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Feb. 2013
Vol.29
Medical Device Daily
ガレージから始まった医療サプライヤー
⼈材育成と謙虚さが成⻑の原動⼒……1
Hospital Case Management
⾃宅で急性期医療を提供する在宅療養プログラム……4
Healthcare Risk Management
放射性物質窃盗の脅威にさらされる病院……5
Same-Day Surgery
2013 年に⽣かす 10 の教訓……7
インド専⾨ニュース
インド通信……8
メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
特許の崖を乗り越えて……9
The Academia Highlight[29]
体に優しい⾼エネルギー線で癌に⽴ち向かう……10
by うのめ・たかのめ
Medical Device Daily……11
Kawanishi Hotline……19
ヒューマンドキュメント医療機器を開発した⼈たち
「ラップディスク開発物語」-4-……21
Jan. 2013
Feb.
Vol.28
Vol.29
ガレージから始まった医療サプライヤー
⼈材育成と謙虚さが成⻑の原動⼒
Micropulse の社⻑兼 CEO
Brian Emerick ⽒インタビュー
――Jim Stommen/MDD 寄稿者
Brian Emerick ⽒は、整形外科の主要企
業向けにインプラントや器具を製造する
Micropulse 社(インディアナ州)の創設
者で、社⻑兼 CEO である。かつて⾃動⾞
部品業界で⼯具・⾦型作業員として働いて
いた同⽒は、1988 年に Micropulse 社をス
タートさせた。さまざまな産業の仕事を⼿
掛けて⼀時経営困難な状態にも陥ったが、
2004 年からは医療分野にターゲットを絞
り、成⻑を続けてきた。⼤⼿メーカーから
の信頼が厚い医療サプライヤーとなった
同社の成⻑の秘訣についてうかがった。
生懸命働き、成長し続けるかということしか頭に
なかったのです。
自動車産業をターゲットに、工具・金型
1990 年代は急成長できましたが、オフショアリ
企業として会社をスタートされましたが、今日で
ング(企業が自社の業務の一部分や全部を海外に
は医療分野がご専門です。これは、少しずつシフ
委託・移管すること)という方法論が現れた途端、
トしてきたのでしょうか?
顧客は一気にいなくなりました。我が社は窮地に
陥り、アイデンティティーと格闘しなくてはなら
Emerick
なくなりました。大変な苦痛をともないましたが、
ガレージで会社をスタートした当時
は、誰であろうと、どんな産業であろうと仕事を
我々は態勢を整え、将来何をしたいか、何に秀で
受けていました。初期の顧客のなかには、ジンマ
ているかを考えました。その結果、3 年がかりで
ーやバイオメットなど、インディアナ州にある整
医療分野に 100% 専念する方針を打ち出し、実際
形外科の大手メーカーが含まれていましたから、
には 1 年で実現しました。2004 年以降、決して
我が社はほぼ設立初日から医療を手掛けてきたと
後ろを振り返らず、医療専門で順調に成長を続け、
言えるかもしれませんね。
今日では 240 人の従業員を抱えています。
ただ、1990 年代は自動車産業が好調でした。私
は電子端末などを型打ちするための高速順送り金
医療産業を選んだのは正しい選択だった
型を扱っていたので、自動車産業向けに、金型や
ように思われます。約 10 年間医療製品を生産さ
プラスチックの射出成形、100 万ドル程度の大型
れてきて、この分野での事業についてどのような
組立・検査機械などの生産も行っていました。
見解をお持ちですか?
当時の私のやり方は、2~3 人雇い入れて社屋を
建て、いくつかの機械を導入して手当たり次第に
Emerick
仕事をこなすというものでした。そこには本当の
く、
「選択と集中」を決断したのが正しかったのだ
意味での戦略はありませんでした。いかにして一
と思います。
1
医療産業を選んだのが正しいのではな
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Feb.
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Vol.29
私はいま、地元の病院の理事長を兼任していま
に安くできる場合さえあります。そのため、メー
す。言うなれば普段と対極の立場ですね。シカゴ
カーは我々を非常に頼るようになりました。
での理事研修会に参加したばかりですが、医療が
我が社は、ほぼ完全に整形外科だけを扱ってい
どこに向かっているのか、デバイスや医療サービ
ます。この市場にはまだまだ開拓の余地があると
スへの支払いがどうなるのか、その行く末を案じ
考えており、ほかの市場を検討する必要性を感じ
ています。しかし、変化は病院だけでなく、製造
ていません。過去に「選択と集中」について厳し
業者にもチャンスをもたらします。
い教訓を得たこともあり、レーザービームのよう
医療機器メーカーに課されるデバイス税は確か
に焦点を絞るようにしているのです。
にプレッシャーとなっていますが、プレッシャー
のない産業なんてあるでしょうか? ほとんどの
産業が、なんらかの形で容赦なくプレッシャーを
受けています。それでも、整形外科は参入が比較
的容易な分野の1つといえます。ベビーブーマー
の高齢化や肥満などが需要を押し上げています。
(micropulseinc.com)
開発途上国も整形外科製品を必要としており、こ
ただ、整形外科事業のなかでは多様化をめざし
れらの国々のメーカーと競い合ったとしても、よ
ています。どの顧客も事業全体の 20%を超えるこ
りグローバルな我々に一日の長があります。
5 年、10 年前に比べて、オフショアリングへの
とはありません。事業の約 15%を占めていてもコ
懸念は弱まりました。海外の労働コストが上昇し、
モディティ化している人工関節は避け、より成長
材料や管理などの課題も浮き彫りになったからで
の速い分野に注力しています。取り扱い製品自体
す。我が社も海外生産を検討してきましたが、い
も多様化し、インプラント、器具、ケース、トレ
ま海外施設を保有すればかえってコストが増える
イまで扱っています。企業育成も行っていますし、
ので見送りました。コスト削減には、自動化やリ
知的財産も開発しています。受託製造が主要な収
ーン生産方式で真正面から取り組んでいます。技
入源であることは変わりませんが、こうやって多
術や設備に投資し、従業員を教育して、製品その
様化を促進しているのです。
ものの利益に重点を置くようにしています。
大手メーカーの外注先となるには、定期
御社があるインディアナ州北東部は、整
的な監査を受けなくてはなりません。なかなか大
形外科の企業が集まる中心地です。競争が激しい
変だと思うのですが、御社はこれらの監査を無料
と思いますが、不利に思うことはありませんか?
のコンサルティングのように考えておられるよ
うですね。
Emerick
ここは、製造業の人材育成が盛んな地
域です。ルーツをたどれば、フォートウェインに
Emerick
あった GE の見習い制度に行き着きます。見習い
が強く求められます。メーカーの監査は企業によ
制度は数多くの熟練者を輩出し、何百もの小さな
って 1 年に 1 回だったり、2 年に 1 回だったりし
機械工場が誕生しました。ここでは皆お互いを知
ますが、そこに我々の内部監査も加わります。結
っており、友好的な競争相手として、この地に強
果として毎週のように監査を受けていますから、
固なインフラを構築してきたのです。
大手メーカーとの共同作業が大変でないとは言い
この産業では一貫性、信頼性、再現性
ません。
私はここが好きで、かなりの事業をこの地で行
ってきましたが、いまや事業の半分以上はインデ
我が社は品質システムや規則遵守に多額の投資
ィアナ州以外からの仕事になりました。我々は一
をし、しっかりした品質管理システムを作りあげ
次サプライヤーとして本当にうまく仕事ができる
てきました。それが勝利への近道だからです。た
ようになっており、納入先のメーカーよりも上手
いへん高くつきますが、いったん彼らの信用を得
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られれば、サプライヤーとして重用されます。
を育てることを恐れません。
我々は極めて正直であることで知られており、
最大のセールスポイントは、株式非公開企業と
監査日にいつもと違うことをしたり、何かを隠し
いうことです。競合他社の多くは、プライベート・
たりはしません。監査員は驚きつつも、やがてそ
エクイティ・ファンドが所有していたり株式公開
れを正しく評価するようになります。監査員にも
されていて、短期的な見通しで事業を行う傾向に
いろんなタイプがいますが、彼らのすべてから学
あります。我々は長期的に捉えており、人材も自
ぶようにしています。彼らの要求は通常、我々の
分たちで育てています。
仕事を上達させてくれるのです。
私は、文字通りこの会社の隣に住んでいます。
また、我が社は常に付加価値をつけることを心
ガレージからスタートし、トウモロコシ畑に土地
がけてきました。多くの企業は、コンサルタント
を買って社屋を建て、地元の従業員を雇ってきま
にお金を払ってお墨付きを得ようとしますが、と
した。
「良い人材が見つからない」と誰もが言いま
ても下手なやり方だと思います。我々は不合格品
すが、それは自分で良い人材を育てていないから
をほとんど出さず、きちんと納期を守ります。こ
です。我々は、高校生を対象にインターンシップ
のようなことに価値をつけるのは難しいですが、
を行っており、20 年前に雇った高校生がいまでも
企業として重要な価値を提供していると思ってい
我が社で働いています。学費を援助したりして、
ます。「ほかより 2%安いから Micropulse に仕事
大学にも通わせました。毎年夏には主要大学から
を依頼しよう」ではなく、「10%高いけれどきち
の産学連携教育の受け入れを行っていますし、中
んと納品してくれ、3 度も製品を送り返す必要が
学校でも、科学・技術・工学・数学について話を
なく、とても高品質だから依頼しよう」とメーカ
しています。
ーの担当者に思ってほしいのです。我が社には優
れた従業員がいて、誰もができるわけではない困
受託製造以外にも、OrthoVation Center
難な作業を行うことができます。常に最善を尽く
を通じて新興企業の育成もされています。これま
し、守れない約束はしません。
での経験をいくつか聞かせていただけますか?
