trastuzumab を 投 与 後 に 生 じ た 脳 転 移 巣 は 全 例 で HER2 陽 性 で あ り,
trastuzumab に対して耐性が生じた可能性が示唆され,新たな HER2 標的治
療剤の選択が必要と思われた.一方,脳転移巣における EGFR の発現は約
30% の症例で上昇しており,EGFR を標的とする分子標的治療薬や抗癌剤の
効果が期待される現象と思われた.
社会医療法人 博愛会 相良病院 乳腺科、
社会医療法人 博愛会 相良病院 病理診断科
川野 純子 1、四元 大輔 1、大井 恭代 2、相良 安昭 1、松方 絢美 1、
寺岡 恵 1、金光 秀一 1、馬場 信一 1、相良 吉昭 1、松山 義人 1、
安藤 充嶽 1、相良 吉厚 1、雷 哲明 1
【背景】近年、分子標的治療薬の開発が相次ぎ治療効果の向上がもたらされる
中、HER2(human epidermal growth factor receptor) 検査は抗 HER2 薬の
適応の有無を判断するうえで必須である。ASCO/CAP ガイドラインに準拠し
た HER2 検 査 ガ イ ド 第 4 版 で、ISH 法 の 陽 性 基 準 は HER2 シ グ ナ ル 総 数 /
CEP17 シグナル総数比が 2 倍以上のものおよび 2 倍未満でも HER2 遺伝子コ
ピー数が6コピー以上あるものと改訂された。これにより、第3版では HER2
陰性と診断されていた症例で、第4版では HER2 陽性に診断が変わりうる、
すなわち抗 HER2 薬の適応となる症例が発生する。【目的】第4版の基準で
HER2 陽性となる症例の臨床経過を retrospective に検証し、HER2 陽性であ
りながら抗 HER2 薬が適応されなかったことの影響を検証する。
【対象と方法】
2006 年 1 月から 2013 年 12 月までに手術を施行した原発性乳癌で、HER2:
2 +で FISH を提出し HER2 遺伝子コピー数まで確認しえた 239 例。(術前化
学療法、両側乳癌症例は除外した。)観察期間中央値は 31.0 か月。FISH の結
果から A)3 版及び 4 版で FISH 陰性 B)3 版及び 4 版で FISH 陽性 C)3 版で陰性
から 4 版で陽性に変更となる 3 群とした。【結果】239 例のうちわけは A)170
例 (71.1%)B)51 例 (21.3%)C)18 例 (7.5%) であった。C) には抗 HER2 薬の
投 与 は な く、 観 察 期 間 中 の 再 発 は A)11 例 (6.4%)B)5 例 (9.8%)C)4 例
(22.2%) であった。Kaplan-Meier 曲線による log-rank 検定で RFS は ER 陽性、
陰性いずれにおいても A 群に対し C 群は有意に予後不良であった。また Cox
解析による RFS について単変量解析で A - C 群間、核異型度 3、ER 陰性が有
意であり、多変量解析では A - C 群間、ER 陰性が有意であり独立した予後因
子であった。【結語】短い観察期間と少ないイベント数であるが、今回第 4 版
で HER2 陽性となる群は HER2 陰性群に対し有意に予後不良であり、また予後
因子であった。これらの症例に対しては新たに抗 HER2 薬が適応となること
で予後を改善する可能性が示唆された。
DP-1-53-01
DP-1-53-02
乳癌の Androgen receptor 発現についての検討
乳癌原発巣におけるサブタイプ別のアンドロゲン受容体発現と
MIB-1 index との関連についての研究
1
国立国際医療研究センター病院 中央検査部 臨床病理室、
2
国立国際医療研究センター病院 外科
1
中村 ハルミ 1、杉浦 良子 2、安田 秀光 2、橋本 政典 2、猪狩 亨 1
Androgen receptor (AR) は乳癌の 60 から 70%に発現していることが知られ
ている。術前化学療法を行わず乳癌手術を受けた 113 例について浸潤癌 98 例
と非浸潤癌 15 例に分け、AR 発現率について検討した。浸潤癌については
2013 13th St. Gallen において提案された乳癌 Intrinsic subtype の代替定義
に従って、98 例を Luminal A-like (33 例 )、Luminal B-like (Her2 陰性 ) (31
例 )、Luminal B-like (Her2 陽性 ) (8 例 )、HER2 陽性 (non luminal) (10
例 )、Triple negative (16 例 ) に分類した。分類の際の Ki-67 のカットオフ値
は 20%とした。PgR のカットオフ値は 20%が提案されているが、今回は簡便
に Allred score 4 点以下とした。AR の免疫染色はクエン酸緩衝液 (pH9.0) 用
いた 10 分間のオートクレーブによる賦活化後、一次抗体 (1:100, AR441;
Dako) と 30 分 室 温 で 反 応 を 行 っ た。 そ の 結 果、AR の 陽 性 率 は そ れ ぞ れ
97.0 % (32/33)、96.8 % (30/31)、100 % (8/8)、60.0 % (6/10)、62.5 %
(10/16) で、陽性率の平均値は 83.3%であった。なお、Triple negative のうち、
アポクリン癌と診断された症例 (8 例 ) の陽性率は 100%であり、アポクリン
癌以外の 25.0% (2/8) と大きく異なっていた。非浸潤癌 15 例は全例が AR 陽
性であった。この結果から、AR は浸潤癌においては Luminal B-like (Her2
陽性 ) を含めて luminal type の乳癌で高く、一方、アポクリン癌を除く Triple
negative 乳癌では AR 発現率が低いことが示唆された。なお、非浸潤癌は全
例陽性を示したが、今後、AR 陰性の浸潤癌における乳管内成分との比較検討
を行いたい。
大分県立病院 外科、2 大分県立病院 臨床検査科病理部
増野 浩二郎 1、野田 美和 1、高井 真紀 1、和田 純平 2、卜部 省悟 2、
田代 英哉 1
【背景】多くの乳癌細胞ではエストロゲン受容体 (ER) だけではなくアンドロゲ
ン受容体 (AR) の発現も高頻度に認められ、アンドロゲンが乳癌の生物学的動
態に何らかの役割を担っていると考えられるが、アンドロゲン作用の意義は
不明な点が多い。一般的にはアンドロゲンは乳癌の進展を抑制すると考えら
れているが , AR と患者の予後との関連には様々な報告がある。特に triple
negative(TN) 乳癌においては AR 陰性での予後不良が報告されている。本研
究ではサブタイプ別の AR 発現を検索し、各臨床病理学因子との関連を検討し
た。【方法】2013 年 2 月から 2014 年 11 月までに当院で手術施行した原発性乳
癌 147 例(除 Tis 症例)の切除標本にて免疫染色にて半定量的に AR 発現をみ
た。術前化学療法施行例では施行前の針生検の検体で検討した。発現量は J
score および Allred score を用いた。サブタイプ分類には免疫染色による ER,
Her2, MIB-1 index 発 現 を 用 い た。MIB-1 は 20 % を cut off と し て luminal
A(LA) 型と luminal B(LB) 型に分類した。【結果】全 147 検体のうち LA 型は
52%、LB Her2- 型は 24%、LB Her2+ 型 7%、Her2 型 3%、TN 型 14%のサ
ブタイプに分類された。AR 発現は 89%(131/147) に認め、11%で陰性であっ
た。臨床病理因子との関連では AR 陰性で有意に核グレード 3 の症例を多く認
め (p=0.001)、MIB-1 index の平均値も AR 陰性 45.1%、陽性 16.2%と有意
に高かった (p=0.0001 )。また Allred score で検討しても total score0, 2 で
は MIB-1 平均値 47%、total score3-8 で 11.3%と AR 低発現症例ほど MIB-1
index も高くなる傾向にあった。サブタイプ別にみた AR 発現は LA 型 99%、
LB Her2- 型 92 %、LB Her2+ 型 100 %、Her2 型 60 % で あ り、TN 型 で は
50%と低値だった。MIB1 index は AR 陰性 TN 型で 55%、AR 陽性 TN 型で
39%と、AR 陰性で高い傾向にあった。【結論】AR 発現は全体の 9 割程度に認
められ、特に LA 型の症例にはほとんどに発現していた。AR 陰性 TN 乳癌は
TN 型の半数を占め、AR 陽性 TN 乳癌と比較して核グレードや増殖能も高い。
382
ポスター討議
DP-1-53-03
DP-1-53-04
国立がん研究センター 中央病院 乳腺外科
1
若年乳癌の臨床病理学的特徴と Ki67 labeling index の有用性
についての検討
乳癌の原発 - 再発巣での Tumor Infiltrating
Lymphocytes(TILs) の比較
東海大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科、
東海大学医学部 基盤診療学系病理診断学、
3
京都大学医学研究科 標的治療腫瘍学講座、
4
東海大学医学部 外科学系乳腺・内分泌外科
2
神谷 有希子、麻賀 創太、小倉 拓也、神保 健二郎、北條 隆、
木下 貴之
扇屋 りん 1、熊木 伸枝 2、田中 俊也 2,4、宮澤 麻里子 2,4、新倉 直樹 3、
徳田 裕 4
【背景】近年,乳癌領域では Tumor Infiltrating Lymphocytes(TILs) の評価・
臨床応用について盛んに議論されている.多くは TILs の割合を判定すること
で術前・術後化学療法の効果予測や薬剤追加の判断の一助にするものであり,
特に HER2 陽性・Triple negative の症例で TILs の割合が多い程,治療効果と
の関連が強いとされている.しかし,再発巣における TILs の詳細は不明であ
る.今回,我々は原発 - 再発巣のペアサンプルで TILs を評価し,その割合の
比較,再発臓器毎の TILs の特徴について検討した.
【対象と方法】1990 年 7 月~ 2010 年 2 月の間に当院で手術を施行し,その後
腋窩リンパ節以遠に再発した乳癌症例のうち,再発巣の生検・手術を施行し
た症例で,原発巣の免疫染色で HER2 陽性もしくは Triple negative の 29 例に
ついて検討した.TILs の評価は TILs の国際ワーキンググループによる推奨方
法 (Ann Oncol,2014) を参考に HE 標本で行い,病理医 1 名・臨床医 1 名で
判定した.TILs は 5% 未満,10% 以降は 10% 刻み,90% 以上を基準とした.
【結果】再発巣の生検を複数回施行した症例を含み (1-3 回 ),術前化学療法を
施行した症例 (5 例 ) については化学療法前の針生検・手術標本ともに評価し
たため,総標本数は 81 標本となった.文献的に TILs が陽性とされる 50% 以
上となったのは原発巣で 11 標本,再発巣で 5 標本であった.原発 - 再発巣の
比較では,原発巣の TILs が中央値で 30%( < 5%-80%),再発巣では中央値
が 10%( < 5%-70%) と TILs の割合が減少する症例を多く認めた.同一症例
内で再発巣を経時的に評価すると,再発部位や時期の違いで TILs の割合に変
化 ( < 5% → 50% など ) を認めた.再発巣で TILs が 50% 以上であった 5 標本
の無増悪生存期間は 6 ヵ月~ 14 年であった.
再発臓器毎の特徴について,脳転移巣でも TILs を< 5%-50% の範囲で認め
た.また,手術標本と異なり生検標本では間質をほぼ認めない症例がある,
リンパ節転移巣・骨髄転移巣では背景リンパ球か TILs かの判定が不能などの
問題点が浮上した.
【結論】乳癌の原発 - 再発巣での TILs の比較では,再発巣で TILs の割合が減少
する傾向を認め,さらに再発巣毎で TILs の割合の変化を認めた.再発巣での
TILs の割合で治療効果を予測できるかは現段階では不明であり,さらなる検
討が必要である.
DP-1-53-05
DP-1-54-01
Luminal A subtype 乳癌における HER 2増幅細胞および
CEP17 polysomy 細胞の臨床病理学的意義の検討
1
ソナゾイドによる造影超音波検査センチネルリンパ節同定法
1
2
2
広島大学病院 病理診断科、 広島大学病院 乳腺腫瘍外科
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般消化器外科、
自治医科大学附属さいたま医療センター 臨床検査部
蓬原 一茂 1、鈴木 康治郎 1、田巻 佐和子 1、吉沢 あゆは 1、尾本 きよか 2、
力山 敏樹 1
尾田 三世 1、有廣 光司 1、城間 紀之 1、原武 大介 1、重松 英朗 2、
角舎 学行 2
【目的】FISH 法を用いての HER2 の遺伝子増幅の評価は、腫瘍細胞 20 個を対
象にして HER2/CEP17 比を算出して行われるが、20 個細胞中には様々な遺
伝子増幅パターンを示す細胞が混在している。Luminal A subtype 乳癌も 1
個ずつの乳癌細胞を評価すると HER2 遺伝子増幅陽性細胞が混在するがその
意義については不明な点が多い。そこで Luminal A type 乳癌において HER
2増幅細胞が占める割合および CEP17 polysomy 細胞の占める割合を算出し
臨床病理学的因子との関係について検討をおこなった。【対象と方法】対象は
2006 年から 2009 年において広島大学病院で乳癌摘出手術を施行された
Luminal A 226 例、Luminal B 35 例、HER2 18 例、Triple Negative( 以 下
T.N)17 例 と し た。 摘 出 乳 腺 腫 瘤 割 面 か ら 擦 過 採 取 し た 細 胞 を 用 い、
PathVysion(Abbott 社 ) による FISH 法を用いて1症例当たり 20 個あるいは
60 個 の 細 胞 を カ ウ ン ト し、 増 幅 細 胞 数 の 割 合 と CEP17 polysomy 細 胞
(CEP17 copy 数 /cell > 3 と定義した)の割合を算出した。【結果】HER2 遺伝
子増幅細の割合を subtype 別に見ると Luminal A、Luminal B、HER2、T.N
でそれぞれ 0-45% ( 平均 3.3% )、10-100% ( 平均 87.1%)、40-100%( 平均
96.4%)、0-35%( 平均 6.5%) であった。一方 CEP17 copy 数 /cell > 3 の細
胞の割合を subtype 別に見ると Luminal A、Luminal B、HER2、T.N でそれ
ぞれ 0-100%( 平均 19.5%)、0-100%( 平均 32.4%)、0-100%( 平均 59.7%)、
0-100%( 平均 27.5%) であった。Luminal A のなかで HER2/CEP17 比> 2.0 の
増幅細胞の割合によっての再発の有無の差を認めなかった。CEP17copy 数 /cell
> 3 の細胞が 70% 以上を占める症例あるいは CEP17copy/cell > 4 の細胞が
60% 以上を占める症例で再発率に有意な差を認めた。(p=0.022,p=0.015)【考
察・まとめ】Luminal A type のなかで CEP17 polysomy 細胞の占める割合は、
補助療法の継続あるいは化学療法の指標となる可能性がある。
383
センチネルリンパ節 (SLN) 生検には色素法とラジオアイソトープ (RI) 法が行
われており , 現在は併用法がやや精度が高い報告がある . しかし ,RI 法は使用
施設が限定されており , 被曝の問題が常に存在する . 当院では 2005 年より色
素法を施行し 2009 年 12 月よりソナゾイドによる造影超音波検査 (EUS) で
SLN を同定する方法の導入した . 今回は十分な修練の後 , 造影の状況から転移
の判定も含めて検討した 【
. 対象】2011 年 11 月より 2014 年 11 月まで臨床的
に腋窩リンパ節転移のない乳癌 157 例【方法】術前日までに sonazoid を乳輪皮
内に注入し SLN を皮膚にマーキングしインジゴカルミン色素法による生
検 .EUS が不均一または造影不良の場合は転移の可能性ありとした 【
. 結果】年
齢 29-80(60.8) 歳 EUS による SLN 同定数 0-3(1.248) 個 同定率 96.2% 術中
SLN 数 0-5(1.669) 個 同 定 率 97.5% nonSLN 数 0-9(2.185) 個 SLN 転 移 数
24 例 EUS で転移が疑われた症例 34 例中 14 例に転移を認めた 感度 58% 特
異度 85% accuracy80.9%【考察】EUS による SLN 法は被曝もなく術前に
SLN の位置が手術と同体位で確認でき同定率も十分に認容できる方法であ
る . また ,EUS の状況は様々な要因で不均一や造影不良となり , 転移と判定する
には十分な結果ではなかった . しかし ,SLN への転移の術前判定にも可能性も
十分に示し , 今後さらなる有用性が期待された.
一般セッション(ポスター討議)
【背景・目的】乳癌細胞の細胞増殖動態を正確に把握することは,その患者の
臨床予後の推定だけでなく,術後治療の決定にも重要である。Ki67 labeling
index(Ki67LI) は、結果の解釈について解決しなければならない問題を残すも
のの、予後との関連性が報告されたことから、検査が広く行われるようになっ
てきている。 一方,手術可能な若年の乳癌においては、ステージ別の予後が
不良な傾向があり、腫瘍生物学的にも際立った特徴を有する可能性が示唆さ
れる。以上から、今回我々は若年乳癌における Ki67LI を中心とした臨床病理
学的特徴について検討した。【方法】2011 年から 2014 年 6 月の間に当院にて
手術を施行した 1,697 人中、Ki67LI の検出が可能であった女性浸潤性乳癌患
者 1,085 人 を 対 象 と し,40 歳 以 下 の 101 人 (9.3%) と 41 歳 以 上 の
984(90.7%) 人に分け、Ki67LI とその他臨床病理学的背景についてレトロス
ペクティブに比較した。Ki67LI の cut off 値は 15 としたが、臨床的には cut
off 値を大きく超える場合には、それに留意した治療方針をとる場合もあるこ
とから、Ki67LI が 35 以上についても別に検討した。【結果】腫瘍の浸潤径は
40 歳以下が 2.42cm,41 歳以上が 1.98cm で 40 歳以下で有意に大きかった
(p=0.006)。リンパ節転移陽性は 40 歳以下が 38 人 (37.6%),41 歳以上が
329 人 (33.4%) で有意差はなかった (p=0.397)。Hormone status について
は、 ホ ル モ ン 陽 性 乳 癌 が 40 歳 以 下 で 88 人 (87.1%),41 歳 以 上 で 866 人
(88.0%) と 有 意 差 な し (p=0.992)、HER2 陽 性 乳 癌 は 40 歳 以 下 で 3 人
(3.0%),41 歳以上で 9 人 (0.9%) と有意差なし (p=0.167),トリプルネガティ
ブ乳癌も 40 歳以下で 9 人 (8.9%),41 歳以上で 109 人 (11.1%) と有意差を認
めなかった (p=0.505)。Ki67LI に関しては、15 以上であったのは 40 歳以下
で 82 人 (81.2%),41 歳以上で 633 人 (64.3%) と 40 歳以下に有意に多い結
果であった (p=0.0007)。Ki67LI 35 以上で検討しても、40 歳以下で 42 人
(41.6%),41 歳以上で 257 人 (26.1%) となり,40 歳以下に有意に多い結果
であった (p=0.0009)。【考察】40 歳以下の若年乳癌では腫瘍の浸潤径が大き
く、Ki67LI で示される細胞増殖能が高いと言える。
ポスター討議
DP-1-54-02
DP-1-54-03
1
三重大学 医学部 附属病院 乳腺外科、
2
三重大学 医学部 附属病院 病理部
1
岡南 裕子 1、木本 真緒 1、澁澤 麻衣 1、今井 奈央 1、野呂 綾 1、
柏倉 由実 1、中村 卓 1、伊藤 みのり 1、木村 弘子 1、山下 雅子 1、
花村 典子 1、白石 泰三 2、小川 朋子 1
岡田 憲三 1、梶原 伸介 1、松影 昭一 2、中西 護 2、山下 美智子 3
腋窩リンパ節の術前評価はどうすべきか
乳房温存療法における術中断端診断についての当院の検討
3
市立宇和島病院 外科、2 市立宇和島病院 病理、
愛媛大学医学部付属病院 乳腺センター
一般セッション(ポスター討議)
はじめに:乳房温存療法において切除断端の術中迅速組織診はその判定の限
界があるため行なわないとする施設も多いが、当院ではできるだけ再手術を
避ける目的で標本摘出後さらに断端を4切片提出して術中迅速組織診を行
なっている。今回術中迅速のため得られた標本と永久標本において断端判定
を比較検討してみた。対象と方法:手術は全て1人の指導医のもとで行なわれ、
迅速組織診は2人の病理医のダブルチェックで行なった。永久標本での断端
陽性は腫瘍が切除面に露出している touch on ink の状態とし、切除標本の最
も 端 の 切 片 に 腫 瘍 が 存 在 す る と き は 断 端 陽 性 と し た。 術 中 断 端 判 定 を
1:Negative、2:Ductal hyperplasia w/o atypia、3:Atypical ductal
hyperplasia(ADH)、4:DCIS、5:Invasive tumor の 5 段 階 で 判 定 し た。
2009 年から 2014 年までの6年間で当院にて手術した原発乳癌 390 例のうち
温存症例は 246 例 (63%)、そのうち術中迅速組織診を行なった 234 例にて検
討した。結果:術中迅速組織診にて 45 例 (19%) が ADH 以上で陽性と判断さ
れた。その結果を受け 4 例は術中に切除に術式変更となり、32 例では追加切
除がなされた。この 32 例のうち 11 例は見かけ上断端陰性とすることができ、
計 15 例において術中迅速組織診に基づく追加治療は有用であった。また戻し
標本にて浸潤癌で陽性となった症例は 2 例にあり、それらを含め再手術は 6 例
に行なった。迅速組織診において Ductal hyperplasia w/o atypia は 33 例
(14%)39 切 片 に 診 断 さ れ た が 最 終 的 に 全 て 陰 性 で あ っ た。ADH は 22 例
(9%)24 切片に診断され最終的に陰性は 13 切片、陽性は 11 切片であった。迅
速組織診を永久標本と比較すると真の陰性は 787 切片、真の陽性は 44 切片で
あったが、偽陰性は 43 切片 (38 例 )、偽陽性は 16 切片 (15 例 ) に認めた。感
度 50%、特異度 98%、陽性的中率 73%、陰性的中率 95% であった。また組
織別にみると乳管癌は 45 例 /174 例 (26%) で断端陽性に対して、DCIS は 18
例 /39 例 (46%)、小葉癌は 11 例 /21 例 (52%) で断端陽性であった。考察:
断端診断を組織別にみると、小葉癌と DCIS では約半数が陽性となり注意が必
要。術中迅速組織診は特異度は良好だが、感度は不十分な結果で迅速組織診
の限界。しかしながらこれに基づく追加治療により 15 例が再手術を回避でき
限界はあるものの比較的有用。術中迅速組織診において ADH の診断は永久標
本において良悪相半ばする結果となったが、Ductal hyperplasia w/o atypia
は陰性と考えて良い。
【背景】ACOSOG Z0011 試験は、早期乳癌で乳房温存術、乳房照射と適切な
補助薬物療法を受ける患者にはセンチネルリンパ節転移陽性でも 2 個以下で
あれば腋窩リンパ節廓清の省略は妥当であるとの可能性を示唆した。試験に
エントリーされた症例は臨床的リンパ節転移陰性であったが、日本では超音
波検査や穿刺吸引細胞診(以下 FNA)によって、術前にリンパ節転移陽性との
診断がつくことも少なくない。術前に転移陽性の場合、もし 2 個以下の転移で
あれば腋窩リンパ節廓清は過剰治療になってしまうのではないか、というこ
とが今後の議論となってくると思われる。そこで、我々は超音波検査と穿刺
吸引細胞診を用いた腋窩リンパ節転移の術前評価について retrospective に検
討した。【方法】2013 年 6 月~ 2014 年 6 月に当院において乳癌と診断され、
超 音 波 検 査 で 腋 窩 リ ン パ 節 転 移 を 疑 い、FNA を 施 行 し た 90 例 に つ い て、
retrospective に超音波画像や CT 画像を見直し、臨床病理学的検討を行った。
術前化学療法の症例は除外した。【結果】90 例中 41 例に最終病理組織学的検
査でリンパ転移を認めた。転移が 1 個のみの症例は 17 例、2 個は 2 例、3 個以
上は 22 例であった。(1) 術前腋窩リンパ節 FNA の精度:感度 68%(27/38 例)、
特 異 度 100%(49/49 例 )、 陽 性 的 中 率 100%(27/27 例 )、 陰 性 的 中 率
79%(49/63 例 ) であった。FNA 陽性かつ最終病理陽性であった症例は全例が
マクロ転移であった。(2) 術前超音波検査でリンパ節転移を示唆する所見:皮
質の厚さが 4mm 以上、リンパ節門に脂肪がないといった所見があげられた。
(3) 術前に転移個数が 3 個以上であるかを推測できるか:3 個以上の転移を認
めた 22 例のうち、CT 検査で複数のリンパ節腫大を認めたのは 5 例 (23%) で
あり、残りの 17 例 (77% ) では見られず、3 個以上のリンパ節転移を推定する
ことは困難であった。【結語】FNA 陽性とされた症例については全例マクロ転
移であり、従来は腋窩リンパ節廓清を選択することで問題がなかったが、今
後はその転移個数が問題となってくる。今後は FNA 陽性で、CT 検査で複数の
リンパ節腫大が示唆される場合は、腋窩リンパ節廓清を、示唆されない場合
は超音波検査で周囲に転移を疑うリンパ節を同定し、2 個以上は FNA を施行
し、1 個のみ陽性であった時にセンチネルリンパ節生検を選択する、といった
術式選択も考えられる。
DP-1-54-04
DP-1-54-05
山形県立中央病院 乳腺外科
1
工藤 俊、蓮沼 綾子、阿彦 友佳、牧野 孝俊
安田 満彦 1、吉田 一也 1、森谷 卓也 2、君島 伊造 1
乳管癌と小葉癌の混在型乳癌の臨床病理学的検討
当院における浸潤性小葉癌の検討
【目的】乳管癌と小葉癌は、組織の発生部位や形態、進展様式および予後にも
違いがあり、両者のいずれであるかは治療上重要な問題となる。その中で、
頻度は少ないが、E-cadherin 陽性乳管癌でも小葉癌部分を含む両者の混在癌
を経験する。最近の研究では、乳管癌と小葉癌の発症は遺伝子学的に同じで
あり LCIS( 非浸潤性小葉癌 ) が前駆形態だとする報告もある。しかし未だこの
ような混在癌については、臨床的な取扱い含め不明な点が多い。そこで今回、
当院の手術例の中で、乳管癌と小葉癌の混在例をまとめ臨床病理学的特徴に
ついて検討する。【対象と方法】対象は 2007 年~ 2013 年までの期間、当院で
治療した乳癌症例で病理検索にて乳管癌と小葉癌の混在所見のある 10 例
(0.8%)。これらについて、年齢、画像 (MMG、MR) 検査の特徴、腫瘍全体の
小葉癌の割合、乳管癌の組織型、LCIS( 非浸潤性小葉癌 ) の有無、組織学的悪
性度やバイオマーカー (ER、PgR,HER2) などの病理学的所見、手術術式な
ど治療についてまとめる。【成績】平均年齢 52.5 歳。画像検査;MMG 所見は、
構 築 の 乱 れ 6/10(60%)、 腫 瘤 ま た は 局 所 的 非 対 照 6/10(60%)、 石 灰 巣
2/10(20%) だ っ た。MR 所 見 は、 主 腫 瘤 の Time Intensity Curve が 全 て
rapid washout pattern を示し、また小さな多発病変 9/10(90%) を認め、
MMG、MR とも画像検査上は浸潤性小葉癌の特徴的所見を多く認めた。病理
検査;各腫瘍の浸潤性小葉癌の割合は、50% 以上が 6/10(60%)、未満が
4/10(40%)。混在する乳管癌の組織型は、非浸潤性乳管癌 2/10(20%)、浸
潤性乳管癌8/10 (80%) (paptub+scirrhous 6/8(75%), scirrhous2/8(25%))、
全例にLCISを認め、組織学的悪性度Grade I 6/10(60%), GradeII4/10(40%)
Grade III(0%)と比較的低い例が多く、バイオマーカーもER (+)9/10(90%) 、
PgR(+)8/10(80%)、HER2(+)1/10(10%)とluminal type がほとんどであった。
手術術式は、温存術を9/10(90%)に施行したが、そのうち2/9(22%)は断端陽
性のため全摘術に移行となった。全例、再発なく経過中である。
【結論】WHOで
も混在癌は基本的に乳管癌の亜型とされているが、今回の検討の結果、MMG や
MRの検査所見、病理学的各所見でも、比較的小葉癌の特徴を持つもつことがわ
かった。また混在する乳管癌の組織型は間質増生の目立つ硬癌が多い特徴が認
められた。今回の特徴を踏まえながら治療にあたる必要と同時に、予後も含め
た大規模な検討が求められる。
北福島医療センター 乳腺疾患センター、2 川崎医科大学 病理学 2
【はじめに】乳癌の中で浸潤性小葉癌の頻度は欧米よりやや少ない 5%前後の成
績が報告されている。その多発傾向、両側発生が乳管癌より多いことが以前
より指摘され、温存手術に際し注意が必要とされている。今回、当施設にお
ける浸潤性小葉癌の診療成績について報告する。【対象】2001 年から 2013 年
末までに北福島医療センターで治療された乳癌 1159 病巣を対象とした。非浸
潤癌 198 病巣、浸潤癌 961 病巣であり、後者のうち、浸潤性小葉癌は 63 病巣
で、全体の 5.4%であるが最近やや増加傾向がみられる。臨床病理学的因子と
局所治療の成績についてレトロスペクティブに検討した。【結果】臨床病理学
的因子の検討では、リンパ節転移率は 26.3%で浸潤性乳管癌の 24.8%と有意
差なし。ER, PgR, HER-2 の陽性率も 88.5%, 67.2%, 7.5% であり浸潤性乳
管癌の 83.3%, 74.5%, 9.3% と有意差はなかったが、Ki-67( 検索病巣数
30) は、平均値 16.9%で浸潤性乳管癌の平均 28.6%に対し有意に低い結果
だった。63 病巣に施行された手術は、Bp46 例、Bt17 例であり、温存率は
73%であった(同期間の全体の乳房温存率は 81.8%)。断端陽性を 5mm 以内
とすると断端陽性率は 34.7% となるが、追加切除を行ったのは 2 例のみで、
他は照射のみで経過観察している。温存術後の乳房内再発は 1 例で再発率
2.1%であり、小葉癌以外の温存術後の局所再発率 1.9%と遜色のない結果で
あった。【考察】この 10 年間の当施設の浸潤性小葉癌はホルモ ン 受 容 体、
HER-2 陽性率では浸潤癌と差がなく、Ki-67index は低い特徴があった。小葉
癌は多発傾向があり、従来より温存手術に際しては注意が必要とされたが、
超音波検査に加え MRI, MDCT を駆使することで的確に病巣の進展範囲を把握
することが可能であり、その結果温存率の向上と、その後の良好な局所制御
が実現できているものと考える。小葉癌は、浸潤がん病巣も的確に判断でき
ないこともあり、使用可能なあらゆる画像検査を動員して、病巣局在の正確
な診断に努力する必要がある。
384
ポスター討議
DP-1-55-01
DP-1-55-02
大垣市民病院 外科
厚生連高岡病院
渡邉 夕樹、磯谷 正敏、原田 徹、金岡 祐次、亀井 桂太郎、前田 敦行、
高山 祐一、深見 保之、尾上 俊介、大塚 新平、川勝 章司、森 治樹、
米川 佳彦、千馬 耕亮、堀米 香世子、吉川 晃士朗、寺崎 史浩
尾山 佳永子、加藤 洋介
当院における乳癌緩和ケアパスの現状について
当院における乳癌死症例の検討
DP-1-55-03
DP-1-55-04
よりよい死にむけてがん治療医ができること
1
進行再発乳癌の予後と転帰の検討:乳癌終末期医療の現状を考
える
自治医科大学 乳腺科、2 自治医科大学 緩和ケア部
1
櫻木 雅子 1、藤田 崇史 1、相良 由佳 1、田中 裕美子 1、芝 聡美 1、
上徳 ひろみ 1、宮崎 千絵子 1、竹原 めぐみ 1、丹波 嘉一郎 2、穂積 康夫 1、
水沼 洋文 1
【初めに】平成 19 年に策定されたがん対策推進基本計画では療養生活の質の維
持・向上が全体目標とされており、個別目標に地域の医療・介護サービス提
供体制の構築を目指すことも掲げられた。転移再発乳癌では、患者および家
族の生活の質を維持するために医療の質の向上のほか、地域連携を効率よく
行っていくことが重要と考えられる。今回我々は今後の地域連携の改善点を
探るために、当施設で乳癌治療を行い、最終的に死亡された患者の終末期の
状況を後方視的に確認した【対象および方法】当施設で乳癌に対し治療を行い
2007 年 1 月から 2014 年 12 月までに死亡した患者を対象とし、患者の最終的
な療養場所、連携内容、end of life(EOL) の意思確認時期につき調査を行った。
【結果】期間中 210 例が死亡した。( 他病死 47 例、連携病院への紹介 48 例、
急変により調整できず 21 例、当院での療養調整 94 例 ) 療養調整を行った
94 例中 54 例が最終療養先として緩和ケア病棟を希望し、36 例が希望通りの
調整が行えた。19 例は症状緩和もしくは精神的サポートのため事前に緩和ケ
ア科の介入があった。自宅療養を希望された 22 例中 21 例は往診受け入れ病
院が調整でき自宅療養が可能であったが、1 例は家族の介護体制が整えられず、
入院継続の調整が必要であった。また病状悪化にともない往診医の判断で最
終的に緩和病棟へ入院した症例が 1 例あった。往診受け入れ施設は 8 施設で
あった。ほとんどの症例で病状悪化により入院が必要な状況になってから
EOL の意思確認が行われていた。【考察】終末期には、様々な支援が必要な状
況となるため End of life の療養場所として病院が選択されることが多かった。
緩和ケアの考え方が浸透し、緩和ケア病棟で死亡する症例も増えてきている
が、患者・家族の病状の受け入れ状況により、潤滑な移行ができない症例もあっ
た。また、最近では自宅療養を希望する症例もあり、往診対応の調整ができ
れば、自宅での最期を迎えることが可能である。現在県内に在宅での看取り
が可能な施設は限られており、地域によっては対応できないこともある。今
後連携可能施設をさらに増やし、患者のニーズにあった療養先提供ができる
ように調整が必要である。また、患者・家族の意思決定を促すために、適切
な治療を選択するだけではなく、予測できる悪い結果をはやめに告知しサポー
トしていく必要があると考えられた。
2
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科、
筑波大学医学医療系 乳腺甲状腺内分泌外科
澤 文 1、坂東 裕子 2、古屋 舞 1、清松 裕子 1、池田 達彦 2、井口 研子 2、
原 尚人 2
【はじめに】進行再発乳がんは治癒は困難であり、Stage4 症例では 5 年生存率
は 43% 程度と報告されている。癌患者における終末期医療のあり方について
社会的な関心が高まっている。当院のような急性期病院がどのように地域や
社会と連携してゆくべきかを検討するため、今回は我々が経験した進行再発
乳癌の予後と転帰について調査する。【方法】2005 年 4 月から 2013 年 12 月ま
でに当院で進行再発乳がんに対する治療を行った 156 症例を対象に、予後と
転帰についてレトロスペクティブに検討した。【結果】2014 年 12 月現在で存
命している症例は 40 例(26%)、死亡している症例は 94 例 (60%)、転院し経
過が不明な症例は 17 例 (11%)、通院中断などで詳細不明な症例は 5 例 (3%)
であった。死亡状況の詳細が判明した 81 例については、乳癌死が 78 例 (96%)、
非乳癌死が 3 例 (4%) であった。乳癌死症例のうち、当院で亡くなった症例は
56 例 (72%)、転院先の病院で亡くなった症例は 10 例 (13%)、転院先の緩和
病棟で亡くなった症例は 8 例 (10%)、自宅で亡くなった症例は 4 例 (5%) で
あった。死亡時の年齢中央値は 58 歳(27 歳 -91 歳)であり、若年者は当院で
なくなる傾向が高い。死亡症例において遠隔転移・再発診断日からの生存期
間の中央値は 41.7 ヶ月であった。サブタイプごとの検討については、遠隔転
移・再発診断日からの生存期間中央値は、Luminal type(A/B 含 ) が 35 ヶ月、
Luminal HER2 type が 65 ヶ 月、HER2 type が 42 ヶ 月、Triple Negative
type が 51 ヶ月であった。【考察】癌の終末期医療では医療従事者からの適切
な情報の提供と説明に基づいた患者本人による決定が原則である。Best
supportive care が主体となった場合には自宅療養、医療機関での療養、緩和
ケア病棟などが選択肢となるが、自宅で最後まで過ごすことを選択する患者
は現状では多くはない。また、一般医療機関に転院を考慮する場合にも乳癌
の終末期医療、緩和医療に積極的対応が可能な医療機関は限られている。患
者が自分の状況に合わせて病院、緩和ケア病棟、自宅での在宅療養といった
様々な体制を自由に選択することを可能とするためにはがん専門病院、急性
期病院、一般医療機関、在宅医療・介護、緩和ケア病棟等が相互に連携可能
な体制の整備がのぞまれる。
385
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌患者の数は増加の一途をたどっており、その全てを急性期基幹病
院で対応するのは困難である。当院では 2009 年 1 月から乳癌手術症例に対し
て積極的に地域連携パスを導入し、診療所と連携して診察にあたっている。
また 2010 年 7 月以降は進行再発乳癌患者に対して緩和ケアパスを導入し、終
末期医療の質の向上に努めている。当院における緩和ケアパスの状況を報告
し、その有用性を検討した。【対象】2010 年 7 月から 2014 年 12 月までに当院
で緩和ケアパスを導入した担癌患者 305 人中 22 人が乳癌患者であり、検討対
象とした。【結果】進行再発乳癌に対して緩和ケアパスを導入した 22 例中 19
例は現在までに死亡しており、2 例は現在もパス継続中、1 例は転院により予
後不明であった。死亡した 19 例について緩和ケアパスの導入からの生存期間
の 中 央 値 は 79 日(5-340 日 )で あ り、 在 宅 療 養 期 間 の 中 央 値 は 54 日(0 日
-181 日)であった。最終治療からの生存期間の中央値は 66.5 日(17-488 日)
であった。看取りの場所は 5 例が在宅、14 例は病院であった。14 例の最終入
院期間の中央値は 23 日 (1-163 日 ) であった。14 例のうち 10 例は当院、4 例
は転院先で死亡した。緩和ケアパス導入目的は疼痛などの症状緩和目的が 15
例、栄養管理目的が 1 例、症状出現前の早期に導入した症例は 6 例認めた。導
入場所は 8 例が外来、14 例が入院中であったが、そのうち 2 例は退院できず
緩和ケアパスは実質的に運用できなかった。22 例中 5 例に対して緩和ケアパ
ス導入前に地域連携パスが導入されており、1 例は緩和ケアパス導入時に受け
入れ困難のため連携施設を変更したが、4 例は同じ連携施設で導入することが
できた。【まとめ】急性期基幹病院のみでターミナル患者を最期まで加療する
ことは困難であるが、緩和ケアパスによってさまざまな職種がかかわること
で、患者の望む場所での看取りが可能となる。死亡された 19 例のうち他院で
死亡した 4 例を除く 15 例に対して最期まで当院も主治医として終末期にかか
わることができた。入院死亡した 14 例の最終入院期間の中央値は 23 日と比
較的短期間であり、急性期基幹病院での入院としては許容できる範囲内であ
る。緩和ケアパスの連携施設はまだまだ少ないのが現状であり、その裾野を
広げるためには乳癌術後地域連携パスの連携施設が再発時に引き続き緩和ケ
アパスの受け皿となることが期待される。
乳癌は集学的治療により予後は改善の傾向にあるが,未だ年間死亡者は 1 万 2
千人に上る.当院における乳癌死症例について検討した.【対象】2007 年 1 月
から 2014 年 7 月に当院で治療を行い死亡した 71 例.【結果】死亡時の年齢は
平均 62.2 歳(35-89).初回治療時の臨床病期はI:7 例(9.8% ),II:27
例(38%),III:21 例(30%),IV:14 例(20%).外科治療は 63 例(88%)
に施行され,緩和治療のみは 4 例(5.6%)であった.ホルモンレセプター陽性
は 44 例(62% ),HER2レセプター陽性は 13 例(18%)で triple negative
は 14 例(20%).再発までの期間は 40.8 ヶ月(0-151:中央 30)で,全生存
期間は 82.7 ヶ月(1-234:中央 67).転移部位は肺:45 例 (63% ),肝:45
(63%),骨:51(72%),脳:27(38%),髄膜;16(23%).最も死因に寄
与した症状は脳転移:26(37%),呼吸不全:23(32%),肝不全:17 例(24% ),
癌性髄膜炎:5 例(7%)であった.終末期入院期間は 37.3 日(0-317,中央
24)で,脳転移:53.3 日(0-245),癌性髄膜炎:135 日(31-317)で,肝不
全の 17.5 日(0-49)と呼吸不全の 19.7 日(0-49)と比較して有意に長期であっ
た(p=0.0002). 入 院 期 間 が 10 日 未 満 の 症 例 は 21 例(30 %)で う ち 15 例
(71%)が 2009 年以降症例であった.また在宅死が 4 例(5.6%)あり,3 例は
過去 1 年以内の症例である.3 例に訪問看護利用され,1 例は訪問診療で看取
りとなっている.【まとめ】乳癌死症例の予後は平均約 7 年と長期であった.4
割が脳転移をともなっており,脳転移や髄膜播種を伴った場合,終末期は長
期入院となる.最近では積極的に訪問看護や訪問診療を利用し,在宅で看取
りができる症例も経験した。今後の終末期医療において地域の連携が重要と
なると考える.
ポスター討議
DP-1-55-05
DP-1-56-01
1
東京女子医科大学東医療センター 乳腺科
当院に長期入院となった乳癌終末期患者の検討
乳癌癌性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注法 (CART) の治療経験
前橋赤十字病院 乳腺内分泌外科、2 緩和ケア支援チーム、3 医療相談室、
4
マンモプラス竹尾クリニック
田川 寛子、服部 晃典、平野 明、小倉 薫、大久保 文恵、井上 寛章、
阪口 志帆、松岡 綾、上村 万里、木下 淳、清水 忠夫
池田 文広 1、安東 立正 1、佐藤 浩二 2、中井 正江 3、竹尾 健 4
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】当院は,地域がん診療連携拠点病院ではあるが,災害・救急医療,
急性期医療を担う地域の基幹病院でもある.定められた医療機関の役割と限
られた医療資源を有効に活用するため,慢性期や療養目的の長期入院は困難
になることが少なくない.今回,緩和ケア病棟を持たない当院に長期入院と
なった乳癌終末期患者の現状とその対策について検討した.
【対象】平成 19 年
1 月から平成 26 年 12 月までに当科で診療した乳癌終末期患者 68 人.平均年
齢 59 歳(29 ~ 88 歳),全例が乳癌終末期の告知を受けている.【現状】1)緩
和医療の提案は,余命が 6 ヶ月以内と予想される終末期患者に対して主治医
が行う.2)患者と家族の望ましい QOL 達成のためのアウトカム(療養目標)
を設定する.3)地域での緩和医療を希望する患者は,緩和ケア支援チームと
医療相談室に介入してもらい療養場所の選択を行う.4)当初は希望がなくと
も,その後の病状の進行に応じて適宜希望を確認する.【結果】乳癌終末期で
緩和医療を希望した患者のアウトカムは,苦痛なく過ごしたいが最も多く,
次いで家族の負担になりたくない,自宅で過ごしたいであった.療養場所と
しては,当院の一般病棟 39 人,療養型病院 8 人,在宅 8 人,近隣の緩和ケア
専門病棟で 13 人を看取って頂いた.当院に入院した患者のうち 14 人は入院
期間が 14 日以内で,在宅療養患者 8 人,療養型病院への入院待ち 6 人,いず
れも病状の急変による緊急入院であった.入院期間が 14 日以上の患者は 25
人で,最長は 80 日,平均在院日数は 34 日であった.在院日数が長期化した
症例は,急速に悪化した若年者の脳転移・癌性髄膜炎や疼痛コントロールに
難渋した多発骨転移等の患者で,いずれも地域での緩和医療のためのアウト
カムの設定が困難であった.ただし,在院日数が 30 日を超える長期入院患者
数は,地域での経過観察を希望する患者数の増加に伴い減少傾向になってい
た.【展望】現在,前橋市近隣地区には在宅療養支援診療所 57 施設,療養型病
院 19 施設,緩和ケア専門病棟を持つ病院が 4 施設ある.乳癌終末期患者の長
期在院日数の短縮には,これらの施設と更なる緩和ケアネットワークを構築
し,アウトカム設定が困難な症例に対しても可能な限り対応していくことが
必要と思われる.
【背景】転移・再発乳癌における腹膜転移は約 3.8% にみられるといわれてい
る.腹膜転移に伴う癌性腹水は治療抵抗性であることが多く,腹部膨満感,
呼吸苦,食欲不振などにより患者の QOL を著しく下げるだけでなく,抗癌治
療 の 中 止 に つ な が る 場 合 も あ る. 腹 水 濾 過 濃 縮 再 静 注 法 (Cell-Free And
Concentrated Ascites Infusion Therapy;CART) は,採取した腹水中から
可能な限り癌細胞を除去し,アルブミンを保持した状態で濃縮し体内に還元
でき,患者の QOL を保つ上で有用な症状緩和処置であり,当院でも積極的に
施行している.今回,難治性腹水に対し CART を行った転移・再発乳癌症例
について,その有用性,安全性を検討した.【対象・方法】対象は 2014 年 1 月
から 12 月までに当科で難治性の癌性腹水に対し CART を行った転移・再発乳
癌5例である.CART 施行後の自覚症状の改善,血清アルブミン値の変化,副
作用について検討した.尚,合併症対策として,プレドニゾロンコハク酸エ
ステルナトリウム 30mg の投与を行った.
【結果】平均年齢は 56 歳 (37-70 歳 ),
全例女性,卵巣転移が 2 例,肝転移を 3 例に認め,3 臓器以上の多臓器転移を
4 例に認めた.原発巣の組織型は浸潤性乳管癌 3 例,浸潤性小葉癌 1 例,粘液
癌 1 例であった.再発から初回 CART までの期間は平均 6.8 ヶ月 (4-11 年,中
央値 3 年 ) で,平均回数は 2.2 回 (1-5 回 ),1 回当たりの腹水ドレナージ量は
平均 3046ml(1600-5000ml) であった.CART は 5 例 11 回行われ,5 例中4
例に自覚症状の改善を認めた.1例は多発肝転移による肝不全の進行のため
症状改善は得られなかった.血清アルブミン値は CART 前後で著明に低下す
る症例はなく,全 11 回中 5 回は上昇を認めた.CART に伴う明らかな副作用
は認めなかった.初回 CART からの生存期間中央値は 27 日 (6-159 日 ) であり,
1 例は生存中である.【考察】乳癌癌性腹水に対する CART は副作用もなく,症
状緩和,栄養状態の改善などの点からも安全で有用な治療法であった.また,
抗癌治療の再開により生存期間延長の可能性が示唆された.
DP-1-56-02
DP-1-56-03
1
筑波学園病院 乳腺内分泌外科
乳癌治療医でありかつ緩和医療専門医である者が行う乳癌治療
における緩和ケアについて
骨転移を伴う乳癌終末期患者に対して在宅緩和ケアに介護保険
を導入した自験例の検討
ベルランド総合病院 乳腺センター、2 ベルランド総合病院 緩和ケア科
山崎 圭一 1,2、阿部 元 1
石川 智義
癌治療において、診断時からの緩和ケアの必要性を言われているが、実臨床
においては、診断時からの緩和ケアの実践は十分とは言えないのが現状であ
る。診断時からの緩和ケア導入といっても、診断時に緩和ケア医に何かを依
頼するにも、何を依頼すればいいのかと思うのが乳癌治療医の思うところで
ある。しかし実際、乳癌治療医は診断から手術、化学療法、そして緩和医療
を行わなければならないのが、一部の病院を除くと大多数がそうであると考
える。筆者も乳癌治療医としてまた日本緩和医療学会専門医として診断時か
らの緩和ケアを実践している次第である。しかし、他院から紹介されてくる
進行再発乳癌患者を見ると、そうでないことが多々見られる。再発治療にお
いては、治療医の病状認識と患者の病状認識の違いがあるのも事実である。
乳癌とは癌腫が異なるが、Weeks らの進行がん患者の化学療法に対する期待
という論文報告では、治癒の望めない転移性肺癌と大腸癌に対して化学療法
を受けた 1193 例を調査したところ、肺癌患者の 69%、大腸癌患者の 81%が、
化学療法によって治癒しないという現実を把握していなかったという内容だ
が、化学療法を受ける患者の多くが、治ることを期待して治療を受けている
ことが分かる。また患者は治癒困難という認識はなく,治ると思って多くの
犠牲を払いながら,治療を最優先にする生活を続けている。病状や予後を正
確に認識することなしには、日常生活の設計をすることが出来ず、日々の行
動に誤りを生じると考えられる。誤った病状認識に基づく患者の希望は,真
の希望とは言えないと思う。 Weeks JC, et al NEJM: 367(17) 1616-24
2012。現実、再発乳癌治療は多種多様であるため、上記の論文と同様のこと
が起こっていると推測される。乳癌診断時の告知のコミュニケーションスキ
ルの必要性、進行癌や再発乳癌の告知のコミュニケーションスキルの必要性、
進行再発乳癌の治療に対しては、治療医がしっかり死に対して真正面から取
り組むこと、また最期の時間を予測して、遅くとも最期の時を迎える 3 カ月前
には治療を終了しないと、患者の希望することは達成することはできないこ
との認識を乳癌治療医が持つことで、診断時からの緩和ケアが実践でき、患
者にとって望ましい乳癌治療の実践が可能になるのではないかと思われる。
以上、乳癌治療医でありかつ緩和医療専門医である者が行う乳癌治療におけ
る緩和ケアについて発表する。
【目的】骨転移を伴う乳癌終末期患者の在宅緩和ケアでは癌性疼痛を制御しな
がら , 介護サービスを有機的に融合させて ADL を維持するためは克服すべき
課題は少なくない . 今回 , 骨転移を伴う乳癌終末期で在宅緩和ケアを希望した
自験例に対して疼痛対策と介護サービスの視点から解析し , 在宅緩和ケアの問
題点を明らかにする 【
. 症例および方法】2000 年 4 月から 14 年 8 ヵ月間に在宅
緩和ケアを選択した乳癌終末期の自験例 40 例 (41 歳~ 91 歳 , 平均年齢;58
歳 ) のうち画像所見で骨転移と診断された症例は 11 例 (41 歳~ 85 歳 , 平均年
齢;55 歳 ) で , 第 2 号被保険者を含む 8 例 (41 歳~ 85 歳 , 平均年齢;54 歳 )
が介護保険を申請した . 1. 認定介護度 , 2. 障害高齢者の日常生活自立度 , 3.
認知症高齢者の日常生活自立度 , 4. 利用した介護サービス , 5. 疼痛制御に処
方した薬剤 , 6. 在宅期間 , 7. 介護保険を申請しなかった 3 例の主な理由を解
析した。【結果】1: 要介護 1;5 例 , 2;1 例 , 5;2 例 . 2: 生活自立 ( ランク J);6 例 ,
準寝たきり ( ランク A);1 例 , 寝たきり ( ランク B および C);1 例 . 3: 1;6 例 ,
2;2 例 . 4:訪問看護 ;3 例 , 訪問診療;1 例 , 訪問栄養食事指導 ;1 例 , 訪問歯
科衛生指導 ;1 例 , 浴室の手すり設置 ;2 例 , ギャッジベッド設置 ;8 例 , 室内段
差解消 ;2 例 , ポータブルトイレ設置 ;1 例でサービス使用せずが 5 例あった .
5: ロキソプロフェンナトリウム ;6 例 , フェンタニル貼付剤 ;7 例 , オキシコド
ン塩酸塩水和物徐放剤 ;2 例 . 6:2 ヵ月から 5 年 2 ヵ月 . 7: 介護者が常にいる ,
自分自身で身の周りのことができる , 病院と自宅との距離が近いなどが理由で
あった .【結語】骨転移を伴う乳癌終末期の自験例では , 介護保険の申請はして
も実際に介護サービスを利用している症例は多くはなかった . 在宅緩和ケアが
長期間にわたる症例もあり , 患者のニーズを把握し , 必要な介護サービス導入
を検討していきたい .
386
ポスター討議
DP-1-56-04
DP-1-56-05
1
1
中川 志乃 1、高橋 龍司 1、赤司 桃子 1、名本 路花 1、赤木 由人 2
芝 英一 1、山本 仁 1、井口 千景 1、南 マリサ 1、小池 健太 1、
松之木 愛香 1、藤田 倫子 1、大岩根 八千代 1、廣瀬 富紀子 1、藤井 直子 1、
河合 潤 2
急性期病院から地域の緩和ケアへ移行した乳癌症例の検討
乳腺専門有床診療所におけるチーム医療の実践
国立病院機構 九州医療センター 乳腺センター、
2
久留米大学 医学部 外科
2005 年 9 月に大都市にて乳腺専門有床診療所を開業して、9 年あまり経過す
る。総合病院でないと困難と考えられる乳癌チーム医療を有床診療所で実践
している。今まで取り組んできた患者中心のチーム医療について発表する。
初診予約が可能で、予約時間から視触診、MMG、エコー、必要ならエコー下
細胞診を施行して、およそ 2 時間以内に診療が完結する。診断時には MMG・
エコー技師が情報を共有し、小さな病変を見逃さないように努めている。悪
性例では他院で MR を撮影し初診後 1 週間で手術日、治療方針が決定される。
悪性と診断された患者さんには医師の告知後、看護師が 30 分以上時間を取り、
告知の内容の確認、今後の検査予定、治療を説明し、精神的なサポートも行う。
当院は医師(常勤医乳腺外科医 6 名うち乳腺専門医 5 名、麻酔科専門医 1 名)看
護師(常勤 16 名、非常勤 4 名)、クラーク 11 名(うち常勤 2 名、非常勤 9 名)、
超音波検査技師 4 名(常勤 4 名)、診療放射線技師 9 名(常勤 7 名、非常勤 2 名)、
細胞検査士 1 名、事務員 18 名(常勤 8 名、非常勤 10 名)、理学療法士 4 名(常
勤 2 名、非常勤 2 名)、2 名の薬剤師、1 名の遺伝カウンセラーを有する有床診
療所ではある。診療所ではあるが種々の職種の専門家が在職し、個々の職種
の専門性を活かして診療を行っている。有床の診療所 1 施設、外来専門の施設、
検診専門施設が近接した場所にあり、近接した他県に分院がある。これらの 4
施設は電子カルテの閲覧、画像の閲覧が相互に可能で、4 施設が有機的にそれ
ぞれの役割を果たしている。院内のコミュニケーション手段として医療機関
向けのグループウェアを用いて活用している。毎朝朝礼を行い、対面でのコ
ミュニケーションを図っている。2010 年から 2013 年まで年間約 300 例の新
規乳癌手術を施行し、そのうち約 25% は非浸潤癌であり、微小病変に対して
の高度の診断技術の存在が示されていると考える。2011 年以降同じ府県の施
設の中では最も多い乳癌手術を行い、2014 年は原発乳癌 352 例の手術を施行
した。すべての症例を乳腺外科医 ( 他院の乳腺外科医も含む )、エコー検査技師、
診療放射線技師、看護師、薬剤師、提携先の病理医が参加して術前、術後の
カンファレンスで治療方針を決定している。また月 1 回の再発および乳癌術前
化学療法カンファレンスを行い、院内での治療の均てん化を図っている。
DP-1-57-01
DP-1-57-02
女性医師のキャリア継続支援に対する労働環境改善への取り組
みと問題点
自治体との連携による乳腺専門医育成システムの構築
1
自治医科大学 乳腺科
広島大学病院乳腺外科、2 広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科
角舎 学行 1、梶谷 桂子 1、恵美 純子 1、重松 英朗 1、舛本 法生 1、
春田 るみ 1、片岡 健 1、岡田 守人 2
竹原 めぐみ、櫻木 雅子、宮崎 千絵子、上徳 ひろみ、芝 聡美、
田中 裕美子、相良 由佳、穂積 康夫
【はじめに】女性医師の増加は近年ますます加速しており、特に乳癌領域にお
ける増加は著しい。しかし女性医師特有の問題として、年齢的にキャリアを
積むべき時期と、育児などの時期が重なることが多いという社会問題も存在
する。この時期の女性医師が離職せざるを得ない状況になることなく、家庭
と仕事との両立をはかることが出来る職場環境の整備が急務である。【当院の
支援システムについて】今までも当院のシステムについては紹介してきたが、
2007 年に設立された支援センターがあり、現在は女性医師のみならず男性医
師や大学院生なども対象として稼働している。主な支援システムは、保育ルー
ムなどによる育児支援(病児保育を含む)と、時間短縮勤務などの制度である。
改善改良を重ねながらより利用しやすいシステムを目指している。病児保育
における問題点なども浮き彫りになってきたので、これらの問題点も合わせ
て提示したい。【当科における取り組みについて】当科のスタッフは現在ほと
んどが女性であり、その大半が未就学児の母であるが、これらのサポートシ
ステムを利用することによって全員がフルタイム勤務で復帰している。また
当直から宅直体制への移行や、各種カンファレンスを可能な限り勤務時間内
またはこれに近い時間におこなうよう調整し、環境整備を整えてきた。働き
やすい環境に伴いスタッフの人数も増えたが、スタッフ枠の定員など、人数
が増えたことに伴う問題点もまた浮き彫りになってきた。これらの問題につ
いても提起して検討したい。【おわりに】どんなに素晴らしいシステムが整っ
ていても、利用できなければ絵に描いた餅に過ぎない。利用しやすい環境を
整備することも重要であるが、利用する立場としてもこれに感謝しつつ出来
る範囲で出来るだけの仕事をすることで、自分自身も職場における重要な戦
力であるべく家庭と仕事の両立を目指していくことが重要である。こうして
女性医師の離職を結果的に減らすことは、女性医師のみならず男性医師、ひ
いては病院全体の労働環境の改善につながっていくと考える。
広島県は県内の医療施設と協力して切れ目のない連携した乳癌診療を行うた
めに、平成 21 年から「広島乳がん医療ネットワーク」を開始した。広島乳がん
医療ネットワークでは、医療施設を診療ステップ別に(1)検診、
(2)精密検査、
(3)周術期治療、(4)フォローアップ、の 4 つの医療機能群に整備している。
4 つの機能群にはそれぞれマンモグラフィ二重読影や乳癌学会認定医の常勤な
どの認定条件が設定されており、それぞれの認定施設は広島県のホームペー
ジから閲覧することができる。乳癌診療の中心となる周術期治療群には乳腺
専門医の常勤が必須条件となっているが、ネットワーク開始時には周術期治
療群に乳腺専門医が充足しておらず、広島大学病院乳腺外科と広島県の共同
により、平成 23 年度から「広島乳腺専門医育成プロジェクト」を開始した。【方
法】プロジェクトの活動内容は(1)アンケートによる県内の専門医取得希望
者数の把握、(2)資格取得への課題点の解析、(3)県内外の指導的立場の医
師による系統的な乳癌の講義、である。プロジェクトは平成 23 年 4 月から開
始し、プロジェクト参加者の中からの乳腺専門医資格取得者数を評価項目と
した。【結果】アンケートの結果、プロジェクト開始時の専門医取得希望者は
13 名、認定医取得希望者は 24 名であった。回答のあった 18 施設のうち、日
本乳癌学会認定施設では資格所得への課題はほとんどなかったが、未認定施
設の 83%からは「業績」、「カリキュラム、手術件数」に課題があるとの回答が
あった。プロジェクトの系統的な講義はこれまでに 13 回行われ、内容は資格
取得のガイダンスや専門医試験の内容の解説などであった。県内全域から延
べ 444 名の医師、コメディカルが参加し、参加者の中から平成 23 年~ 26 年
までの 4 年間に 9 名が専門医を取得した。プロジェクト開始時に県内 21 名だっ
た専門医も平成 27 年 1 月現在 30 名まで増加した。【考察】効率の良い乳腺専
門医育成を行うためには各医療施設、医師の努力だけでなく、自治体による
地域の乳癌診療状況、人材の把握とその情報に基づいた基幹病院からの継続
した教育的サポートの両方が必要である。
387
一般セッション(ポスター討議)
【背景】乳癌は再発後も比較的化学療法による治療効果が期待でき、長く治療
を継続していく中で様々な臓器転移を起こし、多様な症状コントロールが必
要となることも多い。当院は急性期病院であり緩和ケア病棟を持っていない
ため、終末期には地域の緩和ケア病棟のある施設への転院や在宅ケアへの移
行をお話ししている。以前は移行がスムーズに進まず、急性期病棟で亡くな
る症例も少なくなかったが、2013 年 1 月以降、当院での終末期における乳癌
死亡症例はない。【対象】2013 年 1 月から 2014 年 12 月までに当院の急性期病
棟から地域の緩和ケア病棟へ転院し、その後死亡した乳癌患者 15 例を対象と
した。【結果】死亡時の平均年齢は 61.3 歳(41 - 79 歳)。初発再発部位が骨で
あった症例は 7 例、肺 8 例、肝 2 例。死亡時の再発部位は骨 11 例、肺 8 例、
肝 7 例、脳 6 例であった。骨関連事象は QOL を低下させるのみでなく、生存
期間も短縮するという報告があるが、骨転移に対し緩和照射を行った症例は 3
例、麻薬による疼痛コントロールは 8 例、ビスフォスフォネート製剤やデノス
マブの投与は 11 例すべてに行っていた。脳転移 6 例中 1 例にγ―ナイフ、3 例
に全脳照射を行った。進行再発の診断から死亡までの 15 例の平均日数は
1208 日(74 - 3111 日)。その間 13 例に化学療法が行われており、平均レジ
メン数は 5.2 レジメンであった。ホルモン療法のみを行った症例は 1 例。治療
を行わなかった症例も 1 例あり、この症例は 30 日間入院の上で医師、薬剤師、
心理士、看護師、MSW など多職種の介入により転院調整を行った。【考察】
NCCN のガイドラインでは 3 次化学療法後に効果のない場合は BSC への移行
が奨められている。しかしながら 6 レジメン以上化学療法を行った症例の進行
再発から死亡までの平均日数は 1762 日、5 レジメン以下は 723.5 日であり、
生存期間の延長につながったと考えられる。しかし全身状態を考慮しタイミ
ングを計り治療中止を提案することも重要である。緩和医療はがんと診断が
ついた早期から始めるべきものであるが患者やその家族おいていまだ緩和と
いう言葉そのものに抵抗があるケースも多いと感じる。早期から多職種のチー
ムでかかわり、身体症状および精神症状のサポート体制を整えていくことで、
円滑に緩和医療を行うことができ、患者本人だけでなくその家族にとっても
少しでも悔いのないよう過ごしてもらうことができるのではないかと考える。
大阪ブレストクリニック、2 関西電力病院 病理部
ポスター討議
DP-1-57-03
DP-1-57-04
水島協同病院 外科
石巻赤十字病院 乳腺外科
石部 洋一、今井 智大、山本 明広、江口 孝行
佐藤 馨、古田 昭彦、玉置 一栄、安田 有理
乳腺チ-ム医療に必要なことは何かのアンケート調査と当院で
できる介入
チーム力の向上を目指した院内多診療部門・多職種による合同
カンファランス定期開催を振り返る
【はじめに】乳腺医療活動にはチ-ム活動は欠かせない。我々は、西部乳腺研
究会で乳腺チ-ム医療に必要なことについてアンケ-ト調査をしたので報告
する。【対象・方法】対象は平成 26 年 1 月 17 日第 14 回西部乳腺研究会の参加
者 50 名より回答が得られた 30 名とした。内訳は医師 3 名、検査技師 13 名、
放射線科技師 11 名、職種無記入 3 名であった。方法は乳腺チ-ムに必要なこ
とは何かの質問に対し 3 つまで自由記載にてアンケ-ト調査を行った。その回
答を当院のスタッフとともに帰納的手法を使いマインドマップにまとめた。
【結果】回答者 30 名。全回答数 85 個。アンケ-ト調査より7つのカテゴリ-
が抽出された。カテゴリ-とそれぞれの回答数はコミュニケ-ション 30 個、
知識 17 個、理解 9 個、意識 7 個、人材 6 個、技術 1 個、時間 1 個であった。特
に回答が多かったカテゴリ-はコミュニケ-ションと知識であった。結果を
視覚的に理解しやすいようにマインドマップ化を行った。【まとめ】追加検討
としてアンケ-ト調査の結果から当院で行っている介入およびこれからでき
る介入方法を検討した。アンケ-ト結果を帰納的手法として利用したマイン
ドマップをチ-ム医療のツールとして一つとして有用であり当院の活動を合
わせ報告する。
一般セッション(ポスター討議)
【背景】昨今、医療の高度化、専門分化にともない、他職種の専門家による連携、
「チーム医療」の重要性が広く認識されている。乳癌診療はその性格上からま
さにチーム医療の必要とされる分野と思われる。ここではチーム医療の実質
を担保するために当院で定期開催している多部門・職種による「乳がん合同カ
ンファレンス」について報告する。
【目的】当院にて 2011 年 11 月より週 1 回開催している症例検討・相談、業務
連絡・情報共有を目的とした「乳がん合同カンファレンス」について、議事録
を資料にその内容について調査・分析した。
【結果】1. 開催回数:2014 年 12 月まで計 145 回。2. 参加人数:1回あたり
10 ~ 20 名前後。3. 参加職種・部門:参加は任意で条件を付けていないが、
乳腺外科スタッフ ( 医師、認定看護師、外来クラーク )、緩和ケアチーム ( 緩
和医療科医師、精神科医師、認定看護師、心理療法士 )、化学療法部門 ( 腫瘍
内科医師、化学療法センター看護師、薬剤師 )、放射線治療部門 ( 医師、看護師、
診療放射線技師 )、病棟スタッフ ( 担当看護師、病棟薬剤師 )、がん相談室スタッ
フ ( 看護師、MSW,ソシオエステテシャン )、病診連携部門 ( 退院支援看護師 )、
その他の専門職種 ( 理学療法士、リンパ浮腫セラピスト、管理栄養士、認定遺
伝カウンセラー、治験コーディネーター ) など、他職種に携わる者が参加して
いる。4. 症例検討の主な討議点:(1) 集学的治療 ( 放射線、化学療法、緩和ケア )
の適応について、(2) 治療方針の変更について ( 集学的治療から BSC への変更
な ど )、(3) 終 末 期 に 関 す る こ と ( 在 宅 医 療、 他 施 設 紹 介、 介 護 保 険 申 請、
HOT 導入など )、(4) 患者・患者家族のメンタルケアに関すること、など。
【考察】合同カンファレンスが定期開催され、かつ活発な討議が行われるよう
になった。数値や臨床指標に表現はしがたいものの、患者の希望や家族背景
などを踏まえた治療方針の決定、情報共有による治療方針の統一、先々起こ
り得る状況への迅速な準備・対応などが改善されたと考える。加えて、部門・
職種を越えた職員間のチーム意識の醸成にきわめて有効であると思われる。
DP-1-57-05
DP-1-58-01
当科乳癌患者における相談支援センター利用の現状
無床乳腺専門クリニックにおける乳がん診療の現状と今後の課題
ー病診連携からー
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
2
国立がん研究センター中央病院 相談支援センター、
3
国立がん研究センターがん対策情報センター
1
2
市岡 恵美香 1、清水 千佳子 1、加藤 雅志 2,3、北野 敦子 1、前嶋 愛子 1、
笹田 伸介 1、下井 辰徳 1、橋本 淳 1、公平 誠 1、温泉川 真由 1、
山本 春風 1、米盛 勧 1、藤原 康弘 1、田村 研治 1
[ はじめに ] がん対策基本法に基づき平成 24 年に策定されたがん対策推進基本
計画において、重点的に取り組むべき課題に「がんと診断された時からの緩和
ケアの推進」と「働く世代や小児へのがん対策の充実」が挙げられている。乳
癌は壮年期患者の罹患に占める割合が多いことや罹患後の生命予後が長期に
わたるという特性のため、患者や家族を取り巻く多様で複雑な問題を支援す
る相談支援体制が非常に重要視される。[ 目的 ] 乳癌患者における当院での
相談支援センターでの現状を把握し、医療者側の介入ポイントを探索する。[ 方
法 ] 調査期間:2014 年 1 月 1 日から 12 月 31 日 対象者:相談支援センター
を利用した乳腺・腫瘍内科 乳癌患者 164 名中内容確認が可能であった 127
名 調査内容:相談支援センター利用者の相談内容 [ 結果 ] 相談者の性別
はすべて女性で、年齢層は 60 代が 33 人と最も多く、次いで 40 代 31 人、50
代 26 人であった。初発患者は 33 人、再発患者は 94 人であった。また、外来
患者が 83 人、入院患者が 44 人であった。相談の提案は医師 96 人、患者本人
28 人、看護師 3 人であった。相談内容は緩和ケアが最も多く 72 例、バックアッ
プ病院の選定 23 例、精神心理面 8 例、転院 8 例、就労 7 例、保険制度 7 例、
医療費 5 例、セカンドオピニオン 4 例、子供への告知 2 例、その他 2 例であった。
[ 考察 ] 相談内容は緩和ケア相談が最も多いが、時期としては終末期になって
からの相談がほとんどであった。また、相談の提案のほとんどは医師による
もので、その他の医療従事者からの相談の提案はほとんど認められなかった。
就労や子供への告知の相談といった、壮年期患者特有の相談も少数ながら認
められた。以上より、相談の提案者として医師以外の医療従事者の積極的関
与や、就労・医療費・子供に関する相談が可能であることを具体的に説明す
ること、またより初期段階での緩和ケアの導入が今後の介入ポイントといえ
るだろう。
388
札幌駅前しきしま乳腺外科クリニック、
KKR 札幌医療センター斗南病院 外科
敷島 裕之 1、川田 将也 2、大場 光信 2、奥芝 俊一 2
無床の乳腺専門クリニックを札幌駅前に開院し 4 年が経過した。クリニックで
行う診療は主に診断と乳がん手術後の経過観察である。マンモグラフィー、
エコー、FNAC、CNB、VAB を、また術後の定期検診とホルモン療法をクリニッ
クで行っている。CT、MRI、骨シンチ、ステレオガイド下マンモトーム生検
などは連携病院に依頼し行っている。薬物療法はゾメタ、ハーセプチンなど
はクリニックで行っているが、化学療法は連携病院の斗南病院、腫瘍内科に
依頼している。また入院が必要な手術は斗南病院の開放型病床を利用し、自
ら出向いて行っている。斗南病院には形成外科があり乳房再建の認定施設で
あり、全摘後の一期的乳房再建も可能である。また斗南病院は手術後の往診
に行きやすいクリニックから徒歩 5,6 分の大変近い距離にある。2011 年 4
月から 2014 年 12 月までの 3 年 9 カ月間での発見乳癌は 362 例であり、この
うちの 257 例の手術を連携病院で自ら行った。他の 105 例は他施設に手術を
依頼したもの、術前薬物療法中のもの、初診時 IV 期乳癌や合併症を有する高
齢者でホルモン療法中のものなどが含まれる。斗南病院とは乳がん手術時に
おける病診連携パスを作成し、互いのスタッフが患者さんの情報を共有する
ことで診療の継続性に役立っている。また、専用のインターネット回線を結
ぶことでリアルタイムに斗南病院で行った CT 検査や病理結果をクリニック内
で見ることができ、クリニックでの診療の利便性に貢献している。クリニッ
クで乳がんの診断となった患者さんの多くが、開放型病床を利用した斗南病
院での手術、そしてクリニックと連携病院での治療を選択されている。クリ
ニックと病院を行ったり来たりと決して患者さんにとって便利とは言えない
状況もある以上、今まで以上にクリニックと病院のそれぞれの良さを出した
患者さんにとって満足のいく医療が提供できるよう病診連携を深める必要が
ある。オンライでの検査のオーダリングシステムの構築や互いのスタッフの
知識、情報を共有するためのカンファレンスの実施などソフト、ハード面で
の更なる充実が必要と考える。これまでのクリニック、斗南病院での乳がん
診療の現状を報告するとともに、今後の課題についても考えてみたい。
ポスター討議
DP-1-58-02
DP-1-58-03
1
1
綿密な地域連携による経過観察中に発見された乳癌症例の検討
地域におけるチーム医療を担う人材育成のための取り組み
宝持会池田病院 外科、2 東大阪市立総合病院
4
池田 宜子 1、早田 敏 1、富永 修盛 2、古妻 康之 2
日本の乳腺外科医は、検診・精査・生検・手術・術後補助療法・経過観察・
再発治療・緩和ケアと多岐にわたる乳癌診療を求められている。診療を安全・
円滑にすすめ、かつ乳腺外科医の負担を減らすには業務を分担し連携する病
診連携が必要不可欠である。当院は地区内の癌拠点病院の連携先として一次
検診、精査、良性疾患の経過観察を担当しているが、有所見症例や画像上変
化を認めた症例に関して、両病院の乳腺外科医が合同で月 1 回の症例検討会を
行い、乳癌の早期発見に努めている。2012 年 1 月より 2014 年 11 月の間に良
性疾患患者や乳癌術後患者など 158 名が経過観察のため癌拠点病院より当院
へ紹介された。このうち、経年変化を認めた症例およびカテゴリ3以上の新
病変発生症例合計 17 名が症例検討会において要精査と判定され、癌拠点病院
に再紹介となった。精査の結果、4 例が浸潤性乳癌、2 例が DCIS 疑い、9 例
が良性と診断された。効率的な診療連携により早期に診断、加療を施行し得
た以上の症例を提示し、円滑かつ綿密な地域連携を構築することの重要性と
問題点について報告する。
浦添総合病院 乳腺センター、2 宮良クリニック、3 横浜労災病院 乳腺外科、
浦添総合病院 臨床検査部
蔵下 要 1、宮里 恵子 1、新里 藍 1、宮良 球一郎 2、千島 隆司 3、
原 真喜子 4
DP-1-58-04
DP-1-58-05
1
横浜労災病院 乳腺外科、2 よこはま乳がん学校実行委員会、
青森乳がん学校実行委員会、4 沖縄乳がん学校実行委員会、
5
特定非営利活動法人 神奈川乳癌研究グループ
1
3
3
千島 隆司 1,2,5、片岡 郁美 3、照屋 なつき 4、橋口 宏司 2、縄田 修一 2、
天野 奈津子 2、鬼頭 菜穂子 2、古川 尚美 2、松尾 典子 2、大椛 裕美 2、
野原 有起 4、宮里 恵子 4、俵矢 香苗 2、鈴木 正人 2、川嶋 啓明 3、
長谷川 よしえ 3、蔵下 要 4、宮良 球一郎 4、徳田 裕 5
長尾 知哉 1、城田 誠 2、斉藤 琢巳 2、紀野 泰久 2、小谷 裕美 2、
金刺 彩子 3、竹島 裕美 3、藤原 比佳里 3、越後 麻美 4、上井 奈穂美 5
「全人的医療」の実践をめざした多職種合同チーム医療講座
-よこはま / 青森 / 沖縄乳がん学校での経験と展望-
初診が救急搬送であった乳癌患者の検討 - 搬送から治療、緩和へ
のチームアプローチ 札幌徳洲会病院 外科・乳腺外科、2 札幌徳洲会病院 外科、
札幌徳洲会病院 看護部、4 札幌徳洲会病院 リハビリテーションセンター、
5
札幌徳洲会病院 医療福祉相談室
【はじめに】早期発見乳癌の多くは治癒が可能な時代となった。それに伴い患
者は「乳癌を克服した後の人生」を考慮しながら治療を選択する必要があり、
「全人的医療」の実践にはチームによる対応が不可欠となってきている。
【目的】
多職種合同チーム医療講座が、メディカルスタッフの知識の向上とチーム医
療の普及に有用であるか検討した。【方法】2007 年から 2012 年まで、関東周
辺の医療者を対象に多職種合同チーム医療講座 ( 乳がん学校 ) を開催してき
た。2012 年からは青森で、2015 年からは沖縄でも同様の講座を開催している。
受講者は、インターネットと FAX を用いて乳癌診療に携わる医療者の中から
募集した。講座は、手術、薬物療法、緩和医療、乳がん看護などに関する基
礎講義 (10 時間 ) と、多職種で作る模擬チームによるグループワーク ( 症例検
討 / ロールプレイ 12 時間 ) で構成されている。有用性については、講義前後
に行なわれる基礎テスト (100 点法 ) と、グループワーク後に集計する理解度 /
自己効力感アンケート (5 点法 ) によって評価した。【結果】2007 年から 2012
年までの 6 年間で本講座に参加したのは 388 名で、内訳は医師 67 名、薬剤師
80 名、看護師 144 名、診療放射線技師 61 名、臨床検査技師 21 名、臨床心理
士 4 名、理学 / 作業療法士 4 名、MSW 4 名、管理栄養士 3 名であった。基礎
テストの平均点は、講義前には 44.7 点 ( 標準偏差 16.4) であったが、講義後
には 76.0 点 ( 標準偏差 12.8) まで上昇していた。アンケートの平均は理解度
が 4.35 点、自己効力感が 4.67 点であった。青森では 2012 年から 2014 年ま
での 3 年間で 93 名 ( 医師 2 名、薬剤師 9 名、看護師 36 名、診療放射線技師 16
名、臨床検査技師 28 名、理学 / 作業療法士 2 名 ) が参加し、沖縄でも 2015 年
に 77 名の参加者で開催が予定されている。【考察】いずれの地域でも参加者は
多職種にわたり、チーム医療に対する関心度の高さを示していた。基礎テス
トの結果から本講座が職種間での知識の共有に有用であることが示された。
また、多職種で行なうグループワークはチーム医療に対する自己効力感の向
上につながっていると考えられた。一方、講座を開催する地域によって診療
体制、メディカルスタッフの役割が異なっており、各地域のニーズに対応し
た講座を計画する必要があると考えられる。【結語】多職種合同チーム医療講
座は、メディカルスタッフのモチベーションを高揚させ知識の向上とチーム
医療の普及に有用であると考えられた。
【はじめに】「がん救急」という言葉が登場して久しいが、この言葉は診断のつ
いた患者の症状に対し主に用いられている。一方、救急搬送によりがんの診
断がつく患者も少なくない。年間 5000 台程度の救急車が疾患を問わず当院に
搬送されるが、各種症状から乳癌の診断となる例が存在する。当院での救急
初診乳癌患者に対する搬送から治療、社会復帰、看取りまでの多職種でのア
プローチを報告する。【症例】2013 年 1 月から 2014 年 12 月までに当院に救急
搬送され乳癌の診断となった初診患者 10 例。年齢は 45-94 歳。搬送理由は体
動困難 6 例、原発巣からの出血 2 例、滲出 1 例、腹痛嘔吐 1 例。ステージは III
が 2 例、IV が 7 例、1 例は精査を拒否したが T4 症例であり III 以上。全例で救
急外来で乳がん疑い、組織確定後に乳がんと告知した。ステージ別では III 症
例は 2 例とも Bt+Ax を実施。1 例は SCC であり早期に再発死亡し 1 例は TAM
投与し無再発生存中。IV 症例のうち 2 例は全身状態不良、1 例は超高齢であり
そのまま看取りとなった。残る 4 例は Intrinsic subtype をもとに薬物治療、
放射線治療を行い治療継続中である。原発巣自壊による出血や滲出は 4 例あ
り、WOC ナース介入の上 Mohs ペーストを塗布しコントロールした。入院時
から麻薬を導入した 4 例のうち 3 例は骨転移、1 例は原発巣の疼痛であった。
麻薬導入例、看取り例は緩和ケアチームが介入した。独居の 3 例、統合失調症
の 1 例は初回退院時に医療社会福祉士による退院生活支援を行った。体動困難
で搬送された 1 例は骨破壊による脊髄損傷状態であったが、放射線治療、疼痛
コントロール、リハビリテーションにより車椅子自走可能となり障害者施設
に入所し、現在も通院治療中である。未受診の理由として、高齢者はがんへ
の怖れや打撲などの思い込みによるもの、若年者は自己診断したうえで流れ
に任せる「積極的な」未受診という傾向を認めた。「積極的」未受診例は告知後
むしろ否認に傾いたが、対話と症状緩和を並行して行ううちに受容し、治療
への意思決定に参加可能となった。【考察】早期発見、診断はがん治療におけ
る当然の理想ではあるが、さまざまな社会背景や理由によりその枠に入らな
い患者は常に存在する。いかに拾い上げ、想いを受け止め、治療や社会復帰、
安らかな看取りにつなげられるかは多職種による多角的アプローチにより可
能となり、医師は治療のみならず人的社会的資源をコーディネートして初め
て「主治医」となりうる。
389
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】質の高い乳癌チーム医療を実践し、更に将来にわたって継続して
いくためにはチームを構成するスタッフの育成は非常に重要である。今回、
我々の地域における取り組みについて報告する。【取り組み内容】1)乳腺画像
検討会:乳房検査技師の知識や技術の向上と人材育成を目的として、2004 年
3 月より約 11 年間継続している。毎月 1 回開催、参加者は乳腺外科医、超音
波検査技師、放射線技師、病理検査技師で平均 20 名前後が参加し、地域の他
施設からも参加している。画像と病理の対比を中心にディスカッションが行
われる。参加者に対して行った意識調査の結果では、「自分の領域の知識が深
まった」
「他の領域も勉強できた」
「医師や他職種の技師間でコミュニケーショ
ンが密になった」との回答が多かった。2)臨床検査技師と初期研修医とのエ
コー合宿:2003 年より、臨床検査部の主催で初期研修医向けに 1 泊 2 日のエ
コー合宿が開催されている。ここでは超音波検査の基礎知識から実践までの
レクチャーやハンズオンと親睦会が行われる。初期研修医が医師としてのス
タートの段階からチーム医療の大切さを実感するための重要な研修プログラ
ムとなっている。3)沖縄乳がん学校の開催:県内における乳癌の診療レベル
の向上を目指し、乳癌に対する専門知識を学ぶこと、各職種間の業務を相互
理解してチーム医療の充実をはかること、後進を育成すること、を目的として、
県内外の乳癌診療施設の共催で「沖縄乳がん学校」が開催される。これは日常
診療における患者支援を目的としたチーム医療講座で、全体講義とグループ
ワークから構成される。乳癌診療に携わるすべての職種が受講対象である。4)
精中機構 乳房超音波技術講習会(技師対象)の県内開催:遠隔地である本県の
検査技師にとって、都市部で行われる精中機構の講習を受講することは日程
的にも経済的にも負担が大きく決して容易ではない。今回、精中機構共催の
もと本県で乳房超音波技術講習会を開催し、多くの地元の技師が受講して評
価判定を受けた。【考察とまとめ】地域完結型の乳癌チーム医療体制を構築し、
これを継続していくためにチームを担う人材の育成は欠かせない。乳癌診療
に関わる医師やメディカルスタッフが高いモチベーションを持って成長し、
更に後進に伝えていく取り組みを続けていくことが、地域全体で「患者中心の
質の高い乳癌チーム医療」を実践し続けていくためには重要である。
ポスター討議
DP-1-59-01
DP-1-59-02
地域におけるチーム医療の普及のための多職種による瀬戸内乳
がんチーム医療研修会
東京都地域連携クリニカルパス運用 4 年目の現状と課題
東京女子医科大学 第二外科
1
岡山大学病院 乳癌治療再建センター、2 岡山大学病院 薬剤部、
3
岡山大学病院 腫瘍センター、4 岡山大学病院 精神科神経科
大地 哲也、神尾 孝子、野口 英一郎、塚田 弘子、神尾 英則、
亀岡 信悟
枝園 忠彦 1、渡部 聡子 1、鍛冶園 誠 2、藤原 聡子 2、西本 仁美 3、
平田 泰三 3、田端 雅弘 3、岡部 伸幸 4、露無 祐子 1、平 成人 1、
岩本 高行 1、野上 智弘 1、元木 崇之 1、松岡 順治 1、土井原 博義 1
一般セッション(ポスター討議)
【背景・目的】乳癌の治療は、医師による手術や薬物療法といった従来の医療
のみならず全人的な支援を行うことが求められるようになった。それを実現
するためには医師単独では不可能であり、多職種によるチーム医療が必要と
なる。乳がんは罹患率の高い疾患であるが、全国すべての地域で乳がん専門
のチームを確立するのは不可能である。そのためガイドライン等で定められ
た治療と異なり、チームによる患者支援には地域や施設間で差があるのが現
状である。われわれは中国四国地区の乳癌診療の質と維持と向上を目指した
NPO 法人瀬戸内乳腺事業包括的支援機構の教育研修事業の一環として岡山大
学病院腫瘍センター、中国・四国高度がんプロ養成基盤コンソーシアムの協
力のもと、医師・看護師・薬剤師のチームを対象に研修会を企画し定期的に
開催している。【内容】薬物療法・手術療法に加えて、薬剤師や看護師のチー
ムにおける役割、遺伝カウンセリングや妊孕性温存に関するサポートまで講
義を行い、外来における各カウンセリング・抗がん剤のオーダー・ミキシン
グから実際の投与までの流れおよび実際の手術まで乳がん治療の大まかな流
れを実際に見学する。また参加施設から経験症例を発表していただきカンファ
レンス形式でチームでどのように支援できるかを意見交換する、2 日間のプロ
グラム。2013 年からこれまで 3 回施行され 9 施設 27 名に参加いただいた。
【ま
とめ】地域の総合病院等で医師・看護師・薬剤師等が興味はありながらも、他
の仕事に追われて一緒にじっくりと議論できていない現状の中で、多職種で
一緒に研修会に参加することで統一した目標の下で各々の役割が明確になり、
その後の診療・チーム医療に大きな影響を与えることができていると考える。
2010 年頃より全国で 5 大癌の地域連携パスの整備が進み、東京都も独自の統
一パスを作成した。年一回基幹病院を受診する循環型のパスである。当地区
では、東京都がん診療連携協議会から実際の運用に関する手引き書に加え、
新宿、杉並、中野地区の各医師会の先生方と中核病院 4 施設からなる「区西部
がん医療ネットワーク」を組織し、地域の実情を考慮した運用の手引きを作成
した。運用開始から 4 年経過して見えてきた現状と課題について報告する。当
院では運用開始 1 年間で乳 3・肺 1・胃 33・大腸 3・肝 1・前立腺 1 のパスが
運用され、その後 2014 年度までの運用数は乳 36・肺 1・胃 46・大腸 3・肝 1・
前立腺 1・PSA3 であった。本来、患者中心の切れ目のないがん医療ために計
画されたパスであるが、期待された運用数に達していないのが現状である。
患者や連携医とのディスカッションから、連携パスの広報不足や、連携医の
役割が分かりづらい点、患者にとってのパスのメリットが分かりづらい点が
指摘され、以下の改善を行った。1)連携医の明確化:当初地域のかかりつけ
医としていた連携医を、乳癌専門のスキルをもつクリニックとした。2)広報:
院がん相談室や連携室にパスを使った循環型連携紹介のパンフレットを置い
たり、外来に医療連携のポスターの掲示を行った。そして、治療前の早い段
階で「連携パスによる2人主治医制」の紹介を行っている。3)患者メリット
の明確化:患者への説明や導入は無理をせず、パスによる通院負担軽減が明
らかに見込める患者を対象としている。都心は交通網が発達しており、通院
距離(時間)軽減というメリットはアピールしにくいことが分かった一方、仕
事や子育てのある患者にとって LHRH 製剤の注射や通院での通院曜日の自由
度が増すことはメリットであることが分かった。4)バリアンス対応の明確化 バリアンス対応には外来受付や予約センターと情報交換を行い、優先的な予
約や主治医への緊急連絡体制を構築した。バリアンスは、転居で運用中止が 1
件、受診忘れが 1 件であった。このような工夫から当科での乳癌パスの導入数
は 2012 年度 14 件、2013 年度 12 件、2014 年度 (1 月まで )11 件で一定の導
入数が維持されている。今後もパスのメリットを実感できる患者へよりよい
医療を提供するツールとして運用を続けることで運用数も増やしてゆきたい。
DP-1-59-03
DP-1-59-04
飯田市立病院 乳腺内分泌外科
1
当科における乳がん地域連携パスの現状と動向
地域医療機関と行政で構成した乳腺チームの立ち上げと取り組み
4
小松 哲、片岡 将宏、毛涯 秀一、清水 純、新宮 聖士
がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画、厚生労働省の定めたがん診
療連携拠点病院の整備に関する指針において、地域がん診療連携拠点病院の
指定要件として、我が国に多い癌(乳癌・胃癌・大腸癌・肺癌:肝癌)について、
地域連携パスを整備することが求められている。当院も平成 23 年 9 月より、
実際に地域連携パスの運用を開始し、地域かかりつけ医と当科とで協力して、
患者さんの立場に立った安心かつ質の高い医療を提供する体制を構築するこ
とを目指している。運用開始から徐々に体制を強化し、現在は当院地域連携
室の中から専従職員を 2 名配置して、平成 26 年 12 月までに 66 名の乳癌患者
に連携パスを導入した。高齢で遠方より通院を余儀なくされていた患者にとっ
ては、通院の負担が軽減し朗報である一方で、幾つかの問題点が見えてきた。
実際の運用にあたって、かかりつけ医側のメリットとなる毎月のがん治療連
携指導料加算を得るためには、患者の退院日から 30 日以内に、かかりつけ医
を決定して紹介する必要があるが、短期間でこの作業を行うことは難しい。
よって入院前に、連携パス導入可能と予想される患者を選定して、専従職員
が面談を繰り返し、導入の準備をしているが、術後の治療方針によって導入
が見送られるなど、うまくいかないことも少なくない。また、症例が増える
につれて、再発やかかりつけ医とのトラブルなど導入が中断され、当科での
フォローに戻ったケースも 3 例出現している。一方で、かかりつけ医側にも定
期的な学習会を行い、医療の質の向上を目指しているが、個々の専門や関心
の高さには違いがあり、提供する医療の質の担保も、今後の重要な課題と考
えられる。導入から 3 年経過した地域連携パスについて、当院での現状と動向
を中心に報告する
390
チーム乳腺糸島、2 たなかクリニック、3 糸島医師会病院 乳腺センター、
井上病院、5 がん研究会 がん研究所 病理部
田中 千晶 1,2、渡邉 良二 1,3、井上 健 1,4、濱田 雄蔵 1,4、冨田 昌良 1,3、
秋山 太 1,5
糸島市は福岡市の西に位置し、人口約 10 万人、福岡市のベットタウンで、都
市近郊形の農業、漁業、畜産業が盛んな地域である。最近は観光、レジャー
に人気のスポットとしても話題を集めている。糸島市の乳癌検診受診率は
23.8%(2012 年度)と低い。この地域で乳腺診療を行っている施設は 2 施設
(1
施設は当院で、2009 年 4 月に開設、精密検査まで対応)であったが、対策型
検診には関わっていなかった。2010 年より 2 施設でも無料クーポン検診の検
査を担当することになったが、それぞれが独自に検査、読影、精度管理を行っ
ていた。2014 年 4 月、地域医療支援病院である糸島医師会病院に、乳腺セン
ターが開設されたのをきっかけに、既存の 2 施設と、行政も含めた、
「チーム
乳腺糸島」を結成した。構成は医師、放射線技師、臨床検査技師、看護師、医
療事務、行政のスタッフである。糸島市にはこれまでなかった、個別検診、
就学時検診の際に保護者に対し乳癌検診の実施を開始した。チームでの検診、
読影を行うにあたり、問診票、読影用紙の統一、データ管理、結果処理、精
度管理に関して、何度も会議を行った。検診マンモグラフィの二次読影を「チー
ム乳腺糸島」で担当することとし、医師の読影の際に放射線技師、臨床検査技
師も加わり読影の際は、ポジショニングなど撮影条件のディスカッションも
行い、チーム全体のレベルアップを図っている。糸島市としての検診データ
の精度管理、精密検査の追跡調査に関しても対応していきたいと考えている。
2014 年 5 月から 11 月までのクーポン検診のデータ(バス検診を除いたチーム
で担当分)は、受診者数:353 名(クーポン券対象者:8691 名)要精検率:
15.9%、がん発見数:5 名、がん発見率:1.42%、陽性反応的中度(PPV):8.93%
であった。初年度で数もまだ少なく、
精度管理にもさらに改善が必要であるが、
この地域の検診受診率の向上、乳癌死亡率の減少を目指し、そして検診から、
精密検査、治療までを連携し地域完結型医療を目指していきたいと考えてい
る。これらの取り組みについて第一報を報告する。
ポスター討議
DP-1-60-01
DP-1-60-02
1
北海道大学 大学院医学研究科 外科学講座 乳腺外科学分野
長野県における BMI と乳癌発症リスクに関する検討
乳癌サブタイプの年齢別年次推移についての検討
信州大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科、
2
飯田市立病院 乳腺内分泌外科
郭 家志、山下 啓子、細田 充主、山本 貢、市之川 一臣、石田 直子
伊藤 勅子 1、小野 真由 1、大場 崇旦 1、家里 明日美 1、福島 優子 1、
花村 徹 1、金井 敏晴 1、前野 一真 1、新宮 聖士 2、伊藤 研一 1
DP-1-60-03
DP-1-60-04
乳癌組織中ホルモン濃度と肥満度,運動習慣,飲酒との関連
NCD による乳癌症例登録の注意点、データ収集を迅速化するた
めの工夫点
1
宮城県立がんセンター 乳腺外科、
2
宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部、
3
東北大学大学院医学系研究科 地域保健学
国家公務員共済組合 東京共済病院 乳腺科
馬場 紀行、中村 幸子、近藤 友樹
角川 陽一郎 1、河合 賢朗 1、西野 善一 2、南 優子 3
【背景】これまでの研究で、血中女性ホルモンと乳がんの発生・進展との関連
が明らかにされている。血中エストロゲンレベルは肥満女性で高く,さらに
肥満は,乳がん罹患後の死亡リスクを高めるとの報告もある。一方、近年、
乳がんの予後に関して、血中だけでなく乳癌組織中ホルモンの役割が注目さ
れている。しかしながら、組織中ホルモンと肥満度・その他の生活習慣要因
との関連は明らかではない。【目的】閉経後乳がん罹患者を対象に、乳がんの
予後に影響を与えることが示唆される要因(肥満度、運動習慣、喫煙、飲酒)
と血中及び乳癌組織中ホルモンとの関連をホルモンレセプター別に明らかに
する。【対象と方法】2008 年 11 月から 2013 年 9 月までの 50 歳以上閉経後初
発乳がん手術症例うち、研究参加への同意が得られ、癌組織から十分な検体
の採取が可能であった 126 名の血中・乳腺組織中ホルモン濃度(Estrone (E1),
Estradiol (E2), Testosterone (T), Androstenedione (A-dion)、DHEA 等 )
を測定した。また、質問紙調査により予後要因に関する情報を得、これらの
要因と血中・乳癌組織中ホルモン濃度との関連を共分散分析を用いて解析し
た。【結果】ER+ または PR+ の場合、肥満度(BMI)が高くなるほど血中及び組
織中 E2 濃度が有意に上昇していた(組織中 E2 濃度 BMI < 23.0: 54.8pg/g,
BMI ≧ 26.0: 162.6pg/g,傾向性の検定 p < 0.05)。また、血中及び組織中
E1,A-dion 濃度、組織中 T 濃度も有意に上昇していた ( 傾向性の検定 P <
0.05)。ER-/PR- では、いずれのホルモンも肥満度との関連は認められなかっ
た。運動習慣・喫煙・飲酒に関する解析では、ER+ または PR+ の場合、一週
間あたりの運動時間が短いほど有意に血中 E2 濃度が高くなっていた(3 時間以
上の運動 2.2pg/ml,運動しない 3.6pg/ml,傾向性の検定 p < 0.05)。喫煙・
飲酒は組織中 E2 濃度を高めていたが、統計学的に有意ではなかった。【結論】
結果は生活習慣がホルモンレセプター陽性乳がん患者の血中・組織中ホルモ
ン濃度に影響を与える可能性を示唆している。今後、治療内容を含めた経過
観察を行い、生活習慣及び血中・組織中ホルモンレベルと予後との関連を明
らかにする必要がある。
391
乳癌学会の症例登録が NCD に完全移行して 3 年が経過した。症例登録は次第
に臨床病期 (TNM) の記載が細かくなり、術前治療、手術時診断、実施手術術
式などの記載をするためにより専門的な知識を要するようになってきた。登
録が上手く進めば、専門医資格や学会施設認定、その更新作業に大いに役立
つばかりでなく、わが国の乳癌の疫学や治療に関する big data が集積される
ことになり、その学問的な意義は大きい。随時登録可能という点も便利である。
当院は 2014 年に施設認定の更新を行ったが、経験症例については円滑にクリ
アすることができた。しかし関連施設では data manager による入力ミスが
あり、その状況調査や事務局への説明のために時間を使わなければならなく
なった事例が発生した。data manager が交代したために、入力に不慣れで
あったことが原因であった。また連携先の個人開業医の中には外科専門医の
属性で入力していたために、手書きの症例提出を余儀なくされたという事例
もあった。当院では院内癌登録を優先しているために(こちらは事務レベルで
無事提出作業を終えている)、NCD 入力は全て筆者が行っている。乳癌学会の
登録と比較すると消化器外科関係の登録は複雑で難しく、すべての疾患の登
録を少数の data manager に一任してしまうことはいかがなものかと考えて
いる。電子カルテを使った case finding の簡易化や、登録データの記載法に
ついては第 21,22 回本総会で発表した。2014 年度の工夫点は、初診時の症
例プロフィールに詳細な家族歴を加え HBOC 対策としたこと、診断と薬物療
法のみで手術に至らなかった症例も薬物治療開始時に診断・経過シートを作
成するようにして、非手術症例の登録漏れを防止する策を講じたことである。
その他にも術式や病理所見などの細かな入力事項の改訂に注意し、不適切な
登録とならないようにした。NCD 登録は将来ますます項目が細分化され、病理、
外科手術、薬物治療、放射線治療に関する正確な知識を要するようになると
思われる。優秀な data manager の育成を急がなければならないが、医師が
全く関与しないとデータの質は担保されない。2014 年末に NCD 登録施設に
対して課金するという通知が来ているが、このために登録数を調節するよう
なことが起きるのではないかと危惧している。当初の目的である信頼できる
日本の乳癌の big data 構築のためにも対策を練っていただきたい。
一般セッション(ポスター討議)
【諸言】BMI と乳癌のリスクに関する欧米の研究で、閉経前の女性では BMI と
乳癌発症に弱い逆相関が、閉経後では正の相関があり , 肥満が閉経後の乳癌発
症リスクを増加させることが示されている。また , 最近本邦から報告された大
規模な前向きコホート研究を合わせた解析で、閉経前 , 閉経後のいずれにおい
ても BMI が大きくなると乳癌のリスクが高くなる傾向があることが報告され
ている。今回長野県の二つの医療圏の女性の BMI と乳癌発症のリスクについ
て検討した【対象・方法】2005 年 1 月から 2013 年 12 月に信大病院で手術を
施行した初発乳癌 948 例(全例女性)(S 群 ) および 2005 年 4 月~ 2013 年 12
月の飯田市立病院の初発乳癌 583 例 (I 群 ) の BMI を、同時期の同院ドック受
診 女 性 505 名 (C 群 ) を 対 照 と し て 解 析 し た【 結 果 】平 均 年 齢 は S 群 56.9 歳
(21-94)、I 群 58.3 歳(21-95)、C 群 55.6 歳(27-85).平均 BMI は、S 群
22.2(13.3-42.8)、I 群 22.5(15.2-39.0)、C 群 21.6 (13.4-38.9) で、乳癌
患者(S 群、I 群)の BMI は C 群に比べ有意に高かった(p < 0.05)。年齢階層別
BMI の 比 較(S 群 /I 群 /C 群 )で は、30 歳 以 下 20.6/18.8/19.1, 31-40 歳:
21.5/21.9/20.6, 41-50 歳:22.3/22.3/21.6, 51-60 歳:23.1/22.5/22.0,
61-70 歳:23.4/22.5/21.7, 71 歳以上:23.8/23.3/20.9 で,いずれの年齢
層においても乳癌患者の BMI が高く、特に 71 歳以上では乳癌患者の BMI は C
群より有意に高くなっていた(p < 0.05)。閉経前(45 歳未満), 閉経期(45 歳
以上 55 歳未満), 閉経後(55 歳以上)の比較では、閉経期および閉経後で , ドッ
ク受診群に比べ乳癌患者の BMI は有意に高値であった(p < 0.05)。【考察】長
野県の二つの医療圏で閉経後女性では BMI と乳癌発症の間には正の相関があ
り , 肥満が乳癌発症のリスク因子となる可能性が示唆された。乳癌予防の観点
からも生活指導に肥満防止を積極的に取り入れる意義があると考える。
【背景】日本人女性の乳癌罹患率は最近 20 年間で 3 倍増加している。我々は以
前、ER 陽性乳癌が劇的に増加していること、ER 陰性乳癌はほとんど増加して
いないことを報告した (Yamashita H et al. Ann Oncol, 2011)。今回、最近
の 10 年間で当科の経験した乳癌症例について、サブタイプ毎に年次推移を検
討した。【対象と方法】2004 年から 2014 年にかけて北海道大学病院乳腺外科
データベースに登録された連続する乳癌症例 1151 例 ( 年間症例数はいずれも
約 100 例 ) について、年齢、閉経状況、浸潤癌または非浸潤癌、ホルモンレセ
プター (ER, PgR)、HER2 の状況および Ki67 labeling index(LI)(2011 年よ
り ) を検討した。【結果】(1)ER 陽性 HER2 陰性乳癌の割合は、2004 年と 2014
年を比べると、全症例においても、浸潤癌症例、閉経前症例、閉経後症例そ
れぞれにおいても、いずれも 2004 年の約 4 割から 2014 年の約 7 割に増加し
た。一方、その他のサブタイプ (ER 陽性 HER2 陽性、ER 陰性 HER2 陽性およ
び ER 陰性 HER2 陰性 ) は、症例数の増加はなかった。(2) 年齢別の ER、PgR
および HER2 の陽性率は、各年齢層の間に差は見られなかった。(3)ER 陽性
HER2 陰性の浸潤癌症例 (n=233) での Ki67 LI は、cut-off を 14% にした場合、
14% 未満の割合は 30 ~ 49 歳で約 4 割、50 ~ 79 歳で約 6 割であった。
【結語】
本検討において、ER 陽性 HER2 陰性乳癌が増加していることが確認できた。
ER 陽性 HER2 陰性乳癌のより有効な治療法および予防法の確立 ( リスクファ
クターの同定など ) が現在の乳癌診療において非常に重要であると考えられ
る。
ポスター討議
DP-1-60-05
DP-2-61-01
喫煙による乳癌罹患リスクに対して NAT2 遺伝子多型が及ぼす
影響
完遂率を高め寛解率向上をめざした術前化学療法
(S-1+Docetaxel 逐次療法)
1
1
岡山大学医歯薬学総合研究科 呼吸器乳腺内分泌外科、
岡山済生会総合病院 放射線科、3 岡山労災病院 外科、
4
香川県立中央病院 乳腺内分泌外科、5 水島協同病院 乳腺外科、
6
近畿大学医学部付属病院 外科
2
徳島大学 医学部 胸部内分泌腫瘍外科、2 徳島市民病院
田所 由紀子 1、森本 雅美 1、中川 美砂子 1、武知 浩和 1、日野 直樹 2、
丹黒 章 1
原 暁生 1、平 成人 1、溝尾 妙子 1、西山 慶子 1、野上 智弘 1、岩本 高行 1、
元木 崇之 1、枝園 忠彦 1、松岡 順治 1、土井原 博義 1、石原 節子 2、
河合 央 3、川崎 賢祐 4、石部 洋一 5、小笠原 豊 4、菰池 佳史 6、
三好 新一郎 1
一般セッション(ポスター討議)
【背景】喫煙と乳癌罹患リスクの関係を指摘した論文は多数存在するが、一貫
した結論は得られていない。しかし近年、NAT2 遺伝子多型との交互作用を検
討した論文が海外で報告されている。これらによると、NAT2 遅延代謝型フェ
ノタイプにおける喫煙による乳癌罹患リスクの上昇が示唆されているが、現
在まで日本を含めた東アジアでの研究は報告されていない。
【方法】多施設共同で、乳癌患者 511 例、検診受診者 527 例を対象とした症例
対象研究を行った。質問紙法による喫煙歴の聴取と、血液検体の SNP の同定
による NAT2 遺伝子多型の解析を行い、既知の乳癌リスク因子とともに多変量
解析を行った。
【結果】患者群年齢:55.0 ± 12.3 歳、対照群年齢:52.7 ± 11.0 歳。患者群、
対照群ともに約 9 割が迅速代謝型フェノタイプで、約 1 割が遅延代謝型フェノ
タイプであった。Current-smoker と Never-smoker の年齢調整オッズ比は
全体で 2.54(95%信頼区間:1.46-3.81、p=0.0003)、迅速代謝型フェノタ
イプで 2.35(95% 信頼区間:1.45-3.88、P=0.0004)、遅延代謝型フェノタ
イプで 2.60(95% 信頼区間:0.31-54.1、P=0.4) であった。軽喫煙者に比べ
重喫煙者の方において、年齢調整オッズ比が高くなる傾向が認められたが、
いずれも遅延代謝型フェノタイプでは有意差を認めなかった。
【考察】Never-smoker に対する Current-smoker の乳癌罹患リスクのオッズ
比は有意に上昇していたが、NAT2 迅速代謝型においても同様の傾向が認めら
れた。海外の報告では約半数が NAT2 遅延代謝型であるのに対し、日本人にお
ける NAT2 遅延代謝型の割合は少なく、喫煙による乳癌罹患リスクの上昇に、
NAT2 遺伝子多型の寄与は少ないものと考えられた。
【目的】われわれは EC 療法による心毒性や白血病などの副作用を回避し、より
効果的で安全なレジメンを模索して、S-1+Docetaxel 療法(S-1+DOC) に注
目した。パイロットスタデイーでも S-1+DOC 療法の pCR 率は 22.5%、奏効
率は 77.5% であり、治療効果が短期間に発現するという EC 療法と同等以上
と思われる成績を示した。しかし、皮膚・爪の障害や消化器症状などの副作
用を認め、経口剤である S- 1のコンプライアンス維持が課題と思われた。完
遂率を高めるために副作用に対するサポーテイブケアをしっかり行い、寛解
率 向 上 を め ざ す た め に 4 コ ー ス で 効 果 が な い も の に は EC か、taxane +
trastuzumab (HT) を必要に応じて追加し、逐次療法の治療効果と安全性の検
証を行った。【対象と方法】前治療歴のない手術可能な stage II-III の 20 歳以
上 75 歳以下の女性乳癌。全例に Informed Consent のうえ文書による同意を
取得した。3 週間を1コースとし docetaxel (40mg/m2) day1、S-1 (80mg
as FT/m2/day)(day1 -14)を投与した。4 コース終了後に RECIST にて抗腫
瘍効果を判定し、CR は手術、PR は S-1+DOC 療法4コース追加、SD、PD の
HER2 陰性症例では EC 療法 4 コース、HER2 陽性症例では HT 療法4コース追
加した。Primary endpoint は pCR 率、Secondary endpoints は奏効率、安
全性、乳房温存率、経口剤の内服コンプライアンスとした。【結果】2009 年 5
月から 2013 年 10 月までで 70 例が登録した。S-1+DOC 4 コース終了後、CR
4 例、PR 49 例、SD 14 例、PD 3 例だった。SD 症例の 9 例、PD 症例の 2 例
は EC 追 加、SD 症 例 の 5 例、PD 症 例 の 1 例 は HT を 追 加 し た。pCR 率 は
32.9%、奏効率は 80.0% だった。サブタイプ別に pCR 率をみると、Luminal
type では 20.0%、Luminal HER2 type では 40.0%、HER2type では 54.5%、
Triple negative type では 42.8% だった。乳房温存率は 82.9% だった。S-1
を 80% 以上服用できた症例は 72.9% だった。
【結語】S-1+DOC 療法は標準療
法とされる EC+DOC 療法(pCR 率 13-26.1%、奏効率 60-80.4%)と比較し
ても pCR 率、奏効率において良好な成績が得られた。Luminal タイプにおけ
る EC+DOC 療法の pCR 率は 3.8-12.6 % であり、本レジメンの Luminal タイ
プへの有効性が示唆された。
DP-2-61-02
DP-2-61-03
1
1
原発性乳癌に対する FEC followed by Docetacel 75mg/m2
± Trastuzumab 併用療法による術前化学療法の検討
3
HER2 陰性原発性乳がんに対する術前化学療法としての TC 療法
の有効性と安全性に関する検討
栃木県立がんセンター 乳腺外科、2 栃木県立がんセンター 腫瘍内科、
栃木県立がんセンター 病理診断科
熊本赤十字病院 乳腺・内分泌外科、2 熊本大学医学部附属病院、
JCHO 久留米総合病院、4 福岡大学病院、5 北九州市立医療センター、
6
久留米大学病院、7 九州医療センター、8 戸畑共立病院、9 大分県立病院、
10
九州乳癌研究会(KBC-SG)
3
北村 東介 1、安藤 二郎 1、山中 康弘 2、原尾 美智子 1、矢野 健太郎 1、
星 暢夫 3、五十嵐 誠治 3
【 目 的 】当 院 で 4 年 間 に 行 っ た FEC 100mg/m2 followed by Docetaxel
75mg/m2(HER2 陽性は Trastuzumab 併用)による術前化学療法の治療成績
を検討し、得られた結果から問題点を明らかにする。【対象と方法】2009 年
10 月~ 2013 年 9 月に原発性乳癌に対して 824 例の手術を行い、うち 141 例
に術前化学療法として前述のレジメンを行った。男性乳癌 2 例を除く 139 例
(16.9%)を今回の解析対象とした。ER、PgR は免疫組織化学法にて 10% 以
上を陽性とし、少なくとも一方が陽性である場合をホルモン受容体(HR)陽性
とし、Her2 は免疫組織化学法で 3 +もしくは FISH 陽性を陽性とした。HR と
Her2 の発現状況により、HR 陽性 Her2 陰性を Luminal サブタイプ(L サブタ
イプ)、HR 陽性 Her2 陽性を Luminal/Her2 サブタイプ(LH サブタイプ)、HR
陰 性 Her2 陽 性 を Her2 サ ブ タ イ プ(H サ ブ タ イ プ )、HR 陰 性 Her2 陰 性 を
Triple-negative サブタイプ(TN サブタイプ)とした。pCR の定義は ypT0/is
ypN0(乳腺内と腋窩リンパ節における浸潤癌の消失)とした。【結果】年齢中
央値は 51 歳(26 ~ 69 歳)。組織型は浸潤性乳管癌:131 例、浸潤性小葉癌:
2 例、粘液癌:2 例、浸潤性微小乳頭癌:3 例、基質産生癌:1 例。臨床病期
は IIA:34 例、IIB:54 例、IIIA:19 例、IIIB:10 例、IIIC:22 例。化学療
法の完遂率は 89.2%(124/139 例)。PD 症例が 6 例、うち 5 例は TN サブタイ
プでうち 3 例が原癌死。観察期間中央値は 36 か月(5 ~ 61 か月)。再発は 13 例、
死 亡 は 7 例。 全 体 の 3 年 無 再 発 生 存 率 は 89.2%、TN サ ブ タ イ プ の そ れ は
73.5%。pCR 率 は 18.0%(25 例 )。 サ ブ タ イ プ 別 の pCR 率 は H:11/25
(44.0%)、TN:7/24(29.2%)、LH:4/21(19.0%)、L:3/69(4.3%)。
pCR の予測因子(単変量解析)として核異型度(p < 0.01)、サブタイプ(p <
0.01)、終了時原発巣治療効果(p = 0.004)に有意差を認めた。また再発危険
因子(単変量解析)として核異型度(p < 0.01)、サブタイプ(p = 0.048)、終
了時原発巣治療効果(p = 0.022)に有意差を認め、Cox 比例ハザードモデル
による多変量解析では核異型度のみ(p = 0.002)に有意差を認めた。【結論】
サブタイプ別の pCR 率は従来の報告と同様の結果であった。TN サブタイプの
無再発生存率は他のサブタイプに比べ有意に(p = 0.048)不良で、pCR 率は 3
割程度であったが、約 2 割に化学療法抵抗性がみられた。TN サブタイプに対
してはさらに pCR 率を上げる治療戦略と術後補助療法の検討が必要と考えら
れた。
川添 輝 1,10、山本 豊 2,10、田中 眞紀 3,10、田中 俊裕 4,10、古賀 健一郎 5,10、
唐 宇飛 6,10、藤井 輝彦 7,10、高山 成吉 8,10、増野 浩二郎 9,10、光山 昌珠 5,10、
田村 和夫 4,10
【目的】ER 陽性 HER2 陰性、および ER 陰性 HER2 陰性でリンパ節転移陰性の
原発性乳癌を対象として、術後治療として普及しつつある TC(ドセタキセル
/シクロフォスファミド)を術前化学療法に使用し、その効果と安全性を確認
す る。【 対 象 】T1-3,N0 ま た は N1(ER+),M0 で、IHC 法 ま た は FISH 法 に て
HER2 陰性が確認された原発性乳癌 35 症例(36 乳房)。術後病理判定で nonpCR の場合は、アンスラサイクリンレジメンの追加は許容する。
【方法】中央登録方式による多施設共同臨床第2相試験(UMIN000007103)
。
ドセタキセル 75mg/m2、シクロフォスファミド 600mg/m2 を1サイクル
21 日とし、4サイクル施行する。主要評価項目は臨床的奏効率 (ORR)。副次
評価項目は乳房温存率、病理学的完全奏効(pCR)率、ER 発現状況別の ORR・
乳房温存率・pCR 率、安全性、5年無再発生存期間、全生存期間とした。
【結果】不適格例、同意撤回例、手術拒否例は認めなかった。年齢中央値 54 歳、
閉経前/後 :15 / 20、リンパ節転移なし/あり :15 / 21、ER 陽性 / 陰性 :31/
5、治療前予定術式 Bp/Bt:27/9、治療完遂 97%。治療中止 G2 皮疹(蕁麻疹)
1例。Relative Dose Intensity 94.0 ± 9.5% であった。主要評価項目である
ORR は 66.7%(95%CI=50.3-79.8%) であった。副次評価項目は全摘→温存
16.7%、温存→全摘 4.2%。pCR 率 11.1%。ER 陽性で ORR 64.5%、pCR
率 6.5%、ER 陰性で ORR 80%、pCR 率 40%。G3 以上の有害事象:下痢
3%、倦怠感 3%、白血球減少 66%、好中球減少 75%、発熱性好中球減少
症 26%、貧血 3%。G-CSF は 28.7% に投与された。5年無再発生存期間、
全生存期間は解析対象未到達である。
【結論】HER2 陰性乳がんに対する術前化学療法としての TC 療法は、ET(EPI
60/DOC 60)療法とほぼ同程度の臨床効果を確認した。乳房全摘から温存術
への移行を若干増加させていた。有害事象は比較的軽度で安全に施行できる
レジメンである。
392
ポスター討議
DP-2-61-04
DP-2-61-05
大阪ブレストクリニック 看護部
福井赤十字病院
中谷 裕子、大岩根 八千代
金 祥恵、上口 美恵
術前化学療法を受ける乳がん患者の就業状況と必要とされる支
援と課題
外来化学療法を受ける乳がん患者へのオリエンテーションの文
献検討
【目的】当院で行っている外来化学療法の約 4 割を乳がん患者が占めている。
化学療法開始前の全ての患者に対してオリエンテーションを行っている。文
献検討によりオリエンテーションに必要な要素を抽出し今後のオリエンテー
ション内容に活かす基礎資料とする。【方法】「乳がん」、
「化学療法」、
「思い」、
「サポート」、「生活」、「社会的役割」、「患者指導」、「苦痛」、「不安」、「困難」
のキーワードで文献検索を行い原著論文のみ選定した。選定基準を「過去10
年に発表された論文」、「乳がん患者を対象」、「看護援助に関する考察や示唆
が記述されている」、
「がん患者の QOL に関する記述がある」ものとし 16 件を
総覧した。【成績】術前、術後化学療法は QOL-ACD の得点で「活動性」および「身
体状況」は良好であった。一方、
「経済的負担」や「社会性」に関する項目は低かっ
た。治療効果と QOL の関係は、治療効果が高いほど QOL の向上に繋がってい
た。感情尺度を悪化させる副作用症状は消化器症状であった。また、症状が
出現した時点で家族のサポートが不十分であった場合、その存在がかえって
患者のさらなる負担となっていた。再発時の化学療法では、治療を継続する
事が、がんの再発を改めて認識する体験であり衝撃が大きく現実を受け止め
られずにいる心境を示していた。これは、がんとの共存を目指して治療にか
ける切迫した状況が推測されると共に、生命の危機を見据えながらも生きた
いという強い願いを抱いている結果であった。【結論】1. 術前・術後の患者に
対して QOL を低下することなく治療が完遂できる為に、治療開始前にスケ
ジュールや具体的な副作用症状、症状出現時期や対処方法について情報提供
を具体的に行うこと。2. 術前・術後の患者に対し、患者を取り巻く家族に患
者同様に治療に対する理解を求め、家族の存在が治療完遂するために必要で
あることの情報提供を行うこと。3. 術前・術後の患者に対し安心して自宅療
法ができるようなサポート体制を整備すること。4. 再発の患者に対しては、
抗がん剤治療が必ずしも十分な治療の効果が期待できるとは限らないことか
ら治療効果への不安を抱いている、治療ががんの再発を再認識しなければな
らない体験であるという特徴を十分理解して患者に関わること。5. 再発の患
者にとって治療を継続することで経済的負担があることを理解し、必要なサ
ポートが受けられるように関連部署との連携を図ること。
DP-2-62-01
DP-2-62-02
当科における原発性乳癌に対する術前化学療法
HER2 陰性乳癌に対する Nab-Paclitaxel followed by EC 療
法による術前化学療法の単施設臨床第 2 相臨床試験
1
東邦大学医療センター大森病院 一般消化器外科、
2
東邦大学医療センター大森病院 病理学講座、3 相模原中央病院 外科
1
2
尾作 忠知 1、緒方 秀昭 1、三上 哲夫 2、金澤 真作 1、久保田 伊哉 1、
馬越 俊輔 1、片岡 明美 1、高塚 純 3、中野 太郎 3、根本 哲生 2、
金子 弘真 1
3
【目的】当科における原発性乳癌に対する術前化学療法(以下 NAC)64 例にお
ける病理学的奏効率と安全性、生存率について再検証した。【対象と方法】
2006 年から 2012 年までに当科にて NAC を行った 64 例を対象とし、後方視
的に臨床病理学的背景と奏功性、生存率、有害事象について検討した。【結果】
観察期間は 7 か月- 8 年(中央値 4 年)、年齢中央値 50 歳(32-69 歳)、ホルモ
ン受容体陽性群:44 例、ホルモン受容体陰性群:20 例であった。NAC とし
て FEC100(5-FU:500mg/m2、ファルモルビシン:100mg/m2、エンド
キサン:500mg/m2)のみの症例は 6 例で、FEC100 と Taxan の順次投与例
は 58 例であった。HER2 陽性例では 2006 年から 2010 年までの 8 例では術後
に、それ以降は術前にトラスツズマブの投与がなされていた。全奏効率
(CR+PR)は 52/64(81.2 %)で あ り、 全 pCR 率 は 6/64(9.3 %)で あ っ た。
FEC100 無効例は 1/64(1.5%)であり、Taxan 無効例は 3/58(5.2%)であっ
た。生存率は 54/64(84.4%)で、ホルモン受容体陰性群に pCR 率が高い傾向
が認められたが、pCR の有無、ホルモン受容体発現の有無では生存率で違い
が無かった。Grade3 以上の副作用は、好中球減少症 47/64(73%)、発熱性
好中球減少症 4/64(6.2%)、味覚障害 2/64(3.1%)、下痢 2/64(3.1%)が主
なものとして認められた。【まとめ】現状では生存率、p CR、ホルモン受容体
発現に明らかな関連性は認められていないが、今後、症例の蓄積と長期予後
の経過観察に関して注意深く検討する必要があると思われる。
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科、
埼玉医科大学 医学部 乳腺腫瘍科、
埼玉医科大学国際医療センター 病理診断部、4 県立広島病院 乳腺外科
島田 浩子 1、上田 重人 1、佐伯 俊昭 1、重川 崇 1、竹内 英樹 2、
廣川 詠子 1、杉谷 郁子 1、杉山 迪子 1、淺野 彩 1、山口 慧 1,4、高橋 孝郎 1、
松浦 一生 4、長谷部 孝裕 3、大崎 昭彦 1
【目的】当院で術前化学療法として施行した nab-paclitaxel followed by EC の
効果、安全性について解析した。【対象と方法】切除可能な HER2 陰性の原発
性乳癌 (stage2 から 3) を対象に 2011 年 11 月~ 2014 年 1 月までに 53 症例を
登録した。使用レジメンは nab-paclitaxel 260mg/m2 を 3 週間毎 4 サイク
ル投与後に Epirubicin 90mg/m2+Cyclophosphamide 60mg/m2 を 3 週
間毎に 4 サイクル投与した。主要評価項目として組織学的完全奏効率(pCR)
を、副次的評価項目として臨床的奏効率、乳房温存率、有害事象などについ
て検討した。【結果】登録した 53 症例のうち、pCR、Grad2b はそれぞれ 3
(5.7%) 、7 (13.2%) であった。Overall objective response rate は 71.7%
であった。nab-paclitaxel を 2 コース後に PERCIST に基づき FDG-PET で評価
すると、complete metabolic response は 16%、partial metabolic response
56% であった。nab-paclitaxel で認めた Grade3 の有害事象は、筋肉痛、末梢
神障害、
発熱性好中球減少症がそれぞれ 1 (1.9%) であった。アナフィラキシー
で中止となった症例は認められなかった。
【考察】nab-paclitaxel followed by
EC のレジメンは、組組織学的効果判定 Grad2b 以上は 10(18.9%)と効果を認
めたが、pCR 率は低かった。しかし、安全に施行可能なため、他の Taxan 薬剤
の代用となりえる可能性がある。
393
一般セッション(ポスター討議)
【目的】術前化学療法を受ける患者の就業状況と治療中に仕事を休むことに
なった要因、仕事と治療を両立させるために必要な情報を明らかし、看護へ
の示唆を得る。【方法】術前化学療法を受ける時点で就業していた患者 12 名に
アンケート調査を実施した。【倫理的配慮】倫理委員会で承認を得た。【結果】
対象者の年齢は 20 代 1 名、40 代 5 名、50 代 6 名、雇用形態は正社員 7 名、パー
ト 3 名、自営業 2 名、受けた治療は WeeklyPTX+FEC 群が 10 名、DTX+FEC
群 2 名であった。治療継続のために医療者に相談した患者は 8 名で内容は仕事
の継続が可能か、治療期間やスケジュールの調整、予想される副作用や出現
時期などであった。必要な情報は高額医療制度と医療者控除、傷病手当で、
医療者に望むことは副作用で仕事を休む時期、会社や他の人がどのように仕
事を継続しているのか知りたい、上司に報告する際のアドバイスが欲しいで
あった。就業状況は WeeklyPTX 中に仕事を休んだ患者は 5 名、休んだ日数の
中央値は 4 日であった。FEC 中は 3 名が仕事を休まず、残り 6 名の仕事を休ん
だ日数の中央値は 4 日、1 名は休職した。また DTX 群 2 名は、DTX 中に休ん
だ日数は 3 日と 16 日、FEC では 1 名は休まず 1 名は休職した。仕事を休む理
由となった症状は両群とも疲労感が多く、PTX では関節痛、筋肉痛、しびれ、
FEC では食欲不振、発熱であった。また仕事を継続するための取り組みとして、
治療スケジュールを医療施設と相談する、出勤の曜日や時間帯の変更、職場
での病名公表などを行っていた。仕事を継続する上で困難と感じている項目
では、職場の仲間に負担をかけている、昇進・給与に影響を及ぼすというポ
イントが多かった。【考察】治療と仕事の両立のために患者が必要としている
情報は、医療費や仕事を休むことに対する補償についてであったが、看護師
から事前に説明を受けた例は少なかった。化学療法は患者を経済的に圧迫す
る可能性が高い。看護師はこのことを踏まえ、治療開始前に患者に医療費の
控除や休業手当などの情報を提供することが望ましい。また副作用のために
仕事を休んだ日数が多いため、症状マネージメントを確実に行い支援するこ
とが重要であり、患者が感じている仕事への困難さを踏まえて精神的支援を
していくことが必要である。
ポスター討議
DP-2-62-03
DP-2-62-04
1
1
2
2
乳癌化学療法における NK1 受容体拮抗剤の有用性についての臨
床的検証
アロマターゼ阻害剤別にみた骨代謝の特徴―アレンドロネート
に関するランダム化試験結果から 大阪市立大学大学院腫瘍外科、
大阪市立大学医学部附属病院化学療法センター、
3
大阪市立大学医学部附属病院薬剤部
齊藤 光江 1、松岡 淨 2
森崎 珠実 1、柏木 伸一郎 1、浅野 有香 1、中野 妙子 2、川上 紀子 3、
光川 康子 3、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、小野田 尚佳 1、
平川 弘聖 1
一般セッション(ポスター討議)
<背景>アロマターゼ阻害剤(以下 AI 剤)で補助療法中の閉経後乳癌は、続発
性骨粗鬆症予備軍として、安全で実現可能な支持療法が示される必要がある。
<目的> AI 剤服用中乳癌患者の骨密度低下予防に、アロマターゼ+ VitD が
VitD より優れていることを証明する目的で実施されたランダム化比較試験の
サブ解析で、3 種の AI 剤別に骨代謝の特徴があるか否かを解析した。<対象
> DEXA 法で測定した骨密度が同年齢の平均を下回る AI 剤 (ANA,EXE,LTZ)
服用中の閉経(自然、人工)後補助療法中の患者(歯科疾患を有さない者)に文
書による同意取得後、(A 群 ) 活性化 VitD1 μ g + weekly アロマターゼ 35mg
群、(D 群 ) 活性化 VitD1 μ g 群に非盲検無作為割付し、6 ヵ月ごと DEXA(腰椎
正面 L2,3,4)、3 ヵ月ごと骨吸収マーカー (1CTP, 尿中 NTX)、骨形成マーカー
(BAP)、消化器症状、歯と骨関節症状の問診を行った。ランダム化(非盲検)
の割付調整因子は、年齢≧ 70、AI 剤の種類、骨塩量 < -2SD ≦(YAM に対して)
と し、 統 計 解 析 は mixed effect model( * )を 用 い て 行 っ た。 登 録 期 間:
2008 年 3 月 1 日~ 2010 年 9 月 30 日、観察期間:2008 年 3 月 1 日~ 2012 年
9 月 30 日。登録症例数は 58 例(A 群 26 例、D 群 26 例)。本試験は 2007 年 11
月 の 当 院 倫 理 委 員 会 で 承 認 さ れ て い る。 < 結 果 > ANA20 例、EXE15 例、
LTZ23 例が A,D 群にランダム割り付けされた。転移再発や治療薬の副作用、
経済的な理由などで 2 年間の試験が完遂できなかった症例が 15 例あった。非
完遂例も含めての ITT 解析に耐えられる統計的処理(*)を行った結果、DXA
と BAP,NTX の変化は良く相関し、アロマターゼは有意差をもって活性化 VitD
への上乗せ効果があると判断できる結果であった。D 群において、LTZ は EXE
や ANA よ り も DXA 低 下 傾 向 が 強 く 認 め ら れ、 ア ロ マ タ ー ゼ に よ る
BAP,NTX,DXA の改善効果は、LTZ > ANA > EXE の順に顕著に認められた。
【背景】癌化学療法中の制吐療法の基本は発症してからの対応ではなく,適切
な制吐薬を予防的に使用することが重要であると考えられている.2010 年に
『制吐薬適正ガイドライン』が発表され,本邦における標準的な治療が確立さ
れた.高度催吐性リスク症例に使用される選択的 NK1 受容体拮抗剤アプレピ
タント ( 以下 APR) は,急性・遅発性嘔吐の予防と緩和に有効な制吐薬であり,
乳癌化学療法においても広く使用されている.しかしながら APR の使用の有
無による臨床的検証の報告は未だ少ない.当科においても APR は,高度の催
吐性リスク症例に対して 2011 年 1 月より標準的に導入している.今回われわ
れは,FEC レジメンによる乳癌術前化学療法施行例において APR 使用の有用
性について臨床的検証を行なった.【対象と方法】高度催吐性リスクレジメン
にあたる FEC100 にて術前化学療法を行なった初発乳癌症例 123 例を対象と
した.制吐効果について,APR 導入前 (2007 年 4 月から 2009 年 8 月 ) の症例
を historical control として,導入後 (2011 年 1 月から 2014 年 9 月 ) の症例
との比較検討を行なった.制吐効果は,CTCAE ver4.0 を用いて定量的に評価
した.APR 使用の有無,患者背景因子と悪心・嘔吐の相関について,カイ 2
乗検定やロジスティック回帰分析を行なった.【結果】APR 投与症例は 53 例
(43.1%),非投与症例 70 例 (56.9%) であった.年齢は 26-71 歳 ( 中央値 53
歳 ) であった.Grade1 以上の嘔吐は 53 歳未満,APR 非投与群,非トリプル
ネガティブ乳癌,閉経前に有意に多く出現した.これらの因子でロジスティッ
ク解析を行った結果,APR(p=0.007)とサブタイプ(p=0.03)は独立危険因
子であった.【結語】乳癌術前化学療法において,APR 投与により適切な予防
的制吐効果が得られる可能性が示唆された.
DP-2-62-05
DP-2-63-01
術前化学療法後の再発症例についての検討
1
順天堂大学 医学部 乳腺内分泌外科、
順天堂大学 医学部 臨床研究支援センター
多レジメン治療後治療抵抗性再発乳癌に対するプラチナ製剤併
用療法(GEM + CBDCA、ERI + CBDCA)の使用経験
福岡大学医学部 呼吸器乳腺内分泌小児外科、2 福岡大学医学部 放射線科
1
吉永 康照 1、榎本 康子 1、中村 茉美花 1、山下 眞一 1、岩崎 昭憲 1、
藤光 律子 2
2
【目的】術前化学療法は、従来は局所進行乳癌に対して行われていたが、近年
では乳房温存率の向上や薬物治療効果の確認などの利点が認められ、積極的
に行われるようになった。さらに surrogate marker としての pCR の意義は、
subtype により異なってくることも報告されている。今回当科で行われた乳
癌術前化学療法施行例の中で、術後に再発した症例の検討を行ったので報告
する。【対象と方法】2000 年 2 月より 2014 年 11 月までに術前化学療法を施行
した 94 例(IV 期は除外)を対象とした。全例女性で平均年齢 54.1 歳(32 ~
76 歳)、平均腫瘍径 4.1cm(0.9 ~ 14cm)。病期は I/IIA/IIB/IIIA/IIIB/IIIC
それぞれ、9/30/26/10/15/4 例。subtype は LA/LB/LH/H2/TN はそれぞれ、
29/8/11/20/26 例。レジメンは anthra+taxane/anthra/taxane はそれぞれ
69/14/11 例で、Herceptin は 17 例に術前に、8 例は術後のみに投与された。
手術は 59 例が乳房切除、35 例が乳房温存手術を受けた。術後観察期間中央値
は 1514 日。生存率は Kaplan-Meier 法で、有意差はカイ 2 乗検定と Cox 比例
ハザード法によった。【結果】病理学的効果判定は、Grade 0/1a/1b/2a/2b/3
は 12/23/15/16/4/24 で、Grade3(ypT0ypN015 例、ypT0/isypN07 例、
ypT0/is2 例)は subtype の H2 9 例、TN10 例に多く有意差があった。再発は
21 例で、平均年齢 50.9 歳、平均腫瘍径 4.6cm、I/IIA/IIB/IIIA/IIIB/IIIC は、
2/3/6/4/5/1 例。LA/LB/LH/H2/TN は、10/0/3/3/5 例。再発部位は、局所
領域のみ 6 例、遠隔 15 例であった。Grade 3 に再発はなかった。再発例と非
再発例と比較し、カイ 2 乗検定では化学療法後の Grade 3 とリンパ節転移に
有意差を認めたが、Cox 比例ハザード法ではリンパ節転移のみに有意差があっ
た。化学療法後リンパ節転移の無かった症例の 5 年無再発生存率は 87.7%に
対して、転移のあった症例は 57.7%であった。(p=0.0016)【結語】今回の術
前化学療法症例の検討で、再発例に subtype による差は見られなかったが、
治療効果 Grade 3 と治療後のリンパ節転移陰性例に有意に再発が少なかった。
今後術前化学療法の適応や方法がさらに改良されてくると思われるが、特に
リンパ節転移遺残例に対する追加治療を検討する必要があると考えられた。
国際医療福祉大学 三田病院 乳腺センター、
東京大学附属病院 内分泌乳腺外科、3 獨協医科大学越谷病院 乳腺センター
木村 聖美 1、内田 惠博 1、白川 一男 1、小川 明子 1、石橋 祐子 2、
菊池 弥寿子 2、丹羽 隆善 2、西岡 琴江 2、多田 敬一郎 2,3、小川 利久 3
【初めに】乳癌再発病変は治療経過中に、あるいは転移病巣によりそのプロファ
イル(ER、PgR、HER2 など)が変化することが知られている。その変化の多
くはホルモンレセプターの陰性化、HER2 増幅の陰性化で、いわゆるトリプル
ネガティブ(TNBC)になるものがあると考えられる。【背景】タキソテール+
カルボプラチンの術前投与で pCR は TNBC で 54.6%、HER2 陽性で 24.1%、
ER+HER- で 19.4 % が 報 告 さ れ た(Cancer. 2010 Sep 15;116(18):422737)。最近、トリプルネガティブに対してプラチナ製剤を用いたレジメンが多
く検討されていて、NCCN Breast Cancer 2013 version3 から、ゲムシタビ
ン+カルボプラチン療法が記載された。更にエリブリン+カルボプラチンの
術前投与のデータが ASCO 2012、SABCS 2013 で報告された。【選択対象】1)
原発巣が TNBC、2) 巣が ER+ and/or HER2+ で転移巣の再生検で TNBC、3)
原 発 巣 が ER+ and/or HER2+ で 各 種 の 抗 が ん 剤 治 療 や ホ ル モ ン 療 法 が
refractory になった症例。【レジメン】1) ゲムシタビン+カルボプラチンは、
day1,8 にゲムシタビン 1000mg/m2 +カルボプラチン 2AUC、3 週毎投与。2)
エリブリン+カルボプラチンは、day1,8 にエリブリン 1.4mg/m2 +カルボ
プラチン 2AUC、3 週毎投与。これらのレジメンは当院の倫理委員会で検討さ
れ、使用許可を受けた。【レジメンの選択方法】既にエリブリンが使用されて
いる例ではゲムシタビン+カルボプラチンを、使用されていない症例ではエ
リブリン+カルボプラチンを選択し、使用した。【現在の治療症例状況】ゲム
シタビン+カルボプラチンは 7 例、エリブリン+カルボプラチンは 2 例現時点
で 投 与 中。 原 発 巣 は 全 例 が ER 陽 性、 う ち HER2 陽 性 は 2 例。 転 移 病 巣 が
TNBC 化したものは 3 例、変化していなかったものは 3 例。残りの 3 例は転移
病巣の再プロファイル検討が困難であった。【治療効果】投稿時点で 3 サイク
ルまで行われている例が多く、6 例に腫瘍マーカーの低下あるいは胸水の減少、
腫瘤縮小などが見られた。【結論】この二つのレジメンは、末期に近い患者さ
んでも使用可能で、効果か見られ、使用してみる価値があると思われた。
394
ポスター討議
DP-2-63-02
DP-2-63-03
転移再発トリプルネガティブ乳癌の治療成績
多変量解析を用いた Triple-negative 乳癌に対する術後補助療
法の有用性に関する検討
1
独立行政法人 地域医療機能推進機構 (JCHO) 大阪病院 乳腺内分泌外科、
2
独立行政法人 地域医療機能推進機構 (JCHO) 大阪病院 病理科
笠島 綾子 1、塚本 文音 1、木村 綾 1、樋口 奈苗 1、大井 香 1、久保 杏奈 1、
岩崎 香 1、春日井 務 2
仁尾 義則、玉置 美賀子、玉置 将司、仁尾 万里華、壷井 和彦
【背景】Triple-negative 乳癌 (TNBC) は、乳癌全体の 10-15% を占めるが、早
期再発が多く予後不良で、内分泌療法や抗 HER2 療法の適応なく、確立され
た標準薬物療法もない。今回、TNBC 例に対する術後療法 (AT) の有用性を多
変量および単変量解析 (MVA/UVA) を用いて検討した。【対象と方法】対象は、
術 後 1 年 以 上 経 過 の pTNM stage I - III の TNBC111 例:stage I, 45;II,
51;III, 15 で、無再発生存 (DFS)、全生存率 (OS) を、Cox 比例 hazard risk
m o d e l を 用 い て 解 析 し た 。 薬 物 療 法 は 、 U F T, D o x i f l u r i d i n e ( D F ) ,
Cyclophosphamide, Docetaxel, Epirubicin, Gemcitabine, Medroxyprogesterone (MPA) を単独 / 併用で用いた。【結果】10 年 DFS と OS は、全例 ,
77.5%, 86.0%; stage I、97.1%, 100%; II, 67.0%, 79.2%; III, 60.8%,
76.7% であった。再発は 17 例で、初発再発部位は肺が 7 例と最も多く、局所、
骨、対側 AxLN などがそれに次いだ。DFS の Hazard は術後 18 ヶ月が peak で、
78 ヶ月以後 0 となり、OS の Hazard は、術後 30 ヶ月が peak で、102 ヶ月以
後 0 となり、再発後の死亡 Hazard は早期再発で 12 ヶ月、5 年以後の晩期再
発で 24 ヶ月遅延した。DFS の MVA では、UFT が予後良好、pT, MPA が予後
不良の有意独立因子で、OS の MVA では、年令が予後良好因子、pT が予後不
良の有意独立因子であったが、有意独立性を示した薬物療法はなかった。
Stage I は、温存 91%、UFT / DF 投与 96%、再発 1、死亡 0 で、event 不足
で解析不能であった。Stage II-III の MVA では、DFS では UFT と RT が有意
の予後良好因子、MPA が有意の予後不良因子で , OS では RT が有意の予後良
好因子であった。RT, UFT とも UVA では統計学的有意性はなかったが、UFT
は DFS を改善したが、OS の改善効果はなく、RT は DFS よりも OS を改善した。
【結論】stage I の TNBC の予後は良好で、温存手術 +RT 後の AT は UFT 単独
で充分と思われた。Stage II-III では、RT の適切な併用が DFS, OS の改善に
有効と思われたが、UFT を除いて統計学的に有用な薬物療法を同定すること
はできなかった。
DP-2-63-04
DP-2-63-05
トリプルネガティブ乳癌に対する免疫学的治療の試み
アスコフラノンによるトリプルネガティブ乳がん細胞の HIF-1
制御機構の解析
1
久留米大学 医学部 外科学、2 同大学先端分子研究所、病理部、
3
同大学がんワクチンセンター、4 国立病院機構九州医療センター 乳腺外科
1
唐 宇飛 1、岡部(古川) 実奈 1、岩熊 伸高 1、三島 麻衣 1、竹中 美貴 1,2、
高橋 龍司 1,4、中川 志乃 1,4、河原 明彦 2、鹿毛 政義 2、伊東 恭悟 3、
赤木 由人 1
【背景】これまで乳癌が免疫原性の弱い癌種で、抗腫瘍効果には免疫的関与が
少ないと考えられてきたが、近年、腫瘍免疫が乳癌の治療効果に深く関わる
ことが解明された。我々が行われてきた進行転移性乳癌に対するペプチドワ
クチン (PV) の臨床試験 (P-II) では、PV 投与により抗腫瘍免疫反応が誘導され、
臨床的有用性が特にトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) において示唆された
(Takahashi ら、Breast Ca.Res.2014)。今回、乳癌組織における腫瘍関連抗
原(TAA)や腫瘍浸潤性リンパ球 (TIL)、PD-1/PDL-1 などの免疫関連分子の発
現を解析し、TNBC を対象とした 19 種の PV カクテル(KRM-19)による早期
第 2 相試験を開始した。TNBC の免疫的特徴を基礎臨床的に解析し、新たな治
療法として免疫学的アプローチの可能性を模索する。【方法】原発及び再発巣
における EGF-R など 15 種類の TAA 発現について免疫染色を行い、原発乳癌
100 例に対し、PD1/PDL1,CD3,CD163,PTEN など抗体による免疫染色し、
subtype 別に局所での発現を解析した。また、進行再発 TNBC に特化した
KRM-19PV は7種類の異なる HLA- クラス I 分子のいずれか陽性の症例に対し
て2種類以上のPVを含む 19 種類から構成される混合ペプチドカクテルで、
米国 PolyPeptide社製なものを使用する。臨床試験ではKRM-19PV(19mg/1ml)
を週1回投与し、6回を1クールとした。安全性、無増悪期間、がん特異的免疫
能 の 変 化 を 検 討 す る。
【 結 果 】原 発 並 び に 再 発 病 巣10例 ず つ に お い て
Ezh2,CypB,PTHrP,HNRPL,WHSC2,SART2,ppMAPkkk,SART3,
UBEZ2Uの発現率が60~100%で、EGF-Rは30~50%であった。TNBC局所に
PD1,CD163+,CD3+TILが有意に高値で、ER+BCではPTENの発現は有意に高
かった。PV投与後にIgG上昇は90%(9/10),CTL誘導は50%(7/14)の転移性
TNBCにおいて認められた。
【考察】TNBC局所では免疫チェックポイント(PD1
など)が免疫関与しており、TAAが高率に発現し、ペプチドワクチンによる免疫
誘導も確認され、免疫関連抗原をターゲットとした新しい治療戦略の開発が期
待される。
395
3
社会医療法人 弘道会 寝屋川生野病院 乳腺外科、2 馬替生物科学研究所、
デグカソリック大学 医学部医学科
中嶋 啓雄 1、馬替 純二 2、Chang Young-Chae3
[ 背景 ] トリプルネガティブ乳がん (TNBC) には有効な治療法が確立されてお
らず、新たな治療薬の開発が望まれている。アスコフラノンは不完全菌の生
産するプレニルフェノール骨格を持つ物質であり、抗腫瘍作用の他、免疫調
節作用など様々な生理活性を示す。HIF-1 は TNBC の増悪因子として注目さ
れている転写因子である。我々は、昨年度本大会において、アスコフラノン
が TNBC の EGF による HIF-1 αの発現誘導を抑制し、HIF-1 によって制御され
る VEGF の遺伝子発現を抑制し、さらに腫瘍細胞による血管新生を抑制するこ
とを、生体内でのマトリジェル試験を用いた検討により明らかにした。本年
度は、アスコフラノンの HIF-1 抑制に関する遺伝子・タンパク制御機構の解
析を行った結果を報告する。[ 材料・方法 ] ヒトトリプルネガティブ乳がん細
胞 , MDA-MB-231 は ATCC から取得し、D-MEM に 10% FBS および抗生物質
を添加し、5% 炭酸ガスを含む 37 度の炭酸ガス培養器で培養した。タンパク
質の発現量はウェスタンブロッティングで検出し、これをデンシトメーター
に よ り 正 確 に 定 量 化 し た。[ 結 果 ] ト リ プ ル ネ ガ テ ィ ブ 乳 が ん 細 胞 MDAMB-231 では、アスコフラノンで処理することにより、EGF による HIF-1 タ
ンパク質の誘導が顕著に抑制される。この抑制効果は転写レベルでは認めら
れないが、HIF-1 タンパク質の安定性にも影響を与えなかった。HIF-1 αタン
パク質の翻訳は mTOR で制御される S6K や 4E-BP1 に依存し、EGF は Akt の
リン酸化を介して mTOR を活性化し、HIF-1 αタンパク質の翻訳効率を亢進す
ることが知られている。そこで、この経路について解析を行ったところ、ア
スコフラノンは EGF 刺激による Akt、p70S6K、4E-BP1 のリン酸化を強く抑
制した。また、EGFR のチロシンリン酸化活性を阻害する AG1487 や mTOR
を阻害するラパマイシンや Wartmaninn も、アスコフラノン同様、EGF によ
る HIF-1 αタンパク質の発現誘導を阻害することが明らかになった。[ 結論 ]
アスコフラノンによる TNBC 細胞の HIF-1 誘導抑制効果は、EGFR 下流のシグ
ナル伝達系のうち、Akt-1/mTOR のシグナルを選択的に抑制することにより
発現することが明らかとなった。この経路は、現在、TNBC 治療の新たな標的
として注目されている。本研究の結果により、有効な治療法が限定されてい
るトリプルネガティブ乳がんに対して、アスコフラノンが、副作用が少なく
治療効果の期待できる臨床応用可能な治療薬となる可能性が示唆された。
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】乳癌サブタイプの中でトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) について、
当院での転移再発 TNBC( 術後再発症例、初診時 Stage IV 症例 ) の治療成績を、
retrospective に検討した。【対象と方法】2007 年 1 月以降に治療を開始した
転移再発トリプルネガティブ乳癌 24 例。局所再発例は除外。対象 24 例の臨
床病理学的因子、転移再発部位、治療成績について検討した。【結果】年齢中
央値:59 歳 (36 ~ 92 歳 )、ki-67 中央値:50%(1 ~ 90%)、観察期間中央値:
30 ヵ月 (3 ~ 78 ヵ月 )、転移巣:内臓転移 19 例、骨転移のみ 4 例、遠隔リン
パ節のみ 1 例。全体の治療成績については、再発後レジメン数中央値:3(0 ~
6)、1 次治療の time to treatment failure(TTF) 中央値:3 ヵ月 (1 ~ 20 ヵ月 )、
1 次治療の奏効率:22.7%、2 次治療の TTF 中央値:2.5 ヵ月 (1 ~ 17 ヵ月 )、
2 次治療の奏効率:10.5%。治療開始からの生存期間中央値:17 ヵ月 (3 ~
57 ヵ月 )、1 年生存率:66.4%、2 年生存率:38.4% であった。内臓転移が
ない症例に限定すると、治療成績は、再発後レジメン数中央値:5(0 ~ 6)、1
次治療の TTF 中央値:7 ヵ月 (1 ~ 20 ヵ月 )、1 次治療の奏効率:25%。治療
開始からの生存期間中央値:37 ヵ月 (8 ~ 57 ヵ月 )、1 年生存率:100%、2
年生存率:75.0% で、生存率は全体と比較して、有意に良好な結果を得られ
た (p=0.046)。【結語】転移再発 TNBC の中でも、内臓転移がある症例では予
後不良であり、骨転移や遠隔リンパ節のみの症例では治療成績が良く、長期
生存が可能な例も認められた。
乳腺外科仁尾クリニック
ポスター討議
DP-2-64-01
DP-2-64-02
亀田総合病院 乳腺科
1
坂本 正明、中川 梨恵、寺岡 晃、佐川 倫子、山城 典恵、坂本 尚美、
角田 ゆう子、越田 佳朋、戸崎 光宏、福間 英祐
佐藤 友威 1、武藤 一朗 1、酒井 剛 2
トリプルネガティブ乳癌に対する術前化学療法 ~早期効果判定は予測因子、予後因子となるか?~
Triple negative 乳癌における androgen receptor 発現での
術前化学療法の効果
一般セッション(ポスター討議)
【背景】当院ではこれまで乳癌の術前化学療法(PST)症例に対し、化学療法中
の早期(2 サイクル後)の効果を評価してきた。PST の早期効果が pCR の予測
や再発の指標となり得るかを検討している。【目的】トリプルネガティブ乳癌
(TNBC) の術前化学療法に対する反応と予後を検討する。【方法】2006 年 4 月
から 2014 年 3 月までに手術を終えた TNBC のうち、術前化学療法を施行した
88 例をレトロスペクティブに検討した。臨床的効果判定や病理学的効果判定
と予後との関係、特に PST 中に PD となった症例の予後に注目した。また、2
サイクル投与後に乳房 MRI で早期効果判定を行った 69 例を Early Responder
と Non-Responder に分け、pCR の予測因子や再発の予後因子となるかを検
討した。
【結果】年齢の中央値は 52 歳。観察期間中央値 27.5 か月(平均 38 か
月 )
。cStage 別 に 1;3 例、2A;31 例、2B;27 例、3A;7 例、3B;9 例、3C;11
例であり、PST レジメンは、アンスラサイクリン(A)系+タキサン(T)系 ;54
例、A 系のみ ;31 例、T 系のみ ;2 例、その他 ;1 例であった。臨床的効果判定は、
CR27 例、PR36 例、SD10 例、PD15 例 (17% ) であり、PD となった症例の
う ち 13 例 は タ キ サ ン 系 薬 剤 投 与 中 で あ っ た。PD 症 例 の 予 後 は 有 意 に
(p=0.00013)不良であった。病理学的効果判定では、pCR が 28 例(31.8%)
であり、non-pCR と比較し有意に(p=0.004)予後良好であった。2 サイクル
投 与 後 の 早 期 効 果 判 定 で は、Early Responder;41 例(59.4 %)、NonResponder;28 例(40.6%)で、Early Responder は有意に(p=0.0002)pCR
となる傾向であった。また、Early Responder は予後良好な傾向であったが、
統計的な有意差に至らなかった(p=0.079)。Early Responder41 例中 6 例の
再発のうち 5 例は早期効果で 40%未満の縮小であった。【考察】過去の報告通
り、TNBC に対する PST で pCR を得られた症例の予後は良好であった。PST
中の PD 症例が 17%あり、そのほとんどがタキサン使用中である。また PD 症
例の予後は不良であり今後 PD 症例の予測や新規治療の開発が必要と思われ
た。2 サイクル後早期効果は pCR の予測因子となり、予後因子となる傾向も
見られた。特に早期に 40%以上の縮小を示した症例では予後が良好と考えら
れた。観察期間が短いため今後更なるフォローアップが必要である。【結語】
TNBC に対する術前化学療法の早期効果判定は pCR の予測因子となり、予後
因子にもなり得る可能性が示唆された。
新潟県立中央病院 外科、2 新潟県立中央病院 病理診断科
【背景】近年、Triple negative 乳癌が複数の subtype に分けられ (Lehmann, J
Clin Invest 2011)、その中で Luminal androgen receptor type は最も予後
がよいものの、術前化学療法で組織学的完全奏効が得られにくいと報告され
ている (Masuda, Clin Cancer Res 2013)。【目的】androgen receptor が発
現 す る Triple negative 乳 癌 は 術 前 化 学 療 法 の 効 果 が 低 い と 仮 説 を 立 て、
Triple negative 乳癌で術前化学療法を行った症例で androgen receptor を免
疫染色し、その発現の有無での治療効果を後方視的に検討した。
【対象と方法】
過去 10 年間に術前化学療法を行った Triple negative 乳癌 34 例。Androgen
receptor の免疫染色を行い、腫瘍細胞が 10% 以上染色されるものを陽性と定
義した。臨床的奏効率、組織学的完全奏効率をχ 2 検定で比較した。【結果】平
均年齢 60.5 歳 (36-79 歳、中央値 63.5 歳 )。術前化学療法レジメンはアンス
ラサイクリンのみ 2 例、タキサンのみ 7 例、アンスラサイクリン + タキサン
25 例。Androgen receptor 陽性 9 例(26.5%)。Androgen receptor 陽性対、
androgen receptor 陰性で、臨床的奏効率は 5/9(55.6%) 対 18/25(72%)、
組織学的完全奏効率は 1/9(11.1%) 対 4/25(16%)、組織学的治療効果グレー
ド 2 以上の高度の効果を認めた症例は 4/9(44.4%) 対 14/25(56%)。いずれ
も有意差を認めなかった。【結語】少数例ではあるものの、triple negative 乳
癌での術前化学療法の効果は、androgen receptor の発現の有無とは関連が
ない可能性が示唆された。
DP-2-64-03
DP-2-64-04
市立四日市病院 乳腺外科
1
FEC100 と nab-PTX の順次投与とそのリバースレジメンによ
る術前化学療法の臨床的有用性の比較検討
術前化学療法(NAC)中に Progressive disease(PD) となった
22 症例の臨床的特徴と経過について
3
雫 真人、水野 豊、倉田 信彦、森 敏宏、宮内 正之
【はじめに】乳癌に対する術前化学療法(以下 NAC)はアンスラサイクリン系と
タキサン系薬剤の順次投与が標準治療として行われ、最近 GeparSepto trial
でも nab PTX は PTX と比較し有意に pCR 率を高めるとの報告がある。
【目的】
FEC100 から nab PTX の順次投与(以下 FA 群)、およびそのリバースレジメン
(以下 AF 群)による NAC の臨床的有用性を比較検討する。【対象と方法】2012
年 1 月以降に FEC100、nab PTX による NAC を行った 26 例。FA 群が 11 例、
AF 群が 15 例。年齢中央値はそれぞれ 51 歳(33-70 歳)、55 歳(38-72 歳)。
FA 群の subtype は luminal like:4 例、HER2 enriched:1 例、TN:6 例、AF
群 は luminal like:1 例、HER2 enriched:6 例、TN:8 例。FA 群 は FEC100
4cycle 後 nab PTX 260mg/m2 を triweekly 4 cycle 投 与 し た。 一 方 AF 群 は
nab PTX triweekly 4cycle 後、FEC100 4cycle 投与した。また HER2+ に対し
ては nab-PTX と同時に trastuzumab を triweekly 投与した。
【結果】FA 群の奏
効率は 100%(CR18%,PR 82%)であった。一方 AF 群のうち評価可能な 13
症例の奏効率は 85%(CR54%, PR31%)であった。Grade 3 以上の有害事象
は FA 群では FEC100 で好中球減少、倦怠感、口内炎を 18%(2/11)、血管炎を
27%(3/11) に認めた。一方 AF 群では nab-PTX で皮疹を 13%(2/15)、肝機能
障害を 7%(1/15) に、FEC100 で口内炎、嘔吐を 7%(1/15) に認め FA 群と比
較 し 軽 度 で あ っ た。Relative dose intensity(RDI) は FA 群 で FEC100:
90.2%、nab-PTX:96.5%、一方AF群はnab-PTX:96.1%、FEC100:96.9%
でFA群でのFEC100のRDIの低値を認めた。
【考察】FEC100とnab-PTXの順次
投与によるNACは従来よりも多くのPTXが投与できるため奏効率が高く、また
AF群の方がFA群と比較しFEC100のRDIを高く保て、かつ有害事象も少なく認
容性が高いと考えた。
川口市立医療センター 外科、2 川口市立医療センター 検査科、
川口市立医療センター 病理、4 順天堂大学医学部附属順天堂医院 腫瘍内科
中野 聡子 1、大塚 正彦 1、加藤 俊介 4、山口 茂夫 4、壬生 明美 2、
生沼 利倫 3
【はじめに】術前化学療法(NAC)は、乳房温存率向上、予後効果予測などを目
的に施行されている。progressive disease(PD) は、全体の 5% 以下とされる
が、その場合、薬剤変更、もしくは手術の選択を迫られ、その後の薬物治療
効果も悪いことが予想される。今回、当院で NAC 施行中に PD となった 22 症
例の臨床的特徴と経過について報告する。【対象】2002 年 4 月から 2014 年 1
月までに、180 例に対し NAC を施行した。高齢などの理由により経口化学療
法を用いた3例を除く 177 例中 PD となった 22 症例の経過を retrospective に
検討した。【結果】NAC 開始時の年齢は 35 ~ 72 歳。NAC 前の生検結果では 2
例でホルモン受容体感受性陽性で、3 例で HER2 過剰発現を認め、18 例は
triple negative(TN)であった。使用した薬剤は、全例で CAF から開始。CAF
で PD は 15 例 で、 う ち 6 例 は 手 術 に 変 更、9 例 で taxan(TXN) に 変 更 し た。
Her2 陽性症例は trastuzumab を TXN と併用した。TXN 変更後の PD7 例のう
ち 3 例は手術、4 例は非手術で全身治療を継続した。CAF で奏功後 TXN に変
更後 PD となった 7 例は、全例手術とした。手術施行例の病理学的効果は
Grade 0:2 例、1a:8 例、1b:6 例、2a:2 例 だ っ た。 ま た、NAC 前 後 で
biological marker が変化したのが 3 例認められた。CAF で PD 後手術とした 6
例は、全例で術後に TXN を追加した。CAF で PD 後 TXN に変更後手術を施行
した 5 例は、術後補助療法は施行しなかった。CAF で効果を認め、TXN で PD
となった 7 例は、手術後 2 例で CAF を追加、2 例で capecitabine 追加、3例
で無治療とした。22 例中、6 例は乳癌死、4 例は再発・担癌生存、12 症例が
生存している。【まとめ】NAC 中に PD となるのは TN 症例が多いと言われてい
る。今回の検討でも 22 例中 18 例(82%)が TN であり、このうち 6 例(33%)
が死亡しており、非手術症例はもちろんのこと、術後早期の再発、死亡が認
められた。Her2 type で trastuzumab の効果が得られない場合には可能であ
れば、再生検を考慮するのが良い。TNBC は biomarker によりさらに複数の
亜型に分かれると言われているが、その解明が、薬剤選択、予後改善の上で
望まれる。
396
ポスター討議
DP-2-64-05
DP-2-65-01
1
がん研有明病院 乳腺内科、2 がん研有明病院 総合腫瘍科、
3
がん研有明病院 乳腺センター 外科
1
小林 心 1、伊藤 良則 1、柳 裕代 1、柴山 朋子 1、深田 一平 1、小林 隆之 2、
荒木 和浩 1、高橋 俊二 2、岩瀬 拓士 3
高嶋 成輝 1、清藤 佐知子 1、高橋 三奈 1、原 文堅 1、青儀 健二郎 1、
大住 省三 1、藤田 代里子 2
トリプルネガティブ転移再発乳癌におけるエリブリンの効果
当科におけるエリブリンの使用経験
2
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 乳腺外科、
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 薬剤科
DP-2-65-02
DP-2-65-03
1
1
転移再発乳癌に対する Eribulin(Eri) の Dose Intensity(mg/
m2/week(w)) と奏効期間の検討
富山県における転移・再発乳癌に対するエリブリンの使用状況
と有効性に関する報告 (TBCRG-1) 第 2 報
順天堂大学 医学部附属順天堂医院 乳腺科、
順天堂大学 医学部附属練馬病院 乳腺外科、3 越谷市立病院 外科、
4
埼玉県済生会川口総合病院 外科
2
田辺 真彦 1、吉田 悠子 1、徳田 恵美 1、清水 秀穂 1、小坂 泰二郎 2、
三浦 弘善 3、高橋 由佳 4、三浦 佳代 1、毛利 かの子 1、島田 聡子 1、
猪狩 史江 1、氷室 貴規 1、平 郁 1、崔 賢美 1、魚森 俊喬 1、龍 美紗 1、
小田 美規 1、堀本 義哉 1、中井 克也 1、齊藤 光江 1
【背景】Eri の Dose Intensity( 以下 DI)(mg/m2/w) は、1.4mg/m2 の 2w 投与
1w 休薬では 2.8/3w=0.93、隔週では 1.4/2w=0.70、1.1mg/m2 の 2w 投与
1w 休薬では 2.2/3w=0.73 である。副作用などで減量・休薬・不定期投与と
なった場合、DI は「全治療期間総投与量 (mg/m2)/( 投与最終日-開始日+ 14
日 )w」で算出され、0.7mg/m2/w 未満となる場合があり、low dose では期待
した効果が得られない可能性がある。【目的 / 方法】2011/9 月~ 2014/10 月
に転移再発乳癌に対し Eri を投与開始した 42(Stage4 10・術後再発 32) 名を
対 象 と し、DI(mg/m2/w)、 前 治 療 歴 ( 数 )、 副 作 用 有 無 に よ る Time to
progression(TTP) の差を retrospective に検討した。Kaplan-Meier 法で求め
た生存曲線の差を log-rank 検定、Cox 回帰分析で評価した。【結果】転移再発
診断時 /Eri 開始時年齢 median(range) は、58(32-76)/62(33-82) 歳、転移
臓器は肝 30 肺 24 骨 22 リンパ節 13 胸水 10 皮膚局所 18。原発巣免疫染色
は、ER 陽性 28 PgR 陽性 19 HER2 陽性 7 triple negative 7。前治療歴(数)
の median(range) は、総治療数 5(1-13) 抗癌剤 4(1-8) ホルモン剤 2(0-5)、
主な抗癌剤は、FEC31 Docetaxel27 Paclitaxel16 S-1 17 Capecitabine12( +
Lapatinib4) Paclitaxel/Bevacizumab7 Vinorelbine12 Gemcitabine10。 後
治療歴 ( 数 ) の median(range) は、総治療数 1(0-5) 抗癌剤 1(0-3) ホルモン剤
0(0-2)。HER2 陽性 7 名で各抗癌剤に trastuzumab 併用 /pertuzumab 併用 2
例 /T-DM1 投与 1 例。全治療期間を通じ 20 例で Eri の減量を要した。副作用に
よる休薬延期の主な理由は、好中球< 1000 21 例、全身倦怠感 5 例。RECIST
による最良総合効果 (Eri 開始日~ PD 診断日 ) は、PR2 例 (5%)SD21 例 (50%)
longSD( > 6 か月 )11 例 (26%)PD19 例 (45%) であった。観察期間中に 29 例
(69%) が PD となり、50%TTP は 3.1 ヶ月であった。DI 0.63mg/m2/w 未満
(20 例 ) と DI 0.63 以 上 (22 例 ) の 50%TTP は 9.3 ヶ 月 と 2.9 ヶ 月 で あ り
(p=0.031)、前治療歴 ( 数 )、副作用有無による差は認めなかった。Cox 回帰
分析によるハザード比は DI 0.63 未満 /0.63 以上= 0.30(95%CI:0.11-0.73)
(p=0.0074) であった。
【考察】DI=0.93-0.70mg/m2/w は良好な TTP につな
がることを想定していたが、
予測とは異なる結果を得た。減量なしで DI < 0.63
となった症例は不定期投与となっている場合が多い。生体内における Eri の作
用機序・代謝経路・乳癌バイオロジーの解明を目的とした translational 研究の
基盤となる臨床データの可能性がある。
397
高岡市民病院 外科、2TBCRG
小林 隆司 1,2、伊井 徹 2、岩田 啓子 2、江嵐 充治 2、尾山 佳永子 2、
清原 薫 2、澤田 幸一郎 2、島多 勝夫 2、清水 哲朗 2、長田 拓哉 2、
野崎 善成 2、福島 亘 2、松井 恒志 2、前田 基一 2、宗本 将義 2、
吉川 朱実 2
TBCRG は富山県における乳癌治療の現状把握のために立ち上げられた多施設
共同の研究グループであり、県内の乳癌治療を担当する主力医師が連携し、
主要な新薬や治療手技の実施状況を把握するとともに、その有効性と有害事
象の現状を把握・共有するために発足した。TBCRG の調査・研究の第一弾と
して選択したのが、転移・再発乳癌に対するエリブリン(ハラヴェン)の使用
状況と有効性、有害事象に関する調査である。調査期間は 2013 年1月からス
タートし、県内でのエリブリン使用例全例の集積を目指した。なお、第 22 回
日本乳癌学会学術総会にて 2013 年 11 月末までに集積された 39 例の解析をす
でに報告した。今回、2014 年 11 月末日までに富山県内で 81 例のエリブリン
使用例の臨床データが集積され、これを解析した。 今回の 81 症例の患者平
均年齢は 52.4 歳であり、すべて女性であった。エリブリンの投与開始時の状
況は、再発 64 例、進行 17 例であった。ハラヴェンの治療ライン別に見ると、
(1st/2nd /3rd 以降 ) での使用が (11.1%/24.5%/65.4%) であった。また、
閉経状況は前 35.8%、後 64.2%であった。原発巣の (ER/PgR/HER2) の陽性
率は (67.9%/51.9%/19.8%) であった。前治療としてタキサンの使用歴が
59.3%、アンスラサイクリンの使用歴が 58.0% にあった。治療効果判定可能
症例は 78 例あり、奏功率は 26.9%、病勢コントロール率は 73.1%であり 1
例で CR が得られた。また、全症例の無増悪生存期間は中央値 125 日、エリブ
リン投与からの 1 年生存率は 64.7%、生存日数の中央値は 627 日であった。
有害事象に関して、非血液毒性は、脱毛、味覚障害、感覚性神経障害が高率
に認められたが、いずれも認容範囲内であり治療継続の妨げとはなっていな
かった。また、血液毒性では、白血球減少、好中球減少において Grade3/4 の
副作用を認めるものも、いずれも重篤な状況には至っていなかった。 今回、
富山県内でのエリブリンの使用状況の分析を行なったが、転移・再発乳癌に
対する治療選択としてエリブリンは毒性も制御範囲内であり奏功率も期待し
うる、有効な薬剤と考えられた。
一般セッション(ポスター討議)
【背景】ホルモン受容体陰性、HER2 陰性のトリプルネガティブ乳癌は一般的
【目的】エリブリンは非タキサン系の新規微小管阻害剤である。2011 年 7 月に
に治療の選択肢が少なく予後不良であると考えられており、治療戦略も定まっ
エリブリン販売開始後 3 年 5 か月が経過した。その間当科におけるエリブリン
たものはない。一方、エリブリンは進行再発乳癌に対して単剤で全生存期間
111 例(投与継続中 13 例を含む)の使用経験を振り返る事により、本薬剤の使
を延長し、トリプルネガティブ乳癌への効果も期待されている。【方法】エリ
用意義並びに問題点について検討した。【結果】患者の平均年齢 59.3 歳(33 -
ブリン承認以降 2014 年 10 月までにがん研有明病院においてエリブリン治療
82)、15 例が 70 歳以上であった。術後再発 90 例と StageIV21 例に投与した。
を開始した症例のうち、2 サイクル以上継続可能であった 171 例を対象に解析
TTF138.9 日(8-1156)、投与サイクル数は平均値 5.0(1 - 27)、ホルモン陽
を行った。特に、トリプルネガティブ乳癌における効果を後方視的に調査し、
性 /HER2 陰 性 64.0%、 ホ ル モ ン 陽 性 /HER2 陽 性 9.0%、 ホ ル モ ン 陰 性 /
PFS および OS を検討した。母集団の選択に際し、HER2 陽性乳癌においては
HER2 陰性 23.4%、ホルモン陰性 /HER2 陽性 3.6% であった。トラスツズマ
エリブリンとトラスツズマブの併用例は除外し、エリブリン単剤で投与した
ブ併用例は 9 例であった。臓器転移あり 81.1%、肝転移あり 63.1%、複数部
症例のみを検討した。【結果】171 例のサブタイプの内訳は、Luminal type 位転移あり 91.0% と重篤な状況への使用傾向を認めた。再発 1 次治療として
125 例、Luminal-HER2 3 例、 ト リ プ ル ネ ガ テ ィ ブ 35 例、HER26.3%、アンスラタキサン後使用推奨にて 3 次治療が 27.9% と最多であった。
enriched 8 例であった。MBC に対する前治療レジメン数の中央値は 2 で、
一方 3 例に 9 次治療として投与した。PS 並びに年齢など考慮の上 31.5% で減
トリプルネガティブでは 1、非トリプルネガティブでは 2 であった。トリプル
量スタートしている。73.0% で好中球減少を認めスキップを要したが、それ
ネガティブ 35 例において、エリブリンの最良効果、奏効率、PFS、OS は以下
に伴う投与中止例は認めず、GCSF 使用も内 13.6% に留まっていた。スキッ
の 通 り で あ っ た。CR 1 例、PR 3 例、SD 14 例、PD 17 例、 奏 効 率
プ後の半数は減量後投与スケジュール維持、他の半数では 1 回投与量は維持し
11%、PFS 3.5 ヵ月、OS 14.6 ヵ月。非トリプルネガティブ乳癌と比べ、
つつ隔週投与に移行と対応が分かれている。奏功率は 19.8%も CBR は 34.2%
PFS も OS も有意に短い結果であった。(非トリプルネガティブ乳癌 PFS と、使用されている状況を考慮すると充分な結果と思われた。血液毒性以外
5.6 ヵ月 p=0.001、OS 23.6 ヵ月 p=0.0001)【結語】当院でのトリプ
の副作用は比較的軽微で、厳しい状況に対し使用されているにも関わらず、
ルネガティブ乳癌に対するエリブリンの効果は、既報の 301 試験におけるト
副作用での中止例は 20.4% のみであった。間質性肺炎と心不全各 1 例以外は
リプルネガティブ乳癌のサブグループ解析(OS 14.4 ヵ月)とほぼ同等であっ
全て倦怠感が原因であった。通常の抗癌剤の印象と異なりホルモン陽性 /
た。さらに背景因子を検討し報告する。
HER2 陰性で CBR36.6% と他のサブタイプと比較しても遜色ない結果だった。
一方トラスツズマブ併用群は有害事象の増加は認めず安全性に関しては問題
なさそうだが、CBR は 33.3% に留まり、トラスツズマブ併用の相乗効果は乏
しいと思われた。術後補助療法、無病期間に左右されない事、肝転移を含め
た臓器転移を有するものにも遜色なく効果を示す事が示唆された。1 次治療で
は CBR85.7% と抜群の結果を示した。それ以降も 6 次治療まではまずまずの
結果であった。前後治療との兼ね合いの検討では、少なくともエリブリン投
与がアンスラタキサンの後である必要性は認めなかった。【結語】1 次治療とし
ての使用を含めた再発治療の中での位置づけの再考、通院回数減少などのメ
リットを享受できる隔週投与など今後の検討課題と思われた。
ポスター討議
DP-2-65-04
DP-2-65-05
名古屋大学 医学部附属病院 乳腺内分泌外科
1
転移再発乳癌に対するハラヴェンの使用経験
当院における進行・再発乳癌に対するエリブリン使用症例の検討
2
武内 大、柴田 雅央、中西 賢一、林 裕倫、角田 伸行、菊森 豊根
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】エリブリンは、術後あるいは再発後にアンスラサイクリン系とタ
キサン系抗癌剤の治療歴がある進行または再発乳癌患者に対し、全生存期間
の延長が証明された微小管阻害剤である。徐々にその臨床的な特徴が明らか
となっており、第 III 相試験の結果から、特に HER2 陰性乳癌に対して効果が
あるとされている (EMBRACE 試験および 301 試験 )。【目的】転移性乳癌に対
するエリブリンの有効性・安全性を明らかにする。【対象と方法】当院におい
て 2011 年 9 月から 2014 年 7 月の間にエリブリンを使用した症例 30 例のう
ち、効果判定が行われた 27 例の治療効果と有害事象を検討した。【結果】エリ
ブリン投与時の平均年齢は 54(32 ~ 72) 歳、ホルモン陽性が 18 例、HER2 陽
性は 6 例、triple negative 症例は 7 例だった。再発後の前治療における平均化
学療法レジメン数は 2.9(0 ~ 8) レジメだった。投与時の平均転移臓器数は
2.3(1-5) 臓器で、転移箇所は肝臓が 16 例、リンパ節 12 例、肺 11 例、骨 9 例、
胸膜播種 6 例、局所再発と脳が 3 例ずつ、髄膜播種と腹膜播種が 1 例ずつだっ
た ( 重複あり )。エリブリンの平均投与日数は 138(28 ~ 435) 日だった。治療
効果は PR 6 例、SD 11 例、PD 10 例で奏効率は 22% (6/27)、臨床的有用率 (PR
+ long SD) は 63% (17/27) だった。有害事象は 74% (20/27) で認め、好中
球減少症が 48% (13/27)、末梢神経障害が 18% (5/27)、味覚異常が 11%
(3/27)、肝機能障害と間質性肺炎をそれぞれ 3.7% (1/27) に認めた。副作用
に対しては 48% (13/27) で減量して投与が実施されていた。臨床試験として
HER2 陽性症例にトラスツズマブを併用した症例が 1 例あった。【結語】エリブ
リンは転移・再発乳癌に対して有効性が期待できる。副作用を比較的高率に
認めるが減量して多くの症例で投与継続可能であり、安全に投与可能と考え
られた。
筑波大学 医学医療系 乳腺内分泌外科、
筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科
池田 達彦 1、澤 文 2、古屋 舞 2、清松 裕子 2、井口 研子 1、坂東 裕子 1、
原 尚人 1
【背景】エリブリンは、本邦において 2011 年 4 月に進行・再発乳癌に対する適
応が承認された新規非タキサン系微小管阻害薬である。当院での進行・再発
乳癌に対するエリブリンの使用成績と有害事象について報告する。【対象と方
法】対象は 2011 年 8 月から 2014 年 12 月までにエリブリンの投与を行った 20
症例である。有害事象は CTCAE4.0 に基づき評価を行った。【結果】患者背景
は年齢中央値 53 歳 (23-71) で、PS は 0/1/2:2/12/6 例で、前治療レジメン
数中央値 3(0-10) だった。サブタイプ別には luminal タイプが 11 例(55% )、
luminal HER タイプが 5 例(25%)、HER2 タイプが 0 例、TNBC が 4 例 (20% )
だ っ た。 効 果 判 定 は CR:1 例、PR:1 例、SD:11 例、PD7 例 で 奏 効 率 は
10%、臨床的有用率は 25%、病勢コントロール率は 65% だった。主な有害
事象は grade3 以上の好中球減少を 8 例、貧血を 2 例、血小板減少を 1 例に認
めた。グレード 3 以上の非血液毒性は認めなかった。TTF は中央値 84 日(7281)で、RDI は中央値 86%(57-100)だった。14 例(70%)において好中球
減少や QOL 維持を理由に延期または減量が行われていた。3 コース以上投与
した症例で RDI が≧ 85% の 10 症例と< 85% の 8 症例を比較すると、TTF は
前者で中央値 79 日(49-281)、後者で 98 日(21-266)だった。OS は前者で
中央値 210 日(49-510)、後者で 240 日(90-420)といずれも有意差を認めな
かった。【考察】当院での使用成績では EMBRACE 試験に比し OS は短い傾向で
あり、PS2 の症例が 30% と多かったことが影響しているものと考えられた。
ただし、奏効率や病勢コントロール率は同様の結果だった。有害事象に応じ
た適切な延期や減量による RDI の低下は必ずしも全生存期間を短縮させない
可能性が示唆された。
DP-2-66-01
DP-2-66-02
1
市立四日市病院 乳腺外科
エリブリンの早期ラインにおける治療効果および後治療への影
響の検討
3
転移性乳癌に対することなるエリブリン投与スケジュールの有
効性、安全性の検討
大阪ブレストクリニック 乳腺外科、2 大阪ブレストクリニック 薬剤部、
大阪ブレストクリニック 看護部、4 関西電力病院 病理部
水野 豊、雫 真人、倉田 信彦、森 敏宏、宮内 正之
井口 千景 1、小池 健太 1、藤田 倫子 1、松之木 愛香 1、山本 仁 1、
廣瀬 冨貴子 2、中谷 裕子 3、河合 潤 4、芝 英一 1
【目的】エリブリンは非タキサン系の微小管ダイナミクス阻害剤であり、再発
乳癌において単剤で有用性が確認された薬剤である。しかし、Early line にお
ける有効性を検証されたデータは未だ少ないのが現状である。今回我々は、
Early line にてエリブリンを使用した際の腫瘍縮小効果、およびエリブリンの
直後治療の有効性を検討した。【方法】2011 年 7 月~ 2014 年 11 月に、当院
にてエリブリンを投与開始した再発乳癌患者 22 例に対し、Early line( 再発後
前化学療法歴 0 - 1) と Late line( 再発後前化学療法歴≧ 2) に層別し、エリブ
リンの効果を比較検討した。また、エリブリンの直後治療における各薬剤の
有効性も合わせて検討した。【結果】有効性評価対象 18 例において、前化学療
法歴中央値 2(1 - 7)、奏効率 (ORR)39%、臨床的有用率 (CBR)67%、病勢コ
ントロール率 (DCR)89%、無増悪生存期間 (PFS) 中央値 5.6 ヶ月であった。
Early line で の 使 用 群(13 例 )で は、 前 化 学 療 法 歴 中 央 値 1(0 - 1)、
ORR54%、CBR77%、DCR85%、PFS 中央値 6.1 ヶ月であり、約 3 年にわたっ
て病勢維持が可能で現在も継続中の症例も存在した。一方、Late line での使
用 群(5 例 )で は、 前 化 学 療 法 歴 中 央 値 3(2 - 7)、ORR0 %、CBR40%、
DCR60%、PFS 中央値は 3.1 ヶ月であった。後治療の効果については、評価
可能であった 10 例に関して ORR30%、CBR80%であった。これをエリブリ
ンの有効性別に評価すると、エリブリンの CR/PR 例(4 例)では、後治療は
ORR25%、CBR100%、エリブリンの non - CR/PR 例(6 例)では、後治療は
ORR33%、CBR83%であり、エリブリンの有効性に関わらず後治療に一定の
効果が確認された。【考察】早期ラインでの使用により、エリブリンは微小管
ダイナミクス阻害剤として十分な腫瘍縮小効果を有する薬剤である事が確認
できた。また、非奏効例においても、後治療にて一定の有効性が期待できる
ことが示唆された。よって、エリブリンは再発乳癌治療の中で早期ラインに
て使用する薬剤であると考えられる。
【はじめに】エリブリンはアンスラサイクリン、タキサン系抗癌剤を含む前治
療歴がある進行・再発乳癌に対して OS の延長を認めた薬剤であるが、特徴的
な副作用である好中球減少のため継続治療が困難な場合がある。また最近で
は抗腫瘍効果と相対的用量強度に関連が少ないとされ、また投与スケジュー
ル(隔週投与など)の有効性、安全性などが検討されている。【目的】推奨用量
(1.4mg/m2) でことなる投与スケジュール(2 週投与 1 週休薬、2 週投与 2 週休
薬)の有効性、安全性を比較検討した。【対象】2011 年 12 月~ 2014 年 12 月
までにエリブリンを投与した転移性乳癌 16 例。年齢中央値は 68 歳(40 ~ 90
歳)、DFI は中央値 30 ヶ月(10 ~ 96 ヶ月)、ER 陽性 :8 例、HER2 陽性 :3 例、
TN type:5 例。転移臓器は胸壁 :8 例、領域リンパ節 :4 例、骨 :5 例、肺 / 胸膜 :7
例、肝臓 :5 例、脳:2 例。前化学療法レジメン数は、1 ~ 2:4 例、3 ~ 4:11 例、
5 以上:1 例。アンスラサイクリン既治療:87.5%(14/16)、アンスラサイク
リンとタキサン既治療:68.8%(11/16)。投与間隔は推奨である 2 週投与 1 週
休薬 ( 以下 2on1off 群 ):8 例、2 週投与 2 週休薬 ( 以下 2on2off 群 ):8 例。投
与サイクル中央値は 2on1off 群:7 サイクル(3 ~ 17)、2on2off 群:7 サイク
ル(2 ~ 13)
。エリブリンの治療ラインは 2on1off 群で 1 次~ 2 次:1 例、3 次
以降 :7 例に対し , 2on2off 群は 1 次~ 2 次:6 例、3 次以降:2 例であった。【結
果】病勢コントロール率は 2on1off 群:87.5%、一方 2on2off 群:75% であっ
た。それに対し治療成功期間 (TTF) は中央値で 2on1off 群:147 日、2on2off 群:
217 日と 2on2off 群で長い傾向にあった。Grade3 以上の有害事象(とくに好
中球減少、末梢神経障害)の発現を 2on1off 群で 37.5%、25% に認めたが、
2on2off 群では 25%、0% でタキサン既治療例でも末梢神経障害の増悪は認
めなかった。【まとめ】エリブリンの投与スケジュールは病勢コントロール率
からみても 2 週投与 1 週休薬が推奨されるが、推奨される投与間隔が継続でき
ない場合は TTF や有害事象の発現の違いから 2 週投与 2 週休薬への変更も継
続治療を遂行する上で考慮すべきと考えた。
398
ポスター討議
DP-2-66-03
DP-2-66-04
当院における Eribulin 投与症例の検討
ER 陽性 HER2 陰性再発乳癌におけるエリブリン投与後次治療期
間の検討
1
県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科、2 秋本クリニック、
3
香川乳腺クリニック
1
1
1
1
1
2
1
松浦 一生 、野間 翠 、松原 啓壮 、末岡 智志 、築山 尚史 、
井出 隆太 1、今岡 祐輝 1、山下 正博 1、高倉 有二 1、鈴木 崇久 1、
大石 幸一 1、札場 保宏 1、池田 聡 1、眞次 康弘 1、石本 達郎 1、
中原 英樹 1、漆原 貴 1、板本 敏行 1、秋本 悦志 2、香川 直樹 3
八十島 宏行 1、増田 慎三 1、田中 希世 1、田口 裕紀子 1、増田 紘子 1、
水谷 麻紀子 1、関本 貢嗣 2
【背景・目的】エリブリンは EMBRACE 試験において有意に OS を改善したこと
より FDA により承認、また本邦においても 2011 年 7 月以降アンスラサイクリ
ンおよびタキサン系抗癌剤既治療再発乳癌に対して承認されるようになった。
しかしながら EMBRACE 試験において PFS の有意な延長が認めなかったこと
より、その理由解明の基礎的実験がなされ、エリブリンが EMA(Epithelial
Mesenchymal Transition) や腫瘍組織の血管リモデリングに関与しているこ
とが解明された。それによりエリブリン後の次治療期間がより継続できたと
ことによる OS の延長と示唆された。今回実臨床においても検討するため、前
段階としてエリブリン投与後の後治療の延長が認められるかを当院のデータ
ベースを使用して検討した。【対象】2011 年 8 月から 2014 年 12 月までに ER
陽性 HER2 陰性再発乳癌に対してエリブリン単剤投与した 21 症例を対象とし
た。除外基準としてエリブリンが最低 2 レジメン未満施行例、エリブリン後の
次治療が未施行例は除外とした。エリブリン施行期間と施行後における次治
療期間の比較の検討(エリブリン施行後次治療期間 / エリブリン施行の治療期
間≧ 1)、またエリブリンと次治療の最良効果についても比較検討した。【結果】
年齢中央値 63 歳(46 ~ 74 歳)、再発後エリブリン前治療レジメン数 5(0 ~ 9
レジメン)、エリブリン後の次治療は wP+AVA: 7例、capecitabine:4 例、
S-1:2 例、CE:2 例、VNR+GEM:2 例、Fluvestrant:2 例、DOC:1 例であった。
全症例のエリブリン施行前治療期間は 7.7 カ月(1.2 ~ 29 ヶ月)、エリブリン
施行治療期間の中央値は 2.5 ヶ月(1.2 ~ 8.2 ヶ月)、その後の次治療治療期
間中央値は 4.9 ヶ月(1.4 ~ 18 ヶ月)であった。エリブリン後の次治療の期間
が延長していた症例は 15/21 例であった。エリブリンでの最良効果と次治療
での最良効果での比較では、エリブリン PR で次治療 PR1 例 (5%)、エリブリ
ン PR で次治療 PD2 例 (9.5%)、エリブリン SD で次治療 SD4 例 (19%)、エリ
ブリン SD で次治療 PD2 例 (9.5%)、エリブリン PD で次治療 PR2 例 (9.5%)、
エ リ ブ リ ン PD で 次 治 療 SD8 例 (38%)、 エ リ ブ リ ン PD で 次 治 療 PD2 例
(9.5%)【結論】一般的に再発乳癌治療における治療期間は late line になるほど
その期間は短くなるが当院エリブリン単独施行症例21例での検討では、エ
リブリン投与後の次治療期間が延長している症例が多く認められた。
DP-2-66-05
DP-2-67-01
進行再発乳癌に対する早期レジメンとしての Eribulin の有効
性・安全性の検討 (SONG-BC01)
進行再発乳癌に対するエリブリンの使用経験
小牧市民病院 外科
大阪労災病院 乳腺外科、2 南大阪乳癌診療ネットワーク (SONG)
間下 優子、井戸田 愛、田中 恵理
松並 展輝 1,2、阿部 元 2、鶴谷 純司 2、岩朝 勤 2、森島 宏隆 1,2、
小田 直文 1,2、玉川 孝治 2、谷島 裕之 2、神垣 俊二 2、山村 順 2、
稲治 英生 2、西 敏夫 2、中野 芳明 2、荻野 信夫 2、山崎 圭一 2、
菰池 佳史 2、手塚 健志 2、新田 敏勝 2、平井 昭彦 2、中川 和彦 2
【背景】進行再発乳癌に対して推奨されている化学療法は多数あるが、どの段
階でどの薬剤を使用すべきかの結論は得られていない。Eribulin は微小管阻害
剤であるが、Taxane( 以下 T) 等とは異なる独自の作用機序を有し、世界で初
めて進行再発乳癌に対して単剤で OS(overall survival) を有意に延長させた薬
剤である。【目的】進行再発乳癌における早期レジメンとしての Eribulin と T
再治療成績を比較し、Eribulin の臨床的有用性を明らかにする。【対象】南大
阪地区で本研究への参加同意が得られた 10 施設で、Anthracycline 及び T 系
薬剤既治療の進行再発乳癌に対して 2011 年 7 月~ 2014 年 7 月末までに早期
(1 ~ 3 次化学療法 ) レジメンとして Eribulin を投与した全症例。【方法】患者
背 景・ORR(objective response rate)・DCR(disease control rate)・
TTP(time to progression) 及び有害事象を調査し、国内での T 既治療症例に
対 す る T 再 治 療 成 績 (82 例 ) Breast Cancer Research and Treatment
(2005)89:237-241 と の 比 較 検 討 を 行 っ た。 尚、 腫 瘍 縮 小 効 果 の 評 価 は
RECIST ver1.1、有害事象の評価は CTCAE ver4.0 日本語訳 JCOG 版に従っ
た。【 結 果 】調 査 期 間 中 に Eribulin を 投 与 し た 症 例 は 142 例 で、 年 齢 中 央
値 :61(36-80) 歳、再発後の前化学療法歴中央値 :2(0-11)、ER 陽性 :64.1%、
HER2 陽 性 :13.4 %、TN(triple negative):27.5% で あ り、ORR:23.9 %、
DCR:68.3%、TTP 中央値 :3.7 ヶ月であった。そのうち早期レジメンで使用
した症例 (E 群 ) は 74 例 (T 既治療 72 例 ) で、文献値 (T 群 ) との比較を行った (E
群 vs. T 群 )。背景は年齢中央値 :61 歳 vs. 54 歳、進行再発乳癌に対する前化
学療法歴中央値 :1.5 vs. 2、内臓転移を有する割合 :77.0% vs. 65.9%であっ
た。有効性については、ORR:28.4% vs. 19.5%、DCR:67.6% vs. 67.1%、
TTP:4.1 ヶ月 vs. 3.7 ヶ月であった。有害事象については、Grade 3/4 の好
中 球 減 少 :60.8 % vs. 12.2 %、 発 熱 性 好 中 球 減 少 症 :10.8% vs. NA(not
assessable)、Grade 3/4 の 貧 血 :4.1 % vs. 4.9 %、 末 梢 性 ニ ュ ー ロ パ
チ ー :27.0 % vs. 62.2 %、 悪 心 :16.2 % vs. 24.4 %、 嘔 吐 :4.1 % vs.
15.8%、脱毛 :43.2% vs. NA であった。【考察】Eribulin の早期レジメンでの
使用は、T 再治療と比較し同等の有効性が得られ、非血液毒性の発現が少ない
傾向であった。【結語】周術期 T 使用後に再発した症例において早期に Eribulin
を使用することは、QOL 維持の観点からも有用な治療法と考えられた。
【目的】エリブリンメシル塩酸(エリブリン)は 2011 年 4 月の承認以降、当院
でも進行再発乳癌の治療選択肢の一つとして、症例を蓄積してきた。今回、
当院でのエリブリン使用における治療効果と安全性につき検討した。【対象】
当院において 2011 年 7 月から 2014 年 10 月までに進行再発乳癌に対してエリ
ブリンを使用した 37 例を対象とした。【結果】年齢中央値 61(30-80)歳、
subtype は ER 陽性 HER 2陰性 23 例、triple negative 6 例、HER 2陽性 8 例。
奏効率 27%、臨床的有用率 35.1%。無増悪生存期間中央値 147 日、全生存期
間 中 央 値 336 日。subtype 別 の 奏 効 率 は ER 陽 性 HER 2 陰 性 26 %、triple negative16.6%、HER 2陽性 37.5%(奏功例 3 例中 2 例でハーセプチン併用)。
奏功部位としては肝臓 25%、癌性胸水 20%、局所 11%であり、肺腫瘤の奏
功例はなかった。延期、減量での使用は 67.5%であり、奏功例のうち 60%で、
延期、減量を行い治療継続していた。Grade 3以上の末梢神経障害は 11.7%、
好中球減少は 27%、発熱性好中球減少は 11.7%。有害事象による中止例とし
てはしびれ 2 例(5.4%)、口腔粘膜障害 1 例(2.7%)であった。
【結語】毒性は
おおむね認容可能であり、減量、延期にても一定の奏効率が得られていた。
また、肝転移巣、胸水のコントロールにおいて、エリブリンの効果が得られ
やすい可能性が示唆された。
399
一般セッション(ポスター討議)
【背景】
Eribulin は細胞傷害性を有する非 Taxan 系の新規微小管阻害剤である。
Anthracycline ・Taxan 既治療例の転移・再発乳癌を対象とした第 3 相試験
(EMBRACE)において、Eribulin 単剤が主治医の選択した治療(treatment of
physician’s choice; TPC)と比較して Primary endpoint である OS におい
て有意に延長した
(Eribulin: 13.1 months (M) vs TPC: 10.6 M, p=0.041)。
【対象・方法】Eribulin が「手術不能又は再発乳がん」の適応で 2011 年 4 月 22
日に承認された以降、当院における転移・再発乳癌に対する Eribulin の投与
32 症例を対象とし、実臨床における使用状況およびその臨床病理学的特徴を
検討した。
【結果】転移再発乳癌 32 例中、13 例(40.1%)が、ホルモンレセプター(HR)
陰性症例であり、約 60% に化学療法が必要な症例であった。Stage4 の 8 例
を除く、再発症例 24 例の Recurrence free interval(RFI) は、平均 40 M(0-36
M;13 例,36-60 M;7 例,60 M-;4 例)で、晩期再発症例は少数であった。
転移再発乳癌に対して、Eribulin を投与された 32 例の平均前化学療法数は 4.8
で、4 レ ジ メ ン 以 上 の 多 剤 投 与 症 例 が 22 例(69 %)で あ っ た。Eribulin の
Clinical Benefit rate (CBR) は、6 例(30%)であった。Grade 3 以上の有害
事象(AE)は、非血液毒性は 6 例(18.8%)であったが、血液毒性は 17 例(53%)
にみられ、そのうち 4 例の Febrile neutropenia に対して入院加療を要した。
Eribulin の Time to treatment failure(TTF)が、3 M 未満であった 23 例に
おいて、AE で投与中止となった症例が 8 例(35%),新病変出現が 6 例(26%)
と多く、TTF 3 M 以上の 9 例では、1 例の継続中を除き、全例が、新病変出現
の な い 腫 瘍 増 大 に よ る 投 与 中 止 で あ っ た。 後 治 療 の TTF を 比 較 す る と、
Eribulin の TTF 3 M 未満であった 23 例が、平均 1.9 M であり、TTF 3 M 以上
の 8 例 で は、 投 与 継 続 中 2 例 を 含 め、 平 均 8.4 M 投 与 で き た。Eribulin の
TTF 3 M 以上は、TTF 3 M 未満と比較して、Overall survival (OS) が有意に
延長していた。
【結語】転移再発乳癌治療に対する Eribulin 治療は、副作用の management
を適切におこない、3 M 以上投与できた症例において、後治療の治療期間が延
長し、さらに OS も延長した。
1
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科、
国立病院機構大阪医療センター 外科
ポスター討議
DP-2-67-02
DP-2-67-03
当科における Eribulin,Paclitaxel+Bevacizumab の使用成績
進行再発乳癌に対して実施した paclitaxel+bevacizumab 療
法と続いて実施した Eribulin 療法の効果について
群馬大学 乳腺内分泌外科 (2)
那須赤十字病院 外科
時庭 英彰、堀口 淳、高他 大輔、長岡 りん、六反田 奈和、佐藤 亜矢子、
樋口 徹、内田 紗弥香、坪井 美樹、菊地 麻美、竹吉 泉
田村 光、前田 祐助、中馬 基博、谷 紀幸、五十嵐 高広、河島 俊文、
青木 真彦、城戸 啓、小島 正夫
一般セッション(ポスター討議)
【背景】Eribulin は 2011 年 7 月から進行再発乳癌に対して使用可能となった非
タキサン系の微小管阻害剤で,Paclitaxel+Bevacizumab (PTX/Bev) も同年
9 月に使用が可能になった血管新生阻害剤を含んだ治療法である.
【対象と方
法】当科で 2011 年 7 月から 2014 年 9 月までに 2 コース以上の投与が可能で
あった Eribulin 群 41 例と PTX/Bev 群 18 例を対象とし,治療効果および好中
球減少の発現について検討を行った.【結果】Eribulin 群での平均年齢は 57.3
歳で,術後再発 36 例の無病再発期間 (DFI) の中央値は 24 か月であった.転移
臓器は肝 25 例,肺 17 例,骨 25 例,その他 19 例 ( 重複あり ) で,サブタイプ
は Luminal,Luminal-HER2,HER2,triple negative,不明がそれぞれ 20,3,
4,13,1 例であった.前化学療法レジメン数は,平均 1.8 レジメンで治療成
功期間 (TTF) の中央値は 10.9 ヶ月,臨床的有効率 (CBR) は 34.1% であった.
Grade3 以上の好中球減少は 22 例に認めた.若年者,投与時に骨転移有,肝
障害ありのいずれかを認める場合に出現が多かった.CBR は好中球減少あり
群では 27.3%,なし群では 42.1% と好中球減少なし群で良好であった.好中
球 減 少 な し 群 で は Eribulin 投 与 終 了 後 の 後 治 療 が 有 意 に 可 能 で あ っ た
(p=0.013).PTX/Bev 群での平均年齢は 58.6 歳で,術後再発 16 例の DFI の
中央値は 31.5 か月であった.転移臓器は肝 13 例,肺 9 例,骨 15 例,その他
10 例 ( 重複あり ) で,サブタイプは Luminal 12 例,triple negative 6 例であっ
た,前化学療法レジメン数は,平均 1.8 レジメンで,TTF の中央値は 5.9 ヶ月,
CBR は 27.8% であった.Grade3 以上の好中球減少は 8 例 (44.4%) に認めた.
Eribulin と は 反 対 に 骨 転 移 が あ る と 好 中 球 減 少 が 有 意 に 少 な か っ た
(p=0.034).また CBR は好中球減少あり群では 37.5%,なし群では 20% と
好中球減少あり群で良好であり,Eribulin とは反対の結果となった.Eribulin,
PTX/Bev 両群での TTF の比較では有意差はなかった.全生存期間の比較では、
両群をさらに検討期間中に Eribulin のみ投与された群,PTX/Bev のみ投与さ
れた群,Eribulin と PTX/Bev 両方を投与された群で検討したが有意差はなかっ
た.【結語】Eribulin,PTX/Bev 両群での治療効果に大きな差は認めなかった.
有害事象である好中球減少について検討すると,各々の治療では好中球減少
の出現しやすい状況や出現による治療効果に相違があった.今後も症例を蓄
積し,治療効果や有害事象のさらなる検討が必要と考えられた.
