レインボープロジェクトに参加して

レインボープロジェクト に参加して
広島工業大学高等学校 教 諭
生徒会顧問
洞 正 男
3年前に、生徒会宛に一通の案内状
自分たちの洗った靴をアフリカの
ですが、
ジャージを送ってもよいといわ
ではない。届けるという人的コストや金
現地スタッフの福島晶子さんは本校の
誰もが持っている小さな善意を
がI.S.Pの会から送付されてきました。
高校生たちが喜んで履いてくれる。
れたので無理矢理ジャージを洗濯して
銭 的コストがかかるのです 。せっかく
生徒会長と直接面談できて心からうれ
実現させるシステム
I.S.Pの会とは、安佐ライオンズクラブと
そう想像するだけでうれしくなれる。
靴と一 緒につめ込んで「 行ってこい」
寄付してくれた卒業生たちの心を無に
しそうでした。生徒会長と直接面談で
今回、
このような体験をすることがで
提携して発展途上国に支援をしている
本校に移動してから2年目の春、3年
状態で送り出しました。最初の年は段
することはできない。一 生 懸 命 洗って
きたのは広工大高だけだったのです。
きたのは、I . S . Pの会 、
ライオンズクラブ
NPOです。
(「I.S.P」
とは、
International
生最後の登校日に大きなポリ容器を用
ボール箱2箱程度でささやかなものでした。
段ボールに詰めた生徒会執行部の生
面談の中で生徒会長の春川君が福島
の皆さんのレインボープロジェクトという
Service Projectの略です)
「−レインボー
意して卒業生256人に呼びかけました。
徒になんて説明したらいいのだろう。こ
さんに大切なことを言ってくれました。
「自
システムが存在したからです。さらに生
プロジェクト− 卒 業 生が残していった
生徒が卒業後、使用するとしてもまさに
のとき、
ひらめいた方 法は、
「段ボール
分たちのやったことで、見 ず 知らずの
徒一人一人の善意が具現化できたの
シューズをアジアやアフリカの高校生に!」
「体育館シューズ」というデザインなの
の追加分は本校の生徒会で輸送費を
高校生たちがすごく喜んでくれている
は学 校内で、
システムとして生 徒 会 執
それまで、私の心のどこかにひっかかっ
で卒 業 後 、一 般のスポーツセンターで
何とか捻出しますので全部送ってくだ
と思うと心がポッと温かくなれます」こ
行部の年間行事にレインボープロジェ
ていたある疑 問がありました 。日本の
使用するのがちょっと恥ずかしい年頃
さい」という思い切った方 法です 。輸
の言葉にはボランティア活動の大切な
クト参加が定着してきたからともいえます。
豊かさはこのままでいいのだろうか?…
かもしれません。上履きやジャージをロ
送費はペットボトルの回収還元金でな
精神が表れています。親切とか支援と
「人の善意はつながりを作って初めて
前 任 校ではエアコン導 入に伴い校 舎
ッカーに放 置する代わりに多くの生 徒
んとか作り出せると判断しました。生徒
かは支援を受けた人よりも支援した人
命を得る」と思いました。優しい気持ち
内は上 履き使 用になっていました。卒
がポリ容 器に入れてくれました。本 人
たちの活 躍で予 想 以 上にペットボトル
の心を豊かにするということ。支援され
が個人個人の心の中にあるだけでは、
業していくとき生徒たちは親から買って
にとっては卒 業 式 後の邪 魔な荷 物が
の回収金があつまり
( 1年間で5万円ほ
た人だけでなく支援した人にもそれ以
実現しません。それが行動となって、行
もらった上履きを無造作に下足箱に放
処分できた程度のことかもしれません。
ど)、輸送費2万円を捻出することがで
上の笑顔をもたらす。じつは彼女が来
動が継続的に実行されるシステムを作
置したまま学 校を去っていきました。う
しかしその靴が何よりもの贈り物になる
きました。
校されるまで恥ずかしいことにモザンビ
り上げることが、人間らしい社会を構築
ち捨てられた上履きの数々を処分しな
方法があるのです。