実は我が社のメーンターゲットは、生産施設を
持たない中小企業です。こういった企業の抱えて
Emerick
2004 年に DVO という新興企業をサポ
いる製造の課題は、我々一次サプライヤーにとっ
ートしたのが始まりです。私は多額の資本を投入
ては飯のタネであることが多いのです。
し、我が社の CFO(最高財務責任者)が会計を担
当しました。我々は設計、試作、生産、あらゆる
種類の事務管理を行い、外傷治療用プレートやシ
ョルダープレートのプロジェクトを進めました。
2007 年に大手メーカーに売却したときには、従業
員は 10 人ほどになっていました。また、2006 年
には、レジデントの神経外科医と BioSpine とい
(micropulseinc.com)
うジョイントベンチャーを設立し、いくつかの製
整形外科関連の企業の多くが、ここ数年
品を開発してライセンスの販売を行っています。
成長が横ばいまたは減速しているにもかかわら
簡単に聞こえるかもしれませんが、新興企業の
ず、Micropulse 社は、堅実に成長を続けているよ
育成は長い道のりですし、リスクも高い。ですか
うです。その秘密は何でしょうか?
ら我々も大きな看板を掲げて宣伝しているわけで
はありません。ただ、ここでも重要なのは信頼で
Emerick
真似るのはほとんど不可能なのでお話
きる適切な人材を確保することです。
ししますが、成功の秘密は企業文化です。我々は
チームワークの文化、謙遜の文化を持っています。
「Medical Device Daily」
キャリアパスが明確なので、従業員は自分の後任
(2012 年 10 月 25 日&11 月 1 日号)
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⾃宅で急性期医療を提供する
在宅療養プログラム
早期退院で病床の回転率と患者満⾜度を同時に改善
⾼齢化社会を迎えた⽇本では、うなぎのぼりの医
る。同プログラムの医師は、患者の症状だけでな
療費に何とか⻭⽌めをかけようと、「施設から在宅
く、身体機能や自宅でのサポート体制までチェッ
へ」の転換が⾏われている。在院⽇数を減らせばそ
クするという。
れだけ医療費を抑制できるからだ。在宅で医療を受
「プログラムに参加する患者は慣れ親しんだ環
けられる体制の整備は進んでいるが、家族の負担や
境で治療を受けられるので、病院の入院患者より
急変時の対応など残された課題も多い。医療費抑制
も早く回復する傾向にある。また、院内感染や転
はほとんどの先進国に共通の悩みで、⽇本よりはる
倒、精神錯乱を起こすことも少ない」と同プログ
かに在院⽇数の少ないアメリカでも、さらなる短縮
ラムの医師である Melanie Van Amsterdam はそ
をめざして努⼒が続けられている。(編集部)
の効果を説明する。
ニューメキシコ州で複数の病院を運営する非営
利団体 Presbyterian Healthcare Service は、普
通なら入院を継続する患者を早期に退院させ、自
宅で急性期医療を提供する「Hospital at Home」
プログラムを行っている。同じ診断で比較すると、
平均在院日数が 5 日のケースでも、このプログラ
ムを使えば 3.5 日に短縮できる。プログラムを導
入した同団体系列の病院では、医療費が 30%削減
Hospital at Home プログラムは、常勤の医師
2 名と看護師1名が 24 時間 365 日待機し、系列
できたうえ、患者の満足度が向上したという。
Hospital at Home プログラムは、ジョンズ・ホ
病院の看護師や在宅医療スタッフとともに、患者
プキンス大学の Bruce Leff 医師によって開発さ
の自宅に出向いて医療を提供する。看護師と在宅
れた。対象としているのは、心不全、慢性閉塞性
医療スタッフを統括するのは患者の登録看護師で
肺疾患、複雑性尿路感染症、市中肺炎、蜂窩織炎、
あるケアマネジャーで、患者がプログラムに適し
脱水症状、吐き気や嘔吐、肺塞栓、深部静脈血栓
ているかを医師が判断する際にも手助けをする。
症の患者である。
必要であれば、ケアマネジャー自らが患者の自宅
「状態は安定しているもののまだ治療が必要な
を訪れることもある。
患者に、一般的な在宅医療ではなく、病院と同等
プログラムのチームには、保険の確認、退院後
の医療を自宅で提供するものだ」とプログラムの
の医療サービスの手配、処方箋の記入を行うカス
責任者である Karen Thompson は言う。
タマーサービス部門のスタッフが含まれている。
患者がこのプログラムに参加するには、
通常、プログラムを実施している間はリハビリを
Presbyterian の提供する医療保険に加入し、系列
行わないが、必要に応じて理学療法士、作業療法
の病院から半径約 40 ㎞圏内に住んでいる必要が
士、言語療法士が患者を訪れることもある。
ある。患者へのプログラムの適用は、病院の急性
「患者が Hospital at Home プログラムに参加す
期部門、救急部、患者のプライマリ・ケア医、救
るには、自宅に介助者がいるか、完全に自立でき
急医療センター、在宅医療部門によって判断され
ていなくても、自分でトイレに行ったり食事をと
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ったりできなければならない。我々が患者にこの
復してプログラムの終了が近づくと、看護師が訪
プログラムが適用できると判断し、救急部や病院
れるのは 1 日 1 回程度になる。
総合診察医の賛同を得られれば、ケアマネジャー
「このプログラムは、病院にとっても患者にとっ
か医者がプログラムについて患者や家族に説明し、 てもメリットがある。病院ではなく自宅で治療を
自宅で治療するか病院に残るかを選択してもら
受けられるため、患者の満足度は非常に高い。保
う」と Thompson は言う。
険会社も、加入メンバーが低料金でより良い医療
患者の退院が決まると、チームは自宅で必要と
を受けていることを確信できる。また、病院はこ
なる酸素吸入器や注射器のような医療機器や処方
のプログラムを活用することで病床回転率を上げ、
箋を準備する。病院が次回分の薬を患者にわたす
空き病床を増やすことができる。これは、病院が
ため、長期間自宅で治療することができる。
満床になる呼吸器感染症の季節においてはとても
重要だ」と Van Amsterdam は効果を強調した。
退院して患者が自宅に到着すると、1 時間以内
に看護師がやってくる。必要に応じて医師が 1 日
1 回、看護師が 1 日に 2 回訪問し、バイタルサイ
「Hospital Case Management」
ンや重要な指標をしっかりと観察する。患者が回
(2012 年 12 月号)
放射性物質窃盗の脅威にさらされる病院
核汚染を引き起こす爆弾に転⽤される可能性も
放射性物質は医療分野では癌の治療などに利⽤さ
れており、⽇本では「放射線障害防⽌法」や「医療
法」などで厳しく規制されている。取り扱いには⼗
分な管理・配慮がなされているが、⼀⽅で、窃盗な
どへの備えは関係者によって意識に差があるとの指
摘もある。放射性物質はテロに利⽤される危険性が
⾼く、その影響も甚⼤なため、国際社会は連携して
セキュリティ対策を強化している。(編集部)
護対策をとっていたのはわずか 20%の施設にす
米国政府監査院(GAO)は、「ダーティーボム
ぎず、26 施設では驚くべき落ち度が見つかった。
(汚い爆弾)」に転用される恐れがあるとして、放
ある病院では、致死量の放射性セシウムを含む機
射性物質の盗難リスクについて、医療機関に警告
器がダイヤル錠付きの棚に保管されていたが、そ
を発した。ダーティーボムは、通常の爆薬を使っ
の開錠番号は棚の扉に貼り付けられているありさ
て放射性物質を広範囲にまき散らし、周囲を汚染
まだったという。
させる爆弾。威力はそれほどでもないが比較的簡
これら医療機関のお粗末な警備体制をなんとか
単に製造でき、人々を恐怖に陥れることが可能な
しようと、国家核安全保障局(NNSA)は1億ド
ため、テロリストによる使用が警戒されている。
ルを費やし、1,500 以上の医療機関のうち放射線
放射性物質を保有する 1,500 以上の医療機関を
量の高い物質を保有していると判断した 321 施設
調査した GAO の報告によると、放射性物質の防
に防犯カメラ、虹彩認証システム、動体検知セン
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サー、開錠アラームなどを取り付け、セキュリテ
得る核や放射性物質の発見、監視、除去をサポー
ィを改善する措置をとった。
トしている。数年前から医療機関と共同で放射性
テロリストが実際に病院から放射性物質を盗ん
物質を守っており、その結果、犯罪者が医療機関
だ事例は報告されていないが、病院セキュリティ
の放射性物質に手をかけたことはない。
の弱点を探る疑わしい行為はこれまでにも確認さ
医療機関がサポートを求めれば、GTRI は調査
れている。2005 年には Joint Commission(米国
チームを送り、放射性物質に関する現場の対応状
医療機能評価機構)の監査と偽り、複数の犯罪者
況についてアセスメントを実施してくれる。病院
が放射性物質への接近を図る事件が起こった。こ
がどれだけの放射性物質を持っているのか、国家
の事件からは、テロリストが放射性物質を探し求
的なプログラムをどう活用できるかなどを分析し
めており、「病院を標的にしている」「院内の放射
てくれるのだ。
性物質のありかを探っている」
「病院の非常時対応
「GTRI が提供するほとんどの情報やサポート
能力をテストしている」ことが読み取れる。
は無償で利用できる。調査に使用する機器の貸与
や院内環境の改善はもちろん、スタッフの教育や
初期対応訓練まで無償で行ってくれる。さらに