DP-2-67-04
DP-2-67-05
進行再発乳癌に対する weekly Paclitaxel+Bevacizumab 後
治療の検討
1
当科で、乳癌の進行再発 10 症例に対して、weekly Paclitaxel+bevacizumab
による治療をおこなった。効果は PR8 例、SD1 例、PD 1例で奏効率は 80%
であり、PR 症例の奏功期間は、3 ~ 15 カ月(平均 9 カ月)であった。Triple
negative の症例が 3 例含まれたが、すべてに PR が得られ、そのうち 1 例は
CR に 近 い PR で あ っ た。CR に 近 い PR が 得 ら れ た 症 例 は、62 歳 の 女 性 で
weekly Paclitaxel+bevacizumab による治療開始前に径 6cm 大の左乳房腫瘤
と 3cm 大の腋窩リンパ節転移を認め、肝転移も認めた。治療開始後3か月で
腫瘍マーカーが正常化し、5か月目には、画像上明らかな病巣は確認できな
くなった。しかし8か月目に局所病巣の再増大を認めたため、腫瘤の摘出を
おこなった。現在画像上、明らかな腫瘍は認めていない。副作用としては、
高血圧が 4 例、 鼻出血が 2 例にみられたが、コントロール可能で、治療継続
できた。心不全となった 1 例、タキソールによる末梢神経障害の 1 例、治療と
の関連は少ないと考えられるものの大腸憩室からの出血を来した 1 例で治療
内容の変更を要した。血栓症や腸管穿孔といった重篤な副作用はみられなかっ
た。Paclitaxel+bevacizumab 投与中、無効になった症例 3 例と副作用で継続
で き な く な っ た 症 例 2 例 の 計 5 例 に に Eribulin に よ る 治 療 を お こ な っ た。
Eribulin の前治療としては、Paclitaxel+bevacizumab を除けば、anthracycline
を含むレジメンが 1 例、Docetaxel が 1 例、vinorelbine が 1 例、Capecitabine
1例、nab-paclitaxel1 例、gemcitabine1 例、Leuprolelin1 例であった。原発
巣の組織型は、硬癌が 3 例、充実腺管癌が 1 例、浸潤性乳管癌 1 例であった。
また、ER 陽性 3 例、ER 陰性 2 例、PgR 陽性 3 例、PgR 陰性 1 例、弱陽性 1 例であっ
た。HER2 は全例陰性であった。Eribulin 投与開始時の病変部位は、局所・リン
パ節が 4 例、肺 3 例、骨 2 例であり、Eribulin の効果は、PR1 例、NC2 例、PD2
例で、奏効率は、20% であった。PR 症例の奏功期間は、5 カ月、NC 症例の無
増悪期間は、6 カ月以上が 1 例、他の 1 例は、治療開始後 3 カ月で無増悪であっ
たが、手足のしびれのため、治療変更となった。PD となった 2 例のうち 1 例は、
再発後 Eribulin が一度使用されており、その際は PR が得られていたが、今回は
腫瘍血管のリモデリング作用も企図して投与された。全症例とも重篤な副作用
はみられず、現在も生存し治療継続中である。
転移再発乳癌に対するベバシズマブ+パクリタキセル
(AVA+PTX)隔週投与の検討
二宮病院 外科、2 獨協医科大学越谷病院 乳腺センター
東北公済病院 乳腺外科
二宮 淳 1、小川 利久 2、石綱 一央 2、辻 栄一 2、小島 誠人 2、
佐々木 勝海 1、二宮 凛 1
甘利 正和、深町 佳世子、伊藤 正裕、平川 久
( はじめに ) 切除不能局所進行再発乳癌の治療において、weekly Paclitaxel
+bevacizumab (wPTX +BV) 療法は高い奏効率と 1 年近い PFS が得られる
が、OS で差が出ない点が指摘されている。理由の一つとして wPTX + BV 後
の治療が奏効しにくいことが挙げられ、今回検討を行った。(対象と方法)
2011 年 11 月 か ら 2014 年 12 月 ま で に 同 治 療 を 行 っ た 16 例 を 対 象 と し、
wPTX+BV 中止後の治療と効果、死亡までの期間を検討した。( 結果 ) 内分泌
療法を含め wPTX+BV を行った平均治療ライン数は 3.5(1 ~ 9) であり、16
例中 1 例は現在も wPTX+BV を継続していた。病勢進行のため後治療を行え
なかったのは 5 例で 10 例に後治療が行われた(8 例は PD、2 例は副作用のた
めwPTX+BVを中止)
。後治療はECを3例に、Eribulin(HAL) 5例、Gemcitabine
(GEM) 5例、CMF 1例、Capecitabine (+Cyclophsopahmide XC 2 例) 4例、
UFT+fulvestrant(FUL) 1例 で あ っ た。HALの2例、XCの1例 にPRが 得 ら れ、
EC1例、GEM 2例、UFT+FUL 1例に3か月以上のSDが得られた。現在までに死
亡を10例に認め、wPTX+BV中止後の生存期間中央値は4.5 ヶ月で、後治療が
行えた10例に限っては生存期間中央値17.8 ヶ月であった。
(結語)wPTX+BVを
late lineや進行症例で使用することが多く、16例中5例(31%)に病勢進行で後
治療が行えなかった。上記のこともありwPTX+BV後の生存期間中央値は4.5 ヶ
月と短かったが、後治療が行えた症例に限ればHALやXC療法に奏効して長期生
存するものもあり、wPTX+BVの使用ラインを含め、さらに検討すべきと考えら
れた。
(目的)AVA+PTX 療法は優れた奏効率が報告されているが、長期継続するた
めには有害事象のコントロールが重要な治療法である。当科では、通院等の
社会的都合でレジメン通りの AVA+PTX 療法が困難な症例に対して、day 8 の
PTX を初めから省略した AVA+PTX 隔週投与を行っている。今回、AVA+PTX
隔週投与の治療効果と有害事象を検討した。(対象と方法)初回から AVA+PTX
隔週投与を行った転移再発乳癌 16 症例での治療効果と有害事象を検討した。
転移再発後の既治療レジメン数は、0 ~ 9 レジメン(平均 4 レジメン)であった。
(結果)AVA+PTX 隔週投与全 16 症例の効果判定は、PR 2 症例、long SD 6 症
例 で、Response Rate は 12.5 %、Clinical Benefit Rate は 50 % で あ っ た。
1st ~ 3rd line で AVA+PTX 隔週投与した 6 症例での効果判定は、PR 3 症例、
long SD 2 症例で、Response Rate は 50%、Clinical Benefit Rate は 83.3%
であった。有害事象では、高血圧で内服が3症例、尿蛋白で一時投与延期が
2症例でみられたが、PTX 減量は必要とせず、有害事象による治療中止はな
かった。(考察)通常の AVA+PTX 療法は、有害事象により PTX の減量や day
8 の PTX の休薬などで対応している施設が多いとされている。当科では初め
から day 8 の PTX を省略した AVA+PTX 隔週投与を行い、up front での投与
では良好な成績が得られている。しかし、late line での投与は、その効果は
必ずしも良好とは言えず、抗腫瘍効果と有害事象のバランスを考えて投与す
べきであると考える。AVA+PTX 隔週投与は、抗腫瘍効果・有害事象の両面か
らも有用性が高い治療法と考える。
400
ポスター討議
DP-2-68-01
DP-2-68-02
転移・再発乳癌に対するカペシタビン長期奏功例に関する検討
転移再発乳癌における Vinorelbine 療法の奏功率と治療継続期
間に関する因子についての検討
岩手県立中央病院 乳腺・内分泌外科
1
済生会横浜市南部病院外科、2 東京医科大学病院乳腺科、
済生会横浜市南部病院薬剤部、4 済生会横浜市南部病院病理部、
5
横浜市立大学附属市民総合医療センター乳腺甲状腺外科、
6
横浜市立大学附属市民総合医療センター病理部、
7
横浜市立大学医学部臨床腫瘍科乳腺外科
宇佐美 伸、梅邑 明子、佐藤 未来、渡辺 道雄、大貫 幸二
3
嶋田 和博 1、石川 孝 2、長谷川 聡 1、千島 隆司 1、福島 忠男 1、國谷 澪 3、
安岡 真吾 3、中山 崇 4、喜多 久美子 5、山田 顕光 5、成井 一隆 5、
清水 大輔 5、田辺 美樹子 6、佐々木 毅 6、菅江 貞亨 7、市川 靖史 7、
遠藤 格 7
【背景】転移再発乳癌 (MBC) において vinorelbine(VNR) は anthracycline(A)
や taxane(T) 既治療例の標準レジメンである.術前術後に A/T を使用する症
例も多く VNR は再発後第一選択となり得る.また近年の高齢者乳癌増加や医
療経済を考えると,低毒性で安価な薬剤をどのタイミングで使用すれば長期
奏功が得られるかを検討する事は実臨床において重要である.【目的】MBC の
VNR 単独療法の奏功率と TTF(time to treatment failure) に関する因子につ
いて検討した【方法】対象は MBC に対して 2008 年以降に VNR 単独療法が施行
された 51 症例.VNR は 25mg/m2 を Day1,8 投与 (21 日 1 サイクル ),病勢
進行や原病による全身状態悪化や副作用により中止するまで継続.評価項目
は奏効率,TTF,毒性 (CTCAE v4.0).統計解析には SPSSv11.0 を使用した.
【結果】平均年齢は 57 歳.平均腫瘍径は 3.5cm,組織型 ( 通常型浸潤癌 / 特殊型 )
は (43 例 84%/8 例 16%),NG(1,2/3) は (24 例 47%/14 例 27%),
cStage(I/II/III/IV) は (2 例 4%/28 例 54%/10 例 20%/11 例 22%), サ ブ タ
イプ (luminal//TNBC) は (35 例 65%/18 例 35%).VNR 使用前転移部位 ( 内
臓 / 骨 / その他 ) は (44 例 86%/30 例 59%/26 例 51%).術前術後化学療法や
内分泌療法 (HT) を含まない VNR 前レジメン数(0/1/2/3/4 ≦)は (3 例 4%/15
例 29%/17 例 33%/11 例 22%/5 例 9%),VNR 前 A 既治療例は 40 例 78%,T
既治療例は 43 例 84% であった.VNR 奏効率は CR0 例 ,PR9 例 ,SD28 例 ,PD14
例 ,CR+PR は 18%, CR+PR+SD は 73%.CR+PR+SD の予測因子は単変量
解析で VNR 前レジメン数 2 以下 (p=0.021),転移臓器数 2 個以下 (p=0.011),
多変量でも上記2因子が抽出された (p=0.018/0.009).全症例の TTF の
Kaplan-Meier 曲線(TTF-KM)の中央値は 98 日.VNR 前レジメン数 2 以下 (35
例 ) と 3 以上 (16 例 ) の 2 群間の TTF-KM 中央値は 135 日と 66 日で有意差を認
めた (p < 0.001).A/T 使用歴やサブタイプは TTF に影響を与えなかった.毒
性評価可能な 39 例において G3 以上は白血球減少 (6 例 15.3%),好中球減少
(11 例 28.2%) のみだった.【考察】VNR は奏効率も比較的良好の上,安価で
毒性も少なく今後も MBC の標準レジメンとして使用されると考えられる.前
レジメン数や臓器転移数を考慮することは良奏効率と長い TTF を達成するた
めの有用な decision tool となる.文献的考察を加え報告する.
DP-2-68-03
DP-2-68-04
進行・再発乳癌における TS-1 の位置づけ
1
転移・再発乳癌に対する Gemcitabine の有効性と安全性およ
び健康関連 QOL に関する前向きコホート研究
獨協医科大学越谷病院 乳腺センター、2 獨協医科大学越谷病院 放射線科
小島 誠人 1、石綱 一央 1、辻 英一 1、奈良橋 健 1、瀧澤 淳 1、二宮 淳 1、
小川 利久 1、川島 実穂 2、野崎 美和子 2
【目的】経口抗悪性腫瘍剤である TS-1 は手術不能又は再発乳癌において他剤耐
性症例に効果があり、認容性も良好であることは既に知られている。今回我々
は、進行・再発乳癌における TS-1 使用症例を遡及的に検討し、転移臓器別や
サブタイプ別の検討も加えた。【対象と方法】進行・再発乳癌 70 例に対し使用
し、評価可能症例は 50 例であった。投与方法は体表面積に合わせて 1 日に 80
~ 120mg を 28 日間連日投与 14 日間休薬で 1 コースとした。【成績】50 例の
奏効率は 30.0%、臨床的有用率は 54.0%であった。転移臓器別の評価では、
肺 転 移 の 奏 効 率 が 若 干 高 い 傾 向 に あ っ た。 サ ブ タ イ プ 別 の 評 価 で は、
LuminalA・B タイプの奏効率が若干高い傾向にあった。主な副作用については、
軽度消化器症状や骨髄抑制、長期使用症例で皮膚の色素沈着が認められたが、
手足症候群は現在のところ認められず、副作用による中止症例は少なく認容
性は高いと考えられた。【結論】TS-1 は他剤耐性症例にも効果が期待でき、ま
た化学療法の効果が低いとされる LuminalA・B タイプにも効果が期待できる
可能性が示唆された。さらに認容性が高く経口剤であるため、患者の QOL を
低下させずに長期間安全に投与でき、今後は up front にも使用できる薬剤と
考えられた。
401
1
横浜市立大学 付属市民総合医療センター 乳腺・甲状腺外科、
東京医科大学 乳腺科、
横浜市立大学 大学院医学研究科 消化器・腫瘍外科、
4
横浜市立大学 付属市民総合医療センター 病理部、
5
横浜市立大学 付属市民総合医療センター 臨床研究推進センター、
6
湘南記念病院 乳腺外科、7 済生会横浜市南部病院 外科、
8
横須賀共済病院 外科、9 横浜市民病院 乳腺外科、
10
横浜労災病院 乳腺外科
2
3
成井 一隆 1、石川 孝 2、足立 祥子 1、山田 顕光 1、島 秀栄 3、
喜多 久美子 3、菅江 貞亨 3、田辺 美樹子 4、大庭 真梨 5、土井 卓子 6、
長谷川 聡 7、盛田 智之 8、鬼頭 礼子 9、千島 隆司 10、市川 靖史 3、
遠藤 格 3
背景:Gemcitabine(GEM)は、転移・再発乳癌治療に用いられる細胞障害性
薬剤の中で特に認容性が高いとされる。対象と方法:転移・再発乳癌症例に
対して、GEM 群と担当医師選択治療 (TPC) 群を比較する前向きコホート試験
を行った。治療成功期間 (TTF)、FACT-B による健康関連 QoL(HRQoL)、およ
び Grade 3 の有害事象を評価した。FACT-B は治療開始前を baseline として、
4 週毎に回収した。結果:2010 年 6 月から 2014 年 1 月までに 9 施設から 100
例の症例が登録された。適格例は 98 例で、GEM 群 49 例、TPC 群 47 例の 96
例について解析した。TPC 群の内訳は,vinorelbine:15 例,capecitabine:9,
paclitaxel:7 例,eribulin:7 例,EC :6 例,その他が 8 例であった.年齢の中
央 値 は、GEM 群 62 歳 (30-79)、TPC 群 60 歳 (31-77) で あ っ た。GEM 群 の
42 例 (85.7%)、TPC 群の 34 例 (70.8%) が ER 陽性で、GEM 群の 2 例 (4.1%)、
TPC 群 の 8 例 (16.7%) が Her2 陽 性 で あ っ た。TTF の 中 央 値 は、GEM 群 が
5.3 ヵ月、TPC 群が 4.6 ヵ月で、有意差を認めなかった (p=0.67)。FACT-B は、
GEM 群 の baseline が 97.0、1、2、3 回 目 が、94.9、97.8、96.7 で あ っ た。
TPC 群では baseline が 92.4 で 1、2、3 回目は、93.2、89.1、90.3 で、両群
の baseline からの変化に有意差を認めなかった。Grade 3 の血液毒性は GEM
群の 7 例 (16.7%)、TPC 群の 4 例 (9.3%) に認め、有意差を認めず (p=0.31)、
非血液毒性は GEM 群の 2 例 (4.1%) と TPC 群の 4 例 (8.5%) に認め、有意差は
な か っ た (p=0.37)。 結 論:GEM 群 と TPC 群 で、TTF、HRQoL、 お よ び
grade 3 の有害事象に有意差を認めなかった。さらに解析を行って報告する。
一般セッション(ポスター討議)
【背景】カペシタビンは脱毛も少なく比較的高いQOLを保ちながら治療を継
続できる優れた薬剤である . また , 長期にわたって転移巣を良好に制御しえた
症例を日常臨床においてしばしば経験する 【
. 目的】当科におけるカペシタビン
投与症例のうち長期奏功例について , 不応例あるいは比較的早期に耐性を獲得
した症例と比較検討してその特徴を明らかにする 【
. 対象と方法】2010 年 10 月
から 2014 年 12 月に当科でカペシタビンが投与された転移・再発乳癌症例の
うち内服期間が 2 カ月未満の症例やラパチニブと併用した脳転移症例等を除
いた 58 例を検討対象とした .12 カ月以上の無増悪生存例を長期奏功群 , それ
以外を対照群とし , 臨床病理学的因子・前治療歴について検討した【結果】58
例 中 再 発 症 例 は 43 例,de novo stageIV が 15 例 で あ っ た .58 例 中 16 例
(28% ) が長期奏功群に相当した . 長期奏功群におけるカペシタビン治療期間
は 17 ~ 69( 中央値 22) カ月であった . 長期奏功群 vs 対照群について , 年齢 [ 中
央値 62(44-87) vs 59 (34-79)]・ホルモン受容体陽性率 [75% vs 75%]・
HER2 発現状況 [14% vs 19%]・内臓転移の有無 [56% vs 57%]・CEA 陽性
率 [75% vs 60%],CA15-3 陽性率 [56% vs 67%] についていずれも統計学的
有意差は認められなかった . 再発症例における無再発期間 (DFI) については ,
奏功群 7 ~ 178( 中央値 39, 平均 53) か月 vs 対照群 2 ~ 216( 中央値 45, 平均
61) か月で有意差はなかったものの (P=0.32), 奏功群の方が短い傾向にあっ
た . 前治療として投与された化学療法剤は奏功群 0 ~ 6( 中央値 1.5) 剤 vs 対照
群 0 ~ 5( 中央値 2) 剤 , 一方 , ホルモン受容体陽性例についてホルモン剤は奏
功群 0 ~ 4( 中央値 1) 剤 vs 対照群 0 ~ 6( 中央値 2) 剤投与されていた ( いずれ
も有意差なし ). 個々の症例についてみると , 前治療としてのホルモン療法が著
効し , 長期間維持し得た症例はカペシタビンの長期奏功はみられず対照群と
なっていた . 奏功群では前治療のホルモン療法に反応が乏しい症例が多かった
【結論と考察】本検討からはカペシタビン長期奏功群を予測する因子は見いだ
せなかった . 両群においてホルモン受容体陽性率は 75%で同等であったが , 対
象群は DFI が長くホルモン療法の前治療歴がやや多い傾向があったことから ,
内分泌療法反応性とカペシタビン長期奏功との間に何らかの関連 ( 負の相関 )
がある可能性があり今後の検討課題と考えられた .
ポスター討議
DP-2-68-05
DP-2-69-01
1
国際医療福祉大学 三田病院 乳腺センター、
東京大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
3
獨協医科大学 越谷病院 乳腺内分泌外科
1
白川 一男 1、木村 聖美 1、菊池 弥寿子 2、多田 敬一郎 2、小川 明子 1、
小川 利久 3、内田 恵博 1
乳癌において再発リスクに応じた術後補助療法の施行は患者の年齢に関わら
ず重要であるが、高齢者における化学療法の有害事象リスク評価法は定まっ
たものがない。Hurria ら高齢者の抗癌剤副作用リスクを評価する方法として
activity of daily living(ADL) などの機能状態に、社会経済状況や認知精神機
能、 服 薬 薬 剤 数、 栄 養 状 態 な ど を 加 え て る 包 括 的 老 年 医 学 的 評 価
comprehensive geriatric assessment(CGA) スコアを提唱している (J Clin
Oncol 2011)。
【目的】当院において乳癌と診断され治療を開始する患者に対
し、Hurria CGA の有用性を検討する。【方法】2013 年 6 月~ 2014 年8月の
間に当院で手術した 60 歳以上の臨床病期2~3期の原発性乳癌症例を対象と
して、Hurria CGA スコアを算出し、化学療法を行った症例において Grade 3
以上の有害事象の発現との相関について検討した。【結果】Stage 2/3 の症例
は 33 例。年齢は 60 歳から 84 歳、平均 70.2 歳。Hurrier CGA Score 0 ~ 5
点を Low risk group (L 群 )、6 ~ 9 点を Intermediate risk group(I 群)、10
点以上を High risk group(H 群)とした。33 例の内、L 群は 20 例、I 群 11 例、
H 群 2 例であった。これを、60 歳~ 69 歳と 70 歳以上に分けてみると、年齢
60 か ら 69 歳 16 例 は 全 て L 群、 こ の 内、 化 学 療 法 施 行 は 10 例(10/16 =
62.5%)でいずれの症例においても Grade 3 以上の有害事象は認められな
かった。年齢 70 以上は 17 例で、L 群 8 例(化学療法施行 2 例、2/8=25%)、I
群 7 例(化学療法施行 2 例、2/7=28.6%)、H 群 2 例(化学療法施行なし)で、
70 歳以上全体で化学療法施行 4 例(4/17=23.5%)であった。この内、Grade
3 の有害事象は I 群の 1 例に見られ、化学療法は1コースのみとなった。
【考察】
Hurria CGA は高齢者における化学療法の有害事象予測に関して簡便で有用な
評価法である。70 歳以上の Low risk group(Score 1 ~ 5 点)の症例に対し
てより積極的に化学療法を施行して更に検討する必要がある。
局所進行、再発性乳癌に対する2nd 以降レジメン化学療法、
7 レジメンについての DDC を用いた評価
Hurria 包括的老年医学的評価スコアと当院での化学療法有害事
象発現の相関性調査
2
那覇西クリニック、2 那覇西クリニックまかび
山城 和子 1、鎌田 義彦 1、玉城 研太朗 1,2、上原 協 1,2、玉城 信光 1,2
一般セッション(ポスター討議)
【目的】近年、がん化学療法の重要評価項目である OS と関連する事象として、
各レジメン単独の PFS ではなく、連続する複数のレジメンを合計した PFS を
DDC (duration of disease control) と称して、評価する方法が注目されてい
る。大腸直腸がん領域において確立された評価方法であるが、この場合、投
与するレジメンの順序が大切となってくる。MBC においては、anthracycline,
taxan 系抗がん剤が 1st line とされているが、DDC という概念は未だ確率さ
れておらず、pilot study として bench work(xenograft を使用した実験)の
発表が存在するのみである。【方法】今回、2011 年 4 月から 2014 年 3 月にお
い て、 当 院 で の 対 MBC 化 学 療 法 と し て の 2nd line 以 降 レ ジ メ ン で あ る
eribulin(68 例)、paclitaxel+bavacizumab(42 例), nab-Paclitaxel(21 例)、
docetaxel(28 例 )、vinorelbine(25 例 )、capecitabine/endoxan(36 例 )、
S-1(28 例)について、各レジメンの OS、PFS と各 DDC を検討した。【成績】
各レジメンの ORR/ DCR(%)については、34/89、32/89、29/57、15/50、
24/56、23/51、24/54 であった。DDC について、薬剤投与順序の変更によ
り OS と連動し、変化することが明らかとなった。【結論】同解析結果より、推
奨される薬剤投与順序につき考察を加える。
DP-2-69-02
DP-2-69-03
1
1
ホルモン療法を受ける乳がん患者とパートナーの関係性
内分泌療法中の閉経前乳がん患者における更年期症状と対処
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 博士後期課程、
2
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻
市立釧路総合病院 看護部、2 千葉大学大学院 看護学研究科
荒堀 有子 1、増島 麻里子 2
山本 瀬奈 1、荒尾 晴惠 2
目的:諸外国ではパートナーの支援が抑うつや心理的適応に影響すると報告
されている。ホルモン療法中は、長期間、家庭や社会で多くの時間を過ごす
ため、パートナーが精神的健康を高める重要な支援者になると期待される。
そこで、ホルモン療法中の乳がん患者とパートナーの関係性に焦点を当て、
ホルモン療法中の体験を明らかにすることを目的とした。
方法:質的記述的研究。初発の乳がんに対してホルモン療法を開始し 3 ヶ月
以上が経過しており、パートナーと同居している女性乳がん患者 10 名を対象
に半構成的面接を行った。逐語録作成後、データを内容の類似性と関連性に
基づきカテゴリー化した。本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認を得て
実施した。
結果:面接時間は平均 36.3 分、ホルモン療法の治療期間は 3 ヶ月~ 1 年 7 ヶ
月であり、5 名がタモキシフェン(リュープロレリン酢酸塩併用の 1 名を含む)、
5 名がアナストロゾール阻害剤を使用していた。パートナーは全員が婚姻関係
にある夫であった。分析の結果、580 のコードから 143 のサブカテゴリー、
38 のカテゴリー(〈 〉で示す)、8 の大カテゴリー(【 】で示す)が抽出された。
関係の基盤にはこれまでに築いた【夫婦を結ぶ相互のつながり】があり、この
つながりを拠り所として【夫婦でいるための夫との関係調整】を行っていた。
しかし、【ホルモン療法の心身両面への影響】を受け、【夫の協力を得て行う感
情と生活のマネジメント】で対処しようとするものの【夫とホルモン療法中の
体験を共有することの難しさ】を拭えず、〈夫と分かり合えない感覚〉を抱いて
いた。背景には、【個人差の大きいホルモン療法の治療体験】ではあるが【試行
錯誤で取り組む症状マネジメント】を行っている現状があり、対象者らは〈ホ
ルモン療法による副作用のとらえにくさ〉や〈症状への対処の難しさ〉を感じ
つつも〈手探りでのホルモン療法との付き合い〉をするしかない状況に置かれ
ていた。そうした中、
【今も途上にある夫婦関係の再構築】の様子が語られ、
〈互
いの推察の中での関係性〉であることや〈異性としてのぎこちなさ〉が残って
いることが明らかになった。
結論:ホルモン療法中の症状マネジメントは試行錯誤であり、患者はパート
ナーと症状体験を共有することを困難に感じていた。症状体験を共有できる
よう支援することで、パートナーから精神的支援を得ることができ、関係の
再構築を促進することにもつながる。
【目的】内分泌療法中の閉経前乳がん患者(以下患者)が自覚する更年期症状と
対処を明らかにし、外来における看護支援を検討する。【方法】乳がん手術後
に内分泌療法を開始した閉経前乳がん患者を対象に、内分泌療法開始後 6 ~
7 ヶ月時点の簡略更年期指数(SMI)の点数化、および更年期症状に対する対
処について面接調査で得たデータを質的帰納的に分析した。【倫理的配慮】所
属施設の倫理審査委員会の承認後、対象者へ本研究の趣旨等について文書と
口頭で説明し同意を得た。【結果】対象者は 6 名で、年代は 30 歳代から 50 歳
代であった。内分泌療法は、抗エストロゲン剤単独 3 名、抗エストロゲン剤+
LH-RH アゴニスト併用 3 名であった。SMI 合計得点は、最大 54 点、最小 23
点であり、抗エストロゲン剤+ LH-RH アゴニスト併用の方が、抗エストロゲ
ン剤単独より高かった。対象者の自覚する更年期症状の中で、特に症状が強
いと自覚する項目は、「疲れやすさ」、「いらいら」、「肩こり」、「発汗」、「気分
の落ち込み」であった。それらの症状への対処としては、「疲れやすさ」には<
無理な計画を立てない><体を休ませる>等、「いらいら」には<我慢せずに
家族に感情をぶつける><治療中断を検討する>等、
「肩こり」には<マッサー
ジやストレッチをする>、「発汗」には<いつでも汗の処理ができるよう準備
しておく><風通しの良い服装や髪形を工夫する>、「気分の落ち込み」には
<流れに身を任せて気持ちが回復するのを待つ><無理に家事を行わない>
等の内容が明らかとなった。【考察】患者は、内分泌療法による影響と考えら
れるさまざまな更年期症状に対して、問題解決的な対処と情動中心的な対処
を組み合わせながら対処していた。特に「いらいら」の程度が強いと自覚する
患者は SMI 合計得点が高値を示し、治療中断を検討するにまで至っていた。
患者が精神症状を強く自覚している場合は、内分泌療法の継続に影響する可
能性が高いと考えられたことから、医療者は患者の精神症状の出現の有無と
程度を外来通院時に継続的に把握する必要がある。また、患者は複数の症状
に対して自分なりにさまざまな対処を試行錯誤しながら行っていたことから、
専門的知識に基づく症状緩和に向けた情報提供を行うことや、患者の対処を
肯定的に評価し伝えることは、長期にわたる内分泌療法の継続への基盤につ
ながると考える。
402
ポスター討議
DP-2-69-04
DP-2-69-05
顎骨壊死予防のための口腔ケア指導の現状と課題
化学療法時の口腔内冷却法(クライオセラピー)施行における口
腔粘膜障害の予防効果
黒木クリニック
1
独立行政法人 国立病院機構 北海道がんセンター 外来化学療法センター、
独立行政法人 国立病院機構 北海道がんセンター 乳腺外科、
3
独立行政法人 国立病院機構 北海道がんセンター 薬剤科
山下 真里子、黒木 美紗、黒木 惠美、黒木 祥司
2
高橋 由美 1、渡邊 健一 2、富岡 伸元 2、馬場 基 2、佐藤 雅子 2、
萩尾 加奈子 2、五十嵐 真由子 2、玉木 慎也 3、高田 慎也 3、高橋 將人 2
【背景・目的】化学療法中の多くの患者に口腔粘膜や味覚の障害が生じQOL
を低下させる。5FU 急速静注や大量メルファランでの治療中、氷片による口
腔粘膜クーリング(クライオセラピー)が粘膜炎の発症抑制に対して効果があ
ることが実証されている。しかし、その他の薬剤での発表は少なく検証され
ていない。そこで乳腺外科のFEC・ドセタキセル療法治療中の外来患者に
クライオセラピーを施行し、口腔粘膜障害及び味覚障害の発生率をクライオ
セラピー施行前後で比較し、予防効果を検証した。【方法】2014 年 7 月~ 12
月までに乳腺外科ファーストライン治療としてFEC・ドセタキセル療法施
行中の研究同意が得られた外来患者を対象にクライオセラピーを行った。基
本的な口腔ケア(食後 3 回の歯磨き、食前後、起床時、就寝前の含嗽)は治療
前から開始した。制吐剤開始 15 分後(化学療法薬開始 15 分前)から氷片を口
に含み、溶けたら再度含む方法で口腔内冷却を治療終了まで繰り返した。そ
の後、患者に口内炎や味覚障害の有無などを記載する経過観察用紙を渡し、
次治療まで(Day 21)記載して頂いた。Grade は CTCAE Ver.3.0 を基本と
して独自に作成した用紙を使用した。上記を治療終了 4 コ - スまで行った。
2013 年 4 月~ 2014 年 3 月に同療法が終了している外来患者を非介入群とし
て、口腔粘膜障害、味覚障害の発生率を比較、検討した。【結果】クライオセ
ラピー介入群は 25 名(平均年齢 50.2 歳)であり口腔粘膜障害の発生があった
のは 15 名、発生率 60%であった。悪心の誘発が原因でクライオセラピーを
コース途中に中断した患者が 7 名おり、全てFEC療法中の患者であった。わ
ずかな味覚の変化は 20 名 80%(FEC 16 名、
ドセタキセル 4 名)に生じたが、
食欲不振を伴う Grade2 の味覚障害は 2 名 8%のみで、いずれもドセタキセル
治療中だった。一方、非介入群 58 名中(平均年齢 55 歳)口腔粘膜障害の発生
は 35 名 発生率 60.3%であった。味覚障害は 31 名 53.4%(FEC 12 名、ド
セタキセル 19 名)に生じ、Grade2 は 9 名 15.5%で全てドセタキセル療法中
であった。【考察】FEC・ドセタキセル療法中の口腔内冷却法前後の口腔粘
膜障害の発生率に差はみられず、高催吐性レジメンであるFEC療法には適
さなかった。しかし、高度の味覚障害の発生率は低下しており効果が示唆さ
れた。
DP-2-70-01
DP-2-70-02
久留米大学病院 乳腺外科・一般外科総合外来
1
外来化学療法を受ける乳がん患者の「FEC 療法サポートプログラ
ム」の取り組み
乳がんに対する化学療法後の重篤な有害事象(SAE);全症例登
録システムから得られたデータの解析
2
物部 千穂、関 理恵、中島 菜穂子、轟 希美、岡田 晃代
【はじめに】A 病院では FEC 療法を外来通院で行っている。FEC 療法は高度催
吐性リスクに分類され、治療後3日目に身体的苦痛が高い。看護師は治療前
に有害事象の対処法等の説明をしているが、治療後の受診は2週間後であり、
有害事象の辛さを後日、患者から聞くことがあった。そこで、治療後の自宅
でのセルフケア支援が重要と考え、FEC 療法を受ける患者に有害事象の自己
記入式セルフモニタリングシート(以下シート)を用いて電話サポートと面談
を組み合わせた「FEC 療法サポートプログラム(以下サポートプログラム)」の
取り組みを行ったので報告する。
【方法】対象は初回 FEC 療法を受ける患者。1.
FEC 前オリエンテーション、シート記入の説明 2.電話サポート:治療後
約3日目に症状・生活状況の確認と助言 3.面談:治療後2週間目(受診時)
に症状と対処法の確認と助言 4.アンケート調査(独自作成):治療後3週
間目にサポートプログラムについて4段階評価【倫理的配慮】A 病院医療に関
する倫理委員会の研究の取り扱いに基づき、看護部の承認を得た。【結果】A 氏:
40 代、女性。電話時は、悪心と食欲不振があり、水分摂取の必要性を説明した。
面談時、「水分摂取を行い体が楽になった」と発言した。B 氏:40 代、女性。
電話時は、倦怠感・食欲不振を認めた。面談時は、好中球減少を認め、口内
炎予防のための口腔ケアの必要性を説明し、その後症状は出現しなかった。C
氏:50 代、女性。電話時、症状はなく、何かあれば連絡して良いことを伝えた。
治療後4日目、電話で咽頭痛・便秘を訴え休日外来受診。面談時は、好中球
減少・口内炎を認め、口腔ケアを指導し、症状は日々軽減した。シートの記
入は全員でき、自由記載欄には生活の様子や1週間の心情などを記載してい
た。アンケート結果、全員が「シートを記入することで自分の症状が把握でき
た」、「電話サポートの時期は適切だった」、「電話サポートは副作用の対処に
役にたった」、「面談は副作用の対処に役に立った」と答えた。【考察】サポート
プログラムを取り入れることで患者がシートを記入し自己の症状把握に繋
がった。さらに電話で即時的に個別的な説明を看護師が行うことで、A 氏は症
状軽減に繋がり、B 氏は自己対応ができ、C 氏は休日外来を受診する等自己対
処行動がとれた。面談は有害事象の悪化防止に効果的であった。これらは、
セルフケア支援の重要性が示唆されたと考える。
千葉県がんセンター 外来化学療法科、
千葉県がんセンター 腫瘍血液内科、3 千葉県がんセンター 乳腺外科
辻村 秀樹 1,2、味八木 寿子 2,3、王 暁斐 2,3、中村 力也 3、山本 尚人 3、
熊谷 匡也 2
【目的】がん化学療法の進歩は著しいが、一方で多彩な有害事象も増加してい
る。特に重篤な有害事象(SAE)については、組織的な管理と対応が望まれる。
当院では、「抗がん剤投薬後 1 ヶ月以内の緊急入院」を入院理由と関係なく全
て SAE と定義し、漏れなく登録するシステムを稼働させている。その中から、
乳がん関連データについて解析した。【方法】1)事務担当者が予定外入院を毎
日把握し、電子カルテ内専用データベースに該当症例を登録。2)主治医が、
レジメン名、入院理由、治療との関連などの必要事項を入力。3)多職種から
なる委員会で毎週検討。
【結果】2013 年 1 月から 2014 年 12 月までの 2 年間で、
1344 件が登録された。臓器別では消化器が 680 件と圧倒的に多く、呼吸器
159 件、血液 119 件と続いた。乳がんは 96 件が登録され、主治医が 4 段階で
評価した治療との関連は、あり 23 件、おそらくあり 8 件、あるかもしれない
20 件、なし 45 件であった。登録件数が多かったレジメンは、多い順にエリ
ブリン 15 件、ベバシズマブ +PTX 13 件、FEC 11 件、VNR 7 件、T-DM1 6 件、
AC・DOC・カペシタビン 各 5 件、TC 4 件であった。入院理由は、悪心・嘔
吐 19 件、発熱性好中球減少症(FN)17 例、感染症 10 件、下痢 6 件が目立っ
たが、最も多かったのは原疾患の悪化 45 件であった。入院原因とレジメンと
の関連を検討したところ、代表的な治療関連 SAE である FN は、FEC・エリブ
リン・AC の順で、7・6・3 件を数えた。悪心・嘔吐でレジメンと関連したも
のは、エリブリン・FEC・TC が 3 件、DOC・カペシタビンが 2 件であった。
転移・再発例の入院原因では原疾患の悪化が目立ち、エリブリン・ベバシズ
マブ +PTX・VNR ・T-DM1・カペシタビンの順で、8・7・7・5・5 件であった。
また、少数であるが、ニューモシスチス肺炎やアスペルギルス肺炎など、注
目すべき SAE が報告された。【結語】全症例を機械的に登録する当システムは、
化学療法中に生じる様々な問題を把握し評価する機能を備えている。乳がん
に対する化学療法の副作用は、決して軽くない。そのため、ここで得られたデー
タをもとに、レジメンに応じた最良の支持療法、適正な治療適応、充実した
看護ケアなどが導き出されることを期待する。
403
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】ビスフォスフォネート製剤やデノスマブ (BMA) による顎骨壊死の
発症を予防するためには、口腔ケアが重要である。我々は患者が適切な口腔
ケアを実践できるように支援するために、どのような指導が効果的であるか
を調査検討したので報告する。
【対象および方法】アレディア、ビスフォナール、
ゾメタ、ランマーク等の BMA を長期間使用した乳癌骨転移患者 26 名に顎骨
壊死や口腔ケアの知識ならびに実際に行っている口腔ケアに関する無記名の
アンケート調査を行い、顎骨壊死や口腔ケアの知識と実際の口腔ケアとが相
関するかどうか検討した。【結果】26 名中 25 名から解答を得た。BMA 治療が
口腔内に与える影響を良く知っていると答えたのは 8 名、少し知っていると答
えたのは 11 名、知らないと答えたのは 6 名であった。口腔ケアの具体的な方
法を良く知っていたのは 3 名、少し知っていたのは 12 名、知らなかったのは
9 名であった。全員歯磨きは行っていたが、1 日の歯磨き回数は 1 回~ 5 回で、
中央値は 3 回であった。歯磨き以外の口腔ケアまで行っていたのは 15 名で
あった。また、22 名が口腔ケアの方法をもっと知りたいと答えていた。BMA
の口腔内への影響の知識の有無と歯磨き回数やその他の口腔ケアとの間には
一定の傾向を認めなかった。口腔ケアの知識と歯磨き回数や歯磨きの持続時
間には相関がなかったが、口腔ケアの知識がある患者の 100%、少し知識が
ある患者の 75%、知識がない患者の 22% が歯磨き以外の口腔ケアを行って
いた。【考察】当院では、BMA を投与する患者全員に、顎骨壊死のリスクと口
腔内衛生の重要性について医師より説明しているが、BMA が口腔内に与える
影響を知らないと答えた患者が全体の 24% もおり、十分な理解が得られてい
ないことが分かった。また、顎骨壊死の知識の有無は実際の口腔ケアとはあ
まり相関しておらず、リスクがあると分かっていても実際の口腔ケアに結び
ついていなかった。しかしながら、具体的な口腔ケアの方法を知っている患
者は、口腔ケアをきちんと実行していた。以上より、口腔ケア指導には単な
る知識による動機づけよりも具体的な方法を指導する方がより有効であると
考えられた。今後は歯科と連携して、歯科衛生士による看護師のための口腔
ケア演習を行い、口腔ケアをより具体的に患者に指導するシステムを構築す
ることが重要である。
ポスター討議
DP-2-70-03
DP-2-70-04
1
1
乳癌 nab-paclitaxel 使用症例における末梢神経障害の調査研
究(第1報)
Nab-paclitaxel 起因性末梢神経障害に対する四肢冷却法の有
用性の検討
大阪警察病院 乳腺内分泌外科、2 大阪警察病院 看護部、
八尾市立病院 乳腺外科、4 大阪府立急性期総合医療センター 乳腺外科、
5
大阪労災病院 乳腺外科、6 りょうクリニック、
7
大阪厚生年金病院 乳腺・内分泌外科、8 日生病院 乳腺・内分泌外科
3
亀岡市立病院 看護部、2 亀岡市立病院 外科、3 京都府立医科大学 乳腺外科
山田 易余 1、田中 宏樹 2、杉本 里保 2,3
吉留 克英 1、多根井 智紀 1、森本 卓 3、香川 雅一 3、野村 昌哉 4、
松並 展輝 5、梁 壽男 6、塚本 文音 7、西田 幸弘 8、島田 真由美 2、
有働 みどり 2、大前 敬子 2、鳥 正幸 1
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】乳癌化学療法においてタキサン系薬剤は第一選択薬の一つである
が、末梢神経障害をきたし患者の QOL や治療継続性に大きな影響を与える。
nab-paclitaxel( 以下 ABI) は、術前治療における paclitaxel との比較にて pCR
率の優越性が報告されたが(GeparSepto)、悪心・嘔吐や末梢神経障害は高頻
度でありその対策が急務である。末梢神経障害は根本的対策が困難であり、
また対策の評価も CTCAE による重症度判定はあいまいであるため有効性を示
しにくい。今回、各種対策を行いまたスクリーニングツールにて評価を試み
たので報告する。【対象および方法】術前ないし術後補助療法にて ABI を投与
した 54 例。260mg/m2 を 3 週ごとに 4 コース投与した。今回 4 コース投与終
了した 47 例を対象とした。全例女性で年齢 33-78 歳(中央値 53 歳)、ER 陽性
29 例、Her2 陽性 18 例(全例 trastuzumab 併用)、術前 31 例、術後 16 例であっ
た。患者質問票については、神経障害性疼痛スクリーニングツール(日本ペイ
ンクリニック学会)を利用した。7項目(針で刺されるような痛み、電気が走る、
焼けるよう、しびれ、衣服摩擦・冷風で痛い、感覚低下・過敏、むくみ・変色)
について、全くない 0 点から非常に強くある 4 点までを 1 コース 21 日間にわ
たって連日自己記入した。コース内で単純合計し、最良 0 点最悪 84 点とした
(以下スコア)。コース内ならびにコース間での変動を検討した。支持療法の
薬剤、フローズングローブおよび加圧ストッキング ( 以下支持療法 ) は、任意
とした。検定は二元配置分散分析および Dunnett 検定を用いた。【結果および
考察】47 例で4コース完遂し減量は1例のみ。項目別スコアでは、しびれの
スコアが最も高く平均 24.3、以下感覚低下・過敏 12.6、むくみ 9.0、針刺し 6.0、
電気 5.8、焼灼 2.7、衣服 1.5 であった。コース内では、しびれは day4-6 をピー
クにして漸減し、day21 では day 1と同程度となる変動を各コース共通して
認めた。支持療法なしでは、しびれスコアが 19.5、33.1、36.2、39.9 とコー
スを経るごとに第1コースと比し後のコースで有意に悪化したが、支持療法
ありでは、10.1、17.2、17.3、13 と増悪を認めなかった。【まとめ】毎日自
己記入する神経障害性疼痛スクリーニングツールは、ABI による末梢神経障
害の評価に有用である可能性が示唆された。今後さらに症例を重ね、フロー
ズングローブ、加圧ストッキングや薬剤の有用性を検討する予定である。
【はじめに】Nab-paclitaxel はパクリタキセルの溶媒をアルブミンとすること
で、副作用軽減と容量増加に伴う治療効果の増大を狙った薬剤であり、現在
日本で使用できるタキサン系薬剤ではもっとも新しい薬剤となる。まだ臨床
データは十分ではないものの従来のパクリタキセルよりもより高い効果が期
待され、かつ有効成分が従来品と同じなので副作用などの予想もしやすく、
当院ではアジュバントとして多用している。しかしながら日本では 3 週間に 1
回の投与法しか保険で認められておらず、その場合、1 回に 260mg/m2 とか
なり多量の薬剤が入ることから主に四肢末端に出現する末梢神経障害が一時
的に強く出ることが問題であった。そこで 2013 年 10 月以降当院で独自に工
夫したフローズングローブとフローズンソックスを使用してみたのでその効
果について考察する。【対象と方法】2013 年 10 月から 2014 年 10 月までの 1
年間に Nab-paclitaxel を使用した患者のうち冷却法に同意された 7 例と同意
されなかった 4 例の計 11 例を対象とした。冷却群のうち、2 例が再発後使用
で weekly での使用であった。5 例はアジュバントであり、非冷却群は全例ア
ジュバントでの使用であった。7 名には両上肢、両下肢に独自に工夫した冷却
装置を用いて Nab-paclitaxel 投与中と投与前後 15 分間冷却した。下肢は膝下
までの着圧ソックスを 24 時間着用した。末梢神経障害の評価方法としては
CTCAE Ver4.0 を用いて治療開始から 4 サイクル終了時まで評価した。【結
果】冷却群では化学療法中の最大障害度が Grade1 が 4 例、Grade2 が 3 例、非
冷却群では 4 例全部が Grade2 であった。アジュバント使用のうち冷却群に 1
例、非冷却群で 1 例 Grade2 の段階で患者の希望により途中で減量した。その
結果 Grade3 以上は両群ともに認めなかった。治療終了時点での Grade は冷
却群では Grade0 が 2 例 Grade1 が 3 例 Grade2 が 2 例であり、非冷却群で
は全例 Grade2 であった。冷却群の 1 例を除いてプレガバリンを併用した。全
例苦痛なく施行でき、冷却に起因する皮膚症状は 1 例も認めなかった。【結論】
四肢冷却法は Nab-paclitaxel の副作用軽減におおむね有効で安全に施行でき
た。Nab-paclitaxel は一時的な神経障害は強いものの障害の回復が早く、後
に残りにくい。四肢冷却法を併用することで施行中も問題なく使用でき、今
後の使用拡大が期待できる。
DP-2-70-05
DP-2-71-01
術前・術後補助療法のドセタキセルによる末梢神経障害発現の
因子の検討
当院における進行・再発乳癌に対する Bevacizumab の使用経験
国立病院機構 仙台医療センター 乳腺外科
1
群馬県立がんセンター 乳腺科、2 群馬県立がんセンター 看護部、
3
群馬県立がんセンター 薬剤部
岡野 舞子、渡辺 隆紀
森下 亜希子 1、宮本 健志 1、藤澤 知巳 1、松本 弘恵 2、松木 美紀 2、
藤田 行代志 3、柳田 康弘 1
【背景】タキサン系の薬剤は乳癌の化学療法におけるキードラッグであるが、
副作用のひとつに末梢神経障害があげられる。ドセタキセル ( 以下 DTX) によ
る末梢神経障害はパクリタキセルよりも頻度が低く、グレード 2,3 は 6 ~
10%とされている。また、術前・術後補助療法に使用する用量では DTX の末
梢神経障害出現が高頻度となる累積投与量に達することは稀ではあるとされ
ているが、それでも出現しているのが現状である。末梢神経障害出現には影
響する因子があると考えられ、今回、年齢、BMI、DTX のその他の副作用 ( 手
足症候群、関節痛・筋肉痛、浮腫 ) について検討した。【対象】当院にて 2010
年 1 月から 2014 年 10 月までに術前・術後補助療法として DTX (75mg/m2、
4cycle) が完遂できた 318 例についてレトロスペクティブに解析した。318 例
の 内 訳 と し て、DTX 単 剤 184 例、DTX+Trasutzumab88 例、TC(DTX、
Cyclophamide)46 例、投与順として、術前化学療法 162 例(FEC 先行 144 例、
DTX 先行 18 例)、術後化学療法 110 例(FEC 先行 108 例、DTX 先行 2 例)であっ
た。
【結果】DTX 開始からの観察期間中央値は 5.2 ヶ月(2.1 ~ 18.4 ヶ月)であっ
た。NCI-CTCAE による末梢神経障害を Grade 分類すると、Grade0 は 106 例
(33% )、Grade1 は 185 例 (58% )、Grade2 は 27 例 (9% )、Grade3・4 は 0
例であった。末梢神経障害の出現と年齢 (age ≧ 50 vs age < 50) に関しては
有意差を認めた (p < 0.05)。DTX の他の副作用との関連性を検討したが、筋
肉 痛・ 関 節 痛 の 出 現 と 手 足 症 候 群 の 出 現 と は 関 連 を 認 め た (p < 0.05)
BMI(BMI ≧ 30 vs BMI < 30)、浮腫との関連性は認めなかった。術前化学療
法 162 例と術後補助療法 110 例においては術後で末梢神経障害の出現が高い
結果であった (p < 0.05)。術前化学療法例において pCR 率に関して検討した
が、明らかな有意差は認めなかった。【結語】今回検討した項目では末梢神経
障害の発現に年齢と筋肉痛・関節痛、手足症候群との関連に統計学的に有意
差を認めた。今回の解析は DTX 投与終了直後の短期的な評価であり、長期的
に末梢神経障害が遷延した症例とその影響も検討すべきと考えられる。
【背景】進行・再発乳癌の治療の目的は、延命だけでなく、症状緩和や症状発
現 の 遅 延 で あ り、 最 適 な 化 学 療 法 を 行 う 必 要 が あ る。 そ の 中 で、
Bevacizumab(以下 BEV)は、種々の報告で奏効率の増加と無増悪生存期間の
延長が確認されている。当院において、進行・再発乳癌に対して BEV+PAC
療法を行った症例について報告する。【方法】対象は、2012 年 7 月~ 2014 年
12 月の間に、当院にて BEV を使用した進行・再発乳癌の患者 16 名で、年齢
中央値は 57.3 歳(42-79 歳)であった。原則として、28 日を 1 サイクルとし、
BEV は 10mg/kg を day1 と day15 に、PAC は 80mg/m2 を day1、8、15 に
投与した。【結果】転移臓器の内訳は肝臓が 63%、骨が 44%、肺が 25%など
であった。サブタイプは、エストロゲン受容体(ER)陽性かつ / またはプロゲ
ステロン受容体(PgR)陽性かつ HER2 陰性が 69%、ER 陰性かつ / または PgR
陰性かつ HER2 陰性が 13%、トリプルネガティブが 18%を占めた。治療ライ
ン数の平均は 7.2 で、いずれの患者も多くの治療歴を有した。すべての症例に
おいてタキサン系薬剤が初期治療もしくは再発治療に用いられていた。TTF
(治療成功期間)の平均値は 5.5 カ月で、ほとんどの症例で BEV 併用によるタ
キサン再導入治療は有効であった。有害事象として最も多かったものは末梢
神経障害で 44% に見られたが、いずれも Grade2 程度であり、PAC を減量や
休薬し治療を継続することで、効果持続可能であった症例も存在した。他の
有害事象は、高血圧が 3 例、鼻出血が 3 例、皮疹などが 6 例に認められたが重
篤なものはなく、忍容性は良好であった。【結論】濃厚な前治療歴を有する転
移乳癌に対する BEV + PAC 療法は、ほとんどの患者で有効であり、症例によっ
てはかなりの効果が認められた。有害事象は管理可能な範囲内であった。今
回の検討では、再発後の化学療法レジメン数が少ない症例に対して同療法に
よる治療効果が高いというわけではなく、どのような症例で効果が高いのか
を引き続き検討していく必要があると思われた。
404
ポスター討議
DP-2-71-02
DP-2-71-03
当院における Bevacizumab 単独療法症例の検討
1
Paclitaxel+Bevacizumab 療法に伴う肝萎縮、肝不全症例の
検討
松下記念病院 外科、2 竹田乳腺クリニック
1
山口 正秀 1、大西 美重 1、大陽 宏明 1、高尾 幸司 1、石井 博通 1、
荒木 康伸 1、清水 健 1、和泉 宏幸 1、谷 直樹 1、野口 明則 1、山根 哲郎 1、
竹田 靖 2
山本 真理 1、池田 雅彦 1、久保 慎一郎 1、突沖 貴宏 1、中本 翔伍 1、
宇田 憲司 2、石井 辰明 3、川野 亮 4
【背景と目的】Paclitaxel+Bevacizumab 療法(以下 PB 療法)の奏効率はこれま
での進行再発乳癌治療と比べ高く、またその速効性も顕著である。最近は
Paclitaxel(以下 PTX)既治療の進行再発乳癌に対しても PB 療法は有効とする
報告や、濃厚な前治療歴を有する症例でも一定の治療効果が認められたとす
る報告が散見されるようになった。また PTX の有害事象による Bevacizumab
(以下 BEV)単独維持療法や、その後に PB 療法の再導入を実施し、長期投与が
可能であった事例も報告されている。また、2014 年 9 月に IMELDA 試験及び
TANIA 試験において BEV 継続投与の有効性が示されたことから、今後 BEV が
ますます長期投与されることが推測される。従って治療医は BEV 長期投与に
おいては副作用のプロファイルを熟知する必要がある。当科では PB 療法後に
従来報告がないものの因果関係が否定できない肝不全を発症した症例を複数
経験したためその特徴について検討した。【対象と方法】2011 年 9 月から
2014 年 12 月の間に PB 療法を施行した 73 例のうち PB 療法終了後に高度の肝
萎縮と肝不全症状を来した 6 例について治療歴、使用状況、肝萎縮の程度につ
いて検討した。肝萎縮の程度については VINCENT を使用して PB 投与前と投
与後の肝臓体積を算出し比較検討した。【結果】PB 療法後、肝非萎縮の 67 例
は進行再発乳癌治療開始から PB 投与までの期間の中央値は 15.5 ヵ月であっ
たのに対し、肝萎縮6例は 33.5 ヵ月と前治療期間が長期であった。また、PB
療法の治療成功期間の中央値は非萎縮症例では 6 ヵ月に対し萎縮症例 11 ヵ月
と萎縮症例で長かった。肝転移は萎縮症例6例中5例(83%)に認めたのに対
し、非萎縮症例では 66 例中 25 例(38%)と少なかった。肝転移のない症例で
も肝萎縮を認めた症例が1例あった。また肝転移の形態は萎縮症例では 80%
がびまん型であったのに対し、非萎縮症例では 8%であった。肝萎縮の程度は
PB 療法後 /PB 療法前の体積比として 57%~ 82%(平均 67%)であった。最
も高度に肝萎縮を発症した症例は癌の制御が良好であったのにもかかわらず
肝不全によって死亡した。【結語】BEV の直接的因果関係は不明ではあるが、
前治療歴が長く、PB 療法の期間が長い症例で、多数の肝転移を有する症例で
は PB 療法により肝萎縮をきたし、肝不全に陥る可能性があることを念頭に置
くべきである。
DP-2-71-04
DP-2-71-05
補助化学療法後 2 年以降も継続する長期毛髪減少の検討
1
福山市民病院乳腺甲状腺外科、2 うだ胃腸科内科外科クリニック、
いしいクリニック、4 かわの医院
乳癌化学療法レジメン別にみた頭髪の長期的回復
- 全国アンケート調査から
日立製作所日立総合病院 外科、2 日立製作所日立総合病院 看護局
1
埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科、
仙台医療センター 乳腺外科、3 東京大学 医学系研究科、
順天堂大学 乳腺内分泌外科、5 国立がん研究センター がん対策情報センター、
6
千葉大学附属病院 臓器制御外科、7 愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、
8
弘前市立病院 乳腺外科、9 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター、
10
立命館大学 生命科学部 生命医科学科
伊藤 吾子 1、周山 理紗 1、三島 英行 1、中田 頌子 1、奥村 稔 1、
生畑目 みさ 2
2
4
はじめに;補助化学療法の主たる薬剤である Anthracycline,Taxan の副作用
として脱毛があるが、その改善の時期、程度に関する報告は少ない。我々は
2013 年の本学会にて、患者の主観的評価による長期毛髪減少の頻度を発表し
た。今回は医療者による客観的な評価を行った。対象;2005 年 1 月~ 2012
年 12 月に当院で術前または術後補助化学療法を行った 253 名のうち調査の同
意を得た 179 名 (70.8% )。DTX 群 8 名中 5 名、PTX 群 24 名中 15 名、FEC 群
88 名中 60 名、FEC-DTX 群 133 名中 99 名。化学療法開始時年齢 28-76 歳 ( 平
均 51.6 歳 )、化学療法終了からの期間 2-8.5 年 ( 中央値 4 年 )。方法;2013 年
10 月~ 2014 年 12 月に頭頂部 ( つむじ )、前髪の写真撮影を行うと同時に、
頭頂部の脱毛巣の範囲を計測した。脱毛巣の定義は地肌が透けて見える範囲
とした。頭頂部の評価は Grade0: 脱毛巣なし、Grade1: 直径 5cm 以下の脱毛
巣、Grade2: 直 径 6-10cm の 脱 毛 巣、Grade3: 直 径 11-15cm の 脱 毛 巣、
Grade4: 直径 16cm 以上の脱毛巣ありの 5 段階とした。前髪の評価は正常、
前髪伸展不良ありの 2 段階とした。また、35 名については 1 年後の評価も行っ
た。各 Grade の頻度を化学療法レジメンごとに検討した。結果;Taxan 単剤
群では Grade0 が 12 名 (60% )、Grade1 が 4 名、Grade2 が 3 名、前髪伸展不
良ありが 4 名であった。FEC 群では Grade0 が 56 名 (93% )、Grade1 が 3 名、
Grade2 が 1 名であり、前髪伸展不良ありが 3 名であった。FEC-DTX 群では
Grade0 が 26 名、Grade1 が 24 名、Grade2 が 28 名、Grade3 が 12 名、
Grade4 が 9 名であり、前髪伸展不良ありは 35 名であった。Taxan 単剤、FEC
群では脱毛巣の残存はあっても軽度であり、地毛や部分ウイッグでカバー可
能であった。FEC-DTX 群の 21%は Grade3 以上 (10cm 以上の脱毛巣が残存 )
であり、フルウイッグや帽子を必要としていた。更に 52%が Grade1-2 の脱
毛巣が残存しており、FEC-DTX 群の 7 割が 2 年以降も毛髪に不満を持つとし
た患者の主観的評価と一致した。また、2 年以降は脱毛巣の縮小、前髪進展不
良の改善はほとんど見られなかった。考察;補助療法による長期毛髪減少は
女性である乳癌患者の QOL を大きく損ねる。再発リスクに応じた適切な化学
療法レジメンの選択および、事前に長期毛髪減少の頻度の説明が必要と考え
た。また、多施設での実態調査を行うとともに、既に長期毛髪減少状態にあ
る患者への対応が必要と考える。
矢形 寛 1、渡辺 隆紀 2、岡田 宏子 3、齋藤 光江 4、高山 智子 5、
三階 貴史 6、吉村 章代 7、長谷川 善枝 8、土井 卓子 9、下妻 晃二郎 10
(背景)化学療法による外見の変化は,患者を悩ませる主要な副作用である.
我々は化学療法における外見の変化とそのサポートの現状を明らかにするた
め,化学療法を受けた乳癌患者を対象とした全国アンケート調査を行った.
その中で化学療法終了後の長期的な頭髪の変化に注目し,化学療法レジメン
別の回復度を検討した.(対象と方法)質問紙は 2013 年 4 - 10 月に国内医療
施設に発送し,医師から外来受診患者への配布と,患者からデータセンター
への郵送を依頼した.質問内容は化学療法に伴う外見(頭髪,まゆ毛,まつ毛,
爪,皮膚)の変化とそのサポートの現状についてである.適格条件は,術前ま
たは術後化学療法を受けた再発兆候のない乳癌患者で,化学療法終了から 5 年
以内とし,化学療法レジメンはアンスラサイクリン + シクロフォスファミド
+/-5-FU(AC),毎週パクリタキセル(P)または 3 週毎ドセタキセル(D))の組
み合わせで治療を行ったものに限定した.化学療法終了からの期間毎に頭髪
の状態を横断的に解析し,年齢(50 歳未満/ 50 歳以上),内分泌療法(アロマ
ターゼ阻害剤(AI 剤)/ AI 剤以外/使用なし)で補正し,化学療法レジメン別
の頭髪の回復度の差を解析した.(結果)質問紙は 47 病院 1511 名の患者から
郵送され(回収率 82%),化学療法終了から 5 年以上経過の 33 名を除く 1478
名を集計し,レジメン別には P のみ,P + D,AC+P+D を除外した 1448 名に
ついて解析した.化学療法終了からの期間は 1 年未満 28%,1 - 3 年 43%,3
- 5 年 28%であり,頭髪量が 80%以上回復した割合(無回答を除く)は,1 年
未満 52.7%,1 - 3 年 63.5%,3 - 5 年 61.7%であった.3 - 5 年についてレ
ジ メ ン 別 に み る と,AC 88.9% > AC+P 64.1% > D 63.5% > AC+D
43.4% であり,年齢と内分泌療法で補正してもレジメン間で有意差が認めら
れ た(AC > AC+P / AC+D,D / AC+P > AC-D は P < 0.001.AC > D は
P=0.004.AC+P > D は ns).(結論)化学療法後を受けた乳癌患者の一定数
が頭髪の十分な回復がみられず,タキサン系,特にドセタキセルを含むと回
復度が低い傾向にあった.医療者は化学療法による脱毛に関して,長期的に
渡るサポートを考えていく必要がある.
405
一般セッション(ポスター討議)
【 は じ め に 】HER2 陰 性 の 進 行・ 再 発 乳 癌 に お い て Bevacizumab(Bev)+
Paclitaxel(PTX) 療法施行後、有害事象のため継続が困難となり、Bev 単独療
法へ移行した症例について検討したので報告する。【対象と結果】2012 年 1 月
から 2014 年 11 月までに当院で進行・再発乳癌に対して Bev+PTX 療法を施
行した症例は 18 例であり、その内 Bev 単独療法へ移行した症例は 5 例であっ
た。年齢は 47 歳から 61 歳までの平均 55.8 歳であった。ER 陽性 HER2 陰性は
4 例 Triple negative が 1 例であった。手術症例は 4 例で 3 例は根治手術後の
再発であり、術後再発までの期間は 6 年、8 年、9 年と全て 5 年以上であった。
1 例は骨転移を認めたが手術を行った症例であった。手術適応がなかった 1 例
は広範囲なリンパ節転移を認めた症例であった。Bev+PTX 療法前のレジメン
は中央値 3 レジメン(1 - 5)、Bev+PTX 療法は 4 症例が中央値 4.5 コース(2
- 5)
、1 症例が隔週投与として 14 回(7 コース)施行した。Bev 単独療法への
移行理由は、末梢神経障害 4 例と重篤な爪周囲炎 1 例であった。Bev 単独療法
の観察期間は中央値 2 カ月(1 - 15)である。治療効果は評価のできる 2 症例
は SD で有害事象は高血圧とタンパク尿であった。【考察】Bev+PTX 療法後の
Bev 単独療法への移行理由は PTX に起因する末梢神経障害が多かった。Bev
単独療法を 1 年以上長期に継続している症例は、投与早期に末梢神経障害を発
症し、3 カ月ほど Bev 単独療法を行い症状が軽減したため再チャレンジし隔週
投与で Bev+PTX 療法を行い、最終的に Bev 単独療法で一年以上経過している
症例である。また、その症例は投与 1 年後ごろからタンパク尿が発症している
が休薬で改善している。個々の治療効果や症状に合わせて再チャレンジも含
めて投与法を変更していくことが肝要である。また、Bev における有害事象
の高血圧についてはコントロールに難渋する場合も多くあり、循環器内科と
の親密な連携が重要だと思われた。【結語】HER2 陰性 進行・再発乳癌にお
いての Bev+PTX 療法後の Bev 単独療法は、投与方法の工夫とともに有害事象
のコントロールが重要である。
3
ポスター討議
DP-2-72-01
DP-2-72-02
パクリタキセルによる光線過敏症発現の実態
ドセタキセル / シクロホスファミド療法時に発現する皮疹に対
するデキサメタゾンの有効性
医療法人社団 圭友会 浜松オンコロジーセンター
1
宮本 康敬、三澤 奈津、沢井 紀子、足立 順子、渡邊 摩美、牧野 恵美、
内藤 有美、渡辺 亨
一般セッション(ポスター討議)
【目的】パクリタキセル(PTX)は乳癌のみならず、多くのがん腫の薬物治療に
おいて有用な薬剤である。PTX による皮膚障害には、脱毛症や爪脱落、色素
沈着、放射線治療後のリコール現象などが報告されている。しかし、紫外線
曝露による光線過敏症の報告は少なく、発現の実態は明らかではない。そこで、
本研究では PTX による光線過敏症発現の実態について調査することを目的と
した。【方法】2011 年 9 月から 2014 年 12 月までに当院にて PTX 治療を実施
した乳癌患者を対象に、後方視的にカルテより光線過敏症に関連したデータ
を抽出した。PTX 治療を実施した全ての患者に対して、化学療法開始時の看
護師によるオリエンテーションおよび薬剤師による治療説明の際に紫外線対
策とその必要性について指導し、その後も医師、薬剤師、看護師が皮膚状態
の確認および紫外線対策の指導を必要に応じて行った。【結果】対象患者は女
性 98 名で、調査時に 4 名が治療継続中であった。1 回投与量は全ての患者で
80mg/m2 であり、PTX 平均投与回数は 11.1 回(1~29 回)であった。毎週投
与のスケジュールが 58 名(59.2%)で、3 投 1 休が 40 名(40.8%)であった。
PTX 単独療法が 38 名(38.8%)で、トラスツズマブ併用が 30 名(30.6%)、ベ
バシズマブ併用が 9 名(9.2%)、カペシタビン併用が 21 名(21.4%)であった。
対象症例 98 名のうち光線過敏症を発現したのは、37 名(37.8%)であった。
症状出現までの PTX 投与平均回数は 6.2 回(1~11 回)であり、投与回数に関
係なく発現していた。スケジュール別の発現頻度は、毎週投与が 46.6% で、
3 投 1 休が 25.0% であり、毎週投与の方が 2 倍程度発現頻度が高かった。併
用薬剤別の発現率は、単独が 34.2%、トラスツズマブ併用が 50.0%、ベバシ
ズマブ併用が 11.1%、カペシタビン併用が 38.1% であった。光線過敏症を発
現した場所は手背が 28 名(75.7%)と最も多く、顔面 23 名(62.2%)、上腕 5
名(13.5%)と続いた。出現する季節は、紫外線量と関係なくいつの季節にも
出現していた。主な症状は、発赤、掻痒感であり、発現時の対応は、紫外線
対策の確認および見直し、外用ステロイド剤の塗布が主なであった。【考察】
PTX による光線過敏症は高頻度に出現する皮膚障害である。発現する場所は
紫外線曝露を受けやすい部位であり、また季節に関係なく発現するため、継
続した観察が必要である。また、現状の紫外線対策では不十分であり、今後
さらなる強化が必要と考える。
2
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 薬剤部、
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 乳腺外科
阿部 圭輔 1、阪田 安彦 1、吉村 友里 2、梶原 友紀子 2、河内 麻里子 2、
伊藤 充矢 2、大谷 彰一郎 2、檜垣 健二 2
【緒言】ドセタキセル(DOC)/ シクロホスファミド(CPA)療法(TC 療法)は乳
癌術後補助化学療法として広く使用されている。一般に TC 療法は良好な忍
容性を示すと言われているが、特徴的な有害事象として手指や頚部を中心と
した皮疹があり、その発現頻度は高い。今回、TC 療法施行患者におけるデキ
サメタゾン(Dex)の増量が皮疹予防に寄与するか後方視的に調査した。
【方法】対象は 2012 年 4 月~ 2014 年 3 月に当院において TC 療法を 4
コース施行した 42 名。抗癌剤投与前における Dex が 6.6 mg の症例を
Low Dex 群(n=17)、13.2 mg の症例を High Dex 群(n=25)とし、カルテ
より後方視的に二群を比較することで Dex の有効性について検討した。また、
Dex による有害事象(消化性潰瘍、不眠、糖尿病の増悪、HBV 再活性化)につ
いても併せて調査した。加えて、重篤な皮疹(Grade 2 以上)が発現するリス
ク因子を検索するため、重篤な皮疹あり / なしを目的変数としたロジスティッ
ク回帰分析を行った。説明変数には、年齢、性別、体表面積、T-Bil、AST、
ALT、SCr、添付文書上 DOC あるいは CPA と併用注意とされる薬剤の使用
の有無、他薬剤による薬剤過敏症既往の有無、食物および花粉アレルギーの
有無を用い、それぞれの変数について単変量解析を行った。レジメンは前投
与として Dex(6.6 mg あるいは 13.2 mg)およびグラニセトロン 1 mg を
用い、DOC 75 mg/m2 および CPA 600 mg/m2 を 3 週間毎に施行とした。
DOC および CPA 投与中は手足のクーリングを行った。また、両群ともに点
滴治療翌日より 3 日間は Dex 4 mg/day を内服とした。
【結果】皮疹の発現頻度は Low Dex 群において Grade 1: 29.4%、Grade 2:
41.2%、Grade 3: 11.8%、High Dex 群 に お い て Grade 1: 56.0%、
Grade 2: 16.0% であり、High Dex 群において有意に軽度であった(P =
0.031)。両群ともに、消化性潰瘍治療薬、睡眠導入薬、糖尿病治療薬の追加
あるいは HBV 再活性化は生じなかった。High Dex 群を対象として重篤な皮
疹が発現するリスク因子について解析したところ、他薬剤による薬剤過敏症
既往がリスク因子になりうる可能性が示唆された(P = 0.071)
。
【考察】Dex による有害事象に注意を払う必要はあるものの、TC 療法におけ
る Dex 増量は皮疹軽減に有効であると考える。Dex 投与量および投与期間に
ついて、更なる検討を行うことが今後の課題である。
DP-2-72-03
DP-2-72-04
1
1
ゾレドロン酸に抵抗性乳癌骨転移に対するデノスマブの効果の
検討
3
乳癌骨転移の骨転移 Cancer Board の介入~多診療科による骨
転移マネージメントの実際
高崎総合医療センター 乳腺内分泌外科、2 東邦病院 外科、
群馬大学大学院 臓器病態外科学
2
3
荻野 美里 1、鯉淵 幸生 1、常田 祐子 1、小田原 宏樹 2、堀口 淳 3、
竹吉 泉 3
【背景と目的】乳癌骨転移に対してはゾレドロン酸とデノスマブが使われてい
る.ゾレドロン酸が先に使用可能になったため,長期にゾレドロン酸を使用
している例も多いが,デノスマブに変更することが有用かどうかについては
報告がない.今回我々は骨代謝マーカー NTx を指標としてデノスマブからゾ
レドロン酸への変更が有用かどうかについて検討した.【対象と方法】2013 年
10 月から 2014 年 9 月,乳癌骨転移でゾレドロン酸を投与している 35 例中,
ゾレドロン酸を 8 週以上投与中に骨吸収マーカーである尿中 NTx が増加し,
37.5 nmol BCE/mmol Cre 以上となった骨転移乳癌の 7 例を対象とした.最
終ゾレドロン酸投与 4 週間後からデノスマブを投与し,尿中 NTx の推移を観
察した.尿中 NTx は,デノスマブ投与 4 週後,8 週後,12 週後,24 週後に測
定し変化率をみた.
【結果】年齢は中央値 58 歳 (48 ~ 69 歳 ).転移巣は骨 7 例,
肺 5 例,肝 3 例,脳 3 例 ( 重複有り ).サブタイプは,Luminal type が 7 例であっ
た.ゾレドロン酸投与回数中央値は 14 回 (3 ~ 60 回 ) であった.NTx 値はゾ
レドロン酸最終投与時の平均が 56(37.7 ~ 77)nmol BCE/mmol Cre で,デ
ノスマブ投与 4 週後には全例低下し,平均 25.2(13.9 ~ 52) と有意に減少し
た (P=0.001).さらに投与 8 週後の平均値は 19.42(16.5 ~ 23.6),12 週後
は 17.7(10.6 ~ 20.1) と徐々に低下し,24 週後は 20(10.8 ~ 36.8) と低値
で平衡に達し以降は低値を維持した.デノスマブ投与中止となった症例は 3 例
認め,2 例が死亡のため,1 例が転院に伴うためであったが,いずれも直前ま
で投与継続可能であった.デノスマブ投与後に新規 SRE,顎骨壊死,腎機能
障害は認めなかった.【結語】乳癌骨転移でゾレドロン酸投与中に尿中 NTx が
上昇した症例で,デノスマブに変更することにより尿中 NTx は有意に減少し
た.ゾレドロン酸抵抗性となった症例のデノスマブ投与は有害事象もなく有
用であると考える.
東京大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
東京大学医学部附属病院 整形外科、
東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
西岡 琴江 1、原田 真悠水 1、尾辻 和尊 1、佐藤 綾花 1、石橋 祐子 1、
笹原 麻子 1、菊池 弥寿子 1、分田 貴子 1、山村 純子 1、倉林 理恵 1、
丹羽 隆善 1、澤田 良子 2、篠田 裕介 3、多田 敬一郎 1、瀬戸 泰之 1
乳癌骨転移は比較的緩徐な進行をたどることも多く、直接の死亡原因になる
ことは少ないが、QOL を著しく損なう。また、近年の新規抗癌剤やホルモン
剤登場やビスフォスフォネート、RANKL 阻害剤の使用により、骨転移のマネー
ジメントは多彩であり、長期にわたるようになった。当院では、2012 年 5 月
に骨転移 Cancer Board(CB)が設立された。これは診療科を超えて集学的な
診療体制を整えることにより、骨転移の診断・治療の標準化を目的としている。
CB 開設以来、乳癌骨転のマネージメントが非常にスムーズになり、骨転移に
対する治療やコントロールも早期に行えるようになったと考える。今回、乳
癌骨転移に対しての骨転移 CB の役割と今後の課題について検討した。現在
(2014 年 12 月)、外来で診療中の骨転移症例は 24 例、そのうち骨転移 CB 介
入は、14 例である。14 例中 13 例が、ゾレドロン酸またはデノスマブが投与
され、6 例が放射線治療を行っている。CB 非介入理由は、CB 開設以前から治
療経過観察中、本人希望であった。骨転移 CB は、整形外科が中心となり、乳
腺外科(原発担当科)、放射線科,緩和ケア診療部,原発担当科,リハビリテー
ション科,地域医療連携部などの多診療科/多職種で構成される。骨転移 CB
の開設以前は、個々の診療医により骨転移マネージメントを行ってきたため、
診療医の負担も大きかったが、CB 介入により、治療の選択や放射線科や整形
外科によるそれぞれの専門家の適応説明、緩和ケア、地域医療連携への移行
も良好となり、外来の負担も減少した。症状のない患者も含めて、骨転移が
発見された時点で骨転移 CB にコンサルトし、早期より整形外科が介入し、骨
関連事象の治療、および発生を予防することが目指せるようになった。さらに、
緩和ケアチームやリハビリテーション部、地域医療連携部が介入することで、
自宅療養も不安なく移行できるようになった。今後の課題としては、骨転移
のスクリーニングの定期検査は推奨されていないが、骨転移早期発見により、
骨関連事象の予防により QOL の向上が目指せる可能性もあり、
今後はスクリー
ニング方法やその対象も検討が必要と考えられる。
406
ポスター討議
DP-2-72-05
DP-2-73-01
1
1
プロトコルによる共同薬物治療管理を取り入れた乳癌外来化学
療法時の薬剤師の取り組み
2
閉経後 ER 陽性進行再発乳癌におけるフルベストラントの至適投
与方法の検討(JBCRG-C06:Safali 試験)
地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市民病院 薬剤部、
地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市民病院 乳腺外科
松山赤十字病院 乳腺外科、
国立病院機構 大阪医療センター 外科・乳腺外科、
3
大阪府立成人病センター 乳腺・内分泌外科、
4
熊本大学医学部附属病院 乳癌分子標的学寄付講座、
5
福島県立医科大学 腫瘍内科学講座、
6
広島市立広島市民病院 乳腺科・化学療法科、7 弘前市立病院 乳腺外科、
8
がん・感染症センター都立駒込病院 外科(乳腺)、
9
京都大学大学院医学研究科 医学統計生物情報学、
10
国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター
2
阪田 安彦 1、阿部 圭輔 1、梶原 友紀子 2、河内 麻里子 2、伊藤 充矢 2、
大谷 彰一郎 2、檜垣 健二 2、開 浩一 1
川口 英俊 1、増田 慎三 2、中山 貴寛 3、山本 豊 4、佐治 重衡 5、
大谷 彰一郎 6、長谷川 善枝 7、山下 年成 8、森田 智視 9、大野 真司 10
【 背 景 】フ ル ベ ス ト ラ ン ト 500mg(F500)と 250mg の 効 果 を 比 較 し た
CONFIRM 試験の結果を受け、F500 は、閉経後 ER 陽進行再発乳癌性の標準
治療となったが、F500 の治療ライン別効果に関するデータは極めて少ない。
一方、実臨床において内分泌療法のみで長期生存例を経験することがあるが、
F500 を含む治療戦略がどのように長期生存例に寄与しているかは不明であ
る。また、閉経後 ER 陽性進行再発乳癌に対する治療法は、多岐にわたり、治
療ラインも多くなるため、継続される治療レジメンと予後に関する前向き試
験をデザインする事は、極めて困難である。
【目的】日常診療下の閉経後 ER 陽性進行再発乳癌患者に対する F500 の治療ラ
イン別 TTF 及び副作用を後ろ向きに検証する。またフルベストラントの治療
前後の記録から、ダイナミック治療レジメンと生命予後との関連の探索的解
析を行い、最適な FLU500 の投与ラインを探索する。
【対象】2011 年 11 月(フルベストラント上市後)から 2014 年 12 月 31 日まで
にフルベストラントを実診療下で投与された患者を登録する。
【解析方法】中間解析では、主要解析として臨床背景および治療歴がフルベス
トラントの治療成功期間(TTF)に与える影響を調査する。各ベースライン因
子(ステージ、ER/PgR/HER2、Ki67、Histological grade、浸潤径、腋窩リ
ンパ節転移、ly、v)及び治療ライン、前治療内容、転移部位状況と治療期間
との関連を Kaplan-Meier 曲線にて検討する 。副次的な解析として、臨床背
景および治療歴がフルベストラント投与開始後の生存時間(OS)に与える影響
を調査する。最終解析では、中間解析の内容に加えて、複数因子を同時に含
む COX 回帰分析についても行う。さらに全治療状況の記述統計(投与期間、
投与割合、安全性評価、有効性評価)、治療マップの作成、ダイナミック治療
レジメンと生命予後との関連の探索的解析を実施する。即ち、ER+MBC に対
する至適治療順序に関して分析を行う予定である。
【進行状況】現時点までに 374 例のデータをカルテから後ろ向きに抽出した。
【今後の予定】平成 26 年 4 月までに 1000 例のデータ抽出し、上記解析を行う
予定である。UMIN Clinical Trials Registry identifier: UMIN 15168
DP-2-73-02
DP-2-73-03
1
1
2
3
HER2 陰性局所進行乳癌に対するアンスラサイクリン - タキサ
ン - エリブリン逐次療法の有用性確認試験 (JBCRG-17)
先進医療 B にて実施する乳がん局所療法としてのラジオ波焼灼
療法 (RFA) 多施設共同研究(RAFAELO Study)
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科、
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科、
3
愛知県がんセンター中央病院 乳腺科、4 広島市立広島市民病院 乳腺外科、
5
順天堂大学附属順天堂練馬病院 乳腺外科、
6
順天堂大学医学部附属順天堂医院 乳腺科、7 大分県立病院 外科、
8
大阪労災病院 乳腺外科、
9
国立病院機構九州がんセンター 臨床研究センター、10JBCRG
増田 慎三 1、深田 一平 2、近藤 直人 3、大谷 彰一郎 4、服部 正也 3、
小坂 泰二郎 5、田辺 真彦 6、増野 浩二郎 7、松並 展輝 8、澤木 正孝 3、
柏葉 匡寛 10、川端 英孝 10、相良 安昭 10、黒井 克昌 10、森田 智視 10、
大野 真司 9、戸井 雅和 2,10、伊藤 良則 2
【背景と目的】手術不能局所進行乳癌には、アンスラサイクリン (A) 系および
タキサン (T) 系を含む逐次化学療法が標準治療とされるが、十分満足のいく治
療成績とはいえない。進行再発乳癌治療において生存予後を改善できたエリ
ブリン (Eri) に、その追加効果を期待し、A-T に続き、Eri の術前治療レジメの
有効性および安全性を検証する多施設共同第2相試験 (JBCRG-17) を遂行し
ている。2014 年 12 月に初期登録 20 例を対象に中間解析を行ったのでその速
報を報告する。【対象と方法】20 歳以上 70 歳以下、未治療の HER2 陰性局所
進行乳癌 (Stage IIIA (T2-3,N2 のみ適格 ),IIIB,IIIC) を対象とした。A 系お
よび T 系標準レジメを各々 2 サイクル以上 4 サイクル以下実施後、Eri を、1.4
mg/m2 を day1、8 に投与し、21 日を 1 サイクルとし、4 サイクル投与した。
その後、手術可能であれば根治手術を試行した。Primary endpoint(PE) を
A-T-Eri 逐次療法の臨床的奏効率とし、期待奏効率 85%、閾値 70% として、
60 例を目標症例数とした。Eri の安全性評価、腫瘍縮小効果予測に関係する臨
床病理学的および分子生物学的マーカーの探索 (Translational research) など
を secondary endpoints と設定した。【結果】2013.4~2014.11 に 10 施設か
ら 54 例が登録された。初期登録 20 例を対象にその有効性及び安全性に関し
て中間解析を行い、2014.12 の IDMC にて評価された。20 例中、16 例 (80%)
で A-T 療法により SD 以上の効果 (CR1, PR12, SD3) を得て、Eri 投与に移行
したが、うち 5 例 (31%) で Eri 中に腫瘍の再増悪 (PD) を認めた。また、A-T
療法で SD であった 3 例中、Eri による追加効果 (PR in) の得られた症例は皆
無であった。PE に関して、全期間の奏効率は 62.5%(10/16) であり、AT 治
療による奏効率 (68.4%;13/19) を鑑みると、Eri に当初の上乗せ期待値を得
ることは難しいことが予想された。Eri による重篤な有害事象は認めなかった。
IDMC にて検討の結果、A-T 直後に、Eri をこの順序で投与する治療法の有効
性は少ないと判断され、新規登録および Eri 治療への新規移行を中止した。【考
察とまとめ】局所進行乳癌の術前治療として A-T 療法に、さらに Eri による全
身療法を継続する strategy には、十分な有用性がえられない可能性があり、
留意が必要である。今後、全登録例のデータ解析に加え、Translational 研究
の 遂 行 に よ り、Eri が 有 用 な 集 団 を 同 定 し た い。(UMIN Clinical Trials
Registry identifier: UMIN000009639)
407
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、2 千葉県がんセンター、
岡山大学医学部、4 広島市立広島市民病院、5 北海道がんセンター、
6
国立がん研究センター東病院、7 四国がんセンター、8 群馬県立がんセンター、
9
防衛医科大学校
木下 貴之 1、山本 尚人 2、土井原 博義 3、大谷 彰一郎 4、高橋 将人 5、
和田 徳昭 6、高橋 三奈 7、藤澤 知巳 8、津田 均 9、麻賀 創太 1、
吉田 正行 1、神保 健二郎 1、岩本 恵理子 1
早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法(RFA)に対する臨床使用確認試験が平成 19
年度より「胸部悪性腫瘍の対するラジオ波焼灼療法」の一環として開始された。
臨床使用確認試験として乳腺組織での RFA の焼灼効果を確認し、手技の安全
性 / 有効性を検証するための Phase I/ II を行った。腫瘍径 3cm 以下の症例に
対して RFA を施行後、手術を施行し、安全性と病理組織学的な有効性を検証
する試験を 51 症例に対して行った。結果は、RFA は術前の US,MRI にて限局
性かつ 2cm 以下と診断された症例に対して NADH 染色も含めた病理組織学的
検査で完全焼灼効果が確認された。有害事象は軽度の皮膚熱傷および大胸筋
熱傷を計 5 例に認めた。次に高度医療にて腫瘍径 1cm 以下の早期乳癌患者に
対して RFA 施行後非切除試験を行った。施術後、3、6、12 ヶ月後に、画像診
断評価および針生検による病理組織学的評価を実施し、標準的経過観察法の
確立と整容性を評価することを目的とした。58 例施行され不完全焼灼例は 5
例(8.6%)で、乳房内再発、遠隔再発は認めず、高い整容性が確認された ( 観
察期間中央値 :1102 日 )。今回、先進医療評価制度下に RFA と乳房温存療法と
の比較試験を計画し、乳がん局所療法として世界初の医療技術開発を目指す
多施設共同試験を開始した。画像診断で腫瘍長径(T)が 1.5cm 以下で N0 の単
発の乳管癌を対象とした。術前針生検と SLN の情報にて補助薬物療法の適応
は決定する。全身麻酔下に RFA を施行し、3-4 週後より放射線治療、術後薬
物療法を開始する。放射線治療終了後、3 ヵ月の時点で吸引式針生検および画
像診断を実施し、不完全焼灼の有無を評価し、経過観察か切除手術に変更す
る か を 判 断 す る。Primary Endpoint は 5 年 温 存 乳 房 内 無 再 発 生 存 割 合、
Secondary Endpoint は治療後病変残存割合、全生存期間、遠隔無再発生存
期間、有害事象である。試験治療は、標準治療(乳房部分切除術)に比べ低侵
襲で整容性に優れるが、局所再発に関するデータが現時点で十分でない。本
研究の臨床的仮説は、「試験治療(RFA)がヒストリカルコントロールの標準治
療に比較し、5 年温存乳房内無再発生存割合で有意に劣らない」とした。目標
症例数は 372 例、登録期間 3 年、追跡期間 5 年として、2013 年 8 月より 9 施
設にて臨床試験を開始した。
一般セッション(ポスター討議)
【緒言】乳がんにおける薬物治療は、重要な役割を担っており、治療効果を最
大限に得るためには、エビデンスに基づいた治療を適切な用量及び期間で治
療を継続する必要があり、患者の副作用を管理することが重要である。当院
では通院治療室に薬剤師が常駐し、患者のアドヒアランスの向上、QOL の低
下防止を目的として、薬剤師が服薬指導、副作用モニタリングを行い、支持
療法、検査値オーダーの提案などを行っている。平成 22 年の厚生労働省医政
局長通知では薬剤師が医師と事前に作成・合意されたプロトコルに基づき、
薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更、検査値オーダーについ
て実施する共同薬物管理を行うことが求められている。当院では、添付文書、
ガイドラインなどに記載されている薬剤の処方やその用量の変更、検査値オー
ダーについては、事前に作成したプロトコルにより薬剤師が代行入力(以下、
PBPM)をおこなっている。今回、われわれは外来化学療法時の薬剤師常駐の
有効性を評価するため当院での取り組みを調査した。
【方法】2014 年 1 月~ 12 月までの、乳がん外来化学療法患者に対する薬剤師
による提案内容(件数、効果、採択率)、PBPM 内容を調査した。
【結果】期間内での化学療法件数は 2541 件、薬剤師による提案件数は 54 件で
52 件が採用されていた。内訳としては、支持療法の提案:18 件、投与量の変
更:21 件、投与もれの確認:14 件、他科コンサルトの提案:1件であった。
また、支持療法の提案は全例採用されており、改善例 14 例、不変 4 例であった。
PBPM 実施件数は 75 件で、その内訳は HBV スクリーニング:6 件、HBV キャ
リア・既感染患者に対する定期的な HBV-DNA 定量:50 件、腎機能によるゾ
レドロン酸の用量調節:16 件、パクリタキセル投与前の H1 拮抗薬:3 件であっ
た。
【考察】外来化学療法患者に薬剤師が直接モニタリングを行うことにより、患
者毎の有害事象の状況を把握することができる。薬剤師が提案した内容につ
いてはほとんどが採用されており、支持療法の追加や投与量の調節により、
患者の症状改善や有害事象の再燃予防に貢献することができたと考えられる。
また、PBPM は事前にプロトコルを作成することにより、ガイドライン、添付
文書に基づいた内容を薬剤師により代行入力することができるため、医療の
質の向上、リスクマネージメントや医師の負担軽減に繋がると考えられる。
ポスター討議
DP-2-73-04
DP-2-73-05
乳癌術前化学療法としての nab-Paclitaxel followed by EC
療法 臨床第 II 相試験 (PerSeUS-BC01)
エリブリン隔週投与法の有効性と安全性の検討 -JUST-STUDY1
北海道がんセンター 乳腺外科、2 大阪府立成人病センター 、
四国がんセンター 乳腺科・化学療法科、4 相良病院 乳腺科、
5
松山赤十字病院 乳腺外科、6 大阪労災病院 乳腺外科、
7
弘前市立病院 乳腺外科、8 大阪医科大学付属病院 一般・乳腺・内分泌外科、
9
国立病院機構 大阪医療センター 外科・乳腺外科、
10
広島市立広島市民病院 乳腺外科
1
3
石原 和浩 1、二村 学 2、長尾 育子 3、竹内 賢 4、中田 琢己 5、川口 順敬 6、
浅野 雅嘉 7、熊沢 伊和生 8、白子 隆志 9、吉田 和弘 10
渡邊 健一 1、吉波 哲大 2、原 文堅 3、相良 安昭 4、川口 英俊 5、
松並 展輝 6、長谷川 善枝 7、岩本 充彦 8、四元 大輔 4、高橋 將人 1、
水谷 麻紀子 9、増田 慎三 9、中山 貴寛 2、大谷 彰一郎 10
JA 岐阜厚生連 岐北厚生病院 外科、2 岐阜大学医学部 乳腺・分子腫瘍学、
3
岐阜県総合医療センター 乳腺外科、4 木沢記念病院 乳腺外科、
5
岐阜市民病院 乳腺外科、6 朝日大学歯学部附属村上記念病院 乳腺外科、
7
市立恵那病院 外科、8JA 岐阜厚生連 揖斐厚生病院 外科、
9
高山赤十字病院 外科、10 岐阜大学医学部 腫瘍外科
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】乳癌の術前化学療法は Anthracycline 系薬剤と Taxane 系薬剤の順
次投与が標準だが、nanoparticle albumin-bound paclitaxel (nab-PTX) の
有効性は不明である。【目的】乳癌術前化学療法としての nab-PTX followed
by EC 療法の有効性、安全性を検討する。
【対象】病期 I-IIIB の浸潤性乳癌で、
subtype は LumB(Ki67 ≧ 15% ま た は 核 グ レ ー ド 3)、Lum/HER2、HER2、
TN。炎症例乳癌、両側性乳癌、粘液癌、腫瘍径≦ 1.0cm の症例は除外。【方法】
nab-PTX(260mg/m2) 3 週 1 回 を 計 4 コ ー ス 投 与 後 EC(90 mg/m2、600
mg/m2)3 週 1 回計 4 コースを投与。Lum/HER2、HER2 は trastuzumab ( 初
回 8mg/kg、2 回目以降 6mg/kg) を nab-PTX と同時投与。主要評価項目は
pCR 率、副次的評価項目は臨床的奏効率、組織学的治療効果、乳房温存率、
有害事象発現頻度。【結果】全登録症例数 55 例、平均年齢 52.9 歳。LumB:21
例、Lum/HER2:14 例、HER2:6 例、TN:14 例、治療完遂率は 80.0% (44/55)。
pCR 率は 24.5%(12/49)、subtype 別では LumB:15.0%(3/20)、Lum/HER2:
25.0%(3/12)、HER2:50.0%(3/6)、TN:27.3%(3/11)。治療効果は CR:8 例、
PR:27 例、SD:7 例、PD:7 例、臨床的奏効率は 71.4% (35/49)、組織学的治療
効 果 判 定 は Grade0:2 例、1a:14 例、1b:9 例、2a:10 例、2b:2 例、3:12 例、
乳房温存率は 40.8%(20/49)。G3 以上の有害事象は nab-PTX 投与時で白血球
減少 13.0%、好中球減少 50.0%、肝機能障害 5.6%、末梢性感覚ニューロパチー
7.4%、筋または関節痛 16.7%、末梢性運動ニューロパチーおよび発疹が各々
2.0%。EC 投与時は白血球減少 38.8%、好中球減少 49.0%、発熱性好中球減
少 6.1%、貧血、肝機能障害、悪心、食欲不振、末梢性感覚ニューロパチーお
よび血管炎が各々 2.0%。
【まとめ】本療法は従来法に比べ遜色のない抗腫瘍効
果を呈した。nab-PTX の先行投与、適切な支持療法によって本療法は安全に施
行可能である。
【背景】エリブリン (ERI) は進行再発乳癌を対象として、単剤で初めて主治医
選択治療群に対して全生存期間を有意に延長したことで脚光を浴びている
(EMBRACE 試験)。ERI の有害事象で臨床的に特に問題となるのは好中球減少
である。添付文書では ERI 1.4mg/m2 を Day1, Day8 に投与し、その後 1 週
間休薬する 3 週を 1 サイクルとする投与法が採用されている。しかし、有害事
象のため投与を skip し、投与量の変更をせざる得ない場合も少なくない。そ
こで、有害事象により投与量を変更する標準的な方法でなく、投与間隔を延
長し隔週にする新たな ERI の投与方法を検討した。隔週投与は標準投与と比
べて、通院頻度も少なく、QOL の観点からも進行再発乳癌の治療目的に合致
す る 投 与 法 で あ る と 考 え る。【 目 的 】ERI 1.4mg/m2 2 週 連 続 投 与 (dose
intensity:0.93mg/m2/ 週 ) において投与基準に達しない場合に、ERI 隔週投
与(dose intensity:0.7mg/m2/ 週)へ移行し隔週投与の有効性、安全性を検
討した。Primary endpoint は隔週投与法の CBR
(臨床的有用割合)とした。
【対
象と方法】HER2 陰性 A 系および T 系薬剤既治療の進行再発乳癌患者を対象と
し、多施設共同臨床第 2 相試験として行った。ERI 1.4mg/m2 を 2 投 1 休の
標準的投与方法で開始し、第 2 サイクル Day1 までに、投与開始基準に満たさ
ない場合に隔週投与法に移行した。【結果】2012 年 7 月より登録開始し、16
施設より 88 症例の登録があった。隔週投与群が 42 例、標準投与群が 40 例、
その他が 6 例であった。隔週投与群の CBR は 31%、標準投与群は 25% で同
等 (p=0.81) であった。安全性では血液毒性が高頻度である以外、隔週投与群
も標準投与群も特記すべき有害事象は認めなかった。【考察とまとめ】ERI の
国内 P2 試験において CBR は 27.5% であり、当試験の隔週投与群と標準投与
群 の CBR と 同 等 で あ っ た。ERI の 隔 週 投 与 法 は 標 準 投 与 法 に 比 較 し dose
intensity が 75% にもかかわらず有効性が低下することなく、血液毒性を中心
とした有害事象の管理が簡便であった。ERI 隔週投与法は有用な投与方法であ
ると考えられ、今後さらに検討を重ねていく必要がある。UMIN Clinical
Trials Registry identifier: UMIN 000008491
DP-2-74-01
DP-2-74-02
1
済生会新潟第二病院
センチネルリンパ節生検郭清省略後に所属リンパ節単独再発を
来した症例の臨床病理学的特徴を探る
2
3
センチネルリンパ節と外側胸動静脈の関係および生検時に血管
損傷を回避する取組み
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺外科、
がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科、
がん研究会有明病院 病理部、4 がん研究会がん研究所 病理部
田邊 匡、武者 信行、桑原 明史、坪野 俊広、酒井 靖夫
荻谷 朗子 1、北川 大 1、中島 絵里 1、坂井 威彦 1、宮城 由美 1、
飯島 耕太郎 1、森園 英智 1、蒔田 益次郎 1、伊藤 良則 2、堀井 理絵 3、
秋山 太 4、岩瀬 拓士 1
【背景と目的】センチネルリンパ節生検(SN)郭清省略後の所属リンパ節再発率
は低く、当院のデータでも 0.9%(2578 例中 24 例。観察期間中央値 75 ヶ月)
である。郭清省略後の所属リンパ節単独再発 (AR) になるとさらに少ないため、
AR の臨床病理学的特徴に関するデータは乏しい。今回当院の症例を用いて検
討を行った。【対象】2003 年から当院で SN を施行し郭清を省略した症例で、
2013 年 12 月までに AR を確認した 19 例。再発治療開始後の観察期間中央値
32 ヶ月(7-84 ヶ月)。【結果】初回手術から AR までの期間中央値は 42 ヶ月
(9-89 ヶ月)。全例追加郭清施行。AR 後に薬物療法 18 例、放射線治療 6 例に
施行。病理学的に証明された転移はレベル I のみ:12 例、レベ II まで:2 例、
レベル III まで:3 例、鎖骨上まで:2 例。薬物療法前に追加郭清を施行した
17 例で、術前評価以上のレベルに転移が認められた症例は 2 例。追加郭清時
のリンパ節転移個数(薬物療法後に追加郭清を施行した 2 例除外)は 1~3 個:
10 例、4~9 個:5 例、10 個 以 上:2 例。 初 回 手 術 時 の サ ブ タ イ プ は
Luminal:10 例、Luminal-HER2:0 例、HER2:2 例、トリプルネガティブ(TN)
:
7 例。Luminal1 例に再発治療開始後 39 ヶ月で肝に遠隔再発し、遠隔再発後 7 ヶ
月生存中。HER2 の 2 例は再発時にレベル III または鎖骨上まで転移を認めた
が、トラスツズマブを併用し、再発治療開始後 27 ヶ月、68 ヶ月で遠隔再発
は認めず。TN で遠隔再発を来した 3 例は、初回手術から 1 年前後で AR となり、
再発後全例に郭清と抗癌剤、2 例に放射線治療を行ったが、再発治療開始後
1,5,24 ヶ月で頸部リンパ節、肺、肝に遠隔再発を認め、24 ヶ月で遠隔再発
を来した 1 例が遠隔再発後 26 ヶ月で死亡。頸部リンパ節、肺再発後、83 ヶ月、
23 ヶ月生存中。【結論】AR はレベル I まで、転移個数 1~3 個が多く、術前評
価以上に転移が広がっていることは少ない。Luminal は AR 後の治療が奏効し
遠隔再発は少なく、TN は AR が早期に起こった場合は遠隔再発を来す可能性
が高い。
408
外側胸動静脈 (LTA・V) は乳房上外側領域から乳腺を栄養する主要な血管であ
り、乳房温存術式ではその灌流領域の乳腺が温存され、乳腺弁として欠損部
の充填に使用される場合も少なくない。乳腺弁はその血行が不良となると硬
化や萎縮を来し易くなり、LTA・V を血管茎とした有茎脂肪弁 (Lateral tissue
flap: LTF) を作成して Volume replacement を行う Oncoplastic surgery で
は、この血管の損傷は術式の完遂自体を不可能としてしまう事を意味する。
一方、現在腋窩手術の主流となっているセンチネルリンパ節生検 (SNB) では、
腋窩のランドマークが露出されず、血管の走行が不明確なまま、アイソトー
プや色素をガイドにリンパ節を摘出する場合が多いため、不用意な操作が為
されると却って近傍の血管を損傷し、出血や灌流域の血行不良を来す危険が
高いといえる。当科ではセンチネルリンパ節 (SN) と LTA・V の位置関係に注
目し、術前の造影 CT/MRI とリンフォシンチグラフィー、ドップラーエコー
で両者の関係を把握、術中に愛護的な操作でこれを確認し損傷を回避してい
る。【対象と方法】SNB を施行した両側乳癌を含む 69 症例 73 腋窩で SN と
LTA・V の位置関係を確認、LTA・V を温存して温存乳腺 ( 弁 ) および LTF の血
行を良好に保った。【結果】SN と LTA・V の位置関係は、SN が LTA・V 本幹近
傍 (1cm 以内 ) にある例が 34 例 (47%)、SN に LTA・V より分枝の流入する例
が 15 例 (21%)、本幹近傍にありかつ分枝の流入する例が 16 例 (22%)、無関
係 (1cm 以上離れて存在 ) が 8 例 (11%) であり、SN の約 9 割は LTA・V に近
接するか分枝を受けていることが判明した。SN と LTA・V との位置関係には、
腫瘍の局在による一定の傾向性は認められなかった。【結論】SN は LTA・V と
近接または分枝を受ける場合が多く、SNB 時の損傷・出血に注意が必要である。
ポスター討議
DP-2-74-03
DP-2-74-04
1
1
組織診断法・OSNA 法を併用した乳癌センチネルリンパ節生検
例における予後の検討
2
センチネルリンパ節生検における非センチネルリンパ節転移率
の検討
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
国立がん研究センター中央病院 病理科
金沢医科大学病院 乳腺・内分泌外科、2 同 一般・消化器外科
森岡 絵美 1、三浦 聖子 1,2、野口 美樹 1、中野 泰治 1、野口 昌邦 1、
小坂 健夫 2
小倉 拓也 1、木下 貴之 1、神保 健二郎 1、麻賀 創太 1、北條 隆 1、
吉田 正行 2
【 背 景 】ACOSOG Z-11 試 験 の 結 果、cT1-2,N0 症 例 は セ ン チ ネ ル リ ン パ 節
(SLN) 転移を認めても術後、乳房への放射線療法・全身療法を行えば,腋窩
郭清の有無によらず、無病生存率・全生存率は変わらず、このような症例で
は腋窩郭清が省略できると考えられている。しかし、腋窩リンパ節郭清の省
略は非 SLN の転移量が少ない症例がその適応とされる。
【目的】腫瘍周囲およ
び乳輪下の Two-site-injection によって、one-site-injection よりも非 SLN 転
移率が低下するかどうかを検討した.【対象】2009 年 4 月~ 2014 年 6 月の期
間に当院において SLN 生検を行った T1-2,cN0 の 215 例を対象とした。
【手段】
腫瘍周囲に RI コロイド,乳輪下に色素をそれぞれ皮内注射し,SLN を同定し
摘出する.摘出した SLN が術中病理検査で転移陽性ならば,腋窩郭清を施行
した.【結果】SLN の同定率は腫瘍周囲注入で 89.8%,乳輪下注入で 84.2%,
併用して 98.1%であった.SLN を同定した 211 例中 47 例 (22.3% ) で転移陽
性であり,うち 38 例で腋窩郭清を施行した.そのうち 7 例 (18.4% ) で非
SLN に転移を認め,その転移個数は平均 2 個であった.非 SLN 転移率をトレー
サーの注入部位別にみると、腫瘍周囲注入のみ,および乳輪下注入のみでそ
れぞれともに 7.9%(3/38) で,Two-site-injection では 2.6% (1/38) であっ
た.腫瘍径・SLN 転移径別に見ると,SLN 転移が macrometastasis の場合,
腫 瘍 径 T1,T2 の 非 SLN 転 移 率 は そ れ ぞ れ 2.6 %,15.8 % で あ り、
micrometastasis の場合、非 SLN 転移率はいずれも 0%であった.【考察】
Two-site-injection は One-site-injection で SLN と し て 同 定 さ れ ず、 非 SLN
扱いとなるリンパ節も SLN として同定でき,非 SLN 転移率を下げると考えら
れた.SLN 転移径が macrometastasis の場合は非 SLN 転移率が高くなったが、
それでも Z-11 試験で報告された非 SLN 転移率 (27%) を下回った.
DP-2-74-05
DP-2-75-01
沖縄赤十字病院 外科
千葉大学 先端応用外科
長嶺 信治、豊見山 健、宮城 淳、大嶺 靖、知花 知美
宮澤 幸正、青柳 智義、佐塚 哲太郎、白鳥 享、松原 久裕
術前の腋窩超音波検査と ICG 蛍光色素法によるセンチネルリン
パ節(SLN)生検の有用性
微細石灰化病変のみを認める腫瘤非形成乳癌の至適術式に対す
る検討
はじめに:腋窩リンパ節転移の有無は乳癌の予後予測や治療方針の決定のた
めに重要な因子である。SLN 生検は色素法と RI 法にて行われることが一般的
であるが、色素単独法は learning curve の存在から症例数の少ない施設では
手技の習熟に時間を要するという欠点があり、また RI 法は行える施設が限定
される。インドシアニングリーン(ICG)を使用した蛍光色素法は体表からリ
ンパ管の走行が確認でき、その連続性に SLN を容易に同定出来、その感度も
色素法の 100 倍以上と言われている。症例数の少ない施設や、これから開始
する場合は有効な方法であると思われる。今回、手術直前の腋窩超音波検査
による SLN のマーキングと ICG を用いた蛍光色素法の併用にて良好な結果を
認めたので報告する。(対象)2009 年 10 月から 2014 年 12 月までの術前検査
で明らかな腋窩転移が認めない、両側乳癌 3 例を含む 140 症例に腋窩超音波
併用の ICG 蛍光色素法を施行した。(結果)同定率は 143 件中 140 件(98%)
で可能であった。SLN 転移陽性で 11 症例が腋窩リンパ節廓清に移行、5 例は
廓清しなかった。リンパ節廓清をしなかった理由は 2 例が micrometastasis、
2 例は超高齢者、1 例は精神疾患のためであった。蛍光法色素法でリンパ節が
発光していなかった 3 例は 80 歳以上の超高齢者で、1 例はリンパ管の走行も
確認できなかったが、3 例とも予め超音波でマーキングしていた SLN を摘出
して判定可能であった。( まとめ ) 手術直前の腋窩超音波検査と ICG 蛍光色素
法の併用は比較的容易で、SLN の同定率も高い。また症例数が少ない施設や、
これから開始する施設には有用な方法であると思われる。
【背景】微細石灰化病変(以下 MC とする)のみを認める腫瘤非形成乳癌の手術
に際し切除範囲は術前の画像診断で決定するが術後の病理所見で断端陽性の
例や進展範囲の過大評価で部分切除術が可能であった乳房切除術症例を認め
ることがある。リンパ節に対しても術前生検で DCIS の診断の場合、センチネ
ルリンパ節生検を行う施設、無処置の施設と様々で至適術式がはっきりしな
い現状である。今回我々は、当科にて施行した MC のみを認める乳癌手術症例
の画像所見と術後の病理所見を対比し MC のみを認める乳癌の至適術式に対す
る検討を行った。【対象】対象は 1998 ~ 2014 年に手術を行った MMG 上の
MC のみを認める乳癌 142 例である。全例女性で平均年齢は 53.6 ± 9.7 歳で
あった。【方法】1. 病変の組織学的広がりの最大長と D-MRI での広がりの最大
長とを MC の形態、分布別に調べ至適切除範囲の検討を行った。 2. 画像所見
より DCIS なのか Invasive ca. なのかが推定可能かの検討を行うため、MC の
形態、分布、MC の分布の最大長、および石灰化の数を測定し術後の病理所見
と 比 較 検 討 し た。【 結 果 】1. 最 大 長 差 で は、Clustered small round、
amorphous、pleomorphic、Linear/Segmental pleomorphic が、D-MRI で
の 広 が り よ り 組 織 学 的 広 が り の 方 が 長 か っ た。 一 方 Clustered linear/
branching、Linear/Segmental small round、amorphous、linear/
branching は、D-MRI での広がりより組織学的広がりの方が短かかった。2.
術前の生検の病理診断で DCIS の 137 例中、術後の病理診断で Microinvasive
ca. が 5 例 (3.5%)、Invasive ca. が 9 例 (6.6%) であった。またセンチネルリ
ンパ節生検施行 107 例中 4 例 (3.7%) にリンパ節転移を認めた。MC の形態で
は Invasive ca. では Fine/linear の割合が有意に高かった。分布の最大長が
20mm 以内のものでは、22.2% が Invasive ca. であったが、長さが増加する
につれ Invasive ca. の割合が増加した。また MC の数が 10 個以内のものはす
べ て DCIS で あ っ た が、10 個 を 超 え る 場 合、MC の 数 が 増 加 す る に つ れ
Invasive ca. の割合が増加した。
【まとめ】
1. MC のみを認める乳癌の手術では、
至適切除範囲を決定する際、D-MRI での病変の広がりだけではなく、MC の形
態、分布を考慮に入れ決定すべきである。2. 形態が Fine/linear のもの、分布
の最大長の長いもの、石灰化の数の多いものは術前生検で DCIS の診断であっ
ても、浸潤癌の可能性がありセンチネルリンパ節生検を考慮に入れるべきで
ある。
409
一般セッション(ポスター討議)
【背景】これまで当院では、組織診断法と分子生物学的手法(OSNA 法)の併用
法を用いた詳細な SLN の評価を通して、腋窩リンパ節郭清(ALND)省略症例
選別のために、独自に非センチネルリンパ節(non-SLN)転移状況を解析し報
告してきた。ACOSOG Z0011 試験によりセンチネルリンパ節(SLN)転移陽
性でも症例によっては腋窩リンパ節郭清(ALND)を省略しても予後に差がな
いことが示された。ALND 省略の際にも、SLN の評価を通して、non-SLN 転
移状況を予測し、術後補助療法の強度の決定することが重要である。【対象・
方法】対象は 2010 年 2 月~ 2013 年 6 月に当院で組織診断法と OSNA 法の併
用法を用いて SLN 生検を施行した cTis-3 N0 の原発性乳癌患者 1158 症例のう
ち、組織診断法もしくは OSNA 法陽性で腋窩リンパ節郭清(ALND)を追加し
たのは 311 症例。センチネルリンパ節を組織診断法陽性例は macro 転移 /
micro 転 移 /ITC を そ れ ぞ れ 3 点 /2 点 /1 点、OSNA 法 陽 性 例 は 2+/1+/+I を
それぞれ 3 点 /2 点 /1 点とし、その総和を NCC-SLN 転移スコア(以下 NCS ス
コア)とし算出し、スコアごとの予後について検討した。【結果】観察期間中央
値は 33.6 ヶ月(範囲 1.1 ~ 57.3 ヶ月)。再発例は 15 症例 (4.5%) あり、うち
遠隔再発をきたしたものは 12 例であった。NCS スコア 13 点以上での遠隔再
発率は 23.5%、4 ~ 12 点で 4.0%、3 点以下で 0.8% であった。NCS スコア
高値で有意に遠隔無病生存期間が短かった。死亡例は 4 例 (1.3%) であり、い
ずれもトリプルネガティブ乳癌であった。【結論】NCS スコアは、non-SLN 転
移状況の予測だけでなく、遠隔再発の予測因子にもなりうる可能性があり、
ALND 省略時にも、術後補助療法決定の一助となりうる。
ポスター討議
DP-2-75-02
DP-2-75-03
高槻赤十字病院 乳腺外科
1
当院での乳腺腺葉区域切除術の検討
乳房温存術後断端陽性症例に対する追加治療の検討
3
小林 稔弘、平松 昌子、西田 司
一般セッション(ポスター討議)
異常乳汁分泌を主訴に精査となる症例は少なくない。MMG,US では検出でき
ない病変も多い。当院では潜血陰性で画像診断も無所見のものは経過観察と
しているが、血性(潜血陽性を含む)乳汁分泌例に対しては、乳汁細胞診、乳
汁 CEA 測定、乳管造影を行った上で、乳腺腺葉区域切除を行い、診断および
治療を行う方針としている。当院で過去 7 年間に経験した乳腺腺葉区域切除例
の結果を検討し、現状と課題を考える。対象: 女性のみ 16 例 方法:乳管頭
開口部からインジゴカルミンを注入し、染色された乳管および腺葉区域を乳
輪切開にて乳頭開口部から乳腺末梢まで切除する。結果:平均年齢:54.2 歳(38
~ 73 歳)、主訴:全例に血性乳汁分泌(潜血陽性含む)を認めた。その他腫瘤
触知 1 例、炎症 2 例。検査:MMG もしくは US で C-3 以上の所見を有したもの
は 3 例。乳管造影は 9 例に行い乳管内部の欠損もしくは途絶像 7 例、pooling
像 2 例。乳汁細胞診は 13 例に行い C-2 以下 8 例、C-3 以上 5 例。摘出標本の
病理で良性は乳管内乳頭腫 5 例、過形成 1 例、膿瘍 2 例の計 8 例(62.5%)。悪
性は非浸潤癌 3 例、浸潤癌 3 例の計 6 例(37.5%)。良悪性の年齢平均は 48.7
歳と 57.4 歳でやや良性群の方がやや若年傾向であった。細胞診の偽陽性 3 例、
偽陰性:2 例であった。断端陽性(露出)はなかった。術後合併症も特になかっ
た。悪性 6 例は全例ホルモン感受性陽性であった。悪性例には原則放射線療法
およびホルモン療法行った。観察期間中の再発例はなかった。考察:1. 血性
分泌を呈している症例では良性群、悪性群を比較すると良性群の方がやや若
い傾向であった。2. 乳汁細胞診は正診率 61.5% で陰性的中率は 75.0% であっ
たが、陽性的中率 40.0% と低かった。術前検査で良悪性を確定することは困
難であり、血性分泌例では積極的に診断、治療を兼ねた腺葉区域切除術を行
うべきと考えた。3. 術後のフォローは 3 ~ 6 ヶ月毎に行っている。再発や異
常分泌の再開はないが、最近の報告では良性術後であっても、悪性出現の可
能性高いとのこともあり、定期的な検査が必要と考えられた。
川崎 賢祐 1,2、鳩野 みなみ 1,2、白岩 美咲 2、久保 孝文 3、田中 則光 3、
吉川 武志 3、大橋 龍一郎 3、三竿 貴彦 3、青江 基 3、小笠原 豊 1,2
【はじめに】早期乳癌に対する乳房温存術は標準術式として確立されているが
確実な局所コントロールが重要である.今回我々は当院で乳房温存術を行い,
術後病理学的検索で断端陽性となった症例に対する追加治療について検討し
た.
【対象と方法】2008 年 4 月から 2014 年 12 月までに当院で原発性乳癌に対して
手術を行った症例は 397 例で,このうち乳房温存術は 262 例であった.当院
では乳房温存術施行前に術前検査として超音波検査,マンモグラフィー,MRI
などを行い総合的に病変の範囲を診断し,病変辺縁より 1.5 ~ 2cm の Margin
を確保し部分切除を行っている.断端評価については,病理学的検索におい
て水平方向の Margin を 5mm 以上確保できたものを陰性とし,5mm に満た
ないものと露出しているものを陽性と判定している.断端陽性症例のうち,
5mm に満たないものと,露出病変が乳管内病変 3 腺管までで 1 方向のみの場
合には 10Gy の追加照射を行い,これを超えるものは追加切除の適応としてい
る.
【結果】乳房温存術 262 例中,断端陽性であったものは 34 例(13.0%),年齢
は平均 57.4 歳,DCIS が 7 例,浸潤癌が 27 例であり,乳管内進展を含めた病
変の拡がりは平均 3.9cm であった. 9 例が断端露出,25 例が断端近接症例で
あり,露出部は 9 例のうち浸潤癌 2 例,乳管内病変 7 例であり,近接症例の近
接部は浸潤癌 1 例,乳管内病変 24 例であった.追加照射は 19 例,追加切除は
10 例(Bp3 例,Bt2 例,NSM5 例)で施行されていた.追加治療未施行の 5 例は,
追加照射なしの残存乳房照射 2 例と,高齢,術創感染などで追加治療を施行で
きなかった 3 例が含まれていた.断端部が浸潤癌であった 3 例は全て追加切除
が施行されていた.全症例 262 例のうち局所再発を認めたのは 3 例 (1.1%) で
あった(観察期間 1~81 か月,中央値 37 か月).これらの 3 例のうち初回温存
手術断端陽性症例は 1 例のみで再発時に遠隔再発を伴っていたため局所治療
は行われなかった.残りの 2 例は初回手術後 14 か月と 13 か月に局所再発し,
それぞれ Bt と NSM が行われた.
【まとめ】当院での断端陽性症例に対する追加治療方針で,良好な局所制御が
得られていると思われた.
DP-2-75-04
DP-2-75-05
DCIS に対する厳格な病理学的断端診断に基づいた非照射温存
手術 温存乳房と対側乳房の癌の長期発生率の検討
1
4
2
香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科、2 香川県立中央病院 乳腺センター、
香川県立中央病院 外科
乳房温存術後乳房内再発の検討
1
3
がん研究会有明病院 乳腺センター 外科、 放射線治療部、 乳腺内科、
病理部
三重大学医学部附属病院乳腺外科、2 三重大学医学部附属病院病理部
山下 雅子 1、小川 朋子 1、木本 真緒 1、今井 奈央 1、澁澤 麻衣 1、
野呂 綾 1、由井 朋 1、柏倉 由実 1、中村 卓 1、岡南 裕子 1、花村 典子 1、
小塚 祐司 2
坂井 威彦 1、照屋 なつき 1、北川 大 1、荻谷 朗子 1、宮城 由美 1、
飯島 耕太郎 1、森園 英智 1、蒔田 益次郎 1、小口 正彦 2、伊藤 良則 3、
堀井 理絵 4、秋山 太 4、岩瀬 拓士 1
【はじめに】詳細な病理学的断端診断に基づき、十分な切除マージンを確保で
きた DCIS に関しては、照射を省略する選択肢を患者に提示してきた。今回
DCIS に施行された、非照射温存手術の長期成績を提示する。【対象と方法】
1995 年 1 月から 2004 年 12 月までの 10 年間に手術が行われた 6773 例の原
発性乳癌に対する手術のうち、非浸潤癌に対して乳房温存手術が行われたの
は 370 例であった。5mm 間隔の全割標本で断端診断がなされ、側方切離断端
より 5mm 以上がん細胞が離れているものを “非照射のための断端陰性(SM-)
”
とし、条件を満たしていた 103 例を対象とした。【結果】患者の平均年齢は 54
歳、BMI の平均は 21.9、乳癌家族歴は 17%、出産歴は 81% にみられた。ER
は測定してある 48 例のうち 41 例(85%)が陽性であった。5 年、10 年の温存
乳房内癌発生率はそれぞれ 5.9、11.0%で、温存乳房内の浸潤癌再発率は 5 年、
10 年でそれぞれ 0, 3.7%と低率であり、乳がん死は認められなかった(観察
期間中央値 120 か月)。一方対側乳癌の発生率は 5 年、10 年で 4.0、9.1% であっ
た。【結語】詳細な病理学的検索で検討された DCIS の乳房温存手術では、放射
線療法を省略すると年率 1% 程度の温存乳房内癌が発生していた。これらは全
て異時多発の新規発生乳癌で、対側乳房に発生する新規乳癌と同程度であり
かつ、低リスク患者を対象とした同時代の前向き臨床試験結果と同程度であっ
た(JCO 27:5319,2009)。放射線療法は比較的安全な治療ではあるが、毎日
の通院や、温存乳房内再発時には乳房再建が困難であるといったデメリット
が存在する。詳細な病理検討とその評価が可能となる手術操作を行うことで、
放射線療法を省略できる症例選択が可能と考えられた。再発低リスク群の絞
り込みについては症例数と観察期間を増やした更なる検討が求められる。
乳房温存術後の乳房内再発(IBTR)は予後に重要な影響を及ぼす.当科の
IBTR の検討を行ったので報告する.【対象】2003 年 4 月から 2012 年 12 月ま
でに原発性乳癌に対し,乳房温存術を施行し追跡可能であった 626 例で,平
均観察期間は 4 年 9 ヶ月(2 年~ 10 年 10 ヶ月).【結果】断端陽性(断端から
5mm 以内に癌細胞が存在)症例は 143 例(22.8%),再切除を施行したのは
49 例(追加部分切除 13 例,残存乳房切除(NSM を含む)36 例).再切除例の
断端陽性の詳細は浸潤癌 1 例,乳管内病変 34 例,多切片の乳管内病変 14 例.
再切除後の病理標本では 16 例 (32.7%) で残存乳腺内に癌細胞が遺残してい
た.IBTR は 17 例(2.7%)で,原発巣は浸潤癌 9 例,DCIS 8 例.再発までの
期間は 4 ヶ月から 8 年 4 ヶ月(中央値 4 年 2 ヶ月)
.再発症例のうち断端陽性
は 4/143 例(2.8%),陰性は 13/483 例(2.7%)であった (N.S).温存術後照
射 例 ( 死 亡 1 例 除 く ) は 486/589 例(82.5%)で、 非 照 射 例 は 103/589 例
(17.5%),そのうち初回術後照射群の IBTR は 6/486 例 (1.2% ),非照射群の
IBTR は 11/103 例 (10.7%) であった (p < 0.001).また,IBTR 症例を真の乳
房内再発 (True Recurrence : TR) と新病変 (New Primary : NP) に分類する
と,TR 群が 11 例,NP 群が 6 例.初回手術時年齢は TR 群で 30 歳~ 83 歳(中
央値 64 歳),NP 群で 31 歳~ 76 歳(中央値 41 歳)(N.S).再発までの期間は
TR 群で 4 ヶ月から 4 年 8 ヶ月 ( 中央値 2 年 ),NP 群で 4 年 4 ヶ月から 8 年 4 ヶ
月 ( 中央値 6 年 10 ヶ月 ) だった (p < 0.001).TR 群の断端陽性は 3 例 ( 断端
2mm 以内に浸潤癌 1 例,多切片で乳管内病変 2 例 ) で,NP 群の断端陽性 1 例(1
切片で乳管内病変).TR 群は 10 例に再手術を施行,再発巣は浸潤癌 8 例,
DCIS 2 例.その他 1 例で炎症性乳癌型再発を来し乳癌死,1 例で局所に再々
発し切除を施行したが、他臓器癌を合併し死亡.9 例は無再発生存中.NP 群
では 6 例全例再手術を施行,再発巣は浸潤癌 5 例,DCIS1 例で,全例無再発
生存中.再発巣の発見契機は両群とも MMG の石灰化が多く,DCIS で診断可
能であった.【まとめ】IBTR の抑制には,術後放射線照射が必要であると考え
られた.TR 群にのみ,乳房内再発後死亡例が認められ,早期に再発を来す症
例に対しては集学的治療が不可欠である.また,温存術時の病理標本にて広
範囲に病変がある場合や多切片に断端陽性が認められるものは積極的に残存
乳房に対し再手術を行い,さらに術後定期検査にて再発巣の発見に努め局所
制御をすることが重要である.
410
ポスター討議
DP-2-76-01
DP-2-76-02
1
愛知県がんセンター中央病院乳腺科
乳房再建チームつなぐ新たなツール ~乳房再建手帳の作成~
乳がん患者の術式による意思決定要因の検討
聖路加国際病院 ブレストセンター、
2
医療法人社団 ブレストサージャリークリニック
高木 礼子、岩田 広治、新貝 夫弥子、奥村 誠子
猪股 直美 1、岩平 佳子 2、尹 玲花 1、山内 英子 1
【研究背景】先行研究では、個人の価値観、対処行動、サポートなどが乳がん
の術式決定に関する影響要因だと報告されている。本研究では、初期治療と
して手術を受けた患者を対象に、術式決定における影響要因を明らかにする
ことを目的とした。【研究方法】独自に作成した自記式質問紙を用いてデータ
を分析し、検討を行う。研究対象:、人工物による再建術が保険適用になる
以前に手術を受け、術後 1 ~ 2 年で無再発の乳がん患者、20 ~ 80 歳、アンケー
ト調査が可能な患者。研究期間:2013 年 9 月―2014 年 8 月。質問紙の内容:
基本属性、影響要因 1(再発不安、価値観、他者の意見等、5 段階評価)、影響
要因 2(対処規制、心理状態等、5 段階評価)
:手術前後の生活の変化(自記式)、
手術の満足度(0-100%)。倫理的配慮:研究の主旨、中途辞退の自由,個人
情報の保護、利益と不利益、研究の公表について口頭と文書で説明し、アンケー
トの郵送にて同意を得たとした。
【結果】B t ( 郭清 12 名 )44 名、Bp(郭清 22 名)
63 名、TRAM【郭清 1 名)17 名、LD14 名、TE7 名。術前にパートナーがいた
の は 各 群 と も 約 80 %、 有 職 率 は、Bp 群 が 49 %、Bt 群 が 33 %、 再 建 群
(TRAM+LD+TE) が 66 %。Bt & Bp 群 に 比 べ 再 建 群 は、 有 意 に 年 齢 が 若 く
(47.26 ± 9.44 歳 vs58.84 ± 12.30 歳:r< .05)、ボディイメージ、セクシュ
アリティ、仕事に対する価値観が高く、精神的動揺も激しかったが(r < .001)、
積極的に主治医や専門家から情報を収集していた。術式選択にはパートナー、
医師の意見が大きな影響要因となっていたが、自分自身で決めたとの意識も
高 い。 再 発 不 安 は、Bp 群 に 比 べ 再 建 群 お よ び Bt 群 が 有 意 に 高 か っ た( r
< .05)。さらに 1-2 年後の手術への満足度は、再建群と温存群が約 85%であ
るのに対し全摘群では 75.25%と有意に低かった。【考察】今回の調査で、再
建群は、術式決定に対し、積極的な保健行動をとっていた。またパートナー
の価値観や思いが、術式決定の大きな要因であり、パートナー教育、支援が
必要がある。また有職率等から社会生活において、セクシュアリティが重要
な意味を持つと推測される。施設、地域性を反映している可能性もあり、社
会状況の変化も考慮し、さらなる調査が必要である。
DP-2-76-03
DP-2-76-04
乳がん患者の術後 3 か月までの上肢機能障害と QOL に関する縦
断的研究
乳癌再発時期における臨床病理学的特徴
JA 山口厚生連 長門総合病院 外科
1
東北大学大学院 医学系研究科 がん看護学分野、
2
東北大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科学分野
佐藤 冨美子 1、石田 孝宣 2、大内 憲明 2
【目的】乳がん術後上肢機能障害と QOL の関連を術前から術後 3 か月までの縦
断調査で明らかにする。【方法】初発乳がんで手術を予定し , 調査の同意が得
られた 162 名のうち , 術前 , 術後 1 週 ,1 か月 ,3 か月の 4 時点全調査に参加した
149 名を対象とした。調査は 2010 年 1 月~ 2012 年 7 月に実施した。上肢機
能は乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度 (SPOFIA) およ
び上肢障害評価表 (DASH) を用いた質問紙調査と , 両上肢の周径・肩関節可動
域・握力を測定した。SPOFIA と DASH の得点は高いほど症状をより多く認
知し , 障害が大きいことを示す。QOL は SF-36v2(8 下位尺度 ) で評価した。上
肢機能障害と QOL の関連は Mann-Whitney の U 検定を用いて分析した。所属
大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 し た。【 結 果 】対 象 概 要 平 均 年 齢
53.4(SD=10.7) 歳 ,Stage0 ~ 2 が 81.9% , リンパ節郭清が 46.3% , センチ
ネルリンパ節生検が 53.7% , リンパ節郭清範囲レベル 1 が 30.4% , レベル 2
が 52.2% , レベル 3 が 17.4% , 乳房全摘が 34.2% , 化学療法または分子標的
治療が 47.0% , 放射線療法 65.1% , ホルモン療法 76.5%で , 患側利き手が
53.7%であった。上肢機能の経時的変容尺度合計得点が術前と比較して高い
者の割合は ,SPOFIA が術後 1 週 89.9% ,1 か月 66.4% ,3 か月 59.1% , DASH
が術後 1 週 65.8% ,1 か月 32.9% ,3 か月 8.1%であった。測定値で術前に症
状がなく術後 3 か月にあった者の割合は , 上腕周径患側健側差 2cm 以上が
5.4% , 前腕が 6.0% , 肩関節可動域健側患側差 10 度以上は屈曲 26.2% , 外転
25.5% , 水平伸展 4.0% , 握力健側患側差 4kg 以上は 10.1%であった。上肢機
能障害と QOL の関連術前と比較して術後 3 か月の SPOFIA 得点が高い者は身
体機能 (p=.029), 日常役割機能 ( 身体 ) (p=.027), 体の痛み (p=.002) , 社会
生活機能 (p=.038) , 活力 (p=.005) , 心の健康 (p=.015) の 6 下位尺度得点
が有意に低かった。同様に DASH 得点が高い者は身体機能 (p=.000), 日常役
割機能 ( 身体 ) (p=.000), 体の痛み (p=.003) , 社会生活機能 (p=. 001), 活
力 (p=.015), 日常役割機能 ( 精神 )(p=.000), 心の健康 (p=.037) の 7 下位尺
度得点が有意に低かった。測定値と QOL には有意差がなかった。【結論】乳が
ん術後上肢機能障害は術後 3 か月までの時間経過とともに減少し , 術前と比較
して術後 3 か月に上肢機能障害を認知している者ほど QOL が低かった。医療
者は乳がん患者の上肢機能障害に関する主観的評価を経時的にアセスメント
し , 支援する必要性が示唆された。
平田 健、久我 貴之、尼崎 陽太郎
【目的】ATLAS 試験などから乳癌の再発リスクは長期にわたると報告されてい
る . 乳癌症例の再発時期における臨床病理学的特徴について検討した 【
. 対象と
方法】2005 年 9 月から 2014 年 5 月に再発を来した乳癌症例 29 例について , 晩
期 (L) 群 (n=7) と 5 年以内再発の早期 (E) 群 (n=22) に分け比較検討した . 検
討項目は発症時年齢 , 術式 , 腋窩郭清の有無 , 術後放射線治療の有無 , 病理組織
型 ,TNM 分 類 , リ ン パ 節 転 移 個 数 , リ ン パ 管 浸 潤 (ly), 脈 管 浸 潤
(v),ER,PgR,HER2, 病期 , 再発部位等とした 【
. 成績】手術から再発までの期間
は L 群 98.0 ± 9.1 ヵ月、E 群 29.1 ± 2.7 ヵ月 . 全例女性で , 発症時年齢は L 群
59 ± 6.1 歳 , E 群 66 ± 3.4 歳であった . 閉経別は L 群 : 前 2 例 , 後 5 例 ,E 群 : 前 6
例 , 後 16 例で差はなかった . 術式は L 群で温存 1 例 , 乳房切除 6 例 ,E 群で温存 8
例 , 乳 房 切 除 14 例 で あ っ た . 術 後 照 射 は L 群 0 例 ,E 群 7 例 . 組 織 型 は L 群 で
DCIS:1 例 , PT:2 例 , ST:2 例 , Sci:1 例 , そ の 他 :1 例 , E 群 で PT:2 例 , ST:6
例 , Sci:10 例 , その他 :4 例で差はなかった .T 分類は L 群 1.3 ± 0.3, E 群 1.7 ±
1.4 と差はなかった , リンパ節転移個数は L 群 0 個 ,E 群 3.2 ± 1.0 個と L 群で有
意 に 少 な か っ た (p < 0.05). 病 期 は L 群 で 0: 1 例 ,I:4 例 ,IIA:2 例 ,E 群 で I:6
例 ,IIA:4 例 ,IIB:5 例 ,IIIA:4 例 ,IIIB:3 例であり , stage IIB 以上は L 群 0 例 ,E
群 12 例と有意差があった (p < 0.05). ly(+) は L 群 1 例 ,E 群 11 例と L 群に少
な い 傾 向 が あ っ た (p=0.0720). V(+) は L 群 0 例 ,E 群 1 例 と 差 は な か っ た .
ER and/or PgR 陽性は L 群 5 例 ,E 群 17 例で差はなかった . HER2 陽性は L 群 0
例 ,E 群 7 例で L 群に少ない傾向があった (p=0.0794). 術後補助療法は原則的
に当時の標準的レジメンやガイドラインに準じていた . 再発部位は L 群で骨 4
例 , リンパ節 1 例 , 胸部腫瘤 2 例 ,E 群で骨 12 例 , 肺 4 例 , リンパ節 3 例 , 胸部腫
瘤 1 例 , 温存乳腺 1 例 , 肝 1 例で差はなかった . 予後は L 群 : 生存 3 例 , 死亡 4 例 ,
E 群 : 生存 7 例 , 死亡 12 例で , 再発症例の Kaplan-Meier 法による検討では再発
後生存期間の中央値は L 群 24 か月、E 群 20 か月で差は無かった 【
. 結論】文献
的には晩期再発リスクとしてリンパ節転移陽性 ,T3 症例がある . 自験例では晩
期再発は早期再発と比較して n0, 低 Stage,ly(-), HER2 陰性例であった . 低再
発リスク症例であっても継続した術後サーベイランスが必要と考えた .
411
一般セッション(ポスター討議)
人工物による乳房再建は、乳癌手術から再建終了までに複数回の手術とある
程度の時間がかかるため、形成外科と乳腺外科が連携し、互いの治療を妨げ
ないように術後補助治療と調整した再建治療計画を立てることが重要である。
同施設間では診療録を閲覧すれば問題ないが、日本乳房オンコプラスティッ
クサージャリー学会の報告によれば、エキスパンダー実施施設 449 施設のう
ち、一次一期・一次二期・二次再建すべて実施可能なのは 253 施設(56.3%)
に留まり、一連の再建を遂行するのに複数の施設が関与するケースは多い。
他施設間では診療情報提供書は必須であるが、患者自身がこれを理解してい
なかったり、日々の忙しさから書き漏れたりしていることも少なくない。
これに対して患者に携帯させる乳房再建手帳は、施設間をつなぐ架け橋とな
る。乳房再建を行う患者に配布され、再建に関する重要な事項(乳癌手術、再
建時使用した人工物の種類、水の量、シリアル No. など)のほか、乳癌治療(ア
ジュバント)の記入欄を設け、両者を一覧できるようにした。診察のたびに持
参して、治療内容や今後の計画を本人もしくは医師や看護師などが記録する
ようにした。一定の雛形に沿って記入することで、簡便に記録でき、患者が
診察内容を理解して、疑問点を次回の診察までに振り返りやすいように工夫
した。また、患者自身の記録も兼ね、再建スケジュールに合わせた日常生活
のアドバイスや、感染や壊死など合併症の徴候など主治医に相談すべき注意
点も載せた。メリットとしては、1)基本情報を常に閲覧できること、2)乳
癌治療と再建治療が一覧でき両者の連携が取りやすいこと、3)患者自身が治
療を理解するきっかけになること、4)経験の少ない施設にとっては治療計画
や経過観察の指南書となることである。
乳房再建手帳は、患者を中心に関わる全ての人が治療記録を共有するツール
であると同時に、再建に関する簡易な指導書ともなる。インプラントを挿入
した患者は 10 年の経過観察が義務づけられたが、その間同じ施設で同じ医師
が診られるとは限らない。施設間、医師間の申し送りに頼るのではなく、患
者を軸とした情報共有手段は有効と考える。今後は、実際に使用した事によ
る患者満足度を調査していき、最終的には医療 IT と関連づけ、手帳の内容を
広く閲覧できることを目標とする。
ポスター討議
DP-2-76-05
DP-2-77-01
杏林大学 医学部 外科
福岡大学 医学部 形成外科
井本 滋、上野 貴之、伊東 大樹、伊美 建太郎、宮本 快介、
北村 真奈美
高木 誠司、後藤 愛、川上 善久、大慈弥 裕之
ラジオ波焼灼治療後の乳癌患者の QOL と予後
体位による乳房形態の変化の検討とその臨床応用
一般セッション(ポスター討議)
[ 背景 ] 早期乳癌を対象にラジオ波焼灼治療 (RFA) の臨床試験を進めている。
乳房切除を伴う RFA の feasibility study の結果から、病理学的完全腫瘍焼灼
率は 87% (30 例中 26 例 ) であった (Breast 2009;18:130-4)。[ 目的 ] 切除
を伴わない第 II 相試験の治療成績について報告する。[ 対象と方法 ] 対象は画
像診断上乳管内進展を伴わないセンチネルリンパ節転移陰性の浸潤癌である。
LeVeen 電極針を用いた RFA を施行した。Primary endpoint は治療前後の計
測による乳房変位率で、secondary endpoint は FACT-B による QOL 評価と乳
房内再発である ( 目標 30 症例 )。原則として乳房照射と内因性因子に応じた補
助療法を行った。RFA 前と RFA 後 3、6、12、18、24 ヵ月時点での乳房超音
波と MR-mammography(MRM) を施行して乳房内再発の有無を診断した。
[ 結果 ] 約 4 年で ER 陽性 HER2 陰性乳癌 20 例が登録された。超音波上の腫瘍
径 は 0.7-2.4cm( 中 央 値 1.2cm) で、 乳 頭 腫 瘍 間 距 離 は 1.9-7.2cm( 中 央 値
5.2cm) であった。焼灼時間は 4-24 分 ( 中央値 11 分 ) であった。有害事象は、
NSAID を要する疼痛であった。治療前と治療後 1 年での乳房変位率は、中央
値で 0.27 であった (12 例 )。また、TOI、FACT-G total score、FACT-B total
index による QOL 評価では、治療前と治療後 6 ヵ月あるいは 1 年との間に差
はなかった (16 例 )。観察期間 19-61 ヵ月 ( 中央値 49 ヵ月 ) で全例健存中であ
る。超音波画像では焼灼後の熱変性による低エコー域を認めたが、再発の有
無の診断は困難であった。MRM 画像では焼灼部分が明瞭な低信号域として描
出され、経過とともに徐々に縮小する傾向にあった。[ 考察 ] MRM 上の焼灼
領域の境界は、feasibility study で焼灼部の割面に認めたうっ血性変化による
red ring に一致すると考えられた。[ 結語 ] RFA の適応となる症例は手術可能
な乳癌の 4-5% と推計されるが、乳房部分切除に替わる低侵襲治療として有
望である。
【はじめに】乳房再建では健側の乳房形態と対称的な乳房マウンドの再建を目
指すことが重要である。ただし、乳房マウンドというものは体位によってそ
の形が大きく異なるものであり、ここで目標とする「左右対称性」は、通常は
立位姿勢での対称性のことを意味する。乳房形態を規定する重要な要素の一
つとして「乳房の下垂」があり、われわれは術中に全身麻酔下の患者を坐位に
することで左右対称の確認、あるいは左右マウンドのバランスの確認に努め
ている。ただ、全身麻酔下では完全 90 度坐位を取ることは難しく、30-45 度
程度の坐位姿勢で乳房形態を評価しなくてはいけない。果たしてこの角度で
の坐位は立位における乳房形態をどの程度反映しているものなのか。今回我々
は 3D デジタイザーを用いて調査した。
【方法】対象は乳房再建手術を行う 10 症例。仰臥位・45 度坐位・90 度坐位の
3 姿勢における健側乳房を 3D デジタイザーで撮影し、比較検討した。検討項
目は体位による乳房の形態変化、下垂度や乳輪乳頭や乳房下溝の位置変化な
どである。なお 3D デジタイザーとしては Vectra Handy(株式会社インテグ
ラル,東京)を使用した。
【結果】乳房ボリュームが大きい症例ほど乳房の形態変化・乳輪乳頭の位置変
化は大きかった。仰臥位と 45 度坐位の比較、それと 45 度坐位と 90 度坐位の
比較では、前者でその変化量が大きかった。
【結論】乳房サイズが比較的小さい症例では、その乳房再建術中において、立
位姿勢での乳房形態をシミュレーションする目的で 45 度坐位姿勢を取ること
は十分に有用だと思われた。一方で比較的大きい症例となると少し工夫が必
要だと感じた。また、体幹を撮影するための大型 3D デジタイザーも存在する
中で、どのような姿勢でも撮影できるハンディータイプの 3D デジタイザーの
有用性を改めて認識した。
DP-2-77-02
DP-2-77-03
大阪大学 医学部 形成外科
1
冨田 興一、矢野 健二
山下 昌宏 1、澤泉 雅之 1、今井 智浩 1、前田 拓磨 1、棚倉 健太 1、
宮下 宏紀 1、松本 綾希子 1、川上 順子 1、平山 泰樹 1、岩瀬 拓士 2
3D イメージング解析と 3D プリンターで作成した乳房鋳型を用
いた DIEP flap による乳房再建
2 期両側乳房インプラント再建におけるベクトラでのシミュ
レーション
【目的】我々は自家組織による再建乳房の形態に影響を与える因子として、1)
移植脂肪の量、2) 移植脂肪により形成される乳房マウンドの形態、3) 移植脂
肪を覆う skin envelope が重要であると考えているが、特に1や 2 を適切に判
断・形成するにはそれなりの経験を要すると思われる。近年、各分野におい
て 3D イメージングの普及により客観的データに基づいた手術が行えるように
なってきた。最近我々は 3D イメージングおよび 3D データより作成した乳房
鋳型を用いた乳房再建を試みており、その方法と術後結果を報告する。【方法】
2014 年 4 月から 2014 年 12 月の間に DIEP flap による片側乳房再建を施行し
た 11 例おいて、乳房鋳型を用いた移植脂肪量の調整および乳房マウンド形成
を行った。全例術前に 3D スキャナによる両側乳房撮影を行い、解析ソフト
(Breast-Rugle、メディックエンジニアリング社)を用いて 1 次・2 次再建を
問わず健側乳房の鋳型イメージを作成後、左右反転したミラーイメージを作
成した。その後パーソナル 3D プリンターを用いてプリントし、EOG 滅菌後、
術中に用いた。皮弁挙上、血管吻合を行った後、血管柄に注意しながら皮弁
を鋳型へ落とし込み、まず最適な皮弁の向きを決定した。次に水平方向・垂
直方向に鋳型からはみ出た不要組織を、なるべく穿通枝の位置から遠い部分
から優先的に減量して組織量の最適化を行った。皮弁を後方(鋳型における浅
い部分)から吸収糸を用いて可及的に固定することで乳房マウンド形成を行
い、その後欠損部へ挿入し胸壁との固定を行った。【結果】11 例とも皮弁は生
着し、術中・術後経過に特に問題を認めなかった。鋳型作成にかかる材料費
は 1 例あたり 500 円未満であった。術後写真を用いた客観的評価(1 - 5 段階)
では何れの症例も 4 以上のスコアを記録した。術後 3D 撮影も行い、各乳房領
域ごとの容積左右差の評価も行った。【考察】3D イメージよりプリントした乳
房鋳型を用いることで、経験の浅い術者においても簡便に短時間で良好な乳
房マウンド形成が可能になると思われる。特に、薄い皮弁を複雑に折りたた
んで高い乳房 projection を出す必要のある症例では非常に有用であろうと考
えられた。
412
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター外科
はじめに 両側乳房再建においては再建の基準となる健側乳房が存在せず、
インプラントの選択においては自由度が高い。しかし、再建乳房の位置を決
定するメルクマールなどが無いため、インプラントを配置する場所の決定は
難しく、体幹を基準に選ばれたインプラントでないといびつに見えるという
難しさもあり、再建は容易ではない。さらにシリコンインプラントは形態を
予測した上で事前購入の選択となるため、事前のシミュレーションは TE の形
態を参考にする程度が限界であった。ベクトラでは術前にインプラントの挿
入シミュレーションが可能であり、患者とイメージを供覧することで患者希
望に近いより適切なインプラントを選択することができる。今回われわれは
術前にベクトラを用いてシミュレーションし、インプラントの選択を行った
症例を経験したので報告する。対象、方法 2014 年 9 月から 2014 年 12 月の
4 ヶ月間に、一次、二次再建含め 2 期両側乳房インプラント再建を行った 6 例
を対象とした。術前にベクトラによる撮影、シミュレーションを行い、想定
されたインプラントと術後実際に使用したインプラントを検討した。結果、
考察 6 例中 4 例において術前にシミュレーションしたものと同様のインプラ
ントで再建が行われた。2 例で術中判断にて異なるインプラントを挿入した。
異なるインプラントを使用した理由は 1 例は想定したよりもプロジェクショ
ンがとれない、もう 1 例は左右差が生じるためであった。想定されたよりもプ
ロジェクションがでない要因として、ベクトラによるシミュレーションでは
胸壁を乳房周囲の局面より自動判断されて設定されているが実際の胸壁が陥
凹していてプロジェクションがでないことが考えられた。左右差がでる要因
としては、は皮下の組織残存量が左右で異なっていて同じインプラントを挿
入しても対象性が得られないことが考えられた。ベクトラによるシミュレー
ションは簡易であり体表面の把握には有用であるが、皮下組織の厚み、胸壁
の陥凹の程度などは評価出来ず、これらに対してはエコーを併用することで
より適切なインプラントの選択が行えると考えられた。
ポスター討議
DP-2-77-04
DP-2-77-05
インプラント破損を検出する方法は何が優れているか?
定期的フォローアップに推奨される画像検査
1
当院におけるインプラント乳房再建後フォローアップの現状
1
3
医療法人 Yanaga CLinic、2JCHO 久留米総合病院
松本 綾希子 1、澤泉 雅之 1、今井 智浩 1、前田 拓磨 1、棚倉 健太 1、
宮下 宏紀 1、山下 昌弘 1、川上 順子 1、平山 泰樹 1、梁 太一 4、
岩瀬 拓士 2、五味 直哉 3
矢永 博子 1、田中 眞紀 2、山口 美樹 2、矢永 茄津 1
〔はじめに〕インプラント乳房再建の主要な晩期合併症にインプラントの破損
があり、症状出現前に交換すれば乳房形態に影響を与えることなく最小限の
侵襲に抑えることができる。しかし適切な術後フォローアップ方法は確立し
ていない。今回我々は当院における再建術後フォローアップの現状について
検討した。
〔対象〕2006 年から 2011 年に当院で施行し、術後2年以上経過したインプラ
ント乳房再建患者 418 名。
〔結果〕391 名 (81%) が形成外科を定期的に受診していたが、73 名 (15%) は
乳腺科は受診しているものの形成外科は 1 年以上受診していなかった。破損診
断のための超音波は 245 名 (58%、受診者の 62%) に、MRI は 106 名 (25%、
受診者の 27%) に施行した。画像診断により実際に破損が診断されたものは 6
名(うち 3 名は再建と同時に施行した豊胸側インプラントの破損)であった。
うち 2 名は定期受診しておらず、医師側からの連絡により受診し破損と診断さ
れた。6 名いずれも無症状のうちに摘出交換可能であった。
〔考察〕当院は乳癌治療と再建を同一施設内で施行しており、術後フォローアッ
プは乳腺科と形成外科受診日を同日に揃えている。このため患者の負担は少
ないと思われるが、乳腺科を受診し形成外科を受診しない患者においては、
破損を含めた晩期合併症についての情報提供が不足していた可能性があり、
今後も啓蒙を続ける必要がある。また、乳癌治療と再建が別の施設で行われ
る場合には、形成外科での術後フォローアップ率は下がると考えられる。フォ
ローアップされないままにインプラント破損患者が増加すれば問題である。
患者教育のみならず乳腺科医にもインプラントのフォローアップに関する知
識が必要と思われる。
DP-2-78-01
DP-2-78-02
乳房一期再建における Vessel Sealing System の応用
筋肉温存型広背筋皮弁による乳房再建の肩関節機能についての
前向き研究
1
ナグモクリニック札幌、2 ナグモクリニック東京、3 ナグモクリニック大阪、
4
ナグモクリニック名古屋、5 ナグモクリニック福岡
1
中澤 学 1,2、南雲 吉則 2、父川 興一 2、松永 忠東 2、丹羽 幸司 3、山口 悟 4、
北村 薫 5、杉 恭之 2、矢加部 文 5
【目的】整容的乳房一次再建の達成のためには皮膚切開が目立たず最小限であ
ることが求められる。われわれは腋窩と乳房下溝の小切開から乳頭温存乳房
全摘術と胸筋下インプラント挿入を行なっているが、視野が狭いために出血
の制御が困難であった。そこで内視鏡手術用の器具である Vessel Sealing
System(LigaSureTM 以下 LS)を用いて組織の切離を行ない良好な結果を得た
ので報告する。【方法・対象】皮下と胸筋下に 0.1%リドカイン E を注入する。
その目的は出血の制御と hydro-dissection である。腋窩と乳房下溝の 4-5cm
の切開創から剪刀で皮下剥離を行なう。また乳房下溝より電気メスにて乳腺
下剥離を行なう。その後、LS を用いて腋窩から乳腺頭側、乳房下溝から乳腺
内側外側の切離を行なう。同じく LS で腋窩と乳房下溝から胸筋起始部の切離
を行いインプラントの挿入を行なう。皮下に閉鎖吸引ドレーンを挿入し、翌
朝までの廃液量が 80cc 未満の場合はドレーンを除去した。術後セローマを形
成したときは外来にて穿刺吸引を行なった。当院で皮膚または胸筋温存乳房
全摘術と一次一期再建した症例について、LS を用いた 2014 年 6 月から 2014
年 11 月までの 50 症例(LS 群)と、LS を用いず電気メスで切離を行なっていた
2012 年 7 月から 2013 年 3 月までの 50 症例(非 LS 群)について術中出血量、
術後廃液量、血腫に対する開創止血の頻度、外来でのセローマの穿刺廃液の
回数について、比較を行なった。【結果】術中出血量は LS 群 57.6ml、非 LS 群
112.9ml。ドレーン排液量は LS 群 39.6ml、非 LS 群 48.8ml。ドレーンの留
置期間は LS 群 1.12 日、非 LS 群 1.26 日。開創止血術は LS 群は1例もなし、
非 LS 群は 6 例であった。出血部位は第 2 肋間内胸動脈穿通枝が 2 症例、前肋
間動脈穿通枝、外側胸動脈、外側胸動脈と第3肋間内胸動脈穿通枝がそれぞ
れ 1 症例、特定できなかったものが 1 症例であった。セローマの穿刺廃液回数
は LS 群が 12 人に対し平均 2.8 回施行し、非 LS 群が 15 人に対し平均 3.0 回施
行した。【結論】LS は皮膚の小切開から挿入し、遠隔部の組織を先端の鉗子部
で挟み、高周波によって組織を切離するとともに、血管やリンパ管をシーリ
ングして切離できる手術器具である。またブレード間の組織のみ通電するの
で周囲組織の熱損傷も極めて軽微である。LS 導入後、術中出血量、ドレーン
排液量、開創止血の回数、外来での穿刺排液回数は、電気メスを用いていた
従来の方法よりも全て減少していた。
京都府立医科大学 形成外科、2 京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
素輪 善弘 1、坂口 晃一 2、沼尻 敏明 1、中務 克彦 2、藤田 佳史 2、
田口 哲也 2、西野 健一 1
【目的】保険収載されたこともあり低侵襲な乳房インプラントによる乳房再建
が増加している。自家組織による再建においても、深下腹壁動脈穿通枝皮弁
をはじめとした低侵襲・機能温存を重視した乳房再建が望まれている。われ
われは片側広背筋のほとんどを切除するにいたる従来型の広背筋皮弁におい
て、術後に伸展・外旋・内旋の肩関節運動について約 10%-20% の筋力低下
があり、これらが実際スポーツパフォーマンスや持久力に影響を及ぼしてい
ることを報告した。これらの結果は同時に広背筋を温存する有用性を示唆し
ていると考えられる。今回、症例を選んで Muscle-sparing LD flap(MSLD)
を行い、広背筋皮弁を用いた乳房再建術において筋体温存が筋力の維持に寄
与 す る か に 関 し て 検 討 を 行 っ た の で 報 告 す る。【 方 法 】胸 背 動 静 脈 は
Transverse branch と Descending branch に分かれる。この baifuorcation
の末梢で Transverse branch をできるだけ温存する方法を MSLD type1、中
枢側で処理し完全に温存する方法を MSLD type2 とした。これらの MSLD を
用いた症例 (8 例 ) について各肩関節運動方向への筋力評価、およびスポーツ
パフォーマンスの点において、従来の広背筋皮弁 (CLD) を用いた症例 (12 例 )
と比較検討した。
【結果】CLD に比較して MSLD による再建では伸展・2nd 内旋・
2nd 外旋すべてにおいて筋力低下は軽度であった。術後 6 カ月後の伸展にお
いては、統計学的な有意差がみられた。 術後 3 カ月時点では MSLD は CLD に
比較して有意に良好な回復が見られた。 術後 6 カ月においても、CLD におい
て 10% 以上の低下がみられたのに対し、約 5% の低下にとどまった。【結論】
乳房再建術の術式において MSLD を選択することで CLD に比べて肩関節機能
およびスポーツパフォーマンスが維持される可能性が示唆された。
413
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳房再建後のインプラントの破損を検出する方法として、FDA はMR
I検査を再建後 3 年後、その後 2 年に 1 度受けることを推奨している。一方、
JOPBS は最低 10 年間の経過観察、2 年に 1 度のMRIや超音波検査などの検
査を行ってインプラントの状態を確認し、委員会に報告することを推奨して
いる。当院で再建したインプラントを用いた乳房再建 1385 例中、破損が確認
されたのは 28 例である。それらの症例を検証し、インプラント破損を検出す
る方法は何が優れていたのか、定期的フォローアップとして有効であった画
像検査について検討したので報告する。
【方法】2001 年 7 月から 2014 年 10 月まで、13 年間にインプラントを用いた
乳房再建 1385 例中、28 例(2%)の破損を確認した。破損が発見されるまで
の期間は 8 年から 13 年であった。その内訳は、乳腺外科の定期検診で silent
rapture を指摘されたのは 18 例、本人の自覚症状で破損が発見できたのは 10
例であった。
【結果】インプラントの shell が大きく破損し、内容物が脱出している状態なら
ば、自覚症状や触診で発見可能であった。当然ながら silent rapture は自覚症
状や触診では発見困難であった。マンモグラフィーは無効、超音波検査は検
者が経験豊富で silent rapture の概念を有する場合には有効、MRIは有効、
CTも有効であるが小さい破損は描出しづらいことがわかった。
【考察】乳腺外科医、再建外科医、放射線科医、検査技師、そして患者との間で、
非侵襲的な検査方法による客観的情報を共有することが重要なことと考える。
インプラントを用いた乳房再建後には silent rapture も含めて破損の可能性が
あること、そのための定期的な検診が必要であること、破損が発見された場
合の対応策について、術前に文章で説明がなされておく必要がある。
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター外科、
がん研有明病院 画像診断部、4 聖路加国際病院 形成外科
ポスター討議
DP-2-78-03
DP-2-78-04
1
1
T4 乳癌術後に対側穿通枝型 Supercharged TRAM flap を用
いた乳房一次再建の検討
2
乳房再建における MS2 TRAM flap にて ICG を用いた穿通
枝選択の方法
筑波大学 医学医療系 形成外科、
筑波大学 医学医療系 乳腺甲状腺内分泌外科
3
西嶌 暁生 1、関堂 充 1、佐々木 薫 1、足立 孝二 1,2、倉元 有木子 1、
坂東 裕子 2、原 尚人 2、池田 達彦 2、井口 研子 2
愛知県がんセンター中央病院 形成外科、2 乳房再建研究所、
名古屋大学 形成外科
奥村 誠子 1、中村 亮太 1、澤本 尚哉 1、桑田 知幸 1、兵藤 伊久夫 1、
武石 明精 2、亀井 譲 3
一般セッション(ポスター討議)
【目的】一般的に T4 乳癌に対して乳腺切除を行う場合、皮膚を含む胸壁組織の
欠損範囲が大きくなり、植皮や単純縫縮による単なる胸壁再建となることが
多い。我々は T4 乳癌術後の広範な皮膚・軟部組織欠損に対し早期の創傷治癒、
術後 QOL の改善を目的として対側穿通枝を用いた Supercharged TRAM flap
による一次再建を行い、良好な結果を得たので、その有用性について報告する。
【方法】2010 年 12 月から 2014 年 5 月までに当施設において本法を施行した症
例は 5 例であった。患者記録より、手術時年齢、皮膚欠損範囲、皮弁幅、使用
血管、血管径、合併症、入院期間、予後等を調査した。【結果】手術時年齢は
平均 41.8 歳、胸部皮膚欠損の直径は平均 15.4cm、皮弁幅は平均 13.9cm で
あり、採取部の一期的縫縮は可能であった。移植床動脈はいずれも胸背動脈
前鋸筋枝で、移植床静脈は胸背静脈前鋸筋枝が 5 例、外側胸動脈が 1 例であっ
た。皮弁の穿通枝はいずれも TRAM の筋肉茎と対側の深下腹壁動静脈であっ
た。合併症は、1 例で再建乳房下溝の残存皮膚側創縁に潰瘍を認めるのみで、
術後平均 15 日間で退院となった。術後の観察期間は平均 2 年 4 ヶ月であり、
5 例中 1 例が術後 2 年 6 ヶ月で全身転移により死亡し、その他症例では再発・
転移を認めていない。【考察】以前は乳癌に対して乳腺全摘出後に自家組織に
よる乳房一次再建を行った場合、局所再発の発見や評価、治療の障害になる
と考えられていた。しかし近年、再建による発見率や生存率の低下は認めな
いとの報告が多い。当施設では、女性にとって乳房欠損に伴う喪失感は大きく、
日常生活の QOL を著しく低下させる点から、単なる植皮ではなく左右対称で
美しい乳房再建を目指している。また T4 乳癌では組織切除範囲が大きくなり、
通常の TRAM flap では組織欠損が被覆できずに zone4 を使用せざる得ない症
例が多い。本法による一次再建は 1)安全に血流を保ち zone4 まで利用可能、2)
すでに術野に吻合血管となる胸背動静脈、前鋸筋枝が露出されている、3)全
身一次療法の進歩により術後予後が期待され患者 QOL の点で有益である等の
利点が挙げられる。問題点として 1)穿通枝の剥離操作を要する、2)片側の筋
体が犠牲になる点が挙げられる。【結語】T4 乳癌術後皮膚欠損に対して対側穿
通枝型 Supercharged TRAM flap を用いた乳房一次再建を行い良好な結果を
得た。今後も再発・生存率、皮弁の形態等について、長期的評価を行ってい
く予定である。
【はじめに】横軸型腹部皮弁において、zone 4周囲の生着域の判断は難しい。
含める穿通枝の数、位置によっても皮弁の生着領域は左右される。インドシ
アニン・グリーン(以下 ICG)で造影範囲を確認し、必要な穿通枝を選別でき
る方法と、それを用いた症例を検証し、その有用性について報告する。
【方法】通常の TRAM Flap をデザインし、血管茎と反対側より筋膜上にて皮
弁を挙上する。穿通枝が確認されたら、穿通枝以外の部分を正中まで筋膜上
で剥離を進める。同様に血管茎側の挙上を外側から行い、外側の穿通枝を同
定し、そこから中枢へ向かい深下腹壁動静脈本幹まで展開する。この外側列
穿通枝を基本の穿通枝とする。筋膜上の剥離をすすめ、内側列穿通枝も同定・
温存し、周囲は筋膜上で剥離する。反対側も同様に展開し、筋膜上の連続は
穿通枝のみの状態とする。基本となる穿通枝は開放しておき、皮弁に含める
か判断を必要とする穿通枝は血管吻合用血管クリップ(以下クリップ)で血流
を遮断する。
点滴から ICG を経静脈的に全身投与する。赤外線観察カメラシステムにて造
影範囲を観察する。ICG 造影の範囲の拡大が一度静止した時点でクリップを
除去し、その後拡大した造影範囲を観察する。
【対象】2012 年 5 月~ 2014 年 12 月に free MS2 TRAM flap にて乳房再建
した 99 例中、穿通枝の選択が必要であった 26 例。
【結果】術前に全領域が必要と判断した症例は 13 例で、3 例に皮弁内血管吻合
付加(以下 VA)を施行。
下腹部正中瘢痕がある症例は 8 例で、2 例に VA を施行。
内側列穿通枝を皮弁に含めるか判断を要した症例は 5 例で、2 例は含めて挙上。
ICG 造影で不要と判断した割合は 73%であった。
【考察・まとめ】術前に MDCT にて、穿通枝の位置を確認しているが、各穿通
枝の支配領域を判断することはできない。また、下腹部正中瘢痕がある症例は、
瘢痕を迂回して対側が造影される部位があるが、この領域を判断することは
難しい。本法により、これらの領域が判断が可能となった。
VA をするために両側茎で挙上することや、筋体内で内・外側列が離れている
場合に筋体の切除量が増えることは、腹部の侵襲を大きくする。 本方法で
生 着 に 必 要 な 穿 通 枝 を 見 極 め る こ と で、 手 術 侵 襲 を 最 小 限 に し、over surgery を防止、術後の腹壁ヘルニアの抑制も可能となり、有用である。
DP-2-78-05
DP-2-79-01
1
1
当科における深下腹壁動脈遊離穿通枝皮弁を用いた乳房再建症
例の検討
早期乳がんに対する乳頭温存乳房切除術の成績―乳房温存術、
乳房切除術との比較検討―
兵庫医科大学病院 形成外科、2 兵庫医科大学病院 乳腺・内分泌外科
3
藤田 和敏 1、曽束 洋平 1、西本 聡 1、藤原 敏宏 1、河合 建一郎 1、
木下 将人 1、大島 遥 1、垣淵 正男 1、三好 康雄 2
(目的)当科では腹部皮弁による乳房再建を 2012 年より深下腹壁動脈穿通枝皮
弁(以下 DIEP)にて行っている。症例を重ね、いくつかの工夫、改良を行って
きたので、それらについて考察を加えて報告する。(対象・方法)対象は 2012
年 1 月から 2014 年 12 月までに施行した乳房再建症例 23 例 23 側である。こ
れらについて、【1】皮弁デザインの方法、【2】挙上した皮弁の血流評価方法、、
【3】乳房マウンド作成の方法に関して検討した。(結果)、
【1】皮弁デザインは、
初期は術前に造影 CT 撮影を施行しそれを基に計測した穿通枝位置をドプラ血
流計によって確認していた。現在は、撮影した CT 画像を抽出し、プロジェク
タを用いて患者の腹部に投影しながら深下腹壁動脈および穿通枝をトレース
している。穿通枝の太さに関してはカラードプラエコーでも確認している。、
【2】挙上した皮弁の血流評価は、当初は皮弁からの出血の色調で評価していた
が、現在は、血管吻合後インドシアニングリーン蛍光造影法(以下 ICG)を用い、
Zone2 温存範囲の指標としている。、【3】乳房マウンド作成では、術前に患者
正面より多方向から乳房の撮影を行った画像を基に、家庭用パーソナル 3D プ
リンタ-で乳房テンプレートを作成し、マウンド作成の一助としている。(考
察)プロジェクタによる投影を行うようになり、術前デザインに要する時間の
短縮につながったと考えられる。また、CT 画像を見ながらデザインをする事
によって血管走行全体のイメージがつきやすく、手術経験の浅い医師に対し
て教育的な効果も高いと考えられる。ICG 評価に関しては血流の状態が客観
的に確認でき、Zone2 温存範囲の指標になり得ると考えられる。3D プリンタ
-を用いた立体モデルは、再現性の高い乳房形態の作成が可能となり、乳房
再建に有用な方法であると考えられた。家庭用 3D プリンタ-は比較的安価で
入手でき、今後、立体モデル作成がさらに利用されていくと考えられる。
和歌山県立医科大学付属病院 紀北分院 外科、2 串本有田病院、
岸和田市民病院乳腺科、4 紀和病院、5 さくらい乳腺クリニック
櫻井 照久 1、佐々木 恵理 1、鈴間 孝臣 1,2、吉村 吾郎 3、梅村 定司 4、
櫻井 武雄 5
(背景)乳頭温存乳房切除術 (NSM) は乳房切除術(MT)とは異なり乳頭乳輪な
らびに皮弁を温存する術式であり、手術手技的には乳頭壊死や皮弁壊死など
の手術合併症の問題、腫瘍学的には局所再発を含めた NSM の長期予後が不明
であるといった問題がある。(目的)1. 早期乳がん (0,1,IIA, IIB) における
NSM の予後について、同時期に行われた乳房切除術 (MT)、乳房温存術 (BCS)
と の disease free survival (DFS)、overall survival (OS)、breast cancer
specific survival(BCCS)、local recurrence rate(LRR) について比較検討。2.
NSM についてそれぞれ stage 0,1,2A, 2B 別の乳頭再発率、皮弁再発率につい
ての検討。3. NSM について乳頭再発ならびに皮弁再発の時期と臨床組織学的
特徴についての検討。(対象と方法)1985 年から 2007 年の間に当院で行われ
た早期乳がん(0,1,2A, 2B)1082 例を対象。NSM 723 例、MT 100 例、BCS
259 例。NSM、乳房切除術は全例非照射。(結果)1. 観察期間は 114 カ月で、
NSM 723 例 中 に 乳 頭 壊 死 は 認 め ず。DFS は NSM, MT, BCS で 5 年 で 92%,
92%,95%, 10年 で88%,90%,87%, 15年 で83%,79%,83%。OSは5年 で
92%,91%,97%、10年で92%, 91%,97%、15年で90%,91%,97%。BCSSは
5年で96%,96%,99%, 10年で93%,91%,99%, 15年で91%,91%,99%(いず
れも有意差なし)。LRRはNSMで6.7%, MTで4%, BCSで4%
(有意差なし)
。2.
NSMは0, 1, 2A, 2B で21例, 320例, 253例,129例。乳頭再発を24例に認め
(0, 1, 2A, 2Bでそれぞれ0(0%), 9(3%), 12(5%), 3(2.4%))
、皮弁再発を25
例に認めた(0(0%), 12(3.9%), 8(3.3%), 5(4.1%))。3. 乳頭再発までの期間は
1553日で、乳頭再発例の平均腫瘍乳輪間距離は0.5cmで, Paget型の再発を
52%に認め, ER陰性、PgR陰性、Her2陽性例の頻度が高い傾向を認め, 乳頭再
発全例にsalvage手術が可能であった。皮弁再発までの期間は2109日で腫瘤型
の皮弁再発を22例に、炎症型を3例に認め、炎症型の予後は腫瘤型に比較して
有意に不良。(結語) 早期乳がんに対するNSMは長期予後に関して乳房切除術、
乳房温存術と比較して予後に差は認めず、局所再発率についても差は認めず、
乳房切除術に代替できる術式であると示唆された。腫瘍が乳頭から十分距離の
ある症例では、乳頭再発を低頻度に抑えられると考えられた。NSM術後長期経
過後も乳頭再発ならびに皮弁再発を経験しており、長期にわたる慎重な経過観
察が肝要であると考えられた。
414
ポスター討議
DP-2-79-02
DP-2-79-03
1
1
当院における同時乳房再建の適応と断端陽性率についての検討
乳房一次再建における断端陽性、再発例の検討
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科、2 京都府立医科大学 形成外科
2
岡本 明子 1、中務 克彦 1、素輪 善弘 2、大内 佳美 1、藤田 佳史 1、
阪口 晃一 1、田口 哲也 1
関堂 充 1、佐々木 薫 1、足立 孝二 1、相原 有希子 1、西嶌 暁生 1、
倉元 有木子 2、坂東 裕子 2、原 尚人 2、池田 達彦 2、井口 研子 2
【目的】2013 年に乳房用組織拡張器、ゲル充填乳房インプラントが保険認可さ
れ乳房一次再建症例が増加している。再建により再発の発見、再発率などに
影響を与えないとされているが、本邦における形成外科分野からの報告は稀
である。当施設における一次再建時の断端陽性、再発に関して検討した。
【方法】
当施設において 2010 年 4 月より 2014 年 10 月までの乳癌手術症例にて非再建
例、乳房一次再建例に関して年齢、切除術式、再建方法、断端陽性、再発、
予後に関して患者カルテより調査、比較した。【結果】同期間の乳癌手術症例
は 884 例、うち一次再建症例は 108 例であった。非再建症例 776 例において
乳房部分切除 550 例のうち断端陽性 35 例 (6.5%)。うち追加切除 30 例、局所
/ 領域再発 2 例、リンパ節転移 2 例、遠隔転移 6 例であった。乳房切除 226 例
のうち断端陽性 5 例 (2.2%) うち追加切除 3 例、局所再発 0, リンパ節転移 2 例、
遠隔転移 4 例であった。一次再建症例における再建術式は乳房部分切除 38 例
のうち広背筋皮弁が 37 例であった。乳房全切除 70 例のうち広背筋皮弁 13 例、
有茎腹直筋皮弁 11 例、血管付加吻合腹直筋皮弁 11 例、遊離深下腹壁穿通枝
皮弁 11 例、エキスパンダー 19 例、インプラント 5 例であった。再建例にお
いて断端陽性は部分切除 38 例のうち 2 例 (5.2%), 乳房切除 70 例のうち 3 例
(4.3%) と非再建例との有意差はなかった。断端陽性症例は現在のところ再発、
遠隔転移はみていない。局所再発は乳房部分切除で 0 例、乳房全切除で 1 例の
みであり、遠隔転移は部分切除にて 0 例、全切除で 5 例であった。【考察】乳癌
の症例数の増加、再建術の保険適応により一次再建は近年増加している。当
施設においては乳癌切除後の QOL の改善を目的として積極的に乳房一次再建
を行っている。諸家の報告と同様に進行例でも局所コントロールに差が無く、
患者満足度も高いため積極的な乳房再建には支障がないと考えられた。
DP-2-79-04
DP-2-79-05
1
埼玉医科大学総合医療センター 形成外科・美容外科
乳房再建術後のリハビリテーション
高齢者の乳房再建:インプラントを用いた再建での問題点
藤聖会 八尾総合病院 リハビリテーション科、
2
藤聖会 八尾総合病院 乳腺外科、
3
藤聖会 女性クリニック We とやま 乳腺外科、4 藤聖会 八尾総合病院
山川 知巳、三鍋 俊春
野上 静恵 1、江嵐 充治 2,3、渋谷 侑子 1、池田 裕哉 1、藤井 久丈 4
【はじめに】当院では乳房再建術後の患者に対して肩関節可動域の獲得を目的
に手術翌日よりリハビリテーションを実施し、入院期間のみでは十分な回復
が困難な場合は外来リハビリテーションを継続している。乳房再建術後のリ
ハビリテーションに関する報告は少なく、当院ではリハビリテーション終了
の基準を自覚症状として日常生活動作が違和感なくできることとしている。
今回、乳房再建術後の肩関節可動域とリハビリテーション実施期間について
検討したため報告する。【対象】平成 25 年4月から平成 26 年 10 月までの間に
当院にて乳房再建術を施行し、術前とリハビリテーション終了時の理学療法
評価が可能であった 61 例を検討した。性別は全て女性、年齢は 48.8 ± 7.8 歳
で あ っ た。 術 式 は 乳 房 切 除 術 ( 以 下 Bt) + セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 生 検 ( 以 下
SLNB) が 47 例、Bt +腋窩リンパ郭清 ( 以下 Ax) が 14 例であった。【方法】理
学療法評価は肩関節屈曲可動域を術前とリハビリテーション終了時に測定し
た。またリハビリテーション実施期間に関しても検討を行った。【結果】肩関
節屈曲可動域は術前が平均 167.4°、リハビリテーション終了時が平均 163.4
°であり術前と比較すると 97.4%の可動域を獲得していた。リハビリテーショ
ン実施期間は 25.6 ± 12.7 日であった。術式別に比較すると Bt + SLNB は術
前が平均 167.2°、リハビリテーション終了時が平均 162.2°であり、術前の
96.7%を獲得した時点で終了しており、リハビリテーション実施期間は 22.5
± 11.4 日であった。Bt + Ax は術前が平均 168.0°、リハビリテーション終了
時が平均 167.6°であり、術前の 98.7%を獲得した時点で終了しており、リハ
ビリテーション実施期間は 37.0 ± 11.3 日であった。【考察】今回の調査により
リハビリテーションを実施することで術前とほぼ同様の肩関節屈曲可動域が
獲得できることが示唆された。術式別に比較すると、可動域においては大き
な差は認めなかったが、リハビリテーション実施期間においては Bt+Ax で改
善までにより時間を要する傾向にあることが示唆された。乳房再建術後のリ
ハビリテーションに関して、文献的考察を踏まえ報告する。
【目的】シリコンブレストインプラント(SBI)を用いた乳房再建が保険適応と
なり、体への負担を理由に再建を諦めていた高齢者の再建が増加している。
高齢者の乳房再建については、合併症を各再建方法で比較した報告や QOL に
ついて他の年齢層と比較した報告などが認められる。しかし、SBI 再建におい
て整容性に関連する合併症を他の年齢層と比較した報告は認められない。今
回高齢者の SBI 再建を経験し、問題点につき検討したので報告する。
【対象と方法】当院において 2014 年 12 月までに SBI への入れ換えが完了した
27 例中、再建開始年齢が 65 歳以上の高齢者 8 例(A 群)、64 歳以下の 19 例(B
群)を対象とした。それぞれの群で、SBI 再建の整容性に関連する合併症であ
る、rippling、SBI 辺縁の浮き立ち、Baker2 度以上の被膜拘縮、形態の非対
称について比較検討した。平均年齢は、A 群 69.3 歳、B 群 46.5 歳で、再建方
法はすべて TE を使用した二期再建であった。再建時期は A 群一次 4 例、二次
4 例、B 群一次 15 例、二次 4 例であった。A 群の 1 例は両側再建症例であった。
【結果】rippling は A 群 3 例(37.5%)、B 群 4 例(21.1%)、SBI 辺縁の浮き立ち
は A 群 5 例(62.5%)、B 群 4 例(21.1%)、 被 膜 拘 縮 は A 群 3 例(37.5%)、B
群 4 例(21.1%)で あ っ た。 形 態 の 非 対 称 は A 群 5 例(62.5%)、B 群 6 例
(31.6%)であった。修正のための touch up surgery を施行したのは A 群 0 例、
B 群は 2 例であった。
【考察】SBI 再建は侵襲が少ないという利点があり、当院における高齢の再建
患者はすべて SBI 再建を希望した。一方で、再建乳房の整容性が残存してい
る軟部組織の状態に大きく左右され、下垂のない乳房しか再建できないとい
う欠点がある。今回、高齢者において rippling や SBI 辺縁の浮き立ち、被膜拘
縮、形態の非対称といった合併症が他の年齢層と比較して多く認められる傾
向にあった。これは加齢による皮膚弾性の低下、大胸筋の非薄化、対側乳房
の委縮・下垂などの身体的変化が原因と考えられた。整容性向上のためには
touch up surgery が必要であるが、高齢者は再手術を避ける傾向にあった。
高齢者は温泉に入ることを目的に再建することが多く、期待も高い。SBI 再建
を希望する場合は、整容性の限界や touch up surgery の必要性を十分に説明
する必要がある。また対側手術を再建と同時に施行できる体制が整えば、形
態の非対称を減らすことができると考えられた。
415
一般セッション(ポスター討議)
【目的】当院では 2011 年 6 月から形成外科と連携し同時乳房再建を施行してい
る。今回我々は当院での同時乳房再建の適応基準を検討した。【方法】2011 年
6 月~ 2013 年 11 月の当院での同時乳房再建での断端陽性率を検証した。
NSABP-B-06 試験に則り、腫瘍細胞が断端から露出していることを断端陽性
とした。それを元に適応基準を作成し、作成前(前期)と作成後 2013 年 12 月
~ 2014 年 8 月(後期)で比較検討した。【結果】前期の同時乳房再建は 75 件、
再建法の内訳は乳房温存術(Bp)+広背筋再建(LD)が 57 件、乳房切除術(Bt)
+ LD が 2 件、Bt +ティッシューエキスパンダー挿入 (TE) が 16 件であった。
前期の断端陽性率は全体で 30.7%、Bp + LD が 26.3%、Bt + LD が 100%、
Bt + TE が 37.5%であった。同期間の非乳房再建手術での断端陽性率は全体
で 12.3%、Bp で 12.5%、Bt で 12.1%と、同時乳房再建で断端陽性率が高かっ
た。断端陽性例を検討したところ Bp + LD では乳腺の切除範囲が 1/2 以上必
要 で あ っ た 症 例 が 多 く、Bt の う ち Nipple-sparing mastectomy(NSM) や
Skin-sparing mastectomy(SSM) の症例で皮膚側断端陽性が多かった。この
結果から Bp + LD は MRI を基準に腫瘍から 2cm の margin を確保できかつ切
除乳腺が 1/2 までのものとした。NSM、
SSM は MRI で腫瘍から皮膚まで 0.5cm
以上のものとした。全ての症例で MRI で腫瘍が皮膚に近接している場合は直
上の皮膚を切除することとした。2014 年 3 月から Bt +深下腹壁動脈穿通枝皮
弁再建(DIEP)も選択肢に加わり、皮膚切除範囲が大きい症例や大きな乳房の
症例はこの適応となった。後期の同時乳房再建は 39 件、再建方法の内訳は
Bp + LD が 12 件、Bt + LD が 1 件、Bt + TE が 20 件、Bt + DIEP が 6 件であっ
た。 後 期 の 断 端 陽 性 率 は 全 体 で 7.7 %、Bp + LD が 8.3 %、Bt + LD が 0%、
Bt + TE が 10%、Bt + DIEP が 0%と、前期と比べ有意に低下した。【考察】
Bp + LD の適応を絞ったことと 2013 年 7 月からは TE が保険適応となったこ
とで後期では全体的に Bt +乳房再建が増加した。また皮膚側断端陽性を防い
だことが全体の断端陽性率の低下に寄与したと思われる。ただし再建例での
断端陽性率が予後に与える影響は不明である。Bp + LD には術後放射線治療
を加えており、この影響なども含め予後については長期的な経過を検討して
いく必要があると考えられる。【結語】適応基準を改変したことで断端陽性率
を低下させることができた。今後は予後に関して検証していく予定である。
筑波大学 医学医療系 形成外科、
筑波大学 医学医療系 乳腺甲状腺内分泌外科
ポスター討議
DP-2-80-01
DP-2-80-02
1
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター、
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
3
順天堂大学医学部付属順天堂病院 乳腺科
1
崔 星 1、林 光弘 2、唐澤 久美子 1、堀本 義哉 3、白井 敏之 1
増田 紘子 1,2、Qi Yuan2、林 直輝 2,3、上野 直人 2
Triple Negative 乳癌幹細胞に対する炭素線と Cisplatin との
併用による in vitro, in vivo 殺傷効果
Reverse phase protein arrays (RPPAs) を用いた TNBC の
subutype 分類
国立病院機構 大阪医療センター 外科・乳腺外科、2The University of
Texas, MD Anderson Cancer Center Breast Medical Oncology、3 聖路加
国際病院 乳腺外科
2
一般セッション(ポスター討議)
【背景と目的】。乳癌はサブタイプにより予後や治療感受性が大きく異なり、
中でも Triple Negative 乳癌 (TNBC) は原発性乳癌の約 15% を占めるが、治
療のターゲットとなる分子標的を持たず、増殖能力が高く、予後は不良である。
本研究では、炭素線単独或は Cisplatin との併用による乳癌幹細胞への影響を
in vitro, in vivo に て 調 べ た。【 方 法 】TNBC 細 胞 株 MDA-MB-231 や MDAMB-453 より癌幹細胞を同定・分離し、炭素線単独或は Cisplatin との併用に
よるこれら癌幹細胞に対する colony や spheroid 形成能、細胞死や血管新生関
連遺伝子発現変化、DNA 損傷及び移植腫瘍抑制の違いを X 線照射のものと比
較 検 討 し た。【 結 果 】MDA-MB-231 細 胞 や MDA-MB-453 に お い て CD44+/
CD24-、ESA+/CD24- 細胞集団は colony や spheroid 形成能、腫瘍形成能が
高いことが認められた。炭素線と Cisplatin との併用は X 線単独或は Cisplatin
との併用に比べ癌幹細胞の colony や spheroid 形成能を有意に抑制し、24h 後
のγ H2AX foci 残存がより多いことが認められまた。RT PCR Array 解析では、
apoptosis や autophagy 関連遺伝子 Cytochrome c、LC3、ATG7 などの発現
をより増強させる一方、癌幹細胞マーカー CD44 、ESA や血管新生因子 HIF1
αや CD26 発現を著しく抑制した。照射 2 ヶ月後の病理所見では、炭素線
20Gy と Cisplatin(5 mg/kg i.p.) との併用は X 線 30Gy との併用に比べ腫瘍細
胞の繊維化、空洞化がより顕著であり、血管新生もより乏しくなり、強い腫
瘍増殖抑制が認められた。【結論】炭素線と Cisplatin との併用は炭素線単独或
は X 線と Cisplatin との併用に比べより複雑な修復しにくい DNA 損傷を与える
ことによって各種細胞死を誘導し、in vitro, in vivo にて TNBC 癌幹細胞を高
率的に殺傷することが示唆された。
背 景:Gene expression analyses は biology に 基 づ い た、Triple negative
breast cancer(TNBC) の細分化を可能にし、TNBC heterogeneity の克服、
Targeted therapy の探求に重要な役割を果たしている。しかしながら、包括
的 遺 伝 子 解 析 は 複 雑 で、 実 臨 床 へ の 応 用 に は い ま だ 多 く の 問 題 が あ る。
RPPAs analysis は targets となりうる可能性のある遺伝子をタンパクレベル
で測定することが可能であり、免疫染色へ置き換えることにより、より容易
に実臨床へ応用できる可能性がある。方法:MD Anderson Cancer Center
で集められた、80人の TNBC 患者の RPPAs を用い、clustering analysis
を行った。RPPA analysis は 一部リン酸化タンパクも含んだ 154 のタンパク
発現レベルが解析可能であり、2 種類の clustering analysis、“ k-means ” と “
hierarchical” analysis を 用 い て 細 分 化 を 行 っ た。 ま た、RPPAs と mRNA
array のデータがある、52 サンプルを用いて、“7 molecular subtypes” を
RPPAs で も 再 現 可 能 で あ る か、 検 討 し た。 得 ら れ た TNBC Subtype と
recurrence-free survival、overall survival の相関も検討した。結果:2 種類
の clustering analysis の結果、TNBC は 2-3 のグループにもっとも安定して、
細分化できると判断され、2 グループに分けた場合、k-means と hierarchical
clustering は全く同様の結果を示した。それらは、生物学的特徴として、DNA
repair and replication pathway (cluster 1) と immune response and
adipocytokine signaling pathways (cluster 2) に関与していると考えられた。
mRNA array と RPPAs を共に k-means clustering による 7molecular subtype
で比較した結果、RPPA は 5 グループに細分化され、Fisher's exact test によっ
て、7molecular subtype と相関があることが証明された (p-value=0.017)。
結語 : RPPAs を用いた、タンパクレベルでの TNBC 細分化が可能であった。認
められた subtype はm RNA array による 7molecular subtype と相関を認め
た。今後、再現性を確認することで、実臨床への応用が期待される。
DP-2-80-03
DP-2-80-04
Triple negative 乳癌幹細胞の micro RNA 発現の特徴
TNBC の Basal like では Eribulin と ROS 阻害剤の併用添加で
酸化ストレス増加を抑制する
1
亀田メディカルセンター 乳腺科、2 昭和大学 医学部 医科薬理、
3
亀田総合病院附属幕張クリニック 乳腺科
1
角田 ゆう子 1、佐々木 晶子 2、坂本 尚美 1、坂本 正明 1、佐川 倫子 1、
寺岡 晃 1、原 博子 3、片山 信仁 3、古屋 貫治 2、小口 勝司 2、
福間 英祐 1
昭和大学 医学部 薬理学講座、2 亀田メディカルセンター 乳腺科
土屋 洋道 1、佐々木 晶子 1、角田 ゆう子 2、古屋 貫治 1、辻 まゆみ 1、
宇高 結子 1、小山田 英人 1、小口 勝司 1
【目的】Triple negative 乳がん (TNBC) も亜分類が提唱され、生物学的特性が
報告されている。今回、乳癌幹細胞マーカーである CD44 を用いて 3 種類の
TNBC 培養細胞における microRNA(miRNA) の発現の違いを検討した。
【方法】
培養細胞は HCC1143(basal like type), BT-549(mesenchymal type), MDAMB-231(mesenchymal-stem like type) の 3 種類を用いた。MACS separator
で CD44 陽性細胞を収集後、miRNA PCR array を行った。分離前の総細胞の
miRNA の発現をコントロールとして幹細胞 miRNA 発現の特徴を検討した。
【結
果】総細胞に対する CD44 陽性細胞の miRNA 発現が 10 倍以上増加した miRNA
は HCC1143 では 5 個,BT-549 では 20 個,MDA-MB-231 では 25 個検出され
た。non-basal type の BT-549 と MDA-MB-231 で 共 通 し て 増 加 し て い た
miRNA は 8 個 (miR-18a,19a,19b,21,27a,29b,340,424) であり、basal type
の HCC1143 ではこの 8 つの miRNA の増加は認められなかった。最も増加し
て い た miRNA は、HCC1143 で は miR-206,BT-549 で は miR-214,MDAMB-231 では miR-100 であった。
【結論】乳癌幹細胞の miRNA 発現は TNBC の
サブタイプで異なり、自己増殖能の重要な miRNA は basal type では細胞周期
の cyclin D を標的とする miR-206 であり、non-basal type ではシグナル伝達
系の PTEN に働く miR-19a,29b や血管新生の HIF1 に関係する miR-27a,424
であることが示唆された。
【目的】Triple negative 乳癌 (TNBC) の標的治療法は現在、確立されていない。
近年、抗癌剤によるアポトーシス誘導過程で酸化ストレス (ROS) の生成が報
告されている。2011 年、TNBC は 6 つに亜分類された (Lehmann BD, et
al. J Clin Invest. 121(7):2750-67) 。 我 々 は、TNBC の 55% を 占 め る
Basal like(BL) の Eribulin 添加後における ROS 発現の変化を検討した。
【方法】
TNBC 細 胞 の HCC1143 細 胞 (BL1 type), BT-549 細 胞 (Mesenchymal-like
の M type) と MDA-MB-231 細胞 (MSL type) を用い Eribulin (1nM) 添加後
24 時間の ROS 生成値と apoptosis を調べた。さらに Eribulin と ROS 阻害剤
SAM e (S-(5-Adnosyl)-L-methionine disulfate tosylate) 62.4 μ M 併 用 添
加後の ROS 生成値を測定した。
【結果】ROS 生成値は HCC1143 細胞の control
で 3548.73 ± 376.59FI/ μ g/TP, Eribulin 添 加 後 で は 5741.95 ± 229.87 FI/
μ g/TP を示し、1.6 倍の増加を認めた。BT-549 細胞の control は 4843.83 ±
230.66 FI/ μ g/TP, Eribulin 添加後では 5034.25 ± 80.17 FI/ μ g/TP で有意
な 変 化 は 認 め ら れ な か っ た。MDA-MB-231 細 胞 の control で は 6686.7 ±
140.31 FI/ μ g/TP, Eribulin 添加後では 3991.32 ± 253.48FI/ μ g/TP で 1.67
倍減少した。Eribulin と ROS 阻害剤 (SAM e) 併用添加では、HCC1143 細胞
の control で 33228.12 ± 851.72, 併用添加後では 33665.16 ± 963.22 FI/ μ
g/TP で有意な変化は認められなかった。BT-549 細胞の control は 44997.98
± 2301.63FI/ μ g/TP, 併 用 添 加 後 で は 157115.14 ± 2301.63 FI/ μ g/TP で
3.5 倍 の 増 加 を 認 め た。MDA-MB-231 細 胞 の control で は 32574.43 ±
4921.12 FI/ μ g/TP, 併用添加後では 121614.07 ± 34100.02 FI/ μ g/TP で
3.7 倍の増加を認めた。Apoptosis を示す Annexin による Total Apopotic は、
HCC1143 細 胞 の control で は 93.62 ± 4.63 cells/ml, Eribulin 添 加 後 で は
263.4 ± 12.27 cells/ml で 2.8 倍増加し , BT-549 細胞の control では 23.95 ±
3.9 cells/ml, Eribulin 添 加 後 で は 629.8 ± 50 cells/ml で 26.3 倍 増 加 し、
MDA-MB-231 細胞の control では 13.12 ± 4.87 cells/ml で Eribulin 添加後で
は 116.4 ± 9.9 cells/ml で 8.9 倍 増 加 し た。【 結 語 】TNBC の Basal like で は
Eribulin と ROS 阻害剤の併用添加で酸化ストレス増加を抑制することが明ら
かとなった。
416
ポスター討議
DP-2-80-05
DP-2-81-01
乳癌エリブリン化学療法における上皮間葉転換制御および腫瘍
血管リモデリング誘導の臨床的検証
1
ヒストンメチル化を介した BRCA1 による相同組換え修復機構
1
2
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、2 大阪市立大学大学院 診断病理学
聖マリアンナ医科大学 大学院 医学研究科 応用分子腫瘍学、
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科
呉 文文 1、福田 貴代 1、敦賀 智子 1、太田 智彦 1、津川 浩一郎 2
柏木 伸一郎 1、石原 沙江 1、浅野 有香 1、倉田 研人 1、田内 幸枝 1、
徳本 真央 1、森崎 珠実 1、野田 諭 1、川尻 成美 1、高島 勉 1、
小野田 尚佳 1、大澤 政彦 2、平川 弘聖 1
DP-2-81-02
DP-2-81-03
1
1
福田 貴代 1、呉 文文 1、太田 智彦 1、津川 浩一郎 2
引地 理浩 1、林 孝典 2、牛窓 かおり 1、小林 尚美 1、原田 信広 2、
内海 俊明 1
HDAC 阻害剤による BRCA1 および 53BP1 の DNA 損傷応答阻害
乳癌においてインスリンは PgR の発現に影響を与えるか
聖マリアンナ医科大学大学院 応用分子腫瘍学、
2
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科 【 背 景 】DNA 二 本 鎖 損 傷 修 復 に お い て BRCA1 は 相 同 組 換 え 修 復(HDR)、
53BP1 は非相同末端再結合(NHEJ)をそれぞれ促進し、拮抗して両経路を制
御している。53BP1 の損傷局所への集積にはヒストン H4 Lys20 のジメチル
化(H4K20me2)と 53BP1 の結合が必須で ClassII ヒストン脱アセチル化酵素
(HDAC) 阻害剤は、H4 をアセチル化(H4ac)し、53BP1 の集積を抑制するこ
と が 知 ら れ て い る。 一 方 最 近 我 々 は、BRCA1 の 損 傷 局 所 へ の 集 積 に は、
BRCA1 と二量体を形成する BARD1 が HP1 を介してヒストン H3Lys9 のジメ
チル化(H3K9me2)と結合することが必須で、ヒストンメチル化酵素阻害剤
UNC0638 によってこれを阻害できることを明らかにした。そこで今回我々は
Class I HDAC 阻害剤で乳癌治療薬としても期待されている MS-275 と FK228
が、ヒストン修飾の変化を介して BRCA1 および 53BP1 の損傷局所への集積
と HDR に与える影響を解析した。【方法】1. 各種阻害剤がヒストン修飾に与え
る影響をウェスタンブロットにて解析した。2. 放射線照射による DNA 損傷部
位への蛋白質の集積を蛍光免疫染色にて解析した。3.DR-GFP レポーターを用
い た gene conversion assay に て HDR を 解 析 し た。4. 殺 細 胞 効 果 を
Clonogenic survival assay にて解析した。【結果】各阻害剤は DNA 修復因子
の発現レベルに影響を与えない濃度および添加時間にて、顕著なヒストン修
飾の変化をもたらした。UNC0638 が H3K9ac および H4ac に影響を与えない
まま、H3K9me2 を選択的に抑制するのに対して、HDAC 阻害剤は H3K9ac と
H4ac を 亢 進 さ せ て H3K9me2 を 抑 制 し た。 こ れ を 反 映 し て UNC0638 が
53BP1 とその下流の RIF1 には影響を与えずに BRCA1/BARD1 の損傷局所へ
の 集 積 を 阻 害 す る の に 対 し て、HDAC 阻 害 剤 は BRCA1/BARD1 お よ び
53BP1/RIF 全ての損傷局所への集積を阻害した。gene conversion assay で
は UNC0638、HDAC 阻害剤ともに HDR を阻害したが、UNC0638 で PARP 阻
害 剤 Olaparib と の 合 成 致 死 性 効 果 を 認 め る の に 対 し て HDAC 阻 害 剤 と
Olaparib との間に合成致死性効果は認められなかった。【考察】HDAC 阻害剤
は BRCA1 と 53BP1 の集積阻害を介して HDR と NHEJ の両経路を阻害するた
め、PARP 阻 害 剤 と の 相 乗 効 果 が 期 待 で き な い こ と が 推 測 さ れ た。 今 後、
HDAC 阻害剤が臨床応用された際には化学療法剤との併用において重要な知
見となると考えられる。
藤田保健衛生大学 乳腺外科、2 藤田保健衛生大学医学部 生化学教室
【背景と目的】糖尿病は乳癌のリスクおよび予後不良因子とされ、その機序に
は insulin-like growth factor 1 receptor (IGF-I) やインスリン (INS) の関与
が示唆されている。IGF-I は ER α S167 のリン酸化を亢進させ、乳癌細胞の増
殖を促進する事が報告された。また、IGF-I は ER 陽性乳癌において予後因子
である PgR の発現を抑制するとの報告もある。一方で INS も IGF-I と同様に
乳癌細胞の増殖や PgR の発現に影響を与える可能性が考えられるが、詳細は
不明である。そこで、ER 陽性ヒト乳癌細胞株(MCF-7、T47D)を用い、INS
が PgR に及ぼす影響について検討した。また ER α S118 のリン酸化が PgR の
発現に関与することが知られており、INS が ER α S118 のリン酸化に与える
影響について検討した。さらに当院の乳癌患者の臨床データをもとに糖尿病
の有無と PgR の関係、予後についても検討した。【方法と結果】PgR mRNA は
SYBR Green を用いて定量的 PCR にて測定し、PgR 蛋白は Western blotting
法を用いて定量した。また糖尿病を有する閉経後 ER 陽性乳癌 78 例を対象に、
糖尿病を有さない閉経後 ER 陽性乳癌 156 例と case control study を行い比較
した。INS が PgR に与える影響については、MCF-7、T47D にエストラジオー
ル(E2)1nM を添加し 5 日間培養した結果、ともに PgR mRNA 量は E2(-) に
比べて約 4 倍に増加した。両細胞株を用いて E2 存在下で INS を 0.01 μ g/ml
および1μ g/ml 添加したところ、INS は、E2 による PgR mRNA 量の増加を
濃度依存的に抑制した。また INS は PgR mRNA 量と蛋白量を時間依存的に減
少させた。INS が ER α S118 のリン酸化に与える影響については、MCF-7 に
E2 存在下で INS を1μ g/ml 添加後 1 時間で ER α S118 のリン酸化は抑制され
た。当院の乳癌患者の臨床データについては、当院における閉経後の乳癌患
者において、糖尿病の有無は予後には関連しないものの、糖尿病を有する乳
癌症例では有意に PgR 陰性例が多かった (p=0.034)。【考察】本研究により
INS は、PgR の発現を濃度および時間依存的に抑制することが示された。ま
た INS が ER α S118 のリン酸化を阻害することも示めされ、INS が PgR の発
現を抑制する経路の一つである可能性が示唆された。さらに臨床データでも
糖尿病を有する ER 陽性乳癌は PgR の発現が抑制されていることから、糖尿病
を有する乳癌患者においては、長時間高 INS 血症に暴露された場合や、高濃
度の INS 血症に暴露された場合ほど PgR の発現を抑制させる可能性が考えら
れた。
417
一般セッション(ポスター討議)
【背景】エリブリンは,タキサンやビンカアルカロイドとは異なる作用機序を
持つ微小管阻害剤である.その臨床的薬剤特性や作用メカニズムが徐々に明
らかとなってきており,上皮間葉転換 (EMT) の制御および腫瘍血管再構築の
誘導作用を有することが注目されているが,臨床検体を用いた検討について
の報告は少ない.今回われわれは,パクリタキセルとの比較検討を加えてエ
リブリン化学療法における EMT 制御および瘍血管リモデリング作用を検証し
た.【対象と方法】2011 年 8 月から 2013 年 6 月までに局所進行・再発性乳癌
52 例に対してエリブリン化学療法を施行し,病巣の切除に至った 11 例を対象
とした.また同時期にパクリタキセル化学療法を行った 10 例を比較対照群と
した.奏効率 (RR) を算出し,治療前後のパラフィン包埋標本を用いて免疫
組織化学染色による蛋白発現解析を行った.EMT 抑制は,上皮マーカーであ
る E-cadherin 発現上昇,間葉系マーカーである N-cadherin および vimentin
の発現減弱にて評価した.さらに血管リモデリング作用は,腫瘍の低酸素状
態が解除されることについて CA9 発現の減弱により評価した.【結果】手術症
例 11 例の治療効果は,pCR 1 例 , PR 5 例 , SD 1 例 , long SD 1 例 , PD 3 例
であり,RR は 54.5 % であった.pCR 症例を除外した評価可能標本 10 症例
において,エリブリン投与前後の標本にて E-cadherin 発現陽転例は 5 例,
N-cadherin および vimentin の発現陰転例は 3 例,CA9 発現陰転例は 4 例に認
められた.これらの蛋白発現の推移と治療効果との相関を検討したところ,
エリブリン投与群において E-cadherin 発現陽転および CA9 発現陰転が認めら
れたものは有意に RR が高かった (p=0.004, p=0.024).また N-cadherin お
よび vimentin の発現低下が認められた症例についても RR が高い傾向であっ
た (p=0.083, p=0.083).一方でパクリタキセル投与群 10 例においては,こ
れらの EMT マーカーや低酸素マーカーの変化は認められなかった.【結語】エ
リ ブ リ ン 化 学 療 法 に お い て, 投 与 前 後 標 本 で の E-cadherin 発 現 上 昇,
N-cadherin および vimentin 発現の減弱は EMT 抑制,また CA9 発現減弱は血
管リモデリング誘導により腫瘍内低酸素領域の改善を示唆するものと考えら
れた.
【背景】DNA 二本鎖切断の相同組換え修復 (HDR) は BRCA1 の最も重要な機能
であり、その機能不全は PARP 阻害剤を含む化学療法の標的となる。BRCA1
の 損 傷 局 所 へ の 集 積 機 序 と し て ユ ビ キ チ ン を 介 し た BRCA1Abraxas(BRCA1-A) 複合体の集積がよく知られているが、BRCA1-A 複合体は
むしろ HDR を抑制し、非相同末端再結合 (NHEJ) を促進することが最近明ら
かとなってきた。本研究では BRCA1-A 複合体とは異なり HDR を遂行する
BRCA1 がどのように損傷局所に集積するかを明らかにした。
【方法】1)BRCA1
と二量体を形成する BARD1 に対する可溶化クロマチン免疫沈降物からヒスト
ン修飾をスクリーンした。2)BARD1 の遺伝子改変を行い、in vitro(Biacore
解析)および in vivo にて BARD1 とヘテロクロマチンプロテイン 1(HP1) の結
合部位のマッピングを行った。3)HP1 との結合を阻害する BARD1 のミスセン
ス 変 異 体 を 安 定 的 に 発 現 す る 各 種 細 胞 株 を 樹 立 し た。4)Doxycyclin 誘 導
shRNA により HP1 ファミリーを全て同時に抑制する各種細胞株を樹立した。
5) 放射線あるいはレーザーマイクロ照射による DNA 二本鎖切断部位への
BRCA1, BARD1 および HDR 関連因子の集積を共焦点顕微鏡にて解析した。6)
殺細胞効果は Clonogenic survival assay にて解析した。
【結果】放射線照射後、
BRCA1 は BARD1 を介して Lys9 ジメチル化ヒストン H3(H3K9me2)と結合
し、 こ の 結 合 は HP1 を 介 し て い た。 す な わ ち、BRCA1/BARD1/HP1/
H3K9me2(BRCA1-H) 複合体を形成した。BARD1 と HP1 の結合は BRCT ド
メインの PxVxL モチーフを介して行われ、この結合を阻害する変異体および
HP1 ファミリーの発現抑制により、BRCA1、BARD1 および RAD51 の損傷局
所 へ の 集 積 が 阻 害 さ れ HDR が 阻 害 さ れ る 一 方、NHEJ は 促 進 さ れ た。
BRCA1-A 集積経路を阻害しても BRCA1-H 集積は阻害されず、両複合体は拮
抗 し 合 う こ と が 判 明 し た。 ヒ ス ト ン メ チ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ 阻 害 剤
UNC0638 により H3K9me2 が抑制されると BRCA1/BARD1 の損傷局所への
集積は阻害され、PARP 阻害剤との合成致死性を認めた。【結語】これまでに知
られた BRCA1-A 複合体と拮抗し、HDR を担う BRCA1-H 複合体を同定した。
この複合体の機能にはヒストン H3K9 メチル化が重要であり、これを標的と
した治療が期待される。
ポスター討議
DP-2-81-04
DP-2-81-05
乳癌における Glycoprotein non-metastatic B の臨床的意義
と HER2 との関連
1
化学療法が無効な TN type 乳癌増殖機構の新規イメージングシ
ステムを用いた基礎的研究
岐阜大学 医学部 腫瘍外科、2 岐阜大学 医学部 乳腺・分子腫瘍学
1
2
2
1
1
東邦大学 医学部 教育開発室、2 東邦大学 医学部 免疫学講座、3 東邦大
学 医学部 外科学講座 一般消化器外科分野(大森) 乳腺内分泌部門
1
兼松 昌子 、二村 学 、森光 華澄 、森 龍太郎 、森川 あけみ 、
吉田 和弘 1
岡田 弥生 1,2、石川 文雄 2、齋藤 芙美 3、緒方 秀昭 3、近藤 元就 2
一般セッション(ポスター討議)
【背景】Glycoprotein non-metastatic B (GPNMB) は oncogene と考えられて
いるが、乳癌骨転移を促進し TNBC では予後不良因子であることが報告され
ている.【目的】GPNMB の乳癌における臨床的意義および HER2 など膜型受容
体との関係を明らかにする.【方法】2011 年 5 月から 2014 年 2 月に岐阜大学
医 学 部 附 属 病 院 で 治 療 を 行 っ た 乳 癌 患 者 164 人 の 血 清 中 の GPNMB 値 を
ELISA 法 に て 測 定 し 臨 床 的 因 子 と の 検 討 を 行 っ た. ま た HER2 陽 性 か つ
GPNMB 陽性の乳癌細胞株 SK-BR3・BT-474 を用い,HER2 の下流シグナル
伝達と GPNMB 発現の関連について Western blot の手法にて検討した.次に
siRNA にて GPNMB をノックダウンし,trastuzumab 及び docetaxel 治療へ
の反応性について検討した.【結果】患者血清中から測定した GPNMB の平均
値は乳癌 (n=164) 8.214ng/ml,大腸癌 (n=50) 5.751ng/ml,胃癌 (n=38)
6.55ng/ml で,大腸癌に対して乳癌で有意に高値であった (p=0.018)。 乳
癌患者中では HER2 type (16.56 ng/ml) は Luminal type (6.176 ng/ml),
DCIS (4.483 ng/ml) 群に対して有意に高値であった (vs Luminal; p =
0.038, vs DCIS; p=0.0195). GPNMB 高値例では手術や化学療法後に治療
効果に伴って低下する症例がみられた.乳癌細胞株 SK-BR-3、BT-474 におい
て siRNA による GPNMB 抑制後,HER2 発現とリン酸化が増強した.GPNMB
抑制下では trastuzumab 単独ないしは trastuzumab+docetaxel 併用療法に
てより強い細胞増殖抑制がみられた.逆に,trasutuzumab 投与ないしは
ERK inihibitor 投与後,GPNMB 発現の増強がみられた.【結語】GPNMB は乳
癌のサロゲートマーカーとなり,治療標的になりうるばかりではなく,HER2
との crosstalk の存在が示唆された.また抗 HER2 療法においても重要な役割
を果たす可能性も示唆された.