ークがアフリカのどのあたりにあるのか
することになるのではないでしょうか 。
がら複 雑な思いになったものです 。そ
はじめはそのままアフリカに送ればい
正確に知りませんでした。現地の高校
生徒たちにはこのレインボープロジェク
モザンビークから感謝状が届く
の答えが、
このプロジェクトにあるかもし
いのかなという甘い考えでした。
ISP
10月に現地の高校を運営活動して
生が日本の高校生と同じように、当たり
トを通して、次のようなことを学んでほし
れない。そう感じた私は、本 校の生 徒
の担当者に聞くと「できれば洗 濯して
いる日本人スタッフがモザンビークの高
前のことですが 数 学や化 学や物 理を
いと思います。これから考える自分のア
会執行部のメンバーにこのプロジェクト
送ってもらえないでしょうか」
とのこと。
「い
校生たちの感謝状とともに喜びの言葉
学んでいることを改めて知りました。1
イデアや行 動が 人々の 幸 せな生 活を
への参加を勧めました。
「なにか、学校
いことを実行するとなるとやっぱり面倒
を伝えに来てくれました。生徒会長、副
足の靴を2人で分け合って履いてサッ
作り上げるためのシステムづくりになっ
や社 会のためにしたい」という気 持ち
くさいし手 間がかかるなあ」と不 謹 慎
会 長 、生 徒 会 顧 問でお会いしました。
カーをしていることを聞きました。生 徒
ているか 。自分の仕 事は経 済 的 収 入
で生徒会執行部に参加している生徒
にも内心、
やれやれと思いました。生徒
たちは、一つ返事でプロジェクトへの参
たちもなんだか面倒くさそうです 。
「洗
ジャージが無事モザンビークに届きました
確実に善意を届けるには人の
加を同意してくれました。本校以外にも
濯して送ったほうが受け取る人が気持
手間や金銭的コストが必ず付随する。
修道高校、広大附属高校、広陵高校な
ちいいから… 」と生 徒たちを納 得させ
それを覚悟で実行することがたいせつ
ど広島市内の高等学校10数校がこの
て洗剤とたタワシを使ってゴシゴシ。か
レインボープロジェクトに参加しています。
じかんだ手を温めながら生徒たちは一
生懸命洗っていました。靴を洗い
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学校の職員ジャシントさんと届いたジャージ
たちは何kmも山道を歩いて学校に通
を得ることだけではなく、
このようなシス
っていることを聞きました。日本から送
テム作りかかわっているだろうかという
った靴やジャージがいかに破れにくく
こと。
品 質 が良いかも知りました 。足
2年目、卒業生が374人になりました。
の裏の皮が厚いのでアフリカ人
担 任の先 生 方からの案 内も徹 底した
は靴を履かなくても何kmも平気
のか、何と段ボール5個分集まりました。
で歩けるんだろうなどと私はかっ
終えた生徒たちの顔はすがすが
靴にして40足ジャージで50人分くらい
てに思っていたのです 。福 島さ
しい顔に見えました。見えただけ
だったと思います 。勇んでISPに連絡
んの伝言は私たちのちょっとした
でなくやっぱり行動を始めた生徒
するとアフリカまでの輸 送 費がかるの
善意の行動で発展途上国の生
たちの目は輝くんだと感じました。
で段ボール2個までにしてくださいとの
徒たちがこんなにも喜んでいると
自分のやったことが 誰かの喜び
こと。輸送費は安佐ライオンズクラブで
いう、思いがけない心温まるニュ
になっている。そう思うだけで心
負担してもらってきたそうです 。そうな
ースでした。卒業生みんなの善
が豊かになれます 。本当は要 求
んです。いくらものが余っていてもすぐ
意なのに自分たち執行部がほめ
されていたのは靴だけだったの
には不足している人たちが使えるわけ
られたような心地でした。
福島
福島さん
生徒会長
春川君
副会長
吉森君
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