GTRI は、受講者の交通費を負担して、医療機関
のリスク軽減をめざすための集中講義も開催して
いる」と Warren は GTRI の活用を勧める。
レベルに関係なく狙われる放射性物質
医療機関に事件発生時の緊急対応を教育するコ
ン サ ル テ ィ ン グ 会 社 Incident Management
医療機関の安全に取り組む団体 International
Solutions の社長である Zachary Goldfarb にとっ
Association for Healthcare Security and Safety
(IAHSS)の会長 Bryan Warren は、「放射性物
て、医療機関のセキュリティの甘さを糾弾する
質の警備は医療機関によってばらつきがある」と
2001 年の同時多発テロ以降、医療機関が持つ放
GAO の報告は驚くべきものではない。
指摘する。
射性物質は、米国のセキュリティ専門家にとって
十分なセキュリティ設備を持つ大きな病院は、
重要な関心事となっている。放射線量の高いコバ
放射性物質を盗難から守るためのルールや手順を
ルトを持つ医療機関はあまりないが、テロリスト
備えている。しかし、放射性物質を持っているの
はコバルトのような物質だけを狙うのではない。
は大きな病院ばかりではない。小さな病院で、機
放射線量の低い放射性物質を持つ施設は数多くあ
械装置のオペレーターやメンテナンススタッフが
り、いずれも犯罪者のターゲットとなり得る。
セキュリティ管理を担当している場合は要注意だ。
「我々は何年も前から、医療廃棄物として扱われ
彼らは問題の重要性に気付いていないことが多く、 る低レベルの放射性物質が、ダーティーボムに使
放射性物質の管理に適しているとはいえないから
われるのではないかと懸念している。たとえどん
だ。
なに低いレベルであれ、爆発後に放射能が検知さ
れれば、それは米国にとって初めての経験となる。
⼼強い解決⽅法
医療機関には、放射性物質を安全に保管する義
犯罪者の企みどおり、多くの人々を恐怖に陥れる
務がある。Warren は、
「NNSA が主管する、地球
は、放射線量の低い放射性物質で十分達成できる
的規模脅威削減イニシアティブ(GTRI)の一環
のだ」と Goldfarb は警告している。
ことができるだろう。ダーティーボムの真の目的
として、医療機関は放射性物質のセキュリティを
「Healthcare Risk Management」
改善することができる」とアドバイスする。
(2012 年 11 月号)
GTRI は、米国や国際社会にとって脅威となり
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2013 年に⽣かす 10 の教訓
外来⼿術センターのコンサルティング会社からのアドバイス
外来⼿術センターのコンサルティング会社
算を無理やり調整するよりはるかに簡単だという
Earnhart & Associates 社(テキサス州)の CEO
ことを知るべきだ。
Stephen W.Earnhart は 2012 年を振り返り、次の
る医療機関を⽀援するなかで得られたこれらの教訓
 ⿇酔科医の確保
手術には麻酔が欠かせない。しかし、
「いっそ麻
は、充実した 2013 年を送るためのよいヒントにな
酔なしでも」と思いたくなるほど、麻酔科団体は
るだろう。(編集部)
巨大化して融通がきかなくなっている。大金を支
ような教訓を得たという。多くの問題や課題を抱え
払ってまで、制約の多い麻酔科団体を利用し続け
るのはばかばかしい。そろそろ麻酔科団体への依
 スタッフの不正に注意
事務方のスタッフと共謀し、有給休暇を何週間
存度を下げる対策を検討するべきだ。医療機関が
分も上乗せしている病院スタッフの事例がいくつ
ろう。
直接麻酔科医を雇うことで、負担を軽減できるだ
かの医療機関で見られた。この手口はかなり広ま
っているようだ。スタッフの有給休暇の取得状況
をチェックしたほうが賢明だろう。
 単価の表記を更新する
備品保管庫でそれぞれの備品の購入単価を表記
している医療機関は多い。しかし、単価が変更に
なっても表示はそのままというケースが目立つ。
表示は更新しなければ意味がない。
 償還の申請ミスをなくす
ルールどおりの償還を受けていない医療機関は
 規制の遵守
2013 年のメディケアの変更点や、新しい認定基
想像以上にある。残念ながらまともな仕事をして
準は把握できているだろうか。新しいルールの開
いない事務長も多数おり、パソコンのデータまで
始は待ったなしだ。乗り遅れないよう、いますぐ
詳しく調べたほうがよさそうだ。過払いになって
対応しよう。
いればいずれ保険会社から返済を要求されるだろ
 説明責任はより厳しくなる⽅向に
書類作成は面倒かもしれないが、そこに落とし
うが、受取額が不足している場合は自ら気付くし
かない。
穴があることを忘れてはならない。葬儀会社が伝
 ⾮現実的な予算を⽌める
多くの医療機関が非現実的な予算を立てている
染病の流行をひそかに喜ぶように、保険会社はあ
のを見るにつけ、メーンバンクが機能していない
抑えられると喜ぶだろう。きちんとした書類があ
ことに驚かされる。最初からだいたいの数字で予
ってこそ治療成績も上がる。書類作成はとことん
算計画を立てておくほうが、後から非現実的な予
やるべきだ。
なたの病院の治療成績がふるわなければ支払いを
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 医師の定着率のアップ
なかには辞めてもらいたい人もいるかもしれな
こういったスタッフを解雇することは法的な問
いが、医療機関は医師が辞めないよう努力しなけ
てばかりではいられない。直ちに行動を起こし、
ればならない場合がほとんどだ。あなたの病院で
彼らにあっと言わせよう!
題に発展しかねないが、彼らの行いに目をつぶっ
は、医師の稼働時間をきちんと把握しているだろ
っても、誰も目を通していないというケースは枚
 満⾜度の⾼いスタッフを増やす
12 月はパーティーを開く絶好の時期だったが、
挙にいとまがない。処理すべき書類は山ほどある
12 月に限らず、もっと頻繁にスタッフの交流の場
ためあまり責めることはできないが、手遅れにな
を設けるべきだ。経験上、仲のよいスタッフは満
らないうちに手を打つ必要がある。
足度が高く、満足度の高いスタッフはよりよい治
うか? 稼働時間をプリントアウトした資料があ
療成績を収める傾向にある。2013 年はできるだけ
 たちの悪いスタッフには毅然とした態度で
多くの医療機関で、陰口をたたく、受動攻撃的、
たくさんスタッフ同士の交流の機会を設け、楽し
んで仕事をしてもらおう。
怠慢、役立たず、低能、礼儀知らずといったたち
「Same-Day Surgery」
の悪いスタッフが増えている。彼らは大変な勢い
(2012 年 12 月号)
で増加しており、我が物顔で振る舞っている。
インド通信
インド専門ニュースサイト「インド新聞」より、運営会社ムロドーの
許諾を得て、最新情報をお届けします。(http://indonews.jp/)
ナラヤナ病院、低価格病院を
チェーン展開へ(2012/12/27)
の安価な製品を購入する。また、エレベーターや
エアコンを設置せず、日光を有効に活用すること
大手病院チェーンのナラヤナ・フルダヤラヤ(バ
で照明コストも節約する。高価な医療機器につい
ンガロール)は、世界で最も安い料金で心臓手術
てはレンタルで対応し、放射線技師や苦情対応の
を行う専門病院のチェーン展開に乗り出す。
人員はバンガロールにある既存病院から派遣し
インドでは心臓手術を必要とする人が年 250 万
てもらうことで人件費を抑制する。こうした取り
人いるとされるが、実際に手術が行われるのは 9
組みにより、1 床当たりのコストは他病院の 600
万件ほど。ナラヤナは病院の建設コストを抑える
~800 万ルピーを大幅に下回る 120~180 万ルピ
などして他病院チェーンより安い料金を実現し、
ーを実現。手術料金もナラヤナの既存病院より 2
経済的な理由で治療をあきらめている人たちの
割ほど安い。
需要の掘り起こしをめざす。
周辺地域からも積極的に患者を受け入れ、初年度
年内にオープンする第 1 弾の病院「NH マイソー
の外来患者数は 21 万人、3,750 件の手術を行う
ル」は敷地面積 3 万 6,400 ㎡、病床数は 200 床
予定。年間収入は 1 億 8,000 万ルピーで、開設後
で 9 つの手術室を備え、医師 23 名、看護師 40 名
8 カ月での黒字転換を見込んでいる。ナラヤナは
が勤務する。建物はプレハブ構造で、不必要なス
今後 7 年間で、人口 50~100 万人の都市 100 カ
ペースを極力省いた簡素な設計を採用し、建設コ
所に同様の病院を開設する計画という。
ストを同水準の病院の 20%ほどに抑えている。
「チャリティーだ
CEO のデビ・シェティー氏は、
総投資額は 4 億 5,000 万ルピー(約 8 億円)
。病
けで人々を救うことはできない。新たなビジネス
院にありがちな壁や床の大理石や高価な調度品
モデルが必要だ」と述べ、新しい病院チェーンの
を避け、医療機器や設備もインドの中小メーカー
今後の展開に自信を示した。
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Vol.29
特許の崖を乗り越えて
いまやジェネリック医薬品が第⼀選択薬
――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
医薬品のコスト削減は、世界的に喫緊の課題と
医薬品の新しい特許制度を導入した。ところがこ
なっている。2012 年、大手先発品メーカーは
の特許法では、化学構造を変えた改良型医薬品に
「Patent Cliff(特許の崖)」と表現される窮地に
既存薬以上の効果が見られない場合、特許を認め