【目的】早期再発例が多い TN type 乳癌のうち化学療法剤無効群に対し、新た
な治療薬開発の基礎となる増殖機構を生化学的手法と新規イメージングシス
テムによる画像解析にて検討した。昨年度は、TN type 乳癌細胞において抗
mTOR 抗体とパクリタキセルとの併用による強い増殖抑制を報告した。本年
度はこれをさらに発展させ、薬剤処理時の細胞内分子の動向を検討したので
報告する。【方法】乳癌細胞株には MDA-MB231、MCF-7、ZR-75-1、SKBR3
を用いた。各種薬剤添加培養後のシグナル因子変動は、生化学的手法と新規
イメージングシステムを用いた解析の両面から検討した。生化学的解析では、
各細胞株を 1x10 7 個用意し、可溶化、免疫沈降後 SDS-PAGE を行い、イムノ
ブロッティングにより各シグナル分子の発現、リン酸化を蛋白レベルで同定
した。また、新規イメージングシステムは内蔵分光スキャニング技術により
培養細胞を無染色で観察できる画期的システムであり、スライドグラス上で
培養した細胞を洗浄後、高波長分解が可能な特殊分光システムを接続した顕
微鏡ですぐ観察が可能である。そこで、スライドグラス上の培養細胞をその
まま観察、ハイパースペクトルを画像として取得することで薬剤処理の有無
による細胞内因子の変動を解析した。【結果】TN type 乳癌細胞株である MDAMB231 は他の細胞株に比べてパクリタキセルの感受性が低く、シグナル因子
解析では P38、ERK、Akt の強いリン酸化が認められた。またパクリタキセル
単独、抗 mTOR 抗体単独、および両薬剤併用時の培養細胞をイメージング解
析したところ、併用時に明らかに変動している細胞内因子の存在が確認され
た。現在、それが Akt および MAPKase である可能性を検討中である。【結論】
パクリタキセル低感受性の TN type 乳癌細胞では、抗 mTOR 抗体とパクリタ
キセルを併用することで細胞内シグナル系の変動を誘導し、強い抗腫瘍効果
が現れることが示唆された。現在、薬剤併用により変動したシグナル因子の
詳細を検討中である。
DP-2-82-01
DP-2-82-02
1
1
早期乳癌症例のセンチネルリンパ節転移巣における節外浸潤の
臨床的意義についての検討
3
変異 p53 蛋白発現がアロマターゼ阻害剤投与後再発乳癌症例の
予後に及ぼす影響の検討
九州がんセンター 乳腺科、2 広島大学病院 乳腺科、
九州がんセンター 病理診断科
北海道大学病院 乳腺外科、2 北海道大学病院 病理部
山本 貢 1、細田 充主 1、市之川 一臣 1、石田 直子 1、郭 家志 1、畑中 豊 2、
山下 啓子 1
厚井 裕三子 1、重松 英朗 2、及川 将弘 1、古閑 知奈美 1、西村 純子 1、
秋吉 清百合 1、中村 吉昭 1、石田 真弓 1、田口 健二 3、大野 真司 1
背景:センチネル転移陽性乳癌症例において一定の頻度でセンチネルリンパ
節転移巣における節外浸潤(ECI at SLN)を認めるが、その臨床的意義は明ら
かにされていない。本研究では早期乳癌症例における ECI at SLN の non-SLN
転移予測因子および予後因子としての意義を明らかとする。症例と対象:当
院にて 2003 年から 2008 年に SLN 転移陽性にて追加の腋窩リンパ節郭清術が
施行された早期乳癌 131 症例を対象に、ECI at SLN を後ろ向きに評価し、
non-SLN 転移の有無および予後との相関を検討した。ECI at SLN は HE 標本
でのセンチネルリンパ節転移巣におけるリンパ節被膜外への癌細胞浸潤の存
在と定義した。結果:131 人中、46 人(35%)の症例に ECI at SLN を認めた。
Non-SLN 転移を ECI at SLN 陽性群では 28 症例(61%)に、ECI at SLN 陰性
群では 24 症例(28%)に認め、多変量解析にて ECI at SLN は non-SLN の有
意な予測因子として認められた(HR 3.2, 95% CI 1.4-7.1, p=0.005)。5 年
無再発生存期間は ECI at SLN 陽性群では 71% であり、ECI at SLN 陰性群で
は 90% であった(p=0.001, log-rank test)。Cox regression 解析において
ECI at SLN は有意な予測不良因子として認められた(HR 4.5, 95% CI 1.811.7, p=0.002)。
結論:手術可能乳
癌症例において
ECI at SLN は
non-SLN 転移の予
測因子のみならず
有意な予後不良因
子であることが示
さ れ た。Z0011 の
結果から SLN 転移
陽性症例における
腋窩リンパ節郭清
の省略が推奨され
る こ と か ら、SLN
転移巣の情報はよ
り重要になるもの
と考えられる。
【背景】我々は最近、乳癌組織における変異 p53 蛋白の核内蓄積が術後内分泌
療法としてアロマターゼ阻害剤 (AI 剤 ) を投与する閉経後エストロゲンレセ
プター陽性乳癌において早期および晩期再発の予測因子であると報告した
(Yamamoto M, et al., Cancer Sci, 2014)。今回、変異 p53 蛋白の核内蓄積
が再発後の経過および予後に及ぼす影響について検討を行った。【対象】2001
年から 2011 年までに当科で手術を行い術後内分泌療法として AI 剤を投与さ
れた Stage I-III の閉経後女性乳癌 290 例中、再発を来した症例は 33 例であっ
た。そのうち変異 p53 蛋白発現を免疫染色で検索しえた 29 例について検討を
行った。【結果】変異 p53 蛋白が高発現 ( 陽性細胞率≧ 10%) している症例は
17 例、低発現 ( < 10%) の症例は 12 例であった。高発現例では有意に手術
時年齢が低く ( 高発現 59.4 ± 6.6 歳,低発現 66.2 ± 7.3 歳,p=0.01)、Ki67
Labeling Index が高値であった ( 高発現 82%、低発現 33%,p=0.004)。
無再発生存期間は両者で差を認めなかった。治療期間を通じての転移臓器数
は高発現例で有意に多かった ( 高発現 2.8 ± 1.6 臓器,低発現 1.4 ± 0.5 臓器,
p=0.02)。治療効果 SD 以上が 6 ヶ月以上継続したものを奏効とし、一次内分
泌療法の奏効率は高発現例で 50%、低発現例で 75% であった (p=0.2)。一
次内分泌療法施行期間は高発現例が 12.1 ± 14.9 ヶ月であったのに対し、低発
現例は 24.3 ± 21.7 か月と長い傾向が見られたが、有意差は認めなかった。内
分 泌 療 法 施 行 期 間 の 合 計 は 高 発 現 例 21.4 ± 25.8 ヶ 月、 低 発 現 例 29.8 ±
22.4 ヶ月で有意差は無かった。化学療法施行率は高発現例の 59% に対し、
低発現例では 17% と少なかった (p=0.02)。再発後生存期間は高発現例で
29.9 ± 28.0 ヶ月、低発現例で 41.4 ± 28.4 ヶ月であり、高発現例で有意に短
かった (p=0.02)。【結論】変異 p53 蛋白高発現症例は多臓器へ転移する傾向
があった。全生存期間は変異 p53 蛋白高発現症例が有意に短かった。
418
ポスター討議
DP-2-82-03
DP-2-82-04
1
慶應義塾大学 医学部 一般・消化器外科、
2
慶應義塾大学 医学部 臨床薬剤学
1
永山 愛子 1、神野 浩光 1、今村 知世 2、高橋 麻衣子 1、林田 哲 1、
松田 祐子 1、谷川原 祐介 2、北川 雄光 1
亀田 博 1、小宮 裕文 1、高木 芳武 2、山城 勝重 3
担癌マウスにおけるゲムシタビンリン酸化体の腫瘍内薬物動態
St.Gallen2013 提案 luminal 新分類の妥当性
3
【目的】St.Gallen 2013 では、luminal 分類に PgR 値が導入された。今回われ
われは、Ki67 14% に加えて PgR 20% を cutoff とした「luminal 乳癌の新分類」
の妥当性を検討した。【対象と方法】2001.10 ~ 2007.8 までの原発性乳癌手
術症例 411 例から、StageIV、Herceptest2+(FISH 陰性は含む)、両側乳癌
を除く 341 例。ここから luminal 乳癌 227 例(luminal-HER2 を除く)を抽出
し た。Ki67 染 色 は Ariol-SL50 を 用 い た。PgR 陽 性 症 例 は 154 例 は 鏡 検 で、
73 例は Ariol-SL50 で count した。luminal 乳癌 227 例について PgR20% で分
け Distant disease free survival(DFFS)、Breast cancer-specific
survival(BCSS) を比較した。旧 luminal 分類と新分類での luminal A(LA) 群
と luminal B(LB) 群について DFFS,BCSS を比較した。Ki67、PgR と NSAS 核
異型度の相関を求め、各病理学的パラメーターで Cox 回帰モデルを用い、相
対リスクを比較した。【成績】PgR20% で 2 群に分けた DFFS、BCSS 両群間に
有意差がみられた。DDFS は LA、LB 群間に有意差がみられた。新分類でより
その差が広がった。BCSS は旧分類では LA、LB 群間に差はなかったが、新分
類ではと有意差がみられた。Ki67、PgR と NSA 核異型度の間には強い相関が
みられた。Cox 回帰モデルによる遠隔再発相対リスクは単変量解析ではすべ
ての病理学的パラメーターで有意差がみられたが、多変量解析では pN と
NSAS 核異型度が有意、あるいは有意な傾向があった。乳癌死の相対リスクは
単変量解析では各パラメーターで有意であったが、多変量解析では有意な因
子はなかった。【結論】1追跡期間中央値が約 5 年から 7.5 年となり、旧分類で
も DFFS で有意差がみられた。2新分類では DFFS、BCSS で LA 群が有意に予
後が良好であった。したがって新分類は妥当と思われる。
DP-2-82-05
DP-2-83-01
1
1
ER 陽性 HER2 陰性乳癌患者に対する予後予測ツールの問題点と
Oncotype Dx の有用性について
術前化学療法を施行した triple negative 乳癌症例における
BRCAness に関する検討
東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍科、2 井上レディースクリニック
渕上 ひろみ 1、竹田 奈保子 2、水野 嘉朗 1、佐藤 一彦 1
【はじめに】ER 陽性・HER2 陰性の乳癌患者に対する術後補助療法の決定に、
化学療法追加の要否が問題となる . 予後及び化学療法の効果予測として信頼度
が高い OncotypeDx がしばしば用いられるが、保険未収載で効率的利用が求
められる . 一方 ADJUVANT! や PREDICT などの予後予測ツールは費用の面か
らも容易ではあるが、背景となる母集団や使用する予測因子も異なりその解
釈に苦渋することも多い . 近年 St.Gallen 会議を始めとし、再発リスクにおけ
る低 PgR( < 20%) の意義が再び重要視されるにも関わらず、予測因子には含
まれていない . 今回 低 PgR が予後予測ツールへ与える影響を明らかにし、そ
の問題点を検証すべく予後予測ツールと OncotypeDx との比較を行った 【
. 方
法 】2011 年 12 月 ~ 14 年 12 月 ER 陽 性 か つ HER2 陰 性 の 浸 潤 性 乳 管 癌 に
OncotypeDx を施行した 41 例 ( 平均 56 歳 ) を対象とし、低 PgR と再発スコア
の関係を検討した . 尚 閉経後乳癌患者のうち 3 例はリンパ節転移陽性であっ
た . 次に ADJUVANT! と PREDICT を用い、10 年全生存率、無再発生存率及び
化学療法追加の利益率を算出し、化学療法不要な低リスク群における低 PgR
症例に着目し、Oncotype Dx による再発スコア (RS) を検証した . 低リスク群
は、ADJUVANT! では MINDACT 試験でのホルモン療法群を参照し、10 年無
再発生存率 88% 以上とした . 一方、PREDICT では化学療法の利益率が 3% 未
満(predict.nhs.uk/)の症例を低リスク群とした 【
. 結果】最初に OncotypeDx
で は、 低 PgR11 例 中 9 例 (82%) が RS18 以 上 と、 高 PgR30 例 中 6 例 (20%)
に比して有意に高率であり (p < 0.001)、低 PgR の再発リスクへの影響が示
唆された . また ADJUVANT! と PREDICT で低リスク群とされた症例の一致率
は 76% で あ り、ADJUVANT! に お け る 低 リ ス ク 群 21 例 中 3 例 (14 %)、
PREDICT における低リスク群 31 例中 7 例(23%)が低 PgR であった . 次に、
RS との関連であるが、ADJUVANT! で低リスクと判定された 3 例(27%)中 2
例(67%:RS19 ~ 32)、PREDICT で低リスクと判定された 7 例(64%) 中 6 例
(86%:RS19 ~ 32)が化学療法追加を検討すべき RS18 以上であった 【
. 結語】
乳 癌 術 後 の 予 後 予 測 ツ ー ル で は PgR が 予 測 因 子 に 含 ま れ て お ら ず、
ADJUVANT! と PREDICT の両方で低リスクと評価された症例においても約
14% が低 PgR であった . これら低 PgR に対して OncotypeDx を施行すると高
率 ( 約 67%) に RS18 以上となったことより、ER 陽性 HER2 陰性症例に対し予
後予測ツールを用いる場合は、PgR 値に注意を払う必要があると考えられた
北里大学 外科、2 昭和大学 乳腺外科
西宮 洋史 1、明石 定子 2、小坂 賢愉 1、南谷 菜穂子 1、菊池 真理子 1、
藁谷 美奈 1、榎本 拓茂 1、仙石 紀彦 1、谷野 裕一 1、渡邊 昌彦 1
【 背 景 】Triple Negative 乳 癌(TNBC)は、 マ イ ク ロ ア レ イ に よ り
heterogeneous で化学療法に対する反応も異なる疾患群であることが明らか
になってきた。BRCA 遺伝子は、DNA 損傷修復に重要な役割を果たしている。
遺伝子変異や methylation などにより BRCA の機能異常をきたし、DNA 修復
不全となる状態を BRCAness と称される。BRCAness は、DNA 障害性薬剤の
効果予測因子として期待されている。今回われわれは、術前化学療法を施行
した TNBC における BRCAness と、治療効果、再発、生存について検討した。
【対象と方法】2006 年 4 月から 2014 年 1 月の間に北里大学病院及び、昭和大
学病院で TNBC と診断され、術前化学療法(アンスラサイクリン系薬剤のみ 3
例、タキサン系薬剤のみ 4 例、アンスラサイクリン系 + タキサン系薬剤 55 例)
を 施 行 し た 62 例 を 対 象 と し た。BRCAness は、Multiplex Ligationdependent probe amplification array 法を用いて、術前生検(CNB)検体、
手術検体の BRCA 値を測定した。0.5 をカットオフ値とし、臨床効果 (cCR 率 )、
pCR 率、再発、生存について解析した。
【結果】術前化学療法による治療効果は、
ypT0/Tis/N0(pCR) が 25 例、non-pCR が 37 例 で あ っ た(pCR 率 40.3%)。
術 後 17 例 に 再 発 が み ら れ、8 例 が 原 病 死 で あ っ た。1)CNB 検 体 に お け る
BRCAness 陽性群が 34 例、陰性群が 28 例であった。BRCAness 陽性群と陰
性群では、cCR 率、pCR 率に違いを認めず、再発、生存は同等であった。2)
non-pCR 症例群で、手術検体の BRCA 値が測定可能であった 37 例のうち、
14 例が陽性であった。BRCAness 陽性群は 10 例に再発を認め、陰性群に比
べ再発が多く、無再発生存率も悪かった(p < 0.05)。生存との関連は認めな
かった。CNB 検体の BRCAness が陽性で、手術検体の BRCAness が陰性となっ
た 13 例は、手術検体で陽性のままであった 10 例と比し、再発(p < 0.01)、
生存(p < 0.05)が良かった。【考察】TNBC において、BRCAness 陽性でも、
術前化学療法において pCR が得られた症例に再発はみられなかった。一方、
術前化学療法後も BRCAness 陽性となる症例は再発が多く、プラチナ製剤や、
PARP 阻害剤などの効果について評価すべきであり、新たな臨床試験が期待さ
れる。
419
一般セッション(ポスター討議)
【背景と目的】転移性乳癌の治療に用いられる代謝拮抗薬ゲムシタビン(GEM)
は腫瘍細胞内で活性型ヌクレオチドであるリン酸化体に代謝され、直接的お
よび間接的に DNA 合成を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮する。しかし
ながら、活性体の腫瘍内薬物濃度を定量分析した研究はない。そこで本研究
では、乳癌細胞を移植した担癌マウスに GEM を投与し、抗腫瘍効果を反映す
る腫瘍中 GEM リン酸化体濃度、および一般に薬物曝露量の指標とする血清中
GEM 濃度を測定した。またリン酸化体への活性化代謝は骨髄内でも生じてい
るとの推察に基づき、骨髄単核球中の GEM リン酸化体濃度も測定し、腫瘍中
および血中の薬物動態と比較した。【方法】乳癌細胞株 (FM3A) を皮下移植し
た マ ウ ス に GEM 200mg/kg の 単 回 静 脈 内 投 与 を 行 い、5、15、30、45、
60、90、120、240 分後に血液を、15、60、120、180、240 分後に腫瘍と
骨髄を採取した。血液は遠心分離により血清を得た後に UPLC/MS/MS 法にて
GEM と不活性代謝物ウラシル体(dFdU)の濃度を測定した。腫瘍と骨髄は氷
冷下にて前処理を行い、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量
分析)法にて GEM リン酸化体、GEM、dFdU の濃度を測定した。【結果】血清
中からの GEM 消失は非常に速く、投与 5 分後の濃度が 168.8 μ g/mL であっ
たのに対し 45 分後には 1.7 μ g/mL に低下した。一方、腫瘍中 GEM 濃度は血
清と同様に速やかに減衰したが、活性体である一リン酸化体と二リン酸化体
では 60 分後、三リン酸化体では 15 分後に最高濃度に到達し、以後 240 分ま
で持続した。また骨髄単核球中においても GEM はリン酸化体へ代謝変換され
120 分で最大濃度を示し、以後減衰した。【まとめ】本研究では CE-TOFMS 法
による GEM リン酸化体濃度の定量に初めて成功した。腫瘍中 GEM リン酸化体
の動態と血中 GEM 動態との間に相関は認められず、さらに副作用発現部位と
して着目した骨髄単核球中とも異なる挙動を示した。本法で測定可能な腫瘍
内 GEM リン酸化体濃度は、薬効と関連付ける新たなモニタリング指標になり
うると考えられた。
札幌麻生乳腺甲状腺クリニック、2GLab 病理解析センター、
北海道がんセンター病理
ポスター討議
DP-2-83-02
DP-2-83-03
1
1
2
3
馬場 基 1、高橋 将人 1、山城 勝重 3、細田 充主 2、山下 啓子 2
中野 正啓 1、藤末 真実子 1、田嶋 ルミ子 2、奥村 恭博 1、西山 康之 1、
大佐古 智文 1、豊住 康夫 3、有馬 信之 3、西村 令喜 1
細胞質の NF- κ B/p65 強発現はトリプルネガティブ乳癌におい
て予後良好な因子である
トリプルネガティブ乳癌は閉経前後で同等か? - 臨床病理学的
因子と予後の検討 -
北海道がんセンター 乳腺外科、
北海道大学院 医学研究科 外科学講座 乳腺外科学分野、
3
北海道がんセンター 病理診断部
一般セッション(ポスター討議)
【目的】トリプルネガティブ乳癌は、ホルモン受容体の欠如とヒト EGFR 関連
物質 2(以下 ,HER2)増幅のいずれも認めないサブグループである。依然化学
療法のみが標準で、術後数年で約半数症例が再発を帰し予後不良である。NFκ B は、細胞の増殖、アポトーシス、浸潤、血管新生、化学療法耐性化、炎症
などに深くかかわっており、定常時細胞質内に存在し様々な刺激を受けると
核内へ移行し転写活性化する。NF- κ B/p65 核染色性について様々な報告がな
されているが、NF- κ B/p65 細胞質染色性の強度については論文報告を認めず、
一定の見解が得られていない。本研究では、術前化学療法を行ったトリプル
ネガティブ乳癌症例検体を用いて NF- κ B/p65 を含めた免疫染色を施行し、化
学療法感受性ならびに予後との関連性について検討を行った。【方法】北海道
がんセンター 2002 年~ 2012 年に術前化学療法の後手術療法を施行したトリ
プルネガティブ乳癌 34 症例を対象とした。初診時針生検ならびに手術時検体
を使用し、HE、ER、PgR、HER2、NF- κ B/p65、Bcl2、Ki67 染色を行った。
生物学的因子比較に t 検定、臨床病理学的因子と生物学的因子の比較にスピア
マンの順位相関係数、DFS・OS に対し COX ハザードモデルを用いた単変量解
析ならびに多変量解析を行い、生存解析にはカプランマイヤー法を用いてロ
グランク検定を施行した。【成績】NF- κ B/p65 核染色は、術前化学療法前 7 症
例、術前化学療法後 6 例に認めた。染色率も低く、いずれも 10% 未満であった。
いずれの因子も pCR との間に相関性を認めなかった。DFS,OS との相関性は、
単変量解析にて DFS とリンパ節、核グレード、Ki67 の間に有意に認め、多変
量解析にてリンパ節のみ独立予後因子だった。一方、OS とリンパ節、臨床病期、
核グレード、Ki67 の間に有意に認め、多変量解析にて核グレードのみ独立予
後因子であった。カプランマイヤー生存曲線における検討では、Ki67 のみが
cutoff 値 70%を置いた場合に有意に生存曲線の差を認めた。NF- κ B/p65 細胞
質染色では、染色強度 3+ 症例 6 名が全例無再発生存だった。【結論】本研究で
は、NF- κ B/p65 核染色症例・染色率は低く pCR ならびに予後との関連性は見
いだせなかった。NF- κ B/p65 細胞質強染色症例は 6 例全例無再発生存してい
た。化学療法感受性や高い無再発生存率・全生存率との関連性について議論
した論文は認められず、新たな生物学的特性を示す重要な現象と考えられた。
熊本市民病院 乳腺外科、2 熊本市民病院 外科、
熊本市民病院 病理診断科
【背景】トリプルネガティブ乳癌 (triple negative breast cancer: TNBC) は
その生物学的な不均質性 (heterogeneity) や効果的な治療標的が存在しない
ことから予後不良なサブタイプとして認識されている。しかし TNBC の罹患
率や予後は人種によって差があるという報告は以前からあり、閉経状況など
TNBC 患者の背景には本邦と海外で乖離がみられる。今回、TNBC 患者におけ
る閉経状況と他の臨床病理学的因子の関係や予後因子としての可能性につい
て検討した。
【対象と方法】1990 年から 2014 年までに熊本市民病院で治療し
た Stage I-III の原発性 TNBC 398 例について、その臨床病理学的背景と予後
について retrospective に解析した。閉経状況や Ki-67、核異型度 (nuclear
grade: NG) 等 と 無 再 発 期 間 (Disease-free interval: DFI) や 全 生 存 期 間
(Overall survival: OS) との関連について検討した。また、DFI や OS に関わ
る予後因子を明らかにするために多変量解析をおこなった。手術後のフォロー
アップ期間の中央値は 6.2 年であった。【結果】手術時の月経状況は閉経前が
101 例、閉経後が 297 例であった。閉経前症例では閉経後症例と比較して有
意に Ki-67 が高値であった (p=0.0015)。再発率は閉経前 24.8% vs. 閉経後
12.1% であり (p=0.0035)、DFI の検討では閉経後症例が閉経前症例より有
意に長かった (p=0.007)。また、Ki-67 高値 ( > 50%) 群では閉経後症例が
閉経前症例より有意に DFI が長く (p=0.0343)、Ki-67 低値 ( < 50%) 群では
閉経状況による DFI の差は認めなかった。NG が低い群 (1/2) では閉経前症例
の DFI が閉経後症例と比較して短かったが、NG が高い群 (3) では両者に差は
なかった。多変量解析では、閉経状況、NG、腫瘍径と腋窩リンパ節転移が
TNBC の再発における予後因子であった。【結論】TNBC は閉経状況によってそ
の性質が異なる。本邦において閉経状況が TNBC の重要な予後因子となる可
能性がある。
DP-2-83-04
DP-2-83-05
千葉県がんセンター 乳腺外科
千葉大学大学院 医学研究院 臓器制御外科学 乳腺甲状腺外科
大久保 嘉之、中村 力也、味八木 寿子、所 為然、中川 綾子、
山本 尚人
岩瀬 俊明、三階 貴史、榊原 淳太、藤咲 薫、椎名 伸充、藤本 浩司、
榊原 雅裕、長嶋 健、宮崎 勝
術前化学療法が臨床的に無効であった乳癌症例において、その
転帰を分ける臨床病理学的因子の検討
閉経後乳癌患者において内臓脂肪量は術前化学療法後の再発と
関係する
【背景 / 目的】局所進行乳癌に対する術前化学療法(NAC)は今や標準治療とし
て臨床の場において広く施行されており、その奏効性と予後の相関について
は周知の事実である。一方、日常臨床においては、NAC の臨床的効果が乏し
く不安を覚える症例に遭遇することも少なくない。今回我々は、NAC が臨床
的に無効であった乳癌症例において、その予後を分ける臨床病理学的因子を
検 討 し た。【 対 象 / 方 法 】1990 年 1 月 か ら 2014 年 3 月 ま で に 当 科 に 於 い て
NAC を施行した全 462 症例の中で、1. 治療開始前に腋窩リンパ節細胞診を施
行し転移陽性の症例(stage4は除外)
、2.Anthracycline系、或いは Anthracycline
系+Taxane系抗癌剤によるNACを施行した症例、3.NACの治療効果判定が進行
(PD)
、或いは安定(SD)であった症例、4.NAC後に然るべき手術を施行した症例、
これら1 ~ 4を満たした95例を対象とし、これらの予後と関連する各種臨床病
理学的因子を統計学的に検討した。
【結果】95例のNACの治療効果判定としては
4例がPD、91例がSDであった。また組織学的治療効果としては9例がGrade0、
62例がGrade1a、24例がGrade1bであった。全95症例の検討において、転帰
と統計学的有意に相関した臨床病理学的因子はER(p=0.0002*)
、PgR(p=
0.0080*)
、内分泌療法の有無(p=<0.0001*)であり、これらの多変量解析で
は内分泌療法の有無(p=0.0070*)が唯一の独立した予後規定因子であった。ま
たsubtype別 の 検 討 に お い て は、 非Luminal群(HER2+Triple negative:n=
23)において脈管侵襲(LVSI)が有意に転帰と相関した(p=0.0287*)一方で、
Luminal群(LuminalA+LuminalB:n=72)においては内分泌療法の有無(p=
0.0003*)
が転帰と相関した因子であった。
(Luminal群72症例のうち11例は種々
の理由にて内分泌療法の導入・完遂が不可能であった。
)
【結論】ホルモン感受性
乳癌は、たとえNACによる効果が不十分であったとしても内分泌療法の追加に
より予後良好である。このため副作用などの理由にてその継続が困難な場合を除
き内分泌療法は必須である。一方で、ホルモン非感受性乳癌においてLVSIが陽
性であった症例は予後不良であり、治療の強化が望まれる。
【Background】近年の研究成果から肥満は乳癌化学療法の治療抵抗因子であ
ることが明らかとなり、薬物療法における肥満の影響は克服すべき重要な課
題となった。一方で肥満のタイプは内臓脂肪有意型、皮下脂肪有意型など個
人差があり、肥満を一括りに論じることには疑問がある。さらに脂質研究の
発展によって脂肪組織の存在部位による内分泌機能の違いが明らかになり、
脂肪組織などによる身体構成の状態を表す Body composition(BC)と治療効
果との関係が新たに注目されている。そのため今回我々は術前化学療法 (neoadjuvant chemotherapy, NAC) 施行患者を対象に、BC による化学療法への
影響を検討することとした。
【Patients and methods】2004 年から 2012 年まで当施設において NAC 後に
手術を施行した進行乳癌患者 172 例を対象とし、レトロスペクティブに解析
を 行 っ た。NAC 前 に 撮 影 し た CT 画 像 デ ー タ を 元 に、 腹 囲 (Abdominal
circumference, AC)、皮下脂肪面積 (Subcutaneous fat area, SFA)、内臓脂
肪 面 積 (visceral fat area, VFA)、 腰 椎 L3 レ ベ ル で の 筋 肉 面 積 (skeletal
muscle area, SMA) を CT volume analyzer, SYNAPSE VINCENT(FUJIFILM
Co, Ltd) を用いて算出した。それらの BC parameter と pCR、予後との関係
を解析した。
【Results】AC、SFA、VFA、SMA と Body Mass Index(BMI) との相関関係を
解析した結果、いずれも有意に BMI との相関を認めた (p < 0.05)。 ま た、
AC、SFA、VFA は閉経後に有意に上昇していたが、逆に SMA は低下していた (p
< 0.05)。さらに内臓脂肪の割合を評価するために VFA/SFA 比を閉経前後で
比較した結果、閉経によって有意に内臓脂肪割合の増加を認めた (p < 0.05)。
一方で閉経前後で BMI に有意な変化は認めなかった。
全体で 46 例に pCR が得られたが、BC parameter と pCR との間に有意な関係
は認めなかった。
NAC 後の予後に関して、VFA が高い群 ( > 100cm2) は低い群と比較して有意
に Distant Disease Free Survival(DDFS) が低下していた (p < 0.05)。さら
に閉経の有無で層別化すると、閉経後で有意に DDFS の低下を認めた (p <
0.05)。多変量解析の結果、VFA、pCR、サブタイプが独立した予後因子とし
て挙げられた (p < 0.05)。
【Discussion】本検討結果から、閉経による内臓脂肪量の増加は NAC 後の予後
と関係していることが示唆された。今後は BC を元にハイリスクグループを特
定し、栄養学的な介入や運動療法を行うことで NAC 後の予後を改善させられ
る可能性がある。
420
ポスター討議
DP-2-84-01
DP-2-84-02
TN 乳癌において従来の標準 NAC 施行後で pCR が得られる予測
因子としての血清抗 p53 抗体価の検討
1
DJ-1 タンパク発現を組み入れた術前化学療法効果予測因子
< DJ1EH スコア>の臨床検討
九州がんセンター 乳腺科、2 がん研有明病院 乳腺センター
1
1
1
1
1
3
1
中村 吉昭 、秋吉 清百合 、厚井 裕三子 、古閑 知奈美 、及川 将弘 、
西村 純子 1、石田 真弓 1、大野 真司 2
海瀬 博史 1、河手 敬彦 1、山田 公人 1、木村 芙英 1、細永 真理 1、
河合 佑子 1、宮原 か奈 1、上田 亜衣 1、寺岡 冴子 1、佐藤 永一 2、
岩屋 啓一 3、河野 範男 4、石川 孝 1
【背景】DJ-1 遺伝子は新規の癌遺伝子として確認され、DJ-1 タンパク質はアポ
トーシスや抗酸化作用を示す多機能タンパク質であることが判明している。
当科では、既に術前化学療法 ( 以下 NAC) の強力な効果予測因子である事を報
告した ( 河手 BCRT.2013)。【目的】既存の免疫染色によるバイオマーカー 3 項
目(ER・PR・HER2)に DJ-1 発現を加えた4因子による NAC の効果予測モデ
ル(DJ1EH スコア)を提案しその有用性を検討する。【対象】2002 年から 2010
年に当科で NAC 施行した 192 例。【方法】<免疫染色>使用検体は化療前針生
検標本。DJ-1 抗体(3E8; Med and Bio Lab, Nagoya, Japan; 10,000-fold)
を用い免疫染色にて発現評価。<統計解析> JMP ソフトを使用。χ二乗検定に
て解析。< DJ1EH スコア> DJ-1(陽性 0 /陰性 1)、ER/PR
(陽性 0 /陰性 1)、
HER2(陽性 1 /陰性 0)とし、各因子の点数を加算し DJ1EH スコア 0/1/2/3
の4段階評価した。【結果】DJ1EH 各スコアに対する< non・pCR / pCR :
pCR 率 > は、DJ1EH ス コ ア -0 (64/3:4.5%)、-1(52/11:17.5%)、
-2(30/23:43.4%)、-3(6/9:60%) であった(χ 2 = 37.843、p < 0.0001)。
【考察】DJ-1 タンパク発現(陰性)は単独でも強力な NAC 効果予測因子(陰性
vs 陽性:χ 2 = 28.675、p < 0.0001)であることは報告済みである。今回は
簡便に利用可能な既存の
バ イ オ マ ー カ ー(ER・
PR・HER2)と 合 わ せ ス
コ ア 化(DJ1EH ス コ ア )
し た。DJ1EH ス コ ア は
サ ブ タ イ プ や DJ-1 単 独
の予測に比べ、より明確
な NAC 効 果 予 測 因 子 で
あり簡便に臨床応用可能
である。
DP-2-84-03
DP-2-84-04
代謝関連遺伝子を用いた ER 陽性乳癌に対する術前化学療法
(NAC) の効果予測モデル(MPCP155) の追加検証
HER2 陽性乳癌における ki67 と術前化学療法の効果の関連
1
3
大阪大学 医学部 乳腺・内分泌外科
高丸 智子 1,2、明石 定子 1、佐藤 大樹 1、小杉 奈津子 1、池田 紫 1、
大山 宗士 1、橋本 梨佳子 1、吉田 玲子 1、森 美樹 1、桑山 隆志 1、
沢田 晃暢 1、榎戸 克年 2、吉田 美和 2、広田 由子 3、中村 清吾 1
綱島 亮、直居 靖人、加々良 尚文、下田 雅史、下村 淳、島津 研三、
金 昇晋、野口 眞三郎
[ 目的 ] 昨年の本学会で、代謝関連遺伝子発現に着目した ER 陽性乳癌におけ
る化学療法効果予測モデル (MPCP155) を報告した。今回、我々は当院での追
加症例と公共データベースを用いて MPCP155 の性能を追加で検証した。
[ 方法 ] 以下のコホートを用いた:(1) 術前化学療法コホート 599 例(パクリタ
キセル+アンスラサイクリン系(ハーセプチン不使用))、(2) 術後補助ホルモ
ン療法単独コホート 1145 例、(3) 術前ホルモン療法コホート 52 例。乳癌組織
における遺伝子発現を DNA マイクロアレイで解析し MPCP155 を用いて化学
療法高感受性群(High-CS 群)と低感受性群(Low-CS 群)に分類した。
[ 結果 ](1) 術前化学療法コホート:5 つの小コホートのメタ解析の結果、pCR
率 は、Low-CS 群 で は 3.2%、High-CS 群 で は 16.3% と 有 意 差 を 認 め た
(P=1.5E-7)(図 1)。(2) 術後補助ホルモン療法単独コホート:Low-CS 群は、
High-CS 群に比して有意に予後良好であった(5 年健存率 90.3% vs 76.0%、
P=6.1E-9)。また、MPCP155 は独立した予後因子であった。(3) 術前ホルモ
ン療法コホート:Low-CS 群と High-CS では臨床的奏功率に有意差を認めな
かった(73.7% vs 69.7%)。
[ 結語 ]MPCP155 が術前化学療法の効果予測に有用であること、特にその高
い陰性的中率(96.8%)が再検証された。一方、術前ホルモン療法の効果予測
には無効であった。また、MPCP155 は術後補助ホルモン療法のみで治療され
た症例においては独立した予後因子となり得ることが示唆された。
昭和大学 乳腺外科、2 昭和大学江東豊洲病院 乳腺外科、
昭和大学江東豊洲病院 臨床病理診断科
【目的】術前薬物療法において ki67 は治療効果の予測因子としての可能性が示
唆 さ れ て い る。 今 回 HER2 陽 性 乳 癌 で 術 前 化 学 療 法(NAC;neoadjuvant
chemotherapy)の効果と治療前の ki67 の値が相関するか検討を行った。【対
象 】2010 年 ~ 2014 年 11 月 ま で 当 科 で 手 術 を 施 行 し た 原 発 性 浸 潤 性 乳 癌
(StageIV を除く ) のうち HER2 陽性で NAC を施行した 74 例。HER2 陽性は
IHC(Immunohistochemistry) 法 で 3+ ま た は 2+ か つ FISH(Fluorescence
in situ hybridization) 法陽性とした。
【方法】前向きに入力されたデータベー
スおよび診療録を用いて後方視的に検討を行った。ki67 の発現は NAC の針生
検の免疫組織化学染色で病理医の目視によって測定した。手術標本における
薬物療法の効果と治療前の ki67 の値が関連するか比較検討を行った。さらに
ER、PgR ともに陰性である HER2-enriched および ER あるいは PgR にも発現
がみられる Luminal HER2 の 2 つのサブタイプに分類した。【結果】74 例の平
均年齢 50.2 歳 (23 - 74)、全例女性。針生検で ER 陽性は 34 例、組織型は浸
潤性乳管癌 67 例、特殊型 7 例であった。NAC のレジメンは、トラスツズマブ
を含む症例は 63 例であった。内訳はアンスラサイクリン / タキサン / トラス
ツズマブが最も多く 52 例、タキサン / トラスツズマブ 3 例、ドセタキセル / カ
ルボプラチン / トラスツズマブ 5 例、トラスツズマブ / ドセタキセル / ペルツ
ズマブ 2 例、その他 1 例であった。トラスツズマブを含まないレジメンは 12
例で内訳はアンスラサイクリン / タキサン 7 例、アンスラサイクリン 3 例、ド
セタキセル / シクロホスファミド 1 例であった。組織学的効果は Grade0 が 2
例 (2.7%)、Grade1a が 23(31.1%)、Grade1b が 5 例 (6.8%)、Grade2a が
11 例 (15.9%)、
Grade2b が 5 例 (6.8%)、
Grade3 が 28 例 (37.8%) であった。 術前 ki67 の値と組織学的効果に相関は認められなかった。しかしながら、
ki67 の値が高いほど組織学的効果も高い傾向が認められた。また、ER 陰性群
での Grade3 の割合が有意に高かった。(p=0.0311) 次に、サブグループで検
討 を 行 っ た。Luminal HER2 群 で ki67 の 値 と 組 織 学 的 効 果 を 比 較 す る と、
ki67 が 50% 以上の症例で Grade3 の割合が高かった (p=0.0335)。【結語】 HER2 陽性乳癌において治療前の ki67 の値と組織学的効果はサブタイプに
よって異なっていた。特に Luminal HER2 群では Ki67 高値の症例では術前薬
物療法の効果が期待でき、ki67 は薬物療法の効果の予測因子としての一助と
なることが示唆された。
421
一般セッション(ポスター討議)
【背景】トリプルネガティブ(TN)乳癌は、明確な「治療の標的」が存在しない。
しかしながら、分子標的薬の PARP1 阻害剤やプラチナ製剤でなくても、従来
のアンスラサイクリン (A)、タキサン (T) 系を用いた標準術前化学療法(NAC)
でも効果のあるものが存在する。一方、化学療法誘発性のアポトーシスを誘
導する p53 遺伝子変異を伴う乳癌は NAC において、高い病理学的完全奏効
(pCR) を示す事が報告されている。p53 遺伝子変異に伴い変異 p53 蛋白が蓄
積され、血清抗 p53 抗体が産生される。【目的】従来の NAC による pCR 率と血
清抗 p53 抗体価との相関関係を乳癌サブタイプ別、特に TN 乳癌で明らかにす
る.【対象と方法】2007 年 8 月から 2014 年 3 月までに NAC として A 系(FEC
療法 4 サイクル)および T 系(ドセタキセル(DTX)4 サイクル)薬剤および
2011 年からは、HER2 陽性タイプには DTX とともにトラスツズマブを併用投
与した Stage I-III 乳癌において血清抗 p53 抗体価(MESACUP anti-p53 テス
ト;cut-off 値 1.3U/ml)が測定可能であった 247 例を対象とし,乳癌サブタ
イ プ 別 に HR(+)HER2(-);Luminal 108 例、HR(+)HER2(+);LuminalHER2 47 例、HR(-)HER2(+);HER2-enriched 36 例、HR(-)HER2(-);TN
53 例、pCR 率との相関を検討した。【結果】抗 p53 抗体価高値と低値症例の
pCR 率 は、Luminal で は、6.3 % vs6.5 %、Luminal-HER2 で は、10 %
vs10.8%。HER2-enriched では、40%vs41.9% と有意差はなかった。しかし、
TN では、50% (7/14)vs20.5%(8/39) で有意差を認めた (p=0.036)。さら
に cut-off 値 を 34U/ml に す れ ば、TN 乳 癌 の pCR 率 は、100%(3/3)vs24 %
(12/50)(p=0.005)であった。【結論】TN 乳癌のうち血清抗 p53 抗体価が異
常高値(34U/ml 以上)症例は、従来の A → T の NAC で十分 pCR を得られるこ
とが示唆された。「個別化治療」のため、簡易な測定検査で選別、血清抗 p53
抗体価が増加していない TN 乳癌症例では、PARP1 阻害薬やプラチナ製剤な
どを第1選択肢とできると考えられた。
東京医科大学 乳腺科学分野、2 東京医科大学 研究センター、
防衛医科大学 病理部、4 神戸海星病院
ポスター討議
DP-2-84-05
DP-2-85-01
術前化学療法施行 HER2 陽性原発乳癌における sTILs の意義
対策型マンモグラフィ検診の要精検者に対する比較読影の必要
性について
1
聖路加国際病院 乳腺外科、2 聖路加国際病院 病理診断科、
3
昭和大学病院 乳腺外科
1
1
2
1
1
1
3
村井 美知子 、林 直輝 、鈴木 高祐 、吉田 敦 、矢形 寛 、中村 清吾 、
山内 英子 1
一般セッション(ポスター討議)
【 背 景 】HER2 陽 性 原 発 乳 癌 に お い て、 間 質 の 腫 瘍 浸 潤 リ ン パ 球 (sTILs:
stromal tumor-infiltrating lymphocytes) の発現度が術前化学療法 (NAC) の
治療効果・予後因子としての意義、及び trastuzumab の治療効果との関連は
未だ不明確であり、これらを評価することを目的とした。【方法】2001 年か
ら 2008 年 12 月までに NAC 及び手術を行った HER2 陽性浸潤性乳癌 96 例を
対象とし、NAC 前組織診検体の sTILs の評価を行った。NAC 前後の sTILs の
発現度を(50%≦:LPBC: Lymphocyte-predominant breast cancer,<50%:nonLPBC)の2群に分け、完全消失(pCR)及び遠隔無再発生存期間 (DDFS:distant
disease free survival)との関連、さらにtrastuzumabの治療効果と関連を検討し
た。【結果】診断時年齢中央値は52歳(範囲28-74歳)、観察期間中央値は91 ヶ
月(範囲13-154 ヶ月)。全96例のうちtrastuzumabはNACとして28例(29%)、
術後療法のみとして22例(23%)に使用された。LPBCは24例(25%)であった。
NACによりpCRを得たのは42例(43%)で、LPBC群ではnon-LPBC群と比較し有
意にpCR率が高かった(67% vs 36%, p=0.009)
。さらに、LPBC群およびnonLPBC群のいずれにおいても、trastuzumabの使用とpCR率に関連は認められな
かった(LPBC群:p=0.66,non-LPBC群:p=0.41)。観察期間中、遠隔転移はLPBC
群には認めず、non-LPBC群には10例(10%)に認めた。non-LPBC群において、
trastuzumabの使用とDDFSに関連は認めなかった(p=0.30)。【結語】HER2陽性
浸潤性乳癌では、sTILsは術前化学療法治療効果予測因子、および予後因子となり
得ることが示唆された。しかし、trastuzumabの治療効果予測因子ではない可能
性が示唆された。
医療法人 慈桜会 瀬戸病院、2 東京西徳洲会病院乳腺腫瘍科
瀬戸 裕 1、太田 寛 1、林 崇 1、外村 光康 1、藤井 和之 1、堀 慎一 1、
松岡 良 1、竹田 奈保子 2、渕上 ひろみ 2、水野 嘉朗 2、佐藤 一彦 2
【はじめに】所沢市の乳癌検診は、公的保健関連施設を含めた市内 6 施設の医
療機関を中心に、対策型及び任意型検診として実施されている。特に、40 歳
以上を対象とする対策型検診は、平成 21 年度より 2 年に 1 回、問診・視触診・
マンモグラフィ検査にて行われている。近年、乳癌検診の普及及び実施医療
機関の増加に伴い、マンモグラフィ有所見者の蓄積が推察される。しかしな
がら、現行の対策型検診ではマンモグラフィの比較読影は行われておらず、
再受検では要精検とされることが多い。当院は、市内協力医療機関として要
精検者に対する精査も併せて行っているが、平成 25 年度よりモニター診断の
導入により、比較読影を容易にした。今回は、対策型検診による要精検者で、
以前にマンモグラフィを施行していた症例を抽出し、比較読影による不要な
要精検回避の可否を検証した。【対象と方法】平成 22 年度~ 25 年度に当院に
て対策型検診を行った 8,258 例中、要精検とされた症例を対象とした。その
うち、当院でそれ以前に対策型或は任意型検診にてマンモグラフィを施行し
ていた症例を抽出し、その精検理由と以前のマンモグラフィ所見を比較した。
更に、これら症例に対して比較読影を行うことによる要精検率の変化を検討
した。【結果】要精検者 1,333 例のうち、以前に当院でマンモグラフィを施行
していたのは 110 例(8.3%)(平均 48.9 歳:40 ~ 75 歳)認められた。その
うちマンモグラフィ所見が判明し得たのは、107 例(112 所見)であった。初
回マンモグラフィ所見は、FAD:59、石灰化:46、腫瘤:1、所見無し:6
であり、対策型検診時の精検理由は、FAD:61、石灰化:51、腫瘤:1 であっ
た。前回のマンモグラフィの施行時期は平均 2 年 1 ヶ月(6 か月~ 4 年 1 ヶ月)
前であった。2 度のマンモグラフィ所見が同一のものであったのは 94 例
(87.9%) であり、いずれも「不変」或は「軽快」であったため比較読影により精
検不要とし得た。従って、要精検者のマンモグラフィに比較読影が行われて
いれば、再度要精検とされるのは 13 例 (12.1%) に減少し得たこととなる。【考
察】マンモグラフィ有所見者が費用負担の軽減可能な対策型検診を選択した場
合、再度要精検者とされることが多いが、モニター診断による比較読影の積
極的実施により、不要な要精検が回避し得る可能性が示唆された。
DP-2-85-02
DP-2-85-03
精度管理中央機構・教育研修委員会
1
マンモグラフィ指導者研修会アンケートからみた検診精度向上
における問題点と対策ー第 2 報ー
マンモグラフィ読影力向上への対策―乳がん検診における不利
益の減少を目指して
2
古川 順康、古妻 嘉一、岩瀬 拓士、角田 博子、東野 英利子、大貫 幸二、
遠藤 登喜子、森本 忠興
【はじめに】マンモグラフィ検診の精度向上には読影精度の維持、向上が必須
であり、当委員会ではその目的のため各種講習会、試験を通じて読影の精度
管理に寄与している。また読影講習会講師経験者を対象として年 1 回指導者研
修会を開催し、講師経験者自身のレベルアップを兼ね 100 症例の読影と講習
会の新たな教材や試験問題の検討と検診における現況や意識等のアンケート
調査をおこなっている。マンモグラフィ機器は進歩しアナログからデジタル
に、ハードコピーからソフトコピーによる診断へ変わりつつあり、その点に
ついてもアンケートを行った。【対象と方法】平成 26 年は全講師経験者(平成
25 年末で 944 名))を対象とした。アンケートは研修会申し込み時に WEB に
よる調査(回答者 426 名回答率 45.1%)を行いその結果を集計解析した。【結
果】読影に自信ありは 50.4%、なしは 47.4% であり前年と比べると<自信あ
り>は 54.1% から低下し<自信なし>は 43.4% から増加している。また読
影結果の検証ありは 71.8%、なしは 25.1% となっており<検証あり>は
66.2% から増加し<検証なし>は 31.1% から低下している。現在読影してい
るマンモグラフィ機器ではアナログは 2 年前の 20.8% から 7.7% へデジタル
のハードコピーは 34.9% から 23.9% と減じており代わりにデジタルのソフ
トコピーは 44.3% から 53.2% と増加している。また指導者でもアナログマ
ンモグラフィ読影の経験がないは前年の 1.9% から 4.2% と増加している。ま
た地域での勉強会の開催は増えていないが HP への掲載は増えている。HP を
見て参加した人がいると回答したのは 11.3% だった。【まとめ】講師経験者で
も読影に自信がないと答えており一般の読影医師にとっては自信がないのは
当然のことだと考えられる。この結果から自信ありとしている根拠は適切な
読影結果の検証があるためであると考えていたが検証ありが増えているにも
かかわらず自信があるは減っており、その原因の一つとしてマンモグラフィ
機器の変化が考えられる。今後読影精度の維持向上のために新たな講習、勉
強会の体制を考えていく必要があると思われる。また読影勉強会の HP 掲載が
少ない傾向がありこれを増加させるとともに、参加者が少ないので HP を見て
ぜひとも勉強会に参加していただきより自信を深める場としていただきたい。
古妻クリニック、
NPO 法人日本乳がん検診精度管理中央機構 教育・研修委員会
古妻 嘉一 1,2、遠藤 登喜子 2、岩瀬 拓士 2、角田 博子 2、大貫 幸二 2、
東野 英利子 2、鈴木 昭彦 2、古川 順康 2、森本 忠興 2
【背景】わが国でも検診の不利益の減少について議論されている。乳がん検診
における不利益の減少には MG の読影精度の向上が必要である。精中機構では
MG 検診の精度向上には MG 読影認定取得後の読影力維持・向上が必要と考え、
平成 19 年度より認定取得 5 年経過者に読影認定更新制を導入した。更新試験
(以下、試験)は、更新講習会、ランクアップ試験、通常講習会のいずれの試
験でも受験できる。試験症例には検診発見例も加え、試験での A、B 評価取得
率(以下、更新取得率)が検診の読影精度に反映できるようにした。これまで
の更新取得率を集計・解析し検診 MG 読影精度の状況を報告してきた。【目的】
MG 検診が広まるにつれ、検診による利益を多く不利益を少なくすること、す
なわち病変の見落とし(感度)と拾いすぎ(特異度)の両方を少なくすることが
要求されてきた。19 年度以後、更新取得率は年々低下し MG 検診精度の悪化
が危惧され改善が望まれた。更新取得率の改善のため、当委員会では指導者
研修会(読影講習会講師経験者を対象)にて講師のレベルアップと、講習会や
各地での MG 読影勉強会での読影医の読影力向上を目指した。【対象と方法】
19 年度から 26 年 12 月末までの更新試験全受験者(10,217 人)を対象に試験
の評価とアンケートを集計した。全更新取得率は平成 19 年 71.1%、20 年
62.7、21 年 60.0、と年々低下し平成 22 年は 56.7% と最低であった。この
年から指導者研修会を通して特に各地域での読影勉強会の実施(精中機構 HP
に勉強会掲示)や読影結果の feedback から読影医の読影力が向上できるよう
要請を行うとともに受講者や講師のアンケート調査から更新率低下の原因を
調べた。【結果と考察】22 年度まで低下してきた更新取得率は 23 年 62.7、24
年 66.2、25 年 68.3% と改善した。更新講習会、ランクアップ試験、通常講
習会での更新取得率の差異やアンケートの回答から、更新取得率低下の原因
には試験症例には検診で発見された所見が小さい、淡い症例が多く含まれて
いることに加え、モニタ読影増加の影響を示唆する回答も多く講習会の教材
や試験症例にデジタル症例の収集を進め検討を開始している。MG 講習会認定
取得者の約 8 割を占める B 評価者は、その人数からも検診読影に関わりが大き
いが、更新取得率の変動が大きく検診読影精度への影響も大きい。26 年度の
更新取得率は 12 月末で 62.9% と再び低下の傾向にあり、MG 検診の不利益の
減少へ今後の改善策を報告する。
422
ポスター討議
DP-2-85-04
DP-2-85-05
MMG 検診での判定が分かれた乳癌症例の検討
スクリーニング検査で要精検判定後、経過観察を経て診断され
た乳がん症例の特徴
1
名古屋大学附属病院 乳腺・内分泌外科、
2
オリエンタルクリニック 乳腺外科、3 中日病院 乳腺科、
4
名古屋医療センター 検査科、5 名古屋医療センター 乳腺科、
6
藤田保健衛生大学 内分泌外科
1
西川 美紀子 1,2,3、武内 大 1,2、清水 佳美 2,6、高橋 優子 2,3、菊森 豊根 1,2、
佐々 実穂 2,3、長谷川 正規 4、森田 孝子 5
俵矢 香苗 1、高橋 裕季 1、栃本 昌孝 1、堀口 雄太 1、大島 正寛 1、
加藤 秀明 1、川口 雅彦 1、渡辺 透 1、柳本 邦雄 2
目的 検診、健診の普及により自覚症状のない病変が多数診断されるように
なった。初診時典型的ながんの画像所見を示さず経過観察され、後に診断さ
れるがん症例も散見される。このような症例の臨床的特徴について検討し適
切なマネジメントについて考察する。対象と方法 2006年1月から
2014年12月の8年間の乳がん手術症例673例中、初診時に当該病変
をがんと診断せず、経過観察を指示したのち乳がんと最終的に診断、手術を
行なった22例を対象とした。結果 経過観察の期間は最短 157 日最長 2704
日、中央値 637 日、平均値 842.7 日であった。初診時マンモグラフィでのみ
病変が観察され一旦経過をみたのち診断された症例が7例(石灰化6例、構築
の乱れ1例)であった(以下MMG発見群とする)。初診時 US で病変が観察さ
れ、US ガイド下で細胞診もしくは針生検が行なわれたが悪性と診断されず、
経過観察後された症例が15例であった(以下US発見群とする)。MMG発
見群 7 例中 DCIS 3 例、浸潤がん4例であった。いずれも初回受診時には細胞
診や組織診は行なわれていなかった。US発見群 15 例全例が浸潤がんで、リ
ンパ節転移4個以上の進行がんが2例含まれていた。US 発見群の初診時細胞
診は10例に行なわれ、2例は鑑別困難と判定され画像診断と併せて良性と
判断、経過観察された症例であった。8例は細胞診で良性と判定され、経過
観察された症例であった。針生検は5例に行なわれ、いずれも良性と診断、
経過観察された症例であった。この5例のうちサンプリングエラーと考えら
れた症例は3例、病変は採取されていたが良性と判定された症例が2例であっ
た。考察 MMG 発見群は石灰化を経過観察した症例がほとんどで非浸潤がん
が占める割合が高かった。それに対し US 発見群では全例が浸潤がんで、ステー
ジ III の進行がんも含まれていた。腫瘍の大きさの変化を注意深くみるととも
に、何らかの病理診断を一定期間おいて再検するなどの対策が必要である。
US を含めたスクリーニング検査が普及するとこのような症例が増えることが
予測され、適切な経過観察が求められる。
DP-2-86-01
DP-2-86-02
竹田乳腺クリニック
1
竹田 靖、東 純子
先田 功 1,2、西田 禎宏 2、林田 博人 2
当院における市民マンモグラフィ検診成績
西宮市における無料クーポン検診の意義
(はじめに)当院は人口 14 万人の大阪府守口市にある乳腺クリニックである
が、H20 年度より市民マンモグラフィ (MMG) 検診を一次、二次検診ともに請
け負っている。守口市民乳癌検診は、保健センターでの視触診後市内4医療
機関にて MMG 検診を受ける2施設分離併用方式になっている。今回当院にお
ける H20 年度より H26 年度までの市民 MMG 検診成績につき検討を加えたの
で報告する。(対象)H20 年度より H26 年度 11 月までの当院での市民 MMG 検
診受診者 5196 人を対象とした。(結果)H21 年度より無料クーポン制度開始
により市民 MMG 検診総数は 1582 人と前年度 720 人の約倍増した。H22 年度
も 1689 人、また H23 年度より守口市では視触診のみの乳癌検診は廃止され、
全例視触診+ MMG 検診となったため 2773 名とさらに増加した。その後 H24
年度 2977 人、H25 年度 2603 人、H26 年度(11 月 30 日まで)1832 人であった。
その内当院での MMG 検診受診者は H20 年度 152 人、H21 年度 815 人、H22
年 度 690 人、H23 年 度 977 人、H24 年 度 975 人、H25 年 度 906 人、H26 年
度(11 月 30 日まで)681 人であった。当院の検診成績に関しては要精検率は
各々 10.5 10.4 7.7 6.2 8.3 7.6 7.6 であった。陽性反応的中度は各々 0 2.6
3.8 4.9 8.6 7.4 5.7 であった。また乳癌発見率は各々 0 0.24 0.29 0.30
0.72 0.55 0.44 であった。(考察)当院は守口市における唯一の乳腺クリニッ
クであるが読影医一人、放射線技師一人のクリニックであるため、quality を
維持しつついかに効率よく検診を行うかが常に課題で、H20 年度より CR と
PACS を、H21 年度よりモニター診断を導入した。またがん拠点病院と連携し
毎年市民公開講座を開き、受診率の向上のため市民への乳癌検診の啓発にも
務めている。H26 年度は無料クーポン制度の年齢制限により MMG 検診の受診
者減少が予想されたが、予想に反して現在のところ市民検診総数も当院受診
者数も前年より増加傾向にある。
423
さきたクリニック、2 西宮市医師会
目的:大阪市と神戸市に挟まれた人口 48 万人の兵庫県西宮市における 5 年間
の無料クーポン乳がん検診の総括を行いその意義について検討した。背景:
西宮市では平成 17 年よりマンモグラフィ検診を開始した。平成 21 年から無
料クーポン券が配布されるにあたり、受診者の増加を予測して検診施設、読
影医、放射線技師の確保に努めた。無料クーポン初年度は年度末の駆け込み
受診があり混乱をきたしたが、2 年目からは対策を立てて大きな問題はなく5
年間の検診期間を全うした。結果:無料クーポン配布に伴い検診受診者は
3142 人から 7423 人に倍増した。2 年目以降の受診者は 7471 人、7148 人、
6710 人、6880 人と大体横ばいで推移した。要精検率は各年度 9.3%、9.2%、
9.0 %、9.9 %、9.1 %、 精 検 受 診 率 は 84.3 %、92.6 %、92.0 %、90.2 %、
89.5%、がん発見率は 0.39%、0.41%、0.39%、0.54%、0.41%、陽性反
応的中度 4.2%、4.5%、4.3%、5.4%、4.5%と期間中いずれの指標も許容
値である 11.0%以下、80.0%以上、0.23%以上、2.5%以上の基準値を満た
していた。発見乳がんはクーポン導入前が 12 人に対して、導入後は 29 人と
倍増し 2 年目以降も 31 人、28 人、36 人、28 人と高い数字を維持した。さら
に発見乳がんの約 7 割 ( 統計をとった平成 24 年が 66.7%、25 年が 71.4% )
が早期がんで非浸潤がんは各年度 5 例(8.4%)、9 例(29.0%)、10 例(35.7%)、
11 例(30.6%)、8 例(28.6%)といずれも高い割合を示した。総括と考察:
無料クーポン導入により検診受診者は増え、体制の充実により質の高い検診
が実施できた。ただ検診受診率はまだまだ低く、今後どのような方策が必要
かさらなる検討が必要と考えられた。
一般セッション(ポスター討議)
[ 目的 ] 日本での検診 MMG の読影は二重読影が基本である。当院では精中機
構 MMG 読影試験認定 A 評価の医師が二重読影し重い方のカテゴリーを最終判
定とするするシステムをとっている。読影医間で精査要(Cat3 以上)、精査不
要(Cat2 以下)と判定が分かれることのある乳癌症例の MMG 所見についてど
のような傾向があるか retrospective に検討を行った。[ 方法 ]2011 年 1 月~
2014 年 12 月までの MMG 検診、MMG+US 併用検診で乳がんと判明した 86
例を対象として、第一読影医と第二読影医の判定が分かれた 14 症例について
検討を行った。[ 結果 ]14 例の MMG 所見は石灰化 8 例、腫瘤 1 例、FAD3 例、
構築の乱れ 2 例。病理学的には DCIS6 例(石灰化 5 例と FAD1 例)と浸潤癌 8
例(石灰化 3 例、腫瘤 1 例、FAD2 例、構築の乱れ 2 例)であった。石灰化に関
しては所見の存在認識なし 3 例、比較不変としたもの 3 例、良性分布とした 2
例であった。腫瘤は、マンモトーム生検を行って ADH とされた石灰化の対側
腫瘤が認識されていなかった。FAD は所見を認識するも精査不要とされてい
た。構築の乱れは 1 例認識なし、1 例は認識するも精査不要であった。 [ 考察 ]
所見が認識されなかったものは全て乳房の構成は不均一高濃度であった。石
灰化に関しては分布や良性石灰化の中の異なる形態、比較をより詳細に読影
することが重要であると再認識した。FAD, 構築の乱れは読影力の差によると
考えられた。これらの症例はいずれも DCIS あるいは 20mm 未満の浸潤癌で
あり、救命効果につながり検診の harm とはならないと思われた。
横浜栄共済病院 外科、2 同 病理科
ポスター討議
DP-2-86-03
DP-2-86-04
姫路市乳癌検診における視触診の意義に関する検討
中規模公立病院における職員の乳がん検診受診状況と職域との
関連
1
製鉄記念広畑病院 乳腺外科、2 姫路市医師会がん検診検討 ( 乳房 ) 部会、
3
姫路市医師会
1,2
2
2
2
1
2
箕畑 順也 、浦上 育典 、丸山 修一郎 、渡辺 直樹 、小河 靖昌 、
石塚 真示 2、西原 徳光 2、寺井 雅也 3、空地 顕一 2,3
市立貝塚病院 看護局、2 市立貝塚病院 乳がん高度検診・治療センター
梅本 郁奈子 1、久村 祐美子 1、熊取谷 弥生 1、川崎 京子 1、西前 綾香 2、
中野 芳明 2、西 敏夫 2、稲治 英生 2
一般セッション(ポスター討議)
姫路市医師会では 2003 年よりマンモグラフィ ( 以下 MMG)、視触診併用の対
策型乳癌検診を行っている。当初は集団検診のみを行っていたが 2009 年より
市内の各医療機関に委託した個別検診を開始している。今回、姫路市におけ
る対策型乳癌検診受診者のデータベースから視触診の意義について検討した。
【対象と方法】姫路市における 2005 年から 2012 年の対策型乳癌検診受診者を
データベースをもとに後方視的に検討した。【結果】検診受診者は合計 31358
件 ( 集団 18607 件、個別 12751 件 ) であった。受診者の平均年齢は 54.6 歳で
あった。要精検は 2905 件で要精検率は 9.3% であった。検診発見乳癌は 114
件であった。MMG 要精検は 2266 件 (7.2%)、視触診要精検は 880 件 (2.8%)
であった。MMG/ 視触診ともに異常は 248 件 (0.8%) で発見乳癌 44 例 ( 発見
癌 の 36.6%)、MMG の み 異 常 は 2018 件 (6.4%) で 発 見 乳 癌 64 例 ( 同
56.1%)、視触診のみ異常が 632 件 (2.0%) で発見乳癌は 6 例 ( 同 5.3%) であっ
た。年齢を 40 代 (11082 件 ) と 50 歳以上 (20276 件 ) に分けて検討すると 40
代 の 受 診 者 は 要 精 検 1223 件 (11.0%)、 発 見 乳 癌 39 例、MMG 異 常 913 件
(8.2%),MMG 発見乳癌 36 例、視触診異常 436 件 (3.9%)、うち視触診のみ異
常 307 件、視触診発見乳癌 4 例であった。50 歳以上の受診者は要精検 1682
件 (8.3%)、発見乳癌 75 例、MMG 異常 1353 件 (6.7%),MMG 発見乳癌 73 例、
視触診異常 444 件 (2.2%)、うち視触診のみ異常 325 件、視触診発見乳癌 2 例
であった。視触診のみの異常から発見された乳癌 6 例の腫瘍径は 5 例が 2cm
以下でうち 1 例がリンパ節転移陽性であった。1 例は不明であった。乳癌検診
委託料をもとに乳癌発見にかかったコストを計算したところ 1 例の乳癌診断
に費やされた費用は 2,479,227 円 (40 代 2,797,087 円、50 歳以上 2,313,939
円 ) であった。触診のみで診断される乳癌 1 例に対しては 12,877,560 円 (40
代 7,133,160 円、50 歳以上 24,366,360 円 ) を必要とした。MMG で発見され
た乳癌については 1 例につき 1,898,097 円 (40 代 2,301,536 円、50 歳以上
1,704,667 円 ) という結果であった。【考察】視触診を省略した場合、要精査
率を 2% 低下させ精密検査を 21.8% 減少させ乳癌発見 1 例あたりのコストを
約 58 万円削減することができるが、検診で発見可能な乳癌の 5.3% を見逃す
リスクがある。40 代の受診者では特に見逃しのリスクが高く視触診の省略に
は慎重であるべきと考えられるが 50 歳以上の受診者については視触診の意義
は少なく省略も可能であると考えられる。
【はじめに】乳がんの早期発見にはマンモグラフィ併用乳がん検診(以下検診)
と自己検診が重要であるが、西らの先行研究によると南大阪の看護師・保健
師の検診率や乳がんに関する知識は低いと述べられている。現在当院には乳
腺外科医が 4 名おり乳がん拠点病院として地域の乳がん診療の中核を担って
いる。その為当院に勤務する女性の検診に関する意識は高いのではないかと
考えた。【目的】当院に勤務する女性の検診状況と職域の関連について明らか
にする。【方法】当院に勤務する女性 343 名(看護師・助産師・薬剤師・検査技
師・栄養士・医療事務・清掃員)を対象に無記名・自記式調査用紙で基本的属
性と検診に関する調査を行った。【結果】343 名のうち回収は 259 名(回収率
75.5%)、回答者の年齢は 20 歳~ 60 歳以上に分布し看護師と医療技術職では
36 歳~ 40 歳が多く事務職は 46 歳~ 50 歳が最も多かった。検診受診歴があ
るのは 114 名(44%)、ないのは 137 名(53%)であった。職域では検診受診
歴があったのは事務職で 49%、次いで看護師 42%、医療技術職 26%であった。
検診受診機関は当院が 38%、他院または市町村では 59%であった。事務職は
当院で最も多く検診受診歴がありその理由は「職場だから」で、さらに事務職
は乳がん患者との関わりが検診受診歴に関連していた。当院以外で検診を受
けていた 59%の理由は「医師や技師への羞恥心」がどの職域でも多かった。検
診受診歴のない 53%の理由は看護師では「医師や技師への羞恥心」、事務職で
は「検診対象年齢ではない」、医療技術職は「きっかけがない」がそれぞれ多く
選択された。【考察】最も検診受診歴の高い職域は事務職であった。理由とし
て医師や技師との面識が少なく為羞恥心が低い上に検診を受けやすい職場環
境であるからと考えた。一方看護師は羞恥心が障害となり乳がん患者との関
わりも検診受診の動機にはならなかった。また検診受診歴が低かった医療技
術職は、医師や技師との接点が多い事と男性が多い職場である事が障害となっ
ていたと考えた。
【結論】中規模公立病院における検診受診状況は特別高くな
く、職域での関連は羞恥心に差は認めたものの一般女性と同様に強い動機付
けや女性医師の配属など羞恥心を取り払う必要があると明らかになった。現
在は女性医師が勤務しており、院内勉強会でも乳がん検診について定期的に
行っているため今後検診受診率が向上すると期待し調査を継続している。
DP-2-87-01
DP-2-87-02
デジタルマンモグラフィ導入に伴う検診要精査症例の変化
精密検査機関における検診要精査症例の検討~総合判定により
期待できること
1
朝日大学 歯学部 附属村上記念病院 放射線室、
2
朝日大学 歯学部 附属村上記念病院 乳腺外科、
3
朝日大学 歯学部 附属村上記念病院 病理部、
4
朝日大学 歯学部 附属村上記念病院 放射線科
重盛医院・乳腺クリニック
松岡 麻未、諏訪部 夕希、菅村 有香、伊藤 裕子、長尾 珠恵、
重盛 千香
松波 梨乃 1、伊藤 有紀 1、渡辺 一敏 1、藪下 勉 1、川口 順敬 2、
名和 正人 2、杉江 茂幸 3、桐生 拓司 4
[ 目的 ] 当院では平成 24 年 6 月より、乳癌検診にデジタルマンモグラフィに
よるモニター診断を導入した。それ以前のフィルムマンモグラフィ診断と比
較し、モニター診断による要生検率の変化と、診断所見の変化、偽陽性の特
徴について検討したので報告する。[ 方法 ] フィルムマンモグラフィの撮影装
置は、GE Healthcare Senographe DMR+ 、デジタルマンモグラフィの撮
影装置は富士フィルム FCR PROFECT CS 読み取りピッチ 50 μmであ
る。平成 24 年 6 月のデジタルマンモグラフィ導入前 2 年間(F 期 : 2010 年 2
月から 2012 年 4 月 ) とデジタルマンモグラフィ導入後の 2 年間(M 期 :2012
年 5 月から 2014 年 7 月)に分けて検討した。読影はマンモグラフィ精度管理
中央委員会認定 B 判定以上の 4 人の乳がん専門医が担当した。[ 結果 ] 症例数
は、F 期 6102 例 M 期 6465 例であった。F 期での要精査件数は 182 例、
M 期での要精査件数は 633 例であった。当院での診断基準の変更が両時期の
間にあったため、要精査件数のみでは比較が出来なかった。乳癌発見率は、F
期では 7 例、(DCIS 3 例 ,IDC 4 例 ) であった。M 期で、14 例(DCIS 8 例 ,IDC5
例)であり、乳癌発見例に占める DCIS の割合は、F 期 42% M 期 57% になっ
た。 ST-MMT による乳癌の発見は、F 期で 2 例 M 期で 6 例と明らかに増加し
ており、ST-MMT 検査による乳癌発見率が高くなっている。一方ステレオマ
ンモトーム生検例は F 期 24 例、M 期 30 例と増加傾向があり、偽陽性例もやや
増加している。 [ 考察 ] デジタルマンモグラフィによるモニター診断にて検診
を行うようになってから、石灰化での陽性率が高くなったことが目立つ。こ
れは、画像の解像度が上がったこと、モニター診断にて細かく観察できるこ
とも要因と思われる。一方マンモトーム生検結果が乳腺症の症例も増加して
おり、拾い上げに際して注意が必要であると思われた。
【背景・目的】当院は乳癌精密検査・治療を行う無床診療所である。精密検査
の状況を検討し、今後の検診機関でのマンモグラフィ (MG) と超音波検査 (US)
の総合判定に期待できることを考察した。【方法】平成 26 年 7 ~ 10 月に検診
受診後、精密検査目的で当院を受診した 149 例を検討。【結果】受診者の平均
年齢 44 歳(26 歳- 80 歳)、全例女性、26 の検診機関からの精査依頼で、「要
精査」134 例、「経過観察」6 例、「異常無し」2 例、不明 7 例。「要精査」の検診
モダリティは MG ±視触診(MG 群)83 例、US ±視触診(US 群)41 例、MG +
US ±視触診(併用群)9 例、不明 1 例。MG 群の乳房の構成は、高濃度・不均一
高濃度 65 例(78%)、散在・脂肪性 18 例(22%)で、要精査理由は FAD45 例
(54%)、石灰化 19 例(22%)、腫瘤 10 例(12%)、その他 1 例、視触診異常(MG
カテゴリー 1)5 例、不明 1 例。FAD45 例の精査結果は、異常所見なし 30 例
(67%)、良性疾患 14 例(31%)、葉状腫瘍 1 例だった。良性疾患の 13 例のう
ち 7 例は嚢胞で、総合判定をすれば精査不要となる。石灰化の 19 例の精査結
果は、良性石灰化 11 例(58%)、経過観察又は細胞診・組織診を要す所見 6 例
(32%)(悪性 2 例、良性 1 例、経過観察 3 例)、病院検診適応例 2 例(10%)。
腫瘤の 10 例の精査結果は、異常なし 6 例、細胞診・組織診を要す所見 1 例、
病院検診適応例 3 例。一方、US 群の 41 例では、精査 US にてカテゴリー 1 が
24 例(59%)(正常乳腺 16 例、乳腺症所見 8 例)、経過観察又は細胞診・組織
診を要す所見は 13 例(31%)(悪性 1 例、良性 8 例、経過観察 4 例)、病院検
診適応例 4 例(10%)。併用群の 9 例について、MG カテゴリー 1 で US 異常と
指摘された 2 例は、精査 US カテゴリー 1。MG カテゴリー 3 以上の 6 例(不明
1 例)のうち、石灰化又は腫瘤指摘例の 3 例の精査結果は病院検診適応例であっ
たが、FAD 指摘の 2 例は検診 US で「異常なし」「腫瘤疑い」で要精査となって
いて、精査結果は異常なしだった。【考察】MG 検診で乳腺濃度の高い人が FAD
で要精査となり、半数以上が精査 US でカテゴリー 1 であったことから、併用
検診による総合判定に期待が持てる。一方、US 検診で約半数に正常乳腺や乳
腺症での拾い上げがあり、検診 US の精度改善が課題と考えられた。
424
ポスター討議
DP-2-87-03
DP-2-87-04
1
1
マンモグラフィにおける集簇性石灰化の検討~検診で拾い上げ
なくとも良い石灰化は見極められるか?~
3
MMG カテゴリー 3 石灰化に対するマンモトーム生検の必要性
について
がん研有明病院 乳腺センター外科、2 がん研有明病院 放射線診断部、
がん研有明病院 病理部、4 癌研究会癌研究所 乳腺病理部
3
宮城 由美 1、照屋 なつき 1、荻谷 朗子 1、坂井 威彦 1、飯島 耕太郎 1、
森園 英智 1、蒔田 益次郎 1、五味 直哉 2、堀井 理絵 3、秋山 太 4、
岩瀬 拓士 1
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜労災病院 中央放射線部、
横浜労災病院 放射線診断科
山本 晋也 1、松原 由佳 1、原田 郁 1、佐野 美也子 2、岩澤 亜矢子 2、
磯 真一郎 3、守屋 信和 3、千島 隆司 3
【背景】日常診療では、MRI で積極的に悪性所見を認めないカテゴリー 3 の石
灰化に対しては、侵襲的検査であるステレオガイド下吸引組織診 (MMT) を施
行せず経過観察されている場合が多い。【目的】カテゴリー 3 と診断した石灰
化病変に対して MRI を追加することで、より積極的に MMT を施行すべき病変
が抽出可能であるかを検討した。【方法】2012 年 4 月から 2014 年 9 月までに、
非腫瘤性石灰化病変カテゴリー 3 と診断され、MRI を施行した後に MMT を実
施した 73 例について後方視的に検討した。MMG カテゴリー分類は本邦のマ
ンモグラフィーガイドラインに従い、日本乳がん検診精度管理中央機構読影
認定医により判定した。MRI はダイナミック造影(3 テスラー)で評価し、
MMG の情報を得ている放射線科医が BI-RADS をもとにカテゴリーを決定し、
悪性疑い(カテゴリー 4)以上と良性(カテゴリー 3)以下で 2 分して検討した。
【結果】カテゴリー 3 石灰化病変 73 例中、MMT による病理診断では良性 (ADH
などの境界病変も含む ) が 56 例 (76% )、悪性が 17 例 (24% ) であった。一方、
MRI でカテゴリー 4 以上と判定されたのが 16 例 (21% )、カテゴリー 3 以下
が 57 例 (79% ) であった。MRI カテゴリー 4 以上の陽性反応的中率は 56% (9
例 /16 例 )、カテゴリー 3 以下で悪性となった症例(偽陰性)は 12% (8 例 /57
例 ) であった。MRI カテゴリー 3 以下の症例のうち、石灰化領域に MRI で造
影域がない場合には悪性所見を認めなかった (0 例 /17 例 ) が、非特異的造影
効果を示した場合には 20% (40 例中 8 例 ) で悪性所見を認めた。これらを閉
経前後で層別化すると、閉経前では 16% (5 例 /30 例 )、閉経後では 30% (3
例 /10 例 ) と有意差は認めないものの閉経後に高率であった。【結語】MMG カ
テゴリー 3 の石灰化病変では、閉経後に MRI で非特異的造影を認める症例で
は MMT を施行することが推奨される。
DP-2-87-05
DP-2-88-01
1
1
マンモグラフィ検診における淡く不明瞭な集簇性石灰化の転帰
についての検討
3
八尾市立病院における乳癌検診への超音波検査追加効果(年齢階
級および乳腺濃度別の検討)
聖路加国際病院 放射線科、2 聖路加国際病院 乳腺外科、
聖路加国際病院 予防医療センター 内科、4 聖路加国際病院 病理診断科
4
岩瀬 まどか 1、森下 恵美子 1、中山 可南子 2、木村 武志 3、鈴木 高祐 4、
山内 英子 2、角田 博子 1
【はじめに】マンモグラフィ検診の普及により、早期に治療介入が可能な乳癌
が増加した一方で、偽陽性や過剰診断による不必要な精査治療が生じている。
そこで、今回、特に偽陽性や過剰診断となりやすいと考える淡く不明瞭な集
簇性石灰化群について検討した。【方法】2011 年 1 月から 2012 年 12 月の 2 年
間の当院予防医療センターのマンモグラフィ検診受診者を対象とし、淡く不
明瞭な集簇性石灰化の所見を呈した 235 名 246 乳房について retrospective に
検討した。このうち、良悪性の結果を把握出来た症例は合計 216 乳房(87.8%)
であった。良悪性は、検診時に過去画像との経時的比較からすでに良性と診
断し得たもの、精査により組織診断がついたもの、経過観察で診断されたも
のを判断基準とした。観察期間内に初回受診であった場合は、少なくともそ
の後 2 年の経過観察で経時的変化がないことが確認できたものを良性と判断
した。また、淡く不明瞭な集簇性石灰化を有していても、他の悪性を考慮す
べき所見がある症例は今回の検討から除外した。【結果】対象期間内に精査と
なった症例のうち、最終的に悪性と診断されたものは合計 6 乳房(2.4%)で
あった。6 例の内訳は非浸潤性乳管癌 4 例(1.6%)、浸潤性乳管癌 2 例(0.8%)
で、全例が核グレード 1、ER、PgR は陽性を示した。2 例の浸潤癌の浸潤径は
いずれも小さく、それぞれ 3mm、4mm であった。さらに、6 例中初回精査
時に悪性の診断に至った症例は 2 例のみで、その他は精査後の経過観察期間中
に石灰化の増加や腫瘤の出現が指摘され、再精査により悪性であることが判
明していた。初回に要精査となった検診受診日から手術までの平均期間は
16.5 ヶ月(2-33 ヶ月)で、術式は乳房部分切除術が 4 例、乳房切除術が 2 例、
5 例でセンチネルリンパ節生検を施行し、いずれも転移を認めなかった。
【結論】
淡く不明瞭な集簇性石灰化は、随伴所見のない場合そのほとんどが良性石灰
化であった。悪性の場合でも、石灰化単独であれば、生命予後に関わる診断
を急ぐ乳癌の検出には寄与しないのではないかと考えられた。定期検診によ
り比較読影していくことができれば、検診において要精査としない選択肢も
今後考慮されるべきであろう。
大阪ブレストクリニック、2 八尾市立病院乳腺外科、3 八尾市立病院外科、
八尾市立病院病理診断科、5 八尾市立病院看護科
野村 孝 1、道下 新太郎 2、松山 仁 3、竹田 雅司 4、吉野 知子 5、
森本 卓 2
【はじめに】乳癌検診の標準であるマンモグラフィ (MMG) 検診では、発見でき
ない乳癌が少なからず存在する。このため当院では、機器に余裕のある場合
超音波検査(US)を加えており、今回 US 追加の効果を検討した。【対象・方法】
2008 年 7 月 か ら 2014 年 6 月 ま で に US 併 用 (A) 群 3296 例、 非 併 用 (B) 群
3299 例 計 6595 例の検診をおこない、両群を比較した。【結果】計 53 例の
乳癌を診断した。自覚症状ありと申告した 13 例を除外すると、A 群 28 例、B
群 12 例 が 検 診 発 見 癌 と 考 え ら れ、 癌 発 見 率 は A 群 0.85% B 群
0.36%(p=0.01) であった。さらに各年齢階級および乳腺濃度別の癌発見率
を算出した ( 表 )。年齢階級別の検討では、40 代で有意差 * があり、50 代およ
び 60 代でも A 群での発見率が高い傾向がみられた。乳腺濃度別の検討では、
不均一高濃度以上の群(D 群)で有意 * であった。また、A 群における MMG 非
検出症例は 12 例(41.4%)みられ、それらの平均腫瘍径は 7.5mm (5.7 ~
11.4mm) で MMG のみの検診では見逃された可能性が高い。さらに期間中に
把握可能であった中間期癌は、B 群で 4 例 (40 代 3 例、60 代 1 例)A 群では 1
例 (40 代 ) であった。プロセス指標の検討において、全期間での要精査率は A
群 11.3%、B 群 12% と双方とも目標値を超えたが、A 群では 2013 年 4 月
より総合判定を採用することで 6.7%まで低下した。【考察】少なくとも若年者
あるいは乳腺濃度
の高い女性に対し
ては、US を併用す
ることで効率よく
癌発見率を向上で
きる可能性がある。
425
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】日本の乳癌検診にマンモグラフィ (MMG) が導入されて 15 年が経
過し , その harm も検討すべき時期にきている . 特に MMG のみで発見される集
簇性石灰化病変は良性の割合が高く , 悪性であっても非浸潤性乳管癌であるこ
とが多い . 当院で経験した集簇性石灰化について ,MMG の所見のみから良悪性
及び , 悪性であっても進行の遅い病変が推測できるか検討した 【
. 対象】2011
年 1 年間に当院 MMG を施行し新たに集簇性石灰化のみが指摘された 186 例 .
術後乳房 , 他所見の随伴症例 , 経過観察中の症例は除外 . そのうち Categry( 以
下 C-)4/5 としたものが 26 例あり ,1 例鑑別困難以外はすべて乳癌であったた
め ,C-3 とした 160 例を対象とした 【
. 方法】対象症例の MMG2 方向を 5M 高精
細モニタにて観察し , 石灰化の形態・範囲の長径・数・生検 ( 細胞診・組織診 )
の有無・その結果等を検討した 【
. 結果】160 例中 104 例に生検を施行 . 良性 :44
例 , 鑑別困難 :15 例 , 悪性疑い :1 例 , 悪性 :44 例 . 鑑別困難はすべて 3 年の経過
観察中に乳癌発症はなく , 悪性疑いは MMT で DCIS と診断された . 経過観察と
した 56 例中途中で所見が変化したのが 3 例 , うち 2 例は良性 ,1 例は DCIS で
あった . 形態別では淡く不明瞭 :67 例 ( うち悪性 25%), 微小円形 :80 例 ( 同
29%), 多形性 :13 例 ( 同 38%) と悪性の割合に差はなかった , 石灰化の範囲の
長径別では~5mm :59例(同17%)、5.1~10mm:70例(同34%)、10.1~20mm:
25例(同28%)、20.1mm ~ :6例(同67%)、 数 別 で は~5個:23例(同9%)、
6~10個:47例(同15%)、11~30個:75例(同40%)、31個~:15例(同40%)で
あり,長径が長いほど,数が多いほど悪性の割合が高かった.最終的にC-3で悪性と
診断された46例中,DCIS:31例(non-comedo27例,comedo4例),微小浸潤癌:4
例,浸潤癌:10例であった.subtypeはluminal type:38例,luminal HER2:4例,TN:3
例,不明:1例であった.【結語】集簇性石灰化のうちC-4以上は要精査が必要.C-3の
石灰化は範囲が広い・数が多い症例でより乳癌の割合が高いが,luminal type,non
comedoのDCISが大部分であった.これらは検診ですぐに拾い上げる必要がない
病変の可能性があり,長期的な追跡調査が必要である.同時に,検診では将来的に生
命を脅かす可能性のある乳癌発見を目的とするという意識改革と,その選定方法を
考えていく必要がある.
ポスター討議
DP-2-88-02
DP-2-88-03
揖斐厚生病院 外科
静岡済生会総合病院 外科
熊澤 伊和生、土屋 十次、川越 肇、西尾 公利、市川 賢吾、操 佑樹
添田 郁美、田中 顕一郎、岡本 好史、鈴村 潔、土屋 智敬、寺崎 正起
乳がん検診における年齢階層ごとの超音波検診の上乗せ効果
乳腺エコー併用検診における総合判定を導入することの有益性
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】岐阜県北西部において各自治体から当病院が委託されている対策
型乳がん検診は、従来より視触診・マンモグラフィー (MMG)・超音波の3者
併用検診である。J-START の検証結果により40歳代の超音波併用検診が導
入されるが、今回当院における精度結果から年齢階層ごとの超音波検診の上
乗せ効果を検証した。
【方法】平成 21 年度から 25 年度までの 5 年間の対策型乳がん検診延べ 38,088
例 を 対 象 と し、1. 全 体 と 年齢階層別の精度管理(要精検率、がん発見率、
PPV)、2. モダリティー別 (MMG、超音波)の精度管理、3. 超音波を除いた視
触診+ MMG のみでの乳がんの発見率と超音波を加えた実際の乳がん発見率の
比
(上乗せ率 ) と実際の上乗せできたがん発見例数を年齢階層別に retrospective
に算出した。
【 結 果 】1. 全 体 の 要 精 検 率 は 6.8%(2605/38088)、 が ん 発 見 率 は
0.22%(83/38088) で PPV は 3.19 であった。年齢階層別 (39 歳以下・40 歳代・
50 歳代・60 歳代・70 歳以上 ) の要精検率は 6.9%・9.4%・7.5%・5.2%・4.0%
で、がん発見率は 0.09%・0.19%・0.23%・0.28%・0.34% であった。2.MMG
単独での要精検率は 3.8%(1297/34116)、がん発見率は 0.18%(62/1297)
で PPV は 4.78 であった。一方超音波単独での要精検率は 4.2%(1527/36687)、
がん発見率は 0.14%(51/1527) で PPV は 3.34 であり、MMG 単独のほうが精
検精度は良好であった。3. 年齢階層別 ( 前述 5 段階 ) の上乗せ率 ( 上乗せ発見例
数 ) は 若 い 順 に 34.2%(+3)・52.4%(+6)・21.5%(+4)・12.7%(+5)・
9.9%(+3) であり、40 歳代の上乗せ効果が一番良好であった。
【まとめ】超音波併用検診は 40 歳代、30 歳代、50 歳代でメリットがあると考
えられた。当地区の乳がん検診は逐年検診可能で 70% がリピーターであるも
のの、検診結果から 40 歳代での乳がん発見率がやや低いためより一層の精度
管理向上を図りたいと考えている。
【目的】マンモグラフィー (MMG) と乳腺エコー (US) の併用検診において、独
立判定と総合判定をした場合の、受診者の要精検率の差について考察し、総
合判定することでの有益性の有無を考察する。【対象】2012 年 4 月から 2014
年 9 月の 2 年半の間、当院併設の健診センターで MMG、US 併用検診を受けた
受診者 494 人である。【方法】独立判定 (MMG、US の片方でも要精査であれば
要精検とする判定法 ) での要精検者について、精査結果が正常乳腺、経過観察、
乳癌と診断されたものに分類しそれらの結果を用いて、もしも総合判定
(MMG、US 両者の結果を照らし合わせて要精検者を決める判定法 ) を用いた
とした場合、不要な生検目的の受診がどれだけ減少するか分析する。【結果】
乳がん検診受診者の年代は 40-60 歳代が 81% を占め、乳がん発見率は 1.0%
であった。受診者 494 人のうち、要精査は 92 人 (18.6%) で MMG のみ要精査
が 32 人、US のみ要精査が 44 人、両方とも要精査が 16 人であった。MMG ま
たは US のみ要精査で精査結果が正常乳腺であった受診者が 4.7%、正常乳腺
に経過観察の精査結果となった受診者が 7.2% であった。【考察】MMG 単独と
US 併用検診とを比較する J-START は現在データ解析中とのことである。独立
判定を採用しているためか、要精検率が高いと聞く。結果的には精査が不要
であった受診者が少なからずいると考えらえ、総合判定の考え方を導入する
ことで不要な受診を減らせないかと考えた。今回試算した結果からは総合判
定をすることにより最大で受診者の約 7% が精査を回避できる可能性が示唆
された。精密検査を回避できることは不要な検査が減らせるだけでなく、同
時に要精検とされた受診者の不安も回避できるという点でも有益であろうと
考える。
DP-2-88-04
DP-2-88-05
1
練馬駅前内視鏡・乳腺クリニック
対策型検診における MMG・US 同時併用法の成績分析
ハイブリッド検診における効果的な関心領域の同定
たけべ乳腺外科クリニック、2 屋島総合病院、3 香川県立中央病院、
4
久米川病院
佐貫 潤一、片山 信仁
安毛 直美 1、武部 晃司 1、斎藤 誠 2、小笠原 豊 3、吉澤 潔 4
<背景> 我々は以前より乳癌検診における超音波検査の有用性を本学会で
報告してきた。ところで、我が国において JSTART による MMG・US 併用検
診の有用性を検証する前向き試験が行われ、先日 US 併用による有用性が認め
られたと中間発表で公表された。ただし JSTART では US と MMG は別々に行
われた方式を採用したが、高松市ではさらに効率の良い MMG 撮影後に同施設
で US を施行する同時併用方式を多くの施設で採用した。2010 年から 2012
年の 3 年間の対策型検診成績をもとに、MMG に US を同時に併用する施設検
診の成績を検討した。<方法> 当市の対策型検診は施設検診と出張検診の
併用であるが、今回は施設検診のみを検討した。US 併用検診では MMG を撮
影した同施設で医師あるいは技師により US を施行した。多くの施設は MMG
を読影後、読影中に US を実施した。なお US の追加料金は設定していない。
また併用検診の場合、その場で結果説明がなされ、一部の施設では同日に精
密検査を施行した。高松市施設検診は 15 施設が参加、うち 5 施設が全例 US
併用、5 施設が US 一部併用、5 施設が全例 US 非併用であった。毎年約 10000
人がこの検診を受診しているが、そのうち 2010 年は 71%、2011 年は 75%、
2012 年は 79% が MMG・US 同時併用検診を受けた。<結果> 発見癌の総
数は 2010 年 53 例、2011 年 60 例、2012 年 71 例であった。癌発見率は US
併用で 2010 年 0.61%、2011 年 0.64%、2012 年 0.78% であり、US 非併用
で 2010 年 0.35%、2011 年 0.29%、2012 年 0.32% であった。陽性反応的
中度は US 併用で 2010 年 13.8%、2011 年 13.4%、2012 年 17.4% であり、
US 非併用で 2010 年 4.4%、2011 年 4.4%、2012 年 3.5% であった。2012
年の発見癌の詳細な検討では、発見癌 71 例のうち 19 例 (27%) が MMG での
所見が C-1,2 であり、US のみで検出された乳癌であった。さらに自覚なしの
乳癌発見は US 併用が 0.47% で MMG 単独の 0.13% に比べて 3.6 倍高かった。
<結語>施設検診における MMG・US 併用検診は、その発見率、陽性反応的
中度において MMG 単独検診に比して明らかに効率の良い検診成績を 3 年間に
わたり達成することができた。MMG・US 同時併用方式はその導入に様々な
障壁があろうが、施設検診を活用すればその導入は困難ではないと考える。
MMG の二重読影で無駄な時間や予算をかけるよりも、MMG に US を併用する
施設検診として導入することの方が、はるかに効率の良い検診を実施できる
ものと確認する。
426
当院の乳がん検診は、マンモグラフィを読影しながら FAD や石灰化など病変
の候補の位置を体表上でイメージし、さらに浅層、深層も推測しながら関心
領域に超音波プローブをあて、精査の適否を判断している。この位置の推測
には、2方向マンモグラフィで目的とする病変と乳頭の距離を計測(CC は a、
MLO は b、MLO の斜位角度はθ)し、乳頭を原点とし外側を X、頭側を Y とし
た座標で体表に投影した方法が便利である(第 17 回乳癌学会総会「マンモグラ
フィ石灰化病変の局在推定法」で報告、X = a、Y = b/sin θ- a/tan θ、誤差は
半径2cm 以内)。当院は 2013 年5月に開院し、自治体検診で 2013 年度は希
望者のみ、2014 年度から全例、マンモグラフィと関心領域の超音波を組み合
わせたハイブリッド検診を実施している。本法の有用性を数値として求める
ことは困難であるが、限られた時間内に効率的かつ正確に同時検診を実施す
るために、本法の利用は必要不可欠となっている。本法を一層利用し易くす
るため、現在、紙上での作図を改良し、コンピューターによる自動計算も取
り入れている。本学会では、精度の検証(位置、BMI による誤差の生じ方)、
実際の診察室での利用、コンピューター支援について報告する。
ポスター討議
DP-2-89-01
DP-2-89-02
1
昭和大学 医学部 乳腺外科
マンモグラフィソフトコピー画像の画質改善への取り組み
―読影しやすい画像とは―
3 次元評価ソフトウェア Volpara( ボルパラ ) でマンモグラフィ
画像を評価する
愛知乳がん検診研究会、2 名古屋医療センター 乳腺科、
名古屋医療センター 放射線科、4 豊田厚生病院 外科、5 国府病院 外科、
6
東名古屋病院 乳腺外科
3
【はじめに】愛知乳がん検診研究会では、複数の検診施設から委託を受けてマ
ンモグラフィを読影しているが、近年モニタ読影の依頼が増えてきた。2009
年から HOLOGIC 社の Selenia(FPD 型、直接変換方式、サンプリングピッチ
70 μm)も 5MP モニタ(ビューアソフト:クライムメディカルシステムズ社)
で読影しているが、他社のソフトコピー(SC)画像と比べて、読みづらいと
感じることがあった。SC の濃度階調はフィルムに劣るため、乳腺-脂肪間の
コントラストを強調する傾向にあるが、読影医は乳腺外の間質陰影や淡い局
所的非対称性陰影 (FAD) などに注目するので、腺外の黒潰れは避けなければ
ならない。一方、高周波成分を強調することで間質陰影は強調されるが、粒
状性が悪化して石灰化が判定しにくくなる。画像のバランスを崩さない画質
調整が求められる。【目的】SC 画像の画質向上をめざす。【方法】メーカ担当者
(診療放射線技師)に読影医から読影上の問題点を提示した。検診施設の装置
のアプリケーションの設定を変更し、1~ 2 週間撮影後、新しい画像で読影
医による画質の検討を繰り返した。22 例の変更前画質と変更後画質を構成別
(脂肪性 5 例・散在性 6 例・不均一高濃度 6 例・高濃度 5 例)に精中機構の施設
画像評価法を用いて 4 人の読影医で評価した。
【結果】
変更後の画像は、脂肪性・
散在性・不均一高濃度・高濃度乳房の順に、初期表示の乳腺内外コントラス
トが平均で 7.2(6.8)、6.7(5.7)、6.7(5.7)、6.6(6.0) 点(それぞれ 10 点満点で、
カッコ内は変更前)、windowing 実施時のコントラストが 7.4(6.8)、7.2(5.7)、
7.2(5.8)、6.6(6.0) 点、粒状性が 7.6(7.0)、7.2(6.5)、7.3(6.3)、7.4 (6.6)
点、鮮鋭度が 7.2(7.0)、6.8(6.7)、7.0(6.7)、7.0(6.6) 点となった。画像の
ざらつき感が改善し、乳腺外の情報が増え、FAD を windowing で判断できる
ようになった。単純に「読みづらい」と主張するだけではメーカ側に伝わらな
いことは多く、画像処理の原理を理解している技師と共に、画像処理を(一度
にではなく)少しずつ調整し、臨床画像の様子をみながら調整を進める必要が
ある。
【考察】現在も、乳腺組織どうしの連続性が考察しにくい・腺葉内での
局所的・病的な厚み増加が検知しにくい、などの問題があり、更に適切な画
像の実現を目指している。
目的:Volpara(ボルパラ)は、デジタルマンモグラフィの RAW データを用い
て乳房の3次元解析を行い、乳房の乳腺密度評価を行うソフトである。この
ボルパラを使用し当院で撮影した MMG を客観的に評価した。対象:2013 年
に行った乳癌検診 397 例と乳癌手術症例 221 例を対象とした。結果:乳癌検
診症例 397 例1)検診年代別受診率として、30 代 10 例(3%)、40 代 131 例
(33%),50 代 117 例(29%)、60 代 9 9 例(25%),70 代 36 例(9%,)80 代 4
例(1%) で あ っ た。2)VDG(Volpara Density Grade:1"~" 4 ) で Dense
Breast(VDG3or4)と判定した年代別の割合は、30 代 70%,40 代 90%,50 代
79%,60 代 69%,70 代 56%,80 代 75% であり、全体では 78% であった。3)
高 濃 度 乳 腺 で あ る VDG4 の み を 抽 出 す る と、30 代 60%,40 代 70%,50 代
37%,60 代 22%,70 代 19%,80 代 25% であった。一方、乳癌手術症例 221 例
の年代別内訳は 30 代 21 例(10%)、40 代 62 例(28%)、50 代 63 例 (29%)、
60 代 41 例 (19%),70 代 28 例 (13%)、80 代 6 例 (3%) であり、VDG1or2:30
例、VDG3or4(Dense Breast):191 例 で あ っ た。1) 高 濃 度 乳 腺 で あ る
VDG4(109 例 ) のみを抽出すると、30 代 17 例(81%),40 代 43 例(69%),50
代 33 例(52%),60 代 11 例(27%),70 代 4 例(14%),80 代 1 例(17%)であっ
た。2) VDG4 の 109 例 中 32 例 (29%), Non Dense Breast30 例 の う ち 4 例
(13%) を C-1or2 と診断した。C-1or2 の比率は Density によって影響されな
かった。が、50 歳未満では VDG 4:60 例中 20 例を C-1or2 と診断し、VDG
1or2:6 例には C-1or2 の存在を認めなかった。まとめ1)乳癌検診 397 例
中高濃度乳腺(VDG4)は各年代で 20%以上を占めていた。VDG3or4(Dense
Breast)の比率は USA で約 50% であるが、日本人では 78%を占めた。また、
オランダでは 50 歳以上の VDG3or4 は 39% であるが、日本人では 71%と高
率であった。隣国韓国においても閉経後の VDG3or4 は 61%と高率であった。
2)50 歳未満乳癌患者で、VDG4(高濃度乳腺)60 症例は VDG1or2 と比べ、
C-1or2 と読影する率が高かった。(今後への展望)Dense Breast 乳癌の約
20% は MMG で C- 1、2 と診断されており、他の診断モダリティが必要であっ
た。日本人における約 80% の乳腺が Dense Breast とすると、検診時には
MMG と同時に行う他の診断機器の併用が必要と考えた。
須田 波子 、大岩 幹直
遠藤 登喜子 1,3,6
1,3
、丹羽 多恵
1,4
、山本 晴大
1,5
、森田 孝子
1,2
DP-2-89-03
DP-2-89-04
1
1
Dense Breast 評価の問題点~ CT 画像解析ソフトによる乳腺
構成の評価より
検診 MG で要精査となった FAD をどれくらい US で検出できる
か?―MG と US の併用検診の総合判定に備えて―
県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科、2 香川乳腺クリニック
3
野間 翠 1、松浦 一生 1、末岡 智志 1、板本 敏行 1、香川 直樹 2
【背景】本邦の乳癌罹患のピークは若年にあり、いわゆる Dense Breast への対
応として 40 歳代に対しては超音波検診の導入も検討されている。しかし乳房
濃度は年齢のみに依存せず個人差が大きいため各々の乳房濃度に応じた対応
が理想とされるが、乳房濃度の評価に関しては客観的な指標が確立されてい
ないのが現状である。今回我々は CT 画像での乳房の脂肪および乳腺の面積を
測定し、病変の検知に関する要素について検討を行った。【対象と方法】2013
年 4 月~ 2014 年 12 月に原発性乳癌で手術を行った症例のうち、MMG と CT
画像が対比可能な症例 162 症例を対象とした。CT 画像の評価には画像解析ソ
フト Synapse VINCENTR を用い、病変の対側乳房の乳頭レベル水平断にお
いて、乳房全体の面積および乳腺面積を計測して乳房内での乳腺面積の割合
(乳腺%)を算出した。MMG で視覚的乳腺濃度の分類を行い、乳腺面積・乳腺%
の比較を行った。また、石灰化・構築の乱れ症例を除いた 131 例で MMG 検知
可能症例、不可能症例について乳腺面積、乳腺%、病変の部位、病変サイズ、
組織型等の要素の検討を行った。【結果】MMG 濃度との比較では乳腺面積、乳
腺%ともに濃度分類と有意に強い相関を認めた。また年齢との比較では乳腺
面積のみ有意な相関を認めた。MMG 検知可能症例・不可能症例の比較では、
乳腺面積、乳腺%、病変の部位、病変サイズいずれも有意差を認めた。組織
型では検知不可能症例で DCIS が多く、充実腺管癌等の圧排性発育型の組織型
が少ない傾向がみられた。腫瘍径 20mm 以下の症例のみ(N=72)に限定して
MMG 検知可能症例・不可能症例を検討すると、乳腺面積(中央値 14.47 v.
s.20.80cm2 p=1.64x10-11)および乳腺% (31.49 v.s. 35.44% p=0.00448)
いずれも有意差を認めたが、乳腺面積でより強い差がみられた。【考察】CT 上
で測定した乳腺面積および乳腺%は、乳頭レベルのみでの情報ではあるが視
覚的な乳腺濃度を反映しうる。MMG での病変検知の可否には様々な要素が関
与するが、小さな病変では乳腺%よりも乳腺面積のほうが強い相関を示した、
即 ち 乳 腺 面 積 の 大 き な 症 例 で 病 変 が 検 知 し に く い と い う 結 果 で あ っ た。
Dense Breast の評価には乳腺濃度の客観的な評価が不可欠であり、乳腺密度
測定のための様々な試みがなされており方その確立が望まれる。CT での乳腺
評価は検診現場での応用は現実的でないが、乳腺構成の理解には大きな情報
源となりうると考えられる。
国立病院機構名古屋医療センター 放射線科、2 同 乳腺外科、
同 検査科病理、4 国立病院機構東名古屋病院 乳腺外科
大岩 幹直 1、遠藤 登喜子 4、佐藤 康幸 2、森田 孝子 2、林 孝子 2、
加藤 彩 2、市原 周 3、森谷 鈴子 3、長谷川 正規 3、岩越 朱里 3、
宇佐美 寿志 1、太田 康宣 1
【目的】MG と US の併用検診は感度を確実に上昇させるが、特異度を低下させ
ることが危惧されている。総合判定基準では US で正常乳腺と確認できれば
FAD は要精査としないとされているが、US の検出力が明らかでない。検診で
要精査とされた FAD の US 所見を解析することにより US の検出力および FAD
を正常乳腺と確認できる頻度を明らかにしたい。【対象と方法】対象は 2011 年
度に当院で MG を再撮影した MG 検診要精査 445 人のうち、所見に FAD が含
まれていた 138 人を再評価して、FAD を確認した 91 人 94 例(当院 FAD)であ
る。US レポートから FAD に相当する所見を対応部位不明、正常乳腺、病変に
分類し頻度を検討した。【結果】当院 FAD は 21 例が C1、73 例が C3 と判定さ
れていた(随伴所見は評価せず)。FAD に対応する所見が US で検出できたのは
64 例(68%)であった。その所見は、飛び地状の乳腺が 15 例、乳腺の局所肥
厚 が 14 例 と 正 常 乳 腺 の variation が 31% で あ り、 非 腫 瘤 性 病 変 が 13 例
(14%)、腫瘤性病変が 22 例(23%)であった。病変が指摘された 8 例に乳癌
が認められた。US で正常乳腺と判定できた 31%と部位が特定できなかった
32%は経過観察できた限りでは癌は発見されていない。【考察】FAD は正常乳
腺の variation や病変だけでなく、乳腺の重なり、伸展不足による部分的な濃
度上昇など、positioning による虚像も含まれる。FAD が病変の存在を現して
いるのは乳腺の体積の増加が FAD を形成している場合、すなわち乳腺そのも
のの増殖と、内在する腫瘤の増大が考えられる。また周囲を脂肪織に囲まれ
ているが境界が正常乳腺と区別がつかなく病変の濃度も高くない場合である。
今回我々が解析した症例では FAD の 68% に対応する所見、病変の候補を指摘
することができ、31%を正常乳腺と同定できた。所見が指摘されなかった
32%は positioning による虚像が含まれるだけでなく、記録すべき明らかな病
変がないために所見の同定にはこだわらなかった症例があると考えられ、実
際には US の検出力はこれ以上であると考えられる。MG 検診で要精査となっ
た所見の中で FAD の頻度は 24 ~ 37%と報告されており、今回の我々の検討
対象でも 31%を占めていた。US を加えることにより FAD の 1/3 が正常乳腺
と判定されれば約 10%を精査不要とすることができ、要精査率を大きく低下
させられることが期待できる。【結語】検診 FAD の 2/3 で、対応する所見を US
で確認することができ、その約半数が正常乳腺と確認できた。
427
一般セッション(ポスター討議)
、
沢田 晃暢、池田 紫、佐藤 大樹、小杉 奈津子、橋本 佳奈子、吉田 玲子、
桑山 隆志、高丸 智子、榎戸 克年、森 美樹、吉田 美和、明石 定子、
中村 清吾
1,2
ポスター討議
DP-2-89-05
DP-2-90-01
当院マンモグラフィで高濃度乳腺を呈した乳癌症例の検討
術前化学療法後 MRI 上完全奏効例における乳癌受容体発現別の
病理組織学的効果判定
総合上飯田第一病院
1
中根 千穂、窪田 智行、山内 康平、雄谷 純子、三浦 重人
3
一般セッション(ポスター討議)
〔目的〕マンモグラフィ (MMG) 読影において、高濃度乳腺の背景では病変を見
分けることがしばしば困難である。当院で発見された乳癌症例のうち、高濃
度乳腺の症例について特徴を検討し、今後の検診における課題を考察する。尚、
当院における高濃度乳腺とは乳腺組織が全体の 8 割以上を占めるものをいう。
〔方法〕2010 年 1 月~ 2014 年 10 月までの 4 年 10 ヶ月間で当院にて乳癌と診
断され、手術施行した全 441 例のうち高濃度乳腺症例 8 例 (1.8%) について、
発見契機、MMG 所見、超音波 (US) 所見、サブタイプ、組織型についての特
徴を検討した。〔結果〕全 441 例の内訳は年齢:27 ~ 98 歳、中央値 57 歳であっ
た。高濃度乳腺症例 8 例の受診機転は、しこりの自覚が 7 例、検診発見 ( 石灰
化指摘 ) が 1 例であった。MMG 所見は腫瘤像 3 例、石灰化 2 例、構築の乱れ 1
例で、残りの 2 例は異常所見を認めなかった。精査 US では 7 例でしこりに一
致した腫瘤性病変が認められたが、石灰化で発見された 1 例は乳管拡張のみで
あった。病期は 0 期 1 例、1 期 5 例、2b 期 1 例、3b 期 1 例であった。組織学的
に は、 浸 潤 癌 6 例、 非 浸 潤 癌 2 例 で、 サ ブ タ イ プ 別 で は Luminal A:6 例、
Luminal B:0 例、HER2-enrich:1 例、Triple negative(TNBC):1 例であっ
た。 ま た ki-67 < 14 %:7 例、 ≧ 14 %:1 例 で あ っ た。TNBC は、ki-67 ≧
14%の症例であり、その後再発を認めた。〔考察〕今回の検討で、高濃度乳腺
症例ではしこりを自覚して受診するケースが 8 例中 7 例と多数を占めた。また
しこりを自覚しても MMG で所見がみられないものが 2 例あったが、いずれも
精査 US では腫瘤性病変がみられた。術後補助療法なしの 7 例 (Luminal A:6
例、HER2enriched:1 例 ) はいずれも無再発症例で、TNBC の 1 症例は化学
療法を施行したが再発を認めた。このことから高濃度乳腺を有する乳癌症例
ではホルモン感受性のある可能性が高く、比較的予後はよいのではないかと
推測されるが、今回の検討では症例数が 8 例と少ないため、今後も検討してい
きたい。高濃度乳腺では MMG 検診での発見が困難であると一般的に言われて
おり、今回の検討で自己検診や触診の重要性を再認識させられた。今後の乳
癌検診実施にあたり、患者自身に自己検診や定期受診の啓発活動、また MMG
で高濃度乳腺症例であった場合の触診の重要性及び US 併用での判定が必要で
あると考えられる。
聖路加国際病院 乳腺外科、2 聖路加国際病院 放射線科、
聖路加国際病院 病理診断科
南村 真紀 1、角田 博子 2、矢形 寛 1、森下 恵美子 2、林 直輝 1、吉田 敦 1、
鈴木 高祐 3、山内 英子 1
【はじめに】術前化学療法(NAC)後の MRI における残存腫瘍の診断は、受容体
発現別で異なることが知られている。乳癌の NAC 後に MRI 上 enhancement
が認められず、完全奏効(MRI-CR)と判断した症例を対象として、病理学的
完全奏効(pCR)の割合を受容体発現別に検討した。【対象と方法】対象は
2009.1 ~ 2014.5 に NAC を施行した 717 例のうち MRI-CR と判断した 197
例。受容体発現を 1)ホルモン受容体強陽性(HR++:ER または PgR の Allred
score が 7 ,8 点)、2)HR 陰性(HR -:ER かつ PgR の Allred score が 0-2 点)、
3)HR 陽性 (HR+:ER、PgR が 1)2)以外の条件を満たすもの)に分け、更に
HER2 蛋白過剰発現の有無で分類した。更に pCR については in situ + と-に
分けて検討した。解析はχ二乗検定で行った。【結果】MRI-CR 中の pCR 率は
HR - /HER2+ で 一 番 高 く 92.0%(46/50 例 )、 続 い て HR+ /HER2+ で
77.8%(14/18 例 )と な り、HR - /HER2 - で 74.5%(38/51 例 )、HR+ /
HER2 -で 68.4%(13/19 例)、HR++ /HER2+ で 59.2%(16/27 例)であっ
た。これらに対し HR++ /HER2 -では 18.8%(6/32 例)と顕著に低い割合で
あった (p < 0.001)。更に pCR in situ -に至った症例は、HR - /HER2 -で
54.9%(28/51 例)、HR - /HER2+ で 56.0%(28/50 例)、HR+ /HER2 -で
47.4 %(9/19 例 )、HR+ /HER2+ で 55.6 %(10/18 例 )で あ る の に 対 し、
HR++ /HER2+ で 22.2%(6/27 例)(p < 0.001)、HR++ /HER2 -はわず
かに 9.4%(3/32 例)であった(p < 0.001)。【結論】NAC 後の MRI-CR 症例で、
HR - や HR+ は
HER2 発現の有無
に関わらず高い
pCR 率 を 示 す。 一
方、HR++ の場合、
MRI で完全奏功と
判定しても腫瘍が
残存している率が
極めて高く、術式
決定の際十分に注
意する必要がある。
DP-2-90-02
DP-2-90-03
1
1
MRI の T1 値および ADC 値から luminal 乳癌における Ki67
index を推測できる
乳癌術前化学療法後の残存病変:サブタイプ別にみたダイナミッ
ク MRI 所見の検討
北福島医療センター 乳腺疾患センター、2 川崎医科大学 病理学2
君島 伊造 1、安田 満彦 1、吉田 一也 1、外間 尚子 1、森谷 卓也 2
はじめに: MRI で得られる画像には乳癌の悪性度に関わる情報が含まれる。
T1 値や ADC 値はその代表で、それぞれ Ki67 index( 以降 Ki67) と弱い相関性
を有する結果を得た。今回症例を luminal 乳癌に絞って解析を行い、Ki67 と
更に良好な関連性を見出したので報告する。症例と方法:2009 年 12 月~
2012 年 6 月に当院で手術し術前に T1 値および ADC 値が測定され ER が 50%
以上と評価された 82 例。撮影には Philips 社製 Achieva Quasar Dual 3.0T
を用い、T1 値は Philips 社のプログラムにて直接測定して T1 map を作成し
(78 例 )、ADC 値は b 値 0 と 1000 s/mm2 の値から求めて ADC map を作成
した (77 例 )。いずれも造影画像と対比して設定した ROI の平均値を求めた。
更に T1/ADC(73 例 ) を加えた 3 項目の値について Ki67 (77 例 ) との関連性を
検討した。結果: Ki67 と T1 値および ADC 値との回帰分析の p 値は、それぞ
れ 0.056、0.0048 で あ っ た。T1/ADC 値 は、Ki67 と 最 も 高 い 相 関 性
(p=0.0003) を認めた ( 図参照 )。尚、T1 と ADC の間には緩やかな正の相関性
がみられた。結語: luminal 乳癌では T1 と ADC を用いる事で Ki67 が推測可
能である。T1 高値、ADC 低値が高い組織学的悪異型度と関係する結果を得て
いたが、T1/ADC 値を用いる事で Ki67 と良好な相関性を示した。Ki67 は、
luminal A の腋窩転移陰性乳癌症例から化学療法追加の有用例を選択する目的
で用いられる。今回の結果は、これが術前の MRI から推測できる可能性を示
した。更に症例を追加して詳細な解析を行う。
神鋼病院 放射線診断科、2 神鋼病院 乳腺科
門澤 秀一 1、山神 和彦 2、結縁 幸子 2、湯淺 奈美 1、出合 輝行 2、
松本 元 2
【目的】乳癌術前化学療法後の残存病変について St. Gallen conference 2011
で示されたサブタイプ別のダイナミック MRI 所見を明らかにする。
【方法】2011 年 7 月から 2014 年 4 月までに術前化学療法の治療効果判定目的
で MRI が行われ、その後手術が施行された女性乳癌患者 61 例にみられた 64
病変を対象とした (3 例は同時多発癌 )。サブタイプの内訳は luminal A が 2 病
変、luminal B が 23 病 変、luminal B-HER2 が 24 病 変、HER2 が 9 病 変、
triple negative が 6 病 変 で あ っ た。 化 学 療 法 に は 多 く の 患 者 で weekly
paclitaxel (+ trastuzumab) → FEC が行われた。1名の放射線診断医が手術
や病理の結果の情報を伏せてダイナミック MRI を review し、残存病変の有無、
大 き さ、 増 強 効 果 の 性 状、time intensity curve に つ い て BI-RADS MRI
2013 に準じて検討した。さらにこれらの結果についてサブタイプ別に解析を
行った。
【成績】手術標本の病理学的検討では 64 病変中 12 病変で残存腫瘍を認めな
かった。完全寛解率は 19% で、サブタイプ別では triple negative で 33% と
高かった。52 病変 (81%) で腫瘍の残存がみられ、27 病変で浸潤癌、17 病変
で浸潤癌と乳管内病変、8 病変で乳管内病変のみの残存を認めた。ほかのサブ
タイプと比べて、HER2 と triple negative では乳管内病変のみが残存する比
率が高かった。残存腫瘍の描出は後期相が優れていたものが 38 病変、早期相
が 3 病変、早期相と後期相が同等であったものが 6 病変で、サブタイプによる
違いは明らかでなかった。残存腫瘍は mass として描出されたものが 35 病変、
non mass enhancement として描出されたものが 12 病変で、5 病変が描出
されず偽陰性となった。HER2 では non mass enhancement として描出され
る病変が多かったのに対して、ほかのサブタイプでは mass として描出される
ものが多かった。偽陽性が luminal B で 2 病変、偽陰性が luminal B で 1 病変、
luminal B-HER2 で 2 病変、triple negative で 2 病変に認められた。
【結論】サブタイプによって残存病変の病理所見、ダイナミック MRI の所見や
診断能に差異がみられる可能性がある。
428
ポスター討議
DP-2-90-04
DP-2-90-05
1
和歌山県立医科大学 第一外科
MRI による術前化学療法の効果判定の検討
術前乳房 MRI に関する造影効果の定量的評価について
福井県立病院 外科、2 福井県立病院 病理診断科
伊藤 朋子 1、秋山 玲子 1、大田 浩司 1、橋爪 泰夫 1、海崎 泰治 2
【はじめに】乳癌病変に対する画像評価法の一つとして造影 MRI 検査の有用性
が挙げられる。乳癌病変では早期濃染を認めるとされているが、具体的な数
値的評価はされていない。今回我々は、造影 MRI での造影効果に対して定量
的評価を試みた。【対象・方法】当院で手術を施行した乳癌症例のうち、術前
に造影 MRI にて乳房内の評価を行った直近の 10 例を対象とした。Phase 0(0
sec.), Phase 1(80 sec.), Phase 2 (180 sec.), Phase 3(380 sec.) におい
て腫瘍部と同側の正常乳腺部にそれぞれ ROI を設定し Intensity を計測した。
Intensity の変化を薬物動態論に基づいて解析し、流入相における倍加時間
(DT) および流出相における半減期 (HL) を算出した。正常乳腺部と腫瘍部での
DT, HL について Paired t test を用いて統計学的検討を行った。【結果】DT は
腫瘍部 (19.62 ± 13.28 sec.) が正常乳腺部 (277.3 ± 174.1sec.) に比し有意に
(p=0.0012) 短かった。また、腫瘍部は全例で 60 sec. 未満,正常乳腺は全例
で 60 sec. 以 上 で あ っ た。HL は 腫 瘍 部 (1482 ± 1591 sec.) と 正 常 乳 腺 部
(1076 ± 2044sec.) で差が無かった (p=0.1713)。また、10 例中 2 例では消
失相が検出不能であった。【考察】今回の検討の結果、造影検査における流入
速度は乳癌病変部で有意に早く、流出速度については有意差を認めなかった。
そして、DT で 60 sec. を cut-off 値とし正常乳腺と乳癌病変の判定が可能で
あった。今後さらなる症例の蓄積と鑑別精度の向上のための指標の検討が必
要であるが、DT については良悪性鑑別の有用な指標となる可能性が示唆され
た。
DP-2-91-01
DP-2-91-02
1
1
乳癌術前化学療法後 pCR 評価における MRI と Digital breast
tomosynthesis の有用性の比較
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の乳腺造影 MRI 所見と Ki67,
核グレードとの関連についての検討
国立がん研究センター 中央病院 放射線診断科、
国立がん研究センター 中央病院 乳腺外科、
3
国立がん研究センター 中央病院 病理・臨床検査科
2
市立四日市病院 乳腺外科、2 主体会病院 放射線科
渡邉 美佳 1、水野 豊 1、雫 真人 1、坂田 和規 1、倉田 信彦 1、森 敏宏 1、
宮内 正之 1、中村 和義 2
菊池 真理 1、内山 菜智子 1、木下 貴之 2、吉田 正行 3、北條 隆 2、
麻賀 創太 2、神保 健二郎 2、小倉 拓也 2、町田 稔 1、荒井 保明 1
【目的】乳癌広がり診断において MRI は有用な modality であるが、術前化学療
法(NAC)後の造影 MRI では残存病変の過小評価が指摘されている。乳腺の重
な り を 少 な く し た Digital breast tomosynthesis (DBT) の slice 像 は
morphological に病巣を描出し、MRI とは異なる手法で残存病変の描出が可
能である。そこで、予後予測因子である pCR を正しく評価する事を目的として、
NAC 後浸潤癌残存の有無につき、MRI と DBT の描出能力の比較を行った。【対
象・方法】2010.10 ~ 2014.10 の間に NAC 後手術が施行された 34 例 ,35 乳房。
年齢は 29 ~ 71 歳(中央値 47 歳)。全例 NAC 前後で造影 MRI,MMG (2D+DBT)
が施行されている。NAC 前の病変の広がりパターンを solitary, grouped,
separated, replaced の4つに分類し、NAC 後縮小パターンを type1 ~ 5 に
分類した。造影 MRI、DBT にて残存病変のサイズを測定し、手術病理結果と
比較した。NAC 前は生検で、NAC 後は手術標本で組織型、サブタイプ、組織
学的 grade(G)、核 grade(NG)、Ki67 を検索した。【結果】NAC 前組織型(硬
癌 22, 充実腺管癌 10, 乳頭腺管癌 1, 不明 2)、NAC 前 subtype (luminal A 10,
luminal B-HER2 陰性 8, luminal B-HER-2 陽性 12, HER2 2, Basal like1)、
G(1:0,2:16,3:16, 不 明 3),NG(1:10,2:7,3:15, 不 明 3),Ki67 (7.6 ~
94.2%: 平 均 47.4%, 不 明 8)。NAC 前 MRI で の 病 変 広 が り パ タ ー ン は
solitary11, grouped12, separated1, replaced11 であった。NAC 後 MRI で
の縮小パターンは(type1:5 , type2:7, type3:10, type4:6, type5:7), DBT
での縮小パターンは(type1:10 , type2:10, type3:3, type4:6, type5:5, 不
明瞭 1)であった。pCR は 8 例 (23% ) で NAC 前の組織型は硬癌 4, 充実腺管癌
4、subtype (luminal B-HER2 陰性 1, luminal B-HER2 陽性 6, HER2 1)、G
(2:2,3:6),NG (1:2,2:1,3:5),Ki67 (26.4 ~ 94.2%: 平 均 62%)。NAC 前
MRI で の 病 変 広 が り パ タ ー ン は solitary4, grouped3, replaced1、NAC 後
MRI で の 縮 小 パ タ ー ン は(type3:2, type5:6)、DBT で の 縮 小 パ タ ー ン は
(type1:2, type2:2, type5:4)であった。pCR 評価にて MRI は感度 81.8%,
特 異 度 91.7%, DBT は 感 度 60%, 特 異 度 100% で、 正 診 率 は MRI 88.6%
(31/35)、DBT 88.2% (30/35)であった。【結語】NAC 後 pCR 評価の正診率
は MRI と DBT でほぼ同等であった。pCR 評価にて DBT は MRI よりも感度で
劣るものの、特異度は 100% であり、より正確な残存病変の評価には相補的
に両者を組み合わせての診断が有用と考える。
【はじめに】乳腺造影 MRI(以下 MRI)はその高い空間分解能から病変の広がり
診断のみならず、MRI による形態的所見と Ki67 labeling index(以下 Ki67)
など免疫組織学的特徴とに関連があるとの報告がある。また近年解像度が向
上し検査時間の短縮が期待できる 3T-MRI が乳腺領域においても応用されるよ
うになってきた。【目的】3T-MRI の所見で TNBC とその Ki67、核グレード(以
下 NG)の予測が可能か検討した。【対象と方法】2012 年 1 月から 2014 年 12
月までに当院で手術を行った 497 症例中、TNBC(浸潤癌)で治療前に 3T-MRI
が施行された 52 症例を対象に TNBC の特徴とされる腫瘤の形態的所見の頻度
について検討した。さらに Ki67、NG、組織型と TNBC に特徴的な造影効果(腫
瘤辺縁の rim enhancement の出現頻度、腫瘤内部の増強効果)との関連につ
いて検討した。【結果】52 症例のうち大部分の症例が 3T-MRI では単発性の腫
瘤 を 呈 し て い た。 腫 瘤 の 辺 縁 は smooth:50%、irregular:27%、
spiculated:23% で、 造 影 パ タ ー ン は plateau:51%、wash out:26%、
persistent:23% であった。また特徴的な造影効果である rim enhancement
を 59% に、homogenous な増強効果を 27% に認めた。T2 強調画像における
内部高信号は 98% に認めた。Ki67 と rim enhancement には関連を認めず、
< 10%:50%、11-20%:50%、20% <:57% で あ っ た。 一 方 NG は
grade が 上 が る に し た が い rim enhancement の 割 合 が 増 加(NG1:38%、
NG2:50%、NG3:64%)し、homogenous な増強効果が減少する傾向(NG1:
37%、NG2:29%、NG3:24%)であった。多くの症例が充実腺管癌 (46%)
で、組織型による rim enhancement、腫瘤内部の増強効果には関連を認めなっ
た。【まとめ】3T-MRI を治療前に行うことで形態学的所見と造影効果で TNBC
とその NG の予測が可能になり得ると考えた。
429
一般セッション(ポスター討議)
【 目 的 】乳 癌 術 前 化 学 療 法 の 造 影 MRI 画 像,MRI 拡 散 強 調 画 像(DiffusionWeighted Imaging:DWI)と病理組織学的効果判定を比較し,効果判定にお
ける MRI の有用性について評価する.【対象と方法】2004 年~ 2014 年で術前
化学療法後に手術を施行した乳癌症例で,術前化学療法前後で MRI での画像
評価(造影 MRI,DWI)がされている 51 例を対象とした.術前化学療法後
MRI で完全奏功(CR)と判断した症例は,造影 MRI では,術前化学療法後に造
影効果を認めなくなった症例,DWI では術前化学療法後に高信号が消失した
症例とした.病理学的完全奏功(pCR)は乳管内病変の有無は問わず,浸潤巣
が完全に消失した症例とした.MRI の病理組織学的効果に対する感度,特異度,
陽性反応適中度を調べた.【結果】pCR は 23 例(45.1%),non-pCR は 28 例
(54.9%).pCR 23 例のうち,乳管内成分の残存を認めたのは 4 例であった.
造影 MRI で CR と診断されたのは,pCR で 15 例,non-pCR では 3 例であった.
造影 MRI の感度は 89.2%,特異度は 65.2%,陽性反応適中度は 75.8%であっ
た.DWI で CR と診断したのは pCR で 21 例,non-pCR で 4 例であり,DWI
の感度は 85.7%,特異度は 91.3%,陽性反応適中度は 92.3%であった.術
前化学療法後,造影効果はあるものの,DWI 高信号を認めなくなった症例は,
pCR で 4 例(乳管内成分の残存を認めた症例はその内 3 例),non-pCR で 1 例
あり,それらを MRI での効果判定 CR として評価すると,感度は 85.6%,特
異度 95.7%,陽性反応適中度 96.0%となった.【まとめ】MRI での乳癌術前化
学療法の効果判定においては,造影効果の評価に加えて拡散強調画像の評価
を加えることによって,より病理組織学的評価に即した効果判定ができる可
能性が示唆された.
宮坂 美和子、尾浦 正二、粉川 庸三、西口 春香、川嶋 沙代子、
本田 麻里子、青石 裕香、岡村 吉隆
ポスター討議
DP-2-91-03
DP-2-91-04
広島大学病院乳腺外科
1
乳癌術前化学療法症例における乳房 MRI による病理学的完全奏
効の術前診断
術前化学療法後 MRI で臨床的完全奏功となった症例の超音波画
像の検討
がん研究会がん研有明病院 超音波検査部、
がん研究会がん研有明病院 乳腺センター、
3
がん研究会がん研有明病院 画像診断部、
4
がん研究会がん研有明病院 病理部、5 がん研究会がん研究所 病理部
2
重松 英朗、角舎 学行、郷田 紀子、梶谷 桂子、恵美 純子、舛本 法生、
春田 るみ、片岡 健、岡田 守人
一般セッション(ポスター討議)
背景:乳癌術前化学療法(NAC)により約 20% の症例で DCIS を含む病理学的
完全奏効(pCR)が認められ、これらの症例では外科的切除を省略できる可能
性がある。NAC 後の MRI は病変遺残の同定について高い診断能を示すが病変
消失に対しては一定の診断能を示しておらず、より早期の乳房 MRI による効
果判定が病理学的効果予測に有用である可能性がある。対象と方法:当院に
て anthracycline および taxane-based 術前化学療法後に根治術が施行された
手術可能乳癌症例のうち、NAC 前、NAC 中および NAC 後に乳房 MRI による
効果判定が施行された 89 症例を対象に、NAC 中 MRI(int-NAC MRI)および
NAC 後乳房 MRI(post-NAC MRI)による pCR 術前予測能を検討した。各 MRI
による臨床的完全奏効(cCR)は腫瘍の完全消失と定義し、pCR は浸潤癌およ
び DCIS 成分も含めた病変の完全消失と定義した。結果:1st line 化学療法と
し て anthracycline-based regimen が 56 症 例 に、taxane-based regimen
が 33 症例に施行された。Int-NAC MRI および post-NAC MRI における cCR
を 11 例(12%)お よ び 24 例(27%)に 認 め、pCR を 14 例(16%)に 認 め た。
各 MRI に お け る cCR に よ る pCR 予 測 的 中 率 は、int-NAC MRI で は 100%
(11/11)であるのに対し post-NAC MRI では 54 %(13/24)であり、int-NAC
MRI が 有 意 に 高 い 正 診 率 を 示 し た(p=0.007, χ 2 検 定 )。Int-NAC MRI で
non-cCR であり post-NAC MRI で cCR が得られた 13 症例においては pCR を
2 例(15%)に認めた。各 MRI による non-pCR 予測的中率は、int-NAC MRI
で 96%(75/78)、post-NAC MRI で 98%(64/65)であり、ともに病変遺残
については高い診断能を示した。結論:NAC 中 MRI において cCR と診断され
た症例では pCR を高頻度に認め、非手術や縮小手術の検討対象となりうるも
のと考えられた。一方、NAC 後 MRI において cCR と診断された症例でも NAC
中 MRI で cCR でなかった症例では non-pCR である可能性が高く、非手術や縮
小手術の適応は慎重に検討するべきであると考えられた。
加藤 千絵子 1、坂井 威彦 2、五十里 美栄子 1、何森 亜由美 2、國分 優美 3、
五味 直哉 3、宮城 由美 2、山田 恵子 1、堀井 理絵 4,5、秋山 太 4,5、
岩瀬 拓士 2
[ 背景 ] 乳癌術前化学療法(NAC)の効果判定には、MRI や超音波検査、マンモ
グラフィ等が用いられる。MRI で臨床的完全奏効(CR)となった症例の超音波
画像と、病理組織像を検討した。[ 対象と方法 ]2012 年 10 月 から 2013 年 9
月までに当院にて NAC を施行し、MRI を行った原発性乳癌手術症例 79 例を対
象とした。画像の評価は RECIST 判定を用い、MRI の CR の定義は、ダイナミッ
ク MRI で各フェーズを通して造影効果が認められないものとした。[ 結果 ] 超
音波の効果判定は CR:2 例(2.5%)、PR:42 例(53.2%)、SD:33 例(41.8%)、
PD:2 例(2.5%)で、組織学的完全奏効(grade3)と診断された症例はそれぞ
れ 1 例(50.0%)、9 例(21.4%)、5 例(15.2%)、0 例 で あ っ た。 一 方、MRI
の 効 果 判 定 は CR:18 例(22.8%)、PR:46 例(58.2%)、SD:13 例(16.5%)、
PD:2 例(2.5%)で、grade3 は そ れ ぞ れ 8 例(44.4%)、6 例(13.0%)、1 例
(7.7%)、0 例であり、grade3 の予測には、MRI が超音波より有用であった。
MRI で CR と 診 断 さ れ た 18 例 は、 超 音 波 で CR:2 例、PR:10 例、SD:6 例、
PD:0 例で、組織学的効果判定は grade3:8 例、grade2b:1 例、grade2a:9 例
であった。超音波で描出されている部分は、病理標本上、残存した癌細胞で
はなく、癌が消失して置き換わった fibrosis であった。[ まとめ ] 組織学的完
全 奏 効(grade3)と 診 断 さ れ た 症 例 の う ち、CR と 判 定 で き た も の は 超 音
波 :6.7%(1/15)、MRI:53.3%(8/15)であった。MRI で CR と診断された症
例において超音波で描出されている病変は主に fibrosis で、癌細胞遺残の有無
は MRI での造影効果がより予測しえていた。超音波で grade3 の診断をするこ
とは難しいが、もともと癌があった部分を同定し、術野に投影できることが
超音波の有用な点である。治療効果の程度を超音波でより詳細に判定するに
は、RECIST 判定以外の評価方法が望まれる。
DP-2-91-05
DP-2-92-01
1
1
術前の臨床学的所見による乳癌リンパ管侵襲の存在予測に対す
る検討
3
乳癌化学療法における [18F]-fluoromisonidazole-PET を用
いた低酸素イメージングの臨床的意義
三井記念病院乳腺内分泌外科、2 三井記念病院腫瘍内科、
三井記念病院病理診断科
2
4
稲垣 麻美 1、太田 大介 1、辻 宗史 1、加藤 孝男 1、西 常博 1、
赤塚 壮太郎 2、森 正也 3、福内 敦 1
背景:乳癌のリンパ管侵襲は、局所再発の指標ではなく、遠隔転移の指標に
なると言われており、リンパ節転移を伴うことが多いと言われている。術前
の画像評価や針生検でリンパ管侵襲の存在が明らかにならず、術後に乳房の
追加切除が必要になったり、放射線治療や化学療法が必要になることを経験
する。目的:術前の乳房の画像所見と臨床学的なリンパ節転移の診断によって、
リンパ管侵襲の存在を予測できるか評価した。対象・方法:2008 年から
2014 年の間に手術を施行した乳癌症例のうち、リンパ管侵襲のある症例に対
して、retrospective に MMG で梁柱の肥厚、MRI で皮膚の肥厚と T2 強調画像
で高信号、超音波で皮膚の肥厚といった画像所見と画像もしくは細胞診など
で診断された臨床的なリンパ節転移との関係を見直し、どのような症例でリ
ンパ管侵襲の存在を予測できるかまとめた。リンパ管侵襲は HE 染色で診断の
つくものとした。結果:全症例は 28 例、術前薬物療法を施行したのが 10 例、
局所再発が 1 例であった。浸潤性乳管癌 27 例、浸潤性小葉癌 1 例で、浸潤性
微小乳頭癌の成分を含むものが 2 例、炎症性乳癌と考えられるものが 2 例で
あった。画像所見を示したのが 10 例 (35.7%) で、MMG での梁柱の肥厚は全
症例でみられなかった。MRI で皮膚の肥厚を示したのは 6 例、T2 強調画像に
おいて皮膚が高信号を示したのは 4 例、超音波で皮膚の浮腫を認めたのが 8 例
で、あった。術前もしくは術前薬物療法前の腫瘍径は cT1 が 5 例、cT2 が 12 例、
cT3 が 6 例、cT4 が 5 例であり、リンパ節転移は cN0 が 10 例、cN1 が 14 例、
cN2 が 3 例、cN3 が 1 例であった。このうち、何かしらの画像所見を認めたの
は、cT1 で 1 例 (20%)、cT2 で 3 例 (25%)、cT3 で 1 例 (16.7%)、cT4 で 4 例
(80%) であり、cN0 で 1 例 (10%)、cN1 で 5 例 (35.7%)、cN2 で 2 例 (66.7%)、
cN3 で 1 例 (100%) であった。考察:乳癌リンパ管侵襲の存在を考慮する画
像所見を呈するのは、臨床学的腫瘍径が大きい傾向、臨床学的にリンパ節転
移数が多数である傾向がみられ、特に皮膚や胸筋に浸潤している症例では高
率であった。画像所見において、MRI で T2 強調画像で高信号をしめさなくて
も皮膚の肥厚を伴うものもあり、超音波における皮膚の肥厚の所見も重要な
予測因子になると考えた。結語:画像所見や細胞診といった臨床学的診断に
よって術前の乳癌リンパ管侵襲の存在を予測する傾向はみられるものの、限
られた症例におけるものであり、今後も検討が必要である。
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科、
埼玉医科大学病院 乳腺腫瘍科、3 埼玉医科大学国際センター 核医学科、
埼玉医科大学国際医療センター 緩和医療科 淺野 彩 1,2、上田 重人 1、久慈 一英 3、山根 登茂彦 3、山口 慧 1、
島田 浩子 1、杉山 迪子 1、杉谷 郁子 1、廣川 詠子 1、重川 崇 1、
竹内 英樹 1,2、高橋 孝郎 1,4、大崎 昭彦 1、佐伯 俊昭 1
【背景】固形癌の抗がん剤治療抵抗性の要因の一つに微小環境における低酸素
がある。ニトロイミダゾール化合物は低酸素環境下にある細胞内に選択的に
取 り 込 ま れ る た め、 こ の 化 合 物 を ト レ ー サ ー と し た [18F]fluoromisonidazole(FMISO)-PET が細胞内低酸素の指標として注目されてい
る。【目的】乳癌化学療法における FMISO-PET/CT 検査の臨床的意義を検討す
る。【対象と方法】治療歴のない初発乳癌患者 33 名を登録し、抗がん剤投与前
(Baseline)と抗がん剤 2 サイクル後の 2 回、FDG-PET/CT と FMISO-PET/CT
をペアで施行し、原発巣の SUVmax をそれぞれ計測した。臨床治療効果を抗
がん剤治療反応群と非反応群に分類し、非反応群は治療開始後 6 か月以内に
PD となり治療変更を要した症例、又は病理学的効果判定で Grade0 となった
症例と定義した。Baseline と投与後の FMISO-SUVmax、及びその変化率に
ついて臨床的治療効果との相関を比較した。【結果】Baseline では反応群(26
症例)と非反応群(7 例)の年齢、腫瘍径、ステージ、治療内容に有意な差を認
めなかった。FDG-PET/CT に関して、抗がん剤投与前後の FDG-SUVmax 平
均 変 化 率 は 反 応 群 -62.8 % (95%CI:-69.5,-50.2) で 非 反 応 群
-10.1%(95%CI:-42.4,-19.1) と 比 較 し て 有 意 に 低 か っ た (p = 0.002)。
FMISO-PET/CT に関して、抗がん剤投与後の FMISO-SUVmax は非反応群で
平均 2.5(95%CI:1.3,1.7) であり、反応群の平均 1.5 よりも有意に高かった (p
= 0.02)。しかし Baseline の FMISO-SUVmax やその変化率は両群間に差を
認めなかった。【考察】FMISO-PET/CT 検査を用いて治療経過中の細胞内低酸
素の残存を半定量化することで抗がん剤抵抗性の早期指標に役立つ可能性を
示唆した。
430
ポスター討議
DP-2-92-02
DP-2-92-03
ホルモン治療時の 16 α -[18F]-fluoro-17 β -estradiol (FES) positron emission tomography (PET) の有用性
乳房温存手術における標本 PEM の有用性
1
3
1
神戸市立医療センター 中央市民病院 乳腺外科、2 同 外科、
3
同 腫瘍内科、4 同 臨床病理科、
5
先端医療センター 分子イメージング研究グループ
東北大学 医学部 乳腺内分泌外科、2 仙台画像検診クリニック、
東北大学 放射線科
渡部 剛 1、伊藤 正敏 2、段 旭東 2、森 菜緒子 3、金田 朋洋 3、多田 寛 1、
鈴木 昭彦 1、宮下 穰 1、石田 孝宣 1、大内 憲明 1
加藤 大典 1、武部 沙也香 1、橋本 一樹 1、木川 雄一郎 1、細谷 亮 2、
古武 剛 3、今井 幸弘 4、大西 章仁 5、佐々木 将博 5、千田 道雄 5
DP-2-92-04
DP-2-92-05
1
1
2
3
Triple negative 乳癌術前化学療法における FDG-PET/CT の
有用性についての検討
Stage I/II 乳癌における PET/CT を用いた乳癌サブタイプの
比較及び腋窩リンパ節転移診断の検討
国立病院機構四国がんセンター 乳腺科、
国立病院機構四国がんセンター 放射線診断科、
3
国立病院機構四国がんセンター 臨床検査科
東北公済病院 乳腺外科、2Sendai Medical Imaging Center、
東北大学 腫瘍外科
伊藤 正裕 1、伊藤 正敏 2、Xudong Duan2、平川 久 1、甘利 正和 1、
深町 佳世子 1、石田 孝宣 3、大内 憲明 3
清藤 佐知子 1、菅原 敬文 2、細川 浩平 2、西村 理恵子 3、原 文堅 1、
高橋 三奈 1、高嶋 成輝 1、青儀 健二郎 1、大住 省三 1
【はじめに】triple negative 乳癌(TNBC)は、他のサブタイプに比べ高い再発
率が高く予後不良といわれている。また、術前化学療法(NAC)の pCR は予後
の surrogate marker ともされている。【目的】triple negative 乳癌(TNBC)
術前化学療法(NAC)の病理学的効果判定における FDG-PET/CT の診断能およ
び予後との関連について検討した。【対象】NAC 前の原発巣の針生検で浸潤癌
と診断された症例(Stage4 を除く)で、NAC 前後で FDG-PET/CT を撮影され、
NAC 後 2010 年1月~ 2013 年 12 月に手術が施行された TNBC32 例 32 病変。
【 方 法 】原 発 巣 の FDG 集 積 変 化 率( Δ SUVmax=(NAC 前 SUVmax - NAC 後
SUVmax)/ NAC 前 SUVmax)
)を求め、病理学的完全奏効(pCR:ypT0N0)率
や術後経過について後ろ向きに調査した。【結果】手術時患者の平均年齢は
53.0(31 - 71) 歳、NAC 前 の cStage は 2A:5 例、2B:11 例、3A:7 例、
3B:1 例、3C:8 例。NAC 前生検病理素期は浸潤性乳管癌 24 例、潤性小葉癌
6 例、特殊型 2 例であった。術前化学療法としてアンスラサイクリン系および
タキサン系薬剤の両者ともに投与されていたのは 30 例で、レジメン完遂は 30
例、中止は 2 例であった。術後平均追跡期間は 38.97(5.76 - 38.97)月で、
病理学的効果判定で pCR:7 例、non-pCR:25 例であった。ROC 解析で求め
た Δ SUVmax の cut off 値 は 81.3 %、AUC0.794 で、pCR 診 断 能 は 感 度
100%、特異度 64%、陽性反応的中率 43.8%、陰性反応的中率 100%、正診
率 71.9%であった。pCR 群での遠隔再発は 7 例中 3 例に認め、Non-pCR 群で
の遠隔再発は 25 例中 8 例に認めた。Non-pCR 群でΔ SUVmax 低値群での遠
隔再発(5/13)は高値群での遠隔再発(3/12)と有意差を認めなかった。【結論】
TNBC の NAC の原発巣Δ SUVmax が低値である場合は non-pCR の効果予測に
有用である可能性が高い。これまでに TNBC の NAC の原発巣Δ SUVmax によ
り予後予測も可能との報告もあるが、本研究では予後の予測は困難であった。
今後症例の蓄積とさらなるフォロ-アップにより検討を進めたい。
431
目的 進行再発乳癌における 18F-FDG PET/CT を用いた遠隔転移診断は有用
である。しかしながら、乳癌サブタイプ、臨床病理学的な腫瘍の生物学的相
違による FDG 集積度の比較、腋窩リンパ節への FDG 集積度と病理組織像との
定量的比較検討は十分ではない。方法 この後方視的研究では 2011 年から
2013 年において手術施行した原発性乳癌の中で術前化学療法症例、非浸潤が
ん症例を除いた 249 症例を対象とした。患者は手術前に PET/CT を撮影し、
原発巣及び腋窩リンパ節の FDG 集積 (standardized uptake value: SUV) を
計測。体脂肪率、空腹時血糖値、年齢、閉経状況、病理学的因子 ( ホルモン感
受性 ,HER2, 組織学的悪性度 , ki-67 Labeling index) と原発巣の SUV の相関
関係及び PET/CT による腋窩リンパ節転移診断の精度を検討した。結果 乳癌
原発巣 (range: 0.1-4.7cm) のうち、PET/CT で FDG 集積が確認されたのは
225 例であった。回帰分析の結果、原発巣の SUV と相関関係が認められたの
は 組 織 学 的 悪 性 度 , ki-67Labelling index で あ っ た。(p=0.006558,
0.000406)腋窩リンパ節転移は64例(28.4%)に認められた。(macrometastases:
53 例 ,micrometastases:11 例 ) 感度 43.8 (95% CI, 31.4% to 56.7%)
(micrometastases: 0%, macrometastases 45.2%), 特異度 90.1% (95%
CI, 84.4% to 94.2%), positive predictive value (PPV) 63.6% (95% CI,
47.8% to 77.6%), negative predictive value (NPV) 80.1% (95% CI,
73.5% to 85.7%) であった。結論 SUV は組織学的悪性度、ki-67 LI と相
関関係を認め、生物学的活動性を反映している。PET/CT は現時点ではセンチ
ネルリンパ節生検に取って代わるほどの感度、特異度は認められない。
一般セッション(ポスター討議)
エストロゲン受容体 (ER) 発現を非侵襲的に評価できる PET 用製剤として ,
FES がある。FDG-PET と併用することにより、乳癌病巣に対するホルモン療
法の有効性予測や、ホルモン感受性変化の評価などが可能であるとされてい
る。ER 陽性乳癌の再発患者に対して Aromatase Inhibitr (AI) 剤投与前と投
与後 1 カ月で FES-PET、FDG-PET を行い、治療効果ならびに ER 発現の変化
を評価した 5 症例を報告する。症例 1: ER 陽性の転移病巣を縦隔リンパ節 ,
右胸膜 , 骨に認めた。AI 剤投与後、全ての病巣で FDG と FES の集積の低下を
認めた。症例 2:ER 陽性の転移病巣を骨 , 両側胸膜 , 乳癌術後創部皮下に認め
た。AI 剤投与後、全ての病巣で FDG の集積にほとんど変化を認めなかった。
FES の集積は骨転移で軽度増加、胸膜転移で軽度減少など、不均一な、わず
かな増減を認めた。症例 3: ER 陽性の再発病巣を左乳房切除後創部に認めた。
AI 剤投与後、再発病巣で FDG と FES の集積の低下を認めた。症例 4:ER 陽性
の転移病巣を骨 , 両側胸膜 , 傍胸骨リンパ節に認めた。AI 剤投与後、FDG の集
積は、骨転移と傍胸骨リンパ節転移で軽度減少、胸膜転移ではほとんど変化
を認めなかった。FES の集積は、骨転移で一部軽度増加、一部変化なし、一
部減少というように、他の転移でも不均一な、わずかな増減を認めた。症例 5:
ER 陽性の転移病巣を両側肺、左肺門リンパ節 , 一部の縦隔リンパ節に認めた。
一部の縦隔リンパ節転移は ER 陰性であった。AI 剤投与後、FDG の集積は、
肺転移と ER 陽性縦隔リンパ節転移で軽度減少、左肺門リンパ節転移と ER 陰
性縦隔リンパ節転移でほとんど変化を認めなかった。FES の集積は、肺転移
と左肺門リンパ節転移 , 骨で一部軽度増加、ER 陽性縦隔リンパ節転移と ER 陰
性縦隔リンパ節転移では変化を認めなかった。これらの経験から FES-PET は、
FDG-PET と併用することにより、複数の転移再発病巣の ER 発現を、代謝活
性とともに、real time でモニタリングでき、ホルモン治療の治療方針作成に
おいて有用であることが示された。
【目的】乳癌手術の縮小化が進み、乳房温存手術では断端に癌が露出していな
ければ良いとされた。乳房温存手術の適応・整容性を高めるため、正確な癌
進 展 評 価 が よ り 重 要 と な る。 我 々 は 切 除 標 本 の 癌 進 展 を 評 価 す る た め、
18F-FDG PET/CT を術当日に撮影し、その後手術にて切除した温存乳房標本
を高分解能 Positron Emission Mammography(東北大学と古川機械金属で
共同開発した高感度のシンチレーター、Pr:LuAg 単結晶を使用した PEM)で撮
影する臨床試験を行った。【方法・対象】2014 年 2 月から 10 月までの間に乳
房温存手術(全周性断端迅速診断あり)を施行し、PEM を撮影した 13 例を対
象とした。断端診断に関して、全周性の迅速診断と、標本 PEM 画像での断端
予測を比較した。また浸潤巣・非浸潤巣それぞれと PEM 画像の同定率、医療
者被曝を検討した。【結果】初回切除で断端陽性であったのは 3/13 であり、全
周性の迅速診断では1例のみ断端陽性であったが、PEM 画像では 2 例が断端
陽性と判断された。また PEM 画像の断端擬陽性は 1 例のみであり、これは
MRI でも造影され、術前針生検を施行し乳管内増殖性病変と診断されていた
ものであった。13 例で浸潤癌巣は10箇所、非浸潤がん巣は 1 6箇所(3 腺管
以下は除外した)であったが、PEM では浸潤癌巣 10/10、非浸潤癌巣は 15/16
検出可能であった。医療者被曝は術者 / 第 1 助手 / 第 2 助手 / 麻酔科 / 直接介護
看護師 / 間接介護看護師それぞれ 27/31/25/10/19/6 μ SV であった。【考察】
標本 PEM は浸潤癌
のみでなく、非浸
潤癌も十分検出可
能であり、今後病
変の拡がりを確認
しながら加不足の
ない切除を可能と
するナビゲーショ
ン手術につなげて
いきたい。
ポスター討議
DP-2-93-01
DP-2-93-02
1
1
転移性脳腫瘍に対する SRS の前向き多施設共同研究
(JLGK0901):Part 1 主要および副次評価項目の二次解析
2
転移性脳腫瘍に対する SRS の前向き多施設共同研究
(JLGK0901):Part 2 合併症と脳高次機能に関する二次解析
築地神経科クリニック 東京ガンマナイフセンター 脳神経外科、
勝田病院 水戸ガンマハウス 脳神経外科
2
芹澤 徹 1、山本 昌昭 2
勝田病院 水戸ガンマハウス 脳神経外科、
築地神経科クリニック 東京ガンマナイフセンター 脳神経外科
山本 昌昭 1、芹澤 徹 2
一般セッション(ポスター討議)
【目的】本研究(UMIN ID: 000001812)における一次解析結果は既に本学会
でも発表してきており、詳細は Lancet Oncology (2014;15[4]:387-395)
に掲載された。今回は更に 2 年間の追加経過観察期間が終了し、主要評価項目
と副次評価項目に関する二次解析を行ったので、乳癌症例の解析結果も含め
て報告する。
【方法】本研究へは 23 か所のガンマナイフ施設が参加し、2009 年 2 月から症
例登録開始。適格基準の主なものは、1)新規に脳転移と診断、2)転移個数 10
個以下、3)最大病変の最大径 30mm 未満でかつ腫瘍体積 10cc 未満、4)総腫
瘍体積 15 cc 以下、5)癌性髄膜炎所見陰性、6)KPS 70% 以上、などである。
本研究開始時に腫瘍個数 2-4 個群に対する 5-10 個群の非劣性マージン、すな
わちデルタ値を生存期間中央値 (MST) に関し 0.3 と規定した。
【結果】2012 年 2 月に登録を終了とし、1194 例が最終的に解析対象となり、
2014 年末で経過観察を終了とした。原発臓器は肺 912 例、乳房 123 例、その
他 159 例。これら 1194 例を転移個数により A 群(1 個:455 例)、B 群(2-4 個:
531 例)、C 群(5-10 個:208 例)の 3 群に分類して解析した。主要評価項目で
ある SRS 後の MST(月)は,A 群 13.9、B 群 10.8、C 群 11.1 で、B・C 群間
には差はみられず(HR: 0.999、95% CI: 0.844-1.184、p=0.99)、デルタ
値 0.3 未満であった(非劣性 p < 0.0001)。この B・C 群間の MST の差に関し
ては乳癌例でみても同様の結果であったが(13.7 vs 11.4 ヶ月、HR: 0.925、
95% CI: 0.551-1.617、p=0.78)、症例数が少なく非劣性の証明には至らな
かった。副次評価項目に関しては、神経死阻止、神経機能維持、髄膜播種、
ガンマナイフ再治療、全脳照射、局所制御、白質脳症などの累積頻度には B・
C 群間で有意差はなかった。しかし新規病巣出現の累積頻度に関しては、C 群
で有意差をもって高かった (Log-rank p=0.046)。
【結論】初期治療としての SRS 単独治療成績は、腫瘍個数 2-4 個群に対して
5-10 個群は非劣性であることが、今回の二次解析でも再確認された。
【目的】本研究(UMIN ID: 000001812)における一次解析結果は既に本学会
でも発表してきており、詳細は Lancet Oncology (2014;15[4]:387-395)
に掲載された。しかし照射に伴う合併症と脳高次機能の検討には観察期間が
かならずしも十分な長さではなかった。今回は更に 2 年間の追加経過観察期間
が終了し、両項目に関する二次解析を行ったので、乳癌症例の解析結果も含
めて報告する。
【方法】本研究へは 23 か所のガンマナイフ施設が参加し、2009 年 2 月から症
例登録開始。適格基準の主なものは、1)新規に脳転移と診断、2)転移個数 10
個以下、3)最大病変の最大径 30mm 未満でかつ腫瘍体積 10cc 未満、4)総腫
瘍体積 15 cc 以下、5)癌性髄膜炎所見陰性、6)KPS 70% 以上、などである。
合併症は CTCAE ver 3.0 で分類し、脳高次機能は MMSE を用い照射前より 3
点以上の低下を認めた症例を低下、他は維持と判定した。
【結果】2012 年 2 月に登録を終了とし、1194 例が最終的に解析対象となり、
2014 年末で経過観察を終了とした。原発臓器は肺 912 例、乳房 123 例、その
他 159 例。これら 1194 例を転移個数により A 群(1 個:455 例)、B 群(2-4 個:
531 例)、C 群(5-10 個:208 例)の 3 群に分類して解析した。全症例での SRS
後観察期間は 0.3 ~ 67.5 (median; 12.0, IQR; 5.8-26.5) ヶ月。合併症は
145 例(12.1%、乳癌例では 18 例 [14.6%])に SRS 後 0.3 ~ 58.1 (median;
9.3, IQR; 4.1-26.5) ヶ月で見られ、CTCAE grade 1、2、3、4、5 の例数は
各々 48、54、29、11、5。SRS 後 1、2、3、4、5 年での累積頻度は B 群で 8.3%、
10.9%、11.3%、12.2%、12.2%、C 群 で 5.8%、10.6%、12.1%、
12.9%、NA で、両郡間に有意差はなかった (HR; 1.052, 95% CI; 0.6661.662, p=0.83)。この結果は乳癌例でも同様であった。脳高次機能は SRS 後
4 ヶ 月、 そ の 後 1、2、3、4、5 年 で 評 価 さ れ、 維 持 さ れ た 割 合 は B 群 で
93%、91%、96%、92%、81%、80%、C 群 で 96%、89%、88%、
100%、100%、100% で、両郡間に有意差はなかった (p=0.25 ~ 0.75)。
【結論】初期治療としての SRS 単独治療成績は、腫瘍個数 2-4 個群に対して
5-10 個群は劣性ではないことが、今回の長期的安全性に関する二次解析でも
確認された。
DP-2-93-03
DP-2-93-04
乳癌脳転移に対するガンマナイフ治療後の予後因子
乳癌有痛性骨転移に対する Sr-89 単回投与の有効性(2007 ~
2014 年)
1
千葉県循環器病センター 外科、
2
千葉県循環器病センター ガンマナイフ治療部、
3
千葉大学医学部臓器制御外科学、4 千葉県がんセンター 乳腺外科、
5
亀田総合病院 乳腺科
1
東京医科大学 乳腺科学分野、2 東京医科大学 放射線科学分野
山田 公人 1、海瀬 博史 1、木村 芙英 1、細永 真理 1、河合 佑子 1、
宮原 か奈 1、河手 敬彦 1、上田 亜衣 1、寺岡 冴子 1、緒方 昭彦 1,2、
小松 誠一郎 1、松村 真由子 1、吉村 真奈 2、石川 孝 1
羽山 晶子 1,3、永野 修 2、長嶋 健 3、山本 尚人 4、坂本 正明 5、
宮崎 勝 3
はじめに ) 乳癌再発治療の発展により長期生存が可能となっていく中で、未だ
脳転移症例の予後は非常に厳しい . 一般に進行再発乳癌は症状が現れてから脳
転移を診断するため , 脳転移を契機に積極的治療が継続できなくなる症例を多
く認める . 一方で , 脳転移に対するガンマナイフ治療 (GK 治療 ) は局所制御率
が高く脳神経機能の温存にも優れているため , GK 治療後に長期生存を得られ
る症例もしばしば経験する . そこで今回我々は , 当施設で施行された乳癌脳転
移症例の GK 治療の予後に影響を及ぼす因子について retrospective に検討を
行なった . 対象と方法 ) 当施設で 2005 年 1 月から 2014 年 12 月の間に GK 治
療を行った乳癌脳転移症例 189 例のうち , 原発巣の臨床病理学的特徴が把握
できた 62 例を対象とし,以下の 11 項目について GK 治療後の予後への影響度
を検討した.検討項目は初診時年齢,GK 治療時の PS(performance status),
GK 治療時の神経症状の有無,脳転移個数,全脳照射の既往,開頭術の既往,
脳転移巣の総腫瘍体積,初診から脳転移出現までの期間,再発から脳転移出
現までの期間,GK 治療後のレジメン数,サブタイプである.P 値が 0.05 未満
を統計学有意とした.結果 ) 全例女性で初診時年齢は中央値 48 歳 (28 ~ 75).
GK 治療時の PS は中央値で 1,34 例 (54% ) に神経症状を認めた.脳転移個数
は中央値で 4 ヶ所 (1 ~ 32),17 例 (27% ) に開頭術の既往があり,17 例 (27% )
に全脳照射が施行されていた.初診から脳転移出現までの期間は中央値 59 ヵ
月 (0 ~ 330),再発から脳転移出現までの期間は中央値 15 ヵ月 (0 ~ 171),
GK 治療後のレジメン数は平均 1.6 であった.サブタイプは Luminal:20 例,
Luminal-HER2:12 例,HER2:15 例,TN:15 例であった.これらの検討
項目のうち GK 治療時の PS2 以上 , GK 時の神経症状あり,全脳照射の既往,
GK 治療後の治療レジメン数が 1 以下の場合は有意に予後不良であった.また
サブタイプ別の GK 治療後生存期間の中央値は Luminal:14 ヶ月,LuminalHER2:16 ヶ月,HER2:9 ヶ月,TN:11 ヶ月であり,Luminal-HER2 群は
他 3 群と比較して有意に良好であった (1 年生存率 76%,p < 0.05).結語 ) 今
回の検討結果から GK 治療後時に無症候性で PS が良好な症例,更にサブタイ
プでは Luminal-HER2 が長期生存を期待できると言える.一方で症状が現れ
ADL が低下するより前に脳転移を発見し効果的に局所をコントロールするこ
とで , 予後のさらなる延長が期待できる症例も存在すると考えられる.
【緒言】転移性骨腫瘍の約半数が乳癌からの転移を占めると云われている。骨
転移による症状として最も多くみられるのが疼痛であり,長期生存が期待で
きる乳癌患者の QOL に影響を与える。骨転移に対する推奨治療は,癌性疼痛
お よ び 骨 折 な ど の 骨 関 連 事 象 (SRE) を 軽 減 す る Bisphosphonate、
Denosumab などの骨代謝修飾薬、NSAIDs やオピオイド鎮痛薬など、放射線
療法(放射線医薬品療法を含む)、インターベンション療法など、病態に応じ
た組合せである。【背景】塩化ストロンチウム(Sr-89)は有痛性骨転移疼痛緩
和治療薬で、2007 年 10 月本邦でも使用可能となった。欧米では Sr-89 単独
使用でも骨転移の鎮痛効果は複数報告されているにも拘らず、依然その使用
頻度は高いとは云えない。その使用時期、並行して行うがん治療との安全性、
副作用などが懸念されていると思われる。局所治療に位置づけられる放射線
治療は、乳癌診療の中心が薬物療法にシフトしている現在、その適応、導入
に際し明確な指標がない。【目的】我々は第 22 回日本乳癌学会学術総会で、
Sr-89 内照射の鎮痛効果について報告した。今回、続報として 2007 年 10 月
~ 2014 年 12 月まで、当院にて Sr-89 を単回投与した乳癌有痛性骨転移患者
42 名(平均年齢 56 歳)を対象に、乳癌有痛性骨転移における ZOL と Sr-89 の
同時併用の安全性および有効性を検討した。【結果】前回の乳癌学会学術総会
で、Sr-89 内照射(単回)の鎮痛効果について(鎮痛薬減少例)を 71%と報告し
た。この値は 2005 年 Lancet Oncology に掲載された Systemic Review と
ほぼ一致している。また Sr-89 の鎮痛効果の予測因子を検討し、投与前のヘ
モグロビン値が 10.3 以上の症例で有意に有効であったことを報告した。さら
に骨転移のみの症例に限定して検討した結果、Sr-89 投与が有効であった症例
が有意に長期生存していたことを報告した。今回の検討では、42 名中 30 名
(71%)で、鎮痛剤の不要あるいは減量が可能であった。血液毒性についても、
投与後 8 週以内に Grade 3 以上を呈した症例は、白血球 1 例 (2.4%)、血小板
2 例 (4.8%) のみであった。【結語】今回の検討でも、乳癌有痛性骨転移におけ
る ZOL と Sr-89 の同時併用による有効性と忍容性が確認され、Sr-89 のより
早期からの使用が患者の QOL に寄与できる可能性が示唆された。
432
ポスター討議
DP-2-93-05
DP-2-94-01
乳房温存術後に放射線治療を受ける患者の乳がん看護認定看護
師への照射週別相談内容の分析
全乳房照射後の腫瘍床に対する Boost 照射の成績
1
富山県済生会高岡病院
大船中央病院 乳腺センター、2 大船中央病院 放射線治療室
大渕 徹 1、雨宮 厚 1、畑山 純 1、小野 正人 1、武田 篤也 2、佐貫 直子 2
山田 真由美
【背景と目的】全乳房照射後の腫瘍床に対する Boost 照射は局所再発を減少さ
せるので国内外のガイドラインでは推奨されているが,適応症例の選択基準
は未だ明確ではない.我々は 1983 年より照射を併用した乳房温存療法を全乳
癌患者の 80% 以上に施行してきたが,2001 年頃から一部の症例に Boost 照
射を加えたので,今回はその成績を後方視的に検討した.
【対象と方法】当施
設で照射併用の乳房温存療法を施行した臨床病期 I-III の患者は 3842 例.腫
瘤は肉眼的断端陰性を得るよう必要十分量の乳腺を切除.病理標本断端に癌
細胞が露出している例のみを断端陽性と判定.症例により術前薬物療法で縮
小を試みた.全乳房照射はX線を用い接線で主に 50Gy/25 回 , 一部の症例で
42.5Gy/16 回で施行した . 2000 年までは Boost 照射を原則行っていなかった
が,2001 年頃からは主に断端陽性例や 40 歳未満の若年例などに対して全乳
房照射に引き続いて Boost 照射 ( 電子線 10Gy/5 回または 16Gy/8 回 ) を加
える方針とした.補助全身療法はサブタイプに応じて化学療法やホルモン療
法を行った.【結果】平均年齢 51.5 歳 (22-88 歳 ).臨床病期 I 期 : 1361 例,
IIA: 1646 例,IIB: 623 例,IIIA: 142 例,IIIB: 36 例,IIIC: 34 例.断端陽
性 率 : 26%. 観 察 期 間 中 央 値 ; 全 体 : 88 ヶ 月 (1-333 ヶ 月 ),Boost 症 例
(n=290): 46 ヶ月 (2-297 ヶ月 ).臨床病期別 10 年生存率 ; I 期 : 94%, IIA:
90%, IIB: 75%, IIIA: 59%, IIIB: 74%, IIIC: 45%.全体の乳房内再発率;
5 年 : 4.1%,10 年 : 9.4%.Boost 照射 (B) の有無別 5 年乳房内再発率は,
全体では B(-): 4.2%(290/3552) vs B(+): 2.6%(7/290)(p=0.2). 断端陽
性 例 で は B(-): 10.1%(154/777) vs B(+): 2.7%(6/212) (p=0.0003).
Boost 照 射 量 別 で は B(10Gy): 3.0%(5/107) vs B(16Gy): 1.3%(1/105)
(p=0.8). 側方断端 5mm 以内の近接例では B(-): 2.1%(50/1091) vs B(+):
2.0%(1/63) (p=0.9). 40 歳 未 満 で は B(-): 13.3%(98/453) vs B(+):
3.5%(1/36)(p=0.2). 40 歳未満かつ断端陽性例では B(-): 21.6%(55/155)
vs B(+): 5.6%(1/21) (p=0.08). 40 歳 未 満 か つ 断 端 陰 性 例 で は B(-):
9.0%(42/297) vs B(+): 0%(0/15) (p=0.4).【有害事象】Boost 照射野の一
時的な皮膚炎の頻度は高いものの乳房の線維化や毛細血管拡張症が生ずるこ
とはなかった.【まとめ】Boost 照射は断端陽性例には有効かつ安全と思われ
るが,近接例には有用性は見出せなかった.若年例においては症例数が少な
く有意差が認められなかった.
DP-2-94-02
DP-2-94-03
1
1
2
2
再建を伴った乳房温存療法における乳腺断端の指標としてのク
リップの位置の検討
乳房温存療法の放射線治療計画における照射方法別の各種線量
指標の比較 - 特に乳房の大きさに注目して -
奈良県総合医療センター 放射線科、
奈良県総合医療センター 中央放射線部、
3
奈良県立医科大学付属病院 放射線治療・核医学科、
4
済生会中和病院 乳腺外科、5 済生会中和病院 外科
岡山大学大学院 保健学研究科 放射線技術科学分野、
岡山大学病院 乳腺放射線治療外来
黒田 昌宏 1,2
堀川 典子 1、井上 正義 3、宮坂 正子 2、細井 孝純 4、平尾 具子 5
【背景】広背筋皮弁による同時再建は、乳房温存療法の整容性を高めるために
施行されるが術前の CT などで確認できる腫瘍の位置 ( 以下腫瘍床 ) とクリッ
プの位置にずれが生じる.一方乳房内再発は腫瘍床付近に多いとされ、乳癌
診療ガイドラインにおいて全乳房照射後に腫瘍床に対するブースト照射は推
奨グレード B で温存乳房内再発を減少させるので勧められる、とされている.
再建乳房ではこの位置のずれについて理解しておくことが重要である【目的】
同時再建乳房の腫瘍床とクリップの位置の変位について検討する.【方法】
2012 年 10 月から 2014 年 7 月までに当院において乳房温存療法の術後照射を
受けた 23 例を対象とした.再建を受けた温存乳房 ( 以下 R)12 例、比較として
同時期に再建を受けていない温存乳房 ( 以下 NR)11 例で、年齢は R が 30 ~
67 歳 ( 平 均 49 歳 )、NR が 41 ~ 62 歳 ( 平 均 54 歳 )、 検 討 項 目 は 1. ( 最 大 )
腫瘍径 (mm)( 病理診断結果による )、2. 切り出し体積 (cm3)、3. クリップ
面積 (cm2)(3 個のクリップを頂点とした三角形 )、4. クリップの重心 - 腫瘍
床中心距離 (cm)、5. 腫瘍床中心 - 最遠クリップ距離 (cm).【結果】表にそれ
ぞれの平均値、中央値、範囲、標準偏差値を示す.1.腫瘍径の平均値 ( 中央値 )
は R が 2.31(2.7)cm、NR が 1.83(1.7)cm であった.R では 2.切り出
し体積が大きく 3.クリップ面積が大きかった.4.クリップの重心 - 腫瘍床
中心距離は NR 1.1 (1.2)cm に対し R の場合 4.8(3.24)cm で、特に 5.
腫瘍床中心 - 最遠クリップ距離は 7.5(7.0)cm、最長で 9.5cm 離れていた.
【結論】再建乳房においてクリップと腫瘍床の位置は再建なしに比べてかなり
ずれていることがあり、特にブースト照射の決定には注意を要する.
【目的】乳房温存術後の日常診療での標準的照射方法は、JASTRO 放射線治療
ガイドライン 2008 ではウェッジフィルターを用いる照射法 (W 法 ) のみ記載
されていたが、ガイドライン 2012 からは field-in-field(FIF) 法も追加された。
FIF 法は、欧米で先行普及し、本邦に導入が進んできたが、欧米女性に比して
乳房容積の小さい日本人に対しても優れた照射法か否か、体系的に後評価し
た報告は少ない。今回、岡山大学病院の日常診療における乳房温存療法での
放射線照射方法の品質保証活動の一環として、過去の照射例の放射線治療計
画をレビューし、各種の線量指標を、照射方法別、乳房の大きさを反映する
指標として planning target volume (PTV) 容積別に検討した。
【方法】対象は、2008 年 4 月~ 2014 年 3 月に、岡山大学病院で全乳房術後照
射を行った乳がん患者のうち、鎖骨上窩への放射線治療を行わなかった連続
405 症例である。照射法別では、W 法 178 例、FIF 法 223 例、ウェッジフィ
ルターも FIF も用いない No-W 法が 4 例である。PTV 容積は、容積小 (12.6401.3ml) 135 症 例、 容 積 中 (402.0-649.0ml) 135 症 例、 容 積 大 (649.21813.4 ml) 135 症例である。全例、ブースト照射を除く 50Gy/25Fr の全乳
房照射部分を評価した。
【成績】PTV の平均線量と Radiation Therapy Oncology Group の研究プロト
コール 1005 に基づいて定義した breast PTV_evaluation(BPe)の平均線量
は、PTV 容積に関係なく、FIF 法では W 法よりも優位に増加した。処方線量
の 95% 以上、107% 未満の指摘線量を受ける PTV および BPe 内の線量域の割
合は、FIF 法では W 法よりも優位に増加し、処方線量の 95% 未満の低線量域、
107% 以上の高線量域は、FIF 法では W 法よりも優位に低下した。患側肺の
平均線量と V20 と V30 は、PTV 容積に関係なく、FIF 法と W 法に変化はみら
れなかった。左乳がん症例での心臓平均線量は、PTV 容積が小および中で、
FIF 法では W 法よりも優位に低下した。左乳がん症例での心臓 V10 と V20 は、
PTV 容積中で、FIF 法では W 法よりも優位に低下した。腋窩リンパ節の平均
線 量 は、Level I で は PTV 容 積 に 関 係 な く、Level II で は PTV 容 積 中 で、
Level III では PTV 容積小および中で、FIF 法では W 法よりも優位に増加した。
【結論】乳房温存術後の日常診療での標準的照射方法として、FIF 法は、乳房の
大きさにかかわらず、W 法より、標的およびリンパ節線量を改善し、リスク
臓器線量を低減する、優れた照射法であることが確認できた。
433
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳房温存術後に放射線治療を受ける患者の乳がん看護認定看護師への
相談内容を照射開始から週別に把握し、治療経過に応じた効果的な看護支援
を得るために後方視的に分析を行った。【方法】乳房温存術後に放射線治療を
受けた患者を対象とし、乳がん看護認定看護師への相談内容を看護記録より
抽出した。抽出した内容を照射週別にまとめ、共通した内容をカテゴリー化
した。調査期間は 2013 年 7 月 1 日から 2014 年 8 月 29 日。所属施設の看護研
究倫理審査会の承認後、個人情報保護などを説明し同意を得た。【結果】対象
者は 13 名で平均年齢は 53.3 歳、相談件数合計は 26 件で、1 人平均 2 件であっ
た。相談件数の一番多かった週は、2 週目の 6 件で次に多かったのは 6 週目の
4 件だった。内容としては、治療前は治療スケジュールや仕事との両立での思
い、放射線治療に対する不安、創部の状態についてであった。1 週目は、治療
スケジュールや現在の状態報告、今後の治療についてであった。2 週目は、現
在の状態報告と今後の状態について、皮膚炎に対する対処法、治療と仕事の
両立における疲労感であった。3 週目は現在の状態報告と皮膚炎以外の症状や
今後の治療についてであった。4 週目は皮膚炎の症状や対処法の確認、照射に
より変化した乳房に対する思いであった。5 週目は相談がなかった。6 週目は、
順調ではない経過による気分の落ち込み、皮膚炎による痛み、暑い季節に治
療が重なるタイミングの悪さ、終了が近い安堵感であった。7 週目はすぐれな
い体調と放射線との関係、今後の治療に対する不安であった。終了後も相談
があり、皮膚炎の症状や対処法の報告と確認、皮膚炎による日常生活での支
障についてであった。【考察、結論】患者からの相談は、どの時期においても
事前に医師や乳がん看護認定看護師が説明を行った内容の確認と現在の状態
報告という共通した項目と、実際に放射線治療を体験することで生じる皮膚
炎の対処法や仕事との両立における思いなど、照射を重ねることにより変化
する項目がみられた。5週目以外は、どの週においても相談があったことから、
相談する窓口の案内や明示が大切であると考えられた。また、照射により変
化した乳房への思いや日常生活での支障といった苦悩があることから、どの
時期においても患者の思いを十分に聴く環境作りや専門的知識をもつ看護師
からの支持が必要であると考えられた。
ポスター討議
DP-2-94-04
DP-2-94-05
1
1
インプラントによる乳房再建時の放射線治療のタイミングと合
併症
3
当科における乳房温存手術後放射線療法後に発症した肺有害事
象 11 例の検討
聖路加国際病院 放射線腫瘍科、2 苑田会放射線クリニック、
聖路加国際病院 乳腺外科、4 ブレストサージャリークリニック
扇田 真美 1、河守 次郎 1、柏山 史穂 1、関口 建次 2、尹 玲花 3、吉田 敦 3、
林 直輝 3、矢形 寛 3、岩平 佳子 4、山内 英子 3
一般セッション(ポスター討議)
【目的】近年 Implant による乳房再建が増加しているが、再建乳房に対する放
射線治療の安全性は明らかではない。人工物乳房再建に放射線治療を併用し
た際の合併症の頻度と放射線治療のタイミングが与える影響を検討した。
【方法】対象は 2003/1-2014/8 に乳房全摘・人工物一次再建後に術後照射
(50-60Gy)を行った乳癌患者 65 例。retrospective に chart review を行った。
平均年齢 45 歳。観察期間中央値 36 か月(4 ~ 123 か月)。放射線治療のタイ
ミングは組織拡張器 (TE) 挿入時照射が 26 例、インプラント (Imp) 挿入時照
射が 39 例。合併症は永久抜去(TE or Imp の喪失)と感染とした。
【結果】65 例中永久抜去 7 例(TE 群 4 例、Imp 群 3 例)(11%)、感染(永久抜
去例含む)8 例(TE 群 6 例、Imp 群 2 例)
(12%)で、永久抜去の原因は感染 6 例、
被 膜 拘 縮 1 例 で あ っ た。3 年 累 積 永 久 抜 去 率 は 全 体 16.4 %、TE 照 射 群
23.9%、Imp 照射群 11.7%で両群間に有意差はなかった(p = 0.299, logrank test)( 図 参 照 )。2 年 累 積 感 染 率 は 全 体 14.8 %、TE 照 射 群 26.2 %、
Imp 照射群 6.9%、TE 照射群で有意に高かった(p = 0.03, log-rank test)。
照 射 か ら 抜 去・ 感 染 ま
での期間の中央値は、抜
去 650.0 日(14 ~ 950
日 )、 感 染 54.5 日(9 ~
654 日)であった。
【結論】人工物乳房再建
に放射線治療を併用し
た際の永久抜去率は
11%であった。TE 照射
群で感染の頻度が高い
傾 向 が あ っ た。 今 後 も
合併症の出現が予期さ
れ、更なるフォローアッ
プを要する。
福井県済生会病院 外科、2 春江病院 乳腺科
木村 雅代 1、堀田 幸次郎 1、笠原 善郎 1、嶋田 俊之 1,2
【はじめに】乳房温存手術後の放射線療法の有害事象の 1 つとして肺有害事象
(放射線性肺臓炎、器質化肺炎)があげられる。当科でのグレード 2 以上の肺
有害事象例について、発症時期や臨床経過、同時併用治療の有無につき検討
す る。【 対 象 と 方 法 】2003 年 1 月 か ら 2014 年 6 月 の 間 に 当 科 で 治 療 し た
0-IIIC 期の初発片側乳癌患者 1258 例のうち、乳房温存手術例は 910 例であっ
た。そのうち術後放射線治療例 490 例を対象として、グレード 2 以上の肺有
害事象発症例における発症時期や臨床経過、併用治療の有無を retrospective
に検討した。放射線治療は 2011 年 9 月まではライナックによる接線非対向 2
門照射 46Gy-50Gy を施行、2011 年 10 月以降は Tomo Direct による接線非
対向 2 門照射 50Gy を施行し、断端陽性あるいは近接例に対しては電子線ブー
スト照射を 10Gy 追加した。【結果】グレード 2 以上の肺有害事象を 11 例に認
め (2.2%)、全例グレード 2 であった。うち 8 例は放射線性肺臓炎 (1.6%) で、
3 例は器質化肺炎 (0.6%) であった。ライナックでの発症例は 7 例、Tomo
Direct は 4 例であった。発症時期は、放射線性肺臓炎は照射中~照射終了後 6
カ月で、器質化肺炎は照射後 4 ~ 7 か月後であった。臨床経過は全例咳嗽を
認め、診断は胸部レントゲンのみが 1 例、胸部 CT のみが 2 例、胸部レントゲ
ンと CT 併用が 8 例であった。治療は、経過観察のみ 2 例、ステロイド投与の
み 4 例、抗生剤+ステロイド投与 3 例、他院で加療され詳細不明 2 例で、全例
軽快している。しかしステロイド投与 7 例のうち 2 例が投与終了 1 カ月後に症
状の再燃を認めた。併用治療の有無は、併用なしが 3 例、内分泌治療が 7 例、
内分泌+分子標的剤治療が 1 例であった。【考察】発生率は 2.2% と文献的な頻
度と相違なかった。全例軽快したが、ステロイド終了後に再燃した例もあり
慎重な経過観察が必要と考える。放射線治療例 490 例中 324 例が内分泌治療
を同時併用していたが、そのうちの 8 例で肺有害事象を認めた。内分泌治療と
の併用で器質化肺炎が発症しやすいとの報告もあり、検討が必要である。【ま
とめ】当科では肺有害事象を 2.2% に認め、ステロイド投与が必要になる例も
あったが全例軽快した。
DP-2-95-01
DP-2-95-02
1
1
腋窩リンパ節転移 1 ~3個陽性の患者の予後と領域リンパ節照
射の絶対的利益に関する検討
3
1 - 3 個の腋窩リンパ節転移症例に対する乳房温存療法の治療
成績
兵庫県立がんセンター 乳腺外科、2 兵庫県立がんセンター 腫瘍内科、
兵庫県立がんセンター 放射線治療科、4 兵庫県立がんセンター 病理診断科
2
広利 浩一 1、高尾 信太郎 1、田根 香織 1、三木 万由子 1、松本 光史 2、
辻野 佳世子 3、佐久間 淑子 4
[ 目的 ] 組織学的リンパ節転移個数が1~3個の症例の予後を検討し , 今日で
の領域リンパ節照射を行うことの絶対的利益を推定する . また局所領域再発症
例の生物学特徴を検討することで該当症例の領域リンパ節照射の積極的な適
応を検討する .
[ 対象と方法 ] 1990 年 1 月 -2013 年 12 月の間に原発性乳癌 病期 I-III の診断
で , 当院での初回治療を開始した症例 3229 症例 . 両側性乳癌は除外したが . 異
時性両側性第 1 癌は対象とし , 第 2 癌が発生した時点で censored とした . 方法
1) 組織学的リンパ節転移個数別 A 群 (0 個 ),B 群 (1 ~ 3 個 ),C 群 (4-9 個 ),D 群
( ≧ 10 個 ) の局所領域無再発生存率 , 無再発生存率 , 全生存率を算出し , 予後
を検討 . 領域リンパ節照射に有無別にも算出 . 方法 2) 組織学的リンパ節転移
個数 1-3 個の症例で領域リンパ節照射施行例は除外し , 同様に予後を算出 . 検
討した項目は年齢 , 治療開始時期 , 術前治療 , 術式(乳房切除/部分切除),T
stage, リンパ節転移個数 , リンパ管侵襲 ,ER,PgR,HER2, 核異型度から導きだ
した Subtype, 補助療法薬剤別 . 統計解析は Kaplan-Meier 曲線にて生存率を算
出,logrank 検定を行った .Cox 比例ハザード回帰にてハザード比を算出し , い
ずれも危険率 5%で検定 .
[結果]1) 経過観察期間 中央値 79 ヶ月 (IQR 39 - 122) の間に , 局所領域再
発イベント 207 例 , 再発イベント 577 例 , 死亡イベント 320 例の発生 .10 年
局 所 領 域 無 再 発 生 存 率 は A 群 ,B 群 ,C 群 ,D 群 そ れ ぞ れ 94.7 % , 90.7%,
85.1%, 68.3%.10 年 無 再 発 生 存 率 は 同 様 に 86.9%, 74.5%, 59.2%,
30.3%. 10 年全生存率は 94.5%, 87.5%, 75.4%, 54.3%. また B 群で領域
照射を行っている 20 例を除く 10 年局所領域無再発生存率は 90.8% . 2) 単変
量解析では初回治療年 , リンパ節転移個数 ,Subtype, リンパ管侵襲で有意差を
認 め た . 多 変 量 解 析 で は 初 回 治 療 年 (2000 - 13 /1990-1999) HR 0.060
95%CI(0.0068-0.55),Subtype Triple negative / Luminal A 7.51(1.4055.9) が局所領域再発の独立した因子として抽出された .
[ 考察 ] EBCTCG でのメタ解析の結果から組織学的リンパ節転移個数が1~3
個の症例にも領域照射が推奨されている . 当時の領域照射なしの群の 10 年局
所領域再発率は 20.3% であった . その臨床試験がされた時期は 20 年前以上で
あり,その補助療法も現在と大きく異なっている .
[ 結語 ] 現在において領域照射を行うことの絶対的な利益はかなり小さくな
る . 局所領域再発の有無は subtype 別に異なり , 領域照射の適応決定に有益な
情報となる .
京都大学大学院医学研究科 放射線腫瘍学・画像応用治療学、
京都大学医学部附属病院 乳腺外科
平田 希美子 1、吉村 通央 1、井上 実 1、山内 智香子 1、小倉 昌和 1、
戸井 雅和 2、鈴木 栄治 2、竹内 恵 2、高田 正泰 2、平岡 真寛 1
【背景・目的】近年、乳房切除術後の局所治療として、1 - 3 個のリンパ節転移
を有する症例に対するリンパ節領域を含めた放射線治療が領域無再発率およ
び生存率を改善することが示された。しかし、乳房温存療法における同治療
法のエビデンスは乏しい。当院の少数リンパ節転移症例における乳房温存療
法の治療成績・再発形式を解析し、領域照射の追加を考慮する因子について
検討する。
【方法】1993 年 3 月から 2010 年 12 月までに当院で乳房温存療法を施行し、術
後病理評価で 1 - 3 個の腋窩リンパ節転移を有する 133 症例を遡及的に解析
した。無再発生存の状態で観察期間 1 年以内に経過観察が中断となった 3 例、
鎖骨上もしくは胸骨傍リンパ節領域への照射を行った 9 例は解析対象から除
外し、全乳房のみの照射を施行した 121 例を解析した。
【結果】年齢中央値は 52.5 歳 (26 - 78)、原発巣部位は左 / 右:51/70 例、組
織型は IDC/ 特殊型:117/4 例、ER 陽性 / 陰性 / 不明:90/26/5 例であった。
pTstage は 1/2/3/4:61/58/0/2 例、転移リンパ節個数 1/2/3 個:83/29/9 例、
腋窩郭清リンパ節個数の中央値は 13 個 (2 - 60)、郭清レベルは SLN/I/II/III/
不明:9/57/21/8/26 例であった。照射線量の中央値は 50 Gy(42.4 - 52) で
あった。
観察期間中央値は 9.4 年 (1.3 - 20.7)、全生存率は 5/10 年:95.6/92.9 %、
11 例が死亡し全例乳癌死であった。局所領域無再発生存率、領域無再発生存
率、 遠 隔 無 再 発 生 存 率 は そ れ ぞ れ 5/10 年:94.6/92.0%、97.4/93.7%、
89.0/80.5% であった。領域再発は 6 例に認められ、このうち 5 例は患側鎖骨
上リンパ節再発、1 例は患側腋窩リンパ節(Rotter および Level III)再発であ
り、Rotter 領域からの再発は照射野内であった。単変量解析では pT2 以上の
症例は pT1 症例に比べ領域無再発生存率が低かった。(T1:100/100%, T2 以
上 94.7/86.9%, p=0.009) 多変量解析で領域再発の有意な予後因子はな
かった。
【結論】当院の全乳房のみの照射症例における 5 年局所領域無再発生存率は既
報(MA.20 全乳房のみ照射群 94.5%, T.J.Whelan et al, 2011 ASCO)と同程
度であった。領域再発の予後因子として多変量解析では有意なものはなかっ
たが、pT2 以上の症例においては再発率が高く、領域照射検討の必要性が示
唆された。
434
ポスター討議
DP-2-95-03
DP-2-95-04
乳癌術後照射における領域リンパ節照射
乳房温存術後照射における通常接線照射および high-tangent
照射による腋窩リンパ節の 3 次元的線量評価
1
聖路加国際病院 放射線腫瘍科、2 苑田会放射線クリニック、
3
聖路加国際病院 乳腺外科
1
1
1
2
河守 次郎 、柏山 史穂 、扇田 真美 、関口 建次 、山内 英子
1
3
昭和大学江東豊洲病院 放射線治療科、2 昭和大学病院 放射線治療科
師田 まどか 1、加藤 正子 2、村上 幸三 2、新城 秀典 2、加賀美 芳和 2
【背景】ACOSOG Z0011 試験において、センチネルリンパ節転移陽性例の腋
窩郭清省略の妥当性が証明されて以降、全乳房照射による腋窩リンパ節への
照射の重要性が増してきている。また最近では、腋窩リンパ節領域を十分に
照射するために、high-tangent 照射が行われることも多くなっている。しか
し、実際通常の接線照射および high-tangent 照射でどの程度の腋窩リンパ節
が照射できているかは不明なところも多い。
【目的】全乳房接線照射において、腋窩リンパ節がどの程度照射されているか
を、3 次元治療計画装置を用いて検討する。
【方法】当院にて 2014 年 7 月から 2015 年 1 月に乳房温存術後に全乳房照射を
施行された 14 例を対象とした。3 次元治療計画装置にて、治療計画用 CT を基
に腋窩リンパ節のレベル別にリンパ節領域の contouring を行った。その後、
標 準 的 な 接 線 照 射 (Standard Tangent;ST)、high-tangent 照 射 (HT)、
high-tangent 照射を元に領域リンパ節を考慮して照射野を作成した modified
high tangent (mHT) の 3 つ の 治 療 計 画 を 作 成 し、DVH(dose-volume
histogram)を用いて線量評価を行った。
【結果】各腋窩リンパ節領域の平均 V40Gy(40Gy 以上が照射される体積)は、
ST 群、HT 群、mHT 群でそれぞれ、レベル 1;38.2%、53.1%、67.4%、レ
ベル 2; 16.5%、35.3%、47.6%、レベル 3; 8.19%、11.6%、20.0% であっ
た。mHT 群では、どのリンパ領域レベルにおいても ST 群より有意に線量が
増加した (p < 0.0001、p=0.0001、0.0154)。HT 群では、レベル 1、2 では
ST 群に比べ有意に線量が増加したが (p < 0.0001、p=0.0031)、レベル 3 で
は有意差はなかった(p=0.23)。それぞれの照射野における平均肺 V20Gy は、
ST 群、HT 群、mHT 群 で そ れ ぞ れ 6.46%、6.98%、10.5% で mHT 群 で は
他 2 群と比較して有意に肺線量が増加した(p=0.0001)。
【結論】high-tangent 照射により、腋窩リンパ節への線量は有意に増加する。
腋窩リンパ節により多くの線量を照射するためには、リンパ領域を意識した
照射野の作成が必要と考えられた。
DP-2-95-05
DP-2-96-01
1
1
患者選択による温存乳房寡分割照射と通常分割照射の比較:
選択割合と急性期有害事象
術中捺印細胞診とOSNA法併用によるセンチネルリンパ節診
断における転移陽性例の検討
兵庫県立がんセンター 放射線治療科、2 兵庫県立がんセンター 乳腺外科
2
川口 弘毅 1、辻野 佳世子 1、松本 葉子 1、太田 陽介 1、副島 俊典 1、
三木 万由子 2、廣利 浩一 2、高尾 信太郎 2
【目的】乳癌温存療法全乳房寡分割照射は、2000 年代に海外の比較試験で通常
分割照射との同等性が報告された。当時本邦では標準治療とされていなかっ
たため、当院では患者希望により照射法を選択するプロトコルを作成し施行
してきた。その初期結果を解析し、今後の方向性を検討する。【対象と方法】
当科温存乳房照射依頼症例中、領域リンパ節照射必要例など規定の除外基準
を有さない全症例を対象とし、事前の説明文書と医師の診察後、患者が照射
分 割 法 ( 通 常 分 割 (CF)50Gy/25 回 ± 10Gy/5 回 ま た は 寡 分 割 照 射
(HF)41.6Gy/16 回± 10.4Gy/4 回 ) を選択するプロトコルを 2009 年 6 月から
開始、項目を定め前向きに評価した。照射法選択割合、選択理由、急性期有
害事象について解析を行った。【結果】2013 年 12 月までに 431 乳房 426 症例
の温存乳房照射依頼があり、うち適格基準を満たす 343 乳房 342 症例に対し
照射法選択を提示した。90 乳房(26.2%)90 例が HF を選択し、選択理由は同
等の治療であれば短期が良い(38.1%)、仕事の都合(23.8%)などであった。
残る 73.8%が CF を選択し、理由は標準治療の方が安心(32.0%)、乳腺科主
治医の勧め(26.4%)が多かった。また当院照射例 ( 他院照射依頼例除外 ) に
ついて CF 選択群 (187 乳房 186 例 ) と HF 選択群 (89 乳房 89 例 ) の背景因子を
比較した。多変量解析では、手術から照射開始までの期間が長期、核異型度
が高度、化学療法有、CTV 容積大、高年齢が HF 選択と有意に相関する因子だっ
た。急性期有害事象では、G2 以上の放射線皮膚炎発症が CF 群で 29.9%、HF
群で 14.8%(p=0.002)、乳腺痛あり(照射前から有するもの含む)の割合は
CF 群で 62.6%、HF 群で 45.9% (p=0.01)といずれも HF 群で有意に軽度で
あった。倦怠感、創部痛、放射線肺臓炎発症に両群で有意差は認めなかった。
G2 以上の皮膚炎および乳腺痛に相関するその他の背景因子を含めた多変量解
析では、いくつかの臨床因子とともに、照射法は有意な相関因子であった。【結
論】HF 選択は 26.2% と比較的低率であり、治療期間の短縮よりも標準治療の
安心を希望する患者が多かった。急性期有害事象では皮膚炎・乳腺痛で HF 群
が軽度であったが、他の評価項目では有意差を認めなかった。今後は説明文
書に ASTRO ガイドラインや最新の乳癌診療ガイドラインの内容、保険適応が
認められたことなどを追加し、より適切な照射分割法の選択が行えるように
する予定である。
435
独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院 外科・乳腺外科、
久留米大学医療センター 病理診断科、3 よこやま外科乳腺クリニック
山口 美樹 1、田中 真紀 1、大塚 弘子 1、村上 直孝 1、朔 周子 1、
白水 和雄 1、山口 倫 2、横山 吾郎 3
<はじめに>原発性乳癌手術において術前 N0 と診断した症例に対し、センチ
ネルリンパ節生検(以下 SLNB)が行われるが中には複数個のリンパ節転移陽
性症例が存在する。当施設では検査の迅速性、正確性を重視し、また CK19
陰 性 乳 癌 の 可 能 性 を 考 慮 し 術 中 捺 印 細 胞 診 と One Step Nucleic acid
Amplification 法(以下 OSNA)の併用法で行っている。今回、SLN 転移陽性例
について術中診断と非センチネルリンパ節への転移の関連について検討した。
< 対 象 と 方 法 > 2011 年 1 月 ~2014 年 6 月 に SLNB を 行 っ た 961 例 の う ち、
SLN 転移陽性 193 例。術中診断法は 2mm 間隔での捺印細胞診後に OSNA 法
で判定。いずれかで転移陽性であれば SLN 転移陽性と診断。追加廓清リンパ
節は 1 割面で H.E 染色による永久固定標本で診断。<結果>細胞診、OSNA
ともに転移陽性は 132 例、細胞診で転移陽性であり、OSNA 非施行例は 9 例、
細胞診 negative で OSNA 陽性は 45 例、細胞診 positive で OSNA 陰性は 7 例で
あった。細胞診 negative で OSNA 陽性の例では追加郭清の非センチネルリン
パ節 ( 以下 non SLN) に転移ありが 2 例(4.4%)にとどまり 2 例とも non SLN
への転移は 1 個のみであった。細胞診、OSNA ともに転移陽性例において non
SLN に転移を認めなかった例は 77 例(58.3%)であり、OSNA(1+) のうち
73%、OSNA(2+) のうちの 49%であった。non SLN 転移が 3 個以上の例は
14 例であり、OSNA1+ 例のうち 11.5%、2+ 例のうちの 11.6%であった。
<考察>術中捺印細胞診は迅速性にすぐれ、また CK19 陰性乳癌に対する
OSNA 法での SLN 検索をカバーすることが可能である。OSNA 法は客観性に
優れ、微小な転移が診断可能でコピー数による定量が可能であり、non SLN
への転移予測も術中に考慮することがある程度可能と考えられる。
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌術後領域リンパ節照射 (RNI) の適応については、まだ未確定な事
項が多い。自験例で領域リンパ節照射成績を検討した。【対象】対象は、2002
年から 2006 年に治療が開始され乳癌術後領域リンパ節照射施行した 134 例。
年令は 31 歳から 71 歳で平均 50.6 歳。観察期間で中央値は 102.3 ヶ月 (6.4 ヶ
月から 164.0 ヶ月 )。術前化学療法施行 106 例、術後化学療法施行 28 例が施
行され、主に CEF-DTX が施行された。乳房全摘施行 (PMRT)72 例、乳房部分
切除 (BCT)62 例で施行され、pt4 以上が 41 例であった。全例で腋窩郭清が施
行され、pn2a 以上が 106 例であった。
【放射線治療】87 例で患側鎖骨上 + 胸壁・
全乳房、57 例で患側 1-3th 傍胸骨領域を含め、線量は 50 G y/25 回 /5 週施行
した。胸壁照射例では 24Gy から 30Gy まで 5mm ボーラスを使用した。乳房
部分切除例では 10Gy から 16Gy の腫瘍床追加照射を施行した。【結果】局所領
域初回再発は 21 例でみられた。乳房再発 4 例、乳房・領域リンパ節再発 1 例、
胸壁再発 3 例、胸壁・領域リンパ節再発 2 例、領域リンパ節再発 12 例であった。
5 年・10 年局所制御率は、86.3%・80.8% で、PMRT 例では各々 86.6%・
83.2%、BCT 例では各々 86%・76.9% で有意差は認められなかった。Pn1a
以下 28 例では、局所再発は1例のみであった。多変量解析で、核異型度、脈
管侵襲、陽性リンパ節転移個数が有意な予後因子としてあげられた。5 年・
10 年無病生存率は、64.4%・49.3%、PMRT 例では各々 63.2%・50.1%、
BCT 例では各々 64.3%・47.9% で有意差は認められなかった。5 年・10 年
生存率は、83.2%・68.5%、PMRT 例では各々 79.3%・66.5%、BCT 例で
は各々 86.2%・71.2% 各々で有意差は認められなかった。臨床的に明らかな
リンパ浮腫は 25 例、Gr2 の放射線肺炎は 6 例でみられた。【まとめ】自験例成
績は、Early Breast Cancer Trialists' Corporative Group(EBCTCG) 報告と
ほぼ一致する。乳癌術後領域リンパ節照射は、良好な局所制御を示し、有害
事象も軽微であり、BCT 例においても PMRT 例と同様に適応があると思われ
る。
ポスター討議
DP-2-96-02
DP-2-96-03
1
1
OSNA 法による術中センチネルリンパ節生検(SNB)での乳癌微
小転移の臨床病理学的検討
3
当院における OSNA 法によるセンチネルリンパ節生検転移陽性
例の検討
刈谷豊田総合病院 病理技術科、2 刈谷豊田総合病院 病理診断科、
刈谷豊田総合病院 乳腺外科
4
野畑 真奈美 1、伊藤 誠 2、内藤 明広 3、川口 暢子 3、西本 真弓 3、
加藤 克己 3
長野赤十字病院 乳腺内分泌外科、2 同 腫瘍内科、3 同 病理、
中澤ウイメンズライフクリニック
浜 善久 1、岡田 敏宏 1、大野 晃一 1、上野 真由美 2、渡辺 正秀 3、
横山 史朗 4
一般セッション(ポスター討議)
術中 SNB 転移の検索はリンパ節郭清の必要性の有無を効率的に示すための検
索方法の一つである。今回 OSNA 法による SLN 転移の検出率を従来の迅速組
織診および永久標本と比較し微小転移について検討したので報告する.当院
で 2012 年 11 月~ 2014 年 12 月に施行された 367 例の迅速病理診断と OSNA
法検査を比較検討した.使用するリンパ節は 50 mg ~ 600 mg の範囲内とし
600 mg を超えた場合は 2 検体分として測定した.CK19 mRNA 濃度 250 以
上 ~ 5000 copies/ μ L 未 満 の 陽 性 と さ れ た 症 例 を 微 小 転 移
(micrometastasis)相当とした.SNB 生検陽性は 65 件 (17.7%)で,そのう
ち微小転移は 21 例(5.7%),平均年齢 53.2 歳,平均コピー数(2500 copies/
μ L)
,迅速診断陰性・OSNA 法陽性は 11 例(5.1%)であった.迅速診断陰性・
永久標本陰性・OSNA 法陽性は 5 件(1.4%),平均年齢 59.0 歳,平均コピー
数(1490copies/ μ L)であった.永久標本との一致率は迅速病理診断 95.8%,
OSNA 法 99.1%であった.OSNA 法は凍結切片の脂肪の混入,切り出し割面
などに起因する偽陰性率を低下させる効果がある.検出される微細な転移巣
は迅速組織診断や細胞診では診断困難なホルモン療法や化学療法後で変性し
た癌細胞や異型の弱い小葉癌,管状腺癌などの微小転移の検出を向上させて
いる.OSNA 法は SLN の微小転移の検出に十分な感度をもつことが証明され
た.今後 SNB 転移診断は OSNA 法単独で施行することが望ましいと思われる
が,複数個の SLN を OSNA で測定するには時間を要すること,包括医療費支
払い制度のもとで独立した検査に見合う保険点数の配慮が必要である.
