クレジット投資のリスクと有効性

2015 年 6 月 11 日 第 3 号
クレジット調査部長
古市 眞
クレジット投資のリスクと有効性
日本の株式市場は、先月、時価総額(東証 1 部)がバブル期ピーク(1989年12
月末)を更新するなど活況を呈していますが、クレジット市場も堅調な地合いが継続し
ています。
背景には低金利下において少しでも利回りを求める市場参加者の投資行動が考えら
れ、事業債のスプレッド(対国債の上乗せ金利)は過去最低水準に迫るところまで縮小
しています。
スプレッドは5月末時点で25BP(NOMURA-BPI事業債インデックス)と
なっています。一方、グラフから確認できるように、1997年の金融システム不安、
2001年の大型企業破綻、2008年のリーマンショック等、スプレッドが急激且つ
大幅に拡大した局面では、事業債インデックスが1%程度のアンダーパフォーム(対国
債インデックス)を記録したことを踏まえると、一見するとクレジット投資に合理性を
見出しにくいかもしれません。
過去20年のリスクリターン特性
NOMURA-BPIの過去データ(全て中期インデックス)
500
(BP)
(指数)
375
3%
年度別超過収益(左軸)
350
事業債(右軸)
国債(右軸)
300
325
-200
FY14
FY13
FY12
FY11
FY10
FY09
FY08
FY07
FY06
FY05
FY04
FY03
FY02
-100
FY01
250
FY00
0
FY99
275
FY98
100
FY97
300
FY96
200
225
200
リターン(平均収益率)
400
2%
事業債
国債
1%
(年率換算)
0%
0%
1%
2%
3%
リスク(月次収益率標準偏差)
出所:NOMURA-BPI資料より当社作成
当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありま
せん。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記載された意
見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることが
あります。■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。■当資料内のいかなる内容
も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
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しかし、同時にこのグラフからは、中期的には事業債が、国債を上回るパフォーマン
ス(スプレッドが最低水準時に投資開始していても)となっており、国債と同等もしく
はそれを上回るリスク・リターン特性であったことが確認できます。つまり、適切な銘
柄選択とリスク管理を行えば、債券運用においてクレジット投資は極めて有効なツール
になると考えられます。
敢えて条件付きとしたのは、①実際には事業債インデックスという銘柄が存在しない
こと、②事業債のリターン特性の特殊性(上下の非対称性)、を考慮する必要があるか
らです。
前者は、単純にインデックス構成銘柄へ投資するだけでは、リターンがインデックス
を下回る可能性が構造的に存在していることに起因しています。これは、BBB格未満
への格下げ等により、インデックス構成銘柄が償還前にインデックスから除外される場
合に起こり得ます。このような場合に除外銘柄は、その時点での売却が困難(評価価格
を大きく下回る価格でしか売却できない)となることが多く、その場合にはポートフォ
リオのリターンがインデックスを下回る可能性が高くなります。
後者については、事業債はクレジットリスク悪化時の価格下落が限定されない(最悪
デフォルト)一方で、アップサイドは限定されている(よくて満期に100円で償還)
ため、一銘柄でも問題銘柄を抱えてしまうと他の銘柄の超過収益分を容易に打ち消して
しまうこと(場合によってはそれ以上に悪化)がありうるためです。
従って、クレジット投資では、事業債全体の組入比率においても、銘柄選択において
も、ダウンサイドリスクの排除が極めて重要だと言えます。そのため、弊社では銘柄リ
サーチではクレジットにとってのネガティブ・シナリオの検討を優先し、格付の水準に
加え格付のボラティリティを考慮した分散投資を実施するなど、運用プロセスにダウン
サイドリスクを排除する工夫を凝らしています。
当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありま
せん。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記載された意
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あります。■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。■当資料内のいかなる内容
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