立たされた。Patent Cliff とは、ブロックバスタ
ていない。ノバルティスはインドで抗癌剤「グリ
ー薬(圧倒的な売り上げのある新薬)が特許切れ
ベック」の特許を申請したが、上記の理由から却
によりジェネリック医薬品に大きくシェアを奪わ
下された。そこで、改良型医薬品にも特許を認め
れ、売り上げが落ちることを指す。この 10 年で
るようインド政府に訴えを起こしたのである。
特許が切れるブロックバスター薬は多いが、替わ
ノバルティスが勝訴すれば、ジェネリックは規
りとなる新たなヒット商品は登場していない。
制され、先発品を開発する企業は守られる。逆に
先発品の 10 分の 1 の価格で販売されているジ
敗訴すれば、新しい特許法により医薬品の価格が
ェネリックは、発展途上国ではなくてはならない
上がり、発展途上国での医薬品の普及に壊滅的な
必需品である。米国も 2014 年からオバマ医療保
影響を及ぼすと懸念される。
険改革法が施行されるのに備え、ジェネリックへ
の切り替えを推し進めている。
ジェネリックの普及で打撃を受けるのは、大手
製薬メーカーだけではない。米国トップの薬局チ
ェーンであるウォルグリーンでは、2 年以上営業
している店舗の 2012 年の売り上げが、2011 年に
比べ平均 6.1%低下した。医薬品の売り上げだけ
でも 8.9%下がっている。原因は、安いジェネリ
ックが買われるようになったためである。広告業
界への影響も大きく、医薬品の広告費はこの 5 年
米国では、ジェネリックの使用がさらに増える
で推定 10 億ドルも削減されている。大手製薬メ
と予想されるため、オバマ大統領は今後 FDA の
ーカーが広告予算を 2~3 割カットするのは世界
監視を強化すると宣言している。現在は、臨床試
的な傾向といえる。
験なしで許可されるジェネリックだが、手軽に製
ジェネリックの成長は勢いを増している。2000
造できる日々はそう長くは続かないかもしれない。
年以降、米国での売り上げは 3 倍に膨れ上がり、
日本のジェネリックの普及率は、2011 年には全
年間およそ 1,100 億ドル、国内の処方の 70%以上
体の 23%にとどまり、米国の 70%に遠く及ばない。
に達した。2013 年にはさらに 500 億ドルのボリ
しかし厚生労働省の推奨もあって今後の普及が見
ュームが先発品からジェネリックに移ると予想さ
込まれるため、日本市場への参入をうかがう海外
れている。
の製薬メーカーもある。海外では製薬メーカーの
研究開発と製造の分業体制が整っており、去年フ
しかし、ジェネリックも追い風ばかりではない。
現在インドで進行中の裁判は、今後の医薬品市場
ァイザーとジェネリック大手のマイランは、日本
に大きく影響するとして関心を集めている。発展
でのジェネリックの開発・製造・販売で提携した。
途上国で使用されるジェネリックの大半を製造し、
「途上国の薬局」と呼ばれるインドは、2005 年に
世界と同様に国内でも、ジェネリック市場の動
向からは当分目が離せそうにない。
9
Feb. 2013
Vol.29
The Academia Highlight  アカデミア・ハイライト [29]
体に優しい⾼エネルギー線で
癌に⽴ち向かう
うのめ・たかのめ
by
新しい放射線治療の一つであるイオン化し
最小限に抑えて癌組織を叩くことができる。
た水素や炭素原子を用いる粒子線治療が 2 年
粒子線治療の弱点は効果が照射した範囲
前よりも着実に進化していることを、昨年末
内に限定されることで、腫瘍の大きさが 10
とこの 1 月に開催された放射線医学研セミナ
cmを超えたり、転移している場合は不向きで
ーで実感した。重粒子線治療では世界最先端
ある。一方、X 線治療は線量の制約が大きい。
を行く日本勢の、トップランナーに恥じない
これらの弱点を克服する硼素 中性子捕捉
ほ う そ
療法(BNCT)の臨床治験が、京都大学を中
実績も提示された。
一方、水素イオンを用いる陽子線治療では、
心に動き出した。あらかじめ癌細胞に送り込
米国が質・量ともに大きく水をあけている。
んだ硼素同位体に弱い X 線などの中性子を
これには、米国での癌治療に占める放射線利
照射すると核分裂反応でアルファ粒子が発
用率が 70%超と、30%以下の日本を引き離し
生し、硼素が存在する癌細胞のみを選択的に
ていることも関係している。
攻撃できる。
日本は横並び意識も働いたのか、80 億円の
高パルス励起レーザー光を癌治療に応用
陽子線治療装置の倍以上高価な重粒子線装置
する研究も進展している。一つは発生させた
を 10 カ所余も稼動させているが、症例数の伸
高エネルギービームを薄膜に集光させると
びはさほどでもない。放射線医の育成が追い
強力な陽子線ができることから、大型で高価
付かないようである。
なサイクロトロンではなく小型化が可能な
米国の高率の放射線癌治療を支えているの
レーザー装置でより安価な陽子線治療がで
は、放射線医の層の厚さと質の高さである。
きるとして、独ヘルムホルツセンターや神戸
研修医志願者が全診療科中で断トツのトップ
大学でそれぞれ独立して開発が進行してい
であるうえ、放射線腫瘍学研修のハードさが
る。もう一つはフェムト秒レーザー光の正確
半端ではない(ハーバード大 D.T.Miyamoto
なフォーカス能力と照射域外は加熱させな
博士談)ことが何よりの証しだ。周辺組織へ
い特性を活かして、癌腫瘍を見つけ出し、マ
の余分な照射を防ぐスポットスキャン技術を
ップを作り、非侵襲的に破壊する研究で、癌、
いち早く臨床応用できたのも、これと無縁で
特に脳腫瘍治療技術としてテネシー大学が
はないだろう。
取り組んでいる。
放射線治療で粒子線と X 線の差異を際立た
最後に、これまで医療への応用は滅菌や止
せているのは正常組織への侵襲性である。後
血、切開手段ぐらいにとどまっていたプラズ
者は光の性質そのままに照射エネルギーは皮
マを本格的に治療に活用するイノベーショ
膚付近をピークに吸収・減衰するので、正常
ンが、名古屋大学 堀勝教授の下で癌治療法
組織への影響は無視できない。一方、前者は
として誕生しつつある。正常細胞に影響する
体内に入ってもエネルギー散逸はなく停止す
ことなく、プラズマ照射でグリオーマや卵巣
る直前に大放出する性質から、このピークに
癌細胞を殺傷できる。プラズマ医療科学の今
癌組織を合致させれば、正常組織への影響を
後にも期待しよう。
10
Feb. 2013
Vol.29
Medical
Device Daily
2013/1/1― 2013/1/31
(
)
Diagnostics
プレートの中心部に全長 10mm のテーパーねじ
Cytox 社、
AD の早期診断テスト
ADpredict の開発続⾏へ
トが展開し、椎間関節を拡張することができる。
がセットされており、ねじを締めこむほどプレー
Dtrax Facet Screw は頸部を 1cm ほど切開し、
X 線透視下で専用の挿入器を使って左右の椎間に
挿入される。挿入後は、周辺に骨セメントを注入
2013 年1 ⽉28 ⽇
して固定する。
同社は 60 人を対象とした 1 年間の追跡調査の
Cytox 社(英)は 550 万ドルの資金調達に成功
結果を、『Journal of Neurosurgery:Spine』に掲
し、アルツハイマー病(AD)を初期段階で診断で
載している。
きる血液検査「ADpredict」の開発を続行する。
ADpredict は、バーミンガム大学の Zsuzsanna
Nagy が発見したメカニズムに基づいて開発され
た検査で、細胞周期の異常を特定することで AD
を早期に診断できる。同氏によると、細胞周期の
間期で機能異常が発生すると、その後細胞は異常
なまま発達し、AD の特徴であるプラークを生成
(http://providencemt.com/dtrax-facet-system)
するようになるという。
現在 AD の診断で一般的に用いられているのは
Bacterin 社の⾻グラフト
OsteoSponge、
認知テストや PET 検査だが、前者は軽度認知障
害と AD を明確に区別しにくく、後者は費用が高
臨床試験で有望な成績
いという問題がある。AD の早期発見は医療費削
2013 年1 ⽉24 ⽇
減の点からも非常に重要であり、ADpredict の開
発が進むことが期待されている。
Bacterin International Holdings 社が、足関節
(http://www.cytoxgroup.com/)
固定用の骨グラフト「OsteoSponge」の初の臨床
Orthopedics
試験の結果を発表した。
脱灰処理したヒト海綿骨を 100%使用したスポ
ンジ状の移植用グラフトで、柔軟性があり、フィ
Providence 社の
ット感が高い。また、海綿骨の持つ多孔質構造は、
椎間スペーサーシステム
患者自身の骨の再生を促進するよいスキャホール
Dtrax Facet Screw
ド(足場)となる。
今回の試験では、47 人の患者の合計 80 カ所の
2013 年1 ⽉22 ⽇
治療部位を対象に足関節の固定率が評価され、
Providence Medical Technology 社の頸椎用椎
97.5%が癒合していることが確認された。また、
間スペーサーシステム「Dtrax Facet Screw」は、
術後1年での疼痛は著しく軽減され、機能回復の
チタン製スペーサーを用いて圧迫された椎間関節
程度も良好であったという。
を拡張し、神経根を除圧するデバイスだ。V 字型
(http://bacterin.com/products/osteosponge/)
11
Feb. 2013
Vol.29
って臼蓋カップを配置できる手術支援機能をあわ
ジンマー、脊椎固定システム
V2F を発売
せ持つ。
THA では人工のカップを設置するために患者
2013 年1 ⽉24 ⽇
の股関節部分の骨を削るが、削る骨の部位や量の