【背景】当院では 2013 年 6 月より OSNA 法を導入し、術中センチネルリンパ節
(SLN)生検を行っている。SLN 転移陽性の場合は、コピー数によらず原則的
に腋窩郭清を行っているが、コピー数と非センチネルリンパ節 (non-SLN) と
の相関についてはまだ明らかではない。【目的】OSNA 法で SLN 転移陽性例に
おいて non-SLN の転移の状況を検討した。また原発巣の組織型や ly, v, ki-67
などの臨床病理学的因子も検討した。【方法】2013 年 6 月から 2014 年 5 月ま
でに当院で乳癌手術を施行した 120 症例中、SLN 生検を行った 93 例 (SLN 施
行率 77.5% )。SLN 生検の適応は cT0-2,N0,M0 の乳癌で、SLN の同定は色素
(ICG) 法で施行した。 なお、術前化学療法症例で化療前に画像で N0 と診断さ
れた症例も適応とした。SLN は細切した半分を OSNA に使用し、残りを永久
標 本 と し て 病 理 診 断 を 行 っ た。OSNA 法 の 判 定 は ( + ) ; 250 ~ 5000
copies/ μ L, ( ++ ); 5000 以上とした。SLN が複数ある場合、4 個までは個々
で検査を行い、それ以上はまとめたコピー数を総数とした。【結果】SLN 生検
を行った 93 例中、22 例(23.7%)が OSNA 法で転移陽性であり、内訳は ( + )
が 8 例、( ++ ) が 14 例であった。腋窩郭清を行い、SLN ( + ) では non-SLN
に転移は認められず、( ++ ) では 10 例に転移が認められなかった。臨床病理
学的因子に傾向は見られなかった。【考察】OSNA 転移陽性例で ( + ) に関して
は腋窩郭清を省略できる可能性が高いと考える。症例数が少ないため、今後
さらに症例を蓄積して検討したい。
DP-2-96-04
DP-2-96-05
術中迅速診断でセンチネルリンパ節転移偽陰性の原因及び意義
当科におけるセンチネルリンパ節生検の現状及び陽性症例に対
する追加腋窩郭清省略の可能性についての検討
1
聖路加国際病院 病理診断科、2 聖路加国際病院 乳腺外科、
3
聖路加ライフサイエンス研究所
新東京病院外科
阿部 江利子 1、林 直輝 2、楊 陽 1、内田 士朗 1、宇野 美恵子 1、
小野田 敏尚 2、大出 幸子 3、山内 英子 2、鈴木 高祐 1
林 剛、浅川 英輝、村林 亮、太田 絵美
[ 背景 ] 臨床的腋窩リンパ節転移陰性の原発性乳癌に対して手術中に行われ
るセンチネルリンパ節生検 (SNB) の迅速診断は、腋窩郭清の有無を判断する
指標となるが、迅速凍結標本では転移陰性にも係わらず、術後の永久標本に
て転移が判明する場合がある。SNB において迅速標本では陰性であったが、
永久標本で陽性になった症例(偽陰性群)と迅速標本で転移が判明した症例(陽
性群)を比較し、迅速診断で偽陰性となる症例の特徴を検討する事、及び偽陰
性群と陰性群または陽性群との予後の比較することを目的とした。 [ 方法 ]
2008-2011 年に原発浸潤性乳癌に対して根治術とともに SNB が施行された
1632 例のうち、術前化学療法施行症例を除外した偽陰性 14 例と陽性 104 例、
陰性 807 例を対象とした。リンパ節は 2mm 間隔で標本切片を作成し迅速標
本及び永久標本 (HE、AE1/3 染色 ) と臨床病理学的所見の関連を評価した。転
移 面 積 の 評 価 は Image J(NIH Image, Bethesda, MD) を 用 い た。[ 結 果 ] 平均年齢は陰性群 53.8 ± 22 歳、偽陰性群 55.1 ± 3.1 歳、陽性群 52.3 ± 1.2 歳。
原発巣の最大径は陰性群 1.5 ± 1.3cm、偽陰性群 2.7 ± 0.5cm、陽性群 2.6 ±
0.2cm。原発巣の組織型は偽陰性群浸潤性乳管癌 (IDC) 9 例、浸潤性小葉癌
(ILC) 4 例、IDC+ILC 1 例、陽性群 IDC 98 例、ILC 4 例、IDC+ILC 2 例であ
り、偽陰性群で ILC を含む割合が高かった (p < 0.05)。全標本切片数は偽陰
性群 8.4 ± 1.6 枚、陽性群は 9.7 ± 0.6 枚、転移のみられた切片数は偽陰性群 2.4
± 1.2 枚、陽性群 4.8 ± 0.5 枚、最大転移面積比は偽陰性群 3.0 ± 0.05%、陽
性群 22.0 ± 0.2% (p < 0.05) であった。観察期間中央値は 49 か月 (0 - 75
か月 ) であった。無病生存期間は、偽陰性群と陽性群の間では差を認めなかっ
たが、陰性群は偽陽性群、陽性群に対して有意に良好であった (p < 0.05)。[ 結
論 ] 術中 SNB の迅速診断で偽陰性症例は、陽性症例と比較しリンパ節の転移
面積比が少なく、組織型に ILC を含む割合が高かった。また、偽陰性群は予
後の点から陽性群と同様に扱い治療を検討するべきである。
【背景】ACOSOG Z0011 試験において腋窩非郭清のデータが報告されている
が、乳癌学会のガイドラインにおいては B または C1 と慎重な立場をとってい
る。本邦においてはその妥当性に関してはいまだ決まった見解がないのが現
状である。【目的】当科におけるセンチネルリンパ節生検 (SNB) 適応の整合性
とセンチネルリンパ節 (SN) 転移陽性患者に対する追加腋窩郭清の省略の可能
性について検討した。【方法と対象】2005.7 月から 2014.12 月までに SN 生検
を施行した原発性乳癌手術 156 症例 ( 平均 62.3 歳 ) を対象とした。対象患者
は術前診断でT 0 ~T 2、N0 の症例とし、N0 の評価としては術前の触診・超
音波・造影 CT にて行った。術前生検方法は、全例で FNA・CNB を施行し必
要に応じてバコラ生検・摘出生検を併用した。SNB は 2012.12 月までは色素
法単独、その後は RI 法を併用して行った。ACOSOG Z0011 試験適応症例に
関しては Breast Cancer Nomogram(BCN) を用いて Probability of Spread
to Additional Lymph Nodes(PSALN) を算出して、腋窩非郭清対象症例の絞
り込みの指標として有用か実際の結果と照合して検討した。【結果】SN 摘出個
数は平均 1.8 個で、陽性 24 例、陰性 132 例であった。陽性 24 例に対して追
加で腋窩郭清を行った結果 non-SN への転移は 3 例 (12.5%) で陽性数は 1 ~
3 個であった。SN 同定率は 100%、SNB の適応としての術前評価での正診率
は 132/156(84.6 %)、 腋 窩 リ ン パ 節 転 移 の 術 前 評 価 と し て の 正 診 率 は
153/156(98.1%)であった。陽性のうち Z0011 試験に適合する 17 症例につ
いて PSALN を算出した結果 non-SLN 転移陰性 16 例の平均は 49.3%、唯一の
転移例も 52% であり両群とも高い値ではなかった。【考察】当科における SNB
適応の整合性は十分にあった。ACOSOG Z0011 試験適合症例において nonSN 転移陰性例に特徴的な傾向がないか検討するには、陽性症例数が少なく比
較検討はできなかった。non-SN 転移陽性症例の絞り込みのための PSALN の
算出は効果的ではなかった。今後更なる症例の追加・検討が必要であると思
われた。
436
ポスター討議
DP-2-97-01
DP-2-97-02
当院における乳腺針生検で鑑別困難と診断された乳管内乳頭状
病変の検討
1
針生検で乳管過形成と診断された症例における乳癌発生の検討
1
兵庫県立がんセンター 病理診断科、2 兵庫県立がんセンター 乳腺外科
甲南病院外科、2 甲南加古川病院外科、3 甲南病院病理部
宮下 勝 1、森 正夫 1、岡本 葵 1、太田 恭介 2、佐藤 美晴 2、村尾 真一 3
佐久間 淑子 1、前田 尚子 1、廣利 浩一 2、三木 万由子 2、田根 香織 2、
松尾 容子 2、高尾 信太郎 2
DP-2-97-03
DP-2-97-04
1
1
乳腺原発腺様嚢胞癌の10例
乳腺原発悪性リンパ腫 17 症例の検討
昭和大学横浜市北部病院 外科、2 聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
3
聖マリアンナ医科大学 診断病理、4 聖マリアンナ医科大学付属研究所 ブ
レスト&イメージング先端医療センター付属クリニック、5 乳腺クリニック ブレスティアたまプラーザ
西川 徹 1,2、津川 浩一郎 2、前田 一郎 3、印牧 義英 4、大井 涼子 2、
吉田谷 芙美 2、永澤 慧 2、土屋 聖子 2、吉江 玲子 2、志茂 彩華 2、
上島 知子 2、岩谷 胤生 2、土屋 恭子 2、志茂 新 2、小島 康幸 2、
速水 亮介 2、都築 麻紀子 2、河原 太 5
乳腺腺様嚢胞癌は乳癌全体の約 0.1% と稀であり、リンパ節転移や遠隔臓器転
移は非常に少ないとされている。サブタイプ別ではほとんどの症例が ER(-)、
PgR(-)、HER2 陰性例であるが予後は良好とされているなど特異な臨床像を
示す。術前化学療法、術後補助化学療法などの有用性においては検証されて
いない。今回、当科において診断及び治療をおこなった 10 症例について臨床
病理学的特徴と予後について検討をおこなった。
(対象)2004 年 1 月より
2014 年12月までに当科において診断された 10 症例。全例が女性。(結果)
診断時平均年齢が 58.4 歳。平均腫瘍径 23.3mm。画像検査では診断時乳房造
影 MRI 検査が8例に施行されている。全例が mass lesion であり多くは辺縁
不整形および内部不均一な造影効果を呈しており、腺様嚢胞癌に特徴的とな
る特異な所見は認められなかった。手術方法は乳房部分切除術が7例、乳房
切除術が3例。センチネルリンパ節生検が8例、腋窩リンパ節郭清術が2例
に施行された。全例 n0 であった。サブタイプ別では全症例が ER(-)、PgR()、HER2 陰性であった。3例に術前化学療法が施行されており、1例に術後
補助化学療法が施行されその他の症例は手術療法のみ施行されている。全症
例現在までに再発・転移なく生存している。(まとめ)本疾患は腫瘍の進展程
度に関わらず、局所治療を適切に行うことにより良好な予後が期待できると
考えられた。乳腺原発腺様嚢胞癌は稀な疾患であり定型的な診断、治療につ
いての報告が少ないために、文献的考察を加えて報告する。
千葉県がんセンター 腫瘍血液内科 乳腺外科、2 乳腺外科
王 暁斐 1,2、辻村 秀樹 1、熊谷 匡也 1、味八木 寿子 2、大久保 嘉之 2、
中村 力也 2、山本 尚人 2
【目的】乳腺原発の悪性リンパ腫は非常に稀であり、乳腺原発悪性腫瘍の 0.5%
以下に過ぎない。組織型の多くは化学療法に感受性の高いびまん性大細胞性 B
細胞リンパ腫(DLBCL)であるが、リンパ節原発の DLBCL と比べると中枢神
経や対側乳房での再発が多く治療成績は悪い。このような背景から乳癌より
予後不良と考えられているが、詳細については不明な点が多い。今回、単施
設で経験した 17 症例について検討したので報告する。【方法】1996 年 9 月か
ら 2014 年 12 月までに当院で治療を行った 17 例について、後方視的に検討し
た。【成績】全例が女性、年齢中央値 63 歳(36-84)、腫瘍サイズ中央値 37mm
(25-70)であった。手術は 7 例で実施された(Bt3 例、Bp4 例)。ただし、当院
で行われたのは 1 例のみで、術前診断は乳癌であった。その他の 10 例は生検
(CNB 8 例、
VACORA 2 例)
で診断され、
組織型は 17 例全例が DLBCL であった。
臨床病期は、I、II、III、IV 期の順で、11、3、0、3 例であった。17 例中 16
例が化学療法を実施され、リツキシマブ併用 CHOP 療法(R-CHOP)は 12 例、
CHOP 療法は 3 例、THP-COP 療法は1例であった。R-CHOP の 12 例はメソト
レキセートの予防的脳脊髄液内投与(髄注)を 2-4 回実施され、他の症例は実
施されなかった。化学療法を受けた 16 例全例が完全寛解を得たが、4 例が再
発した。再発症例の特徴を検討したところ、4 例とも 2004 年以前に手術を受
けており、かつリツキシマブを投与されていなかった。また、全例が髄注を
受けていなかった。再発部位は、同側乳房 1 例 (Bp 後 )、対側乳房+中枢神経
2例(Bp 後、Bt 後 1 例ずつ)、両側乳房+中枢神経1例 (Bp 後 ) であった。こ
のうち中枢神経に再発した 2 例は、後治療中に死亡した。残りの 2 例は、後治
療が奏功し生存中である。当院で生検され、診断確定後速やかに R-CHOP+
髄注を行われた 12 例は、全例が無再発生存中である。【結論】今回の検討から、
乳腺原発の DLBCL に手術を行う必要はないことが示された。大切なのは生検
による診断後速やかに化学療法を行うことであり、そのためには適切な病理
診断と血液内科医との連携が重要である。治療レジメンについては標準治療
である R-CHOP の有用性が示唆されたが、リスクに応じた対応が求められる。
また、中枢神経に再発した場合は難治性となるため、髄注等による予防が重
要と考えられた。ただし、その方法は標準化されておらず、検討の余地がある。
437
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】乳管内乳頭状病変は乳腺においてしばしばみられる病変であるが、
多彩な像を呈するため、生検での良悪の評価は難しいことがある。当院にお
いて生検にて鑑別困難と診断された乳管内乳頭状病変について、生検と切除
検体の組織像を比較し検討した。【対象と方法】2007 年 6 月から 2014 年 12 月
に当院で針生検された延べ 2966 例の乳腺組織のうち鑑別困難と診断された標
本は 112 例で、このうち 25 例が乳管内乳頭状病変であった。25 例は全例コ
ア針生検 (CNB) によって診断された。うち 4 例は経過観察となった。引き続
き切除が施行された 21 例について、生検と切除検体の組織像について比較検
討をおこなった。【結果】21 例のうち 4 例には吸引式組織生検 (VAB) による再
生検が施行され、2 例には CNB による再生検が施行された。再生検された 6
例のうち 4 例は悪性、1 例は悪性疑い、と生検診断が変更された。1 例は鑑別
困難のままであった。生検診断が変更になった 5 例を含む 9 例に癌を認めた。
また、4 例は intraductal papilloma(IPs) で良性病変と診断された。8 例には
乳管内乳頭腫の一部に筋上皮を伴わない単調な増生を認め、IPs with ADH/
DCIS と診断された。悪性と診断されたものの中には IPs with DCIS に隣接し
て明らかな DCIS を認めるものもあった。【考察】乳管内乳頭状病変は部位によ
り多彩な像を示すため、生検で良悪の診断をつけることが困難である。今回、
生検で鑑別困難と診断された乳管内乳頭状病変の 43% が切除検体で悪性と診
断され、38% で一部に ADH または DCIS が認められた。IPs with ADH/DCIS
のリスクについてはまだ、不明な点も多いが、生検で鑑別困難と診断された
乳頭状病変に対しては、常に悪性の可能性を念頭に置き、厳重な経過観察を
行い、場合によっては、再生検、切除生検などを考慮することが必要と考える。
目的:乳癌のがん化の過程として乳管過形成(DH)が注目されている。針生検
等で診断後、経過観察を行うと1)異型乳管過形成(ADH)のまま経過するも
の2)ADH から DCIS が発生する例、3)異型のない DH(UDH)から非浸潤性
乳管癌(DCIS)または浸潤性乳管癌(IDC)が発生するもの、の3者が考えられ
る。DH を経過観察する上でその後の乳癌発生のリスクを知ることは、重要と
考えられる。対象および方法:2005 年から 2013 年までの9年間に当院でマ
ンモトーム生検を含む針生検で DH と診断しその後経過観察可能であった 56
例を後ろ向きに臨床病理学的に検討した。結果:56 例の年齢は 28 歳から 76
歳、内訳は ADH 5例、UDH51 例であった。最終的に手術で乳癌が確認でき
た症例は ADH では 5 例中2例で DCIS が確認され、UDH では 51 例中乳癌 4 例
(DCIS1 例、T1mic1 例、T1b 2例)が発生した。UDH の対側乳房に 9 ヶ月後
に浸潤癌が発生した 1 例を含む。これらの UDH から発生した乳癌症例では針
生検から手術までの期間は 6 カ月から 1 年 6 カ月であった。ADH から乳癌が
発生した2例では針生検から手術までの期間は 1 カ月と 1 年 1 カ月であった。
後者は年余にわたって経過観察中に異型が増して DCIS と診断した症例であっ
た。乳癌が発生しなかった ADH の 3 例では病変の大きさは変化せず、1 年に
一度の検査で経過観察中である。ADH のまま経過するものと、DCIS や浸潤
癌が発生してきたものの間には臨床病理学的に差はなかった。DH 症例につい
ては背景因子等について病理学的に再検討を加えて発表する。考察:癌化の
過程として1)2)3)の機序が考えられる。ADH からは DCIS を発生する可
能性があるが、UDH においても DCIS または IDC が発生する可能性がある。
最近、米国では異型乳管過形成と診断された患者では、乳癌の発症リスクが
これまでよりも高いとされ、化学予防薬の使用を検討することが勧められて
いる。ADH はホルモン陽性乳癌を発症することが多いことから今後、日本で
も検討すべき課題と考えられる。また dence breast の患者では MRI でのスク
リーニングも検討されるべきかもしれない。結語:当院で経験した乳管過形
成症例では ADH のまま経過するものと、DCIS や浸潤癌が発生してきたもの
の間には臨床病理学的に差はなかった。しかし米国でのデータを参考とする
と、今後異型乳管過形成は多数例での長期での検討が必要である。
ポスター討議
DP-2-97-05
DP-2-98-01
1
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
2
国立がん研究センター中央病院 病理科
1
垂野 香苗 1、吉田 正行 2、椎野 翔 1、小倉 拓也 1、神保 健二郎 1、
麻賀 創太 1、北條 隆 1、木下 貴之 1
本間 慶一 1、佐藤 信昭 2、神林 智寿子 2、金子 耕司 2、辰田 久美子 2
Matrix-producing carcinoma19 例の臨床病理学的検討
Type A と Type B の中間的な乳腺粘液癌
2
一般セッション(ポスター討議)
(目的)乳腺 matrix-producing carcinoma(以下 MPC)は、化生癌の一種で
ある。発生頻度は全乳癌の 1%以下で予後不良とされるが、稀な組織型であり、
その臨床病理学的報告は少ない。今回、当院での MPC 症例の臨床病理学的特
徴を報告する。(方法と対象)1995 年 1 月~ 2014 年 10 月までに国立がん研
究センター中央病院にて手術を行われた原発性乳癌 6312 例から MPC の定義
に合致する 19 例(0.3%)を対象に後方視的に臨床病理学的検討を行った。(結
果)全例女性、年齢中央値 50 歳(26 - 85 歳)、腫瘍平均径 3.3cm(中央値
2.4cm、0.4 - 10.5cm)であった。術式は、乳房部分切除 10 例、乳房全摘 9
例であった。腋窩郭清は 12 例に実施された。術後観察期間の中央値は 675 日
(56 - 5142 日)であった。病理学的病期は、Stage1 は 6 例、2 は 8 例、3 は 4
例、4 は1例であった。サブタイプは、全例トリプルネガティブであった。
EGFR は 12 例で施行し、全例陽性であった。術前化学療法は、6 例に施行され、
治療効果判定は、Grade 0 が 4 例、Grade 1 が 2 例であった。術後補助化学療
法は 10 例に施行され、1 例は術前化学療法とも未施行で経過観察中、2 例は
不詳である。19 例中 6 例(31.6%)で、遠隔転移(肺、肝、脳)をきたし死亡し、
DFS は平均 574 日、OS は平均 815 日、5 年生存率は 55%であった。DFS に
影 響 を 与 え る 因 子 と し て、 腫 瘍 径 5cm 以 上 (p=0.0261)、pStage 3 以 上
(p=0.007)、腋窩リンパ節転移 (+)(p=0.012)、脈管侵襲 (+)(p=0.0001)、
年齢 40 歳以下 (p=0.002) があげられた。OS に影響を与える因子として、
pStage 3 以上 (p=0.0435)、腋窩リンパ節転移 (+)(p=0.0435)、リンパ管
侵襲 (+)(p=0.045)、脈管侵襲 (+)(p=0.006))、年齢 40 歳以下 (p=0.002)
があげられた。(考察)MPC は化学療法抵抗性で予後不良な癌とされており、
Wargotz らによると、5 年生存率は 68%と報告されている。当院のデータでも、
5 年生存率 55%と予後不良であった。術前化学療法の治療効果も不良で、化
学療法抵抗性であることがいえた。また、予後因子として、病理学的病期、
腋窩リンパ節転移 ( +)、静脈侵襲 (+)、若年発症があげられた。
新潟県立がんセンター新潟病院 病理診断科、
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科
【はじめに】2012 年の WHO 分類で、乳腺粘液癌は細胞成分の多寡により Type
A と Type B に細分化され、Type B は神経内分泌性格を有することが多いとも
規定されたが、実際の病理診断上では、Type A、Type B どちらとも断定困難
な症例に遭遇する場合がある。今回我々は、このような中間的粘液癌 (Type
A+B) をどう位置づけるべきかを検討する目的で検索したので報告する。【対
象と方法】2000 年から 2013 年当院診断の乳腺粘液癌 87 例を再鏡検し、粘液
量の多寡により Type A 64 例 , Type B 15 例 , Type A+B 8 例の 3 群に分け、
各群における DCIS 合併の有無、背景乳腺における mucinous cyst (MC)、
mucocele-like lesion (MLL) の有無について検索し、Type B と Type A+B に
ついては、chromogranin A, synaptophysin の神経内分泌マーカーの免疫染
色も加えて検討した。【結果】各群の年齢・腫瘍径では、Type A:79 ~ 26 歳 ( 平
均 53.2 歳 )・97 ~ 1mm 未 満 ( 平 均 23.3mm)、Type B:78 ~ 40 歳 ( 平 均
65.7 歳 )・80 ~ 2mm( 平均 20.4mm)、Type A+B::82 ~ 29 歳 ( 平均 64.8
歳 )・35 ~ 14mm( 平 均 22.5mm) で あ っ た。DCIS は Type A の 31 例
(48.4%)、Type B の 7 例 (46.7%)、Type A+B の 5 例 (62.5%) で認められた。
DCIS with mucin は Type A 20/31、Type B 3/7、Type A+B 4/5 であった。
solid papillary carcinoma in situ (SPCIS) は Type A 3/31, Type B 4/7,
Type A+B 1/5 でみられた。MC は Type A の 21 例 (32.8%)、Type B の 1 例
(6.7%)、Type A+B の 1 例 (12.5%)、MLL は Type A の 13 例 (20.3%)、
Type B の 1 例 (6.7%)、Type A+B の 2 例 (25%) でみられた。神経内分泌マー
カーが陽性であった例は Type B 11/15、Type A+B 5/8 で、A+B では B 相当
部のみが染色された。なお、Type A で神経内分泌マーカーを検索した 14 例
では1例のみで一部陽性となったが、SPCIS を伴った Type A の 3 例中 2 例で
は SPCIS 成分のみが神経内分泌マーカー陽性であった。【結語】Type A+B は
年齢でみると Type B に近いが、腫瘍径や背景所見でみると Type A に近かっ
た。SPCIS を伴った Type A の存在や B 部分のみ神経内分泌マーカー陽性で
あった Type A+B 例の存在から、神経内分泌性格を失う共に粘液産生増加を
きたす場合があることが想定され、Type A+B では Type B から Type A に移
行途中の症例も存在すると考えられた。
DP-2-98-02
DP-2-98-03
1
がん研究会がん研究所 病理部、2 がん研究会有明病院 病理部、
3
がん研究会有明病院 乳腺センター
1
武藤 信子 1、堀井 理絵 1,2、岩瀬 拓士 3、秋山 太 1,2
大橋 隆治 1、坂谷 貴司 1、松原 美幸 1、柳原 恵子 2、山下 浩二 2、
土屋 眞一 1,3、武井 寛幸 2、内藤 善哉 1,4
粘液癌プロトタイプ分類の予後因子としての意義
神経内分泌分化を伴う乳腺粘液癌の細胞像と臨床組織像との比較
3
【背景】乳癌特殊型のなかで最も頻度が多い粘液癌は、純型と混合型に分類す
ることができ、純型に比して混合型は予後不良であることが知られている。
粘液癌の中で浸潤性乳管癌成分を伴うものが混合型である。また粘液癌は発
生機序によりプロトタイプ分類することができる。すなわち粘液癌は、粘液
産生能を有する低乳頭状・平坦型等の乳管内癌が原型である a1-prototype、
充実腺管癌が原型である a2-prototype、浸潤性微小乳頭癌が原型である IMPprototype に分類される。粘液癌のプロトタイプ分類の臨床病理学的意義につ
いては明らかにされていない。
【目的】粘液癌プロトタイプ分類の予後因子としての意義を明らかにする。
【対象】2000 年 1 月から 2004 年 12 月までの 4 年間に、当院にて手術が施行さ
れた原発性乳癌症例 3,737 例中の粘液癌 105 例を対象とした。純型は 60 例
(57%)、混合型は 45 例 (43%) であった。以下、純型:混合型で示す。平均
年 齢 =51.7 歳:58.8 歳。Stage 分 類 は、Stage I=23 例 (38.3%):14 例
(31.1%)、II=33 例 (55%):26 例 (57.8%)、III=4 例 (6.7%):5 例 (11.1%)、
IV=0 例:0 例。リンパ節転移陽性は 3 例 (5%):14 例 (31.1%) であり、純型
に比して混合型は有意にリンパ節転移陽性が高率であった ( カイ 2 乗検定 p <
0.001)。 ホ ル モ ン 受 容 体 の 陽 性 率 は、ER 陽 性 =75%:86.7%、PgR 陽 性
=71.6%:64.4%、HER2 陽性 =0%:15.6%。(HER2 陽性:p < 0.001)
a1-prototype:a2-prototype:IMP-prototype に 分 類 す る と、 症 例 分 布
=69 例 (65.7%):23 例 (21.9%):13 例 (12.4%)、平均年齢 =51.1 歳:65.6
歳:54.2 歳。 純 型 =53 例:2 例:5 例、 混 合 型 =16 例:21 例:8 例 ( 純 型
vs. 混合型:P < 0.001) であった。
【方法】粘液癌を純型・混合型、またプロトタイプに分けて予後との相関を検
討した。
【結果】1)純型:混合型の 10 年生存率は 98.1%:91.9%(ログランク検定有
意差なし)、10 年無再発生存率は 92.2%:81.2%(ログランク検定有意差なし)
であった。 2)a1-prototype:a2-prototype:IMP-prototype の 10 年生存率は 98.2%:
94.7%:84.6%( ロ グ ラ ン ク 検 定 P < 0.05)
、10 年 無 再 発 生 存 は 91.4%:
77.6%:84.6%(ログランク検定有意差なし ) であった。
【結語】粘液癌のプロトタイプ分類は、予後因子として有用であることが明ら
かとなった。
日本医科大学付属病院 病理診断科、2 日本医科大学付属病院 乳腺外科、
飯田病院 病理診断科、4 日本医科大学 統御機構診断病理学
【目的】乳腺粘液癌 mucinous carcinoma (MCA) は、しばしば、神経内分泌
分化 neuroendocrine differentiation (ND) を伴うが、その臨床病理学的意
義については不明な点が多く、特に細胞像に関する報告は少ない。我々は、
ND を伴う MCA の細胞像の特徴について、穿刺吸引細胞診標本を用いて比較
検討を行った。【方法】当院にて 2004-2013 年に治療された MCA 例のうち、
術前に穿刺吸引細胞診を施行された 37 例を対象とし、ND については、手術
標本を chromogranin A、synaptophysin で染色、癌細胞での発現強度をス
コア化 (0-3) し 、高 ND 群 ( スコア 2、3)、低 ND 群 ( スコア 0、1) に分類し
た。まず、組織所見、臨床症状につき、両群の比較を行った。次に、過去の
細胞診標本 (Papanicolaou 染色 ) を、以下の所見の有無、程度について再検
討し、統計学的解析を施行した:(1) ほつれ (discohesiveness)、(2) 細胞密
度、(3) 重 畳 化、(4) 細 胞 質 内 顆 粒、(5) ク ロ マ チ ン パ タ ー ン (fine vs
coarse)、(6) 核サイズ、(7) 核型(円形 vs 類円形 )、(8) 核部位(中心 vs 偏在)
、
(9) 核小体、(10) 多形性。【結果】高 ND 群 (n=18) では、低 ND 群 (n=19)
に比し、平均年齢が高かったが (69.2 ± 14.2 vs 55.7 ± 17.2、p=0.01)、組
織上、腫瘍サイズ、核グレード、脈管侵襲、リンパ節転移の有無、luminal
type に両群間で差異は認めなかった。MCA の亜型である pure or mixed
type の分布について ND による差異は見られなかった。細胞像では、高 ND
群において、ほつれ、細胞質内顆粒がより高頻度に観察され (p < 0.001、
p=0.04)、核の偏在化も目立った (p=0.01)。一方、低 ND 群では、核の重畳
化が顕著であったが、高 ND 群ではより平面的な細胞配列が主体であった
(p=0.02)。その他の細胞所見に、有意な差異は認めなかった。【結語】ND を
伴う MCA では、細胞質内顆粒、ほつれを伴った平面的な細胞配列が細胞学的
な特徴であり、この点を留意すればより正確な細胞診断が可能となると考え
られた。
438
ポスター討議
DP-2-98-04
DP-2-98-05
1
1
Breast carcinomas with neuroendocrine features 58 例
の臨床病理学的検討
2
当院で Solid papillary carcinoma と診断された乳癌手術症例
の検討
独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床検査科、
独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 外科
2
東京大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
東京大学医学部附属病院 病理部
尾辻 和尊 1、原田 真悠水 1、菊池 弥寿子 1、丹羽 隆善 1、西岡 琴江 1、
多田 敬一郎 1、佐々木 毅 2、瀬戸 泰之 1
神経内分泌形質を有する乳癌は全乳癌の 1 ~ 5%を占める稀な腫瘍である.
WHO 分類には消化管や肺の神経内分泌腫瘍と類似の形態を示し,神経内分泌
マーカーを発現する原発性乳癌と定義されている.ただ,発現細胞の割合に
ついては第 4 版では明確な記載はなく組織亜型についても名称の変遷がみら
れる.日本の乳癌取扱い規約には浸潤癌特殊型のその他の腫瘍の部分にカル
チノイドの記載があるのみである.今回我々は当院で経験した乳腺原発の神
経内分泌腫瘍の臨床病理学的検討を行った.対象は 2009 年 4 月から 2014 年
12 月までに当院で切除された原発性乳癌 1104 例中,WHO 分類第 3 版の定義
である免疫染色にて神経内分泌マーカーが 50%以上の腫瘍細胞に陽性を示す
58 例(5.3%).全例女性で,平均年齢は 68.4 歳(37 ~ 89 歳).主訴は腫瘤触
知が 32 例(55%)と最も多く,次いで血性乳頭分泌が 15 例(26%)であった.
58 例中非浸潤癌が 13 例(22%),浸潤癌が 45 例(78%)であった.サブタイ
プ分類では Luminal A が 45 例(77%),Luminal B が 10 例(17%),HER2
type が 1 例(1%),Triple negative が 3 例(5%)であった.浸潤癌 45 例中 7
例(15 %)に リ ン パ 節 転 移 を 認 め た が, い ず れ も Ki-67 labeling index が
20%以上と高値の症例であった.そのうち 5 例は WHO 分類第 4 版における
Neuroendocrine carcinoma, poorly differentiated ( 第 3 版における Large
cell neuroendocrine carcinoma:LCNEC) に相当する腫瘍であり,2 例には
術後再発も認められた.乳腺原発の神経内分泌腫瘍には他臓器と同様に high
grade と low grade の二種類の腫瘍が存在する可能性が考えられるが,その
定義,組織亜型の名称,診断基準などについては更なる議論が必要である.
今後はさらに症例を蓄積し,長期予後や予後因子の解析も行いたいと考えて
いる.
Solid papillary carcinoma( 以下 SPC) は、WHO 分類第 4 版 (2011) で新しく
掲載されたもので、充実性乳頭状の発育形式を持つ核異型度の低い乳管内癌
の特殊な亜系とされている。特徴的な病理組織学的所見として神経内分泌形
質の発現があり、免疫組織染色 (Chromogranin A, Synaptophysin) におい
て陽性所見が認められることが知られている。また、細胞内や細胞外の粘液
産生がみられ、浸潤巣を伴う場合の浸潤形態としては神経内分泌癌や粘液癌
が多いとされている。 今回我々は、当院で 2014 年 12 月までに経験した、
SPC と診断された乳癌手術症例について検討した。SPC は 10 例で、いずれも
2011 年以降に診断されている。全例女性で、閉経前が 3 例 (37 歳、40 歳、
41 歳 )、閉経後が 7 例 (70 歳~ 82 歳 )、年齢の中央値は 70.5 歳であった。2
例に乳癌の家族歴 ( いずれも姉妹 ) があった。主訴として、血性乳頭分泌を認
めたものが 3 例、腫瘤触知が 3 例で、4 例は自覚症状がなかった。術後診断では、
DCIS が 3 例、T1mic が 2 例、T1a が 1 例、T1b が 2 例、T2 が 3 例 で、1 例 に
微小リンパ節転移 1 個を認めた。未測定の DCIS 症例を除き、エストロゲン受
容体は全例で陽性、プロゲステロン受容体は 1 例のみ陰性であった。HER2 受
容体陽性例はなく、浸潤癌での Ki-67 測定値は 6 例で 10% 程度で、1 例は
40% 以上であった。リンパ・脈管侵襲はいずれの症例でも認めなかった。
Synaptophysin は全例で陽性、Chromogranin A は 1 例のみ陰性で、CD56
は 陽 性 4 例、 陰 性 2 例、 未 測 定 4 例 で あ っ た。 浸 潤 癌 3 例 の う ち 2 例 で
mucinous の成分を認め、1 例で神経内分泌系への分化が窺われた。術後放射
線療法を 5 例、ホルモン療法を 5 例に施行しており、化学療法はいずれも施行
されていない。2014 年 12 月現在、再発は 1 例も認めていない。 SPC は比
較的新しい分類であり、現在の本邦の取扱い規約第 17 版では掲載されていな
いが、今後報告が増えてくるものと思われる。
DP-2-99-01
DP-2-99-02
1
1
当院における遺伝性乳癌診療の現状と課題
卵巣がんから見た遺伝性乳がん卵巣がん症候群
高知大学 医学部 外科学講座外科1、
2
高知大学 医学部附属病院 臨床遺伝診療部
国立病院機構四国がんセンター 乳腺科、
国立病院機構四国がんセンター 婦人科、
3
国立病院機構四国がんセンター 家族性腫瘍相談室
2
杉本 健樹 1,2、小河 真帆 1、沖 豊和 1、田代 真理 2、花崎 和弘 1、
執印 太郎 2
【はじめに】遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を含む遺伝性腫瘍の診療は乳腺診
療に欠くことができない。乳腺診療の現場でリスクの高い女性を拾い上げ、
遺伝診療での評価や遺伝子検査の結果をフィードバックし、親族を含め遺伝
的リスクに応じた対策を立てることで、高リスクの女性、特に若年発症乳癌
の予後を改善できると考え HBOC 診療に取り組んできた当院の現状と課題に
ついて報告する。【現状】2009 年から遺伝性腫瘍に対する医療者の意識改革た
めの啓発活動を繰り返し、乳腺外科と臨床遺伝診療部の連携下に 2011 年 11
月より HBOC 診療を開始した。2014 年末までの 3 年間で 109 回のカウンセリ
ングを行い、30 人が遺伝子検査を受けて、5 家系 7 人に BRCA1/2 の病的変異
を認め、2 人に不確定変異(VUS)を認めた。また、その後も他施設の医師を
遺伝カンファレンスに参加させるなど HBOC 診療浸透のための取り組みを継
続している。遺伝診療部を利用することで開始当初からを婦人科・泌尿器科
と連携しサーベイランス体制を確立することができている。乳腺外来では看
護師を中心に問診表を利用した家族歴聴取の徹底、遺伝的リスクのある患者
の家系図作成を行い、リスクが少しでもあると判断された場合は積極的に遺
伝カウンセリングへの受診勧奨を行ってきた。2014 年 4 月、遺伝カウンセラー
養成課程修了者を雇用し、初診だけではなく既発症者でも遺伝的高リスク患
者を受診時に拾い上げ家系図を作成している。さらに HBOC 以外の遺伝性腫
瘍も視野に入れた診療を行うようになった。初期には遺伝的リスクのある患
者をすべて遺伝カウンセリングに来談させリスク評価と情報提供を行ってい
たが、現在ではプレカウンセリングとして家系図作成の段階でリスク評価を
行い、カウンセリング来談の意思確認をしているため、有償の遺伝カウンセ
リングは若干減したが診療内容は充実したものとなっている。【課題】単施設
としては BRCA1/2 に遺伝子変異を認めない場合のリスクに応じた対策作りと
浸透率の高い他の遺伝性腫瘍の遺伝子検査の導入が喫緊の課題である。また、
HBOC 家系ですでに癌死している親族等の近親者に対する情報提供や遺伝診
療への受診勧奨を粘り強く続けていく必要がある。一方で、更に増加するで
あろう VUS への対応やリスク低減治療が日本で積極的に導入できる素地作り
など、HBOC コンソーシアムを中心とした診療・研究の連携に期待する点も
多い。
大住 省三 1,3、野河 考充 2,3、横山 隆 2、竹原 和宏 2,3、白山 裕子 2,3、
大亀 真一 2,3、山本 弥寿子 2,3、楠本 真也 2、杉本 奈央 3、金子 景香 3
我々は、高悪性度の漿液性卵巣がん症例 11 例に対して、家族歴と関係なく
BRAC1 および 2 の生殖細胞系列での遺伝子検査を遺伝カウンセリングを行い、
文書での同意を得たのち施行した。検査では全エクソン領域とエクソンに接
するイントロンの 3 塩基分のシークエンスを調べた。卵巣がんの発症年齢の中
央値は 50 歳(41 ~ 67 歳)。第二度近親者に乳がんあるいは卵巣がんの家族歴
のある患者(家族歴陽性)は 6 例(卵巣がん 5 例、乳がん 1 例)。その結果、4 例
(36.4 %) に 病 的 変 異(3 例 が BRCA1 の 変 異 Q934X(2919C > T)、
R1443X(4446C > T)、E143X(546C > T)、1 例 は BRCA2 の 変 異
R2318X(7180C > T))と 1 例に variant of unknown significance(VUS 意義
不 明 )の 変 異(BRCA1 に IVS14+3A > C)を み と め た。 こ の う ち BRCA1 の
Q934X は日本人の創始者変異の一つとみられているものである。病的変異を
みとめた症例は全例家族歴陽性で、家族歴陽性症例中での病的変異をみとめ
た率は 66.7%と極めて高率であった。なお、VUS の症例には家族歴はなかっ
た。NCCN ガイドラインでは上皮性卵巣がんの既往歴があることを BRCA 遺
伝子検査を提示する項目として挙げているが、自身の高悪性度漿液性卵巣が
んの既往歴と乳がんあるいは卵巣がんの家族歴があることは特に高リスクで
あると思われる。これらの病的変異を認めた患者では乳がんのサーベイラン
スを開始するとともに、血縁者に遺伝カウンセリングを受けるよう呼びかけ、
血縁者での遺伝子検査も開始している。文献的データも示し、婦人科医と協
力しながら高悪性度の漿液性卵巣がん症例を拾い上げることの重要性を遺伝
性乳がん卵巣がん症候群症例拾い上げの立場から強調したい。
439
一般セッション(ポスター討議)
村田 有也 1、中小路 絢子 2、雨宮 愛理 2、平形 侑子 2、笹原 真奈美 2、
松井 哲 2
ポスター討議
DP-2-99-03
DP-2-99-04
当院における遺伝性乳がん・卵巣がん症候群診療の現状と課題
BRCA 変異陽性乳がん未発症症例におけるリスク低減乳房切除
術の経験
1
広島大学病院 乳腺外科/広島大学 原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科、
2
広島大学病院 病理診断科
北野病院 ブレストセンター 乳腺外科
恵美 純子 1、角舎 学行 1、梶谷 桂子 1、郷田 紀子 1、重松 英朗 1、
舛本 法生 1、春田 るみ 1、片岡 健 1、尾田 三世 2、有廣 光司 2、
岡田 守人 1
前島 佑里奈、大瀬戸 久美子、吉本 有希子、萩原 里香、高原 祥子、
山内 清明
一般セッション(ポスター討議)
全乳癌の 5-10%が遺伝性といわれているが、本邦でも家族性乳がんの定義に
該当する患者は約 20%存在するとの報告がある。NCCN ガイドラインでは
BRCA1/2 変異陽性患者に対し両側リスク低減乳房切除術を実施することによ
り乳がん発症リスクが 90%以上減少すると記載されている。しかし、リスク
低減手術が普及している米国でも未発症 BRCA1/2 変異陽性者に対しては 20
‐ 36%、発症者に対しては 49%にしか行われていないとの報告がある。本邦
では遺伝性乳がん卵巣がん (HBOC) の遺伝子検査や検査前の遺伝カウンセリ
ングは保険適応外であり、リスク低減手術も限られた施設で院内倫理委員会
の承認を得て自費で治療を行っているのが現状である 当院ではこれまでに遺伝カウンセリング 68 症例に遺伝子検査 30 例を実施、8
症例が BRCA1/2 遺伝子変異陽性であった。その経緯の中で BRCA2 変異陽性
乳がん未発症症例に対するリスク低減乳房切除術(RRM)の一例を経験したの
で報告する。
症例は 38 歳女性。父が前立腺癌、祖母が乳癌の既往があり前医で遺伝子検査
を実施、BRCA2 遺伝子異常を指摘された。遺伝カウンセラーとの数回の話し
合いの結果、RRM とリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)を希望され、2014
年 4 月に当院受診した。5 月に当院倫理委員会で RRM として乳頭合併皮膚温
存両側乳腺全摘術(SSM)+両側乳房再建術の実施が承認された。RRSO の実
施に関しては、患者は 38 歳と若年であり外科的早期閉経の及ぼす影響が懸念
されたため、継続審議となった。7月に SSM を実施した。術前に超音波ガイ
ド下に乳房外周に点墨し乳腺組織の取り残しを極力防止した。その後組織拡
張期器を両側大胸筋下に留置した。
本症例では RRM として本人の希望もあり、両側 SSM(乳頭合併切除)を選択
し た。 未 発 症 BRCA1/2 変 異 陽 性 者 に お け る NSM(Nipple Sparing
Mastectomy) 後の乳頭部乳癌発生に関しては、未発症 BRCA1/2 変異陽性者
に RRM として SSM(乳頭乳輪合併切除)を施行した例では切除された 33 の乳
頭乳輪に病理学的に乳頭内に上皮内癌や浸潤癌を認めなかったとの報告があ
る。 し か し な が ら、 乳 が ん 発 生 母 地 と な る TDLU(terminal duct lobular
units) が 24%の症例で乳頭乳輪に、8%の症例で乳頭に認められており、今
後の長期にわたる腫瘍発生のリスクの研究が必要とされる。
【背景と目的】遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 (HBOC) 診療は、乳癌診療にお
ける重要課題であるが、高価な検査費用や遺伝子診療体制の整備、一次予防
の倫理的問題、卵巣癌に対する二次予防検診の確立など、未だ課題は多い。
当科においても、前向きな症例の集積と解析、また長期にわたる二次予防診
療を目的に、遺伝子診療部・産婦人科と連携したコホート研究を 2012 年 8 月
より開始しデータを蓄積しており、当院における HBOC 診療の現状と問題点
について報告する。【方法】当院におけるコホート研究としての HBOC 診療は
( 1) カウンセリング受診、( 2) 遺伝子検査実施、( 3) 臨床病理学的特徴の解
析、( 4) 変異陽性者の MRI 検査を含む二次予防検診フォローアップのステッ
プからなっている。2009 年 11 月~ 2014 年 11 月の遺伝カウンセリング受診
者 57 例について、BRCA1/2 遺伝子検査受診率、遺伝子変異陽性の有無につ
いて検討し、遺伝子変異陽性者に関してその臨床病理学的特徴について解析
した。また、当院における HBOC 診療上での問題点や課題について検討した。
【結果】遺伝カウンセリング受診者 57 例のうち遺伝子検査を実施したのは 29
例 (51% ) であった。検査を受けない理由としては、「高額な検査費用」や「陽
性であった場合の血縁者への説明の困難さ」などが挙げられた。BRCA1/2 遺
伝 子 変 異 陽 性 者 は 9 家 系 11 例 (48 % ) で あ り、BRCA1:7 例 (24 % )、
BRCA2:4 例 (14% ) で、発端者が 9 例 ( 平均発症年齢 36.2 歳 )、保因者 2 例で
あった。発端者では、異時性両側性乳癌が 3 例 (33% ) であり、卵巣卵管癌合
併を 2 例 (22% ) に認めた。変異陽性者のうち 5 例は当院にて二次予防検診を
行っているが、乳癌二次検診予防で年一回の MRI 検査を行ったところ、当院
でフォロー中の 5 例のうち 3 例に濃染像を認めたため、MRI ガイド下生検を前
提に厳重フォロー中である。
【考察】HBOC 対象者をカウンセリングにリクルー
トすることはできても、高額な検査費用の問題などで遺伝子検査実施率は低
下していた。当院の BRCA1/2 遺伝子変異陽性乳癌症例の臨床病理学的解析か
らも、対側乳癌の発症や卵巣癌の発症について一次予防に関する選択肢を含
めて変異陽性者へ提示するべきであるが、保険適応の問題から環境整備が進
んでいないのが現状である。乳癌・卵巣癌に対する一次 / 二次予防診療体制を
整え、BRCA1/2 遺伝子検査によって享受される HBOC 診療の必要性とメリッ
トを啓発していくことが課題である。
DP-2-99-05
DP-2-100-01
岩国医療センター 外科
信州大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
金谷 信彦、荒田 尚、田中屋 宏爾
家里 明日美、小野 真由、大場 崇旦、福島 優子、花村 徹、伊藤 勅子、
金井 敏晴、前野 一真、伊藤 研一
本邦 Lynch 症候群における乳癌の累積罹患率と対策
当科で経験した HBOC 診療対象乳癌症例の臨床病理学的検討
背景:Lynch 症候群 (LS) はミスマッチ修復遺伝子 (MMR) の生殖細胞系列変異
を原因とする常染色体優性遺伝性疾患で、大腸、子宮内膜,胃などの関連腫
瘍を若年で高率に発症する.本邦では,大腸,子宮内膜癌のサーベイランス
についての報告は散見されるが,乳癌の対策についての報告はほとんどない.
対象と方法:1987 年 1 月~ 2014 年 11 月に LS の遺伝子検査を施行し,MMR
遺伝子変異陽性であった自験例とその第1近親者の女性を対象とした.レト
ロスペクティブな診療録調査により,腫瘍スペクトラム,初発乳癌の累積罹
患率について解析した.遺伝子検査は,MLH1,MSH2,MSH6 についてダイ
レクトシークエンス法および MLPA 法を用いて施行した.結果:女性の MMR
遺 伝 子 検 査 陽 性 群 は,10 名 で あ っ た.MMR 遺 伝 子 変 異 (MLH1:MSH2:
MSH6) は各々 7:3:0 名であった.MMR 遺伝子変異保持者と第 1 近親者の
合計 72 名であった.女性の腫瘍スペクトラムは,合計 65 病変中,大腸 32 病
変 (18 名 ), 子 宮 内 膜 12 病 変 (12 名 ), 胃 6 病 変 (3 名 ), 卵 巣 4 病 変 (4 名 ),
乳腺 5 病変 (4 名 ),その他 5 病変であった.乳癌の初発発症年齢の平均は,
62.4 歳 (47-73 歳 ) であった.1 名は,異時性多発癌を発症し,1 病変は,マ
イクロサテライト不安定性を示し,1 病変は示さなかった.乳癌のよる癌死は
な か っ た. 乳 癌 の 累 積 罹 患 率 は 50 歳:10.5%(2/19),60 歳:
11.7%(2/17),70 歳:33% (4/12) であった.観察平均期間は,平均 57.8
年 (22-88 年 ) であった.考察:遺伝性乳癌卵巣癌症候群 (HBOC) は,最も頻
度の高い家族性乳癌であり,若年発症するため,25 歳からの半年ごとの MRI
や 1 年ごとのマンモグラフィーが推奨されている.LS 症例による乳癌罹患率
は,散発性乳癌の罹患率より高ったが,HBOC より低い結果となった.また
LS 関連腫瘍である大腸や子宮内膜癌のような若年発症する傾向もなかった.
乳癌は,一般的にも発生頻度が高く,一般的な検診をしっかり行うことが重
要であると思われた.
【はじめに】当科で経験した乳癌症例の中で ,HBOC を疑う対象となる症例の特
徴や遺伝カウンセリング ,BRCA 遺伝子検査の実施状況を検討した 【
. 対象】
2001 年 ~ 2014 年 6 月 に 当 科 で 手 術 を 施 行 し た 乳 癌 症 例 は 1234 例 , う ち
NCCN ガイドライン一次拾い上げ対象者は 424 例 (34.4%) であった . 遺伝カ
ウンセリング受診は 19 例 (1.5%),BRCA1/2 検査を受けたのは 7 例 (0.6%) で
あった 【
. 結果】NCCN 拾い上げ対象者の診断時平均年齢は 42.9 ± 8.5 歳で , 非
対象者の 62.3 ± 10.3 歳に比し有意に若年であった (p < 0.01). 女性 422 例 ,
男性 2 例 . 病理学的因子では , 拾い上げ対象者では triple negative (TN), 術前
化学療法 (NAC) 施行例が有意に多く (p < 0.01),ER 陽性率 ,HER-2 type の割
合 , 腫瘍径 , リンパ節転移 (n), 病期 , 組織学的悪性度 (HG), 非浸潤癌の割合に
は差を認めなかった . 遺伝カウンセリング受診者 ( 全例女性 ) の平均年齢は
43.6 ± 9.2 歳で , 非受診者の 55.7 ± 13.3 歳に比較して有意に若年であった .
Luminal type 7 例 ,Luminal HER-2 4 例 ,TN 1 例 ,HER-2 type 4 例で , カウン
セリング受診者では HER-2 陽性例が有意に多く (p < 0.01), また HER-2 type
が多い傾向が見られた (p=0.052) が,TN は 1 例 (5.9%) と非受診者 (7.2%)
と差を認めなかった . また , カウンセリング受診者では NAC 施行例が有意に多
く (p < 0.01),ER や 腫 瘍 径 ,n, 病 期 ,HG,DCIS に は 差 を 認 め な か っ た .
BRCA1/2 検査施行 7 例のうち 2 例に BRCA1 変異が同定された .1 例は若年の
TN で , 本人の問診からの情報は母親の乳癌の既往のみであったが , カウンセリ
ング時に当院婦人科の診療録から , 母が 30 代で両側性乳癌 ,50 代で卵巣癌を
発症し死亡されていたことが分かった . もう 1 例は濃厚な家族歴を有する
Luminal HER-2 type で あ り ,2000 年 に BRCA1 exon11,BRCA2 exon11 検
査 ( 大塚アッセイ ) を受けたが , いずれも陰性であった . その後 , 本人が対側多
発性乳癌を , 妹も乳癌を発症したため ,BRCA1/2 検査 ( ファルコ ) を施行した
ところ ,BRCA1 変異陽性と診断された 【
. 考察】NCCN 拾い上げ対象者 , 遺伝カ
ウンセリング受診者ともに NAC 施行例が多く認められ , 遺伝的に高リスクで
はあるが , 進行して発見される症例が多くなっていた . 遺伝カウンセリング受
診者で若年者が多く認められたが , これは HBOC に対する意識の高さを反映し
ていると思われる . また患者本人からだけでは十分な情報を得ることが難しい
場合があるので , 家族歴が無くても , 若年症例は積極的に拾い上げていく必要
があると考えられる .
440
ポスター討議
DP-2-100-02
DP-2-100-03
九州大学 臨床腫瘍外科(第一外科)
1
乳癌家族歴と臨床病理学的特徴
異時・同時両側乳癌の第 1 癌と第 2 癌の比較検討
3
森 瞳美、久保 真、山田 舞、松下 章次郎、田中 雅夫
林 孝子 1、佐藤 康幸 1、加藤 彩 1、大岩 幹直 2、森田 孝子 3、須田 波子 3、
森谷 鈴子 4、長谷川 正規 4、市原 周 4
【目的】乳癌罹患数の増加に伴い両側乳癌症例を経験する機会も増えている。
今回我々は 1994 年~ 2013 年に経験した両側乳癌症例について臨床病理学的
に特徴があるかどうか比較検討した。異時両側乳癌は第 1 癌と第 2 癌の手術間
隔が 1 年以上あるものとし、同時両側乳癌は手術間隔が 1 年以内で先に手術さ
れたものおよび発見契機側を第 1 癌として検討した。【対象と方法】1)1994 年
~ 2013 年に当院で手術を施行した原発乳癌 2822 例のうち両側乳癌 159 例
(5.6%)の発生頻度を比較した。2)2004 年以降の両側乳癌 111 例中病理組織
が判明している 84 例について異時第 1 癌(A)第 2 癌(B)・同時第 1 癌(C)第 2
癌(D)に 分 類 し 年 齢、 家 族 歴 の 有 無、 非 浸 潤 癌 の 有 無、 サ ブ タ イ プ
LuminalA(ER+HER2-),LuminalB(ER+HER2+),HER2,、
TripleNegative(TN)(ER-HER2-)を調査した。【結果】1)1994-2003 年 1016
例における両側乳癌は 48 例(4.7%)異時 31 同時 17 例であった。2004-2013
年 1806 例における両側乳癌は 111 例(6.1%)異時 55 同時 56 例であった。2)
病理検索可能な 84 例(異時 29 同時 55)のうち異時第 1 癌(A)は平均 55.3 歳、
第 2 癌(B)は 58.5 歳、同時(C,D)は平均 59.9 歳であった。家族歴のあるもの
は異時 13.9%、同時 30%あったが家族性乳癌の定義を満たすものはなかった。
非浸潤癌の割合は A:51.7%、B:51.7%,C:20%、D:41.8% であった。サブ
タイプでは LuminalA(A:64.3、B:69,C:70.9,D:71.7%)、LuminalB(A:7.1,
B:3.4,C:7.3,D:5.7%),HER2(A:7.1,B:13.8,C:9.1,D:9.4%),TN(A:21.4,B
:13.8,C:12.7,D:13.2% ) 左右サブタイプ一致率は異時 69%、同時 76.4%、
で あ っ た。 異 時 両 側 乳 癌 に お い て の 手 術 間 隔 は luminalA:4.3 年、
LuminalB:1.7 年、HER2:3.2 年、TN:3.8 年であった。【考察】10 年で 1.4%
両側乳癌の増加を認めた。同時両側乳癌の増加や同時両側第 2 癌に第 1 癌より
非浸潤癌が 2 倍以上多い結果は診断能の向上によると推察する。サブタイプ別
では同時両側に LuminalA が多く、異時第 1 癌に TN が多い傾向が見られた。
手術間隔は第 1 癌が luminalA であるものが他のものより長い傾向が窺えた。
両側乳癌について今後も検討を重ねていきたい。
DP-2-100-04
DP-2-100-05
1
亀田総合病院 乳腺センター
当科における両側乳癌症例の検討
当院における両側性乳癌 212 例の検討
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科、
2
新潟県立がんセンター新潟病院 病理診断科
土田 純子 1、金子 耕司 1、神林 智寿子 1、辰田 久美子 1、勝見 ちひろ 1、
佐藤 信昭 1、本間 慶一 2
【目的】両側乳癌症例の臨床病理学的特徴を明らかにし、特に異時性両側乳癌
の診断、治療への対策に役立てることを目的とした。【対象と方法】20002010 年の原発乳癌手術症例 3265 例より両側乳癌症例を抽出した。異時の場
合、一側が期間内に含まれているものは検討対象とし、第一癌または第二癌
の詳細が不明な例は除外した。同時性乳癌 46 人 (92 例 )、異時性乳癌症例
187 人 (374 例 ) を対象とし、両群の臨床病理学的因子を比較した。なお、同
時性は 6 ヶ月以内の手術施行例とした。【結果】2000 年から 2010 年の期間内
に発生した両側乳癌の人数割合は、同時性乳癌で 1.5%(48/3158 人 )、異時
性乳癌で 6.5%(206/3158 人 ) であった。年齢中央値は同時性乳癌で 55.5 歳、
異時性第 1 癌で 48.0 歳、異時性第 2 癌で 59.0 歳であった。組織型は同時性、
異時性第一癌、異時性第二癌ともに浸潤性乳管癌の割合が最も多いが、非浸
潤性乳管癌は同時性で 15%、異時性第一癌で 11%、異時性第二癌で 18% と、
異時性第二癌では早期段階で発見される症例が多かった。乳房温存率は同時
性乳癌で 60%、異時性第一癌で 45%、第二癌で 74% と、異時性第二癌で乳
房温存率が高かった。異時性第二癌の発見契機は自己発見群で 44%、MMG
群で 38%、US 群で 7% であった。異時性第二癌の臨床診断における平均腫瘍
径 (cm) は自己発見群で 2.0cm、MMG 群で 1.0cm、US 群で 1.0cm であった。
異時性第二癌の発見契機ごとの非浸潤癌の割合は、自己発見群で 8%、MMG
群で 31%、US 群で 25% であった。異時性第二癌の平均浸潤径 (cm) は自己
発見群で 1.8cm、MMG 群で 1.4cm、US 群で 1.4cm であった。異時性第一癌
発症から第二癌発症までの期間の中央値は、84 か月で、発見経緯別では自己
発見群で 131 か月、MMG 群では 75 か月、US 群で 61 か月であった。特に、
MMG,US では Stage I の発見割合が多かった。
【結論】異時性第二癌は術後フォ
ローアップ中により早期に発見される症例が多く、乳房温存率も高い。異時
性第二癌の早期発見のためには MMG が有用であるが、US によるさらなる早
期発見の可能性についての検討が必要である。10 年間のフォローアップ期間
後に自己発見される症例もあり、術後 10 年以降も自己触診することの重要性
が示唆された。
441
佐川 倫子、中川 梨恵、寺岡 晃、山城 典恵、坂本 尚美、越田 佳朋、
坂本 正明、戸崎 光宏、福間 英祐
<目的>薬物療法や診断技術の進歩に伴い、両側性乳癌は増加している。当
院における両側性乳癌症例に関して検討した。<対象と方法> 2007/1 ~
2014/11 の期間に当院で手術をした乳癌 2887 例のうち、両側性乳癌に対し
て retrospective に、患者背景、乳癌発見契機、Stage や術式に関して検討した。
<結果>両側性乳癌は 212 例、同時性は 119 例、異時性は 93 例であった。同
時性乳癌では、年齢 34-86 才(中央値 53 才)
、第 2 度近親者以内の乳癌卵巣癌
の家族歴がある人は 23 人。発見契機は、自覚症状ありが 65 例(うち5例は対
側にも自覚症状あり)、検診で要精査が 53 例(うち 16 例が検診で対側の異常)
も指摘、内臓疾患のフォローの CT で指摘1例(対側も同時に指摘)。乳癌精査
の 過 程 で 対 側 乳 癌 が 指 摘 さ れ た 97 例 は、MMG で の 発 見 10 例、US49 例、
MRI で異常指摘されたのが 38 例であった。異時性乳癌では、第一癌時の年齢
27-79 才(中央値 47 才)第二癌時の年齢は年齢 36-92 才(中央値 59 才)。家族
歴がある人は 16 例。第一癌の発見契機としては、自覚症状ありが 24 例、検
診が 20 例、他癌術後フォローのCTで異常指摘が 1 例、不明 48 例であった。
第二癌の発見契機は、自覚症状ありが 17 例、検診や術後のフォローで発見さ
れたのが 72 例肺炎や外傷の精査の CT で指摘されたのが 4 例であった。第一
癌術後より第二癌発見までの期間は、12-420 ヶ月(中央値 88 ヶ月)同時性乳
癌の年齢と異時性乳癌の第一癌時の年齢を比較したところ p=0.0000008 <
0.05 で有意に異時性乳癌の第一癌の年齢の方が若かった。術後の DFS に関し
て検討したが、同時性乳癌と異時性乳癌では DFS は差がなかった (p=0.12)。
<考察>対側乳癌の診断において MRI・MRI ガイド下生検は非常に有用であ
ると考えられた。また、術式では、両側の術式が一致することも多かったが、
片側が全摘であっても、対側は温存や non-surgical ablation を選択するこ
とも多く、患者によって術式の選択は多様性があることが示唆された。両側
乳癌に関しても文献的考察を加えて報告する。
一般セッション(ポスター討議)
【背景】遺伝性乳癌は全乳癌の 7 ~ 10% を占めると言われている。遺伝性乳癌
のハイリスク群を拾い上げるうえで家族歴の聴取は大きな役割を占める。【目
的】当院で手術を施行した患者の家族歴の有無を調査し、病理学的特徴との関
連を検討する。【方法】2005 年 1 月から 2013 年 12 月までの当院における原発
性乳癌手術症例 801 例 ( 平均年齢 56.5 歳、男女比 4:797) を対象とし、3度近
親 者 ま で の 家 族 歴 情 報 を カ ル テ よ り 収 集 し た。【 結 果 】801 例 中 116 例
(12.7%)で第三度近親者内に乳癌家族歴を認めた。内訳は乳癌1人が 97 例、
乳癌2人もしくは両側乳癌1人が 17 例、乳癌3人が1例、乳癌2人+両側乳
癌 1 人 が 1 例 で あ っ た。 家 族 歴 を 有 す る(+)群 の サ ブ タ イ プ は Luminal
58%、Luminal-HER2 23%、HER2-enriched 10%、basal-like 9% である
のに対し、家族歴を有さない(-)群では Luminal 74%、Luminal-HER2 8%、
HER2-enriched 7%、basal-like 11% であった。年齢別では 35 歳未満で家
族歴(+)群が 25.0% であるのに対し、35 歳以上では家族歴(+)群が 14.2%
であった。さらに 35 歳未満のサブタイプを見ると、家族歴(+)群は Luminal
60%、Luminal-HER2 20%、HER2-enriched 0%、basal-like 20% である
の に 対 し、 家 族 歴(-)群 は Luminal 73%、Luminal-HER2 8%、HER2enriched 8%、basal-like 11% であった。また家族歴(+)群の核グレードは、
NG1 70%、NG2 13%、NG3 13%、不明 4%、Ki67 平均値は 18.5 であるの
に対し、家族歴(-)群の核グレードは、NG1 62%、NG2 15%、NG3 19%、
不明 4%、Ki67 平均値は 17.9 であった。【結論】家族歴(+)群は家族歴(-)群
と比較し Luminal が少なく、Luminal-HER2 が多い傾向にあった。35 歳未満
の若年者乳癌では 35 歳以上と比較し家族歴(+)群が多く、さらに 35 歳未満
の家族歴(+)群は家族歴(-)群と比較し Basal-like や Luminal-HER2 が多い傾
向にあった。核グレード、Ki-67 値の分布は、家族歴(+)群と家族歴(-)群と
で大きな差は認めなかった。【結語】家族歴を有する群に若年者、トリプルネ
ガティブ、トリプルポジティブが多い傾向にあった。また、家族歴は日々更
新されて行くものであり、外来診療に於いて定期的に継続して聴取する必要
がある。初診時の医師記載では家族歴 (+) 群は 7% 程度であったが、今回患者
問診など再調査することにより 12.7% に増加した。意識的な家族歴聴取の積
み重ねが、遺伝性乳癌ハイリスク群の拾い上げに最も重要であると考える。
国立病院機構 名古屋医療センター 外科、2 同 放射線診断科、
同 乳腺科、4 同 研究検査科病理部
ポスター討議
DP-2-101-01
DP-2-101-02
1
1
最終出産からの年数が浅いことがホルモン感受性を低下させて
若年者(30 歳未満)乳癌の予後に影響する
若年者乳癌 69 例の挙児希望・術後出産・予後からみた生殖補助
医療技術(ART)のニーズと課題
がん研有明病院 乳腺センター 乳腺外科、
がん研有明病院 乳腺センター 乳腺内科、3 がん研有明病院 画像診断部、
4
がん研有明病院 放射線治療部、5 がん研究会 がん研究所 病理部、
6
がん研有明病院 遺伝子診療センター、
7
日本医科大学 武蔵小杉病院 乳腺外科
2
蒔田 益次郎 1,7、坂井 威彦 1、片岡 明美 1、北川 大 1、荻谷 朗子 1、
森園 英智 1、飯島 耕太郎 1、宮城 由美 1、小林 心 2、小林 隆之 2、
深田 一平 2、荒木 和浩 2、高橋 俊二 2、伊藤 良則 2、五味 直哉 3、
小口 正彦 4、喜多 瑞穂 6、新井 正美 6、秋山 太 5、岩瀬 拓士 1
一般セッション(ポスター討議)
若年者乳癌の予後不良の原因として発見の遅れなどが指摘されている。そこ
で腫瘍径の影響を除いて年齢が予後に及ぼす影響について検討した。[ 対象お
よび方法 ]1986 年~ 2002 年の 45 歳未満乳癌 2300 例 ( 全症例 9713 例 ) の中
から非浸潤癌、遠隔転移陽性例、異時両側第 2 癌、同時両側乳癌を除外すると
1880 例で、30 歳未満をケースとして 15 歳プラスした年齢(例えば 23 歳なら
38 歳)、手術年を± 1 年、腫瘍径をマッチさせた症例をコントロールとした。
同時期の妊娠関連乳癌 (PABC:妊娠期+産後 1 年以内 )47 例も参考にして、
30 歳未満群、プラス 15 年群の 2 群で無再発生存率(RFS)を比較した。観察期
間中央値 10.8 年。ホルモンレセプターは EIA 法で、ER は 5 f mol/mg 以上、
PgR は 10 f mol/mg 以上を陽性とし、陽性例を中央値(ER 21、PgR 95)
で 2 分して、陰性、陽性、強陽性とした。最終出産後年数はイベント発生の
ROC 曲線のカットオフ値から 8 年で 2 分した。[ 結果 ] プラス 15 年群に比べて
30 歳未満群では産後 8 年以上が少なく、部分切除が多く、硬癌・充実腺管癌
の比率が高く、ホルモンレセプター陰性例が多かった。PgR 陰性症例の割合
をみるとプラス 15 年群(29.9%)、30 歳未満群(45.1%)と差がみられ、産後
年数でみると産後 8 年以上、出産歴なし、産後 8 年未満、PABC の順に増加し
(31.9 %、37.7 %、44.4 %、65.7 %)、 強 陽 性 症 例 の 割 合 は 逆 に 減 少 し た
(42.6%、30.2%、22.2%、8.6%)。10 年 RFS は 30 歳未満群 61.7%、プラ
ス 15 年群 65.6%で差は見られず(p=0.387)、PABC も 54.1%で差はなかっ
た。2 群合わせて予後因子ごとに見ると、産後 8 年以上の 10 年 RFS は 72%で
出産歴なし・出産後 8 年未満は 59.3%で差がみられた(p=0.0399)。他の有
意な因子(腫瘍径、リンパ節転移、組織型、波及度、脈管侵襲、化学療法、
PgR)に 30 歳未満・プラス 15 年群を加えた Cox の比例ハザードモデルではリ
ンパ節転移 (4 ~ 9 個、HR:3.39、95% CI:1.36 ‐ 8.43、p=0.009、10 個
以上 HR6.71、2.03-22.18、p=0.002) と産後年数 8 年以上(HR0.42、0.190.96、p=0.039)、 充 実 腺 管 癌 (HR3.35,1.35 ‐ 8.29,p=0.009)、 硬 癌
(HR2.29,1.01-5.20、p=0.047)が有意な因子で、30 歳未満は有意な因子で
はなかった。 [ まとめ ]30 歳未満の症例の予後は腫瘍径を合わせれば 15 歳高
齢の乳癌と変わらず、多変量でも独立した因子ではなかった。出産からの年
数が浅いほどホルモン感受性が低下して 30 歳未満乳癌の予後に影響すること
が示唆された。
久保田 陽子 1、福永 真理 1、甲斐 裕一郎 1、上尾 裕昭 1、宇都宮 隆史 2、
河邉 史子 2、熊迫 陽子 2、小池 恵 2
【はじめに】若年者乳癌では根治的治療とともに、将来の挙児希望にも配慮が
必要となる。そこで、当院における若年者乳癌 69 例の挙児希望・術後出産状
況を解析し、ART(卵子・受精卵保存)の情報提供のニーズと課題について検
討した。【結果】
(1)対象と婚姻状況:2002 年の開院後の乳癌手術 2,645 例
のうち若年者(手術時に 34 才以下)は 69 名(2.6%)で、未婚・離婚 43 名、既
婚 26 名であった。(2)挙児希望:手術時に将来の挙児希望者は 49 名(未婚:
39 名、既婚:10 名)で 55.1%を占めており、妊孕性に関する IC の重要性が
示された。
(3)挙児希望の達成状況:挙児希望者 49 名のうち出産 5 例(10.2%)、
妊 娠 中 1 名(2.0 %)。 残 り 43 例 で 妊 娠 に 至 っ て い な い 理 由 は 未 婚 17 例
(39.5%)、治療継続中 15 例(34.9%)、不妊 6 例(14.0%)、再発 4 例(9.3%)、
他病死 1 例(2.3%)であった。浸潤癌症例のなかで、出産準備条件(術後補助
療法の完了+既婚+再発なし)を満たしたのは 10 名おり、このうち出産者は
4 名(36.4%)、妊娠中 1 名(9.1%)であったが、残り 5 名は妊娠出産に至らず、
不妊外来に通院する症例もあった。術後化学療法後の月経の回復率は高率で
あったが、実際の妊娠・出産の確率は低いことが伺われた。(4)術後出産の状
況:出産者 5 名ののうち DCIS(1 例)では術後薬物療法は不要だったが、他の
4 例は中間リスクの浸潤癌で化学療法を受け補助療法完遂後に妊娠・出産をし
ていた。出産後年数は 1 ~ 7 年に亘るが全例で母子ともに健在である。(5)予
後:St.Gallen 基準に沿って補助療法を選択し、再発低リスク群では再発はな
かったが、高リスクの 12 名中 6 例(50.0%)、中間リスクの 44 例中 4 名(9.1%)
の合計 10 名が術後 10 年以内に再発死亡しており、若年者乳癌の予後は不良
であることが再認識された。(6)ART の対象者:「採卵時に投与する女性ホル
モンに感受性のある乳癌」「予後不良とされる症例」では ART 施設への紹介が
躊躇されるが、ハードルの低いと思われるホルモン非感受性乳癌は浸潤癌 63
例のうち 19 例(30.2%)、再発低リスク症例は 6 例(9.5%)であった。【まとめ】
若年者乳癌では挙児希望者が多く「妊孕性と ART に関する情報提供」の必要性
が浮き彫りにされた。ART 施設へ紹介の際には個々の乳癌の oncology を加味
しながら、本人・家族と乳癌主治医による慎重な協議が必要である。
DP-2-101-03
DP-2-101-04
40 歳未満乳癌手術症例の検討
1
若年者乳癌の発育進展形式についての検討
新潟市民病院 乳腺外科、2 新潟市民病院 病理診断科
1
1
うえお乳腺外科、2 セントルカ産婦人科
1
2
坂田 英子 、牧野 春彦 、上原 拓明 、渋谷 宏行 、橋立 英樹
1
3
2
【背景】対策型乳がん検診の対象は 40 歳以上が基本であるため、40 歳未満の
場合は、任意検診以外には自覚症状なしに乳癌を発見することは困難である。
治療成績向上のためエビデンスに基づいた乳癌手術前後の薬物療法が推奨さ
れる一方で、近年の初婚・初産年齢高齢化を背景に、妊孕性保持の観点での
QOL 低下に悩む症例も少なくない。【目的】40 歳未満乳癌手術症例における臨
床病理学的因子と結婚・出産に関する因子を解析するとともに、薬物療法実
施による QOL 低下回避の糸口を模索する。【対象と方法】2007 年 11 月から
2014 年 12 月までに当科で施行した原発性乳癌手術 1047 例中、40 歳未満の
86 例 (8.2%) を対象に、出産歴、臨床病理所見、術後薬物療法施行歴、治療
成績につき検討した。【結果】患者年齢中央値は 36(28-39) 歳、未婚者は 19
例 (22.9% )、未出産者は 27 例 (32.5% )、授乳期を含む妊娠期乳癌 5 例 (6% )
であった。16 例 (19.2% ) に 3 親等までの乳癌家族歴を認めた。発見動機は腫
瘤自覚 90.4%、乳頭分泌 8.4%、検診 6.7%、乳房痛 3.6%、変形 2.4%( 重
複あり ) であった。病悩期間中央値 2(0.2-120) か月であり、75%の症例が専
門科以外の近医を受診していた。マンモグラフィー陰性例は 13%であった。
病 期 は 0 期 5 例 (6%)、I 期 27 例 (32.5%)、IIA 期 11 例 (13.2%)、IIB 期 20
例 (24.1%)、IIIA 期 14 例 (16.9%)、IIIC 期 4 例 (4.8 % )、IV 期 2 例 (2.4%)
であった。サブタイプは、Luminal A 30%、Luminal B 31.3%、Luminal B
HER2 15.6%、HER2 8.4%、Triple negative 13.2% であった。薬物療法未
施行例は、0 期 2 例と挙児希望の I 期 Luminal A1 例、計 3 例のみであった。化
学療法は、IIA 期浸潤小葉癌 1 例と IV 期 2 例を除く II/III 期全例と、I 期でも
低リスク Luminal A を除く 67%、全体の 78%に施行されていた。未出産者 2
例が化療開始前に卵子保存を行った。ホルモン療法は、0 期で 60%、I 期では
Luminal AB 乳癌のうち挙児希望 1 例を除く全例、全体の 77%に施行され、挙
児希望のための治療中止例 2 例中、1 例が出産した。f/u 中央値 36(2-86) か月
において再発 12 例、乳癌死 4 例であり、死亡例の 75%に遺児を認めた。【結語】
40 歳未満乳癌症例において薬物療法を完全に回避できる症例は少ない。根治
性と患者背景を考慮した上での治療戦略を立てることが重要である。40 歳未
満症例でもマンモグラフィー陽性例は 87%あり、自己検診・任意検診を含め、
しかるべき医療機関への受診など乳癌発見のための啓蒙活動が必要である。
がん研究会有明病院 乳腺センター 外科、2 がん研究会有明病院 病理部、
立川相互病院 外科、4 日本医大武蔵小杉病院 乳腺外科
新堰 佳世子 1,3、蒔田 益次郎 1,4、北川 大 1、貴志 美紀 1、井上 寛章 1、
鈴木 えりか 1、師尾 典子 1、照屋 なつき 1、荻谷 朗子 1、坂井 威彦 1、
森園 英智 1、飯島 耕太郎 1、宮城 由美 1、秋山 太 2、岩瀬 拓士 1
若年者乳癌(35 歳未満)の乳癌は発見の遅れにより進行した症例が多いといわ
れている。しかし、一方で非浸潤癌も頻度的には他の年齢層よりも高い。な
ぜこのような現象が見られるのか、若年者のほうが乳管内進展をしてから随
処に浸潤を起こす、あるいは増殖能が高くはじめから浸潤した腫瘤が急速に
成長するために治療時に大きい、などが仮説として考えられる。そこで 35 歳
未満と 35 歳以上の閉経前乳癌とで進展形式、臨床病理学的な因子に特徴があ
るか検討した。
【対象および方法】対象は 2007 年から 2012 年までの 6 年間に手術を施行され
た遠隔転移のない閉経前の症例とし、35 歳未満(以下若年)264 症例と 35 歳
以上の閉経前乳癌 ( 以下非若年 )2828 症例を比較検討した。進展形式について
は組織型分類を利用して非浸潤癌と乳頭腺管癌を乳管内進展型とし、充実腺
管癌と硬癌を腫瘤形成型として 2 つに分けて検討した。なお Subtype は免疫
組織学的にホルモンレセプターと HER2 の判定により分類した。
【結果】浸潤径で検討すると、非浸潤癌(浸潤径= 0)
:5mm 以下:10mm 以下:
15mm 以 下:20mm 以 下:25mm 以 下:26mm 以 上 の 割 合 は 若 年 で は
26%:15%:9%:11%:13%:6%:20%、一方非若年は 22%:14.5%:
14%:15%:11%:7%:16.5% となり、若年は非若年よりも非浸潤癌と浸
潤径の大きい乳癌で割合が高いことが示された。浸潤癌の組織型別の割合は
若年で乳頭腺管癌 25%、充実腺管癌 20%、硬癌 24%、その他 5%、非若年
では 25%、12%、34%、7% であった。乳管内進展型(非浸潤癌 + 乳頭腺管癌)
としてみると若年 51% vs 非若年 47% となり、若年で過半数を占めた。乳頭
腺管癌で浸潤巣の数を検討すると、多発浸潤が若年 53% vs 非若年 39% と、
若年では半数以上が多発浸潤であった。腫瘤形成型(充実腺管癌 + 硬癌)とし
て Subtype を み る と、 ト リ プ ル ネ ガ テ ィ ブ(TN)は 若 年 26% vs 非 若 年
11.4%、HER2 は若年 6% vs 非若年 4.7%、Luminal-HER2 は若年 14% vs
非若年 7.7%、Luminal は若年 54% vs 非若年 76.2% であった。また、組織
学的グレードについても若年で NG1 19%:NG2 38%:NG3 43%、非若年は
39.3%:38.2%:22.5% で、若年で NG3 が多かった。
【まとめ】若年者では乳管内進展する乳癌が半数を占め、浸潤するときは多発
浸潤を起こしやすい。一方、浸潤して腫瘤を形成していく場合は TN や HER2
が多いため急速に成長して浸潤径が大きくなることが示唆された。
442
ポスター討議
DP-2-101-05
DP-2-102-01
当院における経口避妊薬使用歴の有無と乳癌発症リスクの対照
症例研究
ホルモン陽性閉経前乳癌における化学療法後月経回復時期の検討
1
2
対馬ルリ子 女性ライフクリニック 銀座
国立病院機構 九州がんセンター 乳腺科、
国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター
古閑 知奈美 1、厚井 裕三子 1、秋吉 清百合 1、及川 将弘 1、西村 純子 1、
中村 吉昭 1、石田 真弓 1、大野 真司 2
【背景】低用量経口避妊薬(OC)は、日本では 1999 年に許可された合成エスト
ロゲンと黄体ホルモンの合剤であり、現在日本女性の普及率は約5%と推定
されるが、欧米の普及率(英 28.0%、仏 40.6%、米 16.3%:国連の調査によ
る)と比べるとかなり低い。2013 年版の乳癌診療ガイドラインには、OC の使
用は乳癌発症リスクを増加させる可能性があると結論に至っているが、OC の
歴史が短く、普及率も低い日本では、乳癌発症のリスクとの関連については
報告がまだ少ない。当院では、乳癌検診を受けた女性の約 3 割に OC 使用歴が
あった。【方法と対象】2007 年 1 月から 2013 年 12 月まで、当クリニックで自
費乳癌検診(住民・職域検診を除く)を受けた女性総数 24,334 名が対象(平均
年齢 40.5 歳)。このうち受診者の重複を除き、乳癌と病理学的に診断された
症例 163 名と、対照 12,755 名の計 12,918 名を分析した。全例に対して乳癌
検診前に本人記入のアンケートを実施。OC の使用歴の有無や使用状況(現在
使用中か過去の使用か、使用期間)を調査し、乳癌発症リスクとの関連を症例
対照研究の手法で調べた。また同様に閉経前か後か、出産歴の有無、授乳歴
の有無、乳癌の家族歴の有無も聴取し、それらを含めたロジスティック多変
量解析を行った。
【結果】OC 使用歴のある女性は、使用経験のない女性に比べ
乳癌発症のリスクは有意に低くなった。〔オッズ比(OR):0.64、95%信頼区
間(CI):0.44-0.92〕また多変量解析でも閉経前で、現在 OC を使用している
女性は、使用経験のない女性に比べて、年齢、出産歴と授乳歴、乳癌の家族
歴の有無で調整し分析すると、乳癌発症リスクが有意に低くなった。
(OR:0.49
、95% CI: 0.27-0.91)【考察】今回の当院の研究では、OC 使用が乳癌発症
のリスクを増加させなかっただけでなく、リスクを減少させるという、乳癌
学会のガイドラインの見解とは異なる結果となった。この原因については、
今回の分析対象年齢が乳癌の好発年齢に比べて若いという問題や乳癌のリス
クが低い女性が OC を使用している可能性(潜在的に高リスクの女性は OC を
使用しない)、まだ使用期間が短いことなどがあげられる。今後日本人におけ
る OC と乳癌発症リスクについては長期的な調査・研究が必要だと考える。
【はじめに】SOFT trial の結果(2014 年)から、35 歳未満の ER 陽性乳癌で再発
高リスク群において、LHRH agonist をタモキシフェンに併用することで再発
が有意に抑制されたことが報告された。SOFT trial の対象は、化学療法を行っ
ていない、もしくは化学療法後 8 ヵ月(中央値)以内に月経が回復した症例で、
実 臨 床 に お い て は 化 学 療 法 誘 発 に よ る 無 月 経(chemotherapy induced
amenorrhea: CIA)後の卵巣機能の回復に関する情報が重要であるがその報
告は少ない。【目的】当院にて閉経前ホルモン陽性乳癌で化学療法をおこなっ
た 30 ~ 49 歳の症例について月経の回復状況について報告し、LHRH agonist
の併用について考察する。【対象・方法】2004 年~ 2009 年の間の閉経前ホル
モン陽性乳癌症例において、化学療法後のホルモン治療で LHRH agonist を併
用していない 30 ~ 49 歳の 83 例を対象とした。化学療法の内訳は、FEC(or
EC) → Taxan: 67 例、EC: 13 例、TC: 3 例であった。症例を 5 歳毎(30-34 歳 :
5 例、35-39 歳 : 13 例、40-44 歳 : 30 例、45-49 歳 : 35 例)に分け、各年代
別に CIA の有無や回復時期、治療経過について検討した。【結果】術後 3 年以
上月経が回復しなかった率は、30-34 歳 : 0%、35-39 歳 : 0%、40-44 歳 :
40% (12 例 /30 例 )、45-49 歳 : 83% (29 例 /35 例 ) であった。また、月経
の回復時期を 1 年以内 , 1 ~ 2 年 , 2 年以上でみると、30-34 歳 : 80%, 20% ,
0%、35-39 歳 : 31%, 38%, 31%、40-44 歳 : 17%, 30%, 13%、45-49 歳 :
0%, 9%, 8%であった。また、各年代の月経回復までの期間の中央値は、
30-34 歳 : 5ヵ月、35-39 歳 : 18 ヵ月、40-44 歳 : 16.5 ヵ月(月経回復した
症例での解析)、45-49 歳 : 27.5 ヵ月(月経回復した症例での解析)であった。
現時点での再発 / 死亡は、30-34 歳 : 1 例 /0 例、35-39 歳 : 1 例 /0 例、40-44
歳 : 1 例 /0 例、45-49 歳 : 4 例 /3 例であった。【結語】年齢が上がるほど、化
学療法後に無月経が誘発されそのまま閉経してしまう確立が高い。月経の回
復については、若年であるほど化学療法終了後から早期(1 年内)に月経の回
復を認め、35 歳未満では、半年程で(中央値)で卵巣機能が回復し、年齢が高
くなると 2 ~ 3 年かけて回復してくる傾向がある。LHRH agonist の併用法に
ついては、年齢やリスク同様に卵巣機能の回復時期も考慮して検討すること
が大切である。
DP-2-102-02
DP-2-102-03
化学療法により無月経となった閉経期の術後ホルモン感受性乳
癌患者における内分泌療法の検討
乳癌化学療法施行後の無月経期間の検討
1
3
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
東京医科大学 八王子医療センター 乳腺科、2 八王子乳腺クリニック、
東京医科大学 八王子医療センター 臨床腫瘍科
石川 裕子 1、柴崎 ゆかり 1、天谷 圭吾 1、松尾 聡美 1、三坂 武温 2、
平良 眞一郎 3、林 光弘 1
北條 隆、小倉 拓也、神谷 有希子、神保 健二郎、麻賀 創太、
岩本 恵理子、木下 貴之
ホルモン受容体陽性の乳癌患者に対して、術後内分泌療法は強く勧められて
いる。実臨床では、閉経前あるいは閉経期の症例においてはタモキシフェン
による治療が行われ、閉経後の症例においてはアロマターゼ阻害剤の使用が
行われている。様々な臨床試験の結果より、十分にエストロゲン濃度が低値
であるならばアロマターゼ阻害剤の薬剤効果が認められるといった報告もあ
る。今回我々は、術前術後の化学療法が施行された閉経期のホルモン感受性
乳癌患者に対する内分泌療法の現状をレトロスペクティブに情報を収集し検
討を行った。対象は 2007 年から 2008 年に当院で手術治療を行った 1021 症
例中、手術前後に化学療法施行により無月経となった閉経期(45 歳~ 55 歳)
のホルモン感受性乳癌患者 54 症例(術前化学療法施行症例は 23 症例、術後化
学療法施行症例は 31 症例)を対象とした。対象症例中の 49 症例は補助療法と
してタモキシフェンによる治療が行われ、5 症例はアロマターゼ阻害剤による
治療が行われた。補助療法としてタモキシフェンによる治療が行われた症例
の 21 症例(43%)は術後約 3 年目にアロマターゼ阻害剤へのスイッチが行わ
れた。今回の検討において、術後にアロマターゼ阻害剤を内服した症例とタ
モキシフェンからアロマターゼ阻害剤へスイッチした症例に月経回復を確認
した症例は認められなかった。しかし、過去の論文では、化学療法により卵
巣機能に障害を受け無月経になった症例のうち、アロマターゼ阻害剤を内服
することで約 30% に卵巣機能が回復するといった報告がある。我々の検討症
例において、化学療法により無月経となった症例がアロマターゼ阻害剤の服
用で月経再開とならなかった原因の一つとして、参考論文におけるアロマター
ゼ阻害剤使用開始時の年齢の中央値が 44 歳であったのに対して、我々の検討
症例でのアロマターゼ阻害剤使用開始の年齢の中央値が 51 歳と比較的高齢で
あったことが原因の一つと考えられた。化学療法により無月経となった患者
に対するアロマターゼ阻害剤の使用は月経の状況と服用時の年齢を考慮する
ことにより安全に使用できると考えられた。
<背景>化学療法誘発性無月経は、ホルモン受容体陽性乳癌患者においては
予後が良好といわれ、望ましい状態であるのに対し、妊孕性の維持を希望す
る若年者においては大きな問題となる。乳癌で頻用される化学療法レジメン
別の月経回復率に関してはいくつか報告があるものの、本邦の患者を対象と
した報告は少ない。現在、補助化学療法では、卵巣毒性の強いシクロフォスファ
ミドを併用する FEC 療法や TC 療法が主流であり、化学療法後はほとんどの症
例が、一時的または永久的に無月経状態になる。そのため、化学療法後に無
月経になったホルモン受容体陽性乳癌患者に対しては、年齢や予後因子を検
討し、タモキシフェンに LH-RH アゴニストの併用を施行している。そこで今
回我々は、補助化学療法後無月経になった症例における化学療法毎の無月経
期間、月経回復率を検討した。<方法>当院で乳癌の術前・術後補助療法と
して化学療法を施行した症例で、化学療法開始時に閉経前の 50 歳未満であり、
化学療法施行後 LH-RH アゴニストや他の化学療法を施行していない 43 例に
対し、年齢や無月経期間、施行した化学療法の種類について検討した。無月
経状態の判断は、自覚症状またはホルモン測定(FSH・エストラジオール)とし、
化学療法の種類は、FEC 療法併用と、それ以外の TC 療法について検討した。
<結果>症例の年齢は 28 ~ 49 歳(中央値 44 歳)、無月経期間は 3 ~ 69.4 月(中
央値 32.4 月)であった。43 例中 7 例が月経再開をみとめ、年齢は 28 ~ 41 歳
(中央値 36 歳)、無月経期間は 3-39.4 月(中央値 17.3 月)であった。月経再開
症例で FEC 療法を施行したのは 3 例、TC療法のみは 4 例で期間・年齢ともに
有意な差は認めなかった。また月経が再開しない群でも、41 歳以下は 4 例認
めるが、化学療法の種類に有意な差は認めなかった。<結語>今回我々の検
討の結果では 41 歳以下の患者では、月経状態の観察への注意が必要であり、
また無月経期間が 3 年以上経過しても月経が再開する症例もあり、臨床上注意
が必要と思われた。さらなる症例の追加と、論文的考察を加え報告する。
443
一般セッション(ポスター討議)
市田 美保、片岡 明美、倉林 理恵、菊池 弥寿子、石橋 祐子、高丸 智子、
吉田 玲子、明石 定子、野村 幸世、対馬 ルリ子
ポスター討議
DP-2-102-04
DP-2-102-05
1
がん研有明病院 乳腺センター 外科、
2
がん研有明病院 乳腺センター 乳腺内科
独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 大阪病院 乳腺・内分泌
外科
森園 英智 1、蒔田 益次郎 1、北川 大 1、荻谷 朗子 1、坂井 威彦 1、
飯島 耕太郎 1、宮城 由美 1、小林 心 2、深田 一平 2、高橋 俊二 2、
伊藤 良則 2、岩瀬 拓士 1
塚本 文音、木村 綾、笠島 綾子、樋口 奈苗、大井 香
DP-2-103-01
DP-2-103-02
1
1
若年乳癌患者の妊孕性予測因子の研究
LH-RH アゴニスト投与後の月経回復状況
一般セッション(ポスター討議)
【目的】閉経前ホルモン受容体陽性乳癌において、LH-RH アゴニスト投与後の
無月経からの回復の有無の判断は、タモキシフェンからアロマターゼ阻害薬
への内分泌療法の変更を考慮する上で重要である。LH-RH アゴニスト投与終
(はじめに)アンチミューレリアンホルモン(以下 AMH)は卵巣における小さな
了後の月経回復状況について検討を行った。
卵胞数と相関するとされ、卵巣の予備能を図る指標とされている。乳癌薬物
【方法】対象は根治手術を行った閉経前ホルモン受容体陽性乳癌患者 67 例。年
療法中に生じる一過性閉経状態に、どのような変化を示し、また卵巣機能を
齢 25 ~ 53 歳、中央値 43 歳。LH-RH アゴニストの投与開始時期は 2004 年 6
予測しうるか検討した。(目的)乳癌薬物治療による AMH の変化と妊孕性の検
月から 2010 年 8 月。投与期間は 2 年以上。投与終了後の観察期間 2 年 6 ヵ月
証。(対象)2011.8 から 2012.9 に根治手術を施行した原発性乳癌症例中、治
以上。再発例は除外。術前あるいは術後化学療法あり 28 例。タモキシフェン
療開始時、40歳未満、内分泌感受性陰性で、術前、または術後に化学療法
併用あり 64 例。
を行った8例。 平均年齢 35 歳(31-39)。薬物療法の内訳は、CEF(また
【結果】各群の月経の回復率、回復までの期間、中央値は、
は CAF)のみ:4 例。CEF- w PAC(または AC- w PAC):4 例。(方法)薬物療
(1)40 歳未満、化学療法なし:3/3 例 , 100%, 14 ~ 21 ヶ月(15 ヶ月)
法開始前、終了後、終了18ヶ月後の AMH,E2、LH,FSH を測定し、生理の回
復、妊娠の有無を確認した。(結果)AMH:薬物療法前 平均 4.68 ng/ml (2)40 歳未満、化学療法あり:14/14 例 , 100%, 6 ~ 26 ヶ月(12 ヶ月)
(3)40 歳以上、化学療法なし:19/36 例 , 53%, 2 ~ 33 ヶ月(10 ヶ月)
(1.85-15.4)、 薬 物 療 法 終 了 後 全 例 0.1ng/ml。E2 も 薬 物 療 法 後 は 全 例
(4)40 歳以上、化学療法あり:8/14 例 , 57%, 9 ~ 35 ヶ月(15 ヶ月)
10pg/ml 以下 LH FSH は治療前に比し増加していた。術後、内分泌感受
【結論】40 歳未満では化学療法の有無にかかわらず、全例で月経の再開を認め
性を認め、内分泌療法継続となった2例と術後1年以内に再発し薬物療法継
た。40 歳以上・化学療法あり群は、40 歳以上・化学療法なし群と比較し、月
続 し た 2 例、 計 4 例 は、 生 理 再 開 後 の 測 定 が で き な か っ た。 治 療 終 了 後
経の回復率はほぼ同様であったが、回復までの期間が延長する傾向を認めた。
18ヶ月の測定が出来た4症例は、全例生理が再開しているが AMH は3例で
LH-RH アゴニスト投与後の月経回復の有無は、年齢、化学療法の有無を考慮
0.1ng/ml。治療前の値が 15.4ng/ml であった1例のみ 1.48ng/ml と変化し
に入れて、投与終了後約 3 年の長期間を経て、月経再開を認めるケースがある
ていた。今回、妊娠を確認できた症例はない。(考察)内分泌感受性のない症
ことを念頭に置いておく必要があると考えられた。
例での検討のため、適応症例が限られ、予後不良症例の割合が高く、統計学
的検証には至らなかった。AMH が薬物療法によって減少することはほぼ確実
であるが、生理が再開しても治療前の値に戻らないことが多いと思われる。
乳癌初期治療後に妊娠・出産が可能であった症例の検討
当院における受精卵凍結保存例の検討
医療法人那覇西会 那覇西クリニックまかび、
2
医療法人那覇西会 那覇西クリニック
県立宮崎病院 外科、2 同 外来化学療法室
植田 雄一 1、大友 直樹 1、池田 奈央子 1、牧野 裕子 1、仲田 恵美 2
上原 協 1、玉城 信光 1,2、玉城 研太朗 1,2、鎌田 義彦 2
薬物治療の発展や癌検診の普及などを背景に乳癌治療の成績は向上傾向にあ
り、それに伴い癌治療を乗り越えた「癌サバイバー」も増加している。一方で
内分泌治療については 5 年以上のより長期間の治療を示唆する報告が相次ぎ、
日本人女性の晩婚化といった社会的背景も加えて、癌と妊娠・出産といった
問題は今後ますます増加すると考えられる。最近では妊孕性を keyword に
oncofertility として婦人科と癌治療医の連携も模索されはじめている。今回は
当院における乳癌初期治療後に妊娠・出産が可能であった症例を臨床学的に
検討し、また県内における妊孕性に関するネットワーク構築への取組みにつ
いても合わせて報告する。対象:当院における原発性乳癌手術治療患者のうち、
初期治療後に妊娠または出産に至った 21 例。方法:case control study。
1996 年 5 月から 2014 年 6 月の期間における当院乳癌手術症例から、{妊娠、
出産、授乳}を Key word としデータベースより抽出。結果:21 例の平均年齢
は 33.8 歳 (24.0-40.2)、うち治療開始時点での経産婦は 11 例 (52.4% ) であっ
た。受診動機は自覚症状を伴う症例が 14 例 (66.7% ) であった。Stage 別で
は 0 が 3 例 (14.3 % )、I が 8 例 (38.1 % )、II が 9 例 (42.9 % ) で あ っ た。
Subtype 別では Luminal type が 13 例 (61.9% )、Her2type が 2 例、TNtype
が 1 例であった。術式は乳房切除術 7 例 (33.3% ) 温存術 14 例 (66.7% )、温
存術のうち 11 例で術後照射が施行されていた。薬物治療として化学療法は 7
例、内分泌療法は 9 例に施行。8 例に LH-RH アナログが投与されていた。平
均健存観察期間は 95.1 か月 (40.0-202.0)、再発は 1 例のみであった。全体の
約 8 割は 40 歳までに出産に至っていた。薬物治療の有無で 2 グループに分け
検討してみると治療後から出産までの期間は薬物治療ありの群で 56.2 か月、
なしの群で 27.9 か月で優位に差を認めた。ただ最終薬物治療後から出産まで
の期間でみると薬物治療ありの群で 31.5 か月であった。21 例中 8 例で婦人科
との連携が確認された。結論:おもに LuminalA においては患者の意向を踏ま
えたうえで、癌治療と妊孕性保持の可能性が示唆された。最終治療後から出
産まで平均約 2 年を要したこと、多くは 40 歳までに出産していたことより、
治療開始前に挙児希望などに関する意向を確認すべき対象者を見込める可能
性があると思われた。そのためには現在県下で準備を進めている、癌腫を超
えた婦人科との妊孕性に関する連携構築が早期に必要である。
444
2013 年に ASCO の妊孕性に関するガイドラインが改定され、本邦では 2014
年に清水班より妊孕性に関する手引きが出版され、わが国においても妊孕性
の問題は今後さらに注目される。今回当院で経験した受精卵凍結保存例を提
示し妊孕性に関わる諸問題を検討した過去 10 年間に当院で経験した乳癌症例
1017 例のうち、30 歳以上 40 歳未満の症例は 56 例(5.5%) で受精卵凍結保存
を 施 行 し た 症 例 は 4 例 で あ っ た。 症 例 1:37 歳 女 性。 右 乳 癌 T1cN0M0
stagel、ER-, PgR-, HER2 3+。29 歳時に結婚。33 歳時に卵管卵巣周囲癒着
症で手術歴あり。以降不妊治療を継続されていた経緯もあり受精卵凍結保存
を希望された。Bt+SN+TE を施行。術後まもなく月経が発来し、退院後に受
精卵凍結保存を行った。現在術後補助化学療法を施行中で、挙児希望は継続
し て い る。 症 例 2:37 歳 女 性。 右 乳 癌 T2N1M0 stagellB 、ER+, PgR+,
HER2 0。23 歳時に結婚、妊娠歴 2 回、出産歴 1 回で初診時は長女が 9 歳であっ
た。診断後術後化学療法について説明し強い挙児希望あり。術前に受精卵凍
結保存を施行後に Bt+Ax を施行。術後化学療法は結局希望されず、現在 TAM
を継続中である。TAM を中止し妊娠をするか悩まれている。症例 3:31 歳女性、
右乳癌 T3N2M0 stagelllA、
ER- PgR- HER2 0。7 か月後に結婚予定であった。
術前化学療法の説明をするも、強い挙児希望があり手術を含めて治療を一旦
拒否された。受精卵凍結保存を提案し、受精卵保存後に術前化学療法を施行。
治療効果は PR で Bt+Ax+TE を施行した。術後速やかに生理は再開し術後 3 年
目の時点で妊娠を許可するも自然妊娠の兆候なく経過。術後 5 年目で凍結胚移
植を行うも結局妊娠成立には至らなかった。症例 4:37 歳女性、29 歳時に結婚。
32 歳時に右乳癌 T2N1M0 stagellB、Triple negative の診断をうけ、術前化
学療法後に Bp+Ax を施行。術後 7 カ月後より生理再開。術後 3 年目に不妊治
療 を 開 始 し 継 続 さ れ て い た。37 歳 時 に 左 乳 癌 T1bN0M0 stagel、Triple
negative の診断となり Bp+SN を施行。術後に不妊治療で通院中の婦人科ク
リニックで受精卵凍結保存を行い、術後化学療法を完遂した。術後 1 年目で明
らかな再発所見を認めず、ご本人と相談し凍結胚移植による人工授精を施行。
2 か月後には妊娠成立し自然分娩(当時 39 歳)に至った。現在再発兆候なく、
児の発達・経過に異常を認めていない。それぞれの症例における問題点の抽
出とわが国における妊孕性に関する課題を検討する。
ポスター討議
DP-2-103-03
DP-2-103-04
当院における乳癌術後補助療法後の妊孕性についての検討
1
当院における 40 歳未満化学療法対象乳癌患者における妊孕性温
存の現状
住友病院 外科、2 住友病院 超音波検査部、3 上野クリニック
大阪ブレストクリニック
西村 重彦 1、山片 重人 1、田中 涼太 1、河本 真大 1、中澤 一憲 1、
妙中 直之 1、尾羽根 範員 2、上野 正勝 3
藤田 倫子、秋丸 憲子、松之木 愛香、井口 千景、小池 健太、野村 孝、
山本 仁、芝 英一
【背景 / 目的】我が国では、第一子出産時の母の平均年齢は上昇傾向にあり、
40 歳未満若年乳癌患者における妊孕性の保持が問題となっている。特に化学
療法対象患者においては治療効果と妊孕性保持の両立は困難な場合が多い。
当クリニックの 40 歳未満若年乳癌患者について、妊孕性温存のための対策、
妊娠・出産の現状を評価し、今後の課題を検討する。【方法】2006 年 4 月~
2013 年 11 月までに当院で手術治療を施行した 2049 例の乳癌患者のうち、
40 歳未満は 237 例(12%)、そのうち化学療法のみを施行した 38 例を対象と
した。年齢、化学療法レジメン、無月経リスク、治療前の妊孕性温存のため
の対策、妊娠・出産、生理の回復の有無について retrospective に検討した。【結
果】38 例の平均年齢は 34.7 歳(24-39 歳)であり 20 歳代が 3 例、30-34 歳が
13 例、35-39 歳が 22 例であった。サブタイプは TN 24 例、HER2 type 12 例、
Luminal B 2 例であった。手術後の観察期間は 6-89 カ月 ( 中央値 45 カ月 ) で
あった。化学療法レジメンは P-FEC 15 例、FEC 9 例、TC 10 例、EC 2 例、
PTX 2 例であった。そのうち 36 例 (94.7%) が 30 歳以上もしくは 20 歳代かつ
P-FEC であり無月経の中間リスク、2 例が低リスクであった(ASCO ガイドラ
イン 2013)。FSH、E2 レベルによる生理回復を確認できたものは測定されて
いた 19 例中 14 例(74%)、化学療法終了時点から生理回復までの期間は中央
値 7 ヶ月 (0-29 ヶ月)であった。術前未産婦が 29 例 (76.3%) であり 1 例で受
精卵の凍結を行っていた。既婚者の未産婦は 12 例 (32%) であった。妊孕性
温存のため治療レジメンを P-FEC から PTX へ変更した症例を 2 例認めた。化
学療法後の妊娠は現時点では 2 例あり、1 例は凍結受精卵によるものであった。
受精卵による妊娠例の化学療法時年齢は 34 歳、妊娠時 36 歳、レジメンは TC
であった。自然妊娠例は化学療法中も月経を認め、化学療法時年齢は 29 歳、
妊娠時 31 歳、レジメンは FEC であった。妊娠や治療レジメン変更例での再発
は認めなかった。【まとめ】本検討においては化学療法後の妊娠、出産は少な
かった。若年の化学療法適応患者には治療効果の保持と同時に挙児希望、無
月経のリスクに応じて化学療法前の生殖医療介入等も検討し、妊孕性温存に
配慮することが望ましい。
DP-2-103-05
DP-2-104-01
乳がんサバイバーシップケアプログラムが患者の気持ちや行動
に及ぼす影響
高齢者非浸潤性乳がんの特徴と課題
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
社会医療法人 博愛会 相良病院
神保 健二郎、木下 貴之、小倉 拓也、麻賀 創太、北條 隆
比良 宏美、税所 真帆、戸畑 利香、江口 恵子
背景:乳がんは、発症から 10 年以上経過しても再発する可能性がある。乳が
ん患者が初期治療を終えて生活の再構築をしていく過程で必要とされる看護
支援は、1)治療や生活に関する情報を提供し理解を助ける患者2)医療者間
の信頼関係を構築する3)気持ちを表現する場を設ける、などである。そのた
めのプログラムの確立が重要とされている。目的:乳がんサバイバーシップ
ケアプログラムとして実施している「乳がん集中講座」を受講半年後の患者の
気持ちや行動の変化について明らかにする。方法:サバイバーシップ急性期
から中間期の移行へ向けた患者及び家族を対象として 1 シリーズ 5 回で実施し
ている「乳がん集中講座」の 5 回全てを受講した乳がん患者 75 名に郵送による
アンケート調査を実施した。 結果:回答数 27 名回答率は 36%であった。回
答者の 88%が講座が参考になったと答えていた。「役にたった内容」は、1)
社会保険制度について2)家族との付き合い方3)セルフコントロール・リラ
クセーションの方法、などであった。「気持ちの変化」については、74%が変
化があったと答え、その内容は1)前向きになれた2)自分の命に覚悟がもて
るようになった3)転移が怖かったが恐れるのでなく、自然体にしていければ
といいと思えた4)家族や友人に感謝の気持ちがもてるようになった、などで
あった。
「行動の変化」については、70%が大変あった又はあったと答えていた。
内容としては、1)病気を周囲に話すことが多くなった。2)自己触診を行う
ようになった。3)ヨガなど、色々なことにチャレンジするようになった、な
どであった。講座の中での体験者間の交流や語りを通して、一人ではないこ
とを実感し、大変な経験を乗り越えてきた中でサポートされていることを共
に共有し相互に励まされていた。考察:「乳がん集中講座」の受講により、退
院後の生活に気持ちや行動に変化をもたらし乳がんと共に自分らしく生きて
いく自信に繋がっていると思われる。
【背景】平均寿命の延長や対策型乳がん検診の普及に伴い高齢者(65 歳以上)の
乳がん、特に非浸潤性乳がんは増加傾向にある。非浸潤性乳がん(DCIS)は乳
管内増殖病変であるという特性から理論上は完全切除にて完治する。しかし、
一定の割合で再発し、その半数は浸潤癌として再発する。そのため、DCIS に
おいて再発・対側乳がん発生予防として術後補助療法が選択肢となる。一方で、
高齢者乳がんにおける治療法の標準化は行われておらず、個々の症例に応じ
て手術術式から補助療法まで選択されているのが現状である。そこで、高齢
者 DCIS の臨床的特徴と治療法の現状を非高齢者 DCIS の症例と後方視的に比
較検討し、適切な高齢者 DCIS における治療法の適正を考察した。
【対象と方法】
1992 年 ~2013 年に当院にて手術を施行した DCIS296 例を対象とした。65
歳以上を高齢者と定義し、高齢者 DCIS (123 例 ) と非高齢者 DCIS(173 例 ) の
術式選択・臨床背景・術後補助療法・術後乳がん発症率(新規・再発)・全生
存率を比較した。【結果】選択された術式は、高齢者群 (Bp( 部分切除 ) vs
Bt( 全切除 ); 31% vs 69%)、非高齢者群 (Bp vs Bt; 50% vs 50%) であり、
高齢者で Bt が多く選択された。両群において臨床背景(大きさ・組織グレード・
核グレード・comedo 壊死の有無・ホルモン受容体・HER2 発現)に有意差は
認めなかった。術後補助療法に関して、術後ホルモン療法施行率は Bp で(高
齢者 vs 非高齢者 ; 37% vs 22%)、Bt で(高齢者 vs 非高齢者 ; 7% vs 6%)で
あり有意差は認めなかったが、高齢者群で多い傾向であった。術後放射線療
法施行率に関しては、Bp で(高齢者 vs 非高齢者 ; 66% vs 89%)であり有意
に非高齢者で術後放射線療法が施行されていた。両群に術後乳がん発症イベ
ント(再発・新規乳がん)に有意差は認めなかった(高齢者 vs 非高齢者 ; 6 例
vs 14 例)が、Bp 選択の多かった非高齢者群に乳房内再発が多い傾向にあった。
全生存率に両群に差はなかった(p=0.52)。【結論】術式選択として高齢者で
は Bt を選択される傾向があり、また、Bp となった場合には放射線治療が省略
されている傾向が確認できた。術後乳がんイベント発生率・全生存率におい
て両群には差がなく、十分な術後完全切除を行う事で高齢者 DCIS の中には、
術後補助治療の必要性が低い症例群がある可能性が示唆された。今後症例の
蓄積と前向きな検討が必要と考える。
445
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】日本乳癌学会乳癌診療ガイドラインでは,化学療法誘発性閉経予
防・妊孕性維持目的の LH-RH アゴニストの使用は,推奨グレード C1・C2 で
あり,当院では LH-RH アゴニストの使用は行っていない.SWOG S0230
[POEMS]-Phase III trial では LH-RH アゴニストの卵巣機能保護に対する有
用性が報告され,今後,卵巣機能保護目的の LH-RH アゴニストの投与が検討
されると思われる.乳癌治療後に妊娠を希望される場合の術後補助療法の選
択には,乳癌の再発抑制を十分に検討したうえで,患者の希望も考慮し慎重
な対応を行っている.そこで,今回当院における乳癌術後補助療法後の妊孕
性についての検討を行った.【対象と方法】2006 年から 2012 年 7 年間での乳
癌手術症例 620 例のうち閉経前の 216 例を対象とした.方法は,20 歳台,30
歳台,40 歳台の年齢別に月経回復状況を検討し,実際に妊娠希望者患者と妊
娠状況について検討した.【結果】乳癌手術症例 620 例のうち閉経前の 216 例
の 年 齢 別 内 訳 は,20 歳 台 3 例(0.5 %),30 歳 台 50 例(8.1%),40 歳 台 163
例(26.3%)で あ っ た.20 歳 ~ 30 歳 台 の 53 例 中 化 学 療 法(FEC も し く は
FEC ⇒ドセタキセル)は 35 例に行い,全例月経が回復していた.(月経回復後
に LH-RH アゴニスト投与症例を含む.)20 歳~ 30 歳台の化学療法施行例 35
例中,未婚者が 15 例,既婚者が 20 例で妊娠希望は 3 例であった.妊娠希望者
の 1 例が 2 回の妊娠と 1 回の出産を経験され,1 例は胚凍結を行った.化学療
法非施行例の妊娠は 30 歳代の 5 例で,いずれも内分泌療法単独後の患者さん
であった.
【まとめ】20 歳~ 30 歳台では化学療法施行後,月経は全例改善し
ていた.化学療法施行後に出産を希望した 3 例中 1 例が妊娠・出産を経験した
が、妊娠を希望される場合の術後補助療法の選択には,乳癌の再発抑制を十
分に検討したうえで,患者の希望も考慮し慎重な対応を行っていく必要があ
る.
ポスター討議
DP-2-104-02
DP-2-104-03
当院における高齢者乳癌に対する化学療法の有効性、忍容性の
検討
高齢者乳癌症例の検討
1
2
安城更生病院 外科
雨宮 剛、新井 利幸、佐伯 悟三、平松 聖史、後藤 秀成、関 崇、
大城 泰平、鈴木 桜子、田中 綾、長谷部 圭史、山本 規央、鈴木 優美、
尾崎 友理、牛田 雄太
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】高齢化社会が進むにつれて高齢者乳癌の数は今後ますます増加す
る傾向にあると考えられる.高齢者乳癌に対しても手術療法が基本となると
考えられているが,化学療法の意義はいまだ不明確である.【目的】当院での
70 歳以上の高齢者乳癌患者への化学療法の有効性,忍容性について評価する.
【対象・方法】2007/1 ~ 2014/9 までに,当院で施行した乳癌手術症例 714
例中,70 歳以上の手術症例は 143 例,そのうちの術後化学療法を行った 30
例をレトロスぺクティブに検討した.【結果】全例女性.平均年齢:72.9 歳.
併 存 疾 患 あ り:26 例.PS: 全 例 0. 術 式:Bt+Ax;15 例,Bp+Ax;4 例,
Bt+SN;5 例,Bp+SN;6 例.pT 因 子:T1;20 例,T2;5 例,T3;0 例,
T4;5 例.pN 因 子:N0;14 例,N1 以 上;16 例.subtype:Luminal
A-like;4 例,Luminal B-like(HER2 陰性 );6 例,Luminal B-like (HER2 陽性 );
7 例;HER2 陽 性(non Luminal); 3 例,Triple negative( 乳 管 型 );10 例.
投与レジメン:AC;4 例,AC → T;13 例,AC → HER;4 例,HER 単独;3 例,
CMF;3 例,UFT;3 例. 投 薬 状 況: 完 遂;28 例(RDI:100 %;21 例,
80%;6 例,75 %;1 例 ), 中 止;2 例( 理 由; 高 度 好 中 球 減 少, し び れ ).
Grade3 以上の有害事象:好中球減少;20 例,発熱性好中球減少症;5 例,嘔
気;1 例,しびれ;1 例,めまい;1 例.(全例アンスラサイクリン系薬剤投与
症例)。G-CSF 使用:16 例.転帰(観察期間中央値 ;46.4 か月)
:無再発生存中:
26 例,再発生存中:1 例,原病死:3 例 .【考察】今回の検討では,化学療法
が施行されていた症例では,予後不良と思われる,HER2 陽性症例,Triple
negative 症例の割合が多かった.また,Grade3 以上の有害事象が高率に出
現していたにも関わらず,高い RDI を維持しつつ多くの症例で薬物治療を完
遂することができた.G-CSF を使用するなど支持療法を積極的に行った結果
と考えられた.また,観察期間は短いものの,予後不良と思われる症例が多
いにも関わらず,無再発生存症例を多く認めた.化学療法の効果による可能
性が示唆された.
【結語】高齢者乳癌に対する化学療法の意義についてはエビ
デンスが少なく未だ不明確であるが,高齢者の状態について、高齢者総合的
機能評価などを用い包括的に評価し適格症例を選択すること,また支持療法
を積極的に行うことで,化学療法は安全に行うことができ,かつ有効となり
得ることが示唆された.
岡野 健介 1、西 隆 1、西村 顕正 1、諸橋 聡子 2、二階 春香 1
【目的】社会の高齢化に伴い高齢者の乳癌症例を経験する機会が増えてきてい
る。しかし、基礎疾患や社会的背景などから標準治療が行えない症例も多い。
当院で経験した 80 歳以上の高齢者乳癌症例の臨床的特徴や病理学的特徴、治
療法、予後などを後ろ向きに検討した。【対象と方法】2005 年 1 月から 2010
年 12 月まで当科で初回手術を施行した乳癌症例のうち、手術日に満 80 歳以
上の 16 症例を対象とした。79 歳以下の閉経後乳癌症例を比較対象群とし、臨
床的因子、病理学的因子、治療因子を比較検討した。【結果】年齢は 81 ~ 88
歳で中央値は 82 歳、術後観察期間は 1 ~ 111 ヵ月で中央値は 54.5 ヵ月であっ
た。発見契機は1症例のみ乳房痛でそれ以外は全て腫瘤の自覚を訴え、腫瘍
径は 9 ~ 60mm で中央値は 20mm、病期分類は 1 期 6 症例、2 A期 8 症例、2
B期1症例、3 A期 1 症例であった。術式は乳房切除術 4 症例、乳房部分切除
術 12 症例であった。組織型は硬癌が 8 症例と最も多く、続いて乳頭腺管癌 5
症例、粘液癌1症例、アポクリン癌 1 症例、浸潤性微小乳頭癌1症例であった。
術後補助療法としては 11 症例でホルモン療法が、2 症例で放射線療法が施行
されていたが、triple negative の 2 症例を含めて化学療法は行われておらず、
本人の希望や全身状態などから治療縮小が選択されていた。再発例は1症例
のみで最終転帰判明日まで全症例が生存されていた。79 歳以下の症例と有意
差を認めたのは術式と術後補助化学療法、術後放射線療法のみで、無再発生
存期間や生存期間に有意差を認めなかった。【考察】今回の検討では高齢者乳
癌症例は閉経後乳癌症例と病理学的因子や予後に有意差は認められなかった。
高齢者に対する治療は標準治療が困難なケースもあり、抗癌剤治療などを省
略する症例も存在するが、予後に有意差を認めないことを考えると個々の症
例に応じた治療選択がより重要になると考えられる。
DP-2-104-04
DP-2-104-05
当院における高齢者乳癌の検討
1
弘前大学医学部附属病院 乳腺・甲状腺外科、
弘前大学大学院医学研究科 病理生命科学講座
高齢者乳がんに対するアンスラサイクリン含有レジメンの
Relative dose intensity が予後に与える影響
藤田保健衛生大学 医学部 乳腺外科、2 藤田保健衛生大学 医学部 病理科
1
小林 尚美 1、桐山 諭和 2、牛窓 かおり 1、引地 理浩 1、浦野 誠 2、
黒田 誠 2、内海 俊明 1
2
3
【緒言】日本人女性の平均寿命は 86.61 歳で、世界一長寿命である。近年高齢
者の乳癌患者は増加しているが、70 歳以上の高齢者に対する乳癌治療のエビ
デンスは乏しく、また、併存症や背景因子も様々であり標準治療も受け難く
治療方針の決定に難渋することもある。当科における 70 歳以上の高齢者乳癌
患者の臨床病理学的特徴と予後について、レトロスペクティブに検討を行っ
た。
【対象と方法】対象は 2000 年 1 月から 2014 年 6 月までに当院で治療を行っ
た 70 歳以上の女性乳癌患者 313 例である。年齢は 70 ~ 92 歳で中央値は 76
歳。Ki67 は≦ 20% を低値群、> 20% を高値群とした。サブタイプは luminal
A(ER+、PgR+、HER2-、Ki67 低 値 )、luminal B(ER+ 且 つ / ま た は PgR+、
HER2+ ま た は Ki67 高 値 )、HER2 disease(HER2)(ER-、PgR-、HER2+)、
triple negative(TN)(ER-、PgR-、HER2-) に分類し、SPSS による解析を行っ
た。【 結 果 】腫 瘍 径 の 平 均 は 2.1cm で、N1 以 上 は 86 例 (27%)、Clinical
stage は 0 が 16 例、I が 126、IIA が 95、IIB が 39、IIIA が 6、IIIB が 21、
IIIC が 3 で IV が 7 であった。DCIS は 20 例で浸潤性乳管癌は 251 例、特殊型
は 42 例であった。浸潤癌 293 例におけるサブタイプは luminal A が 144 例
(49.2%)、luminal B は 77 例 (26.3%)、HER2 は 19 例 (6.5%)、TN は 53 例
(18%) であった。観察期間の中央値は 50 ヶ月であった。リンパ節転移は N1
以上の 5 年 DFS が 76.7% に対し、N0 は 92.4% と良好で (p=.002)、5 年 OS
も N1 では 77.4% に対し、N0 は 89.2% と良好であった (p=.002)。薬物療法
施行症例は 257 例 (87.7%) で、5 年 OS は 87.3% と薬物療法無しの 73.8% に
比 べ 良 好 で あ っ た (p=.002)。TN は 5 年 OS が 最 も 悪 か っ た (luminal
A:90.5%、luminal B:86.9%、HER2:100%、TN:77.8%;p=.002)。また、
Ki67 が高値なものは予後が悪い傾向にあったが、ER、PgR、HER2 において
は差が無かった。
【結語】高齢者の乳癌治療における予後因子となっていたの
はリンパ節転移の有無、Ki67、TN であった。この背景には薬物療法の施行が
関与している可能性が示唆された。
国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター 先端医療科、
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
国立がん研究センター中央病院 薬剤部
下村 昭彦 1,2、文 靖子 3、清水 千佳子 2、公平 誠 2、山本 春風 2、
温泉川 真由 2、米盛 勧 2、藤原 康弘 2、田村 研治 1,2
【背景】根治切除可能な早期乳癌は、高齢者でも手術および全身薬物療法によ
り根治および十分な延命が可能である。一方、化学療法の RDI (Relative
dose intensity) が低くなると予後が不良となる報告もある。我々は以前、高
齢者で RDI が低くなることを報告しているが、日本人高齢者における予後と
の関連は知られていない。
【目的】高齢者乳癌患者の周術期化学療法と RDI の関連を明らかにし、非高齢
者との違いを検討する。また、RDI と予後との関連を明らかにする。
【対象と方法】当院乳腺・腫瘍内科で 2002 年から 2013 年までにアンスラサイ
クリンを含む周術期化学療法を行った早期乳癌患者の無再発生存期間 (RFS)、
5 年再発生存割合について、RDI(80% 以上、80% 未満 )、年齢 ( 高齢者 =65
歳以上、非高齢者 =65 歳未満 ) に基づいて後方視的に検討する。無再発生存
に関連する因子について多変量解析で検討する。
【結果】2002 年 1 月から 2013 年 3 月までにアンスラサイクリンを含む周術期
化学療法を行い根治切除が行われた症例は 879 例 (65 歳以上 121 例、65 歳未
満 758 例 ) であり、年齢の中央値は 53 歳 (22-80 歳 ) であった。病期は 0 期 7
例 (0.8%)、I 期 159 例 (18.1%)、IIA 期 400 例 (45.5%)、IIB 期 183 例
(20.8%)、IIIA 期 62 例 (7.1%)、IIIB 期 41 例 (4.7%)、IIIC 期 10 例 (1.1%)、
その他 / 不明 17 例 (1.9%) であった。腫瘍径の中央値は 2.8cm(0-13cm)、リ
ンパ節転移個数の中央値は 1 個 (0-47 個 )、ホルモン状態陽性 614 例 (69.9%)、
HER2 陽 性 211 例 (24%) で あ っ た。RDI は 高 齢 者 で 86.7%、 非 高 齢 者 で
90.8% であり、高齢者で有意に低かった (p=0.014)。RFS はいずれの群も中
央値に到達しなかった。5 年無再発生存割合は高齢者では RDI80% 以上が
86.9%、80% 以下で 93.3%、非高齢者ではそれぞれ 82%、76.8% であった。
再発に関連する因子は全症例では腫瘍径 (p=0.003)、リンパ節転移個数 (p
< .001)、術式 ( 全摘 vs 温存 )(p=.004) であり、高齢者ではリンパ節転移個
数 (p=.007) のみであった。
【結論】高齢者の周術期化学療法において、RDI は 5 年生存割合に影響を与え
ない可能性がある。
446
ポスター討議
DP-2-105-01
DP-2-105-02
当院における後期高齢者乳癌の特徴および治療法に関する検討
当科で治療をおこなった初診時 80 歳以上の高齢者乳癌 50 例の
検討
国家公務員共済枚方公済病院 外科
豊川市民病院 乳腺内分泌外科
木曾 末厘乃、川島 雅央、藤井 一洋、韓 秀弦、竹山 治、田中 満
柄松 章司、三田 圭子
【はじめに】近年 80 歳以上の高齢者の乳癌症例が増加している。高齢者の ER
+症例に対する内分泌療法はガイドラインで推奨されているが、化学療法に
ついては標準的な治療が有効であると示唆するデータはあるものの副作用も
多く出現する。当院で 2000 年から 2014 年までに治療をおこなった初診時 80
歳以上の女性乳癌症例 50 例について報告する【結果】年齢は 80~84 歳 26 例、
85~89 歳 19 例、90 歳代 5 例、Stage I 19 例、Stage IIA 21 例、Stage IIB
1 例、Stage IIIA 4 例、Stage IIIB 5 例。治療は3例にホルモン療法単独、
47 例に全身麻酔で手術(Bp 21 例、Bt 26 例)を施行、N+ には腋窩廓清を施行、
N0 では廓清省略か SNB を行った。組織型は IDC39 例 , 特殊型 11 例。ER +
HER2 - 31 例、ER + HER2 + 2 例、ER+HER2 不明 3 例、ER - HER2 - 9 例、
ER - HER2 + 4 例、ER - HER2 不明 1 例であった。補助療法は ER + HER2
-には AI または SERM、ER+HER2 +には AI か無治療 ,ER - HER2 -には無
治療か UFT,ER - HER2+ には無治療か trastuzmab、UFT を施行。手術拒否
等の理由でホルモン療法を行った ER+HER2 -の 3 例は 2~6 年経過を見たが
CR 1 例 ,PR 2 例であった。手術症例の予後は無再発生存 33 例(平均 3 年)、再
発 生 存 4 例 , 原 病 死 3 例、 他 病 死 3 例、 消 息 不 明 4 例。 タ イ プ 別 で は ER +
HER2 - 28 例および ER + HER2 不明 3 例には手術とホルモン療法を行い 1 例
原病死、3 例他病死、ER+HER2+2 例中 1 例が骨転移、ER - HER - 8 例に対
しては UFT 2 例、補助療法なし6例で 3 例が乳房内再発した。ER - HER2 +
4 例では 2 例が原病死した【考察】今回の検討では 80 歳以上の ER + HER2 -症
例は手術とホルモン療法が有効と考えられた。ER - HER2 -症例では遠隔転
移症例はなく手術単独および UFT で良好な治療成績であった。高齢者乳癌に
対しては手術と副作用の少ない補助療法で十分な治療効果が見込まれるので
はないかと示唆された。
DP-2-105-03
DP-2-105-04
1
1
当院における高齢者乳癌患者の特徴および治療実績に対する検討
90 歳以上の超高齢者乳癌 11 例の検討
平塚市民病院 乳腺外科、2 平塚市民病院 薬剤部
1
大西 達也 、山際 一也
船橋市立医療センター 乳腺外科、2 船橋市立医療センター 放射線技術科、
船橋市立医療センター 薬剤局、4 船橋市立医療センター 看護局、
5
船橋市立医療センター 検査科病理、6 昭和大学病院 乳腺外科
3
2
【はじめに】超高齢化社会を迎え、市中病院でも高齢者乳癌患者の治療機会が
増加している。一方で高齢者乳癌における治療法に関するデータは少なく、
包括的に治療方針を決定することが要求される。今回我々は当院で治療した
高齢者乳癌患者における臨床病理学的特徴および治療実績について検討した。
【対象と方法】2011 年 4 月から 2014 年 12 月までに治療した切除可能乳癌患者
218 名中 75 歳以上の乳癌患者 35 名 (16.1%) を高齢者群、74 歳以下を対照群
として retrospective に解析した。【結果】高齢者では自己発見を主訴として外
来受診される患者の割合が 71.4%と高い傾向にあった(対照群:59.0%)。腫
瘍径は T1 乳癌が有意に少なかった(高齢者群:25.7%、対照群:44.8%、
p=0.01)。リンパ節転移陽性患者の割合は 31.4% であり、対照群 (29.5%)
と差がなかった。組織学的内訳は浸潤性乳管癌 32 例 (91.4%)、非浸潤性乳管
癌 2 例 (5.7%) であり、対照群 (79.2%, 14.8%) と比較しても浸潤性乳管癌
が多い傾向にあった。高齢者群および対照群の ER 陽性率はそれぞれ 74.3%、
78.1% であり、HER2 陽性率はそれぞれ 5.7%、12.0% であった。対照群で
は全例で手術が施行されている一方で、高齢者群では 3 名でホルモン療法単独
治療が行われた(ハイリスク症例1例、同意が得られなかった症例 2 例)。高
齢者群で手術を施行した 32 名の乳房温存率は 40.0% であり、対照群 (65.6%)
と比較して有意に少なかった (p=0.02)。高齢者群で化学療法が施行されたの
は 3 名 (8.6%) のみであり、対照群 (37.7%) と比較して有意に少なかった
(p=0.001)。【考察】高齢者群では自己発見を契機として外来受診するケース
が多く、腫瘍径が大きい傾向にあったものの、リンパ節転移陽性率は対照群
と差がなかった。高齢者であっても一部の症例を除き積極的に手術が行われ
ている一方で、化学療法については慎重に施行されていた。乳癌診療ガイド
ラインでも高齢者乳癌に対しては積極的に手術療法を勧める一方で、化学療
法については個別の対応が求められており、当院での治療実績はガイドライ
ンに準ずるものであった。
447
金田 陽子 1,6、松崎 弘志 1、佐塚 哲太郎 1、唐司 則之 1、吉原 ちさと 1、
石井 悟 2、岩田 可奈恵 3、笹原 奈津美 4、清水 辰一郎 5、中村 清吾 6
近年高齢化が進み、90 歳を超える超高齢者乳癌をも少なからず認め、その治
療に関しては一定の見解が無いのが現状である。当院では 2001 年~ 2005 年
で 3 名、2006 年 ~ 2010 年 で 3 名、2011 年 ~ 2014 年 で 5 名 ( う ち 2014 年
症例が 4 例 ) の患者を加療しており、近年増多傾向にある。今回、当院で
2001 年以降に治療を受けた 90 歳以上の超高齢者乳癌 11 例を対象に、患者背
景、臨床病理学的特徴、治療法などについて検討した。年齢中央値は 93 (90
~ 96 ) 歳、併存疾患を 8 例、他癌既往歴を 1 例に認めた。腫瘍径中央値は 22
(11 ~ 85) cm、T4 症例が 6 例で過半数を占めた。治療は、5 例に手術を施行
したが、術前診断は細胞診が 1 例、生検が 3 例、US 所見のみが 1 例であった。
局所麻酔下の手術を 2 例に施行しており、全例術後合併症なく安全に施行可能
であった。バイオマーカーは Luminal A が 2 例、Luminal B が 1 例、Luminal
B-HER が 1 例で、ホルモン弱陽性例が 1 例であった。補助療法施行は 2 例の
みに留まっている。観察期間は短いが、4 例は無再発で経過しており、1 例は
TAM5 年内服し以後経過観察 5 年で無再発生存中、1 例が他病死に至っている。
6 例は非手術の治療を選択し、5 例が細胞診のみでの診断、1 例は局所進行乳
癌で診察のみであったが、全例でホルモン療法を施行していた。1 例は加療開
始 1 年で CR となり以後 3 年 6 か月 CR 維持し生存中、2 例が癌死、1 例が他病
死に至っている。90 歳以上の乳癌治療の際には、病勢コントロールの他に、
合併症の有無を考慮し治療戦略を決定することが必要で、薬剤選択も限られ
る。また ADL の低下から通院が困難であることも多く、
検査なども制限される。
その一方で、「癌」を有することへの精神的苦痛や、局所進行乳癌の場合の局
所コントロール、手術を希望しない場合・手術が困難な場合の対処、施設入
所などにより治療が制限される可能性など、様々な背景にも配慮する必要が
ある。今回、90 歳以上の超高齢者乳癌につき、文献的考察を加え報告する。
一般セッション(ポスター討議)
(背景)高齢者乳癌症例は若年者と比較し、全身状態や基礎疾患で問題点を有
する事が多く、外科治療、薬物療法、放射線療法など全てにおいて画一的に
行うことは難しい。地域病院である当院では 75 歳以上の後期高齢者を診療す
る機会が多い。当院で加療した 75 歳以上の原発乳癌症例の臨床病理学的特徴
および治療法について検討し報告する。(対象と方法)2010 年 5 月~ 2014 年
10 月に当院において加療を行った原発性乳癌症例 36 例のうち 75 歳以上の後
期高齢者群 22 例と 74 歳以下の症例 14 例の臨床病理学的因子、治療法につい
て比較検討した。(結果)後期高齢者群の年齢中央値は 82 歳 (75 歳~ 93 歳 ) で
あり、組織型の内訳は浸潤性乳管癌 19 例、浸潤性小葉癌 1 例、特殊型 2 例で
あった。74 歳以下の症例では浸潤性乳管癌 11 例、非浸潤性乳管癌 3 例であっ
た。Stage 分類は 3 以上が後期高齢者群で 6 例 (27%)、74 歳以下で 2 例 (14%)
と後期高齢者群で多い傾向があった。リンパ節転移は後期高齢者群で 6 例
(27%)、74 歳以下で 4 例 (29%) 症例と同等であった。手術の内訳は乳房切除
16 例、温存術 6 例であり乳房切除が多い傾向にあった。温存術を施行した 6
例中 2 例で放射線照射が省略されたが期間中に乳房内再発は認めなかった。
cN0 の症例 18 例中、センチネルリンパ節生検は 15 例で施行され、転移陽性
と判定された 3 例中 2 例で腋窩郭清術が施行され、郭清省略した 1 例では放射
線治療が施行された。pN1 以上の 6 例の内 3 例で胸壁 + 鎖骨上照射が行われ
た。術後補助療法として luminal type 18 例全例にホルモン療法が施行された
が本人希望による中断が 4 例あった。術後補助化学療法は 1 例のみ TC 療法が
施行され Her2 陽性 2 例中 1 例で Trastuzumab が1年間投与された。腋窩手
術を省略された症例 1 例で術後 1 年以内の早期再発を認めた。(考察)後期高齢
者ではステージが進んだ浸潤癌として診断される傾向があり、高齢者の受診
忌避の傾向が一因になっている可能性が考えられた。リンパ節転移は 74 歳以
下の症例と頻度は同等で、郭清省略例に早期再発を認めており、高齢である
ことだけを理由とした腋窩治療の省略には慎重であるべきと考えられた。後
期高齢者においては内分泌療法であっても薬物治療が十分に行えない傾向に
あり、併存症や全身状態を考慮した上で必要十分な局所治療を検討する必要
があると考えらえた。今回は少数例の検討であり、高齢者に適した治療を選
択するためさらなる検討が必要であると考えられた。
ポスター討議
DP-2-105-05
DP-2-106-01
1
福井赤十字病院 外科
当院における高齢者乳癌の検討
高齢者乳癌の臨床病理学的特徴
熊本大学 医学部 乳腺内分泌外科、
2
熊本大学 医学部 乳癌分子標的治療学寄付講座
稲尾 瞳子 1、山本 豊 2、末田 愛子 1、林 光博 1、山本 聡子 1、指宿 睦子 1、
村上 敬一 1、岩瀬 弘敬 1
目的;当院における高齢者乳癌(75 歳以上)の臨床病理学的特徴を明らかにし、
適切な治療方針について検討する。方法;2006 年から 2014 年までに当院で
手術を施行した T1 ~ T3 症例のうち、閉経後乳癌 734 例について検討を行っ
た。結果;後期高齢者(75 歳以上)は 151 例(21%)、超高齢者(85 歳以上)は
21 例(3%)であった。75 歳以上の高齢者乳癌と、75 歳未満の閉経後乳癌で
比較を行ったところ、OS、DFS において、75 歳以上の高齢者乳癌は予後不良
であった(OS;P=0.025, DFS;P=0.001)。しかし、Luminal type での両者
の比較では、OS,DFS とも有意差を認めず、その他のサブタイプにおいて高齢
者乳癌は予後不良であった。また、75 歳以上の高齢者乳癌では、T 因子、
Ki-67 や ER の発現においては有意差を認めなかったが、リンパ節転移が少な
く、HER2 陰性症例が有意に多かった。また、術前、術後補助療法未施行例が
有意に多かった。閉経後乳癌の OS に対する多変量解析では、75 歳以上、リ
ンパ節転移の有無が、独立した予後予測因子であった。結語;高齢者乳癌の
特徴として、リンパ節転移が少なく HER2 陰性症例が多かったが、一方で予
後不良であった。75 歳以上であっても、余命、全身状態、併存疾患を考慮し、
化学療法の追加を検討すべきである。
広瀬 由紀、皆川 知洋、我如古 理規、吉羽 秀麿、吉田 誠、土居 幸司、
川上 義行、青竹 利治、田中 文恵、藤井 秀則
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】日本は世界に冠たる長寿国であるが、今後も高齢者の乳癌に遭遇
する機会は増加すると思われる。高齢者乳癌に対していかに対処すべきか。
そのためにまずは自験例での高齢者乳癌の臨床病理学的特徴を検討した。【目
的】75 歳以上の高齢者乳癌の臨床病理学的特徴の検討【対象と方法】当院にお
いて 2005 年から 2014 年の 10 年間におけて経験した乳癌 709 例について、
49 歳以下の乳癌 184 例と、50 歳から 74 歳の乳癌 406 例、そして 75 歳以上
の 119 例に分類して比較検討を行った。検討項目は腫瘍径、リンパ節転移、
Stage、組織型、ホルモンレセプター(ER,PgR)
、Her2、MIB-1 、サブタ
イプ、そして施行された治療である。【結果】腫瘍径に関しては 75 歳以上で有
意に Tis が少ない傾向にあった。リンパ節転移においてはいずれの群において
も差は見られなかった。Stage でもやはり Stage0 は年齢と共に減少した。組
織型では非浸潤癌と硬癌が減少傾向を示し、充実腺管癌が加齢と共に有意に
増加していた。ホルモンレセプターでは PgR については 50 歳以上で陰性例が
増加したが、ER では変化はなかった。Her2 に関しては特に変化は見られな
かった。MIB-1 は 75 歳以上では 49 歳以下に比べてやや低い傾向がみられた
が有意な差はなかった。サブタイプでは Luminal A が年齢と共に増加し逆に
LuminalB が明らかに減少した。治療方法では年齢と共に乳房切除の割合が有
意に増加していた。【考察と結語】75 歳以上の乳癌では組織型において充実腺
管癌が多くみられ、また非浸潤癌が少ない傾向であった。非浸潤癌が少なかっ
たのはマンモグラフィ検診の年齢による受診率の差に依存するのかもしれな
い。諸家の報告では高齢者においてはホルモン感受性が高い、あるいは Her2
過剰発現が少ないといった報告があるが、自験例では明らかでなかった。ま
た MIB-1 についても有意な差はなかった。しかし高齢ほど LminalA の症例が
多くみらえた。手術方法では明らかに高齢ほど乳房切除術が適応されていた。
今後更に症例を重ねて検討したい。
DP-2-106-02
DP-2-106-03
高齢者乳癌の特徴および治療に対する検討
1
当院における超高齢者(90 歳以上)乳癌切除例(7 例)の検討
JCHO 久留米総合病院、2 久留米大学医療センター
1
1
1
1
1
1
唐津赤十字病院 外科、2 唐津赤十字病院 病理部
朔 周子 、田中 眞紀 、山口 美樹 、大塚 弘子 、白水 和雄 、
村上 直孝 1、山口 倫 2
古垣 浩一 1、田渕 正延 1、鶴 安浩 1、北川 浩 1、神谷 尚彦 1、酒井 正 1、
加藤 雅人 1、井久保 丹 1、鮫島 隆一郎 1、木戸 伸一 2、湯之谷 誠二 1
背景:乳癌は女性の罹患する癌疾患の中で増加の一途をたどっている。検診
制度の普及に伴い、癌の発見率が上がり、高齢者でも癌の治療を受ける対象
になってきている。高齢者乳癌は、標準的な治療をするにおいて、併存疾患
を有している率が高く、また治療に伴う副作用も重篤化することが懸念され
る。目的:高齢者乳癌患者は、外科手術や術後薬物療法を他の年齢層と同様
に施行するには、個々の症例に応じた見極めが重要である。それぞれの
Performance Status( 以下 PS) や生活環境に応じた治療戦略が必要である。
今回当院の症例について検討した。方法:2012 年 1 月から 2014 年 11 月まで
の期間で、当院にて治療を行った 1030 例で、乳癌診断時に 75 歳 ( 後期高齢者 )
以上であった患者は 118 例 (2 例の両側乳癌を含む ) であった。それらの症例
に対して病理組織型的特徴、治療 ( 手術、術後補助療法 ) に対する検討を行っ
た。 結 果: 当 院 で の 高 齢 者 乳 癌 を 分 類 し た 結 果、ER(+)HER2(-) type:
76%(90 例 )、ER(+)HER2(+) type:4%(5 例 )、ER(-)HER2(+) type:
3%(3 例 )、triple negative type:17 %(20 例 ) であった。当院での 75 歳未
満では ER(+)HER2(-) type が 64%(592 例 /914 例 ) であったのに対し、高齢
者乳癌では ER(+)HEER2(-) type の乳癌の比率が高かった。内分泌受容体陰
性例でもご家族や本人の希望で化学療法などは施行しない例も多く見られた。
また、温存術後の放射線療法を省略する例や、温存可能な腫瘍でも本人家族
の希望にて乳房切除する症例も若年者に比較して多かった。考察:高齢者乳
癌患者においては、ガイドラインに沿った標準的治療が必ずしも適応になる
とは言えず、社会的背景を考えながらの継続可能な治療が必要である。また
高齢者乳癌においては、併存疾患のコントロールや副作用の出現に対して、
かかりつけ医などとの連携が大切である。
[ はじめに ] 高齢化社会の到来、医療技術の進歩に伴い高齢者の手術は増加傾
向にあるが、90 歳以上の超高齢者乳癌の報告例は極めて少ない。当院におけ
る 90 歳以上超高齢者乳癌患者 (7 例 ) の臨床病理学的検討を行い、文献的考察
を 加 え 報 告 す る。[ 症 例 ](1)104 歳。 局 麻 下 に 腫 瘍 核 出 術。pT2.invasive
ductal carcinoma.ER(+),PR(+),HER2(+)。(2)94 歳。胸筋温存乳房切除術
施行。pT1b.invasive ductal carcinoma.ER(+),PR(+),HER2(+)。(3)93 歳。
乳 房 部 分 切 除 術 施 行。pT1c.invasive ductal carcinoma.
ER(+),PR(+),HER2(-)。(4)92 歳。 局 麻 下 に 腫 瘍 核 出 術。pT1c.invasive
ductal carcinoma.ER(+),PR(+),HER2(-)。(5)92 歳。前胸部皮膚腫瘍切除
術 施 行。pN2.invasive ductal carcinoma recurrence.
ER(+),PR(+),HER2(+)。(6)90 歳。両側乳癌。両側乳房切除+センチネルリ
ン パ 節 生 検。pT1cN0.invasive ductal carcinoma.ER(+),PR(+),HER2(-)。
(7)90 歳。 乳 房 全 摘 施 行。pT4b.invasive ductal carcinoma.
ER(+),PR(+),HER2(-)。[ 考察 ] ホルモン陽性乳癌の場合は可能な限りホル
モン療法を優先することを推奨している報告もある。、一方、タモキシフェン
と手術療法の比較試験では局所コントロールは手術療法の方が有意に良好で、
全身状態が侵襲に耐えうるなら手術療法を行った方が良く、余命が 2 年以上望
める場合にはホルモン単独の治療は行うべきではないとする報告もある。ま
た、高齢者では服薬コンプライアンスが低下し、服薬できているかの確認が
必要で、内服できなかった時やホルモン療法無効時の病勢増悪を考慮すると
QOL の向上には機を逸せずに手術することが確実な治療法であり、いずれの
症例でもご家族・ご本人が十分に理解した上で手術を希望されたため、手術
を選択した。術式に関しては腋窩リンパ節郭清を伴わない乳房温存術で十分
との考えもあるが、温存術で必ずしも満足できる整容性が得られるとは限ら
ず、また乳腺組織が萎縮した下垂が強い乳房では、乳房切除術も短時間で施
行できることから、比較的低侵襲と考えられる。また腋窩郭清に関しては 70
歳・80 歳以上の高齢者には腋窩郭清は必要ないとの報告例もあるため、多く
の症例では腋窩リンパ節郭清は行わず、乳房部分切または全摘を行った。全例、
大きな合併症もなく軽快退院された。[ 結語 ]90 歳以上の乳癌患者を治療する
際には、併存疾患の有無、治療に伴う合併症を考慮しながら治療を提供する
必要があると考えられた。
448
ポスター討議
DP-2-106-04
DP-2-106-05
独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター 消化器乳腺外科
三河乳がんクリニック
高橋 深幸、末松 友樹、須田 寛士、平塚 美由起、齋藤 洋之、真崎 純一、
大森 敬太、石橋 雄次、若林 和彦、伊藤 豊
吉田 直子、水谷 三浩
80 歳以上後期高齢者乳癌症例の検討
当院の高齢者(70 歳以上)乳癌の検討
【背景】近年の高齢者人口の増加に連動するごとく高齢者乳癌も増加し続けて
いる。高齢患者の多くは合併症および家庭環境 ( 一人暮し ) や認知症などの諸
問題を有するため、複雑な個々への対応が求められる。当院でも高齢者の診
療に際し可及的に個別化・適正化に努めているが、直面する様々な対応に苦
慮している。今回当院の 70 歳以上の乳癌患者の臨床と病理所見を解析し、そ
の特徴や課題について検討した。【対象と方法】2009 年 4 月~ 2014 年 10 月
までに当院で手術を受けた 882 例のうち 70 歳以上の高齢者乳癌 86 例 (9.9%、
平均年齢 76.2 歳 ) の 90 乳房を対象とした。調査項目は発見契機、腫瘍径、病
期分類、術式、リンパ節転移、組織型、核異型度、ER、PgR、HER2 などで、
全国モデル (2011 年乳癌登録集計 ) と比較し、特徴や課題の抽出を試みた。
【結
果と考察】発見契機は自覚症状が半数以上 ( 当院高齢者 65.6%VS 全国モデル
55.7% 以下同順 ) を占めており、検診発見例 (20%vs34.3%) の少ないためか、
DCIS が少ない (12.2%vs14.3%) 傾向にあった。それでも腫瘍径は T1・T2
が大半を占めていた ( 各 51.1%vs45.3%、28.9%vs27.5%) が、当院では放
射線療法や断端陽性または再建の目的の再手術を嫌う高齢者が多いため、温
存率は低かった (36.7%vs58.6%)。病期分類では STAGEI(46.7%vs41.5%)
と STAGEIIIB 以上 (7.8%vs5.4%) が全国モデルを上回り、両極に分かれたた
めに、近年まれな定乳切まで施行する例もあった。乳房温存例のうち認知症
や 心 疾 患 の た め の 局 麻 下 手 術 が 11 例 あ っ た。 組 織 型 で は DCIS が 少 な く
(12.2%vs14.3%)、特殊型が多かった (11.1%vs7.7%、粘液癌 5.6%vs3.3%)。
全国モデルと同様にホルモンレセプター陽性率は高く (ER79.7%vs79.7%、
PgR57%vs69.4%)、リンパ節転移率はほぼ同等 (22.6%vs23.2%) で、HER2
陽性率も低かった (11.4%vs14.6%)。また核異型度も grade1 がもっとも多
かった (40.5%)。以上を鑑みると、高齢者の乳癌は総じて低リスク例が多い
と思われた。したがって重度の合併症および一人暮しや認知症などの高齢者な
らではの問題を考慮すると、高齢者こそ早期発見の重要性が高く、家族や行政
のサポートが不可欠と思われる。
【まとめ】今後高齢者乳癌は間違いなく著増す
ることから、高齢者を早期発見治療に導く包括的システムの確立が肝要である。
DP-2-107-01
DP-2-107-02
新潟大学 大学院 消化器・一般外科
1
高齢者 Triple negative 乳癌の治療 - 若年者との比較
高齢乳癌患者における内分泌療法の種類による副作用の比較
東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学研究チーム、
がん研究会がん研究所 病理部、3 がん研有明病院 乳腺センター乳腺外科、
4
福島県立医科大学 腫瘍内科学講座
2
小山 諭、永橋 昌幸、諸 和樹、土田 純子、長谷川 美樹、利川 千絵、
辰田 久美子、萬羽 尚子、五十嵐 麻由子、若井 俊文
【目的】Triple negative(TN) 乳癌では予後不良である症例も少なからず存在す
る.そのため術前もしくは術後補助化学療法が適応となることが多いが,高
齢者では併存疾患や全身状態などの要因を考慮すると化学療法の施行が困難
な場合も多い.今回,当科における高齢者 TN 乳癌の特徴,治療と予後につい
て,若年者との比較により検討した.【方法】2008 年から 2012 年の 5 年間の
当科原発性乳癌手術例のうち,TN 乳癌を対象に,年齢 65 歳未満 ( < 65 群 ) と
65 歳以上の高齢者 ( ≧ 65 群 ) との 2 群に分け,病期,組織型,リンパ管侵襲,
静脈侵襲,術式,術前薬物療法、術後化学療法,照射療法,再発,無病生存
率 (DFS),全生存率 (OS) などの項目を 2 群間で比較・検討した.さらに年齢
75 歳未満 ( < 75 群 ) と 75 歳以上の後期高齢者 ( ≧ 75 群 ) とについても同様の
比較を行った.統計学的検討はχ2 検定,Log-rank 検定を用い,P < 0.05 を
有意とした.
【結果】該当期間の原発性乳癌手術施行 448 例中,HER2 陽性乳
癌 は 45 例 (10%) で あ り, 病 期 I 期 14 例,IIA 期 12 例,IIB 期 13 例,IIIA 期
5 例,IIIB 期 1 例であった.< 65 群 (33 例 ) と≧ 65 群 (12 例 ) では,病期,組
織型,静脈侵襲,核異型度,術式,術前薬物療法や照射療法の有無などに差
を認めなかったが,リンパ管侵襲は< 65 群で有意に頻度が高かった (P <
0.05).術後化学療法は< 65 群で有意に多く施行されていた (P < 0.05).再
発は< 65 群 5 例,≧ 65 群 1 例に認めたが,頻度は 2 群間で差を認めず,DFS
および OS でも差を認めなかった.< 75 群と≧ 75 群の比較では,病期,組織
型,リンパ管侵襲,静脈侵襲,核異型度,術式,術前薬物療法や照射療法お
よび術後化学療法の有無などに差を認めなかった.再発の頻度は 2 群間で差を
認めず,DFS でも差を認めなかった.OS は有意に< 75 群で低かったが (P <
0.05),< 75 群の死亡 2 例中 1 例は他病死であった.【結語】高齢者 TN 乳癌で
は,若年者と比較して術後化学療法が手控えられていることが多いが,再発
率や予後では若年者に比べて劣っているわけではない.高齢者 TN 乳癌に対す
る,化学療法を中心とする術後補助療法の適応に関しては,全身状態や併存
疾患などを考慮しつつ無理のない選択が望ましい.
本間 尚子 1,2、蒔田 益次郎 3、佐治 重衡 4、新井 冨生 1、堀井 理絵 2、
秋山 太 2、岩瀬 拓士 3
【緒言】超高齢社会の我が国において、増加の一途にある高齢乳癌患者への治
療の最適化は重要な課題である。しかし高齢者は一般的に、抗癌薬の臨床試
験では対象外とされることが多く、副作用についても不明な点が多い。高齢
者では、癌の予後よりも薬剤の副作用による QOL 低下の方が深刻な場合もあ
り、より副作用の少ない治療が望まれる。現在、閉経後ホルモン受容体陽性
乳癌に対する内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬(AI)が標準化されている
が、我々はこれまで、閉経後乳癌患者の血中および乳癌組織中の estrone (E1)
および estradiol (E2) 濃度についての詳細な検討から、AI は血中のエストロ
ゲンレベルを極度に低下させることにより作用を発揮することを示してきた。
エストロゲンは全身の生理的機能維持に重要だが、全身機能・代謝機能とも
低下した高齢者において AI がどのような副作用を示すか、抗エストロゲン薬
(SERM)との比較という観点から検討を行った。【対象と方法】乳癌内分泌療
法をうけた患者を対象として、副作用自覚症状 13 種(ほてり、発汗、指関節
症状、膝・肩関節症状、手足のしびれ、易疲労感、だるさ、物忘れ、抑うつ
症状、イライラ感、おりもの、性器出血、膣乾燥)、および、体重変化、骨折、
計 15 項目についてアンケート調査を施行した。のべ 16119 回答のうち、閉経
後であることが確実な 60 歳以降の 6486 回答を解析対象とした。70 歳未満と
70 歳以上の 2 群にわけ、AI と SERM による副作用の出現率・程度を比較した。
有意水準は、P < 0.05/15(ボンフェローニ補正)とした。
【結果】70 歳以上では、
発 汗 (P=0.0004)、 指 関 節 症 状 (P < 0.0001)、 膝・ 肩 関 節 症 状 (P
=0.0010)、手足のしびれ (P =0.0008)、易疲労感 (P < 0.0001)、だるさ (P
=0.0005)、物忘れ (P =0.0030) の 7 症状が、SERM で AI よりも有意に少な
かった。一方、70 歳未満で同様に有意差があったのは指関節症状 (P=0.0028)
のみだった。おりものは両群とも SERM で有意に多かった ( 両群とも P <
0.0001)。【結語】70 歳以上の高齢乳癌患者では、70 歳未満の患者と異なり、
多くの症状の出現率・程度が、SERM で AI よりも有意に低かった。理由は不
明だが、高齢乳癌患者における内分泌療法として、少なくとも QOL 維持の観
点からは SERM が有利な可能性がある。
449
一般セッション(ポスター討議)
【目的】乳癌の好発年齢は 40 ~ 50 歳台がピークであるが , 平均寿命の延長に
伴い高齢者乳癌症例も増加している . 当院においても後期高齢者乳癌症例は過
去 5 年間で約 30%を占めており , その中でも 80 歳以上後期高齢者乳癌症例は
約半数に及ぶ . 高齢者乳癌症例は術式選択や術後補助療法 , 再発治療に関して
画一的に行うことができない場合もある . 臨床病理学的特徴を検証し各々に応
じた治療戦略を検討する .【方法】当院で 2009 年 1 月から 2014 年 12 月の 5 年
間で施行した原発性乳癌症例 258 件のうち , 80 歳以上の症例 34 例を臨床病理
学的因子について後方視的に検討した .【結果】年齢中央値は 82 歳(80~97
歳). 男性乳癌が1例含まれていた . 組織型は DCIS1 例 , 浸潤性乳管癌 31 例 ,
浸潤性小葉癌 1 例 , 粘液癌 2 例であった . ステージは IIB 以上が 47% を占めて
おり , N 因子によるものが多かったが T4 症例も 5 例 (14%) 認めた . サブタイ
プについてはほぼ luminal Type であり , triple negative 症例は 1 例のみで
HER2 陽性乳癌は認めなかった . 術式は乳房切除 23 例(67%), 乳房部分切除
11 例(34%)と乳房切除が多かった . 両側異時性乳癌症例を 5 例(14%)に認
めた . 合併症としての皮弁壊死を 7 例(20%)に認めた . 化学療法は術前 , 術後
を含めて施行症例はなく , 術後内分泌療法はほぼ全例に施行された .【結論】高
齢者乳癌は今後増加してくることが予想されるが , 認知症などの基礎疾患など
による発見の遅れなどがあり , 高度進行例も少なくない . また , 比較的早期の
両側異時性乳癌の症例も増加してくる可能性がある . 現状として術後補助療法
は省略されているケースも多いが , 高齢化社会に伴い高齢者の ADL も今後さ
らに改善してくると思われ , 症例によっては症状コントロール目的以外にも積
極的に治療が可能である場合があることを念頭に入れつつ , 治療戦略をたてる
必要があると考える .
ポスター討議
DP-2-107-03
DP-2-107-04
1
東邦大学医学部外科学講座 乳腺内分泌外科(大森)、
2
東邦大学内科学講座 血液腫瘍科、3 相模原中央病院 外科
1
緒方 秀昭 1、尾作 忠知 1、久保田 伊哉 1、馬越 俊輔 1、金澤 真作 1、
齋藤 芙美 1、名取 一彦 2、中野 太郎 3、高塚 純 3、金子 弘真 1
松本 恵 1、矢野 洋 1、進藤 久和 1、大坪 竜太 1、福嶋 絢子 1、錦戸 雅春 2、
永安 武 1
当院における 80 歳以上の高齢者乳がん症例の検討
血液透析患者における乳癌治療の検討
2
一般セッション(ポスター討議)
目的:当科で経験した 80 歳以上の乳癌症例について検討した。対象と方法:
2004 年 1 月~ 2014 年 6 月までに当科で初回診療のなされた 80 歳以上の乳癌
症例 133 例について臨床病理学的背景、治療内容、予後との関連について後
方視的に検討した。結果:治療開始年齢 80 歳~ 96 歳(中央値 83 歳)、要介護
支援者 27 例、治療を要する併存疾患を有する患者 106 例、うち認知症 19 例
であった。初診時遠隔転移症例は 11 例。120 例に手術が施行され、乳房部分
切除 46 例、乳房切除 74 例。乳房部分切除後の温存乳房照射は 21 例に施行さ
れ て い た。 術 後、 重 篤 な 合 併 症 は な か っ た。 病 期 は Stage0:10、I:40、
II:44、III:28、IV:11。組織型は DCIS10 例、浸潤性乳管癌 109 例、特殊型
7例、浸潤性小葉癌 7 例。ER 陽性 HER2 陰性 84 例、ER 陽性 HER2 陽性 13 例、
ER 陰性 HER2 陽性 2 例、ER 陰性 HER2 陰性 20 例、HER2 不明 14 例。術後予
防的薬剤投与はホルモン療法が 81 例、化学療法が 10 例に施行されていた。
初回治療後の再発症例は 12 例であった。転帰は生存 97 名、死亡 33 名、不明
3 名で原病死 10 名であった。予後に関して、初診時に遠隔転移を有する症例
は有意に生存期間が短かった。一方、検診など受診契機における医師介在の
有無と生存期間に関連はなかった。術後薬物療法による生存期間の延長は認
めらなかった。また乳房部分切除後の照射の有無により局所再発率や生存期
間に差は認められなかった。また、併存疾患の有無は生存期間に影響を与え
なかったが、要介護支援者は生存期間が有意に短かった。結語:80 歳以上の
高齢者においては、乳癌に対する治療のみならず個々の全身状態に応じた包
括的な介入を行う必要がある。
長崎大学大学院 医歯薬総合研究科 腫瘍外科、
長崎大学病院 血液浄化療法部
【背景・目的】血液透析患者は年々増加傾向にあり、日本透析医学会によると
2014 年末現在約 32 万人にのぼると報告されている。その内約 1/3 が女性患
者である。一方乳癌も年々増加傾向にあり、2014 年の罹患者数は 86000 人
に上ると予測されている。透析患者に悪性腫瘍発生率が多いと言われている
が、大規模な研究が無いためまだ結論は出ていない状況である。しかし増加
傾向にある両疾患が合併する症例が増えていくことは間違いなく、透析患者
特有の治療戦略についてこれまでの経験をもとに検討した。【対象・方法】
2010 年 1 月から 2014 年 12 月の間に当院血液浄化療法部にて周術期に透析を
行いながら治療している 5 例について検討した。【結果】全症例女性で平均年
齢は 51.0 歳(41-61 歳)、透析歴は 10 年から 37 年(中央値は 23.0 年)であっ
た。全例患側の前腕内シャントを vascular access(以下 VA)としていた。
発見動機は腫瘤自覚:3 例、CT 発見:2 例であり、Stage は I:2 例、II:2 例、
IV:1 例(肋骨転移)であった。全例腎不全以外の併存疾患を有しており、2 例
が術前ヘパリン化を必要とした。Bt:4 例、Bp:1 例で、全例センチネルリン
パ節生検のみ施行した。N(-) が 4 例で、StageIV 症例のみ N(+) であったが局
所コントロールを目的としており、全身状態と総合判断し腋窩郭清を省略し
た。平均手術時間:121.6 分(102-149 分)
、出血量中央値:30ml(20-130ml)
で非透析症例と著明な違いは認めなかった。しかし在院日数は 11.8 日と長い
傾向にあった。病理結果は Luminal(HER2 陰性):4 例、HER2 enrich:1 例
であった。補助療法として 3 例がホルモン療法を行っており、抗癌剤治療・分
子標的治療施行例は無い。Bp を行った 1 例に残存乳房照射 (50.4Gy) を施行
した。【考察】透析患者であっても術式に特別な配慮は必要無いとされている
が、今回全例で患側に VA があったことより、腋窩郭清を行うことでシャント
トラブルが発生した際の対応を血液浄化療法部と綿密に行っておくことで、
事前に VA を変更することはなかった。在院期間延長の理由として、2 例の術
前ヘパリン化と 2 例の術後血腫による再開創症例が影響していた。術後血腫は
翌日の透析中に出血が始まった症例もあり、術後管理の難しさを痛感した。
補助療法においては乳癌の進行度のみならず、全身状態と透析による予後と
の総合的判断が必要となり、透析医との連携を行いながら透析患者特有の治
療選択を行う必要があると考える。
DP-2-107-05
DP-2-108-01
1
1
当院における糖尿病合併乳癌症例に関する検討
非浸潤性乳癌の疫学と浸潤性乳癌との比較
富山市立富山市民病院 外科、2 富山市立富山市民病院 内分泌代謝内科、
3
富山市立富山市民病院 病理診断科
吉川 朱実 1、福島 亘 1、武居 亮平 1、八木 康道 1、佐々木 省三 1、
月岡 雄治 1、藤村 隆 1、廣澤 久史 1、泉 良平 1、高櫻 明子 2、清水 暁子 2、
橋北 和弥 3、齋藤 勝彦 3
【背景】糖尿病(DM)とがんの関連が注目されている。【対象と方法】20062014 年に当院にて治療開始した女性初発乳癌症例につき A 群:DM 非合併例
と B 群:DM 合併例(うち B-I 群:insulin 使用例)にわけて検討した。【結果】
全体で 545 例(571 病変)。A 群 500 例(525 病変)、B 群 45 例(46 病変)うち
B-I 群 13 例(13 病変)。DM は B-I 群の 1 例(1 病変)を除き Type2。年齢中央
値は全体 /A 群 /B 群(うち B-I 群):62/61/67(64) 歳。診断契機は有症状受診
例が A 群、B 群とも約 60%を占め、B-I 群では 76.9%。無症状例では CT 等で
の偶発的発見例が A 群 /B 群:3.4/8.7%。ステージ 0 および 1 の早期乳癌の率
は A 群 /B 群(うち B-I 群): 55.2/41.3(30.8) %。ステージ 4 の率は A 群 /B 群
(うち B-I 群): 3.8/6.5(7.7) %。浸潤癌の臨床的サブタイプを 1:Luminal
A or Luminal B(HER2 陰性 )/2:Luminal B(HER2 陽性 )/3:HER2 陽性 (non
luminal)/4:triple negative の 4 タイプに分類した場合の各比率は A 群では
65.7/11.7/9.9/12.6 %、B 群 で は 72.5/12.5/5.0/10.0 %、 う ち B-I 群 で は
75.0/16.7/0.0/8.3%であった。MIB-1 index が検索されていた計 118 例の
浸潤癌の検討では、中央値で A 群 (107 例 )/B 群 (11 例 ):18.0/15.0%。両側
乳癌症例(少なくとも一方を対象期間に治療)の率は A 群 /B 群:9.0/2.2%。
観察期間内の術後乳房内(単独)再発例は A 群 /B 群:1.1/0%、遠隔再発例は
A 群 /B 群(うち B-I)
: 6.2/11.1(23.1) %。他臓器悪性腫瘍罹患例(既往含む)
は A 群 /B 群(うち B-I): 10.6/20.0(30.8) %。B 群の 45 例中、6 例(13.3%)
は乳癌診断後の検査で DM と診断されて治療を開始し、3 例(6.7%)は乳癌診
断時に DM 治療中であったがコントロール不良により薬剤調整を要した。B 群
のうち乳癌初期治療あるいは転移再発治療として化学療法を受けた症例は 16
例(35.6%)であった。【考察】B 群は全体の 8.3%にあたり、同年齢層の一般
的な DM 有病者の率と比べとくに多いとは言えない。B 群は A 群より高齢で、
原因は不明であるが、進行例、遠隔再発例、他臓器悪性腫瘍罹患例が多い傾
向にあった。両側乳癌例は本グループではむしろ A 群に多かった。サブタイ
プと MIB-1 index はより多数での検討が必要である。【結語】乳癌の診断・治
療に際し、DM を意識してチーム医療を行う必要があると考えられた。
札幌ことに乳腺クリニック、2 東札幌病院、3 北広島病院、4 札幌医大公衆衛生
増岡 秀次 1、三神 俊彦 1、堀田 美紀 1、桜井 美紀 1、吉田 佳代 1、
白井 秀明 1、下川原 出 1、浅石 和昭 1、三原 大佳 2、野村 直弘 3、
森 満 4
【はじめに】非浸潤癌は、発生した癌細胞が基底膜を超えて間質へ浸潤してお
らず、乳管内にとどまっている状態と定義されている。発生過程として、乳
管過形成、異型乳管過形成 (ADH)、非浸潤性乳管癌 (DCIS)、浸潤癌が一連の
変化で、正常状態から多段階に浸潤癌に発達する可能性も示唆されている。
【目
的】非浸潤性乳癌に対する症例対照研究はほとんどない。この度非浸潤癌のリ
スク要因につき症例対照研究により検討した。また浸潤癌と相違があるか比
較検討も行った。【対象と方法】2013 年 12 月までに当院で手術を施行した原
発乳癌で両側乳癌を除く非浸潤癌 418 例(閉経前 176 例、閉経後 242 例)、浸
潤癌 3,456 例((閉経前 1,431 例、閉経後 2,025 例)を case とした。個人情報
の問題もあり、現在住民 control を取ることは非常に困難である。Bias は多少
あるが乳腺疾患のない当院外来受診者 4,711 例((閉経前 2,604 例、閉経後
2,107 例)を病院 control とし、主に宿主要因につき case-control study を行っ
た。解析は SAS 9.2(SAS Institute. Inc.) を使用し、年齢 matching による
conditional logistic regression 法により行った。【結果および考察】年齢は、
非浸潤癌 27 歳から 87 歳まで平均 55.7 歳、浸潤癌 21 歳から 92 歳まで平均
54.8 歳で、年齢に差はない。平均観察期間は 8.9 年である。非浸潤癌では、
温存率が高いが、温存術後の再発率、ホルモン受容体陽性率に差はない。リ
スク要因の解析は、非浸潤癌の閉経前では、痩せはリスク要因、出産、授乳
は抑制要因である。家族歴、良性乳腺疾患の既往、独身に差は認めなかった。
Stepweis 法による多変量解析では、出産のみが有意のある項目として残った。
また閉経後では、早い初潮、低体重がリスク要因であったが、Stepweis 法で
は初潮年齢のみが残った。浸潤癌は、閉経前では、早い初潮、低体重、独身、
家族歴がリスク要因に、出産、授乳は抑制要因であった。Stepweis 法では、
独身、家族歴、初潮年齢、良性乳腺疾患の既往が残った。閉経後では、早い
初潮、独身、肥満がリスク要因に、出産が抑制要因であったが、Stepweis 法
では、出産、初潮年齢が残った。非浸潤癌と浸潤癌ではリスク要因は異なっ
ており、発生要因の違いがあるものと考えられる。病院 control では家族歴の
ある受診者が多く bias はあるが、非浸潤癌では家族歴との関係は薄いものと
考えられる。非浸潤癌の症例は少なく、今後も症例を増やし検討する必要が
あると思われる。
450
ポスター討議
DP-2-108-02
DP-2-108-03
当院における浸潤性小葉癌手術症例の検討
男性乳癌患者に対する Tamoxifen 投与の有効性についての検
討
1
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科、
2
新潟県立がんセンター新潟病院 病理診断科
地方独立行政法人 広島市立病院機構広島市立広島市民病院 乳腺外科
辰田 久美子 1、土田 純子 1、勝見 ちひろ 1、金子 耕司 1、神林 智寿子 1、
佐藤 信昭 1、本間 慶一 2
吉村 友里、金 敬徳、藤原 みわ、梶原 友紀子、河内 麻里子、伊藤 充矢、
大谷 彰一郎、檜垣 健二
DP-2-108-04
DP-2-108-05
東京都立大塚病院 外科
1
当院乳腺外来における男性患者の検討
乳腺アポクリン癌 72 病変の臨床病理学的検討
2
柿本 應貴、吉村 哲規
【目的】男性乳癌は全乳癌患者の 0.5-1%と言われているが、男性有訴者にお
ける乳癌の頻度についての報告は少ない。乳房の症状で当院乳腺外来を受診
した男性患者について検討した。【方法】2006 年 6 月から 2014 年 6 月まで乳
房の症状で当院外科外来を受診した男性症例を対象とし、受診時の症状、検
査方針、最終診断、乳癌症例数、全乳癌患者との比について検討した。【結果】
症例数は 124 例、平均 67.3(0-88)才であった。男児の女性化乳房症は小児
科にて診療されているため、小児は血液疾患に合併した乳腺炎症例 0 歳児 1 例
のみであった。自覚あるいは指摘された症状は乳頭部腫瘤、疼痛、分泌物の
いずれかであった。体位保持可能な症例には原則として US,MMG が行われ、
エコー下細胞診または針生検は 12 例に対し行われていた。最終診断は女性化
乳房症 120 例、乳腺炎 4 例、乳癌 3 例(重複含む)であった。乳癌 3 例はいず
れも視触診の時点で悪性が強く疑われており、良性疾患と診断され後日悪性
が判明した症例はなかった。乳癌症例はそれぞれ 72 才 stagIIB 生存中、84 才
stageIIIB 初診から 3 年後肺転移に伴う肺炎のため死亡、74 才 stageIIIB 初診
より 4 年後脳転移のため死亡、となっている。同時期の全乳癌患者における男
性乳癌の比率は 0.54%であった。【方法】男性有訴者の受診頻度は施設の性質
(癌専門病院か一般総合病院かなど)や、紹介元が女性化乳房症例をどの精査
に送るかによっても大きく異なっていると考えられ、有訴者における男性乳
癌患者の頻度を推定するには不確定要素が多いと思われる。当院で乳腺外来
受診男性中の乳癌患者は 2.4%であった。全乳癌症例癌に対する比率は一般的
な罹患率と同程度であり、実際の頻度に近いのではないかと考える。男性乳
癌症例は視触診でほぼ診断がついており。文献的にも男性乳癌の診断は専門
医にとって比較的容易であると言われている。また病期が同じであれば女性
症例と予後に差は無いと言われている。しかし実際には高度進行癌の受診例
が多く、疾患についての周知が必要であると思われる。
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 外科、
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 臨床検査科
笹原 真奈美 1、松井 哲 1、中小路 絢子 1、雨宮 愛理 1、平形 侑子 1、
村田 有也 2
【目的】当院における、72 病変の乳腺アポクリン癌(apocrine carcinoma :
AC)の臨床病理学的検討を行った。【対象】2000 年 1 月から 2014 年 12 月まで
に当院で手術をした原発性乳癌 2129 例うち、病理組織学的に AC と診断した
68 症例(両側・多発 3 症例、計 72 病変)を対象とした。【方法】臨床的および
病 理 組 織 学 的 特 徴(ER、PgR、HER2、Ki-67、AR、FOXA1(Forkhead box
A1 protein)発現)等を検討した。【結果】平均年齢は 68.2 歳で、閉経後が
97.2%であった。同時両側 3 例(4.4%)、異時両側 7 例(10.3%)と両側乳癌
が 多 く な っ て い た。 浸 潤 性 AC は 72.2%、 非 浸 潤 性 AC は 27.8% で あ り、
Stage0、1、2、3、4 はそれぞれ、27.8%、27.8%、38.9%、4.2%、1.3%
であった。リンパ節転移を 20.8% で認めた。ER は 95.8% で陰性、PgR は
98.6% で 陰 性、HER2 は 86.1% で 陰 性 で あ り、Intrinsic subtype 別 で は、
Triple negative type が 80.5% を占めた。Ki-67 染色率は平均 12.1% であっ
た。AR は 全 例 陽 性 で あ り、 核 染 色 率 は 平 均 73.0% で あ っ た。FOXA1 は
91.7% で陽性であり、核染色率は平均 50.5% であった。術前または術後薬物
療法は 7 例に実施されるのみであった。無再発生存は 63 例(92.6%)、再発例
は 5 例(7.4%)であり、Ki-67 が高く核異型度の強い症例に再発が多くなって
いた。【考察及び結論】AC は頻度の低い特殊型乳癌であるが、高齢者に多く近
年は増加傾向にある。その理由として、閉経後の高齢者女性での相対的
Androgen 刺激の増加が考えられる。AC は通常型より予後良好であるが、
Triple negative type であることが多く、薬物療法が限定される。再発症例で
は有効な薬物療法が殆ど無く、新たな治療戦略の確立が急務である。AC では、
AR、FOXA1 陽 性 率 が 高 い た め、AR を 標 的 と し た 抗 ア ン ド ロ ゲ ン 薬 や、
FOXA1 を標的とした新たな治療薬の開発が期待される。
451
一般セッション(ポスター討議)
浸潤性小葉癌(ILC)への薬物療法の意義を明らかにするために手術症例の臨
【背景】男性乳癌は,乳癌全体の約 1% と稀な疾患である.女性乳癌と比べて
床病理学的因子を遡及的に検討した。対象:2001 年から 2013 年に手術を施
発症年齢が高い,家族歴を持つ患者が多い,ホルモン感受性陽性の頻度が高
行した ILC 症例 157 名、158 例である(異時性両側乳癌を除く)。 同期間の
いという特徴がある.治療については,術後に Tamoxifen を投与することで,
浸潤性乳管癌手術症例は 3131 例で、ILC は全体の 4.8%であった。年齢の中
DFS(無病生存期間)や OS(全生存期間)を延長する可能性が示唆されている.
央 値 は 56 歳(35-90 歳 )で、Stage I 95 例、Stage II 58 例、Stage III 【目的と方法】当院において 1985 年から 2014 年の間に乳癌と診断した男性患
5 例、ER 陽性は 77.8%(123/158 例)であった。Luminal A like(ER 陽性、
者 17 名が対象.2003 年以降に手術を行った患者には術後 Tamoxifen 投与を
Ki67 ≦ 14%)は 74 例(同時性両側を含む)、Luminal type (ER 陽性、Ki67 >
行っており,投与の有無と予後について比較を行った.【結果】年齢は中央値
15%あるいは A/B 不明 ) は 51 例、HER2 type は 1 例、triple negative(TN)
71 歳(28-86 歳 ), 乳 癌 家 族 歴 が あ っ た の は 2 名, 病 期 は Stage0:1 名,
は 23 例であった。方法:検討項目は術前化学療法 (NAC) 例の組織学的効果、
Stage1A:3 名,Stage2A:8 名,Stag2B:1 名,Stage3A:1 名,
術前・術後の補助化学療法の有無、Luminal A type と B type 群間での無再発
Stage3B:1 名,Stage4:1 名だった.Stage3 までの患者 16 名に対しては
生存(DFS)である。結果:NAC 症例は 21 例、組織学的効果は Grade 1a が
手術を行っており,胸筋合併乳房切除術:2 名,胸筋温存乳房切除術:6 名,
15 例、Grade 0 が 6 例であり、どのサブタイプでも高い効果は得られず、
全乳房切除術:5 名,乳房扇状切除術:1 名,乳房円状部分切除術:1 名,腫
Grade3 は 0% であった。再発症例は 19 例あり、骨転移 7 例、リンパ節再発 6
瘤摘出術:1 名だった.組織型は,Noninvasive carcinoma:2 名,Invasive
例、腹膜・後腹膜播種 4 例、胸膜播種・癌性リンパ管症 4 例、肝転移 4 例、胸
carcinoma:14 名,Apocrine carcinoma:1 名で女性化乳房を伴う患者はい
壁転移 3 例、脳転移 1 例であった(重複含む)。初回再発までの期間の中央値は
な か っ た.biomarker は 12 名 に 対 し て 測 定 し て お り, 全 員 Subtype は
21.9 か月(0.6 ~ 106.6 か月)、平均は 31.3 か月であった。術前または術後
Luminal A だった.転移再発した患者は術後 Tamoxifen 投与しなかった 3 名
に補助化学療法(anthracyclin (A) + Taxan (T) 併用:24 例、A 単独:8 例、
のうち 1 名、投与した 13 名のうち 4 名の合計 5 名だった.転移再発後は EC,
T 単 独:11 例 )が 行 わ れ た 症 例 は 43 例 あ り、Luminal A like 17 例、
TC,CMF + Tamoxifen,Aromatase inhibitor,Tamoxifen 継 続 を 行 っ た.
Luminal 12 例、HER2 1 例、TN 13 例であった。補助化学療法の有無に
5 名中 4 名は生存している.診断時骨転移があり Stage4 であった患者 1 名に
よる DFS を比較すると、有意差はないものの化学療法施行群で DFS(5 年 DFS
対しては Tamoxifen 投与を行い,PR を維持している.17 名のうち 3 名は死亡,
83.7% vs 91.2%)は低かった(p=0.071)。Luminal A と Luminal (B + A/
そのうち 2 名は他疾患による死亡で,乳癌による死亡は 1 名のみであった.
B 不明)で DFS を比較すると、Luminal A 群(5 年 DFS 98.6% vs 78.4%)で
DFS は,Tamoxifen 投与していない 3 名で中央値 32 ヶ月(29-58 ヶ月),投
有意に DFS が良かった(p < 0.01)まとめ:ILC の 77.8%が ER 陽性であった。
与した 13 名で中央値 111 ヶ月(5-152.5 ヶ月)(p =0.249)だった.OS は,
Luminal A like(ER 陽 性、Ki67 ≦ 14%)の DFS は 良 好 で あ っ た。NAC 後 の
Tamoxifen 投与していない 3 名で中央値 32 ヶ月(29-75 ヶ月),投与した 13
pCR は 0%であり、ILC の薬物療法では内分泌療法が中心と考えられる。
名で中央値なし(5-152.5 ヶ月)
(p =0.007)だった.
【結論】当院で治療を行っ
た男性乳癌患者において,術後 Tamoxifen 投与を行った患者の方が,DFS が
長い傾向にあり,OS については有意に長かった.進行乳癌患者についても
Tamoxifen 投 与 に よ る 治 療 効 果 が 認 め ら れ た. 男 性 乳 癌 患 者 に 対 す る
Tamoxifen 投与の有効性が示唆された.
ポスター討議
DP-2-109-01
DP-2-109-02
演題取り下げ
当院における局所進行 T4 乳癌の検討
1
2
東邦大学医療センター大橋病院 外科、
東邦大学医療センター大橋病院 病理部
岡本 康 1、石井 智貴 1、新妻 徹 1、能戸 保光 1、桐林 孝治 1、
西牟田 浩伸 1、萩原 令彦 1、高橋 亜紗子 1、有馬 陽一 1、大原関 利章 2
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】局所進行乳癌には、手術療法・薬物療法・放射線療法を含む集学
的治療が推奨されており、近年は、手術療法に先行し、化学療法が行われる
ことが多い。今回、当院における局所進行乳癌に対して検討を行った。【対象
および方法】2000 ~ 2014 年の当施設における手術例は 770 例で、経験した
局所進行乳癌は 64 例 (8.3%) であった。うち、当施設において手術および治
療を行った 40 例を対象とし、臨床病理学的因子と治療および予後に関して、
後方視的な検討を行った。【結果】年齢は 40 ~ 90 歳(中央値 68.5 歳)であっ
たが、手術先行例 (15 例 ) が 75 歳、化学療法先行例(25 例)では 65 歳と、手
術先行例において高齢であった。閉経状況は、閉経前 4 例、閉経後 36 例とほ
とんどが閉経後であった。臨床的腫瘍径は 1.5 ~ 15cm(中央値 6cm)で、
T4a 5 例 (12.5%)、T4b 31 例 (77.5%)、T4c 4 例 (7.5%)、T4d 1 例 (2.5%)、
組織型は充実腺管癌 14 例 (35%)、乳頭腺管癌 7 例 (17.5%)、硬癌 19 例
(47.5%) であった。手術は、乳房温存が 5 例、乳房切除が 35 例に、腋窩処置
は郭清が 38 例 ( うち SN →郭清 2 例 )、SN のみが 2 例であり、植皮が 7 例に行
わ れ て い た。 ま た、HR・HER2 状 況 は、HR 陽 性 /HER2 陰 性 21 例 (50%)、
HR 陽 性 / 不 明 3 例 (7.5%)、HR 陽 性 /HER2 陽 性 1 例 (2.5%)、HR 陰 性 /
HER2 陽性 2 例 (5%)、Triple Negative14 例 (35%) であった。リンパ節転移
個数(0 ~ 25 個)は 0 個 15 例、1 ~ 3 個 15 例、4 ~ 9 個 7 例、10 個以上 3
例で、化学療法は 34 例 ( 術前 25 例、術後 6 例、術前+術後 3 例 ) に施行され、
その内容は、アンスラサイクリン系+タキサン系が 18 例、アンスラサイクリ
ン系が 2 例、タキサン系が 6 例に、また経口 5FU 系薬剤が 7 例の術後に投与さ
れていた。さらに術後放射線治療は 19 例(温存乳房 6 例、胸壁+領域リンパ
節 13 例)に、また内分泌療法は 24 例に施行。観察期間中央値は 48 ヵ月で、
再発を 9 例 ( 遠隔転移 6 例、局所 3 例 ) に認め、化学療法先行例の 5 年 DFS は、
70.8%、5 年 OS は 87.8% であり、手術先行例と比べ予後に差は認めなかった。
【結語】局所進行乳癌に関しては、手術を含めた集学的治療を行うことにより
比較的良好な予後が期待できると考えられた。
DP-2-109-03
DP-2-109-04
1
福井大学 医学部 第一外科、2 福井大学がん診療推進センター、
3
福井大学附属病院 病理部、4 福井大学附属病院 放射線科、
5
国立病院機構 福井病院 外科
1
東 瑞穂 1、前田 浩幸 1、中澤 雅子 1、横井 繁周 5、小練 研司 1、
塩浦 宏樹 4、今村 好章 3、片山 寛次 2、山口 明夫 1
上野 聡一郎 1、中熊 尊士 1、村田 修 2、仙石 紀彦 3、苅込 和裕 4、
本間 恵 5
局所進行乳癌 ( 病期 3) の検討
特発性器質化肺炎(COP)を発症した乳房温存手術症例の検討
上尾中央総合病院 外科、2 上尾中央総合病院 放射線治療科、
北里大学医学部 外科 、4 柏厚生総合病院 外科、
5
八潮中央総合病院 外科
3
【対象】1990 年から 2008 年 12 月までに当科で治療を開始した 75 歳未満の病
期 3 症例 50 例。
【方法】前期 (1990 ~ 2002 年 ) 31 例 , 後期 (2003 ~ 2008 年 )
19 例の 2 群に分類し、治療成績 (5 年生存率 , 5 年無再発率 , 再発部位 ) と手術
療法、補助療法 ( 化学療法 , 内分泌療法 , 放射線療法 ) を比較検討した。
【結果】
平均治療開始年齢は全体で 54.3 歳 ( 前期 52.5 歳 , 後期 57.1 歳 )、病期 3A
は 20 例 (40.0 %), 病期 3B は 11 例 (22.0 %)、病期 3C は 19 例 (38.0 %) で
あ っ た。5 年 生 存 率 は 全 体 で 75.0 % ( 前 期 70.3 %. 後 期 83.3 %,
p=0.3702(n.s)), 5 年無再発率は全体で 72.0 %( 前期 67.7 %, 後期 79.0
%)、再発部位は局所再発が前期 6 例(19.3 %;領域リンパ節 6 例), 後期 1
例 (5.3 %;大胸筋 1 例 ), 遠隔転移は前期 7 例 (22.6 %)。後期 4 例 (21.0 %)
であった。乳房手術は前期で Bt 13 例 , Bt+Mj+Mn 15 例 ,Bp 3 例 , 後期で Bt
19 例であり、リンパ節郭清は前期でレベル 1 1 例 , レベル 2 25 例 , レベル 3 5
例、後期ではレベル 2 15 例、レベル 3 4 例であった。化学療法は、術前補助
化学療法を前期 0 例、後期 8 例 (42.1 %) に施行し、術後補助点滴化学療法の
サイクル数は、前期で平均 3.2 サイクル、後期で 6.6 サイクルであり、レジ
メンは前期で Anthoracycline 系 16 例 ,CMF 4 例、後期は Anthoracycline 系 4
例 , Taxane 系 6 例 ,Anthoracycline + taxane 併用 8 例であった。内分泌療法
は、前期の 24 例 (TAM 18 例 ,AI 3 例 ,TAM+AI 2 例 , ヒスロン 1 例 ), 後期の
12 例 (TAM 3 例 ,AI 3 例 ,AI+TAM 4 例 ) で施行され、放射線療法は前期で温
存乳房 3 例 (9.7 %)、胸壁 1 例 (3.2 %)、鎖骨上~胸骨傍 1 例 (3.2 %)、後期
では胸壁+鎖骨上に 10 例 (52.6 %) に施行された。【結語】病期 3 症例にて、
後期群での 5 年生存率、5 年無再発率向上の要因として、領域リンパ節再発の
減少、術前補助化学療法施行率の上昇、Taxane 系薬剤の使用と化学療法施行
サイクル数の増加、内分泌療法での AI 使用の増加、術後の胸壁+鎖骨上への
放射線照射率の上昇が考えられた。
452
近年乳癌に対する乳房温存手術の増加に伴い、術後に放射線照射を行う症例
が増加している。乳癌放射線治療に伴う肺合併症として、照射野に一致した
病 変 を 示 す 放 射 線 肺 臓 炎 に 加 え て、 浸 潤 影 が 照 射 野 外 に 及 ぶ COP
(Cryptogenic Organizing Pneumonia) の症例が報告されている。当院でこ
の 2 年間に乳癌温存術後の COP を発症した症例について報告する。症例は 6
例 で 全 例 女 性、 平 均 年 齢 51 歳(40-65 歳 )、Luminal A type 5 例、Her2type 1 例、全例温存乳房に対する放射線療法であった。治療は内分泌療法
としてアナストロゾール 2 例、タモキシフェン +LH-RH アゴニスト 3例、化
学療法 1 例であった。放射線治療は4例は 50Gy(接線照射、2Gy/d、25Fr)2
例は 60Gy(boost 照射を追加 ) であった。発症の時期は照射終了後平均 4.2 ヶ
月で、内分泌療法症例では投与した 5 例全例が放射線治療中に内分泌治療を併
施していた。主症状は発熱 4 例、咳 6 例で、CT による肺炎像は浸潤影 5 例、
浸潤影+すりガラス陰影 1 例、病巣の分布は全例片側性であった。いずれも抗
生剤が効果なく、ステロイド治療で効果がみられた。生検は施行していないが、
ステロイドが奏功したため、COP と診断した。2 例はステロイド中止後再発
し再治療を要したが、他の 4 例は再発していない。COP の発生頻度は乳癌放
射線治療例の 1.8%とまれであり、発生機序や関連因子などについて不明な点
が多いが、重症例の報告もあり乳房温存療法を選択する上で必ず認識すべき
疾患と考えられる。温存乳房に対する放射線治療後に COP を発症した 6 症例
を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
ポスター討議
DP-2-109-05
DP-2-110-01
乳房温存手術後放射線療法による BOOP 様肺炎症例の検討
形成外科―乳腺外科のチーム連携によって見えてきた新たな患
者ニーズと teaching hospital へ向けての挑戦
長野市民病院 乳腺外科
西村 秀紀、小沢 恵介、有村 隆明、藏井 誠
1
( はじめに ) 乳房温存術が乳癌手術の半数以上を占めるようになり 10 年以上が
経過した。術後残存乳房への放射線療法は生存率向上に寄与し、積極的に実
施するよう推奨されている。放射線療法の副作用である照射野以外に発生す
る BOOP(Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia) 様肺炎について
検討した。( 対象 )2006 年 1 月から 2013 年 7 月までの 7 年 7 ヵ月間に、乳房
温存術後に放射線療法を行ったのは 476 例 ( 同時両側 5 例 ) あり、このうち
BOOP 様肺炎として治療を受けた症例について検討した。全例が照射終了日
から 1 年以上経過している。( 結果 )15 例確認され、発生率は 3.2%であった。
照射終了から発見までは 56 ~ 244 日で、平均 133 日であった。年齢は 44 ~
81 歳、平均 63.5 歳で、非発生例の 56.9 歳より高かった (p=0.0441)。呼吸
器疾患や膠原病の既往を有する例はなく、喫煙経験者は 1 例であった。左右別
でみると右 246 例中 11 例に、左 235 例中 4 に発生し、右での発生が多かった
が有意差はなかった。化学療法を行ったのは 1 例で、TC 最終日から 2 ヵ月後
に照射を開始した。10 例が照射開始とほぼ同時に内分泌療法を開始し、アロ
マターゼ阻害 (AI) 剤 6 例、抗エストロゲン (AE) 剤 4 例であり、トラスツズマ
ブ (TRA) 併用例はなかった。476 例中薬物併用なしが 162 例、AI 剤併用は
151 例、AE 剤併用 113 例、TRA50 例で、内分泌療法剤の有無で比較すると、
併用 264 例中 10 例 (3.8%) に、非併用 212 例中 5 例 (2.4%) に発生し差はな
かった。閉経後の AI 剤併用の有無でみると、併用 151 例中 6 例 (4.0%) に、
非併用 126 例中 4 例 (3.2%) に発生し差はなかった。( まとめ ) 乳房温存術後
放射線療法による BOOP 様肺炎は 3.2%に発生し、非発生例より平均年齢が高
かった。薬物療法併用による影響は確認できなかった。
矢野 智之 1、清水 大輔 1,2、石井 義剛 1、河手 敬彦 2、島 秀栄 2、
伊藤 理 1
2
横浜市立みなと赤十字病院 形成外科、
横浜市立みなと赤十字病院 乳腺外科
DP-2-110-02
DP-2-110-03
1
1
2
3
一次乳房再建術を受けた乳がん患者の術式選択過程において利
用した情報源とその有用性について
当院における「乳房再建術後リハビリテーションプログラム」の
作成~第1報~
鈴鹿医療科学大学 看護学部 看護学科、
大阪大学大学院 医学系研究科 がん教育研究センター、
3
社会医療法人 大道会 森之宮病院 乳腺・内分泌外科、
4
社会医療法人 大道会 森之宮病院 看護部、
5
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
6
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻
北里大学病院 看護部、2 北里大学病院 リハビリテーション部、
北里大学病院 外科、4 北里大学病院 形成外科
加藤 牧子 1、児玉 美由紀 1、神保 武則 2、竹内 寛人 2、軽部 敦子 2、
谷野 裕一 3、仙石 紀彦 3、藁谷 美奈 3、西宮 洋史 3、島倉 康人 4、
秋本 峰克 4、石川 心介 4
武田 佳子 1、升谷 英子 2、丹治 芳郎 3、梅田 真紀 4、山中 沙樹 4、
津川 浩一郎 5、荒尾 晴惠 6
【目的】一次乳房再建術は、根治性を損なわず整容性の向上に有用な手術法で
あるとされ、患者が受けられる手術方法の選択肢が増えた。患者は、術式選
択のため様々な情報源から情報収集している。そこで本研究は一次乳房再建
術を受けた乳がん患者が術式選択過程において利用した情報源とその有用性
について明らかにすることを目的とした。【方法】一次乳房再建術を受けた乳
がん患者 56 名を対象に研究者が作成した自記式質問紙調査を実施、郵送法に
て回収。調査内容は、基礎情報、術式選択過程において患者が利用した情報
源とその有用性(4 段階)、術式選択において必要となる情報の理解度(12 項目、
4 段階)。分析は、記述統計及び Spearman の順位相関を用いた。調査期間は
2013 年 10 月 -2014 年 3 月。研究者の所属施設及び研究協力施設の倫理審査
会の承認を得た後実施した。【結果】分析対象者 46 名 ( 有効回答率 82.1%) の
平均年齢 48.5 ± 9.2 歳、人工乳房再建者が 58.7% と多かった。術式選択期間
は 22.7 ± 27.6 日。 対 象 者 が 利 用 し た 情 報 源 で は、 イ ン タ ー ネ ッ ト 30 名
(71.7%)、病院のパンフレット 23 名 (50.0%)、本 21 名 (47.8%)、テレビ
14 名 (30.4%)、雑誌 12 名 (23.9%) の順に多かった。対象者のうち有用であっ
たと回答した割合は、インターネット 90.9%、病院のパンフレット 91.3%、
本 81.8% が高く、テレビ 57.1%、雑誌 54.6%であった。一方、情報源の有
用性と理解度の関連では、インターネットは再建乳房周囲の感覚障害におけ
る項目のみ中等度の相関があったが ( ρ =0.51,p=0.01)、病院のパンフレット
では、再建乳房周囲の感覚障害、術後に必要となるケア、術後に必要となる
外来通院の程度、検査への影響の 4 項目で中等度の相関を認めた ( ρ =0.460.61,p < 0.05)。更に自由記載でインターネットは有用であるとしながらも、
様々な情報がありどれが真実なのかわからなくなる、再建後の写真に驚いた
との記述が見られた。【考察】情報源では、インターネットが利用度および有
用性ともに高かったが、その一方で、情報の理解度では病院のパンフレット
の方が効果的であることが推察された。また、インターネットで得られる情
報は膨大で信頼性の低い情報もあり、対象者が自分に合った情報を吟味する
のは困難である状況も推察された。インターネットの更なる利用拡大も予測
されるため、看護師は信頼性のある情報の選択や状況に合わせて補足説明し
たり、自ら情報源となるような支援が必要である。
【はじめに】乳房再建術の保険適応により、Tissue expander
(以下T.E)を用いた乳房再建患者数は増加している。乳房再建術における
患側上肢の術後安静期間の指示は、施設・術者により様々であり、術後リハ
ビリテーションは先行文献も少なくエビデンスに基づくデータが乏しい状況
にある。当院では、乳癌手術の患者全例に作業療法士(以下OT)によるリハ
ビリテーションを行っているが、T.Eを用いた 1 次2期乳房再建患者は従来
の乳房温存術や乳房切除術と異なり、T.Eのずれや血腫の予防のため術後
患側上肢の安静が指示され、リハビリ開始時期が遅れていた。患者は過度な
安静や肩関節の緊張などにより関節拘縮を来すことも多く、T.Eを用いた 1
次2期乳房再建患者にも別のプログラムを作成し、早期からリハビリ介入す
る必要があると考えられた。1次2期乳房再建患者の術後リハビリテーショ
ンプログラムを他職種で検討・作成したため報告する。【検討の実際】形成外
科医・乳腺外科医・OT・看護師が集まり検討会を開催。術式、医師の意向、
過去の文献、関節及び筋肉の収縮と伸長を鑑み、挿入した拡張器がずれる動
作は、大胸筋の収縮や伸長によるものが大きいと考え、以下 3 点について検討
を重ねた。1,必要な安静期間2,安静期間中に可能な運動範囲3,ADL
における動作制限。検討結果を元に術後日数とドレーン挿入有無に応じリハ
ビリテーションプログラムを作成した。【プログラムの実際】1,患肢の安静
度は術後3週間肩関節屈曲90°・外転90°とする。2,安静度範囲内での
問診・計測。3,術後 3 日目より、安静度範囲内でのリハビリテーション開始
1)肘関節以下の運動2)前傾での上肢下垂と振り子運動3)他動運動を主と
した徒手的な肩甲帯のリラクゼーション。4,退院指導1)ホームエクササイ
ズ2)ADL上の患肢の使い方。5,術後3週間後より当院の乳癌術後リハビ
リプログラムを用いた外来リハビリテーションの開始。【考察・今後の展望】
プログラムが導入された2014年10月から12月までのリハビリテー
ション施行件数は3件であり、有害事象は発生しなかった。今後は実践を重ね、
開始前後の有害事象出現の有無の比較や、プログラム内容の検証・精錬に努
めたい。
453
一般セッション(ポスター討議)
背景)当院は従来、エキスパンダー・インプラント法のみによる乳房再建を行っ
てきたが、2013 年 10 月よりエキスパンダー(Exp)
・インプラント(Imp)法、
局所穿通枝皮弁を用いた部分再建(PBR)、有茎広背筋皮弁再建(LD)、遊離腹
部皮弁(DIEP)を導入した。形成外科―乳腺外科の包括的チーム連携のもと、
様々なニーズに対応可能な乳房再建を行えるようにした。具体的には外来、
手術枠、病棟の部分的な共通化による共同運用枠を増やした。新たな患者ニー
ズが見え、teaching hospital として機能しうる変化を遂げた。そのインパク
トを報告する。
対象)当院にて 2013 年 10 月~ 2014 年 12 月の 14 ヶ月間に乳房再建を行った
76 例。全例女性、年齢は 31-70 歳(平均 47 歳)。1 次再建 70 例(92%)、2 次
再建 6 例(8%)であった。
結果)再建方法の内訳は、Exp 20 例(26%)、Imp 8 例(11%)、PBRP 6 例(8%)、
LD 31 例(41%)、DIEP 11 例(14%)であり、月平均 5.4 例の再建数であった。
形成外科初診から再建までの待機日数は中央値 29 日、再建時間は平均、Exp
58 分、Imp 1 時間 8 分、PBR 1 時間 29 分、LD 3 時間 22 分、DIEP 8 時間 50
分(虚血時間は平均 1 時間 37 分)であった。出血量は平均 123ml。術後平均在
院日数は 10 日であった。観察期間は中央値 160 日であった。合併症は保存治
療が可能な Minor 合併症が 5 例(6%)、追加手術治療を要した Major 合併症が
2 例(2%)にみられた。
考察)包括的チーム連携により、再建手術数は大幅に増加し、再建術式も多彩
な再建方法に変化した。特徴的なのは即時再建である 1 次再建が大部分を占
め、自家組織再建が 6 割を越えている点である。これは高度なチーム連携が達
成された場合、患者のニーズは極力少ない手術・入院回数、低リスクな術式
になる可能性を示唆している。さらに、まだ人工物に対する抵抗感がある印
象がみられた。症例数の増加、1 次再建への対応により保険適応で提供しうる
全ての術式がバランス良く行われ、再建時間、出血量、術後在院日数、合併
症率も high volume 施設に遜色ない結果となり、teaching hospital として機
能しうる可能性が示された。結果として、形成外科、乳腺外科、患者にとっ
て相互にメリットが生じ、理想的な乳房再建を含めた乳癌治療が実現できる
可能性が示唆された。
ポスター討議
DP-2-110-04
DP-2-110-05
1
1
大澤 明日美 1、伊藤 靖 2、後藤 圭吾 2、伴野 仁 3、犬塚 美姫 1
棚倉 健太 1、澤泉 雅之 1、前田 拓摩 1、宮下 宏紀 1、山下 昌宏 1、
松本 綾希子 1、川上 順子 1、平山 泰樹 1、今井 智浩 1、岩瀬 拓二 2
乳房一次再建後のリハビリテーションプログラムに関する検討
ブレスト・インプラントの保険適用がもたらしたもの
磐田市立総合病院 リハビリテーション技術科、
2
磐田市立総合病院 乳腺外科、3 とものクリニック
一般セッション(ポスター討議)
【背景】乳房再建術は増加しているが、当院では乳房切除後のリハビリテーショ
ンはクリニカルパスに組み込んで作業療法士が担当し、乳房一次再建時は形
成外科医の許可が出てから開始している。【目的】乳房一次再建後のリハビリ
テーションの問題点について検討し、リハビリテーション科と形成外科及び
乳腺外科スタッフが共有できるより有効性の高いリハビリテーション計画を
作成する。【対象と方法】対象は 2012 年 1 ~ 2014 年 12 月までに当院で行わ
れた TE による一次再建症例 9 例と、筋皮弁再建 5 例で、術後在院日数、腋窩
隔清の有無、ドレーン排液量及び留置期間、作業療法士によるリハビリ開始
時期、リハビリ内容、術前後の肩関節可動域及び上肢周囲径の変化について
検討した。【結果】TE による一次再建症例は全例センチネルリンパ節生検のみ
行われ、術後在院日数は平均 8.2 日、ドレーンは平均排液量 43.8ml で抜去さ
れており、平均留置期間は 6.3 日であった。リハビリは術後 2 日以内に開始さ
れていたが、肩関節の 90 度以上の外転はドレーン抜去後に開始され、術前及
び退院前の肩関節の平均可動域は屈曲が平均 168.3 度から 126.9 度、外転が
167.2 度から 121.3 度に低下していた。筋皮弁再建は広背筋皮弁 4 例、腹直
筋皮弁 1 例で、2 例に腋窩隔清が行われ、術後在院日数は平均 16 日、ドレー
ンは平均排液量 39.6ml で抜去されており、平均留置期間は 10.2 日であった。
肩関節の 90 度以上の外転は術後平均 5.4 日に開始され、術前及び退院前の肩
関節の平均可動域は外転が 142 度から 113 度に低下していた。上肢周囲径に
関しては術前後で明らかな差は認めなかった。【考察】通常の乳房全切除術で
は関節可動域の低下は 20 度以内で術後 7 日程度で退院するが、乳房一次再建
術ではドレーン留置期間が長く、肩関節可動域の改善が得られないまま退院
することが多かった。今後は、乳房一次再建時は米国理学療法士協会のガイ
ドラインを参考に術後 3 日以内から可能な自己リハビリテーションプログラ
ムを指導し、長期間経過観察していく方針である。
がん研有明病院 形成外科、2 がん研有明病院 乳腺センター 外科
目的
2012 年 9 月ブレスト・インプラント(シリコンゲル充填人工乳房、以下 SBI)
が日本で初めて薬事承認を取得した。引き続き 2014 年 1 月にはアナトミカル
タイプも保険収載され、本邦における乳房再建は新たな時代に踏み出したと
いうことができる。2006 年より SBI による乳房再建を自由診療により開始し
た当施設では、3 か月程度のインターバルを挟み、保険診療に切り替えた。そ
の前後の症例数や術式の変化を追い、保険適用の影響を考察する。
方法
保険適用前の 2012 年 8 月から 2013 年 7 月までの 1 年間と、適用後の 2014 年
1 月から同年 12 月までの 1 年間について、乳房再建および関連手術の術式、
件数等について調査した。
結果
乳房一次再建におけるティシューエキスパンダー(以下 TE)挿入術の件数は、
適用前が 200 件に対し、適用後は 335 件と著名な増加を認めた。これに呼応
して一次二期再建における SBI 挿入術は 133 件から 223 件に増加した。また、
二次再建における TE 挿入術も 6 件から 43 件となった。一方で自家組織再建は
35 件から 14 件へ減少した。他の手術と併施した対側豊胸術は適用前 30 件
あったが、混合診療を避けるため実施されなくなり、総計でも 6 件に減少した。
対側吊り上げ術も 10 件から 7 件へ減少した。
考察
SBI の保険収載は本邦における乳房再建の新たな1ページであり、当施設にお
いては何よりその対象症例数の大幅な増加としてあらわれ、その影響は大き
いといえる。費用面で大幅な負担減となり、ハードルが下がったことが最大
の理由と考えられる。このことは二次再建件数の飛躍的な増加にも認められ
る。整容的に無理な温存を避け全摘+再建とする流れがさらに顕著となって
いるようにもうかがわれる。また、自家組織再建の著名な減少も認められ、
保険適用であることを理由に自家組織再建を選択していた集団がより低侵襲
な SBI 再建を選択するようになったと考えられる。一方で、自由診療ゆえ併
施が可能であった豊胸等の対側形成術は著名に減少した。混合診療を回避す
るため別機会で実施せざるを得ず、手術回数が増えることなどが原因と考え
られる。SBI による乳房再建は既定サイズの範囲内に収まる下垂のない乳房が
実質的な対象ということができ、一定の割合でこのサイズに満たない症例や、
下垂により対称性の獲得が困難な症例がある。このような患者に対しても低
侵襲かつ対称性の高い乳房再建を提供するためにも、今後対側形成術の保険
適用や併施可能な状況が望まれる。
DP-2-111-01
DP-2-111-02
初発乳がんのがん患者指導管理に携わる認定・専門看護師の介
入実態
乳腺カンファレンスの現状調査
独立行政法人地域医療機能推進機構 山梨病院
1
淀川キリスト教病院 看護部、2 淀川キリスト教病院 外科、
3
淀川キリスト教病院 腫瘍内科、4 茶屋町ブレストクリニック
門倉 典子、小澤 康恵
椎野 育恵 1、市川 久美子 1、谷澤 久美 1、國久 智成 2、重岡 靖 3、
脇田 和幸 4
【目的】初発乳がんの告知説明の際、担当看護師が同席しその後に看護師と面
談を実施し、がん患者指導管理料 1 を算定している。担当看護師とは、がん化
学療法看護認定看護師、がん看護専門看護師、精神看護専門看護師の各 1 名で
ある。専門分野が違う看護師が同席することで看護介入内容に違いがあるの
か、その実態と連携方法について検討する。【方法】2014 年 4 月~ 11 月まで
に初発告知面談で、がん患者指導管理料 1 を算定した乳がん患者 55 名の診療
記録から、属性、術式、面談内容を後ろ向きに調査し分析した。倫理的配慮
として、院内の包括同意に基づき個人が特定されないように配慮した。
【結果】
平均年齢 60.8 歳(39-83 歳)
、術式(予定も含む)Bp+SLNB26 名、Bt+SLNB16
名、Bt+Ax7 名、両側乳房手術 4 名、Bt+SLNB+ 同時再建1名、術前化学療法
1名であった。担当患者数は、がん化学療法看護認定看護師 22 名、がん看護専
門看護師 19 名、
精神看護専門看護師 14 名であった。面談内容から [ 心理的問題 ]
[ 社会的問題 ][ 治療選択の問題 ] の 3 つに分類された。[ 心理的問題 ] では、告知
を受けた衝撃、診断までの経緯、今後の治療に対する不安、家族への伝え方な
ど全例に記載があった。[ 社会的問題 ] 仕事の内容や治療に向けた調整、家族の
介護、家族構成、医療費についてなど 50 名で記載があった。 [ 治療選択の問題 ]
では、術式選択や再建術について、化学療法を受けるときの脱毛に関すること
などボディーイメージの変容について 13 名に記載されていた。その他、患者や
家族の反応についても記載されていた。
【考察】告知直後の衝撃のレベルを把握
し、不安や気がかりを確認しながら、仕事や介護など現在の役割遂行が可能か
どうか、患者とともに整理し、治療に向けた対処行動が取れるように介入して
おり、心理・社会的問題については 3 名の看護師に違いはなかった。治療選択
の問題では、24 名の患者が乳房全摘術を受けたにも関わらず、術式選択や再建
術について 13 名しか記載がなかったことは、初回面談時には、告知直後の衝撃
に対する心理的な介入が優先され、治療選択の支援にまで至らないことが考え
られる。多様化する乳がん治療の意思決定を支援するためには、継続サポート
の必要性が示唆された。継続サポートの中で、それぞれの専門性を活かすこと
ができるよう、情報共有・調整を行い連携を強化していくことが今後の課題で
ある。
【目的】乳腺カンファレンス記録を分析・現状把握をし、課題を見出す。
【用語の定義】乳腺カンファレンス(以下カンファレンス)
週に1回、乳腺外科病棟で実施されている。医師、外来看護師、病棟看護師、
皮膚・排泄ケア認定看護師、がん化学療法看護認定看護師、薬剤師などが主
に出席している。医師が主に治療に関連する情報提供を行い、それに対して
看護師などの多職種が発言する形をとっている。
【調査方法】2014 年 6 月~ 11 月、25 回分のカンファレンス記録を内容の類似
しているものに分類(カテゴリー化)し集計・分析した。なお、当該病棟には、
研究の目的、方法、匿名性の保持、データの管理、結果の公表などについて
文章と口頭で説明し同意を得た。
【結果】議題として 220 件挙がっており、最終的に「患者情報」と「問題提起」の
2 つに分けることができた。
患者情報内容は、治療方針 144 件(65%)、終末期ケア 30 件(14%)、社会的
ケア 17 件(8%)、患者ケア 16 件(7%)、精神的ケア 13 件(6%)であった。
問題提起内容は、業務内容 5 件(56%)、患者ケア内容 4 件(44%)であった。
【考察】患者情報は治療方針が多くを占めていた。その理由として、医師主導
型カンファレンスであるためと考える。また、看護師からの情報提供や問題
提起など看護ケアに活かすことができていた内容もあったが少なかった。特
に終末期ケアでは、身体的内容が多く、精神的内容が少なかったため、看護
の視点から患者の精神的ケアについてもっと多くの内容が話し合われるべき
であったと考える。
【結論】
・カンファレンス内容は患者情報と問題提起に分類された。
・患者情報は治療方針が最も多く、医師主導型カンファレンスであった。
・患者、家族を多角的に捉え、個々に合わせた介入が少なく、カンファレンス
が情報伝達の場となっていた。
・今後は、治療方針を理解した治療の先にある看護ケアについて積極的に話し
合う姿勢を持ち、看護師が中心となり外来、病棟間の情報交換を行う。また、
個人の体験をチームが共有し、チーム全体の技術水準を高め、意思統一を図
ることも重要であるため、それぞれの職種が自分の役割を理解し、患者の問
題点に着目した専門性の高いカンファレンス内容を検討する必要がある。
454
ポスター討議
DP-2-111-03
DP-2-111-04
1
1
化学療法を受ける乳癌患者の外見変化に対する看護支援プログ
ラムが患者と家族の QOL に及ぼす影響について
3
術後内分泌療法中の乳がん患者に対する活性化プログラム
~運動療法・栄養療法・グループコーチングの併用~
東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻、2 聖路加国際病院、
国立がん研究センター中央病院
池田 真理 1、玉井 奈緒 1、金井 久子 2、大畑 美里 2、北野 敦子 3、
真田 弘美 1、山内 英子 2
聖路加国際病院 看護部、2 聖路加国際病院 乳腺外科、3 国立がん研究セン
ターがん対策情報センター がんサバイバーシップ支援研究部
竹田 菜々 1、北川 瞳 2、富田 眞紀子 3、高橋 都 3、山内 英子 2
【背景・目的】乳がん患者の肥満は、再発・死亡リスクが高いことが近年多く
の研究で示されている。しかし、内分泌療法中の乳がん患者の多くが、体重
増加に悩んでいる現状にある。運動療法や栄養指導による減量プログラムの
報告は多数あるが、両者を組み合わせた報告は数少ない。我々は今回、自己
啓発を促進し、より肥満改善効果を高めることを目的として、運動療法・栄
養指導に加えグループコーチングを併用した減量プログラムを開発した。本
研究では介入前後での身体・精神的変化を観察し、プログラムの有用性と今
後の課題を検討することを目的としている。【方法】乳がん術後 1 年以上経過
した内分泌療法中の患者を対象に (1)45 分間の有酸素運動、筋力トレーニン
グ、ストレッチング ,(2)15 分間の栄養指導、(3)30 分間のグループコーチン
グを週 1 回、計 3 回のプログラムとして実施した。また医師・看護師がファシ
リテーターとしてプログラムに参加した。介入前後で身体測定(体重、筋肉量、
基礎代謝量、上腕周囲径、皮下脂肪)および、採血結果を比較するとともに、
QOL 関連自記式質問票を用いて、運動療法・栄養指導・グループコーチング
を併用することで得られる結果について検討した。【結果】2014 年 11 月~ 12
月にプログラムに参加した 44 ~ 67 歳(平均 53.5 歳)の女性 16 名。介入1か
月後の体重は -2.3 ~ +0.7Kg(中央値 -1.35Kg)だった。採血結果では、対象
者全てに AST、ALT、TG、CHO いずれかの改善を認めた。質問票の自由記載
欄から、「物事に対する考え方が前向きになった」「今後も継続したい」「活動
的になった」「食生活を改善できた」「運動習慣が身に付いた」という言葉を認
めた。【結語】本研究では、プログラム実施後に減量に対する前向きな意識の
変容が認められた。運動療法や栄養指導だけではなく、グループコーチング
を併用することで、減量へのモチベーションを維持することにつながると考
える。介入後 1 か月では、身体測定結果・採血結果が改善する傾向を認めてい
るが、今後対象患者のさらなる追跡調査を行う必要がある。3 か月後、6 か月
後の身体測定、採血、QOL の評価をすることで長期的な介入につなげていく。
附記:本研究は H26 年度国立がん研究センターがん研究開発費の研究事業
(H25-A-18)の一貫として行っている。
DP-2-111-05
DP-2-112-01
1
1
乳癌化学療法における栄養サポートに対する介入の試み
乳がん患者の就労支援のための就労の実態
大阪市立大学医学部附属病院 化学療法センター、
2
大阪市立大学医学部附属病院 栄養部、3 大阪市立大学大学院 腫瘍外科
社会医療法人 博愛会 相良病院、2 医療法人 恵愛会 上村病院
江口 惠子 1、上村 万理 2、比良 宏美 1、川野 純子 1、松方 絢美 1、
相良 安昭 1、相良 吉昭 1
賀来 裕子 1、野田 諭 3、中野 妙子 1、花山 佳子 2、柏木 伸一郎 3、
川尻 成美 3、天野 良亮 3、高島 勉 3、小野田 尚佳 3、大平 雅一 3、
平川 弘聖 3
【はじめに】近年、癌治療における栄養状態の評価や栄養サポートの重要性が
増しており、栄養障害は QOL の低下を招くとともに、治療反応性やその予後
も左右すると報告されている。特に化学療法中の食事摂取に関連する副作用
は全身状態低下の原因となり、その対策は急務と思われる。当院では癌種を
問わず、化学療法中における栄養状態に対する介入を試みており、特に乳癌
患者に対しては栄養障害や味覚障害に関する観察研究も行っているので、そ
れらの概要と中間結果につき報告する。
【方法と結果】4つの主な活動内容を報告する。(1)化学療法中の食事や栄養
に関する患者向けの勉強会を開催し計 20 名の患者が参加した。勉強会後のア
ンケートには味覚障害・口内炎への対策を希望する声が多かった。
(2)化学
療法センターに NST 専門療法士(看護師)を配置し、患者からの栄養相談に迅
速に対応できるようにした。(3)センター内に週 1 回の栄養外来を開設し、
NST 認定医師、NST 専門療法士の看護師・管理栄養士・薬剤師が個別相談に
応じるようにした。12 名が受診し相談内容は主に味覚異常・口内炎・食欲不振・
体重減少で、食事・生活指導、栄養補助食品や ONS(経口的栄養補助)の紹介・
処方を行った。うち 1 名が乳癌患者で、味覚障害・口内炎により経口摂取困難
となったが、口腔ケア指導・栄養補助食品の推奨にて症状が改善し経口摂取
可能となった。(4)味覚・栄養障害の現状把握と対策を検討するため、乳癌
初回化学療法患者における味覚・栄養障害に関する前向き観察研究を開始し
た。アンケート調査が主な方法であるが、化学療法前後での味覚の変化、栄
養指標(SGA、身体計測、血液生化学検査)の変化、QOL の変化を観察項目と
している。参加を依頼した患者の 94% で同意が得られ、アンケートの回収率
は 93%と患者意識の高さがうかがえた。味覚障害は 66.7%の患者で出現して
いた。
【考察】化学療法中の栄養や味覚障害に関する患者教育や相談窓口の設置は重
要と思われ、さらに観察研究によってレジメン毎の味覚・栄養障害の発現状
況を把握することで、個別化した対応が可能になると思われる。より早期に
介入し、栄養・味覚障害を予防・治療することで、QOL の向上と治療完遂率
の向上を目標とし活動を継続していきたい。
【背景】がんの中でも特に乳がんは就労可能年齢での罹患率が高く、日本にお
いて年間約 5 万人が診断され、約 1 万人の死亡率を考えると、年間 4 万人サバ
イバーが新たに社会の中で生活することになり、乳がん経験者の就労支援は
喫緊の課題である。2012 年厚労省研究班「治療と就労の両立に関するアンケー
ト 調 査 」で の が ん 診 断 後 の 働 き 方 へ の 変 化 の 結 果 で は、 退 職 し て 再 就 職
13.9%、退職して無職 9.7%、変わらない 55.2%であった。また、がん診断
後の就労に関して困ったこととして、経済的な問題、職場の制度や対応の問題、
通勤や仕事中の副作用や後遺症の問題などがあげられている。
【目的】乳がん患者の就労支援を行う上での課題を明確にするために乳がん患
者の就労の状況とその理由と希望について実態を調査する。
【方法】乳がん治療中の患者に対して就労についてのアンケート調査を実施し
た。アンケート用紙は 2014 年 5 月から 12 月の期間に 2 つの医療機関に通院
する乳がん患者に外来待ち時間に記載を依頼した。
【結果】271 名に配布し 228 名(回収率 84%)から回答が得られた。その内、診
断時に就労していた人は 160 名、就労していなかった人は 68 名であった。就
労していた人で、乳がんと診断された後に退職した人は 33.1%で、退職理由
で多かったのは、治療・療養に専念する為 67.9%周囲に迷惑をかけたくない
為 66%であった。職場から退職を勧められたと回答した人が 20.8%乳がんと
診断されたことを職場へ報告相談した人は 77.5%しなかった人は 9.4%、職
場へ業務負担軽減を申し出た時上司や同僚の理解が得られるかについては、
思 う 51.3 % 思 わ な い 13.8 % で あ っ た。 処 遇 に 影 響 が あ っ た と 思 う 人 は
14.4%、治療と仕事を継続する上で困難だと思うことは、体調や治療の状況
に応じた柔軟な勤務が困難 20%体調や症状・障害に応じた仕事内容の調整が
できない 20%治療・経過観察目的での休暇が取りづらい 18.1%であった。企
業への希望として、病気や治療についての理解や体調に応じた業務軽減や休
暇を取ることへの理解、柔軟な対応などが多くあった。一方、仕事を続けた
い理由として経済的なこと以外に仕事ができることが有難い 54.4%、職場の
人からの励ましや応援してくれる人の為にも続けたい 21.3%であった。
【結論】乳がん治療の為に退職した人が 33.1%、理由の多くは治療・療養への
専念と共に周囲への迷惑を考えていた。体調の変化に応じた柔軟な対応が求
められる。
455
一般セッション(ポスター討議)
背景 : 乳癌治療のための化学療法では、それに伴う外見変化により、患者が治
療前の社会生活を同じように送れず心理的苦痛を抱え QOL が低下することが
報告されている。我々は、そうした外見変化に対し、メイク技術にとどまら
ない心理教育的な内容も含んだプログラム:ソーシャル・ビューティ・ケア
(SBC)プログラムを開発した。本研究はそのプログラムが患者および家族の
QOL に及ぼす影響について評価することを目的とした。
方法 : SBC プログラムは医師、看護師、臨床心理士、美容師、がんサバイバー
から構成された研究班が開発したもので、複数の患者を対象とした 3 回のセッ
ションからなるプログラムである。看護師がファシリテーターとなり、美容
師と協同して外見ケアのレクチャー及びグループによる分かち合いで構成す
る。プログラム受講前と受講 1 ヶ月後に、患者とその家族に自記式質問紙を
手渡し、QOL・家族機能尺度に加え、自由記述欄にはプログラムを受講した
感想を求めた。本研究では患者・家族質問紙の共通部分の QOL 尺度(WHO-5)
について、患者-家族ペアデータが得られ者を対象とした。受講前後のスコ
アの差を患者とその家族について求め、自由記述欄の分析結果をその補完と
した。本研究は研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
結果と考察 : 2014 年 5 - 9 月までの参加者 26 名に質問紙を配布し、家族との
ペアデータが得られた 17 組を対象とした。患者は化学療法を予定または受療
中の者で、受講前は 77%が脱毛はなかったが、受講 1 ヶ月後は、ほぼ脱毛
(88%)か脱毛が始まっていた(12%)。患者の平均年齢は 46.1 歳、
参加家族は、
配偶者が 13 名、子どもが 2 名、親が 2 名だった。受講後にスコアが上昇した
患者は 9 名で、家族のスコアも上昇したのは 6 組だった。患者はプログラムを
受講することで「これから起こることに対する心の準備ができた」「同じ仲間
と話せて気持ちが上がった」と予期的適応が備わり「家族との関係を見つめ直
す時間になった」等、家族との相互作用が活性化された。一方、家族は患者が
「前向きに関わっている」こと実感し「試行錯誤だが一緒に考えていこうと思っ
た」と患者の変化に寄り添うことで自らの QOL に影響を与えていた。
結論 : SBC プログラムは参加した患者だけではなく、その家族の QOL を維持
あるいは改善していた。今後はプログラムを普及させていくと共に家族が患
者の変化を共有できるように内容を充実させる必要がある。
ポスター討議
DP-2-112-02
DP-2-112-03
がん患者に就労支援 「就労リングファシリテーター養成講座」
の試み
当院におけるアンケートを用いた乳がん患者の就労調査
愛知県がんセンター中央病院
1
聖路加国際病院 相談支援センター がん相談支援室、
2
聖路加国際病院 乳腺外科
小谷 はるる、近藤 直人、安立 弥生、石黒 淳子、久田 知可、瀧 由美子、
市川 茉莉、吉村 章代、服部 正也、藤田 崇史、澤木 正孝、岩田 広治
橋本 久美子 1、山内 英子 2
一般セッション(ポスター討議)
背景:乳癌治療の進歩に伴うサバイバーの増加、再発後の生存期間の延長に
より、診断後や治療中・治療後も充実した社会生活を実現することの重要性
が高まってきている。当院では 2013 年より社会保険労務士による就労相談を
開始したが乳癌患者の就労状況は把握できておらず、医療者側も支援に関し
てどのように働きかけるべきか共通の認識を得ていなかった。目的:乳癌患
者における就労状況の変化を明らかにする。方法:2014 年 6 月から 11 月に
外来で就労に関する無記名のアンケート調査を行った。対象は当科に通院中
で初診時に就労していた 20 歳以上 65 才未満の乳癌患者で手術から 1 年以上
経過、また進行再発症例では診断から 1 年以上経過し PS が 0 または 1 の患者
を対象とした。術後療法により A 群 ( 手術のみ )、B 群(内分泌療法のみ)、C
群(化学療法±内分泌療法)に分類し、進行再発症例は D 群とし、各群 100 例、
合計 400 例の集積を予定した。結果:A 群 62 人、B 群 79 人、C 群 92 人、D 群
46 人 ( 合計 279 人 ) より回答を得た。全体で初診時の平均年齢は 47.8 才、癌
であることを雇用主に報告しなかった患者は 12.5% 存在した。A 群、B 群、C
群での離職率は治療全体を通して 18.5% で、離職のタイミングとしては診断
時が最も多く (7.3%)、次いで化学療法時 (5.4%)、手術時 (4.7%) の順であっ
た。またグループ別では、離職率は C 群で最も高く (28%)、次いで B 群 (20%)、
A 群 (8%) であった。手術時には全体で 58% の患者が休職しており、休職期
間は術式によって異なっていた ( 休職期間の中央値 ( 週 ); Bp+SLNB(3), Bp
+ALND(4),Bt+SLND(6),Bt+ALND(7))。D 群での離職率は 34.8% で現在の
休職率は 10.9% であった。現在有職の患者で仕事への不安があると答えた患
者は A 群 9.8%,B 群 26.4%,C 群 33.8%,D 群 67.7% であり、治療に関して収
入 面 で 不 安 を 感 じ た 事 が あ る と 答 え た 患 者 は A 群 40.3%,B 群 60.8%C 群
65.2%,D 群 73.9% であった。考察:A-C 群において診断時の離職率が最も高
く、就労相談は診断直後から行う必要があると考える。またより治療が重い群・
進行再発群で離職率が高く、仕事や収入への不安も強いため、このような患
者にはより注意深い配慮が肝要である。
【目的】がん患者の多くが、治療による通院や体調変化のために休職や離職な
どが余儀なくされている。厚生労働科学研究費補助金(がん臨床研究事業 代
表山内英子)『キャンサーサバイバーシップ 治療と職業生活の両立に向けた
がん拠点病院における介入モデルの検討と医療経済などを用いたアウトカム
評価』~ 働き盛りのがん対策に一助として ~「就労相談に関する介入モデルの
検討と実施」(2012-2013)において、乳がん患者の治療と就労の両立に向け
ての病院内モデル「就労リング」を構築し、全国展開を試み有効な効果が示唆
された。医療関係者は就労に関する知識、就労専門家はがんに関する知識も
患者に接する経験もほとんどない。がん患者の就労支援のサポーターとして、
院外の就労専門家である社会保険労務士・産業カウンセラー・ハローワーク
の従事者との協働が重要と考えられ、病院における就労専門職との連携モデ
ルの構築を目指し、サポーター養成講座の取り組みを検討した。【研究方法】
全国のがん診療連携拠点病院および社会保険労務士・産業カウンセラー・ハ
ローワークを対象に、医療従事者と就労専門職従事者が一緒に学ぶ「就労リン
グファシリテーター養成講座」を開催し 85 名が参加した。第1部は、2会場
に分かれ、医療従事者は「患者と職場の権利と義務」(講師:社会保険労務士)、
就労専門職従事者は「がん治療の今」(講師:乳腺外科医)の講義を 30 分、第
2部より全員合同の会場で「がん患者の心とグループ療法」「就労リングのプ
ログラム」の講義(講師:精神腫瘍科医)を 60 分、第 3 部は、職種混合のグルー
プでファシリテーターのロールプレイを 3 時間、第 4 部、質疑応答 30 分(全 6
時間)を開催した。講習会終了後のアンケート結果と感想などの自由記載を
データとした質的帰納的分析を行った。【結果】
「プログラムに満足した」98%
「今後も継続研修および実際の活動への参加を希望する」65%であった。「就労
リングを開催してみたい」「初めて一緒のワークを通し新たな気づきが深まっ
た」の意見が挙がった。【考察】医療者も就労専門従事者も就労支援への関心は
高く意欲もあるが一緒に関わる接点や活動の機会がない。「ファシリテーター
養成講座」は、同じ場で一緒に学び地域の特性に応じたサポーターとしての協
働を考える機会ともなり、院外就労専門職従事者の就労相談に関する病院内
介入モデルへの導入として期待できると示唆される。
DP-2-112-04
DP-2-112-05
医療者の就労支援に関する意識調査
がんサバイバーシップを支えるための患者就労支援体制構築と
課題
1
聖路加国際病院 乳腺外科、2 聖路加国際病院 医療連携相談室、
3
聖路加国際病院 精神腫瘍科、
4
独立行政法人 国際医療研究センター 国際医療協力局、
5
独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター
1
独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 臨床研究センター、2 独立
行政法人国立病院機構 四国がんセンター 内科、3NPO 法人 愛媛がんサ
ポート おれんじの会、4 国立がん研究センター がん対策情報センター が
んサバイバーシップ支援研究部
中山 可南子 1、橋本 久美子 2、保坂 隆 3、和田 耕治 4、高橋 都 5、
山内 英子 1
青儀 健二郎 1、山下 夏美 1、谷水 正人 2、松本 陽子 3、高橋 都 4
がん対策推進基本法では、がん患者とその家族を社会全体で支える社会の構
築を実現することが目標の一つに掲げられ、医療機関における就労支援や就
労関連の専門職との協働が求められている。【目的】就労支援の勉強会に参加
した医療者の就労支援に対する意識の実態を把握する。【方法】2013 年 12 月
2 月から 2014 年 2 月 25 日に全国 7 か所で開催した医療者向け就労支援の勉強
会に参加した医療者 107 人に対して,先行研究班(高橋班)に分担研究として
和田が用いた質問票調査を行った。【結果】患者の仕事への関心は 100%だっ
た。業務内容を聞くようにしているのは 88%、業務形態を聞いているのは
73%であった。97%が仕事を辞めずに治療できることが望ましいと考えてい
るが、会社の上司などに今後の見通しについて説明し理解を求めるようにア
ドバイスしているのは 63%、休職した患者に対して、復職のタイミングをア
ドバイスしているのは 44%であった。産業医とやり取りをしていたことがあ
るのは 9%であった。また、47%が仕事へのアドバイスは難しいと思ってい
ることがわかった。診療体制による就労支援の実態については、外来が時間
通りに受診できるのは 24%、平日夕方や週末など仕事を休まなくても受診で
きる体制があるのは 14%であった。また、抗がん剤、放射線治療日時を患者
の仕事の予定に配慮して決めているのは 50% 以下であった。就労に関して患
者の依頼や必要に応じて看護師が個別対応している体制があるのは、33%で
あった。【考察】就労支援に対して医療者の関心は高いが、多くの医療者が患
者へ実際にアドバイスすることは困難であると考えていた。産業医や勤務先
との調整や情報共有は行われておらず、対応できる受診体制や、支援体制も
整っていない状況であり、患者の就労支援に関して,より積極的に取り組む
必要があることが明らかになった。【結論】医療機関における就労支援のため
の診療体制の整備と、産業医や勤務先との情報交換や協働に向けて病院の外
来治療や支援体制などの仕組みつくりが今後はさらに必要である。なお、本
研究は平成 24-25 年度厚生労働科学研究費がん臨床研究事業「キャンサーサバ
イバーシップ - 治療と職業生活の両立に向けたがん拠点病院における介入モ
デルの検討と医療経済などを用いたアウトカム評価 -」
(研究代表者:山内英子)
の一部として行われた。
【目的】がんサバイバーシップを支えるための患者就労支援体制の構築を行っ
たので成果と課題を報告する。【方法】愛媛県内がん患者における就労状況と
退職関連要因を明らかにしたアンケート調査を行った。さらに当院の患者・
家族総合支援センター “暖だん” を拠点とした就労支援事業を開始した。具体
的には、1)就労支援関係の冊子・書籍の整備、2)就労支援関係のセミナー・
講演会の実施、3)厚生労働省事業「長期にわたる治療等が必要な疾病を持つ
求職者に対する就労支援モデル事業」として、ハローワーク松山の就労支援ナ
ビゲーターによる支援窓口の常設、等を行い継続的支援の可能な体制を整備
した。
【結果】アンケート期間は平成 25 年 10 月 1 日から同 11 月 30 日まで(150
名中 54 名から回答、33%)、診断時年齢中央値 53 歳、男女比 1:3、疾患は
乳がん 20 名(37%)、消化器がん7名(13%)、肺がん 6 名(11%)等で乳がん
患者が最多であった。患者 33 名中 15 名(45%)が職場移動し、減収となった
患者は 54 名中 24 名(44%)であった。職場に産業医がいない患者は 26 名
(48%)、就労問題の相談ができない患者は 33 名(61%)で、支援体制構築が
重要であった。“暖だん” での就労支援の結果、平成 25 年 7 月から平成 26 年 3
月まで相談 38 件、紹介者数 22 件、就職者数 19 名、平成 26 年 4 月から同 10
月まで相談 20 件、紹介者数 22 件であった。支援実施患者は乳がんが最多で
あった。今後の課題として、1)愛媛県内の全ハローワーク事業と連携しての
広報・展開、2)病院間での情報共有、3)就労支援用患者情報ツールの作成
等が挙げられる。
【結論】がんサバイバーシップを支えるための患者就労支援
体制整備が重要かつ急務である。(本研究は厚生労働省がん臨床研究事業(平
成 25 年高橋班)およびがん政策研究事業(平成 26 年高橋班)により支援を受け
た。)
456
ポスター討議
DP-2-113-01
DP-2-113-02
乳癌術後のリンパ浮腫の評価ー US を用いてー
3D スキャナを用いたリンパ浮腫に対するリンパドレナージ効果
の検討
金沢メディカルステーションヴィーク 乳腺科
1
広島大学大学院 医歯薬保健学研究科、
広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門、
3
広島大学病院 リハビリテーション科
横山 浩一、前川 一恵、藤井 久丈
2
西田 圭那 1、金山 亜希 2、砂川 加奈子 2、木村 浩彰 3、片岡 健 1
【目的】リンパ浮腫治療には保存的療法が推奨されて用手的リンパドレナージ
(以下 MLD)もその一つである。最近では機械的リンパドレナージの一つであ
る LPG テクニック(以下 LPG)も導入されている。一方、乳癌術後リンパ浮腫
計測法は、いずれも測定値の信頼性や簡便性等において一長一短がある。そ
こで今回上肢周囲計測定においてメジャー計測との比較による 3D スキャナ計
測の信頼性を検討し、乳癌術後上肢リンパ浮腫患者に対する MLD または LPG
それぞれ 1 回の治療効果について比較検討することを目的とした。【対象・方
法】対象は本学倫理審査委員会承認後、乳癌術後リンパ浮腫と診断され既に複
合的治療が施されている患者。MLD 又は LPG 治療前・後の患側上肢周囲径は
メジャーと 3D スキャナを用い、手関節部、肘関節下部 5cm、肘関節上部
10cm で測定した。体積測定は 3D スキャナで得られた三次元画像モデルより
解析し、手関節部から肘関節上部 10cm までで算出した。【結果】対象は MLD
施術群 10 名と LPG 施術群 10 名の 2 群、合計 20 名である。メジャーと 3D ス
キャナによる上肢周囲径計測値は、上記 3 ポイント全てで高い相関がみられた
(手関節部 p < 0.01、肘窩下部 5cm 及び肘窩上部 10cm p < 0.001)。MLD と
LPG の施術前・後の体積測定値は、両群とも治療後に有意な体積減少がみら
れた(p < 0.05)が、MLD・LPG の 1 回施術後の治療効果比較では有意差を認
めなかった(p = 0.853)。【考察】本研究では、メジャー測定値と 3D スキャナ
測定値がどのポイントにおいても高い相関が認められ、3D スキャナ計測法は
周囲径のみならず体積を同時に計測できるため、リンパ浮腫治療効果判定に
おいて実用的な新しい測定法になると思われる。一方、MLD 又は LPG による
リンパドレナージ 1 回施術前後における上肢体積の比較では、両群ともに治療
後に有意な縮小効果がみられたが、それぞれ1回のみの施術では治療効果に
有意差はみられず、いずれのリンパドレナージも同等の治療効果が得られる
ものと推察された。【結論】本研究から以下の結果が得られた。(1) 3D スキャ
ナ計測はリンパ浮腫の新しい実用的な測定法になり得ることが示唆された。
(2) MLD・LPG それぞれ 1 回の治療効果は、
施術後の有意な上肢体積減少によっ
て示された。(3) MLD・LPG1 回のみの施術効果に有意差はみられず、いずれ
も同等の治療効果が認められた。
DP-2-113-03
DP-2-113-04
乳がんにおける手術法とリンパ浮腫の関係について
乳癌術後上肢リンパ浮腫に対しての当院外来リハビリテーショ
ン介入効果の検討
リボン・ロゼ田中完児乳腺クリニック
1
田中 完児、中村 伊佐子
2
(目的)昨今、乳がんの手術法は乳房・腋窩に対して縮小術が主流である。し
かし、術後の患側上肢のリンパ浮腫は以前よりは減少したものの依然として
存続しており外来診察時にリンパ浮腫を訴えられる患者の絶えることはない
今回われわれは乳房および腋窩手術の方法と術後リンパ浮腫の発生の実態を
客観的に調査を行った。(材料と方法)1.対象者:当院に通院中の原発性乳
が ん 術 後 患 者 症 例 数:250 例2.測定部位:肩周囲、肘上 10cm、肘下
5cm、手首、掌、の5箇所の周囲径 3.調査項目 a. 術式(乳腺全摘出術 :
Mx、乳頭温存乳腺全切除術 : SCM、乳房温存術 : WLE)b. リンパ節手術(腋
窩全郭清術 : AX、センチネルリンパ節生検 : SLN、無郭清術 : none)4.統
計学的分析:ロジスティック回帰分析(結果)1.Mx の方が SCM に比べて掌
のリンパ浮腫を来たしやすい。
(掌 / 回帰係数 0.0234、推定オッズ 0.605)、2.
Mx の方が WLE に比べて肩周囲、肘上 10cm の部位のリンパ浮腫を来たしや
すい。(肩周囲 / 回帰係数 0.0081、推定オッズ 0.789)(肘上 10cm/ 回帰係
数 0.0039、推定オッズ 0.678)、3.Ax の方が SLN に比べて肩周囲、肘上
10cm、掌の部位のリンパ浮腫を来たしやすい。(肩周囲 / 回帰係数 0.0238、
推定オッズ 0.695)(肘上 10cm/ 回帰係数 0.0336、推定オッズ 0.583)(掌
/ 回帰係数 0.0047、推定オッズ 0.529)、4.Ax の方が無郭清に比べて肩周囲、
肘上 10cm、肘下 5cm の部位のリンパ浮腫を来たしやすい。(肩周囲 / 回帰係
数 0.0005、推定オッズ 0.712)(肘上 10cm/ 回帰係数 0.0004、推定オッズ
0.577)(肘下 5cm/ 回帰係数 0.0109、推定オッズ 0.690)(結語)今回の調
査により、乳がん手術後のリンパ浮腫の発生については、・乳房全切除・リン
パ節全郭清が悪影響を及ぼすことが客観的に明らかとなった。
近畿大学 医学部附属病院 リハビリテーション部、
近畿大学 医学部 外科
武田 優子 1、橋本 幸彦 2、菰池 佳史 2
【目的】当院では 2013 年 12 月より外来でのリンパ浮腫へのリハビリテーショ
ン科の介入を開始、理学療法士(リンパ浮腫療法士)による複合的理学療法を
施行している。今回、その効果の有無を検討した。
【対象と方法】2013 年 12 月~ 2014 年 11 月までに当院外科よりリハビリテー
ション(以下リハ)依頼のあった乳癌術後、リンパ浮腫と診断された患者 13 症
例(女性 13 名、年齢 60.3 ± 14.7 歳、患肢右側 8 肢、左側 5 肢、術後リハ介入
までの期間 93 ± 89 ヶ月)について検討した。リハ介入回数 3.4 ± 1.1 回(期間
55 ± 34 日)、その間に複合的理学療法を実施、初回と最終に両側上肢の周径
を計測した。計測部位は上腕近位部、上腕最大部、肘点、前腕最大部、手関節、
手背の 6 箇所とした。初回と最終の各部位の周径差の有無と、背景因子(年齢、
患肢の左右の違い、術後リハ介入までの期間、腋窩リンパ節転移個数、腋窩
リンパ節郭清範囲に関して検討した。有意水準 5%未満とした。
【結果】13 症例ともに周径計測 6 箇所すべて、あるいはいずれかに初回と比較
し最終で周径に減少を認めた(上腕近位部 ; - 1.0 ± 1.2cm、上腕最大部 ; -
1.2 ± 1.3cm、肘点 ; - 1.3 ± 2.1cm、前腕最大部 ; - 1.4 ± 2.8cm、手関節 ;
- 0.6 ± 0.8cm、手背 ; - 0.7 ± 0.6cm)。各計測部位の左右差とリハ介入前後
の周径差に有意な負の相関を認めた(上腕近位部(r= - 0.85,p < 0.05)、上腕
最大部(r= - 0.60,p < 0.05)、肘点(r= - 0.62,p < 0.05)、前腕最大部(r=
- 0.59,p < 0.05))。介入前後の周径差と年齢、患肢の左右の違い、術後から
リハ介入までの日数、腋窩リンパ節転移個数、腋窩リンパ節郭清範囲に有意
な相関は認めなかった。
【考察】初回に周径の左右差が大きい症例ほどリハ介入後、周径に減少を認め
る。介入効果(周径減少)に背景因子の影響を認めなかった。
【結論】年齢や患肢の左右の違い、術後経過日数、腋窩リンパ節郭清範囲に関
係なく、複合的理学療法は効果が得られるため、リンパ浮腫に対して症状、
あるいは訴えの強い患者には積極的に介入していくことが望まれる。
457
一般セッション(ポスター討議)
乳癌術後合併症として上肢リンパ浮腫が一番の問題である。近年は腋窩リン
パ節郭清よりセンチネルリンパ節生検が主流であり浮腫は減少している。し
かしいったんリンパ浮腫を来した際には治療も難渋するうえ日常生活、仕事
への影響は非常に大きい。そこで術後リンパ浮腫の早期発見を目的に上肢周
径計測と US での皮膚・皮下脂肪織の観察を行った。対象:US が更新された
平成 26 年 3 月以降に定期検査を施行した片側乳癌術後患者である。83 例で
97 回、上肢周径計測と US 観察を行った。手術は温存が 47 例、全摘が 36 例
であった。センチネルリンパ節生検 (SN 群 ) は 47 例、腋窩リンパ節郭清 (Ax 群 )
は 35 例、不明が 1 例であった。術後上肢リンパ浮腫にてリンパマッサージな
いし弾性着衣での対策を行っている症例は Ax 群で 7 例であった。方法:両側
の上腕および前腕の周径を測定、US で同皮膚および皮下脂肪織の左右差を記
録した。US 機器は日立メディコ社製の Ascendus を用いた。結果:Ax 群と
SN 群では Ax 群で有意な所見を多く認めた。2cm 以上の周径差を認めたもの
は Ax 群 7 回 18%、SN 群 2 回 3% であった。2cm 以上の周径差を認めた Ax 群
の 7 例中 6 例に US でも所見を認めた。US 所見では肥厚、輝度上昇が主なもの
であった。早期発見のために周径差を 1cm 以上で左右差ありとしたところ、
Ax 群では 20 回 51% に左右差を認めた。うち 15 回 75% で US でも所見を認
めた。US 所見は皮膚肥厚が多かった。逆に周径の左右差はみられなかったが
US で差を認めたものは 5 例であった。やはり所見は皮膚肥厚である。3 例で
リンパ浮腫対策を行っており、治療効果と思われた。1 例はマッサージおよび
弾性スリーブで浮腫が軽減し、周径差の消失し US 所見も皮膚肥厚のみとなっ
た。皮膚肥厚がリンパ浮腫の早期所見と思われた。SN 群では周径差 1cm 以上
かつ US 左右差を認めた症例は 2 例であった。所見は皮膚肥厚と輝度上昇で
あった。周径、US ともに所見を認めなかったものは Ax 群で 13 回 33%、SN
群では 35 回 60% であった。結語:US 観察はリンパ浮腫の早期発見に有用と
なる可能性を認めた。上肢周径計測も早期発見に有用であるが、皮膚肥厚、
輝度上昇、この二つに注意して今後も検討の継続が必要と感じた。
ポスター討議
DP-2-113-05
DP-2-114-01
当院における乳癌術後リンパ浮腫患者の実態調査~指導の評価・
改善・今後の展望~
1
乳がん患者のリンパ浮腫看護外来におけるニーズの変化
1
山形県立中央病院 乳腺外科外来、2 山形県立中央病院 乳腺外科
名古屋第二赤十字病院 看護部、2 一般消化器外科
室田 かおる 1、石間伏 由紀 1、林 真奈美 1、吉川 明海 1、續木 美樹 1、
松浦 美聡 1、赤羽 和久 2、坂本 英至 2
酒井 優子 1、坪沼 仁子 1、牧野 孝俊 2、工藤 俊 2、蓮沼 綾子 2、
阿彦 友佳 2
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】当院では H22 年度診療報酬改定、『リンパ浮腫指導管理料』に対し
看護師の患者指導能力アップを進め H23 年 4 月から『リンパ浮腫指導管理料』
をいただいている。同時期より外来でリンパ浮腫出現患者に対し看護師がフォ
ローを開始した。リンパ浮腫を発症し外来で関わっている患者の現状を把握
分析し、当院での指導内容の評価分析した事を報告する。【対象】H25 年1月
~ H25 年 12 月に乳腺外来にてリンパ浮腫継続指導 を受けた患者 46 名。【方
法】患測上肢の計測値(肘上 10 cm・肘下5cm・手首・手のひら周囲)の経
過の程度を独自の 3 項目に分類(悪化・普遍・改善)し 19 項目に対しデーター
の抽出。術式(郭清の有無)・BMI・リンパ浮腫の程度(1期~ 3 期)・蜂窩識
炎の有無・予防教育の有無・患肢への負担・負荷行動の有無 ( 家事・育児・介
護 )・適切なスキンケア・保湿の有無・皮膚への負傷などについて考察した。【結
果】平均年齢 58.7 歳。リンパ浮腫発症患者の 76%はリンパ節郭清術。手術か
ら受診日までの平均期間は 6 年 2 カ月。悪化群 14 年1カ月・不変群8年4ヵ月・
改善群6年5ヵ月だった。転移後のリンパ浮腫発生4%。平均介入回数は 3.1
回。悪化群 5.6 回不変群 2.3 回改善群 1.5 回。両測乳癌の手術歴のある患者は
25%、悪化群・不変群 33%・改善群 16%だった。BMI25 以上の肥満は悪化
群 66% 不変群 33%改善群 36%だった。リンパ浮腫の程度 3 期 15% 2 期は
73%。予防教育を受けてない患者は全体の 73%。悪化群では全例が予防教育
なし。スキンケア・保湿行動をしていなかった患者は 73%。改善郡でスキン
ケアをしている割合が多かった。負荷行動がきっかけでリンパ浮腫を発症し
たのは全体の 73%。皮膚を傷つける / ペットにかまれるなどで発症した患者
は 16%だった。蜂窩織炎は全体の 44%が発症しており悪化群 33%不変群
16%改善群 37%だった。術式・予防教育の歴の有無・BMI25 以上と 25 以下
での比較・負荷行動がきっかけでリンパ浮腫の発症、スキンケア・保湿行動
の有無・皮膚を傷つける / ペットにかまれるなどで発症・蜂窩識炎の有無での
3 郡に有意差みられなかった。リンパ浮腫の程度 2 期 3 期で有意な差をもって
改善が多い。【まとめ】予防教育を受けていない患者は外来にて指導し 80%が
改善している。リンパ浮腫発症した患者は負荷行動・保湿 スキンケアをして
いない・蜂窩織炎の発症などが誘引となっていることがわかった。
【はじめに】当院では 2012 年よりリンパ浮腫看護外来を開設しリンパ浮腫予防
指導の算定取得を開始した。開設当初より全診療科の中で乳癌腋窩郭術後の
リンパ浮腫ケア依頼件数が最も多い。最近これに加えてセンチネルリンパ節
生検のみの症例において、上肢ではなく患側背部の浮腫を理由にしたケア依
頼件数が増加している。当院の乳癌術後症例に対するリンパケア外来の活動
状況を報告する。
【目的】乳癌術後症例でリンパケア介入を要した例の状況を
把握し今後の課題を抽出する。【方法】2014 年にリンパケア依頼を受けた患者
のうち乳癌患者の依頼をカルテから抽出し後ろ向きにデータ集計をした。集
計は個人が特定されないよう倫理的配慮を行った。
【結果】2013 年のリンパ浮
腫看護外来の依頼・介入件数は延べ 341 件であったが、139 件(41%)が乳癌
患者であった。依頼理由は腋窩リンパ節郭清術後の続発性リンパ浮腫と進行・
終末期患者におけるリンパ節転移に伴うリンパ浮腫であった。2014 年のリン
パ浮腫外来の依頼・介入件数は延べ 796 件であったが、376 件(47%)が乳癌
患者であった。そのうちセンチネルリンパ節生検のみの患者は 78 件 (21% )
であった。依頼理由は 2013 年に加え患側背部浮腫の改善、IADL の向上など
があった。【考察】リンパ浮腫看護外来利用者数の増加の背景に、開設から 2
年が経過し院内でリンパケアの重要性に対する認識が高まったもの考える。
乳癌患者のリンパケア依頼件数が増加しており、特に腋窩郭清を伴わないセ
ンチネルリンパ節生検のみの症例の割合が増えている。この増加の一因とし
て医療スタッフによる上肢だけでなく背部の浮腫に対する認識の向上が挙げ
られる。上肢の顕在化した浮腫は、特にリンパ節郭清した患者において予防
指導の教育効果もあり自己申告が得られやすいが、リンパ節郭清を伴わない
上肢以外の浮腫は意図的に診察が行われないと見逃されやすい症状の一つで
ある。軽度の背部うっ滞であっても自身の手の届かない部位を理由に不快を
伴っている患者は多い。患者のほとんどは指導やケアを熱心に受けリンパケ
ア介入後には背部の凹凸感がなくなったなど自覚症状が改善されていること
から、介入は有効だったと考える。
DP-2-114-02
DP-2-114-03
1
1
化学療法を施行した原発性乳癌患者の就労状況の検討
がんと共に生きる人々の日常生活サポート~就労支援~
名古屋第二赤十字病院 薬剤部、2 名古屋第二赤十字病院 看護部、
名古屋第二赤十字病院 栄養課、4 名古屋第二赤十字病院 一般消化器外科、
5
名古屋第二赤十字病院 呼吸器/腫瘍内科、
6
名古屋第二赤十字病院 産婦人科
社会医療法人 天神会 新古賀クリニック 化学療法室 乳腺外来、
2
社会医療法人 天神会 新古賀病院 乳腺外科
3
森下 絵美 1、堤 えり子 1、本梅 桂 1、田中 喜久 2
【背景】現代、原発性乳癌は女性癌で罹患率1位を占め増加の一途をたどって
いる。又、就労している女性が多くなっているが、日本の経済状況から働く
環境が悪化している。癌に罹患した後も就業を継続しなければいけない女性
は多い。【目的】化学療法治療中の就労問題に注目し、就労女性の労働状況を
調査し把握する。
【対象】2002年~2014年当クリニック及び系列病院
で化学療法を施行した就労中の乳癌患者72名。平均年齢は54.9歳(30
~71歳)【方法】外来受診時や郵送で無記名アンケート調査を施行した。【調
査項目】#1. 会社の規模・労働条件,#2. 治療中の雇用形態の変化,#3. 会
社・同僚との関係,#4. 経済状況(収入)。【結果】#1. 50人未満の小規模
会社が60%と多く、大規模会社は15%と少なかった。男女比は、67%
が女性中心の職場であった。勤続年数は、10年以上が44%と熟練労働者
が多い傾向にあった。就業形態は、正規職が32%と少なく、非正規職が
50%と半数を占めた。残りの18%は自営業であった。労働状況は、軽度・
中等度労働が各47%とほとんどであった。#2. 会社・部署の変化無しは
53%、変化有りが47%とほぼ半々であった。変化有りの内、休職(18%)
・
依願退職(9%)、転職(3%)、解雇(3%)であった。変化有りの理由は、治
療中の時間の調整が難しい・治療に専念する為・体力の低下・体調不良・周
囲に迷惑がかかる等であった。#3. 会社・同僚との関係は、両者とも協力的
が60%以上であり、関係は良好であることが多かった。#4. 変化無しが
55%、減少が32%であった。【考察】1.当地域の乳癌患者は、小・中規
模会社で働きながら、職場の協力を得て就労継続の方が多い。2.就労を継
続していくには、会社・同僚の協力が非常に重要である。3. 就労継続には、
正規・非正規職では差は認めなかった。【まとめ】当地域の化学療法施行乳癌
患者の就労状況を検討した。今後は、患者が就労継続出来るように、情報提
供や地域社会への化学療法の啓蒙が必要と考えた
高原 悠子 1、室田 かおる 2、田小森 かずこ 2、松浦 聡美 2、佐々木 智子 2、
畠山 桂吾 3、木全 司 1、青山 智彦 1、赤羽 和久 4、坂本 英至 4、
若山 尚士 5、山室 理 6
【はじめに】わが国では、毎年 20 歳から 64 歳までの約 22 万人ががんに罹患し、
約 7 万人が死亡している一方、がん医療の進歩とともに、日本の全がんの 5 年
相対生存率は 57%となり、がん患者・経験者に対する就労を含めた社会復帰
支援が注目されている。このような状況の中、2012 年 6 月に改定された「が
ん対策推進基本計画」の中で、「働く世代や小児へのがん対策の充実」が重点課
題として挙げられた。今回、当院におけるがん患者の就労に関する課題を明
らかにし、がん患者やその家族に対する情報提供・相談支援体制のあり方に
ついて検討したので報告する。
【対象・方法】2014 年 5 月~ 6 月の約1ヶ月間、外来化学療法センターにて、
がん化学療法施行中の患者を対象として就労に関する無記名式アンケートを
実施した。本研究は観察研究であり、就労支援を要する患者割合の推定範囲
をより正確に示すことができる対象数を 160 名とした。統計解析は Fisher の
直接確率検定、Mann-Whitney 検定にて行った。
【結果】目標対象数を上回る 247 人より回答があり、回収率は 61.1% であった。
診断時に無職であった割合が 25% であったのに対し、診断後に無職となった
人数は診断前と比較して約 1.6 倍の 39.4% を占めた。離職した割合は正規雇
用、非正規雇用でそれぞれ 16.7%、63.3% であった(P=0.026)
。また、扶
養 家 族 の あ る 人、 な い 人 の 離 職 率 は そ れ ぞ れ 25%、52.3% で あ っ た
(P=0.012)。離職した人のうち 44.2% が治療開始前に離職していた。就労に
関して不安がある人のうち、32.9% が相談をしていなかった。就労に関する
相談窓口の利用希望者が全回答者の 60% であった。就労に関する相談先は主
治医が最も多かった。
【結論】診断前後の離職率から、診断早期からの介入の必要性が認められた。
相談先の中心は主治医である一方で、多くの患者が相談窓口の利用を希望し
ていることから、日常診療の中で主治医のみで対応することは困難であり、
また主治医の負担軽減も考慮する必要がある。以上のことから、就労支援は
診断早期からの介入が必要であり、現在相談窓口の拡充、多職種での支援体
制を構築中である。
458
ポスター討議
DP-2-114-04
DP-2-114-05
1
公立甲賀病院 乳腺外科
当院における乳がん手術後患者の職場復帰の現状
地方都市病院における乳癌患者就労状況 - アンケート調査から -
福島労災病院 中央リハビリテーション部、2 福島労災病院 外科
草野 麻衣 1、又吉 一仁 2
沖野 孝
「諸言」乳癌患者はほかの癌に比べ年齢層が低く、子供が未自立であることが
多く、同時に就労状態が大きな社会的問題となっている。公立甲賀病院は滋
賀県南東部に位置する地方都市病院であり、当院での乳癌患者就労状態を把
握し、今後の対策を考えるためにアンケート調査を行ったので報告する。「方
法」当院に通院する乳癌術後患者 100 名に対し、状態や再発の有無を問わず診
察終了後にアンケート用紙を手渡し、郵送で回収した。アンケート調査に当
たっては当院の倫理委員会に諮問し、承認された。全例女性である。「結果」
回答は 77 例であった。患者年齢は 40 歳台および 50 歳代が 46 例、約 60%を
占めた。診断時扶養家族ありが 33 人、なしが 42 人であり無回答は 2 人であっ
た。診断時なんらかの仕事をしていたのは 45 人、術後は 33 人となっていた。
この内訳では常勤職員が診断時 15 人から 8 人と減少しており、うち 4 人は退
職後非常勤職、2 人は無職になったと答えた。診断時常勤職員で従業員数調査
に回答のあった 13 人のうち 8 人が従業員数 50 名未満の職場であった。就業状
態に変化なしと答えたのは 28 人、36%であった。退職後再就職が 8 人、退職
後無職が 8 人であった。退職 / 移動の経緯は回答 16 人にうち 13 人が自分から
希望したと答えた。就労に関して相談したことがあるのは 23 人、相談相手は
家族と上司が多かった。相談してから 22 人が役に立った、あるいはやや役に
立ったと答えた。逆に相談しなかった理由については、困ってなかったある
いは発想がなかったとの回答が多かった。当院の癌相談支援センターについ
て、47 人がその存在を知っていたが就労問題を相談したことがあるのは 4 人
にとどまった。「考察」国民の多くが癌に罹患するようになり、がん患者のサ
バイバーシップの重要性がひろく知られるようになってきた。乳がん患者に
関しては子育て、就労、遺伝子カウンセルが社会的に考えられるべき問題点
であり、まず現実を理解したうえで今後の方策を模索すべきであり、大企業
だけでなく、中小企業にもこの現状を理解していただく必要がある。また地
域がん診療連携拠点病院としては、がん相談のさらなる充実と周知を図るこ
とも重要である。
DP-2-115-01
DP-2-115-02
乳癌術後における上肢機能に影響を及ぼす因子の検討
乳がん術後外来リハビリテーション患者の身体症状および自覚
症状について 外来リハビリテーションの必要性
1
東北大学病院 リハビリテーション部、
2
東北大学病院肢体不自由リハビリテーション科、
3
東北大学病院乳腺内分泌外科
乳腺ケア泉州クリニック
中原 礼、太下 徳和、金森 博愛、阿南 節子、亀山 澄子、塚本 愛、
住吉 一浩
高橋 晴美 1、片岡 香菜 1、高橋 久美子 1、古澤 義人 2、石田 孝宣 3
【目的】乳癌術後の患者に対し,生活指導や関節可動域訓練,上肢筋力増強訓
練などの包括的リハビリテーション ( 以下リハ ) を実施することは,診療ガイ
ドラインにおいて強く勧められている。当院では,センチネルリンパ節生検
または腋窩郭清を伴う根治術を行う予定の患者に対し,上肢機能の速やかな
回復と合併症の予防を目的として術前から作業療法(以下 OT)を実施してい
る。この度,乳癌術後の上肢機能の経過と回復に影響を及ぼす因子を探るべ
く後方視的調査を行った。
【方法】対象は平成 25 年 9 月~ 26 年 2 月にセンチネルリンパ節生検または腋
窩郭清を伴う根治術を行った患者のうち,術後 7 か月間の OT フォローアップ
が可能であった患者 43 名。患側肩関節可動域(自動屈曲,自動外転),握力(患
側,健側),有害事象の有無に関する評価を,術前,術後(1 週間以内),術後
3 週,5 週,4 か月,7 か月の計 6 回実施した。
【結果】対象の内訳は,性別が女性 41 名男性 2 名,年齢は平均 56.4 歳(中央値
54.0,65 歳以上 12 名),術式は Bp34 名 Bt9 名,腋窩郭清例は 14 名,腋窩リ
ンパ管線維化症候群 (AWS) や創部感染,リンパ浮腫等の有害事象は 14 名に
認められた。上肢機能の術後経過を全体的にみると,患側肩関節可動域や健
側握力は術前と比較して有意な低下は認められなかったが,患側握力は術後
軽度低下し術後 5 週で有意に回復していた。要素別に比較すると,有害事象群
と 65 才以上の高齢者群において上肢機能の一部に経過中の有意な低下が認め
られたが,術式および腋窩郭清の有無では有意な差がみられなかった。また
有意差は無いものの術後 7 カ月において,有害事象群では全評価項目において
術前よりも低値,高齢者群では改善の傾向を認めた。
【考察】術後 7 カ月までの上肢機能の低下は全般的にみて少なく,先行研究よ
りも成績が良かった。乳腺外科との診療連携による適切なリハの実施が効果
を挙げた可能性が示唆された。また,高齢者群では術前に廃用性の上肢機能
低下が認められ,リハビリにより機能改善が得られたものと考えられた。阻
害因子として問題となったのは,術後 AWS やリンパ浮腫等の有害事象であり,
早期発見と発症例へのリハビリ継続が重要と考えられるが,本研究の観察期
間は 7 か月であり,有害事象発症例におけるフォローアップ期間等の検討が必
要であると考えられる。
【目的】乳がん治療中や治療後のリハビリテーションは上肢機能改善やリンパ
浮腫発症予防につながり、運動療法に関しては、体組成や倦怠感の改善、心
理面への好影響があるとガイドラインに記載されている。乳がん術後患者の
身体症状と自覚症状について検討し、外来リハビリテーションの必要性を明
らかにする。【方法】開院から 5 か月間(平成 26 年 7 月~ 11 月)に当クリニッ
ク外来リハビリテーションを受診した 86 名のうち乳がん術後患者 70 名を対
象とした。患者の身体症状及び自覚症状と術式、治療法との関連性について
検討を行った。【結果】身体症状別では、肩関節可動域制限 24 名(34.3%)う
ち術後 1 カ月以内 8 名(11.4%)術後半年以上 16 名 (22.9% )、リンパ浮腫 17
名(24.3%)、術創部違和感 11 名(15.7%)、関節痛 8 名(11.4%)、肥満 4 名
(5.7%)、治療中の体力低下 2 名(2.9%)、その他 4 名(5.7%)であった ( 複数
回答なし )。肩関節可動域制限を訴えた患者のうち 3/24 人 (12.5% )、リンパ
浮腫を訴えた 16/17 人(94.1%)が腋窩リンパ節郭清 ( 以下:Ax) を施行され
ていた。創部違和感を訴えた患者は全例放射線治療を施行され、90%以上は
腫瘍部位が C 領域であった。関節痛を訴えた患者のうち 6/8 人 (75.0% ) と肥
満を訴えた患者 4/4 人 (100% ) がホルモン治療中であった。術後時期に関わ
らず、患者の半数以上が肩関節可動域制限かリンパ浮腫のいずれかを訴えて
いた。リンパ浮腫と Ax 施行との因果関係は認められたが、肩関節可動域制限
と Ax 施行に関連性はみられなかった。創部違和感を訴えた患者の肩関節可動
域は正常範囲であったが、創部周囲の硬さやひきつれ感を自覚していた。全
例で放射線治療を施行され、放射線治療による皮膚や筋肉の伸張性低下が慢
性的に残存していることが考えられた。違和感を訴えたほぼ全例の腫瘍部位
は C 領域で、肩関節挙上最終域で最も伸張性が必要となる、前胸部上方外側
部や側胸部と創部が重なっていることが原因と考察された。ホルモン治療中
の患者では、関節痛や肥満の多い傾向がみられた。【結論】乳がん術後患者は、
退院後の治療継続中に様々な症状を自覚している。患者個々の身体症状に対
して、多職種と情報を共有し生活環境にも配慮した外来リハビリテーション
を行うことが重要である。
459
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】乳がんの罹患率は年々増加傾向にあるが、他の部位に発生するが
んと比べると比較的予後の良いがんとして知られている。しかし、発症年齢
のピークは40歳代と若いため、その時期は就労し社会的役割を担っている
人も多く、手術後の復職が妨げられる患者も少なくない。そこで今回当院に
おける乳がん手術後患者の復職の現状を把握し、阻害因子を検討した。【対象】
就労中に診断が確定し、その後当院において乳がん手術を施行した患者 17 名
( 入院時すでに退職していた1名は除く )。すべて女性。平均年齢 50.3 ± 6.4 歳。
【方法】対象には手術前、退院時、手術後 1 か月時に関節可動域 ( 肩関節屈曲、
伸展、外転、外転位での外旋・内旋 ) を測定し、FACT-B( 第 4 版 ) の自己記入
を依頼する。就労の詳細や復職時期については、入院時と退院後1か月時に
おいてそれぞれ口頭にて質問する。得たデータは退院後 1 か月時点においての
未復職者群、退院後 7 日以内の復職者群、退院後 8 日以降の復職者群の 3 群に
分け、それぞれ比較・検討する。【結果】職種の内訳は事務職 5 名、看護師 4 名、
接客業 3 名、営業 2 名、ケアマネージャー 1 名、土木関係 1 名、縫製 1 名。退
院後 1 か月時点で復職者 12 名、未復職者 5 名。それらは退院後 7 日以内の復
職者群 6 名、8 日以降の復職者群 6 名、未復職者群 5 名の 3 群に分けられた。
それぞれを関節可動域の変化率 ( 手術前を 100% とした数値 ) で比較すると、
肩関節屈曲、外転、外旋において有意差が認められた。年齢や FACT-B におい
てはすべての項目で有意差は認められなかった。【考察】退院後 1 か月時点に
おいて、対象者の 70% の患者が復職しており、そのうちの約半数が退院後 1
週間以内と比較的早い段階で復帰していることが分かった。また、FACT-B で
は有意差が得られなかったことから、上肢の機能的な問題が復職に影響を及
ぼす可能性があると言える。しかし、乳がんと診断された 6 年後には 26 ~
53% が失職・退職しているとする報告もあり、今後も引き続き調査していく
ことが必要である。
ポスター討議
DP-2-115-03
DP-2-115-04
乳腺診療所における一般看護師が関わるリンパ浮腫看護の状況
についての検討
乳腺科の立ち上げと法人内ナース プラクティショナー制度の活用
1
重盛医院・乳腺クリニック
糸島医師会病院 乳腺センター、2 たなかクリニック
渡邉 良二 1、桑原 秀美 1、二宮 百香 1、田中 千晶 2、梶西 ミチコ 1、
竹下 玲子 1、冨田 昌良 1
伊藤 裕子、菅村 有香、長尾 珠恵、諏訪部 夕希、松岡 麻未、
重盛 千香
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】当院は乳癌の診断、手術以外の初期治療、再発治療を行う無床診
療所である。リンパ浮腫看護は、リンパ療法士による週一回のリンパ浮腫外
来以外に、一般の看護師が関わり気軽に相談できる状況を提供している。一
般看護師による看護状況を検討し役割を考察した。【対象・方法】平成 24 年 3
月~ 26 年 10 月に一般看護師が外来でリンパ浮腫看護を行った 69 例の患者状
況、看護内容、転帰について後ろ向きに検討した。【結果】69 例中、未発症の
予防の指導は 47 例(以下、予防群)で、発症後のケア指導は 22 例(以下、ケア
群)に実施した。予防群 47 例中、腋窩郭清は 15 例 (32%)、郭清省略は 32 例
(68%)であった。手術を受けた病院での術後の退院前指導状況は、23 例が指
導をうけていたが、2 例は冊子配布のみ、4 例は説明を受けていなかった(不
明 18 例)。理解度を評価すると、16 例でよく理解していたが、腋窩郭清例の
2 例を含む 22 例でほとんど理解していなかったので補足説明を行った(不明 9
例)。また、予防群のうち 5 例が観察期間内にリンパ浮腫を発症しケア指導し
た。一方、発症後のケア群の 22 例の術式は、19 例 (86%) が腋窩郭清、1 例
が郭清省略(2 例不明)。2 例に一旦軽快も再燃したので、のべ 25 事例の検討
となった。発症契機は、特発性 17 例、家事やスポーツ 4 例、外傷・感冒 4 例。
術後初回発症までの期間は平均 29 ヶ月。発症時病期 0 期 10 例、1 期 15 例。
蜂窩織炎を伴うもの 6 例で、医師による治療内容(のべ)は、冷却 6 例、抗生
剤投与 2 例であった。主なケア指導内容(のべ)は、18 例にセルフドレナージ、
10 例生活習慣指導、11 例スリーブ着用指導であった。転帰は、18 例が初回
ケアで軽快(2 週間以内:5 例、2 ヶ月以内:9 例、それ以上:4 例)し、3 例が
病期 3 へ、2 例がリンパ浮腫外来でケア中、1 例は一旦軽快も再燃のためケア
継続、1 例転院。軽快例の改善までの期間は平均 8 週であった。検討期間内に
予防の指導も発症した 5 例の経過は、3 例は外傷等契機で早期に相談されたた
め改善、1 例はドセタキセル実施中に副作用の浮腫と合併し初発し、ケア指導
も慢性化しリンパ浮腫外来でケア中、1 例は自覚症状のみの軽症だった。
【考察】
一般看護師が、身近に関わり患者に相談しやすい雰囲気をつくり発症時早期
にケアできる環境を提供することで慢性化・重症化するものを少なくしたい
と考える。
【はじめに】慢性的な医師不足により実地医療の崩壊が深刻化している . 特に地
方病院における医師不足や外科系勤務医の労働環境不良の問題は , 新医師臨床
研修制度を契機にさらに悪化している . それらの問題を解決するための打開策
として , 当院では 2009 年より独自に医師法・保助看法の法律内で , 欧米での
NP(Nurse Practitioner)や PA(Physicians Assistant)と呼ばれる中間職種的
な働きのできる職種およびその制度を考案し , 医師補佐制度の運用を開始し
た . これを法人内ナースプラクティショナー(iNP)と称し , その成果を学会や
雑誌に発表してきた . また , 当院は人口約 10 万人のベットタウンの中にある地
域医療支援病院で , 他の2施設とチームを組み乳癌死亡率の減少を目指し , 検
診から , 精密検査 , 治療までを連携し地域完結型医療を目指し ,2014 年 4 月よ
り新規に乳腺センターを開設した . 乳腺センターでは , iNP, 外来看護師 , 医療
秘書がチームを組み煩雑で多忙な診療の補助をし , 潤滑な診療を行うことがで
きている . この度 ,iNP の役割を中心に現状を紹介する 【
. 施設の現状と iNP の役
割】乳線センターのスタッフは , 乳腺専門医1名 ,iNP1 名 , 乳線外来看護師 1
名 , 臨床放射線技師 2 名 , 臨床検査技師 3 名 , 受付・事務 1 名 , 医療秘書 2 名 ( 非
常勤)で診療を行っている .iNP は , 初期診察・検査・IC・治療まで同行し , 手
術手技および化学療法のレジメン作成や指示系統まで把握・実践している . ま
た , 検査日程調節 , 病状説明同伴 , 術後管理補佐 , 回診 , 退院調整(連携室)・サ
マリー作成(医療秘書), 処方原案作成・処方補佐 . 定期処方箋の記入・代行入力 ,
化学療法実施補助も行っている . 今回 , その成果について検討した 【
. 結果と考
察】医師から見た効果は ,iNP による指示系統の代行入力および予約・検査説明・
日程調整 , 入院患者指示の簡素化 , 処方原案作・パスに従ったオーダー・ 病状
にあった追加検査の代行入力で業務の負担の軽減があり , 日常診療に役立っ
た . また , 患者が医師へ聞きにくい質問事項を気軽に聞くことができ , 患者の
満足度の向上にも有用であった .iNP 制度の導入は , 緊急避難的制度であるが ,
上記の役割により医師の労働環境を改善するだけでなく , 看護師のスキルアッ
プにも寄与していると考えられた 【
. 結語】iNP 制度は , 医師の判断・指示をそ
の都度必要とする制度であるが , 中間職種に近い働きのできるものであり , 乳
線科でも有用で , 将来は公的認証のある統一された制度が必要であると考えら
れた .
DP-2-115-05
DP-2-116-01
肥満乳癌患者における栄養指導の取り組み
Fulvestrant の逐次投与法と同時投与法の QOL に関するランダ
ム化比較試験
1
石巻赤十字病院 栄養課、2 石巻赤十字病院 乳腺外科、
3
石巻赤十字病院 看護部
1
公立法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 看護部、
東京医科大学 乳腺科学分野、
公立法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
4
昭和大学横浜市北部病院 薬剤部、
5
京都大学大学院医学研究科 医学統計生物情報学 、
6
横浜市立大学学術院医学群 臨床統計学、
7
公立法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 薬剤部、
8
済生会横浜市南部病院 外科
2
阿部 薫 1、佐伯 千春 1、古田 昭彦 2、佐藤 馨 2、玉置 一栄 3
3
【はじめに】当院では乳癌治療中の入院患者、外来患者について多職種による
乳腺カンファレンスを週 1 回実施している。以前より肥満乳癌患者が多くいる
ことが問題となっていた。乳癌患者において肥満は乳癌の再発のリスクが高
まると言われている。平成 26 年 7 月より肥満患者に対して栄養指導を開始し
たので取り組みについて報告する。
【対象】乳腺外科外来患者で BMI25 以上の肥満患者、著しい体重増加を認めた
患者、その他医師が必要だと判断した患者を対象に栄養指導を実施した。7 月
~ 12 月で対象者は 18 人、平均年齢 59.4 歳、平均 BMI 34.0、平均体重 82.2
kgだった。
【方法】栄養指導初回介入時は食生活の聞き取りを実施、問題点に対して目標
を 1 つ立て 2 回目の栄養指導時に目標の達成度を確認した。以降も追加問題点
に関して指導を行い、再度目標設定し継続して介入することとした。
【結果】継続介入している 10 人中 7 人の患者で平均 2.0kg 体重減少が見られ
た。対象患者のうち多くは肥満の危険性を自覚しており、改善する機会が欲
しかったと感じていることが分かった。過去に自己流のダイエットを実践し
一時は体重減少したが数年後にはまた前回の体重にリバウンドする患者も多
く見受けられた。中には体重減少により肝機能が正常化し休薬していた内服
薬が再開になった患者や、既往に糖尿病があり HbA1c の数値が低下した患者
もいた。
【考察】食事に関して不安な点はあるが診察時に全てを医師に相談出来る患者
は少ない。そこで医師や看護師と協力し肥満者の抽出を行い、栄養士の立場
から介入することによって偏った食事内容を正し、適切な食事内容に導く栄
養指導が起点となり食生活改善を図り体重減少に繋がった。今後は肥満患者
のみでなく、早期からの介入を行い、肥満予防にもチームとして関わっていき、
今後の乳癌治療のリスク防止に関与できるよう取り組んでいきたい。
岩崎 有紀 1、和田 伸子 1、峰尾 敦子 1、木下 美由紀 1、大月 菜穂子 1、
石川 孝 2、成井 一隆 3、山田 顕光 3、足立 祥子 3、縄田 修一 4、
森田 智視 5、大庭 真梨 6、石橋 貴子 6、徳丸 隼平 7、嶋田 和博 8
【背景】Fulvestrant はその製剤特性により、投薬 1 本あたり 1 ~ 2 分の時間を
かけて薬液を緩徐に左右の中臀筋へ注射しなければならない。従来の 1 名で実
施する投与方法(逐次投与法)のほか 2 名で同時に実施する方法 ( 同時投与法 )
を取り入れることで、患者の痛みの軽減や看護師側の精神的負担も緩和され
ると考えた。当院でパイロットスタディとして 16 名(延べ 85 人)に同時投与
法を実施したところ患者から好感度を得たため、2012 年 12 月より当院倫理
委員会の承認を得て、本研究を開始した。【目的】Fulvestrant の逐次投与法と
同時投与法の患者の QOL と作業の効率を比較検討する。【方法】(1) 初回投与
時に、筋注方法を逐次投与法と同時投与法にランダム化して施行し、2 回目は
筋注方法をクロスオーバーする。3 回目以降は、患者の希望方法で治療を継続
する。初回および 2 回目にアンケートを実施、さらに痛みを VAS スケールで
測 定 し て、2 種 類 の 方 法 の QOL に 関 す る 比 較 を 行 う。 症 例 数 は 2 群 間 の
VAS1cm の差を対応のある t 検定(両側:α =0.05, β =0.2)で統計学的に検討
できるよう算出した 37 例に脱落を加味し、40 例(1 群 20 例)と設定した。(2)
投与実施時間の計測および看護師側の注射実施業務アンケート調査を行い、
二つの方法における看護師側の利便性を検討する。【結果】登録状況:試験終
了数 40 名、有効回答 38 名。平均年齢 62.55 歳、平均 BMI23.56。処置時間
(mean ± SD)は逐次投与法 8.08 ± 3.97 分、同時投与法 3.77 ± 2.78 分であっ
た。 主 要 評 価 項 目 の VAS ス ケ ー ル(mean ± SD)は、 逐 次 投 与 法 19.11 ±
16.13mm、同時投与法 17.14 ± 16.76mm であり有意差はなかった。3 回目
以降の注射希望は、逐次投与法 10 名・同時投与法 28 名であった。同時投与
法を選んでいる理由では時間の短縮が最も多かった。看護師からの意見では
研究当初は 2 名で行ったほうが安心という意見が多かった。【考察】逐次投与
法・同時投与法ともに有害事象はなく研究は終了した。逐次投与法と同時投
与法での VAS スケールにおける有意差はなかったが、3 回目以降に患者が希
望した注射方法は同時投与法が多く、同時投与法は有用と思われる。看護師
は研究当初は 2 名で行った方が安心との意見が多かったが、注射件数も多くな
るに従い注射への不安の訴えは減ったことは、注射手技が確立し安定したた
めと思われる。【結語】Fulvestrant の投与法における同時投与法は有用と思わ
れた。
460
ポスター討議
DP-2-116-02
DP-2-116-03
市立奈良病院
1
乳がん初期治療における経口ホルモン薬の服薬実態と QOL
乳癌薬物療法中の患者における health utility values の検討
2
谷口 章子、小山 拡史、今西 清一、松井 千里、今井 文
岩谷 胤生 1、Nick Freemantle2、津川 浩一郎 1
【緒言と目的】近年、欧米を中心にがん薬物療法において費用対効果分析が行
われている。本邦でも質調整生存年 QALYs を用いた費用効用分析を実臨床に
活用する方法が検討されている。QALYs の算出に必要な QOL スコアを utility
(効用値)と呼び、正確な QALY sを算出するキーポイントである。本研究で
は乳癌薬物療法中の患者の効用値を文献的に検索し、問題点を検討する。
【方法】乳癌薬物療法の薬剤やレジメンとして、分子標的薬(トラスツズマブ・
ラ パ チ ニ ブ・ ベ バ シ ズ マ ブ )、 化 学 療 法(CMF・FEC60・FEC followed by
DOC)、ホルモン療法(タモキシフェン・アロマターゼ阻害薬)を選択した。
次に患者の状態を初発・再発に分類した。再発患者に関しては治療反応性に
応じて Stable disease、respond to therapy、disease progression に細分
類した。上記とは独立して終末期(予測される予後が 3 ヶ月以内)を設定した。
上記の分類にしたがって、薬物・レジメン名、health utilities、breast cancer、
chemotherapy、hormone therapy、economic evaluation、costeffectiveness analysis をキーワードに PubMed による文献検索を行った。その
中で最も幅広く効用値を網羅している文献を抽出し検討した。
【結果】乳癌初発患者の効用値は薬物療法の種類によらず 0.86 から 0.99 であっ
た。しかしトラスツヅマブ投与群で心合併症を伴う患者の効用値は 0.64 であっ
た。一方再発患者においては治療反応性に応じて効用値は変化し、局所再発・
non-progressive disease の患者の効用値は 0.54 から 0.84 であった。一方、
progressive disease の患者では 0.26 から 0.5 と低値を示した。また終末期の
患者では 0.159 と最も低値であった。また化学療法中の患者の効用値低下の要
因として有害事象があり、-0.151 から -0.103 の低下を認めた。
【考察】本研究での初発乳癌患者の効用値は過大評価されている可能性が示唆
された。他の先行研究によると初発乳癌患者の効用値は 0.725 であり、変数
は -0.215 から 0.171 であった。また効用値は薬物療法の内容に依存しないに
も関わらず、有害事象の発生が効用値の低下の要因である事が示唆された。
化学療法はホルモン療法に比べて有害事象の発生率が高く、本研究の結果に
矛盾すると考えられる。
【結語】乳癌薬物療法中の患者における health utility values は費用効用分析で
重要であるにも関わらず reliability が低く、さらなる検討が必要であると考え
る。
DP-2-116-04
DP-2-116-05
進行性乳がん患者の受診動機と受診に影響した要因についての
検討
露出した進行がんに対する処置薬剤の選択
1
2
札幌ことに乳腺クリニック
公益社団法人 石川勤労者医療協会 城北病院外科、
公益社団法人 石川勤労者医療協会 城北病院看護部
中村 崇 1、原 和人 1、石井 由香里 2、相原 操 2、川口 真央 2、
竹田 由美子 2、鹿島 しのぶ 2
堀田 美紀、田村 ひとみ、三神 俊彦、増岡 秀次、下川原 出、
浅石 和昭
【はじめに】自覚があっても受診が遅れる乳がん患者の要因として、高齢、生
命保険の未加入、がんの家族歴がないなどの影響があると示唆されている。
今回、当院を受診した進行性乳がん患者の病脳期間、受診契機、受診に影響
した要因、患者背景について検討した。【方法と対象】対象は 2014 年1月から
12 月まで当院の初診の受診者 2236 名うち Stage3B ~ 4 期と診断された 25
名。看護師が個室で行う聞き取りの問診データから要因を分析した。対象者
の平均年齢は 62.8 才(44 才~ 87 才)であった。診断後の治療は、化学療法
15 名、ホルモン療法 4 名、経口抗がん剤 1 名、手術療法1名、緩和ケア紹介 4
名。【結果】症状を自覚し受診行動をとるまでの期間は、自覚のない患者をの
ぞき、最長 10 年から 1 日前で、平均 2 年 7 ヶ月であった。症状が増悪し、受
診を決意するまでの平均日数は 34.7 日だった。受診契機は、症状の増悪が一
番の要因で、そのうち症状で最も多かったのは腫瘍の増大による痛み、出血
であった。受診を躊躇した理由の明らかなものとして、家族の介護問題、経
済面の不安、病院を受診すること自体が苦手というケースが多かった。乳癌
検診を受けたことがない患者は 25 名中 18 名いた。職業をもっていた患者 8 名
のうち、自営業の2名は経済面の不安が強かった。生活保護をうけた直後に
受診した患者が 2 名いた。悪性の自覚の有無は、初診時より半数以上は悪性を
自覚する言葉が聞かれたが、以前に良性と診断され良性と信じていた患者も
いた。告知後、悪性の可能性を考えておらず、動揺が強い患者や、想像して
いたよりも進行していなくて良かったと安堵し、化学療法をうけようと前向
きになる患者もいた。最初から緩和ケアを希望していた患者は 3 名だった。
80 歳以上の高齢者 5 名のうち、2 名は施設の職員に発見されていた。【考察と
結語】進行性乳がん患者は、悪性の自覚や疑念を長く抱え、症状の悪化に意を
決して受診行動をとっている。初診時から、患者の否認の受容、後悔の念、
今までの経過を十分に聴く受容的な関わりをもち、受診の目的を明らかにす
ることが必要である。疾患以外の問題を抱えている場合も多く、早期から患
者の状況を把握し、介入することが重要であると考える。
461
乳癌治療は進歩しているものの、受診時にすでに露出した乳癌患者、再発
にて露出した乳癌患者はまだ多い。露出し潰瘍となった病変は、出血や浸出
液が多く、悪臭も伴う。これらの状態を緩和するために、当院では露出の仕
方に応じ、以下の 3 種類の薬剤を選択している。(1)白色ワセリン(2)メトロ
ニダゾール軟膏(3)モーズ軟膏であり、(2)(3)は保険適応はなく、院内製剤
となっている。また使用際しては、患者様には保険適応外使用としての説明
を行い、院内承諾書に同意をいただいている。
(1)の使用は、潰瘍形成の初期
で、まだ悪臭を伴わないときに使用し、主な目的は保護ガーゼの病変への固
着予防である。出血や浸出液が多くなり、悪臭が伴ってきたら(2)に移行する
ことにしている。悪臭の原因は嫌気性菌が関与していることが多く、メトロ
ニダゾールの抗菌作用で悪臭のコントロールが非常に良好となり、QOL が改
善される。(3)は腫瘍量が多く、出血を伴っている際に使用することが多い。
主成分である塩化亜鉛が蛋白変性を起こし、腫瘍を炭化し脱落させると同時
に、細菌も蛋白変性を受けるため、悪臭の抑制効果もある。 当院での使用
経験をもとに、若干の文献考察を踏まえ症例提示を行う。
一般セッション(ポスター討議)
【研究背景】乳がんの初期治療において,薬物療法は治療の要となっている.
内分泌療法は,経口ホルモン薬の内服を 5 ~ 10 年継続することが必要で,副
反応に低エストロゲン症状があり,8 割以上の服薬を継続できる患者が 76 ~
87% と報告されている (Neugut et al.,2011; Partridge et al.,2003).また,
QOL に は, 服 薬 に 伴 う 気 分 変 動 や 短 気 の 影 響 が 見 ら れ (Ochayon et
al.,2010),2 年程度で回復するといわれている (Fallowfield et al.,2006).そ
こで,服薬行動と服薬に伴う QOL について明らかにすることで,経口ホルモ
ン薬の服薬を継続する患者の理解を得ることを目的とした.【研究方法】研究
協力者は,全国の乳癌学会認定施設のうち協力が得られた 40 施設の,乳がん
の初期治療において経口ホルモン薬(タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬)
の処方を受け継続している女性患者とした.研究方法は,「服薬の実態」,
「QOL」,「服薬継続期間」,「年齢」について,調査票を用いてデータ収集し分
析した.QOL については,SF-36v2 のサマリースコア(身体的健康度,精神
的健康度)を使用した.倫理的配慮として,京都橘大学の倫理審査委員会の承
認を得て実施した.分析の方法は,QOL を国民標準と比較,服薬行動,年齢,
服薬年数と QOL の関係を Spearman の順位相関で確認した.統計解析には,
Windows 版 SPSS version14.0J を 使 用 し た.【 結 果 】質 問 紙 の 回 収 率 は
50.9%,484 名分のデータを分析対象とした.経口ホルモン薬の平均服薬継
続期間 29.4 ヶ月(1 ~ 255 ヶ月),平均年齢 57.1 歳(27 ~ 92 歳)であった.
QOL は,身体的健康度 46.9,精神的健康度 50.2 であった.国民標準値と比
較した QOL は,身体的健康度は低く,精神的健康度は高かった.処方された
薬の 8 割以上を服薬する者が 97.1% であり,この項目は統計的に使用できな
かった.服薬継続期間と関連のあった QOL は,精神的健康度(p < 0.05)であ
り,年齢と関連のあった QOL は,身体的健康度(p < 0.001),精神的健康度(p
< 0.001)であった.
【結論】経口ホルモン薬は,服薬できていた.QOL は,
服薬継続期間と関係弱く,年齢と関係が強かった.診察の場において処方さ
れた薬の残薬を確認する上で,患者の残薬があることに注目することなく,
効果を十分期待できる範囲で服薬を継続できていることに注目し関わり,継
続出来なくなった患者のスクリーニングと個別な対応が必要であると考える.
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
PRIMENT Clinical Trials Unit, University College London
ポスター討議
DP-2-117-01
DP-2-117-02
診断が困難であった乳腺原発 Small lymphocytic lymphoma
の1例
演題取り下げ
砺波総合病院 病理診断科
奥野 のり子、寺畑 信太郎、杉口 俊
一般セッション(ポスター討議)
症例は 80 台女性。1999 年に皮疹、掻痒感、全身リンパ節腫脹を主訴とし
て受診した。Angioimmunoblastic T cell lymphoma の診断で化学療法を行
い、完全寛解を得た。以後、外来にて経過観察となっていた。2008 年にフォ
ローの CT にて、左乳腺の既存の 9mm 大の腫瘤に加え、右乳腺に新規腫瘤の
出 現 が 認 め ら れ、 右 乳 腺 腫 瘍 に 対 し て 針 生 検 を 行 っ た。 既 往 の T cell
lymphoma の像は見られなかったが、小型のリンパ球を主体とする比較的密
な炎症細胞浸潤および、乳管内上皮への浸潤も一部に認められた。B cell
lymphoma、 特 に Extranodal marginal zone lymphoma of mucosaassociated lymphoid tissue type (MALToma) が鑑別に挙がる像であった
が、異型性に乏しいこと、また T 細胞の混在が見られ、上皮に浸潤する細胞
は T 細胞が主体と考えられたこと、などから Lymohocytic mastitis の診断で
経過観察となった。2012 年の CT にて、左乳腺の腫瘤影の増大を認め、再度
左右乳腺腫瘤の針生検を施行した。左乳腺の検体には、B 細胞性の単調な小型
リンパ球の浸潤が見られ、MALToma が疑われた。左乳房部分切除術が行われ、
手術検体にて、小リンパ球の多発結節状の集簇巣を認め、CD5, CD23 陽性の
免疫染色パターンから、Small lymphocytic lymphoma(SLL) の診断となっ
た。2014 年、再度、両側乳腺に多発腫瘤および腫瘤増大を認め、針生検を行っ
た。左右共に、SLL の像で、再発、転移として矛盾しない所見であった。術
後の骨髄生検にて骨髄への SLL 浸潤像を認めたものの、末梢血への異型リン
パ球の出現は伴っておらず、再発、転移の経過からも、乳腺原発の SLL であ
ると考えられた。SLL は Chronic lymphocytic leukemia と本質的には同一と
されるリンパ増殖性疾患である。末梢血、骨髄、リンパ節における発生例が
主体であり、これらを除く他臓器が原発巣となる例は稀である。また乳腺原
発の低悪性度悪性リンパ腫の報告例は MALToma が多くを占める。我々の検
索しうる範囲で、乳腺原発の SLL の既報告例はみられず、本例は乳腺原発の
SLL の第1例となる非常に稀なケースであると考え報告した。また、T 細胞性
リンパ腫の既往を持つという点で、本例は興味深い臨床像を呈した。
DP-2-117-03
DP-2-117-04
乳房に発生した巨大多形性脂肪肉腫の一例
特発性血小板減少性紫斑病合併乳癌に対し術前化学療法を施行
した 1 例
名古屋第一赤十字病院 乳腺内分泌外科
1
浅井 真理子、後藤 康友、河合 奈津子、張 丹
52 歳女性。1 年半前から右乳房の腫瘤を自覚。他院を受診し、右乳房 C 領域
に 3.5cm 大の腫瘤を確認された。マンモグラフィやエコー・針生検を行い、
脂肪肉腫疑いと診断され手術予定であったが、以後受診を自己中断した。そ
の後徐々に腫瘍は増大し、1 年半後に当院受診。来院時、右乳房全体を占める
18 × 13cm 大の腫瘍を認めた。腫瘍尾側の表面の皮膚は一部潰瘍化し、出血
を伴っていた。超音波では境界不明瞭、内部不均一で全体的に低エコーの腫
瘤 が 確 認 さ れ た。 造 影 CT で は 10 × 14.5cm 大、 比 較 的 表 面 平 滑 で 内 部
density は不均一、一部に低吸収域をもつ腫瘤を認めた。周囲の皮膚は肥厚様
であり、胸筋浸潤の所見はなかった。2 ヶ月後に撮影した造影 MRI では腫瘍
径は 14 × 20cm 大に増大しており、内部には造影効果が不均一で拡散上昇を
伴う領域も認められた。明らかな胸筋浸潤は認められなかった。当院画像所
見と他院の組織診断から脂肪肉腫疑いとして、右乳房切除術を行い、皮膚欠
損部に遊離皮膚移植術を行った。術中、腫大リンパ節を認めたためサンプリ
ングを行ったが、リンパ節に異型細胞は認められなかった。摘出標本は 19 ×
19 × 15cm 大の 2.9kg に及ぶ腫瘍で、皮膚は複数個所で自壊し腫瘍が突出し
ていた。病理組織所見では腫瘍は高度な壊死を伴い、腫瘍内は紡錘形~多形
細胞で多形性に富む大型異型細胞が大小不同を示す脂肪細胞や多空胞状の脂
肪芽細胞に混在し増生していた。また免疫染色では MDM2/CDK4 が陰性を示
した。以上より本症例は Pleomorphic type の脂肪肉腫と診断された。本症の
診断、治療について文献的考察を加えて発表する。
福井県立病院 外科、2 福井県立病院 看護部
秋山 玲子 1、大田 浩司 1、伊藤 朋子 1、橋爪 泰夫 1、中野 妃佐恵 2、
朝山 佳恵 2
【目的】特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) を合併した乳癌患者に対し,術前化
学療法を施行し,合併症なく手術を施行し得た症例を経験したので報告する.
【症例】52 歳,女性.ITP に対しプレドニゾロン 5mg/ 日にて加療中であった
が血小板は常に 2 万台であった.左乳房のしこりを主訴に乳腺外来に紹介さ
れ, 左 乳 癌 (T2,N1,M0, Stage2B,ER-,HER2(3 + )) と 診 断 さ れ た.
HER2 陽性乳癌に対する当院での治療方針に従い,術前化学療法を施行するこ
ととしたが,血小板数の保持が困難と予想され,血液・腫瘍内科と共同して
治療をおこなった.化学療法施行前にプレドニゾロンを増量したが血小板数
の増加は認められなかった.一方,血小板輸血により血小板数は確実に増加
することが確認できたため,骨髄抑制による血小板減少時には輸血にて対応
する方針とした.FEC100(5-FU+ エピルビシン+シクロフォスファミド ) 療
法より開始したが,1 コース終了後より血小板数は 2 万台を下回り,血小板輸
血をおこなったが,2 コース以降はシクロフォスファミドの免疫抑制効果によ
り血小板数は徐々に増加した.FEC4 コース終了時には血小板数は 10 万台と
なり,以降のドセタキセル,トラスツズマブ療法,および手術までも安全に
施行することができた.手術は乳房温存手術,腋窩廓清を行い,最終効果判
定は pCR であった.【結語】ITP を合併した HER2 陽性乳癌に対して,安全に
術前化学療法,手術を施行しえた 1 例を経験した.ITP 合併乳癌に対する術前
化学療法の報告は検索しえた限りでは認めなかったが,シクロフォスファミ
ドによる血小板増加作用も期待できるため,同疾患に対する新たな治療法と
して提案する.
462
ポスター討議
DP-2-117-05
DP-2-118-01
1
JA 愛知厚生連 豊田厚生病院 外科
乳腺 IgG4 関連疾患の 1 例
乳房内リンパ節がセンチネルリンパ節であった 1 例
市立池田病院 外科、2 市立池田病院 病理
北田 昌之 1、安座間 隆 1、大橋 寛嗣 2
症例は 51 歳女性で、右乳房のしこりを自覚して当院を受診した。既往歴と家
族歴に特記すべきものはなかった。5 本 / 日× 5 年程度の喫煙歴があり、1 回の
出産歴がある。マンモグラフィーでは distortion と石灰化を伴って高濃度と
なっていた。超音波検査では右 CD 領域に halo と前方境界線の断裂を伴う
57.8 × 21.9 × 29.2 mm 大の不整な低エコー像を指摘し、エラストスコア 4
であった。生検を行い、浸潤性乳管癌、核 Grade 1、ER (Allred 8=5+3)、
PgR (Allred 8=5+3)、HER2 (1+)、Ki67LI 10% と診断された。CT 検査で
主病変は CD 領域 24 mm 大の濃染腫瘤から乳腺全体に及んで進展があると思
われ、腋窩リンパ節腫大や明らかな遠隔転移巣は見られなかった。T4bN0M0
cStage IIIB と診断し術前化学療法として EC と DTX 療法をそれぞれ 4 コース
実施した。化学療法後の超音波検査では病変が 3 つの島状に最大径 10.4 mm
で分かれており、CT 検査では濃染域が 18 mm 大に縮小し、RECIST に準拠
すると PR と判定された。乳房切除・センチネルリンパ節生検・広背筋皮弁に
よる一期再建を計画した。RI 法として手術 16 時間前にフチン酸テクネチウム
37 Mbq を乳輪 C 領域へ皮内注射し、術直前のインジゴカルミン 8 mg による
色素法も併用した。術当日のリンフォシンチグラフィーでは腋窩に集積を認
めず、思いがけない内側乳房に集積が見られた。ガンマカウンターでも腋窩
に反応はなく、色素法を頼りに検索したが、腋窩にはセンチネルリンパ節を
同定できなかった。B 領域の辺縁付近にガンマカウンターで反応があり、この
部分で着色した組織を採取した。迅速病理診断で腫瘍組織を含まないリンパ
節と診断され、センチネル陰性として乳房切除・再建を行った。病理組織学
的には、scirrhous carcinoma、90 mm、f+、ly0、v0 で化学療法の治療効
果は Grade 2a であった。術後 34 病日から内分泌療法としてエキセメスタン
内服を開始している。まれなケースであるが、内側の乳房内リンパ節がセン
チネルリンパ節になりうることを認識してコンタミネーションなどと誤認す
ることなく、確実に生検を行うことが必要である。
DP-2-118-02
DP-2-118-03
1
1
乳腺 lipid-rich carcinoma の1例
乳腺炎症性偽腫瘍の 1 例
公立学校共済組合 関東中央病院 乳腺外科、
2
公立学校共済組合 関東中央病院 放射線科、
3
公立学校共済組合 関東中央病院 臨床病理科
1
1
1
3
2
佐川 雅子 、館花 明彦 、菊山 みずほ 、國又 肇 、岡 輝明
東大阪市立総合病院 乳腺外科、2 東大阪市立総合病院 外科、
東大阪市立総合病院 放射線科、4 東大阪市立総合病院 臨床病理科
古妻 康之 1、富永 修盛 1、松本 謙一 2、古市 欣也 3、岡田 博司 3、
山内 周 4、千原 剛 4
3
【はじめに】乳腺 Lipid-rich carcinoma の1例を経験した。【症例】55 歳、女性。
【主訴】左乳房腫瘤。
【既往歴】高血圧で内服治療中。
【家族歴】特記事項なし。
【現
病歴】例年の乳癌検診では異常を指摘されず。2010 年の乳癌検診で左乳房異
常を指摘。近医にて乳癌疑いの診断にて針生検施行され、浸潤性乳管癌(硬癌)
の診断となり、精査・加療目的に当院を紹介受診となった。
【現症】左 CD 領域
に直径 2 cmの腫瘤を触知。表在リンパ節腫大はなく、乳頭異常分泌はなかっ
た。【各種画像検査】T1, N0, M0、StageI の乳癌と診断。【手術治療】円状部
分切除およびセンチネルリンパ節生検を施行。【病理所見】腫瘍部は、索状・
小胞巣状を呈して浸潤性に増殖する硬癌成分と、大小不同の類円形核を持ち、
淡い好酸性の明るい胞体を有する細胞質空胞の目立つ lipid-rich carcinoma 成分から成っていた。ER(+)、PgR(+)、HER2(1+)、Mib1 12%。核異型度 1。
切除断端は陰性。【術後経過】残存乳房に計 50Gy の放射線治療を終了し、現
在はアナストロゾール内服治療中で転移再発所見は認めていない。
【終わりに】
乳腺 Lipid-rich carcinoma は特徴的な組織所見を呈する比較的まれな疾患で、
文献的考察を加えて報告する。
463
症例は 45 歳女性。主訴は検診要精査。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。
職域検診 MMG で右 M-O に FAD、US で右 E 領域に腫瘤陰影を指摘され当科受
診。昨年の職域検診では左乳腺に低エコー域を指摘されたが精密検査受診せ
ず。その際右乳腺の腫瘤は指摘されていなかった。視触診にて右 E 領域に
3cm の硬結を触知、圧痛、皮膚所見は認めなかった。MMG では両側カテゴリー
1。US では右 EA に 30mm の嚢胞内増殖性病変を認めた。穿刺吸引細胞診で
は異型細胞を認めたが、少数のため判定保留。造影 MRI では同部位に脂肪を
含む腫瘤を認め、内部に造影効果を呈さないが、周囲に不正形の wash out パ
ターンの早期濃染を認め、悪性の可能性が示唆された。前回指摘されていな
い病変であることも合わせて組織診が必要と判断された。嚢胞内増殖性病変
であることや、患者本人の希望もあり摘出生検を施行した。生検は傍乳輪切
開にてアプローチし、マージンをつけて施行した。最終病理診断では乳腺組
織より深部の脂肪組織内に嚢胞性病変が存在。嚢胞内腔には壊死した脂肪組
織が存在、周囲を線維性結合組織が取り囲み、炎症細胞浸潤を認め炎症性偽
腫瘍と診断された。なお、患者に豊胸術、外傷の既往はなかった。乳腺にお
ける炎症性偽腫瘍はまれな疾患であり、成因は異物反応や外傷による脂肪壊
死が多いとされている。乳腺診療上注意を要する疾患であり、今回若干の文
献的考察を加えて報告する。
一般セッション(ポスター討議)
【はじめに】IgG4 関連疾患(IgG4-related disease)は、自己免疫性膵炎での
高 IgG4 血症の報告を契機としてわが国より発信された新しい疾患概念であ
る。自己免疫異常や血中 IgG4 高値に加え、全身臓器に著しい IgG4 形質細胞
浸潤、線維化、閉塞性静脈炎などを認める特異な疾患群である。病因は不明
であり、診断法や治療法も未だ確立されていない。2011 年には、本邦より包
括診断基準が提唱された。国際的にも IgG4-related disease の名称が認めら
れている。新しい疾患概念であるため乳腺での報告はまだわずかである。【症
例】61 歳、女性【主訴】右乳房腫瘤【既往歴】【家族歴】特記すべきことなし【現
病歴】2 週間前に右乳房上外側のしこりに気付く。【マンモグラフィ】右 C 領域
にカテゴリー 3 の腫瘤陰影を認め、リンパ節腫脹も認める。【乳腺超音波検査】
右 C 領域に 22.8 × 17.7 × 13.2mm の境界明瞭辺縁やや粗造低エコー腫瘤を
認める。また右腋窩に 15mm の高エコーを伴うリンパ節腫大を認める。【細
胞診】上皮成分は見られず、リンパ球が標本一面に出現、悪性所見なし。【針
生検】Pseudolymphoma 疑い。上皮成分は含まず、線維性間質を背景に小型
の lymphoid cell の密な集簇をみる。T-cell, B-cell 混在、κ , λに偏り無く、明
らかな monoclonal な増殖とは形態学的には認識困難である。Low grade
lymphoma の可能性は否定できない。【MRI】最大 22mm 大の境界明瞭な腫
瘤影が認められる。造影は均一。腋窩にはリンパ節腫大が見られる。画像所
見 は リ ン パ 腫 で 矛 盾 し な い。【 経 過 】2014.7.17 摘 出 術 施 行【 病 理 】IgG4related disease。脂肪織内に少量の乳腺小葉構造のみられる組織を背景に、
境界明瞭な 18mm の充実性腫瘤を認める。腫瘤は、リンパ濾胞を伴うリンパ
球の集簇、濾胞間には線維化とリンパ球及び形質細胞浸潤がみられる。形質
細胞は IgG4/IgG 比が 80% 程度に認められ、IgG4 関連疾患と診断する。リン
パ節 Level I、15mm と 8mm の 2 個は、リンパ節の基本構造は保たれ、腫瘍
との認識はできない。【考察】診断においては病理組織学的基準が重要である
と思われる。著名なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化に加え、IgG4 陽性形
質細胞が 40% 以上かつ 10 以上 /HPF とされている。血液学的所見が無いため
包括診断基準により本症例は準確診群にあたる。乳腺においても本疾患があ
るという認識が重要で、確定診断されれば不必要な手術は避けるべきである。
青山 広希、久留宮 康浩、丹羽 多恵、世古口 英、小林 聡、桐山 宗泰、
大岩 孝、金森 明、宮村 径、神野 孝徳、中島 悠、森 万希子
ポスター討議
DP-2-118-04
DP-2-118-05
東海市民病院外科
1
断乳後著明に縮小した巨大な授乳性腺腫の 1 例
乳腺に IgG4 関連硬化性疾患を認めた 1 症例
3
小川 明男、生田 宏次、早田 篤司、服部 正興、安藤 公隆、
千木良 晴ひこ
一般セッション(ポスター討議)
症例 28 歳女。初診時妊娠 25 週の初産婦。家族歴に乳癌なし。2,3 年からあっ
た左乳房腫瘤が妊娠後増大し来院。左乳房 A 及び C 領域にわたる 8cm 大の柔
らかい腫瘤を触知。エコー検査(US) では 8x6cm 径で分葉状であった。内部
に液化部を認めなかった。穿刺吸引細胞診の結果は癌陰性。乳頭状の乳管上
皮と筋上皮、さらに間質細胞を多数認め線維腺腫あるいは葉状腫瘍が疑われ
た。造影検査につき婦人科コンサルト。造影 CT 検査では 10x7x3cm 径で限な
腫瘍であった。マンモグラフィ検査では左乳房に巨大な腫瘤影を認めた。妊
娠 32 週 US で 11x10cm 径と増大傾向にもみえたがソフトな腫瘍で厳密なサ
イズ測定は無理と考えられた。結局、出産を優先することとなった。妊娠 36
週触診で最大 11cm であった。39 週出産後 2 週で来院。触診、US で 8cm 径、
造 影 CT 検 査 で 11x8x5cm で 分 葉 状 に 造 影 さ れ た。 造 影 MRI 検 査 で は
8x8x8cm 径で内部多結節状、不均一に造影され葉状腫瘍疑いであった。この
時点で径の増大傾向がなく経過観察とした。出産 4 か月後授乳中来院。触診上
12cm径と増大、表面凹凸目立つものの、US および単純 CT 検査上 10x7x4cm
で径変わらずであった。半年後状況で切除の可否を決めることとした。出産
10 か月後、断乳 5 か月目来院。触診上腫瘍は 4x2cm 径と著明に縮小しており
US 上も 4x3x1cm 径であった。2 回目の穿刺吸引細胞診の結果も癌陰性であっ
た。臨床経過から授乳性腺腫と診断し摘出術は施行せずとした。【考察】授乳
性腺腫が妊娠授乳期に急速増大する特徴のため自験例のごとく葉状腫瘍、悪
性腫瘍を否定できず本邦報告例 17 例中 16 例で手術がなされている。手術 16
例中、術前臨床診断で授乳性腺腫と診断されている症例はない。1 例のみが針
生検で診断確定され手術未施行である。本症例でも葉状腫瘍を疑いつつも経
過観察、結果として腫瘍縮小により臨床経過から授乳性腺腫と判明した。針
生検診断例でも腫瘍の著明な縮小を認めている。妊娠期乳腺腫瘍の異常増大、
悪性葉状腫瘍いずれもまれな病態でもあり、さらにまれな授乳性腺腫を想定
し経過観察する状況は限られていると思われ、本症例は授乳性腺腫の自然経
過をみる上での貴重な症例であると考えられた。
TG1-1
富山県立中央病院 外科、2 富山県立中央病院 臨床病理科、
富山県立中央病院 放射線診断科
前田 基一 1、寺田 逸夫 1、山本 精一 1、加治 正英 1、清水 康一 1、
内山 明央 2、石澤 伸 2、斉藤 順子 3
IgG4 関連疾患は、病理学的にはリンパ球と IgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤
と線維化を特徴とし、臨床的には高 IgG4 血症などを認め、同時性・異時性に
全身臓器(涙腺・唾液腺(Mikulicz 病)、膵臓(自己免疫性膵炎)、胆管、肝臓、
前立腺、後腹膜腔、リンパ節など)の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原
因不明の疾患である。乳腺にもまれに発生することが報告されている。今回
我々は、乳腺に IgG4 関連疾患が認められ、特異な画像所見を呈した 1 例を経
験したので報告する。【症例】54 歳、女性。1 年前より両側眼瞼腫脹を認め当
院眼科を受診した。MRI 検査にて両側涙腺腫脹、耳下腺腫脹を認め IgG4 関連
疾患(Mikulicz 病)が疑われた。同時に右乳房の腫脹としこりを自覚しており
徐々に大きくなってきたため当科を紹介された。【身体所見】右乳房 AC 領域に
約 50mm の硬結を触知、腋窩リンパ節の腫大はなかった。【画像所見】MMG:
右乳房全体が伸展不良で、広範にわたり FAD と構築の乱れを認めた(カテゴ
リー 4)。US:右 AC 領域を中心に境界不明瞭な低エコー領域と脂肪組織のエ
コーレベル上昇を認めた。後方エコーは軽度減弱し、乳頭から AC 領域の乳管
拡張が疑われた。両側腋窩の円形から楕円形の軽度腫大したリンパ節を複数
個認めた。CT:右乳腺は左より腫大し、内部に低吸収結節を認めた。腋窩、
鼡径、腹腔内リンパ節の腫大、腸間膜の脂肪織濃度の上昇を認めた。MRI:
右 AC 領域に最大で約 60mm 大の境界不明瞭な信号変化を認めた。T1 強調像
で等~軽度低信号、脂肪抑制 T2 強調像では背景乳腺よりも軽度低信号、A 内
側では索状の高信号を呈し、拡散強調像では高信号を示した。ダイナミック
の造影パターンは、Slow-Persistent もしくは Slow-Plateau であり、乳癌を
疑うような早期相での強い濃染は認めなかった。【病理所見】針生検:多数の
リンパ球、形質細胞浸潤が認められた。細胞は小型のリンパ球濾胞を中心に
周囲に形質細胞が取り巻くように認められた。線維化は高度ではなかった。
免疫染色では IgG4 陽性細胞が多数みられた。リンパ節細胞診:Class I【検査
所見】血中 IgG4 値 966mg/dl(基準値 4.8 ~ 105)、IgG4/IgG;37.3%と高
値であった。以上から右乳腺の病変は、涙腺や耳下腺、リンパ節などと一連
の IgG4 関連硬化性疾患によるものと考えられた。【結語】乳腺での IgG4 関連
硬化性疾患の発生は比較的稀ではあるが罹患する可能性のある臓器であるこ
とを念頭に置く必要性がある。
trastuzumab administration, both in vitro and in vivo.
Conclusion In this study, loss of PTEN promotes development of
breast cancer primary resistance to trastuzumab via autophagy
defects.
Key words:
PTEN, autophagy, breast cancer, trastuzumab
Inhibition of autophagy induced by
PTEN loss promotes intrinsic breast cancer resistance
to trastuzumab therapy
1
Department of Breast Cancer, Cancer Center, Guangdong General
Hospital & Guangdong Academy of Medical Sciences、2School of Public
Health and Tropical Medicine, Southern Medical University、3Southern
Medical University
Ning Liao1、Guo-Chun Zhang1、Sheng-Li An2、Xue-Rui Li1、Kun Wang1、
Jian Zu1、Chong-Yang Ren1、Ling-Zhu Wen3、Hai-Tong Lv3
Synopsis
Therapeutically targeting PTEN may provide a novel molecular avenue
to reduce the emergence of trastuzumab resistance.
Purpose This study determined the effects
of the phosphatase and tensin homolog (PTEN) expression level on
autophagic status and on breast cancer de novo resistance to
trastuzumab.
Methods The correlation between PTEN and trastuzumab resistance
from clinical specimens were detected using immunochemistry and
western blot.
Estrogen receptor (ER)-expressing breast cancer cell lines were treated
with shRNA expression vectors directed against PTEN mRNA and
control vectors respectively, effects on autophagy signal transduction
pathways and growth of tumors in an orthotopic nude mouse model
were determined. The orthotopically implanted model of breast cancer
was established using trastuzumab-resistant HER2-expressing breast
cancer cells. The expression of autophagy-related proteins (LC3 I/II,
p62, LAMP and cathepsin B) was determined by western blot analysis.
Cell viability was determined via MTT assay.
Results Down-regulation of PTEN and autophagic proteins LC3-I and
-II was observed in non-resistance human breast cancer samples.
Knockdown of PTEN with shRNA in SKBR-3, a (ER)-expressing breast
cancer cell line, resulted in increased resistance to trastuzumab.
Consistent with the in vitro results, tumor size in the PTEN knockdown
cells could not be effectively suppressed by trastuzumab treatment in
a time-dependent manner. Significant decreases in the levels of
autophagic proteins LC3I/II, LAMP, p62, cathepsin B and PI3K-AktmTOR and signaling pathway protein Akt were found in PTEN
knockdown cells compared to the PTEN normal group af ter
464
ポスター討議
TG1-2
therapeutic treatments which include BKM120 were much more
effective on reducing tumor volume compared with each single-agent
alone in CSCs derived xenografts, as well as in the drug resistant
xenografts(P<0.05).
Antitumor efficacy of the comabination of NVPBKM120 with other therapeutic agents on breast
cancer stem cells
CONCLUSION: Our experiments provide further evidence that the
simultaneous combination of BKM120 and chemotherapeutics or other
targeted cancer therapeutics evidently abolishes BCSC, induces
apoptosis and inhibits tumor growth. These data indicate that
combination treatment including BKM120 may represent an effective
therapy for breast cancer in multiple ways.
Tianjin Medical University Cancer Institute and Hospital
Jin Zhang、Yunhui Hu、Yang Zhou、Jingjing Liu、Sheng Zhang
BACKGROUND: Despite general improvement in the management of
breast cancer, chemical agents resistance significantly inhibited the
t r e a t m e n t e f f i c a c y. O v e r w h e l m i n g e v i d e n c e s s u g g e s t b o t h
tumorigenesis and multidrug resistance (MDR) are closely identified
with the dysregulation of the phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)/Akt
pathway, which enhances cancer stem cells (CSCs) characteristics and
is therapeutically targeted in breast cancer. Combining therapy by
NVP-BKM120 (BKM120, a selective inhibitor of PI3K) and
chemotherapeutics/ other targeted-therapeutics may achieve good
results in breast cancer.
Keywords
NVP-BKM120, PI3K/AKT, cancer stem cell, multidrug resistance
RESULTS: The stem cells do exhibit resistance to common
chemotherapeutics and trastuzumab, while BKM120 could kill stem
cells more efficiently.What is more, the combination treatment of
BKM120 together with chemoreagents, trastuzumab or RAD001
exerted augmented activity against stem cells. In chemo-resistant
breast cancer cell lines, strong synergistic anti-proliferative effect was
also noted when BKM120 combined with chemotherapeutics. As a
selective pan-class I PI3K inhibitor, BKM120 not only suppressed
expressions of all four class I PI3K isoforms and phosphorylation of
Akt, but also decreased NF- κ B expression and several apoptosis
related genes expression. In vivo, several kinds of combined
TG1-3
TG1-4
National Clinical Research Center of Cancer, Tianjin
National Clinical Research Center of Cancer, Tianjin Medical University
YunHui Hu、Jingjing Liu、Sheng Zhang、Jin Zhang
ZhengDong Shi、Jin Zhang
Purpose: Chemoresistance remains one of the most significant
obstacles in breast cancer treatment, and this process often involves
dysregulation of a great number of microRNAs (miRNAs). Some
miRNAs are indicators of drug resistance and confer resistance to
chemotherapeutic drugs, although our understanding of this complex
process is still incomplete.
Methods: We have used a combination of miRNA profiling and realtime PCR in three drug resistant derivatives from MCF-7, Cal51 and
MTMEC cells. Experimental modulation of miR expression has been
obtained by lentiviral transfection. Taxol sensitivity was evaluated by
long-term drug resistant clone formation assays. Apoptosis was
determined by flow cytometry after annexin V staining, by caspase 3/7
and caspase 9 activity assays and the levels of apoptosis related
protein bcl-2 by real-time PCR and western blot.
Results: MiRNA profiling of drug resistant breast cancer cell model,
MD60 indicated that miR-93 was overexpressed in MD60 cell. Ectopic
expressions of miR-93 in MTMEC, MCF-7 and Cal51 all promote
chemoresistance of taxol due to the caspase activities inhibition and
the decrease in apoptosis. In addition, miR-93 overexpression resulted
in up-regulation of Bcl-2 both on mRNA level and protein level in all of
the three drug resistant breast cancer cell models.
Conclusions: MiR-93 is involved in the development of chemoresistance
in breast cancer cells via regulating apoptosis related signaling pathway
and leading to evasion of apoptosis induced by taxol. Targeting miR-93
may thus provide a potential strategy for reversing drug resistance in
breast cancer.
Aberrant expression of the microRNA-200 (miR-200) family has been
linked to the occurrence and development of various types of
malignant tumors, including hepatocellular carcinoma (HCC), colon
cancer and breast cancer. However, little is known about the precise
mechanism by which miR-200 expression is downregulated. The
intricate relationship between DNA methylation and histone
modifications has become a subject of increasing interest. The
expression of miR-200 family members is modified by similar or
complementary epigenetic mechanisms in MCF-7 and MDA-MB-231
breast cancer cells. Chromatin immunoprecipitation assays revealed
that DNA methyltransferase 1 (DNMT1) bound to miR-200b /a
promoter regions, indicating an interaction between DNMT1 and the
miR-200b/a promoter. Furthermore, Co-Immunoprecipitation (Co-IP)
detection showed that DNMT1, together with the PcG protein Enhancer
of Zeste homolog 2 (EZH2), a histone methyltransferase, contributed
to the transcriptional repression of microRNA-200 family members.
Knockdown of EZH2 not only impacted H3K27 trimethylation but also
reduced DNMT1 presence on the miR-200b /a promoter. EZH2
appeared to be essential for DNMT1 recruitment to the promoter
region. Silencing EZH2 and DNMT1 using drugs or RNA interference
dramatically reduced the levels of miR-200b/a expression. Collectively,
these results indicated that EZH2 and DNMT1-mediated epigenetic
silencing contributed to the progression of breast cancer and therefore
represents a novel therapeutic target for malignant tumors.
miR-93 promotes chemoresistance of taxol via
regulating apoptosis-related signaling pathway in
breast cancer cells
DNMT1 and EZH2 mediated methylation silences the
microRNA-200b/a gene and promotes breast cancer
progression
Key words
miR-93, breast cancer, taxol, chemoresistance, apoptosis
465
一般セッション(ポスター討議)
METHODS: In vitro, ESA+CD44+CD24-/low or ALDH1 cells were
sorted as CSCs using flow cytometry and the inhibitory effects of the
drugs were evaluated by MTT assays. The drug effects on CSC
population and characteristics were also investigated through
mammosphere formation assay and soft agar colony formation assay.
Western blot analysis and immunofluorescence staining were used to
observe the related protein expression. The activity of BKM120
individually and synergistically with doxorubicin, docetaxel,
trastuzumab or RAD001 on stem cells or chemoresistant cells was
evaluated both in vitro and in vivo.
ポスター討議
TG2-1
Conclusion
Relative SUV changes between pre-NAC and post-NAC [18F]-FDG
PET scanning is able to predict pCR in luminal B (HER2-) subtype
breast cancer,
as well as clearance of ALN metastasis in patients with initially positive
ALN.
18
The predictive value of [ F]-FDG PET in neoadjuvant
chemotherapy for breast cancer
1
Department of Breast Cancer, Cancer Centre, Guangdong General
Hospital、2Southern Medical University
Lingzhu Wen1、Guochun Zhang1、Shengli An2、Chongyang Ren1、
Haitong Lv1、Ning Liao1
一般セッション(ポスター討議)
Purpose
This study aimed to assess the value of [18F]-FDG PET in predicting
pathological complete response (pCR) of breast cancer patients who
underwent neoajuvant chemotherapy (NAC).
Patients and Methods
Breast cancer patients diagnosed by core needle biopsy, who
underwent NAC subsequently, with [18F]-FDG PET scanning both
before starting after the completing of NAC, were retrospectively
enrolled. Definitive surgery was performed for all patients with pCR
status evaluated. Relative changes in maximum standardized uptake
value ( Δ SUVmax%) of breast tumor and axillary lymph node (ALN, if
any) were calculated. Receiver operating characteristic (ROC) curves
were used to assess the pCR predicting ability of Δ SUVmax%.
Results
In total, 87 patients were enrolled with the mean age of 46 years. pCR
was noted in 30 (34.5%) patients by postoperative pathological
examination. Thirty-six (41.4%)patients was categorized as CR by PET
scanning before definitive surgery. The area under the ROC curve
(AUC) of Δ SUVmax% were 0.802 (95%CI 0.680-0.893, P<0.0001), with
the sensitivity of 61.90%, specificity of 87.50%.
For the Luminal B(HER2-)subtype, the AUC was 0.907(P = 0.037,
95% CI:0.750-1.000). We further found that, in the 41
patients diagnosed to have positive axillary lymph node (ALN)
metastasis by pre-therapy
PET/CT scanning, Δ SUVmax% also did very well in
predicting the clearance of ALN metastasis, which AUC was
0.782(P=0.0001, 95% CI 0.625-0.895) with the
sensitivity of 83.33%(95% CI 51.6 - 97.9) and the specificity of
68.97%(95% CI 49.2 – 84.7). However, the predicting value of SUV
changes was insignificant in other subtypes and in those with initially
negative
ALN.
TG2-2
TG2-3
Tianjin Medical University Cancer Institute and Hospital, National
Clinical Research Center of Cancer
Department of Anesthesiology, Taipei Medical University Hospital,
Taipei
Yan Liu、ZHANG Xiaobei、YU Feng、LIU Jingjing、ZHANG Sheng、
HAO Xiaomeng、ZHANG Jin
Chien-Chang Liao、Ta-Liang Chen
The Prognostic significance of Ki-67 expression
before and after neoadjuvant chemotherapy in
different biological breast cancer phenotypes
Adverse outcomes after non-breast surgery
in patients with breast cancer: a nationwide cohort
study
Background: Limited information is available on the association
between a medical history of breast cancer and postoperative
outcomes. This study investigated the outcomes following non-breast
surgery in patients with previous breast cancer.
Methods: Using Taiwan’ s National Health Insurance Research
Database, a nationwide cohort study was conducted of patients who
underwent non-breast surgery between 2004 and 2012 with a medical
history of breast cancer in the 24-month period before operation.
Patients who had non-breast surgery without previous breast cancer
were selected as controls by frequency-matched method with age.
Thirty-day postoperative complications and in-hospital mortality were
compared between the two groups with calculating associated adjusted
odds ratios and 95% confidence intervals.
Results: Patients with breast cancer had higher risks of pneumonia
(OR 1.31, 95% CI 1.11-1.54), septicemia (OR 1.28, 95% CI 1.171.41), and mortality (OR 2.23, 95% CI 1.77-2.82) after non-breast
surgery compared with people without breast cancer. The association
between previous breast cancer and postoperative mortality was
significant in patients aged 20-39 years (OR 2.87, 95% CI 1.19-6.96),
40-49 years (OR 2.78, 95% CI 1.69-4.57), 50-59 years (OR 2.72,
95% CI 1.74-4.27), and ≥ 60 years (OR 1.56, 95% CI 1.08-2.27).
Conclusion: Patients with breast cancer had higher complications and
mortality after non-breast surgery compared with those without breast
cancer.
Purpose This study was conducted to analyze the Ki-67 expression
before and after neoadjuvant chemotherapy and clinical pathology
characteristics of different biological breast cancer phenotypes at our
center. A correlation study was performed between Ki-67 index change
and the prognosis of different biological breast cancer phenotypes and
prognosis. Methods A regression analysis was performed on 178
patients with invasive breast carcinoma accepted NAC admitted to
Tianjin Medical University Cancer Institute and Hospital of Breast
Surgery from August 2007 to August 2008. These patients were
divided into subtype by hormone receptor status and HER2 status. The
Ki67 index (percentage of Ki67-positive cancer nuclei) were determined
immunohistochemically. The prognostic value of the Ki-67 index for
different biological breast cancer phenotypes disease-free survival
(DFS) was investigated by use of Kaplan-Meier curves and multivariable
Cox regression.Results The overall pathologic CR (pCR) rate, defined
as no invasive residuals in breast and axilla, was 15.2%. The highest
pCR rate of 25.0% was observed in TNBC(36/178), which is 14.3%,
10.3% and 18.2% in luminal A(42/178), Luminal B(78/178)and
HER2 overexpression(22/178)respectively (P = 0.040).The Ki-67
change of pre-NAC and post-NAC have prognostic significance in
Luminal A and TNBC(P=0.01 and P=0.022,respectively). Clinical
stage, the efficacy of NAC,and Ki-67 change between pre- and postNAC are independent prognostic factors in TNBC who have not
achieved pCR. Conclusion The Ki-67 change between pre- and postNAC was an independent prognostic factor in TNBC who have not
achieved pCR for DFS.
Key words Breast neoplasms; Neoadjuvant chemotherapy; Ki-67;
Molecular typing
466
ポスター討議
TG3-1
TG3-2
Effect of Injection Placentrex in patients of carcinoma
breast developing grade IV skin reactions undergoing
radiotherapy- An Institutional Experience.
Post-operative radiotherapy of breast cancer patients
in low-resources setting: Individualized treatment
technique based on social-economic circumstances
and patients' preferences
Department of Radiotherapy, KGMC, Lucknow, India
Department of Radiotherapy, Kidwai Memorial Institute of Oncology,
Bangalore
Ramaiah Vinay Kumar
Background: Breast cancer is second most common cancer
among women in India. Resources to access and complete
radiotherapy are
severely restricted due to poverty, limited number of cancer centres
and gender bias.
Improvement in toxicity profile of advances in radiotherapy planning
and delivery techniques is not without their tolls i.e. increased
treatment cost and waiting time thereby decreasing tumor control
probability and increasing anxiety of patients. Therefore, management
of patients with simple and in-expensive conventional radiotherapy
techniques may be still relevant in resource-constrained settings.
Divyesh Kumar、Sudhir singh
Methods/aim: Demographic and clinical data of five post-mastectomy
breast cancer patients referred for post-operative radiotherapy to
department of radiotherapy, Kidwai Memorial Institute of Oncology,
Bangalore between April 2013 and October 2013 was collected.
Patients were explained about the nature of the illness,
details,techniques, and outcome of each of techniques of radiotherapy.
Detailed account of waiting time was also given to patients for making
informed decision of preferred radiotherapy technique.
Results:
Conventional radiotherapy technique was choosen by four out of five
patients over 3-D CRT due to long waiting time and un-affordability.
Conclusions: Socio-economic status of post-mastectomy patients and
waiting time for radiotherapy are the two major determinants of
radiotherapy techniques in our set-up. Cobalt-60 based conventional
radiotherapy technique may still have role in post-operative
management of breast cancer patients in LMIC.
TG3-3
breast cancers. The SLN identification rates for the intra-tumoral
magnetic injection alone were 40/47 (85%), when combined with blue
dye 46/47 (98%) and for the ‘dual technique’ (radioisotope and blue
dye) 46/47 (98%).
Magnetic Sentinel Node and Occult Lesion Localization
in Breast Cancer: The first 50
patient experience of the MagSNOLL trial.
Trial registration:
ISRCTN: 68689512
MREC No: 13/LO/0636
UKCRN ID: 14979
1
Conclusion
Magnetic lesion localization is a feasible technique; with magnetic SLNB
being feasible using an intra-tumoral injection combined with a periareolar injection of blue dye. Further optimization and validation of this
technique, within a larger trial is required.
King's College London、2Guy's and St Thomas's NHS Foundation Trust
Muneer Ahmed1,2、Michael Douek1,2
Introduction
One-third of breast cancers diagnosed are non-palpable. These breast
cancers require localization-guided surgery and axillary staging using
sentinel lymph node biopsy (SLNB). We present our experience of the
first 50 patients undergoing a novel technique of magnetic-guided
lesion localization and concurrent SLNB, avoiding the need for wireguided localization and radioisotopes.
Materials and Methods
An ultrasound-guided intra-tumoral injection of magnetic tracer was
performed (0.5 mL Sienna+, Endomagnetics Ltd, UK) in a protocoldriven predefined minimum of 10 patients with palpable breast cancer
to assess the feasibility of the magnetic tracer to safely localize the
tumour at the site of injection and concurrently drain to the lymphatics.
Once successful lesion localization was confirmed (peak magnetometer
counts retained at the centre of the tumour), the technique was
consequently undertaken in patients with non-palpable breast cancers
awaiting wide local excision and SLNB. All patients underwent SLNB
with the magnetic and standard ‘dual technique’ (radioisotope and
Patent Blue Dye).
Results
A total of 50 patients were recruited of which 4 were excluded due to
protocol violations. This left 12 patients (1 bilateral) with palpable and
34 patients with non-palpable breast cancer. Peak magnetometer
counts were retained at the tumour centre in all palpable (n=13) and
non-palpable (n=34) breast cancers. Re-excisions (second operations)
for involved margins were performed in 3 patients with non-palpable
467
一般セッション(ポスター討議)
Introduction- Carcinoma breast is leading cause of cancer mortality
and morbidity amongst females worldwide. Radiation therapy forms
an integral part of multimodality treatment approach used in these
patients. Skin toxicities are an unwanted side effects of radiation
therapy.
Aim-To study the effect of Inj. Placentrex on grade IV skin reactions
developing in patients of carcinoma breast undergoing radiotherapy.
Patients and methods-Data of 67 patients of carcinoma breast who
had developed grade IV skin reactions and had received Inj.Placentrex
was collected for analysis.3 doses of Placentrex I/M every alternate
day had been given. Grade of healing after 2 weeks and adverse effect
of the drug, if any was noted. Scale from 0-4 was used for grading skin
healing. Analysis was done using SPSS software version 20.
Results-2 patients who had received only one dose of injection and
were lost to follow up were excluded.43/65 (66%) had developed
grade IV healing while 22/65( 34%) patients had developed grade III
healing after 2 weeks of injection Placentrex. No patient developed any
adverse effect during a follow up period of 2 years. Statistically results
were found to be significant (p <0.005).
Conclusion- Injection Placentrex can be an effective measure in
reducing the severe grade skin toxicities in patients undergoing
radiotherapy.
Since this being a single institutional retrospective analysis, further
prospective studies with large number of patients and involving
different sites may help in strengthening the concept.
ポスター討議
TG3-4
CASE REPORT: NIPPLE MALIGNANT-TYPE
CALCIFICATION
Breast Unit, Out-patient Department, Hung Vuong Hospital
Chi Tran Bao Nguyen
Nipple malignant-type calcification is a rare lesion, and only 2 cases
were reported in medical literature so far. The case in this report was a
48 years old female whose chief complaint was a non-cycle breast
pain, and where nipple malignant-type calcification was incidentally
seen on mammography. The final pathology from wedge excision of
the nipple is a fibrocystic change with benign calcium in connective
tissue. Punch biopsy or wedge excision of the nipple, a procedure
without making deformity, is essential to the diagnosis of nipple
calcification
一般セッション(ポスター討議)
468
一般セッション
抄 録
ポスター掲示
ポスター掲示
GP-1-01-01
GP-1-01-02
乳癌術前化学療法(PST)症例における SPECT/CT を用いたセ
ンチネルリンパ節発現の分析
1
センチネルリンパ節転移陽性例における非センチネルリンパ節
転移陽性となる因子
大和市立病院 外科、2 北里大学病院 外科
1
1
2
1
2
2
帝京大学 医学部 外科学講座、2 帝京大学 医学部 病理学講座
雜賀 三緒 1、池田 正 1、高橋 洋子 1、関 朋子 1、笹島 ゆう子 2
田中 蓉子 、藏並 勝 、西宮 洋史 、藁谷 美奈 、仙石 紀彦 、
谷野 裕一 2、渡邊 昌彦 2
【目的】乳癌術前化学療法(PST)は,原発巣の down staging による乳房温存
率の向上と pCR 症例における予後予測因子の可能性が示唆される.一方,
PST 施行症例に対するセンチネルリンパ節生検(SNB)は,正診率の低下が報
告 さ れ て い る.PST 施 行 に 伴 う セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 (SN) の 局 在 変 化 を
SPECT/CT を用いて検討した.SN の分布(levelI とそれ以外の領域)を非化学
療法群 (nonPST) と比較し検討した 【
. 対象・方法】2013 年 4 月~ 2014 年 7 月
の当院で術前 SPECT/CT 施行した PST 症例は 28 症例,nonPST 症例は 94 症
例.年齢は 29 歳~ 89 歳.方法は 99mTc- フチン酸 74mBq を手術前日に乳輪
周囲に注入 , 約 2 時間後撮影(Symbia-T;SIEMENS)
.SPECT/CT 撮影時 , 二
次元および再構築三次元画像を作成した .【結果】SPECT/CT への SN 描出率
は,PST 症例;71.4%,nonPST 症例;95.7%.PST 症例の描出率の低下を
認 め た. 描 出 さ れ た SN の 局 在 分 布 は,levelI 以 外 の 領 域 は PST 症 例:
17.8%,nonPST 症例;12.7%と明らかな差を認めなかった. SPECT/CT に
描出された SN はすべて同定することができた.【結語】 SPECT/CT による解
剖学的構造に配慮した三次元画像は詳細な SN の立体的分布・個数把握が可能
となり , 的確な SNB が可能である .PST 症例においては化学療法の影響で腋窩
リンパ流の変化が予想されるが,描出率において nonPST 症例と比べ低下を
認めたが,同定率において両者に有意な差はなかった.
【はじめに】センチネルリンパ節 (SLN) に転移を認めなければ腋窩リンパ節郭
清 (Ax) の省略は可能である。SLN 転移陽性例での Ax の必要性については臨
床試験がなされているが、症例ごとの検討が必須である。そこで、当院にお
ける SLN 転移陽性例における非 SLN 転移陽性となった症例について臨床病理
学的背景を検討した。【対象】2013 年 1 月から 2014 年 11 月に当院で 196 例
に SLN 生検を施行した。196 例中で再発および術前化学療法後の症例を除く
175 例のうち、SLN 転移陽性 47 例 (26.9% ) を対象とした。【結果】SLN 生検
は併用法を用い同定率は 100%、偽陰性率は 3.8%であった。SLN 転移陽性
47 例 の う ち、42 例 に Ax を 追 加 し た。 他 の 5 例 は SLN の 永 久 病 理 で
micrometastasis を認め、Ax は追加しなかった。Ax を施行した 42 例中、非
SLN 転移陽性は 19 例 (46.3% ) に認められた。非 SLN 転移陽性 1 個は 9 例、2
個は 4 例、3 個以上は 6 例であった。非 SLN 転移陽性群と陰性群で臨床病理背
景を比較した。非 SLN 転移陽性群では、陰性群に比し MIB-1 index、SLN の
転移率の値が統計的に有意に高かった。SLN に 2 個以上の転移を認めた場合
に非 SLN 転移陽性が多かった。年齢、腫瘍径、術式、脈管侵襲、核グレード、
サブタイプでは差は認められなかった。【まとめ】非 SLN 陽性と MIB-1 index、
SLN の転移率に関連を認めた。転移を予測する因子については、さらに症例
数の蓄積が必要と考える。
一般セッション(ポスター掲示)
GP-1-01-03
GP-1-01-04
1
1
当院におけるセンチネルリンパ節生検への OSNA 法導入の現状
と課題
当科におけるセンチネルリンパ節生検についての検討・RI 法単
独の可能性
NTT 東日本関東病院 外科、2NTT 東日本関東病院 病理診断科
2
長田 梨比人 1、里舘 均 1、初沢 悠人 1、奈良 智之 1、大石 陽子 1、
堀内 啓 2、針原 康 1
当院では 2009 年 6 月より乳癌治療の臨床に OSNA(One Step Nucleic Acid
Amplification)法を導入した。2014 年 12 月末まで 246 例(両側同時症例 3 例
含む)のセンチネルリンパ節生検を伴う乳癌手術を施行した。原則としてヘマ
トキシリン・エオジン染色での迅速組織診による従来法に加えて OSNA 法を
同時施行し、うち 234 例で両者ともに結果を得た。従来法と OSNA 法の一致
率は 94.4% で、195 例 (83.3%) で両者とも陰性、26 例 (11.1%) で両者とも
陽性と判定された。
当院においては従来法と OSNA 法いずれか一方でも陽性を認めた場合、全例
腋窩郭清を施行してきた。両者ともに陽性であった 26 症例は全て永久標本で
センチネルリンパ節転移が確認され、うち 18 例(69.2%)で非センチネルリ
ンパ節にも転移を認めた。従来法のみ陽性の症例は 4 例 ( 全体の 1.7%) であ
り、全て永久標本でセンチネルリンパ節転移が確認され、その 4 例中 2 例
(50.0% ) に非センチネルリンパ節に転移を認めた。OSNA 法のみ陽性の症例
は 9 例 ( 全体の 3.8%) で、永久標本では全症例が転移なしと診断された。ま
たこれらとは別に、両者ともに陰性と診断された 195 症例のうち 7 例 (3.6 %)
で、永久標本でセンチネルリンパ節に転移をみとめた。
従来法が、OSNA 法に比べ術中より迅速に結果報告される傾向であることも
あり、当院の現状では OSNA 法は迅速組織診の補助としての位置付けとなっ
ている。OSNA 法のみ陽性となった症例の腋窩郭清の要否については今後の
検討課題である。導入後 5 年を経て、当院の乳癌診療における OSNA 法の意
義について、後方視的に検討する。
3
日本赤十字社秋田赤十字病院 乳腺外科、
日本赤十字社秋田赤十字病院 消化器外科、
日本赤十字社秋田赤十字病院 病理診断科
稲葉 亨 1、鎌田 収一 1、金 暢々子 1、吉川 雅輝 2、澤田 俊哉 2、
榎本 克彦 3
【背景】センチネルリンパ節生検 ( 以下 SNB) は 2010 年 4 月保険適用となり、
N0 原発乳癌症例に対し日常臨床手技として広く行われている。SNB の実際
はガイドライン上の推奨の通り色素と RI の併用法での実施が一般的であると
考えられるが、色素法では Level I-II 間の深部にセンチネルリンパ節 ( 以下
SLN) が存在する場合の同定率の低下、偽陰性率が高くなる、traser として
用いる色素による有害事象等を考慮する必要がある。また、併用法で行うも、
色素で SLN を同定できない場合も経験する。【目的】当科における SNB の結
果を検討し、色素法の意義について検討した。【対象と方法】対象は平成 22 年
1 月 -26 年 12 月の過去 5 年間に色素と RI の併用で SNB を施行した原発乳癌
(Tis-T2N0M0) 312 例とし、術前化学療法、ホルモン療法実施症例は除外し
て色素、RI による SNB の成績について検討した。色素は院内で調製したパ
テントブルー 2.5-3.0mL を乳輪下に注射、RI は 99 m Tc- フチン酸を 37mBq
を腫瘍近傍に皮内注射し SNB を実施した。同定した SLN と周囲に認めた所
謂非センチネルリンパ節 ( 以下 NSLN) は全て術中迅速診断 (HE 染色及び CK
染色にて転移の有無を判定 ) 及び永久標本で病理学的に検討した。リンパ節
転移は ITC 以上を転移とした。
【結果】SLN 同定率は併用法 100%(312/312)、
色素 96.4%(301/312)、RI 99.5%(311/312) で、RI で同定できなかった
1 例は色素のみで同定され、NSLN 3 個を含め転移は認めなかった。NSLN に
転移を認めた 6 例全てで SLN に転移を認め偽陰性例は認めなかった。RI で同
定されず色素のみで同定された SLN を認めたのは 107 例、その SLN に転移
を認めたのは 5.6%(6/107) であった。6 例のうち RI で同定した SLN に転移
を 認 め な か っ た の は 2 例 (1.86%: 2/107) で あ り 対 象 症 例 全 体 で は
0.64%(2/312)、その 2 例は共に NSLN に転移を認めなかった。【考察】SNB
で用いる色素によるアレルギー症状を生じた症例は認めなかったが有害事象
のリスクや調製・保管といった背景を考慮した場合、RI 法単独の SNB を考
慮する余地はあるものと考えた。
470
ポスター掲示
GP-1-01-05
GP-1-01-06
当科の非浸潤性乳管癌におけるセンチネルリンパ節生検の検討
ER 陽性,HER2 陰性乳癌でのセンチネルリンパ節生検省略の可
能性
1
岩手医科大学 医学部 外科学講座、
2
岩手医科大学 医学部 病理診断学講座、3 秋田赤十字病院 外科、
4
函館五稜郭病院 外科、5 県立久慈病院 外科
大船中央病院 乳腺センター
石田 和茂 1、柏葉 匡寛 1、大槻 花恵 4、松井 雄介 5、川岸 涼子 4、
小松 英明 1、稲葉 亨 3、上杉 憲幸 2、石田 和之 2、川崎 朋範 2、菅井 有 2、
若林 剛 1
【目的】近年 ,N0 の乳癌症例では広くセンチネルリンパ節生検(以下 SNB)が実
施され ,SN 陽性例でも腋窩郭清が省略できる可能性も示されている . 当院で
は , これまでセンチネルリンパ節生検も腋窩郭清も実施していない腋窩操作省
略例も多く存在していた . そこで ,Stage1 以上 ,ER 陽性 ,HER-2 陰性の N0 症例
において SNB 施行症例と腋窩操作省略例を比較することで SNB が省略可能か
どうかに関して検討してみた .【方法】1983 年から 2012 年までに当院を受診
した 4682 例のうち N0 で ER 陽性 ,HER2 陰性 N0 の 1081 症例を対象とした.
平均年齢は 54.7 歳,観察中央値は 52.7 カ月であった.対象症例内訳は SN 実
施例が 654 例 , 腋窩操作非実施例は 427 例であった .SN 陽性例には術後 3 門照
射を追加している .SN 実施例 , 腋窩操作不実施例のそれぞれに関して , 生存率 ,
遠隔転移 , 腋窩再発に関して検討を加えてみた 【
. 結果】N0 で ER 陽性 ,HER2 陰
性の条件を満たす症例に関して,検討すると生存率と腋窩再発に関しては有
意差は生じなかった .5 年遠隔転移率に関しては ,SN 陰性が 1.8%,SN 陽性が
7.1%,腋窩操作省略で 6.8%,p=0.01 と有意差を認めた . しかし , この中で
閉経後で補助療法が内分泌療法のみであったものに対象を絞ると , それぞれ 5
年遠隔再発率が ,1.1%,3.6%,3.0% p=0.6 と有意差は生じなかった 【
. 結語】
閉経後症例において ,N0 の Luminal A type の症例においては , 術前検査で
腋窩リンパ節転移が否定できるならば , 放射線照射範囲などを検討した上で ,
センチネルリンパ節生検の操作自体を省略できる可能性があると考えられた .
GP-1-01-07
GP-1-01-08
当院でのセンチネルリンパ節転移陽性例での非センチネルリン
パ節転移陽性へのリスク因子の検討
乳癌センチネル生検,長期成績からみた妥当性の検討
1
静岡県立総合病院 乳腺外科
飯野病院乳腺頭頸部外科、2 石切生喜病院婦人科、3 石切生喜病院病理診断科
森本 健 1、山本 彰 2、若狭 研一 3、虎頭 廉 3
高柳 博行、常泉 道子、中上 和彦
Introduction センチネルリンパ節生検は臨床的に腋窩リンパ節転移を認め
ない乳癌患者の標準治療である。近年 ACOSOG Z0011、IBCSG 23-01 など
の試験により、センチネルリンパ節転移陽性症例での腋窩リンパ節郭清の省
略の可能性が示されている。今回我々は当院での手術症例においてセンチネ
ルリンパ節生検をした患者でセンチネルリンパ節に転移を認めた症例につき、
非 セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 転 移 へ の リ ス ク 因 子 を 検 討 し た。Patients and
Methods 症例は当院にて術前病理検査にて乳癌の診断がつき 2010-2014 年
にセンチネルリンパ節生検を施行した 1319 例(両側乳癌は 2 症例として数え
た)のうち術中迅速病理診断にて転移をみとめた 174 例。術中迅速診断での疑
陽性 1 例、偽陰性 9 例、大きさが 200 μ m で郭清を省略した例を除外した。非
センチネルリンパ節に転移を認めた群と認めなかった群において腫瘍経、リ
ンパ節転移の大きさ、組織学的異形度、ER, HER2, Ki67 などにつき検討し、
Memorial Sloan Kettering Cancer Center の nomogram と も 比 較 し た。
Results 163 例において平均 1.65 個のセンチネルリンパ節として摘出した。
114 例は非センチネルリンパ節に転移を認めず、49 例は非センチネルリンパ
節にも転移を認めた。それぞれの群で腫瘍経:30.2mm vs 28.5mm。ly:
77.2% vs 81.6%。v:57.3 vs 53.1%。Ki67(平均)
:30.7 vs 29.8。Grade
(平均)
:2.11 vs 2.0。ER 陽性:86.3% vs 96.0%。HER2 陽性:16.9% vs
10.2%。であり差を認めなかった。リンパ節転移の大きさは 2mm を超えるも
のと 2mm 以下で分け、2mm を超える割合は 60.1% vs 90.0% と非センチネ
ルでの転移例で高かった 。またノモグラムとの比較で非センチネルリンパ節
転移陽性例は 54.0%、陰性は 54.2% と差を認めなかった。Conclusion 今回
の検討ではセンチネルリンパ節に転移を認めた時の非センチネルリンパ節の転
移予測としてノモグラムは有用でなく、リンパ節の転移の大きさで有意差を認
めた。今後の症例蓄積によりセンチネルリンパ節転移陽性例での腋窩リンパ節
郭清の省略への一助となると考えた。
【目的】乳癌センチネルリンパ節生検 (SNB) では最小限の腋窩侵襲で予後因子
n0 を確認できる。バックアップ郭清により検証されているが,遠隔成績から
の評価は尚十分でない。症例の集積と長期の観察から SNB 後の局所・遠隔制
御状況を評価した。【方法】患側乳房乳輪皮下に色素を注入し腋窩近くで染色
リンパ管を視認追及,到達したリンパ節の染色,蛍光によりセンチネルリン
パ節として摘出した。術中迅速病理検査でマクロ転移が見つかった場合には
腋窩郭清を行うこととし,術後追加検索で見つかった場合にも郭清を勧めた。
Kaplan-Meier 法 に よ り 5 年 累 積 率 を 計 算 し た。【 結 果 】2004.4. よ り
2014.3. 月までに乳癌 308 例(311 側)に SNB を実施した。SNB 後の郭清は
58 側に実施した。観察期間の中央値は 48 ヵ月,再発は 48 例に見られた。腋
窩再発は 8 例に認め,センチネル陰性では 4 例であった。腋窩再発累積状況は
n0 で 3% n+ で 6% であった。乳房内再発はそれぞれ n0 で 3% と n+ で 5%
であった。健存率は n0 で 85% n+ で 67% (p = 0.006) であった。生存率は
n0 で 95% n+ で 88% (p = 0.028) であった。触診で転移なし N- 292 例,
あり N+ 19 例について見ると腋窩再発 N-2%,N+18%(p = 0.001),乳房
内再発 N-4%,N+7%(p = 0.37),健存率 N-84%,N+64%(p = 0.024),
生存率 N-94%,N+87%(p = 0.13) であった。N- と N+ 別の組織学的リンパ
節転移陽性は 16% と 21%,2 個以上転移は 8% と 5% であった。
【まとめ】
SNB の n0 推定は腋窩再発によって見ても妥当であることが判明した。SNB に
よって N 因子で予想できなかった腋窩リンパ節転移状況がわかるが,ミクロ
転移は考慮しなくてよい。センチネル転移は再発・原病死の予測因子であるが,
腋窩乳房再発の予測因子としては N 因子に劣るようである。
471
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】センチネルリンパ節生検(SLNB)は臨床的腋窩リンパ節転移陰性乳癌
の郭清省略を目的として行われ、郭清による神経因性疼痛やリンパ浮腫の合
併症リスク軽減に寄与してきた。ACOSOG Z0011 試験は N0 浸潤癌の SLB 転
移陽性でも郭清省略できる可能性を示唆した一方、実地臨床では理論的に転
移が皆無な DCIS 症例でも微小浸潤の可能性から SLNB を実施してきた。【目
標】術前診断が DCIS 症例の原発巣、SLN の術後病理診断を retrospective に
検討し、SLNB の省略が可能かを検証した。【対象と方法】術前組織診断(コア
ニードル生検、もしくは吸引式生検)で DCIS の診断となり SLNB を施行され
た症例での、HE 染色による病理学的リンパ節転移の有無を検証した。【結果】
2005 年から 2013 年までの術前組織診断 DCIS で SLNB を施行したのは 76
例、うち術後病理診断によって浸潤癌成分が確認されたのは 2 例(2/76;
2.6%)、そのうち 1 例に1個のリンパ節転移を認めた(1/76;1.3%)。転移
陽性症例は、歳閉経前後、腫瘍径 46x15mm、浸潤径 4x3mm、サブタイプ
は Luminal A like(ER+, PgR+, HER2 1+, Ki-67 index 10%)
であった。
【考
察】当科における過去 9 年間の術前診断が DCIS 症例での SLN への転移陽性率
は 1.3% であり、SLNB 省略は妥当と考えられた。このことから、当科の術前
DCIS 診断症例では前向き観察のもと、2014 年 8 月から SLNB を省略する方
針とした。【結語】DCIS における SLNB 省略の可否について、当科の症例を用
いて retrospective に検討した。
山上 良、島 知江、大渕 徹、緒方 晴樹、小野 正人、雨宮 厚、
畑山 純
ポスター掲示
GP-1-01-09
GP-1-01-10
当院におけるセンチネルリンパ節生検陽性例ならびに術前薬物
治療例における腋窩リンパ節診断の検討
当科におけるセンチネルリンパ節同定困難症例の検討
1
2
1
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 乳腺外科、
2
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 外科、
3
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 放射線診断、
4
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 病理診断、
5
社会医療法人厚生会 多治見市民病院 外科、6 恵那市民病院 外科
関根 速子 1、田部井 功 1、風間 高志 1、船水 尚武 1、牛込 琢郎 1、
岡本 友好 1、武山 浩 2、内田 賢 2、森川 利昭 2
竹内 賢 1、坂下 文夫 2、西堀 弘記 3、松永 研吾 4、加藤 浩樹 5、
浅野 雅嘉 6
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】センチネルリンパ節生検(SLNB)は現在、臨床的 N0 症例に対する
腋窩リンパ節転移診断として確立され、専門施設において広く行われている。
最近では SLNB 陽性例に対する腋窩郭清省略の是非や術前薬物療法(PST)後
のセンチネルリンパ節生検が検討されている。今回、当院における SLNB 陽性
例と PST 後の腋窩リンパ節転移診断について検討した。【対象】平成 21 年 4 月
から平成 26 年 11 月までの 5 年 8 カ月間に当科で施行した原発性乳癌手術は
354 例であった。314 例に腋窩リンパ節病理組織診断が行われ、リンパ節転
移陰性は 237 例、陽性は 77 例(24.5%)であった。SLNB は 255 例に施行され、
33 例(12.9%)が転移陽性であった。なお当院では腋窩リンパ節診断に PET/
CT を利用しており、腋窩リンパ節集積陰性(AxLN-)であれば SLNB を行い、
集積陽性(AxLN+)であれば原則的に腋窩郭清を施行している。【結果】センチ
ネルリンパ節転移陽性 33 例に対しては 27 例に腋窩リンパ節郭清を追加した。
腋窩郭清省略の検討では臨床的 N0、T1 または T2、センチネルリンパ節転移
個数が 1 または 2 個、乳房温存手術、術後照射予定、PST なしで選択すると
19 例が当てはまった。その内 6 例(31.6%)は追加郭清リンパ節転移陽性で、
腫瘍サイズが 2cm を越えるものが多かったが、サブタイプや組織型に特徴は
観られなかった。PST は 33 例(術前化学療法は 30 例)に行われた。PST 前の
PET/CT で AxLN+ の 17 例(HER2 陽性が 10 例、HER2 陰性が 7 例)に腋窩リ
ンパ節郭清が施行され、8 例がリンパ節転移陽性(47.1%)であった。HER2
陽性は転移陰性化(8 例)が多く、逆に HER2 陰性では転移残存例(6 例)が多
かった。PST 前の PET/CT で AxLN- 症例に対する SLNB は同意を得て 13 例に
行われた。センチネルリンパ節の同定率は 92.3%でいずれも転移陰性であっ
た。【考察】センチネルリンパ節陽性症例の腋窩郭清省略の試みでは、約 3 分
の 1 の症例で追加郭清リンパ節に転移が観られ、転移リンパ節遺残のリスクが
考えられた。PST 前に腋窩リンパ節転移陰性(N0)であった症例ではセンチネ
ルリンパ節生検でも陰性であったが、HER2 陽性乳癌に限ればより安全に実施
できると考えられた。
【 は じ め に 】 セ ン チ ネ ル リ ン パ 節 生 検(SNB)は、N0 乳 癌 症 例 に お い て
staging および腋窩郭清を省略できる手法として広く施行されている。しかし、
センチネルリンパ節 (SN) が同定されない例も存在しこうした症例では腋窩郭
清が施行されることが多い。これまで、SN 同定困難なリスク因子について高
齢や肥満などの患者背景が報告されているが、当科でも SN 同定困難症例を検
討し文献的考察を加えて報告する。【対象・方法】 2010 年~ 2014 年に、術
前に N0 乳癌と診断し RI 法と色素法を併用して SNB を施行した症例 240 例を
対象として、年齢、BMI(Body Mass Index)、術前 SN リンフォシンチグラフィ
による同定の有無、腫瘍の局在、腫瘍径、組織型、核グレードなどについて
検討した。手術前日に乳房皮下に 99Tc- フチン酸 (50MBq/0.5ml) を投与した
後リンフォシンチグラフィを撮影し、手術開始前に同部位にインジゴカルミ
ン 5ml を投与して SNB を施行した。術中に RI 法、色素法ともに同定できなかっ
た場合、あるいはリンパ節がまったく同定できなかった場合を SN 同定困難例
とした。【結果】年齢は 25 歳~ 89 歳で中央値は 63 歳、BMI は 14.4 ~ 36.0
で中央値は 21.9 であった。平均 SN 摘出数は 2.4 個で、RI 法のみで SN が同定
で き た の は 85.7%、 色 素 法 の み で は 83.1% で あ っ た。SN 同 定 困 難 例 は
6.3%(15 例 ) であり、SN 同定困難と有意に関連があったのは、年 齢 (p =
0.022)、BMI(p = 0.0002)、術前 SN リンフォシンチグラフィによる同定 (p
< 0.001) だった。腫瘍の局在 (p = 0.639)、腫瘍径 (p = 0.339)、組織型 (p
= 0.618)、核グレード (p = 0.435) と SN の同定に関連は認めなかった。【考
察】 SN 同定困難因子として年齢、BMI、術前 SN リンフォシンチグラフィに
よる同定の有無が指摘された。高齢が SN 同定困難の原因となるのか具体的に
は明確になっていないが、加齢に伴う乳房内の脂肪組織の増加がリンパ管流
を減少させると考えられ、同様の理由で肥満症例でも SN 同定が困難になるこ
とが推測される。SN 同定困難症例の背景因子として高齢、肥満症例があげら
れるが、SN 同定率を向上させ、SNB により腋窩郭清を省略しうる症例を同定
するうえで、より効率的で安全、確実なる方法を検討していきたい。
GP-1-01-11
GP-1-01-12
乳房温存術+センチネルリンパ節生検後に発生した同側乳癌に
対する再センチネルリンパ節生検の検討
1
東京慈恵会医科大学 第三病院 外科、
東京慈恵会医科大学 呼吸器・乳腺内分泌外科
当院におけるセンチネルリンパ節生検に関する検討
北播磨総合医療センター 外科
九州中央病院 乳腺外科、2 外科
寺本 成一 1、北川 大 2、中村 俊彦 2、椛島 章 2、根東 順子 2、斉藤 元吉 2、
足立 英輔 2、池田 陽一 2
岡 成光
【目的】乳癌手術に際してセンチネルリンパ節生検 (SNB) を行うことで腋窩郭
清 (Ax) を省略することはすでに一般的となった。当院では、術前に CT リン
パ管造影 (CTLG) でセンチネルリンパ節 (SN) の位置をマーキングしておき、
全国乳がん患者登録調査報告によると乳腺部分切除術(Bp)症例が 58.8%、セ
術中に ICG 蛍光法で SN を同定し生検を行うという方針をとっている。当院の
ンチネルリンパ節生検(SN)症例が 59.2%となっており、Bp + SN が乳癌手
SNB 戦略の妥当性について後方視的に検討する。
術症例の標準術式と考えられる。SN は 2010 年に保険収載されたが実地臨床
では以前より施行されており経過観察中に同側乳癌が発症する可能性はある。 【対象と方法】2009 年 10 月以降 2014 年 12 月までに上記方針で SNB を行った
乳癌症例 58 例、61 乳房・腋窩を対象とした。画像診断およびリンパ節穿刺吸
そこで今回 Bp+SNB 施行後に同側乳癌を認めた 6 例に対して RI +色素法によ
引細胞診にて腋窩リンパ節転移症例を除外し、SNB 候補症例を絞り込んだ。
る再 SN を施行したので報告する。2011 年 4 月より 2014 年 12 月までに当院
CTLG は術前 1 ~ 4 日に腫瘍直上および傍乳輪に造影剤を皮内注しリンパ管走
で施行した乳癌症例は 445 例であり、再 SN 施行した症例は 6 例(0.7%)であっ
行および SN を確認した。術中には同様に腫瘍直上および傍乳輪に ICG とイン
た。平均年齢は第 1 癌手術時 47.2 才 第 2 癌発生までの期間は 5.5 ~ 10 年で
ジゴカルミンの混合液を皮内注し赤外線観察カメラシステム PDE( 浜松ホトニ
あり全例当院にて第 1 癌を手術し経過観察中に同側乳癌を認めた。第 1 癌に関
クス社製 ) を用いて SN を同定し生検を行った。術中迅速診断で SN 転移を認
して全例 RI +色素法で SN を施行し摘出 LN は平均 1.6 個(1 ~ 2 個)であった。
めた場合には Ax を追加し、適応に応じて乳腺部分切除術または乳房切除術を
SN は全例陰性であり腋窩郭清は省略し、全例に放射線療法を施行した。第 2
行った。
癌に関しても RI+ 色素法で SN を施行した。シンチグラフィーにて hot spot
を確認したが同側腋窩に認めたが、同側腋窩以外に対側腋窩、胸骨傍に hot 【 結 果 】男: 女 =1:57、 右: 左: 両 側 =33:22:3、 年 齢 30 ~ 85( 平 均
59.9) 歳、SN 摘出個数は 0 ~ 9( 平均 2.2) 個、SN 同定率は 93.4% であった。
spot を各 1 例ずつ認めた。摘出個数は平均 2.3 個(計 14 個:1 ~ 4 個)であった。
SN を同定できなかった 4 例では CT リンパ管造影でも SN は判然としなかっ
リンパ節には全例転移なく腋窩郭清は省略した。RI +色素が一致した LN は
た。このうち 1 例は Ax を行い、2 例は術後照射症例のため Ax 省略、1 例は
57% RI のみで摘出した LN43% 色素のみで摘出した LN は 0%であった。
DCIS の診断であったため Ax を省略した。術中迅速病理診断で SN 転移陽性と
術式は全例 Bt を施行した。まとめ 今後 Bp+SN 施行後に同側乳癌症例を経
なった 5 例には Ax を追加した。迅速病理診断で SN 転移陰性であり永久標本
験する機会は増加すると考えられ、再 SN 施行する際には色素単独法よりも併
で転移が確認された症例が 4 例あったが全例で 0.2cm 未満の微小転移 1 個だ
用療法が優れているのではないかと考えられた。
けであり、追加郭清は行わなかった。観察期間は 16 ~ 1896( 平均 660) 日で
あった。再発は 2 例に認められ、どちらも SN 転移陰性症例で腋窩再発はなく、
腫瘍の局在は A または B 領域で初再発部位は鎖骨上および縦隔リンパ節で
あった。1 例が術後 1716 日で再発死した。
【まとめ】術前 CTLG と術中 ICG 蛍光法を併用した当院の SNB について検討し
た。SN を同定できない症例は CTLG で予測しうる可能性があると思われた。
当院の SNB 戦略は、満足しうる成績がえられ、有用であると思われた。
472
ポスター掲示
GP-1-01-13
GP-1-01-14
1
敬愛会 中頭病院 乳腺科
当院における OSNA 法によるセンチネルリンパ節生検の検討
cN0 症例の多数リンパ節転移は予測可能か?
国立病院機構九州医療センター 乳腺センター、2 同 病理部
赤司 桃子 1、高橋 龍司 1、名本 路花 1、中川 志乃 1、桃崎 征也 2
宇根底 幹子、野原 有起、座波 久光
【はじめに】近年腋窩リンパ節郭清の適否についてはさまざまな議論があり,
センチネルリンパ節(SN)転移陽性でも郭清省略可能な症例の存在も指摘され
ている.また,乳房全摘後の再建を考慮する場合,リンパ節転移が 4 個以上あ
れば PMRT が推奨されるため,多数のリンパ節転移を術前に予測できれば治
療戦略に有効であると考えられる.
【目的】術前 cN0 でセンチネルリンパ節生検(SNB)を施行し転移を認めた症例
の臨床病理学的因子を検討し,多数のリンパ節転移を術前に予測可能かを考
察する.
【対象・方法】2006 年から 2013 年に当院において術前画像検査(超音波,
MRI,PET/CT)で総合的に cN0 と評価し,SNB を施行した 542 例を対象とし
た.SN 転移陽性で腋窩リンパ節郭清を追加した症例について,年齢,術前超
音波(単発 or 多発,占拠部位,乳頭腫瘍間距離,最大腫瘍径,リンパ節評価),
MRI,PET/CT,組織型,術後腫瘍浸潤径,subtype,脈管浸襲,核異型度等
を検討した.
【結果】対象 542 例中,SN 転移陽性であったのは 60 例であった(11.1%)
.6
例は術後の永久標本で転移が判明し腋窩リンパ節郭清は省略した.郭清を追
加した 54 例中,最終病理で SN 転移のみであった症例が 35 例(64.8%),郭
清リンパ節にも転移を認めた症例は 19 例(35.2%)であった.そのうち 4 個以
上の転移を認めたのは 6 例(11.1%),SNB を施行した症例の 1.1% であった.
この 6 例について臨床病理学的検討を行ったが,いずれも有意な特徴を見出す
ことはできなかった.
【結語】術前 cN0 症例で多数リンパ節転移を有する症例は 1.1% と少なかった.
術前の転移予測は今回の単施設の検討では症例数が少ないこともあり困難で
あったが,今後症例を増やすなどして再度検討していきたい.
GP-1-01-15
GP-1-01-16
当院におけるセンチネルリンパ節生検の成績と今後の転移陽性
例への郭清省略へ向けた問題点
当院でのセンチネルリンパ節生検の現状と問題点
1
1
国立病院機構 金沢医療センター 外科、
国立病院機構 金沢医療センター 放射線科、
3
国立病院機構 金沢医療センター 臨床検査科
やまかわ乳腺クリニック、2JCHO 高知西病院外科
山川 卓 1、井関 恒 2
2
古河 浩之 1、蒲田 亮介 1、山口 貴久 1、佐藤 就厚 1、大西 一朗 1、
大山 繁和 1、萱原 正都 1、俵原 真理 2、笠島 里美 3、川島 篤弘 3
【背景】本邦でセンチネルリンパ節生検(以下 SNB)が保険収載となってから約
5 年が経過しているが、ASCOG Z0011 等の結果から、本邦でも SNB 施行症
例で転移陽性例においても一定の条件を満たせば追加の腋窩郭清を行わない
方向へ傾いている。【目的】当院では現在 SNB で転移陽性例は原則腋窩郭清を
行っており、SNB で転移陽性例に対しての腋窩郭清省略が可能かどうかに関
する問題点の有無等を検討する。【対象】SNB が保険収載された 2010 年 4 月
から 2014 年 12 月までに SNB を施行した、術前薬物療法施行例を除く原発性
乳癌 cTis-3N0M0 の 96 例。なお SNB はインドシアニングリーンによる蛍光法
とインジゴカルミンの色素法の併用法を行っている。なお導入当初には SNB
施行時にバックアップ郭清を行っている症例が存在する。【結果】96 例中セン
チネルリンパ節(以下 SN)同定は 91 例で可能であった ( 同定率 94.8% )。摘
出した SN の平均個数は 1.97 個で、91 例中 SN 転移陽性例は 11 例 (12.1%)、
そのうち 8 例は腋窩郭清が行われているが、3 例は追加郭清が行われていない
( 局所麻酔手術、微小転移で追加郭清なし、患者希望 )。腋窩郭清が行われた
8 例は摘出 SN 個数が平均 1.75 個、いずれの症例も SN 転移個数は 1 個、非 SN
に転移を認めなかったのは 2 例 ( いずれも SN 摘出個数 2 個 ) のみで、6 例は非
SN に転移を認めた (SN 摘出個数 1 個 :3 例、2 個 :2 例、3 個 :1 例 )。合計の転
移個数は平均 2.5 個 (1-6) であった。
【まとめ】当院での少数例の検討であるが、
SN 転移陽性例は非 SN 転移例が多く存在し、転移陽性例は腋窩郭清を行うこ
とを前提に手術を行っていることも関連しているかもしれないがいずれの症
例も SN 転移個数が 1 個であり転移存在時の検索不足のおそれがある。特に
SN 摘出個数 1 個の転移陽性例はいずれも非 SN 転移を認めた。非 SN に転移を
認めてもその後の薬物療法や放射線治療で制御できる症例も存在するとは思
われるが、一部に多数のリンパ節転移症例も存在しており、現時点での郭清
省略には注意を要すと考えられた。
【目的】当院における色素法単独でのセンチネルリンパ節(SN)生検の現状を報
告するとともに問題点を検討した。【対象と方法】対象は 2004 年 4 月~ 2014
年 10 月、色素法による SN 生検を施行した 928 例。使用色素はインジゴカル
ミン、乳輪皮内に 2ml 注入、乳房マッサージはなく、注入 1 分後に SN 生検を
行った。SN 転移の有無は迅速組織診、永久標本(HE 染色)の各々、2 片、計 4
切片で行った。【結果】年齢:57.3 ± 12.8 歳(22 ~ 91 歳)、平均腫瘤径:1.72
± 1.55cm、組織型は非浸潤性乳管癌 136 例、浸潤性乳管癌 688 例、特殊型
104 例。SN 同定率:98.7%(916/928)、平均個数:1.49 ± 1.00 個(1 ~ 11
個)、全体のリンパ節転移陽性率:20.6%(191/928)、SN 同定例でのリンパ
節 転 移 陽 性 率:20.6%(189/916)、SN 転 移 陽 性 率( 迅 速 組 織 診 ):19.9%
(182/916)、SN 単独転移率:57.1%(108/189)、偽陰性率(迅速組織診)
:4.8%
(9/189)。術後に判明した微小転移 7 例は、照射を含む補助療法を行い、追加
郭清は行っていない。合併症はなく、腋窩リンパ節への再発は 1 例のみ。【ま
とめ・結語】色素法単独でも習熟すれば併用法とほぼ同等の成績。色素アレル
ギー、腋窩外の SN の存在等が課題となるが、臨床的にはほぼ問題はないと考
えられた。
473
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】センチネルリンパ節に微小転移を認めた場合の腋窩郭清省略について
検証した IBCSG23-01 や,センチネルリンパ節に転移を認めた場合の腋窩照
射(郭清省略)と腋窩郭清を比較した AMAROS Trial が 2013 年に発表され,日
本の乳癌診療ガイドラインも 2014 年に微小転移の場合の腋窩郭清省略は推奨
グレード B に改訂され,原則腋窩郭清は行わないこととなった。当院では
2012 年 1 月から OSNA 法による術中迅速診断を導入しており,当院における
センチネルリンパ節微小転移に対する腋窩郭清省略の妥当性について検討し
た。【方法】2012 年 1 月から 2014 年 12 月までセンチネルリンパ節を OSNA
法で評価した 253 例を対象とした。OSNA 法では (1+) 以上を陽性とし,セン
チネルリンパ節の陽性率と,腋窩郭清を行った場合の非センチネルリンパ節
の陽性率について検討した。また 2013 年 1 月から 2014 年 12 月までセンチネ
ルリンパ節を OSNA 法で評価した 193 例のうち,腋窩リンパ節郭清を行った
36 例 (18.7%) に対しては CK19 mRNA のコピー数や腫瘍径,ki-67,サブタ
イプとの相関関係についても検討した。【結果】OSNA 法による術中迅速診断
の結果,53 例 (20.9%) にセンチネルリンパ節転移を認めた。腋窩リンパ節郭
清は 48 例 (19.0%) に対して行い,5 例 (2.0%) は郭清を省略した。腋窩郭清
を行った 48 例のうち OSNA 1+(micro 転移 ) は 13 例 (24.5%) であった。そ
のうち非センチネルリンパ節に転移があったのは 1 例 (1.9%) のみであった。
OSNA 2+(macro) 転移は 35 例 (66.0%) であった。そのうち非センチネルリ
ンパ節に転移があったのは 13 例 (24.5%) であった。腫瘍径が大きいものでは
非センチネルリンパ節への転移を認める傾向があった。OSNA 1+(micro 転
移 ) の場合,CK19 mRNA のコピー数と非センチネルリンパ節への転移に有意
な相関関係は認めなかった。また ki-67 やサブタイプとの有意な相関関係も認
めなかった。【考察】当院においてもセンチネルリンパ節微小転移の場合の非
センチネルリンパ節への転移は 1.9% と低値であり,微小転移の場合の腋窩
リンパ節郭清省略は妥当と思われた。ただし腫瘍径が大きい場合については,
慎重な検討を加える必要があると考える。
ポスター掲示
GP-1-01-17
GP-1-01-18
センチネルリンパ節生検不要論-腋窩下部部分切除術 14 年
1910 例の成績
当院における蛍光法を用いた乳癌センチネルリンパ節生検の検討
滋賀医科大学 外科学講座
乳腺クリニック 児玉外科
三瀬 圭一、児玉 宏、菅 典道、児玉 暖
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】1894 年 Halsted の腋窩組織を合併切除する radical mastectomy が近
代乳癌手術の夜明けとなり、現在も腋窩郭清が脈々と引き継がれている。
1952 年 Urban, 1956 年 Handley の胸骨傍郭清、1969 年 Dahl-Iversen の鎖
骨上郭清追加では、生存率の向上は言及されず、臨床比較試験により 1981 年
Veronesi は胸骨傍郭清が予後改善に寄与しないことを、1985 年 Fisher は腋
窩郭清の有無は生存率に影響しないことを報告した。当院では、腋窩郭清縮
小を目的として、2006 年臨床比較試験により level1 郭清と level3 郭清で生存
率に差がないことを報告し、さらに腋窩非郭清を目的として、2001 年より
N0 症例全例に腋窩下部部分切除術を施行、2004 年からは N1 症例に対しても
適応し、2012 年 N0 症例ではリンパ節転移の情報を得るための腋窩下部部分
切除で十分であり、腋窩郭清をしないのであれば郭清の可否を決めるための
センチネルリンパ節生検は不要である、と報告した。また 2011 年 Giuliano
の臨床比較試験でセンチネルリンパ節転移陽性で腋窩郭清をしてもしなくて
も生存率に差がないことが明らかとなった。以下、センチネルリンパ節生検
を行わず、腋窩下部部分切除術を施行した自験例の成績を報告する。【臨床成
績】腋窩下部部分切除術は第 2 肋間上腕神経より下部の腋窩組織のみを結紮切
除する方法である。現在までの本術式施行症例は 1910 例 (N0 症例 1681 例 ,
N1 症例 229 例 ) で、リンパ節転移陽性例に対する追加の腋窩郭清や腋窩照射
は 施 行 し な か っ た。 腋 窩 下 部 部 分 切 除 術 後 の 腋 窩 再 発 を N0 症 例 で 10 例
(0.6%)、N1 症 例 で 4 例 (1.7%) に 認 め た。N0 症 例 の 5,10 年 健 存 率 は
92.1%, 85.4%、5,10 年 生 存 率 は 96.1%, 90.0%、N1 症 例 で は 各 健 存 率
70.8%, 59.3%、各生存率 87.3%, 78.8% であり、従来の腋窩郭清症例と比
較して遜色なく良好である。術後 QOL では、術側上肢のリンパ浮腫を軽度一
過性に少数例認めるのみで、リンパ液貯留は著明に減少しドレーン留置が不
要となった。【結語】センチネルリンパ節生検は患者にとっても医療従事者に
とっても大変な負担であり、患者予後に寄与しない腋窩郭清をしなければ、
当然センチネルリンパ節生検は不要になる。米国で未だに腋窩非郭清が広が
らないのは、郭清をしなかった後で再発した場合、患者から訴訟を起こされ
裁判で敗訴することを怖れているものと思われる。欧米の論文がないからと
いって躊躇する必要はなく、患者のためを考えたならば日本から発信すべき
である。
GP-1-01-19
森 毅、北村 美奈、冨田 香、貝田 佐知子、村上 耕一郎、北村 直美、
河合 由紀、太田 裕之、清水 智治、村田 聡、梅田 朋子、久保田 良浩、
谷 眞至
はじめに;蛍光法を用いたセンチネルリンパ節の有用性および簡便性につい
て多くの報告がなされている。当院でも、2006 年より蛍光法によるセンチネ
ルリンパ節生検術を導入し良好な結果を得ている。今回、我々は、当院で施
行した蛍光法によるセンチネルリンパ節生検症例を後方視的に検討した。対
象と方法;2006 年 1 月から 2014 年 11 月の間に cN0 と診断した原発性乳癌で、
蛍光法によるセンチネルリンパ節(SN)生検術を施行した 484 例を対象とし、
患者背景、臨床病理学的因子などを検討した。結果;平均年齢は 57 歳、セン
チネル同定率は 99.8%、摘出された SN は 1 個~8個で平均 2.4 個であった。
SN 転移陽性症例は 37 例(陽性率 7.6%)、そのうち術後に転移が判明した(偽
陰性)症例は 10 例であった。SN 転移陽性症例と陰性症例を比較検討すると、
転移陽性症例では ER 陽性割合が高く、全例にリンパ管侵襲を認めた。また、
リンパ節転移は1例を除きレベル 1 までにとどまり、転移数は 3 個以下であっ
た。偽陰性となった 10 例は術後に追加の腋窩郭清は行わず、補助療法を行っ
たが、これまでの所再発を認めていない。一方 SN 陰性で、腋窩リンパ節に再
発を認めた症例は、これまでの所2例のみであった。結語;RI 法や色素法に
よるセンチネルリンパ節生検に関する諸家の報告と比較し、当院での蛍光法
によるセンチネルリンパ節生検術の成績は満足できるものであり、その有用
性を確認する事ができた。
GP-1-01-20
SPECTCTを用いたセンチネルリンパ節生検腫大したLN
の転移除外診断の試み
当科の乳癌手術症例による腋窩リンパ節転移予測因子の検討
1
神奈川県厚生連 伊勢原協同病院 外科
KKR 札幌医療センター斗南病院外科、2 しきしま乳腺外科クリニック
大場 光信 1、川田 将也 1、大久保 哲之 1、佐藤 理 1、荻野 真理子 1、
森 綾乃 1、岩城 久留美 1、田中 宏典 1、加藤 航司 1、山本 和幸 1、
才川 大介 1、境 剛志 1、鈴木 善法 1、川原田 陽 1、北城 秀司 1、
奥芝 俊一 1、敷島 裕之 2
飯尾 宏、壁島 康郎
臨床的腋窩リンパ節転移陰性乳癌においてセンチネルリンパ節生検で転移陰
性と診断された場合には、腋窩リンパ節郭清の省略は安全かつ有効な治療法
であり、強く勧められる。(ガイドライン推奨グレードA) 乳癌診療ガイド
ラインでは臨床的に明らかな腋窩リンパ節転移陽性乳癌として術前画像診断
所見が典型的なリンパ節転移像である、細胞診で陽性である、術中所見でリ
ンパ節転移を強く疑わせるなどの要素を掲げている。乳房超音波診断ガイド
ラインではリンパ節転移診断において、皮質部分の限局性肥厚、リンパ門の
消失、類円形腫大などの形状の変化とエコーレベルの低下がある時にリンパ
節転移を疑うとしている。日常診療の場において臨床的に明らかな腋窩リン
パ節転移陽性乳癌とは言えないが陰性とも言い切れない症例、CT上はLN
腫大がみられるが超音波では有意所見がとれないため細胞診が行えない症例
へのSLNの適応の判断は悩ましい。リンパ節郭清を行う症例でも腫大した
リンパ節全てが転移というわけでないし、類円形のリンパ節が転移陰性であ
ることも多い。我々はRI法と色素法とを併用してセンチネルリンパ節生検
を行ってきたが、SPECTCTの導入によってシンチグラフィーとCT像
が融合されて対比できるようになった。その結果、CT上の腫大したLNが
必ずしもSnと一致しない症例が多いことがわかった。導入当初は腫大した
LNは摘出して転移陰性を確認した。これをもとにSPECTCTを用いた
センチネルリンパ節生検における腫大したLNの転移に関わる除外診断につ
いて検討し、若干の文献的考察を含めて報告する。
乳癌患者に対する手術は、従来腫瘍の摘出と腋窩リンパ節郭清(以後 Ax)が一
般的であったが、近年では Ax を省略する目的でセンチネルリンパ節生検(以
後 SNLB)を行うのが標準となった。当科では、術前 CT リンパ管造影(以後
CTLG)と色素法を併用して、SNLB を行い、迅速組織診断で転移陽性と診断
されれば Ax を行っている。将来的には SNLB を省略できる可能性があり、我々
は、術前 CT 所見、術後組織診断によるセンチネルリンパ節(以後 SNL)転移の
予測因子を検討した。2010 年 1 月から 2013 年 12 月までに当科で術中 SNLB
を行った症例から DCIS の症例を除く 162 例を対象とした。SNL 転移陰性は
123 例、SNL 転移陽性は 39 例であった。年齢、閉経状況、腫瘍径、SLN の
CT 所見(SLN 長径、SLN 長径短径比、SLN の内部に脂肪濃度を含むか否か)と、
ホルモンレセプター(以後 HR)
、HER2、Ki-67、TNBC か否か、リンパ管侵
襲(以後 ly)、静脈侵襲(以後 v)などの術後の病理学的診断結果を後ろ向きに
検討した。マン・ホイットニーの U 検定、χ 2 乗検定を用いた単変量解析では、
腫瘍径、SLN 長径、SLN の内部に脂肪を含むか否か、ly(p < 0.01)。Ki-67、
v(p < 0.05)で有意差を認めた。単変量解析で有意差を認めた因子を中心に、
ロジスティック回帰分析等を用いた多変量解析を行い、その結果を報告する。
474
ポスター掲示
GP-1-01-21
GP-1-01-22
1
1
当院における術前化学療法前センチネルリンパ節生検の経験
術前化学療法施行例における乳癌センチネルリンパ節生検の意義
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜労災病院 腫瘍内科
原田 郁 1、松原 由佳 1、木村 万里子 1、山本 晋也 1、松田 真一郎 2、
竹井 沙織 2、引野 幸司 2、戸田 陽子 2、有岡 仁 2、千島 隆司 2
星総合病院 外科、2 いがらし内科外科クリニック
片方 直人 1、松嵜 正實 1、野水 整 1、菅家 康之 1、左雨 元樹 1、
佐久間 威之 1、渡辺 文明 1、二瓶 光博 2
GP-1-01-23
乳癌診療ガイドライン 2013 において術前化学療法(PSC)前に cN0 である症
例に対してセンチネルリンパ節生検(SLNB)による郭清省略を行うことは推奨
グレード C1 とされている。今回、PSC 施行例における乳癌 SLNB の意義を後
方視野的に検討した。【対象】2007 年 8 月より cT1-2cN0 乳癌に対して SLNB
を施行した原発乳癌手術 791 例のうち、PSC を施行し手術時 SLNB を行った
37 例 で あ る。PSC 前 の 臨 床 像 は cT1 11 例、cT2 26 例。Subtype 別 で は
Luminal A 7 例、Luminal B 6 例、Luminal-HER2 4 例、HER2-enriched 7 例、
Triple Negative 13 例。PSC の 内 容 は EC 4 例、EC-Taxan 26 例、
Trastuzumab を含む regimen 7 例である。術式は Bp 28 例、Bt 9 例で SLNB
を併用した。SLN の検索は 2008 年 7 月までは蛍光色素法、2008 年 8 月から
は RI +蛍光色素併用法で行った。SLN の評価は 2011 年 7 月以前は迅速病理
診断+スタンプ細胞診、2011 月 8 月から迅速病理診断+ OSNA 法+スタンプ
細胞診、2012 年 7 月からは whole OSNA 法+スタンプ細胞診で行った。なお
OSNA 法は CK-19 発現を針生検標本で確認してから実施している。【結果】原
発巣 pCR は 11 例(29.7%)であった。迅速病理診断 13 例または OSNA 法 24
例で検索された SLNB 施行例 37 例のうち 5 例に SLN 転移陽性と判定され、全
例追加郭清を施行したが、nonSLN に転移を認めたのは1例のみであった。術
後観察期間の中央値は 700 日(22-2523 日)である。そのうち1例に脳転移再
発を認めたが、腋窩再発例はなかった。【結論】PSC 症例に対しても症例を選
んで SLNB による郭清省略を行うことは妥当と考えられる。 GP-1-01-24
乳癌における術前療法前のセンチネルリンパ節生検術
センチネルリンパ節転移術中陰性・術後陽性に対して腋窩リン
パ節郭清省略のまま経過観察した乳癌症例の検討
1
浜松労災病院 乳腺外科、2 浜松労災病院 消化器外科、
3
浜松労災病院 放射線部
1
加賀野井 純一 1、寺谷 直樹 1,2、沢津橋 孝拓 2、内田 千絵 3、井上 立崇 2、
岩井 輝 2、有井 滋樹 2
【緒言】乳癌に於ける Sentinel Node Biopsy(SNB) は一般診療に応用され既に
長い年月が経過している。しかし術前化学療法 (NAC)・ホルモン療法 (H) を
施行するのが一般的になった現在では、初診時に放射線学的診断で cN0 症例
あるいは超音波ガイド下吸引細胞診や針生検で pN0 であった症例にも腋窩リ
ンパ節転移偽陽性のものが存在しているとの報告もある。転移陽性リンパ節
は NAC/H によって化学的修飾を受けてしまい、乳房手術時の一期的 SNB では
正確な Sentinel Node(SN) を同定できておらず術後の腋窩再発を発症するこ
とも考えられる。そこで当施設では cT2 以上で cN0 症例での NAC/H 施行群に
おいて 2012 年より NAC/H 前に SNB を全例施行している。これまでに 20 例
に施行し、種々の検討を行ったので報告する。【対象・方法】2012.02.01 か
ら 2014.10.31 までに、患者の承諾を得て NAC/H 前に SNB を施行した cT2 以
上で cN0 の 20 例について検討した。【結果】(1) 年齢は 32-76 歳 ( 平均 55.4
歳 )。(2) 全例 ICG 蛍光法による SNB を施行した。手術は局所麻酔下で行い、
セデーションを追加している。手術時間は 18-45 分 ( 平均 32 分 )。(3)NAC/H
前の SNB 20 例中 9 例に永久標本でのリンパ節の病理学的検討で SN に転移を
認めた。(4)NAC/H 中に主腫瘍が PD/SD となった 2 例は NAC/H 中止し手術を
施行した。他の症例は 14 例が PR、4 例が CR であった。(5)NAC/H 前に SN 転
移陰性の 11 例は CR1 例と PR10 例であり AxLN を省略した。(6)NAC/H 前に
SN 転移陽性の 9 例は PD/SD2 例と CR3 例と PR4 例であったが AxLN を追加施
行した。【結語】(1) 初診時診断で、cT2 以上で cN0 と診断された症例には乳癌
転移を高い頻度で含む可能性が示唆された。(2) 転移陽性リンパ節を含んだ症
例で NAC/H を施行すると NAC/H による化学的修飾がかかり、SNB により適
切な SN が同定されない危険があると示唆された。(3)NAC/H 前 SNB は手術時
間が短く、また患者への侵襲も少ない。術中迅速病理検査と異なり、術中迅
速凍結法や半切法と異なりリンパ節全体での確実な乳癌リンパ節転移を評価
できる永久標本での病理学的検討となるため、偽陰性症例での腋窩局所再発
のリスクを軽減する可能性や、乳房手術後の再手術のリスクを軽減する可能
性が示唆された。
475
公立学校共済組合 近畿中央病院、2 みやうちクリニック
松本 崇 1、宮内 啓輔 2
センチネルリンパ節 (SLN) 転移陽性患者を対象として腋窩リンパ節郭清術
(ALND) の有用性を検討したランダム化比較試験 ACOSOG Z0011 では観察期
間中央値 6.3 年の時点において ALND 群と ALND 省略群の間に全生存率および
無病生存率ともに有意差を認めなかった。当院において術中迅速病理診断に
て SLN 転移陰性と診断され腋窩リンパ節郭清術を省略した症例のうち、術後
永久標本にて SLN 転移陽性と診断されたにも関わらず追加の ALND は行わず
に経過観察とした症例のうち術後5年以上経過した症例の術後経過をまとめ
たのでここに報告する。検討対象は、2003 年 7 月から 2009 年 12 月までに乳
癌手術の際に SLN 生検を行った 245 例。当時はパテントブルーを用いた色素
法で SLN の同定率は 97.1%であった。術中の迅速診断で SLN 転移陽性と指摘
された症例は 43 例(43/245=17.5%)。術中の迅速診断で転移陰性と診断さ
れた 202 例のうち 18 例(18/202=8.9%)で術後の永久標本にて転移陽性と診
断された。18 例の転移の内訳は、ITC(Isolated tumor cell) が 9 例、2mm 以
下の微小転移が 7 例、3mm 大の転移が 2 例であった。18 例についてはいずれ
も患者との話し合いで追加の腋窩郭清はせずに経過を見ることとなった。こ
れら 18 例のうち 5 年以上術後経過観察しえた症例は 12 例であった。(観察期
間中央値 6.8 年)12 例のうち全身治療を施行した症例は 11 例でその内訳は
ホルモン療法のみが 9 例、ホルモン療法+化学療法が 2 例であった。(残りの
1 例は、ホルモン感受性陰性で、術後化学療法を勧めるも拒否されたため施行
せず)経過中 12 例中 2 例に再発を認めた。再発した 1 例は、術後 SLN に ITC
を指摘された症例で術後 1 年 4 ヶ月目に鎖骨上リンパ節および残存乳房内再発
をきたした。
(術後化学療法を拒否した症例)現在術後 8 年 11 ヶ月経過するが、
薬物療法を続けながら経過観察中である。再発したもう一例は、術後 SLN に
0.3mm の微小転移を指摘された症例で術後 7 年 10 ヶ月目に残存乳房内再発
をきたした。その後残存乳房切除を行い現在初回手術より術後 8 年 3 ヶ月経過
するが、薬物療法を続けながら経過観察中である。いずれの症例も腋窩リン
パ節再発は認めていない。総会においては、上記内容を詳細に報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】当院では 2012 年 4 月から術前化学療法前に局所麻酔下でセンチネルリ
ンパ節生検を施行している。現在までの臨床経験をもとに、術前化学療法前
のセンチネルリンパ節生検施行例における腋窩郭清省略の可能性について考
察する。【対象・方法】2012 年 4 月から 2014 年 3 月に術前化学療法の適応と
なり、さらに臨床的 N0 の診断で化学療法前センチネルリンパ節生検を行った
27 例を対象として後方視的に検討した。なお臨床的 N0 の診断には CT、超音
波検査を用い、腫大リンパ節に対しては穿刺吸引細胞診を施行して、2 人以上
の乳腺外科によって判定した。また、センチネルリンパ節生検は色素法で施
行し、ホルマリン固定した検体を 3mm 毎(リンパ節が 10mm 以下の場合は
0.3mm 毎)に割面を作成して組織学的に転移の有無を評価した。術前化学療
法 は 全 例 で FEC100、DTX75 を 各 4 コ ー ス 施 行 し、HER2 陽 性 症 例 で は
Trastuzumab を追加した。【結果】年齢中央値は 50 歳(40-74)で全例女性で
あった。CT での原発巣の最大径中央値は 25mm(11-56)、腋窩リンパ節の最
大短径中央値は 11mm(7-26)であった。サブタイプの内訳は Luminal タイ
プ 8 例(29.6%)、Luminal-HER2 タ イ プ 8 例(29.6%)、HER2 タ イ プ 4 例
(14.9%)、トリプルネガティブ 7 例(25.9%)であった。摘出センチネルリン
パ節個数の平均値は 3.4 個であった。7 例(25.9%)で転移陽性であったが、2
例は微小転移であった。6 例では転移陽性のセンチネルリンパ節は 1 個のみで
あった。1 例で 2 個のセンチネルリンパ節に転移を認めた。術前化学療法後の
原発巣における病理組織学的効果判定は Grade3 が 15 例(55.6%)、Grade2
が 4 例(14.8%)、Grade1 が 4 例(14.8%)、Grade0 が 1 例(3.7%)であった。
センチネルリンパ節転移陽性の 7 例のうち 5 例で術前化学療法後に腋窩郭清を
施行した。郭清リンパ節個数の中央値は 12 個(5-21)であり、いずれのリン
パ節にも転移を認めなかった。【結語】今回の検討から、術前化学療法前のセ
ンチネルリンパ節生検で転移が 2 個以下であった場合は、術前化学療法後の腋
窩郭清を省略できる可能性が示唆された。
ポスター掲示
GP-1-01-25
GP-1-01-26
1
1
乳癌センチネルリンパ節転移陽性症例への新しい治療戦略
―放射線治療医との連携の重要性―
3
センチネルリンパ節転移陽性症例における非センチネルリンパ
節転移の有無を予測する臨床病理学的因子の検討
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科、2 金沢大学附属病院 乳腺科、
金沢大学附属病院 放射線治療科
2
井口 雅史 1,2、石川 聡子 1,2、田島 秀浩 1、高村 博之 1、二宮 致 1、
北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、太田 哲生 1、川島 博子 2、熊野 智康 3、
大橋 静子 3
一般セッション(ポスター掲示)
Z0011,IBCSG 23-01,AMAROS 試験により乳癌センチネルリンパ節 (SLN) 転
移陽性であっても適切な薬物療法・放射線療法が行われれば、腋窩郭清の省
略が可能であることが示された。この結果を受け、当科では病理診断医・放
射線治療医と相談の上,2014 年 1 月より SLN 転移診断と腋窩治療方針を新し
く変更した。主な変更点は,1)SLN の術中迅速病理診断の中止、2)乳房の
術式を問わず SLN1-2 個転移陽性時の腋窩郭清省略と腋窩照射を導入の 2 点で
ある。腋窩治療方針を変更後 1 年が経過した現在までの状況を後ろ向きに検討
した。【方法】2014 年 1 月から 12 月までに術前 N0 と診断し、乳癌手術時に
SLN 生検を施行した 84 例 (85 乳房 ) を対象とした。【成績】乳房手術は Bp56
例、Bt20 例、NSM or SSM 8 例 ( 両側 1 例 ) であった。摘出 SLN は平均 3.3 個
(1-8 個 ) であった。1 例を除き、83 例 (84 乳房 ) に術中迅速病理検査を行わな
かった。17 例 (20.5%) に術後 SLN に転移を認めた(SLN 転移 1 個:6 例,2 個:
7 例,3 個以上:4 例)。転移が 2 個以内の 13 例 (15.7%) 症例には追加郭清を
行わず,腋窩照射の方針とした。照射方法は、温存手術後は温存乳房照射 ( 高
位照射 ) にて腋窩 (Level 1) を含めるようにし,乳房切除後は腋窩照射 (level
1) のみを行う方針としたが、症例に応じて放射線治療医に判断を委ねた。転
移を 3 個以上認めた 4 例 (4.8%) は再手術(腋窩郭清)を施行し、術後に鎖骨上
部への照射を追加した。再手術を行った 4 例中 1 例は追加郭清リンパ節にも転
移を認めた。乳房一次再建 (NSM or SSM+TE 挿入 ) 症例に SLN 生検を併用し
た 6 例 ( 両側 1 例 ) 中、1 例に SN 転移 (1 個 ) を認めたが、放射線治療医と相談
し、TE を避けるようにして腋窩照射を行った。【結論】SLN 転移陽性例に対す
る治療方針を変更し、以前より SLN 生検にて腋窩郭清を行う症例が約 16% 減
少した。腋窩照射にあたっては、症例に応じて放射線治療医と連携を取るこ
とが重要であった。一方で、SN の摘出個数の増加、照射時の線量分布の不均
一性や乳房再建時の照射などの今後の新たなる課題も見えてきたので報告し
たい。
東京大学 医学部附属病院 乳腺内分泌外科、
東京大学 医学部附属病院 病理部
丹羽 隆善 1、原田 真悠水 1、佐藤 綾花 1、石橋 祐子 1、笹原 麻子 1、
尾辻 和尊 1、内田 惠博 1、山村 純子 1、倉林 理恵 1、分田 貴子 1、
菊池 弥寿子 1、西岡 琴江 1、池村 雅子 2、佐々木 毅 2、多田 敬一郎 1、
瀬戸 泰之 1
【背景】乳癌センチネルリンパ節転移陽性症例で、どのような症例に郭清が省
略しうるか議論になっている。【方法】当院にて 2011 年 6 月から 2014 年 10
月までのセンチネルリンパ節転移陽性にてリンパ節郭清を実施した症例につ
いて、非センチネルリンパ節転移の有無を予測する臨床病理学的因子を検討
した。【結果】センチネルリンパ節生検を実施した症例は 355 症例であり、そ
の中で 91 症例にリンパ節転移を認めた。91 症例中 60 例に腋窩郭清術が実施
されている。その腋窩リンパ節郭清が実施された 60 例中 22 症例に非センチ
ネルリンパ節転移を認めた。主腫瘍の浸潤径、転移陽性センチネルリンパ節
個数、脈管侵襲の有無は非センチネルリンパ節転移と相関があった。一方、
核異型度、Ki67、ホルモンレセプター、HER2 との相関は認めなかった。【結論】
センチネルリンパ節転移陽性症例における非センチネルリンパ節転移の有無
を予測する臨床病理学的因子として TNM 分類に代表される古典的予後因子が
優れていた。
GP-1-01-27
GP-1-01-28
1
聖隷浜松病院 外科
乳がんセンチネルリンパ節生検症例の検討
乳癌既往のある原発性肺癌手術症例の診断過程における問題点
鶴岡市立荘内病院 外科、2 鶴岡市立荘内病院 看護部
鈴木 聡 1、坂本 薫 1、三科 武 1、竹内 梨紗 2
中村 徹、諏訪 香、鈴木 やすよ、吉田 雅行
【目的】当科では 2009 年 4 月から乳がんのセンチネルリンパ節生検(以下、
SNB)を導入した。この研究の目的は、センチネルリンパ節陽性例の腋窩リン
パ節転移状況を明らかにすることで、腋窩リンパ節郭清の意味について考察
することである。【対象・方法】対象は 2009 年 4 月から 2014 年 8 月までに当
科で行われた SNB 施行 116 症例のうち、術中迅速組織診で転移を認めた 30
例(25.9%)を対象とし、センチネルリンパ節転移陽性個数と腋窩リンパ節の
転移状況との関係等を検討した。SNB 方法は、当科では ICG 蛍光法を採用し
ている。【結果】同期間の乳がん手術例 202 例のうち再発例は 7 例で、このう
ち 2 例はセンチネルリンパ節転移陰性症例で同側の腋窩リンパ節再発例で
あった。SNB 摘出リンパ節数は 1 ~ 11 個で中央値は 2.0 個であった。さらに、
以下のような結果が得られた。1)切除検体にリンパ節が含まれない SNB 不
適正症例を 8 例認めたが、このうち 5 例は SNB 導入初年度にみられた。2)
SNB 転移陽性個数と、腋窩郭清の転移個数とを比較すると、SNB で転移 1 個
の場合、腋窩リンパ節転移なしが 21 例中 14 例(73.7%)、1 個のみ転移あり
が 3 例(15.8%)、2 個が 1 例(5.3%)、3 個以上転移有りが 1 例(5.3%)であっ
た。SNB で 2 個転移がある場合は、腋窩転移なしが 7 例中 5 例(71.4%)、2 個
が 1 例(14.3%)、3 個以上転移有りが 1 例(14.3%)であった。一方、SNB で
3 個以上転移有りでは全例に腋窩リンパ節転移を認め、1 個転移有りが 4 例中
2 例(50%)、3個以上転移有りが 2 例(50%)であった。センチネルリンパ節
転移個数が 2 個までの場合、73.1%が腋窩リンパ節に転移はなかった。【考察】
1)ICG 蛍光法は簡便であり、手技にある程度習熟すると信頼性のおける結果
が得られるようになると思われた。2)センチネルリンパ節への転移が 1 個な
いしは 2 個までの場合、流域の腋窩リンパ節への転移率は低かった。したがっ
て、センチネルリンパ節の転移状況に応じて、今後腋窩リンパ節の郭清範囲
や方法を変更しても良い症例が少なからず存在することが示唆された。
【背景】乳癌は女性における最多の悪性腫瘍であり、その治療成績の向上によ
る予後改善に伴い他癌腫の発症頻度も高まることが予想される。また肺癌は
近年増加傾向にあり、女性でも大腸、胃に次いで罹患数が多く乳癌との重複
症例もしばし経験する。更に乳癌治療後の肺野孤立性結節は乳癌由来肺転移
と原発性肺癌の鑑別に難渋することも多い。今回我々は乳癌を合併した肺癌
手術症例の診断過程について調査した。【対象と方法】当院で 2000 年 1 月から
2014 年 12 月までに非小細胞肺癌に対して根治手術を施行した女性 342 例の
うち、乳癌の異時性あるいは同時性重複症例 24 例を対象とした。診療録を後
ろ向きに調査し、先行癌腫、肺癌発見契機とその診断方法について明らかに
した。【結果】先行癌腫は乳癌が 16 例、同時 6 例、肺癌が 2 例と多くは乳癌が
先行して発症していた。乳癌先行例での肺癌発見契機は乳癌術後フォローが 8
例と最多で、他疾患精査及び健診発見によるものがそれぞれ 3 例、有症状での
発見が 2 例であった。気管支鏡や経皮生検によって肺癌の組織診断が術前に得
られたのは 7 例で、17 例では切除検体による組織診断が必要であった。更に
1 例では術中迅速組織診によって転移と判定されたものの術後永久病理で原発
性肺癌と判明し、二期的に肺癌根治術が施行されていた。【結論】乳癌及び肺
癌の重複癌症例では肺癌の組織診断が困難な場合がある。乳癌由来肺転移と
の鑑別のため確実な組織生検が必須であり、適切な治療戦略確立のために手
術生検及び二期的手術も念頭に置いた対応が望ましい。
476
ポスター掲示
GP-1-01-29
GP-1-01-30
佐久総合病院 佐久医療センター 乳腺外科
1
乳癌術後の定期検査 患者の希望で決められた場合の施行率
当院乳癌術後サーベイランスの検討
東京都立多摩総合医療センター 乳腺外科、
東京都立多摩総合医療センター 外科、
3
東京都立多摩総合医療センター 放射線科 2
石毛 広雪、半田 喜美也、工藤 恵、真岸 亜希子、橋本 梨佳子
【はじめに】乳癌術後の定期検査は生存予後を改善しないため、ガイドライン
では MMG 以外は推奨されていない。しかし再発を早く知ることはできるため、
患者の希望が尊重されるべきと思われる。術後検査の意味を説明された上で
どのくらいの頻度で検査が行われたかを調べた。
【対象と方法】2012 年 1 月から術後定期検査による遠隔再発の早期発見は予後
改善につながらないことを、文書を用いて説明してきた。その上で乳房 US、
MMG は受けることを勧め、胸部 Xp、腹部 US、骨シンチグラフィ(以下骨シ
ンチ)、血液検査(腫瘍マーカー含む)は患者が希望した場合に行うこととした。
対象は 2012 年 1 月~ 2013 年 12 月に乳癌にて手術を受けた症例で、
非浸潤癌、
M1 を除いた。乳房 US、胸部 Xp、血液検査は 6 か月に一度、腹部 US、骨シン
チは 1 年に一度、検査を受けることかどうかを確認して検査内容を決めた。
【結果】対象は 202 人であった。検査が施行された割合は、乳房 US 97.9%、
MMG 95.2%、胸部 Xp 68.9%、血液検査 84.8%、腹部 US 45.8%、骨シン
チ 27.5%であった。6 人が再発して、自覚症状または診察でみつかったのが
2 人、定期検査のみでみつかったのが 3 人であった。再発発見につながった検
査は胸部 Xp1 人、乳房 US1 人、血液検査 1 人、腹部 US2 人、骨シンチ 1 人(重
複あり)であった。
【考察】定期検査をするか否かで予後だけでなく、QOL においても差がないと
されている。QOL で差がないことに関しては、再発の発見時期が違うだけで
あるから、全期間でみれば QOL は同じで当然かもしれない。大事なことは再
発が早く見つかることが患者にどのような意味を持つかであり、患者がそれ
を望むかどうかである。再発した 6 人の中の 3 人は自覚症状がなく、検査で再
発が早くみつかることは間違いないと思われる。検査の施行率にかなりのば
らつきがあったのは、検査の時間的、経済的負担等を含めた患者の気持ちを
反映しているものと思われる。胸部 Xp、血液検査の施行率が高いことは、負
担が少ないのであれば検査をして再発の有無を知りたい人が多いと考えられ
る。定期検査に関しては、患者の希望を尊重することと、検査の効率や弊害、
医療経済まで考慮に入れて議論を深めるべきと思われる。
【結語】患者の希望で決められた場合の術後検査は、負担が少ない検査は施行
率が高く、再発の有無を知りたい人が多いと考えられる。検査の意味は予後
改善以外の面からも考える必要があると思われる。
田辺 直人 1、佐々木 律子 2、吉井 淳 1、高見 実 1、荒木 潤子 3、輿石 剛 3、
喜多 みどり 3
GP-1-01-31
GP-1-01-32
三重大学 医学部 附属病院 乳腺外科
1
早期乳癌遠隔転移症例の検討
乳癌術後定期的全身画像検査・腫瘍マーカー測定の意義
澁澤 麻衣、岡南 裕子、木本 真緒、今井 奈央、野呂 綾、由井 朋、
柏倉 由実、中村 卓、伊藤 みのり、木村 弘子、山下 雅子、花村 典子、
小川 朋子
【目的】検診の普及などにより、Stage0・1 の早期乳癌が発見・診断される割
合は増加している。早期乳癌において術後遠隔転移のみを来す症例は稀であ
る。当科における早期乳癌で術後初発に遠隔転移再発を来した症例について、
その臨床病理学的な特徴を明らかにするため検討を行った。【対象と方法】
2003 年 1 月から 2013 年 12 月までの期間で、当科で手術を施行した 1835 例
の原発性乳癌症例のうち、早期乳癌 (Stage0・1) は 1212 例 (66.0%) であった。
そのうち同時性・異時性両側性乳癌、初発に局所再発・領域リンパ節再発を
来した症例を除き、初発に遠隔転移再発を来した 7 例 (0.6%) について臨床病
理学的に検討した。
【結果】平均年齢は 46.0 歳、観察期間中央値は 41.0 ヵ月
(29 ヵ 月 ~ 101 ヵ 月 )、 無 再 発 生 存 期 間 の 平 均 値 は 32.4 ヵ 月 (20 ヵ 月 ~
65 ヵ月 ) であり、再発後の生存期間の平均値は 26.8 ヵ月 (9 か月~ 67 ヵ月 )、
死亡例は 2 例であった。内訳は Stage0 が 1 例、残りの 6 例は Stage1 であった。
再発初発部位について Stage0 の 1 例は頚椎転移単独、Stage1 症例では骨転
移単独が 2 例、肺転移単独が 1 例、肝転移単独が 1 例、縦隔・多発肺転移が 1 例、
縦隔・胸膜・胸骨転移が 1 例であった。遠隔転移診断の前に自覚症状を有した
例は 3 例 (2 例:骨転移による疼痛、1 例:癌性胸膜炎による多量胸水、胸部
不快感 ) であり、他の 4 例は術後経過観察の CT で発見された。転移病巣に対
して生検を行い病理学的診断を得た症例は 5 例であり、そのうちの 1 例に原発
巣との Status の相違 (Her2 陽転化 ) を認めた。再発群 Stage1 症例の再発リス
クと考えられる因子を個々に検討すると、術後補助療法の未施行 2 例 (ER 陰
性・PgR 陰性・Her2 陰性の T1c 症例:1 例、ER 陽性・PgR 陽性・Her2 陰性
の T1c 症例:1 例 )、ER 陰性・PgR 陰性・Her2 陽性 1 例 (T1c 症例 )、転移巣
の Her2 陽転化 1 例を認めた。残りの 2 例は ER 陽性・PgR 陽性・Her2 陰性の
T1c 症例であり明らかな再発リスクを疑う因子は指摘できなかった。【結語】
Stage0 乳癌での遠隔転移再発例は本検討でも 1 例のみであり非常に稀と考え
られる。早期乳癌の遠隔転移は非常に稀ではあるが、術後平均 32.4 か月と比
較的早期で発見されており、早期乳癌といえども遠隔転移は常に念頭におき
術後の経過観察にあたることが重要と考えられた。遠隔転移が疑われる病巣
については可能な限り生検を考慮し、免疫組織学的な評価を行うことで正確
な診断・早期の治療方針再考につながることが期待できると考えられた。
2
長崎みなとメディカルセンター 市民病院 乳腺・内分泌外科、
長崎みなとメディカルセンター 市民病院 薬剤部
南 恵樹 1、尾関 あゆみ 2
【背景】乳癌術後経過観察において、画像診断・腫瘍マーカー測定を加えても、
生存率,無再発生存率に差はない。遠隔転移・再発を早期に発見しても,治
癒(再発治療後長期間無再発)が得られる確率は低い。【目的】当院で施行され
ていた術後全身検査(胸腹骨盤腔CT・腫瘍マーカー測定)の効果、成績を検
討した。また術後全身検査は他臓器悪性腫瘍を発見できるか検討した。【対象
と方法】後方視的観察。対象は 2000 年 1 月から 2009 年 12 月まで、当院で手
術施行後に、定期的全身画像検査、腫瘍マーカー測定による経過観察がなさ
れた StageI ~ III の初発浸潤性乳癌 317 例 。再発率、再発巣の発見契機、再
発部位、再発後生存期間について検討した。また経過観察期間中の異時性重
複癌の発見契機について検討した。【結果】男性:女性= 1:316。年齢中央値
58 歳。 観察期間中央値 91 ヶ月。StageI:II:III = 177:100:40 。再発
症例は 52 例(16.7%)。再発 52 例の検討では、男性:女性= 1:51。年齢中
央値 56 歳。観察期間中央値 87 ヶ月。術式は Bt:Bp = 13:39、SN:Ax
= 6:46。StageI:II:III = 19:14:19。発見契機では、自覚症状・他覚
所見での発見は 19 例(36.5%)、術後全身検査での発見は 33 例(63.5%)
。再
発初発部位では、局所再発は 22 例(42.3%)で、遠隔転移再発は 30 例(57.7%)
であった。Stage 別の発見契機の割合に有意差は認めなかった。自覚症状・
他覚所見発見では、有意に局所再発例が多かった。発見契機別の生存期間は、
自覚症状・他覚所見での発見において有意に予後良好であった。再発初発部
位別の生存期間では、遠隔転移・局所再発とも、どちらの発見契機でも生存
期間に差は認められなかった。無症状で骨シンチでの骨転移は 10 例(骨転移
のみ 8 例)3.2%(2.5%)であった。経過観察期間中の異時性重複癌は 317 例
中 12 例(3.8%)であった。画像・腫瘍マーカーが発見に有用だった症例は 4
例(1.3%)。8 例は検診発見や自覚症状出現後の診断であった。【考察】後方視
的研究で、症例選択や補助療法や再発後治療が一定していないなど、バイア
スがある。しかしながら定期的全身画像検査、腫瘍マーカー測定による長期
経過観察データであり、有用な結果と考える。【結語】現在までの報告と同様、
乳癌術後の全身画像検査、腫瘍マーカー測定は、生存率に影響しなかった。
また全身画像診断、腫瘍マーカー測定で異時性他臓器癌を発見できる頻度は
低い。
477
一般セッション(ポスター掲示)
乳癌術後サーベンランスはガイドラインでマンモグラフィが推奨されており、
当院もマンモグラフィ、触診で行い、全身検索のルーチン検査で行っていない。
しかし、再発発見時に全身状態が悪く再発治療ができない症例も存在してお
り、臨床的に課題が多い。今回、当院での再発症例に対して再発診断契機、
および、ルーチン検査の有効性につき検討を加えた。対象は 2003 年 1 月から
2010 年 12 月に手術を行った原発性乳癌 1779 例の内、再発した 178 例とす
る。平均観察期間 44 ± 33 ヶ月 , 平均無再発生存期間 33 ± 26 であった。平均
年 齢 58 ± 16 才 , stage 0 5 例 , I 44 例 , IIA 53 例 , IIB 35 例 , IIIA 14 例 ,
IIIB 19 例 , IIIC 8 例、ルミナールタイプ 99 例 ルミナール HER2 タイプ 1 例 HER2 タイプ 25 例 トリプルネガテイブ 53 例であった。術前治療 72 例(化
学療法 68 例 ホルモン療法 4 例)術後治療 136 例、化学療法 71 例 ホル
モン療法 86 例で行われていた。術前術後で全身治療を行わなかったのは
stage0 であった 2 例のでみあった。初再発の内訳は、局所再発 101 例(温存
乳房内再発 37 例、領域リンパ節再発 53 例 居壁再発 15 例)、遠隔再発 106
例 ( 骨 43 肺 32 例 肝 26 リンパ節(頸部、縦隔、対側腋窩)20 脳転移 8 胸
膜 3) であった。初再発が局所、遠隔再発両方であったのは 33 例であった。
また、初再発が局所再発であった 68 症例のうち、遠隔再発が出現したのは 16
例であった。術後 1 年以内の再発は 50 例であり、38 例が遠隔再発であった。
1 ~ 2 年 33 例、2 ~ 3 年 35 例、3 ~ 5 年 38 例 5 ~ 10 年 22 例であった。
再発発見契機は自覚症状 78 例 , 触診 21 例 CT 20 例 乳腺 US 17 採血 16
例マンモグラフィ 8 例 骨シンチグラフィ 5 胸部 X-P 2 不明 9 例であった。
また、上記診断契機が他院であった症例が 9 例あった。対象症例を再発発見契
機が MMG、触診、自覚症状、ルーチン検査群と、ルーチン検査群以外を全身
検査群として OS の比較を行ったが、有意に全身検査群が OS が良好であった。
考察当院での再発乳癌の再発時期は 1 年以内が 50 例(28%)と再発乳癌全体
の 28% も存在しており、現状の体制ではルーチン検査での発見は困難であっ
た。また、検査で発見乳癌の経過は良好であったがどの検査有効かまでは評
価はできなかった。また、retrospectine な結果であり、今後、さらなる評価
が必要と思われた。
ポスター掲示
GP-1-01-33
GP-1-01-34
一次二期乳房再建術を受けた患者の術式選択の背景
1
混合病棟における乳がん術後退院指導に関する現状把握と質の
向上に向けた取り組み
東北大学病院 看護部、2 千葉大学大学院看護学研究科、3 聖路加国際病院
岩手県立中央病院
金澤 麻衣子 1、増島 麻里子 2、阿部 恭子 2、山内 英子 3
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】一次二期乳房再建術を受けた患者の術式決定の背景を明らかにする。
【方法】一次二期乳房再建術後 3 ヶ月以内の患者を対象に、一次二期乳房再建
術を選択した背景について半構造化面接を行った。調査内容は、1)術式選択
の決定に関連する認識と行動、2)患者の基礎情報である。得られたデータは
逐語化し、その中から患者が必要としていた支援を表す記述を抽出し、質的
帰納的に分析した。【倫理的配慮】研究者の所属施設および研究施設の倫理審
査委員会の承認を得た。対象者には本研究の趣旨を文書と口頭で説明し、同
意 を 得 て 実 施 し た。【 結 果 】対 象 は、 女 性 12 名、 年 齢 は 平 均 45.6 歳
(range39-52)、病期は Stage0 ‐ IIIc、全員が胸筋温存乳房切除と腋窩リン
パ節郭清またはセンチネルリンパ節郭清と同時にティッシュエキスパンダー
挿入術を受けていた。面接は、術後平均 27.3 日目(range19-45)に実施した。
一次二期乳房再建術を受けた患者は、
「乳がん治療における乳房再建の必然性」
「乳房温存術への懸念」「切除術を勧める医師からの乳房再建の提案」「乳房再
建への迷いを払拭する医師や体験者の後押し」「手術回数が少ない同時再建の
メリット」「人工乳房再建における入院期間や身体的負担の少なさ」「人工物
の有害事象や再発に対する不安」
「乳房再建で回避できる喪失感と周囲の視線」
を背景に一次二期人工乳房再建術を選択していた。特に患者は、乳房再建に
関する情報を医療スタッフからだけでなく、体験者からの経験談、書籍やイ
ンターネットなどから情報を得て吟味し意思決定をしていた。【考察】一次二
期人工乳房再建術を受けた患者は、病巣の切除する範囲と術後のイメージを
深めながら、全摘する必要性と乳房温存術とを比較し、さらには手術を受け
る時期や乳房再建術の選択肢と多様な選択肢を自分の生活や価値観と照らし
合わせ、意思決定する作業をしていた。さらに、その作業をがんに罹患した
苦悩を抱えながら限られた期間で決断していた。乳房再建術を選択する患者
には、乳がんの告知後の心理的支援とともに、治療と再建後の状態を患者自
身が具体的にイメージできるような情報提供と周囲のサポートを獲得できる
ように支援していくことが、後悔しない意思決定につながると考える。
藤田 実樹、古澤 優子
【はじめに】乳がん術後の患者に対する退院指導を行う看護師は様々な要因に
より困難さがあると言われており、特に混合病棟における退院指導を行う看
護師の困難さについても報告されている。そこで、退院指導に関する現状を
把握し、質の向上を図ることを目的とし、取り組みを行った。【方法】病棟看
護師を対象として乳がん術後退院指導に関するアンケート調査を行い退院指
導に関する勉強会を病棟看護師へ実施。勉強会後、再びアンケート調査を実施。
【結果】対象者31名中、勉強会参加者は22名(参加率71%)。乳がん看護
に関心が「ある」が15名、「ややある」が14名であった。退院指導について
不安が「ある」が13名、
「ややある」が14名、
「あまりない」が3名であった。 不安に思う項目について(複数回答可)は、リンパ浮腫予防指導が 19 名、術後
リハビリテーションが16名と多かった。 不安に思う理由については、「知
識が不十分」が6名、
「学習不足」が2名、
「退院指導実施頻度が少ない」が3名、
「具体的な質問に対応出来ない」が4名、「術式による違い」が1名、「合ってい
るか自信がない」が3名、「退院後の治療・生活・不安が分からない」が3名で
あった。 勉強会実施後のアンケートでは、勉強会の内容で参考になったこ
とが「ある」が19名、「ややある」が2名であった。退院指導実施時に取り入
れていることについては、「退院後の連絡先を伝える」「退院後の生活・不安
を聞きながら説明」「創部のケアを指導」「リハビリの継続の必要性を伝える」
「不安を与えないように」が挙げられた。また、「勉強会で分からなかったこと
が改善したが、実際に伝えられるか不安」「知識不足による退院指導に対する
不安」「具体的な質問に対応できない」などの意見が挙げられた。【考察】乳が
ん看護に対する関心が高い一方で、退院指導に不安を抱えている看護師が多
い傾向がみられた。今回の勉強会のみでは退院指導に対する不安は解消でき
ず、十分な質の向上は図れていないと考える。幅広い知識が求められる混合
病棟において、看護師の様々な不安を補い、多岐に渡る患者のニーズに対応
できるよう、パンフレットの再考や効果的な知識が得られる機会の設定など、
質の向上へ向けて更なる検討が必要であると考える。
GP-1-01-35
GP-1-01-36
患者が乳房再建に求めているもの~患者へのアンケート調査よ
り~
乳がん術後患者の創部洗浄確立に向けた支援
独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター
1
八尾市立病院 看護部、2 八尾市立病院 形成外科、
3
八尾市立病院 乳腺外科
土井 美幸
吉野 知子 1、土岐 博之 2、三宅 ヨシカズ 2、森本 卓 3、野村 孝 3
【はじめに】シリコンインプラントによる乳房再建手術への保険適用が始まり、
希望する患者は増加している。当院では、再建を希望する患者は、乳房再建
外来を受診し、その前後で看護師による術式選択支援を行っている。その中で、
乳房再建を行った理由、術式選択をする際にどのようなことを重要視し、再
建乳房に何を求めているのか、乳房再建を受けてよかった点を調査したので
報告する。【対象】2014 年 7 ~ 8 月に乳房再建外来を受診した再建後の患者
34 名に研究の主旨を説明しアンケートを行った。【結果】24 名から回答が得ら
れ、回収率は 71%であった。40 歳代が 13 名、50 歳代が 8 名であった。乳房
再建を行った理由として「温泉・ファッション・趣味のため」9 名、「乳房がな
くなることを受け入れられなかった」「体のバランス、姿勢などが心配だった」
「温存可能と言われたが再発が心配だった」が 6 名であった。「この先の人生を
前向きに考えるための1つの方法として」「パットなどを使うのが面倒だと
思った」などの理由もあった。再建方法を考慮する際に重要視するのは、「見
た目」「安全性」「手術後の瘢痕」で、再建乳房には「左右のバランス」「見た目」
を求めていた。乳房再建を受けて良かった点として「手術した直後から胸にふ
くらみがあるので、喪失感が少なかった」「服を着ている間は、再建した胸で
あることも自分ががんであることも忘れさせてくれる」などの意見があった。
「今は手術してよかったと思うが、ふくらましている間は痛みや違和感があり
不安でつらかった。手術をしなければこんな思いをしなくて済んだのではな
いかと後悔した」との意見もあった。【考察】患者は、乳房再建を行うことで手
術前と同じような生活を取り戻したいという思いが強い。再建乳房には、「形
状」「手術後の瘢痕」など整容性を重要視していた。しかし、実際に手術後の
患者へ再建乳房の満足度や整容性の評価は行っていない。今後、それらにつ
いて客観的に評価を行う必要がある。術前より患者のボディイメージを確認
しながら、具体的なイメージができるような支援も行う必要がある。また、
手術後も様々な症状により不安を抱えている現状も明らかとなった。その中
で、患者は乳がん治療も同時に行っていかなければならない。再建だけでな
く治療に対する不安や副作用など様々な困難が予測される。術後にも継続的
な支援が必要と考える。
【目的】
当院では、乳がん術後の全身シャワーを、術中にドレーンの挿入がない患者
は術後 2 日目から、ドレーンの挿入がある患者は抜去した当日から開始してい
る。しかし、怖くて傷に湯をかけられない、腰から下しか入浴できていない
患者や、退院後も乳房を洗えず、外来受診や再入院時に垢が付着したままの
患者がいた。創感染予防の視点から、術後 48 時間以降に創部洗浄を行うこと
が勧められるが、患者は、創部に水をかけるという体験と同時に、乳房の切
除というボディイメージ変容に直面する。今回、乳がん術後の創部洗浄の実
態と、患者の反応を明らかにし、看護支援を検討した。
【方法】
2014 年 6 月 13 ~ 9 月 30 日に、乳房温存術または乳房切除術を受けた乳がん
女性患者 86 名を対象に、当病棟で創洗浄のセルフケア支援のフローチャート
を作成し、フローチャートに沿って創洗浄のセルフケア支援を行った。創洗
浄の実態と患者の反応は、診療録からデータを収集し、集計した。
【結果】
対象患者は乳房切除術 49 名、乳房温存術 37 名であった。乳房切除術を受け
た患者のうち 30%にあたる 15 名が、傷はまだ見られない、見るのが怖い、と
訴えていた。15 名中 6 名の患者は、創部のガーゼを除去する術後 2 日目に創
部を見ることができていた。また、15 名中 11 名の患者は、ドレーンを抜去す
る術後 4 日目に創洗浄のセルフケアが行え、残りの 4 名も術後 6 日目には創洗
浄のセルフケアが行えていた。乳房温存術を受けた患者の 10% にあたる 4 名
は、まだ怖くて傷を見ることはできない、傷はなんとなく見ないようにして
いる、と訴えていた。4 名中 3 名の患者は術後 3 日目に創部を見ることができ、
4 名全員が術後 4 日目には創洗浄のセルフケアが行えていた。患者は、洗い方
を見せてくれたので自分でも出来た、洗っても大丈夫と言ってくれて安心し
た、と語っていた。対象患者全員が、退院までに創部洗浄を実施し、患者か
らは、ひとりでは自分の胸になかなか触れられなかったと思う、一緒に見て
くれて心強かった、等の意見が聞かれた。
【考察】
乳がん術後に、創部を見ることに戸惑いを感じる患者に対して、術後の乳房
に対する患者の思いを傾聴し、術後初めてのシャワー浴に付き添い、患者と
共に創部を見たり、触れたりすることは、創部洗浄のセルフケア確立につな
がると考える。
478
ポスター掲示
GP-1-01-37
GP-1-02-01
乳がん看護における病棟・外来の連携 -リンパ浮腫予防を中
心として-
若年性乳癌 18 例に関する臨床病理学的検討
1
横浜労災病院 乳腺外科、2 横浜労災病院 腫瘍内科、
横浜労災病院 病理診断科
1
3
米原 佐紀子 1、風 美緒 1、吉本 千鶴 1、中 麻里子 1、野田 諭 2
松原 由佳 1、原田 郁 1、山本 晋也 1、木村 万里子 1、有岡 仁 2、
長谷川 直樹 3、角田 幸雄 3、千島 隆司 1
公立大学法人 大阪市立大学医学部附属病院 看護部、
2
公立大学法人 大阪市立大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
【目的】若年性乳癌 18 例についてその臨床病理学的特徴と予後について検討す
る。【方法】2005 年から 2014 年の間に当院で手術を施行した原発性乳癌症例
872 例のうち、手術施行時に 35 歳以下であった 18 例を対象として、臨床病
理学的特徴と予後について後方視的に検討した。【結果】年齢の中央値は 31.5
歳 (21 ~ 35 歳 )、追跡期間の中央値は 26 ヶ月であった。発見契機は腫瘤自覚
が 9 例、検診での腫瘤指摘が 6 例であった。第 1 度近親者に家族歴を有したの
は 1 例、第 2 度近親者は 2 例であった。病期分類は 0:1 例、1:10 例、2A:2 例、
2B:3 例、3A:1 例、3C:1 例であった。T 分類は Tis:1 例 , T1:10 例 , T2:5 例 ,
T3:1 例 , T4:1 例、 腋 窩 リ ン パ 節 転 移 陽 性 で あ っ た の は 4 例 で あ っ た。
Subtype は Luminal type 12 例、Luminal-HER2 type 2 例、HER2 type 2 例、
Triple negative 2 例であった。組織型は乳頭腺管癌 11 例(うち1例が炎症性
乳癌)、硬癌 3 例、特殊型 2 例(浸潤性微小乳頭癌、粘液癌各1例)、DCIS 1
例であった。手術は乳房部分切除術が 14 例、乳房切除術が 4 例で行われた。
1 例は単純乳房切除術のみで再建を行っていない。術前化学療法は 3 例で施行
しており、術後補助療法は内分泌療法 13 例、化学療法 9 例、放射線照射 14 例
であった。薬物療法開始前に卵巣凍結、受精卵凍結を行ったのはそれぞれ1
例ずつで、2 例は治療終了後に自然妊娠している。再発を認めたのは T2N1M0
(Luminal Type)の1例のみで腋窩郭清と化学療法、放射線照射を施行したも
のの、内分泌療法中の術後 3 年目に肝転移を認めた。再発後 16 ヶ月の時点で
治療継続中である。【考察】若年者は検診受診の機会が少なく、発見契機が腫
瘤自覚である症例が多いとされているが、今回の検討では T1 症例も多く、腫
瘤を自覚したのは 9 例(50%)のみであった。追跡期間の中央値が 26 ヶ月で
あるものの、再発を認めたのは 1 例のみで、早期発見で適切な治療を行えば比
較的予後は良好であると考えられた。また 18 例中 2 例で生殖補助医療を施行
し、2 例で治療終了後に妊娠出産を経験していることから、若年性乳癌では「挙
児希望の有無」が治療法選択の重要な因子であると考えられた。【結語】若年性
乳癌であっても良好な予後が期待できるため、初期治療開始の時点から「乳癌
治療後の QOL」を考慮しておくことが重要であると考えられた。
GP-1-02-02
GP-1-02-03
1
市立奈良病院
当院における若年乳癌患者の検討
45 歳以下の若年性発症原発性乳癌の特徴
慈泉会 相澤病院 外科、2 中山外科内科、3 慈泉会 相澤病院 化学療法科、
4
慈泉会 相澤病院 病理診断科
橋都 透子 1、唐木 芳昭 1、中山 俊 2、中村 将人 3、田内 克典 1、
井出 大志 1、宮本 剛志 1、五味 卓 1、樋口 佳代子 4
近年本邦でも若年乳癌が増加しているが、高齢者と比較すると TPN 症例が多
いことや予後不良といった報告も多い。若年乳癌は社会的損失が大きく、そ
の予後を改善することは重要である一方、長期にわたり補助療法を続けてい
くことによって受ける個人の負担は大きく、その臨床腫瘍学的な特徴を明ら
かにしていくことは重要と思われる。2005 年 1 月より 2014 年 12 月までの
10 年間に当院において手術を行った 773 例の原発性乳癌患者のうち、乳癌の
診断時に 40 歳未満である若年乳癌患者は 40 例(5.1%)であった。これらの若
年乳癌患者を 2005 年から 2009 年の前期、2010 年から 2014 年の後期にわけ、
その臨床腫瘍学的特徴を比較した。対象患者は前期は 16 例(4.73%)、後期は
24 例(5.52%)であった。前期、後期における進行度のうちわけは、それぞれ
Stage0 5 例、4 例、StageI 5 例、9 例、StageII 6 例、10 例、StageIII 0 例、
1 例である。StageII 以上の症例に対し前期では 1 例、後期では 4 例に対し
NAC を施行した。DCIS 症例を除く前期 11 例、後期 20 例の浸潤癌のサブタイ
プ は luminal タ イ プ が 8 例、14 例、TPN は 2 例、6 例、HER2 タ イ プ は 1 例、
0 例であった。TPN の頻度は 18%から 30%に増加傾向であった。受診契機は
それぞれ、検診後要精査が 7 例、4 例、腫瘤の自覚が 7 例、17 例、乳頭異常分
泌 が 2 例、3 例 で あ っ た。 既 婚 率 は 75.0 %、70.8 % で あ っ た。 経 産 率 は
50.0%、58.3%であったが、治療後に妊娠出産を行った症例はどの期間にお
いてもいなかった。前期においては StageII の 2 例が再発により術後 45 ヶ月、
55 ヶ月で死亡しているが、後期ではいずれの症例も再発無く経過している。
若年乳癌患者は少ないながらも増加傾向にあり、個々の症例で社会的背景を
考慮すべき状況が多い。よりよい治療を考えるべく、当院における症例を振
り返り検討を行った。
小山 拡史、今西 清一、松井 千里、谷口 章子、岩田 千里
【はじめに】近年、乳癌患者の 5-10%は遺伝性の素因があるといわれており、
HBOC などの遺伝子カウンセリングも注目されるところである。HBOC の特
徴として、若年発症、両側乳癌、トリプルネガティブなどの特徴が言われて
いる。今回我々は ASCO ガイドラインでも HBOC の危険因子といわれている
45 歳以下の若年性発症原発乳癌の患者特徴について検討したので報告する。
【対象と方法】過去 3 年間に当院で手術を行った原発性乳癌患者 586 名のうち、
45 歳 以 下 発 症 の 患 者 103 例(17.6 %)に つ い て、ER、PgR、HER2 ki67index、組織学的悪性度、リンパ節転移、家族歴、両側性乳癌の既往、卵
巣がんの既往について検討を加えた。【結果】若年発症乳癌患者 103 例のうち、
ER 陽性は 78 例 (75.7%)、HER 陽性は 19 例 (18.4%) で、46 歳以上発症例と
比べ差はなかった。Ki67index の平均値は 28.3%でやや高い傾向にあった。
組織学意的悪性度はグレード3が 65 例(63.1%)に認め、46 歳以上発症例に
比べてやや多い傾向にあった。また組織型は硬癌 29 例(28.2%)充実腺管癌
35 例(34.0 %)乳 頭 腺 管 癌 21 例(20.4 %)粘 液 癌 5 例(4.9 %)、DCIS13 例
(12.6%)で特徴は認めなかった。リンパ節転移は 22 名(21.4%)に認めたが、
特徴的な傾向は認めなかった。乳癌や卵巣癌の家族歴に特徴的なものは認め
なかったが、2 世代をさかのぼる家族歴などについては正確な情報を得られな
いことも多かった。両側性癌は 9 例(8.7%)に認め、やや多い傾向があった。
【結
語】45 歳以下発症の若年性発症乳癌患者は ER 陽性率や HER 2陽性率に特徴
的な所見はなかったが、ki67index や組織学的悪性度が高い傾向にあったが。
また組織型やリンパ節転移の特徴は認めなかった。また両側性乳癌はやや高
い傾向にあったが、最近指摘されている家族性乳癌、卵巣発症は明らかな傾
向を認めなかった。しかしながら 2 世代をさかのぼる家族歴などについては正
確な情報を得られないことも多く、今後は家族歴聴取に対して、初診時以外
の聴取や、カウンセラーの協力による聴取も重要であると考えられた。また
HBOC 遺伝子検索を望まない患者でも若年発症例の術後フォローに対して造
影 MRI の導入などの手法も必要である可能性も考えられる。【利益相反】なし
479
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳がんの治療は多岐に渡っており、外来治療が中心となっている
が、A病院の乳腺外科では入退院時の病棟・外来間で情報交換に用いるツー
ルがなく、情報共有・継続看護が十分に行えていないのが現状であった。乳
がん手術における主な合併症としてリンパ浮腫があげられるが、発症すれば
治癒が困難であるため予防と早期発見が重要とされている。病棟看護師は患
者用パンフレットに沿ってリンパ浮腫の予防に対する指導を行っているが、
外来で個別的な指導は十分に行えていなかった。そこで、病棟と外来で統一
した指導が継続的に行えるよう取り組みを行ったので報告する。【活動内容】
病棟・外来看護師、医師で現状と課題について話し合い、意見を出し合った。
これまで使用していた患者用パンフレットは周手術期に特化したものであっ
たため、手術オリエンテーション用と乳がん治療用の2つに分けて作成した。
リンパ浮腫については、早期発見を目的とし、入院時と術後の外来受診時に
患肢計測を行った。患者が自己管理できるようにパンフレットに数値を記載
するページを作り、医療者は継時的に数値が把握できるように電子カルテへ
入力することとした。また病棟・外来看護師にリンパ浮腫についての学習会
を開催してから、改訂したパンフレットの使用と患肢計測を開始した。
【考察】
これまで患者用パンフレットは病棟看護師が作成していたが、外来看護師・
医師と話し合うことでそれぞれの立場から患者に必要な情報について意見を
出すことができ、パンフレット内容を充実させ、改訂することができたと考
えられる。術前から患肢計測を行うことで、リンパ浮腫の早期発見と予防の
必要性を患者だけでなく看護師にも意識づけさせるきっかけとなり、また病
棟・外来で学習会を開催することで指導内容を統一し、継続した関わりがで
きたと考えられる。【結語】
リンパ浮腫の予防には、術前からの関わりや、
退院後の継続的なフォローが重要であり、それには、病棟・外来間の連携が
欠かせない。今後も外来・病棟連携を深め、患者にとって切れ目のない看護
を提供していく必要がある。
ポスター掲示
GP-1-02-04
GP-1-02-05
1
大崎市民病院 乳腺外科
当院における妊娠・授乳期乳癌 14 例の検討
当院における若年性乳癌患者の臨床像と問題点
帝京大学 医学部 外科学講座、2 帝京大学 医学部 病理学講座
関 朋子 1、雑賀 三緒 1、高橋 洋子 1、池田 正 1、笹島 ゆう子 2
高橋 梢、吉田 龍一、江幡 明子
一般セッション(ポスター掲示)
妊娠・授乳期乳癌は腫瘍径が大きく、病期が進行、リンパ節転移が高頻度、
ホルモン受容体陰性の割合が高いなどの特徴がありそのため予後不良とされ
る。近年晩婚化に伴い結婚・妊娠・出産の高齢化により妊娠・授乳期乳癌は
増加傾向にある。当院で経験した妊娠・授乳期乳癌について検討を行った。
2006 年 1 月から 2014 年 10 月に当院にて経験した原発乳癌手術症例 1325 例
のうち妊娠・授乳期乳癌は 14 症例(1.1%)であった。このうち妊娠期は 5 例、
授乳期は 9 例であり、発症年齢中央値は妊娠期で 40 歳(38 ~ 42 歳)、授乳期
で 38 歳(33 ~ 44 歳)であった。同期間における 40 歳以下の原発性乳癌手術
症例 144 例でみると妊娠・授乳期乳癌は 9 例(6.3%)であった。妊娠転帰は、
1 例が中絶し、ほか 4 例は出産した。発見契機は妊娠期の 1 例および授乳期の
1 例は定期診察にて発見されたが、妊娠・授乳期 12 例は自己発見であり病悩
期 間 の 中 央 値 は 7 か 月(1 か 月 ~ 18 か 月 )で あ っ た。 病 期 は 妊 娠 期 で
stageIIA1 例、stageIIB3 例、stageIIIA1 例、授乳期で stageI1 例、stageIIA4 例、
stageIIB2 例、stageIIIA1 例、stageIIIB1 例であった。サブタイプは妊娠期で
Luminal type 3 例、HER2 type1 例、triple negative type 1 例、授乳期では
Luminal type7 例、LuminalHER2 type1 例、triple negative type 1 例であった。
手術治療は妊娠初期・中期の 2 例は妊娠中にいずれも全身麻酔下に行い、後期
は出産後に施行した。術式は、妊娠期では Bt3 例、Bp2 例、授乳期では Bt6 例、
Bp3 例であった。リンパ節に関しては、センチネルリンパ節生検を妊娠期 2 例、
授乳期 5 例に行い、腋窩廓清を妊娠期 4 例、授乳期 6 例に施行した。なお、セ
ンチネルリンパ節の同定は妊娠期では RI 法のみで行った。放射線療法は妊娠期
2 例で出産後に、また授乳期では 4 例に行った。化学療法は全例に施行し、妊
娠初期・中期は術後化学療法を行った。遠隔成績では、授乳期 2 例に再発を認
めいずれも癌死した。当院の検討でも妊娠・授乳期乳癌は臨床的に病期の進ん
だものが多く認められており、いかに早期発見を行うかが課題と考えられた。
【はじめに】若年性乳癌患者は、自身を取り巻く環境のため治療を最優先する
ことの葛藤に直面することがある。就労のみならず、妊娠出産や育児、家事、
親の世話など、患者を取り巻く環境は複雑で、将来を見据えて治療すること
が重要である。今回、当科で治療した若年性乳癌患者の臨床像について検討
した。【対象】2000 年 4 月から 2014 年 10 月まで乳癌に対し手術を施行した
1130 人のうち、35 歳未満の患者は 24 名(2.1%)であった。このうち追跡可
能な 22 例を検討し、また、アンケート調査を行い問題点を探る。【結果】検診
発見乳癌は 4 例、T1N0M0 以下の早期癌は 10 例(45.5%)であり発見動機の
多くがしこりの自覚であった。いわゆる Luminal A タイプは 54.5%であった。
家 族 歴 を 有 す る も の は 7 例(31.8%)、 死 亡 4 例 で あ っ た。 既 婚 者 は 18 例
(81.8%)で、手術時に出産歴があったのは 14 例であった。そのうち子が 2 人
未満のものは全員挙児希望であった。挙児希望を確認した 14 例のうち、妊孕
性保持のため何らかの手段を講じたものは 3 例であった。そのうち 2 例はホル
モン療法を希望しなかった。術後に妊娠・出産したのは4例あったが、自然
分娩、人工受精それぞれ 2 例ずつであった。【考察】乳癌登録データでは 35 歳
未満の患者が占める割合は 2.7%であるが、当科では 2.1%とやや低めであっ
た。既婚者でも出産歴2回未満のものは全例挙児希望であったが、妊孕性保
持のため積極的治療を行ったものは少なかった。その理由は、生殖医療専門
施設が近くにないこと、自費であることが原因と思われるが、アンケート調
査で確認する。若年患者は必ずしも経済的に余裕があるわけではなく、生殖
医療の機会があっても経済的理由で断念することもあると思われる。同じ病
期でも 35 歳以上と比較すると、34 歳以下は予後不良であるとされ、早期癌や
Luminal A タイプは半数にとどまったことから、約半数は化学療法を必要と
すると思われる。生殖医療の進歩により、妊孕性と治療を両立させることが
可能になってきたが、現実的には地方では容易ではない。生殖医療専門医と
連携するシステムを構築する必要がある。今回アンケート調査の結果も含め、
若年性乳癌患者の問題を考察する。【結論】若年性乳癌を取り巻く問題と治療
を両立させるための対策を提供するシステムを構築する必要がある。
GP-1-02-06
GP-1-02-07
35 歳未満女性の術前化学療法未施行乳癌に特徴的な病理組織像
とバイオマーカーの発現についての検討
当科における若年者(35 歳未満)乳癌手術症例の検討
1
旭川医科大学 乳腺疾患センター、2 旭川医科大学病院 手術部、
旭川医科大学 循環・呼吸・腫瘍病態外科学
1
3
2
松田 佳也 1、北田 正博 1、林 諭史 1、石橋 佳 1、平田 哲 2、東 信良 3、
紙谷 寛之 3
国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科、
防衛医科大学校 病態病理学、
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
4
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科、
5
国立がん研究センター東病院 乳腺外科
3
廣中 愛 1、津田 均 2、吉田 正行 1、清水 千佳子 3、麻賀 創太 4、北條 隆 4,5、
田村 研治 3、藤原 康弘 3、木下 貴之 4
【背景】35 歳未満の若年乳癌は 2.7%とまれで、進行した病期で発見され術前
化学療法を受けるため、原発性乳癌の詳細な臨床病理像については十分に検
討されていない。【目的】術前化学療法未施行例で、35 歳未満の若年乳癌に特
徴的な病理組織像とバイオマーカーの発現を検討した。【方法】1997 年~
2013 年の期間に当院で手術を受けた、術前化療未施行の 35 歳未満乳癌女性
102 例 ( 以下若年群 ) と、T 因子と N 因子でマッチングした 40 ~ 44 歳乳癌女
性 102 例 ( 以下対照群 ) を対象とし、組織型、組織学的グレード(HG)、腫瘍
浸潤リンパ球 (TIL)、リンパ管侵襲 (ly)、壊死を評価した。バイオマーカーは、
Estrogen Receptor(ER)、Progesterone Receptor(PgR)、Androgen
Receptor(AR)、p53、BRCA1、HER2、EGFR、CK5/6、Ki-67 を tissue
microarrays にて評価した。【結果】若年群では ER と AR の陽性率が低かった
(p= 0.0016, 0.0044)。Triple-negative サブタイプの頻度は対照群(6%)に
比し若年群(17%)で高い傾向にあった (p=0.097)。HG、TIL、ly、壊死の各
因子に両群で相違は認めなかった。【結論】若年群ではホルモン受容体陰性乳
癌が多かった。若年乳癌における AR 発現の意義は今後の検討を要すると考え
られた。
【はじめに】近年,本邦での乳癌罹患率上昇とともに,若年者の乳癌は悪性度
が高く予後不良なものが多いとの報告を散見するようになってきた.今回,
当科が手術を行った乳癌症例のうち,特に 35 歳未満と 35 歳以上との間で各
種因子について比較検討を行ったので報告する.【対象と方法】2000 年 1 月か
ら 2014 年 9 月までの期間に,当科が手術を行った乳癌症例は 2272 例であっ
た.このうち,35 歳未満の患者は 52 例(2.3%)であった.35 歳未満群(以下
A 群)と 35 歳以上群(以下 B 群)との 2 群に分けて,患者背景・手術術式・病
理組織学的所見・予後について解析を行った.p < 0.05 で統計学的に有意差
ありとした.【結果】性別は A 群 52 例すべて女性,B 群は男性 8 例,女性 2212
例であった.平均年齢は A 群 /B 群でそれぞれ 31.5 ± 2.2 歳 / 57.2 ± 12.1 歳
であった.各因子の占める割合だが,腫瘍径(pT2 以上)は 30.8% / 27.3%,
乳房温存手術施行は 71.2% / 65.7%,リンパ節陽性(4 個以上)は 17.3% /
6.4%,脈管浸襲(v+)は 15.4% / 10.8%,核 GradeIII は 25.0% / 14.0%,
各組織型の占める割合(DCIS:乳頭腺管癌:充実腺管癌:硬癌)は 19.2%:
5.8%:25.0%:40.4% / 14.5%:9.3%:15.6%:39.1%,エストロゲン
レ セ プ タ ー 陽 性 は 76.9 % / 76.8 %,HER-2 蛋 白 強 陽 性 (3+) は 38.5 % /
28.9%,トリプルネガティブ(TN) は 13.5% / 5.0%,MIB-1 index 平均は
39.44 ± 31.67% / 30.95 ± 24.65%,病理病期(pStage0+I:pStageII-IV)
は 63.5%:36.5% / 65.3%:34.7% であった.このうち両群間で有意差を
認めたものは,リンパ節陽性(4 個以上)・核 GradeIII・TN の項目であった.