判断はすべて医師に任されている。MAKOplasty
ジンマーが、胸腰椎の破裂骨折や腫瘍、退行性
は医師が削るべき骨の部位を画像で表示し、必要
椎間板変性症用の脊椎固定システム「V2F」の市
以上に骨を削りそうになったら自動でドリルを停
販前承認(PMA)を取得し、販売を開始した。同
止する。さらに、カップがずれることなく植込ま
社は引き続き欧州でも承認を取得する予定で、今
れているかを画像で確認することもできる。
年の第 2 四半期頃までに発売したいとしている。
(http://www.makosurgical.com/)
V2F はさまざまなサイズのプレートと固定用
Cardiology
スクリューを揃えており、専用の挿入ガイド
「All-Through-One」ですばやく正確にスクリュ
ーを挿入できる。また、Variable-to-Fixed Locking
CID 社、Cre8 DES の
Cap 技術により、スクリューの挿入角を 15 度ま
安全性を実証
での範囲で調整でき、重要な解剖学的構造を温存
2013 年1 ⽉7 ⽇
することができる。
同社は、人工膝関節置換術用の骨切りナビゲー
Carbostent & Implantable Devices 社(CID:
ションシステム「iASSIST」の市販前届 510(k)
を1月初めに完了したばかりだ。昨年(2012 年)
伊)は、薬剤溶出ステント(DES)「Cre8」の臨
に完了した市販前届の数は 2009 年の 2 倍にのぼ
床試験での 2 年間の追跡調査の結果を報告した。
Cre8 は、表面に炭素をコーティングすることで
り、今後の成長が期待されている。
周辺の血管内皮形成を促進し、血栓症のリスクを
軽減するステントだ。また、シロリムスを有機酸
化させた独自の薬剤 Amphilimus を溶出し、標的
の血管組織の深部まで浸透させる。CE マークは
すでに取得している。
この追跡調査では、Cre8 とボストン・サイエ
ンティフィックの DES「タクサス」が比較された。
(http://www.zimmer.com/)
2 年目の結果では、心臓死、心筋梗塞、標的病変
部再血行再建などの有害事象の発生率は、いずれ
MAKO Surgical 社の
THA ⽤⼿術⽀援ロボット
MAKOplasty Hip
も Cre8 のほうがタクサスよりも低かった。
(http://cidvascular.com/cre8/amphilimus/)
2013 年1 ⽉31 ⽇
MAKO Surgical 社の人工股関節置換術(THA)
用の手術支援ロボット「MAKOplasty Hip」は、
⼼臓壁の開孔部を
⾃動的に閉鎖する
MID 社の Permaseal
2013 年1 ⽉15 ⽇
同社の人工股関節シリーズ「RESTORIS」の手術
時に使用される。
MAKOplasty は、CT 画像から治療計画を作成
Micro Interventional Devices ( MID ) 社 の
する機能と、ドリルを備えたロボットアーム「RIO
「Permaseal」は、経カテーテル大動脈弁置換術
Robotic Arm」を医師が操作し、正確に骨盤を削
(TAVR)や経カテーテル僧帽弁留置術(TMVI)
12
Feb. 2013
Vol.29
に用いられるガンタイプのデバイスだ。経心尖ア
メドトロニックの
植込み型⼼電図レコーダー
プローチの際に心臓壁へのアクセスルートを確保
し、術後は開孔部を自動的に閉鎖できる。
REVEAL XT
Permaseal の概要はこうだ。まず、ガイドワイ
2013 年1 ⽉17 ⽇
ヤーで経皮的に心尖部にアクセスして心臓壁を開
孔し、アクセスルートを確保する。次に、ゴムベ
ルトがわたされた 6 つのアンカーを開孔部周辺に
メドトロニックは、植込み型の心電図レコーダ
ー「REVEAL XT」の臨床試験を開始した。
打ち込む。このアクセスルートを通じて TAVR や
REVEAL XT は、62×19×8mm の USB メモ
TMVI を行い、術後にシースを引き抜くと、ゴム
ベルトが縮んで開孔部が閉じるようになっている。 リの形をしたデバイスで、外来手術で簡単に胸部
の皮下へ植込むことができる。医師のプログラミ
縫合が不要なため、侵襲も少なくて済む。
同社は現在、Permaseal の臨床試験と CE マー
ングにより、患者の心電図や長期的な診断データ
を継続的に計測・記録し、同社のオンラインネッ
クの申請を進めている。
トワーク「CareLink Network」を介して医師に
送信する。レポート機能で、心房細動の負荷や患
者の活動状況、日中と夜間の心拍数なども確認で
きる。
400 人を対象にした今回の臨床試験では、6 分
間以上続く心房細動の発生率が測定される。心房
細動の高リスク患者の早期検知とその対処法への
足がかりをつかむことが期待されている。
(http://microinterventional.com/permaseal.php#)
(http://www.medtronic.com/)
コヴィディエンが
腎除神経システム
OneShot を発売
CorMatrix 社、⼼外膜再⽣
シート CorMatrix ECM の
安全性を証明
2013 年1 ⽉17 ⽇
2013 年1 ⽉22 ⽇
コヴィディエンは、昨年 CE マークを取得した
CorMatrix Cardiovascular 社は、心外膜の切開
腎除神経システム「OneShot」を欧州やアジアで
部を修復するシート「CorMatrix ECM」の臨床
発売する。
OneShot は腎除神経用のアブレーションカテ
試験の結果を発表した。
ーテルで、血圧をコントロールする腎臓の交感神
これは、患者自身の細胞増殖のスキャホールド
経を焼灼して高血圧を治療する。先端にあるバル
となるシート状の生体材料で、手術で切開した心
ーン内部にはらせん状に電極が配置されており、
外膜を覆うように縫い付けて切開部を修復する。
一度に広範囲を焼灼できる。電極の横には灌流用
400 人以上の患者を対象に行われた臨床試験で
の穴があり、周辺組織への熱の伝導と、電極の組
は、冠動脈バイパス術を行った後に心外膜に
織への焼き付きを防ぐことができる。効率的に治
CorMatrix ECM を使用する群と使用しない群に
療が行えるため、患者の負担も少ない。
分け、安全性が評価された。その結果、心タンポ
8 人の高血圧患者を対象とした臨床試験では、
ナーデ発生率、冠動脈グラフトのキンク率につい
治療後 6 カ月で平均 42mmHg の血圧降下という
て、両群に大きな差は見られなかった。
CorMatrix ECM は心外膜や心臓組織、頸動脈
優れた成績を残している。
の再生用として、米国ではすでに 7 万人以上の患
(http://covidiensites.com/cirse2012/video.php)
13
Feb. 2013
Vol.29
者に使用されている。同社は今後、心臓以外でも
できる。また、バルーンの拡張率を一定に保つ
使用できるよう技術を応用するという。
Balloon Control Band 技術により、閉塞の強い部
位でも安全な留置操作ができる。
(http://www.cormatrix.com/index)
今回の臨床試験に先立ち、30 人の患者を対象に
ニュージーランドで行われた臨床試験では、新生
DFM 社が Transcatheter
Aortic Valve System の
CE マークを取得
内膜による閉塞率はわずかに 2.7%と低く、他社の
DES の 2~3 分の 1 だった。
(http://sveltemedical.com/index.php)
2013 年1 ⽉29 ⽇
Neurology
Direct Flow Medical(DFM)社は、経カテー
テル大動脈弁置換術(TAVR)用の人工弁「DFM
Neuros Medical 社の
Transcatheter Aortic Valve System」の CE マー
植込み型
疼痛治療⽤デバイス Altius
クを取得した。18 フレンチのイントロデューサー
で送達される直径 25mm と 27mm の 2 種類の弁
2013 年1 ⽉14 ⽇
が、まもなく欧州で発売される。
ウシ心のう膜の生体弁をポリエステル製のフレ
ームに取り付けたデバイスで、フレーム内に生食
Neuros Medical 社の「Altius」は、肢切断者の
を流して拡張する。展開後でも位置を調整して弁
残存肢の痛みを軽減させる疼痛治療用デバイスだ。
周囲のリークを抑えることができ、最終的な位置
大腿部に植込むペースメーカ大の本体と、末梢神
が決定すると、生食の替わりに液体ポリマーを注
経付近に取り付けるリード、体外式の小型リモー
入してフレームを硬化・固定する。
トコントローラーからなる。高周波技術
臨床試験では、植込みを受けた大動脈弁閉鎖不
Electrical Nerve Block を採用しており、患者自
全症患者の 4 年後の生存率は 54%で、そのうち全
身がリモコンを操作し、高周波を発生させて末梢
く弁からの逆流がなかった患者は 80%、残りの
神経への痛みの伝達をブロックする。
20%も微量の逆流のみだったという。
現在行われているパイロット試験では、5 人の
被験者のうち 4 人の痛みを半減させることに成功
(http://www.directflowmedical.com/)
するなど、その有用性は実証されている。周囲の
期待も高く、ボストン・サイエンティフィックが
Svelte 社、ベルギーで
Svelte IDS DES の
同社に投資しているほか、米国国防総省も 150 万
ドルの開発援助を行っている。
臨床試験を開始
同社は 2015 年の市販前承認(PMA)申請をめ
ざしており、CE マークについても 2~3 年のうち
2013 年1 ⽉31 ⽇
に取得する構えだ。
Svelte Medical Systems 社が、薬剤溶出ステン
ト ( DES ) の 自 社 製 品 「 Svelte drug-eluting
coronary stent IDS」と、メドトロニックの DES
「Resolute Integrity」の治療効果を比較する臨床
試験をベルギーで開始した。
Svelte 社の DES は、コバルトクロム製ストラ
ットに、アミノ酸ベースの生体吸収性物質でシロ
リムスをコーティングしている。薄型で弾力性に
富むため、いままで留置困難だった部位にも使用
(http://neurosmedical.com/aboutus.html)
14
Feb. 2013
Vol.29
Other Products
鼻腔炎患者用の上顎洞口拡張システム「AerOs」
の薬事承認を取得した。
浸透性の物質を半透性の膜で覆った直径 3mm
UV 殺菌システム
TRU-D SmartUVC、
のカプセル型の拡張デバイスを鼻孔から挿入し、
2013 年1 ⽉7 ⽇
張する。デバイスはその後抜去されるので、留置
上顎洞口に留置する。拡張デバイスは周囲の水分
英国でも普及の兆し
を吸収して直径 5mm まで膨らみ、上顎洞口を拡
時間はわずか 1 時間で済む。一気に拡張するバル
UV Solutions Northwest 社の紫外線殺菌シス
ーンとは異なり時間をかけてゆっくり拡張するた
テム「TRU-D SmartUVC」は、本体に紫外線ラ
め、局所麻酔での治療が可能で、外来患者にも使
ンプを 360 度配した移動式の製品で、米国の 100
用できる。
2012 年 9 月に CE マークを取得しており、欧州
以上の医療施設で使用されている。
室内に置いて遠隔操作すると、短波長紫外線
ではすでに販売中。米国では未承認だが、同社は
市販前届 510(k)を申請している。
(UVC)を出して部屋中を殺菌する。細菌やウイ
ルスなどの DNA を破壊するのに必要な UVC の
(http://sinusys.com/products/)
放射量は、床・壁・天井などから反射する UVC
を Sensor360 で測定し、自動で調整できる。
英国では過酸化水素ガスによる殺菌が主流だが、
殺菌後の待ち時間まで含めると 30 時間もかかる
テレフレックス、
CPAP ⽤デバイス
Bubble PAP Valve を追加
など効率が悪く、やり方を間違えれば健康被害を
起こしかねない。一方 TRU-D は、1部屋わずか
2013 年1 ⽉8 ⽇
数分で処理できるうえ、人体に害のない UVC で
殺菌するため安全で、殺菌率も 99.9%を誇る。院
テレフレックスの子会社で、低コストで治療効
内感染のために余分に発生する英国の医療費は年
果の高い呼吸器関連の製品を提供する Hudson
間 16 億ドルにのぼっており、TRU-D の普及で大
RCI 社は、経鼻的持続陽圧呼吸療法(NCPAP)
幅に節約できると期待されている。
用デバイス「Babi.Plus Bubble PAP Valve」を新
たに発売する。
Babi.Plus は、CPAP システムの呼気チューブ
の先端に接続するボトル状の製品。呼気をボトル
内部の水中へ通すことで水圧によって気道の陽圧
を維持し、気道や肺胞の虚脱を防ぐ。圧力の調整
は、ボトル上部にあるダイヤルを回すだけで簡単
にできる。正確で安定した圧力管理ができるため、
医師の作業負荷が減り、より患者の治療に集中す
(http://www.uvsolutionsnw.com/)
ることができる。
SinuSys 社が加・豪州で
上顎洞⼝拡張システム
AerOs の薬事承認を取得
2013 年1 ⽉8 ⽇
SinuSys 社は、カナダ保健省とオーストラリア
保健省薬品・医薬品行政局(TGA)より、慢性副
(http://www.babi-plus.com/bc01.html)
15
Feb. 2013
Vol.29
ルとワイヤーでつながったカプセル内視鏡を患者
Velomedix 社、
が飲み込むと、食道を通過して胃の入り口まで到
低体温療法システムの
臨床試験をカナダでも実施
達する。約 2.5cm のカプセル内には回転する近赤
外線とセンサーが搭載されており、OCT による観
2013 年1 ⽉17 ⽇
察ができる。検査後は医師がコンソールでワイヤ
ーを操作してカプセルを回収する。
Velomedix 社 が 、 低 体 温 療 法 シ ス テ ム
競合品は、ギブン・イメージング(イスラエル)
「Velomedix ALPS」の臨床試験の実施許可をカ
の食道粘膜を撮影するカプセル内視鏡「PillCam
ナダ保健省から取得した。同社は FDA から治験
ESO 3」で、NinePoint 社の優位性は組織下 3cm の
医療機器の適用免除(IDE)を受け、米国でも試
深部まで撮影できる点だという。臨床試験では麻
験を行っている。
酔を使用せず、1 分以内で食道全体を観察できた。
Velomedix ALPS は、腹膜透析のように臓器や
詳細は『Nature Medicine』2 月号に掲載される。
血管が多い腹腔内にカテーテルを留置し、冷却液
(http://www.ninepointmedical.com/)
を循環させることで、体幹部を冷却するシステム
だ。わずか 15 分で 35 度以下まで下げることがで
New Wave Surgical 社の
きる。
内視鏡⽤曇り⽌めシステム
D-H.E.L.P. 利⽤広がる
心筋梗塞患者の体温を下げて脳や心筋を保護す
れば、再灌流障害を予防できることが知られてい
る。60 人の ST 上昇型心筋梗塞患者を対象に行わ
2013 年1 ⽉28 ⽇
れる臨床試験では、経皮的冠動脈形成術(PCI)
New Wave Surgical 社の内視鏡用曇り止めシ
と低体温療法を組み合わせて行う群と、PCI のみ
を行う群に分け、治療効果と安全性が評価される。
ステム「D-H.E.L.P.」の 2012 年の使用数は、前
年比 46%増となる 30 万件となった。また、導入
施設も昨年だけで 300 施設増加し、全世界で 800
施設となっている。
D-H.E.L.P.は、内視鏡を洗浄する本体、トロッ
カーの内部を洗浄するためのワイパー
「TrocarWipe」、粘着性の高い組織を除去するた
めのマイクロファイバータオル「MicroPads」が
セットになっており、外径 5~12mm の内視鏡に
(http://www.velomedix.com/velomedix-solution/)
使用できる。電源を入れて 5 分後には本体内の曇
り防止剤が約 50℃に温められ、内視鏡を 5 秒間挿
NinePoint Medical 社の
入するだけで曇り止め加工が施せる。また、レン
カプセル内視鏡、
有⽤性を実証
ズに付着した脂肪分を分解・洗浄するので、内視
鏡の視界を綺麗に保つことができる。
2013 年1 ⽉18 ⽇
NinePoint Medical 社は、組織内部まで観察可
能なカプセル内視鏡の臨床試験の結果を発表した。
マサチューセッツ総合病院と共同開発したこの
カプセル内視鏡は、同社の主力製品である光干渉
断層撮影(OCT)装置「Nvision VLE Imaging
System」と同じ技術が採用されている。コンソー
(http://www.newwavesurgical.com/products/products)
16
Feb. 2013
Vol.29
量の大きな製剤でも経皮的に送達できる仕組み。
⾃律移動できる
遠隔医療⽤ロボット RP-VITA
市販前届を完了
一般的に使用される皮下注射のような針の穿刺が
ないので、痛みや炎症などの副作用を抑えること
ができる。CE マークは取得済みで、欧州ではす
2013 年1 ⽉28 ⽇
でに販売されている。
今回の試験では、アレルギー性ぜんそくのマウ
InTouch Health 社と掃除ロボット「ルンバ」
スに P.L.E.A.S.E.で経皮的に薬剤を投与した群と、
で知られるアイロボット社は、共同開発した遠隔
皮下注射で投与した群の治療効果が比較された。
医療用ロボット「RP-VITA」の市販前届 510(k)
その結果、P.L.E.A.S.E.群は皮下注射群と同等の
を完了した。
治療効果が得られたという。
InTouch 社の遠隔医療技術や電子カルテ機能を、
アイロボット社の自律移動式プラットフォーム
「iRobot Ava」に搭載した製品で、患者の周術期
管理に用いる。院内の間取りをインストールして
おけば、iPad で行き先をクリックするだけで患者
のところまで移動する。本体にはスクリーンとカ
メラが備えられており、院内の別の部屋にいる医
(http://www.pantec-biosolutions.com/)
師だけでなく、別病院の医師でも患者を診察する
ことができる。
InTouch 社は、すでに実用化
Augmenix 社、⽣体吸収性
マーカーTraceIT Tissue
Marker の市販前届を完了
されている手術支援ロボット、
薬剤を調製して運ぶロボット、
洗濯物を回収するロボットなど
と同様に、RP-VITA が医療を円
2013 年1 ⽉31 ⽇
滑に進める手段として利用され
ていくと見ている。また、イン
Augmenix 社 は 、 生 体 吸 収 性 組 織 マ ー カ ー
ドや中国など遠隔医療の導入に
「TraceIT Tissue Marker」の市販前届 510(k)を
積極的な国々にも、今年中に進
完了した。
放射線腫瘍医の多くは治療計画をより正確にす
出する予定だ。
るために CT と MRI を併用するが、これまで両方
(http://www.intouchhealth.com/)
の装置で使用できるマーカーは少なかった。主に
水とポリエチレングリコールで構成されるゲル状
Pantec 社の経⽪的な
のこの製品は、肺・乳房・前立腺などに注射する
薬物送達⽤レーザー装置
と、CT・MRI・超音波画像診断法のいずれでも鮮
P.L.E.A.S.E.