術後 10 年生存率はそれぞれ 80.2% /93.2%,術後 10 年無再発率は 54.8%
/87.4%であり,いずれも両群間で有意差を認めた.
【結語】35 歳未満の症例は,
35 歳以上よりも進行症例が多く乳癌の悪性度が高いことが考えられた.乳房
温存手術施行例は両群とも全体の 60 ~ 70%に行われ,術後予後では 35 歳未
満症例の方が乳癌の再発率および死亡率が高かった.従って,若年者では乳
癌の早期発見と術後の厳重なフォローアップが重要であると考えられた.
480
ポスター掲示
GP-1-02-08
GP-1-02-09
北海道がんセンター 乳腺外科
1
萩尾 加奈子、五十嵐 麻由子、馬場 基、佐藤 雅子、富岡 伸元、
渡邊 健一、高橋 將人
住吉 健一 1、谷口 正美 1、丸尾 啓敏 2
当院における若年性乳癌の検討
当院における 80 歳以上の超高齢者乳癌手術症例の検討
【はじめに】近年、高齢者乳癌の患者を診療する機会が増えている。今回我々は、
当院における超高齢者乳癌患者の実態を調査したので報告する。
【対象】2010 年から 2014 年に当院で乳癌手術を受けた 80 歳以上の女性超高
齢者 33 例。同時性両側乳癌 1 例を含む。なお、同期間における当院の乳癌手
術症例数は、234 例であった。
【結果】手術時年齢は平均 85.6 歳(80 歳~ 96 歳)。発見動機は、血性乳頭分泌
2 例以外は、すべて腫瘤であった。4 例は、主治医、デイサービスなどによっ
て発見された。病悩期間は、平均 103 日(2 日~ 1080 日)
。老人介護施設等に
入所しているものが 4 名であった。22 例は、高血圧・脂質異常などの併存疾
患で治療中であった。認知症と診断されているものが 7 例であった。腫瘤最大
径の平均は、33.5mm(11mm ~ 80mm)と大きく、皮膚所見(T4b,T4c)を
伴うものが 9 例あった。画像診断では、マンモグラフィーまたはエコーの所見
は多くがカテゴリー 4 以上で、診断に難渋することはなかった。術式は Bp 4
例、それ以外には、Bt または Bt+Ax が施行された。組織型は、DCIS5 例、粘
液癌 2 例、それら以外 27 例は通常型であった。サブタイプは、TNBC 4 例、
HER2 タイプ 5 例以外の 25 例は Luminal タイプであった。術後入院日数の平
均は、8.9 日(3 日~ 15 日)と他の年代とほぼ同等かやや長い程度であった。
合併症は軽い肺炎と症状を残さず改善した軽い脳梗塞が 1 例ずつあった。術後
補助療法は、Luminal タイプには基本的にホルモン療法のみを行ったが、
DCIS と Luminal A の一部は併存疾患、全身状態、他疾患による生命予後を考
慮し無治療とした。HER2 タイプの 5 例中 4 例に抗 HER 治療を行ったが化学療
法の併用は行わなかった。TNBC の 4 例のうち 1 例には化学療法を行った。
【まとめ】高齢者乳癌は進行した状態で発見されることも多く、局所コントロー
ルのために手術が必要になることが多い。手術は多くの場合安全に施行でき、
合併症も少ない。ただし認知症などのため十分な治療を行うことが困難な場
合もある。また高齢であること、生活習慣病などの併存疾患が多いことなど
から、化学療法を選択できる余地は少ないと考えられた。
GP-1-02-10
GP-1-02-11
1
愛知厚生連海南病院 乳腺内分泌外科
ホルモン受容体陽性高齢者乳癌に対する治療戦略
当院での 80 歳以上の高齢者乳癌に対する治療の現状
高知赤十字病院、2 やまかわ乳腺クリニック
平野 浩紀 1、山川 卓 2
柴田 有宏、稲石 貴弘、富家 由美、小林 大悟
【はじめに】高齢者乳癌は、身体機能の低下や併存症の存在等から他の年齢層
以上に治療およびその継続が困難である。今回、ホルモン受容体陽性である
高齢者乳癌の治療戦略について、特に手術は回避可能か否かを検討した。【対
象】ホルモン受容体陽性で手術を行っていない高齢者乳癌 7 例。【結果】年齢
73 歳~ 95 歳、平均 86.1 ± 7.4 歳、Performance Status(PS)は 1:4 例、2:
1 例、3:1 例、4:1 例、併存症として、脳梗塞 3 例、アルツハイマー 1 例、
対側乳癌 1 例を認めた。組織型は乳頭腺管癌 1 例、硬癌 4 例、充実腺管癌 1 例、
浸潤性小葉癌 1 例、臨床病期は 4 期 4 例、2A 期 2 例、1 期 1 例であり、骨転移
を 4 例認めた。Intrinsic Subtype は Luminal A5 例、Luminal B Her2(-)2 例
で あ り、 治 療 と し て 全 例 ア ロ マ タ ー ゼ 阻 害 剤 を 投 与、 骨 転 移 例 に は
Bisphosphonate 剤等を追加した。治療開始時の原発巣の腫瘤径は 1.5cm ~
4.5cm 大、平均 3.2 ± 1.0cm 大。平均観察期間 962 日にて、腫瘤径は 0.0 ~
1.1cm、平均 0.33 ± 0.5cm 大、原発巣の臨床的効果は CR5 例、PR2 例であり、
全例生存し、PS の増悪は認めなかった。なお、患者は全て家族あるいは施設
職員等にて日常生活は十分にケアされていた。【考察】高齢者では、臓器機能、
併存症、認知機能、栄養状態、社会経済状況など包括的な評価が治療方針を
決定する際に重要とされる。日常生活が家族等により完全にケアされている
場合は、規則的な服薬、外来通院は高齢者においても十分可能である。今回
の結果、日常ケアが十分なホルモン受容体陽性高齢者乳癌では、QOL を保ち
ながらの治療継続が可能であり、内分泌療法は極めて有効であった。その効
果は原発巣において CR5 例、PR2 例であり、ホルモン受容体陽性高齢者乳癌
では手術は回避できる可能性が示唆された。【結語】高齢者乳癌において、ホ
ルモン受容体陽性かつ日常生活が十分にケアされている際には、内分泌療法
の効果により、手術は回避できる可能性がある。
481
近年の高齢化社会の進行に伴い、高齢者乳癌の治療をする機会が増える傾向
にある。高齢者乳癌の治療では、社会的要因、身体的要因、本人や家族の希
望などさまざまな理由で標準治療ができない事がある。今回我々は、当院で
経験した 80 歳以上の高齢者乳癌の治療の現状から、治療の方向性と問題点を
検討した。対象、方法)2007 年から 2013 年の7年間に当院で乳癌と診断し
治療をした 35 例。カルテ記録から臨床病理学的所見、治療内容、経過に関し
て検討した。結果)症例はすべて女性。年齢 80 ~ 95 歳、平均 84.8 歳。腫瘍
径は 8~70mm、T4b が 3 例。M1 が2例。組織型は浸潤性乳管癌 25 例、浸潤
性小葉癌 5 例、粘液癌 2 例、アポクリン癌 2 例、紡錘細胞癌 1 例。ホルモン
受容体は不明が 1 例、ER 陽性 27 例、PgR 陽性 21 例、HER2 陽性 2 例。治療
は、手術を行ったのが 14 例で、局所麻酔下に腫瘍のみ摘出したのが 2 例、Bt
のみ 1 例、Bt+SN 3 例、Bt+Ax 4 例、Bp+SN 4 例。術後補助療法は、化学
療法 0 例、TAM 3 例、AI 4 例。手術を行わなかった 21 例の内、18 例はホル
モン剤による治療のみを行った。使用したホルモン剤は TAM 8 例、AI 10 例。
無治療が2例、不明が 1 例であった。経過観察期間は 2 ~ 60 ヶ月、中央値
13 ヶ月。ホルモン剤のみで治療した症例で効果判定ができたのは 16 例、PR
が 8 例、SD が 8 例。経過観察中に PD になった症例は認めなかった。転帰が
判明しているのは 21 例で、転院3例、生存 16 例、死亡2例。2 死亡例中の 1
例が他病死で、1 例が原病死であった。原病死の1例は手術症例で組織型が紡
錘細胞癌でトリプルネガティブであった。14 症例で外来受診が途絶え経過観
察ができずに転帰が不明であった。考察)消極的な治療を選択する傾向にあっ
た。ホルモン剤のみで治療を行った症例では、経過観察中に憎悪する症例を
認めず、長期間病状がコントロールできている症例も認めた。高齢者乳癌に
おいては、余命も考慮すればホルモン受容体陽性症例ではホルモン剤のみの
治療の選択の可能性が示唆された。しかし 40%の症例で外来受診が途絶え経
過観察ができなくなっている。このことは高齢者乳癌の治療を検討する上で
は問題であり、今後さらに症例を重ね治療の結果を明らかにしていく必要が
あると思われた。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】若年性乳癌は全体の約 3% 以下とされ、ホルモン受容体陰性の症例が
多く予後不良と言われている。また、妊娠や出産などのライフイベントと治
療時期が重なるため、治療選択に難渋することもある。【目的】当院若年性乳
癌 (35 歳以下 ) における臨床的特徴をまとめる。【対象と方法】2000 年から
2014 年の間で当院乳癌症例 3758 例のうち、35 歳以下で発症した 110 例につ
いて、年齢、発見契機、家族歴、病期、術式、組織型、治療法、予後につい
て検討した。【結果】若年性乳癌症例は全体の 2.9% であり、そのうち 2 例は両
側性乳癌であった。年齢は 24 歳から 35 歳 ( 平均 31.8 歳 )、発見契機は検診が
13 (12%) 例、自己発見が 91(81%) 例、その他 8 例 (7%) であった。第 2 度
近親者までの家族歴があったものは 19 例 (17%) であり、遺伝子検査を施行
し た 4 例 の う ち 1 例 が 遺 伝 子 変 異 陽 性 で あ っ た。 病 期 は stage0 が 16 例
(14%)、stageI が 34 例 (30%)、stageII が 42(38%) 例、stageIII が 11 例
(10%)、stageIV が 9(8%) 例であった。術式は部分切除 56 例 (50%)、全摘
48 例 (43%) 例で、腋窩リンパ節郭清の施行は 57 例 (51%) であった。組織型
は DCIS 20 例 (18%)、IDC 92 例 (82%) であった。HR 陽性は 76 例 (68%)、
陰 性 26 例 (23%)、 不 明 10 例 (9%)、HER2 陽 性 は 22 例 (20%)、 陰 性 67 例
(59%)、不明 23 例 (20%) であった。化学療法が 67 例 (61%)、内分泌療法
が 59 例 (53%) に施行された。初期治療後に再発を 11 例 (10%) に認め、その
うち 5 例が死亡した。【結語】若年性乳癌のほとんどが症状を自覚して受診し
ていることから、自己検診の重要性や若年性乳癌の啓蒙活動が望まれる。また、
家族歴のあるものが多く、今後は遺伝性乳癌卵巣癌症候群への対策を進める
必要がある。TNBC の割合が多かったが、Stage や予後は一概に不良とは言え
ず、原疾患への適切な治療が重要となるが、妊牽性の温存など検討すべき問
題もある。
静岡市立清水病院 乳腺外科、2 静岡市立清水病院 外科
ポスター掲示
GP-1-02-12
GP-1-02-13
1
高山赤十字病院 外科
超高齢者乳癌手術症例における合併疾患とマネジメント
当院における高齢者乳癌の検討
愛媛県立中央病院 乳腺・内分泌外科、
2
愛媛県立中央病院 看護部(乳腺・内分泌外科)
井川 愛子、末次 智成、田尻下 敏弘、沖 一匡、佐野 文、白子 隆志
佐川 庸 1、松岡 欣也 1、本間 知子 2
一般セッション(ポスター掲示)
平均寿命の延びに伴い、高齢者さらには超高齢者における乳癌症例も多く経
験するようになっている。当院は、総合病院の特徴上、しばしば種々の合併
疾患を有する超高齢者乳癌患者の治療に携わる機会がある。今回超高齢者乳
癌症例における合併疾患とその対応・管理について検討したので報告する。
対象は、2010 年 1 月から 2014 年 12 月までの 5 年間に愛媛県立中央病院乳腺・
内分泌外科にて手術を施行した超高齢者(85 歳以上)乳癌手術症例 31 例であ
る。これは同時期の全乳癌手術症例の約 5.5%に当たる。全身麻酔(G群)
:局
所麻酔(L群)は 14 例(45.2%):17 例(54.8%)であった。平均年齢はG群:
86.5 歳、L群:89.4 歳で、腫瘍径は、G群:2.08cm、L群:1.62cm であっ
た。ワーファリンおよび種々の抗血小板薬の内服は、G群:6例、L群:7
例であった。G群のうち6例において術前に循環器内科における心血管系の
評価を受けていた。また認知症の存在は、G群:3 例、L群:6 例であった。
局所麻酔下で手術を行った理由は、認知症 6 例、心疾患 2 例であるが、主とし
て家族の希望によるところが大きい。平均追跡期間はG群:22.6 カ月、L群:
15.3 カ月で、いずれも乳癌死亡として確認された症例および局所再発(+腋
窩LN再発)症例はない。(超)高齢者乳癌は、時にT4として発見されること
もあり、局所制御はQOL維持のためにも重要なポイントといえる。更に予
後を確保するためには根治手術が望まれる。全身麻酔下に手術可能と判断さ
れるには、特に循環器内科による判断が重要と思われ、複数科によるバック
アップが要求される。一方で、L群においても 16 例がER陽性で、14 例が内
分泌療法を受けており、観察期間中の局所再発(+腋窩LN再発)はないこと
から、ある程度妥当な治療法と考えられる。超高齢者乳癌においても、症例
に応じた治療戦略が必要である。
【背景・目的】当院は高齢化が進む地方における基幹病院であり、乳癌におい
て も 高 齢 者 の 罹 患 者 が 多 い。 当 院 に お け る 高 齢 者 乳 癌 の 治 療 に つ き、
retrospective に検討した。【対象】2011 年 1 月~ 2013 年 12 月の間に当院に
て乳癌と診断され、治療を開始した 75 歳以上の 22 例。【結果】75 ~ 92 歳で
平均は 83 歳、全例女性。20 例は何らかの併存症を有していた。組織型は 20
例が浸潤癌、2 例は非浸潤性乳管癌であった。腫瘍サイズは Tis/T1/T2 が 2 例
/10 例 /10 例 で、 遠 隔 転 移 を 2 例( 骨 1 例、 肝 1 例 )に 認 め た。Luminal
type18 例(うち HER 陽性 1 例)、HER2enrich1 例、triple negative3 例であっ
た。手術は 18 例に施行された。手術非施行 4 例のうち、2 例は認知症のため、
1 例は本人の拒否、1 例は術前待機中に重症肺炎で死亡したため手術を施行し
なかった。16 例に乳房全摘術、2 例に乳房部分切除術(1 例は局所麻酔)を施
行した。12 例にセンチネルリンパ節生検を選択し、うち 4 例は迅速で転移陽
性であったため、levelI の郭清を行った。3 例は郭清を行い、3 例は郭清を省
略した。術後重大な合併症は認めなかった。リンパ節は N0/N1/N2 が 15 例
/6 例 /1 例であった。薬物治療は 14 例に施行された。13 例はホルモン療法で、
ハーセプチンが 2 例に使用された。いずれの治療も特記すべき副作用なく継続
している。術前に死亡した 1 例を除き、全例生存中である。【結論】術前併存
症を評価することにより、手術は安全に施行できていた。放射線療法を省略
できれば、乳房部分切除術を選択できる症例もあると思われた。ホルモン感
受性を有する症例が多く、抗がん剤を使用している症例はなかったが、個々
の状態を評価して治療方針を決定していく必要があると思われた。
GP-1-02-14
GP-1-02-15
1
新潟県厚生連 佐渡総合病院 外科
当院における 80 歳以上の高齢者乳癌症例の治療検討
当科における高齢者乳癌の実態
松江生協病院 乳腺科、2 松江生協病院 健診科
中島 裕一 1、益永 礼子 2
親松 学
【目的】わが国の高齢化に伴い、高齢者乳癌は増加傾向にある。若年者と比べ、
高齢者においては、ADL、基礎疾患等様々な要因からその治療法については
熟慮、検討を要する。これまでの当院における 80 歳以上の高齢者乳癌症例に
ついてその治療内容の検討から、ご本人の意向はもちろん、そのご家族への
十分な説明と同意も重要であることが示唆された。今回はその結果をもとに
対応、行っていった加療内容に関し、検討、報告する。【対象】2014 年 1 月か
ら 12 月までの期間に当院で診断、加療を行った 80 歳以上の乳癌症例につい
て検討した。【結果】期間内に対象となったのは 5 症例で、平均年齢は 86.8 歳。
StageI:2 例、StageII:2 例、StageIV:1 例であった。またホルモンレセプター
は全例陽性であった。併存疾患としては認知症 :2 例、糖尿病 :1 例、心疾患 :1
例、高血圧 :3 例、喘息 :1 例といずれの症例も何らかの基礎疾患を有していた
が、ADL については腰椎圧迫骨折例を除き自力歩行可能、また全例自力摂取
が可能であった。認知症の症例に関して、1 例はコミュニケーションや理解力
は比較的保たれていた。もう 1 例は、理解力は劣るものの、治療に関して妨げ
となる程度ではなかった。手術施行症例は N(+) を除く 3 例で、全例乳房切除
+ センチネルリンパ節生検を施行。また 1 例は心房血栓除去、弁置換術を先行
し、その後乳腺手術が施行された。術後補助療法は、2 例はホルモン療法のみ
を施行、1 例は補助療法なしで経過をみている。一方非手術症例については、
1 例はホルモン療法のみ、また 1 例 (StageIV) については HER2 陽性で、ホル
モンレセプター発現もわずかであったことから、パクリタキセル + トラスツ
ズマブを施行。全身状態、病状コントロールとも現在まで良好である。【結語】
前年までの検討から、高齢者の治療方針決定は個々の状況に加え、ご家族の
意向を十分考慮していくことが重要であるとの認識をもとに、各々の症例に
ついて対応していった。対象症例は少ないものの、結果、手術症例については、
その後の経過は良好であり、また非手術症例についても、現在まで良好なコ
ンプライアンスが得られ、継続治療がなされている。今後も高齢者乳癌の治
療についてはご本人の意向はもちろんであるが、そのご家族への十分な説明
と同意を得、協力していただくことが重要で、継続治療に対してより良好な
コンプライアンスを保てると考えられた。
【はじめに】少子高齢化が進むにつれ我が国においても高齢者の乳癌は増加傾
向にある。一方、がん診療はエビデンスに基づいて行われるべきであるが、
多くの臨床研究の対象は 70 歳以下の患者であり、高齢者の至適治療は症例
個々に検討されるべきとされている。近年高齢者のがん治療に対する包括的
な検討が進んできてはいるが、それでもなかなか、実際には何を基準として、
どのように判断すべきか患者も医療者も迷いの中にいる。【目的】高齢者の至
適治療を検討するための基礎データとして当科の診療経験を要約する。
【方法】
当科における 2008 年から 2013 年までの症例データベースから 80 歳以上の
乳がん患者を抽出し臨床病理学的事項について検討した。【結果】当科で診断・
治療した病変は 27 例だった。検診発見より自己発見が多く、病脳期間も様々
だった。腫瘍径では約 4 割が T2 以上であり、比較的大きなものが多かった。
組織型では非浸潤癌は 1 例のみで、ほとんどが浸潤癌であった。しかし、全体
の 3/4 は ER 陽性、HER2 陰性だった。このため乳房切除が行われたのは 8 例で、
15 例に部分切除(14 例が局麻)が行われ、4 例は手術を伴わない内分泌治療が
行われていた。予後を見ると追跡期間が短いものの原病死は受診時より手術
を拒否していた 1 例のみで、認知症等によるドロップアウトが 5 例あった。【考
察】諸家の報告通り高齢者乳癌は自己発見で受診するため腫瘍径の大きいもの
が多かった。生物学的には予後の良いサブタイプが多くを占め、それらの症
例ではより簡便な治療でも効果が期待できる可能性が示された。しかし、
HER2 タイプやトリプルネガティブ症例では、慎重な選択が求められると考え
られた。一方、認知症による本人の意思決定ができないドロップアウト例も
少なからず存在することから、老人性併存疾患を十分に検討・評価し、短縮
される健康寿命を予測しながら最適な治療法が提案されるべきと思われた。
【結語】当科では高齢者乳癌症例にはより簡便な治療が行われていたが、健康
寿命の観点からすれば妥当な結果がもたらされていると考えられた。
482
ポスター掲示
GP-1-02-16
GP-1-02-17
大崎市民病院 外科
大分大学 医学部 呼吸器・乳腺外科
江幡 明子、吉田 龍一
末廣 修治、宮脇 美千代、小副川 敦、橋本 崇史、内匠 陽平、安部 美幸、
杉尾 賢二
高齢者乳癌の術後補助療法についての検討
高齢者乳癌症例に対する治療の検討
【背景】乳癌は 40 歳代で好発するが、高齢症例は高齢化に伴い今後の増加が予
想される。今回、2010 年 1 月からの 5 年間において経験した、80 歳以上の手
術可能な乳癌症例 20 例、21 病変(両側乳癌 1 例)の検討を行ったので報告する。
【対象・方法】2010 年 1 月から 2014 年 8 月までに手術を行った乳癌症例 114
例のうち、80 歳以上の症例 20 例、21 病変を対象に検討を行った。【結果】20
例すべて女性。平均年齢は 84.4 歳。(80.8 ~ 93.0)基礎疾患を 19 例に認め、
高血圧 11 例、心疾患の既往 5 例、糖尿病 4 例、悪性疾患の既往 3 例などを認
めた。T 因子は Tis:2 例 T1:11 例 T2:8 例であった。手術は乳房切除術が
4 例、乳房部分切除術が 17 例に行われ、15 例ではセンチネルリンパ節生検を
施行した。腋窩郭清を行った症例はなく、術前検査で腋窩リンパ節転移を疑っ
た症例に対して、レベル I サンプリングを行った。術後重篤な合併症は認めず、
乳房切除術を行った 4 例中 1 例で創傷治癒遅延を認めた。病理診断は非浸潤癌
1例、Paget 病 1 例、乳頭腺管癌 7 例、充実腺管癌 5 例、硬癌 3 例、粘液癌 2 例、
不明 1 例、HR 陽性は 15 例、Triple negative:5 例、不明 1 例、HER2 type
は認めなかった。p stage は 0:2 例 I:10 例 IIA:9 例であった。術後治療は
HR 陽性 15 例のうち、アナストロゾール投与が 3 例に行われたが 12 例では治
療を拒否された。温存乳房に対する放射線療法が 1 例に行われ、化学療法は行
わなかった。術後の平均観察期間 2.2 年において、骨転移 1 例、他病死1例を
認めた。【結語】高齢者乳癌症例に対する手術療法は重篤な合併症を起こさず
に行うことが可能であった。高齢症例では併存疾患を有することが多く、化
学療法や長期間のホルモン療法を行うことが困難なことが有りうる。若干の
文献的考察を加えて検討する。
GP-1-02-18
GP-1-02-19
1
飯塚病院 外科
当院における高齢者乳癌の治療成績に関する検討
当院における 80 歳以上の超高齢者の乳癌手術症例に関する検討
島根大学 医学部 消化器総合外科、2 島根大学 医学部 放射線科、
3
島根大学 医学部 器官病理学、4 島根大学医学部附属病院 薬剤部、
5
島根大学医学部附属病院 看護部、6 安来第一病院
武谷 憲二、井口 詔一、赤峰 翔、廣瀬 晧介、平山 佳愛、吉屋 匠平、
中ノ子 智徳、吉田 倫太郎、古賀 聡、皆川 亮介、甲斐 正徳、梶山 潔
板倉 正幸 1、百留 美樹 1、山本 伸子 2、丸山 理留敬 3、福間 宏 4、
藤井 愛子 5、象谷 ひとみ 1、谷浦 隆仁 1、梶 俊介 1、田島 義証 1、
杉原 勉 6
【緒言】年々高齢者人口の増加が進む我が国においては、高齢者乳癌に対する
治療の位置づけは重要な課題である。その中でも高齢化の進む島根県におけ
る現状を、当院における原発性乳癌のうち 75 才以上の高齢者乳癌の治療成績
から検討した。【対象と方法】2005 年 1 月から 2010 年 12 月までに当科で手術
をおこなった原発性乳癌で、診断時に 75 才以上であった高齢者乳癌 45 例を
対象とし、診断契機、手術療法、臨床病理学的所見、術後補助療法とその施
行状況、無再発生存率 (DFS)、全生存率 (OS) 等について検討した。【結果】術
後補助療法として、ホルモン受容体陽性例には原則的にホルモン療法を行い、
乳房温存手術例には放射線療法を施行したが、いずれも忍容性は良好であっ
た。しかし術後補助化学療法の完遂率は低く、忍容性は低かった。転移再発
は 4 例に認めたが、化学療法の施行例はなく、原病死は 1 例であった。全生存
率で見るとそのほとんどが他病死であり、乳癌治療に対する短期予後は比較
的良好であった。【考察】高齢者乳癌の治療に関しては、全身状態、併存疾患、
合併症等により苦慮することが多い。特に化学療法は予定を完遂することが
困難であるため、リスクを十分に考慮した上で PS、QOL を配慮した治療の選
択が重要であると考えられた。
はじめに)日本において人口の高齢化が進んでおり、高齢者乳癌患者の増加が
予想され、手術適応は重要な課題となる。対象・方法)2007 年 10 月から
2014 年 11 月までに、当院で外科手術を施行された 80 歳以上の Stage0 から
StageIII 乳癌、62 症例(両側乳癌 3 例)、計 65 乳房を対象とした。結果)53
症例 (85.0%) は併存疾患を認め、高血圧を 44 例、糖尿病を 12 例、認知症 7
例に認めた。年齢中央値 84.5 歳(80 歳から 95 歳)であった。術式は乳房切除
(Bt)が 51 乳房、乳房部分切除(Bp/Bq)が 14 乳房であった。センチネルリン
パ節生検(SLNB)を 25 例に施行し、3 例はセンチネルリンパ節の同定困難で
腋窩郭清(Ax)に移行、1 例が SLN 転移陽性で Ax を施行した。Ax 施行は 23 例
であり、17 症例は腋窩リンパ節に関して手術を施行しなかった。入院期間は
10.5 日で、術後皮膚壊死を 4 例(全例、保存的加療にて改善)、リンパ浮腫を
1 例に認めた。最終病理結果では Tis が 7 乳房、T1 が 25 乳房、T2 が 25 乳房、
T3 が 1 乳房、T4 が 7 乳房であり、ホルモン受容体陽性乳癌を 63 例、HER2 陽
性乳癌は 5 乳房、TripleNegative 乳癌は 8 乳房であった。考察)高齢者に対し
て致死的な合併症を起こさずに安全な手術を施行することができた。非高齢
者と同様な手術術式を選択することができる可能性が示唆された。
483
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】高齢者乳癌患者の術後補助療法については、効果、副作用、併存疾患
などを考慮し個々に選択されることが多く、有効性や問題点の評価もあまり
行われていないのが現状である。【方法】2009 年 1 月 1 日から 2011 年 12 月
31 日までの 3 年間において、当科で手術を受けた初発乳癌患者または同期間
に当科初診し、手術不能であった 256 名を、60 歳未満 (120 名 )、60 歳台 (64
名 )、70 歳台 (48 名 )、80 歳台 (24 名 ) に分類して、高齢者乳癌の治療状況に
ついて検討した。【結果】年齢分布を見ると、60 歳以上の乳癌患者はおよそ半
数であった。ステージ別に見ると、初診時では 60 歳以上の患者でステージ 0
が有意に少なかった (p=0.0376)。Intrinsic subtype は年齢による差は見ら
れなかった。術式については、70 歳台および 80 歳以上で有意に全摘が多かっ
た (p=0.0259)。ホルモン剤や抗癌剤治療を受けた患者の割合は、60 歳代は
60 歳未満と同じであったが、70 歳代、80 歳代となるに従い、漸減した。再
発率は各年齢群で有意差はなかったものの、80 歳以上では通院終了となって
いる患者が有意に多かった (p < 0.0001)。60 歳以上の遠隔再発患者は 7 名で、
triple negative(TN) 2 名、luminal B 4 名、luminal A/B 1 名であった。【考察】
60 歳以上の乳癌患者は 60 歳未満と比較し、intrinsic subtype に大きな差は
見られず、統計的には遠隔再発率に差はないものの、luminal B や TN 症例が
比較的多い。当院では 60 歳未満には基本的にはアンスラサイクリン系および
タキサン系薬剤を使用した後に、カペシタビンや UFT 内服を 2 ~ 3 年程度使
用しているが、60 歳以上の患者達 ( 特に 70 歳以上 ) には抗癌剤使用が手控え
られている。60 歳以上の再発症例には TN 症例や luminal B 症例も比較的多く
存在しており、こうした患者達に対する適切な術後補助療法の検討が必要と
思われた。
ポスター掲示
GP-1-02-20
GP-1-02-21
手術治療を拒否した高齢者乳癌の症例の経験
1
当院における高齢者HER 2 陽性乳癌に対する術後補助トラス
ツズマブ投与の経験
医療法人聖仁会 西部総合病院、2 歌田乳腺・胃腸科クリニック
都立墨東病院 外科
北島 晃 1、歌田 貴仁 1,2、伊東 英輔 1、村山 晃 1
高浜 佑己子、中村 景子、下園 麻衣、宮本 幸雄
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】近年の医療技術の進歩による高齢化社会に伴い、担癌患者も高齢化し
てきている。高齢者であっても手術療法が標準的な治療ではあるが当院で経
験した高齢者乳癌において手術療法を拒否した症例について報告並びに考察
をする。【症例 1】84 歳女性、7.20 頃より右乳房腫瘤を自覚、7.22 当科受診、
MMG、US 施行し、悪性が疑われたため、CNB 施行したところ、右乳癌、ER/
PgR とも陽性、Hercep Test1+ の診断を得た。手術療法を勧めたところ、手
術拒否され、内分泌療法の同意を得たため、11.4 よりアナストロゾール内服
開始した。その後、肺炎にて入院加療となったが現在、回復し退院しており、
内服治療による明らかな有害事象を認めていない。【症例 2】88 歳女性、右乳
癌にて 20 年前、乳房温存術施行されており皮膚の潰瘍と硬結を認め、7.31 当
科受診、CT 検査施行したところ、右乳房内に石灰化を認めた。潰瘍部からの
擦過細胞診にて悪性が否定できない所見であったため、CNB 施行したところ、
右乳癌、ER/PgR とも陽性、Hercep Test1+ の診断を得た。手術療法を勧め
たところ、手術拒否され、9.18 よりアナストロゾール内服開始した。現在、
明らかな有害事象を認めていない。【考察】高齢者乳癌患者では内分泌療法感
受性が高いとされる。一方、手術可能例であっても併存疾患、全身状態から
標準的な手術療法が困難な場合がある。また、手術拒否例では一次治療とし
て臨床報告例であるが内分泌療法単独での観察例も散見されている。本症例
では観察期間は短いものの、2 症例とも有害事象なく経過し、明らかな増悪所
見も認めていない。今後も厳重な経過観察が必要であるが内分泌療法感受性
の高い高齢者乳癌患者で手術療法拒否例においては内分泌療法単独療法も忍
容性のある治療法と考えられる。また、今後、観察結果を報告する予定である。
日本社会では急速な高齢化が進んでおり、高齢者乳癌に対する薬物療法を行
う機会が多くなっている。そのような中、2007 年に適応が拡大され、HER
2 陽性乳癌に対する術後補助トラスツズマブ投与が標準治療となったが、高齢
者では社会的状態や併存症などから投与が躊躇される場面も少なくない。今
回、当院における高齢者HER 2 陽性乳癌症例について検討した。症例は
2008 年に術後補助トラスツズマブ療法が保険収載になってから 2012 年まで
に当院で経験した、70 歳以上のHER陽性乳癌術後 20 症例。全例女性で、平
均年齢 76.6 歳。6 例ではトラスツズマブは投与されず、14 例で 1 年予定で 3
週間毎にトラスツズマブ投与が開始された。トラスツズマブに併用して 1 例で
化学療法と内分泌療法、3 例で化学療法、4 例で内分泌療法がおこなわれたが、
6 例は単独投与であった。投与期間中は概ね 3 か月毎の心エコー検査で left
ventricular ejection fraction(EF)の計測をおこなった。14 例中 1 例は薬剤
性間質性肺炎で、2 例は心不全で投与中止となり、1 年間投与を完遂したもの
は 11 例 79% だった。心不全 2 例は可逆的であり、トラスツズマブ投与中止
後EFは改善した。観察期間中央値 44 か月で、遠隔転移は 3 例で乳癌死し、
同側腋窩リンパ節転移は 1 例。16 例は無再発で、うち 1 例は他病死した。乳
癌診療ガイドラインでは、<高齢者乳癌に対する術後薬物療法は予想される
余命期間、併存症、臓器機能を考慮し、ベースラインリスクを判断したうえ
で化学療法の効果と副作用のバランスを熟慮し治療の可否を決定する>と記
されている。当院において経験した高齢者HER 2 陽性乳癌症例を通じ、高齢
者に対する術後補助トラスツズマブ療法のあり方を検討する。
GP-1-02-22
GP-1-02-23
信州大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
がん・感染症センター 都立駒込病院 外科
小野 真由、大場 崇旦、家里 明日美、福島 優子、花村 徹、伊藤 勅子、
金井 敏晴、前野 一真、伊藤 研一
大西 舞、宮本 博美、後藤 理紗、井寺 奈美、本田 弥生、堀口 和美、
有賀 智之、山下 年成、黒井 克昌
【はじめに】本邦の 2015 年の高齢化率は 26.8% と推計され , 日本は世界に類
を見ない超高齢社会に突入している . 一方 , 本邦の乳癌罹患率も上昇傾向が続
いており , 今後は高齢者乳癌の増加が予想される . そこで今回 , 当院を受診した
後期高齢者乳癌患者について , その臨床病理学的検討を行った 【
. 対象と方法】
2005 年 1 月から 2010 年 12 月の 6 年間に当院で治療を行った 75 歳以上の乳
癌症例 64 例につき , 年齢 , 性別 , 発見契機 ,Performance status(PS), 腫瘍径 ,
病期 , 手術 , 病理組織学的因子 , 治療経過 , および予後について検討を行っ
た【
. 結果】女性 62 例 (96.9% ), 男性 2 例 (3.1% ),75-79 歳が 34 例 ,80 歳以上
が 30 例で ,85 歳以上の超高齢者は 5 例で最高齢は 94 歳であった . 発見契機は
腫 瘤 自 覚 54 例 (84.4 % ), 医 療 機 関 で の 指 摘 5 例 (7.8 % ), 高 齢 者 検 診 3 例
(4.7% ), 乳癌検診 2 例 (3.1% ) であった .PS0 ~ 2 は全症例で 45 例 (70.4%)
で あ っ た .79 歳 以 下 で は 30 例 (88.2 % ) で あ っ た が ,80 歳 以 上 で は 15 例
(50.0%) で ,80 歳以上で有意に不良であった (p < 0.005). 病期は Stage 0 が
6例(9.4% ),Iが24例(37.5% ),IIAが15例(23.4% ),IIBが10例(15.6% ),IIIA
が2例(3.1% ),IIIBが3例(4.7% ),IVが3例(4.7% )で,StageIV症例は全例80
歳 以 上 で あ っ た.手 術 が 施 行 さ れ た 症 例 は57例(89.1 % )で,非 施 行 の7例
(10.9% )はすべて80歳以上かつPS 3以上であった.ホルモン受容体陽性乳癌は
51例(79.7% )で,Triple negative乳癌は7例(10.9% )であった.サブタイプ別
分 類(79歳 以 下/80歳 以 上)で は,Luminal A (29例85.3 % /15例62.5 % ),
Luminal HER2(1例2.9% /1例4.2% ), HER2(2例5.9% /3例12.5% ), Triple
negative(2例5.9% /5例20.8% )で,80歳以上では79歳以下と比較し,Luminal
A typeが有意に少なくなっていた(p<0.05).全身的治療(内分泌療法and/or化
学療法)が行われたのは49例(76.6% )で,79歳以下では30例(88.2% )が全身
的治療を施行されていたが,80歳以上では19例(63.3% )に留まり,有意に低い
結 果 と な っ た(p<0.05).確 定 診 断 後 に 当 院 に 通 院 し て い た 症 例 は41例
(64.1% )であった.当院に通院継続中に原病死した症例はなく,他病死も1例の
みであったが,15例(36.6% )が受診を自己中断しており,中断時の年齢は平均
84.2±3.2歳(81-91歳)であった.【考察】今回の報告では80歳以上でStageIV
が多く,Luminal Aが少ない結果であったものの,当院通院中の原病死を認めな
かった.自己中断や他院での経過観察となる症例が多く,生命予後の解析を加え
報告する.
【背景】HER2 陽性乳癌は予後不良とされるが、化学療法および抗 HER2 薬によ
りその予後は改善している。しかし、高齢者乳癌においては副作用による心
機能障害が懸念され、補助療法が行われないことも多い。今回、当院で治療
を行った 70 歳以上 81 歳未満の HER2 陽性乳癌患者の補助療法と予後につい
て後方視的に検討した。
【対象と方法】対象は、当院において 2000-2013 年に手術を行った 70 歳以上
81 歳未満の浸潤性乳癌患者 316 例。HER2 不明例、対側乳癌の既往があるもの、
初診時 Stage IV は除いた。HER2 は IHC で 3+ または FISH 陽性のものを陽性
とし、ER は 1%以上を陽性とし、トラスツズマブまたは化学療法が行われた
ものを A 群、トラスツズマブおよび化学療法なしを B 群として検討を行った。
【結果】患者年齢は中央値 73 歳 ( 範囲:70-79 歳 )。HER2 陽性は 28 例 (8.9%)
であり、A 群は 16 例(57%)(トラスツズマブ + 化学療法 14 例、トラスツズ
マブ単独 2 例)、B 群は 12 例(43%)であった。治療開始時病期は、Stage I/
II/III が、それぞれ A 群:4/9/1 例、B 群:3/8/1 例であった。ER 陽性は A 群:
4 例 (25%)、B 群:4 例 (33%) であり、ER 陽性例の全例で内分泌療法が行わ
れていた。A 群、B 群で患者背景に有意差はなかった。化学療法はアンスラサ
イクリン・タキサンの逐次レジメンが 8 例(完遂率 75%)、タキサン系単独が
4 例(完遂率 100%)、アンスラサイクリン系単独が 2 例(完遂率 50%)であっ
た。補助療法による重篤な有害事象は 3 例 (19%) に認めた。そのうち 2 例は
Grade4 の好中球減少を認め、化学療法を中断したが、トラスツズマブ投与は
継続可能であった。1 例はトラスツズマブおよびドセタキセル投与中に既往の
間質性肺炎の増悪を認め、補助療法終了となった。観察期間中央値 3.2 年(範
囲:1.0-10.2 年)で、遠隔再発は 6 例、A 群 2 例(脳転移 1 例、肝転移 1 例)、
B 群 4 例(肺転移 2 例、骨転移 2 例)で認めた。乳癌死は A 群で 1 例(初診時、
炎症性乳癌)、B 群で 4 例に認めた。
【まとめ】A 群・B 群ともに副作用も重篤なものは少なく、完遂率も高く、補助
療法の忍容性は高かった。A 群の乳癌死が進行例であったことを考慮すると、
投与によるベネフィットが勝ると考えられ、70 歳以上であっても化学療法お
よび抗 HER2 療法は検討すべきと考えられた。
後期高齢者乳癌の検討
当院における HER2 陽性高齢者乳癌の補助療法についての検討
484
ポスター掲示
GP-1-02-24
GP-1-02-25
1
岐阜市民病院 乳腺外科
80 歳以上乳癌手術症例の検討
当院における後期高齢者症例の検討
ハートライフ病院 乳腺外科、2 国立沖縄病院 外科、
3
ハートライフ病院 病理部
中田 琢巳、細野 芳樹
村山 茂美 1,2、喜友名 正也 3、戸田 隆義 3
【目的】近年の高齢化社会の進行に伴い,高齢者乳癌患者症例も増加傾向にあ
る.その治療は合併症や QOL の観点などから標準治療と異なる選択を余儀な
くされたり,患者やその家族からの治療拒否といったことも珍しくはない.
今回,われわれは当院で経験した後期高齢者乳癌症例において臨床的特徴や
治療内容について検討した.【方法】2006年から2010年の5年間に当
科において治療を開始した75歳以上の乳癌症例は49例を対象として,病
期,治療内容,予後などについて検討した.【結果】同時期の治療開始患者は
478例で対象患者は全体の約1割を占めていた.また,後期高齢者中での
80歳以上の患者は22例とほぼ半数であった。発見ステージはステージ I が
最も多く,発見契機は自己発見がほとんどであった.また,他疾患治療中や
介護者により偶然発見されたものも認められた.病理組織は浸潤性乳管癌が
多かったが,中には認知症により患者の協力が得られず組織検査不能で
Subtype 等が不明なまま治療を開始せざるを得ない症例がみられた.また,
これらはすべて80歳以上の症例であった.治療としては luminal A,B が半
数以上と最も多く、これらは内分泌療法を中心とした標準療法を行うことが
できているものが多かったが,内分泌感受性のないものについては局所コン
トロールのみを行い経過観察のみとされたものが多かった.外科的治療に関
しては80歳未満では高度の心不全を合併した症例と,発見時すでにステー
ジ4であった2例を除き,根治術が施行された.しかし,80歳以上におい
ては約 3 分の 1 にあたる7例に手術未施行例が認められた.これら手術不能例
の多くがすでに亡くなっているが,80歳以上の患者においては肺炎などの
他病死がほとんどであった.【結語】高齢者乳癌は様々な合併症が併存してい
ることもあり,必ずしもガイドラインにのっとった治療が施行できないこと
も多く,特に80歳を境にしてその傾向がつよくみられた.しかし,80歳
以上の高齢者についてはそのほとんどが乳癌死とはなっておらず,乳癌診療
ガイドラインに基づいた根治的な低侵襲治療を考慮しながらも,年齢や患者
個々の状態に応じた治療計画を策定することが肝要と考えられた.
GP-1-02-26
GP-1-03-01
1
1
高齢者 (70 歳以上 ) の ER 陰性乳癌について
当院における HER2 陽性乳癌に対する TCbH 療法 15 例の検討
千葉県立佐原病院 外科、2 千葉県立佐原病院 病理部、
3
千葉県立がんセンター 乳腺外科
岡田 淑 1、黄 哲守 1、佐藤 護 1、尾崎 大介 2、菅谷 睦 2、山本 尚人 3
【はじめに】乳がんは一般的には 40 歳代に多いが高齢者乳癌も少なくない . 手
術療法は高齢でも全身状態がよければ積極的に行うが , 薬物療法の , 特に化学
療法については迷うことも多い . そこで内分泌療法の適応がない ER 陰性乳癌
に注目して当院の高齢者乳癌の特性と予後を検討した 【
. 対象と方法】当院で
2009 年 1 月から 2014 年 12 月に施行した原発巣切除 96 例のうち ,70 歳以上
の高齢者 42 例 (70 ~ 92 歳 , 中央値 79 歳 ) について検討 . 特に , 非浸潤癌 4 例
を除く浸潤癌 38 例中サブタイプがわかっている 37 例については ,ER 陰性 (11
例 ) と陽性 (26 例 ) に分けて検討 . 男性乳癌 (1 例 ),stageIV の局所コントロー
ル目的の手術例 (1 例 ) を含む . なお , 当院でのセンチネルリンパ節生検 (SNB)
は 2010 年 7 月より導入している 【
. 結果】観察期間中央値は 24.3 ヵ月 (0 ~
67 ヵ月 ). 術式は Bp19 例 (45% ),Bt23 例 (55% ),SNB22 例 (52% ), 郭清 17
例 (40 % ), 腋 窩 な し 3 例 (7 % ). 病 理 学 的 因 子 で は , 腫 瘍 径 は pTis:4 例
(10% ),pT1:19 例 (45% ),pT2:16 例 (38% ),pT3:3 例 (7% ),pT4:0 例 (0% ).
リンパ節転移は有 12 例 (29% ), 無 27 例 (64% ), 不明 3 例 (7% ). 浸潤癌でサ
ブタイプのわかっている 37 例の内訳は ER+HER-:26 例 (68% ),ER+HER+:0
例 ,ER-HER+:4 例 (11% ),ER-HER-:7 例 (18% ). 病理学的因子では ER 陽性
の方が腫瘍径や stage は低いがリンパ節転移が多い傾向があったが有意差は
な か っ た . 術 後 治 療 で は ,Bp 後 の 乳 房 照 射 は ER 陰 性 で 5 例 中 5 例 (100 % )
に ,ER 陽性で 14 例中 10 例 (71% ) に施行されていた . 薬物療法は ,ER 陰性で
は 5 例 (45% ) に化学療法が ,ER 陽性では 22 例 (85% ) に内分泌療法が ( 化学
療法は 0 例 ) 施行されていた .ER 陰性の化学療法では UFT の使用やトラスツズ
マブの省略がみられた . 再発は ER 陰性で 2 例 ,ER 陽性で 1 例 , 死亡数は ER 陰
性で 3 例 ,ER 陽性で 2 例 , そのうち他病死は ER 陰性で 2 例 ,ER 陽性で 1 例 ,5 年
生存率は ER 陰性で 72.7% ,ER 陽性で 92.1%であった 【
. 考察】一般的に高齢
者乳癌は ER 陽性が多く予後が良好な印象があるが , サブタイプは一般的な割
合と変わらず ER 陰性は 30%を占めた . 手術施行症例では , 手術および術後照
射や内分泌療法は非高齢者とほぼ同等に施行できていたが , 化学療法はできて
いなかった . 本検討では観察期間も短く症例数も少ないため , 今回の 5 生率で
単純な予後の比較はできないが ,ER 陰性は ER 陽性より予後不良の傾向がある
と考えられた 【
. 結論】高齢者でも ER 陰性では安易に治療を省略せず , 可能で
あれば無理のない範囲で化学療法も考慮すべきと考えられた .
丸山記念総合病院 外科、2 埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科
佐野 弘 1、高橋 孝郎 1,2、丸山 正董 1、佐伯 俊昭 2
【目的】HER2 陽性乳癌に対して当院で施行された TCbH 療法の治療効果と安全
性について検討する。【対象】当院で乳癌の診断を得、HER2 は IHC で 3+、
2+ で は FISH を 追 加 し 増 幅 あ り を HER2 陽 性 乳 癌 と し、2012 年 6 月 よ り
TCbH 療法を施行した 15 例 ( 全例 IDC)。( 全例女性、年齢中央値 56.1 歳(44
~ 70 歳))
【結果】術前化学療法として 9 例、術後補助療法として 6 例施行。有
害事象により術前化学療法 2 例が中止となった為、コース完遂率は 86.7% で
あった。DI の概念における期間完遂率は 20% であった。術前化学療法の治療
効 果 判 定 は cPR が 5 例、cCR が 2 例。 組 織 学 的 効 果 判 定 は grade1b が 1 例、
2a が 1 例、2b が 4 例、3 が 1 例 で あ っ た。 有 害 事 象 と し て 血 液 毒 性 で は
grade3 以上の好中球減少が 13 例で認められたが、発熱性好中球減少症は認
められなかった。非血液毒性としては全例脱毛を認めた。他に grade 1の悪
心嘔吐、食欲不振、味覚障害、倦怠感、口内炎、皮膚障害、痺れ、浮腫、息
切れ、便秘、下痢等散見されたが許容範囲内であった。【考察】TCbH 療法で
は Day8 に好中球減少を来たすので注意が必要である。 好中球減少は高頻度
に起こるので、今後は持続型 G-CSF 製剤 ( ペグフィルグラスチム ) を併用すれ
ばより安全に施行出来、完遂率の向上にもつながる。 末梢神経障害、痺れの
予防として牛車腎気丸を投与する事により症状を軽減出来ると考える。 非血
液毒性の有害事象は様々認められたがいづれも grade1 であり支持療法で対処
出来ると考える。
485
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】社会の高齢化に伴い高齢者乳癌も増加傾向にある。しかし高齢者
乳癌の治療指針において明確なものはない。また患者自身も基礎疾患を有し
ている事が多く、特に手術療法は嫌煙されがちである。【目的】今回当院にお
ける80 歳以上乳癌手術症例の特徴に関し検討した。【対象】2001 年 1 月から
2013 年 12 月までに当院で手術を施行した 80 歳以上の乳癌手術症例 19 例。
19 例中 2 例は両側乳癌の為 19 例 21 病変で検討した。【結果】平均年齢 83.2 歳
(80-90 歳)、発見契機は自覚 / 検診 / 他疾患検査 / 他者の指摘で各 13/ 1/ 2/
3例と検診受診者は少なかった。PS は0/ 1/ 2/ 3/ 4で各7/ 2/ 5/ 4/
1例。平均腫瘍径は 29.9mm。Stage は 0/l/ll/lll/lV で1/ 7/ 8/ 2/ 3例。
組織型は DCIS/a1/a2/a3 で各1/ 9/ 5/ 6例。ホルモンレセプター (HR)ER
陽性 / 陰性で 14/ 3例、PgR 陽性 / 陰性で 12/ 5例。HER2 0/ 1/ 2/ 3で
15/ 0 / 1 /1 例。MIB1 測 定 は 10 例 で 平 均 値 10%、 う ち 13 % > は 8 例。
subtype 別 分 類 LuminalA/LuminalB/HER2(non Luminal)/Triple negative
は各々 10/ 4/ 0/ 3例。併存疾患有病率は 7 7%(14 例 ) で高血圧が最も多く、
重複癌を有する症例が 3 例認められた。術式は乳房切除群 / 温存術群で 12/ 9
例。温存術群は年代の新しい症例で多く認められた。平均在院日数は 26 日。
10 日以上入院症例は 16 例、うち術後合併症を有したのは5例。術後合併症の
内訳はリンパ液貯留 / 創部壊死・感染が2/ 3例であり在院日数長期化の主な
理由は他科での治療や転院待機の為であった。術後補助療法は 12 例に施行。
無再発または PR での通院者は 10 例。5 年の補助療法完遂 2 例と原病死 2 例を
除き通院中断者は 4 例であった。中断の理由は基礎疾患の増悪に伴うものであ
りうち 3 例は術後補助療法を省略していた。【まとめ】手術を施行した 80 歳以
上乳癌症例の併存疾患有病率は高かったが、術後重篤な合併症は認めなかっ
た。併存疾患の増悪に伴う術後治療中断者は 4 例 (22%) であった。手術症例
の半数以上が無再発または PR で通院中であり、症例に応じて手術療法の施行
は有用であると思われた。
ポスター掲示
GP-1-03-02
GP-1-03-03
HER2 タイプ乳癌に対するトラスツズマブ併用術前化学療法
当院における HER2 陽性乳癌に対する術前抗 HER2 療法症例の
検討
長野市民病院 呼吸器・乳腺外科
新潟県立中央病院
小沢 恵介、西村 秀紀、藏井 誠、有村 隆明
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】術前化学療法は術後化学療法と同等の生存率が得られ、乳房温存
率が向上するため、術後化学療法が必要とされる症例に対しては積極的に用
いられている。また、原発巣の組織学的治療効果を確認できる利点もある。
さらに HER2 陽性乳癌に対してはトラスツズマブ(TRA)を併用することで有
意に pCR 率が改善し、non-pCR に比べ予後良好である。今回我々は、HER2
タイプ乳癌に対する TRA 併用術前化学療法の治療効果および予後を検討した。
【対象と方法】2009 年 7 月から 2014 年 12 月まで TRA 併用術前化学療法に続
き手術を施行した HER2 タイプ乳癌 12 例を対象とした。現在の基本レジメン
は FEC + DTX に TRA 併用で、術後に計 1 年間の TRA を行っているが、導入初
期の 3 例は PTX に TRA を併用し、うち 1 例は術後化学療法として FEC を行っ
た。今回の検討には、治療前に遠隔転移(肝 1 例、脳 1 例)を有する症例で、
術前治療により転移巣の CR が得られたと考えられた 2 症例も含めた。【結果】
平均年齢は 53.0(30 ~ 64)歳で閉経前 6 例、閉経後 6 例であった。組織型は
IDC が 11 例、ILC が 1 例 で あ っ た。 奏 効 率(CR+PR)は 91.7 %(11 例 )で、
乳房温存率は 83.3%(10 例)であった。治療前に N(+)であった 9 例のうち
7 例(77.8%)で N(-)となり、pCR は 4 例(33.3%)に得られた。4 例のうち 1
例で乳管内成分の残存を認めたが、リンパ節転移は 4 例とも消失していた。治
療開始からの観察期間は中央値 37.5(6 ~ 65)ヶ月で、再発は pCR 症例 4 例
のうち 1 例、non-pCR 症例 8 例のうち 1 例に認め、いずれも温存乳房への局
所再発であった。全例生存中で、無再発生存率は 77.8%であった。術前に遠
隔転移を認めた 2 例とも原発巣の治療効果は Grade2b であったが、いずれも
転移巣は CR を維持しており厳重に経過観察中である。【結語】12 例の HER2
タイプ乳癌に対するトラスツズマブ併用術前化学療法で、pCR は 4 例(33.3%)
に得られた。
武藤 一朗、佐藤 友威
「背景」HER2 陽性乳癌に対する化学療法にトラスツズマブを併用した術前抗
HER2 療法は、化学療法単独に比較して予後・pCR 率を改善することが知ら
れている。pCR が得られれば生存率も改善するため患者にとって大きな利益
になると考えられる。「目的」我々は上記のような理由で HER2 陽性乳癌に対
し、術前抗 HER2 療法を行っている。対象症例の検討を行ったので報告する。
「 対 象 」針 生 検 検 体 で HercepTest3+、 あ る い は 2+ / FISH 陽 性 で 大 き さ
5mm 以上の乳癌症例の中で、2007 年以降、術前抗 HER2 療法を行った 33 例
を対象とした。薬物療法はアンスラサイクリンとタキサンの順次投与に、タ
キサン部分にトラスツズマブ同時併用し、さらに術後 1 年間トラスツズマブ単
独投与するレジメンである。「結果」全例女性、年齢は平均 53 歳(34-72)、閉
経前 11 例・閉経後 22 例、サブタイプではホルモン受容体陰性/ HER2 陽性
の HER2 型(H 群 )13 例、 ホ ル モ ン 受 容 体 陽 性 / HER2 陽 性 の ル ミ ナ ー ル
HER2 型(L 群)20 例である。進行度は H 群1:1 例、2:8 例、3:4 例、L
群1:7 例、2:9 例、3:4 例であった。リンパ節転移は N 1以上が H 群 12
例(92%)L 群 7 例(35%)であった。レジメンではエピルビシン→ドセタキセ
ル+トラスツズマブ 22 例(H:8,L:14)、エピルビシン→パクリタキセル+ト
ラスツズマブ 9 例 (H:5,L:4)、ドセタキセル+トラスツズマブ 2 例であった。
pCR(ypT0/is, ypN0)は H 群 8 例(61.5%)L 群 10 例(50%)であった。手術
は H 群 Bp:5 例、Bt:8 例、Ax:12 例、センチネルリンパ節生検(SN):1 例、L
群 Bp:10 例、Bt:10 例、Ax:9 例、SN:10 例であった。再発は 3 例でいずれも
L 群であり、pCR 後脳転移の 1 例は死亡した。副作用は重篤なものはなかった。
「結語」H 群の pCR 率は 61.5%と諸家の報告と同様に良好で L 群より高かった。
再発は L 群に多く見られた。
GP-1-03-04
GP-1-03-05
神戸アーバン乳腺クリニック
倉敷中央病院 外科
山元 奈穂、小西 豊、福原 稔之
山口 和盛、今井 史郎、岡部 道雄、河本 和幸、小笠原 敬三
当院における ER/PgR 陰性 HER2 陽性乳癌に対する weekly
Paclitaxel+Trastuzumab 併用術前療法の検討
HER2 陽性乳癌に対するトラスツズマブ+タキサン術前化学療
法(NAC)の検討
【はじめに】現在、多くの報告から、Trastuzumab を併用した術前薬物療法に
よる ER/PgR 陰性 HER2 陽性乳癌患者の病理学的完全奏効 (pCR) 率は極めて
高いとされており、また当サブタイプにおいては pCR が良好な予後の予測因
子になりうるとされている。当院でも、10mm 以上の HER2 陽性乳癌患者に
対しては積極的に Trastuzumab 併用術前化学療法を施行している。今回、
weekly Paclitaxel+Trastuzumab 併用術前療法の治療成績について報告す
る。【 方 法 】対 象 は 2007.10 か ら 2013.08 ま で の 間 に 当 院 に て weekly
Paclitaxel+Trastuzumab 併用術前療法を施行した ER/PgR 陰性 HER2 陽性乳
癌患者 10 例である。全員女性で、年齢は 35 歳から 65 歳、平均 51.3 歳であっ
た。閉経前乳癌 3 例、閉経後乳癌は 6 例、臨床病期はステージ I からステージ
IIIC まであった。Paclitaxel の投与量は 80mg/m2 で 3 週投与後 1 週休薬とし
たが、忍用性の高い症例では連続投与とした。治療開始後は毎回乳房超音波
検査 (US) を行って治療効果を確認した。病巣が縮小している症例では同治療
を続け、不変または増大した症例では他剤に変更した。US で病巣の大きさが
5mm 以下となった時点で可能な限り針生検を行ない癌病巣の有無を確認し
た。US かつ MRI で臨床的完全奏功、
または針生検査で癌病巣が認められなかっ
た場合、手術を行った。最終病理診断は手術標本で行い、ypT0/ypN0 または
ypTis/ypN0 を pCR と し た。【 成 績 】10 例 中 8 例 (80%) に お い て、weekly
Paclitaxel+Trastuzumab 併用療法のみで pCR が得られた。また、全症例に
おいて重篤な副作用の出現は認められなかった。pCR に至らなかった 2 症例
はいずれもステージ IIIA の閉経前局所進行乳癌であり、術前に anthracycline
系 レ ジ メ ン も 投 与 し た が、 そ れ ぞ れ の 病 理 学 的 治 療 効 果 は Grade2b と
Grade0 で あ っ た。【 結 論 】ER/PgR 陰 性 HER2 陽 性 乳 癌 に 対 す る weekly
Paclitaxel+Trastuzumab 併用術前療法は、奏功率が高く、安全性も高い有用
な治療法であると考えられた。
【背景】HER2 陽性乳癌に対する NAC としては , アンスラサイクリンとタキサ
ンの順次療法にトラスツズマブ (HER) をタキサンと併用するのが通常である。
しかし HER+ タキサンレジメンのみでも pCR が得られる症例も多く経験する。
今回 HER +タキサンを先行して投与することで , アンスラサイクリンレジメ
ンを省略することが可能かどうか検討した。【方法】対象は cStage II, III (T4
症例を除く ) のホルモン受容体陰性 HER2 陽性乳癌で , 2008 年 1 月から 2014
年 12 月までの約 7 年間に当院で施行した HER+ タキサンによる NAC 施行症例
9 例を検討。投与レジメンは HER 2mg/kg ( 初回 4mg/kg)+Weekly パクリタ
キセル 80mg/m2 の 12 週投与もしくは HER 6mg/kg ( 初回 8mg/kg)+ ドセ
タキセル 75mg/m2 の 3 週毎投与を 4 コース。投与終了後に手術を行い , 術
後病理検査にて治療効果を判定した。【結果】平均年齢 58 歳 (39-74)。術前
cStage は IIA:3 例 , IIB:4 例 , IIIA: 1 例 , IIIC:1 例であった。9 例中 6 例で治
療効果判定 Grade3 (pCR) が得られ , 3 例が Grade2b であった。Grade2b 症
例のうち 2 例は Ki-67 値が 1% であった。1 例に術後 EC 療法を追加したが , 8
例は HER の単独補助療法のみで , 全例無再発で経過観察中である。【結語】
cStage II, III のホルモン受容体陰性 HER2 陽性乳癌に対して HER+ タキサン
を NAC として先行投与することで , アンスラサイクリンレジメンを省略でき
る可能性が示唆された。
486
ポスター掲示
GP-1-03-06
GP-1-03-07
Pertuzumab を併用した HER2 陽性局所進行乳癌に対する術
前化学療法の経験
1
HER2 陽性乳癌アルブミン懸濁型パクリタキセル + カルボプラ
チン + トラスツズマブ併用化学療法第 1 相臨床試験
独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院 乳腺外科、2 右田病院 乳腺外科
石田 文孝
1,2
1
1
1
、吉竹 公子 、小西 寿一郎 、井上 真未 、鴨 宣之
1
独立行政法人国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 乳腺外科、
大阪市立大学大学院 腫瘍外科、3 大阪市立総合医療センター 臨床腫瘍科、
4
住友病院 外科、5 大野記念病院 外科、6 府中病院 外科、
7
和泉市立病院 外科、8 育和会記念病院 外科、9 市立柏原病院 外科
2
1,2
局所進行乳癌に対する治療において、化学療法を施行した後、手術、放射線
治療などの局所療法を含めた集学的治療が求められる。特に皮膚浸潤を伴う
ような T4b 乳癌においては、浸出や出血、悪臭などのコントロールに苦慮す
ることが多く、速やかな対処が求められる。モーズペーストなどの化学的焼
却により、局所コントロールを図ることも有効ではあるが煩雑でもあり、手
術療法で腫瘍を切除できれば、QOL の低下に苦慮している患者への治療の一
介となる。そのためにも腫瘍縮小に有効な化学療法の選択が重要になる。
昨今、HER2 陽性乳癌の治療効果を高めるために、化学療法とともに、従来の
Trastuzumab に 加 え、 作 用 機 序 が 異 な る 抗 HER2 療 法(Lapatinib,
Pertuzumab)を用いる Dual HER2 target 療法が術前治療として検討され、
高い pCR 率が報告されている。Dual HER2 target 療法と化学療法の併用で得
られる高い pCR 率と予後改善効果の関連については、未だ結論が得られては
いないものの、心毒性などの有害事象を上昇させることなく pCR 率が上昇さ
せうることは、早急な腫瘍の縮小を求める局所進行乳癌の患者にとって、少
な く と も QOL の 改 善 と い う 面 で 有 効 で あ る と 考 え ら れ る。 と く に
NeoSPHERE 試験においては対照群の約 3 割が局所進行または炎症性乳癌であ
り、高い pCR 率はより手術療法への移行が容易となることを示唆している。
今回、我々は HER2 陽性局所進行乳癌に対し、Pertuzumab を併用した化学
療法を施行し、手術可能となった 3 例を経験したので、若干の文献的考察を加
えて報告する。
手塚 健志 1、高島 勉 2、川尻 成美 2、柏木 伸一郎 2、徳永 伸也 3、
西村 重彦 4、水山 陽子 5、鄭 聖華 6、須波 毅 7、西森 武雄 8、石川 哲郎 9、
平川 弘聖 2
GP-1-03-08
GP-1-03-09
1
小川赤十字病院 乳腺内分泌外科
cT1N0M0 の HER-2 陽性乳癌における術後薬物療法の選択
高齢者乳癌に対するハーセプチンを含む化学療法の使用経験
大阪市立総合医療センター 腫瘍内科、
2
大阪市立総合医療センター 乳腺外科、
3
大阪市立総合医療センター 消化器外科
長岡 弘、高橋 泰、遠藤 敬一
徳永 伸也 1、亀井 佑梨 2、渡部 智加 2、池田 克実 2、小川 佳成 2、
西口 幸雄 3、武田 晃司 1
【はじめに】NCCN ガイドラインで推奨される HER-2 陽性乳癌の術後薬物療法
は、ホルモン受容体 (HR) 陽性の場合、T1mic および T1a は内分泌療法、T1b
は Trastuzumab ±化学療法+内分泌療法、T1c は Trastuzumab +化学療法+
内分泌療法である。HR 陰性の場合、T1mic および T1a は経過観察、T1b およ
び T1c は Trastuzumab +化学療法である。また年齢や併存疾患の有無で化学
療法や Trastuzumab の適応を考慮するよう勧められている。ただ日常診療に
おいて、その実情は十分検討されていない。【方法】2008 年 1 月から 2012 年
12 月に当院で手術を施行した cT1N0M0 の HER-2 陽性乳癌症例を後方視的に
検討した。【結果】cT1N0M0 の HER-2 陽性乳癌の手術症例は 62 例であった。
患者背景は、年齢中央値 60 歳、pT 1mic + 1a / 1b / 1c:6 / 13 / 43、
ER 陽性 / 陰性:40 / 22、PgR 陽性 / 陰性:27 / 35、術後化学療法 あ
り / なし: 30 / 32、術後 Trastuzumab 療法 あり / なし: 27 / 35、術後
内分泌療法 あり / なし: 36 / 26 であった。実際に選択された術後薬物療
法を表に示す。NCCN ガイドライン通りに術後薬物療法が選択された割合は、
全 体 で 41.9% (26/62)、 う ち HR 陽 性 は 30.0% (12 / 40)、HR 陰 性 は
63.6% (14 / 22) であった。選択されなかった理由は、患者希望 20 例、高齢
8 例、合併症・その他 8 例であった。経過観察期間中央値 53.9 ヶ月で、再発
を 4 例に認めた。【考察】HR 陽性症例で NCCN ガイドライン通りに選択されて
いない割合が高く、患者希望や高齢の理由で内分泌療法± Trastuzumab が選
択されていると考えられる。【結論】cT1N0M0 の HER-2 陽性乳癌の術後薬物
療法が NCCN ガイドライン通りに選択される割合は低い可能性がある。
【目的】Her2 陽性乳癌に対する補助化学療法は , 化学療法+ハーセプチン (H)
が強く推奨されている一方で高齢者に対しては心機能障害等を有する本治療
の安全性は確立されていない . 今回 , 75 歳以上の高齢者乳癌に対してハーセ
プチンを含むレジメンを施行した症例の治療成績を検討した 【
. 対象と方法】
2009-2013 年に当院で治療を行った治療開始時 75 歳以上の Her2 陽性乳癌症
例で , インフォームドコンセントにてハーセプチン療法の施行に同意を得られ
た 7 例 (1.9%) を対象とした . 対象患者の背景因子は全員が女性 , 年齢 (75-81
歳 , 中 央 値 76 歳 ), PS(0(6 例 ), 1(1 例 )), 臨 床 病 期 (IIB(2 例 ), IIIA(3 例 ),
IIIB(1 例 ),IV(1 例 )), Intrinsic subtype(luminal-Her2(3 例 ), Her2(4 例 ))
で 治 療 は FEC75 × 4+H(Triweekly) +pacritaxel(P)(weekly × 12)(3 例 ),
H+P(4 例 ) が施行された 【
. 結果】観察期間は 16-62 ヵ月 ( 中央値 30.0 ヵ月 ),
治療経過は補助療法として施行した 6 例中 4 例が 1 年間の完遂 ,1 例が化学療
法のみ中止し H 療法継続治療中 (4 ヵ月 ) で , 1 例が 4 ヶ月で中止となった . 中
止した 1 例は FEC75 施行後に H+P 療法を開始した症例で H 療法 5 回目より心
不全症状と EF の低下を認めホルモン療法に変更した . 他の有害事象としてイ
ンフュージョンリアクションは認めず , 好中球減少 :4 例 (G3:1 例 ,G2:3 例 ),
末梢神経障害 4 例 (G2:3 例 ,G1:1 例 ), 食欲不振 3 例 (G2:2 例 ,G1:1 例 ), 脱毛
4 例 (G2:3 例 ,G1:1 例 ), 便 秘 4 例 (G2:3 例 , G1:1 例 ), 浮 腫 4 例 (G2:2
例 ,G1:2 例 ), 口内炎 2 例 (G2:1 例 ,G1:1 例 ) を認めた .5 例全員が生存で , 2 例
に 再 発 (1 例 : 骨 (21),1 例 : 皮 膚 (9M)),1 例 に 他 病 死 ( 脳 梗 塞 ) を 認 め た 【
. 結
語】PS の良好な症例に対してハーセプチンを併用した化学療法は比較的安全
に施行可能であったが , アンスラサイクリン系抗癌剤と連続しての使用には心
機能障害の発生に留意する必要がある .
487
一般セッション(ポスター掲示)
HER2 陽性局所進行乳癌の術前治療レジメンの選択肢として、ドセタキセル
(D) +カルボプラチン (C) +トラスツズマブ(T-mab)併用レジメン (DCH) が
ある。その一方で HER2 陽性転移再発乳癌 (MBC) の1次治療において、パク
リタキセル(P)+ C + T-mab の 3 剤併用療法と P + T-mab の 2 剤併用を比較
した海外臨床第 3 相試験では、無増悪生存期間において C の上乗せ効果が検証
できた。また、3 週毎投与法でのアルブミン懸濁型パクリタキセル(n-PTX)
260mg/m2 と P 175mg/m2 を比較した第 3 相試験(CA012)では、奏効率に
おいて n-PTX の優越性が示され血液毒性も有意に低かった。さらに第 2 相試
験(CA024)では、3 週毎 n-PTX 300mg/m2 が 3 週毎 D 100mg/m2 と奏
効率においてほぼ同等であることが示唆された。以上より、HER2 陽性乳癌に
対する術前 n-PTX + C + T-mab 併用療法 (nPCH) の可能性を検証する目的で
第 1 相試験を計画した。対象は、Stage3b3c の HER2 陽性局所進行乳癌女性。
n-PTX は レ ベ ル 1:220mg/m2、 レ ベ ル 2:260mg/m2、 C は 6AUC、
T-mab は 1 コース目 8mg/kg、2 コース目以降 6mg/kg とし、3 週 1 回投与と
した。用量制限毒性 (DLT) の定義は、1 コース中の Grade(G)4 の血小板減少、
輸 血 を 必 要 と す る G3 の 血 小 板 減 少、7 日 間 以 上 続 く G4 の 好 中 球 減 少、
38.5℃以上の発熱を伴う G3 の好中球減少、G3 以上の非血液毒性とした。結果:
各レベルに 3 例が登録された。1 コース中の DLT は各レベルにおいて認められ
ず MTD は得られなかった。しかし、2 コース目以降では G4 の血小板減少を 2
例、G4 の好中球減少を 2 例、G4 のヘモグロビン減少を 3 例認めた。G3 の筋
肉痛、関節痛も 2 コース目で 1 例認めた。平均腫瘍縮小率 59.8%、治療コー
スは 3 ~ 6(平均 4.3 コース)で、全例で乳房切除術が可能であった。結語:
nPCH 療法は奏効率の高いレジメンとして期待できるが、DLT は認められな
かったものの最終的に血液毒性発現率が高く、継続性に問題があるため、現
在 C の投与量を 5AUC に減量したレベル 1.5 を検証中である。
ポスター掲示
GP-1-03-10
GP-1-03-11
HER2 陽性乳癌術後補助化学療法としての Nab-Paclitaxel/
Trastuzumab 併用療法の投与完遂性と安全性の検討
1
ER(-)PgR(-)HER2(+)乳癌の術後治療戦略―ECTH 療法
1
戸田中央総合病院 乳腺外科、2 埼玉乳がん臨床研究グループ
東北薬科大学病院 乳腺外科、2 東邦大学 医療センター 佐倉病院 外科
朴 英進 1,2、佐藤 礼実 2、北原 知晃 2、門屋 健吾 2、高木 隆一 2、瓜田 祐 2、
森山 彩子 2、田中 宏 2、加藤 良二 2
大久保 雄彦 1,2、井上 賢一 2、松本 広志 2、山田 博文 2、櫻井 孝志 2、
君塚 圭 2、山崎 泰男 2、黒住 昌史 2、甲斐 敏弘 2
一般セッション(ポスター掲示)
ER(-)PgR(-)HER2(+)乳癌(以下--+乳癌)は予後不良であり、--+
乳癌における術後補助療法はかつてから Anthracycline 含有レジメン(EC や
EC - Taxane)を中心とする化学療法が主力であった。その後 HERA 試験や
NSABP-B31 試験の結果により、HER2 陽性乳癌に対する術後補助療法として、
本邦では 2008 年 2 月から Trastuzumab(=Herceptin(以下 H 療法))が適応追
加となった。これを受けて当科では、--+乳癌に対する術後治療戦略とし
て ECTH 療法と称した 1 年半にわたる静注術後補助療法を 2008 年 3 月から臨
床導入した。--+乳癌に対する術後治療戦略としての ECTH 療法の規定治
療レジメンは以下のとおりである。Epirubicin 75mg/m2 + Cyclophophamaide 600mg/m2、4クール、3週毎(以下EC療法)→Taxane(以下T療法)
(Docetaxel
(以下D)60mg/m2 計4クール、3週毎あるいはnanoparticle aibumin bound
Paclitaxel(以下nabP)175mg/m2 計4クール、3週毎)→H療法(初回8mg/kg、
2回目以降6mg/kg、計17クール満了、3週毎)
。対象は2008年3月から2014年
12月までに、術前化学療法の適応がなく第1治療が手術であった--+原発性乳
癌43例である。方法:対象43例に対して術後補助療法である上記規定治療(ECTH
療法)
が施行された。結果:対象43例においてEC療法やT療法中の再発例はなかっ
た。またH療法中の再発例は3例あり、規定治療終了後の経過観察期間における
再発例が1例あった。よって--+原発性乳癌無再発例は39例であり、無再発生
存日数の中央値は1279日であった。また対象43例中死亡例は2例であり、生存
日数の中央値も1279日であった。さらに--+乳癌に対する治療戦略である
ECTH療法と2008年2月までの既療法を比較すると、5年健存率は88.8%と
68.8%で有意差を認め、5年生存率は91.8%と85.8%で有意差を認めなかった。
ECTH療法の安全性では、ECDH療法の1例にH療法第4クール目に心毒性による
治療中止があったが、その他の症例での中途治療中止例はなく、このECTH療法
の安全性は高かった。結論:--+乳癌の治療戦略としてのECTH療法は高額療
養ではあるが、費用対効果は高いと考える。
【背景】従来のパクリタキセル製剤は乳癌術後補助化学療法の標準療法として
確立されている . しかしながら , Nab-Paclitaxel については海外においても
標準療法とはなっていない . 術後補助化学療法としては 2 つの試験がある . い
ずれの試験においても認容性が確認されている . しかしながら , 術後補助化学
療法としてNab-PaclitaxelとTrastuzumabとの併用データは無い.Nab-Paclitaxel
は従来のパクリタキセル製剤と比べてクレモホールEL及び無水エタノールが使
用されていないことから,臨床的な有用性を高めており,術後補助化学療法として
も期待されている.また,Infusion reactionが無く,Trastuzumabを使用する際に
問題となるInfusion reactionのリスクが重複しないことから従来のパクリタキセ
ル 製 剤 と 比 べ て 併 用 の 安 全 性 は 高 い こ と が 予 想 さ れ る.こ の こ と か
ら,NSABP-B31/N9831試験と同様にAnthracycline Baseレジメンの4サイクル
後にNab-Paclitaxel(Nab-Paclitaxel)とTrastuzumabを4サイクル併用し,さらに
Trastuzumab単 独 で52週 ま で(1年 間)継 続 す る レ ジ メ ン の 投 与 完 遂 性
(feasibility)および安全性を検討した.なお,Trastuzumabは本邦において術後補
助化学療法として承認されている3週毎投与にて検討を行った.【対象と方法】適
格 規 準 は,乳 癌 術 後 補 助 化 学 療 法 を 必 要 と す る 臨 床 病 期I ~ IIIA,HER2陽
性,PS0,1,年 齢20 ~ 70歳.Anthracycline Baseレ ジ メ ン4サ イ ク ル 後NabPaclitaxel(4サイクル)+Trastuzumab(1年間)の投与完遂性および安全性を検討
した.Anthracycline Baseの術後補助化学療法を4回行った後,Nab-Paclitaxelと
Trastuzumabを同時に投与した.Nab-Paclitaxelは260mg/m2を3週後毎に30
分間かけて4回投与した.Trastuzumabの初回投与時8mg/kgを,2回目以降は
6mg/kgを3週毎に1年間投与した.Anthracycline Baseの術後補助化学療法
は ,AC(60/600)mg/m2q3wk,EC(90/600)mg/m2q3wk,FEC(500/100/500)
mg/m2q3wkのいずれかを行った.【結果】症例数設定は30例で,2011年7月か
ら2013年6月までに39例が登録された.今回は,プライマリー・エンドポイント
である投与完遂率,セカンダリー・エンドポイントである安全性,生存割合,無再
発生存割合,Nab-Paclitaxelの相対用量強度(RDI)と無再発生存期間との関係,生
存期間および無再発生存期間について報告する.
GP-1-03-12
GP-1-03-13
山形大学 医学部 消化器・乳腺甲状腺・一般外科
静岡赤十字病院 外科
鈴木 明彦、柴田 健一、小野寺 雄二、木村 理
宮部 理香、熱田 幸司
HER2 陽性乳癌術後補助療法の検討
当院における HER2 陽性乳癌の再発率とその臨床病理学的特徴
HER2 陽性乳癌の術後補助療法については,2008 年に Trastuzumab (Her)
が術後補助療法に適応拡大された。St.Gallen 2013 では,サブタイプ別の推
奨 薬 物 療 法 と し て,Luminal B HER2 陽 性 (Luminal B) に は, 化 学 療 法
+Her+ ホルモン療法,HER2 には,化学療法+ Her とされ,Her 単独投与は
現時点ではエビデンスなしである。また,HERA study, SAFIR study の結果
より,術後 Her は 1 年投与が標準治療と考えられるようになっている。今回,
当科での HER2 陽性乳癌の術後補助療法状況について検討をおこなったので
報告する。<対象> 2008 年から 2013 年の Stage I-III HER2 陽性乳癌手術症
例 45 例。年齢 38-90 歳。サブタイプ Luminal B 26 例,HER2 19 例。<治
療方針の決定>再発リスクを考慮して 1) TC (Docetaxel, Cyclophosphamide)
→Her, 2)FEC100 →Her, 3) FEC100 →Docetaxel 75 →Her をLuminal Bに対
してはさらにホルモン療法を提示し,患者と相談の上決定した。<結果> HER2
の有合併症および腫瘍径10mm以下症例4例以外は,何らかの補助療法が行わ
れていた。Luminal Bは,化学療法が15例 57.6% ( 1) 2例,2) 5例, 3) 7例
その他1例),そのうち14例にHerが入っていた。残る11例はホルモン療法単
独であった。HERは,化学療法が13例 68.4% ( 1) 3例, 2) 0例,3) 6例,そ
の他3例)
,そのうち9例にHerが入っており,また患者希望により2例がHer
単独投与されていた。全Her投与症例は,25例 (55.5%)であった。術後再発症
例は,観察期間中央値45 ヶ月でLuminal B 4例, HER2 1例 (11.1%)うち死亡
1例であった。HER2陽性乳癌は2年以内の再発が多いとされるが,当科では半
数以上の患者に術後補助療法として,化学療法,Herが行われており,比較的制
御できているものと考えられた。
【はじめに】近年,サブタイプ分類による術前術後治療が確立され,乳癌治療
は標準化が一気に進んだ.特に,2008 年 2 月トラスツマブに対し,HER2 過
剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法が追加適応として承認さ
れたことにより,HER2 陽性乳癌の治療に大きな変化をもたらした.今回我々
は,当院で診断手術を施行した HER2 陽性乳癌の再発率とその臨床病理学的
特徴について検討したので報告する.【対象症例】症例は当院で 2008 年 5 月~
2012 年 12 月までに診断手術・術後補助治療を施行した乳癌症例 302 例中,
浸潤癌と診断された 249 例である.Intrinsic subtype は 2013 年 St. Gallen
の代替定義に順じて分類したが,2009 年以前は Ki-67 ラベリングインデック
スを日常的に計測していなかったため,Luminal(ER and/or PgR 陽性 ,HER2
陰性),Luminal HER2(ER 陽性かつ HER 2陽性),Her2(ER 陰性かつ HER2
陽性),Basal(ER 陰性かつ HER2 陰性)に分類した.【結果】浸潤癌 249 例中,
Luminal は 169 例(67%),Luminal HER2 は 23 例(9%),HER2 は 14 例
(6%),Basal は 44 例(18%)で あ っ た.HER2 陽 性 の Luminal HER2 と
HER2 subtype を合わせた 37 例中,観察期間内に 8 例(21.6%)の再発を認め
た.8 例中 2 例は,合併疾患や高齢であることを理由に術前術後に補助化学療
法やトラスツマブ投与が施行されておらず,術前術後トラスツマブを 1 年間投
与 さ れ て い る 患 者 の 再 発 例 は 6 例(16.2%)の み で あ っ た. こ の 6 例 は
Luminal HER2 が 5 例,HER2 が 1 例であった.病期分類は温存術後乳房内再
発 Stage I が 1 例,Stage IIB 2 例,Stage IIIA 1 例,Stage IIIC 2 例 と、
進行癌が多い傾向であった.6 例中,死亡例は産褥期炎症性乳癌の 1 例のみで,
他の 5 例は現在も抗 HER2 療法を含めた再発治療を施行中である.
【考察】今回,
2008 年以降のデータの集積であり,それ以前の症例との比較を行っていない
が,一般的に約 3 割程度に 5 年以内の再発が認められることがあるとの報告を
考慮すると,術後トラスツマブ投与を行うことにより,再発率が低減されて
いることが当院のデータからも明らかである.文献的考察を加えて報告する.
488
ポスター掲示
GP-1-03-14
GP-1-03-15
医療法人虹樹会 おおえ乳腺クリニック
がん・感染症センター都立駒込病院 外科
大江 信哉
堀口 和美、後藤 理紗、井寺 奈美、本田 弥生、宮本 博美、有賀 智之、
山下 年成、黒井 克昌
トラスツズマブエムタンシンが奏効を持続している HER2 陽性
進行再発乳がん3例の検討
当院におけるペルツズマブ (PER) の使用経験 -この 1 年とこれからの HER2 陽性進行・再発乳癌を考える- GP-1-03-16
GP-1-03-17
1
川崎医科大学 乳腺甲状腺外科
当科における Pertuzumab の使用経験
当科における T-DM1 の使用経験
岩手医科大学 外科学講座、2 岩手医科大学 病理学講座分子診断病理学分野
小松 英明 1、柏葉 匡寛 1、石田 和茂 1、川岸 涼子 1、松井 雄介 1、
大槻 英恵 1、上杉 憲幸 2、川崎 朋範 2、菅井 有 2、若林 剛 1
下 登志朗、紅林 淳一、緒方 良平、齋藤 亙、小池 良和、太田 裕介、
山下 哲正、野村 長久、山本 裕、田中 克浩
【はじめに】Pertuzumab は、HER2 レセプターの細胞外ドメインに結合する
完全ヒト化モノクローナル抗体である。HER2 と HER3 のヘテロ二量体の形成
を阻害する作用が強いとされる。CLEOPATRA 試験においては Trastuzumab
と Docetaxel に上乗せすることで、PFS(中央値)で 18.7 ヶ月、OS(中央値)
においては 56.5 ヶ月とプラセボ群と比較して有意な延長が示された。今回
我々は HER2 陽性の転移・再発乳癌に対し Pertuzumab を使用した 4 例に対
し検討を行った。
【対象】平成 25 年 10 月~平成 26 年 10 月までに Pertuzumab
を開始した、転移・再発乳癌 4 症例。ER、PgR は IHC で 1% 以上、HER2 は
3+。また 2+ の場合 FISH; 2.0 以上を陽性とした。【結果】年齢中央値は 59 歳
(57 ~ 60 歳)であった。Subtype では Luminal B-like (HER2 positive) が 2
例、HER2 positive (non-luminal) が 2 例であった。Pertuzumab 投与開始前
の再発治療レジメンは中央値で 2.5(0 ~ 8)レジメンであった。転移臓器は肝
転移が 1 例、肺転移が 1 例、骨転移が 2 例、脳転移が 1 例、縦隔リンパ節転移
が 2 例 で あ っ た。 全 症 例 が 現 在 も 治 療 継 続 中 で あ る。 ま た、 全 症 例 と も
Grade3 以上の有害事象は現れていない。【考察】HER2 陽性乳癌の再発症例に
Pertuzumab の使用は、Trastuzumab 単独と比較して PFS、OS が延長される
ことが示されており、かつ追加投与による有害事象の増悪等も認めないこと
から第 1 選択肢となる重要な治療方法である。当科においても治療継続困難症
例は認めず、かつ DFS は最長で 14M であった。さらなる症例の検討と文献的
検証を加え報告する。
489
T-DM1 は 2013 年 9 月、トラスツズマブおよびタキサン系薬剤の治療歴のあ
る HER2 陽性進行再発乳癌に対し保険適用を得た新規抗 HER2 療法剤である。
海外第 III 相 EMILIA 試験で、T-DM1 はラパチニブ + カペシタビンに比べ、無
増悪生存期間と全生存期間を有意に延長した。当科における T-DM1 使用経験
をまとめた。2013 年 9 月から 2014 年 9 月までのトラスツズマブおよびタキ
サン系薬剤の治療歴のある HER2 陽性再発乳癌患者 5 例に対し T-DM1 3.6
mg/kg を 3 週間毎静脈内投与した。Response Evaluation Criteria in Solid
Tumors(RECIST)v1.1 に従い治療効果を評価し、安全性は NCI-CTCAE に従
い評価した。術後補助療法としては、4 例でアンスラサイクリンが使用、3 例
でタキサンが使用されていた。トラスツズマブは 3 例で 1 年間使用され、1 例
が原発巣で HER2 陰性であったため使用されず、1 例が肝機能障害のため短期
で投与中止されていた。ホルモン療法としては、2 例でタモキシフェンが使用
されていた。年齢の中央値は 55 歳(41-62 歳)。無病生存期間の中央値は 23
カ月(8-101 カ月)。再発時には全例内臓転移を有しており、肺・肝・骨・リ
ンパ節のいずれかに転移を認めた。全例、免疫染色か FISH 法で HER2 陽性が
確認されていた。1 例のみホルモン受容体陽性であった。再発後の化学療法の
レジメン数の中央値は 3(1 -5 )であり、T-DM1 使用前に全例でトラスツズマ
ブ、ペルツズマブ、タキサンが使用されており、内 2 例にラパチニブが使用さ
れていた。投与期間の中央値は 4 カ月(3 - 6 カ月)。partial response(PR)1
例、stable disease(SD)2 例、progressive disease(PD)2 例であった。PD
1 例は他剤に変更しているが、全例生存中である。前治療でペルツズマブが有
効な症例に T-DM1 は有効であった。有害事象では疲労感、血小板減少、AST
増加があり、Grade 3 以上では SD 1 例に AST 上昇を認めたのみであった。
T-DM1 導入後の使用期間が短いため、有用性を評価するには時期尚早である
が,現在まで重篤な有害事象は認めず安全に使用できている。今後は、長期
使用例の評価が必要である。
一般セッション(ポスター掲示)
<はじめに>再発乳癌あるいは局所進行乳癌に対する薬物療法のセカンドラ
イン以降にトラスツズマブエムタンシン(以下カドサイラ)を投与し、奏効を
【目的】現在 HER2 陽性進行・再発乳癌の一次治療として、トラスツズマブ
持続している 3 例を報告し、HER2 陽性乳癌に対する治療を考察する。<症例
(HER) +ペルツズマブ (PER) +タキサン系薬剤が、その後の二次治療として
1 > S.O 68 歳、 女 性。2006 年 9 月 に 左 乳 癌 発 覚 し、Bt+Ax を 施 行。
は、トラスツズマブエムタンシン (T-DM1) が、PER および T-DM1 の承認に伴
pT2N0M0 Stage2A、ER+、PgR+、HER2+++。術後 EC ×4回施行し TAM
い NCCN ガイドラインにより推奨されている。当院においても 2013 年以降、
内服を継続中の 2013 年 10 月に左癌性胸膜炎および左鎖骨上窩リンパ節再発
HER2 陽性進行・再発乳癌に対する治療戦略は、それまでの HER を軸とした、
確認。トラスツズマブ+カペシタビン開始。一時胸水減少し腫瘍マーカーも
あるいはラパチニブ (LAP) を含めたスタンスから様相が一変した。抗 HER2 療
低下したが、約 10 ヶ月で増悪したため 2014 年 9 月にカドサイラに変更した
法の劇的な変化の時期における当院の治療状況に関して PER を中心にまとめ、
ところ、胸水消失し腫瘍マーカーも正常化し治療継続中。<症例 2 > R.Y 43
今後予測される抗 HER2 療法の展開について考察する。【方法】2013 年 9 月か
歳、女性。2005 年 11 月に右乳癌に対して Bt+Ax 施行。pT2N0M0 Stage2A、
ら 2015 年 1 月までの期間に、当院で PER の投与を開始した HER2 陽性進行・
ER+、PgR+、HER2+++。術後 EC4 回施行後 TAM 内服を 2011 年 3 月まで
再発乳癌について検討した。【結果】PER 投与を開始した症例の総数は 34 例で
継続。2013 年 3 月に胸骨傍リンパ節再発確認。TAM、リュープロレリンおよ
あった。年齢の中央値は 53 歳 ( 34-71 )、男性が 1 例含まれていた。再発症
びトラスツズマブ開始するが奏効せず。2013 年7月からカペシタビンをオン
例は 14 例、Stage IV の症例は 18 例、切除不能症例が 2 例であった。ホルモ
するが副作用にて断念。8 月よりビノレルビンをオンしたところ、腫瘍は著明
ンレセプター陽性症例は 13 例であった。初再発病巣の内訳は、骨 17 例、肝 9
に縮小。2014 年 8 月まで1年継続したが腫瘍が再増悪したため、2014 年 8
例、リンパ節 9 例、局所 6 例、肺 4 例などであった ( 重複あり )。治療経過中に
月よりカドサイラに変更したところ腫瘍消失し治療継続中。<症例 3 > S.S 5 例の脳転移を認めたが、PER 開始以降に発症した脳転移はそのうち 1 例で
51 歳、女性。2013 年 9 月初診。初診時右乳房が乳癌に全置換され、乳房から
あった。進行・再発に対し初治療として PER を含む治療を行った症例は 7 例
連なる皮膚の浮腫が背側まで広がり炎症性乳癌様所見を呈していた。さらに
であり、27 例はその他の抗 HER2 療法を含む既治療症例であった。併用薬は
腋窩リンパ節転移著明だったが明らかな遠隔転移は見られず。局所進行乳癌
ドセキセル (DOC) が 27 例と 79%を占めており、DOC 併用のサイクルの中央
T4N2M0 Stage3B、ER-, HER2+++。2013 年 10 月よりペルツズマブ+ト
値は 6 回であった。投与期間の中央値は 281 日(112 ‐ 474)であり、10 例に
ラスツズマブ+ DOC 開始したところ腫瘍縮小と腋窩リンパ節転移の縮小が見
おいて次治療としての T-DM1 投与が行われた。いずれの症例においても、
られたが、約1年で徐々に増悪したため、2014 年 9 月にカドサイラに変更し
PER を含む治療による clinical benefit が一旦得られており、PER 単独の原因
たところ、腫瘍は著明に縮小し治療継続中。<考察> カドサイラはトラス
と思われる有害事象を認めなかった。22 例においては現在も安全に PER 使用
ツズマブが奏効しなくなった進行再発乳癌症例に対しても極めて良好に反応
中である。【考察】原発巣では HER2 陰性であったが再発巣の re-biopsy の結果
する印象を受ける一方、カドサイラが奏効しなくなる可能性も否定は出来ず、
HER2 陽性と判明し、現行の抗 HER2 療法が奏効している症例や、一度 PER を
その際の治療戦略が困難と考えられる。
含む治療が PD となった後に、後治療で PER に re-challenge したところ奏効
を得られた症例なども徐々に蓄積されつつある。抗 HER2 療法として 4 剤の選
択肢が得られた結果、腫瘍の biology を十分に吟味し、QOL も重視しつつ、
HER2 陽性進行・再発乳癌治療を進めていく事がますます重要になってきてい
るといえる。
ポスター掲示
GP-1-03-18
GP-1-03-19
当施設におけるPertuzumab(パージェタ)投与症例11例の検討
HER2 陽性転移再発乳癌に対する Eribulin+Trastuzumab 併
用化学療法の前向き観察研究(KSCOG-BC06)
姫路赤十字病院 乳腺外科
1
朝倉医師会病院、2 久留米大学外科、
国立病院機構九州医療センター 乳腺センター、
4
田山メディカルクリニック、5 公立八女総合病院、6 広仁会 広瀬病院、
7
JCHO 久留米総合病院
湯淺 壮司、佐々木 陽子、大塚 翔子、渡辺 直樹
3
一般セッション(ポスター掲示)
【 目 的 】HER2 陽 性 進 行 再 発 乳 が ん に 対 し て 2013 年 9 月 に Pertuzumab が、
2014 年 4 月には Trastuzumab emtansine が販売開始され治療薬が充実して
きている。当院においてこれまで 11 例の乳癌患者にパージェタの投与を行っ
た。今回、手術不能乳癌(A 群)と再発乳癌(R 群)の 2 群に分け比較検討した
のでここに報告する。
【対象・方法】当院で 2013 年 9 月よりパージェタ投与を行った 11 例の乳癌患
者を対象とした。レジメンは CLEOPATRA study に準じている。
【結果】A 群 4 例、R 群 7 例であった。年齢平均値(歳、標準偏差)はそれぞれ
47.2(± 2.98)、59.7(± 9.65)で p 値 0.036 であった。組織型は A 群は全例
硬癌であり、R 群は 5 例が硬癌、2 例が乳頭腺管癌であった。サブタイプは A
群全例が Luminal-HER で、R 群は 2 例が Luminal-HER、5 例が HER2 rich で
あった。HER2 タンパクの発現状況は全例が IHC 3+ であった。Ki-67 は A 群
で 53.6(± 13.7)%、R 群で 59.0(± 8.7)% であった。パージェタ投与開始ラ
イン平均値は A 群 2.75(± 2.0)、R 群 3.86(± 3.86)で p 値 0.433 と有意差を
認めなかった。総実施クール数平均値は 10.5(± 6.4)、10.14(± 7.1)で p 値
0.936 であった。前治療は A 群では 2 例で実施しており、R 群で全例実施して
いた。また、前治療にはすべての症例で Trastuzumab が含まれていた。投与
中止に至った症例は A 群で 1 例あり、パージェタ 15 クール実施後に PD とな
りレジメンが変更された。R 群では 3 例あり、PD となった症例が 2 例、浮腫
の増悪で中止した症例が 1 例あった。
【考察】パージェタは進行再発乳がんの 1st ラインとして有効性が確認されて
いる。しかし、当院の症例では 1st で使われたものから 7th で使われた症例ま
で幅が広い。これはパージェタの発売時期が影響しており、2014 年以降に乳
癌と診断された症例では全例が 1st でパージェタを用いていた。総実施クール
数で A 群、R 群に有意差を認めなかったが、いずれの群でも投与開始後 5 クー
ル前後の症例が含まれており、中止症例がまだ少ないため今後の経過を見る
必要がある。また、PD 以外の理由で中止に至ったのは再発症例で 7th ライン
としてパージェタを実施した症例のみであった。ドセタキセルの累積投与量
上昇に伴い出現した高度の浮腫・歩行困難がその理由であった。パージェタ
の安全性は NeoSphere Trial, TRYPHAENA Trial 等でも確認されており、今
後は、併用する細胞障害性抗がん剤の種類・至適投与量等の検討が重要となっ
てくると思われる。
高橋 宏樹 1、唐 宇飛 2、岩熊 信高 2、三島 麻衣 2、竹中 美貴 2、
藤井 輝彦 2、赤木 由人 2、篠崎 広嗣 1、鈴木 稔 1、中川 志乃 3、
田山 光介 4、小野 博典 5、古賀 稔啓 6、田中 真紀 7
【目的】エリブリンは本邦で開発され、チューブリンの重合を阻害して微小管
の伸長を抑制することで、アポトーシス細胞死を誘導し、がん細胞の増殖を
抑制する作用機序を有する抗癌剤として、転移再発乳癌において、国内第 2 相
試験においても良好な結果が得られた。今回、Her2 type 症例に対する Eribulin(Halaven)+Trastuzumab(Herceptin) 併 用 療 法 の 有 用 性 に つ い て 検 討 し
た。【対象と方法】年齢 20 ~ 80 歳、PS0-2、主要臓器機能が維持された進行
再 発 乳 癌 患 者 を 対 象 と し、 多 施 設 共 同 で 行 う 観 察 研 究 で あ る。Primary
endpoint は無増悪生存期間と安全性、Secondary endpoint は抗腫瘍効果、
QOL 等とした。Eriblin(1.4mg/m2)を2週投与 1 週休薬(day 1, 8投与)し、
Herceptin は 3 週毎(day1 投与)投与する3週間を 1 コースとして繰り返す。
【結果】これまでの登録症例は 10 例で、患者背景は年齢中央値 55 歳(37-62
歳)、PS0/1/2:7 例 /2 例 /1 例、ER+/Her2+:8 例、ER-/Her2+:2 例であっ
た。現在評価可能の 8 症例おいて CR/PR/SD/PD:1/2/2/3 例で、奏効率は
37.5%, 病勢コントロール率は 62.5% であった。G3 以上有害事象は好中球減
少 3 例、貧血 1 例、末梢神経障害 1 例であった。【考察】前治療歴のある進行再
発乳癌に対する Eribulin+Trastuzumab 療法は有効且つ安全に行うことが可
能で、症例登録進行中である。
GP-1-03-20
GP-1-03-21
当院での乳癌再発転移 T-DM1 投与 25 症例の検討
HER2 陽性進行再発乳癌に対する Pertuzumab +
Trastuzumab 併用療法の使用経験
1
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科、2 聖マリアンナ医科大学横浜市西
部病院 乳腺内分泌外科、3 聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージング先
端医療センター附属クリニック、4 ブレスティアたまプラーザ
1
上島 知子 1、津川 浩一郎 1、大井 涼子 1、黒田 貴子 1、土屋 聖子 1、
永澤 慧 1、吉田谷 芙美 1、吉江 玲子 1、志茂 彩華 1、土屋 恭子 1、
小島 康幸 1、志茂 新 1、速水 亮介 1、西川 徹 1、矢吹 由香里 2、白 英 3、
川本 久紀 3、首藤 昭彦 3、福田 護 3、河原 太 4
埼玉県 済生会川口総合病院 外科、2 済生会川口総合病院 病理診断科
高橋 由佳 1、齋藤 徹也 1、佐藤 雅彦 1、伴 慎一 2、佐藤 英章 2
【背景】新規抗 HER2 薬 Pertuzumab(Per) は HER2/HER3 ダイマー形成阻害に
より HER2 シグナルを遮断し抗腫瘍活性を発揮して細胞増殖を抑制する。
Trastuzumab(Tra)とは作用機序が異なるため、併用により高い効果が得ら
れることが知られている。CLEOPATRA 試験では HER2 陽性進行再発乳癌の 1
次治療で Per + Tra + Docetaxel(Doc) 併用療法において PFS および OS の有
2014 年 2 月から 11 月の間で T-DM1 投与を開始した乳癌再発転移症例 25 例
意な改善が示された。本邦では 2013 年 9 月に承認されたが、臨床的な治療効
について 12 月時点のデータで検討した。投与時平均年齢 51 歳、組織型は硬
果や安全性についての報告はまだ少ない。【対象・方法】2013 年 12 月から
癌 15 例、充実腺管癌 2 例、乳頭腺管癌 2 例、微小乳頭癌 1 例、不明 3 例、ER
2014 年 8 月に当院で Per+Tra + Taxan 系抗癌剤併用療法を導入した HER2 陽
陽性 17 例、ER 陰性 8 例、PgR 陽性 12 例、PgR 陰性 13 例、HER2(3+)15 例、
性進行再発乳癌患者を対象とし、臨床的治療効果および有害事象について報
HER2(2+)Fish 増幅あり 10 例、初発病期は 3 期以下 15 例、4 期 10 例、治療
告する。【結果】対象患者は 5 例(手術不能進行症例 3、術後再発症例 2 例)。年
ラインはホルモン治療+抗癌剤治療+分子標的治療合わせて平均 5.7 レジメ
齢中央値 66.2(46-85)歳、ER:陽性 1 例、陰性 4 例。再発転移は 2 臓器以上
ン目、抗癌剤治療+分子標的治療合わせて平均 4.7 レジメン目、効果は CR1 例、
4 例、炎症性乳癌 1 例。1 次治療は 2 例、2 次治療以上が 3 例。Doc は 4 例で併
PR3 例、SD9 例、PD11 例、PFS 中央値 3 か月、施行コース数中央値 4 回とい
用、1 例はアレルギー反応認め、nab-Paclitaxel(nab-PAC) を併用した。治療
う結果であった。10 例は 2014 年 12 月末時点で投与継続中であったため、
経過中 Doc 中止は 3 例で、中止理由は有害事象が 2 例、1 例は高齢の為であっ
PFS や施行コース数は変化する可能性がある。肝機能障害や血小板減少の副
た。Grade3 以上の有害事象は好中球減少 2 例(Grade3)、発熱性好中球減少
作用が特徴的であるが、今回の当院投与症例で多かった副作用は肝機能障害
症 1 例(Grade3)、全身倦怠感 2 例(Grade3)。Per で報告されている下痢や皮
や血小板減少、嘔気であったが、いづれも Grade1 が多く、治療中止になた症
例はなく、血小板減少で延期 1 例、肝機能障害で延期減量は 1 例にみられた。 疹は Grade2 以下でコントロール可能であった。平均観察期間は 8.2 ヶ月(412 ヶ月)。臨床的治療効果は PR2 例、PD3 例。PD 症例全例に前治療歴があり、
Late line での投与が多く、PFS が短い症例も多いが、SD 含めると効果は半数
2 例は long SD を得るも病状増悪認めレジメン変更、1 例は死亡。PR の 2 例は
にみられている。保険承認されてまだ短期間であるため投与症例数が少なく、
治療継続している。【考察】有害事象は抗癌剤によるものが中心で Per 特有な
観察期間も短いが、今後の観察の継続や早期の line での投与で HER2 陽性乳癌
ものはコントロール可能であり安全に投与可能であった。また PD 症例でも 2
の予後がますます改善することが期待できる。
例は long SD を得ており、1 次治療だけでなく 2 次治療以降の選択肢としても
有用であると考えられた。今回併用した抗癌剤はすべて Taxan 系薬剤であっ
たが、他の薬剤との併用に関しても報告が待たれるところである。当院でも
さらに症例の経験を重ねて検討していきたい。
490
ポスター掲示
GP-1-03-22
GP-1-03-23
HER2 陽性進行再発乳癌に対する Pertuzumab 投与症例の検討
演題取り下げ
京都第一赤十字病院 乳腺外科
小谷 達也、李 哲柱、張 弘富、本田 晶子
【目的】Pertuzumab は Trastuzumab と抗癌剤の併用において HER2 陽性進行
再発乳癌に対して無増悪生存期間及び全生存期間の延長が期待できる.当院
での Pertuzumab 投与症例について検討する.【対象と方法】2013 年 12 月か
ら 2014 年 12 月までに当院で Pertuzumab を投与した HER2 陽性進行再発乳
癌 12 例について検討した.【結果】年齢は 54 才から 73 才.中央値 65 才.12
例中,術後再発乳癌 8 例,4 期乳癌 4 例.HER2 発現状況は IHC 3+ が 10 例,
IHC equivocal で FISH 増幅確認が 2 例.サブタイプ別では HER2 enriched
が 3 例,LuminalB-HER2 陽性が 9 例.主な転移病変は骨,肺,肝,リンパ節,
脳,髄膜,子宮,卵巣,副腎,胃,腹水などであった.前治療については,
すべての症例でトラスツズマブの治療歴があるが,アンスラサイクリンは 12
例中 10 例.タイケルブは8例であった.治療 Line 数は ( 一次治療 ) /(二次)
/( 三 次 以 降 ): 0 / 3 / 9 例. 併 用 抗 癌 剤 は Docetaxel:6 例,nab ー
Paclitaxel:3 例, Vinorelbin:2 例 , Gemcitabin:1 例 , Eribulin:1 例
(Pertuzumab + Trastuzumab +他剤から変更)であった.最良効果の評価は
CR/PR/SD/PD/ 不明:0/3/8/0/1, 奏効率 25% (3/12) であった.重篤な有害
事象はみられなかった.【結論】結果的に当院での Pertuzumab 投与症例には
本来推奨されるべき一次治療例はなかった.初期の治療経験では 3 次治療以降
の高次ラインが多く、効果も高々 SD で,すぐに抗癌剤を減量するか抗体のみ
の 投 与 に な る 傾 向 が み ら れ た. そ の 後 は 概 ね 満 足 す べ き 効 果 を 得 た.
Pertuzumab が PD となった後の理想的な治療戦略については今後さらに症例
を重ねて検討する必要があると思われた.
GP-1-03-25
Docetaxel + Trasuztumab + Persuztumab 療法後の
T-DM1 の治療効果の検討
1
3
当院における転移・再発乳癌に対する T-DM1 の使用経験
1
3
2
福山市民病院 乳腺甲状腺外科、 うだ胃腸科内科クリニック、
いしいクリニック
1
1
1
1
明和病院 乳腺・内分泌外科、2 阪神自衛隊病院 外科、
明和病院 放射線科
友松 宗史 1、岸本 昌浩 1、田代 真優 2、後野 礼 1、増田 奈々子 3、
上瀧 麻衣子 3
1
突沖 貴宏 、池田 雅彦 、久保 慎一郎 、山本 真理 、中本 翔五 、
宇田 憲司 2、石井 辰明 3
【背景】HER2 陽性転移・再発乳癌において CLEOPATRA 試験と EMILIA 試験よ
り、1st line では Docetaxel + Trastuzumab + Pertuzumab 療法(以下 DTP)
、
2nd line では trastuzumab emtansine 療法(以下 T-DM1)が標準治療と比較
して全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)共に有意な延長効果が示された。
それらの臨床試験結果より evidence base で考えると HER2 陽性転移・再発乳
癌の治療法としては 1st line は DTP 療法、2nd line は T-DM1 療法を用いるこ
とが妥当であると考えられる。しかし、Pertuzumab の作用機序を考えると、
Pertuzumab 後に抗体療法を base とする T-DM1 が本当に作用するのか懐疑な
所がある。EMILIA 試験においても、1st line で DTP 療法を施行している患者
は 10%に過ぎず、大半は Trastuzumab + Taxane 療法が選択されていること
を考えると、DTP 療法後の T-DM1 療法の治療効果は明確ではない。
【目的】
DTP 療法後の T-DM1 療法の治療効果と副作用について検討した。
【対象と方法】
2014 年 4 月~ 2014 年 12 月に DTP 療法後に T-DM1 療法を施行した 4 例。患
者背景、治療効果、PFS、前治療歴を調査した。
【結果】年齢中央値 65 歳(57
~ 73 歳)
、HER2 enriched type 2 例、luminal/HER2 type2 例であった。肝
転移が 1 例、肺転移 1 例、骨転移 2 例、脳転移 3 例であった(重複あり)
。臨床
試験結果通り 1st line で DTP 療法→ 2nd line で T-DM1 療法を施行した症例が
1 例、salvage 目的に rate line で使用せざる得なかった症例が 3 例(4・6・8 t
h line)であった。治療効果は PR2 例、SD1 例、PD 1 例であり CBR は 75%
であった。TTP の中央値は 3 ヵ月(3 ~ 4 ヶ月)であった。T-DM1 療法の重篤
な副作用として、血小板減少が 2 例に認められ、どちらの症例も投与の延長を
したが、1 ヶ月以上経ても血小板が開始基準まで回復せず、治療変更とせざる
を得なかった。その他の血液学的毒性は認められず、肝毒性も認められなかっ
た。
【考察】DTP 療法後の T-DM1 療法の治療効果はおおむね良好であると考え
られた。一方で、重篤な血小板減少を来たし、改善の見込みが付かず、治療変
更を余儀なくされた症例があった。
【結語】DTP 療法後でも T-DM1 が反応する
症例が存在することが確認できた。同治療効果については、今後更なる症例集
積が必要である。
【はじめに】HER2 陽性転移・再発乳癌に対する治療薬のひとつとして、昨年
9月に T-DM1 が承認された。本薬剤は臨床試験において trastuzumab +
taxane 耐性後の lapatinib + capecitabine と比較し、有意に PFS および OS
を延長させた。しかし、trastuzumab の先行投与により HER2 蛋白発現量が
低下し、T-DM1 と癌細胞との結合低下が起こることが懸念される。そこで今
回われわれは転移・再発乳癌に対し T-DM1 を用い、一定の見解が得られたの
で報告する。症例 1:45 歳。T1bN0M0 Stage 1. Bp + SNB →残存乳房照射
施行。ER-, PR-, HER2 3+, Ki67 62.9%. trastuzumab 1年間投与。術後 1
年 6 ヶ 月 後 に 同 側 頚 部 リ ン パ 節 転 移 再 発。FEC × 6 cycles → T-DM1 × 5
cycles →転移 LN 領域に放射線照射施行。再発後 1 年経過も cCR 継続中。副作
用:血小板が投与前の 29.8 万 / μ l から投与 5 日後に 2.8 万 / μ l へと急激に低下
した。ただし、2 回目の投与 7 日後は 7.9 万 / μ l、3 回目投与 7 日後は 11.4 万 /
μ l と投与毎に軽快した。その他、関節痛を認めた。症例 2:62 歳。T2N3cM1
( 上 縦 隔 LN)Stage 4 ER+(80%), PR-, HER2 3+, Ki67 34.3%. FEC × 6
cycles → T-DM1 × 4 cycles → Bt+Ax 施行し pCR. 縦隔リンパ節転移も CT 上
CR。副作用:血小板が投与前 22.3 万 / μ l から 7 日後の 5.2 万 / μ l へと急激に
低下した。さらに 2 回目 4.2 万 / μ l、3 回目 3.7 万 / μ l、4 回目 2.3 万 / μ l と低
下 の 程 度 が 増 悪 し た。 症 例 3:73 歳。T4dN3cM1( 同 側 頚 部 LN)Stage 4
ER+(10%), PR-, HER2 3+, Ki67 7.7%. T-DM1 × 4 cycles+LET に て
nearly cCR で治療継続中。副作用:著しい血小板減少含め特になし。【考察】1.
trastuzumab の前投与があっても、10 ヶ月間のインターバルにて良好な効果
が得られた。これは HER2 蛋白発現が十分に回復したものと推察された。2.
転移性乳癌の 1st line において非常に良好な結果が得られた(CR2 例、治療継
続中 PR1 例)が、これは HER2 蛋白発現が前治療により影響を受けないためと
推察され、有効な治療となり得ることが示唆された。3. 早期に高度な血小板
減少がみられる症例があり、特に初回投与時には頻回の末梢血検査が必要で、
回復遅延する場合には休薬が必要と考えられた。
491
一般セッション(ポスター掲示)
GP-1-03-24
ポスター掲示
GP-1-03-26
GP-1-03-27
当科における脳転移に対する trastuzumab emtansine
(T-DM1) の使用経験
当院における T-DM1 の使用経験
岡山大学 乳腺・内分泌外科
東京女子医科大学 第二外科
野口 英一郎、神尾 孝子、神尾 英則、塚田 弘子、玉木 雅子、青山 圭、
大地 哲也、亀岡 信悟
一般セッション(ポスター掲示)
背景・目的:脳転移は乳癌患者の10~16%にみられるとされる。脳以外
の転移を有する乳癌については全身治療が進歩するとともに制御期間の延長
が認められており、そういった患者には、脳転移巣のコントロールが重要な
課題となっている。しかし、乳癌脳転移に対する初期治療(標準治療である放
射線療法や外科療法)後の標準的な薬物療法は定められていないのが現状であ
る。HER2 陽性乳癌は脳転移をきたす症例が多いとされているが、その再発治
療に日本でも最近 T-DM1 が使用可能になった。また海外では、T-DM1 が直接
脳転移巣に作用することを示唆する症例報告もなされている。今回当科にお
ける脳転移に対する T-DM1 の使用経験を報告する。対象:HER2 陽性(ホルモ
ン受容体陰性)乳癌脳転移例 2例(いずれも有症状症例に脳 MRI にて脳転移
を診断した。)症例1:57歳女性。左片麻痺+けいれん発作で発症の、初診
時 StageIV(多発脳転移20個以上+多発骨転移)乳癌。12カ所にγナイフ施
行後に歩行可能になった。そのため、当科にて全身療法(trastuzumab+pertuzumab+docetaxel)を開始した。その後脳の PD を契機に全身療法の変更を
数回行ったが(lapatinib+capecitabine 療法 3ヶ月で脳 PD)
、再度脳転移巣
PD の診断にて、全脳照射を施行した。施行後より T-DM1(3.6mg/kg , 3 週毎 )
を開始した。6 コース終了後、脳転移巣、局所ともに PR の判断も、8コース
開始直前に再度けいれん発作を起こした。脳 MRI で、右後頭葉(γナイフ照射部)
に 広 範 な 浮 腫 を 認 め た。 症 例 2: 6 7 歳 女 性。 初 診 時 StageIV( 骨 )
trastuzumab , lapatinib , pertuzumab, 使用歴あり。肝転移巣 PD に対して
初診時より10年の時点で T-DM1 の使用を開始した。4 コース施行後、神経
症状が出現し、脳 MRI にて多発脳転移の診断となった(肝臓 SD)
。全脳照射(そ
の間 T-DM1 は休薬)終了後、再度 T-DM1 を再開した。照射終了後約1ヶ月の
効果判定で脳転移巣 PR、肝臓 SD の判定となった。以上2症例の経過等を、
文献的考察を加えて発表する。
安部 優子、鳥越 英次郎、溝尾 妙子、野上 智弘、岩本 高行、元木 崇之、
平 成人、松岡 順治、土井原 博義
【背景】トラスツズマブエムタンシン (T-DM1) は抗 HER2 モノクローナル抗体
であるトラスツズマブと化学療法剤である DM1 をリンカー結合させた製剤で
あり、トラスツズマブ・タキサンを含む薬物療法後の HER2 陽性局所進行・
転移性乳癌に対する有用性が報告されている。【方法】2010 年~ 2014 年に当
院で T-DM1 を使用した 10 例の進行再発乳癌患者に関して、抗腫瘍効果、忍
容性について検討した。【結果】年齢中央値は 54.5 歳。腫瘍のサブタイプは、
ER( + ):6 例(60%)、HER2( + ):10 例(100%)。既治療として、平均 7(313) レジメンの化学療法を行っていた。全体の投与数の平均値は 5(2 ~ 26)
サイクル、TTF の中央値は 7(2-20) ヶ月であった。最大治療効果は PR:1 例
(10%),SD6 例 (60%,long SD:3 例 ),PD2 例 (20%) で あ り、 臨 床 有 効 率 は
40% であった。有害事象は 4 例(40%)にみられた。Grade3 以上の重篤なも
のはなかったが、長期投与例のうち 2 例は肝機能異常(Bil 上昇)と心機能異常
により投与中止に至った。【まとめ】検討した 10 例の最大治療効果は PR1 例、
SD6 例であった。いずれの症例も複数の前治療歴後であったが、良好な結果
が認められた。T-DM1 は手術不能又は再発乳癌において Trastuzumab 治療後
の有用な治療選択肢であると考えられた。今後もさらに症例を積み重ね、抗
腫瘍効果、忍容性の評価が必要である。
GP-1-03-28
GP-1-03-29
JR 東京総合病院 乳腺外科
1
当科における Pertuzumab の使用経験5例
切除不能 HER2 陽性転移乳癌の治療に関する考察
3
名取 恵子、平田 勝、尾辻 和尊、尾身 葉子
【はじめに】HER2 陽性手術不能または転移再発乳癌に対して、Trastuzumab+
Pertuzumab(HP 療法 ) 併用化学療法が保険適応を得た。どのラインでも投与
可能となっていて、併用抗癌剤は Docetaxel でなくてもよいとされている。
【目
的】当科における HER2 陽性手術不能又は再発乳癌の使用経験を報告する。
【方
法】2013 年 10 月~ 2014 年 12 月までに Pertuzumab を投与した手術不能又
は再発乳癌 5 例を対象として、治療効果ならび有害事象を検討した。【結果】5
症例の平均年齢は 55.6 歳(41-69 歳)。Luminal B が 3 例(60%)、HER2 陽性
が 2 例(40%)、HER2 スコアは 3+ が 2 例、2+ が 3 例で、FISH 法を行い 2.1
が 1 例、2.4 が1例、3.2 が 1 例。手術不能は 1 例、転移再発は4例で、手術
不 能 以 外 は 全 て Trastuzumab 治療歴を有していた。併用された抗癌剤は
Taxan 系薬剤の他、Gemcitabine、Tegafur、Vinorelbine、Eribulin(重複有)
であった。1 st line で HP 療法併用化学療法を行った症例の投与期間は、PD
となり HP 療法を中止した後に行った抗癌剤の投与期間よりも長期であった
(294 日 /63 日)。また、残りの 3rd line 以降に HP 療法併用化学療法を行った
4 症例において、2 例は HP 療法併用化学療法の投与期間は、過去の抗癌剤投
与期間に比べて延長された(120 日 /225 日)
(92/206 日)
。他の1例の評価は
局所再発による胸壁の皮膚潰瘍でのみ評価を行っていたため NE としたが、皮
膚潰瘍は上皮化が促進されており今後も継続期間の延長が期待できる。もう
1例は、HP 療法併用化学療法開始後に比べ、併用療法を行わない抗癌剤投与
の方が投与期間が長かった(43 日 /154 日)。この症例は、FISH 法で 2.0 であり、
5 症 例 の 中 で 最 低 値 で あ っ た。 有 害 事 象 は 下 痢 1 例(Grade1)、 皮 疹 1 例
(Grade3)であった。【考察】4症例では HP 療法併用化学療法を行うと投与期
間が延長され、手術不能又は再発乳癌の治療目的であるがんの進行抑制とが
んとの共存に有用であると考えられた。1 症例は投与期間が短縮された。
HER2 スコアと治療効果と関連については今後、さらなるデータの蓄積が必要
である。投与中止となる重篤な有害事象は 1 例に認めた。併用していた Taxan
系薬剤を中止したところ改善し、HP 療法は継続した。Pertuzumab は安全に
投与可能な治療薬と考えられた。
秋田赤十字病院 乳腺外科、2 秋田赤十字病院 消化器外科、
秋田赤十字病院 薬剤部
鎌田 収一 1、稲葉 亨 1、金 暢々子 1、吉川 雅輝 2、澤田 俊哉 2、
吉楽 拓哉 2、小棚木 圭 2、佐藤 公彦 2、田口 伸 3
【はじめに】切除不能転移乳癌の治療については、これまでは再発乳癌と同列
に考えられていて、Hortobagyi や Piccart のアルゴリズムに沿って治療され
ることが多かった。しかし HER2 陽性乳癌は他の intrinsic subtype より化学
療法の効果が期待でき、当科で HER2 陽性転移乳癌が 6 年間完全奏効(CR)を
継続している例を経験した。また近年は使用可能な抗 HER2 薬の選択肢も増
え、手術可能 HER2 陽性乳癌の術前化学療法でも、以前と比べると高率に
pathologicalCR が得られるようになってきた。以上から HER2 陽性の転移乳
癌の中には CR を目指せる群が存在すると考えられる。【目的】HER2 陽性転移
乳癌について CR を目標に治療戦略を立てることが可能か、考察する。【方法・
成績】過去 10 年間当科で経験した HER2 陽性転移乳癌 11 例を検討した。年齢:
34 ~ 86 歳(中央値 50 歳)、Luminal B-like(HER2 陽性)が 8 例、HER2 陽性
(non luminal)が 3 例であった。病理組織型は全例が浸潤性乳管癌であった。
転移部位数は 1 部位:3 例、2 部位:6 例、3 部位:2 例であった。転移部位は骨:
6 例、肺:6 例、リンパ節(N2 b以上):5 例、肝:6 例(重複あり)であった。
症状は日常生活に全く支障のない症例から、terminal stage に近い症例まで
様々であった。First line の治療は、9 例は抗 HER2 療法 + 化学療法から開始
されていた。1 例は抗 HER2 療法 + ホルモン治療、他院から紹介された 1 例は
抗 HER2 療法なしでホルモン治療が行われ、その後当科に紹介になった。
First line 治療の効果は CR が 1 例、PR が 9 例、PD が 1 例であった。CR の 1 例
は転移部位数が 2 ヵ所(肺、リンパ節)であり、総腫瘍量も他の症例に比べ少
なかった。6 年経過した現在も CR を持続している。Luminal B-like(HER2 陽
性)で PR になった症例は、その後は抗 HER2 療法 + ホルモン治療が行われて
いた。肺転移の 5 例中 3 例は CR に近い PR、肝転移の 5 例中 2 例は効果十分な
PR であった。しかし骨転移の 6 例は大きな変化はなかった。【結論】HER2 陽
性の転移乳癌の治療に良く反応してくれるのは、総腫瘍量が少ないと考えら
れる症例であった。また肺、肝、リンパ節転移は治療効果が高かったが、骨
転移は大きな変化のない症例が多かった。【考察】症例が少なく断定的なこと
は言えないが、骨転移のない HER2 陽性転移乳癌に関しては生命の危険のな
い状態でも First line として化学療法 + 抗 HER2 療法を行い、治癒を目指す治
療を考慮すべきと考えられた。
492
ポスター掲示
GP-1-03-30
GP-1-03-31
HER2 陽性転移再発乳癌に対する Pertuzumab +
Trastuzumab + Docetaxel の治療成績
後次治療としての TDM1 の治療経験
1
3
1
東京女子医科大学 東医療センター 乳腺科、
2
東京女子医科大学 東医療センター 病理診断科
八尾市立病院 乳腺外科、2 八尾市立病院 病理診断科、
八尾市立病院 看護部
森本 卓 1、野村 孝 1、竹田 雅司 2、吉野 知子 3
服部 晃典 1、平野 明 1、小倉 薫 1、大久保 文恵 1、田川 寛子 1、
阪口 志帆 1、井上 寛章 1、松岡 綾 1、上村 万里 1,2、木下 淳 1、
藤林 真理子 2、清水 忠夫 1
GP-1-03-32
GP-1-03-33
1
1
当院における T-DM1(Trastuzumab emtansine)療法の使用
経験
HER2 陽性手術可能乳癌に対するトラスツズマブを含む治療後
の再発例の検討
神奈川県立がんセンター 乳腺内分泌外科、2 横浜市立大学 外科治療学
2
嘉数 彩乃 1、山中 隆司 1、小島 いずみ 1、中山 博貴 1、吉田 達也 1、
稲葉 將陽 1、吉田 明 1、清水 哲 1、益田 宗孝 2
4
【背景】進行再発乳癌に対する T-DM1 療法は EMILIA 試験において 2 次治療以
降の使用で OS の延長が示され、本邦でも 2014 年 5 月から使用可能となった。
【目的】当院における T-DM1 療法の使用実態とその効果、有害事象について報
告する。【方法】2014 年 5 月から 2014 年 12 月までに T-DM1 療法が施行され
た 14 症例について報告する。【結果】2014 年 12 月の時点で年齢中央値 63 歳
(36-78 歳)、subtype は HER2 positive(non-Luminal)8 例、LuminalBlike(HER2 positive)6 例であった。2 次治療は 3 例、3 次治療以降は 11 例で、
導入の契機は全症例ともに前治療 PD であった。全症例において Trastuzumab
既使用であり、Pertuzumab 既使用例は 5 例あった。現時点での奏効率は
36.3% で あ っ た。T-DM1 初 回 投 与 時 1 例 で infusion reaction を 認 め た。
day8 での血小板減少は全 Grade で 6 例 (42%)、Grade3 以上は 4 例 (29%)、
transaminase の上昇は全 Grade で 8 例 (57%) であった。その他の有害事象
は倦怠感 3 例、食欲低下 2 例、頭痛 2 例、下痢 1 例認め、有害事象による減量、
延期は 3 例あった。今後症例を追加し治療効果を加えて報告する。
493
がん研究会有明病院 乳腺センター、
JCHO 東京新宿メディカルセンター 外科、3 がん研究会有明病院 病理部、
がん研究会研究所 病理部
師尾 典子 1,2、荒木 和浩 1、堀井 理絵 3,4、伊藤 良則 1、秋山 太 3,4、
岩瀬 拓士 1
目的 :HER2 陽性手術可能乳癌患者にトラスツズマブ(Tmab)を投与したが投
与中または投与後再発した症例の頻度 , 再発部位 , 再発後の治療について後方
視的に検討した .
方法 :2007 年 1 月から 2012 年 12 月までの 6 年間に当院で原発性乳癌に対し
手 術 さ れ た 6411 症 例 中 HER2 が 判 明 し て い る 3562 症 例 に つ い て 調 査 し
た . 観察期間は 2007 年 1 月から 2014 年 5 月まで 4 年 4 か月だった .
結果 : 術前 HER2 陽性は (3+)129 例 , (2+)FISH 増幅あり 14 例だった . 術後
HER2 陽 性 は (3+)251 例 , (2+) FISH 増 幅 あ り 51 例 ,(0) か (1+) だ が FISH
増幅を認め陽性と判断された 8 例だった .453 例 (453/3562; 12.7% ) が
HER2 陽性で , 術後補助療法 (ADJ) の Tmab 投与は 269 例 (269/453;59.4% )
だった . この内 20 例 (20/269;7.4% ) が再発した .
再発例は年齢 : 中央値 54 歳 (37-85 歳 ),TNM 分類 :T1/2/3/4b 各々 4/ 9/ 5/
2 例 ,N0/1/2/3 各々 6/12/ 2 例 , 臨床病期 I/II/III 各々 2/10/8.ER 陽性 6 例 ,
陰性 14 例 .PgR 陽性 2 例 , 陰性 18 例 . 術前化学療法は 12 例で ,4 例に Tmab が
投与された .ADJ は 8 例だった .Tmab 投与中に再発した症例は 7 例 , 投与終了
後 1 年以内に再発した症例は 8 例だった . 術後無再発期間は中央値 1.89
(0.314.51)年だった . 初再発部位は温存乳房内 3 例 , 肺 5 例 , 肝 8 例 , 骨 2 例 , 脳 1 例 ,
副腎 1 例だった . その後の経過で肺 7 例 , 肝 10 例 , 骨 4 例 , 脳 6 例 , 遠方リンパ
節 3 例 , 胸膜・局所皮膚・遠方皮膚各々 1 例に転移が出現した . 再発後の治療
レジメン数は中央値 4(1-5) で ,Tmab が全例に再投与され 2 例にペルツズマブ
が投与された .ANT,TAX, ゲムシタビン , ビノレルビン , カペシタビン , エリブ
リン , ラパチニブが投与された .2 例にアロマターゼ阻害剤が投与された . 再発
治療後 10 名が乳癌死した . 全生存期間は中央値 4.74(1.50-6.48) 年だった .
結論 :HER2 陽性手術可能乳癌で Tmab が投与された症例のうち 7.4%に再発
を認め Tmab を含む治療を行ったが 45%が死亡した . 今後症例数を増やし早
期再発に関わる因子について検討していく .
一般セッション(ポスター掲示)
【 背 景 】HER2 陽 性 転 移 再 発 乳 癌 に 対 す る 抗 HER2 薬 は,trastuzumab(H),
lapatinib(L) に加えて pertuzumab(P),T-DM1 が承認された.CLEOPATRA
試験などの結果により,NCCN ガイドラインや乳癌学会診療ガイドラインに
おいて H + P + docetaxel(D) 療法は HER2 陽性転移再発乳癌治療の 1st line
として推奨されている.今回,当院における HPD 療法の有効性,安全性につ
いて検討した.【対象・方法】対象は 2013 年 11 月から 2014 年 12 月までに当
院で HPD 療法を施行した転移再発乳癌 7 例で,評価項目は最良効果および有
害事象とした.H(6mg/kg[ 初回 8mg/kg]),P(420mg/body[ 初回 820mg/
body]),D(75mg/m2) を day1 に投与,1 コース 21 日とし,PD に至るまで
施行した.D の 7 コース以降の投与は CLEOPATRA 試験に準じ主治医判断とし
た.【結果】年齢の中央値は 67.6 歳 (59 ~ 77),転移乳癌 (StageIV) 3 例,再
発乳癌 4 例,PS 0 が 5 例,PS 1が 2 例であり,luminal HER2 (ER ≧ 10%)
が 2 例、HER2 type が 5 例であった.前治療歴の中央値は 1 regimen(0 ~ 4)
であり,anthracycline 既治療は 5 例,taxane 既治療は 3 例であった.臨床効
果は PR が 5 例,評価不能が 2 例で奏効率が 71.4%,投与コースは 3 ~ 18( 平
均 11) コース,うち HPD が 1 ~ 9 ( 平均 5.4) コースであった.投与中止例は
3 例で,4 例 ( 全例 HP 療法 ) は継続投与中である.有害事象では白血球減少が
6 例 (85.7% ) で,うち Grade 3 が 2 例 (28.6% ),Grade 4 が 3 例 (42.9% )
認めた.また,好中球減少が 6 例 (85.7% ) ですべて Grade 4 であった。発熱
性 好 中 球 減 少 症 を 2 例 (28.6 % ) に 認 め た. 非 血 液 毒 性 で は, 下 痢 を 2 例
(28.6% ) に認め,うち Grade3 が 1 例 (14.3% ) であった.その他 Grade2 以
下の末梢神経障害 2 例 (28.6% ),末梢性浮腫 2 例 (28.6% ),流涙 1 例 (14.3%)
を認めた.また Grade 2 のざ瘡様皮疹を 1 例 (14.3% ) に認め、投与中止となっ
た.【結語】HPD 療法は好中球減少を多く認めたが,奏効率および安全性,認
容性において満足できるものであった.
(目的)濃厚な前治療のある HER2 陽性転移・再発乳癌に T-DM1 を投与したの
でその効果と問題点を報告する。(対象)症例は 47-76 歳の女性 4 例 4 次治
療 1 例 6 次治療 2 例 9 次治療 1 例 転移部位は 4 例とも肺・肝の一方また
は両方の転移を伴っていた。HER2 タイプが 3 例 ルミナル HER2 が 1 例で
あった。
(結果)初回治療から T-DM1 投与開始まで 25,38,41,66 ヶ月であった。
76 歳は初回から 2 段階減量行い他 3 例は初回量で投与開始した。4 例中 3 例は
肝機能異常 血小板減少により 1 段階減量投与となった。1 例のみ初回量での
投与が継続できた。効果は PR1 例 NC1 例で現在投与中 他の 2 例は PD とな
り 4 コ ー ス(3 ヶ 月 )投 与 で 終 了 し 次 治 療 へ 移 行 し た。 副 作 用 は 2 例 に
grade3 の肝機能異常が出現し減量となった。この 2 例は PD の 2 例であった。
76 歳の症例には grade3 の血小板減少が見られ安全のためさらに 20% 減量し
た。心機能は 4 例とも異常は見られなかった。他に grade3 以上の副作用は見
られなかった。前治療は 4 例とも抗 HER2 薬(トラツズマブ 3 例 ラパチニブ
1 例)が併用されており全例 SD 以上の効果が見られていた。(考察)濃厚な前
治療のためか肝機能異常 血小板減少が見られ減量が必要となるが このラ
インでの投与では大きな効果は期待できず 病状コントロールが可能であれ
ば有用と考えられる。ただし骨髄機能や内蔵機能は前治療の化学療法で疲弊
している可能性もあり副作用管理は 2 次治療としての投与に比べてより慎重
になるべきと考えられた。後次ラインであっても副作用に十分注意すれば
T-DM1 の有効な症例もあると思われる。
ポスター掲示
GP-1-03-34
GP-1-03-35
川崎医科大学 乳腺甲状腺外科
1
山本 裕、小倉 一恵、菅原 汐織、緒方 良平、斎藤 亙、小池 良和、
太田 裕介、山下 哲正、下 登志朗、野村 長久、田中 克浩、紅林 淳一
野崎 善成 1、江嵐 充治 2、前田 基一 2、福島 亘 2、島多 勝夫 2、
長田 拓哉 2、清水 哲朗 2、尾山 佳永子 2、岩田 啓子 2、小林 隆司 2、
吉川 朱実 2、澤田 幸一郎 2、清原 薫 2、伊井 徹 2、宗本 将義 2
HER2 陽性進行・再発乳癌におけるラパチニブ+カペシタビン
使用症例の検討
富山県における進行・再発乳癌に対するペルツズマブの使用状
況と有効性に関する報告 (TBCRG-3)
一般セッション(ポスター掲示)
HER2 陽性乳癌は本来予後不良であったが、トラスツズマブ(Tras)の出現に
よって、予後は著しく改善された。その後 EGFR および HER2 を選択的に阻害
する Thyrosine kinase inhibitor としてラパチニブが出現し、HER2 過剰発現
が確認された手術不能又は再発乳癌に対して 2009 年 4 月に承認された。さら
に最近ペルツズマブや T-DM1 などの新規抗 HER2 薬が出現し、生存期間の延
長効果も認めており、HER2 陽性乳癌の治療は日々進歩している。ラパチニブ
に関しては、脳転移症例に対する有効性や、HER2 発現を安定・増加させ、そ
れを通じて抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を上昇させる可能性があること
が報告されており、注目すべき薬剤である。今回 HER2 陽性進行・再発乳癌
におけるラパチニブ+カペシタビン使用症例の検討を行ったので報告する。
2009 年 6 月 か ら 2014 年 10 月 に 当 科 で ラ パ チ ニ ブ(LAP)+ カ ペ シ タ ビ ン
(CAP)で 治 療 を 行 っ た HER2 陽 性 進 行・ 再 発 乳 癌 36 例( 再 発 30 例、
StageIV6 例)を対象に、治療の有効性、安全性について検討した。ER および
PR 陽性率はいずれも 33% で、HER2 は 33 例で陽性であり、残り 3 例は転移
巣で HER2 陽性を確認した。ラパチニブ治療ラインの中央値は4であり、前
治療として Tras、アンスラサイクリン、パクリタキセル(PTX)、ドセタキセ
ルが、それぞれ 97%、64%、78%、53%に投与されていた。また 67%に内
臓転移を認め、44%に脳転移を認めた。PFS の中央値は 2.6 カ月で、PTX 未
使用および PS 0-1 の症例で有意に長かった。ORR、CBR はそれぞれ 17%、
46%であり、早いライン(1-3 ライン)で使用した症例で、CBR が有意に高かっ
た。OS の中央値は 76.8 か月であり、有害事象は 66% に認め、下痢や手足症
候群が多かった。LAP+CAP は、PTX 未使用で、全身状態が良好の症例に対し
て(PS 0-1)、できるだけ早期に(1-3 ライン)使用した場合に有効性が高かっ
た。
富山赤十字病院 外科、2TBCRG(Toyama Breast Cancer Research Group)
TBCRG は富山県における乳癌治療の現状把握のために立ち上げられた多施設
共同の研究グループである.県内の乳癌治療を担当する主力医師が連携し,
主要な新薬や治療手技の実施状況を把握するとともに,その有効性と有害事
象の現状を把握・共有するために発足した.TBCRG の調査・研究の第三弾と
して選択したのが,HER2 陽性進行・再発乳癌に対するペルツズマブ(パージェ
タ)の使用状況と有効性,有害事象に関する調査である.2012 年 7 月から
2014 年 12 月までに,富山県内で 32 例のペルツズマブの使用が確認された.
患 者 の 平 均 年 齢 は 54.2 歳. 内 訳 は 進 行 癌 13 例(40.6%), 再 発 癌 19 例
(59.4%),閉経前 11 例(34.4%),閉経後 21 例(65.6%).(ER/PgR/HER2)
の陽性率はそれぞれ(59.4%/40.6%/93.8%)であった.前治療としてタキサ
ン お よ び ア ン ス ラ サ イ ク リ ン の 治 療 歴 を 有 し た 症 例 は そ れ ぞ れ 12 例
(37.5%),13 例(40.6%)であった.効果判定が可能であった 16 例の検討で
は,ペルツズマブの奏効率は 50%,病勢コントロール率(CR+PR+SD)は
81.3%,無増悪生存期間の中央値は 387 日であった.有害事象では血液毒性
として白血球減少を(全 Grade/Grade3 以上),(25.0%/18.8%)に,好中球
減少を(全 Grade/Grade3 以上),(12.5%/12.5%)に認めた.非血液毒性と
しては悪心を(全 Grade/Grade3 以上),
(18.8%/0%),嘔吐を(全 Grade/
Grade3 以 上 ),(6.3%/0%), 口 腔 粘 膜 炎 を( 全 Grade/Grade3 以 上 ),
(21.9%/0%),感覚性神経障害を(全 Grade/Grade3 以上),
(21.9%/3.9%),
倦怠感(全 Grade)を 21.9% に認めた.いずれの有害事象も重篤な状態には至
らず,治療継続の妨げにはならなかった.今回富山県内でのペルツズマブの
使用状況の調査,解析を行った.経過観察期間は短いがペルツズマブは高い
奏効率と病勢コントロール率を有しており有害事象も重篤なものは認められ
なかった.今後は観察期間を延長し,予後に関する検討をさらに進めていき
たいと考えている.
GP-1-03-36
GP-1-03-37
当院における HER2 陽性乳癌再発症例の検討
当院でのラパチニブ・カペシタビン (LC) 療法の位置づけ
~脳転移・LC 増悪後トラスツズマブ・LC 再投与の検討
国立病院機構 嬉野医療センター 外科
広島市立広島市民病院 乳腺外科
田中 彩、福田 明子、荒木 政人、近藤 正道、柴崎 信一、岡 忠之
【目的】HER2 陽性乳癌の再発に関与する因子を明らかにすべく、当院での経
験症例について臨床病理学的に検討した。
【対象と方法】当院における HER2 陽性乳癌の手術症例は 2004 年から 2013 年
の 10 年間で 91 例であった。これを再発群 (n=19)、無再発群 (n=72) の 2 群
に分け、臨床病理学的因子(閉経前 / 後、主訴、年齢、腫瘍径、T 因子、N 因子、
stage、浸潤度、核 grade、ER、PgR、組織型、術式、腋窩郭清の有無、術後
補助療法の内容)の検討を行った。統計には Mann-Whitney’s U test と X2 検
定を用いた。P < 0.05 を有意とした。
【結果】TNM 分類では特に N 因子が重要であり、再発群では N1 以上、stage2
以上が多かった(P:< 0.0001)。また、組織型は再発群では scirrhous type
と lobular type の割合が高かった。再発群のうち scirrhous type は 9 例、そ
のうち 8 例は核 grade 2 以上、主訴は乳房腫瘤の自覚であった。トリプルポジ
ティブが 2 例、死亡例が 5 例であった。Lobular type は 2 例で、ともに腫瘍最
大径が 5cm 以上であり、局所進行例であった。
19 例 の 再 発 群 で、 術 後 抗 HER2 療 法 を 施 行 し た 11 例 の Disease Free
Survival(DFS) の平均値は 796 日、施行していない 8 例の平均値は 613 日で
あった。また、術後抗 HER2 療法を施行した 11 例のうち 6 例が死亡し、再発
から死亡までは平均 1062 日であった。一方、術後抗 HER2 療法を施行してい
ない 8 例では 3 例が死亡し、再発から死亡までは平均 365 日であった。術後抗
HER2 療法の有無に関わらず、癌性胸膜炎および多発脳転移を来した症例は死
亡の経過をたどっていた。死亡例では抗癌剤と trastuzumab や lapatinib の併
用療法を繰り返し施行されているが効果は限定的であった。HER2 陽性乳癌の
再発例には腋窩リンパ節転移陽性、核 grade3 の症例が多く、進行期の症例で
は術後補助療法としてハーセプチンを使用しても再発する割合が多いのが現
状である。しかし症例によっては、trastuzumab のみで以降の再発を抑制で
きており、pertuzumab の併用を行っている生存症例もみられた。また、術
後補助療法でハーセプチンを使用した方が DFS が長く、再発後治療でも使用
した症例が生存日数が長いため、ハーセプチンの耐性克服が今後の課題であ
る。
【 結 語 】当 院 に お け る HER2 陽 性 乳 癌 再 発 症 例 を 検 討 し た。 周 術 期 の
trastuzumab 導入の促進、および再発後には pertuzumab、T-DM1 の導入を
図りたい。
藤原 みわ、金 敬徳、吉村 友里、梶原 友紀子、河内 麻里子、伊藤 充矢、
大谷 彰一郎、檜垣 健二
【背景と目的】ラパチニブはカペシタビンとの併用 (LC 療法 ) でトラスツズマブ
(T-mab) 抵抗 HER2 陽性乳癌の PFS を有意に改善させるが、CLEOPATRA 試
験・EMILIA 試験でのペルツズマブ・T-DM1 の有効性が示され、HER2 陽性転
移再発乳癌において 3 次治療以降の位置づけとなった。一方ラパチニブの脳転
移に対する有効性や、T-mab の antibody-dependent cellular cytotoxicity
(ADCC) 活性回復による LC 療法増悪後の T-mab 再投与の有効性が報告され、
ラパチニブの使用に関しては議論の余地がある。【対象と方法】2011 年 4 月~
2014 年 10 月までに当院で LC 療法を行った 22 例に対し、臨床学的治療効果、
脳転移・T-mab 再投与・LC 再投与の治療効果を Retrospective に検討した。
【結
果】年齢中央値は 61.1 歳 (47 ~ 82 歳 )、内訳は再発 11 例・転移 11 例だった。
全体の TTP は 196 日、OS は中央値に達しなかった。臨床学的治療効果は CR3
例、PR2 例、SD5 例、PD8 例、NE4 例で、奏効率 (RR)22.7%、臨床学的有
用率 (CBR)36.4%、病勢制御率 (DCR)45.5% だった。脳転移は 9 例 (40.9%)
に認め、TTP330 日、CR2 例・PR2 例、SD(longSD)1 例、PD3 例、NE1 例で、
RR44.4%、CBR・DCR55.6% だ っ た。LC 療 法 後 T-mab 再 投 与 は 10 例 で、
TTP140 日、PR1 例、PD8 例、NE1 例 で、RR・CBR・DCR は 10% だ っ た。
LC 再 投 与 は 5 例 で、TTP35 日、PR1 例、SD1 例、PD2 例、NE1 例 で、RR・
CBR20%、DCR40% だ っ た。 有 害 事 象 は 下 痢 9 例 (40.9%)(Grade1:7 例、
Grade2:2 例 )・手足症候群 9 例 (40.9%)(Grade2:5 例、Grade3:4 例 )、ざ瘡
様皮疹・爪囲炎は各々 2 例だった。 有害事象による中止は 3 例で、下痢・手
足 症 候 群 ( と も に Grade2)、 皮 疹、 蜂 窩 織 炎 だ っ た。【 考 察 】当 院 と
EGF110151 試験を比較し当院の治療効果は同等だった (TTP:6.5 ヶ月 vs
6.2 ヶ月、RR: 22.7% vs 23.7%、CBR: 36.4% vs 29.3%)。脳転移例に関
しては EGF105084 試験と比較し良好だった(RR:44% vs 20%、PFS:11 ヶ
月 vs 3.65 ヶ月)。LC 療法後 T-mab 再投与は治療効果は高くないが TTP140
日 と 比 較 的 長 か っ た。1 例 で PR が 得 ら れ LYM・OSS が 消 失 し た こ と か ら
T-mab 再投与の有効性が示唆された。LC 療法再投与例の TTP は、死亡例や最
近投与開始された症例も含まれるため 35 日と短いものの、最大 198 日と有効
な症例もある上 RR は 20% と比較的良好である。T-mab・LC 療法再投与は症
例が少なく今後も検討を重ねる必要がある。【結論】LC 療法は脳転移、LC 療法
増悪後の T-mab 再投与、LC 療法再投与においても有効である可能性を示唆で
きた。
494
ポスター掲示
GP-1-03-38
GP-1-03-39
当院における Pertuzumab の使用経験
パクリタキセル起因性下肢末梢神経障害に対する加圧機能ソッ
クス着用による予防効果の検討
富山大学 消化器・腫瘍・総合外科
1
松井 恒志、長田 拓哉、塚田 一博
鈴木 直子 1、岡本 直子 2、長内 孝之 2
【背景・目的】タキサン系抗癌剤治療に伴う末梢神経障害の対策として,薬剤
投与開始時から 24 時間の加圧機能ストッキング着用による予防効果が報告さ
れている.今回,着用時間を 8 時間に短縮した場合の予防効果について検討を
行った.【対象・方法】対象 ( 着用群 ) は,2013 年 8 月から 2014 年 11 月まで
に Nab-paclitaxel(Abraxane, 260mg/m2,q3w)x4) を含む術前抗癌剤治療を
実施した乳癌患者 11 名.全例 IC を施行し同意を取得.投与直前から 8 時間加
圧機能ソックスを着用し問診票を記入.投与期間の前半 (1-2 コース ),後半
(3-4 コース ) における下肢末梢神経症状を CTCAE v4.0 に準じて Grade 分類
(G1-5) して評価した.比較対照として,2012 年 10 月から 2013 年 7 月に同
様のレジメを実施した乳癌患者 12 名 ( 加圧機能ソックス着用なし ) を非着用
群とした.【結果】末梢神経障害 (G3 以上 ) は,着用群では前半 :27% (3/11),
後半 :9% (1/11),非着用群では,前半 :17% (2/12),後半 :25% (3/12) と,
加圧機能ソックス着用による末梢神経障害の軽減を認めた.【結論】加圧機能
ソックスの 8 時間着用でも末梢神経障害の予防効果があり,特に治療後半に有
効であることが示唆された.
GP-1-03-40
GP-1-03-41
1
1
肥満体型患者へのフルベストラントの安全な投与方法について
の取り組み
3
nub-paclitaxel 投与に関連した末梢神経障害の発現状況と看護
支援
医療法人東札幌病院 外来、2 医療法人東札幌病院 看護部、
医療法人東札幌病院 ブレストケアセンター、4 医療法人東札幌病院 内科
2
3
佐々木 あづさ 1、大串 祐美子 2、亀嶋 秀和 3、東 玉枝 1、大村 東生 3、
三原 大佳 4
東京慈恵会医科大学附属第三病院 看護部、
東京慈恵会医科大学附属第三病院 外科、
東京慈恵会医科大学 呼吸器・乳腺内分泌外科
田中 星 1、田部井 功 2、関根 速子 2、船水 尚武 2、矢部 三男 3、
牛込 琢郎 2、岡本 友好 2、武山 浩 3、内田 賢 3、森川 利昭 3
【はじめに】平成 23 年度以降当院ではフルベストラントを使用している。これ
までに当院では、皮下壊死や下肢神経障害が発生した困難事例を経験した。 【目的】当院における nab-paclitaxel(アブラキサン)投与に関連した末梢神経
フルベストラントの注射部位は、推奨されている「クラークの点」を目指して
障害の発現状況と看護支援の方法を検討した。【方法】対象は 2011 年 2 月から
手順に沿い注射針は 22G、32mm を用いて筋肉内注射を施行している。しか
2014 年 12 月までに当院でアブラキサンを投与した乳癌患者 17 例。平均年齢
し、肥満体型患者では腸骨棘の触知が困難であり、中殿筋穿刺の感触が得ら
58.7 歳。当院作成の問診票と診療録および看護記録をもとに末梢神経障害の
れ難いことがあり投与に迷う場面がある。使用手順書によると「肥満体型患者
出現時期と持続期間、看護支援の内容を検討した。【結果】アブラキサンの初
にはカテラン針を推奨する」としているが具体的な手順は提示されていない。
回投与で末梢神経障害が出現した症例は 12 例、2 回目投与は 2 例だった。ア
そこで今回、CT 画像より中殿筋までの距離を測定して投与を行い、安全で適
ブラキサン投与前から末梢神経障害を認めた症例は 2 例だった。末梢神経障害
切な投与方法が行なえているかを検討したので報告する。【対象者】平成 24 年
の持続期間は「1 年未満」9 例(術前・術後補助化学療法 7 例、進行・再発乳癌
6 月~平成 26 年 12 月の間にフルベストラントを使用した進行再発乳がん患者
2 例。ただし、2 例投与 1 年以内に死亡)、
「1 年以上」2 例(進行・再発乳癌 2 例)、
17 名。【研究方法】1) フルベストラント投与が計画された患者の身長・体重を
「2 年以上」5 例(術前・術後補助化学療法 2 例、進行・再発乳癌 3 例)だった。
「1
測定、BMI 値算出。2)BMI 値 24 以上は肥満体型患者とする。3) 対象者の CT
年以上」症状が持続した症例は 8 回投与しており、1例はタキソールへ薬剤変
より表皮から中殿筋までの距離を測定。4) 距離が 30mm 以上の患者の場合に
更した。「2 年以上」症状が持続した術前・術後補助化学療法 2 例は、糖尿病を
は、カテラン針(22G、70mm)を選択する。5) 筋肉注射部位の選定、注入角
発症しており、進行・再発乳癌 2 例はエリブリンへ薬剤変更した。全例に保温
度は主治医と看護師で決定する。6) 投与時は必ず看護師 2 名で行う。【結果】
や運動により末梢循環を改善する方法を指導した。支持療法としてプレガバ
17 名中 BMI24 以上の肥満体型患者は 9 名(47%)
。表皮から中殿筋までの距
リンを使用した患者は 6 例だった。末梢神経障害による治療中止例は術前・術
離は 30mm 以下 1名(6%)、31 ~ 70mm 14 名(82%)、71 ~ 100mm 後補助化学療法では認めず、再発・進行乳癌で 5 例だった。【考察】アブラキ
2 名(12%)。カテラン針使用者 4 名(24%)。BMI は 24 以下だが骨盤周囲の
サン投与に関連した末梢神経障害は全例 2 回目投与までに出現した。よって、
皮下脂肪の割合が高くカテラン針を使用したもの1名(11%)。硬結 2 名。神
化学療法開始時に末梢神経障害の症状と対処方法を十分に説明し、早期介入
経障害、皮下壊死の発生はなかった。【考察】肥満体型患者の場合には、表皮
することが重要だと考える。術前・術後補助化学療法では、持続期間が 1 年未
から中殿筋の筋層までの到達距離が 30mm 以上の場合もあった。CT 画像によ
満の症例が多いが、糖尿病を発症した症例は 2 年以上症状が持続した。進行・
る中殿筋までの距離測定は注射針選択に有用と考えられた。ただ CT は仰臥位
再発乳癌は総投与量が多く、3 例はアブラキサン投与中止後に末梢神経障害を
での撮影であり、注射実施時の体位と異なるため、CT 単独では施行時と若干
認める薬剤へ変更したことから 1 年以上症状が持続した。末梢神経障害の治療
の差異が生じることも有りうることがわかった。そのため現在のところ BMI、
方法は現在まで確立されておらず、日常生活での注意点や持続する症状に対
骨盤周囲の体型確認、触知などを総合し表皮から中殿筋までの距離を推測し
する不安感の軽減、内服コンプライアンスの向上といった看護支援を症状が
ている。今後も安全に投与を行うため更に検討していきたい。
発症する前より継続的に行う必要がある。
495
一般セッション(ポスター掲示)
HER2 陽性乳癌に対しては,Trastuzumab(H) や Lapatinib が使用されてきた
が,Pertuzumab(P) は 2013 年 9 月に国内承認された HER2 陽性の手術不能
又は再発乳癌に対する新規抗悪性腫瘍薬であり,CLEOPATRA 試験において
Pertuzumab を Trastuzumab,Docetaxel(DOC) 併用療法へ上乗せすること
で無増悪生存期間や全生存期間の有意な延長が示されている.当院でも同年
10 月より使用を開始しており,これまで 4 例の使用経験を報告する.(症例 1)
2010 年左乳癌,Invasive lobular carcinoma,ER(+),PgR(-),HER2(3+)
と診断.骨転移を認めたため Trastuzumab にて治療を開始.その後肝転移も
出現し,5 次治療として HP+DOC 療法を施行.2 コース施行し効果判定は
SD.重篤な副作用は認めず.(症例 2)2007 年左乳癌にて Bp+Ax.Invasive
ductal carcinoma,ER(+)
,PgR(+)
,HER2(3+)
.術後補助化学療法を施行.
2008 年骨転移を認め,ホルモン療法および化学療法を継続.8 次治療として
HO+DOC 療法を施行.1 コース後に発熱性好中球減少を認め,全身状態も増
悪.それ以降の治療の継続はできなかった.(症例 3)2012 年左乳癌にて
Bt+SLNB.Invasive lobular carcinoma,ER(-),PgR(-),HER2(3+). 半
年 後 に 皮 膚 転 移 を 認 め,Trastuzumab+ Capecitabine を 開 始. そ の 後
Tykerb+ Capecitabine,T-DM1 を投与後,4 次治療として HP 療法を施行.
PS を考慮し DOC は投与しなかったが,腫瘍は縮小を認め PR と判定.軽度の
下痢を認めるのみであった.(症例 4)2013 年右乳癌にて Bt+Ax.Invasive
ductal carcinoma,ER(+)
,PgR(+)
,HER2(3+)
.Epirubicin,DOC に対
するアレルギーを認め,術後補助療法は施行せず.2014 年大胸筋下に再発腫
瘍を認め,HP 療法を開始.DOC はアレルギーのため投与せず.4 コース施行
したところで CR と判定.重篤な副作用も認めず.現在 Trastuzumab 単独に
よる維持療法を継続している.今回の検討からは特に late line での投与の場
合,Docetaxel の投与量については減量も含めて慎重に選択する必要性があ
ると考えられた.また,Docetaxel を投与しなかった 2 例では重篤な副作用は
認めず,いずれも有効性が認められており,症例によっては Pertuzumab,
Trastuzumab の 2 剤での投与方法も検討の余地があると考えられた.今後も
デ ー タ の 蓄 積 を も と に, 有 効 性 と 安 全 性 の 両 面 か ら Pertuzumab,
Trastuzumab,Docetaxel の 3 剤併用の投与方法について検討する必要があ
ると考えられる.
四谷メディカルキューブ 看護部、2 四谷メディカルキューブ 乳腺外科
ポスター掲示
GP-1-03-42
GP-1-03-43
ゴセレリン酢酸塩の投与法の検討 ―刺入方向変更による注射
部位反応の変化の検証―
冷却法を用いた LH-RH アゴニスト注射投与時の除痛効果の検討
1
2
三河乳がんクリニック
公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 看護部、
公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 乳腺外科
田中 敦子 1、間 京佳 1、山内 清明 2
日置 あずみ、高坂 歌純、大久保 紀江、小暮 俊明、佐々木 俊則、
水谷 玲子、水谷 三浩
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス R3.6mg:以下 ZOL) の投与による疼
痛や出血を防ぐために速やかな皮膚穿刺と抜針は必須で、穿刺時に臍周囲の
皮下脂肪をしっかりと把持するのがコツである。皮下脂肪を掴み易い点で、
水平方向に皮膚を刺入する ( 横打ち投与法:H 法 ) 例が従来多かった。ところ
が解剖学的に多くの神経・血管は頭尾方向に走行するため、頭尾方向での刺
入 ( 縦打ち投与法:S 法 ) がより安全な投与法と判った。そこで当院でも ZOL
の刺入方向を原則的に S 法に統一し、これに伴う注射部位反応の実際の変化
などを詳細に検証し報告する。【対象と方法】対象は 2014 年 4 ~ 8 月に ZOL
治療を受けた閉経前乳癌 132 例。この間に対象例は延べ 105 人が H 法(H 群)
を、299 人 が S 法(1 回 112 人:S1 群、2 回 87 人:S2 群、3 回 56 人:S3 群、
4 回 44 人:S4 群 ) を受けた。H・S1-4 群の注射部位反応と追加止血の状況を
評価した。各注射前に前回の注射部位反応を確認し、注射直後の疼痛の評価
(NRS 使用 ) を行った。鎮痛のために保冷剤を用いて、全例の穿刺予定部位を
3 分間冷却した。投与直後の 5 分間の圧迫止血(刺入部から針到達部までを患
者の3横指で圧迫)を実施後に看護師が止血を確認し必要に応じ追加止血を
行った。
【結果】注射部位反応は総じて H・S1-4 群(以下同順)でそれぞれ 5.1%、
23.7%、8%、10.7%、4.5% にみられた。直後の疼痛の NRS 評価は 2.25、2.08、
1.73、1.43、1.02 であり、追加止血は 25.7%、2.7%、3.5%、1.8%、2.3%
に施行された。次回投与時の内出血は 5.1%、18.6%、6.9%、10.7%、4.5%
に認められた。【考察】解剖学的見解からの投与法の変更によって直後の疼痛、
追加止血ともに軽減しており、S 法は合理的と判断した。一方で内出血を S1
に多く認めたことから、用手的止血後さらに穿刺部を枕子により圧迫して帰
宅させる処置を全例に加えた。この対処により S4 では 4.5% まで内出血が減
少した。直後の疼痛が S1 から S4 と投与毎に軽減していることも合わせて、
単に S 法への変更に留まらず、スタッフ各自の手技の成熟を目指すとともに、
トラブル解決に向けチームとしての真摯な取組み(全スタッフによる患者の苦
痛などの情報共有、問題直視、創意工夫など)を継続することの重要性を再認
識した。なお少数ながら、高度の疼痛のため H 法へ戻した例や皮下脂肪が極
度に薄く穿刺困難な例などもあり、柔軟な対応や判断が求められる例外の存
在も忘れてはいけない。
【目的】当院では閉経前乳がん患者に対して、LH-RH アゴニストであるゴセレ
リン(ゾラデックス)もしくはリュープロレリン(リュープリン)の投与を行っ
ている。製剤の特性上、21G ~ 14G と比較的疼痛を伴う針での穿刺が余儀な
くされる。また、投与期間が 2 ~ 5 年間が容認され、患者の穿刺に伴う苦痛
を受ける期間も長くなったといえる。投与時の疼痛緩和に関しては、他施設
でも保冷材等にて冷却する方法(以下、冷却法)等を導入し疼痛緩和に努めて
いるが、明確な基準はない。少しでも苦痛なく治療を継続しうけてもらえる
よう、除痛効果のある有効な冷却方法、すなわち除痛効果の期待できる冷却
時間と皮膚表面温度を明らかにしたい。
【対象】当院にてゾラデックス (3.6 mgデポ ,LA10.8 mgデポ )、リュープリ
ン ( 注射用 3.75,SR 注射用キット 11.25) を投与している乳腺外科の患者(初
回投与は除く)で、注射時の疼痛に関する質問紙の回収が可能であり、製剤の
変更がない患者とした。
【方法】冷凍室で保管した保冷材にて、約 1 分を目安に(自制できない場合は途
中で冷却を中止可能とした)穿刺部位を冷却し、皮膚温を測定(赤外線放射温
度計 AD5617WP A&D社製)直後、速やかに消毒し LH-RH アゴニストを投
与する。投与後に患者が質問紙を記載する。質問紙の内容は「穿刺時」
「投与時」
「投与後」の 3 場面各々における疼痛の程度を VAS(Visual Analog Scale:痛
みの量的評価スケール)を用いて回答を得た。身長、体重、年齢、性別、冷却
した際の冷たさ、今後も冷却したいかどうか、感想等を記載してもらった。
なお、本研究は当院における倫理委員会で承認後、研究対象者に書面にて研
究目的、方法、研究参加の自由等を説明し、書面にて同意を得ている。
【結語】1、冷却法により注射穿刺時、投与時、投与後の疼痛が緩和できる。2、
冷却法を継続したいかどうかの問いに対しては「希望」
「どちらでもよい」とい
う結果が多かった。3、除痛効果のある有効な冷却時間と効果の期待できる
皮膚表面温度が示唆されたので報告する。
GP-1-03-44
GP-1-03-45
1
1
ホルモン療法中の乳がん患者の体重変化と体重変化に関連する
要因
3
エストロゲン付加療法のマネジメントに関する考察 - 看護師の
視点から -
熊本赤十字病院 看護部、2 人吉医療センター、
熊本大学大学院保健学教育部、4 熊本大学大学院生命科学研究部
2
3
山下 真由 1、地下 奈緒 2、村上 美華 3、国府 浩子 4
【背景】ホルモン療法では、薬剤作用による食欲増進、ホルモンバランスやス
トレスによる過食が問題とされる場合も多いが、ホルモン療法を受ける患者
を対象とした体重増加に関する研究は我が国においては少ない。【目的】ホル
モン療法を受ける患者の体重変化と体重変化に影響を及ぼす要因を明らかに
する。
【研究方法】乳腺外科に通院しホルモン療法を受けている患者 49 名を対
象に運動習慣や食事、更年期症状などに関する自記式質問紙調査と体重や血
液データ、化学療法・ホルモン療法に関する診療録調査を実施し、分析した。
【結
果】対象者の年齢は平均 58.7 歳、閉経後 33 名(67%)
、14 名(29%)が化学療
法を経験し、ホルモン療法を 31.1 ± 15.1 ヶ月行っていた。術前体重は平均
55.3Kg(BMI23.0)、現在の体重は平均 56.6Kg(BMI23.4)であった。現在の
体重が術前体重に比べ -5Kg 以上の者は 2 名(4%)、-5 ~ 0Kg の者は 11 名
(23%)、0 ~ 5Kg 未満の者は 27 名(56%)、5Kg 以上の者は 8 名(17%)、術
前体重に比べ現在の体重のほうが重く(p= 0.011)、51 歳以下は 65 歳以上
に比べ増加していた(p< 0.05)。自宅で定期的に体重測定している者は 41
名(84%)であり、そのうち 21 名が体重は増えていると回答した。ホルモン
療法開始前と調査時において血清総タンパクは 7.2 g/dl から 6.9 g/dl、血清
総 コ レ ス テ ロ ー ル は 199.9g/dl か ら 204.4 g/dl、 中 性 脂 肪 は 144.91 か ら
141.9 であった。ホルモン療法開始後に食欲や間食、嗜好の変化はあまり感
じていなかった。33 名(67%)が食事内容に注意しており、カロリーや食事の
バランスを気にし、油っぽいものを控えているものが多かった。仕事の変化
は 14 名(辞めた 6 名、変えた 3 名、短くした 6 名)にあり、運動習慣がある者
は 16 名(33%)であった。家事時間が 4 時間以上の者は 20 名(41%)であり、
82%が家事時間の変化がなかった。また、簡略更年期指数で平均 44.38 点で
あり、強い更年期症状はなかった。【考察】欧米に比べ日本人ではホルモン療
法における体重増加は激しくなかった。体重増加の要因として挙げられてい
る過剰な食事摂取や活動量の急激な低下などがなかったためと思われる。治
療期間やホルモン剤の違いによる体重変化など分析を継続していく必要があ
る。
熊本大学医学部附属病院 看護部、
熊本大学大学院生命科学研究部・医学部保健学科 母子看護学、
熊本大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
久本 佳奈 1、牛島 紘子 1、指宿 睦子 3、村上 敬一 3、山本 豊 3、
岩瀬 弘敬 2
【目的】昨今、閉経後進行再発乳がんに対するエストロゲン付加療法が見直さ
れ、その有用性について国内外で報告されている。内分泌療法特有の副作用
があるものの、忍容性があるとされている。この古くからあるが馴染みのう
すい治療に関する有害事象の効果的なマネジメント方法について看護師の視
点から考察した。
【方法】閉経後進行再発乳がんでエチニルエストラジオール
錠によるエストロゲン付加療法を受けた 24 症例についてカルテから後方視的
に有害事象とその対応を抽出、そのマネジメントについて考察した。【結果】
前治療のレジメン数は 2-10(中央値 6)、エチニルエストラジオール錠による
治療期間は 1-62 週(中央値 18 週)であった。主に外来診療下で実施された。
頻度の高い有害事象として「四肢浮腫」42%(10/24 例)、「悪心」38%(9/24
例)、「乳頭・乳輪の変化」38%(9/24 例)、「帯下増加」33%(8/24 例)、つ
いで「子宮変化」「不正性器出血」があった。婦人科的事象について今回の調査
では悪性に至った事象はなかった。重篤な有害事象として 1 例に「脳梗塞」が
あった。また 3 例では「全身痛」「悪心」「嘔吐」「発熱」により服用開始 1 週間
で中止された。中止例以外でのこれら事象は服用開始初期に出現しその後軽
快する傾向が観察された。【考察】エストロゲン付加による「四肢浮腫」や「悪
心」、特有の婦人科的有害事象があることがわかった。「全身痛」などの自覚症
状により早期治療中止となった症例があるものの多くは経過とともに軽快す
る傾向がうかがえた。看護支援として、患者へ起こりうる症状の説明、観察、
多職種と連携した支持療法の提供、特に婦人科的事象に関しては羞恥心に配
慮した問診、婦人科受診の確認、婦人科医師との連携等があると考えた。さ
らに有害事象の経過の特徴を理解し、進行再発乳がん患者の QOL とのバラン
スに配慮した治療継続の支援が望まれると考えた。血栓症については、心疾
患等の既往・抗凝固薬の薬歴確認、自覚症状・浮腫・バイタルサイン・腎機
能の観察などが外来でできる看護支援ではないかと考えた。他の内分泌療法
と同様に外来における看護支援が必要な症例を拾い上げる方法の検討や、
QOL 調査表や更年期指数を用いた評価と介入の検討が今後の課題と考えた。
看護師がエストロゲン付加療法の特徴を理解し支援体制を構築することは、
進行再発乳がん患者の治療選択肢を支える一助になると考える。
496
ポスター掲示
GP-1-03-46
GP-1-03-47
タキサン耐性転移再発乳がん症例におけるエリブリンの有効性
と安全性の検討多施設共同による第 II 相臨床試験
当院における進行・再発乳癌に対するエリブリンの使用経験
埼玉県立がんセンター 乳腺腫瘍内科、2 さいたま赤十字病院 乳腺外科、
3
戸田中央総合病院 乳腺外科、4 春日部市立病院 外科、5 赤心堂病院 外科、
6
さいたまメディカルセンター 外科、7 獨協医科大学越谷病院、8 三井病院、
9
新都心レディースクリニック、10 埼玉県立がんセンター 病理診断科
市立秋田総合病院 乳腺内分泌外科
1
井上 賢一 1、齋藤 毅 2、有澤 文夫 2、大久保 雄彦 3、君塚 圭 4、
山田 博文 5、櫻井 孝志 6、石綱 一央 7、秦 怜志 8、甲斐 敏弘 9、
黒住 昌史 10
【はじめに】エリブリンはチュブリン重合阻害による微小管伸長抑制により抗
腫瘍効果を発揮する新規抗癌剤である。EMBACE 試験において主治医選択治
療群と比較し、OS を有意に延長することが報告されている。当科ではこれま
で進行・再発乳癌9例に対してエリブリン単剤投与を行ってきた。今回、治
療効果と有害事象に関する検討を行ったので報告する。【対象】全例女性、平
均年齢:53歳(40-64)、進行/再発:2/7例、初診時ステージは 1
/ 2A / 3B / 3C / 4 /不明:1/3/1/1/2/1例、組織型は浸潤性
乳管癌/特殊型/不明:6/2/1例、サブタイプ別ではLuminal(H
ER2-)/Triple negative:7/2例、進行・再発乳癌に
対する先行化学療法レジメン数は平均2レジメン(0-4)であった。【投与方
法】21 日を 1 サイクルとし、第1・8日目にエリブリン1.4-1.1mg/m
2を投与、有害事象に応じて適宜減量や投与間隔調整を行った。
【結果】平均
投与サイクルは6.8サイクル(2-21)、抗腫瘍効果はCR1例(11%)、
PR2例(22%)、SD2例(22%)、PD4例(44%)であり、奏効率
33%(3例)、臨床的有用率56%(5例)であった。臨床的有用性が得られ
た5例の前治療平均レジメン数は、1.2レジメン(0-4)、サブタイプは全
例Luminal(HER2-)であった。一方、PDであった4例の平均レ
ジメンは3.3レジメン(3-4)、サブタイプはLuminal(HER2-)
/Triple negativeが2/2例であった。全生存期間は観察
期間が短く、評価不能であった。減量や休薬による奏効の違いはなかった。
G3の有害事象は好中球減少3例、間質性肺炎1例であった。【考察】諸家の
報告と同様、前治療レジメン数が少ない方が治療効果を認める傾向にあった。
エリブリンは前治療歴のある乳癌患者に対して有効な薬剤であり、忍容性も
高いが、G3の間質性肺炎や好中球減少遷延など、副作用により中断せざる
を得ない症例も存在した。基礎研究においては、腫瘍血管リモデリング作用
や癌幹細胞促進因子に対する強い阻害活性を持つ可能性も示唆されており、
進行・再発乳癌におけるエリブリンの有効性に関して文献的考察も加え報告
する。
GP-1-03-48
GP-1-03-49
独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院 乳腺外科
1
当院におけるパクリタキセル+ベバシズマブ治療症例の検討
当院におけるエリブリン使用経験
鳥取大学 医学部 附属病院 乳腺内分泌外科、
鳥取大学 医学部 附属病院 薬剤部、
3
鳥取大学 医学部 附属病院 看護部、
4
鳥取大学 医学部 附属病院 胸部外科
2
小西 寿一郎、石田 文孝、吉竹 公子
【はじめに】パクリタキセル+ベバシズマブ療法(以下 PTX+BV)は、E2100
試験や JO19901 試験での有効性が示されて以降、救命を急ぐような遠隔転移
や局所進行症例に対して 1st line で用いられているが、2014 年の ESMO にお
いて BV の維持療法に関する IMELDA 試験および BV の Beyond progression
に関する TANIA 試験の結果が報告され、PTX+BV に新たな治療戦略が示され
た。【対象】2012 年 1 月から 2014 年 12 月までに PTX+BV を施行した施行し
た 10 例に対し臨床経過について検討した。年齢中央値 56 歳、転移・再発乳
癌 6 例、局所進行乳癌 4 例。T4 症例が 6 例。浸潤性乳管癌 7 例、化生癌 3 例、
ER 陽性 7 例、陰性 4 例、HER2 は全例陰性であった。使用 line は 1st.line5 例、
2nd line3 例、3rd line 以降 2 例。【結果】投与開始後全例に PR を認めたが、
その後 PD になるまで使用した症例 2 例、PD になる前に他治療に移行した症
例 5 例、有害事象により中止となった症例 1 例、その他 2 例。評価可能であっ
た症例における投与サイクル数は 5 ~ 10 サイクル(平均 7.3 サイクル)であっ
た。PD になる前に他治療に移行した症例に関しては、ホルモン療法へ switch
した症例 3 例、手術 2 例。手術に移行した症例のうち 1 例は pCR と診断された。
PD となった 2 症例はいずれも late line 症例であった。【まとめ】今回の検討で
は、PTX+BV を早い line で使用した症例は PR となった段階で他治療への移行
が可能であった。これは、PTX+BV が急を要す病態に対して次の治療に繋が
る有効な治療法であることを示唆していると考えられた。
田中 裕子 1、廣岡 由美 1、細谷 恵子 1、村田 陽子 1、大谷 豊司 2、
渡邊 美保 3、松居 真司 4、門永 太一 4、松岡 祐樹 4、高木 雄三 4、
春木 朋広 4、三和 健 4、荒木 邦夫 4、谷口 雄司 4、中村 廣繁 4
【はじめに】エリブリンは国外第 3 相試験において、医師選択治療群に比べて
全生存率の延長が示された。当院においてエリブリンを使用した転移再発乳
癌を対象として、その特徴を検討した。【対象と方法】2011 年 7 月~ 2014 年
11 月に当院でエリブリンにて治療を行った転移再発乳癌 10 例について、患者
背景・使用状況・有害事象を検討した。エリブリンは 1.4mg/m2 を 2 投 1 休 ,3
週間 1 クールを基本としたが、患者状態によって添付文書に基づいて減量し
た。【結果】使用開始平均年齢は 52.8 歳 (28 ~ 73 歳 ) で、再発乳癌が 6 例、
Stage4 乳 癌 が 4 例 で あ っ た。 サ ブ タ イ プ は ER+/HER2 - が 8 例、ER ± /
HER2 +症例なし、ER - /HER2 -が 2 例であった。再発乳癌 6 例の無再発生
存期間中央値は 27 か月 (14 ~ 123 か月 ) であった。転移再発からエリブリン
使用までの期間中央値は 27 か月 (0 ~ 105 か月 ) で、平均前化学療法レジメン
数は 3.8、ER+8 例の平均前ホルモン療法レジメン数は 2.8 であった。内臓転
移のある症例は 8 例で、肝転移 5 例、肺・胸膜転移 4 例、脳脊髄転移 2 例であっ
た。有害事象は G3 以上の好中球減少を 9 例で認め、発熱性好中球減少症が 1
例であったが、抗生剤・G-CSF を使用しその後の治療継続が可能であった。
非血液毒性は重大なものはなかった。初回から 1 段階減量した症例が 1 例あり、
最終的な投与量は 1 段階減量が 4 例、2 段階減量は 1 例あった。平均治療回数
は 6.3 回で、好中球減少を理由に中止した症例はなかった。治療効果は治療期
間が短く未評価症例が 4 例あり、また評価基準が一定ではなく評価困難とし
た。【考察】好中球減少は高頻度であったが、前化学療法の多い症例・内臓転
移のある症例などに関しても、G-CSF 投与・適切な減量を行い治療継続可能
であった。骨髄抑制に対するマネジメントが適切であれば比較的良好な QOL
を維持した治療を継続できる可能性があると考える。
497
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】現在の転移・再発乳がんに対する標準的な1次化学療法はアンスラサ
イクリン系薬剤またはタキサン系薬剤と考えられており,2次化学療法では
使用されていないもう一方の薬剤が使用されている。エリブリンメシル酸塩
は, 海 外 の 臨 床 第 III 相 で あ る E M B R A C E 試 験 に お い て, T P C 群
(treatment of physicians choice)と比較し,2.7 ヶ月(P=0.014)の全生存
期間延長を証明した。これは,進行再発乳がんにおいて単剤で全生存期間の
延長を証明したはじめての薬剤である。そこで,埼玉乳がん臨床試験グルー
プ(Saitama breast cancer clinical study group; SBCCSG)は,以下の臨床
第 II 相試験(SBCCSG24; UMIN6965)を計画した。【目的】タキサン耐性転移
再発乳がん症例におけるエリブリンの有効性と安全性を検討する。【対象】乳
癌であることが確定診断されていて,Performance status 2 以下,20 から
75 才未満の評価可能病変を有する進行再発女性で,タキサン耐性(術前又は
術後補助療法としてのタキサン治療が本試験直前の化学療法の場合は,投与
中又は最終投与後 1 年以内の再発。進行又は再発に対して,タキサン投与中に
増悪を認めた。)となった患者を対象にした。IRB で承認を得た後に,本人よ
り本試験参加の同意が文書で得られている。【治療】エリブリン 1.4 mg/m2 を
2 ~ 5 分間かけて、週 1 回、静脈内投与する。これを 2 週連続で行い,3 週目
は休薬する。これを 1 サイクルとして,投与を繰り返す。なお,患者の状態に
より適宜減量する。減量方法:1.4mg/m2 → 1.1m g /m2 → 0.7m g /m2。【評
価項目と方法】主要評価項目は,RECIST v1.1 を用いて臨床的有用率(CR;
Complete Response + PR;Partial Response + 24 週 以 上 の long SD;
Stable Disease),副次評価項目は,無増悪生存期間,生存期間,安全性;
CTCAEv4.0 日本語訳、QOL。【予定症例数】52 例;設定の根拠は,期待 CBR
を 23% とし,閾値 CBR を 10%,有意水準 5%,検出力 80% の条件で症例数
算定を行うと,52 例と計算された。
【結果】2012 年 2 月から 2014 年 12 月ま
でに,53 症例が登録されました。評価項目ついての詳細は,現在治療中の患
者もあるため,学会場で発表します。
高橋 絵梨子、片寄 喜久、伊藤 誠司
ポスター掲示
GP-1-03-50
GP-1-03-51
当院におけるフルベストラントの使用経験について
DIC を伴う乳癌骨髄癌腫症の治療経験 -PTX が有効であること
が示唆された 4 例の報告 -
1
国立国際医療研究センター病院 外科、
2
国立国際医療研究センター病院 病理診断部
1
1
1
1
1
2
1
杉浦 良子 、橋本 政典 、安田 秀光 、山澤 邦宏 、山田 和彦 、
徳原 真 1、枝元 良広 1、矢野 秀朗 1、中村 ハルミ 2、猪狩 亨 2
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】フルベストラントはホルモン感受性閉経後転移・再発乳癌に対す
る新規内分泌治療薬として近年使用する機会が増加している。これまでの薬
剤とは作用機序が異なる点で内分泌療法抵抗性の閉経後 ER 陽性乳癌に対して
有効な薬剤である。今回、我々は当院でフルベストラントにて治療された患
者について検討した。
【対象】承認から 2014 年 12 月までにフルベストラントの投与を受けたのは 32
例であった。そのうち投与期間が 3 ヶ月未満の 8 例を除外し、23 例について
検討した。術後再発 21 例、Stage IV 2 例であった。前治療として平均 4.8(3
~ 8)レジメンの治療歴があった。16 例 (69.6%) に内臓転移が認められ、肝
転 移 は 5 例 (26.1%)、 肺 転 移 は 12 例 (52.1%) で あ っ た。 骨 転 移 は 8 例
(34.8%)、皮膚・軟部転移は 6 例 (26.1%) で認められた。
【結果】全例女性、年齢の平均値 68.8 歳。治療効果としては CR 0 例、PR 3 例、
SD 9 例、PD 11 例であった。Clinical benefit rate は 52.1% であった。SD
となった症例のうち 6 か月以上 SD が継続した long SD は 4 例であった。肝
転移・肺転移を有する症例で PR もしくは long SD を得られた症例はそれぞ
れ 3 例・4 例に認められた。有害事象としては Grade 1 の下痢を 1 例に認める
のみであり、長期使用であっても安全に使用できた。フルベストラント後の
治療では、抗癌剤が9例、ホルモン剤が 1 例であり、Best supportive care
が 6 例であった。
【考察と結語】当院での Clinical benefit rate は 52.1% であり、諸家の報告例
に比べ低い値になった。この原因として、前治療として平均 4.8 レジメンもあ
ること、後治療として BSC が6例あることより、かなり遅いラインでの導入
であった可能性がある。早い治療ラインで使用する方が有効とされており、
今後は導入時期を検討する必要があると考えた。
宮崎大学医学部附属病院 がん診療部、
宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野
柴田 伸弘 1、秋月 渓一 2、日高 智徳 1、亀田 拓郎 1、永井 公洋 1、
下田 和哉 1,2
【背景】骨髄癌腫症は播種性血管内凝固症候群(DIC),細血管障害性溶血性貧
血(MHA)出血傾向を高率に合併する予後不良な病態である.また,DIC を伴っ
た骨髄癌腫症は全身状態不良のことが多く薬物療法を行なうことが躊躇され
る.今回は当院で経験した乳癌骨髄癌腫症の 4 例の治療経過を報告する.【症
例 1】74 歳女性,左乳癌術後再発(ILC : invasive lobular carcinoma, ER+,
PgR+, HER2-)で,DIC,出血傾向,多発肝転移を伴い,骨髄検査で確定診
断を得た.weekly Paclitaxel(wPTX) 2 コースで DIC が改善し,発症から
120 日 生 存 中.【 症 例 2】66 歳 女 性, 右 乳 癌 (ILC, ER+, PgR+, HER2-) で,
DIC,MHA, 髄外造血を伴い,骨髄検査で確定診断を得た.wPTX 4 コース投
与, 発 症 か ら 203 日 生 存 中.【 症 例 3】56 歳 女 性, 右 乳 癌 (IDC : invasive
ductal carcinoma, ER+, PgR-, HER2-),DIC,MHA, 髄外造血を認め,骨
髄検査で確定診断を得た.wPTX 2 コース投与したが,薬剤性間質性肺炎のた
め 発 症 よ り 133 日 で 死 亡.【 症 例 4】左 乳 癌 (IDC, ER+, PgR+, HER2-),
DIC,MHA を伴い,PET-CT の所見を併せ骨髄癌腫症と診断した.wPTX 1 コー
スで DIC が改善し,1251 日生存中.【まとめ】今回報告した全例で PTX 投与
により DIC の改善を認めた.また,wPTX 投与により発症から平均 426 日の
生存が得られている.【考察】乳癌由来の本症無治療群は 0.9 ヶ月,薬物療法
施行群では 17.9 ヶ月の予後であったとの報告がある.乳癌骨髄癌腫症は稀な
病態で治療法は確立されていないが,wPTX 療法は有効な治療法であることが
示唆された.また,再発例や薬物療法未施行例の乳癌骨髄癌腫症においては,
積極的な薬物療法を行うことで DIC の改善と予後の延長が期待できる可能性
が示唆された.
GP-1-03-52
GP-1-03-53
Bevacizumab+Paclitaxel 療法抵抗性の転移再発乳癌に対す
る次治療の検討
乳癌癌性胸水 / 腹水に対する S-1+CPT-11 併用療法
東京医科歯科大学 乳腺外科
がん研有明病院 乳腺内科
倉田 麻美、鈴木 えりか、師尾 典子、稲垣 里奈、照屋 なつき、小林 心、
深田 一平、柴山 朋子、柳 裕代、小林 隆之、荒木 和浩、高橋 俊二、
伊藤 良則
当院における Bevacizumab+Paclitaxel 療法抵抗性の転移再発乳癌の次治療
の有効性について後ろ向きに検討を行った。対象:2011 年 11 月~ 2014 年
10 月に当院で Bevacizumab+Paclitaxel 療法を施行後に、次治療を行った転
移 再 発 乳 癌 39 人。Bevacizumab 10mg/kg(day1)、Paclitaxel 80mg/m2
(day1、day8)を 2 週間毎に静脈投与した。患者の年齢中央値は 53 歳(34~75
歳)、サブタイプは ER/PgR 陽性 HER2 陰性が 33 例、ER 陰性 PgR 陽性 HER2
陰性が 1 例、トリプルネガティブが 5 例であった。Bevacizumab+Paclitaxel
療法前の治療レジメン数中央値は 3(0-7)であり、TTF 中央値は 4 か月(0~23
か月)であった。有害事象のため投与中止となったのは 8 例で、消化管穿孔 1 例、
腎機能障害 2 例、出血 3 例、末梢神経障害 1 例、間質性肺炎 1 例であった。
Bevacizumab+Paclitaxel 療法後の治療内容は、化学療法 26 例、ホルモン療
法 13 例であり、CEF5 例、Paclitaxel5 例(合併症のため Bevacizumab 中止)、
Eribulin6 例、Gemcitabine6 例、Capecitabine3 例、vinorelbine1 例、
Aromatase inhibitors 7 例、Fulvestrant4 例、Everolimus+ Exemestane1
例、MPA1 例であった。Bevacizumab+Paclitaxel 療法後の PFS 中央値は 3 か
月(0-13 か月)であった。Bevacizumab+Paclitaxel 療法後の次治療について、
効果との相関を検証したので、報告する。
中川 剛士、小田 剛史、石場 俊之、細矢 徳子、永原 誠
【緒言】進行再発乳癌の治療後半から終末期にかけて、胸膜転移 / 腹膜転移によ
る癌性胸水 / 腹水はコントロールに難渋することが多い。当院では、再発後化
学療法治療後半または最終ラインで S-1+CPT-11 を 21 症例に施行し、特に癌
性胸水 / 腹水に対して有用であった。癌性胸水 / 腹水に対して S-1+CPT-11 併
用 療 法( 以 下 S-1+CPT-11)を 施 行 し た 6 症 例 を 提 示 す る。【 対 象 】年 齢 は
42-68 歳。LuminalB:4 例、Triple negative:2 例。StageIV:1 例、再発 :5 例。
投与ラインは 3rd:3 例 ,4th:2 例 ,5th:1 例。投与サイクルは 1 回 :1 例、2 回 :1
例、5 回 :1 例、6 回以上 :3 例。治療レジメは S-1:80mg/body/day(day1-14)、
CPT-11:80mg/body/day(day1,8)、21 日で 1 コースとした。1 例は癌性胸水、
5 症例は癌性腹水であった。多量に貯留していた 4 例(胸水 3、腹水 1)に対して
は投与前にドレナージを行った。
【結果】1 例は Grade3 の下痢、1 例は Grade4
の血小板減少を認め、投与中止した。全 6 症例において投与後の胸水 / 腹水のコ
ントロールは良好であり、ドレナージを要する再貯留は認めなかった。いずれ
も再発後化学療法治療後半または最終ラインであったが、緩和医療に移行した
後も著明な胸水 / 腹水の再貯留はなく、再穿刺ドレナージを要せず、症状緩和
に有効であった。
【考察】CPT-11 は、多量の胸水 / 腹水貯留例への投与は、薬剤
排泄遅延から骨髄抑制の増強を来すことも懸念されるが、穿刺ドレナージ後に
投与することにより、副作用の軽減が図れる可能性がある。
【結語】再発進行乳
癌の化学療法において、治療後期における薬剤選択は重要である。今回我々が
施行した乳癌癌性胸水 / 腹水に対する 3rd-Line 以降の S-1+CPT-11 は、症状緩
和に有用であると考えられた。
498
ポスター掲示
GP-1-03-54
GP-1-03-55
進行再発乳癌に対する Bevacizumab+Paclitaxel 療法の位置
づけの検討
癌性体腋貯留に対してにベバシズマブ(BEV)+パクリタキセル
(PTX)は有用であるが、PTX は 90mg / m2 必要?
平塚共済病院 外科
刈谷豊田総合病院 乳腺外科
谷 和行、松浦 仁、嶋田 裕子、亀田 洋平
加藤 克己、内藤 明広、川口 暢子、西本 真弓
はじめに:再発・転移乳癌において心嚢水あるいは胸水、腹水を合併すると
患者の QOL は著しく損なわれる。BEV + PTX の癌性体液貯留に対する減少効
果は認められているが、QOL の低下した状態において PTX90mg / m2 は妥
当であろうか。当科では有症状の体液貯留例には PTX を減量して施行してい
るが、有効性は十分に認められる。今回、当科で経験した6症例について報
告する。対象症例:2014年12月までにおこなった BEV+PTX 療法20
例(HER2 陰性・再発転移乳癌、全例女性、平均年齢61歳、Luminal type
16例、Triple negative(TN)4例)のうち有症状の心嚢水2例(TN)、胸水
3例(Luminal)、腹水1例(Luminal)。症例1。70代、心嚢水: PTX は初
回 よ り 2 0 % 減 量 し た が、 1 ク ー ル で 症 状 は 軽 快 し た。 そ の 後、PTX を
3 0 % 減 量 し、 1 3 ク ー ル 施 行 し た。 症 例 2。 6 0 代、 心 嚢 水: PTX を
10%減量して開始した。1クールで心嚢水の減少を認め、症状は改善した。
そ の 後、 2 0 % 減 量 し て 1 3 ク ー ル 施 行 し た。 症 例 3。 3 0 代、 胸 水:
10%減量で開始し、1クールで胸水の減少と症状の改善を認めた。3クー
ル施行後、転院となった。症例4。60代、胸水: PTX は初回から20%減
量したが、1クールで症状の改善が得られた。6 クール以降 PTX は40%減
量し、2 週目は休止とした。9クール後も SD を維持している。症例5。70代、
腹水:全身状態が不良のため PTX を40%減量した。1週目の BEV+PTX 投
与で腹水の著明な減少を認めた。3クールで休止した。症例6。70代、胸水:
20%減量して開始したが、1クールで症状の改善が得られた。10クール
施行した。6症例ともグレード1の鼻出血としびれを認めた。考察:再発転
移乳癌に対する薬物治療の目的は QOL を維持することにある。癌性心嚢水あ
るいは胸水、腹水に対して BEV+PTX 療法は PTX を減量しても速やかな体液
減少効果と症状の改善が得られた。また、重篤な副作用なく、比較的長期に
奏功期間を維持できた。BEV+PTX 療法を継続するためには BEV よりは PTX
の有害事象をコントロールすることが重要であるが、特に問題となる末梢神
経障害は減量あるいは休薬しかない。減量の明確な指標はないが、患者の状
態をみながら症例ごとに投与量を決めていくしかないと思われる。
GP-1-03-56
GP-1-03-57
転移乳癌に対するエリブリン、カペシダビン後のゲムシタビン
またはビノレルビン治療の有効性に関する検討
1
3
当科における進行・再発乳癌に対するエリブリンの使用経験
1
3
2
がん研有明病院 乳腺内科、 がん研有明病院 総合腫瘍科、
がん研有明病院 乳腺外科
1,3
1
2
1
帝京大学 医学部 外科学講座、2 北里研究所病院 ブレストセンター、
北里研究所病 院病理診断科、4 北里研究所病院 外科
柳澤 貴子 1、関 大仁 2、浅沼 史樹 2、山田 好則 2、森永 正二郎 3、
大作 昌義 4、神谷 紀輝 4、石井 良幸 4、鈴木 慶一 4、金田 宗久 4、
中村 理恵子 4、岡 英俊 4
1
鈴木 えりか 、小林 心 、稲垣 里奈 、柴山 朋子 、柳 裕代 、
深田 一平 1、小林 隆之 2、荒木 和浩 1、高橋 俊二 2、伊藤 良則 1、
岩瀬 拓士 3
【背景】転移再発乳癌においてアンスラサイクリン、タキサン治療後の三次治
療としてエリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビンなどの選
択枝が存在する。エリブリンは全生存期間の延長を示した唯一の薬剤である
ため第一に選択されることが多い。経口剤として利便性の高いカペシタビン
も比較的早期に選択されやすい。しかし、これらエリブリン、カペシタビン
治療後におけるゲムシタビン、ビノレルビンの有効性は明らかでない。【方法】
エリブリン承認以降、2014 年 11 月までの期間に当院において、エリブリン
およびカペシタビンの治療後に、ゲムシタビンまたはビノレルビンを投与し
た 36 例を後方視的に臨床的効果を検討した。【結果】36 例中、ゲムシタビン
投与群は 25 例、ビノレルビン投与群は 18 例、両剤を投与した群は 12 例であっ
た。原発巣のサブタイプは、Luminal type 32 例、Triple negative 11 例で、
HER2 陽性乳癌は含まれなかった。ゲムシタビン群における再発後の前治療レ
ジメン数の中央値 4(3-6)、ビノレルビン群は 3(3-5) であった。ゲムシタビ
ン投与群では CR 0 例、PR 0 例、SD 11 例(long SD 4 例)、PD 14 例、PFS 2.8
カ月であった。ビノレルビン投与群では CR 0 例、PR 0 例、SD 4 例(long SD
2 例)
、PD 14 例、PFS 3.2 カ月であった。【結語】エリブリン、カペシタビン
治療後におけるゲムシタビン、ビノレルビン治療ではともに奏効は得られず、
著明な効果は期待できない。しかし、一部の患者では long SD が得られた。
今後、患者背景、有害事象を検討し有効性を予測する因子を検討する。
【背景・目的】微小管阻害剤であるエリブリンは EMBRACE 試験にて進行再発
乳癌における全生存期間の延長が示され、本邦では 2011 年 4 月に保険承認さ
れた。乳癌の再発治療では QOL を維持した治療が重要であり、エリブリンは
他の薬剤に比べて身体的副作用が軽微である。当科ではこれまでに進行再発
乳癌 12 症例に対しエリブリンの投与を行ってきた。今回、その有効性・安全
性に関する検討を行った。【対象と方法】2011 年4月から 2014 年 12 月まで
に当院でエリブリンを投与した進行・再発乳癌 12 例を対象とした。評価方法
として、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、腫瘍縮小効果を用いた。
投与方法は HER2 陰性では、エリブリン(1.4mg/m2)を 2 週間投与1週間休
薬とし、HER2 陽性ではエリブリンにハーセプチンを併用した。腫瘍縮小効果
は RECIST で評価し、安全性は CTCAE を用いて評価した。【結果】年齢の中央
値は 59 歳(38 ~ 72 歳)であり、閉経前が 3 例(25%)、閉経後 9 例 (75%) であっ
た。原発巣の Subtype は Luminal が 8 例(61.5%)、トリプルネガティブが 3
例(25%)、HER2 陽性が 1 例(8.3%)であった。内訳は 1 次治療群 0 例、2 次
治療群 3 例、3次治療以降は 9 例であった。転移臓器はリンパ節 7 例、骨 7 例、
肺 7 例、肝臓 6 例に転移しており内臓転移が多かった。1 例は卵巣癌を合併し
ていた。PR 1例、SD2 例、PD9 例であり、奏効率は 8.3%(1/12) であった。
PR の得られた症例は Luminal type で1次治療としてエリブリンを使用して
いた。 主な有害事象として、白血球減少が8例、好中球減少が6例、脱毛が
5例、口内炎が2例、肝機能障害が3例、末梢神経障害が1例認められたが
いずれも軽度であった。エリブリンの投与回数は平均 6.2 回であった。6 回以
下が 8 例で最長で 13 回投与であった。6 例(50%)で減量がなされたが、全て
白血球減少によるものであった。【まとめ】レトロスペクティブな解析ではあ
るが、今回の検討では既存の報告例より奏効率が不良であった。これは late
line での使用症例が多かったことが最も影響している可能性がある。しかし、
エリブリンは他剤と比較し血液毒性以外の有害事象は軽微であるため、病状
が進行した症例に対しても忍容性が高い薬剤と考えられた。【結語】進行・再
発乳癌に対するエリブリンの有効性および安全性を検討した。今後さらなる
症例の蓄積が必要である。
499
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】本邦では 2011 年 9 月に進行再発乳癌に対する Bevacizumab+
Paclitaxel 療法(以下 BV+PTX 療法)が承認された。しかしながらその位置づ
けに関しては、施設間においてまだまだ温度差が感じられるのが現状である。
そこで今回我々は、当科で施行した BV+PTX 療法症例について検討を行い、
その位置づけについて考察することを目的とした。【対象及び方法】対象は
2012 年 10 月から 2014 年 12 月の間に当科にて BV+PTX 療法を施行した進行
再発乳癌症例 9 例。これらの症例につき、年齢、臨床経過、病理学的特徴、ホ
ルモン感受性の有無、投与期間、治療効果、有害事象などにつき検討した。【結
果】9 例全例が女性で、平均 51.8(40-66)才、閉経前 6 例、閉経後 3 例であっ
た。また術後再発症例は 6 例であり、術後 BV+PTX 療法施行までの期間は平
均 82(42-144)カ月であった。一方手術未施行進行乳癌症例は 3 例であり、
全例肺転移などの遠隔転移を有していた。9 例全例が HER2 陰性であり、うち
6 例はホルモン感受性陽性、3 例が感受性陰性(triple negative)であった。
2015 年 1 月 1 日現在、7例は BV+PTX 療法を継続施行中で 2-24 コース目で
あり、一方で BV+PTX 療法を終了した 2 例のうち 1 例は 9 コース終了時 PD と
なり他のレジメンに変更、もう 1 例は 14 コース施行後 PD となり BSC に移行
となった。9 例中 6 例は経過中 PR が得られた。またこのうち癌性心嚢水を認
めた 2 例はいずれも BV+PTX 療法施行により心嚢水のコントロールが可能と
なった。また癌性リンパ管症となり強度の呼吸困難をきたした1症例は、
BV+PTX 療法施行により著明な症状の改善が得られ 2 年 3 ヶ月経過した現在
も無症状である。9 例中 3 例は BV+PTX 療法施行中に一旦他のレジメン(2 例
は UFT 療法 ,1 例は CMF 療法)に変更したが、いずれも 2-6 ヶ月で PD となり、
再度 BV+PTX 療法に戻した。また 9 例中 4 例では、有害事象等の理由で途中
から day8 を省略する隔週投与法に変更している。BV+PTX 療法の有害事象と
しては、しびれ感、鼻出血、手足症候群、下痢、好中球減少症、倦怠感、高
血圧、蛋白尿などがみられたが、いずれも比較的軽微で、それらにより治療
継続困難となった症例は1例も認めなかった。【考察】BV+PTX 療法を施行し
たことにより QOL の著明な改善が得られた症例が少なからず存在し、また有
害事象も比較的忍容性が高いと考えられた。よって、HER2 陰性進行再発乳癌
に対し BV+PTX 療法は極めて重要な治療選択のひとつに位置づけられると考
えられた。
ポスター掲示
GP-1-03-58
GP-1-03-59
当院における進行再発乳癌患者に対するエリブリンの使用経験
HER2 陽性乳癌術後補助化学療法におけるトラスツズマブと放
射線照射の併用についての検討
1
JA広島総合病院 乳腺外科、2 JA広島総合病院 外科、
3
JA広島総合病院 放射線治療科
1
1
1
2
1
茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 腫瘍内科、
総合病院国保旭中央病院 乳腺外科、
3
茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 放射線治療センター
2
2
川渕 義治 、鈴木 江梨 、安井 大介 、黒尾 優太 、熊田 高志 、
田崎 達也 2、香山 茂平 2、今村 祐司 2、中光 篤志 2、桐生 浩司 3
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】エリブリンは、EMBRACE 試験や 301 試験の結果から進行再発乳癌患
者に対する標準治療の選択肢の一つとなり、どのような症例に適しているの
かどのようなポジションで使用されるべきなのか今後の期待が大きい。
【対象】
2011 年 8 月から 2014 年 10 月までに、当院でエリブリンを使用した進行再発
乳癌患者 18 例とした。【結果】エリブリン開始時の平均年齢は 61.9 歳で、
ECOG performance status は、PS0:1 例、PS1:6 例、PS2:8 例、PS3:
3 例であった。Stage IV 乳癌は 4 例 (22.2%)、再発乳癌は 14 例 (77.8%) で、
Subtype は、’Luminal A-like’ 3 例 (16.7%)、‘Luminal B-like(HER2
negative)’ 10 例 (55.6%)、‘Luminal B-like(HER2 positive)’ 2 例 (11.1%)、
‘Triple negative’ 2 例 (11.1%)、’HER2 positive’ 1 例 (5.6%) であった。前治
療歴は、中央値 4.5 であった。エリブリン投与サイクル数は中央値 5 サイクル
で、ECOG PS3 の症例は、1 例は 2 サイクル、2 例は 1 サイクルのみで投与が
終 了 し て い た。dose intensity(DI) は 中 央 値 0.69mg/m2/week、relative
dose intensity(RDI) は中央値 73.0% であった。CR:0 例、PR:3 例、SD:13 例、
PD1 例 で、 奏 効 率 16.7 %、 臨 床 的 有 効 率 33.3 %、 病 勢 コ ン ト ロ ー ル 率
94.4% で あ っ た。 無 増 悪 生 存 期 間 (PFS) は 中 央 値 99 日、survival
postprogression(SPP) は 中 央 値 119.5 日、OS は 中 央 値 272.5 日 で あ っ た。
Grade3 以上の有害事象は、発熱性好中球減少症 5 例 (27.8%)、白血球減少症
5 例 (27.8%)、好中球減少症 9 例 (50%) を認めた。
【考察】
当院での実臨床では、
phase III study と比較して survival が短い傾向を認めた。比較的 QOL を保
ちながら受容できる治療であることが benefit でもあるエリブリンは、適切な
症例選択の中で、早い line に挙げて投与する、あるいはより積極的な支持療
法を行うことにより DI や RDI を保ちつつ投与サイクルを伸ばすことができれ
ば、治療成績の向上につながるかもしれない。
藤澤 文絵 1、平野 稔 2、玉木 義男 3
【緒言】2008 年に本邦においてトラスツズマブの術後補助化学療法への適応拡
大が承認され、現在では HER 陽性乳癌に対する術後補助化学療法においてト
ラスツズマブ併用が標準治療となっている。トラスツズマブの有害事象のひ
とつとして心筋障害があり、心臓超音波検査での定期的な EF 測定などでのモ
ニタリングが推奨されている。トラスツズマブによる心筋障害は抗癌剤と併
用することで頻度が上昇することが知られており、さらに放射線治療との併
用でもそのリスク上昇が懸念される。しかしながら、本邦におけるトラスツ
ズマブと放射線治療併用における心筋障害の頻度の変化やその発症時期の違
いなどはまだ詳細には検討されていないのが現状である。
【対象と方法】2010 年 4 月 1 日から 2014 年 6 月 30 日までに当院にて乳癌に対
する手術を施行された患者のうち、術前および術後にトラスツズマブを含む
化学療法を行った HER2 陽性乳癌患者のうち、放射線治療をトラスツズマブ
と併用した症例を抽出し、右乳癌と左乳癌の2群に分けてトラスツズマブと
放射線治療の併用における心筋への影響の差を検討した。上述の期間の対象
患者は 32 名、うち右乳癌 20 名、左乳癌 12 名であった。術前化学療法を行っ
てから手術を施行したのは 6 名、他 26 名は術後補助化学療法を施行した。主
治医の判断によるが、トラスツズマブ施行中はおおむね 2 ~ 3 か月毎に 1 回の
心臓超音波検査による評価を行っており、後方視的に電子カルテよりデータ
を抽出し検討した。
【結果】放射線照射部位が左右どちらの前胸部であっても心機能において両群
間で有意差はなかった。また、トラスツズマブ施行中に放射線照射を併用し
なかった群との比較においても心機能に有意差は認めなかった。心機能障害
のリスクファクターとしては年齢、アンスラサイクリン使用歴であり、従来
の報告と相違なかった。
【結論】後方視的検討であり症例数も少ないため、今回の検討で結論づけるこ
とは難しいが、HER2 陽性乳癌に対するトラスツズマブと放射線治療との併用
は心筋障害を増加させることなく安全に施行できるものと推測された。心機
能の長期的な予後などについて今後も引き続き観察を継続する必要があるも
のと考える。
GP-1-03-60
GP-1-03-61
Subtype からみた eribulin 治療成績の検討
1
当院における進行・再発乳癌に対する
Bevacizumab+Paclitaxel 療法の使用経験
伊勢崎市民病院 外科、2 伊勢崎市民病院 病理
名古屋第二赤十字病院 一般消化器外科
平方 智子 1、片山 和久 1、岡田 朗子 1、鈴木 豊 2
【はじめに】eribulin は微小管伸長を阻害することにより細胞周期を停止させる
抗癌剤である。当院の eribulin 治療成績について検討した。【対象・方法】
2012 年 4 月 か ら 2014 年 12 月 ま で 当 院 に て eribulin 投 与 を 行 っ た 年 齢
39~73 歳の転移再発女性乳癌 24 例。うち ER+HER- 群が 9 例、ER+HER+ 群
が 1 例、ER-HER+ 群 が 3 例、ER-HER- 群 が 9 例、ER+HER 不 明 群 が 2 例。
RECIST criteria に従い治療効果判定を行った。eribulin 投与は 2 投 1 休また
は biweekly 投与とした。【結果】投与期間 1 ~ 13 ヶ月 ( 平均 4.4 ヶ月 )、治
療 効 果 は PR;3 例(ER+HER- が 1 例、ER+HER+ が 0 例、ER-HER+ が 1 例、
ER-HER- が 1 例 )。SD;8 例(ER+HER- が 6 例、ER+HER+ が 0 例、ERHER+ が 0 例、ER-HER- が 2 例 )。PD;13 例(ER+HER- が 2 例、ER+HER+
が 1 例、ER-HER+ が 2 例、ER-HER- が 6 例、ER+HER 不明群が 2 例)であった。
eribulin 中止理由として PD の他に grade3 ~ 4 の全身倦怠感を 3 例に認めた。
有害事象は血液毒性 G1 ~ 2 が 3 例、G3 ~ 4 が 4 例、FN が 3 例。全身倦怠
感 G1 ~ 2 は 5 例、G3 ~ 4 は 3 例。脱毛は 4 例であった。【考察】PR3 例の
うち ER+HER- の 1 例は術後補助療法として anthracycline・taxane 投与後、
無再発期間は 29 ヶ月、再発後化学療法 3 レジメン後に eribulin を開始し投与
期間は 6.0 ヶ月。ER-HER+ の 1 例は初診時肝転移を有する StageIV であり、
anthracycline・taxane 投与後に eribulin を開始し投与期間は 5.0 ヶ月。ERHER- の 1 例の無再発期間は 18 ヶ月、再発後の初回化学療法で eribulin を開
始し投与期間は 10.0 ヶ月であった。今回の検討では subtype 別で治療効果の
差は認められなかった。【結語】今後さらに症例の追加検討が必要と考えられ
た。
山東 雅紀、赤羽 和久、坂本 英至
〈背景〉HER2 陰性進行・再発乳癌に対する Bevacizumab+Paclitaxel(AVA+PTX)
療法の奏功率の高さや安全性が示され、実臨床において本療法が選択される症
例が増えている。今回、
当院における本療法の有効性と安全性について検討した。
〈方法〉2012 年 10 月から 2014 年 12 月まで当院にて AVA+PTX 療法を行った
18 例について有効性と安全性を検討した。
〈結果〉全症例の年齢中央値は 57 歳
(40 ~ 75)、Luminal が 13 例 (72.2%)、Triple negative(TN) が 2 例 (11.1%)、
HER2 陽性が 3 例 (16.7%)、タキサン系治療歴ありが 10 例 (55.6%)、アンスラ
サイクリン系治療歴ありが 12 例 (66.7%) であった。また AVA+PTX 療法の治
療期間の中央値は 8.9 ヶ月 (1.5 ~ 28)、一次または二次療法が 9 例、三次治療
以降が 9 例であった。全体の奏功率は、66.7%(CR:0 例、PR:12 例 ) で、病
勢コントロール率は 94.4%(PR:12 例、SD:5 例 ) であった。治療の中止理由は、
PD が 9 例、有害事象が 3 例 ( すべて末梢神経障害 ) であった。また全体のうち 8
例で末梢神経障害のため PTX の減量ないし隔週投与が行われた。その他、治療
介入を要した有害事象は 4 例で、すべて高血圧であった。サブグループ別の結
果は表に示す通りである。
〈結論〉全体の奏功率は 66.7% と良好であった。一・
二次治療と三次治
療以降で奏功率は
同等であり、三次
治療以降でも有効
性が期待できる結
果であった。
500
ポスター掲示
GP-1-03-62
GP-1-03-63
徳山中央病院外科
名古屋掖済会病院 外科
多田 耕輔、宮原 誠、久保 秀文
東垂水 久美子、河野 弘、木村 充志、米山 文彦、木村 桂子、芥川 篤史、
尾辻 英彦、清板 和昭、水川 卓丈、磯部 英男、長尾 拓哉、前田 周良、
福岡 恵
当院における転移性乳癌に対する Paclitaxcel+Bevacizumab
療法による治療経験
局所進行再発乳癌に対する Paclitaxel+Bevacizumab の使用
経験
【目的】Paclitaxel+Bevacizumab(PTX+BV)は,2011 年 9 月より進行再発乳
癌に対し使用可能となった.今回,当院で PTX+BV の投与を行った進行再発
乳癌 8 例の特徴,治療効果につき検討した.【対象】2012 年 1 月 ~2014 年 12
月の 3 年の間に当院で PTX+BV の投与を行った進行・再発乳癌 8 例.【結果】
PTX+BV 投与時の平均年齢は 61.5 歳(47~76 歳).サブタイプは,luminal:
4 例,triple negative:3 例,Her2 陽性:1 例であった.8 症例の詳細としては、
局所進行再発乳癌に対し化学療法を長期に使用し,病勢コントロールが困難
となってきた段階で PTX+BV の投与を行い,一時的に局所コントロールや肝
機能が改善した症例が 6 例.切除不能な進行乳癌に対し術前化学療法として
PTX+BV を投与し著明な腫瘍縮小効果を認め切除可能となった TN 症例が 2 例
であった.PTX+BV 前に使用した化学療法レジメン数は,中央値 3.5(0 ~ 9)
で,PTX+BV 投与期間は平均 4.25 ヶ月(1 ~ 7 ヶ月)であった.治療効果は,
PR2 例,SD4 例,PD2 例であった.有害事象は,PTX+BV 投与後に DIC を来
たした 1 例以外は、Grade2 以上の有害事象は認めず高齢者に対しても安全に
使用できた.【まとめ】PTX+BV は化学療法を長期間、多数レジメンを使用し
てきた症例において,予後延長にはならずとも局所コントロールが良好とな
り一時的に QOL を改善する特徴がある.高齢者に対しても安全に使用するこ
とができた.また腫瘍縮小効果を期待して術前に投与を行い,局所コントロー
ル目的で切除可能となった症例も認めた.
GP-1-03-64
GP-1-03-65
エベロリムス投与によりワルファリンコントロール不良となっ
た進行乳癌の治療経験
1
進行再発乳癌における Bevacizumab・Paclitaxel 療法の検討
大阪赤十字病院 乳腺外科
東京医科大学 茨城医療センター 乳腺科、2 小山記念病院 乳腺外科
仙田 典子、中山 美恵、露木 茂
越川 佳代子 1、西村 基 1、藤田 知之 1、近藤 亮一 2、藤森 実 1
エベロリムスによりワルファリンのコントロールが困難となった症例を経験
したので報告する。症例は 71 歳、女性。2003 年に前医で左乳房切除術およ
び 脇 窩 郭 清 術 を 施 行、 浸 潤 性 乳 管 癌( 充 実 腺 管 癌 )pT4N2M0stageIIIB、
ER(+)、PgR(+)、HER2(1+) の診断で、術後 CAF →カペシタビン→タモキシ
フェン→アナストロゾールを実施後経過観察となっていた。2011 年癌性胸膜
炎・縦隔リンパ節転移・多発骨転移で再発。レトロゾール→フルベストラン
ト→ XC を実施。縦隔リンパ節増大傾向のためエベロリムス・エキセメスタン
に変更した。2012 年に肺塞栓を発症し内科にて長期 VKA 療法を行うことと
なり INR1.5 を目安にワルファリン内服を開始、1mg 内服にて安定していた。
エベロリムス・エキセメスタン変更 1 か月後 INR 低下がみられ、ワルファリ
ン 2mg に増量されたが効果なく 2 カ月後には 3mg へ増量された。変更 3 カ月
後に鼻出血を主訴に受診、INR3.7 と延長していた。経過中グレード 1 以上の
血小板減少は認めなかった。エベロリムスは主として肝代謝酵素 CYP3A4 に
よって代謝され、ワルファリンは CYP2C9 によって代謝される。類似する代
謝経路によりワルファリンのコントロールが困難になったと考えられる。そ
の後の経過もあわせて報告する。
【背景および目的】Bevacizumab(Bev) は Paclitaxel(PTX) との併用において
進行再発乳癌に対する治療選択肢として広く使用されている。今回我々は当
院での経験例を元に再発乳癌における効果的な PTX+Bev 適応例を検討した。
【対象】2012 年 12 月~ 2014 年 12 月に当院で PTX+Bev 療法を施行した進行
再発乳癌 21 例を対象とし調査した。【結果】対象症例の年齢中央値は 61 歳
(42-78) で、 サ ブ タ イ プ は ER+HER2-:12 例、ER+HER2+:1 例、ERHER2+:2 例、ER-HER2-(TNBC):6 例だった。進行再発乳癌に対する前レジ
メン数の平均は 4.38(0-12) レジメン、上記サブタイプ別に平均 5、5、7.5、
2 レジメンであった。対象症例全体における奏功率 (PR) は 61.9%(13/21 例 )、
病勢コントロール率 (SD-PR) は 76.1%(15/21 例 ) だった。治療ライン別では
1st line で 50%(1/2 例 )、2nd line で 40%(2/5 例 )、3rd line 以 降 で は
71.4%(10/14 例 ) に奏功が認められた。サブタイプ別では ER+HER2-:8/12
例、ER+HER2+:1/1 例 , ER-HER2+:1/2 例、TNBC:3/6 例の奏功を認めた。
転移臓器別では肺・胸膜 3/6 例、肝 4/9 例、脳 1/2 例、皮膚・胸壁 7/10 例、
リンパ節転移 10/16 例に奏功を認めた。術前化学療法後または再発巣でサブ
タイプが TNBC に変化した症例 3 例のうち PR は 1 例であった。またタキサン
既治療例では 2/9 例、タキサン無治療例 7/12 例に奏功が認められた。前治療
薬剤と PTX+Bev の奏功率について検討すると、前治療薬剤がホルモン療法で
は奏効率は 25%(1/4 例 )、点滴抗癌剤を含むレジメンでは 60%(6/10 例 ) で
あったのに対して、経口 FU 剤のレジメンの場合は 100%(5/5 例 ) と良好で
あった。投与継続にあたり休薬を必要とした有害事象としては、好中球減少
12 例、血小板減少1例、蛋白尿 1 例が認められたが、投与間隔の延長や投与
量減量を行うことで投与継続が可能であった。また奏功が十分認められた 1 例
については Bev 単剤のメンテナンス治療を行い効果も延長して得られている。
【結語】進行再発乳癌に対し PTX+Bev は良好な成績を示した。前治療薬剤と
の組み合わせに注目すると、前治療で経口 FU 剤使用例に奏功する可能性が示
唆された。さらなる症例の蓄積による検証が必要である。
501
一般セッション(ポスター掲示)
HER2 陰性進行再発乳癌に対する Paclitaxcel(PTX) +Bevacizumab (Bev) 療
法は,高い効果と安全性が示されている.今回我々は,当院で PTX+Bev 療法
を施行した進行再発乳癌乳癌 6 例について,臨床像とその効果,有害事象など
につき検討を行ったので報告する.対象は 2012 年8月から 2014 年 12 月ま
でに当院で PTX+Bev 療法を開始した乳癌術後再発患者 6 例である.臨床像、
結果;対象例の年齢中央値は 62.6 歳(48-73)であり,Luminal A subtype(ER
陽性・HER2 陰性)が 2 例,triple negative3 例であり、その他の 1 例は両側
乳癌症例であり右側が Luminal A、左側が triple negative であった。再発部
位は骨、肺転移1例,骨、肝転移 1 例,リンパ節転移 2 例,骨、肝、皮膚転移
1 例肺、胸壁、リンパ節転移1例であった.5 例は EC+ DTX、PTX またはナ
ブパクリタキセルによる術後補助療法が施行され、再発判明後に XC 療法を施
行され PD となった後に 3 例では PTX+Bev 療法を、2 例では Eribulin 療法はさ
み PTX+Bev 療法が施行された。また 1 例は術後補助療法として TC 療法を施
行後に再発、PTX+Bev 療法が施行された。効果は CR が 4 例、PR が 2 例であっ
た。現時点では 3 例は再燃増悪に至っていないが 2 例は肝転移増悪のため
PTX+Bev 療法を中止、他レジメンによる治療が施行されている。また 1 例は
PR 判定後 3 ヶ月にて急速に胸壁、肺転移が出現し癌性胸膜炎となり死亡した。
有害事象は Grade2 高血圧 4 例に認め,降圧剤投与を開始し加療継続可能で
あった.また,Grade3 の好中球減少を 2 例に認め,抗生剤投与と G-CSF、
PTX の減量で対処し,現在も加療継続中である.考察:当院で PTX+Bev 療法
を施行した再発乳癌患者では,良好な奏功率が得られ、病勢のコントロール
が可能となった.今回は全例,再発後化療の2次及び 3 次での使用経験であり,
また術後補助療法にて PTX 既治療例も3例含まれていたが全ての症例にて奏
功が得られ、多くの報告にもあるように,late line での使用やタキサン既治
療例でも効果が認められた。有害事象も認容できるものが多く,進行再発乳
癌に対して高い効果が期待できる治療法であるが短期間で PD となる症例があ
り PD 後の治療法の選択、開発が重要であると考えられた。
ポスター掲示
GP-1-03-66
GP-1-03-67
医療法人 うえお乳腺外科
1
甲斐 裕一郎、久保田 陽子、福永 真理、上尾 裕昭
山下 純男 1、尾本 秀之 2、山田 千寿 2
当院におけるエリブリン使用例 16 例の検討
乳癌肝転移再発に対する XC 療法の検討
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳癌肝転移は予後不良とされている。深谷赤十字病院では 2006 年
か ら 2011 年 ま で の 6 年 間 の 手 術 症 例 は 653 例 で あ り、 再 発 症 例 は 50 例
(7.7%)、初発再発部位が肝のみの症例は 6 例であった。6 例とも術前後に補
助化学療法 ( アンスラサイクリン系とタキサン系 ) を施行していた。再発後 1
例は多発肝転移のためベバシズマブ・パクリタキセルを使用したが、他 5 例は
life threatening でない数ヶ以内の肝転移であったため、補助療法に使用しな
かったフッ化ピリミジン系の XC(カペシタビン・シクロフォスファミド)療法
を再発の 1st line として施行した。今回この XC 療法の 5 例を検討した。
【方法】
カペシタビン 1657mg/m2/ 日、クロフォスファミド 65 mg/m2/ 日、2 週投
与 1 週 休 薬。【 成 績 】5 例 と も 閉 経 前 ( 平 均 40 歳 )、HER2(-) で あ り、4 例 が
ER(+) で、1 例が (-) であった。T2 が 3 例、T3 と T4b が 1 例ずつで、N(+) が
4 例で、stageII が 3 例、III が 2 例であった。術前化学療法を施行した症例は
3 例であり、3 例とも病理学的効果判定は Grade2 であった。ER(+) 症例は化
学療法後にホルモン療法を施行していた。肝再発までの期間は術後 1 年から 2
年が 4 例で、4 年以内が 1 例であった。成績は CR が 3 例、PD が 2 例で、奏功
率は 60%であった。CR の 2 例は 6 コース後に 1 例は 10 コース後に CR となり、
その後可能な限り治療を継続した。PD の症例は 6 コース後と 4 コース後に治
療を変更したが、治療中に急速の増悪は見られなかった。CR の 1 例は 6 年以
上再燃なく経過しており、1 例は 6 年後に肝転移が再燃したためベバシズマブ・
パクリタキセルを施行している。有害事象は白血球好中球減少を 1 例に、軽度
肝機能障害を1例に認めたが、手足症候群は見られなかった。【考察】XC 療法
は奏功率 35 ~ 45%、CR も 4 ~ 13%と言われている。副作用もカペシタビ
ンの特徴的な手足症候群も少なく、治療を休薬するような血液毒性も少ない
と報告されている。肝初発再発は他の再発と遜色ないという報告もあり、肝
転移が予後不良と決めつけることはできない。今回症例は少ないが、奏功率
60%を考えるとアンスラサイクリン系とタキサン系の補助療法を施行した肝
単独再発症例には XC 療法が効果ある可能性があり、また脱毛も少なく QOL
を損なわない治療であり長期に使用することもでき再発治療の 1 つの有効な
治療法と考えられた。
【目的】エリブリンが保険適応となり再発治療において様々なラインで使用さ
れるようになった。その成績と有害事象について検討する。【対象】当院でエ
リブリンを使用した 42 歳から 66 歳の 16 例。【背景】ホルモン感受性陽性が 5
例 (31.2%)、ホルモン感受性陰性が 11 例 (68.8%)うち triple negative が 6
例であった。HER2status は 3+ & FISH+ が 6 例、陰性が 10 例であった。前
治療レジメン数は 3 以内が 9 例、4 以上が 7 例。投与量は 1.4mg/m2 で施行で
きたのが 14 例、1.1mg/m2 への減量を要したのが 2 例であった。投与サイク
ル 数 は 1 ~ 14 サ イ ク ル で 平 均 4.8 で あ っ た。【 結 果 】overall の response
rate( 以 下 RR) は 16 例 中 5 例 の PR で 31.2 %、total clinical benefit rate は
43.7%。前治療レジメン数が 3 以内の症例では 9 例中 5 例で 55.5%、clinical
benefit rate( 以下 CBR) は 66.7% であった。4 レジメン以上が入っているケー
スでは long SD が最良治療効果であり PR が得られた症例はなく、CBR は
14.3% であった。ホルモン感受性別に見ると、ホルモン陽性症例では 5 例中
1 例で RR は 20%、CBR は 40%であった。ホルモン陰性症例では 11 例中 4 例
で RR は 36.4%、CBR も同じく 36.4% であった。triple negative 症例では 6
例中 2 例が PR で RR は 33.3%、CBR も 33.3%とホルモン陰性症例ではより効
果が高い傾向であった。HER2status で見ると、陽性例では 6 例中 2 例が PR
であり RR は 33.3%、CBR も 33.3%であった。陰性例では 10 例中 3 例が PR
で RR は 30%、CBR は 40%であった。有害事象は重篤なものはほとんど見ら
れなかった。grade3 以上の好中球減少が 16 例中 8 例 (50% )、前治療レジメ
ンが 4 以上の群では 7 例中 5 例 (71.4% ) と効率に見られた。有熱性好中球減
少(FN) は 16 例中 7 例 (43.8% )、前治療 4 レジメン以上では 57.1%にみられ
た。末梢神経障害は grade3 以上のものは認めなかった。【結語】エリブリンは
投与時間も短く前投薬も不要でありそのメリットは大きい。今回の検討では
ホルモン感受性陰性症例でより効果が高く投与ラインがより早いほうが効果
が大きい傾向にあることが示された。有害事象も最も重篤なものとして好中
球減少があげられるが FN と併せてコントロールは比較的容易であった。エビ
デンスとしては 3rd line 以降のデータしかまだ無いものの今後はより早いラ
インでの使用の検討が望まれる。
GP-1-03-68
GP-1-03-69
富山県における転移・再発乳癌に対するベバシズマブの使用状
況と有効性に関する追加報告 (TBCRG-2)
1
こくさいじクリニック、2 深谷赤十字病院 外科
Subtype に基づいた術後補助療法の施行状況とその問題点
大阪府済生会千里病院 外科
黒部市民病院 外科、2Toyama Breast Cancer Research Group
吉岡 節子、北條 茂幸、豊田 泰弘、野間 俊樹、松永 寛紀、宮垣 博道、
真貝 竜史、福崎 孝幸、大東 弘明、前浦 義市
岩田 啓子 1,2、伊井 徹 2、江嵐 充治 2、尾山 佳永子 2、清原 薫 2、
小林 隆司 2、澤田 幸一郎 2、島多 勝男 2、清水 哲朗 2、長田 拓哉 2、
野崎 善成 2、福島 亘 2、前田 基一 2、松井 恒志 2、宗本 将義 2、
吉川 朱美 2
TBCRG は富山県における乳癌治療の現状把握のために立ち上げられた多施設
共同の研究グループである。TBCRG の調査・研究に関しては、第 22 回日本
乳癌学会学術総会においてエリブリンとベバシズマブについて初回報告を
行った。今回、転移・再発乳癌に対するベバシズマブ(アバスチン)の使用状
況と有効性、有害事象に関する調査の追加報告を行う。 調査期間は 2013 年
1月からスタートし、県内でのベバシズマブ使用例全例の集積を目指した。
2014 年 12 月末日現在、富山県内で 110 例のベバシズマブ使用例が確認され、
臨床データが集積された。 対象患者の年齢(中央値)は 54.2 歳であり、閉経
前 / 後 は 28.2 % /71.8 % で あ っ た。ER/PgR/HER2 の 陽 性 率 は
78.2%/56.4%/13.2% で あ っ た。 転 移 部 位 に 関 し て は 内 臓 転 移 有 / 無 は
73.6% /26.4%、脳転移有 / 無は 9.1% /90.9%だった。治療歴としてはアン
スラサイクリンによる治療歴のある症例が 58.2%、タキサンによる治療歴の
ある症例が 55.5%あった。 治療成績に関しては効果判定可能症例は 101 例
あり、奏功率は 65.3%、病勢コントロール率 (CR+PR+SD) は 88.1%と良好
な結果が得られた。治療期間は短いが、1 年生存率は 62.0%、無増悪生存期
間の中央値は 248 日だった、 Grade3,4 の有害事象としては、好中球現象が
12 例(11.0%)、高血圧が 5 例 (4.5%)、感覚性神経障害が 3 例(2.7%)、蛋白
尿、肝機能障害、口内炎、味覚障害がそれぞれ 1 例 (0.9%) に認められた。有
害事象のために治療中止となった症例はなかった。 富山県内でのベバシズ
マブの使用状況を継続して調査・分析を行なったところ、転移・再発乳癌に
対する治療選択としてベバシズマブは有効な薬剤の一つであると考えられた。
また、このような症例集積はさらに大規模な症例集積・分析の窓口としても
有用であると考えられ、今後も追跡を継続する事が重要と考えられた。
【目的】Subtype に基づいた術後補助療法の実施状況とその問題点について検
討した。【対象】2005 年から 2014 年までに乳癌手術を施行し、遠隔転移がな
く、Subtype 分類が可能であった 651 例を対象とした。2008 年から術後補助
trastuzumab を 導 入、2011 年 か ら Ki67 index を 測 定 し て い る。【 成 績 】
Luminal A 215 例、Luminal B 249 例、Luminal HER2 74 例、HER2 30 例、
Triple negative(以下 TN)83 例で、subtype 別の再発は 4 例(1.9%)、39 例
(15.7%)、17 例(23.0%)、5 例(16.7%)、21 例 (25.3%) で あ っ た。
Luminal A では、内分泌療法 185 例、化学療法追加は腋窩リンパ節転移のあっ
た 50 例中 22 例に施行し、全例が健存。no adjuvant は腋窩リンパ節転移陰性、
T1、Ki67 index < 10 % ま た は 75 歳 以 上 の 8 人。 再 発 例 は Stage I/ IIA、
n=0、内分泌療法後であった。Luminal B での再発は、化学療法追加 20/99 例、
内分泌療法のみまたは no adjuvant 19/150 例だったが、ER 発現 50% 未満
での再発は 10/40 例 (25%) で、ER50% 以上の 29/209 例 (13.9%) に対し
高 率 で あ っ た。HER2 陽 性 乳 癌(ER 陽 性、 陰 性 計 104 例 )で の 再 発 は、 抗
HER2 療法 + 化学療法(標準治療)5/59 例で、trastuzumab 未施行 17/45 例
より少なかった.化学療法省略のうち高齢 3 例、化学療法拒否 3 例が再発し、
ER 陽性かつ病理学的低悪性度での化学療法省略は全例健存である。TN での
再 発 は、 化 学 療 法 あ り 12/54 例、 な し 9/29 例( 高 齢 8/20、 拒 否 1/1、T12N0 0/8)であった。【考察】病理組織学的に早期もしくは低悪制度で、St.
Gallen などで推奨される治療方針では過剰診療が危惧される場合における術
後補助化学療法の省略は妥当、リンパ節転移陽性 Luminal への化学療法の追
加は有効と考えられた。HER2 陽性や TN では高齢でも再発リスクは低くなく、
化学療法追加を検討する必要がある。また、化学療法拒否は有害事象への嫌
悪感と再発リスクについての理解不十分から起こることが多く、チームとし
ての看護師や薬剤師の介入が治療の同意継続に有効であろう。
502
ポスター掲示
GP-1-03-70
GP-1-03-71
転移・再発乳がんに対する 1 次化学療法としての TS-1 の使用例
1
進行再発乳癌における Life threatening metastasis に対し
Eribulin で全身状態が改善した 1 例
関西医科大学 外科、2 リボン・ロゼ田中完児乳腺クリニック
小張総合病院 外科
吉田 秀行 1、兼松 清果 1、岡崎 智 1、神原 達也 1、金 成泰 1、吉田 良 1、
田中 完児 2、權 雅憲 1
【はじめに】進行再発乳癌症例における広範な多発肝転移や呼吸困難を伴うリ
ンパ管性肺転移は Life threatening metastasis と呼ばれ、生命の危機を伴う
ことから、治療においても速やかな効果が期待できる薬剤を選択する必要が
あ る。 今 回 我 々 は、 乳 癌 術 後 の Life threatening metastasis に 対 し て
Eribulin を使用し、速やかに転移巣の縮小を認め、全身状態が改善した症例を
経験したので文献的考察をふまえて報告する。【症例】症例は 65 歳女性。左乳
腺腫瘤を自己触知し 2009 年 11 月当科初診。精査にて左乳癌 T2N3M0 Stage
IIIC と診断し、術前化学療法として AC + 3W-PTX をそれぞれ 4 クール施行。
腫瘍は縮小し T1N0M0 Stage I に down staging が得られたため 2010 年 8 月
に 乳 房 切 除 + 腋 窩 リ ン パ 節 郭 清 術 を 施 行 し た。 術 後 病 理 は Scirrhous
carcinoma, T1N0M0, Stage I でバイオマーカーは ER+, PgR+, HER2 0 で
あったため、術後補助療法としてアロマターゼ阻害剤を使用していたが、術
後 1 年 8 ヶ月で縦隔・鎖骨上リンパ節再発・多発肺転移をきたした。その後 2
次内分泌療法としてフルベストラントを、3 次内分泌療法としてタモキシフェ
ンを使用したが効果は乏しく、さらに多発肝転移・胸壁転移・多発骨転移・
胸水貯留による呼吸困難をきたしたため全身状態が急激に悪化し ADL が著し
く低下した。そこで早急に化学療法を導入する方針とし、本人の意向をふま
えて Eribulin を選択した。Eribulin の初回投与量は 1.4mg/m2 とし、2 投 1 休
を予定したが day 8 で Grade 3 の血液毒性と Grade 2 の食欲不振・嘔気が認
められたため投与を延期。さらに day 15 でも骨髄機能の回復が遅延したため
減量の上、tri-weekly での投与となったが、計 6 回の投与後、多発肝転移巣を
はじめ胸壁転移巣・多発肺転移も縮小傾向を示し、胸水はほぼ消失して全身
状態は著明に改善し、現在継続治療中である。【考察】Eribulin は新たな転移
巣を抑制し、特定の転移巣に対して有効性を示すとの報告が散見されている
が、本症例のような Life threatening metastasis に関しても比較的速やかに
効果が発現し、全身状態の改善が期待できる薬剤であると考える。
GP-1-03-72
GP-1-03-73
1
太田西ノ内病院 外科
進行再発転移乳癌に対するエリブリンの有用性の検証
当院における乳癌術前化学療法の検討
東京医科大学病院 乳腺科、2 東京医科大学病院 病理診断部、
3
東京医科大学病院 薬剤部
山田 睦夫、安藤 仁、伊藤 泰輔、石井 芳正
河合 佑子 1、寺岡 冴子 1、上田 亜衣 1、宮原 か奈 1、細永 真理 1、
木村 芙英 1、海瀬 博史 1、山田 公人 1、宮松 洋信 3、佐藤 永一 2、
石川 孝 1
【背景】エリブリン(HAL)は、2011 年 4 月に手術不能又は再発乳癌に対して適
応が認められた微小管作用薬であり、現在、実臨床における使用成績が報告
されている。【目的】当院における進行再発乳癌に対する HAL 療法の効果と安
全性を観察する。【対象・方法】2011 年 8 月から 2014 年 9 月までに HAL 療法
を施行した進行再発乳癌 40 例を対象として後ろ向きに解析した。 HAL は原
則として、1.4mg/m2、day1、8 投与、day15 休薬を 1 サイクルとして 3 週
毎に静脈内投与した。【結果】40 例の内訳は、再発 33 例および転移 7 例であっ
た。年齢の中央値 67 歳、ホルモン陽性 HER2 陰性 29 例、ホルモン陽性 HER2
陽性 4 例、HER2 2 例、トリプルネガティブ 5 例であり、再発転移後の既治療
平均レジメン数 3.3 であり、前治療に使われた薬剤は、アンスラサイクリン
80%、タキサン 73%、カペシタビン 50%、ビノレルビン 60%、ゲムシタビ
ン 65% であり、DFI の中央値 4.4 年(0~15.5 年)であった。全体の治療効果
は PR 23%、SD 30% で、TTF 中央値 3.6 カ月(7 日 ~15.7 カ月)であった。
PS 低下や末梢神経障害、好中球減少など Grade3 の副作用および他疾患よる
治療中止は 7 例に認めた。
【結語】進行再発乳癌に対する HAL 療法は、報告さ
れた臨床試験と遜色ない効果が観察された。他疾患や G3 により治療を中止し
た症例はあったが、治療関連死はなかった。今後、症例を増やして観察を続
ける必要はあるが、有用な薬剤と考えられた。
503
2009 年 10 月から 2013 年 4 月までに当院で乳癌と診断され手術施行した初発
乳癌 184 例のうち、術前化学療法を施行した 25 例(13.6%)について検討した。
初 診 時 年 齢 は 34 ~ 69 歳( 平 均 52.1 歳 )、ER(+)17 例、ER(-)8 例、 ま た
HER2(+)11 例、HER2(-)14 例であった。術前化学療法は主としてアンスラ
サイクリン系の後タキサン系のレジメンまたは HER2(+) 例は分子標的療法と
してトラスツズマブを追加した。Grade3 の発熱性好中球減少症 3 例あり、入
院の上薬物療法を施行したが、その他重篤な有害事象はなかった。画像診断
による術前化学療法の治療効果は、cCR 8 例、cPR 17 例、cSD と cPD はなかっ
た。乳房手術の術式は乳房温存 16 例、乳房全摘が 9 例であり、乳房温存手術
が施行された 16 例のうち少なくとも 14 例は初診時乳房全摘が妥当と判断さ
れていた。手術標本の組織学的治療効果は、Grade0 1 例、Grade1a 13 例、
Grade1b 2 例、Grade2a 4 例、Grade2b 0 例、Grade3 5 例であった。ER、
HER2 発 現 状 況 別 pCR 率 は ER(+)HER2(+)33.3%(2/6)、ER(-)HER2(+)
100%(3/3)、ER(+)HER2(-) と ER(-)HER2(-) は 0%であった。術後経過観
察中央値 33.4 か月で再発 4 例(肺・胸膜 1 例、骨 1 例、頚部リンパ節 1 例、温
存乳房局所 1 例)あり、再発症例の術前化学療法による組織学的治療効果は温
存乳房局所 1 例は 2a、その他は 1a であった。(まとめ)初診時乳房温存手術が
困難と判断されても、HER2(+) であれば、副作用に注意しながら、乳房温存
手術を目指して術前化学療法を施行することは有意義であると考えられた。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】転移・再発をきたした乳がんは根治が困難である。そのため治療
の目的は生存期間の延長とQOLの改善である。転移・再発乳がんに対する 1
次 化 学 療 法 は Anthracycline 系 や Taxane 系 の 薬 剤 が 推 奨 さ れ る。 し か し、
TS-1 と Taxane 系薬剤を比較する第三相試験(SELECT BC)が行われ、
全生存期間に関して TS-1 の Taxane 系薬剤に対する非劣性が証明された。こ
の結果をもとに当院でも、HER2 陽性乳がんの陰転化した症例や高齢者に対し
て点滴化学療法が困難な症例に TS-1 を投与し良好な結果が得られた。【対象・
方法】転移・再発臓器から組織学的に HER2 陰性である事が確認された症例ま
たはホルモン療法に抵抗性になった症例を選んだ。投与方法は体表面積に合
わせて 1 日に 80 ~ 120mg を 28 日間連日投与 14 日間休薬で 1 コースとした。
効果判定には、CTまたはPET / CT、腫瘍マーカーを用いた。【結果】50
歳代女性、左乳がん(HER2 陽性乳がん)に術前化学療法施行し手術施行。手
術標本にて HER2 陰転化。術後 1 年 9 ヶ月の時点で左頚部リンパ節転移と診断。
生検標本にて ER(-)、PgR(-)、HER2(0)。TS-1 投与し 3 ヶ月後のPET / C
Tにてリンパ節消失(CR)。70 歳代女性、左乳がん(ホルモン陽性乳がん)術
後 11 年目。左胸壁再発。生検標本にて ER(+)、PgR(-)、HER2(2+:FIS
H法にて増幅なし )。再発治療としてホルモン療法施行(1 次治療~ 4 次治療)
するもPD。1 次化学療法として TS-1 投与。3 ヶ月後のCTにて縮小、腫瘍マー
カー低下(PR)。有害事象も Grade3 以上の出現を認めなかった。
【考察】転移・
再発治療に求められる生存期間の延長は、TS-1 でも他の Taxane 系薬剤と同
等と考える。それゆえ、QOLを考慮すると点滴抗癌剤よりも経口抗癌剤の
方が簡便で脱毛等の副作用の点で優れている。また、ホルモン療法に耐性を
示した症例でも TS-1 の効果が期待できると考える。【結語】今回の症例を通じ
て、TS-1 投与を転移再発治療の早期の段階で投与することでCR、PRが得
られたと考える。また、有害事象はほとんど出現せずQOLの低下を認めず
治療が続行できた。
木村 友紀、冨岡 一幸、横山 武史、金森 規朗、黒川 友晴、吉井 克己、
小張 淑男
ポスター掲示
GP-1-04-01
GP-1-04-02
大阪府済生会野江病院 乳腺外科
1
乳腺外科領域での造影超音波検査の経験
異時性に発生した乳腺 solid papillary carcinoma の1例
3
藤澤 憲良、吉田 朱里、西江 優子
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】超音波造影剤ソナゾイド ( ペルフルブタン ) は 2012 年 8 月より乳房腫
瘤性病変に対して適応が拡大された。しかしながら、どのような症例に対し
て特に有用性が高いかはまだ完全には明らかになっていない。当科において
も 2014 年 1 月よりソナゾイドを用いた造影超音波検査 (Contrast-enhanced
ultrasonography: CEUS) を開始している。2014 年1月から CEUS を施行し
た症例経験から CEUS の特徴と、乳癌診療における CEUS の意義、役割につい
て検討する。
【方法】対象は 2014 年 1 月から 12 月の間に CEUS を施行した 28 例。鑑別診断、
広がり診断、second look 検査、化学療法効果判定に CEUS を用いた。最終的
に組織診または細胞診を施行した症例については感度、特異度、正診率を検
討した。
検査方法は 1)0.015mL/kg のソナゾイドを静注ののち生食 10mL にてフラッ
シュする、2) 造影剤静注射後 1 分間は断面を固定して観察する、3) 病変全体
をスキャンし、2 分後まで観察する。4) 多発病変の場合などは必要に応じて
複数回投与し、同様の観察を行う、こととした。
【結果】28 例の CEUS 施行目的は鑑別診断 20 例、広がり診断 4 例、second
look 検査 2 例、化学療法効果判定 2 例であった。22 例で最終的に組織診断ま
たは細胞診を施行し、感度 92%、特異度 56%、正診率 77% であった。
化学療法効果判定例では血流の低下が確認できた。また乳管内進展が疑われ
る部位にも不均一な造影効果を認め、広がり診断に有用であった。
【結論】鑑別診断においては感度 92%、陰性的中率 83% とまずまず良好であっ
た。一方特異度は 56% と低かった。CEUS にて良性と診断された症例では、
他検査で良性と考えられる場合は主に経過観察とし、他検査で悪性を否定で
きない場合に組織診、細胞診を行う事が多かったが、このことが特異度が低
下の一因と考えられる。また一例のみ CEUS 良性と診断し、組織診で悪性と
診断した例があった。どのような症例が良性と間違えやすいのか、症例を積
み重ねて組織型の検討などが必要である。
少ない症例ではあるが、広がり診断や化学療法の効果判定でも CEUS は有用
であった。
今後は鑑別診断だけでなく、手術時の切除範囲の決定や化学療法の効果判定
にも CEUS を応用し、症例を重ねて行く予定である。
大阪警察病院 臨床検査科、2 大阪警察病院 乳腺内分泌外科、
大阪警察病院 病理診断科
辻 里佳 1、長谷部 愛 1、水谷 哲 1、吉留 克英 2、辻本 正彦 3
[ はじめに ] solid papillary carcinoma( 以下 SPC) は、1995年に Maluf ら
によって提唱された高齢者に好発する予後良好な乳癌である。
SPC は非浸潤性乳癌 (ductal carcinoma in situ) の特殊組織亜型で、比較的ま
れな腫瘍である。低異型度癌細胞が主に乳管内で充実性・乳頭状に増殖する
のを特徴とし、神経内分泌への分化や細胞内・細胞外粘液の貯留を示す。
今回、異時性で左右両側に SPC を認めた1例を経験したので報告する。
[ 症例 ] 74歳女性。
68歳時、左 C 領域の非浸潤性乳癌にて Bt + Ax を施行。
病 理 結 果 は Intraductal papillary carcinoma (SPC)。ER( + )PgR( + )HER
2( -)。
術後6年目の超音波検査にて、右乳頭直下に拡張した乳管があり、その内部
には充実性腫瘍を認めた。さらに C/D 領域外側方向に8×5mm、その外側に
7×5mm の充実部伴う嚢胞性腫瘤を認めた。
穿刺吸引細胞診を施行した結果、非浸潤性乳癌 (ductal carcinoma in situ) の
診断を得て、右乳房全摘出術を施行した。
永久病理標本では、拡張した乳管内に異型細胞の増生を認めるが乳管内に留
ま り、 明 ら か な 浸 潤 は 認 め な か っ た。 神 経 内 分 泌 マ ー カ ー (NCAM,
Synaptophysin, Chromogranin) 陽性。粘液染色では、細胞内に粘液を有し
ていた。ER( + , ほぼ100% ) PgR( + , 80% )p 53( - )CD 31( - )。
今回発見された右乳癌は、充実部を伴う嚢胞性腫瘤であり、6年前の左乳癌
の 超 音 波 所 見 と も 類 似 し て お り、 病 理 診 断 は、Intraductal papillary
carcinoma (SPC) で、同一の組織像であった。
異時性に発生した乳腺 SPC は、諏訪らの報告では47例中2例と稀であり、
今回、文献的考察を含め報告する。
GP-1-04-03
GP-1-04-04
1
1
超音波にて悪性が疑われた benign fibroepithelial tumor の
3例
3
マンモグラフィ (MMG)で所見が認められなかった腫瘍径10mm
以下の浸潤癌の特徴と診断の留意点
社会医療法人財団 白十字会 白十字病院 臨床検査技術部、2 乳腺外科、
臨床検査科
たけべ乳腺外科クリニック、2 高松平和病院病理検査
兼近 典子 1、綾野 はるな 1、松本 昌子 1、安毛 直美 1、新井 貴士 1、
武部 晃司 1、佐藤 明 2
古賀 晶子 1、松尾 文恵 2、大谷 博 3
乳腺の benign fibroepithelial tumor には線維腺腫、若年性線維腺腫、良性葉
状腫瘍が含まれ、それらの超音波像は円形または分葉形で境界明瞭な腫瘤像
を呈する。不整形、境界不明瞭な腫瘤像を呈し、悪性病変が疑われた 3 例を経
験したので病理組織像と対比して報告する。【症例1】60 歳代女性、左乳房に
腫瘤を触知。MMG は C-1。US では左 D に楕円形境界明瞭な部分と不整形境界
不明瞭な部分とからなる低エコー腫瘤、後方エコーは不整形境界不明瞭な部
分では減弱、C-4、線維腺腫と浸潤癌の混在を疑った。病理では良性葉状腫瘍、
間質成分は粘液腫状~硝子化まで不均質、2 次結節が見られた。【症例 2】40
歳台女性、検診精査目的で来院。MMG では一部境界不明瞭な不整形腫瘤 C-4。
US では楕円形、境界明瞭平滑、一部境界不明瞭な部分を伴う低エコー腫瘤
C-4、浸潤癌を疑った。病理では良性葉状腫瘍、間質成分は一部不均質、2 次
結節が見られた。【症例 3】30 歳台女性、右乳房に腫瘤を触知。MMG では円形、
境界明瞭一部評価困難な等濃度腫瘤 C-3。US では円形、境界不明瞭な高エコー
腫瘤、内部はモザイク状、C-3、過誤腫、悪性リンパ腫を疑った。病理では若
年性線維腺腫と診断された。間質成分は粘液腫状~硝子化まで不均質であり、
脂肪細胞の混在を認めた。また、上皮の増生所見が目立ち、嚢胞が散見された。
3 症例とも後方エコーは増強していた。3 症例とも針生検後に腫瘍摘出術が施
行された。【考察】症例 1 での不整形境界不明瞭な部分は広範な硝子化と 2 次結
節がみられたため、後方エコーが減弱し不整形になっていたと思われた。症
例 2 は、境界明瞭な腫瘤像であったが末梢側で不明瞭なところが見られた。病
理では 2 次結節がみられたため、この部分が不整形腫瘤像を反映していたもの
と考えられた。症例 3 の境界不明瞭な高エコー腫瘤、モザイク状の内部エコー
と後方エコーの増強は、乳汁を含む多発嚢胞、間質の粘液腫状領域、脂肪細
胞の混在、上皮の不均質な増生所見が原因と考えられた。この複雑な内部構
造により内部エコーが不均質となり悪性との鑑別が困難であった。【結語】
benign fibroepithelial tumor は病理組織像を反映した多彩な腫瘤像を呈し、
乳癌との鑑別が困難なことがある。境界不明瞭腫瘤、不整形腫瘤病変を見た
ときは、benign fibroepithelial tumor を鑑別診断として常に考慮し、過剰な
治療にならないよう臨床に報告しなければならない。
504
目的:超音波 (US) 検診が導入されると、US 所見のみで見つかる病変が増加
すると予想される。当院ではすべて MMG / US 併用検診を行っており、穿刺
吸引細胞診 (FNAC) を精査の第一選択としている。今回、検診効果の高い腫瘍
径 10 mm以下の浸潤癌のうち、MMG に所見のなかった症例の特徴を検討し
た。対象:2008 年から 2013 年の 6 年間に組織診断で病理長径 10 mm以下の
浸潤癌と診断された 205 例中、MMG で所見のなかった 51 例 (25% ) を対象と
した。成績:平均年齢は 50 歳(MMG に所見ありは 56 歳)、MMG での乳腺は
不均一高濃度から高濃度が多かった。発見状況は腫瘤自覚 5 例、乳汁分泌 4 例、
無自覚 42 例、US 所見は distortion のみられる腫瘤が 25 例、distortion のみ
られない腫瘤や嚢胞性病変が 26 例であった。なお、distortion とは、超音波
上腫瘤およびその近傍に引き込み所見がみられることを言う。サブタイプ別
では lumA38 例、lumB9 例、triple negative(TN)4 例であり、サブタイプ別
の超音波所見は distortion あり:なしが lumA23:15、lumB 2:7、TN0:4
であった。FNAC を施行した症例は 43 例あり、全て検体適正で、細胞診断は
悪性 28 例 (65% )、悪性疑い 5 例 (12% )、鑑別困難 10 例 (23% ) であった。
鑑別困難は lumA 9 例、lumB 1 例であり、TN はすべて悪性であった。鑑別困
難の理由は二相性のみられる集塊の混在や、異型が乏しい症例、腫瘍細胞量
が少ないことであった。結語:腫瘍径が小さく、MMG で乳腺が不均一高濃度
や高濃度のもの、あるいは腫瘍の病理学的波及度が乳腺組織診内にとどまっ
ているものは MMG 陰性になりやすい。10 mm以下の浸潤癌にも悪性度の高
い症例もあり、distortion のみられない症例に高悪性度のものが多く、細胞診
が有用であった。MMG に所見がなく超音波のみで発見される微小病変を積極
的に精査できる細胞診を組み合わせることで、高悪性度の乳癌を早期に発見
でき診断効率が上がると考える。
ポスター掲示
GP-1-04-05
GP-1-04-06
乳癌症例に対する乳房造影超音波検査所見の分析と組織型診断
への応用検討
乳腺良性腫瘤の造影超音波検査の TIC 曲線の有用性の検討
杏嶺会一宮西病院 放射線科
姫路赤十字病院 乳腺外科
小橋 里加
佐々木 陽子、渡辺 直樹、大塚 翔子、湯浅 壮司
【はじめに】昨今の乳癌診療において、乳房超音波検査はマンモグラフィーと
ならび重要な検査であり、病変の広がりや大きさなどの情報に加え、生検を
行う際にも不可欠な検査である。さらに近年開発された造影剤を用いること
により、今までの超音波検査による定量的評価に加え、血流評価などの質的
評価も可能となった。この乳房造影超音波検査を用いて、初診の際に組織型
や subtype の予測をすることが可能であれば、以後の治療を進めて行く上で
大きな助けとなる。【対象と方法】2012 年 12 月以降に、自施設にて超音波造
影剤ペルフルブタンマイクロバブル(ソナゾイド)を用いて乳房造影超音波検
査を施行した 174 例と、生検標本または手術標本を用いた組織型・Intrinsic
subtype のデータを後ろ向きに解析し比較検討を行った。造影超音波での所
見は、造影強度・染影パターン・周囲染み出しの有無・wash out とし、それ
ぞれの項目に関して検討を行った。【結果】染影パターン・染み出しの有無の
2 項目で、組織型による有意差を認めた。染影パターンは p=0.00082( χ 2 検
定、有意水準 p < 0.001) で、scirrhous で不均一な染影パターンが多く認め
ら れ た。 染 み 出 し の 有 無 は p=0.025(G 検 定、 有 意 水 準 p < 0.05) で、
scirrhous や papillotubular と比べて solid-tubular で染み出しを認める症例が
多く認められた。一方で Subtype による有意差は認めなかった。【考察】組織
型において、それぞれの生物学的特性に応じた所見の差が認められた。今後
は造影結果の TIC 解析による定量的評価を行い、より詳細なデータの比較検
討を行う必要があると考える。
GP-1-04-07
GP-1-04-08
薬物療法奏功例におけるべバシズマブ併用の有無と造影超音波
所見の関係
マンモトーム生検にて診断した非触知乳癌の超音波画像の検討
1
1
東邦大学 医療センター大森病院 乳腺・内分泌外科、
東邦大学 医療センター大森病院 臨床生理機能検査部、3 相模原中央病院、
4
東邦大学 医療センター大森病院 病理診断科
2
金澤 真作 1、三塚 幸夫 2、齊藤 芙美 1、尾作 忠知 1、久保田 伊哉 1、
馬越 俊輔 1、片岡 明美 1、中野 太郎 3、高塚 純 3、根本 哲生 4、
渋谷 和俊 4、緒方 秀昭 1
【はじめに】細胞障害性抗がん剤が奏功する症例では、早期に腫瘍径の縮小が
見られることが多い。造影超音波で経過を観察すると、治療奏功例では早期
に腫瘍内部の造影効果の低下が認められる。また、造影効果の低下は、腫瘍
径の変化に関わらず治療の奏功と関連している場合が多く薬物療法の治療効
果の評価に有用である。近年、分子標的治療薬が細胞障害性抗がん剤と併用
されるようになり、その治療効果の評価が重要となってきている。
【目的】分
子標的治療薬の一つであるベバシズマブと細胞障害性抗がん剤を併用した乳
癌化学療法症例の治療経過を造影超音波で観察して、細胞障害性抗がん剤の
みで治療された症例との違いを検討する。【方法と対象】使用した超音波診断
装 置 と プ ロ ー ブ は 主 に APLIO XG と PLT-805AT ま た は APLIO 500 と PLT1005BT。同一症例では、使用機器や検査条件は一定として治療経過を観察し
た。 超音波造影剤として 0.0075mL/kg のソナゾイドを経静脈的に投与し、
投与開始から 1 分間プローブを固定して観察し撮像した。造影超音波所見の解
析は、保存されたビデオデータあるいはローデータを用いて行った。治療効
果の評価には、組織学的な検索が可能であった症例では組織学的効果を用い、
組織学的な検索が可能でなかった症例では臨床所見と画像所見および治療後
の経過より評価した。対象症例は、ベバシズマブとパクリタキセル併用で治
療が行われた症例と細胞障害性抗がん剤のみで治療された症例。トラスツズ
マブ併用で治療された HER2 陽性例は除外した。【結果】細胞障害性抗がん剤
のみで治療され奏功した症例では、治療早期から造影面積の減少、造影強度
の低下や不染域の増大などの造影効果の低下を認め最終的には造影効果が消
失した。一方、ベバシズマブが併用され奏功した症例では、造影面積の減少
を認めたが、造影強度は保たれ不染域の増大も少なかったが、最終的には造
影効果が消失した。【結論】薬物療法奏功例でベバシズマブ併用の有無で造影
効果の変化に違いが見られた。造影効果の変化に違いは、ベバシズマブの抗
VEGF 抗体としての血管透過性低下作用や間質圧低減作用が関連したと考えら
れる。
505
山王台病院 乳腺センター 乳腺外科、2 山王台病院 外科
櫻井 修 1、幕内 幹男 2、上道 治 2
当院において 2014 年 11 月末迄の 7 年 8 カ月間に超音波ガイド下マンモ
トーム生検を 416 例に施行した。この内、乳癌は 109 例であり、28 例(26%)
は非触知乳癌であった。今回、この非触知乳癌の超音波画像所見をガイドラ
インに沿って検討したので報告する。 非触知乳癌の中で「腫瘤像形成性病変」
は 18 例あり、画像上の最大腫瘤径は 5.5 ~ 18.9mm 平均 10.3mm、画像所
見の中で頻度の高かったものは D/W0.7 以上、内部エコーの均質性が不均質、
形状が不整形、境界が不明瞭、その他の順であった。組織型についてみると
DCIS5 例、充実腺管癌 2 例、硬癌 10 例、髄様癌 1 例であった。 次に、「腫
瘤像非形成性病変」は 10 例あり、画像所見の中で頻度の高かったものは局所
性不明瞭な低エコー域、局所性斑状低エコー域、その他の順であった。組織
型についてみると DCIS2 例、乳頭腺管癌 1 例、充実腺管癌 2 例、硬癌 3 例、
粘液癌 1 例、不明 1 例(他院にて手術、生検組織診断は硬癌)であった。 28
例の非触知乳癌の組織学的腫瘤径は 5.0 ~ 45.0mm(他院手術症例の 1 例を除
く)、DCIS 及び術前化学療法を施行して pCR が得られた症例を除いた IDC の
手術標本の浸潤腫瘤径は 3.0 ~ 16.0mm であり、総て0期または 1 期の早期
乳癌であった。 今後、超音波検診が頻繁に行われることが予想されるが、
非触知乳癌の早期発見のためには上記の超音波画像所見に注目するべきであ
ると思われた。
一般セッション(ポスター掲示)
【背景 . 目的】第2世代超音波造影剤ソナゾイドは肝臓腫瘤性病変に続き、
2012 年 8 月に乳腺腫瘤性病変の保険適用が許可された。当院では、セカンド
ルックとして乳腺造影超音波を施行している。乳腺造影超音波検査は MRI 造
影検査と比較されることが多いが、まだ造影方法や評価統一が充分でなく、
造影効果の判定を目視で行うことが多い。その為造影結果を可視化する TIC
曲線の作成が、良性腫瘤の識別や治療方針に有用か検討した。
【使用機器 ; 対象】使用装置 HI VISION ASCENDUS(Hitachi Aloka Medical),
深 触 子 EupL73S,EupL74M, 対 象 は 年 齢 31-77 歳 ( 中 央 値 48.6 歳 )、 腫 瘤 径
4.1-35.1mm( 中央値 12.1mm), 単純超音波では境界明瞭で腫瘤内部に血流
を認めずカテゴリー3、マンモグラフィーでは3以下の良性の可能性が高い
腫瘤 16 症例
【方法】B モードにて腫瘤を計測、血流評価を行い、フォーカスは腫瘤下縁、
MI 値 は 0.2 前 後 に 設 定 す る。 ソ ナ ゾ イ ド 注 射 液 は 規 定 通 り 混 濁 液 と し て
0.015mL/kg を静脈内投与し 10mL の生理食塩水を 1ml/kg でフラッシュす
る。
造影剤注入後 60 秒間は腫瘤関心断面に固定し動画保存する。その後 Micro
Flow Imaging(MFI) にて腫瘤内部の染色を観察、ROI を腫瘤内部とし TIC 曲
線を作成し検討する。
【結果】16 症例中、注入後から TIC 曲線の変化がなく内部に染色を全く認めら
れない腫瘤のパターンは 15 症例 (94% )、注入後から TIC 曲線が緩やかに上
昇し内部が均一に染色するパターンの腫瘤は 1 例 (6% )、悪性所見を示すパ
ターンは0例 (0% ) であった。今回、乳腺造影超音波を施行した症例はより
良性の可能性が高いとされ経過観察となった。
【考察】対象の 16 症例は単純超音波では類似した所見の腫瘤であったが、造影
超音波では違った良性腫瘤の造影パターンで TIC 曲線を描いた。これは腫瘤
の病理学的背景によるものであると考えられる。TIC 曲線の作成により良悪性
の判別が可視化かされただけでなく、腫瘤鑑別のパターン化につながり、TIC
曲線の作製は乳腺腫瘤診断に有用であると考えられる。
ポスター掲示
GP-1-04-09
GP-1-04-10
1
1
センチネルリンパ節転移陽性症例における腋窩郭清省略適応と
なる術前超音波所見の検討
2
乳腺超音波検査で指摘された構築の乱れにおける3D超音波の
有用性について
東京医科大学茨城医療センター 乳腺科、
東京医科大学茨城医療センター 病理診断部
札幌ことに乳腺クリニック、2 札幌臨床検査センター 病理部
白井 秀明 1、吉田 佳代 1、桜井 美紀 1、三神 俊彦 1、増岡 秀次 1、
下川原 出 1、浅石 和昭 1、成松 英明 2
西村 基 1、越川 佳代子 1、近藤 亮一 1、藤田 知之 1、森下 由紀雄 2、
藤森 実 1
【はじめに】乳癌に対するセンチネルリンパ節生検 (SNB) は広く普及しており、
近年 SN 転移陽性例における腋窩廓清 (ALND) 省略の可能性が議論されてい
る。今回われわれは術前に N0 と診断された症例において、SNB 転移陽性であっ
た場合、腋窩郭清省略の適応となる術前超音波所見に関して retrospective に
検討した。【対象と方法】2008 年 4 月~ 2014 年 3 月までに術前 N0 と診断し、
当院で手術を施行した 262 例を対象とし、術前超音波所見と病理結果を対比
した。【結果】262 例中 SNB が施行されたのは 244 例、術中 SN 転移陽性が 35
例、術後 SN 転移陽性が 18 例であった。SN 転移陽性 53 例のうち DCIS が 2 例
( 高悪性度 1 例 , 中悪性度 1 例 )、浸潤癌が 51 例であった。術中 SN 転移陽性で
追加郭清した 35 例のうち、非 SN 転移陰性群は 28 例、陽性群は 7 例であった。
両群とも腋窩リンパ節の術前超音波所見では有意な転移所見は認めなかった。
非 SN 転移陽性例 7 例はいずれも浸潤癌であり、術前超音波検査所見で検討し
た結果、3 例は腫瘍浸潤径 2cm 以下であったが Halo 領域が全体の 15% 以上
であり、2 例は真皮浸潤を伴う所見、2 例は浸潤部が多発している所見であっ
た。【まとめ】上記因子を郭清省略の適応から除外することにより、SN 転移陽
性例における非 SN 郭清省略基準に術前超音波検査所見が有用である可能性が
示唆された。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳腺超音波検査(以下US)による構築の乱れ(以下構築の乱れ)は
非腫瘤性病変であることより,その全体像を把握する事は,そう容易ではない.
特に通常用いられるBモード画像(以下Bモード)のみでは,病変の一断面の
記録やその評価になってしまうことより,病変の全体像を捉えて,静止画像
に記録する事は難しい.一方,3D超音波画像(以下3D)は,従来のBモー
ドとは異なる方向の断面像が記録可能であることより,多く情報が得られる
ことが期待された. そこで今回我々は構築の乱れの存在の指摘とその良悪鑑
別のため,
Bモードに3Dを合わせて施行し,
良好な結果を得たので報告する.
【対象と方法】2010 年 1 月から 2014 年 11 月までに,USにて構築の乱れを指
摘し,針生検や切除生検などの組織学的検査によって確認出来たものの内,
Bモードおよび3Dが記録として残されていたもの 24 例を対象とした.方法
はBモード単独の評価と3Dを加えて評価したものとを比較し明らかにその
情報量が増加していたかについて調べた.また合わせてその良悪の鑑別にお
いても3Dが診断に寄与したか否かについても検討した.特に良悪の鑑別に
おいて比較したのは,構築の乱れやハローを伴うような浸潤癌と良性病変の
鑑別における画像的な情報量の違いをBモード単独と3Dを加えたもので比
較検討した.【まとめ】今回対象とした構築の乱れは全てにおいて,3Dを加
味する事によってその情報量が増加し,構築の乱れを確認し評価する事が容
易になった.特にその表現が難しかった病変の形状の他,境界の所見におい
ては,不明瞭またはその存在すら認識が出来ない非腫瘤性病変であることも
全体的に画像表示することによって認識が可能であった.また良悪の鑑別に
おいても3Dを合わせて施行すると,Bモードのみでは把握しにくかった病
変の全体像を立体的に把握することが可能になり,全ての症例において病変
に中心部がなく,非腫瘤性病変としての画像を静止画に記録することが可能
であり,これまで区別の難しかった構築の乱れのみで指摘される浸潤癌やハ
ローを伴う腫瘤性の浸潤癌との鑑別が可能であった.以上より3Dはこれま
で検者の頭の中のみで構築されていた立体的な形状や境界部所見を静止画像
に表示させることが可能となり,構築の乱れにおける良悪の鑑別においても
その有用性が示唆された.
GP-1-04-11
GP-1-04-12
造影超音波検査における乳腺腫瘍の微細血管構築所見について
非触知かつ微細石灰化病変を伴う乳癌に対する非侵襲的病変部
位同定法の検討
東京慈恵会医科大学 乳腺内分泌外科
旭川医科大学 乳腺疾患センター
加藤 久美子、神尾 麻紀子、野木 裕子、塩谷 尚志、鳥海 弥寿雄、
井廻 良美、武山 浩
林 諭史、松田 佳也、石橋 佳、北田 正博
【はじめに】乳腺超音波診断にカラードプラ法を追加する有用性を肯定する報
告は多い.造影超音波検査(Contrast-enhanced ultrasonography;CEUS)
ではカラードプラ法よりもさらに微細な血管構築の描出が期待される.CEUS
の乳腺領域における判定基準は定まっていないが,腫瘤辺縁および内部の血
管構築の分類が良悪の鑑別に有用であると報告されている.しかし実際の検
査では得られた検査所見の解釈に迷うことが多い.【目的】CEUS で描出され
る腫瘤内部の微細血管構築所見から良悪の鑑別 w をするためにはどのような
分類が日常臨床に有用であるかを検討する.【対象】2013 年 1 月から 2014 年
12 月までに当院で CEUS 施行後に手術を行った症例のうち,病理組織学的検
査で限局した病変を有する 17 症例を対象とした.病理組織学的内訳は乳癌 12
例(浸潤性乳管癌 10 例,線維腺腫内に合併した浸潤性乳癌 1 例,線維腺腫内
に合併した非浸潤性乳癌 1 例),線維腺腫 4 例,葉状腫瘍 1 例であった.腫瘤
径は 1.1 - 4.2cm ( 中央値 1.9cm) であった.【方法】造影剤はソナゾイドを
使用した.装置は GE Healthcare 社製 LOGIQ E9 を,プローベは ML6-15 を
使用して CEUS を行った. raw data から accumulation mode 画像を作成し,
腫瘤内部の微細血管構築所見を retrospective に検討した.血管の走行形式お
よび形状が,(1) 直線的走行または分枝を有する,(2) 屈曲蛇行した走行を有
する,(3) 口径不整を示す,(4) 連続的線形を示さない,の 4 点から各病変を
評価した.【結果】乳癌 12 例のうち 2 例では腫瘍内部の造影が乏しく血管構築
は評価不能であった.(1) 直線的走行または分枝を有する血管走行は乳癌症例
では 1 例に認め,線維腺腫内に合併した非浸潤性小葉癌症例であった.また線
維腺腫 4 例のうち 2 例が同所見を示した.(2) 屈曲蛇行した血管走行は乳癌症
例9例 ( 9/12 例,75% ),線維腺腫1例,葉状腫瘍1例に認めた.(3) 口径
不整は乳癌症例7例(7/12 例,58.3%)に認めた.(4) 連続的線形を認めない
ものは,線維腺腫 2 例に認めた.【まとめ】乳癌に特異的な微細血管構築は口
径不整所見であった.直線的な血管走行と分枝は線維腺腫に特徴的な所見と
されているが,今回の研究ではこれに一致せず,屈曲蛇行する血管構築も線
維腺腫の一所見でありうると考えられた.連続的線形を認めず血管走行が描
出されない症例に関しては症例の積み重ねによる検討が必要である.
【はじめに】非触知で微細石灰化病変を伴う乳癌 (NPBC) に対し,病変部位同
定のためステレオガイド下マーキング (SM) を施行しているが,非侵襲的に病
変を同定できれば,患者や術者への負担を軽減できる.超音波 B モード,石
灰 化 モ ー ド (MicroPure モ ー ド,MP), ペ ル フ ル ブ タ ン に よ る 造 影 超 音 波
(CEUS),MR マンモグラフィ (MRM) を併用し手術した NPBC について,病変
同定率の検討を行い,SM 省略の是非について考察したため報告する.【対象
と方法】2012/8 ~ 2014/8 までの NPBC 15 例を対象とした.超音波検査は
Aplio400( 東芝 ) を用い,全身麻酔導入後に施行した.病変評価はスコア化 (1:
同定困難,2: 同定可能,3: 容易に同定可能 ) し検討した.また,各検査と年齢,
閉経状況,BMI,腫瘍径,MMG 所見,組織型との相関について検討した.【結
果】B モード,MP,CEUS は全例,MRM は 13 例に施行した.SM 省略は 4 例
であった.各検査単独での病変同定率は,B モード 87%,MP 87%,CEUS
93%,MRM 77% であった.同定率が下がる原因は,B モード ( 若年,腫瘍径
小,非浸潤癌 ),MP(BMI 高値 ),CEUS( 閉経後,腫瘍径小,MMG 所見乏 ),
MRM( 若年,腫瘍径小,石灰化分布狭い ) であった.SM 施行の有無にかかわ
らず,各超音波検査の併用により全例で病変部位を同定できた ( 図 ).【まとめ】
NPBC の手術施行に際し,SM を省略しても,当科で考案した各超音波検査の
併用により全例でリアルタイムに病変部位を同定できた.B モードのみでは所
見が弱い場合でも,MP と CEUS を併用することで,より安心確実に切除範囲
を決定できた.た
だし,若年や腫瘍
径 が 小 さ い 例,
BMI 高値例では超
音波検査でも病変
同定率が下がるた
め,SM 省 略 の 適
応は慎重にすべき
である.
506
ポスター掲示
GP-1-04-13
GP-1-04-14
Shear-Wave Elastography による術前化学療法の効果予測の
検討
1
乳癌の広がり診断における造影超音波の有用性の検討
1
3
昭和大学江東豊洲病院、2 昭和大学病院
島根大学 医学部 放射線科、2 島根大学 医学部 消化器・総合外科、
島根大学 医学部 病理部、4 国立病院機構 浜田医療センター 乳腺科
山本 伸子 1、吉廻 毅 1、石橋 恵美 1、荒木 和美 1、北垣 一 1、百留 美樹 2、
板倉 正幸 2、丸山 理留敬 3、吉川 和明 4
榎戸 克年 1、高丸 智子 1、吉田 美和 1、吉田 玲子 2、橋本 梨佳子 2、
池田 紫 2、小杉 奈津子 2、佐藤 大樹 2、桑山 隆志 2、森 美樹 2、
渡邊 知映 2、奥山 裕美 2、沢田 晃暢 2、明石 定子 1、中村 清吾 2
【背景】乳癌の広がり診断には造影 MRI が施行されるが、腹臥位で撮影するた
め MRI で確認した造影域を手術体位で正確に把握するのは困難な場合がある。
手術体位で施行できる造影超音波(以下 CEUS)によってリアルタイムに造影
域を確認できれば、術前の広がりの把握に有用であると思われる。
【目的】
CEUS が乳癌の広がり診断に有用であったか、retrospective に検討した。【対
象・方法】2014 年 3 月~ 10 月に当院で乳癌の術前に CEUS を施行した症例の
うち、B モードで腫瘤性病変として描出された 17 例。すべて造影 MRI を施行
後にその結果を参照した上で CEUS を施行した。【結果】病理組織診断の広が
りが腫瘤に限局するもの(限局:11 例)と、腫瘤外にも広がりを示すもの(広
がり:6 例)とに分けて検討した。病理で限局の症例は、MRI では限局 7 例、
広がり 4 例、CEUS では限局 10 例、広がり 1 例と診断していた。過大評価の
原因は、MRI が乳頭側への進展について過大評価 2 例、乳腺症を癌の広がり
と過大評価 1 例、MRI/US とも乳管内乳頭腫を癌の広がりと過大評価 1 例で
あった。病理で広がりの症例は、MRI では広がり 6 例、CEUS では限局 1 例、
広がり 5 例と診断していた。このうち 3 例はほぼ広がりを正確に把握できてい
たが、広がりの過大・過小評価もあった。MRI に CEUS を追加することによっ
て乳癌の広がりがより正確に診断できた症例は 3 例だった。【考察】MRI での
造影域が CEUS でも造影される場合は癌病変である確信度が上がり、腫瘤外
の広がりの同定に有用だった症例があった。しかし CEUS で造影される場合
でも、病理では癌病変でない場合もあり、不必要な切除を避けるためには術
前に生検を行うことが望ましいと思われた症例もあった。一方、CEUS で造影
されない場合は、癌の広がりでないことが多く、切除範囲の縮小に寄与でき
る可能性があると思われた。【結語】乳癌の広がり診断には CEUS のみでは十
分ではないが、MRI と相補的に使用することで術前の広がり診断の向上に寄
与できる可能性が示唆された。少ない症例数での検討であるため、今後症例
を蓄積しさらに検討したい。
GP-1-04-15
GP-1-04-16
嚢胞内病変における画像所見と組織学的所見の比較検討
超音波による経過観察中に顕在化した乳癌からみた、適切な観
察期間と生検の時期についての検討
1
独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院 乳腺・内分泌外科、
2
独立行政法人地域医療機能推進機構 大阪病院 病理科
大井 香 1、塚本 文音 1、木村 綾 1、笠島 綾子 1、樋口 奈苗 1、久保 杏奈 1、
岩崎 香 1、春日井 務 2
当院で経験した嚢胞内病変について、超音波画像所見と組織学的所見を対比
し、その頻度や臨床的意義を検討した。[ 対象と方法 ]2008 年 4 月より 2014
年 12 月までに、当院で超音波検査を行い嚢胞内病変(嚢胞内に充実成分を伴
う病変)と診断され、マンモトーム生検による組織診を行った 23 例を対象と
し、画像所見と組織学的所見を比較検討した。嚢胞内病変のカテゴリー分類は、
乳房超音波診断ガイドラインに基づき、主に嚢胞内充実成分の形状で判断し
た。 [ 結果 ] 年齢は 27 ~ 83 歳(中央値 57.5 歳)。超音波画像のカテゴリーの
内訳は、カテゴリー 3 は 7 例(30.4%)、カテゴリー 4 は 11 例(47.8%)、カ
テ ゴ リ ー 5 は 5 例(21.7 %)で あ っ た。 ま た 組 織 診 で 良 性 の も の は 13 例
(56.5%)、悪性は 10 例(43.5%)であった。各カテゴリー別での組織診の結
果は、カテゴリー 3 では良性が 5 例(71.4%)、悪性が 2 例(28.6%)、
カテゴリー
4 では良性 7 例(63.6%)
、悪性 4 例(36.4%)、カテゴリー 5 では良性1例
(20.0%)、悪性 4 例(80.0%)であった。組織学的には、カテゴリー全体でみ
ると良性病変では乳管内乳頭腫が 46.7%、悪性病変では非浸潤性乳管癌が
36.4%と、それぞれ最も多く含まれたが、カテゴリー 5(充実成分が嚢胞外へ
浸潤している)では悪性病変では非浸潤性乳管癌は 25.0%にとどまった。年
齢別では、49 歳以下では良性は 77.8%、悪性は 22.2%であったのに対し、
50 歳以上では良性は 42.9%、悪性は 57.1%であった。[ 考察 ] 嚢胞内病変の
診断において、超音波画像のカテゴリー分類と組織学的悪性度には相関関係
がある。また、乳腺病変一般と同様、嚢胞内病変においても高齢になると悪
性の頻度が上がるといえ、診断に際しては年齢も考慮するべきである。
国立国際医療研究センター
安田 秀光、橋本 政典、杉浦 良子、皆川 梓
【はじめに】癌の発生には5年から7年かかると言われている.生検した同部
位に、数年後に癌の発生が認められることはしばしばある.マンモグラフィー
(MG) や超音波検査(US)にて長期にわたり(最長19年)経過観察中に、癌が
顕在化した症例を経験したので、適切な生検時期や観察期間について検討し
た.【対象及び方法】今回経過観察中に乳癌が顕在化した 52 例を対象とした.
超音波所見の変化を中心に検討した.また、大きさの変化を確認できた症例
に関して、腫瘍体積倍加時間 (TVDT) を計算した.新出病変に関しては、超音
波で検出限界の大きさを 2.5mm と仮定し、TVDT を算出し、適切な経過観察
期間について検討した . 腫瘍の体積は楕円体として評価した。
【結果と考察】1.
腫瘤の大きさの経過を追えた症例の TVDT の中央値は 5 ヶ月で、2.5 ヶ月 , 6 ヶ月 , 16 ヶ月以上の3つの群に分かれた。低エコー域の顕在化、構築の乱
れ、乳管内充実エコー、点状高エコーの出現、Vascularity の増加などが生検
の指標と考えられた.経過観察期間の指標は、所見の変化に応じ、3ヶ月~6ヶ
月が妥当と考えられた.2.マンモグラフィ石灰化経過観察群での、経過観
察期間の指標は6ヶ月が妥当と考えられた.点状高エコーの認められた部位
の近傍で、低エコー域の出現、乳管内充実エコー、Vascularity の増加が生検
の指標と考えられた.3.種々理由で定期観察していた群の経過観察期間指
標は 12 ヶ月が妥当と考えられた.【結語】観察期間と生検の時期を決めること
で、適切な癌の治療時期が得られる可能性が示された.
507
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】腫瘍径の大きい乳癌やリンパ節転移陽性例では術前化学療法が行われ
ることが多い。近年はバイオマーカーなどの効果予測因子をもとに、より的
確な治療が行われている。診断では、包括的超音波診断の一つとしてエラス
トグラフィーが位置づけられるようになった。Shear Wave と呼ばれる横波
を用いて組織弾性を測定する Shear-Wave Elastography (SWE) が開発され
欧米を中心に普及している。SWE は手技に依存することなく再現性のある画
像を得ることができ、また組織硬度を定量化することができる。これまで
SWE の定量値と NAC の効果を検討した報告はほとんどなく、今回我々は
SWE の定量値が pCR を予測する因子として有用であるか検討を行った。【方
法】2012 年 1 月から 2014 年 2 月までに術前化学療法を行った原発性乳癌症例
のうち化学療法前に SWE を行った 99 例を対象とした。超音波装置は Super
Sonic Imagine 社 ”Aixplorer” を使用し、腫瘍で最も硬く表示される部分に
ターゲット ROI を表示し組織硬度の定量値 (kPa) を計測した。【結果】平均年
齢は 50.0 歳(25 ~ 76 歳)、NAC 前原発巣腫瘍径の中央値は 32mm、SWE 定
量値 164.8 ± 68.5kPa であった。臨床病期は 1 11 例、2A 46 例、2B 32 例、
3A 7 例、3B 3 例であった。サブタイプ別の内訳は Luminal 44 例(44.4%)、
Luminal-HER2 18 例(18.2%)、HER2-enriched 16 例(16.2%)、Triple
Negative21 例(21.2%)で、SWE 定量値は Luminal 178.8 ± 64.3、LuminalHER2 135 ± 61.0、HER2-enriched 147.4 ± 73.3、Triple Negative 165.7 ±
78.2 であった。NAC 効果判定は non-pCR79 例 (79.8%)、
pCR 20 例 (20.2%)、
SWE 定量値は non-pCR 173 ± 64.8 、
pCR 133.9 ± 80.2(p = 0.11)であった。
【結論】pCR 症例では non-pCR 症例と比較し、有意差はないものの術前化学療
法導入前の SWE 定量値が小さい傾向にあった。現時点では SWE 単独で化学療
法感受性を判断するのは困難であるが、臨床応用されて間もなく症例数も少な
いことから、引き続き症例の集積が必要である。
ポスター掲示
GP-1-04-17
GP-1-04-18
1
1
石灰化病変の温存手術適応に関する考察
当院における非浸潤性乳管癌の超音波所見の検討
名古屋医療センター 乳腺科、2 名古屋医療センター 放射線科、
3
名古屋医療センター 外科、4 名古屋医療センター 病理診断科、
5
東名古屋病院 乳腺外科
大阪ブレストクリニック、2 大阪ブレストクリニック医療技術部
小池 健太 1、藤田 倫子 1、松之木 愛香 1、井口 千景 1、小西 章子 2、
藤井 直子 2、山本 仁 1、芝 英一 1
森田 孝子 1、須田 波子 1、大岩 幹直 1,2、佐藤 康幸 1,3、林 孝子 1,3、
加藤 彩 1,3、長谷川 正規 4、森谷 鈴子 4、市原 周 4、遠藤 登喜子 1,5
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】マンモグラフィ検診検出の石灰化病変は、切除範囲の同定が難し
いために乳房切除術を行わざるを得ない場合がある。我々は、マンモグラフィ
(3D、トモシンセシスを含む:MG)
、MRI、エコーの画像情報を総合し、エコー
による術前マーキングを行ってきた。正常乳腺エコーの texture を同定、病変
部位との差により、病変の広がり診断を行なった。手術後の標本撮影、標本
スライス撮影を行ってさらに病変の伸展範囲の石灰化の範囲の同定を試み、
次症例に生かす工夫をしてきた。【対象と方法】2011 年 1 月~ 2013 年 12 月
までに石灰化病変で温存手術が試みられた 18 症例(両側 1 例含む)。エコー画
像と術後標本撮影、およびスライス標本撮影を行うことにより、詳細な病理
組織像および石灰化の存在を確認。【結果】多形性区域性の石灰化 2 症例は、
断端陽性で乳切が行われたが、広めの集簇性以下の石灰化病変症例は断端陰
性で温存手術が完遂された。多形性石灰化病変と悪性病変の範囲はほぼ一致
した。微小円形石灰化、淡く不明瞭な石灰化症例は、石灰化部位がすべて悪
性所見とはいえず、良性部位であることもあった。MRI で造影効果がはっき
りせず、集簇する
石灰化病変が複数
ある場合の範囲の
同定に、3DMG や
トモシンセシスの
位置情報は有効で
あった。【考察】こ
れらの検討により、
石灰化病変の病態
の 理 解 が す す み、
断端陰性をめざし
たさらに確実な温
存手術ができる可
能性がある。
GP-1-04-19
超音波画像の進歩により超音波による非浸潤性乳管癌 (DCIS) の診断が向上し
ている。当院での DCIS 超音波所見を retrospective に検討し、その所見を分
類した。超音波機種は東芝 Aplio(500,MX,XV), Xario、日立 EUB-7500 を使
用した。対象は平成 23 年 9 月から 26 年 9 月までに当院で診断、手術を行った
DCIS の 194 例。超音波所見を腫瘤性病変(充実性、混合性)、非腫瘤性病変に
分類し、さらに非腫瘤性病変を低エコー所見、乳管異常所見、嚢胞集簇、点
状高エコー所見に分類しその頻度を検討した。194 例の DCIS の中で超音波所
見に全く異常を認めず、MMG 検査で石灰化で発見された症例は 39 例であっ
た。194 例中 155 例 (80%) に超音波所見異常を認めた。超音波所見を認めた
155 例中腫瘤性病変は 70 例 (45.2%) であり、その中で 5 例は混合性腫瘤で
あった。非腫瘤性病変 85 例中 67 例 (78.8%) は低エコー域の所見で、乳管異
常所見(拡張乳管、乳管内腫瘤)は 9 例 (10.6%)、小嚢胞集簇5例 (5.9%)、
点状高エコースポット4例 (4.7%) であった。DCIS の 80% に超音波検査で異
常所見を認めた。腫瘤性病変より非腫瘤性病変が多く、その中でも乳腺内低
エコー域が最も多かったことは、JABTS で報告された結果と同じであった。
今後もますます DCIS 発見における超音波検査の重要性が増すことが予想され
る。
GP-1-04-20
乳腺超音波検査のうち、構築の乱れで見つかった当院乳癌手術
症例の検討
乳頭状病変症例の超音波画像の検討
1
総合上飯田第一病院
東京女子医科大学附属青山病院、2 東京女子医科大学 第 2 外科
青山 圭 1、神尾 孝子 2、亀岡 信悟 2
山内 康平、窪田 智行、雄谷 純子、中根 千穂、三浦 重人
【背景】超音波検査 (US) の技術や医療機器の向上により、マンモグラフィ
(MMG) では診断できない乳癌発見症例が増えてきている。US 所見の構築の
乱れでは、皮膚の瘢痕を伴わない場合はカテゴリー4とされているものの、
腫瘤非形成性病変であるが故に悪性と診断するのに難渋する。今回、当施設
での US で構築の乱れが認められた乳癌手術症例について検討を行った。【対
象と方法】2011 年 1 月より 2014 年 10 月末までに当院で乳癌手術を施行した
全 343 例 (27-98 歳、中央値 56 歳 ) を対象とした。この内、術前 US で構築の
乱れを示した 9 例 (2.6%、44-78 歳、中央値 60 歳 ) について検討した。
【結果】
全乳癌手術 343 症例中、US の構築の乱れを認めたものは 9 例であった。尚、
同一期間中での当院全 US で構築の乱れを認めたものは 24 例しかなく、良性
15 例 (62.5%)、 悪 性 9 例 (37.5%) で あ っ た。9 例 の 内 訳 に つ い て 述 べ る。
MMG 背景乳腺は、脂肪性 1 例、散在 5 例、不均一高濃度 3 例であった。組織
型は、DCIS:2 例、乳頭腺管癌 (a1):2 例、充実腺管癌 (a2):2 例、硬癌 (a3):1
例、浸潤性小葉癌 :2 例であった。いずれもリンパ節転移は認めなかった。病
期別では、病期0:2 例、病期 I:5 例 (TIa:1例、TIb:2 例、TIc:2 例 )、病
期 IIA:3 例であった。腫瘍径 20mm 以下は5症例あり全て浸潤癌 (3 - 15m、
平均 9.4mm) であったが、21mm 以上の 4 症例はいずれも DCIS と浸潤性小
葉癌であった。【考察】手術標本で 2cm 以上の病変の拡がりを有していたにも
関わらず、腫瘍境界を US で同定することはできなかったものは、いずれも
DCIS や浸潤性小葉癌であった。TI 病変 5 例各々の MMG 背景乳腺・組織径・
波及度 ( 乳腺内:g、脂肪に及ぶ:f) は、(1) 散在・a1・g、(2) 不均一高濃度・
a1・g、(3) 脂肪性・a2・f、(4) 散在・a2・f、(5) 散在・a3・f であり、背景
乳腺が薄い症例や波及度が脂肪に及ぶものが比較的多く見られた。年齢につ
いて TI 病変 5 例では平均 67.6 歳、残り 4 例では平均 56.3 歳であったが有意
差は認められなかった。以上から浸潤癌であっても背景乳腺や浸潤形式の影
響により構築の乱れを呈し得ると考えられた。【結語】US 構築の乱れを呈する
乳癌症例では悪性の診断に難渋するも、浸潤癌の可能性もある。
508
背景;乳頭状病変は異常乳頭分泌の原因となる乳管内病変やのう胞内腫瘍病
変を呈し、画像上は良・悪性の鑑別が難しく、画像技術の進歩により微細な
病変が指摘されるようになった。このため組織検査結果との対比が重要であ
るが、針組織生検検体では標本が小さく、断片化、変性のために良性~異型
~悪性の鑑別に難渋する症例も多い。目的・対象;2011 年 4 月~ 2014 年 12
月に当院において病理組織検査診断が確定した乳頭状病変 58 例について、超
音波検査所見・マンモグラフィ(MMG)検査所見・局在・年齢について比較
検討した。結果;平均年齢 47.4 歳(25 ~ 72)、血性乳頭分泌を認めたのは
10 例、ホルモン補充療法を行っている症例は 9 例であった。超音波検査所見
は充実性腫瘤 18 例、乳管内腫瘤・のう胞内腫瘤 19 例、非腫瘤性病変 12 例で
あった。MMG 検査所見にて集簇微細石灰化を認めたのは 11 例であった。切
開摘出生検を施行した症例は 18 例、そのうち針組織生検検体と切開摘出組織
検 体 で は 異 な る 病 理 診 断 と な っ た 症 例 は 4 例 で あ っ た。1 例 は
neuroendocrine ductal carcinoma in situ(DCIS)、1 例は flat type DCIS、
1 例は solid type DCIS、1 例は invasive ductal carcinoma(IDC) であった。
情報量の少ない針生検検体で鑑別困難の場合は再生検が必要である。結語;
乳頭状病変の超音波画像所見は多彩であり、良・悪性の鑑別には難渋する。
年齢・局在などを考慮し、慎重な経過観察と病理組織検査が肝要である。
ポスター掲示
GP-1-04-21
GP-1-04-22
BI-RADS を用いた乳房 MRI の読影・病変のマネージメント
~有用性・問題点~
乳癌骨転移症例における Bone Scan Index の検討
大阪大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
1
東京医科歯科大学 医学部附属病院 放射線科、
2
亀田京橋クリニック 放射線科、
3
東京医科歯科大学 医学部附属病院 乳腺外科
渡邉 法之、金 昇晋、直居 靖人、加々良 尚文、下田 雅史、下村 淳、
島津 研三、野口 眞三郎
藤岡 友之 1、町田 洋一 1,2、久保田 一徳 1、岡澤 かおり 1、細矢 徳子 3、
小田 剛史 3、石場 俊之 3、永原 誠 3、中川 剛士 3、斎田 幸久 1、
立石 宇貴秀 1
GP-1-04-23
GP-1-04-24
乳腺造影超音波による均一濃染病変の良悪性の鑑別
当院手術症例におけるマンモグラフィと Digital Breast
Tomosynthesis 比較
1
福岡大学 医学部 放射線医学教室、2 福岡大学病院 呼乳小外科、
3
福岡大学 医学部 病理学教室
1
2
藤光 律子 1、島倉 樹子 1、吉永 康照 2、榎本 康子 2、鍋島 一樹 3、
濱崎 慎 3、青木 実希子 3、吉満 研吾 1
国立国際医療研究センター病院 放射線診療部門、
国立国際医療研究センター病院 乳腺外科
皆川 梓 1、杉浦 良子 2、橋本 政典 2、安田 秀光 2
目的;乳腺病変の超音波造影の濃染所見では、辺縁濃染は悪性に有意な所見
であり、均一濃染(以下均一)は良性病変の所見とされている。しかし、均一
病変にも悪性が散見されており、今回 均一病変の臨床病理学的検討を行った。
対象:2012 年 10 月から 2 年間に造影超音波検査を行った 131 病変中、TIC
ピーク時に均一濃染された 54 病変{DCIS13,浸潤癌(以下 IC)13、線維腺腫
もしくは葉状腫瘍(FA/Phy)10、IP(乳管内乳頭腫)10、その他 8}、である。
全例女性、平均年齢 54.0 才(32-84)、測定可能な腫瘍径 52 病変の中央値は
9.0mm(40-4)であった。方法;使用機種 GE healthcare 社 LOGIQE9、使
用プローブは 9-15MHz。MI 値は 0.2 程度、フォーカスは病変の最深部に設定。
ソナゾイドは 0.01ml/Kg 体重を静注後生食にてフラッシュを行い、約 6 秒か
ら 120 秒まで断面を固定、その後病変全体を観察した後、積算画像、TIC を
作成した。検討項目:1、均一病変の良悪性の頻度とその組織形、2、以下
の項目と良悪性の関係を検討した。1)腫瘍径、2)病変の形状(腫瘤形成性病変;
mass-forming type、腫瘤非形成性病変;non-mass-forming type)、3)病
変の濃染ピーク時の濃染輝度(等、高輝度)、4)病変の境界(境界明瞭平滑、
明瞭粗造もしくは不明瞭)5)Axk 値(濃染はじめの立ち上がりの傾き、6)T
toPk(start frame から最大輝度になるまでの時間)、7)G 値(start frame か
ら高輝度間の傾き)。結果;1,均一病変では悪性が 26/54 病変(48.1%)で
あり、そのうち DCIS が 50%を占めていた。2、悪性と関連が有ったものは、
平 均 腫 瘤 径( 良 性 10.2mm、 悪 性 17.5mm、(p=0.0175))、non-massforming type、境界明瞭粗造・不明瞭であった。そのうち、多変量解析では、
腫瘍径と病変の境界に有意差が認められた。結語;均一病変には 46%の悪性
病変が見られ、特に半数は DCIS であった。均一病変において腫瘍径が大きく
境界明瞭粗造もしくは不明瞭なものは、悪性の可能性が示唆された。
【はじめに】現在当院では日常診療において Digital Breast Tomosynthesis(以
下;DBT)を マ ン モ グ ラ フ ィ( 以 下;2DMG)と 同 時 に 撮 影 す る Selenia
Dimensions(HOLOGIC 社 )を 導 入 し て い る。DBT は 2DMG と 比 較 し、
distortion や FAD の検出に優れるとされている。【目的】当院で手術を施行し
た症例について先の見解を検証する。【対象】対象期間は 2013 年 9 月から
2014 年 9 月 1 年間。当院にて乳腺切除を行った 80 例中、他院で 2DMG 撮影
した 14 例と MG 未撮影 6 例を除外した 60 例。【方法】対象症例の術式、2DMG
所見、DBT 所見、組織型を後方視的に抽出し比較検討した。【結果】対象 60 例
中、乳房切除術(Bt)38 例、乳房部分切除術(Bp)22 例。2DMG 所見はカテゴ
リ ー( 以 下;C.)5 が 21 例、C.4 が 21 例、C.3 が 11 例、C.1 が 7 例。DBT 所
見は C.5 が 24 例、C.4 が 26 例、C.3 が 7 例、C.1 が 3 例。組織型は DCIS 11 例、
Papillotubular carcinoma 10 例、Solid-tubular carcinoma 12 例、
Scirrhous carcinoma 20 例、Mucinous carcinoma 2 例、Invasive lobular
carcinoma1 例、Apocrine carcinoma 2 例、Matrix-producing carcinoma
1 例、Multiple intraductal papilloma 1 例。2DMG に て C.1 の 7 例 中 4 例 は
DBT で C.3/4 であった。また、C.3 の 11 例中 6 例は DBT で C.4 であった。6
例は 2DMG で FAD 所見、石灰化病変であったが、DBT で Distortion が観察さ
れた。【結語】乳癌症例において、DBT は 2DMG と比較して Distortion の描出
に優れ、C.4/5 所見が多くみられた。DBT は日常診療において有用な追加検
査である可能性が示唆された。
509
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】BI-RADS を用い読影された乳房 MRI の所見や病変を解析し BI-RADS
の有用性や問題点を検討する。
【対象と方法】2012 年 1 月~ 2013 年 9 月に当院で施行した連続したすべての
造 影 乳 房 MRI が 対 象。BI-RADS を 用 い 病 変 ご と に 読 影 所 見、BI-RADS
Category( 以下 C) を前向きにつけた。確定済みの C 6 を除き、MRI の時点で
未確定だった C 3 ~ 5 の病変の読影所見、Category と良悪性を X2 検定で解析
した。
【結果】患者 86 名、107 病変が対象となり 57/107 病変 (53.3%)、masses は
33/60 病 変 (55.0%)、non mass enhancement(NME) は 24/46 病 変
(52.2 % ) が 悪 性 だ っ た。masses で は shape が irregular は 27/36 病 変
(75.0%)、margin が not circumscribed は 29/39 病 変 (74.4%)、internal
enhancement が rim enhancement は 8/8 病 変 (100%)、kinetic curve
assessment が fast は 33/52 病変 (63.5%)、washout は 14/17 病変 (82.4%)
で 悪 性、NME で は distribution が segmental は 20/26 病 変 (76.9%)、
internal enhancement patterns が clustered ring は 12/12 病 変 (100%) が
悪性でそれぞれの所見と悪性が有意に相関した (p < 0.05)。
C 3 は 0/13 病 変 (0%)、C 4A は 3/22 病 変 (13.6%)、C 4B は 9/23 病 変
(39.1%)、C 4C は 14/18 病変 (77.8%)、C 5 は 31/31 病変 (100%) が悪性で、
高い Category で悪性の確率が高かった (p < 0.05)。
MRI のみ描出される C 4 以上の病変
は 9 例あり、2 例は手術で悪性、2 例
は MRI ガイド下生検で良性、5 病変
は経過観察で良性だった。
【結論】読影所見及び Category が悪
性と有意に相関し BI-RADS を用いた
マネージメントは有用と思われる。
MRI のみ描出される悪性病変が含ま
れ MRI ガイド下生検を用いたマネー
ジメントが必要と思われる。
【はじめに】乳癌骨転移診断時の Bone Scan Index(BSI) と骨関連事象 (SRE)
の相関を retrospective に検討した。【方法】対象は 2008 年 1 月~ 2014 年 10
月に当科で乳癌骨転移の診断・治療を行った 230 例のうち、骨転移診断時の
BSI が得られた 126 例。骨転移診断後の観察期間の中央値は 19 ヶ月。本検討
における SRE は病的骨折、骨病変に対する放射線治療や外科的手術、脊髄圧迫、
高カルシウム血症とした。【結果】患者の骨転移診断時の年齢は 29 ~ 90 歳(中
央値:59 歳)。ER / PR / HER2 陽性例はそれぞれ 100 例、67 例、20 例であっ
た。骨転移診断時に他臓器転移を認めたのは 89 例 (70.6%)(脳 12 例、肺・胸
膜 46 例、肝 43 例、卵巣 3 例、消化管・腹膜 1 例、遠隔リンパ節 36 例)で、診
断後にゾレドロン酸およびデノスマブを 96 例 (76.2%) に使用した。BSI の中
央値は 0.31%(0 - 10.49%)。SRE は 34 例 (27.0%)( 病的骨折 4 例、放射線
治療 27 例、脊髄圧迫 2 例、高カルシウム血症 1 例)認め、うち骨転移診断と同
時に SRE を生じた症例を 25 例(病的骨折 4 例、放射線治療 19 例、脊髄圧迫1
例、高カルシウム血症 1 例)に認めた。SRE との相関を検討したところ、単変
量解析では乳房手術施行 (+)、BSI 高値(≧ 1.0%)、ゾレドロン酸・デノスマ
ブの使用が有意に SRE 発症と相関し、これら3因子は多変量解析でも有意な
独立した相関因子であった。次に、SRE の予測因子を検討するため、骨転移
診断時の SRE 合併症例を除外した 101 例で検討を行った。単変量解析ではゾ
レドロン酸・デノスマブの使用が有意に SRE の発症と相関した。一方 BSI は、
高値群(≧ 1.0%)での SRE 発症は 4/22 例 (22.2%) で、低値群(< 1.0%)の
5/79 例 (6.3%) に比べて、SRE 発症率が高い傾向を認めたが有意差は認めな
かった(p=0.193)。多変量解析では有意差を示した因子は認めなかった。【結
語】今回の検討では BSI により SRE を予測することはできなかったが、対象症
例数が少なく観察期間も短かったこと、さらに症例の約 70% が他臓器転移を
認め骨転移診断後の生存期間が短かったこと(生存期間中央値:19 ヶ月)など
が関係していると思われる。今後は、骨単独再発例における prospective な検
討が必要であると考える。
ポスター掲示
GP-1-04-25
GP-1-04-26
新規乳房専用 PET 装置の使用経験
乳房温存手術での切除範囲決定における Real-time Virtual
Sonography(RVS) の有用性の検討
1
横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学、
2
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
3
横浜市立市民病院 放射線診断科、
4
東京医科歯科大学 画像診断・核医学分野、
5
横浜市立大学医学部 放射線医学、6 横浜市立大学医学部 がん総合医科学
1
丸茂病院 乳腺外科、2 愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
大久保 雄一郎 1、竹内 透 1、竹内 新治 1、中野 正吾 2
菅江 貞亨 1、島 秀栄 1、喜多 久美子 1、足立 祥子 2、山田 顕光 2、
成井 一隆 2、鳥井 郁夫 3、立石 宇貴秀 4、井上 登美夫 5、市川 靖史 6、
遠藤 格 1
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳房専用 PET は高い空間分解能や高濃度乳腺でも診断能が落ちないこ
とからその有用性が期待されている。対向型乳房専用 PET 装置(PEM)は欧米
で実績がある一方で、その撮影方法(撮像時間、長時間のポジショニングによ
る痛み、ずれ、ポジショニングの際の技師の被曝など)が問題となっている。
リング型乳房専用 PET 装置(dedicated breast PET;dbPET)はポジショニン
グが簡便で、MRI との比較が容易で有用とされている。当院では近年保険収
載された dbPET のプロトタイプ機を使用し、その臨床的意義を検討した。【方
法】当科で針生検により浸潤性乳管癌の診断後、前治療なしに手術を施行した
5 症例を対象とした。術前に PET 施行後に、dbPET を追加で施行し、その画
像を従来の PET、MRI、CT、術後病理結果と比較検討した。【結果】5 症例の
平均年齢は 57.6 歳(48-66 歳)であった。右乳癌 4 例、左乳癌 1 例。全例手術
が施行され、腫瘍径は平均 2.3cm(1.8-3.0cm)、全例エストロゲンレセプター
陽性、HER2 レセプター陰性であった。Ki67 index は 1 例(50%)を除き 15%
以下であった。原発巣は dbPET で 4 症例が描出可能であった。PET と比較し
て明瞭な描出が可能で、SUV も高く出る傾向があった。乳管内進展をともなっ
た 3 例はいずれも淡い集積として描出されていた。描出できなかった 1 例の
Ki67 index は 4% と低く、PET における集積と Ki67 index の関連が示唆され
た。リンパ節転移を 1 例に認めた。PET や CT では描出できたが、dbPET では
視野外となり描出できなかった。対象症例中で偽陽性病変はなかった。
【結語】
病理結果と対比して造影 MRI と同様の所見を得られた症例もあり、造影 MRI
が撮像できない症例では dbPET は代替にできる可能性がある。一方で腋窩リ
ンパ節や胸壁に近い部分の腫瘤が視野外となる症例があり、dbPET の有用性
や限界について更なる症例の集積、検討が必要である。
乳房温存手術における乳腺切除範囲は MMG、US、MRI などの画像診断によ
り癌の広がりを評価して決定される。術前マーキングに関しては US を用いて
病変部をマークして、広がり診断を考慮しつつ、マージンを加えて切除範囲
を決定するのが一般的である。周囲への乳管内進展を伴う症例では辺縁の評
価が困難な場合があり、切除断端陽性となる要因の 1 つと考えられる。Realtime Virtual Sonography(RVS) は US 画 像 と 同 期 さ せ た MRI/CT/US ボ
リュームデータを並列描画させるシステムであり、当院では 2014 年 4 月より
乳房温存手術の術前マーキングの際に CT - RVS を導入し切除範囲を決定して
いる。【目的】乳房温存手術切除標本における病理学的断端-腫瘍間距離を測
定し、切除範囲の決定に RVS が有用かどうかを検討した。【対象】RVS 導入前
で あ る 2013 年 9 月 ~ 2014 年 4 月 に 施 行 し た 50 例(US 群 )、RVS 導 入 後 の
2014 年 4 月~ 12 月に施行した 50 例(RVS 群)を対象とした。【方法】US 群、
RVS 群それぞれ病変部をマーキングした後に 2cm のマージンを加えて切除範
囲とした。病理学的断端-腫瘍間距離を測定し、断端より 5mm 以内に癌細胞
(in situ を含む)を認めた場合を断端陽性とした。【結果】平均断端-腫瘍間距
離 は US 群 15.6mm、RVS 群 20.3mm(p=0.002)、 断 端 陽 性 例 は US 群 8 例
(16%)、RVS 群 5 例(10%)(p=0.27)であった。両群とも断端陽性例の約
半数は乳管内進展や DCIS などの乳管内成分で US や RVS では同定困難な病変
であった。【考察】RVS で認識できる病変での断端陽性は 1 例のみであり、平
均断端-腫瘍間距離は 20.3mm とほぼ設定したマージンと同程度であったこ
とから、乳房温存手術における切除範囲の決定に RVS が有用であることが示
唆された。
GP-1-04-27
GP-1-04-28
新東京病院 外科
大垣市民病院 外科
浅川 英輝、太田 絵美、村林 亮、林 剛
亀井 桂太郎、原田 徹、金岡 祐次、前田 敦行、高山 祐一、深見 保之、
尾上 俊介、大塚 新平、森 治樹、千馬 耕亮、渡邉 夕樹、堀米 香世子、
吉川 晃士朗
SonazoidR 乳腺造影超音波と原発性乳癌の病理学的悪性度との
関連性
MRI/CT で指摘された病変に対する 2nd look US 時に行う造
影超音波検査の検討
<緒言>乳腺領域における複数の modality を用いた診断の有用性は以前より
知られており、MRI を含めた総合的画像評価は標準的となっている。これ加え、
第二世代超音波造影剤 SonazoidR が 2012 年 8 月に保険適応となり、血流評価
の新たな modality として認知されている。造影超音波(以下 CEUS)は乳癌の
実臨床において、広がり診断や良悪性鑑別、センチネルリンパ節生検への応
用など様々な有用性があるとされる。その他、病理学的な悪性度とも関連す
る可能性があるが、未だ報告は少数である。今回我々は CEUS を用い、臨床
病理学的因子と対比することで、その関連性について検討した。<対象>
2014 年 1~12 月に当院で初回治療として手術を施行した原発性乳癌患者のう
ち、術前 CEUS を行った 15 例。性別は全員女性で、年齢は 66.4 ± 13.1 歳、
最大腫瘍径は 2.5 ± 1.1cm。<方法> SonazoidR 懸濁液として 0.0075 mg/
kg を静脈内投与し、視野を原発巣の最大径にて固定し ROI を病変全体に設定、
投与後 1 分間の動画と Micro Flow Imaging を観察した。そこで得られた
Time intensity curve(TIC) から、Time to peak(TTP: 最高輝度到達時間)、
Peak Intensity(PI: 最 高 輝 度 値 - 造 影 剤 流 入 前 の 輝 度 値 )、Ascending
Slope(AS: PI/TTP) を算出した。これらの parameter と臨床病理学的因子(腫
瘍径、組織学的 Grade、組織型、ly、v、nodal status、EIC 有無、ER、PgR、
HER2、Ki-67、Subtype)との対比を行った。統計法は変数に応じて、t 検定、
Wilcoxon/Kruscal-Wallis、Spearman 順位相関を用いた。<結果と考察>
ER 陽 性 と TTP 高 値(p=0.04)、PgR 陽 性 と TTP 高 値(p=0.0783)、ER/PgR
陽性と TTP 高値(p=0.04)では関連性のある傾向があり、ホルモン受容体陽
性例では陰性例と比較し、造影剤の流入に時間を要する傾向が見られた。ま
た高 Grade と TTP 低値(p=0.01)、高 Grade と AS 高値(p=0.02)との間にも
関連性を認めた。すなわち高 Grade では造影剤の流入速度が速いと考えられ、
腫 瘍 の vascularity と の 関 連 が 示 唆 さ れ た。 < 結 論 > CEUS で 得 ら れ る
parameter と病理学的な悪性度とは関連する可能性があると考えられた。今
後は、症例の集積を進めるとともに、超音波の持つ高い時間空間分解能を利
用して、病変の広がり診断や術前化学療法の効果判定あるいは効果予測など
への有用性についても検討する予定である。
【目的】MRI/CT で発見された新規病変を診断するために,2nd look US を行
うことが一般的である。しかし,両者が同一のものかどうかについては迷う
ことがある。近年,ソナゾイドを用いた造影超音波検査(CE-US)が乳腺疾患
の診断に MRI や通常の US よりも正確であると報告された。本研究の目的は,
MRI/CT で発見された病変に対する 2nd look US 時に行う CE-US の有用性を
調べることである。【対象と方法】対象は,2012 年 12 月 ~2014 年 12 月まで
に当院で CE-US を行った 126 例中,MRI/CT で発見された病変に対して 2nd
look US 時 に 行 っ た 44 例。MRI/CT で 発 見 さ れ た 病 変 に 対 す る US お よ び
CE-US の同定率,確信度を検討した。【結果】CE-US の検査目的は,乳癌術前
の拡がり診断が 26 例,MRI/CT で新規に発見された病変の診断が 18 例。腫瘤
性病変が 29 例で腫瘍径は 6.8mm(2~17mm),非腫瘤性病変が 15 例で腫瘍
径 は 10.5mm(3~16mm)。US カ テ ゴ リ ー は,C1;0 例,C2;14 例,C3;
25 例,C4;5 例,C5;0 例。MRI/CT で発見された病変の同定率は,US で
100%,CE-US で 84.1%であった。CE-US で造影されなかった 7 例はすべて,
MRI/CT では造影効果の弱い症例であり,その後の病理学的検索でもすべて
癌ではなかった。また,病変を描出した確信度を評価するために,最も確信
度が高い 4 から確信度の低い 1 までスコア化して検討すると,US では 2.3
(1~4)
,CE-US では 2.9(0~4)であった。造影されたものに限定すると US
の 2.4 に比し CE-US は 3.4 と有意に確信度を増した(p < 0.0001)。【まとめ】
MRI/CT で指摘された病変に対して,2nd look US 時に CE-US を行うことは,
病変を同定するためには有用であると考えられる。MRI 下のインターベンショ
ンが保険収載されていない現状においては,その後のインターベンションを
行う際にも確信を持って行うことができると期待される。
510
ポスター掲示
GP-1-04-29
GP-1-04-30
岐阜県厚生連岐北厚生病院 外科
1
乳腺 second-look US における Real-Time Virtual
Sonography(RVS) の有用性について
マンモグラフィ画像におけるスピキュラを伴う腫瘤陰影の2D
画像と3D トモシンセシス画像の比較検討
3
高橋 治海、山本 悟、石原 和浩、田中 秀典、鷹尾 千佳
医療法人 明和病院 放射線部、2 医療法人 明和病院 乳腺・内分泌外科、
医療法人 明和キャンサークリニック 放射線診断科
GP-1-04-31
GP-1-04-32
1
1
マンモグラフィ画像における局所的非対称性陰の 2D 画像と 3D
トモシンセシス画像の比較検討
3
マンモグラフィ検診二次精密検査におけるトモシンセシスの有
用性
医療法人 明和病院 放射線部、2 医療法人 明和病院 乳腺・内分泌外科、
医療法人 明和キャンサークリニック 放射線診断科
藤本 麻衣子 1、岸本 昌浩 2、増田 奈々子 1、友松 宗史 2、後野 礼 2、
興津 茂行 3
【諸言】従来のマンモグラフィ(2D)画像では腫瘤性病変があっても周囲組織
と重なりを生じる事により、所見が不明瞭になる場合がある。また単なる乳
腺の重なりであっても、精密検査の必要な局所的非対称性陰影 (FAD) として
検出される例がしばしばみられる。近年、乳腺の重なりのない断層画像が得
られる 3D トモシンセシス (3D) が臨床導入され、より鮮明な画像が得られる
ようになった。今回われわれは 2D における FAD において 3D における画像の
違 い に つ き 検 討 し た。【 対 象 と 方 法 】2013 年 6 月 よ り 2014 年 11 月 に
MAMMOMAT Inspiration( シーメンス ) で 2D 撮影をおこなった 5412 例のう
ち 335 例にカテゴリー 3 の FAD 認めたが、このうち 3D 撮影をおこなった 44
例 45 所見を対象とした。(ただし、男性を除く。)3D 所見を分類し最終診断と
比較検討した。【結果】所見なし群が 12 例 (26.7%) で最終診断異常なし (Nor)
が 6 例、線維腺腫 (FA)4 例、嚢胞 (cyst)2 例、乳癌 (Ca)0 例であった。境界明
瞭 腫 瘤 陰 影 群 は 16 例 17 所 見 (37.8%) で Nor3 例、FA5 例、cyst3 例 4 所 見、
Ca5 例であった。境界不明瞭・微細鋸歯状腫瘤陰影群は 15 例 (33.3%) で
Nor3 例、FA4 例、cyst4 例、乳腺膿瘍 1 例、Ca3 例であった。スピキュラを
伴う腫瘤陰影は 1 例 (2.2%) で Ca であった。なお腫瘤性病変はほぼ内部均一
に描出された。【考察】2D で FAD のうち 3D で所見なし群では乳癌症例は含ま
れなかった。この群では不必要な精密検査を省略できる可能性が示唆された。
3D で腫瘤陰影を認めた群では乳癌の占める割合が比較的高く (27.3%)、境界
明瞭群 (29.4%) と境界不明瞭・微細鋸歯状群 (26.7%) で差はみられなかった。
3D で腫瘤陰影を認めた場合には厳重な精密検査が必要と考えられた。3D で
スピキュラが鮮明になる例を認めた。その様な例では乳癌の可能性が高いか
もしれない。【結語】FAD は精密検査となる可能性が高い所見の一つである。
3D 導入により不要な精密検査を減らし、病変の精密検査の比重をより高めら
れる可能性が示唆された。
島根大学 医学部 消化器・総合外科、2 島根大学 医学部 放射線科
高梨 俊洋 1、百留 美樹 1、山本 伸子 2、板倉 正幸 1、田島 義証 1
【目的】デジタルブレストトモシンセシス(SenoClaire:GE ヘルスケア・ジャ
パ ン 社 , 以 下 DBT)は、 通 常 の MMG で み ら れ る 乳 腺 の 重 な り に よ る false
positive を排除できる利点がある一方、小さな良性病変を拾いすぎる問題点も
指摘されている。今回、MMG 検診二次精密検査における DBT の有用性を検討
した。【対象】MMG 検診で要精査となり、2014 年 3 月から 12 月に当科を受診
した症例のうち、MMG、DBT、US での精査を行った 84 例。今回の検討では
石灰化病変は除外した。
【方法】MMG に DBT を加えることによるカテゴリー(以
下 C)変化を検討し、DBT による乳癌、良性病変の検出率について US と比較
した。【結果】一次検診結果は C3:69 例、C4:14 例、C5:1 例。C3 の 29 例、
C4 の 9 例 が MMG 再 精 査 で C1 と な り、C1:38 例、C3:40 例、C4:5 例、
C5:1 例となった。更に DBT を加えることで、C1:45 例、C3:32 例、C4:
4 例、C5:3 例と変化した。C が変化しなかった症例は 79 例(87%)。C が上
昇した 3 症例(4%)は、C1 → C4(構築の乱れが出現。CNB で microglanular
adenosis)が 1 例、C4 → C5(スピキュラが明瞭化)が 2 例であった。C が低下
した 8 症例(9%)は何れも C3 → C1(FAD が消失。US で 7 例は異常なし、1 例
は嚢胞)であった。乳癌と診断された症例は 8 例で、3D-DBT 所見は C3:2 例、
C4:3 例、C5:3 例。DBT は乳癌を 100%検出したが、MMG でも 100%検出
されており、US は何れも C5 の所見であった。US で C3 の良性病変(嚢胞・FA
など)を認めた 46 例中、DBT で検出されたのは 28 例(60%)であり、良性病
変は US の方が検出しやすい傾向にあった。【結論】乳癌検出において DBT は
US を凌駕するものではないが、DBT で FAD が消失した場合は US 精査を省略
してもよい可能性がある。また、一次検診での併用 modality として、US で
はなく、DBT を用いることで不要な精査を省略できる可能性が示唆された。
511
一般セッション(ポスター掲示)
増田 奈々子 1、岸本 昌浩 2、友松 宗史 2、後野 礼 2、藤本 麻衣子 1、
乳腺画像診断において MRI は高い感度を示すため、従来の画像診断法では不
興津 茂行 3
確定な乳癌の広がり診断、対側乳癌の検出 , 潜在性乳癌の検出、術前化学療法
の効果判定に用いられている。初回マンモグラフィや超音波で同定できず、 【諸言】従来のマンモグラフィ (2D) 画像では乳腺の重なりにより病変所見が不
MRI で初めて検出される病変を認めた場合、3次元画像より病変部位を推測
明瞭で、場合によっては見落としとなる場合がある。近年、乳腺の重なりの
して second-look US を施行し病変の同定および組織学的良悪性の鑑別が必
ない 1mm 断層像が得られる 3D トモシンセシス (3D) が臨床導入され、それ
要となる。近年、磁気ナビゲーションシステムを用いてリアルタイム超音波
により鮮明な画像が得られるようになった。今回われわれはスピキュラをと
像と MRI 画像を同期させ、同一断面のそれぞれの画像をリアルタイムに比較
もなう乳癌において、その画像の違いについて比較検討した。【対象】2013 年
することができる real-time virtual sonography(RVS) が日立メディコ社に
6 月より 2014 年 11 月に 2D 撮影した 5412 例のうちスピキュラを伴う腫瘤陰
より製品化された。RVS を用い second-look US を施行し有用症例を経験し
影 を 認 め、3D 撮 影 を お こ な っ た 乳 癌 症 例 22 例。【 方 法 】MAMMOMAT
たので報告する。(症例1)46 歳 女性 左乳腺腫瘤を主訴に来院。MMG で
Inspiration(シーメンス)で撮影した 2D および 3D における腫瘤陰影と、スピ
は所見無く、乳腺 US では L-A 域に 6mm の LEM を認め C3b であった。MRI で
キュラを含む腫瘤長経を測定し比較検討した。2 群間の比較は対応のある t 検
は L-A 域に濃染する小腫瘤像と AC 域にも濃染する小腫瘤像を認めた。再度
定で有意差検定をおこなった。【結果】腫瘤評価では両者で所見が同じものは
US を施行したが、病変を描出できず、RVS で 5mm の LEM を認め、マンモトー
18 例(46%)ですべて辺縁は微細鋸歯状であった。両者で所見が異なるものは
ム生検で何れも乳頭管状腺癌であった。(症例2)45 歳 女性 乳がん検診で
21 例(54%)で 2D 境界不明瞭・3D 微細鋸歯状 13 例(33%)、2D 境界不明瞭・
L-C 域の構築の乱れで要精査となった。MMG-MLO で構築の乱れを認めたが、
3D 境界明瞭平滑 5 例(13%)、2D 境界明瞭平滑・3D 微細鋸歯状 3 例(8%))
US では悪性を疑う病変はなかった。MRI で L-CD 域の 2.5cm の濃染する腫瘤
であった。腫瘤内部所見では 3D でより均一な mass として捉えられた。スピ
像を認め、悪性が否定できないため、RVS で相当する LEM を認め生検したと
キュラを含む腫瘤長経は MLO で 2D は平均 35.3 ± 13.1 mm、3D は平均 45.8
ころ乳腺症であった。(症例3)47 歳 女性 左乳腺のしこりに気づき来院。
± 15.0 mmで、3D で有意に長かった(p= 0.0003)。CC でも 2D で平均 32.8
左 B 域に 2.5cm の腫瘤を認め、MMG と US では皮下に浸潤する乳がんを疑っ
± 13.8 m m、3D で 平 均 44.2 ± 19.2 m m と 3D で 有 意 に 長 か っ た( p <
た。MRI では左乳腺で主腫瘤以外に乳頭下に区域性に広がる乳管内病変を認
0.0001)。【考察】2D と 3D において辺縁所見の異なるものは 54%とおよそ半
め、対側乳腺の乳頭下にも 1cm の濃染病巣を認め、各々 RVS で確認した。左
数を占めたが、これは乳腺の重なりのない 3D においてより鮮明な画像が得ら
側の生検で DCIS, 右側は ADH の病理診断であった。(症例4)54 歳 女性 れた事によるものと考えられた。腫瘤内部陰影は 3D でより均一な mass とし
左 A 域の 1.2cm の乳がんで腋窩リンパ節転移を伴う症例。生検で IDC,sci と
て捉えられたが、これも重なりのない画像により真の腫瘤内部を反映するた
診断され、術前化学療法(nab-PTX → EC)施行した。MRI で濃染腫瘤は消失し、
めと考えられた。スピキュラを含む腫瘤長経では MLO, CC ともに 3D におい
臨床上 CR となり US でも腫瘤像は同定できないため、切除範囲の決定のため
て有意に長かった。これも 3D では乳腺の重なりがないため、より鮮明に末梢
RVS を使用し化学療法前の乳がんの位置を正確にマーキングした。正確な部
までスピキュラを確認できたためと考えられた。【結語】今回スピキュラを伴
分切除術が可能となった。以上の4症例を呈示し、当院での RVS 施行にあた
う腫瘤形成性乳癌症例において 2D と 3D を比較検討した。3D において、より
り問題点と今後の展望を考えたい。
鮮明に腫瘤辺縁および内部構造、スピキュラを確認できた。3D トモシンセシ
スを導入することにより、読影者の個人差を減らしより精度の高いマンモグ
ラフィ検査がおこなえる可能性が示唆された。
ポスター掲示
GP-1-04-33
GP-1-04-34
乳腺専用 PET(PEM) および whole body PET を用いた乳癌術
前化学療法の効果判定
乳癌症例における Tomosynthesis の有効性について
三河乳がんクリニック
1
横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部、
2
横浜市立大学附属病院 放射線科、
3
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
4
横浜市立大学附属病院 第二外科、
5
横浜市立大学附属市民総合医療センター 病理部、6 ゆうあいクリニック
小野寺 麻友美、渡辺 恵美、小島 美由紀、水谷 三浩
則武 睦未 1、関川 善次郎 1、菅江 貞亨 4、山本 弥生 6、川本 雅美 6、
小澤 幸彦 6、井上 登美夫 2、石川 孝 3、佐々木 毅 5
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】近年、乳腺専用 PET(Positron Emission Mammography;PEM) は、乳
癌の術前診断において、従来の MMG や超音波、MRI などのモダリティに加え
て使用されるようになってきている。現在、検診から化学療法効果判定にい
たるまで、さらなる臨床応用が期待されている。
【目的】PEM および whole body PET を用いて、術前化学療法の適応となった
症例に対し、pCR が予測できるかを検討すること。
【対象】2011 年 6 月~ 2013 年 11 月の間に、NAC の適応と判断され、PEM お
よび whole body PET でのモニタリングに同意した 20 症例。
【方法】PEM は Naviscan Solo Flex、whole body PET は Shimadzu Eminence
SOPHIA を使用した。NAC 前、2 コース終了後、全コース終了後にそれぞれ、
PEM および whole body PET とを撮影した。その結果を、判定量的・視覚的に
病理学的治療効果と比較検討した。
【結果】pCR の定義は、grade2b/3 response とした。エントリーされた 20 人
のうち、10 人が pCR、10 人が non-pCR であった。2 コース終了後の時点では、
whole body PET において、pCR 群は non-pCR 群よりも有意に SUVmax 値が
低かった(pCR;1.36 ± 0.29, non-pCR 群;2.96 ± 1.49, P < 0.05)。一方で、
PEM においては両群の SUVmax 値に有意差はなかった。全コース終了後では、
whole body PET において両群に有意差は見られず、PEM で pCR 群が nonPCR 群 と 比 較 し て 有 意 に SUVmax 値 の 低 下 を 認 め た(pCR 群 1.11 ± 0.24,
non-pCR 2.78 ± 1.97, p < 0.05)。
【結論】PEM は、化学療法全コース終了後に、CR かどうかを判定する上で有用
であることが示唆されたが、2コース終了後の効果判定予測では、whole
body PET がより優れている可能性があると考えられた。
【 目 的 】: 当 院 で は 2014 年 5 月 よ り Tomosynthesis 撮 影 の 可 能 な GE 社 製
Senoclaire を導入し、その臨床応用を積極的に行っている。そこで今回、当
院の乳癌症例の通常の Mammography と Tomosynthesis(以下 MG と TS)画
像を比較検討するとともに、TS と病理所見を対比検証し、TS の有効性につい
て考察する。【対象と方法】:2014 年 5 月から 11 月の当院の乳癌手術症例で
最終病理診断の得られた 42 症例を対象とし、同症例の MG と TS の比較および
TS 画像と病理の対比を行った。【結果】:MG 所見からカテゴリー(Ct)3 以上
と評価したのは 35 例(感度 83.3%)。内訳は Ct3-11 例、4-18 例、5-6 例であっ
た。MG で Ct4 以下の症例で、TS では鮮明にスピキュラが描出され、5 例の評
価 が Ct5 と な っ た。 構 築 の 乱 れ を 認 め た の は MG8 例(19.0%)
、TS17 例
(40.0%)あり、TS では MG より細部まで明瞭に描出されていた。また MG 所
見で構築の乱れあるいは微細石灰化のみを呈した 8 例のうち 2 例に TS では腫
瘤も認めた。乳房の構成で乳腺が不均一高濃度~高濃度の症例で MG による検
出の困難な病変は、やはり TS でも描出は難しかった。それでも MG で異常を
認めなかった 8 例(21.0%)のうち、TS では腫瘤を 4 例に、構築の乱れを 1 例
に認めた。MG では検出できなかった 3 例の娘結節を TS では描出できた。TS
の感度 92.8% であった。病理の組織型別に TS 施行によって Ct の上昇する割
合をみると、a1-40%、a2-45%、a3-60% であった。【結語】
:今回の検討結
果を鑑みると、TS は診断精度の向上を期待でき、専門外来での精査よりも検
診の場で有効性を発揮する可能性が示唆される。今後も TS 施行症例を蓄積し、
TS の有効性に関する議論を深めていきたい。
GP-1-04-35
GP-1-04-36
乳腺造影超音波 10 例の経験
volume navigation を用いた second-look US で同定されな
かった乳房 MRI 発見病変の検討
1
公立昭和病院 乳腺内分泌外科、2 公立昭和病院 病理診断科、
3
公立昭和病院 外科・消化器外科
1
2
岡田 尚子 1、金内 一 1、森田 恒治 1、清水 誠一郎 2、照屋 正則 3、
上西 紀夫 3
都立多摩総合医療センター 放射線科、
都立多摩総合医療センター 乳腺外科
荒木 潤子 1、輿石 剛 1、喜多 みどり 1、高見 実 2、田辺 直人 2
当院では 2014 年 10 月より 12 月の 3 ヶ月間 Sonazoid による乳腺超音波検査
を施行した。Sonazoid の有用性としては、卵アレルギー以外の患者には使用
できること、また腎機能不良患者にも用いられること、MRI 禁忌者にも使用
できることが知られている。しかし、具体的にどのような症例に対し有用で
あるかはまだ明確ではない。今回当院で 3 ヶ月の試用期間を持ち、浸潤癌、
非浸潤癌、良性病変を含む 10 例に対し同一の術者が一台の機械で造影超音波
を施行し、有用と思われるもの、思われないものに分類を試みた。(装置:
Aplio300( 東芝メディカルシステムズ )、probe:PLT-1005BT。Sonazoid は
0.015ml/kg を静脈ラインより bolus 投与)
【対象病変と目的】A) 乳がんと診断され手術予定、術前造影 MRI を施行してい
ない症例の病巣の広がり診断。B) 乳癌の診断が難しい乳腺病変の質的診断。
【症例数】A)7 例 B)3 例
【症例提示】
i) 粘液癌の症例
ii) 嚢胞内乳癌の症例
iii) 術前化学療法後の症例
iv) 同側乳房の他領域に腫瘤影を認める症例
v) 血性乳汁分泌で受診、MRI で境界不明瞭な区域性に造影される病変を認め
た症例
vi) 乳頭直下の小腫瘤
【造影超音波が有用だと思われない症例】A)1. 境界明瞭でハローや乳管拡張な
どの浸潤傾向を示さない病変。
【造影超音波が有用かもしれないが熟練者には不要と思われる症例】A)1. 境界
明瞭だがハローや乳管拡張を伴う、すなわち浸潤傾向を示す病変。B)1. 低エ
コー病変 【造影超音波が有用だと思われる腫瘤】A)1. 同側あるいは反対側乳房に鑑別困
難な病変を認める場合。B)1. 乳頭下の病変 2. 小病変
【考察】造影超音波はソナゾイドの安全性から比較的使用しやすい技術と思わ
れるが、装置のプローブやソフトの設置できる機種が限られること、またそ
の利点が明確でないことより、施行している施設は少ない。当院は MRI の予
約が取得しにくいことから広がり診断を目的として試用を行った。広がり診
断に加え主病変から離れた病変の鑑別に特に有用であり、また乳頭下の病変
をより鮮明に映し出すことで通常の外来での診断を容易にした。また、ベッ
ドサイドで病変が造影されていく様子を見ることにより、腫瘍の血管や浸潤
のイメージが明らかになり、手術のイメージが湧きやすくなることが利点で
あった。
【背景と目的】乳房 MRI にて初回 US で同定されない MRI 発見病変が検出され
た場合、部位や性状によっては、組織学的検索が必要となる。当院では、US
施行時と同一の 30 度傾斜支持台を用いた半仰臥位 MRI 画像と、US 画像を同
期させて、volume navigation(V-navi) を用いた second-look US を行い、同
定された病変に対し組織学的検索や皮膚マーキングなどを施行している。今
回 V-navi を用いた second-look US で同定されなかった病変を臨床病理学的
に検討した。【対象】2010 年 6 月から 2014 年 11 月までに、112 例 154 病変
の 乳 房 MRI 発 見 病 変 に 対 し、V-navi を 用 い た second-look US を 行 っ た。
second-look US で同定されなかった 13 例 13 病変の臨床病理学的特徴を明ら
かにした。【結果】MRI では 13 病変のうち 1 病変は乳頭直下、3 病変は主病変
と同一領域、9 病変は異なる領域に位置していた。形態は mass 3 例 (5-7mm)、
focus 7 例、non-mass 2 例 (linear, focal) で あ っ た。V-navi を 用 い た
second-look US では乳腺辺縁や後間隙の脂肪織内、脂肪織との境界部に位置
していたもの 4 例、皮下脂肪織内に位置したもの 1 例、点状や現局性低エコー
に見えたが組織学的検索をしなかったもの 2 例、拡張乳管のみ同定されたもの
1 例、乳頭下エコーとの鑑別困難だったもの 1 例、原因不明 4 例だった。原因
不明の 4 例のうち 1 例は周囲の血管をメルクマールに CNB を行い、invasive
lobular ca. の病理診断であった。1 例は全摘で乳房リンパ節と診断された。
他の組織学的検索を行わなかった 11 例は温存療法を行い、これまで再発はな
い。【結語】V-navi を用いた second-look US で同定されなかった乳房 MRI 発
見病変は主病変と異なる領域で、小さい病変が多い。周囲にメルクマールが
あれば、組織学的検索を検討してもよい。
512
ポスター掲示
GP-1-04-37
GP-1-04-38
PEM(Positron Emission Mammography)で低集積を示し
たアポクリン癌の1例
1
PEM(Positron Emission Mammography) の初期使用経験
1
医療法人 DIC 宇都宮セントラルクリニック、2 獨協医科大学病院 第一外科
齋藤 順一 1、佐藤 俊彦 1、伊藤 淳 2
Positron Emission Mammography(以下、PEM)は Navi-scan 社によって開
発された乳房専用の PET スキャナである。全身用 PET/CT と比べて高い空間
分解能を有しており、これまで PET では検出できなかった乳房内の微細な病
変を早期に検出しうることが期待されている。宇都宮セントラルクリニック
では 2013 年 4 月より PEM を導入し、臨床応用を開始した。他の modality お
よび組織診にて乳癌の診断となり術前精査として施行した症例のほかに、
PET/CT 検診受診者で PEM を希望する方に対して無料で PEM を追加すること
で通常の保険診療内で施行可能な症例以外にも経験を得ることができた。
PET/CT 検診の際に PEM を施行した症例 134 例中、有意所見を認めたものは
36 例、そのうち要精査と判断されたものは 4 例(2.98%)であった。4 例中 2
例は当クリニックにて針生検による組織診が施行され、1 例が乳管内乳頭腫、
1 例が乳腺症の診断であった(他の 2 例は他院紹介にて追跡調査中)。PEM の
精度に関しては、感度 93%、特異度 88% との報告がある。PEM は悪性病変
以外にも良性の増殖性病変も検出しうる可能性があり、その診断基準につい
ては今後症例を重ね検討を要すると思われた。現在、当科にて乳癌の診断を
得た症例については、全例 PEM の施行を開始しており、最終病理結果(組織型、
subtype など)を合わせた検討結果を含めて、初期使用経験として報告する。
【はじめに】乳癌においてアポクリン癌は特殊型乳癌に分類されており、(乳癌
取扱規約16版)その中でも比較的稀(全体の乳癌の~1%程度)な癌である
と言われている。また画像診断分野において、特徴的な臨床像は無く診断が
難しい病変の一つである。我々は 2014 年 4 月より PEM(Positron Emission
Mammography)を導入し、臨床・検診において使用してきた。今回は検診
で要精査となり吸引式組織生検によりアポクリン癌と診断され、PEM 検査に
て低集積を示した1例について報告する。【症例】62 歳女性。マンモグラフィ
にて右乳房 C 領域に構築の乱れカテゴリー4を認め US 及び MRI を施行。US
では右乳房 C 領域に内部不均一、後方エコー減弱、一部に血流シグナルを伴
う低エコー腫瘤を認めた。また MRI で同部位に早期に造影後 Wash Out され
る病変を認めた。US ガイド下に吸引組織生検を施行し、病理診断の結果アポ
クリン癌、ER 陽性、PgR 陽性、HER2 陰性の診断。病期診断の為に PET/PEM
検査を施行したところ、主病変は低集積を示し、また明らかな遠隔転移は認
められなかった。【考察】文献によるとアポクリン癌における FDG^PET 検査
は高集積を示す例が多いとされるが、今回の自験例では全身 FDG-PET、PEM
検査で低集積を示した。本例について分権的考察をふまえ報告する。
GP-1-05-02
若年発症乳癌 (50 歳未満 ) に対する温存術後の全乳房照射と部
分照射との後方視的比較解析
3
乳房温存手術後の SAVI による加速乳房部分照射治療について
1
2
東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍科、 井上レディースクリニック、
東京西徳洲会病院 放射線腫瘍科、4 瀬戸病院
佐藤 一彦 1、渕上 ひろみ 1、水野 嘉朗 1、竹田 奈保子 1,2、下 貴裕 3、
窪田 淳 3、井上 裕子 2、瀬戸 裕 4、加藤 雅宏 3
[ はじめに ] 乳房温存療法では温存術後に全乳房照射 (WBI:Whole Breast
Irradiation) が 行 わ れ る が , 近 年 照 射 期 間 短 縮 を 可 能 と す る 乳 房 部 分 照 射
(PBI:Partial Breast Irradiation) が注目されている . 本邦は欧米諸国に比して
若年発症例が多く ,PBI 導入は多忙な若年発症の乳癌患者には特に大きな福音
となろう . しかしながら , 術前の画像診断や全身治療の進歩から温存療法後の
再発率低下が報告されてはいるが , 同側乳房内再発が多いとされる若年発症例
に対する PBI の有用性を検証した報告は未だ少ない . 我々は院内倫理委員会承
認のもと小線源を用いた PBI を試みているが , 今回は若年発症例を対象に WBI
との後方視的比較解析によりその有用性を検証した .[ 方法 ] 当科では原則とし
て温存術後には WBI を行うが , センチネルリンパ節転移陰性 ,40 歳以上 , 腫瘍
径3cm以下で患者が希望する場合には PBI を施行している . 温存術中に術前
の CT による照射計画を参考にアプリケーターを刺入し , 小線源を用いて照射
を行った . 術直後に CT にて最終治療計画を立てるが , 標的は cavity 周囲より
1-1.5cm 外側に設定し , 術当日より 1 回 4Gy を 5-6 日間で総線量 32 Gyを照
射している .WBI は 1 回 2Gy 総線量 50Gy 照射した .40 歳未満の若年者や断端
陽性例においては適宜 10Gy の boost 照射を腫瘍床に追加し , 更にリンパ節転
移 4 個以上の症例には , 腋窩及び鎖骨部位に対する照射を追加している . 術後
は年1回の MMG 及び乳房 MRI により詳細な経過観察を行っている . 尚 , 術前
化学療法例は本解析から除外した .[ 結果 ]2007 年 9 月 ~2014 年 12 月に温存
手術を施行した 423 例 (PBI:253 例 ,WBI:170 例 ) のうち , 若年発症 (50 歳未
満 ) の 175 例 を 対 象 と し た .PBI は 95 例 (37.5%, 平 均 43.9 歳 ),WBI は 80 例
(47.1%, 平均 42.1 歳 ) に施行されていた . 観察期間中央値はいずれも 3.4 年で
あった . 両群とも全例生存しており , 同側乳房内再発はそれぞれ 3 例 (3.2%) と
2 例 (2.5%)(p=0.588),3 年無再発生存率も同様に 97.3% と 98.1% であり有
意差を認めなかった (p=0.986).[ 結語 ] 乳房温存術後の PBI は , 若年発症例に
おいても WBI に代わりうる照射法として有用である可能性が示唆された . し
かしながら , 今回の検討は後視的解析であり症例数及び観察期間も充分ではな
い . 標準治療としての施行は大規模ランダム化比較試験の結果を待ちたい .
関西医科大学附属滝井病院 乳腺外科、2 関西医科大学附属滝井病院 放射線科
坪田 優 1、末岡 憲子 1、播磨 洋子 2、山本 大悟 1
〔緒言〕日本乳癌学会編の乳癌診療ガイドライン 2013 年版では、StageI-II 乳
癌に対する乳房温存手術後は放射線療法を行うことが強く勧められている ( 推
奨グレード A)。本邦での放射線療法は全乳房照射が一般的であるが、放射線
療法は 5-7 週間の期間を要するため、仕事や通院などのライフスタイルへの
負担、照射後の整容性の問題、放射線性の肺炎など影響などが少なからず懸
念される。そこで欧米で普及している Strut Adjusted Volume Implant(SAVI)
を用いた加速乳房部分照射治療 (ABPI) について安全性や整容性の評価を行う
ために臨床試験を計画した。
〔対象〕原発性乳管癌 腫瘍径 2cm 以下 cN0M0、
乳房温存手術・センチネルリンパ節生検後、切除断端陰性・術中迅速及び永久
標本でのセンチネルリンパ節陰性、十分な IC に同意があること。
〔方法〕乳房
温存手術後、SAVI スペーサーを挿入し、乳房内腔の計測を行う。永久標本で
断端陰性 , センチネルリンパ節陰性を確認後に SAVI アプリケーターに交換、も
しくはスペーサーを内腔計測後に抜去し、後日アプリケーターを刺入する。高
線量率照射として、処方線量は 1 回 3.4Gy を 6 時間以上の間隔を空けて 1 日 2
回、5 日間の治療を行う。照射終了後アプリケーターを抜去する。
〔評価項目〕
治療完遂率・有害反応発生割合・局所制御率・治療前後の乳房整容性について
検討。院内臨床試験として5例予定している。本学会において得られた結果に
ついて報告する。
513
一般セッション(ポスター掲示)
GP-1-05-01
1
獨協医科大学 第一外科、2 宇都宮セントラルクリニック
伊藤 淳 1、上野 望 1、齋藤 順一 2、佐藤 俊彦 2、加藤 広行 1
ポスター掲示
GP-1-05-03
GP-1-05-04
乳房温存療法における両側乳癌症例の検討
乳房温存手術後に残存乳房への放射線照射を省略した症例に関
する検討
1
国立病院機構 福山医療センター 放射線治療科、
2
広島大学病院 放射線治療科、3 広島大学病院 乳腺外科、
4
広島大学病院 病院病理
1
2
兼安 祐子 1、中川 富夫 1、永田 靖 2、角舎 学行 3、片岡 健 3、
有広 光司 4
大阪府立急性期・総合医療センター 乳腺外科、
大阪府立急性期・総合医療センター 放射線治療科
三宅 智博 1、野村 昌哉 1、福田 礁一 2、島本 茂利 2、青野 豊一 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】乳房温存療法以後の同時または異時性両側乳癌症例について検討する。
【対象と方法】1990 年から 2002 年において広島大学病院および関連施設で乳
房温存療法を施行した患者 360 例 (365 乳房 , 対側乳癌既往は 10 例 ) のうち治
療時を含めて治療後に両側乳癌を発症した患者 30 例を対象とした。1 年未満
を同時、1年以上を異時性とすると、同時は 9 例、異時性は 21 例であった。【結
果】初回乳癌の平均年齢は 50 歳 (29-69)、対側乳癌までの期間の平均は 5.7
年 (0-18 年 ), 中央値は 4 年であった。経過観察期間は 12-253 ヶ月 ( 中央値
146 ヶ月 ) であった。初回乳癌と対側乳癌で組織型が異なる症例は 22 例、同
一は 6 例、不明は 2 例であった。同時性重複癌 9 例のうち 5 例は同時に温存療
法を施行、残りの 4 例は以下の理由で放射線療法を施行しなかった。2 例は進
行癌で乳房切除、1 例は DCIS で検討の結果手術単独、1 例は RT を蜂窩織炎に
て中止した。異時性乳癌 21 例のうち、対側乳房にも温存療法を施行したのは
16 例、4 例は乳房切除、1 例は乳腺全摘術であった。両側乳房に同時または異
時に放射線療法を施行することで、重篤な晩期有害事象の発生は認めなかっ
た。30 例の初回乳癌からの 10 年生存率は 86% 年で、その他の温存群 93%
と有意差はなかった (P=0.22)。また広島大学病院の以前の報告では乳房温存
療法を施行した 360 例の乳房内再発は 13 例であり、乳房温存療法における同
時または治療後の異時性乳癌のほうが多かった (P=0.0075)。【結語】乳房温
存療法においては、治療時およびそれ以降の経過観察において、両側乳癌の
発生に常に留意すべきである。
【目的】乳房温存手術後の治療として、残存乳房への放射線照射は標準治療で
ある。当院において残存乳房照射を省略した症例の治療成績について検討し
た。【方法】2008 年 1 月から 2011 年 12 月までに当院において乳房温存術を施
行した、連続する pT1-2N0M0 原発性乳癌患者 98 名を後ろ向きに検討した(観
察期間の中央値:59 ヵ月)。術前化学療法施行症例や両側乳癌症例は除外した。
摘出標本の永久病理診断の結果、断端から腫瘍までの距離が 1.0cm 以上確保
されており、かつ広範な乳管内進展が無い場合、主治医から患者に対して残
存乳房照射の省略が提案されていた。断端陽性例(断端から腫瘍までの距離が
0.5cm 未満)に対しては、腫瘍床へのブースト照射を追加した。術後局所再発
の検索目的で、6 か月毎に視触診および乳腺超音波検査を、12 か月毎にマン
モグラフィ検査が施行された。【成績】全対象患者 98 例中、47 例(48%)が残
存乳房照射を省略された。照射群のうち断端陽性例が 24 例(47%)であり、
そのうち 23 例(96%)に対して Boost 照射が施行された。照射省略群は主に、
閉経後(81%)・pT1(81%)・ly0(98%)・v0(100%)・ER 陽性(85%)・PR
陽性(77%)・HER2 陰性(85%)の乳癌であった。両群間の背景を臨床病理学
的因子に基づき比較したところ、照射省略群において断端陽性例と乳管内進
展例が有意に少なかった ( ともに p < 0.05) が、その他の背景因子に差を認
めなかった。観察期間中、照射群および照射省略群ともに局所再発を認めず、
両群で 1 例ずつに遠隔再発を認めた。【結論】少数例かつ限られた観察期間の
結果に基づく検討ではあるものの、対象を限定すれば、残存乳房照射省略群
においても局所制御率は許容されるものであった。臨床試験の枠組みで本検
討を続ける意義はあると考える。
GP-1-05-05
GP-1-05-06
乳房切除後腋窩リンパ節転移 1 個から 3 個症例に放射線療法は
必要か?
乳房切除術後胸壁再発症例の検討
三重大学 医学部 乳腺外科
1
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科、
2
京都府立医科大学附属病院 病理診断科、
3
京都府立医科大学附属病院 放射線科
野呂 綾、山下 雅子、木本 真緒、今井 奈央、澁澤 麻衣、由井 朋、
柏倉 由実、中村 卓、伊藤 みのり、木村 弘子、岡南 裕子、花村 典子、
稲上 馨子、三井 貴子、小川 朋子
小野 寿子 1、中務 克彦 1、大内 佳美 1、岡本 明子 1、藤田 佳史 1、
阪口 晃一 1、小西 英一 2、相部 則博 3、山崎 秀哉 3、田口 哲也 1
[背 景] 乳 が ん 腋 窩 リ ン パ 節 転 移4個 以 上 の 乳 房 切 除 術 後 放 射 線 療 法
(Postmastectomy radiation therapy:PMRT)は世界的に標準治療とされて
いる。一方、腋窩リンパ節転移 1 ~ 3 個の症例に対しては、evidence が不十
分なため、2013 年版日本乳癌ガイドラインではグレード B、2014 年第 1 版
NCCN guideline ではカテゴリー 2B にとどまっている。昨年、EBCTCG2014
meta-analysis の結果により、腋窩リンパ節転移 1 ~ 3 個の症例は 4 個以上の
症例と同様に、PMRT により乳癌死亡率の低下につながることが示された。し
かし全生存率の低下は示されなかった。
[ 目的 ] 腋窩リンパ節転移 1 ~ 3 個の乳がん症例に対する PMRT の有効性を検
証し、PMRT 適応の見直しを図る。
[ 対象と方法 ] 原発性乳癌に対して根治目的で乳房切除術を 2004 年 1 月から
2014 年 10 月 ま で に 施 行 し た、336 症 例( 両 側 乳 癌、 男 性 症 例 を 除 く )を
retrospective に検討した。リンパ節転移 0 個群、リンパ節転移 1 ~ 3 個群、
リンパ節転移 4 個以上群に分けて、予後を解析した。また PMRT、年齢、閉経
状況、サブタイプ、病理学的因子、断端状況、薬物療法の有無などで局所領
域再発に関するリスク因子の解析をおこなった。
[ 結果 ] 全症例の平均年齢は 58 歳(28 歳‐93 歳)、平均観察期間は 35.3 ヶ月(最
長 123 ヶ月)であった。336 例のうち、局所領域再発を来たしたものは 23 例
であった。23 例中、腋窩リンパ節転移 0 個は 7 例(PMRT 非施行は 6 例、断端
状況による施行は 1 例)、腋窩リンパ節転移 1~3 個は 6 例(PMRT 非施行は 5 例、
断端状況による施行は 1 例)、4 個以上は 10 例(PMRT 非施行は 6 例、うち 1 例
は予定前に再発、PMRT 施行は 3 例、施行有無不明は 1 例)であった。その他
の解析結果の詳細は観察期間を延長し、改めて示す。
[ 考察 ] 腋窩リンパ節転移 1 ~ 3 個の症例に対する PMRT は全生存率で統計学
的有意性がなく、薬物療法の発展や再建症例の増加を加味すると、適応拡大
は時期尚早と考える。今回の検討にて術前治療前の皮膚所見、適切な術式や
切除断端状況を包括的に考慮し、PMRT の適応を個々の症例で判断することで
予後の改善につながると思われた。
【背景】乳癌における乳房切除術後の胸壁再発は、乳癌患者の生存と QOL に影
響を与える因子である。PMRT(postmastectomy radiotherapy)は、腋窩リ
ンパ節転移が 4 個以上の症例で局所再発を抑え生存率を改善することが知ら
れており、1 ~ 3 個の症例やリンパ管侵襲 (ly) の強い症例についても適応拡大
が検討されている。【対象と方法】当院で 2003 年 4 月から 2013 年 12 月に乳
癌と診断され、乳房切除術を行った 1049 例を、PMRT の適応別に分け、胸壁
再発の要因と、適応拡大の対象となりうる症例について検討した。【結果】観
察期間は 12 ~ 131 ヶ月 ( 中央値 42 ヶ月 )、治療開始時年齢は 34 ~ 85 歳(中
央値 42.5 歳)。1049 例中、同側胸壁に再発を来したのは 11 例 (1.0% ) であっ
た。PMRT の適応症例(T3/4、リンパ節転移個数 4 個以上、N2 以上)は 1049
例中 170 例あり、照射施行例は 130 例、うち 4 例 (3.1% ) に胸壁再発を認めた。
全 例 StageIII で、T4 が 3 例。ly(1+) が 2 例、(2+) が 1 例、(3+) が 1 例。 断
端陽性が 1 例。初回手術から再発までの期間は 6 ~ 41 ヶ月。4 例中 2 例が後
に遠隔転移を伴い、死亡している。PMRT 適応症例で非照射例は 40 例で、う
ち 3 例(7.5%)に胸壁再発を認めているが、いずれも初回手術後、照射前の段
階で再発を来しており、初回手術から再発までの期間は 1 ~ 2 ヶ月であった。
StageIIB が 1 例、StageIII が 2 例。ly(1+) が 2 例、(3+) が 1 例。 断 端 陽 性
が 1 例。いずれも NG3。3 例中 2 例が死亡している。PMRT 適応外の 879 例の
うち、照射例は 11 例 (1.3% ) で、術前化学療法を施行したものが 7 例(NAC
前 StageIIA が 3 例、IIB が 4 例)、リンパ節転移が 1 ~ 2 個で ly(+) のものが 4
例。いずれも胸壁再発は認めていない。PMRT 適応外で非照射例は 868 例で、
うち 4 例 (0.46% ) に再発を認めている。2 例は DCIS で、1 例は断端陽性、も
う1例は断端陰性で組織生検の tract への再発と考えられた。残り 2 例は
StageIIA で、PMRT の適応拡大の対象となりうる腋窩リンパ節転移 1 ~ 3 個、
ly(+)、かつ非照射の 110 例に含まれていた。110 例中胸壁再発を認めたのは
この 2 例 (1.8%) のみであり、1 例は断端陽性、もう 1 例は組織生検の tract へ
の再発が考えられた。【考察】局所進行乳癌は、PMRT 後であっても遠隔転移
を伴って予後不良となりうる。また、適応拡大対象となる腋窩リンパ節転移 1
~ 3 個、ly(+) の症例であっても、十分な切除断端を確保し組織生検の tract
は可能な限り切除範囲に含めることで、照射せずとも胸壁再発を防げる可能
性が高い。
514
ポスター掲示
GP-1-05-07
GP-1-05-08
N1-3 個症例における局所および遠隔再発率と PMRT の適応に
ついての検討
乳房温存術後に発症した放射線誘発乳房皮膚血管肉腫の1例
1
1
国立病院機構 九州がんセンター 乳腺科、
2
国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター
済生会山形済生病院 外科・乳腺外科、2 済生会山形済生病院 病理
太田 圭治 1、浦山 雅弘 1、磯部 秀樹 1、尾形 貴史 1、刑部 光正 2
石田 真弓 1、及川 将弘 1、古閑 知奈美 1、西村 純子 1、厚井 裕三子 1、
秋吉 清百合 1、中村 吉昭 1、大野 真司 2
GP-1-05-09
GP-1-05-10
1
1
乳癌多発骨転移に対する放射線照射後 4 年で遅発性放射線脊髄
症を認めた 1 例
乳房全摘術後乳房再建術のおける予防的胸壁照射の安全性に関
する検討
函館五稜郭病院 外科、2 北美原クリニック
聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 乳腺・内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学付属研究所 ブレスト&イメージングセンター、
4
聖マリアンナ医科大学 放射線科、5 ブレストサージャリ - クリニック
2
川岸 涼子 1、早川 善郎 2、米澤 仁志 1、大槻 花恵 1、高金 明典 1
3
【はじめに】遅発性放射線脊髄症は頸部、食道、肺、縦隔などに生じた悪性腫
瘍に対する放射線照射後、6 ヶ月から数年後に臨床症状が出現する脊髄障害で
ある。その予防の為に、脊髄に対する全照射線量を 45Gy 以下、22 ~ 25 回
の分割照射にすることが推奨されているが、0.2% の割合で発症するとの報告
もある。今回、乳癌術後の多発骨転移に対する放射 線照射後 4 年で遅発性放
射線脊髄症を認めた 1 例を経験したので報告する。【症例】72 歳、女性。6 年
前に前医で左乳癌に対し手術施行 (Bp+SN)。病理結果は、左乳癌、C 領域、
T1N0M0 Stage I、scirrhous carcinoma、ER+/PgR-/HER2 3+、NG2、
Luminal-HER2 type の診断。術後補助療法として Anastrozole を投与するも
4 年後に肺転移を認め、Toremifen に変更され、当院へ紹介受診となった。
PET-CT で多発肺転移、多発リンパ節転移、多発骨転移を認めた。多発骨転移
に対しては胸椎・腸骨へ各々 40Gy の放射線照射を施行した。また、再発 治
療は FEC100、Trastuzumab/Paclitaxel、Trastuzumab/Vinorelbine を施行
後、PET-CT で明らかな活動性の集積像は認めず、CR と判断した。経過中に
末梢神経障害の増悪を認めており、その後は Trastuzumab 単独療法へと変更
した。Trastuzumab 単独療法へ変更後も末梢神経障害の改善は認めず、徐々
に両下肢の脱力、両下肢麻痺を認めるようになった。PET- CT では明らかな
活動性の病変を認めず、MRI 検査でも骨転移による脊柱管狭窄像は認められ
なかった為、骨転移の再増悪による末梢神経障害は否定された。さらに、MRI
検査で前回の放射線照射部位に一致する胸椎レベルの脊髄の腫大と T2WI 画
像で脊髄内部の信号の上昇を認め、遅発性放射線脊髄症の診断となった。【結
語】遅発性放射線脊髄症は稀であり、本症例のように脊髄の耐用線量内でも起
こりうる。鑑別としては、骨腫瘍の増大による脊髄圧迫症状との鑑別が重要
となる。今後の治療選択肢の 1 つとして,ステロイドパルス療法を提示してい
るが、今後の経過を含め、文献学的考察をふまえて報告する。
大井 涼子 1、津川 浩一郎 1、黒田 貴子 1、土屋 聖子 1、永澤 慧 1、
岩重 玲子 1、志茂 彩華 1、上島 知子 1、土屋 恭子 1、小島 康幸 1、
志茂 新 1、速水 亮介 1、西川 徹 1、白 英 3、川本 久紀 3、矢吹 由香里 2、
岡田 幸法 4、五味 弘道 4、岩平 佳子 5
【背景】近年乳房再建技術の進歩に伴い、乳房全摘術後に一次的あるいは二次
的に乳房再建術を希望する患者が増えている。一方、腋窩リンパ転移が 4 個以
上認めた場合や一部の pT3 以上の症例の場合、予後改善の目的から胸壁に予
防的照射を行うことが一般化しつつある。ティッシュエキスパンダーやイン
プラントなどを用いた再建術の場合、放射線照射と乳房再建術をどのような
時期にどのような順序で行うのが適切かに関しての定説はない。【対象】乳房
切除+ティッシュエキスパンダー挿入術→術後化学療法→インプラント入れ
替え術→胸壁照射の順に施行した 17 症例においての合併症に関しての検討を
行った。
【結果】患者は平均 37 歳(29 ~ 50 歳)であった。5 例には術前化学療
法を施行し、全例に術後化学療法を施行した。リンパ節転移個数は、平均 7 個
(2 ~ 22 個)であった。術後化学療法施行後にインプラント入れ替え術を施行
し、放射線照射までの期間は、1 回目の手術から 38 週(28 ~ 62 週)であった。
その中の 1 例で、術後 2 年が経過したところで、Baker 分類の Grade3 の被膜
拘縮を認め、現在は被膜切除術とインプラント入れ替えの予定となっている。
その他、放射線療法施行後の合併症として、皮膚の軽度発赤や拘縮が見られ
たが、軽度のものであった。【まとめ】インプラント入れ替え後に胸壁照射を
施行することにより、急性期の重篤な合併症は生じなかったが、晩期の合併
症が見られており、長期的な管理が必要である。
515
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】2014 年の EBCTCG の報告ではリンパ節転移 1-3(n1-3) 個の症例にお
いて放射線治療 (RT) 群は no-RT 群に比べ初局所再発率、初再発率、乳癌死亡
率が有意に減少しているが対象症例は 1960-1980 年代と古く術後治療の多く
は CMF か TAM である。乳癌学会診療ガイドライン 2013 年版では乳房切除術
(Bt) 後の n1-3 個に対する術後領域放射線治療 (PMRT) は推奨グレード B だが
biology 別の薬物療法が進歩した現在の局所および遠隔再発の absolute risk
評価が重要と考える【目的】Bt 後、n1-3 個の症例の局所および遠隔再発の
absolute risk を評価し欧米のデータとの相違を検討した【対象と方法】2000
~ 2009 年の原発性乳癌で Bt 後で n1-3 個かつ術後 RT 未施行例で biology が
判明した 129 例の臨床病理学的因子、初再発部位、全生存率 (OS)、無再発生
存率 (DFS) を検討した【結果】129 例中 94 例 (95% ) に術後薬物療法が施行さ
れていた。化学療法はアンスラサイクリン系±タキサン系が 82 例 (64% )、
CMF が 10 例 (8% )、その他が 2 例 (2% )、内分泌療法は SERM ± LHRHa が
52 例 (81% )、AI が 31 例 (24% )、SERM → AI が 13 例 (10% ) であった。平
均 観 察 期 間 は 7.3 年 で 全 症 例 の 5 年 DFS(any first recurrence) は 24.8 %、
10 年 DFS は 37.2%と EBCTCG の報告より低かった (EBCTCG;5 年が 35.6%、
10 年が 45.5% )。初再発部位は局所再発のみが 12 例 (6% )、局所+遠隔再発
が 4 例 (12% )、遠隔転移のみが 24 例 (21% ) であり、再発部位別の 5 年 OS
は局所再発のみが 100%、局所+遠隔再発が 65%、遠隔再発のみが 50%
(p=0.02) と局所再発のみが有意に良好であった。また局所再発後に遠隔転移
を 来 た し た の は 4 例 で 5 年 OS は 100 % で あ っ た。biology 別 の 5 年 DFS は
HR+/HER2- が 81 %、HR+/HER2+ が 72 %、HR-/HER2+ が 61 %、HR-/
HER2- が 66% (p=0.43) で HR+/HER2- がやや良好であった。biology 別に
初再発部位を検討すると HR+/HER2-(83 例 ) は遠隔転移のみが 60 例 (21% )
と最も多く、HR+/HER2+(16 例 ) では局所再発のみが 3 例 (19% )、局所+
遠隔と遠隔転移のみが各 1 例 (6% )、HR+/HER2+(18 例 ) は局所再発のみと
遠隔再発のみが各 4 例 (22% )、HR-/HER-(12 例 ) は局所+遠隔再発と遠隔再
発 の み が 各 2 例 (17 % ) で 局 所 再 発 の み の 症 例 は 認 め な か っ た【 結 語 】
SUPREMO 試験の結果が待たれるが近年の biology に基づいた術後薬物療法に
よる再発率の減少が予測され、Bt 後の n1-3 個症例における PMRT はより慎重
に検討することが重要と考える。
【はじめに】放射線誘発性血管肉腫は稀であり、診断の難しさや悪性度の高さ
から治療に難渋する疾患である。今回我々は乳房温存術後約 7 年 7 か月後に発
症した放射線誘発乳房皮膚血管肉腫の1例を経験したので報告する。【症例】
70 歳女性。2006 年 7 月(64 歳時)に右乳癌(T1N0M0 Stage 1)に対し乳房
温存術 Bp+Ax を施行。術後放射線照射 50Gy/25fx を施行。術後補助療法と
してアナストロゾールを投与。2008 年 5 月よりほてり、血圧上昇にて休薬し
軽快。トレミフェンに変更し継続。2014 年 7 月右乳房内側皮膚に発赤を伴う
小発疹が出現、10 月には 3.5cm の範囲に淡く発赤を認め、ステロイド外用も
2週後には 5 × 4.5cm に拡大し、パンチ皮膚生検を施行。真皮網状層に異型
細胞が散在、細く不規則な管腔を形成、増殖。免染にて、Vimentin、CD31、
CD34 を発現し、放射線照射部位の皮膚に発生した血管肉腫と診断。CT にて
右乳房内側皮膚に造影効果を、MRI でも皮膚の肥厚と早期濃染を、PET-CT に
て FDG の集積を、サーモグラフィにて同部に一致して皮膚温の上昇を認めた。
遠隔転移、リンパ節転移、乳房内再発所見は認められなかった。血管肉腫の
初発治療においては外科的切除が第一選択とされている。切除範囲の決定が
困難であったが、皮膚所見、画像所見を参考に、3cm のマージンを確保して
広範囲皮膚切除を行うこととした。12 月手術時には 7 × 5cm の班状、紫紅色
の板状硬結となり、乳房切除、広範囲皮膚切除を施行し、欠損部には分層植
皮術を行った。肉眼的に割面は、ほぼ皮膚主体に斑状に暗赤色を呈していた。
病理組織所見は、多くは血管腔を形成し、細胞異型も顕著ではなく、low
grade 相当も一部の結節形成部には細胞異型が高度で核分裂像も多く、充実
性増殖もみられ、high grade 相当と考えられ、血管肉腫と診断された。75 ×
70mm の範囲であり、21mm のマージンで断端(-)わずかに脂肪織に浸潤を
認めた。皮膚血管肉腫は非常に予後不良な腫瘍であるが、術後補助療法に関
して確立されたものはない。近年、パクリタキセルの有効性が報告されており、
本症例も投与を検討している。【結語】放射線照射は皮膚血管肉腫発生のリス
クとなるため,今後乳癌患者の増加に伴い放射線照射後の皮膚血管肉腫が発
生する症例も増加する可能性が高いと考えられる。放射線照射野に腫瘤や皮
膚の色調変化が出現した場合は、皮膚血管肉腫発症の可能性を念頭に早期診
断、治療にあたるべきと考える。
ポスター掲示
GP-1-05-11
GP-1-05-12
1
1
放射線照射後の難治性皮膚潰瘍の一例
温存乳房に対する Prone Breast Irradiation の初期経験
徳島大学 放射線科、2 徳島県鳴門病院、3 徳島赤十字病院
2
川中 崇 1、久保 亜貴子 1、松本 隆裕 2、川中 妙子 3、原田 雅史 1
一般セッション(ポスター掲示)
症例は右乳癌にて H13 年 1 月に右乳房切除を行った。その後、右胸壁に 1.5cm
大の再発腫瘤が出現して、X 病院放射線科を受診。同部分に対して H15 年 10
月に電子線を用いて処方線量 50Gy/25Fr での放射線治療を行った。その 1 年
後から照射部の硬結が認められ、エコーガイド下 ABC では Class I であった。
その後、慢性の皮膚湿疹状の放射線皮膚炎が遷延していたが、放射線治療後 9
年目に皮膚潰瘍を形成し、皮膚科での処置を行っているが、現在まで皮膚潰
瘍の閉鎖はない。 X 病院放射線科ではその事態を放射線治療後 11 年目に把握し、照射線量の再
検証を行ったところ、7MeV 電子線の処方が皮膚面からの深さ 2.8cm の部分
で 20Gy/10Fr と 2.cm の部分で 30Gy/15Fr であることを確認した。通常は7
MeV 電子線の線量ピーク(6cm 径の tube を使用して 1.4cm)の深さでの処方
を用いることが通常と思われ、再測定にてピーク部分の線量の合算は 100Gy
程度となっていた。 X 病院では H14 年度に以前のコバルト照射装置から直線加速器(東芝 メバト
ロン)への機器更新が行われ、放射線治療を専門とする医師ではなく主に放射
線診断を行っている医師が放射線治療を行っていた。そのため、線量処方に
ついての不慣れな部分があり、電子線での適切な線量処方ができていなかっ
たと思われる。多くの病院にて放射線治療を専門とする医師がいない状況下
でコバルト照射装置から直線加速器への機器更新が行われた時期には、不慣
れな状況での不適切な照射が行われた可能性が考えられ、10 年以上経過して
から晩期有害事象として認められることもあり、注意喚起の意味を込めて症
例を供覧する。
国立病院機構 福山医療センター 放射線治療科、
国立病院機構 福山医療センター 乳腺外科、3 日本鋼管福山病院 乳腺外科
中川 富夫 1、兼安 祐子 1、三好 和也 2、椎木 滋雄 3、藤井 清香 3
【目的】乳房温存療法にて術後に全乳房照射を行うことは必須である。この際、
再発予防のためには全乳房を照射野内に十分に含めることが肝腎であるが、
肺や心臓が過剰に入り込んでくることがある。このため合併症発生の危険性
から照射野を縮小せざるを得ないことがある。これを改善させる方法として
うつぶせ照射が有用との報告がある。今回うつぶせの体位を取り乳腺を下垂
させて照射できる患者固定具 New HorizonTM Prone Breast Board を導入
したので、その初期使用経験について報告する。【対象と方法】60 歳代女性、
左乳癌にて温存術を施行された。病変は B 領域に存在した。病理は invasive
microcapillary carcinoma である。当初通常の仰臥位での照射シミュレーショ
ンを行ったが、肺や心臓への過剰な照射を避けようとすると腫瘍床への十分
な線量投与が困難となることが判明した。このためうつぶせ体位での照射に
変更した。全乳房照射は患者希望により 2.66Gy/fr.、総線量 42.56Gy/16fr.