明な画像を得られる。3 カ月は体内の注入箇所に
2013 年1 ⽉29 ⽇
安定してとどまり、その後生体に吸収される。
また、同社は医療用ハイドロゲル「SpaceOAR」
Pantec Biosolutions 社(リヒテンシュタイン)
の市販前届 510(k)の完了もめざしている。前立腺
が、経皮的な薬物送達用レーザー装置
癌で放射線治療を行う際に前立腺と直腸の間に注
「P.L.E.A.S.E.」の試験結果を発表した。
入すれば、正常な直腸や周辺組織を放射線から防
P.L.E.A.S.E.は、ハンドピースで皮膚にレーザ
護でき、約 6 カ月で生体に吸収される製品。CE
ーを照射して角質層に最大 5,000 個の微小孔を作
マークの取得はすでに済ませている。
り、その上に薬物送達パッチを貼ることで、分子
(http://www.augmenix.com/)
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Feb. 2013
Vol.29
M&A
め、手術にかかるコストを抑えられる。
腹腔鏡手術はその技術を有する病院が近くに
あり、かつ高額な治療費を支払える患者のみ
ストライカー、
中国の⼤⼿整形外科メーカー
Trauson Holdings 買収へ
が享受できる治療法で、世界中で年間 500 万
人以上の患者が腹腔鏡手術を受けられずにい
るという。同社は本体の生産コストを抑え、
2013 年1 ⽉18 ⽇
なおかつ病院に無償で本体を貸し出し、使用
した回数に応じて使用料を徴収する販売プラ
ストライカーは、中国の大手整形外科デバイス
ンを打ち出している。トータルコストの低さ
メーカーTrauson Holdings 社を 7.64 億ドルで買
をアピールすることで、腹腔鏡手術の適用患
収する。買収完了は今年の第 2 四半期と見られて
者増をめざす。
いる。
(2) Angel Medical Systems 社
ストライカーの米国市場における売り上げは、
10 年前から全体の 65%と変わらないが、
「新興国
植込み型の心臓モニタリングシステム
市場に注力することにより、米国以外の市場で成
「AngelMed Guardian」は、ペースメーカ大
長できる余地は充分にある」と CEO の Kevin
の本体を植込み、冠状動脈の閉塞などによる
Lobo は述べる。Trauson 社は、2011 年の売り上
急速な ST 波の変化を感知して、体外ユニット
げが 6,000 万ドルで、中国のトラウマ分野では最
から振動・光・音により警告を発する。CE マ
大、脊椎分野では 3 番目に大きい整形専門のデバ
ークは取得済みで、市販前承認(PMA)をめ
イスメーカーだ。ストライカーは、中国のリーデ
ざして臨床試験を行っている。
ィング企業を買収することで中国における存在感
を強め、同国を始めその他の新興国市場でのシェ
ア拡大を狙う。
両社は 2007 年から業務提携し、Trauson 社が
ストライカーの製品を OEM で製造している。
(http://www.stryker.com/)
Conference
(http://www.angel-med.com/)
新興企業が
(3) Discogen 社
OneMedForum で
特許取得済みのハイドロゲル製剤「Injectable
投資を呼びかけ
Hydrogel」は、減少した椎間板に注入するこ
2013 年1 ⽉10 ⽇
とで痛みと炎症を抑え、椎間板を再生する。
同じく特許取得済みの超音波治療器
サンフランシスコで行われた投資家向けの会議
「Ultrasound Generator」は、体外から超音
OneMedForum で、80 社を超える新興企業が資
波を当てることで幹細胞を刺激し、非侵襲的
金提供を呼びかけた。主だった企業は次のとおり。
に椎間板の痛みを和らげ、軟骨の再生を促進
する。
(1) Salvetis 社(英)
(http://discogen.net/index.html)
3 つの関節を備えたアームが上下・左右・前
――――――――――――――――――――――
後方向に屈曲する手術支援用ロボットは、人
編集室注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し
ています。
の手よりも効率的に腹腔鏡手術を行えるた
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Jan. 2013
Feb.
Vol.28
Vol.29
Kawanishi Hotline
前号の Medical Device Daily から、カワニシの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。
メドトロニックがアルツハイマー病を
治療する DBS の臨床試験を開始〈12/13〉
バネで膝の負荷を軽減するMoximed社の
OA治療デバイスKineSpring〈12/12〉
パーキンソン病⽤として欧⽶で承認されている
深部脳刺激(DBS)装置「Activa PC」を、アル
ツハイマー病(AD)患者に使⽤して治療効果を
評価する。初期症状が現れる脳⼸を刺激するこ
とで、記憶⼒を回復する効果が期待されている。
バネ状のデバイスを⼤腿⾻と脛⾻に固定する
ことで、変形性関節症(OA)患者の膝の負荷を
軽減する。靭帯やほかの関節組織を温存できる
ため、⼈⼯膝関節への置換を遅らせたい患者向
き。CEマークは取得済みで欧州各国で販売中。
 高齢化で AD 患者は今後も増加していくため、適

 人工膝関節置換術(TKA)に勝るものではないが、
応が拡大されれば市場性は大きい。200 万人以上
低侵襲で治療ができ、膝の痛みが取れるのであれ
いる AD 患者のうち、1%が DBS 適応になるだけ
ば効果が高いデバイスだと思う。変形が少ない症
でも 2 万件、Activa PC 1 台 130 万円として 260
例で片側置換術を行っている施設などで使用して
億円の市場が生まれる。今後 DBS 本体が充電式
みれば効果が比較できるだろう。導入されれば独
になり、パーキンソン病(PD)患者に使用されて
占市場になると思うが、日本では人工関節の耐久
いる DBS の電池消耗による交換需要が減るとし
性が向上し、QOL 向上のために早くから TKA を
ても、その減少分を十分補うことができる。AD
受ける患者が増えてきている。どうせ手術するな
に外科的治療を行うことに拒否感を持つドクター
ら 1 度にやってしまうほうが良いという患者が多
もいるだろうが、薬物療法では効果がない患者や
いのではないか。(青木)
その家族にとっては福音となり得る。ただし PD
 今後 OA は若年層にも広がることが予想されるた
の場合と同様、DBS の効果には個人差があり、す
め、人工膝関節への置換をできるだけ遅らせたい
べての症状が改善されるものではない。認知力の
患者には適した製品と言える。現在こういった患
低下しやすい AD 患者にどうインフォームドコン
者に対しては高位脛骨骨切り術が行われることが
セントをとるのか、植込みを行う脳神経外科医と
多いが、侵襲が大きいのがネック。
「KineSpring」
長期的なフォローを行う神経内科医や精神科医と
は骨切りをせず、軟部組織の温存が可能とこれま
の連携をどうとるのかなどが課題。(樋口)
でにないコンセプトの製品であり、安全性に問題
現在 DBS に関しては PD・本態性振戦・ジストニ
がなければ治療方法として選択されていくと思わ
ア等のごく限られた症例で使用されているが、AD
れる。(萬木)
が適応になればその市場は爆発的に増加すると思
 人工関節置換を遅らせる製品のニーズは非常に高
われる。国内では 3 社が競合しており、技術的な
く、大きく分けてこの商品のような補助目的の製
差はなくなりつつある。AD は神経内科の担当す
品と、広島大を中心に進められている再生医療の
る患者であるため、外科適応をどこまで神経内科
自家軟骨培養置換とがある。KineSpring は資料
医に啓発できるかという点が市場獲得のカギにな
を見る限り分厚いようなので、日本人(特に女性)
るだろう。(田中)
には不向きかもしれない。すでにすり減っている
軟骨への処置を行わず、この製品だけで痛みが軽
減できるのかも疑問。また、自家軟骨培養は 1~2
年以内に上市される見込みで、受け入れられるか
どうかは国内への導入時期にもよる。(岡本)
(http://professional.medtronic.com/)
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Elixir Medical社の⽣体吸収性
ストラットDES DESolve〈12/20〉
注⽬のデバイス関連記事を
ピックアップ!(未掲載記事より)
ノボリムスを溶出し、体内に残留物を残すこと
なく冠動脈病変を治療できる⽣体吸収性スト
ラット DES。年内の CE マーク取得をめざす。
■ ボストン・サイエンティフィックの
MRI 対応リード「Ingevity」〈12/18〉
MRI 対応ペースメーカ「Ingenio」シリーズ⽤
 薬剤溶出ステント(DES)には遅発性ステント血
で、従来品より操作性・固定性・通電性に優れ、
栓症の問題が指摘されている。それを克服する次
MRI 下でも安全に使⽤できる。現在臨床試験中。
世代ステントとして期待が集まる生体吸収性ステ
 国内の MRI 対応ペースメーカは現在メドト
ロニックのみで価格も下落していない。セン
ト・ジュードを始め各社がこの市場に参入し
てくると見られ、その動向と参入でどれだけ
価格が下がるか注視する必要がある。
(柴田)
ントだが、まだ第1世代が開発段階のため、ステ
ントの厚み・デリバリー性能・最大拡張等におい
て、まだまだ現在市場に出回っている DES に及
ばない。国内でいちばん先に上市されるのはアボ
ットの薬剤溶出型生体吸収性スキャフォールド
「Absorb」と思われるが、それがどの程度市場に
■ CryoLife 社の⽌⾎剤
受け入れられるかによって、Elixir 社のような 2
「BioFoam Surgical Matrix」〈12/6〉
番手、3 番手のメーカーの動向も変わってくるだ
シリンジの液体製剤をかけるとゲル状に固まり、
ろう。ただ、第1世代が発売になったとしても、
組織を癒合させる。⽣体吸収性で、肝臓や脾臓
使用できるのは低リスクの病変で、治療対象病変
に続き⼼臓⾎管⼿術⽤として CE マークを取得。
の 2~3 割程度になるかもしれない。(米田)
 縫合術やエナジーデバイスを使用しても止
血が困難なケースでのニーズは高い。日本で
も医療材料としての止血剤が複数発売され
る予定で、市場の反応に注目したい。
(片桐)
電源や⽔なしで診断できるキアゲンの
HPV検査キットcareHPV〈12/3〉
バッテリー稼動の分析器や気温の変化に強い試
薬を採⽤した途上国向けのヒトパピローマウイ
ルス(HPV)検査キットで、中国の薬事承認を
取得。感度は90%と⾮常に⾼く、2時間半で結果
が分かる。細胞サンプルは患者⾃ら採取可能。
■ コンバテックの創傷治療ドレッシング
「アクアセル」〈12/18〉
⽔分を吸収してゲル化し、滲出液が健康な⽪膚