の寡分割照射を施行した。【結果】うつぶせ照射により全乳房への線量分布は
改善され、肺や心臓への照射線量は低減できた。【考察】米国ニューヨーク大
学を中心に Prone Breast Irradiation の有用性の報告が数多くみられる。
報告によれば、右乳房では 100%、左乳房では 85%の症例でリスク臓器への
被曝量が軽減できる。但し、左乳房の 15%の症例ではうつぶせ体位で心臓が
胸壁側に接近して逆に被曝量が増加してしまう場合もある。また、二次癌発
生のリスクを低減できる。【結論】うつぶせ照射用固定具は全乳房照射におい
て合併症軽減に有用な器具と考えられた。本邦においてもこの照射方法はもっ
と普及してもよいものと思われる。
GP-1-05-13
GP-1-05-14
1
江戸川病院 放射線科
早期乳癌に対する炭素イオン線治療
進行乳癌に対する tomotherapy による緩和的放射線治療の検討
放射線医学総合研究所 重粒子線治療乳腺腫瘍臨床研究班、
2
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院、
3
千葉県がんセンター 乳腺外科、4 東京医科大学 乳腺科、
5
順天堂大学 人体病理病態学、6 順天堂大学 乳腺・内分泌外科学
浜 幸寛
唐澤 久美子 1、尾松 徳彦 1,2、山本 尚人 1,3、石川 孝 1,4、荒川 敦 1,5、
齊藤 光江 1,6
【目的】筆頭演者の施設では、2013 年 4 月より早期乳癌に対する炭素イオン線
治療の先進医療を開始し、2013 年 5 月より共同演者らと共に乳腺腫瘍臨床研
究班を結成し臨床第 I/II 相試験を開始している。今回、その初期成績を報告
する。【方法】臨床試験の対象は乳房部分照射に適すると米国放射線腫瘍学会
のコンセンサスで認められている T1N0M0 の低リスク例(60 歳以上、ER 陽性、
HER2 陰性、浸潤性乳管癌、単発)とした。先進医療の対象は、T1N0M0 低リ
スク例だが試験参加を希望しない例、T1N0M0 で手術不能あるいは手術拒否
例とした。また、皮膚の線量制約より腫瘍と皮膚の距離が 5 mm 以上離れて
いることを条件とした。臨床試験第 I 相では、病理学的効果判定目的で 90 日
後に腫瘍切除を行い、術後に内分泌療法を開始した。先進医療では重粒子線
治療施行後に適応例には内分泌療法を開始した。治療体位は仰臥位で、治療
体位の保持には患者固定具と熱可塑性シェルを用い、腫瘍の位置確認のため
腫瘍の頭尾側辺縁2か所に金マーカー(Visicoil)を挿入した。照射方法は、
呼吸同期を用い、ブロードビーム法で左右と垂直の3門照射とし 290MeV 炭
素イオン線を用いた。1回線量は、臨床試験レベル 1 では 12.0 Gy E、レベル
2 は 13.2 GyE、レベル 3 は 15.0 GyE とし、4 日連続照射で、それぞれ総線量
48.0 GyE、52.8 GyE、60.0 GyE とした。先進医療は、1 回線量 13.2 GyE
から開始し 3 例目以降 15.0 GyE とし、総線量はそれぞれ 52.8 GyE、60. 0
GyE とした。【結果】2014 年 12 月までで臨床試験レベル 1 の 3 例、レベル 2 の
3 例、レベル 3 の 1 例、先進医療の 7 例を治療した。観察期間は 20 か月から 3
か月で、有害事象は一過性の Grade 1 の皮膚反応が 6 例に認められたのみで
あった。臨床試験レベル 1 の治療 3 か月後の MRI での効果は PR、SD、good
PR で、腫瘍切除術後の病理学的効果は Grade 1a、0、3、レベル 2 の MRI で
の効果は SD、good PR、PR で、病理学的効果は Grade 1a、3、1a であった。
術後は内分泌治療を拒否した 1 例を含み全例再発なく経過している。先進医療
例では Triple negative の 1 例を除き内分泌療法を施行し、その 1 例を除き再
発なく経過している。Triple negative の 1 例は 6 か月後に局所再発と腋窩リ
ンパ節転移を来し、根治手術及び化学療法は困難な症例であることから腫瘍
切除のみ施行し経過観察中である。【結論】乳癌に対する炭素イオン線治療の
有用性が示唆され、研究を継続する意義を認めた。
【目的】手術不可能な進行乳癌に対する tomotherapy による高線量強度変調放
射線治療 (IMRT) の認容性について検討する。【方法】2011 年 6 月から 2014
年 6 月の間、総線量 66Gy 以上の照射を行った非切除局所進行乳癌患者のうち、
6 ヶ 月 以 上 フ ォ ロ ー ア ッ プ さ れ た 6 名 を 後 ろ 向 き に 検 討 し た (Stage,
IIIB:IIIC:IV=1:1:4)。全症例とも放射線治療前に 1st line の全身治療が行わ
れており、2 名は 2nd line の化学療法が既に行われていた。4 名が遠隔転移を
有し、2 名が手術を前提に術前化学療法を行うも十分な効果が得られず、手術
適応なしと判断されていた。全症例とも原発巣による局所症状を有しており、
緩和を目的とした放射線治療のため当科受診となった。主な症状は、腫瘍出
血 (n=4)、 疼 痛 (n=4)、 患 側 上 肢 の 浮 腫 (n=2) で あ っ た。 放 射 線 治 療 は
helical tomotherapy を用いた IMRT を施行した。患側全乳房および転移が確
認されているリンパ節領域に 45-50Gy/25Fx. を行い、さらに肉眼的残存病変
に対して、10-30Gy/5-10Fx. の boost IMRT を行った。【結果】照射中、照射
後のフォローアップでは、重篤な放射線障害は認められなかった。全症例で
Grade1 の放射線皮膚炎を認めたが、軟膏による保存的治療により軽快した。
4 症例で出血を伴う皮膚浸潤を認めたが、全 4 例とも出血は止まり、治療終了
3 ヶ月後には瘢痕化を確認した。6-25 ヶ月間のフォローアップ期間中、全症
例で腫瘍は縮小し、照射部は無増悪の状態を維持した。6 人中 1 名は他病死し、
2 名は全身転移による原病死と診断された。残る 3 名は、現在も生存中である。
【結論】進行乳癌に対する tomotherapy IMRT は、有効な緩和的治療手段にな
りうると考えられた。
516
ポスター掲示
GP-1-05-15
GP-1-05-16
1
メディポリス がん粒子線治療研究センター、
2
久留米大学 医学部 放射線医学講座、3 北九州市立医療センター
1
有村 健 1、荻野 尚 1、淡河 恵津世 2、光山 昌珠 3、菱川 良夫 1
高橋 英明 1、佐藤 信昭 2、神林 智寿子 2、金子 耕司 2
陽子線を用いた新しい乳癌治療の提案
脊髄所見を呈した乳癌髄膜癌腫症の検討
2
【目的】髄膜癌腫症は、髄膜刺激症状、頭蓋内圧亢進症状、脳神経障害、意識
障害や精神症状といった神経巣症状、脊髄症状などが単独ないし併存して認
められ、発症、進行して行く病態である。乳癌の臨床現場ではしばしば診断
に悩まされることが少なくない。本研究では、脊髄所見を呈した乳癌の髄膜
癌腫症症例について、その画像や髄液検査所見、予後について後方視的に検
討した。
【方法】2006 年 10 月から 2014 年3月までに当院で診断された乳癌の髄膜癌
腫症症例 48 例中、脊髄症状を呈し、脊髄 MRI に造影病変を認めた症例 17 例
を対象とした。年齢は 36 から 81 歳、平均 56 歳であった。全例女性例である。
ER/HER2 status では、ER 陽性 /HER 陰性群4例、ER 陰性 /HER 陽性群5例、
両陽性群2例、両陰性群4例、不明2例であった。当院での髄膜癌腫症の治
療は基本的には全脳照射+緩和的髄注化学療法であるが、脊髄症状を呈した
場合は脊髄局所照射+髄注化学療法もしくは髄注化学療法である。
【結果】脊髄症状を髄膜癌腫症診断時に認めた症例は 11 例で、残りの6例は治
療経過中に脊髄症状を呈した症例であった。脊髄症状としては坐骨神経痛7
例、下肢の異常知覚5例、下肢運動障害、失調4例、膀胱直腸障害1例であっ
た。診断時髄液細胞数は 6-411、中間 63 個の細胞増多を認め、髄液蛋白濃度
では 49-1516、中間 250mg/dl の異常高値を認めた。蛋白濃度 400mg/dl を
超す症例では髄液はキサントクロミーを呈していた。最終的に2例を除いて
麻薬を癌性疼痛のため使用している。生存期間は 1-17 週、中間 17 週であった。
【結語】乳癌の髄膜癌腫症において脊髄症状はその 35%に認められ、その ADL
も予後も不良である。また、癌性疼痛のコントロールも必要となる。髄液の
細胞増多や蛋白濃度の異常高値を呈することから、脊髄所見診断の一助にな
ると考えられた。
GP-1-05-17
GP-1-05-18
当院における乳癌脳転移症例の検討
SAVI(Strut adjusted volum implant) 療法の安全な管理方
法の検討
1
香川大学医学部呼吸器・乳腺内分泌外科、2 高松赤十字病院胸部乳腺外科、
3
おさか脳神経外科病院放射線部、4 香川県予防医学協会、5 伊達病院外科
1
橋本 新一郎 1、紺谷 桂一 1、村澤 千沙 1、法村 尚子 2、本城 尚美 3、
大谷 昌裕 4、伊達 学 5、横見瀬 裕保 1
昭和大学病院 看護部、2 昭和大学 医学部 外科講座 乳腺外科部門
我妻 志保 1、飴谷 菊代 1、円道 亜祐実 1、田村 亜沙美 1、比嘉 直子 1、
菊地 美恵子 1、桑山 隆志 2、中村 清吾 2
【目的】乳癌脳転移患者は一般に予後不良であり全生存期間は6ヶ月前後と言
われている。積極的治療としては放射線照射や手術療法が挙げられ、薬物治
療に関しては一部の分子標的治療薬以外は無効であることが多い。今回当院
にて経験した乳癌脳転移症例の臨床病理学的所見、治療、予後について検討
したので報告する。【対象】2004年1月から2014年12月まで当院に
て治療を行った乳癌脳転移患者12例について検討した。【結果】脳転移診断
時の平均年齢は47.8歳(30-63)であった。組織型は硬癌5例、乳頭腺
管癌1例、充実腺管癌4例、不明2例であった。サブタイプ別ではホルモン
レセプター (HR) 陽性 /HER2 陰性は5例、triple negative (TN) 6例、HR 陰
性 /HER2 強陽性 1 例であった。炎症性乳癌は4例含まれ、そのうち 3 例は
luminal type であった。脳転移単独は2例、他は肺あるいは骨転移を伴って
いた。脳転移巣に対しては 4 例に定位照射、7 例に全脳照射、2 例に摘出手術
を行った。脳転移出現時からの生存期間中央値は 5 月 (1-84) と短かったが、
7 年や 5 年の長期生存例も少数であるが見られた。脳転移数 2 個以下とそれ以
上の多発症例を比較すると、脳転移後の生存期間中央値はそれぞれ 19 月と 4
月で有意差はなかったが、少数例に長期生存の傾向が認められた (p=0.075)。
luminal type と TN 症例間での予後の差異は認められなかった。【考察】乳癌
脳転移症例は一般に予後不良であるが、長期生存も期待できるため subtype
に関わらず積極的に治療すべきと考えられた。
【目的】乳房温存術後の補助療法である全乳房照射の標準的な治療スケジュー
ルは、5 ~ 6 週間の通院を要する。そこで、乳房内部から直接放射線治療を行
う「加速乳房部分照射法」が開発され、「SAVI」が 2014 年に導入された。本法
では、術後 4 日目に病理検査結果を得た上で、5 日間(朝夕 2 回)の照射を経て、
約 2 週間の入院で乳房温存療法を終えることができる。日本におけるアプリ
ケーターの適切な留置や創部管理に関する文献がないため、今回症例を通し
て管理方法と看護を検討した。【方法】対象:SAVI 療法うける乳房温存術施行
後の患者、本研究の同意を得た 7 名(画像提供に同意を得た対象は 4 名)。方法:
乳房温存手術後からスペーサー挿入までを I 期、病理結果のもとスペーサーか
らアプリケーターに入れ替え照射が始まるまでの期間を II 期、5 日間の照射期
間を III 期の 3 期に分類し、
創部の観察と記録法、
症状の経過と症状緩和の工夫,
アプリケーター管理方法を検討し実施した。【結果】II 期ではアプリケーター
挿入部の疼痛が 2 件、先端部の腫脹、発赤が 2 件であった。III 期治療期では
固定位置にずれが生じ照射開始時間に遅延を生じたケースが 2 件あった。さら
に治療に対する不安が強く抗不安薬を処方したケースが 1 件あった。【考察】
従来の乳房温存手術と比較して SAVI 挿入部の疼痛が加わったが鎮痛剤の追加
で対処でき、ADL に制限が加わることや治療の中断には至らなかった。しかし、
患者の可動性や ADL を考慮すると、ガーゼや下着によるアプリケーターの固
定方法は今後も放射線治療室と病棟との情報共有や検討を重ねて改良する余
地がある。また早期乳癌の放射線療法の選択肢の一つとして確立されていく
中で安全に患者が治療を受けられるよう、我が国の実情に沿ったクリティカ
ルパスや退院指導資料などを整えていく必要がある。
517
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】乳癌治療の基本は外科的切除である。しかしながら、近年の科学技術
の進歩や情報化社会の進展とともに、社会や患者の価値観は多様化し、外科
的切除を望まない乳癌患者への対応も求められるようになった。陽子線は X
線と異なる物理特性や生物特性を持ち、以前より乳癌治療への応用を期待さ
れていたが、高精度な照射を可能にする乳房の固定方法が確立されていなかっ
たため、容易に実現することができなかった。乳房は、腹臥位で最も胸壁か
ら離れ、肺や心臓に対して安全な照射が可能となる一方で、照射角の制限や
乳房形状の保持、腫瘍位置の再現性などに技術的課題が多い。これらの課題
を克服すべく新たな乳房固定技術の開発を行った。【方法】仰臥位の利点と腹
臥位の利点の両方を併せ持つ固定装置および固定方法の確立を目的とした。
基本的コンセプトとしては、腹臥位で患側の乳房を下垂させ、その形状に合
わせた固定具を作成・装着し、体位を反転させて仰臥位で照射することを考え、
それを可能にする諸装置の開発を行った。【結果】まず重力による乳房の形状
変化や呼吸の影響を再現・観察できるファントムを作製し、人体実験の事前
準備として、開発した全ての装置に対し、ファントムでの検証を先行させ、
安全性を確保した。つぎに体位変換を可能にするバックロック群や体位保持
台を製作し、患者の体位を任意の角度に変換し、保持できる装置を開発した。
体位を反転させ、乳頭を最下点とする下垂乳房の形状に合わせた固定具を作
成し、乳房全体に固定具を密着させ、乳房形状を安定化させ、体位を仰臥位
に戻した後、容易に治療室へ移動できる装置も開発した。【結論】陽子線を用
いた新しい乳癌治療の提案を行った。今後も精度検証や改良を重ね、より高
い精度での治療が可能となるよう、より一層の努力を重ねる所存である。
新潟県立がんセンター新潟病院 脳神経外科、
新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科
ポスター掲示
GP-1-06-01
GP-1-06-02
1
新潟厚生連 長岡中央綜合病院
リンパ浮腫予防指導を含めた当院での乳がん周術期患者への関
わり~多職種連携を通じて~
乳がん看護認定看護師の役割の周知~初期治療の意思決定支援
を通して~
徳島大学病院 リハビリテーション部、
徳島大学病院 食道乳腺甲状腺外科、3 徳島大学病院 看護部、
4
徳島大学病院 緩和ケアチーム
2
1,4
2
3
4
小川 知恵
2
中原 佳子 、田所 由紀子 、一宮 由貴 、松岡 由江 、森本 雅美 、
中川 美砂子 2、武知 浩和 2,4、丹黒 章 2
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】乳癌周術期のリンパ浮腫予防のために包括的リハビリテーション
が推奨されており、多職種の連携が重要である。当院では平成 26 年 9 月より
多職種連携による乳癌周術期におけるリンパ浮腫予防指導を含めた日常生活
指導、上肢運動などを含むリハビリテーションを開始した。現在の活動、今
後の展望について報告する。【取り組み】乳腺外科医師、病棟看護師、外来看
護師、緩和ケアチーム、リハビリテーション医師、作業療法士 (OT) が協働し
て、腋窩郭清施行症例、センチネルリンパ節生検施行症例のリハビリテーショ
ンに関するそれぞれのパンフレットを作成し、外来から入院、退院後と継続
してフォローアップ出来る体制を整えた。腋窩郭清例に対しては、入院時、
看護師によるリンパ浮腫予防に関する集団指導、OT による個別指導を開始し
た。センチネルリンパ節生検症例に対しては、現在のところ、パンフレット
を入院時に渡すのみとしている。退院後に OT の介入が必要と思われる症例に
関しては、退院時に次回外来でのリハビリテーションの予約、さらに退院後
初回外来で外来看護師がチェックを行い、必要と思われる症例には再度 OT が
介入することとした。【結果】平成 26 年 9 月から 12 月までで集団指導、OT 介
入症例は 10 例、退院後 OT 介入症例は 6 例であった。【考察】多職種連携によっ
て各々の専門性を発揮でき、指導の定着化を図れた。今後はセンチネルリン
パ節生検症例への集団指導、周術期だけではなく、地域医療連携で経過を観
察している乳癌患者に対しても、地域のがん診療連携拠点病院である当院の
役割も踏まえながら、リンパ浮腫予防指導、上肢運動指導を行える体制を整
えていきたい。OT として、個人に応じたリハビリテーションを選択し、それ
ぞれの生活背景を考慮した関わりが出来るよう、多職種連携をより一層強化
していきたいと考えている。
【はじめに】当院は、地域がん診療拠点病院の指定を受けており、年間 60 ~
80 件の乳がん手術を行っている。しかし、乳腺専門医・認定医がおらず、消
化器外科医が乳がん治療に携わっており、乳がん治療について十分な説明が
できていない現状にあった。特に手術においては、術前検査後の再来日もなく、
入院当日(手術前日)に説明され、術式選択を 1 日で決めなければならない環
境であった。【目的】乳がん患者にとって、治療の選択肢は多岐にわたり意思
決定に至るまでの過程は容易なことではない。しかし、当院での体制では、
初期治療の意思決定が不十分であるため、乳がん看護認定看護師(以下CN)
が、乳腺看護外来での患者へ介入することで、患者が自分の意思を明確化し、
納得した治療を選択できるような支援ができる体制作りや今後の活動の課題
を検討する。【倫理的配慮】当該施設の管理者に学会報告することを口頭・文
書で説明し了承を得た。【実際の活動】告知後の乳がん患者と家族の同意を得
て、看護面談を実施。面談内容をカルテに記載するとともに、主治医へも面
談内容を伝え、再来予約を取り、再来時の診察前面談・診察への同席・再来
診察後の面談を行った。【結果】乳がん手術を受けるまでの受診体制が変わり、
術前検査結果を入院前に説明する機会を設けられ、患者の精神状態や理解度
に応じた支援ができ、患者自身も納得した治療方法を選択できるようになり、
術前に統一した介入ができるようになった。
【考察】乳腺専門医・認定がおらず、
CNの役割が認知されにくい環境であったが、看護師であっても専門的な情
報提供ができ、患者の意思決定支援を行うなどCNの役割が認識されるよう
になった。今後も患者が主治医を信頼し治療継続できるために、看護面談で
得た情報を主治医へ伝え情報共有と統一したケアができるよう、多職種とも
連携できるCNのコーディネート力が必要なことが再認識できた。
GP-1-06-03
GP-1-06-04
静岡済生会総合病院
相模原協同病院 消化器病センター
内田 理恵、朝日 恵美、田中 顕一郎
藤平 大介、河野 悟、木村 友洋
アロマターゼ阻害剤の内服を開始する乳癌患者への食事介入
FEC 療法のクリニカルパス導入と他職種連携チーム医療
【背景】乳がん診療チームの一員として、臨床栄養科は入院患者のみならず、
外来患者についても栄養指導、管理を行うことが望ましい。当院では入院中
のがん患者の食事については管理栄養士の介入体制ができているが、外来化
学療法患者の食事に関連する支援は、外来化学療法室(化療室)の看護師に委
ねられている。この事が化療室カンファレンスで問題提起された。まず手始
めに骨粗鬆症が問題となるアロマターゼ阻害剤 (AI) を開始する外来患者への
介入を試みた。【目的】AI 剤を開始する乳癌の外来患者への食事介入、支援体
制を考える。【方法】2014 年 8 月~ 11 月、乳癌術後補助療法で AI 剤が開始さ
れた女性患者6人を対象に、骨粗鬆症予防目的の食事指導を施行、筆者らが
作成した選択式質問用紙を用いて食事指導に対する満足度調査を実施、単純
集計した。個人が特定できないように無記名とし、調査に協力しなくても不
利益は生じないことを文書で明記、調査用紙の提出を以て同意を得たとした。
【結果】調査用紙回収率・有効回答率 100%で、平均年齢 74.16 ± 9.51 歳であっ
た。「食事指導は希望する内容だったか」には、66.7%が「とてもそうである」、
33.3%が「まあまあそうである」と回答した。「活用できそうか」には 16.7%
が「とてもできる」、50%が「まあまあできる」、33.3%が「どちらともいえない」
と回答した。「管理栄養士に聞いてみたい内容」について複数選択肢を設け回
答してもらったところ「骨粗鬆症」66.7%、「下痢」33.3%、「嘔気があるとき」
「口内炎ができたとき」が 16.7%であった。【考察】本調査から、食事指導の患
者満足度は良好であると考えられた。「骨粗鬆症」以外に、管理栄養士に質問
したい内容を回答している患者もおり、個々の要望に合ったタイムリーな介
入が必要であると考えられた。化学療法を受ける患者をサポートする多職種
構成チームの一員として、管理栄養士がその役割を担うためには、個人背景
を考慮した介入が求められる。そのシステム構築が課題であり、臨床栄養科
と化学療法センターで検討を重ねる必要がある。調査と並行し化療室看護師
と共同で支援ツールの作成を行い化療室に配置した。今後、支援ツールの評
価も必要である。【結論】AI 剤内服を開始する乳癌患者への食事指導は患者満
足度が高かった。
518
2009 年 1 月から 2013 年 12 月までの当院一般外科における外来化学療法総延
べ数 6702 件のうち、乳癌化学療法総数は 3106 件 (46.3%) であった。その中
で FEC 療法延べ件数は 384 件であり、乳癌化学療法の 10.9% を占めていた。
FEC 療法の予定完遂率は 82% であった。FEC 療法には高度催吐性、20% 以
上の好中球減少症、90% 以上の脱毛など、他の抗癌剤と比較して多くの副作
用があり、乳癌の好発年齢も考慮すると医師患者間だけの治療関係では不十
分であると考え、FEC 療法のクリニカルパス導入と他職種連携チーム医療を
検討した。具体的には第 1 回目の FEC 療法導入の際には全例入院加療として
いるため、入院前からの早期チーム医療の介入に加えて、入院中における他
職種連携を推進した。まず高度催吐性抗癌剤である FEC 療法の対応として、
当院では一般外科医が乳癌治療にあたる事もあり、制吐療法が十分に施行さ
れているかを分析した。アプレピタントの処方は全症例に施行されていたが、
ステロイド剤の投与は 61% の症例に留まった。非処方の理由として、糖尿病
の既往、医師の知識不足、処方忘れが挙げられた。パス化による確実な制吐
療法は、患者の肉体的負担のみならず精神的抵抗感を改善する事になり、結
果として化学療法完遂率の改善に寄与できると考える。他職種連携として、
乳房喪失や生活環境の変化にも対応できるように臨床心理士の介入も適宜可
能な体制を構築した。入院中には薬剤師による副作用チェックの指導、また
主要な副作用についての評価を、医療スタッフと患者間の情報共有のため有
害事象共通用語基準 CTCAE に準じて使用できるようにパス内へ取り入れた。
また外来化学療法室看護師と病棟看護師の連携により、化学療法導入前から
脱毛に対するウィッグの作成などケアの介入時期を明確化した。リンパ浮腫
にも対応できるように専門外来の開設を行った。
ポスター掲示
GP-1-06-05
GP-1-06-06
当院におけるチーム医療-個人の価値観に寄り添いつつ皮膚筋
炎と乳癌治療をチームで成遂げた一例を通して-
乳癌のチーム医療と IT
1
東京慈恵会医科大学 乳腺・内分泌外科、
2
東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科、3 東京慈恵会医科大学 画像診断部、
4
東京慈恵会医科大学 放射線治療部、5 東京慈恵会医科大学 形成外科、
6
東京慈恵会医科大学 病理学講座、7 東京慈恵会医科大学 看護部、
8
東京慈恵会医科大学 薬剤部
井廻 良美 1、野木 裕子 1、小林 直 2、三本 麗 1、神尾 麻紀子 1、
加藤 久美子 1、塩谷 尚志 1、鳥海 弥寿雄 1、永崎 栄次郎 2、柵山 年和 2、
中田 典生 3、小林 雅夫 4、兼平 千裕 4、冨田 祥一 5、森 克哉 5、
鈴木 正章 6、北出 和美 7、安藤 尚美 8、内田 賢 1、武山 浩 1
鈴木 正人、中野 茂治
実地臨床においてチーム医療の重要性は論を待たない。また現在の医療現場
は IT(Information Technology)によって成り立っているといっても過言で
はない。当施設では平成 26 年 4 月と 11 月に乳腺専門医(指導医)が 1 名ずつ
赴任し、11 月に外科から乳腺外科が正式に単科独立した。それに伴いチーム
医療体制の確立を短期間で行っている途上である。乳腺外科医が 2 名とも今年
度からの採用であり、昨年度までと異なる治療体制にメディカルスタッフが
戸惑うことになるので、まず看護師(病棟、外来、手術室、化学療法室)や薬
剤師、放射線技師、超音波技師、細胞検査師、理学療法師とのカンファレン
スを個々に開始した。ある程度のコンセンサスを得た上で全体としてのカン
ファレンスを構築する予定である。当施設には電子カルテや PACS といった
IT 環境がすでに導入されているので、患者情報の共有は比較的容易であるが、
術前の患者に関しては実際の病巣の把握や手術のシミュレーションなどの理
解は医師以外のスタッフにとって容易ではない。そこで術前に routine で撮影
する CT の画像を無償の software「OsiriX」を用いて 3 次元構築しその一助と
している。この software は DICOM 画像さえあれば自分の PC で種々の 3 次元
画像が簡単に構築できる。放射線科医や放射線技師の力を借りずに外科医が
自分の PC で自由に画像構築ができるのが特徴である。前任地で行っていた
3D virtual navigation(いわゆる projection mapping)を応用し、病巣を 3 次
元的に捉えたり、画像を体表から内蔵まで様々な深度で連続的に描出して解
剖学的な位置関係を理解するためのツールにしている。これは研修医の教育
にも一役買っている(当院のカリキュラムでは外科研修は必修)。また、クラ
ウド環境を利用することでタブレット端末と連動させることが可能になり、
いわゆるユビキタス・コンピューティング環境を作れるので(個人情報保護の
問題からある程度制限はあるが)、アナログ時代と比べて短時間でチーム全体
に情報伝達(レクチャーも含めて)ができると考える。抄録の段階では乳腺外
科が実際に独立してまだ 2 ヶ月しか経過していないので、チーム体制は発展
途上であるが、予想よりも順調に進展している。7 月の総会までにどの程度達
成できるか、その経過の詳細を報告する。
GP-1-06-07
GP-1-06-08
社会医療法人 博愛会 相良病院 画像検査部
ちば県民保健予防財団総合健診センター 乳腺科
川畑 理恵、岡本 瑠美、原口 織歌、南 紫織、金子 薫、南 詩穂、
寺脇 愛子、萩原 陽子、田口 稔基、大迫 俊一
齋藤 智子、岩元 興人、橋本 秀行
カンファレンスでの技師による症例報告の取り組み~チーム医
療の推進と読影力向上にむけて~
ステレオガイド下吸引式組織生検におけるコメディカルスタッ
フの役割
【はじめに】当院では週に一度術前カンファレンスを行っている。医師を中心
に様々な職種が参加しているが症例の報告はすべて医師が行ってきた。今回、
普段検査を行っている技師のスキル向上とチーム医療の一員として連携を深
めることを目的に、カンファレンスでのMMG・US画像読影の取り組みと
カンファレンス後の定期的な症例検討会を行った。取り組みを通して得られ
た成果と今後の課題について報告する。【方法】これまでカンファレンスでは
PACSに登録されている画像を医師が提示していた。今回、前日までにM
MGとUS画像と技師の読影所見を記載したカンファレンスシートをスライ
ドにて作成し技師が症例提示を行った。カンファレンスにて報告した内容が
医師と意見の相違がみられた症例は、月に一度症例検討を医師と合同で行っ
た。これまでの取り組みについて技師と医師にアンケートを行い評価・問題
点について検討を行った。【結果】医師のアンケートではカンファレンスシー
トを提示することで以前より画像所見がわかりやすくなり、技師の読影力の
向上も感じられたとの評価を得られたが、もう少しコミュニケーションが必
要との意見があった。技師のアンケートでは、作成する過程で読影力だけで
はなく所見の記載方法や画像の撮像技術の向上も感じられたとの意見があっ
た。症例検討会での意見交換等、コミュニケーションが密になったと感じる
一方で、もう少しディスカッションをしたいという意見があった。
【考察】限
られた時間で効率よく症例報告を行うためにカンファレンスシート作成した
ことによって画像所見をわかりやすくまた短時間で伝えることができ、技師
の読影力の向上にもつながったと考えられる。しかし症例検討会を通して医
師とのコミュニケーションをとる機会は増えたが日常の臨床では検査する技
師と読影する医師で見解が分かれる場合などにすぐに意見交換ができる環境
が必要と考えられる。【結語】カンファレンスの取り組みから読影力の向上に
つながる成果があった。今後は症例検討を継続して行うとともに、日々の診
療業務でも容易にディスカッションできるようにしていきたい。また、カン
ファレンスシート作成の取り組みを他の部署にも発展させてチーム医療を推
進し、ICや患者情報提供書にも利用できるようにしていきたい。
519
当施設では、平成12年から平成26年までの間ステレオガイド下吸引式組
織生検を約2900症例行った。病理診断結果は、非浸潤癌29.5%、浸潤
癌4.3%、ADH 1.7%、良性64.5%であった。全症例検査時間は、24
±8分である。当施設では、患者の精神的、身体的負担を考慮しながら、いか
に短時間で確実に標本が採取できるかを目標とし、医師、放射線技師、看護
師がチームで行っている。このために検査前に医師から患者に検査の内容に
ついて説明し同意を得てから開始される。この患者の同意と協調は、ポジショ
ニングにとって必要不可欠であり検査時間の短縮につながる。看護師の役割
は、枕の挿入などで工夫し検査が進行する様につとめ、患者が少しでもリラッ
クスして検査が受けられるようにすること、体位などについての説明を行い
検査部位が動かないように協力を得ること、羞恥心への配慮と心理的サポー
トにつとめることである。放射線技師は、患者の体格や乳房のボリューム、
可動性組織と固定性組織を念頭にいれ、検査部位が刺入部からもっとも近く
圧迫板の中央になるようにポジショニングを行うことなどである。今回は、
ステレオガイド下組織生検におけるコメディカルスタッフの役割に焦点をあ
て、当施設の経験から学んだことを報告する。
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】当院におけるチーム医療の歴史は古く、1980 年 4 月院内乳癌研究
会として、術後化学療法や転移性乳癌に対する治療を統一プロトコールで行
うために始まった。当初の参加者は外科、内科、放射線科、病理部であり、
月 1 回の開催であった。1995 年より 2 週に 1 回の、個々の患者についての診
断と治療を中心とした乳腺カンファレンスに発展的に移行した。現在、参加
者は形成外科、看護部、薬剤部など多岐にわたり、週 1 回行っている。今回我々
はチーム医療でなくては成遂げることの出来なかった皮膚筋炎を合併した乳
癌 症 例 を 通 し て、 チ ー ム 医 療 の 有 用 性 を 報 告 す る。【 症 例 】40 歳 代 女 性。
2012 年 10 月頃から左乳房腫瘤と同時に手背の紅斑を自覚。前医皮膚科で皮
膚筋炎と診断された。11 月中旬よりプレドニゾロン (PSL) 内服による治療を
開始するも症状は増悪し、精査加療目的に当院内科入院。入院時の CT で左乳
房腫瘤を認め、当科紹介受診。針生検施行し浸潤性乳管癌と診断した。PSL
増量し皮膚症状は軽快したが、嚥下障害を始めとする筋炎症状は改善せず。
腫瘍随伴症候群としての皮膚筋炎と考え、手術を先行した。12 月下旬、左 Bt
+ SN → Ax(II) 施 行。 術 後 病 理 診 断 は pT:4.5cm、pN:(9/14)、pT2N2aM0
StageIIIA。ER( - )、PgR( - )、HER2(3 + )。術直後より筋炎症状の改善を
認め、PSL を漸減し始めると同時に、2013 年 2 月より術後補助化学療法を開
始。PSL 投 与 に よ る 感 染 症 の 誘 発 が 懸 念 さ れ た た め Weekly PTX +
Trastuzumab 療法で開始した。FEC 療法施行後、PSL が十分に減量され病状
再 燃 も 認 め な い た め、9 月 よ り 乳 房 切 除 術 後 放 射 線 療 法 (PMRT) 施 行。
Trastuzumab 単独療法再開。PMRT による皮膚硬化の改善を待ち、2014 年 8
月ティッシュエキスパンダー挿入術施行。この時点で患者は結婚式を挙げた。
今後シリコンインプラント挿入術施行予定であるが、皮膚の伸展も良好で皮
膚筋炎も小康状態である。【まとめ】本症例では乳癌の術前評価、手術と化学
療法のタイミング、皮膚筋炎の病勢、PSL による影響、放射線療法の適応、
それに伴う乳房再建の適応とタイミングにおいて治療方針決定に苦慮した。
また患者は結婚を控えており、生命予後とともに容姿についても無視できな
い状況であった。明確な指針がなく議論の余地が残る問題において、各診療
科が専門家としての意見を出し合い、慎重に治療を進め、経過良好かつ患者
の価値観に沿うことが出来たことはチーム医療が有用であったと考える。
国立病院機構 千葉医療センター 乳腺外科
ポスター掲示
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1
1
無治療を選択した自己表現力の弱い乳がん患者に対する支援
~その人らしく生きることをチームで支えた 1 例~
3
患者が継続した乳癌治療を行うために
~経済面を考慮した支援を行って~
社団医療法人養生会かしま病院 看護部、2 リハビリテーション部、
社会福祉相談室、4 診療部:乳腺外科
ちばなクリニック ブレストセンター、2 中頭病院 乳腺科
座間味 さおり 1、鷲頭 真弓 1、照屋 優奈 1、井上 あかね 1、新里 智子 1、
座波 久光 2
鈴木 則子 1、岡部 文子 1、長沢 敦子 2、佐川 真澄 2、鈴木 和子 3、
鈴木 正明 4
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】
今回私たちは、無治療を選択した自己表現力の弱い患者の症例を経験した。
疼痛コントロールを目的とした入院生活の中で人生観や価値観を尊重しつつ
退院支援についてチームで介入した。その経過を振り返り、有効なチーム介
入について検討したので報告する。
【倫理的配慮】
同意しない場合であっても不利益は生じないこと、発表以外には使用しない
ことを説明し、本学会で公表する同意を得た。
【事例】
B 氏。40 歳代。女性。X-1 年、両側乳がんの診断を受けた。度重なる情報提
供と治療に対する意思選択に努めたが、無治療を選択された。
X 年腰痛にて他院受診、骨転移による疼痛との判断にて A 病院外来受診。1 年
ぶりの受診での様子は外来看護師より病棟看護師へと伝達した。次回外来時
には、体動時の疼痛が著しく外来診察室で仰臥位のまま涙されていた。B 氏・
家族は、東日本大震災の被災者で自宅を失っており、外階段から入室する社
宅を住まいとしていた。診察室での様相から外階段の利用は困難であること
は十分に予測できた。
まずは疼痛コントロールを目的として入院となった。オキシコンチンをベー
スにした薬物療法、歩行器やコルセットによる非薬物療法による疼痛コント
ロールを医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフで検討した。B 氏は自身の
仕事や住居への不安も抱えておりMSWの存在も大きく影響した。MSWは
家族を含めた面談を重ねた。
言葉の少な目な B 氏であったが「歩行器の使用は否定的」「外出などの提案に
は考えたまま時間が経過する」場面、また、入院時に比して表情は柔らかくなっ
たものの「ただただ涙する」場面が続き思いの共有や吸い取りに苦渋した。そ
の苦渋は関わるスタッフがそれぞれ感じており、今まで以上に情報交換を意
識して行った。
【考察】
本症例の B 氏は無治療を選択した意志の強さをもちつつも、自己表現力が弱
くその人らしさに寄り添うことに苦渋した。しかし、多職種で患者の表情や
言動を含めた細やかな情報共有を密に共有することで QOL を維持した退院支
援・療養場の選択へ繋げることができたと考えられる。本症例を通し、チー
ム医療の有効性を高めるには、他職種での勉強会やカンファレンスに加え、
タイムリーに行う日常的な情報交換やミーティングが不可欠であると再認識
できた。
【はじめに】
近年、乳癌治療の多様性と個別化は患者が治療法を選択する場合に、よりいっ
そう複雑さを増している。告知から短期間に全身療法や術式の選択など今後
の治療方針への決定を迫られることもまれではなく、癌という不安のみなら
ず経済的問題などが混在し、患者の苦悩は計り知れない。
当院では乳腺専門外来開設以来、患者の診断から治療に際し、看護師による
一貫した支援の充実を心がけている。今回は、治療継続するための、近年大
きな要因となっている経済的問題解決のための支援活動について報告する。
【対象と方法】
治療法別(放射線治療、手術療法、薬物療法)の料金表の作成と提示
社会資源についての情報提供
他職種との連携
【結果および考察】
看護師は、医師より個々の患者に推奨される標準治療・術式の説明の後、再
度面談を行い、経済状態も含めた患者背景を傾聴し、患者の社会生活環境に
あった術式や治療を供に検討している。沖縄県は一人当たりの所得が低い県
であり、経済状態に恵まれない患者も多くみられる。健康保険料の滞納や生
活困窮のため、治療を受けることができない方もおり、そのため、治療の選
択にあたり、患者の経済的状況に応じた支援は重要となる。そこで、看護師
は入院、手術や薬物療法が当月内で実施できるよう配慮したスケジューリン
グを作成したり、治療法の選択支援も行っている。例えば、内分泌療法では、
処方をジェネリック薬品にした場合の値段比較等の提示、説明を行っている。
さらに、当クリニックは外来のみの施設であり、入院は隣接する同法人の施
設になるため医療費の合算ができない現状にある。また、放射線治療は他の
医療機関に依存しているため、各々の治療料金の提示を看護師が行っている。
また、社会的支援が必要と思われる場合は、医療ソーシャルワーカーとの連
携が迅速に行えるよう支援を行っている。
乳癌治療は、他の癌と比較し治療が長期にわたることと、高額な分子標的薬
の使用により患者の経済的負担は増加している。そのため、医療者は、患者
が安心して治療を受けられるよう、経済的側面を考慮することが重要である
と考える。今後も、他職種との連携の充実や情報の収集、共有化を行い、支
援の充実を行っていきたい。
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ティッシュエキスパンダー挿入中に抜去を希望した乳がん患者
への医療チームの関わり
チーム医療を生かした外来化学療法の実施
大分県済生会日田病院 外科
1
群馬大学医学部附属病院 看護部、
2
群馬大学大学院医学系研究科顎口腔科学分野、
3
群馬大学大学院臓器病態外科学、
4
群馬大学大学院医学系研究科 医学部 保健学科
尾崎 邦博、西村 寛
廣河原 陽子 1、一場 慶 1、牧口 貴哉 2、堀口 淳 3、二渡 玉江 4
当院では、形成外科医による乳房再建術を行っており、希望者は増加傾向に
ある。今回、両側乳がんと診断され、一次二期乳房再建術を希望し、がん摘
出と同時にティッシュ・エキスパンダー(以下 TE と略す)を挿入した患者が
3 ヶ月後に「異物感が堪えられない。痛いので抜いてほしい」と TE 抜去を希望
した。手術決定に至るまでの患者の心理プロセスと医療チーム(形成外科医、
乳腺外科医、がん看護専門看護師 ( 以下 OCNS と略す )、化学療法センター看
護師)のそれぞれの関わりを検討し、支援を行ったので報告する。
【倫理的配慮】
学会発表を行うにあたり個人が特定されることはないことを口頭で説明し、
同意を得た。【症例】A さん、50 歳代、女性、既婚。他院で両側乳がん ( とも
に E 領域、St Ⅰ ) の診断を受け両側乳房切除を勧められたところ乳がん罹患、
乳房喪失に対する動揺が著しかった。少し考える時間がほしいと考えた結果、
同時両側乳房再建術を希望され、当院を受診。乳腺外科・形成外科を受診し、
両側乳房切除術+ TE 挿入術+ SNB 予定となった。
【経過】
術前看護面談では「転
移がたくさんあれば TE 挿入はできないが、最終的にはシリコンを入れると決
めました」とやや緊張した様子で話し乳房再建術を受ける意思を示した。手術・
入院経過は問題なかった。術後病理の結果、右乳房は DCIS、左乳房は ER 陽性、
PgR 陽性、HER2 陽性、Ki-67(50-60%)であった。そのため、術後補助療法
として TC 療法を開始。1 回目終了後より TE に対する違和感、異物感が強くな
り、2 回目の TC 療法中に「手が自由に上がらず、これほど支障があるとは思っ
ていなかった。異物が入っていることが不安でならない。乳房再建術をした
くない」と、化学療法センター看護師に訴えた。【看護介入】化学療法センター
看護師は、A さんの不安が強いことから OCNS に介入を依頼した。OCNS は、
A さんの思いを傾聴し、TE 抜去を希望するに至った経緯をジョンセンの 4 分
割法を用いて分析を行った。その結果、①術前は乳がん罹患に対する受容が
できず、冷静に考えられる状況ではなかった。② TE 挿入後の違和感に対する
情報が不足していた。③ TC 療法による影響が考えられた。この情報を医療チー
ムで共有し、A さんの気持ちの理解とすぐに決断する必要はなく時間をかけて
考えることを伝えた。そして、乳房再建の実施または断念するかの選択の意
思決定を医療チームで支えた。この事例を通して今後の課題を検討する。
520
当院はいわゆる地方病院であるが、チーム医療と外来化学療法の向上を考慮
し、様々な工夫を凝らしてきた。当院の状況を紹介し、試みについて報告する。
当院は 1. 対象地域が広く、通院に難渋する。2. 高齢者、独居が多く、病状説明、
薬剤説明の理解、アドヒアランスに問題がある。3. 初診時に進行癌の占める
割合が多い。4. 各種スタッフが不足している。これらのことは、レジメン決
定の際、ガイドラインを上回る優先事項となることがある。これまで各種委
員会、電子カルテ導入によるレジメン登録、アラート設定、パス導入などを行っ
てきた。さらに看護師の取り組みとして、副作用対策のマニュアルシートだ
けでなく、血管外漏出時や過敏症発生時に持ち運ぶ薬剤等をセット化し、迅
速に対応できるようにした。電話相談は、患者さんからではなく対象とすべ
き患者さんを選んで、病院側から連絡することとした。当院ではこれまでに
顎骨壊死症例を数例経験しており、歯科口腔外科医との連携を強化してきた。
さらに院外歯科での顎骨壊死に対するチェック機構への試みも行った。化学
療法当日の検査値は、医師と看護師が電子カルテでそれぞれチェックしてい
る。それに加えて薬剤部では、あえて検査値をシートに手書きしてトリプル
チェックし、見落としを防ぐようにした。今後は薬手帳に抗癌剤内容の記載
も行うようにする予定である。これらの内容をこれまでの業務に加え、少な
いスタッフで行うことは、非常に負担がかかることになる。しかし実際にス
タッフに聞くと、病院や医師の協力があるため、やりがいが仕事量の苦痛を
上回っているとのことだった。レジメン決定はこれまで乳腺外科医が一方的
に行う傾向にあった。そのため月1回のキャンサーボードに、院外から腫瘍
内科医に参加して頂くこととした。スタッフにとっても、乳腺外科医と腫瘍
内科との討論、レジメン決定までの過程を目の前で聞くことは参考になって
いる。参加する腫瘍内科医にとっても、普段と事情の異なる地域での病院で
レジメン決定をする際、コメディカルの情報は重要となるため、医師のみの
カンファレンスに参加することに比べ、キャンサーボードでの参加は効率が
良いと思われた。当院ではスタッフが少ない欠点を、垣根なく会話が多いと
いう利点とし、さらに様々な会に共に参加することにより、情報、知識、理
解の共有がしやすい環境と捉えている。
ポスター掲示
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≪その人らしく≫を支えるケア
抗がん剤治療を拒否していた終末期乳がん患者が抗がん剤治療
を受けた理由~その背景を振り返る~
高知大学医学部附属病院 看護部
1
藤原 キミ、杉本 健樹、小河 真帆、沖 豊和
医療法人東札幌病院 看護部、2 医療法人 東札幌病院 副院長
本間 千絵 1、横山 初美 1、高井 祥子 1、大串 祐美子 1、長谷川 美栄子 2
【はじめに】当院は緩和ケア病床を 58 床持つがん専門病院である。当病棟はブ
レストケアセンターであり入院患者の7割は再発乳がん患者である。その多
くは再発し積極的治療が難しく緩和ケアを紹介されてきている。しかし他院
で積極的治療が困難と説明されていても、当院で抗がん剤治療を選択し延命
や症状コントロールができ、最期までの時を有意義に過ごした患者さんを多
く体験してきた。今回、初発時より抗がん剤治療を拒否し他院から緩和ケア
目的で入院した再発乳がん患者が、入院後、緩和ケア病棟で抗がん剤治療を
する決心し当病棟に転棟となった。患者の意思決定支援を医師(外科医・緩和
ケア医・腫瘍内科医)・看護師(外来・一般病棟・緩和ケア病棟・ブレスとケ
アセンター)・MSW とチームで連携して関わっていった。治療を拒否しつづ
けていた患者が治療に至った経緯を振り返り、その心理的変化と医療者の関
わ り を 明 ら か に す る。【 事 例 紹 介 】A 氏 56 歳 女 性 右 乳 が ん stage 4
(Luminal B)<経過> 10 年ほど前より乳房のしこりに気がつくが放置。 X
年、市職員に勧められた。初診時にはすでに肺・肝・皮膚転移あり、抗がん
剤治療を進められるが積極的治療を拒否し当院を紹介された。X 年+ 1 年、肺
転移により胸水出現、呼吸苦増強し入院。胸水ドレナージし呼吸苦は軽減し
たが入院後も抗がん剤治療は拒否し緩和ケア病棟へ転棟となった。転棟後も
看護師・MSW・主治医が治療に対する本人の思いを聞いていく中で胸水のコ
ントロールができれば家で過ごす時間が作れるかもしれないと看護師に話し
た。その後、抗がん剤治療を決心し当病棟に転棟。wPTX + Bev 療法を開始。
1 クール終了時には胸水減少し、胸水ドレナージも隔日となり呼吸苦も軽減し
た。外出にも出かけられ、患者も治療効果を実感し自宅退院を目標に日々治
療に励んでいる。
【結果】患者の意向はいつ変わってもよいことを医療者側が
理解し患者に伝えること、また、患者の思いを引き出す関わりができていた。
治療の目的を患者と医療者が共有し患者の望む生活が出来るよう意思決定を
支えていくことが重要である。【考察】治療を拒否してきた経緯があっても、
患者の意向が変化することを医療者は十分に理解し関わること。そのために
は思いを引き出し患者の望む生活ができるように他職種で連携し本人の意思
決定をサポートしていくことが大切である。
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1
横浜労災病院 看護部、2 横浜労災病院 乳腺外科、
よこはま乳がん学校実行委員会、
4
特定非営利活動法人 神奈川乳癌研究グループ
琉球大学 医学部 附属病院 第一外科
大椛 裕美 1,3、千島 隆司 2,3,4、俵矢 香苗 3、橋口 宏司 3、縄田 修一 3、
松尾 典子 3、古川 尚美 3、天野 奈津子 3、片岡 郁美 3、鬼頭 菜穂子 3、
高橋 優里 3、徳田 裕 4
沖縄県で当科が主導し組織した、骨転移キャンサーボードの活動を報告する。
再発乳がんでは 65 ~ 80% に骨転移を合併すると言われ、乳がん診療医師は
そのマネージメントに比較的詳しい。一方、他の固形がんでは頻度が低いも
のもあり、筆者は他の医師よりマネージメントに関して助言を求められる事
も多かった。そこで我々は、沖縄県内の複数の病院より複数の診療科の医師
が参加し、固形がん骨転移のマネージメントを学ぶ目的で、2013 年 11 月に
骨転移カンファレンスを開催した。そこでは、まず放射線科医師が骨転移の
診断に関して、また筆者が bone modifying agents の変遷についての総論を
提示した。次いで消化器外科・泌尿器科・整形外科・呼吸器内科医師より各
科で扱っている固形がん骨転移に関するエビデンス及び実際の診療各論が示
された。固形がん骨転移という一つのテーマを通して各科の診療内容に接す
るのは大変興味深いものであり、また病院・診療科を超えた医師同士の結び
つきが生まれた。今回我々はこの会を発展させ、様々な固形がん骨転移症例
のマネージメントに関し、複数病院・診療科及び職種がディスカッションす
る骨転移キャンサーボードを組織した。そこでの基調講演並びにディスカッ
ションされた内容に関し報告する。また当会の今後の課題や計画についても
提示する。
乳がん患者の就労支援に関する現状と課題の検討 - 多職種合同
チーム医療講座の取組み -
骨転移キャンサーボード ~病院、診療科を超えた固形がん骨転
移への取り組み~
3
国仲 弘一、堤 綾乃、西巻 正
【はじめに】乳がんは治療方法も多岐に渡り、患者は治療に伴う副作用、費用、
就労などの様々な問題や苦悩を抱えながら治療に臨むことになる。がん治療
を受けながら働き続けることも可能な時代になっているが、がんに罹患した
ことに関連して、約 30%が依願退職や解雇の状態になったという報告もあり、
がん体験者の就労支援は希求の課題であるといえる。また、「がんとともに生
きること」に目を向け、生存率や治療効果だけでなく生活や人生の質を重視す
るがんサバイバーシップの概念に基づき、社会復帰を目指した支援が求めら
れている。
【目的】治療と就労の両立を目指した支援体制の構築を図るため、乳がん患者
の就労支援に関する現状を把握し、今後の課題を検討する。
【対象・方法】平成 24 年 12 月~平成 26 年 12 月、当院の乳腺外科および腫瘍
内科の受診歴があり、乳がん看護認定看護師等の面談を希望された患者の就
労に関する相談を抽出し、現状の分析および支援における課題を検討した。
【結果】相談件数は 424 件(複数回答)であり、相談者の平均年齢は 49.9 歳で
あった。主な相談内容は、治療 113 件(26.6%)、副作用 112 件(26.%)、不
安 102 件(24.0%)、費用 35 件(8.2%)等であり、就労に関する相談は 62 件
(14.6%)であった。相談内容の内訳は、継続の可否 20 件(32.2%)、継続に
伴う不安 17 件(27.4%)、復帰の目安 16 件(25.8%)、上司へ伝える内容 6 件
(9.6%)、職場で伝える範囲 3 件(4.8%)であった。
【考察】就労についての相談は、主に継続に関する項目(85%)、職場に伝える
内容と範囲に関する項目(15%)に大別され、職場の上司や身近な人々の理解
と協力の重要性が伺える。患者の体験を理解し、就労が継続できる方法の検討、
患者が自ら必要な情報の探求やコミュニケーションを通じた交渉ができるよ
う医師や MSW、行政との関わりなど多職種による支援が必要と考えられる。
また、このような現状から多職種が合同となり、事例を用いて具体的な支援
方法を検討することが有用であると考え、2015 年 6 月に関東近辺の医療者を
対象に多職種合同チーム医療講座(乳がん学校)を開催する予定である。
【結語】乳がん患者の治療と就労の両立に向けた支援は重要であり、多職種の
連携を強化する取り組みが必要であると考える。
521
一般セッション(ポスター掲示)
【はじめに】がん患者を支えるために全人的苦痛へのアプローチは不可欠であ
る。今回治療や症状緩和に抵抗や否認があることに加え、終末期を迎え強い
不安や焦燥感にもがき苦しみ続ける患者に関わった。その中で看護師自身も
「何がこの患者にできるのか」と迷いや葛藤を抱えながらもプライマリーチー
ム及び多職種が連携し実践した≪その人らしく≫を支えるケアについて、チー
ムアプローチを中心に考察し報告する。【事例紹介】30 歳代後半、X 年左乳が
ん診断後乳房温存術実施、術後補助療法は副作用のため完遂できず。術後 2 年
目に局所再発後、多発転移(骨、肺、肝)を認めた。病勢は進行し、術後 5 年
目に永眠した。【実践内容】今回、強い不安や焦燥感のある若年性乳がん患者
に対し、プライマリーチームはコミュニケーションを図りながら、カンファ
レンスを通して情報共有に努めつつケアの方法を検討した。看護師は「この患
者を支えるケアをしたい」という共通認識のもと日々のケアを行った。ケアを
行う上で患者の訴えが繰り返され対応に苦慮し、看護師側が患者に巻き込ま
れケアに対する迷いや不安感が生じることもあったが、その都度リソースを
活用した。多職種でのカンファレンスによる情報交換や意思統一を図り、ケ
アの承認を得ることで自信をもち患者に関われるようになった。患者の思い
を大切にし、家族と共に最期まで患者の≪その人らしく≫を支えることができ
た。【考察】≪その人らしく≫を支えるケアを行うためのチームアプローチにつ
いて考察する。一つ目は、プライマリーチームには、「この患者を支えるケア
をしたい」という共通認識のもと、意思統一を図れるチーム力、患者、家族と
の信頼関係があった。さらに日常よりスタッフ同士でのコミュニケーション
が良好であり、定例カンファレンスにおいて情報共有を図る皆の意識と師長
を中心としたそれを支える土壌があったことである。二つ目は、緩和ケアチー
ムを中心としたカンファレンスは、多角的で専門的な視点と共にプライマリー
チームへのケアの承認を得る機会となり、ケアの迷いや不安感の軽減が図れ
ケアへの自信につながったことである。三つ目は、乳がん看護認定看護師は
病棟の中でリーダーシップをとり、上記のように患者を全員で支えるという
思いをスタッフとの共通認識とし、乳腺外科医や緩和ケアチームを中心にそ
の他の多職種やスタッフとの調整を図ることで相互の連携が高められた。
ポスター掲示
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独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター
1
臼井 由行、秋山 一郎、國末 浩範、内藤 稔、柿下 大一、徳毛 誠樹、
森川 希実
森口 喜生 1、吉岡 祥子 1、太田 知佳 1、久保田 恵子 2、荻野 葉子 3
当院における乳癌チーム医療の現状と問題点
当院おける骨転移ボードの取り組み
一般セッション(ポスター掲示)
悪性腫瘍における骨転移の頻度は高く、乳房は骨転移の原発巣の 18.6% を占
め、気管支・肺(20.5%)に次いで頻度が高く、女性の骨転移の原発巣として
最も頻度が高い。当院では、骨転移を有する癌患者において QOL を極端に低
下させる病的骨折を予防し診療を安全に進めることを目的に平成 26 年2月、
多職種による骨転移ボードを立ち上げたので当院の骨転移ボードの運用の概
要と現状につき報告する。構成メンバーは、主治医、乳腺外科、放射線診断科、
放射線治療科、リハビリテーション科各科医師、がん看護専門看護師、がん
放射線治療認定看護師、作業療法士、がん診療連携業務委員会委員長、医療ソー
シャルワーカー、および病棟担当看護師である。骨転移を診断した放射線診
断科医師の骨転移ボードの必要性に関するコメント、及び臨床経過を鑑みて
主治医が骨転移ボードの開催を決定する。主治医は地域連携室の担当者に開
催を依頼し、電子カルテ上の骨転移ボードアセスメントシートに必要事項を
記入する。各メンバーはコメント欄に骨折、神経麻痺のリスク、安静度、荷
重制限、手術および放射線治療の適応の有無など担当分野のコメントを記入
する。その後全体で骨転移ボードを開催し、治療方針、看護方針等を決定す
るものである。ボードは臨時と 2 ヶ月ごとの定期で開催された。平成 26 年 2
月から 12 月までの検討症例は 11 例で乳癌、大腸癌、肺癌及び胃癌が各々 6 例、
3 例、1例及び1例であった(延べ 26 症例)。以下乳癌症例について報告する。
骨転移の診断からボード開催までの期間は最短 1 日であったが緊急を要しな
い症例は定期開催としたため平均 44.5 日であった。検討した骨転移部位は、
脊椎転移単独、大腿骨転移と脊椎転移が各々 3 例であった。また3例は肝転
移も合併していた。6 例中 2 例は骨折のリスクが高いと判断され荷重制限がな
された。放射線治療は 6 例中 4 例に施行されたが、初回に手術適応とされたも
のは無かった。大腿骨転移の 1 例で放射線治療中に骨折を認め緊急で骨接合術
が施行された。骨転移ボードアセスメントシートと骨転移ボードは、患者情
報を短時間で多職種で共有し診療方針を決定するのに有用であった。構成メ
ンバーの日程の調整、院内での周知など現状の問題点も検討し報告する。
乳癌チーム医療の目的は、多職種間の連携強化によって、乳癌患者に関して、
多方面からの介入によって、より良い治療やケアを提供できるようにするこ
とである。 当院は、地方の癌拠点病院であると同時に、急性期病院である。
乳癌に関しては、新患を治療しつつ、再発例も受け入れ、末期患者の診療も
診療所やホスピスと連携しながら行っている。2001 年 4 月に新病院に移転し
たころより、化学療法を行うための場所が確保され、化学療法センターができ、
カルテの電子化により化学療法のオーダーができるようになった。2007 年に
は政府によるがん対策推進基本計画が策定され、医療行政からのバックアッ
プも行われるようになった。そのころより、チーム医療の重要性が注目され
るようになり、2007 年から岡山地区に乳癌チーム医療研究会が発足した。当
院でも、しだいにチーム医療の必要性からさまざまなシステムが作られた。 2011 年 11 月に新病棟建設により新しい化学療法センターができたことより、
薬剤師は、医師が処方した薬をダブルチェックしたりする以上に、患者に対
しても薬剤の効能や副作用などを説明するようになった。また、看護師も専
門性を帯びるようになると同時に、化学療法に来院する患者にその都度質問
票を渡し、患者情報を医療者側で共有するようになった。患者の訴えを様々
なポイントで拾い上げることができる。乳癌に関しては、週 1 回、化学療法セ
ンターで医師、看護師、緩和ケアチーム、薬剤師などが集まって、患者に関
してのカンファレンスを行い、情報を共有し、治療方針を決定している。また、
進行癌状態の患者に関しては、適宜、医師、看護師、緩和チーム、地域連携
室が集まって、在宅ケア、ホスピス(当院にはない)紹介など終末期医療につ
いても検討している。 以前に比べると、乳癌診療に関しては、医師一人に
負担が掛かることなく、薬剤師、看護師、各種スタッフなどで患者に関わり、
患者の情報を共有することができるようになったので、患者を中心とした治
療やケアが行えるようになった。しかし、専任のスタッフも少ない状況で、
乳癌診療において、安全を担保しつつ、チーム医療を効率的に継続していく
のかが問題である。
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乳癌脊椎転移に対するリエゾン治療
1
京都市立病院 乳腺外科、2 京都市立病院 外科、3 京都市立病院 看護部
Key word は”信頼” 乳腺専門クリニックだからこそできる、
主治医を中心としたチーム医療
川崎医科大学 放射線科(治療)、2 川崎医科大学 乳腺甲状腺外科
乳腺ケア 泉州クリニック
余田 栄作 1、釋舎 竜司 1、紅林 淳一 2、山本 裕 2
【目的】転移性脊椎腫瘍に起因する骨関連事象は、しばしば非可逆的に患者の
QOL を著しく損なう。乳癌は骨転移発症後も長期生存が期待でき、適切なタ
イミングで治療介入し骨関連事象を未然に防止することが重要である。当院
では 2014 年 1 月から転移性脊椎腫瘍に対するリエゾン治療を立ち上げたの
で、その内容を紹介し成果を検証したい。【方法】原発腫瘍科の主治医、整形
外科医、画像診断医、放射線腫瘍医、腫瘍内科医、看護師、理学療法士等か
らなるリエゾン治療チームを結成した。院内で施行された画像検査レポート
から転移性脊椎腫瘍の患者を網羅的に抽出し、リエゾンチームによる定期カ
ンファレンスを通じて、情報共有と治療方針決定を行うシステムを構築した。
【結果】2014 年 1 月から 12 月にリエゾンチームが扱った乳癌転移性脊椎腫瘍
の患者は 32 名であった。うち 3 名に最小侵襲脊椎安定術を、8 名に放射線治
療を施行し、転帰は現在追跡中である。また、リエゾン治療の成果を検証す
るため、リエゾンチーム立ち上げ前に治療された転移性脊椎腫瘍の患者につ
いて、骨転移治療開始時の状況や骨関連事象の有無を調査し、比較検討する
予定である。【結論】集学的リエゾン治療は、転移性脊椎腫瘍の患者の骨関連
事象を減少させ、QOL ひいては予後の向上に寄与することが期待される。発
表時に実際の症例や治療結果を提示する予定である。
住吉 一浩、金森 博愛、阿南 節子、中原 礼、太下 徳和、亀山 澄子、
塚本 愛
【諸言】One for All, All for One ラグビーでチームプレーを表す言葉である。
「チーム医療」といえば、患者を中心にしてコメディカルがそれを取り囲む
チャートをよく見かけるが果たして真実であろうか?検査を施行、診断結果・
治療方針を患者へ説明し、治療を行うのが主治医である。全診療を医師一人
で行うことは可能であるが、限られた時間内で診療の質を担保するためには、
患者 ( および家族 ) と主治医の “信頼” 関係を軸として、主治医が各スタッフを
“信頼” して診療を任せることが必要になる。
【目的】乳腺専門クリニックの利点、欠点を明らかにして、クリニックにおけ
るチーム医療を考える。
【結果】クリニックの利点は、①小回りが利き、各職種間の情報共有が行いや
すい、②主治医が変わらない、③時間を作りやすく待ち時間が短い、などが
ある。欠点は、①他科依頼が行いにくい、②急変時の対応が行いにくい、③
手術 ( 全麻 )、放射線治療が自院で行えない、などがある。当院はスタッフ 10
名である ( 内訳:医師、看護師、薬剤師、リンパ浮腫指導セラピスト、理学療
法士、放射線技師、臨床検査技師、細胞検査士 )。問診聴取は全職種が行い、
技師が検査施行、一次診断を行った後、医師が確認、必要に応じ 2nd look
US を行う。技師は検査・診断に集中できるため精密な検査施行が可能である。
同一診療スペースのため、技師と医師間の相互チェック、密なコミュニケー
ションを取りやすい。精査要であれば細胞検査士と相談、即細胞診を施行し、
悪性が疑われる場合は特別予約枠を設け、針生検時など精査の早期から乳が
ん看護認定看護師が介入し、がん告知の補足説明、治療方針決定支援を行う。
精査・治療前から治療後に至る一連の状況を把握でき、患者との “信頼” も築
きやすい。加えて、術前から、セラピストによるリンパ浮腫予防指導、理学
療法士による関節可動域訓練説明、がん指導薬剤師による薬剤指導などを行っ
ている。一方、欠点①、②に対しては、地域内で病診連携、診診連携を整備
しつつあり、③は、基幹病院にて主治医が open bed システムで手術を行い、
同病院に放射線治療を依頼している。自院の限界を理解した上で、“信頼” 関
係のある医療機関との連携構築が今後の課題である。
【結論】スタッフへの “信頼” を元にした、患者 ( および家族 ) と主治医の “信頼”
関係が根底となり、地域医療機関への “信頼” を築くことが重要である。
522
ポスター掲示
GP-1-06-21
GP-1-06-22
初診患者へのチーム医療のおける法的疑義
乳癌術式選択における看護支援
~術式選択ツール作成による支援の統一を行って~
吉岡医院
1
吉岡 泰彦
鷲頭 真弓 1、座間味 さおり 1、照屋 優奈 1、井上 あかね 1、新里 智子 1、
座波 久光 2
【はじめに】
近年、乳癌治療の多様性と個別化は患者が治療法を選択する場合に、よりいっ
そう複雑さを増している。手術法に関しても、患者の乳癌の程度のみでなく、
QOL を重視した手術方法など選択肢が多岐にわたっており、患者にとってそ
の選択は困難な状況にある。そのため当院では、患者の術式選択に際し、看
護師が個別支援を行っている。
しかしながら、その看護支援は個々の看護師の知識や力量によって差がある
ため、今回、術式選択ツールを作成し、支援の統一化を図ったので報告する。
【対象および方法】
1. 当院で実施されている乳癌の術式別の写真一覧の作成
2. 術式毎のメリット・デメリットについての説明シートの作成
【結果および考察】
現在、術式選択に際して看護支援を行うステップとしては、まず医師より個々
の患者に推奨もしくは適応可能な術式を確認後、診察にて医師からの説明に
同席。その後、看護師による個別面談を実施している。その際に、統一した
看護支援が行えるよう、今回作成した術式選択ツールの活用を行った。
まず、術式の特徴やメリット、デメリットを記載したシートを活用し、患者
にわかりやすい説明を試みた。そして、さらに視覚的に理解できるよう、術
式別の術後写真(整容性の良好な症例と不良症例や合併症例)を ipad を用いて
供覧を行った。その上で、患者背景や希望を傾聴しながら決定に対する支援
を行い、後日診察にて術式の最終選択を行ってもらった。
その結果、患者より、術後写真を実際にみたり、術式別の特徴が一目でわか
ることで、「イメージしやすい」、「全摘でいいと思ったが、やはり再建をしよ
うかな」と言った声が聞かれ、患者の今後の生活を見据えた支援ができるよう
になった。乳癌は女性にとって、その後の QOL に大きな影響をもたらすと考
える。そのため、今後は、このツールを活用し、患者の意思決定における支
援の充実を図るとともに、患者に寄り添った支援を行っていきたい。
GP-1-06-23
GP-1-06-24
放射線治療を受ける乳癌患者が求める支援
~他施設で放射線治療を受けている患者を対象として~
1
乳がん骨転移に対するチーム医療の重要性
1
3
2
ちばなクリニック ブレストセンター、 中頭病院 乳腺科
進藤 久和 1,2、矢野 洋 1、松本 恵 1、大坪 竜太 1、福嶋 絢子 1,3、
永安 武 1
照屋 優奈 1、座間味 さおり 1、鷲頭 真弓 1、井上 あかね 1、新里 智子 1、
座波 久光 2
【はじめに】
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)データーベース委員会「全国放射線治療施設の
2010 年定期構造調査報告(第1報)」より、放射線治療を施行した原発巣別新
疾患患者数のうち乳癌は 23.7%(43,315 人 /182,491 人)とトップであり、
当院乳腺外科外来において看護師は放射線治療の説明の補助を行っている。
しかしながら、当院は、放射線治療設備が備わっていないため、放射線治療
が必要な場合、患者は他院へ紹介となる。2014 年、放射線療法のため他院へ
紹介となった患者は約 66 件であった。
放射線治療を勧めるにあたり、患者は、被爆・有害事象・治療費などの不安
を訴える方もいたが、他院で実施している治療のため、治療中どのような支
援を求めているかが把握できなかった。
そこで、今回、今までに放射線治療を行って患者を対象に、放射線治療を受
ける際の不安や看護師に求める支援について調査したので報告する。
【対象と方法】
当院外来通院中で過去 3 年以内に放射線治療を受けた患者を対象として、放射
線治療中に求める支援内容について調査した。
【結果】
術後に放射線治療の費用について、
「なぜもっと早く教えてくれなかったのか、
知ってたら全摘してたのに」「生活費がマイナスなので、今は治療は受けられ
ない」、「放射線皮膚炎のケアの仕方がわからなかった」などの声が聞かれた。
今後は、放射線治療の患者には、治療中の状況についてこまめに情報収集を
図るとともに、放射線治療施設への紹介前に、放射線治療についての費用や
皮膚炎のケアの仕方などの知識や情報を提供し、患者が安心して治療を受け
られるよう支援していく必要性が示唆された。
長崎大学 腫瘍外科、2 佐世保市立総合病院 乳腺外科、
諫早総合病院 外科
【はじめに】骨転移診断の向上や、Bone-modifying agents(BMA)による SRE
(skeletal related events)発症の抑制によって、骨転移患者の QOL が改善さ
れている。一方で、SRE 発症により生存期間が短縮するとの報告もある。乳
がん骨転移に対するマネジメントは、薬物療法、放射線治療、手術、疼痛管
理と治療が多岐にわたるため、多職種によるチーム医療が重要である。当院
での骨転移症例に対するチーム医療の有用性を検討するために、乳がん診断
時に骨転移の症状を有した群(SRE 群)、乳がん診断時に無症候性の骨転移が
発見された群(非 SRE 群)を比較した。【対象と方法】2014 年に進行再発乳が
んで治療を継続していた 32 例のうち、骨転移治療を行っていたのは 22 例で
あった。うち乳がん診断時に骨転移を有した 16 例の診療経過を後方観察した。
内 訳 は、SRE 群:7 例、 非 SRE 群:9 例 で あ っ た。【 結 果 】SRE 群 は 全 例 で、
腰痛:4 例、歩行困難:2 例、胸部痛:1 例を主訴に整形外科医を受診した後
に乳がんが発見された。さらに 4 例は整形外科で手術を要した(大腿骨骨折:
2 例、前腕骨骨折:1 例、骨生検:1 例)。一方、非 SRE 群は観察期間中に整
形外科の介入を要しなかった。高カルシウム血症は両群ともみられなかった。
SRE 群では全例に治療開始時から、BMA が投与され、がん疼痛管理を行って
いた。一方、非 SRE 群は治療開始時に BMA を投与したのは 4 例で、残り 5 例
は経過中に BMA が開始された。放射線治療は SRE 群:4 例(57%)、非 SRE 群:
3 例(33%)に行った。ONJ(osteonecrosis of the jaw)発症による歯科治療:
2 例はいずれも SRE 群であった。2014 年 12 月までの観察期間および予後は、
SRE 群:14 ~ 101 か月(平均 57.3 か月)で癌死:2 例、非 SRE 群(他病死例
を除く):31 ~ 208 か月(平均 81.6 か月)で癌死:1 例と他病死:1 例であっ
たが、Kaplan-Meier 解析で有意差はみられなかった。【まとめ】SRE 群で整形
外科、放射線科、歯科、緩和ケアなどの多くの科から介入があった。今回の
検討では、症例数が少ないことが影響している可能性もあるが、チーム医療
によって SRE 発症例でも長期に渡る治療が可能であった。
523
一般セッション(ポスター掲示)
【緒言】最近「スピード乳腺外来」などのチーム医療を導入する所をみかける。
しかし医師に情報がとどかないまま診療が行われる状態は「薬だけ外来」と類
似する。法令に抵触するか検討する。【対象】電子カルテの病院で、初診患者
に対し、事務員、看護婦などによる質問の後、医師の事前の包括的指示のも
と検査(採血、X 線照射など侵襲的なものを含む)を行い、検査結果が出ては
じめて外来医の診察となる「スピード乳腺外来」。検査結果が出て診察の順番
がくるまでは、外来医はその患者についての情報は得ておらず個別の指示も
出していない。【方法】この外来が、医師法第 20 条「無診察治療の禁止」などに
抵触するか、地元保健所に問い合わせた。【結果】・診療は、医師又は歯科医
師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療は、あくまで
直接の対面診療を補完するものとして行うべきものであること。・「診察」とは
問診、視診、触診、聴診、その他の手段の如何を問わないが、現代医学から
見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のもの。・直接の対面診療によ
る場合と同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に
関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法
第20条等に抵触するものではない。・初診及び急性期の患者に対しては、原
則として直接の対面診療によることとされておりますが、患者側の要請に基
づき、患者側の利点を十分に勘案した上で直接の対面診療と適切に組み合わ
せて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えない。・患者の心身の状況
に関する有用な情報であるか否かは、「医師・歯科医師が個々の診療場面に応
じて判断されるべきものであり、一律に基準を定められる性質のものではな
い」・問い合わせについては、初診患者に対しては、原則として直接の対面診
療によることとし、患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した
上で直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、医師法第20条
に直ちに抵触するものではない。【考察】電子カルテの導入により診療の順序
が記録される時代では、乳腺外来での初診患者全員への「スピード乳腺外来」
は違法になる可能性がある。「スピード乳腺外来」時には「患者の同意」の記録
を残す必要があると考えられた。【まとめ】チーム医療を推進し医師の権限を
委譲していく過程で法令についても考慮する必要があった。
ちばなクリニック ブレストセンター、2 中頭病院 乳腺科
ポスター掲示
GP-1-06-25
GP-1-07-01
乳癌術後の上肢可動域・リンパ浮腫状況の外来チェックによる
患者への関わり
乳癌症例における外科的生検の意義
中津市立中津市民病院
社会医療法人 高清会 高井病院
永松 敏子、梶原 啓資、倉光 絵梨奈、上原 英雄、草野 徹、藤井 及三、
福山 康朗、岸原 文明、増田 英隆
金井 奈緒子、徳川 奉樹
はじめに:乳癌患者では多くの場合、術後の上肢可動域制限をチェックする
機会は少なく、中には軽度ながら可動域制限やリンパ浮腫を呈している症例
も存在するが現状は医療側・患者側でチェックするのは日常診療では困難で
あると考えられる。目的:外来受診時に術直後患者から長期フォロー患者で
の可動域制限の有無や手術側のリンパ浮腫チェックを理学療法士・医師が共
同でチェックを行い患者状態を把握することを目的とした。術直後患者から
長期フォロー中患者まで術後の患者を対象として患者同意の得られた 184 名
に可動域チェック・リンパ浮腫チェック(視触診・エコーによる)を行った。
また可動域制限やリンパ浮腫チェックについてのアンケートを行った。結果:
可動域制限を認めた症例は 12 名でうち 3 名は通常の肩関節炎症状で 7 名は腋
窩郭清による症状で残り 2 名は皮膚ひきつれ症状による乳房全摘出症例で
あった。Grade2 以上のリンパ浮腫は 5 名に認めたがいずれも弾性スリーブな
どの処置を行っている症例であった。Grade1 程度の軽傷例は 10 例に認めた
が、本人の自覚がないか気にされていない例がほとんどであった。まとめ:
理学療法士・医師による上肢のチェックを行うことについては患者の多くが
安心感を得られたと答えた。多くの患者で可動域制限を認めなかったが、少
なからず可動域制限を呈している症例の中には皮膚のひきつれ感から可動域
を自ら制限していた症例も認めれらた。結語:可動域チェックを行うことで
より患者が安心できる指導へつなげられる可能性とリンパ浮腫の早期拾い上
げもできる可能性が示唆された。
【背景】乳腺病変に対する針生検装置や手技が進歩したため、外科的生検の適
応は限られてきているが、乳腺腫瘤に対する細胞診、針生検標本は情報が少
ないことがあり、外科的生検が必要になることがある。当院で乳癌と診断さ
れた症例において、術前病理検査で確定診断に至らなかった症例についての
検討を行った。【対象】2010 年 1 月から 2014 年 12 月に当院で外科的生検を施
行した 56 例のうち、乳癌と診断された 13 例。同時期に当院で乳癌と診断さ
れた症例 251 例。【結果】当院で乳癌と診断された 251 例のうち、確定診断に
外科的生検が必要だったのは 13 例 (5.1%) であった。外科的生検が必要であっ
た 13 例は、針生検または細胞診で境界病変だった 6 例、画像上、葉状腫瘍を
疑った 2 例、乳管内腫瘍で細胞診の診断が境界病変であった 4 例、患者希望で
切除を施行した 1 例であった。組織型は非浸潤性乳管癌が 9 例、微小浸潤癌が
1 例、Neuroendcrine tumor 1 例、腺様嚢胞癌が 1 例、葉状腫瘍に非浸潤性
乳管癌を合併した症例が 1 例であった。術後補助療法として化学療法が必要と
なった症例は含まれなかった。【結語】画像所見と細胞診、針生検の結果が一
致しないとき、確定診断を得られないときは、外科的生検を検討する必要が
ある。
一般セッション(ポスター掲示)
GP-1-07-02
GP-1-07-03
Nipple Aspirate Fluid に関する研究
トモシンセシスをもちいたステレオガイド下マンモトーム生検
の検討
1
東京都立駒込病院 外科、2 大塚ブレストケアクリニック、
3
NPO 法人 Biomarkers and Cancer Prevention Frontier、
4
NPO 法人日本臨床研究支援ユニット
1
公立藤岡総合病院、2 群馬大学大学院病態総合外科学
松本 明香 1、石崎 政利 1、萩原 慶 1、塚越 律子 1、田中 成岳 1、
安藤 裕之 1、田嶋 公平 1、森永 暢浩 1、設楽 芳範 1、桑野 博行 2
有賀 智之 1,3、大塚 恒博 2,3、松浦 千恵子 3,4、矢嶋 多美子 3,4、
宇都宮 譲二 3、黒井 克昌 1,3
【背景】外分泌器官である乳腺細胞からは少量ながら恒常的な分泌があること
が知られている。乳管内に貯留するこの少量の分泌液は乳房の加温、マッサー
ジ後に乳頭へ吸引を加えることにより採取することが可能なことから Nipple
Aspiration Fluid(NAF)と呼ばれ、乳管内環境を反映するバイオマーカーとし
ての応用が期待されている。【目的】健常者、乳癌術後患者に対し NAF 採取を
試み採取率、採取量、採取率と関連のある因子、及び NAF の特徴について検
討する。
【方法】2007 年 2 月~ 2014 年 11 月まで、合計 174 名の健常ボランティ
ア、乳がん術後患者の参加を募り、健常ボランティアでは両側乳房、乳癌術
後患者では健側乳房のみ採取を試行した。【結果】参加者は全員女性、年齢は
21 歳から 79 歳(中央値:40 歳)。174 名の参加者中、健常ボランティア 133 名、
乳癌術後患者 41 名(全例片側乳癌術後)であった。174 名中 84 名(48.3%)よ
り NAF の採取が可能であり、採取を試みた 307 乳房中 108 乳房(35.2%)よ
り NAF の採取が可能であった。採取量は 0.1ul ~ 88ul(中央値 4ul)であった。
健常ボランティアでは 266 乳房中 91 乳房(34.2%)から採取可能であり、採
取 量 は 0.1ul ~ 88ul( 中 央 値 4ul)、 乳 癌 術 後 患 者 で は 41 乳 房 中 17 乳 房
(41.5%) より採取が可能であり、採取量は 0.1ul ~ 7ul(中央値 2ul)であった。
【考察】アジア系女性においては NAF 採取率が低いとの既報と一致する結果で
あった。
524
当院では平成26年10月にトモシンセシスの導入を行った。それと同時に、
従来行っていたステレオガイド下マンモトーム生検からトモシンセシスを使
用したステレオガイド下マンモトーム生検に切り替えた。平成27年1月現
在、6例の患者に対し、施行している。従来のステレオガイド下マンモトー
ム生検と検査時間・手技上の相違・長所短所等若干の文献的考察を含めて報
告する。[ 方法 ] 患者は46歳~74歳(平均58歳)。右3例、左3例。全例、
側臥位にて施行。[ 結果 ] 検査時間(ポジショニング~マンモトーム針抜去まで)
は30分~58分で平均39.8分であった。従来法で当院にて行ったステレ
オガイド下マンモトーム生検の検査(平成25年10月~平成26年9月に同
一 術 者 で 行 っ た 1 1 例 )の 検 査 時 間 平 均 が 6 1.3 分 で あ っ た こ と か ら、
21.5分の検査時間短縮を認めた。すべての症例で十分な検体採取がおこな
わ れ た。 従 来 法 で 2 回 診 断 が つ か な か っ た 1 症 例 に 対 し、 よ り 精 密 な
targeting をおこなうことで、診断をつけることができた。また、合併症として、
術後血腫を認めた症例が 1 例あった。[ まとめ ] 症例数がまだ 6 例と少ないも
のの、トモシンセシスを使用したステレオガイド化マンモトーム生検は検査
時間の短縮・採取の正確性等、従来法と比べ優れている可能性が高いと考え
られる。
ポスター掲示
GP-1-07-04
GP-1-07-05
1
1
微細石灰化病変に対するステレオガイド下マンモトーム生検適
応の検討
2
当院におけるマンモトーム生検で良性と診断された症例の追跡
調査
北里大学 北里研究所病院ブレストセンター 放射線画像診断・IVR科、
同 外科、3 同 生理検査科、4 同 病理診断科
2
白藤 栄麻 1、関 大仁 2、柳澤 貴子 2、東海林 美玖 1、菅波 遥 1、根本 彩 1、
浅沼 史樹 2、中嶋 純子 3、久保畠 香織 3、森永 正二郎 4
濱田 未佳 1、久保田 倫代 1、新崎 亘 1、藤島 成 2、安積 達也 1、
橋本 幸彦 1、菰池 佳史 1
2012 年 4 月から 2013 年 3 月まで当院で行ったマンモトーム生検 65 例につい
て検討する。65 例中、ステレオガイド下マンモトーム生検(以下 ST-MMT)が
23 例、エコーガイド下マンモトーム生検(以下 US-MMT)が 42 例だった。
ST-MMT23 例中、石灰化採取率は 100%(23/23) 良性が 15 例、悪性が 7 例、
ADH が 1 例あった。良性症例中、MMT 前画像診断は C-2 が 1 例、C-3 が 12 例、
C-4 が 3 例であった。良性症例中、1 年後フォローにて新たな病変出現はなかっ
た。また、鑑別困難の 1 例も変化なしであった。US-MMT42 例中、良性が 21
例、悪性が 21 例であった。良性症例中、MMT 前画像診断は C-2 が 5 例、C-3
が 12 例、C-4 が 4 例であった。1 年後フォローにて DCIS が 1 例、ADH が 1 例
出現した。DCIS の 1 例は MMT 施行前の画像評価では C-4(区域性低エコー、
MRI でも造影効果あり)であり、1 年後 MRI にて造影効果部位が増強していた
た め、 再 度 US-MMT 施 行 し た と こ ろ、DCIS の 診 断 を 得 た。ADH の 1 例 は
MMT 施行前の画像評価は C-4(微小円形区域性石灰化)であり、US でも石灰
化を伴う低エコー域が描出できたので、US-MMT を施行したが、石灰化は採
取できなかった。1 年後 MMG 上石灰化増強していたため、今度は ST-MMT 施
行し、ADH の診断の診断を得た。マンモトーム生検は針生検に比べ、組織採
取量は多いが、あくまで病変の一部をみているにすぎない。今回、1 年後フォ
ローにて増悪病変があった症例はいずれも MMT 前画像診断は C-4 であり、
MMT にて良性と診断されても画像診断上、C-4 以上症例は自院にてフォロー、
または open biopsy などを考慮するほうがよいと考える。C-3 以下は検診フォ
ローでも問題ないと考える。
GP-1-07-06
GP-1-07-07
1
1
当院における超音波ガイド下 Vacuum assisted Biopsy の初
期成績
ステレオガイド下マンモトーム生検前の乳腺造影 MRI はカテゴ
リー 3 に対する適応症例の絞り込みに有用か
米沢市立病院外科、2 米沢市立病院病理科
市立四日市病院 中央放射線室、2 市立四日市病院 乳腺外科、
ひなが胃腸内科・乳腺外科、4 主体会病院 放射線科、
5
市立四日市病院 外科
3
橋本 敏夫 1、北村 正敏 1、角田 力彌 2
【はじめに】当院では平成 25 年 9 月より BARD 社 Encor Enspire の Vacuum 稲垣 由美 1、水野 豊 2、倉田 信彦 2、久野 泰 3、中村 和義 4、森 敏宏 5、
assisted Biopsy System(VAB) を導入し微小病変や石灰化病変の診断に
宮内 正之 5、雫 真人 2、広瀬 美紀 1
活用している。今回平成 25 年 9 月から平成 26 年 12 月までの超音波(US)ガ
イド下 VAB を施行した症例を検討し報告する。【対象】平成 25 年 9 月から平成
【はじめに】当院のステレオガイド下マンモトーム生検(以下 ST-MMT)の適応
26 年 12 月に US ガイド下 VAB 施行した症例は 30 例であり微小腫瘍性病変 20
は、マンモグラフィ(以下 MMG)でカテゴリー 3 以上と判定された、対側に
例、石灰化病変 10 例であった。【方法】局所麻酔を十分に施行の後、穿刺部皮
はない密度のある石灰化病変で、超音波検査で病変を指摘できないものとし
膚を 3mm 切開し生検針を病変の後面に穿刺。吸引補助下に組織を採取する。
ている。2012 年以降は存在診断を目的に、ST-MMT 前に乳腺造影 3T-MRI(以
組織採取の際は US にて病変が確実に採取されているか確認する。また石灰化
下 MRI)を行っている。【対象・方法】2010 年 1 月~ 2014 年 12 月までの間に
病変は採取標本のマンモグラフィーを撮影し、病変の採取を確認する。終了
ST-MMT を施行した 297 症例中、2012 年以降で ST-MMT 前に MRI を施行し
後は皮膚切開部を 4 - 0 ナイロン糸にて縫合施行。生検後 30 分程度安静のの
た 148 例を対象とした。MMG によるカテゴリー判定別に ST-MMT の乳癌陽性
ち、創部をガーゼにて圧迫施行し、翌日再診している。【結果】VAB を施行し
率、陽性的中率、偽陰性率と MRI による濃染所見の有無を 2012 ~ 2013 年
た腫瘍性病変 20 例中 13 例が乳がんであった。DCIS 2 例、浸潤性乳管癌
までの症例と 2014 年の症例を比較検討した。さらに 2014 年の症例では MRI
(IDC)11 例であった。平均腫瘍径 10.92mm であった。石灰化病変は全例 US
で濃染所見を認めた 34 例に対して拡散強調画像(DWI)、ADC 値の所見も加
上病変部を確認できる症例であり、マンモグラフィー上カテゴリー 4 症例は 7
味した検討を行った。【結果】全 297 例のカテゴリー判定別の乳癌陽性率はカ
例、 カテゴリー 5 症例は 3 例であった。石灰化病変 10 例中 5 例が乳がんで
テゴリー 2:0/19 例(0%)、3:31/198 例(15.6%)、4:35/74 例(47%)、5:
あった。DCIS 4 例、IDC 1 例、ADH 1 例であった。マンモグラフィー上
4/6 例(66.7%)であった。ST-MMT 前に MRI を施行した 148 例の乳癌陽性率
カテゴリー 5 の症例 3 例中 2 例が DCIS であり、1 例は乳管内乳頭腫であった。
はカテゴリー 2:0/6 例(0%)、3:25/85 例(22.6 → 29.4%)、4:30/52 例
合併症は後出血症例 0 例、創感染 1 例であった。【まとめ】US ガイド下 VAB の
(53.3% → 57%)、5:3/5 例(66.7% → 60%)であった。MMG によるカテゴ
適応は施設や医師により異なる。穿刺技術を含め画像診断能力によって適応
リー判定に MRI を追加することで、陽性的中率はカテゴリー 4,5 でそれぞれ
を考える必要がある。当院では CNB にて十分な組織が採取できないと判断さ
70% → 78%、100% → 100% に上昇、カテゴリー 3 でも 37% → 46%と上昇
れる場合(10mm 以下の腫瘍など)や石灰化病変を US 上確認できる場合は US
した。しかし濃染所見に加え DWI、ADC 値の所見を加味するとカテゴリー 4
下 VAB を適応としている。
以上の陽性的中率は高くなったがカテゴリー 3 では変化を認めなかった。ま
た偽陰性率は MRI を追加することでカテゴリー 3:16.7% → 14.4%、カテゴ
リー 4:12.5% → 10% と減少し、とくにカテゴリー 3 で濃染所見に ADC 値
の所見(ADC 値が高値)を加味することで良性病変を除外できた。
【まとめ】今
回得られた結果から ST-MMT 前に MRI を施行することで適応症例の絞り込み
に対して有用性が認められた。またカテゴリー 3 では偽陰性率を減らすとと
もに濃染所見があっても ADC 値を加味することで不要な ST-MMT を回避でき
る可能性を見出すことができた。
525
一般セッション(ポスター掲示)
【背景・目的】MMG 検診で発見された微細石灰化病変に対するステレオガイド
下 MMT 生検 ( 以下、ST-MMT) は乳癌の早期診断方法として有用性の高い手
段である。一方で、ST-MMT は低侵襲な検査として認知されているが、長時
間の乳房圧迫によって苦痛を伴う検査でもあるため、エコーや造影 MRI 所見
などを加味した生検適応の判断が求められる。
【対象・方法】2013 年 4 月から
2014 年 12 月までに当院で ST-MMT を施行した 107 例を対象に統計学的解析
をおこなった。【結果】年齢の中央値は 55.5 歳(30-81 歳)、閉経前が 53 例
(49.1%)、閉経後が 55 例(50.9%)であった。乳腺濃度別では高濃度乳腺が
6 例(5.6%)、不均一高濃度乳腺が 89 例(83.2%)、乳腺散在が 9 例(8.4%)、
脂肪性が 3 例(2.8%)であった。生検の結果、良性は 93 例(86.9%)、悪性は
14 例(13.1%)であった。悪性と診断されたもののうち、8 例 (57.1%) は
DCIS であり、6 例 (42.9%) は浸潤癌であった。悪性の診断率を MMG カテゴ
リ ー 別 に 比 較 す る と、C-3 で 9.4%(8/85)、C-4 で 33.3% (4/12)、C-5 で
100% (3/3) で あ り、 カ テ ゴ リ ー が 高 い 程 有 意 に 悪 性 の 割 合 が 多 か っ た
(p=0.002)。エコーでの随伴所見の有無で比較すると、悪性の割合はエコー
随伴所見ありで 42.6% (46/108)、エコー所見なしで 40.7% (44/108) であ
り有意差は認められなかった (p=0.252)。107 例中 79 例は ST-MMT 前に造
影 MRI 検査を施行しており、悪性所見との関連性を BI-RADS カテゴリー別に
比較すると、悪性の割合は BI-RADS C-3 以上の症例で 36.1% (39/108) で
あったのに対して、BI-RADS C-2 以下の症例では 40.7% (44/108) であり有
意差は認められなかった (p=0.684)。浸潤癌うち HER2 陽性が 50% (3/6) で
あり、Luminal が 50% (3/6) であった。非浸潤癌のうち low grade が 50%
(4/4) で あ り、high grade が 50% (4/4) で あ っ た。 エ コ ー 所 見 あ り は low
grade で 100% (4/4)、high grade で 75% (3/4)、 ま た、 造 影 MRI BIRADS C-3 以上が low grade で 75% (3/4)、high grade で 50% (2/4) であ
り、いずれも有意差は認められなかった (US; p=0.439, MRI; p=0.221)。
【結
語】今回の検討では、ST-MMT における乳癌の診断とエコーの随伴所見や MRI
所見に有意な関連性は認められなかった。現状では、少なくとも MMG で C4
以上と判定された微細石灰化病変に対しては積極的な ST-MMT 生検が必要で
ある可能性が示唆された。
近畿大学 医学部 附属病院 外科、
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
ポスター掲示
GP-1-07-08
GP-1-07-09
桜新町濱岡ブレストクリニック
1
Portable VAB(Vacuum assisted biopsy) による組織確定診
断のモダリティ別評価
Core needle biopsy で良性上皮性腫瘍と診断された症例につ
いて
3
濱岡 剛
市立砺波総合病院 健診センター、2 市立砺波総合病院 病理、
市立砺波総合病院 外科、4 市立砺波総合病院 核医学科
瀧 鈴佳 1、寺畑 信太郎 2、杉口 俊 2、奥野 のり子 2、清原 薫 3、
北川 桂子 3、金木 昌弘 3、絹谷 啓子 4
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】境界不明瞭で病変範囲のはっきりしない陰影に対する組織診断には、
サ ン プ ル が 比 較 的 多 く 採 取 可 能 で あ る portable VAB(Vacuum assisted
biopsy) が有用である。現在 portable VAB には主に Mammotome Elite(M),
VACORA(V), EnCor ULTRA(E) の 3 種類が存在し、各モダリティでそれぞれ
の特徴を持つ。今回 3 種類のモダリティを比較する機会を得たので報告する。
【対象】2013 年 8 月から 2014 年 12 月までに当院にて VAB を施行した 157 症
例(M:137 例、V:15 例、E:5 例)につきその組織サンプル採取時間、サンプ
ル量、刺入感、操作性、操作音、介助利便性、出血、疼痛につき M、V、E そ
れぞれ比較した。【結果】全症例の平均年齢 49 歳、悪性率 62%。平均採取時
間(原則 4 本採取、刺入開始よりすべてのサンプル採取終了まで)は M:2.45 分、
V:7.18 分、E:2.9 分。サンプル量(1-3 で評価)M:2.3、
V:3.0(10G)2.0(14G)、
E:2.8。刺入感 E、M、V、操作性 M、E、V、介助利便性は M、V、E の順で優
れた結果となった。操作音は E、M、V の順で静かであった。出血、疼痛はモ
ダリティ間で差を認めなかった。【結論】V(10G)は最も多くのサンプル量が
得られるが、一刺入にて一個のサンプル採取のみで操作性および刺入感で劣
る。E は刺入感、サンプル量で優れ、また一度の刺入で複数サンプルが採取可
能だが、プローベと本体がチューブでつながれており、吸引用ユニットも別
体となる。また電源ケーブルの準備も必要であることから、
介助利便性で劣る。
M はサンプル量が少ない傾向があるが、一度に複数サンプル採取が可能なう
えに操作性、介助利便性に優れ刺入感も良い。サンプル量が増えるとさらに
良いと言える。
乳管内乳頭腫や乳管腺腫などの良性上皮性腫瘍は、画像上乳癌との鑑別が問
題 に な る こ と が 多 く、 針 生 検 の 適 応 と な る。 し か し、Core needle
biopsy(CNB) で乳管内乳頭腫と診断され、切除された症例のうち 3- 19% が
癌であったとの報告があり、経過観察には切除を視野に入れた慎重な対応が
必要とされている。そこで、当院で CNB を施行し良性上皮性腫瘍と診断され
た症例について、その転帰について検討した。対象は、1999 年 5 月 - 2014
年 2 月までに当院で初回の CNB を行った結果、良性上皮性腫瘍と診断された
女性 57 例 (17- 88 才、平均 49.4 才 ) で、カルテ記録により経過を調べた。
CNB は 18G 針を用い、検体は 1 病変につき 3-4 本採取した。US での腫瘍サイ
ズは 5- 35 mm、平均 12.7mm であった。57 例の CNB 診断は、乳管腺腫が
39 例、乳管内乳頭腫が 17 例、管状腺腫が 1 例であった。57 例中、異型あり、
もしくは悪性の疑いもありとされたものは 5 例であった。病変切除がされたも
のは 57 例中 13 例で、このうち 3 例が乳癌(粘液癌 1 例、DCIS 2 例)であった。
切除理由は、初回の針生検で異型または悪性の疑いありが 2 例、経過観察後の
再 CNB や臨床上で悪性もしくは悪性の疑いありが 4 例、患者希望によるもの
が 5 例、同側または対側の乳癌手術にあわせて切除されたものが 2 例であった。
切除により乳癌と診断された症例は、いずれも、初回 CNB では異型や悪性所
見はなく、経過観察後の再 CNB で悪性もしくは悪性疑いとされたものであっ
た。この 3 例の初回 CNB から手術で乳癌と診断されるまでの期間は、1.211.3 年、平均 5.6 年であった。切除せずに経過観察された 44 例の平均経過観
察期間は 3.8 年で、初回 CNB からの経過や、腫瘍サイズの変化にあわせて 3 ヶ
月 - 1 年ごとの経過観察がなされた。経過観察後の腫瘍サイズ変化については、
縮小 8 例、不変 28 例、増大 8 例であった。サイズ増大例は、再 CNB で悪性所
見は得られなかった。以上の結果から、良性上皮性腫瘍に対し、CNB は信頼
できる診断手段と考えられた。しかし、CNB で良性乳頭腫と診断された症例
の 1.6% に 2-5 年の経過観察期間中、癌が発生するとの報告があり、今回の結
果もこれと矛盾しないものであった。CNB で良性上皮性腫瘍と診断された症
例には、定期的な画像診断と、必要に応じて再 CNB を含めた慎重な経過観察
が望まれる。
GP-1-07-10
GP-1-07-11
当院におけるステレオガイドマンモトーム生検の初期導入成績
についての検討
当院における穿刺吸引細胞診の検体採取の工夫
1
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 消化器・乳腺外科、
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 病理診断科、
3
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 臨床検査科
2
1
産業医科大学 呼吸器胸部外科(第2外科)、
2
産業医科大学 放射線部(診療放射線技師)、3 産業医科大学 第2病理学、
4
大平メディカルケア病院 外科
藤島 成 1、河原 邦光 2、安江 智美 3、重岡 宏典 1
永田 好香 1、田嶋 祐子 1、中村 幸枝 2、河野 千恵 2、猿渡 博美 2、
秋葉 ナオミ 2、宗 知子 1、山田 壮亮 3、吉田 泰憲 4、田中 文啓 1
【目的】近年乳癌検診の受診者は増加しており、マンモグラフィ (MMG) での要
精密症例が増加している。当院でも非触知石灰化病変や構築の乱れの評価に
対応すべく、マンモトーム生検装置を導入した。初期導入時の現状と課題を
報告する。【方法】2013 年 5 月~ 2014 年 12 月までにステレオガイド下マン
モトーム生検 (SMMT) を施行した 35 症例を対象とした。当院での適応基準は、
(1) カテゴリー 3-2(C3-2) 以上であり、超音波での組織検査が困難である症例、
ないし超音波で病変の描出可能であるもステレオガイドマンモトームが有用
と判断した症例、(2) 患者希望(基本的に C3-1 以上)である。【結果】患者年齢
は 33 ~ 78 歳(中央値 53 歳)。右乳 :18 例 左乳 :17 例。手術時間は 12 分~
150 分(中央値 33 分)。SMMT を施行した 35 例のうち、石灰化病変 34 例、構
築の乱れ 1 例であった。MMG カテゴリー分類は、C3-1:0 例、C3-2:22 例、
C4:12 例、C5:1 例と判定した。SMMT の病理組織学検査は、非浸潤癌が 8 例、
浸潤癌が 1 例で悪性所見率は 25.7%であった。MMG カテゴリー分類における
悪性所見率は、C3-2:2 例 (9.1%)、C4:6 例 (50%)、C5:1 例 (100%) であった。
乳房厚が薄い症例でも、局所麻酔薬と生理食塩水注入により施行している。
しかしながら、SMMT を予定したが乳房の厚み不良や石灰化の位置異常など
の理由で検査中止となった症例は 5 例であり、うち 4 例は経過観察、1 例は切
開生検を施行し良性(乳腺症)の診断であった。合併症は 1 例に手技中の出血
を認め縫合処置を要したが、その他の症例では合併症は認めなかった。乳癌
と診断され、乳房温存手術を行った症例に対しては、手術体位のうえ透視下
でμマークのマーキングを行い、手術時にμマークを回収しているが1例のみ
位置異常により回収不能であった。【結語】当院での SMMT での悪性所見率は
やや低めであり、初期導入の影響が高いと考える。今後は過剰検査を最小限
にすべく石灰化を慎重に評価すべきであると思われる。手技に関しては比較
的安全で有効な検査である。症例数を増やして検討することが望まれる。
【はじめに】乳腺診療において穿刺吸引細胞診(以下 FNA)は臨床の現場で診断
のファーストステップとして行われることが多い。しかし FNA の診断能は穿
刺や標本作製技術、病理側の細胞診断能力に依存しているところが大きく施
設による差があるため、自施設の FNA の成績を明確にすることは重要である。
今回我々は当院の FNA 判定区分について検討を行い、新たな工夫を行ったの
で報告する。【対象と方法】対象は 2013 年 4 月から 2014 年 12 月までに超音
波ガイド下に FNA を施行した 304 例。2013 年 4 月から 12 月までの 129 例を
A 群、2014 年 1 月から 12 月までの 175 例を B 群とし両群の細胞診の判定区分
について検討した。FNA で鑑別困難以上の判定は全例組織診を施行した。A
群は 23G で穿刺を行った。B 群は 22G で穿刺を行い、更に針および注射筒を
Saccomanno 保存液で洗浄し遠心にかけ細胞を回収した。【結果】A 群は検体
不 適 正:28 例(21.7%)で 検 体 適 正 101 例 中、 正 常 あ る い は 良 性:81 例
(80.1%)、鑑別困難:10 例(9.9%)、悪性疑い:2 例(2%)、悪性 8 例(7.9%)
であった。B 群は検体不適正 18 例(10.2%)で検体適正 157 例中、正常また
は良性:125 例(79.6%)、鑑別困難 16 例(10.1%)、悪性疑い :3 例(1.9%)、
悪性:12 例(7.6%)であった。両群悪性疑いは組織診で全例乳癌であった。
A 群、B 群ともに FNA 偽陽性を 1 例ずつ認めた(1 例は adenomyoepithelioma、
1 例は intraductal papilloma)
。
【考察】B 群は A 群より有意に検体不適正が減
少した(p=0.001)。穿刺針を 22G に変更し、針および注射筒を Saccomanno
保存液で洗浄し細胞を回収することは FNA 検体を適切に採取する上で有用で
ある。検体適正例で偽陽性を 2 例認めており、今後は細胞診の診断精度向上の
ための改善が必要である。
526
ポスター掲示
GP-1-07-12
GP-1-07-13
進行再発乳癌における薬物療法と血清抗 p53 抗体の推移
エベロリムスの使用経験より知見を得た間質性肺炎マーカー
KL-6 の癌マーカーとしての意義
浅ノ川総合病院 外科
松本市立病院 外科
道輪 良男、高田 智司、尾島 英介、中野 達夫
高木 洋行、武田 美鈴、坂本 広登、三澤 俊一、桐井 靖
【背景】エベロリムスは副作用として、口内炎のほか間質性肺炎が比較的高率
に報告されている。エベロリムスの使用を 4 例経験し間質性肺炎マーカー
KL-6 を定期的に測定したが、KL-6 の癌マーカーとしての意義について知見を
得たので報告する。全例女性でER陽性 HER2 陰性。【症例1】65 歳。1999
年手術施行。再発部位はリンパ節・肺・脳。6 ラインの治療歴有。2014 年 8
月より 12 月までエベロリムス投与。KL-6(正< 500U/ml)は投与前測定なし、
投与 2 週後 998、10 週後 1680、14 週後 2690 と高値を示した。癌マーカー
CA15-3(正< 25.0 U/ml)も治療前の 50 が 14 週後 105 と上昇。CT で間質性
肺炎の所見はない。【症例2】64 歳。2010 年手術施行。再発部位は骨・肺。5
ラインの治療歴有。2014 年 9 月より投与。KL-6 は投与前測定なし、投与1週
後 2510、13 週後 3330 と高値を示した。癌マーカー CA15-3 も治療前の 121
が 13 週後 198 と上昇。CT で間質性肺炎の所見はない【症例 3】75 歳。2009
年癌性胸膜炎症状で受診。wPTX が著効し一時 CR となるが、その後再燃した。
再発部位はリンパ節・肺・肝。4 ラインの治療歴有。2014 年 11 月より投与。
KL-6 は投与前 996、投与 1 週後 958、7 週後 956 と低下を示した。癌マーカー
CA15-3 は治療前 52.1 であった。間質性肺炎の症状は認められない。本例は
初診時に KL-6 が測定されていたが 1600 と高値で CA15-3 も 96.4 と高値で
あった。
【症例 4】74 歳。2006 年手術施行。再発部位は肺。4 ラインの治療歴有。
2014 年 11 月より投与。KL-6 は投与前 592・投与1週後 589、5 週後 691 と
著変なしである。癌マーカー CA15-3 も治療前 63.1 が 5 週後 54.8 と著変なし
である。間質性肺炎の症状は認められない。
【考察・結語】KL-6 は間質性肺炎
の感度・特異度ともに高いものの、乳癌など様々な疾患で偽陽性を示すこと
も知られている。今回の 4 例ともエベロリムス投与前や初期から高値を示し、
癌マーカーとパラレルな変動を示すことが分かった。KL-6 は癌マーカーとし
ての意義もあると推察された。よって間質性肺炎の指標としての KL-6 はエベ
ロリムス投与前の値を測定しておく事が重要である。
GP-1-07-14
GP-1-07-15
乳汁分泌に対する乳汁中 CEA 測定の意義
1
当科における乳癌手術患者の統合失調症有病率及びその臨床的
特徴についての検討
愛媛県立中央病院 乳腺内分泌外科、2 愛媛県立中央病院 看護部
1
松岡 欣也 1、佐川 庸 1、本間 知子 2
乳頭異常分泌の頻度は乳腺疾患の 5 ~ 10%と言われており、乳腺外来ではし
ばしば遭遇する症状である。乳頭異常分泌での乳癌の頻度は高くないが、早
期発見の手掛かりとなる重要な症状といえる。当科では乳頭異常分泌に対し
て乳汁中 CEA の測定を行っている。2011 年 4 月から 2014 年 9 月までに当科
で乳汁中 CEA 検査を行った 53 例について画像所見、分泌物細胞診、病理診断、
経過に関して検討したので報告する。症例は全例女性、年齢中央値は 45 歳。
乳汁中 CEA を測定した症例で乳癌と診断した症例は 13 例で乳汁中 CEA 値と
の 関 係 は < 100 で 2 例 / 27 例、100 で 1 / 7 例、400 で 5 / 9 例、1000 が
5 / 10 例であった。400 をカットオフ値をすると感度 77%、特異度 85%で
あった。同時に施行している分泌物細胞診は鑑別困難 2 例、悪性疑い 1 例で診
断能は低かった。画像診断ではマンモグラフィでは所見のないもの、US では
乳管の拡張のみを認めるものが多く診断は困難であった。MRI は悪性症例 13
例中 9 例でカテゴリー 4 以上であった。乳汁中 CEA 400 以上、MRI カテゴ
リー 4 以上を合わせると 13 例中 12 例でいずれかの所見を認めた。CEA 高値
の血性分泌を認めた症例でも数か月で分泌がなくなりその後の経過で異常所
見を認めない症例もあるため、手術の適応については乳汁中 CEA 値のみに頼
らず MRI 等の画像診断を合わせて決めるべきと思われる。
防衛医科大学校病院 外科、2 防衛医科大学校病院検査部病理
福村 麻希子 1、長谷川 翔 1、山崎 民大 1、坂口 奈々恵 1、山岸 陽二 1、
守屋 智之 1、河野 貴子 2、島崎 英幸 2、中西 邦昭 2、長谷 和生 1、
津田 均 2、山本 順司 1
【背景と目的】精神科疾患と乳癌との関連性は明らかでないが、当院で加療す
る乳癌患者の精神科疾患有病率が、一般と比較して高い印象があった。今回
我々は、当院手術症例での統合失調症有病率を調査し、その特徴を検討する
こととした。【対象・方法】2011 年 1 月から 2014 年 12 月までの当科で施行さ
れた乳癌手術症例 321 例を対象とした。対象患者の中から、精神科専門医か
ら統合失調症の診断を受け、加療されている患者のみを抽出した。
【結果】
321 例中 5 例に統合失調症の既往があり、有病率は 1.6% であった。症例 1 61 歳 女性 統合失調症治療歴:中年期以降に発症し、それ以来治療継続さ
れている。病識はなし。BMI:17.9。組織型:mucinous carcinoma. 症例 2 60 歳 女性 統合失調症治療歴:29 歳で発症し、それ以降複数の医療機関を
経て治療継続されている。BMI:30.5。組織型:invasive ductal carcinoma,
papillotubular carcinoma, EIC(+). 症例 3 38 歳 女性 統合失調症治療
歴:30 歳で発症し、他院へ措置入院後から治療継続されている。B 型肝炎キャ
リ ア。BMI:28.4。 組 織 型:invasive ductal carcinoma, papillotubular
carcinoma with invasive lobular carcinoma and lobular neoplasia
component. 症例 4 44 歳 女性 統合失調症治療歴:詳細不明、医療保護
入院中に前胸部の皮膚潰瘍を指摘された。BMI:24.5。組織型:scirrhous
carcinoma. 症例 5 43 歳 女性 統合失調症治療歴:数年間。BMI:32.3。
組織型:scirrhous carcinoma. 5例の手術時の平均年齢は 49.2 歳、平均 BMI
は 26.7、 組 織 型 は 2 例 が scirrhous carcinoma、 2 例 が papillotubular
carcinoma、1 例が mucinous carcinoma であった。【まとめ】統合失調症の
生涯罹患率は 0.3 ~ 2.0%とされており、今回の調査結果の 1.6% は一般人口
と比較して差がないと考えられた。症例数が5例と少ないため、組織型等に
明確な傾向は示されなかった。
527
一般セッション(ポスター掲示)
血清抗 p53 抗体は、p53 遺伝子異常に伴う p53 蛋白の過剰発現に対する IgG
抗体で、従来の癌細胞由来の成分を直接測定するものとは異なる新しい腫瘍
マーカーとして開発された。早期癌の発見に検診としても使用されているが、
転移・再発例に対する検討は少ない。今回、進行再発乳癌における薬物療法
と血清抗 p53 抗体の推移について検討を行った。【対象】2014 年 12 月に薬物
療法が行われ、血清抗 p53 抗体が測定された進行再発乳癌 14 例を対象に、抗
p53 抗体(基準値 1.3 U/ml)と臨床経過について検討した。【結果】血清抗 p53
抗体が高値であった症例は 4 例 (29%)(平均年齢:64 歳、転移部位:肺、骨、
肝、皮膚、リンパ節)で、抗 p53 抗体は 1.87 ~ 3170 (U/ml) であった。正常
であった症例 (n=10)(平均年齢:66 歳、転移部位:肺、骨、肝、皮膚、リン
パ節、胸膜、脳)は、全例、全経過で抗 p53 抗体は正常範囲であった。抗 p53
抗体高値症例 1 は術前より肺、肝転移を伴う局所進行 HER2 陽性症例で、抗
HER2 療法と化学療法後に手術 (Bt+Ax) を施行した。その後も薬物療法継続
中であるが、抗 p53 抗体は治療前より 1.9 ~ 2.2 でごく僅かに高値で経過した。
症例 2 は再発後 10 年以上抗 HER2 療法と化学療法を併用している症例で、骨
転移が増悪した際に抗 p53 抗体は 90.6 まで上昇したが、薬物療法と放射線治
療で腫瘍は縮小し、p53 抗体もほぼ基準値近くまで低下した。症例 3 は術後肺
転移に対してホルモン療法を行っている症例で、画像上は緩徐に転移の増大
が疑われる程度であるが、抗 p53 抗体は 43.8 まで増加傾向であった。症例 4
は対側腋窩リンパ節転移を伴う局所進行 HER2 陽性症例で、術前に抗 HER2 療
法と化学療法後を行った。抗 p53 抗体は 173 と高値で、薬物料療法で腫瘍の
縮小が疑われたが、抗 p53 抗体は 852 まで上昇した。手術 (Bt+Ax) にても抗
p53 抗体は低下せず、皮膚転移が出現し、リンパ節転移が増悪した時には
3170 まで著明に高値となった。その後も薬剤を変更し治療継続中であるが、
抗 p53 抗体は 1000 台で推移している。
【まとめ】進行再発乳癌においては、
抗 p53 抗体の値と治療効果との関連性は明らかではなかった。抗 p53 抗体の
上昇程度と転移の状態とは関連がある可能性があるが、抗 p53 抗体が著明に
高値となる要因も不明であった。高値の場合には、上昇程度をどのように判
断すればよいのか、あるいは抗 p53 抗体が治療効果や予後を反映する指標と
はならないのか、更なる検討が必要と考えられた。
ポスター掲示
GP-1-07-16
GP-1-07-17
海老名メディカルサポートセンター
1
乳腺濃度と乳腺良性疾患との関連についての検討
DCIS 症例への当科での治療選択と予後についての後ろ向き検討
2
岡本 隆英、伊東 明美、神山 太郎、伊藤 和也
一般セッション(ポスター掲示)
[ 背景 ] マンモグラフィー (MMG) における乳腺濃度 (MD) は高濃度になると乳
癌のリスクは高まると報告されている。また乳腺良性疾患 (BBD) で特に増殖
傾向・細胞異形のあるものではリスク因子とされている。しかし、これらの
相互の間連性と他の乳癌リスク因子との関連は明らかではない。 [ 目的 ]
MD・BBD および乳癌リスク因子との関連性を調べるためにこの研究を行った。
[ 対象 ] 2012 年度に当院で生活習慣病の検診と MMG・乳房超音波両方による
乳癌検診を同時に行った受診者 137 例 平均年齢 46 ± 8.6 を対象とした。ま
た乳癌の既往・診断のないものとした。 [ 方法 ] MD の評価は、MMGでの
高濃度部分をコンピュータグラフィックにより面積を計測し、乳房全面積と
の比% MD(PMD) を求めた。BBD は超音波検査で認めた最大径 5mm 以上の
腫瘤性病変 Benign Breast tumor(BBT)・のう胞 (CYST) を対象とした。PMD
と BBD の有無及びリスク因子(乳癌家族歴・飲酒・出産歴・初産年齢・初経
年齢・肥満度 (BMI))との関連性について検討した。統計処理は t・χ 2 検定、
相間は Pearson の係数を求め評価した。p < 0.05 を有意とした [ 結果 ] 閉経
前の PMD は 61 ± 17、閉経後 46 ± 19 に比し有意に高かった。(p < 0.001)。
また BBT は閉経前・後で 21, 11(%) に認め有意差なし , CYST を認めたのは
閉経前で 22(%)、閉経後の 6 (%) に比し有意に高かった (p=0.03)。(BBD
と PMD の関連性)閉経前の PMD は、BBT陽性群 64 ± 16、陰性群 60.1 ±
017、またCYST陽性群 60 ± 15.、陰性群 61.1 ± 17、でいずれも有意差は
なかった。閉経後の PMD は BBT 陽性群で 64 ± 16、陰性群の 44 ± 18 に比し
有意に高かった (p=0.02)。CYSTは陽性群 41 ± 18、陰性群は 46 ± 19 で
有意差はなし。 (PMD とリスク因子)BMI と PMD は閉経前・後とも有意な
逆 相 関 を 示 し た( そ れ ぞ れ r = -0.50 p < 0.001、r=-0.52, p < 0.001)
(BBD とリスク因子)閉経前で CYST 陰性群の出産歴は 1.2 ± 0.8 で陽性群の
0.9 ± 0.9 に比し高い傾向があった (p=0.09)。閉経後では有意な所見はなかっ
た。 [ 結論 ] 閉経前後ともに、PMD は BMI と有意に逆相関を示した。また閉
経後では BBT に伴い MD が上昇することが示唆された。
GP-1-07-18
1
1
1
NSABP B-17、B-24 の統合解析で DCIS 症例に対する治療として、切除のみ
の群での局所再発率は 15 年で約 20%と放射線照射を加えた群の局所再発率
9%と比較し多いものの、累積乳癌死亡率を比較すると、15 年で切除のみ群
では 3.1%に対し、放射線照射を加えても 2.7 ~ 4.7%と差は見られなかった。 当科では DCIS 症例に対して乳房部分切除後には通常、残存乳房への放射線照
射を行っているが、近年は組織型、年齢や病変の広がりの範囲、異型度、切
除断端からの距離などを参考に、一部の症例で照射を省略する事や、術後に
ホルモン療法を提案している。当科での DCIS 症例に対する術式や照射の有無、
補助療法とその予後に関する後ろ向き検討をおこなった。 症例は 2004 年か
ら 2012 年の間に乳癌と DCIS され手術を受けた 554 例である。年齢の中央値
は 50 歳。観察期間の中央値は 4 年 4 ヶ月である。術式は乳房温存術(Bp+SNB)
が 335 例、腫瘤摘出術が 17 例、乳房全切除術(Bt+SNB)が 87 例、乳頭乳輪
温存乳房切除術(NSM+SNB)が 102 例、皮膚温存乳房切除術(SSM+SNB)が
12 例であった。切除後放射線照射を受けたのが 92 例おり、Bp86 例、腫瘤切
除 6 例であった。術後内分泌療法を受けたのは、Bp 症例中 132 例、腫瘤摘出
術症例中 6 例、全摘 (Bt、NSM、SSM) 症例中 60 例であった。組織異型度1ま
たは low grade DCIS(低悪性度 DCIS)と診断された症例が 181 例、異型度 2
ま た は intermediate grade DCIS は 272 例、 異 型 度 3 ま た は high grade
DCIS は 56 例であった。 再発症例は DCIS 全体において 2.4%に認められ、
放射線照射なし群で 5 例、放射線照射あり群で 8 例であった。術後内分泌療法
なし群では 10 例にイベントを認め、対側乳癌 2 例、胸壁・領域リンパ節再発
8 例であった。術後内分泌療法施行群では 4 例にイベントを認め、対側乳癌 1
例、胸壁・領域リンパ節再発 3 例であった。 局所切除(Bp、腫瘤切除)症例
で照射なし群(33 例)での局再発率は 6.1%、照射あり群(277 例)での局所再
発率は 2.9%であった。これを低悪性度 DCIS(116 例)に限ってみると、局所
切除(Bp、腫瘤切除)症例での局所再発率は、放射線照射なし群で 9.5%に対し、
放射線照射あり群では 1.1%あった。
乳癌における ARID1A 発現異常についての検討
川崎医科大学 乳腺甲状腺外科、2 福山医療センター 乳腺内分泌外科
1
小島 康幸 1、吉田谷 芙美 1、志茂 彩華 1、上島 知子 1、土屋 恭子 1、
志茂 新 1、速水 亮介 1、白 英 1、西川 徹 1、川本 久紀 1、前田 一郎 2、
津川 浩一郎 1
GP-1-08-01
閉経時期における身長、BMI と乳癌リスクについて
1
聖マリアンナ医科大学 乳腺内分泌外科、
聖マリアンナ医科大学 診断病理学
1
岐阜大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科、
岐阜大学大学院 医学系研究科 形態機能病理 、
3
岐阜大学大学院 医学系研究科 乳腺・分子腫瘍、4 岐北厚生病院 外科
2
1
野村 長久 、園尾 博司 、緒方 良平 、斉藤 亙 、太田 裕介 、
小池 良和 1、山下 哲正 1、下 登志朗 1、山本 裕 1、田中 克浩 1、
紅林 淳一 1、三好 和也 2
はじめに:乳癌のリスクファクターについては、高身長や閉経後の BMI 高値
が高リスクになると挙げられているが、国内での報告は少ない。今回、乳癌
検診で異常がなかった健常者と乳癌患者について、閉経状況と身長および
BMI について検討した。方法:2008 年から 2011 年に住民検診で異常なしと
された健常者 873 例と当施設で乳癌と診断された 554 例の原発性乳癌患者に
ついてアンケート調査を行い、閉経状況と身長、体重についてロジスティッ
ク回帰分析を行った。閉経状況については、50 歳以下を閉経前、50 ~ 60 歳
を閉経期、60 歳以上を閉経後と分類し、それぞれ検討した。結果:身長に関
し て は、 閉 経 前(OR:1.01、95%CI:0.98-1.05)、 閉 経 期(OR:1.02、
95%CI:0.98-1.07)と有意差を認めなかったが、閉経後については高身長ほ
どリスクが低かった(OR:0.95、95% CI:0.92-0.99、P < 0.01)。BMI につ
い て は、 閉 経 前(OR:0.99、95%:CI0.94-1.05)、 閉 経 期(OR:1.00、
95%CI0.94-1.07)では有意差を認めなかったが、閉経後では BMI が高いほ
どリスクが高くなった(OR:1.09、95%CI:1.02-1.15、P < 0.01 )。結語:
閉経後の BMI は、予想通り乳癌のリスク因子となった。閉経前、閉経期では
有意差を認めなかった。身長については、高身長ほどリスクが軽減しており、
過去の報告と一致しない結果となった。身長は、遺伝、ホルモン、幼少期の
栄養状態、環境などに左右される因子であり、国内でも風習がかなり異なる
ことから、身長に影響を与える因子と乳癌についてさらなる研究が必要であ
ると考えられた。
528
森川 あけみ 1、竹内 保 2、櫻谷 卓司 1、兼松 昌子 1、森 龍太郎 1、
森光 華澄 3、二村 学 3、石原 和浩 4、吉田 和弘 1
はじめに:クロマチン再構成因子複合体は ATP 依存性にヌクレオソーム構造
を変換し種々の転写因子が、DNA へ結合しやすくする、あるいは逆に結合し
にくくすることで細胞周期に密接に関係しており、その変異、機能不全が腫
瘍発生、進行に関わることが、明らかにされつつある。我々の研究グループ
は国内外に先駆けてクロマチン再構成因子複合体の DNA 結合因子であるヒト
ARID1A(synonyms: p250, BAF250) を同定し変異型 ARID1A が細胞周期促
進作用を担い癌発生、進行に関わっていることを報告してきた。目的:乳癌
における ARID1A 発現異常の進行、予後との関係を明らかにする。対象と方法:
2004 年 6 月から 2008 年 9 月までに岐阜大学腫瘍外科および関連施設にて浸
潤性乳癌で手術を受けた stageI ~ III の 127 例を対象とした。女性 125 例、
男性 2 例、年齢は 33 ~ 97 歳で StageI、II、III はそれぞれ 44、70、13 例であっ
た。ER(+)、( 境界域)、( -)は 88、13、26 例であった。HER2( + )、(-)、
未検は 26、97、4 例であった。両側乳癌、術前治療例は除外した。手術標本
のパラフィンブロックを用いて ARID1A に特異的な抗体を使用し、ARID1A
の発現異常を免疫組織染色法にて検討した。染色判定は染色低下部位での染
色濃度を 0 ~ 3 の 4 段階、染色低下面積割合を 0 ~ 5 の 6 段階に分けてスコア
化 し、 加 算 し て 検 討 し た。 さ ら に、MDA-MB157 の ARID1A を siRNA に て
20% ノックダウンした細胞を用いて網羅的遺伝子解析を行った。結果:乳癌
における ARID1A の発現を免疫組織染色法で検討したところ、70.9% の症例
で ARID1A の発現減弱や消失あるいは細胞内局在の異常がみられた。スコア
2,3 の群(全体の 25.2%)では、有意に DFS が短縮した(p=0.033)。OS も不
良 な 傾 向 で あ っ た が(p=0.111)有 意 差 は 認 め な か っ た。MDA-MB157 の
ARID1A をノックダウンした細胞による網羅的遺伝子解析では、浸潤に関与
する TIMP3 が低下していた。結論: 乳癌でも ARID1A の発現異常が認めら
れた。ARID1A の発現低下は浸潤を抑制に働く TIMP3 の発現低下を惹起し、
これが予後不良の一因と考えられる。
ポスター掲示
GP-1-08-02
GP-1-08-03
北里大学 医学部 外科
北里大学 医学部 外科
菊池 真理子、山下 継史、藁谷 美奈、南谷 菜穂子、西宮 洋史、加藤 弘、
小坂 愉賢、仙石 紀彦、榎本 拓茂、谷野 裕一、渡邊 昌彦
南谷 菜穂子、藁谷 美奈、菊池 真理子、西宮 洋史、小坂 愉賢、加藤 弘、
榎本 拓茂、仙石 紀彦、谷野 裕一、渡邊 昌彦
<背景>癌特異的 DNA メチル化は癌抑制遺伝子に高頻度に生じる異常であ
り,遺伝子発現低下を介して癌発生・進展に関連している.われわれは,消
化器癌において癌抑制遺伝子 HOPX を同定し,プロモ-ター DNA メチル化
が予後と相関することを報告してきた.しかし乳癌における HOPX- βプロモ
-ターのメチル化およびその臨床的意義についてはこれまで報告を認めず,
今回臨床的意義を明らかにするための研究を行った.<材料と方法>乳癌株
化細胞 7 種及び乳癌原発巣 172 例を解析した.株化細胞より RNA を抽出し,
RT-PCR にて HOPX の発現を確認し DNA メチル化との関連を調べた.組織検
体より DNA を抽出し,bisulfite treatment,TaqManMSP による HOPX プロ
モーターメチル化の定量を行い,臨床病理学的因子との関連性を解析した.
<結果> (1) 乳癌細胞株 7 種全てにおいて HOPX- βの発現は認めず,脱メチル
化処理で遺伝子再発現を認め , HOPX プロモーター DNA メチル化が確認され
た.(2)Q-MSP による乳癌組織における HOPX 定量値 Taq Meth value の中央
値 は 16.9(0.01 ~ 138.1)で あ っ た.pN,pStage,subtype,HER2 で,
methylation level に有意差を認めた.(3) 予後解析のため Log-rank plot を行
い,予後と最も強く関連する最適カットオフ値を検討した.Taq Meth value
4.3 および 24 で relative risk の最高値を認め,Low risk 群の cut off 値を 4.3,
high risk 群 の cut off 値 を 24 と し た.(4)cut off 値 4.3 及 び 24 に お い て,
high methylation 群では有意に予後が悪かった (p < 0.0001,p=0.0016).
χ 2 乗 検 定 で は,cut off 値 4.3 は 術 式 で 有 意 差 を 認 め,cut off 値 24 は pN,
pStage,subtype に有意差を認めた.多変量解析では,Taq Meth value ≧ 4.3,
Taq Meth value ≧ 24 は,共に pN 及び Ki67 と独立予後因子として抽出され
た.<結語>乳癌において HOPX の高メチル化が見られ , 乳癌悪性度を規定す
るバイオマーカーとしての可能性が示唆された.今後,悪性度に関わる機序
を明らかにしたい.
【背景】: CDO1 はシステインをシステインスルフィン酸(CSA)に変換する重
要な酵素である.われわれは,消化器癌において癌特異的メチル化を示す癌
抑制遺伝子として CDO 1(Cysteine dioxygenase type1)を同定した.乳癌
において,CDO1 遺伝子がアンスラサイクリン系薬剤感受性に関与しており,
promotor 領域における DNA メチル化がアンスラサイクリン術前治療をうけ
た乳癌の悪性予後に相関していることが報告されている.一方で,術前治療
を受けていない乳癌における臨床病理学的意義は知られていない.本研究は,
術前治療を受けていない原発性乳癌における CDO1 遺伝子のメチル化と臨床
病理学的因子の関連について検討した.【材料と方法】:7 種類の乳癌株化細胞
と 1996 年~ 2000 年に当院で手術を施行した術前治療を受けていない乳癌症
例で,臨床病理学的特徴が明らかになっている 172 例の乳癌組織を用いて,
定量 methylation specific PCR(Q-MSR) を施行した.【結果】:乳癌株化細胞
7 種類の内,SK-BR3 を除く 6 種類で CDO1 遺伝子のメチル化を認めた.乳癌
組織 172 例を CDO1 遺伝子メチル化の中央値で 2 群に分類すると,10 年原病
生存率は高メチル化群が 67%,低メチル化群が 87% と,高メチル化群が有
意に不良だった (p=0.004).Log rank plot 法では CDO1 メチル化値が高いほ
ど予後不良であった.多変量解析で,Ki-67 陽性 (p < 0.0001, HR5.2) とホル
モン受容体陰性 (p=0.006, HR3.2) と CDO1 遺伝子の高メチル化 (p=0.01,
HR2.4) が予後関連因子となった.Subtype 別で解析すると,特にトリプルネ
ガティブ乳癌において,10 年原病生存率は高メチル化群が 28%,低メチル化
群が 80% と高メチル化群が有意に予後不良だった (p=0.007).【考察】:われ
われは,乳癌の CDO1 遺伝子メチル化が予後と強く関連していることを明ら
かにした.特にトリプルネガティブ乳癌の予後因子として重要である可能性
が示唆された.
乳癌における HOPX 遺伝子メチル化の臨床的意義
乳癌における CDO1 遺伝子メチル化と臨床病理学的因子の検討
GP-1-08-05
乳癌における FISH 法を用いた KRAS 遺伝子異常の意義
Androgen receptor 陽性 triple negative 乳癌の臨床病理学
的特徴
広島大学病院 病理診断科
1
城間 紀之、尾田 三世、有廣 光司
3
【緒言】HER2 は、ホモあるいはヘテロダイマーを形成して RAS/MAPK シグナ
ル伝達経路を活性化する。しかし乳癌細胞において KRAS 遺伝子の点変異と、
KRAS 遺伝子の増幅あるいは 12 番染色体の数的異常の意義は不明な点が多い。
【 対 象 】本 学 の 乳 癌 症 例 フ ァ イ ル の 中 か ら 浸 潤 性 乳 管 癌 31 例 を 用 い た。
Subtype別にはLuminal A 6例、Luminal B 19例、HER2 3例、Triple negative
(TN)3例であった。【方法】乳腺腫瘤割面を擦過し、1症例あたり50個の細胞
を対象にKRASプローブ(Abbott社製)、CEP12プローブ(Sure FISH社製)を用
いて型通りにFluorescence in situ hybridization (FISH)法を行い、臨床病理学
的因子との関係を検討した。KRAS遺伝子の増幅はKRAS/CEP12比2以上、CEP
12 polysomyは平均CEP12 signal 3以上と定義した。更に1例あたりのKRAS/
CEP12比が2以上の細胞の割合を算出した。
【結果】平均KRAS/CEP12比は、
Luminal A、Luminal B、HER2、TNでそれぞれ1.23、1.1、1.0、1.1であった。
腫瘍細胞1個あたり平均KRASシグナルをsubtype別に見ると、それぞれ2.65、
2.74、2.39、2.39であり、どちらも有意差はなかった。一方、CEP12シグナル
は、それぞれ2.26、2.52、2.74、2.16であった。浸潤性乳管癌31例中1例(3%)
ではKRAS遺伝子の増幅を認めた。増幅症例は、Luminal Aの硬癌であった。そ
の他の症例ではKRAS遺伝子の増幅は認めなかった。一方、HER2遺伝子増幅の
ある浸潤性乳管癌15例中6例(40%)でCEP12 polysomyを認めた(p<0.05)。
KRAS/CEP12比、KRASあるいはCEP12の平均シグナル数とリンパ節転移、リ
ンパ管侵襲、静脈侵襲、核異型度の間に有意な相関はなかった。
【考察】HER2遺
伝子増幅とCEP12 polysomyと関連していることがわかった。さらにKRAS遺
伝子検索の結果も併せて報告する。
昭和大学病院 乳腺外科、2 昭和大学江東豊洲病院 乳腺外科、
昭和大学病院 臨床病理診断科
小杉 奈津子 1、明石 定子 2、広田 由子 3、中島 恵 1、桑山 隆志 1、
渡邊 知映 1、佐藤 大樹 1、池田 紫 1、橋本 梨佳子 1、高丸 智子 2、
森 美樹 1、繁永 礼奈 2、吉田 玲子 1、大山 宗士 1、吉田 美和 2、
榎戸 克年 2、沢田 晃暢 1、中村 清吾 1
【目的】近年、triple negative 乳癌 (TNBC) を遺伝子パターンにより分類し、
それぞれに有効な治療法が示唆されている。その中で androgen luminal
receptor type はより簡便に androgen receptor(AR) に対する免疫染色で代
用される可能性があり、注目を集める1つの entity である。AR 陽性乳癌は、
ホルモン受容体陽性乳癌でも高頻度に認められるが、TNBC においても 10 ~
43% 認められる。一般的には androgen は乳癌の進展を抑制すると考えられ
ているが、乳癌発癌における AR の意義については明らかにされていないこと
が多い。臨床的には AR 陽性 TNBC には抗 androgen 療法が有効との報告もあ
り、AR の染色は TNBC の適切な治療選択のために有用な検査になると期待さ
れる。
【対象】2010 年~ 2014 年に当院で手術をした原発性 TNBC65 乳房(うち NAC
施 行 例 は 29 例 )の 手 術 標 本 の CNB 標 本 に 対 し、 抗 AR 抗 体(novocastra,
AR27)にて免疫染色を実施した。AR は 1%以上の細胞が染色された症例を陽
性と判定とした。Ki67 は MIB1 にて免疫染色し、20%以上で陽性と判定した。
TN の判断は治療開始前の CNB にて実施した。また、対側乳癌や他臓器癌に対
して化学療法の既治療例は除外した。
【結果】AR 陽性は 65 例中 13 例(20%)であり、年齢中央値は AR 陽性例で 65
歳・陰性例で 48.5 歳と前回同様陽性例では高齢であった。AR 陽性例では術
前 及 び 術 後 の ki67 は 有 意 に 低 値 を 示 し た。( 9% vs 91%, p=0.0016,
13.5% vs 86.5%, p=0.0009)組織学的異型度は陰性例で高値を示す傾向を
認めた。組織学的効果判定で Grade 2以上の効果を示した 4 例はいずれも AR
陰性例であったが、少数例のため、有意差は認めない。ただし術前化学療法
症例においては手術標本での AR の検討であったため、病理学的完全奏功例が
含まれていない。
【考察】AR 陽性 TN 乳癌は高齢者に多く、Ki67 低値が多く、化学療法の対象と
なりにくいことが示唆された。 529
一般セッション(ポスター掲示)
GP-1-08-04
ポスター掲示
GP-1-08-06
GP-1-08-07
1
1
次世代シーケンスを用いたタキサン系薬剤抵抗性に関わる遺伝
子の探索
2
術前化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌における HMGB1
発現の検討
名古屋市立大学病院 乳腺内分泌外科、
名古屋市立大学大学院 医学研究科 実験病態病理学
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科、
防衛医科大学校 病態病理学講座、
3
国立がん研究センター中央病院 病理科、
4
国立がん研究センター中央病院 乳腺外科
2
遠藤 友美 1、高橋 智 2、吉本 信保 1、浅野 倫子 1、波戸 ゆかり 1、
遠山 竜也 1
田辺 裕子 1、津田 均 2、吉田 正行 3、木下 貴之 4、公平 誠 1、
温泉川 真由 1、山本 春風 1、米盛 勧 1、清水 千佳子 1、藤原 康弘 1、
田村 研治 1
一般セッション(ポスター掲示)
背景:近年、次世代シーケンサーの登場により、膨大かつ正確なゲノム情報
が短時間に得られるようになった。このようなデータを元にして、最近、
HER2「陰性」乳癌における HER2 遺伝子の体細胞変異が、HER2 に対する分子
標的治療への効果や抵抗性に関与することが報告された。目的:乳癌治療に
おいて、アンスラサイクリン系およびタキサン系薬剤キードラッグとして使
用されてきたが、近年、タキサン系薬剤に無効な症例の存在が大きな臨床的
課題となっている。本研究では、多数のタキサン抵抗性乳癌を対象に全エク
ソンシーケンス解析を行うことにより、共通する体細胞変異を見出し、その
機能解析を通して、タキサン抵抗性メカニズムの解明とその克服を目指すこ
とを目的とする。方法と対象:アンソラサイクリン系薬剤が著効したにもか
かわらず、タキサン系薬剤を投与後、腫瘍が著明に増大してしまった 6 症例の
凍結乳癌組織から、ゲノム DNA を抽出した。また、そのうち 3 症例は血液か
らも DNA を抽出し、計 9 検体を対象に HiSeq(Illumina)を使用して全エクソ
ンシーケンスを行った。それらの結果から、生殖細胞変異の除外、すでに報
告のある変異の除外、蛋白構造への影響の大きさの予測、共通の変異の抽出
などを考慮して、タキサン抵抗性へ関与が強いと思われる変異に絞り込んだ。
結果:タキサン抵抗性症例において 6 例に共通する変異を 4 箇所、5 例に共通
する変異を 11 箇所見出した。今後、当院で術前または術後化学療法でタキサ
ン系薬剤を使用した約 100 例の total RNA を抽出し、上記変異の存在する遺
伝子の発現と予後について検討を行う予定である。結語:次世代シーケンサー
を用いて体細胞変異を網羅的に検索することで、タキサン抵抗性に関与する
遺伝子を抽出する試みを行った。今後、この遺伝子と予後との関係の調査、
体細胞変異自体が薬物耐性に関与するかを細胞実験で確認する予定である。
背景:トリプルネガティブ乳癌(Triple negative breast cancer:TNBC)の術
前化学療法に抵抗性を示す症例は約 5% 存在しており、新たな治療開発のた
め、治療反応を予測する因子の同定が必要とされる。HMGB1 は腫瘍増殖関連
因子と考えられており、乳癌細胞株における検討では、HMGB1 高発現と治療
抵抗性の関連が報告されている。方法:治療抵抗性因子を探るため、102 名
の TNBCs を対象に後方視的検討を行った。術前化学療法中に病状進行し手術
を施行した 22 名(PD 群)に対して、術前化学療法を行わずに手術を実施した
80 名を対照群とした。術前化学療法には、アンスラサイクリン系抗癌剤(FEC
または AC)に続いてタキサン系抗癌剤(パクリタキセルまたはドセタキセル)
を用いた。評価項目は、組織型、Ki67、分裂数、HMBG1 とした。群間差は
X2 検定を用いて評価した。結果:PD 群は、浸潤性乳管癌 14 名 (64% )、化
生癌 8 名(36%)、対照群はそれぞれ 59 名(74%)、1 名(1%)であった(p <
0.001)。また、Ki67(63% vs. 39%, p < 0.001)、分裂数(61 vs. 35 /10
per high-power-field, p < 0.001)、 細 胞 質 内 HMGB1 高 発 現(86% vs.
51%, p=0.002)は、対照群と比較し PD 群において有意に高値を示した。核
内 HMGB1 は両群で高発現(91% vs. 100%, p=0.045)であった。結語:細
胞質内 HMGB1 高発現は、トリプルネガティブ乳癌に対する術前化学療法の抵
抗性を予測する因子である可能性が示唆された。
GP-1-08-08
GP-1-08-09
乳癌原発部位と再発転移部位における乳癌幹細胞の発現比率の
変化とホルモンレセプターとの相関性
原発性乳癌組織における膜蛋白 Axl 発現の意義に関する研究
1
東京慈恵会医科大学 医学部 乳腺内分泌外科
九州大学 消化器・総合外科、2 九州大学 九州連携臨床腫瘍学
田中 仁寛 1、徳永 えり子 1,2、井上 有香 1、山下 奈真 1、岡野 慎士 1、
前原 喜彦 1
武山 浩、鳥海 弥寿雄、野木 裕子、塩谷 尚志、加藤 久美子、
神尾 麻紀子、井廻 良美、三本 麗、木下 智樹、内田 賢
<背景>白血球表面マーカーの一種である CD44 と CD24 の抗体を使用した
免疫染色において、CD44 陽性で CD24 陰性あるいは弱陽性 [CD44 (+),
CD24(- /low)] となる乳癌細胞は、高い腫瘍増殖能や転移能を持つことがマ
ウスの移植実験において証明されており、いわゆる乳癌幹細胞である可能性
が高いと考えられている。また微小骨転移巣では転移細胞のほとんどが CD44
(+), CD24(- /low) の細胞であったとの報告もある。<目的>今回我々は原
発腫瘍と再発転移部位で CD44 (+), CD24(- /low) 細胞の発現数を測定し、
この細胞が再発転移の原因の一つであるかを検討した。またこの細胞の発現
比率の変化と ER, PgR, Her-2 による腫瘍悪性度分類との相関性を検討した。
<方法>症例は手術後 5 年以内に再発、転移を生じた乳癌 12 例である。その
臨床病期は stage I 2 例、stage II 8 例、stage III 2 例であった。またこれら
12 例の再発部位は骨転移 1 例、肺転移 2 例、リンパ節転移 3 例、胸筋内再発 5
例、乳房内再発 1 例であった。これら 12 例の原発腫瘍、再発転移部位のホル
マリン固定切片にそれぞれ CD44、CD24、ER, PgR, Her-2 抗体を作用させ
染色した。<結果> CD44 (+), CD24(- /low) 細胞の発現数を腫瘍細胞全体
の 10%以下、10-50%、50%以上に分類して評価したところ、原発腫瘍では
6 例が 10%以下、5 例が 10-50%、1 例が 50%以上であった。これに対して
再発転移部位では 1 例が 10%以下、2 例が 10-50%、9 例が 50%以上であった。
またこの細胞の発現数は染色した 12 例中 10 例で、原発腫瘍より再発転移部
位の方が増加していた。ER, PgR, Her-2 染色結果は、原発腫瘍では 9 例が
luminal A、1 例が luminal B、1 例が Her-2、1 例が triple negative であった。
再発転移部位では 7 例が luminal A、1 例が luminal B、1 例が Her-2、3 例が
triple negative であり、再発転移部位で 2 例が luminal A から triple negative
に変化していた。<結論> CD44 (+), CD24(- /low) 細胞数の増加は乳癌の
再発転移に関与している。
【背景】膜受容体型チロシンキナーゼ Axl は、癌の浸潤や化学療法抵抗性と関連
しており、新たな治療標的として注目されている。乳癌においては Axl 発現が
ER 発 現 と 相 関 す る こ と、 上 皮 間 葉 系 移 行(epithelial-to-mesenchimal
transition: EMT) に関連する vimentin により Axl 発現が上昇することが報告
されている。【目的】原発性乳癌における膜蛋白 Axl 発現を解析し、臨床病理学
的因子、予後、vimentin 発現との関連を検証する。【対象】2000-2010 年に
当院で手術を施行した原発性乳癌 (cStage I-III) の中で vimentin の発現が解
析されている 151 例。【方法】乳癌組織での Axl 蛋白発現を免疫組織化学染色
にて解析した。【結果 1】Axl 発現の proportion 平均値 61% であり、60% 以下
を低発現群(63 例 , 42%)、61% 以上を高発現群(88 例 , 58%)に分類した。
Axl 発現と年齢、浸潤径、リンパ節転移に有意な相関は認められなかった。
Axl 高発現群は低発現群と比べ、核グレードが有意に低く (p=0.005)、Ki67
が低い傾向を認めた(p=0.052)。また Axl 高発現群は低発現群と比べ、ER 陽
性症例を多く認め(p=0.075)たが、PR、HER2 発現は 2 群間に差を認めなかっ
た。ER 陽性群では Axl 高発現群の核グレードが低く (p=0.016)、Ki67 は低値
であったが、ER 陰性群では Axl 発現と核グレード Ki67 との相関は認められな
かった。症例全体においては、Axl 発現と予後に有意な関連は認められなかっ
た。【 結 果 2】vimentin と Axl 発 現 と は 有 意 な 関 連 は 認 め ら れ な か っ た が、
vimentin+/Axl 高発現群とその他 (vimentin+/Axl 低発現、vimentin-/Axl 高
発現、または vimentin-/Axl 低発現 ) を比較すると、vimentin+/Axl 高発現群
では Ki67 が高い傾向を認め(p = 0.068)、無再発生存率 (p=0.027)、全生存
率 (p=0.001) は共に不良であった。【結語】Axl 発現は ER 発現と相関し、ER
陽性群では低悪性度と関連していた。一方、vimentin+/Axl 高発現群は有意
に予後不良であることが示された。
530
ポスター掲示
GP-1-08-10
GP-1-08-11
乳癌における C4.4A と ALDH1 の発現と上皮間葉転換の検討
1
乳がん腋窩リンパ節転移の予測にむけた転写開始点のゲノムワ
イドな探索
兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科、2 兵庫医科大学 病院病理部
1
順天堂大学医学部乳腺内分泌外科、2 理化学研究所 ライフサイエンス術基
盤研究センター 機能性ゲノム開発ユニット、3 順天堂大学 病理部、4 理化
学研究所 予防医療・診断技術開発プログラム、5 理化学研究所 情報基盤セ
ンター ゲノミクス応用開発ユニット、6 神奈川県立がんセンター 臨床研究
所 がん治療学部、7 神奈川県立がんセンター 乳腺内分泌外科
井上 奈都子 1、八木 智子 1、柳井 亜矢子 1、宮川 義仁 1、西向 有沙 1、
榎本 敬恵 1、今村 美智子 1、村瀬 慶子 1、高塚 雄一 1、渡邊 隆弘 2、
三好 康雄 1
崔 賢美 1,2、荒川 敦 3、川路 英哉 2,4,5、伊藤 昌可 2,4、大津 敬 6、
宮城 洋平 7、清水 哲 7、林崎 良英 4、齊藤 光江 1
〈背景、目的〉CAGE 法(Cap Analysis of Gene Expression)は、ランダムプ
ライマーによる cDNA と不完全長 RNA を除去する cap-trapper 法を原理とし、
次世代シークエンサーを組み合わせることによって、転写開始地点(TSS)を
網羅的に解析する方法である。複数存在するプロモータ領域を網羅的に読み
取ることによって、マイクロアレイではとらえることのできない特異的な未
知な RNA であっても発現を測定できることが特徴である。乳がんリンパ節転
移は乳がん患者全体の 30%ほどに認められ、重要な予後因子の中の一つであ
る。現在腋窩リンパ節転移の評価はセンチネルリンパ節生検で行い陽性であっ
た場合のみ追加郭清を行うことが標準治療であるが、術前に予測する手段は
画像評価以外なく、生物学的予測マーカーは明らかになっておらず臨床応用
されていないのが現状である。そこで本研究では、原発性乳がん転移陽性郡
と陰性郡において、原発巣における転写開始活性の網羅的な定量を CAGE 法
を用いて実施した。〈手法〉神奈川県立がんセンターにて 2005 年 12 月から
2008 年 12 月 の 間 に 浸 潤 性 乳 が ん と 診 断 さ れ 手 術 さ れ た 81 例 に 関 し て、
CAGE 法によるプロファイリングを実施した。〈結果〉免疫染色によるサブタ
イ プ で は、Triple negative(ER-HER2-)24 例、HER2 type(ER-HER2+)16
例、Luminal type(ER+HER2+/-)41 例であった。そこで CAGE 法により推
定された ER、HER2 遺伝子の転写量を調べたところ、免疫染色におけるサブ
タイプと非常に相関していることを確認した。次に subtype 毎に腋窩リンパ
節転移陽性郡と陰性郡における転写開始活性の差異を比較解析したところ、
HER2 type 乳がんにおけるリンパ節転移陰性郡において、優位に発現する
糖タンパクの一種である遺伝子を同定した。本報告では、これらの CAGE 解
析と検証実験の結果を含めて報告する。
GP-1-08-12
GP-1-08-13
1
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科
浸潤性乳管癌における E-cadherin 及び vimentin 発現の臨床
的意義
乳癌原発巣 CXCR4・CCR7 発現と腋窩リンパ節転移の相関につ
いての検討 ( 第 3 報 )
九州大学大学院 消化器・総合外科、2 九州大学大学院 九州連携臨床腫瘍学
山下 奈真 1、徳永 えり子 2、井上 有香 1、田中 仁寛 1、前原 喜彦 1
【背景】E-cadherin は細胞間接着に関与しており、従来、癌進展の抑制因子と
して機能すると考えられてきた。一方、vimentin は中間径フィラメントの一
つで、通常は間葉系細胞に発現し細胞形状の維持、力学的ストレスに対する
抵抗性に関与しているが、様々な癌腫において、その発現上昇が報告されて
いる。がん転移のメカニズムとして重要とされる上皮間葉系移行 (EMT;
epithelial-mesenchymal transition) の過程においても、E-cadherin 等の細
胞接着因子の発現低下および vimentin 等の間葉系マーカーの発現上昇が見ら
れ る と さ れ て い る。 と こ ろ が 近 年、 が ん 抑 制 因 子 と 考 え ら れ て き た
E-cadherin の機能はより複雑で癌進展において促進因子としても働くという
知見も散見される。【目的】浸潤性乳管癌における E-cadherin 及び vimentin
発現の臨床的意義を検証する。【対象】当科にて手術を施行した術前薬物治療
歴 の な い 浸 潤 性 乳 管 癌 切 除 例 659 例 の う ち 177 例 を 対 象 と し た。【 方 法 】
E-cadherin、vimentin 蛋白発現を免疫組織化学染色法にて評価した。また、
原発巣・リンパ節転移巣の揃った 65 症例で E-cadherin と vimentin 蛋白発現
を評価し比較検討した。【結果】vimentin 発現症例は DFS、OS いずれも予後
不良であった (p=0.019, p=0.0044)。一方 E-cadherin 発現と予後との相関
は認められなかった。原発巣における E-cadherin・vimentin の発現パターン
で は、E-cadherin 陽 性 /vimentin 陽 性 群 に お い て 最 も 予 後 不 良 で あ り、
E-cadherin 陽 性 /vimentin 陰 性 群 で は 最 も 予 後 良 好 で あ っ た (DFS;
p=0.0184, OS; p < 0.0001)。E-cadherin 発現は原発巣・リンパ節転移巣間
での相関は認められなかったが、vimentin 発現は原発巣・リンパ節転移巣間
で 一 致 し て い た。 ま た、 リ ン パ 節 転 移 巣 に お い て も E-cadherin 陽 性 /
vimentin 陽性群は最も予後不良であった (DFS; p=0.15, OS;p=0.03)。【結
論】E-cadherin 陽性 /vimentin 陽性である乳癌は aggressive な性質を示す事
が示唆され、必ずしも E-cadherin 陽性である事が癌進展を抑制するとは限ら
ないと考えられる。
安藤 孝人、藤井 公人、中野 正吾、後藤 真奈美、塩見 有佳子、
高阪 絢子、今井 常夫
【背景・目的】CXC chemokine receptor type 4 ( 以下 CXCR4) は G タンパク
共役受容体で種々の癌転移に関与しているとされる。腫瘍の転移が起こりや
すい臓器において CXCR4 のリガンドである CXCL12 が発現、同時に腫瘍細胞
の細胞質では CXCR4 自体の発現が亢進するとされる。同じケモカインレセプ
ターの CC chemokine receptor 7( 以下 CCR7) は、食道癌をはじめとする癌
のリンパ節転移に関与していると報告されている。乳癌領域において術後再
発の危険因子としてリンパ節転移の有無は重要だが、CXCR4 と CCR7 の原発
巣での発現とリンパ節転移の相関について検討を行った。【方法】2006 年から
2013 年の間に原発性乳癌で手術を行った症例 111 例を対象としたケース・コ
ントロールスタディを行った。cT1・2N0M0 で手術を行い、pT1・2N1M0 で
あった原発性乳癌 38 例をケース群とした。コントロール群は cT1・2N0M0
で手術を行い、pT1・2N0M0 であった 76 例とした。統計学的処理はχ 2 検定
にて評価を行い、P < 0.05 を有意差とした。【結果】CXCR4:ケース群の陽性
22 例、陰性 16 例、コントロール群の陽性 20 例、陰性 56 例、P value は 0.002
であった。CCR7:ケース群の陽性 30 例、陰性 8 例、コントロール群の陽性
57 例、陰性 19 例、P value は 0.816 であった。【結論】CXCR4 は乳癌 T1・2
病変の原発巣細胞質中において、リンパ節転移を有する症例に有意に多く発
現していたが、CCR7 の発現はリンパ節転移との相関は認められなかった。
531
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】C4.4A(a glycosylphosphatidyl-inositol-anchored membrane protein)
は、上皮間葉転換(EMT)に関与する蛋白として同定され、大腸癌、肺癌、胃癌
では高発現群で予後不良である。また、ALDH1(aldehyde dehydrogenase 1)
は乳癌の幹細胞マーカーとして知られており、ALDH1陽性乳癌では予後不良と
報告されている。癌幹細胞はEMTを生じる能力を有することから、C4.4Aなら
びにALDH1は、EMTを介して乳癌の予後に影響しているものと推測される。そ
こで今回我々は、C4.4AならびにALDH1の発現とEMTの相関を検討した。
【対
象と方法】原発性乳癌によって当科で手術切除した91例を対象に、切除検体に
おけるC4.4A、ALDH1の発現と、EMTの指標としてVimentinの発現を、免疫
組織染色によって評価した。カットオフ値は、C4.4A:10%、ALDH1:5%、
Vimentin:1%とした。
【結果】C4.4A、ALDH1、Vimentinの陽性率は、それぞ
れ53.8% , 15.4% , 13.2%であった。臨床病理学的因子との相関では、C4.4A
はHER2陽性で(78.9% vs 47.2% , P=0.014)
、ALDH1はエストロゲン受容体
(ER)陰性で(29.2% vs 10.4% , P=0.045)有意に陽性率が高かった。Vimentin
に関しては、ER陰性(37.5% vs 4.5% , P=0.0002)、プロゲステロン受容体陰
性(29.0% vs 5.0% , P=0.025)で陽性率が高かった。また、ALDH1では腫瘍
径の大きい群で陽性率が高く、Vimentin陽性群では核異型度が高かったが、他
の 因 子 に 関 し て は、 い ず れ も 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た。ALDH1と
Vimentinの発現には相関する傾向がみられたものの(P=0.085)
、C4.4Aと
Vimentin、C4.4AとALDH1に関しては、いずれも有意な相関は認められなかっ
た。
【考察】C4.4AとALDH1はいずれもVimentinの発現と相関は認められず、
乳癌において両者は、EMTを直接規定している因子ではないと考えられた。
C4.4AとALDH1の発現にはサブタイプ特異性があり、それぞれのサブタイプに
おいてEMT以外のメカニズムで機能している可能性が示唆された。
ポスター掲示
GP-1-08-14
GP-1-08-15
DCIS における Tumor Infiltrating Lymphocytes 評価の有
用性の検討
1
トラスツヅマブ療法後の乳癌組織内への免疫細胞浸潤の検討
1
東京慈恵会医科大学 乳腺・内分泌外科、2 東京慈恵会医科大学 病理学講座
日野記念病院 乳腺外科・外科、2 滋賀医科大学 乳腺・一般外科
糸井 尚子 1,2、徳田 彩 1、花澤 一芳 1、冨田 香 2、北村 美奈 2、河合 由紀 2、
梅田 朋子 2、森 毅 2、久保田 良浩 2
神尾 麻紀子 1、野木 裕子 1、三本 麗 1、井廻 良美 1、加藤 久美子 1、
塩谷 尚志 1、鳥海 弥寿雄 1、内田 賢 1、鈴木 正章 2、武山 浩 1
【背景】免疫細胞と腫瘍細胞の相互作用は、癌の発症および進行に重要である.
腫瘍浸潤リンパ球(TIL:Tumor Infiltrating Lymphocytes)の有無と程度は
腫瘍増殖の制御や排除に関連し,浸潤性乳管癌では化学療法の効果予測因子
としても注目されているが,非浸潤性乳管癌(DCIS)における報告は少ない.
【目的】今回我々は,DCIS における TIL と既知の臨床病理学的因子との相関関
係について検討した.【対象】2004 年 1 月から 2014 年 3 月に当院で手術を施
行した 140 例の DCIS 症例.【方法】ER,PgR,HER2,Ki-67 の発現は免疫組
織学的に評価し,カットオフ値を HR(Hormone Receptor : ER / PgR)
:
10%,HER2:Hercep test (3+) 10%,Ki-67:20% とした. TIL は HE 染
色において DCIS の存在する間質との比率をパーセントで示し,TIL 陰性(050%), 陽 性( > 50%)に 分 類 し た.【 結 果 】年 齢:31-86( 中 央 値 54)歳.
TIL 陽 性 群 は HR+HER2-:25 / 105(24 %),HR+HER2+:6 / 9(67 %),
HR-HER2+:19 / 19(100 %),HR-HER2-:6 / 7(86%) で あ り
HR+HER2+,HR-HER2,HR-HER2- で有意な TIL の増加を認めた(p < 0.01).
TIL 陽性群では陰性群と比較して核グレードが高く(p < 0.05),Ki-67 の高発
現症例が有意に多かった(p < 0.01).【結語】TIL は DCIS においても浸潤性
乳管癌と同様に,既知の臨床病理学的因子との関連を認めた.高悪性度のサ
ブタイプでは DCIS の時点で TIL が増加しており,腫瘍の進展に免疫応答が関
与していると考える.
一般セッション(ポスター掲示)
【背景】Tumor infiltrating lymphocytes(TIL) はトリプルネガティブ乳癌や
HER2 陽性乳癌の化学療法効果予測因子や予後予測因子として近年注目されて
いる。そこで、術前化学療法にトラスツヅマブ (Tz) を併用することにより
TIL が増加するかどうかを検討した。【対象と方法】2011 年 1 月から 2014 年
12 月までに術前化学療法後に手術が行われた乳癌 24 例を対象に CD4 および
CD8 の免疫染色を行い、染色強度により 0 ~3でスコア化した。術前に Tz 療
法を施行した群 (Tz+ 群 ) としていない群 (Tz -群 ) で CD4 および CD8 陽性リ
ンパ球の浸潤に差があるかどうか検討した。【結果】患者の平均年齢は 53 歳
(38-72 歳 )。サブタイプ別には LuminalA 5 例 , LuminalB 2 例、LuminalHER2 6 例 ,HER2 type 6 例 ,Triple negative 5 例で、術前化学療法として
全例にアンスラサイクリン及びタキサンが投与されていた。Tz+ 群 12 例、Tz
-群 12 例で HER2 陽性乳癌には全例 Tz が投与されていた。CD 4陽性リンパ
球 の 平 均 ス コ ア は Tz+ 群 2.0、Tz- 群 1.58 で 優 位 な 差 は な か っ た(p=0.3)
CD8 陽性リンパ球の平均スコアは Tz+ 群 2.0、Tz -群 1.16 で、Tz 治療を行っ
た群において優位に増加を認めた (p=0.01)。CD4 陽性リンパ球と CD8 陽性
リンパ球浸潤の間には緩やかな正の相関が認められた。【考察】これまでにも
化学療法により TIL が誘導されることが報告されており、抗腫瘍効果や予後と
の関連が指摘されている。今回の検討では、Tz 投与により CD 8陽性 T 細胞が
優位に増加しており、Tz の作用機序として NK 細胞や単球を介した ADCC 作用
によるものの他に、宿主の細胞性免疫を誘導している可能性が示唆された。
今後症例数を増やし、Tz の治療効果との相関を検討する予定である。
GP-1-08-16
GP-1-08-17
山口大学 医学部 消化器・腫瘍外科
京都大学 医学部 乳腺外科
前田 訓子、西山 光郎、北原 正博、井上 由佳、徳光 幸生、兼清 信介、
前田 和成、山本 滋、硲 彰一
山口 絢音、鈴木 栄治、川島 雅央、高田 正泰、竹内 恵、石黒 洋、
佐藤 史顕、戸井 雅和
乳癌腫瘍浸潤リンパ球における Tim-3 発現および乳癌腫瘍の
Galectin-9 発現と予後に関する検討
腫瘍浸潤 EGFR 陽性免疫細胞とトリプルネガティブ乳癌の組織
グレードとの関連性
【はじめに】T cell immunoglobulin and mucin 3(Tim-3)は、活性化T細胞
のうち、特に 1 型 helper T 細胞(Th1)細胞や CD8+T 細胞に発現しており、
慢性炎症や腫瘍微小環境での T 細胞疲弊に深く関わっている。Galectin-9 は、
腫瘍細胞に多く発現しており、Tim-3 のリガンドの一つとして Th1 細胞の無
力化やアポトーシスを促し免疫抑制に作用することが報告されている。乳癌
腫瘍における Galectin-9 の発現と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)での Tim-3 の発現
を調べ、臨床病理学的因子、予後との関連を検討した。
【対象】当科で手術を行っ
た浸潤性乳管癌患者 25 例を対象とした。【方法】乳癌腫瘍に対し抗 Galectin-9
抗 体、 抗 Tim-3 抗 体 を 用 い て そ れ ぞ れ 免 疫 組 織 学 的 染 色 を 行 っ た。
Galectin-9 発現は腫瘍細胞の染色強度により陰性群、陽性群、強陽性群に分
類し評価を行った。Tim-3 抗体染色では TIL の Tim-3 陽性細胞数を計測し、
高発現群と低発現群に分類し評価した。【結果】Tim-3 高発現群の無再発生存
率は有意に低下していた(P=0.0353)。Galectin-9 では無再発生存率に差を
認めなかった。Tim-3 陽性細胞数と Galectin-9 染色強度の間には負の相関を
認めた(P=0.005, r=-0.5423)。臨床病理学的因子(年齢、腫瘍径、リンパ節
転移、ホルモンレセプター、HER2、核グレード)で検討を行ったところ、
Tim-3 および Galectin-9 発現といずれの因子も関連を認めなかった。【結語】
少数例の検討ではあるが、乳癌腫瘍 TIL における Tim-3 発現は不良な予後を
予 測 し う る 有 用 な マ ー カ ー と 考 え ら れ た。 今 回 の 検 討 で は Tim-3 と
Galectin-9 発現に負の相関関係を認めており、これらの相互作用は腫瘍の免
疫逃避機構に関与していると考えられた。
532
近年腫瘍とその周囲の微小環境との相互作用が注目されており、2014 年乳癌
学 会 コ ン セ ン サ ス カ ン フ ァ レ ン ス に お い て も Tumor Infiltrating
Lymphocyte(TIL) の Biomarker としての重要性が示された。トリプルネガ
テ ィ ブ 乳 癌 (TNBC) に お い て Lymphocyte-predominant breast cancer
(LPBC) は高い組織グレードと相関があり、TNBC の中でも EGFR 陽性 TNBC
は組織グレードが高いとの報告がある。我々は EGFR 陽性 TNBC の自験例につ
いて review し、EGFR 陽性 TNBC と TIL との関係性について調べた。対象は
2010-2012 年 に 当 院 で 手 術 前 針 生 検 を 施 行 さ れ た 手 術 可 能 な EGFR 陽 性
TNBC の う ち basal-like phenotype と 診 断 さ れ た 29 例。LPBC と mSBR
Grade 及び各スコア、Ki-67 との相関について検討した。また、自験例で認め
た EGFR を発現した TIL(EGFR-TIL) について、High/Low EGFR-TIL と Grade
及び各スコア、Ki-67 等との相関とを検討し、EGFR 陽性 TNBC における TIL
及び EGFR-TIL の意義を確認した。結果、EGFR 陽性 TNBC において LPBC と
Grade、 各 ス コ ア、Ki-67 に 相 関 は な か っ た。 一 方、High EGFR-TIL と
Grade3 とに有意な相関が認められた。腺構分化スコアは全症例で点であった。
LPBC は核分裂スコア 3 と有意な相関を認めたが、核異型度スコアとは相関を
認めなかった。一方、EGFR-TIL は核異型度スコア3と有意な相関を認めたが、
核分裂スコアとは相関を認めなかった。また Ki-67 については High/Low
EGFR-TIL と相関を認めなかった。よって、High EGFR-TIL は Grade 3、特
に核異型と相関していると考えられた。High EGFR-TIL は腫瘍の悪性度と相
関している可能性があり、EGFR-TIL が腫瘍の予後や治療反応性に与える影響
について更なる研究が必要と考えられる。
ポスター掲示
GP-1-08-18
GP-1-08-19
HER2 陽性乳癌における腫瘍リンパ球浸潤の臨床的意義
Tumor-infiltrating lymphocytes(TILs) は HER2 陽性乳癌
の術前化学療法効果予測因子となりうるか?
1
稲城市立病院 外科、2 稲城市立病院 病理診断部、
3
慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科
1
3
1
1
1
1
東京医科大学八王子医療センター 乳腺科、
東京医科大学八王子医療センター 病理診断科、3 八王子乳腺クリニック、
4
川崎医科大学 病理 2、5 立川共済病院 外科
2
1
松本 暁子 、神野 浩光 、齋藤 淳一 、安藤 知史 、藤井 琢 、中村 哲 、
上山 義人 2、高橋 麻衣子 3、林田 哲 3、北川 雄光 3
松尾 聡美 1、石川 裕子 1、柴崎 ゆかり 1、天谷 圭吾 1、芹澤 博美 2、
三坂 武温 1,3、森谷 卓也 4、松永 忠東 1、服部 裕昭 5、林 光弘 1
(背景と目的)かつて、腫瘍の近傍に浸潤するリンパ球様細胞の存在は pericancerous lymphoid cell infiltration と呼ばれ、予後良好の指標といわれて
いた。近年、このような現象に注目し腫瘍間や腫瘍内に存在するリンパ球を
Tumor-infiltrating lymphocytes(TILs) 定義し、術前化学療法の治療効果予
測因子となりうるといった報告がなされている。今回、我々は、術前化学療
法を施行した HER2 陽性乳癌を対象に、TILs の程度と治療効果の関係を後方
視的に検討した。(対象と方法)09 年 3 月より 14 年 11 月までに術前化学療法
を 施 行 し た HER2 陽 性 乳 癌 33 例 を 対 象 と し た。 使 用 し た レ ジ メ ン は FEC
followed by DTX+trastuzumab 17 例、Taxian + trastuzumab 16 例。TILs
の検討は腫瘍近傍の間質に浸潤するリンパ球のみを評価した(Stromal TILs)
。
中視野(対物 10 倍、対眼 10 倍)における腫瘍巣間の間質に占めるリンパ球の
割 合 を 目 視 に て 評 価 し (%)、3 視 野 の 平 均 値 を 用 い た。60 % 以 上 を
lymphocyte-predominant breast cancer (LPBC) と判定した。術前化学療
法の効果判定は乳癌学会の判定基準に従い評価した。(結果)33 例中 LPBC は
7 例(21.2 %)で あ っ た。Grade 3 を pCR と 定 義 す る と LPBC7 例 中 4 例
(57.1%)、non-LPBC 26 例 中 8 例 (30.8 %) が pCR で あ っ た (p=0.3774,
n.s)。治療効果の判定を grade 2b までを奏功と判定し、再評価したが LPBC
6 例奏功(85.7%)、non-LPBC 15 例奏功(57.7%)と有意差を認めなかった
(p=0.2233, n.s)。(考察と結論)LPBC の頻度は、Denkert らの報告 (19.9%
) と同様であったが LPBC が HER2 陽性乳癌の術前化学療法効果予測因子にな
りうるかについてはさらなる症例の集積が必要である。また、TILs の判定に
は ER をはじめとする免疫染色における標準化以上に様々な問題があると考
え、 我 々 は 他 論 文 等 で は 言 及 さ れ て い る、 腫 瘍 内 に 浸 潤 す る リ ン パ 球
(Intratumoral TILs)の評価は行わなかった。当日は評価法の標準化への問題
点も含めて発表したい。
GP-1-08-20
GP-1-08-21
1
東京医科大学茨城医療センター 乳腺科
乳腺扁平上皮癌の細胞遺伝学的プロファイルと腫瘍内不均一性
の検討
3
トリプルネガティブ乳癌における次世代シーケンスデータを用
いた同時共起性および相互排他性遺伝子解析
九州がんセンター 乳腺科、2 九州がんセンター 病理診断科、
にゅうわ会 及川病院 乳腺外科
藤田 知之、越川 佳代子、西村 基、近藤 亮一、藤森 実
及川 将弘 1,3、井川 明子 2、石田 真弓 1、中村 吉昭 1、西村 純子 1、
古閑 知奈美 1、秋吉 清百合 1、厚井 裕三子 1、田口 健一 2、大野 真司 1
【背景】乳腺扁平上皮癌は稀な組織型であり、全乳癌の 0.1% 以下を占める。
その形態学的特徴にかかわらず、発生過程や細胞遺伝学的プロファイルの詳
細は明らかにされていない。本研究では当施設で経験した 5 例の乳腺扁平上皮
癌に対してアレイ CGH 解析を行い、細胞遺伝学的プロファイルと腫瘍内不均
一性の検討を行った。【方法】当院で切除された約 3000 例の乳癌病理データ
ベースの検索により、5 例の乳腺扁平上皮癌が同定され、臨床病理学的特徴に
ついて検討した。10 μ m の未染薄切標本 5 枚より、最も扁平上皮癌成分が多
い部位を manual dissection にて切り出し、3 日間プロテアーゼ処理を行った
後に、QIAmp DNA Mini Kit (Qiagen 社 ) により tumor DNA (SCC 部 ) を抽
出した。通常型の乳管癌成分(浸潤または非浸潤)を伴った 3 例においては、
その部位からも同様の手法で tumor DNA (NST 部 ) を抽出した。SurePrint
G3 8x60k microarray(Agilent 社)を用いてアレイ CGH 解析を行い、各症例
および同一症例内の SCC 部と NST 部の細胞遺伝学的プロファイルを比較し
た。【結果】抽出 DNA 総量は平均 0.78 μ g (0.39-1.35 μ g) であり、全例でア
レイ CGH 解析を行うのに必要な 0.25 μ g 以上の DNA を抽出することが出来
た。アレイ CGH 解析の質を示す DLRSpread は平均 0.45 (0.20-0.55) と許容
範囲内であった。HER2 陽性が FISH で確定された 1 例と HER2-IHC が 2+ で
FISH を行っていない 1 例では、ERBB2 の amplification を認め、それ以外の
症例では認めなかった。コピー数変化領域の数は 2 か所から 160 か所と症例
によって大きな変化を認めたが、SCC で共通の変化領域は認められなかった。
同一症例内で SCC 部と NST 部の比較を行った 3 例では、2 例で細胞遺伝学的
プロファイルはほぼ一致した。1 例では SCC 部で多数のコピー数変化を認め、
NST 部で見られるコピー数変化はすべて一致していた。【結論】稀な疾患であ
る乳腺扁平上皮癌の細胞遺伝学的プロファイルを明らかにした。腫瘍間不均
一性、腫瘍内不均一性ともに大きいことが明らかになった。腫瘍内プロファ
イルの検討により、NST 部が SCC 部の発生母地であることが示唆された。
【背景】がん化には遺伝子の同時共起性(co-occurrence)と相互排他性(mutual
exclusivity)が関与し、乳癌においても The Cancer Genome Atlas(TCGA)
など大規模なゲノムプロジェクトによる全ゲノムシーケンス(WGS)の結果に
より、解析されるようになってきた。しかし、いつ、どこで、どのようにこ
れらが関連し機能しているのかは不明である。また、トリプルネガティブ乳
癌(TNBC)において同時共起性と相互排他性解析の結果と予後との関係の結
果は報告されていない。【方法】今回われわれは TCGA より TNBC68 例を抽出
し、全生存期間情報をもとに 2 群に分類し、TNBC で変異頻度が高い TP53、
PIK3CA 遺伝子を query とし、ヒトタンパク質をコードする 20630 遺伝子を
対象として、それぞれの群で同時共起性と相互排他性解析を予後情報に基づ
き行った【結果】TP53 に構造変異(amp・gain・mut)があり、1p33-34 の遺
伝 子 に 構 造 変 異 が な い と 予 後 良 好 で あ る。TP53 に 構 造 変 異(homodel・
hetloss)があり、6q27, 17p, 17q, 22q の遺伝子に構造変異があると予後不
良である。TP53 と BRCA2 は予後不良群において排他的であり、TP53 に構造
変異(homodel・mut)があり BRCA2 に構造変異がないと予後不良である。
PIK3CA に構造変異(amp・gain・mut)があり、2q、11q、17p の遺伝子に
構造変異がないと予後良好である。PIK3CA に構造変異(homodel・hetloss)
がなく、2p の遺伝子に構造変異がないと予後良好である。【結論】今後データ
ベースを利用した validation は必要であるが、構造変異の排他性・共起性を
解析することで、予後因子となる遺伝子変異を見出すことができる可能性が
示唆された。また、これらの結果をもとに、予後の違いによる遺伝子の機能
解析、パスウェイ解析、ネットワーク解析を行うことで、乳癌の診断や治療
に役立つ情報が得られる可能性がある。
533
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】近年、乳癌における腫瘍組織内のリンパ球浸潤(TILs)と薬物療法の効
果や予後との関連性が報告されている。トリプルネガティブ乳癌においては、
TILs が良好な予後因子であるとの報告が多いが、HER2 陽性乳癌における
TILs の意義については一定の見解が得られていない。今回我々は HER2 陽性
乳癌において、トラスツズマブを用いた術前療法の効果予測因子としての
TILs の有用性を検討した。【対象と方法】2010 年 1 月から 2014 年 9 月までに
当院にてトラスツズマブおよびタキサンによる術前療法を施行した HER2 陽
性乳癌 10 例を対象とした。術前療法開始前の針生検検体を用いて、腫瘍内
(Itu-TILs)と間質内(Str-TILs)のリンパ球浸潤の割合を判定した。Itu-TILs
または Str-TILs が 60%以上の症例をリンパ球優勢乳癌(LPBC)と定義した。
【結果】10 例の年齢中央値は 63.5 歳、腫瘍径中央値は 2.9cm、臨床的リンパ
節 陽 性 率 は 40 % だ っ た。 組 織 学 的 治 療 効 果 は、Grade3(pCR)が 5 例、
Grade2 が 1 例、Grade1 が 3 例、Grade0 が 1 例 で あ っ た。Itu-TILs と StrTILs の中央値はそれぞれ 5%と 50%で、Itu-TILs と Str-TILs の値は有意に相
関していた。(相関係数:0.724; p = 0.018)Itu-TILs、Str-TILs のいずれか
が認められた群では pCR 率は 62.5%(5 / 8)、LPBC 群では 66.6%(2 / 3)
だったのに対し、腫瘍組織内に全くリンパ球浸潤が認められなかった群では
pCR 症例は認めなかった(0 / 2)。ホルモン受容体発現の有無と pCR 率の関
連性は認められなかった。LPBC では non-LPBC と比較して、ホルモン受容体
の陽性率が低い傾向を認めたが(33.3%対 85.7% ; p = 0.183)、核グレード
や Ki67 値との関連性は認められなかった。【結論】HER2 陽性乳癌における
TILs は、トラスツズマブを用いた術前療法の効果予測因子となる可能性が示
唆された。
ポスター掲示
GP-1-08-22
GP-1-08-23
乳癌組織における新規悪性度関連タンパク質の検索
フィンゴリモドは乳癌細胞株でタモキシフェンとの相乗効果を
認めた
1
大阪医科大学 一般・乳腺・内分泌外科、2 大阪医科大学 臨床検査医学教室、
3
新生病院 外科
1,2,3
2
1
1
1
1
、中西 豊文 、碇 絢菜 、冨永 智 、前沢 早紀 、
佐藤 七夕子
寺沢 理沙 1、藤岡 大也 1、高橋 優子 1、木村 光誠 1、田中 覚 1、
1
岩本 充彦 、内山 和久 1
千葉大学大学院医学研究院先端応用外科、2 バージニア州立大学腫瘍外科
青柳 智義 1,2、山田 顕光 2、永橋 昌幸 2、宮澤 幸正 1、白鳥 亨 1、
松原 久裕 1、スピゲル サラ 2、高部 和明 2
一般セッション(ポスター掲示)
背景転移再発乳癌の生存率は非常に悪く、主たる治療法はホルモン療法また
は化学療法が選択される。しかし近年様々なバイオマーカーの発見や HER2
タンパクを標的とした新規分子標的薬など出現、また各薬剤の組み合わせに
よる相乗効果により予後の改善がみられているが、未だに満足いく結果は得
られていない。フィンゴリモドは本邦およびアメリカ・イギリスで多発性硬
化症の治療薬として既に臨床上使用されている免疫抑制剤であり、またスフィ
ンゴシンのアナログでありスフィンゴシン 1 リン酸受容体の一つである S1P1
受容体の機能的アンタゴニストである。フィンゴリモドは免疫を抑制する作
用とともに抗腫瘍作用を持つことが知られてきている。この研究では in vitro
でフィンゴリモドの乳癌細胞株を用いた cytotoxic assay あるいはタモキシ
フェンなどの抗ホルモン剤との治療相乗効果について研究した。方法 in vitro
で 4T1 乳癌細胞株を用いてフィンゴリモドとタモキシフェンをそれぞれ単剤
投与と併用療法を行い cytotoxic assay で行った。96well dish にそれぞれ
2000 細胞 /well となるように細胞をまき、24 時間後にフィンゴリモド , タモ
キシフェン , フィンゴリモド + タモキシフェンを加えた。治療開始後 48 時間
で WST-8 を用いて治療効果判定を行った。結果フィンゴリモドは 4T1 乳癌細
胞株に対して抗腫瘍効果を認め、タモキシフェンとの併用療法では治療相乗
効果が認められた。新たな作用機序であるフィンゴリモドは従来の乳癌治療
薬との併用で相乗効果を認め、従来の化学療法で耐性となった症例に対して
効果が期待される。
(目的)近年、乳癌は遺伝子解析により intrinsic subtype に分類されるように
なった。日常臨床においては、ホルモン受容体、HER2、Ki-67 の発現状況を
免疫染色法で検索することで近似的にサブタイプ分類を行っている。それに
より、乳癌を luminal A,lumina lB,HER2 陽性 , トリプルネガティブの4つの
グループに分類して術後の治療方針決定の指標としている。今回、乳癌切除
標本を解析対象に、マトリックス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析イメー
ジング(以下 MALDI-MS)法を用い、乳癌組織内に存在する癌関連タンパク質
を質量イメージング法にて同定し、タンパク質の発現と乳癌悪性度(増殖能)
との関連性を検証した。(方法)乳癌手術に際して摘出した新鮮凍結乳癌組織
20例を、MALDI-IMS 解析にかけ、可視化された画像(heat map)を HE 染
色 像 と 比 較 し、 癌 部、 非 癌 部、 正 常 組 織 な ど 関 心 領 域(ROI :Region of
interests)を設定し、タンパク質プロファイルを可視化する。それぞれの ROI
で分類し、両者で異なる分子イオンを選出し、コンピューター解析により有
意差のある分子イオンを見出す。それらに対して、酵素消化及びマトリック
ス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析(以下 MALDI-MS/MS)解析にて両者
間で発現の異なるタンパク質を同定する。また、従来の病理組織学的検索結
果と比較検討し、両者の分布が一致する事を明らかにする。(結果)MALDIIMS 解析で複数認めた分子イオンを、MALDI MS MS 解析で同定する。
(考察)
今回の結果で、乳癌関連タンパク質発現パターンは乳癌の生物学的特性に関
与している可能性が示唆された。乳癌の悪性度に関わる可能性があるため、
今後検討を進めていく予定である。
GP-1-08-24
GP-1-08-25
演題取り下げ
移植脂肪内乳癌局所再発制御を目的としたドキソルビシン含有
徐放剤
1
滋賀県立成人病センター、2 ピッツバーグ大学形成外科
辻 和香子 1,2
【背景】自家脂肪移植は美容目的および乳癌術後再建に見直されてきている。
しかし、脂肪細胞・脂肪由来幹細胞が乳癌細胞の増殖を促進する可能性につ
いては完全に解明されておらず、乳癌術後症例への適応は慎重に行う必要が
ある。ドラッグデリバリーシステムを用いて抗癌剤を移植脂肪内に徐放させ
ることができれば、局所再発を抑制しながらより自然な乳房を再建すること
ができると考える。昨年の本学会で、ヒト脂肪由来幹細胞は乳癌細胞株より
も抗癌剤(ドキソルビシン、パクリタキセル)感受性が低いことを報告した。
今回は抗癌剤を含有する徐放剤を作成し、これらの乳癌細胞株への毒性につ
いて検討を行った。【方法】ドキソルビシンを含有する徐放剤を乳酸グリコー
ル酸共重合体 (PLGA) およびポリ乳酸 (PLA) を用いて作成した。乳癌細胞株は
BT-474 および MDA-MB-231 を使用した。6 ウェルプレートに 1 × 104 個の乳
癌細胞を播種し接着させた後、トランスウェルバスケットシステムを用いて、
異なる重量の徐放剤と 72 時間インキュベートした。alamarBlue assay を行
い、乳癌細胞の生存率について検討した。【結果】電子顕微鏡を用いて徐放剤
の構造を確認した。ドキソルビシンを含有した徐放剤は重量に比例して殺細
胞効果を有した。10mg のドキソルビシン含有徐放剤は 1 × 104 個の癌細胞の
増殖を抑制する効果を有した。【考察】徐放剤の重量を調節することで乳癌細
胞の生存・増殖を抑制することが可能であり、この徐放剤を至適な濃度で自
家脂肪組織に混入し乳癌術後の欠損部位に注入することができれば、局所再
発をコントロールしながら自然な乳房再建が実現する可能性がある。これに
は in vivo での検証が必要である。
534
ポスター掲示
GP-1-08-26
GP-1-08-27
中外製薬株式会社 メディカルアフェアーズ本部 プロダクトリサーチ部
1
乳がん株ゼノグラフトモデルを用いた trastuzumab/
docetaxel/pertuzumab 三剤併用効果の機序解析
IMP3,cathepsinL2,MMP11 発現による ER 陽性 HER2 陰性乳
癌の heterogeneity の検討
北斗病院 乳腺・乳がんセンター、
北斗病院 腫瘍医学研究所 病理遺伝子診断科、3 北斗病院 外科、
4
北海道大学医学部探索病理学講座
2
山下 依子、周 正、萬 啓悟、守屋 陽一郎、原田 直樹
中島 恵 1,3、川見 弘之 1,3、赤羽 俊章 2、山口 智仁 3、西原 広史 4、
難波 清 1
【背景】ER 陽性 HER2 陰性乳癌は比較的予後が良く術後補助療法はホルモン療
法が標準治療とされているが、近年、その中でも予後が悪く抗癌剤治療を追
加すべきものも含まれているとの報告がある。今回、高悪性度のマーカーで
ある IMP3,cathepsinL2,MMP11 の発現の有無を調べ、ER 陽性 HER2 陰性乳
癌の heterogeneity について検討した。
【方法】2013 年 4 月~ 12316;2014 年 12 月、浸潤性乳癌と診断された原発性
乳癌の手術検体を対象に IMP3,cathepsinL2,MMP11 の発現の有無をパラフィ
ンブロックから抽出した mRNA を使用した rtPCR で解析し、年齢、腫瘍径、
リンパ節転移の有無、ER、PgR、HER2 発現の有無、Ki67% との相関を調べた。
A 群(ER+, HER2-)45 例:平均年齢 50.3 歳 , 平均腫瘍径 15.0mm, リンパ節
転移陽性率 26.7%,Ki67 平均値 11.4%。B 群(ER+,HER2+)12 例:平均年齢
55.8 歳 , 平 均 腫 瘍 径 13.3mm, リ ン パ 節 転 移 陽 性 率 16.7%,Ki67 平 均 値
13.4%。C 群(ER-, HER2+)5 例:平均年齢 69.8 歳 , 平均腫瘍径 31.4mm, リ
ンパ節転移陽性率 80.0%,Ki67 平均値 30.3%。D 群(ER-,HER2-)14 例:平
均年齢 57.1 歳 , 平均腫瘍径 26.9mm, リンパ節転移陽性率 35.7%,Ki67 平均値
46.7%。
【結果】D 群は 3 因子(IMP3,cathepsinL2,MMP11)すべて高発現であった。B
群においては MMP11 が高発現であった。IMP3 は B、C、D 群に特に認められ
た。A 群の中にも 3 因子すべて発現している症例、また D 群において、発現し
ていても低発現の症例も存在した。
【考察】ER 陽性 HER2 陰性群の中には IMP3,cathepsinL2,MMP11 が発現し、
悪性度が高いと考えられるものが含まれている。今後、再発、転移率に有意
差が出てくるのかどうか、症例を増やし調査していきたい。
GP-1-08-28
GP-1-08-29
乳癌マウスに対する凍結療法における治療効果の検討
1
乳癌組織における YTHDC2 遺伝子の発現の意義
東邦大学医学部外科学講座 乳腺・内分泌外科分野、2 東邦大学免疫学講座
1
1
2
齊藤 芙美 、緒方 秀昭 、岡田 弥生 、金子 弘真
1
札幌医科大学 消化器総合乳腺内分泌外科学講座、
札幌医科大学 病理学第一講座、
3
麻布大学 獣医学部 基礎教育研究室・生物学
2
1
目的:乳癌に対する外科的治療は乳房切除や乳房温存療法が一般的である。
一方で乳房の形成を損なわないことから低侵襲治療も注目されつつある。乳
腺領域における低侵襲治療としては凍結療法、レーザー、ラジオ波などが挙
げられる。我々は比較的簡便に用いることの出来る凍結療法に注目し乳癌に
対する治療の有効性につき検討している。対象と方法:生後 6 週のメスの
SHO(SCID Hairless Outbred) マウスの第二乳房にヒト乳癌細胞である MB231 を移植し乳癌モデルマウスを作成する。腫瘍が 100mm3 となった段階で
マウスを観察群と治療群に2分する(n=5)。治療群に関しては液体窒素を用
いて凍結療法を行い、24 時間・48 時間後に採血を行い抗腫瘍効果の指標とし
て血清サイトカイン(IL-12,IFN- γ)の測定を行った。結果:生存期間の中央
値 は 観 察 群 で 101 日、 治 療 群 で 105 日 と 2 群 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た
(o=0.35)ものの治療群では治療後 120-140 日と長期生存例も認めた。血清
サイトカインに関しては IL-12、INF- γいずれも治療後 24 時間に比較し 48 時
間の段階で有意に上昇を認めた。結語:凍結療法により乳癌マウスの長期生
存の可能性が示唆された。また、凍結療法の治療効果に関しては治療開始後
48 時間以降に生じる可能性があることが伺えた。
前田 豪樹 1、九冨 五郎 1、島 宏彰 1、里見 蕗乃 1、佐原 弘益 3、
鳥越 俊彦 2、平田 公一 1
【背景】YTHDC2 (YTH domain containing 2) 遺伝子 ( 以下 Y2) は麻布大の佐
原らによってクローニングされた新規の RNA ヘリカーゼ分子であり、大腸癌
の転移に関与する可能性が示唆されている。今回私たちは Y2 分子が乳癌の予
後予測因子となりうるかを解析すべく、preliminary に YTHDC2 による免疫
染色においてそれぞれの subtype で特徴がないかを検討した【症例】2013 年 7
月 か ら 2014 年 6 月 に 当 院 に て 手 術 を 施 行 し た 10 例。 内 訳 は Luminal A,
luminal B HER2 negative, luminal B HER2 positive, HER2 type, triple
negative それぞれ早期癌・局所進行癌の 1 例ずつ、計 10 例である。【方法】当
院における原発性乳癌に対する手術検体から、浸潤部を選び、パラフィン包
埋切片を用いて原発巣を抗 YTHDC2 抗体にて免疫組織染色を行った。【結果】
subtype 間においては、明らかな相違を認めなかったが、早期癌と比較して
局所進行癌では染色強度が強い傾向が見られた。【考察】mRNA には開始コド
ン手前の非翻訳領域に複雑な二次構造を持つものがある。このような二次構
造は翻訳を開始する際に障害となる。RNA ヘリカーゼとは mRNA の転写開始
点から開始コドンまでの 5`-untranslated region (5`-UTR) に生じている高
次構造を解消する酵素タンパクである。すなわち、翻訳を担っているリボソー
ムが開始コドンを効率よく認識するためのものであり、たんぱく質の翻訳効
率に大きな役割を果たしている。興味深いことに Y2 分子の発現を抑制した癌
細胞を移植すると転移が抑制されることが分かった。これは、Y2 が癌転移に
かかわる遺伝子群の mRNA の高次構造の解消に働いているためと考えられて
いる。Preliminary な解析では各 subtype や組織型によって明らかな特徴は見
られなかったが、癌の進行度と発現強度が相関している傾向を認め、Y2 分子
は癌の転移増悪に関与している可能性が考えられた。今後症例数を集積し臨
床病理学的な背景や予後との関連について解析を進める予定である。
535
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】Pertuzumab(PER)は trastuzumab(TRAS)とは異なる HER2 ドメイ
ンに結合し、HER2 のダイマー形成を阻害するヒト化抗 HER2 抗体であり、
TRAS と docetaxel(DTX)に PER を 加 え た 三 剤 併 用 療 法 は 本 邦 に お い て も
HER2 陽性転移性乳がんの標準療法となっている。本研究では、ヒト HER2 陽
性乳がん株 KPL-4 担がんマウスモデルを用いて本併用療法を実施し、その作
用機序を解析した。
【方法】KPL-4 担がんマウスに TRAS 10 mg/kg 及び PER 20 mg/kg を週 1 回
腹腔内投与、DTX 10 mg/kg を 3 週 1 回尾静脈投与し、投与開始 3 週間後の
腫瘍体積が TRAS + DTX 群(133 ± 102 mm3)に比べて TRAS +DTX +PER
群(11 ± 27 mm3)で有意に小さくなるモデルを作製した。本モデルを用いて、
投与開始後 5 日目に採取した腫瘍の HE 染色、Ki-67 染色、TUNEL 染色を実施
した。また、腫瘍内 HER2 シグナル阻害を Western blotting により検討した。
【結果】投与開始後 5 日目の腫瘍組織 HE 染色により有糸分裂(M)期にある腫瘍
細胞を測定した結果、TRAS + DTX 群と比較して TRAS + DTX + PER 群の
M 期細胞数は有意に減少した。このとき、TRAS + DTX 群と比較し TRAS +
DTX + PER 群における TUNEL 陽性細胞は有意に増加し、Ki-67 陽性細胞は有
意に減少していた。さらに、TRAS + DTX 群に比べて TRAS + DTX + PER
群の腫瘍内 HER2、HER3、AKT のリン酸化が抑制されていた。これらのこと
から、TRAS + DTX に PER を加えた三剤併用療法は HER2-HER3-AKT シグナ
ルをより強く抑制することでアポトーシスを促進することが示唆された。一
方、投与開始後 5 日目における腫瘍内への免疫細胞の浸潤を評価した結果、
TRAS + DTX 群と比較し TRAS + DTX + PER 群で顕著に単核球の浸潤が増
加していた。このことから、三剤併用群では ADCC 活性が亢進している可能
性が考えられた。
【結論】TRAS + DTX + PER 三剤併用機序として、乳がん細胞に対するアポ
トーシスの促進と ADCC 活性の増強が示唆された。
ポスター掲示
GP-1-08-30
GP-1-08-31
1
1
浸潤性小葉癌と浸潤性乳管癌におけるエストロゲン合成代謝酵
素の比較
4
組織 Q-FISH 法を用いた乳癌の組織別テロメア長と臨床病理学
的検討
東北大学乳腺内分泌外科、2 博愛会相良病院、3 東北公済病院、
東北大学医学部病理診断学
3
高木 まゆ 1、石田 孝宣 1、三木 康宏 4、宮下 穣 1、雷 哲明 2、平川 久 3、
笹野 公伸 4、大内 憲明 1
金地病院 外科、2 東京女子医科大学 内分泌外科、
東京女子医科大学 第 1 病理学、4 よしもとブレストクリニック
神森 眞 1,2、福森 龍也 1、吉川 啓一 1、岡本 高宏 2、小林 槇雄 3、
吉本 賢隆 4、山田 哲 1
一般セッション(ポスター掲示)
【目的】浸潤性小葉癌は浸潤性乳管癌に次いで全乳癌の約 5 ~ 15%の頻度で認
められ、ER 陽性、HER2 陰性、ki-67 低値の luminal A タイプが多いと言われ
ている。しかし女性の患者数としては統計上、食道癌や白血病よりも多いに
も関わらず、その病理学的特徴をふくめ、多くのことが明らかにはなってい
ない。臨床においても乳管癌よりもやや予後が良いと言われているが、臨床
的には ER 陽性乳癌として乳管癌と一括りに扱われている。今回この浸潤性小
葉癌の約 9 割を占める Luminal A に着目し、浸潤性乳管癌 IDC と小葉癌 ILC
について臨床病理学的因子およびエストロゲン合成代謝酵素の比較を行った。
またエストロゲン関連遺伝子の解析を行った。また予後に関与する可能性が
高いとされるエストロゲン応答遺伝子の一つである FOXP1 についても遺伝子
解析および免疫染色を行い比較した。【方法】東北大学病院、東北公済病院、
博 愛 会 相 良 病 院 に お い て 2001 年~ 2010 年間に行われた乳癌手術 215 例
(luminal A 浸潤性小葉癌:157 例、luminal A 浸潤性乳管癌:58 例 ) について ,
免 疫 組 織 学 的 手 法 を 用 い て、 エ ス ト ロ ゲ ン 合 成 代 謝 酵 素 (STS,EST,17 β
HSDtype-1,17 β HSDtype-2,aromatase) について比較を行った。またの凍
結標本にて、エストロゲン応答遺伝子群の DNA アレイキットおよび FOXP1
について解析を行った。【結果】ILC にて、エストロゲン合成経路の活性が抑
制されており、反対のエストロゲン代謝経路は亢進していた。またアロマター
ゼ活性は ILC にて高値であった。両組織型でエストロゲン関連遺伝子の発現
に差異を認め、概ねエストロゲン応答遺伝子群の発現は ILC の方が低い結果
となった。FOXP1 に関しては、ILC で高値であった。【考察】luminal A ILC で
は局所でのエストロゲン活性が抑制されている可能性やエストロゲン濃度が
低値である可能性が考えられた。今回の結果から ILC と IDC では局所でのエ
ストロゲンの受容体への応答が異なる働きをしている可能性があり、抗エス
トロゲン剤やアロマターゼ阻害剤への感受性も異なる可能性が考えられる。
今後は実際の局所のエストロゲン濃度の測定を行う予定である。
[ 背景 ] テロメアは染色体末端に存在する遺伝子で細胞分裂や活性酸素被曝に
よってその長さが短縮する。一般に癌組織では速い細胞分裂に伴って正常組
織に比べてテロメア長は短縮するといわれている。またテロメア長が crisis 以
下になると多くの細胞は apoptosis に至るが、癌細胞ではテロメアを伸長させ
る酵素テロメレースを獲得し最短のテロメア長を維持しつつ不死化する。我々
は、組織切片上で Q-FISH 法により細胞ごとのテロメア長を比較する方法を確
立し、乳癌および非腫瘍部組織における各構成細胞のテロメア長について解
析した。[ 方法 ] 手術を施行した乳癌 44 例 ( 硬癌 17, 充実性腺管癌 12, 乳頭腺
管癌 15) を対象とし腫瘍と非腫瘍部組織のテロメア長を組織 Q-FISH 法 (TCR)
にて測定比較し、病理組織学的因子との関係を検討した。また、同時に免疫
組織学染色法を用いて ER, PR, HER2 蛋白 , Ki67 index, p53 発現を検討し、
遺伝子発現解析に基づく病型分類(Luminal A, B, HER2-enriched, Basal
like)との関係も検討した。[ 結果 ] テロメア長は乳癌細胞全体で非癌部細胞よ
り有意に短く、それぞれの癌細胞でも有意差を認めた。腫瘍径と TCR のみに
有意な負の相関がみられた。また、pN3, 病期 III, v(+) の症例では有意にテ
ロメアが短縮していた。遺伝子発現解析に基づく病型分類では Luminal A 型
のみ有意にテロメア短縮していた。[ 結論 ] 今回の研究で乳癌組織のテロメア
長短縮が腫瘍径 , リンパ節転移 , 病期分類との間で関連性を示したことで , テロ
メア代謝が乳癌の悪性度や予後に重要な役割を担っている可能性が示唆され
た。
GP-2-09-01
GP-2-09-02
1
1
乳房温存術後の CAL 脂肪注入による乳房再建
Brava システムを併用した遊離脂肪移植による一次乳房再建術
セルポートクリニック横浜、2 亀田メディカルクリニック
1
辻 直子 、浅野 裕子
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科、
横浜市立大学附属市民総合医療センター 乳腺甲状腺外科、
3
横浜立大学 大学院医学研究科 形成外科学、4 藤沢湘南台病院 形成外科、
5
KO CLINIC 形成外科・美容外科、6 東京医科大学 乳腺科
2
2
【はじめに】乳房温存術後の陥凹変形に対して、脂肪注入は低侵襲で簡便な方
法として有用とされている。しかし乳房温存術後の乳房は放射線照射や瘢痕、
癒着などの存在のために移植床としては注入脂肪生着の条件が悪く、十分な
組織増大効果が得られにくい。今回、当院における経験から、特に改善困難
な症例や合併症について検討し、乳房温存術に対する CAL(Cell Assisted
Lipotransfer、幹細胞付加脂肪移植)の適応を考察した。【方法】片側の乳房温
存術後、2006 年より 2014 年に当院で CAL による乳房再建を施行し、術後経
過観察し得た 59 例について検討した。患者の平均年齢は 47.7 歳であり、6 例
を除いて放射線照射後であった。手術は大腿や腹部より脂肪吸引後、吸引脂
肪の一部より脂肪由来幹細胞を抽出してこれを加えた脂肪を陥凹部へ注入し
た。術後は写真による整容性評価と 3D 計測による組織増大量を評価した。
【結
果】平均手術回数は 1.3 回で 1 回あたりの平均注入脂肪量は 205.4ml であっ
た。術前後の 3D 計測の結果では、患側乳房体積が平均 132.3ml 増大した。
整容的結果は 4 段階評価で Excellent(左右差がほとんどない)8 例、Good(左
右差があるが、患者満足度は高い)40 例 ,Fair(かなりの左右差がある)7 例、
Poor ( ほとんど改善していない )4 例となっており、整容性が劣る症例では陥
凹や乳輪乳頭の偏移が残存していた。注入術後に感染、排膿した症例が 2 例あ
り、いずれも洗浄処置にて軽快したが組織増大効果は低かった。【考察】乳房
温存術後の再建において、比較的組織欠損が小さく、下床との癒着の少ない
症例は低侵襲の CAL が良い適応であった。一方、陥凹部位の皮下組織が非常
に薄い場合や癒着が強い症例では、脂肪注入や CAL 単独での治療効果は低い
と見込まれるため、皮弁移植や瘢痕形成の併用などが必要と思われた。また
放射線照射後の固い組織や瘢痕へ無理に大量注入すると感染や嚢胞形成のリ
スクが高いため少量を複数回に分けて注入することが望ましいと考えられた。
佐武 利彦 1、菱川 美紀 1、風間 真人 1、堀 弘憲 1、安岡 裕司 1、
小川 真里奈 1、渋谷 麻衣 1、安村 和則 1、成井 一隆 2、山田 顕光 2、
武藤 真由 4、黄 聖琥 5、石川 孝 6、前川 二郎 3
【目的】近年、遊離脂肪移植 (fat grafting) は移植材料の採取と処理法、移植法
の工夫、術前後ケアの導入などにより生着率が向上し、乳房再建の現実的な
選択肢の一つとなってきた。これまで FG の多くが二次再建で行われているが、
乳房切除術と同時に施術すれば、1,直視下に注入できる。2,創面が露出
しているので移植部の組織内圧が上がりにくい。3,全体の手術回数を少な
くできるなどの利点が想定される。当科では乳房切除直後に遊離脂肪移植を
行い、術後に Brava システムを併用した一次再建に着手しているので報告す
る。【対象および方法】術後の化学療法、照射が不要で、AA~B カップサイズ
の乳房の小さな乳癌患者を対象とした。2013 年 6 月よりこれまでに乳癌患者
9 例(浸潤 5 例、非浸潤 4 例)に対して乳癌手術(NSM7 例、SSM1 例、MRM1 例)
後に、大胸筋、前鋸筋内と裏面に遊離脂肪移植による一次再建を行った。術
後に持続吸引ドレーンが抜けた翌日から Brava の着用(1 日 10 時間 で計 4 週
間)を指示した。【結果】合併症として乳房皮膚の部分壊死 1 例、移植脂肪の壊
死 1 例、接触性皮膚炎 2 例、漿液腫 4 例を認めた。創壊死を合併した症例では
Brava 連続装着が困難であった。Brava 装着により漿液腫が長期化し、治癒後
に乳房皮膚の皺、襞が目立つ症例を 2 例経験した。創治癒が順調な 5 例は、
Brava 装着も問題なく脂肪移植の経過も順調であった。【考察】遊離脂肪移植
による一次再建では、漿液腫がなく創部がトラブルなく閉鎖した状況で、
Brava 装着を開始すべきである。本法により初回手術後からデコルテ部の自
然な形状を再現しやすく、全体の手術回数を減らすことができる。また脂肪
移植により大胸筋に厚みをもたせることで、2 回目の脂肪移植も容易になる。
課題としては手術適応、移植床の形成法、注入法などがあげられる。
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ポスター掲示
GP-2-09-03
GP-2-09-04
インプラントを用いた一次一期再建の禁忌
乳腺外科医が行うエキスパンダーを用いた乳房再建術の現状と
課題
ナグモクリニック
1
父川 興一、南雲 吉則、中澤 学、遠所 瑞拡、丹羽 幸司、山口 悟、
松永 忠東、北村 薫、矢加部 文、杉 恭之
赤羽 和久 1、坂本 英至 1、並木 保憲 2、法水 信治 1、新宮 優二 1、
田口 泰郎 1、渡辺 博行 1、伊佐治 孝洋 1、牧野 安良能 1、三浦 泰智 1、
山東 雅紀 1、大原 規彰 1、原 由美子 1
【はじめに】当院は 2013 年 8 月よりゲル充填人工乳房(インプラント)は一次
一期・一次二期・二次再建すべて、皮膚拡張器(エキスパンダー)は一次・二
次両方実施可能施設として登録されている。当院の特徴として、1次再建で
のエキスパンダー挿入および術後の拡張作業は乳腺外科医が行い、インプラ
ント交換は形成外科医と乳腺外科医が合同で行っている。当院における乳房
再建術の現状と課題について報告する。【対象と方法】2013 年 8 月から 2014
年 12 月までの当院で行った乳癌手術症例を対象として、乳房切除+再建術症
例(再建あり)と乳房切除術症例(再建なし)における年齢・出血量・ドレーン
留置期間・入院日数等を比較した。【結果】167 例に乳癌の手術が実施されて
おり、乳房切除が 103 例(61.7%)で、そのうちの 25 例(24.3%)にエキスパ
ンダーを用いた再建術が施行されていた。再建例の病期は pStage0 が 6 例、
pStage1 が 13 例、pStage2A 以上 6 例であり、4 例が両側乳癌であった。2
例は術前化学療法後であった。再建あり群 25 例(6 例郭清、24%)の平均年齢
は 46.7 歳でなし群 78 例(26 例郭清、34%)は 64.3 歳であった。出血量は
60.8 g vs 40.0 g、ドレーン留置期間は 6.0 日 vs 5.5 日、術後在院日数は 7.3
日 vs 5.6 日であった。エキスパンダー感染を 1 例に認めたが、術後 63 日で発
症し、アトピー性皮膚炎治療中であった。【考察】再建あり群では再建なし群
と比べて、ドレーン留置期間で 1 日、術後在院日数で 2 日長かった。腋窩郭清
例の割合に差があるものの、許容できる延長期間と考える。また、エキスパ
ンダー使用基準では、一次再建の場合、対象は術前診断において Stage2 以下
で術後照射を必要としない症例が該当する。cN0 症例でセンチネルリンパ節
生検を行った結果、転移陽性となった時にエキスパンダーを留置するかどう
かが臨床上問題となる。当院ではセンチネルリンパ節転移陽性となった場合
の対応方法については施設基準を設けずに個々の症例において術前に話し
合って決めている。乳腺外科医がエキスパンダーを挿入することの利点の一
つとして、患者の意志決定支援において再建術を含めた初期治療の治療経過
を説明しやすく、上記のような不測の事態に対する対応も事前に決め易いこ
とがあげられる。
GP-2-09-05
GP-2-09-06
皮下乳腺全摘後のティシュエキスパンダーによる一次二期乳房
再建とソフトウェアを用いた乳頭位置評価
ティッシュエキスパンダー挿入後のドレーン管理の実際
昭和大学病院 乳腺外科
岡山大学病院 乳がん治療・再建センター
渡部 聡子、木股 敬裕、片山 裕子、雑賀 美帆、徳山 英二郎、野上 智弘、
岩本 高行、元木 崇之、枝園 忠彦、平 成人、松岡 順治、土井原 博義
<背景>乳頭温存皮下乳腺全摘(NSM)後のティシュエキスパンダー ( 以下
TE) を用いた再建では、温存乳頭が偏在しやすいことがしばしば経験さる。
2013年テクスチャード・アナトミカルタイプの TE が保険収載されたこと
により、乳頭位置にどのような影響を及ぼしたのか調査を行った。<方法>
対象 2009 年8月から2014年8月の間に NSM 後の TE を用いた一次二期再
建を行った27例について、患者背景、手術背景、術後経過、乳頭位置につ
いて調査した。乳頭位置の評価は、術前後の正面写真から Image-Rugle for
eyelid ver1.