を軟化させたり、ダメージを受けやすくするの
を和らげるため、褥瘡⽤としても有効。
 HPV ワクチン接種の補助金は自治体によって異
 最近 SPD 契約先でもよく採用されるが、期
限切迫品になりがち。褥瘡の進行による償還
価格の違いの問題はあるが、適用が広がれば
回転がよくなる可能性もあるだろう。
(間中)
なるため、現在国として予算確保のため動いてい
る。日本では HPV 検査市場のリーディング企業
であるキアゲンの高リスク型 HPV を検出できる
HC2 法で遺伝子を検出しており、この試薬の感度
が HC2 法と同じか、HC2 法でなくてもよいとな
■ Arsenal 社の腹腔内出⾎の⽌⾎システム
「Arsenal Foam System」〈12/11〉
れば市場が生まれると思う。ただ、現場の技師は
型が判定できないことに懐疑的な様子。(穐田)
戦場での応急処置⽤。2 種類の液体ポリマーを
 HPV ワクチンの普及で認知度は高まっているが、
専⽤の注⼊器で腹腔に注⼊するとフォーム状
に膨張し、腹腔内を圧迫して⽌⾎する。
診療報酬には施設基準があり、検査費用も高いの
がネック。HPV 検査にはグルーピング検査(陽性
 救急医療の現場において、外傷による腹腔内
か陰性か)とタイピング検査(型まで判定)があ
出血の初期対応に有効では。材質の安定性、
画像診断時の影響など続報が欲しい。
(片桐)
り、現在日本では後者が主流。この製品は電源や
水が不要な検査としては有用だと思うが、日本市
※〈 〉は MDD の配信日、
( )内は回答社員の名字
場にはマッチしていないのでは。(吉川)
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ヒューマンドキュメント医療機器を開発した⼈たち
ハンドアシスト法を⽤いた腹腔鏡⼿術を普及させた
「ラップディスク開発物語 」-4-
―――取材・執筆
ふくやま
たけし
福⼭ 健
この「ラップディスク開発物語」(全 12 回)は、NPO
法人・日医文化総研の文化情報誌、
『知遊 Vol.15』
(2011
年 1 月刊)と『知遊 Vol.16』
(同 7 月刊)に掲載のヒュ
ーマンドキュメントを一部編集して転載したものです。
最⼤の難関は、
⼿を出し⼊れする弁機構
かずゆき
下村一之から依頼を受けて、ラップディスクの開
発・製品化に取り組んだのは、㈱八光電機製作所メ
ディカル生産本部(現・八光メディカル事業部)で
ある。
八光グループは、電熱機器製作、医療機器開発、
ラップディスクの開発を担当した八光メディカル事業部の
玉井亨彦・商品開発部長。
エンジニアリング、IT技術、商事などの事業部門
を持ち、長野県千曲市磯部に本社と主力工場を置く。
COLON 手術用トロッカー」を装着し、内視鏡下の
開発を担当したのは、現在、メディカル事業部商
ゆきひこ
品開発本部で商品開発部長を務める玉井亨彦だ。
手術に入る。したがって、リーク防止機構が必要。
玉井は新潟大学で化学工学を学び、1983 年に諏訪
③米国では学会のボス的存在のマックファーデン教
精工舎(現・セイコーエプソン社)に入社する。光
授が考案し、ウェーディングペック社が発売してい
学事業部の開発課と技術課に在籍し、入社 10 年を
る製品があるが、シンプルさに欠け、術者の負担が
経たとき、父親の病状が思わしくなくなったため実
大きい。④日本では福島医大第 1 外科と住友ベーク
家に戻り、地元の八光電機製作所に職を得て医療機
ライトが開発中の様子。
器の開発業務に携わるようになる。
〔仕様〕―― ①シンプルかつ 2~3 回使用可能なも
千曲川のほとりに立地するメディカル生産本部か
の。基本的にはディスポーザブル(注・使い捨て器
ら埼玉医大へ、玉井が下村と面談するために向かっ
具)。②弁によるリーク防止と手袋付きのトロッカー
たのは、1996 年 9 月 10 日のことだ。カバンの中に
が考えられる。③切開する長さにあまり影響されな
は、ラップディスクの試作品サンプルが入っていた。
い構造であること。④入り口は 90 ミリ前後、高さ
その 2 か月ほど前、玉井の上司、丸山勝(現・メ
は 70 ミリ程度。⑤リーク防止と腹壁との固定がポ
ディカル事業部専務取締役)と下村との間で初回の
イント。
打ち合わせが行われ、開発の基本事項が明らかにさ
〔今後の方向性〕―― ①他社の開発に負けない器具
れている。
としたいので、段階を踏んで開発したい。② 12 月
〔開発目的・背景〕―― ①内視鏡下にて COLON
の日本内視鏡外科学会や来年 3 月の米国 SAGES
(注・結腸)を手術する際、微妙かつむずかしい血
(注・消化器外科学会)で情報を集め、その上のラ
管の処理を腹腔内に直接手を入れて行うのに必要な
ンクをめざしたい。③第 1 ステップ――リーク防止
器 具 で あ る 。 ② あ ら か じ め 切 開 し 、「 内 視 鏡 下
機構の検討と実験(8 月~9 月)。第 2 ステップ――
21
Feb. 2013
Vol.29
動物実験レベルの器具の試作(年内)。第 3 ステップ
ない。課題は材質と耐久性。鋭利な手術器具等が
―― 情報収集により改良。
触れると破れるおそれもある。弁を 2 重構造にす
開発担当者に任じられた玉井は、この基本事項に
れば、より完璧なリーク性能が得られる。
・ 手袋付きのトロッカーは最大気腹圧 30cmH2O で
沿って、早速、試作に取りかかる。
は風船のようにふくらみ、また腹腔内においても
最大の難関は、ドクターの手の出し入れに伴い、
視界の妨げとなるため、当初は考えないほうがよ
自在に開閉する弁機構の開発であった。
い。
ドクターの手といっても、太い、細い、厚い、薄
いと千差万別だ。それらに対応できるリングを擁す
・ 腹壁の固定には肉厚弾性ゴムの張力を利用し、止
る弁でなければならない。さらに気腹法では、良好
血作用を持たせたい。末端はスプリングチューブ
な手術視野を確保するために腹腔内に炭酸ガスを注
にして、切開孔に丸めて投げ込むような仕様を考
えている(サンプル 2 提示)。
入し、腹壁をふくらませる方法がとられる。弁には
炭酸ガスが漏れるのを防ぎ、気腹を維持する役割が
〔下村Dr談〕
求められる。
・ 今回の八光の弁機構には感心した。十分使用可能
であり、実用新案にもなる可能性もある。手術は
最初に玉井が試作したのは、2 つのリングのつい
5~6 時間に及ぶことがあり、それ以上の耐久性が
た手袋である。
「これです(写真右)。手袋を切って、上のリング
ほしい。このトロッカーは手しか使えないと考え
と下のリングを挟んでねじったら、弁になったんで
ているが、いちばん上に保護キャップをつけるな
すよ。手袋を切った部品で、それをミルク缶に連結
ど、万が一の安全対策も考えておく必要がある。
したものです。それで簡易的な気腹装置みたいなも
手袋付きは最初考えなくてもよい。
の(写真左)をつくって、どれくらいの圧力に耐え
・ サンプル 2 であれば、動物実験に使用できると思
られるか、数値を測定しながら、使えそうなものな
う。次回までに 3 セットほど動物実験用に用意し
のかだめなのか、アタリをとってみたのです。この
てもらいたい。動物実験は US サージカル等も考
えている。
写真の日付からすると、下村先生とお会いするひと
・ トラカール・インプランテーション(ガンの植え
月ほど前ですね」
付け)にも配慮して、スカート部はなるべく広く
手術用手袋を部品に用いた弁機構のサンプルと圧
してほしい。
力漏れを計測したリークテストの結果を携えて、玉
・ 福島医大と住友ベークライトの開発中の製品は
井は下村のもとを訪れた。
12 月ごろ学会発表の気配がある。なるべく早いう
そのとき説明した内容や下村の談話を、玉井は記
録に残している。
ちに動物実験に入り、学会発表を行い、完璧な商
〔八光の説明〕
品になるよう問題点の抽出をしたい。
・ 形状から見て、名称は「ラパロディスク」がいい。
・ リークを最小限にし、薄型を追求すると、円筒状
のゴムをねじることで弁の機構はクリアできる
商標登録の調査をお願いしたい。
(サンプル 1 提示)。リークテストの結果も問題
玉井は下村と会った印象を、つぎのように記して
いる。
試作段階のラップディスク。
手術用手袋を切って、ミルク缶に
連結した。
「なごやかななかでお話をうかがうことができ、ま
た非常に丁寧に説明していただき、よい勉強になっ
た。ドクターは日本ではラパロ(注・腹腔鏡手術)
の先駆者であり、将来的にも有望な人物であるとい
うことで、どのような評価を受けるのか心配してい
たが、八光案の弁構造を非常に気に入っていただき、
よかったと思う。弁の構造については現在特許の出
願準備も進めているが、同時に製品開発も遅れるこ
試作段階の弁。
手術用手袋を切って上のリングと
下のリングで挟んでねじったら、
弁のようなものができた。
となく進めていきたい」
(次号に続く)
22
Feb. 2013
Vol.29
[出典紹介]
MDD (Medical Device Daily)
医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。
医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。
HRM (Healthcare Risk Management)
医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。
CMA (Case Management Advisor)
入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。
HCM (Hospital Case Management)
病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。
SDS (Same-Day Surgery)
感染症コントロールから償還、コスト削減策まで、日帰り手術の効果と安全性を高める情報を幅広く収録。
TR (Trauma Reports)
外傷患者の救急医療についての精査された情報を提供。
知遊 (CHIYU)
特定非営利活動法人(NPO 法人)・日医文化総研が、年 2 回刊行する文化情報誌。今日の医療を取り巻く
文化状況を、芸術文化・歴史・経済など幅広い視点から取り上げている。(http://www.chiyuu.com/)
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毎⽉ 15 ⽇発刊/年 12 号発⾏
年間会費 46,800 円(消費税込み 49,140 円)
Feb. 2013 Vol. 29
[発⾏⼈]―――⾼井
http://www.kawanishi-md.co.jp/mg
平
[編集⼈]―――前島達也
[発⾏所]―――㈱カワニシホールディングス
〒700-0975 岡⼭市北区今 1 丁⽬ 4-31
TEL: 086-245-1112
Internet:http://www.kawanishi-md.co.jp/mg
e-mail:[email protected]
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